金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第2回)

日時:平成19年2月16日(金)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館11階 共用特別第一会議室

○池尾座長
 それでは定刻になりましたので、まだちょっとお見えでないメンバーもおられるようですが、ただいまより我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第2回会合を開催いたしたいと思います。

皆様ご多忙のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

それでは、初めに本日の議事についてちょっとご説明したいと思います。本日は日本の金融・資本市場の国際化に関して有識者からヒアリングを行う予定となっております。本日のヒアリングを行わせて頂く対象の方々ですが、当スタディグループの打越メンバー、それから淵田メンバーのお2人に加えまして、外部有識者として中前国際経済研究所の中前忠さんをお招きしております。中前さん、本日はどうもお忙しい中お越し頂きまして、誠にありがとうございます。

それでは、進め方といたしましては、最初にヒアリング対象のお三方より、それぞれ15分から20分程度のプレゼンテーションを行って頂いて、途中ご質問等もあるかもしれませんが、質疑応答は全員のプレゼンテーションが終了した後、一括して行うという形にしたいというふうに思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

それから、もう少し議事の進め方などに関して、幾つか事務的に確認頂きたいことがありますので、それは事務局の方からお願いいたします。

○三井市場課長
 市場課長の三井でございます。

今回からご出席のメンバーの方々もいらっしゃいますので、まず、今回からの方々をご紹介させて頂きます。

皆様方から見て右手でございますけれども、江原伸好様でございます。

○江原メンバー
 どうぞよろしくお願いいたします。
○三井市場課長
 翁百合様でございます。
○翁メンバー
 よろしくお願いいたします。
○三井市場課長
 まだお越しになっていませんので、木南敦様は後ほどご紹介させて頂きまして、鈴木武様。
○鈴木メンバー
 よろしくお願いします。
○三井市場課長
 それから打越俊一様。
○打越メンバー
 よろしくお願いします。
○三井市場課長
 それから、皆様方の左手の方でございます。増井喜一郎様。
○増井メンバー
 よろしくお願いいたします。
○三井市場課長
 それから、これも前回と重複になりますけれども、議事進行などにつきまして若干事務的なことを、繰り返しになりますが、ご説明させて頂きたいと思います。

この会議、原則公開にいたしたいと考えておりまして、議事録も公表予定でございます。したがいまして、本日、これからお三方に意見陳述、プレゼンテーションをお願いいたすわけでございますが、その資料もあらかじめご了解を得た上で公表ということにさせて頂いております。

なお、例えばビジネスモデルなどにかかわるということで、非公開を望むプレゼンテーションをされる方ないし議論をご要望される方は、あらかじめ事務方の方にお申しつけ頂ければ、座長と相談の上、適切な取り扱いを検討したいと思います。

それから、本日の資料等につきましてご確認を頂ければと思います。お手元に配付した資料がございまして、資料1、2、3と右肩に付したものがございます。今日は打越メンバー、淵田メンバー、中前様からプレゼンテーションをお願いしておりまして、その関係の資料でございます。

それから、それ以外に、1月30日にこのスタディグループが行われました議事要旨を公開しております。それを2枚のものでございますが添付してございます。それ以外に分厚い資料がございます。これは、今週13日でございますが、経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会金融・資本市場ワーキンググループにおきまして、金融庁がヒアリングに呼ばれまして、金融庁からその際に提出した資料を参考までに配付させて頂いております。

それから1枚紙でございますけれども、席上に当面のスタディグループのスケジュールについて日にちを記載した紙をお配りしてございます。これは会議の最後に当方から説明させて頂きたいと存じます。

以上でございます。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

それでは、早速ですが、ヒアリングに入らせて頂きたいと思います。

それでは、おのおのスピーカーの方には、先ほども申しましたが、20分程度ということでお願いしたいと思います。

それでは、まず打越メンバーからお願いいたします。

○打越メンバー
 大和総研の打越と申します。

今日は、我が国金融・資本市場の国際化についてということで述べさせて頂きますけれども、私、大和総研のコンサルティング本部というところで仕事をしてございますので、どちらかというと現場に近い目線でこの問題について考えてまいりました。

早速ですけれども、1ページ目をご覧ください。

ここは私の申し上げることの骨子というか、まとめに近いところでございまして、3点ございます。まず第1点目、「静態的には、」と書いてございますけれども、スタティックに見て、日本の金融・資本市場というのは国際金融センターとしての要件を満たしているかというと、どうも否という結論ではないかと思います。これはとっぴな見方でもなくて、後ほど見て頂きますけれども、シティ・オブ・ロンドンでアンケート調査を実施してございまして、そこでもそういう結論になっておると思います。では、日本はどういう特徴があるかというと、構造的ローカル市場体質ということが言えるのではないかなと思っております。

しかし、2点目なんですけれども、現在進行形という形でどうも地殻変動が起きているというふうに考えてございます。ニューヨーク、ロンドン集中ということから、徐々にですが、グローバルな多極分散型へ資本市場、金融市場が動いている、そういう感じがします。その背景としては、よく指摘されておりますけれども、BRICsの台頭でありますとか、あるいはイスラムのマーケットの拡大と、こんなことがその背景にある。これについては、また資料で、アメリカでもこの辺を踏まえた議論が出てございますので、簡単にご紹介したいというふうに思っております。

3点目なんですけれども、こういう動き、流れ、地殻変動を考えたときに、日本のその構造的ローカル市場体質というのが、徐々にまた変わってくるのではないかということを考えております。その背景としては、これもよく指摘がされておりますけれども、日本には非常に強い産業基盤と、それから潤沢な投資資金、それから豊かな知的財産がセットで、世界的にも希有だと思うんですけれども、ございます。また、これから世界の成長の中心がアジアになってくる。そことも非常に地政学的に近い。今までは欧米ということで、どうも時差の問題ですとか言葉の問題ですとか、やはり離れているというのがマイナス要因として大きくあったと思うんですけれども、アジアと近いというメリットもある。この強みを生かして金融市場機能の魅力を高めるといいますか整備をしていくことで、日本のグローバルなポジションというのが変わってくると思いますし、経済、アジア全体の経済発展に貢献するんだろう、そんなように考えてございます。

2ページ目をご覧ください。

ここは、たしか第1回目のこのスタディグループの際に金融庁の方からご紹介があった、シティ・オブ・ロンドンが、ちょっと古いんですけれども、2005年11月に実施した機関投資家を主に対象としたアンケート調査であります。アンケート項目としては、対象国をニューヨーク、ロンドン、それからフランクフルト、パリ、この4カ国に絞って、アンケートの項目としては20項目弱でまとめておるんですけれども、どうもアンケートを漫然と見ていてもなかなか特徴が出ないので、いささか統計的な手法を使いましてグラフにしたのが左側に載せてございます。

横軸が、右に行けば行くほど、ちょっと見にくいんですが、他市場へのアクセスが容易であるだとか、それから専門家が豊富にあるとか、それからビジネスインフラがいいとかですね。ビジネスインフラというのは、空港ですとかあるいは集積だとか、いろいろあると思うんですけれども、そういうのが非常にすぐれているということでございます。

それから縦軸なんですけれども、これは上に行けばカルチャー・ランゲージの制約が少ない。それから下に行くほどクオリティ・オブ・ライフがいい、こういうことなんです。これで見ると、カルチャー・ランゲージ、それから市場のポジションですとか専門性、専門家のアベイラビリティだとか、どこを見てもニューヨーク、ロンドンというのは断トツにすぐれておる。フランクフルト、パリというのは、特徴としては、特にパリはクオリティ・オブ・ライフがいい、こういうことになっているんですけれども、簡単には、このニューヨーク、ロンドンの優位性というのが揺るがないというのが、右側の中段にシャドーであります最初のところに書いてございますが、ロンドン、ニューヨークの地位が脅かされることは当面予想されないというのがアンケートの結論になってございます。

では、日本マーケットの評価はどうなのかというのは、実はアンケートと同時にインタビューも行っているようでございまして、そのインタビュー結果という形で、記述ベースで非常に簡単に書いてございます。右側の丸で囲ってあるところの2つ目のところなんですけれども、ロンドン、ニューヨーク、フランクフルト、パリに次いで重要と考えられている市場はアジアに集中しておる。上位3市場はシンガポール、香港、東京である、こういうインタビューの結果であります。ただし、上海、北京がどんどん大きくなってきて、いずれ近い将来、英語の表記ですとwithin the next few yearsという書き方なんですけれども、2005年でwithin the next few yearsですから、そんなに遠くないところでシンガポール、東京は上海、北京に置き換わっていく、こんな見方が、非常に厳しい、あまり愉快ではない見方が出てございます。

それから、このペーパーが出ているわけなんです。そこの56ページ目に、other financial marketsということで、そのインタビューのまとめというか、記述がございまして、その中に日本市場ということで非常に簡単に書いてあります。英語で申し上げますと、日本のマーケットの特徴、これは投資家とかですね、アンケート調査ですから、それがどうかということよりも、みんなが割とそういう意見が多かったということでございますが、poor regulation and too much bureaucracyというのが日本市場の特徴ということで書いてございます。

このペーパー自身の信憑性とか客観性とかいうのはいろいろご議論があるかと思いますけれども、スタティックに見てというか、静態的に見て、今の通貨体制のフレームワークですとか、そういう観点からそんなにずれた話ではないのかな、日本市場というのはそういうふうに見られているということだと思います。

それから3ページ目でございます。

ここは、地殻変動、最近の変化ということで例として持ってきたんですけれども、どうもアメリカでエクイティ・マーケット、キャピタル・マーケットが競争力が落ちているという認識がかなりございまして、その原因究明というか、コミッティが組成されておって、それが昨年の11月30日に中間報告ということで、またこういうペーパーを出してございます。コミッティのメンバーというのは、シンクタンクですとか監査法人ですとか学者、あるいは投資銀行の経営者と、かなりの布陣でコミッティが組成されておるわけなんですが、なぜアメリカのキャピタル・マーケットの競争力が落ちているのかということで、4点、そこでは指摘がされてございます。

