金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第30回)議事録

 

1.日時:

令和2年7月15日(水)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室






【神田座長】
 おはようございます。定刻になりましたので、始めさせていただきます。

 市場ワーキング・グループの第30回目の会合になります。皆様方にはお忙しいところ御参加いただきまして、ありがとうございます。

 本日の会合も、前回に引き続き、オンラインでの開催とさせていただき、一般傍聴はなしとさせていただきます。メディアの関係者の方々には、金融庁内の別室にて傍聴をいただきます。

 議事録は通常どおり作成して、金融庁のホームページにて公開させていただく予定でございます。

 会議を始める前に、2点、注意事項がございます。

 御発言をされない間はマイクをミュートの設定でお願いいたします。御発言の際にはミュートを解除して、マイクをオンにしていただいて御発言をしていただいて、御発言が終わられましたら、またミュートを設定していただけますようお願いいたします。

 次に、発言御希望の方は、チャットの機能で全員宛てにお名前と、あるいは、協会名とかの組織名を御入力いただけるとありがたく存じます。そちらを確認して、私のほうから御指名させていただきます。御自身のお名前を名のった上で御発言いただければ、ありがたく存じます。

 前回の会議では、事務局というか主催者端末宛てのみにチャットを送られた方がいらっしゃったのですけれども、私のPCで見れませんので、必ず全員宛てにチャットを送っていただければありがたく存じます。

 それでは、本日の議論に移りたいと思います。このワーキング・グループでは、昨年の10月から顧客本位の業務運営をテーマに議論を重ねてまいりましたが、本日はこれまでの議論を取りまとめた報告書の案について御審議をお願いいただきます。

まず、事務局から事務局提出資料について御説明をいただき、その後、皆様方から御意見等をいただきたいと思います。それでは、太田原さん、よろしくお願いいたします。

【太田原市場課長】
 それでは、「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書(案)-顧客本位の業務運営の進展に向けて-」について概要を説明いたします。

 1ページ目、「はじめに」で経緯を記載しております。金融審議会市場ワーキング・グループは2016年12月に「顧客本位の業務運営に関する原則」の策定を提言し、これを受けて、2017年3月に「原則」が策定・公表されました。その原則では、留意事項において、金融事業者の取組状況や原則を取巻く環境の変化を踏まえ、必要に応じ見直しの検討を行うとされておりました。また、高齢化が急速に進んでおります。こうした状況を踏まえ、原則の策定後3年が経過した現在、当ワーキング・グループでは、これまでの進捗を検証し、海外の規制動向も参考にしつつ、顧客本位の業務運営の更なる進展に向けた新たな方策や超高齢社会における金融業務の在り方について検討を行った、としております。

 2ページです。Ⅰ.顧客本位の業務運営の更なる進展に向けた方策、1.で基本的な考え方を記載しております。原則は、いわゆるプリンシプルベース・アプローチを採用しております。原則が策定されて3年余りが経過し、この間、原則を採択し、顧客本位の業務運営に取り組む金融事業者は着実に増加している。投資信託の平均保有期間の長期化や積立投資信託の顧客数の増加など、顧客本位の業務の運営は金融事業者において一定程度浸透してきている。しかしながら、原則の採択自体を目的化しているかのような動きも見られる。金融事業者の取組が顧客による金融事業者の選別につながっているとは言い難い状況にある。さらに、不適切な事例がいまだに見受けられる。

 こうした現状を踏まえれば、金融事業者のベスト・プラクティスの実績を目指す原則の具体的内容の充実や新たな方策の導入により、プリンシプルベースによる対応の実効性をより一層高めていくことが望まれる。一方で、ベスト・プラクティスの対極にある不適切な事例に対しては、ルールの適用についての明確化を図ることが必要と考えられる。このように、プリンシプルベースの対応を基本としつつ、ルールベースの対応を適切に組み合わせることにより、顧客本位の業務運営の更なる進展を図るべきである、としております。

 3ページです。顧客本位の業務運営に関する原則の実効性の評価として、①で原則の具体的内容の充実を掲げています。ア)顧客本位の商品提案力の向上と適切なフォローアップとして、顧客のライフプラン等を踏まえて、金融商品・サービスを提案することが重要である。業法の枠を超えて横断的に他の類似・代替商品との比較が行われることも重要である。4ページに行きまして、長期的な視点にも配慮した適切なフォローアップを行うことが重要である、という指摘をしています。

 以上を踏まえ、原則6の注1として、4ページにあります内容を追加することが適当と考えられる、としております。

 イ)組成会社による想定顧客の公表です。想定顧客の情報は、販売会社が顧客に販売・推奨等を行う商品の選定理由になると共に、顧客が購入しようとしている商品が自身に合っているかを判断する材料にもなる。そこで、原則6と原則5の注として、5ページの内容を追加することが適当と考えられる、としております。

 次に、ウ)顧客にとって分かりやすい情報提供の在り方です。手数料の構造や従業員の業績評価体系に起因する利益相反を含めて重要な情報が強調されるとともに、顧客において他の同種の商品との比較が容易になるよう、メリハリをつけた分かりやすい情報提供の在り方を検討することが重要である。6ページに行きまして、このような観点からは、例えば顧客にとって分かりやすく、各業法の枠を超えて多様な商品を比較することが容易となるように配意した重要情報シートが積極的に用いられることが望ましい。そして、提供すべき情報に応じた質問例も記載することが適当と考えられる。

 以上を踏まえ、原則5の注4、注5を7ページにあるように変更することが適当と考えられる、としております。

 その下ですが、なお、現在、契約締結前交付書面や目論見書等の法定書類について、電子提供を行う場合には顧客の承諾又は同意が必要であるが、重要情報シート等を新たに用いて、かつ、契約締結前交付書面の主な内容を顧客に説明した場合には、紙での交付を要しないことを検討することが適当と考えられる。ただし、この場合も、法定書類のURL、QRコードを明示することや、顧客の求めがある場合には紙での交付を行うことが必要である、としております。

 エ)従業員の業務の支援・検証を行うための体制です。原則7に注を設け、金融事業者の原則に関する取組について、関係する従業員に周知徹底を図ると共に、業務の質の担保・向上を図る観点から、これを支援・検証するための体制を整備することが期待される、としております。

 8ページ、②原則の一層の浸透・定着に向けた方策。ア)金融事業者の取組の「見える化」です。取組方針として、原則の文言を若干変えた程度の内容を策定・公表している金融事業者が散見されるほか、各原則の中で実施しない項目があるにもかかわらず、その理由や代替策の説明はほとんどなされていないのが現状である。また、金融庁や金融事業者の取組について、顧客の認知度が低く、金融事業者の選択にあまり活用されていないという問題も見受けられる。そこで、原則2~7(これらに付されている(注)も含む)に示された項目ごとに実施の有無を検証し、その内容が分かるように明示することが望ましい。また、今後、金融庁において原則の採択事業者のリストを公表する際には、各金融事業者の原則の取組方針や、これに係る取組状況を項目ごとに比較できるようにすることが適当である、としております。

 9ページ、イ)顧客の主体的な行動のための環境整備についてです。顧客の主体的な行動を促す観点から、利用者側の金融リテラシーの向上に向けた当局及び関係団体・事業者の更なる取組が期待される。今後は新型コロナウイルスの影響を踏まえ、ICTを活用したウェブ事業やデジタルコンテンツの提供、オンラインイベントの開催などによって、引き続き、金融リテラシーの向上に注力していくことが期待される。また、顧客目線で金融事業者を比較するに当たっては、顧客の主体的な行動をサポートする存在として、顧客の側に立ったアドバイザーの役割も重要である、としております。

 次に、(2)不適切な販売事例に対する監督上の対応の強化です。金融庁の調査、モニタリングや証券取引等監視委員会の検査においても、商品の特徴やリスクを十分に把握しないまま行われた不正確又は不十分な説明による勧誘、顧客の属性・意向を軽視した営業員主導による取引の勧誘、回転売買などの販売手数料に過度に依存した取引の勧誘が確認されております。

 10ページの②ですが、上記のような不適当・不誠実な行為をより効果的に抑制していくためには、まず、適合性の原則の内容の明確化を図ることが重要である。金融商品・サービスの勧誘を行う金融事業者には、(ⅰ)金融商品・サービスの内容を適切に把握すること。(ⅱ)顧客の属性・取引目的を的確に把握すること。(ⅲ)金融商品・サービスの内容が顧客の属性・取引目的に適合することの合理的根拠を持つことが求められ、これらを履行しないで行う勧誘行為は適合性の原則の観点から適当ではないと考えられる。これらの履行を確保するための体制の整備に関し、(ⅰ)、(ⅲ)については監督指針において、監督上の目線が示されていない。このため、監督指針において個別の金融商品のリスク、リターン、コスト等の情報を十分に分析・特定し、適切に顧客に説明できる体制を整備すること。個別の金融商品や当該顧客との一連の取引の頻度・金額が、合理的根拠があるかについて検討・評価を行うことなどが求められる旨を明確化することが適当と考えられる、としております。

