金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第13回)議事録

 

1.日時:

平成30年9月21日(金)15時00分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室
 
【神田座長】
 それでは、定刻でございますので、市場ワーキング・グループの第13回目の会合を開催させていただきます。皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 
 少しご無沙汰しておりまして、前回第12回会合までに引き続き、このワーキング・グループの座長を務めさせていただきます、学習院大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。
 
 まず最初に、今回からご参加いただく方もいらっしゃいますので、このワーキング・グループについて簡単に説明といいますか、振り返りをさせていただきます。
 
 このワーキング・グループでございますけれども、今から2年半ほど前の平成28年4月に麻生金融担当大臣から、「市場・取引所を巡る諸問題に関する検討」という諮問をいただきまして、それを受けて金融審議会のもとに設置されたワーキング・グループであります。平成28年の5月から12回にわたって皆様方からご議論をいただき、また関係者の方からヒアリング等もしながら審議を進めて、顧客本位の業務運営、あるいは取引の高速化等についてご審議をいただきました。平成28年の12月には、約2年弱前ですけれども、報告書を公表いたしました。
 
 その後、金融庁においては国民の安定的な資産形成に向けた取り組みを進めてきまして、近いところでは本年6月に「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPI」を公表するなど、顧客本位の業務運営の定着に向けた施策を進めてきました。このほか本年1月につみたてNISAの導入、それから本年の7月になりますけれども、「高齢社会における金融サービスのあり方」の中間的な取りまとめというものを公表しております。
 
 そこでこのたび、「高齢社会における金融サービスのあり方」など「国民の安定的な資産形成」を中心に議論をさらに深めるために、このワーキング・グループが再開されることとなった次第です。
 
 本日は、ワーキング・グループの通算で、第13回目の会合となりますけれども、前回から約1年9カ月ぶりの開催ということになりますので、初めに、事務局である金融庁の遠藤長官からご挨拶をいただきたいと存じます。遠藤長官、よろしくお願いいたします。
 
【遠藤長官】
 ご紹介いただきました、金融庁長官の遠藤でございます。本日は大変お忙しい中、また足元の悪い中お集まりいただきましてまことにありがとうございます。
 
 ただいま神田座長からご紹介ありましたように、平成28年の12月でございます。顧客本位の業務運営や取引の高速化などについて、本市場ワーキング・グループで報告書を取りまとめていただきました。ありがとうございました。今般、この市場ワーキング・グループを再開するに当たりまして、私から一言ご挨拶申し上げます。
 
 ご案内のように、我が国では1,800兆円という家計金融資産、この過半が現金・預金ということでございます。過去20年間、その伸びも非常に低い水準になっております。この豊富な資産が有効に運用、活用されているとはとても言い難い状況ではないかと思っております。
 
 こうした状況を踏まえますと、家計の安定的な資産形成というものを進めることは我が国としての大きな政策課題ではないかなと考えております。これまでも我々は様々な施策を打ってまいりました。金融事業者向けには、皆様に取りまとめていただいたプリンシプル、原則を踏まえまして、顧客本位の業務運営の定着、徹底を図ってきたつもりでございますし、また家計向けには、本年1月にスタートいたしましたつみたてNISAなどを通じた長期・積立・分散投資を行いやすい環境整備などに取り組んでまいりました。しかし、率直に言いまして、こういった取り組みもまだまだ依然、道半ばではないかなというふうに考えております。こうした取り組みを着実に進めるとともに、その効果も検証しなければいけないと。さらにそういった検証の上に立って改善していくという形で、明確なPDCAというものを回していかなければならないのではと考えております。
 
 例えば、顧客本位の業務運営に関しては、その原則というものをコンプライ・オア・エクスプレインという形で各金融機関に業務運営の方針というものを公表していただくことをお願いしているわけでございますけれども、ともすると金融庁が顧客本位の業務運営の方針について、ぜひコンプライ・オア・エクスプレインという形で対応してくださいということをお願いしているから、金融庁がお願いしているから、金融機関が顧客本位の義務運営の取組方針等を出している、という形になっているのではないかと。このため、形式的な対応にとどまっているのではないかということを懸念しております。
 
 本事務年度、これから我々の行政方針を出してまいりますけれども、モニタリングを通じて、実際にこういった経営陣が出した顧客本位の業務運営の取組方針が現場でも本当に徹底されているのか、営業現場でどのように実践されているのかということを見ていきたいと思いますし、業務運営の方針でありますとか、あるいはそれの検証のための実質的なKPIというのを出している金融機関もございますけれども、実際に方針のプリンシプルでありますとかKPIというものが、現場の窓口でお客様にちゃんと示されて、自分たちの金融機関というのは、まさにこういう方向でお客様のために商品を売っている、あるいは金融サービスを提供しているということがお客様に届いているのかどうかということも、我々は見ていかなければならないと思います。
 
 顧客アンケート調査というのを行政としてもやってみたいと思っておりまして、この顧客アンケート調査を通じて、顧客に本当に届いているのかということの分析・検証をして、施策を深めていくことを考えております。
 
 それから、長期・積立・分散投資につきましては、つみたてNISAの新規口座開設者の7割が、これまで投資と縁遠かった20代から40代でございます。新たに投資を行う層の広がりにつながりつつあるというふうに、我々確信しております。今後、つみたてNISAのさらなる普及に向けた取り組みに加えまして、つみたてNISAにとどまらず、国民の生涯を通じた安定的な資産形成を支援する制度、例えばイギリスなんかにはISAというような制度がございますけれども、そういった支援する制度のあり方につきましても検討を進めていきたいと考えております。
 
 それから、長寿化が進展する中で、高齢の各世帯の金融資産は伸び悩んでおり、長生きに備えながら、退職世代等が自分自身の状況に応じた資産の形成、取り崩し、それから承継を行っていくことが重要になっております。そのため、先ほど申しました生涯を通じた安定的な資産形成を支援する制度に加えまして、例えば多様なお客様が自身の状況に適した商品サービスを選択できるように、老後の収支でありますとか金融商品・サービスの見える化等、それを踏まえた商品・サービスの提供の推進と、それを支える環境を整備していかなければいけない。あるいは、個人資産や事業の円滑な承継を支える仕組み、金融サービスのあり方というのを検討していかなきゃいけない。あるいは、金融老年学、いわゆるフィナンシャル・ジェロントロジーでございますけれども、このフィナンシャル・ジェロントロジーの進展というものを踏まえて、きめ細かな投資家保護のあり方について検討していかなければならない、といった問題意識を持っております。
 
 金融業界が取り組むべき方向性、顧客が留意すべき事項に関する原則などを取りまとめていただくということも視野に、検討を進めるということが重要ではないかなというふうに考えております。
 
 以上まとめますと、顧客本位の業務運営の取り組みというものが進化し、高齢社会における国民の生涯を通じた安定的な資産形成を推進していくということは、個々の家計の資産配分の効率化を通じまして、我が国全体の資金循環の最適化を図る上で非常に重要なことだと考えております。こういった取り組みを加速していくために、委員の皆様のぜひご知見をお借りできればなというふうに切に考える次第でございます。
 
 前回までに引き続きまして、ぜひ活発なご議論をいただきますことをお願い申し上げまして、私の挨拶にかえさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、次に、このワーキング・グループでございますけれども、前回第12回会合までのメンバーの方々と、基本的には同様の方々にご参加いただくわけですけれども、審議内容の一部変更等を踏まえまして、何人かのメンバーの入替えや増員がございました。また、約1年9カ月ぶりの開催ということもありまして、ワーキング・グループの再開の経緯と、それからご参加いただくメンバーの皆様方のご紹介を事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 事務局の企画市場局市場課長の小森でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 まず、このワーキング・グループの再開の経緯について簡単にご説明をいたします。当ワーキング・グループにおかれましては、一昨年の12月に報告書を取りまとめ、公表していただきましたが、昨年3月の金融審議会の総会におきまして、その後のワーキング・グループ運営について、岩原金融審議会会長にご一任がなされておりました次第でございます。その後、当庁では顧客本位の業務運営を含む国民の安定的な資産形成に向けた取り組みを進めてきておりましたが、今般、岩原会長のご了解のもと、こうした取り組みにつきましてさらに議論を深めていただくために、ワーキング・グループが再開されるといったことになったところでございます。
 
 続きまして、当ワーキング・グループのメンバーの方々を順にご紹介申し上げます。座席の順番にご紹介させていただきます。
 
 委員の皆様から見て右側のほうから、まず上柳敏郎様でございます。
 
【上柳委員】
 上柳でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 大崎貞和様です。
 
【大崎委員】
 大崎でございます。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 鹿毛雄二様です。
 
【鹿毛委員】
 鹿毛でございます。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 加藤貴仁様です。
 
【加藤委員】
 加藤です。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 神作裕之様です。
 
【神作委員】
 神作でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 隣に神戸孝様がいらっしゃるご予定でございますけれども、今日は途中からご参加されるご予定でございます。
 
 続きまして、黒沼悦郎様です。
 
【黒沼委員】
 黒沼でございます。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 駒村康平様です。
 
【駒村委員】
 駒村です。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 島田知保様です。
 
【島田委員】
 島田でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 竹川美奈子様です。
 
【竹川委員】
 竹川です。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 佃秀昭様です。
 
【佃委員】
 佃です。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 中野晴啓様です。
 
【中野委員】
 中野でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 野尻哲史様です。
 
【野尻委員】
 野尻です。どうぞよろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 野村亜紀子様です。
 
【野村委員】
 野村でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 濱口大輔様です。
 
【濱口委員】
 濱口です。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 林田晃雄様です。
 
【林田委員】
 林田です。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 宮本勝弘様です。
 
【宮本委員】
 宮本です。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 また、本日はご欠席のメンバーといたしまして、池尾様、上田様、高田様、永沢様、福田様にもご参加していただくこととなっております。
 
 続きまして、オブザーバーの皆様をご紹介いたします。やはり委員の皆様方のほうから見て右前のほうからご紹介いたします。
 
 全国銀行協会より、みずほ銀行の望月常務執行役員です。
 
【望月オブザーバー】
 望月です。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 日本証券業協会より、大和証券の荻野常務執行役員です。
 
【荻野オブザーバー】
 荻野です。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 生命保険協会より、第一生命の畑中取締役常務執行役員です。
 
【畑中オブザーバー】
 畑中でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 隣、これも遅れて参加されますけれども、投資信託協会より、野村アセットマネジメントの栗崎常務執行役員が後ほどご参加されます。
 
 続きまして、信託協会より、三井住友トラスト・ホールディングスの白山執行役専務兼執行役員です。
 
【白山オブザーバー】
 白山でございます。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 テーブルの反対のほうにまいりまして、国際銀行協会より、UBS証券、中村代表取締役社長です。
 
【中村オブザーバー】
 中村でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
【小森市場課長】
 日本取引所グループ、東京証券取引所の川井執行役員です。
 
【川井オブザーバー】
 川井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 日本投資顧問業協会より、三井住友アセットマネジメントの宮垣取締役兼専務執行役員です。
 
【宮垣オブザーバー】
 宮垣でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 消費者庁消費政策課の内藤課長です。
 
【内藤オブザーバー】
 内藤でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 日本銀行金融市場局市場企画課の大竹課長です。
 
【大竹オブザーバー】
 大竹でございます。よろしくお願いいたします。
 
【小森市場課長】
 財務省大臣官房信用機構課の中澤課長です。
 
【中澤オブザーバー】
 中澤でございます。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 オブザーバーの方々につきましては、テーマに即してお呼びすることとなりますので、今後、追加・変更があり得ることをご了解いただければと存じます。
 
 次に、今回の会合に参考人としてご参加いただく方をご紹介させていただきます。委員の皆様から見て、右側にお座りいただいております。
 
 明治大学国際日本学部特任教授の沼田優子様です。
 
【沼田参考人】
 沼田と申します。よろしくお願いします。
 
【小森市場課長】
 事務局につきましては、時間の都合もございますので、お手元の配席表をもってご紹介にかえさせていただきます。
 
 委員等のご紹介につきましては以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 次に、会議の運営について幾つかご承認をいただければと思うことがございます。前回までといいますか、大分前ですけれども、前回までと同様、このワーキング・グループは原則として公開とさせていただき、議事録も公表させていただくということを考えております。したがいまして、皆様方には公表を前提としたご意見、ご発言をいただければと存じます。
 
 また、私がこのワーキング・グループに万が一出席できないような場合の座長代理につきましては、大変恐縮ですけれども、私にご一任いただき、その都度ご指名をさせていただくということにさせていただければと思います。
 
