金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第26回)・「顧客本位タスクフォース」(第6回)合同会合 議事録

  • 1.日時:

    令和6年1月26日(金曜日)14時00分~16時05分

2.場所:

 中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用
 
 

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第26回)・
「顧客本位タスクフォース」(第6回)合同会合

 

令和6年1月26日

 
【神田市場制度WG座長】
 それでは、定刻になったと思いますので、始めさせていただきたいと思います。市場制度ワーキング・グループの第26回目、そして、顧客本位タスクフォースの第6回目の会合を合同で開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 本日でございますが、まず最初に、本日の合同会合の開催の趣旨について、簡単に事務局から御説明をいただきます。そして、事務局から次に、安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)と、それから、金融経済教育推進機構について御説明をしていただきます。その後、討議の時間とさせていただき、委員の皆様方から御質問、御意見等をいただければと存じます。
 
 なお、本日ですけれども、御欠席と伺っております永沢委員と渡辺委員から、意見書を提出していただいておりますので、お手元、資料4、資料5として配付させていただいております。御参照いただければ幸いです。
 
 それではまず初めに、事務局から本日の合同会合の開催趣旨についての御説明をお願いいたします。齊藤さん、よろしくお願いします。
 
【齊藤市場課長】  
 本日の会合の開催の趣旨について御説明させていただきます。
 
 参議院におきまして継続審査となっておりました金融商品取引法等の一部を改正する法律、これが昨年11月に成立・公布されております。これに伴いまして、金融サービスの提供に関する法律は、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律に法律名が改正され、また、国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本方針の策定、金融経済教育推進機構の設立などの規定が盛り込まれているところでございます。
 
 この改正によりまして、同法では「国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本方針を策定しようとするときには、金融審議会の意見を聴くもの」とされております。そこで、本日の合同会議では、基本方針(案)につきまして、委員の皆様に御議論いただきたいと考えております。そして、その内容も踏まえまして、後日、金融審議会総会で御議論いただきたいと考えております。
 
 また、昨年9月の市場制度ワーキング・グループ(第24回)におきまして御議論いただきました、金融経済教育推進機構の設立の準備状況及び取組などについても御説明させていただきまして、併せて御議論、御意見をいただきたいと考えております。
 
 以上になります。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは続きまして、事務局から、安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)及び金融経済教育推進機構についての御説明をお願いいたします。桑田さん、よろしくお願いします。
 
【桑田金融経済教育推進機構設立準備室長】  
 お配りしている資料3-1、事務局説明資料について御説明いたします。
 
 右下5ページ目を御覧ください。こちらが安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)の概要になります。国内外でファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に関心が高まっているところでありますけれども、国民の安定的な資産形成は、個々人の幸福だけではなく、成長と分配の好循環や公正で持続可能な社会の実現にも資するものと位置づけておりまして、本基本方針ではインベストメント・チェーンの各主体に着目した施策について記載しております。
 
 個別の施策に関してはローマ数字のⅡに記載しております。1ポツでは、制度の整備としてNISAやiDeCoについて触れておりますが、NISAについては、令和9年度末時点で口座数3,400万口座、買付総額56兆円を目指すこととしております。
 
 2ポツでは、顧客本位の業務運営の確保など販売会社や運用会社に関する施策、さらにはアセットオーナーについて、昨年末に取りまとめられた資産運用立国実現プランの方向性に沿う形で記載しております。
 
 3ポツは教育・広報について記載しております。ここでは総論として、金融経済教育を受けたと認識している人の割合が低水準にとどまっているという現状に鑑み、将来的に誰一人取り残さず、定期的に金融経済教育を受けられる機会を提供することの重要性について触れております。その上で、まずは令和10年度末をめどにこの割合を米国並みの20%となることを目指すということにしております。さらに、金融リテラシーマップを踏まえた広範な教育を進めること、長期・積立・分散投資の意義の普及啓発を行うこと、消費者教育や社会保障教育と連携していくことについても記載しております。また、新設される金融経済教育推進機構においては、多様なステークホルダーとの連携を通じて、地方を含めた学びの場づくりに取り組み、公的性格という強みを生かしながら、職域教育などの活動を抜本的に拡充することとしております。
 
 次に、ローマ数字のⅢは、国、地方公共団体、機構、民間団体等の相互連携・協力についてになります。改正金サ法に規定されておりますとおり、資産形成の支援に関する国と地公体の努力義務のほか、事業主においても、事業に支障のない範囲内で国や地公体あるいは機構が行う取組に協力するよう努めることとされている、そういった旨を記載しております。
 
 最後にローマ数字のⅣですが、施策の実施状況や効果検証を行い、おおむね5年後をめどに本基本方針は見直しを検討することとしております。
 
 右下7ページ目には、御議論いただきたい事項として、国民の安定的な資産形成を支援することで実現すべき姿、施策の実施状況を評価するための調査、関係者間の連携の在り方について記載させていただいております。
 
 右下9ページ目以降が、新設する金融経済教育推進機構についてでございます。本機構は本年4月の設立、8月の本格稼働を目指しております。全銀協、日証協、投信協といった民間団体や日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会からの事業移管を受け、職員数約70名、予算規模は約20億円、うち9割以上は民間からの拠出で賄われる認可法人となります。
 
 10ページ目は機構の事業概要になります。主要な事業としては、講師派遣事業、イベント・セミナー事業、個別相談事業、認定アドバイザー事業を行う予定であり、関連する論点を次のページ以降で御説明したいと思います。
 
 まず、講師派遣事業については、11ページ目に記載がありますとおり、2022年12月に皆様におまとめいただいた中間報告におきまして、職域における教育の重要性が指摘されているところです。
 
 12ページ目では、職域教育の重要性を示すものとして、マイナビによる学生向け調査の結果をお示ししております。足元数年間で、「安定している会社」を求める傾向が顕著に表れております。
 
 では、この「安定」とは何かについてが、13ページ目です。学生が企業に安定性を感じるポイントとして、「福利厚生が充実している」に次ぎまして、「安心して働ける環境である」を挙げる意見が多いという結果が示されております。この安心して働ける環境としては、成長できる職場環境か否かが重要でありまして、この観点から企業が提供している研修の状況に注目が集まっております。
 
 そこで14ページ目は、金融庁等が独自に行った調査になるんですけれども、学生が企業に求める研修としては、資産形成・金融リテラシー研修への関心度が高く、右の円グラフのとおり、それを企業が積極的に導入している場合には学生の志望度が高まることが見込まれます。したがいまして、企業が従業員向けに資産形成・金融リテラシー研修などを積極的に実施することは、従業員の新規採用や、あるいはリテンション強化に寄与し得るものと考えられます。
 
 企業における職域教育に関しましては、15ページ目でDCにおける継続投資教育について御紹介しております。事業主に対して実施状況を質問したところ、「実施したことがある」との回答が約8割でしたけれども、加入者側で「継続的に何回か受けた」と回答した者は約1割にとどまり、両者の間にギャップが見られます。DC担当者の悩みを右に一覧にしておりますけれども、継続投資教育が最も多い結果となっております。具体的には、無関心層への効果的な教育の方法が分からない、そもそもほかの業務と兼業しているので教育に時間が割けないといった意見が挙げられます。
 
 しかし、こうした継続投資教育を積極的に実施している例ももちろん存在しておりまして、これを16ページ目で御紹介しております。こうした従業員向けの資産形成支援などは、17ページに記載しておりますとおり、従業員の経済的な安定を支援する取組として、ファイナンシャル・ウェルネスと呼ばれております。令和5年3月期からは有価証券報告書において人的資本に関する開示が求められているわけですけれども、このファイナンシャル・ウェルネスに関する取組についての積極的な開示も期待されるところでございます。この点、18ページ目から20ページ目では、日本及び海外での開示事例について御紹介しております。
 
 次に、21ページ目ですけれども、機構が行う個別相談事業の概要を紹介しております。一昨年の中間報告においては、金融経済教育とアドバイスを一体として捉えた取組の重要性について御指摘いただいたところです。アドバイスの意義や価値についての理解が広まるよう、機構では無料の個別相談を実施いたします。対面・オンラインでの個別相談では、最大1時間で家計管理、生活設計、資産形成等の一般的な内容に関する相談を行う予定です。
 
 22ページ目は、認定アドバイザー制度についてです。一昨年の金融審におきまして、顧客の立場に立っているとうたいながら特定の金融事業者や金融商品に偏ったアドバイスが行われているケースが見られる、顧客にとって誰が信頼できるアドバイザーであるかが分からない等の課題についての議論をいただきましたが、機構では、金融商品の販売・組成等を行う金融機関を兼業していないことなどを要件といたしまして、顧客の立場に立ったアドバイザーを認定・公表する事業を行う予定です。
 
 この事業の目的は、個人が信頼できるアドバイザーにアクセスしやすい環境整備の一環として、顧客への情報提供の充実、すなわち、見える化を図ることですけれども、同時にこうしたアドバイザーが持続可能な形でサービス提供が可能であるということが重要であります。そのため、こうしたアドバイザーを支援する観点から、機構内では、この認定アドバイザーが機構の講師あるいは個別相談事業の相談員として御活躍いただくことを想定しております。また、機構外においては、この認定アドバイザーが自らアドバイザリービジネスや相談事業を営んでいる場合もあると思いますけれども、個人がこの認定アドバイザーに相談を行う場合にその相談料の一部を補助する仕組みを創設したいと考えております。
 
 23ページ目が認定要件になります。また、この認定要件として、アドバイスを提供するために有益な資格及び一定の業務経験を有していることを含めており、その例を24ページ目に記載しております。なお、23ページの要件2におきまして、外務員1種など金融機関の方が多く取得されている資格も記載しておりますが、あくまで金融機関に勤務していた時代に取得した資格として認めるものであり、これをもって、現状金融機関に所属している方も要件に合致するとみなすわけではないことは要件1に記載しておりますとおりですので、御留意ください。
 
 25ページ目は機構が活用する標準講義資料について記載しております。機構においては、金融リテラシーマップを基に再編し、全国に等しい内容の金融経済教育が提供されるような環境を整備してまいります。もちろん講師の方の創意工夫を損なわないよう、一定の柔軟性も確保いたします。下の表には、対象層の一覧と詳細コンテンツとしての作成予定のテーマを掲載しております。
 
 26ページ目はKPIについてです。施策が目的を達成するまでの論理的な因果関係を示すロジックモデルを整理いたしました。まず、インプットが機構の予算・人員、次に、アクティビティとして講師派遣事業等の機構の事業になります。そのアウトプットが金融経済教育の提供となり、それによって達成される成果としてのアウトカムが金融経済教育の受益、つまり、金融経済教育を受けたと認識しているか否かになります。加えて、知識面として、金融リテラシーの向上、さらに、意識の変容と行動の変容になります。これらがひいてはファイナンシャル・ウェルビーイングの実現や、自立的で持続可能な生活を送ることのできる社会づくりにつながるということで、インパクトとして記載しております。
 
 このKPIの御参考ですが、27ページ目では、アウトプットに関係する計数として、講師派遣等の実施回数が足元で約5,000回、受講者数が約30万人となっていることをお示ししております。
 
