金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第5回)議事録
平成28年9月21日
- 【神田座長】
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それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。市場ワーキング・グループの第5回目の会合になります。皆様方には、いつもお忙しいところ、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
まず初めに、この会合に参考人として、ご参加していただく方を事務局からご紹介いただきます。お願いいたします。
- 【齋藤市場課長】
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では、私からご紹介申し上げます。
委員の皆様方から見て、事務局の右側にお座りいただいております、野村資本市場研究所研究部長、関雄太様でいらっしゃいます。
- 【関参考人】
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よろしくお願いいたします。
- 【神田座長】
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よろしくお願いいたします。
それでは、議事に移らせていただきます。本日でございますけれども、「インデックス運用の位置付けとETF等の投資商品」ということをテーマにご議論をお願いしたいと思います。なお、このテーマについてご審議いただくのは、今回が初回ということになります。
そこで、まず、日本取引所グループ東京証券取引所の土本取締役専務執行役員から「今後のETF市場」についてご説明いただきます。
次に、今、ご紹介いただきました野村資本市場研究所の関研究部長から、「海外ETF市場の発展と規制上の課題」についてお話をいただきます。
続けて、事務局からご説明をしていただきます。
これらを済ませた後で、質疑応答、意見交換をさせていただくということにさせていただきたいと思います。
それでは、まず、土本さんからよろしくお願いいたします。
- 【土本オブザーバー】
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東証の土本でございます。今日はこのような機会を頂戴しまして、ほんとうにありがとうございます。
日本において、15年以上にわたりまして、ETFのセカンダリーマーケットをご提供させていただいていることを踏まえまして、本日は前半でETFの商品としての特徴、あるいは、世界、日本でのETF市場の現状について概観をさせていただいた後、後半で、今後、日本のETFマーケットをよりよくしていくために、幾つかの提案も含めまして、ご報告をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
早速でございますが、目次は飛ばしまして、資料3ページ目をご覧ください。
まず最初に、今回の金融審の大きなテーマの1つでもあります、家計のポートフォリオ・リバランスということから考えてまいりたいと思います。このワーキングのフィデューシャリー・デューティーの回でも指摘がされておりますとおり、家計のポートフォリオを見ますと、株式や投信の占める割合は15%程度にとどまり、80%程度は現金、あるいは、保険で占められております。貯蓄から投資へというフレーズは、この10年間ずっと変わっておりませんが、まだまだ家計のポートフォリオ・リバランスが本格的に進み始めたとまでは言えないのが日本の現状でございます。
野村総研さんが指摘されている分類でございますけれども、家計の金融資産の項目を2つ、すなわち、将来に備えるためのお金、そして、積極的に増やすためのお金に分けられるのではないかというご指摘がありますが、その背景として、まだ株式や投信は積極的に増やすためのお金として使われているのではないか、こういう問題意識がございます。将来に備えるためのお金は現金や保険として持たれているということでございます。
貯蓄から投資への移行を進めて、ポートフォリオ・リバランスを進めていくに当たって、今は保険や現金として持っておこうと思われております、将来に備えるためのお金として投資が行われるような意識の変革と、将来に備えての投資を安心して行うことができるような環境整備が必要だということではないでしょうか。では、将来に備えるために、どんな投資が必要とされているのでしょうか。次のページをご覧ください。
将来に備えるためのお金による投資でございますので、当然に長期投資である必要がございます。また、ただ、長期であるだけではなくて、リスクを避けるために、株や債券などさまざまな資産クラスに投資される必要があり、1つの資産クラスの中でも複数の銘柄を持つといった形で、十分に分散された投資である必要がございます。これを個別の株や債券で行おうとしますと、多額の資金が必要であり、個人にとっては必ずしも容易とは言えません。
そこで、投資信託やETFのように、例えば、日経平均構成銘柄をまとめて一度に少額から買えるといった商品が必要となってきます。では、どんな特徴を持つ商品が必要でしょうか。さまざまな商品の中で、特にETFに限ったわけではありませんが、ここでは長期分散投資のために必要と考えられています要素を3点挙げてございます。
1つはコストが低いという点です。これまでもいろいろなところで指摘をされておりますが、利回りよりコストが高ければ、資産の成長を望むことはできませんし、特に金利が低い昨今、その重要性はより高まっていると考えられます。
2つ目に透明性が高い点。これはコスト構造もそうですし、例えば、理論価格との乖離がある場合には、それが容易にわかるといった商品であるべきではないかということです。
そして、3つ目の簡単であること。どういうときに、このファンドは値上がりするのか簡単に想像することができないような商品で運用することは難しい。専門知識がなくとも、その商品が何に投資をされていて、どうなるとどんな値動きをするのか、これが容易に理解できる商品である必要があるのではないでしょうか。また、そう考えますと、1つで誰にでも対応できるという複雑な商品だけがあるのではなくて、簡単な商品を組み合わせることで、個々人によって違うニーズに応えられることが望ましいのではないかというふうにも考えられます。
こうした点を踏まえまして、次のページからは、本日のテーマであるETFについて、考えてみたいと思います。
5ページをご覧ください。後にも触れさせていただきますが、ETFは設定交換と言われる新規発行と解約を大口に限定していること。そして、取引所商品の販売チャネルを利用することができるということで、一般的にコストが低く抑えられています。また、上場規則によりまして、ファンドが保有する全ての銘柄の開示が義務づけられているなど、透明性が高く、指数に連動することが求められていることから、値動きがわかりやすいということも言えると思います。日本で最も有名な株価指数は日経平均だと思いますが、日経平均と日経平均ETFは当然、同じような値動きをします。これがわかりやすさです。
ETFだけが投資にふさわしいということではありませんが、ここで申し上げたいこととしては、ETFは個人投資家の資産形成、特に、今後求められる長期分散投資に適した商品の1つと言えるのではないでしょうか。では、世界や日本でどの程度ETFが利用されているのか、実際の数字を見ていきたいと思います。
次のページをご覧ください。6ページの左側のグラフでございますけれども、こちらは、ブラックロックさんの公表資料をお借りしてきております。ETFにETN等も含む少し広い概念として、ETPと言われておりますけれども、世界のETPの残高と銘柄の数を見ますと、2005年ごろから急拡大を続けております。今回、細かい資料まではつけてございませんが、最初は株価指数から始まりましたETFが、原資産の種類についても多様化が進んでおりまして、特に海外では、株式ETFだけでなく債券ETF、あるいは、株式の中でも配当やROEといった指標に着目したスマートベータETF、こういった一工夫ある商品も急拡大をしております。
左側の表の中で、日本の純資産残高も示しておりますが、下のほうに、地を這うような感じでございまして、小さ過ぎて見えづらいので、大きくしたのが右側のグラフでございます。右側の日本のETFの純資産残高の推移だけを見ますと、なかなかよいペースでの拡大にも見えますけれども、まだまだ世界の中で見れば、小さなマーケットと言わざるを得ません。
次に7ページをご覧ください。今回、参考として載せておりますけれども、米国の機関投資家によるETFの利用状況を概観したものでございます。米国はETFが非常に広く使われている国で、確定拠出年金もそうですし、独立系アドバイザー等を通じたETFへの投資も非常に盛んだと聞いております。そこまではご存じの方も多くいらっしゃると思いますので、本日は、逆に機関投資家の利用状況の資料を掲載させていただいております。
一番左側にございますが、アメリカの機関投資家の43%が、それぞれの運用資産の中で10%以上をETFで運用しているとの調査結果がございます。調査の中では使い道、何のためにETFを使っているのかといったことも聞いておりますけれども、コア・アロケーションという、まさに分散投資のために投資対象として使っているものが最も多くなっております。また、それだけではなくて、特定のセクター、あるいは、中小型株といったサイズへの集中投資に使う。あるいは、投資に至るまでの一時的なポジション構築に使うといった理由も見られますし、ETFのほうが原資産より流動性が高いから使うといった回答も見られております。ここからは、プロの機関投資家においても分散投資に有用なツールだと考えているということがおわかりいただけると思います。
次に、8ページをご覧ください。純資産残高と売買代金で見た日本のETFマーケットの現状でございます。先ほども見ましたように、日本のETF市場も拡大を続けておりますが、左側の円グラフからわかるとおり、利用されているETFがほとんど日本株もので、しかも日本株のレバレッジを含んだものに集中をしております。また、右側の売買代金を見ましても、TOPIXが少しあるぐらいで、ほとんどが日経平均型となっております。長期分散投資のために有用なツールで、さまざまな資産クラスへの投資を容易にすることができるというETFの特性を考えますと、もう少し多様な銘柄、あるいは、資産クラスで使われてもよいように思います。
次に、9ページをご覧ください。ここまでは、ETFの本来、長期分散投資に向いているのではないかということを確認した後、日本ではあまり利用が進んでいないという実態を紹介してまいりました。実際に日本のETF市場はまだまだ使いにくいという声も聞かれております。
ここからは、その改善案について考えてまいりたいと思います。これまでの市場提供の経験を踏まえますと、9ページでご紹介させていただいている3点について整備がなされることで、実際に長期分散投資に使われる商品として、より有効に機能するのではないかと思っております。1点目が品揃えの拡充、2点目が流動性、そして、3点目が認知と選択ということでございます。以下のページでそれぞれの項目について、具体的な提案も含めてご説明をさせていただきたいと思います。
10ページをご覧ください。その前に、ETFの特性と、その裏返しではありますが、制約についても1点、お話をさせていただこうと思います。先ほど、ご指摘をさせていただきましたとおり、ETFはランニングコストが低いですし、株式のように売買をされておりますけれども、株とは異なりまして、多くの銘柄が1万円程度から投資を行うことができます。
一方で、例えば、投資信託のように、ちょうど1万円を買いたいとか、あるいは、毎月1万円積み立てたいといった場合に、どうしても端数が出てきてしまいます。証券会社の手数料は、例えば、100円といったような最低手数料が決まっております。したがって、例えば、積み立てで1,000円といったかなり少額での買い付けの場合に、手数料が比較的割高になってしまう懸念がございます。既に、るいとうで対応されていたり、端数は持ち越すことで積み立てを可能にしているケースもございますが、より広く長期投資で利用されるためには、積み立て投資などを行いやすくするような何らかの工夫が期待されているところでございます。
