金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第2回) 議事録

  • 1.日時:

    平成25年7月19日(金曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

○神田座長

おはようございます。時間になりましたので始めさせていただきます。ただいまから「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」、長い名称ですけれども、その第2回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところを、また本日は暑い中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

このワーキング・グループでございますが、前回ご承認いただきましたとおり、原則公開とさせていただいております。なお、カメラ撮影をされる方は冒頭のみということでお願いいたします。

議事に入ります前に、事務局に人事異動がございましたのでご紹介をしていただきます。よろしくお願いします。

○油布企業開示課長

先般、人事異動により企業開示課長を拝命いたしました油布でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、私のほかにも事務局に一部人事異動がございましたので、新任者だけご紹介させていただきます。

まず、桑原総務企画局長でございます。

○桑原総務企画局長

桑原でございます。よろしくお願いいたします。

○油布企業開示課長

遠藤審議官でございます。

○遠藤審議官

遠藤でございます。よろしくお願いします。

○油布企業開示課長

藤本企画課長でございます。

○藤本企画課長

藤本です。

○油布企業開示課長

齋藤市場課長でございます。

○齋藤市場課長

齋藤でございます。よろしくお願いいたします。

○油布企業開示課長

中澤市場法制管理官でございます。

○中澤市場法制管理官

中澤でございます。よろしくお願いします。

○油布企業開示課長

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、議事に移らせていただきたいと思います。前回、事務局から具体的な検討課題のイメージというものの提示があったかと思います。本日も再度お手元に配付しておりますけれども、本日はお手元の資料が大変多数になって分厚くなっておりますが、その中に参考資料1というのがありまして、その8ページ目になりますけれども、実は前回のこの会合において複数の委員の皆様方から「リスクマネーの供給をめぐる現状と課題について」、まずは総論的な議論が必要であるという旨のご発言・ご意見をいただきました。

この点につきましてちょっと申し上げさせていただきたいのですけれども、実はこの6月に閣議決定されました日本再興戦略というのがありまして、お手元の参考資料2をごらんいただきますと、そこにありますのですけれども、「内外の資源を最大限に活用したベンチャー投資・再チャレンジ投資の促進」といたしまして、人材の育成やエンジェル税制といった幅広い施策が盛り込まれております。このワーキング・グループで検討をしていただくテーマといいますのは、こういった全体集合というのでしょうか、のうちの「資金調達の多様化」という部分だということになります。ただ、前回も「総論的議論が必要である」というご指摘をいただきまして、それも重要なことですので、そこでということになりますが、今回と次回、やや幅広い視点からのヒアリングと議論をさせていただきたいと思います。そういうことを2回させていただいた上で、次々回以降に個別の検討課題をご審議いただくと、こういう順序で進めていきたいと考えております。もちろんその際には、今申し上げましたイメージに記載してある項目だけに限ることなく、ご議論をいただければと考えております。

そこで、幅広い視点からのヒアリングの一環といいますか、第一弾といたしまして本日はまずリスクマネーの受け手側のご経験などをお話しいただこうと思います。そのため本日は株式会社リブセンス代表取締役社長の村上太一様にご出席いただいております。そして、リスクマネーの出し手側のご経験などをお話しいただくためにヤフー株式会社執行役員社長室長の別所直哉様にご出席いただいております。村上様と別所様には大変お忙しいところをお越しくださいましてありがとうございます。

それから、日本証券業協会におきましては、本年4月に懇談会を設置して新規・成長企業へのリスクマネー供給のあり方に関し、市場関係者のニーズや課題、問題点等の整理と洗い出しを行ってこられました。そこで、本日は日証協の平田委員からこの点についてお話をいただくことになっております。

そういうことでございまして、早速ヒアリングといいますか、お話をいただくことに入らせていただきたいと思います。なお、村上参考人は所用により10時半にはご退席と伺っておりますので、順番といたしましてまず村上参考人からお話をいただき、それについての質疑応答を行います。それから、別所参考人と平田委員からお話をいただき、これらについて一括して自由討議を行うという流れで、本日の議事を進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、村上さん、お話をいただきたく思います。よろしくお願いいたします。

○村上参考人

よろしくお願いいたします。初めまして、株式会社リブセンス代表取締役村上と申します。

まず、私の自己紹介を簡単にさせていただきます。株式会社リブセンスは、2006年私が19歳・大学1年生のときに設立いたしました。メインといたしまして「ジョブセンス」というアルバイトの求人サイトを運営しております。こちらの求人サイトのビジネスモデルが非常に画期的ということもあって着々と成長し、2012年10月には史上最年少となる25歳で東証1部へ上場いたしました。この「ジョブセンス」のビジネスモデルは、私が高校時代に感じた不便さを解消しようという思いのもと生まれました。私が高校時代、アルバイトを探そうと思っていた際、街中には「アルバイト募集」の張り紙がたくさん張っているということに気づき、アルバイトを募集している店舗はたくさんあるんだなと感じました。一方で、インターネット上で検索してみると全然情報がありませんでした。これはなぜなんだろうと調べてみたところ、情報を載せることに費用が発生する、例えばインターネット上で1週間10万円という形で費用が発生するということがわかりました。このため、インターネット上には情報があまり載っておらず、私自身、マッチする働き先を見つけるのが非常に大変だったという体験がありました。

それを解消しようという思いのもと、掲載費用を無料にし、採用ごとにお金をいただくという「成功報酬型」のビジネスモデルを思いつき、起業いたしました。このモデルは、通常の場合、アルバイト求人等の情報を載せるだけで費用が発生するのを、載せるのは無料にし、人が採用できて初めて費用をいただくというものです。成功報酬型の場合、企業側にも費用の掛け捨てリスクがなく、また、情報掲載料が無料で掲載期間の制限がないので大量の求人広告が集まります。現在、当社は求人掲載数では業界でもトップクラスになっています。このようなビジネスモデルの特長から順調に成長し、設立時4名だった従業員数も現在では150名ほどの規模にまで拡大しております。

本日は「リスクマネーの受け手」と「起業家」という視点でお話しさせていただきますが、当社の事業がIT領域であるという点や、学生ベンチャーであるという点は、非常に特徴的な点ではありますので、お話をお聞きいただく際、ご注意いただければと思います。IT領域の場合、非常に小資本で始められる。また、学生ベンチャーの場合、初期は私を含め全員給料ゼロ円でスタートできたという、非常に特殊な環境にありました。

「起業家」という視点について、私は19歳、大学1年生という非常に若いときに会社を起こしました。実は、小学生の高学年ぐらいのころから、将来社長になりたいと思っていました。こういった思いに至る起業家がどんどん生まれる環境を、日本として作っていく必要が経済成長に必要だと思います。私の場合は、両祖父が経営者だったということもあって、幼いころから会社というものを身近に感じていました。将来の職業選択を考える際、自分自身が知っている職業の中から選ぶものだと思います。特に、幼い頃、小学生ぐらいの時はそうかと思います。ですから、身近に経営者がいたというのは非常にありがたい環境だったと思っております。しかも、ただ経営者がいただけではなく、非常に格好よく生きている姿を幼い頃から目の当たりにできたというのは、私自身の人生に非常に大きな影響を与えていると思います。

また、いろいろな製品に触れたり、ビジネスの体験をすることにも影響を受けたと思います。例えば、幼い頃、ポカリスエットが誕生するまでの苦労話を聞いて、自分も同じように多くの人に何かを提供できるような存在になりたいと思いました。ビジネス体験では、中学生の頃、ヤフーオークションで小規模ながらも収益をあげたことがありました。当時、熱帯魚のグッピーを飼っていたんですけれども、グッピーにはたくさん子どもが生まれるんです。このため、この子どもを販売してみてはどうだろうかと。そういったビジネスを考えて楽しいと思う体験というのが影響を与えていると思います。

このほか、大学時代には、起業家の講演を幸いにも聞ける機会がありました。具体的には、ディー・エヌ・エーの南場社長やサイバーエージェントの藤田社長などのお話が印象に残っています。苦労しながらも、多くのユーザーの方に使っていただけるサービスを作るということは、非常にやりがいあるという話を聞くと、自分も同じようになりたいと、あこがれの対象になっていきました。

最年少で上場をしたということもあって、現在では、私自身が学生に相談を多数受けたり、大学で講演する機会も増えました。アドバイスを求められた際、「なぜ起業したい」と思ったのか聞いてみると、私と同様に、小さくても何かしらビジネスをやってみた、という体験を語る方が多くいます。例えば、最近お会いした方の場合、ビックリマンシールを集めていて、それを同じようにヤフーオークションで売ってみたらすごい収益が上がったと。それでインターネットの可能性、ビジネスの可能性というのを感じて、幼いころからビジネスに興味持っていたそうです。なので、例えば文化祭であったり、インターンであったり、小さくても良いので実体験としてビジネスに触れる機会というのが幼いころにあると、起業する人材、今後の経済成長を担う人材が育成されるのではないかと思っております。

次に、「リスクマネーの受け手」という視点について、当社は資本金300万円全て自己資金でスタートいたしました。一部の資金を両親から貸していただいてのスタートになります。当時、VC(ベンチャーキャピタル)の方々をご訪問させていただいて、出資いただけるかお伺いしたんですけれども、当時は資金の出し手が全然ありませんでした。大学1年生で、やりたいという思いはあるけれども、経験はない。そんな人物にお金を出してくれるベンチャーキャピタルはなく、結果として、両親に頭を下げて貸していただくことになりました。もしあの時、両親が貸してくれなかったら今はないのかなと思います。

一方で、現在の市場環境は、創業前からお金を出してくださるベンチャーキャピタルは非常に増えていると思います。創業前からキャンプをして、そこでアドバイスをするなど、スタートの前段階からサポートをしていくという資金の出し手が増えてきています。

成長過程における死の谷など、いろいろと苦しい体験がある中で、当社が1番助かったことは、お金ではなく、起業家の方々からのアドバイスでした。具体的には、ベンチャー起業家で上場経験もあり、現在もインターネット関連の上場企業の代表かつ個人投資家をされている方がいらっしゃるんですけれども、その方のアドバイスは非常に貴重でした。

私のまわりの起業家を見ていても、最近の事例ですと、バリュエーション30億円でお金を出しますと提示されたにもかかわらず、バリュエーション10億円であっても有益なアドバイスができる起業家から出資を受けるというようなケースもありました。ただお金を出すだけではなく、起業経験者のアドバイスというのが非常に貴重だと思っております。コンサルをして非常にパフォーマンスを出していた方が、起業したら「実際こんなに違うんですね」というケースが多々あると思うんですが、アドバイスをするだけというのと、起業した方の体験に基づくアドバイスというのは全く違うものだと思います。

最近では、私自身も多くの方から資金を出してくれというお話を受けますが、本業に専念したいということもあって未だ出資はしていません。ただ、出資を検討した際に、非常に改善の余地があるなと思ったのは、エンジェル税制になります。税金云々という部分は、金額的にはあまり大きなインパクトはないんですけど、実際、個人投資家の方等に聞いてみても、エンジェル税制を利用していないケースが実は多かったりします。理由を聞いてみたところ、出資者ではなく受け手側に非常に手間がかかってしまう。個人投資家の方は、その企業をしっかりと伸ばしたいという思いでやっているにもかかわらず、逆に手間をかけてしまうというのは非常に申しわけないという思いのもと、エンジェル税制を活用しないケースがあるということを多々聞いております。エンジェル税制というのは、改善の余地がまだまだあるのかなと感じております。

