金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第4回)

日時:平成19年3月6日 10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館4階 共用第4特別会議室

○池尾座長

時間ですので、そろそろ始めたいと思います。

それでは、ただ今より我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ第4回会合を開催いたします。

皆様、ご多忙中のところご参集頂きまして誠にありがとうございます。

初めに本日の議事についてご説明したいと思います。

本日は、前回、前々回に引き続き、日本の金融・資本市場の国際化に関して、有識者からヒアリングを行う予定となっております。

本日は、もうご案内だと思いますが、有識者からの意見聴取として、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)アジアのデレック・モーン会長をお招きしております。また、我が国で活躍する外国企業からの意見聴取として、在日米国商工会議所(ACCJ)のチャールズ・レイク会頭、ジョナサン・シューマン金融サービス委員会協同委員長、及び欧州ビジネス協会(EBC)のフィリップ・アヴリル銀行委員会副委員長にお越しいただいております。皆様、本日はよろしくお願い致します。

なお、モーンさんは、所用により会議の途中で退席されるとのことですので、本日はモーンさんのプレゼンテーション及びそれに関連した質疑応答を先に行いたいと思います。その後、在日米国商工会議所、欧州ビジネス協会と続けてプレゼンテーションを後半でしていただくということで、前半と後半に分けて行いたいと思いますので、協力のほどよろしくお願い致します。

それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○三井市場課長

お手元の資料をご確認願いたいと思います。

資料1、それから資料2-1、2-2と横長のものが3点ございます。それから、今日はプレゼンテーションが一部英語で行われますので、同時通訳を用意してございます。手元のヘッドホンセット、チャンネル1が日本語、チャンネル2が英語でございます。それでは、よろしくお願いします。

○池尾座長

それでは、初めにデレック・モーンさんからプレゼンテーションをお願いしますが、その前に、皆さんご案内かと思いますが、モーンさんの簡単なご経歴をご紹介させていただきます。

モーンさんは、現在コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)アジアの会長をされておられますが、以前はシティグループの副会長、ソロモン・ブラザースの会長をされるなど、卓越した経験と実績をお持ちでいらっしゃいます。また、ソロモン・ブラザース東京支店長のご経験もおありで、日本の金融・資本市場についても深いご見識がおありであります。このたびは、そうした金融・資本市場におけるグローバルなご経験を踏まえ、議論に参加していただきたいということでお招きした次第であります。

それでは、モーンさん、よろしくお願い致します。

○モーン参考人

池尾座長、ご紹介どうもありがとうございます。皆様、おはようございます。

このように皆様の前でお話しできることを大変光栄に存じております。

今日、私はお招きをいただき、金融市場のグローバル化並びに東京の国際的な金融センターとして競争力をどのように高めていくかについて意見を述べてほしいということで参っております。

まず初めにお伝えしておきたいのは、私は元政府の役人、官僚でありました。ですから、国の政策を通じて健全な経済を推進することの重要性をよくわかっておりますし、また、政策変更の可能性がある場合には、国民からの支持を確保することが最も重要であることを十分認識しております。

私から見て、主要な課題と思われるのは、バランスをどうとるかということです。すなわち、国民の信頼を損なわず、しかも金融制度全体の健全性を守りつつ、イノベーションと成長をどのように推進していくかということです。

私自身は、金融業界に30年ほど過ごしてまいりましたので、私の考え方にはかなりその経験が影響を及ぼしているかと思います。主要な3つの資本市場でありますロンドン、ニューヨーク、東京でそれぞれ暮らし、また仕事をしてまいりました。現在は、KKRのアジア会長を務めておりますが、日本に対し深い敬意と、そして親愛の情を有しております。

私は、このスタディグループに対して、よく知られておりますテクニカルな変更、例えば新規株式公開の上場基準の変更ですとか、会計基準や規制基準の国際的な収斂の必要性について述べるというよりも、少し距離を置いて、より広い視野に立ってご検討されるということをまずお願い申し上げたいと思います。

まず、その国の経済自体が総体的に国際競争から隔絶されているとするならば、そこにグローバルな金融センターを構築するということは可能でありましょうか。私のこの問いというのは、問題をより一層複雑にするものと考えております。

と言いますのも、世界で最も開かれた経済であるロンドン、ニューヨーク、香港及びシンガポールに最も競争力のある資本市場が育っているということは偶然ではないからであります。やはり、国内の資本市場が未整備であったとするならば、グローバルな金融センターを構築するということは可能でありましょうか。私の答えはノーであります。日本がロンドンやニューヨークの金融市場の優位性を支えている政策や手法を会得するためには、もうしばらく時間がかかるのではないかと考えております。

まず、グローバリゼーション、グローバル化について述べましょう。

明らかなことは、世界の主要な経済は今収斂しつつある、統合されつつあるということです。貿易や資本の流れのデータを見れば、それは明らかであります。中国、インド、ロシア、東ヨーロッパ、ブラジル、メキシコ、その他のエマージング・エコノミーがグローバル経済に参入してきているということが、大きな影響、深淵なる影響を及ぼしております。

それに対して、通信や技術の革新によって支えられ、世界の最大級の企業が今や研究、生産、そして流通のグローバルなシステムを構築しつつあります。金融市場もまたやはりつながりを深め、結びつきを密にしつつあると私は考えております。

世界第2位の経済大国として、そして世界第4位の輸出国として、また主要な債権国として、日本はこのような力強い流れから免れるものではありません。そして、重要な視点から見て、日本の経済はこういう新しい現実に即応するというのが、やはり遅いと言わざるを得ません。

2つの簡単な例を挙げてみましょう。

企業のM&A、また事業の売却というのは、欧米では正当であり、しかも効果的な方法だと考えられております。グローバルな能力を構築し、そして、コア活動に資本を再配分する有効な手立てだと考えられております。2006年にグローバルのM&Aの総額は、3兆7,500億ドルにも上りました。しかも、クロスボーダーの取引、投資は1兆ドルを超えております。片や対照的に、日本のM&Aはわずか1,500億ドルにとどまっております。世界の他の国々では、グローバルな市場で競争するために産業が今や再編をされている最中にあります。日本は、その中で一人際立って違う様相を見せております。

外国直接投資(FDI)は、競争を推進し、技術を移転し、革新を推進し、また生産性を増大させ、雇用を創出し、経済成長を刺激する非常に力強い手段であります。多くの国々は外国直接投資を歓迎しております。そして、様々なインセンティブを与えられております。イギリスにおける外国直接投資は、GDP比で37%にも相当しております。ドイツの場合は23%、アメリカは14%、日本の場合は2%であります。

グローバルな企業とグローバルな投資家は、一般的に日本は難しい環境に置かれていると見ております。エコノミスト誌が公表した指標によりますと、日本は世界の競争力、グローバルな競争力では17位、そしてビジネスのしやすさでは27位というランキングになっております。すなわち、日本は常に他の国とは違うと主張してこられましたが、それにより、それで、幾つもの国際企業は今やそれを信じるようになっております。すなわち、変化が遅いということ、外国からの投資は歓迎されていないと感じております。このような認識がありますので、日本ではない他の国に投資を向けてしまうということです。

これらの理由、そしてそのほかの理由から、日本の経済の幾つかの部門は、今やグローバルな競争力を失いつつあります。日本の企業は、一般的に言って、国際的な競合他社と比べて利益が上がっておりません。

例えば、営業利益率でありますけれども、世界の他の国々と比べると6割程度の水準に過ぎません。また、資本収益率も低く、これは直接的に日本企業の国際的な競争力に影響を及ぼしております。また、戦略的な買収を実行する能力に直接的に影響を与えております。

時価総額ベースで世界上位50社の中に、日本企業はたった1社しか入っておりません。また、上位100社においても日本企業は5社にとどまっております。以下の企業の時価総額を比べていただきたいと思います。HSBCは2,090億ドル、MUFGは1,250億ドルであります。ボーダフォン1,670億ドル、NTT690億ドル。グラクソ・スミスクライン1,480億ドル、武田薬品600億ドル。サムスン電子870億ドル、ソニー430億ドル。モルガン・スタンレー850億ドル、野村證券360億ドル。シーメンス880億ドル、日立210億ドル。BPは2,200億ドル、新日本石油は100億ドル。公平性という意味からアンフェアにならないよう追加させていただきますと、GM170億ドル、トヨタ2,150億ドル。

これからのことを考えますと、将来日本の人口が減少し、そして国内の経済が縮小するにしたがい、国際市場において日本企業が競争していくためには、日本の産業を再編せよというプレッシャーがより強くかかってくることでしょう。

ということで、私どもの目の前にある問題、課題としては、資本市場はいわゆる株主という視点から見て、このような経済のリストラクチュアリングのプロセスを支援することになるのか、それともこれまでのように、いわゆる系列やメインバンク方式といったような経営方式に任せたままでいいのか、ということがあります。

幾つもの国民経済モデルを経験してきた、またサッチャー以前のイギリスでの経験もした私の経験から言いますと、疑いようもないところでありますが、株主の方が資源の配分についてはずっと優れており、より生産的な使い道を考えてくれる、ということです。

また、同時に、私どもは最近実施されました多くの改革、特に新会社法を歓迎しております。また、J-SOX、すなわちサーベンス・オクスレー法の日本版の導入も歓迎しております。これらの法律によって財務報告の質とその他のコントロールが向上を致しました。

その反面、日本企業と同じ条件で国際企業が三角合併を実行可能にすべきだという考え方に経団連が反対をされたことに対し、多くの国際的な企業は失望を覚えております。ポイズン・ピル条項を導入する例が増加し、防衛的な株式持ち合いも今増加傾向にあります。このルールのもと、外国のパートナーシップのキャピタルゲインに課税するために2005年に設けられた特別措置、17年度税制改正による特別措置はさらなる障害となっております。

また、北越製紙を買収しようとした王子製紙の試みも国際的に大きな注目を集めました。当初は、厳しい競争に直面している産業を整理統合する果敢なる試みとして歓迎をされました。しかしながら、大詰めを迎えたところで、まとまった大量の株式がその本来の価値より極めて低い価額で友好的な買い手に渡ってしまったということには、驚嘆とはいかないまでも、狼狽に近い驚きを感じる国際企業は多くありました。

そうした行動が、米国や英国で起こったとするならば、当該企業と取締役会に対する株主訴訟が起きるのは必須であります。私は、上場企業3社、ロンドンの2社とニューヨークの1社の取締役を務めておりますので、その立場からこう申し上げることができます。

