金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第28回)議事録

 

1.日時:

令和2年3月25日(水)14時00分~16時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室





【神田座長】
 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。ただいまから、市場ワーキング・グループの第28回目の会合を開催させていただきます。皆様方には大変お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 
 本日の会合でございますが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、一般の傍聴の方々はなしということでの開催とさせていただきます。また、皆様方には、検温、マスクの着用等にご協力いただきまして、誠にありがとうございます。あと、メディア等の関係者の方々におかれましては、別室にして傍聴をしていただいております。音響の都合がございますので、別室の方々にも聞き取りやすいようにご配慮をいただけましたら大変ありがたく存じます。また、換気のため、この会場の扉は開放したままで進めさせていただきます。
 
 なお、議事録のほうは通常どおり作成して、後日金融庁のウェブサイトで公開させていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 
 それで、本日の内容のほうになりますけれども、引き続き、「顧客本位の業務運営」をテーマにご議論をいただきます。
 
 それでは、まず初めに今回の会合に参考人としてご参加いただく方々について事務局からご紹介をお願いいたします。
 
【太田原市場課長】 
 ご紹介を申し上げます。
 
 私のほうから見て右側のほうにお座りをいただいております三井住友銀行コンサルティング業務部長、加藤様です。
 
【加藤参考人】 
 よろしくお願いいたします。
 
【太田原市場課長】 
 一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会代表理事、中桐様です。
 
【中桐参考人】 
 よろしくお願いします。
 
【太田原市場課長】 
 フィデリティ証券執行役員、個人金融サービス本部長、久保田様です。
 
【久保田参考人】 
 よろしくお願いします。
 
【太田原市場課長】 
 本日、私も含めてですけれども、メインテーブルでない後ろの方におかれましては、発言の際、マイクを渡しに行きますので、よろしくお願いいたします。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、早速本日の議事に移ります。まず最初に本日は事務局から資料1についての説明をしていただきます。続きまして、今ご紹介させていただきました三井住友銀行の加藤様、ファイナンシャル・アドバイザー協会の中桐様、フィデリティ証券の久保田様からそれぞれのご提出資料に基づいてご報告とお話をいただきます。これらを終えた後、委員の皆様方からご意見等をいただきたいと思います。
 
 なお、これまでと同様、多くの委員の方々にご発言いただく機会を確保する観点から、説明あるいは委員のご発言が一定時期を過ぎますと残り時間の目安がスクリーンに映し出されるということにしておりますので、ご参考にしていただければと思います。
 
 それでは、まず事務局の太田原市場課長からご説明をお願いいたします。
 
【太田原市場課長】 
 資料1をご覧ください。本日は、「顧客本位のアドバイスと情報提供のあり方について」を議題としてご議論いただきたいと思います。
 
 2ページ以降です。論点1、「金融商品の提案力の向上について」でございます。
 
 3ページです。顧客に対して金融商品のアドバイスや情報提供を行い得る者としては、さまざまな事業者が存在しております。
 
 4ページです。昨年8月の金融庁の調査では、金融機関が売れ筋商品を優先して提案していると感じる者が25%となっております。また、金融機関のサービスに満足していると回答した者は約4割となっております。
 
 5ページです。リスク性金融商品を購入する際、他の融商品との比較説明を受けていないと回答した者は全体の7割弱となっております。
 
 6ページです。リスク性金融商品の購入後、フォロー・アドバイスを受けていない、またはほとんど受けていないと回答した者は全体の8割弱となっております。
 
 以上を踏まえ、7ページに問題提起をしております。例えば現在の原則を咀嚼した以下のような取組を行っていくことが期待され、これらを原則に盛り込んでいくことも考えられるがどうか、としています。
 
 その内容としては、顧客の取引目的・ニーズ等をより正確に把握するために、顧客の意向を確認した上で、まず顧客のライフプラン等を踏まえた各将来時点の目標資産額、安全資産と投資性資産の適正な割合を検討し、それに基づき具体的な金融商品の提案を行うこと。
 
 各業法で規律する金融商品の枠を超えて横断的に検討すること。
 
 類似商品や代替商品の内容を手数料を含めて比較しながら行うこと。
 
 従業員による提案等の質の担保・向上を図る観点から、従業員による上記作業や顧客への商品選定理由の説明を支援・検証するための体制・仕組みを講ずることを掲げております。
 
 9ページ以降が論点2、「手数料等の開示のあり方について」でございます。
 
 10ページです。投資信託に関しては、顧客が支払う販売手数料や信託報酬があります。また、顧客への投資助言を行うことによって対価として報酬を得ようとする動きも見られます。
 
 11ページです。顧客が直接支払う手数料のほかに、販売仲介業者が投資信託や保険商品を販売することに伴う代理店手数料もあります。
 
 12ページです。これらの手数料・保険料の情報提供に係るルールとして、販売手数料・保険料の情報提供は法律上必要とされております。一方で、代理店手数料の情報提供は、原則で求められるものの、情報提供していない事業者も多く存在しています。
 
 以上を踏まえて、14ページに問題提起をしております。手数料や利益相反の具体的な内容等について、よりわかりやすい情報提供を行っていくための方策として、欧米の事例も参考に、金融商品の内容を容易に比較できるようにする簡略な書面(共通フォーマット)を今後検討することなどを提示しております。
 
 15ページ以降が論点3、「報酬・業績評価体系のあり方について」です。
 
 16ページです。近年、これまでの金融商品の販売額や収益等による評価を変え、金融商品のストック残高等を評価の軸とする動きが見られます。
 
 17ページに問題提起をしております。現在、例えば事業者の取組方針には、顧客のニーズと利益にかなう業務姿勢を適切に評価するための評価制度を整備するといった抽象的な内容を記載しており、外から見てその取組を評価することが困難な状況にあるということを踏まえて、現在の原則7にありますように、利益相反の適切な管理等を促進するように設計された報酬・業績評価体系の整備に向けた具体的な取組内容を取組方針に記載すべきであり、また、利益相反リスクの有無を顧客に情報提供すべきであるとしております。
 
 そして、これらの実効性を確保する観点から、例えば先ほども申し上げた共通フォーマットに利益相反に関する内容を記載することなどを提示しております。
 
 19ページからが論点4、「組成会社による想定顧客の公表等について」でございます。
 現在の原則6では、金融商品の組成会社は、商品の組成に当たり、商品の特性を踏まえて、販売対象として想定する顧客属性を特定し、販売会社等においてそれに沿った販売がなされるよう留意すべきであるとされております。
 
 一部、このページの下にあるような例もわずかながらありますが、大手組成会社のほとんどは販売対象として想定する顧客属性を特定していない状況です。
 
 以上を踏まえて、21ページに問題提起をしております。組成会社には、可能な範囲で、各金融商品の販売対象として想定する顧客属性を特定するだけでなく、わかりやすく公表すること。
 
 販売会社・販売仲介業者には、当該公表情報を顧客に提供しながら金融商品の提案を行うこと、当該顧客属性と異なる顧客に提案する場合には、その理由を詳細に説明することを提示しております。
 
 22ページからが論点5、「分かりやすい情報提供のあり方について」でございます。
 
 23ページです。現在金融商品の販売時に顧客に交付される書類としては、目論見書や契約締結前交付書面などの法定書類などがありますが、金融商品を比較・検討するのに十分なわかりやすさが担保されているわけではないといった指摘もあります。
 
 そこで、欧米の事例も参考に、顧客が多様な金融商品の重要な内容を容易に比較できるようにするという点に特化した簡略な書面(共通フォーマット)を、原則の一部又は関連資料と位置づけること。
 
 上記書面には、あわせて顧客が金融事業者から適切なアドバイスを受けることをサポートするための質問例も記載すること。
 
 また、法定書類について、その重要性は踏まえつつ、負担軽減も検討すべきことを提示しております。
 
 24ページ、25ページが参考資料として付けておりまして、24ページが昨年12月10日の資料の再掲となりますが、米国における簡潔な説明書面の概要でございます。
 
 25ページが欧州における簡潔な説明書面の概要とされております。欧州のほうも、形式としてはA4サイズ、かつ最大3ページで、販売資料とは別の独立した資料とされております。
 
 26ページからが論点6、「各論点に係る取組を促すための方策について」でございます。
 
 27ページです。現在、現状では原則を採択している金融事業者の中には、具体的な取組内容や実施しない場合の理由や代替策を明示していないものがあります。これらをわかりやすくするために、28ページにありますとおり、取組状況に共通のフォーマットを設け、比較可能性を高めること、必要に応じて金融事業者の実名を公表することを含め、金融事業者による好事例と不芳事例を比較・分析し、より深度ある情報発信を行うこと。
 
 原則の重要項目を実施しない金融事業者であって、それに対する合理的な理由の説明や代替策を講じていない者については、金融庁ホームページの原則採択業者のリストから削除することなどを提示しております。
 
 29ページからは参考資料になりますが、2月10日から21日の日程でEUの顧客保護規制・英国の金融アドバイザーに関する実態調査のために事務局から欧州に出張しましたので、その報告を簡単にさせていただきます。
 
 30ページです。第二次金融商品市場指令(MiFIDⅡ)は、2007年に施行されたMiFIDⅠの施行直後に生じた金融危機を契機に改正されたものでありまして、顧客保護、市場透明性の向上、技術革新への対応が主な柱となっております。
 
 顧客保護の関連では、このページの下にありますような具体的な規定があります。
 
 適合性評価では、取引前に適合性に関する分析を記した報告書、適合性報告書を顧客に提供。
 
 利益相反回避では、顧客以外の第三者との間で提供・受領する便益の特性や金額等は開示。ノルマについて、顧客の最善の利益のために行動する義務に反する従業員報酬・業績評価の禁止。
 
 コスト開示では、顧客が全体のコストと投資リターンに対する累積的効果を理解することができるよう合算した上で開示。
 
 商品ガバナンスでは、対象客層を特定し、組成後も組成者によるモニタリングを継続といったことが記載されております。
 
 31ページです。昨年12月10日の市場ワーキング・グループで加藤委員からエンフォースメントの状況についての質問もございましたが、合わせて説明をさせていただきますと、このページの上から2段目になりますが、「本規制の施行の影響・効果」の欄にありますとおり、2018年1月の施行から2年程度しか経過しておらず、MiFIDⅡのマクロな影響は現時点では不明とされております。
 
 ただ、一般論として、事業者の顧客に対する義務の自覚や市場の透明性の向上がみられるといった評価がされております。
 
 一方で、問題点として意見があったのは、手数料等の詳細な開示義務をリテール顧客以外にも課すことは過剰ではないかといった点ですとか、あるいは一番下の欄にもありますが、コストの事前・事後開示規制の厳格化により、ITシステムの投資額の負担が大きい。コストの開示が詳細・複雑になり過ぎていることなどにより、余計に顧客を混乱させているという声が多かったところでございます。
 
 ちょっとページ飛びまして、最後、34ページでございます。英国の金融アドバイザーに関する調査もしてまいりました。英国ではリテール・ディストリビューション・レビュー、RDRという販売改革が2013年に行われました。その内容としては、上から2段目にありますが、アドバイザーの資格要件の厳格化、運用会社からの販売手数料等の受領の禁止などがあります。
 
 このRDRの影響として、アドバイザー手数料が大幅に上昇したですとか、マス層がアドバイスを受けられないアドバイスギャップが起きていると指摘されております。
 
 そして、マス層に対しては、ロボアドの利用が拡大しており、また、アドバイスに至らない情報提供であるガイダンスの活用が期待されているところであるという意見が聞かれたところでございます。
 
 私からは以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、今日ゲストとしてお越しの方々からお話をいただきたいと思います。まず三井住友銀行の加藤さんからお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【加藤参考人】 
 三井住友銀行の加藤です。では、着席させていただきます。よろしくお願いいたします。
 
 資料2に基づきまして、本日は私ども、三井住友銀行における商品・サービスの基本的な提案プロセスについてご説明させていただきたいと思います。
 
 1ページ目をご覧ください。まず私どもSMBCグループでは、お客様本位の業務運営に関する取組方針としまして5つの取組方針を定めまして、お一人お一人のニーズにふさわしい提案に努めております。
 
 お客様のニーズは非常に多様であるため、SMBCグループでは、各社の特徴を生かして幅広い顧客ニーズに対応しているといった状況です。
 
 その中で、三井住友銀行では、初めて運用を開始されるお客様とか、比較的保守的な運用を望むといったお客様が多くいらっしゃいますので、主に中長期分散投資とか、時間分散を軸とした資産を守りたい、これから資産を形成したいというニーズに対応した提案を中心に行っております。
 
