金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第18回)議事録

 

1.日時:

平成30年12月17日(月)15時00分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室


【神田座長】
 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。

 ただいまから、市場ワーキング・グループの第18回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 今回も、委員の皆様方の着席はランダムとさせていただいております。

 本日は、120分での議事を予定しておりますため、途中休憩はとらないということで進めさせていただきますので、お許しいただければと思います。

 まず初めに、今回の会合に参考人としてご参加いただく方を、事務局からご紹介をお願いいたします。

【小森市場課長】
 ご紹介申し上げます。委員の皆様から見て左側のほうにお座りをいただいております、東京証券取引所の青執行役員です。

【青参考人】
 東京証券取引所の青でございます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 それでは、早速ですけれども、本日の議事に移ります。

 本日は、テーマは3つとなります。「直接金融市場に関する現行規制の点検」、2番目が「近時の市場動向等を踏まえた対応」、そして3番目「高齢社会における金融サービスのあり方」、これら3つを取り上げます。

 まず、前回、第17回会合、11月16日に引き続きまして、直接金融市場に関する現行規制の点検について、前回の会合でのご議論等も踏まえた、このワーキング・グループとして、このテーマについての取りまとめをさせていただきたいと思いまして、その取りまとめの案を事務局で準備していただいておりますので、事務局から説明をしていただき、ご審議をお願いしたいと思います。したがいまして、本日の進行としては、このテーマについて先にご審議というか、討議をする時間をとらせていただきます。

 それが終わりましたら、2番目に、近時の市場動向等を踏まえた対応といたしまして、最近の市場や取引所関係をめぐる諸問題への対応策についても、ご審議をお願いしたいと思います。具体的に言いますと、総合取引所の実現に向けた取組みと、上場会社役職員等の株式投資意欲および金融リテラシー向上に係る取組みとして、インサイダー取引規制に関するQ&Aの改訂、この2つについて事務局から説明していただきます。

 その後、東京証券取引所から、投資家が投資しやすい市場構造等を検討するため、現在、同取引所で開催されております市場構造の在り方等に関する懇談会における議論の状況について、ご報告をしていただきます。これらについて、皆様方からご意見をいただければと思います。

 そして、最後、3番目ですけれども、第14回から第16回まで数回に分けて議論してまいりました高齢社会における金融サービスのあり方について、これまでに皆様方からいただきました主な意見を事務局で整理していただいておりますので、その紹介をしていただきます。

 なお、本日ご欠席の永沢委員から、一部のテーマについてですが、意見書の提出がございましたので、席上に配付させていただいております。適宜ごらんいただければ、ありがたく存じます。

 それでは、まず最初に、直接金融市場に関する現行規制の点検についての議事から始めたいと思います。事務局の八幡市場業務監理官からご説明をお願いいたします。

【八幡市場業務監理官】
 市場課監理官の八幡でございます。

 私のほうから、前回ご議論いただきました直接金融市場に関する現行規制の点検についてということで、資料1に基づきまして、取りまとめ案についてご説明させていただきます。

 資料1をごらんいただきますと、1枚、概要と、後ろに2枚、取りまとめ案をつけさせていただいておりますけれども、概要の1枚紙に基づいてご説明させていただきたいと思います。

 前回のワーキング・グループにおきましても、3点、法律改正も含めて検討している点についてご説明させていただきました。

 まず、1点目でございますけれども、契約締結前交付書面等の見直しでございます。契約締結前交付書面につきましては、顧客に対して重要な情報を提供するという趣旨がそもそもの目的であります。この趣旨を損なうことなく、一方で、本当に顧客目線でわかりやすいものになっているか。顧客利便の観点から、情報が必要以上に冊子で郵送されてくることが、顧客にとっても、環境への配慮等の点からも、必ずしも有益なものになっていないのではないかということから、合理化、効率化を図るとともに、一方で、複雑な商品については、顧客本位でしっかりと説明することが必要であろうということを、前回のワーキング・グループでも議論いただきました。

 あわせて、本書面とか広告等については、記載事項や方法をより工夫しまして、顧客が認識、理解しやすいものにするなど、最近のIT技術に対応した顧客への情報提供のあり方について、自主規制のあり方なども含めて、しっかり市場関係者と連携しながら検討していくべきではないかというご意見をいただきまして、このような取りまとめ案とさせていただいております。

 2点目でございますけれども、犯則調査における証拠収集・分析手続でございます。近年、情報技術の進展等によりまして、犯則調査におきましては電磁的記録等の証拠収集や分析を行う必要性・重要性が高まっているところであります。こうした点を踏まえて、他法令、具体的には刑事訴訟法や国税通則法等でございますけれども、既にこれらの法律には電磁的記録等の証拠収集等に係る規定がございますので、これらを参考にして金商法にも必要な規定を整備してはどうかという提案でございます。この点については、前回も大きな議論はなかったのではないかと承知しております。

 3点目でございますが、非清算店頭デリバティブ取引の証拠金規制ということでございます。前回、この分野において法制、実務の専門家の方々が多い、日本銀行が事務局を務める金融法委員会においても検討していただいておりますということをご紹介いたしまして、委員会のほうから和仁先生にも来ていただきまして、ご紹介をいただいた案件でございます。内容につきましては、我が国金融機関等が行う非清算店頭デリバティブ取引につきまして、取引の一方当事者が倒産した場合の証拠金の清算に関しまして、関係法において国際慣行に即した規定を整備するべきではないかということで、この点について前回も議論いただいたところでございます。

 取りまとめ案は、2枚目以降に記載しておりますが、説明は割愛させていただきます。

 私の説明は以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 今、ご説明ありましたように、お手元の資料1の1枚目が取りまとめ案の概要で、2枚目と3枚目というのでしょうか、1ページ、2ページと書いてある表裏の紙が取りまとめ案ということになります。

 ご質問、ご意見等があれば、お出しいただきたいと思います。なお、このワーキング・グループとして、本日、取りまとめをさせていただきたいと思いますので、できればそれを念頭にご発言いただけると大変ありがたく存じます。

 どなたからでも。上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
 ありがとうございます。

 契約締結前交付書面の点ですけれども、結論としては、今回の案文のような対応はあり得ると思っておりますが、やはり基本的な考え方としては、紙の書面が交付されるところを限定的に、あるいは補完措置をとりながら電子化していくという態度をとるべきだろうと思います。今日ご欠席の永沢委員からは、大分、時代は変わってきたんだという趣旨のご意見が出ておりますが、大きな流れはそうかもしれませんけれども、まだ高齢の方、あるいは金融資産をある程度お持ちの方の中でも、コンピューターであるとか、インターネットになれていない方というのは、仄聞するところ、国務大臣の方も含めていらっしゃるようです。電子化を進めるとしても、リクエストがあればきちんと書面を出すということではあると思いますけれども、慎重に進めていくということが大事だと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかに、いかがでしょうか。どうぞ、福田委員。

【福田委員】
 基本的には、私も案に賛成いたします。ただ、いろいろなタイプの投資家、あるいは人たちがいるという次元の問題をやはり考えるべきです。例えば貯蓄から投資へと言ったときに、もちろん銀行預金だけではなくて、いろいろなリスク性資産を持たなければいけません。けれども、その場合、多くの人が複雑な金融商品まで持つべきだという発想は基本的にはなくて、やはりそういう金融商品を持つ人たちは非常に特殊な人たちです。そういう意味では、まず標準的な人たちに対してわかりやすい情報を提供するということが必要です。それから、それとは違う金融商品を持つ人に関しては、それはそれで別の対応をするという、多次元的な対応がおそらく必要なのだろうとは思います。また、現状のように非常に画一的な書面がどっと送られてくるという仕組みよりは、投資家のタイプによって必要最低限の重要な情報が説明されることが重要です。ここでも書かれていますけれども、趣旨というものが常に大事に対して、顧客に対して重要な情報とは一体何かという趣旨が常に踏まえられて、そういう原則が踏まえられていれば、いろいろな形での見直しは大丈夫だろうと私も考えております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかに、いかがでしょうか。特に、よろしゅうございますでしょうか。

 そうしましたら、取りまとめをさせていただけますでしょうか。今、上柳委員と福田委員からご注意はいただきましたけれども、お手元の資料1の取りまとめ案の内容そのものについては、委員の皆様方にご賛同いただけたものと理解しておりますので、恐縮ですけれども、表現の平仄など、てにをは的な最終チェックは念のため私にご一任いただきまして、最終的に確認の上、確定して、取りまとめとさせていただきたいと思いますけれども、そのようにさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】
 どうもありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。どうもありがとうございました。

 次に、今日の2番目のテーマになりますけれども、近時の市場動向等を踏まえた対応の議事に移らせていただきます。

 まず、事務局の八幡市場業務監理官からご説明をお願いします。

【八幡市場業務監理官】
 引き続きまして、市場業務監理官の八幡でございます。それでは、私のほうから2点、資料2と資料3に基づいて、ご説明を順番にさせていただきたいと思います。

 まず、資料2「総合取引所の実現に向けて」という資料をご覧いただければと思います。

 1枚おめくりいただきまして、世界の主な取引所の現状を記してございます。いろいろなランキングがございますけれども、時価で見たランキングは、左側、シカゴのCMEグループ、それからニューヨーク証券取引所などを傘下に持つインターコンチネンタル取引所(ICE)グループが1番、2番でございます。以下、香港、ドイツと続くわけですけれども、いずれの取引所も、我々は総合取引所と言っておりますけれども、世界の常識なので当たり前のこととされていますけれども、証券・金融先物と、アンダーラインを引っ張っていますが、商品先物をともに取り扱う取引所ということでございます。