 また、(ⅱ)顧客の属性・取引目的の把握に関し、監督指針において、金融事業者は顧客の申出の有無に関わらず、顧客の投資目的のみならず、資産・収入の状況が変化したことを把握した場合にも速やかに登録内容の変更を行うことが求められる旨を明確にすることが適当と考えられる、としております。

 ③では、顧客との一連の取引の経過を見たときに、顧客の属性や投資目的に適合しない高頻度の金融商品の売買を勧誘し、顧客に過度の手数料を負担させる行為などの不適当・不誠実と言える投資勧誘行為を例示することが適当と考えられる、としております。

 12ページからⅡ.超高齢社会における金融業務の在り方についてです。金融事業者においても、高齢顧客、特に認知判断能力の低下した高齢顧客に対する対応を強化・改善していくことが求められている。金融ジェロントロジー等の学問的見地も取り入れ、金融ビジネスのサステナビリティにも留意しつつ、高齢顧客の様々な課題やニーズに対応し、顧客本位の業務運営に取り組んでいくことが金融事業者には期待される、としております。

 2.(1)金融取引の代理の在り方についてです。代理による手続が認められないといった事例が多く指摘されている。本人であっても預金の引出し等が認められないことも指摘されている。しかしながら、明らかに本人のための支出であり、直接振り込むなど手続が担保されているのであれば、認知判断能力の低下した高齢顧客本人のほか、代理人であっても手続を認めるなどの柔軟な対応を行っていくことが顧客の利便性の観点からは望ましい。各金融機関がより顧客に寄り添った対応を行いやすくなるよう、業界団体における指針の策定が期待される、としております。

 (2)金融機関と福祉関係機関等との連携強化です。一部の金融機関では、医療福祉関係者との相互研修や社会福祉協議会や地域包括支援センター、地域連携ネットワークの中核機関などの福祉関係機関との連携、高齢者を支える地域のネットワークへの参加等が行われている。さらに金融業界全体として、金融機関は地域社会の主要な構成員との視点から、関係機関と協力しながら認知判断能力の低下した顧客を支援していくことが期待されている。

 こうした取組を支援するため、今後、金融業界において、行政や福祉関係機関等と協力しつつ、具体的な連携内容について指針を策定していくことが重要と考えられる。この指針には、顧客のどのような兆候・行動を認識した場合に連携を行っていくべきかについても例示されることが期待される。

 福祉関係機関等と連携して高齢顧客を支援していく際には、本人の意思・意向を尊重した対応を取ることが原則である。しかしながら、例えば、顧客に認知判断能力の低下があると思われる兆候・行動が見られ、かつその状態を放置すれば顧客財産の管理に重大な支障をきたすような場合で、緊急性が高いと思われる場合など、例外的ケースにおいては、個人情報保護法との関係においても顧客の必要情報を提供できる場合もあると考えられる。業界団体においては、こうした例外的ケースがあることも考慮に入れて、先述した指針を策定していくことが期待される、としております。

 次に、(3)金融業界における好事例の集約・還元と指針策定です。業界全体のレベルアップを図るため、以下の事項について、業界の好事例を集約・還元することなどが有効と考えられるとして、①高齢者のニーズに応える金融商品・サービス等、②認知判断能力の低下に備えた事前の取組、③高齢者の相談窓口の案内、④金融商品販売後のフォローアップを掲げております。

 16ページです。(4)デジタル技術を活用した柔軟な顧客対応についてです。現状、金融商品取引業者等の金融商品販売時における高齢顧客対応は、一定の年齢等を目安として画一的な対応となっている可能性がある。未来投資会議において、規制の精緻化として、現在、金融庁と関係機関が連携した研究が進められている。今後、高齢者ごとの認知判断能力に応じた対応や、本人の状況から見て不相応な取引の検知など、高齢者の能力、状況に応じたきめ細かな対応が可能となることが期待される、としております。

 (5)金融契約の照会システムについてです。金融資産を有する者が死亡した場合や、金融資産を有する者の認知判断能力が低下した場合、その遺族や家族において、本人がどの金融機関とどのような取引を行っているか分からないおそれがあり、証券保管振替機構や業界団体においては、積極的に制度周知を図っていくことが望まれる。また、保険などの証券以外の分野においても、既存の取組やコストも勘案しつつ、こうした仕組みの導入について検討していくことが期待される、としております。

 最後、17ページ、「おわりに」で締めの言葉を記載しています。

 なお、重要情報シートにつきましては、前回の委員からの御指摘などを踏まえ、例えば、リスクという言葉を分かりやすくするなどの修正を加えています。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、今、御説明いただきましたことを踏まえて、委員の皆様方から御質問、あるいは御意見をお出しいただければと存じます。前半と後半と2部構成ではあるのかもしれませんけれども、どの点についてでも御質問、御意見をお出しいただければと思います。いつものように、多くの委員の皆様方から御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間としては5分を目安としていただければありがたく存じます。4分を過ぎますと、事務局から発言時間の残りが1分である旨のチャットが全員宛てに送付されますので、チャット上のメッセージにも御留意、御参考にしていただきながら、発言時間をお考えいただければありがたく存じます。

 それでは、どなたからでも結構ですけれども、御質問、御意見はいかがでしょうか。今日は途中で退席の申出をいただいている方に上田委員がいらっしゃいますが、今、上柳先生から御希望があったと伺いましたので、上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
 恐れ入ります。上田委員が先でも結構ですが。1つ目は、修文も含めてお願いしたいんですが、報告書(案)で言いますと、6ページ辺り、重要情報シートに関する部分です。注11にありますように、これから各団体も含めて検討が進むということで、その中身次第かもしれませんけれども、私はいわゆる想定最大損失、つまりリスク、シートの案で言うと、(その他)というところになるのかも分かりませんけれども、どういうことが想定されるのか、その可能性がどの程度あるのかとか、あるいは、解約の場合も、解約条件だけではなく解約した場合に返還額がどのぐらいになるのかということについて明記されるなり、あるいは、対話が促されるようになることが、少なくとも一部の商品については極めて重要じゃないかと思っております。ということで、そのような具体的な項目の記載を充実できればと思います。あるいは、注11のところに「関係団体において」とありますけれども、消費者なり、あるいは、関係専門家の意見も聞きながらと、入れていただけるとありがたいと思います。

 あとは、修文まで必要ということではありませんけれども、7ページの法定書面の電子交付については、いろいろ留意しながらやる必要があるということを再度申し上げたいと思います。

 さらに、10ページ辺りの適合性原則の内容の明確化、監督指針に10ページの2つのポツにあるようなことをきちんと書くということは大変重要、あるいは、歓迎されることであると思います。けれども、私の考えとしては、これは法令に上げてもよいのではないかと思っております。

 最後ですけれども、13ページの金融機関と福祉関係機関等との連携強化、これからと言いますか、現在の状況に鑑み、大変大事なところだと思います。こういう取組をさらに促進するようなベストプラクティスを紹介するであるとか、あるいは、場合によっては関係部署、官庁と協力の上、モデル事業に一定の資源を投入するとか、そういうことも考えられてよいのではないかと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 上田委員、いらっしゃいましたら、今日途中退席とされておりますので、もし御意見があれば御発言いただければと思います。

【上田委員】
 ありがとうございます。

 まず、このような立派な報告書をまとめていただいてありがとうございました。重要シートを含めまして、全般的な内容、方向性については異論ございません。これまでの議論を反映されたものと思っております。

 一方で、これを実務に落としたときにどうかと思う点がありましたので、それに関連してコメントをさせてください。今回の内容は、エンフォースメントの在り方が変わろうとしているかと思います。従来の完全にプリンシプルベースのものから、ルールベースを組み込むということなんですが、その際に、エンフォースメントの強さというものについて、丁寧に共有していく必要があると思います。これはコーポレートガバナンス・コードでもよくあるとコメントしたことがあるんですが、何となくコンプライになってしまうおそれがあります。

 コンプライの程度感というのが難しくて、具体的に言いますと、例えば、重要情報シートについて、全扱い商品を対象とするのか、あるいは、一部の売れ筋の幾つかのものを対象とするのか等々。実務上、これは実際にいろいろ聞いていますと、システム対応等の負担も大きいということなので、それをアップデートも含めるとどうするのかとかありますので、その辺りの濃淡について、今後は実務をもっと見ていく必要があるのではないかと思っております。

 あと、フォローアップ等のところでありました、顧客意向を確認した上でといったところについて、お客さんによっては、販社に情報を出したがらないお客さんもいらっしゃるということでもありますので、そういったところをどうするのか等を含めて、コストがかかる取組でもありますので、実効性を高めるために、どの辺りでベストプラクティスなのかといったところの共有は必要なのかと思います。

 そういう意味で、金融庁さんが今後まとめられる、あるいは、取り組まれるということで、原則の各金融機関による取組状況の確認みたいなところを少し精緻化されるということですので、コンプライの適切さの確認も含めて、一般の人にも見える形、そして、今後のモニタリング等を通じて、ベストプラクティスが何なのかということを金融機関と共有をということが必要なのかと思った次第です。