 28ページ目では、アウトカムに関する設問例を記載しております。これまで金融広報中央委員会が実施してきました金融リテラシー調査や家計の金融行動に関する世論調査において含まれている質問になります。
 
 以上を踏まえまして、御議論いただきたい事項が31ページ目以降になります。まず、機構の教育活動を抜本的に拡充する観点から、どのようなステークホルダーとの連携により職域教育の推進を図っていくべきか。個別相談事業については、周知・案内方法、相談対応日時等の事業の実施方法に関してどのような点に留意すべきか。また、相談員に求められる業務経験やスキルは何か。認定アドバイザー制度については、23ページでお示しした認定要件は適切か。金融機関を兼業していても開示などを行っていれば認めてもよいのではないかとの意見に対しては、制度の根幹に影響するので慎重であるべきではないかとの意見もあるがどうか。そして、個人がよりよいアドバイザーに相談できる環境を整備する観点からどのような点に取り組むべきか。
 
 標準講義資料については、ほかに盛り込むべき内容があるか。対象層としては、特に配慮が必要と想定される区分はあるか。KPIについては、講師派遣の実施回数や受講者数のような機構による事業活動の直接的な成果であるアウトプットと異なり、その他の要因も含めて判断されるべきアウトカムを同様にKPIとして設定することが適切なのかどうか。この点については、機構の提供する金融経済教育を受けた人からの評価を都度収集することも考えられるがどうか。最後に、この機構が多くの方になじみのある組織となることが重要ですが、そのための工夫として何が考えられるか。
 
 以上が御議論いただきたい事項になりますけれども、本日はその他の点も含めて幅広く御意見を頂戴できればと存じます。事務局からの説明は以上になります。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、本日は残りの時間、委員の皆様方から、今、事務局から御説明いただいたことに関する御質問、御意見をお出しいただくという討議の時間とさせていただきたいと思います。それで、恐縮ですが、まず委員の皆様方に御発言いただくことにして、それが終わりましたら、もしお時間があればということになりますが、オブザーバーの皆様方から御発言があれば承りたいと思います。
 
 今御説明がありましたように、御議論いただきたい事項というのは、今の資料の7ページと31ページ、32ページにありますけれども、今御説明いただきましたように、これに限らず、お気づきの点等がございましたら御発言いただければと思います。
 
 なお、いつものことで恐縮ですけれども、会議全体の時間的な制約等も考えますと、皆様方の御発言の時間の目安としては、お一方当たり4分程度になるかと存じます。また、御発言の順番に関しては若干前後する可能性がございますので、あらかじめ御了承いただければと思います。
 
 それでは、冒頭、事務局から御紹介させていただいたと思いますけれども、御発言いただける方にはこのネームプレートを立てていただければと存じます。また、オンラインで御参加の方は、適宜の方法でお知らせいただければと思います。
 
 ぱっと見て、瞬間的で分からなかったんですけれども、有吉委員、佐々木委員、松元委員、坂委員、この辺りの順番から始めたいと思います。有吉委員、どうぞお願いします。
 
【有吉委員】  
 有吉でございます。最初に御指名いただきまして、どうもありがとうございました。
 
 まず総論の総論として、この金融経済教育推進機構の活動を中心に官民連携しての資産形成支援や金融経済教育の推進が効果的に図られていくことを強く期待しております。その上で4点ほどコメントさせていただきたいと思います。基本方針(案)との関係で2点、それから、機構との関係で2点、コメントさせていただきたいと思います。
 
 基本方針(案)との関係では、いずれもアドバイザーに関するコメントでございます。基本方針(案)の5ページの128行目の辺りに、「特定の金融事業者や金融商品に偏ったアドバイスが行われているケースが見られる」といった問題意識を示す記述がございます。ただ、いわゆる中立的なアドバイザーであっても、例えば安定性が高くて手数料水準が低い業者のインデックス投資商品などにアドバイスが偏るということは十分想定されるように思われます。そのため、特定の金融事業者や金融商品に偏るということ自体を否定的に捉える記述は、ややミスリーディングではないかと思いました。あくまでも顧客の利益とは別の観点からのインセンティブによってアドバイスの対象になる金融事業者や金融商品が選択されてしまう結果、特定のものに偏るということが問題であると思いますので、この部分の表現については、御修正いただくか、あるいは文章を加えるかして趣旨が明確になるように整えるほうがよろしいのではないかと思いました。
 
 それから、2点目でございます。今回、認定アドバイザー制度の導入に際して、中立性を前提とする認定アドバイザーがうまく機能していくことはもちろん願っているわけでございますけれども、ただ、割引クーポンによる支援制度などを踏まえましても、収益性が不明確であるということは否定できないと思いますし、それから、実際になされるアドバイスの領域にもよるとは思いますが、中立性と専門性とはどうしてもトレードオフになるということもあり得ると思います。こういったことを踏まえますと、認定アドバイザーだけで顧客に対する十分なアドバイスが確保されるようになるかどうかは確実とは言い難いのではないかと考えます。
 
 この点、私自身過去の顧客本位タスクフォースの会合でも申し上げたことの繰り返しではございますけれども、国民の資産形成の支援という観点からは、これまでの実務の中でも行われてきた販売業者などによる、基本方針(案)の言葉を借りれば、中立性を有しない業者によるアドバイスについても、当然ながら適切に利益相反管理がなされるということを前提として、引き続き重要性を有するものだと考えます。この点についてこの基本方針(案)には何の記述もないということは、非常に違和感を受けるところでございます。中心的な部分は認定アドバイザーなのかもしれませんが、そういった既存の業者によるアドバイスの重要性という観点についても、何かしら記述を加えるべきではないかと思います。
 
 それから、3点目は機構の関係でございます。事務局説明資料10ページ以下の御説明で、この機構がどういった活動をしていくのかというイメージを大変具体的に持つことができて分かりやすかったと思っております。一方で、これまでの日銀の金融広報中央委員会や、それから、各業界団体の金融経済教育に対する取組も非常に立派なものであったと思います。例えば私もこのタスクフォースに参加した後に、オンライン上の金融教育に関する映像コンテンツなどを拝見したのですが、非常に分かりやすくまとまっており、私自身勉強になったということがございました。そういった立派な取組がある一方で、今日の資料でもお示しになっておりますとおり、金融経済教育を受けたと認識している人の割合が非常に低いということもこれもまた事実でございまして、この点は真摯に受け止めるべきであると思います。
 
 そういった意味で、もちろんこれまでの取組の合理化とか、それから、延長線上でこれまでの取組をさらに推進していくというような対応も機構の役割としては重要だと思うわけでございますけれども、一方で、この点も過去のタスクフォースでも度々私自身申し上げていることでございますが、無関心層に対して従来とは違うやり方、手法で働きかけを行って金融分野に関心を持ってもらうとか、さらには実際に体験をしてもらうといった取組そのもの、あるいはそういった取組を促すということについても、機構には精力的に取り組んでいただきたいと強く願っております。
 
 最後に、全くの蛇足のコメントではございますが、機構自身、貴重なリソースを用いて活動するというものでございますので、機構自体のガバナンスということも十分確保した上で取組を進めていただきたいと思います。
 
 私からは以上でございます。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、佐々木委員、松元委員の順でご質問、ご意見をいただけましたらと思います。佐々木委員、どうぞお願いいたします。
 
【佐々木委員】  
 ありがとうございます。では、私から非常に大きな観点のコメントを1つと機構に関して1つ申し上げたいと思います。
 
 大きい観点のことというのはマクロ的な視点ということなんですが、今回この具体的なところでも意識していただけたらいいのかなと思ったんですけれども、大本に、成長と分配の好循環とかいうところに含まれていると思うんですが、やはりマクロ的に資産の構造を変えるということが今回あって、それがどのような効果を生むか、あるいはそれがどういう狙いであるかという部分も非常に重要な視点ではないかと思います。
 
 今までこの30年ぐらい金利もインフレもほとんどないところで、ある意味安定した形で現金や預金という形で国民が資産を保有してきた。それを銀行を通さずに直接株や債券という形で出資する方向に転換するということなので、その効果によって、まず国民の資産が本当に安定的に増加するのか、それから、それが日本の経済成長にどう貢献するのか、そういった観点からの狙いを明らかにしたり、あるいはそういったことが実現されていることを事後的に調査していくことも重要ではないかと思いました。これは、ですから、もともと成長と分配の好循環というところに含まれてはいるんですが、いろいろな施策をする中でそういったことも意識した形で進めていただくのがいいのではないかというのが1つ目のコメントです。
 
 もう一つ、機構についてなんですが、機構設立のもともとの考え方というのは、資産所得倍増プランにあるように、例えば投資未経験の方が一歩進んで投資をしてみようと、それを後押しするというようなところが意図にあると思います。例えば10ページにあるような様々な事業概要を見せていただきまして、それぞれとてもよく出来ていると思ったんですが、全体としてやはり初めの一歩を後押しするような、しっかり捉えて導くといった部分が重要になってくるかなと思いました。そういう意味では、この中でもうたわれていますように、周知をどういうふうにしていくかということも重要ですし、また、投資をしようとして例えばネット検索をしてここに来られた人が、うまく情報を引き出せるような道筋をつけるということもとても重要ではないかと思います。まず、投資しようかしらという人が、個々の証券会社とか銀行ではなく、まず何を知ったらいいんだろうと思ったときに安心して情報を提供できるといった役割があるかなと思いました。
 
 それともちょっと関係があるんですが、25ページのところです。これは内容として全てこれらが網羅されていればいいと思うんですが、やはりこういうことを学んで、じゃあ、実際投資しようとなったときに、自分が自分のお金をどこにどう振り分けたらいいのかという個人のポートフォリオの選択、このようなところについてはどこで勉強するのかなというのが、こちらを見てはっきりは分からなかったかなと思います。例えば今年の春学期もうちの大学でもそういう講座が半期ありまして、私もたまたま担当したのでそれに出たんですけれども、いろいろな知識は増えたんですけれども、では、いざ自分が何をしたらいいかというところはちょっと分かってないみたいな感じがありました。実際、例えばローンの返済をするべきなのに無理に積立てをしてしまうとかそういったことが起こらないように、全体を、個人のポートフォリオ形成をしっかり学べるところも必要なのかなと感じました。
 
 以上です。ありがとうございます。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、松元委員、その後、坂委員、野村委員の順でお願いできればと思います。松元委員どうぞ。
 
【松元委員】  
 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。慶應の松元でございます。全体として大きく3点申し上げたいと思います。
 
 まず1点目なんですが、先ほどの有吉委員の御発言と重複する部分が多いんですけれども、銀行とか証券会社といった、いわゆる販売側の立場に立ち得る方たちによる教育についてもやはり重要性がすごくあると思いますので、今回の認定アドバイザーという制度が重要であることはもちろんでありますけれども、それとともに、銀行、証券会社などによる金融教育についても、ぜひ機構のほうで後押しをしていっていただきたいと思います。
 