このティックが入っているところなんですけれども、1つ目は、要するに海外市場のクオリティが上がってきている。ディスクロージャーであるとか、さまざまな法制度の整備もございまして、トランスペアレンシーが改善しているとか、信頼性が上がっているということが第1点目。それから第2点目としては、リクイディティとございますが、要するに流動性の市場としての厚みが増しておるということです。それから3点目としては、技術の進歩もございまして、アメリカの投資家が容易にこうした他市場に投資できる環境になってきているということでございます。4点目は、ある意味、アメリカ市場のオーバー・レギュレーションに関する見直しというか、それが指摘されてございます。

そのうち、上位4つのうち3つですね。これについては、There is little public policy can doと書いてありますけれども、自然の流れといいますか、まさにそういう潮流が始まっているんだ。これに対して何か政策的に流れを逆転させるとか、そういうことは難しいということで、最終的には、ある意味オーバー・レギュレーションに対する見直しをレコメンデーションとして講じるべきではないかというのが、このアメリカのインテリム・レポートの内容でございます。

したがいまして、こういう流れの中に日本がもっともっと乗っていくというか合流していく、その中で日本の金融センターとしての魅力を高めていく、こういうことが必要ではないかというふうに考えてございます。

それで、4ページ目でございます。

魅力向上策と書きましたけれども、どんなことが考えられるかということで、大きく分けて4点ほど考えております。

1つは、(B)RICsの金融・資本市場の担い手にもっとなっていく必要があるんだろう。(B)RICsのBはちょっと遠いので括弧書きにしておりますけれども、内容としては、一つは東京市場での運用ですとか、資本調達のビジネスを拡大していくということだと思います。運用ということで申し上げますと、債券ですとかあるいは投資信託、ETF、ファンド、指数先物などですね。こういう多様な商品の開発がまだまだ遅れてございますので、投資家ニーズもかなり、ここもと株式投信の販売動向等を見ますと大きく変化してございますので、そういうニーズに対応して積極的に投入していく必要があろうかと思います。

それから、そういう商品の購入先として、日本の投資家というのも当然あるんですけれども、欧米の投資家も巻き込んでいくというふうなこともできたらいいなというふうに思っておりますし、それから欧米と、企業にしろ、銀行でも、日本企業とリスクを分担しながら(B)RICsに事業展開していくということも必要ではないかなというふうに考えてございます。最近、日本企業のこうした動きも、インフラファンド組成等につきまして、実際出てきているようでございます。

それから2点目としては、さはさりながら、現状こうした(B)RICsの国情といいますか、政治から法制度、それからどんな会社があるのかとか、さまざまな情報が十分供給されていないという状況がございます。したがって、投資リスク、リターンの分析に足るような情報を、周辺情報も含めまして提供していく必要があるだろう。それは担い手としては、証券・投資銀行あるいは情報サービス会社、コンサルタントなどが考えられるわけですけれども、例えば、先般、第1回目のとき、私、たまたまインドに出張に行っていたんですけれども、テレビを朝つけますと、日本の場合ですと大体アメリカのマーケットの話でおしまいなんですけれども、インドあたりは、地理的な環境というのもございますけれども、東京とソウル、シドニー、それから香港、シンガポール、全部ワンセットでどんなニュースがあったかと、マーケット情報だけではなくて企業情報あるいは政治の話、そういうのが英語でばんばん入ってくる。そういう意味では、インドの方がはるかに日本よりもそういうビジネス情報が潤沢にあるなという実感を持ったわけなんですけれども、そういうことも含めまして、もっともっと情報が入ってくる、あるいは流すというか、アベイラビリティを高める必要があるかと思います。

それから、いろいろな商品が出てくるのはいいんですけれども、結局、そのリスクテイクを促進させるような、その商品のリスクリターンといいますか、透明性、客観性を担保するような例えば株式レーティングですとかあるいは株価レーティングだとか、こういう機能もあわせて必要になってくるんだろうというふうに思っております。

それから、当たり前でございますけれども、証券・投資銀行等、こうしたビジネスの拡大に向けての営業推進体制の推進ということも当然必要になってくるわけで、この点に関しましては、急ピッチでさまざまな会社が営業体制の構築ということで動いているように見受けられます。

それから、2点目としては、我が国の金融・資本市場の流動性をもっと高めていく必要があるんだろうというふうに思います。1点目としては、当たり前のことなんですけれども、市場の取引ルールといいますか、国際標準にする。そして、それをきちんと守っていく体制を、外形的ではなくて実態的にも進めていく必要がある。それによって、市場の健全性あるいは信頼性を高められるというふうに思っております。

2点目としては、グローバル取引をもっともっと我が国においても活性化する必要があるだろう。その文脈で考えられることは、時差を解消するという意味で夜間取引の活用ですとか、あるいは東証の海外の取引所との提携等、こういう取引所の役割というのもあろうかと思います。

それから3点目としては、やはり規制緩和といいますか、例えば個人勘定の年金制度資産が日本の場合には非常に小さいということはございます。投資教育も含めて拡充し、401Kの制度見直し、規制緩和ということも必要かと思います。

それから、夜間取引にも関連するんですけれども、私設取引所の開設という動きも、ここもとかなり加速しているようでございまして、今までネットビジネスというのは個人向けのビジネスが中心でございましたけれども、こういう私設取引、ネット系の証券会社がやろうとしているわけなんですけれども、これが本格的に導入してきますと、機関投資家も巻き込んだような大きなインパクトを与えることになっていくのではないかなというふうに思います。

それから、規制緩和に関連して、ETF、日本の場合には現行の制度ですと、非常にリジッドな商品設計しかできない形でございます。多様な商品を投入していくという観点からもETFの規制緩和というのは必要ではないかなというふうに考えております。

それから、以前もありましたけれども、離島振興というような形で沖縄の活用ということでございましたが、もう一度オフショアの活用をどうするのかということを再検討する必要もあると思っております。

それから、5ページ目でございます。

国内企業がこれからますますグローバル化していくのは当然の流れだと思います。製造業、非製造業に限らず、海外売り上げ比率が、早晩、5割を超えるようでなければ、なかなか成長戦略が描けない、そんな時代に入ってきているのではないかなと認識しておりますが、そういう中で、大手企業に対してはこうした国際化に伴う保険やリースを含んだトータルな金融機能を東京ベースで提供していく、こんなことも必要だと思います。

それから、クロスボーダーのM&Aのニーズというのも必然的に高まってくる。こういうものに対する支援というのも、東京マーケットの役割として担っていかなければならないんだろうというふうに考えてございます。

それから、地域再生あるいはベンチャー企業の育成という観点もございますが、現在は主に地銀さんが証券会社を設立されて動き出されておりますけれども、地域の眠っている会社の育成に関する資金調達を含めたさまざまスキームを、もっともっと整備していく必要がある。それによって経済が活性化するということもありますが、日本国内にやはり投資機会があるというのは、また海外に出るばかりでなく大変重要な視点だと思いますので、そういう面での東京市場の役割というのは大きいというふうに認識してございます。

それから、3点目としては、これは既に決まった話でございますけれども、今後、導入される三角合併、これがいろいろインパクトをもたらすと考えられるわけですけれども、グローバル化の中でこれを生かしていく。そのためにいろいろ議論していかなければならない、そんなふうに思っております。

それから4点目、その他として4つほど載せてございます。

とにもかくにも、今後、国際金融センターとして発展していくためには、人材育成というのが非常に重要な問題になります。証券アナリスト、ファンドマネジャー、それから投資家教育、こういった点、あるいは語学力の向上とか、避けて通れない人材育成の課題があると思います。

投資家教育に関しましては、現状はかなりばらばらといいますか、5社ベースでさまざまな取り組みが行われておりますけれども、もっと体系的にカリキュラムのような形にして、金融に対する知識を持つというのは、人生を豊かにするためにも避けて通れないテーマとなっておりますので、きちんとした国のバックアップも必要ではないかなというふうに思っております。

それから、システムの信頼性の向上あるいは法制度・コンプライアンスの整備。コンプライアンスについては、言うまでもないと思いますけれども、きちんとした対応で透明性、信頼性を向上していかなければならないというふうに思っています。

それから、今まで申し上げたことは、いわば自然発生的といいますか、自然の流れの中でこういう施策を業者が、あるいは当事者が展開する中で、行政当局の方も含めて、やはり日本のポジションというのは高まっていくとは思うんですけれども、やはり明示的に、日本はやはりそういう関心を対外的にも対内的にも示すという意味で、金融特区というような議論も、中身はともかくとして、今後、いろいろ議論して詰めていくとして、活用を考えるのは一考かな、かように考えてございます。

非常に雑駁な話で恐縮ですけれども、以上でございます。

○池尾座長
 打越さん、どうもありがとうございました。

木南先生が来られましたけれども。

○三井市場課長
 先ほど最初に、今日からご出席の委員のご紹介をしておりまして、皆様方から右手でございますけれども、木南敦先生でございます。
○木南メンバー
 遅れて申しわけございません。
○池尾座長
 それでは、引き続き淵田さんの方からご報告をお願いいたします。
○淵田メンバー
 それでは、資料の2を用いてお話しさせて頂きます。

まず1枚めくって頂いたところで、実体経済の発展というものと金融の国際化についての簡単な概念整理をしておりまして、経済の発展の初期というのは、国内企業が国内資本を活用して成長するという構図だと思います。つまり、左の図の1番のところでありまして、資金運用主体も資金調達主体も国内にあるということです。しかし、経済がより発展してきますと、やがて海外投資家が注目するに至りまして、対内資本投資が活発化しまして、これを支える市場仲介ビジネスが発達するという段階に至ります。図の2になります。さらに国力が高まりまして経常黒字が蓄積し、外貨準備が蓄積していきますと、対外資本投資の時代となります。図の3番になります。そして最も進んだレベルでは、国際的に信頼される国家市場となりまして、外-外の取引の仲介の場としても発展することとなります。

