金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第27回)議事録

 

1.日時:

令和2年2月13日(木)15時30分~17時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室





【神田座長】
 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。ただいまから市場ワーキング・グループの第27回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日でございますけれども、顧客本位の業務運営を促進する環境を整備するという観点から、高齢者など認知・判断能力の低下した顧客への対応ということをテーマとさせていただいて、ご議論をお願いしたいと思います。

 それではまず初めに、今回の会合に参考人としてご出席いただく方々を事務局からご紹介お願いいたします。

【太田原市場課長】
 ご紹介を申し上げます。

 委員の皆様から見て右端の方にお座りいただいております、一般社団法人全国地域生活支援機構理事、株式会社エクサウィザーズドメインエキスパート、尾川様でございます。

【尾川参考人】
 尾川でございます。よろしくお願いいたします。

【太田原市場課長】
 社会福祉法人全国社会福祉協議会地域福祉部長、高橋様です。

【高橋参考人】
 よろしくお願いします。

【太田原市場課長】
 公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・埼玉県支部代表、花俣様です。

【花俣参考人】
 よろしくお願いいたします。

【太田原市場課長】
 厚生労働省社会・援護局地域福祉課成年後見制度利用促進室長、竹野様です。

【竹野参考人】
 よろしくお願いします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。本日は大変お忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の議事に移りたいと思います。まず今日は事務局から事務局提出資料について説明をしていただきます。続きまして、今ご紹介いただきました尾川様、高橋様、花俣様より、それぞれ資料もご提出いただいておりますので、それに基づいてご報告といいますか、お話をしていただきます。その後、委員の皆様方からご質問、ご意見等をいただければと思います。

 なお、最後に市場構造専門グループの報告書について簡単にご報告をさせていただきます。

 大変恐縮ですけれども、これまで同様、多くの委員の方々に発言の機会を確保する観点から、一定時間を過ぎますと残り時間の目安がスクリーンに出るというようになっているようですので、ご発言の際の参考にしていただければありがたく存じます。

 それではまず、事務局の太田原市場課長からの説明をお願いいたします。

【太田原市場課長】
 それではお手元の資料1に沿ってご説明させていただきます。

 まず1ページ目でございます。我が国においては長寿化が進んでおり、2015年時点の推計では、60歳の人のうち、約4分の1が95歳まで生存するとされております。また、家計金融資産の約3分の2、2035年には70%強を60歳以上の世帯が保有するという推計もあります。

 2ページです。認知症の人の数の推計です。全国の65歳以上の高齢者のうち、認知症の人の数は2012年に約462万人と推計されております。また、2025年には認知症の人の数は約700万人前後、65歳以上高齢者の約5人に1人になると推計されております。

 3ページです。認知症の人の保有する金融資産額は2030年に215兆円に達し、個人金融資産の1割に達するとの試算もございます。

 4ページです。認知・判断能力が不十分な者を支援する制度として成年後見制度があります。民法上の法定後見制度として後見、保佐、補助があり、この他、任意後見制度があり、それぞれ家庭裁判所が関与する手続がとられています。

 5ページです。政府としては成年後見制度の利用を促進するため、成年後見制度利用促進基本計画が策定されております。

 6ページに参考までに成年後見制度の利用推移がございます。成年後見制度の各類型における利用者数はいずれも増加傾向でございます。

 7ページです。成年後見制度利用促進基本計画では、全国どの地域においても成年後見制度の利用が必要な人が制度を利用できるよう、地域連携ネットワークを各地域で構築するとされております。

 8ページに地域連携ネットワークにおける中核機関の設置状況がございます。それを見ますと、2018年10月では、金融機関が構成員となっているのは4団体となっております。

 9ページです。認知・判断能力が不十分な者を支援する制度として、成年後見制度の他に、各地の社会福祉協議会が行っている日常生活自立支援事業もございます。こちらは本人の契約締結能力を前提に、社会福祉協議会が本人との契約に基づき、福祉サービスの利用支援、日常的な金銭管理等の援助を行う制度でございます。

 10ページです。平成11年に当時の厚生省から全国地方銀行協会宛てに、日常生活自立支援事業の前身であります地域福祉権利擁護事業の周知がされております。これは、この事業により社会福祉協議会が利用者の日常的な金銭管理等も行うこととしていて、各金融機関にご協力いただくことが本事業の円滑な実施に必要不可欠とされておりますが、必ずしも周知されてないとも聞いておりますので、この機会に紹介させていただきます。

 11ページです。金融機関が提供しているサービスとして、成年後見制度を利用している人の財産管理を支援する商品である後見制度支援信託、後見制度支援預貯金がございます。

 12ページにこの後見制度支援信託、後見制度支援預貯金の導入状況がございまして、導入済みの金融機関と導入予定の金融機関を合わせると約55%となっております。こちらの支援信託・預貯金の累計利用者数も増えてきていますが、約2万5,000人の利用者数となっております。

 13ページです。高齢者を主な対象とする様々な信託商品も開発・販売されております。本日、詳細は割愛させていただきます。

 14ページです。政府、金融庁が行っている事業として、デジタル技術を活用した規制の精緻化に向けた実証事業があります。金融商品の販売における高齢顧客対応については、左下にあります通り、現状、一定の年齢を目安として画一的な対応がなされている可能性があります。こうした中、未来投資会議において、デジタル技術の社会実装を踏まえた規制の精緻化として、高齢者の取引履歴データ等の分析・活用を進めることで、高齢者の能力や状況に応じた高齢顧客対応の判断ができないかを検討するとされたところでございます。

 15ページに参考として事業の内容を記載しております。

 16ページです。金融庁が本日のテーマにつきまして事前にヒアリングした関係者の主な意見を掲げております。1、認知症など縁起の悪い話題は、家族間でどうしても避けられがち。認知症になったときにどうするかといった会話を誘発することが重要。2、銀行は顧客のアフターフォローをほとんどの場合やめてしまう。3、金融機関に地域連携ネットワークのチームの輪に入ってもらうべきではないか。4、金融機関と社会福祉関係機関が直接的・具体的に情報交換をすることができれば対応がスムーズになるかもしれないが、個人情報保護の関係で具体的なやりとりがしにくい。5、ケアマネジャーは金融制度、金融機関は介護現場の理解がそれぞれ足りていない。6、身体の衰えやけがなどにより本人が金融機関に赴けない場合に、家族等が本人の代理として預金を下ろしに行った際、家族等の預金引き出しを認めてくれない金融機関が多い。代理を認めてくれる場合であっても、社会福祉協議会などの法人による代理を認めてくれない。7、成年後見制度について、保佐人・補助人に代理権が設定されている場合であっても、本人による取引は制度上は可能であるはずだが、金融機関によってはそれを断るケースがある。

 17ページに、以上を踏まえた論点を記載しております。最初の〇で、金融機関にはどのような対応が考えられるか。例えば(1)現在の対応や内部規程に改善すべき点がないか、または新たに取り組むべき事項がないかということ、(2)可能な範囲でわかりやすく対応を発信すること、(3)地域連携ネットワークの中核機関や社会福祉協議会など地域社会を支えるほかの機関と質的・量的に十分な連携を行うこと、を掲げています。

 次の〇ですが、前のページのヒアリング結果に対応した論点です。認知・判断能力が低下した場合に備えて事前の検討を促すための取組、金融商品販売後のフォローアップ、家族が相談できる機関・窓口の案内、金融機関職員の理解の向上、使い勝手のよい金融商品やサービスの開発・導入、預貯金の引き出し等に関する代理権です。

 3番目の〇で、業界団体において指針を策定することや金融機関の好事例を集約・還元することも期待されると考えられるかどうかという点です。

 4番目の〇として、そのほか、金融機関に期待されるものがあるかどうかという点です。

 私からの説明は以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、本日参考人としてお越しいただいております方々からお話をいただきたいと思います。まず、全国地域生活支援機構、エクサウィザーズの尾川様からお話をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【尾川参考人】
 尾川でございます。よろしくお願いいたします。私は今、認知症高齢者の自立支援の観点から、成年後見に関する仕事をしております。所属するエクサウィザーズでは、主にAIを活用した成年後見のプラットフォームの開発を行う傍ら、主に後見法人の中間支援を行う全国地域生活支援機構も立ち上げ、活動を行っております。本日は、現在の活動のきっかけとなった調査の一端をご紹介いたしまして、金融機関の課題についての私の考えを申し上げたいと思います。

 それでは早速、1ページ目にお進みください。2008年のリーマンショックによる相場急変は、含み損を抱えたお客様からの苦情トラブル増加をもたらしました。私は、お客様と金融機関の意識の間に大きなギャップがあるという疑念を持ちまして、2012年から13年にかけて、適合性判断やアフターフォローなど4つのテーマの調査を行いました。本部の方にヒアリングを行いますと、担当者が自宅を訪問してみたら、既にご本人が特養に入られていた、あるいはご本人の入院費用のために家族から中途解約の申し出を受けた、介護や認知症めぐる相談事例が散見されておりました。あれから8年、金融機関の窓口では、6ページにお示しするような高齢者トラブル、これがまさに日常茶飯事で発生しております。

 では、2ページのほうにお戻りください。調査結果のポイントをお示ししています。適合性判断では、顧客情報の聞き取りが形式的であることや、お客様の理解度の確認といったところが大変気になりました。年齢については、既に日証協から高齢者ガイドラインが出て、目線合わせができておりますけれども、判断能力あるいは保有知識の有無、これを確認する有効な方法は見当たりませんでした。また、医療・介護に不安を抱える高齢者にとっての余裕資金とは何か。投資経験に乏しい高齢者は明確な運用目的を持っているか。安全性やバランス重視という言葉について、高齢者は明確にリスク認識ができているか。高齢者の自主的・能動的な投資経験の聞き取りができているのか。

 一方、アフターフォローでは、CS向上やトラブル防止のために相場の情報提供や意向確認を行っていましたが、健康面など生活状況の変化を確認している事例は少数派でございました。対象顧客の範囲や頻度については、その多くは手が回っておらず、どちらかといえば意識も薄いという印象を持ちました。お客様の認知症などを発見したとしても応接記録への記入を禁止するという回答も少なからずあり、顧客管理面での大きな課題を感じておりました。

 それでは、3ページにお進みください。調査を通して感じたことを申し上げます。まず、ルールの形骸化の懸念であります。確かにルールはきちんと存在するけれども、説明義務などルールを遵守することに意識が向き過ぎていないか。適合性判断云々の前に、もっとお客様をよく知ること、理解度の確認においてもできる限りご本人の生の声を引き出すということが大切だと思いました。

 次に、複雑化する契約内容への対応です。現代社会は、高機能・高付加価値を追求するあまり契約内容が複雑化し、事業者と消費者の間には常に知識や能力の隔たりやすいスキマが存在します。この点、7ページの図表もご参照ください。特に判断能力が低下している高齢者の場合、本人の理解を助ける、あるいは手続を代理する、そういう本人をサポートする機能の存在が不可欠だと感じています。

