金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第23回)議事録

 

1.日時:

令和元年5月22日(水)9時30分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室





【神田座長】
 おはようございます。定刻でございますので、始めさせていただきます。

 ただいまから、市場ワーキング・グループの第23回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、事務局から議事に関する事務的な説明をお願いします。

【小森市場課長】
 委員の皆様の座席でございますが、今回もランダムにさせていただいております。また、座長のご判断によりまして、議事の途中で5分程度の休憩をとっていただくことがあろうかというふうに考えております。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、本日の議事に入ります。

 本日ですけれども、高齢社会における金融サービスのあり方について、取りまとめに向けたご議論、ご審議をお願いしたいと思います。このテーマにつきましては、皆様方ご存じのとおり、昨年9月に当ワーキング・グループを再開して以来、皆様方に大変精力的かつ多角的な議論をしていただきました。これまでのこのワーキング・グループにおけるプレゼンテーションやご意見、ご指摘等を踏まえ、事務局のほうで報告書の原案を作成していただいております。本日は、事務局からこの原案について説明をしていただいた後で、委員の皆様方からご意見等をいただきたいと思います。

 本日からこのワーキング・グループとしましては取りまとめに向けたご議論をお願いしたいと思いますので、ご発言をいただく際には取りまとめを意識したというか、そういうご発言を簡潔にいただけると大変ありがたく存じます。また、報告書の案のどの部分についてのご意見なのか、また修正を求める場合にはどのように修正したらいいのかを具体的にご指摘していただきますと、大変助かります。

 そういうことで、まず事務局の小森課長から、報告書(案)についてご説明をしていただきます。よろしくお願いします。

【小森市場課長】
 お手元に5つほど資料がございます。資料1というのが報告書の案でございまして、こちらについてこれからご説明をさせていただきます。資料2につきましては、この背景となるような図表を集めてございますけれども、私の説明の中では、基本的にはこれについての説明は行わないつもりでございます。そのほかに3枚資料がございますけれども、こちらは資料1をベースといたしまして、報告書の全体ですとか、あるいは付属文書の1、2について事務局のほうで簡略にまとめたものでございます。こちらについてコメントをお願いしたいという趣旨ではございませんけれども、ご参照いただいて、ご理解の一助になればというふうに思っているところでございます。

 それでは、資料1に沿ってご説明をさせていただきます。「高齢社会における資産形成・管理」というタイトルで報告書の案をつくっております。

 おめくりいただきますと、目次がございます。「はじめに」、それから「おわりに」に挟まれた形で全体がございますけれども、現状の整理があった後に4つ、基本的な視点と考え方について述べられております。3ポツというところで「考えられる対応」とございますけれども、ここで3つの主体に分けた形で書いております。個々人にとっての資産の形成・管理での心構え、金融サービスのあり方、それから環境整備ということでございます。このうち(1)(2)につきましては、付属文書の1と付属文書の2で、それぞれもう少し詳しく書かれているといった構成になっております。

 それでは、まず「はじめに」に行っていただければと思います。1ページでございます。2段落目にございますけれども、金融をめぐる特に大きな背景の変化として、人口の減少・高齢化の進展ということを述べさせていただいております。人生100年時代と呼ばれるような時代におきまして、政府全体の取り組みもなされておりますけれども、その中で資産形成や管理、あるいは金融サービス提供者の取り組みなどについて議論をしているということを書いているところでございます。

 次のパラグラフの終わりのほうでございますけれども、本報告書の公表をきっかけに、金融サービスの利用者である個々人及び金融サービス提供者をはじめ、幅広い関係者の意識が高まり、具体的な行動につながっていくことを期待する、と述べられております。

 2ページ目でございますけれども、今後さらなる前提条件の急速な変化というのも見込まれるところであり、本報告書は金融面でのこうした対応の始まりと位置づけられるべきもの、金融サービスの提供者による取り組み等の状況について、例えば四半期ごとにフォローアップをしていくことが望ましいと述べられております。幅広い主体が本報告書の問題意識を訴え続け、国民間での議論を喚起することにより、中長期的に本テーマに係る国民の認識がさらに深まっていくことを期待する、と述べられているところでございます。

 3ページ目からが本論でございます。1の現状整理ということで、高齢社会を取り巻く環境変化につきまして、4つに分けて述べられております。

 (1)が人口動態等ということでございます。まず長寿化について述べられておりますけれども、現在60歳の人の約4分の1が95歳まで生きるといった試算などに触れられているところでございます。また、健康寿命という概念につきまして次のページから述べられておりまして、健康寿命と平均寿命の差を縮めていくことが重要であるといったことが述べられております。

 4ページのイは、単身世帯等の増加ということで述べられております。次のページ、下のほうになりますけれども、結婚後、夫婦と子供、親と同居し、持ち家を持ち、老後の親の世話は子供が見るというような、かつて標準的と考えられてきたモデル世帯は空洞化してきているといったことを述べております。

 その下のウ、認知症の人の増加ということでございます。2012年の65歳以上の認知症の人は約462万人、65歳以上の約7人に1人、また軽度認知症の人の数は約400万人と推計され、これらを合わせると、65歳以上の4人に1人が認知・判断能力の何らかの問題を有している。また、下のほうでございますが、今後の高齢化と相まって、2025年には認知症の人は約700万人前後まで増加すると推計されているといったことが述べられております。

 図表の下に参りますと、加齢とともに認知・判断能力が低下し、心身の機能が衰えていくことには個人差はあるものの、誰にでも起こる現象である。これに起因する金融サービスにおける制限というのも多岐にわたるものだということでございます。

 7ページに進んでいただきまして、真ん中ほどでございますけれども、成年後見制度の利用の増加に伴い、この制度の枠組みに入る金融資産が大きく増加していくことが想定される中、これらをどう管理していくのかは重要な課題の一つと言える、というふうに述べております。

 7ページ下のほうに囲み記事が載っております。米国におけるプルーデント・インベスタールールについてご紹介させていただいております。このルールの中で、フィデューシャリー(受託者)に原則として分散投資を求めている。成年後見制度における後見人もフィデューシャリーであるとして、資産管理に分散投資が義務づけられているといった紹介をさせていただいております。

 8ページの(2)、収入・支出の状況について述べられているところでございます。アで平均的収入・支出について触れております。年齢層別に見ても、時系列で見ても、高齢の世帯を含む各世代の収入は全体的に低下傾向となっているというところでございます。次の9ページでございますけれども、支出もほぼ収入と連動している。過去と比較して大きく伸びていない。65歳以上においては、過去と比較してほぼ横ばいの傾向が見られると述べております。

 10ページの中ほどでございますけれども、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補てんすることとなると述べております。

 11ページに就労状況、イでございます。2016年においては、65歳から69歳の男性の55%、女性の34%が働いており、世界でも格段に高い水準となっているということでございます。12ページ下のほうでございますけれども、こうした現状を踏まえれば、高齢者の就労継続は今後も続くのではないかと考えられるといったことをご紹介させていただいております。

 13ページのウでございます。退職金給付の状況でございます。かつては退職金と年給給付の2つをベースに老後生活を営むことが一般的であったと考えられる。しかし、長寿化による影響はもちろんのこと、公的年金の水準が低下することが見込まれていること、退職金給付額の減少により、こうしたかつてのモデルは成り立たなくなってきている、と述べております。15ページに飛んでいただきまして、退職金の給付額を把握した時期について、約3割が退職金を受け取るまで知らなかった、約2割が定年退職半年以内と回答している。退職金の金額の大きさを踏まえると資産運営に回す金額は多額であると言えることから、こうした投資を行う際には、運用方針や資産運用に当たって必要な金融に関する知識を事前にある程度は身につけてから臨むことが望ましいと言える、と書いてございます。

 その下の(3)金融資産の保有状況でございます。全体的な傾向として、若年層よりもシニア層のほうが金融資産の保有割合が高く、この傾向は今後も続く見込みであるといったことが述べられております。17ページの上のほうからでございますが、(2)で述べた不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取り崩しが必要になる。特別な支出を含んでいない。さらに、みずからの金融資産を相続させたいということであれば、金融資産はさらに必要になってくると述べております。

 その下でございますが、米国では、75歳以上の高齢世帯の金融資産はここ20年ほどで3倍ほどに伸びている一方、我が国の同年代の高齢世帯の金融資産はほぼ横ばいで推移、対照的な動きとなっている。米国では市況が好調だったことに加え、401(k)プラン等の制度的な後押しもあり、現役期から資産形成を実行し、かつ継続するとともに、高齢世帯の資産が増加していったと推察される。我が国でも後述するつみたてNISAやiDeCo等が整備され、個人が長期の資産形成を行うに際して制度的な環境が整いつつある、とまとめさせていただいております。

 18ページの(4)金融環境に対する意識でございます。「老後の生活設計を考えたことがある」と回答した人は全体で67.8%となっている。また、「ある」と回答した人に対して理由を問うたところ、多数を占めた回答が「老後の生活が不安だから」であり、多くの人が老後生活に不安を抱えている現状がわかる。下のパラグラフの最後でございますけれども、老後の不安として「お金」が主要要因となっていることがうかがえる、と述べております。

 19ページでございますけれども、資産寿命を延ばすために必要なことを尋ねた調査によれば、「現役で働く期間を延ばす」「生活費の制約」を挙げる回答が多いが、このほかに「若いうちから少しずつ資産形成に取り組む」を挙げているといったことを紹介しております。