次に、11ページをご覧ください。話を戻しまして、日本のETF市場にとって必要な3つの取組みについて、順にお話をさせていただきます。
1つ目は、品揃えに関するものになります。今の日本のETFの上場銘柄は、国内株式や先進国株式が多く、その他の資産クラス、例えば、債券で言いますと、先進国、新興国を含め、ほとんどありませんし、株式も新興国のものはほとんど上場されておりません。最初に申し上げましたとおり、分散投資を考えますと、これらの資産クラスについても上場していることが望ましいと思いますし、既に上場されている国内や先進国株式につきましても、より運用方法に工夫がなされたETFの上場を促していきたいと考えております。一方、商品を増やしても実際に買いたいときに適切な値段で買うことができなければ、せっかく上場されても上場している意義がございません。
そこで、次に流動性の問題について、見てまいりたいと思います。次のページをご覧ください。12ページになりますが、改善すべき重要な課題の1つが流動性の向上だと認識しております。ETFの上場銘柄数は、東証の場合は200を超えてまいりましたけれども、銘柄によって流動性が低い、すなわち、いつでも買える、いつでも売れる状態にないということで、ETFへの投資を行いにくいという現状がございます。いかに品揃えを増やしたところで、実際に適切な価格で買うことができなければ、上場していないのと同じですので、品揃えを増やしていくためにも、まずは流動性の改善が必要だという認識でございます。
このページでは、例示として、S&P500に連動するETF、これは世界で最も有名なETFで日本でも重複上場をされております。しかし、日本では十分な注文が出ていないということで、売り買いの価格がかなり開いてしまっております。やはり個人投資家がいつでも買える、売れるようにするために、適切な値段で十分な量の注文提示が必要だと考えております。では、それをどう担保、改善していくのかというのが次のページになります。
13ページでございます。解決策の1つとしては、マーケットメイク制度の整備ということでございます。先ほどご覧いただきました銘柄だけではなくて、十分な注文提示がなされていないETFが多くございます。そこで、原資産を調達してETFに注文を出す、マーケットメイカーが必要となってまいります。証券会社の自己売買部門、あるいは、外国物ETFの調達を得意とするような海外業者等も証券会社への委託を通じてマーケットメイカーとなることで、注文を出していただく仕組みを整備したいと考えております。
今は特に制度がございませんけれども、今後は制度として注文を提示する義務を満たしたマーケットメイカーには、例えば、手数料を一定程度割り戻すといった義務とインセンティブをセットで導入することで、各ETFをいつでも適切な価格、数量で売買できるようにすべきだと考えております。
もう1点は、注文を提示しやすい環境の整備ということでございます。技術的な点にはなりますが、これは今まさに申し上げました、マーケットメイカーについて、彼らは投資家がいつでも買えるよう注文を提示するために、場合によっては、空売りをする必要がございますが、現状では、空売り規制の対象となってしまいますために、継続的、かつ実勢にあった有利な価格で注文を提示することが難しいということが想定されます。マーケットメイカーが制度に則ってETFの注文を出す場合には、原資産の価格を参照しながら注文を出しますので、それが売り崩しにつながることは考えられません。そこで、マーケットメイカーが注文を提示する義務を負って行う、マーケットメイク制度内での空売りについては、空売り規制の適用除外としてもよいのではないかと考えます。
次のページで、流動性の改善について、もう1点だけ提案をさせていただきます。14ページでございます。こちらも、かなり技術的な論点ですので、詳細な説明はいたしませんが、ETFを市場に流通させるためには、現物を差し入れてETFに設定する、もしくは、逆にETFを現物に交換するというプロセスを踏む必要がございます。日本では、この設定交換というプロセスが、投資家サイドとETF発行者サイドで、相対で行われておりますことで、さまざまな非効率が生じておりますが、資料の一番上の2行にございますように、米国と同様に、両者の間に清算機関が介在する仕組みを導入することで、設定・交換の統一化・効率化を図って、流動性の向上を図ることが必要ではないかと考えております。
次に、15ページをご覧ください。3つ目の改善点になりますが、ETFの認知度について、問題意識と改善の余地を強く感じております。今までご紹介させていただきましたとおり、ETFは長期投資に資する商品の1つとしての価値がありますが、ETFという商品があることを知ってもらって、ETFのメリット、デメリットを投資家が知った上で、よければETFを選ぶことができるような環境を整えることが必要ではないかと認識しております。
弊社が、つい最近行いました調査になりますけれども、ETFの一般的な認知度は、名前を知っていますという方を含めても25%にすぎません。ETFは資産運用の手段として、ほとんど検討の俎上にすら上がっていないのが現状となっております。まずは、認知度を上げるべく、効果的な取組みを行っていく必要があると痛感しております。
最後、16ページでございます。冒頭に申し上げましたとおり、日本では、まだ投資が進んでいないという現状があります。先ほどの認知度の話も含めまして、投資に携わる一員としまして、国民の資産形成を担っていくに当たって、弊社を含めまして、求められる取組みを3点、挙げております。
1つは投資教育の充実ということでございます。投資教育を充実させることで、投資者みずからが自律的な投資判断や資産形成を行うことができるようにしなくてはならないと思います。
もう一つは、プロの的確なアドバイスということでございます。本日、ここには実際に投資家と向き合っていらっしゃるFPの方、あるいは、証券会社の方も多くいらっしゃいますが、投資教育の充実に尽力する一方で、全ての投資家が高度な知識を持てるというわけではありませんので、プロの方が適切なアドバイスを行うことで、それぞれの投資家がニーズや各自の資産形成プランに沿った運用を行うことができるのではないかと思います。
最後に、十分な情報提供ということですが、さまざまな商品が求められているわけですけれども、各商品について、投資家が比較して、どの商品で投資を行うべきかの判断ができるように情報提供についても一層の拡充を努めていく必要があると考えております。
簡単でございますが、私からのご報告は以上でございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、関さん、よろしくお願いいたします。
- 【関参考人】
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野村資本市場研究所の関でございます。本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。
私どもは、継続的に米国、欧州の資産運用業界を調べている中で、ETFに関しましても、継続的にというか断続的に調査をしてまいりました。その中で、今回の市場ワーキング・グループのアジェンダに沿う形で、海外でのETF市場がどのように発展してきたのかということと、発展してきた中で、規制上の課題もいろいろと浮き彫りになっているんじゃないかという問題提起をいただきまして、それに沿う形で資料を作成してまいりましたので、ご紹介していきたいと思います。
まず、1ページ目でございます。ブラックロックさんの資料から借用させていただいた形になっておりますけれども、グローバルなETP、Exchange Traded Productsの総資産残高というのが、直近、2016年8月末で、約3.3兆ドルを超えてきております。このラインを見ていただくと、継続的に伸びているということ、それから、世界金融危機が起きた2008年以降の再成長のトレンドが大変強いことに、感銘を受けます。ある意味では、21世紀になってから、世界の金融市場で起きた最大のイノベーションの1つと言ってもいいのではないかと思っている次第でございます。
2ページは、ETF、ETP市場の構造的なスナップショットをグローバルに捉えたものでございます。これもブラックロックの資料を参考にさせていただいているわけでございますけれども、まず、上場市場別にETP、ETFの資産残高を見てまいりますと、米国が約2.4兆ドルとなっておりまして、グローバルなETF市場全体の約7割ということでございます。グローバルな金融イノベーションと申しましても、米国中心にそれが進展していることがわかります。
それから、後でETF、ETPの多様化ということについてコメントさせていただきますが、依然としまして、ETFが連動している原資産、原証券に関しましては、株式が全体の約7割5分を占めておりまして、米国中心、株式中心というのがグローバルなETF市場の構造の大きなポイントでございます。
それから、プロバイダーということで申し上げますと、ブラックロックさん、バンガードさん、ステート・ストリートさんというビッグ3がございまして、この3社がグローバルなETFマーケットの成長を牽引してきている存在ということも、補足まで、コメントさせていただきます。
次に、3ページは、ETF市場拡大の理由と意義ということに関してまとめています。ETFに関しましては、先ほどもご説明がございましたとおり、低コストであるとか日次の流動性が確保できるとか、インデックス運用ができるといったさまざまなメリットがあるわけでございますけれども、それに加えまして、ここに書いてございますような、大きく4点の拡大の理由とか意義がコメントできるのではないかと考えております。
1つは、個別証券投資からバスケットでの投資とかポートフォリオ投資を好む投資家が、機関投資家、個人投資家を問わず、増えてきていることがございます。
それから、もう一つは、ETFの多様性を活用する形で、銘柄分散、セクター分散、国際分散、はたまたロング・ショート取引といったポジションを、つまりプロフェッショナルな、あるいは非常に専門性の高い投資戦略を、アマチュアの投資家でも、ETFを活用してつくることができる。それを通してリスクの分散、もしくは、リスクの中立化が可能となってきたということが大きな意義として挙げられると思います。
それから、後でコモディティETF等についてもコメントさせていただくわけですが、証券市場の投資家が証券市場にいながらにしてと言えるかと思いますけれども、コモディティ投資などにアクセスできるといったメリットもあると思います。
さらに、その結果といたしまして、ETFの価格形成とか、ETFの資金流出入がそのほかのファンドのマーケット、もしくは、証券市場に対して、いろいろな情報を提供しており、ある意味では、マーケットの動きとか、今後の投資戦略というものも、ETFのマーケットから新しい情報が生まれて、その次の投資行動につながっていくといったフィードバック・ループが形成されていると評価してよいのではないかと思っている次第でございます。
米国にフォーカスを絞る形で、もう少しコメントしてまいります。4ページには、米国ETFマーケットの上場本数と資産残高の伸びを左側のグラフに置いております。私の観察、考察といたしましては、おおむね本数が増えると、それに従って資産残高も増えていくという好循環が観察できるのかなと思っておりまして、ETFが多様であればあるほど、さまざまなETFの使い道が広がり、それを支持するというか、それに期待する投資家がお金を入れてくるといった循環があるのではないかと思っております。
ETFの多様化というものを、右側のグラフを見ていただきますと、わりと時代を追って変わってきているところがございまして、2000年代の前半は、市場全体の株価指数、もしくは、セクターの株価指数に連動するETFが、ETFの本数の多様化、増加をドライブしたわけでございますけれども、それ以降は、グローバル・海外株式、米国株式に連動するもの、それから、スマートベータETFですとか、債券ETF、コモディティETFを中心に、株式以外のものに連動するETFが、ETFの多様化というものをドライブしている様子が見てとれます。
