金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第7回) 議事録

  • 1.日時:

    平成25年10月25日(金曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

おはようございます。それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。ただいまから新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの第7回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

早速でございますが、議事に入らせていただきます。本日ですけれども、上場企業の資金調達の円滑化に関するテーマとして3つのテーマをご審議いただきます。具体的には1つ目が上場企業の資金調達に係る期間の短縮、2つ目が発行登録に係る記載事項の見直し、そして3つが届出前勧誘に該当しない行為の明確化という、この3つのテーマにつきまして皆様方にご審議をいただきたいと思います。それぞれについて事務局からのご説明をまずさせていただき、その後に委員の皆様方にご議論をお願いしたいと思います。

それでは、まず、第1のテーマであります上場企業の資金調達に係る期間の短縮につきまして、事務局からのご説明をお願いします。

○油布企業開示課長

企業開示課長の油布でございます。本日はやや技術的で細かいお話も含まれますが、ご容赦いただきたいと思います。お手元の資料のうち、カラーの1枚紙で増資の手法、流れというフローチャートと、それから、資料1、これをお出しいただきまして、まず、資料1に沿いましてご説明を申し上げたいと思います。

1ページをごらんください。一番上の丸のところでございます。問題意識というところですが、我が国では有価証券の募集・売出しを行う場合、有価証券届出書の提出から効力発生まで一定の待機期間を義務づけているということでございます。この具体的な待機期間は注にございますが、2つ目のポチの矢印のところにありますように、大半の上場企業につきましては、現在、中7日間以上ということで指定をしております。この待機期間を設けている趣旨が2つ目の丸でございます。これは投資者が開示されている情報に基づき、取得・買付けの是非を検討する熟慮期間を確保すると、こういう趣旨でございます。

3つ目の丸に参りますけれども、ただ、一方で上場企業がエクイティ性の証券、普通社債などのような場合にはこういう問題はないのですけれども、エクイティ性の証券を発行しようとする場合に届出書の提出、つまり、公表があってから価格決定までの間にその増資企業の株価が下落する、こういうことがあるということでございます。この結果、ポチを2つ書いておりますが、まず、この増資企業は目標としていた、あるいは想定としていた額の資金が調達できない、その金額に足らない。2つ目のポチですが、その結果、企業が十分な資金調達ができないということと、株価下落そのものによりまして、企業そのもののみならず、その企業の既存株主も不利益を受ける、こういう事例が少なくないというご指摘がございます。

2ページをごらんください。これは募集・売出しの標準的な現在の手続について文章で記載したものでございます。一番上のマル1というところでございますが、届出書の提出とありまして、括弧書きの中にこの時点では価格は未定と記入されておりまして、ただ、注記で仮条件、これは条件決定日の終値の0.9倍から1倍の間で決めますと、こういった目安が示されていると、こういう段階でございます。この募集・売出しの手続につきましては、この文章よりもカラーのフローチャートをごらんいただきたいと思います。上のほうを見ていただきますと、小さくAと書いてございます。これは増資を考えている企業が取締役会決議を行いまして増資を行うということで、有価証券届出書を提出いたします。その時点でこれが公表されるということになります。

この後、下のほうに待機期間7日とありますけれども、少なくとも7日間を置いてBの日になります。Bには、まずここで直近の株価の終値などを見まして、実際の価格をここで初めて決定する。そして、その実際の発行価格を記載した訂正届出書を提出いたします。そうすることによって、いわゆる効力発生と言われることになりまして、右の下のほうに取得契約の締結解禁という矢印がございますが、効力が発生することによって実際の投資者との取得契約の締結ができるようになるということでございます。問題は、この下のほうの待機期間7日間という赤い矢印の間に大きく株価が下落している現象が見られるということでございます。

これをどのように評価するかということについて、まず3ページをごらんください。これは私どものほうで実際に増資を行った企業の株価についてランダムサンプリングでサンプル調査をいたしました。その結果、下にポチが2つございますように、サンプル調査しました全ての銘柄で確かに株価が下落しているということでございます。1つ目のポチのところですけれども、対象は今年増資を行った事例40から無作為に15を選びまして、それで株価の値下がりは市況全体にも左右されるわけですので、TOPIXを使って、その市場全体の要因を除去した上で15銘柄の株価がどうなったか、7日の間にどうなったかというのを見ました。これは、結論としましては15銘柄の全てで株価が市場の全体の変動要因を除いた後で、平均で12.1%下落しているということでございます。

ただ、2つ目の丸をごらんいただきますと、一方で、この増資企業が増資を公表して、その株価に一定の下落圧力がかかるということは必ずしも不合理とは言い切れないということでございます。なぜかと申しますと、この下にポチが書いてありますが、現実の増資では、増資をすることによって株式数は直ちに増えるわけでございますが、この追加で獲得した資本がほんとうに利益を生み出すことができるのか、その追加で獲得した資本が毀損するようなおそれはないのか、これは誰にも断言できないという意味でも不確実性がございますので、下がること自体をもって不合理とか、おかしいということはなかなか言えないだろうと思っております。

そこで、もう少し詳しく見てみましたのが次の4ページでございます。4ページ目の1番の丸でございますが、先ほど申し上げましたランダムサンプルで選んだ15銘柄につきまして、それぞれの希薄化率、これは新たに発行される株式数を既に発行されている株式数で割ったものです。これをもとにいたしまして、仮に追加で獲得した資本が全く利益を生み出さないまま全てで毀損するというふうに仮定した場合、株式数だけは実際に増えますので、その株式数の増加だけを織り込んだ資産価格、これは増資分全額毀損シナリオ価格とつけておりますけれども、それを算出いたしまして実際に価格決定日の終値とどうだったかというのを比較したわけでございます。

これは具体例で申し上げますと、極端な例で恐縮ですけれども、仮に上場企業で1株だけ株式を発行していて、株主資本が1億円という会社があったといたしまして、海外で類似業種をやっているよさそうな会社があって、1億円あればそれで買収できるというときに新たに1株を発行して1億円を調達するということが考えられるというときです。これはその時点では2株の2億円という資本になっております。実際にその海外の企業を1億円支払って完全買収したというようなときに、買収した後よくよくその買った会社を見てみると実態ががらんどうであって全く利益も生み出さないし、それから、いわゆる純資産ももうゼロ円、ゼロドルであったというような大変失敗、極めて大きい失敗、そういうパターンだと思いますけれども、この場合には支払った1億円はもう紙くずになってしまっておりますので、資本は1億円、それから、利益も全く追加で生み出されることはありませんので、ROE、1株当たり利益は従来の半分になる。

1株当たりの株主資本も半分になるということで、こういうパターンでは実際の株価が半分になります。希薄化率が倍になるということで株価が半分になる。このシナリオと比較したときにどうかというのがこの5行目のところでございまして、多くのケース、15銘柄のうち11銘柄で今申し上げましたような全額毀損シナリオの株価よりもさらに株価が下落しておりました。ポチの1つ目のところですけれども、この11銘柄の平均では、この全額毀損シナリオ株価よりも5.9%さらに値下がりしておりました。15銘柄の平均で見ましてもこのシナリオ価格よりも2.6%下落していたということでございます。

これはどういう理由かというのはもちろん断言はできないわけでございますが、2つ目の丸にありますように、日本証券業協会の調査で届出書の提出の後に空売りが急増しているという結果が示されております。注に書いてありますように、空売りに伴います株券の貸借取引、これが届出書の提出の後には14.7倍に急増しているという結果が出ております。矢印のところになりますが、以上を踏まえれば増資を行おうとする企業が届出の提出を行うと、つまり、増資が公表されるとこれをきっかけとして投機的なものを含む空売り、こういったものを含めまして売りが活発化して、必要以上にその企業の株価を下落させている場合も少なくないと考えられるのではないかと見ております。この問題に対応するために、待機期間を短縮または撤廃することが考えられないかということでございます。

5ページは、先ほど申し上げましたランダムサンプリング15銘柄についての実際のデータでございます。社名は伏せさせていただいておりますが、一応、見方だけご説明させていただきますと、左上の銘柄A社、これは希薄化率は9.82%でございます。決議日、すなわち、増資をしますと公表する直前の終値、それが2,377円でございました。希薄化率9.82%を用いまして全額毀損シナリオの株価を試算しますと2,164円ということになります。実際、このA社の株価は条件決定日のCの終値は、実は2,070円でございまして、左側の2,164円をさらに下回っております。その下落率は右端の4.36%でございまして、ただ、この間にTOPIXが右から2行目にあります2.03%、TOPIX自体が下落しておりますので、これを差し引いて2.38%、この毀損シナリオ株価よりもさらに下落していたという、そういう見方でございます。右下には総括表をつけております。

6ページにお進みいただきたいと思います。この銘柄の株価が必要以上に下落する可能性を小さくするということで、1つはこの待機期間を短縮または撤廃するということについてどう考えるか。2つ目の丸のところでございます。待機期間が義務づけられておりますのは、投資者が開示されている情報に基づき、取得・買付けの是非を検討する熟慮期間を確保するため。3つ目の丸でございますが、この開示されている情報としましては次の2種類があると一般的に考えられます。1つ目が増資企業そのものの状態に関します企業情報、それから、2つ目が新たに発行します有価証券自体の情報、これは証券情報と呼ばれることが多うございますけれども、その具体的な内容は注にありますように、どういう種類の有価証券を発行するのか、発行数はどれだけか、発行価格は幾らか、こういったことになります。

7ページをごらんいただきたいと思います。ここからしばらくは2種類の情報のうち、企業情報についてご説明させていただきます。これは一般的にというお話ですが、企業情報につきましては、下に掲げております3つのポチなどがありますように、特に近年、より充実した情報を容易かつ迅速に入手できる環境が整ってきていると考えられないか。インターネットやEDINET、あるいは東証のTDnet、それから、有報の記載事項ですとか四半期報告書などがありますので、情報の質・量も改善されております。それから、臨時報告書ですとか、取引所でのタイムリーディスクロージャーの整備も整っておりまして、情報の変化についても迅速に入手できるようになってきております。

8ページをごらんください。こうした環境の中でも、ということでございますが、一番上の丸です。特に時価総額が大きい企業や市場で非常に頻繁に売買が行われている企業などについて、こういう企業は一般に市場での周知性が高いと認められる、こういう企業でございますが、こういうものについては投資者がその企業情報を検討するための時間はそれほど要らないのではないか。こういった企業を、バーのところでございますけれども、市場において、「特に周知性の高い企業」というふうに以降申し上げますけれども、こうした企業につきましては、ポチの1つ目ですが、専門的な能力を持っておられる証券アナリストの方が複雑な情報を非常にわかりやすく簡潔な形で、アナリスト・レポートなどの形で情報発信しておられる。それから、メディアの経済ニュースというのもあるということでございます。最後に矢印のところですが、こういった点を踏まえれば、企業情報だけを念頭に置いて考えると、この特に周知性の高い企業については、待機期間を短縮、撤廃することが考えられるのではないかということでございます。

