金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第31回)議事録

 

1.日時:

令和2年7月29日(水)13時30分~15時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室






【神田座長】
 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。

 ただいまから、市場ワーキング・グループの第31回目の会合になりますけれども、開催させていただきます。皆様方には、お忙しいところを本日も御参加いただき、誠にありがとうございます。

 本日の会合も、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、これまで同様オンラインでの開催とさせていただきます。一般傍聴はなしとさせていただいております。メディアの関係者の方々には、金融庁内の別室にて傍聴いただいております。議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 会議を始める前に、2点、注意事項がございます。まず1点目ですが、御発言されない間はミュート設定にしていただきますようお願いいたします。御発言される際にはミュートを解除していただき、御発言が終わりましたら、また再びミュート設定していただくようにお願いします。

 それから2点目として、御発言を希望される場合には、前回までと同様、このオンライン会議のシステム上のチャット機能で全員宛てにお名前あるいは協会名などの組織名を御入力いただければありがたく存じます。それを確認した上で私のほうから御指名させていただきますので、そうしましたら御自身のお名前を名のった上で御発言いただければと思います。事務局とか主催者端末のみにチャットを送られますとちょっと見えませんので、必ずチャットは全員宛てでお願いできれば幸いです。

 本日の議事に入ります前に、出席者の変更がございますので、事務局から御紹介をお願いいたします。

【太田原市場課長】
 事務局である金融庁におきまして人事異動がありましたので、御紹介いたします。

 これまで企画市場局長でありました中島が、新たに総合政策局長に着任しました。そして、新たに古澤企画市場局長が着任しました。また、新たに油布企画市場局審議官が着任しました。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、本日の議事に移らせていただきます。本日は、これまでの議論を踏まえた報告書の案につきまして、前回から引き続き取りまとめの御議論をお願いしたいと思います。

 まず、前回多数の貴重な御意見を頂きまして、本当にどうもありがとうございました。そういった点を盛り込んだ修正点について事務局から御説明いただき、その後、皆様方から御意見等を頂きたいと思います。

 それでは、太田原課長、よろしくお願いいたします。

【太田原市場課長】
 それでは、資料1【前回からの見え消しあり】と書かれた資料を御覧ください。前回、7月15日の御議論などを踏まえまして修正を加えた箇所を説明いたします。

 2ページです。金融事業者におきまして、顧客本位の原則が一定程度浸透してきているという点をもう少しポジティブにという御意見を踏まえ、本文と注1、注2を修正、追加しております。

 3ページ、4ページでは、顧客の意向についての御意見を踏まえ、報告書本文や原則6の注1の案を修正しています。

 4ページの注10では、前回御質問いただきました点について、例示として注を追加しております。

 4ページから5ページにかけて現在の原則6(注2)の表現に合わせて、「金融商品の組成に携わる金融事業者」というように表現を統一しております。

 5ページの注12では、想定する顧客属性についての自主規制団体等での調整について、また、注13では、顧客属性とポートフォリオ全体との関係についての御意見を踏まえて注を修正しています。

 6ページ本文では、重要情報シートのインターネット取引等での使用についての御意見を踏まえて文章を追加しております。同じページの注14では、欧州での取組について追加しています。注15では、重要情報シートを本報告書の別添とすることなどを提案しています。注17では、販売員との対話を伴う取引などの場合でも、重要情報シートの電子的な提供が考えられる旨を追加しています。

 7ページでは、ミニマムスタンダードと比較可能性について意味が取りにくいとの御意見がありましたので、表現を修正しています。また、重要情報シートの内容や作成主体などについて御意見が複数ありましたので、注18、19、21、22を追加しています。

 8ページでは、文章の趣旨の明確化を図るため言葉を追加しています。

 9ページでは、好事例、不芳事例の公表についての金融庁からの情報発信の重要性についての御意見を踏まえて本文を修正しています。

 10ページでは、アドバイザーの育成も必要との御意見を踏まえて本文を修正しています。

 11ページの注28では、判例について、いわゆる狭義の適合性に関するものである旨を追加しています。注29では、適合性原則の適用に当たっての合理的根拠の具体化、明確化についての御意見を踏まえ、注を追加しています。

 12ページ本文では、文章の趣旨の明確化を図るため言葉を追加しています。同じく12ページの注32では、監督指針で示すことが考えられる内容を法令で規定すべきであるとの御意見を踏まえ、注を追加しています。

 13ページでは、高齢化に関して、金融包摂としても重要であるとの御意見を踏まえ、本文を修正しています。また、代理人についての御意見を踏まえ、狭義の代理人に限らない趣旨とするための修正をしています。

 14ページでは、業界団体における指針の策定に関し、行政からの支援も必要との御意見を踏まえ、本文を修正しています。

 16ページでは、金融商品だけでなくサービスが重要との御意見を踏まえ、言葉を追加しています。同じく16ページでは、資産寿命の延伸との御意見を踏まえ、その趣旨の修正をしています。

 最後の18ページでは、「望まれる」よりも強い表現でよいのではないかとの御意見や、金融庁によるフォローアップの重要性、デジタル化についての御意見などを踏まえ、本文を修正しています。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、委員の皆様方からの御質問や御意見をお出しいただければありがたく存じます。多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、これまでどおりですが、御発言のお時間という意味では、お一人方最大で5分を目安にしていただければと存じます。4分を過ぎますと事務局から発言時間の残りが1分である旨のチャットを全員宛てに送付させていただきますので、御参考にしていただければと思います。

 それでは、どなたからでも結構でございますが、御質問、御意見、いかがでしょうか。

 上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
 ありがとうございます。

 いろいろな議論を簡潔にまとめていただきまして、ありがとうございました。消費者保護の立場からは、1つ目は、重要情報シートにこれからどういうものが記載されていき、充実していくのか、その執行が大変大事だと思いますし、2つ目に、適合性原則の内容の明確化が、実際にどのように執行していくのかというところが注目されると思います。さらに金融機関と福祉関係機関等との連携強化も大きく期待されるところです。

 1つだけ追加で申し上げたいんですけれども、注18のところに重要情報シートの内容について、私も特にリスクの問題について申し上げたところですけれども、やはりここのところは大変工夫が必要なところで、一覧性、1枚ないし3枚ぐらいでまとまっているということ、その中で私が強調したかったのはリスクとリターンがトータルとしてよく分かるようにと、リターンのほうだけが数字が出るようなことはまずいのではないか、想定最大損失などが併記されるべきではないかということで、全体としてリスクリターンがきっちり分かり、その後の顧客と金融事業者との間の対話が促進されるような、そういうものであるべきだということで申し上げました。この注18だけを見ますと、とにかくこのシートが膨大なものになりそうな気もしないこともないので、念のために申し上げました。

 ありがとうございました。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、チャットで頂いた順番で言いますと林田委員、野尻委員、宮本委員の順になるかと思います。

 林田委員、どうぞ。

【林田委員】
 ありがとうございます。

 駆け足での議論を受けまして、まとまった報告書案を作っていただいた事務局の方々に敬意を表したいと思います。それを踏まえて、3点ほど意見を述べたいと思います。

 まず、報告書案の7ページ辺り、重要情報シートについてなんですけれども、野尻委員が前回おっしゃったとおり、いろいろな書式が出てきてしまっては利用者の混乱を招くので、比較可能性に留意しながら簡潔性を担保するというのは非常に重要な観点だと思います。ただ、同時に今回、金融庁が示したひな形さえ守っていれば必要にして十分であると、そのように各事業者が理解し、受け止めて、いわゆるボイラープレート化してしまっては、プリンシプルベースの趣旨、すなわち金融機関に顧客対応の改善について不断の努力を求めるという趣旨に沿わないのではないかと思っています。