より一般的に申し上げますと、我々から見まして日本の機関投資家は、彼らが所有する企業に対してより密接な関心を払い注目をし、明らかに成果に乏しい場合には、受け身の姿勢をとるべきではないと考えております。また、同時に強く感じておりますのは、企業の取締役の大多数は、経営から独立しているべきだということです。日本の取締役会の多くは経営委員会として位置づけられておりまして、株主への説明責任を十分に果たしにくい状況に置かれております。

差し出がましく聞こえるかもしれませんが、事業を所有する者の利益というものが受け入れられるようにならない限り、日本はグローバルなリーダーシップを維持することが困難になり、恐らく東京は実質的に国内向け資本市場のまま変わることはないでしょう。したがって、政府が企業改革を継続的に推進されることが非常に望まれております。

それでは、次に金融市場に話を転じます。

過去10年間で、国境を越えた資金の流れは大幅に増大しております。1995年が1兆5,000億ドルあったのに対し、2005年には6兆2,000億ドルに拡大をしております。企業、政府、機関投資家など、資本市場の参加者は外為、ローン、債券、株式、スワップ、先物、オプション、店頭デリバティブなどをこれまで以上に活用するようになっております。そして、これらの活動は、国境を越えて各国の資本市場とリンクし、変化を促しております。また、このグローバルな市場とのリンクを持てないような市場は、やがて重要視されなくなると考えられます。

東京の資本市場の国際化は、もちろん以前から検討されてきました。私もよく覚えておりますが、1980年代に東証に外国証券会社の会員が初めて認められ、国債のオークション制度、入札制度が導入された当時に議論がありました。当時、私は盛田昭夫さんのような著名人と並んで、ただ1人の外国人として、新設された東京金融先物取引所の取締役を務めておりました。しかし、バブルが起こりそして破綻した余波によって、当時の議論は消え去ってしまいました。

東京の持つ根本的な力というのは、よく理解されております。成長軌道を取り戻した巨大な経済、そして安定した民主政治を持っているということ、報道の自由が確立している、また司法の独立性がある、科学技術の研究に関する高い能力を持っている、また高学歴で勤勉な労働力が豊富にある、といった基本的な強みはよく理解されております。さらに、芸術とか文学、デザインや料理といった日本の文化は、いわばルネッサンスを迎えたように世界中に広がり、賞賛されております。

また、健全な金融政策の番兵として、日銀は高く評価されております。金融庁も金融市場の完全性を維持するための力強い管理人として、国内外の企業に対し平等に規則を適用されております。東証は喜ばしいことに、ニューヨーク及びロンドン証券取引所との戦略的な提携が実現しました。

では、何が障害となっているのでしょうか。

2つの分野について、さらに議論を深める必要があるかと思います。

まず第1に、ロンドンとニューヨークが成功した要因は何なのか、そして東京としてはそこからどういう結論を引き出すべきか、ということです。

第2に、何が日本国内の資本市場の整備、育成を阻害しているのか、どういうことを変えなければならないのか、ということです。

まず第1の点についてでありますが、ぜひ皆様にマッキンゼー社が最近出した報告書、「持続するニューヨーク及び米国の金融面におけるグローバルなリーダーシップ」をお読みいただきたいと思っております。この報告書では金融サービスに関する国の政策の重要性に力点が置かれ、新たな発展に対する規制の対応、そして公正かつ予測可能な法律制度、またスキルが極めて高い専門家の集団、効率的かつ現代的なインフラ、税制、コストその他の要素の重要性が強調されております。私どもの見解でありますが、東京はこれらの項目の幾つかについては高得点を上げているものの、全てにおいてそうだとは言えないだろうと思います。

多くの識者は、日本国内の資本市場について比較的未成熟であると見ております。投資信託や有価証券に比べて、預金とローンというのが金融制度で中核をなしております。活発な市場としては国債、さらにこのところ活気を見せ始めている市場として社債、ABS、CDOやCDSなどがあります。

しかし、片やレバレッジドファイナンスやセカンダリーローン、ハイイールド債の市場は発展がかなり遅れております。同時に、やや懸念される事項としては、新しい金融商品に対して、投資家が関連するリスクを十分に理解するための情報が提供されておらず、また、十分なトレーニングを受けていないということがあります。

現在のところ、日本における資本市場の普及率は低く、債券及び株式発行による資金調達のGDPに占める割合で比較しますと、英国や米国の半分となっております。

関連する項目として、日本の銀行や証券会社の合併が進行した一方で、資本市場の売上高がGDPに占める割合で比較するとわかるように、日本の資本市場ビジネスは欧米に比べるとまだまだ小規模にとどまっております。このような不均衡が、ビジネスを世界的に拡大しようとする日本の金融機関の課題となっております。

これらの金融機関の国際的なプレゼンスは、現状では小さいと言えるでしょう。国際市場における財務アドバイザリーや資本調達のランキングにその結果が反映されております。同じように、東京の外資系銀行は、国際的な資金のフローの仲介で一定程度の成功を収めておりますけれども、一方で国内市場に十分に浸透したとは言えません。

このため、国際市場から国内市場への金融技術の移転はほとんど進んでおりません。この点は、ニューヨークやロンドンと比較すると、ほとんど衝撃的と言える状況でしょう。ニューヨークやロンドンなどの国際都市は、世界中から人材を惹き寄せており、革新性とリスクマネジメントに対してはプレミアムが支払われております。

東京が人材、専門性を獲得するためには、次の2点が必要となります。

日本の金融機関は、業務のグローバル化を行う方法を見出さなければなりません。すなわち、買収とか業務提携とか、パートナーシップを通じてグローバル化をしていかなければなりません。また、国内市場は、外資系企業に対しさらに門戸を開いていただかなければなりません。

この点について、個人的なエピソードを1つご紹介いたしましょう。

1970年代でありますが、私は英国の財務省に所属する若手職員でありましたが、将来のイングランド銀行の総裁となる、当時からもう著名であった方に、怖い物知らずでこのような質問をしてみました。「英国のマーチャントバンクが、より大規模なアメリカやヨーロッパの銀行に買収されつつある状況をどう思われますか」と。彼は、こう答えました。「ウインブルドンでは誰が勝つかというのが大切ではない。大切なのは、ウインブルドンで試合が行われるということだ」ということです。その後のロンドンのシティの成長、そして多大なる成功を見てみますと、彼の言葉はまさにそのとおりであったということがよくわかります。

国際的な市場を望むとするならば、国際的なプレーヤーが必要です。そして、その中で最も優秀な選手が勝つということが必要なのです。途方もない理想論と思われるかもしれませんが、これは必要なことなのです。恐らく、これは議論の余地があるかと思うんですが、ロンドンとニューヨークの双方において、今日の資本市場における活力と革新性の多くは、プライベート・エクイティとヘッジファンドからもたらされているということに留意しなければなりません。

プライベート・エクイティ企業は、運用する年金基金やその他の資産の代理人として、経済成長を見込んで投資を行い、経営や資本の効率を高めております。プライベート・エクイティ業界では、昨年およそ9,000億ドルの投資を行いました。そのうち日本のシェアは100億ドル、およそ1%であります。推定によりますと、プライベート・エクイティは国際市場におけるM&Aのおよそ20%、IPOの50%、レバレッジドローンの50%、ハイイールド債の75%を占めております。

このスタディグループでぜひご検討いただきたい点として、日本のプライベート・エクイティビジネスの活性化をどう進めるか、そのメリットがどういうものなのかということがあります。その一環として、日本の公的年金、企業年金基金やその他の機関投資家が、運用資金をプライベート・エクイティに対して委託する割合が他の先進国と比べてなぜ低いのか、その理由についてもぜひ分析をお願いしたいと思います。

次に、結論に入ります。

申し上げられることは、国際的な金融センターとして東京が発展することによって、日本は大いにメリットを享受できるということです。国際的な資本市場があることによって、日本の企業と投資家双方のニーズがより適切に対処されるということになるでしょう。

日本は、この課題を達成するために必要とされる知的財産及び金融資源をすべて持っておられます。必要とされる変化を遂行するために必要なのは、国がやはり指針を示すということと、強い政治的な意思であります。もし何の行動もとられないとするならば、恐らく東京はロンドン及びニューヨークに更に遅れをとるということになります。そして、やがては香港や上海が、ともにアジアの新たな金融ハブとして浮上してくるでありましょう。

ご質問があれば、喜んでお答えを申し上げたいと思います。このような機会を与えていただきましたことを改めて御礼申し上げます。

○池尾座長

大変貴重なお話ありがとうございました。

ただ今のモーンさんのプレゼンテーションに関するご質問やご意見がありましたら、多少自由討論の時間をとりたいと思います。ご意見やご質問のある方、挙手をしていただくか、またはネームプレートを立てていただくか、お願いします。

どうぞ。

○藤巻メンバー

私は2000年までアメリカの銀行に勤めていたんですけれども、2000年までは、少なくとも欧米の金融機関は東京市場ではほとんど儲けを上げていなかったと、私は認識しております。1行だけ、ちょっとマーケットリスクをとっている銀行は儲けていたと思うんですけれども、他の欧米機関は利益が上がっていなかったと思うんです。

それ以降、現在を私は知らないんですけれども、早くからリスクをとって不動産を買っていた金融機関と、それから不良債権を買っていた外資の金融機関は利益を上げているんじゃないかなというふうに想像します。ここで質問したいのは、ご経験からして、東京市場で外資の金融機関が十分な利益を上げられていたのかどうか、ということです。上げていなかったとすれば、それは何が問題だったのか、それは東京市場が問題だったのか、それとも外資系金融機関自身の問題だったのか。2000年の前にしろ2000年の後にしろ、リスクをとらなければ儲からないようなマーケットなのかどうか、その辺をちょっとお聞きしたいと思います。

○モーン参考人

ご質問ありがとうございます。

外国の金融機関の経験というのは、利益性については様々だったと思います。一部の外資系金融機関は非常によくやっておりましたし、また、それほどうまくいっていないところもあったと思います。1990年代にさかのぼりますと、多くの外資系金融機関はかなりの熱意を持っており、かつ、過剰な金融機関があったわけです。

私は1991年に日本を出ていったんですけれども、私の記憶では、54社、外資系の企業があったということであまり利益が上がらなかった、オーバーキャパシティーだったのだと思います。その後、かなりの努力がされて、主な企業は今は儲かっていると思います。

