金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第29回) 議事録
1.日時:
令和6年6月21日(金曜日)10時00分~12時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用
金融審議会 市場制度ワーキング・グループ(第29回)
令和6年6月21日
令和6年6月21日
【神田座長】
おはようございます。それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。市場制度ワーキング・グループの、本日第29回の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところ御参加をいただき、誠にありがとうございます。
本日でございますが、このワーキング・グループでの御議論を取りまとめた市場制度ワーキング・グループ報告の案と併せて、顧客本位の業務運営に関する原則の改訂の案につきまして、御議論をいただきます。
まず、初めに事務局から報告案と原則の改訂案について御説明をいただきます。その後を討議の時間とさせていただき、委員の皆様方から御質問、御意見をいただければと思います。
なお、報告案の概要ということで事務局が作成した概要紙を資料2としてお手元に配付させていただいておりますので、適宜御参照いただければと存じます。
それでは早速ですが、まず、事務局から報告案と顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案についての御説明をお願いいたします。齊藤課長、よろしくお願いいたします。
【齊藤企画市場局市場課長】
報告案と顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案について御説明いたします。
まず、報告案についてでございます。資料1は、前回の市場制度ワーキング・グループでの事務局説明資料に基づき、前回メンバーの方々からいただいた御意見等を踏まえまして、加除修正等を行う形で作成しているところでございます。このため、前回の事務局説明資料からの主な修正点を中心に御説明させていただければと存じます。
それでは、おめくりいただきまして、真ん中の下側にページ番号を付しております、1ページ目を御覧いただければと思います。
「はじめに」として、まず、本ワーキング・グループで検討を行った経緯を記載しております。経済財政運営と改革の基本方針2023及び新しい資本主義の実行計画において、資産運用立国の実現に向けて取組を行うこととされました。これを受けて、本ワーキング・グループにおきまして資産運用に関するタスクフォースが設置され、昨年12月に本ワーキング・グループとの合同で報告書が取りまとめられました。その中で、プロダクトガバナンスに関する提言が行われたところでございます。
また、一昨年の12月に取りまとめられました、市場制度ワーキング・グループ第二次中間整理では、指摘された課題について継続検討することとされており、足元の論点として、安全・効率的な市場インフラの提供や非上場企業等への円滑な資金供給を挙げております。
そして、これらを踏まえ、本ワーキング・グループで審議を行い、検討結果を取りまとめたものとしています。
続きまして、Ⅱのプロダクトガバナンスに関する原則の策定についてでございます。
1.の背景としまして、プロダクトガバナンスに関する原則を定める趣旨等を記載しております。家計の安定的な資産形成を図るため、成長と分配の好循環を実現していく上では、インベストメント・チェーンの各主体に対する働きかけを行っていく必要があり、政府においては、一昨年に資産所得倍増プランを策定し、昨年12月には資産運用立国実現プランを策定しているということでございます。
次の2ページ目の44行目でございますけれども、金融庁においては2017年に顧客本位の業務運営に関する原則を策定し、これに基づいて、金融事業者による取組について継続的にモニタリング等が実施されているところでございます。これまで各金融事業者の取組により改善が図られてきているところでございますが、販売会社では、時として収益獲得を優先した販売行動が引き続き見受けられるとの指摘がある一方、資産運用会社についても、プロダクトガバナンスに引き続き課題があることが指摘されているところでございます。
そして、61行目でございますが、資産運用会社については、国民の安定的な資産形成を果たすための重要な役割を遺憾なく発揮するため、適切な商品組成・提供・管理、透明性の確保等をより一層後押ししていく必要があるとともに、販売会社においても、資産運用会社と適切に連携して、製販全体として顧客にふさわしい商品が提供される態勢を確立していくことが重要であるとしております。
68行目でございますが、一方でこうしたプロダクトガバナンスの確保については、資産運用会社の規模や特性、提供しようとしている金融商品、販売方法等に応じて最適な体制が確立されることが重要であり、特に新興運用会社について過度な制約となることのないよう適切なバランスが確保されることの重要性を書かせていただいております。
73行目でございますけれども、そのため、ルールベース・アプローチにより画一的な対応を求めるよりも、プリンシプルベースでのアプローチが望ましいとしております。
次のページの77行目でございますけれども、顧客本位の業務運営に関する原則は、金融商品の販売、助言、商品開発、資産管理、運用等を行う全ての金融事業者を対象としており、プロダクトガバナンスについても、顧客本位の業務運営を図る上で基本となるものであるため、この原則の射程に含まれるものと考えられることから、プロダクトガバナンスの確立を後押ししていくため、この原則を具体化し補充する、補充原則を追加するべきであるとしております。
その下の2.「補充原則に関する基本的な考え方」でございます。こちらは前回の事務局説明資料を大幅に書き足した形にしております。
まず、製販全体としての顧客の最善の利益の実現についてでございます。前回のワーキング・グループの事務局資料からの主な変更点といたしましては、90行目でプロダクトガバナンスについて括弧書で定義を入れております。顧客の最善の利益に適った商品提供等を確保するためのガバナンスとしております。そして、プロダクトガバナンスは、金融商品の販売方法、組成会社や販売会社のビジネスモデルに応じてその在り方は異なるものであることを追記しております。
また、97行目からでございますが、プロダクトガバナンスは、商品組成、販売等の各段階の品質管理だけではなく、組成から償還に至る金融商品のライフサイクル全体の中で実効的に機能していくことが重要としております。
101行目からでございますけれども、金融商品の組成及び想定顧客属性の特定に当たっては、顧客の資産形成等に係る真のニーズを捉え、そのニーズに応えるためにはどのような金融商品が必要か、また、その金融商品はどのような顧客に提供するべきかを検討することが求められるとしております。そして、こうした製販全体としての取組を行うことにより、販売会社における適合性原則や説明義務の実効性が高まること、組成会社における適正な商品構成や品質の向上、ひいては経済全体の便益につながることが期待されるとしております。
その上で、補充原則を定める趣旨としまして、112行目でございますが、組成会社が金融商品の組成・提供・管理等に関する業務におけるベストプラクティスを目指す上で有用と考えられる具体的な取組を補充原則として示すことが、組成会社による顧客本位の業務運営をより一層進めるために適切であるとしております。
次に、補充原則の対象についてでございます。組成会社においてプロダクトガバナンスの重要性を認識し、幅広く補充原則が採択されるべきであるとしつつ、個別の金融商品の性格や商品性等により適用されることが馴染まない記載もあり得る。組成会社においては本補充原則の趣旨を踏まえて適用範囲を自ら考え、対外的に説明することが考えられるとしております。また、製販が分離していない金融事業者においても、補充原則を踏まえてプロダクトガバナンスの確保が図られるべきとしています。
