金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第6回)

日時:平成19年3月23日(金)14時00分~16時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 特別会議室

○池尾座長

それでは定刻ですので、ご出席の予定でまだ来られていない方も若干名おられますが、ただいまより我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第6回会合を開催いたしたいと思います。皆様にはご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

初めに、本日の議事について説明したいと思います。

お手元に議事次第があると思いますが、本日はまず初めに有識者からのヒアリングとして、当スタディグループのメンバーで国際銀行協会、IBAの会長であられるポール・クオさんにプレゼンテーションを行っていただきます。その後ですが、昨日、事務局よりEメールが届いたかと思いますが、ちょっと状況の変化がありまして、もう少し議論をしている余裕があるということが判明いたしましたので、尽くされていない論点が幾つかまだありますので、それについてのヒアリング等を今回はちょっと続けたいということで、後半には事務局から2点、1つはコングロマリットに関する制度上の論点ということに関連したご説明と、市場行政におけるエンフォースメントについてというご説明を受けて、その上で自由討議をするという形に、若干前回言いましたことからは変更させていただきたいとに思っております。

それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○三井市場課長

お手元の資料、4つございます。資料1と書いてある横長のもの、それから一番下に縦長でIBAという資料の番号のないものがあります。それ以外に事務局の資料として資料の2と3というのが、2が横長、3が縦長でございます。ご確認願えればと存じます。

以上です。

○池尾座長

よろしいでしょうか。

それでは、初めにクオメンバーからプレゼンテーションをお願いいたしたいと思います。それから、ディスカッション自体はクオメンバーのプレゼンテーションと、それから事務局からの説明を併せて伺った後に、一括して行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、お願いします。

○クオメンバー

ただいまご紹介いただきました国際銀行協会会長のポール・クオでございます。

本日は、日本語のパワーポイントに沿ってプレゼンテーションさせていただきますが、お配りした本文の方にはより詳細な内容がございますので、ぜひご覧になってください。本文の日本語版は数日後にはご用意できるかと思います。申し訳ありません。

1ページをご覧ください。

国際銀行協会は21カ国、65の外資系金融グループを会員とし、日本におります役職員総数は1万5,000名以上であります。IBAの会員幹部は、所属するグループ企業の中で対日投資の拡大を主張する存在であります。IBAは海外の現状と私どもの海外での経験を踏まえ、建設的で実際的な視点に立って、今回の提言を取りまとめさせていただきました。

2ページをご覧ください。

私どもは、東京市場が金融センターとして成功した姿を思い描くことから、検討作業を開始いたしました。IBAが思い描く2015年のビジョンは、東京市場が最もダイナミックな金融市場となり、日本型金融イノベーションが世界の標準となり、金融商品の多様化も進み、間接金融から直接金融への流れの中、資本市場がより大きな発展を遂げ、日本の金融に対する規制・監督はグローバル・ベスト・プラクティスとして認められ、日本の社会で金融サービス分野は良質でやりがいのある仕事を創出する産業として、幅広く認識されるといったところでございます。

お手元にあります英語の本文は大きく9つの項目に分かれており、各項目におきまして幾つかの提言をさせていただいております。テーマ別の概要としましてはお手元の資料の3ページにあるように、まずは仮称ですが、金融セクター推進機構(Financial Sector Promotion Organization)といった官民合同での金融セクターの推進を図る機関の創設、次に金融サービス業の変化に素早く対応できる規制・監督体制の確立、その他にも銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直し、取引所機能の強化、金融サービスに関わる優秀な人材の育成及び確保、さらにはヘッジ・ファンドを受け入れやすくするための環境の整備、税制の整備など多岐にわたって提言を取りまとめさせていただきました。

幾つかのテーマに関しましては、既に各スタディグループや委員会などで十分に議論されておりますので、本日のプレゼンテーションにおきましては、新しいアイデアや当協会のユニークな観点からの提言にフォーカスさせていただきたいと思っております。

お手元の4ページにありますとおり、金融サービス業の発展が日本の利益となることを明確に内外に表明することが重要であり、国際競争力を再検討した他の主要金融センターの先例を見ると、金融サービス業の国際化をナショナル・プライオリティに位置づけていることが目立つところです。