次に、5ページでございますが、現在の米国のETF市場において、資産残高の大きなファンド30本をまとめております。英語の指標で見づらくて恐縮なのですけれども、こういったラインナップが主要ETFだということを、ざっと見ていただくためのものでございます。1位の有名なスパイダー、SPDRと書いてスパイダーと読んでおりますけれども、S&P500株価指数に連動するETFでございますが、現在、資産残高が大体2,000億ドルということで、大変巨大なファンドになっており、ご存じのとおり、米国の株式市場の中で、平均的な日次の出来高、売買高が最も大きな銘柄としても知られているところでございます。そのほか上位の銘柄は、円に換算いたしますと、それぞれ1兆円とか2兆円を上回る大きなETFになってきているわけなんですけれども、中にはREITの指数とか、ハイイールド債の指数といった多様なアセットクラスに連動するETFがその中に入ってきていることがおわかりいただけると思います。
6ページには、ETFが切り開いてきたアセットクラスみたいなことについて、金、エマージングマーケットの株価指数、それから、日本株ETFについても、このぐらい急成長していることを見ていただくための資料をつくっております。ただ、急成長と言いましても、2013年以降は、金とかエマージングマーケットのETFに見られますように、急激に資産が減少したりとか、乱高下もあるということでございます。一方で、金ETFの資産残高が大きく変動しても、金のマーケットそのものでは大きな混乱は見られなかったということでございまして、後で述べる市場の安定性への影響といったものも、この辺の実績なり、トラックレコードを評価する必要があるかなと思っている次第でございます。
7ページに移ります。ETF市場の構造変化について、まず、プロダクト面の革新では多様化ということを申し上げております。それから、後に論点として出てくるかと思うんですけれども、ETFへ投資する人の範囲、タイプもだんだんに変わってきておりまして、おおむねホールセール中心だったマーケットが、徐々にリテール投資家の重要性が増してきていると言われております。その背後には、投資一任サービス、あるいは、ラップ口座の中でETFを活用する、もしくは、ETFだけでラップ口座をつくる金融機関があるようでございますし、昨今では、ロボアドバイザーのような、対面のアドバイスを通さずに、ETFの組み合わせを提供するようなベンチャー企業なども出てきたということでございまして、リテール投資家におけるETFの活用が、さらに注目されているところでございます。
ETFの規制上の課題に移りますが、その中で、どうしてもセカンダリーマーケットということについて注目せざるを得ません。アメリカのETFのセカンダリーマーケットの場合、ビビットに見られる統計資料がなかなかないんですけれども、NYSEアーカ取引所、もともとETFの上場に力を入れていたアメリカン証券取引所の流れを汲む取引所に、多くのETFが上場しており、セカンダリー取引でも中心的な位置づけを占めています。けれども、現在、アメリカではETFの上場本数が約1,600本ございまして、非常に流動性が高い、あるいは、日次の取引が盛んにされるETFもあれば、そうでもないETFも出てきており、さまざまな問題が指摘され始めたところです。
8ページ以降は、ETFの構造について紹介をしております。時間の関係上、ポイントだけになりますが、もともと基本形であり、また、日本のETFでも基本になっているのは、現物出資型、もしくは、現物拠出型と言われる形で、原証券のバスケットでファンドのユニットを発行、償還していくプロセスでございます。ここでは、指定参加者の役割が大変重要になります。指定参加者の存在によって、投資家とファンドがダイレクトにつながっていないことによる不透明性があるんじゃないかと批判されることもございますし、逆に、指定参加者が間に入ることで、急激な証券の流動性の変化に対して、一種のバッファーを形成しているという見方もあるようでございまして、評価が難しいところなんですけれども、現物出資型が基本であるということでございます。
そして、9ページでは、コモディティETFにおいて、現物出資型のETFに似た構造を、信託を活用してつくろうとしている例を示しています。フィジカルな資産を活用して実物資産の価格に連動するコモディティETFをつくりたいとした場合には、こういったストラクチャーをとるケースがほとんどのようですが、現物のコモディティを管理するのはなかなか大変だという問題がございます。10ページに書いてございますような、シンセティックETFと呼ばれる構造では、コモディティとか為替の価格の動きをまねるというか、基本的には投資家とETFのファンドの間は、現金でのやりとりをして、先物取引ですとか、スワップ取引を行っていくという形をとります。こうした変わったタイプのETF、ETPが出てきたことで、投資家にわかりにくくなっているんじゃないかという批判が欧州、アメリカでは指摘されています。
それから、11ページに関しましては、現物出資型のETFに関しまして、日中、原証券の時価あるいはネットアセットバリューとETF価格との乖離が起きたときに、どのような調整が行われるのかということを、非常に教科書的に書いております。この価格調整プロセスがうまくいっているのだろうかという問題も、現在、海外では提起され始めたところでございます。
12ページ以降、規制上の課題に移ってまいりますが、時間の関係で、ざっとご紹介を申し上げてまいります。12ページでは、まず、2009年ごろ、リーマンショックの直後ぐらいに、非伝統的なETFがリテール投資家に販売されることはいいんだろうかという問題提起がアメリカで起きたことを示しています。早いタイミングでの課題指摘だったのかなと思いますけれども、その後、ETFの成長が順調に続いているところを見ると、このときの問題提起が、必ずしも、市場の成長、トレンドを変えることには至らなかったと言えると思います。
一方、先ほどのシンセティック型ETFのような複雑なETFが増えてまいりますと、どちらかというと、米国以外の海外の国際機関が、こういったシンセティック型ETFというのはいろんな問題があるんじゃないか、リスクがあるんじゃないかという提起がされてきまして、その提起が非常に盛んに行われたのが、2011年から2013年ごろと言えると思います。
それから、2014年、2015年ごろには、今度はアメリカでだんだん利上げが迫ってきたということで、利上げをされると、例えば、ハイイールド債の指数に連動したETFなどで大きな流動性の変化が起きるんじゃないかといった指摘がされるようになりました。さらに、昨年の8月、米国株式市場で起きました異常な価格変動を受けまして、ETFというのは仕組み的に複雑過ぎるんじゃないかとか、ETFの規制の枠組みをもう一回見直すべきなんじゃないかという議論が出てきたのが13ページに指摘している大まかな経緯ということになっております。
特にアメリカでは、SECの幹部がETFの構造ですとか、ETFと市場の安定性みたいなことについて発言するケースが非常に増えてきておりまして、14ページ、15ページ、16ページでは、最近の米国SEC幹部がETFの規制上の課題について、何を言っているかということを整理させていただいております。本日、細かいところまではご説明申し上げませんが、幾つかの問題については、ETFについて、現状を把握した上で、新しい規制の枠組みをつくるべきなのではないかというのが今のアメリカの現状であると思います。
そういう意味では、まだ答えが出た議論ではないんですけれども、ETFに関して、海外でどのような規制上の課題が出ているかということについては、17ページに書きました3つの課題が指摘できるのではないかと思います。
まず第一に、株式市場の構造、株式市場の取引の安定性とETFがどう絡んでいるのか、ETFについて何か規制をする必要があるのかという課題でございます。18ページに書きましたように、2010年のフラッシュ・クラッシュの際も、ETFの価格の変動が、現物価格と比べて大分かけ離れた動きであったことが指摘されたんですが、その結果として導入されたサーキット・ブレイカー、もしくは、値幅制限の制度が、昨年の2015年8月の異常な価格変動の際には何回も発動されました。しかも、発動された銘柄のほとんどがETFであったことから、ETFと現物のバスケットの証券の価格形成のタイミングやメカニズムがずれていると言いますか、違うことによる問題があるんじゃないかと指摘をされております。ただ、これも、どのように規制をすればいいのかというところまでは、まだ至っていないのがアメリカの現状と言えると思います。
第2の課題といたしまして、ETFの多様化・複雑化に係る課題があります。これは、19ページ、20ページに書きましたように、債券ETFですとか、シンセティック型ETFのような複雑なETFの中で、流動性とかカウンターパーティーリスクのような特有のリスクがあるのではないかといったことが言われている点です。ただし、米国の場合、債券市場全体が規制改革によって市場構造が大分変化しているんじゃないかということが言われておりまして、ひとえにETFのせいにできないといった指摘もあり、まだ結論というか、最終的な方向性は見出せないところではないかと思います。
それから、最後に、3番目の課題といたしまして、非伝統的な米国ETFをリテール投資家に販売していいんだろうかという課題でございます。22ページに経緯が書いてございますけれども、もともと2009年6月にFINRA、それから、2009年8月にSECが、レバレッジドETF、もしくは、インバースETFについて個人投資家にきちんと説明されているんだろうかという問題提起がございました。その後、幾つかの摘発というか、課徴金を課せられた事例などが出てきていなすが、これも、別にETF全体が悪いということではなく、また、レバレッジドETFならば悪いということではなく、売り方ですとか説明、適合性といったところに議論は収れんしているということでございます。
以上のように、おおむね3つの課題が浮き彫りにはなっておりますけれども、今のところ、ETF市場の現状というか課題を定性的、定量的に確認しながら、イノベーションを殺さないようにフレームワークをつくっていこうというのが米国の方向性であると、私としては理解しているところでございます。
私からの報告は以上でございます。ありがとうございました。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、事務局からの説明をお願いいたします。
- 【齋藤市場課長】
-
では、資料3をご覧ください。ここにありますように本日のテーマは、「インデックス運用の位置付けとETF等の投資商品」ということで設定させていただいております。これまでのヒアリングも踏まえて、このような観点からご議論いただいてはどうかという論点を事務局のほうでまとめてみましたので、この資料に添ってご紹介をさせていただこうと思います。
1枚おめくりいただきまして、1ページ目でございますが、1つ目の大きな論点が、インデックス運用の増加と株価形成ということでございます。資産運用の一手法として、皆様ご案内のとおり、インデックス運用、市場の代表的な指数と連動することを目指して運用する手法がございまして、代表的なものとして、インデックスファンドへの運用、それから、今回取り上げておりますETFの購入などが挙げられるところでございます。このようなインデックス運用は、個人投資家のみならず機関投資家にも幅広く利用されておりますが、国際的にも、日本でも機関投資家の運用資産に占めるインデックス運用の割合が増加しているという指摘がございます。
このインデックス運用は、運用コストが低いことが特徴でございますが、これは一般的に投資対象の企業価値分析やその分析に基づいた投資判断が行われず、銘柄入替えも頻繁には行われないといったことが背景にあろうかと思います。それと、その結果というか、そういうことなので、その売買は個々の企業の中長期的な価値に直接基づくものではないといった面があろうかと思っております。
このような特徴を持つインデックス運用が増加しているということ、あるいは増加するとなると、企業の中長期的な価値に基づく株価形成を阻害し、市場にゆがみをもたらし得るのではないかといった指摘がありますが、このようなことについてどのように考えるのか。また、インデックス運用が市場取引全体に対して過度な割合を占めた場合に、個々の銘柄について、その企業の中長期的な価値に基づく株価が形成されず、ひいては、インデックス運用自体の合理性も失われかねないといった点もあろうかと思いますが、この点についてどのように考えるのかといった論点を挙げさせていただいております。