 20ページでございますが、他方、別の調査では、老後に向け準備したい(準備した)公的年金以外の資産として証券投資を挙げた者は2割以下にとどまり、意識と行動に乖離があることがうかがえる。投資を行わない理由として上位を占めているのが「まとまった資金がない」「投資に関する知識がない」「どのように有価証券を購入したらよいのかわからない」という回答であり、顧客側の問題に加え、金融機関側が顧客のニーズや悩みに寄り添い切れていない状況がうかがえる、というふうにしてございます。

 21ページからが、2.の基本的な視点及び考え方でございます。現状整理から、高齢社会における金融サービスに関して、個々人及び金融サービス提供者の双方がともに認識することが望ましい事項が導き出されるのではないかということで、4つのポイントについて以下述べております。

 1番目が、長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが必要、ということでございます。段落の中ほどでございますが、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるのか考えてみることである、と述べているところでございます。このページの下のほうに、囲みがつくってありまして、長期・積み立て・分散投資の有効性について紹介をしているところでございます。22ページの真ん中ほど、文章の最後のほうでございますが、想定外の損失が発生するリスクも存在することには留意が必要であるが、長期・積み立て・分散投資がリスクをコントロールし、一定のリターンをもたらしやすい点で、多くの人にとって好ましい資産形成のやり方であると考えられる、と紹介しております。23ページ、続きまして、この囲みの最後でございますが、手数料の高低が長期投資においてはその果実に大きく影響を与えることはよく認識しておく必要がある、と触れております。

 (2)ライフスタイル等の多様化により個々人のニーズはさまざまというところでございます。その下のパラグラフの終わりのあたりでございますが、前述のとおり、保有資産や所得等の状況はばらつきが見られるようになってきている。その下のパラグラフのやはり終わりのほうでございますが、今後はみずからがどのようなライフプランを想定するのか、そのライフプランに伴う収支や資産はどの程度なのか、個々人は自分自身の状況を「見える化」した上で対応を考えていく必要があると言える、としております。

 24ページの(3)でございますが、公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスクでございます。3行目からでございますが、公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して、老後の収入が足りないと思われるのであれば、おのおのの状況に応じて、就労継続の模索、みずからの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった自助の充実を行っていく必要があると言える、としております。

 (4)認知・判断能力の低下は誰にでも起こり得るという点でございます。2つ目のパラグラフでございますが、今後は、認知症の人はもはや決して例外的存在ではなく、認知・判断能力の低下は誰にでも起こり得ると認識すべきであると言える。本人による意思能力が不十分となった場合には、日常生活を送るに当たってさまざまな制約を受けることになる。これをできる限り回避するための事前の備えや適切な対応の重要性が増していくものと考えられる、としてございます。

 25ページからは、3.考えられる対応でございます。まず(1)に、個々人にとっての資産の形成・管理での心構えでございます。長寿化が進む中、資産形成・管理において、資産寿命を延ばす観点から、広く国民が知っておくことが望ましい事項があると考えられる。詳しくは付属文書1で述べることとしてございますが、ステージに応じて整理すると以下のような点が考えられるということで、現役期、リタイア期前後、高齢期のそれぞれについてポイントを記述しております。

 26ページの(2)金融サービスのあり方でございます。(1)で述べた個々人のニーズに対して、顧客の資産寿命を延ばしていく上で金融サービス提供者がどのように顧客をサポートできるか、考えられる対応を整理する。これも詳しくは付属文書2で述べるということでございますが、前提として重要な点として、顧客本位の業務運営の徹底などについて述べているところでございます。また、顧客の年代別の対応について、整理を28ページにかけて行っているところでございます。

 28ページの下、(3)環境の整備でございます。個々人の資産形成・管理での心構えや、これに対応した金融サービス提供者のあり方が重要であることを述べた。これに加えて、行政機関や業界団体などによる種々の環境整備も劣らず重要である、としております。

 29ページ、アでございます。資産形成・資産承継制度の充実でございます。1つ目のパラグラフの最後のほうに、つみたてNISA、それからiDeCoについて触れております。表の下、ページの下のほうでございますが、ライフイベントに応じて引き出すことが可能なつみたてNISAと、年金制度として所得控除が認められているiDeCoとは、両者を併用することで、住宅購入などの計画的に準備が必要な支出や、病気、事故、失業などの予想外の支出への備えをしつつ、老後に向けた資産形成が可能となるものである。よって、お互いが補完し合う関係として活用が進むことが望ましい。このように、制度面では個人の資産形成を促す制度が相応に整備されてきていると言える、としております。その下のパラグラフで一般NISAについて触れられておりまして、30ページの上のほうに参りますが、退職金の受け皿としての機能も期待されるというふうに述べてございます。

 つみたてNISAとiDeCoの両制度とも、まずは順調に利用者が増加しているものの、その利用は国民の一部にとどまっている。金融庁と厚生労働省は、それぞれが連携し、今後より一層の制度の周知に努めるとともに、若年期から資産形成に取り組むことの重要性についても広報していくべきである。そうした普及に向けた取り組みと並行して、つみたてNISA、iDeCoともに、利用者の声を聞きながら、制度そのものの改善にも努めていくべきである。つみたてNISAについては、時限を撤廃し、恒久的な措置とすることが強く望まれる。また、より利便性の高い制度を構築するため、非課税保有期間について無制限とすること、ライフプランに沿って拠出額を柔軟に変更させることができるようにすること。次のページに参りまして、スイッチングを条件次第で可能とすること。その他、例えば配偶者死亡時においてNISAの非課税枠を引き継げるようにすることなども検討していく課題であるとの指摘があった、としています。

 次のパラグラフがiDeCoでございます。iDeCoについては、拠出可能年齢の上限を引き上げることのほか、利便性向上のほか働き方の多様化等への対応、また、さらなる税優遇を行うことの政策的必要性を勘案して、拠出限度額のあり方についても検討することも望ましい、としております。

 その他の課題として、住宅資産を有効に活用できる環境整備も重要と考えられる。例えばリフォーム市場の活性化や、良質な既存住宅の資産価値の適正評価を促すなど、既存住宅の流通化を活性化させるための施策をより一層推進することが望まれる、としております。

 次のパラグラフでございますが、相続税評価額の算出時における不動産の価格、それから有価証券の評価について述べておりまして、資産承継に関する制度のあり方についても検討していくべき課題である、としております。

 最後のパラグラフは事業承継について述べております。下のほうでございますが、非上場株式の売買の媒介に関する業界の自主規制を改正し、金融サービス提供者が事業承継の円滑化に貢献されることが期待されるということで、注の7でございますけれども、今年5月に、事業承継を含む経営権の移転等を目的とする非上場株式の取引に係る投資勧誘を解禁する規則改正案が日本証券業協会より公表されたというご紹介をしております。資料2の16ページ、17ページに、この案について出ておりますので、お時間があるときにご覧いただければと思います。

 32ページ、イの金融リテラシーの向上でございます。2つ目のパラグラフの後半でございますが、今後は生涯を通じた資産形成の重要性や適切なあり方を国民に広めるきっかけとなるよう、取り組みを工夫・強化していくべきである。本報告書で示している「個々人にとっての資産の形成・管理での心構え」についても、高齢社会において個々人が金融サービスに向き合うための基礎となる一つの考え方として、関係省庁、企業、機関、地方公共団体等の協力を得つつ、ライフステージごとのさまざまな機会を捉えて広く浸透を図っていくことが望まれる。

 次のパラグラフは企業の取り組みでございまして、「退職金がある場合には」のパラグラフの後半でございますが、退職金が幾らになるかの見通しをできる限り早い時期に雇用者から本人に通知することは社員の福利厚生の向上の面でも重要であり、各企業の積極的な取り組みが望まれる。更に次のパラグラフでございますが、金融リテラシーの向上における企業年金の役割も重要であり、適切なガバナンスのもとで受益者本位で運用されることはもとより、その前提として、運用状況や給付額について、より職員が把握しやすくなるよう各企業が取り組むことも望まれる。このページの下から2行目でございますが、事業主においては、より従業員一人一人の資産形成に資するような投資教育・継続教育を行うことや、従業員のリテラシーも踏まえつつ資産形成に資する運用の選択肢を用意することが求められるとしております。

 33ページのウ、アドバイザーの充実でございます。2つ目の段落でございますが、個々人に的確なアドバイスができるアドバイザーの存在が重要である。「現状では」とございまして、単一の業態の金融サービス提供者が全ての商品・サービスを俯瞰したアドバイスを行うことには難しい面がある。このため、特に強く求められるのは、顧客の最善の利益を追求する立場に立って、顧客のライフステージに応じ、マネープランの策定などの総合的なアドバイスを提供できるアドバイザーである。まだまだ認知度は低く、数は少ない。今後は認知度向上に努めるとともに、そのサービスの質的な向上に努めることが望まれる。また、本人に一番身近な金融機関などの者においても、単一の業態にとどまらない顧客のニーズに応じた総合的なアドバイスを行うことは、顧客からの信頼を得る上で、また高齢社会の金融サービス提供における役割を果たす上でも重要なことである、としております。

 エの高齢顧客保護のあり方でございます。下から2行目でございますが、例えば現在の日本証券業協会の投資勧誘等のルールでは、一定の年齢を目安に、それまでの年齢の顧客と違う対応を求めている。75歳ごろから認知症の発症率が上昇していくことを踏まえると、これには一定の合理性が認められるが、高齢者の状況も非常に多様である。本来は個々人に応じたきめ細やかな対応が望ましく、例えばリスクが高い複雑な商品の提供は厳しく抑制する一方で、リスクが低い簡素な商品については説明内容を軽減し、商品のリスクや複雑さに応じてメリハリをつけるなどの対応が望まれる。高齢顧客保護のあり方については、顧客本位の業務運営を徹底しつつ、業態を問わず金融業界として横断的に、金融ジェロントロジーの進展に応じて見直していくことが必要と考えられる。また、本人が望む場合には、認知・判断能力の低下・喪失後も資産運用を続けられることが望ましい。成年後見制度における資産管理のあり方について、本人意思の尊重と財産保護という2つの両立を図るための方策を関係省庁等が連携して検討していくべきである、と述べております。