 と申しますのは、これも先ほど有吉先生がおっしゃっていたことと重複しますが、やはり専門性の面、あるいは規模の面、あるいは画一的に均質な教育サービスを提供できるという点からしますと、個人個人で認定されるアドバイザーの方と比べますと、やはり確実に大規模のというか、何人も講師を派遣して同じ内容の講義をすることをある程度保証できるというのは大きな金融機関の強みであると思いますので、それを使いこなさない手はないと思います。あとは、資料を拝見しますと、5年後に20%の国民が金融経済教育を受けたと認識してもらうというような目標が達成されて(掲げられて?)いますが、恐らくこれは認定アドバイザーだけでは不可能なんじゃないかと思います。その数を現実的に見ますと、認定アドバイザーによる教育だけで20%に達することはほぼ不可能だと思いますので、やはりその意味でも金融機関は重要だなと思います。
 
 その際に、これももう有吉委員がおっしゃっていたことですが、利益相反についての開示というのはきっちりしていただくことが前提で、以前タスクフォースのときにも申し上げましたが、例えばアメリカでレギューレーション・ベストインタレスト、顧客本位の原則というようなレギュレーションがそれこそ証券会社とかに対してつくられたわけですが、アドバイスをする際にこういう利益相反を開示しなさいということがかなり具体的に示されていると。
 
 なので、恐らく機構でひとつやれるというか、やるといいんじゃないかと思うことは、金融機関が金融教育をするときに、こういうことについて利益相反の開示をしなさいというようなガイドラインをしっかりお示しいただく。例えば金融機関が例えば大きな会社さんの新入社員に向けて金融教育をするというときに、前半はとにかく一般的な話だというときには、一般的な話の場合の利益相反関係は、ビジネスにつなげたいよねという程度のもので、そのときにはそのぐらいの利益相反の開示でいいと思うんですが、その後、個々人の社員、希望する方と個別に面談しますよ、個別にいろいろな銘柄を推奨しますよとなると、より具体的な利益相反の開示が必要になると思うので、その段階ではこういうことは開示しましょうとか、そういったことを具体的にガイドラインとかで示していただいて、しかもせっかく作っていただくこの標準資料でしょうか、標準資料を作られるのは大変すばらしいと思いますので、むしろぜひそれを金融機関にも活用していただいて、教育を受けたという国民をぜひ増やしていただきたいなと思っています。以上が1点目です。
 
 2点目が、御議論いただきたい事項の中では、32ページの金融リテラシーマップとかの中のテーマ、ほかに盛り込むべき内容あるかという話なんですけれども、ここにぜひ情報の取捨選択をするという意味でのリテラシーを追加していただければいいんじゃないかなと思います。以前タスクフォースでも申し上げたことがあったかとは思うんですけれども、どういうアドバイザー、どういう人に聞けばどういうアドバイスがもらえる、どういうアドバイザーに聞く場合には、こういうメリットはあるけれども、こういうデメリットがあるということを分かるようにしていただく。
 
 例えば認定アドバイザーであれば、利益相反はないけれども、必ずしも提供されるアドバイスの質、専門性、内容は均質では必ずしもないかもしれない。それに対して銀行とか証券会社であれば、多少の利益相反はあり得る。ただ、専門的かつ均一的なアドバイスが受けられる可能性がある。さらに言うと、最近特に気になっているのは、SNSでアドバイスみたいなことをしてくる広告が物すごくたくさんあって、毎日インスタを見ていると、もうインスタで大量の投資の勧誘が流れてきて、これは怪しいのか怪しくないのか私でもよく判別がつかないというようなものも結構あったりします。恐らくそういった方たちは、フォロワー数狙いでかなり過激なこととか断定的なことを言ったりしている。なので、そういうSNSの情報というのは、有益なこともあるけれども、フォロワー狙い、フォロワー数稼ぎで結構断定的なこと言っているかもしれないとか、そういった辺りの情報の選択の仕方もぜひ加えていただきたいと思います。
 
 あともう1点、テーマに加えていただきたい中身、リテラシーマップに加えていただきたい中身として、そもそも投資とは何かという視点が、恐らく皆様にとってはあまりにも当たり前過ぎてどこにも入っていなくて、例えば株式会社の株を買うということが宝くじを買うこととどう違うのかという説明は恐らく今どこにも入っていないんですが、分散投資とは何かとかというすごいハイレベルな話は入ってきます。自分が会社法の専門家だから思うのかもしれないですが、特に小中学生にとっては、高校生もかもしれないですけれども、株を買うということは決して宝くじを買うという話ではないんだと。お金を出資して、そのお金を使ってビジネスが回って、利益が上がれば返ってくるというような形で、ちゃんと裏づけのある動きなんだということをこのマップのどこかに入れていただければいいなと思いました。
 
 すみません、長くなって恐縮ですが、最後にもう1点だけです。閣議決定案の9ページです。ここの中で、276辺りから279までの書きぶりにやや不安があります。というのは、現状の書き方ですと、分散投資とかの知識を習得したことのみをもって投資で損する可能性を完全に排除できるわけではなく、投資から得られる収益はいろいろなものに左右されるものであることに留意が必要であると書かれていて、これだけ読むと何となく、デフォルトはもうかるんですよ、デフォルトはあんまり損はしないんですよと言っているようにちょっと読めてしまうところがあります。
 
 完全に排除できるわけではないのは当然ですし、「完全に排除できるわけではない」というと、ほぼ排除できるみたいなイメージがやっぱりついてくるので、「完全に排除できるわけではなく」の「完全」は要らないんじゃないかなと思います。「完全」を削除いただけないかというのと、「投資から得られる収益は」と書いてあるんですけれども、投資の場合、利益が上がる可能性と同じようにやはり損失が生じる可能性もあるので、投資から生じる利益や損失はいろいろな要因に左右されるというぐらいにしていただいたほうが、何だかこれだと、政府として、投資は基本もうかるものなんだよと言ってしまってはないかという懸念がちょっとありました。最近の動向だとそうかもしれないんですけれども、この後またいつ状況が変わるかもしれませんので、御留意いただければと思います。
 
 すみません、大変長くなって恐縮です。よろしくお願いいたします。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、坂委員、野村委員、その後、野尻委員、沼田委員の順でお願いします。坂先生、どうぞ。
 
【坂委員】  
 ありがとうございます。全体として、中間報告を踏まえた、取組みの具体化を図っていただいているものと認識をしております。先ほど来出ております金融機関の取組について、ちょっと一言忘れないうちになんですが、当面、金融経済教育推進機構の設立をして、この取組をしていくということですので、できればここに金融機関の皆様方も力を集中するような形で進めていただければと考えております。
 
 このことを申しあげた上で、主として資産形成支援において実現すべき姿と認定アドバイザーの資格要件について発言させていただければと思います。
 
 まず、実現すべき姿について、前提として、顧客本位の業務運営、顧客の最善の利益の確保とその絶え間ない普及・高度化の努力が重要であるということは指摘をしておきたいと思います。その上で、これは金融経済教育に関することでもありますけれども、多くの国民が自らの金融行動について、社会経済の中での位置や影響、自らのライフサイクルの中における位置や将来への影響を認識あるいはイメージできる姿が望まれるように思われます。
 
 好むと好まざるとにかかわらず、預金、保険や投資取引等を通じた個人の金融行動は何らかの形で社会に影響を与えますし、自身の現在及び将来の生活にも大きく影響を与えます。社会経済の中での位置や影響という点では、例えば保険は資金をプールし合ってリスクに備える面があり、投資取引はビジネスへ1票を投じるなどの意義を有し得ます。投資詐欺は、被害とともに反社会的な勢力の成長を促してしまいます。248行目以下のところで、健全で質の高い金融商品や家計金融資産の有効活用により、公正で持続的な社会の実現に貢献することができるとありますけれども、こういった認識が広く広がっていくことが望まれると考えます。
 
 金融行動の社会経済の中での位置や影響の理解を深めることは、個人の選択を支援するとともに、詐欺被害や投資被害の防止の観点からも重要な意味を持ち得ると思います。個人の現在及び将来への影響という点では、ライフサイクルや広い意味でのポートフォリオの考え方が広がることが望まれます。若年層の資産形成や高齢層の金融行動において、個々人が望む姿を実現するための認識や知恵が社会的に広まっていくことを期待したいと思います。
 
 総じて「知は力」を金融行動において高めていくことが望まれると思います。資産形成がいかなる形で実現されるかは社会経済の状況に左右され、20年30年のうちには予期せぬ変化や事象も起こり得ます。かかる変化に対応するためにも、金融行動の社会経済の中における位置、ライフサイクルの中における位置を知ることは重要です。かかる認識が社会的に深まることは、企業や社会の対応能力を高め得るとも考えます。
 
 次に、事務局資料の23ページの認定アドバイザーの資格要件についてですけれども、資格要件は制度が信頼を得て広がるか否かの根幹に関わると考えます。4点申し上げます。
 
 1点目ですが、金融機関等の従業員等について、情報開示により許容してはどうかという御意見がございますが、開示によるガバナンスの実効性や、利用者に開示情報の確認という負担を負わせることになること、顧客の立場に立った中立性という観点から、現時点において金融機関等の従業員は認定対象として認めないこととすべきと考えます。
 
 2点目ですけれども、顧客に対するアドバイスの信頼性・公正性に影響を及ぼし得る報酬を得ていないという要件については、中間報告の趣旨からも厳格に運用されるべきと考えます。この点に関し、金融機関から販売手数料、信託報酬等の報酬を受けることは認められないと考えますし、単発的な講演・原稿による報酬でも高額なものは許容されないと考えるべきと思います。
 
 3点目ですが、認定アドバイザーには、個人の家計管理、生活設計、資産形成等について、最低限のベースとなる知識は不可欠ですので、適切な形での研修等の制度が必要と考えます。
 
 4点目ですが、継続的にアドバイザーの質を維持するため、資格要件には期間を設け、更新時に研修を行う等の対応も考えられるところか思います。
 
 最後に一言、事務局資料の25ページ、テーマ別の詳細コンテンツについてですけれども、金融と財政が社会経済を支える車の両輪であって、個人の生活においても重要な要素であるということに鑑みますと、税金や租税制度についても加えたほうがよいと考えます。
 
 以上です。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、野村委員、どうぞお願いします。
 
【野村委員】  
 野村資本市場研究所の野村でございます。資料の取りまとめ並びに御説明ありがとうございます。コメントにつきましては、7ページ、31ページ、32ページを一体で行いたいと思います。
 
 まず、7ページの1点目、支援の意義というところでございます。資産形成の最も重要な目的である個人のファイナンシャル・ウェルビーイングの向上、それから、そのためのインベストメント・チェーンの機能発揮といった点に言及していただいており、それらの点はよいかなと思いました。
 
 また、7ページ目の2点目、基本的な方針の効果評価、それから、32ページのほうにある機構のKPI、これらにつきまして、施策の効果の評価という観点から、数値目標を設定するかどうかという論点があると思っております。26ページで言うところのアウトカム、やはりここが一番大事だろうと思います。NISAの口座と買付額の倍増という目標を記載されておりまして、また、金融経済教育を受けたという人のパーセンテージ、これも一つの目安であろうと思います。記載されている20%を超えて、最終的には全員を目指したいといった記述をすることも考えられると思います。また、証券投資を行っているかどうか、生活設計やファイナンシャルプランニングの有無、家計の運営に関する自己評価といった点も候補になると思います。金融リテラシーのテストのスコアみたいなものも目安にはなるだろうと思いました。
 