 以上でございます。先に当てていただいてありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、ほかの委員の皆様方、いかがでしょうか。

【林田委員】
 かなり多くの委員の方が発言希望を出しておられるようですけれども。

【神田座長】
 そうですね。加藤委員、林田委員、野尻委員の順で、まずはお願いしたいと思います。加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】
 加藤です。ありがとうございました。

 まず顧客属性の位置付けについて、意見を述べます。顧客属性については、これまでも組成会社が金融商品を組成する際に特定することが求められていたわけですけれども、今回から、それを公表することまで求めるとしたことは適切であると思います。ある金融商品を勧められた場合に、その商品がどういった人を念頭に置いて作られているのかを顧客も知ることができるので、その金融商品の適合性を顧客が自ら判断することの助けになると思います。

 ただ、これまでは顧客属性を金融機関の内部で特定すれば足りたわけですけれども、今後はこれを一般に公表することも求められます。そうすると、顧客属性の特定の仕方というか、区分というものが非常に重要になってくると思います。特に今回の報告書(案)では、業界横断的な商品の推奨も求めるということが書かれているわけですから、自主規制団体を中心にして、顧客にとっての分かりやすさを考えながら、顧客属性のある程度の分類を考えていただくことが適切であると思います。

 2点目も顧客属性に関連しますが、報告書(案)の5ページの注9の記述について、意見を述べます。注9は、組成会社が特定する顧客属性とは決してその顧客属性に所属している人にしか、ある商品を売ってはいけないといった狭義の適合性の原則を定めたものではないことを示していると理解しています。組成会社が特定する顧客属性と適合性の原則の関係については別の理解の仕方もあるかと思いますが、注9の記述は、ある顧客属性に完全には当てはまらない人に商品を売る際には、その人の資産構成を踏まえた上で販売しなければならない点を示しているという点で非常に重要であると思います。そうすると、注9の記述を残す場合には、ポートフォリオ全体に関するアドバイスの重要性をもう少し強調してもよいと思います。逆に言えば、そのようなアドバイスができないのであれば、組成会社が特定する顧客属性から外れた顧客に金融商品を販売することには慎重さが必要であると記述してもよいかもしれません。

 3点目ですが、報告書(案)の全体的な印象について感想を述べます。一読しますと、対面の販売を念頭に置いているのかという気がします。しかし、注13にありますとおり、必ずしも対面の販売だけではなくて、インターネット取引も念頭に置かれているということは理解しております。ただ、全体的な印象として、対面販売を中心に置かれているので、対象はそれに限らないということを本文のほうでも記載できればよいと思います。

 関連して気になっているのが、注6で言及されている金融サービス仲介業への原則の適用です。金融サービス仲介業については、今後、どのような形でサービスが提供されていくか分かりませんが、金融サービス仲介業者も顧客本位の業務運営に関する原則の対象に含まれることは明らかです。ただ、金融サービス仲介業者のサービスと原則の各規定との関係については、整理が必要です。例えば、新しく加わる原則6の注1というのは、「金融商品、サービスの販売推奨等」を対象とするものですが、金融サービス仲介業者の提供するサービスの中には、これまで想定されてきた「金融商品、サービスの販売推奨等」には上手くあてはまらないものが現れるかもしれません。今後のビジネスの発展に応じて、顧客本位の業務運営に関する原則の対象範囲の括り方についても、継続的に検討していく必要があると考えます。

 長くなりましたが、私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、林田委員いらっしゃったら、どうぞ。

【林田委員】
 ありがとうございます。前回のワーキングで、監督指針の見直しに関しまして、プリンシプルベースのアプローチの後退ではないかと疑問を示させていただいて、あまりほかの委員の御賛同を得られなかったのは残念だったのですけれども、報告書(案)を拝見いたしますと、2ページ目に「プリンシプルベースによる対応の実効性をより一層高めていくことが望まれる」とした上で、「プリンシプルベースの対応を基本とし、ルールベースの対応を適切に組み合わせる」と書かれております。今後もプリンシプルベースの対応を基本線に、顧客本位の業務運営の浸透を図っていくことを明記したと受け止めておりまして、大変結構だと思いました。

 ただ、今回、ルールベースでの対応をやや強化せざるを得なかった背景には、スルガ銀行やかんぽ生命の問題など、顧客の利益をないがしろにした対応が次々と明らかになりまして、プリンシプルに沿った対応を取ることで顧客に選ばれるといった金融機関も進化していくという理想が、一部の業者の心ない行為によって踏みにじられていたという残念な現実があると思います。ルールの強化というものは、今回は僅かなものであろうと思います。10ページにあるような監督指針の見直しというのは、言ってみれば、どれも言われなくてもやるべきことであります。ですから、規制強化の程度、つまりベクトルの長さについては、当否はいろいろとあると思いますけれども、ベクトルの方向については、私も決して望ましい向きではないと。不正の横行を踏まえたやむを得ない措置なんだと受け止めています。

 金融事業者は自ら襟を正さねば、どんどんルールが厳しくなると。また息苦しい規制の時代に戻りかねないということを各金融機関の経営陣はもとより、金融業務に携わる全ての方々が重く受け止めて、今後の業務運営の在り方を真剣に見つめ直していただくことを強くお願いしたいと思っています。

 それから、利益相反に関してなんですけれども、最近の私の体験で、少し話が違うんですけれども、ある通信のインターネットの申込みをしまして、NTTに頼みました。そうすると代理店にその話が行きまして、結局紹介されたプロバイダーはauのプロバイダーでした。何が起こっているのかと聞いたんですけれども、どうもそれぞれにキックバックの多い会社を選んでいるように思いました。それで、利益相反に関して、重要情報シートで触れておりますけれども、要は、一覧性のある形で、このサービスを選ぶとこういうメリット、このサービスを選ぶとこういうデメリットがあると、他の商品、あるいは、業者、今は販売チャネルも多様化していますので、それが顧客の利益に資するという取組が必要なんじゃないかと感じました。

 それから、最後、言葉尻の問題で恐縮なんですが、「おわりに」のところで、2段落目の最後に「望まれる」という表現があります。さんざん言ってきて、最後、何か望まれると非常に客観的、傍観者的な表現になっているのは、若干、責任感がないかという感じが私はしまして、当ワーキングとして、こういう対応を望みたいとか、もう少し強い言い方をしたほうがいいのではないかという気がいたしました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、野尻委員いらっしゃいましたら、よろしくお願いします。

【林田委員】
 聞こえましたか。

【上柳委員】
 よく聞こえました。

【林田委員】
 すいません、ありがとうございました。

【神田座長】
 では、野尻委員、お願いいたします。

【野尻委員】
 ありがとうございます。野尻です。

 まず、全体として、私としては賛同できる内容になってきたと思っております。コロナが大変な中で、事務方の皆さんの御努力に本当に感謝いたします。私のほうから5つほど、確認というか質問をさせていただきたいと思っています。

 まず、1つ目なんですが、4ページ目の原則6における注1の3項目めになります。文章としては、「長期的な視点にも配慮したフォローアップ」という表現が書かれているのですが、後段のほうでも通じるポイントとして、顧客の認知判断能力の変化という点もこのフォローアップの対象になるのかというところを確認させていただきたいと思います。これが1点目になります。

 2点目は、先ほども御質問のあったところかもしれませんが、6ページ目の下から5段目にミニマムスタンダードですとか比較可能性といった表現があって、この2つはなかなかバランスが取りにくいのではないかと危惧しています。ミニマムスタンダードが形骸化とか定型化になることを避けるべきであるという表現であるとすると、比較可能というのがある程度、そういったものも必要になってくる部分が出てくるのではないかと考えます。同じ金融商品について、金融機関によっては違う表現になっているということも、必ずしもいいことかどうかは顧客の目線で考えると断定できないのではないかと思います。この辺、今後、金融庁と業界のほうで詰めていかれることが注記には幾つか書かれていますので、その点はぜひ確認していただきたいと思います。

 3点目、8ページの7行目の原則の採択事業者リストの公表のところなんですが、ここにだけ「項目ごと」という表現が入っておりまして、これは原則ごとという意味で「項目」を使っていらっしゃるのか、注をそれぞれ1個ずつ分離して指摘をされているのか、ここが少し明確ではないと思いました。ここは、あえて項目とされた何か意味合いがあるのかという点になります。

 4点目、9ページの上から11行目、アドバイザーという言葉がここで初めて登場してくるんですが、文章の意味をずっと読んでいくと、簡単に言えば、金融事業者を比較する際にはアドバイザーの取組の見える化も重要なんだと、こういう文脈に読めるんですが、これでいくと、アドバイザーが投資助言業のように独立したものではなくて、金融事業者の所属するものを前提として、ここに議論されているように読めます。このところが確認をしたい点であります。アドバイザーも取組を見える化するのが望ましいというのであれば、それはそれで全然問題のないことというか納得できることではあるんですが、「金融事業者と比較する際に」と書かれていることで、どこまでをカバーしているのかは少し気になるところでありました。