 そういうことで進めさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 
【神田座長】
 どうもありがとうございます。
 
 それでは、議事に移らせていただきます。本日ですけれども、「顧客本位の業務運営の定着状況と課題」をテーマとしてご議論をお願いしたいと思います。
 
 そこでまず事務局から、第12回会合以降の「顧客本位の業務運営の定着状況と課題」についてご説明をいただきます。その後に、顧客本位の業務運営の取り組み状況について、銀行、証券会社、保険会社、運用会社の皆様からご報告をいただきます。その後、投資信託の販売会社等から、独立した立場で顧客にアドバイスを提供する担い手、いわゆるIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)の現状及び課題について、沼田特任教授からご報告をいただきます。最後にまとめて質疑応答・意見交換の時間をとりたいと思います。
 
 ちょっと盛りだくさんで恐縮ですけれども、よろしくお願いいたします。
 
 では、まず事務局からの説明をお願いいたします。
 
【水野主任統括検査官】
 総合政策局の水野です。よろしくお願いいたします。
 
 それでは、お手元の資料に沿ってご説明させていただきます。最初に、資料の大まかな構成について申し上げます。2ページ目の目次をご覧ください。本資料では、まず金融機関に対し、「顧客本位の業務運営」の定着、浸透を促進するために、金融庁がこれまでに取り組んできた施策について説明した上で、投資信託等販売会社における足元の取り組み状況について説明した後、資料は今回ご用意しておりませんが、口頭にて今後の金融庁の取り組み方針を説明したいと思います。
 
 4ページをご覧ください。平成28年12月に公表された金融審議会市場ワーキング・グループ報告において、金融事業者がみずから主体的に創意工夫を発揮し、ベストプラクティスを目指して顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、よりよい取り組みを行う金融事業者が選択されていくメカニズムの実現が望まれること、そのためには、プリンシプルベースのアプローチを用いることが有効であり、当局において、顧客本位の業務運営に関する原則を策定し、金融事業者に受け入れを呼びかけることが適当であるとの内容が示されたのを踏まえ、平成29年3月に金融庁におきまして、「顧客本位の業務運営に関する原則」及び「『原則』の定着に向けた取り組み」を公表しました。
 
 5ページをご覧ください。本原則の目的は、金融事業者が顧客本位の業務運営におけるベストプラクティスを目指すものであり、金融事業者において幅広く採択されることを期待しております。また、「プリンシプルベース・アプローチ」を採用しており、プリンシプルの中で実施できないものがあった場合には、その理由や代替策をわかりやすい表現で示せばよいというアプローチになっております。
 
 6ページをご覧ください。ご覧のとおり、本原則は7つの項目で構成されております。本日は時間も限られておりますので、個々の説明は省略させていただきます。
 
 7ページをご覧ください。「原則」の公表に合わせ、「原則」の定着に向けた取り組みの基本的考え方を公表し、取り組みについては、実質を伴う形での定着が重要であること、経営トップが経営戦略という次元で積極的に関与していくべきであること、あわせて顧客自身が主体的に行動することが重要であることなどを掲げております。
 
 8ページをご覧ください。具体的な取り組みとして、まず金融事業者の取り組みの「見える化」を促進するべく、顧客本位の業務運営の定着度合いを客観的に評価できるようにするための成果指標、いわゆるKPIを取組方針や、その実施状況の中に盛り込んで公表するよう働きかけております。また、当局において実態把握を行い、各社の取組方針と実態が乖離していないかなどをモニタリングしております。さらに顧客が主体的に行動できるように、実践的な投資教育の教材を作成するほか、その行動を補う仕組みとして、第三者的な主体による評価や顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化といった取組みが広く提供されることが望まれるところです。
 
 9ページをご覧ください。今年の6月末までに1,426の金融事業者が「原則」を採択し、取り組み方針を策定、公表しました。また、成果指標(KPI)も347の事業者が公表しており、「見える化」は一定程度進んできているものと考えられます。
 
 10ページをご覧ください。金融庁では、各社が公表した自主的なKPIの中から、金融事業者が目指す販売等の方向が端的に示されると考えられるものを好事例として四半期ごとに公表しております。本ページの事例は、その一部になります。
 
 11ページをご覧ください。こうした自主的なKPIの内容は、各事業者において区々であり、顧客がこれらのKPIを用いて、顧客本位の良質な金融商品・サービスを提供する金融事業者を選ぶことは、必ずしも容易ではないものと考えられます。こうした中、有識者から、KPIについては第三者が比較できるように統一的な情報を金融事業者に公表させることが望ましいといった要望が多く聞かれました。このため、今般金融庁において、比較可能な共通KPIとして考えられる指標を示すことといたしました。
 
 具体的には、顧客が投資信託を購入する目的は、基本的にはリターンを得るためであるとの認識に立ち、運用損益別顧客比率、投資信託預り残高上位銘柄のコスト・リターン及びリスク・リターンといった3つの指標を比較可能な共通KPIといたしました。これらの指標については、複数の指標を複合的かつ時系列で見ることが重要であると認識しております。なお、この指標に係る現時点の定義は、金融事業者のデータ管理に係るシステム運営の制約等を勘案したものとなっておりますが、各社のシステム対応状況等を踏まえ、今後必要に応じて改善していくつもりです。また、今後投資信託の販売会社のみならず、その他の業態においても、比較可能なKPIの指標に関する検討を進めてまいる所存です。
 
 12ページをご覧ください。今般、主要な投資信託の販売会社、銀行29行について、これら3つの共通KPIを用いた分析を行っております。左端のグラフのとおり、2018年3月末時点の運用損益別顧客比率を見ると、半数弱の顧客の運用損益率がマイナスとなっております。左から2番目のグラフのとおり、各販売会社について、運用損益率が0以上の顧客の割合を見ると、7割台の販売会社がある一方、3割台にとどまる販売会社もあります。また、右から2番目のグラフのとおり、顧客の投資信託の平均保有期間が長くなるにつれ、運用損益率0以上の顧客割合が高くなる傾向にあり、長期投資がリターンの向上につながっていることが窺われております。
 
 13ページをご覧ください。各販売会社の投資信託預り残高上位銘柄のコスト・リターンを検証したところ、左端のグラフのとおり、両者に明瞭な関係が認められず、コストに見合ったリターンは必ずしも実現していないことが窺われます。一方、リスク・リターンは中央のグラフのとおり、リスクの上昇に伴い、リターンも一定程度上昇する傾向が見られましたが、シャープレシオを見ると右端のグラフのとおり、0.8台の販売会社がある一方、0.3台にとどまる販売会社もあり、リターンを効率的に提供しているかとの観点から見ると、かなりの差が認められております。
 
 15ページをご覧ください。これより投資信託等の販売会社における「顧客本位の業務運営」の定着に向けた足元の取り組み状況について、モニタリングした結果をご報告いたします。
 
 まず、業績評価体系については、残高などのストックを重視する動きや、積立投資を業績評価項目に設定する動きが見られます。また、業績評価上、手数料率を一律評価する動きのほか、営業店の収益目標をなくし、新たに販売プロセス目標を導入した事例、顧客アンケート調査の結果を業績表彰に反映させる仕組みを導入した事例などが見られております。
 
 16ページをご覧ください。商品ラインアップについては、長期投資向けの新商品の投入、高リスク商品等の特定商品の販売抑制といった取組みなどが見られるほか、一部地域銀行において、投信積立について、あらかじめ積立期間を決められる仕組みを構築し、投資信託の保有を促す取り組みが見られております。
 
 また、コンサルティングの充実を図るため、支店単位で毎週ロールプレイ研修を実施しているか、ロボットアドバイス等を用いて、顧客ポートフォリオの管理強化等に努めている事例も多く見られております。
 
 さらに顧客と接触する機会を増やすべく、年中無休でアドバイスを行う新型店舗を開設するほか、職域営業やコールセンターを使った情報提供の強化等に取り組んでいる事例が多く見られるところです。
 
 17ページをご覧ください。このように運営体制を見直す動きがある中、具体的な数値を見てみますと、預り残高上位銘柄に占めるバランス型・インデックス型投信の割合は、銀行においては増加傾向にあり、長期投資を意識した販売が広がりつつあることが窺われます。
 
 18ページをご覧ください。銀行における販売手数料は足元で低下する一方、証券会社においては高止まりの状況にあります。
 
 19ページをご覧ください。積立投資信託を行っている顧客の割合は、銀行において逓増傾向にあり、特に地域銀行の比率は30%にまで達しております。
 
 20ページをご覧ください。投資信託の預かり残高上位銘柄を、顧客年齢層別に見ると、60歳以上の顧客が8割程度を占めております。一方、顧客年齢層別に資産カテゴリーの内訳を見ると、年齢層別で目立った違いは見られず、年齢を意識した販売はあまり行われていないことが窺われております。
 
 21ページをご覧ください。投資信託保有顧客数は、銀行や大手証券では伸び悩んでいる一方、ネット証券においては大幅に増加しております。ネット証券はつみたてNISA等、新規に積立投信を始める顧客の獲得に注力したことなどが大幅増加に繋がっているものと思われます。
 
 22ページをご覧ください。平均保有期間は、足元で短期化しております。ただし、個々の販売会社を見ると、4年超の販売会社がある一方、2年未満の販売会社も一定数存在し、大きな差が見られております。右のグラフのとおり、過去データの分析では、長期保有することにより、投資リターンが安定化しており、「長期保有の有効性」を認識してもらうことが重要であると考えております。
 
 23ページをご覧ください。今回モニタリングを行った営業現場においては、平均して販売員1人当たり年間約30人の顧客に約70件の投信を販売しておりますが、うち新規顧客は7人にとどまっております。こうした中、月次のリスク性商品販売を見ると、四半期末ごとに一時払保険の販売を中心に顕著な伸びが見られており、期末収益目標を意識したプッシュ型営業が行われている可能性が窺われております。
 
 お手元の資料説明は以上になりますが、最後に口頭にて、今後の金融庁の取り組み方針を申し上げます。
 
 これまで見てきましたように、投資信託等の販売会社においては、取組みの成果が窺われる事例と、あまり成果が見られない事例が混在しており、顧客本位の取組みは道半ばの状況にあります。そのため、顧客本位の業務運営の浸透・定着に向け、金融機関の取組みの「見える化」の促進が重要な課題と捉えております。金融庁では、金融機関の経営者が「原則」をみずからの理念としてどのように取り入れ、戦略を立てているか、また現場においてどのように実践しているかなどについて分析、検証してまいる所存です。
 
 また、顧客アンケート調査を通じ、金融機関の取り組みが顧客に浸透し、金融機関の選択に活用されているかなどの実態を分析するつもりです。さらに投資信託の販売会社に対し、個々に公表を働きかけるなどにより、比較可能な共通KPIの普及・浸透を図るとともに、類似商品である貯蓄性保険も含め、商品内容等のさらなる「見える化」を促進してまいる所存です。
 
 また、民間の第三者的な主体による金融機関の取り組みの「見える化」については、今後第三者評価間で健全な競い合いが行われ、質の向上が図られていくことを期待しております。さらに販売会社等とは独立した立場で顧客にアドバイスを提供する担い手、いわゆるIFAにより、今後更に顧客の視点に立ったサービスが広く提供されていくことも期待するところです。そのため、今後それらの新たな動きを注視しつつ、本市場ワーキング・グループにおいて議論を行い、顧客の主体的な行動を補う仕組みの発展を促していきたいと思っております。
 
 以上で、私からの説明を終わります。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、次に、顧客本位の業務運営の取り組み状況についてご報告をしていただきたいと思います。順番は、みずほ銀行の望月常務執行役員、大和証券の荻野常務執行役員、第一生命の畑中取締役常務執行役員、そしてセゾン投信の代表取締役社長をされておられる中野委員、この順番で報告をお願いしたいと思います。
 
 では、まずみずほ銀行の望月さんからよろしくお願いいたします。
 
【望月オブザーバー】
 みずほ銀行の常務執行役員の望月でございます。本日は、ご説明の機会をいただきありがとうございます。
 
 全国銀行協会の会長行という立場であることから、銀行界を代表し、みずほ銀行の取り組みにつきまして、ご紹介させていただきたいと思います。
 
 3ページをご覧ください。これまでの取り組みですけれども、みずほにおきましては、ガバナンスのフロントランナーを標榜し、委員会等設置の移行などをいち早く行ってきたところですが、みずほのフィデューシャリー・デューティーにつきましても、お客さまへの向き合い方は企業風土並びにガバナンスそのものであるとの考えのもと、他社に先駆けまして、2016年2月にFDに関する取り組み方針を公表させていただきました。その後、この金融審議会市場ワーキング・グループの報告書なども参考にさせていただきながら、2017年1月にFD推進室といった専門組織の立ち上げ並びに外部の有識者の方にご参画いただくFDアドバイザリー・コミッティーの設置を行いました。3月には顧客本位の業務運営に関する原則が金融庁から公表されたことを受けまして、同日付けでその採択を行うとともに、10月には定量指標でありますKPIを中間期として公表いたしました。また、直近では2018年6月に、18年度のアクションプランに合わせまして、金融庁が公表いたしました共通KPIにつきましてもいち早く公表を行っているところであります。
 