しかし、いわゆるプリンシパルアクティビティー、投資銀行が自分たち自身で投資する自己勘定の取引で、利益が出ていたのだと思います。それが、マーケットのせいなのかどうかというご質問もあったと思いますが、それは他の専門家の方たち、ACCJの方の方が私より今の状況についてよくご存じだと思いますので、お任せしたいと思います。

私の日本における個人的な経験から言うと、この30年間何回も日本に来ておりますけれども、政府の政策という観点から見ますと、マーケットはもうオープンだと思います。私の先ほどのお話にも申し上げましたように、規制当局は公平な法の運用を行っていると思います。

しかし、本当に難しい点だと思いますが、外資系企業は2つの事実に直面しております。

1つは、普通の競争です。日本の企業は大変強力で大規模でありますし、地元の社会、国内の社会のことをよく知っているんです。ニューヨークでも状況は同じだと思いますが、そういった競争への不満はありません。しかし、文化的な抵抗とは言いませんし、外資系の企業が直面する問題かもしれませんが、ある意味で日本は慎重なのかもしれません。日本の大手の企業は、外資系の企業を使って国際資本にアクセスしております。そして、戦略的なアドバイスを求めております。しかし、国内の日本の社債市場あるいは消費者金融などの分野では、外資のその分野での参加はまだ大変小規模なものに限られていると思います。

ありがとうございました。

○池尾座長

どうぞ。

○平野メンバー

今のモーンさんのお話を伺っておりまして、日本の金融市場の国際化あるいはその国際的な競争力を増すという問題が、ある意味で日本の経済あるいはその産業全体の構造に深く関係しているというところは、私もまさに実感するところであります。

金融市場というのは、基本的にこの場でも議論されましたけれども、各国の経済あるいは産業を支え、これを映す鏡であるというふうに考えると、資本市場あるいは金融市場の国際化だけを議論してもだめだという点については、これは全くそのとおりであると思います。

そういう意味では、日本の企業は今や国際化の大きな流れの中に身をさらし、競争力を維持するために必要があればM&Aを行い、あるいはアライアンスを行うことで、国際的な市場の中における生き残りをかけて戦おうとしているし、日本の金融機関もその例外ではないだろう、という先ほどのお話は全くそのとおりだというふうに思います。

ただ、金融機関あるいは金融市場に目を向けて考えてみますと、やはり日本の国内における投資家のアペタイトといいますか、考え、投資に対する選好、これは重要であろうというふうに思っております。現状はご指摘のとおりで、確かに金融資産に関して言うと、預金が5割を超えるという極めてユニークな構造を持っているということであります。

結局、リスクに対する選好が日本の場合は従来極めて保守的であったということで、ここはチキン・アンド・エッグの関係にはあって、一方で金融商品が多様化していないということで投資の機会も限られるということとの、どちらが先かという問題はあります。ただ、今の日本の国内の個人あるいは機関投資家の投資のビヘイビアーを見ていると、そういう大きな傾向というのが徐々に崩れつつある、変化しつつあると、こういう状況かと思います。

そういう意味で、1つお伺いしたいのは、かつて、例えばアメリカにおいても同じようなドメスティックな志向というのを機関投資家が持っていた時代がある。あるいは、金融機関についてもそういう時代があったかもしれない。それが、何をきっかけにどう変わって金融資産が多様化し、あるいは国際化していったのか。国際分散投資という観点もあろうかと思いますけれども、そのあたりのお話を伺いたいというふうに思います。

○モーン参考人

少しご辛抱していただければと思います。

投資家について、2つのグループに分けてお話ししたいと思います。機関投資家と個人投資家で、それぞれ選好や投資パターンもやはり違ってくると思いますので、2つに分けてお答えしたいと思います。

機関投資家についてでありますが、この20年間を振り返ってみますと、アメリカでもヨーロッパでも、年金基金ですとか、保険会社といった機関投資家は投資をグローバルに分散化してきたということです。すなわち、より高い利益率がより少ないリスクで得られるという信念があったからです。

それで、やはり分散化が必要だということを唱える学派もありました。彼らは世界の多くの地域で急速な経済成長が見られる、そして資本収益率もそれだけ高くなっているということを主張されました。すなわち、本国よりも高い収益率が得られるということで、アジアの各地に関心が向いていったということです。

日本は、1980年代に、大量に外国株や外国債券を購入するようになりました。ところが、ドルの動きによってダメージを受けた。今はどこまで分散化されているか分かりませんが、当時はダメージを受けたということがありました。今もまだそうではないかと思っているのですが、日本の機関投資家も分散化を始めておられるものの、まだまだ相対的にいってリスク回避の傾向が強いです。ですから、国債志向である、あるいは質の高い政府債、政府機関債ですとか、大型株などに投資が向いている、ということです。すなわち、元本を失うということの方が高いリターンを得られないことよりも怖いということです。リスクをとってリターンを高く上げるよりも、元本を守るということの方を重視しているようです。

さて、日本のことですが、日本の機関投資家は新しい資産クラスへの投資分散化を進めていません。というのも、市場は十分に代替的な手段を提供できないからです。これは他の国の市場とは異なる状況です。

例えば、ハイイールド債ですとか、社債市場の奥行きの深さというのが欠けていると思います。これは確かに鶏か卵かどちらが先かという議論だと思うんですけれども、恐らく日本の機関投資家は十分な経験や知識を持っていらっしゃらないということがあると思うんです。日本の友人の多くから聞いたところですが、国際的な経験は既に持たれたところも多いとは思いますが、投資家基盤のいわば本質の問題だろうと思います。そのため、まだ需要も十分に発掘されていないということです。

次に、個人投資家に目を向けてみましょう。

個人投資家は、機関投資家よりもさらに遅れをとっていると思います。これは、アメリカやヨーロッパでもそうでした。しかしながら、もちろんこれもさらに分析検討してみる必要があるかと思いますが、世界の他の地域と比べて相対的に言えることが、いろいろ制度的な是正措置がとられてきたということです。投資運用会社、いわゆる大型の運用ができるようなところが、グローバルな市場で貯蓄を投資できるような手段として活用されてきたということです。ですから、欧米の個人投資家は安心して、現在では投資信託などを購入できるということです。また、日本やエマージング・マーケットへのエクスポージャーを安心して持つことができる状況になっております。

公平性を期すという意味で申し上げますが、日本の投資運用業界には、私もビジネスで死活的に頼っているわけです。ただし欧米に比べて能力がいまいちという気がいたします。国際的な業界と国内業界というのがもっともっと交流をすべきだと、現在はそれがまだまだ限定的だと思っております。

私が日本にいるときには、国際資産を運用するためには欧米の一流の投資運用会社を使いなさいと、常に口を酸っぱくして言っておりました。私はよくわかっておりますが、国際的な投資会社は、日本になかなか浸透できない、進出できないでいます。日本では信頼がないからということが理由なのです。何故かはわかりませんが、はっきりとしていることがあり、外資系の企業が経済的にも金融的にも日本の競合会社を買収することは以前に比べてよりやりやすくなりましたが、実際のところ歓迎されていないと感じているのです。つまり、日本では、外資系企業の行為が敵対的とみなされがちであると感じております。

ちょっと長々としたお答えになってしまって申し訳ありません。

○池尾座長

時間がないので、順番に当てます。手短にお願いします。

○柴田メンバー

ちょうど四半世紀前の1984年に、日米円ドル委員会の報告書が出まして、国内市場のアクセス開放、ユーロ円市場の自由化を軸とする日本の金融市場の自由化の方向性が出されました。これを受けて、その直後、世界の金融機関の首脳が次々に日本を訪れて、口々に「これからは24時間トレーディングの時代になる」、また、「ロンドン、ニューヨーク、東京が世界の金融の3極になる」ということを述べていたのを、よく覚えています。

その後、ソロモンではデレック・モーンさんが、またモルガン・スタンレーではジャック・ワズワースが、またバンカーズトラストではアラン・ホイート、後のCSFBの会長ですが、それぞれ日本に本拠を置いて、この世界の3極の一端を占めるであろう日本においての活動を始められたわけです。これは1980年代のことだと思います。

ところが、四半世紀経ってみまして、ロンドン及びニューヨークは国際金融センターとして繁栄しているけれども、3極目を占めるはずの日本は国際金融センターとしては発展し切れていないということでございます。

この国際金融センターをめぐっての競争に立ち遅れるどころか、実は地域の金融センターとしても立ち遅れが始まっているように見えないこともない。すなわち、米国及び欧州の金融機関のアジアのヘッドクォーターは、よく見てみるとかつては東京にあったものが、今は香港ないしはシンガポールといったところに移っているということでございます。

質問といたしましては、今なぜ国際金融センターとして発展が遅れているかの議論はお伺いしましたが、地域金融センターの地位をめぐって、なぜ香港ないしはシンガポールにも遅れをとっているように見えるのか、また、その香港及びシンガポールがどんな正しいことをやっていたのかということについてコメントしていただけたらと思います。

○池尾座長

少し待ってください。もう時間がないから、先に質問をお願いします。藤原さん。

○藤原メンバー

アメリカ人の親日派の方にこういうことを言われることを非常に複雑な気持ちで聞いています。日本の金融・資本市場の国際化は海外の人たちに言われるまでもなく、日本人が自分たちの国をよくするために動かなければいけないことだと思うからです。それが第1点です。2点目は、私は世界の金融市場シティで仕事を長くしてきて、日本はカメラや車で世界中の人たちが欲しがる世界一の物を作れるのに、なぜ金融に関しては世界一の金融商品を作れないのだろう、と疑問に思ってきました。例えば、日本で売られている投資信託の場合、もちろん日本で作られているものもありますが、大方はロンドンで作られたものが日本の市場で売られています。つまり日本の個人投資家が買う投資信託がロンドンで作られ、日本で販売されているのです。25年間、国際金融の世界で生きてきて、英国も米国も金融で大成功し国が豊かになってきているのに、なぜ「物作り日本」が金融に関してはアジアの1番にもなれないのだろうと疑問に思ってきました。