次の5ページにありますように、当協会の提言としては、内閣府のもとに官民の専門家を構成員とする公益機関として、金融セクター推進機構を創設することであります。この金融セクター推進機構は、金融センターとしての東京の強みを世界にマーケティングし、外国企業の上場やヘッジ・ファンドの誘致などを促進したり、東京市場の国際競争力強化のための旗振り役となるものでございます。

次に、金融規制・監督体制のあり方についてであります。6ページをご覧ください。

金融規制・監督の一貫性、実効性、効率性、透明性の基本原則にさらに重点を置くことによって、日本の規制基盤がさらに強化されると考えております。規制・監督の一貫性は、言うまでもなく投資家保護の観点から、すべての金融商品に適用されなくてはならない原則であります。また、その実効性は金融商品の複雑化、高度化が加速している今、一層、その必要性を増しております。業界との継続した対話を重視し、規制・監督機関への民間専門家の積極的登用により、市場実態と規制との距離を埋めることができるものと考えます。効率性は規制コストの低減を意識する検査や報告の重複を排除し、費用対効果分析、コスト・ベネフィット・アナリシスに基づく規制の優先順位付けなどを考慮するべきであります。最後の透明性に関しては、金融機関が経営戦略を策定する際に、必須条件であるという点から重要なものであります。

これらの原則を踏まえ、望ましい規制・監督体制のあり方について、次のページのとおり提言させていただきます。

第1は、すべての金融商品を対象とする規制の実現であります。あらゆる金融投資商品を一律的に規制すれば、規則、検査、報告義務といったものの重複または不統一もなくなり、実効性や透明性も確保できるものと確信しております。次回の金商法の改正において、是非取り組んでいただきたい点であります。

第2は、規制・監督当局と業界との連携の強化であります。官民間の継続的な情報交換と共有、規制当局の上下あらゆるレベルでの民間人の登用と人的交流、金融商品の開発速度と規制体系の進展の幅を狭め、規制の4原則が強化されるものと考えます。

第3は、基本原則、いわゆるプリンシプルを重視した規制・監督制度の導入であります。基本原則に基づいた規制体系によって予測可能性、プレディクタビリティが高まり、透明性を高めることになると考えられます。

これらの3つの改革を踏まえて、どのような規制・監督機関を創設するべきかが次の8ページにある提言でございます。

私どもは、すべての金融商品を対象とした政府の管轄下に置かれた民間の運営資金負担、インダストリーファンディングによる独立の規制・監督機関の創設を提言いたします。金融行政の立案と法令の起草機能は、基本的にこれまでどおり政府に残したまま、創設される組織が通常検査を含む幅広い規制・監督機能を果たすというものであります。現在ある金融業界の幾つかの自主規制機関は、この組織に統合されることになります。一貫性、実効性、効率性、透明性の4原則を促進しつつ、この機関の運営を民間の資金負担とすることによって国民の負担は軽減され、民間人の積極登用による官民対話と専門性の促進、民間資源による現状の人材不足の緩和といった効果が期待されます。

次のテーマは、金融コングロマリットに対応した法規制の問題であります。9ページをご覧ください。

世界の主要先進国において、銀行と証券を厳格に区分して規制しているのは日本のみとなっています。金融コングロマリット規制においても海外では銀行と証券を区別せずに、弊害の防止措置を効果的に実行しております。

IBAのグローバル金融コングロマリット企業は、現行規制の下で日本固有の問題を抱えております。10ページをご覧ください。

すなわち、他国では通常見られるグループ全体の統括責任者を日本においては置くことができず、グループ全体の戦略の策定にも支障を来し、グループ内での人、組織、システムの重複がコスト増につながり、顧客への総合的なサービス提供のための商品開発や販売が制約されることであります。これらは事実上、金融イノベーションの弊害要因になっております。これは私ども業者の利益の問題だけではなく、このような商品の恩恵を受けることができない利用者である日本の企業や投資家にとっての問題でもあり、日本の資本市場の競争力強化にとって大きな阻害要因であると考えます。目指すべき方向性は、ユニバーサル・バンキングの持つ総合性ではないかというふうに考えております。