 続きまして、4ページをご覧ください。みずほのフィデューシャリー・デューティーの特徴は2点挙げることができます。1つ目は上段にありますとおり、販売、運用・商品開発、資産管理といったインベストメントチェーンのフルラインにつきまして、グループ一体でFDに取り組み、またその取り組み状況につきましても、個社単位ではなくグループベースで公表しているということであります。
 
 2つ目の特徴が、下段にありますとおり、フィデューシャリー・デューティーの実践を通じ、お客さまの高い支持・評価を獲得することで、一番右下③にあります、みずほの中長期的な成長を実現するという、お客さまとみずほとの共通価値の創造を目指すPDCAを回していく、こうした枠組みを構築しております。
 
 5ページをご覧ください。開示しております定量指標につきましても、このFD実践、お客さまの支持・評価、成果に合わせまして、各々の記載のようなものを対外的に公表しており、その数は17項目に上ります。また、下段にありますとおり、金融庁の公表した共通KPIに該当します3項目につきましても、この6月から開示を始めたところでございます。
 
 6ページをご覧ください。共通KPIにつきましては3点、上段が投資信託の運用損益別のお客さま比率。これにつきましては、プラスを出しておられるお客さまが54%、マイナスの方が46%ということで、これは金融庁の公表KPIとほぼ同水準でありますが、私どもとしましても、ここは1点課題だというふうに認識しております。
 
 左下は投資信託の預かり資産残高上位銘柄のコスト・リターン分析、右下は同じく上位銘柄のリスク・リターン分析ということになります。これに付随しまして、上位20銘柄につきましても公表しておりまして、本件につきましては定点での観測を引き続き行っていくところでございます。
 
 続いて7ページをご覧ください。ここからは右上にラベルが貼ってありますように、FDの実践、お客さまの支持・評価、成果とったPDCAに沿って我々の取り組みをご説明いたします。
 
 まずFD実践の中の大きなパーツであります現場への浸透でありますが、社員への徹底、ほめる仕組み、それをモニタリングするサイクルを通じまして、FDが企業文化として定着することを目指しております。最終的には右下にありますように、このFDにつきましては、資産関連業務についてのアクションプランということで対外公表しておりますが、私どもが企業理念で掲げますクライアントオリエンテッド、あるいは顧客本位の業務運営を全ての対象業務において実現していく。そこにまで広がっていくことが、私どもの最終的な目標というふうに考えております。
 
 続いて8ページ、まず社員への徹底からご説明申し上げます。社員への徹底に関しましては、役員自らがメッセージビデオを発信することで、経営としての本気度を現場に伝えるとともに、お客さまにもその旨をしっかりとご認識いただくために、ホームページでも一部公開を行うといったことをしております。
 
 続きまして、9ページをご覧ください。ほめる仕組みといたしましては、表彰制度にFDの概念を導入しております。例えば、お客さま満足度を個人、あるいは組織の評価に導入するとともに、収益だけではなく、時価ベースの残高増加というものを評価の項目に加え、収益率に左右されないお客さま本位の提案を行うために、手数料については一律評価を行う形を導入しております。
 
 続きまして、10ページをご覧ください。FDを実践し、お客さまから高い支持をいただいた担当者をロールモデルといたしまして、クライアントファーストマイスターと認定し、現在13名を認定してございますが、この方々を顔写真入りでホームページにも掲載することで、社員へのモチベーションアップとともに、お客さまへのコミットを高めるといったことに取り組んでございます。
 
 続きまして、11ページ、モニタリングでございます。社員の意識調査を定点で行っております。FDについての認知、共感、そして実践、定着といったことを見ておりまして、ここにありますように、認知、共感度については9割ということで、相応の水準になってございます。課題は、実践のところをご覧いただきますと、常に実践しているという濃いゾーンが、昨年と比べますと32%から6割ということで増加傾向にはございますが、まだまだここを高める必要があるとともに、組織に定着しているかといった項目については、まだ改善の余地があるといったことが読み取れるかと存じます。
 
 続きまして、12ページ、ここからはお客さまの支持・評価についてであります。2017年度より、FDに特化したお客さま満足度のアンケートを開始しておりまして、質問項目はここにある8項目、これを販売時点と、それからその後の定点でのアフターフォローの段階といった形でとってございまして、アンケート結果は左下のグラフの通りでありますが、右下にありますように、接点頻度やアフターフォローといったことにつきましては、さらなる改善が必要といった声をいただいている状況であります。
 
 続きまして13ページ、こうしたお客さまの支持・評価を踏まえた運営での成果指標でございますが、左上にありますように、運用商品の預かり資産残高につきましては、純増傾向にございます。また、右下にありますように、つみたてNISAやiDeCo、平準払保険といった若年層を含む資産形成層向けの商品取扱高につきましても、徐々に年々増加傾向にあるという成果指標が見てとれるかと存じます。
 
 最後に14ページで、今後の課題につきまして3点ご説明させていただきます。
 
1つ目は、お客さまとみずほの共通価値創造に向けた浸透・定着でありまして、先ほど当局からの説明にもありましたように、FDを単なる義務感とするのではなく、FD実践そのものがお客さまとみずほの中長期的な成長につながる、こうした意識を企業文化にまで高めて定着化させること。2つ目は、お客さまアンケート調査の活用なども通じまして、お客さま支持・評価を着実に改善すること。3つ目は、共通KPIなど、見える化に真摯に対応し、自社の目線ではなくお客さま目線で、自主的かつ積極的な公表に取り組んでいくこと、この3つが今後の課題だというふうに認識しております。全銀協の会長行という立場で、またメガバンクとして、銀行界全体をリードする気概を持ってFDに取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 
 私からの説明は以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、大和証券の荻野さん、よろしくお願いします。
 
【荻野オブザーバー】
 大和証券の荻野でございます。本日は、このような機会をいただきましてまことに光栄でございます。
 
 それでは、早速資料を説明させていただきます。2ページをご覧いただければと思います。お客様本位の業務運営を行うためには、お客様に接している営業員がみずから考え、お客様のニーズに沿った商品、サービス、ソリューションを提供していくべきであるといった考えに基づきまして、昨年4月に、それまでの商品ごとに販売目標を設定するというトップダウン型の営業推進体制を改めまして、各営業店がお客様のニーズに応じて最適と考える商品を販売するというボトムアップ型の営業推進体制へと変更いたしました。また、お客様の満足度を向上させるために、お客様アンケートと、外部機関による店頭応対調査を実施いたしまして、営業店の評価に定量的に反映させる仕組みに変更しております。
 
 続いて3ページをご覧ください。こちらはお客様本位の業務運営をさらに進めていくため、今年度からお客様満足度をこれまで以上に効率的かつ継続的に可視化を行いまして、お客様のロイヤリティーをはかることができる指標として、大和版のNPSというのを導入しております。これはNet Promoter Scoreと申しまして、単純な質問を1つするだけです。「家族や友人に大和証券を勧める可能性がどのぐらいありますか」と。そういう質問を1つするだけでございます。こちらの結果でございますけれども、左下のグラフにありますように、NPSのスコアの向上と企業業績の成長性というのは、高い相関関係が実証されておりまして、全店導入後、スコアの継続的な改善と向上を図りつつ、それに伴います業績の成長を目指していきたいと考えております。
 
 あわせて右側のほうに書いてございますが、本部の組織として4月にはCCO(Chief Customer Officer)というポジションと、リテールビジネス改革室というのを新設いたしまして、現場と本部が密に連携してNPSの導入、改善、それからゴールベースのアプローチによるコンサルティングの促進など、お客様本位の営業体制の構築を一体となって促進するサポート体制というのを整えております。
 
 続いて次のページ、4ページをご覧ください。付加価値の高いサービスを提供していくためには、お客様との接点の拡大が必要だということで、チャネルの最適化も進めております。お客様との接点を拡大するため、当社は五、六年前から継続的にバックオフィス機能を持たない、低コストで小規模な営業所の出店を行い、店舗数を拡大しています。また、お客様の属性、ライフステージを細分化しまして、チャネルの最適化を図るため、高齢者層のお客様専門のコンサルタント、これはあんしんプランナーというものと、それから、資産形成層のお客様向けのフィナンシャルコンサルタントを新たな販売チャネルとして設置をしまして、2020年ごろまでには全店への展開をする予定でございます。また、相続に関する専門知識を備えました相続コンサルタントにつきましても、早期に全店配置を行い、次世代へとつなぐ役割として、お客様をサポートしていきたいと考えております。
 
 次のページをご覧ください。お客様のニーズに対応した商品ラインアップの拡充に向けては、投資信託の例を出しておりますけれども、投資信託の商品選定において、昨年の4月以降、グループ内外に関係なく、お客様に最も魅力的と考えられる商品を選定してまいりました。その結果として、昨年度に新しく募集、取り扱いを開始した投資信託全17本のうち、サブアドバイザリー方式を含め13本、約8割が当社グループ外の投資信託となりまして、一昨年度から本数ベースでは倍増しております。
 
 また、右側のラップ口座サービスにつきましては、お客様のニーズに対応するため、順次ラインアップを拡充しているという状況です。
 
 最後、6ページのほうでございますけれども、こちらが先ほどもお話に出ておりますKPIですね。9月10日に公表しました当社の共通KPIについてのご説明でございます。3月末時点の運用損益は、投資信託に関しては60.7%、ファンドラップに関しては79.8%のお客様がプラスとなっております。先ほどの平均より若干いいぐらいの状況でございますけれども、まだまだ課題が多いと思っております。
 
 投資信託は、各損益率帯に散らばって分布をしているという状況でございますけれども、ファンドラップはゼロから10%未満の利益のところに64.1%が集中しているというように安定的な運用結果となっておりまして、商品性の違いが明らかになっている状況です。また、設定後、5年以上経過した投資信託の残高上位20銘柄についてのコストは1.96%、リスクは14.15%、リターンは5.0%となりました。このようなKPIを継続的に開示することで、我々自身のパフォーマンスを高めていきたいというふうに考えております。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、第一生命の畑中さん、よろしくお願いします。
 
【畑中オブザーバー】
 畑中でございます。本日は、このような機会を頂戴しましてありがとうございます。
 
 顧客本位の業務運営に関する取組みというペーパーの1ページをご覧ください。ページは右上に振っております。
 
 まず冒頭2ページで、生命保険の役割、特徴について触れさせていただきます。1ページのスライドの下の図をご覧ください。左側の図のとおり、お客様の一生涯にかかわるさまざまなリスクを保険会社が引き受けることにより、国民生活及び社会の安定に寄与しつつ、一方で右側にございますように、お預かりした保険料をもとに金融市場での資産運用を行っております。社会構造の変化に伴いまして、老後の介護や資産形成など、お客様のニーズは多様化しており、これらにしっかり応えていくことが課題であると認識しております。
 
 2ページをご覧ください。生命保険の主な商品特性でございます。保障性、長期性、ニーズの潜在性や多様性、再加入の困難性といった点があります。これらを踏まえつつ、保険数理に基づき、各社創意工夫のもと実務を構築しております。
 
 3ページからが第一生命の取組みでございます。第一生命では、創業者が「お客さま第一主義」という経営理念を掲げておりまして、これをしっかり受け継ぎ、経営品質向上の取組みも取り入れながら、DSR経営として発展させてまいりました。DSRというのは上段のボックスの3つ目の※のところに記載しています、Dai-ichi's Social Responsibilityの頭文字でございます。こうした背景も踏まえまして、2017年に「お客さま第一の業務運営方針」を制定いたしました。
 
 4ページをご覧ください。全体の建て付けでございます。第一生命グループでは、「お客さま第一の業務運営方針」は、第一生命ホールディングスで制定し、これに基づく具体的な取組みにつきましては、傘下の国内生保である、第一生命、第一フロンティア生命、それからネオファースト生命の3社それぞれにおいて実施の上、公表しております。
 
