金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第17回)議事録

 

1.日時:

平成30年11月16日(金)9時30分~11時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室


【神田座長】
 おはようございます。定刻でございますので、始めさせていただきます。ただいまから市場ワーキング・グループの第17回目の会合を開催いたします。皆様方には、いつも大変お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日でございますけれども、「長期・積立・分散投資の推進」というテーマと、「直接金融市場に関する現行規制の点検」というテーマについてご審議をお願いいたしたいと思います。

 前回まで、数回に分けてご議論をしていただいてまいりました「高齢社会における金融サービスのあり方」についてでありますけれども、メンバーの皆様方から大変幅広い多様な意見をいただきました。どうもありがとうございました。それで、今メンバーの皆様方からいただきましたご意見などを事務局において整理をさせていただいているところでございまして、今後ももちろん議論を続けさせていただきたいと思いますので、この点を付言させていただきます。

 今回は、この「国民の安定的な資産形成に向けた取組み」というテーマの中で、高齢社会とあわせて重要なテーマの一つであります「長期・積立・分散投資の推進」について、ご議論をお願いしたいと思います。また、あわせて本日は「直接金融市場に関する現行規制の点検」ということで、現行の規制に関して金融庁で検討している見直しについて説明を受けた上で、議論をしたいと思います。

 このワーキング・グループでございますけれども、平成28年4月の諮問において「情報技術の進展その他の市場取引所を取り巻く環境の変化を踏まえ、経済の持続的な成長及び家計の安定的な資産形成を支えるべく、日本の市場・取引所をめぐる諸問題について幅広く検討を行う」とされているところでありまして、第12回会合までと同様に必要に応じてこのようなテーマについても取り扱わせていただければと思います。

 それでは、まず最初に、今回の会合に参考人としてご参加いただく方を事務局からご紹介をお願いいたします。

【小森市場課長】
 ご紹介申し上げます。委員の皆様から見て右側のほうにお座りをいただいております伊藤見富法律事務所の和仁弁護士でございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の議事に移らせていただきます。まず、「長期・積立・分散投資の推進」について、事務局から説明をしていただきます。それで続けて金融庁が現在検討している「直接金融市場に関する現行規制の点検」について、事務局から説明をしていただきます。その後に、今般日本銀行を事務局とする金融法委員会で行われてきました一括清算法に関する議論の状況について、同委員会委員の和仁先生からご説明をいただきます。討議の時間は、説明が一通り全部終わった後でまとめてとらせていただきたいと思います。なお、前回までと同様、本日も委員の皆様方の着席はランダムとさせていただいております。また、議事の途中に5分程度の休憩をとりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず事務局の田原総合政策課長から「長期・積立・分散投資の推進」について、ご説明をお願いいたします。

【田原総合政策課長】
 おはようございます。田原でございます。お手元の資料1に沿いまして、20分程度ご説明をさせていただければと存じます。

 1ページをおめくりいただきますと、「安定的な資産形成に向けた取組み」ということで、主に先ほどご紹介いただきました「長期・積立・分散投資の推進」ということで、金融税制と金融リテラシーの関係につきましてご説明させていただいた上で、ご意見を頂戴できればと存じます。

 次のページ、2ページでございますけれども、私からご説明させていただく点は大きく2点でございまして、まず「国民の生涯を通じた資産形成を支援する制度のあり方」ということで、NISAの話、それから資産の円滑な世代間移転、相続税などのお話をさせていただければと存じます。2点目でございますけれども、「つみたてNISAの普及・金融経済教育の推進」ということで、制度を踏まえた上でどうやってこの制度を普及させていくか、それからそのさらに前提となります金融経済教育などにどう取り組んでいくかということについて、現在の取り組みについてご説明をさせていただければと存じます。

 1ページおめくりいただきまして、まず制度についてご説明をさせていただければと存じます。まず、NISAでございますけれども、4ページにございますように、日本における家計金融資産の構成の問題ということがございまして、リスク性資産の割合が低いという特徴があるわけでございます。こういった中で、家計の安定的な資産形成を支援するために2014年1月から一般NISAを開始させていただいたということでございます。

 1ページおめくりいただきまして、その際の問題意識でございます。5ページ・6ページに日英・日米の比較ということで、株式・投信保有残高の比較を載せておりますけれども、例えばイギリスでは99年のISA導入、それから08年のISA恒久化という制度の整備を踏まえ、またその制度の拡充を踏まえる中で、家計における株式・投信の保有残高というのが着実に伸びているということでございます。

 それから、この傾向というのはアメリカでさらに顕著でございまして、6ページにございますように、81年に企業型の401(k)がスタートし、個人型のIRAの対象者が拡大するということで、制度が非常に整備をされたということで、その後90年から2000年にかけまして堅調な株式市場というものを受けて、家計の株式・投信の残高がどんどん増加していくということで、適正なポートフォリオによって好循環というものが始まったということであろうかと思います。

 こうした制度の整備と経済の好況、あるいは制度の周知をうまく組み合わせて、家計の資産形成というものを促進していくという観点から、イギリス、アメリカの例に倣うということで、先ほどのNISAが導入されたものと承知をいたしております。

 7ページ・8ページに日本のNISA制度の位置づけにつきまして、全体的な年金制度、投資・貯蓄促進制度との関係で位置づけを掲げさせていただいておりますので、ご意見をいただく際のご参考にしていただければと存じます。

 9ページをご覧いただきますと、そういった形でNISAを導入させていただいたわけでございますけれども、先ほどのチャートをご覧いただければわかりますように、まだまだその定着というものについては課題があるということでございます。したがいまして、2018年から新たな取り組みということで、つみたてNISAを開始させていただいたわけでございます。つみたてNISAという毎月少額ずつ積み上げていくNISAを導入するに至った経緯といたしましては、その下にございますように、私どものとらせていただいたアンケートの中で、投資をしない理由として、資金がないからとか、あるいはどういうふうに有価証券を購入したらよいのかわからないとか、取引を行う時間的ゆとりがないというご意見を頂戴して、やはり一般NISAだけではこういった家計の安定的な資産形成というものにたどり着くにはまだ課題があるということで、つみたてNISAを導入させていただいたわけでございます。

 10ページをご覧いただきますと、つみたてNISAの対象商品につきましては、絞り込むということをさせていただいております。その理由といたしましては、既存の投資信託の大半は資産形成に不向きではないかというご意見、具体的には短期的な運用であるとか手数料が高いとか、そういったご指摘を頂戴していたということでございます。したがいまして、先ほどいただいたような、なぜ資産形成が進まないのか、なぜ投資がされないのかという問題意識を踏まえた上で、どういう商品に投資をしていただくのが適当なのかということを考えた上で、対象商品につきましてはインデックスの投資信託、あるいはアクティブ運用の投資信託の中で、実績のしっかりしたもの、かつ販売手数料がゼロというものを選ばせていただいて対象商品とさせていただいたということでございます。

 11ページ・12ページに一般NISAとつみたてNISA、現行NISA制度の概要についても掲げさせていただいておりますので、ご参考にしていただければと思います。また、13ページにはこれまでの制度改正の経緯を掲げさせていただいております。

 14ページをご覧いただけますでしょうか。こういった形で一般NISA、それからつみたてNISAを導入させていただきまして、口座数、それから投資の額自体は着実に伸びているということかと思います。一般NISAにつきましてはやや頭打ち傾向がございましたけれども、つみたてNISAを導入して、つみたてNISAにつきましては、今年の初めの導入以来約70万口座が開設されたということで、着実に伸びていると考えておりますし、残高につきましては、商品の性質上20年間着実に積み上がっていくということを期待しております。

 1ページおめくりいただきまして、つみたてNISAの投資層でございますけれども、15ページ上の左側のパイチャートをご覧いただきますと、7割の方が40歳代以下ということで、右側の一般NISAですと50歳以上の方がほとんどということでございますので、そういう意味では若年層に訴求しているという意味でも効果があったと思っております。ただ、一方で下の認知度をご覧いただきますと、つみたてNISAの認知度は4割ということで、まだまだ周知には時間がかかっており、より努力が必要だということであろうかと思っております。

 それから、16ページ、先ほどアメリカ、イギリスの例を申し上げましたけれども、制度が入った上で経済の好況、あるいは市場の状況がいいということで、やはり成功体験を持つということが普及の上で欠かせないということを申し上げたわけですけれども、幸い足元の経済環境、市場環境ということもございまして、NISA口座につきましてはお客様の8割の方がプラスのリターンということで、着実に普及に向けた方向には進みつつあるということでございます。

 続いて18ページをご覧いただきますと、日英米の私的年金制度、非課税投資制度を比較したものでございますけれども、やはり英米の私的年金制度、非課税投資制度が整備されている、特に恒久措置として整備されている制度が多いということ、それからライフステージに合わせて利用しやすい枠組みとなっているということなどを踏まえて、これだけ英米で制度が普及しているということに比べても、やはり日本の家計金融資産に占めるそういった資産形成手段の利用割合は非常に低いという状況がございます。したがいまして、私どももそういう英米の制度に倣いまして、こういった制度をさらに整備していく、それからしっかりと普及させていくという努力が欠かせないものと考えております。

 19ページにも人口比でこういった制度をどれだけの方が活用されているかというのを出させていただいておりますけれども、日本の場合1割ぐらいの方にとどまっておりまして、一人当たりの金額も70万円程度ということでございます。イギリスですと半分弱の方に使われていて一人当たり400万円です。アメリカの数字が世帯ベースでしかとれないんですが、1世帯当たり2,240万円ということで、利用されている世帯の割合もかなり高いということでございますので、まずはこういったところを目指して制度の恒久化、利用しやすい制度のあり方、それから制度の普及というものに取り組んでいく必要があると考えておりますけれども、この点につきましてご意見を頂戴できれば幸いでございます。

 20ページ以降、英米の制度につきましても資料を掲げさせていただいておりますので、ご覧いただければと存じます。

 続きまして、24ページ以降でございますけれども、1つ目の制度のあり方の2点目、資産の円滑な世代間等の移転につきまして、ご説明をさせていただければと存じます。

 1ページおめくりいただきまして25ページでございますけれども、こちらは今年の7月に取りまとめていただきました「高齢社会における金融サービスのあり方」の中でご指摘をいただいた点でございます。1点目でございますけれども、相続財産が近年増加しているわけですけれども、老老相続となっているので現役世代に資金が回ってないのではないか。それから、相続税評価の算出の際に、不動産の時価というのは一般的に路線価ですので有価証券より有利になっているのではないか。それから、イギリスでは先ほど紹介したISAにおいて、夫婦間で非課税枠も含めて相続することを認めているわけですが、こういったことも重要なんじゃないかというようなご指摘を頂戴したわけでございます。