次の11ページにありますとおり、私どもは金商法33条、現行の証取法65条の撤廃と金商法44条、いわゆる弊害防止措置の改正を提言申し上げます。本文の方には暫定措置として幾つかの提言もさせていただいております。

次に、取引所のあり方であります。12ページをご覧ください。

取引所は言うまでもなく、国民の共有財産としての国の経済資本市場の競争力の反映でもあります。取引所間の国際競争が激化する中、多様な金融商品が高い流動性の中で公正な価格で不測の停止などすることなく、瞬時に低コストで取引ができることが競争を勝ち抜く条件であります。日本の国際化戦略を立てるに当たり、日本の持つ比較優位である資金力を最大限に活用する意味でも、取引所の位置付けは極めて重要であります。

私どもの提言は13ページにあるとおりです。

第1に、規制コストを考慮した外国企業の上場促進。

第2は、アジア企業の上場の誘致に積極的に取り組むべきであり、また、リスクテイク能力のあるプロ投資家向けに、アジアの成長企業を対象とした市場を創設することを検討すべきであります。

第3は、取引所に対する信頼性の確立であります。危機管理、ソフト及びハード面でも取引システムの回復力、健全な事業継続対策、ビジネス・コンティニュイティー・プラン、取引中断時の非常時対応計画の強化が主要であります。

第4は、国内取引所の統合。

第5は、多様な金融商品の上場と投資機会の提供です。

最近の東証さんのニューヨーク証券取引所やロンドン証券取引所との事業提携を当協会としては歓迎し、今後、アジアの取引所との提携もするべきものであると考えます。

14ページをご覧ください。

次に、ヘッジ・ファンドにとって魅力のある市場についてであります。

ヘッジ・ファンド業界は1.2兆ドル以上の規模になり、市場の二、三割のフローを占めるようになりました。ヘッジ・ファンドは市場に新しい資金の供給と流動性、コーポレート・ガバナンスの促進、企業の株式価値重視を付与する機能を持っております。ヘッジ・ファンドが大きなプレゼンスを占めている金融センターはまた、そうしたヘッジ・ファンドにサービスを提供する多数のサービス提供者を惹きつけることにもなっております。海外市場においてはヘッジ・ファンドの持つ金融サービス業務の雇用創出、経済活性効果に着目して、税制、法規制改正を図って積極的に誘致を図っております。ロンドンとシンガポールがいい例です。

次に、16ページの税制についてでありますが、税制が資金のフローに与える影響は皆様ご存じのとおりです。

まず、第1の提言は、「貯蓄から投資へ」の流れを確実にするため、個人の課税繰延商品の拡大やキャピタルゲイン課税の優遇税制措置を継続することであります。

第2は、世界の資金を取り入れるため、早急により多くの国との租税条約を締結し、既存の条約の見直しも要望されます。

次の17ページに移りまして、人材の確保・教育であります。

グローバル市場において競争力がある市場には、資金と優秀な人材が集まります。優秀な人材の確保は、世界の金融センターとなるために不可欠な条件になります。金融における共通言語としての英語教育の充実、早期学校教育を初めとする金融教育プログラムの導入、専門家育成のための実務教育と研修などがあります。

最後の18ページにありますとおり、その他の提言でありますが、東京市場をさらに発展させるために、金融に精通したプロの専門家を増やし、法務・会計環境の整備、法律政策決定プロセスのオープン化、成田・羽田の空港問題についても真剣な検討がなされるべきであります。

以上が私どもの意見と提言であります。

最後に一言申し上げさせていただきたいことは、私どもの提言は身勝手なものに聞こえるものもあるかもしれませんが、日本市場に信頼を寄せる外国金融機関の悩みでもあり、期待でもあることを是非ご理解いただきたいと思います。今後、活発な議論がなされることを心から期待しております。ありがとうございました。

