金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第10回)議事録

  • 1.日時:

    平成25年12月12日(木曜日)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。

ただいまから、新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの第10回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきましてまことにありがとうございます。

早速でございますが、議事に移らせていただきます。本日の議事は、お手元の議事次第にございますように、このワーキング・グループの報告、報告書と言ってもいいかもしれませんが、その素案を事務局で用意していただきましたので、その説明を事務局からしていただきまして、委員の皆様方にご議論をお願いしたいと思います。この素案につきましては、一昨日だと思いますけれども、メンバーの皆様方にはあらかじめお送りさせていただいたところでございます。

本日の進め方ですけれども、この報告書の案を4つのパートに分けて、区切りながら説明をしていただいてご議論をお願いできればと思います。具体的には、まず最初に、このお手元の報告(案)の「はじめに」と第1章、それから、次に第2章と第3章、それから第4章、最後に「おわりに」ということでやってみたいと思います。

それでは、早速ですが、お手元の報告(案)の「はじめに」と第1章の部分につきまして、事務局からのご説明をお願いいたします。

○中澤市場法制管理官

それでは、説明させていただきます。市場法制管理官の中澤でございます。

まず「はじめに」と第1章でございますが、事前に配付させていただいておりまして、お目通しいただいたということを前提に概略をご説明させていただこうと思います。まず、おめくりいただきまして1ページ、「はじめに」というところでございますが、ここにつきましては、今回の諮問に至った経緯について概略を書かせていただいているところでございます。最初に日米における開業率の差があるということ、その後、ベンチャーキャピタルにおける年間投資額においても日米の相当の差があるということ、それを踏まえて今回の諮問に至ったという流れを書かせていただいているところでございます。

次に、第1章の2ページに行きまして、まず、第1章の最初のところでクラウドファンディングについての記載をさせていただいておるところでございます。2ページの1以下のクラウドファンディングのところですが、ここにつきましては、事実関係の説明になっているところでございます。1のクラウドファンディングの最初の段落のところにつきましては、クラウドファンディングにはいろいろなタイプがあるという話を書かせていただいております。その後、投資型につきまして我が国の法規制上の扱いがどうなっているのかということを2つ目の段落で書かせていただいております。3つ目の段落のところにおいては、米国を初めとする諸外国の動きを書かせていただいているところでございまして、3ページに行きまして、3ページの3つ目の段落の「なお」以下のところでございますが、ここで今回の投資型クラウドファンディングの制度整備に当たっての2つの視点について記載をさせていただいているところでございます。一つは、リスクマネーの供給促進という観点から、できるだけ仲介者にとっては参入が容易であり、かつ、発行者にとって負担が少ない制度設計にすることが重要であるという点でございます。それから、もう一つは、「一方で」の後でございますが、詐欺的な行為に悪用され、ひいては投資型クラウドファンディング全体に対する信頼感が失墜することのないよう、投資者保護のための必要な措置を講じることも重要な課題であるということを書かせていただいております。

続きまして、(1)の「仲介者の参入要件の緩和」のところでございますが、ここは先ほど言った2つの視点の前半のところでございます。できるだけ仲介者にとって参入が容易であるという制度にするという観点から、1人当たりの投資額、あるいは発行総額の上限を設けるとともに、クラウドファンディング業務を専業とすることを条件とするなど、限定的な範囲で特例を設けるということを記載させていただいているところでございます。株式につきましては、特例第一種金融商品取引業者、それからファンド持分の場合については、特例第二種金融商品取引業者で位置づけると。それぞれ財産規制等を緩和するということが考えられると記載させていただいております。

「なお」以下につきましては、非上場株式の募集、私募の取扱いを原則として禁止している日本証券業協会さんの自主規制規則の緩和の記述をさせていただいているところでございます。

続きまして(2)の「投資者保護のための必要な措置」でございますが、繰り返しになりますが、詐欺的な行為に悪用されることのないよう制度的な工夫ということが必要という観点から、2つ目の段落でございますが、発行者に対するデューデリジェンス及びインターネットを通じた適切な情報提供等のための体制整備、それからインターネットを通じた発行者や仲介者自身に関する情報の提供を取扱業者に義務づけるという記述をさせていただいております。

それから、その後、二種業者につきましては、契約締結前交付書面等の重複が生じる観点から、そこの負担軽減の記述をさせていただいているところでございます。

続きまして(3)でございますが、自主規制機関の話でございます。最初の段落の後段でございますが、当局による規制監督にのみ依拠するのではなく、自主規制機関による適切な自主規制機能の発揮を組み合わせることが重要ということを書かせていただいております。

5ページに行きまして、この観点から各協会におきまして自主規制規則の整備に関する検討が進められることが期待されるという点を記載させていただいております。

その次の段落は二種業協会への加入率が低率にとどまっているという事実関係の記載でございまして、その後の「このため」のところにおきまして、加入していない二種業者に関して自主規制機関による自主規制を考慮した社内規則を整備することや、当該社内規則の遵守を確保するための体制を整備することを義務づけるなど、加入促進をするための規制の整備をすることが適当であるということを書かせていただいた上で、二種業協会の体制強化についてもあわせて図っていくことが必要であるというふうにさせていただいているところでございます。

以上がクラウドファンディングでございまして、続きまして「非上場株式の取引・換金のための枠組み」ということでございます。まず最初の段落につきましては、今あるグリーンシート銘柄の説明でございます。その次の段落につきましては、グリーンシート銘柄制度が近年、利用企業数が減少して、売買も低迷している状況にあるという事実関係を書いておきまして、その後でその要因について上場企業と大差のない負担であるインサイダー取引規制と、それに伴う適時開示義務、それから上場企業に準じた開示義務が課されているということが指摘されているという点を書かせていただいております。

その後の「一方で」の段落につきましては、地域に根ざした企業などの非上場株式については、一定の取引ニーズ・換金ニーズが存在していますが、こういうニーズに的確に応えられていないという事情がございますので、その次の4つ目の段落で、こうした換金ニーズに応える場としての新たな取引制度を構築することが望まれるというふうに記載させていただいております。

その際、新たな非上場株式の取引制度については、市場のような高度な流通性を持たせない仕組みを設けるということで、高度の流通性を付与することに伴って必要となる開示義務等の発行者に対する負担を極力軽減することが適当であるというふうに書かせていただいているところでございます。

(1)のところは新たな非上場株式の取引制度の概要でございます。グリーンシート銘柄と同様、自主規制機関である日本証券業協会の自主規制規則に基づく制度として創設しまして、投資勧誘を行える範囲を銘柄ごとに組成・管理する「投資グループ」のメンバーに限定するということで、一定の取引ニーズ・換金ニーズに応えられる程度の流通性にとどめるという制度設計を書かせていただいているところでございます。

次の段落につきましては、メンバーとして想定される投資者層の話と、それから流通性を一定程度にとどめることを担保するという観点から、「投資グループ」の加入に当たっては投資意向を有する投資者から第一種金融商品取引業者への自己申告を基本とすること、それから、新たな非上場株式の取引制度の特性やリスクについて、第一種金融商品取引業者が投資者の納得・了承を得るといった仕組みを設けるということが適当ではないかということを書かせていただいているところでございます。

続きまして7ページに移りまして、7ページから8ページにかけましては、新たな非上場株式の取引制度の各規制の適用関係の説明をさせていただいているところです。(2)につきましてはインサイダー取引規制でございまして、上の段落につきましては、インサイダー取引規制をかける基本的な考え方を記載させていただいておりまして、下の段落におきまして今回、新たに設けられる非上場株式の取引制度の流通性を見て考えてみると、あくまで非上場株式の一定の取引・換金ニーズに応える場として設計されるものであって、一般の投資者が広く参加するものではなく、取引が頻繁に行われることを想定されないということで、適用対象外とすることではどうかということでございます。

(3)の開示義務につきましても、最初の段落につきましては現行の制度の説明でございます。その後、後段につきましては、これも繰り返しになりますけれども、今度新たに設けられる制度では、流通性が限定された形で設計されるということにかんがみますと、現行のグリーンシート銘柄制度ほどの開示義務を課す必要はないということではないかということを記載させていただいているところでございます。

続きまして3ですが、これは「保険子会社ベンチャーキャピタルによるベンチャー企業への投資促進」ということで、前回ご議論いただいた点でございます。結論だけ、一番最後のところですが、リードベンチャーキャピタルとして出資を行っている場合には、出資先が中小企業であるか否かにかかわらず、上場までの間に限り、追加出資に応じることができるよう、特例の要件を緩和することが適当ではないかということを書かせていただいてございます。

その後、4からですけれども、ちょっときょうはここで皆さんにご議論いただきたいことがございまして、あわせて配付させていただいている「ベンチャー投資を巡る環境についての有識者の意見」という、この紙と対照させながらご説明をさせていただきたいと思います。