 前回の案から追加されたものとして、また必要に応じて他の資料を適宜組み合わせるなどしてというようになっています。ただ、悪意に取れば、これでは重要情報シートとは別に、膨大とは言いませんけれども分厚い資料を渡して、後で見ておいてくださいといった対応にもなりかねないということも危惧している。必要最低限の情報を簡潔に示しつつ、例えば何か新手の問題が起きてしまったときに、これも顧客に伝えたほうがいいよということが出てきたのならば、金融庁から指摘されるまでもなく、心ある事業者が、例えば質問例を増やすとか、何かいろいろ適切な対応を取ることができると思うので、そういった趣旨だけは残したほうがいいのかな、そういうことを促したほうがいいのかなと思います。

 このくだりで、金融事業者が常に検討していくべきことの内容として、顧客に分かりやすい情報提供の在り方を求めるということです。ただ、これはあまりに表現が曖昧ではないかと私は思っておりまして、この文脈からいきますと、事業者に対応を求めるとすれば、やはり重要情報シートに絞ってその内容を充実させる不断の努力を怠るなといったようなストレートな表現を盛り込んだほうが、私はメッセージとして強いのではないかと考えています。

 次に、重要情報シートの個別商品編ですか、質問例の2、フォローアップという言葉があります。質問としては、これは前回アフターサービスだったのがフォローアップに変わったのはどういう経緯だったのかをお尋ねしたいということです。フォローアップという言葉は、当ワーキングの参加者にはもうすぐに分かる言葉だと思いますけれども、現段階で十分に人口に膾炙した言葉だとは思っていません。一般の方々、特に金融商品は預金ぐらいしか知らないといった高齢者などがきちんと理解できないのであれば、当然のことながらこの質問例を示しても意味がないということになります。例えばですけれども、この商品を購入した場合、その後どのようなサービスを継続的に受けることができるのかといったような具合に一般の人にも分かりやすくかみ砕いて書いたらどうかなと思っています。

 最後ですが、ポンチ絵についてなんです。ポンチ絵が出ていたと思うんですが、これなんかはどうでもいいと思う方は多いと思うんですけれども、私の経験では記事を書くために政策のポイントはどこだろうと考えた際、まず参考にするのがこういったポンチ絵です。全体の評価としてはよくできているのですが1点だけ、中ほどの監督指針に触れている部分ですが、監督指針で明確化するとありますけれども、私が担当記者だったら、つまり監督指針は改正するのですか、どうですかという質問すると思います。今回は監督指針をわざわざ改正して法的なルールの遵守を強く求める方向にかじを切ったということが大きなポイントだと思っています。この対応を明確にするためにも監督指針を改定し、明確化するといったように表現を補ったらどうかと思っています。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
 ありがとうございます。

 まず、新型コロナの蔓延というような事態の中でワーキング・グループの議論を進めていただきました事務局の皆様に、心からお礼を申し上げたいと思います。

 それから、超高齢社会において顧客本位の業務運営はどうあるべきかという大変大きなテーマについて十分広い範囲でできたかというと、正直なかなか難しい部分もあったかと思うんですが、その一方で部分的には、全体というわけではないですが踏み込んだ議論が十分にできたんじゃないかという自負もあります。その上で3点、改正とか直しとかというよりは付言といいますか、強調しておきたいというところを指摘させていただきたいと思います。

 まず1点目なんですが、顧客本位の業務運営というのが、そもそも金融商品は全体として対象にすべきものだということだと思っています。今回の議論の中で自分も反省しなければいけないなと思っているんですが、知らず知らずのうちに投資信託がやっぱりメインの金融商品になっておりました。本文の中にもありましたようにライフプランを前提にした顧客へのアプローチというのを考えようとすると、そこにはやっぱり投資信託のほかにも株や債券や保険や預金も入ってくるものだと考えるべきかと思います。重要情報シートの対象かどうかというのも大事な議論のポイントではあったんでしょうけれども、改めて顧客本位の業務運営というのが広い金融商品をカバーするべきものであるということを理解しておく必要があるのではないかと思います。

 2点目なんですが、これも1点目と関わりのある点なんですが、保険商品の重要性をもっと強調しておきたいなと思っています。最近、イギリスの金融制度ですとかシステムを勉強する機会が多くなっているんですが、個人金融資産を殖やしていくという大きいテーマの中でいくと、やはり保険商品、特に日本ではまだなかなかありませんが自分で運用できる選択肢がある、そういった保険商品なんかがイギリスでは十分に使われております。こういったものが今後日本でももし広がってくるというような機会があるとすれば、やはり保険商品も含めて手数料だとか重要な情報の開示は重要情報シートで一元的にできるようになっていくということが大事ではないかと思っています。今後金融庁の皆様のほうが業界との細かい折衝にも当たっていただくんだと思いますけれど、ぜひ保険の重要性に一層の御理解いただけるといいなと思っています。

 それから3点目ですが、重要情報シートがとかく紙の提供の拡大につながらないようにしたいなと思っています。その代わりにというと変ですが、電子提供できる法定書類が増える、もしくは原則的に電子提供もできるようになるというのは大変いいことだと思っています。顧客に重要情報シートの存在が、提供すると何か面倒くさいもので、「まあ、いいや、後で。それはいらないや」とその場で終わっていってしまうようなものではまずいなと思っています。紙よりもアプリだとかインターネット上で比較できるといったような、より現場での使いやすさに力点を置いた運用面での対応をお願いしたいと思います。紙のコストの削減という面からも、金融ビジネスの持続可能性を高めるという点からも、顧客にとっても重要なポイントになるのではないかと思います。

 以上3点、付言として付け加えさせていただきました。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして宮本委員、よろしくお願いします。

【宮本委員】
 ありがとうございます。

 各界の各委員からの御意見、それから議論内容について、本当に短い期間の中でよくまとめていただいておりまして、事務局の皆様に感謝申し上げたいということであります。取りまとめ内容については、賛成でありまして、異論は特にございません。その上で3点であります。

 まず第1に、重要情報シートについては簡潔に分かりやすく整理されていて、顧客本位の業務運営の進展に大きく役立つツールになるものと期待しております。この内容については、今後金融事業者、顧客双方の活用実績とか課題をフォローアップして、このシートを適宜ブラッシュアップし続けるということも重要だと思っております。各業界団体の枠を超えた横断的な議論が継続されるということを望んでおります。

 老後2,000万円問題をきっかけに、若年層を含めて顧客本位の業務運営への関心、とりわけ資産形成への関心は非常に高まっていると思っております。この機会を捉えて顧客本位の業務運営の取組を浸透させ、適切な資産形成への機運を社会に広めていくことが重要と思っております。

 それから、重要情報シートなどの見える化に向けた取組をより機能させるためには、顧客側の理解度の向上も欠かせないと思っておりまして、書いていただいているとおり金融リテラシー向上の一層の取組が重要になってくると思っています。例えばオンライン講座、高校とか大学の学校教育、カリキュラムに組み込んでいくということも、文部科学省との調整が必要となってくるということでしょうが、今後検討していくことも重要だと考えております。

 最後に、高齢顧客への対応に関しては、認知能力が低下する前から後見への備えが重要となってきておりますが、既に開発されている利便性の高い高齢者を対象とした信託スキームなどの活用拡大とか、後見制度の分かりやすい手続や簡素化、これも望まれるのではないかと思っております。特に高齢者の生活に直結するものについては、関係省庁が連携して各業界団体とともに顧客の利便性向上に資する制度、サービスの継続的な検討をお願いしたいと思います。また、日本は高齢先進国であって、高齢者対応も進んでいるのでしょうが、海外でのよい事例があれば、国内で適用可能かどうかも含めて検討していくことも大事だと思っております。

 以上であります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして高田委員、竹川委員、中野委員の順になると思いますので、高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 高田でございます。御指名いただき、どうもありがとうございます。