株式上場については、多くの企業が資金調達を目的に挙げますが、IT企業の場合、少し異なると感じております。多くのIT企業が無借金でやっているように、資金ニーズというよりは、上場による人材のリクルーティングやPR効果を目的として上場する企業が多いように感じております。本日のワーキンググループでは、市場の緩和や上場基準の緩和云々という内容もアイデアとして挙がっているようですが、逆に緩和をし過ぎると、上場によるPR効果というのは逆に薄れてしまう可能性があるため、慎重になるべきと、個人的には感じました。緩和により上場企業の不祥事が発生しやすくなると、「上場」に対する権威や信頼が揺らいでしまい、逆に上場したがる企業が減ってしまう原因になるのではないかと感じております。

最後に、当社の成功要因を含め、本日のお話をまとめさせていただきます。資金面に関しては、創業時は苦労しましたが、創業後は、資金面よりも多くの有識者や起業体験者の方々からアドバイスをいただけたことが大変有り難かったです。また、多くの仲間に支えられたこと、特に経験豊富なCFOが入ってくれたり、事業を立ち上げていくに当たり優秀なメンバーが集まってくれたことが大きかったと思います。私自身については、幼いころから商売のルールというのを体験する機会に恵まれた、両親や学校など環境に恵まれたというのが大きくあると思っております。私が多くの起業家から影響を受けたように、現在は、起業家教育という部分で大学でも講演をさせていただき、新たな起業家が生まれていく土壌を作るサポートをしているような状況です。

以上、お話を終わらせていただきます。

○神田座長

どうも大変貴重なお話をいただきましてありがとうございました。

それでは、今の村上さんからのお話につきまして委員の皆様方からご質問やご意見がありましたら、10時半をめどということになるかと思いますがお願いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ、福田先生、お願いします。

○福田委員

大変貴重なお話をありがとうございます。なかなか私の学生も起業家になる学生はいないんですけれども、どうしたらそういう起業家になるという学生を育てればいいかというのは私も非常に関心があります。お話を伺うと大学時代に起業をされて、それでそれなりに大学時代に軌道に乗られたからということもあるんじゃないかと思うんですが、やっぱり日本の学生、卒業してからこういうベンチャーを始めたりして、うまくいけばいいんだけれども、やっぱりなかなかうまくいかないと、せっかく大学卒業したのにという心配があって、なかなか私の学生なんかもそういうところに踏み込めないんじゃないかなという感じもするのです。そういう観点からどういうふうに学生をもうちょっと起業家に、学生時代に起業してうまくいくというのもなかなかそう多いわけではないと思うんですが、それでもそういう起業家の人材育成という観点からもう少し何かお考えがあれば教えていただくとありがたいと思います。

○村上参考人

ありがとうございます。起業家の教育というと、幼いころ何に憧れるかというのは、単純に大きく影響すると思います。例えば、一時期ドラマで美容師が取り上げられたら美容師になる方が増えたというように、世の中の「格好いい」の基準というのが1つ大事なのかなと思います。起業家は格好いいよ、というふうに世の中全体が感じるような風土ができれば、それを志す方というのも増えると思います。起業家の方が講演をする機会を作ったり、ドラマやニュースなどマスメディアで取り上げたり。起業家が新たな挑戦をして世の中に新たな価値を創り出していく姿を「格好いい」と、社会から認められる風土をつくっていくことは大切だと思っております。

あとは、リスクに対する考え方というのも1つポイントなのかなと思います。会社を立ち上げて、仮に失敗したとき、日本は再度チャレンジする機会がないと言われています。しかし、実際はそんなことはないのかなと私自身感じております。起業という挑戦をして、頑張って、頑張って、苦しんで、いろいろなことを考えた経験があるというのは、逆に当社のようなベンチャーからすればぜひ採用したい逸材です。そんな貴重な体験をして、苦労している方というのは非常に強い心を持っていると思うからです。再度チャンスがないといったような誤解を解いていく啓発というのも必要だと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。どうぞ、山下委員。

○山下委員

先輩の起業家のアドバイスが非常に貴重であったというお話があったと思うんですけれども、こういったいわゆる成長企業を考える場合に例えば証券会社ですと各専門家がいて、それが業態別の専門家がいて、それで企業を成長させていくというところを見ていくというところがあると思うんですが、具体的にどういう起業家のアドバイス、どういうところが貴重だったのかというところをお教えいただければと思いますけど。

○村上参考人

ありがとうございます。私の場合、大学のインキュベーションセンターの方からもアドバイスをいただき非常に参考になりましたが、一番影響が大きかったのは起業家のアドバイスだったと思います。私自身が印象に残っているのは、まずビジョンをしっかり固めろと。ビジョンを固めた上で、やっている事業としっかり紐付け、ビジョンを実現するために具体的な目標の数字に落とし込む。目標の数字が、どの構成要素によって成り立つのか、それらの構成要素をどう伸ばしていくのかという議論を、一緒にディスカッションしながら考えていく機会に恵まれたのは大きかったです。一言アドバイスをするというのではなく、一緒にディスカッションをしていくと、自分に足りなかった視点が見えて、さらに議論も深まり非常に有意義でした。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、そろそろお時間かとも思います。村上社長にはお忙しいところをお越しくださいましてありがとうございました。

○村上参考人

ありがとうございました。

○神田座長

それでは、続きましてお隣の別所様からお話をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○別所参考人

ヤフーの別所と申します。よろしくお願いいたします。

お手元に資料1というのを配付させていただいておりますので、そちらに従ってお話をさせていただきたいと思います。私からは主に実際にヤフーという会社がやっています投資というか、出資と、それを通じて考えて感じていることについてお話しさせていただければというところでございます。

3ページ目からになります。私ども提携とか出資というのをいろいろやっておりますけれども、大きく分けて2通りのやり方をしています。1つは、ヤフーの本体から直接出資をするというところです。これは基本的にヤフーの事業とシナジーがあるところと積極的に組んでいくということ、あるいは積極的に吸収していくために行っているものです。それとは別にもう一つやっていますのは、ここに写真がありますけれども、YJキャピタルという投資用の会社をつくっていて、そこを通じて投資をしているということでございます。今年の2月26日に初めて出資の説明会をしたんですけれども、かなりの会社さんにお越しいただいて、実際にお越しいただいたのは110社ちょっとですが、お申し込みいただいていた会社様はこれより多くて、幾つかはお断りをせざるを得なかったという状況になっております。

4ページ目をおめくりいただきますと、最初にお話ししました本体からの出資でございます。これはヤフーの事業そのものにかかわっている部分について出資をしていくというところで、ここ2社ほど例がありますけれども、クロコスという会社とコミュニティファクトリーという会社に出資をした例が記載してございます。クロコスというのはフェイスブックを利用したオンラインマーケティングをやっている会社で、フェイスブックを利用したオンラインマーケティングの中ではかなりの顧客数を持っている会社になっております。もう一つのコミュニティファクトリーは、アプリの会社で「DECOPIC」というものがあるんですけど、こちらは非常に特に女性でダウンロードした写真をいろいろデザインできるということで、日本だけではなくてアジア各国でダウンロードされているようなものを開発した会社で、こちらの2社にそれぞれ出資をしているというところです。前者は広告事業に非常に密接に関連しているということですし、後者は今スマートフォンにいろいろな市場が移っているので、そちらに注力したいということで特色のある会社に出資をしたというところで、こちらの出資の目的は会社運営そのものにも関与をしていこうというところでやっております。ここは非常にスタンダードというふうに思っています。

その次が6ページ目になりますけど、ベンチャーキャピタルとしての事業ということでございます。昨年の8月にYJキャピタルという会社を設立して、9月にYJ1号投資事業組合を設立したということになります。目的はここに書いてありますように、新規事業領域で有望なベンチャー企業を見つけて育てたいということになります。もう一つはヤフーの本体で出資をしていると、本体側の事業とかぶってしまうものについて、どうしても出資ができないというようなこともあって、将来性を考えたときに必ずしも既存の事業が伸びていくということの保証がない特にITの領域ですので、違う領域にも一応手を出しておきたいんですけど、本体側で抱えてしまうとやっぱり事業シナジーがなかったり、競争相手になるところというのはどうしても手を出さないという結論になってしまうんで、ここはわざと切り離しをして自由に、競合になるようなところでも出資をしておきたいというところでございます。

もう一つは会社の中のこれは制度の課題でもあるんですけれども、各カンパニー、事業部がそれぞれのPLの責任を負っておりますので、まだ成長途上でPLにインパクトがあるようなところというのは、やっぱり事業体としてななかなか手を出しにくいので、そこは事業部門から切り離してPLを見るような仕組みというのが必要だったということもあって、YJキャピタルというのを設立してやってきております。先ほどお話ししましたように、110社ほど来ていただいた以外に、個別にもいろいろお話をいただいていて、過去1年間で7ページにあるようなところに出資をさせていただいているというところであります。そちらの幾つかのところは8ページ、9ページにホームページのご紹介がありますので、見ていただければと思っています。

10ページ目に投資の実情のところを少しお話しさせていただければと思っております。1つは、たくさんいろんなお話はいただくんですけれども、出資に至らないケースというのも多数あって、そういうものにある課題が私どもとしてこういうものがあるというふうに感じているというところです。1点目は、やはりインターネットのサービスなのでたくさんのアクセスがある、つまりお客様がいるということは大切なんですけれども、それをどうやってマネタイズしていくのかというような仕組みがちゃんと考えられていないというようなことがあります。そうすると、サービスとしては人気が出るんですけれども、それを一体どうやって回収をしていくのか、企業体として永続的な運営をしていくためにはやっぱり資金が回らなきゃいけないので、そこがやっぱり十分に考えられていないというようところ、詰めが甘い部分があるんだと思っていますけれども、そこが詰め切れていないモデルというのがやっぱり多数ありますというところです。

それから、もう一つ出資する側とされる側のバリュエーションの認識が合いませんというところです。下のそのバリュエーションが高く、出資されたい側がバリュエーションを比較的高く見積もっているんですけど、その辺の理由がここに書いてあって、1つは、米国のIT系のM&Aに代表されるようなことをどうしても念頭に置くので高額的になりがちだということと、もう一つは、企業経営者のほうが自分の持ち分のダイリューションをあまり起こしたくないというところもあって、比較的高めのバリュエーションになってしまうということがあるんではないかなというふうに想定しております。ただ、バリュエーションの問題になる前の問題として、一番最初にお話しさせていただいたほんとうにビジネスモデルとしてちゃんと設計されているんだろうかというところが課題としては一番大きいかなと思います。

