金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第1回)

日時:平成19年1月30日(火)13時30分~14時30分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○三井市場課長
 それでは、時間になりましたので、我が国金融・資本市場に関するスタディグループの第1回会合を開催したいと思います。

まず、冒頭、カメラ撮りがございますので、いましばらくその旨ご了承頂ければと存じます。

スタディグループの開催に先立ちまして、お手元に配付させて頂いています資料のご確認を頂ければと存じます。

まず、資料1-1、これはスタディグループの設置要綱でございます。それから1-2は、そのメンバー名簿、それから1-3は議事規則、それから資料2、1から3までございます。後ほど私の方から、その資料2-1を使ってごく簡単にバックグラウンドの説明をさせて頂きますが、それらの資料でございます。

それから、発言されます方、マイクの調子が先ほどは悪うございまして大変恐縮でございました。できるだけマイクにお近づきになってご発言頂ければと思います。

○池尾座長
 それでは、ただいまより、我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第1回会合を開催いたします。

皆様、ご多忙中のところご参集頂きまして誠にありがとうございます。私は、お隣の堀内金融分科会長から当スタディグループの座長に指名されました慶應義塾大学の池尾と申します。よろしくお願いします。

初めに、当スタディグループについてご説明したいと思いますが、資料1-1という紙があったと思いますが、そこに趣旨が書かれております。「貯蓄から投資へ」の流れの中で、我が国金融・資本市場の国際金融センターとしての魅力を更に向上させていく観点から、法制度面に限らず、人材、専門サービス、インフラ等を含め幅広く検討を行うという、そういう目的で設置されたスタディグループであります。この趣旨をどう解釈するかというのもなかなかですが、それで、次にスタディグループにご参加頂くメンバーの皆様のご紹介をしたいというふうに思います。

お手元に名簿をお配りしておりますが、メンバーのご紹介を事務局より簡単にお願いいたしたいというふうに思います。

○三井市場課長
 総務企画局市場課長の三井でございます。それでは、メンバーの方々を紹介させて頂きとう存じます。

ポール・クオ様でございます。

小足一寿様です。

柴田拓美様でございます。

立岡登與次様でございます。

田中直毅様。

関哲夫様。

檀野博様。

根本直子様。

野村修也様。

露木繁夫様。

飛山康雄様。

藤原美喜子様。

淵田康之様。

平野信行様。

藤巻健史様。

矢野朝水様。

山澤光太郎様。

若松誠様。

なお、このほか、本日はご欠席ですけれども、翁百合様、木南敦様、島崎憲明様、増井喜一郎様、鈴木武様、江原伸好様、打越俊一様にもご参加頂くこととしております。

それから、本日は堀内会長、その他金融審議会委員の方々にもご参加頂いております。

なお、その事務局とオブザーバーにつきましては、時間の都合もございますので、お手元の配席表をもってかえさせて頂きたいと存じます。

○池尾座長
 そうしますと、その次に、当スタディグループの運営についてですが、まず当面の進め方につきましては、皆様のご参加頂ける状況等も勘案しなければなりませんので、原則として月2回程度のペースで開催させて頂くのが適当かというふうに考えております。やや2回はきついかもしれませんが、そういうふうに考えております。

それから、スタディグループという形でございますので、設置について特に期限等は定められておりませんし、それから、最終的に答申をというふうな形でまとめを行うという予定も今のところはございません。ただし、議論の内容につきましては、論点整理という形で随時まとめていければということで、何か期限を切って最終答申を出すというのではなくて、議論がまとまった段階で随時論点整理というような形でまとめていければというふうに考えております。このような形で議論を進めるということで、特にご異議ございませんでしょうか。

どうもありがとうございました。

それから、もう少し議事の進め方について幾つか確認して頂きたいことがございますので、その点については事務局の方からお願いしたいと思います。

○三井市場課長
 細かな点を若干確認させて頂きたいと存じます。

まず、このスタディグループ、原則公開、それから議事録も公表したいと存じます。従いまして、ご発言の際には公表を前提としたものでご発言、ご意見を賜れればと存じます。ただ、例えばスタディグループでございますので、個別企業のビジネスモデルに言及して議論を深めたい等、例えば競争上の理由から非公開にして欲しいと、こういったご要望があります場合には、事前に事務局の方にお申しつけ頂ければ、私どもの方で座長と相談し、その公開、非公開の取り扱いについて考えさせて頂きたいと存じます。

その他の詳細につきましては、資料1-3の議事規則をご覧頂ければと存じます。

それから、もう一つ、事務局の発言でございますけれども、今回、金融・資本市場の国際競争力、国際化ということで、事務局も一緒になって委員の皆様方と一緒に研究させて頂ければと存じまして、従来型の正式の部会等と異なりまして、事務局も受け身ということではなくて、積極的に発言させる機会を頂ければありがたいと存じます。

私からは以上でございます。

○池尾座長
 議事規則に関しましては資料1-3ということで、部会の規定と基本的には同じですが、議決等の部分はスタディグループという性格から特に含まれていないということです。

それから、金融庁サイドの方も積極的にご発言頂くということですので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

それでは、一応議事の進め方等につきましては以上ということで、続きまして、事務局の方から配付資料に基づいて、日本の金融・資本市場の国際化に関する論点とか問題点などについてご説明をお願いしたいと思います。議論の手がかりをまず与えて頂くという意味で、最初の資料説明をお願いします。