 一方で、本日は、青執行役員、川井執行役員に来ていただいていますけれども、日本取引所グループが取り扱っている商品は、現物の株式、証券・金融先物ということで、いわゆる金融系の商品になりまして、商品の分野がない取引所でございますが、海外の主流は総合取引所になっているという認識でございます。

 1ページめくっていただきまして、2ページ目でございますけれども、世界の商品市場の推移をグラフにしております。

 世界の市場の出来高は右肩上がりでございまして、2000年初頭から足元に至るまで、約8倍の取引、出来高量になっているところでございます。一方で、右肩下がりになっているのが日本の出来高でございまして、同じ期間をとってみますと約5分の1になっている。かつ、これは尺度が違っておりまして、世界の取引所は左軸、日本は右側の軸でございまして、2桁ほど違うので、これを同じ尺度ではかると、ほんとうに下をずっと這ってしまうグラフになるのが日本の状況でございます。

 1ページめくっていただきまして、我が国の取引所の現状を模式図的に書いております。左側がJPX、日本取引所グループでございまして、右側に東京商品取引所、TOCOMと言っている2つの取引所がございます。左側の金融商品取引所は金融庁所管、右側のTOCOMは経済産業省所管と、縦割りの状況になっています。マーケット参加者からは、やはり1つの取引所で金融も、商品も取引できる総合取引所を我が国においても早く実現してほしいと、長らく期待されているところでございます。

 4ページをご覧いただきますと、総合取引所の一元的な規制・監督のスキームでございます。先ほど期待は高まっていると申し上げましたが、スキーム自体はもう既に5年前の法律改正においてできております。商品所管官庁と金融所管官庁が協議、連携することによって、規制・監督自体は金融所管官庁に一元化をして、そのもとでの総合取引所の実現、そして清算機関も一体化しようというようなスキームは既にできて、施行もされているところでございます。

 さらに1枚めくっていただきまして、法律も含めましたこれまでの経緯をちょっと振り返ってみますと、今から10年前になりますけれども、第1次安倍内閣が発足したときの最初の「骨太方針」におきまして、取引所において総合的に幅広い品ぞろえを可能とするための具体策等を検討し、結論を得るということで、総合取引所の実現に向けた議論がスタートしております。

 政権は民主党政権にかわりましたけれども、平成22年以降もその閣議決定は引き継がれておりまして、平成24年9月の法改正で、先ほど申し上げました金融庁が一元的に規制・監督する総合取引所のスキーム、枠組みが法律として公布され、施行もされているところであります。

 政権交代後、再び安倍政権でも、毎年の「骨太方針」、当時は「日本再興戦略」、直近は「未来投資戦略」となりますけれども、総合取引所を可及的速やかに実現するということはずっと閣議決定されているところであります。時々、閣議決定なのに、行政はさぼっているのかというご批判も頂戴するところでありますので、しっかりと議論を進めていかなければならないという状況になっております。

 足元では、今年の夏以降の動きでございますけれども、規制改革推進会議におきましても、大田弘子議長のもとで、優先度の高いテーマとして総合取引所の実現が取り上げられまして、経済産業省、金融庁等が、あるいは取引所自身も規制改革推進会議の場に呼ばれまして、推進に向けた議論が進みました。

 その上で、11月19日に「規制改革推進に関する第4次答申」が取りまとめられたところでございます。

 この内容について、ご紹介させていただきたいと思います。次の6ページ、7ページでございます。

 まず、6ページ、答申の1.第四次産業革命のイノベーション・革新的ビジネスを促す規制・制度の改革、(2)総合取引所の実現の基本的な考え方でございます。アンダーラインを引いたところを中心に紹介させていただきますと、我が国の経済規模や金融資本市場の規模に見合った商品市場を形成していくためにも、総合取引所を実現すべきである。メリットはさまざまあるんですけれども、結果として多くのビジネス機会を喪失してきたことを認識すべきである。以上の考え方に基づき、形式的な一体化ではなく、実質的に総合取引所を実現する方向で所要の措置が講じられることを期待する。

 こういう考え方のもとに、次のページでございますが、実施事項として4点、aからdまで挙げられております。

 まず、1点目のaのところでございますけれども、TOCOMに上場されている一部の商品デリバティブについて、JPX傘下の取引所への戦略的な移管を検討し、例えば大阪取引所において株価指数等の証券デリバティブとワンストップで取引できるようになることを期待する。

 cのところでございますけれども、総合取引所をおおむね2020年度ごろの可能な限り早期に実現できるよう、今年度末を目途に目指すべき方向性について結論を得るべく、金融庁、経済産業省等において関係者との協議を行うとされておりまして、その際の重要なポイントとして4つ挙げられています。信用力の強化、流動性向上の確実性、プレーヤーのコスト負担が増加しない、使い勝手のよい市場設計となるような総合取引所を実現できるようにということで、引き続き金融庁においても実現に向けてしっかりと議論をしていきたいと思っております。委員の中にも、この分野に極めて詳しい方々いらっしゃるかと思いますけれども、さまざまな観点からご議論いただければ幸いでございます。

 続きまして、資料3に基づきまして、もう一点、私のほうからご説明をさせていただきたいと思います。インサイダー取引規制に関するQ&Aの改訂ということでございます。

 1ページおめくりいただきまして、4ページに「インサイダー取引規制に関するQ&A」、すなわち現行Q&Aが載っております。今も、金融庁と証券取引等監視委員会連名で、インサイダー取引規制に関するQ&Aというものを出しております。これは、主に法律の法令解釈について問いを1から5まで並べております。法令解釈なので、法律をある程度知っている方を前提に、法律ではどう書いてあって、どういうことが法令上違反になるのか、ならないのかといったことが書かれているものとご理解いただければと思います。

 戻っていただきまして、1ページ目でございます。今般、このQ&Aの改訂を検討、議論しておりますけれども、まず、一番上に書いてありますインサイダー取引規制の意義という点については、何ら変わるものではなく、引き続きしっかり押さえていかねばならないものであります。上場会社の内部情報を知り得る特別な立場にある者が、未公表の重要事実を知って株取引を行うということは、証券市場の公平性、健全性を損ない、投資家の信頼を失うおそれということでありまして、インサイダー取引を厳しく規制していくことは、何ら変わることなく、揺るぎない重要な事実であります。

 一方、当ワーキング・グループにおいても、何人かの委員からご指摘がございましたけれども、今のインサイダー取引規制に関しては、やや過度な抑制になっているのではないかという指摘がございます。ここに書いてございますように、通常の株取引でありましたら、これも当たり前のことでありますが、本来、自由に行うことができ、また、資産形成上有意義であります。それにもかかわらず、上場企業の役職員でありますとか、我々、国家公務員を含めた公務員などは、特に社内や取引先の重要事実に接することが多いという実情もありまして、インサイダー取引と疑われることを過度に心配して、慎重になってしまっているケースが多いのではないか。インサイダー取引に該当しない通常の取引であっても、過度に抑制されているということは非常に問題であって、例えば社内規則で株式投資についてルールが定められる際に全ての株式投資を禁ずるといったようなケースがあると、我々も聞いているところであります。こういった場合、過剰な抑制になっているのではないかという問題意識を持っておりますし、委員の方からもそういうご指摘をいただいたところでございます。

 こういった点を踏まえまして、株式投資に対して過度に抑制的にならないように、規制をわかりやすく解説することが必要ではないかということで、先ほど紹介した既存のものは法令解釈にかなり寄って書かれたものでありますけれども、もう少し投資未経験者とか、要はインサイダー取引規制という言葉は聞いたことあるけれども、何なのか知りたいというような方々に、わかりやすいものをつくったほうがいいのではないか。そういうことで、今のものは応用編として法令解釈等という形で位置付けることとして、その前段として、まず「はじめに」というところで、そもそものインサイダー取引規制の趣旨でありますとか、通常の株式投資は過度に抑制的になる必要はないということで、資産形成、貯蓄から投資ということを推進するためにも必要な情報を記載してはどうか。さらに、Q&Aでも、いきなり法令解釈で、具体的に黒か、白か、グレーかみたいなところよりは、素朴にインサイダー取引規制について知りたい人はかなりいるはずなので、そういったものを並べてはどうかと書いております。

 具体的なイメージを2ページ以降につけております。2ページが「はじめに」でございまして、申し上げたようなことを書いておりますけれども、アンダーラインを引っ張ったところを中心に申し上げます。

 先ほど申し上げたように、我が国では、重要事実に接することの多い役員の方々にとっては、インサイダー取引規制に抵触するのではないか、あるいはインサイダー取引を疑われるのではないかといった心配があって、慎重になっているケースが多いという声が聞かれます。確かに、インサイダー取引が横行すれば、証券市場の公平性、健全性は損なわれ、ひいては株式投資が魅力を失ってしまうおそれがあるということで、厳しく規制し、対応することが重要だと考えています。

 一方、株式投資は、不公正取引でなければ、本来、自由に行えるものであり、国民の安定的な資産形成の観点からも有効に活用されるべきものであります。また、次のパラグラフでは、アンダーラインを引っ張ってあるところでありますけれども、内部の重要事実を知らずに行う取引ですとか、重要事実の公表後に行う取引を抑制する必要は、本来、全くありません。社内規則で、例えば全ての株式投資を禁ずるというような場合には、それは過剰な抑制と言うべきかもしれません。

 こうした実態を踏まえまして、金融庁、証券取引等監視委員会では、今般、インサイダー取引規制について新しく理解していただくため、従来より作成、公表していたQ&Aについて、その構成をわかりやすく見直すこととしました。最後のほうのメッセージですけれども、インサイダー取引に当たるか否かの、いわばグレーゾーンの取引を意図的に行うわけではない限り、一般の方は基礎編のような点を理解していただければ、特に心配することはありませんというようなメッセージを加えているところであります。