 さらに、家族への対応です。高齢者ガイドラインでは家族の同席を求めるルールがありますけれども、肝心の家族に会えない事例は少なくありません。しかし、例えば介護業界では、ケアマネジャーは必ず家族の連絡先を確認しています。高齢者の大切な財産をお預かりし、リスク性商品などをお勧めするのであれば、不測の事態に備えて家族の状況や連絡先を確認するということは当然のことではないかと思われます。高齢者を単なる資産運用先として見るのではなく、将来必ず相続承継が発生する先として見ることが肝要と感じております。

 では、調査を踏まえた考察について、3点申し上げたいと思います。4ページにお進みください。まず1点目、契約終了時まで適合性を担保することです。適合性判断は、契約時点における特定の商品についての結果に過ぎません。投資家の目標達成やその時期を予言することは不可能であり、金融機関は結果にコミットするのではなく、プロセスにコミットする必要があると思います。お客様の生活状況や考え方など普段からご本人のことをよく知る、本人の平熱を知るということが重要だと思います。そのような意味で、アフターフォローは異変を検知する絶好の機会と考えるべきであります。

 2点目、長期的な視野に立った顧客対応と顧客理解です。リスク性商品販売のトラブルは、短期的な販売方針や顧客理解の軽視に原因があると考えています。将来、認知機能が低下したときのエグジットについての事前の意思表示、言ってみれば、金融商品取引版ドナーカードのような仕組みが考えられます。高齢者の能力低下は加齢とともに個人差が大きくなる傾向にあり、一律的な対応やマス的な取り扱いは難しくなっていきます。今後は、判断能力が脆弱な高齢者個々人とのコミュニケーション技術、これを身につける必要があると思われます。

 3点目、金融機関にとって高齢者取引は今後避けて通れません。次世代との取引継続が最重要課題であると思います。この点、8ページ、9ページの図表もあわせてご覧ください。高齢者の判断能力が低下していきますと、生命や財産のリスクが増大していくかわりに、金融機関のビジネス機会は失われていきます。高齢者は、信頼を置くケアマネには相続承継、遺言に関する相談もしています。おざなりな高齢者対応は、相続預金の流出や相続承継ビジネスの喪失につながると考えられます。

 それでは最後に、金融機関の課題についての私の考えを申し上げます。5ページにお戻りください。まず、金融機関自身に向けた課題です。これからは高齢者取引を避けるのではなく高齢者取引に強くなること、高齢者のニーズや課題をよく知る高齢者取引のエキスパートを養成することが不可欠と考えます。専門部署を立ち上げることも有効な施策と考えます。そのためにも、認知症を含め高齢者とのコミュニケーション技術の向上は必須であると考えております。10ページをご覧ください。ユマニチュードという認知症のコミュニケーション・ケア技法がございます。フランス生まれの技法で40年の歴史を持っておりますが、医療・介護分野における認知症高齢者、介護者双方の負担軽減が既に実証されておりまして、金融分野でも活用することは十分可能だと私は思っております。

 次に、お客様に対する課題です。金融機関の役目は、お客様をお金の悩みからストレスフリーにすることだと思っております。よろず相談から入って、高齢者の不安を取り除き、人生の棚卸しや終活の取り組みを支援する。時には、家族を交えて相続や承継の相談に乗り、成年後見、家族信託、遺言の利用を促す。また、地域の居場所づくりは、高齢者の孤立防止や社会参加にも直結する非常に有意義な活動になります。

 最後に、地域社会に対する課題です。今や行政と福祉だけでは高齢者を支えることはできません。金融機関は、高齢者の異変察知の最前線にいる存在です。地域連携ネットワークのメンバーとして、見守り・後見ニーズの発見、地域包括や中核機関への連携、福祉と金融で高齢者を支えることが有効な方策だと考えております。

 進展する超高齢社会においては、金融機関は単なる金融仲介業にとどまるのではなく、地域社会の生活総合支援企業へ脱皮する覚悟が問われていると思います。信金業界などでは、後見法人を設立・運営する事例も出てまいりました。もっと積極的に高齢者の暮らしの困り事に関心を持って認知症高齢者の支援に主体的に取り組んでいくことが、持続可能な金融機関経営につながると確信をしております。

 以上で、私のご報告は終わらせていただきます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、全国社会福祉協議会の高橋様からお話をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【高橋参考人】
 全社協の高橋でございます。今日は資料3によって、日常生活自立支援事業利用者のニーズや支援上の課題、特に金融機関とのかかわりを中心にということでお話をしたいと思っております。

 1ページをお開きいただきたいと思います。社会福祉協議会について書いてございます。社会福祉協議会は、地域福祉を推進する民間団体として社会福祉法に規定をされております。全ての市町村、都道府県、指定都市、全国の段階に設置をされているという組織でございます。

 2ページをお開きください。日常生活自立支援事業が創設された背景が書いてございます。これは、判断能力が不十分な方が増えてきたこと、2000年、社会福祉基礎構造改革として介護保険制度が開始されたということが背景にございます。日常生活自立支援事業につきましては、介護保険制度が始まる半年前、1999年10月からスタートしております。2000年制定の社会福祉法におきましては、第2条に福祉サービス利用援助事業という形で規定をされたものでございます。また、社会福祉法第81条、ここに、都道府県社協は福祉サービス利用援助事業を行う市町村社会福祉協議会と協力をし、都道府県の区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるようにその必要な事業を行うというふうに書かれてございます。

 3ページをお開きいただきたいと思いますが、ここに日常生活自立支援事業の概要ということで援助内容が書いてございます。福祉サービスの利用を援助すること、そして、日常的金銭管理サービス、書類等の預かりということです。日常的金銭管理サービスにつきましては、①から④、この手続を行うとともに、①から④の支払いに伴う、預金の払い戻し・解約・預け入れの法手続を行うということになっております。一番下のところ、「具体的には、利用者との契約に基づいて」ということを書いておりますが、それが前提でございます。契約に基づいて、福祉サービスの申請の助言・同行、あるいはサービス利用料の支払い、公共料金の支払い等々日常的金銭管理を行うということになります。1カ月の平均につきましては利用回数約2回ということで、1回ごとに1,200円の費用が発生をするということです。

 4ページをお開きいただきたいと思います。担い手の役割、援助のプロセスについてということでございます。現在1,401カ所の「基幹的社協」という形で呼んでおりますが、市区町村段階の社会福祉協議会、複数の市区町村で連携をしてやるものもございますが、それがございます。また、相談援助を担う専門員、これが全国に3,194人、また日常の支援、金銭管理等々を行う生活支援員が1万5,905人いらっしゃいます。

 援助の方法を真ん中に書いておりますが、相談・助言・情報提供、連絡調整を中心として、利用者自らが各種手続を行えるよう援助をするということです。必要に応じて代行・代理による援助を行いますが、代理権の範囲は限定的に行うということで、契約書に記名するということになっております。判断能力が低下した場合については、成年後見の制度につないで財産管理等を行うということになっております。

 5ページをお開きいただきたいと思います。現在、31年3月末の数字でございますが、5万4,797人の方がご利用されております。認知症の高齢者の方が4割位、2万3,000人ほどの方がご利用されているということです。

 6ページをお開きいただきたいと思いますが、日常生活自立支援事業につながった経路ということでございます。ご本人あるいは家族・親族からつながってくるケースというのはわずかでございまして、ほとんどが相談・援助の関係機関からということでございます。その他が30ございますが、この中に銀行等が含まれているということでございます。なかなか銀行から直接つながってくることは少ないという状況でございます。

 7ページをお開きいただきたいと思います。最初の相談につきましては、左の棒グラフですけれども、金銭管理ができないということを中心としてつながってまいります。それが徐々に契約までの間に相談を重ねることによって、信頼関係を本人とつくりながら本当のニーズが見えてくるということで、福祉サービスの利用の必要性だとか、あるいは年金等が受給できてない状況を把握し、その手続を行っていくということになります。

 8ページが利用者の特徴ということでございます。左、所得の状況でございますけれども、所得・収入なしあるいは月収10万円未満と合わせまして6割弱の方が低所得の方ということでございます。8ページの方、右の上のところでございます。契約時の公共料金等の滞納の有無ということで、滞納ありが大体3分の1の割合でございます。ここには書いておりませんが、そのうちの4分の3が返済計画を立て、実際に返済をしていくということになります。

 9ページをご覧いただきたいと思います。右のところ、利用者の特徴として、本人が判断能力不十分なってまいりまして、サービスの必要性についての自覚がないとか、あるいは本人との信頼関係の醸成に時間がかかるだとか、そういうような状況がございます。実際に初回相談から契約までにかかった期間が3カ月を超えるものにつきましては、4割以上が時間がかかって契約をするという状況でございます。

 10ページをお開きいただきたいと思いますが、ニーズに対する専門員の充足状況ということです。利用者が5万人を超え、また、精神障害がある方が増えてくるということもございまして、難しいケースがあるということで、なかなかニーズに対応できるような状況にはないというのが、このグラフでわかるかと思います。

 11ページでございますが、日常的金銭管理支援サービスの実施方法。これについては、同行、代行、代理ということでございます。12ページに代行の方法、また、13ページに代理の方法を示してございますので、ご覧いただければと思っております。

 ここまでが大体、現在の日常生活自立支援の状況でございまして、14ページのところが支援上の課題や連携の取り組みを整理しております。この課題に関しましては、金融機関や支店による本事業への理解、対応の違いということが明らかになっております。金融機関によって、あるいは支店によっても事業への理解の差があるということでございます。先ほども事務局からご説明のあった銀行協会宛ての事務連絡がございますけれども、それが制度発足当初出されましたが、年数を経過する中で周知されていない部分も見られるということでございます。毎回委任状を提出するというのではなくて、代理人届による簡易な手続を認めていただくということが記載されているものでございますが、異動等もございまして、なかなかそれが周知されていないというところでございます。

 また、金融機関での各種手続を代行や代理で行う場合に求められる提出書類が金融機関によって異なっていると、その都度、個別の対応が必要になってくるということでございます。これは同じ金融機関であっても支店ごとに異なる場合もあるということでございます。

 また、金融機関によりましては、認知症や障害の程度が軽くても成年後見制度の利用を強く進めるという事例も発生をしていると聞いております。また、私ども日常生活自立支援事業による代行を認めないというような機関もあると聞いております。

 また、現在、支店の統廃合による影響が非常に大きいということもございまして、利用者さんのご自宅から金融機関までの窓口が非常に遠いということもございます。移動時間がかなり負担になっているということでございます。

 また、計画的な支出方法支援するため、千円札あるいは硬貨で小袋に小分けをするということをしておりますけれども、今、両替に手数料がかかるということもございまして、それも負担になっているという話がございます。