やっぱり小さい起業したばっかりの会社であったとしても、どういう勝ち筋でそのビジネスをしていくのかということをちゃんと考えているところと考えられていないところがやっぱりあるんだなと思っております。そういう勝ち筋が見えたところというのは、比較的投資をしようというジャッジメントができますけれども、それがなかなかできない、アイデアはすごくよさそうに見えるんだけれども、じゃ、一体それがビジネスとしてどういう勝ち筋なのかというところが見づらいというところがあるというふうに思っております。よく巷間言われる死の谷の問題なんですけれども、私どもの認識としては近時やっぱりIT系の成長が期待される企業への資金供給というのは増えているんではないかなと思っているというところです。にもかかわらず出し手が増えていて実際に資金を呼び込めないのは、やっぱりビジネスモデルなのかなというふうに、今、私どもの経験としては考えているというところになっております。

次の12ページが、どんなステージで考えているかということなんですが、実は私どもはシードの領域よりも若干それを超えた領域に入ってきた企業に対する出資を主に考えているというところで、逆に言うとまだエンジェル税制に該当するような、シードキャピタルと言われるようなところには、まだ会社としては踏み込めていないというところです。ただ、ここの領域、今、投資をしている領域もかなりの会社があるという認識ではおりますので、ここの領域に至っている会社であっても、まだまだなかなか出資ができないというところが多いんだろうなと思っております。これは考え方としては日本だけではなくて、実は米国における投資というのもほかの会社さんと一緒にやっているんですけれども、ほぼこの領域を狙ってやっているというところです。やり方は日本と同じなので、説明会を開いたりとかいうことをやっています。

ただ、日本とアメリカの違いはやはりこの辺の会社を手助けする仕組みが、ヤフーとしてもあまり提供できてないんですけれども、提供できる仕組みがアメリカの場合は比較的そろっているというようなところが差があるかなというふうには思っています。最近、伸びてきた代表的なところに「500スタートアップス」というアメリカの出資をしている会社があるんです。これ小口の出資をたくさん企業にしているところなんですけど、小口といえども出しているところに関して言うときちんといろいろなものを見ていく。IT系の企業を対象にした出資をしているファンドなんですけれども、たくさんのメンターを抱えていて、かつプロダクトがちゃんとプロトタイプができるというようなところを支えていって、そこまで支えていく条件で小口の出資をしていくということをやられている例がありますので、そういうようなことを組み合わせていかないと、お金だけ出していってもなかなか難しいのかなというふうに思っています。ただ、私どもまだそこまでできていないので、多少助言とかはできますけれども、まだまだお金を中心に出しているというところにとどまっているというのが、そこは将来的な課題なのかなと思っております。

もう一つ、投資の判断をしている人間なんですけれども、もともと弊社に入社する前にさまざまな自分で起業した経験もあり、起業した会社をエグジットをしていて、多数の投資の経験もある者がジャッジメントをしているということをやっております。やはりそこは経験値が物を言うんだろうなというふうに思っていて、その人の見立てとかいうところをかなり貴重なものだというふうに考えて、投資判断をしているというのが私どもの実態になっております。

もう一つ、次にクラウドファンディングについて若干お話しさせていただきます。実はクラウドファンディングについて検討した、検討だけしたんですけど、経験がございました。それは東日本大震災の直後、クラウドファンディングという方法でお金を集めて、復興支援に使うことが可能なのかどうかということの検討をしたということです。第二種金融商品取引業の登録の検討はしたんですけど、いろいろなことを考えてやっぱりちょっと負担が大きいということで、その時点では断念しています。もう一つ、このとき考えたもの、今もそうなんですけど、考えているクラウドファンディングのあり方なんですが、実は復興支援に関して言うと普通の投資とは違ってリターンをほんとうに求めることができるんだろうかということを、今でもそうですけど、考えています。なので、私どもが考えていたのはどちらかというと投資というよりも寄付に近い形でクラウドファンディングをしたほうがいいし、この場合はすべきだなというふうに思っていたというところです。

そのかわりに、16ページに書きましたように、私どもとしては今インターネットの募金ですとか、あるいは復興デパートメントというECの仕組みを提供させていただいたり、あるいはチャリティーオークションというようなことをやっているというところです。インターネット上の基金とか募金なんですけれども、震災時に経験からいうと10億円が1週間ぐらいで集まったというぐらいの集金力があるので、そこをきちんと生かすことができればなということと、それから、そのときの震災の復興というのはお金を出している方々も実際にリターンを求めることがなくて、復興の支援のために自分のお金を何らかの形で使っていただきたいということが主眼だったということと、それから、今もそうなんですけれども、復興で頑張っている方々がほんとうに先行きビジネスが大きくなっていくかどうかって全くわからない状況だというふうに認識しておりますので、そこにリターンを求めるようなリスクマネーというのは、多分出せないんだろうなというふうに認識していて、むしろ寄付型のものが増えていったほうが、望ましいのかなというふうに思っております。

そこは実は、今、私ども石巻に復興支援用の事務所というのを構えていて、実際に5人ほど従業員を常駐させて現地の復興というのをお手伝いさせていただいているんですけれども、地元でいろんなビジネスをやりたいというお話を聞いても、なかなかそのスケールするようなものというのが出てこないというような実態があります。そうすると、そこにリスクマネーと言えるようなものをほんとうに入れることができるのかどうかというのは、課題かなと思っているというところです。例えばですけれども、水産業の方々といろんなお話をさせていただいて、私どもも手助けをしたりして例えばホタテとか、カキとかいうのをブランド化して販売したりというようなところをやっているんですけど、安定的な生産というのがなかなか難しかったりすると、あるいは提携できている漁師さんの数が非常に少なかったりすると供給量の限界もあって、そういうものを資金調達を手伝おうと思ってもなかなかうまくいかないと。B to Bのビジネスでそちらのほうの生産者と例えば東京都内の例えばレストランと結びつけようというふうなことを考えたとしても、大型のレストランチェーン店さんはやっぱり同じメニューを大量に必要とされていて、それだけの供給量が確保されるのかという観点からいうと非常に難しいです。

例えばカキとか1つとっても、季節的にはプランクトンが発生すると貝毒が発生して生産を一時止めなければならない。そういうような不安定なところを大量消費しているところとスケールさせるために結びつけるというのは非常に困難です。そうすると、1つ1つのサイズがどうしても小さくならざるを得ない。利益の額も漁師の方々が生活するのに必要な利益というのは出てきますけど、それ以上に、リターンを求める人たちに何か分配ができるほどのものが上げられるのかというと、なかなか難しいんじゃないかなというふうには考えています。そうすると、そういうところに資金は必要なんですけれども、それは多分投資ではなくて、そこに助けたいという気持ちと、事実上の寄付という形で助けていくお金を集めていくほうがより合理的ですし、実際のニーズにもマッチしているんではないかなというふうに考えているというところですので、特に復興支援に関するクラウドファンディングというところは、寄付型のものがもう少しやりやすくなるということがあると、いいんではないかなというふうには思っていますし、逆に言うとそこにお金を入れたい人たちにリターンがありますというような説明は多分できないですし、できるものがあったとしたら非常に限られているので、そこは方法論としてはいろいろ考えなければならないなというふうに考えております。

短いですけれども、今、これが私どもが実際にやっている投資と、それから、震災復興に関連して考えたクラウドファンディングのあり方についてでございます。以上です。

○神田座長

どうも大変貴重なお話をいただきましてありがとうございました。

それでは、続きまして平田委員からもお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○平田委員

日本証券業協会の平田でございます。本日はこのような機会を頂戴いたしましてありがとうございます。私からは、既に前回の本ワーキングにて金融庁の事務局からご説明がありました論点につきまして、日証協において事前に証券界の問題意識を整理した内容につき、ご紹介させていただきたいと思います。

お手元資料の表紙をめくっていただきますと、3つほど論点を掲げさせていただいております。まず第一に新規・成長企業へのリスクマネー供給、これはまさにこのワーキングでの主題になろうかと思っております。それから、2点目が公募増資等のあり方に関する論点整理です。本ワーキングでも後半に資金供給メカニズムのさらなる使い勝手のよさという観点で論点が挙がっておりますが、その点について付言をさせていただきます。最後、その論点整理の延長としてプレ・ヒアリングの問題につきまして論点をご紹介させていただきたいと思います。

それでは、2ページ、3ページに進んでいただきまして、まず1つ目の大きな論点としまして新規・成長企業へのリスクマネー供給に関する問題でございます。日証協におきましては、本年4月に本ワーキングの議論に先立ちまして、産業競争力会議等での議論を踏まえて、早い段階で証券界として論点をある程度整理しておいたほうがよいだろうということで、協会長の諮問機関といたしまして、「新規・成長企業へのリスクマネー供給に関する検討懇談会」を設置し、金融庁市場課にもご協力をいただきまして検討を行わせていただいたところでございます。なお、この懇談会につきましては、座長に本ワーキングの委員であります大崎さんや、委員として前川さんにもご参加をいただいておりますので、もし私からの話に付言していただくことがありましたら、後ほどの自由討議で補足をいただければと思います。

当懇談会では、まさに本ワーキングでの論点と同じで、クラウドファンディングあるいは地域における資本調達を促す仕組み、それから、新規上場促進策・ベンチャー投資活性化策について、どのような方向性で物事を考えていけばいいのかという論点整理を行ったところです。

4ページ目をごらんください。まずクラウドファンディングにつきましては、枠組みの整理からスタートしまして、基本的には金銭的リターンを伴う投資型というものを念頭に置いて論点整理をさせていただいております。しかしながら、投資型であってもやはり寄付型などと同じように、「出資者の事業に対する共感」が十分必要であろうと考えられますので、その辺に留意した特徴のある制度となるように議論を行っていく必要がある点をまずまとめております。さらに、クラウドファンディングは当然ながらインターネットを用いて多数の者から資金調達を行う仕組みでございますので、詐欺的な行為に用いられることのないように、出資者からの信頼が確保できる枠組みとすることが必要であるとしております。また、クラウドファンディングをどのように考えていくのかにつきましては、今までどちらかというと寄付型を中心に比較的自由に発展してきた経緯がありますので、健全な発展を阻害することのないように、過剰な規制や事務手続を生じさせないための留意が必要なのではないかといった点、また、既に二種業者を中心に匿名組合契約形態がスタートしているわけでありますが、今後、議論されるであろう株式形態によるものも視野に入れた議論が必要なのではないかといった点について留意しつつ、法令での対応だけではなく、自主規制ルールも最大限活用すべきといった点が指摘されております。

もう一つ重要な論点としましては、情報開示という問題があろうかと思います。どのようなベンチャー企業であるのかといったことがわからないと、投資者は投資ができないということになりますので、事業者自身のキャリア等も含めて直面するリスク・課題、あるいは資金使途等を開示させることは最低限必要なのであろうと考えていますが、一方で、財務情報等につきまして金商法ベースの開示を求めることになりますと、発行企業に対する負担が相当程度重くなってしまいます。このような枠組みでの考え方を進めてしまうと、そもそものクラウドファンディングといった自由な仕組み自体がワークしなくなるおそれがあるので、その辺は十分慎重な検討が行われる必要があるのではないかという指摘が行われてございます。