もう1枚おめくりいただきまして、2ページ目でございます。大きな論点の2つ目として、国民の安定的な資産形成とETFの関係でございます。1のような点に留意しつつも、国民の安定的な資産形成を図る上では、長期・分散・積立投資といったことが重要で、中でもETFは、少額でも分散投資を可能とするほか、透明性が高いといったメリットもあるのではないか。こうした観点からは、国民の安定的な資産形成に向けて、本来有用な商品と言えるのではないか。しかし、現状はETFについて以下のような課題があり、国民の安定的な資産形成のために活用されているとは言い難いという指摘がございますが、これをどのように考えるか。
具体的な課題として4つ挙げさせていただいております。まず1つはコスト面ですが、ETFは、投資信託に比して保有コストが相対的に低い一方で、現状は、取引のたびに売買手数料が発生することから、積立を行う場合には手数料負担が重くなるほか、売買単位が若干大きいという指摘もございます。こうした課題を克服するために、関係者においてどのような取組みが考えられるのかといった論点でございます。
それから2番目は、流動性の問題でございます。ETFは販売会社の窓口で投資家に積極的に勧められていませんが、その要因の一つとして、流動性の乏しい銘柄も少なからず存在しており、投資家が意図した価格やタイミングでの購入、売却ができない可能性を指摘する声がございます。流動性を供給するためには、関係者においてどのような取組みが考えられるのかという論点でございます。先ほど土本専務のほうから、マーケットメイカー制度の導入であるとか、あるいはそれに伴って空売り規制の緩和といった提案もございましたが、そのようなことも含めてご議論いただければと思います。
それから3番目として、販売手法や認知度に関してでございます。ETFは、同じように積極的に勧められておりませんが、その要因の一つとして、販売会社に対する信託報酬の販売会社受取分である代行手数料がないことから、販売会社にインセンティブが働かないとの指摘もございます。ETFの認知度を高め、国民の安定的な資産形成に活用されるためには、関係者においてどのような取組みが考えられるのか。この観点から、例えば投信等の販売時に同様の性質を有する金融商品、ETFなどが比較可能となるような情報提供を行うことであるとか、あるいは銀行においても制度上ETFの取り扱いが可能であることを明確化するといったことについて、どのように考えるか。他方、現在、既に200を超えるETFが上場している中で、その全てが国民の安定的な資産形成に資するものであるかどうかは議論があるところ、長期・分散・積立投資になじむETFについて何らかのラベリングを行うなど、わかりやすさを向上させるための工夫もあり得るが、どのように考えるかという論点でございます。
それから4つ目として、商品の多様化でございます。国際・分散投資に資するETFやスマートベータ型のETFの拡充など、ETFの一層の多様化を図るべきとの意見もあるが、これをどのように考えるか。他方で、商品を多様化することに関しては、先ほど申し上げたわかりやすさとか、あるいは流動性の向上とトレード・オフの関係もあり得るわけですが、これについてどのように考えるのかということでございます。
それから3つ目の論点、その他の論点ということで、まずは1つ目、相場変動とETFの関係。諸外国においては、相場急変時におけるETFの価格形成・流動性に係るリスクが指摘され、対応策も検討されているところであるが、これをどのように考えるか。日本においても、ETFの中には、対象指標に連動させるために行われる先物等の売買により、結果として相場変動を増幅させているものがあるといった指摘もありますが、これもどのように考えるのか。
それから2つ目のその他の論点ですが、リテール顧客への販売・説明ということで、諸外国においては、高齢者や保守的な投資方針を持つ投資家に対し、レバレッジ型・インバース型等、非伝統的なETFを不適切に販売したとして、販売会社に対して課徴金納付命令が発出されているとの事案がございます。日本においても、レバレッジ型・インバース型が上場商品という理由で、高齢者に販売されている事例があるとの指摘もあるが、これらも含めてどのように考えるのかという論点でございます。
今、ご説明したような論点も参考にして、本日、ご議論をいただければ幸いでございます。
以上でございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、皆様方からご質問やご意見をお出しいただければと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。
大崎委員、どうぞ。
- 【大崎委員】
-
ありがとうございます。事務局でお示しいただいた論点の幾つかについてコメントしつつ、できれば土本さんにもコメントいただければと思うのですが、まず1点目、私個人は、このETFをめぐる問題、唯一とまでは言いませんが、最大の問題は流動性の欠如ということだと思っておりまして、事務局でもご指摘いただきましたし、また、土本さんから、できればマーケットメイク制度を導入して、そこを改善したいというお話があったことは大変心強く思っております。これはぜひ実現していただきたいと思っておりまして、証券会社でない主体がマーケットメイクをするということも想定されるとすれば、ご提案のあったような委託注文に関する空売り規制の緩和というか見直し、これは絶対必要だと思っております。
別の回で、例のHFTの規制をどう考えるかという話が出て、HFTをやる人に対する登録等の制度を検討してはどうかみたいな話が出ていたわけですが、例えばそういう登録を正規に受けている人じゃないとこのマーケットメイクはできないという、規制の組み合わせをうまくやって、ちゃんとしたマーケットメイカーが市場を安定させていくような工夫をしてもらえればと思います。
そのときに、1点お願いというか、土本さんにできればコメントしていただきたいんですが、ちょっと気になっていますのが、ETFの場合は、いろんなお話がありましたけれども、基本的に価格は原資産の価格に連動しているはずであるわけでして、海外物ですと、場合によっては原資産のマーケットが動いていないということで、例えばS&P500でしたら、先物の価格を見ながらということはあるかもしれませんが、為替は動きますので、為替が動いた分だけ動くということかもしれません。
いずれにしても、原資産の価格とETFのマーケットメイカーの提示している価格が、適正と思われる範囲で連動しているかどうかというのを、取引所、市場運営者としてきっちり監視をしていただく、これは非常に重要だろうと思います。マーケットメイカーと称して、いわば投資家を食い物にするような、そういった行為が行われると大変残念なことでございますので、それをぜひお願いしたいということでございます。
それから、もう一点がレバレッジETFについてのお話でございますが、事務局の論点で、リテール顧客への販売・説明ということで、問題提起がなされております。これは私、もちろん個別にとんでもない事案というのがあるかもしれないということは全く否定しないのですが、ただ、レバレッジ型・インバース型だからということで、類型的に問題だと考えるべきかどうかという点については疑問がございます。というのは、基本的にはレバレッジ型のETFであっても、個別株のボラティリティよりはボラティリティが小さいというケースが多いのではないかなと。代表的な指数でやっておりますので、2倍のレバレッジであっても、例えばマザーズの銘柄なんかに比べれば、はるかにボラティリティが小さいのではないかと想像されますので、少なくとも個別株の投資に適合的な方にレバレッジ型の商品を勧誘するのであれば、例えば1年後に日経平均が倍になっていたら、これは4倍になるんですよとかという、全くの嘘の説明をした場合は別として、レバレッジをやった場合は、絶対そういうふうにはなりませんので、そういう嘘の説明をした場合は別として、正しく商品性を説明した上で、個別株の投資に適合的な方を勧誘するのであれば、さしたる問題はないのではないかなという気がします。
それから、これは事務局というか、金融庁へのお願いなのですが、今、日本のETF市場の1つの変わった特徴として、レバレッジ型ETFが極めて大きな割合を占めている、これは事務局資料にもあったとおりですし、土本さんからもお話あったとおりでございます。この1つの要因は、とりわけ個人投資家にレバレッジETFが先物取引のかわりに使われているのではないのかなと私は思っております。と申しますのは、デリバティブと現物投資の損益通算が認められないという中で、レバレッジETFを使えば損益通算できるわけですから、先物で例えばリスクヘッジをするかわりに、インバース型ETFを買っておけばいいという考え方が出てきても全くおかしくないわけですね。ですので、ぜひ税制改正で、デリバティブと現物取引の損益通算を実現していただければ、レバレッジ型ETFの取引も適正な規模に収まるのではないかなと、私は思う次第でございます。
以上でございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
土本さん、何かコメントございますか。
- 【土本オブザーバー】
-
ありがとうございます。マーケットメイク制度をどのように作っていくのかということについて、私たちも今の大崎委員のご指摘を踏まえて、意を用いていきたいと思っておりますけれども、今2つ申し上げたいと思います。1つは、ETFについては理論価格、ネット・アセット・バリューが今どういう価格になっているのかということを、別途開示を促しているわけですけれども、そこと実際の価格がどうなっているのかということが、まず対比できるようにしておるところですけれども、これをより充実させていくということがあるのかなというのが1点と、それから、マーケットメイク制度の中で、どんな値段でも提示していればいいんだということではなくて、一定程度のスプレッド内におさまる注文を一定期間、一定数量以上出すことによって義務を満たすという建付にすることによって、価格の整合性を保っていきたいなと考えております。
- 【大崎委員】
-
ありがとうございます。ちょっとよろしいですか。
- 【神田座長】
-
どうぞ。
- 【大崎委員】
-
大変細かい点で申しわけないのですが、ネットプレゼントバリューの提示、確かに東証でやっていただいていると認識しているのですけど、各証券会社の取引画面とかとうまく連動するように、これは業界全体で考えなければいけない問題だと思うのですけど、現状、確か発注するときに見るというのは非常に難しいのではないかと認識しておりますので、ぜひその辺、よろしくお願いいたします。
- 【神田座長】
-
ありがとうございました。事務局はよろしゅうございますか。
それでは、有田委員、それから永沢委員、佃委員の順で、有田委員からお願いします。
- 【有田委員】
-
ありがとうございます。本日の論点につきましては、大きく分けて2つあるわけでございますが、この2つは非常に関連していることだとは理解しておりますけれども、ややもすると、ETFのお話ばかりにもしかしたらなってしまうかもしれないなという感想を持っておりますので、その前に、第1の論点でございますインデックス運用の増加と株価形成という点につきまして、運用者の立場からまずは一言意見を申し上げたいと思います。
一口にインデックス運用と申しましても、さまざまな保有形態がございます。ここで論点になっておりますようなETFもおおむねインデックス運用でございますし、機関投資家が個別に運用会社と契約を持って行うパッシブ運用もインデックス運用の部類に入るわけでございますが、これが一体全体、運用市場の中でどのくらいの割合を占めているのかというのは、実は統計が非常に難しいことでございまして、なかなか実態がつかめないという状況でございます。おそらく過半にはなっていない、というのが現状の理解なわけですけれども、それがここの論点で示されておりますように過大に増えた場合、株価形成に影響があるかという点につきましては、私どもは確かにそうかもしれないという考えでございます。ただ、一方でインデックス運用が増加して、もしご懸念のような株価形成が一時的にゆがめられるような状況になった場合は、市場が合理的に形成されているならば、ここぞとばかりにアクティブ運用、アルファを求めるトレードが増加するはずでございますので、そうなりますと、そういったゆがみは市場の中で自動的に調整されると、そのように私どもは考えております。