 まず最初に、今回の顧客本位の業務運営の進展に向けてということでこれだけのものがまとめられたこと、事務方を中心といたしまして、心から敬意を表したいと思っております。全般的な内容につきまして、私自身は全く異論がございません。その上で、幾つか付言させていただければと思います。

 まず申し上げたい点なんですけれども、今回のこの顧客本位の業務運営というのはあくまでも資産運用の高度化とする好循環というんでしょうか、金融における成長戦略を目指すものと私は考えています。日本のマクロ構造というものが、従来、貿易収支で製造業中心とした輸出構造といったところから、所得収支として、それから投資、投資の配当で富を蓄積する時代になってきた中、いかに国民レベルでの資産形成、富の蓄積が求められるような状況になってきたと考えています。

 今回、一義的には金融事業者の行動指針ということでまとめたわけでありますが、同時に国民の習熟というんでしょうか、資産形成に対するリテラシー、それに加えて行政制度のインフラ、さらには国の資産形成を成長戦略とするという国民合意が一体となってこうしたものが好循環が生まれるということであります。従って、今回の一連の作業を含めて、資産形成の重要性を確認するということではないかと思いますし、また金融事業者のサステナビリティというものも同時にやっぱり考えておく必要があるんじゃないかと思います。

 今回、非常に私が重要だと思いますのは重要情報シートということになると思うんです。どうしてもこれまで業者の視点として、それぞれの業界ごとの商品を勧める発想というんでしょうか、いわゆるBtoCの対応から、国民の目線に立ってそのニーズに沿った新しい様々な商品というものを比較しやすい形で、すなわちCtoBという形で対応できるインフラづくりというのが非常に重要なことだと思います。これによってリスク、リターンの関係というんでしょうか、こうしたものを見えやすくするという中で国富を増大させるという好循環ができるというのは重要だと思います。また、こうしたもの、これだというものをなかなか決めるわけにはいかないと思うんですが、いろいろな意味での好事例というものを簡潔に積み上げていくということが今後重要だと思いますので、そういう観点から重要情報シートを使うことが重要ではないかと思います。

 平成のバブル崩壊後、日本の場合は資産デフレと円高ということで、しかも海外からも非常に運用悪環境ということで隔絶されたという状況があったものですから、どうしても資産運用に悪循環が生じやすかったと。こういうような状況の中から、ようやくこの四、五年間というのでしょうか、外部環境も海外並みになってきたということになりますから、そういう環境に合わせてこうしたいい市場のインフラというものを改めて整えて、情報インフラを整えていくということは非常に意義のあることだと私は思います。

 最後になりますけれども、今回、高齢化社会の中での金融の在り方ということも改めて問われているわけであります。特にこれだけの高齢社会になった中で言いますと、金融というものが生活に一体として、医療と一体となってというんでしょうか、生活に結びついた金融というもの、金融包摂というものを含めたものがまさに高齢社会の必需品として重要になってきているということだと思います。そういう意味では高齢社会での金融が非常に重要なものなのだという国民合意を今回改めて広めていくということもやっぱり重要だと思いますし、また、先ほど委員の先生方もお話がございましたけれども、金融にこだわらずいろいろな意味での制度、それから様々なデジタル技術などの社会実装というんでしょうか、こうしたものをどんどんと高度化させていく、そういう新しい働きかけというんでしょうか、こういうものも重要でございますので、今後も幅広くほかの業態も含めた、ほかの様々な産業も含めた高度化というものを求めていきたいなと思う次第でございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、続きまして竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】
 短期間に報告書を簡潔にまとめていただきまして、どうもありがとうございました。私からは4点申し上げたいと思います。

 まず1点目、重要情報シートについてです。顧客にとって最も重要だと考えられる利益相反、そして費用(手数料)についてしっかりと記載すること、そして横断的に商品を比較できる体裁にすることを重視していただきたいです。WGでは投資信託の議論が多かったように思いますが、保険なども含めた幅広い金融商品をカバーした上で横断的に比較するということが大事だと思っています。それ以外の項目については簡潔に、そして詳しいリスクなどについては目論見書などで別途丁寧に説明していただきたいと思います。

 2点目は、同じく重要情報シートについてです。今回は時間が短かったということもあって各委員の意見も割れているというか、分かれているところもあります。(重要情報シート導入後)本当に顧客のためになっているのかを検証してほしいと思います。例えば紙の枚数だけが増えていないか、説明に要する時間がかかり過ぎて顧客側の理解が進まないのであればむしろ逆効果だと思いますし、その辺も含めて本当に顧客のためになっているのかを検証する必要があるでしょうし、金融事業者の側も現場で利用できるものになっていないと形式的なもので終わってしまいます。顧客、そして金融事業者双方の目線からフォローアップが必要だと感じます。

 3点目、報告書の10ページにアドバイザーを育成していくための環境整備という記述があります。アドバイザーについては昨年6月に出されて消えてしまった報告書「高齢社会における資産形成・管理」の33ページにもう少し詳しく、アドバイザーについての記載がります。例えば、アドバイザーとなり得る主体については投資助言代理業や証券仲介業、ファイナンシャルプランナーなど様々な業種、業者が存在するといったことも含めてアドバイザーとなり得る主体や役割などについて詳しい記載がございます。今回の報告書についても、主体や何を期待しているのかというのを前回並みに書いていただけるとありがたいです。

 最後、4点目です。この報告書自体は、顧客本位の業務運営ということを金融事業者に求めているわけですが、国も長期的な視点に立って顧客つまり国民が分かりやすいシンプルな制度設計を目指すということを心掛けていただけないでしょうか。国も一体となって顧客本位の業務運営を実行していくことが顧客にとってはより重要だと考えます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして中野委員、どうぞ。

【中野委員】
 中野でございます。

 まずは、私自身、顧客本位の浸透というものに大変格別な思い入れを持つ一委員として自分自身が目指す方向に合致したという意味で、昨年の報告書に劣らぬ強いメッセージ性を出した意欲的な報告書になったと感じておりまして、事務局の皆様にお礼を申し上げたいと思います。その上で、全体として、私は大いに賛成いたしますが、せっかくの機会なので総括的に付言させていただきます。

 まず、顧客本位の業務運営原則、この受入れと取組方針ついて、3年前に各金融事業者が多数提出しているはずですが、今回これを修正するにあたって、改めてこの受入れ及び取組方針の再提出を促すことによって、当ワーキング・グループあるいは行政当局からこの浸透に向けた強い意志を示していただきたいと思います。

 それからもう一つ、高度な顧客本位の実践を希求するプリンシプルベース、これが現状の金融行政の根幹だと思いますが、併せて今回ミニマムスタンダードに当たるルールを入れたということで、ここを峻別する意味で高いレベルのプリンシプルベースとミニマムスタンダードの厳格な遵守を意図したルールベースという、本質的な行政方針を明示的に表していただいて、日本の金融業界全体のサービス水準底上げにつながる強いメッセージにしていただきたいと思います。

 それから、取組の見える化は誰に対して見える化を希望するかといえば、一般生活者に対してだと思います。ですから、一般生活者の判断材料に資する易しい表現で取組事例などの情報発信をしていただけるように工夫をお願いしたいと思います。

 最後に、高齢社会における金融業務の在り方についてですが、総括的に申し上げますと、これは業際を超えた金融事業者間の協力が必要だと思います。そういった知見の集積によって、一事業者を超えた形でのベストプラクティスを求めるという表現を加えていただけると、より強いメッセージになると思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして島田委員、駒村委員、野村委員の順でお願いしたいと思います。