 次の3ページ、基礎編の質問を見ていただければと思います。1つ目は、やはりよく聞かれるのは、上場会社の役職員というのは、自社株とか、取引先、その他の株式は一切売買できないのではないかと思っている人もいると。これは、もちろん基本的な要件に留意すれば可能ということ。

 2つ目、自分のところの社内規則では、一律禁止や許可制が定められているが、これは法令上求められていることなのでしょうかというような話もよく聞きますが、もちろんそれは法令上の要請ではないですといったことを書いております。

 4つ目は、インサイダー取引規制のQ&A、法令解釈ではないのですけれども、かなりよく聞かれる質問として、インサイダー規制があるので、投信とか、ETFも買ってはいけないんですよねというようなことがよく聞かれます。これは、わかっている方からすると全くもってナンセンスな質問です。けれども、実際には投信やETFを買うことがやってはいけないことと思っている人はかなりいて、これは金融庁職員なども含めて、相当の人数が実はこちらに該当するのではないかと思います。もちろん、これらの取引は、原則としてインサイダー取引の対象ではなく、上場会社役員であるか否かを問わず売買は可能ですということ。

 あと、我々、去年、つみたてNISAを各省庁にも奨励してもらおうと思って回っているときに、金融庁はどうなんだとよく聞かれたりしましたのが一番最後の質問です。金融庁職員の投資に係る規則、資産形成支援の取り組みはどのようなものですかということであります。金融庁も、一律禁止にしているわけではなくて、法令や服務に反しない範囲で、例えばつみたてNISAとか、投資信託を積み立て的に買っていくものなどは、インサイダーとは全く関係ないものであって、資産形成支援の取り組みとして積極的にやってくださいというようなことを事務連絡で流したりしています。

 インサイダー取引規制に関するQ&Aに書くべきかどうかというと、インサイダーからはむしろ逆に外れていくのかもしれません。しかしながら、そういうところをある意味、誤解している人も多々いるのではないかと思いますので、インサイダー取引規制に関してしっかりわかってもらう上で、普通の人が投信とか買っていいのでしょうかという、本来、インサイダーと関係ないことを過度に心配して、いろいろな取引を抑制的にやるということに対する問題意識については、金融庁としてもしっかり説明できればいいと思っております。何らかの形でこういった説明のための資料をつくって、経済界を含めていろいろなところにご説明できるような、まず題材としての資料をつくってみてはどうかということで、こんな検討を始めたところでございます。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 続きまして、東京証券取引所で開催しておられる市場構造の在り方等に関する懇談会における議論の状況等について、東京証券取引所の青執行役員からご説明をしていただきます。よろしくお願いいたします。

【青参考人】
 ありがとうございます。

 東京証券取引所で、上場関係を担当しております青と申します。ご説明の機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。本日は、東京証券取引所における市場構造の在り方等に関する検討の状況につきまして、ご説明申し上げたいと思います。

 ご承知のとおり、現在、東京証券取引所で開設しております一般投資者向けの市場は、市場第一部、市場第二部、マザーズ、それからJASDAQという4つの市場区分から構成されております。なお、厳密には、JASDAQにはスタンダードとグロースという内訳区分がございます。

 現在の形は、東京証券取引所と大阪証券取引所が2013年に現物市場を統合した際に、それぞれの市場構造を、上場会社や投資家に影響が出ないように、基本的に維持してできたものでございます。現在、それから約5年が経過したところでございますけれども、昨今、この市場構造をめぐりまして、改善すべき点が幾つか出てきていることを踏まえ、これからご説明させていただく、3つの切り口から検討を進めていきたいと考えております。

 具体的に申し上げますと、まず1つ目として、エントリー市場、すなわち新規上場する先の市場でございますけれども、現状は、市場第二部、マザーズ及びJASDAQの3つの市場がこれに該当しております。これらエントリー市場の在り方ですとか、上場基準がどうあるべきかといった点が一つの議論になるのではないかと考えているところです。

 2つ目は、ステップアップ先の市場でございます。上場会社が企業価値の向上を実現して目指す市場という位置づけで認識されていると思いますけれども、現在であれば市場第一部がこれに当たるわけですが、今後、ステップアップ先の市場の在り方はどのようなものであるべきかというところが2点目でございます。

 3点目としましては、市場の移行や退出の在り方でございます。例えば、市場第一部への上場や降格などの市場間の動きは、本来、どうあるべきか、あるいは、上場廃止はどうあるべきか、などについても、議論し考えるべき話ではないかと考えている次第でございます。

 こうした3つの切り口をベースにしまして、それぞれにどのような機能が求められているのかということをよく検討した上で、在るべき市場構造の姿を検討していきたいというのが私どもの意識でございます。具体的な検討に当たりましては、本年10月に「市場構造の在り方等に関する懇談会」を設置いたしまして、先月から議論を開始させていただいているところでございます。

 次のページに参りまして、このスライドは、ご参考までに海外の市場構造がどうなっているかということを、各国の代表市場の比較という形でまとめさせていただいたものでございます。日本のように、市場の階層構造を設けている取引所は「市場に階層あり」という欄に、ニューヨーク証券取引所のように、市場に階層がない取引所は「市場に階層なし」という欄に記載しております。

 市場に階層がありますNASDAQですとか、ロンドンと日本の代表市場の市場第一部を比較しますと、下線部分にございますように、日本は上場会社の数が比較的多いという状況でございます。もっとも、数が多いこと自体が問題というわけではございませんけれども、中身を見てみますと、例えば時価総額の中央値で見ますと、各国の取引所の代表市場は軒並み1,000億円を超えているという中で、日本は低めの水準になっているということは事実です。

 市場第一部は、日本経済を牽引していくべき企業群であることは間違いないところかと存じますけれども、そこを目指していく上場会社、あるいは、そこに上場している上場会社にとって、どのような市場であれば企業の成長という観点から一番適切なのかということについて十分に検討した上で、投資者の支持が得られるようなものにつくり上げていくことが必要ではないかと考えている次第でございます。

 次のページに参りまして、懇談会自体はまだ第1回を開催したばかりでございまして、まさにこれから検討を深めていくというステージでございますが、第1回では、どういった観点で今後の検討を進めていくべきか、ということにつきましてご議論いただいておりますので、その内容をご紹介いたします。

 1つ目は、市場構造につきましては、投資者に対して企業のリスク特性の違いを示す役割があるので、そうした役割に照らして、現在の市場構造に問題がないかどうかを見ていく必要があるということでございます。これまでの市場発展の歴史を振り返ってみますと、もともと戦後、再開しました取引所におきましては、単一市場であり1つしか市場がなかったところでございますけれども、その後、店頭登録銘柄ですとか、新興企業に向けて上場の機会、管理された市場で取引する機会を提供するために、取引所市場の対象を順次、拡大してきたという経緯がございます。そのたびに、企業のリスク特性が異なるということを投資者に示す観点から、新たな市場区分をつくることを繰り返してきたということでございますけれども、今後もその役割を適切に果たすことで、投資者が投資しやすい環境を整備することが必要ではないかということで、この点について考える必要があるのではないかということでございます。

 2つ目は、市場構造が上場会社の企業価値向上に側面的に寄与してきたのではないかということを踏まえまして、これをうまく活用していくことが日本経済にとっては重要ではないかということであります。昨今、東証に上場にしていただく多くの上場会社におかれましては、新規上場された後、市場第一部を目指していらっしゃるという状況でございます。もちろん、上場会社が企業価値を向上させる主体であるということは言うに及びませんけれども、市場第一部を目指すという階層的な市場構造があることが、これまで日本の上場会社の企業価値向上ですとか、ガバナンス、あるいは内部管理体制の維持向上の動機づけとして機能してきた面もあると考えている次第でございます。そうした経緯もございますので、これをうまく活用しまして、上場会社が企業価値の向上を図っていくきっかけをつくっていくことが適当なのではないかという観点でございます。

 それから、今後、こうした枠組みを検討していくに当たりまして、具体的な基準をどうするかという議論も出てくるところかと存じております。その際、基準が過度に形式的になり過ぎますと、枠組みをつくったとしても実態が伴ってこない可能性もあると考えております。そのため、上場会社の実態をどのように実質的に評価できるかという観点も、重要な視点の一つではないかと考えてございまして、そうした観点も含めて、今後、検討を進めてまいりたいと考えている次第でございます。

 先ほど申しました観点を柱としまして、市場構造の在り方を今一度、見つめ直していくことで、国内外の投資者の方々が投資しやすく、投資者に支持されるような環境を整備していく。そのためには、投資対象である上場会社の魅力向上を図っていくということが重要かと思っております。こうした取り組みを行うことによりまして、資本市場の持続的な発展、ひいては日本経済の発展に貢献できないかというところを、今回の改革の狙いとしたいと考えている次第でございます。

 ご参考までに、こちらの懇談会の委員は最後のページのとおりでございまして、本日、出席されていらっしゃいます市場ワーキング・グループのメンバーの方々にも、一部、ご参加いただいている状況でございます。

 今後につきましては、現在の市場構造に関する課題は何かということにつきまして、具体的な論点を整理していきたいと考えております。その論点につきましては、広く社会の皆様から意見募集を行っていくということを予定してございます。ほかにも、市場関係者の方々への個別のヒアリングを行うなど、様々なご意見を頂戴しまして、実りある検討を進めていきたいと考えている次第でございますので、引き続きご支援、ご協力等を賜れれば幸いでございます。

 私からの説明は以上でございますけれども、何かお気づきの点ですとか、今後の進め方等に関してご示唆などがございましたら、ぜひお伺いできれば幸いでございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、今、ご説明のありました資料2、3、4と、その説明も含めてですけれども、皆様方からご質問、ご意見等をお出しいただければと思います。どなたからでも、どの点についてでも、お願いします。