この横の紙につきましては、これまでのワーキング・グループの場で各委員から、あるいはヒアリングをさせていただいた方々からのご意見の中から抜粋したもの。それ以外に事務局のほうで内外のベンチャーキャピタルさん、あるいは有識者の方から、このベンチャー投資を巡る環境についてのご意見を拝聴したものをまとめたものでございます。皆さんに本音ベースで語ってもらうということを目的としましたので、誰がどのような発言をしたかということはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、このうち、本文のほうの4の「ベンチャー企業に対する人材面からのサポート」という点につきましては、この横の紙の3ページのところでございますが、「起業家を支援する関係者」という題目でいろいろな意見をいただいておりまして、アイデアや技術があっても、シーズの事業化をサポートする人材がなかなかいないとか、あるいは3つ目のバーでございますが、ベンチャー起業を育てるためには創業後の早い段階でトップクラスの専門家が支援する方式をとることが必要ではないかと。これは初回に早稲田大学の長谷川先生が言っていたコメントを持ってきたものでございますが、このような話がございましたし、その後、ベンチャー企業におけるCFO人材の不足は否めず、CFOを育てていく仕組みを考えるべきといった意見も出させていたところでございます。

そういうことを踏まえまして、報告書の4の「ベンチャー企業に対する人材面からのサポート」を書かせていただいているところでございます。この中では、第6回のワーキング・グループだったと思いますけれども、新日本監査法人のほうからもプレゼンテーションがございましたが、そういう取り組みが進んでいることは非常に歓迎すべきことであり、こうした取り組みのさらなる進展が期待されるということでまとめさせていただいております。

今日、この第1章のところで皆さんにご議論いただきたいのは、やはり新規・成長企業への資金供給をメーンで担うのはベンチャーキャピタルではないかと思われるのですが、そのベンチャーキャピタルについて事務局が各有識者からヒアリングした中でどんな意見があったのかということが4ページ、5ページ、6ページのあたりに書かせていただいているところでございます。いろいろなご意見がありまして、ベンチャーキャピタルとしての人材に関して言いますれば、日本のベンチャーキャピタルの多くは親会社からの出向者で構成されて、数年で異動するためノウハウが蓄積していない。あるいは、ベンチャーキャピタルの評価軸が定まっていないので、皆さん資金調達に苦労しているというような声がございました。

それから、ハンズオン型VCと書かせていただきましたが、最初のところで、アメリカのベンチャーキャピタルはシードのステージよりも若干進んだステージに入ってきた企業を手助けする機能を有していますけれども、日本のこれまでのベンチャーキャピタルにはそこまでの機能はないというようなご指摘もございましたし、その下には、ベンチャーキャピタルにはそもそも技術の用途を探して駆けずり回るような泥臭い仕事が求められて、技術に対する知識や目利き能力も必要でありますけれども、日本の金融機関系ベンチャーキャピタルは経営に深くコミットしない「小口分散型」が主流であるといった意見もございました。

その他方で、徐々にハンズオン型の独立系ベンチャーキャピタルも増えているし、既存のベンチャーキャピタルの中にも目利きの観点で製造業と連携して工夫をしているところもあるといった意見もあったところでございます。

5ページに行きまして、慣行という形でまとめさせていただきましたが、このワーキング・グループでも複数の委員からご指摘があったかと思いますけれども、ここで主に書かせていただいているものは、ベンチャーキャピタルの契約条項の中で、出資先企業が上場に至らない等うまくいかなかった場合に経営者による株式の買い戻し条項というのが盛り込まれていて、ベンチャー企業の経営者が多大なリスクを背負わされている実態が存在していると。他方で、もうそういうものはないんだと、市場から抹殺されているという意見もございましたし、あってもうまくいかない経営者の買い取り価格は二束三文なので、それほど負担にはなっていないといった意見もあったところでございます。

それから6ページに行きまして出口論ということでございますが、ベンチャー企業支援の出口が日本の場合はIPOに偏重しているのではないかといった意見が根強くございます。一番上のバーに書かせていただいておりますけれども、米国でもIPOの評価は高いのですが、日本ほど非常に高いものではないと。M&Aも含めて多様なExitの選択肢が確保されているということが重要であるといったご指摘は第1回のワーキング・グループでヒアリングさせていただいた長谷川教授からもご指摘があった点でございます。

下のほうに行きまして、Exitの方法としてM&Aをもっと推進すべきだと。それから、M&Aを促進するためには、日本にある「Not Invented Here」あるいは「自前主義」といったM&Aに消極的な企業文化が存在するので、ここを改善しなければいけないという意見もございました。

その下は、経営上の文化みたいなものがあって、なかなか難しいということを別の切り口で言っておられる方もいたということでございます。

それから、4つ目でございますが、売り手のほうにも問題があって、売り手のベンチャー企業のほうのビジネスモデルの設計も甘いので、売り手と買い手のバリュエーションが合わない、認識が合わないといったこともよくあるというようなご意見もあったところでございます。

本日、皆さんにご議論いただきたいのは、新規・成長企業の資金供給の仲介者であるベンチャーキャピタルのあり方について若干の記述を報告書に盛り込みたいということでございまして、この観点からいろいろご議論をいただければ幸いだと思っているところでございます。

1章までにつきましては以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、今ご説明いただきました部分について、すなわち「はじめに」と第1章について、それから最後にご指摘のありました、参考資料で言うといろいろな方のご意見を集めた4ページから6ページに触れられていることをベースに、ベンチャーキャピタルについての記述を私どもの報告書に盛り込む場合に何かご意見があればぜひいただきたいということでございますので、それらの部分についてご質問、ご意見をどなたからでも、どの点についてでもご自由にお出しいただければありがたく思います。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

報告書の記述について2点意見を申し上げたいのですが、一つが、3ページのクラウドファンディングの仲介者に関する記述のところですが、「仲介者が『クラウドファンディング業務』を専業とすることを条件とする」というふうに、結構断定的に書かれているんですけれども、例えば第二種業者として登録を受けている者が、第一種の特例を受けるとか、あるいは投資助言業務の登録を受けている者が第一種あるいは第二種の特例を受けるというようなケースも考えられるのではないかと思うのですけれども、そういった場合にも専業を要求するというのはちょっと過剰ではないかという感じがしまして、特に投資助言代理業なんかは、そもそも兼業規制がないようになっているわけで、なぜこれをやるときだけ専業義務になるのかというのは非常にわかりにくいと思うので、ただ、例えばほんとうに金融と全く関係ない人たちがこれを兼業で気安くやるというのもちょっと問題だというふうには思うので、例えば「仲介者が金融商品取引業の登録を受けていない者である場合には」とかいうようなふうにするべきではないかと思います。

それから、もう一つは、7ページの「新たな非上場株式取引制度へのインサイダー取引規制の適用関係」の記述のところでございますが、趣旨はこれで全く結構だと思うのですけれども、どこかに「一般的な不公正取引禁止規制は当然適用されるのだが」という記述をやっぱり入れていただきたいなと思いまして、そうしないと何かインサイダー取引やり放題なのかみたいな誤解を生むのではないかという気がしますので、その点ちょっとご検討ください。

○神田座長

どうもありがとうございました。

事務局から何かありますでしょうか。

○中澤市場法制管理官

まず最初の点の専業のところですけれども、委員ご指摘のように、ちょっときつく書き過ぎたところもあるので、少し工夫をさせてください。

それから、第2点のところは確かにご指摘のとおりですので、修文を考えさせていただきます。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、永沢委員、平田委員の順で、永沢委員からどうぞ。

○永沢委員

ありがとうございます。

今、大崎さんが言われた点は私も気になりました。3ページのところですけれども、専業とさせてしまってほんとうにうまくやっていけるのか気になったところでございますので、ご検討いただきたいと思います。それから、その前の部分の、投資者保護の観点からという文言がありますけれども、素朴な疑問でございますが、1人当たりの投資額を抑えるということは、投資者保護というよりも、むしろ消費者保護ではないかなと思いました。被害が発生することを前提として、投資した人が生活に困ることのないようにとの配慮、後見的な配慮のように思いまして、果たして投資者保護という表現でいいのかどうか、ちょっと引っかかりました。

それから、実は私、事前に本日申し上げる意見を用意してきておりまして、事務局から受けた説明とずれる部分もありますが、議事録に残していただきたいと思っておりますので、読ませていただきたいと思っております。

まず、総論的な意見ですが、全体として、資金の欲し手、発行者のための規制緩和という印象が否めないという点を指摘させていただきたいと思います。もちろんその点がこのワーキング・グループに課された宿題であることは十認識しておりますけれども、賢い投資家、真の投資家は信頼ができないものにはお金を出してこないと思います。やはり発行してもそれを受ける投資家がいなければ、結局は資金調達はうまくいかないわけですから、投資家から信頼される市場や仕組みをつくっていくという姿勢が必要というか、取り組みが必要であるということを、終わりの部分で結構ですからぜひ入れていただきたいと思います。