 35ページ、36ページについては、「おわりに」でございます。36ページの1行目、高齢化は世界共通の課題となりつつあるといったことでございまして、そのパラグラフの真ん中ほどでございますが、我が国はそのトップランナーとして高齢化対応に取り組んでおり、その取り組みは各国から注目されている。我が国については、その経験を共有することで各国の状況に適応できる解決策の検討に貢献することが期待されるところである。今年、我が国はG20の議長国を務めるが、「G20金融包摂のためのグローバルパートナーシップ」において議論を主導し、報告書をまとめたところである、ということでございます。

 下のパラグラフの真ん中ほどでございますが、個々人や金融サービス提供者、行政機関などのあらゆる主体がメインプレーヤーであり、多様な主体が意識を共有して協働していくことが非常に重要である。この報告書が契機の一つとなり、幅広い主体に課題認識等が共有され、おのおのが自分事として本テーマを精力的に議論することを期待している、と述べております。

 37ページ以降に2つの付属文書がついております。付属文書の1が高齢社会における資産の形成・管理での心構えといったことでございまして、長寿化が進行する中、資産寿命を延ばす観点から、個々人が各ライフステージ別にどういったことに留意すべきか述べたものでございます。

 (1)の現役期でございますが、長寿化に対応し、長期・積み立て・分散投資など、少額からでも資産形成の行動を起こす時期、としております。早い時期からの資産形成の有効性を認識するということで、準備のための時間を多く保有している現役期について、少額からでも長期・積立・分散投資を習慣化して行うことにより、安定的に資産を形成できる可能性は十分にあるとしております。下の囲みの「少額からであっても安定的に資産形成を行う」についてでございます。投資期間が長期であればあるほど、投資タイミングと投資対象を分散すればするほど、市場の価格変動に強く、収益がばらつきにくくなること。みずからにふさわしいリスクの程度を認識し、過度にリスクの高い投資は行わないこと。市況変動に一喜一憂することなく着実に長期・積み立て・分散投資を継続することが、長期的な資産形成には重要であること。金融サービス提供者に支払う販売手数料や信託報酬等の高低が長期投資の果実に影響を与えること等を認識することが重要である、と触れております。

 次の四角が「みずからにふさわしいライフプラン・マネープランを検討する」でございます。このような資産形成を行動に移し、金融や関連する経済に関する知見を得ていくことを通じて、資産及び収入・支出状況と照らし合わせ、みずからにふさわしい長期的なライフプラン、マネープランを検討することが可能となってくるのではないだろうか、としております。

 その下の四角でございますが、「長期的に取引できる金融サービス提供者を選ぶ」。金融サービス提供者を選ぶ際は、提供者が顧客の利益を重視しているかという観点から、長期的に取引でき得る提供者を選ぶように心がけたい。その一つの目安としては、商品の手数料は高過ぎるものではないか、コストや対価は適当か、その説明は十分なものかといったことであろう、としております。

 39ページに進んでいただきまして、(2)リタイア期前後でございます。リタイア期以降の人生も長期化していることに対応し、金融資産の目減りの防止や計画的な資産の取り崩しに向けて行動する時期としております。四角でございますが、退職金がある場合、それを踏まえたマネープラン等を再検討する。①でございますが、退職金の金額や形式等を退職前の早期に確認する。公的年金等をはじめとする定期的な収入や支出、その時点での資産や負債などを自らに「見える化」し、老後の生活に十分な資金状況であるかを確認する。

 40ページでございますが、収支の改善策を実行するといったことで、収入の確保、特に就労継続の検討、次に検討する事項としては支出の見直し、住宅資産の活用や、住居費や生活費が相対的に安い地方への移住も選択肢に入ってこよう、としております。

 その下の四角でございますが「中長期的な資産運用の継続と計画的な取り崩しを実行する」でございまして、リタイア後もまだ20年から30年の人生が続くことを前提に、中長期的な資産運用の継続・実行と、その後の計画的な取り崩しの実行が挙げられるとしております。既に長期・積み立て・分散投資を現役期から行っている場合は、それを続けられるうちは続け、仮に現役期より行っていない場合であっても、リタイア後でもまだ20年から30年の人生が続くことを踏まえると、リタイア期前後から長期・積み立て・分散投資を始めても遅くないと考えられる、としております。

 41ページでございますが、退職金等の資産を運用する場合は、当座の生活資金や十分な予備資金等を余裕をもって控除した上で、当面の使途がない資金について運用を検討すべきである、としております。

 (3)の高齢期でございますが、資産の計画的な取り崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期でございます。年齢による区分は困難であるが、心身の衰えも踏まえて資産の計画的な取り崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失は誰にでも起こり得るという認識のもと、それに備えて行動することが重要となるということでございます。

 42ページの四角「心身の衰えを見据えてマネープランを見直す」でございまして、老人ホームなどへの入居が必要となった場合には大きな費用が発生し得るため、マネープランの検討が改めて必要となってくる、としております。

 次の四角の「認知・判断能力の低下・喪失に備える」でございます。認知・判断能力の低下は誰にでも起こり得る、そしてその認知・判断能力の低下には本人も周囲も気づきにくいということでございます。対策として挙げられている例といたしまして、取引関係のシンプル化など、金融面の自身の情報を整理するとともに、適切な限度額の設定など、使い過ぎ防止のための手段を講じる。金融資産の管理方針を決めておく。可能であれば金融面の必要情報を信頼できる者と共有する。これらにより、たとえ認知・判断能力が低下した場合でも、資産寿命の短縮化をある程度を防ぐことができると考えられる。こうした能力を喪失した場合でも、あらかじめ共有された情報や方針に基づき、周囲の者が本人の金融行動をサポートするとともに、周囲の者の混乱も抑えることが期待されるとしております。

 43ページの一番下の部分でございます。長期・積み立て・分散投資ならば、金融の最先端知識や手間はほとんど必要ない。人生100年時代というかつてない高齢社会においては、これまでの考え方から踏み出して、資産運用の可能性を国民の一人一人が考えていくことが重要ではないだろうか、としております。

 44ページから、最後の付属文書の2でございます。高齢社会における金融サービスのあり方でございまして、個々人の資産の形成・管理での心構えに応じて、金融サービスはどうあるべきか、ということで、囲みで「顧客本位の業務運営の徹底」ということで、大前提として、顧客本位の業務運営を挙げておきたい。そのパラグラフの下でございますが、資産寿命を延ばすために、顧客にどういった金融サービスを提供し得るか、顧客が真に必要とする金融サービス提供し、信頼を勝ち得た金融サービス提供者が中長期的に選ばれていくと考えられるとしております。

 その下の四角は「持続可能な金融サービス」でございます。顧客本位の追求は、持続可能な金融サービスの提供と同時に実現されるべきものである。顧客の利用しやすさにも配慮した適切な対価を得ることは正当なことである。対価を開示し、コストとサービスを踏まえ適切であることを顧客に対して説明し納得してもらうことも顧客の信頼を勝ち得るポイントの一つであろう。高齢社会における金融サービスについても、1つだけの正解はない。下記に示す方策はあくまで一例であり、かつ大きな方向性としてのあり方となる。ゴールに至るまでの過程・方法やゴール自体についても、金融サービス提供者おのおので異なっていることは自然なことであろう。大事なことは、顧客と目的と共有し、寄り添いながら顧客を満足させ、かつその利益を中長期的に最大化させられるかどうかであり、そうした観点から金融サービス提供者がそれぞれ具体的に考えていくことが重要である、としております。

 (1)顧客や社会の変化に応じて、金融サービスに何が求められているかということで、45ページに述べております。アで、長寿化と自助の充実への対応といったことでございます。2つ目の段落でございますが、金融サービス提供者に求められることとしては、顧客に対する資産形成・管理のサポート、顧客のライフプラン・マネープランに関するコンサルティング機能を強化し、顧客の最善の利益を追求すること、と述べております。この段落の後半でございますが、金融サービス提供者は、こうした多岐にわたるニーズに対して、顧客本位の観点から、非金融サービスとの連携やワンストップ化の推進なども含め、総合的に応えていくことが求められている。異業種の主体との連携も含め、高齢者向けサービスに関する地域での連携の発展に努めていくことも重要である、としております。

 46ページのイ、多様化への対応でございます。1つ目の段落の後半でございますが、商品・サービスの多様化や、前述したコンサルティング機能の強化のほか、顧客ニーズに応じて商品・サービスを組み合わせて提供するといったことも求められていると言えよう。また、商品・サービスの「見える化」も重要である。その商品・サービスがどのような内容であるかが容易に理解できること、理解してもらうことが重要である。「見える化」を推進し、金融機関や業界の垣根を越えて、さまざまな商品・サービスの内容やコスト等の相互比較を容易にすることが重要である。顧客がニーズに合った商品・サービスを適切に選択できるメカニズムが形成されていくことが期待される、とございます。

 ウでございますが、認知・判断能力の低下・喪失への備えへの対応でございます。1つ目の段落の後半でございますが、本人意思の確認を十分に行い、またはあらかじめ明らかにされた本人意思に基づいて、判断能力が低下・喪失した後でも継続的にサービスを受けられるよう、あらかじめ本人意思を明示させるよう働きかけることが望ましい、としております。