 2ページをご覧ください。こちらは提案プロセスについてです。具体的なケースとしまして、一定の金融資産をお持ちで、投資未経験の方、老後のお金を準備するために運用を検討するといったケースでご説明したいと思いますけれども、まずは一般的な流れについてご説明したいと思います。
 
 当行では商品の提案の前にお客様本位の業務運営に関する取組方針をご説明し、私どもの基本姿勢を宣言するところをスタートとしております。
 
 次に、お客様のことを深く知るためのヒアリング、そして、さらにお客様の潜在ニーズも含めたニーズを具体化するといったプロセスを、お客様の投資経験とか理解度に応じて繰り返しながら行っております。
 
 3ページをご覧ください。こちらは当行のお客様本位の業務運営に関する取組方針をご説明する際に使っているリーフレットの抜粋でございます。ここでは中長期分散投資のページをお示ししておりますけれども、このお客様本位の業務運営のリーフレットを使って、お客様に当行の取組についてご案内することからスタートすることをコンサルティングの基本としております。現在、こちらは約20万人のお客様に対面でご説明するとともに、ホームページ上に動画も掲載しておりまして、わかりやすく表示することに努めています。
 
 4ページをご覧ください。こちらのお金の色分けシートでは、お客様が既にお持ちの金融資産について整理し、簡単に、当面生活費として確保するお金、使い道の決まっているお金、当面使う予定のないお金に分類します。こういった色分けをすることで、将来どういった目的でお持ちの金融資産を活用したいとお考えか、お聞きすることができます。
 
 5ページをご覧ください。こちらの未来年表では、お金の目的やニーズなど、ご自身でもお考えが定まっていないお客様へ、これから将来のお金の準備に必要となるライフイベントを想定していただいて、いつごろ、どのようなイベントに、幾らぐらいのお金が必要かというのをイメージしていただくために、お客様と一緒に年表を作成しております。そうすることで、お客様の資産状況やご家族への思いなどを見える化できまして、お客様と担当者で課題を共有化することができると考えています。
 
 こういったことがコンサルティングする上で非常に大切な要素と考えています。ここでは紙ベースの説明にしていますけれども、足元はタブレットで対応しているといった状況です。
 
 6ページをご覧ください。お客様と課題を共有化した後は、お客様の考え方に応じましてさらに詳しいデータを用いて情報提供を行っていきます。老後資金を準備したいというお考えの方には、お金の守り方や育て方に関するデータを記載した、こちらに掲載している「マネープラン読本」というもので、長期分散投資の必要性や効果をご説明しています。非常に基本的なことですか、国内株式のみ投資した場合と国内・海外の株式・債券の4資産に分散して投資した場合のリターンを比較するなと、長期分散投資が有効であることをこういうもので説明しているといったところです。
 
 7ページをご覧ください。ここからは具体的な商品提案までのプロセスについてご説明しますが、投資経験がないお客様にはまずご自身のお金の目的やリスクに対する考え方がどのような商品が当てはまるか、将来ラインアップでご確認いただきながら整理していきます。
 
 主に増やすことを目的としている場合には、運用商品を横断的に比較するツールも活用しながら、さらにどの商品カテゴリーが自分に適しているのか、絞り込みを行ってまいります。
 
 そして、絞り込みされた商品カテゴリーの中で類似商品から複数の商品を提案していくというフローになっています。
 
 8ページをご覧ください。こちらは総合商品ラインアップの抜粋となります。例えば今回のお客様の目的である老後のためのお金の準備ということであれば、複数の商品種類の選択肢があります。それぞれの商品に特徴やメリット・デメリットがあることなどをその仕組みを紹介しながらご説明します。
 
 9ページをご覧ください。こちらは商品を横断的に比較するツールになっていまして、外貨預金から保険商品まで、金融商品を投資初心者の方でもわかりやすく一覧で比較できるよう、簡略した内容で紹介しております。このツールの特徴としましては、各商品の運用方針のイメージとして、お客様が自分で投資判断するのか、あるいは、プロに運用を任せるのかで比較しているという点と、プロに任せる場合とか、保険など運用以外の機能をつけたい場合には一般的にコストが高くなるということを記載している点です。
 
 こういったツールも活用しながら、お客様のお考えをお聞きし、商品を絞り込んでいきます。今回は、投資信託での運用を検討することを選択されたと想定し、バランスファンドから複数の商品提案をしたという場合についてご説明したいと思います。
 
 10ページをご覧ください。こちらのファンドラインアップを使用しまして、バランスファンドの中から複数商品を提案していきます。運用方針、お客様にご負担いただく費用のほか、資産配分比率とか過去の運用実績をまとめております。こちらで比較いただきながら、お客様のお考えに合った商品をお選びいただきます。さらに詳細については目論見書などでご説明いたします。
 
 ニーズ喚起から個別商品提案までの主なプロセスは以上となっております。
 
 11ページをご覧ください。今回まとまった金融資産をお持ちの方を想定した提案でしたが、毎月の収入から少しずつ老後資金を準備されたいというお客様も多いので、そういうお客様にはご覧の「つみたて読本」というものでつみたてNISAなどを活用した資産形成をご提案しております。
 
 12ページをご覧ください。三井住友銀行ではわかりやすい情報提供を行うためにユニバーサルデザインの考え方を取り入れておりまして、ツールの改善を行っております。例としまして、先ほどご説明でご紹介した総合商品ラインアップは、見やすさだけでなくて、伝わりやすさも含めた認証でありますユニバーサルコミュニケーションデザイン協会の「伝わるデザイン」というものの認証を取得しております。資料に記載のとおり、色弱者にも配慮したすっきりしたカラーリングだとか、1ページ内の情報量を測定して、一定量に制限するなどの改善を行っております。
 
 13ページをご覧ください。最後になりますが、これまでのご説明をまとめますと、三井住友銀行での商品提案のプロセスのポイントは3つあります。
 
 1つ目は、お客様の資産状況やリスク許容度、家族構成や各資産に対するお考えをツールを活用しながらヒアリングして、お客様のことを深く知るということです。
 
 2つ目は、お客様の知識や理解度に応じてデータやツールなどを活用しながらニーズを具体化していく。
 
 3つ目は、お客様にふさわしい商品提案のために、商品横断的、または類似商品を複数提案した上で比較検討をいただくということです。
 
 本日は、SMBCのお客様本位の業務運営に関しましての5つの取組方針のうち、主に中長期分散投資を軸としたお客様本位の運用提案というところについてご説明させていただきました。
 
 時間の関係上、その他4つの取組についてのご説明は割愛いたしますが、本ワーキング・グループの皆さんの意見を参考にさせていただきまして、引き続きお客様本位の業務運営の定着に努めてまいりたいと思います。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、ファイナンシャル・アドバイザー協会の中桐さんからお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【中桐参考人】 
 よろしくお願いします。座ってお話をさせていただきます。
 
 このような機会を頂戴し、誠にありがとうございます。
 
 前半の部分で私のほうからファイナンシャル・アドバイザー協会についてのお話をさせていただきまして、後半で私が代表を務めますGAIAの具体的な取組というところで2つに分けてお話をさせていただきます。
 
 まず1ページ目のところになります。本協会に関してですけれども、こちらにありますように、金融商品仲介業者を対象とした協会となりまして、1月に設立をしまして、来月から本格的に活動をするということになっております。
 
 2ページ目をご覧ください。こちらが金融商品仲介業者のビジネスモデルということになりまして、金融商品仲介業者は、証券会社の委託を受けて、証券会社が取り扱う金融商品を顧客に仲介を行うということになります。
 
 続いて、3ページ目をご覧ください。こちらは日米の金融商品仲介業者数の比較になりまして、米国のほうでは独立系ファイナンシャル・アドバイザーというのは2017年時点で約13万人存在しまして、個人向けの資産運用の金融サービス提供では社員系アドバイザーと並ぶ主力形態となっています。
 
 一方、日本のほうの金融商品仲介業者数に関しては、増加傾向にあるものの、現在3,500名にとどまっているということになります。
 
 続いて4ページ目をご覧ください。金融商品仲介業者を取り巻く環境というところになります。こちら、少子高齢化の進展により、個人の資産形成・資産管理の重要性が高まる傾向にあります。また、金融庁さんにおかれましても、顧客本位の業務運営の浸透・定着に向けた取組の強化ということがあり、また、直近では、ネット証券を中心としまして、株式や投資信託の売買手数料を無料化するという動きが加速する中、対面サービスの付加価値がより問われる時代になっていると認識しております。
 
 また、単に金融商品の仲介を行うのみならず、顧客のライフステージに応じた資産計画の策定や資産関連の総合的なアドバイスにより、その目標達成に向けた実行支援までを行うファイナンシャル・アドバイザーの役割の重要性が高まりつつあると思っております。
 
 顧客のライフステージに応じた資産計画という観点では、例えばですけれども、キャッシュフロー表の作成、ファイナンシャル・ゴールの設定、また、実行支援ということに関すると、アフターフォローによるゴールやポートフォリオの見直しも必要と考えております。
 
 5ページ目をご覧ください。一方、課題としますと、2段目になりますけれども、現状、ファイナンシャル・アドバイザーのほとんどが小規模な事業者として個別に活動しているため、質の高いサービスの提供に必要な情報や研修機会が不足していると。また、専門性やサービスの水準がまちまちであると。また、その認知度の観点からもまだまだ低いというふうに感じております。
 
 それを解決すべくファイナンシャル・アドバイザーが真にお客様の立場に立ち、アドバイスを行うための支援とファイナンシャル・アドバイザーの普及というところを目的としてファイナンシャル・アドバイザー協会を設立したということになります。
 
 6ページ目をご覧ください。こちらが協会の組織体制ということになりまして、左側が会員ということで、5種類の会員で構成をされております。また、右側の組織図というところになりますが、理事会、審査委員会、こうしたところに外部有識者の方にも入っていただき、中立・公正性を保って協会運営をやっていきたいと思っております。
 
 続いて7ページをご覧ください。こちら、正会員の入会審査ということになります。真に顧客本位の業務運営に取り組む、また取り組もうとしているファイナンシャル・アドバイザーに入会していただきたいというふうに思っており、その入会に際しては、審査ということでチェックポイントを設けております。こちら、定性・定量という観点があり、定性の観点でいいますと、4番目のところになります、従業員の業績評価体系の適切性、販売手数料に偏った業績評価体系になっていないか、また、定量項目の検証に関しては、こちらも4番目になりますけれども、資産収益率ということで、預かり資産に対する収益の割合というところが、顧客ニーズに反し、過度な回転売買を行っていないか、そういったところもチェックをしていきたいと思っております。
 
 8ページ目をご覧ください。こちらがこの協会の正会員の倫理綱領ということになっておりまして、入会に際しこちらを遵守することを宣誓してもらうことになっております。この10個のうちの4番目のところになりますけれども、「合理的かつ明確な手数料体系」ということで、お客様の長期的な利益に資する手数料体系ということで、例えばフィーベース等の拡大を目指すであったり、また、7番目のところで、「わかりやすい情報開示」というところで、経営方針の理念、役職員の専門性、サービス内容、手数料体系等に関する情報についてわかりやすい情報で開示・提供する。こうしたことを倫理綱領に謳って遵守していただくようにしております。
 
 続きまして、ファイナンシャル・アドバイザーの会社でありますGAIAの取組についてご報告いたします。10ページ目をご覧ください。当社のサービスになりますけれども、目的はライフプランの達成ということになりまして、長期的にお客様をサポートするサービスを行っております。
 
 4つのステップがありまして、まず1つ目が、ゴールを特定する。そのゴールに対してどうやって実現していくかというところのシナリオを設定しまして、それをまたプランを選択し、実行していくと。さらには、アフターフォローということで、継続的なレビューをするということ、この4つのステップを回しております。
 
 続いて、11ページ目、使用ツールに関してのスライドになります。こちらは2つに分かれまして、最初の面談時のときと提案面談時と2つに分かれます。まずこちら、11ページが初回面談時ということで、ヒアリングシートを起点として、これまでの投資経験や現在の状況、今後の予定と希望等をヒアリングします。また、現状と理想のギャップから、ライフプランにおける課題を発見し、プランニング等で相続税等の算出等が必要な場合は、証券会社から提供してもらっていますツール等を利用しております。家計の見える化としましては、キャッシュフロー表を活用し、状況を視覚的に捉えることで、お客様自身の理解や判断をサポートします。
 