その理由を自分なりに考えて見ますと、優秀な人たちの数が英米に比べ少ないからだとは思いません。優秀な人たちの数では日本も英国も変わらないと思います。また金融に対する問題意識もほぼ同じだと思ってます。何が原因かといいますとそれは日本の場合、物事を実行するのに時間がかかり過ぎるからだと思います。あまりにも議論に長く時間を掛けるので、英国や米国に比べ遅れを取ってしまうのです。他の理由としては米国や英国と比較して金融関係で儲けた人の年収などに対する国民感情の違いがあげられると思います。日本では工場で仕事をしていて、500人の部下を持っている人が1000万円の年収をもらうことに関しては異論がありません。しかし、金融市場でお金からお金を作り、25,6歳の人が1000万円をもらうことに関しては、「そういう儲け方はおかしい」という国民感情が根強いです。資本主義を維持しているのですが、株などでの金融からのお金儲けに関しては国民が胡散臭いと思っているからです。これは、年収1000億円以上もらっているヘッジファンドのマネジャーがいても、もらいすぎと批判されない米国とは全く違います。こういう環境下で「お金からお金を作り出し経済を強化する金融の国際化」のために法律改正や減税を提案し選挙民である国民の支持を取り付けることは難しいと思います。

とはいえ時間はだんだんなくなってきております。私は国際金融の世界で長く仕事をしてきて、今が日本にとって金融・資本市場の国際化を目指す最後のチャンスだと思ってます。もしかしたら遅いかもしれません。先ほど申し上げましたように、日本は何かを決めようとするときに、決めるまでに時間を掛け過ぎてしまう傾向があります。でも、一度動き出すと同じ方向へ向かって 早く動く人たちが多い国だとも思ってます。今の日本はシンガポールと比較しても、国際金融では遅れていますが、今度大臣が金融・資本市場の国際化という問題提起をしてくれたおかげで、今回はインプリメーテーションのためにすばやく動くのではないかと期待しております。これが私の意見です。

○池尾座長

矢野委員。

○矢野メンバー

モーンさんの話にありましたように、日本では株主の地位が非常に低いということはあります。あるいは王子・北越のケースのように株主の利益を損なうようなことを平気でやられるし、あるいは防衛策導入を競っていらっしゃるとか、持ち合いが昨今また増えている、あるいは三角合併に対する抵抗が非常に強い、コーポレートガバナンスも非常に不十分で、こういった経営者の考え方を改めるにはどうしたらいいのか。

それから、もう1つ、機関投資家についても、おっしゃるようにいろいろ問題があっても沈黙を保っている、受託者責任をちゃんと果たしていないと、こういうお話があったんですけれども、機関投資家の受託者責任をきちんと果たさせるためには、どういった方法を講じていったらいいのか。この2つについてご意見をお聞かせいただきたいと思います。

○池尾座長

それでは、なかなかお答えしにくい、難しい質問ばかりだと思いますが、何かコメントがあればお願いします。

○モーン参考人

では、柴田さんのご質問からお答えしたいと思います。

香港やシンガポールは何を、どういう正しいことを行ったのかという質問でした。私はイギリス人ですので、歴史、伝統ということを重んじます。過去の産物、経験による、あるいは実績による成果ということを信じております。香港はイギリスから中国に返還されましたが、トレーディングセンター、金融のセンターとしての国際的な地位を確立したということです。元には300万人、400万人の人口で小さな島でありますから、香港の地元の経済だけに頼ってはいられなかったということでもあります。

その成功というのは、一部やはり制度的な枠組みにあった、香港政府のとった政策に起因している、と言えるでしょう。それだけではなく、もちろん中国の台頭ということによっても支えられたということです。香港は、国際ビジネスの中心地でありますし、国際ビジネスのプロフェッショナルが集う地で、いわば中国本土へのゲートウェイということです。香港がビジネスあるいは金融のカウンターパートということです。ですから、いわばプレゼンスとしては二重性があるということです。やはり中国ということを念頭に置きつつ、香港に拠点を置いているということでしょう。

さて、シンガポールですが、ここも小さな島国であります。やはりASEANとの関係に頼っているということです。ですから、日本にとってよいお手本になるかどうかわかりません。もちろん教訓として学べるところはあるかと思うんですが。

アメリカも独自の歴史を持っております。アメリカは大陸です。アメリカは移民の国として生まれました。ですから、ほとんど困難はなかった。もちろん、苦労はあったでしょう。世界の他の国々と相対していく上でいろいろな問題は抱えていたでしょう。しかしながら、ニューヨークに暮らしておりますと、国内市場と国際市場の区別がなく、ほとんど1つのシステムになっているということが分かります。本国で開発されたものを世界中に出して、世界でできたものを国内に取り入れている。また非常に競争の激しい市場でもあります。アメリカのアイデンティティーということを考えますと、誰が経営者であれ、どういう国籍の人が経営者であれ、そんなことは気にしないということです。

ロンドンですけれども、イギリスはいわば自己否定の最中にあったわけです。2世紀にわたってその体制がずっと維持されてきたのがこれはサッチャー以前の時代です。しかしながら、ロンドンのビッグバンが起こりました。幾つもの点から見て、これは成功したと言えるでしょう。例えば、マッキンゼーの報告書を読んでいただければ、最初の5年間、ロンドンはニューヨークをはるかに上回っていたということです。すなわち、収益とか活動のレベルから見ても、それから商品の質の高さから見ても、アメリカの先を行っていたということです。

アメリカは予測可能性がないとか、細分化された規制監督制度になってしまっている、法制度もきちっと確立されていないといったような様々な問題を乗り切ってきたわけです。

藤原さんにおわび申し上げなければなりません。私のコメント、もしかしたならば抵抗を覚えられるかもしれません。ただ、友人としてご忠告をしたいと思っています。日本は国際的な資本市場をつくれる力を持っていると思います。ただ、日本はこれまで偉大なる産業、企業を構築されてきたが、日本の視点から見て変化が必要だと私は思います。僭越なことを申し上げて申し訳ありません。

私ならば、社会全体のためを考えて2つのことを行うでしょう。

1つは、日本の様々な機関を真剣にどのように国際化するか。いろいろ他から学んで、外国から輸入し、そして日本の市場に当てはめていくということで、様々な挑戦課題はあるでしょう。ただ、遅らせてはならない、先送りしてはならないということです。

また、2つ目に必要なことは何かと言いますと、日本の機関投資家の育成に時間をかけるということです。本当にいい仕事を日本でしていますか、日本の市民のために適切なリターンを皆の貯蓄のために提供していますか、ということです。人口動態も変わってきていますので、日本が経済としての資本利益率を高めることができないのであれば、問題が増えることになります。そして、日本の金融機関、日本の大きな銀行などが日本の企業の社長たちと一緒に会うようになれば、物事は動き始めるのではないでしょうか。頻繁によく出てくる外国人の訪問者よりもうまくいくと思います。

ですから、日本の観点から見ると、この2つのことが生産性を高めることになると思います。ただ、私は大きな心配を抱いております。日本がもっと撤退してしまう、国内の産業界、国内の金融機関の統廃合に時間をかけてしまう、と。しかし、国内での統合というのは、グローバルなチャレンジへの回答とはなりません。ただ、壁が高くなってしまうだけです。

また、もう1つ私が心配していることがあります。何も変わらない場合、何か日本で間違ったことが起こってしまうと、そして主要な金融機関が外国からの救済や資本の再構築などの影響を受けてしまう、と思います。これは薄暗い見通しになってしまいますが、世界は不確実なものでありますし、グローバルな競争というのはますます激しくなってくると思います。

また、非常にたくさんの技術的なチャレンジ、また成熟へのチャレンジがあると思います。日本を資本市場として確立するために、韓国、中国や他のアジア地域にとっての資本の中心地になるためのたくさんのチャレンジがあると思いますが、これは私の力が及ばないところです。しかし、東京が国際化し、そしてロンドンやニューヨークとのコネクションがうまくいくようになれば、重要なアジアの資本市場になり得ると思います。

ありがとうございました。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

もうちょっと時間がなくなってきましたので、一応まだご質問もあるとは思いますが、モーンさんに関しての質疑はこれで終わりたいというふうに思います。どうもありがとうございました。

それでは、引き続き、在日米国商工会議所と欧州ビジネス協会の方からお話を伺いたいと思います。

それでは、最初に在日米国商工会議所レイクさん、お願いいたします。

○レイク参考人

ありがとうございます。在日米国商工会議所(ACCJ)会頭のチャールズ・レイクでございます。

このたび、我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループにて意見を述べる機会をいただきましたことを大変感謝しております。

私は、アフラック日本社の副会長、東京証券取引所の社外取締役も務めさせていただいておりますが、本日はACCJ会頭の立場で発言をさせていただきたいと思います。

また、本日はACCJ金融サービス委員会共同委員長であるジョナサン・シューマン、私の左に座っております。また、副委員長兼投資運用小委員会共同委員長のダクラス・ハイマス、後ろの方に座って、同席させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

まず初めに、ACCJについて、簡単ではございますがご紹介させていただきます。パワーポイントをお配りいたしました。

ACCJは、1948年に設立された日本で最大の外資系経済団体です。米国企業の日本における経営者を中心に、現在は1,400社による企業で構成され、日米両国の経済団体や政府などとの協力関係のもと、日米の経済関係のさらなる進展、米国企業及び会員活動の支援、そして日本における国際的なビジネス環境の強化というミッション、その実現に向けた建設的な活動を展開しております。

また、2007年度は経済成長応援団と企業の社会的責任(CSR)の活動を二本柱としています。

今回、プレゼンテーションさせていただきます内容は、皆様のお手元にもお配りいたしましたACCJのビジネス白書、相利共生をベースにパワーポイントにまとめたものでございます。

本ビジネス白書は、パワーポイントの2ページ目にも記載させていただきましたが、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)といった国際機関の活動の中から見出された、ご覧の5つの基本原則に基づき、テーマごとの分析、提言を行っております。

さて、1990年代半ばに日本政府が金融制度改革に着手して以来、日本の金融制度は飛躍的に改善し、競争力も向上してまいりました。

3ページにも記載させていただきましたように、日本政府は金融監督庁の設置、金融庁への改組、護送船団方式から透明性、そして事後チェックを重視し、各金融機関の自己責任を基盤とするアプローチへの行政手法の転換、そして膨大な不良債権残高の削減など、さまざまな取り組みをなされてまいりました。

バブル経済崩壊後の10年は、日本経済の潜在的競争力を発揮することができなかったという意味では失われた10年でありましたが、金融制度改革という面については、必ずしも失われた10年ではないと評価することができるのだと考えております。