また、序論のリスクマネーの供給が不十分であることが我が国の経済の再成長を阻んでいるという指摘については、全くそのとおりだと思うんですけれども、過去に「貯蓄から投資へ」という言葉に踊らされて痛い目に遭ったと思っている個人も多くおりまして、「またか」という印象や感想を持たれる方も少なくないのではなかろうかと思っております。報告書においてクラウドファンディングは一般の個人を対象としているということを書いているわけですけれども、一般の個人に資金のリスクマネーの出し手としての役割を過度に期待し過ぎていると読めてしまうことがないように、十分な配慮をお願いしたいと思っております。

本来、リスクマネーの供給者として一番役割を期待されるべきなのは、本日も事務局から追加説明のありましたベンチャーキャピタルであり、また、資金も豊富でリテラシーも高く、何よりも投資期間が非常に長い機関投資家なのだと思っております。前回、保険会社の子会社のベンチャー投資に関する規制緩和について事務局からご提案がありましたが、やはりこうした王道の見直しを進めつつ、それを補完する形でクラウドファンディングのような個人からの応援のお金を集めるという仕組みを試験的につくっていくことに賛成というのが、このワーキング・グループに出席された方々の大方のご意見であったと思います。

続いて、各論についてですが、先ほどクラウドファンディングについては、3ページの部分、大崎委員のご指摘と同意見であるということを申しましたが、一つ気になっていることをお話しさせていただきたいと思います。席上配付させていただきましたのは昨日の朝日新聞の記事です。朝日新聞だけではないのですが、このような取り上げられ方が多いようで気になっております。例えばこの記事の中で「未公開株を売買」という文言がありますが、このワーキング・グループではポータルファンディングの場で投資家が売買するようなことは想定していなかったと私は認識しておりますが、いかがでしょうか。

私がここで申し上げたいのは、読み手、特に一般消費者にとって都合のよいところ、惹かれるようなところが強調して伝えられて、読み手である一般消費者はもっと都合よく解釈する傾向があるということです。この記事を見て、未公開株の売買はインターネットで解禁されるというふうに解釈してしまう人も出かねないわけで、そうしたところに悪いことを考える人が入り込んでくるわけです。詐欺的な行為を防ぐためには、発行者や仲介者の規制も必要ですが、それだけではなくてやはり投資家側の理解が不可欠です。そのためにも金融のリテラシーを上げることが課題となってくるわけですが、あわせて、マスコミやファイナンシャルプランナーのような方々に適切な情報提供や注意喚起を行っていくことも不可欠ではないでしょうか。

それから、今回のワーキング・グループでは、クラウドファンディングや、5ページからの非上場株式の取引・換金の仕組みについては、投資家間での売買や株式の流通ということを原則想定しないことを前提として、その代わりに情報開示などの規制の緩和というものを認めてはどうかという議論を行ってきたと理解しております。そうすると、投資家が負うリスクは、創業間もないから失敗して全部なくなってしまう可能性があるというようなリスクだけではなくて、投資した後に欲しい情報が必ずしも入手できないかもしれないリスクだとか、換金しようとしてもできないリスクの問題も大きいわけで、そういうことの注意喚起も必要であるということも、可能ならば、報告書でぜひ記載していただきたいと考えております。

最後になりますが、実は今週月曜日に日本証券業協会様と第二種金商業協会様のご協力をいただいてクラウドファンディングの自主勉強会を開催いたしまして、さまざまな方にご参加いただき、大変貴重な意見をいただきましたので、最後にお時間があるようでしたら紹介させていただきたいと思っております。

長くなりますので、とりあえずここで終わりにさせていただきたいと思います。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

事務局のほうからよろしゅうございますか。

それでは、平田委員、どうぞ。

○平田委員

何点かございます。まず1点目として、先ほど大崎委員から話がありましたクラウドファンディング業務を専業とすることの条件とすることに関し、この業務を既に金商業の登録を受けている業者が行う場合の取扱いについては、私も全く同じ意見でございます。恐らく、既存の証券会社はなかなかクラウドファンディング業務には参入しにくい分野であると考えられますので、新たな業者が参入してくるということが考えられますが、まさにこのクラウドファンディング業務だけを行うとした場合に、ほんとうにビジネスとして成り立つのかどうか。発行総額1億円未満の有価証券の募集の取扱いについて、例えば手数料を5%しか取らないとしたときに、何件取り扱えばペイできるのか。また、発行会社についてデューデリジェンスも行わなければならず、インターネットを通じた情報提供等を行うためシステムも適切に構築・管理しなければならないとすると、採算性の観点からは難しい部分があると思いますので、もう少し範囲が広くてもよいのではないかと思います。

2点目として、一方で、やはり特例一種業となりますので、この業務の範囲においては、一種業者と同じ業規制をかけるべきでないかと思います。デューデリジェンスをする発行会社の情報を取得・保有するということであれば、例えば、適切な法人関係情報の管理をしなければいけないのは当然に必要になりますし、既存の一種業者に対する一連の業規制が、ある程度、特例一種業者が行う募集の取扱いに係る業務に対しても課されるべきではないかと考えます。

3点目として、これまで本ワーキングにおいて私から再三、取扱いの明確化をお願いしてきました、特例一種業者が経営破たん等をした場合における、いわゆるセーフティーネットの問題や、特例一種業者に対して、顧客の有価証券や金銭の保管等をさせるのかどうかについては、今回の報告書案には何も記載されておりませんので、今回、報告書に記載されなくとも、何らかの形で、引き続きご議論いただきたいと思います。

4点目として、報告書案5ページの二種業協会の加入に係る部分で、二種業者が自主規制機関に加入していない場合には、その業者に対して、自主規制機関による自主規制を考慮した社内規制を整備させることなどとされております。これは、前回の本ワーキングにおいてご議論いただいたように、元々2つの案があって、同5ページの下に記載されている注4を見ると、恐らく第2案の方を記載していると考えられますが、本文だけ読んでいると第1案の方を記載していると読めてしまうと思います。例えば、一種業者や、投資運用業者に対しては、既にこのような規制は導入されておりますので、業登録・協会への加入の際に、報告書案に記載の社内規則の整備等が必要であるという、第2案であることを明確化してほしいと考えております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、どうぞ、安達委員。

○安達委員

ありがとうございます。

本委員会におきまして、ベンチャーキャピタルという言葉が非常に多く、頻繁に出まして、業界の一員として大変うれしく思っております。先ほど事務局からご説明がありました参考資料、「ベンチャー投資を巡る環境についての有識者の意見」ということで、有識者の方々の本音がいろいろと出ております。ある意味で我々にとっては非常に耳の痛い課題も幾つかご指摘いただいておりますが、それに応える形で私も本音をしゃべりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

まず、確かにここに書いてあることは全部おっしゃるとおりだと思います。事実として真摯に受けとめて、我々も引き続き改善していきたく、さらにベンチャー起業家、またはステークホルダーの方々の信頼を高めるために努力していきたいと思っております。

その上で、私も十数年間、このベンチャーキャピタル業界で仕事をしておりますので、もう少し掘り下げて、どうしてこうなっているか、どうすればいいかということに対して、私なりの意見をいくつか申し上げたいと思います。

まず1番目ですけれども、確かに日本のベンチャーキャピタルは親会社を持つ子会社が非常に多いことは事実です。ところが、この数年間、特に2006年、2007年以降ですか、比較的規模は小さいものの、独立系のVCがかなり増えてきました。起業家との信頼関係も徐々に構築されつつあります。特に彼らのインキュベーション機能は非常に高度なものを持っています。起業家と同じ目線で会社を創るときから一体となって経営を考えています。まだまだ規模は小さいものの、一定の成果が出ているというふうに私は認識しております。従いまして、従来型といいますか、もう少しわかりやすく言いますと、金融型のベンチャーキャピタルだけを捉えて、ベンチャーキャピタル全てということではないということはご理解して頂きたいと思います。

加えまして、先ほど業界慣行ということで、買い戻し条項の指摘がありました。確かに大きな問題ではございます。ただ、一方で、この五、六年、これは米国型ですけれども、優先株が非常に普及しており、経済産業省のご指導もいただきまして、かなり優先株の使用頻度が高まってきました。詳しくデータを持っておりませんが、私の肌感覚ではもう既に50%以上、過半を超えていると思います。従いまして、優先株による出資においてはこういうことは一切起こっておりません。

どなたかの有識者のご意見もありましたけれども、やはりこういうことをやっているベンチャーキャピタルはいずれにせよ淘汰されるということははっきりしていると思います。もちろん自然淘汰を待つだけが能ではありません。我々、ベンチャーキャピタル協会としましても、頻繁に勉強会等を開き、業界に対して積極的に働きかけをしていくということを継続していきたいと思っております。