 島田委員、どうぞ。

【島田委員】
 島田でございます。よろしくお願いいたします。

 報告書、いろいろな意見がある中でこれだけおまとめいただきまして、どうもありがとうございました。私は趣旨に賛同いたしまして、本報告書全般に賛成でございます。

 顧客本位の業務運営に関する原則が、金融商品取引の現場までより一層浸透、定着していくために、具体的な取組を例示していただくということは非常に助けになると思います。国民の安定的な資産形成の実現という原則がつくられた目的、この目的の達成を進めていくことですので、いずれの課題に対しましてもミニマムスタンダードとならず、各社の特性を発揮して工夫していただき、今後も一層改善・発展がなされることを期待したいと思います。

 そして、この原則よりももっと前の段階で払拭していかなければならなかったはずの不適切な販売事例の効果的な抑制という問題につきましては、監督指針を明確化することはもちろんのこと、今後モニタリングを通じた金融機関との意思疎通や、事案発生時の対応など、金融庁がリーダーシップを発揮して誠実公正義務や、適合性の原則を実際の金融取引においてどのように実践していくか、遵守していくべきかということを、より顧客本位の視点で示していただければと思います。

 重要情報シートについては、7ページを拝見しましたところ、ちょっと以前の案よりもふわっとした感じになってしまったようにも思われますが、そもそもこのシートを作った主眼は、顧客に対して分かりやすさと、各種の商品の比較のしやすさを情報提供しようということにあったと思います。ですから、今後もそこを基本として改善を進めていただきたいと思いますし、既存の法定書類や各社で使用している資料との重複などについては、改善の時点で整合性を持って簡単にしていただくことが読み手にとって分かりやすくなるのではないかと思います。

 また、重要情報シートの金融事業者編についてですが、当初より少し意見を述べさせていただいておりますとおり、実際に顧客の目の前にいらっしゃる販売員や役職員についての情報が個別商品編の質問としてのみ取り扱われていることには、やはりちょっと物足りなさを禁じ得ません。質問事項としてでも金融事業者編に明示されるほうが顧客にとっても分かりやすいし、望ましいのではないかと考えております。

 これらの重要情報シートの提供を前提に、法定書類の電子交付についてさらに拡大していくという方向については、結局読む気がしないほどいろいろな書類を提供されて、かえって消費者が戸惑ってしまうというようなこともあり、またそのコストを消費者が負担しているということもあるので、若い世代を中心にどんどん進めていただくことはよいことだと思います。ただ、当然のことながら電子交付となっても従来行われてきたはずの説明をはしょってもよいということではないので、重要情報シートとともに今後もしっかりと法定書類を活用して御説明いただくようにお願いしたい。そして重複する部分については、今後どちらに集約していくのかといったこともお考えいただければと思います。

 最後に、高齢社会における金融業務の在り方については、より柔軟な対応や様々なテクノロジーを活用して顧客の変化を把握し、状況に応じた制度をつくっていくということは、多くの人の不安を取り除くためにも有効な取組であり、賛成いたします。今後議論を進めていく中で1つだけお願いしたいことがございまして、これは性善説にのっとった家族主義ではなく、たとえ家族であっても利益相反の存在する可能性があるとの認識を基本にして、より中立的な第三者やテクノロジーが介在してそのような弊害を抑制する方向でお考えいただければと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして駒村先生、どうぞ。

【駒村委員】
 非常にバランスの取れた報告書を取りまとめていただきまして、事務局の御尽力にお礼を申し上げたいと思います。

 あと具体個別の修文依頼というわけではございませんけれども、2つほど高齢顧客の部分についてコメントさせていただき、もしこの意図を反映していただけるようであれば、少し考慮いただければと思います。

 14ページのところでございますが、金融庁においても、最初のパラグラフにありますように業界の取組のフォローアップをしていただくという記述になっております。ここはぜひとも具体的にフォローアップの仕組みを入れていただきたいなと、応援する仕組みを準備していただきたいなと思いました。

 そしてこの14ページから15ページは、金融庁のみならず関係者が、今度は様々な福祉の関係者、それから自治体が出てくる、そのところとの連携も大変重要になってくるところでございます。今回の報告書は金融庁の報告書ということでございますので、福祉関係諸団体を所管する厚生労働省のお名前はあえて出ていないのかもしれませんけれども、どうしてもこの部分で隙間が出てくる心配があります。福祉関係諸団体関係者、社会福祉協議会も含めて、なかなか体力差もありますし、コロナの状況で業務量が急激に増えていることもありまして向き合える余力もない、あるいはまだまだ自分たち問題とは思っていないところもあるかと思います。ぜひとも厚生労働省もこの報告書のこの部分については少なくとも一緒に担っていただくという必要があるのではないかと思いますので、そこは強めにコメントしておきたいと思います。

 さらに15ページの上段のパラグラフには、「福祉関係機関等と連携して」からのところで、高齢顧客の財産管理に重大な支障をもたらすような場合で、緊急性が高いと思われる場合など、例外的なケースにおいてと、非常に慎重に書かれているわけでございますけれども、ここについて、現場の金融機関のみにその判断をお任せするのは当然ながら問題が起きるわけでありますので、業界団体、それから福祉関係諸団体とともにつくっていく指針についても、法的なコメントなり担保をして、過大なリスクを現場に押しつけないようにしていかなければいけないのではないかなと思います。この辺について、厚生労働省もぜひとも主体的に参加していただきたいと思っております。

 最後に、17ページのデジタル技術を活用した部分にも触れたいと思います。加齢に伴う認知機能の変化、それから認知症リスクそのものの変化、これはまだ様々な研究途上、ジェロントロジーや脳神経科学の分野でも研究途上の分野でありまして、コーホートや社会活動との関わりによっては異なってくる部分がある。特にこれから65歳以上の就業者が増えてくる中で、一律に年齢で区別していくというのはやはり問題が出てくると思いますので、個別にデジタル技術を使って判断できるような仕組みを実装していく必要があるのではないかと思います。この辺はまだ研究途上の分野でございますので、政府におきましてもこれに対する研究投資を充実してほしいなと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして野村委員、どうぞ。

【野村委員】
 ありがとうございます。

 まずは、大変短い時間だったかもしれませんが、取りまとめ、誠にお疲れさまでございました。私からも幾つかコメントのような位置づけで発言させていただければと思っております。

 まず、何人かの委員の先生方が御指摘の点ではあるのですけれども、全体的に顧客本位を追求するに当たっては、顧客目線ということを考えますと、個人にとってはこの金融商品がどういう業法に基づくものなのかといった技術的なことはもしかするとあまり重要ではなくて、より大事なのはこの金融商品は自分にとってどういう意味があるのか、どういう機能を提供してくれるのかということではないかと思いますので、繰り返しになってしまうかもしれませんが、そういう意味も含めて幅広い金融商品が対象になっているということは引き続き強調していっていただくのがよいのかなと思いました。

 2点目は、重要情報シートのところでございますけれども、これは電子的な活用を明確にしていただいて、どうもありがとうございます。

 また、ほかの委員の方々も既に御発言がありましたけれども、このシートが実際のところどのくらいの利便性、有効性を持つものなのかというのは、どうしてもやってみなければ分からないというのが、実際のところではないかと思います。したがいまして、引き続き現場との対話も含め、本当に実のあるよいものになっていくようにしていく必要があるのかなと思いました。

 それから、最後の高齢社会のところでございます。これも継続案件、Ongoingのことがたくさん書いてあるということを、今回の報告書を見ても改めて思ったところでございます。

 16ページに「資産の有効活用や効率的な資産管理の観点から」と記載していただいておりますけれども、まさにそのとおりでして、代理人、代理といったことが必要になる手前のところからシームレスにいろいろな備えや取組といったことをやっていく必要があるというのが、これまでの市場ワーキングにおける議論の内容、メッセージでもあったかと思っております。

 報告書にありますこのデジタル技術の活用のところなどは、今の駒村委員の御発言にもありましたとおり大いに注目、期待したいところではあるものの、やはり多様性に富む高齢者の方たちということを念頭に置きますと、その研究成果を生かしつつも、ある程度慎重な議論というのは必要ではないかと思います。研究成果をどのように使っていくのかというのが議論の対象になるかとも思いますので、この辺りは引き続きいろいろな形で多面的な関係者に参加していただく形で、また、まさに省庁横断的な形で議論を続けていく必要があるかと思う次第です。

