金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第24回) 議事録
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1.日時:
令和5年9月15日(金曜)15時00分~17時00分
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2.場所:
中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室 ※オンライン併用
金融審議会 市場制度ワーキング・グループ(第24回)
令和5年9月15日
【神田座長】 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。
ただいまから、市場制度ワーキング・グループの第24回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところを本日も御参加いただき、誠にありがとうございます。
そこで、議事に入ります前に、今般、このワーキング・グループ委員の就任、それから、事務局における異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。齊藤市場課長、よろしくお願いいたします。
【齊藤企画市場局市場課長】 事務局を務めさせていただきます市場課長の齊藤と申します。よろしくお願いいたします。
まず、本ワーキング・グループ委員をお務めいただいていました原田喜美枝委員、福田慎一委員、井口譲二委員が御退任されました。続きまして、新たに亀坂安紀子委員、小枝淳子委員が就任されました。
また、事務局である金融庁にて人事異動がございましたが、時間の都合もございますので、お手元の配席図で紹介に代えさせていただきたいと思います。
以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、本日ございますけれども、まず、事務局から本年3月に国会に提出されました金融庁関連の法律案について、御説明をしていただきます。その後、日本証券業協会から金融庁提出法律案に関連する事項について御説明をしていただきます。ここで、一旦、皆様方に御議論をいただきたいと思います。
その後で、日本取引所グループから最近の取組みについて御紹介をいただきます。続けて、社債市場について、事務局及び日本証券業協会から御説明をいただきます。そこでまた、皆様方に改めて御議論をいただくという二部構成で進めさせていただきます。
それでは、早速ですが、金融庁提出の法律案について、事務局の皆さんから御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【齊藤企画市場局市場課長】 まず、金融庁提出法律案について御説明させていただきます。お手元の資料2-1に沿って御説明させていただければと思います。
2枚めくっていただきまして、3ページ目でございます。金融商品取引法等の一部を改正する法律案については、昨年の市場制度ワーキング・グループの第二次中間整理、また、顧客本位タスクフォースの中間報告等を踏まえた法律案となっております。3月に閣議決定されて国会提出をし、6月8日に衆議院本会議で可決されましたが、参議院で、現在継続審査となっております。
法律案の趣旨でございますが、デジタル化の進展等の環境変化に対応して、金融サービスの顧客等の利便の向上及び保護を図るため、顧客本位の業務運営や金融リテラシー、企業開示等に関する制度を整備するものでございます。
大きくは3つのパートがございまして、左側の顧客本位の業務運営・金融リテラシー、右上の企業開示、右下のその他のデジタル化等の進展に向けたものの対応でございます。
まず、左側の顧客本位の業務運営・金融リテラシーについてでございますが、顧客本位の業務運営の確保といたしまして、最終的な受益者たる金融サービスの顧客や年金加入者の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行すべきである旨の義務を、金融事業者や企業年金関係者に対して幅広く横断的に規定するという内容でございます。こちらは、顧客本位の業務運営の原則で、金融機関を対象に顧客の最善の利益を図りつつ事業運営をするように促してまいりました。これまでの原則だけではなく、法律としてしっかり規定をすることで一層の定着を図っていきたいという趣旨でございます。
また、顧客の属性に応じた説明義務を法定すると。これは、これまで内閣府令レベルで規定されていたものについて、法律レベルでの義務とするとともに、顧客への情報提供におけるデジタル技術の活用に関する規定を整備するということでございます。
このデジタル技術の活用に関する規定ということで、これまで顧客への説明について書面の原則を採っていたところでございますけれども、顧客のデジタルリテラシーに応じて、書面またはデジタルによることを任意で金融商品取引業者等が選べることとするということで、こちらにつきましては、後ほど日本証券業協会から、書面から電子にお客様の認識がなく切り替わることのないように、どのように配慮していくかの取組みについて御説明いただければと思っております。
その下の金融リテラシーの向上については、政府として安定的な資産形成の支援に関する施策を総合的に推進するために基本方針を策定すると。こちらは、内閣総理大臣が案を策定して閣議決定をするということでございます。案の作成に当たりましては、金融審議会の意見を聴くこととなっております。また、利用者の立場に立って金融経済教育を広く提供するために、金融経済教育推進機構を設立するということで、御覧のような業務、形態、役員、ガバナンス等になっております。
これに伴いまして、これまで金融サービスの提供に関する法律という名前だったものが、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律と、法律名も変える案となっております。
右側の上でございますが、企業開示につきまして、非財務情報の開示の充実に向けた取組みと併せて、企業開示の効率化の観点から、金商法上の四半期報告書を廃止するという内容でございます。法律上の義務を廃止して、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化するということでございます。
また、半期報告書、臨時報告書の公衆縦覧期間でございますが、現在はそれぞれ3年、1年となっておりましたが、課徴金の除斥期間に合わせて5年に延長を図る内容でございます。
また、右下でございます。その他のデジタル化の進展等に対応したものということで、まず、ソーシャルレンディングについては、インターネットで集めた出資を企業に貸し付ける仕組みで、クラウドファンディングの一種でございますが、これを行う第二種金商業者について、投資家に適切な情報提供等が行われていなかった事例を踏まえまして、運用報告に関する規定を整備しております。
また、その下でございます。不動産特定共同事業契約については、出資を募って不動産で運用して収益を分配する仕組みでございます。こちらは不動産特定共同事業法に基づく規制ということでございましたが、トークン化する動きが見られることを踏まえまして、他のトークン化された電子記録移転権利と同様に金商法のルールを適用するという内容となっております。
また、金融商品取引業者等のウェブサイトにおいて、営業所に掲示する標識と同内容の情報の公表を義務づけると。また、課徴金納付命令に係る審判手続につきまして、手続全体をデジタル化、デジタルで処理するといった内容も盛り込んでいるところでございます。
次のページでございますが、もう1本、法律案を提出しているところでございます。社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案ということで、こちらもデジタル化関係でございます。
内容といたしましては、左側でございますが、現在、取引所に上場されている有価証券の中で、唯一日本銀行出資証券はデジタル化されていないということでございます。こちらについてデジタル化するという内容でございます。
また、真ん中でございますが、投資法人等についての登録簿、これもインターネットで公表するという方向に合わせまして、インターネットの公表に際して個人情報、例えば役員の住所等を除くための規定を整備するという内容でございます。
また、右側のところにつきましては、公認会計士に対する課徴金納付命令についての審判手続をデジタル化する内容でございます。
下側のところでございますが、スタートアップの上場日程の期間短縮でございます。上場に要する期間が長くなれば、価格変動リスクが価格に織り込まれて、公開価格が低く設定される傾向があるということで、この振替法によりまして、現在、1か月以上と法定されています上場承認日から上場日までの期間について、株主保護を図りつつ、実務の改善による短縮を可能とする見直しを行っているところでございます。
それでは、法律の施行に係る四半期開示の見直しについては企業開示課の野崎課長から、金融経済教育推進機構における取組みの進め方については総合政策課金融経済教育推進室の桑田室長より御説明をお願いいたします。
【野崎企画市場局企業開示課長】 企業開示課長の野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。本案の施行に係る四半期開示の見直しについて、若干御説明させていただければと思います。
金融商品取引法上の四半期報告書を廃止しまして、取引所の四半期決算短信に一本化することによりまして、情報の重複を解消して、企業開示の効率化を図ることを目的とするものでございます。
四半期開示の見直し等の改正につきましては、法律案では確定日付で来年の4月1日を施行日としておりますので、法律案が成立した場合には、円滑な施行が行われるように前広に準備を進めているところでございます。
具体的には、四半期決算短信に一本化した後も、投資家にとって必要な情報が提供されることが重要でございますので、現在、東京証券取引所におきまして、四半期決算短信の開示内容や、会計不正が起きた場合の監査人によるレビューの義務づけの要件等につきまして、投資家や企業の意見を踏まえながら検討をいただいているところでございます。このほかの会計基準や監査基準の検討、関係政府令の整備やEDINET等のシステム改修の準備も進めているところでございます。
私からの説明は以上です。
【桑田総合政策局金融経済教育推進室長】 金融経済教育推進室長の桑田と申します。よろしくお願いします。
それでは、資料の右下5ページ目を御覧ください。先ほど説明のありました関連法律案の成立が前提ではありますけれども、金融経済教育推進機構の設立を来年春、本格稼働を来年夏に据えて、可能な範囲での設立準備を関係団体と議論しながら進めております。
左側に設立に向けたイメージを図示しております。この機構の形態といたしましては、金融庁が監督官庁として所管する認可法人となります。中立的な形での金融経済教育を国全体で展開していくため、政府、日本銀行、民間団体等が進めてきた取組みの重複を解消しつつ、より効率的、効果的な金融経済教育の実現を目指してまいります。
この一環として、民間団体のうち、全国銀行協会、日本証券業協会、投資信託協会につきましては、今行っておられる事業の基本的に全てを機構に移管するとともに、資金、人員の面で御貢献をいただく方向で議論を進めております。また、その他の民間団体につきましても、資金、人員の拠出について御協力をいただき、機構の業務を支えていただく予定です。
あわせて、金融庁及び日本銀行の関連業務、事業も機構に移管し、資金、人員も拠出する予定ですが、機構の全体のイメージといたしましては、新たな経営陣の下で最終的には決定される事項ではありますが、役職員数が約70名、年間の予算規模は約20億円でありまして、うち9割以上は民間からの拠出で賄うことを想定しております。
右側には、機構における取組みを記載しております。まず、顧客の立場に立ったアドバイザーの普及・支援です。特定の金融事業者、金融商品に偏らないアドバイスを提供する者を認定アドバイザーとして見える化することにより、個人が気軽に相談できる環境づくりを進めてまいります。
2点目が、金融経済教育の抜本的拡大です。公的な性格という強みを活かしながら、企業向けのセミナー開催と講師派遣事業、その他イベントを広く展開してまいります。
3点目が、教育の質の向上になります。先ほど申し上げた認定アドバイザー等機構の講師として活躍いただく方に対する体系的な養成プログラムや研修を導入して、分野横断的な知識習得の機会を確保いたします。
4点目が教材・コンテンツの充実です。官民の各団体が有するノウハウを結集し、家計管理や生活設計のほか、資産形成、金融トラブル等、各年齢層に必要な金融リテラシーを整理いたしました金融リテラシーマップの内容を踏まえつつ、工夫を凝らしてまいります。
5点目として、個別相談事業を実施いたします。セミナー等で知識を得たとしても、それを具体的な行動変容へとつなげていくためには、個人の状況に応じたアドバイスが得られることが重要かと考えております。個人が家計に関するアドバイスに価値を見出すきっかけとなることを期待しております。
最後の6点目といたしまして、戦略的な教育を展開していくために、教育活動の目標やKPIを設定しながらPDCAを回していきたいと考えております。
私からは以上です。
【齊藤企画市場局市場課長】 最後に、御議論いただきたい事項につきまして、御説明させていただきます。資料の最後の7ページ目を御覧いただければと思います。
まず、金融経済教育推進機構でございますが、国全体として、中立的立場から金融経済教育の機会提供に向けた取組みを具体的に進めていく際にはどのような点に留意すべきか。また、機構の教育活動を抜本的に拡充するためには、地方を含めて学びの場づくりに取り組むことが重要だと思われます。企業の雇用者向けセミナーを広く支援・促進する場合に、どのようなステークホルダーとの連携を追求すべきか。また、その他に学びの場づくりに向けてどのような取組みを進めていくべきかという点でございます。
また、上記のほか、金融庁提出法律案が成立した場合の施行に向けて、顧客に対する書面デジタル化の周知方法を含め、どのような点に留意して進めていくべきか。これらにつきましては、この後の日本証券業協会からのプレゼンテーション後に御議論いただければと考えております。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、日本証券業協会から御説明をお願いします。森本さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【森本オブザーバー】 日本証券業協会政策本部の森本と申します。本日は、説明の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
私からは、事務局より御説明のありました金商法等の改正法律案のうち、初めに御説明いただきました顧客への情報提供におけるデジタル技術の活用、こちらの顧客への周知の方法につきまして、まだ法律案が成立していない状況ではございますが、国会で御審議されております法律案のまま成立すると仮定しまして、現在、証券業界において検討している状況を御説明させていただきます。
資料の2-2を御覧いただければと思います。表紙の次、1ページ目を御覧いただければと思います。
御覧のとおり、昨年末に取りまとめられました顧客本位タスクフォースの中間報告におきまして、顧客への情報提供におけるデジタル技術の活用について示されております。このうち、本日、特に御説明させていただく箇所には下線を引かせていただいておりますけれども、その部分は、また後のページでも改めて引用させていただいておりますので、次に進ませていただきます。次の2ページ目を御覧いただければと思います。
上のほうに1ページ目の一部を再掲させていただきましたが、中間報告では、契約締結前や契約締結時等の情報提供については、金融事業者において、書面とデジタル手段を顧客本位の観点から自由に選択できるようにすることが考えられるとされました。この点につきましては、デジタルトランスフォーメーションの促進を重要施策の一つとして掲げている私どもからお願いしていたところでございますので、今般、このような方向をお示しいただいたことにつきまして、厚く御礼申し上げる次第でございます。
2ページ目の中ほどは、左側が現在の書面交付原則、顧客からの希望があればデジタル交付、右側が制度移行後に新たに選択可能となります、顧客からの希望があれば書面交付、希望がない限りデジタル交付のイメージを図にさせていただいたものでございます。もちろん中間報告においても御指摘いただいておりますとおり、これは顧客本位の観点の下に行われるべきこと、顧客の認識なく書面交付が電子交付に変更されるといった事態が起こらないようにすることが重要でありますので、2ページ目の一番下に書かせていただきました、中間報告で求められている3つの項目につきましては、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
この点、現在、国会で継続審査中ではございますけれども、その法律案がそのまま成立すると仮定しまして、証券業界では、具体的には次の3ページに書かせていただきましたように、業界とデジタル原則に移行しようとする証券会社個社の両面で取組みを行ってまいりたいと考えております。それぞれの項目につきましては、4ページ以降に示させていただいておりますので、4ページを御覧いただければと思います。
まず、業界レベルでの取組みですが、いずれも本協会におきまして、(1)全国紙に複数回広告を出し、まず、社会全体における認知の向上を図ってまいりたいと考えております。また、(2)証券会社がそのまま顧客への周知に使えるリーフレットの作成、配布、それから、(3)証券会社による顧客への周知についてのガイドライン等を作成して、個社における対応の目線合わせを行うことを考えております。
次に、デジタル原則を選択しようとする証券会社、個社における取組みにつきまして、こちらは新規のお客様と既存のお客様とに分けて検討しておりますが、現在の検討内容を御説明いたします。5ページを御覧いただければと思います。
まず、新規のお客様につきましては、口座開設時の申込書類やウェブページにおける申込み画面において説明することで、漏れなく周知することができると考えております。
次に、6ページを御覧ください。
既存のお客様については、既に書面での交付を受けられている方がいらっしゃいますので、中間報告でも御指摘いただいておりますとおり、より丁寧な周知が求められると考えております。その対応のイメージを7ページに図で表させていただきましたので、7ページを御覧いただければと思います。
まず、上のほうの黄色の網かけの2段、お客様によって証券会社との接触の仕方は異なるものと思われますので、一律の方法ではなく、それぞれのお客様に伝わりやすい方法を用いて、デジタル原則への移行と書面交付への切替えが可能であることをお伝えしたいと考えております。その際、お伝えした文面をお客様が御覧になったかどうかを、マイページでの閲覧記録や電子メールの開封通知等によって証券会社側で確認できるようにしておきまして、図の上から3段目の左側、さらにそこから下のほうへ行くところになりますけれども、一定期間経っても閲覧されたことが確認できないお客様につきましては、同じ方法、あるいは、異なる方法を用いて、デジタル原則移行後にもわたって、実際にお客様に伝わるように取り組んでまいりたいと考えております。
なお、8ページに移りますけれども、デジタル原則を選択する社であっても、デジタル手段による情報提供がふさわしくないと考えられる顧客層につきましては、その社において初めからデジタル原則の対象とせず、書面交付の原則を継続することもあり得ると考えております。
こうした内容をベースとしまして、証券業界におきましては、顧客本位タスクフォースの中間報告で御指摘いただいておりますような、お客様の認識なく書面交付を電子交付に変更するといった事態が起こらないよう、しっかりと対応を行う所存でございます。
繰り返しですが、まだ法律案が成立していない状況ということもございまして、現在の検討状況は、本日、御説明申し上げたようなところでございますが、引き続き、金融庁と調整させていただきながら、証券業界において対応の在り方について検討してまいりたいと考えております。
私からの説明は以上となります。御清聴いただきまして、ありがとうございました。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、これまでのところで一遍区切りまして、今までいただきました御説明について、委員の皆様方に御議論をいただければと思います。本日、初めての委員の方もいらっしゃると思うのですけれども、これまでのやり方として、できるだけ多くの委員の皆様方に御発言いただく機会を確保する観点から、あらかじめ割り算をして時間の目安を申し上げています。大変失礼ながら、御発言のお時間の目安としては、お一方当たり3分程度以内を目安にしていただければありがたく思います。
また、今日は、委員の皆様方には実参加をしていただいていまして、恐らく3年半以上ぶりだと思うのですけれども、チャットに記入してくださいというわけにもいきませんので、御発言いただける方には挙手していただくか、あるいは、昔、人数が多いときによくやっていたのですけれども、お名前の札を立てていただければ、できるだけ順番に、私から御指名をさせていただきたいと思います。それから、今日、松岡委員はオンラインにて御参加されると思いますけれども、オンラインの方はいつもの方法でお知らせいただければと思います。
なお、オブザーバーの皆様方には、大変恐縮ですけれども、時間の関係で、ここの段階では御発言の機会を設けさせていただきませんけれども、後半の部分が終わりましたら、委員の皆様の御発言の後に時間を設けたいと思いますので、そこでもし前半部分についても御意見等ございましたら、併せて御発言いただければと思います。今、御説明いただきました前半部分について、委員の皆様方から御質問、御意見、どなたからでもお出しいただければ大変ありがたく存じます。
それでは、坂委員、どうぞお願いいたします。ありがとうございます。
【坂委員】 坂です。よろしくお願いいたします。私からは、金融経済教育推進機構について3点ほど述べさせていただければと思います。
まず1点目ですけども、顧客本位タスクフォースの中間報告が提言しました金融経済教育の意義を再確認することが重要と考えます。中間報告では、幅広い観点から金融リテラシーの向上に取り組むとしており、金融リテラシーマップの内容を踏まえ、家計管理や生活設計等のほか、消費生活の基礎や社会保障、税制度、金融トラブルに関する内容も含めた取組みを行うとしております。この趣旨は、衆議院の財務金融委員会の附帯決議とも共通するものと思います。
他方で、金融経済教育が投資教育に偏ることを懸念する声は根強いものがございます。投資教育は金融教育の一部ではありますが、適切に位置づけることが必要と考えます。投資を行う余裕資金がないという声が多いこと等も踏まえ、金融経済教育が投資教育に偏ることがないよう、十二分に留意する必要があると思います。
2点目ですが、こうした観点に十分配慮して、推進機構の認可要件、あるいは組織構成、業務運営は適切に具体化される必要があると考えます。特に、業界団体の皆さんとの関係においては、潜在的な利益相反構造といいますか、そういったものがあり得ることに十分配意し、信頼される制度の具体化と運営をお願いしたいと考えます。