 また、キャッシュレスが最近流行っているということでございますが、精神の方に特に多いんですけれども、計画的な支出が難しいという状況でございます。生活費が不足してしまったり、あるいは現金に比べて使い過ぎてしまう。それを防ぐ手だてが難しいという状況が発生をしております。

 事例として、地域における金融機関との連携というのもかなり当方でも収集しておりますけれども、地域の福祉関係者等との合同勉強会あるいは連絡会を日常生活自立支援事業と金融機関で行っているような事例もございます。

 また、利用者への情報提供ということで、事業説明のチラシを窓口に置いていただける金融機関もあるという話でございます。

 また、見守り活動への協力ということで、自分でATMの操作ができないだとか、あるいは通帳の紛失を何度もしてしまうというような、銀行・金融機関の窓口から社協あるいは地域包括支援センターにその連絡が来るというような事例も幾つかの市町村で実施をされているという話をお伺いしているところです。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、認知症の人と家族の会の花俣様からお話をいただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

【花俣参考人】
 公益社団法人認知症の人と家族の会の副代表理事、花俣と申します。本日はこのような席で意見を申し述べる機会をおつくりいただきまして、大変ありがとうございます。

 先ほど来、尾川・高橋参考人から、より専門性のある的確で整理されたご意見がございました。そのような中、いずれにいたしましても超高齢社会の到来に伴う認知症の人の急増が喫緊の課題とされており、そういった観点から国のさまざまな施策において、認知症の本人・家族の視点の重視が謳われております。今回それらの視点から、特段の専門知識を有するわけでもない一般人、言い換えれば、顧客側、それも認知症高齢者と非常に近い距離におります私どもからの意見をお聞きいただける大変貴重な機会であると捉えております。それでは、拙い資料ではございますが、それに従いまして、当事者団体から金融機関等の皆様に期待したいことなどを伝えさせていただきます。

 当会の概要につきましては、ご参考までに簡単に資料の冒頭に記させていただいております。

 さて、本題でありますが、最初の〇のところ、まず金融機関の窓口において、高齢者が通帳をなくすなど対応に苦慮する場面もあり、地域包括との連携も必要になっているというふうに捉えております。これについては、何といっても認知症についての基本的な理解が不可欠であると思っております。

 また、窓口でのトラブルにつきましては、それに伴った家族等のクレームを含めまして、その場だけの対症療法的な工夫にとどまるのではなく、高齢顧客のニーズを把握するために最も有効なデータという捉え方をしていただいて、それらを集積・分析する。これがまさに生の声の集約になるかと思います。そこからおそらく課題の解決に向けたヒントがたくさんございますので、そういったところでそんな仕組みをつくっていただけたらなと思います。

 顧客対応の困り事を解決するためには、現場で起きているアンケートの情報の共有化・データ化ということで、それらのノウハウの蓄積もできるのではないかと思っています。例えば当会の会員の中に、指紋認証のキャッシュレスカードに作り替えてくださいと、それを強く進められて、独居の高齢の方、しかも若干認知機能の低下された方がそういったキャッシュカードに作り替えをされた。そして、案の定、高額の振り込み詐欺に遭ってしまった。ご家族は全くそれをご存じなかったと。これは大変なことだということで、なぜそういったやや判断能力の不安定な母親にそういうものを勧めたのか、あるいはこれは今後どうすればいいのかという相談に行かれたそうですけれども、担当の方が転任されて不在なので詳細はわからないと、そういった回答しか得られなかったことに息子さんが大変憤られて、もう二度とあの銀行とは取引をしないというふうにおっしゃったと。なので、こういった窓口トラブルのデータの集約というのは、いろいろな意味で有効活用できるのではないかなと思っています。

 また、窓口対応については、過去に通帳をなくされた。この方は別に認知症の方ではないのですが、本人が免許証を持参して、再発行してもらうために銀行まで出向いた。ところが、その場では発行してもらえなくて、後日文書が郵送されるので、それを持ってもう一度来てくださいと言われたと。当時は再発行手数料も必要であったために、手続としては正当な手順であったとしても、顧客側から見れば非常に不親切なような気がするといったことも聞かせていただきました。

 通常、物を作って売るというような業種では、モニター制度があるとか、あるいは苦情対応のそういう部署があるとかといって、必ずそういったものを集積して商品開発につなげているというのは当然の流れですけれども、ぜひ金融関係にもそういった発想を持っていただきたいと思っています。

 また、自分自身または親兄弟などが将来意思表示が困難になった場合の対応についても、どんな制度が利用できるのかということについてはなかなか皆さん周知されていませんので、そういったときに相談窓口としての役割を担っていただければ大変ありがたいと思っています。

 ここにも一部事例の紹介させていただきました。本人名義の定期預金を解約しようと金融機関を訪れましたが、「本人自身で判断できないのであれば、後見人を選任してほしい」と大変一方的に言われたようです。家族で話し合って再度訪れたのですが、やはり本人が認知症なら後見人を選任してほしいと。この後、ご家族は大変苦労がございまして、あげくの果てに監督人を選任しなくてはいけなくなった。こういうときに本当に後見制度について相談できる窓口があればもっといい方法があったのではないか、といったような意見も寄せられました。

 それから、もう一つ私からの提案といたしましては、例えば定年退職者向けの資産運用の講座等は銀行さんでよくやっていらっしゃると思うんですけれども、それらの取り組みをもう一歩踏み込んで、資産の活用だけじゃなくて管理の部分で、例えば成年後見制度の広報活動に若干力をおかしいただけないか、そういう役割を担っていただけないかというふうにも考えています。

 それから、もちろん地域包括支援センターの連携強化。これについては一方的に包括から認知症高齢者の話を聞くというだけではなくて、金融機関さんの方でも、福祉の現場で働いている包括が一番弱い部分、例えば金融商品の詳しい説明とか、そういったことを相互に情報提供するような場になってほしいなというふうにも思っています。

 それからもう一点は、今、成年後見制度の中で不正防止の観点から支援信託が出てきておりますけれども、プラス、支援預貯金という制度も出てきています。これは支援信託に比べてより使いやすいというふうに我々顧客側は受け止めております。なので、支援信託と並立・代替する支援預貯金についても、ぜひより深い現状の把握とか課題を分析していただいて、信託・預貯金ともにさらに使い勝手のよいものとなるように期待しております。

 ここにも事例を紹介させていただいています。母親が後見人に選任された場合には、後見支援信託制度の利用が必須であった。ところが、そこには支援信託銀行がない。他府県の信託銀行支店を利用せざるを得ない状況があったのですが、その後、手続の過程において、長男の口座がある地方銀行が新たに設定した後見支援預貯金ができましたので、それを利用することで信託銀行への大口の預金の預け替えをしないで済んだ、非常にスムーズに後見制度の利用に至ったといったような例もございます。

 最もお伝えしたいことといたしましては、いずれにしても高齢者あるいは認知症の人が特別なカテゴライズされた人ではないということを、ここで改めて申し上げたいというふうに思います。そんなふうに認知症の人というのは特別な困っている・困った人というようにカテゴライズして捉えてしまいますと、発想の硬直化といいますか、なかなかうまく発想ができない。なので、当たり前の人がたまたま認知機能の低下を起こす病気を持っているという捉え方を改めてしていただいて、あるいは、高齢になってくれば自分自身に置き換えてみる。そういったことで、まさに自分ごととして様々な課題に向き合ってみることからぜひ出発していただきたいと思います。

 私からの意見は以上になります。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それではここで本日のご出席のオブザーバーの協会の方々から、もしご発言があればお伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。では、全国銀行協会の萩原さん、どうぞ。

【萩原オブザーバー】
 ありがとうございます。全国銀行協会で企画委員長を務めております三井住友銀行の萩原と申します。本日は早速、参考人の皆様のほうから私ども銀行の対応などにつきまして、本当に忌憚のないご指摘、これからどのように対応していくかというご示唆を賜りまして、誠にありがとうございます。

 全銀協といたしましても本日の論点、いわゆる高齢者、認知能力を低下・喪失された方への対応というのは極めて重要な課題と認識しておりまして、今年度大きく2つ対応してきております。1つ目は、高齢社会対応等検討部会を全銀協の中に立ち上げております。
2つ目は、3年ぶり2回目の会員行への認知症対応アンケートを行っているところでございます。アンケートの回答を分析いたしますと、各行の取り組みに一定の進歩も見られる一方で、悩みも依然多くあることが判明しております。一定の進歩という点で申し上げますと、先ほど来お話いただいておりますが、本件対応には地域連携が重要なわけですが、3年前、2016年度の調査では、外部機関と相談・連携をしていると回答した銀行は5割強だったのに対しまして、今回の調査では7割強という形で増加してきております。
一方、悩みにつきましては本当に多々ございます。アンケートの中をざっくりと大きくくくってみますと、2つに分けられるかなと思っております。1つは認知・判断能力をいかに判定するのかということでございます。もう一つは、認知・判断能力が低下・喪失した後のご本人や代理人の方からの取引の申し出が、本当に真にご本人のためになる申し出であるのかということをどうやって確認するのかという点でございます。

 1点目の認知・判断能力をどう判定するのかという点ですが、現在は銀行員が面談を通じまして推測をしております。今のところ、学術的にも確立された判断基準が存在しないため、各行で確認の手順を標準化したり、複数人での面談、複数回の面談など試行錯誤をしているところでございます。こうした中、先ほどお話しいただいておりますとおり、地域における連携というのは極めて重要と認識しております。また、事務局のご説明の中にもございましたデジタル技術を活用した規制の精緻化に向けた実証事業、こちらにつきましても期待をしているところでございます。

 もう一つの能力低下後の取引の申し出が本当にご本人のために行われているのかということの確認方法につきましては、やはり法的に担保されております成年後見制度の活用が第1でございまして、各行とも制度の紹介と利用を促しているところでございます。こうした制度の紹介・周知のほか、ご利用を検討されている方が相談しやすい環境を整備していくことが必要だと考えております。

 一方、成年後見人からの申し出ではない場合の対応というのは非常に苦慮しているところでございます。アンケートでは、認知症ご本人からの申し出の場合、親族などに確認をとると回答した銀行が5割強ございます一方、本人の申し出のみであっても、日常生活に必要だと思われる範囲内であればそれに応じると回答した銀行も4割ございました。また、代理の方との取引の際にも、日常生活費とか医療費など、ご本人のために必要だと思われる範囲であれば応じると回答した銀行は6割弱ございます。こちらの確認方法につきましても決定的な方法が存在しておりませんので、各行、苦心して対応しているというのが実情でございます。

 なお、本日、事務局論点ペーパーの中に、業界団体において指針を策定することに期待というお話もございましたが、まさに、アンケートでも9割以上の会員行が業界の指針を作ってほしいという求めがございます。全銀協といたしましても業界共通の指針作りに着手していきたいと考えておりますが、その内容を考えるに際しましても、本日の議論は大変に参考になるものと考えております。特に本人のために使われるのかという点の確認方法につきましては、銀行はやはりお客様の大切な預金などをお預かりしているという立場からしいたしますと、極めて重要なポイントだと考えております。この点につきまして、特に皆様からのご意見、ご示唆などをいただければ幸いに存じます。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかの業界の方々、ご発言があれば。どうぞ、米花さん。