○池尾座長

どうも大変ありがとうございました。

それでは、引き続き事務局から2つ、説明を聴取したいというふうに思います。

まずは初めに、コングロマリットに関する制度上の論点ということで、総務企画局の大森信用制度参事官からご説明をお願いします。

○大森信用制度参事官

資料の2の2枚紙でございます。

2年ちょっと前ですか、金融改革プログラムにコングロマリット化に対応した金融法制の整備の検討という言葉がありましたのをとらえて、コングロマリット新法をつくって金融業態の再編・融合を促すんだという意味不明の大きな報道が続いたことがありましたけれども、コングロマリットについて残された制度問題のうち最もしばしば指摘されますのが、ただ今、IBAのお話や本日の日経新聞の都銀懇の報告が主張される銀・証のファイアーウォールでございます。もう一つの銀・証問題、商業の方は先週、ウォールマートが銀行保有を一旦断念したという報道がありましたけれども、一般事業者と銀行の相互参入規制のあり方になると思います。

資料の1枚目左上、まず、非公開情報の共有規制でございます。「親法人等・子法人等」という法律用語がいささかわかりづらいので、以下、代表的に「証券子会社と親銀行」という言い方をさせていただきます。

現在の法令では、マル1証券子会社が親銀行との間で発行者間または顧客に関する非公開情報を本人の事前の同意なく授受、やりとりをしてはならないと。及びマル2で、親銀行から取得した顧客に関する非公開情報を利用して取引等に関与することを禁止しております。

マル1の方は授受そのものを禁止しておりますから、親子で情報を共有した方がメリットになる場合もできないという指摘がございます。マル2の方は例えば、ある人が大金持ちだという情報を親銀行から得て、証券子会社が証券取引しませんかと関与するということですけれども、銀行自らが投資信託を販売するとか証券仲介業をするときには、当然ながら、自らの情報として多額の預金のある人をターゲットにするのでしょうから、それと余り変わらないじゃないかという指摘もございます。

一方、例えば独立系の証券会社などからは、銀行の証券子会社に比べ、競争上、不利な状況に置かれているというか、確たる証拠はないけれども、親子で示し合わせて動いているというようなお話をよくお聞きいたします。であるからこそ、ある程度情報の授受そのものを禁止する形式的な規制でないと、弊害防止措置として十分ではないという意見を、これまでずっとお聞きして参りました。

最近では、といってももう3年ちょっと前になりますけれども、銀行による証券仲介業を解禁するときも同じような議論がございまして、最終的に私の記憶では池尾先生が定量的に検証不能な弊害の可能性よりも、解禁によるメリットの方が上回っているのはかなり自明じゃないかと言われて、決着したように覚えております。この問題について隔靴掻痒の感がありますのは、親銀行から貸付先の企業が潰れそうだという話を証券子会社が聞いて、その企業の増資を引き受けて投資家に売りまくるみたいな絵に描いたような利益相反は、最近はあるわけはないので、一方、3年とか5年とか一定の期間を振り返ってみると、結果として投資家が損をして、その損した分のお金が銀行の懐に入っていたというようなことはございます。

ですから、弊害防止の必要性そのものは誰も異論はないんですが、市場の評価にゆだねて防止しようとするのか、常時適用される行為規制によって防止しようとするのか、言いかえますと、この規制によって守られているものと、この規制をなくすとか、あるいはもう少し実質的な利益相反防止ルールに改めることによって、得られるものとの比較衡量ということになるんだと思います。

一方、情報を共有される側である顧客の事前同意につきましては、実際のところ、なかなか同意を得るのが難しいという事情があって、銀行サイドからは、同意をとらなくてもいい制度にしてほしいという要望になっておりますけれども、この資料左側中ほどのただし書きですが、法令遵守やリスク管理など内部管理のための情報の授受は、当局の承認により事前同意なしで行ってよいというのは、相互参入が始まって以降、七、八年たったときだったでしょうか、現実のコングロマリット化の進展に応じて講じられた手直しでございます。

さらにその下、個人情報保護法がございまして、原則は個人情報を本人の事前同意なく第三者に提供することを禁ずるオプトインですけれども、第三者に提供することを本人に通知、あるいは本人が知り得るようにしておいて、嫌ならやめるというオプトアウトの仕組みがあれば提供できるとか、ちょっと飛ばしまして、あらかじめ情報利用の範囲とか目的を明示した特定の者との共同利用は認められております。