3点目ですが、消費者教育における蓄積も活かされるべきと考えます。消費者教育の分野では、消費者教育推進法という法律が消費者市民社会という考え方を提唱しております。この考え方に倣いますと、個々人の金融行動は、貯蓄や投資等を通じて社会経済の在り方に影響を及ぼし得るというところでありまして、個々人が金融行動を通じて企業価値の向上や経済成長の実現に寄与し得るといった認識が広がることが期待されると思います。こうした考え方は、顧客本位タスクフォースの中間報告の冒頭に、インベストメントチェーンの機能発揮として述べられている点とも共通するものと考えます。
全体として、腰を据えた幅広い金融経済教育を進めることが、中長期的には成長資金の供給を促す基盤となり得るものと考えます。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、お隣の佐々木委員、野村委員、そして、神作委員の順でお願いしたいと思います。佐々木先生、どうぞ。
【佐々木委員】 ありがとうございます。私からは、2点ほど意見を述べさせていただきます。
金融教育に関して機構に期待することなのですが、こちらの5ページの説明をお伺いする限り、これが実現できればすばらしいのではないかと思いました。こちらに含まれているかもしれないのですが、やはり安心してアクセスして調べられるウェブサイトというか、そういったものが期待されると思います。例えば大学におりましても学生からよく聞かれるのですが、いろいろな情報があふれる中で、どこの情報だったら安全だと思って読めばいいでしょうかといったような質問を結構受けることがございますので、これだったらこれという案内ができるようなウェブサイト的なものをつくっていただければと思っております。
また、デジタル化についてですが、先ほどお話がありましたように、閲覧状況を確認されるというようなメリットを活かされた運用をされるということで、非常に意味があると思いました。さらに、場合によっては、必要な部分については、例えば閲覧ができないと、ずっとしてない人は先に進めない等といった様々な新しい対応方法も考えられると思いますので、ぜひそのような形で進めていただければと思います。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
お隣の野村委員、どうぞ。
【野村委員】 野村資本市場研究所の野村でございます。御説明どうもありがとうございました。
私からも、金融リテラシーの部分について、幾つか申し述べさせていただければと思います。まず、このような機構という組織を設立して、現在、いわば複数の主体にまたがっているような機能を集約し、より効果的な活動を志向するという、このこと自体はとても意義深いと思っております。その際に、金融リテラシーの向上について、今までの民間等の取組みだけではなかなか届かない対象が存在し、そのギャップを埋めることが主眼であると理解しておるところです。
そうやって考えますと、社会人については、職域、より具体的には小規模な、あるいは地方の職域がポイントになるのではないかと思います。これには、地方公共団体も含まれるかと思っております。大手の企業等では、例えば企業型確定拠出年金が入っておりますと、そこでの投資教育等も提供されますし、あるいは、昨今では、従業員のファイナンシャルウェルネスの向上、人的資本の拡充の観点から、そういったことが注目されたりしているわけですけれども、やはり規模の小さな職域では、そのようなことに人的リソースを割くのにも限界があると思います。また、いわゆる大都市圏ではない地方に行くほど、提供する側のリーチがどうしても届かないこともあると思いますので、これらのギャップをいかに埋めにいくかが大事なのだと理解しております。
また、先ほど桑田室長の御説明にもありましたとおり、知識装備だけにとどまるのではなくて、金融の行動にまで持っていきたいということだとすると、これは、機構の活動と民間の連携も極めて重要であろうと思います。
また、今、佐々木先生からありましたとおり、幅広い適切な発信においては、デジタル戦略が鍵を握るということで、ウェブサイトやSNSの活用も必須なのだろうと思います。
最後に、金融経済教育の基本方針の策定についても御説明にありましたけれども、ここではイギリスのように数値目標を掲げるかどうかも一つのポイントではないかと思います。これは難しいかもしれないとは思うのですけれども、エビデンスベースの施策推進という観点からは、何らかの数値目標は検討に値するのではないかと思います。
私からは以上です。どうもありがとうございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、神作委員、松尾委員、有吉委員の順でお願いできればと思います。神作先生、どうぞ。
【神作委員】 ありがとうございます。私は、7ページの2つ目の「顧客に対する書面デジタル化の周知方法」について、コメントさせていただきたいと思います。
不意打ちにならないように顧客に対し、書面デジタル化の周知をしっかり行うことは、大変重要なことであると思います。日本証券業協会からプレゼンテーションいただきましたけれども、お話を伺いますと大変周到な方向で考えておられ、そのような方向で周知を徹底していただければありがたいと思います。
その際、2点希望と申しますか、御要望させていただきたいと思うのですが、第1点は、周知をするときに電子データでの提供のメリットをアピールしていただくことが非常に重要なのではないかと思います。電子的に提供することの迅速性や、保存や取り出しの容易性、あるいは、場合によっては編集可能性等々、デジタル化にはメリットがたくさんあると思いますので、書面デジタル化の周知に併せてデジタル化のメリットについても強調していただければありがたいと思います。
第2点は、実際に書面デジタル化原則が適用される場合には、そこで強調したメリットが、実際に顧客や投資家にとっても実感できるような形で書面デジタル化を実施していただくとともに、特に当事者にとっては分かりやすい、使いやすい方法・様式で提供していただくことを希望いたします。
私から以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、松尾委員、どうぞお願いいたします。
【松尾委員】 ありがとうございます。私からも、金融経済教育の学びの場づくりについて、2つほど申し上げたいと思います。
一つは、個人的に見聞きした範囲ですけれども、一つのアプローチの仕方として、オーナー経営者の方の資産運用についてアドバイスしている業者が、信頼を得て、うちの従業員にもぜひそういうアドバイスをしてほしいというような形で従業員にそういう場を設けるというところで成功している例を幾つか見聞きしたことがございます。そういう意味では、既にお考えかと思いますけれども、先ほど野村委員からもありました特に地方への拡充に関しては、オーナー経営者からのアプローチと、そこで信頼を得て従業員の方にと。その際に、既に資産を持っていらっしゃる方へのアドバイスと、資産形成層へのアドバイスが異なると。ですので、オーナーについているアドバイザーの方がうまく従業員にはできないというようなことがあるのであれば、何かしら連携が必要になるのかと感じております。
もう一つ、これも地方にとっては非常に重要かと思いますけれども、教育の際に学校で生徒、学生にということはよく考えておられると思うのですけれども、ぜひそこに保護者の方も御一緒いただいて、子たちと一緒に御両親、親御さんにも一緒に学んでいただくと。そうすると、子たちへの責任も感じていただいて、人ごとではないと感じていただけるのではないか、そういうことを考えております。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、有吉委員、どうぞお願いします。
【有吉委員】 西村あさひの有吉でございます。私からは、金融経済教育について2点、それから、書面のデジタル化について1点、コメントを申し上げたいと思います。
まず、金融経済教育について、いろいろな観点からの取組みが必要であることは承知しておりますが、そのうちの一つの視点として、金融や金融経済教育そのものに無関心な層に対して、どのようにしたら関心を持たせることができるのかを特に重視して取り組んでいただきたいと思っております。この点、桑田室長や野村委員からお話がありましたとおり、実際に行動に移してもらうことが重要であると思いますが、今申し上げたような層がどうしたら実際に体験をするのか、場合によってはバーチャルでまず体験してもらうことでもよろしいのかもしれませんが、こうしたことを重視して取り組んでいただきたいというのが1点目でございます。
2点目のコメントとしまして、教える側の確保という視点も重要ではないかと感じます。金融機関の方からのお話として、業務外で何か物を教える、あるいは資料を作る等して、講演料や執筆料を若干でも受け取ると、これが副業扱いになって社内手続が非常に煩雑で、結局、そんなことはしない、あるいは、無償のボランティアで対応するといった方向になりやすいと伺ったことがございます。
もちろん本業を度外視してそういった活動ばかりに取り組んでしまうのであれば、これは本末転倒だと思いますが、金融機関の実務に携わられている方々の中で、知識、経験、それから、意欲がある方々が教育に関わることを行いやすくするような取組みをぜひ進めていただきたいと思うのが2点目のコメントでございます。
それから、書面のデジタル化について、どうしても書面対応が必要になる顧客が存在することは、私も十分理解しているつもりでございます。ただ、神作先生のお話にもございましたとおり、本来的にはやはりデジタル化は顧客のメリットや利便性につながるものであると考えます。今般の制度改正がなされた後の仕組みとしては、デジタル対応ができない顧客に、書面で対応してほしいと言われれば、書面を渡さなければならないという制度になることは十分承知していますが、ただ、金融機関側の実務的な取組みとしては、何でも紙を渡せばよいとしてしまうのではなくて、何らかのサポートをする等して、できる限り顧客をデジタル対応のほうに誘導していく、そういった施策が取られていくことを強く期待したいところでございます。
私からは以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、亀坂先生、どうぞお願いします。
【亀坂委員】 ありがとうございます。
本日、議論する事項の2点目の顧客に対する書面デジタル化の周知方法は、日本証券業協会の方々に準備していただいた資料を拝見して、よく検討されていて、もう回答が用意されているような状態だと思いました。特に、2枚目のデジタルが原則になった場合も書面交付が可能である旨の告知を義務づけることは非常に重要だと思うのですけれども、ポイントを既に整理していただいていて、何もコメントすることはないように感じました。
1点目の金融経済教育推進機構に関してコメントしたいのですが、資料の2-1の5枚目が一番関係あるかもしれないのですけれども、政府、民間団体、金融広報中央委員会等が、金融経済教育推進機構に機能移転、承継、資金、人員を拠出するということで、私は、この金融広報中央委員会の、連携講座と呼ばれていたと思うのですけれども、5年ぐらいコロナ前に引き受けていて、ここに書いてある問題点のようなことを日本銀行の情報サービス局の方々と議論したことがあります。中立的立場から、とにかく独立性や中立性が大事だということで、大学で講義をさせてほしいというところから始まって、それを拡大するにはどうしたら良いのだろうということで、3年目ぐらいになったら、毎年、日本証券業協会や、団体[A1] 、全国銀行協会、金融庁からも講師にいらしていただいて、オムニバス形式でやっていたのですけれど、3年目ぐらいになったら、これもDVDか録画で全国にいつでも見られるようにできないかと提案して、実際、青山学院大学で行った授業を収録していただきました。ところが、大学で行った授業を大学外の人に提供してはならないという、法務関係のチェックが入りましてできませんでした。
ですので、ぜひ金融庁で、この会議もユーチューブ配信されていらっしゃるようなのですが、金融教育の講義を年1回、15回程度されて、それを録画して、いつでもオンデマンドで受講できるようにする等していただきたいなと思いました。
長くなりましたが以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
そうしますと、あと、御発言いただいてない方としては、小枝先生なのですが、御発言はございますか。
【小枝委員】 重複がございましたので特に、今の時点ではございません。
【神田座長】 そうですか。どうもありがとうございます。
あと、松岡委員が遅れてオンラインで御参加と伺っていますけれども、まだ現時点では御参加されておられないようですが、それでよろしいでしょうかね。
それでは、これで委員の皆様方一通り御意見をいただきましたけれども、追加で、ほかの委員の方々の発言を聞いて何か追加で発言があれば、ぜひお願いしたいとは思います。いかがでしょうか。
それでは、まだ後半がありますので、次に進ませていただければと思います。どうもありがとうございました。
次の議題ですけれども、日本取引所グループから最近の取組みについての御説明をしていただきます。それでは、青さん、よろしくお願いいたします。
【青オブザーバー】 東京証券取引所の青でございます。本日はどうぞよろしくお願いします。
日本取引所グループでは、様々なことに取り組んでおりますけれども、本日は、資産運用立国に関連して、投資先となる上場企業の価値を高めていくための取組みについて、資料3に沿って御説明させていただければと思います。
2ページ目でございますが、東京証券取引所では、昨年、60年ぶりに市場区分の大幅な見直しを行いました。今回の見直しは、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を支えることを目的としておりまして、そのための基盤として、明確なコンセプトに基づく3つの市場区分を設け、それぞれのコンセプトに応じた上場基準等を設定しております。
この市場区分の見直しを契機といたしまして、上場会社各社では、ガバナンスの充実や、英文開示の強化、上場維持基準に適合するための計画の策定・実施等、企業価値向上に向けた様々な取組みを進めていただいているところでございます。
3ページ目でございますが、このような上場会社の取組みをフォローアップし、市場区分の見直しの実効性を高めてよりよいマーケットを運営していく観点から、東京証券取引所では、有識者会議を設置しまして、そこでの論点整理を踏まえた上で、さらなる対応を進めております。
まず、経過措置について、移行先の市場の上場維持基準に達していなくても、当分の間は上場可能としているものですけれども、新陳代謝を健全に機能させる観点から、2025年3月で終了することといたしました。
それに伴い、プライム市場の上場会社については、改めて上場市場を選択する機会を設けることにいたしまして、これまで100社程度の会社がスタンダード市場への移行を表明しているところでございます。
また、上場維持基準への抵触の懸念がない、規模の大きな会社に対しましても、企業価値の向上に向けた取組みをさらに促すことが重要であろうとの認識から、その動機づけとなる枠組みづくりを進めているところでございます。
具体的に申し上げますと、資料の右下の、特に1のところにございますけれども、本年3月に上場会社に要請いたしました、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を中心といたしまして、1から4までの4つの施策を進めつつあるところでございます。
この問題意識の背景にあるのが5ページ目にあるわけですけれども、簡単に申し上げますと、日本の企業のPBRとROEの状況が芳しくないというところが議論の出発点でございます。
従前からコーポレートガバナンス・コードでは、持続的な成長と中長期の企業価値向上の観点から、資本コストや資本収益性を十分に意識した経営資源の配分が重要であるという考え方が示されておりますが、日本企業の現状を見ますと、左側のグラフにありますように、主要企業の43%がPBR1倍割れという状況にあり、ROEで見ましても、右側のグラフにありますように、40%がROE8%を割っているという状況です。これは、アメリカや欧州と比較しましても、日本だけが特に目立って芳しくない状況にあったということでございます。
有識者会議では、こうした状況を踏まえまして、我が国では経営者が資本コストや株価、言い換えれば市場評価に対する意識が薄いのではないかというような認識の下、まずは経営者の意識改革や経営に関するリテラシーの向上によって、自律的な経営の見直しを促進していくことが必要との整理がなされました。
そこで、東京証券取引所といたしましては、6ページ目にございますとおり、東京証券取引所プライム市場とスタンダード市場の上場会社全社に対しまして、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等の要請を行ったところでございます。
具体的には、各社の取締役会において、自社の資本収益性や市場評価に関する現状分析を実施した上で、改善に向けた計画の策定・開示、取組みを実行していくといったことを継続的に実施いただくようお願いしております。
なお、改善に向けた取組みの内容として、右側の黄色ハイライト部分を御覧いただければと思いますけれども、自社株買いや増配といった一過性の対応を期待するものではなく、長期的な収益力が高まるような必要な資源の投下、投資をしていただきたいという趣旨でございますので、継続的に資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な経営の改善をしてくださいというメッセージを明確に申し上げたところでございます。
7ページ目が、今般の要請を踏まえました上場会社の開示状況でございます。経営者の皆様には、十分な現状分析や検討を行っていただくため、開示時期の期限は定めておりませんでしたけれども、これまでのところで、プライム市場の3割の会社が何らかの開示を行っているという状況でございます。とりわけPBRが低く、時価総額が大きい会社ほど開示が進展しております。逆に言いますと、PBRが高い企業や時価総額が小さい企業では、相対的に開示が進んでいない状況でございます。
ただ、この点につきましては、とにかく開示を進めましょうということを過度にやってしまいますと、企業の形式的な対応を招くおそれもございますので、やはり十分な検討を行っていただくことを基本に据えながら、可能な限り速やかに進めていただくよう、これからも要請をしていきたいと考えているところでございます。
8ページ目は、御参考までに、フォローアップ会議で議論した状況でございますけれども、まず、上半分の対応状況に関する評価や課題認識に関しては、先ほど申し上げた内容と概ね一致しているところでございます。
下半分の今後の方策については、例えば、企業の現状を3つの類型、具体的には、今般の要請を機に改革を試みようとする企業、リソース不足でなかなか手が回らない企業や他社の出方を様子見する企業、要請に取り組む意義自体に疑問を抱いている企業に分けて考えたうえで、それぞれ企業にフィットするような形で、企業の対応の見える化や、一層かみ砕いたガイダンスを提供していくべきではないかというような意見が出たところでございます。今後、議論を重ねながら、どうすればより企業に動いていただけるかといった観点から、企業をサポートするための取組みを継続してまいりたいと考えております。
また、9ページ目も御参考でございますが、株価指数に関しまして、TOPIXの見直しを進める一方で、並行して、企業価値向上を促すための取組みとして、JPXプライム150指数の算出を開始しております。
本指数では、プライム市場の時価総額上位500社のうち、エクイティ・スプレッド、PBRの2つの基準を用いて選定した150社を構成銘柄としております。これらは、米国を代表する指数でありますS&P500の構成銘柄と比べても、各種の経営指標において遜色のない水準の企業群となります。
投資家がこうした「企業の稼ぐ力」に着目した投資を行うことで、稼ぐ力を意識した価値創造経営が浸透し、その果実が投資家に分配され、さらに投資が行われる、といった好循環を生み出す機能をこの指数が担い、日本を代表する企業や日本経済の成長とこの指数がうまくリンクしていくことを期待しております。
10ページ目も御参考でございますけれども、今月、アクティブETFの上場という商品が上場しました。従来、東京証券取引所に上場しているETFは、TOPIXや日経平均といった指数連動型のみでしたが、世界的にアクティブタイプのETFが拡大していることを受けて、今般、必ずしも連動する対象の指数が存在しないというタイプ、つまりアクティブ運用ができるタイプのETFの上場制度を整備いたしました。
先週9月7日には、第1弾が上場いたしまして、PBRに着目して投資先を選ぶETF等計6商品が上場し、個人投資家をはじめ様々な投資家層に取引をしていただくことを目指しているところでございます。
こうした株価指数やアクティブETFは、投資や銘柄の選択が、よりプロの力を使いながら行われていくことにつながり得る一つの取組みと考えております。
続いて、12ページ目は、グロース市場の機能発揮に向けた検討についてでございます。こちらについてはまだ検討を始めた段階でございますので、あくまでも現状報告になりますけれども、まず、IPO全体の現状としましては、年間で100社程度が上場しており、そのうちの7割程度がグロース市場への上場でございますが、諸外国と比べてかなり小規模での上場が多く、資金調達額も小さい傾向にあります。ここについてはかなり課題意識を持っているところでございます。
また、13ページ目は、グロース市場の上場後の状況でございますが、左側のグラフを御覧いただければ分かるとおり、上場時から個人投資家を中心に株式が保有されているという現状がございます。資金供給・対話等の観点から、中長期的な成長を支える機関投資家の参入が期待されるところでございますけれども、なかなか進んでいないのが実情でございます。
その理由としましては、機関投資家が参入しやすい企業規模まで成長できていないことや、上場会社が自社の成長性を機関投資家に十分に訴求できてないといったことが考えられ、いかにして機関投資家の参入を促し、上場後の成長を促していくかが課題と捉えているというところでございます。
こうした課題を踏まえまして、まず、上場会社の情報開示やIRを促進していくとともに、新たな産業の創出の観点からも、上場前に大きく成長できる環境の整備に向けて、政府のスタートアップの育成5か年計画の動きとも歩調を合わせ、東京証券取引所として取り組むべき事項を検討してまいりたいというふうに考えてございまして、例えば、未上場の段階の企業につきまして、日本証券業協会で御検討されているJ-Ships制度や、PTSの活用等との関係も踏まえながらも、プロ向けの上場市場の活用も考えられないか等も含めて、幅広い検討を行っていきたいと考えております。
最後になりますけれども、15ページ目で投資単位の引下げの最近の取組みについて御紹介させていただければと存じます。ここまで上場会社の企業価値向上についてお話ししてきましたが、その恩恵が広く家計に及ぶためには、個人が投資しやすい環境が必要と考えております。ファンドを使うことが一つの大きな軸でありますけれども、個別株につきましても、投資単位の引下げに取組んでいるところでございます。
従来、東京証券取引所では、望ましい投資単位ということで5万円以上50万円未満という水準を示し、上場会社に投資単位の引下げをお願いしてきたところでございますけれども、依然として投資単位が高いままにある会社があることから、昨年10月に引下げに向けた株式分割の実施を要請し、これまでに50社以上に実際に分割の実施を決定していただいております。
