金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第15回)議事録

 

1.日時:

平成30年10月22日(月)9時30分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室




【神田座長】
 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。市場ワーキング・グループの第15回目の会合を開催いたします。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 今回も、前回に引き続きまして、席順といいますか、配席はランダムにさせていただいております。また、途中で5分程度の休憩をとりたいと思っております。

 それでは、まず初めに、前回までご欠席で、今回からご出席の委員を事務局から紹介していただきます。

【小森市場課長】
 ご紹介させていただきます。委員の皆様方から見て、右手から4番目にお座りいただいております、上田亮子様でございます。

【上田委員】
 上田でございます。欠席が続きまして、申しわけございません。どうぞよろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、本日でございますけれども、前回に引き続きまして、高齢社会における金融サービスのあり方をテーマとして、ご審議をいただきたいと思います。

 前回、複数の委員の方々から金融機関のみならず、金融庁を初めとした関係機関の取り組みを含め、全体像を整理すべきではないかというご指摘をいただきました。そこで、これにつきまして、事務局のほうで整理をしていただきましたので、本日は、まずこの点について、事務局から説明をしていただきます。

 そのあと、委員からヒアリングをさせていただきたいと思います。順番は駒村委員、野尻委員、野村委員、これら3名の方々からご報告をいただき、最後に質疑応答、意見交換をまとめて行いたいと考えております。

 それでは、まず、事務局からの説明をお願いいたします。

【小森市場課長】
 資料の1をご覧いただきたいと思います。座長からもございましたように、前回、金融業界のほか、金融庁、他省庁等のほかの主体も含めた取り組みの全体像を整理すべきではないか、というご意見をいただいたことを受けまして、事務局で試みにまとめさせていただいているものでございます。もし何かお気づきの点等ございましたら、ワーキング・グループの席上でも、あるいは、別の機会に私どもへご連絡いただく際にでもおっしゃっていただければと存じます。

 俯瞰図の中身について、簡単にご説明をいたします。上の方からでございますけれども、急速な高齢社会の進展を受けまして、政府全体の取り組みとして、例えば、未来投資戦略や骨太の方針、人生100年時代構想等、さまざまな取り組みがなされているところでございまして、この中に、例えば、前回ご指摘もございました生産性向上なども含めて議論がなされているところでございます。

 その下、真ん中から右にかけまして、金融庁、あるいは金融審議会市場ワーキング・グループでご議論をいただいている事項についてまとめております。縦方向には基本的考え方や資産形成・取り崩し、資産承継等、テーマについて並べてございます。横軸のでは、金融庁、金融業界、他省庁、国民といった主体別にどのような事項がどの主体に該当しているのかを整理しているものでございます。

 数点申し上げますけれども、右上の国民の上から2番目のところで潜在的ニーズとございますけれども、例えば、ここが出発点となりまして、金融業界で顧客起点のビジネスモデルというものを追求していただいてはどうか。その下でございますけれども、国民においては、自分の老後収支の「見える化」、金融業界における金融商品、サービスの見え化、これらを通じて、適切な選択を推進していってはどうか、といった論点があると思います。

 少し下がっていただきまして、資産形成・取り崩しですと、例えば、他省庁から金融業界にまでまたがるところとして、NISAやDC/iDeCo等、老後資産の形成に資する制度のさらなる充実、使いやすい仕組みの検討等といった課題が存在しているものと思います。

 また、さらにもう少し下に行っていただきますと、安心な投資環境整備の一番上で、金融庁のところに顧客本位の業務運営の原則、金融事業者の取り組みの「見える化」といった事項がございまして、右側、金融業界でございますけれども、これらも受けまして、顧客本位の業務運営の実践に努めていただいているといったところだと考えております。

 いずれにいたしましても、金融や金融サービスを切り口といたしまして、多くの主体が関わるテーマについて、当ワーキング・グループにおいて幅広くご議論をいただきたいと存じております。

 左側をご覧いただきますと、今度は他省庁という大きな箱がございまして、その中に高齢者雇用の延長、公的年金制度改革、医療・介護制度改革、認知症対策、住宅対策等の箱が置いてございます。それぞれ、大変大きなテーマでございまして、専門的見地からも議論がなされているところだと思います。他省庁におきまして、こうした議論がなされていることと、金融庁、金融審議会市場ワーキング・グループの議論は相互に関連しているものでございます。他省庁においてこういう議論がなされているといった状況を意識しながら、金融市場ワーキング・グループのご議論もしていただければと存じますし、また、当ワーキング・グループのほうからのアウトプットがあれば、それも発信していく、といったことになろうかと思います。

 その下の部分をご覧いただきますと、2019年、来年は日本がG20議長国ということでございまして、高齢化社会における金融包摂の実現等、世界共通の課題解決に向け、貢献していきたいと考えておりまして、市場ワーキング・グループの議論につきましても、こうした中でぜひ活かしていきたいと思っておりますので、そうしたことも頭に置いてご議論いただければ大変幸いに存じます。

 一番下が、高齢社会、長寿社会における金融の目指すべき姿などということで、これは前回、事務局からご説明した資料の中身を改めて書いているものでございますけれども、国民がそれぞれの状況に応じた適切な金融取引の選択を行うことができるような状態を実現することが議論の目指す姿のあり方ではないかと思っております。こうしたことも含めまして、ご議論いただければと存じます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。今、小森課長からも申し上げましたように、できれば、こういう俯瞰図を共有した上で議論を進めさせていただきたいと思いますので、資料1につきまして、もし皆様方、お気づきの点がございましたら、この会議が終わった後でも結構ですので、適宜、事務局のほうまでご連絡いただけますと大変ありがたく存じます。

 それでは、続きまして、3名の委員の方々からのヒアリングに移らせていただきます。まず最初は、駒村先生からご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【駒村委員】
 おはようございます。こういう機会をいただきまして大変ありがとうございます。お時間、20分ぐらいということで承っておりますので、大分量もありますから、かいつまんでのお話になります。説明が不足した部分は後ほど質疑等で対応させていただきたいと思います。

 まず、今日の報告の構成ですけれども、まず複合領域分野としての金融ジェロントロジーはどういうものなのか、それから、高齢化社会、長寿社会における市場のあり方に金融ジェロントロジーはどういうヒントを与えていくのか。資産の高齢化が加齢に伴う認知機能の低下の影響を受けて、どういう問題が発生していくのか。それから、加齢と認知機能の変化によって資産運用がどういう影響を受けているのか、これは内外の研究のレビューということになります。それから、金融ジェロントロジー研修、これは私ども慶應義塾とファイナンシャル・ジェロントロジー研究センターが野村ホールディングスと三菱UFJ信託銀行との共同研究を行っておりまして、これに関連する研究機関をこのたび立ち上げることになりました。金融ジェロントロジーにかかわる研修というのは一体どういうものを意識しているのか、それから、その他関連しそうなテーマを2点ほどご説明させていただきたいと思っております。

 では、3ページ目に入ります。複合研究領域としてということですけれども、従来の経済学のアプローチでは、合理的な人間像をイメージしていたわけですけれども、そこに最近は認知科学、脳・神経科学の進歩によって、経済的な意思決定を行うときに脳のどの部分を使っているのかが、fMRI(機能的磁気共鳴装置)を使ってわかるようになってきた。加齢とともに脳の機能が変化する、あるいは、認知機能が落ちていく状況において、どういう意思決定に課題が出てくるのか、これに関して神経経済学と言われる分野でありますが、神経経済学と行動経済学が連携していく中で、加齢に伴う認知機能の変化が、具体的に経済行動にもたらす問題点を明らかにすることが次第にわかってきた。これは日本ではまだこれから進めていかなければいけない研究ではありますけれども、海外の経済学の専門学術誌でも徐々にこの分野が注目されて論文が発表されるようになってきている。この問題意識から、加齢と行動経済学、あるいは、金融ジェロントロジーというものに私も関心を持っているところでございます。

 4ページに移りたいと思います。認知機能とはどういうものなのかというと、外部から情報を取り入れて、分析し意思決定を行い、行動に動かす機能のことと一般的には定義されているわけです。従来の市場の想定は、認知機能が十全な人がほとんどであり、判断を失った人は一部であり、そういう方には成年後見で対応すればいいという想定だったわけでありますが、これからお話しするように、高齢化社会、高齢化率も既に30%に向かって上昇中であります。将来的には40%になるということになります。はっきりと認知症まで至った方と、そうではない曖昧な部分、軽度の認知障害も含めて、非常に曖昧な部分の方が増えてくる。さらに正常加齢でも、認知機能は加齢ともに下がるようになる。本人もわからないし、他人も見分けにくい。または、客観的な診断も容易ではない人が増えてくる。そういう意味では、従来想定した市場と高齢化社会ではかなり状況は変わってくるのではないか。

 そういった中で、市場のあり方や契約、市場のルールは、従来の想定は十全な認知機能を持った人がほとんどであるので、説明をして、手続を守っていけば、取引上の問題はないだろうと想定していたわけですけれども、ほんとうにそうなのか。それが今後の高齢化社会をイメージしたときに、そういう想定でいいのか。少なくとも、高齢投資家に対する倫理的な責任といったものもこれから金融機関は考えていかなければいけないのではないか。その際に、高齢者の心身の状態を十分に理解するためには、単に文字を大きくするとかわかりやすい説明を超えて、高齢者の心身にどういう特徴があるのかということを理解した上で、そのサービスをしていかないと、非常に契約や取引が形骸化してくるのではないか、この部分を研究していくのが金融ファイナンシャル・ジェロントロジーということになってくると思います。

 では、高齢社会の状況を見ていきたいと思います。5ページを見てください。65歳以上人口の状態を抽出したものでありますが、65歳以上人口は3,500万人に接近しているものが、将来的には4,000万人に接近していくだろう。ただ、今後は、65歳から74歳の人口はほとんど増えずに、増えるのは75歳以上人口ということになりまして、2025年問題、これは社会保障や財政の問題のみならず、金融の問題でも75歳以上になって認知機能が低下した人が増えてくるというのは大きな問題になってくるだろうと思います。将来的には、75歳人口比率が65歳人口の3分の2近くになる状態もある。したがって、今後は高齢者というのは75歳によって主に構成され、人数も急激に増えてくるということでございます。

 そういったことを考えると、6ページでありますけれども、我々の今の人生は、大体人生80年という状態で、60歳ぐらいで引退して、以降は継続就労をしているということでございますが、ゴールが今後、長寿によって100歳に接近していくということになりますので、先ほども事務局から俯瞰図があったように、引退のタイミングの先送りということも大事です。一方で、社会保障改革等々が続いていますので、自己負担や社会保険の支出も増えていく。その結果、資産が取り崩される圧力も高まってくる。さらに考慮しなければいけないのは、長寿社会というのは個人から見ると、75歳あるいは80歳以降に一定の期間、少なからずの人が、認知機能が低下した状態で老後を過ごす可能性があるということも一緒に考えておかなければいけないと思います。

 では、7ページのほうにいきたいと思います。これは私が前回、ご説明した姿でございますけれども、これはまさに今日、事務局から俯瞰図ということで整理していただいたものとマッチするわけですけれども、現行のモデルというのは、65歳まで継続的に何とかつなげて働き、その後は公的年金等、金融資産の取り崩しということが想定されてきたわけでありますが、それを寿命の伸長と社会保障給付の見直しを就労、あるいは、金融資産あるいは公的年金、いずれかで吸収することは極めて難しいと、いわゆる一本打法でこれを対応するのは難しいと。一本足打法で対応するのではなくて、今、事務局からお話しされたように、複数の政策を組み合わせて対応していくしかないだろう。65歳以降も多様な働き方をしていく。そして、年金の繰り下げ支給についても、積極的に推進し、かつ就労インセンティブとの整合性を確保する。または現行制度にはない制度ですけれども、部分的繰り下げ支給みたいなものも検討していくべきではないか。それと対応したように、長寿や社会保障給付の分をきちんとまかなえるように、若年期からの資産形成をしていく必要がある。就労、金融資産、公的年金の3本足が整合性のあるように対応していくしかないのではないかということを前回はお話しさせていただいたわけであります。

 さて、8ページのほうに移りますと、全国消費実態調査、これは使用が許されている年の個票データでありますけれども、従来は70歳以上をひとくくりということで発表されている統計が多いわけですけれども、75歳以上をグループとして統計を集計し直した状態であります。平均額をみると金融資産の取り崩しはそれほど進んでいない一方で、赤で示されているリスク性資産の比率は、高年齢で高止まりしていることが確認できる。

 9ページを見ていただきたいと思います。これは国立社会保障・人口問題研究所の将来世帯の推計と、今紹介した年齢別の平均資産額から計算される世代別の金融資産の保有状況です。もちろん金融資産は、分散も大きいわけでありますが、一応、現在の高齢者の金融資産の保有状況が続いていくと、75歳以上の世代が保有する金融資産が全金融資産に占める割合を簡単に推計したものであります。2015年時点で75歳人口の持つ金融資産はおそらく全世帯が持つ金融資産の22%程度です。これが2030年ぐらいになってくると、さらに75歳以上人口比率が上昇しますので、全金融資産の31%ぐらいまで来るだろうということを推計できます。