それから3番目ですけれども、そもそもなぜ日本で親会社を持つ子会社のベンチャーキャピタルが多いかということです。これは非常にシンプルです。独立系としてベンチャーキャピタルをやりたい方はいっぱいいらっしゃいます。問題は資金調達できないからです。日本の社会において、ブランド志向が強く、親会社の名前があると信用がある。従いまして比較的、といっても結構難しいのですけれども、資金調達がしやすいと言えます。一方、個人名または独立した方がやっても、まず日本で調達できないということで、これは鶏と卵の議論になるかもしれませんが、なかなか独立系のベンチャーキャピタルが育たないという事情がございます。もちろん、先ほど言いましたとおり、この数年間、かなり増えてきていました。ただ、資金調達の問題から、運用規模がまだまだ非常に小さいということで、さらに継続的な努力が必要かと思っております。

それから、これは非常に乱暴な議論なので、果たして議事録に載せていただくのがいいのかどうかわかりませんけれども、一つの例で申し上げますと、金融系子会社のベンチャーキャピタルというのは親会社本体の機能、役割との関係からその運用は難しいと思っております。例えば4年ぐらいのサイクルで、きのうまで融資をやっていた方がきょうから出資をし、エクイティをやって、またあしたから融資に戻るわけですから、キャピタリストの育成にはつながりません。何らかの形で日本のベンチャーキャピタルのパフォーマンスといいますか、信頼関係構築という意味では、やはりそこに関して更なる考察と解決策が必要ではないかと私は思っております。

それから、先ほど日本で非常に資金調達しづらいということを申し上げましたけれども、今回成立しました産業競争力強化法があります。私も1年間ずっと運動してまいりましたが、この法律にはベンチャーキャピタルを通じたベンチャー投資に関しての一定の条件が整えば税制優遇を受けられるという措置がございます。私どもは評価しているんですけれども、ただ、一方で、適用範囲が非常に狭められておりまして、実際には使い勝手が悪いと思っております。やはり日本でどうしてリスクマネーが少ないかという本質をもう少し掘り下げていただいて、その本質的課題を解決する方法をぜひ皆さん方に改めてご理解いただきたいというのが私の意見でございます。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、原田委員、どうぞ。

○原田委員

2点申し上げます。

まず、報告書(案)の8ページから9ページにかけまして、「ベンチャー企業に対する人材面からのサポート」ということになっておりますが、ここでは先ほどのご説明のときに、ベンチャーキャピタルのあり方について議論したい、とおっしゃったかと思います。そのあり方について議論するということで参考資料が上がってきているかと思うんですが、そうしますと、この8ページから9ページにかけての2段落なんですが、ここをもう少し膨らませようという意図があると勝手に思っております。参考資料のほうを拝見すると、現状認識のようなものでしかありませんで、今回ここまでの何回かにわたるワーキングの中でも、ベンチャーキャピタル、エンジェルに関する制度改正についての話というのはほぼございませんでしたので、今日になって唐突に2段落出てきているような印象がぬぐえないのです。先ほど永沢委員がおっしゃったように、ベンチャーキャピタルの役割というのは日本においても重要であろうと思っておりますし、今、安達委員がおっしゃったように、構造的な問題というのがやはり幾つもあるように思います。

例えば、先ほど資金調達のお話がございましたけれども、日本の機関投資家はなぜか日本のベンチャーキャピタルではなく、海外のベンチャーキャピタルに投資をしてしまうというような問題ですとか、もっと日本のベンチャーキャピタルに資金を集める工夫が何かできないかとか、いろいろ議論できるところは残っているのではないかと思います。この8ページ、9ページのところに一言入れていただくとしたら、ベンチャーキャピタルに関する議論は今後も継続して行っていく、ですとか、もう少し今後の取り組みに関連するようなことが入ればいいなというふうに思っております。

2点目としまして、参考資料の4ページにありますハンズオン型ですとか、いろいろご紹介していただいているところに関してです。ベンチャーキャピタルのこの分野に関しては、エンジェルも含めて、アメリカとの対比で見ると、かなり規模が違います。ベンチャーキャピタルでは何十倍、エンジェルに至っては1,000倍以上も規模の観点からすれば違いますので、アメリカはかなり先を行っているように思います。なので、例えば、EUの先進国でベンチャーキャピタルやベンチャーファンドがどうなっているかとか、そういったことも少しどこかで、もうあまり時間もないのかもしれませんが、比較のようなものがあればイメージしやすいかなと思いました。

以上になります。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、山下委員、どうぞ。

○山下委員

先ほどから話が出ている点の繰り返しになりますけれども、やはり専業についてはこういう形で参入障壁になりうるようなものをわざわざ設ける必要はないんじゃないかというふうに思います。もう少し広く捉えていただきたいというふうに思っております。

それから、もう一つ、先ほど平田委員からもお話が出ましたけれども、決済等、あるいは株式実務等、たとえば配当があったらどうするんだとか、そこら辺のところを確実にするために、これは投資家保護とも関係してくると思いますので、仲介者の義務にするのか、あるいは何らかの形できちんとした決済、株式事務なりの制度を使えということでやっていくのかどうか、そこら辺のところは何らかの形で書き込んでいただければというふうに思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

田邊委員、どうぞ。

○田邊委員

クラウドファンディングについて、結論に全く異存ありません。ただ、前回も申し上げましたが、インターネット経由を対象に緩和がなされたわけですが、ここでの、クラウドファンディング業務の定義について確認しておきたい。結果的に少額投資の範囲内においては、インターネット経由を対象に緩和がされて、インターネット経由ではないチャネルではできないことが、今回、インターネット経由ではできるようになりました。既存の第二種金商業者を除いてですが。そこが緩和されたのは、インターネット経由であるからむしろ安全であるというか、何かが担保されているから、インターネット経由のときだけが緩和されたということですね。それについて、インターネット経由だと、例えば契約のトレーサビリティーがあるとか、そういうことを指してというか、考慮に入れて緩和されたんだと理解しているので、インターネット業務と一言で文章では書かれているところの定義が何なのか。例えば情報提供だけインターネットでやって、契約は電話でやっちゃったというのはだめなわけですね。インターネット経由だということで緩和したのなら、インターネット業務の定義というものを明確にしておく必要が出てくると思います。そこのご確認と要望です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

確認の部分があったかと思いますが。

○中澤市場法制管理官

田邊委員のご指摘のとおりでありまして、今の書きぶりでもそういうニュアンスを出しているつもりではあるんですけれども、「インターネットを通じて行われる少額」っていうところを入れているので、ちょっとすみません、もう少し明確にできるかどうかちょっと考えさせていただきたいと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。武井委員。

○武井委員

すみません、細かい点で一点だけ。報告書の修文には至らない話としてですが、弁護士についての言及が出ていましたので。御存じのとおり、司法制度改革のあと、ロースクール卒業生を含めていろいろ就職難が起きている状況です。そこで、ベンチャーキャピタリストのほうに行くルート、マッチングを行っていく体制をつくっていけないものかと思いました。学生側にそうした需要・ニーズがあると言うことの情報が行っていないことが一つの問題なので、ベンチャーキャピタリストさんと、ロースクール、会計士さんの学校もそうかもしれませんけれども、そういう卵の方々とのマッチングをうまくすれば案外人は見つかるのではないかと思いました。それだけです。すみません。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。前川委員、どうぞ。

○前川委員

ベンチャーキャピタルの議論がありましたので、少しだけ補足させていただきますと、安達委員がおっしゃったとおりだと私も思います。あえて簡略化して申し上げますと、いわゆるいいベンチャーキャピタルとして、米国で範となるようなベンチャーキャピタルが少ないというのは事実だと思います。それと、そこに向かって資金のルートが細くて小さいというのも事実だと思います。また我々のような引受けを業としている証券会社もIPO至上主義といったものがやはりあるのも事実だと思います。IPOで言うと、日米では大体同じぐらいでございまして、10社に対して1.5社ぐらいが新規上場してくると思います。日本はその1.5社と同じぐらいがM&AでExitするのですが、アメリカは平均的に見ていくと、IPOとM&Aの比率は1対4ぐらいでM&Aのほうが多いということになっていると思います。つまり、ショーウインドウのようになってたくさんのExitを開発していくという意味で言うと、証券会社の役割は大きいのだろうと思います。

それでもなお、やはりベンチャーキャピタルの数が少なくて資金量がないと何が起きるかというと、早く上場できるところの投資がやはり優先されてしまう。3億とか5億とかの投資よりも、実はやらなくてはいけないのは100億とか500億とかを投資して、5,000億とか1兆で回収する産業をつくらないといけないと思います。言ってみると産業創成ということになりますが、この視点はやはり重要だと思います。ですから、ないと言って諦めてはいけなくて、実は良質なベンチャーキャピタルに人とお金を集めていくという施策はやはり国として重要になると思います。これは、例えばGPIFの運用を担えるベンチャーキャピタルにお金がどう入ればいいかということが論点の一つだと思います。一つは、お金が入って、いい人材が入ってくると、日本にはシーズがあるわけですから、高い期待収益が生まれてくるわけであります。そこにお金をどう入れるかという論点は、今まで議論していただいたとおり、機関投資家のルート、GPIFの運用でベンチャーキャピタルに投資できるようなルートを開発することによって、生保、信託、年金といったお金が入ってくる仕組みをまずつくることが必要であると思います。