5ページをごらんください。ネット上で企業と投資家を仲介する、いわゆるファシリティ提供業者の在り方といった観点についても少し議論も行っております。ネット上でいわゆる資金の出し手、それから、資金を欲しいといった者をマッチングさせる、ファシリティを提供する者は、投資型で考えた場合、現行の金商法ではファンドであれば第二種業者、株式であれば第一種業者になりますが、このような業者につきましても過大な負担が課されないよう配慮する必要がある一方で、信頼できる仲介者によって適切に取扱いが行われることが必要であり、重要な論点ではないかと思っております。第二種業者ですら先ほどヤフーさんからお話があったようにハードルが高いという問題がありますように、さらに第一種業者となるとよりハードルが高くなる問題があろうかと思いますが、一方で、きちんとしたビジネスとしてやっていくためには、一定の業者規制というものは必要なのではないかと考えております。

一方で、投資者側についての論点を整理しますと、まず、出資の性格や特徴等の正しい理解を投資者に持っていただく必要があります。つまり、ここでの基本的な原則は自己責任原則であると考えております。そういうことを考えた上で、さらなる投資者保護といった観点で何かないかということになりますと、アメリカのような仕組みが参考になるのではないかと考えられます。例えば1人当たりの投資額や、募集総額に上限を設けるような工夫も考えられるのではないかということであります。

実はこの懇談会とは別に、この懇談会の取りまとめを上位の会合体に報告した際に、意見として強くだされたことをご紹介させていただきますと、ベンチャー投資は10銘柄投資して1銘柄うまくいけばいいぐらいのスタンスで投資をすべき分野であり、そのような観点では、相当程度、自己責任原則が中心になければならない。やはりそうなりますと、先ほどの寄付型と同じように例えばサッカーが好きだからサッカーチームに寄付をするのと同じようなレベルで、投資家が物事を考えていかないとうまく回らない分野なのではないかという指摘が行われております。そういう意味では、共感といった論点は非常に重要なのではないかということではないかと思われます。1社うまくいかないと、その仕組み自体が悪いというような議論に陥ってしまうということは非常によろしくないことであり、1つ失敗してしまうと一体全体誰が責任をとるのかという責任論まで発展してしまう議論が往々にして行われがちだということについては、十分留意が必要という指摘が行われているところでございます。

では、証券界としてクラウドファンディングを見た場合に、活用あるいは展開の可能性があるのかどうかという点でございますけれども、5ページの真ん中よりちょっと下のところに記載がございますとおり、匿名組合契約という形態ではもう既に実績があります。これを例えば株式型で考えていきますと、経営権をとられてしまうというような心配も想定しますと、種類株をクラウドファンディングで募集をすることは十分考えられるのではないかとの指摘がございました。また、地域等における資本調達を促す仕組みとしても活用できるし、企業内ベンチャーで活用いただくことも十分考えられるのではないか。またさらに事業への投資の判断が困難な先端医療等、いわゆる先端技術を用いた事業に対してビジネスコンテストなどとリンクさせた形で、利用が可能なのではないかという指摘が行われているところでございます。したがいまして、クラウドファンディングにつきましても前向きに枠組みとしては十分検討に値することなので、証券界としてもさまざまな検討に参加をさせていただきたいということでございます。

続きまして6ページをごらんください。地域等における資本調達を促す仕組みでございますが、今まではどちらかというと銀行の融資を中心に、その地方の資金供給が行われてきたわけですけれども、銀行による審査の厳格化が進む中で、地方への資金供給をどういうふうに考えていくのかといった問題が出てまいります。そこで、我々がルールを定めておりますグリーンシート銘柄制度という仕組みを見直すことによりまして、地域における資金供給メカニズムとして利用ができるのではないかという論点があり、そこの部分について取りまとめをさせていただいております。

グリーンシート銘柄制度自体を地域等における資本調達を促す仕組みとして新たに制度設計をするといったニーズとしましては、新規・成長企業の資金調達ニーズが地方でも強くあり、さらに地域の非上場企業の株式を取り扱いたいという証券会社や投資家のニーズも存在しています。例えば既に一般の株主が持っている地方の電鉄や銀行などの株式を換金するニーズは十分あり得るということです。さらに、先ほどのクラウドファンディングよりももう少し大きな資金調達ニーズを念頭にしつつ、グリーンシート銘柄制度の枠組みを活用することも十分考えられるのではないかとの指摘がございました。ただ、その場合、今のようなグリーンシート銘柄制度のような取引所類似の仕組みではなくて、高度な流通市場機能というものは不要とした、あくまでも換金ニーズに応えられるような場という形で考えていく必要があるのではないかという指摘が行われております。

以上の考え方に基づき、どのような制度設計が考えられるのかにつきまして検討を行いましたが、株式の発行・流通の範囲といった点に関しましては、企業と一定の関係性を有する者による出資や流通を中心に制度設計をしていくのがいいのではないか。その際には、例えば会社法上の譲渡制限、あるいは関係者による譲渡制限契約などを使って、一定の範囲にとどまるような仕組みを模索することも考えられるのではないかといった考え方が示されました。また、開示につきましても、現在のグリーンシート銘柄に対する規制はかなり重い、上場会社と同じような開示を要請しておりますが、それですと負担が重過ぎるといったことから、例えば会社法上の事業報告を容認するなど簡素化をする、または会計監査についても一律求めることに関しては少し考え直す必要があるのではないかとの整理をおこなっています。さらに、現行の1億円以上の増資に関する法定開示義務についても、ある部分、見直しを行っていただく必要があるのではないというような論点が出されているところでございます。

それから、7ページをごらんください。このような枠組みを柔軟につくっていくためには、担い手を確保しなければなりませんが、その担い手を確保する場合については引き続き自主規制ルールを最大限活用して行っていく必要があるのではないかとの指摘がなされました。ただし、これもクラウドファンディングと同じように、適切な者を担い手として巻き込む必要があることから、資金供給の部分も担うような証券会社においては、相当程度その取扱いを厳格化し、さらに通常の取引、流通性を担う証券会社については、一定の適切性を確保するような仕組みを設け、より幅広い証券会社による仲介も可能とするような検討が必要なのではないかという指摘が行われております。

さらに、気配・取引情報の公表については、従来のような形で我々が担わせていただくことも検討をしていく必要があろうと考えております。

もう一つ重要な事項としましては、現在、グリーンシート銘柄に関しましては、いわゆる一般的な不公正取引を排除する仕組みに加えて、インサイダー取引規制・適時開示義務とが課されています。これは非常に厳しい規制であり、前回の本ワーキングでもなぜグリーンシート銘柄をやめてしまう会社が多いのかというご質問の際にもお答えさせていただきましたけれども、この開示負担が相当に重いという声が最も多く挙がってきておりますので、この規制については、そもそも流通量が一定の範囲にとどまる、あくまでも換金市場であるならば、インサイダー取引規制を撤廃をすることも考えられるのではないかという指摘が行われているところでございます。

次に、8ページをごらんください。新規上場促進、ベンチャー投資活性化につきましては、第一として新規上場促進策として上場を目指す地元企業の発掘を促進させるといった点が掲げられています。例えば取引所等が既にもう行っていることでありますが、それをさらに促進させることが考えられます。また、上場を目指す企業の負担を軽減という意味では、内部統制報告書の提出の負担の一定期間の軽減や、あるいは5期分の財務諸表の開示について対象期間をもう少し短くするといった軽減策が考えられるのではないかとの指摘があります。また、上場する取引所のブランド力の向上といった点に向けた取組みなどが必要なのではないかという指摘も行われております。

第二に、エンジェル投資促進策につきましては、先ほどご指摘がございましたように、エンジェル税制は非常に煩雑な手続を行う必要がありますので、これを簡素化することも重要です。さらに個人投資家だけではなく企業を支援するという意味では、企業も同じような形で支援を行っているわけなので、企業版のエンジェル税制の創設についても考えていく必要があるのではないかとの指摘がありました。さらに、この分野につきましては、ベンチャーキャピタルが前面に立って支援をしていくべき分野だといったことから、ベンチャーキャピタル自身を支援し、ベンチャーキャピタルが積極的なリスクテイクと投資先への中長期的な支援ができるような環境整備が必要なのではないかとの強い指摘もありました。その他人材の育成、あるいはベンチャー企業とファンド、証券会社をマッチングさせるためのネットワークの必要性といったようなことも指摘が行われているところでございます。

大きな論点の二番目としては、いわゆるファイナンスの使い勝手のよさの向上といった点がかかげられておりますので、簡単にご紹介をさせていただきます。

日証協では証券戦略会議の下部機関として「我が国経済の活性化と公募増資等のあり方分科会」を設置し、公募増資そのものがインサイダー取引をはじめとする不公正取引が介在する余地がないか、あるいは証券会社による公募増資の引受けの改善の余地はないか、さらに将来の成長をより一層確かなものにしていくといった各種の切り口で現行のファイナンスの仕組みについて見直しの論点を報告書として取りまとめさせていただいています。

11ページ、12ページをごらんください。昨年問題となりました公募増資インサイダーの背景にありました大型公募増資における、いわゆるダイリューション問題を取り上げまして、既存株主の権利を著しく損なうようなファイナンスは、一定程度制限されるべきではないかという議論が行われております。一番簡単なのは株主総会決議を求めることで、大規模ダイリューションを起こさないようなファイナンスにとどめるということが指摘されています。海外に目を向けると、アメリカにおいては、20%以上の希釈化を伴う増資については取引所の規制があります。また、12ページにございますとおり、英国ではライツ・オファリングが主流となっています。そこから日本でも何らかの措置が考えられるのではないかという議論が行われましたが、一方で、日本だけ株主総会決議を求めるということになりますと規制が重過ぎますし、そもそも株主の理解を得られる方策はほかにもあるのではないかと指摘が行われております。したがってここは幅広く柔軟に考えていく必要があるのではないかという取りまとめをしてございます。

13ページをごらんください。ファイナンスの手法の柔軟化として問題となっているのは、条件決定までの期間が長いということです。ファイナンス期間が長いと、価格変動リスクや不公正取引のリスクが発生してしまうので、これを短くすることによりこれらのリスクを軽減させることが必要なのではないかという論点です。そのために、これも前回事務局からもご提案がありましたけれども、包括的な発行登録制度、あるいは国内におけるプレ・ヒアリングの導入といった論点について検討を行っていく必要があろうかと思っています。ただし、その際には単に制度的な改正の検討を行うだけでは不足しておりまして、いかに米国と同様に機関投資家を巻き込んだファイナンス環境をつくっていくのかといった点につきましても、あわせて検討が行われる必要があるのではないかという指摘が行われております。

14ページをごらんください。今まで実施された大型の公募増資は、ほとんどのケースが株価の下落につながっていますが、これは一定程度増資自体が企業の業績向上につながるという理解がきちんと投資家の間に浸透していなかったという点もあるのではないかとの指摘がなされています。そのためには、現行の開示制度の中では難しい将来情報の開示について、今後いかに適切により柔軟に記載できるような環境の見直しを考えていくかという議論が必要なのではないかとの指摘がなされました。特に米国の場合は自由書面目論見書という制度が非常にうまく利用されておりまして、それに対するセーフハーバーも存在していることから、日本にもこのような制度の導入を考えてもいいのではないかとの指摘がなされています。

次に15ページをごらんください。募集プロセスの短縮化についても見直しの余地があるという観点についてであります。

現在ブックビルディングが行われてから再度募集を行い注文をとり直すというスキームが一般的でありますが、米国のようにブックビルディング イコール 注文受注というような形で期間を短縮化するような考え方がとれないのかといった指摘が行われました。また、注文のとり直しをするがために募集期間が長期化し、安定操作期間中に高い価格で安定操作取引を行わなければいけないこととなり、裁定取引が行われるといったデメリットがあり見直しも必要ではないかとの論点もだされました。