続きまして、130行目からプロポーショナリティについてでございます。組成会社及び販売会社におけるコスト及びフィージビリティにも配慮する必要があること、また、めり張りの例としまして、シンプルなインデックス商品については最低限の必要な対応を行う一方、複雑な、またはリスクの高い金融商品については、より慎重かつ重点的に取り組むことを記載しています。
5ページの140行目からでございますけれども、実効性の確保についてでございます。主に追記した箇所といたしましては、143行目でございますが、製販で連携すべき内容についての業界の共通認識の醸成に関しまして、組成会社・販売会社双方の自主規制機関等が連携し、商品の複雑さやリスク等の金融商品の特性等に応じて連携すべき対象商品の範囲や情報の内容、頻度、連携方法等について、フォーマットの作成も含めて実務的な検討が行われることが期待されるとしております。
153行目から、基本的な考え方の最後の、取組状況のフォローアップについてでございます。こちらは前回の事務局説明資料に若干の肉づけをした程度でございます。金融庁においてフォローアップし、好事例等を分かりやすく示すことや、必要な場合には、将来的にルールベースでの対応も視野に入れることを記載しております。
以上の基本的な考え方に基づきまして、5つの補充原則を追加するとともに、原則6の改訂を行うことが適当としております。
169行目から補充原則の内容でございます。まず、補充原則1.「基本理念」につきましては、これ以降も同様でございますが、顧客本位の業務運営に関する原則の記載の仕方に合わせまして、組成会社を金融商品の組成に携わる金融事業者としております。それ以外の点は、基本的に前回の事務局説明資料と同じでございます。
次に、補充原則2.「体制整備」でございます。本文の180行目でございますが、基本的な考え方に合わせまして、金融商品のライフサイクル全体のプロダクトガバナンスについて実効性確保のための体制を整備すべきであるとしております。注1も同様の修正をしているほかは、基本的に前回の事務局説明資料と同じでございます。
次に、補充原則3.「金融商品の組成時の対応」でございます。本文につきましては、こちらはこれ以降も同様でございますけれども、販売会社を金融商品の販売に携わる金融事業者としております。それ以外の点は、基本的に修正しておりません。その他、注2につきまして、想定顧客属性の特定に関しまして、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズ等を基本としつつ、必要に応じて想定される販売方法にも留意すべきであることを追記しております。
続きまして、補充原則4.「金融商品の組成後の対応」についてでございます。まず、注2でございますが、製販で情報連携すべき内容について243行目から追記しております。よりよい金融商品を顧客に提供するために活用する観点から実効性のあるものであるべきであり、実際に購入した顧客属性に係る情報のほか、例えば顧客からの苦情や販売状況等も考えられると記載しております。これに合わせまして、補充原則4の本文につきましても、232行目でございますが、検証する内容として、「顧客属性が合致しているか等」と、「等」をつけさせていただいております。それ以外は前回の事務局説明資料と同様でございます。
続きまして、8ページ目の原則6の修正についてでございます。注3につきましては、前回の事務局説明資料に沿った修正でございます。金融商品の販売に携わる金融事業者においては、特定された想定顧客属性を基本としつつも、自らの責任の下で顧客の適合性を判断して、販売を行うべきとしております。
また、注6につきましては、先ほどの補充原則4と同様の修正を加えておりまして、製販で情報連携すべき内容として、実際に購入した顧客属性に加えて、顧客の反応や販売状況に関する情報等を記載しているところでございます。注7につきましては、前回の事務局説明資料と同じでございます。
最後に、補充原則5の顧客に対する分かりやすい情報提供でございますが、こちらは基本的に前回と同様の内容でございます。
以上がプロダクトガバナンスに関する報告書案となります。
お手元の資料3といたしまして、顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案をお配りしております。今御説明いたしました報告案のとおりに基本的考え方と補充原則を追記するとともに、原則6を改定する内容としております。ただ、報告案に記載している基本的考え方における取組状況のフォローアップにつきましては、これは原則全体と共通でございますので、割愛しております。御参照いただければと思います。
報告案に戻っていただきまして、9ページ目の299行目から金融資本市場を巡るその他の論点についてでございます。
1.株式決済期間の短縮(T+1化)についてでございます。現状、T+2であること、主要な国・地域でT+1化の実施・検討が進んでいること、様々なメリット・課題があることを記載した上で、318行目でございますが、国際的に株式決済期間のT+1化の実施・検討が進む中で、日本の証券決済制度が取り残されないよう、市場関係者においてT+1化を進めるに当たっての方法や課題等について、実務的な検討を始めることが必要であるとさせていただいております。
続きまして、投資型クラウドファンディングについてでございます。325行目から、まず、株主を一元化するスキームを活用したクラウドファンディングに関してでございます。10ページ目の326行目からの段落で、株主一元化スキームに対するニーズと投資運用業の体制整備の負担が課題として指摘されていることを記載しております。
その上で、336行目からですが、先般成立した改正金商法等で、投資運用業の体制整備等の負担が一定程度軽減されること、また、実態に即した人的構成、業務運営体制での投資運用業の登録が可能であることを金融庁のガイドライン等で明確化することが適当であることを記載しております。
また、345行目以下のなお書きでございますが、自主規制機関による自主規制規則の平仄を合わせる必要があることを記載しております。これに併せ、株主一元化スキームによるファンド持分について、クラウドファンディング以外の方法による販売の在り方においても、規制の整合性が確保される必要がある旨を指摘しております。
次に、354行目からが投資型クラウドファンディングの勧誘方法の見直しについてでございます。355行目から366行目の段落で、現行規制及びクラウドファンディング業者からの要望を記載しているところでございます。
続きまして、367行目からでございますが、これに対しまして、特定投資家であっても、個人に対する電話・訪問勧誘を可能とすることについては、引き続き慎重に対応することが適当としております。また一方で、371行目からの段落で、法人の特定投資家に対する勧誘については、電磁的方法以外の方法、電話・訪問等を可能とすることが考えられるとしております。
そして、377行目からのなお書きでございますが、日証協の自主規制に関し、少なくとも社債券に投資するクラウドファンディングについては、株式投資型クラウドファンディングにおける勧誘規制と同様の規制を設けることが適当であること、その他の有価証券についても、投資型クラウドファンディングで実際の取扱いが行われる場合には、同様に対応するよう検討を行うことが適当であることを記載しております。
最後の論点として、銀証ファイアーウォール規制の見直しについてでございます。現在、金融庁において、金融機関における優越的地位の濫用防止態勢、利益相反管理態勢及び顧客情報管理態勢の整備状況についてモニタリングが行われているところでございます。この中で、先日、証券取引等監視委員会から大手金融機関グループに対する行政処分勧告が行われたことは御存じのとおりと思いますので、注書きを加えさせていただいております。当ワーキング・グループで銀証ファイアーウォール規制に関する議論を行う際には、こうしたモニタリング結果を踏まえる必要があると考えられるため、継続的に検討していくこととしています。
最後に、「おわりに」といたしまして、今後、関係者において、本報告の内容を踏まえて、必要な対応が進められることが期待されるとしております。