【米花オブザーバー】
 三菱UFJ信託銀行の米花でございます。信託協会から一言申し上げさせていただきたいと思います。

 今回認知・判断能力の低下した顧客への対応というテーマを取り上げていただきましたけれども、私どもも日頃からこの点を課題として認識しておりまして取り組みを続けているということであります。一方で現実的には、今、萩原常務からもお話がありましたように、取り扱いが難しいテーマだということも事実でありまして、今回非常に有益なテーマを取り上げていただいたと考えております。

 私ども信託業界では、先ほど事務局からのご説明の中にもありましたように、各社が工夫を凝らしながら、ご高齢者向けにさまざまな商品をご提供しているというところでございますけれども、その多くはご本人の認知能力が低下した場合に備えた商品ということでありまして、実際に認知能力が低下した方に対してどのように対応していくかという点については、引き続いての課題だと認識しております。

 本日、事務局から今申し上げたことを含む幾つかの論点をご提示いただいていますけれども、このような論点に関しまして、この市場ワーキング・グループでの議論を通じて、認知・判断能力が低下したお客様への対応に関する共通認識、さらに言えば、何らかの共通目線のようなものができれば、金融機関のサイドの実務対応もスムーズになり、その結果、ご高齢者の方がよりストレスなく生活できる社会の実現に寄与するのではないかというふうに思っておりますので、本テーマの議論に期待をしているところでございます。よろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 どうぞ、塙さん。

【塙オブザーバー】
 生命保険協会の塙でございます。貴重なお話ありがとうございます。日本の生命保険業界は、世界に比べても医療保険の終身型等、保険期間の長いご契約が多くございまして、私どもが日々悩んでいるテーマについていろいろと示唆に富む現場のお話もいただきまして、大変参考になりました。

 生命保険協会においても、例えば昨年、「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」を改訂いたしまして、「親族等の同席」や「複数回の募集機会の設定」等、少しずつ対応を進めているところでありますが、一つ一つ道半ばでございます。

 こうした中で、生命保険協会では昨年、「顧客本位の業務運営の高度化に資する取組みに関するアンケート」を実施し、会員各社の好取組み事例や、あるいは工夫等を個社ごとに全社からヒアリングを行い、苦情の分析を進めているところでございます。

 また、高齢者の方々がお客様の中に占めるウエイトが上がってきておりますので、これは生命保険会社にとって真正面の課題だと思っております。先ほどもございました、認知症の方に限らずですけれども、とりわけ認知症に関する取組みにつきましては、認知症サポーター制度の研修を受ける等、色々な取組みをしている会社がございますので、専門の方のご意見等も聞きながら進めてまいりたいと思います。本日は貴重なお話ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 はい、どうぞ。

【荻野オブザーバー】
 日本証券業協会から一言を言わせていただきます。大和証券の荻野でございます。先ほど事務局の方の説明の中で、200兆円が認知症の人の資産になってしまうという試算がありました。これはその資産が眠ってしまうということになってしまいますと、日本経済にとってもこれは大変ハンディキャップになってしまうというふうに認識しております。証券業界としては各社様々な取り組みを行っておりますけれども、高齢者専門に対応するような営業部門、営業者をつけると。かなり年を老いた方に対して、孫のような若い営業員が相談してもなかなか会話がかみ合わないということもありますので、そういったところについては、会社によっては、高齢者、特にシニアの営業員を専門につけているというような取り組みもしておるところもございます。

 本日色々なご意見をいただきながら、また参考にさせていただければというふうに思っております。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。あと、よろしゅうございますでしょうか。

 それでは、委員の皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければと思います。時間が限られていて大変恐縮ですけれども、今ざっと計算しますと、お一人できれば4分弱以内でのご発言をいただければありがたく存じます。

 なお、社会福祉協議会の高橋様につきましては、所用のため4時45分頃に退席されると伺っておりますので、恐縮ですが、高橋さんへの質問をちょっと優先したいと思いますので、高橋さんへのご質問ある方は挙手をしていただけましたら、その方を優先したいと思います。

 それでは、駒村先生、どうぞ。

【駒村委員】
 ありがとうございます。あらかじめ申し上げますと、私は全社協の理事でもありますので、あらかじめ別に打ち合わせしたわけではございませんので、全社協に素直にお聞きしたいことがありました。

 先ほどの日常生活支援のところですけれども、処理量というか対応量が増えてきているということなのですが、このマンパワーというのでしょうか、全社協の資源の見通しというか、今かなり厳しい状態になっているのか。どういうところに公的な支援等があれば、これに対応できるのか。このマンパワーというか資源の状況を教えてほしい。

 それから、金融機関に代理・代行というふうになかなか理解が得られないと。これについては、全社協として何か申し入れたことがあるのかどうかと、この2点。

 他にもあるんですけれども、全社協関係だけだということで。

【神田座長】
 ありがとうございます。お願いします。

【高橋参考人】
 私の資料の5ページお開きをいただきたいと思います。先ほど5万4,797人、31年3月末の数字というふうに申し上げました。この数につきましては近年その伸びが低下しております。ここに関しましては、ここには書いてないのですが、やはり相談の件数が非常に多くなってきていると。特にそこは認知症というよりも、知的障害あるいは精神障害の方々の相談が多くなっております。そういう方々の頻繁な相談がありまして、この支援についてはかなりもう窮屈な状況ということで、利用者の伸びが低下をしているという状況でございます。

 ここに関しましては、今日、厚生労働省の室長がおみえになっておりますけれども、そこにご相談いたしまして、単価のアップ等をお認めいただいたということで、そこについては若干改善したかなというふうに思っております。ただ、やはりこの日常生活自立支援事業だけで判断能力が不十分な方を見ていくというのはなかなか可能ではないというふうに思っております。社協の場合、400あるいは500カ所が権利擁護センターを設けておりまして、成年後見の事業も一体的に行うという状況もございます。そうした事業も絡め合わせまして総合的に権利擁護を図っていく、金銭管理も含めた権利擁護を図っていくということで、ある程度支援が必要な方々のニーズの解消はできるかなというふうに思っておりますが、なかなかやはり今の認知症の方あるいは精神障害の方の増え方を考えますと、結構厳しい状況かなと思っております。

 また、社協あるいは日常生活自立支援事業に関する金融・銀行等々のご理解につきましては、これも所管であります厚生労働省と協議をいたしまして何年か前にもう一度事務連絡を出していただこうということでやっていたのですが、なかなかそこのところが整わず、現在、この2000年前後に出した通知でとどまっているというところでございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。それでは、駒村先生、もし他にもご意見があれば、いかがでしょうか。

【駒村委員】
 今の回答で結構です。

【神田座長】
 それでは、他にいかがでしょうか。上柳委員、野尻委員の順で、上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
 高橋様、ありがとうございました。今の点、私の現場の感じだと、やはり社協の方の人数がもっといらっしゃれば、もっとさらにご活躍されるんじゃないかと。質の問題があるので、人数だけ増えれば良いということではないのかもしれませんが、そのように思いました。

 質問は、4ページのところに、判断能力が低下したり、財産管理の法律行為に関する支援が必要な場合は成年後見制度につなぐというふうに書いていただいているのですが、これはスムーズにいっているのでしょうか。私は弁護士で、成年後見人の費用の問題とかいろいろあるのじゃないかと思うのですが、率直なところをお聞かせ願えればと思います。

【高橋参考人】
 この日常生活自立支援事業は、先ほどご覧いただきましたが、やはり低所得の方が多いという形でございます。また、ここに書いてはございませんけれども、一人暮らし、あるいは親族がいても、なかなかその方々の支援を受けにくいという方がございます。ですので、後見制度の申立人がいないとか、あるいは後見報酬も申立の費用もなかなか工面できないということでございます。現在、自治体で市町村長申し立てに頑張っていただいているのですが、なかなかそこのところも進んでない自治体があるという状況もございます。ということもあって、必ずしもスムーズということでございません。

 ただ、最高裁の統計では、保佐・補助といった軽いレベルの法定後見制度の利用については、最高裁の統計ではあわせて2割くらいなのですが、全社協の統計では、日常生活自立支援事業から成年後見に移行した場合、保佐・補助の割合が3割いらっしゃるんですね。ですので、より軽いレベルから必要な状況に応じて的確につなげている件数もある程度あるかなというふうに認識をしております。

【神田座長】
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

 それでは、野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 ありがとうございます。自分の知っている分野とはかなり違うところをたくさん聞かせていただいたという意味では、良い勉強ができたという気がしています。ただ、フィデューシャリー・デューティーというか、顧客本位の業務運営という立場からいくと、前回のワーキング・グループのときにも高齢者の議論はさせていただいたと思うのですが、そのときには、1つ、金融資産だけではなくて土地だとかその他の資産についても議論をしてきたというふうに思います。マクロ統計からいくと、個人の保有する土地の評価も含めると個人資産は3,000兆円くらいあって、事務局のほうからの3分の2が高齢者ということになると、2,000兆円ぐらいのお金が高齢者の名前のもとにある。これを見ていくときに金融資産だけでいいのかというのはすごく気になるところであります。

 2つ目は、逆の意味で、金融資産の中で比較的生活支援のお金を、という議論が多かったかと思うのですけれども、金融の業界からいくと、有価証券を保有していて、認知症等々、もしくは高齢になることで現金化が進んでしまうという、マーケットにとってはマイナスの影響も気になるところかと思いました。これが2つ目であります。

 それから、3つ目は、今伺っていると、ルールと現実の対応の間にかなり広いのりしろがあって、金融機関ごとに、もしくは業界ごとに、もしくはその地域ごとにのりしろが違っていることで、できるはずなのにできないという声があるというふうに私は今、全体像として理解をいたしました。こののりしろをどういうふうに圧縮できるのかというのは、ルールの改定ではないなと思いながらも、現場がどれだけ対応できるかというところに落ちるとなると、これはなかなか難しい問題をはらんでいるなと感じた次第であります。

 それから、最後なのですが、金融商品でどれぐらいカバーできるのかということで、幾つか、支援信託だとか支援預貯金だとかというものが出てきているんですが、昨年の議論の中でも保険のところでお聞きしたと思うのですが、色々な商品がたくさん出てくることは良いことなのですが、名前に統一感がないことからカテゴリーがどんどん違うもののように見えて、名前が違っていて、比較検討ができないというのが非常に多かったように思います。この分野もそういうところに陥らないことを切に願っているところであります。