 5つ目です。すいません、長くなりまして。12ページ目であります。高齢者の金融取引に関するところなんですが、小見出しですとか締めの言葉では、「金融取引の代理」という表現になっているんですが、例示は預金の引出しがほとんどになっております。改めて確認をさせていただきたいんですが、ここでの代理というのは預金の引出しを主に念頭に置いているのか、その他の金融取引、例えば、有価証券の売却等も含めた取引を念頭に置いているのかというところの確認です。

 以上5点、当然分かっていることだと言われることかもしれませんが、確認をいただければ助かります。

【神田座長】
 野尻委員、どうもありがとうございました。チャットの順番で言いますと、野村委員、駒村委員、永沢委員の順になりますので、野村委員いらっしゃいましたらどうぞ。

【野村委員】
 ありがとうございます。野村でございます。

 まずは、報告書の作成、誠にお疲れさまでございます。全部で報告書について4つほど、それから、シートについて1つ、コメント等させていただければと思います。

 まず、報告書のほうの1点目ですけれども、主に4ページに関することかと思います。先ほど来の御発言にも少し関係するかもしれませんが、ここで書いておられるライフプランに基づく提案やフォローアップ、これらいずれにしましても、顧客がどんなことを業者に期待するのか、望むのかということに係るところはあろうかと思います。これを頼みたい、あるいは、ここから先はあまり見せたくないというのは確かにあることかと思いまして、既に文面にも「顧客の意向を確認した上で」という一言が入っているのはそのとおりかと思いますが、「顧客の意向に基づき」くらいが良いかと思いました。

 2点目ですけれども、前回も申しましたが、法定書類の電子提供の推進には賛成でございます。その上で、今回、新しく入ってきます、重要情報シートのほうですけれども、これの交付方法はどうなのかというのを改めて思いました。これはデジタルなのか、紙なのかについて特段、制約等はないと理解しているのですが、これもぜひデジタルも構わない、ないしはデジタルありきぐらいの感じがよいかと。コロナ禍で非対面の重要性も改めていろいろと取りざたされているところかと思いますので、そこはクリアにしていただけるとよいのかと思いました。

 3点目ですけれども、監督指針のところでございます。監督指針というのは強いものだと認識しておりまして、書いておられる中で、とりわけ金融商品、サービスの内容は顧客の属性、取引目的に適合することの合理的な根拠を持つことという内容があるかと思います。合理的根拠というのは、解釈によって色々であり、ある意味、悩ましいところにもなり得ると思います。コンプライアンス意識が高い業者ほど、ここを非常に厳格に捉えたり、言うなれば過度に慎重な対応に、結果的につながってしまうと、そもそもやりたいことから外れてしまう可能性もあるかと思います。

 ですので、監督指針は非常に強いものだということを前提に、一体何が本当のところ回避したいものなのか、防止したいものなのかというところ、これがよく伝わるように、例示なのかもしれませんけれども、そこはクリアにしていただく形が大事なのかと思います。

 4点目でございますけれども、これは14ページ、15ページの高齢社会、高齢顧客のところでございます。金融商品、あるいは、顧客のニーズに対応するような商品、サービスの例示のところ、あるいは、フォローアップに関連するところかもしれませんが、どこかで「資産寿命の延伸」というキーワードを入れていただけるとよいと思います。これは高齢期の顧客のフォローアップの1つのポイントになるかと思いますし、金融商品、サービスを新しく導入するときの重要な目的というか、目指すところともなるかと思います。例えば、長寿化の時代において、資産寿命の延伸の観点も重要であるといった文言を入れていただくとよいかと思いました。

 シートについてのコメントも一遍に言ってしまってよろしいのでしょうか。個別商品に関するシートのところなのですが、これはリスクと運用実績という2点目のところで、求める開示内容はこういう感じなのかと思うのですけれども、何も前提条件なしにここだけ見ますと、保証されない、損失が生じるリスクという非常に怖い文言が立て続けに並んでいるわけです。収益も期待できるがリスクもあるという両輪であるという意味においては、収益も期待できるといったことも併せて書いていただけると、よりバランスが取れるのかと思います。このシートを目になさる方は、もともとその辺はご存じという前提なのかもしれませんが、金融商品に初めて接するという方もシートを目にされることもあろうかと思いますので、そういうバランスも必要かと思いました。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】
 野村委員、どうもありがとうございました。では、続きまして、駒村先生、いらっしゃいましたらどうぞ。

【駒村委員】
 駒村です。よろしくお願いいたします。3つほどコメントをさせていただきたいと思います。

 後半部分のⅡ、12ページ以降のところで、業界団体に指針策定を期待するという部分と、それから、金融業界と福祉関係者の連携、そして、それに関する指針を期待するという2種類の期待が記述されているわけですけれども、この辺については、行政からも必要な支援をしていただきたいと思いました。なかなか難しい分野だと思いますので、これまでにない部分もあると思いますので、そういうサポートも必要かと思いました。

 それから、14ページの上段にあるところですけれども、例えば、顧客に認知判断能力の低下があると思われる兆候、行動から例外的なケースまでにおいては、情報を提供できると書いてあるんですけれども、これはかなり個別の判断は難しいケースが多いのではないかと思います。あるいは、それぞれの金融機関が高齢者をケアしても、たとえば、自分の会社はこの高齢顧客には、金融商品を売らないと判断しても、別の会社なり、別の業界が不適切な取引をしており、この人を放置していたら、非常にまずいことになるのではないかという判断した場合、どうのようにすべきだろうかと思います。高齢顧客の財産を守るという意味で、自社だけではなくて他社の企業の動きも想像すると、このまま放置はまずいのではないかという判断もあり得ると思いますが、そうした時にどうすればよいか。ここについては、現実、実務では本当に難しい判断の部分が多いと思いますけれども、充実した指針を作っていかないといけない部分だろうと思いました。

 それから、資料4の記述フォーマットです。重要情報のフォーマットでありますけれども、これはこれまでのワーキングでも議論したわけですけれども、手数料や報酬行動をディスクローズするという項目が入ってきて、これについては、私も望ましいのではないかと発言しましたけれども、先日、イエール大学のデイリアン・ケインの論文を読んでいたら、ディスクローズのパラドックスみたいなことも条件次第では起き得るんだと。あまり細かいことをお話しする時間はありませんけれども、自分たちの報酬構造を顧客にディスクローズすることによって、かえってアドバイスにゆがみが出るというケースもあり得るということですので、重要情報シートが使われるようになった後、金融機関だけではなく、顧客側に対しても追加的な、どのように変化したのか、改善したのかを追加的に調査することが必要ではないかと思います。

 以上で発言を終わります。

【神田座長】
 駒村先生、ありがとうございました。次は永沢委員になるのですけれども、永沢委員、いらっしゃいますでしょうか。お願いします。

【永沢委員】
 ありがとうございます。永沢でございます。

 まず、このたびの報告書、コロナもありまして審議の時間が大変短い中、おまとめいただきましてありがとうございました。内容は、私も賛同できる内容と思っております。若干のコメント、それから、要望を述べさせていただきたいと思います。

 まず、前半部分の顧客本位の業務運営につきましては、かねてより金融機関の皆様から原則を具体的にどう実践するのかが分かりにくいというお話をいただいておりました。

【太田原市場課長】
 事務局です。島田委員のマイクが入ったり、入らなかったりが原因かどうかは分かりませんけれども、雑音が聞こえます。

【永沢委員】
 少々混線していても、発言させていただいてよろしいでしょうか。続けさせていただきます。

 このたび、具体的にどう実践するかを書きこんでいただきましたので、原則の分かる化が進んだと私は評価しております。

 また、商品を組成する金融事業者において、想定顧客を公表することをお願いした点につきましては、思い出話になってしまいますが、2015年頃の市場ワーキング・グループの席上だったと思いますが、同じことをお願いしましたときに、投信協会の方から自分たちは部品供給会社であって、想定顧客の設定は組立会社である販売会社の役割だと言われたことを思い出し、隔世の感があります。非常に大きな前進であると思いました。この点、このワーキング・グループの委員間では合意しておりますが、そのような経緯もありましたので、金融事業者の方々が同じように考えてくださっているかどうか、一抹の不安を持っております。金融商品においても製造と販売の分離が進んでおりますので、金融商品の組成を担う金融事業者におかれまして、最終顧客を意識して組成し運用していただくことがますます必要になっていることを、この場で改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、情報シートですけれども、自主的な取組として、よりよいものに作られていくことを期待しておりますが、ぜひとも検討をお願いしたいことがございますので、述べさせていただきます。まず、全体にリスクに関する記述が漠としているという印象は否めません。1つの提案ですけれども、例えば、想定される顧客層についてのところで、途中換金が制約されている商品であるとか、流動性が低い商品については、換金を急ぐお客様にはお勧めしませんとか、お勧めしない情報の記載をお願いしたいと思います。