次、9ページでございますが、今ご説明申し上げました特に周知性の高い企業、これはどういう要件で絞ったらよいかということでございます。「検討」とございまして、「米国では」としております。これは米国の例を参考に考えてみてはどうかということですが、米国では著名適格発行者、Well-Known Seasoned Issuer、WKSIと呼ばれているようでございますが、こういった一定の企業に限りまして待機期間が撤廃されております。1つ目のポチにありますように、その条件は12カ月以上継続開示をやっているということ。それから、浮動株の時価総額、これが7億ドル以上あるということでございます。3つ目の丸の「なお、米国では」というところに進めさせていただきますが、このWKSIとは異なりますけれども、もう一つカテゴリーがございまして、これも企業の周知性に着目した特例です。発行開示書類で財務諸表などを改めて添付するのではなくて、継続開示書類を参照させれば足りる。そういう参照方式の特例が認められている企業でございます。参照方式の対象企業ということになりますが、米国ではこれが12カ月以上の継続開示を行っており、かつ浮動株の時価総額が0.7億ドル以上という、こういう要件になっております。これは我が国と対照させて見てみますと、この参照方式の特例については、我が国にもアメリカと同様の制度がございます。これは周知性の高い企業、そういう整理のもとに我が国でも参照方式が導入されておりまして、その要件は、ポチが2つありますが、1年間継続して有価証券報告書を出していること、それから、売買代金の年間合計額、それから、時価総額、これが両方ともに100億円以上であることということです。ただ、現在、我が国ではこのアメリカのWKSIに相当する制度は設けられておりません。

10ページをごらんいただきたいと思います。これは今申し上げたことを表にしたものでございます。周知性の高い企業であります参照方式を利用できる発行体が左側に書いてあります。アメリカではその要件として12カ月以上の継続開示、それから、浮動株の時価総額が0.7億ドル。右を見ていただきますと、WKSIの制度がございまして、やはり要件としましては12カ月以上の継続開示、それから、浮動株の時価総額が7億ドル以上であることということで、参照方式の約10倍の要件とされております。下の段の日本を見ていただきますと、周知性の高い企業であります参照方式利用企業の要件が書いておりまして、1年間継続して有報を出していること。その下のポチですけれども、上場株券についてということで、上場企業であるということと、その場合の要件が売買代金の年間合計額と時価総額、これが100億円ということでございます。ただ、日本の場合は、右下、ブランクにしておりますように、特に周知性の高いというカテゴリーは現在設けられておりませんので、ここをどうするかということでございます。

11ページをごらんいただきたいと思います。先ほど表で申し上げましたようなご説明をもとに考えまして、具体的に我が国で特に周知性の高い企業という要件を設けまして、待機期間の短縮、撤廃という特例を認めるとしますと、その要件は下記の3つが考えられるのではないか。まず、1年間継続して有報を提出していること。それから、2つ目といたしまして、上場企業であること。それから、3つ目といたしまして売買代金の年間合計額と時価総額がともに1,000億円以上であること。これは下にバーがついておりますが、先ほどご説明しましたように現在の我が国の参照方式、これは周知性の高い企業という要件になっておりますが、この要件が売買代金と時価総額を基準としておりますので、同じ要件をカテゴリーとして使ってはどうかということでございます。

12ページをごらんいただきまして、その売買代金の年間合計額と時価総額について、具体的に幾ら以上にするかということについては、これはもちろん明確な決め手はないわけでございますが、1つ目のポチとしまして、先ほど表のところでご説明いたしましたが、アメリカのWKSIの基準はアメリカの参照方式の基準の約10倍ということになっております。日本での参照方式の金額水準は、これは売買代金、時価総額ともに100億円ということで、これを10倍するということが考えられるかと思っております。「参考」でこの基準を当てはめた場合どうなるかということですが、仮に上記の基準を使用した場合、上場企業は3,600社ございますが、約500社程度が特にこの周知性の高い企業に該当する見込みでございます。

なお書きで重要なことを書いておりまして、我が国では複数の証券会社のアナリストさんが常時カバーしている上場企業数は約900社と言われております。特に3社以上の証券会社のアナリストがカバーしている企業数は約600社強ということでございまして、この500社というのと大体うまくはまるのではないかなと考えております。

13ページをごらんいただきますと、ここからは証券情報についての検討でございます。1つ目の丸でございますが、証券情報については特に周知性の高い企業であっても別段条件が異なるわけではありませんので、別の検討が必要かと思っております。その場合、2つ目の丸ですけれども、仮に待機期間を短縮、撤廃する場合、どういうことを考えたらよいかということですが、そもそも証券情報の検討に時間を要しないような、取得・買付けの是非の判断が比較的容易と考えられるケースだけに限定するということでどうかというご提案をさせていただいております。これは日本独自の方法でございまして、実は米国の方式はとらない。米国の方式をそのまま使うということではないというやり方でございます。米国はどうしているかといいますと、注1にありますけれども、米国のWKSIの場合は、WKSIに限りということですが、届出前勧誘の禁止を特例的に解除しておりまして、投資者に対して価格とかが未確定な段階での証券情報を提供することを特例的に許容しております。

ただ、注2にありますようにこの制度と同様に我が国でも同じように未確定段階の証券情報を提供することを認めるかということも考えられないわけではございませんが、この下に2つポチがありますが、この2つの点を踏まえると日本に当てはめるのはちょっと無理があるのではないかなと考えた次第でございます。1つ目のポチのところにありますように、まず募集に応じる投資者層の違い。米国では公募増資の7割以上が機関投資家でございますが、日本では逆に7割以上がむしろ個人投資家という構造になっております。したがいまして、不確定な情報といいますか、未確定段階の証券情報を提供するということはやや混乱を招く可能性があるかなと思っております。

2つ目の丸ですけれども、これは外資系のところを含めまして複数の証券会社を通じて確認させていただきましたが、米国では今申し上げたように制度上はこういう禁止が特例的に解除されておりますが、実際にはインサイダー取引につながるリスクなどがあるということで、具体的な証券情報を提供するということはほとんど行われていないという状況にある模様でございます。

14ページは機関投資家や個人投資家の投資者層の違いを表にしたものでございます。割愛させていただきまして15ページにお進みいただきたいと思います。それで、先ほど申し上げましたようにアメリカと違うアプローチをとるといたしまして、取得・買付けの是非の判断が比較的容易と考えられるケース、こういう方向性で考えていくとした場合にどういうことが考えられるか。1つ目のポチでございますが、まず、対象とする有価証券は仕組みが簡単で標準的なものだけに限ってはどうか。バーのところにありますように、我が国で7割以上が個人投資家が取得するということを考えると、やはり個人投資家にとって一番判断が容易な普通株式だけを対象とするということでどうかということであります。

2つ目のポチのところでありますが、さらに対象とする増資の規模について希薄化の程度が低いものだけに限定してはどうか。すなわち、一定の希薄化率以下の増資を行う場合に限定することとしてはどうか。これはバーのところの1つ目ですけれども、増資を行う場合に希薄化率が小さければ株価に与える影響も限定的ですので、本日の取引所の終値を見て、そのオファーされた価格が妥当かどうかを判断するということがわりと容易でございます。ただ、2つ目のバーにありますように希薄化率が40%とか、60%とか非常に大きくなりますと株価にどの程度影響を与えるかもわからないので、なかなか直近の終値で、それを物差しにするということが難しいと考えられるわけでございます。

16ページをごらんください。今、一定の希薄化率以下のものに限ってはどうかと申し上げましたが、その場合の具体的な基準がどのようなものが考えられるか。この点については、私ども事務局のほうでどれと決めずにニュートラルに提示させていただいておりますので、どの基準がよさそうかということをご議論いただければ幸いであります。1つは10%という基準でございます。これは現在は撤廃されております、2004年に撤廃されましたが、米国でその発行登録制度を使うときにダイリューションの上限とされていた基準が10%でございました。次の15%というのは、これも同様に現在は撤廃されておりますが、我が国におきまして平成4年までは証券業協会の公正慣習規則がございまして、株式増資の場合は15%というのが目安とされておりました。下の20%と申しますのは、この同じ公正慣習規則で新株引受権を使う場合の基準が20%だったということでございます。

これはご判断いただくに当たりまして17ページに東京証券取引所でお調べになったデータをつけさせていただいております。これは2009年から足元までの一定規模の公募増資の希薄化の状況を調べたものでございます。濃い線が調査対象の全件数でございまして、網かけのほうの棒グラフは右上を見ていただきますと時価総額1,000億円以上の企業が公募増資を行った件数。特に周知性の高い企業として今考えているものとほぼ合致すると考えられるものでございます。これにつきまして希薄化率が5%までであったものが1件、これ、全体件数は右下を見ていただきますと54件になりますが、54件中1件、希薄化率が5%から10%のものが5件、こういうふうに見ていただくと、そういうグラフでございます。

ごちゃごちゃいたしましたので実は数字をつけておりませんが参考に申し上げますと、この時価総額1,000億円以上の企業の増資につきまして、仮に10%というところで線を引くといたしますと、この過去の実績に照らせば11.1%の増資件数がこれに該当いたします。仮に15%というところで線を引くといたしますと、過去の実績で29.6%がこれに該当いたします。仮に20%のところで線を引くといたしますと、46.2%がこれに該当する。こういう形になります。

18ページにお進みいただきたいと思います。先ほどから待機期間は短縮または撤廃と申し上げておりましたけれども、どちらにするのかということです。これについては以下の点を勘案すると撤廃でよろしいのではないかとも考えております。まず、1つ目のポチは、これは今ご説明申し上げたように、非常に要件を絞り込んでいるということでございます。それから、2つ目のポチですけれども、仮に待機期間を短いなりに義務づけるといたしますと、短いとはいえ、その間にやはり投機的なものを含む空売りなど、そういう売りが発生することは避けがたいのではないかということです。

それから、3つ目のポチですが、待機期間を撤廃するということになりますと、増資に対する市場の実際の反応を見ないで発行価格が決められることもできるようになります。その場合、発行体としてはできるだけ高く発行価格を決めたいと思うのでしょうけれども、他方、引受証券会社のほう、こちらはあまり高い価格にして売れないと、いわゆる募集残を自分で抱え込むということになりますので、そういう価格をあまり高くしない、発行体の言うままに高くしないという適切な引受審査を行う一定のインセンティブが働くということでございます。

4つ目のポチは、米国のWKSIではやはり撤廃になっております。注のところは確認的にちょっと記載させていただいております。仮にここで法令上、待機期間の設置義務を撤廃したとしても、これは撤廃しなければならないということにはなりませんので、実際には増資企業とか引受証券会社の判断で市場環境とかいろいろなことを踏まえながら適当な待機期間をみずから選んで、それを任意に設置するということは可能でございます。例えば非常にグローバルな超大企業などは、たとえ3%の希薄化の増資でございましても金額としては相当な金額になりますので、実際にはロードショーとか、ブックビルディングをやるということも十分考えられるとは思っております。