 それぞれのご意見につきましては、この中間的な取りまとめの中では、1つ目の話といたしましては、資産移転を進めるために教育資金贈与信託などの制度について改善していくべきではないかというようなご指摘を頂戴しております。それから、不動産と金融資産の関係につきましては、資産選択にゆがみが生じないような何か手立てを講じるべきではないかというようなご指摘を頂戴しております。また、ISAの夫婦間での相続についても似たような制度を考えていくべきではないかというようなご指摘を頂戴したものと承知をいたしております。

 このうち2点目の上場株式の相続税に係る現状、問題点につきまして、26ページに資料を載せさせていただいておりますけれども、現行制度では相続財産となった上場株式につきましては、相続時の時価と相続時以前3カ月間の各月における終値の平均額のうち、最も低い額で評価をするということでございますが、土地・建物については価格変動リスクを考慮いたしまして、評価額から割り引いた額を相続税評価額としているということでございます。上場株式につきましても、実際納付期限まで価格変動リスクがあるわけですけれども、100%で評価されるということが先ほど申し上げたような問題につながっているのではないかということで、株式の評価額についても今後考えていく必要があるのではないかというご指摘を頂戴したものだということを考えておりまして、こういった点も含めまして資産継承のあり方などについてご指摘を頂戴できればと存じます。

 1ページおめくりいただきまして、27ページでございますけれども、こうした制度をしっかりとつくった上で、こうした制度を普及していく必要がございますし、その前提となる金融経済教育というものをしっかり進めていくことも課題であると考えてございます。

 まず、1点目、NISAの普及に向けた取組みでございます。28ページにございますように、先ほどのアンケートの結果にも出ていますけれども、資産形成のニーズというのはこの低金利の中で、あるいは高齢化の中でますます高まっているということでございますけれども、きっかけがなくて資産形成に踏み込めないというのが現状であろうかということでございます。そういったことでつみたてNISAという制度もつくりましたので、まずは職場で資産形成を始めるきっかけというのが重要なのではないかということで、こういった取り組みを始めさせていただいております。まず隗より始めよということで、金融庁でも「職場つみたてNISA」ということで説明会などの実施を行っておりますし、これを今他省庁、地方自治体、民間企業の皆様にも展開する方向で努力をしているということでございます。

 1ページおめくりいただきますと、内閣人事局からの通知、高齢社会対策大綱、それから国から各地方自治体に通知をさせていただいた文書など載せさせていただいておりますので、ご議論の参考とさせていただければと存じます。

 30ページでございますけれども、具体的に「職場つみたてNISA」でどういったことを行っているかということでございますけれども、これは職場でつみたてNISA、それからiDeCoについて情報提供するというものでございます。それから、先般もご指摘を頂戴いたしましたけれども、やはり職場あるいは会社などでこういった投資が職場の内規などに抵触するのではないかという危惧がある、あるいは実際そういう内規を持たれているところもあるかと思いますけれども、そういったことにならないような手立てを講じると。当庁の場合は内規に抵触しないということを周知させていただいたということでございまして、そうした形で各職場でまずつみたてNISAを始めていただくということが一歩になるのかなと考えているところでございます。

 それから、1ページおめくりいただきまして、これ以外にもつみたてNISAの普及に向けまして金融庁としてもいろいろ取り組みをしているところでございまして、31ページの左上にありますが、つみたてNISA Meetupということで、やはりネットを通じてこういった情報を普及するということが重要ではないかということで、投資ブロガーの方ですとか金融の専門家の方々も交えて、一般に参加者を募集させていただいて、実際に会うという場を持たせていただいている、会っていろいろな情報を提供させていただくという場を持たせていただいておりまして、こういった場に参加された方がご自身のブログやツイッターなどでその状況を発信していただくということでつみたてNISAの普及を考えているところでございます。また、年に1回、そういった取り組みの取りまとめ的イベントといいますか感謝祭的イベントということで、つみたてNISAフェスティバルというものを開催させていただいたりしております。それから、下にありますけれども、まだあまり認知度が高くないのですが、つみたてワニーサというキャラクターもつくりまして、ツイッターアカウントなどもつくっております。こういった手段をいろいろ使いまして、制度の普及に向けた取り組みをしているということでございます。

 それから、2点目でございます。32ページからの金融経済教育・投資教育を通じた金融リテラシーの向上ということで、こういった投資あるいは資産形成の前提となる金融経済知識というものの普及が大切ということで、こちらにつきましても取り組みを進めておりまして、本年度はさらにその取り組みを推進していきたいと考えているところでございます。

 33ページをご覧いただけますでしょうか。もう金融経済教育につきましてはこの何十年来の課題であるということは委員の皆様よくご承知のとおりだと思っております。加えまして足元、高齢化も進んでおりますし、それからデジタライゼーションが進んでいるということで、情報・金融リテラシーについての教育も欠かせないということになっております。また、成年年齢も引き下げられるということでございますので、さらに若年期からの金融リテラシーの向上が必要ではないかというご指摘も頂戴をいたしているところでございます。

 そういったこともございまして、34ページにございますように、金融庁といたしましてはまず自分たちで現場に出て実際どういうふうに皆さんお考えになっているのか、あるいはみずからどういうふうに教育を進めればわかっていただけるのかということを経験するべきではないかということを考えております。したがいまして、本年度の金融庁の金融行政方針の中でも書かせていただいておりますけれども、職員がみずから現場に出ていってそういった教育に携わってみるということで、庁内で任意の募集をいたしまして、100人弱の応募がございました。この100名弱の職員を、本年度順次現場でこういった金融教育に携わるという経験をしてもらう、あるいは実際にそういう知識の普及に携わってもらうという取り組みを始めたいと考えております。

 それから1ページをおめくりいただきまして、その際に使う教材というものについても充実をさせていく必要があると考えておりまして、昨年来、若年世帯向けに資産形成の重要性を訴えるビデオクリップというものを策定しております。それから、つみたてNISAについてはガイドブックも作成させていただいております。それから、現在日本銀行などとも協力しまして、大学生向けの金融リテラシーに係る導入用の講義資料、コアとなるようなコンテンツを作成しているということでございます。先ほどの出張授業の経験なども踏まえて、こういった教材についてもさらに充実させていくことを考えていきたいと考えているところでございます。

 それから、36ページでございますけれども、そういった取り組みをしながら実際義務教育、あるいは高等教育の中で具体的に学校教育としてそういった知識を普及していただくということが重要であると考えておりまして、文部科学省とも協力させていただいて、学習指導要領の中に順次こういったものを少しでも入れられないかというお願いをしたところでございます。中学・高校につきましては、少しずつそういう記載を、資産形成という観点から記載をするということについて拡充をいただいているところでございまして、中学では平成33年度、高校では平成34年度からこの新しい学習指導要領を踏まえた教科書というものが出てくるということでございまして、現在教科書会社向けにどういったことを書いていただきたいかというような働きかけを行っているところでございます。

 次に、37ページになります。そのほかにも教員の方々の金融リテラシーの向上、それから退職されている世代の金融リテラシーの向上などいろいろ課題があるところでございまして、こういった点についても取り組んでまいりたいということでございますし、経済団体、金融団体など実業界などとも手を携えて取り組んでいく必要があると考えているところでございますので、そういった取り組みを進めてまいりたいと思っております。金融経済教育につきまして、この場の委員の方々にも相当教材の内容ですとか、実際の開催に当たりましてご参加いただいたり、ご協力いただいているものでございまして、この場を借りてお礼申し上げますとともに、最後に教育の実施、それから教材の内容などにつきましてもご意見を頂戴できればと考えております。

 以上、大部を駆け足で恐縮でございますけれども、ご説明とさせていただきます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、「直接金融市場に関する現行規制の点検」についてのご説明をお願いいたします。

 事務局の八幡市場業務監理官からお願いいたします。

【八幡市場業務監理官】
 市場課監理官の八幡でございます。私のほうから資料の2で「直接金融市場に関する現行規制の点検」という点についてご説明させていただきたいと思います。現在、法令の改正も含めまして検討している事項、3点ほどございます。順次ご説明させていただきます。それから、3点目の一括清算法につきましては後ほど本日参考人として来ていただいている和仁先生のほうからもご説明をいただくことになっております。

 資料2の目次の次の1ページをお願いいたします。現行規制の点検(1)、1つ目で、契約締結前交付書面等の見直しということでございます。現状のところでございますけれども、金商法上金商業者等は契約の締結前にあらかじめ書面を交付しなければならないとされておりまして、いわゆる前書面というものでございますけれども、業者の商号・住所、契約の概要、手数料、リスク等々について書いたものを交付している。また、この法令上は契約の締結前1年以内に同じ内容の契約に関する前書面を交付している場合はこの前書面の交付を要しないということになっておりまして、こうした規定を踏まえまして交付漏れを防止しつつ、電話等において円滑な受注を確保するという実務上の事業者のニーズ等も踏まえて、上場有価証券や個人向け国債等のプレーンな商品については前書面を一つの冊子にまとめて全ての顧客に対して毎年1回交付するというような運用が実態上存在しているというところであります。

 こうした運用につきましては、必ずしも顧客の側から見ても有益で合理的な情報が来ているというわけではないという指摘がある一方で、業者側にとっても毎年郵送コストをかけて送るだけになっているんじゃないかというような、形式的な側面もあるというような批判もございまして、当庁としても顧客に対して重要な情報を提供するという趣旨を損なうことなく、一方でその内容・方法等につきましては、より合理的で効率的なわかりやすいものにするという方向で制度の改善ができないかということで検討しているところであります。

 具体的な見直し案でございますけれども、下のほうに書いておりますが、一旦前書面を過去に交付したことがある顧客の方に対しましては、実際の契約の締結前の1年以内にその業者の任意の方法――メールやウェブ閲覧等でございますけれども――で前書面の情報提供をした場合には、物としての書面での交付を要しないこととするということにしてはどうかというようなことを考えているものであります。もちろん、顧客のほうから書面交付自体を望むという意思表示がある場合もあると思いますので、こういった場合は除くような運用をすることが必要かと考えております。

 また、あわせまして、前書面や広告等の記載内容につきましても、これもむやみにたくさん書いてあってかえって読みにくいというような話があったり、一方で協会の名前というのはその業者が入っている協会を全部書かなければならないと規定しておりますけれども、このあたりについてそれが変わると全部つくりなおさなきゃいけないといった問題が、これは業者の側からも示されているところですので、例えば契約等に係る業務に関連していない協会の記載は任意とするとか、実務的、実用的にもよりわかりやすいようにするというようなことから、内容面についても見直しを進めていくという意味で、法令・府令も含めて、日証協等の業界ルールなどもよりわかりやすくてより実用的なもの、できれば、理想を言えば過不足なく業者にとっても顧客にとってもいいものにより近づけていくべく法令のほうも見直していきたいというふうに考えているところであります。