もう一つ、今、これはベンチャーキャピタルの皆さんと日々お話をしていると、上場企業の持つ流動性預金は300兆円を超える。大企業には人もいる、それらが次のシーズの開発としてコーポレートベンチャーキャピタルを始めてきています。こんなことは今までなかったといいます。ここのルートを増やしていく。損金の繰り延べ等、いろいろなことで今、策が出てきています。更にもう一つのルートでお願いしたいのは個人でありまして、ここは本ワーキングの趣旨ではないのですが、アメリカで起きているのは、要するに500億、1,000億の上場で獲得したオーナーの金が大学のルート、つまりエンダウメントに寄附が行くルートや、ベンチャーキャピタリストになる人もいますし、またベンチャーキャピタルに回っていくルートが非常に太いということです。ここにはやっぱり税の恩典が入っているということでありまして、個人投資家がベンチャーキャピタルに出資すると、例えば所得控除が入るような、こういう税の仕組みを入れている。つまり、機関投資家のルートと、あるいは法人のルートと事業会社のルートと個人のルートとを開発して太くしていく。そこにお金を集め、投資をしていく。または大学から生まれてくるシーズでExitできたものがまたさらに大学に戻ってシーズ開発に向かうというようなルートをつくっていくということが重要なのではなかろうかというふうに意見を言わせてもらいたいと思います。よろしくお願いします。

○神田座長

どうも大変ありがとうございました。

どうぞ、安達委員。

○安達委員

ありがとうございます。先ほどちょっと1つ言い忘れましたので、ここで申し上げます。

ご準備いただきました第4項「ベンチャー企業に対する人材面からのサポート」の第1段落の一番下、9ページの一番上のところですけれども、確かにおっしゃるとおり、「創業した早い段階から、トップクラスの専門家が支援する方式が採られることが望ましい」、このとおりです。しかしながら、実際の現場で起業家の意見はどうかといいますと、確かに専門家のアドバイス、ご意見は非常にありがたいとは思います。ただ、得てして技術的な専門家、またはある一つの分野の方は、市場との対話がない場のアドバイスが非常に多いことも事実です。従いまして、専門家のアドバイスが実際にはうまくそれが機能しないということが多くあります。実際に事業を経験した方のアドバイスが起業家には有効だと思います。もう少し現場感覚を持つ事業家という目線を加えてもらうことが大切であることを強く指摘おきます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

大変多くのご指摘をいただきまして、まだ第2章以下もあるものですから、そろそろ先に進めさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。「はじめに」と第1章につきましては、皆様方からいただいたご指摘を踏まえて、報告書の次のバージョンを用意させていただきたいと思います。そして、ベンチャーキャピタルにつきましては、本日皆様方からいただきましたご指摘をうまく生かす形で何らかの書き込みができないかということを事務局でご検討いただくということにしてはいかがかと思います。

それでは、また後で時間があるかもしれませんので、ほかになおご発言おありかもしれませんが、まだ第2章以下をやっておりませんので、続きまして報告(案)の第2章と第3章につきまして事務局からのご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○油布企業開示課長

それでは、お手元9ページからになります。第2章からでございまして、ここから6ページほどにわたりましてまずご説明申し上げます。第2章でございますが、ここは柱書きのところに1行目、2行目あたりに書いておりますけれども、新規上場が視野に入った新規・成長企業の障壁をできるだけ低くするということでございます。

1といたしまして、負担の軽減がまず書いてございまして、ここの第2パラグラフのところでは、「一方で」ということでございます。ここで新規上場を躊躇する要因としていろいろ指摘があるということで、「このため、投資者保護に支障をきたさない範囲内で、新規上場に伴う企業の負担の軽減を図る」ということでございます。

(1)が「新規上場時の負担の軽減」でございます。新規上場を行う際には有価証券届出書を提出するということになりますけれども、現行、これが過去5年分の財務諸表を添付するということになっております。この点につきまして、10ページの上のほうのパラグラフですが、マル1マル2マル3というような背景を踏まえまして、「過去2事業年度分の財務諸表のみの記載とする」ということでございます。

(2)は新規上場後といいますか、新規上場間もない事業の負担の軽減ということでございまして、これは内部統制報告書にかかる監査証明の話でございます。このパラグラフの中では、3パラグラフのところに、「上場企業の場合」というパラグラフがございますが、これの後のほうに、「新規上場企業であっても内部統制報告書の提出自体を免除することは適当ではない」ということでございまして、その上で、「一方で、内部統制報告書の監査義務について検討したところ」ということでございます。これにつきましては11ページでございますけれども、ここで申し上げると3つ目のパラグラフになると思います。「これらを踏まえると」と書いてございますが、「新規上場後、例えば3年間について、内部統制報告書に係る監査義務を免除することが適当である」と。

その次のパラグラフの「ただし」のところに書いてございますのは、ただし、新規上場企業といいましても、その規模などに照らしまして影響が大きいと考えられるような企業については、この特別な義務の免除は適用しないということを書いてございます。

そして、2に移りまして、これは新規上場の際の最低株主数基準の引下げでございます。ここの中の第2パラグラフの最後の結びのところになりますが、各金融商品取引所の状況に応じまして、円滑な取引に支障が生じない範囲で、より低い水準に下げる余地があると考えられるということであります。

続きまして、12ページの第3章のところをご説明させていただきます。こちら「上場企業の資金調達の円滑化」という章になっておりまして、柱書きを見ていただきますと、新規成長企業に対するリスクマネーの供給だけではなくて、上場後の企業についても資本市場から円滑に資金調達できるようにということが重要であると書いてございます。

大きく3点ございます。まず1点目でございますが、1のところにありますが、これはいわゆる法定待機期間の撤廃によります資金調達期間の短縮ということでございます。1のところの最初のパラグラフにございますように、現行の金商法のもとでは、投資者に取得していただくためには、有価証券届出書を提出した後7日間の待機期間が法定で必要となっております。これは、投資者のための熟慮期間とされておりまして、これは2つに分類して考えてみますと、一つが企業情報、もう一つが証券情報と、こういう2つの情報を分析するための熟慮期間ということだろうということでございます。このうち、まず企業情報につきましては、これは今の1のところの第2パラグラフの最後のほうになりますが、企業情報の検討に要する時間のみに注目した場合には、「特に周知性の高い企業」については、待機期間を撤廃する特例を設けても、投資者保護上、大きな問題は生じないのではないかということでございます。

次のパラグラフ、「一方で、『証券情報』については」というところです。この証券情報については、同じように考えることができないわけでございまして、別途の考慮が必要ということで、どうするかということが13ページの一番上のパラグラフに書かせていただいております。特に周知性の高い企業が行います募集・売出しのうち、対象有価証券の取得・買付けの判断が比較的容易に行うことができると言えるような場合に限定するということでございまして、具体的にはまず、対象有価証券の種類を普通株式や投資証券など、仕組みが単純かつ標準的なものに限るということ。

それから、もう1点目が「かつ」以降のところに書いてございますが、増資による希薄化率が20%以下である場合などに限ると。こういう条件を満たす場合に限りまして、待機期間を撤廃することが適当であると考えられるというふうに記載させていただいております。

2は「『届出前勧誘』に該当しない行為の明確化」ということでございます。ここの最初のところに書いておりますが、有価証券届出書の提出前に有価証券の勧誘を開始すること、この届出前勧誘は禁止されておりまして、これ自体を解禁する趣旨ではございませんが、ただ、この禁止によりまして、本来必要でない萎縮効果であるとか躊躇が見られるということでございます。

このセクションの2つ目のパラグラフで、届出前勧誘の禁止措置が講じられている趣旨は、勧誘による販売圧力によって、不確実・不十分な情報に基づく投資判断を強いられる事態の防止にあるということでございます。こうした趣旨に照らしまして、その上で今から申し上げるような点については、その届出前勧誘の禁止の対象でないということについて改めてセーフ・ハーバー・ルールとして明確化することが適当というふうに考えております。

順次、ポツに沿って申し上げますが、1つ目のポツのところは、募集・売出しの是非を判断するために、事前に需要見込みなどを調査すること、いわゆる「プレ・ヒアリング」でございます。

次の2つ目のポツに書いてありますのは、1カ月以上前までという期間の前提を付しておりますけれども、いわゆるノン・ディール・ロードショーでございます。

3つ目が、法令や取引所規則など、制度に基づきます開示でございます。例えば、業績予想の上方修正をためらうというふうなお話もございましたので、この点も記載しております。