4ページをご覧ください。

日本の金融・資本市場の国際化を考える上で、前提となりますのは、もちろん日本政府が掲げている政策の方向性との整合性だと思います。

平成8年の我が国の金融システム改革では、ニューヨークやロンドン並みの国際金融市場となって再生することを目指し、フリー、フェア、グローバルが改革の3原則とされました。

そして、安倍首相は、オープン・アンド・イノベーションをキーワードに経済成長戦略、アジア・ゲートウェイ構想などに取り組んでいらっしゃると理解しております。

先ほども申し上げましたとおり、日本版ビッグバン以降、金融制度改革面においては著しい発展が見られるものの、一方で政府が目標に掲げている日本の自由で透明、公正なグローバル金融市場の実現には、さらなる取り組みが必要であるとACCJは考えております。

世界各国の金融専門家の間では、東京はグローバルな金融センターのレベルには達しておらず、現在のところグローバルな金融センターはニューヨークとロンドンの2都市に限られるという見解が大勢を占めています。

資料の5ページをご覧ください。

コーポレーション・オブ・ロンドンは、グローバルな金融センターを、世界中の組織間で世界中の金融商品を駆使してビジネスが展開され、多様な国際金融ビジネスが1拠点に集中し、その取引が行われている都市として定義しております。

また、東京について、重要な地域金融センターであり、世界第2位の経済大国の首都ではあるものの、基準には達していないと結論づけています。これは、コーポレーション・オブ・ロンドンのスタディであります。

このような事実に基づき、本日はACCJが考える、日本がグローバルな金融センターとなるための改革において取り組むべき課題をご紹介させていただきたいと思います。

6ページをご覧ください。

まず初めに、一貫性、効率性かつ透明性にすぐれた金融規制環境を創出することが大変重要な課題と考えます。

OECDはこの点を強調し、そのGuiding Principles for Regulatory Quality and Performance(規制の質と効力についての指導原則)において、すぐれた規制は健全な法的・経験的基盤を備え、コストと市場のゆがみを最低限に抑えるとともに、利用者にとっては明快、単純、かつ実際的であると同時に、他の規制や政策との一貫性が保たれていることが必要であるとしています。

日本は、これら原則と照らし合わせますと、金融制度改革の面においては、大きな進歩を遂げてはいるものの、さらなる改革が必要とACCJは考えます。

例えば、コーポレーション・オブ・ロンドンによる調査では、金融センターとしての東京の競争力を弱めている重要な理由として、日本がその複雑な金融規制環境と統治構造を十分に改革できていない点を挙げています。ACCJは、この分野横断的な課題について、ご覧の4つの提言をさせていただいております。

7ページをご覧ください。

米国の資本市場のさらなる競争力、これは米国の資本市場、ニューヨークがロンドンとの関係で競争力を失っている部分があるのではないかという懸念の中から出てきているものでありますけれども、米国の資本市場のさらなる競争力強化を目的に、米国の金融専門家によって設置されました資本市場の規制に関する委員会が、昨年11月に中間報告を発表いたしました。

金融行政プロセスについて、既成の費用対効果にフォーカスしたリスクベース・プロセスに焦点を絞り、可能な限りプリンシプル・ベースのルールや指針などに準拠した規制とすべきであると提言しました。これは米国だけではなく、グローバルな金融・資本市場を形成する上でのあるべき姿を示した1つであり、日本においても同様のことが言えるのだと考えます。

プリンシプル・ベースの規制とする場合、自主規制機関の役割が重要性を増すこととなりますが、自主規制機関に一部の規制監督業務を行う権限が与えられる場合、金融監督行政が同じ業務を行う場合に適用される透明性ルールと同じルールが適用されるべきとACCJは考えます。これはまたIMFの原則にも書かれている点であります。

次に、OECDは、新たな規制の策定や規制の改正について、監督機関からの十分な情報提供の必要性を指摘しています。つまり、このような情報が提供されない場合、企業は予想されるコスト、リスク、市場機会を正確に評価することができないということであります。

日本における情報共有のあり方につきましては、法律制定に関する討議、規制案の作成、規制機関による施行及び運用など、規制制定におけるすべてのプロセスにおいて改善の余地があるとACCJは考えております。よって、外国企業などの利害関係者がその見解を表明するための有意義な参加機会を備えた、透明な規制制定プロセスの一層の確立が重要であると考えます。

具体的には、8ページに記載させていただきましたように、ノーアクション・レターの制度や、パブリックコメントの制度、それが最大限さらに活用されていくよう一層の運用の改善などが求められていると私ども考えています。

3点目は、同種のサービス提供者に対する同種の規制の適用についてであります。9ページをご覧ください。

日本の金融・資本市場が、世界中のステークホルダーからグローバルな金融センターと認識され、健全かつスムーズに機能するために重要なことは何か。それは、日本が産業政策、護送船団型のマーケットに逆戻りしたというメッセージを国際社会に送ることがないよう、グローバル・ベストプラクティスに則り、公正な市場に立脚した金融行政・競争政策を確立することとACCJは考えます。

例えば、郵政民営化プロセスにおいて、100%政府出資が存在する金融機関の業務拡大については、対等な競争条件が確保される前の民業圧迫にほかならないため、新規業務の認可に当たっては慎重な判断がなされるべきとACCJは考えます。さらに、対等な競争条件が確保されないだけではなく、WTOの内国民待遇違反になるようなことがあっては、世界中のステークホルダーから市場の信用を得ることはできません。

また、郵政民営化の議論におきまして、暗黙の政府保証が存在することは、客観的データによっても裏づけられている点にもかかわらず、誤解などすなわち実態を伴わないパーセプションに基づくものであるという理由から、株式処分前であっても業務拡大を容認するべきとの意見がございます。

その一方で、例えば、銀行窓販においては、すべての銀行は優越的地位を濫用するという前提のもと、そのパーセプションに基づいた包括的な弊害防止措置が施されています。

この2つの規制のあり方などには、整合性があるとは言えないとACCJでは考えております。仮に産業政策的な判断のもと、一貫性を持たない金融規制環境が創出された場合、国際社会が受け取る日本マーケットへの印象は、グローバルな金融・資本市場を目指す日本が決して望まない姿になる可能性がございます。

10ページに記載させていただきましたのは、検査手順の改善についてであります。

ACCJは、市場における消費者保護の向上や、消費者の信頼と獲得という金融庁の目標を支持しております。金融庁の検査プロセスにおいて完全な透明性と予測可能性を実現することは、さらに取り組みが必要であると考えます。

ACCJは、金融行政における目標として、金融庁が掲げた透明性、予測可能性の向上を実現するための対策を引き続き実施することが重要であると考えます。

11ページ目より、資本市場における課題について整理をさせていただきました。

まず初めに、日本の資本市場は「大きな規模」と「流動性」といったグローバルな金融センターとなる上で重要となる要素を既に備えており、これは日本が潜在的な競争力を有していることを意味しています。

それでは、ACCJが考える日本の資本市場の課題について4点ほどご紹介させていただきます。12ページ目をご覧ください。

資本市場における1つ目の課題は、東京証券取引所の魅力と効率性の継続的な強化です。

2006年3月に発表されました東証の中期経営計画では、東証自体のコーポレートガバナンスとともに、東証の上場企業のコーポレートガバナンスを強化すること、同取引所のインフラストラクチャーの信頼性回復・向上を図ること、他の世界的な証券取引所に匹敵する国際競争力の強化を図ることという3大目標が掲げられております。

ACCJはこれら東証の改革への取り組みを歓迎するとともに、その運用におけるアカウンタビリティ、透明性、効率性、信頼性を高めるための取り組みがさらに続けられることを期待しております。

ACCJは、東証が新たに設立する自主規制法人について、最大限の透明性、独立性、効率性が付与されるよう、大胆な組織改革を行うべきであると考えます。また、社内改革と国際的提携による国際競争力という東証の強化という東証の公約を支持するとともに、東証が引き続き、日本やその他のアジア地域に展開する外国のビジネスコミュニティーとの緊密な連携を維持し、東証を主たる市場とする外国企業や主たる市場とはしていない外国企業、そして上場を希望する外国企業のニーズを把握されることを期待しております。

例えば、東証に上場している外国企業の母国の法制度を尊重し、その規制策定において他国の監督を考慮するという東証の見解を支持するとともに、持続的かつ着実な進展が図られることを期待しております。

2つ目の課題は、証券取引等監視委員会についてであります。13ページをご覧ください。

活気に満ち、効率的で適切に規制されている資本市場は、投資家の信頼を高めるだけではなく、経済面での競争力確保に不可欠であります。つまり、独立した強力な証券取引監督機関の存在は、日本の資本市場のさらなる強化に不可欠な要素であります。

しかし、日本の証券取引等監視委員会は、金融庁管轄の一機関として機能しており、組織面でのさらなる独立性の強化が重要であり、またその予算、人員も不十分と考えられております。よって、ACCJは、さらに有効に機能する証券取引等監視委員会を創出するという目標のもと、ご覧のように委員会の機能を強化することを提案しております。

具体的には、国会が承認する理事会の設置などの方策を通じて、委員会の独立性を強化したり、日本の資本市場の監視、投資家保護及び公的な資本市場における信頼性確保のためのコーポレートガバナンスに関する最低基準の策定と施行や、内部統制や企業の情報開示に対する監視・監督の権限を委員会に付与することなどを通じ、委員会の機能をさらに強化することが重要であると考えております。

14ページには、資本市場におけるその他課題を列挙させていただきました。

商品取引や先物取引のための基盤を拡大し、機関投資家に対してより多くの取引機会を提供することも重要でございます。そして、金融サービス規制のさらなる緩和も重要だと考えております。

例えば、「貯蓄から投資へ」の流れを促進するための税制改革だけではなく、経済成長、技術革新、新規投資を促進するような税制改革も行うべきであり、それには国境を越えた株式交換やその他類似案件、例えば先ほども議論に出ておりました三角合併などに対する柔軟な措置や課税猶予も含まれております。

最後の15ページには、グローバルな金融センターの実現に向けたその他の課題について整理しております。

仲裁や裁判外紛争処理制度の普及促進といった法制度の整備も重要でございます。また、国際金融に関する高度な専門性を兼ね備えた公認会計士、弁護士などのプロフェッショナル人材の増強や、英語教育の強化も必要となってまいります。