 こういったことを初回面談時にやっております。
 
 続いて12ページをご覧ください。こちらは、使用ツールということで、提案面談時ということになります。最初の面談でヒアリングしたお客様の意向をベースにライフプランの課題を解決するソリューションを提案ということで、現状及び今後入ってくるお金をどのように活用していくか、整理するお金の色分けであったり、あと、資産運用を目的別に捉え、具体的に紹介する「4つのポケット」等の資料を活用しております。
 
 これらのツールを使うことでビフォア・アフターを示すことによってソリューションの効果を視覚的な理解を促す、また、複数のソリューションを用意し、シミュレーションしながらお客様と一緒に最善策を比較・検討するということをツールを使ってやっております。
 
 また、13ページ目、もちろん、こうしたツールも重要なんですが、それ以上に重要と考えておりますところは、お客様のことを深く知るということが重要と考えております。お客様においては、顕在ニーズというところで、資産運用をしたいとか、何か保険に入りたいとか、そうした顕在的なニーズはあると思いますけれども、そうした既に認識しているニーズをヒアリングするにとどまらず、潜在ニーズというのを重要と考えておりまして、お客様がまだ明確に認識していないニーズをヒアリングするということです。例えば今ある資産を、誰に、どういうふうに残したいかと。そういったことはやっぱり深くヒアリングすることで出てくるニーズかなと思っておりますので、そうしたことを聞いた上で、包括的なプランニングを提案しております。
 
 14ページ目をご覧ください。こちら、信頼のサイクルというふうに呼んでおりまして、4つのステップということで、こちらも、まずはきちんとお客様のことを深く傾聴するということで潜在ニーズをヒアリングし、それに沿った形での包括的な提案・サービスの提供、そこから信頼感・満足度の向上が生まれ、さらなるご相談ということになりますので、この4つのサイクルを回すことで信頼を得られると思っております。
 
 最後、事例紹介ということでご紹介します。こちらは当社と10年契約を頂戴しているお客様で、当初は50代の男性ということで、奥様と長男と同居をされております。最初に来られたのは、早期退職をしたいが、今後の生活状況で成り立つかどうかというところでご相談に来られて、それに対して我々でファイナンシャルプランニングを提供させていただきました。
 
 その結果、無事に早期退職ができるということがわかり、その後、半年に一度ずつお会いしながらアフターフォローをしておりました。
 
 その際は、また、そのプランの中で、不動産を持っていらっしゃいましたので、その不動産をどうしたらいいのかとか、または相続をどうしたらいいのかといったところも相談をいただくようになり、また、マーケットの変動時にはきちんとご連絡をするようなアフターフォローをしております。
 
 こうしたことをすることによって、長期的な関係が築け、最終的には二世代プランニングということで、ご長男のプランニングというところもお手伝いをさせていただいております。
 
 こうした形で、深度あるプランニングと長期的なアフターフォローを同一担当者によってしていくということで、お客様に長期的に寄り添うサービスを提供していきたいと思っております。
 
 以上で私の報告とさせていただきます。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。それでは、続きまして、フィデリティ証券の久保田さんからお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【久保田参考人】 
 フィデリティ証券、久保田でございます。本日はこのような場にお招きいただき、大変光栄に存じます。また、このような難局でこのような会がとり行われるということで、関係者の皆様に厚く御礼申し上げたいと思います。
 
 それでは、時間も限られていますので、早速お話をさせていただければと思うのですけれども、まず冒頭、弊社の簡単なご紹介をさせていただきます。フィデリティ証券は、1998年にフィデリティ投信の直販チャネルとしてビジネスをスタートしております。現在は、650本以上の投資信託と日本株の取引をオンラインとコールセンターを通じて提供しておる、いわゆるオンライン証券という業態でございます。
 
 弊社では、今年、海外で提供しておりますロボアドバイザー型の自動一任運用の商品を年内を目標に提供することを現在検討しております。
 
 このタイミングで、海外で提供しているアドバイスビジネスのモデルに関しても日本で提供ができないかどうかというのを検討を重ねているところでございます。
 
 本日は、この場をお借りして、我々の日本での想定も含めて、3つのスライドでフィデリティのアドバイスモデルについてご説明をさせていただきます。
 
 最初、まず1つ目が、フィデリティがアドバイスモデルを海外で提供するに当たってどのような点に着目をしているのか。
 
 2つ目は、アドバイスビジネスを提供している背景で、どのような制度面の変化だとか、あとは市場の動向があるのかどうか。
 
 最後に、日本で海外のモデルを提供するに当たって、どのような想定を弊社が今しているのかということを共有させていただこうと考えております。
 
 お手元の資料を1ページめくっていただいて、1つ目のスライドを見ていただければと思います。まず米国の事例をもとにフィデリティのアドバイスビジネスの視点をご紹介できればと思います。
 
 ご存じのように、米国では2つのアドバイザーの形態がございます。1つが、外務員型の投資アドバイザー、もう一つが、RIAと呼ばれている、投資顧問型のアドバイザー。この2つの違いは、報酬の源泉の違い、あとは、報酬の支払われる流れが違うということで、左にあります外務員型の投資アドバイザーに関しては、報酬の源泉が、手数料だとか残高報酬がお客様から証券会社のほうに払われて、そこに所属している投資アドバイザーに対して報酬が支払われるという形のものになります。
 
 逆に右側、RIA、投資顧問型のアドバイザーに関しては極めてシンプルで、報酬が直接お客様からアドバイスのフィーとして支払われるという、こういったところに違いがあります。
 
 フィデリティは、過去30年以上にわたって、フィデューシャリー・デューティーの観点でRIAという右側のビジネスのほうに注力をさせていただいております。
 
 社内で、インハウスのアドバイザーを我々は抱えておりまして、お客様にグループアドバイザーという形で、ロボアドバイザーに人のアドバイザーが介在をして、アドバイス、プランニングを提案する、提供するというハイブリッドモデルであったり、あとは、ウェルスのお客様、少し裕福なお客様に関しては、専任のアドバイザーが対応する形をとらせていただいて、社内のアドバイザーがお客様にプランニング・アドバイスを提供して報酬を頂くという、こういったモデルを提供しております。
 
 提供するアドバイスの対価として、直接、顧客から報酬を得る。あとは、お客様に対して継続的にアドバイス・プランニングをご提供するというところが、左の外務員型の投資アドバイザーと違う大きな特徴と言えます。
 
 また、昨今、テクノロジーの進展でいろいろな方がフィナンシャル・プランニングだとか、アドバイス、一任運用もできるような時代になってきましたので、マーケットの流れとしては、独立型のRIAという方々が非常に増えています。今まで外務員型をやられていたアドバイザーや社内のインハウスのアドバイザーの方々が、こういったテクノロジー、ツールを使うことで独立をするという流れが起こっていまして、我々フィデリティは、ここに対して、バックオフィス、ミドル業務の業務支援を行うことで、カストディというビジネスで、こういった独立しているRIAの皆様を後方から業務支援するというビジネスもあわせて行っております。いわゆるプラットフォーム型のカストディビジネスということになります。
 
 次のスライドに進ませていただきます。現在アドバイスビジネスを行う上でどのような制度面の変化だとか、市場の動向があるのかというのをここで整理したいと思います。
 
 キーワードは、フィデューシャリーとテクノロジーの進展です。
 
 先ほどお話ししたとおり、フィデューシャリー・デューティーということで、透明性の高いビジネスのモデル、お客様が報酬をどのような形でお支払いしているのかというのが非常にわかりやすく、利益相反の起こらないような形のビジネスモデルが各国で広がりを見せています。
 
 また、テクノロジーの進展により、先ほど申し上げたように、特に米国ではRIA型の投資顧問型のアドバイザーの割合が今大きく増えています。同時にいわゆる独立投資アドバイザーのほうには、レギュレーション・ベスト・インタレストということで、よりフィデューシャリーを高めるという動きがありますので、今後の状況はわかりませんけれども、現状は透明性だとか利益相反というところを加味してRIA型のビジネスが広く広がっているという状況でございます。
 
 英国では、先ほども出ましたけれども、RDR、リテール・ディストリビューション・レビューを経て、事実上IFAは販売手数料を受け取らない形になっておりますので、おのずと英国のIFAに関しては投資顧問型のアドバイザーという形でやっているということでございます。
 
 この中で日本で我々が同じようなアドバイスモデルを提供するに当たってどのようなことを想定しているのかというのを次のページで詳しくご説明できればと思っております。
 
 3ページ目を見ていただければと思いますけれども、日本でアドバイス型のビジネスを提供するに当たって、必要な要素は、もちろん人のアドバイザー、そして、先ほど申し上げたようにテクノロジー、あとは一任運用の3つでございます。
 
 この中の一任運用、あとはテクノロジーの部分に関しては、弊社が今想定しているのは、フィデリティ投信が提供をする予定でございます。そして、販売会社であるフィデリティ証券は、助言代理業という日本の現行の制度、ライセンスを使って助言業務としてアドバイスを、海外でやっている同様のモデルを国内で提供できないかと考えております。
 
 この助言業務の中で、まずお客様とゴール設定を行い、運用計画を立案すること。そして、投資が始まった後、ゴール設定したゴールへの進捗を定期的にお客様と一緒に確認をすること。そして、必要に応じて運用計画やゴールの見直しを行うこと。こういった、購入しただけではなくて、購入した後のアフターフォローに対してバリューがあるのではないかということで、この部分を助言業務の中で行えるよう今想定をしております。
 
 またお客様が、この我々が継続的に提供するアドバイスに対して継続的に報酬を支払っていただく、アドバイスに対してアドバイスフィーを直接我々に支払っていただくということ自体が極めて重要なことだと思っています。その重要なことを通して、効果としては、お客様がこのアドバイスというサービスの価値を明確に認識ができること。そして、継続的に報酬を払うということに対して、助言業務を行っている助言業者が、サービスを継続的に提供することに責務を明確に認識できるだろうと。そして、このアドバイスということに対して、サービスに対して、お客様が対価としてお支払いをするということの文化の醸成が今後の日本でのアドバイスビジネスの拡大につながってくるだろうと考えております。
 
 以上が我々が今想定している海外のモデルをどのように日本に持ってくればいいかというところの内容でございます。
 
 これ以降のページは参考資料としておつけしておりますので、また追って見ていただいて、何か質問等があればいつでもご連絡いただければと思います。
 
 ご清聴ありがとうございました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければと思います。時間もいつものように限られておりますことと、当初予定しておりました出席ご予定委員の方々も実際には増えたということもございまして、事務局のほうで計算していただきまして、お一人3分30秒程度以内でお願いできればということでございます。どなたからでもお願いします。
 
 それでは、上柳委員、お願いします。
 
【上柳委員】 
 ありがとうございます。主に事務局からご説明いただきました資料1についてですけれども、いろいろフォームというか、新しいフォーマットをつくるようなことも含めて、賛成といいますか、ぜひお願いしたいなと思うんですけれども、1つだけ気になるところありまして、23ページの一番下のところ、論点の3つ目の丸ですけれども、法定書類について負担軽減も検討するべきかというふうに書いてあるんですけれども、検討はもちろん結構ですけれども、法定書類が法定となっていることの意味は損なわないように、そこのところは留意をする必要があると思います。
 
 それから、もう一つは、去年の秋のときにも申しましたけれども、やはりアメリカとか、あるいはヨーロッパを見ますと、かなりの部分を法令で定めているところもあり、特に顧客を調査することであるとか、推奨に合理的な根拠が必要である、あるいは、合理的な根拠があると判断する理由があることというあたりは、法定化するべきではないかと思いました。
 
 もし可能であれば、ヨーロッパの関係で質問をしたいのですけれども、事務局資料の1の30ページ、MiFIDの適合性報告書という言葉がありました。これ、どこかで調べればわかるようであれば、そう言っていただければありがたいですし、今回ヨーロッパに行かれて、個社の、あるいは個々の取引での現物そのほかをもし入手されていたら、見せていただきたいなということと、それの関連で、25ページにはヨーロッパのプラクティスで、組成会社のほうが示すものがあるということで、組成会社のほう、具体的にどんなものかというのは見たいなというのはあるんですが、いわゆる日本で配布される目論見書であるとか、あるいはパンフレットであるとかと体裁とかは似たようなものなのか、もしイメージがわかりましたら教えていただきたいと思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 ありがとうございます。わかる範囲で。
 