事務局からの説明は以上となります。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、今御説明いただきました報告の案、そして顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案につきまして、御質問、御意見等をお出しいただければと思います。いつものように、まず、委員の方々から御質問、御意見をお出しいただき、それが済んだ後で、オブザーバーの皆様方にも御発言をいただく機会を設ける予定です。また、御発言の順番等に関しましては、いつものように若干前後する可能性があるかと思いますが、あらかじめ御了承いただければありがたく存じます。
それでは、途中で御事情により退席と伺っているオンライン参加の森下委員から、もし御発言があれば承りたいと思います。森下先生、どうぞお願いいたします。
【森下委員】
すみません、授業の関係で途中で退出させていただきますので、よろしくお願いいたします。
おまとめをいただきまして、ありがとうございました。今回の議論が適切に反映された報告書になっているかと思います。2点だけ申し上げたいと思います。
1点目は、この報告書の中でもプリンシプルベースということが書かれていました。金融商品の状況とかあるいは製販の実態とか様々なものがあると思います。そうした中で、やはりプリンシプルベースということで各事業者の方々が創意工夫を凝らしていただくことが本当に重要になってくると思いますので、事業者の方々にはぜひこの方向で前に進んでいっていただければと思いますし、監督当局としてもそういった事業者の創意工夫を広く受け止めるような観点でモニタリングをしていただくということが必要なのではないかと考えております。
例えば、290行から293行目の辺りです。特に運用者の個性が重要な意味を持ってくる金融商品との関係での開示の方法が例示されています。ここはこういった形で例示されていますけれども、商品の特性やサービス内容に応じて購入者に伝えるべき内容をどんどん運用事業者あるいは組成会社のほうで工夫をしていただくということが重要なのではないかと考えております。
もう1点、271行のところから注6ということで、販売事業者から組成事業者への情報の提供について書かれているかと思います。これについてはいろいろな課題もあるというお話がこの会議の中でもなされましたけれども、こういった販売事業者から組成事業者側への情報提供をいかに充実していくかということが、今回のプロダクトガバナンスをもっとよりよいものにしていく上で極めて重要な点であると考えていますので、ぜひ販売事業者の方々には率先して、何が必要かということを考えて情報提供していただければと思います。
また、販売事業者、そして組成事業者のグループ間で密接にベストプラクティスを協議していただくということを進めていただけることが重要ではないかと考えております。
以上です。どうもありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、ほかにいかがでしょうか。会場で御参加の方は、いつものように名札を立てていただけますとありがたく存じます。オンラインの方には、いつものようにチャットを全員宛てに出していただければと思います。
多くの方にほぼ同時に立てていただいているので、坂先生が一番早かったので、その後、有吉先生ということで順番に行きたいと思います。坂先生、どうぞお願いいたします。
【坂委員】
ありがとうございました。報告書のまとめ、大変ありがとうございます。私からは、株式一元化スキームとプロダクトガバナンスについて、発言させていただきたいと思います。
株主一元化スキームにつきましては、ファンド型クラウドファンディングだけではなく、ファンド型クラウドファンディング以外の販売の在り方においても規制の整合性が確保されるよう措置を求めていくということを明記いただきました。この点は極めて重要だと思います。かつ、注19のところで、株主一元化ファンドについては、非上場株式の勧誘と同等の性質を有することを踏まえて、証券業協会の規制との整合性を図っていくということが明記をされています。この点については感謝申し上げたいと思います。
非上場株式は、資金供給の円滑化とともに、企業の成長を適切に促す観点から、資金提供先の選別と資金提供条件の適切な設定が極めて重要と考えます。かかる観点からの制度の具体化と対応をお願いしたいと思います。
他方、非上場株式が質の悪い企業の資金集めや詐欺に用いられやすい点については、注意を喚起しておきたいと思います。かかる事態は悪質な企業や犯罪組織を肥え太らせることにもなりかねません。この点、捜査機関との連携強化等も含め、関係機関におかれましては配慮をお願いしたいと思います。
次に、プロダクトガバナンスについてです。プロダクトガバナンスにおいても、適切な先に適切な形で資金を流すこと、適切な形で情報生産がされることが重要と考えます。
インベストメント・チェーンにおいて、投資家も含めた各主体の行動が総体としてそのような資金の流れ、情報生産を実現することが重要と考えます。
その重要な環、ピースとして、プロダクトガバナンスがより一層洗練されていくことを期待したいと思います。
事業者の皆様には今後一層御尽力いただけるものと思いますけれども、言わずもがなではありますが、事業者と顧客との間には、情報、専門性、組織力、交渉力に格段の格差がございます。販売業者と運用業者の連携が悪い方向に作用してしまうと、顧客の利益が大きく損なわれてしまいます。そのような利益相反関係が潜在的・構造的に存在し得ることについては、改めて認識をしておきたいと思います。特に未成熟の金融事業者や対応が遅れる金融事業者において、そのような事態が生じることがないよう留意をお願いしたいと思います。
かかる観点からは、金融事業者の外の目、行政による監督、市場の目あるいは顧客の目による監視が重要と考えます。プロダクトガバナンスの在り方について、社会に対して豊富な情報提供がされ、かかる情報により、ガバナンスの在り方が社会的に注目されること、かかる緊張と競争の中でより高度なガバナンスが実現されることを期待したいと思います。この点に関しては、今後金融経済教育が進められますけれども、こういった中でも金融事業者のガバナンスの在り方について国民の関心や認識が深まることを期待していきたいと思います。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
ほかの方々もほぼ同時に全員の方から札を立てていただきましたので、有吉委員から順番に行きたいと思います。有吉先生、どうぞ。
【有吉委員】
有吉でございます。まずは報告案の策定、それから、補充原則を含めた顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案の御作成、迅速にお取りまとめていただきまして、感謝申し上げます。私のほうでは、基本的にこの報告案、それから補充原則を含む原則の改訂案の内容について、これ以上直すべき点はなく、賛成させていただくものでございます。その上で、1点コメントと、それから、1点確認をさせていただきたい点を申し上げたいと思います。
コメントでございますが、報告案の4ページの補充原則の対象の部分につきまして、「本補充原則は、あらゆる金融商品が対象となり得るものの、個別の金融商品の性格や商品性等により、適用されることが馴染まない記載もあり得る」という記述を書いていただけたということにつきましては、前回も私含め何かの委員からコメントがあったものを踏まえた内容だと理解しておりますけれども、補充原則の対象や位置づけについて明確になったものであり、記述自体、妥当であると思っております。
さはさりながら、若干あまのじゃく的なコメントで非常に恐縮でございますが、今回のこのワーキング・グループの議論の中で補充原則の内容は、基本的には投資信託を念頭に置いて議論がされてきたものであると理解をしております。