 47ページの(2)以降が顧客のステージごとのものでございますが、(2)が現役期の顧客に対する対応の方向性でございます。2つ目の段落でございます。金融サービス提供者は、資産形成ニーズに応じた商品・サービスを提供することが求められていることの一つと言えるのではないだろうか、としているところでございます。48ページに進んでいただきまして、具体的な対応としては、まず顧客の状況をよく知り、金融以外の資産・負債を含めて家計のポートフォリオを俯瞰することである。顧客の状況に即したマネープランの提案など、総合的なコンサルティングサービスを提供することが考えられる。こうした資産形成のニーズに対しては、短期的な取引に基づく収益追求に終わらせるのではなく、例えば長期・積み立て・分散投資等を提案することなどにより、長期的な取引関係につなげることが重要ではないだろうか、としております。

 48ページの中ほど(3)リタイア期前後の顧客に対する対応の方向性でございます。2つ目の段落でございますが、多くの人が退職金という多額の金融資産を取得する時期であることから、多くの金融機関が退職者向けのキャンペーンを盛んに行っている。しかしながら、そうしたキャンペーンなどの内容が真に顧客にふさわしいものであるかについては自問が必要なのではないか。金融サービス提供者に求められるのは、短期的な利益ではなく、中長期的の資産形成の観点からの商品・サービスの提供である。そのためにも、まずは今後のライフプランをいかに考えているのか、顧客に寄り添ってコンサルティングを行うことが重要となる。49ページに進んでいただきまして、初めの段落の最後でございますが、顧客のその後人生に必要なプランや商品・サービスを提供できた金融サービス提供者が中長期的に選ばれていくことになるのではないだろうか。次の段落でございますが、就労延長や支出抑制策を含めた、特定の金融サービスにとどまらないライフプラン、マネープランの提供が挙げられるとしています。資産取り崩しやリスク許容度の変化、長生きリスクなどがこの時期において発生することを踏まえると、こうしたことに対応した商品・サービスのますますの充実が期待されるところであろう。一括で比較できるワンストップのサービスの提供、他社の類似商品との比較のしやすさに配慮した商品の説明や内容の開示なども検討されるべき事項だろう、としております。

 49ページの下のほうで、(4)高齢期の顧客に対する対応の方向性でございます。初めの段落の最後でございますが、顧客のマネープランを「見える化」するサポートがここでも求められるのではないだろうか。次のページに進んでいただきまして、非金融の分野に関する商品・サービスの提案・提供も考えられるところである、としております。

 下から2番目のパラグラフでございますが、認知・判断能力の低下・喪失に備える時期でもある。本人意思が確認できないとなった場合、これまでは金融サービスを従前どおり受けることは難しい面があった。しかし、社会全体の対応が変わりつつある中で、金融サービスもそれぞれに応じて対応していかなければならない。金融ジェロントロジー等の学問的見地を取り入れるなどして、その対応を進化させるとともに、環境づくりをより推進していくべきである、としております。

 最後の51ページでございます。2行目でございますが、認知・判断能力が低下・喪失した後であっても、あらかじめ明らかにされた顧客本人の意思を最大限尊重しながら、適切な金融取引の選択を行えることが望ましく、金融サービス提供者も今後より一層対応を進めていくべきである、としております。

 以上、端折りながらのご説明になりましたけれども、以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければありがたく存じます。どなたからでも、どの点でも、お願いいたします。

 それでは、上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
 ありがとうございます。取りまとめに賛成でございます。近々に国際的な発信もされるのではないかと思いますので、特に修正意見はないということにさせていただきます。ただ一言だけ、特に34ページあたりのところですけれども、34ページの4行目に「きめ細やかな対応」という言葉がございます。繰り返すまでもないかもわかりませんけれども、特に認知能力について変化があり得ること、それから個々人の差があること、医学的知見を伺いましたし、これからまたそのような科学的知見も変わっていくということを考えると、ここがポイントだろうと思います。ゆめゆめ、いわゆる脆弱な、あるいはバルネラブルな顧客が不測の損害をこうむらないように、顧客のことをよく知るknow your customerということで、伝統的な概念をそのまま使えるのかもわかりませんけれども、ここのところが大変重要だろうということだけは申し述べたいと思います。

 それからもう一つだけ、34ページの一番下の行とも関連するかもわかりませんが、地域における包括支援体制というのが各所で議論されております。地域金融機関を中心に金融サービスに携わられる方は、そういう意味では、それこそ個々の国民の状況をよく把握されていると思いますし、資産を預かるという大事な業務をされていますので、その包括支援体制の中に金融サービス、あるいは金融機関がどのように組み込まれるのかということは今後の大きな課題だと思いますので、残された課題ということで申し添えたいと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 すごい勢いでこのワーキング・グループが続いてきて、本当にたくさんの、多方面からの意見があったというのは承知しております。その上でこれをまとめていただいている点、ほんとうに大変評価したいなと思っています。

 ただ、本質的な課題は報告書ができて終わりというわけではないのは、もう今さら言うまでもないと思っていまして、いかに現実の社会に根づかせていくかというところになると思います。正直なところ、海外と比べたり、また現実の高齢化の水準やペースと比べると、こうした活動がこれまでかなり遅れてきたというところを改めて認識しておく必要があると思っています。特に自分の中では、やはりデキュミュレーションですとか、それからそれに対する制度的なサポートというのが非常に欠けているのではないかというのを改めて認識しているところであります。最初の「はじめに」のところに、四半期ごとにフォローアップをしていくというような表現をされていますので、金融庁がこれに関して常に関心を持っているよということを続けて示していただくということは大事なことではないかなというふうに思っています。

 ちょっと細かい点で恐縮なのですが、30ページの一番最後のパラグラフです。「また、より利便性の高い制度を構築するため」というところなのですが、これはつみたてNISAだけではなくて、一般NISAについても言及しているのではないかなと思えますので、可能であれば、一般NISA、つみたてNISAともに非課税保有期間については云々というふうにできないものだろうかというのをちょっと思いました。それほど大きなポイントではないと思っています。繰り返すことになって恐縮ですけど、退職後の非課税制度でいくと、もうほんとうに一般NISAしか残っていないなというのが今の現状だと思っています、特に高齢者に対してです。そこは何かしら制度的なものが必要になるというのが、私は大事なポイントではないかというふうに思っています。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、林田委員、高田委員、中野委員、野村委員の順でお願いできればと思います。

 林田委員、どうぞ。

【林田委員】
 ありがとうございました。中身については大分、原案よりブラッシュアップされて、よくなっていると思います。

 1点、表題についてなのですけれども、原案では高齢社会における金融サービスのあり方となっていて、付属文書の2と同じ表現になっている。何か金融機関に対してサービスのあるべき姿を求めているような印象があったので、この報告書の狙いは、主に人生100年時代を迎えるに当たって各個人がどう対応していくべきかというところに主眼があったと思います。したがいまして、資産形成・管理に力点を置いた表題にしたということは賛成したいと思います。ただ、表題の後半部分「資産形成・管理報告書」と、点を挟んで漢字が9文字も並んでいて、ややかた苦しいイメージがあるなというふうに思いました。私自身、名案があるわけではないのですけれども、例えば、高齢社会における資産形成と管理のあり方報告書みたいな、もうちょっと砕けた表現にしたらどうかなということを感じました。

 それから、皆さんおっしゃっているように、報告書の取りまとめというのは決してゴールではないのだと、報告書に盛り込んだことを世の中に浸透させていくスタートと位置づけて対応していただきたいと。特に金融庁は、この内容をサマライズしたパンフレットのようなものをつくるとおっしゃっていらっしゃいますので、充実した内容に仕上げていただいて、本報告書の普及周知に役立てていただければと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 どうもありがとうございます。ちょうど昨年の秋からということで、いろいろな方々のご意見でありますとか、そういったものを背景にこうしたものができ上がったいうことは大変時宜にかなったものではないかと思いますし、またこれだけの作業をまとめていただきましたこと、ほんとうにどうもありがとうございます。

 そういう意味では、私も今回のこの案ということで、ぜひ発表していただければというふうに思っているということでございますが、ただ、先ほど林田委員からのご議論にもございましたように、またこちらの文章の中にもあるのですけれども、これがゴールではないということでございますので、これを機にさまざまな広がりをというのでしょうか、今回こちらのワーキング・グループは金融庁でということでございますが、こちらにありますように非常に多くの方々にご参加をしていただいております。例えばNISAにしてもiDeCoにしてもということでありますけれども、場合によっては厚生労働省ということでもございますし、また場合によっては、こうした広がりは自治体にも及び、また場合によってはさまざまな関連の金融の業界というでもありますので、これを機に、ある面で言いますと国民運動といいましょうか、また場合によってはこれからの令和に向けた意識改革といいましょうか、そういう草の根運動的なものとして、こうしたものがいかに使われてくるかということがやはり重要なのではないかなと思います。

 そういう観点から申し上げますと、先ほどの議論の中にもありますように、これから金融庁のほうでパンフレットをおつくりになるということも1つでしょうし、また場合によってはさまざまなシンポジウムということもあるのでしょうし、また、先ほど委員の方のご議論にもありましたように、今回のこのタイトル自体、私もこれで構わないと思うのですが、場合によっては副題みたいな形でもって、より親しみというのでしょうか、キャッチーなものがあるといいと思います。こういうものがやはりみんなのところに1冊、1回みんな読んでいただくというような、そんなことも含めたものが出てくるといいのではないかなとも思います。また今後、その広がりという観点から申しますと、こちらの文章の中にもありますけれども、四半期ごとのフォローアップをどうしていくのかということもやはり重要ではないかと思います。