こういった日本の個人情報保護の仕組みを右側のアメリカの個人情報保護制度に比べますと、アメリカは原則グループ内の共有はオーケーで、グループ外の第三者ならオプトアウトしてくださいと。さらに一定の個人情報、信用情報についてはグループの内外を問わず、オプトアウトの機会を設けてくださいというものですから、日本より広く情報共有を認めているようにも見えます。

ただ、日本の個人情報保護法の専門家によりますと、先程の特定の者というのを広くとらえる、例えば極端に言えば、共同利用したい人というのが特定の者なんだと。そういうふうにとらえると、後ほど申し上げるように日本ではアメリカと違って事業会社も銀行を持てますから、より広い範囲で情報共有を認めているんだというような指摘もあるところでございます。また、右左行ったり来たり恐縮ですけれども、右側の※印にありますように、アメリカでも州によってはオプトインを求めておりますし、EUではオプトインが当たり前でございます。

この点、5年半ぐらい前になりますけれども、まだ日本で個人情報保護法ができる前に、私はアメリカ、イギリス、フランスと、10日ぐらいで実態調査に行ったことがございます。当時、アメリカはグラム・リーチ・ブライリー法の施行直後で、議会でもこのオプトインかオプトアウトかをめぐって、結構、激論を戦わせておりましたし、金融界と消費者団体の主張が全く相入れないので、行政当局が途方に暮れているというような印象でございました。

こういったアメリカの状況に対するEUの見方は、一言で言えば遅れた議論をしておるなというもので、もとよりどこの国でも自分の個人情報の管理にそんなに神経質でない、知らない会社からダイレクトメールが届いても気にならない人たちも多いんですけれども、神経質な人もいるので保護する、いわばマイノリティ保護の問題なんだというふうに、EUの当局は割り切っているような感じがいたしました。

右下、この非公開共有のEUのというところの上に、金融機関は重要な非公開情報の悪用を防ぐための適切な方針と手続を策定し、実施することが必要というのは、大恐慌の後にできた古いルールでありまして、このルール自体もちろん意味がありますけれども、自主的な取組みだけでは足りないので一定の規律を導入して、それが厳し過ぎると、トータルでかなり無駄が生じてしまうという兼合いの問題かと思います。その下の3行、銀・証の役職員の兼業規制も、日本の場合は形式的には厳しくなっていると言ってよろしいかと思います。

以上がファイアーウォールの問題で、資料にはないんですが、先ほどクロスマーケティングのお話もございました。こういったことも、どこの国でも同じような問題が生じていると思います。典型的には金を貸すから投資商品を買えとか、あるいは投資商品を買うんなら金を貸すといったことで、なかなかFRBも単に銀行が希望を表明するだけだったらいいんじゃないかとか、お客の方から希望があればいいんじゃないかとかいうガイドライン案を4年ぐらい前につくっていたと思うんですけれども、いまだにその「案」というのがとれていませんので、やっぱり事実上、力関係が違うということへの懸念も各国とも共通して抱えているんではないかと思います。

2ページ目が銀行と一般事業会社の相互参入という論点で、日本では一般事業会社による銀行保有が認められております。おりますというか、実感としては認めているというよりも、長らく銀行の新規参入、免許そのものを与えない時代が続きまして、10年前のビッグバンでも、そういう運用は続けられないということになったときに、ことさら銀行の親が事業会社であってはならないという規定がなかったというのが、仕事をしてきた側の実感でございます。ここで銀行業に参入した事業会社というのは、ビジネスモデルにたぶん自信があったということで、例えばコンビニ送金が非常に便利になったというのは、日本経済全体の効率化に貢献しているんだと思います。

一方、米国では原則、事業会社は銀行を持てませんけれども、※印が2つありますように、単一の貯蓄銀行とか産業融資会社という形で割合大きな穴があいておりまして、GEなどのように本業をしのいでいるところもございます。ただ、冒頭申し上げましたように、ウォールマートとかダイムラー・クライスラーとか、長らく待ったをかけられているところもあるようでございます。