 5ページが、第一生命グループの「お客さま第一の業務運営方針」の構成でございます。右側に金融庁の原則との対応関係もお示ししております。
 
 6ページで思想観を述べさせていただきます。第一生命の中長期戦略には2つの軸を設けておりまして、1つが、右に伸びております中長期戦略の方向性①「お客さま第一を実践し、みずから高めていく」という視点。それからもう一つが、縦軸の中長期戦略の方向性②「お客さまにとって最高の安心を、今も未来もお届けする」という視点でございます。「お客さま第一の業務運営方針」も、これらの視点を踏まえて構成しております。
 
 7ページが、具体的な取組みとKPIの一覧ですが、左側の軸に、今申し上げた2つの視点、それから、さらに③として、「お客さま・社会への社会的責任を果たす」というところを設けております。この中で青字の部分が、各取組みのKPIというふうに構成しております。
 
 続きまして、8ページをご覧ください。これはKPIの状況でございまして、2017年度の遂行結果としましては、これらの指標は基本的に前年度より改善させることができております。
 
 最後に浸透策と浸透の状況でございます。9ページをご覧ください。上段のところにございますように、これらのKPIを各組織の目標に、定量・定性の目標として落とし込んで、半期ごとに振り返り、評価を行うという体系でございます。
 
 また、下段のとおり、こちらはみずほ銀行のプレゼンにもありましたが、社長や役員がダイレクトにメッセージを発する機会も設けております。
 
 10ページは、営業現場への周知・理解促進でございます。営業現場におきましても、研修において理念の確認や、それから、お客様からの感謝の声の事例について、「“With You”マインド感動エピソードBOOK」という写真がございますけれども、こうしたものを毎年作成しまして、これを継続的に研修の中で使用し、どういったことが本当にお客様に喜ばれるのかというのを、理念とともに教育することで浸透を図っております。この中で、好事例につきましては、右下の写真のように、全社の表彰の場で表彰を行っています。
 
 11ページは割愛させていただきます。
 
 私からは以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、最後になりましたが、中野委員、よろしくお願いいたします。
 
【中野委員】
 セゾン投信の中野でございます。今般、このワーキング・グループの委員に新たに混ぜていただきまして、改めてどうぞよろしくお願いいたします。
 
 ちょっとセゾン投信の事例についてお話しさせていただきますが、まず私ども、紙ペラ1枚でございまして、より顧客本位の実践についても、非常にシンプルかつより具体的だと思っております。
 
 セゾン投信は、創業から12年目に入っておりますが、そもそも創業時から掲げたビジネスモデル上の競争上の優位性なるものを、今流に言うと顧客本位の実践ということにもとより据えておりました。ですので、今般のいわゆる金融改革によりまして、改めてこれまでの実践状況を自分たち自身で総括して、フィデューシャリー・デューティー宣言や、あるいはKPIなど含めて、自身にも「見える化」することができたなというふうに実感しています。
 
 まず、フィデューシャリー宣言と言われるものですが、ページをめくっていただきまして2ページ目のセゾン投信のフィデューシャリー宣言というのを見ていただきたいんですけれども、これは実は結構シンプルでありまして、かつこれは金融庁さんが原則を掲げるはるか前の2015年の8月に、国内の投信会社としていの一番に自ら公表したものであります。
 
 このフィデューシャリー・デューティーという考え方について、セゾン投信として大変共感いたしまして、真っ先に飛びついたんですけれども、これ自身、以降、フィデューシャリー・デューティーとは一体何かということについて、自分たち自身で相当学習しまして、深掘りし、そして我々自身がみずからの言葉でたどり着いた表現として、お客様全部主義と。これはすなわち、徹底した顧客への奉仕という概念で捉えておりまして、よくいうお客様第一主義とか顧客優先とか、そんな生易しいことではないぞというところまでたどり着いたわけです。
 
 宣言の中にもありますが、具体的に2つの軸に整理できます。1つが、とにかく顧客に対しての徹底した利益相反の排除ということでございまして、もう一つの軸が、顧客本位の実践を健全に実行、実践していくために必要な私どもの報酬の合理性という、この2つを具体的に整理したものでありまして、中身、ちょっと字が細かくて申しわけないんですけれども、とりわけ特徴的なのは、例えば販売手数料を全面否定するといったスタンスであるとか、あるいは一物一価。これは顧客の徹底した平等性ということで、あらゆるお客様を一切不平等に扱ってはいけないんだということで、フィデューシャリー・デューティーの本質への一貫性をしっかりと貫いているつもりです。
 
 フィデューシャリー宣言なるものの位置づけですけれども、これはセゾン投信としてのビジネスモデルそのものの体現でありますし、あるいは企業理念である。そして大事なのは、これは金融庁に向けてではなくて、お客様であり、社会へのコミットメントなんだという意識だと思います。これを実際社員にも実践、浸透するために、社員においては日々の行動規範としてこの宣言を据えておりまして、この紙を具体的には全社員の机の上に全部置いてもらって、パウチッコして置いてもらっているのですが、それを日常業務の一つ一つ、例えばお客様と電話一つ取るにも、自分の仕事がこの顧客本位のフィデューシャリー宣言に沿ったものかどうか、常に照顧してもらうというようなことを実践してもらっておりまして、手前味噌ですが、大変組織に根づいてきたなと実感しておりまして、まさに組織にこの理念を根づかせることこそ最重要であろうと考えています。
 
 さらに実践状況の見える化ということで、非常に独自性の高いKPIも意欲的に構築いたしまして、これ自身はどういう位置づけかというと、ありたい姿の目標設定というふうに明確に位置づけて、そして具体的にはこの紙の下のほうにあるのですけれども、インベスターリターン。これは見ていただくとおり、セゾン投信は2つしかファンドがないのですが、2つのファンドの設定来の累積平均リターンに対して、そこに参加されている13万8,000人、今直販のお客様がいらっしゃいますが、この13万8,000人の平均のリターンは、それをはるかに凌駕する形が実現している。これはすなわち、極めて正しい投資行動をお客様自身が選択してくれたということに尽きるわけであります。
 
 これを裏づけるものとして、右側にあるのが平均保有期間でありまして、これもKPIに重要なものとして位置づけていますが、当社の平均保有期間は10年界隈を今でも維持しておりまして、ちょっとずつ減ってきているのが課題なんですが、これをとにかく目標20年という数字を出していますが、1人でも多くの方に徹底して長く持ってもらうんだと、これを目標に据えて、理想として掲げているわけであります。
 
 共通KPIに関してなんですが、セゾン投信は運用会社ですが、直販を旨としておりますので、早々に公表いたしました。これは具体的な成果として顧客本位の実践の一端を示せたのではないかと自負しておりますが、数値としては85%のお客様が利益をしっかりと積み上げておられるということでありまして、このデータではないのですが、さらに深掘りしますと、今マイナスになっている方はほとんど10%未満なのですが、これは極めて集中的に早々に投資を始められた方、すなわち2016年、17年に口座開設をされた方に集中しているということで、逆に言うと3年目以降に続けておられる方はほぼ全てちゃんと利益をしっかり実現されているという、これは長期でしっかりと持っていけば、ちゃんと結果が出るんだということを裏づける結果になっているなと思っております。
 
 セゾン投信、長期・積立・国際分散投資という3原則を実は創業来据えておりまして、これを厳格に正しい投資行動であるというふうに自分たち自身も確信的に思うように、その実践を顧客に強く勧奨していくんだと。こういうことで、いわゆる正しい投資行動にしっかりと誘っていくのは、資産運用業者としてのかなり大きな社会的使命であるというふうに、今、顧客本位を捉えております。すなわち、顧客利益の最大化というものに向けた最善の努力こそが、顧客本位の枢要であろうというのがセゾン投信の認識でございまして、組織の浸透については、私自身、トップ自身がミスター・フィデューシャリー・デューティーというふうに称して、毎日のように社員にメッセージを出しておりますので、小さい会社ならではの結果が出ているなと考えております。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、明治大学の沼田特任教授から、IFAについてのご報告をいただきたいと思います。沼田さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【沼田参考人】
 明治大学の沼田と申します。このような機会をいただきましてありがとうございます。
 
 早速ですけれども、2ページ目をご覧いただけますでしょうか。これから、米国の独立アドバイザーについてお話し申し上げたいと思いますけれども、人数では大手証券を上回る勢力となっていますが、まずは独立の度合いというのはさまざまだということを念頭に入れて聞いていただければと思います。独立した法人として営業していても、証券外務員型であれば証券会社の監督を受けます。これは我が国の金融商品仲介業者(IFA)に近い形態と言えると思います。投資顧問型というのは、証券外務員資格がないので、取引連動型のコミッションは受け取ることができません。したがいまして、回転売買のインセンティブがないということを売りにしております。彼らは一任の取引を行いますので、我が国の投資助言業とは大分様子が異なるかと存じます。両者の兼業型というのも存在しています。我が国でも、この兼業型を目指して金融商品仲介業者が投資助言登録を行う動きがあります。ただ、いずれの米国のアドバイザーも、商品と情報技術ツールは証券会社から提供されておりますので、これらをコントロールすることで、遠隔品質管理ということもある程度可能なのではないかと思います。
 
 これらのアドバイザー、独立はしておりますけれども、3ページ、4ページをご覧いただければと思います。彼らは多様な営業支援を金融機関、協会、アドバイザー向けの専業業者などから受けております。主な支援は営業、経営、それから次のページのコンプライアンス、ITツール支援ということになりますけれども、アドバイザーは必要なものだけを選べばよいので、営業固定費というのは抑えられます。
 
 5ページ目のほうを見ていただきたいんですけれども、米国の独立アドバイザーが、創業期を乗り越えられる理由というのは4つあるのではないかと思っております。
 
 まず、資産形成層が市場に参入いたしましたので、最高級というよりは身近な対面アドバイスというのを求めるようになりました。次に、アドバイザーはこの手数料の大半を自分で受け取ることができます。ですので、正社員時代ほど稼がなくても生活が成り立つということになります。3つ目ですけれども、転勤などもありませんので、顧客とともに独立して長期につき合っていくということができます。最後に営業の自由度が高いため、兼業は行いやすいですし、投資サービスのみで生計を立てる必要もありません。また、本業の顧客に投資サービスを薦めるということもできます。
 
 6ページ目をご覧いただきたいんですけれども、彼らの付加価値について3つお話ししたいと思います。
 
 1つ目は、顧客本位の業務運営が行いやすい形態と言えるのではないかと思います。系列商品に縛られない中立的なアドバイスが提供でき、地域に根差すことが不可欠ですので、周りの目がモニタリング機能というのを果たすと思います。また、兼業しやすいですので、顧客の資産全体を俯瞰したアドバイスというのも提供できますし、一方で、営業の自由度が高いので、顧客のニーズに合わせたアドバイスの取捨選択もできます。
 
 7ページ目になりますけれども、実際残高手数料を受け取るアドバイザーという、投資顧問型のアドバイザーを見ましても、資産運用特化型、それから相続対策とか事業継承なども含めた広義のファイナンシャルプランニングを行うものまで、さまざまなタイプがいるというのを見ていただけると思います。不要なサービスをそぎ落とすということも、顧客本位の業務運営になるかと存じますけれども、これがやりやすい業態と言えるのではないかと思います。
 
 次のページにいっていただきたいと思います。2つ目の付加価値ですけれども、アドバイスの地産地消ができるという特徴がございます。独立系のアドバイザーというのは、従来の証券会社が出店できないようなところにも出て行くことができますので、地域では頼られる存在になり得るのではないかと思います。相続などを通じて、世代を超えたアドバイスというのを提供していくことも可能ですし、そのために地域の士業、税理士さんですとか弁護士さんと連携をしたり、顧客を紹介しあうこともできますので、アドバイスの地産地消ということができます。これは大手の金融機関にはなかなかできないことではないかと思います。
 
 9ページ目、3つ目の付加価値をご覧いただきたいと思います。商品推奨にとどまらないんですけれども、実は貴重なアドバイスが提供できるという特徴があるのではないかと思います。商品取引に結びつかないけれども貴重というアドバイスは、実はたくさんあります。投資顧問型のアドバイザーであれば、残高連動の手数料をアドバイスの対価として受け取ることができますので、商品取引に結びつかない取引の対価も得られるようになっております。
 