【澤井専門官】 
 まず適合性報告書のところなのですけれども、現物については調べてみまして、提供できるようであればご報告させていただきたいと思っております。
 
 ただ、ESMAが出しているQ&Aに幾つかこういうことを書くべきという示唆がありまして、例えば、具体的に推奨商品のリスククラスが3に分類されて、顧客のほうのリスク許容度がレベル3であるため、合致しているですとか、そういった個々の顧客に即した具体的な記述もすべきであるといったことがQ&Aには書かれております。
 
 あと、PRIIPsのKIDのほうにつきましては、インターネットで現物が公開されていますので、そちらも適宜の方法で共有したいなと思っております。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、宮本委員、中野委員の順でお願いします。宮本委員、どうぞ。
 
【宮本委員】 
 色々とご説明ありがとうございました。まず1点目ですが、事務局からご説明のあった共通フォーマットについては、一覧性という意味でも、顧客に対する非常に良い情報提供手段だと思います。金融機関毎にレベルは異なってくるでしょうから、そういった点も比較して開示していくべきだろうなと思います。
 
 2点目は、商品リスクランクや顧客適合性の判定マトリクス、それからMiFIDⅡ対応の説明の中で、ITシステムへの投資負担の話がありましたが、こういったことへの整備には投資額は結構大きくなりがちなのですが、これらを共通でやる動きがあるのかどうか、教えていただければと思います。
 
 3点目ですが、各参考人の方から大変わかりやすい話、ありがとうございます。その中で、SMBCの商品提案プロセスの取り組みに関して、対価としての収入、手数料フィー、はどのようにして得られるのでしょうか。こういうことをやれば相当コストがかかると思いますが、それを何でcompensateするのか、ということです。おそらく、ある一定規模の資産がある方かとは思いますけれども、その辺りを教えていただければ。
 
 また、中桐さんと久保田さんのご説明に関して、やはりこういった取組が重要だと思いますが、フィー体系というのはどのように出来ていて、それをどう開示されているのか、についても教えていただければなと思います。よろしくお願いします。
 
【神田座長】 
 ありがとうございます。事務局から。
 
【澤井専門官】 
 IT投資の面についてご回答申し上げますと、ヒアリングをしてきた範囲になるのですけれども、IT投資を共通でやるといった情報は得られておりませんで、ただ、少なくとも業界団体でテンプレートを作成するですとか、そういったことで取組の円滑化を図っているということは認識をしております。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。それでは、参考人としてお越しいただいている、どうしましょうか、順番でよろしければ、加藤さんからお願いします。
 
【加藤参考人】 
 すみません。ご質問、わかりやすいものをつくるとコストがかかるけど、ということだったでしょうか。
 
【宮本委員】 
 いえ、そうではなくて、非常に丁寧にやられていて、わかりやすいと思うのですが、当然こういうサービスを全ての人に提供することは、なかなか難しいことだと思います。まずそのコストをカバーするだけの収入はどこで得られているのかなということ。手数料なのか、商品を売ったときの利益収入なのでしょうか。
 
【加藤参考人】 
 実態的にどういうところで手数料を得ているのかというご質問だと思っていますけれども、当初からすると、販売に対する手数料というのはどんどん落ちていく傾向にありまして、ノーロードを中心に変化していますので、入り口のアップフロントの収入というのは徐々に低減してきていると考えています。そこで、どこでマネタイズするかという話だと思いますけれども、やはりデジタル投資も含めて、効率的にお客様をフォローするなど、ある一定の金額階層別のデジタル化と、OMOという観点かもしれませんけれども、デジタルと有人をうまく融合させながら、低収益率でもどのように提供していくのかというのは、まさに今模索しながら取組み中であるところです。
 
【神田座長】
 ありがとうございます。それでは、フィーについて、中桐さんと久保田さん、お願いします。
 
【中桐参考人】 
 それでは、お答えさせていただきます。フィー体系についてですけれども、協会といたしましては、倫理綱領にありますように、長期的利益に資する手数料体系というところがありまして、例えば欧米等でいきますと、やっぱりフィーベースというところがありますので、当社、GAIAにおいても、フィーベースの割合が今8割ぐらいになっているという形になります。そういった意味では、一つフィーベースを目指すというところと、ただ、非常に高度な、もしくは継続的なアドバイスがあまり必要ないというお客様もいらっしゃると思いますので、そういった方に関しては、フロント手数料を頂いて、それで長期的に保有していただくということもあるのかなと思っております。
 
 また、開示に関しても、こちらはお客様とのそういった利益相反をなくすために、そういった手数料等はどんどん開示して見える化をしていきたいと考えております。
 
 以上になります。
 
【神田座長】 
 ありがとうございます。それでは、久保田さん、お願いします。
 
【久保田参考人】 
 海外でのモデルと同様に、お客様にご提供したアドバイスに対してアドバイスフィーという形でいただくというモデルを日本で実現するために、助言業務としてフィナンシャル・プランニングとアドバイスをお客様にご提供して、それの対価として助言の報酬を別途お客様から継続的に頂くというモデルを想定しております。一番その形がお客様にとって透明性が高く、利益相反の影響が低いというふうに認識しております。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。それでは、次に進ませていただきます。中野委員、どうぞ。
 
【中野委員】 
 ありがとうございます。まずご当局の説明のほうで、大分論点を具体的に整理していただき、それから、課題提起もしっかりと、より具体的になされたというふうに思って聞いておりました。
 
 我が国の場合、金融商品の販売というところに顧客本位の観点がフォーカスされるということは否応なくあるわけで、その観点から、そもそもフィデューシャリー・デューティーという概念の根幹は何かといったら、やはり顧客の最善利益の追求であるわけで、それを顕著に疎外する要因というのは、利益相反構造である。その最もわかりやすい事例は何かといったら、顧客の損失に立脚した利益、すなわち、利益移転行為がわかりやすいんですけれども、例えば投資信託でいえば、販売手数料という存在に尽きると感じておりまして、これがゆえに既存の金融業界の中で販売行為そのものが目的化してしまったということに帰結すると思います。
 
 ですから、乱暴な言い方ですけれども、販売手数料という存在そのものを業界全体として何らかの形で実質的に廃止できれば、結果的には全ての業者が長期保有目的にかじを切れるし、そこから得られる報酬を現状の仕組みの中でも十分に希求できるようになると思っています。
 
 例えば、積立投資に注力するということは各銀行が今どこでも最重要課題に据えておりますけれども、一方でつみたてNISAという制度の残高と積立投資という金額の残高の伸びが必ずしもリンクしていないという両者の乖離が目立つ事例がたくさんあります。理由は、販売手数料がある商品を積立投資でも勧奨してしまうからです。そうすると、つみたてNISAは制度上販売手数料がゼロですので、結果としてつみたてNISAの残高が伸びずに積立投資だけが伸びていくという一物二価と同じく利益相反に直結するものではないかと思います。すなわち、結果としてはダブルスタンダード、疑わしき二律背反行為が日常化していることにもなると思います。
 
 それから、もう一つ、プロダクトベースでは、行き過ぎた低コスト競争というのも、健全に持続的な事業遂行を担保するために必要な合理的報酬という顧客本位の視点が欠けている部分もあると思います。
 
 そして最後に人事評価体系ですけれども、販売目標とか手数料目標などを個人ベースで廃止しても、まだ支店ベースで同様の目標が残っていて、支店長が自部門の利益評価のために最優先して手数料獲得を至上命令として組織上動かしている事例もありますので、今度は商品供給サイド、投信なら投信会社だし、保険なら保険会社が販売委託業務をする前提において、委託先の販売行為が、利益相反行為と見える相手に対してはきちんとモニタリングする、さらには、販売の委託を廃止するといったような責任共有化を明示的にきちんと果たしていくという努力が業界全体に必要ではないかと思いました。

 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。多くの方に札を立てていただいておりますけれども、永沢委員、林田委員、野尻委員の順でお願いできればと思います。永沢委員、どうぞ。
 
【永沢委員】 
 ありがとうございます。私は事務局からご提示いただきました項目に従いましてお話をさせていただきたいと思いますが、まず、提案力の向上につきましては、特にエの部分、従業員による作業や顧客への商品選定理由の説明を支援・検証するための体制・仕組みを講じることが特に重要だと思っております。
 
 また、日本人に限らないかもしれませんけれども、一般の方はお任せが好き、自分で判断するのを好まれない方が多いと言われています。先ほどのデータで、「満足している」を選択するのはそういう傾向とも関係するのだろうと思いました。その上で1つご提案ですけれども、お客様にふさわしい商品をというご提案や説明に加えて、あなたには勧められない商品の要件というのはどういうようものかということもお示しいただくと、一般の方の理解もいっそう進むのかな、お話を聞きながら思いました。そういうアプローチもご検討ください。
 
 2と3もぜひ進めていただきたいと思っております。共通フォーマットについて、特に報酬や業績についての評価については進めていただきたいと思います。
 
 1点、事務局資料の随所に対話を促進とかモニタリングと書いてありますが、この対話の主体は金融庁と事業者の対話ということでしょうか。金融庁と事業者の間の対話が進むのは大変望ましいことですが、どのような対話があったのかという情報は公開され、金融サービスの利用者にも見えるようにしていただくことを要望します。いわゆる市場に情報を出していただくことで市場、すなわち金融機関以外からのチェックも入るのではないかと思います。
 
 5につきましては、一般の消費者には、それが保険なのか投資信託や債券といった有価証券なのかがわからないという状態が生じております。商品の法形式、保険か有価証券かで説明資料が異なるという状況というのは一刻も早く改善していくことが必要だと思っております。
 
 上柳先生がご指摘された点は私も同意でございまして、事業者の負担軽減はもちろん進めていく必要がありますが、過去にそういう規制が入るだけのトラブルが発生したわけで、法的に求められたということには理由があると思っておりますので、その規制の趣旨は踏まえていただき、その一方、現状に甘んじず、顧客本位の視点で、いろいろな技術も革新しているのですから、説明資料の改善に向けて新しい方法をどんどん取り入れて開発していっていただきたいと思います。
 
 それから、出張報告の中で特に興味深いと思いましたのは、商品のガバナンスという視点です。この概念は日本には今のところないのではないかと思っております。投資信託だけでなく保険でも製販分離が進んでいますので、ぜひ導入を検討いただきたいと思います。
 
 最後に、3社の代表者の方からご説明いただいたんですが、時間がないので1点だけ申し上げたいと思います。三井住友銀行様からの商品提案プロセスのご説明ですが、お話を伺い、現場も努力しておられ、大きく改善していると思いました。消費者の立場から長くこの分野に関わってきました私としては大変うれしく思いました。最後のページの2番目のポイントに「お客様の知識や理解度に応じて、データやツール等を活用しながら、ニーズを具体化する」とございますが、三井住友様は実はもう一つ、本当はおそらく工夫されているところがあると思っております。それは、お客様の側の認識力にも配慮されているという点です。顧客の高齢化が進んでおり、顧客の認知力というのが重要な問題になっております。私は知識や理解度だけでなく顧客の認識力・認知力という点も十分に留意をして商品提案を進めていくことが必要と思っております。その点、三井住友銀行様は、文字の大きさだけでなく色やレイアウト等についてもとても工夫されており、こういった点も、今後、業界全体で工夫いただけたらなと思います。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。林田委員、どうぞ。

【林田委員】 
 ご説明ありがとうございました。私から4点ほどコメントしたいと思います。
 
 1つ目は、リスク性商品のアフターフォロー、あるいはアドバイスを受けていない人が8割もいるというのは非常に残念だと思っています。フォローにもいろいろありまして、次の契約をとるための営業活動もこれには含まれていると思いますので、リスク性商品による運用に不安とか疑問とかを感じている顧客をフォローするという行動はさらに少ないのではないかと思います。このところ、新型コロナの影響による市況の悪化で、リスク性の商品の運用に不安を感じている人は非常に多いと思っています。当ワーキングではこれまでリスク性商品による運用については、長期・分散・積立というのが望ましいというメッセージを発してきました。今のような市況が悪いときこそ、長期・分散・積立投資の意義を、商品販売の前線にいる人たちが、販売時点だけでなく、既に売られた方に、はがき1枚でも結構ですので、顧客に伝えていくということが大切なんじゃないかと感じています。
 
 次に手数料についてですが、プリンシプルの採択をしたという事実をいわゆる隠れみののようにしないためにも、手数料の開示についてコンプライ・オア・エクスプレインの原則を導入するというのは適切な対応ではないかと思います。
 