それから2番目に、スマートベータ型のインデックスの登場ということが挙げられると思います。投資家にとっては、アクティブに指数を選好するということが可能になってきているわけでございますので、こういったイノベーションを通じて、いわゆる成長企業に資金が配分されるということが、今ではインデックス運用の中で期待されているということが、2番目に指摘したい点でございます。
3番目は、最近では特に機関投資家による、投資先に対する対話をはじめとしたエンゲージメント活動が積極化しております。基本的にインデックス運用は、そもそもが中長期保有が多いことでございますので、こうした議決権行使であるとか、エンゲージメントがより重要となるわけでございまして、そういった活動を通じて、市場全体に対するガバナンスは必ずしも低下するわけではないというのが、私どもの考えということになります。したがいまして、極端な場合、インデックス運用が100%になったら、確かに自動的に有無を言わさず、インデックスに入っている割合で株を買うという事態になりますが、そのような事態にはなかなかならないというのが私どもの考えでございまして、直ちに企業の中長期な株価の形成の阻害要因となっているとは考えておりません。
2番目以降のETFについては、先ほど、私どもの資料も大分出てきておりまして、いろいろ言いたいことはあるんですけれども、もう少し皆様のご意見を伺ってから、発言したいと思いますので、以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、永沢委員、佃委員、鹿毛委員の順でお願いします。
永沢委員、どうぞ。
- 【永沢委員】
-
ありがとうございます。東京証券取引所及び野村資本市場研究所の関様のお話、大変勉強になりました。ありがとうございました。
まず、論点1のところでございますが、国民の資産形成の部品としてETFは重要な役割を担ってきておりますし、かつ有用な金融商品になっているということは、私どもも確かなことだと思っております。一方で、私のような素人でも、個別企業調査をしないで済むETFが増えていっていいのかという不安は持ってはおります。有田委員のような運用の専門家の方から心配は無用とのご説明がありましたので、心配することではないとも思いますが、個人投資家でもこの点は心配しているということを、この機会にお伝えしておきたいと思います。
以下、商品性の問題と、それから販売の問題につきまして、幾つかお話をさせていただきたいと思います。
まず、商品性ですが、流動性の問題、あるいはトラッキングエラーと一般に私たちが捉えているものが大きくなっているETFがあり、インデックス運用型の商品としての品質管理が、今問われている状況にあるのではないかと思います。品質管理のあり方の見直しとして、マーケットメイクを指定参加者に義務付ける方法をお考えであるという説明であったと理解しましたが、その理解で間違いでしょうか。それから、スマートベータのようなETFで、東証様が先ほどご説明になられたようなことが機能するのかどうか気になりましたので、後でご説明いただけたらと思っております。
それから、販売面に関しましては、 まず1つお願いしたいこととして、資産形成の方法として少額ずつ積立投資をしていくが重要ということになりますけれども、(毎回の買い付け額が少額であるため)コミッションが高くなってしまいますが、これを安くするための仕組みというのは、具体的に何かお考えなのか、もしお考えがありましたらお話しいただきたいと思います。
それから、販売勧誘上でもう一つ改善していただなくてはいけない問題があると思っております。それは、投資信託のような目論見書が提供されていないということでございます。証券会社のほうで勝手につくることもできないそうで、結局何も資料がないまま販売勧誘されているという状況にあり、その点についてはやはり工夫が必要なのではないかと思いますし、この商品をもっと押し出していきたいということであるならば、証券取引所のほうで一工夫いただいて、どなたでも、どのような証券会社でも利用できるような、リスクや商品の仕組み、それから投資対象などを説明する簡単な資料、交付目論見書とまでは言いませんけれども、それに類するようなものをご準備いただいて、ホームページからとり出せるようにしていただくことはできないでしょうか。
そして、大崎委員の先ほどのご意見に反論することになりますが、レバレッジやインバース型につきましては、たくさんの事例に出会っているわけではありませんけれども、高齢者に対してレバレッジやインバース型のETFが販売されて、紛争になっているケースをいくつか見ております。この種のETFは日々の動きに対して2倍に連動する、あるいは反対に動くという商品ですが、説明資料が提供されていないからということも関係していると思いますが、投資家はその仕組みを正しく理解していないし、また、説明してもなかなかこの点は理解が難しい商品なのではないかなというのを、日ごろの経験で感じております。
また、日経平均やTOPIXのように、毎日、新聞やテレビで指数が公表されるものはともかく、例えばWTI、ニューヨークの原油先物価格のようなものに連動するブル型・ベア型みたいなものになりますと、指数そのものが一般個人には入手しがたい指数でもあり、また、それが円換算になるということで、非常にわかりづらいものもあったりします。レバレッジやインバース型のETFについては、上場物だからという理由で2013年末に日本証券業協会が作られた高齢者ルールが適用除外となっていますが、この運用で良いのかどうかもう一度ご検討いただきたいと思っております。
最後になりますけれども、もしETFを個人の資産形成の重要な商品としてもっと位置づけたいということであるならば、やはりこのペーパーの中にもありましたけど、銀行での取り扱いが重要だろうと思うのですけれども、現状では、銀行は扱っておりません。HP上では扱っているように見えるけれども、ETFを購入する場合は系列の証券会社の口座のほうに飛ぶという形になっていまして、銀行では実際には取り扱っていないという理解でおります。
これはこれでいいのですけれども、そうなるとNISAの問題が一方で残っておりまして、銀行で口座を開いてNISAをやりたい、でもETFをやりたいというときには、このNISAの問題が残っているのではないでしょうか。財務省への要望になるかと思いますが、もし銀行でも扱っていくということであるならば、ここの辺も見直しも必要ではないかと思った次第です。
それから、最後にもう一つ、東京証券取引所様に質問させていただきたいのですけれども、なぜ日本ではこんなにETFの取引がレバレッジ型とかインバース型に集中するのでしょうか。東証様のほうではどのように分析されているのかというところ、原因についてどのように分析されているか、ご見解を伺いたいというのが最後になります。
長くなりましたが、以上でございます。
- 【神田座長】
-
ありがとうございました。東証から、もしコメントがあればお願いします。
- 【土本オブザーバー】
-
ありがとうございます。幾つかご質問、ご意見をいただきましたので、お答えさせていただきたいと思います。
まず商品性の観点で、流動性を向上させるためのマーケットメイカー制度の導入ということでございますけれども、永沢さんのご理解のとおりで、今の指定参加者制度を、より義務を課して、実際にタイトなスプレッドを一定期間出していただくような、より強固な制度に改良していきたいというか、改善していきたいということでございます。
それから、販売の面につきまして、実際に仲介されている証券会社さんなどとも協働していくという必要があると思っておりますけれども、取引所のほうでできます情報の提供の一層の充実ということについては、積極的に対応してまいりたいと思っておりまして、できれば近いうちに、東証の中でETFの特設のサイトといったものを設けて、そこを見に行けば誰でも仕組みだとか、商品によってのリスクだとかが比較的簡単にわかるような、そういったサイトの立ち上げ、それから、そのサイトから簡単にそういったものをダウンロードできるような仕組みといったものを考えていきたいと思っております。
それから、最後になぜこれだけレバレッジ型・インバース型ができるのかということで、なかなか直接ヒアリングだとかアンケートをしたことはないんですけれども、私の冒頭のプレゼンの資料にありますように、現時点で株式とか投信への投資というのが、やはりどちらかというと積極的に増やしていくという形での使われ方があって、そういう投資家の方から見ると、多少リスクをとってもハイリターンを求めていくということがあるのではないかということだと思います。それはそれで、それぞれの投資家の方のスタンスですけれども、ここで議論されていますように、もう少し中長期の分散投資を後押ししていく、その商品としてETF市場があるのではないかと私たち思っておりますので、プレーン型を含めて、より広く利用していただけるように、証券会社の方々ともいろいろ協議を重ねながら、改善していきたいと思っております。
- 【神田座長】
-
ありがとうございました。
- 【永沢委員】
-
すいません。
- 【神田座長】
-
どうぞ、永沢委員。
- 【永沢委員】
-
先ほど、ささいなことですが、スマートベータのような新しいETFなども、先ほどご説明のあったようなマーケットメイクはできると理解してよろしいでしょうか。
- 【土本オブザーバー】
-
それも対象にしてやってまいりたいと思っております。
- 【永沢委員】
-
ありがとうございます。
- 【神田座長】
-
よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
札を立てていただいている委員の皆さん方が9名いらっしゃいまして、佃委員、鹿毛委員、上田委員、池尾委員、福田委員、竹川委員、そして神戸委員、有田委員、島田委員の順でお願いしたいと思います。
佃委員、どうぞ。
- 【佃委員】
-
ありがとうございます。
主に事務局の資料の2ページ、国民の安定的な資産形成とETFの関係のところで、幾つかコメントさせていただきたいと思います。私は前回欠席いたしましたが、そこで池尾委員が問題の真因は一体どこにあるのかという疑問を呈示され、神田座長が国民の資産形成という観点から具体的にどのように仕組みを変えていくかが重要であるということを発言されたと伺いました。そこで、これらの問いに答えるべく、今回のETFの話も絡めて私の考えをシェアさせていただければと思います。
まず真因ですけれども、投資家教育や販社における教育等々、長年取り組んでこられたにもかかわらず「貯蓄から資産形成」へ進まないのはなぜかというと、3つの理由があると考えています。
まず1つ目の理由として、個人金融資産1,700兆円のうち、60%以上、1,000兆円以上が60代以上に集中している事実があります。60代以上の方々は、積極的に資産を増やすというよりもどちらかというと預貯金として持っていたいというニーズが非常に強いのでしょう。ここの部分が動かないと、貯蓄から資産形成への大きい流れにはならないんじゃないかと考えます。
2つ目の理由として、先ほどインバースとかいろいろございましたけれども、ほんとうに真の顧客ニーズに応える商品というのがあるのかといえば、あるとはいえない店があります。
では、真のニーズとは何かと考えると、まず1番目は国際分散投資で、海外の成長も日本に取り込む、自分の資産に取り込むといった観点が大事になってきます。
2番目に、自分のリスク許容度というのがちゃんと反映されることも大事だと思います。
それから、3番目に、購入するときの簡便な手続が非常に大事なポイントだと思います。窓口に行って、何十分もかけて延々とコンプライアンス上のリスクに関する説明を聞きたくないということも、大事な顧客ニーズの1つだと思います。
最後に、リーズナブルなコスト。コストの見える化がされていないと、しかもそのコストというのがリーズナブルでないと、なかなか投資行動に向かわないのではないかなと思います。以上の4点が真の顧客ニーズのポイントと考えます。
真因の3番目の理由は売るインセンティブの欠如だと考えます。先ほど永沢委員からもございましたけれども、例えばETFをとって見ても、当然、銀行は現状売れる形になっているけれども、正直、売るインセンティブがないと思います。インセンティブをどう付与するか真正面から取り組んでいかないと、なかなか貯蓄から資産形成への流れはつくれないのではないかなと考えます。