 ページをおめくりいただきまして2ページでございます。現行規制の点検の2つ目でございますけれども、犯則調査における証拠収集・分析手続に関する規定の整備であります。現状はIT化等が進展した中ですけれども、例えばパソコンのサーバー等に保管されているデータなどの電磁的記録につきまして、証拠収集・分析を行う必要が高まっているんですけれども、現行の金商法には刑訴法や国税通則法に導入されている電磁的記録に係る差押え等の規定が今は整備されておりません。このため現在、証券取引等監視委員会が電磁的記録の取得等を行う場合には任意で協力を求めているという状況でございます。こういった中で、見直し案として、金商法上の犯則調査につきましても必要なデータの確実な取得のために下の1から6に掲げているようなものにつきまして、刑訴法や国税通則法の規定と同様に証拠収集・分析に関する規定を導入することにしたい、このように考えているところでございます。

 続きまして、3ページでございます。現行規制の点検の3つ目ということで、店頭デリバディブ取引に関することについてのご説明をさせていただきます。3ページの下の絵をご覧いただければと思うんですけれども、現在店頭デリバディブ取引においての規制というものが2パターンあります。左のほうに書いている清算されない取引、これがリーマン・ショック前の国際社会でもこういう状況だったと思いますが、それぞれ清算されない取引、店頭デリバディブがいろいろな金融機関の中で行われていて、この絵でA・B・C・Dで出しておりますけれども、Bが仮に破綻したといった中で、このBが倒産したことによる影響が直接あるいは間接的にA・C・Dといろいろなところに影響が伝播していくということが実際にありますし、その可能性があったというところで、そのリーマン・ショックを踏まえた国際社会の合意の中で、2パターンでそういった悪影響を遮断するような方法をとらなければならないんじゃないかということであります。

 1つが清算集中ということでそれぞれの取引金融機関の間に清算機関が入ることによって、仮にBが破綻してもA・C・Dには伝播しない、問題なくその取引を継続することが可能というような仕組み、それともう一つが、清算集中義務ではない非清算の仕組みを使う金融機関の間では、これは相対で証拠金を授受するということをすればよいのではないかということで、これも仮にBが破綻した場合でも、それぞれほかのA・C・D社は事前にそれぞれで証拠金を受領しているために、仮にBが破綻してもその取引の伝播は回避されるということです。

 こういった規制はそれぞれ国際合意の中でなされてきたわけですけれども、下の証拠品授受の関係については、上段に書いていますG20カンヌ・サミット、2011年11月のときにこうした合意が導入されているところでありまして、こうした合意を踏まえまして、我が国におきましても2016年9月にこの証拠金規制を導入しておりまして、今対象となる金融機関が順次拡大しているところであります。足元ではメガバンクでありますとか大手証券が対象となっているところでありますが、今度2020年9月1日以降は、地銀でありますとか保険会社とかなり幅広くほぼ国内の金融機関が対象になってくるという見込みでございまして、こうしたことを踏まえて何らかの対応が法的にも必要になってきているのではないかというふうに考えているところであります。

 1ページめくっていただきまして、若干テクニカルでございますが、現在一括清算法という3条構成の法律でございますけれども、破綻したときとか、要はいわゆる一括清算の効力が発生したときに、当事者間にいろいろな債権、複数の債務が両者にありますけれども、それを当事者間で1本の債権にして、それでその1本の債権で倒産手続に参加するということを、いわゆる「一括清算ネッティング」と申し上げますけれども、その有効性を担保する法律というのが1998年から成立しているところでございます。

 下のほうに米印で書いているところでちょっと細かくて恐縮ですけれども、左の下ですが、リーマン・ショック後の国際合意で、先ほど申し上げました証拠金のやりとりにつきまして、一方が破綻した場合、相手方の破綻時にも即時に担保権の実行が可能な様態で即時利用できる要件が入っていまして、それを分別管理することが求められているところであります。これをもとに即時担保利用ができるということが国際合意上求められているわけでありますが、現行の一括清算法において一部欠けているところがあるということについてのご説明として、マトリックスの真ん中あたりに書いておりますが、日本国内における一般的な方式でありますと、それが上段の所有権移転(信託+消費貸借)方式による担保授受ということなんですけれども、これは右側に書いてありますように、既に一括清算法の対象となっておりまして、この同法の規定によりましてISDAマスター等の基本契約書に基づく一括清算ネッティングの法的有効性は既に確立をされているとありまして、この場合担保の即時利用が可能というふうになっています。下段のほう、これがクロスボーダーの国際的な慣行のほうでありますが、これについては質権方式による担保授受というのが国際慣行になっているんですけれども、これは2パターンありまして、下段の左側が破産法・民事再生法適用時ですが、これは今も一括清算の対象外なのですけれども、破産法・民事再生法上は当事者間に合意があれば質権でも破産・再生手続外で権利行使ができるということでありますので、担保の即時利用が可能ということで、ここについては問題がないんですけれども、問題となり得るのは、右側の会社更生法適用時でありまして、これは一括清算法の対象外であるとともに、会社更生法が適用されますと、当事者間に合意があったとしても質権の権利行使は更生手続外で行うことが禁止されていると。これは法律上そうなっているということなので、担保が即時利用できるのが必ずしも保証されていないというふうな問題が指摘されているところでありまして、この右下の場合、質権方式の担保授受で、かつ会社更生法が適用された場合については、決済の安定性確保の観点から担保の即時利用を可能とするようなことが法制上も手当てが必要ではないかと言われておりまして、現在法改正も踏まえた見直しについて検討を進めているところでございます。

 この点につきまして、先ほど申し上げておりますように、実務上、法的な面からも問題がないかとか、余計な規制をしてしまわないかといった点について、より専門の方々の見地からもご検討いただきたいと思っておりまして、日本銀行が事務局を務めていただいている金融法委員会のほうにもご検討・ご議論をお願いしているところでありまして、その検討状況については、和仁先生からご説明いただきたいと思っております。

 私の説明は以上でございます。ありがとうございました。

【和仁参考人】
 参考人の和仁でございます。以前は委員をさせていただいておりましたので、かなりの方はお久しぶりですというところですが、参考人の席は非常に居心地が悪いですね。何か悪いことをしたんで引き出されて説明しなくちゃいけない、そういう感じなんですが、この話はそういう筋の悪い話では全くございません。極めてテクニカルな話でありまして、1998年の金融システム改革法の一環として一括清算法という法律が入れられたんですが、そのときに企業間でデリバティブの取引をやるときにどういうふうなやり方で担保を動かすかということで、当時は質権、譲渡担保、それから有価証券等の消費貸借というようなことが議論されたんですけれども、基本的に質権というのは転質はわかるんですけれども、担保がどんどんと転がっていくということを考えると、即ち転々質、転々々質で真ん中にいる人が倒産したらどうなるんだということについて、倒産法が確たる答えを出せてないというのが一つ目の質権の弱点でした。もう一つが、今日話題になっております、会社更生法の手続が始まると質権の実行というのはできなくなってしまうということで、金融機関が早急に担保を回収できないということが問題で冷たい扱いをされていたんですが、それでもやはり今用いられているISDAのデリバティブの取引のマスター契約に付随するISDAの日本法版の担保契約、日本法CSAと言われていますが、それでは担保権としては質権と証券貸借という2つのやり方を設けたわけです。

 このときに考えていた担保というのは、今世の中で話題になっていますVM(Variation Margin)でありまして、リーマンのときに明らかになったのは、要するにVMの数字を出してくるまでに、事故が起こってからVMの数字が出てくるまでにえらい時間がかかるねということでした。その間にやはり担保のポジションが動いてしまってそこを更にカバーする担保を入れておかなくちゃいけないよねということでIM(Initial Margin)というのが入ったわけです。実際には、その以前でもIndependent Amountという考え方があったんですけれども、いや、それじゃ足りないよということでInitial Marginという考え方ができたんですが、この問題というのは、要するに担保を差し入れている人が倒れたときに実行できればいいんですけれども、担保を受け取っている人が倒産したときも、そのときにも担保を差し入れている人は必要なInitial Marginを返してもらうようなシステムをつくらなくちゃいけないということで、日本国内では信託と証券貸借つまり消費貸借をくっつけた形でのメカニズムが動いております。

 ただ、これに対して問題なのは、クロスボーダーでやっている取引、あるいは海外の本邦金融機関の間でやっている取引で、海外でやっている取引というのは、これはその場所の法律によって左右されてしまう、コントロールされてしまうということで、彼らとしてはNew York law pledgeであるとか、あるいはEnglish law chargeとかそういう現地のものを使ってやっているというルールになっているんですね。これらの現地システムというのは、先ほど言いましたように質権者からも質権設定者からも担保物にアクセスができるという形になっているわけなんですが、日本法でそれを実現するとなるとどうなるかというと、質権しかないよねということになるんですが、先ほど言いましたように、質権は非常に使い勝手が悪い。

 ということで、今回実際には昔マージン規制を導入した時に国として約束したことをずっとほったらかしにしてきたという批判はあるかもしれませんけれども、質権で、海外で行われた取引などが日本で、当事者が日本の企業であると日本の倒産裁判所が判断しますが、そのときに、裁判官はいや、これは日本の質権と一緒だということで、担保権の実行を認めてくれない、一括清算ができない、Initial Marginを使うことができないと、そういうふうなことが起こってしまっては困るよね、国際的な信用も失うよねということで、今回の改正が提案されているわけです。端的に言えば、質権で取ったものについても流質という形で一括清算の過程に取り込んでしまうということでできないかということであります。

 で、金融庁のほうから金融法委員会のほうにご連絡がありまして、じゃあどうなんですかねということで議論してもらったのがこのペーパーです。基本的には皆さん流質を認めるという結論には全然異論はないのです。なぜかというと流質というのは別に日本の商行為法等で商人間の取引に関しては一般的に認められる形になっておりますので、そんなにおかしなことではない。ただ、それを法律上補強するために会社更生手続が始まったときについて、どうやって流質の実行を認めてもらうかということをはっきり書いておいたほうがいいよねということが今回の改正の中心論点でございます。

 ただ、この法律というのは、そもそも倒産手続を開始する前に一括清算というのが起こるというふうに仕組んであるので、本来なら倒産法の世界には立ち入らないというのが基本設計であります。このあたりはつくった当時の金融監督庁と法務省との間で合意ができた基本設計でございます。それに基づいてやっていますから、基本的には流質禁止規定の外の話として、悩む必要はないのかもしれませんけれども、実質効果を考えた場合には流質でもできますよということを法律上明確に書いておいたほうがいいですねということで、流質の場合にもちゃんとこの国際合意に従った形でInitial Marginの実行ができますよということを法律上規定しています。