 また、10ページをご覧いただくと、これは全国消費実態調査から、これも試みでやったものです。データ数にかなり制約がありますので、信頼区間に幅があるということはご承知いただくことを前提にして、都道府県別の75歳以上が保有する平均資産額と中位資産額を示しています。同じ75歳でも地域によって保有する金融資産にかなりの差があることがわかるわけです。なお、平均と中位の乖離が大きいというのは、これはばらつきが大きい可能性があるわけです。それから、星印はリスク性資産比率でありまして、これも地域によって差があるということになります。

 このデータを横軸に金融資産残高、縦軸にリスク性資産比率をもって、相関関係で見たのが11ページということになります。金融資産残高の多い都道府県ほどリスク性資産をたくさん持つ傾向があるという、穏当な関係が確認できると思います。

 今後、75歳以上人口が増えていくのはどういう地域なのかというのは、12ページのほうでご紹介をしています。これを見ると、関東近辺や近畿、中京エリアは絶対数で75歳以上人口は増えていくということになります。そして、あと、先ほど見たように、こういうエリアに金融資産を多く持った高齢者が多くいるということを考えると、ますます首都圏近郊、近畿、中京エリアにお金を持った高齢者が集中するということで、金融機関は高齢者の心身の理解をして事業を行う必要がある。

 さて、では、高齢者は加齢とともにどういう問題が起きてくるのかというのを見たのが13ページであります。年齢とともに認知症になる確率は上がっていく、特に75歳以上は急上昇していくということになります。また、女性のほうが高いと、これはほかの国の調査も大体類似した傾向が見られるということであります。そして、全体で見ると、75歳以上のグループの認知症のリスクは大体35%ぐらいになってくるのかなと思われます。今後は、75歳の上でも、さらに80、90代の方の数が増えるということは、その集団のリスク全体が上がってくるからです。したがって、先ほど30%近い金融資産を高齢者が持つことになると、そのうちのさらに30%の金融資産を高齢者が持ち、そのうち35%が認知症の可能性があるということになると、金融資産の10%近くは認知症の方によって保有される可能性が出てくることになるわけです。

 14ページ、認知症まで行かなくても、前段階で軽度の認知障害という状態も起きます。この方たちも既に400万人ぐらいいらっしゃる。認知症の方は現時点で、15ページで見るように、500万人を超えてくる勢いでありますが、これは今後の生活習慣病の状況によりますけれども、おそらく800万人から1,200万人の幅の中で65歳以上の認知症の方が出てくるという予想がありますので、決して認知症の方というのは例外ではないことになるわけです。

 16ページは今まで申し上げたことのサマリーでありますので、資産の高齢化というのが、認知機能の低下と加わるとどういう問題が起きてくるのかということを要約したものであります。

 17ページに入っていきたいと思います。認知症に至らなくても、認知機能は加齢とともに低下していくと。そして、認知機能の低下は論理的な、推論的な機能の部分が主に低下していく可能性が高いと。そして、年齢とともに、資産の運用管理能力は変化していき、これまでの研究だと、おそらく50歳ぐらいのところが資産の管理、運用パフォーマンスが一番高い時期ではないかという先行研究がアメリカでも発表されているということであります。いずれにしても、こういう認知機能の変化まで理解した上でのサポートをしていくのが金融ジェロントロジーの研究の目的ということになります。

 では、18ページ、これからは加齢とともにどういう部分の認知機能が落ちていくのかと。数学シンボル課題といったものは、後ろのほうに英語の質問票がついていますので、あとでそれを見ていただくことにして、処理速度とか数学的な処理能力が落ちていくことがわかっているということです。

 19ページ、これも左側の図は、数的処理能力と言われていて、その部分が落ちていくのはわかるわけですけれども、ただ、太く線が広がっていることはばらつきが出てくるということになります。一方、言語能力とか、右側の対人能力は、実は高止まりしていたり、上昇する傾向があるので、全ての認知能力が一方的に落ちてくるわけではないということになります。

 20ページを見ますと、赤い線で示された論理的、抽象的思考能力、流動性知能と言われているものは、加齢とともに落ちていくわけでありますが、言語能力とか説明能力とか対人対応能力といったものは、結晶知能と呼ばれていて、これは緩やかに上昇しながら、ある程度まで高止まりしていると。総合的な認知機能は緑の線のようにある程度まで維持されるわけでありますが、認知症になれば落ち方が激しくなると。これは今まで申し上げたことの概念図ということになります。

 さて、こういうふうに認知機能が落ちてきて、特に論理的、推論的な能力が落ちてくると、金銭の管理能力等々が落ちてくる。このことについて、医学的な研究、神経科学的な研究が今、さまざま進んでいるという紹介が21ページにあります。

 一方、高齢者の判断能力、特に金融リテラシー、金融に関する知識は22ページにあるように、逆U字型をしておりまして、意外に中高年が高いということがわかるわけです。また、右側は男女別、年齢別に過剰な自己採点をしている、つまり過剰な自信を持っている人がどういうところにいるのかというと、若年層と高齢者の女性の層に自分の客観的な能力よりも金融リテラシーが高いと思っている人、自信過剰な人が存在することも、この調査からわかるということであります。

 ただ、23ページになると、さまざまな基本的な数字の処理能力が落ち、極めて簡単な問題でもわからなくなっていくということを23ページの図表が示しています。簡単の数学の問題、算数の問題が加齢とともに急速に正解率が下がっているという状態であります。

 こういったことを総合すると24ページにありますけれども、これはアメリカの研究になりますけれども、横軸に認知機能の強さ、右に行けば行くほど高いと。縦軸に株式資産の保有率をとってみると、認知機能が高い方はちゃんと株式を保有できますけれども、低くなると運用ができなくなってくる。

 そして、25ページ、これも別の研究ではありますけれども、認知機能の低スコアの方と高スコアの方でリスクを調整した運用のパフォーマンスを比較しても、認知機能の低い方は運用パフォーマンスが悪いという結果が出てきているということになります。

 26ページは、横軸に年齢、縦軸にクレジットヒストリーから計算されたローンの実質金利をとったものでありますが、先ほどお話ししたように、この金利は50代のところでボトムになっていると。ここで一番資産管理能力が上昇していることがわかるということです。

 これらの研究から要約していくと、「加齢行動経済学」と私は名づけていますけれども、加齢によって認知機能が低下すると、高齢者は従来、行動経済学で確認された現象よりも、高齢期ではより強くフレーミング効果が発生しているのではないか。意思決定は、これまでの経験に依拠した判断をしてしまう、取引相手に誘導されやすいと、説明によって選択行動が左右されやすいということが生まれてくるのではないか。また、多くの選択肢に若者以上に対応しにくくなってくるのではないか、意思決定を将来に先送りするのではないか。28ページのほうはポジティブな情報のほうにどうしても目が行きがちではないのかという特性が生まれてくるのではないかということで、こういう高齢者の特性も理解した上で、金融商品、金融サービスを考えていくべきではないかということでございます。

 高齢化社会においては、29ページ、30ページに書いてあるように、「バルテスの補償を伴う選択的最適化理論」という対応方法がございまして、自分でやるべきことを高齢になると、ちゃんと絞り込んでいく。そして、誰かとか何かにこれをお願いするべきものはお願いするように、人やものにお願いすることを考えなきゃいけないと。それを最適に組み合わせていかなければいけないという整理をされているわけです。

 これを30ページで整理すると、加齢になると、自分のかわりに適切な金融サービスを使っていくことが重要であり、ますます高齢社会における金融サービスのあり方は重要になってくると思います。

 さて、31ページを見ますと、これまでの研究によって、加齢イコール認知機能低下イコール運用困難なのかというと、そんな簡単な話でもなくて、かなり個人差も広がっていくこともわかっていると。そういう意味では、なおさら高齢者の心身、一律的な対応ではなくて、きめ細かい対応をしていく必要があるのではないか。もちろんさまざまな技術の革新も現在進んでおりますけれども、最終的には人間が対応する部分が多いだろう。そういう意味で、金融機関で働く方は、金融ジェロントロジーに関する研修を受けていただく、あるいは、そういった情報を学んでいただく必要があるのではないかと思います。

 そこで、32ページ以降は、金融ジェロントロジー研修にかかわる組織を私ども、慶應義塾大学と野村ホールディングス、三菱UFJ信託銀行と共同して、今後つくっていくということでございます。

 先ほどもご紹介しましたが、お手元に18日のニュースのリリースが配布されているかと存じます。

 新しい協会に対して、どういう共同研究を行い、どういう研修プログラムを開発していくのかということを現在、考えているものを発表したものが32ページから33ページ。そして、34ページには、研修の意義、これは特別な一部の金融機関ではなくて、金融システム全体として、高齢化の問題、認知機能の低下の問題に取り組んでいく必要があるということで、広く金融機関、あるいは、この問題をよく考えてみると、別に金融問題だけではございませんので、ほかの消費者選択の問題も、あらゆる問題がかかわってきますので、そういうところともいずれは共同に研究していく必要があるのではないかというものでございます。34ページから35ページ、プログラムの概要を提示させていただいております。

 そのほか、37ページ、38ページ、この辺は私の個人的に関心を持っている問題でありますけれども、最後、2つご紹介させていただき終わりたいと思います。

 21世紀、先進国の相続制度は、高齢者と高齢夫婦自身が自分の形成した資産を使い切っていくほうに性格が変わってきているのではないかということで、今回の相続法改正もそれに近い動きでありますけれども、そういったものを今後も推進していく必要がある。高齢化社会にふさわしい相続制度のためには、遺留分制度の見直しといったものが必要ではないか。あるいは、最終的には成年後見を使う方も増えてくるわけですけれども、そこの司法インフラが脆弱ではないかと、こういったものも見直していく、強化していく必要があるのではないか。

 それから、38ページのほうは、教育資金贈与の改善というものが1つのテーマになります。自分の子供や孫だけが幸せな社会というのは存在しないわけでありまして、例えば、社会的養護の子供たちは施設に入って、里親から自立する先は支援がないという状態で、非常に困難な生活を送っております。具体的にどのぐらい困難なのかというのはご説明する時間はないですけれども、実は、政策的にも対応が不十分な部分でございます。教育資金贈与は、どちらかというと、豊かな世帯から孫の世帯へといきますので、格差の再生産の可能性があります。しかし、孫子に贈与するときに、贈与する祖父祖母世代から、自分と自分の孫だけが幸せな社会があるんだろうかと、贈与のときに考えていただいほしい。子供からは親は選べないわけですから、そういう不遇な状態にある子供たちのためにもお金が回る寄付といったものも、このときに考えていただくような仕組みをつくったらどうかということの提案でございます。

 あとは、今日お話しした資料の参考資料が最後についております。足りない部分はあとの質疑で補いたいと思います。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、野尻委員、よろしくお願いいたします。

【野尻委員】
 おはようございます。こういう機会をいただきましてありがとうございます。フィデリティ退職・投資教育研究所におります、野尻といいます。お手元の資料、「高齢社会における金融サービスのあり方について」を、20分ほどお時間を頂戴してご説明させていただきます。

 1ページ目の骨子ですが、今日、お話しをしたいのは、イギリスでの金融制度の調査、それから、今年8月に行ってきましたが、アメリカでのDecumulationに関する調査、そして、国内で10年ほど続けております個人の方々へのアンケート調査といったものを背景としまして、前回のワーキング・グループでも議論をされていたキーワードの中から、シームレス化と「見える化」を中心にしてお話をしたいと思っております。共通項は、高齢期のほうからさかのぼって現役世代の制度とか考え方を見つめるというか、考えることが大事になるというポイントになります。

 最後は、海外、アメリカとイギリスですが、既にある制度の中から日本に何か使えるものはないかという視点で幾つか挙げさせていただこうと思っています。また、最後には、少し逸脱するかもしれませんが、マクロ的な視点についてもお話をしたいと思っています。

 資料は文章と図表が交互に来る形でつくっておりますので、図表のほうをご覧いただきながら聞いていただければと思います。3ページ目の資産形成から資産活用のシームレス化ということですが、これは今般、アメリカで議論してきました中で、自分なりにまとめたものであります。Decumulationという言葉は海外でも最近使われるようになった言葉でして、日本語訳はもともとあんまりありません。あえて資産活用というものを私は当てはめていますが、資産活用、Decumulationの世代はでき上がった資産が議論の対象になる、当然、一個一個のプロダクト、金融商品よりも、その組み合わせである引き出し方のプロセスといったものがより重要になってくることになります。

 引き出し方については、税制上の優遇や税制上のポイントを念頭に置いた引き出しの方法が必要になってきます。アセットアロケーションよりも、アセットロケーションのほうが課題になるということで、Decumulationの議論を詰めていくと、実はAccumulationのほうの制度の見直しや考え方の見直しみたいなものまで言及せざるを得なくなる、リフレーミングが出てくるということをアメリカでは議論しておりました。そういう意味でいくと、シームレス化というのはDecumulationのほうからさかのぼってものを見ていくことが非常に大事になるのではないかと思います。