では、具体的にどういう必要な対策があるかと考えますと、大きく3つあるかと考えています。
まず、1点目が国際分散投資を実現するような簡便な商品の提供が大事だと考えています。その中でも、1つは先ほど申し上げましたようなリスク許容度に応じたアセットアロケーションに基づくモデルポートフォリオを提示して、お客様から見たときにわかりやすい形で提示していくことが大事であると思います。
そういった意味で、最近ではベンチャー企業も大手金融グループもロボアドバイザーを展開していて、例えばあるベンチャー企業では、ETFでポートフォリオを組成し、これをリスク選好度によって幾つかパターン分けした中から顧客が選択できるサービスをネット上で提供しています。手数料も全部込みで1%ぐらいでございます。この流れは非常にいい流れで、大手金融グループでも似たようなサービス提供が始まっており、この流れが大きくなっていくことが大事であると思います。
その上で、このようなネット上の簡便な手続きと同様に、店頭でも簡便に手続きできるようにしていくことが必要だと考えます。同じ商品を買う場合でも、ネット上では、いろいろ細かい注意書きがありますが、実際、皆さんが購入するときには「同意する」をクリックしながら買っておられると思います。店頭でも簡便な購入手続を実現するようなやり方をぜひとも考えていただきたいです。次に2点目に、先ほど申し上げましたように、1,000兆円が60代以上のところで集中しているということでございますから、この退職世代に投資を促す仕組みづくり、つまり、退職金の運用等に適したローリスク、ローリターンのポートフォリオの提示を積極的にやっていく必要があると考えます。これは、官民を挙げて横断的に退職世代の預貯金に滞留している部分を資産形成へ促す仕組みづくりを行っていく必要があると考えています。
最後に3点目で、これは金融庁へのお願いとなりますが、特に2点目を実現するためにもぜひ、金融庁として財務省等に既に働きかけておられると理解しておりますけれども、思い切った政策対応、税優遇をやっていただきたいと思います。例えばNISAのバックボーン的な拡充もそうですし、それから、先ほど大崎委員からございましたように、損益通算にもご対応頂きたい。例えば不動産投資は減価償却費等を所得として通算できますが、金融商品でロスが出たときには所得と通算することができない状況をできるようにするとか、もうひと工夫する余地はかなりあるのではないかと思っています。
1兆円の政策コストをかけても、仮に1,700兆円のうち、例えば100兆円が貯蓄から資産形成にシフトしますと、それが先ほどの退職世代等であまり大きいリスクをとらない・大きいリターンをとらないという話でも、例えば2%リターンが高まるとなったら、100兆円の2%リターンが大きくなった分で2兆円ですから、1兆円の政策コストというのは十分ペイできることになると思います。そういった意味で、ぜひとも思い切った政策対応をこの際やっていただければと思います。
以上でございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、鹿毛委員、お待たせしました。
- 【鹿毛委員】
-
簡単に総論と若干、個別の論点について申し上げます。このワーキング・グループの取組み視点としては、国民の資産形成のためにETFがどういう役割を果たせるか、という形で出てきていると思います。今日のお話をお伺いしても、ETFが国民の資産形成のために近い将来重要な役割を果たしていくためには、いろいろな難しさがあるな、というのが率直な感想です。まずこのETF市場が日本の機関投資家にとってである程度しっかりした市場に育っていくことによって、結果的に個人とっても有効なマーケットになるのではないだろうかという感じがしました。アメリカの例でお話がありましたように、何のためにETFを使っているかというアンケートに、コアアロケーションとして使うという回答はもちろんありましたが、それ以外10個ぐらいの理由は、全てポートフォリオ・マネジメントとか、リスク管理関連のものです。資産運用側としては最もプロフェッショナルな人たちにとって、最も有効なマーケットというわけです。そのことは関さんのご説明の中にもあったと思います。
翻って日本の場合は、ある程度プロのマーケットとしての有効性はあると思いますが、どちらかというと投機性が強いのが現状と思います。市場の中に投機的なプレーヤーがいるということは決して悪いことではなくて、流動性を高めるという意味があると思います。ただ、投機的なマーケットであればあるほど、個人が時間をかけて長期投資のために貯蓄していく対象にはなりにくいのではないでしょうか?
むしろ潜在的にせよ最もETFを必要としているのはアメリカの例を見ても高度なプロフェッショナルという事ですから、むしろそちらのための問題を解決していくことのほうが、最終的に一般国民にとっても使いやすいマーケットになる早道ではないかと思います。
各論の第一は、1ページ目のインデックス運用が市場を歪めないかという点です。この点については基本的に有田さんのご説明のとおりですが、現時点のマーケットには必ずしもそういう機能が働いていないわけです。ここにいる皆様がよくご存じのように、日本だけではなくて世界の主要国において強力な金融緩和政策が行われている結果、現実に株式の本源的価値と市場価格がかなり離れているなというのが一般的な認識だと思います。両者が離れていながら調整機能が働いていないという方が問題です。つまりインデックスファンドが増えていくことが市場を歪めるのではなくて、市場が歪んでくるとインデックスファンドが機能しにくくなっていくという論理構成ではないかと思います。
第二に、2ページ目のコストの問題です。確かにETFはコストが低いのでいいということになっていますが、日本の現状を見る限り、マーケットの参加者がインセンティブを持ってどんどん増加していくということにはなっていないわけですね。
つまり、コストというのは確かに適正である必要はありますが、安ければ安いほどいいというものでもなくて、十分な参入を実現できる程度のコスト水準ということをもう少し考えてもいいと思います。第三に流動性の問題です。現状、ETFへの供給と需要の両方が極めて偏っているというのが実態です。さきほど流動性が問題だと大崎委員が言われたこと、全く私も賛成ですが、流動性がないからマーケットメイクをして何とか流動性を上げようということも、もちろん大事ですが、ただ、流動性がないということは、売り手、買い手双方に、つまり需要と供給が十分存在しないから、流動性がないわけです。
ですから、やはり本来的な需要と供給をどれだけ増やしていくかという議論のほうが必要であって、マーケットメイクを幾らやっても、需要と供給が刺激されなければ、やはり流動性は少ないままだと思います。同時に、今、日本に関して言えばETFが200ぐらいある中で、残高が非常に大きく流動性が高くて取引も多いというものは、5銘柄ぐらいあると聞いています。
ETFはまだまだ認知度も低く、理解もなかなか難しいということであれば、不特定多数のものを何とかしようというより、代表選手を育てるという考え方は如何でしょうか?例えばアメリカではバンガード、ブラックロック、ステートといったもともとパッシブマネジャーによるインデックスファンド投信として完全に定着している資産を、今度は上場して、ETFにして出す、ということであれば、市場に浸透しやすい。もともと非常に知名度が高いわけですね。
ETFという名前がいいのか、何かもうちょっとニックネームがあったほうがいいかもしれませんがむしろ特定少数の、現在でも流動性のある人気投資信託を上場して、ETFとして育てていくということのほうが、マーケットとしては成長していくと思います。
第四に、3ページの販売手法についてです。これまでの皆さんのご意見に基本的に賛成ですが、要は、当面のわが国においては、本来的にETFはプロのものだと考えたときに、それを個人に売ろうとすれば、やっぱり顧客をプロとアマにはっきり分けて考えるべきではないかと思います。プロの中に、当然、機関投資家と同じような知識を持って、そうした運用をやっている人たちもいますが、一方投機が好きで短期トレーデイングでやっていこうという人たちもいます。さらに現下の国家的課題である国民の資産形成のための投資を考える人を、これから増やしてゆく必要があるでしょう。ETF市場の育成を考えるとき、こうした各種のマーケットをはっきり分けた形のアプローチが必要だと思います。このことは、海外のいろいろな規制当局等でも提起している問題で、おそらくワーキング・グループの課題はフィデューシャリー・デューティーとか、販売手法を議論する際、はっきりマーケットを分けた形でやるというところがポイントになるのではないかと思われます。
以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、上田委員、どうぞ、お願いします。
- 【上田委員】
-
ありがとうございます。皆様からのご説明、大変勉強になりました。ただ少し思いますに、こういった議論というのは、1つ1つの金融商品を見ていくのも大事なのですが、そもそも個人の金融資産のポートフォリオ、これは機関投資家も個人もポートフォリオ全体で見るって大事なことだと思うのですが、その中での位置づけなのかなと思っております。
例えば中長期のリスクがとれる人、とれない人のリスク許容度も違います。年齢も違うでしょう。あと不動産が多い人、ない人、フローが多い人、ストックを買う人と違ってくると思います。
そういう中で、例えばレバレッジ型とか、こういうETFについて、これ自体が悪い、商品自体が悪とは思わないのですが、ただ、これは機関投資家の年金の運用を見てもそうなのですけれども、ヘッジが全体の50%を超えるなんていうことはないわけです。全体のポートフォリオにおけるアセットアロケーションの中で、ヘッジ部分をこの程度に置いていく、そういったところが大事なのかなと思っていて、それがもしないとすれば、そこの問題があるのではないかと、こういったレバレッジ型であるとかインバース型とか悪い販売方法が、どうしてこれが増えているかというのは、基本的にそういうポートフォリオの意識、あるいはアセットアロケーションの意識がない中で、もしかしたら売っている人、買っている人がいるのかなと。
ですので、個別株を買っていて、そこである程度ヘッジをかけたいという人が増やしているというのであればいいのですが、そうじゃない資金が入っているとすれば、高齢者に販売があるやの、日本でもあるかもしれないのではないかという指摘が書いてございますが、そこは問題として考えていく必要があるのではないかと、こういう切り口で見たほうが、何となく合理的な解決が出るのかな、なんて思ったところです。
すいません、事務局からいただいた資料を、少しページに沿って拝見させていただきたいのですけど、まずは、インデックス運用が、これの市場における株価形成をゆがめるのではないかということなのですが、私、有田様のご意見に全く同意でございます。もちろん、何かそれでゆがみがあるとすれば、それを調整するものとしてアクティブ運用がちゃんと超過収益をとっていくということで調整されるのではないでしょうかということです。
例えば、これに関係するのかどうか……、例えばJPX日経が暴騰して暴落してなんていうことを批判されますが、これも最初に買い付けのタイミングでそういうことが起こるのは当然で、こういうのも長期的に見ていてどうなのかということで、スマートベータというものの有効性は、今、議論できるものではなく、長期的に見ていく必要があるのかなと思っているのですが、そういった中でも指数、日経225中心だと思います、公的な資金の買い付けも含めて。ここも見る必要が少しあって、S&P500ですよね、日経225。
これはどうなのかという話もあるのですけれど、もう少し、これはただ投資資金を貯蓄から市場に移すというだけではなくて、できれば、これが日本のGDPの向上につながれば一番いいわけで、そういったところにこういった個人の資金が移ればいいというふうに、私なんかは大きな夢を描くわけなのですが、となると今後、そういった日本全体の利益を稼いでくれるようなところにお金が入っていくとなれば、何らかのスマートベータ的なものに資金が入ると、こうすれば、ちょっと夢を見過ぎですけれども、日本が向上していくのとともに資産が向上する余地があるのではないかということで、以前も申し上げましたが、指数について少し検討の余地があるのではないのかなと思っています。