 ただ、技術論として議論になりましたのは、質権の対象というのは有価証券などの物のことが多いんですが、そうするとそれを全部質権者が取ってしまって、それで後でお返しするというメカニズムをどうやってつくるんだと。お金ならきれいに分けて清算できますけれども、物の場合はどうするんですかということで、技術的にそこのところを考えなくちゃいけないんじゃないかということをwaterfall論が好きなstructured financeに強い先生方は心配をしておられました。でも、よく考えると、最終的にはお金で決済すれば良いだけの話なんで、特に、質物全部を一旦担保権者、我々はobligeeと言っていますが、そちらのほうへ寄せてしまって構わないということで、調整は後からやればいいだけの話だということも考えられます。この点については今後金融庁のほうでもう少し、条文案をブラッシュアップするという形で作業が進んでおります。

 ということで、金融実務界としては別にこういうふうな形での一括清算法の見直しということに関しては、別に法律上問題はないんじゃないかというのが現在の結論になっております。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、今までいただきました説明につきまして、委員の皆様方からご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。本日も多数の委員の方にご出席いただいていますので、大変恐縮でございますけれども、ご発言は簡潔にお願いできればありがたく存じます。

 では、上田委員、どうぞ。

【上田委員】
 ありがとうございます。

 ご説明ありがとうございました。特に、金融庁で長期・積立・分散投資に対して、かわいいキャラクターも含めて取り組まれているということで、ちょっとこれは固いテーマですが少しやわらかく感じたのと、あとこれは個人的な意見で恐縮ですが、職員の方が母校等に戻られて出張講義をされると。これはすばらしい取り組みだなと正直思いました。どうしてもこういう当局や金融の現場は、子供たちとの間で距離がありますので、そういう仕事を見せるということは将来優秀な方がこういう分野にも来るのかなと思いながら、いいお話だなと思いました。

 内容についてなんですが、NISAの恒久化という議論が一部であるかと思うんですが、これは私は大賛成でございます。田原課長がご説明いただいた資料の14ページに相当数字としても積み上がっておりますし、投資の手段として定着をしているのかなと思いますので、これをぜひ恒久的な制度としていただけると将来世代含めてもよろしいのではないかと思いました。

 あと、金額についても、21ページ以下に英国、米国のように年間預け入れ額で例えば2万ポンドというような上限があるという話がありましたが、なかなか税制絡みのことなので最初は広げて入れるというのは難しかったのかもしれませんけれども、今後はより資産の投資をこのNISAを主な口座として使えるような形で広げていただくこともご検討いただければよろしいかなと思いました。

 あと、学校教育法でよろしいのでしょうか、高等教育の教科書も含めてつくっておられるということですが、これも私は大賛成でございます。なかなか日本でまだ投資というものが親世代に定着していないという状況の中で、家庭教育においてこういうものを身につけさせるのは難しいと思いますし、子供は学校で習ったことは真面目に聞くと思いますので、ぜひここは文部科学省とご協力されて進められればありがたいなと思いました。

 最後、こちらは法制面の変更ですが、契約締結前交付書面の見直しです。これについては、私は別の会議で会社法での招集通知電子化等にかかわらせていただきましたが、同様の議論で実質的な投資者の権利にかかわるものでも今電子化が進められている時代でございます。こういう手続書面については環境問題の観点から、そして書面が欲しいというお客様の権利がしっかりと保護されるというのであれば、こういう手続きを入れることは時代の流れに沿ったものかなと思いました。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、大崎委員、高田委員の順で。

 大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】
 ありがとうございます。

 2点申し上げたいんですが、1つは前半の国民の資産形成をめぐる制度の話ですが、今後どのぐらい具体的に個別の検討をこの場でするのかちょっと私理解しかねておるのですが、今後の方向性として、前にもちょっと申し上げたんですけれども、例えばNISAみたいな制度をどんどん拡充していきましょう、あるいは確定拠出年金もどんどん拡充していきましょうというのは、私も基本的な方向性としては全く賛成なんですが、他方で英米なんかと比較しますと、やっぱり厚生年金、国民年金というものが相当程度充実しているというこの日本の事情もあるんで、どんどん全部を非課税にしましょうというと、私は別にいいと個人的には思わなくもないんですが――全くの個人としてはですね――ただ、やっぱり国の財政ということを考えたときに本当にそれでいいのかという話が出てきてしまうと思います。

 ですので、今日出していただいている表で行きますと、8ページの表にございますように、いろいろな制度があって、いわゆる課税・非課税の関係で拠出時に非課税で受け取り、給付時にどうなるというのが書いてありますけれども、どちらかというと現役のときの所得がある程度あるうちは税金は払った上で拠出をして、収入が少なくなった受け取りのときに非課税扱いが受けられるような制度を拡充していくという方向で検討するのが望ましいのではないかということでございます。これが1点です。

 もう一点は、先ほど上田委員も同じ論点を取り上げられたのですが、契約締結前交付書面の話でございまして、私、この提案は全く賛成でございます。これでいいと思います。ただ、今後もし何でしたらもう一歩踏み込んで、例えば法定情報開示が行われているような商品の取引に関しては、これを全面的にもう適用を排除するぐらいのことも考えてもいいんじゃないかというふうに思っております。ちょっとこの書面といわゆる情報開示は趣旨が違うというのは重々承知しておりますですが、他方で、いろいろな形で法定情報開示の対象になってない金融商品というのもあって、それに対しての説明的な意味もあるんだというような解説もなされたりするわけですよね。例えば事業型の投資ファンドなんかですと契約締結前交付書面以外にあまりそういう顧客向けに何らかの情報を公的に流す手段がないということになりますので、それを考えたときに、例えば上場株式とか国債とかいう――国債はまた全然違う意味で法定情報開示がなかったりしますが、それは少し置いといて――上場有価証券とかいうときに、本当にこういうものが顧客の保護という観点から意味があるのかというのは、もう少し踏み込んで今後議論できるといいんではないかと思っております。またそうでない、法定情報開示が行われていない商品については、契約締結前交付書面の交付がちゃんと行われてないんじゃないかとか、記載内容が問題なんじゃないかというような観点から、早い段階での不正の摘発というものをぜひ積極的にやっていただきたいなと思う次第です。今ですと何かいわゆる被害というのが表ざたになってからいろいろな事件化するという傾向が高いように思っておりまして、このような制度をうまく使って被害の未然防止に役立ててほしいなと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 いろいろなご説明いただきましてどうもありがとうございました。最初に田原課長のほうから全般的な資産の形成に向けた取り組みについてお話がございまして、私も大変賛同するところが多いなと思いました。

 先月、私も陳述の機会をいただいたわけなんですけれども、そのときの関係で申し上げさせていただきますと、最初のところでNISAを中心としたいろいろな制度的な発展をご議論いただいたわけなんですけれども、私も先月申し上げたのが車の両輪ということを申し上げておりました。すなわち、いわゆる海外に倣った制度要因というものと、それからある程度、市場要因の成功体験というものが合わさって、好循環ができた、しかもそれが何十年も重なったという中で現在のアメリカにしてもイギリスにしてもあるということでございまして、そういう観点からいたしますと、日本におきましてもやはり当局のご尽力によりまして制度ができて、そして成功体験も少なくともこの6年間ぐらいはある程度あるわけでありますから、その積み重ねというところでようやく今こそという段階になったわけなんで、まさにこうした審議会の場というものはそういうものを後押しする意味では非常に重要なんではないかなと感じております。

 そういう中で、つみたてNISAみたいなものもできて、これも非常に私はすばらしいものだと思うわけなんですけれども、あくまでもやはり普及段階の段階に今はあるんじゃないかなと思うわけです。となりますと、いずれ定着した段階ということになった場合には、もう少し柔軟な対応というものもやっぱり必要になってくるんではないかと思います。例えば、そこになってまいります対象商品でございますとか、さまざまそうしたものをいろいろな意味で選別していくというのも、導入段階においては必要なんだろうと思うんですが、ある程度普及段階になる中でこの辺の制度設計の見直しというものはやはりいずれ対応していくべき関係ではないかなと思いました。

 そういう中で、このNISA自体もそうなんでありますが、私どももちょうど先月の会合のときに恒久化をするべきではないかと。それから限度枠の拡大、非課税期間の撤廃とかスイッチングを可能にして、退職金制度の受け皿にしていくとか、こういう点は今後もさまざまな議論になるところではないかなと私ども思っておりますし、また新たな非課税枠を利用することなく、収益金・分配金の再配分でありますとか、こうした部分というのもやはり重要ではないかと思います。

 それから、先月私も申し上げましたように、世代間の移転のところも、やはりこれも重要なところでございまして、これだけ高齢化、場合によっては認知症が広がる状況にもある中で言いますと、こうした部分は、また金融という意味での拡大、もしくは成長戦略という中からも活かしていくという部分はやはり重要でございますし、この中で資産形成が分断してしまうというのは大きな議論になるんではないかなと思います。

 そういう中で、私も前回申し上げたんですけれども、こういう活用していくのは個別の今ここの部分をもうちょっとどうとかいうことにとどまらず、やはり行動経済学的な活用というものが必要なんではないかということを申し上げました。たまたま昨年のノーベル経済学賞の中で単視眼的な損失回復行動というものがあるということも申し上げたわけでありますけれども、これだけ成功体験がないという状況がバブル崩壊後繰り返されるということになりますと保守的な行動バイアスが生じます。従って、どうしてもやはりそこのところをもうちょっと一押しするというもの、そういう意味では後半部分でご指摘なされた学校教育でございますとか、さまざまなものをきっかけづくりをするというようなところは非常に重要だということでございまして、こうした点というものはやはり職場を挙げてということも重要になります。さまざまな部分での国民的な合意というんでしょうか、こういう形勢づくりというものは非常に重要なんではないかなと思います。

 最後になりますけれども、今回これだけ議論していただいておりますのは、やはり資産形成、また高齢化におけるもの、見える化、ライフサイクル全般を通じて、またトータルな観点から行うという部分がやっぱり大きいんだろうと思うんです。そういう面からいたしますと、この老後を中心とした資産形成、さまざまなものがございます。住宅、教育、それから医療、さまざまなものがあるわけでありますけれども、そこに横断的な対応というものも、やはりまたライフサイクルを通じたものも必要なんではないかと。そういう意味では、私も今現在政府の税制調査会の中で議論をしてもいるんですけれども、そこの中でも議論として、やはり例えば今回の説明の中にもIRAみたいなもののアメリカの事例もございましたけれども、ああいう形で国民横断的に非課税の枠を等しく与えて、その枠をどう埋めていくかというような対応というもの、場合によっては国民退職制度、資産勘定とかいうようなものもやっぱり必要になってくる議論の一つの対象になりやすいんではないかなと思います。そうしますと、そういう枠をどのような形で使う、またそれをトータルにどういうふうに管理していくのか、もしくはそういう意識を持っていくのかが必要になります。もちろん段階的に現役世代のときとそれから老後の部分とはまた違ってくるとは思いますけれども、日本特有なこの退職金制度というようなものも含めた中で、いかにシームレスにこうしたものを活用していくのかというところは非常に重要で、今回の取り組みもやはりこうした広がりを持った議論というものも必要になってくるんではないかなと、そんなふうに感じたところでございます。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 多くの方に名札を立てていただいておりまして、永沢委員、竹川委員、島田委員、そして林田委員、濱口委員、野尻委員、鹿毛委員、駒村委員という順番でお願いしたいと思います。なお、10時45分ごろに5分間の休憩をとらせていただきます。