もちろんこの図が示すことは、経済が発展すれば放っておいても金融が国際化するということではありませんで、国内の運用主体、海外の運用主体両方の幅の広がり、懐の深さというものがあって、初めて資本市場の基礎ができる。これに成功するかどうかいうのが、国際資本市場の、国際的な市場の基本的要素であるということは言うまでもありません。

これは一般的な金融の国際化のプロセスと言えると思うんですけれども、異なるパターンもあります。

次のページをご覧ください。

最初のページで見たのは、この3ページの左側のように、国が成長するに応じて金融の国際化が進んでいく。内-内での資金調達運用からスタートして、これを基盤として外-内、内-外、外-外という形での国際的な金融取引の拡大が実現していくという、大きな国内経済を抱えたいわば大国型の金融センターモデルであります。

この図の番号は、前のページの図の番号に対応しているわけでありますけれども、東京はこうした金融センターに当たると思います。ニューヨークもそうだと思います。これに対しまして、このページの右のように、国内経済は小さいんですが、国際的な金融取引を活発に担うオフショア型といってもいいと思うんですけれども、金融センターもあるわけであります。アジアでは香港、シンガポールがその例であります。ロンドン市場というのは、イギリスが世界に君臨していたころは、いわば大国型の金融センターだったと言えると思うんですけれども、20世紀後半以降、ユーロ市場の中心となりまして、欧州大陸の経済成長を助け、またそれに助けられる形でオフショア型の金融センターとして今日発展していると思います。逆に香港は、中国への返還によりまして巨大な国内市場を抱えた大国型の金融センターとなり得る存在と今はなっているわけでありますが、この場合、上海金融センターとのすみ分けという要素も働いてくると思います。

以上は、経済発展とともに金融が国際化するということでありますけれども、この過程では金融の性格、中身も高度化していくという点が重要かと思います。

4ページ目でありますけれども、金融センターへのプロセスというのは、市場型金融のプロセスではないかということであります。一旦市場型金融が主流の時代になりますと、それにふさわしいインフラとかスキルを集積させたところが、必ずしも経済大国でなくても金融センターを形成できるという特徴も指摘できると思います。

この2つ目のポツに書きましたように、昨今の特徴としましては、大国、小国を問わず各国、各地域で国際金融センター機能の強化ということを目指す動きが活発となっているということが指摘できると思います。この背景としては、まず第一に、今日、金融がグローバル化しているわけでありますから、自国市場を強化していかなければ金融取引も企業もよりよいマーケットに簡単にシフトしてしまう時代になっている。したがって、自国市場の国際金融センター化というものが競争上重要になってくるということだと思います。

それから第2の背景としましては、一部の製造業が低賃金の国にどんどんシフトしてしまうような時代になっておりますから、ハイテク産業であり知識集約産業である金融サービス業というものを比較優位を持つ基幹産業の一つとして育成していこうという発想が高まっているのではないかと思います。端的に言いますと、ものづくりだけやっていていいのかという発想に通ずるものだと思います。

5ページ目と6ページ目では、アジアの近隣諸国におきまして、金融センター育成への取組みがあるということをご紹介しております。それから6ページ、7ページでは、アメリカ、イギリスの動きについて紹介しておりますが、時間の関係で細かくは説明いたしませんが、6ページ目の下にありますように、先ほど打越メンバーのご発言の中にもご紹介されていましたように、アメリカにおきまして資本市場の競争力が低下しているのではないかという危機感が昨今高まっておりまして、相次いでレポートが出されている点が注目されます。この6ページ目に紹介してある最初の2つのレポートにつきましては、この私の資料の後ろの方にポイントをまとめておりますので、後でご参照頂ければ幸いです。

1点、興味深い指摘を紹介いたしますと、この2番目のブルームバーグ・ニューヨーク市長とシューマー上院議員が今年の1月に出したレポート、マッキンゼーがつくったものですけれども、この中で、今日、資本市場の競争力というのは、マーケットの流動性といった伝統的な要素よりも、人材ですとか、法規制環境といったものが、今までよりもより重要なファクターになっているという指摘がありまして、これは興味深いことだと思います。そして、アメリカはこうした点では英国に学ばなくてはいけないという主張が展開されているわけであります。

そのイギリスも、7ページ目に紹介してありますように、アメリカに追われる立場といいますか、国際金融センターとしての地位を維持しようということで、引き続き努力しておりまして、シティは昔から非常にこの辺、精力的なわけでありますけれども、昨年からは財務大臣のイニシアチブでシティの有力金融機関との会合が持たれるなど、国を挙げての取り組みというものが始まっているということであります。

8ページ目では、以上の動きを踏まえまして、留意点を若干挙げております。

まず、国際金融センター振興といっても、今まで各国の例をここに掲載してきたことからもおわかりのように、国によって重点が異なります。特にオフショア型の金融センターというのは、税などの優遇によって取引や業者を誘致してこようということに当然積極的なわけであります。これに対しまして、大国型では、先進国の間で有害な税の競争を避けなくてはいけないという合意もあることでありますから、あからさまに税を使って他国から取引を奪うといったような方策は見られません。

それから、各種の施策というものは、資本市場振興が中心となっているということがもう一つのポイントかと思います。ただ、言うまでもありませんが、資本市場といいましても、株式市場の振興という話だけではなくて、デリバティブ市場ですとか、資産運用業の振興といったことも重要な柱となっております。

それから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、昨今、イギリス、アメリカともに規制のあり方に高い関心が寄せられていまして、特にアメリカにおきまして会計基準と同様にイギリスの原則ベースの発想というものを支持する論調が強まっています。それから、そのイギリスにおきましてもベター・レギュレーション政策というものが展開されておるようでありまして、過剰規制の見直しなどが進められているということであります。

ただし、アメリカにおいても、アメリカですら自国市場の競争力に危機感を抱いている時代だと申しましたけれども、これは必ずしも万民に支持されているわけではありませんで、投資家保護を重視する立場の人からは、例えばSOXの見直し等については非常に警戒する声が上がっておりますし、それからそもそもウォールストリートの業者はこんなにもうかっているではないか、引受手数料をもっと下げればいいではないかとか、そういったような批判も聞かれているということで、こういう点も無視してはいけないと思っております。

さて、そこで我が国はどうしたらいいのかということで、若干私見を述べたいんですが、9ページでございます。

日本は、まずは大国型の金融センターとして、今現実に大きい実体経済、この大きさ、強さというものを正当に反映した姿にまずはなるというのが第一歩といいますか、そこから始めなくてはいけないと思っております。特に、前回もちょっと申しましたけれども、経済の足を引っ張らない金融にならなくてはいけないということで、不良債権問題を再発させない安定した金融システムというのが最優先課題であって、貯蓄から投資へと、本当に長年言われていることでありますが、実現していないわけでありますから、この未達成の目標の達成を心がけるというのが何よりも第一歩かと思います。これが実現して初めて経済にお役に立つ金融になれるわけでありまして、経済に寄与する金融というのは、すなわちリスクマネー供給ですとか、資源配分の効率化、生産性向上に寄与し、かつ高齢化社会に向けた国民の資産蓄積に寄与できる金融市場というものに発展させていくということであります。

さらに、この上に立ち、基幹産業としての金融を我が国としても展望すべきかどうかということでありますが、ここはいろいろな議論があるかと思いますけれども、一つの考え方として、今、大国だから、実体経済が強いから、それに見合った金融市場は当然持っていてしかるべき、それがまだ達成できないという問題意識を示したわけでありますけれども、そのそもそもの前提である大国というところが、早晩変わってくるというのはもう言うまでもありません。2050年まで展望したら、中国の今の成長率がずっと続くかどうかというのはありますけれども、少なくとも中国、インドよりも小さな国になるということは、単純計算で出てくる話でありまして、そうした中で知識集約産業としての金融業の比較優位の確立という選択肢というものはあり得る話ではないかと思います。

先ほど、ロンドンが大国型からオフショア型のセンターに転換しながらより発展した、その際、欧州の成長を助け、またそれに助けられる形で発展したと申したわけでありますけれども、その例えで言いますと、東京が中国大陸あるいはアジアの経済成長を助け、またそれに助けられる形で、ニューヨーク型からロンドンのような形の金融センターとしての発展を目指すべきといった考え方が成り立つかもしれないということであります。

ただ、その際ですが、過去の教訓というのをこれは忘れてはいけないと思っておりまして、20年前も東京国際金融市場とか盛り上がったときがあります。しかし、当時の経緯を振り返りますと、それによって関係者がいたずらにユーフォリアを抱くような事態を避ける必要があるというふうに思っております。

それからもう一つ、10年前というのは、いわゆる日本版ビッグバン宣言でありますけれども、あのときも2001年3月までにニューヨーク、ロンドン並みの市場にするといって、ちょっと締め切りはとっくに過ぎているんですけれども、なぜそれが達成されなかったかといいますか、急速に世論がしぼんだ背景というのは、言うまでもなく金融システム問題の発生でありまして、そうなってしまうと国際金融センターどころではなくなるわけであります。これは先ほど強調しましたように、市場型金融振興といった重要度の高い根幹の問題に取り組むことがまず大事であって、それなしに国際金融センターになるためにはああしたらいい、こうしたらいいというアイデアは、恐らく際限なく今後も出てくると思うんですけれども、そういう取っつきやすい、改革しやすいところが先行して、本当に重要なところがなかなかこれは難しいからといって置いていかれるようでは、これは本質的な変化というものは期待できないと思っています。

それから、最後のところですが、国がすべきことと、地方、民間、市場に任すべきことは峻別する必要があると思います。国としては、やはり基本は投資家保護、金融システムの健全性の確立、それから基本的なスタンスとして、日本のような国は産業政策よりも競争政策というものをまずは優先していくというのが当然の話だと思います。