 私からは以上です。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、続きまして鹿毛委員、神戸委員、上田委員、永沢委員の順でお願いします。

 鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】
 まず最初に、事務局の皆様の取りまとめのご努力に心からお礼申し上げたいと思います。

 私もこの最終案につきましては、格別異論はありません。今後は業界とそれを通じた一般国民にどれだけこの考え方が伝わっていって実効性を高めるかという事が課題になると思いますので、この点に関連して3点ほど簡単にコメントします。

 第1は、これはもともと業界向けメッセージを意識したものだとは思いますが、最終的には一般国民を対象として説明する、あるいは一般国民も含めて情報が伝わっていくという機会も少なくないと思いますので、そうした場面においては説明の仕方、言葉遣いを含めて、できるだけ分かりやすく伝えるということが大事だと思います。この報告書は専門家の方々の発言に基づくものが多いと思われますので。蛇足ですが、このSNSの時代に、状況次第で誤解による炎上リスクがあることも、想定する必要があるということです。

 第2は、不適当、不誠実な事例についての公表の今後の取り扱いです。公表自体重要なことだと思いますが、特に適合性原則等から法の精神に合わないというような事例に関しては、単に事例を提示するだけではなく、法的解釈を含めた、むしろ最終的には法令の一部になっていくような扱いができないか、という事を今後の課題として検討されては如何かと思います。釈迦に説法になると思いますが、アメリカのSECの場合には法令の解釈に関連した膨大な判例とかノーアクションレターといった膨大な書類の蓄積があって、事前に法令解釈の検索ができるようになっているということを私も耳にしております。わが国においても特に法令違反に関わってくるような事柄についての事例集の整備が必要な段階に来ているのではないかという気がしました。

 第3に、高齢化社会の対応については、もともとこれは個人個人の価値観によって多様な御意見のある分野だとは思いますが、当然のことながら今回の報告書も、結論というよりはむしろ現時点での第1段階としての整理ということだろうと思います。先ほど駒村先生もおっしゃったコメントに私も賛成ですが、今後認知症の方の増加に伴い、社会の対応も徐々に進み、社会通念そのものも変わっていくというような変化の中で継続的に検討を進めていくテーマだということが明確になっているほうが、今後議論を深める上でも分かりやすいのではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、続きまして神戸委員、お願いいたします。先ほどチャットを事務局に早めに頂いていたようですけど、遅くなって申し訳ありませんでした。どうぞ。

【神戸委員】
 とんでもありません。

 今回取りまとめていただいた事務局の皆様に、まず感謝申し上げておきたいと思います。私は前回WGには参加できませんでしたが、個別に申し上げた意見もある程度反映していただいておりまして、報告書の内容については賛成です。本日のWGは報告書の取りまとめが目的ということですので、報告書の表現、文言を中心に意見を申し上げたいと思います。

 鹿毛さんもおっしゃったことですが、前回の報告書が、皆様もご存知の通り史上最も多くの人に読まれた報告書だと言われておりまして、その後メディアなどでも、読みやすい、分かりやすいという評価を頂けていたと思います。今回も一般生活者にとっても読みやすい、分かりやすい報告書を目指すべきだと考えたときに、前回と比べて専門用語的な表現が多いような気がしまして、気づいたところを何か所か指摘させていただきます。

 まず、5ページの3つ目のパラグラフ、原則6のすぐ上の部分ですが、「金融商品・サービスの選定理由として」の後に、「当該顧客の想定顧客属性への該当性が示されること」とあります。該当性という言葉があるかどうか分からないのですが、一般の方向けには「当該顧客が想定される顧客属性に当てはまること」ぐらいの表現のほうが分かりやすいのではないかと思いました。

 次に、同じページの一番下の注13についてですが、今回加えられた部分である下から2行目に、「当該金融商品がポートフォリオ全体としてふさわしい商品か否かについての評価・検討」とありますが、当該金融商品を含むポートフォリオが顧客にふさわしいか否かについての評価・検討という表現の方がいいのではないかと思いました。

 それから、7ページになりますが、今回修正が行われた部分である上から5行目に、「金融商品・サービスの特性等に応じて、簡潔性や比較可能性」とあり、以下文章が続くのですが、この「金融商品・サービスの特性等に応じて」というのがかかるのはこの文章の一番最後の部分になると思うので、修正前の位置にあった方がわかりやすいのではないか、元に戻したほうがいいのではないかと思いました。

 また、同じページの注20の5行目ですが、「適切な質問するための知識が十分ではない場合もあると考えられる」と、「の」を入れる方がいいと思います。その1行下に「金融事業者が顧客に対して促す質問例を予め」という文章がありますが、この「顧客に対して促す」というのはない方がわかりやすいかもしれません。「金融事業者が質問例を予め『重要情報シート』に組み込んでおくことが望ましく」の後も、「顧客の金融リテラシーを高めていくことにもつながると期待される」くらいの表現でいいのではないかと思いました。

 次に、10ページの(2)不適切な販売事例に対する監督上の対応の強化で、①の上から6行目の「回転売買などの販売手数料に過度に依存した取引の勧誘」という表現ですが、金融事業者が行いがちなのは回転売買などの販売手数料の獲得を主目的とした取引の勧誘ということになると思います。販売手数料に過度に依存した勧誘というのは分かりにくいかもしれないので、再考していただけたらと思います。

 それから、12ページの③不適当・不誠実な行為の具体例というところの黒ポチ2つ目、「顧客に対し、顧客の属性や本来の投資目的に適合しない金融商品を勧誘するため、当該顧客に」の後の部分、「その意味や理由を正確に理解させることなく」というのが少し分かりづらい気がします。「当該顧客に当該金融商品が適合するように投資目的を変更させる行為」として、なくしてもいいのではないでしょうか。特に「その意味」というのが何を指しているかが分かりにくいのではないかと思いました。

 超高齢社会における金融業務のあり方については、13ページの3行目から4行目にかけて、「高齢者は金融事業者の顧客のうち大きな割合を占めている」という表現がありますが、確かに大手証券会社などにとっては全顧客の中での数的な比率が高いケースもあるでしょうが、金融機関全般にとって人数の比率が高いというわけでもないと思いますので、「高齢者は金融事業者にとって重要な顧客となっている」くらいの表現でいいのではないかと思います。

 より気になったのは、一般の方が読まれることを考えると、高齢者に対して資産形成・管理が困難になるといったように、資産形成という言葉が何回も繰り返されていることです。高齢者になっても資産形成を勧めているのかと曲解される可能性が無いともいえないので、16ページあたりまで、何か所かに資産形成・管理という文言が出てくるのですが、形成という文言を運用あるいは保全とする方がいいかもしれないと考え、再度検討していただければと思います。

 また、13ページの2の(1)金融取引の代理のあり方の1行目の、「これまでの資産形成・管理や金融取引が困難になる場合」の部分ですが、これはお客さん自身が従前のような資産管理や取引を行うことが困難になるということだと思いますので、表現を変更することと、3行目の「このため、その家族や公的機関が本人に代わって」という部分についても、「このため」ではなく「このような場合」の方がいいと思います。

 次に、16ページの一番下なのですが、④の金融商品販売後のフォローアップで、6行目に「フォローアップのあり方について、業界として目線が示されることが期待される」とありますが、この表現だと業界が期待しているようにも読まれかねないので、「業界としての目線が示されることが期待される」と「の」を入れた方がいいだろうと思いました。