○三井市場課長
 それでは、手元に大きく分けて手続的なことを除きまして4つの資料があります。資料2-1、2-2、2-3、それからパンフレット、「新しい金融商品取引法制について」というものがございます。今日は主に資料1を説明したいと存じます。資料2-2というのは、資料2-1の参考の資料でございます。それから、資料2-3と、それからパンフレットは、先般この前の任期中の金融審議会で大変なご議論を頂いて、さきの通常国会、昨年6月に終了しました通常国会で成立しました金融商品取引法制についての資料でございます。法律は成立しておりまして、一部施行もされておりますけれども、最終的な横断的な姿というのは、今年の夏を目指し、政省令など施行に向けて準備をしております。

この金融商品取引法は、当時利用者保護に加えて市場の機能の充実、それから国際性の3つの柱でご議論頂いたものでございまして、その特に国際性の部分は、今回の国際化、国際競争力の議論のバックグラウンドとして場合によっては参照頂く機会もあろうかと思いまして配付させて頂いています。

それでは、資料2-1をお開き頂きたいと存じます。

1枚表紙をめくって頂きまして1ページ目でございます。この国際化というものについての切り口は多々あろうかと思います。1つは、国際化というものをどのように考えるのか、言葉をかえますと、国際化として、日本の国際競争力の高いという状態をどのようなものとしてイメージするのか、ゴールとしてどのようなものを描いてそれに向かっていくのかという大きな出発点からさまざまな意見があるのではないかと思います。ということでありまして、ここはひとつ、その切り口のうちの一つとしてマクロの金の流れを参考までに取り上げてみました。

このデータの制約がございまして、必ずしも網羅的になっていませんが、とりあえずとれるもの、推計できるものということで、日本、アメリカ、EU、アジアの4つのエリアに分けまして、その間でどのような資金の流れがあるかというものを数字にしたものでございます。

日本から出ていく矢印をまず見て頂きたいと思います。右下が日本で左上がアメリカですので、日本からアメリカに黒い矢印で左上に向かっている矢印、889というのが箱の真ん中あたりにあると思います。内訳を見ますと、その大宗が債券でございます。

もう一つ、今度は右下の日本から左下のEUに向かって、これは細い矢印で左向きの矢印でございますが、593という数字がございます。この内訳のうち債券を見ますと435でございまして、ここで日本から出ていく金というのはかなりたくさんありますけれども、債券か株式かというと債券が多いということになります。

片や日本に入ってくる金、今のそれぞれの2つの矢印の反対方向をご覧頂ければと思います。アメリカから日本に入ってくるもの、この167のうち、これは期間のフローでございますのでプラスマイナスございますが、株式が149となっております。それから、EUから日本に入ってくる数字、763、そのうち株式は481というふうになっております。かなり日本から出ていく金と入ってくるお金で形態が違っているかと存じます。直接投資を除きまして、証券投資で株か債券か、要するにデットかエクイティかというふうに見た場合には、日本から出ていく金はデットで出ていって、入ってくる金はエクイティになっております。この解釈はいろいろあろうかと思います。それから、これのベースになります日本あるいはG5の国のマクロの投資状況といいますか、金融資産、それから私企業の資金調達状況につきましては、資料2-2で幾つか資料をつけています。今日は省かせて頂きます。

それでは、この資料2-1の2ページに向かいたいと思います。

企業の資金調達状況、借入金が少しずつ減ってきています。それから、株式はアップダウンを繰り返しながら以上のようなグラフになっているということで、企業の資金調達状況、このようなウエートになっているということであります。片や家計の方は、今日は説明省きますけれども、預貯金が半分を占めるという諸外国にはない特殊な形態になっているのはご案内のとおりでございます。

次3ページ、今度はマクロからやや現象面、結果的な側面の方に目を向けたいと存じます。

各国の取引所の市場規模ということで、主な市場、よく新聞に登場してくるような市場について、そこに上場されている企業の時価総額、時価総額ですので、発行済株式数掛ける株価の総額ということになりますが、それから売買代金、上場会社数などを列記させて頂いています。依然としてスケール、規模だけ言いますと、東京証券取引所に上場されている企業の規模というのはニューヨークに次いで2番目あたりにあるというふうに言えます。ただし、後ほど見ますけれども、かなり他国から追い上げられているという状況ではなかろうかと思います。

次のページをご覧頂きたいと思います。

4ページ、これは新聞でも報道されたものでございますが、原データからグラフ化したものでございます。左側が16年前、そして右側が直近でございます。米国、上場企業の時価総額が2兆ドルだったものが6.4倍の19兆ドルになっていると。ヨーロッパも同様に8.1倍になっているというところで、東証の伸び具合の低さというのが際立っています。アジアは、もともとはアメリカ、それからニューヨーク、ロンドン、それから東京の3極だと言える状況だったものが、今やアジアが急成長してきて大きなウエートになってきていると、こういうことだと思います。

5ページでございまして、今言ったものを経済の規模、経済活動との比較で見ようとしたものであります。棒グラフがそれぞれ日本の株式時価総額、それからこれが濃い棒グラフですが、薄い棒グラフが世界の株式時価総額であります。その折れ線グラフがそれぞれ日本と全世界合計のGDPということでありまして、直近の6年間ぐらいで見ますと、それがおおむね並行に動いているということになります。90年から2000年につきましては大きなずれがありまして、この2つの要因があろうかと思います。日本なりのマーケットの置かれた特殊な状況と、もう一つは、マーケットというか、市場経済国にたくさんの参入があったといった事情があります。その中身が分解できていませんが、そこのところがあるということを申し添えたいと思います。