また、個人が投資しやすい環境を整備する観点から、望ましい投資単位の下限を下回るような、1万円や2万円といった水準に移行することを目的とした株式分割を実施・検討する企業が出てきていること等を踏まえまして、下限の「5万円以上」を撤廃することといたしました。東京証券取引所では、引き続き、投資単位が高いままにある会社への働きかけ等の取組みを行っていきたいと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、テーマは少し変わりますが、社債市場についてです。まず、事務局からの御説明をお願いします。
【齊藤企画市場局市場課長】 それでは、お手元の資料の4-1に沿って御説明させていただきます。1ページ目を御覧いただければと思います。
まず、社債市場の活性化に関するこれまでの取組みでございます。我が国の社債市場につきましては、これまで様々な制度改革を経て自由度と効率性を高めてきたところではございますが、近年では特に2009年7月の社債市場の活性化に関する懇談会、これは日本証券業協会が事務局でございますが、本懇談会が設置されて以降、社債市場の活性化に関して様々な課題についての検討及び取組み、見直しが進められてきました。
主な取組みとして年表を掲げておりますけれども、2010年にこの懇談会の取りまとめの公表が行われまして、発行市場、流通市場、市場インフラ等に関して課題を整理され、具体的な取組方針がまとめられております。その取組方針に基づきまして、2012年、「社債市場の活性化に向けた取組み」ということで具体的な取組み内容がまとめられております。
それを踏まえた検討が進められ、2015年には「社債の取引情報の報告・発表制度」、2016年には発行企業による自主的な情報の開示が進むように、コベナンツ開示例示集の公表がされております。また、2021年には、社債発行者への主要投資家名を報告する需要販売情報の提供、いわゆるトランスペアレンシー方式ですけれども、これを規定した自主規制の規則が施行されております。また、改正会社法におきまして、社債管理補助者制度が導入されております。そのほか、社債の取引情報の報告・発表制度につきましては、さらに対象銘柄を拡大して公表する内容が見直されております。
また、2023年、今年でございますけれども、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループでの議論を踏まえまして、コベナンツの内容等の開示に係るパブリックコメントを金融庁で実施しているところでございます。
次のページでございますが、社債市場の状況ということで、発行企業の状況でございます。企業の資金調達構成を見ますと、我が国では、株式に次いで借入れの割合が大きく、全体の4分の1を占めており、米国と比較しまして、社債等による資金調達割合が低い状況でございます。また、社債の格付別発行額を見ると、米国では非投資適格の社債が一定程度発行されておりますが、我が国では非投資適格、信用リスクの相対的に高い企業が発行する社債でございますが、こうした社債はほとんど発行されていない状況でございます。
こうした点から我が国では社債の発行が、スタートアップ企業を含めた幅広い企業の資金調達手段として十分に活用されていない状況であり、我が国の社債市場の厚みは限られているのではないかということでございます。また、特に経済金融環境が急変した場合には、企業の社債による長期の資金調達が行いにくくなる状況が生じてしまうこともあるのではないかと考えてございます。
次のページでございます。新たな動きということで、デジタル社債についてでございます。デジタル社債とはトークン化された社債のことでございます。一般的には小口化、効率化、コスト削減等にメリットがあるとされておりまして、この活用が進んでいけば社債市場の活性化にもつながり得るとの期待の声もあります。2021年の4月に第1号事例となるデジタル社債が発行されて以降、一口1万円だったものもございますが、デジタル社債による資金調達が複数回実施されているところでございます。また、金融機関等が中心となって、デジタル社債の発行を容易にするインフラの構築の動きも見られておりまして、社債の投資家の裾野拡大を通じた社債市場の活性化につながる可能性も指摘されているところでございます。
次のページは社債の投資家側の状況でございます。社債の保有者構成につきましては、日本では、銀行を含む預金取扱金融機関が全体の約4割を占めている一方で、米国では保険・年金基金と投資信託が全体の約6割という状況になっております。また、日本の社債保有における海外機関投資家等の比率は極めて低い水準にとどまっている状況でございます。これにつきましては、言語や低金利環境といった要因に加えまして、コベナンツの設定・開示や、社債管理者の設置状況等、本邦社債市場の構造的な課題も原因となっているとの指摘があるところでございます。
次のページでございます。我が国社債市場の構図と論点をまとめさせていただいております。信用リスクが相対的に高いスタートアップ企業等による社債発行の促進も含め、企業による資金調達の選択肢としての社債等の活用を進めていくことは、社債市場の発行に寄与するものと考えられます。発行体におきましては、資金調達の多様化につながり、また、投資家におきましても投資対象の拡大に資するものと考えております。そのためには、社債権者の適切な保護が図られることが不可欠であります。現在、一定のコベナンツ内容の開示に向けた検討も進んでおりますけれども、社債権者の保護を図る上では以下のような論点が指摘されていると承知しております。
まず、市場への適切な情報提供ということで、他の債務との優先劣後関係を含めた社債の評価に必要な情報が十分に提供されているかといった点。この点につきまして、有価証券報告書等の提出会社が一定規模以上のローン契約の締結や社債の発行をした場合には、コベナンツの内容等を開示する方向で、現在、内閣府令等の改正案のパブリックコメントが実施され、その回答の公表に向けて準備を行っているところでございます。また、社債と融資のイコールフッティングの向上ということで、付与されている社債のコベナンツの内容につきましては、諸外国の例も踏まえて、社債権者保護の観点から見ても適切十分なものとなっているかといった論点もあろうかと思います。
以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、次に日本証券業協会からの御説明をお願いします。松本さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【松本オブザーバー】 ありがとうございます。日本証券業協会の松本と申します。どうぞよろしくお願いします。
資料の4-2を用いまして、近時のデフォルト事例に見ます我が国の社債市場の課題と、それを踏まえた改善策についてお話しさせていただければと存じます。
まず、1ページを御覧いただければと思います。今、御紹介いただきましたとおり、当協会におきましては、我が国社債市場の活性化を重要な課題と認識して、2009年以降、発行市場、流通市場の両面から改善に向けた取組みを実施してまいりました。また、昨年4月の本ワーキングにおきましても、我が国社債市場に係る課題を取り上げていただいたほか、先ほどございましたが、ローン等に付されたコベナンツの開示に係る制度整備も進んでいるところでございます。
しかしながら、我が国の社債市場の活性化は道半ばであるという指摘がなされる状況は変わっていないところでございます。特に、社債の発行会社、投資家ともに、プレーヤーが限定的であるという点はまさに金融庁からの御説明にあったとおりでございます。
本日は、このような状況を踏まえまして、我が国社債市場に係る課題につきまして、近時のデフォルト事例を取り上げて、特に相対的に信用リスクの高い企業の社債発行の促進に係る論点を整理した結果を説明させていただければと存じます。
2ページを御覧いただければと思います。今回取り上げるデフォルトの事例の概要をまとめてございます。まず、最初のブレッドのところにありますとおり、本事案では、2019年の7月に社債発行企業であるA社に対して敵対的買収が表明されたことをきっかけに、複数の社がTOBを表明して、いわゆるTOB合戦のような形になりました。その後、翌年の4月に、A社の一部従業員とアメリカの投資会社が設立したY社により、A社に対するEBOが成立しました。ここで、課題の1にありますとおり、支配株主等の異動が起こったわけでございます。
米印にありますとおり、このEBOの前に、A社は、将来、Y社へ資金移動等がされる場合には、社債への担保差入れによる債権の保全や期限前償還を行う等をY社との間で合意書として定め、その合意書の開示を行っていたところでございます。
その後、A社が株式合併によりY社の完全子会社となり、上場の廃止になったところでございます。また、7月でございますが、A社はY社への配当金の支払いや貸付けを実施し、当該資金をもってY社はX社に割り当てた優先株の買戻しや融資を返済したと考えられます。これによりまして、この発行会社のA社から投資会社X社へ約2,600億円の資金が流出することになりました。
こちらは、課題2にありますとおり、社債権者の損失を招く財務活動に当たると考えられますが、その下の米印にありますとおり、このときにEBOの前に開示した合意事項であります、A社からY社への資金移動の際には社債の担保の差入れよる債権の保全や期限前償還をすることの手当ては、実際にはなされなかったのでございます。
その後、2021年の3月以降、A社の長期借入金に占める担保付債務の割合が3割から9割に上昇しております。一方、社債は無担保のままとされましたので、右側の課題3にありますとおり、A社の社債はほかの債務との関係で劣後するという立場になってしまいました。
また、この借入金の担保提供や担保付債務の発生について適時の開示が行われなかったことから、社債権者は自身が他の債務に劣後する立場に置かれていることを知ることができませんでしたので、課題の4にありますとおり、債権者間の情報格差が生じてしまったところでございます。
下の2つにありますとおり、本年4月にはA社が民事再生手続の開始の申立てをし、A社の社債の期限の利益が喪失したというところが事案の概要でございます。
次に、3ページを御覧ください。3ページから、本事例を踏まえた課題と改善策を記載してございます。まず、課題の1支配株主等の移動でございます。本事案では、発行会社の所有・経営権の異動といった、当社の経営の在り方や社債権者の投資判断に重大な影響を及ぼす事象が生じました。それにもかかわらず、社債権者に対して投資判断を再考する機会が与えられてございませんでした。
これにつきましては、改善策にありますとおり、発行会社の支配株主の異動等があった場合には、社債権者に期限前弁済の請求権を与えるチェンジオブコントロール条項のコベナンツが付与されていれば、社債権者はA社のEBO成立の段階で期限前償還を請求することが可能となり、被害に遭うことは少なくなっただろうと考えられます。
課題の2は、社債権者の損失を招く財務活動でございます。本事案におきましては、発行会社の営業活動に影響を与える資産の売却等に伴いまして、社外へ多大な資金が流出するといった社債権者の利益を害する行動がございましたが、社債権者が当該行為を抑制する方策はございませんでした。
こちらにつきましては、改善策にありますとおり、適切なコベナンツ、例えば配当の制限の条項や支払い制限の条項、また、資産処分の制限の条項、こうしたコベナンツが付与されていれば、A社からY社への資金流出を制限できた、また、A社の財務状況がこれほど悪化することはなかったとも考えられます。
4ページでございます。課題の3といたしまして、他の債務との劣後関係でございます。発行会社の経営悪化時におきましては、銀行借入金に対しては担保を設定する等の債権の保全を図ることができますが、社債に付されております担保提供制限条項は、社債間のみに限定されており、社債以外の債務への担保提供が制限されてございません。このため、社債は銀行借入金に対して実質的に劣後しておりまして、今回のようにデフォルトが起こりますと、銀行の担保設定により社債の元利金の返済のための資産が著しく減少いたしまして、デフォルト時の社債の回収率は極めて低くなるという傾向にございます。
これに対しましては、社債に付されている担保制限の条項を銀行借入金も含めた全ての債務間で同順位とすることで、銀行借入金との間で同等性を確保することが望ましいと考えますが、現状、融資を受ける発行会社の立場上、銀行借入金との同等性を求めるのは困難ではないかとも言われているところでございます。
課題の4は、債権者間の情報格差でございます。本件の事案におきましては、社債の投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす債務の発生や、債務に付される担保、また、そのコベナンツ等の情報が適時適切に開示されることはありませんでした。
こちらにつきましては、先ほど説明がございました開示府令等の改正によりまして、重要な財務上の特約が臨時報告書等で開示される方向です。今後、その状況を見ていく必要がございますが、さらなる取組みといたしまして、財務上の特約の有無に関わらず、担保提供の内容を含む債務の発生や既存債務への担保提供、こうした社債の投資家にとって投資判断に重要な情報についても、臨時報告書等においてタイムリーに開示されることが望ましいと考えます。
5ページ、その他でございます。発行会社の信用力が低下した際に社債管理補助者が自動的に設置される仕組みや、本事案を踏まえまして、社債管理補助者の役割の整理が必要と考えてございます。なお、これまで社債管理補助者の利用例はございませんでしたが、ちょうど今週に入りまして第1号の社債管理補助者設置債の発行がリリースされまして、今後もさらに利用されることを期待しているところでございます。
最後、6ページに「4.まとめ」として記載してございます。本事例を踏まえますと、我が国の社債市場につきましては、1点目として、発行会社の信用力や業容等に応じた適切なコベナンツが付与されていない。2点目ですが、社債投資家の投資判断に必要な情報の適時適切な開示が十分でない。3点目、発行会社の信用力が低下した場合に、適切な債権保全がなされる仕組みが未整備である。こうした課題が挙げられるかと存じます。
これらにつきましては、いずれもこれまでも関係者の方から指摘されてきた事項でございますが、残念ながら必ずしも大きな進展は見られていないところでございます。スタートアップの育成という観点からは、エクイティに加えまして、デットでの資金調達も重要でございますが、これらの課題が改善されなければ、相対的に信用リスクの高いスタートアップ企業への社債を通じた資金供給は困難と思料いたします。
一方で、社債市場におきましては多くの関係者が存在してございます。このため、課題改善のためには発行会社、投資家、証券会社、銀行等の多くの関係者が問題意識を共有し、協力していくことが必要と考えてございます。
このような中、今後の対応でございますが、スタートアップ企業をはじめとする企業の資金調達手段の多様化の観点から、本ワーキングのこれからの御議論を踏まえまして、当局も含めた多様な市場関係者間において、社債市場の課題改善に向けた効果的な検討が必要と考えてございます。当協会といたしましても、引き続き社債市場の課題改善に向けまして、積極的に役割を果たしてまいりたいと考えてございますので、皆様からの御指導も引き続き賜ればと存じます。
私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、今、御説明いただきました東京証券取引所の取組み、それから、社債市場についての事務局及び日本証券業協会からの御説明を踏まえて、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただければありがたく思います。
どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。佐々木先生、どうぞ。ありがとうございます。
【佐々木委員】 ありがとうございます。明治学院大学の佐々木です。
私のほうからは、今、日本証券業協会と事務局からも御説明いただきました社債のことに関して一言御意見申し上げたいと思います。
こちらで例に挙げられている事案に関しては、私は、EBOをする際に短期的に海外ファンドから資金を借り入れる、その返済が非常に大変であったことから、EBOの在り方や海外ファンドの関わり等、いろいろな面で疑問を感じ、興味を持って見ておりました。特に市場制度ワーキングとの関わりでは、やはり銀証ファイアウォール見直しの議論とも関連しているところがあると思っておりまして、昨年、社債管理補助者の設定の議論がありました時にも、一度、御意見申し上げました。
本件については、ここではあまり議論されてないのですけど、銀行が貸し出している先の社債を子会社の証券会社が販売し、銀行は貸出しに対して既に返済を受けていると。社債はそのまま販売されたままになっているというようなことだったかと思います。
個別案件については、私も事情を詳しくは存じ上げませんので、一般的な話として申し上げたいのですけれど、例えばこういうような、銀行が親会社で、子会社の証券会社が社債を売るというようなことがあったときに、例えば社債を売るタイミングまで銀行が貸出しをして、社債を売った後でその資金を回収するというようなことを意図的に行うことも可能性としてはあり得るわけで、そういうことがもし起こった場合に、それは利益相反にならないのかと思います。
金商の連携で得られるものも多いのですけれど、やはりあり得るデメリットをしっかり把握して対応しておく、対応策を考えるべきと思っていますので、対応策としては、例えば、今回、提案されているような、こうした社債権者を守る方向のコベナンツの付与、銀行借入れとのバランスを取ること等が考えられるのかなと思っております。やはり社債市場を活性化することを考えているのであれば、これまでもいろんな形で議論もされていますし、先ほどのコベナンツ開示という話もありましたが、いろんな取組みもされていることと思いますが、やはり社債の保護の体制は、よりよく考えていくべきと思いますので、ぜひ進めいただきたいと思って、非常に関心を持って今回のお話を伺いました。
昨年は、社債管理補助者の設定をしやすくするということで議論があったときに同じようなことを申し上げたのですが、その時は、社債管理者というものに関してそんなにまだ深く、管理する、社債権者の権利を保護するというような形であまり深い議論はされなかったように思ったのですけれど、その点についてもぜひお進めいただきたいと思いました。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、有吉委員、神作委員の順でお願いします。有吉委員、どうぞ。
【有吉委員】 有吉でございます。
私からも社債市場の活性化の関連で、1点コメントを差し上げたいと思います。社債市場を活性化させて資金調達手段の多様化を図ること、これは金融ないし資金供給という観点からとても重要な課題であると理解しておりますし、同時に非常に難しい論点で、長年、いろいろな方々が御検討されていろいろな施策を採ったものの、決定的にうまくはいっていないという状況だと理解をしております。
ただ一方で、例えば融資契約に関する情報開示を進めたり、社債のコベナンツを拡充したりということを過度にやってしまうと、かえって銀行を介した資金調達、資金供給等が滞ってしまうような結果となり、全体として資金供給が後退する可能性も否定できないわけでございます。また、一定のコベナンツを社債に必ず付するということをやっていきますと、発行会社側の経営の自由度が失われて、かえって企業の成長を損なうという可能性もあると考えております。
もちろん冷や水をかけるようなことをここで申し上げるつもりではないのですが、個別の論点を考えていく中で、社債市場の活性化という局地的な視点だけに偏って議論することは避けるべきであり、資金供給がどうしたらうまくいくかというような全体的な目線でこの社債の在り方を議論していくべきだと考えております。
抽象的なコメントで恐縮でございますが、私からは以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、神作先生、どうぞ。
【神作委員】 御指名ありがとうございます。私も、資料4-1と資料4-2の社債市場の課題に関してコメントをさせていただきたいと思います。
今、有吉委員が御発言されましたように、社債市場の課題や課題の克服、そして、活性化に向けて、関係者の方々を中心に長らく努力がなされてきたわけですけれども、なかなかうまくいってないというのは有吉委員の御指摘のとおりだと思いますし、日本証券業協会の松本さんからプレゼンテーションがありましたように、現在でも問題事例が出ているということだと思います。
しかし、松本さんから御報告の最後のほうで言及がございましたけれども、つい先日、各種の担保提供制限条項等を含む各種のコベナンツが付され、また、2021年の会社の改正で導入された社債管理補助者が設置された、格付を取得しない公募社債が発行されました。私は、この事案は非常に大きな流れの転換の一つのきっかけになるのではないかと期待しております。チェンジオブコントロール条項をはじめとして、社債のコベナンツがますます多様化され、さらに、社債管理補助者が実際にどのような役割をどのように果たしていくかに注目しております。
法制面では、これも現在、見直しが進んでおりますけれども、社債権者が適切かつ合理的な投資判断ができるような情報が適時に開示されているのかという観点から、引き続き開示項目について検討していく必要があると思います。
今述べましたコベナンツにしても、あるいは、社債管理補助者制度にしても、基本的には社債権者がより積極的に意思決定に関与したり、アクションを起こしたりすることを期待しているものと思われます。社債権者自身がより主体的、積極的に社債に関心を持って行動することが、コベナンツや社債管理補助者が期待された役割を果たすために重要であると思います。そういう意味では、これも有吉委員が御指摘されたことと同様ですけれども、社債市場の活性化に向けては、引き続き全体的、総合的にいろいろな観点からまだまだ議論すべきことがたくさんあるように思いました。
私からは以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、野村委員、松尾委員の順でお願いします。
【野村委員】 どうもありがとうございます。野村資本市場研究所の野村でございます。
私からは、JPXの最近のお取組みの中で、資料の中のグロース市場に関して、雑感というか所感みたいな感じですけれども、申し述べたいと思います。この中で御指摘のありましたIPOの規模が小さいという点、これは非上場企業のままで成長できるようにする方法の拡充、そのための資金供給の在り方という課題を、取引所のサイドから御覧になった御指摘というふうに理解いたしました。また、機関投資家の参入がなかなか進まないことは、政権の新しい資本主義で出ている資産運用の高度化や、アセットオーナーの機能強化といったような論点ともつながると思いました。こちらも、よりトータルな視点で、複数の観点から取り組むべき課題を述べられたのかと思った次第です。
また、社債市場のいろいろな論点、複数の委員から御指摘のとおり、重要な課題だと思いました。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、松尾先生、どうぞ。
【松尾委員】 ありがとうございます。私も社債市場の活性化について、一つだけ申し上げます。
ここでは、スタートアップ企業による社債の活用、利用も考えられておるようですけれども、信用力が低い発行会社になりますと、やはり例えば担保付社債というような形で信用力を補完することも出てくるかと思います。必ずしもそういったスタートアップ企業が担保付社債を発行することは、これまで想定はされていなかったと思いますし、一方で、担保についても事業成長担保のようなものが出てきておりますので、そういったものと組み合わせた担保付社債が、今後、ひょっとすると検討されるのかもしれないと思いました。