 それから、損失が生じるリスクという部分については、これまた抽象的すぎると思うのです。特に、このモデル案ではリスクの程度が分かりづらいんです。影響を受けますと記載したら、それで終わりになってしまう、それ以上の記載がないことが今から懸念されます。市場価格の変動以上に変動するとか、市場価格程度の変動であるとか、何%程度の影響を受けるとか書いていただけたらありがたいと思っております。信用リスクについても大きく受けるとか、あまり受けないとか、中程度とか、そのような程度の記載の工夫をお願いしたいと思います。顧客が求めてから説明するのではなく、この程度の記載は最低限必要ではないかと思っております。また、リターンだけが数字になっておりますので、この数字が独り歩きすることも今私としては懸念しているところです。

 それから、同じシートの2ページ目の利益相反の可能性に関する部分については、これも大きな前進と評価はしておりますが、資本関係だけではないのではないでしょうか。最近、かんぽ生命の問題を報じた記事で、営業社員が研修と称する饗応とも言えるような過剰な飲食の提供を受けていたという報道も目にしました。我々利用者は、かねてより、こうした関係が商品提供の判断に影響を与えているのではないかと疑っていたりもしているわけで、そういった疑念を払拭するような、そういう饗応を疑われるような研修などは受けさせていませんというような宣言を工夫して出していただき、こういうところに書いていただくとかして、営業の現場からそういう習慣がなくなるようにしていただきたいと思っております。

 それから、適合性の原則のところですが、ここも高く評価はできると思っておりますし、監督指針に盛り込むという方向性を私は指示します。紛争解決の現場では、金融機関の方々と私たち一般人との感覚にかなりのずれがございました。適合性の原則について、ノウ・ユア・カスタマー・ルールに加えて、営業担当者が商品性を正しく理解していることが必要であること、それから、この顧客にこの商品を勧めることの合理的根拠も必要とすることも要件として書いていただきましたので、これは大きな前進だと思います。

 そして、11ページの監督指針の明確化のところですけれども、監督指針に不適当、不適切な投資勧誘事例を例示いただくことは、営業の現場にとって重要なメッセージになると思います。営業現場の是正、適正化に役立つと思います。監督指針については、金融庁のホームページにアクセスして見ることができたと思いますが、金融機関の営業の現場の社員や、消費生活センターの相談員にも容易に閲覧でき、不適切と評価された事例などが共有されることも効果的と考えます。ご検討ください。

 後半のパートである超高齢化社会における金融業務の在り方については、昨年の報告書では、この部分を詰め切れず、弱かったと思っておりましたし、国民に求めることのほうが金融事業者に求めることよりも多く、バランスが欠けていて、残念に思っておりました。今回の報告書では金融事業者や業界団体に期待すること、そして、行政に期待することを具体的に示すことができてよかったと思います。

 そして、ここで要望でございますけれども、前段の顧客本位のところでは、不適切事例を積極的に開示してほしいとお願いしましたけれども、こちらに関しては、先端的な取組や、全国にぜひ広がってほしい、いいサービスを積極的に紹介して、褒めてあげるということを進めていただきたいと思っております。そのためには、例えば、金融庁のホームページに、一般人でもアクセスできる利用者向けコーナーを設置いただき、いい事例の紹介をしていただくと、一般の方がどこの金融機関がいい取り組みをやっているということを知り、利用するようになり、そうなると、先行するいい事例に倣う金融事業者が続くというようないい循環が作られているようになるのではないかと期待します。

 私からは以上になります。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。チャットの順番でいきますと、中野委員、竹川委員、鹿毛委員の順でお願いできればと思います。中野委員、いらっしゃいましたらどうぞ。

【中野委員】
 よろしいでしょうか。

【神田座長】
 お願いします。

【中野委員】
 中野でございます。事務局の皆様、今回しっかりまとめていただいて、ありがとうございました。

 まず、大前提としまして、顧客本位の業務運営の進展とは、我が国独自のプリンシプルベースをメインストリームとする方針をぜひ堅持していただきたいです。ルールベースを盛り込むということであっても、あくまでも我が国はプリンシプルベースで頑張るんだという意志をより強く示していただきたいと思います。というのは、ルール一辺倒では決してベストプラクティスを目指す業界文化は醸成されずに、金融サービスの真の高度化という方向には向かわないだろうと私は強く思っているからであります。

 その上で、今回の報告書ドラフトの内容について、とりわけ原則の内容の追加、修正には大いに賛成させていただきたいと思います。そして、重要情報シートについては、どちらの紙面も各金融機関が、独自にベストプラクティスを追求することにつながる余白の部分も盛り込んで、ベースとなるシートに加えて、個別の努力部分もぜひ作れるようにしていただきたいのと、金融事業者編ですけれども、顧客が知りたい情報という意味では、例えば、投資信託であれば、それにどのぐらい注力しているのか、あるいは、どんなお客さんが中心なのかといったことが、金融機関、カウンターパーティー選択の入り口になるはずだと思います。とすると基本情報には、例えば、その金融機関のそれに関する事業規模とか預かり残高とか顧客数、あるいは、中心になる顧客属性とか、もしかしたら、積立て顧客のデータといったものも盛り込んでいただけるといいと思いますし、窓口担当者の職務経験、あるいは、投資経験などの情報はすごくお客様としては欲しいもので、もっと言うと、その方の上司は誰、といった責任の所在も表示してもいいのではないかと思いました。

 それから、8ページのところで原則への対応については、プリンシプル主義ですので、コンプライ・オア・エクスプレインが大前提であることから、各項目の実践状況が、オンサイトの重点項目であるべきだろうと思います。今、オンサイトとモニタリングのダブルでの監督行政と言われておりますが、オンサイトについては、原則に対する未実施の部分は、社会や顧客へのコミットメント違反であるという観点から、厳格に指摘をして改善指導し、あるいは、採択を取り下げるよう促し、そして、その理由を明示化させるといった形での行政サポートをしていただきたいと思います。

 併せて、顧客本位での取組では、具体的な好事例と同時に、不法事例を列挙、公表することで自ら是非を判断できない、プリンシプル主義に適応できていない金融事業者に対して、具体的な気付きも与えられますし、判断材料の一助となるはずだと思います。さらに、お客さん側もその事例を見ることによって、より具体的に金融機関選択の判断基準への理解ができるようになると思います。

 それから、最後ですけど、適合性原則、誠実公正義務については、FDの観点に鑑みれば、実質、遵守のルール化は至極当然のことと思います。そもそも、不適当、不誠実行為の問題は、金融商品の取扱いにおいて、もっぱら販売を目的化してきた金融業界の歴史的ビヘイビアに起因しているわけで想定顧客の公表と同時に、組成側に商品の特性、たとえば、長期保有型だとか短期テーマ型だとか、あるいは、極めて投機的だとか、そういった表示も含めて登録するなどの仕組み作りまで踏み込んでもいいのではないかと思っています。

 以上でございます。

【神田座長】
 中野委員、どうもありがとうございました。それでは、続きまして、竹川委員いらっしゃいましたらどうぞ。

【竹川委員】
 重要情報シートと報告書について、意見を申し上げたいと思います。

 まず、重要情報シートですが、個別商品編について質問でもあるのですが、提案した商品ごとに全て説明をする必要があるのでしょうか。個別商品ごとに全て説明するとなると、書面が非常に増えてしまうのではないかという懸念があります。5の利益相反以外のものに関しては、例えば、投資信託の交付目論見書などと記載内容がかなりかぶっている部分があります。あまり書面が多過ぎると、顧客は逆に混乱してしまう可能性もあります。他の開示資料とどのように切り分けて説明をするのかを決めておかないと、逆に混乱が生じるおそれがあるのではないでしょうか。

 何人かの委員の皆様から、特に個別商品編のリスクに関しては、より詳しい説明、記載が必要なのではないかという意見がありましたが、交付目論見書には過去10年間の騰落率の推移や、同じカテゴリーの指数との比較などが記載されています。重要情報シートにそうした項目をどんどん加えていくと、ますます従来ある開示資料との重複が増えていきますので、その辺をどうするのかというのはきちんと決めておく必要があると思いました。

 2つ目は金融事業者編についてです。そもそも重要情報シートがなぜ必要かといえば、私なりの理解としては、顧客である生活者・相談者が金融事業者に行った際に、その相談料、フィーなりコミッションが何の対価として支払うものなのか、金融事業者はその報酬はどこから得ているのか、金融機関からのキックバックなのか、相談者から得ているものなのかといったことがきちんと分かることが一番大事だと思っています。そういう意味では、前回も申し上げましたが、金融事業者編の中に、顧客に提案した商品とその選定理由、異なる業法の商品も含めて、きちんと横比較をしたのか、そして、利益相反はないのかを加えていただきたいです。そして、個別商品編については、必要な部分に絞り込むことを御検討いただければと思います。

 それから、報告書について2点、申し上げたいと思います。

 まず、6ページ目、顧客にふさわしいサービスの提供というところですが、どうしても投資商品を中心とした書きぶりになっている部分があるかと思います。例えば、保険などに関して言うと、公的保障や企業内保障を加味した適正な保障額を算定して提案するということになるかと思います。前回、上田委員もおっしゃっていましたが、ワーキングでは投資信託などを中心とした投資商品の議論になりがちですが、保険等も含めた、もう少し幅広い書きぶりにしていただきたいと思いますし、保険については今後もう少し議論を深めていく必要があるのではないかと思います。