 以上4点、感想です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 林田委員、どうぞ。

【林田委員】
 ありがとうございます。3点ほどコメントしたいと思います。

 まず1つ目なのですけれども、この検討の意義みたいなことについてです。事務局の資料にもありましたように、認知症の方が700万人になるとか、あるいは認知症の方の金融資産が200兆円超えるとか、そういった試算もあるということですけれども、正確にそのとおりになるかどうかは別にいたしまして、方向性としては、認知症の方が増えていき、その金融資産も膨らんでいくということは間違いないと。

 こういうあらかじめ予想されたことなのに政策対応が後手に回ったという代表格が、やはり少子高齢化問題だろうと思うのです。少子高齢化の問題というのは、僕が記者になったころからもう問題になっていた。それを考えますと、当ワーキングで議論する今の高齢者の資産問題もその一環みたいな話かもしれませんが、いずれにしても将来、問題化することは避けられないわけなので、早急に有効策をとらなければいけないのは明らかだと。
ただ、その具体策となりますと、ご説明にあったように成年後見制度の利用促進の措置もとられていますが、利用の伸びは緩やかであるということ、それから、金融機関によるいろいろな支援信託などもありますけれども、実績は伸びていても、絶対数はまだ低水準ということですね。ですから、やはり制度とか金融商品をつくっておしまいというのではなくて、どうすれば大勢の人に使っていただけるのかというところを中心に議論していったらいいのだろうと思います。

 その検討に当たってはやはり、今日も参考人の方々からいろいろ有益なご説明がありましたけれども、高齢者のサイドから見てなぜ使いたいと思わないのかとか、あるいは金融営業の現場でこれじゃ売れないよ、ペイしないよ、と感じていることという、そういう本音ベースの話を集めて分析するということが不可欠なんだろうと思っています。

 2点目です。言わずもがなかもしれませんけれども、今現在、かんぽ生命の不祥事などがいろいろ問題になっているという中で、郵便局ですら高齢者のことを食い物にしていたということで、国民が金融業全体に向ける目線というのは非常に厳しくなっている。信頼はもう地に落ちていると言っても過言ではないと、私は思っています。ですから、どんな立派な金融商品を作ったとしても、やはり金融機関に対する信頼が回復しなければ普及は見込めないということですので、顧客本位の業務運営というところについては、強調してもし過ぎることはないと。ここはしっかりやっていただきたいということです。

 最後に、高齢者の金融資産問題というと、何か一般の人には、これは富裕層の話なのだ、私には関係ないやと考えている方も多いかと私は思うのです。特に色々な金融機関のCMを見ても、いかにも豊かそうな人が出てきて、将来の親父の資産をどうしようかと困っているみたいな設定のCMを多く見かけます。そういうこともある。しかし、認知症はお金持ちがかかるだけではなくて、みんなかかるものでありますし、お金の管理というのは、一般の人広くやらなければいけないことであるということですので、当ワーキングで検討しているのは、一般の方々に広く関係のある問題なんだということをメッセージとして報告書などで打ち出していくべきではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 駒村先生、どうぞ。

【駒村委員】
 ありがとうございます。今日のお話を聞いて、事務局にご提案したいと思いますので、検討してください。高齢化社会で認知機能が低下してくる人が増えていく社会がどういう問題を抱えていくのか。特に経済活動とかお金の管理という意味で起きてくる問題が、今日大事なところが出てきたと思っています。日本証券業協会の方からお話があったマクロ経済に与える影響、これもまた深刻な問題ですけれども、家族の会からお話があった、本人をど真ん中に置いたときに、金融資産があり、それを運用して、そして、それを取り崩して、そして、これ自分のために使っていくということが、今どういう問題起きているのかというのが明らかになったと思うのです。

 資産の活用・運用・取り崩しというところは、金融庁あるいは金融機関が対応しなければいけない。そして、取り崩したものを、いかに自分のためのサービスなどに変換していくか。お金だけで生きていけないわけですから、サービスに変換をしていかなきゃいけない。ここにも実はサポートも必要になってくるということで、今日もお話ありました、グループホームに入る費用、老人ホームに入る費用、保険外サービスを購入する、あるいは旅行に行きたい等々、本人がどう望むのか、家族がどう望むのかと。特に使うときにさまざまな根詰まりがあるというのが確認されたのだと思います。

 現状、重度の認知症になった場合は、成年後見ということで後見人がそこを支えることになるわけですけれども、そこがスムーズに動いているかどうか、本人に寄り添っているどうかというのは、色々議論があるところだと思います。あるいは、その一連の流れ、この作業について、金融機関と社協、地域包括、こういった厚生労働省が担当している分野との連携がいまひとつ不十分ではないのかということ。あるいは、お金を自分のためのサービスを購入するように変換するときに、認知機能が落ちているがために不適切な使い方をしてしまう。これは恐らく今日いらしている消費者庁のテーマだと思うのです。

 一連の話というのが、省庁ごとに今まで対応していたのが、1つの大きなフローの絵になっているのだ、認知機能の低下とお金の活用という意味では大きな流れになっているのだということをぜひ、金融庁や政府で整理していただいて、そこにある根詰まりは一体何なのか、それを解くためにはどういう制度改革、法改正も必要なのか、あるいは民間ビジネスで対応できるのかということを議論する必要がある。今日、尾川さんの方からこの金融の場でユマニチュードという福祉・介護の技術の言葉が聞けたというのは、素晴らしいと思うんですけれども、高齢者の経済活動を支えるエキスパート、こういった方をどの組織がどのように育てていくのかというのが大変大きなビジネスだと思いますし、重要な取り組みになるのではないかなと思いました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 たくさんの方に札を立てていただいておりまして、永沢委員、島田委員、高田委員、そして、中野委員、野村委員、福田委員、竹川委員、神戸委員の順でお願いできればと思います。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】
 ありがとうございます。3人の参考人の方のお話、大変参考になりましたし、日頃、色々な消費者トラブルに関わっております。本日のご提言を全て金融機関の方で実践いただけたら、トラブルも少しは減少するのではないかと思いました。

 お話をいただいた中で幾つか思ったことをお話しさせていただきたいと思います。

 私は特に尾川参考人からお話がありました適合性の原則のところにつきましては、かねてよりずっと同様に感じておりました。この適合性の原則が契約時のみというところは、特に認知能力が落ちていく高齢者には大変きついものがあります。例えて言うならば。認知症の方は、着ている服がもう合わなくなって体に悪くなっている状況にあるわけでして、そうした状況を何とかしてあげるということが金融機関の務めではないかと思いますので、そこのところのケアをやはりルール化して手当てしていく必要があるのではないかと感じております。

 今日お話いただいたご提言の中に、今からでもすぐにスタートできることが幾つもあると思いました。その1つとしてドナーカードのご提言です。すぐにでもお金もあまりかからずできるのではないかと思いました。これは消費者団体の方も積極的に取り組むべきと思いました。

 また、専門部署の設置というお話がありました。見守りの方々の声が届くシステムというご提案はすぐにも実践をされてはどうかと思います。高齢者や認知症ノオ本人の声を聞くということは難しく、足りないところがありますので、見守りの方々からの声の窓口の設置も1つの解決策と思いました。

 それから、なぜだろうと思った箇所がございました。事務局資料の12ページですけれども、地方の金融機関にも後見制度支援預貯金というのが広がっているというお話ではありましたが、導入の予定が半分ぐらいしかないということですが、どうして進まないのでしょうか。先ほど、参考人の方から大変有益だったというお話もありましたので、どうして普及しないのか、その理由をどこかの機会で結構ですので、ご説明をいただけたらと思いました。普及するにはどのようにしたらいいかというところを考えていく必要があると思います。

 もう一つ、気になりましたこととして、ほかの方からも出ておりましたし、お隣の林田委員からもペイするかどうかというお話が出てきましたけれども、金融機関のサービスというのはやはり持続可能でなくてはいけません。採算がとれるようにサービスをどう作っていくことができるのかという点は、何かの規制が枷になっているならば、金融庁の方でも知恵を出してあげる必要があると思います。安く汎用品のような形でサービスを提供することができないのか。特に地方においては、安く提供できるサービスが必要でしょう。ここは特に工夫が必要と思っております。

 最後に1点、キャッシュレスという話が出てきました。最近では支店がどんどんなくなり、ATMも廃止の方向にあります。認知症の方々やそのケアをされている方々にとって、このキャッシュレスという流れをどのように考えていったらいいのか、1つの課題とも思いました。またの機会にこの点についても検討しておく必要があるのではないかと思いました。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、島田委員、どうぞ。

【島田委員】
 お三方のお話大変勉強になりましたし、これから考えるヒントもたくさんいただけたと思います。どうもありがとうございました。

 その中で、尾川さんのお話の中で4ページにありました調査結果を踏まえた考察というところが、これからの考える課題として非常に重要なポイントがたくさん出てきたのではないかと思います。特に私どもは、金融商品、投資信託についての仕事をしております関係から感じることかと思いますけれども、契約終了時まで適合性を担保というところはとても大切なポイントだと思います。適合性を最初の時点で判断したとしても、お客様が年をとっていくに従って、その変化によって適合性の水準も変わってくるし、それからもっと言ってしまえば、最初に定めた目標とも変わってきてしまうということもあるので、プロセスにコミットしていくというアフターフォローは非常に重要なポイントだと思います。
また、高齢者の資産をマーケットにいかに活用するかというようなお話も若干出てきているかとは思うのですけれども、全体の話で見ていても、いろいろな資産水準の方たちの話がごっちゃになって出てきていて、そこは区別して考えなければいけないのかなというふうに思います。

 まず高齢者の資産をいかにマーケットに活用するか、あるいは資産をどのように継承していくかといった話については、多くの方にはあまり関わりのない、資産規模の大きな方の話なのかなと感じます。ここが現在のボリュームゾーンとしての金融機関のお客様だと思いますが、こうした方々についても認知能力が非常に衰えてしまった時点でも、資産を継承していく中では資産の運用や活用が非常に重要であると思います。ここは関係者とのコミュニケーションを密にしながら定めていけばいいと思うのですけれども、基本的には高齢者から資産を若い世代に移動させてからいかにマーケットに活用していくかということが、そもそもの投資という意味ではあるべき姿なのではないか、という印象を受けました。

 それから、お金持ちの話で関係ないと思う多くの方々に対しても、やはり認知能力の低下や、資産をどうやって老後に使っていくのかということは非常に重要な問題であって、ここについても多様な家族のあり方、特に単身の方とかお子様がいらっしゃらない家族なども増えてきているので、多様な家族のあり方に対応したサービスについて、これからどんどん発展していくと良いと思います。

 その中で考えるのは、現状では金融機関の考え方としては、商品を通じたサービスの提供という発想があるかと思いますけれども、商品中心というよりはむしろそのサービスを提供するためには、どのような商品ができるのだろうかといった発想の転換をしていただければ嬉しいと思います。そして、資産規模に応じて、どのようなサービスがあるのかといったことを、セグメントごとに情報発信を考えていただければと思います。