 7ページの4点目のところにある基本的な方針に盛り込む事項と中長期的な方針、そして、32ページの3点目のところ、機構の活動の工夫といった点でございます。この基本的な方針の文案を見せていただいて、これは資産所得倍増プランと資産運用立国実現プランの関連箇所を読み込んでおられるのかな、それはそうなのかもしれないなと思ったのですが、やはり重要なのは何を基本方針として掲げるのかということかと思います。先ほど申した支援の意義、これが目的となると思いますし、定性・定量の目標といったもの、それから、自助努力と公助の役割分担、行政、公共団体と民間の役割分担、こういったことに関する基本理念や方針、こういったものが盛り込まれるとよいのではないかと思われます。
 
 そして、その際に優先順位あるいは優先分野の提示というのが有用ではないかと思います。すなわち、民間で自然体で行われるような取組ではなかなかできない分野、民間では自走できないような分野、ここで幅広い連携に取り組むことというようなイメージです。そうなってきますと、いわゆる大都市圏というところよりも地方ですし、職域においては規模の小さな職域、中小企業等が優先分野としてイメージされます。これらを重視するということではないかと思います。
 
 そして、7ページの3点目にある関係者の効果的な連携方法、そして、31ページにある機構の活動における連携です。今申したような地方や中小企業への提供を重視するという場合、機構、民間を含めた関係者の連携の仕組みづくりという点に今後フォーカスしていくのが重要であろうと思います。言ってしまえば、熱意のある主体が存在する地域や分野だけが盛り上がるという事態は避けねばならないと思います。また、民間にどうつないでいくかというのも、重要かもしれません。一般的な金融経済教育の次に、個別具体的な投資アドバイス的なものを求められる可能性というのは、それなりにあると思います。確定拠出年金の投資教育の現場などでもそういったことが起きていると聞いておりますので、そういったときにどうつないでいくのかということも、大事なポイントだと思います。
 
 そして、何人かの方がコメントされている認定アドバイザーでございますけれども、中立的なアドバイザーについてはいろいろな御意見があると認識しつつ、私自身は、所属組織による区分というよりは、業務内容等に鑑みた利益相反管理の可否で区分するのがよいのではないかと思います。こう言っては何ですけれども、性悪説に立ってしまえば、金融商品を販売しない、あるいは報酬を顧客のみから受け取るということだけで真に顧客の立場に立つことが担保されるのかという見方もできてしまうわけでして、そうなってくると程度の問題かもしれないということにもなり得ます。また、多様な相談対応のアドバイザーには幅広いスキルや知識が確かに必要だと思います。そうしますと、ハイスペックな人材というのは、人数は少なく、報酬は総じて高い可能性もあるということでいくと、これはより多くの方々を支援したいという目標と矛盾しかねないということになります。ここは裾野拡大という観点から、利益相反管理を前提に、認定の対象は幅広めに取ってはどうかと思う次第です。
 
 最後に、32ページの1点目のところの標準講義資料、それから、金融リテラシーマップの関連ですが、25ページの左側の対象層別のところで、学齢期以外のところ、社会人等ですが、今後一層ライフコースの多様化が進むと考えられる中で、いわゆるモデルケース、あるいはペルソナみたいなものを設定することが今よりも困難になっていく可能性には、留意する必要があるかもしれないと思います。また、高齢者につきましては、少なくとも前期・後期ぐらいに分けるようなことは必要かもしれません。御本人の状況が大きく異なっている可能性もございます。支援の提供方法あるいは内容について、さらなる工夫が必要な分野かなと思います。
 
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、順番としては、次に野尻委員、沼田委員、そしてその後、岩城委員、松尾委員、竹川委員の順でお願いしたいと思います。野尻委員、どうぞ。
 
【野尻委員】  
 ありがとうございます。合同会社フィンウェル研究所の野尻でございます。いただいた課題といいますか、たくさんありましたのですけれども、これに沿って簡単に、でも、7ポイントぐらいになりますので、短くお話をしたいと思います。
 
 まず1点目、佐々木委員が御指摘になられたようなマクロ的な視点というのを7ページの1番目の四角のところにもう少し考えてもいいなと考えました。具体的には、私がカバーしている部分が多いんですが、超高齢社会の進展という目線がここに入ってもよかったのかな、入れてもいいのかなと思いました。高齢化率の上昇というのは、何もしなくても資産が高齢者に傾斜することになります。その資産をどう活用するかというのが、総人口が減っていく日本において成長を支える大切な要素になると考えています。基本方針の中の371行目に「資産の形成と活用を支援する」という表現で、高齢層の出来上がった資産の取崩しみたいなものをカバーしていただいていますが、こういうものも目線を向けてもいいのではないかと思います。
 
 それに関連する点で、7ページの4つ目の四角でありますが、国民の安定的な資産形成が必要とされている課題の一つとして、26から29行目の辺りに、家計金融資産のバランスのよい成長が不足しているというところが課題として挙げられていると思います。その点で見ると、3分の2を保有する高齢者が資産を一括で現金化するというような傾向がありますので、こういった点も本当は視点として入れるべきではないかと考えています。
 
 同様に32ページの1番目の四角ですが、金融経済教育推進機構における教育及び広報に関して、退職前後層みたいなところがカバーされてもいいのかなと。そこには、資産の取崩しという理解が不可欠になると考えております。具体的には25ページのコンテンツ案、皆様方からいろいろ御意見があったかと思うんですが、ここに資産の取崩しというテーマも加えていただけるのがいいかなと思っています。ただ、これはこの閣議決定をする報告書のテーマが国民の安定的な資産形成ということで、多分に現役層をテーマにしているということがありますので、この辺の判断は座長、事務局に私はお任せしたいと思います。ただ、7ページの1番目の四角でほかにあるのかと聞かれると、この点はカバーすべきではないかと思います。
 
 それ以外のポイントですが、7ページの2番目の四角です。ほかに何か調査するテーマみたいなものはないかということだったんですが、コホート調査とかいうんでしょうか、対象者を継続的に追いかけるようなパネル調査、こういったものがあると、同じ対象者が時間の経過に伴ってどんなふうに変わっていくのかということがフォローできると思います。なかなか日本のこういう分野ではされているところが少ないと思っているので、ぜひ機構でカバーしていただけるとうれしいなと思っています。
 
 それから、7ページ目の3番目の四角になります。野村委員もちょっと言及されていましたが、総じて遅れがちになると懸念しているのが中小企業の従業員向けの支援ということだと思います。正直言うと、支援を担当する主体ってどこなんだろうなと自分でも頭を抱えてしまっていますので、ぜひここは御検討いただけるといいなと思っています。
 
 それから、31ページの3番目の四角になります。皆様が御検討されているように認定アドバイザーについてですが、私は顧客の立場に立つという場合は2つのポイントがあると思っています。一つは、自社商品というか自社グループ商品への過度の誘導と、それから、手数料の高い商品への過度な誘導、この2つをどう止めるかということが重要だと思っています。その一方で、機構の相談員の中では金融商品・サービスを推奨しないアドバイスをされるということになっていますので、この範囲であれば、民間の金融機関に認めても問題はないと思っています。ただ、商品を推奨しないのに民間企業がやるのかと言われると、ここはどうかなという気もしますけれども。認めるかどうかで言えば、こういう手があると思っています。また、将来的には手数料バイアスを排除するということができるようになれば、提供する金融商品には制限がありますよということを明示した上で、「限定的な商品・サービスを提供するアドバイザー」というカテゴリーを認めるのもいいのではないかと思っています。
 
 最後、KPIのところです。32ページの2番目の四角ですが、教育を受けた人20%をターゲットにするというアウトカムをターゲットにされたことは大変有意義な点だと思っています。できればもう一つですが、中に掲載されていたうちの、生活設計を立てた人の比率、これがもう一つ大事なアウトカムになるのではないかと思っています。教育を受けた人のうちのどれぐらいが生活設計を立てたのかというようなことを想定するということが必要になるかもしれませんが、もう一つ加えるとすれば、これではないかと思います。
 
 以上7つでした。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、お隣の沼田委員、どうぞお願いいたします。
 
【沼田委員】  
 明治大学の沼田と申します。このような機会をいただき、ありがとうございます。私のほうからは、目標20%という言葉もありましたので、米国の資産形成の研究をしてきたという立場から何点かお話しさせていただければと思います。
 
 まず、アメリカの施策が目指しているのは、個人がインフォームドディシジョンをできるようになること、つまり、個人に行動を起こさせることです。その際、アメリカで重要なのは、WHYとHOWとゴール、この3つを個人に腹落ちさせることだと言われています。
 
 そのような目で見ますと、今回のこの基本方針ですけれども、まずWHYとHOW、非常に丁寧に説明していただいているなと感じました。そもそも安定的な資産形成をするのは、我々が幸福、厚生、ファイナンシャル・ウェルビーイングに行きつきたいから、安定した資産形成をするためには投資をする必要がある、投資をするためにはNISA、iDeCo、金融教育が必要だと、WHYとHOWが一体化して説明がされているなと感じました。
 
 ただ、これまでの日本人がなかなか投資をやりたがらなかったということを踏まえますと、幾つかもうちょっと丁寧に説明されてもいいのではないかと感じるところもあります。例えば、安定的資産形成をするために投資、というのはもう少しなぜかを説明をしていただければなと思いました。安定のために投資ということが矛盾しないと分かる、説明資料の28ページ目のレベルまで、リテラシーを引き上げるにはまだ時間がかかるからです。
 
 また、HOWは、NISA、iDeCo、金融教育といろいろと道筋が明確になっていますが、次の一歩、つまり投資とはポートフォリオ型運用だというところも、基本方針の9ページ目にはポートフォリオという言葉がでてきますが、個人が頭の中で結びつけられるようになるには、説明が必要な気がいたします。
 それからゴールは、これも資産倍増計画から安定的資産形成、ファイナンシャル・ウェルビーイングへと、だんだん個人が自分ごととして捉えられるゴールになってきたと感じました。特にファイナンシャル・ウェルビーイングは、将来も今も自分の金融状況をコントロールできる状態、安心できる状態と書いてあります。自分だったら何が安心できるのか、自分だったらどうなればコントロールできると感じられるのか、というところを、個人が機構の方々と一緒に考えていけるようになればいいと感じました。
 
 金融教育は、インフォームドディシジョンのインフォームに当たるかと思いますが、米国の調査によれば、金融情報を提供しただけでは行動に結びつきにくいと言われております。これに関しては、信頼度の高い情報をどうやって探すかという、先ほどの松元委員がおっしゃっていたようなこと、健全な意思決定を行うためには情報をどうやって処理するのか、意思決定をどうやって実行に移すのか、実行に移した後のモニタリング、軌道修正をどうするのかということ、金融のスキルとかアビリティーとか言われていることですが、これらも含めたのが金融リテラシーだと言われております。ですので、ぜひとも情報提供だけではなくて、行動変容を促すようなリテラシーの向上を機構にはやっていただきたいと思っております。
 