 それから、9ページ目、先ほど野尻委員からも出ましたけれども、ここでいきなりアドバイザーの役割が出てきます。どこまでを対象としているのかといった記載が必要だと思います。

 金融商品の販売を行う金融機関やファイナンシャルアドバイザー(FA)などを中心とした議論になっていますが、一般の生活者から見たら、販売を行わないアドバイザーの育成も同じぐらい大切です。そうした独立系のアドバイザーが事業参入しやすいようにインフラ整備も含めて、長期的な視点で議論することが必要ですので、そうした視点も入れられないでしょうか。

 以上です。

【神田座長】
 竹川委員、どうもありがとうございました。続きまして、鹿毛委員いらっしゃいましたらどうぞ。

【鹿毛委員】
 鹿毛です。今回、委員会での議論をきめ細かく反映して、報告書をまとめていただいた事務局にまず、お礼を申し上げたいと思います。私は基本的に報告書(案)に賛成です。

 その上で3点コメントします。

 第一はページ2の原則の評価のところです。「一定程度浸透している」という評価ですが、もう少しポジティブな文言を入れていただくことで、頑張っている方々を支援するというか、それを評価していただいたら如何かと思います。

 理由は、これまでの御発言にあった様に、特に大手金融機関の経営陣中心にこの「原則」の理解が進み、経営方針としてはいいけれども、なかなか現場までは浸透していない、道半ばというのが、恐らくここにおられる皆様も含めて共通の認識だと思います。もともとこの原則の趣旨が、ビジネスモデルを変えて、コーポレートカルチャーも変えていこうということで考えると、かなりの長期戦のテーマと思います。そんなに早く結論の出るような話に取り組んでいるわけではないので、長期的に評価していく必要があると思います。その意味では、経営陣全部とは言いませんけれども、特に大手を中心とした経営層の中にビジョン、ポリシーとして確認して、それを推進しているところが出てきているということ自体は、3年前と比べれば大変な成果だと思います。ベストプラクティスを後押しする原則という行政は恐らく私の知る限りでは過去に例を見ない画期的なものだと思います。むしろもう少し金融庁も自信を持っていただいて、いい方向に向かっていることは評価されていいんじゃないかと思います。

 一例としてはつみたてNISAです。3年前になかったものが件数としてはこれだけの形で出てきた。一方金額的に言えば、まだまだごく僅かなものです。こういう性格のものだと思います。要するに政策効果が3年、5年とたっていくうちに、いろいろな形で見えてくるものなので、変化率、あるいは、方向性をとらえた積極的な評価もあっても良いのではないかと思います。

 コメントの第二はシートの話です。先ほどの竹川さんの御意見に若干近いのですが、これは簡潔性を売りにしているわけであって、詳しいことに興味のある人は別のものを見てくださいということだと思いますので、皆様の注文を聞いているとどんどん増えてしまいますから、どこかで割り切って、最初、私は1枚と申し上げたんですけれども、2枚が限度でしょう。分かりやすく簡潔にという点は大事だと思います。

 第三点はページ12の高齢化時代の代理の在り方です。これは私は何回か申し上げたので、詳しく申し上げませんが、当面の対応に関しては、これは極めて必要なことで、賛成で、このとおりで結構だと思いますが、一言、本文か、「おわりに」のところに、現状のいろいろな問題というのは、現状の法規制体制を前提としたものを現場の裁量と親切で何とかならないかというところの、そういう対応だとは思いますので、長期的には限界があるということです。今後、高齢化社会が進み、認知症の問題が大きくなるにしたがって、例外措置の対応ではなくて、むしろ現行、法規制に関連して、その例外に当たる法規制的な整備の検討が必要ではないかということがないと、金融機関側から考えても、これはどこまでやればいいかと、いうことになります。今は応急措置の段階だと思います。この辺のことをどこかで1行入れていただくことで、今後の課題として残していただければありがたいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 鹿毛委員、どうもありがとうございました。チャットの順番で、続きまして、高田委員、福田委員、佃委員、島田委員の順でお願いします。高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 どうもありがとうございます。こちらの取りまとめ、短い期間における事務局の方々の対応、お疲れさまでございました。私も全般的に申し上げまして、今回のところに異存はございませんので、この流れでという形で考えております。

 今回、顧客本位の業務運営の進展での対応ということなんですが、私はあくまでも、今回の顧客本位という状況というのは、資産運用に関する高度化というところがポイントで、あくまでもそのために様々なインフラを整えていくことになるんじゃないかと思います。そういう意味では、インフラということで申し上げますと、例えば、制度的な要因、税制も含めてということになるでしょうし、また、一方で、当然、業者側という形で、顧客本位の業務運営ということもあるでしょうし、また、一般の投資家の方々のお客様のリテラシーという点もあるだろうと思います。

 顧客がいろいろな選択におけるメカニズム、また好循環と言うか、こうしたものが実現できるような対応が必要だと思います。こういう中で、情報の非対称性を低下させて、いわゆる見える化の中で、インベストメントサイクルで実現しながら資産運用を高度化させていくことが重要だと思います。その観点として、重要情報シートというのは私は大変重要な側面があると思います。ただ、あくまでも、情報の非対称性を下げるという実のあるものとすべきであるわけでありまして、単に形式にとらわれてしまうということでは、なかなか実際の運用の成果が得られません。そういう意味では、先ほどからいろいろ議論がありますように、簡明性というか、せいぜい一覧性があって、表、裏ぐらいのところがあればいいわけでありまして、リスクというものも全て書き出しちゃうと、薬の効能書きみたいな形になっちゃいますので、なかなか実際に見られないようになってしまいます。何がリスクのポイントであるのかというところが示せれば、私はいいのではないかと思います。

 そういう観点も含めて、金融業者の創意工夫の中で、そういう意味でのよい例を示しておくというか、そういうものが必要で、ただ、一方で、各業者の商品ごとの比較みたいなものは利用者の利便を高める上では重要だと思いますので、あくまでも比較可能なものということで簡潔にするのが必要だと思います。すなわち、コストだけがそういう関心を高めてしまうことが、なかなか新しい投資に関するものにつながりにくい部分というものもあるのではないかと。

 また、一方で議論にもなっておりましたけれども、コモディティ化されたもの、プレーンなものについては、そこの対象外で私はいいと思いますし、また、書面もデジタル化が重要だと思います。

 考えてまいりますと、インベストメントサイクルが重要でありますので、ちょうど審議会の1年前の議論の中でもありましたけれども、利用者側のリテラシーの向上というもの、そのための取組の必要性というものが我々も随分議論した時期がございました。そういう意味では、改めて今回のこういうものを車の両輪として、コンテンツを作成しながら、一般の方々にいろいろな意味での広報活動を行っていくことが私は非常に重要なのではないかと思います。改めて、これを機にもう一度、そういう動きを深めていくという姿勢は重要ではないかと思っております。

 それから、2番目の高齢化に対しての対応ということでございますけれども、私は今回の顧客本位と高齢化というのは、今の金融における日本の課題を考える上では、車の両輪として非常に重要なものだと思います。記述の中にもありますけれども、家計金融資産の3分の2が60歳以上の高齢者が持っている中で、高齢者をめぐる資金のフローというものが、いまや金融全体の中心になってきているんだということを前提とした上での制度設計を改めて考えていく必要があるんじゃないかと思います。

そういう意味では、日本が先進的な状況でもありますので、こうした日本モデルと言うか、こうしたものを場合によっては世界に示していくことも、私はそのぐらいの姿勢は必要ではないかと思いますし、また、高齢者にとっても金融というものが必需品であって、まさに金融包摂としても非常に重要なんだということを改めて明記しておいてもいいのではないかと思います。

 そういう観点からいたしまして、最後のところにもデジタル技術を利用した柔軟な顧客対応が重要です。高齢者対応にもありますように、これまでは一定の年齢を目安にした、どちらかというと、画一的な対応になっている部分が多いわけでありますけれども、そうした状況の中で、昨年来、未来投資会議の中にもデジタル技術の社会実装という動きで、私もそこにやや加わらせていただいている部分があるんですけれども、こうした対応というものをより深めていって、民間における様々な分野においても、こうした技術革新みたいなものを対応していくのが非常に重要であると思います。そういうものを含めて高齢者のところの議論、今に金融というものが今、非常に求められていて、中心になっているんだということを、少しメッセージ性のあるものを出していただいてもいいんじゃないかと思います。

 私の意見は以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 高田委員、どうもありがとうございました。それでは、続きまして、福田先生、いらっしゃいましたらどうぞ。