 永沢さん、どうぞ。

【永沢委員】
 ありがとうございます。田原課長からご説明いただきました内容につきましては、私は賛成です。金融庁の取り組みに対して感謝を申し上げたいと思います。その上で3点意見を申し上げたいと思います。

 まず、一番初めの資料の18ページです。各国の資産形成に対する税制優遇制度の普及状況という図です。日本では国民の多くが生命保険や年金保険を老後に向けた資産形成として使っていますが、これらの商品も税優遇を受けているので購入が促進されているということを考えると、そうした要素がこの図には欠けているように思います。つみたてNISAについては、10ページに紹介がありますように、国民にとって資産形成にふさわしい投資信託の基準を有識者が集まり検討いただき、合意された基準に合致した投資信託が税優遇されるということでスタートしているわけですけれども、生命保険についても、国民の適切な資産形成を促すという観点からしますと、同様の基準づくりの取り組みが必要なのではないかと思います。生命保険は、日本人にはなじみのある資産形成商品となっておりますので、国民に内容が見えやすい形にすることが必要であると考えます。

 2点目ですが、同じ資料の26ページ目でございます。株式の評価、上場株式等の相続税に係る点でございますが、株式についてはやはり価格変動リスクを考えていただく必要があると思っております。私の知人の中には相続時に株価が多く、その後下がってしまい大変だったとこぼしている方もいました。これも見直しの俎上に上げていただけるならばぜひにと思います。

 3点目は、もう一つの資料のほうでございますが、他の委員からも出ている契約締結前書面のことでございます。私も、かねてよりずっと契約締結前書面制度が非常に形式化しているという意見を申し上げております。投資者保護のためにつくられた制度であったとは思いますけれども、現状は交付漏れがあることを恐れる金融機関のリスクヘッジのためにこの文書は渡されていると私ども投資家は感じております。一つの家であっても家族それぞれが証券口座を個別に持っていますし、それぞれが取引している金融機関は1つとは限りません。多くの方が複数の口座を開設しています。そうすると何冊も同じような文書が毎年毎年送られてくることになり、これは受け取る側にも負担でございます。しかも内容が国債などに関する抽象的な記述で自分には特に必要ないと思うものばかりで、多くの投資家はそう思っていらっしゃると思います。SDGsという時代でもございますし、また、顧客本位の業務運営という観点からも交付漏れがあっては困るからという発想は顧客本位ではないと思います。今回ご提示があったような方向で改正していただくと同時に、金融機関側でもリスクをとるといいますか、このお客様にはこれが必要という個別判断をされることが必要なのではないかと思っております。

 この問題につきましては数年前に証券業協会の会議で議論をさせていただいたことがございます。私の記憶では、アメリカでは日本の契約締結前書面のようなものはなく、取引開始前にもっと簡単な一枚ものの裏表のシートが渡されているというお話を教えていただきました。そのシートには、わからないことがあるときにはどこへ聞けばいのか、トラブルに遭ったらどこに相談に行けばいいのかというようなことが書いてあったと記憶しておりまして、投資家に必要なのはこれらの情報で全てでございまして、事前に抽象的な情報をいろいろといただいてもあまり意味がないと思います。実際の取引の直前に、そのお客様に合った必要な情報を提供いただけるようにしていただくことが真の投資家保護という観点から必要なのではないかと思っています。

 それから、この機会に申し上げたいことがあります。上場等有価証券について非常に形式化された形で情報開示が済まされている点が問題だと思っております。例えば上場ブルベア型投資信託という上場商品があり、単なるブルベア型ではなくて非常に複雑なブルベア型の上場投資信託が目論見書交付なく販売されています。上場されているので市場に情報が流布されているからという理由で目論見書に相当する資料も渡されていません。証券会社の中には、お客様にチャート1枚渡して終わりという社もあります。高齢者に対する勧誘も、上場物ですから不招請勧誘の禁止にもなっておらず、チャート1枚で営業が行われているという状況がまだまだ続いております。東京証券取引所で情報開示のための資料づくりをご努力いただいておりますけれども、この際この機会もありますのでこの問題も言わせていただきましたが、上場物だからとかそういう何か抽象的なくくりでどうなのか、本当の投資家保護になっていないのではないかということを感じているということを申し上げて終わりにさせていただきたいと思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】
 ご説明ありがとうございました。

 私は、一般NISAが導入された当初から、各地で一般投資家さん向けのセミナー等でお話する機会があり、ご意見を伺ってきていますし、自分自身もNISAを利用しておりますので、そういった面を踏まえてお話をさせていただきたいと思います。

 申し上げたいことは主に3点です。1つ目はNISAを恒久化をしてほしいという要望が圧倒的に多いです。制度もそうですし、非課税期間についてもそうです。

 それから、2つ目としては、一般NISA、つみたてNISA、それからジュニアNISAもあって、わかりにくいという声がとても多いです。ですので、誰にでも理解できる、シンプルでわかりやすい制度にしてほしいというのが2点目になります。

 具体的に申し上げると、一般NISAに関しては制度の期間が10年で非課税期間が5年ということもあり、(非課税期間終了時に)ロールオーバーをするか否かという問題が生じます。2014年から制度がスタートして今年が5年目に当たりますので、金融機関の方が、年末までにロールオーバーするか、課税口座に移すのかという説明をするのに非常に手間がかかる、あるいはお話をしてもなかなかお客様が理解をしてくれないという話をききます。投資家さんから見ても、複数の制度が併存するのはわかりにくいです。また、年間40万円未満であればつみたてNISAに変更しようと思っても、一般NISAでこれまで積み立ててきた投資信託の資産をつみたてNISAに移管することもできません。(一般NISAの非課税期間終了時に)課税口座に出すんですか、解約したらいいんですかというように、悩むポイントが多すぎます。ファイナンシャルプランナー等からも、セミナーで制度の説明に時間がかかり過ぎて、本来の資産形成や投資といった本質的な話をする時間がとれなくなってしまうというような話も聞いております。

 また、制度が2014年からスタートして毎年のように変更があるので、金融機関のシステム負担も非常に大きいと思いますし、ひいては個人投資家の負担にもつながる問題だと思います。そういった問題も踏まえて、誰にでもわかりやすく理解しやすい、とにかくシンプルな制度にしてほしいです。今回、資料の25ページにありました相続NISA、相続をする際に夫婦でISA口座で保有されている有価証券について夫婦間で相続を認めるという話もいいとは思いますが、そうしたことを検討される前に、まずはシンプルでわかりやすい制度にし、制度の恒久化、非課税期間の恒久化を検討することを先に検討していただきたいと思います。

 そして、3点目ですが、例えば、イギリスはISAを導入後、一定期間を経過したのちに恒久化が決まりました。日本でも今後NISAがどういう方向に行くのかということを、将来像を示していただきたいと思います。具体的なロードマップです。何年後までに、例えば一本化をするのか、それとも非課税期間を延ばしていく方向に行くのかというところを、です。税に関しては金融庁だけでは決められないとは思いますので、政府や関係各所と協議の上、ロードマップを示していただけると個人投資家も安心して使うことができるのではないでしょうか。

 個人投資家さんからは「今度どうなるんですか」ということを、5年経ちましてよく質問されます。私も「わかりません」としか申し上げようがありません。とても困っております。ぜひ協議をしていただいた上でロードマップを示していただき、こうなれば、例えば非課税期間を延ばすことができますとか、恒久化できますとか、何年後までにこうしますということをぜひ金融庁から示していただけると非常にありがたいです。よろしくお願いします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、島田委員、どうぞ。

【島田委員】
 私どもも本日の議論については、何といいましょうか、突っ込みどころはあまりないと思っておりまして、皆様のご意見、そのとおりだなと思って伺っておりました。ですから、あまり繰り返しになるようなことは申したくないのでございますけれども、それでも繰り返しておきたいことは、制度のわかりやすさ、恒久化といったお話は、先ほど竹川委員からおっしゃったこと、そのとおりだと思います。個人投資家の方たちとの交流の場でもお話をしていて、参加していらっしゃる方は比較的物がわかっていらっしゃる、投資をご自分でもなさっていて真剣に考えていらっしゃる方たちなので疑問が出てくる。実体験からもっとわかりやすくしてほしいとか、自分たちが使いにくいということで提案していらっしゃいます。

 一方でまだやっていらっしゃらない方たちに使っていただくことが最も重要であると思っています。

 ですから、やっていらっしゃる方たちの中でどうやって使ったらいいんだろう、これ、使いにくいよねという意見が出てくる状態の中で、自分は投資をする必要があるのだろうか、本当はしたくないけれどもやらなきゃいけないのかなと思っている方たちに一歩進んで投資していただくためには、本当にもっとわかりやすくならないと最初のハードルが下がらないと思います。初めて投資をしてみようかなと思っても、iDeCoがあります、NISAがあります、つみたてNISAがありますといったときに、自分はどれを使ったらいいのだろうというところからまず入ってしまうわけです。その次に、どんな金融機関でやるのだろうということがある。終わったときにはどうなるのかな、自分は将来一体どれだけのお金が必要なんだろうというところから始めなければいけないはずが、入口のところでもう悶々としてしまって入っていけないという方たちが非常に多い。

 ですから、ぜひここはシンプルに、そして長期的に見られるようになるためには、制度の恒久化が必要だと思います。投資枠を大きくする、あるいはより相続にどうするかといったことよりも、まずは恒久化が必要だと思いますし、制度自体の積立期間が決まっていてロールオーバーしなきゃいけないというのは大きな問題になっていると思いますので、ここは使える期間を定めずロールオーバーをしないでずっと使えるというところまで、制度と投資期間の一致ぐらいは最初のハードルとしてやっていただきたいと思います。また、課題としては、NISAが終わった段階でつみたてNISAに行こうと思っても、商品の制限もありますし、制度もシームレスではないわけですから、ここも使えないということになってしまうことは、本当に不便だと思います。

 次に、職場つみたてNISAの話ですが、これは大変よい取り組みだと思っております。もう一つ、せっかくジュニアNISAがあるわけですから、今はお金持ちのおじいちゃん、おばあちゃんがいらっしゃる方のためのジュニアNISAという印象が強いのですが、子供たちが自分たちで使えるジュニアNISAという形に位置づけをもう少し、広げていくことが必要なのではないかと思います。そこに金融教育がマッチングをしていくと、子供たち自身が小さいときから少額でやっていくといった形の投資への身近な取組みが実現していくのかなと思っています。