6ページでございまして、GDPに占める金融セクターの割合、これ解釈はさまざまあると思いますが、現状日本というのがこの7.0になっております。香港からフランスまでの数字と比較して頂ければと思います。

それから、次の別の切り口でありますが、株主構成に占める外国人の割合でございます。日本が真ん中の点々でございまして、一番右端26.7でございます。韓国、イギリス、非常に高うございますが、片やアメリカというのは、13.2ということで直近でもかなり低うございますが、過去で言うとさらに低いということがございます。

これを次のページの8ページで投資部門別に株式保有比率を日本で見たものでございます。ご覧頂ければということで説明は飛ばします。

それから、9ページ、今までエクイティ、株式の話をしてまいりましたが、信用リスクの市場という観点で一番単純な資料をここに置いてございます。日米の公社債の発行残高、ストックの構成比でありまして、日本はご案内のとおりほとんどの債券は国債、あるいは公共債で占められております。アメリカ、全体のもちろん発行残高は大きいわけでございますけれども、日本との大きな違い、社債の規模、それからウエート、これは流通市場、それから構成に至るところでもかなり違うと思います。信用リスクの高いものがどの程度流通しているのかという観点から今回はこの表を掲げておりますが、そういった面、信用リスクの市場という観点もぜひご議論頂ければと存じます。

それから、10ページでございまして、これも今度取引所ベースに見た上場企業の国籍別ということで、国際化の中で出てきます結果としての数字、その各取引所に外国企業はどれだけ上場しているのかというものであります。左上が東京でありまして、左下がニューヨーク、その他、フランクフルト、ロンドンであります。外国の企業、東京が圧倒的に少ないということになります。今度東京以外で見ますと、それぞれ地域の特性がありまして、例えばイギリスのコモンウェルスに所属している国がやや多いかなとか、あるいはアメリカで言いますと南北アメリカあたりも少し多いかなとか、それぞれの地理的な特徴なり、経済社会文化的な特徴を持った外国企業が多々上場されている状況であります。

次の11ページ、これが日本が危機感があることの一つのあらわれでございますが、アジアの企業、日本に上場しないで、それ以外のメジャーマーケットに向かっているという状況のものを取り上げたものでございます。個々の数字は説明いたしませんが、日本に来るかわりに、例えば英国のAIMの市場であるとか、あるいはステータスとしてニューヨーク証券取引所の上場を目指している姿が見てとれます。

それから、12ページ、さらにまた違う切り口でございまして、これはいわゆる金融の中、あるいは取引所という狭いものなり、結果とはまた別の切り口で広く金融センターとしての魅力というのをシティ・オブ・ロンドンが調査したものであります。調査対象はロンドン、ニューヨーク、フランクフルト、パリの4都市でございまして日本は入っていません。ここで調査なりアンケートをした項目というのがここにありますように、規制環境以外に、税であるとか、人材であるとか、生活文化、それからビジネス環境とか、顧客へのアクセスであるとか、そういった非常に幅広い項目をとらえております。

その次のページで4つのマーケット、それぞれの項目でのスコアというのが上の段にありまして、結論は、ロンドンがやった調査でロンドンが最もいいという答えになっておりますが、答えそのものというよりは、この切り口であるとか、それからそれぞれの項目、金融産業そのものだけではなくて、金融産業を取り巻くさまざまなサービスなり業態、それからさらに広げますと、都市、人材、ビジネス、生活といった金融のサービスを提供する側、受ける側を取り巻く環境として重要だと思われる項目が並んでおりまして、この点について東京をどう位置づけるか、あるいは東京についてどう認識して、改善すべき点があるとすればどういった点かといった点もご議論頂ければと存じます。

時間の制約もありまして、資料説明は以上とさせて頂きます。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

それでは、これより討論に移りたいと思いますが、今日は第1回ということで顔合わせ的な意味の会合で2時半までということの予定でおりますので、あと40分ほどの時間が残されております。その間、自由討議をお願いしたいと思いますが、日本の金融・資本市場の課題とか国際競争力の強化に向けて何が必要かという点につきまして、初回ですので幅広い観点からそれぞれご自由にご発言頂ければというふうに思います。

ただし、それほど時間があるわけではありませんので、全員の方からご発言を今日頂くことは無理かもしれませんので、次回以降発言をして頂くという形になるかもしれませんが、ご自由にご発言を希望される方は挙手なり、ネームのプレートを立てて頂くなりして頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

どうぞ、柴田メンバーと言うんですか、委員と言わないんですか。

○柴田メンバー
 欧米の先進国であるか発展途上国であるかにかかわらず、世界の各国は自国の金融・資本市場の国際的な競争力を高めるべく競争していまして、今でもその競争は激烈であるということかと思います。ニューヨーク、シカゴ、ロンドン、パリ、フランクフルト、それにダブリン、香港、シンガポール、シドニーが加わって、今やお隣のソウルも北東アジア金融ハブ構想を打ち出しています。今までのところは、日本だけがこの市場間競争に参加する意思を明確にせずに、いわば傍観者のごとく振る舞い、外見的にはこの市場間競争から取り残されているような嫌いがありました。