【福田委員】
 よくできた報告書だと私も思っております。事務局の方は非常に工夫されて、まとめていただいたことは非常によかったと思います。

 私から2点ほどお話しさせていただきたいと思います。私もこの会議では、顧客というのはいろいろあるんだということを発言させていただきましたが、今回の報告書では様々な顧客対応する形でのベストプラクティスという形が丁寧に書かれていると思います。ただ、顧客の内容というのは、時代とともにかなり大幅に変わってきていると思います。そういう意味では、かつては日本では証券を購入するのは大金持ちが中心で、多額の資産を持っている人ということが前提に、いろいろな制度ができていたと思うんですけれども、足元では金融庁の努力もあり、あるいは、今回のコロナ禍ではネット証券の開設がものすごく増えたこともあって、顧客が従来とはかなり変わってきていることはあります。そういった新しい時代に向けて、これはルールベースよりもプリンシプルベースでベストプラクティスをやっていくことは大事なんだろうとは思います。

 現状では、いろいろな制度が、伝統的には非常に多額の資産を持っている人たちを前提にしており、気軽に少額の投資をするという人たちを前提には必ずしもできていない仕組みもあるのではないかと思います。例えば、報告書の最後にある照会システムで、ほふりのシステムというのがあります。確かに、手数料を払えば照会することは確かにできるけれども、手数料というのは決して安くない。これはもちろん多額の資産を持っている人にとっては大した手数料じゃないかもしれませんけれども、少し投資していたという人にとってみると、照会の手数料というのは決して安くないものになっている。

 また、手続が極めて今の時代にしてみるとローテクで、いろいろな書類を紙でそろえて、郵送してくださいとなっている。かつ、受け取りも簡易書留で送られてきたら、その料金を郵便局の代金引換で払ってくださいとなっている。金融庁はキャッシュレス社会を推進しているわけですけれども、ほふりは今の時代には合っていない仕組みにもなっていて、いろいろな利便性ということも含めて、まだまだ改善の余地はあるのかとは思います。

 それから、デジタル化の流れ、今、お話しした話とも関係していますけれども、急速にデジタル化が進んできているし、証券会社を通じた伝統的な投資の形態だけじゃなく、ロボアドバイザーみたいなものを使った新しい投資の形態というものも急速に普及してきたりもしてきています。そうした中で、なかなか現行の制度を前提とした、今回のような議論だけではなかなか対応できないことも将来的には起こっていくと思われます。そういう意味では、もちろんプリンシプルベース、ベストプラクティスという形で、それを対応していくと同時に、こういうワーキング・グループを将来的にも積み重ねて、新しい時代に対応していく望ましい制度設計というものを考えていっていただきたいということでございます。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。次に、佃委員、どうぞ。

【佃委員】
 佃です。まず、今回、コロナ禍の中で報告書の取りまとめ、それから、原則の改定作業を進められました事務局の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。私も全体として、今までの議論を反映しつつ、大変よくまとまっていると思います。特に大きな異論はございません。

 その上で、2点コメントをさせていただきます。まず、1点目は、前回、私はたまたま欠席しまして、そこで林田委員から大変重要な御指摘がございました。その御指摘も含めて、今回の一連の議論を振り返って、プリンシプルベースとルールベースについて、いろいろ考えさせられました。例えとして適切かどうかは分かりませんけれども、学校に例えると、クラスの中には100点満点の優等生もいれば、テストが0点で素行もよろしくない、そういう生徒の方もおられてクラス全体の平均点は60点だと。そういった中で、どうやってクラスのレベルを上げていくかといった話に似ているのかと思っています。そこでどのような姿勢でクラスに向き合うべきかが問われているのかと考えました。現実には、先ほどの100満点の人もいれば、0点の人もいればということを考えると、プリンシプルとルールを組み合わせるしかないと考えています。

 最後は一人一人の生徒と向き合うしかないわけなんですけれども、基本は、さはさりながらプリンシプル。その中で、必要に応じてルールベースを適切に組み合わせると。そういった意味で、今回の報告書の方向性というのは、基本的には極めて正しいと考えます。ただ、原則は、あくまでもプリンシプル、つまり信じて任せるのが原則であると。これが1点目です。

 それから、2点目は、重要情報シートについてです。資料1の報告書(案)の5ページのウの顧客にとって分かりやすい情報提供の在り方と、原則5に関連するところです。ここは当然、今回の改定の重要ポイントと私は理解しておりますけれども、先ほど上田委員が御指摘されたとおり、金融機関にとっては大変コストがかかる話でございますので、コストを上回るリターンを得るのは極めて重要であります。かつ、その上で顧客本位の業務運営の進展が実際に実現しなければ意味がないと考えております。

 重要情報シートについて、単にシートが定着したといった点にとどまらずに、顧客が利益実感を得られているか、そして、顧客本位の業務運営が具体的にどのように進展しているかについて、金融庁としても、今後、金融機関とも十分な対話をしつつ、フォローアップしていくことが最も重要であると考えます。そういった観点から言うと、できれば、金融庁としての今後の方向性というものを、例えば、報告書6ページの最後の部分に入れていただければ、さらにすばらしいのではないかと思います。

 以上でございます。どうもありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、島田委員、神作委員の順でお願いできればと思います。島田委員どうぞ。

【島田委員】
 島田でございます。幅広く行われた議論をここまでまとめていただいて、大変ありがたく思います。どうもありがとうございました。ここまで集約していただきましたので、あまり申し上げることはないのですが、幾つか意見と質問をさせていただければと思います。

 1つ目は、すごく細かいことで、またしつこく申し上げて恐縮ですが、原則4について、顧客が負担する手数料、その他の費用というもので、文意としては当然含まれていると思いますが、さらに明確にするために、顧客が直接、間接に負担する手数料、その他の費用と明記していただけないでしょうか。投資信託などは手数料率が比較的明確に表示されているとはいえ、顧客が間接的に負担する費用は、長期になると顧客の収益に影響を与えるものなので、意識を促す必要があると思います。また、金融商品によっては手数料や費用を意識していない顧客には、あたかも手数料やコストを負担していないかのような錯覚をすることもあるようです。ですから、屋上屋を重ねるように思われるかもしれませんが、ここはできれば、金融取引のプロではない顧客がはっきりと認識できるよう、お願いできればと思います。

 2つ目は重要情報シートについての質問です。もっと前に質問すべきだったかもしれませんが、金融事業者編と個別商品編の2つが提示されておりますけれども、これらのシートを作る主体というのは、金融事業者編が販売会社、個別商品編が金融商品の組成会社、そして、実際に両シートを活用するのは販売金融機関ということでしょうか。それとも、いずれも販売金融機関が作成して活用することが想定されているのでしょうか。と申しますのも、個別商品編に記されている質問例の中には、個別商品に付随する属性や実績についての質問のほか、販売者の商品取扱いにおける姿勢や勧誘方針についての質問が含まれているので、販売会社の方針が非常に重要な論点となっております。

 一方、今後、このシートがミニマムスタンダードではなく、さらに改良、発展して作られ、活用されていくことも期待しているわけですが、販売に関わる質問事項については、商品を組成する会社において(シートを)作るのであるとするならば、質問例以上に踏み込んで改善することは困難ではないかと思うので、この質問をさせていただきました。

 次は、投資信託について、重要情報シートと交付目論見書の関係についての質問です。重なっている内容等も多く見られるという御指摘は、私より前の御発言にもあったと思います。今後、目論見書が電子交付される機会も多くなるとすると、せっかくここまで大変な苦労を重ねて分かりやすくする努力をして作り上げてきた交付目論見書が徐々に形骸化していかないかという懸念です。もちろん事前交付と説明が義務となっておりますので、直ちに交付目論見書が軽んじられるようなことは起きないと思いますけれども、重要情報シートと交付目論見書の位置付け、設問においての活用法について、どのように想定されているのか、もしあれば、お聞かせいただければと思います。

 最後に、高齢化の問題です。15ページに既に金融機関によっては独自の金融商品を開発、販売されていると。「こうした高齢者のニーズに応える商品については」という文言がありますが、ここの見出しは「高齢者のニーズに応える金融商品・サービス等」と書いてあるので、できることであれば、「こうした高齢者のニーズに応える商品・サービスについて」と、しつこいようですが、入れていただけたらありがたいと思います。と申しますのも、どうしても金融機関の発想といたしましては、商品の提供がサービスであるという考え方によりがちですけれども、特に高齢化の問題については、むしろどのようなサービスが必要とされているかということで発展していくことが金融業界のこれからの社会的な役割を果たす上でも重要なポイントになってくるし、活路を見いだす部分でもあると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。今、島田委員から御質問をいただいたのですけれども、神作委員に御発言いただいて、その後で事務局から御質問へのお答え、その他を御発言いただきます。神作先生、どうぞ。

【神作委員】
 どうもありがとうございます。私も報告書の原案、非常によくまとめていただいておりまして、基本的な方向として賛成いたしますし、特に重要情報シートというのはコンパクトに、しかし顧客本位の金融商品や金融サービスが提供されているかどうかを顧客自身もレビューしチェックする上で、非常に有意義に機能し得ると思い、適切な運用に大変期待しております。