最後になりました。19ページでございますが、これは補足的なところでございます。法令上、待機期間を撤廃するとした場合でございますけれども、これについては後ほど資料3でご説明いたしますが、仮に待機期間を撤廃するとした場合、これは禁止されております届出前の勧誘には該当しない範囲で企業情報をできるだけ発信できるように、そういう不必要な制約ないし萎縮効果を除去するということが必要かと考えております。そうすることによりまして投資者は届出書の提出前から企業情報をある程度制約なく受け取ることができるようになる。こういう措置をあわせてとることについて、後ほど資料3でご説明させていただきます。

以上であります。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの事務局からのご説明を踏まえまして皆様方にご議論をお願いしたいと思います。資料に示されたどの論点についてでも結構です。ご質問、ご意見等、ご自由に、どなたからでもご発言をいただければと思います。

前川委員、どうぞ。

○前川委員

ご説明、ありがとうございます。長年この論点については議論を重ねていただいていたところでありまして、今回の事務局からご提示いただいた原案、大変すばらしいと思い賛成いたします。そこにおきまして幾つかの確認とご提案、あるいは意見を幾ばくか述べさせていただきたいと思います。

エクイティファイナンスを実際企業さんがされる場合に非常に重要に考えていることというのは、既存株主を含めた個人投資家や機関投資家の皆様にそのファイナンスの必要性といったものをきちんと理解いただけるかということです。その熟慮を重ねた上で発行決議に至っています。今日、事務局からご説明がありました増資分の全額毀損シナリオといったものがあるわけですが、それを超えて株価が下がっているケースがある。ここについては、ファイナンスの必要性の説明がまだ足りていない部分があるのではないかという観点から、ファイナンスの開示のあり方についてはまださらに向上させていかないといけないところがあるのだろうと思っています。

しかし、その一方で資金調達の金額が減少するリスク、株価が下がってしまって資金調達の金額が減少するリスクは、調達側からしますと資金計画の変更自体をそもそも余儀なくされるリスクをはらんでいるわけであります。設備投資を全額調達資金でしようとしているところ、借入金で補充するということが実際起きていますので、この短縮期間の撤廃というのは、その調達の安定性という観点から良いことなのだろうと思います。また、本日、現状の日本における販売実績、殊に日本は個人投資家に販売するということが多いわけでありますが、その対象となる有価証券を限定するのは、その制度の導入時としましては合理性があるものだと考えています。

そこについて、本日の事務局案に対して2点ほどご検討をお願いできないだろうかということがございます。1点目は判断が容易な有価証券という軸で述べられていて、普通株がどうだろうかとご提案されています。判断の容易性ということは主に個人投資家の保護という観点から極めて重要なことでありますが、判断の容易な有価証券という軸では上場のREITというのが最近非常に増えてきているわけでありますが、この投資口も同様なものだと考えられるため、普通株式というよりも、むしろ金融商品取引所に上場している有価証券と同一の有価証券というような整理はできないかというのが提案の1点目であります。

2点目が、希薄化の考え方というのが今日ございましたが、希薄化というのは既存株主から見えている不利益というように一般には思われる概念でございますので、ここについては株式数の増加により1株当たりの権利内容がどれだけ希薄化したかと考えることが適切だろうと思います。いささか技術的な話でありますが、事務局案では、既発行株式を分母にとり増加する株式数を分子にとるという考え方でありますが、名実ともに希薄化ということになりますと、既発行の株式と新株を分母にとり、分子に新株をとるという希薄化の考え方で整理をいただくといったことについてお願いできないでしょうかという提案であります。そして、ご質問にありました希薄化の基準を理論的に導くことは無理なのだが、何%ぐらいがよろしいかという話だったと思いますが、実務をやっている感覚ということで言うと20%ぐらいでいかがでしょうかということです。

また、最後に確認事項になりますが、今回の期間短縮には訂正届出書を出した場合の待機期間、例えば出し直しを要求されるようなケースが幾つかあるわけでありますが、ここの待機期間についても同様の考え方でよろしいかというご質問が1点でございます。

以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

○油布企業開示課長

私どもの理解では、訂正届出書を提出した場合には、現行、待機期間はないという理解でおります。

○前川委員

ありがとうございます。

○神田座長

よろしゅうございますでしょうか。黒沼先生、どうぞ。

○黒沼委員

制度設計の細かい点に入る前に考え方を確認するための質問をさせていただきたいと思います。現状、日本の公募増資が行われるときに株価が不合理に下落してしまっているということは非常に問題であると感じています。その原因として投機的な空売りということをここでは指摘されているのですが、その原因が投機的な空売りであれば、それを押さえ込む方策を考えるのがまず第一だと思うのです。その点について、現在でも空売りの規制はかかっているのですけれども、空売りの規制だけでは十分でないと考えておられるのかというのが1つです。

それから、この原因が投機的な空売りなのかどうかまだはっきりはしていないのだと思いますけれども、もし株価がこのように下落をするのであれば、仮に待機期間を撤廃したとしても、届出の効力発生後に株価が下落するということも考えられるわけです。もし同じように株価が下落するなどすれば、発行価格を相当、市場価格よりもディスカウントした価格で設定しなければならないのではないか。もしディスカウントした価格で設定しなければならないとすると、それは結局、企業としては十分な資金を調達できず、既存株主も不利益を受けるという効果が生じてしまって、最初に狙った狙いが十分、達成されないのではないかとも思うのですが、その点についてのご見解をお伺いしたいと思います。

私自身は、周知性の特に高い企業について待機期間を撤廃することは、それ自体合理的なものだと思っております。その理由は、ご説明がありましたように、特に周知性の高い企業は継続的に情報を開示していますので、情報の咀嚼に時間がかからないということに尽きるのだと思います。待機期間を撤廃するという政策そのものについては反対ではないのですが、最初に述べられた効果との関係で十分効果が上がるのかという点についてお伺いしたいと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

今の点は皆様にもぜひご意見を伺いたいところだと思いますけれども、事務局から。

○油布企業開示課長

それでは、大変的確なご質問、ありがとうございます。まず、空売り自体を規制するということ、これは論理的な選択肢としてあり得ると思いますが、1つは、2012年からは、先生ご案内のように、この募集発行のときの空売りに対して新たな制限が、規制が導入されておりまして、募集発行で取得することを想定している、その株を使って空売りをするというようなことが、これは禁止されております。これは、あらかじめ取得するというつもりで株の空売りをしますと、そのこと自体によってまず株価が下がりますので、空売りでキャピタルゲインを得られるということと、それからもう一つは、そうやって自分が空売りをかけることによってさらに価格がどんどん下がっていきますので、取得価格も引き下げることができる。

しかも、取得価格は決まっておりますので、新たに市場で調達して買い戻しをやる必要がないというようなことで、そこが規制されている。増資の場合に係る空売り規制が整備されているということと、リーマンショック以降、我が国でも空売りの規制がご案内のとおり導入されておりまして、来月から恒久化措置になる部分もございますが、1つはネーキッド・ショートセリングの禁止、それから、10%以上取引所価格が下落している場合の、その取引価格よりも低い値段で空売りを出すという、いわゆるアップティックルール、こういうのも入っておりますので、これ以上、この問題を解決するために空売りを、規制を強化するというのは必ずしも適切ではない。ご案内のように空売りというものを含めまして、その取引自体を規制するということは最後の手段にしたほうがいいのではないかなという考えでございます。

2点目のところでございますが、おっしゃったとおり、こういう制度が入りますと、この効力発生後に株価が下がるということは予断をもって申し上げられませんけれども、想定されるところであろうと思います。そうしますと、その場合の値段といいますのは、現状は冒頭ご説明しましたように条件決定日の終値の0.9倍から1倍というふうな、そういうディスカウント率になっておりますが、これは希薄化が起こるということをさらに織り込む必要がありますので、恐らくもう少し大きいディスカウント率が一般的には要るようになるだろうと思います。そこはまさに幾らの値段にするかというのは、ある意味で引受証券会社のスキルといいますか、腕の見せ所、適切な判断が求められるようになるだろうということです。

ただ、その場合、今よりも大幅なディスカウント率が必要になるように私は思いますけれども、その価格には投機的に下げられてしまった市場価格の下がりの分は反映されていないので、今の仕組みよりはもう少し合理的に高い価格になるかもしれない。そういう考え方でおります。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがですか。たくさん手が挙がったのですが、永沢委員、福田委員、そして山下委員、それから、岡野委員の順でお願いします。永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

黒沼先生が先ほど投機的な空売りの話をされたので、関連して、1つ個人投資家の立場からの意見を申し上げます。投機的という説明が釈然としません。実際にその株を持っている既存の投資家からしますと、下がるということがわかっているならば重要なさや取りの機会として、ここで一度売っておき、また買い戻すという投資行動をとることはありうると思うので、投機的な空売りもあるのでしょうけれども、投機的と決めつけるのはどうかと思います。そういう売りも相当あるということはやはり前提として考えなくてはいけないのではないかと思います。

それから、株価に重要な影響を与えるほかの情報は、ほかにもいろいろ多々ございますが、ほかのものは速やかに公表されているという状況を考えますと、この情報だけが特別に扱われる必要があるのだろうかという気持ちもございます。また、熟慮期間という言葉が非常にミスリーディングなのではないかと思っております。もともとの制度の趣旨は、投資家が熟慮するための期間、新規に買おうとする投資家が価格をきちんと吟味をするための時間であったと思いますが、先ほどのお話を聞く限りにおいては、これはマーケティングのための期間、証券会社が売れ残りを抱え込んでしまうことを防ぐための期間なのではないだろうかというふうに捉えたほうがよいように聞こえましたし、そのような観点から、この期間をどうすべきかということを考えたほうがよいのではと個人的には思いました。

既存株主への配慮を優先するのか、資金調達側のニーズを要請するのか、新しい投資家への投資家保護を優先するのか、証券会社の負うリスクを考慮するのか、幾つかの要素をどう勘案するべきなのかということなのかと思いますが、いずれにしても、この熟慮期間という用語について少し違和感を感じております。基本的には、情報の織り込まれる速度は早まっておりますので、私はこの熟慮期間というのを短くするという提案には賛成です。

以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

福田委員、どうぞ、お願いします。

○福田委員

増資の際に株が下がるというのは日本に限らず、あらゆる国でよく知られた事実で、ファイナンスの教科書にも必ず出てくることです。それが非常に明確に出ているというのは、しかもここまで明確なのはややびっくりしました。ただ、ファイナンスの教科書で増資をしたときに株が下がる理由というのは、空売りが原因だとは書いてありません。事務局の説明では空売りが全て悪だみたいな表現でしたけれども、通常は発行体と投資家の間の情報の非対称性に起因していると説明しています。それはどういうことかというと、発行体はさまざまな資金調達の手段があるわけです。増資に限らずデッド(銀行借入や社債)でも資金調達ができる。それにもかかわらず、発行体があえて増資を選んだということは、発行体が相対的に増資が有利だと考えたからだというふうに市場は捉える傾向がある。