そして、同時に、周辺地域内やグローバルな経済活動を支えるための輸送インフラストラクチャーの整備も、金融・資本市場の国際化とは一見異なるようにお感じになるかもしれませんが、重要な課題であると考えます。

本日は、駆け足で早口でお話をさせていただきましたが、我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループという貴重な場で意見を述べさせていただきまして、誠にありがとうございました。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続き、欧州ビジネス協会のアヴリルさんからお願いします。

○アヴリル参考人

よろしくお願いします。EBC、アヴリルと申します。

今日は、こういう委員会の前で意見を述べさせていただきまして、誠にありがとうございます。

最後のプレゼンテーションとなりますので、今まで聞いた点、いろいろな共通点があると思いますが、大事なポイントだけ絞ってプレゼンしようと思います。

EBCというのは、多分ご存じだと思いますが、欧州ビジネス協会と言いまして、いろんな欧州の諸国の商工会の代理として、いろんな在日で活動をしています。

2ページの資料を見ると、EBCの中で参加している、いろんな欧州の国々の協会を書いているんですが、全部合わせると18カ国の商工会が参加しているということでございます。非常に国際的な協会でございます。

次のページを見ますと、EBCの全体的な活動等を簡単に書いてあるんですが、そういう多くの趣旨の議論、いろんな話が出ているんですが、全部載せるといろんな委員会に分けておりまして、金融に関連している委員会というのは3つあるという事実がございます。

まず、アセットマネジメントですね、投資顧問業務に関しての委員会がありまして、次はバンキング。バンキングというのは、実は銀行、証券業務についての委員会がありまして、3番目というのは保険、インシュランスに関しての委員会があります。

私自身、そういうEBCの代表としてアクセスいただきまして、簡単に個人のことを述べますと、20年間にわたって日本の市場で働いておりまして、ヨーロッパと日本の間を行ったり来たりしていて、主に欧州の金融機関、現在はロイヤルバンクオブスコットランドの在日代表の立場にいるんですが。

こういう国際間についてのいろんな点を述べますと、簡単に、建設的に具体的に述べますと、我々の意見として、もともと11年余り前に橋本総理大臣の時代の時にビッグバンとして提案された大事な点がありますが、そういういろんなビッグバンに関しての点を完全に実行させればよろしいのではないかと思います。

次のページ、5ページに細かくいろんな項目を書いてあるんですが、我々の感覚から見ると、そういう12年間の間に確かにいろんな進歩があったのは事実なんですが、まだ不十分、もう少し進めばいいかと思っているのは、主に2点があります。

1つは、ユニバーサルバンキングについて、要するに、兼業に関しての規制緩和、一番大事な課題ではないかと思います。

2番目というのは、金融当局のルールに関しての透明性を深めるということです。我々のプレゼンテーションは主にその2点に集中しているということでございます。

6ページにいきますと、そういう兼業解禁についていろいろ書いてありますが、具体的に言いますと、国際間の非難になった大きな項目と考えますと、今まで証券業務、銀行業務、いろんな金融に関しての業務が分かれていて、そういうファイアーウォールの問題が一番大事ではないかと思います。そういうことを見直すために、当然ながら法律の見直しということになるんですが、新しい金融商品取引法の33条のことでございます。

もう少し細かく考えますと、またいろんなファイアーウォールの規制がありまして、そういうような規制を緩和すればいいのではないかという提案なんですけれども、その6ページの下にいろいろ細かく書いておりまして、信託業務、保険業務に関して完全に自由化すればいいのではないかと思います。

そういう兼業解禁の重要性ということは、簡単に7ページに書いてあるんですけれども、非常に簡単に言いますと、我々ヨーロッパ人として、ドル、ユーロによるユニバーサルバンキングはそんなに重要であるか、そんなに合理的に業務を行うことができるかと考えますと、簡単にリスク管理、その後は資産配分機関の中のマネジメントの合理性によると思っています。

その上に、ヨーロッパの経験に基づくと、確かにユニバーサルバンキングというのはグローバル・スタンダードになるのではないかと思っています。日本だけ、そういうグローバル・スタンダードから外れると、当然ながら国際化にならないのではないかと思います。

逆に、日本はそういう兼業の規制をずっと強めるようであれば、外資系の機関投資家に関して、日本でビジネスの開業は非常に負担になりますし、コストが高くなりますし、特別なストラクチャーをつくらなければならないし、なかなか我々の金融機関のストラクチャーの中に日本だけ簡単に入れないという状況になります。

その上で、そういうように分散して日本だけ独立するということになれば、リスク管理が非常に難しくなりまして、非常に我々のマネジメントにとって嫌な部分になるということになります。

次のページになりますと、当然ながら、そういう兼業に関しての規制を緩和するということになれば、当然利益相反の議論が出てくるはずなんですけれども、ヨーロッパの経験に基づいて、どういうふうにユニバーサルバンキングの制度の中で、そういう利益相反を防ぐかということを考えますと、主に経験に基づいて、マーケット・メカニズムが非常に強いのではないかと思っています。

要するに、特定利益を集中していろんなビジネスを行うということになれば、すぐビジネスの中で、レピュテーションリスクとかいろんな顧客の反発があって、なかなか実際はできないという大きな事実があるんですけれども、もちろん具体的にそういう利益相反を防ぐために、いろんな内部管理をちゃんとつくらなければならないし、その上に当局と一緒にいろんな規制をつくらなければもちろんだめなんですけれども、その中に主に行動規範をつくればいいのではないかという提案でございます。

次の大きな項目に、規制の透明性のことなんですけれども、どういうふうにそういう規制の透明性を深めればいいか、9ページに書いてあるんですけれども、さっきACCJがご指摘したと思うんですけれども、ノーアクション・レターの制度がとても大事ではないかと思います。

確かに、2005年、そういうノーアクション・レターの制度を導入されたという事実がありますが、事実を見ますと、ノーアクション・レターが起こった件数が非常に少ないという事実がございます。その上に、今まで事前にネゴシエーションが必要になって、とりあえずそういうノーアクション・レターの内容を公表するという状況になりますので、そんなに簡単に機関投資家としてノーアクション・レターの制度を使えるということではないという事実があります。

次の大事なポイントといいますと、そういう法令、規制の解釈のことなんですけれども、どういうふうにそういう解釈を通知すればいいか、どういうふうに報告すればいいか、とても大事なことではないかと思います。当然ながら、ガイドラインが必要になりますし、そういうガイドラインはちゃんと発表されて、それで徐々に安定するのではないかと提案したいと思います。

検査に関して、当然ながら外資系の中でそういう検査に関していろんな不安の声が聞こえると思いますが、主に非常に難しいと思っているのは、異議を唱える機会がないということでございます。要するに、検査があれば、何か違反があったということにすれば、基本的に認めるしかない。その上で従うしかないという状況でございます。もう少し議論できるような機会をつくればいいのではないかと思います。その中で、特に第三者のアドバイスを受ければとても有意義ではないかと思います。

一番最後に書いてありますが、税の規制に関しても同じ透明性が重要だと。

10ページにいきますと、透明性の重要性、簡単に書いてあるんですけれども、どういうふうに透明性が必要かという答えを挙げますと、さきにモーンさんも非常に力強くそういうことを述べたと思いますけれども、一番大事なのは、予測可能性のことがとても大事だと思います。要するに、トップがどういうふうに考えているか、何かあったらどういうふうに反応するか、事前にわかるのはとても大事なことでございます。そうでなければ、なかなかマネジメントの立場として計画を立てるのは難しいし、どういうふうに新しい商品を導入すればいいか、非常に疑問になりますし、新しいことをするのはすべて非常に難しくなると思います。

逆に言うと、そういう透明性が完全でなければ、なかなか日本の中でも外国で開発した商品を導入するのは難しいですし、そういう東京市場にきちんとすべてなかなか参加できないということになります。

その中で、一番大事なポイントというのは、外国からそういう新しい商品、新しい感覚が入ってこないということになれば、なかなか国内金融機関でもそういう新しい知識が多分吸収できないと思いますし、なかなか自分の力で開発できないのではないかと思います。要するに、国際的な理論、知識が共通になって、日本でも広く渡れるようにということが大事なのかなと思います。

一番最後というのは、同じ考えで、また、税制に関しての透明性の重要性だと思います。

非常に簡単だと思いますが、我々の欧州の国々の立場から見ると、そういう主に2点が大事なのではないかと思います。もっと深く考えると、もちろんいろんな細かいことがありますし、いろんなこと、海外でやればいいんではないかと思いますが、まず建設的に考えるとその2点に絞りたいと思います。よろしくお願いします。

○池尾座長

どうも大変ありがとうございました。

それでは、田村大臣政務官からご質問があるそうなので、よろしくお願いします。

○田村政務官

レイクさんに質問です。

今日は、ACCJの代表として来られたということなんですけれども、東証の社外役員もされていますよね。東証の社外役員をやられてから、きょうは他人事のように東証の外国部のこと言ってらっしゃったんですけれども、ガバナンスを効かせる立場でいらっしゃるわけですよね。今までどんなところが問題であって、どうしようと思って、何をされてきたのか。それが、どれぐらい達成されたのか。達成されていないとしたら、どこに課題があるのか。ちょっとぶっちゃけ教えてもらえますか。

○池尾座長

どうぞ。

○レイク参考人

先生、大変難しいご質問を、全然違う立場でのご質問をされました。

ACCJのビジネス白書に書かせていただきました点というのは、まさに東証の中期経営計画の中で書かれている点についてであります。そして、その中期経営計画が出された背景については、先生もよくご存じだと思います。幾つかの大きな課題、もちろんシステムの課題も含めて課題がある中で、中期経営計画が出された。そして、それについてはACCJもEBCと同じで、いろいろな投資銀行や金融機関のメンバーが60近くの委員会をつくって、このビジネス白書のタスクフォースを組んだチームが、私はそのタスクフォースのメンバーではなかったんですが、東証の中期経営計画を評価し、それは方向性として正しいと、そしてそれを実行していく、そして実行していくプロセスの中で、さらにステークホルダーとのコミュニケーションを高めてほしいという意見でありました。ですから、ACCJとしてそれを客観的に見たときに、その方向性は正しいという評価をしたということで、今日お話をさせていただきました。