14ページの上のほうでございますが、ここに書いておりますのは、いわゆるIRミーティング、これは通常の頻度でやるということは問題ないということでございます。

2つ目のポツは、新製品・新サービスの発表など、通常の業務の過程で行われるものということでございます。

その下が、記者やアナリストさんなどからの問い合わせに応じて回答を行うこと。

そして、最後のポツのところは、引受証券会社のアナリストさんの話でございますが、チャイニーズ・ウォールが設置されているという場合において、従来どおりにアナリスト・レポートを発表するということでございます。こういったものはセーフ・ハーバー・ルールとして明確化するということを考えるということを記載してございます。

最後、3点目のところですが、これは発行登録制度に関するものでございます。訂正発行登録書の見直しとございます。発行登録制度のもとでは、いろいろな事情が生じますと訂正発行登録を出していただく必要がございます。ただ、その中には、例えば有価証券報告書が出ましたとか、四半期報告書が出ましたと、こういったものの場合にも訂正発行登録書を出していただく仕組みになっておりますが、これにつきましては2つ目のパラグラフのもとに「一定の条件の下で」というふうに下のほうに書かせていただいており、一定の条件については注の12に書かせていただいておりますけれども、あらかじめ出ることがわかっているものについては、その法定提出期限は最初から記載していただくということを条件といたしまして、実際にそれが出た都度、訂正発行登録書を出すことは要しないというふうに制度を改正してはどうかということを記載させていただいております。

以上であります。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、この第2章と第3章の報告(案)につきまして、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければと思います。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

3つほど。いずれもちょっと細かいことです。

最初は、私の意見じゃないんですが、報道とか、既に公開されている議事録なんかの情報に基づいて、今回の議論に関心を持たれた方からいただいた意見をご紹介させていただきたいのですが、ある大手のベンチャーキャピタルの割と幹部の方からのご意見なんですが、内部統制報告書に関して、有効性評価及び内部統制報告書の提出は引き続き義務づけ、監査義務だけを免除するというのは、現場の感覚としては全く規制緩和になっていないし、新規上場の負担を緩和することにはならないと。現実問題として、内部統制の有効性の評価にも、公認会計士に手伝ってもらわないとできないというのがある以上、監査義務だけ免除しても意味はほとんどないという意見を言っておられました。私はこれが正しい意見かどうかについては、特に判断は差し控えたいと思いますが、そういう意見があるということをご紹介しておきたいと思います。

それから、2つ目は、届出前勧誘に該当しない行為の明確化のところの記述の意味なんですけれども、待機期間を撤廃する場合には云々ということも書いてあるんですが、これは別に待機期間がないやつにだけこういうことを適用するとかいう趣旨ではなくて、そういうこともあるので、一般的に届出前勧誘禁止に該当しない行為を類型的に明確化しますという、こういう趣旨ですね。

それから3点目ですが、これはほとんど揚げ足取りなんですけど、セーフ・ハーバー・ルールっていう言葉なんですが、ちょっと私の記憶違いかもしれないですけれども、昔そんなような議論がいろいろ出たときに、日本ではセーフ・ハーバー・ルールっていうものを表立ってつくることはできないんじゃないかという指摘を受けたことがあって、セーフ・ハーバー・ルールって、結局ここに書かれているような行為に対しては、行われたとしても当局として違反摘発行為は行わないということをいわば確約するに近いようなことだと理解するんですね。ここに書かれていないような形態でも、違反しない行為類型はいろいろあり得るというようなことだと思うんですけど、そういう理解でよろしいのかどうか。また、それから、今後、物議をかもすようであれば「ガイドラインで明確化する」とか、何かそういう表現にしておいたほうが無難なのかなと思ったということでございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、どうぞ、岡野委員、お願いします。

○岡野委員

今の大崎委員の論点に続く部分なんですけれども、この届出前勧誘に該当しない行為の明確化ということで、これを明確化していただくことは非常にいいことだと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。この中で言われていることで、1段落目の終わりのほうですけれども、「有価証券届出書の提出前に投資者が増資企業に関する企業情報を受け取る機会をできるだけ確保しておくことが望ましい」と、こういう観点は非常に大事だと思いますので、この観点を徹底させる形で細かく規則というか、あるいはガイドラインというか、そういうものをつくっていただきたいなと思う次第でございます。

その上で、この中の今、挙げられておりますポツのところで言いますと、例えば2番なんですが、先ほど課長のほうから、ロードショーを想定していたことをちょっとおっしゃられたのですが、これだけ読みますと、企業が1カ月以上前に何らか情報発信を行うという行為ということなので、例えばある企業が増資を2カ月後に予定しているんだけれども、その企業の中期経営計画というものを出すとか、新規ビジネスの計画みたいなものを打ち出していくとか、そういうことが考えられると思うんですね。そうした場合に通常は、企業というのはそういうものを出して、プレスリリースするほか、自社のウェブサイトなりにプレゼンテーションマテリアルを載っけるというようなことを行うと思うんですが、じゃあ、それを増資1カ月の時期になったら削除しなければいけないのか、そういう事情は実務的には論点としてあると思います。例えば企業がそういうことをやりますと、当然アナリストもそれを受けて、通常カバレージしていないけれども、この企業が中期経営計画を出したので、これについてコメントのレポートを書こうかとか、そういうことが起きてくると思うんですね。アナリスト・レポートの場合にも発行当日にお配りになるほかに、大抵は検索できるリサーチレポートのデータベースに登録しておくというのが普通ですので、じゃあ、それを1カ月前になったら削除しなければいけないのかというと、これまたちょっと変なことになるので、やはり先ほど言ったような観点からすれば、情報があればあったほうがいいわけですから、それは余りにも近いところでピッチング的に作用するというのではよくないという趣旨で1カ月という期間を考えるのだとすれば、すでに発信した情報を掲げ続ける等の行為は許されるという方向で解釈していただけるようにしていただければありがたいと思っております。細かいことで恐縮です。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、田邊委員。

○田邊委員

細かいことで恐縮ですが、待機期間撤廃特例措置についてのところで、対象を「普通株式や投資証券(REIT等)」と、REITまで明快に書いていただいたというのは大変ありがたいことだと思いますが、その後に「など、仕組みが単純かつ標準的であり」という中で、通常の転換社債なんかはこの「など」に含まれるということなのかと理解していますが、いかがでしょうか。

○油布企業開示課長

そこはいろいろご意見があり得るところだと思います。これは、執筆した者の立場としては、標準的な商品と言ったときにはそこは含めてはおりません。

○神田座長

ほかにいかがでしょうか。山下委員、どうぞ。

○山下委員

セーフ・ハーバー・ルールのところなんでございますけれども、確かに大崎委員が申せられたように、セーフ・ハーバー・ルールという、アメリカなんかでやられているコンセプトだと思うんですけれども、これは確立するまでは相当時間がかかるものだと思います。ですから、ガイドラインできちんと出すのかどうか明確にしないと多少混乱するのではないかなというふうに思います。

特に、その中で、例えばチャイニーズ・ウォールですとか、アナリスト・レポートの公表について言及するということになれば、それはある程度はっきりした形でないと、非常に混乱することになると思います。ですから、そこについてはどういうものを考えているのかということをある程度明確にしていただければと思います。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございますでしょうか。それでは、先に進ませていただきます。時間に余裕があれば、後からお戻りいただいても結構ですので、それでは続きまして報告(案)の第4章につきまして事務局からご説明をお願いします。

○油布企業開示課長

それでは、報告書(案)の15ページから6ページちょっとにわたりまして一度にご説明申し上げます。

第4章につきましては「近年の金融資本市場の状況を踏まえたその他の制度整備」という表題でございますが、ここの中身は大きく2つで、1つ目は大量保有報告制度の見直し、2つ目が損害賠償責任に関する見直しでございます。

まず、大量保有報告制度の見直しについて、柱書きの3行目あたりからでございますが、平成2年の制度導入以降の他の制度における開示の充実や個人のプライバシー保護の意識の高まり、EDINETの整備といった、環境変化に必ずしも対処しきれていない部分もあるという認識のもとに、次のパラグラフでございますけれども、これらの状況を踏まえ、大量保有報告制度の趣旨には十分配意しつつ、大量保有報告書の提出者の負担軽減を図るための措置について検討を行ったということでございます。

以降、細かいものが6項目ほどございますが、まず(1)は、自己株式、いわゆる自社株の取得や処分に関するものでございます。この点については、自社の株式を取得、処分する場合にも、大量保有報告制度の対象となっておりますが、これを見直すということを記載させていただいております。

16ページの(2)でございますが、大量保有報告書の提出者や共同保有者が個人でいらっしゃる場合には、第2パラグラフの一番下において、住所における「番地」の記載、「生年月日」の記載を、公衆縦覧の対象から除外することが適当であると記載しております。当局のほうには従来どおり情報を提出していただきますが、公衆縦覧はしないということでございます。