 具体的には次のページ、10ページ目を見ていただきたいんですけれども、例えば複数の税制優遇制度がある中で、どの口座に幾らずつ、どの資産でどの順番で投資をすべきか、というような資産の置き場所に関するアセットアロケーションというアドバイスがありますし、その逆、ある程度税制優遇口座に積み上がった資産を、ではどの順番で、どのように引き出していくかという引き出し戦略というアドバイスがあります。これは実際、個人が自分で判断するというのは難しいのではないでしょうか。また、投資行動のコーチングというのもありますけれども、これは市況が大きく動いた際に、パニック売りを諫めるようなタイプのアドバイスを指します。米国では、アドバイザーがITバブル、それから金融危機といったような時期に、こうした投資コーチングと言えるようなアドバイスを提供したからこそ、投資家は混乱期を乗り越えられたというふうに感じているようでございまして、これが現在の信頼関係につながっているようです。こうしたアドバイスは、実際パフォーマンスを押し上げる力があるということもわかりつつあります。
 
 また、右の図にありますように、昨今、米国では投資商品の手数料が相対的に低下していると言われておりますけれども、これは運用にかかわる手数料ということにはなるのではないかと思っております。運用だけということであれば、ロボ・アドバイザーで済むのかもしれませんけれども、人間はそのほかにもファイナンシャルプラン、それから相続対策といったことも行っております。これらも機械によるシミュレーションはできるとは思うんですけれども、機械の答えはこう出たとしても、私は実際にこうしたいといったような顧客の意を酌み取って微調整を加えなければ、満足度の高いアドバイスにはならないと思います。
 
 こういった商品取引に直接は結びつかないようなアドバイス、これをやってくれるのであれば、その対価は払っても惜しくはないというふうに考える投資家が、米国では増えているようでございます。
 
 次のページをご覧いただきたいと思いますけれども、11ページ目、これは米国アドバイザーの法的位置づけになります。証券外務員か投資顧問業者か、もしくはその兼業型ということになります。独立して営業していると、監督の目が行き届かないというような懸念も聞きますけれども、実際米国の検査で指摘された事例の大半というのは、オペレーション上の不備というふうに言えるのではないかと思います。一番右側になりますけれども、倫理的でない行為というのは限られております。このことからも、ITツールを使えば、ある程度の遠隔品質管理が可能なのではないかというふうに考える次第でございます。
 
 12ページ目でございます。次にご覧いただきたいのは、我が国のIFAの普及に向けてということで、日米の共通課題から米国の解決策をお話ししたいと思います。
 
 日米共通の課題としては、認知度が低いこと、アドバイザーのレベルがさまざまであること、営業と経営の両方を行わなければならないこと、小規模であることなどが挙げられます。ただ、その解決策ですけれども、一言で言えば、支援を充実させるということに尽きるのではないかと思います。また、この支援も取引先だけではなくて、アドバイザー向けの専業業者といったような業種も発達させて、アドバイザーを中心とするエコシステムをつくっていけばいいのではないかと考える次第でございます。
 
 とりわけ次のページを見ていただきたいんですけれども、業務効率化の観点からも、コンプライアンスの観点からも、ITツールというのは不可欠ではないかと思います。また、せっかく商品取引に結びつきにくいアドバイスを提供しやすい業態ということでございますので、アドバイスの中身を多様化させて、その付加価値を可視化するとともに、対価が得られる仕組みをつくっていくことも有用なのではないかと思っている次第です。
 
 最後のページになりますけれども、我が国のIFAの普及には、個人の金融リテラシーを高めていくことも必要かと存じます。リテラシーがないと、どうしてもブランドに頼りがちということになりますけれども、投資理論の基礎を知れば、どのようなアドバイスに付加価値があるのかということがわかるようになりますし、独立アドバイザーがどんな付加価値を提供しているかというのもわかりやすくなるのではないかと感じるからです。ただ、金融リテラシーを上げる一番の方法というのは、実際にやってみて困ったときに質問して、一緒に解決していくアドバイザーが横にいるということになります。とすれば、やはり金融リテラシーの世代格差、それから地域格差といったものをなくすためにも、郊外で活躍しやすいIFAというのは重要な役割を果たせるのではないかと考えている次第でございます。
 
 以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。多くの委員の皆様方にご出席いただいておりますので、できるだけ簡潔にご発言をいただければと思います。どんな点でも結構でございますけれども、再開後の第1回目でございますので、どなたからでもご質問、ご意見いかがでしょうか。
 
 上柳委員、どうぞ。
 
【上柳委員】
 どうもありがとうございました。いろいろ言いたいことはあるんですけれども、1つだけにします。投資信託のKPIの取り組みというのは、すごく画期的だろうと思います。今日の資料でもよくわかりました。そういう意味で高く評価した上で、一、二点留意点を申し上げさせていただきたいと思うんですけれども、1つはやっぱり数字が正確であるかどうか。ここは特にわかりやすい数字で出れば出るほど、その数字が本当に正しいのかどうかということの信頼性というのは問題になってくると思うので、それが大前提だということが、当然かもしれませんけれども1つです。
 
 2つ目は、事務局資料に必要に応じて改善との指摘がありましたが、常に改善の必要はあるのではないかと思います。偏差値教育と同じで、偏差値自体はわかりやすいですけれども、それだけが一人歩きしたりするおそれもあり、システム上の制限があるというお話も伺いましたけれども、さらに改善できるんじゃないかと思いました。
 
 それから3つ目は、この投資信託の間の比較という面では、かなり今回の取り組みがうまく進んだと思いますけれども、顧客の目線から見れば、投資信託の中で何を選ぶかの問題だけではなく、投資信託以外の商品、あるいはタンスに入れておくことも含めてですけれども、それとの比較というのが今後できるべきであろうというふうに思います。なかなか全金融商品に共通のものは難しいのかもわかりませんが、少なくとも生命保険会社の貯蓄性、あるいは投資性の保険については同じような、あるいはぴったり同じものでないのかもわかりませんけれども、指標を開発されているのかどうか、今後そういう取り組みがあるのかどうかということを伺いたいなと思いました。
 
 IFAについても、大変示唆に富んだお話があったと思うので、また議論できればと思います。以上にします。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、濱口委員、どうぞ。ちょっと済みません、新しい方もいらっしゃるので、ご発言希望の委員の方がたくさんいらっしゃるので、ネームプレートを立てていただければ、私にとってよりわかりやすいと思います。もちろん手を挙げていただくことでも結構ですけれども、わりとこれまでネームプレートを立てていただくやり方が多かったと思いますので、そのようにしていただければと思います。
 
 濱口委員、どうぞ。
 
【濱口委員】
 私は機関投資家として、直接市場で運用している立場から、少し畑違いではありますが意見を申し上げます。今まであまり投資の経験のない層にも、投資とか資産形成の輪を広げていくということが大きな課題になっていると理解しますが、そうであれば特に、投資の対象となる市場の環境に十分配慮して、まさに長期的なスタンスで地道に取り組む必要があると思います。
 
 といいますのは、現在の市場の環境というのは、日銀の政策もあって、我々機関投資家でも苦労するような非常に特異で難しい環境なわけで、そういうことでいいますと、ここに出てきますKPIを使って、金融機関を今からプッシュするような政策というのは、少し違和感があるかなと思っています。
 
 具体的にはどういうことかといいますと、資産形成ということでいうと、我々機関投資家がやるように、常識的には分散したポートフォリオでやっていくというのが当たり前で、その中でもコアになるべきなのは国内の債券、中でも国債であるべきだと思いますが、ご存じのように今、我々も困っていますけれども、ほぼこの投資対象は消滅してしまっているということです。
 
 過去30年を振り返ると、この日本の国債を中心とする債券市場というのは、ごく最近までほぼコンスタントに年率2~3%のリターンを過去30年生んできました。最近の5年程度を除くと、日本株のリターンよりも高いわけです。ただ残念ながら、多くの国民は、あえて言うとこの一生に一度あるかないかの非常に優良な投資機会を逃してしまって、ひたすらほぼゼロ金利に近い銀行預金にとどまっていたという厳しい現実があります。銀行はこの預金を原資にして国債を買って、このリターンを享受してきたということで、銀行経営としてはいいんでしょうけれども、個人とすれば大変に重要な機会を逃したということです。
 
 どうしてこういう結果になったのか、その原因を分析して、今後もそれでいいのか、いずれ市場が正常化することも見据えて検討していただく必要があるんじゃないかと思います。
 
 私の個人的体験で申し上げて現状の問題を見ると、金融機関の窓口では、まず手数料が多分ほとんど稼げないからでしょうが、全く国債を売る気がなく、それどころか国債を買いたいといっても、ほかの投資信託をしつこく勧められて、なかなか購入手続に入れないといった状況があります。私の知り合いなど、これは冗談みたいな話ですけれども、結局国債は買えなくて諦めて帰ってきたということです。
 
 仮に購入手続に入れたとしても、あれこれ資産の状況を聞かれて、しかも資金繰りは大丈夫ですかと、確認書に署名をさせられるんですね。しかもその確認書の下のほうに大きな字で、個人向け国債は預金ではなく、当行が元本を保証する商品ではありません。発行者である日本国の信用状況の悪化によって損失が生じることがあります、と注意書きがあり、これを読み上げられるんですね。そのとおりなんでしょうが、そうするとなかなか買う気があっても買えなくなるというようなこともあります。しかも翌月行くと、回号が違うのでまた同じことをやられてその同じ書類にまた署名をさせられるという状況があります。
 
 そういうこともあるのか、国民の中で、国債を買って本当に大丈夫なのかと、真面目に心配している人が相当いるかもわからないということです。その辺は先ほどおっしゃった個人アンケートで、ぜひ調べていただければと思います。こういうことが本当に顧客本位の対応なのか、私は疑問があると思います。こういう難しい環境でも、個人向けの変動国債というすばらしい商品があり、これはもっとどんどん売れていいんじゃないかと思うんですが、そういうこともあるので、ぜひ販売の仕方を再検討していただく必要があるのではないかと思います。
 
 次に、やはりもう一つのコアな資産になっていいのは日本株なわけですが、ご存じのように日銀の大規模なETFの購入で、これはいろいろな見方がありますが、一部には株価形成がゆがんでいるといった見解もございます。そうした状況は必ずしも一般の国民は知らないと思いますので、その販売とか勧誘については、慎重な対応が求められるのではないかと思います。そういう環境もあって、結局今、店頭では主に外国株を組み入れた投資信託や、いわゆるファンドラップが売られています。ただ、これは初心者にとっては、情報の量もあって、非常に難しい商品なわけです。我々機関投資家でも苦労するわけですから非常に難しい商品です。とりあえずここ数年はいい結果が出ているものもありますが、そういう難しい商品の残高が増えることが、本当に顧客本位で歓迎すべきことなのかというのは、よく慎重に考えて対応する必要があるのではないかと思います。以上です。
 
【神田座長】
 ありがとうございました。それでは、大崎委員、どうぞ。
 
【大崎委員】
 ありがとうございます。私から3点ほどちょっと申し上げたいんですが、まず1つは、事務局からのご説明をいただいた、かつ金融機関の皆様からご紹介をいただいた顧客本位の業務運営についてでございますが、大変いろんな新しい発見もあって、当局としてはこういう感じのモニタリングを引き続きやっていただきたいなというのが1つで。
 
 いただいた中で、ちょっと私が若干ショックを受けましたのが、事務局資料の20ページの投資信託の顧客年齢層別資産カテゴリー割合というやつで、どの年齢層でも同じ商品が、同じような割合でどうも売れているようだという、これは当然本来からいえば、年齢層によって顧客の投資ニーズというのは異なってくるものだろうと思いますので、ここまでみんな似ているのはどうなんだろうなという感じがしたというのが1つでございます。
 
 それに限らず、私がちょっと心配していますのは、顧客本位の業務運営という取り組みが、何か一律の動きになってしまうのではないかなということを懸念しておりまして、もちろん今日ご説明いただいたように、各金融機関、工夫をこらしておられるというのは大いにわかっているところではあるんですが、例えば去年の前半、顧客本位の業務運営というのが強く打ち出される中で、毎月分配型投信というのは非常に問題だというような空気というか、そういうような見方が生まれて、その中で毎月分配型投信の資金流出がものすごく増えた時期があったんですが、このときにJ-REITの価格が、毎月分配型投信の解約売りでものすごく下がった時期があったんですね。
 
 これも非常に不思議な現象で。というのはJ-REITというのは、決算期を分散させて買っていけば、それ自体が毎月分配型のキャッシュフローをつくれるという商品で、J-REITに投資する毎月分配型投信というのは全く不合理でない、極めて合理的で健全な商品のはずなんですね。ただ、毎月分配というのは悪だということになったもので、それも解約が増えて、値段が下がった。このとき、私は下がったのを随分買いまして、おかげで今、今年に入ってJ-REITの価格が随分戻してますので、今は儲かっていて個人的にはそれでいいんですけれども、そういう物事が一律にいってしまっていないかというのは、常に当局としては注意をしていただきたいなというのが第1点でございます。
 