あと、ETFのコスト面あるいは販売のところで少し申し上げると、やっぱり販売会社にインセンティブがないとなると、販売会社経由で購入しようとする個人投資家というのは、どうしてもなかなかアクセスしづらいのではないかと思います。私みたいにできれば手数料を払いたくない人にとって見れば、何でETFをみんな買わないのかなと思うわけなので、ここは情報の格差というものもあるのかなと思います。
アメリカでETFが増えている、これは投資アドバイザーがETFを増やしているわけなのですが、では、アメリカでも個人投資家が払っている手数料という面で見ると、その投資アドバイザーに払っている部分が出てくるわけです。ということで、日本の投資家がめちゃくちゃ高い手数料を払っていると言えるのかという、ちょっとこの辺の数字も見せていただければと思うのですが、という面があると思います。米国において、投資アドバイザーという職業としての人たちがいるとすれば、ETFというところに安いフィーを払って、その分プロの専門家が手数料を取るという仕組みで成り立っているとすれば、これは考慮する必要があり、あるいはそういう面でETFというものが使われているということを見る必要があるのではないのかなと思っております。
最後に、商品の多様化です。レバレッジ型等について、先ほど申し上げたとおりなのですが、運用会社の幾つかに聞いてみると、別に多様化というのはビジネスにつながるのであればやりたいということなので、何もそれに反対しているものではないとのこと。ただし、先ほど申し上げたように、その商品がツールとして、ヘッジとして使うものがメインストリームの商品になっていると、こういったところについてはきちんと見ていく必要があると。これは販売会社なのか、つくる側なのか、あるいは市場全体を統括するところなのかわかりませんが、そういった視点で少し見ていかないと、ビジネスの拡大とともに、投資家の保護にもつながらないのではないかなと思います。
ちょっととりとめもないところで恐縮ですが、思ったところを述べさせていただきました。ありがとうございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
お隣の池尾先生、どうぞ。
- 【池尾委員】
-
どうも。最初に有田委員が取り上げられた事務局の論点1のインデックス運用の増加と株価形成という点ですけれども、今、上田さんは有田さんに全面的に賛成だとおっしゃったのですが、私はそう楽観的になれないので、ちょっと一言発言したいなと思います。
それで、効率市場のパラドックスという話があって、資本市場がほんとに情報効率的で価格に全ての情報が織り込まれているならば、自分で情報なんか集めないで、価格だけ見て投資をするのがコストはかからなくて一番いいわけですよね。ただ、コストがかからなくて一番いいということで、みんながその価格だけ見て投資をするようになったら、誰が価格に情報を織り込む活動をするのだというパラドックスがあります。それでインデックス運用に代表されるような、価格だけを見て投資をする人が増えてきたときに結果として市場価格にゆがみが生じると、アクティブ運用のリターンが上がって、情報生産活動が自動的に増大してというふうになれば、ほんとにそれはいいと思うのですが、でも、アクティブ運用をする人はコストをかけて情報生産活動をするわけですけれども、コストをかけた情報生産活動の成果というのは、全てその活動をした人に返ってくるわけではなくて、価格に情報が織り込まれることを通じてマーケット全体にその利益は拡散するわけですよね。
言い方を変えると、経済学で言う外部性がそこに存在するわけですから、リターンが全て当人に帰属するのであれば、適正なレベルの生産活動が行われると言い切って構わないんですけれども、今、申し上げたような外部性がある場合に、必ずそういうふうに適正なレベルの情報生産活動が行われて、市場の価格形成が情報効率的である状態がずっとキープされるというのは、ちょっと私は経済学者のせいか知りませんが、懐疑的なところがあって、やはり論点としては存在していると思います。
- 【神田座長】
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どうもありがとうございました。
福田先生、どうぞ。
- 【福田委員】
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はい。経済学の教科書、大学で教えていることと金融市場で実際に起こっていることは必ずしも一致しないことも少なくありません。だから、学生には間違ったことを教えている可能性はたくさんあるわけですけれども、そういう意味では、まず私が大学で通常教えることは、池尾先生のご意見じゃなくて、むしろマーケットの方がおっしゃったように、インデックスファンドがあったとしても、市場が効率的なので、裁定取引が適切に働いてその価格形成に問題は発生しないのだろうとは思います。これが通常の理論だと。
ただし、数年前にノーベル経済学賞で、ファーマという効率市場仮説を受賞した方と、シラーという方が同時に受賞したことからもわかるように、経済学者の間でも意見は大きく分かれていると思います。シラーという学者は効率市場仮説を否定する方なのですけれども、そのような学者もノーベル賞をとれるような、尊敬されているのだということがある。そう考えると、池尾先生のご意見も、まさしくそのとおりなのだろうと思いますので、そこら辺はなかなか難しい問題だろうとは思います。
それから、もう一つ、投資信託あるいは分散投資というものは、バラエティーのある商品を提供する必要があるのかどうかという問題に関しては、教科書的にはこれは必要ないというのが一応教科書の説明です。これが市場ポートフォリオという概念です。これは、もちろん人々のリスク回避度はいろいろ違うのですけれども、それは安全資産とリスク資産をどのような比率で持つかという選択には影響を与えるのですけど、危険資産の構成内容に関しては基本的には影響ない。これはトービンという人とかが考えた分離定理という考え方から来ているのですけれども、そういう意味では、本来は個人がリスク分散をやるための商品の構成というのは、そんなにバラエティーのある商品である必要はないのだという考え方はあります。ただ、これもほんとに合っているのかどうかという問題は、最初に申し上げたようにあるので、議論は分かれるところだとは思います。
日本の話に少しだけ話を持っていきますと、やはり何のためのETFかというのは皆さんのおっしゃるとおりだと思いますし、どういう形で、何のためにこういう市場を発展させていかなければいけないのかということは大きな問題だと思います。
多くの人がおっしゃっているように、大きな問題意識としては、やっぱり現在の日本の個人資産の構成というのが、世界的に見てもどう考えても異常な状況なんじゃないだろうかということは、大きな論点になり得ると思いますし、そういった人たちに、すなわち現金預金を持っているような人たちに、できればそれ以外のリスク資産を少しは持ってもらえるようなことができないだろうかというのは、非常に重要な論点になり得るのだろうとは思います。そしてそのためには、流動性のある商品というのをいかに提供していくかというのは、1つの重要な考え方になるのだろうと思います。
それから、流動性に関しては、もう一つだけ経済理論的な観点をご説明させていただきますと、これは外部性という問題が非常に大事だということです。すなわち1人だけがたくさん取引しても流動性は高まらなくて、みんなが一斉に取引を始めれば一気に流動性が高まるという性質です。このため、ほかの人があまり取引しないと思えば1人の個人も取引しないという外部性が、流動性という問題にはあります。
そういう意味では、流動性を高める上では、常に誰か特定の人物が流動性を高めなければいけないというのではなくて、ある意味で呼び水的に、まず流動性を高めて、市場の中で流動性が高まっていけば、それ以上はもう外部でサポートしなくても、流動性は高まっていくことがあります。鶏が先か卵が先かみたいな話で、流動性がないから誰も取引しないということですし、流動性があれば放っておいてもどんどん取引が進んでいくというのが流動性という概念だと思います。そういう概念も考えながら、どういう流動性を高める施策というのが大事なのかということを議論するということも必要なのだろうとは思います。
- 【神田座長】
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どうもありがとうございました。
竹川委員、どうぞ。
- 【竹川委員】
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私は個人投資家が中長期に資産形成を考えたときに、ETFというのは、その中核になり得る商品だとは思っています。ただ、既存の投資家及び初心者、これから投資を始めようという方々が、なぜETFを使ってくれないのかというところからお話をしたいと思います。
まず、既存の投資家さんですけれども、これまで皆さんお話に出ているように、流動性の問題が一番大きいと思っています。出来高も少ないですし、指数との乖離もある中で、積極的に使いづらいというのが一番意見としては大きいと思います。これはマーケットメイカーの制度を導入するといったご提案も出ていましたので、そういったことも含めて環境の整備をしてほしいというのが、まず1つ目です。
2つ目は、ETFを個人投資家さんに使ってほしいという声も大きいですが、現状、機関投資家の方々が国内市場ではなくて海外市場に上場する、海外ETFを買っているということがあります。
国内の機関投資家が国内市場ではなくて、海外市場のETFを買っているというのはなぜなのか、その理由を取り除くことが、イコール個人投資家のためにもなるのではないかと思います。
個人投資家だけに売買を期待されても、より積極的に取引をしてくださいと言われても、それは難しい。積極的に機関投資家が入ってこられるような市場にする、現状、取引をしたがらない理由を明確にしていただいて、それを取り除くことが結果的には個人投資家のためになると考えます。
3点目は、中長期で資産形成を考えている投資家さんによく言われるのは、アメリカの証券会社のようにDRIPを導入してほしいということです。要するに、株の配当金やETFの分配金を自動的に再投資できるサービスです。こうしたサービスがほしいと言われることが多いです。
例えば中長期で資産形成をしていこうという方々は、その時々で配当金とか分配金が欲しいわけではなくて、中長期で資産を育てていこうと思っているわけで、分配金が払い出されてしまうと、自分で再投資をしないといけないという手間がかかるとか、面倒であると考える方も多いです。これは証券会社の方にお願いしたいのですが、そういったサービスができるようになると、少しETFを使ってみようという方も増えるのではないかと思います。
一方、金融庁の資料の中に、ETFを積み立てで、という話も出てきていますが、ETFは積み立てではなく、ポートフォリオを組んで、そのパーツとして使ったほうがいいのではないかと考えます。インデックスファンドの最低積立金額が下がっていますし、ノーロードで積み立てできるシステムもかなり普及しています。ETFはそうした使い方とは別に、個人もそうですし、IFA(独立系のファイナンシャルアドバイザー)もそうですし、投資一任のサービスもそうですし、ポートフォリオ運用を考えたときのパーツとしてETFは使っていったほうがいいのではないかと思います。
最後に、商品の多様化ですが、現状、流動性がない中で商品を増やしていっても、あまりよいことにはならないのではないかと思っています。過去にも、上場したETFが資産残高が少なく、流動性もなく、繰り上げ償還した例もあります。無理に本数を増やしていくより、まずは市場に厚みを持たせて機関投資家の方にも入っていただいて、さらに個人投資家も入っていくというような流れで進んでいったほうがいいのではないでしょうか。
以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、神戸委員、お願いします。
- 【神戸委員】