 最後に、「おわりに」の部分についてです。今回のコロナ問題によって、金融事業者と顧客間のコミュニケーション方法、あるいは営業のスタイルなどに変化が生じる可能性が非常に大きいと思っています。そういう状況変化に応じて、顧客本位のあり方というのを今後も継続的に新しい状況に合わせていくように考えていくべきであるといった趣旨の文章が入るといいのではないかと思いました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして上田委員、どうぞ。

【上田委員】
 ありがとうございます。上田です。

 それでは、まずはコロナ等の影響があっていろいろと制約があります中、何度も会議も無事開催していただきまして、またこのような報告書もおまとめいただきまして、事務局の皆様の御尽力に心より感謝いたします。

 全体的な方向性については、全く異論はございません。その上で、少し細かなこと、あるいは前回からの改正、修文のあった点等について幾つかコメントをさせてくださいませ。

 まず、3ページから4ページ目にかけて、これは前回私が早く出た関係でお伝えできなかったところなんですが、取り扱う商品について、業法の枠を超えた類似・代替商品との比較が行われることも重要ということで、注にありますように金融サービス仲介法制との関係で、こういう業界横断型の俯瞰した形でという御提示だと思いますが、少し現行法の枠内でこれってどうやればいいんだろうかというところに疑問を持ちましたので、現行法内でスコープの明確化のようなものも、できましたらその注の中に書いていただくか、あるいは別途どこかで御説明いただく機会があればと思います。

 具体的に言いますと、例えば銀行が取り扱うことができない個別銘柄、ETFのようなものを紹介したりとか、あるいは証券会社において外貨預金のようなものを紹介したりというようなことなのかなとちょっと思いまして。そうしますと、これは現行法制の中では法令違反になる可能性もあるんではないかというようなこともありますので、その辺りを少し明確化していただければと思います。顧客の立場から見ましても、提案ではなくて単なる比較であれば業法に違反しませんよということであれば、自ら売ってもいない商品を無責任に御説明されてしまうのもちょっと困る感じもいたしますので、ここについては少し御説明していただけるとありがたいと思いました。

 続きまして、7ページ目の注18、前回から修正いただいたところでございます。私、重要情報シートについては今回の報告書の一番の目玉であるとともに、こういう一覧性と、そして簡潔性をもって顧客に必要な情報がぱっと分かるということは本当にすばらしい取組だと思いますので、これはいいことだと思っております。一方で、こちらで前回から追加されている意見があったというところの具体的な内容につきましては、先ほど上柳先生からも一覧性とか簡潔性との兼ね合いでというような御指摘があって、大いに同意しているところでございまして、やや少し方向性が逆なのではないかと感じました。むしろこちらに書いてある内容というのは投資家側というか顧客側のリテラシーとして疑問があって、必要であれば業者に対して質問すると、それに対して金融事業者側が答えを用意しておくと、そういった項目であろうかと。あらかじめ金融事業者の側がシートの中にこういったものを入れるということではないのかなと思いました。

 中でも想定最大損失とか、あるいは推奨される投資維持期間のようなものというのは大変難しいだろうなと現実的に思いました。他方でリターンだけではなく、顧客はリスクを知るべきだといったところも重要だと思いますけれども、実際問題、ここについては実務上相当難しいと思いました。

 あと担当者、上司の情報ですか、これもその場によって担当者が替わることもあろうと思いますので、シートという形で恐らく各事業者においてシステム上管理されると思うんですが、そういったシステム面での対応というのも人が動くたびに変わったりするのかな、などと細かいことを感じました。

 いずれにしても、この内容はこのワーキング・グループの参加者であればその背景も分かって読みますけれども、一般の読者から見ますとこういったものも提供されるべきだ、あるいは事業者が提供するべきだというように読まれかねないところでもございますので、ここの取扱いについては、私はこれはなくてもいいんじゃないかなと思ったところでございます。

 最後でございますが、私が何よりも大切なことだと思っていますのが金融事業者のサステナビリティ、それとともに個人の、我々国民の金融サービスへのアクセシビリティと信頼性の確保、このバランスを取ることだと感じております。こういったところ、特にバランスのところに配慮しながら、今後金融庁においてベストプラクティスの御提示のようなものも自主的に進められるということですので、そういったものの実施及び今後モニタリングをより実効的に行っていくといったところを含めて、より実質的な品質の向上のところに取り組んでいただければと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして永沢委員、よろしくお願いします。

【永沢委員】
 ありがとうございます。私からは総論意見1つと、各論への意見を3点言わせていただきたいと思っております。

 まず、コロナのほかいろいろ厳しい状況の中、会議を開催いただき、報告書をお取りまとめいただきました事務局の皆さんに、感謝を申し上げたいと思います。そして、先ほどから昨年の報告書は大変なベストセラーだったというお話が出ましたが、私としては今年の報告書こそ、昨年のワーキング・グループで積み残した重要な宿題をやり遂げることができたと思っており、大変意義のある報告書だと思っております。

 顧客本位の業務運営の原則の公表から3年がたち、形骸化が懸念されていましたけれども、市場ワーキング・グループの委員として、金融事業者に対して具体的にこういうことを実施していただきたいというメッセージを発信することができたことも大変よかったと思います。以下、各論を述べさせていただきます。

 第一に、原則についてですけれども、今回、原則を具体化していく中で、販社の役割は商品を顧客に紹介する立場から、顧客の資産形成と管理に寄り添う専門家たることを期待するということを、販社に対してメッセージとして出すことができたと思います。これまでもポートフォリオとかライフプランという言葉はいろいろなところに出てはきておりますけれども、今回の報告書ではその点をより前面に出すことができたと思います。このような分野の知識や技能は、個人や個社ではなかなか習得が難しいと思います。金融庁にも応援いただき、業界団体が協働して、この分野の販社の従業員教育を開発し提供することをお願いしたいと思います。

 販売会社の間に原則が浸透すると、良質の金融商品を提供するための環境整備が進んでいくことになります。金融庁に資産運用高度化室なるものが設置され、「資産運用の高度化プログレスレポート」を公表されましたが、次のステップは資産運用業の高度化であろうと思います。次の動きを期待しています。

 2点目は、重要情報シートについてです。今回の市場ワーキング・グループの大きな成果物と思います。様々な意見が出ておりますが、まずは始めてみて、トライアンドエラーで修正していけばよいと思います。

 会社に関する重要情報シートは不要という意見が審議の途中で出ておりましたが、例えば商品の品揃えの方針などを示していただくことを期待しています。各社がどのような作文をされるのか、楽しみにしております。

 商品シートにつきましては、野村委員から御指摘がありましたように、消費者である顧客はどの業法に基づいて商品提供される等ということには関心がなく、商品そのものを比較しやすいということが大事だと思います。より一般消費者の目線に立ったシートに今回は近づけたと思っております。いろいろ言いたいことはありますが、1点、やはりリスクの表示のところは気になります。今後、各業界が用意されるものを拝見させていただき、積極的に物申させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。また、この商品シートにつきましては、利用者だけでなく現場の営業社員の声も聞いて定期的に検証していただきたいとも思います。

 最後に、超高齢社会におけるとか金融機関の在り方につきましてです。この分野については金融機関はためらっておられたと思います。やらなくてはいけないと自覚されながらも始めることができなかったところを、この報告書で背中を押すことができたのでないでしょうか。ポンチ絵の3点を、金融機関には積極的に進めていただきたいと思います。

 1点、この点につきましてお願いがございます。これからはフィンテックといいますか、デジタル技術を活用して個々人の認知判断能力を測定するようなことも行われていくのだろうと思いますが、こうした研究についてはクローズではない形で、私たち一般人に分かるかどうかは分かりませんが、先ほど駒村先生からもお話がありましたように、福祉関係や医療関係の方々にも参加いただき、いわゆる金融村ではない方々の目にも触れるようにして、ぜひともオープンな形で議論を見える化していただきたいと思います。