今日は、東証社外取締役の立場でここに参加はしていませんが、何も言わないとまた先生にお叱りを受けるかもしれませんので、しっかりとそういう意味での経営に携わるガバナンスの役割を果たしている社外取締役の一人として、建設的な役割を私も果たしていきたいと思っております。さらに、また違う立場でお話しする日が来れば、そのときにその立場でお話をしたいと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのACCJとEBCのご報告に関連してご意見、ご質問がございましたら、よろしくお願いします。どなたからでも結構です。

はい、では藤原メンバー。

○藤原メンバー

藤原です。1つだけ質問があります。レイクさんへの質問です。東証の社外取締役の立場でお答えしていただきたいと思います。

私は、日本の金融・資本市場を強くするには、東証を改革して強くすることが大事だと思っております。ところが、東証に上場する海外の企業数を見てみますと、この20年間で125から25へと大幅に減ってます。東証への外国企業の上場数がアジアの他の証券取引所と比較してどうなのかをみてみますと、シンガポールに上場している外国企業数は220社と増えてます。東証への海外上場企業数は今やシンガポールの10分の1です。私の質問ですが、レイクさんは東証への外国企業の上場は必要とお考えですか。現在25社という上場数を100ぐらいまでに増やすべきだとお考えですか。それとも金融はグローバル化されてきているので、東証への外国企業の上場数は増やす必要がないとお考えですか。

○レイク参考人

東証を代表してお話しする立場では必ずしもないと思いますし、私の意見として聞いていただければと思うんですが。

金融・資本市場という意味で考えたときに、そこで資金調達をさらにしたいと世界の国々の企業が思う東証であるべきだと、ACCJのメンバーも思っていますし、特にアジア・ゲートウェイということを考えたときには、いろいろなアジアの企業、そしてそれは欧米の企業もそうでありますけれども、少なくともゼロベースで資金調達をし、上場する最初の市場としての魅力という意味でのマーケットであり、さらにそれだけではなくて、セカンダリーリスティングという形で母国の上場があったとしても、さらに東証での上場もする。これだけの規模と、そして流動性を持っている市場の中で、さらにそれを展開していけるようなメリットがそこにある、というふうに考えることができるようなマーケットでなければいけないのではないかと思います。

例えば、私 の勤めている会社は持ち株会を社員やビジネスパートナーの皆様とともに展開しているわけですが、そういう意味でも東証がさらなる魅力的なマーケットになり、株価が評価され、そして取引がされていくというマーケットになることが重要なのではないかと思っておりますので、いろいろな立場がございますが、すべての立場で共通の考え方としてそういうふうに私は思っています。

お答えになっていないかもしれませんけれども。

○藤原メンバー

今のことに対する確認の質問なのですが、東証への外国企業の上場数を現在の25から100ぐらいまでに増やすべきだと私は個人的には思っているのですが、レイクさんは東証の社外取締役として、増やすべきだとお考えなのでしょうか、それとも25は25でいいのだというお考えなのでしょうか。

○レイク参考人

100などというもので満足するべきではないというのが私の個人的な意見であります。東証の方針としても、アジアのいろんな新興マーケットとしてのあり方として、その存在としてさらに上場を進めていきたいと思っているわけですから、そういう意味では、30、100などということでは全くなく、更に多くの企業が上場していくということが求められているのだと思いますし、私が少なくともいろいろと議論している皆様との会話の中では、そのためのいろいろな方向性を出し、実現に向けていろいろな措置をとるということが検討されているのだというふうに理解しております。

○池尾座長

じゃ、藤巻委員。

○藤巻メンバー

私も東証の外国株は何百でも何千でもリストするべきだと思っているんですけれども、先ほど前回の質問で、外資系企業の努力も不足しているんじゃないかという質問をした裏には、もし東証で外国株をリストしないならば、特にアメリカの銀行、金融機関等は直接にニューヨークでリストされている株を日本で売ればいいんじゃないかと私思っていたんですね、ずっと。

要は、ニューヨークダウみたいな日本人になじみの深い株は、日本人にとっても非常に魅力的です。それを日本人に売る場合米系の金融機関は非常に有利な立場にあるわけです。なぜやらないのかなと、私外資系金融機関もちょっと努力不足だったんじゃないかなと思っていた理由です。確かに税制の問題があって、ニューヨーク株でやると、外国税10%払って、日本でも10%払わなくちゃいけないという問題はあるかと思います。それでも日本人がもうちょっと米国の国債ばっかり買わないで、アメリカの株とリスク資産を買うためには、もうちょっと外資系金融機関も頑張ってもらわなくちゃいけないのかなと思っていたんですね。そういう点で、外資の方としても努力すべきことがあると思います。しかし、よりベターなのは、やはり東証にもっとたくさんの株がリストアップされることだと思うんです。

もう一つだけちょっと、脱線的になって恐縮なんですけれども、米国商工会議所のリストされている要求事項というのは、私も非常にいいなと思うんですけれども、唯一ちょっと気になるのは、先ほど藤原メンバーの方からお話がありましたけれども、格差を気にしすぎると規制強化にまた戻っちゃうんじゃないかということです。私は日本って全然格差がない国だと思っているんですけれども、そういうことを効果的に日本人に伝える組織の一つは米国商工会議所じゃないかと思うんですよね。日本ってそんなに格差がないんだよという外国人のコメントは非常に効くんだと思うんです。そうすることによって、規制社会に戻らなくて済むんじゃないかと思うんです。日本の格差問題、ちょっと間違った方向に進んでいると思うんですけれども、それをぶち破るようなご提案をする方がいいんじゃないでしょうか。

○レイク参考人

格差問題というのは、重要な問題として米国でも議論されておりますし、その格差が政治問題化している現状の中で、ACCJとしての考えはもう既にビジネス白書の一番最初、5ページにも書かせていただいております。グローバル化が進む経済における成功のための要因というものを考えたときに、私どもは、やはり企業は社会的責任を果たすということを絶対考えなければいけないと思っておりますし、その視点に立ったときに、例えばセーフティーネットというものもとても重要であると。ですから、私どもが政策提案をするときには、市場に立脚した経済システムが最も経済成長を実現する上で大前提となるという考え方に立つんですが、それはイコール弱肉強食で、すべて敗者が市場から退場して、それでいいという考え方では全くなく、しっかりとしたセーフティーネットも必要である。 つまり競争の原理の中で格差というものが固定せずに、一部の既得権がそのままずっといいポジションを維持するのではない、そういう意味での競争とともに成長が起き、そしてさらにセーフティーネットとのコンビネーションで格差が解消されていくのだというふうに考えて、今回もビジネス白書の提案をしております。

ですから、そういう意味での様々な啓蒙活動やACCJの考え方の説明というのは今後も継続していきたいと考えております。

○アヴリル参考人

少しだけ前の議論に戻りたいと思うんですけれども、東証の上場の話に戻りますが、当然たくさんの外資系の会社が上場すればよろしいと思いますけれども、今まである程度たくさん上場して、どういう理由で撤退したか、考えればいいのか、おもしろいのではないかと思います。

外資系の立場から見ると、どうすればどういうふうに変わるかというと、当然ながら、日本の投資家がちゃんと投資できるようなということなんですけれども、事実を見ると、上場してもなかなか取引されていない。実利が本当に少ないという事実があります。逆に言うと、そういう調子で上場を維持するために、いろんな日本のディスクロージャーのような規制をちゃんと守らなければならない。そうすると、プラスマイナスを比べると、結局は上場しなくてもいいじゃないかという議論に当然ながらなってきて、撤退したということなんですね。

そうすると、どういう理由で、今まで取引が余りなかったということであるか、いろんな規制とかいろんな議論できるところありますけれども、私から見ると、東証に参加していないので、単に長く証券会社で勤めている人間という立場で答えると、投資家の教育という問題でもあるかと思いますね。要するに、全世界で非常に広がっている大きな会社が東京で上場しても、投資家から見ると、おもしろい株だということはなかなか認識がありません。そうすると、どういうふうにそういうことを直せばいいかというと、簡単に言うと、そういう金融業界の力を合わせて教育させるしかないのじゃないか、本当に皆さんの責任ではないかと思います。

もう1つの問題というのは、そういう、今ディスクロージャーとかいろんな難しい経理制度とかいうのは、反対に議論ができるんじゃないですが、簡単に言うと、具体的に言って、努力しようと思えば、すべて日本語でディスクロージャーして、その上に若干違う制度ですべてのディスクロージャーをつくることになれば、なかなかそういう点を本店まで持っていけば納得できない、手間がかかる。どういうメリットがあるか、だから見当たらない。そうすると、撤退することになりますね。

要するに言いたいのは、そういう例として2つの大きな問題が出てきているのは、1つは投資家の教育、国際化の教育。機関というのは、そういう簡単なルールをつくればいいのではないかと思います。

○池尾座長

関連ですか、はい。

○藤巻メンバー

ここは今の関連なんですけれども、投資家の教育を考えるとき、今は絶好のチャンスだと思うんですよ。というのは、外為証拠金取引に日本人が非常に興味を持ち始めている。それと、欧米の株が急上昇していると。この2大要因を考えると、今、うまくシステムをつくれば、多くの日本人が外国株買うと思うんですよね。

要するに、外国株を東証でリストアップするということは、為替とキャピタルゲイン両方ねらえることなんですから、まさに今ホットなところじゃないかと、私は思っているんです。それなのにだれも努力していないのは、投資家だけじゃなくて、業者も悪いんじゃないかと私は思います。

○アヴリル参考人

同意見ですね。

○池尾座長

じゃ、柴田委員。

○柴田メンバー

別の件で。一般的に規制・監督を考えるときに、欧州においては原則ベース、プリンシプル・ベース、米国においては規則ベース、ルール・ベースという実態があるわけですが、 今日お二方のプレゼンテーションを聞きまして大変驚きました、ということです。

まず、ACCJの方からは、可能な限りプリンシプル・ベースのルールや指針等に準拠した規制にしてほしいと。これがまさかアメリカの方々の口から出るとは思わなかったということでございますし、また、EBCの方からは、今度は逆に真のルール・ベースシステムに移行してほしい、欧州とは反対の方向に行ってほしいというプレゼンテーションがありました。

そうしますと、米州の目から見て、また欧州の目から見て、それぞれ日本のその姿が違って見えるのかという疑問が出るわけでございますが、その辺につきましてコメントを頂戴できたらと思います。