 ただ、2点、御質問も含めまして、あるいは、コメントを申し上げさせていただきたいと思いますけれども、第1は、報告書7ページの原則6の(2)のところで、金融商品の組成に携わる金融事業者は商品の特性を踏まえて、想定している顧客属性を特定、公表するとあります。この点は、加藤先生も御指摘されたと思いますけれども、非常に重要なポイントになると思います。と申しますのは、報告書の10ページの、適合性の原則の明確化に関する記載の(2)でございますけれども、金融商品、サービスの内容が顧客の属性、取引目的に適合することの合理的根拠を持つこと、が適合性の原則を遵守するために必要とされています。合理的根拠を持つことの1つの大きなポイントは、先ほど述べた想定している商品の顧客層に合致しているかどうかということが非常に重要であると思います。これもまた加藤先生が御指摘されていた点だと思いますけれども、商品の想定顧客層というのがどれぐらい特定されて、具体化されているかということにかなり依存する部分があると思います。もしここが非常に曖昧と申しますか、必ずしも明確でないということになると、合理的根拠を示す根拠が薄弱化し、他方、いわば消極的な事情すなわち利益相反がない状態で、つまり顧客の利益ではなく当該金融事業者やグループ会社等の利益を追及するというインセンティブがない下で、当該顧客に対しある金融商品や金融サービスを推奨している、あるいは、販売、仲介しているということが言える必要があると思います。

 報告書の10ページの前半では、根拠の規定として、適合性の原則と誠実公正義務の双方が引かれているのですけれども、適合性原則の内容の明確化の中に、先ほど述べたような形で利益相反ないし誠実公正の考え方が入ってきて、利益相反が存在しない、あるいは存在するけれどもその内容について開示されたりコントロールされたりしている、という要素もいわば消極的な形で合理的根拠を持つかどうかを判断する際の1つの考慮要素になると思われます。

 それから、2つ目のコメントでございますけれども、これは12ページでございます。金融取引の代理の在り方でございます。確かに、例えば、代理人による手続が認められないという指摘がされていて、その中には問題の事例もあると思うんですけれども、実は結局、代理人に、例えば、払出しをしなくてよかったというケースもあるのではないかという気がいたします。要するに、何が申したいかというと、金融取引の代理というのは非常に重要なのですが、大前提として、代理人のほうにまさに本人のベストインタレストをきちんと追及すると、ここが確保されていないと、金融取引の代理で問題を丸投げしちゃっている感じがありますので、ここのところは金融取引の代理に当たっては、代理人についてあくまで本人のために行動することが前提であることについて何か言及が一言あると良いと思いますし、さらには、代理かどうかを問わず本人の利益になるのであればそのような金融取引は行えるべきであり、あくまでも代理かどうかではなく、本人の利益になるような取引かどうかが重要で、そのような金融取引は阻害されるべきではなく、それをスムーズに進めるための課題について検討するという方向感について触れられているといいのではないかと思いました。

 非常に雑駁な意見でございますけれども、私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 神作委員、どうもありがとうございました。

 それでは、これで委員の皆様方からは、一通り非常に貴重な御意見をいただきました。事務局のほうから、先ほど御質問もありましたので、もしお答えいただけることがあれば、お願いいたします。

【太田原市場課長】
 事務局からですが、全部についてコメントは難しいのですが、明示的に御質問という形であった中から可能な範囲で申し上げたいと思います。

 まず、野尻委員から何点か御質問がございました。原則6の注1で、長期的な視点にも配慮した適切なフォローアップということで、認知判断能力との関係での御質問がございました。ここで書いた一義的な意味としましては、例えば、今回のコロナショックのような価格の急変があった場合にも、長期分散積立て投資をされている方に対しては、特段うろたえる必要もないので、そこは、むしろ冷静になって見守るべきではないかというアドバイスをすることも入ってくるのかという意味で、長期的な視点にも配慮したということを案として提示したところでございます。

 その先の高齢社会対応のところも、排除する趣旨ではないとは思っておりますが、また後ほどよく検討してみたいと思います。

 同じく野尻委員から項目ごとというのが原則を単位としているのか、注を単位としているのか明確でないという御指摘がございました。私どもの今の考え方としては、注単位ということを想定しております。

 アドバイザーが金融機関に所属していることが前提かどうかという御質問についてですが、特に所属していることを前提としたつもりではないのですが、書き方についてよく考えたいと思います。

 代理について、預金の引出しを念頭に置いているのかどうかということで、もちろんそれは入りますし、ほかの行為類型について特に排除しているつもりはないというのが、現時点での叩き台を提示した事務局としての考え方でございます。

 続きまして、竹川委員から重要情報シートについて、個別商品ごとに全部用意するのかどうかというお話がございました。法定書面ではないので、まさに、このシートの使い方というのは顧客にとってどう分かりやすく説明するかというポイントから、まずは考えるのが適切であろうと思っております。したがって、極端な例で言えば、紙を何十枚も示すことが顧客本位かどうかということは、大分顧客のニーズからは逸れていくケースも多いのではないかと思いますので、そこはケース・バイ・ケースだとは思いますが、いかにポイントを絞って、かつ比較可能なように説明していく際に、どう使っていくのかというのは課題であろうと思いますし、そこは業界ともよく意見交換をしながら、考えたいと思います。

 アドバイザーがどういう範囲なのかが不明瞭であるという御指摘でありました。原則はもともと様々な金融事業者が参照していただくことを想定していますので、ここでのアドバイザーというのが、例えば、先ほどのお話にもありましたような、機関に所属しているか独立系かといったところも、特にいずれかに限定する趣旨ではないのですけれども、何か書き方を工夫できるかどうかはよく検討したいと思います。

 島田委員から重要情報シートに関して、作成主体が組成会社か販売会社かという御質問がございました。当然、販売会社のほうで記述すべき内容というのもありますし、あと想定顧客というのは、販売会社が想定する部分もあろうとは思いますが、組成会社が一義的に考えて作るという側面はあろうと思っていますので、そこは、実際には共同作業になるのではないかと思いますが、こちらもよく金融機関とも実情について、意見交換をしながら精査してまいりたいと思います。

 ほかに目論見書との関係について、同じく島田委員から御指摘がございました。目論見書の使い方として、途中でも竹川委員などから御指摘ありましたけれども、目論見書は法定書面でございます。重要情報シートというのは、説明の便宜のためにということでありますので、例えば、本日の議論を踏まえて言えば、詳しい過去の値動きですとか複雑なリスクの説明を重要情報シートで全て書き切るということは恐らく不可能であろうと思いますので、そういったものは、適宜、目論見書を参照しながら説明するという使い方があるのではないかと考えております。

 時間もありますので、私のほうからは取りあえず以上、回答させていただきます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 予定の時間が来ておりますけど、オブザーバーの方々で、もし御発言希望があれば手短にお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。

【林オブザーバー】
 委員長、林でございます。

【神田座長】
 どうぞ、林さん。

【林オブザーバー】
 短く申し上げます。

 まず、今般の目論見等の法定書類の原則、電子交付を可とするということにつきましては、改めて賛成でありますことを申し上げたく思います。コロナ禍の顧客ニーズ等が大きく変化してまいっておりますことは、銀行運営の資源の効率化、サービス向上、環境負荷低減、様々なメリットがあると認識をしているところでございます。

 また、金融サービスの仲介業者の件でございますけれども、今般、法制が成立いたしまして、今後、取扱いが開始されると理解してございますが、必要な規制が適用されることが法律等に規定されているとの認識をしてございます。この点、希望事業者とのレベル・プレイング・フィールドがしっかりと確保された状態の下で、お客様への貢献、社会の貢献がなされますよう、様々なモニタリング等も必要になってくるのであろうと、このように考えたところでございます。

 高齢化社会の対応でございますが、今後、金融取引を通じて、お客様の認知症の兆候を把握したような場合、御本人の同意なしに御家族、あるいは、社会福祉協議会への情報提供を行ってまいりますことに関しては、これは様々な制度の中で理解できるところではもちろんございますが、実際に営業現場で当該対応を行うに際しましては、様々なクレーム、トラブルが発生することも危惧してございます。つきましては、金融庁、厚労省連名の御通知等、公的な文書に具体的な事例を御記載いただく等で金融機関の現場が今より動きやすくなりますような建てつけ等につきましても、御協力、御考慮を頂戴していただきたく、改めてお願いを申し上げる次第でございます。

 以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ほかのオブザーバーの方々、御発言ございますでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。

 それでは、予定の時間を過ぎておりますので、質疑応答、意見交換はここまでとさせていただきます。本日も大変多くの貴重な御意見、御指摘をいただきまして、どうもありがとうございました。もし会議の後、さらにお気づきの点がございましたら、ぜひ事務局までメール、電話等でお知らせいただけますとありがたく存じます。

 次回でございますけれども、本日いただきました御意見、御指摘を踏まえ、報告書の案を修正させていただき、報告書の取りまとめの御議論をお願いしたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。日程についてですが、既に事務局から御案内させていただいていると思いますけれども、7月29日の水曜日、13時30分から2時間を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

 本日もといいますか、本日はといいますか、オンライン会議のシステムの不備、不具合で御迷惑をおかけしまして、大変申し訳ございませんでした。

 それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループ会合を終了させていただきます。どうもありがとうございました。



―― 了 ――
 

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