そうしましたときに、現在の担保付社債信託法の規律が過剰であったり過少であったりすることがないのか、現場の方の御意見を聞いていただいて点検していただくことも重要ではないかと思いました。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、小枝先生、どうぞお願いいたします。
【小枝委員】 質問はしてもよろしいですか。
【神田座長】 もちろんです。質問等、大いにしていただいて結構でございます。
【小枝委員】 コメントと質問で、私も社債のことについて申し上げたいと思います。
一般に社債というのは、例えば株式よりもリスクが低い金融商品でありますので、そういったことが金融商品としてよりアクセシブルになるのはいいことだと思います。ただ、日本では、歴史的な背景もあって、社債市場はなかなか、例えばアメリカに比べて育成が進んでこなかった。今回、最近のデフォルト事例に見る課題についてお話しいただいて、担保がついていない債券が妥当にプライシングされているかという視点から、チェンジオブコントロールに伴った予期できなかったデフォルトリスクについてどのような配慮が必要かという重要な論点を御提示頂いたと思いました。質問としては、今回のデフォルト事例に照らしてだけでなく、今まで論点として、コベナンツに関してほかに改善できる面があるのか等について少し教えていただきたく、お願いいたします。
【神田座長】 ありがとうございます。これは日本証券業協会、松本さんでよろしゅうございますか。
【小枝委員】 そうですね、よろしくお願いします。
【松本オブザーバー】 御質問ありがとうございます。
コベナンツについて改善すべき点は、まず現在、ほとんどの社債につきましては、社債間限定同順位の担保提供制限条項はありますが、それ以外のものが付与されていませんので、会社の信用リスクや業容に合ったコベナンツをきちんと付与していくことが必要かと思ってございます。
まさに今申し上げました会社の業容やリスクに沿ったものが必要かと思っておりまして、アメリカでも全ての会社に同じようなコベナンツが付与されているわけではございませんので、きちんとそれに見合ったコベナンツが付与されることが重要かと思ってございます。
海外の例を見ますと、発行体からコベナンツを積極的に付与したいというインセンティブはなかなかないので、投資家の側がそういったコベナンツを付与すべきと声を上げて広まっていったと聞いてございます。今後、資産運用立国ということで、投資家のさらなる役割が重要になってくるかと思いますので、そういった中でもそういった議論がなされると良いと考えているところでございます。
以上でございます。
【神田座長】 少々分かりにくいかと思うのですけども、私もこの分野、過去に参加したことがあるのですが、やはりアメリカ、日本、ヨーロッパと大ざっぱに言うと、アメリカは非常に社債市場が大きいです。ヨーロッパはそれほどでもないので、日本でも社債というのはすごく難しいと思います。一つの理由は、長期資金について、社債と銀行借入れが併存するわけですね。アメリカではそれはないです。長期資金については、銀行は貸しません。ですから、ヨーロッパと日本はそういう問題を抱えているわけです。
そうすると、例えば銀行が担保を取るけど社債は担保取らないのだったら、もうそれだけで劣後しますし、先ほどの同順位というものも、両方同順位にしなければ、やはり社債は劣後するのですね。だから、非常に大きく言うと、それを構造的と呼ぶのか、何と呼ぶのかよく分かりませんけれども、そういう構造があります。では、銀行融資をやめたら良いかって、そんな簡単な話ではもちろんなくて、銀行融資には銀行融資の役割があるわけです。そうすると、それを強調すれば社債市場は育たない。
非常に大ざっぱに言って恐縮ですけども、そういう中で個別の事件も起きるし、あるいは、もう少し、例えば最近の課題で言えば、リスクマネーの供給というところで社債も役割を発揮してもらえないかという課題を抱えているという問題があると思います。もっと言えば、投資家とは誰かという問題もあります。リスクの高い社債を買う投資家が日本には存在しないのです。
そうした問題もあって、可能な範囲でこういう場でぜひ御議論いただければ良いと思うのですけれども、今回は日本証券業協会からも問題提起していただいたと理解しております。
【小枝委員】 ありがとうございます。
【神田座長】 すみません、私が余計なこと言ったかもしれませんけれども。小枝先生、何か御意見は追加でございますか。
【小枝委員】 いえ、ありがとうございました。
【神田座長】 よろしゅうございますか。ありがとうございます。
それでは、隣の坂委員、どうぞお願いいたします。
【坂委員】 ありがとうございます。
私も、社債市場について4点ほど述べたいと思います。まず、1点目ですけども、資料4-2の報告事例と改善策についてですが、この事例からは発行企業が社債権者に重大な影響を及ぼす行動を取り得ることと、かかる行動について社債権者への適切な情報提供と、期限前弁済等の投資の再考の機会が与えられていないという問題が見いだせると思います。対策としては、発行企業の行動をある程度合理的に制約すること、及び、適時の情報提供と期限前弁済等の投資の再考の機会を確保することが考えられるところです。
他方で、いろんな問題があり得ると思っておりまして、こうした取組みを促すことは、社債への投資を促進し得る面もありますが、実際、こうした取組みを行うことは、個別にもそう簡単ではないようにも思われます。
いずれにしろ、このような情報提供は社債が持ち得るリスクについて社会的認識を深めることに寄与し得ると考えますので、非常に大事な情報共有であると思います。
2点目ですが、社債関連の市場構造についてですが、御報告によりますと、米国の社債への投資は機関投資家、専門家の方々が大半を占めていて、家計の直接保有はごく一部にとどまるという状況のようです。株式のような市場が存在しない社債の特性や、社債投資が相応に専門化、高度化していくことに鑑みますと、こうした在り方はある程度合理的であって、我が国においても、家計の直接保有よりも機関投資家等による保有の拡大、特に投資信託における取組みの拡大が目指されるべき方向なのではないかと感じております。特にスタートアップ企業による社債発行の促進を図るには、かかる視点は極めて重要であろうと思います。
3点目ですが、インベストメントチェーン全体を通じて、適切な役割分担とチェーンの各段階におけるガバナンスの確保によって、適切な資金の流れを確保することが必要だと考えます。社債を通じた資金提供においても、チェーンの適切な段階で適切な主体による投資判断を確保すること、適正な投資判断のためのガバナンスを確保することが課題で、それを具体的にどう組み込んでいくかという問題であろうと思います。
4点目ですが、社債投資の特性に鑑みますと、個人投資家の位置づけというのは少々悩ましい問題というふうに感じております。これまでも信用リスクの高い社債や特殊な社債等によって投資者被害が生じてきておりましたし、そこでは必ずしも適切でない資金の流れやリスク移転が行われたということではないかと思われます。こうした事象が生じないように、十二分に留意しつつ検討を進める必要があると思います。
それから、最後に1点、これは株式資本ですけども、御報告ありました中で、グロース市場においても機関投資家の参入が進んでいないという点については、重要な課題だというふうに感じました。規模のことを御紹介いただきましたが、情報通信技術の発達によって、比較的規模の小さなところにもかつてよりは投資しやすくなっている面があるのではと思ったりもしますし、この辺りのところについてぜひ、御検討を進めていただければと思います。もし現段階で何か御検討されているところがあるのであれば、教えていただけるとありがたく思います。
【神田座長】 ありがとうございました。
青さん、今の点、いかがでしょうか。
【青オブザーバー】 現実にどのように機関投資家の参入を促していくのか、どのように活性化させていくのかという点につきましては、これから勉強していく段階でございますので、様々な方々の御示唆を頂戴しながら、検討を進めていきたいと思っております。まずは情報提供といったところから取り組んでいくのが現実的かと考えておりますが、いろいろと教えていただければと存じます。
【神田座長】 ありがとうございました。
よろしゅうございますか。
それでは、亀坂先生、どうぞお願いします。
【亀坂委員】 ありがとうございます。
資料で気になる点が1点、コメントが1点ないし2点あるのですけど、まず、気になる点が資料の4-1の4枚目の上に書いてある説明でして、2つ目の箇条書の日本の社債保有における海外機関投資家等の比率は極めて低水準というここなのですが、結局、為替リスクを負って、しかも円安が中長期的に見込まれるという状況で海外の投資家を増やすというのはやはり難しいのではないかと思います。
となると、やはり個人投資家を呼び込むことが重要なのでしょうが、資料3では、私は15枚目の投資単位の引下げに向けた取組みというものに非常に関心を持ちました。学生や若年層と話していると、ポイント活用の投資だったらやってみたい等。やはり手軽に少額の資金、あるいは、よく行動ファイナンスや行動経済学の分野だとメンタルアカウンティングという、たまたま手に入った、あるいは、自分で必死に稼いだお金とそうでないお金と使い方が違うというような説明があるのですが、ポイントで貯めに貯めたのを、例えば投資信託を購入してみたいというような大学生や若者の声をよく聞きます。証券投資論等を私は大学で教えているのですけど、資料の4-1の3枚目で説明していただいた、デジタル社債や小口化というのは、社債市場を活性化させる可能性があるのではないかと思います。
ですので、株式市場に関しても社債市場に関しても、小口化は有効かもしれないのですけれども、あまり投資家のことばかり、投資家目線で話すと、今度、発行企業側の負担というか、嫌がる企業もあるのではないかと。あと、コスト面とか。ですので、あまり押しつけにならない範囲内で、うまくバランスを取って小口化等を進めていただけるとよろしいのではないかと思いました。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、本日、リアルで御出席の委員の皆様方全員から御発言をいただきました。どうもありがとうございました。
オンラインで松岡委員に御出席いただいていると思いますけれども、松岡さん、もし御意見等ございましたら御発言承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
【松岡委員】 ありがとうございます。社債市場について、今日のお話にも出ましたので、皆様の御意見を拝聴し、当方からもコメントさせていただきます。
企業もグローバルに事業を展開しているところも多いと思います。実際当社も広くグローバルに活動しています。 先ほど神田先生からありました御指摘、例えば間接金融の位置づけに日米の違いは確かにある一方で、現在欧米では非常にイールドの高い水準にあり、日本はそれに対して非常に低い金利水準が長期的に継続しています。投資家サイド、いわゆるプロの機関投資家については、洗練度が上がっており、様々なアセットカテゴリーについて、リスクを含めてのアセスメントできており、様々なアセットをポートフォリオに組込み、リスクとバランスしていると考えております。
それに対して、個人投資家が、機関投資家間の競争環境の中で、それらを投資に含めているのは、欧米の市場では一般的なことになっていると思います。日本の金利水準がもし今後上がっていくのであれば、同じような対応が求められるのではないかと思います。したがって、様々なリスクのあるアセットカテゴリーに対する機関投資家のアセスメント能力、リスクテイク能力が重要なカギになるのではないかと思います。そのことが、翻っては日本のスタートアップ企業を含めた様々な企業が、多様な資金調達手段にアクセスできる環境に向けた道筋になるのではと考えております。
そのため、皆様から先ほど御指摘のあった各種の論点もあるかとは思いますが、やはり投資家の洗練度をさらに上げ、イールドに対する個人投資家の求めに対して適切かつ健全な競争状況が出来上がることが必要ではないかと考えております。
以上です。ありがとうございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、本日は皆様方に御相談しなければならないこともありますので、時間も押しているのですが、オブザーバーの皆様方、もし御発言があれば承りたいと思います。チャット機能、または挙手機能等でお知らせいただければと思います。いかがでしょうか。
【河本オブザーバー】 全国銀行協会の河本と申します。
【神田座長】 どうぞ。
【河本オブザーバー】 口頭ですみません。よろしいですか。
【神田座長】 結構です。よろしくお願いします。
【河本オブザーバー】 全国銀行協会の河本でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。銀行からの声もお聞きいただければと思います。
社債市場の活性化については、事業者の資金調達の選択肢を広げる観点から御議論いただいていると理解しております。ただ、その取組みによって、間接金融も含めた事業者の資金調達全体に悪影響が出ることがないようにお願いしたいです。その観点から、論点で挙げていただいている社債と融資のイコールフッティングの向上については、やはり融資と社債では求められている役割、機能が違うことを踏まえた議論をお願いします。
御案内のとおり、融資におけるコベナンツは、事業会社側に規律を与えるというだけではなく、健全な財務水準に対する認識の共有と、それを踏まえた次のアクションの起点ということで、仮にコベナンツに抵触した場合でも、事業会社とコミュニケーションを速やかに取ることで、事業計画の見直しやウェーブ等といった柔軟な対応を取る、というのが銀行の基本的な立場です。
そうした観点から、社債のコベナンツの内容充実においては、こうした役割の違いがございますので、円滑な資金供給機能全体に影響が出ないように御留意をお願いしたいです。例えば、社債権者については意思結集を速やかにできないということがあると思いますので、銀行と同じようなコベナンツをつけることが、必ずしも事業者の安定的な継続、あるいは成長に資する資金供給にならない可能性もありますし、挙げていただいているパリパスの観点も同様の論点があると考えております。
したがって、社債がどのような資金供給機能を果たし、それを踏まえてどのようなコベナンツを付すのが適切なのか、その抵触時の対処をどのような形で行うのかといったことについて、事業者の目線も踏まえた御検討をぜひお願いしたいと考えております。
もう1点、佐々木先生から利益相反ということでコメントをいただいておりますので、銀行界としての認識を申し上げたいと思います。銀行融資を、社債を発行してすぐ回収するという利益相反を挙げていただいていますが、利益相反管理については銀行法等で態勢整備を求められており、こうした類型も、当然、典型的な類型ということで、相当な態勢整備を銀行界でも進めてきていると認識しておりますので、この論点が、今、社債市場の活性化に大きな影響を与える状況にはないだろうと、銀行界としては認識しております。
長くなりまして、恐れ入ります。以上でございます。
【神田座長】 ありがとうございました。
ほかにオブザーバーの皆様方で、御発言はございますでしょうか。生命保険協会、お願いいたします。
【佐藤オブザーバー】 生命保険協会の佐藤でございます。本日は、オブザーバーとして意見を述べさせていただく機会をいただきましてありがとうございます。
私からは、前半のテーマでございました金融経済教育について、簡単なコメントをさせていただければと思います。我々生命保険協会としましては、これまでも各業界団体と同様に、生命保険の普及や啓発、情報提供等を専門的に行う生命保険文化センターという機関とともに、中学校・高校への講師の派遣や教材の提供等を行ってまいりました。昨年末に取りまとめられました顧客本位タスクフォース中間報告では、幅広い年齢層が家計の管理や生活の設計も含む広範な金融リテラシーを効率的に身につけることが重要との方向性が示されております。
新たな機構におきましてもその方向で検討いただいていると考えておりますが、委員の方からも、本日、御意見ございましたように、私ども生命保険協会としましても、特定な分野に過度に偏ることがないように、とりわけ資産形成、投資といった分野だけにとどまらない幅広いリテラシーを身につけることができるように、バランスを取った取組みをぜひ新しい機構でお願いしたいと考えてございます。
また、あわせて、決意表明のような形になってしまいますけれども、新たな機構におきましては、学校に加えて企業への講座への展開も検討していると認識しております。我々生命保険協会といたしましても、学校教育における教育はもちろんのこと、こうした企業への講師派遣につきましても議論に参加してまいりたいと思っております。ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【神田座長】 ありがとうございました。
では、次に、信託協会、どうぞ。
【加藤オブザーバー】 御指名いただきまして、ありがとうございます。信託協会でございます。通信の安定性の観点から画面をオフにさせていただいておりますこと、御了承いただけたらと思います。
信託協会といたしましても、今し方生命保険協会からありました金融経済教育推進機構の件について、簡単にコメントさせていただきたいと思っております。現在、信託協会におきましても、全国、各種、御要望に応じまして、いろんな金融リテラシー向上に向けた講師派遣等の取組みを行っているところでございまして、今回の機構の設立並びに取組みについては非常に重要であると認識しております。
現在、信託協会の加盟会社におきましては、年金の資産運用の管理、個人の資産承継を支援する信託商品の提供といった、幅広い世代のライフイベントに対して、領域を横断して商品、サービスを提供しております。そういった信託の特性も踏まえつつ、公的年金や、企業年金をはじめとする私的年金の領域、それから、社会人、高齢者に対する承継、遺言の領域について、機構の活動に積極的に貢献をしてまいりたいというふうに思っております。
決意表明みたいな形になりますけども、コメントは以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、恐縮ですが、時間の関係もありますので、先へ進ませていただきます。本日の最後に、今後の検討の進め方について、事務局から御説明をしていただきます。よろしくお願いします。
【齊藤企画市場局市場課長】 それでは、お手元の資料5に沿って御説明させていただきます。
1ページ目でございますが、本年の6月に閣議決定されました新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画における市場分野の課題について、ピックアップさせていただいているものでございます。こちらについて、概略を説明させていただければと思います。
企業の参入・退出の円滑化とスタートアップ育成5か年計画の推進につきまして、まず、個人からベンチャーキャピタルへの投資促進ということで、イギリスのVCTと言われます上場ベンチャーファンドといった事例も参考にしながら、個人から上場ベンチャーファンドへの投資を促進するスキームについて検討を行うこと。また、イギリスでは、この上場ベンチャーファンドは投資口の自己取得が可能であることも踏まえて、我が国においても上場ベンチャーファンドにおける投資口の自己取得が可能となるように、投信法の内閣府令等の改正を検討するようにといったことが盛り込まれてございます。
また、その下、株式投資型のクラウドファンディングの活用ということで、現在、発行総額の上限1億円でございますが、これにつきまして、開示等の必要な投資家保護策と併せて、例えば現行の1億円から5億円にする等の拡充を検討する。また、投資家の投資上限について、現行50万円となっているものについて、引上げを検討するといった項目が盛り込まれております。
次のページでございますけれども、SPACの検討につきましては、昨年の市場制度ワーキング・グループでも御議論いただいていると思いますけれども、検討を進めることとなっております。
その下、未上場株の取引環境の整備ということで、PTS、私設取引システムにつきまして、現在、資本金要件は3億円でございますが、こうした認可基準や開示義務システム要件を緩和する等、オンラインプラットフォーマーが参入しやすい環境を早期に整備することが盛り込まれております。
また、プライマリー市場につきましても、スタートアップ企業への資金供給を促進していくため、少額募集の在り方を含めて検討することが盛り込まれております。
次のページでございます。東京証券取引所グロース市場の在り方ということで、上場維持基準の在り方等、グロース市場の制度整備について検討を行うことが盛り込まれております。
次のページでございます。資産所得倍増プランと分厚い中間層の形成ということで、ここに掲げられております項目については、法律案に盛り込まれております金融経済教育推進機構に係る制度整備等の中で検討されていくべき内容となっています。
次のページでございます。2つ目の項目ですけれども、市場インフラの強化ということで、PTSにつきまして、売買高上限の緩和等の必要な措置を講じること、また、金融商品取引所において、投資単位が高い水準にある上場会社の投資単位の引下げに向けた取組みを進めること、また、その下ですけれども、銀証ファイアウォール規制の見直しについて検討を行うことが盛り込まれています。
最後のページでございますけれども、顧客本位の業務運営の確保については、金商法の改正法律案を国会に提出しているところでございます。
最後の項目ですけれども、資産運用立国に向けた取組みの促進ということで、資産運用業の高度化やアセットオーナーの機能強化を強力に推進すべく、資産運用立国の実現に向けた取組みを行うといった項目が閣議決定されたものに盛り込まれているところでございます。
こうした実行計画における市場分野の項目につきまして、本ワーキング・グループにおきまして、今後、どのような項目をどのように御議論いただくかにつきましては、神田座長と御相談させていただきながら進めさせていただきたいと考えております。
【神田座長】 どうも御説明ありがとうございました。
今後の検討の進め方についてですけれども、事務局から御説明いただきましたように、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、これに関連する項目というものがございます。それらについて、この金融審議会でどのように取り上げていくのか、また、議論を別途行う必要が生じる可能性があるような場合には、本ワーキング・グループの下に、個別のテーマに応じた人選をさせていただいた上で、議論の場を設けるかも含めまして、大変恐縮ですけども、今後の進め方について私に御一任をいただけるとありがたいと思うのでありますけれども、御承認いただけますでしょうか。
ただいまから、市場制度ワーキング・グループの第24回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところを本日も御参加いただき、誠にありがとうございます。
そこで、議事に入ります前に、今般、このワーキング・グループ委員の就任、それから、事務局における異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。齊藤市場課長、よろしくお願いいたします。
【齊藤企画市場局市場課長】 事務局を務めさせていただきます市場課長の齊藤と申します。よろしくお願いいたします。