脚注の7番で、投資信託については、本補充原則の全てが妥当すると考えられるといった指摘があったと書いていただけていることはそういった議論の背景を踏まえたものだと承知をしているところでございますが、要すれば、補充原則について、あらゆる金融商品が対象になり得るものの、商品ごとに適用される項目、されない項目があるということを前提にしつつも、投資信託については、やはりこの補充原則が、プロポーショナリティの考え方を踏まえた上で全て適用されるというのが、私が申し上げるのは大変僭越でございますが、このワーキング・グループの議論でも総意ではなかったかと感じております。そういった意味で、今後、金融庁や投資信託協会において、この補充原則を利用して投資運用会社を監督していくに当たって、今のような考え方を前提に解釈・運用をぜひ進めていただきたいと思っているというのがコメントでございます。
それから、確認させていただきたいのは、今後の顧客本位の業務運営に関する原則の改訂の段取りというかスケジュールでございます。想像するに、今回の報告案がこの後しばらくして完全に取りまとまった後に、この原則の改訂案は、パブリックコメントに付した上で意見照会を行って内容を確定させて、数か月して最終版が出ると、このようなところかと想像しておりますが、そういったスケジュールを御想定か伺いたいということと、そういったスケジュールであったとしても、できるだけ早急にお取りまとめをいただいて世の中に出していただきたいとお願い申し上げるというのが2点目の確認というか御質問になります。
私からは以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。御質問の点について、齊藤さん、お願いします。
【齊藤企画市場局市場課長】
今御質問いただきました今後のスケジュールでございますけれども、御指摘いただいたとおりと思っております。この報告案を取りまとめていただいた後に、金融庁におきましてパブリックコメントに付して、その内容も踏まえた上で最終化させていきたいと考えております。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、お隣の神作先生、どうぞお願いいたします。
【神作委員】
学習院大学の神作でございます。私も、事務局から先ほど御説明がありました報告案と、それから、顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案に全面的に賛成いたします。大変充実した報告案と改訂案を取りまとめていただき、厚く御礼を申し上げます。
プロダクトガバナンスについて、一言だけ感想を申し上げさせていただきたいと思います。顧客本位の業務運営に関する原則に追加して、プロダクトガバナンスに関する補充原則を新たに定めることは、金融商品、金融サービスに係る市場全体として、顧客の最善の利益を実現するために非常に重要かつ有用なことと存じます。
昨年の11月に改正された金融サービス提供法2条1項において、金融サービスの提供等を行う、その業務を行う者に対して、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正にその業務を遂行しなければならないという義務が定められました。金融事業者は、このことを念頭に置いて行動する必要があると思います。
しかしながら、このようなハード・ローとして課された、顧客の最善の利益を勘案すべき法的義務に基づいて、具体的にどのような方針と態勢で顧客の最善の利益を勘案し、それを実現していくかは、個々の金融事業者に大きく委ねられており、販売戦略やビジネスモデルにも大きく依存することとなると思います。組成会社が金融商品の組成・提供・管理等に関する業務におけるベストプラクティスを目指すとともに、販売業者が顧客の最善の利益にかなう金融商品・金融サービスを提供する上で、今回新設された補充原則と原則6に追加された注は、これらの金融事業者にとって大変有効な指針になることと思います。
プロダクトガバナンスは、市場全体として顧客の最善の利益の実現を目的とするものであり、金融商品の組成業者と販売業者がそれぞれの立場から独立性と専門性に基づいて生産的な情報交換やコミュニケーションがなされるということが期待されており、またそのことがとても重要であると思います。そのような方向に進みますよう、ぜひ実務における工夫と協力がなされることを強く期待しております。
私からは以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、お隣の小池社長、どうぞお願いいたします。
【小池委員】
小池でございます。初めに、報告案の取りまとめにつきまして、大変ありがとうございます。また、今回、本ワーキング・グループへの参加という貴重な機会をいただきまして、本当にありがとうございました。
プロダクトガバナンスの原則の検討に当たりまして、皆様に実務的な観点での考え方や私たちの取組を具体的に御理解いただけますよう努めてまいりました。その中で、本ワーキング・グループにおきましてコメントをさせていただきました幾つかの点、例えばプロダクトガバナンスをファンドのライフサイクル全体の中で捉え、実効的に進めていくことが重要であるという点や、プロダクトガバナンスが過度な参入障壁とならぬよう、規模や経営スタイルに応じた配慮をいただきたい点などを多く反映いただきまして、本当にありがとうございます。こうした視点に立ったプロダクトガバナンスの取組は、顧客の最善の利益にもかないますので、資産運用会社として一層の推進をしてまいりたいと思っております。
一方で、プロダクトガバナンスの取組はまだ緒に就いたばかりと言え、第27回で御紹介をさせていただきましたとおり、当社でも態勢整備やファンドレビュー、想定顧客に係る取組などを進めているものの、外部有識者の方からは多くの指摘をいただいており、まだまだ強化をしていく点が多いと感じております。今回のワーキングを通じまして、プロダクトガバナンスの道しるべとなる原則をお示しいただきましたので、それを踏まえまして、一層のプロダクトガバナンスの強化に努めてまいりたいと思います。
言うまでもなく一番大切なことは、プロダクトガバナンスはあくまでも手段であり、それ自体が目的ではないということです。本報告書でも定義をされていますとおり、顧客の最善の利益にかなった商品提供などを確保するためのガバナンス、これを通じまして、良質な商品を提供し、国民の資産形成の普及を図ることが目的となります。
今後は、金融業界のみならず、インベストメント・チェーンの参加者を挙げての取組が必要となっていくと思います。この中で、我々としましても一層の進化を目指すとともに、これまで培いましたノウハウを広く還元するなど一層の取組の強化に励んでまいりたいと思います。
今回は本当にありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、佐々木先生、どうぞお願いいたします。
【佐々木委員】
ありがとうございます。私も今回この報告書には賛成で、やはりプロダクトガバナンスに関して、製販全体として顧客の最善の利益を考えるという姿勢は非常に重要で、販売してみて初めて顧客本位とならないことが明らかになるというケースも見られますので、こういったことを定めていただくのは非常に重要だと感じました。
また、株式決済期間の短縮についてですが、こういったことで日本が後れをとるのではないかと心配する声もあるようですので、このような明らかな形で検討していくべきということを表明するということには意味があるのではないかと思いました。
最後に、ファイアーウォール規制についてですが、現在モニタリング中ということで特に今回は議論はございませんでしたが、先ほどお話がありましたような証券監視委員会からの勧告もありましたので、一言申し上げたいと思います。今回の勧告内容を見る限り、非公開情報が企業の意思にかかわらず共有されてしまうといった問題であるのかなと認識しております。これは情報共有の事前同意が必要かどうかという議論以前の問題でありますので、そういった意味では市場制度ワーキング・グループで検討していた内容と直接的に関わる部分ではないのかもしれないんですが、やはり全体としてより慎重に考えざるを得ないものと思いました。