逆に、銀行による事業会社の保有というのは、日米ともに5%ルールでございまして、米国では金融補完業務によって個別に承認をするという仕組みで、排出権とか商品取引の会社を持つ銀行がございます。

この日本の仕組み、アメリカの仕組みに対しまして、EUは双方向で銀行が事業会社、事業会社が銀行を持てる制度になっておりますが、闇雲に持っているというわけではもちろんなくて、特に銀行が事業会社を持てるのは、資本市場が未発達であったことを反映しているに過ぎないではないかという指摘もございます。先ほどのダイムラー・クライスラーはいまだにドイツ銀行が大株主ですけれども、そのこと自体をいいとか悪いとかいう話は、あまり聞いたことがないような気がいたします。

以上、申し上げましたように、EUは双方向を認めると、米国は原則は双方向を認めないと、日本は片方向を認めるということになっておりますけれども、片方向だからEUか米国かどっちかに合わせるべきだというような制度論は、最初のファイアーウォールの話に比べると、私自身はあまり強くお聞きした記憶はございません。5%ルールのもとでも銀行が事業会社と連携するのには、余り大きな障害になっていないということなのかもしれません。

ただ、こうした事業会社と銀行の間の動きというのは、顧客情報の共有・活用を目指して行われているという面がありますので、最初の方で申し上げた金融業態内、銀・証・保といった業態内でのファイアーウォールのあり方と、併せて考えていく必要があるんだろうというふうに感じております。

雑駁で恐縮ですが、以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続き、市場行政におけるエンフォースメントについてということで、先日、監督局の佐藤局長からは一度お話を伺う機会があったんですが、証券取引等監視委員会からお話を伺う機会はなかったので、今回、証券取引等監視委員会の内藤事務局長からご説明をいただくことにしたいと思います。お願いします。

○内藤証券取引等監視委員会事務局長

事務局長の内藤でございます。

それでは、資料に基づきましてご説明いたします。

資料3をお開きいただきたいと思います。

「市場行政におけるエンフォースメントについて」というタイトルでございまして、98年に金融ビッグバンがスタートいたしまして、それ以降、業者関連の規制でございますとか、それから市場周りの規制につきましても、規制緩和という形で大きな流れが今日まで至ったというふうに理解をしております。この中で市場仲介者の新規参入が非常に増加しております。そしてまた金融商品であるとか、あるいは金融取引の多様化・複雑化あるいはグローバル化と、こういった展開はもう申し上げるまでもございません。そしてまた、最近の傾向でございますが、金融資産というものが非常に蓄積をしてまいりまして、これを背景とした個人が市場取引に積極的に参加していくということで、「貯蓄から投資へ」という形で政府の謳い文句にはなっておりますけれども、大きな流れとして既に始まっているのではないかなというふうに考えております。

そういった大きな規制緩和という流れの中で、私どものそのルールというものをどう適用していくかということで、日々、エンフォースメントの業務をやっているわけですが、もう少し掘り下げて申し上げますと、2のところで市場における多様な問題の発生というのがございます。実に多様な問題が、現在、発生をいたしております。

これはとりあえず整理をしたようなものでございますので、まだまだあろうかと思いますけれども、まず第1は、金融市場仲介者の新規参入が増加をいたしまして、その競争が非常に激しくなってきている。証券会社といいましても、かつての兜町のカルチャーを戴いた証券会社のみならず、先ほどもお話出ましたように他業態、他業種からの証券会社への進出という形で、あるいはまたネット証券というのもございますので、そういったところがいわば相互にしのぎを削り、競争を激化させている。

そこで、証券会社の適合性の問題でありますとか、そしてまた引受審査、最近は次の○にございますように市場、取引所ですね、証券取引所間の競争というのも激化しておりますので、新興市場における上場企業、これがどんどん上場が行われているということで、これに絡むIPOに関連する引受審査というものがさまざまな形で問題化をしております。上場したのはいいけれども、IPO直後からずっと初値、そして市場価格は下げていきまして、全く公募価格には届かないというような実例が非常に目立つということでございます。