以上の総論を踏まえまして、私は次の3つの課題を優先課題として挙げたいと思っておりまして、10ページですが、第1は何といっても市場型金融の振興ということでありまして、そのためには、一つは相対型の金融分野の政策の見直しが必要だと思います。象徴的な意味しか持たないかもしれませんが、決済用預金の全額恒久保護措置の再考というのは当然あってしかるべきだと思いますし、それから重要なのは金融機関間の健全な競争。健全な競争というのは、コスト、リスクを無視した過当な競争でもなく、かつ少額預金者保護とか、システムリスク防止といった最低限の目的以外の公的支援は避けるということであります。

それから、政府系金融機関の改革の徹底も不可欠でありまして、これが民間金融機関のリスクに見合わない金利の設定ですとか、資本市場の発達を阻害しているということは、既に公的にも指摘されている、その可能性が指摘されているということでもありますので、この意味でもこの分野における改革の後退というのがあってはならないと思っております。

それから、個人の資産形成促進、税優遇スキームの導入ということですが、これは別に国際金融センターをつくるためということでは、もちろんないわけでありますが、事実としてこうしたものが既に欧米に存在しておって、高齢化問題等への対応として、より重視されつつあるということはあるわけであります。米でもいろいろなスキームがあります。こうした仕組みが投資信託の拡大に明確に寄与したということは、実証分析でも確認されているところであります。

それから、税ということではもう一つ、企業財務行動に対する税の中立性の追求ということも、これはやはり既に欧米では一定の対応がなされているところでありまして、このページに挙げたような相当根本的なところにおきまして、欧米と日本というのは非常に異なる枠組みとなっている。こうしたところに対する取り組みがなされないまま、貯蓄から投資というものが実現しないのは、ある意味当然かもしれないと思いますし、国際金融センターどころか、銀行システムに過度に依存した構造のままでは、国際金融センターどころか経済の足を引っ張る金融のままになってしまうのではないかと思っております。

次のページでは、米国では「貯蓄から投資へ」に、401Kの普及ですとか、IRAが貢献したことを示す表を掲載しておりまして、左の上下は401K、IRAにおける資産選択において投信の比率というのは非常に高まっている。これは、やはり長期投資という性格を考えると、投資性の商品に資産をより配分した方がよいということが人々に普及してきたというところがまず背景としてあると思います。

それから、右の上の図は、米国の投信保有において401K経由、それからIRA経由合わせると3分の1程度もあるということであります。その下の図にありますように、特に新規の投信購入の入り口としましては、401K経由というのが大きなウエートを占めておりまして、いわゆるベビーブーマー世代においては、その6割以上が401Kで初めて投信というものに接したということがわかるわけであります。

次に、第2の課題でありますけれども、金融ストックの活用ということがあると思います。フローの経済規模では、早晩、中国、インドが日本よりも優位になっていくことは、これは明確であります。しかし、過去からの金融ストックの蓄積というのは、すぐには揺るがないわけでありまして、まず金融資産の有効活用というのは考えられると思います。個人金融資産における市場型金融振興というのは、前のページで述べたところであります。

それから、機関投資家の運用の高度化というものも挙げるということができるかと思います。機関投資家がより高度な運用をしていくこと、追求していくことを通じて、さまざまな付随的なスキルを持つビジネスというものも日本に集まってくるということが言えると思います。もちろん、これも言うまでもなく、金融センターのためではなくて、制度本来の目的達成に寄与する話だと思います。

それから、資産だけではなくて、負債もたくさんあるわけでありますが、これをより市場型金融にしていくということで、住宅ローンの証券化は進んでおりますけれども、まだまだ米国に比べてわずかでありますし、それから、負債ということでは地方債もアメリカで完全に市場調達されているところが相対的になっていくわけでありますし、こういった商品というのは、単に調達の効率化ということではなくて、投資家に対する優良な運用商品の提供ということでも重要かと思います。政府資産・負債の圧縮の議論も今されているようですけれども、そこにおいてもこうした視点は考慮されていいかもしれないと思っています。

最後に3つ目の課題としまして、市場のクオリティですね。質的向上ということも強調したいと思っています。中長期的に経済の規模自体ではハンディを負うマーケットだというふうに日本がなったとしましても、クオリティ、量ではなく質の高さでは比類なき市場であるというふうなことを目指すというのは、志としてはよいのではないかと思っておりまして、クオリティとは何かということでは、例えば先ほども英米で指摘されていると申しましたけれども、人材の話とか規制環境、あと取引インフラというのもあります。これに関しましては、いわゆるベター・レギュレーションに関する検討をしていくことは有意義かと思っておりまして、特に、昨今、原則ベース、ルールベースではなくてプリンシプルベースへの規制というものが評価されていることについてでありますけれども、我が国では裁量行政批判とかもありますし、まずは明確なルールを入れてくれ、事後監視だ、そういう声も強いわけでありますし、包括条項も利用されにくいという環境を考えますと、この他国における原則ベースへの規制の評価の高まりというものをどう扱っていくべきかというのを考えていかなくてはいけないと思うわけであります。

それから、原則ベースとは一体何なのかということもありまして、イギリスでもFSAはルールブックが8,000ページ以上もあると聞いておりまして、どこが原則ベースなんだという声もあるやに聞いております。ただ、少なくともこの問題というのは自主規制機関のあり方も含めて考えていく必要があるのは確かだと思っておりまして、例えば原則ベースというのであれば、本来、倫理ですとか行動規範といったところが、まずは問われていってしかるべきだと思うんですが、倫理まで行政がコントロールするわけにいきませんから、やはり個々の業者あるいは自主規制機関のコミットメントというものが不可欠ではないかと思っております。

あとは、ベター・レギュレーションということではコスト・ベネフィット分析、業界とのコミュニケーションのあり方の改善ということは、今後、考えられてしかるべきだと思いますし、この辺の検討につきましては、これは放っておくと、ひょっとしたら将来的に英米で証券監督・規制のコンバージェンスというものが進む可能性もあるのではないかと思いまして、そういうことも念頭にしながら、我が国でもこうした点を議論に着手する必要があるのではないかと思っています。

取引インフラにつきましては、証券現物、金融デリバティブ、商品デリバティブ、その他広範な投資商品の取引所の融合というものを可能にしていく。そういう広範な投資商品をまとめて取引できるような取引所というものを設立可能にしていくということは有意義かと思います。それから、競合的な電子取引の台頭も、当然、許容していく必要があると思います。

それから、プロに限定したような市場ですね。あるいは非上場市場といったものの試み、そういうのも考えられると思いますけれども、こういう従来よりも緩い規制でよしとするようなマーケットをつくるとすれば、先ほども申したような、プロとしての自己規律とか自主規制というものが、まずはきちんと働くことが前提となると思います。

それから、ベター・レギュレーション導入、それから商品先物取引も含む広範な投資商品を取引できるようなマーケットをつくろうといったところでは、金融商品取引法の改正というものも、さらなる改正というのも視野に入れなくてはならなくなってくるわけですが、これについては既に国会で附帯決議もあるところでありますから、既にこうした議論をしていくということは既定路線というふうに考えられるかと思います。

最後のページでは、14ページ目ですけれども、主要な取引所の時価総額とか経営指標を掲げているわけでありますが、強調したいことは、デリバティブが取引所の競争力のかぎと今はなっているということであります。一番時価総額の大きいマーケット、シカゴ・マーカンタイル・エクスチェンジですけれども、ここは商品先物も、金融先物も、証券先物も、さらには天候デリバティブですとか、住宅価格指数先物とか、さまざまなイノベーションを導入しておりまして、いろいろな商品を取引する総合的なデリバティブ取引所であります。ほかのドイツ、ユーロネクスト、これらの高い時価総額を誇っています取引所も、総じてデリバティブビジネスに強いところでありまして、そうした意味でも、現在の枠を超えた取引所の創設というのを日本でも認めていくということは、競争力という観点からも有意義かと思っている次第であります。

以上、3つの課題を強調した次第であります。後半は昨今の米国における金融・資本市場競争力強化論の概要を添付しております。

以上で私の発表を終わらせて頂きます。

○池尾座長
 どうも大変ありがとうございました。

それでは、最後に中前さんからお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

○中前参考人
 先ほど淵田さんの方からありましたけれども、前回の金融ビッグバンがちょうど10年前でありましたので、大体こういう議論が10年ごとに起こるという想定で、これから10年ぐらいを見て議論をさせて頂きたいと思います。

10年ぐらいを考えた場合に、第1の問題は、現在の国際化という場合に、国際化のベンチマークとなるような海外市場の状況が、10年ももつようなサステイナブルな状況にあるかどうかであります。一言でいいますと、世界の現状は過剰流動性の中で、相当にバブル化していて、この10年というか、5年ももたないような状況だと思いますので、議論をする場合に、そういうところをまず頭に置いておく必要があるのではないかと思っております。

そういった大きな変化の背景には、2番目に歴史的な問題があると思いますが、それはアメリカ資本主義の変貌が大きく起ころうとしているのではないだろうか。それはレーガン・サッチャー改革と言われる市場主義、それからグローバライゼーションの流れが、最終局面で株価至上主義になって、極端に高株価を追求するような経済社会になってしまった。これに対する反省が、多分あらゆる国で起きてくるのではないかと思います。

3番目の問題としまして、先ほど議論にでたニューヨークの地盤の低下傾向があります。ロンドンがいろいろな指標でニューヨークを上回ったとか、あるいは香港、シンガポールといった、あるいはドバイとかいったところが急激に浮上しているとかいった問題がありますが、見落としてはいけない問題は、どの市場に行きましてもアメリカのインベストメントバンクがメジャープレイヤーであります。つまり、国際競争力というのは、アメリカのインベストメントバンクがいかに仕事がしやすいかということが、今の基準になっているような気がいたします。

そういうふうなことを踏まえますと、当面、まず考えなければいけないのは、危機管理をどういうふうに整備しておくかということだと思っております。そういうふうな問題意識を踏まえて、まずアメリカ資本主義の変貌を、アメリカの雇用、アメリカの賃金といったところの数字でまず最初にご覧頂きたいと思います。