16ページをごらんください。ライツ・オファリングについてでありますが、せっかくライツオファリングが実施できるよう法制化をしていただいているにもかかわらず、実際にコミットメント型のライツ・オファリングはまだ1社しか出ていない状況です。いかにこのライツ・オファリングの使い勝手のよさを求めていくのかというのが今後の課題であろうと考えております。その点につきましてはプレ・ヒアリングの問題、あるいは、大株主の権利行使が阻害されないようなTOB規制の見直しといった点についても検討していく必要があるのではないかと考えております。その他様々な細かい実務上の問題もございますので、それらにいかに対応していくのかがこれからの課題であります。

すみません、ちょっと時間が足りなくなってしまったので、最後の論点を簡単に駆け足でご紹介しておきますと、プレ・ヒアリングの問題でございますが、既に法制度の中では法人関係情報を伝えることにより、需要を調査をするというプレ・ヒアリングができるような環境は整っておりますが、一方で有価証券届出書を提出する前に勧誘を行うことを禁止するという規定とのバッティングがありまして、なかなかプレ・ヒアリングを行うことが難しい状況にあります。

そのような環境で適切なプレ・ヒアリングは難しいとの判断から、現在日証協の規則でいわゆる法人関係情報を伝えて需要調査を国内で行うことについては禁止するというルールを制定させていただいているところでございます。したがいまして、ここでの論点としましては、22ページに記載のとおり、届出書前勧誘規制とのバッティングを払拭するためには例えば米国のような包括発行登録制度の利用により、プレ・ヒアリングが可能となるような環境、あるいは、第三者割当について、現在、開示ガイドラインで割当予定者から直ちに転売されるおそれが少ない場合については、勧誘に該当しないといった見解が示されておりますので、このような見解をお示しいただくことによって、プレ・ヒアリングをうまくやっていくことが考えられるのではないかという論点を取りまとめさせていただいております。

時間の関係がございますので、20ページ、21ページになぜプレ・ヒアリングが必要なのか、あるいは、どのような場面で想定されるのかということを記載させていただいておりますが、後ほどご高覧いただき、必要な事項は今後の具体的な議論の際に発言させていただければと思います。今ご説明させていただきました詳細につきましては資料2-2及び2-3に取りまとめておりますので、こちらにつきましても後ほどご高覧をいただければと思います。以上でございます。

○神田座長

どうも限られた時間の中で盛りだくさんの内容をお話しいただきましてありがとうございました。

なお、本日はヒアリングさせていただきました方々からの資料のほか、前回、安達委員からご紹介がありました提言書につきましても皆様方の席上にお配りしております。

それでは、別所さんと平田委員からのお話について皆様方から自由討議といいますか、ご質問・ご意見をお出しいただければと思います。もちろん関連してリスクマネーの供給全般について、あるいは前回ご議論させていただいたこと等についてのご意見等でも結構でございます。どなたからでもご自由にご発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

今日は大変参考になるお話をありがとうございました。まずヤフーの別所様に2点、それから、平田様に2点質問させていただきたいと思います。

まず、別所様に質問です。クラウドファンディングという言葉は、今、世の中でも大変話題になっておりますし、私どものような個人投資家の耳にも入ってきておりまして大変関心は持っておりますけれども、マスコミ等ではこのような取り組みがあるということをよく取り上げられるのですが、その後どうなったのかというような情報はあまり出てきておりません。こういった取り組みをされているところが(その後)どうなっているのかという情報について、調査とまでは言いませんけれども、実態というのはどのようにして把握することができるのでしょうか。初めのところ(お金を集める時点)はすごく(マスコミ等に)取り上げられるんですが、その後どうなったかというところは、あまり情報が出てきていないように思いますので、この機会に(実務に携わっておられる別所様に)お聞きしたいと思います。

第2点目については、やはりこういう投資というものは、投資なのか寄付なのか難しいところでございますが、やはり共感が大事というところ、私もなるほどと思いながらお話を伺いました。投資家の皆様は共感というものに基づいてお金を出されていると思いますが、寄付でもそうですけれども、やはり出したほうは出したときだけではなく、その後の共感といいますか、その後、やはり自分のお金がどう回っているのかということについてずっと共感はしていたいと思うものなのではないでしょうか。寄付でもそうですので、そのあたりこういうクラウドファンディングではどのような工夫がされているのか、あるいは、課題として何があるのかということについてご意見をお聞きさせていただきたいと思います。

それから、平田様には、6ページ目に指摘のある「地方の会社」について、地方の名門の老舗会社の資金調達をどう支援をしていくかというお話と思って聞いておりました。そこで質問ですが、「換金ニーズに十分応えられる場は必要」と書いてありますが、この場は具体的には何かイメージされているものがこのお話し合いの中であったのでしょうか。この投資家層というのをもう少し踏み込んで、この際お話をいただきたいというのが第1点目の質問でございます。

それから、もう一点、14ページのセーフハーバーというのはどういうものなのでしょうか。「米国の例を参考に、ベストプラクティス」は何となくわかるのですが、セーフハーバーというものはどういうものかこの機会に教えていただけたらと思っております。よろしくお願いいたします。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、別所さんからお答えいただければ。よろしくお願いいたします。

○別所参考人

私が的確に答えられるかどうかはちょっとあれなんですけど、クラウドファンディングのその後というのは、多分、全容を把握している方はいらっしゃらないんじゃないかなと思っています。私のほうの資料の15ページ目も、私どもではないですけど、ほかの会社さんがやられているものの例を出させていただいていますけれども、これ以外に多分有名なのでミュージックセキュリティーズさんがやられているようなものも存在していると思っています。多分こういうものはそれぞれそこにお金を出された方々がそちらのページを訪れて、自分たちのお金の使い方がどうだったかということをトレースしているというのが実情だと思っていて、全体像は、多分、先ほど言いましたように押さえている人間は誰もいないので、1つ1つ探していくしかないのかなというところでございます。

2点目なんですけれども、私ども自身がクラウドファンディングをやっていないので、クラウドファンディングをやっている者としての回答にはなりませんが、共感という意味で言うと私ども復興支援のための寄付とかいう活動を自分たちでやっていますし、ほかのNPOさんがやっているものの寄付の窓口とかもやらせていただいているので、そのときにやっぱり一番大事にしたいと思っているのは、出した側の方々にやっぱり情報を開示していかなければならないというところだと思っていますので、拠出していただいたお金がどういうふうになったのかということを、適宜報告をしていくということは非常に重要だなと思っています。

もう一つ、インターネット上の寄付の特徴でもあるんですけれども、基本的には匿名の寄付がほとんどで、どなたかからの寄付かというのはわかっていないものが山のようにあります。銀行からの振り込みとか、あるいはクレジットカードによる寄付とかいうことになると、どなたからかというのはわかっているケースもあるんですけれども、そうではなくて、例えば私どもがやっている寄付というのはヤフーポイント、今、Tポイントに変わりましたけど、での寄付ができます。それはどなたのものなのかというのは私ども全くわかっていなくて、IDベースでしかわかっていないので、住所とかお住まいとか電話番号とか全くわからない。そういうものでも寄付として扱っていますし、それがかなりの額になるというところで、そういう方々に対する連絡方法もないので、逆に言うとホームページの中でできるだけそういう人たちがどうなったのかということが、わかるようなものを開示をしていくということが大事だろうなと思っていますし、寄付のお手伝いをしているNPOさんたちもそういうところの開示がしっかりしているところを選んでご協力させていただいているというのが実態です。おっしゃるように共感をきちんと後々まで残していくということは非常に大事だろうなと思っているところです。

○神田座長

ありがとうございました。平田委員、お願いします。

○平田委員

まず1点目のいわゆる地方の株式の換金ニーズということでございますが、基本的には地域の鉄道や、百貨店、老舗企業などの地域の非上場会社の株式が、過去に有償株主割当等で従業員等々に割り当てられ、それが相続等により、現在、一般の方々にも渡ってしまっているので、地元の個人の方々を中心にその売却ニーズが存在します。一方で、特に鉄道や百貨店では、優待券を欲しいという方が株式を保有したいというニーズとしてあらわれてきますので、ここでいわゆる換金プラスアルファのニーズが生まれてくるわけです。これをうまく利用できれば将来的な資金供給メカニズムにもつながるのではないかという議論が行われております。実際に地方でそういう未上場株の取扱いをしている証券会社が数社ありますので、これらをキーに考えていけるのではないかということでございます。

それから、もう一点のセーフハーバーの点でございますけれども、いわゆる自由書面目論見書になりますと、当然ながら将来の情報を記載することになりますので、そこで虚偽記載があると法令違反になります。ベストプラクティスという考え方であれば、どういう範囲で考え方をまとめて記載をしていけばいいのかということを業者側で集まって考えていくことが必要になりますが、その根拠としては一定程度法定的ないわゆる免除規定のようなものが考えられないと、うまく回らないわけです。特に米国においては私的な訴訟が非常に定着しているので、結局、私的な訴訟がこのような開示を過度に萎縮させないようにセーフハーバーとして一定の規定が設けられておりまして、私的証券訴訟改革法という法令の中で将来情報がリスク要因を特定する意味のある注意表示が付されている場合においては、責任が免責されるという条項が入っており、こういうものがうまくセーフハーバーとして機能しているということだと理解しています。

○永沢委員

ありがとうございます。

○神田座長

ありがとうございました。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

今の平田さんのお話にちょっとつけ加えさせていただきたいんですけれども、地域での株式の換金ニーズの話についてなんですが、もともと青空銘柄というふうに通称されていた、いわゆる積極的な投資勧誘を伴わないけれども、証券会社が売買の仲介をするような取引としては、かつてそういう銘柄が実際に取り引きされておったんですね。さらに平成9年のグリーンシート銘柄制度をつくったときには、投資勧誘についても認めるということで行われておったわけです。この地域の証券会社が投資勧誘をするという形でそういう換金の仲介をするというのは、それに絡んだ不祥事とか事件などは全くなかったと私は理解しておるんですが、しかるに、ちょっと何年だったか、正確に覚えていないのでありますが、インサイダー取引規制や適時開示の義務づけをするという改正が行われたために、それらの株を発行していた会社は適時開示までは負担が重過ぎるのでやりたくないということでやらなくなり、その結果、流通ができなくなっているという実態があるんですね。つまり何ら問題なく流通が行われていたものが、私に言わせれば不当な規制強化が行われたことによって、流通できなくなっているという実態があると、それが問題だということを懇談会では議論したということでございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

2点、平田委員にお伺いしたいんですけれども、1点目は、これから順次議論していくこととも大きく関係するのですが、非上場企業が資金調達をする方法としては現在でも私募の制度がありますし、グリーンシート銘柄もその1つと位置づけられますし、それから、いわゆるプロ向け市場という制度も設けられているのです。クラウドファンディングはそれらとどう違うのか、従来の制度では達成できないような何を達成するのがクラウドファンディングなのかということについて、ちょっと私は疑問を持っています。もちろん足りない部分は改正していけばいいのですが、既存の制度で改正できる部分はそこで対応することも考えられます。平田さんには証券業協会ということでグリーンシート銘柄との関係といいますか、グリーンシート銘柄を手直しすることでクラウドファンディングに近いことが可能なのかどうか、そのあたりについてご自身の感触とか検討された結果をお教えいただければと思います。