 そうしますと、先ほどからご指摘がありましたけれども、機構のアドバイザーだけで十分かというと、なかなか手が回らないのではないかと思います。誰がどこまでできるのか、という整理は必要かと思いますけれども、一昨年神田先生がおっしゃられたように、健康診断のように誰もがどこかでいつでも定期的に診断を受けられるという仕組みが非常に重要かと思います。最初の健康診断は自治体で受けたとしても、何か異常があったら最終的には民間の病院に入院するということを、私どももやってます。金融もこのような仕組みになればいいなと考えています。
 
 最後に、職域は野村委員がおっしゃっていましたけれども、DCの投資教育は言わずもがなです。今後機構にぜひやっていただきたいのは、小さな職場でも全国津々浦々、金融リテラシーを上げる活動です。冒頭でWHYとHOW、これを広く知ってもらうことが重要だと申し上げました。従業員たちの福利厚生をあずかる小規模な事業の経営者の方々にも、この2つを知っていただくというのが非常に重要なのではないかと思います。
 
 そのように考えましたときに、どうしても資産運用とか証券業というのは、歴史的経緯もありまして首都圏型ビジネスになりがちです。全国津々浦々に金融情報を行き渡らせるという意味では、認定アドバイザー制度のリストにありますような税理士、社会保険労務士様の出番ではないかと思います。民間にもつなげるという意味では、信金・信組様、保険代理店の方々の支援も受けられるといいのではないかと感じています。
 
 施策のアウトカムというお話もありましたが、これは行動変容だと思っております。インフォームドディシジョンができるように、国と民間、それから、首都圏と地域で連携が取れ、健康診断のように誰も取りこぼさない形が出来ればと願っております。ありがとうございました。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、岩城委員、どうぞお願いいたします。
 
【岩城委員】  
 ありがとうございます。岩城でございます。私は2点述べさせていただきます。
 
 1つ目は、企業による資産形成を支援する取組についてです。実務に携わっておりますので事例として聞いていただきたいんですが、私は株式会社キングジムにおいて社外取締役をしておりまして、昨年7月から3回にわたって、当社の役員・従業員のためのオリジナルセミナーを実施いたしました。当社もDC導入企業として年1度の継続研修は実施していますけれども、このたびは、ライフプラン・キャリアプランに沿ったマネープランの考え方、公的年金制度、当社の企業年金制度、持株会、NISA、iDeCo、そして、なぜ資産運用が必要か、投資と投機の違い、長期投資の基本知識、商品選択をするための必要な知識、リタイアメントプランなど全てを網羅したセミナーを行いましたところ、20代から40代は、元本確保型商品から国内外の株式の投資信託にシフトをして長期的な運用リターンの向上に寄与していくことが期待できるようになりました。さらに驚いたことに、従業員から、より効率的な運用をするため運用商品の見直しをしたいという要望も上がりました。当社のホームページにも、従業員の老後資金を含めて資産運用サポートを今後も取り組んでいく旨を公表しております。
 
 このような職域での役員、従業員のためのオリジナルセミナーというのは、機構の認定アドバイザーが企業から丁寧にヒアリングを行うことでプログラムを策定することが可能になり、より効果的な投資教育が実施できると思います。また、企業は実施状況を積極的に公開していくことが必要だと思います。KPIとして、年代別に元本確保型の割合の変化率も一つだと思います。リタイアメント前には元本確保型にシフトするケースも多いので、年代別での状況になろうかと思います。また、個別相談を、職域での研修後に受ける機会があるとより効果的だと思います。
 
 2点目は、認定アドバイザーについてです。今後、質の高いアドバイザーを増やし、誰でも良質なアドバイスが受けられる環境整備の必要性が指摘されています。その対象は一般の方から富裕層まで含まれると思いますが、例えば代々資産継承をしていくようなケースでは、個人のアドバイザーが対応するのには物理的にも難しい側面があります。そこで、先々は金融機関のグループ会社であっても、販売を一切せずに資産運用アドバイスに特化していることを条件に、かつ会社そのものではなく、アドバイザー個人、イコールそこの会社の従業員ですけれども、それを認定していく、そういうことも検討してはどうかと思います。その場合、「自己及び自己の所属する、または関係する組織・企業の利益よりも相談者の利益を優先したアドバイスを行います」とフィデューシャリー・デューティー宣言をしていただき、金融庁に個別に提出してもらって名前と所属を公表するなどの方法も考えられると思います。
 
 ただ、そうした従業員の存在を認める金融機関、あるいは手を挙げる従業員は少ないかもしれません。しかし、長い目で見れば、今後国民の金融リテラシーが向上して、優良アドバイスの価値が浸透していくと、顧客に信頼される金融機関こそ生き残るはずだと思います。逆にそうでない金融機関は生き残れなくなる。本気で顧客ファーストでやっていこうという金融機関が増えていくとすれば、業界そのものが変わっていくのではないかと思います。そういう期待を持っています。これについては、引き続きの議論の機会をおつくりいただけるようにお願い申し上げます。
 
 以上です。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、松尾委員、どうぞ。
 
【松尾委員】  
 ありがとうございます。私からは2点申し上げます。
 
 一つは金融経済教育についてですが、もう既に出ておりますとおり、これについては地方、それから、中小の企業においても等しく金融教育が施されるということが重要と思います。そういう意味では、やはり職域での金融経済教育、とりわけ、継続的な教育の機会が提供されるということが非常に重要であると感じております。そのためには、企業の経営者にどのように金融経済教育の重要性をアピールしていくかということが重要になるかと思います。その点で、事務局説明資料の12ページ以下にあります、学生のリクルートに着目するというのは非常に面白く、また有効な着眼点なのかなと感じました。
 
 ただ、こちらを見ますと、よりよい金融経済教育の機会を提供しているところが選ばれるというようなメッセージになっているかと思うんですが、日本の現状を見ますと、まさにこの金融経済教育が、健康診断に例えられておりましたとおり、必要最低限のところがまだ十分にできていないということかと思いますので、必要最低限どんな企業でもこれはしてくださいというようなところを安価で提供するのが機構の役割かなと思います。ぜひそういったパッケージをお示しいただいて、その重要性を説いていただきたい。そして、リクルートに結びつけて言えば、こういうことすらもできていないところは就職先としては選ばれないというような、そういう本当に基本的な教育のパッケージをぜひ安価で提供していただきたいと感じております。
 
 2点目は、資料の23ページでしょうか、先ほど来出ているところですが、認定アドバイザーの資格要件についてです。ここで金融機関に所属している者は除かれるということですが、これについては、ここで対応しようとしているのは利益相反の問題であるということは既に指摘されたとおりでして、行く行くは利益相反の内容とそれに対してどのような対応をしているかということを開示させて規律するということが望ましいのだとは思います。ただ、現状はまさに利益相反に関する情報を提供されても適切な選択ができない人にそれを選択できるような教育をしようということかと思いますので、そういう意味ではまだ利益相反の開示で対応するという、そちらに移行するということは難しくて、資格要件のほうで絞らざるを得ないのかなと思います。とりわけ教育機関への講師派遣ということを考えますと、やはり業者に所属している方というのはやや難しいのかなと、その点でもそのように感じます。
 
 また、認定アドバイザー制度が出来た以降も、当然プロといいますか、金融商品取引業者等による投資アドバイスの重要性が低下するわけではないということは有吉委員のおっしゃったとおりかと思いますけれども、であればこそ、投資助言業者とか、あるいは金融商品の販売業者が金融商品の販売に伴って提供する投資アドバイス、これを十分に規律するルールの整備が重要であるように思います。この点がまだ不十分なのではないかと感じております。今回の認定アドバイザー制度を設計するに当たって問題になったところを踏まえて、ぜひ投資に結びつく助言、広い意味での投資助言を連続的に捉えるルールの整備ということを併せて進めていただきたいと感じます。もし可能であれば、それをこの基本的な方針でも一言触れていただけるとありがたいと思います。
 
 以上です。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、竹川委員、どうぞ。
 
【竹川委員】  
 竹川です。資料をまとめていただきまして、ありがとうございました。
 
 何点かございます。まず1つ目は事務局資料の5ページ目、基本方針(案)の概要についてです。その中で、資産所得倍増プランの中でも挙げられていたNISAの買付額と口座数の目標数値が書いてあります。ただ22年末のデータを見ますと、NISA口座を開設したけれども稼働していない口座が一般口座で半分、つみたてNISAでも4分の1ありました。また買付額は積み上がっていますが、残高自体が増えていないという課題もあります。口座数と買付額だけでなく、残高についても定点観測をしていただきたいです。
 
 2つ目は金融経済教育についてです。何人かの委員の方からもお話が出ましたけれども、誰一人取り残さないという観点で考えると、民間が取り組めることと公的な機構が取り組むことは明確に区別をしたほうがよいと思います。そう考えると、(機構が取り組むべきは)大都市より地方、(大企業よりも)企業年金がない中小・ベンチャー企業の社員の方、あるいは公的年金が薄い自営業やフリーランスの方、こういったところに届くことが重要ではないでしょうか。
 
 内容は投資に偏るのではなく、社会保険や、今項目に入っていませんが、税金なども含めた内容にすることが重要だと思います。そういう意味では、基本方針の13ページに「社会保障教育との連携」と記載されたのはよいことだと思います。
 
 一方、事務局資料の25ページに、対象層やテーマ別詳細コンテンツ案が書いてありますが、非常に幅広い。当初はある程度絞ることも必要ではないでしょうか。例えば、終活や相続、エンディングノートなどは重要だとは思いますが、まずは資産形成の始め方や続け方、社会保険や税金といったことを訴求していくことが第一歩だと考えます。同様に、ベテラン層も含まれていますが、投資経験者や投資が好きな方に対しては民間金融機関ですでに対応しており、公的な機構が対象としなくてもよいのではないでしょうか。
 
 そして、投資(教育)の部分についてです。現状、どちらかというと手法、HOWに関するものが多いような気がいたします。長期・積立・分散投資の意義はうたわれていますが、その前段階の本質的な話、理解が重要だと思っています。例えば、資本主義とは何か、会社は何のためにあるのか、株式を持つ意味、などが分からないまま腹落ちせずに投資を始めても、価値ではなくて価格に振り回されて、結局、長期投資ができないのではないか、根づかないのではないかと懸念しています。HOWだけではなく、より本質的な投資の理解が進むようなコンテンツを入れていただきたいです。
 
 次に、(機構の)個別相談事業についてです。21ページ、22ページに認定アドバイザーについての記述がありますが、今ひとつ理解できない部分があります。認定アドバイザー、情報提供を行う講師の立場であれば「中立」というのはわかりますが、顧客の側に立ったアドバイスというのは、中立・一般的ではなく、個々人(顧客)によって異なるはずです。21ページを拝見すると、無料相談、個別相談でできる範囲として、「一般的な内容に関する相談・照会」と書いてありますが、これは個々人の個別事情を勘案して個別に相談に乗るというよりは、一般的な情報提供とかガイダンスにとどめるという意味に取ってよいのでしょうか。これは質問としてお聞きしたいところです。
 