 大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】
 ありがとうございます。

 総合取引所の件と、インサイダー取引規制Q&Aの件、それぞれ一言申し上げたいんですが、まず総合取引所のお話でございますが、私、個人的に、規制改革推進会議専門委員としまして、規制改革推進会議としての意見、答申の取りまとめにも関与いたしました。商品市場が非常に厳しい状態にある中で、今回、大阪取引所と東京商品取引所との間で協議が始まっていると聞いておりますが、このチャンスに実現できなければ、もう次のチャンスはないのではないかというぐらいの意識で、規制改革推進会議のメンバーも、ぜひ金融庁として、傍観することなく当事者の協議を後押ししてほしいと言っておりましたので、改めてそのことを申し上げたいと思います。

 時々、この話をしますと、取引所といえども、現在は民間企業なのだから、私企業が経営戦略で話し合うことに、あまり政府がどうのこうの言うべきではないなんていうことを言う人もいるのですけれども、実際問題として、証券デリバティブにしましても、商品デリバティブにしましても、事実上の独占企業に良くも悪くもなっておるわけであります。かつ、デリバティブ取引の市場運営というのは極めて公益性の高いビジネスでありますので、ごくごく普通の民間企業2社がどうするかを考えているのとは全く次元が違うんだということで取り組んでいただければと思う次第です。

 それから、インサイダー取引規制のQ&Aですが、こういうことを進めていただくのは大変いいことだと思っております。可能であれば、資料の3ページ、基礎編の概要ということで書いてある2番目の問いのところでございますけれども、「株取引の一律禁止や許可制等が定められている場合があります」という表現が使われておりまして、許可制等にもちろん入るとは思うんですが、「許可制・届け出制等」ぐらいにしていただいて、情報を把握すると称して、投資を抑制してしまうようなこともあり得るんだということをにおわせていただけると非常にいいのかなと思っております。

 もう一つは、取引所はこれまで、インサイダー取引の防止体制がきっちりしているかということを上場会社に対して、もちろんこれは必要なことですし、点検するよう呼びかけてこられて、これまでのやや過剰な社内規則というのは、その反映である面もあると思うのです。ただ、実際問題として、ほんとうの意味のインサイダー取引防止のための社内体制というのは、おそらく未公表の重要事実をどう管理するかであって、社員の株取引を把握するというのはちょっと道筋が違うのではないかと率直に感じております。今後、上場会社の役職員がインサイダー取引をやるというような不祥事が出ないとも限らないわけですけれども、そういうことが起きた場合も、取引所としてなぜそういうことが起きてしまったのかを点検されるときに、株取引の規制をちゃんとやっていたのかという観点ではなくて、重要事実の管理を一体どういうようにしていたのかというところをチェックするように、ぜひしていただきたいと思います。

 もう一つは、このQ&Aがこういうように改訂されるということをどうやって周知するか、これは非常に重要だと思っております。こういう過剰規制的なルールをつくっているところは、まずは上場会社が多いのかなと思うので、上場会社には取引所を通じてぜひ徹底していただきたいと思う一方、先般、メディアでもいろいろありますというようなお話も他の委員の方からありましたので、ぜひ金融庁としても、広く、いろいろな団体に周知する工夫をしていただければと思う次第です。

 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、上柳委員、高田委員、濱口委員の順で、上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
 総合取引所の関係ですけれども、既に金商法では規制・監督の一元化ということで整理済みだと認識しているんですけれども、それをさらに実際に進めていくときに、今さらながらかもしれませんけれども、やはり留意すべきことがあると思っております。

 1つは、業者規制のことで、特に消費者被害の観点から言いますと、一部の商品デリバティブを主に扱う業者について被害申告がたくさんありました。その悪弊といいますか、問題を引きずらないように、むしろきちんとした規制・監督をして信頼を確保していく。そうすれば、また市場規模も回復していくのではないかと思っております。

 同じことかもしれませんけれども、商品デリバティブについて、価格操作の問題であるとか、不公正取引の問題が指摘されがちでしたので、そのほかの金融商品と同じくということかもしれませんけれども、きちんと横並びで、適切な監督をお願いしたいと思います。
インサイダー取引規制の関係については、特に意見はないのですが、私は少数意見かもしれませんけれども、むしろもっときちんとインサイダー取引の問題例を、当局が摘発なり、あるいは問題視されることによって、ここまで行くと問題だということがもっと世の中に明らかになる。摘発例が少ないと、基準かあまりよくわからない面があって、安全側に動いているような側面もあるのではないかと思っております。ですから、Q&Aも含めてのいろいろな情報の提供とともに、やはり適切な規制・監督が重要であると思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 どうもありがとうございます。

 まず、総合取引所に関してですけれども、私ども、みずほ総合研究所で、今から4年前に「東京金融シティ構想の実現に向けて」という提言を、日本経済研究センターと大和総研と一緒にさせていただいたことがございます。商品市場の拡大、それから総合取引所の実現ということで、我々もかなり重要なのではないかという議論をさせていただいたことがありました。

 我々、考えておりましたのは、やはり日本は、例えば原油の輸入でいいましても世界3位なっておりますし、LNGなどでいいますと世界最大の輸入国でもあるわけです。ただ、先ほどの表にもありましたように国内のコモディティーというのは、金融の市場化がどんどん進む海外と比べましても、残念ながら非常に貧弱な状況で停滞が続いている。そういうことになってまいりますと、やはり日本の今後の取引等は、逆に言えば可能性が非常に高い市場と考えることもできるのではないかと思いますし、また、その市場拡大が喫緊の課題になっているのではないかという問題提起をさせていただいております。

 国内における市場活性化は、金融市場のグローバル化にも資するのではないかとも思っておりましたし、それを含めて東京市場が世界の大きな中心になるというか、一つの核となるような大きな一歩にもなるのではないかという意識がありました。世界では、先ほどありましたように、コモディティーのデリバティブとか非常に拡大しておりますし、また、主要な各取引所が業容拡大を進めている中で、我々としては今こそ重要な状況になってきているのではないかと思います。

 利便性の向上の観点を考えましても、内外の投資家が多様なこういう資産にワンストップで対応できる体制というのは、やはり今後の東京市場、また日本の金融の戦略的な立場を考える上でも重要でございますので、先ほど大崎委員からお話がありましたように、私も非常に重要な論点として、もちろんこれは別に今、始まったことではなく、これまでもということではあったんですけれども、まさにこういう議論があるときに盛り上げていくべき議論ではないかと考えているところでございます。

 それから、インサイダー取引に関する議論でございますけれども、インサイダー取引そのものの考え方は別に緩める必要は全くないわけでございますし、今後も非常に重要だということでございます。ただ、考えてまいりますと、インサイダー取引の観念と申しましょうか、歴史的に考えましても、導入のタイミングがちょうどバブル崩壊のころと一致していたような状況でございます。となりますと、バブル崩壊と、新しいインサイダー取引の規制という概念を定着させることも加わって、非常に厳し目なというんでしょうか、そういう意識を国民がかなり持ったということもあるのではないかと思います。ですから、実態以上に、たまたま歴史的な部分も加わって、しかも最初にこうした概念を定着させるというようなバイアスが加わって、非常に下方バイアス、厳し目のバイアスが定着してしまったという部分もやはりあるのではないかと、私は思います。

 そういう中で、今回、こういういろいろな議論をさせていただいて、私もプレゼンテーションの中で、たまたま近視眼的な損失回避バイアスというような言い方をさせていただいたことがございました。すなわち、行動経済学的に考えますと、日本の場合、バブル崩壊後の非常に厳しい状況の中で、株は悪であるみたいな、投資をすることが悪であるというようなバイアスが自然、自然と身についてしまった部分があるだろうと思うんです。これだけNISAでありますとか、DCというような長期投資という概念がある中で、残念ながらそういう枠があっても、株も含めたリスク性資産をなかなか取り込めないというようなバイアスがかかってしまっている。制度的にもいろいろな意味で尽力をなさっておられるにもかかわらず、なかなか事実上の意味合いが出てこないというような状況が出てきてしまう。

 そうなりますと、そこは行動経済学から見ますと、ナッジングといいましょうか、ぽんと押してあげるような状況も必要なわけであります。これは、別にインサイダー取引の規則を破るとかいうことではございませんけれども、これまで長年、どうしても大きくそういうバイアスがかかってしまったものが、もうちょっと今の時代に合わせて、しかも、制度要因と市場要因もある程度ニュートラルになってきた、もしくは遜色ないものになってきた中で、これまでの大きなインサイダーに関する負のバイアスというんでしょうか、こうしたものを和らげてあげるということもやはり必要な状況なのではないか。

 そういう意味では、先ほどのご議論にもありましたように、やはりより社会に対してメッセージ性というでしょうか、こうしたものを強めていくことが重要であり、もちろん筋としては重要なものでありますから、インサイダーの本来の規則を守るということではございますけれども、先ほど申しましたように、残念ながら非常に負のバイアスがかかって、抑制的なバイアスがかかってしまったという現実を直視しながらの対応も、やはり必要なのではないかと感じるところでございます。

 最後になりますけれども、取引所に関しての対応ということになりますと、やはり企業価値の向上といういろいろな目標に立ちまして、今、改革をするということが重要な局面ではないかと思います。特に、東京市場というんでしょうか、世界の中でも流動性のある、海外から見ても投資しやすいといったような観点も含めて、確かにさまざまな意味でのリスク特性はあろうかと思いますけれども、グローバルの中での対応もやはり必要ではないかと思っております。そういう意味では、このタイミングで改革を行うということは重要ではないかと感じる次第でございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、濱口委員、どうぞ。