 最後に、私もリタイアメント世代になりまして、金融機関や公的機関からいろいろ手紙をいただくのですが、どれを見ても非常に分かりにくい。まだこの年齢、60代でも非常に分かりにくいので、認知能力が更に衰えてきたりしてしまうと、本当に分からないということがあると思います。ですから、説明をもっと分かりやすく、読ませるためにつくるということについてはぜひもっと努力していただければと思います。そして、分からないことの相談窓口についても、もう少し親切にご対応いただければなと思います。

 最後に、知識や能力、認知能力と判断力についての認定ということについて申し上げますと、実は金融に対する知識というのは、高齢者の方が若年層よりも高いという試験結果が出るわけです。ただし、この高い知識と判断能力の間にどんどんアンバランスが出てくるというところがありますので、この判定についてもこれからそういうアンバランスがあるのだということを前提に、これを理解しているからオーケーなのではないということをぜひ勘案して議論を進めていただければと思います。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは、高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 どうも今日はありがとうございます。参考人の方々含めて、我々もいろいろな事例も含めて大変勉強になったというふうに思っています。私の方は大きく分けて3つの論点から、キーワードで言いますと、1つはミスマッチ、それから2番目に共通言語、それから3番目に実証事業ということで申し上げたいなと思っています。

 1つはミスマッチという論点です。やっぱり高齢になればなるほど、本来であればこの金融サービスというのはある面での必需品と申しましょうか、非常に重要な、なくてはならないものであるということなのだろうと思うのですが、一方でそういう中で、認知症というようなことの中で、実際にそういう方々が金融のところから遠ざけられるような、いわゆる金融包摂というものが見えにくい実現できないようなものがやっぱり生じてしまっている部分というのもどうしてもあるのだろうなと思います。

 また一方で、高齢になればなるほど、日本の場合、現実的には資産が集中するような状況になっている。しかも、比較的リスク性の高いものに集中しているというような現実もあるわけです。そういう中で、現実には認知能力が低下をする中でのミスマッチもあるわけであります。そうしますと、このミスマッチをいかに直しながら、高齢の方々にも金融包摂を進めていくのかということは、ある面で金融面での目詰まりをなくすというか、成長戦略の1つなんだろうと思うわけです。そういう意味では成長戦略なんだというような論点でこの議論を取り組んでいくというのは、やっぱり私は必要なのではないかというふうに思います。

 それから、2番目の共通言語です。今日も色々ご説明していただいたわけでありますけれども、どうしても金融の分野、また福祉の分野、また医療の分野、それから、地域の分野ということで言葉がみんな違って、その中では、その村では分かるんですけれども、村を越えるとなかなか言語が通じないというような実情が起こっているのも現実ではないかなと思います。そうなりますと、共通言語みたいなものを、いかに言葉が通じるような共通土台をつくっていくのかというところがやっぱり私は非常に重要だと思います。

 また、どうしても福祉の世界ということですと、市場メカニズムが働きにくいという部分もあるわけでありまして、先ほど持続性という議論がありましたけれども、そういう観点からもやっぱり必要であるということだろうと思います。

 また一方で、先ほど野尻委員のほうからもお話がありましたけれども、金融だけではなくて、不動産とか、また場合によってはその他のサービスというものも十分あるわけでありますので、そうしたものも含めた非常に幅広い共通の土壌づくりと申しましょうか、また、共通言語というところが、やっぱりこれからまさにこうした委員会の中での重要な論点なのだろうと思います。

 そういう意味で、最後に事業ということになるのですけれども、まさしく、こうしたものを、最初に申し上げた成長戦略、また共通言語というような状況の中で、いかに叡智というんでしょうか、情報を集めていくか、もしくは色々な実例を集めていくのか、というところが重要になると思います。また一方で、今回、生活総合支援企業というような言い方が尾川さんの方からもございましたけれども、そういう既存の規制環境の中で、総合的に対応する新たな実証実験みたいなものを行いながら対応していくというようなことが、今後重要になってまいります。なかなかこういう分野は未知、未開の分野という部分もあると思いますので、そこをいかに情報の非対称性を埋めながら持続性のあるものにしていくのかというのは、これからまさにこの場、まさにこういった皆様方がそろった中での実現していく重要な論点になるんじゃないかなと思います。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは、中野委員、野村委員、福田委員の順で、中野委員、どうぞ。

【中野委員】
 ありがとうございます。今高田委員からのお話の中で金融包摂という言葉がございましたが、前回のワーキング・グループの中でまさに議論をした高齢社会における資産形成・管理、これにも本当に直結するテーマであったと今日改めて思い返しております。

 まずお三方の問題提起、1つは地域金融機関というのは非常に重要な役割を果たしていくだろうということ。そして、地域自治体をリードする形で、地域金融機関が主導的に、先ほど説明があった地域連携ネットワークを運営管理していく姿を作ることで、地域生活者の財産権やあるいは生活の尊厳まで繋がる、そういったものを守る役割を果たしていくということによって、新しい社会的需要に対する使命を果たせるのだろうと考えております。

 それから、後見制度、日常生活自立支援制度等々の制度活用、これらは一般の人たちには実際のところ馴染みがまだ薄かったりしますので、こういった手続だとか活用方法などをアドバイスする、あるいは代行するといったことを金融機関の重要なサービスにしていくのが普及につながるのではないでしょうか。

 併せて言いますと、非金融で見守りサービスというのがありますけれども、これは郵便局が大変意欲的に始めたものの、実りがほとんどない状態である。これは結果的には社会的使命の視点が、組織に欠落しているからであろうと思います。これは郵便局に限らず、金融業界全体にまだまだ欠けていると反省しなければいけないことだと思いました。

 それから、日証協の方、それと島田委員からもお話がありました、認知症の方々が保有している200兆円規模の資金、これが死蔵になってしまうということで、これはマクロ経済あるいは金融市場機能に立脚した社会的損失だと思います。例えば、これが1%のリターンを生むお金になれば、それだけで2兆円生むわけですから、この新たな富の創出につながるものは放置してはいけないと、資産運用的な観点からも非常に危機感があります。

 例えば、認知症の罹患に備えた家族間での準備行動の定着、これは任意後見で預貯金のみならず資産運用まで含めた自由度を一般化するというようなことで、尾川さんがおっしゃっていた認知遺言のドナーカードみたいなものというのは非常に重要なことだろうと思います。具体的に言いますと、例えば、計画的な運用資産の取り崩しにおいて、システマチックに構築されている場合や、あるいは次世代に向けた定時定額の積み立て契約といったものは、事前の本人の意思によって認知後も継続的な活用が可能となるような法令やルールの柔軟な対応も我々自身で考えていくべきだろうと思います。

 最後に、野尻委員や林田議員からもございましたが、顧客本位のプリンシプルが何より重要なイシューの1つであろうということです。対応がどうしても短期的な視点から紋切り型で終わってしまうことに鑑みて、意識をフィデューシャリー・デューティーに則ったギブギブギブの精神で、結果的にそれによって地域社会貢献をすれば、結果リターンが返ってくるという本来の精神を取り戻すことが重要だろうと非常に強く認識いたしました。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、野村委員、どうぞ。

【野村委員】
 本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。全体の方向性、議論の方向性という意味では、例えば年齢区分のようなある意味で機械的なことではなくて、より実質的なサービス提供のあり方を考えるということだと理解しておりまして、その方向性については賛成したいと思っております。また、顧客本位の考え方にも整合的であろうと、先ほど来の皆様のご指摘の通りだと思います。

 その上でやや確認めいたことでございますけれども、これからの議論の対象という意味では、非常に幅広い金融サービス、金融取引を議論の対象としていくという理解で正しいでしょうか。

 何となれば、事務局の資料の中で、デジタル技術の実証事業についてのご紹介とは思いましたが、日証協の現行ルールである75歳、80歳が挙げられています。これはあくまでも投資勧誘という、やや特定の金融取引の局面にフォーカスした内容と捉えられます。そういう意味では先ほど来の参考人の皆様からのお話にもあるとおり、高齢者ないし認知機能低下の見られる方々の直面する課題、そのときの金融取引というのは、日常的なお金のところに始まり非常に幅広いということですので、全体的なところを対象とする議論であるということはぜひ確認したいと思いました。

 ここから先は幾つかのコメントめいたことでございます。これも既にご指摘、キーワードとしていただいている点ですけれども、やはり時代の流れとしてはデジタル化ということではないかと思います。これから、結構デジタル技術を使いこなす高齢者も増えてくる方向だと思います。デジタル技術、インターネット取引などは、非常にポテンシャルがあると同時に難しい課題も提示するものだと理解しているところです。

 それこそ、移動が難儀になってきた方が金融機関の店舗に必ずしも行く必要ない。これは非常に便利な一方で、この取引は本当にご本人の意思なのか、ご本人のものなのかという確認のやり方等はもしかすると難しくなるかもしれない等々いろいろあるのですが、少なくともデジタル化の進行というものを踏まえた議論にする必要があるのかと思いました。

 また、先ほどから出てきている金融包摂というキーワードも、恐らく理念的には極めて重要だと思います。金融包摂の方向性としては、認知機能の低下があったとしても、いかに個人の意思を尊重していくかだと思います。この考え方に対して、やはり詐欺は防止しなくてはいけない、どうやって保護していくのかという課題があり、この2つをどうやって両立させていくのかということがあると思います。

 前回までの議論でもありましたが、この超低金利の中で資産寿命をいかに延ばしていくか、この部分は課題としてなくなったわけでも何でもなくて、資産寿命を延伸しようとすると、一定程度の分散投資等も考える必要があるのではないか。このような課題も引き続き関連してくるかと思います。

 あと最後に1点ですけれども、これも繰り返しになりますが、やはり民間のサービス提供者を巻き込んでいくということになりますと、それらの方々においては一定程度の収益性の確保は必須かと思います。これはサービスの持続可能性を担保するためにも必須かと思いますので、この点も併せて考えていく必要があるのかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、福田先生、どうぞ。

【福田委員】
 ありがとうございます。成年後見人制度に関する色々な取り組みに関しては私も非常に重要だと思いますし、それはそれでしっかりやっていただきたいとは思います。ただ、基本的にはオーダーの違う問題だと思います。要するに、認知症の方々の数字というのは何百万あって、もう間もなく700万になろうというオーダーで起こっていることと、成年後見人が何人やっているか、何十万のオーダーですけれども、オーダーが一桁違うタイプの議論だということがあるという、そういう問題意識はやっぱり重要だと。大半の人はやはり成年後見人制度は使わない、あるいは少なくとも当面は使わないという社会の中でどうすべきかという、そういう制度設計を考えざるを得ないとは思います。そうしたときに、どういうふうな形で生活に困らないような対応をすべきか、そういう制度設計を考えるのが少なくとも一番現実的な対応なんだろうなと思います。