 それから、時宜にかなったという観点で申し上げますと、まさに来月、G20が始まるわけでございます。そういう意味では、私は、日本がやはり変わろうとしているというメッセージを外に出すこと、また場合によっては、今回のこういう議論が、なかなか他に先例がないということからすると、ほかの、今後の、新興国も含めたところにもいかに参考にしてもらうかという点もやはり重要ではないかと思います。そういう観点から申し上げますと、この50ページを全部英文にというのはなかなか難しいかもしれませんけれども、少しでもそういうグローバルな広報活動というのでしょうか、こうした点もできる範囲で続けていただけるとよろしいのではないかなというふうに思うところでございます。

 私は今回のこちらのものは、もうこの段階でということで取りまとめをということなのだろうと思うのですが、ただ、やはりこの議論は非常に長い時間軸の議論ではないかなというふうに思います。特に今後の時間軸の中で考えてまいりますと、これからちょうど団塊の世代が後期高齢者ということ、それから私は、もっとやはり重要になってまいります団塊ジュニアの世代が今後高齢層に入ってくるということになりますと、今40代の問題ということがいろいろ言われておりますように、従来のエスカレーターの上に乗っていない人たちというのも出てきているということでもございますので、そういう方々も含めて、できるだけそのカバレッジをどうするのかというのも、次の議論としてやはり重要になってくるところもあるのではないかというふうに思います。

 そういう点も含めて今回のものが1つのきっかけになって、先ほど申し上げましたように国民運動的に、これがある面でのバイブルになって、それぞれのものでみんなに使っていただけるような、そういうものになればというのを我々委員としても強く願うところでございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、中野委員、どうぞ。

【中野委員】
 ありがとうございます。今までの委員の皆さんのご意見と重なるところが非常に多いのですが、私なりの総括をさせていただきたいと思います。

 まずは、ほんとうにかなり長い時間をかけてこのワーキング・グループで議論し、端的に言えばかなり百花繚乱な意見が出た中を、事務局の皆様方がものすごく知恵を絞られて、大変精緻な共通解としてまとめてくださったことに感謝申し上げたいと思いますし、これがほんとうに今後社会に広まっていくことを大いに期待しております。

 この報告書自体は、1つは国民生活者一人一人に対する、共通に行動してほしい、いわゆる行動規範をまとめたものと、もう一つは、そこに対して金融業界がどういう形でビヘイブしていくか、という2つの軸にあると思うのですが、当該報告書がしっかりできてきたということで、まずは、ここに絶対正義というものはないことをあえて前提にしながらも、金融業界挙げて、普遍的な、共通正義と一旦定義してみて、その上で1人でも多くの顧客にこれを知らしめていく、そして1人でも多くの生活者に気づきを与えていく。これは単に今はやりのお勧め的な勧誘とは全く別次元で、能動的にみずから考えて行動してもらうための行動規範のアドバイスという観点から、ビジネスモデルの中核にこれを据えて、そういったやり方自体を切磋琢磨しながら競い合って、そして顧客の将来の幸せな人生のためにのみ我々金融業界が持つ知的財産を提供していくといったことに、金融業界の産業文化を改めて構築、昇華していくように金融業界自身が努力するべきでありましょう。そして、金融業界のみならず、官民協働で注力していくことを、一緒に目指してまいりましょう。

 これは生活者主導の金融立国化に直結することだと思っておりまして、すなわち、これまで20世紀の高度経済成長期に我々の先達が積み上げてきた金融資産が、この国には幸い大量にある。その金融資産が行動の仕方1つで十分な富をまだ生み出せるのであって、生み出した富を拠出者たる生活者がするっと丸ごと還元を受ける、そうした文化が次の世代までしっかりと定着して醸成されていくことが、結果的には金融業界全体における資産運用の高度化を実現することに直結するゴールであろうと思います。

 次のワーキング・グループでは、その実践に向けた具体策を考えていく場にぜひしていただきたいと思います。皆さん委員の方々がおっしゃったとおり、当然これがゴールであるわけではなく、完成形でもないので、俗に言うPDCAサイクルを一緒に回し続けて、虚心坦懐に、ちょっとやってみたけど、うーんと思うものは冷静に修正していくということも考えながらやっていければと思います。

 20世紀の一億総中流社会というのは、もう実現できないことは自明の理であり、一方で一人一人がちゃんと自分で行動していければ、ちゃんと豊かな人生をつくれるのだという事実を伝えることが大事で、すなわち適者生存社会という形に変わってくるわけですが、これこそが日本の目指すべき、これからの豊かな日本のあるべき姿、ビジョンとして、この場で出た議論が定着していくことを委員の一人として強く望む次第でございます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、野村委員、どうぞ。

【野村委員】
 多岐にわたる意見の取りまとめ、まことにお疲れさまでございます。私のほうからも修正等については特段なく、この形でと思っております。踏み込むべきところはそれなりに書いていただいているような印象も持った次第でございます。

 皆様繰り返しご指摘になっているところではありますが、むしろこれからの、フォローアップを続けていく、そのあり方というか内容というか、そちらのほうが、注目していくべき、意識していくべきことであり、極めて重要だということではないかと思いました。多くの省庁の方々にもご参加いただき、かつ金融とは異なる、そういう意味では、自然体でいくと重ならない可能性すらある医療の方々にもわざわざお越しいただいてプレゼンをいただくというようなことが、今回のワーキングでは非常に特徴的だったのかなと思っておりまして、今後のフォローアップ等々においても、やはりそういう幅広い観点からの取り組みを続けていくのが重要なのではないかと思った次第でございます。

 先ほど来ご指摘ありますとおり、海外に向けてというのも全く同感でございまして、日ごろ、時々海外の方に、日本こそモデルといいますか、どういう取り組みが必要なのかを示してくれるのではないかと思っている、と言われることもございますので、そのような点も意識していることでございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、永沢委員、島田委員の順で。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】
 ありがとうございます。このたびは、いろいろな意見が出ました中、このように報告書として取りまとめていただき、ありがとうございました。私からは特に修正希望はございません。

 その上で、自分が参加しておきながら評価するというのもなんですが、国民、金融業界、国・業界という3つの視点から幾つか、私としてよかったというところを述べさせていただきたいと思います。

 まず国民に対してのところですけれども、私は、今回のこの報告書はとても読みやすいものにまとまっている点と、考え方の整理になる、とても具体的なことがいろいろ書いてある点を評価しております。例えば5万円足りないという指摘は自分自身の生活設計の具体的なガイダンスになり、考え方の整理もできますので、私は評価しております。また、心身ともに衰えるという状況に備えることの必要性についても今回踏み込んで書いていただき、このように書かれることは従来そう多くなかったので、私のような一般人は漠然と考えてはいるけど頭の整理がなかなかできていないことでしたので、これは国民へのメッセージとして活用できるものと思いました。この点も評価したいと思います。

 続いて、金融業界に関してですが、上柳先生がknow your customerのお話をされました。know your custmerは金融ビッグバンの前ぐらいから言われていた考え方であると思いますが、この考え方を今回、大きく進化させることができるのではないかと思う議論ができたと思っており、その点を特に評価したいと思います。これまでは販売という1時点での適合性というところに、制度的には重点が置かれてきたと思いますけれども、今回の報告書では「寄り添う」という言葉が随所に登場しております。お客様が加齢により変わっていく中で、金融機関はどのように顧客に寄り添っていくのがよいのかということを考えていく必要があるという共通認識ができたことはよかったと思います。

 特に、34ページの箇所ですが、業態を問わず金融業界として横断的に金融ジェロントロジーの進展に応じて高齢顧客の保護のあり方を見直していくことが必要と考えられる、と書いていただきましたことを私はとても高く評価します。従来、高齢顧客の保護のルールが業態によって異なり、縦割り的なところがありました。証券業協会は証券業協会で、生保業界は生保業界で高齢顧客保護のルールやガイドラインを用意されていますけど、今後はそれらを横断的なものにしていただくとともに、高齢顧客への対応については新しい金融ジェロントロジーという学問の知見も踏まえながら進化させていっていただけたらと思っております。

 もう1点は国・業界でございますけれども、同じく34ページのところですが、前半のところでもアメリカのプルーデント・インベスタールールについて言及いただいておりますけれども、34ページの最後の段のところで、この考え方を参考にしながら日本でも本人意思の尊重と財産保護という2つの両立を図るための方策を制度的に検討することが必要ではないかとも踏み込んで提言できたことはとてもよかったと思っております。

 それから、32ページの脚注についてです。今回の報告書は国民へのメッセージとしてもよくまとまっているものだということを申し上げました。老後のお金をどう考え準備するのかというのは国民の誰もが持っている関心事、不安でもございますので、例えば消費生活センターや地域の社会教育会館、公民館のような国民の学習の現場で使っていただけるような平易なパンフレットの開発をぜひともお願いしたいと思っております。また、そうした場所でお話をしていただけるような方として、金融機関の方が一定の訓練を受けて、そういった場に立っていただくことが期待されますが、この報告書は基本的なものになりますので、金融業界の人にはまずこの報告書を読んでいただきたいと思います。この報告書が公表されたときには全ての金融機関の従業員の方に読んでいただくような取り組みを、ぜひ業界団体の方にはお願いしたいと思います。

 最後になりますけれども、私も、これが始まりであり、今後、具体的な取り組みにどうつなげていくのかということが期待されると思っております。私はパンフレットについてお話をさせていただきましたけれども、そう遠くないうちに具体的な見える形にしていただけたらと思っております。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、島田委員、どうぞ。