第2点は、非常にテクニカルな問題なのですけれども、資料の7ページにグリーンシート銘柄について「インサイダー取引規制や適時開示義務の適用は、見直しの検討を」と書かれています。大崎委員からもご指摘があった点です。これはグリーンシート銘柄を法律上の制度とする際に、いわば市場の信頼性を高めることによって投資を促進しようとして、インサイダー取引規制が入れられたものだと思います。適時開示義務については、これはどういうことを意味しているのかよくわからないんですが、どうも報告書のほうを見ますと、自主規制で発行者に対し事情聴取等に積極的に協力する旨の同意書の提出を求めていることを意味しているのかと思いました。しかしもしそうだとするとこれは自主規制でやっている話ですから、見直しの検討をというのは証券業協会でやっていただければ済むような話のような気もいたしました。

そこから先の話はまたここで議論をしてもいいのですけれども、私の理解ではグリーンシート銘柄は法律上、取扱有価証券と言われているもので、それは従来あった、今もあると思いますけれども、証券業協会の店頭取扱有価証券よりも狭い範囲ですよね。そうするとそれ以外の店頭取扱有価証券は、大崎委員が言われた従来の青空銘柄じゃないかと思うのですが、その従来の青空銘柄についてもインサイダー取引の規制とか適時開示義務が適用されているのでしょうか。もし適用されていないのであれば、それは従来どおり、証券業協会に属している証券会社が仲介をして売買が行われていると思うのですけれども、その点について確認ですが、お教えいただければと思います。

○神田座長

ありがとうございます。

○平田委員

まず第1点目でございますけれども、基本的にはグリーンシート銘柄制度の枠組みを少し見直すことによってクラウドファンディングにも、多分、対応できると思います。おそらくクラウドファンディングは、グリーンシート銘柄制度が想定しているファイナンスの規模よりももう少し小さい規模なのではないかという議論は行われておりますが、当然ながらクラウドファンディングを利用したグリーンシート銘柄制度をベースとした地域等における資本調達を促す枠組みは十分考えられるということで、資料2-2のクラウドファンディングの項目の冒頭のところにもグリーンシート銘柄制度との連接については考えていく必要があるのではないかという指摘が行われております。ただし、グリーンシート銘柄制度での取扱いとは別にクラウドファンディングを考えた場合には、クラウドファンディングを担う仲介業者をどういう位置づけにするのか。今、株式の募集によりクラウドファンディングを利用するとすれば、現行の法令では第一種業者しか取り扱えないということになります。第一種業を行うとなると証券会社になりますが、そうすると、現在我々の規則でいわゆるグリーンシート銘柄以外の未上場株式の勧誘行為が禁止されておりますので、そのことのバッティングをどういうふうに解消していくのかという問題は別途あると考えております。

それから、2点目でございますが、そもそもインサイダー取引規制が適用された経緯といたしましては、証券取引所の予備校的な位置づけとしてグリーンシート銘柄制度を活性化させる必要があるのではないかとの考えに基づき、発行機能も流通機能もある程度取引所のミニバージョンのようなものを想定しながら、制度設計をしてきたところがありますので、そこではある程度の流通を念頭に置いたさまざまな規制を入れる必要があったわけです。そこで、流通市場に係る規制は取引所と同様にということでインサイダー取引規制も適用されたと理解しております。適時開示義務はインサイダー取引規制と基本的には車の両輪の関係でございまして、インサイダー取引をきちっと防止していくためには適時開示が行われないとうまく機能いたしません。適時開示義務は確かに日証協の規制ではありますが、インサイダー取引規制が適用されている以上は適時開示義務を入れざるを得ないので、まずインサイダー取引規制をどうにかしてほしいというのが考え方のベースとしてあるということでございます。

それで、ご質問の現在グリーンシート銘柄ではない、いわゆる地方の銘柄についてですが、これらは基本的には取扱有価証券という法律の枠組みには入るものではありません。今の法令上の取扱有価証券については「日証協の規則に基づき投資勧誘を行うもの」としておりますので、これらの銘柄は基本的には勧誘ができないというステータスにおいては、グリーンシート銘柄にも、法令上の取扱有価証券にも乗らないことになります。では、何が不便なのかというと、まさにこの投資勧誘ができないというところでございまして、当然ながら売ってほしいとか、買ってほしいというニーズがあったときに、相手方を探すときにどうしても相手方にオファーを出さなければいけないということがあって、それが投資勧誘行為だということになると、なかなか積極的に株式の流通、換金ニーズに応えるということが難しいわけです。これは、今、非常にパッシブで各証券会社が取り扱っているわけでありますが、もう少しこの辺の環境が整備されるのであれば、過去、先ほど大崎委員からもお話がありましたけれども、投資勧誘が認められていたので何ら不便がなくうまく回っていたというのが、できなくなってしまったというところがまさにそこの部分でございますので、その辺の見直しが必要であるということでございます。お答えになっているでしょうか。

○神田座長

大崎さん、どうぞ。

○大崎委員

それから、ちょっと今のインサイダー取引と適時開示の関係について私の理解に基づいて若干補足させていただきますと、日本のインサイダー取引規制が極めてテクニカルに定められていて、特に公表概念が非常に画一的にしか定められてないものですから、結局、適時開示が行われないとテクニカルにはインサイダー情報が発生している場合、ある意味、永遠に取引がインサイダー取引になってしまうという問題があるんです。インサイダー取引規制における公表に該当する手続がとられない限りですね。それはやりたくないという企業さんがやってない場合、常識的に考えれば全く問題がないよく知られている情報であっても、公表されたことにならないという問題がありますので、したがって、適時開示をやってもらうことというのは確かに協会ルールではあるんですが、インサイダー取引規制が上場株と同様にかかっている以上、適時開示をやってもらわない限り危なくて取引の対象にできないと、そういう問題があると私は理解しております。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかに。

それでは、田邊委員、それから、安達委員の順でお願いします。田邊委員、どうぞ。

○田邊委員

先ほどのグリーンシートとクラウドファンディングの関係性のご質問もあったと思うんですけど、そういった質問によってクラウドファンディングが何をしようとしているかということが明らかになるので、大変重要なご質問だと思ったんですが、私の理解としてはもちろんクラウドファンディングのほうがアーリーステージをやるとか、そういうステージの違いもあると思うんですけれども、やっぱりクラウドファンディングというのは、今回、震災で別所さんのほうは寄付を集めたとか、そういう威力をまざまざと見せつけたというところから出てきていると、それがITを使われているからというところは、クラウドファンディングのグリーンシートなんかと峻別する本質の部分なのかなと思っています。共感性というのは確かに今の上場株式ではなかなか、上場企業も共感性で買ってもらいたいとは思っているんですが、なかなかそうならないときに、この共感性という言葉はすごく魅力があると。クラウドファンディングというのは寄付から多分来ると思いますんで、出資が寄付から来るというところから、もし投資型になってもそういう共感性のある投資の道具になるんではないかという期待があるということ。

それから、もう一個は共感を持つ人を効率的に集められるんだという仮説があるということだと思うんですね。ただ、お手軽な共感になっちゃうんじゃないかとかいう心配が一方であると思いますけど、そこはITを使っているとほんとうに共感する人が集められるんだというところをどう担保できるかということ、それから、もう一個は投資家保護というのがその裏側にあるわけですが、ITだからこそ投資家保護がよりよくできるんではないかということは、証券業協会さんのレポートにもちらっと書かれていたんで、そういうことがあればなおさらいい武器であるというふうに感じると思います。

そういう点で2つ質問があるんですが、共感性を持った寄付に近い投資という非常に曖昧な概念ですけれども、ミュージックセキュリティーズさんなんかは寄付と投資を半々でやるというようなお話もあったように記憶しているんで、例えばすごく素人的な発想で恐縮ですが、半分投資・半分寄付という仕組みでやって、寄付のほうはもうそのまま税制的には損金算入ができるとか、そういったハイブリッド的な、何ていうんですか、クラウドファンディング用の出資形態みたいなものをつくるというのは、証券業協会さんなんかのほうで何かご議論はないのかというのがもう一つ、それから、先ほどの投資家保護の仕組みというのに若干言及されていたので、もう少し何か具体的なアイデアをお持ちであれば、それもお聞きしたいなと思います。

○神田座長

ありがとうございます。

○平田委員

まず1点目の半分寄付型・半分投資型ということについての議論は、残念ながら日証協においては今の段階でまだしてございません。そこまで議論を深くしていないので、今後いろいろビジネスプランを考える証券会社が出てくれば、そういう議論は自然と起こってくるのかなと思います。しかし、正直言いますとクラウドファンディングは一体全体業界で誰が担えるのだろうかという議論がございます。大手証券だとなかなかビジネスに乗りにくい分野です。そうすると、小さい証券会社がいろいろなアイデアを出しながら参入してくるのではないかと考えられますが、今のところまだそういう兆しがないので、とりあえず枠組みとしてどうするかという議論にとどまっているという現状でございます。

それから、もう一点の投資者保護という観点は、一方で未公開株詐欺という問題に非常に深く取り組んでおりまして、きちんとしたビジネスでまともに考案すればすごく生産的なのになあと思うぐらい知恵を尽くし、さまざまな仕組みが手を変え品を変え考案され詐欺に使われている状況にある中で、それと同一視をされてしまうようなクラウドファンディングであれば、やっぱり非常に問題であると思っています。そのために一体全体何ができるのかといったことを考えると、考えれば考えるほど開示をきちんとしなさいとか、そっちのほうに走ってしまいがちなのですが、そうすると、やはりそもそもクラウドファンディングが持っている優位性や利便性が希薄化してしまうことになります。そうなると、やはり1つ参考になるのは先ほど申し上げましたアメリカでも規制としてかかっている1人当たりの投資金額に上限を設けることや、1回当たりの募集金額を一定程度小型にすることなどが考えられるのではないかということが挙げられます。まだここについても細かい議論をしているわけではないので、ほかにもいろいろ投資者保護策はあると思いますけど、今の段階でこの懇談会で指摘されたのはそういう論点でございます。

○田邊委員

わかりました。私が申し上げたのはこのレポートの中に、インターネットでは履歴が残ること、情報が多数の者の目にさらされること等から、むしろ詐欺的な行為をITだからこそ防げるんではないかという論点が非常におもしろいなと思ったのでお聞きしたのですが、結構です。

○神田座長

どうもありがとうございました。安達委員、どうぞ。

○安達委員

ありがとうございます。私からは質問ではなくお願いと、もうひとつ私の意見ということでふたつ申し上げます。

まず、先ほど座長からもご案内ありましたとおり、私どもの協会で提出した緊急提言という小冊子を配布しました。非常に大部でして61ージございます。お忙しい委員の方に全部読んでくださいと言いませんが、17ページ~28ページ、合計12ページに今回のテーマである「新規・成長企業へのリスクマネーの供給」という観点から、私どもの要望事項をまとめています。ぜひ目を通していただきたいというのがお願いでございます。