次のページをご覧頂きたいと思います。1ページとしてあります。

今回のアメリカの景気回復は、2002年から最近まで続いているわけでありますが、この2002年3月から2006年3月にかけて、この右上の数字をご覧頂きたいのですが、全産業ベースで1億600万人から1億1,100万人に、大体480万人雇用が増えております。大体1年間120万人ですから、ちょうど1%強の伸びですが、これを横にご覧頂きますと、最もふえたのは99人以下の小企業です。だんだん右に行って頂ければわかりますが、この増加額は1,000人以上の大企業では37万4,000人の減少となっておりまして、アメリカの雇用の増加の主役は、中小、特に小企業です。

それから、縦に見て頂きますと、どういう業種が伸ばしたかということですが、これは上から順に、教育・医療サービス、専門及びビジネスサービス、娯楽というふうなところが上位に来ておりまして、下のように、製造業とか情報といった労働生産性が非常に高くなっているところは伸びがマイナスであります。金融について言いますと、真ん中の方にありまして、やはり金融の場合も大企業のところでは雇用が、この4年間で減っているわけであります。

そこで、次のページに移っていきますが、賃金の動きであります。

週給で示してあります。アメリカの全産業平均が、右上のように週給847ドルです。これは年収4万4,000ドルで、円にしますと530万円であります。左側に移って頂きますと、やはり小企業が最も低くて、大企業が最も高い。つまり、賃金の低いところの雇用が非常に伸びたという問題であります。

それから、縦にご覧頂きますと、産業別では金融、情報、製造業と、金融が上の方に来ておりまして、下の方にその他サービスとか娯楽といった、教育・医療サービスもありますが、雇用が伸びたところほど賃金の水準が低い。

そこで、最も賃金が高いのはどこかといいますと、1,000人以上の金融のところで3,664ドルです。これは年収19万ドル、円にして2,300万円相当であります。これは金融機関88万人のところですが、金融機関のバックオフィスも含めた平均給与です。最低は、左下の99人以下の娯楽のところでして303ドル。円にして190万円ぐらいです。

これはいろいろな見方ができますが、最大の問題は、金融があまりにも儲かっている。ここまで金融が大きくシェアをとっていいのだろうかというのが、レーガン主義に対する反省として、今、出始めているのではないかと思います。

それから、これは賃金で申し上げましたが、アメリカの企業収益を見てみますと、民間産業の、連結する前の国内だけですが、収益の大体35%が金融部門であります。しかし、これは製造業に含まれるGEキャピタルとかGMACは含まれておりませんで、こういったものを入れますと、優に50%を超えるという推計になっております。明らかに金融が国民経済のシェアをとり過ぎている。

日本の資料を拝見しておりますと、GDPに占める金融の割合が6.5%で、アメリカが8%台、ロンドンも8%台ということですが、私は6%をさらにふやすようなことを考えるべきではないというふうに考えております。

最後のページをご覧頂きたいのですが、アメリカの非金融法人企業の数字ですが、この左上の濃い線がキャッシュフローです。細い実線が設備投資で、この下に投資/キャッシュフロー比率を示していますが、キャッシュフローの7割弱しか設備投資に回っていない。約30%ぐらいのフリーキャッシュフローがあるわけですが、これは一体どう使われているのかといいますと、右側で、点線がフリーキャッシュフロー。キャッシュフローマイナス設備投資という数字ですが、その上の実線が自社株買いと配当です。つまり、広い意味での株主還元がフリーキャッシュフローの2倍以上になっている。結果的に、その不足分を外部資金の調達ということでやっているわけであります。これもやり過ぎではないだろうか。

つまり、こういう形を通じて、アメリカの企業の借入比率といいますか、英語で言えばギアリングが急激に上がっていて、最近の日本企業に対するアメリカのヘッジファンドとかプライベートエクイティの要求もだんだんと、もっと借金しろ、あるいは金が余っているなら配当しろという議論になるわけであります。こういう議論が成り立つ時代と、やり過ぎになる時代があると思いますが、これが今や相当やり過ぎになっていると見ております。

それから、ギアリングに関していいますと、こういうふうに上がった理由は、一つはプライベートエクイティを中心にしたM&Aの行き過ぎがあると思います。M&Aで相当高いコストで企業を買収して、元利払いはフリーキャッシュフローでまかなうわけですから、どうしてもフリーキャッシュフローを増やしていかざるを得ない。したがって、少しでもキャッシュフローが落ちるようなことになりますと、アメリカの企業経営は設備投資をどんどん落としていくことをまず第一にやる。そういう意味で、現在のアメリカの資本主義というのは、国民経済的に見ると、相当な行き過ぎ、株式を中心にした資本主義が行き過ぎになっている、これが私の基本認識であります。

そういうことを踏まえて、最初のページのメモに戻って頂きたいと思いますが、競争力という場合に、競争力が日本の金融機関で劣っているという場合、よく言われるのが金融新技術という問題です。具体的にどういうことかはいろいろあると思いますが、大ざっぱに言えば、最近のファッションはヘッジファンドであり、プライベートエクイティであり、CDOであり、M&Aである。こういったものがあること自体、100%否定するわけではありませんが、基本的には、これは、過剰流動性のもとで、余った資金を使って、言ってみればアービトラージがどんどん行われているにすぎない。国民経済的に必要な機能は、極めて小さい。むしろ、本来、まじめな企業がこういったプライベートエクイティのM&A攻勢に対して身を守るために本業の経営がおろそかになってきている、そういうリスクの方が大きいのではないかと見ています。

それから、プライベートエクイティは60年代ぐらいから出てきたわけですが、当初は、ベンチャービジネスであるとか経営がおかしくなった企業を買収して、5年なら5年の間に企業を再生して、付加価値をつけた形で市場に戻すという役割、これは非常に大事な役割だったと思いますが、最近のように、プライベートエクイティが非常に数が多くなって、資金量も豊富になってきますと、もうそういったことではなくて、市場に出ている株をあたり構わず買っていく。それは資金調達コストがあまりにも低いからであります。そういったところで、今、これに追いつくような技術を磨いたとしても、私は手おくれだと思います。また、あまり意味がない、そういう認識であります。

本当に必要なのは、2番目に入りますが、金融市場の役割をどう考えるかということで、先ほど来、2人の方のプレゼンテーションにもありましたが、私は基本的には、ロンドンのように、国内のバックアップが非常に小さい経済では、金融産業というのは主要な基幹産業です。しかし、ニューヨークがロンドンに劣らないようなことを目指すのは間違いだと思っております。

ニューヨークは背後に大きな経済を持っているわけで、そこに国民経済から最も優秀な頭脳を吸収していくというのは非常に大きな問題で、むしろ最も優秀な頭脳は、製造業であるとかサービス産業で吸収していく方がはるかに合理的である。私はいずれそういうことになっていくのだろうと思います。

それから、では何をやるのかということを日本で考えますと、日本の場合、金融ビジネスのファンクションをいろいろ考えますと、まず資金調達ということでは、大企業はもう資金調達の必要がない、そういう存在です。必要なのは、中小企業ファイナンス、それから家計、特に住宅ローン、それから政府の赤字ファイナンスの問題で、こういったものをいかにスムーズにやれる市場環境を整えるかということだと思いますが、その中で最も重要なのは、中小企業の育成です。

「貯蓄から投資へ」ということをいいますけれども、この10年ぐらいで1,500兆円の家計の金融資産のうち、何百兆円が移動できると考えられるだろうか。多分100兆円にもならないだろう。それはなぜかといいますと、既存の上場企業に対する投資だけでは到底そういうことはあり得ない。値上がりだけを期待するということになります。したがって、次々と新たに企業が上場してこなければいけないわけですが、現在の日本では中小企業を育成する条件が整っていない。特に問題なのは税制でして、今の税制改革は、常に上場企業を頭に置いて議論がされがちであります。しかし、今一番重要なのは、中小企業の二重課税問題だと思います。

1つは配当の二重課税ですが、非上場企業というのは、源泉分離課税が10%でなくて20%である。それから、非上場企業の配当は、一定額を超えると、非常に低いシーリングですけれども、総合課税になっております。そうすると、企業をつくって成功してもあまり税制上のメリットがないといいますか、税制上のデメリットが非常に大きい。

2番目に、役員賞与の二重課税問題であります。中小企業における役員というのは従業員と同じですが、儲かったからといってボーナスを出せば、またこれは税引後の利益から出さなければいけない。またこの所得が総合課税になっている。これに加えて、今回、若干の修正がなされるようですけれども、内部留保の課税という問題もあります。これでは、中小企業は大きく儲けてはだめだという、そういう税制になっている。したがって、中小企業で成功する場合の目標は、常に上場時の売却益が最大の目標になって、上場したときに大体もう経営者は目的を達成しておしまいということになります。これでは新興市場も一部市場も大きく伸びていかないだろう。

それから、2番の中の最後の問題として、こういう中で、いずれにせよ、「貯蓄から投資へ」ということをやるには、どうしても国際投資、海外証券を買っていく以外ありません。そのために、資産運用の技術を国際化という観点から伸ばしていかなければいけないということは、前のお2方のプレゼンテーションに全く同感です。

3番目の問題は、ちょうど10年になった金融ビッグバンの総括が必要だと思います。私はここでは2点申し上げたい。これも前回の資料を拝見しておりまして見た数字の中に、外資系金融機関の進出状況がありまして、最大のものは証券業。ここでは資産ベースで大体半分ぐらいになってきている。しかし、銀行業では、まだ10%にも届いていない。これが実は自由化の問題でして、外国の金融機関というのは儲かるところにしか出てこない。必要であっても出てこないので、自由化、国際化に頼って、マーケットをオープンにすれば自然によくなるということではないと思います。