【濱口委員】
 まず、総合取引所についてですが、個人的には、随分昔ですが私自身、商社で商品取引を担当しておりまして、当時、東工取とかで、いろいろな議論があったんですが、残念ながら大きな進展もなく、それだけが理由ではないんですが、結局、多くの業者、商社などは、商品先物を含むトレーディング部門を、シンガポールとか、海外に人ごと、会社ごと移してしまったという実情がございます。

 今回、ようやく実現に向けてもう一度、議論がされるということで、それは結構なことだと思いますが、正直言ってちょっと遅きに失したという感もあります。したがって、金融庁、取引所も、成果を出すために焦って形だけに終わらないように、ぜひ業者、業界のニーズを慎重に調べられて、実質的な取引体制をつくられるようにお願いしたい。

 インサイダー取引については、我々、年金基金ですので、担当部門は相当厳しい制限をしています。相当前ですが、そういう規制を導入するときに参考にするために、証券業界だったり、銀行業界だったり、投資顧問業界だったり、ヒアリングをして何となく感じはわかりましたが、世の中でどの程度、どういう規制がされているのかというのはあまり具体的にはわからなかった経緯があります。何かそういうサーベイがあったり、データがあると、参考にできると思うのですが。

 それから、市場構造のあり方の件ですが、これは我々、投資家にとっては非常に大きな問題です。一時、TOPIXに含まれる、一部上場企業の数が1,800以下に減ってきて、いいなと思っていたのですが、最近はどんどん二部とか、マザーズから移ってきて、とうとう2,100を超えているということで、困ったなと思っています。

 どういうことかといいますと、我々、機関投資家の運用の多くの部分を占める、いわゆるパッシブ、インデックス運用ですと、日本では、時価総額ベースのインデックスで、取引可能なインデックスということですとTOPIXしかないわけです。日経平均は時価総額ベースではないのでだめです。市場規模からすると、明らかに2,000を超える銘柄数は多い。個々の企業の時価総額のレベルからしても、また代表性とか、魅力度とか、ガバナンスのレベルとか、あらゆる点で明らかに多過ぎる。この議論は、ずっと昔からあって、何とかする必要性があると言われながら、全然変わらない。

 ご存じのように、アメリカであれば、そもそも上場企業数は少ないですし、よく報道されているように、ほかの要因はありますが、この10年、15年で半分になった。取引されるインデックスも、S&P500とか、ラッセル1000とか、イギリスであればFTSE100とか、DAX30とか、日本の2,000というのは飛び抜けて多い。明らかに海外のほうが流動性も含めてすぐれていて、その選別の度合いもよくて、投資対象に入るために企業間の競争状態が健全に保たれて、自然にガバナンスをよくするとか、いろいろな意味で、まさにマーケットの構造としてドライブがきいているのに対して、日本はそうではない。

 投資対象の企業と話しますと、そもそも上場というのは、選別されるとか、投資対象になって資金調達するというよりも、社会的な評判のためですと明確におっしゃられる経営幹部の方も多いです。もうそういう状態になってしまっているということで、これは何とかする必要がある。インデックスということで言うと、TOPIX500と絞り込んだものがあるので、この500を使って、我々投資家がやればいいわけですが、そのときに問題になるのは対応する先物市場がないことです。現物の運用をするのですが、技術的なことですが、対応する先物に十分な流動性がないと実際には運用できないという問題があります。そういう意味では、上場企業の数、それから今、言いました先物とか、インデックスのつくり方とか、ぜひ総合的に、ふさわしい投資市場のために、どう絞り込むのか、どういうメカニズムが必要なのかという議論をしていただきたいと思います。

 多様な投資家が投資しやすいような環境をつくることを目標に、ぜひ議論をしていただきたいと思いますが、この懇談会のメンバーを見ると投資家の代表がいないので、何でかなと最初は思いましたが、投資家も含めて、証券会社とか、企業とか、そういう利害関係者を除いて、ヒアリングでカバーされながら妥当な結論を出していかれようとしているのではないかと理解しました。

 そういう観点で言いますと、そもそも取引所自体が上場企業から上場手数料を取って収益源にしていますので、ある意味では最大の利害関係者ではないかと思います。そもそもこの懇談会自体が取引所の中で仕切られて、やられているので、そこでほんとうに上場廃止とか、選別という議論ができるのかというのは、外から見ていると疑問です。現に、そういう声は投資家間で話すと出ます。取引所内で議論されていてもだめですねと、フランクに言われる方も結構多いです。その辺は承知の上でやられていると思うので留意していただいて、ただ、そういう観点もあるので、この市場ワーキング・グループは、市場機能強化を議論する場ですから、この懇談会の後、この場で、出た結論は妥当なのかどうかということを、フォローの意味でぜひやられたほうがいいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、鹿毛委員、中野委員、野尻委員の順で、あと林田委員、池尾委員、野村委員、竹川委員という順でお願いしたいと思います。

 鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】
 インサイダー関係で一言申し上げます。基本的な方向としては私も賛成です。と申しますのは、アメリカでは、特に運用機関のような場合でも、事前届け出をして、インサイダールールをきちんと守っていれば、役職員の個別株売買は基本的に自由です。そういう状況と比べて、私個人の過去のことを考えても、周りを見回しても、一般的に金融機関や上場会社の役職員、幹部職員の場合、インサイダー規制も気になってあまり株式取引はやっていないようです。確かに、結果から見る限り、少し萎縮している面があって、これを何とかしていくことは大事なことだと思います。

 日本の場合は、何人かの方が指摘されたたように、そもそも株式投資について、周りから見ると、何かあいつ株をやっているらしいと思われる、潜在的なレピュテーションリスクを気にしてしまうことと、特に上場会社のある程度の幹部職員ということになると、いろいろな形で重要情報に触れる可能性があるので、そうなると余計ナーバスになる面があろうかと思います。

 ただ、アメリカでも一定ルールを守れば自由だということではありますが、その条件の一つとし、万一でもインサイダー取引をやった場合は、厳罰を科される、ということが極めて明快なわけで、この点関係者に共有されている、と思います。その上で、個別の売買をするときは、同居の家族の分まで含めて必ず事前に届け出を出すというところで、もう一つ具体的なチェックが働いているわけです。その2点を押さえている限りは自由ということなので、逆に言うと安心して株取引できるということだと思います。

 今回のQ&A改訂にあたってコメントしたいのは、インサイダー取引というのは重要な犯罪であって、これを犯すような場合は厳罰であるということが世の中的に十分浸透したかというと、必ずしもそうでもなくて、時々は出てくるケースとしてあり得るので、やはりそこは明解にしたほうがいいと思います。ニュアアンスとして規制を緩めますということになっては、やや誤解を与えるメッセージになる恐れがあるでしょう。。過剰な自主規制を避けるための説明としても、インサイダーは犯罪です、から始まるのではないでしょうか。

 それでも、やはり何となく心配だという自主規制の心理的な部分は、今、このワーキング・グループでも時間をかけて、いろいろな形で議論している、貯蓄から投資へ促進する上でのカルチャーの問題がもう一つあると思います。

 それから、もう一点、インサイダーかどうかの判断が難しいような例外的なケースの場合でも、アメリカの場合、私の感じでは、これまでのインサイダーに関する判例がたくさんあるとか、ノーアクションレターがあるとか、曖昧な部分がかなり減ってきていると言われています。コンプライアンスや弁護士に聞けば、白か、黒かというのは大体すぐわかる。日本の場合、重要情報の一番最後のその他条項とが、どういうものだったらアウトになるかというところが、まだ社会として十分定着していないかもしれないということで、どちらかというと心配するほうに動くことはあり得るかと思いますこの点についても社内のコンプライアンスや、顧問弁護士の協力でもう少しクリアになっていって、わからなければ最終的には金融庁に問い合わせて、白、黒がはっきりするといった仕組みができていくと、安心して売買ができるため助けになるのではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、中野委員、どうぞ。

【中野委員】
 ありがとうございます。

 ちょっと五月雨的にお話しさせていただきたいと思いますが、そもそも今日の議論は、全体として、この国の金融立国化の土台として資する内容だと思っております。であれば、金融立国化という概念は具体的に一体何を目指すものなのか、そして、その目指すものの中で、当然のことながら取引所という存在の果たす役割は極めて大きなもので、その担う役割を具体的に整理する必要があると、今日、聞いていて改めて感じました。

 そういったベースを鑑みて、一番最初にございましたTOCOMとの統合の話ですけれども、非常にシンプルに申し上げて、そもそもいまだに統合がなされていないという実態の根本的な理由がよくわからないので、なぜ統合できないのかということをつまびらかにしていただきたいと思いました。

 取引所のある種の閉塞感については、まず取引所の競争力をグローバルに高めるということが金融立国化の大前提であることは、皆さんの異論がないところだと思いますが、では、それを妨げているものの根本は何かというのは、言い尽くされた議論ではあるでしょうが、やはり英語の問題だと思います。日本語でしか対応できない、極めてローカルなマーケットがグローバルであるはずがない。ですから、まずは英語で全てのものが完結するように抜本的な構造改革をやらなければ、グローバルは全くおぼつかないであろう。逆に、ストレートに申し上げますと、英語が最低限理解できない人は、こういった金融市場に参加することができないということも、今や世界的に見れば必然ではないかと感じております。

 それから、先ほど各委員の方々からも上場企業数が多過ぎるという話がございまして、私も日常からそれは非常に強く市場参加者の1人として感じております。そもそもの問題はいろいろあるんでしょうが、まず資本市場にIPOを目指す企業経営者側の意識の問題が、一つあると思っております。すなわち、資本市場にみずからの企業をパブリック化する意義とは、一体、社会的意義はなんなのか、その機能は自分たちに何が必要なのかということを、まず上場取引所側がきちんと事前に教育をする必要があると思います。もし、エグジットをオーナーが求めることを目的化して上場することが横行しているのであれば、非常に不健全な東京マーケットになっていると言わざるを得ないと思います。それは現場の人間として、正直、少し感じるところです。