 以上でございます。いろいろと本当にありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に池尾先生、お願いいたします。

【池尾委員】
 報告書の今回の案に関しましては、基本的に賛同いたします。ただし、1点だけ引っかかるところがありまして、それは14ページのアドバイザーのところなんですけれども、アドバイザーのところが、ちょっとアドバイザーというのが唐突に登場しているという感じがいたしまして、今の段階でここを書き込むというのはなかなか難しいと思いますが、最低限アドバイザーということで想定している主体はどういうものかぐらいは少し書いてもらわないと、ちょっと唐突感があるなというのが感想です。

 それから、報告書のスタンスに対してですが、銀行法も存在しなかったかつてのイギリスのような場合であれば、全面的にプリンシプルベースでという話になるのかもしれませんが、我が国は金融商品取引法に代表される厳然たるルールを保有している国ですから、やはりプリンシプルというのはルールの補充であって、上乗せだと思うので、ルールそれ自体は厳格にエンフォースされていく必要があるということで、その辺のスタンスが、ある意味当然だとは思うんですけれども、少し曖昧だったのが今回の報告書で明確になったことは好ましいんじゃないかと思っております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして佃委員、どうぞ。

【佃委員】
 ありがとうございます。

 まず、この報告書を取りまとめていただきました事務局の皆様、そして大変示唆に富む発言をたくさん私も学ばせていただきました委員の皆様に感謝を申し上げます。また、前回の私のコメントにつきまして、報告書の最後、「おわりに」のところで金融庁による金融事業者との対話等を通じてのフォローアップという形で反映していただきまして誠にありがとうございます。

 私も、報告書につきましては大変よくまとまっていると思います。異論ございません。その上で2点、付言させていただきます。

 まず1点目は、顧客本位の業務運営に寄与しているかのフォローアップに際しての留意点といいますか、ぜひこのようにしていただきたいことです。顧客本位の業務運営をいかに根づかせるかを考える上で、やはりKGI、KPIの設定は大変重要だと考えます。Key Goal Indicator、それから中間目標としてのKey Performance Indicator。どんな司法を重視して今後フォローアップしていくのかといったことを考える上で、これは釈迦に説法ではございますけれども、これらのKGI、それからKPIというものがどういったものであるべきかといったものをぜひとも十分御議論いただき、かつ、できればそれを金融事業者との対話の中でも議論していって、金融全体のレベルアップを図っていただければと希望いたします。これが1点目です。

 2点目は、まさにこの報告書、先ほど、去年ベストセラーになったという話がございましたけれども、この報告書に関しましてもメディアも含めてなるべく広く世に知らしめて、ぜひともなるべく多くの方々がこの報告書の趣旨を御理解いただくという方向で情宣を図っていただければと考えます。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 以上で、御発言を御希望いただきました委員の方々からは一通り御発言いただいたことになります。ほかにいかがでしょうか。

 そうしましたら、すみません。オブザーバーの皆様方で、もし御意見があれば短めにお願いしたいと思います。

 それでは、荻野さん、どうぞ。

【荻野オブザーバー】
 証券業協会を代表しまして、大和証券の荻野でございます。

 まず初めに、本ワーキングで報告書を取りまとめていただいた事務局の御尽力に、本当に心から感謝を申し上げたいと思います。報告書案の内容につきましては、証券業界としましては顧客本位の業務運営をより高度なものとするため、前向きに受け止めていきたいと思います。その上で、3点ほどコメントさせていただければと思います。

 まず、原則に関してでございますが、先ほど上田委員からも御指摘があったかと思いますが、3ページから4ページにかけて、各業法の枠を超えて横断的に比較を行うことという記載がありますけれども、これは我々の認識としましては各社における業登録や取扱商品の範囲を超えて行うものではなく、自社の取扱商品を対象に合理的な範囲での比較を行えばよいものと理解しております。この点を確認させていただければと思っております。

 2点目は、重要情報シートに関してでございます。今後記載事項等の調整があると思いますので、そちらのほうに協力させていただきまして、このシートの趣旨をきちっと実現していけるように一緒に考えていければと思っております。

 この中で、6ページ目の注記15に関しまして、業界の自主規制ルールによって交付が求められている既存の各種書面との内容の重複についても調整が必要だと考えております。

 あと、重要情報シートにつきましては、今報告書においては別添というような位置づけになっているかと思いますが、少なくともこの原則の中の資料としていただく等、位置づけを明確にしてもらうことが重要ではないかと考えています。

 それから、最後になりますが、超高齢社会への対応については大変重要な課題だと認識しております。人生100年時代においては、長寿に備えて適切な資産形成・管理を行う必要があります。そのためには、有価証券投資等を長きにわたり継続していただくような制度面、それから税制面での環境整備が重要であると思っておりますので、引き続き御高配を賜りたく、お願い申し上げたいと思います。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、生命保険協会、中村さん、どうぞ。

【中村オブザーバー】
 ありがとうございます。生命保険協会一般委員長の中村でございます。

 生命保険協会の新体制発足に伴い、私は今回からの参加となりますが、これまでの委員の皆さまの熱心な御議論、ならびに事務局の皆さまのお取りまとめに感謝申し上げます。

 報告書で取り上げられました顧客本位の業務運営のさらなる進展、超高齢社会における金融業務の在り方に関しましては、協会といたしましても従前より自主ガイドラインの策定や見直し、アンケートによる事例の共有、経営への反映等、これまでも各社の経営高度化を後押しする取組に努めてまいりました。

 さらに今年度は超高齢社会において保険サービスが直面する課題、中でもお客様が認知症になった場合に生じる課題を整理、特定し、業界としてその解決に向けた取組を検討してまいりたいと考えております。

 本報告書で御示唆いただいた内容をしっかりと受け止め、今後も引き続き顧客本位の業務運営や、高齢化社会に対する各社の取組の高度化に向けて協会挙げて取り組んでまいりたいと考えておりますので、今後ともどうぞ御指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして信託協会、お願いいたします。

【眞武オブザーバー】
 信託協会で一般委員長を務めております、みずほ信託銀行の眞武と申します。

 本ワーキングにおきまして、皆様に議論いただきました顧客本位の業務運営のさらなる進展というテーマと、超高齢社会における金融業務のあり方、いずれも、私ども信託業界にとりまして非常に重要なテーマという認識でございます。その中で、超高齢社会における金融業務のあり方のテーマについて、一言コメントさせていただきたいと思います。

 私ども信託銀行は、高齢のお客様が多く、2月の本ワーキング・グループでも紹介いただきましたように認知症に対応した商品などを提供させていただいておりますが、そういった商品の提供を通じまして、これから申し上げるような点を認識しているところでございます。

 まず1つ目は、お客様御自身や御家族が認知症になった場合の金銭の管理などへの関心や不安を感じていらっしゃる方が多いということ。2つ目は、認知症の御家族の方に寄り添うという点で、バリアフリー店舗や商品といったハード面に加えまして、接遇や事務といったソフト面、この両方が重要であるということ。更には、日常生活に関わる様々な関係者の方々、例えば地域ですとか医療、介護、鉄道、スーパーといった皆様と、私ども金融機関との一層の連携が重要であるということです。

 今回、御家族や福祉関係機関にお客様の情報を提供できる場合もあることを明確にしていただきましたけれども、こうした内容は、私ども現場の業務運営にも資するものだという認識でございます。もっとも、お客様の認識機能の低下が疑われるケースというのは一様ではございませんで、またその際の金融機関の対応も様々でございます。実際に御家族の方々といったところへ情報提供させていただく場合には、後々御本人との間でトラブルになるということも考えられますので、金融機関、行政の皆様、福祉関係機関の皆様、あとお客様など多くの関係者の間で共通認識を醸成していくということも重要ではないかと思っております。