 また、共通フォーマット、皆さん評価される方多かったんですけれども、これも同業他社のサービスの内容を比較しやすくするという点でも有効だと思います。
 
 ただ、共通フォーマットさえ出していれば説明責任を果たしているといったようなことにならないよう、適切な情報提供に向けて不断の努力を求めていくということも必要だと考えています。
 
 それから、次ですが、報酬、業績評価も大変重要だと思います。不適切な勧誘などを排除しつつ、販売現場のモチベーションを維持するということも大切です。今日のご参考人のご説明ではなかったんですけれども、オフレコの取材では、金融庁の言うことを聞いていたら金融機関は干上がってしまうというようなことをおっしゃる方もいると。金融機関の経営云々ということもありますが、それ以外にも、締めつけを強くし過ぎるということになりますと、リスク性商品の販売が過度に抑制されるということになってしまいますと、貯蓄から投資への動きを鈍らせることにもなりかねないという心配があります。こうした点については、リスク性商品での運用が盛んな欧米とは区別して議論したほうがいいのではないかと思います。
 
 最後ですが、金融事業者の実名公表についてですけれども、会社名の公表というのは、各種行政処分の項目にも挙がっているほどで、特に信用商売の金融機関にとっては芳しくない例を公表されるというのは非常に死活問題だと思います。極めて悪質な場合に行政処分の対象にするというような対応はあってもいいのかなと思いますけれども、安易に公表するのは控えたほうがいいのではないかと思います。
 
 一方、好事例に関しては、別に業者名を出さなくても、具体的な内容を公表すれば、同業他社の手本になると思います。行政当局は個別会社の宣伝につながるようなことをする必要はないのではないかというのが私の考え方です。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、野尻委員、駒村委員、竹川委員の順でお願いできればと思います。野尻委員、どうぞ。
 
【野尻委員】 
 ありがとうございます。私のほうは、資料1、事務局の説明資料に4つほどコメントをさせていただこうと思っています。
 
 まず1つ目なんですが、提案力の議論の中で、7ページ目にありますが、ちょっと細かいところではあるんですけれども、アのところに各将来時点の目標資産額と言及されていますが、時点ごとの目標資産というのはあまり書く必要はないような気がしています。どちらかというと、ゴールごとに目標額があってもいいとは思うんですけれども、各時点での例示として書かれて、これが中心になるように思われてしまうことは、私は避けるべきではないかなと思っています。
 
 2点目は、14ページになります。米国のRegBIのCRSをいろんな形で言及をいただいて、導入をということであります。原則賛成と思っております。手数料ですとか、利益相反とか、大事な部分をこういう形で評価して、個人が複数の金融機関のありようを比較・検討できるという意味では非常に大事なのではないかと思うんですが、2つ気になっているところがあります。先程来、法定書類の増えることがないようにという、あの部分についての、いやいや、削っちゃいかんのだよという声はある一方で、負担をつくることをNGにするのではなくて、どうお客様に交付していくかとか、他にも負担軽減のやりようはいっぱいあるような気はしています。必要なことをやってもらう一方で、必要でないものがあるんだったら、もしくは配布の方法ですとか、負担の軽減があるのであれば、ぜひ検討をしてほしいと思います。
 
 それから、今回のこの内容の中には言及されていらっしゃらないと思いますが、このCRSの書面をどう扱うかというのがアメリカでも大分大きな課題になっていたと理解をしています。共通のフォーマットを作るのはいいんですけれども、これをどういうふうに開示をしていくのか、それから、Q&Aみたいなのが入っているとすれば、これを実施したのかどうかといったことまでアメリカの場合は問われていたと思います。日本では、どこまで実務段階で対応するかという点もこれから議論する必要があるのではないかと思いました。
 
 3つ目は、21ページになります。組成会社に対して顧客を想定する。これも非常に重要な方向性だと思っています。ただ、ポートフォリオを作って提案するというところのパーツを提供するような場合においては、上手なコミュニケーションをしないと、リスクが高いからだめだというよりは、リスクの高いものを組み合わせたポートフォリオがお客様にとっては適切だといったようなアドバイスが必要な場合に、これが足かせになってもいけないのではないかと。これも議論をもう少し深めるべきだと思います。
 
 最後、28ページ目であります。促進施策のところなんですが、28ページの黒丸が4つ並んでいるんですが、業者指導の目線と顧客向けの目線で必要なものというふうに分ける必要があるのではないかと思います。先ほどもご指摘があったように、実名を公表するとかというのは、自分が保有している金融商品もしくはアドバイスを受けている会社はどうかというふうに見ようとすると、公表されているか、されていないかの2つでありますと、大半の場合が公表されていないところに入ってしまうので、良いか悪いかってなかなか難しいだろうなと思うんですね。業者指導としてはありですが、個別の投資家の目線でいくとそれよりは、リストから削除といったようなほうがまだわかりやすい制度ではないかと思います。個人的には共通フォーマットとリストからの削除というのが顧客目線ではいいアプローチに近いのではないかと思っています。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、駒村先生。
 
【駒村委員】 
 ありがとうございます。まず事務局の提示した資料の中で、供給サイドから商品提供のインセンティブの構造をお客に対して示すというのは大変重要な考え方だと思いますので、これは進めていただきたいなと思いました。
 
 それで、ご報告いただいた皆様に対して質問というか、もし時間があればご意見いただきたいと思うんですけれども、特にフィデリティとファイナンシャル・アドバイザー協会、三井住友も同じ発想だと思いますけれども、助言に対しての価値をきちんと高めていき、経済的な評価をしてもらうというのは大変重要な発想だと思いました。
 
 ただ、金融にかかわらず、人に助言をするというのは大変難しい作業になります。大学で教えていても、ただ単に知識や情報を与えて論文を書けるわけじゃありませんので、学生に対して過剰な自分への自信に対する期待みたいなものを修正しなければいけないといを作業も伴うわけですね。規範的意思決定の理論においては、リスクとリターンを提供して、きちんとそれを身につけて判断するというのは当然ですけれども、もう一つ重要なものとしては、メタ認知の問題があるわけですね。自分自身が今どういう状況で意思決定をしているのかと。要するに、非常に過度に自信過剰になったり、自信過少になったり、あるいは、金融に関する情報がゆがんだ形で持っているのではないかということを自分自身が知っているということが、合理的な意思決定するときの条件になるわけですけれども、アドバイスする際に、知識、リターン、リスク、商品に関する知識を超えて、どうもこの方は例えば自信過剰になっている、金融に関するゆがんだ知識を持っていると、自信過剰になっていると、過大なリスクをとっているのではないか、長期的には資産形成に対してはマイナスではないかということを強く認識されたときに、お客にとってはそこを言われるのは不愉快だと思いますけれども、そこまで踏み込んだアドバイスが果たしてできるのかどうなのか、やっているのかどうなのかというのをお聞きしたいなと思いました。
 
 それから、アドバイザー協会のほうに1つ具体的な質問になるわけですけれども、倫理綱領を破った場合、その会員はどうなるのかということ。
 
 また過剰な回転販売というのはどうモニターするのか、この辺を教えてもらいたいなと思いました。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 ありがとうございます。最初のほうのご質問はお三方かと思うのですけれども、久保田さんからですかね。お願いします。
 
【久保田参考人】 
 ありがとうございます。おっしゃるように、金融知識の部分に関していうと、テクノロジーの進展であらゆる人が非常に難しい金融理論をもってアドバイスを行う、プランニングを行うということが可能になるとは思うのですけれども、やはりおっしゃったように、それ以上にお客様をどう理解するのかというところに関していうと、その担当するアドバイザーであったり、レップさんの経験力だったり、人間力だったり、傾聴力だったり、そういったところが非常に重要になると思っておりますので、我々コールセンターでも、その部分に力を入れるべく、金融知識以外の応対力といったところに非常に力を入れてここ数年鍛え上げてきております。そういったものがテクノロジーのツールと相まって非常にいいアドバイスができるものと信じてやっております。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。中桐さん、今の点と、ついでにというか、もう一つ、協会の倫理綱領のエンフォースメントについてもあわせてお願いできませんでしょうか。
 
【中桐参考人】 
 そうですね。おっしゃるように、まずはお客様とどういった形で信頼関係を築いていくかというところが一番重要だと思いますので、そのあたりは、一番はお客様のことをきちんと傾聴してヒアリングをしていくというところをやっております。
 
 定期的な面談ということで、必ずアフターフォローとして半年に一度ずつお会いしていく中で信頼感を醸成して、また、お客様に対して、人間というのは非合理的な行動をしてしまいますよといったようなことを毎月のいろいろな会報誌等を通じてお客様にお伝えをしていくことで、長期分散投資を継続していただけると思っております。
 
 協会に関してですけれども、こちらは、倫理綱領に違反するようなことがありましたら除名ということをもちろん入れておりまして、こちらは、今後になりますけれども、そういったことがあった場合には、理事会等で判断していきたいと思っております。
 
 また、過剰な回転売買等に関してですけれども、こちらは正会員に関しては、委託正会員という形で、所属している証券会社さんからデータ等も出してもらいますので、そういったデータ等を入会の際と年に1回のモニタリングの際に実際の取引内容を出していただいて、その中で定量・定性ともに審査委員会のほうでそういった形の過剰な売買等をしていないかといったところを審査、モニタリングしていくことになっております。
 
 以上であります。
 
【神田座長】 
 ありがとうございます。加藤さん、もし助言、アドバイスについてあればお願いします。
 
【加藤参考人】 
 ちょっとゆがんだ情報をお持ちであったり、自信過剰であったりしたときにということですけれども、お客様にとって適正ではない商品を、お客様が選択された場合には「お勧めできない」という提案を、通常のフローで行っております。例えば、マーケットが大きく変動し、足元で急に下がったので、初めて契約したつみたてNISAをやめたいという方がいらっしゃいます。一方、上がったら上がったで、過剰な投資比率にも関わらず買いたいという人もいらっしゃいますが、そういったときに、「そもそもそれは何で始めたのか」というスタートしたときの目的に立ち返って説明しますと、基本的にはそうだね、という形で振り返られることが多いのではないかと思っています。そもそも何の目的だったのかとか、当初どうして加入したのかということを立ち返って説明するように営業店に指導することを繰り返しています。そうすれば、100%そういったものが排除できるわけではないかもしれませんが、ある程度、我に返るきっかけというところもあると考えています。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。
 
 それでは、竹川委員、その後、鹿毛委員、島田委員の順でお願いできればと思います。竹川委員、どうぞ。
 
【竹川委員】 
 参考人の方々、貴重なご意見ありがとうございました。質問2点と、その後に意見を申し上げたいと思います。
 
 質問の1点目はFA協会の中桐さんに。会員企業、正会員になった企業へのクオリティの担保をどうするのか。特に証券仲介だけではなく、保険の代理店を兼ねていたり、不動産の取り扱いがあったりということもあるかと思います。入会審査をクリアした後で、不動産、保険その他で問題が生じたときにどう対応されるのかも含めて教えていただければと思います。
 
 2点目の質問はフィデリティ証券の久保田さんに対してですが、継続的に係る手数料について、残高に対してフィーがどの程度、例えば何%かかるのかなど、現時点でわかる範囲で結構ですので、どういう形で顧客から継続的にアドバイスのフィーをとっていくのかを教えていただければと思います。
 
 意見ですが、事務局の資料の28ページにありました追加的に考えられる対応についてというところです。こちらについて、黒丸の1つ目、「『取組方針』と『取組状況』について共通のフォーマットを設け、比較可能性を高めること」と書いてあります。顧客本位の業務運営について、方針については非常にきれいな言葉で記載されていることが多いのですが、顧客サイドから見ると、一番知りたいのは具体的な取組状況です。どういう取組を具体的にしていて、それが定期的に実行されているのか、いないのか、それを1回ではなく、継続的に(ホームページ等の)見やすいところに開示をしていただきたいです。
 
 2点目は共通の開示についてです。普通の生活者から見たときに、アドバイザーに対するニーズは非常に高まっていると思いますが、アドバイザーがどこにいて、何をしているのかわからないので、相談しづらいという現状があります。
 
 いろんな業界・団体にまたがっていて大変とは思いますが、そのアドバイザーは会社組織に属しているのか、個人でやっているものなのか、販売をしているのか、していないのか、販売をしないのであれば、投資助言・代理業登録をしているのか、していないのか。販売をしているのであれば、取り扱う商品が何であって、手数料体系はどうなっているのか。所属している協会・団体、資格、登録番号等を共通のフォーマットで開示していただけるとわかりやすくなり、個人も選択しやすくなるのではないでしょうか。
 