すなわち、現在の株価が相対的に過小評価されているときには増資は行われず、過大評価されているときに増資を行われる傾向があるというふうに考えるわけです。その結果、増資をすると株が下落する傾向があるというのが、これが標準的なファイナンスの教科書に書いてある説明です。マーケットメカニズムが正常に働くもとでも、情報の非対称性が解消されない限りは、増資のときに株が下落するというのは、空売りがなくても通常起こることです。このため、空売りだけが悪だというような形でだけで、こういう問題を捉えるべきではない。もちろん空売りが問題を起こしているかもしれないということは、私自身も否定はいたしませんけれども、空売りだけを規制すれば問題が解決するということでは必ずしもないということだとは思います。

あと、期間を短縮する際に個々の企業の株価が下落するから短縮したほうがいいのだというようなご説明でしたけれども、私はむしろ、市場全体の株価がその間に大きく変動してしまう可能性もあるので、短縮したほうがいいというふうに、あるいは撤廃したほうがいいという面もあると思うんです。その企業の株が下落するのは、その企業自身の責任といった側面もあり、それは甘んじて受け入れるべき面もあるとは思うのです。けれども、市場環境、その企業とは関係ない形で、いろいろなマクロ的な環境で思わぬ形で株が下落してしまったりして、思わぬ資金調達ができなくなるというコストは、その企業の責任でもありません。期間の短縮には、そういった問題を回避するという側面も重要ではないかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

山下委員、どうぞ。

○山下委員

この制度改革については非常に賛成でございます。1つございますのは、例えば今現在でもユーロマーケットで臨時報告書だけを使って待機期間なしでやるというようなことが行われております。こうした制度を改革することによって、当然、後で出てきます勧誘の制度ですとか、プレ・ヒアリング、あるいはアナリスト・レポートも含めていろいろな制度をきちっと変えていくということは空売りの観点だけではなく、日本のマーケット自体がグローバル・スタンダードといいますか、ユーロマーケットとかと比較して非常に使いやすいマーケットになっていくということになるわけですので、全体として非常にいいことであると思っております。

あと1つ、追加的な話で恐縮なのですけれども、会社法の規定で、いわゆる14日の規定がございますので、そこのところも検討できればということがございます。投資家、特に一般の投資家にとっては会社に払い込みが行われるまでの14日間というのがございます。待機期間を縮小したとしても投資家は14日間、株券が出てくるまで待たなければいけないというところがございます。それは空売りとか、信用とかで対応可能ということもありますけれども、原則としては待機期間と同等にすべきだと思います。会社法の規定もどういう形で見直すかというところも視野に入れられるのであれば入れていただきたいなと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、岡野委員、お願いします。

○岡野委員

情報の伝達の環境もかなり変わってきておりますので、短縮ですとか、撤廃ですとかということが検討されるのは当然だと思っておりますし、なるべく短縮できればできたほうがいいと思うのですが、一方で、現実の状況を見ると、ある程度待機期間がある中で個人投資家に消化されているという実態があるというのが日本の現実で、先ほどご説明があったとおりだと思います。アメリカ型で、即日でさっと機関投資家に販売できて消化できればいいのかというところは、ちょっと考えてみる必要があるのではないか。私はむしろ、これだけ貯蓄から投資へと言って、個人からリスクマネー供給がどういうふうに出てくるようにしようかということが1つの大きなこの会議の課題でもあるということを考えますと、個人投資家に参加していただくということを重視するというところは必要ではないかと思っております。

ですから、そういう意味では普通株式に限ってということ、それから、ダイリューションのパーセントを考えて、まずそこに限ってやりましょうという形でのアプローチということには賛成でございます。ただ、撤廃ということにいきなり踏み込むのかというところで言うと、私としては少しヘジテートするところがございまして、最終的には撤廃を目指すにしても、一たん短縮という形でやってみて、結果としてどういうような効果があらわれてくるのかというところを見ていきながらやっていくというようなアプローチも可能ではないかなと思います。特に個人投資家への消化の状況だとかということについて、どうなんだろうかということは日本のこの資本市場を改革していくという観点で考えると、そこはむしろ、大事にしておきたい点ではないかと思っておりまして、そのあたりのところも少しご検討いただければと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

原田委員、お願いします。

○原田委員

少し基本的なことになるかと思うのですけれども、確認させていただければと思います。公募増資はご説明いただいた3ページを見るとランダムサンプリングで全て株価が下落しているとあります。これが自己株の取得なのだと中立的な影響になるのだろうと思うのですけれども、全て格が下がっているというのをランダムサンプルで見ていらっしゃいますが、これは規模も恐らく違いますでしょうし、業績も違いますでしょうし、どこに上場しているか、一部なのか、マザーズ銘柄なのかということでも影響を受けると思いますし、例えば浮動株比率なども影響するかと思いますので、15社でも構いませんが、もう少しケースを増やして特徴ある銘柄毎に区分けしてみて、どういう影響があるのか、影響は大きいのか小さいのかというところも見ていただけると、その傾向がわかると思います。もし、そういうことをやっていらっしゃいましたらお教えください。

もう1点としましては、先ほどから日本では7割、公募増資の7割は個人投資家が応じているとありましたが、どの銘柄も株価が下がってしまうという状況のもとで、誰がどういうふうに応じているのかというところが少し気になるところでして、例えば対面で高齢者の方にとか、何か特徴があるのかどうか、これは御庁の管轄外ではあるかと思うのですけれども、そういうところを何かご存じでしたら教えていただければと思います。また、同様に先ほどから出ています空売りですが、公募増資に応じている個人が空売りもしているとは思えませんので、どういう機関投資家、ヘッジファンドなのか、外資系なのか、あるいはそうでもないのか、どういうところが空売りを主に担っているのかというところも気になるところではあります。

3点目としまして、周知性の特に高い企業の条件に日本では浮動株比率が入ってきていません。これについて何かご意見をお伺いできればと思います。

以上になります。

○神田座長

ありがとうございました。

では、事務局からお願いします。

○油布企業開示課長

今回、実はここに出しているデータだけではなくて、もう少しいろいろなことを調べたかったものですから、対象を絞るという意味で時間の制約の中で15社にさせていただきました。もう少し対象をこの40社まで広げて調べてみたいと思っております。1点だけ今申し上げられることですが、この15社はどこに上場している企業かということですけれども、JASDAQが1社ありまして、これは東証と一緒になりましたけれども、大証2部が1社あるだけでございまして、残りは全て東証第1部でございます。

それから、対面販売はもちろん、恐らくかなり普段から証券会社とおつき合いのあるような富裕層の方とか、そうしますとやはりご高齢の方がどうしても多い可能性はあるかとは思いますけれども、ここは私どものほうで現時点で、はっきり何か把握しているわけではございません。

最後にアメリカの浮動株時価総額をそのまま使わないということですけれども、ご指摘の点も考えられるかとは思っております。ただ、今、現状、日本の制度を前提にしましたときに周知性の高い企業と位置づけられているものに参照方式の企業の要件がございまして、これが売買代金の年間合計額と時価総額、この2つで捉えております。売買代金といいますのは、ある意味浮動株の実際の売買とかなりリンクするところもあると思いましたので、この2つの基準を使ったとしてもアメリカの浮動株時価総額と比べて、性質的に、本質的には変わりはないかなと考えております。

○神田座長

よろしゅうございますでしょうか。

○原田委員

ありがとうございます。

○神田座長

それでは、吉野委員、平田委員の順でお願いします。

○吉野委員

発行体の立場から申し上げると、今回の待機期間の撤廃というご提案は資金調達の円滑化という面で非常に資するものがあると考えておりまして、方向性については賛成をいたします。一方で、その対象、一定の希薄化率以下の普通株主のみに限定されておりますけれども、発行体としては資金調達の手段として転換社債というのも重要な手段と考えているわけで、先ほど前川委員さんからREITのお話がございましたけれども、有価証券の対象に新株予約権付きの社債もご検討対象に入れていただきたいと思っております。また、希薄化率につきましては、投資家の保護という観点からは有効だと思いますけれども、逆に資金調達の規模を縮小するということにもなりかねないわけでありますので、この率につきましてはできるだけ高めに設定して、資金調達規模を確保するということを発行体からはご要望させていただきたいと思っております。

○神田座長

ありがとうございました。

平田委員、どうぞ。

○平田委員

今、普通株式だけではなく、転換社債型新株予約権付社債も対象に含めてほしい旨の話がありましたが、私も賛成ですので、ぜひご検討いただけるとありがたいと思います。

また、それに加えて、少し違う論点になりますけれども、ライツ・オファリングについても、待機期間が設けられておりますので、その短縮化に関する議論をお願いしたいと思います。ライツ・オファリングに関しましては、公募増資による希薄化の議論を受けて金商法を手当てしていただきまして、解禁されたわけでありますが、公募増資の1.5倍以上の期間がかかってしまうため、できるだけその期間を短くしていかなければいけないという大きな課題があります。確かに待機期間の短縮化の問題だけではなく、先ほどの山下委員からお話のように会社法上の制約もありますし、ほかの金商法上での一定の制約もあるので、待機期間の短縮化だけで必ずしも効果があるわけではありませんが、少しでも短縮化を図るという観点でご検討いただければと思います。

その際、株式と大きく違うのは、まず、株主割当であるという点であり、株主割当である以上は、発行会社のことをある程度知っている方が対象で割当てが行われますので、一定の期間を設けて、会社情報を熟慮していただくことは必要ないのではないかと思います。また、当然、株主割当ですから、希薄化という問題も発生しません。それから、当然ながら、無償で割り当てられた投資家は、その後、基本的には市場で売却をするか、又は権利行使をするのかを検討する必要がありますが、基本的には、割当後に二、三週間程度の上場期間が設けられていますし、上場期間の後半には、権利行使期間が設定されていますので、相当程度、その割り当てられた投資家の投資判断をするための検討期間は十分設けられているのではないかと考えます。そのような観点から、ライツ・オファリングについては、待機期間を短縮しても、投資家保護上問題がないのではないかと考えております。

それから、先ほど岡野委員から、一方で待機期間を短くすることで必ずしも撤廃というのが望ましいわけではないのではないかというご指摘がありましたけれども、ダイリューションが大きい、あるいは規模が大きいファイナンスになればなるほど、現在も中7日間という待機期間を超えて、もう少し期間をとってマーケティングをするなどの工夫もされており、実際には、証券会社も実態を見て行動をしているという状況です。また、待機期間について、制度上は撤廃しても、自主的に設けることは可能ですので、できる限り短くするという観点からは、待機期間を撤廃し、必要に応じてそれぞれの実務の中で待機期間が設けられる制度の方が、より効果的な制度改正になるのではないかと考えておりますので、その辺もご考慮いただければと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、田邊委員、それから、上柳委員の順で、田邊委員、どうぞ。