もちろんその間に日本は不良債権処理を果たし、また消費者保護の姿勢を明確にし、また、市場の透明性の向上を果たしてきたわけです。これが市場間競争での立ち遅れに結びついたわけではありますが、競争に立ち遅れた以上、日本は先進国、それから発展途上国を問わず、諸外国の例を謙虚に学んで、総合的な戦略をつくる必要がある段階に来たのではないかと考えます。

その総合的な戦略という以上、重要な要素をこれから洗い出して、簡単な戦略フレームワークを作成して、それを駆使して、省庁の壁を越えたパッケージの作成につなげるべきではないかというふうに考える次第です。

仮に日本の金融・資本市場の発展と国際化を国策と定義することが可能ならば、金融、税金、年金運用、会計士、弁護士、労務、産業政策、入国管理を司るすべての当局が一体となって推進できるような総合的なパッケージをつくる必要がある、いわば国家戦略の議論であるかと思います。

さて、諸外国の例と申し上げましたが、私の限られた経験で思いつきますのは、それぞれが独自の国家戦略を持って自国の金融市場の国際競争力を高めているということです。ロンドンは、経済規模では米国をはるかに下回る英国に位置しながら、ニューヨークを凌駕する形でユーロ市場の覇者としての立場を維持しています。この決め手の一つに機関投資家相手の取引であるホールセール業務における規制面での自由度の高さがあると思います。個人投資家相手のリテール業務については、消費者保護に力点を置く厳格な監督を行う一方、機関投資家相手のホールセール業務専従の業者については自由度の高い監督を行う、この規制の一種の二分論は、日本の金融市場の国際競争力を高めるための参考になると思います。

また、仲介業者への規制とは別のアングルで、遠回りでもよいから基本に立ち返って、まずは機関投資家市場の発達を促すということで、金融・資本市場の発達と国際化を図る戦略をとっている一連の国々があります。日本とは年金のあり方などで国情に違いはありますけれども、発達した機関投資家市場における競争とプレイヤー間の相互チェックが資本市場の礎であるということを考えますと、日本の金融・資本市場の国際競争力を高めるための参考にもなるのではないかと考えます。

一例を挙げますと、急速に資本市場が発展しており、欧米を凌駕する形で金融テクノロジーが進展し、インフラストラクチャーファイナンスの機関投資家現象が進展をしているオーストラリアです。背景には、スーパーアニュエーションファンドという強制加入ではあるけれども、個人ごとの運用手段の選択の自由度が高い、確定拠出年金制度の急速な拡大があります。一言で申し上げますと、金融サービスの利用があれば供給があるということの典型ではないかと思います。この類型にはシンガポールのように、政府投資公社、GICを設立して、国の将来のために外貨準備を積極運用する一方で、世界中の投資銀行と資産運用会社を引きつけ、さらには税制上の優遇策を持って機関投資家の進出を促すケースもございます。この類型には韓国の北東アジア金融ハブ構想も入るのではないかというふうに思われます。現に韓国では、最近政府投資会社、KICを設立して、加えて海外からの機関投資家の進出を推進するということであります。

ほかにも例はいろいろあると思いますが、新たに競争に参加するという意思がある場合には、諸外国のいろいろな例を参考に今後の議論を進められたらというふうに思います。

○池尾座長
 大変どうもありがとうございました。

今のご発言の前提が本当にどこまで確認されるのかというのが非常に大きな問題としてあるとは思いますが、ほかにご意見いかがでしょうか。

藤原委員。

○藤原メンバー
 私は、イギリスの資本市場でかなり仕事をしてきましたので、そのときに感じたことは、サッチャー政権ができたときに、それまではイギリスは製造業とかそういうので、日本からとかアジアから来る質がよく安い品物が入ってきて、失業が増えていったんです。何が起こったのかというと、男の仕事がなくなっていったということが起こったわけですね。それで、資本市場を自由化し、拡大化していったのは、ある意味では国家を挙げての政策であったわけです。私はたまたまイギリスの大学院を出て、向こうで民営化とかそういう仕事をやってきて1つ学んだことは、仕事ができる人間だったら、女性であろうと年が若くても構わないという感じで、経営方針も変えてきました。イギリスの市場を大きくするためにいろいろやってきました。

私は、その当時、何度も日本へ出張してきて何が違うんだろうと思っていました。でも、80年代はイギリスも日本も、イギリスは国の政策をシフトしていってGDPを増やしていき、それで労働人口は製造業からサービス産業にどんどん増えてきました。それはアメリカ型と言えばそうかもしれません。私は、できる人の数では日本もイギリスも変わらないと思います。私は、特殊法人の資金調達をやっていたので、大蔵省理財局の国債課に行っていました。彼らは朝から晩まで仕事をし、金融のことに一生懸命で、こんなに朝から晩まで仕事をする人たちがたくさんいる霞が関の中で、なぜトリプルAの日本が資金調達市場に行くとフィンランドみたいなところよりも安い値段で調達するんだろうとか、いろんな面を考えました。