 5ページ目のグラフを見ていただきたいと思います。まずは、Accumulation、資産形成世代についてアンケート調査からわかってきたことをご案内します。急速に資産形成についての意識が変わってきているように思います。5ページ目の左側です。1万人ぐらいずつのアンケートをほぼ毎年行っているんですが、その中で、投資をしていない人に投資をしない理由を聞いています。投資するだけのまとまった資金がないからというのが急速に下がっているのがおわかりいただけると思います。要はまとまった資金がなくても投資ができるという意味になるかと思います。積立投資への認知度が高まっていることだと思います。2014年のNISAの導入は非常に大きかったと思います。自分自身もビラ配りなんかをしましたけど、少額投資非課税制度という、少額は非常にインパクトのある言葉であったかと思います。右側のDC加入者ですが、とかく半分以上が元本確保型に資金を入れていると言われていますが、特に企業型のDC加入者の中で投資をしているとご回答になった方々がこのところ増えてきています。特に、40代、30代、20代と若くなるほど比率の回復度合いといいますか、上がり度合いが大きくなっていることがおわかりいただけます。

 こういう資産形成の準備が進みつつある中で、シームレス化をどう考えていくかというのが7ページになります。先ほど申し上げましたように、資産活用の面からものを考えるということが非常に大事になってきます。例えば、できあがった資産を退職とともに全部売却してしまうのかというと、ほとんどの方はそうされないと思います。少なくともでき上がった資産は、その一部から少しずつ使っていく、引き出していくという時代が必要になってきます。これがここで書かれている使いながら運用する時代と私は表現しているものであります。

 この中で大切なのは大きく2点だと思っています。使いながら運用するということになりますと、実は60歳の段階、もしくは退職の段階で必要資金額よりも少ない金額で必要資金額をカバーすることができるようになる。要は、退職時点のゴールの高さが使いながら運用する時代を入れることで少なくて済むようになる、これが現役時代の目標を無理なものにしない大事なポイントになると思います。言いかえるとシームレス化を具現化するためには、ここであえて「逆算の資産準備」という言葉を使わせていただいていますが、逆算で高齢の時期からゴール設定を順番にさかのぼってつくっていくという発想が必要になるのではないかと思います。これが1点目です。

 2点目は、使いながら運用する時代というのは、引き出し方によって大きく、いろいろな影響が出てきます。欧米では収益率配列のリスク、Sequence of returns riskといいますが、高齢期の資産運用では必ず言及される言葉になります。アメリカに行っても、イギリスでもこの議論をせざるを得ませんでしたが、日本ではあまり議論されることがありませんでした。この辺の取り崩し方というのが大きな課題になるのではないかと思っています。右側のほうは退職の定義をまとめています。いろいろな定義があるんだと思うんですが、前回のワーキング・グループで鹿毛委員からご指摘のあった退職の定義を決めるべきなんじゃないかという議論をされていたと思います。お金との向き合い方という視点でいけば、私は勤労収入と生活の支出との大小の関係で見ていくべきで、できるだけ勤労収入でまかなえる時期を長くすることがより高齢期の資産の枯渇化を避ける方法になるのではないかと考えています。

 9ページの表を見ていただきたいと思います。先ほどご案内をした収益率配列のリスクというものを簡単にご説明するために使っています。これは個人投資家の皆様方によくセミナーで使わせていただいている資料であります。意外に反応が良いというと変ですが、理解をされるとなるほどとわかっていただけるものになっています。パターンAとパターンBがあります。定額引き出しと書かれているところを見ていただきたいんですが、パターンAもBも1,000万円を持って、毎年40万円を引き出し、残りを左側にある収益率と書かれているマーケットで運用したと想定をします。収益率パターンAとパターンBは上から並んでいるものをひっくり返しただけですので、15年間の標準偏差とか収益率は全く同じになります。現役で単に1,000万円を預けていれば、15年後の資産は全く変わっていないはず、パターンAもBも同じはずなんですが、ここに引き出しという機能をつけると15年後パターンAは670万円の資産が残り、パターンBでは240万円になります。前半のほうに大幅なマイナスが来ると、負けが大きくなって最後よくなっても資産の元本が毀損していますので、戻りが弱いといったことになります。ここの収益率配列のリスクというものをあまり議論されないままに使われてきたのが毎月分配型投資信託の持っている分配金の下方硬直性の議論だと思っています。これを解決する1つの手が定率引き出しと呼ばれている右側に書かれているものです。15年後を見ていただくと、この場合はともに同じ率になるということになります。

 10ページを見ていただきますと、これをさらにいろいろなアイデアです。左側は、私が予定率と呼んでいますが、引き出し率を事前に決めておいて、何歳のときは残高の何%を引き出すとルール化してやっているものになります。右側は余命を使った数字になります。例えば、70歳のとき、27.4歳という余命があります。これの逆数を使って引き出し率を計算して引き出していきます。アメリカの401KとかIRAの70.5歳を過ぎた以降、引き出さなければいけないという強制引き出しのルール、Required minimum distributionといいますが、ここで使われている計算方式になります。

 11ページ以降は、「見える化」のアイデアをご紹介したいと思います。いろいろなものがあるかと思いますが、ここではちょうど8月に行ったときに、フィデリティのアメリカで使われている「見える化」のアイデアがありましたので、これをご紹介したいと思います。目標代替率、Target replacement rateとかIncome replacement rateというものがよく海外でも使われています。これは現役最後の年収に対して、退職後の年収――Retirement Incomeといいますが、これが幾ら、何%に当たるか推計するという考え方、その率であります。

 12ページのグラフを見ていただきたいと思います、左側の表ですが、見方は細かくご説明すると時間がかかりますので簡単に申し上げますと、下から2列目をご覧いただきたいんですが、67歳で退職をします。この方が一番右ですが、残高に対して4.5%の比率で引き出しを続けていく、これが可能になる資産額は幾らかというと、真ん中にあるSavings Factorsと呼ばれている、10倍と書かれているものです。その時期の年収の10倍を用意しておけば、これが達成できますという意味です。10倍の年収を用意するために、毎年の現役時代の資産の貯蓄率――Savings rateと書かれていますが、日本語にすると資産形成比率のほうが正しいかと思うんですが、資産形成に回す資金は年収の15%と算出しています。これを使って何を見せているかというと、実は右側の上にあるほうです。退職というのが若い方にとっては非常に遠いゴールなんですが、そのゴールを先ほどの引き出すところから設定し、でき上がった残高を年齢ごとに前のほうに若いところで何倍あればオントラック、計画どおりに進んでいるかがわかるようにしてあるわけです。35歳のときに2倍あれば、67歳のときに10倍に届く、オントラック、計画どおりなんですといったことを見せている「見える化」のアイデアであります。これが全てというわけではありませんが、こういうやり方も1つあるんだということかと思います。

 13ページ以降では、これが日本で適切にできるかという議論を検証してみました。14ページの左側のグラフを見ていただきたいんですが、これは私どもが14年に行った3万人の勤労者アンケートの結果です。設問は公的年金以外に必要な退職後の資金総額は幾らですかと聞いたものであります。平均は3,000万円という数字だったんですが、注目したのは下の年収別の平均値であります。年収が高くなるにつれて必要金額が高くなる、当たり前といえば当たり前のことであります。年収の高い人ほどいい生活をし、それが退職してもそう簡単に変えられないというのが前提であると。我々はとかく退職したら1年間に幾ら必要で、それで何年でという極めて一律の議論をしてきているんじゃないかと思いますが、ご承知のとおり、働き方はどんどん多様化していますので、何か違う指標が要るのではないか、その柱になるのが年収だと思っています。右側のほうには、年収を柱にした考え方として、3つの掛け算をご案内しています。これが現在の年収から退職直前の年収は推計しやすく、これに目標代替率を掛けると1年間に必要な退職後の年収が見えてきます。これに退職後、何年生きるかを掛けることで総額が見えてくるという考え方になります。

 ここの中で、赤く丸が囲んであるのが自分でコントロールできるところになります。駒村委員の、先ほどの金融だけ、一本足打法にならないというのは、3つの赤い丸を自分でどうコントロールするかというところに私はかかってくるのではないかと思っています。一番上の退職後年数は早く死ぬということではなくて、退職という期間に入るのをなるべく遅らすということで短くする、長く働くということと同義ですし、目標代替率は先般、鹿毛先生からご指摘のあった地方移住も含めて、生活のコストそのものを引き下げるアイデアにつながります。一番下は資産運用になるかと思います。

 最後、5分ぐらいありますので、15ページ以降で、海外にある制度をご案内したいと思います。16ページを見ていただきたいんですが、16ページにあるのは現行のiDeCoやDCや一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA等を年層別、階層別に並べてみました。これを見ると、退職者と配偶者のエリアが、今は一般NISAだけしかないんだということであります。そのために、DCの拠出可能期間の引き上げは1つ大事なポイントだと思うんですが、そのほかに、NISAを生涯拠出上限型のものに変えて、統合していく、さらに相続NISAといったアイデアも導入する、それから、投資教育とか金融リテラシーというのはとかく若い人たち向けの議論が多くなっているんですが、イギリスでは退職時の投資ガイダンスを政府が無償で行うという動きも出ています。こういったアイデアのようにお金に敏感な時代に行うことのインパクトが大きいのではないかと思います。

 17ページには左側で生涯拠出上限額NISAのアイデアを簡単にまとめています。イギリスの年金制度にある生涯拠出上限額を日本のNISAに持ち込もうというアイデアであります。右側は、そうなってきますと、高齢者の資産の保守化の要請が非常に強くなってきます。イギリスのISAも2014年の改正で一段と資産のスイッチングがしやすくなりました。こういったものも日本では検討する余地があるのではないかと思います。

 18ページは、イギリスの相続ISAの例をまとめています。相続税に触れることなく、ISAの拠出上限額を一時的に配偶者が死亡したときに上乗せすることができる制度ということになります。ISA、NISAは家族の構成員一人一人が上限額を持つというやり方ですが、老後、退職をした後、構成員が減っていくときにどうそれをカバーするかというのが相続ISAの持っているアイデアだと思います。右側は、これも2017年から実施されましたPension wiseという制度であります。DC資産を引き出す方には、政府による無料の投資ガイダンスを実施するというのがスタートしています。これに合わせて、課税の繰り延べの特例を、引き出し型金融商品にも対象を広げるといった動きも出ています。

 19ページから21ページは、高齢者の脆弱性のことであります。ここは駒村先生が非常に詳しくご案内をしていただきましたので、簡単に20ページの左側は、資産運用とか資産活用の手間を考えると、現役世代よりも退職世代のほうが引き出すという作業の分だけ実は重たい、多いのではないかという前提に立つと、現役世代よりもより大事なのがアドバイスとかサポートになるのではないか。特に本人が行える部分が大きいうちはいいんですが、だんだん小さくなってくるわけですので、そのかわりの商品とかサービスが非常に大事になってくる。そのためにはイギリスのRDR以降、急速に注目されていますIFA、独立系のファイナンシャルアドバイザーと投資家との関係は、これからさらに日本では重要視されてくるのではないかと思います。

 21ページはTrusted contactというアメリカの一例になります。

 最後、あと1分なんですが、先ほど駒村先生も最後に相続のことをお話しになられていました。Decumulationというのは、消費とつながるとすれば、相続とは非常に大事な関連があるのではないかと思っています。23ページを見ていただきたいんですが、私どもが行った2015年のアンケート調査の結果では、年間の相続資産額は46兆円ぐらいでした。言うを待たず、これはこれから増えていく方向になるんだろうと思います。老々相続というのが言われておりまして、80代後半の親世代から60代の子供世代にということは、相変わらず老後のための資産をキープしたいということにつながってしまっています。この呪縛からなかなか出ないわけでありますが、46兆円の資金というのはGDPの1割に相当します。このうちの1割だけ、46兆円の1割が消費に回る、Decumulationによって消費に回るとすれば、GDPを1%押し上げるだけの力に相当します。何も全体の議論よりは、実は先ほどもありましたように、相続を持った60代が地方都市に移住できるような環境をつくると、地方経済への大きなプラスにもつながるのではないかと考えています。Decumulationが相続と絡む形で、若い世代に資金を送るよりは、景気そのものへのインパクトも考えていく時代になっているのではないかと思います。

 24ページは相続に関するアンケート調査の結果ですので、後ほどご参照いただければと思います。

 時間になりましたので、私はこれで終わらせていただきます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、最後になりますが、野村委員、よろしくお願いいたします。

【野村委員】
 本日は貴重な機会を頂戴いたしまして、どうもありがとうございます。野村資本市場研究所の野村でございます。

 お手元の資料をめくりながらお聞きいただければと思います。まず、1ページ目のほうをご覧いただけますでしょうか。今日、私からのお話の全体の構成なんですけれども、ここにありますような環境認識を簡単に共有させていただいて、その後、目指すべき方向性を述べ、最後に考えられる施策の案のようなものでまとめさせていただくと考えております。まず導入部分になりますが、環境認識をお話しさせていただきたいと思います。

 1ページでございますけれども、これはご案内の絵でございます。長寿化が進んでいる、例えば、女性であれば半分の方は90歳まで生きるということですので、人生100年時代というのは確かに到来しているということです。

 そのような中で、次の2ページ目のスライドでございますが、この審議会、市場ワーキングで議論されているような改革の議論の必要性が、なぜ今なのかということでございます。それは端的に申しますと、団塊ジュニアの世代の存在を抜きには考えられないのではないかと思います。団塊ジュニア世代というのは、人口動態的に自分より若い世代の中で支えてくれるような大きな人口の塊がありません。彼らはまだ40代半ばですので、まだ自分自身のために資産形成によって備えることができる、今このタイミングを逃してはならない、必要な措置を講じるなら今ですということが申し上げたかった点でございます。