 3点目は、手数料についてです。(英国のRDRのように販売にかかる手数料を外だしにしてアドバイス料をとる形ならスッキリするのですが)、販売手数料や代理店手数料、商品に内在している手数料、例えば投資信託であれば、販社の代行手数料などを全てそのままにしておいて、アドバイスフィーを別途とるということが、どうもすっきりしません。(日本において)どういう手数料体系にするのがのぞましいのかを整理する必要があるのではないでしょうか。
 
 ファイナンシャルプランナーや投資助言・代理業登録をしている方にお話を聞いたところ、こういう意見もありました。具体的には「多様な仲介業者の方も必要だと思う一方、純粋なアドバイザー、要するに販売をしないアドバイザーも増えるような仕組みづくりが必要だと感じています。当局に対して希望することは、販売をしない独立アドバイザー、投資助言・代理業登録をしている人なども含めて、事業参入しやすくなるように、例えば英国のように販売に関連する手数料は外出しにするといった構造改革を進めていただくことも含め、多くの人が安心してアドバイザーを利用できるようなインフラを整えてほしい」ということでした。そういう視点でも考えていただければと思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。ご質問の点につきまして、中桐さんからお願いしてもよろしいでしょうか。
 
【中桐参考人】 
 ありがとうございます。そうですね。協会とすれば、金融商品仲介業というところを対象としていますけれども、実際に生命保険代理店だったりとか、不動産業を営んでいる会社等も入ってくると思っております。こちらに関しては、まずは入会審査の際に、定量・定性というところをきちんとヒアリングするというところと、実際に代表者とも面談をするというところになっております。その定性の部分のところで、もちろん企業理念だったりとかビジネスモデルというところもそうですし、あとは、お客様との係争であったりとか、クレームであったりとか、そういったところがあるかどうかといったところも最初のヒアリング項目に入っておりますので、そこは仲介のみならず、そういった業として営んでいるところもきちんと審査の段階で判断をしていきたいと思っております。
 
 以上になります。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。
 
 それでは、先へ進ませていただきます。あと、10人の方から札を立てていただいておりますので、多少短めにご発言いただければありがたく存じます。鹿毛委員、島田委員、神戸委員の順でお願いします。鹿毛委員、どうぞ。
 
【鹿毛委員】 
 論点6に絞ってコメントいたします。まず第1の最低限必要と考えられる対策。これは賛成です。
 
 2番目の今後追加的に必要と考えられるもの。これは有効な情報発信を促していくということだと思います。その観点で、ここで述べられている共通フォーマットは意義あるものだと思います。ただ、対象は全ての項目ではなくて、ある程度分けて考えるべきでしょう。例えば利益相反、報酬体系、業績評価体系、手数料開示といった、いわば市場の公正性を担保するものについては、これは有効だろうと思いますが、どのような顧客層にどのような商品を勧めてゆくかというような事柄については、これはある意味では企業の経営戦略の根幹になるものです。確かに十分ではない、一部に問題があることは事実でしょうが、これを共通の物差しで評価していくということが本当にできるのか。金融庁も前回のワーキング・グループのときには、横並びではなくて、むしろ独自の努力をして、独自の戦略を打ち出すことを促すというふうなこともおっしゃっていたことを記憶しておりますが、そういう観点から見ても、ビジネス戦略については共通フォーマットは如何かなと思いました。
 
 それから、3番目、実名公表については、何人かの委員の方がおっしゃったように、私も慎重にすべきだと思います。
 
 4番目の金融事業者との対話の充実、モニタリング体制、これは一層進めていただければと思います。
 
 最後に全く別の問題ですが、今、世界の市場が大暴落、これが一、二年のうちに平時に戻るのか、どうなるかというのは実は誰にもわかりませんが、しかし今このWGでの議論が今起きている市場の大混乱と全く無関係でいいのかと思います。一喜一憂という意味ではなくて、経済実態に構造的な影響があるかとか、投資態度に根本的な影響が出るかもしれないという部分を全く無視していいのかという点が1つ。それから非常に投資環境が混乱していった場合には、どちらかというと規制強化よりは規制緩和が必要になってくるという面もあり得るかと思いますので、こうした点についてもまとめにかけての今後の課題ではないかと思いました。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。では、島田委員、どうぞ。
 
【島田委員】 
 まず論点1については、細か過ぎるかなとは思いますけれども、原則の中に含めていく方向でやっていただけたら、ここまで手が回っていない金融機関の方たちにも意識をしていただくという意味で良いのではないかと思います。
 
 また論点2、共通フォーマットを検討するということは私も総論では賛成でございます。共通フォーマットの中に、例えば論点3に含まれていますような利益相反の状況などを含めてはどうかといった考え方もあるかとは思いますが、顧客にとっては自分の目の前にいる「アドバイザー」という方が、金融商品販売のアドバイザーなのか、自分のお金にかかわるファイナンシャル・アドバイザーなのかという点は大きな違いがあると思います。ですから、利益相反、あるいはどこから報酬をとっているかといったことについては、まず名刺がわりにこの人はそういう人なのだということがわかるような形がよいのではないか、別にしたほうがよいのではないかと思います。
 
 つまり、共通フォーマットの中には商品にひもづけされた商品内容の比較を誰にでも可能にするような共通フォーマット、それとは別にサービスの内容として、サービスをする方たちの属性、あるいは金融機関、あるいは所属している団体のあり方が概覧できるようなものが一番最初についているなり、名刺代わりになるようなり、少しはっきりした形で示すべきではないか思います。
 
 重要なことは、推奨する金融商品やサービスが顧客本位でない形にバイアスがかかってしまうような慣行であるとか要素をいかに適切に洗い出していくかということだと思います。それを管理するのか、開示するのか、禁止するのかということは、個々に要素によって異なってくると思います。
 
 ですから、ノルマを必ずしも禁止しろとか、評価のインセンティブをこういうのはよくないという形で言うのではなくて、そうしたことに対してどのくらいのバイアスがかかるのか。そして、これはお客さんがそれを理解していればいいのか、よくないのかといったことをきちんと考えていく必要があると思います。また、それ以前の問題として、業界の慣行の中で、個別の商品に含まれているのではないような販売推奨の奨励金のようなあいまいなものがいまだに残っている金融商品があるのか、ないのか。そこは非常に重要な部分だと思いますので、ぜひ洗い出しからまずやっていく必要があるのではないかと思います。
 
 参考人の方々から、金融商品を販売するのではなくアドバイスでお金を頂くというビジネスが形となって発展していくことの萌芽といいますか、明るい未来が見えてくるようなお話を伺うことができて、とても今日は勉強になりました。一方でこうしたお話をするときに必ず出てくるのが、アドバイスでお金をとるとアドバイスギャップといって取り残されていってしまう人が増えるということで、そうすると、インクルーシブという考え方からいうと、かえって良くないのではないだろうかという議論です。でも、投資していく金額、あるいはお客様のステータスによってかかってくるコストが違うというのは当然のことだと思います。ですから、お金を払って総合的なサービスを受けられてアドバイスを受けられる方たちと、あるいは、ITなどを使ってなるべくレディメイドのアドバイスを受けたい方たちといった形の区別はこれから技術でカバーできるのではないかと思いますので、あまりそこに固執しないで、まず富裕層からでもきちんとしたアドバイスをお金をとって提供していくという文化をつくっていただくのはとてもいいことだと思います。

 どうもありがとうございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、神戸委員、その後、上田委員、加藤委員の順でお願いできればと思います。神戸委員、どうぞ。
 
【神戸委員】 
 ありがとうございます。最初にお出でいただいた参考人の方々に1つずつご質問させていただいた上で、意見を述べさせていただきたいと思います。
 
 まず、三井住友銀行さんにお聞きしたいのは、現状のようなマーケットでも長期分散投資が重要だと強調されているということはわかったのですが、昨年のワーキングで私もお話しさせていただきましたが、退職金や相続した財産などについてもまとめて投資させず、何回かに分けて投資するというアドバイスが非常に重要だと認識しております。今のようなマーケット状況になりますと、そういうアドバイスをしてきたかといったところも問われていると思います。しかし、主力販売商品の一つであるファンドラップという商品を考えると、金融機関あるいは担当者としては、ある程度まとまった金額で投資させたいという気持ちになるだろうと思うのですが、そのあたりをどのように考えておられるのでしょうか。GAIAさんもファンドラップを中核商品にされていると伺っていますが、その辺のお考えを伺えればと思います。
 
 次に、ファイナンシャル・アドバイザー協会さんに関しましては、GAIAさんの現状のビジネスモデルというのは、一つの企業がお客さんからはライフプラン・アドバイスに対する会費をいただき、証券会社側あるいは保険会社側からはラップのアドバイスフィーとか、信託報酬、生保などの販売手数料を得るという形で、ある意味利益相反が最も生じやすいビジネスモデルになっているような気がします。中桐さんがGAIAの社長と協会代表という2つの立場をお持ちなので難しいところがあるかもしれませんが、それをどのように捉えて、今後どういう方向に向かおうとしているのかということと、利益相反が生じる可能性についてお客さんに対してどのような説明をされているのか、また資料にはあらかじめ具体的な対応策を講じると書かれているのですが、例えば手数料など顧客以外から受領する金額を開示しているのか、協会として今後開示していく方向なのかといったことについて、具体的に伺えればありがたいと思います。
 
 それから、フィデリティさんのお話は、個人的にはたいへんうれしい話でございまして、私もFDの観点から見た時に最も望ましいスタイルはRIAだろうと思っています。このスタイルが一番素直に顧客本位になりやすいビジネスモデルだと考えているのですが、独立系RIA向けも想定されているのかということです。日本においても、それが想定されているのであれば、具体的な商品ラインアップやサービス内容にもよるでしょうが、弊社も利用を検討させていただきたいと思うのですが、そのあたりのお考えを伺えればと思います。質問は以上です。
 
【神田座長】 
 ありがとうございます。それでは、ご質問について、加藤さんからお願いします。
 
【加藤参考人】 
 今、ファンドラップや、バランスファンドといったものでも、足許のマーケット環境ではドローダウンがきついということもあります。そんな中で、当行、個別行としての取り組みとしては、一括投資だけではなくて、一括投資プラス積立てのような見せ方をするツールも作成しております。長期分散投資なので、一括でということもありますが、さらに時間分散を加えることでかなりリスクが低減されます、といったご説明をしております。
 
 システムの開発があるので、あと一、二年はかかるかもしれませんが、ファンドラップの中にもそういった機能をつくろうとしていて、ファンドラップにおいて、一括で投資する部分とそこに積み立てで入れていくことを個別行としては検討しています。退職金のようなまとまったお金も、一括で投資することに加えて、時間分散で投資したほうがより効果的ですということを見せるような説明をするように心がけています。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。中桐さん。
 
【中桐参考人】 
 そうですね。こちらの分散に関しては私も同じ考えでありますので、時間分散であったりとか、資産分散というところがやっぱり重要と思っておりますし、また、何よりもお客様のこれまでの投資経験であったりとか、リスク許容度といったところをきちんとヒアリングするというところが重要だと思っておりますので、その上で、お客様にきちんとご納得をいただける形で、タイミングというか、買付けの回数だったりとか、そういったところを慎重にするというような方であれば、複数回に分けてというような形でご提案をしております。
 
 また、手数料と利益相反のところに関してですけれども、利益相反等に関しては、きちんと見える化、開示をするというところが一番重要と考えておりますので、こちら、当社に関しても、もちろん商品の中から手数料を頂戴しているというところがありますので、そこをきちんと開示をしていこうと思っております。
 
 繰り返しになりますけれども、1つの事例として、フィーベースというところがあると思いますので、そこはできるだけ残高に比例するような形にする、すなわち、フロント手数料の部分ではなくて、残高に応じた手数料体系のビジネスをしていくことが重要かなと思っています。
 
 開示に関しては、協会等もきちんとどういった手数料を頂戴しているのかといったところを開示するというところと、それが何の対価なのかといったようなことはとても重要なことだと思っていますので、協会としても今後、世界の方々とそういったことを議論していきたいなと思っております。
 