○田邊委員

今のお話を聞いて大分わかった点があるのですが、基本的によく考えられた考え方だと思って賛成しております。先ほどご説明のあった点は、熟慮期間という言葉がいいかどうかは別として、熟慮期間を撤廃する、すなわち任意の熟慮期間を持つ、というふうに私も解釈しておりまして、そこで難しいディールであれば自然と価格決定までに3日かける、5日間かける。そうでなければ即日決定するという市場原理にのっとった熟慮期間になるということでいいのかなと思っております。

ただ、それが余りにナイーブで、実際は早いほうをみんなとってしまう、つまり、発行体、あるいは証券会社ともども早いほうを優先してしまうと、個人が買えなくなるという弊害があるかという議論があります。私としては多分、企業体もしっかりと個人投資家、比率とかいうことを意識してやるのであれば、そこは市場原理で、自然と今おっしゃったような1週間等の期間になってくるのだろうと思っているので、制限は撤廃でいいかなと思っていたのですが、アメリカはまた個人投資家が少ないし、要はほかの市場でこうやって撤廃をしたことによって、何か個人投資家が大きく阻害されるような事例があるかないかということをもしお調べになっていたら、お聞きしたい。要は任意の熟慮期間というのが、どれぐらいに落ち着くものかというようなことについて何か考察があれば教えていただきたいと思います。

それからあと2点ですけれども、希釈化については心配であるけれども、今申し上げた通りとすれば、希薄化率が30%でも40%でも難しいディールであれば熟慮期間が長くなるということで対応すればいいので、これを条件の1つに入れなくていいという考え方もあろうかと思うのですが、慎重を期して20%とか30%というバーをつくっておこうという事だと理解しております。ただ、これについては、投資家というか、一般人として、私は、30%というのが、利益の増減等、わりと希釈化のメルクマールになっているように思います。20%になると、今度は20%の希釈が、何か1つの概念として出てきてしまい、いろいろな数字が出てくると混乱するので、ちょっと大胆かもしれませんが、30%ぐらいでもいいと思います。利益の増減の適時開示も30%でやっていますよね、インサイダー情報上。ですから、2割とか15%というのは、恣意的な、新しい希釈化のバーになるということに対して、若干躊躇があるということです。

商品については皆さんがおっしゃっていたとおりで、投資口等については広げて考えていただいてもいいのではないかなと思っています。

○神田座長

どうもありがとうございました。

上柳委員、お願いします。

○上柳委員

結論的には国際的な流れに合わせるということでよいのかなと思っているのですが、ただ、私の限られた知見で言いますと、いわゆる熟慮期間が熟慮期間として機能しているものもあるような気がしています。特に大型の信用ある企業で、高齢者の方が多いとは思いますけれども、今回、公募増資があるということで買い増さないか、あるいは買わないかということで、何日かわかりませんが、1日とか2日とか考えている人たちというのは結構いるような気がいたします。

ただ、そのときに企業情報なり証券情報を考慮しているというよりも、自分のポートフォリオとの関係を考慮されているだけなのかもしれません。それから、もっと思い切って言えば、実際、ふたを開けたときに自分の考えていたよりも株価が下がってがっくり来ているという方もいらっしゃるようです。そういう意味で言うと、むしろこの期間を撤廃して即時に答えがわかっているというか、価格が見えているところで判断をするというほうがいいのかもしれないし、そこは悩むところです。けれども、全然機能していないというわけではないような気がします。

それから、希薄化の中身として、私もどちらかというと空売り的なことが多いような気がしていて、そういう意味ではなるべく期間が短くなったほうがいいというふうに今までは考えておりました。が、ただ、実際には公募増資をするような会社なんだから、今の株価が高過ぎるのではないかという判断、つまり、売る機会となる期間が短くなる、あるいは即座に判断しなければいけないようになるというところは何か気になるところです。ということで、アメリカがやっているのがいいのかというのが率直なところですけれども、もしわかればそのほかのヨーロッパ等の法制も教えていただければと思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

田邊委員のご発言に関連して事務局からお願いします。

○油布企業開示課長

諸外国でございます。ヨーロッパは、これはデータがございませんが、機関投資家比率が非常に高いと聞いておりますが、基本的にオーバーナイトで決める例が多いという話でございます。アメリカにつきましては、WKSIなどについて待機期間が撤廃されておりますが、2010年以降の一定規模以上の増資について調べたデータがございまして、総額866件のうち、順次申し上げますと、即日、待機期間ゼロだったものが75件。翌日、これも翌日というのは取引所取引を1日も挟まない可能性がございますが、479件。3日以内が144件、7日以内が28件、8日以上というのがちょっと多いですが、140件ある。そういうデータがございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

武井委員、どうぞ。

○武井委員

すみません、資料1だけでこんなに盛り上がっていると時間がなくなるかもしれませんので、手短にいたします。基本的に待機期間の撤廃について私も賛成です。この手の待機期間の規律は法律でカチッと決めてしまうのではなく、自主的に任せれば良い話だと思っています。先ほど永沢委員からもございましたとおり、売れ残りリスクを見ながら自主的に決まってくるところに任せて良いのだと思います。その上でなのですが、今回のご提案はアメリカのWKSI制度と比べて2点大きく違うところがあります。1つはガンジャンピング規制、事前勧誘規制を撤廃していない点です。これは13ページにその理由のご説明がございましたけれども、事前勧誘規制についてはあとで参考資料3がございますのでそちらで議論したほうが良いと思いますので、その際に申し上げます。二点目が希釈化率の箇所です。熟慮期間がWKSIのレベルでなぜ必要なのかというそもそもの点にも絡んできますが、希釈化率で何か規律に差異を設けるとしたら、既存株主の保護の観点からの話だと理解されます。ただ日本の場合、会社法で14日待機が必要ということになっていて、そもそも米国に存在しない株主保護の規律が設けられています。この会社法の14日は既存株主の差止の機会の確保のためなので、この場でいくら議論してもじゃあ緩和なり撤廃、と言うことに簡単になるわけではないと思っています。そこでローンチからクロージングまでどのみち既存株主保護のために14日が置かれ差止権行使の機会が確保されていることに照らしますと、今回、WKSIについてローンチ後の証券法上の待機期間を短くすることを考える際に、希釈化率に関する規律をわざわざ設ける必要が果たしてあるのかとも思います。米国でWKSIについては希釈化率による規律は設けられていませんし、日本では米国よりも個人株主が引受先として多いといっても、日本でも希釈化率の規律は置かないで待機期間を撤廃するという選択肢もあるかと思います。会社法上の規律に加えてさらに証券法上の規律についてもWKSIであるにもかかわらず希釈化率の規律が被さってくるというのでは、WKSI規模の日本企業は同規模の米国企業に比して、米国の同種のファイナンス環境に比して二重の規律・二段階規律が追加で覆い被さっている状態になってしまいます。そこで希釈化率を付することの必要性についてもう1回、内部で揉んでいただければと思います。

もちろん、いろいろなバランス論を考えて希釈化率に関する規律をどうしても入れることにするのだとしたら、その%は30%とか25%とか、高い値で良いのではないかと思います。ただリスクマネーの循環の円滑化という今回の法制度見直しの視点からしますと、同じWKSI規模の日本企業が同規模の米国企業に比して余計な規律を受ける事態は基本的に避けるべきであり、もしも加重された規律を日本企業が受けるのなら相応の必要性・合理性が必要なのだと思われます。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

まだあと2つテーマがあるのはそのとおりなのですけれども、2つ目のテーマは少し軽そうな感じがしております。1つ目のテーマはこんなところでよろしゅうございますでしょうか。皆様方から非常に多様なご意見をいただきましたので、本日いただきましたご指摘を受けて先へ進ませていただきたいと思います。1つ目のテーマについては、先ほどもありました希釈化率の線をどこに引くかとか、特に周知性の高い企業をどういう要件を設けるか、対象となる証券をどう捉えるかについて、皆様方から基本的には事務局のご提案の線についてご指示いただいたと思うのですけれども、細かいところで違うご意見もいただきましたので、それも踏まえて今後さらに事務局で詰めていただきたいと思います。

より大きな問題としては、結局、日本の株式市場の問題だということかと思いますので、これは引き続きまた皆様方にもお考えいただければと思います。恐らく株価の下落というのも、福田先生がおっしゃったような一般的に言われている下落以上に下落しているのではないかという問題があるように思います。日本の市場ではですね。それから、買う人が個人だというのも、要はそういう個人に売るような売り方をしているのではないかということがあると思います。

希釈化率についても、先ほどの図にもありましたけれども、いま一つよくわからない。1,000億円以上のところでむしろ25%以上の希釈化率のケースが多いので、それは資金が必要だからそうなのだということなのかもしれませんし、公募増資でのそういう指摘を受けてライツ・オファリングのほうへという議論が一時期されましたけれども、ライツ・オファリングは本日もテーマではないのですけれども、平田委員のご指摘があった点ですが、実際にされているのを見るとやっぱり研究に値するような気がするものですから。結局、日本の株式市場なんですよね。やはりそれをよくしていかなければいけないということですから、その点は引き続き皆様方にお考えいただいて、実際にどうなのかということについては、もう少し細かいデータの分析もあるいは必要かと思いますので、引き続きのテーマとさせていただければと思います。どうもありがとうございました。

それでは、2点目に移らせていただきたいと思います。発行登録に係る記載事項の見直しであります。まず、事務局からのご説明をお願いします。

○油布企業開示課長

それでは、資料2をお目通しいただきたいと思います。極力簡素化して説明申し上げますのでご容赦いただきたいと思います。1ページ目をごらんください。一番上の丸でございます。現在、我が国の発行登録制度、ここでは1通の登録には1種類の有価証券、普通株とか普通社債とか、そういったことだけを記載することになっておりまして、その最大発行予定額も記載するということになっております。その理由は、この趣旨というところに書いてございますが、あらかじめ発行登録をしておけば、発行登録追補書類で価格を決めて、この追補書類をポンと出すということで即時に効力発生に至ることができる。先ほどの待機期間と似たような話でございます。

これは投資者の側から見ると、いわゆる熟慮期間といったものが限られてしまいますので、2つ目の黒丸のところにありますように、発行登録の段階でできるだけその情報を明確にしておいてバランスをとろうという趣旨でございます。それから、2つ目の白丸にありますように、現状、エクイティ物で発行登録を行いますと、多くの場合、その登録をした途端に増資があるぞということで株価が下落してしまうということが現実にございます。これを懸念して、株式の発行については、ほとんど発行登録は利用されておりません。普通社債などでは広く使われております。問題意識といたしまして、下にございますようにこの発行登録制度をより使える制度にできないか。2ページ目が実際、エクイティ物では発行登録が使われていない反面、社債などでは発行登録が幅広く使われているというデータでございます。