(3)は短期大量譲渡報告制度に関するものでございます。大量保有報告書を1回提出した後、株券等の保有割合が増減すると変更報告書を提出する必要が生じます。このうち、保有割合が減少した場合で、その減り方が一定の基準に該当するような場合は、特に短期大量譲渡報告というものを行っていただくことになっております。その際には、最近60日間のすべての譲渡について、その譲渡の相手方や対価に関する事項を変更報告書に記載するという制度になっております。

この点につきましては、17ページをごらんいただきたいと思います。2つ目のパラグラフのところでございますが、短期大量譲渡の基準となる保有割合の減少は、実際に譲渡により減少した場合に限るというのが1点目の見直しでございます。あと、中ほどの「また、」以降に記載しておりますが、僅少な株券等を譲渡した相手方につきましては、日付ごと、かつ譲渡の相手方ごとに記載するという制度を改めるということを記載しております。

(4)は変更報告書の同時提出義務に関するものでございます。大量保有報告制度では、提出事由が生じた後、基本的に5営業日以内に報告書を提出していただくことになっておりますが、現行の制度では、特にその5営業日の前日までに、新たな提出事由が生じた場合には、第2パラグラフの「このため」というところに記載しておりますとおり、共同保有者の分も含めて株券等の保有状況を確認した上で、その翌日、すなわち当初の提出事由が発生してから5営業日後に新たな提出事由に係る変更報告書を同時提出しなければいけないという制度になっておりまして、これはいろいろな子会社等を含めて株券等を保有しておられる機関投資家においては、実務上の対応が事実上不可能であるというような事態に至っております。このため、かえって投資者の方から見たときに、提出された変更報告書の情報が5営業日前の情報なのか、それとも昨日の情報を反映したものなのかわからないということでございますので、ここは同時提出義務を廃止するということを記載しております。

(5)と(6)はお読みいただくということで説明を割愛させていただきます。

18ページは2つ目の大きなポイントの論点でございますが、「流通市場における虚偽記載等に係る賠償責任」ということでございます。18ページの(1)のところにございますように、まず現在、提出会社が負っております流通市場の投資家に対する損害賠償責任の見直しでございます。この点につきましては、18ページから19ページにわたって書いてございますけれども、現在の金商法では、いわゆる無過失責任ということで、故意、過失を問わないという、いわば例外的なケース、例外的な立法措置がとられております。この理由は、19ページの上にございますように、提出会社に対する民事訴訟による責任追及を容易とする、プライベートエンフォースメントを充実させるという政策的な意図があったということでございます。

19ページの2つ目のパラグラフですが、この点に関しましては、近年、課徴金制度の整備、それから内部統制体制構築の定着などによって、総体的にプライベートエンフォースメントを図る、そういう必要性は低下してきているということを考えますと、このパラグラフの半ばよりちょっと下のところに書いてございます、「本ワーキング・グループでは、当該無過失責任を過失責任に見直すことについては慎重な意見も出されたが、こうした点に鑑みれば、流通市場における提出会社の損害賠償責任については、現行制度の趣旨・目的を損なわない範囲において、一般原則どおり、過失責任とすることが適当」と記載させていただいております。

具体的に、その内容でございますが、「その際」という次のパラグラフです。損害賠償責任は過失責任といたしますけれども、提出会社の故意・過失の有無に関する立証責任については、投資者の訴訟負担が過大にならないよう、立証責任を転換し、提出会社が自己の無過失の立証責任を負うということが適当であると記載しております。過失について訴える側の投資者が立証する必要はないという、こういう大きな前提は、変更がないということになります。

その次のパラグラフ、「なお」というところでございますけれども、これは提出会社の過失、無過失をどこを起点に判断するかという点でございます。これはご議論いただきましたが、「この点については」というパラグラフに記載させていただいております。個々の事案ごとに相当程度異なり得るものであるということや、それから、他の法令において立法例を調べてみたわけでございますけれども、法人自身の不法行為責任につきまして、その故意・過失の判断対象となるべき者を具体的に例示している規定は見当たらないという状況でございます。こういうことにかんがみまして、現時点においては、立法政策上、法令上特段の明記は行わず、個別の事情に応じた妥当な解釈に委ねることとしておくという記載にさせていただいております。

20ページでございますが、引き続きの論点といたしまして、損害賠償の請求権者の拡大でございます。これは提出会社を相手取る場合でも、それから、役員等を相手取る場合でありましても、現行の金商法では粉飾期間に株式を流通市場で取得した取得者だけが使える規定が置かれているわけでございます。この点につきましては、「しかしながら」というところにございますが、処分者につきましても取得者と同様に虚偽記載等により損害を被り得るものと考えられる。それから「また」というところに書いてございますが、近時、MBOが増加しております。その際には株価を不当に引き下げるというインセンティブが働き得るということも考えられるということにかんがみまして、金商法上、虚偽記載等による損害賠償を請求できる者として、「取得者」に加え、「処分者」を追加することが適当と記載してございます。

最後、(3)でございますけれども、損害額の推定規定の拡大でございます。最初のパラグラフですが、現行の金商法のもとでは、今、取得者だけが対象になっておりますが、取得者が、提出会社に対して損害賠償を請求する場合の特別規定が置かれているわけでございます。その場合、損害額の推定規定があるということになってございます。

このため、損害賠償責任の見直しを行うに当たりましては、この推定規定を利用できる範囲を、今回新たに訴えを起こせる対象に追加いたします「処分者」が損害賠償を起こす場合にも規定を使えるようにするか、それから、今度は損害賠償の請求を受ける先が「提出会社以外の者」(役員等)である場合、こういう場合についてもこの推定規定を使えるようにするかという点についてご意見がございました。

この点につきましてはいろいろご意見がございまして、私どもでもいろいろと検討させていただきましたが、20ページから21ページ目にかけて記載させていただいております。この推定規定といいますのは、極めて強力な効果を有する例外的な規定でございまして、その対象を拡大することによるメリットとデメリットとをなお慎重に見極めること等が必要であるということで、したがいまして、この点については将来の課題として引き続き検討を行うことが適当であるというふうに記載させていただいております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、この4章の報告(案)につきまして、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければありがたく思います。いかがでしょうか。

大崎委員。

○大崎委員

私、この部分は揚げ足取りしかする気がなかったので、ちょっと最後に発言しようと思っていたら、どなたも発言しないので言っちゃいますけど、揚げ足取りです。

15ページの本文の5行目、「金融商品取引法上の義務が過大となりすぎていないか」、これは重複表現でありますので修正していただければと思います。

それで言うと、もう一つ、19ページの下から6段目の「特段の明記」っていうのも、ちょっと重複表現っぽい感じがするのでご検討いただければ。

いずれも揚げ足取りでございます。

○神田座長

ありがとうございました。

原田委員、どうぞ。

○原田委員

大崎委員に便乗させていただく形で、1つ、言葉の確認をさせていただきたいのです。16ページから17ページにかけてのところに、短期大量譲渡報告の記載がありまして、この制度については、短期大量譲渡については変更報告書を提出するということになっておりまして、大体、「短期大量譲渡」という言葉が書かれているのですけれども、1カ所だけ「短期譲渡報告」となっていまして、「大量」という言葉がありませんで、変更報告書というのが正式名称なので、ここに「大量」があってもなくても構わないのかもしれませんが、ちょっと確認という意味で申し上げます。

○油布企業開示課長

おっしゃるとおり、これは「大量」が抜けておりまして、「短期大量譲渡報告」です。

○神田座長

どうもありがとうございます。細かいところまで読んでいただきまして、大変ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございますでしょうか。それでは、先へ進ませていただきまして、最後にこの報告(案)の「おわりに」に当たる部分につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。

○中澤市場法制管理官

「おわりに」でございますが、特に説明することはないのですけれども、このワーキングで最初のほうにリブセンスの村上社長とかに来ていただきまして、やはり起業する人が少ないという話をいただいたとともに、起業するときにはそういう意識を持った人がたくさんいたほうがいいんじゃないかという話がございましたし、それから、慶應大学の川本先生からも、やっぱり起業に対するハードルが高いという実態があるというご示唆をいただいております。

それから、川本先生からは、3つ目の段落のところの、いわゆるエコシステムといった議論もございましたので、その辺の記述を加えさせていただいて、最後、まとめさせていただいているということでございます。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、今の「おわりに」の部分、それから、これまでの事務局からのご説明に関する報告(案)全体についてでも結構ですし、また、追加の点になるような事柄に関してでも結構でございます。皆様方からご質問、ご意見をご自由にお出しいただければと思います。どなたからでも。

前川委員、どうぞ。

○前川委員

それでは、少し戻りまして、油布課長のご説明がありましたところで、13ページ目に、届出前勧誘に該当しない、これはいわゆるセーフ・ハーバーのところの記載で細かいことですけれども、丸ポツが3つあるところの少し上に、「速やかに」という言葉が入っております。大体時期については「いつに」ということが本報告案にはないわけでありますが、「速やかに」というのは何か意思があるのでありましたら教えていただきたいと思っております。