 以上になります。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。久保田さん、どうぞ。
 
【久保田参考人】 
 ありがたいお言葉ありがとうございます。米国での取組というところで、カストディという言葉を述べさせていただきましたけれども、まず社内で助言代理業を使ったアドバイスモデル、そして、お客様から直接報酬を頂くという透明性、あとは、利益相反のない形のモデルというのが実現できた暁には、米国でもやらせていただいていますように、カストディとしてプラットフォームをほかの外部のアドバイザーの方々に提供するというのは1つ新しい日本の中でのIFAのモデルとしてぜひ積極的に推進してまいりたいと思っておりますが、どうしてもこのモデル自体が、投資助言業というところに登録が必要になりますので、1つチャレンジとしては、その際に求められるコンプライアンスの人的要件、あとは経験値、そういったところをどうしても小さい新規業者さんだとなかなか認めていただくのが難しいというような現状がございまして、米国ですと、そういったところを後方から支援するサービサーのような業をやっている者がおりますので、フィデリティも一つその部分はサポートしていますけれども、コンプライアンスの部分を外部委託してサポートするというモデルが日本の中で認められることができるのであれば、こういった新しい助言代理業を使ったIFAのモデルというのが実現できるのはないかと現状は考えておりますが、ここの部分は、今後関係当局も含めてご相談させていただきながら検討を進めてまいりたいと思っております。ありがとうございます。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。
 
【神戸委員】 
 ありがとうございました。短めに意見を述べさせていただきます。事務局さんの資料の中で、顧客本位の業務運営を進める上では、やはり利益相反NGというのが最大のポイントになるのだろうと思っています。そのためにも、手数料開示のルールというのは非常に有益で、お客さんに対して、他からはこういう収入をお客さんとの取引で自分は得ているというところを開示することがフェアなやり方といえるでしょう。そのあたりを共通フォーマットに記載するということはたいへん有益だと思います。
 
 また、共通フォーマット内には利益相反が発生する可能性についての記述、どういうことが利益相反となり得るのか。万一それが発生した場合に、その会社はどのように対応するのか、その場合にはアドバイスを行わないといった対応も含めて、具体的に記載されているほうがいいのだろうと考えております。
 
 最後に、追加的対応として、何人かの委員の方々から実名の公表は慎重にというお話がありましたが、私は不芳事例はともかくとして、好事例についてはそろそろ実名の公表を行ってもいいのではないかと考えております。不芳事例についてはリストからの削除という対応でいいと思いますが、好事例については実名を公表する方向で動いたほうが、金融機関側のモチベーションが上がるのと同時に、お客さんが金融機関を選ぶ上でも役に立つだろうと考えております。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、上田委員、どうぞ。
 
【上田委員】 
 ありがとうございます。2点だけ、時間も限られていますので、申し上げさせてください。
 
 まず第1点、共通フォーマット、こちらは、私も賛成です。原則というのは、最近定着しているプリンシプル・アプローチの出方として、最後、こういう公表物があるというのは大変良いことだと思っています。
 
 ただ、その中でぜひしっかり意識して枠組みつくっていただきたいのが、以前、コンプライ・オア・エクスプレインだったものが、現状、コンプライ・アンド・エクスプレインになっていると。さらにエクスプレインについては、オルタナティブの明示というものが世界的な潮流になっていますので、そこはしっかりしていただきたいと思います。
 
 そうすることでおそらくステークホルダーにも大変有利な、有意義なものにもなると思いますし、客観的な比較可能性も高まりますので、モニタリング上も相当有用な資料になるのではないかと思います。
 
 先ほど来、好・不芳事例の公表はどうですかなんていう話もありましたけれども、具体的な事例はともかくとして、全体像としてしっかりされている会社と、よくよく見ると、なんちゃって、何となくコンプライってガバナンス報告書でも多いんですが、そういったものとの見分けも、心がこもっているかどうかが見えてくるのではないかと思います。
 
 その中で、特に今回EUとUSのハイブリッド的なものをというようなことになるのかと思うんですが、いいところをとっていけばいいと思うんですが、想定顧客と対象資産、顧客属性と商品属性、ここをぜひ入れていただきたいと思っています。マトリクスになるんじゃないかと思うんですが、それについてはぜひ、誰が見てもわかるもの、顧客もわかるし、販売員もわかるというもので、これをこのお客さんに売っていいのかどうかというものが売る側もわかるようなものになると幾つかの問題は解決されるのかなと思います。
 
 そこにおいては、こういった開示のひな型づくりというところをぜひ意識していただいて、例えば資料20ページにあるようなこのマトリクス、業者名は出ていませんけれども、こういったものを好事例として逆にお名前を出して参考にしてくださいというものでもいいんじゃないかと思いました。
 
 あと、もう1点、参考人の方に対する、ひとつ教えていただきたいというところもあってなんですが、SMBCさん、ありがとうございました。お客様のことを深く知るというようなところをスタートにされておられるということで、これはおそらく銀行ならではの情報収集力とか信用力、住宅ローン、給与口座、退職金等々含めての総合力だと思います。そこから始まりますと、例えば株式やETF投資をしたいときに、なかなか銀行さんだけではできないのかなと思います。先ほどの資料、軽くご説明だけでしたけれども、1ページ目に、例えばグループ内に証券会社もお持ちである。そういったところとの連携があると、顧客サイドから見ると、同じグループの銀行に行って、また証券会社に行って、ゼロから始めて、それぞれに営業が来てしまうことになります。金融がグループ化しているので、お客さんの同意があれば、それは信頼があるということですので、同じプラットフォームの中で情報を持っていただいてもいいような場合もあるんじゃないかと思います。これはやっぱり難しい、ファイアウォール規制等で現状も今後も難しいのかもしれませんが、そういったところは少し工夫の余地はないのかなと思った次第です。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。加藤さん、いかがでしょうか。
 
【加藤参考人】 
 現状、SMBC日興証券を紹介するというスキームにならざるを得ないかなと。法的な問題、銀行には法人関係情報も結構ありまして、インサイダーの問題がありますので、ある程度その遮断が必要だということもあり、現状では、1人が株も銀行業務もというのはやや難しいかなと考えています。ただ、確かに担当者が2人いるという状態になるというのは、不便でもあったりするので、少し何かないかというのは考えたいと思いますが。
 
【上田委員】 
 ありがとうございます。ファイアウォール規制が過度に個人にまで入っているのかなとちょっと思ったことがあったので。以上です。ありがとうございました。
 
【加藤参考人】 
 すみません。ありがとうございます。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。それでは、加藤委員、その後黒沼委員、神作委員の順でお願いします。加藤さん、どうぞ。
 
【加藤委員】 
 ありがとうございます。3点、意見を述べます。まず、論点1についてですが、ある金融商品がある顧客にふさわしいかどうかを判断するためには、その顧客が持っている金融資産の全体に対して、その商品を新たに購入することがどういう意味を持っているかということを適切に判断していく必要があると思います。ところが、顧客が金融資産を複数の金融機関を通じて持っている場合には、アドバイスをする金融機関が顧客の持っている金融資産の全体構造を的確に把握できない場合もあるかと思います。この問題を解決するために、例えば顧客が電子決済等代行業者の提供するサービスを利用している場合には、顧客の要望に応じて、金融機関が電子決済等代行業者の元に集積している情報を顧客へのアドバイスに際して使える仕組みが整備されていくことが望ましいと思いますます。
 
 次に論点3について、論点1との関係で論点3は非常に重要であって、7ページの一番最後のところにも「論点3の従業員の報酬・業績評価とも関係」と書いてあるわけですが、従業員の方々が良いアドバイスをして報われる仕組みがないと、金融機関の提案力の向上は期待できないと思います。
 
 この点に関して気になりますのは、アドバイスをすること自体で顧客からフィーをもらえる業態とそうではない業態があるということです。アドバイスだけではなくて、実際に商品を買ってもらわないと金融機関が利益を上げられないような場合に、どのようにして良いアドバイスを行った従業員に報いる仕組みをつくっていくかが非常に重要であると思います。
 
 最後に論点6についてですが、顧客本位の業務運営に関する原則について、エンフォースメントという言葉が適切か分かりませんが、より顧客本位の業務運営に関する原則を尊重した行動を金融機関にとってもらうために、何らかの対応が必要であるという点は私も賛成であります。ただ、金融庁がどこまで表に立って出ていくかという点について、もう少し慎重に考えるべきではないかとも思います。
 
 もともとこの原則ができたきっかけは、これまでの経緯から、日本の金融機関はどうしても金融庁のほうばかり向いていて、顧客のほうを向いていないという、そういう問題意識であったと記憶しております。そうすると、ここで金融庁が真正面から出ていくと、なぜ、法令ではなく、顧客本位の業務運営に関する原則という形になっているのかが問われることになりますし、当初の意図から相当離れると思います。
 
 ただ、リストから削除という施策については、私は良いと思っていまして、一方で、リストから削除するという判断を金融庁が単独で行うのではなくて、例えば投資家側の団体と自主規制機関から構成される委員会が、ピアレビューのような形でリストからの削除を金融庁に勧告するという仕組みの方が、顧客本位の業務運営に関する原則の趣旨には適っていると思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、黒沼先生、どうぞ。
 
【黒沼委員】 
 私からは事務局の用意した論点ごとに簡単に意見を述べていきたいと思います。
 
 まず論点1ですけれども、もう少し個別に検討していく必要があるのではないかと思いました。私が気になったのは、金融商品の提案は類似商品や代替商品の内容と比較しながら行うことということなのですが、これは、同じ業者が提供できる商品の間で比較することを考えているのか、そうでないのかということがはっきりしない。後者だとすると、守れるものと守れないものがあるだろうと思うのです。個別に守れるものもあれば、そうでないものがあったときに、じゃあ、それは全体として遵守しているといえるのか、あるいはしていないということになるのか。おそらく理想的なものは、守れるようなものは守ってください、遵守すると言った以上は、守れるものは守ると。そういうことになのであれば、もう少し具体的に書き込んでいく必要があるのではないかと思いました。
 
 論点2ですけれども、これは現在の原則を遵守すると言いながら遵守していない業者がいるというのは非常に残念なことで、手数料の開示をきちんと行わせるために共通フォーマットを採用するということに賛成です。
 
 論点3については、EUの取り組みはかなり先進的なもので、私も鹿毛委員が言われたように、本来は経営戦略の問題ではないかと思うのです。しかし、そうは言っていられない。EUのように特定の金融商品を推奨するインセンティブを与えるような報酬体系の設定を禁止するということまでいくのかどうかというのをまずきちんと検討する必要があると思います。現在提案されているものは、いわば開示をせよというもので、これだけでは遵守するということにはならないわけで、これだけではEUと同じような状態にはならないと思います。
 
 また、フィデューシャリー・デューティーを法的な義務と捉えて、きちんと行為規制のようなものをつくっていくとしたときに、ここに書いてある内容が実現できるかというと、私は、アメリカのフィデューシャリー・デューティーからこういうものが細分化して出てくるという考え方はやや疑問に思っていまして、むしろ、適合性原則に関する体制整備義務として規定を設けるということは考えられるのではないかと思いました。
 
 論点4については賛成です。
 
 それから、論点5についてですけれども、共通フォーマットを作るというのは賛成ですが、これはアメリカではどうも業務ごとに作っていて、EUでは商品ごとに作成することを求めているようですが、参考にするならば、やはりこれは商品ごとに必要なのではないかと思います。
 
 最後に論点6ですけれども、皆さんおっしゃられるように、不芳事例の実名公表の点を除いて、顧客本位の業務運営を法的義務に高めないような場合には、できるぎりぎりのことはここに書いてあるのかなと思いましたので、その限りで賛成です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、神作委員、高田委員、福田委員、佃委員の順にご発言いただければと思います。多少の延長をお認めいただければと思います。神作先生、どうぞ。
 
【神作委員】 
 ありがとうございます。顧客本位のアドバイスと情報提供の大前提として、原則6、これがまさに最も中核的なプリンシプルであると思います。原則6は、資料の8ページに掲げていただいておりますけれども、「顧客の資産状況等を的確に把握して、ふさわしい組成、販売、それから推奨等を行う」とあります。このことが、顧客本位のアドバイスと情報提供をするための大前提であり、顧客情報の的確な把握をどのように実質化するかということが大変重要であると思います。本日、資料1のご説明の中で幾つかのヒントをいただいたように思います。
 
 まず第1は、適合性報告書のようなアイデアでありますけれども、これは既に現在の顧客本位の業務運営に関する原則におきましても、原則の5の注1のところで、なぜあなたにこのような商品を推奨するのかということについて、顧客のニーズや意向を踏まえたものであると判断する理由、これを含む情報提供を求めています。これをさらに制度化していく、実際にこれが実効的に行われるようにしていくという方向は一つ考えられると思います。
 