それからもう一つ、これが結論ですが、この10年間を振り返ってみて、確かに金融ビッグバンをやって、古い体質を相当変えることができたという意味では、よくやったというところはありますが、しかし、ここで明らかになったことは、やはり日本人というのは、アングロサクソン的といいますか、ユダヤ的といいますか、金融ビジネスにあまり体質が合わないのではないかということであります。つまり、相当あくどく、人をだましても儲けるというような体質になっていない。やはり日本は、優秀な頭脳は金融よりも製造業とかサービスの方で吸収した方が合理的である。金融は国内の必要なところをサポートする役割に徹した方がいいのではないだろうか。運用部門だけはもっと別に考えていく必要があるのではないかと思いますが、私はそういうふうなことを結論としてプレゼンテーションを終わらせて頂きます。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

お三方から大変興味深くて、かつ本質的な問題提起をして頂いたと思います。あと残された時間につきましては自由にご議論をして頂きたいと思いますので、手を挙げて頂くかネームプレートを立てておいて頂ければと思います。

ではどうぞ、若松委員。

○若松メンバー
 どうも、本当にお三方のご説明、非常にわかりやすくて勉強になりました。どうもありがとうございました。

私はメディアの方から入っている委員で、若干一言、ちょっと抽象的かもしれませんが、2回目ということなので申し上げさせて頂きたいと思います。

今の議論でもありましたけれども、金融ビッグバンから10年とか、いろいろ月日がありましたけれども、私は日本の場合には、やはり議論を粘り強く進めていく必要があると思うんです。最後に中前先生が若干触れられましたけれども、私が一番、特に報道からの拙い経験から感じることは、ここにいらっしゃる皆さんのように、金融に対する非常に知識の深い方とか、あるいは国際的なプレーヤーと競って非常に実績を上げられた方とか、いわゆる金融の先端にいらっしゃる方と、一般国民の金融とか市場に対する知識とか、理解という言葉がいいかわかりませんけれども、そこのギャップというのは非常に大きいものがあると思うんです。特に、それは欧米諸国と比べても、やはり非常に大きいんだろう。だから、一つには、「貯蓄から投資へ」というのが、なかなかかけ声とかいろいろあっても動かないのではないか。

もう一つは、国民から見た場合には、市場に対する不信感あるいは先端の金融産業に対しても、まだちょっとよくわからない、あるいはアメリカの姿について若干行き過ぎなのかなどと、あるべき姿について、国民の間にもまだ価値観というものが統一されていない、非常にまだみんな揺れ動いているというか、まだ分かれているところだと思うんです。

ただ、今回のこの議論が始まった、日本市場が各国との激しい競争の中で、今後、地位が低下していくのではないかという、金融庁の方から示されたこの間の資料や懸念とか危機感、そして国際競争力の強化という、この議論の方向性については多くの一般ビジネスマンも共有できることだと思うんです。その結果として、新聞などでも別に何かまとまったわけではないのに、こういう議論が始まったということについて、経済面で、背景などについて大きく取り上げられている。やはりこれは、今、大きなチャンスだと思うので、国民に向かって、今、これが一体何のためなのか、そして、その目指す姿をわかりやすいメッセージで伝えていかないと、結果として、幾ら立派な提言が出ても、それが現実問題として進んでいかないわけなんで、やはり世論というものは大事なのではないかと思います。

それから最後に、今、ご報告された方に若干質問させて頂きたいんですけれども、日本の市場の信頼性について、若干触れられた方もいらっしゃいましたけれども、これについては、欧米と比べて、今、どのような見解をお持ちなのか、もし教えて頂けたらと思います。

○池尾座長
 ちょっとお答えしにくい感じの質問かとは思うんですが、日本の金融・資本市場の信頼性という意味で、クオリティですね。クオリティの中でも信頼性という尺度で見たときのクオリティについてどう評価されているかというふうなことですが、どなたか、いかがでしょうか。
○中前参考人
 このお二方は言いにくいでしょうから。

別に日本だけが特別ということはないのですが、私の感じるところでは、今の日本の株式市場というのは極めて信頼性が小さい。つまり、先物指数だけで相場がどんどん動いて、それがかなり恣意的ですね。それをむしろ、一部の外国系のファンドあたりが、株価操作をやっているのではないかというのが、大体市場の共通認識になっている。

しかし、ニューヨークやロンドンでそういうことがあれば、相当当局は厳しく対応しているのではないだろうか。そういうところで、年金とか、ヨーロッパの地方のトラディショナルな投資家から見ると、ひどい話だなという批判が随分出ているのではないかと思いますが、これは印象論であります。

結局、ライブドアのときの、個別に述べますけれども、ああいうM&Aの場合も、欧米ならもう少し衣をかぶせたやり方をしますよね。だけど、東京でなら、オープンにやっても平気だというような感じがあるのは、日本人としては非常に不愉快な問題だと思って私は見ておりました。

○池尾座長
 ほかに。藤巻委員。
○藤巻メンバー
 中前さんのプレゼンテーションに対し、幾分違和感がありますので、ちょっと意見を言わせて頂きたいんですけれども。

一つ、アメリカの金融が国民経済でシェアをとり過ぎたというご発言がありましたけれども、これは翻って日本のことを考えてみますと、もし金融が低迷していった場合何が起こるか。メーカーの人たちにお金が回るのかということなんですけれども、私はそうではなくて、現状では隣の国に13億人という労働人口がいるわけで、そういうソフトでないというか、高度技術でない労働力というのはどんどん中国に移ってしまうと思うんですね。金融がシェアを減らせば、ほかの産業に仕事が回るとか、金が回るということではなくて、それは中国の方へ行ってしまう。要するに、テクニックを必要としない労働というのは、やはり中国とか、そういう方へ回っていってしまって、金融がだめだったからそっちへ回るということではないと思うんです。

逆に言うと、そういう技術が必要でない労働というのは、他国へどんどん移っていく時代にあるわけですから、やはりこういうソフトとか金融とかという行動、知識等が必要な産業を生かしておかないと日本は生き延びられない、もしくは日本人の働く場所がなくなるという問題になるのではないかというふうに一つ思います。

それから2番目に、今、過剰流動性バブルだから、いずれ崩壊するのではないかというご発言がありましたけれども、現物のお金という面では、確かに日本を初めとして過剰流動性があるかと思います。しかし、10年前、20年前と比べると何が金融で違ったかというと、先物市場を活用するようになったということで、先物市場というのは、基本的には売りが先にできるというメリットと、それともう一つ、レバレッジがきくということで、何十倍もの取引が盛んになったということ、これが一番大きい、マーケットの流動性が大きくなったことだと思いますので、一概に今後、金融、中央銀行が引き締めに入って過剰流動性がなくなっていくというふうに思い込むのは断定のし過ぎかなというふうに思います。

それから3番目に、なかなか貯蓄から投資に行きにくいのではないかという話がございましたけれども、これは私個人としてはいずれ資産インフレ並びにインフレは来ると思っているんですけれども、そういう時代に来れば、日本人というのはがらっと貯蓄から投資に動くのではないかなというふうに考えます。もちろんのこと、日本の産業が新しい産業を生んでいくためには、当然、リスクマネーが必要なわけであって、それは多少今のデフレ懸念からインフレへと動いていくことによって、投資に回る金も増えてくるし、だからこそ、今のうちにきちんとした制度をつくっておく必要があるのかなというふうに考えます。

最後に、金融よりもメーカー業の方が重要だという発言に関してですけれども、現状、日本の経常黒字等を考えますと、去年、一昨年と、物プラスサービスよりも所得収支の方が大きくなっているわけで、日本全体としてもいかに所得収支を伸ばしていくかというのが、まさに日本経済としても死活問題になってくるんだと思います。ですから、一概に金融は絶えずメーカーのサポート役に徹するべきだというふうに考えていると、日本経済がシュリンクしていってしまう理由になってしまうのではないかというふうに考えます。

○池尾座長
 やり合うのもなんなんで。根本委員が発言の……。
○根本メンバー
 ご質問させて頂きたいんです、せっかくの機会なので。

まず、打越メンバーにお伺いしたいのは、4ページ目に東京市場での運用調達力の拡大というご指摘がありまして、例えば私がぱっと思い浮かんだのは、外国会社の日本での上場が減っているとか、上場しても撤退してしまうことが多いとか、それは香港などと違っているというようなことを聞きまして、その一つのネックとなっているのが、日本語の開示が負担になっているというようなことも聞くわけなんです。一方、これは投資家保護という目的がそこにあるんだと思うんですが、例えば英文である程度開示もでき、専用のマーケットというか、プロの投資家を対象にするとか、そういった解決もあるのかどうか、ご意見をお伺いしたいと思いました。

あともう一つは、淵田委員にお伺いしたいんですが、10ページ目に相対型金融分野の政策の見直しというのがありまして、3行目くらいに、民間金融機関がリスクに見合った適正な金利を設定できないという、これは委員のご発言ではないんですけれども、そういう指摘がありました。個人的には、この問題が資本市場の根本にある問題ではないかなと思っております。例えば、社債の発行があまり伸びないのも、あるいは証券化があまり起こらないのも、結局は金融機関がかなり安いコストで資金を供給しているため、わざわざ直接調達に行かなくてもよい、というところがあると思うんです。

また銀行のローンの流動化に関しても、例えばローンの格付けという制度もあるわけですが、現状あまり普及していません。その理由はいろいろあるんですけれど、わざわざそういうディスクロージャーをしなくても、ローンの取り手というのはかなりあり、そんなに信用リスクを厳密に評価しなくても、というような、行動があるかと思います。

ただ、この解決策として、政府系金融機関の問題がそれほど大きいのかというのがちょっと疑問です。政府系金融機関の貸し出しというのは、財投改革もあってかなり小さくなっておりますし、あと、最近、住宅金融公庫というのは直接貸し出しをしていないんですけれども、それによって住宅ローンの市場が適正な金利になっているのかというと、決してそうではないと思うんですね。むしろ逆の感じがありまして、民間金融機関の金利のダンピングとか、審査基準の緩和ということがかえって進んでいるように思うので、そこはかなり根深い問題があるのではないかと思いまして、ご意見を伺えればと思いました。