 それと、日米、あるいは海外の大きな取引所と比較しての感想ですけれども、とりわけアメリカと比較すると、非常に残念なことが幾つも明らかになってくると思います。まず、上場からの退出ということに対して、日本の今のマーケットは退出後の機能がほぼありません。ですから、退出をすると、株主、投資家は、それを一切、現金化することができない。これが、最大の流動性の欠落だと思います。

 一方で、アメリカが退出の機能も充実している多くの根本的な理解は、OTCマーケットにおいてグレーマーケットが充実しており、聞くところによると1万5,000社ほどのグレーマーケットの取引が行われている。ですから、上場廃止になっても、投資家はそこでプライシングに納得すれば売却をすることもできる。この機能の深み自体が大きな差になっていて、これを日本自身がつくり上げることが大前提なのだと思います。すなわち、アメリカは全体として市場ガバナンスが、グレーマーケットも支えになって機能している。これは、日本でも、プライベートエクイティーの拡充なども含めて、抜本的な課題だろうと感じております。

 それと、インサイダー取引の部分についてシンプルに申し上げます。私も、ふだんから実感しています。例えば、大手のメディアの方に「セゾン投信で、積み立て投資をやってくださいよ」なんて言いますと、「いや、すごくやりたいんですけれども、会社で禁止されているので」と、これはもう日常茶飯事の会話になっています。きれいな言葉で言えば、いわゆる「李下に冠を正さず」ということになるんでしょうが、一方で、資料にもありましたとおり、「なますを吹く」という表現のほうが強く感じられるところで、投資信託はインサイダー取引規制に抵触することがあるのかと、僕もその専門家の人間としていろいろ考えるんですけれども、見当たらないです。ですから、厳格に投資信託はインサイダー取引規制には何ら当たらないとQ&Aで改めて示すことは非常に大きな意味を感じます。また、こういったことを、ある一つの組織が、社内ルールであれ規制するのであれば、国民の資産形成する権利を阻害していると言えなくもない。これは、何らかの形で、規制することはいけないという規制を設けていただくほうが早いのではないかと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 2つ、お話をさせていただきます。

 1つ目は、取引所の集中化の件、総合取引所の件、それからインサイダーもそうだと思うんですけれども、形式的に統合することができるとか、できないとか、制度を変えていくということは大事なことだとは思うんですが、やはり一番大事なのは、実質的にそれで何ができるかというところのように思っています。日本のマーケットが大きくなっていくということが前提にある議論であれば、基本、やるべきことだと思っておりまして、ただし、やった結果に対して誰かがきちんと責任を持てるという体制も必要なのではないか。やったけれども、うまくいきませんでしただけではいけないのではないかと思っています。その意味で、形式的なゴールの設定ではなくて、実質的なゴールはどこにあるのかを、もっとクリアにしておく必要があるのではないかということが1点目です。

 2点目は、特にインサイダー取引に関してですが、皆様おっしゃっているように、基本的に株式投資とか、資産形成は正しいことだ、悪いことではなくていいことなんだというメッセージが表に出ていかないと、なますを吹くとか、李下に冠を正さずとか、いろいろ表現はともかくとして、いいことをやっているとポジティブに理解をしていただくための作業が必要だと思っています。

 もちろん、インサイダー情報を使うことはだめなことはクリアですが、先ほど鹿毛委員もおっしゃっていましたけれども、私も20年、外資系にいますけれども、かなり厳しいです。四半期に1回、報告をしなければいけませんし、同意書を書かされますし、同意書を書いたことに対してだめである場合は、かなり厳罰になるのは明確なものですから、きちんと自分で管理もするし、報告もしますけれども、基本、それで資産形成はできます。私のような立場で、自分はできませんなんて言った日には、誰も信用してくれないことになりますので、こういうクリアにしておくことの大事さと、せめて、私、やっていますよ、ちゃんと資産形成していますよと言う人が、もっと増えてくるような環境をつくっていただきたいと思います。

 その意味で、上場企業の役職員だけではなくて、先ほどからも出ているようにメディアとか、ほかにもルールで厳しく縛られている方に対しても、対象を広げていただくほうが、私は正しいと思っています。

 ただ、インサイダー取引ではないかもしれませんが、相場操縦という目線で見ると、ETFはひっかかる可能性があるのではないかという点の議論はされるべきだと、私は思います。ETFがだめだと言うつもりは全くありません。株式に対して何かしら特段の影響があるのと同じように、値段が動くものと動かないもの、1日に1回つくものとの差はどこかにあるかもしれないので、そこは十分に確認をしながらやっていく必要がある。ETFは投資信託と同じようなものだからみたいな形で認めてしまうことが正しいのかどうかは、私はあまり詳しくないので、問題提起だけしておきます。やはり違いますという可能性も十分にあるんですけれども、考えておく必要のある点ではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 林田委員、どうぞ。

【林田委員】
 先ほどからメディアの例が何度も出てきているので、一言申し上げたいと思います。

 インサイダー取引のことですけれども、今回のようにQ&Aをわかりやすい内容に改訂するということについては賛成です。ぜひ霞が関文学などと言われないように、大変わかりやすい中身にしていただけたらと思っています。一番は、それをどう周知徹底していくかという問題だろうと思います。ホームページに載せておしまいということではちょっと寂しいので、何か具体的に取り組みをとっていただきたいと思います。

 インサイダー取引のことで、もう一点、Q&Aの「はじめに」の案の中ほど、アンダーラインの下です。「例えば、全ての株式投資を禁ずるような場合には、それは過剰な抑制というべきかもしれません」とあります。この「全ての株式投資」が何を意味しているのかがちょっと気になるところでありまして、これが「全ての株券投資」と限定した意味であるならば、業種でありますとか、部署によっては、全ての株券取引が禁止されている例が少なからずあるのではないかと思います。

 といいますのは、自分の業界の話を内規まで詳しく話すわけにはいかないんですけれども、幅広い業種で不祥事が起きたり、あるいは統合、合併等が起きます。それをいろいろな部署で取材して、公表される前に紙面化するということをいつも目指してやっておりますので、どうしても取材、報道の現場におりますと、そうした情報を目にする、担当者でなくても目にすることが多々あります。ですから、「全ての株式投資」という意味を少しはっきりさせていただきたいと思います。

 一方で、いくらマスコミであっても、インデックス型の投信もだめですとか、つみたてNISAもだめですというところまではなっていません。そもそもインサイダーの余地がないと思われます。ですから、「過剰な抑制に当たる」という部分をより際立たせる形で、何か限定をつけていただけるとありがたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、池尾委員、どうぞ。

【池尾委員】
 私、以前、東京商品取引所(TOCOM)の社外取締役をやっていたことがあるので、コモディティーマーケットの現状に関しては内心じくじたるものがあって、ちょっと口は重くなるんですけれども、黙っているというのも、責任を果たしたことにならないと思うので、ちょっと一言申し上げたいと思います。

 組織的な統合を実現すれば、成果として非常に見えやすい、見やすい成果ということで、政治的にもアピールしやすいという話になると思うんですが、最初のほうで濱口委員がおっしゃいましたし、先ほど野尻委員もおっしゃいましたけれども、それで実質どれだけの利便性が高まるのかということがやはりポイントだと思うんです。

 それとの関連で言うと、やはり規制・監督体制の一元化をもっと徹底していただきたいということがあります。確かに、取引所に対する規制・監督は既に一元化されているということですが、では取引所にかかわっているさまざまな主体に関してほんとうに一元化が徹底されているかというと、そこにはやや疑問が残っております。例えば、取引業者がほんとうに総合取引所で取引をするときに、1つの監督官庁とコンタクトをとっていればそれで十分で、二重の規制とか、監督を受けるリスクは全くないと、現状、ほんとうに言い切れるのかという問題です。

 あるいは、投資家なり、当業者として商社等がかかわった場合についてもほんとうにそうなのかというところを含めて、やはり今まで統合できていない理由は何かというのは、中野委員がおっしゃっていましたけれども、規制・監督体制の一元化が徹底されていないところにかなり原因があるような気が私はしておりますので、そこはぜひ検討していただきたい。

 あわせて、投資家から見たときの利便性という観点で言うと、例えば税制上の取り扱いが一元化されているどうか、損益通算がコモディティーとほかの先物の間でできるのか、あるいは、機関投資家等に対する投資ルールの中で同じような扱いを受けられているのか。そういうところをあわせて、単に組織を統合するということを超えてやっていかないと、ほんとうの実質的な利便性の改善はなかなか実現できないのではないかと思いまして、それだけちょっと申し上げておこうということです。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、野村委員、どうぞ。

【野村委員】
 私も、もう既にご発言、多々あったので繰り返しのようになってしまうのですが、簡単に、やはり市場構造のところです。

 これは、非常に重要なテーマだと理解しているところでございます。資料4の3ページをずっと眺めていたんですけれども、こういう形でエントリー、ステップアップというような位置づけがなされているわけですが、まず、これがわかりやすくこういう区分になっているということ、及びそれが実際に区分どおりに運営されていることが重要と思います。例えば、基準を満たさない形になったらどうするのか、別の市場に移ることになると思うんですけれども、そこは実質的にきちんと行われているということも大事なのかと思います。そのあたりの実態が現状ではあまりクリアでないということが、いろいろなご議論の前提にあるのかなと思った点です。

 また、先ほど中野委員がおっしゃった点と本当に同じことなのですけれども、特に上場廃止となったときに、投資家の流動性が全くなくなってしまって、逆にあまりにも困ってしまうので退出できないなどとなると、これは全く違う話になってしまうわけでございます。やはりここのところで某かの形での流動性確保、基礎的な仕組みというものが非常に求められると思います。中野委員から米国の事例もご案内があったとおりでございますけれども、そういうことが重要なのかなと思っている点でございます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、竹川委員、島田委員の順で、竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】
 私のほうからは、インサイダー取引と市場構造の問題についてお話をしたいと思います。