まず、本ワーキング・グループ委員をお務めいただいていました原田喜美枝委員、福田慎一委員、井口譲二委員が御退任されました。続きまして、新たに亀坂安紀子委員、小枝淳子委員が就任されました。
また、事務局である金融庁にて人事異動がございましたが、時間の都合もございますので、お手元の配席図で紹介に代えさせていただきたいと思います。
以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、本日ございますけれども、まず、事務局から本年3月に国会に提出されました金融庁関連の法律案について、御説明をしていただきます。その後、日本証券業協会から金融庁提出法律案に関連する事項について御説明をしていただきます。ここで、一旦、皆様方に御議論をいただきたいと思います。
その後で、日本取引所グループから最近の取組みについて御紹介をいただきます。続けて、社債市場について、事務局及び日本証券業協会から御説明をいただきます。そこでまた、皆様方に改めて御議論をいただくという二部構成で進めさせていただきます。
それでは、早速ですが、金融庁提出の法律案について、事務局の皆さんから御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【齊藤企画市場局市場課長】 まず、金融庁提出法律案について御説明させていただきます。お手元の資料2-1に沿って御説明させていただければと思います。
2枚めくっていただきまして、3ページ目でございます。金融商品取引法等の一部を改正する法律案については、昨年の市場制度ワーキング・グループの第二次中間整理、また、顧客本位タスクフォースの中間報告等を踏まえた法律案となっております。3月に閣議決定されて国会提出をし、6月8日に衆議院本会議で可決されましたが、参議院で、現在継続審査となっております。
法律案の趣旨でございますが、デジタル化の進展等の環境変化に対応して、金融サービスの顧客等の利便の向上及び保護を図るため、顧客本位の業務運営や金融リテラシー、企業開示等に関する制度を整備するものでございます。
大きくは3つのパートがございまして、左側の顧客本位の業務運営・金融リテラシー、右上の企業開示、右下のその他のデジタル化等の進展に向けたものの対応でございます。
まず、左側の顧客本位の業務運営・金融リテラシーについてでございますが、顧客本位の業務運営の確保といたしまして、最終的な受益者たる金融サービスの顧客や年金加入者の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行すべきである旨の義務を、金融事業者や企業年金関係者に対して幅広く横断的に規定するという内容でございます。こちらは、顧客本位の業務運営の原則で、金融機関を対象に顧客の最善の利益を図りつつ事業運営をするように促してまいりました。これまでの原則だけではなく、法律としてしっかり規定をすることで一層の定着を図っていきたいという趣旨でございます。
また、顧客の属性に応じた説明義務を法定すると。これは、これまで内閣府令レベルで規定されていたものについて、法律レベルでの義務とするとともに、顧客への情報提供におけるデジタル技術の活用に関する規定を整備するということでございます。
このデジタル技術の活用に関する規定ということで、これまで顧客への説明について書面の原則を採っていたところでございますけれども、顧客のデジタルリテラシーに応じて、書面またはデジタルによることを任意で金融商品取引業者等が選べることとするということで、こちらにつきましては、後ほど日本証券業協会から、書面から電子にお客様の認識がなく切り替わることのないように、どのように配慮していくかの取組みについて御説明いただければと思っております。
その下の金融リテラシーの向上については、政府として安定的な資産形成の支援に関する施策を総合的に推進するために基本方針を策定すると。こちらは、内閣総理大臣が案を策定して閣議決定をするということでございます。案の作成に当たりましては、金融審議会の意見を聴くこととなっております。また、利用者の立場に立って金融経済教育を広く提供するために、金融経済教育推進機構を設立するということで、御覧のような業務、形態、役員、ガバナンス等になっております。
これに伴いまして、これまで金融サービスの提供に関する法律という名前だったものが、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律と、法律名も変える案となっております。
右側の上でございますが、企業開示につきまして、非財務情報の開示の充実に向けた取組みと併せて、企業開示の効率化の観点から、金商法上の四半期報告書を廃止するという内容でございます。法律上の義務を廃止して、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化するということでございます。
また、半期報告書、臨時報告書の公衆縦覧期間でございますが、現在はそれぞれ3年、1年となっておりましたが、課徴金の除斥期間に合わせて5年に延長を図る内容でございます。
また、右下でございます。その他のデジタル化の進展等に対応したものということで、まず、ソーシャルレンディングについては、インターネットで集めた出資を企業に貸し付ける仕組みで、クラウドファンディングの一種でございますが、これを行う第二種金商業者について、投資家に適切な情報提供等が行われていなかった事例を踏まえまして、運用報告に関する規定を整備しております。
また、その下でございます。不動産特定共同事業契約については、出資を募って不動産で運用して収益を分配する仕組みでございます。こちらは不動産特定共同事業法に基づく規制ということでございましたが、トークン化する動きが見られることを踏まえまして、他のトークン化された電子記録移転権利と同様に金商法のルールを適用するという内容となっております。
また、金融商品取引業者等のウェブサイトにおいて、営業所に掲示する標識と同内容の情報の公表を義務づけると。また、課徴金納付命令に係る審判手続につきまして、手続全体をデジタル化、デジタルで処理するといった内容も盛り込んでいるところでございます。
次のページでございますが、もう1本、法律案を提出しているところでございます。社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案ということで、こちらもデジタル化関係でございます。
内容といたしましては、左側でございますが、現在、取引所に上場されている有価証券の中で、唯一日本銀行出資証券はデジタル化されていないということでございます。こちらについてデジタル化するという内容でございます。
また、真ん中でございますが、投資法人等についての登録簿、これもインターネットで公表するという方向に合わせまして、インターネットの公表に際して個人情報、例えば役員の住所等を除くための規定を整備するという内容でございます。
また、右側のところにつきましては、公認会計士に対する課徴金納付命令についての審判手続をデジタル化する内容でございます。
下側のところでございますが、スタートアップの上場日程の期間短縮でございます。上場に要する期間が長くなれば、価格変動リスクが価格に織り込まれて、公開価格が低く設定される傾向があるということで、この振替法によりまして、現在、1か月以上と法定されています上場承認日から上場日までの期間について、株主保護を図りつつ、実務の改善による短縮を可能とする見直しを行っているところでございます。
それでは、法律の施行に係る四半期開示の見直しについては企業開示課の野崎課長から、金融経済教育推進機構における取組みの進め方については総合政策課金融経済教育推進室の桑田室長より御説明をお願いいたします。
【野崎企画市場局企業開示課長】 企業開示課長の野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。本案の施行に係る四半期開示の見直しについて、若干御説明させていただければと思います。
金融商品取引法上の四半期報告書を廃止しまして、取引所の四半期決算短信に一本化することによりまして、情報の重複を解消して、企業開示の効率化を図ることを目的とするものでございます。
四半期開示の見直し等の改正につきましては、法律案では確定日付で来年の4月1日を施行日としておりますので、法律案が成立した場合には、円滑な施行が行われるように前広に準備を進めているところでございます。
具体的には、四半期決算短信に一本化した後も、投資家にとって必要な情報が提供されることが重要でございますので、現在、東京証券取引所におきまして、四半期決算短信の開示内容や、会計不正が起きた場合の監査人によるレビューの義務づけの要件等につきまして、投資家や企業の意見を踏まえながら検討をいただいているところでございます。このほかの会計基準や監査基準の検討、関係政府令の整備やEDINET等のシステム改修の準備も進めているところでございます。
私からの説明は以上です。
【桑田総合政策局金融経済教育推進室長】 金融経済教育推進室長の桑田と申します。よろしくお願いします。
それでは、資料の右下5ページ目を御覧ください。先ほど説明のありました関連法律案の成立が前提ではありますけれども、金融経済教育推進機構の設立を来年春、本格稼働を来年夏に据えて、可能な範囲での設立準備を関係団体と議論しながら進めております。
左側に設立に向けたイメージを図示しております。この機構の形態といたしましては、金融庁が監督官庁として所管する認可法人となります。中立的な形での金融経済教育を国全体で展開していくため、政府、日本銀行、民間団体等が進めてきた取組みの重複を解消しつつ、より効率的、効果的な金融経済教育の実現を目指してまいります。
この一環として、民間団体のうち、全国銀行協会、日本証券業協会、投資信託協会につきましては、今行っておられる事業の基本的に全てを機構に移管するとともに、資金、人員の面で御貢献をいただく方向で議論を進めております。また、その他の民間団体につきましても、資金、人員の拠出について御協力をいただき、機構の業務を支えていただく予定です。
あわせて、金融庁及び日本銀行の関連業務、事業も機構に移管し、資金、人員も拠出する予定ですが、機構の全体のイメージといたしましては、新たな経営陣の下で最終的には決定される事項ではありますが、役職員数が約70名、年間の予算規模は約20億円でありまして、うち9割以上は民間からの拠出で賄うことを想定しております。
右側には、機構における取組みを記載しております。まず、顧客の立場に立ったアドバイザーの普及・支援です。特定の金融事業者、金融商品に偏らないアドバイスを提供する者を認定アドバイザーとして見える化することにより、個人が気軽に相談できる環境づくりを進めてまいります。
2点目が、金融経済教育の抜本的拡大です。公的な性格という強みを活かしながら、企業向けのセミナー開催と講師派遣事業、その他イベントを広く展開してまいります。
3点目が、教育の質の向上になります。先ほど申し上げた認定アドバイザー等機構の講師として活躍いただく方に対する体系的な養成プログラムや研修を導入して、分野横断的な知識習得の機会を確保いたします。
4点目が教材・コンテンツの充実です。官民の各団体が有するノウハウを結集し、家計管理や生活設計のほか、資産形成、金融トラブル等、各年齢層に必要な金融リテラシーを整理いたしました金融リテラシーマップの内容を踏まえつつ、工夫を凝らしてまいります。
5点目として、個別相談事業を実施いたします。セミナー等で知識を得たとしても、それを具体的な行動変容へとつなげていくためには、個人の状況に応じたアドバイスが得られることが重要かと考えております。個人が家計に関するアドバイスに価値を見出すきっかけとなることを期待しております。
最後の6点目といたしまして、戦略的な教育を展開していくために、教育活動の目標やKPIを設定しながらPDCAを回していきたいと考えております。
私からは以上です。
【齊藤企画市場局市場課長】 最後に、御議論いただきたい事項につきまして、御説明させていただきます。資料の最後の7ページ目を御覧いただければと思います。
まず、金融経済教育推進機構でございますが、国全体として、中立的立場から金融経済教育の機会提供に向けた取組みを具体的に進めていく際にはどのような点に留意すべきか。また、機構の教育活動を抜本的に拡充するためには、地方を含めて学びの場づくりに取り組むことが重要だと思われます。企業の雇用者向けセミナーを広く支援・促進する場合に、どのようなステークホルダーとの連携を追求すべきか。また、その他に学びの場づくりに向けてどのような取組みを進めていくべきかという点でございます。
また、上記のほか、金融庁提出法律案が成立した場合の施行に向けて、顧客に対する書面デジタル化の周知方法を含め、どのような点に留意して進めていくべきか。これらにつきましては、この後の日本証券業協会からのプレゼンテーション後に御議論いただければと考えております。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、日本証券業協会から御説明をお願いします。森本さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【森本オブザーバー】 日本証券業協会政策本部の森本と申します。本日は、説明の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
私からは、事務局より御説明のありました金商法等の改正法律案のうち、初めに御説明いただきました顧客への情報提供におけるデジタル技術の活用、こちらの顧客への周知の方法につきまして、まだ法律案が成立していない状況ではございますが、国会で御審議されております法律案のまま成立すると仮定しまして、現在、証券業界において検討している状況を御説明させていただきます。
資料の2-2を御覧いただければと思います。表紙の次、1ページ目を御覧いただければと思います。
御覧のとおり、昨年末に取りまとめられました顧客本位タスクフォースの中間報告におきまして、顧客への情報提供におけるデジタル技術の活用について示されております。このうち、本日、特に御説明させていただく箇所には下線を引かせていただいておりますけれども、その部分は、また後のページでも改めて引用させていただいておりますので、次に進ませていただきます。次の2ページ目を御覧いただければと思います。
上のほうに1ページ目の一部を再掲させていただきましたが、中間報告では、契約締結前や契約締結時等の情報提供については、金融事業者において、書面とデジタル手段を顧客本位の観点から自由に選択できるようにすることが考えられるとされました。この点につきましては、デジタルトランスフォーメーションの促進を重要施策の一つとして掲げている私どもからお願いしていたところでございますので、今般、このような方向をお示しいただいたことにつきまして、厚く御礼申し上げる次第でございます。
2ページ目の中ほどは、左側が現在の書面交付原則、顧客からの希望があればデジタル交付、右側が制度移行後に新たに選択可能となります、顧客からの希望があれば書面交付、希望がない限りデジタル交付のイメージを図にさせていただいたものでございます。もちろん中間報告においても御指摘いただいておりますとおり、これは顧客本位の観点の下に行われるべきこと、顧客の認識なく書面交付が電子交付に変更されるといった事態が起こらないようにすることが重要でありますので、2ページ目の一番下に書かせていただきました、中間報告で求められている3つの項目につきましては、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
この点、現在、国会で継続審査中ではございますけれども、その法律案がそのまま成立すると仮定しまして、証券業界では、具体的には次の3ページに書かせていただきましたように、業界とデジタル原則に移行しようとする証券会社個社の両面で取組みを行ってまいりたいと考えております。それぞれの項目につきましては、4ページ以降に示させていただいておりますので、4ページを御覧いただければと思います。
まず、業界レベルでの取組みですが、いずれも本協会におきまして、(1)全国紙に複数回広告を出し、まず、社会全体における認知の向上を図ってまいりたいと考えております。また、(2)証券会社がそのまま顧客への周知に使えるリーフレットの作成、配布、それから、(3)証券会社による顧客への周知についてのガイドライン等を作成して、個社における対応の目線合わせを行うことを考えております。
次に、デジタル原則を選択しようとする証券会社、個社における取組みにつきまして、こちらは新規のお客様と既存のお客様とに分けて検討しておりますが、現在の検討内容を御説明いたします。5ページを御覧いただければと思います。
まず、新規のお客様につきましては、口座開設時の申込書類やウェブページにおける申込み画面において説明することで、漏れなく周知することができると考えております。
次に、6ページを御覧ください。
既存のお客様については、既に書面での交付を受けられている方がいらっしゃいますので、中間報告でも御指摘いただいておりますとおり、より丁寧な周知が求められると考えております。その対応のイメージを7ページに図で表させていただきましたので、7ページを御覧いただければと思います。
まず、上のほうの黄色の網かけの2段、お客様によって証券会社との接触の仕方は異なるものと思われますので、一律の方法ではなく、それぞれのお客様に伝わりやすい方法を用いて、デジタル原則への移行と書面交付への切替えが可能であることをお伝えしたいと考えております。その際、お伝えした文面をお客様が御覧になったかどうかを、マイページでの閲覧記録や電子メールの開封通知等によって証券会社側で確認できるようにしておきまして、図の上から3段目の左側、さらにそこから下のほうへ行くところになりますけれども、一定期間経っても閲覧されたことが確認できないお客様につきましては、同じ方法、あるいは、異なる方法を用いて、デジタル原則移行後にもわたって、実際にお客様に伝わるように取り組んでまいりたいと考えております。
なお、8ページに移りますけれども、デジタル原則を選択する社であっても、デジタル手段による情報提供がふさわしくないと考えられる顧客層につきましては、その社において初めからデジタル原則の対象とせず、書面交付の原則を継続することもあり得ると考えております。
こうした内容をベースとしまして、証券業界におきましては、顧客本位タスクフォースの中間報告で御指摘いただいておりますような、お客様の認識なく書面交付を電子交付に変更するといった事態が起こらないよう、しっかりと対応を行う所存でございます。
繰り返しですが、まだ法律案が成立していない状況ということもございまして、現在の検討状況は、本日、御説明申し上げたようなところでございますが、引き続き、金融庁と調整させていただきながら、証券業界において対応の在り方について検討してまいりたいと考えております。
私からの説明は以上となります。御清聴いただきまして、ありがとうございました。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、これまでのところで一遍区切りまして、今までいただきました御説明について、委員の皆様方に御議論をいただければと思います。本日、初めての委員の方もいらっしゃると思うのですけれども、これまでのやり方として、できるだけ多くの委員の皆様方に御発言いただく機会を確保する観点から、あらかじめ割り算をして時間の目安を申し上げています。大変失礼ながら、御発言のお時間の目安としては、お一方当たり3分程度以内を目安にしていただければありがたく思います。
また、今日は、委員の皆様方には実参加をしていただいていまして、恐らく3年半以上ぶりだと思うのですけれども、チャットに記入してくださいというわけにもいきませんので、御発言いただける方には挙手していただくか、あるいは、昔、人数が多いときによくやっていたのですけれども、お名前の札を立てていただければ、できるだけ順番に、私から御指名をさせていただきたいと思います。それから、今日、松岡委員はオンラインにて御参加されると思いますけれども、オンラインの方はいつもの方法でお知らせいただければと思います。
なお、オブザーバーの皆様方には、大変恐縮ですけれども、時間の関係で、ここの段階では御発言の機会を設けさせていただきませんけれども、後半の部分が終わりましたら、委員の皆様の御発言の後に時間を設けたいと思いますので、そこでもし前半部分についても御意見等ございましたら、併せて御発言いただければと思います。今、御説明いただきました前半部分について、委員の皆様方から御質問、御意見、どなたからでもお出しいただければ大変ありがたく存じます。
それでは、坂委員、どうぞお願いいたします。ありがとうございます。
【坂委員】 坂です。よろしくお願いいたします。私からは、金融経済教育推進機構について3点ほど述べさせていただければと思います。
まず1点目ですけども、顧客本位タスクフォースの中間報告が提言しました金融経済教育の意義を再確認することが重要と考えます。中間報告では、幅広い観点から金融リテラシーの向上に取り組むとしており、金融リテラシーマップの内容を踏まえ、家計管理や生活設計等のほか、消費生活の基礎や社会保障、税制度、金融トラブルに関する内容も含めた取組みを行うとしております。この趣旨は、衆議院の財務金融委員会の附帯決議とも共通するものと思います。
他方で、金融経済教育が投資教育に偏ることを懸念する声は根強いものがございます。投資教育は金融教育の一部ではありますが、適切に位置づけることが必要と考えます。投資を行う余裕資金がないという声が多いこと等も踏まえ、金融経済教育が投資教育に偏ることがないよう、十二分に留意する必要があると思います。
2点目ですが、こうした観点に十分配慮して、推進機構の認可要件、あるいは組織構成、業務運営は適切に具体化される必要があると考えます。特に、業界団体の皆さんとの関係においては、潜在的な利益相反構造といいますか、そういったものがあり得ることに十分配意し、信頼される制度の具体化と運営をお願いしたいと考えます。
3点目ですが、消費者教育における蓄積も活かされるべきと考えます。消費者教育の分野では、消費者教育推進法という法律が消費者市民社会という考え方を提唱しております。この考え方に倣いますと、個々人の金融行動は、貯蓄や投資等を通じて社会経済の在り方に影響を及ぼし得るというところでありまして、個々人が金融行動を通じて企業価値の向上や経済成長の実現に寄与し得るといった認識が広がることが期待されると思います。こうした考え方は、顧客本位タスクフォースの中間報告の冒頭に、インベストメントチェーンの機能発揮として述べられている点とも共通するものと考えます。
全体として、腰を据えた幅広い金融経済教育を進めることが、中長期的には成長資金の供給を促す基盤となり得るものと考えます。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、お隣の佐々木委員、野村委員、そして、神作委員の順でお願いしたいと思います。佐々木先生、どうぞ。
【佐々木委員】 ありがとうございます。私からは、2点ほど意見を述べさせていただきます。
金融教育に関して機構に期待することなのですが、こちらの5ページの説明をお伺いする限り、これが実現できればすばらしいのではないかと思いました。こちらに含まれているかもしれないのですが、やはり安心してアクセスして調べられるウェブサイトというか、そういったものが期待されると思います。例えば大学におりましても学生からよく聞かれるのですが、いろいろな情報があふれる中で、どこの情報だったら安全だと思って読めばいいでしょうかといったような質問を結構受けることがございますので、これだったらこれという案内ができるようなウェブサイト的なものをつくっていただければと思っております。