また、こちらの市場制度ワーキング・グループでは、最終的にファイアーウォール規制の緩和を検討しているわけですけれど、情報共有や優越的地位の濫用などの違反を防ぐために究極的にはどうしたらガバナンスをしっかりしていただけるか、また、顧客から見て、ガバナンスがしっかりしていると安心して利用できるような状況になるのかという究極的な目的を達成する方法について考える必要があると感じました。そのためには、規制緩和と同時に、規制違反に対する罰則などの対応についても検討し、ガバナンスがしっかり働く形にする。また、そういった罰則についても国際的な動向に合わせることも検討してもいいのではないかと改めて感じました。
現在、金融機関に対するモニタリングを進めていただいているということをお話しいただきましたが、同時に、企業側、つまり顧客側がどのように考えているか。例えば現状で情報共有をしないでほしいと考えている企業が具体的にどれくらいいて、どのような状況のときにそういうことが求められるかなどの企業側の分析というのも必要ではないかと感じました。
優越的地位の濫用に関する相談窓口について前回お伺いしましたところ、それほどたくさん意見が寄せられているわけではないというようなお話だったと思いますが、今回の報道を見ていても、優越的地位の濫用と認められる基準はある程度厳しいのかなと思いました。
しかし、法律に違反するとか規制を破るということではなくても、今回のプロダクトガバナンスのように顧客本位の業務運営といった目線から考えますと、もう少しできることもあるのではないかと思いました。
以上、私の意見です。よろしくお願いします。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、西岡委員、どうぞよろしくお願いいたします。
【西岡委員】
マン・グループの西岡でございます。まず、プロダクトガバナンスについての報告書をしっかりまとめていただきまして、本当にありがとうございました。内容については全面的に賛成でございます。また、このような重要な課題を議論させていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございました。
せっかくの機会ですから、私なりに、プロダクトガバナンスで大事だと思っていることについて簡単に述べさせていただこうと思います。2点です。
まず、運用会社がプロレベルの運用プロダクトを作ることが重要。運用会社ですから、いい運用プロダクトを作らないといけないということです。運用はよく医者とか弁護士になぞらえることもありますけれども、同様に成果を保証できないプロのサービスなので、プロの行動自体が大事だということだと思います。行動自体、真摯に最善を尽くす、運用会社が責任を持って行うことが本当に大事だということです。それを担保するのがこのプロダクトガバナンスだと考えております。
2つ目が、お客様の最大利益を実現するためにも、お客様の真のニーズを理解することが重要だとい思っています。これはまさに運用業界として、運用会社だけではなくて、運用会社、販売会社一体となって取り組む必要があることだと考えています。これもしっかりこの報告書にまとめられていると考えております。
最後に、私も運用業界に身を置く者として、政府の資産運用立国という政策は、国民のために実現すべき本当に大事な政策だと思っています。この政策が実現されるためには、資産運用業界はやはり大きな責任を持って真摯に取り組むことが要請されると思っています。この今回のプロダクトガバナンスの議論がそのきっかけとなって、運用業界が大きな責任を持って行動することで、お客様からの信頼を得ることが重要なことだと思います。運用業界にとって正念場と言って良いものだと考えており、業界は必ずこの機会をとらえて改革出来ると信じております。
以上です。本当にありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、お隣の野尻委員、どうぞお願いいたします。
【野尻委員】
ありがとうございます。フィンウェル研究所の野尻と申します。まず、報告書をここまで仕上げていただきまして、本当にありがたいと思っております。お疲れさまでございました。賛成をさせていただきます。
それで、改めて、2つの点を強調させていただきたいなと思っています。
先ほど有吉先生からも御指摘もありましたけれども、原則6に注を加えるということと、附属の原則を入れるということの2つの面で今回はアプローチをしていただいた中で、やはり表現が金融事業者とか金融商品と表記をされていることが私は大変大事なことだと思っています。投資信託のプロダクトガバナンス的な議論にとどまらないで、ほかの金融商品もここでカバーをされているんだということが大事なポイントになるのではないかと思っております。改めてこの点を指摘させていただきたいと思いました。
2つ目ですが、基本的な考え方の101から103のところに書かれています、「潜在的なニーズを含む顧客の資産形成等に係る真のニーズを捉え」と言及されています。今、西岡委員からも御指摘がありましたように、この「潜在的」とか「真の」という言葉の意味をさらっと流さないでほしいなと思っています。これは非常に大事なことであって、顧客のウオンツに応えるのではなくて、ニーズだと。潜在的であっても、患者が嫌がる薬も処方するというのが医者の大事なポイントだとすれば、欲しいというものを提供するのではなくて、必要であるものを提供するということが念頭にあるべきではないかというのを改めて思いました。
個人的には、資産形成等の「等」を大事に思いたいと思っています。資産形成以外の部分、例えば保険だとか、それから、私が専門にやっている取崩しとか、作ることばかりではなくて、それ以外の金融サービスもこの「等」がカバーしていると考えています。作られた方々の思いはそれで合っているかどうか分かりませんですが、そう思って読ませていただいています。
最後に、1つだけ気になっている点があります。このワーキング・グループの議事録が、まだ、初回というか、前々回の分は公開されていますかね。昨日見た段階では公開がまだされてないように思ったんですが、お忙しいところはもう十二分に承知はした上での一言になるんですけれども、やはり早めに議事録等を公開いただいて、我々のほうからも、ぜひ読んでくれという発信ができるようにしていただけると嬉しいと思いました。よろしくお願いします。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。最後の点、何かございますか。
【齊藤企画市場局市場課長】
御指摘のとおり、まだ議事録は公開できておりませんので、できるだけ早急に進めてまいりたいと考えております。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、藤田委員、どうぞお願いいたします。
【藤田委員】
ありがとうございます。ブラックストーンの藤田です。インフレの進行に備えた預金以外の資産防衛手段や、金利のある時代におけるポートフォリオの再構築は、アセットオーナーだけではなく、個人投資家においても重要性が高まっております。家計の安定的な資産形成を支援するためには、海外投資家のポートフォリオ構成などの先進的な手法を参考にしながら、顧客のニーズに合わせた高品質な商品を提供していくことがますます求められているということかと思います。今し方各委員から御指摘がございましたけれども、組成会社や販売会社においては、この重要な責務が課されているということかと思います。
そうした中で、製販全体としまして、建設的かつ活発なコミュニケーションを通じた革新的な商品の開発や推進が適宜図られておりますけれども、これらの先進的な取組が適切な形で促進され、広く普及するためには、一定の規律や枠組みが必要不可欠です。今回のプロダクトガバナンスの策定は、そのような枠組みを整備する上で非常に重要な意味を持っており、金融庁含め関係者の皆様の御尽力により、業界の意見を踏まえていただきながら整理くださったことに感謝申し上げます。
さて、商品組成及び商品後において、4ページの注6に記載いただきましたとおり、顧客の適格性(eligibility)を特定・検証する組成会社と、顧客の適合性(suitability)を特定・検証する双方が、互いの役割を尊重しながら、本原則をプリンシプルベースで実行していくために2点コメントさせていただきます。