それで感じたのは、やっぱり国としてのグローバル化、グローバル化というのは国際化とはちょっと違って、50年ぐらい前にグローバル化がイギリス人に言わせると、洋服に例えるとみんなに同じ洋服を着せ、それだけではなく、9号なら9号、同じサイズにさせる、これがクローバル化であると。それでイギリスが何をしたのかというと、法律は資金調達をするときは英国法を使えと。それから、国際化といってイギリスの会計基準を国際化しと、そういう徐々に徐々にやっていって、そして時価会計をつけて、イギリスだって昔は時価会計ではなかったわけです。やって、その結果大きくなったわけです。

私は、今日の説明を聞いて、例えばページ1、なぜ日本から行くのは債券が多くて、イギリスとか海外から来るのは多いのかというと、これにはちゃんと理由があって、日本は資本主義というのをやっても資本をあまり大事にしてこなかった。それで、お役所の人たちが日本の機関投資家には株は危ないから債券は安全だと、こういうのが結構浸透して、日本以外の国が国際化でこれからは製造業だけではなくて、金融のグローバル化で競争して生き残っていかなければいけないというところで、外部環境が変わったにもかかわらず、日本の中では日本はアジアのリーダーにはなれるだろうという感じで、こういう言い方をするとちょっと失礼ですが、たかをくくるところがありまして、ところがシンガポールとかそういうところに出張すると、だれも日本は将来的にアジアのリーダーになるとは思っていないというギャップがあって、だからそういう面では、私は今日のこういう流れをつくったのは日本人であると。だけど、金融に関しては遅いということはない、今から始めても日本は何とかなると私は思っています。でも、そのためには、金融庁だけではなくて、例えば何が起こったのか、私が外資の東京市場になると、やはり日本は法人税が高い、だからせっかく取引はやるんですけれども、ブッキングというと香港とかそういう感じでやったりとかするんで、もし本当に日本の市場を強くするということになるんでしたら、海外の上場企業の数がシンガポールに比べ日本はその10分の1であると。その理由はなぜか。多分上場の基準が魅力的ではないかもしれない、私は最近はちょっと見ていませんので、昔はそういうところがありました。だから、その原因を取り除くということをやるだけではなくて、もうちょっと人材育成するにはどうしたらいいのかとか、税金を安くするにはどうしたらいいのかとか、それによってだれがメリットを持ち、だれがデメリットを持つのかみたいな感じの国を挙げての戦略みたいなのが必要ではないかと思います。

以上です。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

このスタディグループも趣旨にありますように、狭い意味での金融法制の話だけではなくて、もっと幅広く人材とかインフラを含めて議論したいという趣旨で設置されておりますので、ただいまのご意見は非常に参考になったかと思います。

ほかにご意見いかがでしょうか。

露木委員。

○露木メンバー
 私からよろしいでしょうか。機関投資家として今の日本市場マーケットを見ておりますときに、多くの不便を感じないというのが本音の実情だと思っています。そういう意味では、国民の大多数がそう思っている部分があると思うんですけれども、今回、今座長がおっしゃられたような趣旨の中でおっしゃられているレベル感というものが、今より洗練された市場に持っていって、海外の投資家が参加しやすい環境まで高めていくのか、もしくは本格的に金融・資本市場を国際化、ロンドンにするようなものまで到達させるのかによって随分ハードルの高さも違ってくると思うんですね。やはり今の日本の姿と将来、20年、30年先の日本のあるべき姿、少子高齢化にも向かっていますし、その中で日本のサービス産業としての金融技術も含めた将来のあり方というものを広く国益だというふうに認識できるような前提が必要なのではないかという気がしています。

私も、シンガポールのあれだけの人数でやはり資金が通過することによって収入が得られている、もしくはそういう国のあり方というのを求めているわけですけれども、そういうものも含めて考えると、やはり一つの技術産業立国という核がある、片や金融産業というところでの将来の国のあるべき姿というようなものを背景に持たないと、何となくリスクリターンの関係でいくと、リスクばかりがいろいろな面で今不自由を感じていない人たちの中から出てくるというところがあるような気がしています。

そういう意味では、リターンの姿をはっきりさせる、到達するレベルというものをしっかり明示していって、国民のコンセンサス、もしくは支持を得ていくような提言にしていきませんと、過去いろいろな技術論はたくさん出てきて、テーマもかなり絞られているような気もするんですけれども、その一つ一つのハードルを超えるのがかなり重たい課題になってくるのではないかなと。今回相当広範囲にわたりますので、やはり根っことなる理念というものがはっきり示される必要があるのかなというふうな気がしておりますけれども。すみません、雑駁な意見で。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

では、藤巻委員。

○藤巻メンバー
 国際化の議論をするときに2つの点を最初にはっきりさせておく必要があると思うんですけれども、1点目は国際化によって日系企業を活躍させる場をつくるのか、それとも、イギリスの金融機関というよりは、ほかの国の金融機関がより活躍しているようなシティーのような市場、これはウィンブルドン現象といわれてますが、そういう市場を作っていくのか、どちらを目標とするのかということをはっきりさせる必要があるのかなというふうに思います。私個人としては後者でないと立ち行かなくなるのではないかと思っていますけれども、その点を一つはっきりさせる必要があると思います。