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ありがとうございます。最初に、永沢委員がおっしゃった、レバレッジ型とかインバース型の利用がなぜ多いのかということに関しましては、鹿毛委員もおっしゃっておられましたように、タイミングを捉えた投資を行いたい多くの投資家がETFを使っているというのが、その理由だと思います。
多様なスタンスの投資家がETFを利用していれば違った状況になると思いますが、プロの投資家の方があまり国内のETFを利用しないのに加えて、資産形成目的の個人投資家、あるいはポートフォリオ運用を行っている投資家の方々もETFをあまり利用していないと考えられます。実際、弊社でポートフォリオによる運用をアドバイスさせていただいている中で、ポートフォリオに入れるのはせいぜい金のETFぐらいというのが実情で、それ以外はリバランスなどのポートフォリオ管理のしやすさもあって、ETF以外の一般的な投信を使ってポートフォリオを組んでいます。ETF自体が特定の相場観に基く、タイミングを捉えた投資を行いたい方が利用する商品となっているため、レバレッジ型、インバース型の利用が多いのだろうと思います。
次に、ETFを普及させていきたいということになると、皆様方がおっしゃるように流動性の確保が最大のポイントになると思います。プロにとって有用な商品にまずするべきというご意見が複数の方からありましたが、プロの方にとってこそ、運用における最大のリスクは流動性リスクと考えられます。そのリスクを軽減するためにマーケットメイク制度を導入することは有用と思われます。ただし、実際何らかのショックが発生したときなどに、そのマーケットメイカーがどこまで対応可能なのかということも問われてしまうわけなので、その辺の検証が必要だとは思うのですが、マーケットメイク制度の導入自体には賛成です。
今回、一番大きなテーマである国民の安定的な資産形成とETFの関係ということに関しましては、ETFを安定的な資産形成に資するための商品にしたいということであれば、銀行本体においての販売というのも検討されてしかるべきと思います。
ただ、時価が動くものについて銀行本体で常に売り買いの取扱いを行うというのは、実務上難しい問題も生じると思いますので、定額の積立型、いわゆるるいとう型の商品のみの取扱いがいいのではないかと考えます。特定の日の寄りつきで買うというような仕組みであれば、銀行でも対応可能なのではないでしょうか。対象も全銘柄は難しいでしょうから、少数の銘柄だけに限っていいと思うのですけれども、そういう対象となりうるかどうかというラベリングがあってもいいと思います。
資産形成、積み立てに向いている商品ということで、流動性とか原資産価格との乖離の状況の推移などから判断して、特定の銘柄を選定するわけです。その場合には、一定期間ごとに評価して見直していくというルールが求められると思います。
あと、商品の多様化に関しては、金融庁さんが決められたスローガンなのでたいへん申し上げにくいのですが、貯蓄から投資へというスローガンが、私は個人的にはあまり適切ではなかったのではないかという気がしています。投資の本質というのは成長と分散にあるということを、毎回、お話しさせていただいていますが、日本の生活者にとって成長と分散というのを考えたときに、必要になるのはいずれについても、おそらく海外投資でしょう。それを考えると、国内から海外へというスローガンにしておいたほうが、ひょっとしたら定着が進んだのではないかと思っています。
ETFを多様化させていく上でも、多様な海外投資、これはスマートベータ型も含めて、それを可能とするための品揃えというのを図って行く方向ではないかと思います。貯蓄から投資へというと、多くの方が日本株を思い浮かべてしまいがちです。ETFをもし多様化させていくのであれば、海外投資に結びつく方向性での多様化というのが1つ考えられるのではないかと思います。
上田委員がおっしゃった、ラップ型商品などにアドバイザーが関わってETFの利用を生活者に広めていくというのは、私もたいへん有望だと考えていますが、その場合にはラップ型商品の構成部品としてのETFという形を取ることになると思います。スマートベータ型ETFというのは、プロにとっても非常に有用な商品になりうるということを併せて考えれば、商品多様化の候補になるでしょう。時代が変わってもアルファを求めたい投資家は必ず存在するわけで、それにある程度対応できるスマートベータ型のETFのような商品は求められてくると思います。それにプロアドバイスも加えて、ETFを資産運用に活用というのが、望ましい姿の一つなのではないかと思います。
最後に、リテール顧客への販売、説明で問題が出ているというお話がありましたけれども、私も本来はレバレッジ型、インバース型はほかの一般的な投信と同様のリスク基準での適合性が求められるべきだと思います。一般的な投資信託だと売れないのに、同程度のリスクがあってもETFであれば同じ顧客に売っても大丈夫というのはいかがなものか、ということもありまして、この辺はよく整理したうえで、できれば同じ基準にしていくべきではないかと思います。
以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
有田委員、どうぞ。
- 【有田委員】
-
私からは二、三申し上げたいことがございます。まず1つ、改めてETFとは何かということを考えてみますと、私は、これは関さんがおっしゃいましたように、ある意味イノベーションだと思っております。どのようなイノベーションかというと、資本市場のエクスポージャーを取引所に乗せるテクノロジーがこれで開発されたと。
そういった意味で、非常に大きな意義があることでございまして、それは投資家に対してアルファとベータを峻別する機会を与え、また、いわゆるコミッションベースの営業から、アドバイザリーベースの営業への転換を後押しし、また近年では、例えば銀行のバランスシートに対する制約が厳しくなる中で、機関投資家の利用も増大しているということでございまして、投資家はまさに費用が安いこと、目的に即したマーケットのエクスポージャーを容易にとれるということ、それから流動性が高いことに注目して、その利用を増やしてきているということが、グローバルには言えると思うんです。
かつ3.4兆ドルという現状の市場規模も、投信市場が21兆ドル、フューチャーズやスワップといったデリバティブズが50兆に迫る規模ということを考えれば、まだまだ飽和感ということには乏しくて、グローバルには、このイノベーションを使った市場がますます拡大していくと考えております。
こうした特徴を持つETFは、今回のテーマでもありますとおり、私は言うまでもなく日本の国民の安定的な資産形成を図る上で、そもそもは非常に適した運用商品であると考えております。
では、それがなぜ足元、なかなか日本では発展しないのかということになるわけですけれども、流動性の問題、商品の多様性の問題、ここについて1つずつ申し上げたいと思います。
流動性につきましては、マーケットメイクということが先ほど来、話題になっておりますが、1つ技術的に設定、交換のプロセスが日本では大きな障害になっているということを認識しなければいけないのではないかなと考えております。
土本さんの資料の14ページ、あるいは関さんの資料の8ページに実は書かれていることですが、本来、ETFは原資産のバスケットを持ち込むことによって、それをETFに変換し、また、ETFを戻すことによって、そのバスケットを現物移転させることが可能というのが特徴なわけでございますけれども、本邦、日本には米国におけるNSCCのようなETFと対象原資産の有価証券バスケットのネッティングを行う決済機関が存在しておりません。
そのために、設定、交換プロセスにかかる日数が、今では、特に株について言うと、Tプラス6日以上というサイクルが一般的になっておりまして、本来であれば投資対象原資産の流動性が裏づけとなるはずのETFの流動性を著しく制限していると、すなわち日本株の決済サイクルはTプラス3日であるにもかかわらず、ETFはそれよりも長い時間をかけなければ設定、交換ができないという技術的な現状を改善しなければ、流動性は、いくらマーケットメイクをしてくれと言ってもなかなか増加してこないという点が上げられると思っております。
それから、商品の多様化についてですが、足元、レバレッジ型のETFのことが話題になりますが、それはさておいて、日本のETF市場は、レバレッジ型も含めて純資産残高の95%が日本株のETFであるということでございます。例えば、日本の債券をETFにするという努力も必要だと思いますし、また、海外で上場されておりますETFへの日本からのアクセスをもう少し容易にするためにも届出事項の改善とか、そういった工夫がされれば、日本におけるETFの選択肢も格段に増えて、このイノベーションを日本国民がもっと容易に使うことができるようになるのではないかと考えております。
以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、島田委員、お待たせしました。どうぞ。
- 【島田委員】
-
皆さんのお話を聞いていて、ほんとに思うことがたくさんありまして、ETF、何とかしたいという気持ちは皆さんお持ちなのだと思いますが、何かすばらしい魔法はないのだなということがよくわかりました。
まず、個人投資家にとってはETFを使えるようになるというのは、すごくメリットがたくさんあると思います。しかし、残念ながら、このETF、組成する場合にはいろいろメリットはありますが、販売することに対して誰もメリットがないというのが、非常に大きな問題になっていると思います。
ですから、そこを考えると、やはり流通をさせていくためには、現在、ETFを買えるところだけではなく、もっと便利にみんなが買いたいと思うような仕組みをつくらなければいけないということで、皆さんがおっしゃっているように、独立アドバイザーというものをきちんと育てていくとか、そういう方たちが生活ができるような形のビジネススキームになっていくようにするといったことが非常に重要なのではないかと思います。
ただし、そのためには、卵が先か鶏が先かということもあると思います。商品としての信頼性が担保されていなければ、投資家は安心して使えないけれども、この信頼性を高めるためには、個人投資家に使ってもらおうということを最初に考えるのではなくて、やはりプロがきちんと使えるようなものになっているかという竹川委員、あるいは鹿毛委員のお話があったと思います。まさしくその通りだと思います。順番としては、プロが使えるものになっていなければ、個人投資家はそこの後にはついていけないのではないかと思います。
一方で、個人投資家がどういうふうに使えるかということをあえて考えてみるとするならば、これもまた販売する方たちにとってもモチベーションはないと思いますが、ラップ型の商品であるとか、DCにおいて使うことはできないか、あるいは先ほど来お話があるように、銀行で直接売ることができないかといった形で、少し制度的な手当て、あるいは商品の仕組みとしてアイデアをくっつけていただいて、使いやすいものにしていただかなければならないと思います。現状では、個人投資家は一般的なインデックスファンドも相当程度コストも安くなっておりますし、定額買い付けであるとか、分配金再投資といった利便性を考えますと、あえてETFではなくてもいいという意見も大きくなってきています。
また、最も大きな顧客、潜在顧客というのは、多分、退職金ではないかと思います。退職金においてのポートフォリオ運用で、ETFがしっかり使えるような商品になること、そして、その人たちが相談できる相手がいるということが、個人への広がりになっていくのではないかと思います。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
あっという間に予定の時間が来てしまいました。大変活発にご意見をいただきまして、ありがとうございました。
本日、皆様方からいただきましたご意見は、今後の具体的な検討に生かさせていただきたいと思います。
最後に事務局から連絡事項等ございましたら、お願いします。
- 【齋藤市場課長】
-
次回のワーキング・グループの日程及びテーマなどに関しましては、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局からご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
- 【神田座長】
-
それでは、以上で散会いたします。どうもありがとうございました。
―― 了 ――