【島田委員】
 膨大な議論をここまでおまとめいただきまして、どうもありがとうございました。拝見して、特に異論はございません。ただ、やはりここはほんとうにスタートだと思っておりまして、例えば本人の意思確認のプロセスですとか家族との懇談といった、認知能力が衰えるに際しての準備をすることについては、顧客本位の業務運営を前提にすれば、まさにコンサルティング機能の強化、あるいはアドバイザーとして寄り添ってお話をしていただくということが重要になってくると思います。けれども、往々にして、こういったプロセスは形式化、ルーティン化しやすいものであると思います。だからこそ今後のフォローアップや、先進的なお取り組みをしているところの実例を知る機会などを、今後継続的にぜひいただければと思っています。

 それから、若い方たちへの運用の楽しさ、将来に備えるということについて、もう少し積極的に伝えていただければなと思います。どうしても文面からは、将来が不安だから早くから運用しましょうねという雰囲気がひしひしと伝わってくるのですけれども、これを具体的にこれからパンフレットやいろいろな場所で広げていくに当たっては、ぜひ、将来に向けてこつこつ備えていくことは、将来自由にお金を使えるようになるためにも必要なことなのだと、安心してお金を使えるようになるために今から準備しておきましょうねという、楽しさをお伝えいただければと思いますし、私たちも実際の仕事の中でそのように伝えていきたいなと思います。

 高齢化に関しては身近な例もたくさんありまして、具体的に自分自身も一国民として考えていく、非常に重要な課題をいただいたと思っておりますので、実の親や友人の問題等にもぜひ積極的にかかわりながら、考えていきたいと思います。

 また、資料の5については、金融サービス提供者の考えられる対応というところは、サービスについて取りまとめられているのだと思うのですけれども、ここに、定率取り崩しサービスのほかにトンチン年金という形で具体的な商品スキームがぽんと出てくるのが、本文にもないものですので、ちょっと違和感があったということだけはお伝えさせていただきます。

 ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、黒沼委員、佃委員、駒村委員、神戸委員の順でお願いできればと思います。

 黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】
 今回の報告書は、提言部分を取り出しますと、個人の心構え、それから金融サービスのあり方についての提言、第三として環境整備についての提言部分から成っています。個人がしっかり心構えを持って、金融業者がサービス提供について努力をしても、環境が整備されていなければできることには限界があります。全体を通して見ると、高齢社会における各ステージにおける資産管理、特に認知・判断能力が低下してからの資産管理については、まだまだ環境として整備していくべき部分が多いように思います。この部分もよく書いていただいて、これからやっていく必要があり、実行に移していってもらいたい部分が大きいと思うのですけれども、特に最後に記載されている成年後見制度における資産管理のあり方については他省庁と連携して検討していくべきであるというふうに書かれていまして、ここはこの審議会の中では詳しく議論できませんでしたけれども、私は一番重要な点ではないかと思いますので、ぜひこの点を、できるだけスピード感を持って検討していただきたいと感じています。報告書の内容についてはすばらしいものができたと思っています。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、佃委員、どうぞ。

【佃委員】
 ありがとうございます。まず、この報告書、先ほど百花繚乱とおっしゃっていましたけれども、よくぞここまで取りまとめられたなと、非常に感心しました。

 非常にポジティブな印象を持ちました。何故かというと、やはり本報告書が終わりでなく始まりであるという点、それからもう一つは、やはり国民的な議論を喚起しようとしている点、この2点が大きいと思います。力強いメッセージが込められていると思いますので、先ほどもほかの委員の方がおっしゃいましたけれども、できる範囲で国際的にもどんどん、発信されるのがいいのではないかなと思いました。したがって、私としてはこの報告書に関して修正等、特段必要ないというふうに考えています。

 一方で、これを読んでいまして、金融庁の危機感も強く感じました。具体的に言うと、やはり今の日本の金融機関を取り巻く環境、そして現状の経営状況を鑑みると、本報告書が金融サービス提供者に期待しているレベルを、どれぐらいの金融機関が現実的に達成できるのだろうかという疑問、難しい課題がやはりあると思います。実際問題この報告書の中でも、例えば44ページのところに、販売担当といった現場レベルでは必ずしも十分に定着していないでありますとか、あるいは48ページの真ん中の下のところに、金融機関が退職金をめぐって盛んにキャンペーンを行っているという点が指摘されています。これが実態だと思います。そういった意味では、顧客本位がほんとうにどこまで徹底されているかというのは甚だ疑問だという課題意識が出ていると思うのですが、そういったことを踏まえると、36ページにフォローアップの話が載っていますが、金融庁さんにぜひお願いしたいことが2つあります。

 まず1点目ですが、36ページにもシンポジウム等書かれていますが、やはり積極的に今後、特に金融サービス提供者向けに、ベストプラクティスのシェアリングであるとか、また、金融サービス提供者はやはりどうしても業態内での発想にとらわれがちだと思いますので、業態を越えた形で、金融機関の経営者に対する啓蒙活動を当面、是非積極的にやっていっていただきたいと思います。

 それから2点目に、例えば金融サービスの今後のあり方といったところで27ページを見ますと、真ん中より少し上のところです。顧客の長寿化、自助の充実、多様化云々に対して考えられる対応として以下が考えられるとあって、ここに3つ書き出されています。例えば資産形成・管理やコンサルティング機能の強化、あるいは多様な顧客ニーズに応じ、商品・サービスの多様化や「見える化」、あるいは資産の運用・保全向けの商品・サービスの充実、基本的には金融事業者に対して、コストをかけ、機能を強化する、あるいは商品・サービスを多様化する、充実するという、強化・拡充の方向性が明記されているのですが、先ほど申し上げましたように、今の経営状況を考えると多くの金融機関では、現実的には経営判断として縮小均衡しなければいけないという判断もあると思いますので、このような国民的な議論を喚起しつつ、金融事業者のサービス提供のあり方としては、報告書に書かれているようにサービスを強化・拡充する方向性もあるのだけれども、逆に、どのサービスは提供しないかと、あるいはこのサービスに関してはアライアンスを組んで自分たちだけではやらないとか、いろいろなやり方があると思いますので、経営判断として縮小均衡の方向性も許容されることは明確にして頂きたい。この報告書を読むとどうしてもやらなきゃいけないというモードに皆さんなると思いますが、やらない経営判断というのがある点については、ぜひ、ご留意いただければと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、駒村委員にご発言いただいた後で、少し休憩をとらせていただきたいと思います。

 駒村先生、どうぞ。

【駒村委員】
 ありがとうございます。これから人生100年を迎えるであろう現役世代に対して、老後の準備、特に社会保障、年金の給付が変化する中でどういう準備をすべきなのかと。それから、団塊世代を中心に、75歳に接近してくる高齢者に対して、認知機能の低下に備えてどういう準備をしておく必要があるのかと、まさに金融面での長寿・高齢化対応についてのレポート、さらには当面差し迫った金融面での2025年問題に対する包括的で体系的な報告書になったと思います。私としては特段、加筆修正する必要は感じておりません。

 お願いしたいのは、今まで何人かの委員からもありましたように、このエッセンスをいかに国民、金融機関に伝えていくのかと。これは知識のレベルでお伝えするだけではなくて、金融機関、国民に対して行動変容、知識から実際に取り組んでいただくと、行動変容につながるような形の伝え方をしていかなければいけないと思います。

 それから、行政、政府にも引き続きお願いしたいのは、去年7月3日に出された中間的なとりまとめの中では、後見制度支援信託の資産管理の話が出てきていたわけですけれども、今回も7ページと34ページにその記述がありますが、この問題、いろいろ見方があるかもしれませんが、引き続き積極的に政府でこの対応をしていただきたいと思います。

 それから金融ジェロントロジーも、何度もこのキーワードが出ておりますけれども、学術研究としてもまだわかっていない部分、わかっている部分がありますし、日々この分野、新しい分析が行われたり、新しい知見が検証されたりしている分野だと思います。学術の方もこれに対して常に新しい知見を提供して、具体的なツールの開発に協力していかなければいけないのだろうと思って、研究者としても改めてこの分野の研究を進めなければいけないという意識を持ちました。どうもありがとうございます。


( 休 憩 )


【神田座長】
 それでは、再開をさせていただきたいと思います。順番としては、神戸委員、竹川委員、そして池尾委員の順でお願いいたします。

 神戸委員、どうぞ。

【神戸委員】
 ありがとうございます。まず、この報告書に関しては素晴らしいできだと思います。これまで議論されたことを上手にまとめて頂いているわけなのですが、一昨年の市場ワーキングの中で、顧客本位の業務運営が大きなテーマとして議論されたのは、今の日本の国にとって最大の課題が、今回の議論の中心となった超高齢社会になることと同時に、将来、人口が大幅に減少していく社会になるという背景があるからだと思っています。戦後のわが国の最大の課題が経済復興だったという中で、どうすればそれが実現できるかというさまざまな議論が行われた結果、大幅な人口増加が見込まれる中で加工貿易型立国が選択され、日本の金融機関の融資業務中心のビジネスモデルができ上がって行ったのだと思います。経済復興のためには、国も企業も資金不足だったので、それを賄うのが金融機関にとっては自分たちのビジネスの中心となり、同時に国益に資するということにもなっていたわけです。

 一方、現在は、国を除けば個人も法人もお金が余っている、つまり資金余剰の状況です。資金余剰の中で果たして金融機関が従来型のビジネスモデルでやっていけるのか、あるいは国益に貢献できるのかと。普通に考えると、やはりアセットマネジメント業務の比率が上がっていくべきなのだろうと思います。わが国の課題を解決するためにも金融機関のビジネスモデル自体が変わっていくべきで、日本の国益というのも考えて、方向性をもう一度見直して欲しいということでしょう。アセットマネジメント関連のビジネスの比率を上げるためには顧客本位でないと無理で、お客さんのニーズに対してきちんと応えていく形でなければ、比率が高まっていくはずがないということだと私は認識しています。