2つ目ですけれども、今日前半でリブセンスの村上社長、それから、ヤフーの別所さんの非常に現場感覚のあふれるいろんなお話しいただきまして非常に参考になりました。ベンチャーキャピタルをやっている立場からひとつ申し上げますと、IT分野、特にITサービス系は決して十分ではありませんが、曲りなりにも資金は回っています。今日皆さんのご印象でもうリスクマネーあるんじゃないかと、回っているんじゃないかという印象を持たれているやに思いますけれども、実は全く違います。当然IT分野においてもそれこそグーグルとかフェイスブックとか、そういう会社を超えるような会社がぜひ日本から出てほしいと私は思います。加えてやはりイノベーティブな、本質的なイノベーションを産むコアテクノロジーの会社、バイオであったり、ライフサイエンスであったり、エネルギーであったり、それから、日本が得意とする材料系、マテリアルであったり、あとものづくり系もあります。こういう分野のベンチャーに関しては全く資金が回っておりません。

これは実を言いますとITは比較的素早くスタートアップできますので、資金量が少ないということもありますけれども、コアテクノロジーになりますと必要資金の桁が1桁、期間も10年は優にかかります。こういう分野のベンチャーを育てるという観点からいうと、もう日本のリスクマネーは完全に不足しております。本ワーキング・グループでぜひ本質的な成長につながるコアテクノロジーのベンチャーをどうやって日本で支援していくのかという観点から、ぜひお話しできればと思っていますのでよろしくお願いしたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。原田委員、お願いいたします。

○原田委員

別所さんに2点お伺いさせていただきたいと思います。

1つ目としましてはリスクマネーの供給ということに関しまして、御社の出資先はIT関連、ネットサービス関連の企業が多いかと思います。先ほど村上さんのお話の中にもITは小資本で無借金のところが多いというお話が出てきましたけれども、そうしますと、御社がなさっている出資の規模ですとか、長期資本だと思いますが、お金の期間ですか、そういったことは特にIT関連であるという何らかの特徴はあるんでしょうかということを1点目にお伺いします。あと、関連しまして、投資の出口はどこに置いていらっしゃるのかということもお伺いしたいと思います。先ほどご説明いただいた資料ですと、クックパッドなどはもう既に上場しているかと思いますので、そうしますと、IPOが必ずしも念頭ではないのかなというふうにちょっと考えました。

2点目としましてはリスクテイクに関することです。先ほどのお話ではまだシード期の会社には投資をしていないというふうにおっしゃっておられましたが、ベンチャーへの投資でリスクはありますので、営利事業でやっていらっしゃるということで考えれば、マーケットの金利の環境というのが、リスクをとるためにはリターンもとらなければいけないかと思うんです。ビジネスのやりやすさというのはこの低金利下ではどうなのかという、感触のようなことを少しお伺いできればと思います。IRRが何%ぐらいで回っていればうまくいっているということになるのか、お聞かせいただける範囲でお伺いしたいと思います。この点に関しましては平田委員も先ほどのご説明の資料の中で、ベンチャー投資の活性化策として、ベンチャーによる積極的なリスクテイクが必要であるというふうにおっしゃっているんですが、裏を返せばリターンも必要であるということになるかと思うんですが、その辺について何かちょっとマーケットの環境との関連でお話しお伺いできればと思います。以上になります。

○神田座長

ありがとうございます。いかがでしょうか。

○別所参考人

最初の点なんですけれども、ITであるからということで何か特徴があるのかというところについて言うと、ほんとうに会社ごとですので特徴がというのをちょっとまとめて言うのは難しいかなと思っています。確かに小資本でできるということで実効資本だけで、資金だけでやっているところももちろんありますけど、出資を求めてくるようなところというのはやっぱり拡大するために例えば技術者の数が必要だったり、あるいは新しいプランのために機器類も必要だったりとか、そういうことで、やはりどうしても出資を求めてきているというところがあって、そこは何のために求めてきているのかは企業バイ企業で変わってきているというところです。

当社の出口についてなんですけれども、当社の目的と関連しております。先ほど言いましたように私どもは今2通りの出資をしていて、1つは完全に業務提携を目的としたものですね。こちらはもう業務提携のために出資という形で、関係性をつくりたいというようなことになっておりますので、その強化のためということです。資本だけではなくて、その場合には取締役とかを派遣したりとかいうことを含めてやっているというところです。もう一つの目的でやっている投資のほうは、IPO含めてエグジットをそれぞれ考えていくということになると思っております。リターンのところは1件1件のリターンを見ているというよりも、ファンド全体としてプラスになればいいというふうに思っておりますし、ファンドマネジャーのほうはそのリターンに応じてプロフィットがシェアされるような仕組みでインセンティブを確保していますので、そういうような形で総体としての利益が上がればいいなというふうに思っているところです。各社のところは、どちらかというと細かく見るときには各社ごとのKPIを追いかけていくというところで、順調なのかどうかというのはそこの数字を見ていくということになって、会計的な数字だけではなくてビジネス上のKPIをきちんと見ていくということを、主眼にしているというところになります。よろしいでしょうか。

○原田委員

はい、ありがとうございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。山下委員、どうぞ。

○山下委員

クラウドファンディングの先ほどから出ております話の担い手の話なんでございますけれども、別所さんにちょっとお伺いしたいんですが、証券会社がこういったクラウドファンディングに参入する際に、やはりどうしても収益性ということを考えますと、なかなか難しいかなというところもあると思います。特にヤフーさんが投資型のクラウドファンディングを検討されたときに、二種業の登録ということが多少障壁になったというようなことがあったと思うんですけれども、投資型のクラウドファンディングに参入しないことの決定の経緯ですね、その辺のお話し伺えればと思うんですが。当然いろんなオプションがあったと思うんですけれども、例えば二種業者さんと一緒にやるとか、そういうところも検討されたかどうかとか、お話しいただけると助かります。

○別所参考人

先ほどお話しさせていただきましたように、もともと検討した経緯が震災復興を何らかの形で助けられないかというところにございましたので、いろんな状況とかを見ていて結果的に手続的な部分もあるんですけど、それよりむしろ、今もそうですが、あの状況で個別の事業に関してリターンって求められるような状況というのが、ちゃんと把握できるのかどうかというのが一番大きいかなというふうに思っています。もう一つは、それぞれの資金需要のサイズがやっぱり小さい商店とかも考えていましたんで、それほど大きくないというところがあって、そういうものについて純粋な投資型のものを当てはめていくということが、管理コスト含めてほんとうに妥当なんだろうかというところがあります。やはり一番大きいところはそこのリターンが計算できないということと、そもそも助けようとしている先がサイズが小さいので、そういうところに投資という形がほんとうに当てはまるのかという、その実務的なところが一番大きかったのが理由で断念したというところでございます。

○神田座長

どうぞ、平田さん。

○平田委員

今の質問の延長になりますけれども、クラウドファンディングの出資形態の場合は匿名組合形式と株式形態がありますが、海外では、ちょうどその中間のようなベンチャーキャピタル形態、いわゆる株は基本的には仲介業者が買い取って、個人投資家からは事業組合の持分を買ってもらうみたいな、そういう形態が結構たくさん出始めていると聞いておりますけれども、そういうビジネス、いわゆる震災の寄付という考え方ではなくて、昨年設立されたYJキャピタルさんでクラウドファンディングを使っていくというようなお考えは今のところないのでしょうか。

○別所参考人

今のところはないですね。多数の方々にお金を出してもらうとしたときに、多数の方々がどのくらいほんとうの意味で、投資という意味で考えたときのリスクのジャッジができるかどうかって非常に問題だというふうに思っています。特にYJキャピタルがやっているようなところは、みずからもある意味リスクをとる覚悟でいるんですけど、それと同じようなレベルで、皆さんに同じようなことを考えていただけるのかというところが、一番大きいかなと思っているというところですね。

○神田座長

どうぞ、前川委員。

○前川委員

クラウドファンディングに関してでありますが、この会の前に懇談会をさせていただく中で、やはり寄付型のクラウドファンディングと出資・株式型のクラウドファンディングは明らかに、言葉は同一であるが別のものとして捉えねばならないということは一般的な認識というか、皆さんの認識の中でおそらくでき上がってきたものなんだろうなと思います。つまり共感をキーにお金を出すという行為は同じであっても、出資型や株式型という形になりますとパフォーマンス、つまり、今、別所さんがおっしゃられていたようなリスク・リターンのプロファイルがわからない。おそらく新しい製品ができて新しいサービスをやりたいと言った瞬間には、おそらくリスク・リターンのプロファイルがないものを行かざるを得ない。であるがゆえに、金額の上限などをコントロールして、あるいは、出資者については無記名でいくのではなくて記名にして、それをどう担保して、連続的にフォローアップをしていただくか。つまり出したはいいんだけど、わからないという状態では困るので、おそらく実施要綱に関してはかなりきちっとしたものをつくらなくては、これはいけないんだろうと、そういったことがないと詐欺的な行為が非常に横行するんだろうという整理をしていると思います。つまり、言ってみると、言葉は同じでも別物として扱い、そういった新しいところ、特に非常に規模の小さなところに、どういう担い手がどういうサービスをやるかというふうに分けて考えていくのが、必要ではなかろうかという整理をしているという状況でございます。

○神田座長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。それでは、岡野委員、武井委員の順で、岡野委員からどうぞ。

○岡野委員

別所様に1点ご質問させていただきたいんですが、先ほどの原田さんからのご質問にも関連するんですけれども、10ページのところで出資に至らないケースということで、ビジネスモデル・マネタイズの仕組みが不十分な場合は、残念ながらヤフーさんとしては出資ということに至らないと。これはネガティブのほうの条件だと思うんですが、ある意味、積極的にリスクテイクするという、その条件というか、どういうところに逆に注目されて、ここについてはリスクテイクしていこうということをお考えになるのかという部分について、ちょっと何かご意見ございましたらお聞かせいただきたいんですが。

○別所参考人

なかなか具体的にご説明するのは難しいんですけれども、先ほど言いましたように、そのビジネスの先行きがこちらとしてちゃんと見えるというのが非常に重要だというふうに思っています。ここにはマネタイズが見えないからというのを1つ書かせていただきましたけれども、インターネットの特徴としてマネタイズが後からついてきて、顧客獲得が先になるというビジネスもちろんあります。特に広告領域ですとご案内のようにフェイスブックさんとかツイッターさんとかも最初は全く利益にならずに、一定の顧客ベースができ上がってから広告という形でマネタイズをしいるわけですが、それは多分最初から広告という形のマネタイズを想定した上での顧客ベースをつくっていくということを考えているんだというふうに思っています。そういうものがちゃんと設計として見えていくというのが重要かなと思っています。