まず、補充原則3の組成時の対応として、複雑な商品や運用が特殊な商品について、慎重に想定顧客属性を特定するというところです。本来的にはそれらの金融商品は顧客の資産形成にとって有意義かつ持続的にその目的を達成できるように十分に考慮された上で組成され、慎重に想定顧客属性を特定した上で、金融商品の販売に携わる金融業者に情報連携されるべきであり、今般その意義を明確にしていただいたという点は高く評価させていただきます。
例えばブラックストーンでは、流動性を犠牲にした対価としてリターンにプレミアムが上乗せされるプライベート資産を公募投信として組成をする際には、解約のお申込みに対して十分な流動性を確保すると同時に、万が一のときには、既存受益者の利益を損ねることがないよう、一定の解約制限を設けることで資産の強制的な売却を回避するなど、組成上の工夫を凝らしております。さらには、販売側の販売会社様におきましては、商品採用のデューデリジェンスにおいて、こういった点をしっかりと確認され、適合性の判断等に生かされています。そして、導入研修などを通じて販売の御現場での理解を深め、顧客からの確認書の徴求なども含む追加的な対応を実施されています。このように、製販全体が協業して適切な対応を行うというのが重要なのであり、今回のプロダクトガバナンスの策定を受けて、必ずしも業界が萎縮することなく、顧客のポートフォリオの多様化に資するような商品提供や開発が促される、そういった前向きなものとして捉えられるように期待をしております。
そして、2点目です。基本的な考え方の実効性の確保及び、補充原則4番目、5番目にございます、組成会社及び外部委託会社が販売会社から受け取る情報連携に関してです。組成会社・販売会社双方の自主規制機関等が連携をして、今後、フォーマットの作成も含めて実務的な検討を行うということです。また、販売会社は、組成会社が特定した想定顧客を踏まえて、自らの責任の下で顧客の適合性を判断し、金融商品を販売するということかと思います。
組成後の検証とともに、運用会社や外部委託先がよりよいアフターフォロー、次の商品の開発に活用するという観点で、金融商品を実際に購入した顧客属性に関する情報や顧客の反応、加えて、販売状況に関する情報も含めた記載にしていただいたということに感謝をします。具体的な案を検討する際には、適合性を基に、どのような顧客ユニバースに対して販売推奨をした結果、どのようなお客様が購入されたのか、または、販売経験等販売員の属性別の販売状況とか、実際の導入研修に応じた販売実績、こういったものが含まれてくると、組成会社としては組成後の検証が求められているわけですけれども、しっかりとした、ギャップ分析のみならず、具体的なアクションプランに向けて製販全体での建設的な議論が進むと考えておりますので、ぜひ御配慮いただければと思います。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、松尾先生、どうぞお願いします。
【松尾委員】
松尾でございます。私も、おまとめいただいた報告と、それから、改訂版の原則について賛同いたします。その上で2点申し上げます。
一つは、プロダクトガバナンスについてですけれども、本来、プロダクトガバナンスというのは、顧客に一番近いところにいる事業者が自主的・自律的に取り組むべきもの、それが基本だと思います。一方で原則を見ますと、各原則が、べきである、べきであるとなっておりまして、何か外から言われてやるような性質のようにも見えてしまうのですけれども、決してそうではなくて、各金融事業者がその事業の継続性を考える上で、こういったことを、プロダクトガバナンスの仕組みを構築することが不可欠であるという意識を持って取り組んでいただきたいということでございます。
とりわけここ数年は、これまで金融商品取引に距離を置いてきた人々が新たに金融商品取引に参入してきておりまして、その方々に資産形成の点で成功体験を積んでいただくというのが、今後、資産運用立国ということが成功するかどうか大きなキーポイントになると考えております。そういったことを踏まえて、各金融事業者におかれましては、ぜひ今回の報告と改訂版の原則を指針として自主的・自律的に取組を進めていただきたいというのが1点目でございます。
2点目は、報告の10ページから11ページにかけてのところで、株式投資型のクラウドファンディングとファンド型のクラウドファンディングで規制の整合性が問題になっている、整合性を図る必要があるというところでございます。これはもともと別の制度としてできて、それぞれの経緯でそれぞれのルールが展開されてきたところ、たどり着いたところを見ると同じところにたどり着いたんだけれども、規制がちょっと異なってしまうのではないかと、そういう局面の問題状況の一つだと捉えています。
そういったときには、先ほど坂委員からも御指摘のあったように、脚注19に記載していただいておりますように、同等の性質を有する者には同等の規制をということが基本的な観点になるのかなと考えております。その上で、この同等の性質というのを誰から見るか、どこから見るかということも重要かと思います。これはやはり規制の目的が投資者保護にあることからしますと、投資者、顧客にとって同等と言えるものについては同等の規制を課していくという、そういう観点でぜひ規制の整合性の確保を進めていただきたいと。こういった問題はクラウドファンディングのところ以外にもあると思いますので、ぜひそういった他のところについても点検を進めていただけるとありがたく存じます。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、松岡委員、どうぞお願いいたします。
【松岡委員】
ソニーグループの松岡です。発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。経団連の金融・資本市場委員会 資本市場部会長も務めております。まずは、本報告書の取りまとめ、どうもありがとうございました。
私のほうからは、12ページにございました銀証ファイアーウォールの規制の見直しについて、一言申し上げさせていただきます。報告書案の脚注にも御記載いただいておりますけれども、今般、事業会社が銀行に対して情報提供の禁止について再三伝えたにもかかわらず、銀行が証券会社に非公開情報を提供してしまうという事案が発生したことは、大変残念かつ遺憾に思う次第です。
このような事案は、金融機関に対する信頼を著しく損なうものであるというのは申し上げるまでもなく、顧客である事業会社の立場としましては、金融機関の顧客情報管理に不安と懸念を抱かざるを得ません。このような状況が改善され、リスクが払拭され、担保されない限りは、規制の見直しを議論するのは難しいと考えております。まずは、顧客情報管理、利益相反管理、優越的地位の濫用防止の観点から、現行の規制の厳格な運用とその改善に取り組むべきであると考えます。
以上です。どうもありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、オンラインで御参加の野村委員、どうぞお願いいたします。
【野村委員】
どうもありがとうございます。野村資本市場研究所の野村でございます。私も、この報告書案は、多くの意見を取り込みつつまとめられたものと理解しておりまして、その内容について異論はございません。取りまとめ、誠にお疲れさまでございます。
コメントを2つほど述べさせていただければと思います。まず1つ目は、このプロダクトガバナンス原則、すなわち、追加された補充原則、それから、原則6の注ですけれども、これらについては若干細かい記述も見られるように思います。そうであるがゆえに、これはルールではなくてプリンシプルであること、すなわち、ベストプラクティスへの道のりを示すものであるということの理解が、十分関係者に浸透するようにぜひお願いしたいと思います。関係者一同が、この改訂原則、補充原則、これらに前向きに取り組めるようにするということが、まずは第一歩として極めて大事だろうと思う次第です。