 相続については、有価証券が100%で換算されてしまうということに関しましては、永沢委員がおっしゃいましたように、マーケットというのは変動するものですので、ここは何とか考えていただきたいと思います。といいますのも、身近なところでも比較的お金を持っていらっしゃる方になればなるほど、相続が近づいてくると有価証券から不動産へとお金が動いていくということが実際に起きておりまして、これは非常に残念だなと思います。もっと市場に資金を向けていただくためにも、ここは公平なという言い方がよいのかどうかわかりませんけれども、あまり証券について厳しくしていただきたくはないなと思いました。

 最後に教育と情報提供いついては、現在のお取り組みは非常にすばらしいと思っております。投資教育について、金融庁の方がみずから出向いていろいろなところでお話をなさる、あるいはいろいろな方たちと交流をしていくということは大変効果もあるし、時間がたてばたつほどじわじわと広がっていくことだと思っております。一方で、現時点で提供されているものというのは、長期で積み立てて、分散投資をすれば資産はできますよという感じの、虹色の未来を描き過ぎている部分もありまして、マーケットというのは本当に変動するものですし、下がったときの情報提供ほど重要なものはないと思っております。特に、積み立て投資をやっていて、初期にマーケットが下がってしまいますと、実際には幾ら積み立てても4年、5年と元本が回復しない時期が続きます。これは途中でとても嫌になってしまう。やらなきゃよかったなと思ってしまう。ちょっと気の早い方でしたら、下がってしばらくした段階で、怖いからもう二度とやりたくないというふうに思ってしまいます。

 ところが、積立投資に関しては、まさに長期でやればやるほど効果が出てくるものでございますから、やめてしまっては何にもならない、元も子もないわけです。ですから、大きな市場の変動があって下がったときということを想定した情報提供の準備も、我々も常にしておりますけれども、ご当局におかれましても少ししておいたほうがよいのかなというふうに思います。今はとにかくやっていただきたいという一心だと思いますけれども、下がったときにどのように、今やめてはだめだよ、続けなきゃいけないんだよという情報提供を、今以上に頑張って出していただきたいというのがお願いでございます。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、林田委員にご発言いただいた後、休憩をとらせていただきたいと思います。

 林田委員、どうぞ。

【林田委員】
 ご説明ありがとうございました。もう大体論点は出尽くしてしまっておりますが、NISAの推移グラフ、先ほどご説明で順調に伸びているというお話だったんですが、金額も伸びも少々物足りないのかなという印象を持ちます。ただ、右肩上がりですので、傾向としては悪くない。積み立てNISAに関しても規模はまだまだ小さいですけれども、世代別の内訳を見ますと40歳代までの若い世代が7割を占めているということで、長期・積立・分散投資の普及促進という点ではいい傾向が出ているんじゃないかと評価したいと思います。

 心配なのは、規模がまだまだという状況のままで、NISAの伸びがどこかで頭打ちになってしまわないかということです。何かてこ入れがやっぱり必要なのかなと思っています。英国のISA、最初これは10年の時限措置で始まったものが恒久措置に切りかえられた後、グラフを見ますと家計の株式、投信の残高は着実に伸びているようです。日本のNISAやつみたてNISAについても、先ほどから出ていますけれども、恒久化によるてこ入れを真剣に検討すべきではないかと考えています。

 それから、資産運用に関して個人的な立場に戻って考えますと、どうも日々の仕事に追われる中で、資産運用のことまで意識が回ってこなかったなという反省があります。そういう方はかなり多いんじゃないかと思います。資料の説明にもありましたように、職場つみたてNISAというものは、一般の方が資産運用に踏み出す良いきっかけになるのではないかと私は思いました。まずは認知度を高めることが欠かせないと思います。2階の下のエレベーターのところにワニーサのゆるキャラが張ってありましたけれども、何か普及の取り組みを点的な取り組みから面的な取り組みに広げていかなきゃいけないのかなと感じています。

 それから、この取り組みを軌道に乗せるには、金融機関と各職場がうまく連携することが欠かせないと思います。関係者が努力をされて、ぜひ利用者にとって使い勝手のいい制度にしていただきたいというお願いをしたいと思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、ここで5分間程度の休憩をとらせていただきたいと思います。10時53分に再開させていただきます。よろしくお願いいたします。

( 休 憩 )

【神田座長】
 では、そろそろ始めさせていただきたいと思います。

 濱口委員、野尻委員、鹿毛委員、駒村委員、野村委員、佃委員、福田委員、黒沼委員が名札を立てていらっしゃるので、その順番でお願いしたいと思います。

 では、濱口委員、どうぞ。

【濱口委員】
 現行の制度を前提として、変更点ということで具体的な提案を申し上げます。まず、これは1回目から言っていることですが、NISA、つみたてNISA、それからDC(確定拠出年金)の投資対象商品に国債を加えたらどうかということです。投信の形ですと、日本の現在の国債の低金利では採算がとれないので、直接個人が買えるように個人向け国債を加えるということでどうでしょうか。現行の個人向け国債は10年までしか発行されていないので、これを財務省と協議して20年、30年まで広げるということはどうでしょう。現状の異次元の低金利の状態でも、20年、30年になりますと1%近い金利の水準がありますので、長期・分散投資という観点でも、それからDCの制度設計という観点でも十分に意義のあるレベルの金利であると思っております。

 これにあわせて、NISAの非課税期限を少なくとも20年へ伸ばす。本当はつみたてNISAも含めて欧米のように無期限とするべきだと思います。そもそも株式投資では10年の保有期間でもマイナスという状況は過去の歴史でもめずらしくなく、特に日本では20年、30年たってもマイナスという厳しい現実も過去にありましたので、今の5年というのはいかにも投資の現実に合わないということだと思います。

 今申し上げた提案の背景は、第1回目、2回目に申し上げたのでポイントだけもう一度くり返しますと、日本はとにかく現預金が多過ぎるということが課題になっており、DCにおいてもいまだに相当の現預金残高があります。これが結局金融機関を通じて大量に国債に流れているということで、現状ではそれを日銀が大量に買い上げている訳ですが、日本の資本市場の効率化、活性化のためにも、ぜひこの資金循環を変える必要があるということです。

 政策課題になっています分散投資という点でも、我々機関投資家のポートフォリオでは当たり前なのと同様に、個人のポートフォリオでも、債券が主な位置を占めるべきです。特に投資経験が少ない個人をいきなり株式へ、日本の株式市場の規模は世界に比べるとわずか七、八%の規模ですから、どうしても外国株式へ誘導することになる訳ですがそれは無理で、危険があると思います。国の年金はマクロ経済スライドで給付を下げていく方向ですので、そこに金利が稼げる商品があるということは、そのヘッジ機能も果せることになります。また、金融リテラシーの向上が課題になっていますが、普通はまずはマクロ経済、それから金利、債券、それから国の財政などを理解するところから始めるべきであって、そういう意味でも個人向け変動国債などはまさに金利が変動するので、最適の理想的な商品ではないかと思います。

 欧米に倣ってということは理解はいたしますが、ただ、日本は欧米とはそもそも資本市場全体の姿が相当違うということがございます。ご存じのように、日本の国債残高はGDPの約2倍で、欧米に比べれば突出して多いということで、それに見合う資金循環ができているわけですから、これに合わせた制度にしていくということも重要ではないかと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、お隣の野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 ありがとうございます。ご説明いただきました資料、基本賛成の点ばかりだと思っています。その上に立って3点だけお話をしたいと思います。

 前回までの高齢化の議論、高齢社会の中におけるという議論の中で、高齢者がどう対応するかという議論を2回ほどやったわけですけれども、それと比べてというか、それとあわせて今回の資産形成のところをいかにシームレスにするかというところに我々はもう少しフォーカスを当ててもいいんではないかと思います。私は資産形成と資産活用というふうによく言っています。積み上げていくところと引き出していくところ、この2つをNISAでどうやってシームレスな制度として見ていくかということが鍵になるんではないかと思っています。その意味では、15ページの世代別比較というのは、つみたてNISAと一般NISAがいかに違っていて、逆に言うとつみたてNISAは積み立て側に、一般NISAは引き出し側にというのが世代間としては非常によく出ていて、この2つがどういうふうにシームレスにつながっていくかということが大事なんではないかと思います。それで恒久化ということを条件として、前々回、発言させていただいたのが、生涯拠出上限額を持ったNISAという形で積み立てもできるし、例えば退職金で一括でもできるしというような形でコントロールできるようなものがあっていいのではないかなと考えています。

 それから、イギリスのISAの恒久化の議論を10年でそもそもやめるのをどうするかという議論をしたとご理解をされているかと思うんですけれども、私の理解は逆でして、イギリスのISAはそもそも恒久の制度なんですが、7年目で打ち切るかどうかを議論するというふうに理解をしています。恒久化をするんではなくて、うまくいかないんだったらやめるという制度設計と私は理解をしておりましたんので、恒久化をするかどうかの議論をすること自体が本当は違うのかなと思いました。1点目です。

 2点目ですが、相続のところで現役世代にどうやって資産を回していくかという議論も大事かと思うんですが、高齢化という、もしくは超高齢社会というのは人口が大幅に減少する社会でもあります。今1億2,000万人が2060年、65年には9,000万人を割るということが前提とされているとすれば、高齢者がどうやって消費をもう少しできるようになるか。安心して消費ができるということはちょっと難しい意味を持つかもしれませんけれども、持っている資産がどうやって経済とか景気にプラスになるのかということも目線に置いておく議論をしていく必要があるんではないかと、こういうふうに思います。

 3点目は、教育のところです。大変金融庁の皆様が頑張っていただいているなとつくづく思うんですが、やはり先ほど大崎委員からもご意見がありましたけれども、公的年金も含めてDCやiDeCo、それからNISAという全体の議論を説明いただけるようにすべきかなというふうに思いますので、ぜひ厚生労働省とか文部科学省とあわせてご尽力をいただけるといいなと。NISAとかという制度1個だけの議論や積み立てというところだけに議論が行ってしまうと、どうしても投資をすることが前提のご議論になると思いますので、ぜひ広い視野でお金の教育、金銭の教育というふうに位置づけていただけるといいなと思います。以上、3点です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】
 ありがとうございます。手短に2点コメントします。

 第一は、本日指摘された方もおられましたが、やはりこれからNISA等について税制優遇の幅を広げていくためには、そのための大義名分とか枠組みも同時並行で議論する必要があると思います。たとえば、若年層の資産形成が非常におくれているので、政策的に支援する必要があるとか、今後の高齢層の長寿化に伴う生活資金の確保を政策的に支援する必要がある、といった議論です。多分、この2点が柱になってくる、と思われます。一方では今日いただいた資料の中のIRAの説明でも、対象資金には当然所得制限があるわけです。そうした枠組みの中で、公的年金の扱いも考えればよい、と思います。要するに本当に必要な階層に的を絞った税制優遇という観点からの議論が、説得力を高める上でも必要ではないかと思われます。