 まず、インサイダー取引についてですけれども、資産形成していくのはいいことだということが前提にあった上で、基本的な方向性はこれでいいのではないかと思います。特に問題がないケースと、ルールを逸脱した場合には厳格に処分されるという、この2つをはっきりさせることがとても大事だと思っています。ほかの委員の方からも出ていましたが、例えばメディアなどに関しては、企業型確定拠出年金でさえ投資信託を購入できず、元本確保型のみというような会社もあるそうです。それはさすがにやり過ぎではないかと思います。問題ないケースについては、例など挙げながら説明していただいです。

 また、個人投資家の初心者の方が初めて証券口座を開くときに、インサイダー取引は問題ないですねというところにチェックをする欄がありますが、一般の方はインサイダー取引と言われた時点でフリーズしてしまい、口座開設をする際のハードルになっている例もあります。そういう初心者の方がQ&Aを読むかというと、全く読まないと思いますので、証券口座を開設するときに、用語解説なり何なりで、もう少しわかりやすい説明をつけていただけるといいのではないかと思います。

 市場構造の問題についてですが、2点申し上げたいと思います。1点目は、先ほど濱口委員からも出ましたが、第一部の上場会社数が2,000社を超えてきていて、多いと感じます。パッシブ運用のベンチマークになっているものは、日本株に関してはTOPIXが多く、機関投資家だけではなくて個人投資家、特に初心者が初めて接する制度、例えばつみたてNISAにしても、確定拠出年金にしても、TOPIXに連動する投資信託がとても増えてきています。例えば、アメリカのS&P500などは新陳代謝がよく、(指数の)上位の会社も長期的に入れ替わっていています。一方、TOPIXに関しては、上位の会社を見てもあまり入れかわりがなく、昔ながらの大きい会社が多いです。

 各市場の特徴、違いをはっきりさせるということは必要だとは思います。ただ、昔は日本株に投資をする比率が高いことが問題になっていましたが、最近は若い投資家さんからは、逆に日本株にあまり投資をしたくないとか、日本株を長期で持っていても成長性が感じられない、株価が長期的に上がっていくのかどうか不安であるという声を聞きます。そうしたことも踏まえて、(日本株の)パッシブ運用のベンチマークのあり方も含めて考えていただければと思います。

 2点目は、退出のあり方です。粉飾決算等があったときなど、ルールを逸脱したきにどのような形で退出をするのか。投資家に対して、特に貯蓄から投資、資産形成へという政策を勧めるのであれば、公正な市場で投資をすることができる、安心して投資ができる市場なんだということがわかるようにする必要があるかと思います。退出を厳格にするという、ということははっきりとうたっていただきたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、島田委員、どうぞ。

【島田委員】
 まず、総合取引所の件については、総論でもちろん賛成ですが、まだこんなことをやっていたのかというのが実感でございます。新しい市場がつくられることは非大歓迎ですけれども、皆様がおっしゃっているように、それがほんとうに機能するのかというところで、魅力ある市場をつくっていただくことが一番重要だと思います。特に、まずは機関投資家にとって魅力ある市場になって、海外に出てしまっている現在の日本の機関投資家が活用して、活発に取引をしていけるような市場をつくっていただかないことには、せっかく統合しても意味がないのかなと思っております。

 そして、こういう新しい市場が出てきたときに、みんなに周知をしようとか、出だしの勢いがあるうちに活用してもらいたいということで、歴史的には、投資信託の投資対象としてファンドをつくるということが行われてきたわけですけれども、そういったことについて急ぐ必要はないと思っております。というのも、商品デリバティブというのは、株式の比ではなく、情報の非対称というものが一般の投資家にとってはありますので、そういった個人投資家の現在のリテラシーに照らし合わせてルールの整備、あるいは情報開示についてもきっちりと取り組みを進めていただいた上で、個人は使っていけばいいと。まずは、機関投資家に魅力のあるものにしていただければと思っております。

 次に、インサイダー取引の問題は、中身については皆様、特に野尻委員と中野委員のおっしゃっていることに賛同しております。お役所のつくるこうしたQ&Aというのは、問いについては非常にわかりやすいんです。何を聞いているかというのは。ところが、それに対する答えを読もうと思うと、いきなり普通の人には難しい答えが書いてあるんです。今、ウエブサイトをごらんになって、もう一度、普通の人の目で読んでいただくとよくわかるのではないかと思いますが、正確に書こうとすればするほど言葉が難しくなって、一文が長くなってしまう。そして、普通の人にはなじみのない文章になってしまうということがあります。知りたいのは答えでございますので、答えの部分をどうかよくわかりやすく書いていただければと思います。役員だけであれば問題ないのかもしれませんが、一般職員の方にも、今はほとんど読んでいないと思いますけれども、読めばわかるようなものをつくっていただけたらと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかに、いかがでしょうか。林田委員、どうぞ。

【林田委員】
 補足で。インサイダー取引の「はじめに」の文章ですけれども、初めの文章がとても長いんです。何字あるのか数えてはいないんですけれども、「はじめに」の初めなので、なるべく短く、わかりやすく、説得力のある文章にしていただけたらと、それだけ申し上げておきます。

【神田座長】
 いろいろご指摘いただきまして、ありがとうございました。

 駒村委員、どうぞ。

【駒村委員】
 先ほどの総合取引所の話、資料2の話です。議論総体としては、こういう総合取引所の作成というのは非常に納得できるものですけれども、先ほど池尾委員からもお話があった、ちょっと詳細な議論の部分がわからなくて、例えば管理する監督省庁がどういう考え方になっているのかがよくわからないと、私も議論を深めてコメントすることができません。

 例えば7ページ目、先ほど事務局から説明があって、聞き逃したのかもしれませんけれども、bとか、dとか、この辺はもう少し詳しい内容をご紹介いただかないと、商品所管大臣、これは経済産業省だと商務流通グループなのでしょうか。あるいは、かつてあった穀物のほうは、廃止された後、農林水産省はどういうような形でかかわっているかわかりませんけれども、「商品所管大臣の『同意』について、総合取引所の実現可能性に過度の不透明感を与えないよう、具体的かつ明確な運用基準を策定する」、この辺に一体どういう背景があるのかがわからないと、資料2の2ページを見ても、2010年までの4年間、5年間で4分の1ぐらいまで急激に縮小しているのに、なぜ手を打たなかったのか。今後も、こういう協議のための協議みたいな、協議を行うように協議するとか、非常にわかりづらい文章がたくさんあるので、もう少し資料をいただいて、議論が前に進むようにお願いできればと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかに、いかがでしょうか。どうぞ、中野委員。

【中野委員】
 すみません。今、資料4の3ページの市場構造の図を見ていて、ふと素直に思ったことですが、マザーズ、市場第二部、JASDAQと、日本はエントリー市場が充実しているように見えるんですが、私の実感から申し上げて、とりわけマザーズとJASDAQは一体、何がどう違うのかわからないです。実際は、エントリーするに当たって、年間に払う上場代みたいなものが結構違っていたりするようですが、これは形式ではなくて実態的に、多分、プロが見てもあまり明確に説明できない分かれ方であるので、まずここはしっかりと合理的に整理をしていただくのがいいのではないかと感じました。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかに、いかがでしょうか。

 金融庁のほうからありますか。では、八幡市場業務監理官。

【八幡市場業務監理官】
 総合取引所の話、それからインサイダー、いろいろご議論いただきました。ありがとうございました。

 幾つか、ご質問も含めていただきましたけれども、明確に質問いただいた2点ほど、お答えになればと思うんですけれども、1つは、なぜ進まなかったのかということは、極めて難しい質問ではありますけれども、やはり縦割りの中でなかなか進まなかったということは現実にあると思います。

 今回もいろいろ議論を始める中で、金融庁が議論をしっかりやっていきますと言うと、何となく外から権限争いだと見られて、そういうつまらない議論になったりするようなこともございます。これは日本の役所の宿命かもしれませんけれども、もともと役所が2つに分かれていることによって、両省庁がいろいろ議論しなくてはいけないのだけれども、なかなかそれが進まない。先ほど申し上げました縦割りというのはネガティブな意味に捉えられると思いますけれども、基本的に経済産業省も自分たちのマーケットを小さくしようと思っているわけではなくて、いろいろ取り組まれている中で、商品市場に関する権限がちょっと別にあるということの中で、しばらく動かなかったんだと思っております。

 今回、経済産業省との議論としては、規制改革推進会議の場において、ともにその土俵でしっかり議論しようと。これは権限争いではなくて、今後、商品市場はどうあるべきかということで、日本のマーケット全体をどう整えていくかという議論になっていると思っております。長らく進んでいなかったので、我々としてもちょっと歯がゆいところはありますけれども、ここはしっかり議論を進めていきたいと思っております。

 その流れの中で、最後にいただいた、資料も含めてわかりづらいとの駒村委員からのご指摘ですけれども、資料2の7ページの規制改革推進会議のbの文言、現状をちょっと説明させていただきます。bに書かれていることは、金融商品取引所に商品デリバティブを上場する際に要するのは所管大臣の同意となっていますけれども、同意する、しないの判断基準が不透明なので、経済産業省はその運用基準を今年度末までに明確にしてくださいとなっています。