それから、2点目に、何のために国際化を推奨するのかという目標または、目的をはっきりさせておく必要があるかと思います。国民の資産をふやすためにあるのか、これは確かに昨年から、物プラスサービスの黒字よりも所得収支の黒字の方が大きくなっているという点で、重要な事だと思います。また、この前、日経新聞にもありましたけれども、ロンドンのシティーでは2億円以上もらっている金融マンが4,000人もいるということでした。要は雇用の場を提供する。金融を1つの産業として育て雇用を確保して行くために東京市場を国際化するのか、というように、何のために市場を国際化していく必要があるのか、という点も最初にはっきりさせておく必要があるかと考えます。

以上です。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

引き続きご意見、いかがでしょうか。

これまでのご発言伺っておりまして、我が国金融・資本市場の国際化というときに、目的ないし理念は何かということを最初に踏まえて、議論を進めていくことが必要だろうというご指摘は共通に出ていたというふうに思います。それで、従来日本の場合に、金融産業というのをそれ自体が付加価値を生む重要産業という位置づけではなくて、製造業を始めとしたほかの産業を支える、ないし製造業等に仕える産業という位置づけで金融業についてとられてきた面が強いというふうに思うんですね。

率直に申しまして、現状においても金融業の位置づけに関してはそういうふうにとらえている人が日本の中には多いんではないか。要するに、産業がうまくいくように円滑に事業会社に資金を供給するような役割を果たしていればいい金融業なんだという、それ自体が何か、金融産業それ自体が大きな付加価値とか雇用を生んでいくという、そういう産業として育てなきゃいけないんだという認識は比較的乏しかったんではないかと思うんですが、そのあたりを本当に転換して、金融産業それ自体を付加価値ないし雇用を創出する重要産業として育てていくことが日本の国益なんだというふうなことで本当に一致して進んでいけるのかというのが、課題ないし検討の最初のポイントかな、というふうに伺わさせて頂いていたんですが、ほかいかがでしょうか。何かご意見いかがでしょうか。

関委員、今私が申し上げた点についていかがでしょうか。事業会社の立場では。

○関メンバー
 私は、日本の製造業というのは相当強いわけですね。自動車産業、造船業、あるいは産業機械、鉄鋼、相当競争力があって、こういうことを言うのはややはばかりがありますけれども、資金調達だって相当多様にできますから、金融のあり方を製造業サイドからこうしてもらわなきゃいけないというような側面は私はほとんどないんだと思っております。中小企業の皆さんはわかりませんけれども、代表的な競争力のある産業はもう既に国際的に完全にやっていけますから、ですから今の池尾先生の設問で言えば、やはり日本の金融産業というのはそれ自身国際競争力があって、そしてどこへ行っても戦えるという、日本にもそういう金融セクターがどんどん出てくると、そのこと自身が日本の資本市場を強くするという観点でそれは議論して頂くということで何ら差し支えないと私は思っております。
○根本メンバー
 格付会社の立場から申し上げますと、今回のような金融・資本市場の国際化、それから、競争力の向上ということは、日本の金融機関の格付にとっては非常にプラスではないかと思っております。不良債権時に格付がかなり下がってトリプルBレンジだったと思うんですが、その後資産内容の改善とか、そういったことで大手銀行さんとか証券会社さんはシングルAレンジに戻っています。ただ、海外のグローバルな金融機関の場合、ダブルAぐらいになっていまして、まだ格差があると思います。その違いとしては、収益力とかリスク管理とかいろいろな点がありますが、かなり大きな違いがマザーマーケットの違いというんでしょうか、成長性とか流動性とか多様化とか、我々の業界では産業リスクと言っているんですけれども、そういったファクターが、例えばロンドンとかニューヨークに比べて劣るということが、ひいては金融機関の格付の制約要因となっています。例えば多様性に劣る市場を本拠地として活動すれば収益性が低くなるなど、そういう形で影響していると思いますので、こういった試みが結実すれば、格付という意味ではプラスに働く可能性があるかと思います。

以上です。

○池尾座長
 補足の発言どうぞ。
○藤巻メンバー
 先ほど日本の金融機関が世界的に競争力があって、今後とも製造業をサポートし続けることを期待されたいというご発言がございましたけれども、私は幾分疑問に思っております。

というのは、私は実はモルガン銀行というところに勤めておりましたけれども、私がモルガンに勤めたころは、モルガン銀行がどこの金融機関を合併するのとかということを我々従業員は、いつも話題にしていました。ところが、私が辞める2000年前後になりまして、どこの金融機関に合併されるかということが話題になりはじめまして、最終的にはアメリカの銀行であるチェース銀行に合併されました。しかしチェースに決まるまでには、ドイツの銀行とかイギリスの銀行に合併されるのではないかといううわさが流れておりました。要するに、国境を越えた合併合戦が世界の金融界で行われていたわけです。要は世界の金融界は合併合戦の嵐でございます。なぜか日本だけが蚊帳の外に置かれていたわけですけれども、それは確かに日本の金融機関が不良債権処理ということで、外資にとって魅力がなかったということとともに、株式による三角合併ができなかったからだと思います。

しかし、昨年新会社法が成立し、今年5月から三角合併が出来るようになると、日本の金融機関も世界の金融機関との合併競争に巻き込まれる、すなわち時価総額を大きくしないと他の金融機関に食われてしまうという競争に飲み込まれていくと思います。ということは、やはり金融という産業も国境がなくなるというふうに考えなければならないのではないでしょうか。日本の金融機関のみが日本の製造業をサポートできるというふうに考えていくのはちょっと甘過ぎるのかなというふうに私は考えています。