 また、24ページに資格等の例が並んでいます。いろいろな資格保有者が認定アドバイザーになったときに、認定アドバイザーとしてできる範囲を明確に定めるのか、それとも、(同じ認定アドバイザーでも)資格者ごとに異なるのかがよく分かりません。できる範囲を明確にしておかないと、後々トラブルになる恐れがあるのではないか、と考えます。
 
 無料(の個別相談で)でできる範囲は一般的な情報提供にとどめ、個別事情を勘案して相談を行う部分については、有料相談に向かうような仕組み・工夫が必要ではないでしょうか。持続可能であることが大事で、仕事として食べていけるアドバイザーが増えていかないと持続性が担保できません。そこをどうお考えになっているのかもお伺いしたいと思います。
 
 そして、32ページの御検討いただきたい事項についてです。顧客の立場に立ったアドバイザーですが、今何が一番問題かというと、(相談者側からみて)FP業務だけを行っている人、投資助言・代理業登録をしている人、証券仲介をしている人、保険代理店を兼ねている人などの区別がつかないことです。例えば、ホームページなり名刺なりに一定のルールを設けて記載をしていただき、この人はどういう人なのか、どこまで業務範囲として対応できるのかがまず分かるということ、そして報酬体系を含めた開示についてもルールを設け、その上で個人が選択できることが大事だと考えます。
 
 最後に、機構について2点要望です。トラブルが何か発生したときの窓口を設置していただき、(利用者に)分かるようにしていただきたいというのが一つ。もう一つは、税金のほか、各業界団体がお金を出すわけなので、影響力はそれなりにあると思います。機構のガバナンスをどのように効かせるのか、(発足後の)情報開示については明示していただきたいと思います。
 
 以上です。すみません、長くなりました。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。御質問があったようなので、もしここでよろしければ御発言をお願いします。
 
【桑田金融経済教育推進機構設立準備室長】  
 ありがとうございます。認定アドバイザーというのは、認定アドバイザーになることによって何か法律上定められている、あるいはいない業務が新たに出来るという話では決してなくて、アドバイザーというのはこれまでの議論にもありましたとおり、非常に多義的だと思っています。FPあるいは個別銘柄ができる投資助言業者、金融トラブルのことを話している消費生活相談員の方とか、まさにそれぞれ自分の資格に基づいて自分の分野で業務をやっておられる方ということであります。
 
 そうした様々なアドバイザーがいらっしゃる中で、金融機関の特定の商品とか業種とかに偏っていない、顧客の立場に立って考える方というのはどういう方か分からないという、そういった議論を踏まえて今回の認定アドバイザーの枠組みになったわけです。したがって、認定アドバイザーというのは、その方がどのような立場にいるのか、金融機関を兼業している、していないとか、形式主義過ぎではないのかという議論もありましたけれども、そういった見える化を実現する枠組みであって、認定アドバイザーになったら、新たに追加的な業務ができるというわけではないということです。
 
 機構の中の無料個別相談事業についてもう少しお話ししたいと思います。現状想定しておりますのは、一般的な相談とはいえ、事前に予約していただいて、それ以前に家族の状況とか資産の状況とかその方が置かれている状況、そういうものは事前に教えていただいて、予約した当日の時間に1時間とか限られた時間ですので、全ての相談に応じられるわけでは決してないとは思いますけれども、その人のライフプランの話とかそういったことから、個人の状況に応じた相談に対応するというのが一つの目的です。ここで言う一般的な相談というのは、そうはいっても、その先に何を買えばいいんですかとか、個別商品の話とかそういったことはもちろんする予定はありませんで、そこは機構の範疇外であるということを考えています。
 
【竹川委員】  
 ありがとうございます。機構ができるときに、無料の個別相談事業の範囲に関しては明確に示される、ということでよろしいでしょうか。
 
【桑田金融経済教育推進機構設立準備室長】  
 はい、そうです。
 
【竹川委員】  
 ありがとうございます。
 
【神田市場制度WG座長】  
 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。 それでは、発言を御希望いただいている順番でいいますと、次はオンラインで武田委員、小枝委員、その後、会場に戻りまして、亀坂委員の順になると思いますので、その順でお願いします。オンラインで御参加の武田委員、どうぞよろしくお願いします。
 
【武田委員】  
 ありがとうございます。2点意見を申し上げたいと思います。
 
 1点目は、企業の付加価値、生産性向上の重要性に関してです。安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)については、全体として賛成の立場でございます。一方で、資産形成支援が進むことは望ましいですが、根本的には日本企業に対する成長期待が市場で高まらなければ、家計の資産運用比率は上昇しても、海外資産への投資だけが増えていく可能性もございます。日本経済の持続的な成長と国民の安定的な資産形成を実現するためには、日本企業自身が価値創造力を高めて付加価値・生産性を上昇し、結果として投資家からの日本企業への成長期待が高まり企業価値が上昇していく、こうした流れが重要と考えます。
 
 閣議決定する資料の本文を拝見しますと、企業価値向上への取組について触れていただいていますが、基本方針の概要でもその点が伝わるとよろしいのではないかと思います。安定的な資産形成を進めるためには、今申し上げたような日本企業の付加価値・生産性の上昇に向けて、他省庁とも連携し、ここに記載されている取組を進めていくことが重要であるといったことも言及されてはどうかと感じた次第です。今申し上げたことについて、本文あるいは概要での記述の取扱いは、座長と事務局の御判断にお任せいたします。
 
 2点目は、機構に関してです。金融教育の推進の重要性は認識しておりまして、ぜひ推進いただきたいと思います。同時に、これまでも多様な組織・機関が様々な金融教育に関しての取組を行ってきた中で、新たに機構という箱をつくれば金融教育が進むのか、という点についてはやや疑問に感じます。こうした機構を設立する際には、既存の組織で何ができて何ができなかったのか、できなかった理由として何が足りていなかったのか、この点を明確にしていただき、それを改善する施策としてアウトプット、アウトカムを設定し、見える化を行っていただきたいと思います。
 
 また、こうした機構をつくりますと、新たに組織が出来、ポストも増えていきますが、既存組織とのスクラップ・アンド・ビルド、これを大前提にしていただいてうまく進めていただくこと、そしてガバナンスも、他の委員がおっしゃったとおり重要と思います。その点、ぜひ御検討いただければと思います。
 
 最後に、金融リテラシーに関する感想です。12ページに職域教育の重要性で、学生が何を重視しているかについてのアンケート結果がございました。私が驚きましたのは、この10年間、「安定している会社」の選択が上昇する一方で、「やりたい仕事ができる会社」や「働きがいのある会社」の選択が低下傾向にございます。世界経済が非常に不確実で安定志向が強まっているということは理解できますが、不確実だからこそ、会社が絶対安定という保証はないわけです。
 
 この点を考えますと、資産運用に関しても、世界情勢が不透明な中で資産価格が上がる局面もあれば、何かあれば下落する局面もあるわけですので、安定志向が強い世代に対して、そうした世界の情勢やリスクへの考え方といった情報も適切に訴求していく必要があるのではないかと思います。この点は感想で、直接本日の議論とは関係ございませんが、金融リテラシーという観点では、狭義の専門知識にとどまらず、少し広義で教育のあり方を考えていく必要はないのかという感想を抱きましたので、言及させていただきました。
 
 以上でございます。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、同じくオンラインで御参加いただいている小枝委員、どうぞお願いいたします。
 
【小枝委員】  
 ありがとうございます。オンラインから失礼いたします。2点コメントを申し上げたいと思います。
 
 まず、5ページ目で、やはり資産形成というのはもちろん、今までも従来型といえば、皆様、貯蓄をして銀行に預金を預けるだとか、保険に加入するだとか、あるいは住宅ローンを組んで不動産という資産を持つとか、そういったことはされてきたわけですね。ただ、従来型の資産形成では限界があるし、もう少し直接的に資産形成を行う。それには直接金融の知識というのは少しは必要でしょうし、あるいはリスクの分散、株や債券をポートフォリオで持つということのリスクの分散への理解というのは非常に重要なことだと思います。ですので、教育推進をされるときは、個人の目線で今までこういう選択肢があったんだけれども、新たに株や債券を持つことはどういった意味なのかという視点で、分野横断的といいますか、直接金融も間接金融も、そのオプションも包括的に、個人がどういった選択肢があるのかということを踏まえてやっていただきたいなと思いました。
 
 2点目は、やはり調査、統計を踏まえた戦略的なことということをおっしゃっていて、すごく大事なことだと思います。やはりコロナの後、教育ということを考えると、教育の形式というのは大きく変わってきていると思います。オンラインというツールをいかに使いこなすのか。一方的な講義であれば、例えばユーチューブに講義を乗せるとか、そうすることで様々な方が様々な時間に見ることができますし、あるいはオンラインのチャット、できればAIなどを使ったチャットを、デジタル化ということが議題になっている中での一環もあり、むしろ機構の方にも、既に専門性がある方にさらに世界の最先端の方法というかツールなどを学んでいただくみたいなそういうことがあっても、ただ単に対面の講義出張やイベントを行うというよりも、一部そういった本当に最先端のことは今何なのかということを踏まえて何かパッケージとして考えていただきたいなと思いました。
 
 以上です。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、会場に戻りまして、亀坂委員、どうぞお願いいたします。
 
【亀坂委員】  
 ありがとうございます。私のほうでは、頂いた資料になるべく従う形でコメントないしは感想を述べさせていただければと思います。
 
 まず、資料の3-2の基本的な方針(案)に関してなんですけれども、冒頭のⅠの1のところで「国民の安定的な資産形成は、国民一人ひとりの幸福や厚生を実現するために不可欠な要素」となっていて、「内閣府の調査においては、「家計と資産の満足度は国民の「生活満足度」を構成する一つの分野として認識されている」云々ですね。あと、「家計と資産の満足度」は、「生活満足度」との関係性が2番目に高くて、将来不安度との関係性については、全ての分野別満足度の中で最も強いことが示されている。この文章を、こういったことを記していただいたことは非常にうれしく思っています。
 
 というのは、その注に、内閣府の満足度・生活の質に関する調査報告書2023というのが載っているわけですけれども、これは研究会がありまして、内閣府からの委託調査がなされているわけです。研究会のメンバーは5人しかいないんですけれども、そのうちのメンバーの1人でございます。ウェルビーイングの研究を10年以上前からやっているんですが、なかなか重要性を認識していただけなかったところ、全然関係ないと思われていた金融審議会のこういった資料に掲載していただいたのが驚きであり、こちらのメンバーの1人としても大変うれしく思いました。
 
 金融庁でも調査を実施するということで、調査の方法に非常に関心があります。と申しますのは、内閣府の調査に関わって、人々の意識の変化を捉えるというのは非常に大変なことであり、実は物すごい予算が必要なんです。先ほど野尻委員からも御指摘があったんですが、人々の意識の変化を捉えるにはパネルデータを収集しなくてはいけなくて、全国規模のパネルデータを数千以上集めないと、日本の国民の意識の変化とかが捉えられないんです。なので、どこまでの調査を金融庁あるいは機構がされるのかなということに私は今最も関心があります。調査面ではですね。
 