 それから、2番目が、沼田先生からご紹介のあったIFAの話に関してなんですかアメリカの状況をご紹介いただいて、日本でこれをどんな格好で生かしていくかという、いろんな議論がこれからあると思うんですけれども、1つ私が思っていますのは、今、雇用延長という話が出ていて、社会保障制度の持続可能性というようなこともありまして、65歳、70歳とできるだけ企業も雇用を延ばしていくようにするべきだという議論もございますけれども、例えば証券会社の営業で実績を積んだ人なんかが、こういうIFAというような形で、従来勤めていたところに引き続き勤めるのではないんだけれども、収入を得ていくと。かつ同時に年金も一部受給したりすれば、証券会社の月給よりは、仮に収入が減ったとしても、生活もできるわけで。
 
 かつ資産運用というのは、もちろん資産形成層も重要なんですけれども、どうしても高齢者の方の資産運用アドバイスというのも大事ですので、同年代のアドバイザーからアドバイスが受けられるというのは、もしかするとお客様の側から見ても安心感があるのかななんていうことも思いまして、そういった方向にうまく誘導していくような、いろんな手だてというのも考えていくといいのではないかなと思った次第でございます。
 
 長くなって恐縮ですが、3番目でございますが、多分ほかの人から出ないだろうと思うので、ちょっと私、申し上げたいんですが、顧客本位の業務運営ということからは離れるんですけれども、ここで議論すべきテーマというのは、結局最初の問題意識として長官のお話にもあったとおり、どうやってもう少しリスク性の投資を増やしていくことで、国民の金融資産の効率的な運用を実現していくか、こういうことだと思いますので、今、投資信託とか販売手法ということに話が集中している感があるんですけれども、必ずしもそれだけではないと思うので、それに絡めて2つ申したいことがありまして。
 
 1つは株式の取引なのでございますが、いわゆる現物株式の取引ですね。上場会社の役職員なんかは、取引所からインサイダー取引の予防的規制というような観点から、いろんなご指導もあって、非常に厳しいさまざまなルール、事前の届け出とか、上長の承認とか、あるいは会社によっては他社の株も含めて取引禁止とかいうような事例もあると聞いております。これは非常に問題ではないか。やっぱり上場企業の社員というのは、株式というものについて慣れているはずの人たちで、リテラシーが本来高い人ががんじがらめになって投資ができないでいると。面倒臭いから、じゃあ預金で置いておけというようなことになっているとすると、これは非常に大きな問題です。もちろんインサイダー取引はだめです。それはどんどん摘発していただきたいんですが、そこは監視委員会に頑張っていただいて、無用のと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、過剰な予防的規制をできるだけ外して、健全な株式取引を増やしていくという、これをぜひやっていただきたいなと。これは実は、そちら側に座っている皆様方、あるいはメディアの方、あと法律事務所なんかも最近規制が強いと聞いていますので、皆様に共通した問題だと思いますので、これはぜひ大運動をやっていただきたいなと思う次第です。
 
 それからもう一つは、昨今仮想通貨というのがございまして、いろいろ問題があるのも承知はしておるんですけれども、今いただいた資料で、投資信託については60歳以上の顧客が8割程度を占めると。ちゃんと統計を持っておりませんけれども、仮想通貨については真逆でございまして、多分8割ぐらいが40代までぐらいではないですかね。要するに、資産形成層の人たちがそこに殺到しているわけですね。それを投機的取引だから間違っているとかいうふうに上から目線で説教するというのも、1つの考えとしてあるのかもしれませんけれども、実際にそこに取引ニーズがあるということを考えますと、せっかくそうやって生まれてきている若い人たちの取引ニーズを、どう投資家被害みたいなものを起こさない形で健全に育てていくかというのを考えていただかなきゃいけないなと思っておりまして、今後、こことは別の場で、多分仮想通貨の規制についてもいろいろ検討が行われると思うんですが、できるだけ芽をつぶさないという方向で検討していただけると思う次第です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、たくさんの方に札を立てていただいているんですけれども、その順にと思いますけれども、野村委員、神戸委員、鹿毛委員、島田委員、竹川委員、野尻委員、中野委員、林田委員の順にお願いしたいと思います。野村委員、どうぞ。
 
【野村委員】
 貴重なお話を、今日はどうもありがとうございました。簡潔にと思うのですけれども、沼田先生にもしよろしければご教示いただきたいというか、コメントなどいただければと思います。
 
 今、大崎委員からもあった点と若干重複するのでございますが、沼田先生のプレゼンテーションの中でも、米国のIFAがいかに創業期というか黎明期を乗り切ってきたのかというような分析があり、かつ日本はまさにその黎明期にありとのことでした。また、アドバイスというものをいかに「見える化」するような形で、要するに対価をきちんと取っていくというところを確立していく必要ありと、諸々ご指摘があったわけですけれども、端的に日本のIFAの置かれている現状ないし、今まさに足元にある課題、どうやって今後より拡大していくかということも念頭に置きながら、コメントをいただければというのが1つ。
 
 あともう一つですけれども、これも先ほど来ありますが、高齢社会における金融サービスのあり方ということも、今後のテーマになるというふうに認識する中で、そことの関連づけで、先ほど大崎委員から、同年代のアドバイザーによるアドバイスということをどう考えるかという、それも非常にもっともなご指摘だなと思ったのですけれども、それこそ地域密着というご指摘もプレゼンテーションの中でありましたし、少し幅広く、IFAがどのような役割を果たしていくのか、どのような期待が持てるのかということについてコメントいただければと思います。
 
【神田座長】
 ありがとうございます。沼田先生、どうぞ。
 
【沼田参考人】
 まず現状でございますけれども、新たなフェーズに入りつつあると言っていいのではないかと思っております。と申しますのは、第一世代というのは、やはり腕に自信のある方、独立しても大丈夫だと思う方が独立してIFAになっていくというところだったのではないかと思うんですけれども、その方々がいろいろやってみて、IFAのカルチャーに合った営業というものを少しずつ編み出していって、それをほかの若いIFAの方々に広げていこうというようなフェーズに入っているのではないかと思っております。実際、IFAのアドバイザーの方が研修サービスという形でほかの方に広めていく活動もやっております。
 
 次に高齢者に関してでございますけれども、課題と一緒にお答えしたいと思いますが、高齢者の方に向けた顧客本位のアドバイスを提供するというのは、場合によってはシンプルな商品をわかりやすく、わかるまでアドバイスするとか、説明するといったようなことになるのではないかと思います。ただ、今のコミッション主体のIFAですと、わかりやすくわかるまで説明するというのが、場合によってはただ働きになってしまうかもしれないと感じております。高齢者の顧客本位のアドバイスというのは、取引は別として、わかるまで説明してくれたという場合も十分あり得るのではないかと思いますので、こういったサービスに対しても対価が得られるような仕組みが作られればいいのではないかと感じている次第でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございます。よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。
 
 それでは、神戸委員、どうぞ。
 
【神戸委員】
 遅刻しまして意見を申し上げるのは大変恐縮なのですが、本日、独立系のアドバイザーについてのご議論があるということで伺いましたので、発言させて頂きます。実際私どもは独立系のFP会社として、今日、沼田さんから詳細なご説明があったように、独立系FPの黎明期から営業して参りました。アメリカの状況というのは、沼田さんのご報告で皆さんご理解いただけたと思うのですが、日本の状況についてもう少し説明させて頂きます。まず独立系FPの数についてですが、継続的な研修を受けている日本FP協会の会員が約20万人いますが、このうちの9割近くは金融機関などの大手企業に所属されています。ですから、2~3万人いわゆる独立系FPと呼ばれている人間がいるということになります。
 
 このうちの大半は保険代理店に所属しています。保険の営業が中心でありまして、ほかに会計事務所や不動産関係の副業的ビジネスとしてFPを名乗る方がいるということで、投資運用のアドバイスがメインの独立系FPというのは、今日ご紹介があった金融商品仲介業を行う一握りだけということで、数百名程度と考えられます。
 
 それしか存在しない理由は、フィー収入を得にくいというところに尽きると考えられます。保険の場合はフロントでかなり大きな金額のコミッションが入ってきますので、ビジネスとしてスタートしても成り立ち得るのですが、顧客資産を積み上げていくというのにはどうしても時間がかかりますので、その間低収入に耐えて継続して行くというところが難しいのだと思います。IFAの方も大分増えてこられていますが、実はこのIFAの方の中でも、資産管理型、ポートフォリオについての提案をされる方は少数派です。大半は、やはり従来型の投資のアドバイス、どれを買えば儲かりそうというスタイルのアドバイスをされている方です。これも同じく資産管理型ですと主たる収入が信託報酬の一部ということで、充分な収入を得にくいというところが大きな理由になっていると思います。
 
 フィデューシャリー・デューティーの定着を考える上で、私は基本的に運用というのには2種類あると考えています。1つは従来から投資はそういうものだと考えられている、安く買って高く売ろうというスタイルです。長期、中期、短期いろいろなスタンスがあるでしょうが、より上振れしそうなもの、儲かりそうなものを探すという行為になりますので、積極的にリスクテイクを行うことになります。経済に関心のある方などが行うこのスタイルの投資のアドバイスをして、何回か繰り返し売買をしてもらうことでコミッション収入を得るという職業として捉えられているのではないかと思います。
 
 この趣味としての投資、私はこのスタイルの運用を、そういうふうに呼んでいるのですが、この趣味を持つ方というのは、日本人10人の内、潜在的な層も含めても2人程度だろうと言われています。残りの8人は、そういうスタイルには興味がないわけです。従来、金融機関は、そういった興味がない人に対して、趣味にしましょう、趣味にしましょうというアプローチをしてこられたのではないかと思います。
 
 本来、今回のフィデューシャリー・デューティーの定着について、金融機関さんに期待したいのは、もう一つの運用スタイル、私は仕事としての運用と呼んでいるのですが、残りの8人の方も持っている、ある程度はお金にも働いてもらいたいというニーズに応える営業体制の確立です。そんなに高いリターンを求めるわけではないので、リスクテイクを積極的に行う必要はありません。金融庁さんが長期、積立、分散が重要とおっしゃっておられるのも、全てがリスクコントロールにつながるからですね。この考え方、趣味の投資家には伝わりにくいといえます。なぜ積立なのかわかりません。下がった時にまとめて買いたいわけです。あるいは、長期も納得できない。今ならどれを買えば儲かるのかを考えることは、できれば手っ取り早く上がってほしいという思いから、短期スタンスで選ぶことにつながりがちです。国際分散投資も嫌いでしょう。儲かりそうもないものも同時に買うなんて理解できないということで、趣味としての投資を行いたい人はバランス型ファンドを嫌うわけです。
 
 証券会社はこういった当てにいこうとする投資家に対してこれまで営業を行ってきたわけです。この趣味としての投資のアドバイスをIFAとして行っている方が多数派なんですね。仕事としての運用というのは、おもしろくない、退屈、リバランスなんか労務管理のようなもので面倒です。だからこそ他人に頼むわけです。おもしろければ自分で趣味の世界でやればいいのであって、興味のない仕事のようなものだからプロに頼みたいと、そういう思いをお持ちの方が弊社の主なお客様です。
 
 仕事としての運用では、売るタイミングはあまり重要ではなくなります。株は一般的に上がったら下がりますからどこかで売る必要がありますが、投資信託ならばファンドの中で銘柄が入れかわっていきますから、本当に運用がうまいものでポートフォリオを組めば継続して保有し続けられます。長期運用に一番適しているのが、私は投信だと思っています。そういう仕事としての運用のアドバイスをしている独立系のアドバイザーは本当に一握りでありまして、その最大の理由は先ほどお話ししたとおり、そのスタイルでは収入が得にくいからといえます。次に、今後、日本においても、独立系FP、あるいはIFAによる仕事としての運用のためのアドバイスが広がるための対応策についてお話ししたいと思います。アメリカでは、沼田さんのご報告にもありましたが、基本的にアドバイスやポートフォリオ管理などのサービスに対する対価として、年0.5~1.5%程度のフィーを得られます。これが収入のベースとなっていますので、我が国の独立系FPが米国のFPのような存在に育っていくためには、まずアドバイスフィーを得ながら投資商品を販売できる、多くの商品が並ぶプラットフォームが要るということです。それから、現状の日本の投資顧問業というのは、一任は非常にハードルが高く取得するのが難しい状況です。この一任のアドバイスが可能な米国のRIA類似の資格、これが不可欠だと考えます。
 