あとは、先行きが、こういう言い方するとあれなんですけど、ビジネス上の環境として見えている、先が見えているというか、将来が見やすい領域と見えない領域というのがあると思います。予見できる将来にかけるというのは非常にやりやすかったりするので、その中でのビジネスがどうなっていくかということを予想していきつつ判断をしていくことになると思っています。ヤフー自身のビジネスの例でご紹介しますと、ヤフーという会社が1996年にできている会社ですけれども、その当時インターネットというのがまず登場したばかりでした。広告のビジネスをやっていましたので何を考えたかというと、テレビとか新聞とかラジオとか、それまでのメディアの売り上げというのは何に依存していたかというと、実はマスメディアとしてはリーチできる人たちの量に依存していたわけですね。今もそうですけど、テレビはほぼ全人口にリーチできるだけのものがあって、約2兆円の総売り上げを上げています。新聞とかが発行部数総数で言うと全紙足して5,000万部ぐらいになると思うんですけれども、それに応じて大体当時ですと半分ぐらいの領域で、インターネットというメディアは新しいメディアでしたけど、だんだんだんだん視聴者が増えていくというのは誰でも予見ができたので、そうすると、既存のメディアのマスメディア媒体としての広告価値というのは、利用者数に応じて上がっていくだろうということは容易に予見できたわけですね。

そうすると、その中でどういうふうなマーケットが伸びていくところがわかっている中でかけているわけなんで、その中の勝ち筋をどうやって立てていこうかという戦略が見えるわけですね。そうすると、マーケットの伸びとかが非常に見えやすいところというのは、客観的にいっても別途しやすかったりするので、そういうものをそれぞれの領域ごとに判断しつつ、投資をするかどうかを決めていくということを積み重ねていくというのが実態で、それが先ほど抽象的に勝ち筋が見えているところというお話をさせていただいたんですけれども、そういうことをやっているということになります。

○岡野委員

そうしますと、勝ち筋が見えるということは、ヤフーさんとしてヤフーさんの持っているノウハウというか、そのビジネスを見るノウハウ、それをこのファンドの運営に生かすと、そういう考え方でベンチャーキャピタルを運営していると、そういうことになりますね。

○別所参考人

はい、そういうことです。

○岡野委員

ですから、それ以外の領域について拡大していくということは、まず今のところ、現在のところでは考えにくいということになる。

○別所参考人

そうですね、そこは目ききの問題なので、今のファンドマネジャーの目ききの領域では、今、申し上げたようなところになっているということです。

○岡野委員

そういう意味では、ご経験からいってもやはりそういう目ききができる人材というか、そういうところがないとベンチャーキャピタル自体の本当の運営も難しいんじゃないかということも言えそうでございましょうか。

○別所参考人

はい、そのとおりでございます。

○神田座長

ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。

○岡野委員

はい。

○神田座長

それでは、武井委員、どうぞ。

○武井委員

今の目的との関連で、平田さんのお話で投資型の類型として匿名組合と、あと種類株とありますが、両者の中間形態と言える合同会社の持分についてもクラウドファンディングの中の射程で考えておいていただきたいと思います。まだニーズとしては顕在化していませんが。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、田邊委員。

○田邊委員

別所さんに、最後、ビジネスモデルがあるかないか、それから、もう一つはバリュエーションが合うかという2つご指摘いただいて、そうだなと思ったんですけど、バリュエーションのほうでもちろん経営者のほうが高く売りたいというのは当然ありますが、さっき村上さんのほうから30億円よりも10億円の個人投資家で助言してくれている人がいいとかいう話もありました。その中で経営者がディフェンス、自分の経営権を守るがためにあまりバリュエーションを高くするというお話がちょっと書いてあったと思いますけど、そこら辺は実際それが大きな1つの障害になっているのかどうか。ちょっと意外だったのでもう少し具体例とか、あるいは、種類株でそういうのを何とか回避するとかいう方法をお考えになっているかと、そこら辺をお聞かせいただければ。

○別所参考人

実態は個別の会社ごとに違うので、平均値として実際に出資を担当している人間に今の状況を聞いたものを、そのまま字にさせていただいているので、交渉の中でそういうことを感じることが主観的に多いということだけです。客観的に何件中何件がこれでというのを把握してここに書かせていただいたわけではないので、そういう意味で言うとちょっと主観的な表現にはなっているというところです。ただ、実際に交渉を担当をしている人間としてはその辺をひしひし感じているというのが、現実の私どもがやっているところでの実感値でございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。それでは、上柳委員。

○上柳委員

平田委員に1つご質問したいんですけれども、配っていただきました資料2-2の懇談会報告6ページ注4として、匿名組合契約を用いたクラウドファンディングの実態を調査されたものがあるようですが、これは公表されているでしょうか。それから、それに関連してですけど、その下の行、資料2-2の6ページ、「また」のパラグラフの3行目に「これまで比較的自由に発展してきたクラウドファンディングの」云々とあるんですけれども、これはこの匿名組合契約を用いた日本のクラウドファンディングという趣旨でよろしいんでしょうか。

○平田委員

注4の出資者へのアンケート調査は、我々の懇談会に委員として参加いただいたミュージックセキュリティーズさんからのプレゼンテーションにおいて、ミュージックセキュリティーズさんの調査結果として報告いただいた内容になります。この調査結果の概要が記載されたプレゼンテーションの資料は、日証協のホームページにて公開されています。

それから、2点目の「自由に発展してきたクラウドファンディングの健全な発展を阻害してしまう」というのは、先ほどもちょっとお話をさせていただいたように、そもそも寄付型などから始まってきたクラウドファンディングという手法自体をうまく活用するという意味では、自由発展的に発展してきたという、その使い勝手のよさをいわゆる投資型になった途端に規制をがちがちにはめてしまうと、そもそもの使い勝手が悪くなり、やはりうまく回らないということになるので、そういうところをできる限り排除した形で使い勝手のよさという、その利便性に注目した制度設計が、十分されていくことが必要なのではないかなという意味で、ここは記載をさせていただいたということでございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。

○上柳委員

はい。

○神田座長

ありがとうございました。どうぞ、福田委員。

○福田委員

大変有益なお話しいただきました。寄付型のクラウドファンディングに関しては、寄付という行動に関して日本とアメリカではかなり違うということも知られていて、アメリカの寄付は匿名の寄付というのは少ないんですね。やっぱり寄付するというのは寄付者の名前が出るということがアメリカでは非常に重要視されていまして、そういうのが重要だと。ところが日本の場合は必ずしもそうでなくて、やっぱり匿名性の寄付を非常に好む人もむしろ多い。したがって、寄付型のクラウドファンディングに関しては、単純にアメリカのまねをするというのではなく、日本のカルチャーというか、文化というか、心情というか、そういうのを考慮した形でのこういうものをつくっていくということは大事だと思いますし、ヤフーさんの最後のお話というのはまさにそういうようなことも考慮に入れた形でのあれだと思います。よくここで多くの委員の方々が「共感」という言葉を使われていましたし、あるいは、日本の場合にはほかの国のを比べれば地域のつながりが、昔に比べれば薄れてきたとはいえ、まだありますし、あるいは、助け合いの考え方なんかもあるという意味では、日本型の寄付型のクラウドファンディングというのを追及するという余地は大きいとは思うんですけれども。

ただ、それが投資型に当てはまれるのかどうかという、先ほど前川委員がおっしゃられた全く別物的なものもあるわけですよね。やっぱり投資となるとリターンというものが当然大事になってきたときに、寄付型で言われていた日本的なそういう発想というのは、どこまで使えるのかどうかということは重要なポイントではないかなとは思っております。そこら辺の感触がもしお持ちであれば、ちょっと難しい質問で申しわけないんですが、別物なのか、それとも多少はやっぱり関係しているのかという感覚はいかがでしょうか、あるいは、中間的なものというのは成り立ち得るのかどうかということはご意見を伺えれば幸いです。

○別所参考人

すいません、ものすごく難しいご質問なので、ただ、私どもが実際にいろいろなことをビジネスとして考えてやってきている中では、やはり寄付型のものしかなかったというか、念頭に置かなかったというのは現実です。先ほど震災復興の話をさせていただきましたけれども、もう一つ実は私ども経験があって、公金決済という仕組みを私ども実は自治体さんに提供させていただいて、その中でふるさと納税の仕組みを提供しています。そのふるさと納税の仕組みを一番使われた機会というのは実は宮崎県が口蹄疫の被害を受けたときだったんです。そこで1カ月間で多分数千万円ぐらいがふるさと納税の形で寄付がされたというのがあります。あれがもし県ではなくて被害に遭ったそれぞれの牧場主さんとかというのが宛先だったら、どうなんだろうかというのを考えたことがあるんですけど、そこは非常に可能性があるのかなと。ふるさと納税なのでもちろんそれは匿名ではなくて名前がわかっている寄付になるんですけど、そういうものでもやはり寄付なり何なりの形で救済をしたいというお金が相当量動くだろうなというふうに思っていて、そのお金の出口としてクラウドファンディングというのがあるんであると、やっぱりその寄付型なのかなと。事業的なリターンで結びつけられるものが、そういう意味で言うと私どもは想定できるような場面に今まで遭遇したことがなかったので、ちょっとそこの可能性については何とも私どもとして現時点では申し上げられないというところでございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

そろそろ時間になってきていると思いますのですけれども。どうぞ、武井委員。

○武井委員

時間切れなのにすいません。平田委員にご質問なのですが、さきほどヤフーさんのほうから二種の登録でも投資型を行わなかったというお話がありました。出資・投資の世界になった瞬間に厳しい規制になるといろいろ難しいという話が出ていますが、二種だとどういう世界が考えられるのか。証券業協会さんのご議論の中ではどういう感じでしたでしょうか。一例を挙げると適合性原則の適用のありかたです。適合性原則は二種の世界でもかかってきますが、寄付から始まった投資という先ほどからのいろいろなご意見を踏まえるとどうなのか。何か整理されたことがあれば教えていただきたいと思います。各論の中で一つの論点になるかと思い、おうかがいします。

○平田委員

基本的には第一種業者でクラウドファンディングを取り扱うということになれば、適合性の原則は全てかけざるを得ないかなと思っていますので、そういう意味ではハードルが高くなるのだろうなと思います。第二種業については、自主規制がまだまだこれからの世界でありますから、いろんな考え方があると思いますけれども、さらに第二種業でもし株式型を取り扱うということになれば、現在の第二種業のハードルよりも高い第一種業のハードルと同等の高いハードルになるだろうと考えます。ただ、適合性の原則は業者が投資勧誘を行うという場面において、それはインターネットであろうと何であろうと勧誘という行為が発生するのであれば、当然ながらその根底にはあるべき規制なのではないかなとは思います。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにまだご発言があるかもしれませんが、前回ちょっと延長してしまいましたので、できるだけ時間を守りたいと思います。本日は皆様方から大変貴重なご発言を多数いただきましてありがとうございました。本日いただきましたご説明、それから、ご意見等は今後の具体的な検討に当たって参考とさせていただきます。前回も申し上げましたけれども、皆様方から追加でご意見・ご要望等がございましたら、ぜひ事務局にメールなどでお寄せいただきますようお願いいたします。次回も関係者をお呼びしてリスクマネーの供給のあり方等について幅広くヒアリングを行いたいと思います。

本日は別所様には大変お忙しい中をお時間いただきまして、大変貴重なお話をいただきありがとうございました。

それでは、最後に事務局からご連絡等をお願いいたします。

○油布企業開示課長

手短に申し上げます。次回の日程でございます。後日、別途事務方からもご連絡申し上げますが、7月30日、火曜日の10時からとさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、本日はこれで散会いたします。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課・企業開示課(内線2638、3665、3802)

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