 そういう意味では、私の親を介護した個人的な経験も含めてですけれども、ある意味でのキャッシュレス化は今かなり進んでいまして、例えば公共料金の支払いとかは元々銀行引き落としに大体はしてあり、別に毎月毎月支払うわけでも何でもなかったので、ともかく毎日現金が必要だったというわけではないんです。ただ、新たに何か支出が必要になったときに、やっぱり銀行引き落としにするにしても手続が必要で、これはこれでかなり大変な作業というのは当然家族には表れてきて、そこで色々な形で銀行の方にも対応していただかなければいけませんでした。

 これもまた個人的な経験なのですが、そのときの金融機関の対応は必ずしも画一的ではなかったかな、というのが私の印象で、非常につれなく断られてしまった銀行さんもあれば、やはり非常に親切にしていただいた銀行さんもあって、特に親切にしていただいた銀行さんというのは、もちろん初めての銀行さんではなく、両親がお世話になっていて、兄弟が住宅ローンを借りた際にもお世話になった銀行さんとか、ある意味では顔の見える金融機関の方々に関しては非常に親切にしていただいて、それで何とか乗り切ってきたというようなことはございました。そういう現場担当者の対応のフレキシビリティを持ってやっていただけると、現実問題としては、もちろん全ての方が大丈夫ということではないとは思いますけれども、かなりの人たちは何とかやっていけるということはあるのかなとは思います。

 ただ、担当者の方にある意味でリスクは負っていただいたということは恐らくあるのだろうとは思います。本来であれば、本人の必ずしも十分な同意がとれていないのにも関わらず、そういう手続をしていただいているわけですので、そういう意味ではある意味でのリスクをとってもらった。

 問題になれば、多分その担当者の方というのは非常に責任を問われるということにもなるのかもしれないのですけれども、そこら辺のあまりにもネガティブ、負のサイドだけでその人をマイナス評価するのじゃなくて、そういうフレキシブルな対応というのはある意味で良い面もあるので、そういうことも許容するような制度設計、ある意味では融資をするということもそれに近いと思うのです。融資をすれば必ず儲かるわけではなくて、ある意味では損害が発生する。だけど、担当者がどういうふうな形で融資をすればいいかというのは、現場で判断して融資をして、全体としては上手く回るということもあるので、そういう現場の方の判断というのをある程度許容するような、そして、ある一定の確率では問題は発生するとは思うんですけれども、そういうようなことをある意味で許容するような仕組みというのは、何となく上手くいくんじゃないかというふうに個人的には感じております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、竹川委員、神戸委員の順で、竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】
 参考人の方々のご意見、非常に参考になりました。どうもありがとうございました。幾つか申し上げたいと思います。

 まず1点目、事務局の資料にありました7ページ目、8ページ目の地域連携ネットワークですが、金融機関が参加できていない理由、5.1%しか入っていないということなので、阻害要因がどういうところにあるのか、もしお分かりになれば教えてください。また、中核機関と記載がありますが、これもイメージするものがばらばらだと思いますので、具体的にどういうところなのか、分かれば教えていただきたいです。

 2点目は、日常生活自立支援事業についてです。金融機関も、私たちも、知らないケースが圧倒的に多いので、ぜひ金融機関は周知徹底して、実際に使える形にしていただければと思います。全銀協の方が業界で共通の指針なども今後考えていくということをおっしゃっていました。ただ、全社協の高橋さんの提出資料3の14ページに「金融機関での各種手続きを代行や代理で行う場合に求められる提出書類等が金融機関によって異なる」とあり、そのため非常に使い勝手がよくない、というお話もありました。指針にとどまらず、業界全体でフォーマットを統一するといったところまで検討していただきたいです。

 3つ目は、ここまでは日常資金をどうするかでしたが、運用している方、有価証券を保有している方がいつまで運用できるのか、逆にどうなったら運用をやめたほうがいいのかという判断については日常資金の話とは別問題だと思います。(認知能力の低下に伴って)運用の継続・終了をどう判断していくのか、という問題についてはもう少し詰めて議論する必要があるのではないでしょうか。

 また、今回は対面の銀行・証券といった話がメインですが、先ほど野村委員からも出ましたが、オンライン取引をされる高齢者の方も増えてきています。ネット取引が増えている現状を鑑みて、ネット証券、ネット銀行、ネット保険等も含めて、認知機能の低下をどう把握するのか、どういう対応していったらいいのかも、今後は議論していく必要があると考えます。

 もっと言うと、金融仲介業の方や保険代理店など、高齢者に関わる方は増えているわけで、そうした方々まで、(認知機能の低下について)どう判断・対応するのかをきちんと共有できるしくみにしていくことが必要だと考えます。

 そして、島田委員等からも出ましたが、契約終了までの適合性の担保というところは非常に重要だと思っています。判断能力の低下が徐々に起こる方もいらっしゃれば、一気に著しく低下する方もいらっしゃいます。継続的に見ていくということが非常に大事だと思います。

 最後に、マクロ経済的に、高齢者の方のお金を市場に回すというのは重要かもしれませんが、FD(フィデューシャリー・デューティー)的に見て、高齢者一人ひとりにとって運用を続けた方がいいのかどうかは別問題ですよね。そこはきちんと分けて議論するべきではないでしょうか。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。今、地域における金融機関の状況についてのご質問が出て、また先ほど永沢委員からそれぞれの地域というか支援預金が普及していない現状というか状況はどうか、というような質問が出ました。調査して、また次回以降にご報告していただくとは思いますけれども、今日の段階で何かあれば、課長さんからいかがでしょうか。

【太田原市場課長】
 幾つかありましたけれども、中核機関のご質問については厚労省さんがおられるので、後で厚労省さんにお答えいただくとして、地域連携ネットワークの中にまだ入れてないことの阻害要因について、竹川委員から今ご質問いただきました。数字の時点が古いので、足元ではもう少し拡大しているかもしれませんけれども、この4つのうちの1つが東京都港区で、港区の方に聞いている限り、やれているところではちゃんとやれていますし、それ以外のところで何かネックになることがあるかというと、制度的な要因というのは少なくとも承知しておりませんので、今座長が言われたようにヒアリングをして、分析してみたいと思います。

 また、野村委員から実証事業との兼ね合いで、全体を議論していくのかどうかという議論の範囲、スコープについてご質問があったかと思いますので、私の方で見解を述べさせていただきます。高齢者のガイドライン云々という具体的なところを議論するというよりは、これはこういう事業をやっていますという紹介であって、この審議会では元々顧客本位の業務運営に関する議論、本日はその中でも高齢顧客をテーマにした議論をしていますので、顧客目線に立ったときに、どういう制度のあり方がいいのか、あるいは制度面というよりは運用面であれば、金融庁としてどういう行政をしていったらいいのか、金融機関としてはどういうサービスを提供していったらいいのか、そういったことについて幅広くご議論いただければというふうに考えております。

 では、支援預貯金については、監督局の方からお願いします。

【田辺監督調査室長】
 後見制度支援預貯金について何人かの方にご指摘いただきまして、金融庁としても非常に重要な取組みだと思っています。現在、事務局説明資料の12ページにもありますように、定期的にアンケートを金融機関に対して実施しまして、金融機関が積極的に取り組めるように、金融庁としても促していきたいと思っております。

 これの導入が上手く進まない理由として、今のところ金融機関から聞いているところでは、費用面の事情とシステム面の事情があるというふうには聞いております。ただ、やはり引き続きこういった取組みが進むように促すということを継続していければと思っております。

【神田座長】
 どうもありがとうございます。

 厚生労働省の竹野室長、いかがでしょうか。

【竹野参考人】
 厚生労働省でございます。中核機関のイメージということでご質問いただきました。この中核機関につきましては、市町村直営または委託ということで自治体において責任を持って取り組んでいただくということにしておりまして、直営の場合でありますと、自治体の福祉担当課あるいは地域包括支援センター等が窓口となって運営をされているということでございます。そして、委託につきましては、社会福祉協議会やNPO法人等に委託をしていただくという形でございます。

 今、令和元年7月時点で139ございますけれども、このうち委託または一部委託が133ということで多数が委託となっておりまして、そのうち社会福祉協議会に委託しているものが114、NPO法人が12、その他が7という形で、多数が社会福祉協議会に委託をされているという状況でございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、また引き続き、次回以降に調査するなり、あるいは地銀等を含めてヒアリングをしていただいて、ご報告できるものはご報告したいと思います。

 神戸委員、どうぞ。

【神戸委員】
 ありがとうございます。本日のお話を伺って3点お話をさせていただければと思います。

 まず1点目として、今回の認知症の問題に関しましては、今後人数がかなり増加していくということが予想されていることもありまして、発症前、事前の対応スキームをきちんと用意することが重要だろうと考えます。ただし、この部分に関しましては、金融機関さんにとって関心が高い富裕層向けのビジネスとして競争が働きやすいはずですので、様々なものが今後も出てくると思っています。

 2点目はそれらのスキームの要件についてです。私どもの会社にも、長らくお取引きいただいているお客様から成年後見等の対応ができないか、というお話を頂くのですが、現状の成年後見制度ですと、運用が行えなくなるということがありまして、これまではお断りしてまいりました。

 実際にそういうサービスを利用するときにネックとなる可能性が高いのが、1人あるいは1社に全て任せることに対する不安です。やはりダブルチェック機能が働く仕組みが必要なのではないかと思います。専門家あるいは家族と金融機関という組み合わせが一番自然だと思うのですが、この場合に金融機関さんに求められるのは、まずは資産管理のためのプラットフォームの提供ということになるでしょう。そのプラットフォーム上で、富裕層向けであれば特にニーズが高くなるのでしょうが、私どものお客様のように有価証券等を保有している方もかなりおられるはずなので、FDに基づいた運用を可能にするべきかどうか、といったことも検討されるべきだろうと考えます。

 最後に、3点目として、今回、顧客本位の業務運営について議論しているわけですが、顧客本位の業務運営を実現する上で、競争を促すべき事柄と、協調を促すべき事柄が存在するのではないかと考えています。富裕層向けのビジネスというのは、競争していただくことでより良いものが出てくればいいのでしょうが、今日の参考人の方々からのお話にもありましたが、認知症というのは全国民の課題であり、特に低所得層への対応を考えますと、収益性は見込みにくいのではなかろうかと思います。

 そういう分野に関しては、金融機関等にある程度協調して対応していただくために、もちろん厚労省さんとの調整も必要と思われますが、場合によっては金融庁さんがリーダーシップを発揮されるべきなのではないかと考えます。先ほど全銀協さんから指針の策定が難しいというお話もありましたが、その辺りも含めてある程度協調できるような方法はどのようなものかというところを作っていきませんと、低所得層向けの対応に関しては最後まで公的なものだけになってしまいかねないという危惧が生じます。競争を促すべき事柄と協調を促すべき事柄の2種類があるのではないかということについて、金融庁さんにもご検討いただければありがたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、佃委員、上田委員、上柳委員の順でお願いしたいのですが、ちょっと時間も押していまして、できるだけ簡潔にお願いできますとありがたく存じます。もう一つ議題を最後にやらせていただきます。