 今回の資料の中にも、日本人が以前持っていた常識がもう通用しなくなっているといういくつかの事実が記載されています。たとえば、アメリカの家庭のほうが日本の家庭よりも貯蓄額が多いというのは、多くの日本人にとって驚きだと思います。日本人の貯蓄率は高いという思い込みですね。同様に、今回の資料には出ていないのですが、1人当たりのGDPは、日本は今、世界で20位台半ばだということもあまり認識されていません。90年代前半には世界で第3位だったわけなのですが、それが20位台半ばまで落ちて来ていて危機的な状況だと言えるでしょう。G7の中で日本より1人当たりGDPが低い国というのはイタリアだけなのです。そういう認識を持っている日本人はあまり多くないと思います。今後さらに急激に人口が減る見込みなわけで、どう考えても生産性を上げていく方法を考えるしかないでしょう。人口が減少しても豊かに生きられる国日本にしていくために何ができるのかということが、今議論されるべきなのだと思います。

 その方法の1つとしてあり得るのが、金融機能の高い国を目指すということでしょう。ご存じのとおり1人当たりGDPが高い国の1位はルクセンブルク、2位はスイスで、長年そのポジションを譲っていません。1つのあり方として、わが国を金融機能の高い国にしていくという方向性を金融庁さんが示されようとしているのだと考えています。それは同時に、今回のワーキングで議論されたように個人の生活者の立場になれば、勤労所得がなかなか増えにくい中、どうすれば財産所得を高めていけるのかということについての提言につながっているのだと思います。

 実際にこれまであまり投資というのを行ってこなかった日本人に投資を行ってもらうためには、まず動機づけが必要です。この報告書の構成はまさにそうなっていると思うのですが、最初に、なぜやらなくてはいけないのか、問題の認識、動機づけの部分があり、その後、では具体的にどうすればいいのかという、方法の提示が行われています。それは、長期で積み立てで分散という方法だということが、生活者へのメッセージとして出され、最後にそれに応えていくべき金融機関側としてはどんな対応が望ましいのかという構成になっていますので、読んでいて腑に落ちやすいといいますか、説得力がある内容になっているのではないかと思います。

 ありがたいことには、その中で、私どものような独立系のアドバイザーも含めて、ライフプランニングをベースとしたアドバイザーの存在が重要だということを繰り返しご指摘いただいています。そういったアドバイザーへの期待という部分も報告書に盛り込んでいただけたのは大変ありがたいことだと思っております。また、生活者がライフプランを策定するという考え方、その重要性の指摘も行って頂いていますので、商品説明の前にまず考えるべきなのはライフプランなのだというところが明確に示されているのが素晴らしいと思います。

 基本的に、金融機関に求められるのは生活者へのアドバイス、プラス実行支援ということだと思います。リテラシーというのは、知識プラス判断力、行動力と言われるわけですが、知っているだけでは役に立ちません。知った上で行動して初めて意味があるわけなので、金融機関が提供するべきなのは、そのアドバイス、プラス実行支援ということになるでしょう。実行支援の中に、商品販売だけではなくて、他業態とのアライアンスなども含めてさまざまな解決策の提供を考えるべきという方向性が示されていますので、全体として金融機関さんが何を考え、どういう方向に進むべきかということがはっきりと提示されていると思います。

 報告書の内容としては、私としては充分な内容になっていると考えますので、これで進めていただきたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】
 多様な議論をきちんとこのような形でまとめていただきまして、ありがとうございます。特に、一般論ではなくて、各人がきちんと自分のお金を「見える化」する、ライフプラン、マネープランをきちんと立てるといったことが書かれているのはすばらしいと思いました。

 1点、報告書について申し上げたいのは34ページですけれども、上柳委員からもありましたが、「きめ細やかな対応が望ましく」ということが書いてあり、後半部分で、本人が望む場合には、認知・判断能力の低下・喪失後も資産運用を続けられることが望ましいというお話が書いてあります。この報告書は、高齢期について本人の意思を明らかにすること、本人の意思の確認ということが何度も出てくるのですが、ここは慎重にしていただきたいです。

 この本人の意思の確認という点について、いつの時点で、どのように本人の意思の確認を行うのかということについては、共通のルールを設けるなり、きちんと定めておくことが必要なのではないかと思います。私も身近に介護状態の者がいますが、心身ともに変化が著しい部分がございますので、1回意思確認をとったら終わりということではなく、定期的にどう確認をしていくのかといったことも含め、きちんと考えておく必要があると思います。

 また、報告書では、運用をどう続けるかという話がメーンですが、逆に、本人がどういう状態になったらやめるのか、逆に本人がどういう意思を示したら速やかにサービスを解約・終了できるのかといったことも併せて決めておく必要があるのではないかと感じました。駒村先生のお話にもありましたが、研究が今後も進んでいく分野だと思います。そうした知見を取り入れて、どういう状態なら続けられるのか、逆にやめたほうがいいのかというところを活用していただければと思います。

 報告書については以上です。今後の課題について、3点だけ申し上げたいと思います。

 1つ目は、先ほど野尻委員からもあったように、人生を通して資産形成をしていき、最終的にどう取り崩しをしていくのかというのが今後のテーマになってくると思います。取り崩しの考え方については示されていますが、今後は環境整備についてもきちんとやっていく必要があるのではないでしょうか。例えば、私は企業さんのマネープランセミナーなども担当していますが、退職一時金に加えて、例えば企業年金、DC、DB、プラスiDeCo、さらに金融機関でご自身が運用してきた部分、積み上げてきた金融資産をどう取り崩していくのかを、現実的に実行するのは非常に難しい。例えば給付口座の一本化ということも含めて、個人が取り崩しをしやすくするような環境を整えていく必要があるのではないかと考えます。

 2点目は、金融リテラシーの部分です。企業、金融機関も含めて、金融リテラシーを高めるようという方向はとてもよいと思うのですが、一方で、どうしても大企業にお勤めの方に限定されてしまうところがあります。一番長期的に資産形成を考えていかなくてはいけない自営業・フリーランス、中小企業の方、それから非正規の方になかなか届いていないという現状があります。民間だけでは届かないところに関しては、行政が何らかの支援を行うべきではないでしょうか。

 3点目は、先ほど島田委員からもご指摘がありましたが、現役世代の資産形成、投資は必ずしも進んでいません。「不安だから」だけではなく、例えば、投資は社会を支える上で必要なことなのだという本質的な、ポジティブな面も今後は伝えていく必要があるのではないでしょうか。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、池尾先生、どうぞ。

【池尾委員】
 今回の報告書の内容は、金融審議会の市場ワーキング・グループとしてのミッションに照らした場合は十分な内容だというふうに思いますので、事務局のご努力に感謝するとともに、特段、私のほうから内容の修正等の希望はありません。ただ、この報告書の1ページの初めのところにも書かれていますが、「はじめに」の10行目ぐらいですけれども、政府全体の取り組みということで、高齢者雇用の延長、年金・医療・介護の制度改革云々が議論されていて、金融サービスも例外ではなくて、政府全体の取り組みや議論に相互連関して云々というふうなことがうたわれているわけですね。

 私としては、ここでの議論のカウンターパートとして、もっとマクロの話とか、すべきことがいっぱいあるような気が実はしていて、ただ、そういう議論がここのワーキングのミッションからは、ちょっと超える、必ずしも含まれるものでもないということで、この報告書にそういうマクロの議論がなくてもそれは仕方がないというか、それはそうだと思います。だからどこかできちんと、きっちりそういうカウンターパートになる議論が行われることを期待したいということで、そういう意味で、この報告書は自己完結的なものでは決してないのだということを改めて認識というか、確認させていただきたいというふうに思います。

 それで、ついでにちょっと、非常につまらない、形式的なことを申し上げますが、目次のところで、「はじめに」は番号がついていないのですが、「おわりに」のところは4ポツという番号がついていて、本文との照合をすると4ポツは取るべきだというふうに思います。

【神田座長】
 以上でよろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

 委員の皆様方、大体よろしゅうございますでしょうか。

 失礼しました。鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】
 私も皆さんとほとんど同意見で、この報告書に関しては、この段階で修正の必要はないと思います。それから、多岐にわたる議論をこれだけきちんとまとめていただいた事務局に大変感謝したいと思います。

 今後の進め方について簡単に4点ほど申し上げます。

 第一にこの報告書の中でも注意深く書かれていますが、今回は100年時代の問題を提起し、関連情報を提供し、そして対応の選択肢を提示しながら国民の間での議論を高めていって、社会全体として対処するきっかけにしようという趣旨なので、解答を1つに絞っているわけではないと思います。その辺のことがこれからの広報活動についてもある程度メッセージとして伝わっていくと、かえって受け入れられやすくなるのではないか。高齢社会における資産の形成・管理の問題は、個人の人生観なり心情に関連する部分が多くて、非常に意見が分かれてくると思いますので、そういう意味でも最終的には、いわば決めるのはあなたですという部分が必要ではないかと思います。その辺が報告書には十分書かれていると思われますので、今後の広報の段階でもうまく伝わることを期待します。

 第二に、この広報の関係では、相手に応じ、個人向けの部分と金融機関向けの部分を分けて発信されるとより伝わりやすいかなという感じがいたしました。

 今回の報告書はこれで結構だと思いますが。

 第三に、金融機関の問題です。先ほどご意見がありましたように、金融機関も今後なかなか厳しい状況になってくるときに、ここに書かれていることすべてを全金融機関全体としてやっていけるかということです。おそらく各金融機関はそれぞれの業態に照らして、得意わざを生かしながらということになっていくかと思います。特に、この報告書にもありましたような介護・医療を含めた高齢者の人生全体と向かい合っていくといった場面では、やはり地域密着型の金融機関がなじみやすいかなと思いますし、一方では、大手金融機関が高度の運用管理能力なりシステムを生かしてゆく役割などと、いろいろな形で分かれていく面があろうかと思います。つまり、100年時代に対して全ての金融機関が全て同じように対応していくわけではないということは当たり前のことですけれども、改めて確認しておきたいと思います。