また、デジタル化についてですが、先ほどお話がありましたように、閲覧状況を確認されるというようなメリットを活かされた運用をされるということで、非常に意味があると思いました。さらに、場合によっては、必要な部分については、例えば閲覧ができないと、ずっとしてない人は先に進めない等といった様々な新しい対応方法も考えられると思いますので、ぜひそのような形で進めていただければと思います。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
お隣の野村委員、どうぞ。
【野村委員】 野村資本市場研究所の野村でございます。御説明どうもありがとうございました。
私からも、金融リテラシーの部分について、幾つか申し述べさせていただければと思います。まず、このような機構という組織を設立して、現在、いわば複数の主体にまたがっているような機能を集約し、より効果的な活動を志向するという、このこと自体はとても意義深いと思っております。その際に、金融リテラシーの向上について、今までの民間等の取組みだけではなかなか届かない対象が存在し、そのギャップを埋めることが主眼であると理解しておるところです。
そうやって考えますと、社会人については、職域、より具体的には小規模な、あるいは地方の職域がポイントになるのではないかと思います。これには、地方公共団体も含まれるかと思っております。大手の企業等では、例えば企業型確定拠出年金が入っておりますと、そこでの投資教育等も提供されますし、あるいは、昨今では、従業員のファイナンシャルウェルネスの向上、人的資本の拡充の観点から、そういったことが注目されたりしているわけですけれども、やはり規模の小さな職域では、そのようなことに人的リソースを割くのにも限界があると思います。また、いわゆる大都市圏ではない地方に行くほど、提供する側のリーチがどうしても届かないこともあると思いますので、これらのギャップをいかに埋めにいくかが大事なのだと理解しております。
また、先ほど桑田室長の御説明にもありましたとおり、知識装備だけにとどまるのではなくて、金融の行動にまで持っていきたいということだとすると、これは、機構の活動と民間の連携も極めて重要であろうと思います。
また、今、佐々木先生からありましたとおり、幅広い適切な発信においては、デジタル戦略が鍵を握るということで、ウェブサイトやSNSの活用も必須なのだろうと思います。
最後に、金融経済教育の基本方針の策定についても御説明にありましたけれども、ここではイギリスのように数値目標を掲げるかどうかも一つのポイントではないかと思います。これは難しいかもしれないとは思うのですけれども、エビデンスベースの施策推進という観点からは、何らかの数値目標は検討に値するのではないかと思います。
私からは以上です。どうもありがとうございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、神作委員、松尾委員、有吉委員の順でお願いできればと思います。神作先生、どうぞ。
【神作委員】 ありがとうございます。私は、7ページの2つ目の「顧客に対する書面デジタル化の周知方法」について、コメントさせていただきたいと思います。
不意打ちにならないように顧客に対し、書面デジタル化の周知をしっかり行うことは、大変重要なことであると思います。日本証券業協会からプレゼンテーションいただきましたけれども、お話を伺いますと大変周到な方向で考えておられ、そのような方向で周知を徹底していただければありがたいと思います。
その際、2点希望と申しますか、御要望させていただきたいと思うのですが、第1点は、周知をするときに電子データでの提供のメリットをアピールしていただくことが非常に重要なのではないかと思います。電子的に提供することの迅速性や、保存や取り出しの容易性、あるいは、場合によっては編集可能性等々、デジタル化にはメリットがたくさんあると思いますので、書面デジタル化の周知に併せてデジタル化のメリットについても強調していただければありがたいと思います。
第2点は、実際に書面デジタル化原則が適用される場合には、そこで強調したメリットが、実際に顧客や投資家にとっても実感できるような形で書面デジタル化を実施していただくとともに、特に当事者にとっては分かりやすい、使いやすい方法・様式で提供していただくことを希望いたします。
私から以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、松尾委員、どうぞお願いいたします。
【松尾委員】 ありがとうございます。私からも、金融経済教育の学びの場づくりについて、2つほど申し上げたいと思います。
一つは、個人的に見聞きした範囲ですけれども、一つのアプローチの仕方として、オーナー経営者の方の資産運用についてアドバイスしている業者が、信頼を得て、うちの従業員にもぜひそういうアドバイスをしてほしいというような形で従業員にそういう場を設けるというところで成功している例を幾つか見聞きしたことがございます。そういう意味では、既にお考えかと思いますけれども、先ほど野村委員からもありました特に地方への拡充に関しては、オーナー経営者からのアプローチと、そこで信頼を得て従業員の方にと。その際に、既に資産を持っていらっしゃる方へのアドバイスと、資産形成層へのアドバイスが異なると。ですので、オーナーについているアドバイザーの方がうまく従業員にはできないというようなことがあるのであれば、何かしら連携が必要になるのかと感じております。
もう一つ、これも地方にとっては非常に重要かと思いますけれども、教育の際に学校で生徒、学生にということはよく考えておられると思うのですけれども、ぜひそこに保護者の方も御一緒いただいて、子たちと一緒に御両親、親御さんにも一緒に学んでいただくと。そうすると、子たちへの責任も感じていただいて、人ごとではないと感じていただけるのではないか、そういうことを考えております。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、有吉委員、どうぞお願いします。
【有吉委員】 西村あさひの有吉でございます。私からは、金融経済教育について2点、それから、書面のデジタル化について1点、コメントを申し上げたいと思います。
まず、金融経済教育について、いろいろな観点からの取組みが必要であることは承知しておりますが、そのうちの一つの視点として、金融や金融経済教育そのものに無関心な層に対して、どのようにしたら関心を持たせることができるのかを特に重視して取り組んでいただきたいと思っております。この点、桑田室長や野村委員からお話がありましたとおり、実際に行動に移してもらうことが重要であると思いますが、今申し上げたような層がどうしたら実際に体験をするのか、場合によってはバーチャルでまず体験してもらうことでもよろしいのかもしれませんが、こうしたことを重視して取り組んでいただきたいというのが1点目でございます。
2点目のコメントとしまして、教える側の確保という視点も重要ではないかと感じます。金融機関の方からのお話として、業務外で何か物を教える、あるいは資料を作る等して、講演料や執筆料を若干でも受け取ると、これが副業扱いになって社内手続が非常に煩雑で、結局、そんなことはしない、あるいは、無償のボランティアで対応するといった方向になりやすいと伺ったことがございます。
もちろん本業を度外視してそういった活動ばかりに取り組んでしまうのであれば、これは本末転倒だと思いますが、金融機関の実務に携わられている方々の中で、知識、経験、それから、意欲がある方々が教育に関わることを行いやすくするような取組みをぜひ進めていただきたいと思うのが2点目のコメントでございます。
それから、書面のデジタル化について、どうしても書面対応が必要になる顧客が存在することは、私も十分理解しているつもりでございます。ただ、神作先生のお話にもございましたとおり、本来的にはやはりデジタル化は顧客のメリットや利便性につながるものであると考えます。今般の制度改正がなされた後の仕組みとしては、デジタル対応ができない顧客に、書面で対応してほしいと言われれば、書面を渡さなければならないという制度になることは十分承知していますが、ただ、金融機関側の実務的な取組みとしては、何でも紙を渡せばよいとしてしまうのではなくて、何らかのサポートをする等して、できる限り顧客をデジタル対応のほうに誘導していく、そういった施策が取られていくことを強く期待したいところでございます。
私からは以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、亀坂先生、どうぞお願いします。
【亀坂委員】 ありがとうございます。
本日、議論する事項の2点目の顧客に対する書面デジタル化の周知方法は、日本証券業協会の方々に準備していただいた資料を拝見して、よく検討されていて、もう回答が用意されているような状態だと思いました。特に、2枚目のデジタルが原則になった場合も書面交付が可能である旨の告知を義務づけることは非常に重要だと思うのですけれども、ポイントを既に整理していただいていて、何もコメントすることはないように感じました。
1点目の金融経済教育推進機構に関してコメントしたいのですが、資料の2-1の5枚目が一番関係あるかもしれないのですけれども、政府、民間団体、金融広報中央委員会等が、金融経済教育推進機構に機能移転、承継、資金、人員を拠出するということで、私は、この金融広報中央委員会の、連携講座と呼ばれていたと思うのですけれども、5年ぐらいコロナ前に引き受けていて、ここに書いてある問題点のようなことを日本銀行の情報サービス局の方々と議論したことがあります。中立的立場から、とにかく独立性や中立性が大事だということで、大学で講義をさせてほしいというところから始まって、それを拡大するにはどうしたら良いのだろうということで、3年目ぐらいになったら、毎年、日本証券業協会や、団体[A1] 、全国銀行協会、金融庁からも講師にいらしていただいて、オムニバス形式でやっていたのですけれど、3年目ぐらいになったら、これもDVDか録画で全国にいつでも見られるようにできないかと提案して、実際、青山学院大学で行った授業を収録していただきました。ところが、大学で行った授業を大学外の人に提供してはならないという、法務関係のチェックが入りましてできませんでした。
ですので、ぜひ金融庁で、この会議もユーチューブ配信されていらっしゃるようなのですが、金融教育の講義を年1回、15回程度されて、それを録画して、いつでもオンデマンドで受講できるようにする等していただきたいなと思いました。
長くなりましたが以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
そうしますと、あと、御発言いただいてない方としては、小枝先生なのですが、御発言はございますか。
【小枝委員】 重複がございましたので特に、今の時点ではございません。
【神田座長】 そうですか。どうもありがとうございます。
あと、松岡委員が遅れてオンラインで御参加と伺っていますけれども、まだ現時点では御参加されておられないようですが、それでよろしいでしょうかね。
それでは、これで委員の皆様方一通り御意見をいただきましたけれども、追加で、ほかの委員の方々の発言を聞いて何か追加で発言があれば、ぜひお願いしたいとは思います。いかがでしょうか。
それでは、まだ後半がありますので、次に進ませていただければと思います。どうもありがとうございました。
次の議題ですけれども、日本取引所グループから最近の取組みについての御説明をしていただきます。それでは、青さん、よろしくお願いいたします。
【青オブザーバー】 東京証券取引所の青でございます。本日はどうぞよろしくお願いします。
日本取引所グループでは、様々なことに取り組んでおりますけれども、本日は、資産運用立国に関連して、投資先となる上場企業の価値を高めていくための取組みについて、資料3に沿って御説明させていただければと思います。
2ページ目でございますが、東京証券取引所では、昨年、60年ぶりに市場区分の大幅な見直しを行いました。今回の見直しは、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を支えることを目的としておりまして、そのための基盤として、明確なコンセプトに基づく3つの市場区分を設け、それぞれのコンセプトに応じた上場基準等を設定しております。
この市場区分の見直しを契機といたしまして、上場会社各社では、ガバナンスの充実や、英文開示の強化、上場維持基準に適合するための計画の策定・実施等、企業価値向上に向けた様々な取組みを進めていただいているところでございます。
3ページ目でございますが、このような上場会社の取組みをフォローアップし、市場区分の見直しの実効性を高めてよりよいマーケットを運営していく観点から、東京証券取引所では、有識者会議を設置しまして、そこでの論点整理を踏まえた上で、さらなる対応を進めております。
まず、経過措置について、移行先の市場の上場維持基準に達していなくても、当分の間は上場可能としているものですけれども、新陳代謝を健全に機能させる観点から、2025年3月で終了することといたしました。
それに伴い、プライム市場の上場会社については、改めて上場市場を選択する機会を設けることにいたしまして、これまで100社程度の会社がスタンダード市場への移行を表明しているところでございます。
また、上場維持基準への抵触の懸念がない、規模の大きな会社に対しましても、企業価値の向上に向けた取組みをさらに促すことが重要であろうとの認識から、その動機づけとなる枠組みづくりを進めているところでございます。
具体的に申し上げますと、資料の右下の、特に1のところにございますけれども、本年3月に上場会社に要請いたしました、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を中心といたしまして、1から4までの4つの施策を進めつつあるところでございます。
この問題意識の背景にあるのが5ページ目にあるわけですけれども、簡単に申し上げますと、日本の企業のPBRとROEの状況が芳しくないというところが議論の出発点でございます。
従前からコーポレートガバナンス・コードでは、持続的な成長と中長期の企業価値向上の観点から、資本コストや資本収益性を十分に意識した経営資源の配分が重要であるという考え方が示されておりますが、日本企業の現状を見ますと、左側のグラフにありますように、主要企業の43%がPBR1倍割れという状況にあり、ROEで見ましても、右側のグラフにありますように、40%がROE8%を割っているという状況です。これは、アメリカや欧州と比較しましても、日本だけが特に目立って芳しくない状況にあったということでございます。
有識者会議では、こうした状況を踏まえまして、我が国では経営者が資本コストや株価、言い換えれば市場評価に対する意識が薄いのではないかというような認識の下、まずは経営者の意識改革や経営に関するリテラシーの向上によって、自律的な経営の見直しを促進していくことが必要との整理がなされました。
そこで、東京証券取引所といたしましては、6ページ目にございますとおり、東京証券取引所プライム市場とスタンダード市場の上場会社全社に対しまして、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等の要請を行ったところでございます。
具体的には、各社の取締役会において、自社の資本収益性や市場評価に関する現状分析を実施した上で、改善に向けた計画の策定・開示、取組みを実行していくといったことを継続的に実施いただくようお願いしております。
なお、改善に向けた取組みの内容として、右側の黄色ハイライト部分を御覧いただければと思いますけれども、自社株買いや増配といった一過性の対応を期待するものではなく、長期的な収益力が高まるような必要な資源の投下、投資をしていただきたいという趣旨でございますので、継続的に資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な経営の改善をしてくださいというメッセージを明確に申し上げたところでございます。
7ページ目が、今般の要請を踏まえました上場会社の開示状況でございます。経営者の皆様には、十分な現状分析や検討を行っていただくため、開示時期の期限は定めておりませんでしたけれども、これまでのところで、プライム市場の3割の会社が何らかの開示を行っているという状況でございます。とりわけPBRが低く、時価総額が大きい会社ほど開示が進展しております。逆に言いますと、PBRが高い企業や時価総額が小さい企業では、相対的に開示が進んでいない状況でございます。
ただ、この点につきましては、とにかく開示を進めましょうということを過度にやってしまいますと、企業の形式的な対応を招くおそれもございますので、やはり十分な検討を行っていただくことを基本に据えながら、可能な限り速やかに進めていただくよう、これからも要請をしていきたいと考えているところでございます。
8ページ目は、御参考までに、フォローアップ会議で議論した状況でございますけれども、まず、上半分の対応状況に関する評価や課題認識に関しては、先ほど申し上げた内容と概ね一致しているところでございます。
下半分の今後の方策については、例えば、企業の現状を3つの類型、具体的には、今般の要請を機に改革を試みようとする企業、リソース不足でなかなか手が回らない企業や他社の出方を様子見する企業、要請に取り組む意義自体に疑問を抱いている企業に分けて考えたうえで、それぞれ企業にフィットするような形で、企業の対応の見える化や、一層かみ砕いたガイダンスを提供していくべきではないかというような意見が出たところでございます。今後、議論を重ねながら、どうすればより企業に動いていただけるかといった観点から、企業をサポートするための取組みを継続してまいりたいと考えております。
また、9ページ目も御参考でございますが、株価指数に関しまして、TOPIXの見直しを進める一方で、並行して、企業価値向上を促すための取組みとして、JPXプライム150指数の算出を開始しております。
本指数では、プライム市場の時価総額上位500社のうち、エクイティ・スプレッド、PBRの2つの基準を用いて選定した150社を構成銘柄としております。これらは、米国を代表する指数でありますS&P500の構成銘柄と比べても、各種の経営指標において遜色のない水準の企業群となります。
投資家がこうした「企業の稼ぐ力」に着目した投資を行うことで、稼ぐ力を意識した価値創造経営が浸透し、その果実が投資家に分配され、さらに投資が行われる、といった好循環を生み出す機能をこの指数が担い、日本を代表する企業や日本経済の成長とこの指数がうまくリンクしていくことを期待しております。
10ページ目も御参考でございますけれども、今月、アクティブETFの上場という商品が上場しました。従来、東京証券取引所に上場しているETFは、TOPIXや日経平均といった指数連動型のみでしたが、世界的にアクティブタイプのETFが拡大していることを受けて、今般、必ずしも連動する対象の指数が存在しないというタイプ、つまりアクティブ運用ができるタイプのETFの上場制度を整備いたしました。
先週9月7日には、第1弾が上場いたしまして、PBRに着目して投資先を選ぶETF等計6商品が上場し、個人投資家をはじめ様々な投資家層に取引をしていただくことを目指しているところでございます。
こうした株価指数やアクティブETFは、投資や銘柄の選択が、よりプロの力を使いながら行われていくことにつながり得る一つの取組みと考えております。
続いて、12ページ目は、グロース市場の機能発揮に向けた検討についてでございます。こちらについてはまだ検討を始めた段階でございますので、あくまでも現状報告になりますけれども、まず、IPO全体の現状としましては、年間で100社程度が上場しており、そのうちの7割程度がグロース市場への上場でございますが、諸外国と比べてかなり小規模での上場が多く、資金調達額も小さい傾向にあります。ここについてはかなり課題意識を持っているところでございます。
また、13ページ目は、グロース市場の上場後の状況でございますが、左側のグラフを御覧いただければ分かるとおり、上場時から個人投資家を中心に株式が保有されているという現状がございます。資金供給・対話等の観点から、中長期的な成長を支える機関投資家の参入が期待されるところでございますけれども、なかなか進んでいないのが実情でございます。
その理由としましては、機関投資家が参入しやすい企業規模まで成長できていないことや、上場会社が自社の成長性を機関投資家に十分に訴求できてないといったことが考えられ、いかにして機関投資家の参入を促し、上場後の成長を促していくかが課題と捉えているというところでございます。
こうした課題を踏まえまして、まず、上場会社の情報開示やIRを促進していくとともに、新たな産業の創出の観点からも、上場前に大きく成長できる環境の整備に向けて、政府のスタートアップの育成5か年計画の動きとも歩調を合わせ、東京証券取引所として取り組むべき事項を検討してまいりたいというふうに考えてございまして、例えば、未上場の段階の企業につきまして、日本証券業協会で御検討されているJ-Ships制度や、PTSの活用等との関係も踏まえながらも、プロ向けの上場市場の活用も考えられないか等も含めて、幅広い検討を行っていきたいと考えております。
最後になりますけれども、15ページ目で投資単位の引下げの最近の取組みについて御紹介させていただければと存じます。ここまで上場会社の企業価値向上についてお話ししてきましたが、その恩恵が広く家計に及ぶためには、個人が投資しやすい環境が必要と考えております。ファンドを使うことが一つの大きな軸でありますけれども、個別株につきましても、投資単位の引下げに取組んでいるところでございます。
従来、東京証券取引所では、望ましい投資単位ということで5万円以上50万円未満という水準を示し、上場会社に投資単位の引下げをお願いしてきたところでございますけれども、依然として投資単位が高いままにある会社があることから、昨年10月に引下げに向けた株式分割の実施を要請し、これまでに50社以上に実際に分割の実施を決定していただいております。
また、個人が投資しやすい環境を整備する観点から、望ましい投資単位の下限を下回るような、1万円や2万円といった水準に移行することを目的とした株式分割を実施・検討する企業が出てきていること等を踏まえまして、下限の「5万円以上」を撤廃することといたしました。東京証券取引所では、引き続き、投資単位が高いままにある会社への働きかけ等の取組みを行っていきたいと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、テーマは少し変わりますが、社債市場についてです。まず、事務局からの御説明をお願いします。
【齊藤企画市場局市場課長】 それでは、お手元の資料の4-1に沿って御説明させていただきます。1ページ目を御覧いただければと思います。
まず、社債市場の活性化に関するこれまでの取組みでございます。我が国の社債市場につきましては、これまで様々な制度改革を経て自由度と効率性を高めてきたところではございますが、近年では特に2009年7月の社債市場の活性化に関する懇談会、これは日本証券業協会が事務局でございますが、本懇談会が設置されて以降、社債市場の活性化に関して様々な課題についての検討及び取組み、見直しが進められてきました。
主な取組みとして年表を掲げておりますけれども、2010年にこの懇談会の取りまとめの公表が行われまして、発行市場、流通市場、市場インフラ等に関して課題を整理され、具体的な取組方針がまとめられております。その取組方針に基づきまして、2012年、「社債市場の活性化に向けた取組み」ということで具体的な取組み内容がまとめられております。