【佃委員】
 かしこまりました。では、今のご指導を踏まえまして、1点だけコメントさせていただきます。先ほどの皆様の説明、特に全銀協さんのご説明をお伺いしまして、各金融機関で相当ご苦労されながら、認知・判断能力の判定とか、あるいは取引申し出時の判断をされていることが分かりました。お話を伺っていて、やはり高齢者の皆さんの保護と、一方で利便性の確保を両立させていくことは非常に大変なことだなと感じました。

 一番のポイントは、個人的にはコスト負担の問題になると思います。今も何人かの方から別の形でもコメントございましたけれども、事務局の資料1の18ページのところに金融機関の課題というのが、大変よく全体像がまとまっていると思いますけれども、他の機関との連携にしましても、金融商品の販売後のフォローアップにしましても、使い勝手のよい金融商品サービスの導入にしましても、全てコストがかかる話になってきます。今の日本の金融機関を取り巻く極めて厳しい環境を考えたときに、その中で高齢化社会に対応していく、ますます高齢化が進行する中で対応していくというのは、個々の金融機関の経営努力に頼るだけではとても解決できないと思います。したがって、大きな仕組みで社会全体でコスト負担をしていくというのも、現実問題として検討する必要があるのではないかと考えます。

 銀行業の場合、預金保険制度があって、預金者等の保護とか、あるいは資金決済の履行の確保を図ることで信用・秩序を維持することを目的としていますが、我々が直面している高齢化社会は、信用・秩序を維持するのと同じぐらい非常に大きい課題じゃないかと考えます。従って、今申し上げましたように、社会としてコストを負担していくということも検討するべきタイミングに来ているのではないかと考えます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、お隣の上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
 参考人の先生方、後でもし可能であればペーパーでもと思いまして、特にご質問、お答えがなければそれで結構なのですが、私がお聞きしたかったのは、花俣さんに対しては、支援貯貯金がもっと使い勝手が良いようにできるんじゃないかとおっしゃったので、何か具体的に考えておられるとか、あるいはそれを書いたものがあったりしたら教えてもらいたいなと思いました。これが1点です。

 それから、尾川さんに伺いたいなと思ったのは、1つは「生活総合支援企業への脱皮」というふうに書かれているんですが、今ちょうど佃委員からもお話ありましたけれども、これはなかなか個々の金融機関にとっては、特にコスト面で抵抗があるんじゃないかと思うのです。そこのところをもし、こういうふうに工夫すればいいんじゃないかという考えがありましたら、後日でも教えていただきたいということ。それから、今日のプレゼンにはあまりなかったのですが、AIの活用についても検討されているように伺ったのですけれども、AIの導入について、リスクといいますか、こういう点に留意して考えていくべきだ、ということについてご提言があれば、これも後日で結構ですので、お願いします。

【神田座長】
 後日でも結構でしょうか、それとも今……。

【尾川参考人】
 いや、後日で。

【神田座長】
 それでは、そういうことにさせていただいてよろしいでしょうか。ありがとうございました。

 それでは、失礼しました。上田委員、どうぞ。

【上田委員】
 ありがとうございます。まず、参考人でお話いただきました皆さん、大変貴重なお話をありがとうございます。このテーマについては、金融資産の保有者が高齢者であるというアプローチから見てしまうのですが、お話を伺いまして、高齢者個人の状況に寄り添うというのでしょうか、改めて寄り添う金融の必要性みたいなものを再認識いたしました。先ほど競争と協調ということのご指摘もありましたが、そういう視点を少し持つ必要もあるのかなと思いました。

 その上で2点ございます。まず、先ほど全銀協のほうからご報告がありましたけれども、特に窓口での認知・判断能力の判定が極めて難しいという点について、これは恐らく各金融機関において研究機関との産学の連携等で取り組みもされているかと思うのですが、事務局の資料でご紹介いただいたNEDOの実証事業は大変期待できると思っております。特に参加・関係する各金融機関が保有している情報のようなものを持ちつつ、業界全体あるいは金融業界全体のプラットフォームとして、例えば1次スクリーニングのようなものとして、各行あるいは各証券会社が使えれば、大変意義があるものであって、そこから先の個別の対話のところで金融機関のコストをかけるという取り組みができるのかな、と思いました。

 コストの話にもなるのですが、今、佃委員からもおっしゃっていただいたのですけれども、金融機関の経営環境は大変厳しい。特にこの分野については、地域金融機関の位置付けが大変重要なのですが、本当にユーティリティとして取り組んでいただく余裕があるのかなと。今週、日銀からそういうレポートが出ているかとは思うのですが、例えば、金融取引の口座の開設・維持・管理等に係るコストを改めて我々国民が受け入れる時期に来ているのかな、とも思いました。先ほど後見制度支援預貯金の拡大についても、どうしてもコストの問題があるということでしたので、社会のサステナビリティという観点からは、金融機関が手数料で儲けているという視点ではなくて、こういったサービスの提供に係る基礎的なコストも、我々が受け入れざるを得ない時代になっているということをご指摘させていただければと存じます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】
 今日の事務局や専門家のお話を伺って、認知症に関連した高齢者向けの、ある程度の品質のローコストサービス需要が、相当な勢いで増えていくことが十分分かったのですが、一方でその供給面を民間金融機関の行動だけで対応していくことには、今後相当ご努力は進んでいくと思いますが、やはり無理ではないかという認識も必要だと思います。

 特に資産家層はともかく、一般国民にとっての必要なレベルの価格でサービス供給をしかも大量に行うためには、さっき佃さんのお話にあったように、国全体でそのサービス体制ができるような仕組みが必要であろうと思います。例えば、福祉の現場でも、人が足りないというお声がありましたけれども、そういうところである程度経験もある人たちをさらにどんどん増やしていくためにも、給与水準や処遇を維持向上させていく必要があろうかと思います。

 それから、今回の議論のもう一つのポイントは、本人の意思確認が不明確な状況で金融機関がどこまで対応していくかということです。現在の金融事業は、法的な契約に基づく商取引としてでき上がっているわけで、現場の事務手続きはコンプライアンスルールの従う仕組みがあるので、その中で本人の意思確認が不十分な取引を、金融機関だけの判断でどこまで実行できかという点については、やはり限界があると思います。しかし、社会として、国としてはやらなければならないとなると、その分野についてのルールは別途作っていかなければならない。つまり、その判断リスクを福祉や金融機関の現場の人に負わせるというのは良くないことではないか。やはりそれは制度としてそのリスクに対する対応策を作っていく必要があると思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。貴重なご意見を今日もたくさんいただきまして、ありがとうございました。

 それで、ほぼ時間一杯で大変申し訳ないのですけれども、もう一つ議題がありまして、少しだけ時間延長をお許しいただいて。昨年末に市場構造専門グループが報告書を取りまとめておりますので、それについて事務局から簡単にご報告お願いします。

【太田原市場課長】
 市場構造のあり方に関する検討につきましては、当市場ワーキング・グループでは、2018年12月17日の第18回会合において、東京証券取引所から東京証券取引所に設けた懇談会における議論の状況等について説明をしていただいた後、昨年4月24日の第22回会合において、我が国の市場そのもののあり方にも直結している課題であるため、専門的かつ集中的に議論する場として、専門グループを設置することを決めていただきました。そして、市場構造専門グループにおきまして、神田座長の他7名の委員のもとで昨年5月以降審議を行い、昨年12月25日の第6回会合を経て、12月27日にお手元の資料のとおり、報告書としてまとめていただいたところでございます。

 資料5のポンチ絵に沿って概要を申し上げますと、市場構造の見直しの目的として、上場企業やベンチャー企業の持続的な成長と企業価値の向上を促すこと、内外の投資家にとって魅力あふれる市場とすること、としております。

 そして、現状の課題として、東京証券取引所に5つある各市場区分のコンセプトが曖昧であること、上場企業の持続的な企業価値向上に向けた動機づけに乏しいこと、TOPIX=市場第一部となっており、投資対象としての機能性を備えていないこと、を挙げております。

 これらの課題に対応するために、いずれも仮称ですが、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの市場区分に再編し、各市場のコンセプトを明確化すること、それとともに、例えばプライム市場では、新たに上場する企業は流通時価総額等の上場・退出基準を厳格化すること、一段高いコーポレートガバナンス・コードを適用すること等により、上場企業やベンチャー企業の持続的な成長と企業価値の向上を促すメカニズムの強化を図ること、そして、現東証一部上場企業の雇用・取引における役割等を考慮し、所要の経過措置を設けること等を提言しています。

 また、TOPIXの見直しに関しては、市場区分とTOPIXの範囲を切り離し、現在のTOPIXとの連続性も考慮しつつ、より流動性を重視して対象企業を選定することを提言しています。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。もう予定の時間も過ぎているんですけれども、もしご質問等があればお伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ、福田先生。

【福田委員】
 素晴らしい報告書をまとめていただいて良かったと思います。今、日本のマーケットが直面している環境が大きく変わっているということは重要で、具体的に言えば、香港マーケットの地位は確実に下がるということが予想されている中で、東京マーケットに海外からいかに呼び込むか。これは時間が十分あるわけではなくて、このチャンスの中で東京マーケットとしていかに魅力的なマーケットを世界にアピールして、発展させていくかという非常に重要なタイミングでもあると思います。是非この報告書を生かして、そういう形の動きにつなげるような形になっていただければと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 どうぞ、永沢さん。

【永沢委員】
 ありがとうございます。報告書の11ページに書いてございますけれども、退出基準と受け皿市場のところでございますが、方向性としては、私は支持するところでございます。ただ、やはり個人の投資家で、このように退出を強制される企業が株主である場合には、換金というところで自分の持っている投資の価値が非常に落ちてしまいますので、受け皿市場の整備については、本当に丁寧に引き続きご議論いただきたいと思います。要望でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございます。今の点も報告書では非常に意識して書いてあるつもりでありますので、今後の検討課題ということでございます。

 それでは、本当はもう少しご意見いただきたいのですが、申し訳ありませんが、私の議事進行の不手際もあって、もう既に四、五分過ぎております。大変恐縮ですけれども、この報告書を座長である私から金融審議会の総会に報告するという取り扱いにさせていただきたく存じますけれども、そういうことでお認めいただけますでしょうか。

 (「異議なし」の声あり)

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、大変積極的で多様な意見を今日も出していただきまして、ありがとうございました。本日は以上とさせていただきます。今日いただきましたご意見等を踏まえて、さらに先に進みたいと思います。

 次回以降も、テーマといたしましては、顧客本位の業務運営のあり方についてご議論をしていただく予定です。日程等については、後日事務局からご案内させていただきます。

 それでは、本日は以上にて散会いたします。どうもありがとうございました。


―― 了 ――
 

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