○池尾座長
 今のご発言はそうだと思いますが、ちょっと最初のご理解は少し違う話だというふうに思いますが。いかがでしょうか。

では、柴田委員。

○柴田メンバー
 今の藤巻委員のご発言は、事実だと思いますけれども、これは東京という国際市場が発展してもしなくても必然的に起きる話であろうかというふうに思います。

また、それぞれの資本市場において、例えば自国の業者を特別に扱うというような風評が出た途端に、その市場の公平性、公正性、透明性が疑われて発展しなくなるということです。環境の自由化、環境の国際競争力、つまり市場そのものの競争力ですが、これと業者の競争力とは、はっきりと分けてお考えになられた方がいいと思います。後者については、それぞれの会社の経営者がどれくらいしっかり仕事をするかという次元の議論かと思います。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

田中委員、お願いします。

○田中メンバー
 今、日本の円が国際的な決済にどれくらい使われているかとか、それから外貨準備にどのぐらい組み込まれているかということは、東アジアにおいて恒常的な貿易黒字国がふえていますから、アジアの中で考える場合、非常に重要だと思うんですが、現実は世界の外貨準備に占める円の割合はポンドに追い越されました。アジアでも円の比重は下がっていますし、円がそれだけ使い勝手が悪いわけです。考えてみると、ゼロ金利で価格機能を債券市場において潰しちゃったわけですから、円が使われるわけもないし、デリバティブその他で使い勝手がいいわけがないんで当たり前なんですけれども、問題は根本さんが言われたマザーマーケットということからいくと、これ放置できないわけですね。日本人の4人に1人が65歳以上になる時期がもう指呼の間にあるわけでして、65歳以上というのは年金の受給者です。勤労時に拠出したものがどのような収益を生み出すかということによって生活水準が事実上規定される人が4人に1人になるときに、マザーマーケットにおける収益率が悪いということでは、それはホームカントリーバイアスもこれらに何かドル建てでうまくやればいいというような話では、やはり日本全体からいけばそうはいかないわけでして、この日本の市場において収益率の高い企業を選びとっていくという意味での資本市場の機能が麻痺しているということになれば、それは21世紀の日本はみじめなものになるわけです。

先ほど関さんが言われましたことは、ある種国際分業論からいけば、製造業もすごい、金融業もすごいというのは、ある意味で経済学の伝統的な教科書にはない話だねということになるんですが、しかし、4人に1人が年金の受給者だと考えれば、金融産業がいかなる機能を日本において果たさなければいけないのかというのがはっきりしているわけです。それからいくと、例えば日本銀行が短期の政策金利をどうするのかというときに、デフレ論が払拭できているのかとか、物価上昇率が対前年比でゼロの近傍のままで政策金利を操作していいのかとか、そういう議論が今日に至るまで新聞紙上であたかも日本経済の論点であるがごとく議論されている限りにおいて、それは日本の金融産業がリスクの分解、組み合わせ等も含めてできるわけがない。ですから、金利水準の正常化というのは、これは何が何でもやらなきゃいけないわけでありまして、まして関さんが言われたように、日本の製造業、事業会社は収益基盤なり、バランスシートの改善を図ってきておられますから、短期金利が例えば1%変化したって、それが何か中長期的なリスクをとりにいく、事業会社がリスクをとりにいくことに影響が出ると考える方がおかしい。ですから、政府部内にも、あるいは連立与党の中にも金利水準の正常化についての議論が全く行われていないという状態が、我々の社会が何に行き当たっているのか、我々は何に向かわなければいけないのかについて論点整理ができていないということだと思うんです。

ですから、ここで我が国の金融・資本市場の国際化というふうに出ていますけれども、国際化でもいいんですけれども、やはりこれは別に国際化と言わなくたって、我が国の資本市場が果たすべき役割でいいんですよ。それはやはり資本市場が企業なり、資源配分にかかわってちゃんとした機能を果たせるようにするという、そこに持っていくためにどういう政策課題があるのか、だからほかのところで行われている政策課題と言われているものに驚くべき逸脱が起きている、そのこと自体がこの我が国の資本市場論を議論する上で大きな問題だというふうに私は思っています。

○池尾座長
 野村委員。
○野村メンバー
 すみません、ありがとうございます。

今、田中委員の方からもいろいろご発言がありましたけれども、池尾座長が先ほどちょっとおっしゃられた金融業自体を一つの産業としてどう見ていくのかという議論は、また田中委員との間でも少し意見の違いもあるのかもしれませんけれども、一番大事なまず出発点なんだろうというふうに思います。そういう中で、たしか金融庁は金融改革プログラムというのを今やっていて、最後の数カ月ということになっていると思うんですけれども、その金融改革プログラムのテーマはたしか金融サービス立国というものを目指そうということで、いわば金融サービスというものを一つの産業として発展させていくということをどういうふうに考えていけばいいのかということをたしかテーマにされてきたというふうに記憶しております。

そういう中で5つの柱が立てられていまして、1つが利用者利便性の向上でありましたし、もう一つは地域再生でありましたが、それ以外のところは、国際性とITの戦略的活用とレフェリーの健全化というこの3つが柱になっていたかというふうに思います。その中で、前者2つに関しては、ややかなり大きな成果を上げたとも評価できるような政策がとられたかというふうに思いますが、後ろの方の国際性の問題とITの戦略的活用とレフェリーの健全化についてはまだ道半ばという感じがぬぐえないというふうに私は思います。