○油布企業開示課長

すみません、これはいわゆる法律改正が要らない事項でございますので、そういう意味で「速やかに」と書いてございまして、具体的な時期まではちょっとまだはっきり見定めがついておりません。

○前川委員

実はそのことでございまして、大体、法律改正があって、こういうルールはパッケージとして来年の、例えば10月とかそういう時期に出てくるというのが一般的だと思うのですが、こういったリスクマネーを供給していく姿勢という観点で言うと、変えられるもの、速やかにできるものを次々とやっていただきたい。それが先に出てしまって、後で変更する法律との齟齬が出てはいけないと思うのですが、そういったものがないものについては、どんどん前倒しで行ってほしいと思います。

つまり何を申し上げたいかというと、今年は58社という新規上場企業が生まれたわけでありますが、来年は70社から80社とも見込まれております。今、実は現場で対応しているのは再来年に上場したいという会社さんの準備に入っているところでありまして、このようなワーキングの内容を新聞で見て、今後どうなってゆくのかなど、実は現場で大変多くの質問が出ております。そういったことが実はきっかけとなって、あるいは上場企業がどんどん生まれることによって、「上場に向けて私の会社も」ということが大事だと考えております。こういう論点で言うと、できることを前倒しでどんどんやっていくということを、例年とは少し違うかもしれないのですが、ぜひご検討いただけたらと思います。よろしくお願いします。

○神田座長

どうもありがとうございました。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

今の点に関してなんですけど、セーフ・ハーバー・ルールという意味を文字どおりに取るのであれば、これは現在でも違法でない行為類型を明確化するというだけですから、ここに書いてあることはもともと違法じゃないわけですよね。ですから、武井先生初め現場の弁護士の皆さんが、こういうことは違法ではないという法律意見書を出していただければ、もうきょうからでもできますので、ぜひそうしていただきたいと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

先ほど申し上げましたように、「おわりに」の部分については、起業される方々を支援することももちろんですけれども、資金を出す側に対する配慮というものも大変必要でございまして、それが両輪となってこなければお金は社会に回らないということで、ベンチャーの方々には、受託者責任とまでは言いませんけれども、やはり情報開示や、きちんと投資家に対してお返しをするという意識を持っていただきたいものだと思っておりまして、そこまで書いてほしいとは言いませんけれども、やはりその部分、両輪であるということはぜひ触れていただきたいなと感じております。もちろん起業家を育てるということに反対なわけではございません。

それから、少し時間があるようですので、先ほど申しました勉強会で出た意見を少しご紹介させていただきたいと思います。

実は、当会で配信しておりますメールマガジンで呼びかけまして、クラウドファンディングに関する自主勉強会をしました。自分たちと同じように、これでまた何かトラブルが発生するのではないかと心配しているような方だけが集まるような勉強会を想定していたのですが、口コミで少し広がりまして、全く想定していなかったような、自分たちからすれば反対側にいるような方々もご参加いただき、右から左までのメンバーがそろった会でございました。投資家の方々から、それから起業しようとしている人、それから、ポータルサイトの運営などに関心を持っている人も参加されていたように思いました。

そこでいただいた意見の一部をご紹介させていただきますが、まず、ベンチャーで立ち上げようとしている方からの意見ですけれども、株式型が新しく導入されるということですが、「5,000万円を集めるのに100人もの株主か」というふうに思ったとのこと。この仕組みを使って資金を調達するのは創業者。創業の段階で100人の株主というのは、株主の権利の制限があるとしても、やはり株主100人をお世話するというのは大変だというような、そういうニュアンスのことを言われました。

続いて、個人の投資家の方からは、匿名組合型が資金調達側からするとよさそうに思えるだろうが、投資家にとって大切なのは、やはり買ってからのモニタリングというのがきちんとできるのかどうかということ。これは非常に重要なところで、匿名組合というのは、乱暴な言い方をすれば、お金を営業者にあげてしまうという関係であって、投資家にとっては何の権利もないような関係であり、投資のスキームとしては自分としては踏み切れないものがある、それは投資としては致命的な問題だというご指摘をいただきました。

それから、仲介者であるポータルサイトの運営会社には自主規制機関に加入してもらわなければいけないのは当然だが、ただ、自主規制機関にお願いできるのは、仲介者への規制でしかなくて、やはり発行者に対しては自主規制は及ばないのではないかという問題が残り、別途手当が必要なのではないか、一般の個人を相手にするならばその部分の手当ても必要なのではないかというご指摘もありました。

それから、NPOバンクに関係しているという個人の方からですけれども、今回のクラウドファンディングのモデルになっているのはミュージックセキュリティーズさんだと思うが、ミュージックセキュリティーズさんの成功については、小松さんという個人のお人柄と、震災後に国民の間に広がった絆を大事にしようという動きが重なったという、非常に偶然が偶然に重なったことが大きいことが見過ごされている。あれは非常に稀有なケースであるにもかかわらず、それを標準型として制度設計されていくことには不安を感じているというご指摘がありました。

それから、否定的な意見ばかりではなくて、インターネットというのが安心して投資できるためには、投資家自身が発行者の情報がとれることが重要であり、投資家が事業者から直接見聞きする機会があることが必要という指摘がありました。「おらが町の何とかさんがやっているあれを支援しよう」とか、「沖縄にあるあのレストランを応援しよう」というような、そういう動きをクラウドファンディングで捉えていくことができれば、新しい展開が期待できるのではないかということでした。

また、その方は、クラウドファンディングから第2、第3のアップルやグーグルが出てくるということは期待しづらいが、世の中には、小さくてもいいから意義のあることをやろうとしている会社や個人もいるわけで、それを支援する仕組みとして位置づけていくことは非常によいのではないかというような意見が出ました。

勉強会ではその他にもいろいろな意見をいただきましたが、私が特に印象的に感じましたのは、資金の欲し手が望むものと、資金の出し手のニーズというのはなかなか合致しない、相反するところがあるということでございます。先ほども申し上げましたけれども、資金の欲し手の声ばかりを聞いているような印象を与えますと、やはり出てくるべきお金も出てこないのでないかというふうに思いますし、また、たとえ出てきたとしても、それは投資家とは言えないような人、自己責任を全うできない人のお金が出てくるわけで、それはそれで後日、大きな消費者問題というような形に発展しかねないのではないでしょうか。

以上、簡単ではございますが、報告させていただきたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、田邊委員。

○田邊委員

新たな非上場株式の取引制度で投資グループというのが今回定義されていますが、これは十分議論されて、私も理屈としては十分理解して賛同しているものです。ですから、これは意見というよりも感想ですけれども、そういうふうに論理的には出てきたのですが、この間も申し上げたかもしれませんが、グリーンシートをやめて今度これになるわけですね。それで換金性を担保するということですが、グループへの参加は、最後は自己申告であり、しかも、個社ごとに複数の投資グループがあるという話ですし、告知によってどういう人が集まるのか、イメージがまだ非常に持ちにくい。これがほんとうにグリーンシートにかわった普遍的な、長く続くシステムになるのか、そんな広くはなり得ないものの、ある程度対象を広くし、ほんの一部のオーナーの方だけが利用するシステムとならないようにという思いで皆さん考えておられるのだと思います。しかし、投資グループの中身がなかなかイメージができないし、これからの運用というか、細則をおつくりになることと、運用の面で慎重に、よく考えて育てていくべきところだろうと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

大体ご指摘はいただけたということでよろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございました。

それでは、まだ時間は若干あるのですけれども、大体皆様方からきょうお示しした報告(案)についてはご指摘をいただけたと思います。報告(案)の全体構想、おおむねのところについては基本的にはご賛同いただけていると思いますけれども、個々の点等につきまして、皆様方から多くのご指摘をいただきました。大変ありがとうございました。

本日皆様方からいただきましたご指摘を踏まえまして、事務局のほうで報告(案)の次のバージョンというのでしょうか、最終バージョンというのでしょうか、そういうものへ向けた検討を今後させていただきたいと思います。

それで、毎回申し上げさせていただいているので恐縮ですけれども、さらに皆様方、追加で何かお気づきの点がございましたら、事務局のほうまでお寄せいただけましたら大変ありがたく思います。

次回でございますけれども、本日いただきましたご議論を踏まえて、事務局において検討していただいた次のバージョンというか、報告(案)を皆様方にご提示をし、できればこのワーキング・グループにおける取りまとめをお願いしたいと思っておりますので、そういうようなことで進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

最後に事務局からご連絡事項等をお願いいたします。

○油布企業開示課長

次回のワーキング・グループの日程でございます。後日改めて事務局からもご案内申し上げますが、12月20日、金曜日の10時からとさせていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは以上をもちまして散会いたします。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課
(内線3665、3802)

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