それを踏まえた検討が進められ、2015年には「社債の取引情報の報告・発表制度」、2016年には発行企業による自主的な情報の開示が進むように、コベナンツ開示例示集の公表がされております。また、2021年には、社債発行者への主要投資家名を報告する需要販売情報の提供、いわゆるトランスペアレンシー方式ですけれども、これを規定した自主規制の規則が施行されております。また、改正会社法におきまして、社債管理補助者制度が導入されております。そのほか、社債の取引情報の報告・発表制度につきましては、さらに対象銘柄を拡大して公表する内容が見直されております。
また、2023年、今年でございますけれども、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループでの議論を踏まえまして、コベナンツの内容等の開示に係るパブリックコメントを金融庁で実施しているところでございます。
次のページでございますが、社債市場の状況ということで、発行企業の状況でございます。企業の資金調達構成を見ますと、我が国では、株式に次いで借入れの割合が大きく、全体の4分の1を占めており、米国と比較しまして、社債等による資金調達割合が低い状況でございます。また、社債の格付別発行額を見ると、米国では非投資適格の社債が一定程度発行されておりますが、我が国では非投資適格、信用リスクの相対的に高い企業が発行する社債でございますが、こうした社債はほとんど発行されていない状況でございます。
こうした点から我が国では社債の発行が、スタートアップ企業を含めた幅広い企業の資金調達手段として十分に活用されていない状況であり、我が国の社債市場の厚みは限られているのではないかということでございます。また、特に経済金融環境が急変した場合には、企業の社債による長期の資金調達が行いにくくなる状況が生じてしまうこともあるのではないかと考えてございます。
次のページでございます。新たな動きということで、デジタル社債についてでございます。デジタル社債とはトークン化された社債のことでございます。一般的には小口化、効率化、コスト削減等にメリットがあるとされておりまして、この活用が進んでいけば社債市場の活性化にもつながり得るとの期待の声もあります。2021年の4月に第1号事例となるデジタル社債が発行されて以降、一口1万円だったものもございますが、デジタル社債による資金調達が複数回実施されているところでございます。また、金融機関等が中心となって、デジタル社債の発行を容易にするインフラの構築の動きも見られておりまして、社債の投資家の裾野拡大を通じた社債市場の活性化につながる可能性も指摘されているところでございます。
次のページは社債の投資家側の状況でございます。社債の保有者構成につきましては、日本では、銀行を含む預金取扱金融機関が全体の約4割を占めている一方で、米国では保険・年金基金と投資信託が全体の約6割という状況になっております。また、日本の社債保有における海外機関投資家等の比率は極めて低い水準にとどまっている状況でございます。これにつきましては、言語や低金利環境といった要因に加えまして、コベナンツの設定・開示や、社債管理者の設置状況等、本邦社債市場の構造的な課題も原因となっているとの指摘があるところでございます。
次のページでございます。我が国社債市場の構図と論点をまとめさせていただいております。信用リスクが相対的に高いスタートアップ企業等による社債発行の促進も含め、企業による資金調達の選択肢としての社債等の活用を進めていくことは、社債市場の発行に寄与するものと考えられます。発行体におきましては、資金調達の多様化につながり、また、投資家におきましても投資対象の拡大に資するものと考えております。そのためには、社債権者の適切な保護が図られることが不可欠であります。現在、一定のコベナンツ内容の開示に向けた検討も進んでおりますけれども、社債権者の保護を図る上では以下のような論点が指摘されていると承知しております。
まず、市場への適切な情報提供ということで、他の債務との優先劣後関係を含めた社債の評価に必要な情報が十分に提供されているかといった点。この点につきまして、有価証券報告書等の提出会社が一定規模以上のローン契約の締結や社債の発行をした場合には、コベナンツの内容等を開示する方向で、現在、内閣府令等の改正案のパブリックコメントが実施され、その回答の公表に向けて準備を行っているところでございます。また、社債と融資のイコールフッティングの向上ということで、付与されている社債のコベナンツの内容につきましては、諸外国の例も踏まえて、社債権者保護の観点から見ても適切十分なものとなっているかといった論点もあろうかと思います。
以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、次に日本証券業協会からの御説明をお願いします。松本さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【松本オブザーバー】 ありがとうございます。日本証券業協会の松本と申します。どうぞよろしくお願いします。
資料の4-2を用いまして、近時のデフォルト事例に見ます我が国の社債市場の課題と、それを踏まえた改善策についてお話しさせていただければと存じます。
まず、1ページを御覧いただければと思います。今、御紹介いただきましたとおり、当協会におきましては、我が国社債市場の活性化を重要な課題と認識して、2009年以降、発行市場、流通市場の両面から改善に向けた取組みを実施してまいりました。また、昨年4月の本ワーキングにおきましても、我が国社債市場に係る課題を取り上げていただいたほか、先ほどございましたが、ローン等に付されたコベナンツの開示に係る制度整備も進んでいるところでございます。
しかしながら、我が国の社債市場の活性化は道半ばであるという指摘がなされる状況は変わっていないところでございます。特に、社債の発行会社、投資家ともに、プレーヤーが限定的であるという点はまさに金融庁からの御説明にあったとおりでございます。
本日は、このような状況を踏まえまして、我が国社債市場に係る課題につきまして、近時のデフォルト事例を取り上げて、特に相対的に信用リスクの高い企業の社債発行の促進に係る論点を整理した結果を説明させていただければと存じます。
2ページを御覧いただければと思います。今回取り上げるデフォルトの事例の概要をまとめてございます。まず、最初のブレッドのところにありますとおり、本事案では、2019年の7月に社債発行企業であるA社に対して敵対的買収が表明されたことをきっかけに、複数の社がTOBを表明して、いわゆるTOB合戦のような形になりました。その後、翌年の4月に、A社の一部従業員とアメリカの投資会社が設立したY社により、A社に対するEBOが成立しました。ここで、課題の1にありますとおり、支配株主等の異動が起こったわけでございます。
米印にありますとおり、このEBOの前に、A社は、将来、Y社へ資金移動等がされる場合には、社債への担保差入れによる債権の保全や期限前償還を行う等をY社との間で合意書として定め、その合意書の開示を行っていたところでございます。
その後、A社が株式合併によりY社の完全子会社となり、上場の廃止になったところでございます。また、7月でございますが、A社はY社への配当金の支払いや貸付けを実施し、当該資金をもってY社はX社に割り当てた優先株の買戻しや融資を返済したと考えられます。これによりまして、この発行会社のA社から投資会社X社へ約2,600億円の資金が流出することになりました。
こちらは、課題2にありますとおり、社債権者の損失を招く財務活動に当たると考えられますが、その下の米印にありますとおり、このときにEBOの前に開示した合意事項であります、A社からY社への資金移動の際には社債の担保の差入れよる債権の保全や期限前償還をすることの手当ては、実際にはなされなかったのでございます。
その後、2021年の3月以降、A社の長期借入金に占める担保付債務の割合が3割から9割に上昇しております。一方、社債は無担保のままとされましたので、右側の課題3にありますとおり、A社の社債はほかの債務との関係で劣後するという立場になってしまいました。
また、この借入金の担保提供や担保付債務の発生について適時の開示が行われなかったことから、社債権者は自身が他の債務に劣後する立場に置かれていることを知ることができませんでしたので、課題の4にありますとおり、債権者間の情報格差が生じてしまったところでございます。
下の2つにありますとおり、本年4月にはA社が民事再生手続の開始の申立てをし、A社の社債の期限の利益が喪失したというところが事案の概要でございます。
次に、3ページを御覧ください。3ページから、本事例を踏まえた課題と改善策を記載してございます。まず、課題の1支配株主等の移動でございます。本事案では、発行会社の所有・経営権の異動といった、当社の経営の在り方や社債権者の投資判断に重大な影響を及ぼす事象が生じました。それにもかかわらず、社債権者に対して投資判断を再考する機会が与えられてございませんでした。
これにつきましては、改善策にありますとおり、発行会社の支配株主の異動等があった場合には、社債権者に期限前弁済の請求権を与えるチェンジオブコントロール条項のコベナンツが付与されていれば、社債権者はA社のEBO成立の段階で期限前償還を請求することが可能となり、被害に遭うことは少なくなっただろうと考えられます。
課題の2は、社債権者の損失を招く財務活動でございます。本事案におきましては、発行会社の営業活動に影響を与える資産の売却等に伴いまして、社外へ多大な資金が流出するといった社債権者の利益を害する行動がございましたが、社債権者が当該行為を抑制する方策はございませんでした。
こちらにつきましては、改善策にありますとおり、適切なコベナンツ、例えば配当の制限の条項や支払い制限の条項、また、資産処分の制限の条項、こうしたコベナンツが付与されていれば、A社からY社への資金流出を制限できた、また、A社の財務状況がこれほど悪化することはなかったとも考えられます。
4ページでございます。課題の3といたしまして、他の債務との劣後関係でございます。発行会社の経営悪化時におきましては、銀行借入金に対しては担保を設定する等の債権の保全を図ることができますが、社債に付されております担保提供制限条項は、社債間のみに限定されており、社債以外の債務への担保提供が制限されてございません。このため、社債は銀行借入金に対して実質的に劣後しておりまして、今回のようにデフォルトが起こりますと、銀行の担保設定により社債の元利金の返済のための資産が著しく減少いたしまして、デフォルト時の社債の回収率は極めて低くなるという傾向にございます。
これに対しましては、社債に付されている担保制限の条項を銀行借入金も含めた全ての債務間で同順位とすることで、銀行借入金との間で同等性を確保することが望ましいと考えますが、現状、融資を受ける発行会社の立場上、銀行借入金との同等性を求めるのは困難ではないかとも言われているところでございます。
課題の4は、債権者間の情報格差でございます。本件の事案におきましては、社債の投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす債務の発生や、債務に付される担保、また、そのコベナンツ等の情報が適時適切に開示されることはありませんでした。
こちらにつきましては、先ほど説明がございました開示府令等の改正によりまして、重要な財務上の特約が臨時報告書等で開示される方向です。今後、その状況を見ていく必要がございますが、さらなる取組みといたしまして、財務上の特約の有無に関わらず、担保提供の内容を含む債務の発生や既存債務への担保提供、こうした社債の投資家にとって投資判断に重要な情報についても、臨時報告書等においてタイムリーに開示されることが望ましいと考えます。
5ページ、その他でございます。発行会社の信用力が低下した際に社債管理補助者が自動的に設置される仕組みや、本事案を踏まえまして、社債管理補助者の役割の整理が必要と考えてございます。なお、これまで社債管理補助者の利用例はございませんでしたが、ちょうど今週に入りまして第1号の社債管理補助者設置債の発行がリリースされまして、今後もさらに利用されることを期待しているところでございます。
最後、6ページに「4.まとめ」として記載してございます。本事例を踏まえますと、我が国の社債市場につきましては、1点目として、発行会社の信用力や業容等に応じた適切なコベナンツが付与されていない。2点目ですが、社債投資家の投資判断に必要な情報の適時適切な開示が十分でない。3点目、発行会社の信用力が低下した場合に、適切な債権保全がなされる仕組みが未整備である。こうした課題が挙げられるかと存じます。
これらにつきましては、いずれもこれまでも関係者の方から指摘されてきた事項でございますが、残念ながら必ずしも大きな進展は見られていないところでございます。スタートアップの育成という観点からは、エクイティに加えまして、デットでの資金調達も重要でございますが、これらの課題が改善されなければ、相対的に信用リスクの高いスタートアップ企業への社債を通じた資金供給は困難と思料いたします。
一方で、社債市場におきましては多くの関係者が存在してございます。このため、課題改善のためには発行会社、投資家、証券会社、銀行等の多くの関係者が問題意識を共有し、協力していくことが必要と考えてございます。
このような中、今後の対応でございますが、スタートアップ企業をはじめとする企業の資金調達手段の多様化の観点から、本ワーキングのこれからの御議論を踏まえまして、当局も含めた多様な市場関係者間において、社債市場の課題改善に向けた効果的な検討が必要と考えてございます。当協会といたしましても、引き続き社債市場の課題改善に向けまして、積極的に役割を果たしてまいりたいと考えてございますので、皆様からの御指導も引き続き賜ればと存じます。
私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、今、御説明いただきました東京証券取引所の取組み、それから、社債市場についての事務局及び日本証券業協会からの御説明を踏まえて、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただければありがたく思います。
どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。佐々木先生、どうぞ。ありがとうございます。
【佐々木委員】 ありがとうございます。明治学院大学の佐々木です。
私のほうからは、今、日本証券業協会と事務局からも御説明いただきました社債のことに関して一言御意見申し上げたいと思います。
こちらで例に挙げられている事案に関しては、私は、EBOをする際に短期的に海外ファンドから資金を借り入れる、その返済が非常に大変であったことから、EBOの在り方や海外ファンドの関わり等、いろいろな面で疑問を感じ、興味を持って見ておりました。特に市場制度ワーキングとの関わりでは、やはり銀証ファイアウォール見直しの議論とも関連しているところがあると思っておりまして、昨年、社債管理補助者の設定の議論がありました時にも、一度、御意見申し上げました。
本件については、ここではあまり議論されてないのですけど、銀行が貸し出している先の社債を子会社の証券会社が販売し、銀行は貸出しに対して既に返済を受けていると。社債はそのまま販売されたままになっているというようなことだったかと思います。
個別案件については、私も事情を詳しくは存じ上げませんので、一般的な話として申し上げたいのですけれど、例えばこういうような、銀行が親会社で、子会社の証券会社が社債を売るというようなことがあったときに、例えば社債を売るタイミングまで銀行が貸出しをして、社債を売った後でその資金を回収するというようなことを意図的に行うことも可能性としてはあり得るわけで、そういうことがもし起こった場合に、それは利益相反にならないのかと思います。
金商の連携で得られるものも多いのですけれど、やはりあり得るデメリットをしっかり把握して対応しておく、対応策を考えるべきと思っていますので、対応策としては、例えば、今回、提案されているような、こうした社債権者を守る方向のコベナンツの付与、銀行借入れとのバランスを取ること等が考えられるのかなと思っております。やはり社債市場を活性化することを考えているのであれば、これまでもいろんな形で議論もされていますし、先ほどのコベナンツ開示という話もありましたが、いろんな取組みもされていることと思いますが、やはり社債の保護の体制は、よりよく考えていくべきと思いますので、ぜひ進めいただきたいと思って、非常に関心を持って今回のお話を伺いました。
昨年は、社債管理補助者の設定をしやすくするということで議論があったときに同じようなことを申し上げたのですが、その時は、社債管理者というものに関してそんなにまだ深く、管理する、社債権者の権利を保護するというような形であまり深い議論はされなかったように思ったのですけれど、その点についてもぜひお進めいただきたいと思いました。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、有吉委員、神作委員の順でお願いします。有吉委員、どうぞ。
【有吉委員】 有吉でございます。
私からも社債市場の活性化の関連で、1点コメントを差し上げたいと思います。社債市場を活性化させて資金調達手段の多様化を図ること、これは金融ないし資金供給という観点からとても重要な課題であると理解しておりますし、同時に非常に難しい論点で、長年、いろいろな方々が御検討されていろいろな施策を採ったものの、決定的にうまくはいっていないという状況だと理解をしております。
ただ一方で、例えば融資契約に関する情報開示を進めたり、社債のコベナンツを拡充したりということを過度にやってしまうと、かえって銀行を介した資金調達、資金供給等が滞ってしまうような結果となり、全体として資金供給が後退する可能性も否定できないわけでございます。また、一定のコベナンツを社債に必ず付するということをやっていきますと、発行会社側の経営の自由度が失われて、かえって企業の成長を損なうという可能性もあると考えております。
もちろん冷や水をかけるようなことをここで申し上げるつもりではないのですが、個別の論点を考えていく中で、社債市場の活性化という局地的な視点だけに偏って議論することは避けるべきであり、資金供給がどうしたらうまくいくかというような全体的な目線でこの社債の在り方を議論していくべきだと考えております。
抽象的なコメントで恐縮でございますが、私からは以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、神作先生、どうぞ。
【神作委員】 御指名ありがとうございます。私も、資料4-1と資料4-2の社債市場の課題に関してコメントをさせていただきたいと思います。
今、有吉委員が御発言されましたように、社債市場の課題や課題の克服、そして、活性化に向けて、関係者の方々を中心に長らく努力がなされてきたわけですけれども、なかなかうまくいってないというのは有吉委員の御指摘のとおりだと思いますし、日本証券業協会の松本さんからプレゼンテーションがありましたように、現在でも問題事例が出ているということだと思います。
しかし、松本さんから御報告の最後のほうで言及がございましたけれども、つい先日、各種の担保提供制限条項等を含む各種のコベナンツが付され、また、2021年の会社の改正で導入された社債管理補助者が設置された、格付を取得しない公募社債が発行されました。私は、この事案は非常に大きな流れの転換の一つのきっかけになるのではないかと期待しております。チェンジオブコントロール条項をはじめとして、社債のコベナンツがますます多様化され、さらに、社債管理補助者が実際にどのような役割をどのように果たしていくかに注目しております。
法制面では、これも現在、見直しが進んでおりますけれども、社債権者が適切かつ合理的な投資判断ができるような情報が適時に開示されているのかという観点から、引き続き開示項目について検討していく必要があると思います。
今述べましたコベナンツにしても、あるいは、社債管理補助者制度にしても、基本的には社債権者がより積極的に意思決定に関与したり、アクションを起こしたりすることを期待しているものと思われます。社債権者自身がより主体的、積極的に社債に関心を持って行動することが、コベナンツや社債管理補助者が期待された役割を果たすために重要であると思います。そういう意味では、これも有吉委員が御指摘されたことと同様ですけれども、社債市場の活性化に向けては、引き続き全体的、総合的にいろいろな観点からまだまだ議論すべきことがたくさんあるように思いました。
私からは以上でございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、野村委員、松尾委員の順でお願いします。
【野村委員】 どうもありがとうございます。野村資本市場研究所の野村でございます。
私からは、JPXの最近のお取組みの中で、資料の中のグロース市場に関して、雑感というか所感みたいな感じですけれども、申し述べたいと思います。この中で御指摘のありましたIPOの規模が小さいという点、これは非上場企業のままで成長できるようにする方法の拡充、そのための資金供給の在り方という課題を、取引所のサイドから御覧になった御指摘というふうに理解いたしました。また、機関投資家の参入がなかなか進まないことは、政権の新しい資本主義で出ている資産運用の高度化や、アセットオーナーの機能強化といったような論点ともつながると思いました。こちらも、よりトータルな視点で、複数の観点から取り組むべき課題を述べられたのかと思った次第です。
また、社債市場のいろいろな論点、複数の委員から御指摘のとおり、重要な課題だと思いました。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、松尾先生、どうぞ。
【松尾委員】 ありがとうございます。私も社債市場の活性化について、一つだけ申し上げます。
ここでは、スタートアップ企業による社債の活用、利用も考えられておるようですけれども、信用力が低い発行会社になりますと、やはり例えば担保付社債というような形で信用力を補完することも出てくるかと思います。必ずしもそういったスタートアップ企業が担保付社債を発行することは、これまで想定はされていなかったと思いますし、一方で、担保についても事業成長担保のようなものが出てきておりますので、そういったものと組み合わせた担保付社債が、今後、ひょっとすると検討されるのかもしれないと思いました。
そうしましたときに、現在の担保付社債信託法の規律が過剰であったり過少であったりすることがないのか、現場の方の御意見を聞いていただいて点検していただくことも重要ではないかと思いました。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、小枝先生、どうぞお願いいたします。
【小枝委員】 質問はしてもよろしいですか。
【神田座長】 もちろんです。質問等、大いにしていただいて結構でございます。
【小枝委員】 コメントと質問で、私も社債のことについて申し上げたいと思います。
一般に社債というのは、例えば株式よりもリスクが低い金融商品でありますので、そういったことが金融商品としてよりアクセシブルになるのはいいことだと思います。ただ、日本では、歴史的な背景もあって、社債市場はなかなか、例えばアメリカに比べて育成が進んでこなかった。今回、最近のデフォルト事例に見る課題についてお話しいただいて、担保がついていない債券が妥当にプライシングされているかという視点から、チェンジオブコントロールに伴った予期できなかったデフォルトリスクについてどのような配慮が必要かという重要な論点を御提示頂いたと思いました。質問としては、今回のデフォルト事例に照らしてだけでなく、今まで論点として、コベナンツに関してほかに改善できる面があるのか等について少し教えていただきたく、お願いいたします。