 第二は、金融経済教育の問題です。金融庁への期待といいますかお願いは、司令塔としての役割をぜひ強められたら如何か、ということです。もちろん金融庁の皆様が金融経済教育の現場に出られているということは、その現場の実情を直接つかまれるとか、あるいはポリシー、コミットをはっきり示されるという点で私も大変すばらしいことだと思いますが、やはり対象は全国民ということになってまいりますと、それに加えて、金融庁はある意味では金融経済教育のホールセールの役割をも担っておられると思います。言いかえますと、たとえば現在、日銀の金融広報中央委員会や、証券業協会など各業界団体もかなり熱心に取り組んでいるわけで、結局オールジャパンとしての金融経済教育が推進されているわけです。。それは、大変結構なことと思いますが、他方、利益相反の管理など基本的なところをどう押さえるかという意味での品質管理も必要だと思われます。金融庁とされては、その点を含めた司令塔という役割を、これまでもやっていらっしゃると思いますが、ここでもう一度全体を見渡して、品質管理、品質向上を図っていくということを期待したい、と思います。

 最後に、本日の事務局の市場規制への点検等についてのご提案につきましては、私も賛成です。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、お隣の駒村先生、どうぞ。

【駒村委員】
 リテラシーとNISAに関して1点ずつコメント、意見を申し上げたいと思います。

 1つはリテラシー、今まで多くの委員のお話にも重なる部分でありますけれども、リテラシー、特に教育におけるリテラシーの充実というのは必要だと思うんですが、貯蓄をする、資産形成をするというのは、お金を使う消費とあるいは債務との表裏一体の関係であるわけですが、33ページにはこの借金の意味みたいなものも少し言及されているということでありますが、最近はインターネット、スマホの充実によってローン、クレジットカードをつくるのが非常に簡単になってきて、それからスマホ等でさまざまな消費刺激の機会が増えている。認知科学的に言うと情動的な消費機会が増えていると思います。

 そういった中で、例えば経済や金融の基本的な意味、インフレ、デフレ、複利の意味、あるいはポイントとか手数料がどういうふうな負担になってくるのかというようなことをやはり理解してもらう必要がある。子供たちの間でも理解してもらう必要があると思うんですが、今、中学生の社会科のテキストの作成にかかわっているんですけれども、見開き1ページ使った資料で、今のようなお金の話をしている教科書会社は6社か7社チェックしたところわずかに1社というところです。あとは、お金を貸し借りしたら金利がつきますよという程度の説明がほとんど主流なようですので、これは中学校の例ですけれども、現在基礎的な金融リテラシーというか知識についてどういう状況になっていて、これが22年以降は、どうなるのかモニターしていただきたいなと思います。このときには34ページに出ているような、自分がネットで物を売買したときには情報も出ていくんだということも知るべきである。この情報と金融リテラシー、これを一体的に今の若い世代には理解してもらう必要があるんだろうと思っています。

 それから、2つ目がNISAに関することなんですけれども、リテラシーにまずかかわる話なんですけれども、世代ごとに、ライフステージごとに必要なリテラシーというのは変わってくるだろうと思う。そういう意味では濃淡をつけなければいけないと思うんですけれども、これからNISAが必要になってくる、NISAを充実しなければいけない公共政策上の意義というのは、事務局で説明されたような国際的にも株式投資のウエートが低いということもあるんですけれども、やはり今まで議論があったように厚生年金、基礎年金、これが将来世代については大幅に給付水準が下がっていくことが大きい対物価上昇率で見たときに、基礎年金はおよそマイナス20%、賃金上昇率を見たときにはマイナス30%給付水準が将来世代は下がるんだ。それをキャンセルアウトするためには当然ながら自助努力が求められていくわけでして、NISAの恒久化やその充実というのは必ず、特に若い世代にとってみれば大事で、これに入っていただくような誘導が必要だと。こういう形で政策上の必要性が出てくるんではないかと思います。

 ただ、この分野をやっている人間として一つ悩ましいのは、こういうふうな形で自助努力を支援していくわけでありますけれども、低所得者、非正規労働者、中小企業の労働者、こういったところにこういう自助の機会が実質的に広がり得るのかどうなのかというのが非常に心配でありまして、さっき申し上げたように、厚生省では今の基礎年金の程度の下がり方だと大変まずいことになるので、年金財政検証の中でこれを見直すという方法はないのかと議論はしている。ただ、保険料の上限を設定しましたから、もうどこからどこにお金を回すかはゼロサムゲームとなっていますので、そういう意味では低所得者のところにも自助努力の機会が実質的に保証されるように、これはもしかしたらiDeCoやiDeCo+の充実という分野にもかかわってくるかもしれませんけれども、こういったところも同時に説いていく必要があるんだろうと思います。

 いずれにしても、公的給付の守備範囲が下がっていくのを補うためにも、NISAの充実は必ず必要であると、こういうふうに思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、野村委員、どうぞ。

【野村委員】
 ありがとうございます。何点か気づいた点というか思うところをお話しさせていただければと思います。

 まず、前書面のところでございますけれども、これはおそらく皆様ご指摘のとおり、結果的に顧客の利便性にもつながり得るということかと思います。また足元での非常に大きなうねりといいますか、それこそ5年、10年前との違いかもしれませんが、やはり環境面でプラスというところがあります。金融機関は紙が環境負担という点では目につくところかなとも思いますので、環境にも優しいというのは重要な論点になるのかと思います。

 あと、金融リテラシーのところで、資料の中に退職世代のところというのもキーワードとして入れていただいておりまして、退職世代はおそらく学校ですとか職場といったような言うなればプラットフォームがないというのが一つの特徴かなと思います。いわゆる金融リテラシー、あるいは金融教育的なものをデリバーする場ですね、それがわかりやすいものが必ずしもないということがあります。また、私の先月の発表でも申し上げましたけれども、どうしていいかわからないというのが現実だということも踏まえますと、やはりわからないのであれば相談するというそのアクションをまずはとるんだというような、かなり地に足の着いたところからの金融リテラシーなのかなというふうに思いました。

 それから、これも先ほど来ご指摘が何度もあるので繰り返しになって恐縮ですけれども、やはりNISAは恒久化をしていただくというのが重要なのかと思うところでございます。また、いわゆる資産移転のところなども幾つか指摘がありまして、私、ここのポイントはやはり意図せざる形で資産が非効率的な形に陥ってしまうというのをいかに回避するのかというのが非常に重要な論点ではないかと思います。その観点からは、もう少し、先ほどの野尻委員のご指摘とも近いのかもしれませんが、現役から引退というのもライフコースの中でやり方が多様化しているわけですので、現役から引退までの移行期というのも資産の非効率化をいかに防ぐのか、その方法やいかにという観点からNISAも含めていろいろ幅広い検討があっていいのかなと思いました。

 それから、これが最後ですけれども、先ほど高田委員からより幅広い目線での議論をということで、いろいろな制度があるというところでの、横串を刺したような退職勘定というご指摘がありましたけれども、そのようなことをいろいろ幅広く考えるのは大事かなと思うのですが、そのときの切り口、ポイントは何かというと、機会均等ということではないかと思います。やはりライフコースが多様化しておりますので、いかに個人個人に機会均等という形での制度をつくれるのか、それにすぐれたやり方は何なのかということになるのかなと思います。

 ただ、そうしますと、個人個人に例えば一定の金額の枠を付与というような観点になるのかと思ったりもするのですが、そのときに忘れてならないのは、実際のオペレーション上の対応が本当のところ可能なのかということです。そこをあわせて考えていき、十分に検討がやはり必要なのではないかと思いました。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、佃委員、どうぞ。

【佃委員】
 ありがとうございます。1つ質問がございます。事務局資料の14ページの現行NISAの現状の①のスライドで、14.5兆円、先ほど若干伸び悩んでいるんじゃないかというコメントもございましたけれども、こちらの14.5兆円の内訳で、このうち――これは事務局でもあるいは委員の方でもどなたでも結構なんですけれども――日本株式の割合ってどれぐらいなんですか。ざっくりベースでも結構ですが、大体どれぐらいあるんでしょうか。

【田原総合政策課長】
 上場株式全体ということですと、5.6兆円でございます。この内訳については数字を持っておらず、日本株の割合は不明でございます。

【佃委員】
 ありがとうございます。この質問に関連して後ほどちょっと触れたいのですが、コメントとしては2つあります。

 まず1つ目は、今日の大事な論点は、やはりNISAを中長期的にサステイナブルに発展させる、そのためには何が必要かといった点だと思うのですけれども、先ほど来、事務局からご提示いただいた論点であるとか、あるいは多くの委員の皆様がコメントされたとおり、例えばNISAの恒久化であるとか、限度額の撤廃であるとか、税制優遇制度の拡充であるとか、あるいは金融経済教育の推進などを適時適切に図っていくことは、私は個人的に大賛成です。これは引き続きやっていくべきだと思います。

 一方で、2点目に先ほどの質問で、特に日本の場合にはホームカントリーバイアスが強いということもあって、もうちょっと日本株あるかなと思っていたんですけれども。

 その中で、国民の生涯を通じた資産形成を支援する制度を充実させることだけでこの政策目的が達成できるのかと考えると、そもそもインベストメントチェーンを真に機能させないと、この支援制度を幾ら充実させても国民の安定的な資産形成につながらないんじゃないかと考えます。すなわち、資産形成を支援する制度というのは必要条件であったとしても十分条件じゃないと考える次第です。

 では十分条件は何かというと、やはり投資している対象の資産のパフォーマンスがよくなるというのが大前提でございます。その中でもやはり日本株式に関しては、当然ながら日本企業の成長、日本企業の資本生産性の改善なくしては最終的にインベストメントチェーンを機能させ、ひいては国民の安定的な資産形成につながらないというふうに考えております。

 そういった意味で、金融庁さんでは池尾先生が座長をされているスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議があって、まさに田原課長も大変ご尽力されてこられたと思うんですけれども、機関投資家と企業との対話の促進であるとか、あるいは政策保有株式の縮減であるとか、今回のこちらの市場ワーキング・グループのテーマとは直接は関係ないんですけれども、これらも含めた企業統治改革を推進していかないと、結果的にこの14ページのこのグラフが上に伸びていかない、そうい
うふうに考える次第であります。以上、2点です。

【田原総合政策課長】
 ご指摘のように一般NISAですと日本株はそれなりに入っているのではないかという感じはいたします。

 それから、投資信託は8.5兆円でして、この中には当然日本株をポートフォリオとして組んでいるものもありますので、先ほど申し上げた数字よりは日本株式というか株式の額は多いのではないかと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、福田先生、どうぞ。

【福田委員】
 ありがとうございます。基本的には皆さんのお考えに私も意見は同じです。けれども、「貯蓄から投資へ」という非常に大事な問題を実現するうえで大事なポイントはやはり限られた予算の中でいかにそれを効率的に実現するかという視点です。お金をばらまいてそれを実現しようという発想は、これは大崎委員もおっしゃったことですけれども、日本の財政が火の車の中で難しい。いかに限られた予算の中で効率的にそれを実現するかという制度設計の発想というのはやはり大事だという視点は持つべきだろうとは思います。