 私どもの信託業界といたしましても、今回の報告書を契機といたしまして商品及びサービスの提供を通じていろいろな実例を積み重ねまして、超高齢社会という社会的な課題に貢献してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかに、委員の方でも、あるいはオブザーバーの方でも御発言の希望はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 そうしますと、今日も大変多くの貴重な御指摘を頂きまして、ありがとうございました。

 それで、今日は取りまとめということをさせていただきたいのですけれども、お示しております報告書案、これはこれまでの皆様方からの御意見、御指摘を踏まえて事務局で作成していただいたものでありまして、大筋において皆様方から御賛同は頂いていると思います。今日も多くの委員の方々から報告書はこれでいいともおっしゃっていただいたのですが、他方、何かの委員の方々からは修文案というか、そういう御指摘も頂きました。私、ちょっと手元でメモを取っていて、あまり正確でなかったらおわびいたしますが、発言順で申しますと上柳委員、林田委員、竹川委員、上田委員、永沢委員、池尾先生、神戸委員、それから駒村先生からも御指摘いただきまして、具体的な修文案を頂いた方もいらっしゃいますし、御提案を頂いた方もいらっしゃいます。

 そのうち、事務局からも今コメントしていただこうと思うのですけれども、私が気がついた点を一、二申し上げますと、竹川委員からの御発言で、池尾先生からも御発言のあったアドバイザーというところは敷衍して記載するということで、報告書に与える影響は特にないというか、報告書の趣旨が変わるものではない、一層敷衍するものですので、そういう形での追加記述が可能かと思います。

 あとは、多くの委員の皆様から御指摘のあった重要情報シートなのですけれども、この位置づけは、今回の報告書に例として載せるということです。その後、永沢委員のおっしゃったように確かに走りながら改善していくというようなことでよろしいのではないかと思うのですけれども、それにしても、重要情報シートの最初の例としても少しこうしたほうがいいのではないかという御意見を、多数というか、何人かの方々から頂きました。その辺りをどのようにしたらいいかということなのですが、今日お聞きになって、太田原さんのほうでありましたら、お願いいたします。

【太田原市場課長】
 本日も皆様方から建設的かつ積極的な御意見を多数頂戴いたしまして、本当にありがとうございます。数ある中で幾つか、今の時点で答えられるものについて申し上げたいと思います。

 今、座長から御紹介のあった重要情報シートにつきまして、林田委員からも御指摘がございましたけれども、重要情報シート自体も、今後も不断に見直していかなければいけないということは私どもも考えております。したがって、これはこの時点で完成形ということではなくて、あくまで例として今回報告書に付けるということであって、今後も見直しというのはあり得ると思っております。その旨、今回の見え消し版での7ページで注22を追加している通り、重要情報シートにつきましても絶えず見直しをしていくべきということは我々も認識しているところでございます。

 他にも、この機会に幾つかこちらの考えを申し上げたいと思います。上田委員や荻野専務から御質問いただいた点ですけれども、私の理解としては、荻野専務がおっしゃったような形で自分のところで取り扱っているものについて、したがって合理的に説明できる範囲の中での必要な比較を行っていただくということではないかと考えております。

 また、具体的な修文案ではなくて他の意見になりますが、駒村先生から厚生労働省についても御指摘がありまして、本日もオブザーバーで御参加いただいておりますし、今後も政府内で必要な調整というのは行っていきたいと思っています。

 あと、永沢委員からデジタル技術を活用した事業について、福祉関係者など幅広い形で進めてほしいという御意見があったかと思います。私どももこの事業を進めるに当たって、そういった方々の御意見もヒアリングしたいと今のところ考えております。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 そういたしましたら、私の感じでは、今日お出しいただきました御意見は報告書の基本的な趣旨とか流れを損なわないで追加したり、修正したりということができるように思われますので、もう一度ウェブ会議を皆さんにお願いするということも、それはあり得るのかもしれないのですけれども、恐らくそれは不要で、事務局と私のほうで少し作業をさせていただいて報告書案の最終バージョンというものに持っていきたいと思います。そのプロセスにおいて、場合によっては委員の方々に御連絡させていただくかとも思います。そういったプロセスを経て、大変恐縮でございますが最終的に私のほうで「てにをは」などの表現ぶりも含めて確認をさせていただき、その上でしかるべき時期や方法によって報告書の公表ということをさせていただきたいと思います。

 以上申し上げたような手続で進めることとし、本日はこの報告書案について、そういうことをするということを前提というか条件にして取りまとめに御承認を頂きたいと思いますけれども、そのような形で取りまとめを今日して、あと残りの作業をするということにさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、そのようにさせていただきます。

 このワーキング・グループでございますが、昨年10月以来7回にわたって、顧客本位の業務運営を中心としたテーマについて議論を重ねてまいりました。メンバーの皆様方には、その前からもそうなのですけれども、また昨年10月以降、毎回非常に積極的に御参加いただき、多様な意見、また精力的な御議論をしていただきました。報告書は皆様方からの精力的な御意見を本当に取り込んだものになっていると思いまして、その意味で非常に重たいものになっていると思います。私からも、これまでの皆様方のワーキング・グループへの御参加に厚く御礼申し上げます。

 それでは、事務局である金融庁から御挨拶というか、一言お願いしたく存じます。

 中島総合政策局長からお願いいたします。

【中島総合政策局長】
 事務局、取りまとめをした立場として、一言御礼の御挨拶をしたいと思います。

 神田座長はじめ市場ワーキング・グループの委員の皆様、オブザーバーの皆様、ありがとうございました。今日も本当に熱心に御意見を頂きまして、今日頂いた意見も一つ一つまた検討して、できるだけ何らかの形で意見が残るような反映の仕方につき、ご相談させていただきたいと考えております。

 今回、去年の10月からですけれども、コロナの影響で、4月、5月が開催できない中で、6月以降の短い期間で回を重ねるということになり、またオンライン会議という、まさに金融庁も不慣れなところが大分露呈してしまい、本当に御迷惑をおかけしましたけれども、何とか今日までこられたというのは本当に皆様のおかげと思っております。

 私自身、この市場ワーキング・グループというのは、4年前の立ち上げのときの顧客本位の業務運営の原則をつくるときにも携わっておりまして、当時はプリンシプルベースの取組というのがうまくいくのかという、そういう我々自身も期待と不安が両方あったんですけれども、今回は制定から3年がたって、改めて今回の議論を通じてよりよい商品・サービスを求めていくというベストプラクティスの試みについて、いかに機能させていくのかというより深い議論ができたのではないかと思っております。また、超高齢社会における金融サービス、これも顧客本位の観点で非常に大きなテーマだということで、これについても具体的な提言が出てきたということで、非常に貴重なものだと考えております。

 それから、今回皆様の意見を取りまとめた結果として、金融庁の役割はかなり重いといことを今ひしひしと感じております。私自身、今回の異動で総合政策局長ということですけれども、これは何をするかというと、実際には金融事業者の取組状況をまとめたり、あるいは事業者と具体的な対話をするモニタリング部門というものを担当したり、あるいは金融経済教育を担当する総合政策課というのも、実は私の担当ということになっております。そういう意味で、今回のメンバーの皆様には引き続き御指導を頂ければと考えております。

 最後に、改めまして御礼を申し上げまして御挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、今後につきまして事務局から御説明をお願いいたします。

【太田原市場課長】
 委員の皆様方におかれましては、報告書の取りまとめに向けて精力的に御議論いただきまして誠にありがとうございました。報告書につきましては、先ほど神田座長から御説明があったようなプロセスで神田座長に最終的な御確認を頂き、皆様方にも御確認いただき、なるべく速やかに公表させていただきたいと考えております。その後、金融審議会総会へ報告するという段取りを想定しております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして本日の市場ワーキング・グループの会合を終了させていただきます。重ねまして、皆様方のこれまでの精力的な御議論に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。


── 了 ──
 

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