 第四に、金融庁としての直接的な働きかけは、メッセージが極めて明快で、必要なことだと思いますが、合わせて、金融機関や事業会社の人事部門、あるいは年金基金等個人個人とお金や退職の問題、高齢の問題と現実に向き合っている現場が多数あるわけなので、そういう組織を通じた間接的な形で広報を進めていくことも、効率的と思います。さっきどなたかおっしゃいましたが、出来るだけ多くの金融機関の職員に読んで頂ければ、と思いますし、同時に金融機関や郵便局の店舗の目につくところに、お客様向けにおいて頂くことも期待したいと思います。

 ほんとうにどうもありがとうございました。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ほかに、委員の方々はよろしいでしょうか。

 どうぞ、高田委員。

【高田委員】
 済みません、ちょっとだけ補足をさせていただければと思った次第です。1つ、私、今回非常に重要だと思いましたのが、この本文の中の44ページにもありましたが、持続可能なサービスというところでありまして、今回のこの状況の重要なものというのは、とかく高齢社会における金融というのが、どちらかというと昔よくあったのは、問題があったときにどうしようかとか、場合によってはクレーム処理的なような部分があったと思うのですけれども、それをやはり、今回のこういう状況の中で、健全な高齢ビジネスというような形の中で持続性のあるビジネスモデルにいかに育て上げていくかというようなことが、各金融業態、どの業態を通じて重要になります。またもう一段、金融としての、先ほど金融立国という話もございましたけれども、そういうような形の中で、新たな持続可能性のあるビジネスとしていろいろな部分をどうやっていけるかということが必要になります。

 それは、やはりそういうものがないと、クレームで対応するということ以上に、1つのあり方というのでしょうか、継続的なものになるというようなことがやはり重要であって、先ほどのマクロ的な議論の中でもありましたけれども、もう従来の金融、いわゆる商業銀行的なところから、よりアセットマネジメントというような状況の中に、資金フローも変わっておりますので、そういう中でこういう新たな発想の転換を、業界全体で共有しつつ、金融業として対応していく、金融ビジネス全体の意識を変えていくということがやはり重要なのではないかなというふうに思います。

 それともう一つ、もう私、この場でも従来申し上げたのですけれども、32ページの注のところでもいろいろな、誰もが一つ一つのステージで求められることがあります。私はたまたま「高齢式」というような言い方も申し上げたことがあったのですけれども、今回、その議論も取り上げていただいているのですが、やはりさまざまなところを通じて高齢化に対応するという話がございました。そういう中で言うと、今後のやり方の中で、例えば自治体でありますとか、そういうようなさまざまなルートを使った、高齢化は誰しもが通る状況でもありますので、そういう動きをしていただけるとよろしいのではないかなというふうにも思いますし、また、皆様方の多くの方々の意識もそういった点にあるのではないかなというふうに思った次第でございます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。オブザーバーの方々、もしご意見とかご感想があれば伺いたいと思いますけれども。

 どうぞ、荻野さん。お願いします。

【荻野オブザーバー】
 すばらしい報告書を取りまとめていただきまして、ありがとうございます。多くの委員の皆様がおっしゃったように、こちらに書かれていることというのは、非常に今後日本が目指す方向に沿ったものであるというふうに、よくまとまっているなと思っております。その中で、これを実際に現実のものとして定着させていくということにおける金融機関の役割というのは非常に大きなものがあると、我々としてはその実現に向けて各社が経営努力をするべきだというふうに考えております。

 先ほど佃委員と、それから鹿毛委員のほうからもちょっとコメントしていただきましたけれども、その定着をさせるためには、やはりサステーナブルでなければいけないと、ここに書かれているようなことを実現しようとすれば、よりオーダーメードな形のサービスが必要になってくるなと。それには当然コストもかなりかかってくるということにもなりますので、いろいろと、金融機関各社がそれぞれの経営努力をするなり、それぞれの得意分野に特化するなりで、かなりの工夫が必要になるなというふうに思っています。特に今現在、ゼロ金利という厳しいマーケット環境にありますので、金融機関の経営はなかなか厳しいところもありますので、そのあたりの工夫を各社がしていく必要があるのではないかなというふうに思った次第でございます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。萩原さん、お願いします。

【萩原オブザーバー】
 萩原です。ありがとうございます。全銀協という立場で、2つ、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 まず、委員の先生のほうからもかなり、この報告書がまとまった後、金融機関はほんとうにこれがやれるのかというふうな、厳しいご指摘をいただいたところではございます。当然、顧客本位の、アンケートとかを見て、まだまだだねというところが出ている中において、ちょっと偉そうなことは言えないのですけれども、実は私は、ちゃんとやれるというふうに自信を持っているというか、安心している面がございます。

 というのも、ここで日本の金融機関、リテールを扱っている金融機関は、この高齢者のところでビジネスをしなかったら、どこでビジネスするのだろうというふうに、今変わってきていると思っています。なので、自然とこの高齢社会に対応できない金融機関というのは淘汰されてしまいますし、淘汰されないようにしっかりとビジネスとしてやれるように各社は努力していくことだと思っています。そういう面で言うと、ほんとうに非常にいい競争が生まれてくるのではないかと、そういう中でこれが1つの手本となって、しっかりと道しるべをつけていただくところで活用できたらなと思っているというのが1点目です。

 もう一つ、2点目、そうはいっても、これは業界団体、横断的にというお話も委員の先生からありましたけれども、しっかりやっていかなければいけないなというか、しっかりメルクマールをつくっていかないとできない面というのはあると思います。それがまさに認知能力、判断能力が低下すると、ほんとうにそういう方に対してどのように、先ほど竹川委員からも、本人の意思確認というのは非常に難しいですね、慎重にやるべきですねというお話がございました。これに対する、どういうふうに金融機関としてしっかりと対応していくのかというところは、個社の努力でやるというよりは、業界もしくは業態をまたいでしっかりやっていく、もしくは、もう少し言わせていただければ、官民あわせてやっていくということを取り組んでいく必要がある事項だと思っています。そういうところでも、まさに金融ジェロントロジーというところを活用というか、しっかり勉強させていただきながらやっていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、畑中さん、どうぞ。

【畑中オブザーバー】
 ありがとうございます。生命保険協会の畑中でございます。

 今回の報告書の大前提となっております顧客本位の業務運営に関しましては、生命保険協会としましても従前から非常に重要なものというふうに位置づけておりまして、協会の行動指針、行動規範におきましても、一丁目一番地としてお客様本位の行動を掲げてまいりました。ただ、この点、社会や人口動態、それからお客様ニーズの変化を踏まえて、我々の行動も進化させていかなければならないというふうに考えてございます。したがいまして、今般の市場ワーキングでのご議論、それから報告書からの示唆も踏まえまして、生命保険会社及びその役職員は、より一層お客様の視点に立った業務運営を徹底して、生命保険事業への社会からの信頼をより強固なものにできるよう努めてまいりたいというふうに考えてございます。

 特に、今回の大きなテーマでございます高齢のお客様への対応です。これに関しましては生命保険協会で自主ガイドラインというのを設けまして、高齢者の方に寄り添った、わかりやすい対応のための基本的な考え方や留意点を公表しております。会員各社の取り組みをできるだけきめ細やかなものとするよう後押ししてまいりましたけれども、人生100年時代を迎える中で、こうした取り組みにさらに拍車をかけていって、国民の安定的な資産形成と資産寿命の延伸に向けて、お客様に対するコンサルティングをしっかり行いながけら、お一人お一人のニーズを踏まえた、例えば報告書に出てきましたトンチン年金や個人年金保険等の提供にも力を入れてまいりたいというふうに考えてございます。

 また、生命保険業界では3つのPというのを掲げてございまして、1つ目は、従前から取り組んでおりますプリペアードネスとしてのライフプランの「見える化」による自助努力の促進でございます。2つ目が保障機能としてのプロテクションでございますが、これに加えまして3つ目として、プリベンション、要するに予防機能です。これの発揮による健康寿命延伸に向けて商品・サービスの提供を工夫してまいりたいというふうに考えてございますので、今後ともご指導、ご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。あと、よろしゅうございますでしょうか。反対側の座席のオブザーバーの方々もご発言があれば。特に、よろしゅうございますでしょうか。委員の皆様方でさらに追加のご発言、ご指摘、もしあればご遠慮なくとは思いますけれども、特によろしゅうございますでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、ちょっと予定の時間より早いかもしれませんけれども、また将来、時間をとっていただく機会もあるかと思いますので、本日のご審議は以上とさせていただきます。

 次回ですけれども、本日いただきましたご指摘を踏まえて、事務局でこの報告書の案を修正したものを再度、皆様にご提示させていただきます。そこで次回は、報告書をこのワーキング・グループとして取りまとめるということを行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 なお、さらにお読みいただいて、てにをはや表現ぶりを含めて、さらにご意見とかお気づきの点がございましたら、次回より前にメール等で事務局にお知らせいただけますと、それらも盛り込んだものを次回ご提示することができますので大変ありがたく存じます。次回、円滑な取りまとめを目指したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。具体的な日程等につきましては、後日、事務局からご案内させていただきます。

 それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。


―― 了 ――
 

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