 そうしたときに、ある資産から別の資産にお金を移す方法としては大きく分ければ2つで、それを実現するには、移す側の資産を魅力的にするか、もとの資産を魅力的じゃなくするかの2つしか方法はなく、私はそれをバランスよくやっぱりやるべきだろうというふうには思っています。例えば、事務局の資料26ページも相続税の問題がありまして、確かに土地の相続とかに比べれば株の相続は不利なんですけれども、じゃあ土地の相続を有利なままにしてそれにあわせて株の相続も有利にするほうがいいのかどうかというのは、これは議論の余地はあります。やはり土地の相続に関しても現状の仕組みを見直しながらバランスをとるという発想というのは大事だろうとは思います。

 それから、日本人の預金に資産が偏っているわけですけれども、これも現在の預金の魅力をそのままにしてリスク資産にというよりかは、預金の魅力をおとしめるという言い方は変ですけれども、魅力をなくするような仕組みづくりを考えるということはもう一つあり得ます。具体的に言えば、海外では一般的だけれども日本ではないものというのは口座維持手数料でありまして、これはマイナス金利政策の中で日本の銀行もかなりやりたいところではあるとは思うんですけれども、なかなか実現には至っていない問題です。これをどう実現していくかということは、移す元の資産を魅力的じゃなくする一つの考え方でもあり得るのだろうなとは思いますということです。これが1点目です。

 あと、NISAに関しては皆さんのご意見、基本的には延長するというのは私も賛成です.けれども、これも期間は長くして金額に関しては幾らでも大丈夫というのではなく、標準的な家計が持つのに適したリスク資産というものに応じた非課税の総額というのはあるべきだろうとは思います。

 それから、現行のNISAの仕組みで若干私は違和感を持っているのは、やっぱり損をした人はNISAを持っていても逆に税制上不利益をこうむるという仕組みです。NISAでもうかった人はもうかった上に税制上利益をこうむるんだけれども、NISAを持っていて損をした人は損をした上に税制上も不利益をこうむるという、非常にアンバランスな仕組みです。確かに現状では損をした人は2割かもしれない――事務局の資料でも16ページでは損をしている人は2割かもしれないんですが、その2割の人というのは、持っていてキャピタルロスをこうむる上にさらに税制上も不利益をこうむるというのがバランスがとれた制度設計なのかどうかというのはちょっと議論の余地はあるかもしれません。

 それから、最後に金融教育に関して1点だけコメントをさせていただきたいと思います。金融庁の取り組みとかも私も非常に評価したいとは思います。けれども、学生さんたち、あるいは生徒さんたちだけに金融教育をするんじゃなくて、やっぱり学校の先生たちにも金融教育をするということは大事だというふうに思っています。これはもちろん出張講義でいろいろと教育されて、それで勉強はするんだけれども、結果的に日常的に接するのは先生たちで、先生たちにもそういうことをいろいろ理解してもらうという取り組みは非常に大事です。

 経済学者の一部の人たちは高校の先生に経済学を教えるという取り組み、特に高校の社会の先生に経済学を教えるという取り組みをやっていまして、私もやったことはあるんですけれども、一部の方は非常に勉強している方もいらっしゃるのですが、大半の高校の先生は、こういう言い方をするとちょっと失礼かもしれませんけれども、やはり経済学の知識が全然ない方が多い。社会の先生であっても、これらの知識がない方が驚くべきほど現状は多いということです。やはり、そういう方にも金融教育をするというような試みなんかも心がけていただくというのが望ましいことじゃないかなと思います。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】
 契約締結前交付書面等の見直しについて2点と、店頭デリバディブ取引の証拠金規制について1点申し上げたいと思います。

 契約締結前交付書面というのは、金融商品取引業者の説明義務を書面交付の形式で定めたものでありまして、平成18年の金融商品取引法の制定時に金融商品横断的な規制として導入されたものです。1つの目玉だったわけですけれども、確かに上場株式とか国債については形骸化しているというのはそのとおりだと思います。

 もっとも、事業型ファンドの持ち分については、大崎委員が指摘されたようにディスクロージャー制度が適用されないので、契約締結前交付書面の交付が目論見書による情報提供のかわりになっている面があると思います。そして、一般の有価証券については、基本的な仕組みとリスクを開示するだけなのですが、事業型ファンドの場合には個別の事業の内容などもここに記載されることになっています。そうだとしますと、この交付書面の交付義務の免除の範囲を広げるとしても、事業型ファンドについてはその対象外とすべきではないかと思います。

 もう一つは、この書面交付の際には、その記載事項について顧客の属性に応じて説明することなく金融商品取引契約を締結する行為が金融商品取引業者等の禁止行為に挙がっているのです。この交付義務が現在でも一部免除される場合があるのですが、免除されるとこの行為規制も適用されなくなります。これはむしろこの契約締結の際にリスク等について説明する義務のほうはきちんと残しておくべきだと私は考えています。特に、1年ごとにそんなものは必要ないのではないかと思うかもしれないけれども、1年たてば理解力に変化が生じているかもしれませんので、そういう点について臨機応変に、必要なときに適切に説明義務が課せられるような仕組みをつくっていく必要があるのではないかと思います。

 それから、店頭デリバディブ取引の証拠金規制ですが、これのポイントは、会社更生法の問題だと思うのですけれども、会社更生法上問題がないということが、和仁参考人のご説明でよくわかりましたので、これについては一括清算法の改正をぜひ進めていただければと思っています。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 どうも多くの意見を、また幅広い観点からのご意見、貴重なご指摘たくさんいただきましてありがとうございました。

 今日は、あとご発言いただいてない方は池尾先生ですけれども、いかがでしょうか。

【池尾委員】
 金融経済教育に関して、先ほどちょっと福田先生がおっしゃったことに関連して1点だけ申し上げます。

 学習指導要領に組み込んでいくということは重要でやるべきことだと思いますが、それをちゃんと教えてもらえるかという話であって、教員の金融リテラシーを向上するために研修等をするというのは金融庁の資料にもあるんですが、なかなか研修を受ければ教えられるようになるかというと難しいところがある。だから、銀行とか証券会社の退職された方といいますか、銀行・証券のOBとかOGの方をある程度組織化して、中学校とか高校に教えに行ってもらうというか、あるいは中学校とか高校の先生が教えるときの支援をしていただくような形は考えられないかと。なかなか金融庁の100人ぐらいの方が全国の中学・高校に全部行くことは無理だと思いますので、草の根的にそういうことをやる上では、長年金融業務に携わっていたそういうOBの方は、多分そういうことを教えたいという意欲を十分お持ちの方も多いと思うので、そういう金融機関関係の退職者の方をマンパワーとして活用する、そういうような取り組みも証券業協会とか全国銀行業協会とかで考えていただいてもいいんじゃないかなと思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 2巡目でさらにご意見があれば伺いたいと思います。業界からのオブザーバーの方々ももしご発言があれば伺いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

 望月さん、どうですか。

【望月オブザーバー】
 全国銀行協会企画委員長兼みずほ銀行常務執行役員の望月でございます。今、各委員から金融教育のお話がございました。池尾委員からも貴重なご提言をいただきました。全銀協および個別行の取り組みを少しご紹介させていただきます。

 先ほど機会均等というお話もございましたが、地銀・第二地銀も含めてそれぞれの地域と連携しながら、初等教育、中等教育機関等に訪問する取り組みを続けております。また、私ども金融機関の立場としては、学校の先生方がどういった教材で教えればいいのかといったことも極めて重要になりますので、例えばみずほフィナンシャルグループでは、東京学芸大学と提携し、道徳や社会科の時間で取り扱う教材を作成・配付するなど取り組んでおります。機会均等ということでは、地銀・第二地銀も含めその地域の職員ができるだけ教育機関へ訪問すると共に、全銀協でもどこでも出張講座を開催しております。遠隔地含めて年間多数の講座を開催しており、例えば、最近では、私の出身地でもある山梨県の身延の高校でも開催しております。

 金融リテラシーにつきましても、インベストメントを行うにあたっての教育のチェーンのようなものが必要だと考えており、初等教育の早いタイミングから金融になじんでいただくところから、高等教育、そして職域や高齢者の金融リテラシーの教育に至るまでにおいて、このようなチェーンをしっかりと確立していくことが重要です。そして、お客さまにサービスをご利用いただくにあたり、前回の本グループの議論の場で銀行・信託・証券の連携というビジネスモデルをご紹介申し上げました。NISAは、投資の入り口部分の裾野拡大の役割が大きく広がってきており、まず銀行において預金からこうした投資のとば口に立っていただき、そこでの投資の成功体験も踏まえて、みずほ証券において、もう少しリスクテークした投資信託や、株式へ投資されるお客さまもいらっしゃいます。そしてさらに年齢が上がれば、みずほ信託銀行で信託機能を使った資産承継サービスをご利用いただくなど、ライフサイクル、ライフイベントに応じたサービスをグループとしてしっかりとご提供していくことが非常に重要であり、そのような取り組みへのますますの努力が必要であろうということについて、本日のご議論を伺いながら課題認識を新たにしたところであり、少しご紹介をさせていただきました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 永沢さん、どうぞ。

【永沢委員】
 鹿毛委員と私は金融広報中央委員会の金融経済教育推進会議の委員をしておりまして、その関係もありまして、そちらのほうで実は取り組みを業界団体のご協力をいただいて、個々の業界ではなくて一緒になってやっと大学に対しての教材ができ上がりつつあるという状況でございまして、池尾先生がご指摘のところ、少しずつは進んでいるんですが、大学にもなかなか、各全国の大学でやっていただくのもまだまだやっていただくところ、ご協力いただくのに苦労されているようなんですが。ましてや、もっと数の多い小・中・高というところ、やはり国からのご支援、文部科学省からのご支援がないと、せっかくつくって、あるいは業界団体、ボランティアグループをつくったとしてもなかなか入り込めないという状況があるようでございますので、これはやはり国のほうからご支援いただかないと難しいのではないかなと思っておりますので、取り組みはしっかりやりつつあるんですが、なかなかつくってもというところを皆様にご理解をいただいてご支援いただきたいと思います。失礼いたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかに、委員の皆様あるいはオブザーバーの方々でご発言ございますでしょうか。

 特によろしゅうございますでしょうか。

 それでは、今日は予定の時間よりも早いのでございますけれども。このあたりとさせていただきたいと思います。

 本日も多数の貴重なご指摘、ご意見をいただきまして、どうもありがとうございました。本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえ、今後、さらに具体的な検討を行わせていただきます。

 次回のこのワーキング・グループの日程及びテーマ等につきましては、後日、事務局からご案内させていただきます。

 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――




 

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