そういう中で、今回国際性というところを突出して取り上げる形にはなるんですが、私としましては、やはり立てた政策の中でこの5つの柱を実現させてきたわけですので、これをやはり有機的にまた発展させていく上で、例えば競争力の確保の点でいきますと、金融業というのは一枚はげばみんなIT産業であるということもできるわけですので、依然としてITコストに高止まりが見られる状況の中でマーケットの議論をしても、それだけでは十分国際競争力は確保できないだろうというふうに思いますし、さらには、レフェリーの問題も非常に大きいだろうというふうに私は思います。

レフェリーの問題は、事前規制から事後チェックへということの流れはかなり明確になってきましたが、事後チェックのあり方そのもの自体が必ずしもまだ明確にはなっていないというふうに思います。金融庁自身は、いろんな意味で重要な処分等をやっておられるという部分もあろうかと思いますが、他方において、例えば検察当局等におきます取り締まりといったようなものについては、やや見通しの立たない状況の中で、極めて裁量的に行われているという危惧を感じているところがあります。こういう中では、マーケットでプレイをしろと言われても、一体だれがどういう形で処分されるのかわからないという状況の中では、とても安心してプレイをすることができないという環境にあろうかと思いますので、そういう意味におきましては、依然としてこのレフェリーの健全化の問題も重要なテーマとして取り上げて頂く必要があろうかというふうに思います。そうしなければ、日本のマーケットではとてもじゃないけれども危なくてプレイができないということになりかねない部分があろうかと思いますので、やや皆さんとは違った観点ではありますけれども、ぜひ検討のテーマに取り上げて頂ければというふうに思います。

○池尾座長
 では、淵田委員、どうぞ。
○淵田メンバー
 製造業の役に立つことが大事か、それとも金融サービス業として非常に強くて国際競争力をもっていくのが大事かと、これは私は全然矛盾していないと思っていまして、1つのタイムフレームで考える必要があると思うんですね。金融の高度化、発展を考える場合、まず大事なことは、特に日本の場合、まずは経済の足を引っ張らない金融であること、ついこの間までいろいろあったわけでありますから、急に日本の経済を支えるようなところまで一気に行くというのは無理でありまして、まずは足を引っ張らない体質になると。これはもう大丈夫かといいますと、私はまだまだリスクが銀行セクターに集中しているという市場型金融といいますか、貯蓄から投資へということを言い出した2001年6月と同じレベルの個人金融資産が預貯金に集中しているわけでありますから、全然貯蓄から投資になっていないわけですね。今回のスタディグループの設置の趣旨としても、この貯蓄から投資への流れの中でとあるところに非常に意義があると思いまして、それを達成できなければ骨太の第1弾でも言われていましたように、将来に向けた安定的な金融システムが成立しないわけでありまして、これは経済の足を引っ張る金融システムのままであるというふうに言わざるを得ないんですね。まずここをどうするかと。

その次に、今度は経済のお役に立つ、ユーザーのお役に立つ金融システムというのが初めてその次に出てくる課題でありまして、3番目が恐らくhopefullyですが、経済を牽引するような金融産業となると。金融産業が日本において日本経済の柱の一つになっていくと、そういうことを目指していくということでありまして、そういうシークエンスで考えれば1番目と3番目は決して矛盾しない、1番目、2番目、3番目というのは順番に達成していくところでありまして、私は1番目のところからまだ不安であるというふうに言わざるを得ないということであります。そこができなければ3番目なんかとてもあり得ないと思っております。

それから、もう一つ付け加えれば、ユーザーのお役に立つということで、座長は製造業というふうにまずおっしゃったわけですけれども、同時にユーザーというのは今までもどなたかお話しされていらっしゃったように、運用者というのも大事なユーザーでありまして、これまで各種の議論というのは結構資金調達サイドのニーズを勘案していろいろ変えてきたところが多いんですけれども、やはり特にこれからの将来を考えますと、高齢化の議論も出ましたように、いかに日本の運用者に対して適切なリターンを提供できるマーケットであるかどうかというのは大事なところだと思います。

以上です。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

そろそろ時間なんですが、今日の非常に限られた時間の中でもこれだけのいろいろ活発な議論をして頂いて、有益な論点を出して頂きましたので、これから次回以降、本格的にスタディグループを進めていけば、大いに成果のある議論ができるんではないかというふうに期待しております。

それでは、本日は一応これにて終了といたしたいと思いますが、なお、この後、堀内会長より本日のスタディグループの会議の模様につきまして、これに先立って開かれました金融審議会の総会・金融分科会の模様とあわせて事務局陪席のもと、記者ブリーフィングを予定いたしております。私は失礼しますので、堀内先生にやって頂くということになっておりますので、よろしくお願いいたします。

最後になりましたが、事務局の方からご連絡等、次回等のことについてお願いします。

○三井市場課長
 次回の日程、ちょっとまだ調整中でございまして、今日この時点でご案内できなくて大変申しわけございません。極力早く調整してご連絡申し上げます。原則月2回ぐらいのペースを目標に近々にでもご連絡したいと思います。よろしくお願いいたします。
○池尾座長
 それでは、どうもありがとうございました。本日はこれで終了させて頂きます。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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