 その上で、次の3枚目をご覧いただけますでしょうか。これは生き方の多様化に対応した資産形成・資産管理。何度か事務局のほうからもご指摘があった点でございますけれども、そういったことが大事になるということです。いわゆる従来型というのを、あえて単純化いたしますと、退職というタイミングまでが現役でございまして、その間に資産形成をする。そして、退職したら蓄積してきた資産を月々幾らといった形で取り崩して生活していくというイメージだと思います。ただ、先ほど野尻委員からもありましたとおり、そういう単純化はもう難しいのではないか、例えば、社会保障制度をはじめとする前提が変わっていくわけでございます。そこで必要なのは、まずは資産形成を後押しする制度を有効活用することだと思いますし、現役から引退への円滑な移行というものも今後はぱたっと札を返すように現役引退と切りかわるというよりは移行していくという観点も大事だと思います。さらには、引退後に運用しながら取り崩すということが必要になっていく、そういう環境認識でございます。

 次の4ページ目、これも環境認識の続きでございますが、4ページ、5ページのところで資産形成と分散投資をめぐるこれまでの状況ということを振り返らせていただいております。何となれば、このワーキングのテーマの1つでもあると認識しておりますが、いわゆる貯蓄から資産形成ということは、今までも言われておりましたし、施策も打たれてきたという認識でおります。ただ、これまでのところ、日本人の間で当たり前のように皆さんが長期分散投資を実践しているかというと、そうは言いがたいということになろうかと思います。なぜなのかということを、これは歴史をさかのぼれば、例えば、住宅です。あるいは、土地、不動産といった存在のほうが、あえて言うなら大きかったという時代もありましょうし、公的年金をはじめとする社会保障制度の存在感、あるいは、雇用のあり方、いろいろなものがファクターとして絡まってきたんだと思います。言うまでもなく、国内の運用環境といったものも影響を及ぼしてきたと思います。要するに、いろいろなファクターが絡まり合って今に至る。したがって、申し上げたいのは必要以上に悲観することもまた必要ないのかなということでございます。

 また、次の5ページをご覧いただきたいんですけれども、そもそも普通の日本の個人において、分散投資という資産形成できちんと積み上げていくことがそうはいっても可能だったのか、理論的には長期分散投資ということを行えば、それこそ預金のような低リスク低リターンのものよりは高い運用利回りを期待できるということに理屈の上ではなるんですが、日本の個人にとってどうだったのかというのを見ていこうというものです。

 要は内外の株式・債券のインデックスにバランスよく投資することが考えられますけれども、個人で行うなら投資信託ではないかと思います。となりますと、インデックスファンドというのは、手数料の存在が現実問題としてはございますので、こういったものも加味した上で考えるとどうか。ここで野村総合研究所のほうにお願いいたしまして、同社の投資信託のデータを駆使して、シミュレーションを行っていただきました。その結果です。左側、20年の運用のところを見ていただきますと、20年間、4資産のバランス型の運用をしたと仮定いたします。そうすると、中央値3.3%、比較対象として、1年物の定期預金と比較しますと、これが0.5%ということです。この20年というのは決して順風満帆なものではなくて、上下の変動とともに激しかったと思うんですけれども、それであったとしても、内外に長期分散していれば、こういう形で、それなりに意味のあるリターンということが達成できたのが確認できた点でございます。

 ちなみに、これを20%課税ではなくて、運用時非課税で0%にすると3.3が4.1になるということで、相応のリターンが水準的にあると非課税の恩恵もかなり「見える化」できるかなと、これはつけ加えたかった点でございます。

 環境認識の最後、次の6ページでございます。これは高齢者が非常に多様であるということをご指摘したかったところでございます。例えばですけれども、左上の65歳以上がいる世帯の世帯構造、かつては3世代というのが約半分でございまして、かなりメジャーだったと思われるわけですが、これが大きく変化いたしまして、今はどのパターンが一人勝ちということも言えないという形です。夫婦のみですとか、あと、単身の存在感も増しております。また、健康状態ですとか就業ですとか所得、こういったものもいろいろと違いが出てくるということが見てとれる点でございます。このように高齢者が多様であるということを踏まえて、全てを考える必要があろうかと思います。

 以上が環境認識ということなのですが、これらを踏まえて目指すべき方向性ということで7点ほど指摘させていただきたいと思います。

 まず、資産形成の拡充です。7ページをご覧ください。公的年金の給付抑制が、制度上進んでいくとなるわけですので、ここは私的年金等を活用した自助努力の老後の所得確保が必要になるわけでございます。そういう意味では、確定拠出年金(DC)ですとか、また、多様な目的に対応可能なNISA、こういったものの拡充が求められるわけでございます。

 例えば、DCにつきましては、加入可能な年齢の引き上げですとか拠出限度額の引き上げ、中途引き出しの要件緩和、特別法人税の撤廃といったようなことが求められるのではないかと思います。また、NISAもいろいろと改善案が出ていると認識しておりますが、例えば、制度の恒久化が求められると思いますし、非課税期間の延長といった利便性の向上も重要ではないかと思います。

 8ページでございますけれども、今触れましたDCは職域の企業型があるわけですが、NISAについても職場でのつみたてNISAがあるわけです。やはり職域の活用は引き続き追求していくのが重要ではないかと思います。個々人に、一人一人に資産形成の重要性を訴えかけていくことに比べますと、職域という場をプラットフォームとして活用することは極めて重要ではないかと思います。また同時に、企業にとっても従業員は重要なステークホルダーになります。例えばコーポレート・ガバナンス・コードにおいてもそのようにうたわれているところでございまして、従業員が活気ある形で仕事に励むには、資産形成の面でも後押しというのは有意義ではないかという考え方であります。

 9ページでございますけれども、これは3点目になります。先ほど少し触れましたとおり、現役から引退への円滑な移行が重要になってまいります。いわゆる第一線での就業から完全な引退に至るまでの道筋は、間違いなく多様化していくと思います。イメージとしては60代、場合によっては70代の生き方ということになるかと思います。そうしますと、それこそ働き方、住む場所、住居、家族との過ごし方等々、いろいろな形でいわゆる現役から引退までの円滑な移行ということが大事になるわけですが、これに、金融資産についても移行期の管理が大事であるということを加えてはどうか。また、もし考えられるのであれば、制度的なサポートが可能かどうかということも検討に値するのではないかと考えております。

 10ページは4点目になります。高齢期に求められる金融リテラシーの向上でございます。金融リテラシーは、世代を問わず全世代にわたって個人の金融行動の基盤を形成するものですので重要なわけですが、高齢期においてもこの向上は大事であろうということであります。先ほど野尻委員からもご指摘のあった点でございます。

 ただ、高齢期に必要とされる金融リテラシーは何かということも、同時によく考えるといいのかなというところでございます。駒村先生からもご説明いただいたとおり、心身機能の相対的な低下は若いころに比べるとやはり否めないところがありますし、先ほど申しましたとおり、人によって非常に状況は多様になってくることも想定されます。また、60代、70代、さらには80代、場合によっては90代となりますと、一言で高齢期と言っても多様になるわけでございます。これらを全て考え合わせますと、やはりシンプルで、かつ運用しながら取り崩すというところも考えますと、ライフマネーの運用に必要な高齢期の金融リテラシーというのは一体何なのかということになります。

 イメージということで、11ページ目以降を挙げさせていただいているのですが、例えば11ページ目は、実は昨年の11月に、野村アセットマネジメントと野村資本市場研究所とで金融ジェロントロジーを意識した高齢期の資産管理に関するアンケート調査を行いました。これは60代以降、60歳から89歳を対象にしたという点がやや特徴的なところでございます。高齢期のアンケートの難しいところは重々認識しているのですが、ご参考までにちょっと見ていただきますと、例えば、ご自身はどのぐらい生きると思いますか、どのぐらい健康で生きると思いますか、どのぐらい資産がもつと思いますかということを聞いているわけですが、60代を見ていただきますと、平均で83歳という答えになっております。ところが、生命寿命と書いてある隣に平均寿命と、これが統計上の65歳時点の平均余命でございまして、男性84歳、女性89歳ということで、統計的な数字よりもご自身の自己認識における生きている年齢が低い。長寿化を少し甘く見積もっているというか、生命寿命を短く見積もっている。このような寿命についてどう考えますかというところの自己認識からして、まずは金融リテラシーの第一歩ではないかということです。ちなみに、資産寿命というのを見ていただきますと、81歳が平均ですので、ご自身の83歳より短い、それでいいんですかということです。こういう寿命の認識も、ひとつ金融リテラシーのイメージとしてあるのかなと。

 あるいは12ページでございますけれども、認知機能が低下してきたときに資産管理をどのようにしますかと聞いたものでございます。私自身は運用をやめて預金しますという方が大半かなと思っていたんですが、そこはいい意味で外れまして、事前に運用方針を決めて家族などと共有するという答えもそれなりにおられました。ただ、ここで見ていただきたいのは、どうしていいかわからないという答えが存外多いことです。特に60代におきましては4割ということで、結構な方たちがそうお答えになっている。わからないのはよろしくないわけでして、まずはこういうところから認識した上で、わからない、まずいなということで行動していただく、こういうイメージではないかと思います。

 さらには13ページでございますけれども、先ほどの運用方針を決めて家族と共有するということであると、家族のサポート、これは老齢期には生活のあらゆる面において重要になってくるわけですが、こと金融についてサポートを得るということになりますと、おそらく高齢者の側にそれなりの事前の準備も必要になろうかと思います。ここに挙げましたのは米国で出されているものの本から引用させていただいた、エッセンスを要約させていただいたところですけれども、どの金融機関にどんな口座があって、もし担当者がおられるなら誰なのか、そして、どこにそれらの情報が記録されていて、すぐに見せる必要はないんですけれども、ここに置いてあるといった程度のことは、しかるべくご家族との間で共有しておく。こういうことを子供の側からやってくれというのはなかなか言いづらいものであろうかと思いますので、例えばですけれども、高齢期の金融リテラシーというのはこういったものの事前準備も大事なんだということを踏まえる。このようなイメージを持っております。これが4点目の高齢期の金融リテラシーになるわけです。

 14ページをご覧いただきますと、これがいわゆる金融ジェロントロジー、資産寿命をいかに延ばしていくかという論点になります。長寿化時代の資産形成、資産管理というのは、資産寿命の延伸がおそらく最終的な重要目標の1つになろうかと思います。その際、大事なのは、資産の取り崩しを行うときに、意図せざる資産の枯渇をいかに回避するかです。したがって、一定程度資産価値を維持していくということも大事になりますし、同時に、自分の寿命は誰にも当てられませんので、長寿リスクと言われるものの対応も必要になってくるかと思います。さらには心身機能の低下を想定いたしますと、医学とか心理学といった、いわゆる狭義の金融ではない幅広い知見も取り込むことが必要になろうかと思います。したがって、いわゆる老年学、老齢学と言われるジェロントロジーが、高齢期それから老齢化プロセスに関する学際的な研究分野ということでございますが、ジェロントロジーに立脚した金融ジェロントロジーのような非常に学際的なアプローチが大事だということ、これは先ほど駒村先生からのご説明にあったとおりでございます。

 米国ではこのような金融ジェロントロジーの学問が登場しているという認識でいるところでございます。その米国において、例えばですけれども、引退後の資産管理においてどのような議論がされているのか、15ページにごく簡単に触れさせていただいております。詳細はよろしければ後で見ていただければと思いますが、同国では引退後の所得の確保という議論においては、やはり長寿リスクの対応をどうやるのかが中心的なテーマになっているという認識でおります。ただ、先ほど申しましたとおり、高齢者は非常に多様でございますので、例えば資産形成期にとられていたような、いわゆるデフォルト設定ですね。そういうやり方が果たして有効なのかということ1つとっても、なかなか米国でもコンセンサスは得られていないようでして、この問題の難しさがある種うかがわれるところでございます。

 16ページをご覧になっていただけますでしょうか。さはさりながら、運用しながら取り崩すための部品といいますか、ツールといいますか、パーツですね、そういう意味での金融商品は日本においても既に登場し始めているという認識でございます。左側の表を見ていただければと思います。例えば、先ほど申しました長寿リスクの話、認知症に関するもの、資産をいかに保全するか、取り崩しのペースをどうやって作っていくか、投資アドバイスをどう考えるか、資産の移転をどうするか、こういったような分野において、非常に幅広い業態において金融商品、あるいはサービスといったものの工夫は既に始まっております。

 したがって、いろいろな動きが始まっているということなのですが、ここで見てとれるのは、特定の業態、金融サービス業界において単独で全てのニーズに対応するというのはおそらく不可能であろうということになります。単独で全てのニーズには対応できない。そうしますと、それらを全て総合するような、総合的な資産管理サービスというものが求められるわけです。

 17ページを見ていただきますと、そのざっくりしたイメージ図をお載せしております。専門家によるサポートというのはやはり大事だと思うのですが、それを総合するようなものを提供できる、これは誰が担えるのかというのはこれからの議論という認識でおります。まだ答えは出ていない、これから答えを出していくというところではないかと思います。