以上です。

○池尾座長
 では、今の点について手短にお答え頂けますか。
○打越メンバー
 ご質問が長くてちょっと正確ではないかもしれませんけれども、外国企業上場のというのは、やはり英文開示だとか、ジャパン・GAAPの問題もございまして、要するに発行体側からすると、コストを埋めても何か高い値段がつくとか、あるいは上場することによって人の採用ですとかビジネス上の何かメリットがあるだとか、そういう部分も含めて考えたときに、私の個人的な印象ですけれども、発行体側からあまり日本市場に上場するというのがこれまではなかったというのが事実だと思います。今後もその流れというのは、日本の国内市場がどういうビジネスマーケットになっていくのかということにも関連するんですけれども、個別には日本にそういうコスト上のデメリットあるいは会計の問題とか、そういうデメリットを超えて上場するという会社は出てくるとは思います。

英文開示とか、ちょっと普通の上場とは変えた形で上場を促すような施策は可能なのかというご質問もあったと思うんですけれども、これは最近の投資家の海外投資への関心の高さということを考えると可能ではないかなと。こういうことを検討するのは意味があると思います。ただ、それにしても、その会社の評価をする、例えばバリュエーションですとかですね。そういう周辺の情報の提供、その会社のバリュエーションというか、価値の判断、そういうものが同時になければ、単に上場したからといって、なかなか投資家がついてくるかというと、それは違うんだろうというふうに思っています。

○池尾座長
 淵田委員、いかがですか。
○淵田メンバー
 ついでに英文開示の話もちょっと触れますけれども、外国企業の上場廃止の続出については、本当に英文からの翻訳コストが重要かという点については、そうではないのではないかという議論もありまして、例えば上場を伴わない日本での公募資金調達というのは外国の企業は結構やっているという事実がありまして、こちらも日本語に翻訳したりしているわけですけれども、そちらは数、量が増えている。そうすると、結局、上場するか、あるいは上場を伴わない調達をするか、後者の方が増えているとすると、流動性に対するプレミアムが小さいということでありまして、上場してもそれによって売買が活発になって資本コストが低下するということが期待できないのであれば、あえて上場しないといったことが働いているという可能性があります。売買が少ないから撤退するというのがある。では、どうやって売買を高めるかという議論、これは尽きないわけでありますけれども、一つ指摘したいのは、必ずしも英文開示が大きなネックかどうかについては議論があるということについてちょっと申し上げたいということです。

それから、相対型のリスクコストに見合わない条件設定ですが、これはもう何か永遠の課題みたいで、私もどうしたらいいのかわからないんですけれども、強いて言えば、ご指摘のことは全くおっしゃるとおりだと私も思っています。どうしたらいいかについては、迂遠なようでありますけれども、例えば、一つはバーゼル II のような、よりリスクセンシティブな規制の導入ということを通じまして、よりそうしたリスクに見合わないことをやっているというような金融機関がマーケットあるいは行政に通じてペナライズされていくといったような枠組みがより普及していくということとか、あるいはもう一つは、オーバーバンキングというのは、結局オーバーデポジットだという議論もありますから、預金が絶対何があっても守られるというような枠組みでは、そちらに対する選好というのは非常に高いわけでありますから、そうではないんだよと、おかしなことをやっているところはつぶれてしまって、そして預金だってひょっとしたら危ないんだよというようなことが当然のごとく普及していけば、国民のビヘイビアーというのも変わっていくかもしれない。

したがって、トゥ・ビッグ・トゥ・フェイルとか、日本は小さいところも守ってきたという歴史がありますので、その辺に関する人々の認識を変えるような方向が必要かなというふうに思っています。

○池尾座長
 それでは、田村政務官。
○田村政務官
 メディアの方が貴重な問題提起されたので、ここでもそうですし、諮問会議の専門調査会でも同じことをやっているんですけれども、金融庁としても、私個人としてもたくさんヒアリングを積み重ねてきまして、何をやるべきかというのは大体クリアになっていいるんですけれども、あとはどうやるかが大事になってきまして、どうやるか、ちょっと話が飛んでしまうんですけれども、どうやるかのときに、国民に対する説明責任というのが政府としても要るし、政治家としても非常に大事になってくるわけですね。

そこで、意義はどうかということなんですけれども、国民にわかりやすくこれが伝わるかということで我々は悩んでいるところなんです。例えば、今、格差の問題がよく言われますけれども、これは格差の種になりやすいテーマなんですね。東京だけかよというと、名古屋や大阪の人たちは怒るし、金融だけかよというと、またこれも格差のネタにされやすい話なんです。

しかし、金融を使って日本の魅力を上げていくことがいかに国益にかなうか、国民のためになるかということをどう説明していくかというところが一番大事なわけで、私は幾つか用意しているんですけれども、一つは、これは金融に限らず、少子高齢化の時代ですから、1人当たりの国民の生産性を上げていくということは絶対不可欠なわけです。これは製造業でもそうです。一番低いと言われているサービス産業、その中でも金融の生産性を上げていく、国際競争力を高めていくというのは、単純にこれは必要だという説明をしています。

次に、これは国家財政とか年金の運用にかかわる話なんですけれども、助ける部分が多いわけですね。例えば年金、今、11%を株式でやっているんですけれども、未納、未加入の問題とかよりも、運用効率の低さの問題が今まで年金の非常に大きなネックだったんです。この3年間、株が上がっただけで未納、未加入の問題よりも大きな貢献が年金の運用でできたわけですね。しかし、資本市場や債券市場を魅力的にしていくことで、年金の運用や国家財政の改善、これに大きく資することができる。国民の負担を減らすことができる、こういう説明もしていこうと思っています。

また、金融というのはガバナンスのツールなんですね、プロの方がいらっしゃる前であれですけれども。ガバナンスの効いたお金、これを製造業に入れていくことによって、製造業自身の生産性ももっと高まる。まだまだ、例えば日本の製造業でも完全に内向きになっていって、販売やマーケティングを怠って、いいものはつくっているけれども売れない。ガバナンスが効いていないんでますます内向きになっていく。しかし、ガバナンスが効いたお金を入れていくことによって、ガバナンスもキャッシュフローも改善して、その製造業自身も生産性を高めていく。また、多様な資金調達手段を増やすことによって、金融業以外の製造業も競争力を増していく、こういう説明もしようと思っています。

最後に、やはり国際分散投資ですね。日本のお金が国際的にもっと分散投資されることによって、ODAの代わりも果たしていくわけですね。いろいろな形で途上国にも入っていく、BRICsという国にも入っていく。今、ODAというものが国民のいろいろなプレッシャーを受けて、1兆円あったものが7,000億円に減っていますけれども、これを民間のお金が代替していって、世界とともに発展する日本を目指す。これが、またお金として、リターンとして返ってきて国民を潤す、こういうふうな説明をしていこうと思っています。そのために、国民の皆さんの理解を得て、我が国の金融市場を国際化することが大事なんだということを訴えていこうと思っていますし、これは大きなテーマなんで、皆さんもぜひいいプレゼンの仕方、アカウンタビリティの果たし方があったら、また教えて頂きたいと思います。

私からは以上です。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

まだもう少し時間がありますので、引き続きご意見。

○江原メンバー
 今、田村さんの意見を聞いて、それの延長線上のような話になってしまうんですが、金融ということを語るときに、比較的日本では資金調達というところにスポットが当たる傾向があるかと思うんですが、実を言うと、日本という国は、これからはまさしく運用の方の世界なんだと思うんです。それが年金だとか個人レベルの話だとか、また国レベルの話というのがあるんですが、それが元本保証型の投資にあまりにも偏り過ぎている。したがって、国債ないしはUSトレジャリーというところに行っている中で、では我々と似たような国は何をやっているのかということを考えてみると、例えば中国のケース、私が聞くところによりますと、明らかに日本の今までのパターンとは違った形での、もう少しミディアムリスク・ミディアムリターンというものを目指した運用をしていこうではないかというふうに考えているというようにも聞いていますので、やはりそういう意味でも国際的なレベルでの競争というものを意識したときに、さらなる運用技術の高度化というものは日本の金融市場においては不可欠ではないかなというのがまず一点です。

もう一点は、ではこれからどうやってこれを取り組んでいくべきなのかということで、私としては、やはり日本で一つ大きく欠けている点があって、これはやはり省庁を超えたレベルのコミットメントというものがこのプロジェクトに必要なのではないかなというふうに考えております。この場で金融庁の方々がイニシアティブをとって健闘していらっしゃるのは、これは大変ご立派なことだとは思いますが、やはり税の問題、法律の問題及び産業の問題及び日銀、こういうふうなレベルでの、もう少し高いレベルでのコミットメントというものが、この日本の本当の意味でのファイナンシャルセンターないしは資本市場の活性化というものには必要ではないかなと思います。

それと3つ目のポイント、これは言葉じりをとらえているつもりは全くないんですが、よく日本はものづくりの国だというふうな表現をされるケースが多いんですけれども、実を言うと先物市場というのは江戸時代の日本の米市場から始まっているんですね。したがって、日本人が金融というふうなものに対して全く能力がないというのは、これは適切ではなく、私はやはりこの金融というものが日本の基幹産業であるというような認識のもとで、いかに雇用の再生等々にもいい影響を及ぼす、ないしは個人の資産、国の資産を増やすのにどれだけ役に立つのかというところをやはり再認識すべきではないかなと思います。

ちょっと長くなってしまいますけれども、一つの例を出させて頂きますと、アメリカの大学のケースを出しますと、大体1兆円から5、6兆円の基金を持っている大学が多うございます。こういうようなところが過去5年間を見ると、若干のばらつきはあるかもしれませんけれども、大体15%ぐらいのリターンを年率で上げている、こういう現状です。一方で、この間、東京大学でも似たようなことをやろうということで、それを担当している方が相談に来ていたんですが、残念ながら300億円を集めるのも難しいということで、何かそういうふうな現状を見てみると、結局それだけの富というものが運用というものから生まれてきて、それが人ないしは研究設備及びプログラムに再投資されるということになると、やはりそのアメリカの大学が持っている競争力というのはさらに増していく。ある大学では、特に工科系の大学では、3分の1の方が海外からの留学生だ。こういうふうなシステムというんですか、というふうなものをつくり上げるには、もう少し金融というようなものを深刻に考える必要性が、価値があるのではないかなと思います。