それから、2点目ですけれども、プロダクトガバナンス原則の策定の背景、報告書案の70行目の辺りにも記述していただいていますが、新興運用会社の参入、そういったことも含めたイノベーションを通じて、多様な機会を顧客に提供できる、そういう業界に発展していくことが求められており、大事なのだろうと思います。このプリンシプルがその後押しになるように活用されていくことも、このプリンシプルをつくった大きな意義になると思います。そういったことも重要だと思いましたので、ここで申し述べさせていただきました。
私からは以上でございます。どうもありがとうございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、同じくオンライン御参加の武田委員、どうぞお願いいたします。
【武田委員】
ありがとうございます。まずは、事務局におかれましては、報告書の取りまとめ、大変ありがとうございました。本ワーキング・グループで議論されたことを丁寧に取り入れていただいたと拝見しております。
報告書の記述については原則賛成の立場ですが、改めて、重要と思う点についての意見と、最後に、1点質問をさせていただきます。
意見として再度申し上げたいことは、実効性の確保の重要性です。私は原則プリンシプルベースに賛成しております。金融業界において、ここで書かれていることが正しく理解・周知、そして一定の規律で運用され、本来の目的である顧客の最善の利益を実現することが望ましい姿であると思います。不要に事務負担を金融業界で増やすことは本意ではありません。
しかし、その手法や情報連携などは、個別の金融機関に委ねられてくることになると思います。繰り返し述べましたとおり、情報連携などは手段であって目的ではないとこと、また、情報連携さえすれば、顧客の適合性が担保されるわけではございませんので、最終的にはそうした取組に依存している面は否めません。その点、取組情報のフォローアップとして書かれているページがありますが、金融事業者の取組が不十分である場合や、組成会社と販売会社との情報連携等について、共通ルールが適切だと判断される場合には、ルールベースでの対応を検討することも必要になる可能性があります。
では、どう判断していくのかという点が最後の質問になりますが、実態や運用のフォローアップのモニタリングについてはどのように進められる予定なのか。そして、先ほど申し上げたような、ルールベースでの対応を検討することも必要になる点は、どこで、どのような形で判断していく予定でいらっしゃるのか、その点を最後に確認させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【神田座長】
ありがとうございました。それでは、御質問の点についてお願いします。
【齊藤企画市場局市場課長】
事務局からお答えさせていただければと思います。モニタリングをどう進めていくのかということでございますけれども、顧客本位の業務運営に関する原則の改訂がされました後には、各金融機関、金融事業者の方々の取組状況について金融庁としてモニタリングをしていくことになると考えております。どのような形でやっていくかにつきましては、モニタリングチームのリソース・態勢を踏まえつつ、優先順位をつけながらやっていくものと考えております。また、モニタリングを行った結果についても、御指摘いただいているとおり、分かりやすい形で対外的に示していき、好事例等も含めて、それが業界の中で広がっていくことが重要であると考えております。
そして、ルールベースについて必要性をどう判断していくのかということでございますけれども、モニタリングの中で課題意識が生じた場合に、さらに一歩進めた形でルールベースが必要かどうかを考えていくものと理解しております。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
これで、本日御参加の委員の皆様方全員から御発言をいただきました。どうもありがとうございました。
それでは、オブザーバーの皆様方で御発言があれば承りたいと思いますけれども、チャットに入れていただけますでしょうか。
今、投信協会さんから入れていただきましたので、投信協会、杉江さん、どうぞお願いいたします。
【杉江オブザーバー】
投信協会の副会長をしております杉江でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
お忙しい中、建設的に御検討いただきました委員の皆様方、お取りまとめをいただきました事務局の方々に感謝を申し上げたいと思います。投資信託協会といたしましては、今回事務局より御提示いただきました考え方につきましては基本的に賛成でございます。特に、金融商品の組成会社と販売会社が連携して、製販全体として顧客の最善の利益を実現するという基本的な考え方が示されたこと、また、こういうような取組を実施する際には、コストや実務面のフィージビリティにも配慮するというプロポーショナリティの考え方が明示されたことを高く評価したいと思っております。
その上で、補充原則1について1点だけコメントをいたします。今回補充原則1にて掲げられました、経営者としての十分な資質を有する者のリーダーシップの下、ガバナンスの構築と実践を行うべきとの考え方は、運用会社だけではなく、インベストメント・チェーンを構成する全ての金融事業者に求められるものであると考えます。今後、顧客本位の業務運営に関する原則の見直しを検討される際には、ぜひ同様の考え方を原則本体にも盛り込むことを議論していただきたいと考えているところでございます。今後、投信協会といたしましては、組成業者と販売業者との連携を実効性のあるものとするため、関係団体との協議の場を設定いたしまして、プロダクトガバナンスの向上のために実務的な検討を行ってまいりたいと考えているところでございます。
また、本日多くの委員から御指摘をいただきましたが、事業者としてこのプロダクトガバナンスを定着させていくということが大変重要なことだと考えております。今回取りまとめられました補充原則につきましては、投資信託協会の会員によりよく理解をしていただきまして適切に対応することができるように、会員向けの説明会の開催をするなど補充原則の定着のための努力を投資信託協会として続けていきたいと考えているところでございます。引き続き、委員の皆様方に御指導いただけますようお願いをいたします。ありがとうございました。
私からは以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、信託協会、藤井さん、どうぞお願いいたします。
【藤井オブザーバー】
信託協会で業務委員長を務めております、三井住友トラスト・ホールディングスの藤井でございます。取りまとめの御尽力に感謝申し上げます。
本日、私が発言をさせていただくのは、資料1の122行目以降、組成会社において本補充原則の趣旨を踏まえて適用範囲を自ら考えて対応していくという考え方が示されている点です。我々信託業界は、お客様の多種多様なニーズに応えるために、財産の運用・管理・承継といった様々な機能を持った信託商品を組成して取り組んでおります。財産の管理・承継を目的とした信託商品は、多くの場合には元本補填契約が付されておりますが、運用を主とした投資性のある信託商品もあり、こうしたものは特定信託契約として金融商品取引法上の規制が準用されることとなっております。このように、信託商品の特徴は様々でございますけれども、今回の議論、原則の趣旨を踏まえた各社の取組を信託協会としても適宜サポートしていきたいと考えております。
私からは以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、生命保険協会さん、どうぞお願いいたします。
【佐藤オブザーバー】
生命保険協会で一般委員長しております、日本生命の佐藤でございます。本日はオブザーバーとして発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、本ワーキング・グループにオブザーバーとして業界として参加させていただきましたことについて、御礼申し上げたいと思います。
生命保険協会からは、プロダクトガバナンスに関する補充原則に対する受け止めについてコメントをさせていただければと思います。基本的な考え方に記載いただいてございますけれども、製販全体としての顧客の最善の利益を実現するという観点は重要であり、生命保険協会としてもその趣旨に賛同してございます。