 18ページにフィデューシャリー・デューティーというキーワードを出させていただいております。ここでは後見人はフィデューシャリーであるという考え方のもとで、後見人が保全する資産の管理にも、例えば分散投資のような考え方を適用する必要があるという考え方をしているということです。日本でこれをそのままというのは行き過ぎのような気もしないでもないわけですが、ここで申したかったのは、一連の議論にフィデューシャリー・デューティーの概念を取り込むということは重要なのではないかということです。

 最後、19ページに、求められる施策を簡単にまとめさせていただいております。DC、NISAといった資産形成制度の拡充が求められるということは先ほど触れさせていただいたとおりです。また、より多くの事業主に対して、職場を通じた資産形成の支援制度の提供を促していくのも有効ではないかと思います。例えばですけれども、コーポレート・ガバナンス・コードに従業員も重要なステークホルダーと言及されておりますので、こういったものを活用するということも考えられるのではないでしょうか。また、現役から引退への多様化する移行期をどのように資産管理の面で行っていくのか、これを見直す必要があるということでございます。さらには、高齢期の金融リテラシー、シンプルかつライフマネー運用に必要なものは何なのかということの議論は必要ではないかと考えます。最後に、金融サービス業界の創意工夫の後押しと申し述べております。ここに挙げさせていただいたような項目、それぞれ動きは始まっているという認識でおりますので、これをいろいろな形で後押ししていただくというのが今の局面ではないかという認識です。

 最後に、1分ぐらいいただきまして、これらの高齢社会における金融サービスの拡充が社会、経済全体に対してどのような寄与をするのかという論点と結びつけて考えてみると、どんなことが言えるのだろうかという点です。1つは、意図せざる形で資産がそれこそ塩漬けになってしまうような事態を回避することによって、本人と家計の資産寿命を延ばす。それがひいては、結果的にかもしれませんけれども、リスクマネーないし成長マネーの維持につながるというのは考えられることではないかと思います。またもう1つは、財政とか社会保障との関連かと存じます。高齢者の何割かの方たちは、ある種、自然体で資産寿命を延ばしていく、十分に維持することが可能ではないかと思います。逆に、一部の方たちは、金融面での自助は難しい、したがって社会保障、社会福祉といった公助が中心的になる可能性があるのではないかと思います。したがいまして、なにがしかの施策を講じていくということが、この両者の中間層が自助を実践していく力を高めていく、そうすることで今後の社会保障給付の抑制にもつながり得るのではないか。そういったことにつなげていくこと、社会保障給付をより必要なところに振り分けられるといったことに資するのではないか。そういった形でこの高齢社会における金融サービスの拡充の意義も考えることができるのではないかと思います。

 大変早口で恐縮でございます。私からは以上です。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、ここで5分間休憩をとらせていただきたいと思います。5分後に再開させていただきます。よろしくお願いいたします。

( 休 憩 )

【神田座長】
 それでは再開させていただきます。

 3名の委員の方々からは大変貴重で重要なお話をいただきまして、どうもありがとうございました。

 それでは、今日は残りの時間、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。なお、このワーキング・グループは、委員の皆様方の数が非常に多くなっておりますので、大変申し上げにくいことで恐縮でございますけれども、ご発言はできれば簡潔にお願いできるとありがたく存じます。とはいえ、できるだけ多くの方から思い切った発言を多数出していただきたいと思っております。多少矛盾めいたことを申し上げましたけれども、どなたからでも、どの点についてでも結構でございますので、ご質問、ご意見をお出しいただければと思います。

 大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】
 私からは、本当に細かい質問を2つほどしたいものですから、1番に当てていただいてありがとうございます。

 野尻委員と野村委員に1点ずつお伺いしたいんですが、野尻委員のお話の中で、定率引き出しをやっていくと、資産の減り具合が、運用環境の変化によってもそれほど影響を受けないというご指摘があって、なるほどと非常に感心したんですが、他方で、引き出しをするということは生活上必要なお金を確保するということなので、定率引き出しだと入ってくる金額が動いちゃうというのは大きな問題のような気もするんですが、その辺をどううまくすり合わせる、何かアイデアがあるのか、あるいはそういう議論があるのかみたいなことを教えていただければと思います。

 野村委員に1点お伺いしたいのは、資料の18ページのプルーデント・インベスター法という話なんですが、これはあくまで確認ですけれども、連邦の法律ということではなくて、アメリカ法律家協会がつくっている模範法というやつですよね。さっきちょっとネットで調べたら、もう既に40数州で実際に法律が州法として実施されているらしいんですが、何となくアメリカで後見人をやる人は大体弁護士さんなんじゃないかなと思うんですけれども、そうすると資産運用の専門家ではないし、しかもプルーデント・インベスター法で投資運用の外部委託が容認されているということを考えると、それ専門の商品みたいなものが出てくるんじゃなかろうかと思うんですが、その辺何か事情をご存じであれば教えていただきたいと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 それでは最初のご質問についてですが、見ていただきますように確かに引き出し額の数字は相当にぶれます。ただ、これはご理解をいただくために少々荒っぽいことをしておりまして、超ハイリスク・ローリターンをあえて数字上あらわしていまして、方法は2つあります。1つは、よりリスクの少ない運用にシフトしていっていただくことで、引き出し額の変動のリスクを引き下げることができます。それからもう1つは、これは海外ではないんですが、日本で考えるときには、あえて74歳までにしてあるのは、例えば75歳以降の生活により安定的な資金を求めるのか、74歳までにより安定的な資金を求めるのか、二者択一を迫るつもりはありませんが、どちらかをというふうに考えたときには、やはり75歳以降、もしくは80歳でもいいんですが、年齢の後のほうこそ定額で引き出せるように財産を残していくというスタンスをとるべきだという考え方を前提にしています。2つあるということになります。

【神田座長】
 野村委員、いかがでしょうか。

【野村委員】
 ご質問ありがとうございます。ご指摘のとおり、運用については外部の専門家を雇うということは適宜行われているというのが、私どもの、限られた形ですが、調査したときの理解でございまして、専用の商品はそのとき見つけることはできませんでしたけれども、老齢期の、しかも保全資産の運用であるということを十分に認識した上で、リスク抑制というんでしょうか、それを非常に強く意識した運用をやりますという形でのサービスを提供しているような投資顧問の方が存在するということは確認できました。定型化された商品が存在するというイメージは私は持たなかったんですが、いろいろなサービスはあるんだなという認識でございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、宮本委員、福田委員、永沢委員の順で、宮本委員どうぞ。

【宮本委員】
 前回欠席させていただいたので、そこも含めてなんですけれども、前回高齢社会における金融サービスというテーマの中で、日本経済全体としてのキャッシュフローの創出向上に向けての産業界の努力、それから、既存の金融資産の活用による新たな富の創出ということを議論されたと認識しておりますけれども、国民の適切な資産形成がなされるという意味で、経済の持続的成長に資する望ましい資金の流れをつくっていくということで、当然ながら相互に関連する事項でもありますし、長寿リスクの課題については、どちらかがまずありきということではなくて、産業界、金融界のそれぞれの面から努力していくことが必要だと考えております。

 それから、高齢社会における金融サービスの大前提として、顧客本位の業務運営という点も前回のワーキング・グループで議論されたと認識しておりますけれども、そのとおりだと思いますし、本日、駒村委員からご説明がありましたように、高齢化社会、長寿時代を見据えた市場のあり方といったことも検討することが非常に重要だと思っております。

 それで、今日野村委員から目指すべき方向性の1つとして、職場経由での資産形成制度の活用の促進という点をご説明いただきましたけれども、これについて企業の立場から少し述べさせていただきたいと思います。

 高齢化社会の進展におけるさまざまな課題について、社としても認識していますし、その中で、社員の老後の資産形成に向けた取り組みは今後ますます重要になってくると考えております。一方、人手不足という中で、高齢者雇用の延長の問題、定年延長の問題等の課題も非常に重要な問題と認識しているわけでありまして、これもあるべき資産形成に影響を与えてくるものだと思っております。

 その資産形成については、あくまで個々の社員の自己責任のもとでの選択というのが基本になっているわけですけれども、企業として従業員の老後の生活設計、資産形成に対する支援メニューを提供することは極めて重要だと思っております。当社でも社員のライフステージ全体を俯瞰して、蓄財支援としての寮・社宅の提供、住宅融資制度、それから教育融資制度、財形貯蓄制度、生命保険、選択型のDC、積立年金制度等、各種メニューを設定しているわけですけれども、これは高齢化社会の進展の中でも社員の老後の資産形成に資するものと考えております。

 その普及や活用促進に向けては、当社としても、社員の多様性も踏まえながら、支援や教育に努めております。この中で、野尻委員からも「見える化」というお話があったかと思いますけれども、社員に将来のキャッシュフローとかバランスシートを認識してもらって、それに向けた適切な対応をとれるよう早くから教育することが重要だと思っておりますけれども、若い方は一部認識が高い人もいるのですが、退職前になって初めて勉強している人が多いというのもこれも事実かと思います。社においても、こういう教育の充実とか投資の選択肢を提示することに努めていますけれども、国や金融機関においても、個人の金融リテラシーの向上に向けた取り組みや高齢社会という状況にマッチした資産形成等について、今まさしく議論しているわけですけれども、このワーキング・グループで議論を深めて、枠組みの整備を含めて進めていただくことが重要だと思っております。

 以上であります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、福田先生、どうぞ。

【福田委員】
 主として事務局の俯瞰図を見たときの印象を発言させていただきます。いつもながらに非常によくできた俯瞰図だと思いまして感心させていただきました。これを見て思ったこととして、まず、経済学で、少なくとも合理的な人間像を想定する経済学で、高齢者はなぜ資産を持つかということをどういうふうにこれまで考えてきたかということを若干ご紹介したいと思います。

 まず1つは、多くの方が指摘されているライフサイクル、自分自身の人生設計の中で、高齢者のフェーズでどういうふうな資産を持つかという議論はもちろん非常に重要だということは議論されています。老後の生活の中で資産をどう崩していくか、あるいは老後のリスク、病気や長生きのリスクの中でどういうふうな資産を持って対応していくかということは非常に大事だということで、これは俯瞰図にも書かれているし、多くの方が幅広く議論された問題です。

 ただ、あと2つ重要な動機があると考えていて、2番目は、これはおそらく事務局の俯瞰図による整理でも資産継承という形で反映されていると思いますけれども、世代間の所得移転といいますか、資産継承という観点で大事だということです。古い話をすれば、戦前の日本というのはご存じのとおり家社会、家制度というのがあって、長子相続というのがあって、それが非常に継承として大事だということで考えられていました。現代ではその制度はないんだけれども、それなりに子孫に、長男ではないけれども、子供がかわいいから資産を残したいということで残す動機というのは決して少なくないということです。

 かつ、第1のライフサイクル的な動機と2番目の動機では、保有する資産の内容はかなり違ってくるということはあり得ると思います。1番目の動機は、自分で使わなければいけないものですから、過度に非流動的なものではなくて、かなり使いやすいもので資産を持たなければいけません。けれども、世代をわたった資産の継承という動機であれば、かなり非流動的なものでもいいということになります。したがって、どういう動機で資産を持っているのかによっても望ましい資産構成は違ってくるということであります。この観点は重要だと思います。

 加えて、相対的には皆さんの議論にはないんだけれども、経済学者が比較的重要じゃないかと考えている第3の動機というのがありまして、これが戦略的な動機と言われているものです。これは経済学者以外の方にとってはちょっと奇妙なものかもしれませんけれども、老後の楽しみって何だということがあります。若いときはスポーツとかやって、いろんなアクティビティをやったりするわけですけれども、老後になると体も動かなくなってきて、そういう楽しみが相対的には減っていくわけで、そのときに何が楽しみかというと、子供や孫が遊びにきてくれて、一緒に遊ぶということが大事になってくると経済学者は考えています。

 そのときに何が大事になるかというと、小遣いもあげられないようなおじいさんやおばあさんのところには孫や子供は寄りつかないと経済学者は考えています。実際これはアメリカで研究している人がいまして、子供や孫の訪問する頻度が親の資産のどう依存しているかというと、これは極めて密接な関係があるということが、アメリカでは少なくとも示されています。そういう意味では、親はなぜ資産を持っているかというと、第1の動機でも第2の動機でもなくて、子供や孫と遊びたいから持っているという動機は決して少なくないということです。

 高齢者社会との関連でもう少し別の観点で言えば、医療や介護などでも最近は在宅介護というのが非常に大事になってきているわけです。そのときに公的サービスを利用して在宅介護、医療というのは大事だけれども、それには限界があって、やはり子供が親の面倒を見るということが大事になってきます。そのときに面倒を見てくれる子供と面倒を見てくれない子供というのは、もちろん子供の献身的な姿勢というのは大事なんですけれども、他方で、親が資産を持っているから面倒を見るという点はやっぱりあるんじゃないかと。ちょっと世知辛い話なんですけれども、これは現実問題としてやっぱりあるんじゃないかと思うんです。そうすると老後の第3の資産形成の観点というのは、こういう新しい社会で、子供が積極的に親の面倒を見るような、第3の観点というのはそれなりに大事で、これは皆さんあまり議論しない、経済学者的な世知辛い話なんですけれども、そういう第3の資産形成の観点というのも経済学者は大事だと思っているということをご紹介させていただきました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】
 本日、3人の先生からお話をいただき、それぞれ20分ではとても惜しいお話でした。また次回以降でお話を伺いたいと思っております。今日はお三方からお伺いしましたことの中で特に印象に残ったことと、それから幾つか質問も交えながら短めにお話しさせていただきたいと思います。