それから、二つ目の○が今申し上げたような取引所間の競争の激化ということで、どうしても取引所の間の競争が激化して参りますと、易きにつくといいますか、より緩やかな基準の中で上場を進めていこうということで、取引所も一種のビジネスという形で、そうした行動に出がちなわけであります。そうなって参りますと先ほど申し上げたような形で、新興市場上場企業の信認自体が非常に低下をしていくと。そして、また毎期毎期、実績見込みであるとか、業績予想というのは発表いたしますので、そういったところでのかさ上げと思われるような予想というのも、発表されるというような問題が出ております。

それから、取引の多様化・複雑化という中ですが、これもさまざまな問題が申し上げられますけれども、一つの例としてREIT、不動産投資信託があります。昨今の不動産市場の活況というものを背景にしまして、一つの不動産関連事業をする主体としてのパターンとして申し上げますと、まずは私募不動産ファンドに入れて、それで資金を入れて事業を立ち上げていく。それで、ある程度の年数を経た上で、その案件をREITといういわば公募の器の方へ移していくという形で、いわばその出口戦略を考えるというようなものが、一般的な姿ではないかなというふうに思います。

ここで問題になって参りますのは、いわゆる不動産関連事業者そのものが支配している傘下の中にある私募のファンドと公募のファンド、その相互間の勘定間やり取りというものについての利益相反の問題が取り沙汰されるということでございます。

それから、MSCBの発行というものもございます。これは一時は再生事業の先行きがなかなかおぼつかないというような企業の場合には、MSCBというものを発行して、より弾力的なファイナンスをしていく、エクイティファイナンスを強化していく。こういう目的があったわけではございますけれども、最近の例で申し上げますと、やはり株価が下がる中でより発行株式数が増えるもんですから一層ダイリューションが激しくなると。そういうときに非常に紛らわしい行為なんですけれども、関連の証券会社あるいは関連の会社がこれに空売りをかけるというような形で、いわば不正行為というようなものが出てきている。そういう例もございます。

それから、一般論でございますけれども、仕組商品に係る説明不足ということで、いわゆる適合性原則の観点から問題が非常に多い、そういう売りつけ方法をとっているということもございます。

それから、取引のグローバル化ということでございます。これも非常に今、進展しております。といいますのは、今の日本の、特に外資系の証券会社の取引では約6割から7割ぐらいがDMAでありますとか、あるいはアルゴリズムというような、いわばコンピューターに基づく取引が行われて、ダイレクトに東京のマーケットに注文が入ると。こういうような形で、国境というものがいわば存在しないかのような形で取引が行われるというのが実態でございます。

我々も、もちろん、そういう実態を前提にしながら考えていく必要がございますけれども、そういう場合にこれまであった例を申し上げますと、ロンドンのヘッジ・ファンドの一トレーダーですけれども、彼が東京にDMAで発注をいたしまして、ある商品が売られると、発行されるというときに、プレヒアリングという事前の打診というもの、事前のサウンディングというものが行われるんですが、その情報を察知をしまして、早速インサイダーの空売りをかけたというような形で、最終的には私どもがイギリス当局に情報を提供いたしまして、それでイギリス当局において民事制裁金を科したと、こういう例でございます。

これからますます一当局だけではなかなか対応できないということで、相互に外国当局と連絡をしながら、全体としてのエンフォースメントを考えていく、こういう必要が出てきているのかなという気がいたしております。

それから、個人による市場取引への参加ということでございますが、最近の例で申し上げますと外為の証拠金取引、これがご承知のとおり非常に増えております。増えておりますが、その中でやはり説明不足という問題が出ております。特に最近見られますのは、詐欺とか詐欺まがいの取引の増加というものでございまして、この統計というのは、なかなかまだまだ足元の数字というのはないんですけれども、昨年の夏以降で見ても、非常に数が増えてきているのではないかなと。個人金融資産は1,500兆と言われますけれども、そのうち50歳代以上の世代が持っている個人金融資産が約8割ということで、そういうところに集中したさまざまな取引というものがこれから起きてくる。金融商品取引法の枠の外でも頻発するのではないかなと思っておりますけれども、そういったものが既にかなりの数見られるということでございます。

それから、その他にもということで、これは伝統的な従来からもあったものでございまして、取引一任勘定取引における違法行為でありますとか損失補填、インサイダー、それから有価証券報告書の虚偽記載などがございます。