○レイク参考人

ありがとうございます。

まず最初に、7ページに書かせていただいた視点、フットノートの形にいたしましたが、その背景にはやはり、ニューヨークのロンドンとの資本市場としての競争というものがあって、米国ではサーベンス・オクスレー法に一番象徴される問題、課題だけではなくて、訴訟社会ということも含めて、キャピタルマーケットとして、ニューヨークの、特に例えば近年のIPOの額や数を見ても、その競争力が低下している可能性があるという懸念のもとで、この報告書の関係者はその作業に入りました。

これは、私はニューヨークはそういう新しいアイデア、先ほどモーンさんのコメントにもありましたけれども、国際的な視点と競争の中で新しいものをどんどん取り入れていく文化、文化、風土、そしてシステムがあるので、その競争力が低下している部分に対しては一挙にさらに競争力を高めていき、ロンドンと競争していくと思いますし、ロンドンは、またそれを受けて競争をしていくという、その繰り返しになるのだと思うんですが。この考え方は、米国の中での最も今考えられている視点でありACCJももちろんそれに対して、これは有識者の集まりとしてはとても重みがある、そしてかつ財務長官のポールソン氏もこれを評価しているというふうに理解していますので、そういう意味でお話をしています。

ただ、前提にあるのは、もちろん各国の司法制度と歴史の中での行政との関係の中で、どういうふうに現実的に透明性を確保していくのかということになるんだと思いますので、ベースになるヨーロッパの大陸法をベースにした、かつその政府との関係がある、そういう意味で起きている課題と、それを解消していく方法、米国の中で起きている問題、それを解消していく方法、日本の中で起きている課題を解消していく方法というのは、その表現だけにとらわれずに、現実問題としてどういう課題があるのかということで整理していくということが重要なのであると思います。

その意味で、私が理解している限り、EBCとACCJが言っていることは、提案していることは、全く違いがあるものではなく、基本的に日本のいろいろな意味での金融行政がしっかりと進化している金融ビッグバンの成果がたくさん出ている中でも、現実にビジネスをしている会員のメンバーをそろえていろんな議論をしてみると、透明性の課題がそこに幾つかある。それについて整理をしたというふうにお考えいただければいいのではないでしょうか。

○アヴリル参考人

もちろん、実際思っているんですけれども、こういうプリンシプルそれぞれその議論ということはとてもおもしろいと思いますけれども、もう一歩先に進むとですね、我々会員にとって、どういうふうに規制がつくられているかよりも、どういうふうに簡単に使えればいいか、従えればいいかが一番大事だと思います。

要するに、大事なのは、ルールはどういうふうに出てきたかよりも、どういうふうに簡単に理解すればいいか、要するに透明性。その後はルールで、チョイスに合わせてないことがあれば、どういうふうに予想できるか。要するに、予測可能性という1つのことが大事ですね。要するに、非常にプラクティカルな考え方で見ればよろしいのではないかと思うんですけれど。

○池尾座長

ありがとうございました。では江原メンバー。

○江原メンバー

今日は2つの大きな地域を代表なさっているお二方、商工会議所のメンバーの方ということで来ていただいているので、質問をさせていただきたいと思います。

日本というマーケットがどれだけ皆さんから見て魅力的に見えるのか、ないしは見えないのか。この質問というのは、他のマーケット、特にアジアの国と比較という観点からもお答えしていただいても結構なんですが。財務長官、米国のポールソンさんが長官になる前に70回中国を訪問したと。全く同じ時期に、日本に来た回数は20回行くか行かないかと、こういうふうな1つの例があるわけですが、皆さんにとっても資本及び人的な資源の配分というのはどこかで最適化していらっしゃるわけで、そういう観点から日本というものがどれだけ魅力的に映るのかどうか。

また、もしチャレンジがあるとしたならば、日本で働いていらっしゃる外国企業の方々として、どういうふうなチャレンジが、皆さんの会社の中であるのか。日本というマーケットに投資しよう、コミットしようというときに、どんなふうなことで苦労していらっしゃるのか、そこら辺の話を聞かせていただくと、大変ありがたいです。

○レイク参考人

まず初めに、日本のマーケットはとても魅力的なマーケットだと、もちろん私どもACCJの会員は思っております。

実際に、いろいろな幹部と話をしておりまして、日本経済が世界第2の経済大国であって、その中で成功すれば、まさに国際部門というもので見た場合に、日本市場からの収入というものが一番巨大な収入になっている企業がたくさんございます。

ところが、中国はとてもエキサイティングな可能性を持っているということと同時に、先ほど出ておりました直接投資のGDPの比率で見ますと、高くなっている。それは、それだけ海外からの直接投資をいろんな形で歓迎する動きがありますし、例えば世界経済フォーラムのアジア大会などで議論をしておりますと、何人かのアメリカ人が日本でビジネスをしたこともあるけれども、全然中国の方がやりやすいと、歓迎してくれているというイメージを持つんだよということを言って、それに対して、いや、でも最近は日本も全然違うと思うので、またよろしくお願いしますと、ACCJ会頭としては一生懸命頑張るわけですけれども、それは、そういうイメージであると。そして、各機関のメンバーたちは実際に本社との議論の中で、様々な課題を持っているというのは事実であります。

ただ、現実をわかっている幹部であれば、日本市場の重要性、すなわち 日本のお客様は厳しい目で商品やサービスを見ますので、日本で成功すればアジアで成功し、世界で成功することができるという事実を理解しています。 日本で気合を入れて仕事をしている人たちは、その日本の魅力をしっかりとわかっているんだと思います。それでは、じゃ、経済システムに課題がないかと言えば、このビジネス白書がいろんな意味でリストしましたような課題がありますので、ACCJの会員はとても残念に思っていると思います。これだけ巨大な経済大国であり、かつ潜在的なパワーをたくさん持っている日本が、特に日本で生活し、日本語を話し、日本でビジネスをしている人たちがさらに活躍する場をつくっていけば、彼らは世界に対してプラスのメッセージを発信していく人たちにもなっていくのだと思います。そういう多くのメンバーが頻繁にフラストレーションを感じて、ACCJでいろんな政策提案をしたいと思っているという状況がもっと改善されていけば、アジアの中でのゲートウェイというのは必ず実現できる、そしてそのパワーと潜在的可能性を日本は持っているというふうに私どもは思っています。

○アヴリル参考人

欧州から見ると、間違いなく、当然ながら日本の市場は魅力的であるし、重要であるということは事実なんですね。欧州の機関から見ると、多分だれでもそういうことを深く理解していると思います。

ただ、3つの課題があるのではないかと思います。

私の個人の経験から、20年前に初めて日本で勤め始めたときの状況を見ると、どこかに、日本に関して非常に恐怖感が強かったという状況なんですね。要するに、そういう巨大なマーケットになかなか今まで入れなかったし、将来を考えると非常に魅力的だという、非常にみんな気持ちよく日本に何かしようということを思っていたんですね。ただ、20年を繰り返すと、日本の重要性、例えばマーケットというものの重要性、市場の大きさを見ると、どんどん下がってきて、もちろんまだ非常に大事なんですけれども、昔と比べると、アメリカと並べるぐらいの大きさが市場にあったのに、何でそんなに小さくなったかと、非常にがっかりしているという感覚がありますね。

もう1つは、20年間にわたっていろんなことやってみたんですけれども、やっぱりそんなに簡単に日本で活用できないという事実をわかってきました。規制とか知識とか投資家の教育―今の話になるんですけれども―のことがありまして、やっぱり魅力であるのになかなか入れないという、また、がっかりという気持ちもあります。

もう1つというのは、20年間そういうことは全くなかった、ほとんどなかったと思いますけれども、アジアの魅力、全体的に見ると、昔は基本的に日本しかなかったんですが、最近中国ですね、いろんな国がどんどん発展して、大きな市場を出しているので、じゃ、そうすると、アジアの中で活用するためにどういうところにそういうリージョナルヘッドクォーターとか、アジアの中心をつくればいいかと、どんどん議論出てきますね。20年前にも当然ながらちゃんとやれると思えば、将来的に日本しかないでしょうということがあったんですが、最近逆に、結論に至るのは、今の段階でシンガポール、香港の方が簡単でありますし、将来的に中国だろうということを思っているんですね。

そうすると、失望的な状況ではないと思いますが、レイクさんの口から出てきた残念という言葉、あれということになりますが、将来的にもっと残念にならないこと、みんな協力する場ではないかと思いますが。

○シューマン参考人

今の質問に対して、一言付け加えさせていただきたいと思います。

日本というビジネス拠点としての見方についてなんですけれども、2つに分けることができると思います。

長年、日本で事業を行っている企業は、大体収益を出せるようになっていまして、今レイクさんから話がありましたように、非常に重要なマーケットだという意味で、魅力を十分感じているということが言えると思いますが、今から日本でビジネスをつくろうと、または支店を開こうという企業の話をしますと、コストが高くて、競争が激しくて、規制の透明性が不十分であり、いろんな不安があると。ですから、日本じゃなくて、中国とかシンンガポールとか香港に行きましょうというふうに判断する会社が少なくないと、個人的には思います。

それから、チャレンジなんですけれども、やっぱり我々はサービス業を行っていますので、サービス業をやるに当たっては、人的資源が不可欠であることを考えますと、やっぱり一番チャレンジしているところは、その人的資源のところだというふうに思っております。

ご存じのとおり、今の金融サービスセクターの労働市場が非常にタイトになっていまして、なかなか優秀な方を採用するのが難しい時期でありまして、ですから、何とか人的資源を、優秀な方々を増やす必要があるというふうに思っております。

○池尾座長

何人かの委員の方から手が挙がっていることは存じ上げているんですが、Our Time is Upで、そろそろこの会合は今日の段階では終わりにさせていただきたいと思います。引き続き次回以降も議論の機会がありますので、ご質問、ご意見は次回以降、また出していただくということで、本日は以上で終わりとしたいと思います。どうもありがとうございました。

最後に、事務局より次回以降の日程についてご報告していただきます。

○三井市場課長

次回の第5回スタディグループの日程でございます。3月13日火曜日、12時30分から14時30分までの時間を予定しております。次回もヒアリングをしたいと思います。プレゼンテーションの方として、メンバーの柴田様、藤原様、それから外部から三國陽夫様を予定しています。

それから、3月23日金曜日の第6回の会合では、メンバーのポール・クオ様からのプレゼンテーションを予定しております。

日程は以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。

どうもありがとうございました。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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