 まず、駒村先生の資料の4ページにありました、契約の手続が適法であれば問題ないのかという問いかけは、私は非常に重要なところだと思っておりまして、投資者保護に関しては説明責任と適合性の原則というのが2つの柱で、特に高齢者は適合性の原則が重要なところと理解しておりますけれども、現実に高齢者のトラブルに立ち会っておりますと、適合性の原則というのが非常に形式化しているということと、金融機関は顧客と争うことを前提と適合性の原則を現場で実践されているようにしか思えないという場面に何度か遭遇しておりまして、高齢者の脆弱性ということを前提としながら、いま一度、適合性の原則のあり方を見直していく必要があるのではないかと思っております。顧客本位の業務運営と言いますけれども、こういった顧客との対立・紛争はお客様を失うことにつながりますし、何よりも高齢者が老後にメインバンク、自分の老後に寄り添ってくれる信頼する金融機関を失うことになり、これは大変つらいことでございますので、そういうことがないようにしていただきたいと思っておりまして、もう一度、適合性の原則の制度を実効性のあるものにするための見直しも必要なのではないかと私は感じているところでして、駒村先生のお話を伺いながらその気持ちを大変強くいたしました。

 また、先ほどの休憩時間に駒村先生とお話をさせていただきましたが、お客様である高齢者との対話においてどれぐらい問題があるのかというところをAIのような新しい技術を使えないものだろうかと先生にお訊ねしたところですが、慶應大学の医学部でそのような研究を実際にされているということを伺いましたが、これにはなかなか難しい問題があるようで、この辺り後日またお話を伺いたいと思います。漠然とですが、人間に任せっきりでいいのかという疑問は感じておりまして、新しい技術がこういうところで活用できればいいのではないかと期待しております。

 それから、先生の資料の19ページ以降で、数学的な処理だけではなくて類似図表のパターンとか記号パターンの読み取りといいますか、認識や認知力の落ち込みというのが特に大きいというご指摘がありました。私も日ごろ、高齢者のトラブルに立ち会っております時に同様のことを感じておりますので、これは説明資料の問題になるかもしれませんけれども、この辺も先生方ご指摘のあった知見を活用していく必要があると思いました。

 初めに戻りますが、契約の手続のあり方、その1点ではなくて、そこから始まる関係性について、特に高齢者については配慮が必要ということを改めて思いました。

 先生の27ページのご提言については、全て私は賛同いたします。

 それから、野尻さんのお話ですが、私も時々、資産形成はどうあるべきかみたいなお話をして欲しいと頼まれてしておるわけですけれども、資産の取り崩しが非常に重要なところと、聞いてくださる皆さん分かってくださっているのですが、その方法について日本人として共有できるものが現時点ではないことにもどかしいものを感じております。この点、、アメリカでは取り崩し戦略的な議論が相当なされているようです。日本人は右に倣えという傾向がありますので、こうすればいいという方向性が示されると行動を起こすことができるのではないかと思います。知恵を集めて、取り崩しの方法論を示すことができれば、動かない日本人も一歩動けるのではないかと思っております。
それから、野尻さんに質問がございます。資料の21ページのアメリカのTrusted Contactといところですが、お分かりになる範囲で、これは何歳ぐらいから対象になるのか、どういうケースでこういうコントラクトを結ぶのか、一定の年齢が来たら全員交わすことになるのか、このTrusted Contactの締結の方法などをお伺いできたらと思います。

 それから、野村委員のお話も本当にそのとおりと思って伺いました。冒頭で、家を資産と思いたがる日本人というご指摘がありました。これまで日本人が資産と思ってきた家と墓ですが、少子化が進むと、両方の両親から家と墓を引き継ぎますので、2つ持つことになることがあるわけですが、これらの資産は2つあってもしようがないわけです。相続とともに幾つも持ってしまうことになるこうした資産は、果たしてほんとに資産と言えるのかと思うことが多く、こうした資産の処分や管理も含め、資産のあり方を見直すような視点が必要なのではないかと思いました。

 それから、私は投資信託を中心にいろいろお話をさせていただいておりますが、取り崩しにおいては投資信託というものほど優れたものはないと思っておりまして、小額から、いくらからでも取り崩していけますし、一般に取り崩し売却には手数料がかからないという点も心理的な負担がないということで、高齢者にとってもいい商品ではないかと思っており、こうした点のアピールはもっとしていただきたいと思いました。

 それから、野村委員のお話の中で、高齢者のリテラシーのお話がありました。駒村先生のお話をお聞きし、リテラシーだけでは足りず、事業者の努力がこの分野で必要と思いましたが、野村委員のお話から、高齢者向けのリテラシーとして特に必要なのが、どのようなときにどのような人にどのように頼るのかという情報が必要であることに気づかされましたし、また、現実とあるべきところがずれている場合、その認識を修正するためのリテラシーというのでしょうか、そういう機会を高齢者向けに提供していくことも必要なのではないかと思いました。

 以上です。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。では、野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 21ページのTrusted Contactですが、そんなに詳しいわけではありません。ただ、今回、唯一、こういう口座保有者以外の確認の連絡先というのを調べるのが今年からスタートしているということで、その書類ができていたので、見てみたというところであります。
ただ、話をいろいろ聞くチャンスがありましたけど、この確認連絡先というのが、本人が書けばオーケー、書かなければならないというものではないというところが1つの課題でありました。あと、この確認連絡先の連絡先もつながらなくなるとか、こういうこともあるようですので、どの程度までこれが効用があるのかというのはまだこれからの議論になるのではないかと思います。あるということだけをまずお伝えしようと思っていました。

【神田座長】
 それでは、たくさんの方に札を立てていただいておりますが、高田委員、上柳委員、黒沼委員の順で、高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 本日は駒村先生、野尻先生、野村先生、多くの方に大変勉強させていただき、ありがとうございました。

 私、今日いろいろお聞きしたお話の中で、4つの点について感想を申し上げたいんですが、1つはトータル、2番目に例外ではない、3番目に今こそ、4番目にマクロの視点ということでございます。

 まず最初のトータルということなんですけれども、今回、最初に小森課長様のほうからこちらの全体の俯瞰図のご紹介をいただいたわけなんですけれども、今回のこういう作業を、こういう形で「見える化」をしていただけるというのは大変すばらしいことではないかと思っておりまして、というのは、まだまだいろんな部分、パーツで至らぬところはあると思っているんですが、いろんな制度を含めてかなりパーツはできてきている部分が多いのではないかと思うんです。そういう中で、改めてトータルなピクチャーを見せることができるかという作業が、今こそ非常に求められているのではないかなと。まさにこういった今回の一連の作業というものはこういうトータルな部分を、1つは、ここにもございますように、さまざまな当事者でありますところのお役所もしくは業界ということもあるんだろうと思うんですけれども、また一方で、こういうトータルなピクチャーを、利用側の視点も含めて、こういったところにどういうふうに見せていくかということも非常に重要なのではないかと思っております。さまざまな部分部分の議論も必要だとは思うんですが、まさにこういうトータルで、全体感というものをいかにみんなに「見える化」していくのかというところの作業は今後も非常に必要であり、また、こういった作業を当局サイドからもしていただけるということは非常に意義があることなのではないかと思っている次第で、これが第1点目でございます。

 それから2番目が、例外ではないということに当たるんですけれども、今回、駒村先生のほうからさまざまなジェロントロジーに関する議論があったんですが、私はたまたま、海外の大学時代で開発経済学をちょっと議論していたことがあるんですが、最近の経済学を考えてまいりますと、普通は経済合理性と呼んで、経済人みたいなものを意識していたところで普通の近代経済学ができたところを、さまざまな制約があるというようなことの中で開発経済学ができたわけです。一方、同様にして、先ほどいろいろ議論がありましたように、さまざまな神経的な部分の制約等もあるというようなことの中で、しかも人生が60年から100年になるという状況の中で、こういうことが従来であれば例外として考えていたことが、ある面でニューノーマルな1つの状態なんだということを認識した上で対応していくということも、もう必要になってきた次元なのではないかということだと思うんですね。そうしますと、ある面でこれまで例外処理的な状況として考えていたところから、ジェロントロジーとしてある面でのニューノーマルということを考えながらの常態化というんでしょうか、こうした点を非常に駒村先生のほうでも意識してとらせていただいたということではないかと思いますし、今後、そうした認識というものもやはり重要になってくるということではないかと思います。

 それから3番目に、今こそということなんですが、私も前回こういう発表の機会をいただいたわけなんでありますけれども、その中で、今の状態というのは資産運用に向けた車の両輪が初めてそろい出した、いわゆる制度と市場要因が揃ったということで申し上げました。そういう中で、今こそこういう状況が到来しているということを申し上げたんですが、今回、野村先生のほうでも、人口動態的にも今こそというようなお話がございました。そういう意味では、この今の局面ということをいか捉えてというような発想も非常に必要であると思っておりまして、そういうさまざまな幾つかの、この今こそという論点があるのではないかという点かと思います。

 それから最後に、マクロ的な考え方ということになるんですが、私も前回のプレゼンのときも申し上げたんですけれども、マクロ的に考えますと、現役世代の中で完結していた資金の流れというんでしょうか、人生60年時代、私は波平さんと申し上げましたけれども、という中で完結したような状況が、要は今日、100年時代と言われるような状況の中で、現役世代だけというような状況の中で、どうしても金融を中心とした供給側から、いかに効率的に対応していくかというような発想というものが、これはどうしても時代の要請上、私は必然だったと思うんですが、しかしながらそういう状態から、いわゆる利用者側というんでしょうか、利用者を前面に考えた「利用者ファースト」というような状況になってまいりますと、これまでの金融に絡むいろんな制度、もしくは組織というんでしょうか、もしくは既存の規制というようなものを超えた議論が必要になってくるということなんだろうと思うんです。これが、最後に野村先生がおっしゃったようなフィデューシャリー・デューティー的な考え方というんでしょうか、いわゆる供給側、金融機関側ということだけでなく、ある面で委託に対して忠実に対応することが必要になります。こういう発想というものが非常に重要になってくるということにもなりますので、その発想というものを非常に今後もやっぱり重視していくべきではないのかなと思います。

 それを含めて、最後のメッセージになるんですけれども、やっぱり国民合意的な、国民合意を持った成長につなげていくような合意というもの、まさに最初に金融庁の小森課長のほうから議論させていただきましたようなこういうピクチャーを全面的に出していくというのが今回非常に重要だなと改めて感じた次第でございました。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
 駒村先生に1つ質問です。パワーポイントの27ページに関して、フレーミング効果であるとか、これまでの経験に依存した判断をしがちであるとか、あるいは28ページの4のところに、ポジティブフレームの影響を強く受けるとか、こういうご指摘がありまして、これは高齢者に限らないのかも、消費者一般かもわかりませんが、特に高齢の方にこういう傾向があるような気が私もするんですけれども、私の質問は、こういう能力の低下なり程度について、どういう指標が開発されているのか、もし研究があれば教えていただきたいという質問です。

 駒村委員のパワーポイント、例えば19ページには、言語能力はそれほど落ちないけれども、数的処理そのほかについては変化していくということがあって、1,000の10%を計算すると100かどうかとかいう処理能力が落ちていくことと、27ページに書いてあるようなことが、関連というか相関がかなりあると理解していいんでしょうか。何となく私の感じでは、数的処理の問題と、27ページに指摘されている能力とは何か違うような気もするんですが、そのあたりについて研究がありましたら教えてください。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございます。駒村先生、いかがでしょうか。

【駒村委員】
 ありがとうございます。ジェロントロジーという学問は、日本であまり定着していない状態であります。ただ、アメリカのほうではかなりこれが普及されていた学問でありまして、日本でも研究がいろいろ進み始めていて、そこから非常に多くの知見が得られてきています。私の提案はそれをいかに社会で実装化していくということでございます。今、ご質問のところで、まず27ページあたりの議論ということでありますけれども、ご指摘のように、多くの問題は、既に行動経済学で若い者の被験者を相手にした実験などでは確認されているわけでありますが、これは高齢期においてはどうなのかという点が重要です。加齢と認知機能、意思決定にはいろいろなモデルがありまして、たとえば二重過程論といったモデルがあります。いろいろ考えて熟慮していく能力と、経験や感覚的で感情的に判断していく部分とのバランスの問題があるわけですけれども、この熟慮の能力にかかわるところとして、さっきの簡単な算数とか論理的な思考能力が関連する。海外の実験は、わりと20代、30代の、認知機能が高い人の実験をやった上でも行動経済学的な発見があるわけですけれども、これはこの熟慮能力が落ちてくるところ、すなわち高齢期においては、行動経済学で確認されている問題はさらにもっと顕著、深刻になるのではないかというようなことが幾つかの研究などでは出ているということでご紹介させていただきました。