3ページをごらんください。この対応といたしましては、1つにはそもそも発行登録をするときに1通の発行登録で1つの有価証券の種類というのではなくて、全ての有価証券の種類を幾つでも記載することができるようにする。それから、マル2としまして、その場合の発行予定額は、その全部のいろいろな有価証券の総額だけを記載するということが考えられるかということでございます。これは実際アメリカがそうなっているわけでございますけれども、ただ、この点につきましては、この下の矢羽根のところにありますように、やはりこういった発行登録では投資者にとって十分な情報が提供されているとは考えにくいところがございまして、こういったやり方、アメリカ式のやり方をやるということは、投資者保護上の問題が大きいのではないかと考えております。あと、注書きには、説明を割愛させていただきますが、仮にこういうある程度のドラスティックな対応をとったとしても、実際はやっぱりエクイティ物の発行登録が敬遠される結果になってしまうのではないかということを注に書かせていただいております。

4ページをごらんいただきたいと思います。ただし、仮にそうだとしても、これぐらいは考えられるかもしれないということのご提案が4ページ目でございます。これも事務局として方向性をあまり決めておりません。ニュートラルにご議論いただければと思っております。一番上に丸がございますように、基本的な性質が似ています普通株式と新株予約権、これは一緒に記載して最大発行予定額も内訳を書かずに両方の合計を書いてもらう、こういう発行登録のやり方をしたとしても、あまり投資者保護上の問題は生じないかもしれないということでございます。他方、メリットとしましては白丸のところの1つ目のポツにございますように、現状、ライツ・オファリングがようやく広がりを見せておりますので、普通株による公募増資なのか、ライツ・オファリングなのかというのを発行登録しておいて、その状況を見極めて柔軟に決める。そういうことができるようになるかもしれない。実際、どの程度こういう実務上のメリットがあるかどうか、私どもでは必ずしも図りかねているところがございまして、いろいろとご議論をいただければと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、皆様方からご質問、ご意見をお願いします。平田委員、どうぞ。

○平田委員

まず、総論としまして、発行登録制度が利用されない理由が、株価の下落の発生によるものという前提である場合、株式と新株予約権を一緒にして発行登録できるようにしたとしても同様の状況は起こるのではないかと思います。当然ながら、先ほどご指摘いただきましたライツ・オファリングに関して実施しやすくなるという点では非常に歓迎いたしますが、その辺も含めて考えますと、行為としてはアメリカ方式にしていただいたほうが使い勝手がよくなるのではないかということを付言させていただきます。

もう1点、非常に技術的な点でありますけれども、現在、ライツ・オファリングでは、発行登録制度を利用できません。その理由は、目論見書の交付が義務付けられているためです。有価証券届出書の場合には、目論見書の交付が免除されていますので、平仄をあわせて、ライツ・オファリングについて、発行登録制度を利用できるようにしていただくよう、ご検討いただけるとありがたいと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、吉野委員。

○吉野委員

発行体の立場で申し上げますけれども、1通の発行登録書に包括的に登録できるということにつきましては、使い勝手をよくするという方向でぜひ見直していただきたいと思っております。対象は株主と新株予約権に限定するということでありますけれども、先ほど申しましたように社債につきましても一括登録できるようにしてはどうかというご提案でございますので、ご検討いただきたいと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

素人の発言ですけれども、先ほど第1のところでも検討しましたけれども、株数が増えるということは大きなマイナス要因と投資家は受け取めます。増える可能性、希薄化の可能性の有無に関する情報は事前に開示していただいたほうがよろしいと思いますので、事務局提案で私はよろしいのではないかと思っております。どちらの方向がいいのかについては、専門家からご意見いただきたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょう。黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

細かい点ですけれども、1点だけ指摘させていただきたいと思います。株式と新株予約権の双方をあわせて記載することを提案されているのですが、買収防衛策の手段として使われる新株予約権は資金調達の性質を持たないので、新株予約権といっても少し違うと思うのです。そういうところは区分するのでしょうか。もし可能であれば区分したほうがよいと思うのですけれども。

○神田座長

ありがとうございます。

何かありますか。

○油布企業開示課長

おっしゃるとおりでございまして、これはもしこのライツと普通株を一緒にするということであれば、そこはポイントになろうかと思っております。おっしゃいましたように、2ページの下から2つ目に新株予約権がございますが、現行、新株予約権の発行登録はほとんどが買収防衛策のための登録となっております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかに。どうぞ、失礼しました。岡野委員。

○岡野委員

今の点で申し上げますと、現状、その他記載事項に書くということになっているので、そのこと自体を、ガイドラインを変えなければ開示されるということでよろしいのではないかと思っております。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。この論点は、小さくご提案させていただいているので若干違うご意見もいただいたと思いますけれども、今いただきましたご意見も踏まえて、また、ご発言のない委員の方々からは基本的にはご賛同いただけているのではないかと思いますので、3つ目の論点に進んでもよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。もし追加でお気づきの点がありましたら、いつものようにまた後で事務局のほうにご意見をお寄せいただければ大変ありがたく思います。

それでは、時間の関係で3つ目に進ませていただきます。届出前勧誘に該当しない行為の明確化というのがテーマになります。事務局からのご説明をお願いします。

○油布企業開示課長

それでは、資料3と、それから、先ほどごらんいただきましたカラーの増資の手法、流れという1枚紙と両方お出しいただいて、その上でご説明差し上げます。まず、資料3の1ページでございます。最初の丸のところでございますが、これは3行目のゴシック体のところです。有価証券届出書の提出前の勧誘、届出前勧誘は現在禁止されております。

その理由が2つ目の丸でございます。この禁止の趣旨は不確実、不十分な情報に基づく投資判断を勧誘の販売圧力によって投資者が強いられる、こういう事態を防ぐ、こういう趣旨でございます。一方で3つ目の丸でございますが、この勧誘の範囲が実は必ずしも明確でないということがございまして、実務上いろいろ萎縮効果が出ているという指摘がございます。3つほど矢羽根で例示を掲げさせていただいておりますが、まず、1つは証券業協会の自主ルールのほうで、その引受けを伴う国内募集の場合には、実はプレ・ヒアリングが禁止ということで自粛されている状況でございます。これは募集・売出しの是非、そもそも募集・売出しをするかどうかを判断する、あるいは価格の目安を何となくつかむという意味で、ほんとうはプレ・ヒアリングができるといいのだけれどもというお話がございます。それから、国内ではプレヒアが自粛されておりますが、海外ではプレ・ヒアリングができるということで、海外市場で発行する例がある。

2つ目の矢羽根でございますが、発行企業が通常の情報発信をする場合ですとか、アナリスト・レポートが公表される場合にも実は萎縮効果が出ている場合があると言われております。それから、最後の矢羽根、IRミーティングなどの広報活動、これはあらかじめ年間スケジュールなどが決まったりしているのですけれども、その結果、この勧誘に触れないかということを心配して、募集・売出しのスケジュール、ウィンドーが限定されてしまうという話がございます。

2ページ目でございます。2ページの一番上でございますが、これは先ほど資料1でご説明した待機期間、これを撤廃するとした場合には届出前勧誘には当たらないけれども、問題のない企業情報は円滑に出していただくようにするということで、不必要な制約は解除したほうがいい。このことが結局、投資者のためになるのではないかと考えられることでございます。

そういう意味でございまして、矢印の2つ目のほうですが、今回、セーフ・ハーバー・ルールといたしまして、企業内容等開示ガイドラインで解釈上、この禁止されております勧誘に該当しないことが明らかであると考えられる具体的な行為を列挙するということで、どういう情報発信が禁止に抵触しないのかを明確化するということを考えております。以下5つほど具体的な提案を申し上げますが、これは全て企業内容等開示ガイドラインでセーフ・ハーバーとして書くということでございまして、法令そのものではございません。財務局に対して金融庁が法令の解釈などを示すものでございます。ただ、これは一般に公開されていると、そういう趣旨のものでございます。

2ページの注の一番下ですが、この勧誘、勧誘と申し上げておりますが、これは講学上は特定の有価証券についての投資者の関心を高め、その取得・買付けを促進することとなる行為を言うとされております。ただ、関連する法令その他には実際には説明がございません、ということであります。

3ページをごらんいただきますと、まず、トップバッターとしまして俗にプレ・ヒアリングと言われているものについて、以下、検討をしております。これはフローチャート、カラーのものをごらんいただきたいと思います。真ん中よりやや左下に紫色の薄い線でプレ・ヒアリングということで、この届出書提出前のところに線を引いております。大体届出書提出の2週間ぐらい前に海外などでは行われることが多いと聞いております。3ページに戻っていただきまして一番上の注です。そのプレ・ヒアリングとは何かということですが、企業や引受証券会社が募集・売出しの是非や価格を判断するために、その募集・売出しに係る有価証券への市場の需要見込み、これを届出前に調査するという行為でございまして、情報の発信と、先方からのレスポンスという意味で情報の受信の、両方が含まれるわけでございます。

2つ目の丸で、実は内閣府令上はプレ・ヒアリングできるということを前提にした規定も実は置かれております。3つ目の丸ですが、ただ、一方で、先ほどもご説明しましたけれども、国内募集については、今、自主ルールで自粛が行われております。この理由は矢羽根が2つありまして、1つは勧誘の範囲が法令上、必ずしも明確でないということ。それから、2つ目の矢羽根ですが、こういうプレ・ヒアリングを行いますとインサイダー取引を誘因する懸念があるということから自粛がとられてきているわけでございます。ただ、このインサイダー取引の誘因については、注のところにありますように本年度の金商法改正で公募増資インサイダー関係に関する規制強化などが図られておりますので、こういったことをあわせ考えますとインサイダー取引を誘発するという懸念は低くなったと考えられます。

4ページをごらんいただきたいと思います。届出前勧誘の禁止、これがなされている趣旨からいたしますと、3行目のところにありますように、趣旨と申しますのは販売圧力で投資者が判断を強いられるということなのですが、この点を踏まえますと3行目にありますように発行者に対して適切な交渉力を有する投資者であれば、そういった心配は少ないのではないかと考えております。下の注書きのところに、これは現行法制の例を引いておりまして、実は第三者割当増資を行う場合には、割当先と事前に協議する。当然、これは必要になると思われますけれども、そういうことも踏まえましてこういう事前の協議が認められているという例もございます。

5ページですが、このプレ・ヒアリングと言われるものの一部をセーフ・ハーバーとして明確化するとした場合、具体的にどうするか。プレヒアと名のつくもの全てではなくて、以下の要件を満たすものについては、これは勧誘に該当しないということを明確化してはどうかと思っております。まず、1点目はマル1ですが、適格機関投資家、特定投資家または大株主、これだけを対象とするプレ・ヒアリングということです。これは発行体、証券会社に対して適切な交渉力を持っているということでございます。

2つ目の丸ですけれども、これはプレヒアは一応できるという前提のもとに現在、このページの一番下につけておりますように、内閣府令で体制整備が図られておりますので、これに準じるような形で、プレヒアを行う人からさらにほかの方に情報が漏れないような、そういう適切な措置を講じてもらうということが考えられると思っております。