 もう一つ関心があるのは、これまで金融広報中央委員会あるいは日証協さんが行ってきた調査にも、意見を聞いていただくという程度ではございますが、関わってまいりました。例えばですが、日証協さんは、調査員による訪問留置法に基づいて証券投資に関する全国調査を、私が生まれる大分前の1962年から実施されています。これの調査票の改訂にも私のような者でも意見聴取をしていただいて、直近の調査が、最近は3年毎で2021年の6、7月に実施されています。
 
 その調査結果を見ると、株式に関しては、今のところ購入するつもりがないが83%、投資信託85%、公社債に至っては94.3%なんですね。全国調査で国民の意識を捉えた調査でこのような状況で、金融リテラシーを高めるというのは本当に大変なことだと思うんです。全国調査を行ったところで、なかなか意識が変わるものではないんじゃないかと私はちょっと悲観的に見ております。
 
 同じ調査で、証券投資に関する知識の習得方法、希望する方法が、先ほど小枝委員が御指摘したばかりでありますが、1位がパソコンやタブレットを利用したインターネットからの情報、これが36.8%、2番目がスマートフォンを利用したインターネットからの情報でこれが33.3%、3番目になってやっと、中立的な機関が実施する無料のセミナーへの参加で31.6%なんです。国民の状況はまずはこうであるということを大前提にして、投資教育に前のめりであれば、国民は関心を持ってくださらないということを頭によく念頭に置いた上で、やはり金融リテラシー教育、消費者教育も含めた、あるいは保険の仕組みだの、損害保険加入の重要性だの、そういったところから教育しないと、あるいは情報提供しないと、そもそも国民が関心を持って捉えてくれないんじゃないかと私は思っております。
 
 それに関連することで、例えば既存の金融リテラシー調査、これが対象が18歳から79歳の3万人とかなんですけれども、3万人に聞くということは相当の予算がかかるということですね。だから、機構の予算でできるのかというのも気になるわけです。これは金融知識や判断力に関する調査など53問に回答しなければいけないんですけれども、70代、79歳までが対象なんですが、79歳とかで金融知識や判断力に関する調査に53問にネットで回答するって、これは大学の教員とか、元金融機関に勤務した方とか、よっぽど知識がある方に回答が偏っているはずなんです、全国調査というのをやってみれば。ここで、高齢者ほど正答率が高いという結果も示されているんですが、もともと自信がある人が回答している割合が高い可能性もあると思います。
 
 こういった調査を実施してどんな結果が得られるかは、設計が本当に難しいんです。なので、この機構をつくられるのはいいんですけれども、機構でどこまで本気で予算を幾ら使ってどういった形で実施されるのかということだけでも非常に慎重に、既存の、これまで実施している調査に質問を加えていただいて全国データを取ったほうが、よっぽど低予算で欲しい情報が得られて、過去の結果と比較しやすいと思うんです。ですので、調査の実施の仕方とかは本当によく検討していただきたいなと。統計を取ったことがある専門家、パネルデータとかの専門家も含めて検討していただきたいと思います。
 
 あと、今御紹介した証券投資に関する全国調査、日証協さんのアンケート結果からも分かるとおり、中立的なというか信頼できる情報が欲しいんですね。ネットでのユーチューブでの動画は無数にあるわけで、いくらでも見れるんですけれども、どれを信頼していいかが分からないんですね。ですから、機構で自ら自分たちで作るのが大変であれば、認証制度みたいなものをつくったり、ホームページでこれは信頼できる情報ですという形でお墨つきを機構とか金融庁が与えて、これは信頼できる情報という形で開示すれば、コストはそれほどかからなくて、要するに、国民が求めている、国民の3割が求めている知識を提供できると思うんです。ですから、予算の効率的な運用も併せて考えられて、どう情報提供したらいいのか、あるいは今ある、これまで積み上げてきた金融広報中央委員会とか日証協さんとかそれ以外の機関の方々の実績にお墨つきを与えつつ、できなかったところを補うような形で例えばネットの教材を提供するとか、進められたらよろしいんじゃないかなと思います。
 
 あと、文書の案のほうの8ページ、長期・積立・分散投資の意義です。長期・積立・分散投資の意義を理解していただくのは重要なんですが、本当に分かったと学生に思っていただいたような形で教育するには、例えばドルコスト平均法を実際の株価で学生にエクセルとかを使って計算させないと分かった気にならないんですね。だから、日経平均株価とかTOPIXとかを使って実際にドルコスト平均法で計算させたり、あるいは為替でもいいんですけれども、それで大学の授業に近いような説明とか演習をさせないと、こういうものはひょっとしたら浸透しないかもしれない。分かった気に受講する側がなってくれないかもしれないと思っております。
 
 次に13ページなんですけれども、この役割分担ですね。13ページの406行目とかですね。だから、これまでできてないことをフォローする、機構でフォローしていくような形でやっていくしかないのかなというのと、あと、次の段落の「地方公共団体や民間団体とも緊密に連携しつつ」というところなんですけれども、ここは例えばFPの講演会とかを公民館とか図書館とかでオンラインで情報発信して受けられるようにするとか、受けられる層を拡大するような形で、かつ地方公共団体とかごとに受講者数とかを開示していくという形でKPIとかを設定するということは考えられるように思います。
 
 例えばなんですが、10万人当たりの受講者数とかを都道府県別に開示するとか、あるいは市区町村別に高いところを取り上げるとか、あとは市区町村で無料の弁護士相談とかをやっていると思うんですけれども、そこにFPの相談とかも入れていただいて、それも、だから、無料相談を受けられた方の数をカウントするとかそういったことも考えられるんじゃないかと思いました。
 
 あと、長いんですけれども、パワーポイントの資料のほうで気になった点は、14ページのアンケート結果ですかね。資産形成・金融リテラシー研修について、あなたの志望度はどの程度変わりますかって、これは「高まる」の人数が半分以上で、「大いに高まる」も2割程度いるということなんですけれども、私も金融広報中央委員会の方々の講座を受けた、全く同じではないんですけれども、同様のアンケート調査を行ったことがあるんです。日銀の方とか金融庁の方々にいらしていただいて、授業を受けた後にこういった質問されると、みんな、高めにつけちゃうんですね。だから、恐らくこれはちょっと高めに出ているんじゃないかなというのが気になりました。
 
 あと、企業のDC加入者も大事なんでしょうが、国民全体に行くような、企業にお願いするベースではなくて、お願いベースではなくて、永沢委員とかも事前に、地方公共団体とか地域性が出ないようにということを書かれていますけれども、地公体ごとの10万人当たりの何とか、受講者数とかいろいろな、そういった形で地域差が生じないようなKPIの設定も必要かと思います。
 
 あと、18枚目のスライドの資料で日本取引所グループが、従業員持株会のことを書いているんですけれども、これを読むと、私はエンロンの事件を思い出します。エンロンの場合は、従業員には自社株購入を勧める一方で、経営陣などはエンロン株を大量売却していて、従業員持株会で自社の株を買うと、自社が倒産したときは全部失っちゃうという問題が当時は指摘されたので、これ、日本取引所グループが倒産することはないんでしょうが、ちょっと気になりました。
 
 あとは、認定アドバイザーの制度も設けていただくのはいいと思うんですけれども、例えば日本FP協会のいろいろな支部会とかも利用して、個人じゃなくて支部ごとに、得意不得意があってもグループで個別相談に乗れる制度とかはつくれないのかなと思いました。
 
 あとは、金融経済教育を受けた人からの評価を都度収集すること自体は、KPIとして実施していただいてもいいのかなと思います。
 
 ちょっと長くなりましたが、以上です。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。そういたしましたら、あと、オンラインで御参加の松岡委員、特に御発言の御希望は伺ってないかもしれませんけれども、もし御発言があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。
 
【松岡委員】  
 ありがとうございます。御案内のように、経団連の立場としては、本件に関して、様々なサポート、周知、企業に対する周知活動やアウェアネス、認知を広げる、また、その利用について促す等の御協力をさせていただいております。今後ともそういった御協力をぜひさせていただき、先ほど来、皆様からお話が出ていた裾野を幅広くという観点では、広く職域の分野でもリテラシー向上につながるような貢献をさせていただきたいと思っております。
 
 あとの点は、皆様から様々な御指摘を既にいただいており、おっしゃるとおりと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。これで今日御参加ないし御出席の委員の皆様方全員から御発言をいただきました。どうもありがとうございました。 事務局からこの時点で何かございますか。もしあれば。
 
【桑田金融経済教育推進機構設立準備室長】  
 すみません。では、ごく短く。有吉委員と松元委員がおっしゃっていた点に関連してなんですけれども、決して認アドだけが金融教育の担い手ではありませんで、それだけで米国並みの20%というのは到底難しいと思っています。これまでも個別の金融機関の方々、金融業界団体の方が大変意欲的に金融教育を積極的に進められてきているわけですが、それ自体を何か否定するものでは決してなく、業界団体では受け手から敬遠されることもあるため、壁を越えられない領域もあるという一つの課題が示されたのも今回機構の設立のきっかけでありますので、民間が行けないところは機構が行く、民間がこれまで行けるところは引き続き行くという、こういう役割分担の世界であって、我々が究極的に目指しているのは、広く教育の機会を提供するということですので、ここは官民が連携してやるということかと思っています。
 
 それからもう一つだけ、野尻委員から、行動変容のパネル調査ですかね、どういうふうに変わっていくのか見ていくべきという、この辺りを実際にやろうとすると非常に資金がかかって大変なんですというのが亀坂委員からもありましたけれども、この点について、今回御欠席されている渡辺委員から御意見をいただいております。やはり機構のKPIですので、機構が直接行っている事業、その授業を受けた方から意見を聞く、そして、受講前と受講後の双方のタイミングで意見を聞いて効果を測定するということが重要なのではないかというご意見をいただいています。
 
 加えまして、ただ、受講後も含めて、意見を聞くのはいいんですけれども、なかなか回答に協力していただけないというような実務的な壁もありますので、そういう意味で渡辺先生からは、職域での教育活動で企業の人事・福利厚生担当の部署の方に協力してもらえば、その部署の方々にとっても自社の従業員の変化を把握するということは企業のファイナンシャル・ウェルネスに取り組む上で効果的ですし、この辺りはウィンウィンの関係になるので、そうした形で調査を進めていくことが一案として考えられるのではないかという具体的な御意見もいただいていますので、機構においてはこうしたことを参考に、PDCAに活用できるKPIをつくれるよう検討を進めたいと思っております。
 
 以上です。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、オブザーバーの皆様方から御発言があれば承りたいと思います。既に御希望をいただいておりまして、全国銀行協会、日本証券業協会、そして、国際銀行協会の順でお願いします。では、全銀協、河本さん、どうぞ。
 
【全国銀行協会(河本オブザーバー)】  
 全国銀行協会の河本です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 御説明いただきましたとおり、全国銀行協会は、金融経済教育に関する事業を新機構に移管しますので、今後は新機構の下で官民一体となって金融経済教育の推進にしっかりと貢献してまいりたいと思います。その上で、2点コメントさせていただきます。
 