 ただ、今、申し上げたように、その構造がどこまで解明されているのか、まだ議論があるところだということです。

 一方では、経済学以外の研究の中で、例えば、実験的な研究、あるいはアンケート、あるいは医学的な脳の動きの測定結果などのデータをつき合わせながら、その構造を推測していく脳・神経科学の貢献も重要です。簡単な数学的な判断能力と頭の脳のどの部分の構造に萎縮や機能の低下があるのか、その低下が意思決定に与える影響を見るという研究も出てきております。それを組み合わせて、今度は金融の判断力までもっていくかどうかは、これはかなり先の話で、今まさに私の研究センターのほうでやっているテーマでございまして、今後の構造の解明は課題と思います。

 その上で、恐らく今後はどこまで、そういうファクトに基づく金融に関する判断能力の低下に関する簡易的な尺度が開発できるのかとか、先ほど永沢委員からもご指摘あった、動画とか記録を解析することによって、AI等を使ったプログラムは開発できるのかというステップに入ってくるかもしれませんが、これはこれで社会実装するには、大変な機微情報になりますので、非常に難しい問題もあるだろうと、そういう現状だと思っています。あまり歯切れがよくて、こういう議論があって、こういうことがもう確定したというほどではなくて、行動経済学がようやく、その経済学の中でもきちんと地場ができた上で、さらに加齢変化による認知機能の低下の要因を考慮した場合、脳神経科学との連携が必要になってくる途上だと思っていただければと思います。だから、1対1で数学的判断能力イコール熟慮能力の低下かどうかあたりをさまざまな論文も出始めいます。経済学以外の実験の中でも、それを裏付けるような研究も出始めているということでございます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。

 それでは、黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】
 3人の委員のご報告やご提言は、それぞれ説得性が高くて、今後の議論の柱になるものと思いました。

 駒村先生のご指摘された、金融ジェロントロジーを踏まえた、例えば、年齢による一律の切り口ではなく、個々人の認知機能に応じた投資勧誘を考える必要があるといったご提言には全面的に賛成であります。

 また、野尻委員の、Accumulationの局面とDecumulationの局面を見据えた資産管理が重要であるということや、そういった需要に金融制度がうまく対応していくことが重要であるというご指摘はよく理解できましたし、賛成できるものと思います。

 ただ、このAccumulationからDecumulationへの転換点に近づいている者や、既にDecumulationに入っている者にとっては、資産寿命を自分の寿命より長くという点を前提に、資産形成局面にさかのぼって逆算の資産準備を行うことは困難でありまして、そういった人たちにとっての資産運用とは何かということを個別具体的に考えていく必要があるのかなと感じました。つまり、野尻委員の分析は非常に役に立ったと思いますけれども、やや理想論の部分があるのかなと思いました。そういう、既に高齢期に入っている人たちが絶望しないで済むような、金融上の方策があれば、これは金融制度だけで対応することは難しいのかもしれませんけれども、考えていく必要があると感じた次第です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、中野委員、神戸委員、竹川委員、上田委員、島田委員の順で、中野委員、どうぞ。

【中野委員】
 ありがとうございます。中野でございます。本日も大変、3委員からすばらしい勉強をさせていただきました。

 まず、私の生活者と対話している日々がございますので、その現場感から一つ申し上げる大前提になると思うんですが、野村委員からお話がありました金融リテラシーの必要性といった部分で言いますと、大多数の方々、とりわけ高齢者になればなるほど、短期売買に至るような投機的の行動と、本来の証券投資理論に、立脚した合理的な資産運用というものへの峻別が、この国は文化として欠落しているということを非常に感じるわけで、ゆえに私も地方に行くと、怪しいファンド屋というところから話を始めなきゃいけない、非常につらい仕事をしておりますが、まずこの部分においての金融リテラシーということが一番大事なんだろうと。そもそも投資とは何かということにおいて、言ってみれば、お金を通じて経済活動に参加することだよ、お金における事業参画だというようなことからお話をしていくことで、決して悪いことでも何でもないんだというようなリテラシーをまずつくっていくことが非常に必要だと思います。

 そういう意味ではイギリスの事例で、野尻委員がおっしゃっていたと思いますが、60歳以降において、投資行動の教育を義務化する、これは各自治体がやるとかといったような、ちょっとした行政の負担というのは非常に意義の高いことではないかなと感じました。あわせて言いますと、現状あります、つみたてNISAという制度、これは資産形成世代、の思い込みが強いんですけれども、例えば70を過ぎた預金一辺倒の方に、まずできる範囲で行動してもらう。毎月1万円だったら何も怖くないよと。とにかくちょっとお金を働きに出してみましょうといったような形で、我々金融業界はいざなうことで改めて70歳以上の金融リテラシーもきっちりと育っていくんじゃないかなということを思った次第です。

 それから、もう一つ、今度は資産運用業としての私の現場の立場から、非常に雑駁な見解になりますけれども、野尻委員がおっしゃっていた、使いながら運用する時代という考え方ですが現状、残念ながら、まだこの国ではiDeCoという制度が代表的でありますけど、60歳までで終わっちゃう。そうするとやっぱり60歳までにキャッシュにしなきゃという考え方が非常に根付いているわけで、この考え方をまず脱却しなきゃいけないんです。合理的な資産形成に、期日のゴールというのはないんじゃないかと私は思っておりまして、世代を問わず長期で分散した、しっかりとしたポートフォリオをずっと保有することで、合理的にキャッシュフローを生み出す、王道の資産運用によって、長期的には恒常的に資産を育て上げ続けられる。それに対応した時間軸を、これからの我々、高齢社会を生きる人間は持つことができると考えるべきでありましょう。ですから、何歳においても長期資産形成にふさわしい年齢であるという発想の転換が必要であろうと思います。

 それに関して私は、投信会社の人間なので我田引水的になりますけれども、アメリカではベビーブーマー世代と言われている、50代以上、この世代以降の5割超が投資信託を当たり前に保有しているという、実態がある中で、長期資産育成型と言われている、極めてノーマルな、ごくごく普通の投資信託を継続的に保有して運用し続け、あわせて、野尻委員から具体的にありました、定時解約のさまざまな考え方による仕組みを、70歳以前にきちんとパッケージしたサービスで提供していきそれをしっかりと管理して継続させて差し上げるということが金融機関の今後のサービスのメーンストリームになるんじゃないかと思っております。

 こういった高齢社会における金融サービスの議論をすると、どうしても今までの我々の金融業界の発想では、じゃあ、シニア専用何とかファンドの開発乱造みたいな、結果としては摩訶不思議な仕組みがいっぱいついてくるといった、ちゃらちゃらしたビジネスモデルになりがちでございますので、そういうことから脱却しなきゃいけないと思いますし、高齢者NISAみたいな、死ぬまでに定時解約する分は非課税といった仕組み新たに高齢者用につくるということも含めて考えていったらいいんじゃないかなと思います。

 そして、駒村委員がしきりにご主張されておりました認知が一般化していく課題ということについては、これも金融サービスの一つの課題だと思いますが、認知遺言的なもので、後見人を事前に指定して、それを登録するという仕組があればいいのではないでしょうか。後見人というのは非常に怖い存在でもあるのですが、まさに野村委員がおっしゃっていた、フィデューシャリーという部分が非常に重要だと思います。後見人にフィデューシャリー宣言をさせて、それを登録するといったような形で制度化して、やがて安心して認知に入れるという社会を、つくっていくべきじゃないかなということを感じました。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、神戸委員、どうぞ。

【神戸委員】
 ありがとうございます。

 弊社は、独立系FP会社として、個人のお客様の概ね9割が50代から80代という状況で、まさに高齢の方向けのアドバイスをさせていただいております。野村委員から日本人のライフスタイルがいろいろ多様化する中で、対応を個別に考える必要があるというご指摘がありましたが、弊社に実際にご相談に来られるお客様は、ほとんどが富裕層に当たり、ある程度ニーズも共通していると言えます。日本人の世帯ごとの金融資産の分布状況を見ますと、平均保有額だけでなくて、中位の保有額というのもあまり意味がないという気がします。3,000万円以上の世帯が2割なのと同時に、300万円未満も2割強存在していて、この両者の比率が高いわけです。中位近辺の世帯も平均額の世帯も比率は低めで、平均的と考えられる世帯に対して必要なものをと考えて、果たしてどれくらいの世帯に当てはまるのかという点に疑問が残ると思います。

 ある程度以上の金融資産をお持ちの方に対しては、今回の議論のように認知能力の低下に伴う商品選択などについてのサポートというのは非常に重要といえるでしょうが、一方、あまりお持ちではない方に関しては、やはりセーフティーネットをどう作るのかといった議論のほうが重要になると思います。残りの5~6割の方がその中間の保有額ということになりますが、この層の方々について考えると、保有資産の中で最大のものが恐らく自宅としての不動産であろうと考えられます。この方々が、リタイア後の生活資金を自分で生み出すためには、どうしても自宅という資産からキャッシュフローを生み出す方法が求められると思います。ローンを組んで保有したものを、またキャッシュに戻していくというような仕組みやサービスが、まだ現状では少ないと。リバースモーゲージという制度はありますが、実際にそれに対応している金融機関も、あるいは対応可能なエリアも非常に限定的で、現状のままでは利用しにくい制度になってしまっていると思います。最大の保有資産、資産に占める比率が高い自宅に関しての商品やサービス等、自宅からキャッシュフローを得る方法というのがポイントになるのではないかと思います。

 一億総中流の時代であれば、多くの人、近所の人が何をやっているのかを見て、それと同じようなことをやれば何とかなるということでもよかったのかもしれませんが、野村委員のお話の中にあったように、どうしていいかわからないという方が多いというのは、誰に相談すべきかも含めて、結局、生活者の状況が多様化する中で、自分はどういう行動をとればいいのかがわからないという方が増えているのだろうと思います。野村委員に、海外のケースで、このような多様化に対応している例、また不動産の流動化関係の商品やサービスで高齢者の方向けに提供されているものがあれば教えていただけるとありがたいと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 野村委員、何かございますでしょうか。

【野村委員】
 ご質問ありがとうございます。

 不動産の活用というのは、私もとても重要なポイントであるというのは認識しているところでございますけれども、なかなかこれをベースにキャッシュフロー化する、さきほどリバースモーゲージというのが海外にあるとのことでしたが、ご指摘のとおりで、それもそのように認識しておりますが、日本に引きつけてどうするのかということだと、課題もたくさんあるのかなという程度の認識にとどまっているところです。

 また、本当に誰に相談すればいいのかというのは恐らく尽きない議論なのかなという認識でおりまして、確かに、例えば、米国などを見ますと、非常に多様な、いわゆるアドバイザーの方たち、独立系の方もいらっしゃいますし、組織に所属する方、もろもろの形で、いろいろな形で個人に対してサービスを提供しているわけですけれども、そこに至る手前の方たちのことをどうするかというご質問なのだといたしますと、やはり最後は個人の意思決定になりますので、どうやって促すのかというのは、やはりいろいろな形で大事なことなんだというアピール、「見える化」などを地道にやっていく以外にないのかなという認識でおります。

【神戸委員】
 ありがとうございました。

 ここまでの議論の流れを振り返りますと、先ほど野村委員がおっしゃった、団塊ジュニア向けの将来への布石といいますか、リタイア後に備えるべき方々向けには、野尻委員の話にもありましたが、逆算で資産形成していくというのが、多分、ぴったりくると思うんですが、もうリタイアされている方、あるいは間近という方ですと、これはまったく違う議論が必要になると思います。ですから、今後の議論を進めていく上でも、既に高齢の方向けの話と、将来への布石についての話というのは分けて、それぞれ別に議論していくべきだろうと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】
 ありがとうございました。私のほうから簡単に意見と、野村委員、野尻委員にそれぞれご質問がございます。

 まず、感想なんですけれども、野尻委員がおっしゃっていました、資産形成から資産活用まで途切れない制度設計を考えることが非常に大切であるということは非常に同意する部分であります。野村委員、野尻委員からもご意見としてありましたが、DC、NISAといった資産形成の支援制度の拡充は大切だと思います。また、DCの加入可能年齢の引き上げや拠出限度額の引き上げ、NISAの制度の恒久化、非課税期間の延長といった制度改正はもちろん大切ですが、長期間、高齢期においても運用を続けるということを考えるとスイッチングが可能になることも大事なのではないでしょうかす。

 2つ目は、総合的な資産管理の重要性ということを野村委員がおっしゃっていらっしゃいましたが、そう考えたときに、独立系のアドバイザーの育成が急務だと思います。

 3点目、野尻委員からありました、金融資産の引き出し方は大事だと思います。現状ある自動定額・定口引き出しだけでなく、自動定率引き出しなども含めた、複数の引き出し方・サービスが今度拡充されるとよいと思います。

 次に、ご質問ですが、まず野村委員に。職場を通じた資産形成支援制度の提供を促すということをおっしゃっていましたが、担い手は誰になると考えていらっしゃるのか。また、職場を通じた資産形成支援サービス・支援制度ということになると、どうしても大手企業が中心になってくるかと思います。中小企業であるとか、非正規、また個人事業主などに対してどのような投資教育であるとか、資産形成の支援制度の提供を促していけばよいとお考えなのかをお聞きしたいと思います。

 野尻委員に対しては、Pension wiseのお話があったんですけれども、政府による無料の投資ガイダンスというのは、具体的にどういうことを行っているのか、どの程度の効果があったのか、利用者はどういう方が多いのか、を教えていただければと思います。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは、野村委員、どうぞ。