一番下の参考のところで、どういう体制整備が必要になっているかといいますと、例えば2つ目のポチ、調査対象者、すなわちヒアリングをする相手方ですけれども、そこでインサイダー取引をしないようなことを確約させる。3つ目のポチですが、調査担当者、これは調査を行った発行体側、あるいは証券会社側の人、それから、調査対象者ということで調査を受けた相手方、これらの名前をはっきり記録に残しておくということでございます。

6ページをごらんください。ここからはプレ・ヒアリング以外のものについて何点か、セーフ・ハーバー・ルール化の検討をしております。1つ目が届出の一定期間前の情報発信ということでございます。これもカラーのフローチャートをごらんいただきますと、白黒になりますけれども、左側のほうに届出書提出の1カ月前とありまして、その下のほうに点線の矢印で水色、ノンディールロードショーいうのが書かれております。これを念頭に置いたセーフ・ハーバー・ルールでございます。

これは1つ目の丸にございますように、一般に企業による情報発信は募集・売出しに言及しないものであれば、届出書の提出間際のものでない限り、有価証券の取得・買付けを促進するとは想定しにくいということもございます。ただ、2つ目の丸にありますように、実際には、萎縮効果が出ているという指摘がございますので、最後のこの丸のところ、「検討」というところにありますが、勧誘は特定の有価証券に対する投資者の関心を高めるというのが要件と考えられておりますが、情報発信が行われてしばらくたつと、その関心が沈静化するということで、勧誘としての効果はもはや失われているというふうに考えることができるかと整理をしております。

7ページになりますけれども、現行法でも実は同様の趣旨に沿うような規定がございます。これは勧誘そのものについての人数の数え方の規定でございますが、注のところにありますように、募集に伴う取得勧誘のときには6カ月以内のものだけをカウントする。売出しに伴う売付け勧誘の場合は1カ月以内だけのものを勧誘人員としてカウントするということで、こういう規定が現にあるということでございます。矢印のところがありますけれども、これにつきましては下の参考、米国においてはとありますけれども、この例を参考にして考えたらどうかということでございます。

次のページ、8ページになりますが、この3つは、いずれも米国の例とほぼパラレルな内容のものを3つ提案させていただいております。1つ目の丸は、有価証券の募集・売出しに言及しないということであります。これはいわゆるセーフ・ハーバー・ルールとして勧誘に該当しない行為を明確化しようということでございますので、有価証券の募集・売出しに言及するようなものは除くということが適切でないかということです。

2つ目の丸ですけれども、届出書提出の1カ月以上前に行われたものはいいというふうにしてはどうか。これは注のところにございますように、勧誘そのものについての整理を見ますと、取得勧誘では6カ月以上前、売付け勧誘等の場合には1カ月以上前、まあ、6カ月と1カ月、2つのパターンがあるわけですが、これは勧誘をすること自体についての考え方でございます。今回、やろうとしていることは、勧誘に該当しない、有価証券の募集・売出しに言及しないような情報発信ですので、6カ月、1カ月、この2つを見たときに1カ月前という基準で十分ではないかと考えております。3つ目の丸は、当然のことでございますが、この1カ月以内に再度情報が発信されないようにするということでございます。

9ページをごらんいただきますと、今度は金商法、あるいは取引所の規則に基づく開示でございます。こういう場合につきましても、1つ目の丸にございますように実務上は、例えば募集・売出しの直前に業績予想の情報修正を出すということをためらったり、あるいはタイミングをちょっと迷うというような実例があるというお話もございますので、これについては矢印のところにございますように、こういった開示はこれ自体、流通市場における投資者などへの適切な情報提供のために行われるものでございます。ですから、その合理的な範囲を超えた積極的、能動的な行為を伴わない限り、基本的には該当しないと整理できるかと考えております。

10ページでございます。発行者の広報活動ということでございます。これにつきましても、いろいろと1つ目の丸に書いてございますように若干萎縮効果が見られるというようなことでございます。これについては矢印にございますが、通常の業務の過程で行われる以下のような情報発信は勧誘に該当しない、そういうセーフ・ハーバー・ルールを明らかにしてはどうかと考えております。1つ目の丸は発行者が従前から通常の業務の過程で行っている企業情報の定期的な発信、これを通常の頻度で従前どおり行うこと。これは定期的なIRミーティングなどを念頭に置いております。2つ目の丸ですが、新製品・新サービスの発表。3つ目の丸ですが、これは記者やアナリスト、投資者などから問い合わせがあった場合の回答でございます。

11ページ、これで最後でございますが、最後の類型としまして引受証券会社が出しますアナリスト・レポートでございます。丸のところにございますが、これにつきましても上場企業の発行・売出しに係る引受けを予定している、引受けが内定している証券会社の場合、そのアナリストが、その増資予定企業のアナリスト・レポートを、例えば届出書提出の間際に公表するということについては、わりと危惧があるということでございます。これは具体的には今度どこどこの引受主幹事を獲得したのだけれども、これが来々週あたりに増資を行うということなので、当面、アナリスト・レポートを出すのは控えておいてくれないかと、恐らくこういうやりとりがあるという話ではないかと想像しております。しかし、2つ目の丸に書いてございますが、アナリスト・レポート自体は、有益なものでございます。

それから、3つ目の丸にありますように、こういうことをやっておりますと、これは誤解されないようにしておられるということだと思いますが、引受証券会社のアナリストさんが発行前に突然このレポートの発信をしなくなるということで、かえって市場でいろいろな思惑を招くこともあり得るかなと思います。このためということで、矢印に書かせていただいておりますが、基本的に引受証券会社の中でチャイニーズ・ウォールを設置していただく。具体的にはレポートを書くアナリストさんに知らせない。チャイニーズ・ウォールの内側に入れるのではなく外に出すということを前提といたしまして、通常どおりのアナリスト・レポートを通常どおり発表していただく。こういう場合には勧誘の取扱いには当たらないと整理してよいのではないかと考えております。

12ページ、13ページは米国とEUの例でございまして、説明を割愛させていただきます。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、皆様方からどの点についてでもご質問、ご意見をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。

岡野委員、どうぞ。

○岡野委員

私、リサーチの経験があるというか、その経験からアナリスト・レポートの点について少しだけコメントさせていただきたいのですが、アナリスト・レポートは投資者側の立場に立って書かれる限り非常に有益だと思いますし、それを活用するというのは合理的だと思います。そういう意味でアナリスト・レポートについては、こういう扱いにしていただくというのは非常に前向きだなとまず考えております。通常の頻度という部分なのですが、ここのところをどういうふうに決めるかというのは考慮事項かと思います。一応、アメリカなどでは半年というのを置いて、ほぼ普通にカバレッジしている場合には四半期に一回レポートを出すというのが通常の実務的なあり方だと思いますが、どうしても1回飛んでしまうような場合もありますので、半年に一回は出ている、直近、半年以内に出ているというような条件でカバレッジされているということとして頂くのが適切かなと思っております。

あと、ひょっとするとこの趣旨とは離れるかもしれないのですが、証券会社内でのチャイニーズ・ウォールということも非常に大事だと思いますが、もう一つ、アナリスト・レポートの内容をピッチング的なものにならないようにするという観点から言うと、発行会社側からのリタリエーションの問題というのがありまして、これはよく私、アメリカにいたときに、向こうでリサーチマネジメント会議をやると必ず出てきた問題なのですが、今でも全然直っていないと思います。発行会社によるリタリエーション的な行為があると、アナリストの筆致というのはどうしても曲がる可能性があるというふうには言わざるを得ないともいます。今日のこの課題とは直接関係ありませんが、アナリスト・レポートのそういう質を高めて維持するという観点に立つと、そういうところも今後の考慮事項かなと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、お隣の上柳委員、それからあと順番に行きます。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

質問というか確認です。5ページのプレ・ヒアリングの場合に業等内閣府令の規定について、「インサイダー取引を行わないこと及び他に情報を提供しないことを約させ」というところが大変大事だと思うのですが、これはどういうふうにして履行確保されるのかということと、それから、この「他に」というのは、調査対象者個人がいらっしゃる会社の中で隣の席の人にも言ってもいけないということなのか、その範囲というか、要するにこのチャイニーズ・ウォールの決め方ということなのか何か従来の規制なり今後の考え方がありましたら教えていただきたい。

もう一つ、自明なのかもわかりませんが、8ページの届出書提出1カ月内に再度発信されないための合理的な措置というのは、どういうふうに規制をかけるのでしょうか。その2点です。

○神田座長

ありがとうございました。

事務局からお願いします。

○油布企業開示課長

直ちにお答えできるものと、ちょっと調べてみないとわからないものがございますが、1つはこの「インサイダー取引を行わないことを約させ」というのは、基本的に書面で確認がされていると理解しております。お答えが難しいのは、同じ社内で隣のテーブルの人については、恐らく合理的な判断があるのだろうと思いますが、実務がどうなっているかというのはもう少し調べてみたいと思っております。

それから、8ページの1カ月以内に再度発信がされないための合理的な措置がとられているような場合についてはということで、これは実際、ガイドラインにどう書くかということになろうかと思いますが、お話のように一定のそういう体制がとられている場合のノンディールロードショーは大丈夫だというふうに書くということは考えられるのではないかと思っております。そこはいろいろと検討してみたいと思います。

○神田座長

ありがとうございます。

静委員、どうぞ。

○静委員

ありがとうございます。資料9ページについて意見を申し上げます。

資料9ページでは、私ども取引所の規則に基づく開示、これは適時開示を指していると認識しておりますが、こちらについては基本的には勧誘に該当しないという整理がなされています。資料にございますとおり、適時開示は勧誘ではなく、公正な価格形成のための投資家への情報提供が目的でございますので、この整理に賛同したいと思います。その上で1点お願いをさせていただきます。

よく実務で問題となりますのは、夕方に発表する予定の公募増資が、朝の朝刊ですっぱ抜かれるケースです。このとき、取引所としては、その真偽についてのコメントを求めますが、上場会社からは、「ここで肯定的なコメントを出すと事前勧誘規制に抵触する」と言われておりまして、これが今や定説になっています。その結果何が起きているかというと、以前に金融審議会の他の会議でも話題になりましたが、どちらともつかないコメントを一度出しておいて、夕方になって「今決めました」といって正式発表するということでございます。このまま放置しておきますと、公正な価格形成が望めませんので、これを是正するために、取引所では上場会社との間で色々と話をしております。

今後は、事実であれば肯定的なコメントを出していただくようにしたいと思っておりますけれども、そのためには、この制度改正が行われた場合にこれまでの定説が変わるということを広く知ってもらわないと、上場会社に納得していただけないのではないかということを懸念しております。

今回の資料では、業績の上方修正のように自発的に開示する例が挙げられており、スクープ報道によりコメントの開示を求められるケースが挙げられていないので、なかなかそこまでイメージするのが難しいのではないかと思います。ガイドラインなどを作成されるときは、そういったことがはっきりと分かるように、できるだけの工夫をお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