 一つは、目標、KPIについてです。KPIの設定は非常に意義があると思いますが、何人かの委員からも御発言いただいたとおり、基本方針において、金融経済教育を受けたと認識している人の割合を米国並みの20%にするという目標を掲げていただいていて、これは非常にチャレンジングな目標であると認識しています。単純計算ですと、現行の調査の対象となっている18歳から79歳までの人口は約9,200万人でございますので、この目標を達成するためには、今後5年間で約1,200万人、年間250万人の認識を変えることが必要となります。
 
 一方で、資料の27ページに記載いただいているとおり、現在の主要組織・団体による取組では受講者数が年間30万人前後ですので、要すれば、10倍近い規模の教育をやっていかなければならないということです。限りある新機構のリソースの中で講義回数や受講者数を大幅に増加させることにも一定の限度があると思われるところ、既存の活動の延長だけでは、なかなか手の届かないレベルだと考えられます。その辺り、民間と新機構のすみ分けというのもあると思いますが、どのような形でこれを達成していくのか、この目標の設定の考え方といったところはよく整理いただきたいと思います。
 
 2点目は、今少しお話しましたが、金融経済教育における新機構と民間の役割分担についてです。何人かの委員からも御発言がありましたが、実態としては、現在でも個々の民間金融機関において職域セミナー等を多く実施しております。内容としては、中立的立場で実施しているものもあれば、ビジネス推進の一環で行っているものもございます。そうした取組に対して、これまでの議論では、受け手側の問題として、個別金融機関による教育は敬遠されるという指摘があって、今般の中立的な立場である新機構の設立に至ったと認識していますが、今までの民間の取組と新機構の取組について、地方も含めてどのような形で民間金融機関として今後協力していくのか、その在り方や役割分担について、しっかり整理した上で取り組んでいく必要があると認識しておりますので、この点については引き続き連携をお願い申し上げたいと思います。
 
 以上です。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、日本証券業協会の島村さん、どうぞお願いいたします。
 
【日本証券業協会(島村オブザーバー)】  
 日本証券業協会の島村でございます。手短にお話しさせていただきます。本日はオブザーバーとして発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 
 まず、安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)でございますが、本日お示しいただいた案につきまして、私どもは賛同いたします。特に8ページにございます、「将来的には誰一人取り残さず、定期的に金融経済教育を受けられる機会を提供することが重要」と示していただいたほか、途中経過目標について、マイルストーンとして「金融経済教育を受けたと認識している人の割合が米国並みの20%となる」と設定をしていただきました。関係者の1人として協力していきたいと存じます。
 
 次に、金融経済教育推進機構についてでございます。私ども日証協といたしましては、同機構の設立・運営に向けて最大限協力すること及び日本銀行及び全銀協等の関係団体と緊密に協力することを既に表明させていただいております。現在、これまで私どもが行ってきた事業の全面的な移管及び資金的・人的な支援・協力等につきまして、関係者と協議させていただいているところでございます。
 
 次に、幾つかコメントをさせていただきたく存じます。認定アドバイザー制度につきましては、証券業界としても非常に関心が寄せられているところでございます。認定アドバイザーが機構の外において、本来の業務、例えばFPや投資助言業などを行う際に、相談料の一部が補助される仕組みを検討されておりますが、この仕組みの利用者は、基本的には投資未経験者層が対象になると理解しております。加えて、補助金の効果測定の観点から、アドバイスを受けられた方々が実際に口座開設や商品選択などの行動変容に至っているかどうかを、何らかの形で一定期間後にフォローアップする仕組みも必要ではないかと考えております。また、利用回数や相談内容などの制度設計につきましても、投資家の裾野拡大に着実につながる仕組みとしていただくことを期待しております。
 
 金融トラブルから身を守ることは極めて重要な課題でございます。一方、金融庁がお示しされている日米英の家計金融資産の推移のとおり、投資をしないことによる機会損失についても考慮すべきかと考えております。加えて、今回の資料では触れられてはおりませんが、つみたてNISAやiDeCoに絞った投資助言について、どのように登録要件の緩和が検討されていかれるのか注視しております。つきましては、引き続き関係者の意見も聞いていただきたく、コミュニケーションをお願いいたしたく存じます。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、国際銀行協会、平山さん、どうぞ。
 
【国際銀行協会(平山オブザーバー)】 
 国際銀行協会、平山です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。1点だけ細かいコメントをさせていただきます。
 
 基本的な方針(案)の270行に分散投資の説明の記述がございます。ここでは、アセットクラスと地域の分散について書かれておりますが、時間の分散についても触れたほうがよいと思いました。269行から始まる「具体的には」の1文は、積立投資に関する記述ですので、文章としては時間分散の概念が入っています。ですが、分散投資の概念には時間分散も含むと思いますので、271行の「クラス」の言葉の後に、例えば「投資のタイミング」といった言葉を加筆すると前後のつながりがよりよくなると思いました。御検討いただければと思います。
 
 以上でございます。お時間をいただきまして、ありがとうございました。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。予定の時間が来ているのですけれども、オブザーバーであとお三方御発言希望をいただいていますので、恐縮ですが、手短にお願いできればと思います。具体的には、電子決済等代行事業者協会、信託協会、投資信託協会でございます。電子決済等代行事業者協会さん、どうぞお願いいたします。
 
【電子決済等代行事業者協会(澤田オブザーバー)】  
 電子決済等代行事業者協会でございます。簡単に意見を述べさせていただきます。
 
 2点ございまして、まず資料26ページにもございますけれども、金融経済教育の目的は行動変容を通じたファイナンシャル・ウェルビーイングの実現であると理解しております。そのためには投資による資産形成もさることながら、自らの金融資産や金融行動を把握して、それを基にライフプランシミュレーションを行うということも非常に重要と考えております。電子決済等代行事業者協会には、こうした家計把握であったり、あるいはライフプランシミュレーションサービスを提供する事業者も参加しておりますので、今後、金融経済推進機構の設立については、運営あるいは人員配置といった点も含めてぜひ連携させていただければと考えております。
 
 2点目なんですけれども、職域における金融教育についてです。従業員向けに教育する人も必要ですけれども、企業の中で金融に詳しい人がそもそも増えて、社内でお手本のような形になることで実質的に中立的なアドバイスを提供しているということも、こちらは個別の事例で恐縮なんですけれども、弊社マネーフォワードの中でもございます。そのような人たちの存在を意識されたコンテンツにも期待しているところでございます。職域における最も基礎的なチャネルはDCであると思いますので、機構の運営に当たっては厚労省で企業年金を担当されている部局と密に連携をしていく必要があるのではないかと考えております。
 
 以上となります。ありがとうございました。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 では、信託協会さん、どうぞ。
 
【信託協会(加藤オブザーバー)】  
 信託協会でございます。画面オフにして失礼いたします。簡潔に2点コメントさせていただきます。
 
 1点目が、企業年金に係る教育についてでございます。企業年金は、御案内のとおり従業員の退職後の所得を保障するために重要な役割を果たす制度でありますけれども、退職金制度の位置づけは企業ごとに独自の制度内容となっています。信託銀行はDB・DC等の企業年金を取り扱っておりまして、企業独自の年金制度に対応した教育サービスが提供できます。信託協会としても、今回示された投資教育の枠組みの中でしっかりと役割を果たしていきたいと考えております。
 
 2点目が、事務局資料P25における講師派遣事業における標準講義資料の本日の議論を踏まえて、ちょっと発言をさせていただきたいと思っております。安定的な資産形成の目的は、国民一人一人の幸福や厚生を実現するためと理解をしております。そういう意味では、それぞれのライフプランに合った金融商品・サービスをより適切に個々人が選択できるよう、金融リテラシーを向上させていくということが非常に重要だと思っております。それは資産形成のみならず、その後の資産承継も非常に重要だと考えてございます。
 
 25ページの中で、テーマ別詳細コンテンツの案の中に相続、遺言、贈与といった項目がございますけれども、こちらはお一人お一人の多様なニーズに対応するためにも不可欠のコンテンツと考えておりまして、信託協会としてのノウハウ、長年の経験を提供することでこちらの分野に大いに貢献してまいりたいと思っております。
 
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、投資信託協会さん、どうぞ。
 
【投資信託協会(杉江オブザーバー)】  
 投資信託協会の副会長の杉江でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございました。最近の金融商品の選択の基準の変化と、金融経済教育機構の活動について一言だけコメントさせていただきます。
 
 金融広報中央委員会の家計の金融行動に関する世論調査によりますと、金融資産保有者世帯に対し、金融商品の選択基準として、収益性、安全性、流動性のどれを重視するかを調査したものでありますが、これまで40年以上、圧倒的に安全性と回答される方が多かったわけでございますけれども、2021年と22年は収益性という回答が最も多くなりました。こういうような状況で多くの方々が将来の老後に対する備えや、物の値段が高くなっている状況の下で、収益性を重視して金融商品を選びたいと考えるニーズが強まっていることを示していると考えてございます。
 
 このような状況の下で、金融経済教育推進機構におきましては、認定アドバイザーによるセミナーや個別相談など今後活動を進めていく中で、実際に受けた質問や相談事例、国民の関心がどこにあるのかを検証しながら、ぜひ個人の立場に寄り添ったアドバイス、個人の方が相談したいこと、知りたいことに対して的確に対応することにより活動を進めていただきたいと考えております。投資信託協会といたしましても、金融経済推進機構の運営につきましては、予算面・人的な面から可能な限り協力をさせていただきたいと考えております。
 
 私からの発言は以上です。ありがとうございました。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、予定の時間も参っておりますので、本日はこの辺りとさせていただければと思います。委員の皆様方、また、オブザーバーの皆様方、大変貴重な御指摘をたくさんいただきまして、誠にありがとうございました。
 
 それでは、タスクフォースのほうの座長を務めておられる神作先生から、もし何か御発言ございましたらお願いいたします。
 
【神作顧客本位TF座長】  
 どうもありがとうございます。神作でございます。
 
 本日示されました基本方針(案)は、令和4年12月9日に公表された金融審議会市場制度ワーキング・グループ 顧客本位タスクフォースの「中間報告」の考え方に基本的にのっとって策定していただいたものと思っております。
 
 1点だけ、金融リテラシーのリテラシーという言葉の意味は、単なる知識や情報ではなくて、それを使う、利用するというところまで含まれていると思います。様々な御指摘がありましたけれども、単に知識・情報を得るというだけではなくて、それが行動につながると申しますか、意思決定につながると言ったほうがいいかもしれませんけれども、そういった金融リテラシーの向上に、学校、企業、地域、それから、機構、様々な方々が取り組んでいかれることを期待しております。
 
 私からは以上でございます。
 
【神田市場制度WG座長】  
 どうもありがとうございました。 それでは、繰り返しになりますけれども、本日は多数の貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。この安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)についてですけれども、本日委員の皆様方からいただきました御意見等を踏まえながら、事務局のほうで案をさらに検討させていただき、今後、金融審議会の総会において御議論をいただいた上で、政府としての基本方針を策定させていただくという、こういう予定になっております。
 
 また、金融経済教育推進機構のほうですけれども、これにつきましても、本日いただきました皆様方からの御意見を参考にして、今後さらに、設立に向けた準備を進めていただきたいと思います。
 
 それでは、少し予定の時間を超過して申し訳ありませんでしたけれども、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。皆様方、どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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