 早期にとりあえず今の段階でも実現が可能で、独立系FPがポートフォリオのアドバイスに絡めるだろうと考えられる形態は、アメリカのSMAや我が国のファンドラップをベースとして、そのアドバイザーの一つとして独立系FPがポートフォリオ運用のアドバイスを行うというもので、それならば割合早期に実現が可能でしょう。この場合は、先ほどご説明した仕事としての運用のアドバイスを得意とするFP会社が、顧客がアドバイザーを選ぶときに選択肢の1つとして並ぶということになります。フィデューシャリー・デューティーの観点からも、特定の投資顧問会社だけがアドバイザーとして指定されているのではなくて、ロボアドあるいは系列の投資顧問会社、運用会社、そして投資顧問業の登録のある独立系FPなどがアドバイザー候補として並んでいるイメージです。お客さんがその中から選べる選択肢の1つとして独立系FPが加わるというのは、早期に実現可能だと思います。
 
 ただし、この形態では、個々のアドバイザーによるポートフォリオ管理は行いにくいといえます。個々の独立系のアドバイザーが顧客にアドバイスを行いながら、金融資産全体を管理していくということを考えますと、アメリカにはUMA(Unified Managed Account)というプラットフォームがあるのですが、預貯金や保険なども含めて顧客の資産を総合的に管理していくためのプラットフォームが必要になります。このようなフィー収入を得られるプラットフォームがあり、個々のアドバイザーが投資顧問業の登録を行えば一任でポートフォリオの管理ができるようにすることで、状況の変化に応じた対応もできるということになりますので、そういう仕組みを検討して頂けるといいと思います。
 
 運用会社さんや証券会社さんなどが今申し上げたようなプラットフォームを、独立系FPに対して提供していただければありがたいのですが、それを提供していただけたとしても、アドバイスフィーを得ながら運用アドバイスやポートフォリオの管理を顧客に対して直接行って行くためには、先ほど申し上げた一任の投資顧問業の資格がどうしても必要になります。アメリカにはRPM(Rep. as Portfolio Manager)という資産管理が中心のタイプの資格や個別の株の売り買いのアドバイスが中心のRA(Rep. as Adviser)というような投資一任サービスを行える資格があるようです。そういった資格を設けた上で、フィデューシャリー・デューティーを負わせ、金融庁さんがチェックできるような仕組みができればいいと思っています。
 
 なかなか道のりは遠そうにも思えるのですが、例えば東証さんがETFの普及を目的として、ETFを使ってアドバイザーがポートフォリオを組めるようなプラットフォームを提供するとか、あるいは国自体が、弊社のようなアドバイスオンリーの投資顧問業の資格を持つFPが活用できる、ポートフォリオの作成と管理が可能なプラットフォームを提供するといった可能性についても、せっかくですのでご検討いただければありがたいと思います。
 
 いずれにしても、独立系FPが投資信託販売の主要チャネルの一つとなっているアメリカに存在する独立系FP向けのプラットフォームにはどのようなものがあるのか、さらに、アドバイスの資格の状況はどうなのかという点については、詳細に把握し、研究していただく必要があると思います。
 
 最後に弊社の現状をご紹介すると、親会社がアドバイスオンリーの投資顧問業を登録しております。沼田さんのご説明にある顧客からフィーを頂ける会社です。子会社が証券仲介業と保険の乗合い代理店をやっておりまして、こちらは証券会社や保険会社からコミッションを頂戴しています。コミッションという形でメーカーさんなり販売会社さんからお金を頂戴する仕組みだと、どうしても顧客本位になりにくいと思います。フィー収入というのは顧客から頂戴しますので、顧客の満足度が全てということになりますから、顧客と同じ方向を向いて、顧客本位の営業を行っていくためには、アドバイスに対する対価をフィーとしてどうやっていただくのかが最大の課題で、そのためにはプラットフォームがないとなかなか厳しいということを実感しております。以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。鹿毛委員、どうぞ。
 
【鹿毛委員】
 今後のワーキング・グループの議論の進め方について、簡単にコメントします。長官の最初のお話にもありましたように、顧客本位の業務運営推進は道半ばです。かなり実質的な面で効果も出てきているという実感もありますが、ばらつきもあります。これをさらに実質を伴う形で定着させる方策が、このワーキング・グループの1つのテーマだと理解しております。そういう議論を有効にしていくためには、実質を伴う形の定着とはどういうことなのか、その中身に関して、このワーキング・グループの中で明確にして共有することが必要と思います。
 
 ではどういうことか。私見では、言うまでもなくこのWGは、国民の資産形成に資するということを究極の目的としていると思われますので、何らかの目に見える形で、国民の資産形成に寄与しているということが、実質を伴う定着の最終的な姿なんだろうと思います。具体的には、1,800兆の大部分を占める預金の意味のある部分が、ゼロリターンの預金から、有効なリターンがある資産にかわるということが、顧客本位運営のいわば究極の目的ではないかと思います。
 
 市場要因や、少子・高齢化の問題とかいろいろな理由があって、私もそう簡単に1,800兆が目に見える形で動くとはもちろん思っておりませんが、しかし、これが5年後、10年後を目指して、やはり100兆単位で動かなければ国民の資産形成が進んだとは言えない。これは非常に難問だとは思いますが、今、銀行を中心につみたてNISAやiDeco推進などいろいろな施策は打たれております。なかなか放っておけば動かない状況をどういう形で政策的に背中を押すかということが、私は1つの大事なテーマではないかと思います。以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、島田委員、竹川委員の順で、島田委員どうぞ。
 
【島田委員】
 顧客本位の業務運営の実施度合いの評価について感想を述べたいと思います。まず顧客満足という言葉が繰り返し出てきたと思いますが、ちょっと違和感を覚えたのは、顧客満足と、顧客にとっての最善の利益というものは必ずしもイコールではないのではないかということを感じております。というのは、もしこれがイコールであるならば、行動経済学は必要ないわけでありまして、お客様というのは基本的に情報の非対称の中で、間違った時間軸の設定などもしているわけです。ですから、そこでお客様が満足したというアンケート調査をいただいたからといって、必ずしもお客様にとって最善の利益になっているかどうかというのは保証されないのではないかということを感じました。
 
 お客様にとっての最善の利益といったときに、リターンを生むということはもちろんですけれども、もう少し考えてみますと、お客様自身が納得をして長く資産運用とかかわっていける状態に、お客様と(金融機関が)共通の目的意識を持っていただくということが一番重要なのではないかと思います。現状で見ますと、各経営、あるいはさまざまな書面、ウェブ上での開示などは大変なご努力の成果が見えていると思いますし、私自身もすごく変わったなと感じております。ただ、実際には浸透しているとは言えない。例えばですが、今朝私、フェイスブックを開くと、1年前に自分がつぶやいた投稿が出てきました。ある証券会社が私にコンタクトをしてきたことを書いておりまして、この間お送りした某新興国ファンドのご検討はいかがでしょうかとい話からから始まっております。その後、職場に電話がかかってきました。それで私は、「新興国の株式ファンドは別に持っているので、その新興国のファンドは要りません」と申しました。そうしますと、「島田さんのお持ちの日本株ファンドはかなり益が乗っていますので、もっといいAという日本株ファンドがあるんですけれどもいかがですか」と。益が乗っているのでいかがですかというのは、明らかに回転売買の推奨でございます。
 
 「その投信のことは存じておりますけれども、それを買うんだったら、私が直接買えば販売手数料はかかりません」と申し上げましたところ、「それではBさんという大変優秀なファンドマネージャーさんが運用していらっしゃる日本株ファンドがございまして、こちらはAよりも安くてご購入いただきやすいと思います」と言われました。安くてというのは基準価格でございまして、投資信託の基準価格が安い高いというのは、購入しやすい、しにくいという問題とは一切関係ございません。ですから、状況としては上部が考えているほど、フィデューシャリー・デューティーの話というのは浸透はしていないと思います。
 
 また別の某証券会社の話ですが、私の母がもう80も相当過ぎたので、投資信託の運用から卒業しましょう、そして保険という名前のものはいくら営業されてももう要らないからねといって送り出したところ、帰ってきましたら、一時払いの外貨建ての年金保険をまんまと購入してまいりまして、非常に満足度は高いわけです。元本保証だからというわけですね。外貨での元本保証なのですが。ですから、この(顧客本位の業務運営)の浸透度というのは、数字ではなかなか見えてこないと思います。
 
 また、数字でいいますと、先ほど大崎さんがおっしゃったように、非常に形式的な部分もあると思っていまして、1年前では資産活用型といいますか、年4回以上の分配があるファンドにつきましては、1,000億円以上のファンドというのは非常に多かった。1兆円ファンドも2本ありました。これが現在はもうなくなっておりまして、毎月資産が増えている、資金が入ってきているファンドも、50本から、何とこの8月末には半減しまして25本しかなくなっています。
 
 一方で、年1回、2回決算型のファンドは、1年前には81本しか1年間続けて毎月資金が入ってきているものはなかったのですが、これが142本に増えております。資産運用効果もあるかとは思いますが、非常に大きい変化です。ですから、売り方として毎月決算型がだめだ、じゃあ年1回決算型にすればいいということは、数字で出てきております。ところが、年1回、2回決算型の上位ファンドには、まだまだテーマ型のファンドも入っておりますので、売り方自体が変わったとは言えないと思います。
 
 それから、ファンド賞を受賞したファンドの取り扱い本数のようなKPIの話が資料の中で拝見しましたが、ファンド賞というのも玉石混淆でございまして、販売金融機関の系列の評価会社が行っているものもございますし、セミナーや広告などのスポンサーシップと相関があるようなファンド賞もございますので、特に販売金融機関さんにおかれましては、ファンド賞のマークをつければ売りやすいから、売れるからというようなことで、(このファンドは)ファンド賞を取っているからフィデューシャリー・デューティーに沿っているという安易な判断はあまりなさっていただきたくないなと思います。
 
 最後に、第三者機関による実施状況の評価ということで申し上げます。セゾン投信さんの先ほどの資料にインベスターリターンの話が出ておりましたけれども、販売会社ごと、ファンドごとの純資産と資金増減を毎月開示していただきますと、第三者の評価機関が、誰でもインベスターリターンを金融機関ごとに見ることができます。ですが、これは10年以上、実は投信協会さんにもお願いしていることなんですけれども、販売金融機関さんというのは、全社が投信協会さんの会員であるわけではなく、この辺の縦割りのこともございまして、投信のデータというのは、投信協会さん経由で開示されているわけですけれども、ここはあてはまらないので守備範囲外だということで、なかなかご対応が難しいということでした。とはいえ、投資家にとっても、販売金融機関さんを客観的に評価する上でも、大変有用な情報ですので、ぜひご検討いただければと思います。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、竹川委員、どうぞ。
 
【竹川委員】
 私からは3点、意見と、1つご質問を申し上げたいと思います。
 
 まず、今日のテーマである共通KPIの話なんですけれども、販売会社の中でいくつかの会社が自主的に公表していらっしゃいます。そのときに、預り残高上位20銘柄が対象ですが、継続的に見ていくと、当然上位20銘柄は変わっていきます。中身がわからないと評価のしようがないと思います。一部開示している金融機関もありますが、アセットクラスによって手数料等も変わってくると思いますので、アセットクラスと上位20銘柄はあわせて公表していただきたいです。
 
 また、共通KPIといいつつ、各社が自主的に公表していることもあって、開示しているデータの条件がそろっていないという課題もあります。例えば、投信を解約した分も加味して(データを)出しているところもあれば、加味していないところもある。投信保有者の(データの算出時期が)2009年以降のもの、2013年以降のものというように、共通化されていない部分もあります。独自のKPIに関しては、個性をもって各社が出せばいいと思いますが、共通KPIに関しては、データ管理の問題もあるかもしれませんけれども、条件はそろえる形で出していただいたほうがいいのではないでしょうか。
 
 もう一つ、ラップに関しては、データは別に出していただきたいと思います。
 
 また、販売会社に共通のKPIを出していただいているわけですが、(販売する側と作る側は)表裏一体ですので、運用会社にも公表していただきたいと思います。自社で運用している投資信託に関して、1番目に挙げられている運用損益別の顧客比率というのは、顧客のデータを持っていないので難しいと思いますが、2つ目、3つ目、コスト・リターンとリスク・リターンに関しては出せるかと思います。先般、このワーキング・グループで運用の高度化がテーマになっています。各運用会社が自社で運用する投資信託に関して、自信を持ってこういう形で運用していますよという実績は公表していただきたいと思っています。
 