永沢委員、平田委員、それから、山下委員の順で、永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

ありがとうございます。素人の意見になりますが、まず第1ですが、11ページのところですけれども、アナリスト・レポートのところに関してですが、そもそもチャイニーズ・ウォールが完全であるというふうな前提でおりましたので、引受部門からアナリストに伝えられているという事実を知って、まだそうなのかというのが正直な感想ですし、残念に思います。やはりまずチャイニーズ・ウォールを完全なものにすることが大前提であるということをお願いしたいと思いました。この機会に併せて質問させていただきますが、アナリスト・レポートのチェックというのはどこかがなさっているのでしょうか。例えば金融庁等の当局で、こういうことをチェックされているのでしょうか。アナリストの行動というのはどのようにチェックされているのでしょうか。市場が評価しているだけなのかと思いまして少し気になりました。

それから、今日初めに議論したことと関係しますが、プレ・ヒアリングに関して一言申し上げたいと思います。日本では個人の投資家が増資の7割を引き受けているということですが、私は先ほど熟慮期間のことをマーケティング期間と考えるのが適当なのではないかという意見を申しましたが、別名はめ込み期間というふうにも解しておりまして、このプレ・ヒアリングが不十分なばかりに、この強引なはめ込みを個人に対して行うということが行われ、その結果、後で市場の大きな株の下げにつながっているということもあるのではないでしょうか。個人の投資家をつくることはもちろん重要ですけれども、適切なプレ・ヒアリングをきちんと行っていただき、プレ・ヒアリングで機関投資家の間である程度のロットがさばけるというめどがつけられるということの方が日本の市場のためにはいいのではないかと感じております。乱暴な意見かもしれませんが。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

どうぞ。

○油布企業開示課長

不十分な知識で間違った回答となりました場合、後日、訂正させていただきますが、アナリスト・レポートの中身は、事前予防的な対応というよりも、それが法律上の構成要件を満たせば例えば株価操縦などに該当する場合はきっとあり得るという意味では、法令の規制というのはあるのだとは理解しております。

○神田座長

ありがとうございます。

平田委員、どうぞ。

○平田委員

今回、このような形で届出前勧誘に該当しない行為についての整理をしていただくことに関しまして非常にありがたく思っております。ライツ・オファリングの実施に際し、プレ・ヒアリングができない点が大きな問題点として指摘されている一方で、証券会社が証券情報あるいは法人関係情報をもって機関投資家に対してヒアリングをすることに関しては、勧誘との関係で、切っては切り離せない問題がありますので、日本証券業協会の自主規制ルールにより自粛することとしています。今回の提案により、この辺が非常に明確になってきますので、今後色々とルールづくりもしやすくなると考えております。

また、先ほど上柳委員からご指摘いただきましたインサイダー取引を行わないこと、単に情報を提供しないことに関しましても、細かい部分については、日本証券業協会の自主規制ルールで明確化させていただきたいと思っております。この辺については既に海外で行うプレ・ヒアリングに関しては守秘義務契約を結び、隣の人に言ってはいけないといったルールがあるわけではないですが、法人として他と取引をしない、あるいは法人として情報管理するという形での契約になっていますので、それは相手方の内部管理次第ということはありますけれども、この辺についてもきちんとした形で具体的な議論を今後進められるのではないかと思っております。

それからもう一つ、永沢委員からご指摘いただいたアナリスト・レポートの件ですけれども、必ずしもチャイニーズ・ウォールがなかったから、そのアナリストに情報が伝達されていたということではなくて、アナリストから意見を聞かなければいけないケースがあって法人関係情報が伝達されていたというケースもありますので、基本的にはチャイニーズ・ウォールがしっかりしているけれども、アナリストから意見を聞くためにアナリストに情報が流れるというケースは、現在もあります。この辺はご理解をいただければと思います。

ただ、当然ながらチャイニーズ・ウォールが設けられている以上、その情報を受けたアナリストはこれを外に漏らしていけないことになりますから、チャイニーズ・ウォールの中に入る人として管理がされることになると思います。そういう意味では、インに巻き込まれたアナリストは引き続きレポートを書けないことは、もしかしたら出てくるのかもしれませんが、逆に言うと、今回の提案が実現すれば、アナリストから情報を聞き、その引受判断をしていくという実務を、証券界としても整理できるのではないかと思っております。公募増資インサイダー事件で問題となったブラックアウトに関して、これで解消されるのではないかと思っておりますので、ありがたいと考えております。

○神田座長

ありがとうございました。

山下委員、どうぞ。

○山下委員

私も平田委員と大体同様の意見でございますけれども、基本的には非常にプレ・ヒアリングについて、あるいはアナリスト・レポートについての点については、事務局案に賛成でございます。そもそもプレ・ヒアリングについては、私どもユーロマーケットでやらせていただいておりますけれども、基本的には難しい案件といいますか、規模が大きいですとか、あるいは環境が非常に厳しいとか、そういう場合にどうしても必要となるという事実がございます。

ただ、一般的に発行金額もそれなりですし、発行体についても全く問題ない、あるいは環境も問題ないということであれば、それは逆にプレ・ヒアリングの必要はなくて、そういうことをやる必要もないというのが現状でございます。ですから、そこについてはきちっとした枠組みの中でどういうふうにやっていくかというのは、今後いろいろ議論していく中でやっていくことであろうと思っております。

アナリスト・レポートについてなのですけれども、これは先ほどからお話が出ていますように、きちっとしたチャイニーズ・ウォールの管理というのを業者も含めていろいろな形できちっとした管理をするという前提で、こうした形でやっていくほうがよりマーケットにとってはプラスになると思っておりますので、ここの点についても非常に賛成でございます。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

お隣の前川委員、それから、吉野委員、お願いします。

○前川委員

ありがとうございます。年々IR活動が大変充実してくる一方で、長年届出前勧誘の禁止とどう整合させていくかというのが我々にとっても大変長い間の実務家の間で苦労してきたところでございまして、この勧誘に該当しない行為、いわゆるセーフ・ハーバーを整理していただくといったことについては極めて画期的なことであり、これは市場全体、つまり、投資家サイド、これは個人投資家を含む投資家サイドにも、発行体サイドにも、そしてさらにはばかりながら私ども業者にとっても非常にありがたいことであり、有益なことだということで賛成いたします。

念には念をということで、はばかりながら申し上げますと、委員の皆様よりアナリストのレポートの扱いについてご意見が出ているのですが、私も一言、通常の頻度という言葉が出てきますが、この通常の頻度の中身ということになりますが、例えばレーティング変更はどうなのだとか、あるいは非常にアグレッシブな目標株価の変更みたいなものをどう扱っていくか。こういったものをどう考えていくかということについては、さらに実務家の問題意識を事務局のサイドで汲み取っていただいて、その制度設計に生かしていただくといった観点もぜひお願いしたいということを一言付言しておきます。よろしくお願いします。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

一定の前提条件は付きながらも、ガイドラインで具体的なアイディアというか、案を示したということでありますので、そのタイミングですとか、IRを含めた発行体の実務的な躊躇をかなり払拭できるという観点で歓迎したいと思っております。よろしくお願いいたします。

○神田座長

どうもありがとうございました。

武井委員、どうぞ。

○武井委員

この事前勧誘規制の見直しは規制改革としてまさに画期的な内容だと思いますので、ぜひとも実現していただきたいと思います。事前勧誘規制は長年難しい問題で、特に勧誘規制がなぜ置かれているのか、IT化が進んだ今の時代ではますますわからなくなってきているので、規制の趣旨・正当性がよくわからないからますます何が「勧誘」に該当するのかもよくわからない状況になっています。ただ近時のコンプラ強化の動きの中で、日本の現場では、勧誘規制を過度に気にした対応をとらざるをえない例が依然として多く、海外に比すると滑稽に見えるおかしい行動制約が現場では生じています。今回の勧誘規制の見直しは是非とも進めていただきたいと思います。

その上で二点コメントがございます。第一に、5ページのプレ・ヒアリングのところで、「適格機関投資家、特定投資家、大株主」と列挙されていて大株主でない事業会社が対象相手先として列挙されておりませんが、事業会社と第三者割当を行う際に支障が無いことを確認しておきたいと思います。第三者割当については数年前に勧誘規制に関して一定の規律の見直しが行われていろいろな問題が解消されましたが、そもそも第三者割当になぜ勧誘規制が必要なのかの合理性自体に依然として疑問が残っているところですので、事業会社と行う第三者割当に事前勧誘規制が障害にならないことを確認しておきたいというのが一点目です。

二点目はより総論的なお話で、さきほど資料1の待機期間の箇所で出てきたWKSIの際に言いかけた点です。アメリカではWKSIに該当する場合には事前勧誘規制に服していないわけで、そこまで日本は今回踏み切らないと言うご説明が資料1の13ページにございました。こちらの説明を読んで私もなるほどと思ったのですが、ただこの資料3の5ページに書いてあるような条件、たとえば届出書提出前に当該情報が対象者以外の者に伝達されないための適切な措置が講じられていること等の条件をつけてもなお、WKSIに関しては事前勧誘規制を緩和できないのか。事前に証券情報を渡せないのか、プレ・ヒアリングを超えて渡せないのかという点に関して、いかがでしょうかというコメントです。

個人投資家保護は確かに重要でそれに伴った規律はどうしても残るのだと思いますが、WKSIに同じように該当するレベルの大手の上場会社で日本の企業とアメリカ企業との資金調達を比較して、先ほど申し上げたとおり勧誘概念が曖昧なままであることの弊害を解消するため、WKSIに該当する大手企業、マスコミやアナリストが十分取り上げていて個人投資家を含めて十分情報アクセスが確保されている企業については、全面的に事前勧誘規制を排除して頂けると、まさに画期的な規律見直しに至るかと思います。今回の提案内容でも大変素晴らしいのですが、敢えて、WKSIであることを切り口にした勧誘規制緩和がどんな条件を付けてもだめなのかを、ちょこっとお考えいただけましたらありがたいということです。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。お気遣いいただいてちょうど時間となっております。まだ若干時間がありますので、ぜひご発言がある方はご発言ください。重要なテーマだと思いますので。よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。3つ目のテーマも非常に大きなテーマでありますけれども、基本的には事務局のご提案の線での方向で進んでよろしいということではないかと受けとめております。本日いただきましたご意見、ご指摘を踏まえてさらに検討をさせていただきたいと思います。

それで、いつものことで大変恐縮ですけれども、さらにお気づきの点など、いろいろおありかと思います。追加でのご意見、ご要望、ご質問等がございましたら、ぜひ事務局にメール等でお知らせいただきたいと思います。それで、次回でございますけれども、次回は2つのテーマを今のところ予定しております。1つは大量保有報告制度の見直し、もう一つが流通市場における虚偽記載等に係る賠償責任、この2つについてのご議論をお願いする予定でございます。

最後に事務局からの連絡等、お願いいたします。

○油布企業開示課長

次回のワーキング・グループの日程でございます。後日、事務局から正式にご案内申し上げますが、少し時間があきますが、次回は11月20日、水曜日の14時からとさせていただきたいと考えております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課・企業開示課(内線2638、3665)

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