また、原則の対象につきましても、個別の金融商品によって原則の適用がなじまないものがある旨を4ページの120行目以降に記載いただいてございます。これについては、ワーキング・グループにおける議論を踏まえまして、商品性等の違いを考慮いただき、丁寧な対応をしていただいたものと受け止めてございます。ありがとうございます。
また、前回のワーキング・グループの際にもお伝えさせていただきましたけれども、生命保険協会におきましては、本年4月にガイドラインを改正しておりまして、外貨建ての一時払い保険に代表されるような特定保険契約につきましては、年齢や投資経験、リスク許容度などの想定顧客の属性を明確化するなどの対応を求めているところでありますけれども、今後は組成会社として販売会社に対しましてその取組状況をフォローしてまいりたいと考えております。こうした取組を推進する中で、生命保険業界として引き続き、製販一体となって顧客の最善の利益を踏まえた対応を進めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、日本証券業協会、飯山さん、どうぞお願いいたします。
【飯山オブザーバー】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。日本証券業協会、オブザーバー、飯山でございます。まず、本報告書案の作成に当たりまして、神田座長、委員の皆様による御議論、事務局の皆様の御尽力に感謝申し上げます。その上で2点ほど申し上げたいと思います。
まず、プロダクトガバナンスについてです。報告書案でもお示しいただいておりますとおり、販売会社と組成会社等との間の情報連携につきましては、商品の複雑さやリスク等の金融商品の特性等に応じ、連携すべき対象商品の範囲や情報の内容等について、コストベネフィットや実務面のフィージビリティにも配慮しながら行うことが重要であると思っております。
次に、銀証ファイアーウォールについてです。今般、監視委員会から指摘されていますのは、日本の金融資本市場のクレディビリティーを傷つけかねない複数の行為であり、ここまでの市場制度ワーキングでの銀証ファイアーウォールに関する議論を振り返りますと、にわかに理解できない内容と思っております。こうした行為は、証券会社による付加価値ベースのフェアな競争を阻害することにもなりかねませんので、深刻に受け止めております。
また、今後の銀証ファイアーウォール規制に関する議論については、金融機関における優越的地位の濫用防止態勢、利益相反管理態勢及び顧客情報管理態勢の整備状況に関するモニタリングの結果を踏まえるということですが、今回のような事案が繰り返し起きていることを考えますと、銀証ファイアーウォールの緩和というよりも、むしろ銀行に関する諸規則、諸規制において金商法とのバランス、こういった観点も含めて見直すべき点があるのではないかという観点で御議論していただく必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、全国銀行協会さん、どうぞお願いいたします。
【安地オブザーバー】
発言の機会いただきまして、ありがとうございます。全銀協の安地でございます。また、委員および事務局の皆様におかれては、非常に良い議論を報告書にまとめていただき、ありがとうございます。
2点申しあげます。
まず、プロダクトガバナンスにつきましては、製販、インベストメント・チェーン全体、ライフサイクル全体にわたって、包括的に整理いただきましたので、これを当協会でもしっかりとフォローしていきたいと思います。また、その中では、情報連携等の実務面にも配慮いただいていると理解しており、委員からもコメントがございましたように、各社においてしっかりと創意工夫して、顧客の最善の利益にかなった取組をしていきたいと考えております。
2点目は、ファイアーウォール規制のところでございます。何名もの委員からコメントがあったように、今般、会員行において処分勧告を受けるような事態が発生し、皆様の信頼を損なうような事案が発生しましたことを深くおわび申し上げたいと思います。今回の事案を大変重く、また真摯に受け止めて、管理態勢等の見直し、改善をしっかりと図っていきたいと考えております。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、委員の皆様方からもし追加の御発言等がございましたらお伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
特にないでしょうか。ありがとうございます。
それでは、今御議論いただきました報告の案、そして顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案についてでございますけれども、基本的に皆様方から御賛同いただけたと思います。そこで、念のため本日いただきました御意見や御指摘を踏まえて、事務局と私とで確認の作業をさせていただきたいと思います。併せて、てにをはを含めて、恐縮ですけれども、表現の平仄などの精査につきましても、事務局と私のほうでさせていただきたいと思っております。これらの点につきまして、大変恐縮ですけれども、私に御一任をいただき、取りまとめの作業をしたいと思いますけれども、御承認いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【神田座長】
どうもありがとうございます。
もう1点、報告の案と顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案の公表等の取扱いでございますけれども、これも、後者については先ほどありましたようにパブコメということも予定されております。いずれにしましても、公表等についての取扱いについても私に御一任いただけると大変ありがたく存じますけれども、そうした進め方をさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【神田座長】
どうもありがとうございます。それでは、御承認をいただいたということで先に進みたいと思います。
このワーキング・グループのメンバーの皆様方には、いつものことでございますけれども、大変御多忙の中をこのワーキング・グループの議論に積極的に御参加をいただき、また、毎回精力的かつ建設的な議論をたくさんいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。皆様方にはまだ今後もいろいろと助けていただいたり、サポートをしていただいたりすることもあろうかと思いますけれども、引き続き御指導、御鞭撻のほどをお願いできれば大変幸いに存じます。
それでは、最後に事務局から御連絡等ございましたらお願いいたします。
【齊藤企画市場局市場課長】
委員の皆様におかれましては、報告等の取りまとめに向けて精力的に御議論いただきまして、誠にありがとうございました。報告案の確認につきましては、神田座長からお話しいただいたように、確認させていただき、なるべく早く公表させていただきたいと考えております。その後、金融審議会総会へ報告するという段取りを想定しております。
また、この顧客本位の業務運営に関する原則の改訂案につきましては、先ほど有吉委員からの御質問にお答えさせていただきましたように、金融庁において、本報告の取りまとめの後にパブリックコメントを実施したいと考えております。その後、パブリックコメントに寄せられた御意見等を踏まえて最終化したいと考えております。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
局長、何かございますか。よろしいですか。
それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。皆さん、どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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企画市場局市場課(内線:3970、2393)