以上です。

○池尾座長
 ありがとうございました。

では、矢野さん次でお願いします。

○矢野メンバー
 淵田さんに対する質問です。13ページに「ベター・レギュレーションに関する検討を」というのがあるんですけれども、ちょっと不勉強でございまして、この原則ベースの規制というのがいまいちよくわからないところがありまして、これはどういうことなのかということと、これを日本で徹底してやるとしたら、どこがどう変わるのかということを教えて頂けたらと思います。

それから、これは監督取締機関とも非常に密接に関係があるので、そういった場合に、日本のその監督取締機関あるいは自主規制機関、こういったものはどうあるべきかというのを、あまり具体的にということで無理であれば、方向なりとも教えて頂けたらと思います。

○淵田メンバー
 原則ベースの規制というのは、なぜ議論されてきたかといいますと、細かくルールを決めれば決めるほど、そのすき間をねらったような取引が横行してしまう。したがって、そもそも悪いことは悪いといいますか、そういう原則を、これはいろいろなイギリスですと10幾つとか、いろいろなレベルに分けて決めたりするんですけれども、見るとごく当たり前のことなんですね。その当たり前のことに反したら、まずはこれは悪いものは悪いという立場で取り締まっていくというスタンスであります。

すき間をねらった取引がどんどん出てしまうということと、それからもう一つは、同じことかもしれませんけれども、グレーな取引があるときに、一体これは違法なのかそうではないのかというところでもめてしまう。でも、そもそも法の精神にのっとれば、これはやはり悪いことは悪いというふうな判断もできるわけです。明確に決めてしまえば決めてしまうほど、この要件を満たさないからこれは違法ではないという反論になってしまいますので、金融の世界、イノベーションがどんどん進んで、想定しなかったような取引とか商品が出てきますこともありますので、また非常に賢い人たちもたくさんいるので、ルールで、後追いで対応していくよりも、まずは原則を掲げて、これを使って信頼性を高めていこう、それが基本的な考え方だと理解しております。

それから、今の監督規制のあり方、自主規制も含めてということですけれども、これは大問題なので、今後、いろいろここでも議論されていくと思いますが、一つ申し上げたいのは、例えば日本版SECが必要とかいう箱の問題よりも、何をどういうスタンスでやっていくかという、もっとソフトな議論が重要ではないかと思っています。それから、もちろん絶対的な人員の格差が日米にあるということもありますので、そこは引き続き対応が必要だということと、それから自主規制のところは、欧米でも非常に強化していく必要があるという流れになっておりますので、日本におけるその辺の議論、強化だけではなくて効率化というのもありまして、例えば取引所と協会で同じようなことをやっているところがあれば、それを統合していくといったような動きはアメリカでも実現しておりますので、そういう各種の動きを日本でも参考にして検討していくということではないかと思っています。

○池尾座長
 山澤さん、どうぞ。
○山澤メンバー
 淵田メンバーが、矢野メンバーからご質問がありました次のページで、取引所の話に触れて頂きましたので、大阪証券取引所の方から、若干この点、敷衍させて頂くとともに、1点、淵田メンバーにご質問させて頂ければと思っています。

取引所のランキングにはいろいろなランキングがありますけれども、最近では、主要な取引所が上場しているということもありまして、上場企業の時価総額というよりは、むしろ取引所自身の時価総額で比べる表が、一般的になっています。

大阪証券取引所は、この表では12位ということですが、これを直近の数字で見ましても、時価総額1,800億円ということで12位ということでございます。取引所の時価総額のランキングはいろいろな要素で決まってきますが、これも先ほど淵田メンバーがご指摘されたように、やはりデリバティブへの取り組み、ないしはデリバティブからの収益というのがかなり大きなウエートを占めていると思っております。

私どもは、エクイティ関係のデリバティブでは国内で7割ぐらいのシェアがありますが、それでもここへ並べてみますと、全体で12位になってしまう。この表には12番までしか掲載されていないのですが、13番目はマレーシアでございまして、ほぼ同じような金額になっています。実はエクイティのデリバティブの順位を並べてみると、ほとんどこれと同じような並びになっておりまして、大証は全体で見ると14位ということになっています。このように、やはり取引所の時価総額を上げていくという観点から見ても、デリバティブの取引を日本でどうやって増やしていくかというのが、極めて重要なテーマではないかと考えております。

デリバティブ取引を活発化させるためのポイントとしては、さまざまな要因が考えられます。まずは、個人投資家の金融リテラシーの面で、かなりアメリカと日本というのは差がある。例えば、アメリカの高校生の金融教育のテキストを見ると、デリバティブのペイオフカーブといった高度な内容まで盛り込まれていますが、一方で日本ではデリバティブに対してアレルギーを感じる人も少なくない。日本のこうした地合いを変えていくためには、息の長い取り組みが必要になると思われます。ただ、それだけではなく、これも淵田メンバーの資料の中に書いてあったような気がいたしますが、一つは、金融先物と商品先物の垣根の撤廃ですとか、あとは税制面で、先物と現物の損益通算を可能にするといったようなことも、恐らく主要なテーマとして上がってくるのではないかと思っております。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。質問はいいんですか。
○山澤メンバー
 海外の取引所の方と話していると、日本のデリバティブはまだまだキャパシティがあるものの、その割にそのキャパシティを実現できていないという意見を聞きます。そのため、主要な海外の取引所が日本にその端末を設置したり、これから進出してこようとしているわけですが、日本のデリバティブの取引高をさらに増やしていくためにどういうことが考えられるかということに興味があります。質問は、上で挙げた点以外に、日本のデリバティブが伸び悩んでいる要因があれば、教えて頂ければということです。
○淵田メンバー
 特に国として何かやらなければいけないというような、今、ヘッジファンド等を見ましても、現物も先物も商品も証券もない時代ですから、その辺の垣根を撤廃していくというのは、これは国としてやるべきことだと思います。それを超えた創意工夫というのは、これは民間がそれぞれ考えていけばいいのではないかと思いまして、優秀な人材はこういうセクターにはいませんので、私などはそういうアイデアをすぐ申し上げるようなことは特にございません。
○池尾座長
 そうすると、そろそろ時間も迫ってきましたので、あと追加的に特段、今日意見を言っておきたいという方がおられませんようでしたら、そろそろ終わりにしたいんですが、ちょっと2点だけ感想を申し上げたいと思います。

1点目は、前回、初回の際にも申し上げたんですが、金融産業の位置づけということで、金融産業を、それ自体付加価値とか雇用を生むような基幹産業として位置づけて議論していくのか、それとも金融産業というのは他の製造業を初めとした諸産業をサポートするようなポジショニングが望ましいものとして考えていくのかというフィロソフィーの対立はあるということは今日も出たわけですけれども、一応この場に関しては、一将功成りて万骨枯るみたいな感じで、金融だけが下がるというのはもちろん困るんですけれども、金融産業も一つの雇用付加価値の将来的な担い手として期待していくということで、このスタディグループでは一応位置づけられているという理解だと思います。

それからもう一点は、淵田委員が強調された点かと思うんですが、富士山とかに関して、頂が高いから裾野が広いのか、裾野が広いから頂が高いのかという議論がありますが、国際金融センターというのは頂だとすると、裾野が先で、頂が後か、その因果関係はわかりませんが、やはり裾野が広くなくて頂だけ高いということはあり得ないという意味において、全般的な市場型金融の拡大みたいなことが、日本でやはり実現していかないと、国際金融センターみたいな、その頂点も高くはならないという関係にやはりあるのかなというふうに思いました。そのためには、裾野を広くするためには教育から始まってさまざまなことがあって、一朝一夕の簡単な話ではないんですが、地道に努力していく必要があるということかと思います。

それでは、どうも本日はお忙しい中、活発な議論をして頂きまして、大変ありがとうございました。

それで、終了としたいんですが、最後に今後のスタディグループのスケジュールなどにつきまして、事務局より説明をして頂きたいというふうに思います。

○三井市場課長
 お手元に当面のスタディグループ、SGスケジュールという1枚紙がございます。前回の第1回目、今日の第2回目以下で、第3回から第7回まで、日程を掲げさせて頂いております。このうち、第5回目ぐらいまでは、既にヒアリング、プレゼンテーションのお願いを内々打診しておりまして、この程度の回までは今日と同様の方法でプレゼンテーションと議論を行ってまいりたいというふうな提案でございます。

それから、前回の会合の場で、東京証券取引所における外国企業の上場数が、諸外国に比べて相対的に少ないということを私どもの方から説明いたしましたが、この点に関しまして、本日ご欠席の藤原メンバーから事務局に対して、外国企業の上場数の減少の理由や背景について東京証券取引所から話を聞いてみてはどうかというふうなお話がございました。これを受けまして、次回は東京証券取引所の方からのヒアリングを行いたいと思います。また、このスタディグループのメンバーの中から、鈴木メンバー、矢野メンバーにもプレゼンテーションをお願いしたいと考えております。

それから、日程でございますけれども、次回の第3回の会合は、この紙にありますように3月1日木曜日、14時30分から16時30分までの予定でございます。

それから、紙にあるとおりでございますけれども、次々回、第4回は3月6日火曜日の10時から12時の予定で行いたいと思います。この場におきましては、海外からの有識者ということで、KKRアジア会長のデレック・モーン氏をお招きしてヒアリングをしたいと存じます。以下の会については、この紙のとおりでございます。

それから、23日以降の議事内容につきましては、まだ現時点では未定でございまして、座長と相談の上、また皆様にお知らせしたいと存じます。

以上でございます。

○池尾座長
 どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させて頂きます。どうもありがとうございました。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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