 しかし、他方、加藤委員もご指摘されたように、顧客の情報を網羅的・的確に取得することは、現実問題としては非常に難しいことであると思います。日本の場合には、ハードローとしてもノウ・ユア・カスタマーについてきちんとした手当てがなされているとは言えないと思いますので、ソフトロー、とりわけ顧客本位の業務運営に関する原則のような非法的な規範に依存するところがとりわけ大きいと思います。したがって、ここのところは、適合性報告書のような制度を実効化していくことを考えることは有益であると思われます。
 
 もう一つヒントになると思いましたのは、論点4で触れられているプロダクトガバナンス、商品ガバナンスの考え方です。この考え方は、そもそもは、特に製販分離の中で、市場、消費者、あるいは投資家の本当のニーズと金融商品・サービスの組成者との間に距離が生じてしまっていると、このような問題意識に根づき、投資者や市場のニーズを販売者を仲立ちに組成者にフィードバックさせるというアイデアだと思います。顧客について必ずしも十分な情報を得られないときは、せめて一定の商品はどのようなニーズや属性をもつ顧客に向けられたものであるかを明確にしていただく。そして、そのようなターゲットとなる顧客のカテゴリーに入るかどうかということについては、きちんとチェックをしていただく。このような形で適合性の原則の実質化を進めていくことができればいいかなと思いました。
 
 第2点は、これは多くの委員の方が発言されたことですけれども、顧客のベストインタレストに反するような、合致しないような行動をするインセンティブ、こういったものを広い意味での利益相反と捉えて、開示、報酬体系、あるいは商品開発や販売の仕組み等を構築していくことが重要です。これは論点の2と論点の3、14ページと17ページのところで、これのさらに実質化、具体化するという提案がなされておりますけれども、私はこの方向に賛成でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、高田委員、お願いします。
 
【高田委員】 
 事務局のご説明、参考人の方々のご説明、どうもありがとうございました。顧客本位の業務運営を行うに際しましては、顧客本位のアドバイスと情報提供を行うということは非常に重要だと私も思います。そういう中でも、ファイナンシャル・アドバイザーというのは、金融リテラシーの向上に寄与するという観点から非常に重要であると思いますし、また既にアメリカやイギリスなんかで先行の事例もあることですので、そういう事例をよく研究する必要があると思います。
 
 ただ一方で、日本についてはこれから定着すべき様々な検討が必要でもありますし、また、今の日本の環境の中でどのようなインベスメント・チェーンをつくっていくかということがやっぱり重要じゃないかなと思います。ファイナンシャル・アドバイザー、例えば独立ファイナンシャル・アドバイザーという言葉があるとすると、金融機関から独立したというふうにはなるわけですけれども、ただ、金融機関と独立ファイナンシャル・アドバイザーが二元的に対置するということではなくて、あくまでもそれぞれが金融サービス全体を向上して、そのインベスメント・チェーンが生まれるということがやっぱり重要であると思いますので、そういう意味からいいますと、幅広い金融サービスの選択肢を広げていくというんでしょうか、例えばさまざまな金融業界との連携でありますとか、また地域との連携というんでしょうか、そういうようなものがやっぱり重要になるんじゃないかと思います。
 
 そういうサービスの育成には、利用のメリットに対して幅広い認識が必要になると思いますので、そういった対応というんでしょうか、すなわち、いろんな意味でのフィーも、手数料も含めた顧客の選択の幅が広がってサービス全体がよくなるという、そういうエコシステムができるというのがやっぱり重要ではないかと思います。
 
 ただ、こうした対応というのは英米においてはこれまで随分広がってきたわけでありますけれども、どうしても欧州での長年にわたるマーケットにおける資産市場の成功体験でありますとか、また一方で、金利の水準があるという中で考えますと、今の日本の場合、必ずしもそれが十分な状況ではないというのも実際だと思います。ただ一方で、これから高齢化、個人の金融資産の重要性というものがある中でいうと、ますますこういうような業務が重要になってくるということだと思います。
 
 足元のこれだけ非常にストレスがかかったコロナショックの中の状況ということを考えますと、私はやっぱり今こそ、こういう資産運用というんでしょうか、また、従来から議論されてまいりました長期・積立・分散というんでしょうか、こうした動きを広めていく、金融リテラシーを高めていく必要があります。そういう意味からしても、こういうファイナンシャル・アドバイザーの役目というようなものを通じて、全体的なレベル向上、上げていくということがやっぱり重要だと思います。私は、特にこういう観点こそ、これから報告をまとめるに当たって、そういう視点を重要視した取組というんでしょうか、また我々も、そういう当局、もしくは官民含めたところの取組が重要なのではないかなと改めて感じる次第であります。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。では、福田先生、どうぞ。
 
【福田委員】 
 事務局の資料、あるいは業界の方々、ご丁寧な説明をありがとうございます。事務局の資料に言及されているように、顧客本位のアドバイス、あるいはわかりやすい情報提供、そのとおりだと思いますし、購入後いろんな形でアドバイスをするべきだとか、独立のアドバイザーの重要性の指摘というのはそのとおりだと思います。
 
 ただ、基本的にご説明あったのは、便益のほうが中心だったと思います。経済学者は便益とコストのバランスでどういう制度設計が望ましいかということを考えるわけです。やはりそういう便益を丁寧に提供すればするほど当然コストもかかるということとのバランスでとう考えるかという視点というのは考えるべきなんだろうと思います。当然、もちろん手数料の開示、コストがかかっていれば、それは正当なフィーですので、業界の方々だってボランティアでやっているわけではありませんので、そういう非常に手間のかかる情報提供をすれば、それはそれでフィーという形ではね返ってくることになりますの。そういうバランスをどう考えるかという視点というのはやっぱり大事なんだろうとは思います。
 
 もちろん富裕層の方々であれば、高いフィーを払っていろんな形で投資するということはできるんだとは思います。けれども、おそらく一般の投資家が負担できるフィーというのは非常に限られているという視点に立てば、どういうふうに便益の提供を考えるかということというのは大事なんだろうとは思います。
 
 そういった観点で、ご説明でもご指摘ありましたけれども、ロボアドバイザーの役割というのはこれからますます重要になっていくと思いますし、そうした流れの中でコストを削減するという問題を位置づけていくかという視点というのは大事だとは思います。
 
 ただ、若干、ロボアドバイザーって、1種類しかないような感じで取り扱っていますけれども、実態としては様々です。ほとんど無料で利用できるものもあれば、それなりにフィーをとってやっているロボアドバイザーもあります。そういう意味では、ロボアドといっても一括りにはなかなかできない実態もあるので、そういう問題ももう少し突っ込んで考えてもらいたいというふうには個人的には思いました。
 
 どんどんテクノロジーが進展しても、個人的にはやっぱり人間の役割はそれなりには大事だろうとは思っています。1つは、ロボアドバイザーというのは、感情のないものですし、投資判断としてはある意味で適していますけれども、投資家の人間自体はいろんな心理を持っていて、どうしてこんなロボアドバイザーがこういう投資をしたんだということに対する不満とか、そういうものがいろいろ生まれてきます。そうした中で、そういった不満に対してどう対処するか、それには人間の役割も重要になってくると思います。
 
 それから、ロボアドバイザーは基本的にはビッグデータを使ったものです。けれども、今回のコロナの問題なんかも含めて、ビッグデータにないイベントが起こったときになかなか対処できないということもあります。そういったときには人間の役割というのはかなり大事だろうとは思います。
 
 ロボアドバイザーでコストを下げると同時に、人間のフィーもとりながらも、しかも、それをどれだけ安価に提供するかという問題は今後重要となっていくと思います。
 
 そのときに、情報って大きく分けて2種類あって、個別に説明しなきゃいけない問題とみんなに共通の問題というのはかなりあると思います。例えば今マーケットが下がっているという問題、みんな、多くの投資家がパニックにはなっているとは思いますけれども、それを一人一人に個別に説明すれば、それは手間もかかるし、コストもかかるわけで、全体としてはフィーは高くなってしまうわけです。このため、共通の問題は、個別ではなく共通に説明するほうが当然効率的にはなるということです。
 
 だた、共通の情報の提供というのは、ある意味で公共財の問題もありまして、業者の人々はそれを提供するインセンティブが少ない。なぜなら、コストをかけてみんなのために問題を提供すると、その情報をフリーライドされてしまうという問題があるからです。このため、コストを下げるという問題を、もう少し全体のフレームワークの中で共通の情報というものを個々に提供するんじゃなくて、しかし公共財という形で提供するような形の仕組みをつくっていけば、もう少し非常にいろんな情報を非常に安価につくるというようなこともできるんじゃないかなとは思います。
 
 最後に、こういうワーキング・グループの大きな目的というのは、貯蓄から投資へということだと理解しています。けれども、日本の不幸な歴史というのは、だんだん貯蓄から投資へ進んでいったときに大体マーケットクラッシュがこれまで何回も起こって、それで貯蓄から投資への流れというのがストップしてしまったという歴史があります。今回もそうならないように、このワーキングの皆様も含めて、ぜひいろんな形で、業界の方々も含めて努力していただければと思います。
 
 最後は蛇足でしたけれども、以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、最後になりましたが、佃委員、どうぞ。
 
【佃委員】 
 どうもありがとうございます。6つの論点、基本的にはこの方向性で素晴らしいご提案をいただいたと思います。その中でコメントを幾つかだけさせていただきたいと思いますけれども、まず論点の4、組成会社によるマトリクスの話がございました。これに関して、アイデア的には非常にすばらしいと思います。一方で、こちらのほうの20ページにも書かれてありますとおり、大手の組成会社のほとんどは販売対象として想定する顧客属性を特定していないという現実もあって、これは日本では販売会社が非常に強い影響力を持っているため、メガにしろ、あるいは大手の証券会社にしろ、販売会社の販売ニーズを組成会社がきっちりと咀嚼しながら商品開発してきたという歴史もあると思います。
 
 そうした中で、例えばここにあるようなマトリクスを実際に導入する際には、ここの縦横マトリクスにある例えば難易度であるとか、価格変動リスクというのも、それぞれの会社によって定義も違えば、水準感も違うといったところがありますので、現実的にワークさせるためには、やはり金融庁さんで横串を通す作業が必要になるものと考えます。それができれば、組成会社に顧客属性を想定していただく方向性は、長期的に考えると極めて大事な取組になるものと考えます。
 
 それから、論点の5番目のところで、これは23ページですけれども、一番下のところにありました法定書類について、負担軽減も検討すべきと考えられると。これはこのとおりだと考えております。金融機関の経営者にとって、かかる負担やコストを上回るリターンがないとサステナブルじゃないといったところがありますので、今回の取組を通じて、コスト負担ばかりが増える話は、果たして顧客本位になっていくのであろうかといった点は検討すべきじゃないかなと考えます。
 
 論点6、28ページのところにありますけれども、追加的に考える対応のところで、黒い丸が幾つかありますけれども、皆さんご指摘されているとおり、リストから削除する等の対応というのはやはり慎重に考えるべきじゃないかなと考えます。
 
 一方で、その上にある共通のフォーマットを設け、比較可能性を高めることは、実際コーポレートガバナンス・コードに関する報告書が導入されてから5年ぐらいになると思いますが、最初はコピー・アンド・ペーストみたいな報告書が大量にあったと思うんですが、その中で、年を経るに従って、各社独自の報告書の内容になっていって、その中でベストプラクティスも出てくるようになったことを踏まえると、このような取組をされるといいんじゃないかなと考えます。
 
 最後に1点、先ほど福田先生からもございましたけれども、やはり金融機関が顧客本位の業務運営に関する原則を守ることが目的になることはやっぱり避けるべきじゃないかなと考えます。大目的はあくまでも国民の貯蓄から資産形成への動きを促進させること。これを達成するのがそもそもの目的であるので、それに資するかどうかといった観点から各論点を詰めていただければと思います。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。本日は時間をかなり超過してしまいまして、大変申しわけございませんでしたけれども、これまでとさせていただきます。
 
 次回以降も顧客本位の業務運営のあり方に関して議論する予定です。
 
 本日も非常に積極的、また多角的なご意見をいただきまして、ありがとうございました。もし何か追加でお気づきの点がありましたら、ぜひ事務局までメール等でお知らせいただければありがたく存じます。
 
 次回以降の日程につきましては、おそらく会議のやり方等も含めて、また後日事務局からご案内をさせていただきます。
 
 それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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