【野村委員】
 ご質問ありがとうございます。

 職場経由ということでございますけれども、2つ目の、大手企業中心なんじゃないかというご指摘とあわせて、私の思うところでございますが、従来の職場経由の資産形成支援といいますと、イメージかもしれませんけれども、やはり資金面でのサポートということもあわせて、雇用主なんだからということで提供される、そういうイメージが結構あったのかなと理解しています。

 ただ、ここで申したいのは、それも引き続き大事だともちろん思うのですけれども、例えば、お金はちょっと余裕がなくて、もしかしたら出せないかもしれません。けれども、例えば、こういう制度があるんですよ、ですとか、こういう金融機関に行けば口座を開くことができるんですよといった案内ですとか、存在をまず認知していただく、そういう意味でのより幅広い観点からのプラットフォームとしての職場です。こういう意味での職場の活用ということが、今後はもしかすると広い意味での福利厚生制度というんでしょうか、より重要になってくるのではないかなと思います。繰り返しになりますけれども、個人個人に対して、いい制度があるんだから活用しましょうというアピールも大事ではあるものの、やはり職場というプラットフォームを経由することによって、効率的に伝わるものは結構あるのではないのかなと思いますので、その点においては、必ずしも大きな余裕のある会社でなくても、やっていただけるのではないかなという期待をして、そんなふうに申し述べました。

 以上です。

【神田座長】
 よろしゅうございますでしょうか。

 それでは、野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 ありがとうございます。

 イギリスのPension wiseですが、これは、これだけを議論すると、なかなか見にくいものがあります。具体的にはDC加入者が資産を引き出すときに投資教育を受けられる制度設計、政府による無償の制度設計という形になっています。何でDCだけなのかということもあるかと思うんですが、今、企業年金を全ての企業が導入するという法律が通って、施行が進んでいます。2018年までに、どんな小さな企業でも企業年金を導入するという中で、NESTと呼ばれる、政府が肝いりでスタートさせた年金プロバイダーがあって、多くの中小企業が、ここを使ったDCを企業年金として導入をし始めています。要は企業年金をうんと普及をさせる制度と合わせてスタートをさせた、年金自由化のための一つの対応だと思っていただくといいかと思います。

 その意味で、引き出しに関して、まず一番最初に聞くのが、あなたはDCの加入者ですかです。多くの問い合わせの中の大半がDCの加入者じゃなくて、問い合わせをしてくるというところで、まずは最初にそこから議論が始まるというのをよく聞きました。また、該当する方の、まだ1割ぐらいしか使われていないというのも、昨年の年末に出張したときのヒアリングでは聞き及んでいます。制度としてはスタートしているんですが、まだまだ周知の弱さとか、内容の問題点、それから、投資ガイダンスを行うので、投資アドバイスではないんです。どういう金融制度がいいですとか、金融商品がいいですというのを政府の代理人である者が言うわけにはいきませんので、投資ガイダンスでとどまっているというところも含めて、参考にはできますが、まだまだ日本でどうやってやっていくかというときには議論ができるポイントにはなっているかと思います。

【神田座長】
 よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございました。

 それでは、上田委員、どうぞ。

【上田委員】
 ありがとうございます。少々欠席が続きましたので、前回の資料も含めて気づいたところを述べさせていただきたいと思います。前回までの資料を見ていて、実は私、一番驚いたのが、世代間で保有資産額構成にほとんど違いがないという結果が出ていたことです。長寿社会における金融サービスのあり方を議論しているのですが、ある程度、世代ごとにターゲティングというか、対応は違ってくるべきであろうと思います。一番、まだ将来で、ゆっくりやればいいということで、就学世代、若い子供の世代だと思うのですが、こういったところはリテラシーを早い段階で整える。私は今、イギリスにいるのですけれども、2年生の子供が、学校でバンクオブイングランドに行って、いろいろ学んでくる、お金についてカリキュラムが組まれている。どうも、政府方針に基づいて学校がそういうカリキュラムを組んでいるということで、そんなことを6歳、7歳ぐらいから始めている。お金というのは、日本はややアンタッチャブルで「子供には」というようなこともありますが、他の国は全く違うアプローチがとられていて、こういうところも参考になるのかなと思いました。

 勤労世代、これは貯蓄から投資というところで、まさにリテラシーをこれから高めていきつつ、将来に備えてという、まだ余裕があると、先ほど野村先生からもありましたけれども、そういう世代かと思います。

 高齢世代、これは今から喫緊の課題として取り組まなければいけない世代でございますが、この世代については保護とともに適切な金融サービスが活用できるような環境づくりという二重の取り組みが求められるのかなと思います。その際に、実は私、一昨年までの市場ワーキングの議論を思い出してみると、業者、販社等々は大変グリーディーでけしからんという前提でした。実際グリーディーだったのでしょうけれど、ここをいかにルールで、そういう行動から外していくかというところがターゲットだったと思うのですが、今回の長寿社会におけるという話になると、こういった金融機関の金融サービス提供業者というのでしょうか、を活用していかざるを得ないのかなと思います。こういった機関も使いつつという発想でいく必要があるかと思います。

 適切な金融サービスというのは、資金サービスとか金融商品というのは、顧客により異なるわけです。顧客の属性は本当に多様で、それぞれに応じたサービスを提供する。これはかなり負担がかかるわけです。一方で金融サービスとか金融商品というのはいろいろなものがありまして、生活に近いもの、決済に近いものから、ある程度、リスクを緩和して行うべき投資と、極めて高いリスクで行うべき投資と、いろいろな商品、サービスが混ざっています。

 今の日本の問題は何かというと、ワンストップでいいのですけれども、リスクが低いものと高いもの、生活に近いものから、やや贅沢品というと変なんですが、余裕がある人がリスクをとって、ヘッジファンド的に一部に使えばいいような商品が一律に並んでいる。このあたりは少し濃淡つけていかざるを得ないのではないかと思います。決済に近いものについては、これは誰に対してもというと変ですが、等しく機会を与えて、安全に、安定的にサービスを提供するというのは必要です。一方でリスクが高いものは、これはもう専門家の助言を得られるような人、逆にいうと、これはちょっとイギリスでこういう話をしたら、富裕層と、そうではない世代で受けられるサービスが違ってくると。そういう格差が生じる商品が中にはあるのだと。そういう前提でもって、ある程度、議論しないと、そうしないと、先ほど来、適合性の原則という話もありましたけれども、顧客の状況に合わない商品が提供されてしまうというようなことにもなるのかなと思います。

 そうなるとどうなるかというと、高齢者向けのサービスというのは、コンサルティングであるとか、あるいは、話を聞きながら、ということになるかと思うのですが、短期間ではなく結構、時間がかかるわけです。1時間、2時間話をして、何か資産につなげればいいのではないかということだと思うんですが、そこをコストとして、きちんと金融機関として受け入れざるを得ないのではないか。こういう経営の方向性であるとか、あるいは、例えば金融当局としても、そういう方向性でいいということ、ここをある程度、皆で認識を共有しておかないと、なかなか難しいのではないかと思います。

 あわせて、その先の話ですが、先ほど来、IFAの活用が日本でも進むべきではないかと思うという話が出てきましたけれども、実は私、これはかなり難しいと思っております。というのが、そのベースとなるのは個人向け営業員という職種だと思うのですが、日本において、こういう個人向けの営業者というのがキャリアパスとして全く成立していない。つまり若い人がそういう仕事を目指して、あるいは金融機関に入ってそういう仕事に配属されたとしても、離職率が案外高い。これは他社に移るのであればいいのですが、他業種に移っているということで、キャリアとして、つまりプロフェッショナルな職業として成立していないのではないかと思っています。

 ここには、今、時代が変わってきたという話がいろいろありましたけれども、恐らく営業の世界においても時代が違っていて、私はバブルを正直知らないのですが、バブルのころのように質より量を求めた世代と、今は量じゃなくて質を求める世代になっているわけです。その質を求める世代で、例えば、KPIをどう設定するか。これはまた工夫が必要で、KPIという数字なんですけど、数字がそもそも適切なのか。そういうことを是認できる社内の指導体制があるのか。そして金融機関の本部は末端の営業員、特に銀行やなんかでは女性の一般職も含めてだと思うのですが、こういう人をどうキャリアとして長続きさせていくかと、こういったところの工夫が必要なのではないかと思います。

 さらに将来、仮にフィンテックであるとか、デジタライゼーションでしょうか、というものが進んだときに、支店というサイトの場所が、今と10年後、20年後、変わってくる可能性があるわけです。そういった場合に、またこういうアクセスできない弱者が必ず増えてきますので、そういう弱者と、自分でインターネットで取引できる人、あるいはIFAのような専門家を雇える人と、格差は今よりももっと広がるはずですので、そうしたところを見据えた対応も必要なのかなと思いました。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、あとは島田委員と鹿毛委員にご発言いただいて、今日は終わりとさせていただきたいと思います。

 島田委員、どうぞ。

【島田委員】
 どうもありがとうございました。お時間もあまりないので、簡単に感想を述べさせていただきたいと思います。

 一つは、日本の金融機関が今、新しい話のように問題を語っていますけれども、日本の金融機関ほど実践を通じて高齢者がどのようにアプローチすればどんな選択をするか、あるいは、どのようなキーワードに反応するかといった、具体的な経験と結果を膨大に蓄積していらっしゃるところはないのではないかとも感じております。過去の実績や、お客様との見解の相違が起きた場合のことなどについて、集約して、フィデューシャリー・デューティーの観点から検証していくことも、これからの話を考えていく上で非常に役に立つのではないかと思います。特に、どのようなケースがお客様の資産を長持ちさせることに役に立ったのか、あるいは立たなかったのかといったことを真剣にデータとしてお考えになっていただいたらいいのではないかと思いました。

 また、これに関連した話になってくるかと思いますが、高齢者のお金を流動化する、あるいは使いながら運用するときの判断というものが、高齢者自身が必ず合理的な判断ができると期待できるわけではないということは、自分の親を見ていても非常によくわかります。ですから、こういった場合に、新しいテクノロジーや医療の研究などに基づいたブレークスルーもあるかとは思いますが、一方で、過去の蓄積に基づいた心理的な特性を顧客本位で活用していくことも必要があるのかなと感じております。

 この場合に、ありがちな商品ベースで、こういったものだったら選んでもらいやすいといった形で考えるのではなくて、野尻委員のお話にもありましたような、引き出しの仕方、あるいはリアロケーションのアドバイスなども含めて、サービスベースで形になっていったらいいなと感じました。

 3つ目は、長寿の中で資産寿命も延ばしていくということ、これは高齢者の経済的な自立を促すという考え方でもあるかと思います。その中で、同時に高齢者の持っている資産を社会の活性化に活用できないかという観点もあるかと思います。ただ、高齢者の投資家保護、あるいは高齢者になって、認知症や認知能力の低下が伴っている場合に、どのように両立させていくかというのは、ある意味で、かなり諸刃の刃と申しましょうか、矛盾した部分が出てこないとも限らないところなので、考えて行く上で注意が必要かなと思いました。

 その中で、社会に高齢者の資産を活用するという視点では、駒村委員のお話の中にもありましたように、格差の再生産となるような、血縁相続だけではなくて、むしろ社会の中での富の再配分に資するような寄附、あるいは基金の設立などによって活用していくという考え方もあり、そういったものに対して、むしろより大きなインセンティブを与えるということは考えられないかというと考えました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】
 今日、高齢期の資産管理の全体像について「見える化」が大事だという議論が何人かの方から出されました。これは私も大賛成です。資産形成と取り崩しを計画的にやっていく上で非常に大事だと思います。さらに、「見える化」は、もう一つ、頭を切りかえていくという点でも非常に大事なのではないかと思います。「見える化」はシミュレーションが重要な要素ですが、その結果これでいいということにはなかなかならなくて、現状のままでは収入が足りない、ということもありうるわけで、そうした現実をしっかり見ることによって、頭を切りかえて、支出を少し抑えようとか、ちょっとでも働いて収入を増やそうとか、考えるきっかけになると思います。特に年いってから生活習慣を変えるのはなかなか難しいだけに、実情をしっかり見ることが一つの出発点になるかと期待しています。

 この点に関連して、これまでの議論であまり議論されていないけれども考慮すべき要因を2点提起します。第一は、実は想定よりも長生きしてしまうというリスクです。エリスが言っているように、人は必ず死ぬわけですが、いつ死ぬかは誰にもわからない。どんな人にとっても資産以上に長生きしてしまうというリスクがあります。

 第二は、介護施設の費用の問題です。認知症でなくても、多くの人にとって体がうまく動かなくなったときに、介護施設に入る必要性がでてきます。。自宅でやっていけない場合です。その介護施設の費用も少なくないわけで、老後の生活設計を考える上でのリスクファクターと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 予定の時間をちょっと過ぎてしまいまして、申しわけございませんでした。多くの方々から貴重なご意見を多数いただきまして、どうもありがとうございました。時間の関係で、追加のご意見等がありましたら、ぜひメール等で事務局までお寄せいただけましたら、大変幸いに存じます。

 それでは、本日いただきましたご説明、ご意見等を踏まえて、今後、具体的な検討を行ってまいります。次回のワーキング・グループでございますけれども、今回に引き続きまして、高齢社会における金融サービスのあり方について、ご議論をお願いいたします。日程につきましては、後日、事務局からご案内させていただきます。

 それでは、以上をもちまして、終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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