【神田座長】 ありがとうございます。これは日本証券業協会、松本さんでよろしゅうございますか。
【小枝委員】 そうですね、よろしくお願いします。
【松本オブザーバー】 御質問ありがとうございます。
コベナンツについて改善すべき点は、まず現在、ほとんどの社債につきましては、社債間限定同順位の担保提供制限条項はありますが、それ以外のものが付与されていませんので、会社の信用リスクや業容に合ったコベナンツをきちんと付与していくことが必要かと思ってございます。
まさに今申し上げました会社の業容やリスクに沿ったものが必要かと思っておりまして、アメリカでも全ての会社に同じようなコベナンツが付与されているわけではございませんので、きちんとそれに見合ったコベナンツが付与されることが重要かと思ってございます。
海外の例を見ますと、発行体からコベナンツを積極的に付与したいというインセンティブはなかなかないので、投資家の側がそういったコベナンツを付与すべきと声を上げて広まっていったと聞いてございます。今後、資産運用立国ということで、投資家のさらなる役割が重要になってくるかと思いますので、そういった中でもそういった議論がなされると良いと考えているところでございます。
以上でございます。
【神田座長】 少々分かりにくいかと思うのですけども、私もこの分野、過去に参加したことがあるのですが、やはりアメリカ、日本、ヨーロッパと大ざっぱに言うと、アメリカは非常に社債市場が大きいです。ヨーロッパはそれほどでもないので、日本でも社債というのはすごく難しいと思います。一つの理由は、長期資金について、社債と銀行借入れが併存するわけですね。アメリカではそれはないです。長期資金については、銀行は貸しません。ですから、ヨーロッパと日本はそういう問題を抱えているわけです。
そうすると、例えば銀行が担保を取るけど社債は担保取らないのだったら、もうそれだけで劣後しますし、先ほどの同順位というものも、両方同順位にしなければ、やはり社債は劣後するのですね。だから、非常に大きく言うと、それを構造的と呼ぶのか、何と呼ぶのかよく分かりませんけれども、そういう構造があります。では、銀行融資をやめたら良いかって、そんな簡単な話ではもちろんなくて、銀行融資には銀行融資の役割があるわけです。そうすると、それを強調すれば社債市場は育たない。
非常に大ざっぱに言って恐縮ですけども、そういう中で個別の事件も起きるし、あるいは、もう少し、例えば最近の課題で言えば、リスクマネーの供給というところで社債も役割を発揮してもらえないかという課題を抱えているという問題があると思います。もっと言えば、投資家とは誰かという問題もあります。リスクの高い社債を買う投資家が日本には存在しないのです。
そうした問題もあって、可能な範囲でこういう場でぜひ御議論いただければ良いと思うのですけれども、今回は日本証券業協会からも問題提起していただいたと理解しております。
【小枝委員】 ありがとうございます。
【神田座長】 すみません、私が余計なこと言ったかもしれませんけれども。小枝先生、何か御意見は追加でございますか。
【小枝委員】 いえ、ありがとうございました。
【神田座長】 よろしゅうございますか。ありがとうございます。
それでは、隣の坂委員、どうぞお願いいたします。
【坂委員】 ありがとうございます。
私も、社債市場について4点ほど述べたいと思います。まず、1点目ですけども、資料4-2の報告事例と改善策についてですが、この事例からは発行企業が社債権者に重大な影響を及ぼす行動を取り得ることと、かかる行動について社債権者への適切な情報提供と、期限前弁済等の投資の再考の機会が与えられていないという問題が見いだせると思います。対策としては、発行企業の行動をある程度合理的に制約すること、及び、適時の情報提供と期限前弁済等の投資の再考の機会を確保することが考えられるところです。
他方で、いろんな問題があり得ると思っておりまして、こうした取組みを促すことは、社債への投資を促進し得る面もありますが、実際、こうした取組みを行うことは、個別にもそう簡単ではないようにも思われます。
いずれにしろ、このような情報提供は社債が持ち得るリスクについて社会的認識を深めることに寄与し得ると考えますので、非常に大事な情報共有であると思います。
2点目ですが、社債関連の市場構造についてですが、御報告によりますと、米国の社債への投資は機関投資家、専門家の方々が大半を占めていて、家計の直接保有はごく一部にとどまるという状況のようです。株式のような市場が存在しない社債の特性や、社債投資が相応に専門化、高度化していくことに鑑みますと、こうした在り方はある程度合理的であって、我が国においても、家計の直接保有よりも機関投資家等による保有の拡大、特に投資信託における取組みの拡大が目指されるべき方向なのではないかと感じております。特にスタートアップ企業による社債発行の促進を図るには、かかる視点は極めて重要であろうと思います。
3点目ですが、インベストメントチェーン全体を通じて、適切な役割分担とチェーンの各段階におけるガバナンスの確保によって、適切な資金の流れを確保することが必要だと考えます。社債を通じた資金提供においても、チェーンの適切な段階で適切な主体による投資判断を確保すること、適正な投資判断のためのガバナンスを確保することが課題で、それを具体的にどう組み込んでいくかという問題であろうと思います。
4点目ですが、社債投資の特性に鑑みますと、個人投資家の位置づけというのは少々悩ましい問題というふうに感じております。これまでも信用リスクの高い社債や特殊な社債等によって投資者被害が生じてきておりましたし、そこでは必ずしも適切でない資金の流れやリスク移転が行われたということではないかと思われます。こうした事象が生じないように、十二分に留意しつつ検討を進める必要があると思います。
それから、最後に1点、これは株式資本ですけども、御報告ありました中で、グロース市場においても機関投資家の参入が進んでいないという点については、重要な課題だというふうに感じました。規模のことを御紹介いただきましたが、情報通信技術の発達によって、比較的規模の小さなところにもかつてよりは投資しやすくなっている面があるのではと思ったりもしますし、この辺りのところについてぜひ、御検討を進めていただければと思います。もし現段階で何か御検討されているところがあるのであれば、教えていただけるとありがたく思います。
【神田座長】 ありがとうございました。
青さん、今の点、いかがでしょうか。
【青オブザーバー】 現実にどのように機関投資家の参入を促していくのか、どのように活性化させていくのかという点につきましては、これから勉強していく段階でございますので、様々な方々の御示唆を頂戴しながら、検討を進めていきたいと思っております。まずは情報提供といったところから取り組んでいくのが現実的かと考えておりますが、いろいろと教えていただければと存じます。
【神田座長】 ありがとうございました。
よろしゅうございますか。
それでは、亀坂先生、どうぞお願いします。
【亀坂委員】 ありがとうございます。
資料で気になる点が1点、コメントが1点ないし2点あるのですけど、まず、気になる点が資料の4-1の4枚目の上に書いてある説明でして、2つ目の箇条書の日本の社債保有における海外機関投資家等の比率は極めて低水準というここなのですが、結局、為替リスクを負って、しかも円安が中長期的に見込まれるという状況で海外の投資家を増やすというのはやはり難しいのではないかと思います。
となると、やはり個人投資家を呼び込むことが重要なのでしょうが、資料3では、私は15枚目の投資単位の引下げに向けた取組みというものに非常に関心を持ちました。学生や若年層と話していると、ポイント活用の投資だったらやってみたい等。やはり手軽に少額の資金、あるいは、よく行動ファイナンスや行動経済学の分野だとメンタルアカウンティングという、たまたま手に入った、あるいは、自分で必死に稼いだお金とそうでないお金と使い方が違うというような説明があるのですが、ポイントで貯めに貯めたのを、例えば投資信託を購入してみたいというような大学生や若者の声をよく聞きます。証券投資論等を私は大学で教えているのですけど、資料の4-1の3枚目で説明していただいた、デジタル社債や小口化というのは、社債市場を活性化させる可能性があるのではないかと思います。
ですので、株式市場に関しても社債市場に関しても、小口化は有効かもしれないのですけれども、あまり投資家のことばかり、投資家目線で話すと、今度、発行企業側の負担というか、嫌がる企業もあるのではないかと。あと、コスト面とか。ですので、あまり押しつけにならない範囲内で、うまくバランスを取って小口化等を進めていただけるとよろしいのではないかと思いました。
以上です。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、本日、リアルで御出席の委員の皆様方全員から御発言をいただきました。どうもありがとうございました。
オンラインで松岡委員に御出席いただいていると思いますけれども、松岡さん、もし御意見等ございましたら御発言承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
【松岡委員】 ありがとうございます。社債市場について、今日のお話にも出ましたので、皆様の御意見を拝聴し、当方からもコメントさせていただきます。
企業もグローバルに事業を展開しているところも多いと思います。実際当社も広くグローバルに活動しています。 先ほど神田先生からありました御指摘、例えば間接金融の位置づけに日米の違いは確かにある一方で、現在欧米では非常にイールドの高い水準にあり、日本はそれに対して非常に低い金利水準が長期的に継続しています。投資家サイド、いわゆるプロの機関投資家については、洗練度が上がっており、様々なアセットカテゴリーについて、リスクを含めてのアセスメントできており、様々なアセットをポートフォリオに組込み、リスクとバランスしていると考えております。
それに対して、個人投資家が、機関投資家間の競争環境の中で、それらを投資に含めているのは、欧米の市場では一般的なことになっていると思います。日本の金利水準がもし今後上がっていくのであれば、同じような対応が求められるのではないかと思います。したがって、様々なリスクのあるアセットカテゴリーに対する機関投資家のアセスメント能力、リスクテイク能力が重要なカギになるのではないかと思います。そのことが、翻っては日本のスタートアップ企業を含めた様々な企業が、多様な資金調達手段にアクセスできる環境に向けた道筋になるのではと考えております。
そのため、皆様から先ほど御指摘のあった各種の論点もあるかとは思いますが、やはり投資家の洗練度をさらに上げ、イールドに対する個人投資家の求めに対して適切かつ健全な競争状況が出来上がることが必要ではないかと考えております。
以上です。ありがとうございます。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、本日は皆様方に御相談しなければならないこともありますので、時間も押しているのですが、オブザーバーの皆様方、もし御発言があれば承りたいと思います。チャット機能、または挙手機能等でお知らせいただければと思います。いかがでしょうか。
【河本オブザーバー】 全国銀行協会の河本と申します。
【神田座長】 どうぞ。
【河本オブザーバー】 口頭ですみません。よろしいですか。
【神田座長】 結構です。よろしくお願いします。
【河本オブザーバー】 全国銀行協会の河本でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。銀行からの声もお聞きいただければと思います。
社債市場の活性化については、事業者の資金調達の選択肢を広げる観点から御議論いただいていると理解しております。ただ、その取組みによって、間接金融も含めた事業者の資金調達全体に悪影響が出ることがないようにお願いしたいです。その観点から、論点で挙げていただいている社債と融資のイコールフッティングの向上については、やはり融資と社債では求められている役割、機能が違うことを踏まえた議論をお願いします。
御案内のとおり、融資におけるコベナンツは、事業会社側に規律を与えるというだけではなく、健全な財務水準に対する認識の共有と、それを踏まえた次のアクションの起点ということで、仮にコベナンツに抵触した場合でも、事業会社とコミュニケーションを速やかに取ることで、事業計画の見直しやウェーブ等といった柔軟な対応を取る、というのが銀行の基本的な立場です。
そうした観点から、社債のコベナンツの内容充実においては、こうした役割の違いがございますので、円滑な資金供給機能全体に影響が出ないように御留意をお願いしたいです。例えば、社債権者については意思結集を速やかにできないということがあると思いますので、銀行と同じようなコベナンツをつけることが、必ずしも事業者の安定的な継続、あるいは成長に資する資金供給にならない可能性もありますし、挙げていただいているパリパスの観点も同様の論点があると考えております。
したがって、社債がどのような資金供給機能を果たし、それを踏まえてどのようなコベナンツを付すのが適切なのか、その抵触時の対処をどのような形で行うのかといったことについて、事業者の目線も踏まえた御検討をぜひお願いしたいと考えております。
もう1点、佐々木先生から利益相反ということでコメントをいただいておりますので、銀行界としての認識を申し上げたいと思います。銀行融資を、社債を発行してすぐ回収するという利益相反を挙げていただいていますが、利益相反管理については銀行法等で態勢整備を求められており、こうした類型も、当然、典型的な類型ということで、相当な態勢整備を銀行界でも進めてきていると認識しておりますので、この論点が、今、社債市場の活性化に大きな影響を与える状況にはないだろうと、銀行界としては認識しております。
長くなりまして、恐れ入ります。以上でございます。
【神田座長】 ありがとうございました。
ほかにオブザーバーの皆様方で、御発言はございますでしょうか。生命保険協会、お願いいたします。
【佐藤オブザーバー】 生命保険協会の佐藤でございます。本日は、オブザーバーとして意見を述べさせていただく機会をいただきましてありがとうございます。
私からは、前半のテーマでございました金融経済教育について、簡単なコメントをさせていただければと思います。我々生命保険協会としましては、これまでも各業界団体と同様に、生命保険の普及や啓発、情報提供等を専門的に行う生命保険文化センターという機関とともに、中学校・高校への講師の派遣や教材の提供等を行ってまいりました。昨年末に取りまとめられました顧客本位タスクフォース中間報告では、幅広い年齢層が家計の管理や生活の設計も含む広範な金融リテラシーを効率的に身につけることが重要との方向性が示されております。
新たな機構におきましてもその方向で検討いただいていると考えておりますが、委員の方からも、本日、御意見ございましたように、私ども生命保険協会としましても、特定な分野に過度に偏ることがないように、とりわけ資産形成、投資といった分野だけにとどまらない幅広いリテラシーを身につけることができるように、バランスを取った取組みをぜひ新しい機構でお願いしたいと考えてございます。
また、あわせて、決意表明のような形になってしまいますけれども、新たな機構におきましては、学校に加えて企業への講座への展開も検討していると認識しております。我々生命保険協会といたしましても、学校教育における教育はもちろんのこと、こうした企業への講師派遣につきましても議論に参加してまいりたいと思っております。ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【神田座長】 ありがとうございました。
では、次に、信託協会、どうぞ。
【加藤オブザーバー】 御指名いただきまして、ありがとうございます。信託協会でございます。通信の安定性の観点から画面をオフにさせていただいておりますこと、御了承いただけたらと思います。
信託協会といたしましても、今し方生命保険協会からありました金融経済教育推進機構の件について、簡単にコメントさせていただきたいと思っております。現在、信託協会におきましても、全国、各種、御要望に応じまして、いろんな金融リテラシー向上に向けた講師派遣等の取組みを行っているところでございまして、今回の機構の設立並びに取組みについては非常に重要であると認識しております。
現在、信託協会の加盟会社におきましては、年金の資産運用の管理、個人の資産承継を支援する信託商品の提供といった、幅広い世代のライフイベントに対して、領域を横断して商品、サービスを提供しております。そういった信託の特性も踏まえつつ、公的年金や、企業年金をはじめとする私的年金の領域、それから、社会人、高齢者に対する承継、遺言の領域について、機構の活動に積極的に貢献をしてまいりたいというふうに思っております。
決意表明みたいな形になりますけども、コメントは以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、恐縮ですが、時間の関係もありますので、先へ進ませていただきます。本日の最後に、今後の検討の進め方について、事務局から御説明をしていただきます。よろしくお願いします。
【齊藤企画市場局市場課長】 それでは、お手元の資料5に沿って御説明させていただきます。
1ページ目でございますが、本年の6月に閣議決定されました新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画における市場分野の課題について、ピックアップさせていただいているものでございます。こちらについて、概略を説明させていただければと思います。
企業の参入・退出の円滑化とスタートアップ育成5か年計画の推進につきまして、まず、個人からベンチャーキャピタルへの投資促進ということで、イギリスのVCTと言われます上場ベンチャーファンドといった事例も参考にしながら、個人から上場ベンチャーファンドへの投資を促進するスキームについて検討を行うこと。また、イギリスでは、この上場ベンチャーファンドは投資口の自己取得が可能であることも踏まえて、我が国においても上場ベンチャーファンドにおける投資口の自己取得が可能となるように、投信法の内閣府令等の改正を検討するようにといったことが盛り込まれてございます。
また、その下、株式投資型のクラウドファンディングの活用ということで、現在、発行総額の上限1億円でございますが、これにつきまして、開示等の必要な投資家保護策と併せて、例えば現行の1億円から5億円にする等の拡充を検討する。また、投資家の投資上限について、現行50万円となっているものについて、引上げを検討するといった項目が盛り込まれております。
次のページでございますけれども、SPACの検討につきましては、昨年の市場制度ワーキング・グループでも御議論いただいていると思いますけれども、検討を進めることとなっております。
その下、未上場株の取引環境の整備ということで、PTS、私設取引システムにつきまして、現在、資本金要件は3億円でございますが、こうした認可基準や開示義務システム要件を緩和する等、オンラインプラットフォーマーが参入しやすい環境を早期に整備することが盛り込まれております。
また、プライマリー市場につきましても、スタートアップ企業への資金供給を促進していくため、少額募集の在り方を含めて検討することが盛り込まれております。
次のページでございます。東京証券取引所グロース市場の在り方ということで、上場維持基準の在り方等、グロース市場の制度整備について検討を行うことが盛り込まれております。
次のページでございます。資産所得倍増プランと分厚い中間層の形成ということで、ここに掲げられております項目については、法律案に盛り込まれております金融経済教育推進機構に係る制度整備等の中で検討されていくべき内容となっています。
次のページでございます。2つ目の項目ですけれども、市場インフラの強化ということで、PTSにつきまして、売買高上限の緩和等の必要な措置を講じること、また、金融商品取引所において、投資単位が高い水準にある上場会社の投資単位の引下げに向けた取組みを進めること、また、その下ですけれども、銀証ファイアウォール規制の見直しについて検討を行うことが盛り込まれています。
最後のページでございますけれども、顧客本位の業務運営の確保については、金商法の改正法律案を国会に提出しているところでございます。
最後の項目ですけれども、資産運用立国に向けた取組みの促進ということで、資産運用業の高度化やアセットオーナーの機能強化を強力に推進すべく、資産運用立国の実現に向けた取組みを行うといった項目が閣議決定されたものに盛り込まれているところでございます。
こうした実行計画における市場分野の項目につきまして、本ワーキング・グループにおきまして、今後、どのような項目をどのように御議論いただくかにつきましては、神田座長と御相談させていただきながら進めさせていただきたいと考えております。
【神田座長】 どうも御説明ありがとうございました。
今後の検討の進め方についてですけれども、事務局から御説明いただきましたように、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、これに関連する項目というものがございます。それらについて、この金融審議会でどのように取り上げていくのか、また、議論を別途行う必要が生じる可能性があるような場合には、本ワーキング・グループの下に、個別のテーマに応じた人選をさせていただいた上で、議論の場を設けるかも含めまして、大変恐縮ですけども、今後の進め方について私に御一任をいただけるとありがたいと思うのでありますけれども、御承認いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
どうもありがとうございます。
それでは、その方向で進めさせていただきたいと思います。
なお、皆様方には、今日の御議論をいただいたものも含めて、実際の会議の場所で御意見をいただく時間が限られていると思いますので、追加でお気づきの点等ございましたら、今後の進め方を含めて、事務局までメール、電話、その他適宜の方法でお寄せいただきますと大変ありがたく存じます。
今日は、以上で終了とさせていただきたいと思いますけども、局長、何かございますか。
【井藤企画市場局長】 本事務年度も市場周りの課題につきまして、先ほど課長から御説明させていただきましたように、様々な課題がございますので、精力的な御議論をお願いできればと考えてございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、その方向で進めさせていただきたいと思います。
なお、皆様方には、今日の御議論をいただいたものも含めて、実際の会議の場所で御意見をいただく時間が限られていると思いますので、追加でお気づきの点等ございましたら、今後の進め方を含めて、事務局までメール、電話、その他適宜の方法でお寄せいただきますと大変ありがたく存じます。
今日は、以上で終了とさせていただきたいと思いますけども、局長、何かございますか。
【井藤企画市場局長】 本事務年度も市場周りの課題につきまして、先ほど課長から御説明させていただきましたように、様々な課題がございますので、精力的な御議論をお願いできればと考えてございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
【神田座長】 どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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金融庁 03-3506-6000(代表)
企画市場局市場課(内線:2393、2410)