 4ページのスキーム図を見ていただければと思いますけれども、もう既にできているスキームの中で、金融庁と商品所管官庁の規制・監督はもう一元化して、金融庁が規制も監督も一元化するとなっているんですけれども、例えば原油であっても、金であっても、いわゆる標準物とはどんなものかという話というのは、確かに我々、金融庁のみの知見ではなかなかない部分がある。それは、やはりその業なり、商品、物を所管している役所の意見を聞きながらという意味で、この法律のスキームでは協議、連携、あるいは同意をということになっています。

 それがゆえに、同意権があることが、ある意味、拒否権のようになって、同意しなければ上場できませんと、もし経済産業省がそのように運用するのであれば、乱用しているわけではないですけれども、その規定の趣旨はそもそも違うのではないかということを規制改革推進会議からもご指摘いただいております。その基準を明確にしないと、仮にJPXに上場しようと思っても同意を得られないのではないだろうかということにより、この議論が進まない可能性もあるということであれば、同意権の運用基準、どういう場合には同意するんだ、どういう場合には同意しないんだということを明確にするべきではないか。もし、それが拒否権のようになっているのであれば、その同意権自体も要らないのではないかということが、規制改革推進会議でも議論されております。

 こうした指摘は、確かに、総合取引所を巡る議論がなかなか進まなかった一つの要因だろうと理解しております。ただ、今現在は、規制改革推進会議にも先ほどのa、b、c、dのような実施事項を明確に書いていただいていまして、この答申を受けて、金融庁のみならず、経済産業省、農林水産省ともしっかり議論をしていかなければいけないという現状になっております。過去を弁明すると、なかなか難しいところはありますけれども、これからこの方針に向かって、政府が一体となって、よい取引所をつくっていくべく議論をしていきたいと考えているところでございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 このテーマにつきまして、本日はさまざまなご指摘とご意見をいただきまして、どうもありがとうございました。いただきましたご指摘やご意見も踏まえて、さらに先に進めればと思います。

 それでは、残り時間、少しになってまいりましたが、3つ目のテーマとしております高齢社会における金融サービスのあり方について取り上げたいと思います。このテーマにつきましては、来年といいますか、年明け以降も本格的なご議論を引き続きお願いしたいと思っております。今日は、時間もあまりありませんので、これまでの議論の振り返りとして、委員の皆様方から出された意見等の整理について、小森課長からご紹介をしていただくことにしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【小森市場課長】
 資料5をごらんいただければと思います。

 今年9月以降、ワーキング・グループが再開した後に、高齢社会における金融サービスのあり方について委員の皆様方からいただいたご意見などを、事務局のほうで分類、整理をさせていただいているものでございます。座長からもおっしゃっていただきましたけれども、年明け以降、ワーキング・グループでこの問題についてさらにご議論をいただく上で、ご参考になる資料になればと考えているものでございます。分類の際に、きれいに切り分けることが難しいご意見などもあったところであります。お気づきの点や、気になる点等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。

 それでは、中身について説明をさせていただきたいと思います。

 1ページに目次がございまして、2ページ目以降、総論と各論について書いてございます。お時間の関係で、全てのご意見に触れるわけにはいかないので、一部のみについて触れながらご説明をさせていただきます。

 2ページ目、総論でございまして、検討に当たり留意すべき点や、議論の位置づけなどにつきましてご意見をいただいているところでございます。例えば、一番上のご意見ですが、認知症や加齢による認知能力の低下は、これまでは例外的な対応が求められるものと考えられてきたけれども、現在はそういうことではないといったご意見がございました。あるいは、一番下の黒丸でございますけれども、就労延長や年金改革など他の政策との組み合わせの重要性についてご意見をいただいたところでございます。

 ページをめくっていただきまして、3ページにお進みください。ここから各論に入ります。一番初めに、顧客自身の見える化が大事であるといった点についてのご意見でございます。例えば、2番目の黒丸でございますけれども、計画的に資産形成や取り崩しを行う上で見える化は非常に重要であり、キャッシュフローがワークしないなどの現実を見ることにより、行動も変わってくるのではないか、といったご意見もいただいているところでございます。

 進ませていただきまして、4ページ、各論の2番目といたしまして、金融機関のビジネスモデルについてのご議論でございます。顧客起点のビジネスモデルの追求、あるいは金融・非金融の連携などについて、私どもからも問題提起、投げかけをさせていただいたところでございます。例えば、下から3つ目の黒丸でございますが、今後は特定の業態、金融サービス業界において、単独で全てのニーズに対応するというのはおそらく不可能であり、総合的な資産管理、サービスが求められる、といったようなご意見もいただいているところでございます。

 進んでいただきまして、5ページ目、ビジネスモデルの3つ目として、高齢社会に即した商品・サービスの提供といった点についてもご議論をいただきました。例えば、2つ目と3つ目の黒丸でございます。各金融機関の工夫でさまざまなサービスが提供されていることがわかったけれども、各金融機関それぞれが同じようなサービスに異なる名称をつけており、比較が難しいのではないか、といったご意見もいただきました。それに関連いたしまして、独自の用語ではなく、スタンダードな用語ができるといい、といったようなご意見もいただいたところでございます。

 さらに進んでいただきまして、6ページ目、資産運用、取り崩しについてご意見をいただいているところでございます。たくさんご意見いただきまして、6ページ、7ページと2ページにまたがってご意見をいただいているところでございます。7ページに進んでいただきまして、例えば下から3番目の黒丸をごらんいただければと思いますが、資産を取り崩す方法は非常に重要であり、定額だけでなく、定率なども含めた複数の取り崩す方法や、サービスが拡充されるといいのではないか、といったようなご意見もいただいたところでございます。

 8ページ、各論の4番目として、NISA、iDeCo等の資産形成制度等についても活発にご意見をいただいたところでございます。例えば、8ページの上から4番目、NISA、つみたてNISAの統合や恒久化など、制度の将来像を示していただきたい、といったご議論をいただいているところでございます。

 また、9ページに進んでいただきまして、下から2番目でございますけれども、保有住宅の流動化という点で、リバースモーゲージはよいアイデアだけれども、普及には何らかのサポートが必要、といったようなご意見もいただいたところでございます。

 10ページに進んでいただきまして、各論の5番目、資産承継についてもご意見を幾つかいただいております。下から2番目の黒丸でございますけれども、上場株式等の相続税について、株式の評価額、価格変動リスクも考えていただく必要があるのではないか、といったご意見もいただいたところでございます。

 11ページ、各論の6番目といたしまして、顧客と金融機関の信頼関係などについても活発にご意見をいただきました。例えば、営業姿勢ですとか、あるいはコストの開示などについてご意見をいただいたところでございます。上から2番目をごらんいただきますと、顧客満足と顧客にとっての最善の利益は、必ずしもイコールでない、といったご指摘もいただいたところでございます。

 また、②の1番目をごらんいただきますと、金融機関が提供しているサービスに対して、利用者にどの程度のコスト負担が求められているのか明らかになっていないのではないか。あるいは、3番目でございますが、コストの開示やサービスの対価を請求するのは、信頼をかち取る上でのポイントとなるのではないか、といったようなご意見をいただいているところでございます。

 12ページに進んでいただきまして、各論の7番目、金融リテラシーということで、金融教育についても活発にご意見をいただいております。例えば、上から3番目、投資教育について、学校教育の中でもっと実施していってほしい、といった声もいただいております。

 次の13ページでございます。認知能力や判断能力が低下する前の対応の重要性についても幾つかご意見をいただいております。その中で、例えば1番目の黒丸でございますけれども、心身機能の低下は年代によって多様であることから、ライフマネーの運用に必要な高齢期の金融リテラシーについて、一体何なのか考えていく必要があるのではないか、といったご意見もいただいたところでございます。

 14ページ、各論の8番目、高齢顧客の保護についてでございます。非常に難しい問題でございますけれども、例えば3番目でございますが、高齢化社会では、市場のあり方や契約ルールについて、高齢者の心身にどういう特徴があるのかということを理解した上でサービスをしていかないと、契約や取引が形骸化してくるといった投げかけもいただいているところでございます。

 15ページ、その続きでございます。例えば、下から2番目の黒丸でございますけれども、成年後見人もリスク資産を取り扱えるようにしてはどうか、といったようなご意見もいただいているところでございます。

 16ページ、各論の最後になります。高齢者の側に立ったアドバイザーについても大変多くの意見をいただいているところでございます。例えば、上から3番目、こうしたアドバイザーの抱える課題として、認知度の低さ、あるいは小規模業者が多く、サービスの質も玉石混淆であるといった現状についてご指摘もいただいているところでございます。

 甚だ簡単ではございますけれども、これまでの整理ということでご紹介をさせていただいております。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 今日は、このテーマは、これまでの議論のご紹介ということにとどめさせていただきたいと思いますけれども、お気づきの点、もしこの場であれば伺いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。この資料の作り方、その他、今後の議論の進め方等について、ご助言等ありましたら、ぜひ別途、事務局のほうまでお知らせいただければありがたく存じます。

 それでは、少し予定の時間よりは早いかもしれませんけれども、今日、予定しておりました議事は終わりましたので、本日はこのあたりとさせていただきたいと思います。

 このワーキング・グループでございますけれども、本年9月に再開して以来、6回にわたって会合を重ねてまいりました。大変頻度多くお集まりいただきまして、ありがとうございました。高齢社会における金融サービスのあり方など、国民の安定的な資産形成に関しましては、年明け以降も引き続き議論をしていただきたいと思いますので、年内の議事は今日までということにさせていただきたいと思います。繰り返しになりますが、委員の皆様方には大変精力的なご議論を、2週間に1回ぐらいのペースでしていただきまして、まことにありがとうございました。

 次のワーキング・グループの日程及びテーマ等につきましては、後日、事務局から案内させていただきます。

 以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了したいと思います。少し早いかもしれませんが、皆様、よいお年をお迎えください。ありがとうございました。

―― 了 ――


 

サイトマップ

ページの先頭に戻る