 共通KPIに関しては、今、投資信託が中心ですが、銀行に行きますと勧められるのは今は投資信託よりも保険商品が多かったりします。手数料についても保険のほうが不透明というかわかりづらいです。保険やほかの金融商品についても共通のKPIは、何らかの形で設けて公表していくということが、顧客にとって親切なのではないでしょうか。
 
 2点目は、先ほど神戸委員が詳しくおっしゃっていたので簡単に申し上げたいと思いますが、国内のIFAに関してです。『ファンド情報』という雑誌の増刊号で『トップIFA2018』というものがありました。そこで、IFAが取り扱っている投信の残高トップ3の投信を、具体的な商品名を挙げて公表していました。それを見ると、ブル・ベアファンドや単一国の新興国株のファンドが上位にきているケースもありました。必ずしも独立しているから顧客本位かというと、必ずしもそうではないところもあったりいたします。ETFやインデックスファンドを使ったポートフォリオ管理をしているところというのは少数だと思われます。
 
 (預り残高に対して)フィーを得るという体系にしにくいといった問題もあります。個々の努力だけではできないところもありますので、先ほど神戸さんもおっしゃっていたように、根本的な制度や法律の整備であるとか、プラットフォームをつくるというようなことがこれからは必要になってくると思います。そうした細かい議論もしていただきたいと思います。
 
 3つ目は、島田さんが先ほど触れていましたが、顧客にとっての最善の利益の追求って何なのか、というところを各金融機関に改めて考えていただきたいです。それに沿った自主的なKPIであり、現場の取り組みだと思うのですが、そこがいま一つわからないままにきれいな文言が並べられているような気がいたします。今一度、本質的な部分をぜひ考えていただきたいというのが3つ目です。
 
 1つ質問ですが、みずほ銀行さんの資料の13ページに、資産形成層向けの商品保有者数ということで、積立投信(つみたてNISA含む)、iDeCo、平準払保険の保有者数がまとめて記載されていますが、それぞれの比率はどれぐらいなんでしょうか。
 
【望月オブザーバー】
 手元に詳細な資料がございませんので、もし必要であれば、後ほど個別にご回答させていただくようにいたします。
 
【竹川委員】
 よろしくお願いします。以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、あと二、三分程度なんですけれども、札を立てている4人の委員の方々からご発言いただきたいと思います。野尻委員、中野委員、林田委員、駒村委員の順で。野尻委員、どうぞ。
 
【野尻委員】
 ありがとうございます。簡単に3点です。
 
 1つ目、1,800兆円の個人金融資産という議論を、長官も含めて皆さんもおっしゃっていて、その視点は「活用」ということで、一方で運用という議論をすると、何となく1,800兆円のうちの半分以上を占める現金・預金を運用に回すべきというふうにとれるんですけれども、本質的には1,800兆円を幾らにするかという議論ではないかと思っています。アメリカでもイギリスでもここ20年、30年の間に、個人金融資産は5倍、6倍になっている中で、日本は2倍になっただけなんですね。我々1,800兆円というのは大きいという理解をし続けているのですが、実はちっとも大きくないんだと。ちょっと可能かどうかは別にして、1,800兆円の活用よりは、個人金融資産を4,000兆円にするとか、こういうロジックでないと本当の意味の老後の資産形成だとか、個人の持っているお金を有効にするとかというところにつながらないのではないかなと考えています。
 
 2点目です。神戸委員がお話しになられたように、ファンドプラットフォームの重要性は非常にあるなというふうに考えています。その一方で、沼田先生のお話の中にありました、外務員としての行動は、証券会社の監督下にあるというアメリカ独立アドバイザーの法的位置づけのところであります。11ページなんですが。なかなか独立系の外務員といいながら、証券会社の監督下にあるというふうな位置づけをどういうふうに我々は消化をしていくのかというところは、大きな課題というかポイントになるのではないかなと思っています。
 
 英国のIFAは、1社当たりのIFAの人数というのは4人とか5人が平均値であります。私が個人的に知っているところは100人以上のIFAを抱えているところもあるわけですので、地産地消ということになると、独立で本当に1人でやっていくというようなところもあるわけでして、こういう人たちが資格として外務員ができる、かつファンドプラットフォームのようなITだとかのサポートもできるようになっていくというようなことが実現していかないと、やっぱりなかなか難しいのではないかなと思います。
 
 3点目です。沼田先生の資料の13ページの一番最後のところに、付加価値の可視化という言葉が書かれていまして、これはなかなか厄介なことではないかなと思っております。アドバイスですとか、もしくは手数料、フィーとかいうのは可視化できる範囲だと思っているんですが、付加価値自身をどうやって可視化していくかというのは、10ページにありましたような、こういう外部の分析を待たざるを得なくなるような形であると、なかなか付加価値の可視化というのは難しいのではないかなと思っています。ここはもう少し踏み込んだ議論が必要になるのではないかと思いました。以上です。
 
【神田座長】
 ありがとうございました。隣の中野委員、どうぞ。
 
【中野委員】
 済みません、もう時間が押していますので、本当に手短に。
 
 皆さん委員から出ておりますので、ちょっと別の観点から申し上げたいんですけれども、私、自負しておりますけれども、日本一普通の生活者に日々対面して話を聞いている運用会社の人間であろうと思いますので、生活者の感覚で物を言える人間だと思いますので、その立場でちょっと申し上げますが、金融庁さんがこの金融改革を実践されて、そのど真ん中に顧客本位の業務運営を据えた。これについて、その具体的なメッセージは、我々金融事業者には十分に伝わったと思います。
 
 一方で、これは金融庁さん自身が役所のあり方を自ら問うたわけですから、まさにこれは我々金融事業者だけのためではなくて、それこそ世の中の生活者のためにある役所であり、そして同時にそれは改めて金融庁自身が世の中にもっと伝えていただきたいんです。なぜなら私自身、セミナーとかでこの金融改革の流れ、フィデューシャリー・デューティーの流れを散々お客様に伝えますけれども、初めて聞く方がいかに多いか。そして、それを知ることによって、ものすごく驚くし、ものすごく関心を持つんです。これについて、やっぱり伝えるべきは、我々金融事業者ではなく、究極には生活者、国民であるので、ここへの易しいメッセージが大事だと思います。
 
 こうやって議論していても、やっぱり専門的な用語で、非常に難しい役所言葉でどうしてもやりとりが続いている部分があって、これを本当にお客様の目線で、生活者にどうやって届けていくか。これを一緒にこの場で考えていく、そんなワーキング・グループになったらいいなと思いました。
 
 それから、共通KPIなんですけれども、これは明確に金融庁さん自身が、顧客本位とは何かの具体的な意思表示をしたと思います。それこそはお客さんの投資目的は利益を挙げることであり、それをきちんと目的に沿って実現させることが、顧客本位の業務であるということですから、この最大化の努力をしっかりと継続的に「見える化」していくという、たしか冒頭、上柳委員がおっしゃったと思うんですけれども、それをやるためには、やはり共通KPIを極めて継続的に開示を、これは義務づけていただきたいと思います。
 
 そこまでやっていいことだと思うし、正しいことをやられていると思うので、それを1年に1回とかではなくて、それこそ四半期、あるいは毎月とか、これを1回出したところならば、やり方はみんなわかりますから、時間をかけてしっかりと出していけばいいんだと思います。
 
 それから、竹川委員がおっしゃったように、運用会社もこの共通KPIは、私は運用会社側の人間なので、まさに投信協会を挙げて自分たちでしっかり考えて、当局とも対話しながら、我々自身が目指すものを出していきたいなと思っておりますので、この対話の場をぜひとも具体的にいただきたいなと思っております。以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。林田委員、どうぞ。
 
【林田委員】
 ありがとうございます。事務局からもご説明がありましたけれども、銀行などが販売していた投資信託の運用成績は、半数近くが0%未満ということでした。この5年ほど、株価は堅調でした。それにしては少々成績が悪いのではないかなというのを率直に感じました。当局も業界も、長年にわたって貯蓄から投資へということをいってきたわけでありますけれども、肝心の運用成績が奮わないのであれば、いくら投資してくれといってもなかなか難しいのかなというふうに感じたところです。
 
 国民の安定的な資産形成に資する運用商品ということを考えるわけですけれども、これらはきちんと提供されていたのか、このワーキングでの議論を通じてしっかりと検証していく必要があるのかなと感じました。
 
 2番目は、これも事務局の説明にありましたけれども、最後のページだったと思いますが、リスク性商品の月次販売額の推移を見ますと、期末収益の目標を意識した、そこで収益が高まっているという現状が見られました。これはひょっとするとプッシュ型の営業が行われているのではないかという可能性はうかがえるということでした。依然としてノルマ営業のようなものが健在なのかなと、少々心配になりました。行き過ぎたノルマ主義が顧客をないがしろにするということは、先立ってのスルガ銀行のケースなどを見ても明らかだと思いますので、こういった点はぜひ是正していっていただきたいなと思います。
 
 最後にKPIのことですけれども、共通KPIの公表については大変意義があったなと思っております。実績の見える化について、いわばお手本を示されたわけでありまして、実施する金融機関は、これによってさらに増えるということを期待したいと思います。ただ、KPIの導入は、一部金融機関で熱心に行われているということですけれども、まだ道半ばというところですので、これから頑張っていただきたいと。よりよいKPIをそれぞれの金融機関が工夫していくということが、まず大切だろうと思います。ですけれども、過渡期としては共通KPIなどを目安にしつつ、浸透を図っていくということを目指したらどうかなと思っております。以上です。
 
【神田座長】
 ありがとうございました。それでは、駒村委員、どうぞ。
 
【駒村委員】
 ありがとうございます。金融庁の委員会は初めて参加なので、ちょっと今日は戸惑っておりますが、よろしくお願いします。
 
 私、2点ほど申し上げます。時間もございませんので極めて簡単になります。私の研究は、ちょっと皆さんとは違う毛色かもしれませんけれども、高齢期における生活保障をずっと研究しておりました。
 
 1つ目は、長寿社会との関係です。このワーキング・グループで何を議論するかというのは、先ほども長官がお話しされたと思うわけですが、長寿社会の問題です。さらに社会保障の給付が全般的にこれから下がっていくということが予定されているわけでありますので、特に若い世代には、今までの世代以上に長期、早くから資産形成をしていただかないと大変なことになる。今までのように一部の人が投資、資産形成をやっているというわけではなくて、より広汎に裾野が広がらなければいけない。そういった問題意識で、今日の資料を見せていただいたり、今日の議論を聞かせていただいて、果たしてその準備が金融市場のほうにできているのかというのが、今後議論していきたいなと思いました。
 
 もう一つは、現在既に高齢期になっている人たち、特に資産運用されている方のなかで、高齢者のウエートが高くなっているということでございますが、これは金融老年学のテーマになるわけです。加齢とともに認知機能というのは変化していくことは避けがたいですが、この視点を共有したい。私たちの慶応の研究センターのほうでは、医学部や老年科学の研究者と一緒に、人間は加齢とともにどういうふうな認知機能の変化が進んでいって、生活のどの部分が、どの程度難しくなっていくのか研究をしております。認知機能の低下、最終的には病気によっては、認知症ということになるわけでありまして、急速に認知機能が低下する。資産を持ちながら急速に高齢化が進む日本の金融市場の中で、高齢者向けの対応をどうしていくのかというのも大いに議論していただきたいなと思っています。
 
 そういう意味では、事務局にお願いでありますけれども、今後のテーマの整理、予定と、それから、今日時間もございませんので、少し金融機関の皆様にお聞きしたかったのは、高齢顧客に対してのどういう課題、どういう対応の検証を行っているか、こういったことをお聞きしたかったなと思います。これは後日、またそういう議論ができればなと思います。以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 既に予定の時間を10分以上超過しておりまして、私の進行の不手際をお詫びいたします。今日はこの程度とさせていただきたいと思います。
 
 大変貴重なご意見を多数の方々からいただきまして、どうもありがとうございました。また時間の関係でご意見をお述べいただけなかった方、あるいは追加でのご発言もあろうかと思いますけれども、時間も限られておりますので、別途事務局まで、あるいは私まででも結構ですので、メール、電話その他の方法でお知らせいただければ大変ありがたく存じます。本日いただきましたご説明、ご意見等を踏まえて、今後具体的な検討を行ってまいりたいと思います。
 
 今、駒村先生からも若干ご発言があったかとは思いますが、次回以降、高齢社会における金融サービスのあり方に関して、数回に分けて皆様方にご審議、ご議論をお願いしたいと考えております。具体的な日程等につきましては、後日事務局からご案内させていただきます。
 
 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうも長時間ありがとうございました。
 
―― 了 ――

 

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