こういった問題というのを考えますと、よく指摘されている点ですけれども、情報の非対称性といいますか、マーケット参加者における情報の格差というのがやはり非常に大きいものがあると。であるがゆえに、この情報をまた操作をして、相場操縦でありますとか風説の流布でありますとか、そういった形でマーケットをマニピュレートして収益を得ると。こういうような行動が後を絶たないのであろうと思います。

証券市場、直接金融というのは、間接金融よりもマーケットというものを母体にした、より透明性の高い価格形成がきちっとしている、そういう形でいろいろ言われてきたわけですけれども、実際考えますと、ある意味で銀行と企業との関係というのは、銀行が審査コストを出して、それで企業調査をし、そして妥当だと考えれば貸出を行う。そしてまた、その後も企業と銀行との関係が永続的に続いていく、長期間続いていく。こういうような関係であるのに対しまして、やはり市場というのはその場その場の対応でもありますし、そしてまた、その中での情報というものがなかなか一筋縄ではいかないといいますか、非常に格差が大きいと。したがいまして、こういった格差をどうやって是正をしていくか、あるいは透明性を高めていくかというのが、私どもに与えられた一番大きな仕事ではないかなというふうに実は思っております。

その透明性というものがございませんと、公平性というものも成り立ちようがありませんし、あるいは市場の効率性というのもやはり透明性から始まるだろうと。もちろん、ディスクロージャーというのは重要なわけですけれども、ディスクロージャーのみならず、透明なマーケットであるという信頼性といいますか、そこのあたりが非常に重要な課題ではないかなというふうに考えております。

そこで、下に書かせていただきましたように、私どもとしては自由で透明性の高い魅力ある市場の構築には、規制緩和のみでなく、むしろ、こういう規制緩和というものに的確に対応していけるような市場運営ルールの整備、そしてまた、そのエンフォースメント、ここでは私どもの監視という狭い範囲のものだけではございませんで、監督・検査・監視全体を広くとらえた、そういうルールというものの適用と考えてございます。そういったものが非常に重要になってきているのではないかということでございます。

次のページをご覧いただきたいと思います。

2ページでございますが、金融商品取引法の本格施行というのが今年の夏から予定をされておりまして、この法律が施行されますと、実は規制対象領域がさらに拡大をするというようなことになります。

3ページをご覧いただきます。

絵がございまして、この絵ですと白いところとちょっとグレーに塗っているところがあろうかと思いますが、私どもの委員会の機能といいますのは、まず一番上に情報収集・分析・審査。これはさまざまな情報を集めて分析・審査をいたします。最近ですと大体年間で外部からで7,000件くらいの情報がもたらされます。必ずしも、これは有用な情報のみならず、さまざまな情報が実にございます。それを分析をする、あるいは日々の売買審査の中で取引所の方からもたらされる情報もございます。そんなものを分析をいたしまして、担当課の方へつなぐ。

担当課が大きく4つぐらいに分かれているというふうにご理解いただければと思います。一番左が業者に対する検査、証券会社の検査でございます。証券会社、そのほかに投信会社とか投資顧問業者とか登録金融機関などがございます。それから開示検査。これは有報あるいは届出書の検査。それから課徴金検査があり、悪質な事案については犯則事件の調査。こういう形になっております。

この網かけのところが今年の夏から新たに入る部分でございまして、一番左を申し上げますとファンド等と書いてありますが、いわゆる集合投資スキームで、今はみなし有価証券に一部入っておりますが、それ以外のものが相当程度ございます。それも今後はこの対象領域の中に入ってくる。民法上の組合といったようなものもこの中に入ってくるということでございます。それから、開示検査で申し上げますと、四半期報告書でございます。四半期報告書も20年からスタートするということになりますので、これも対象領域に入ってくる。課徴金は、今は不公正取引及びその開示関係についての虚偽記載があれば課徴金をかけるということになっておりますので、そういったもので四半期も新たに入ってくる。こういうようなことでございます。

それで、2ページにまた戻っていただきたいんですが、今、申し上げたようなことが金商法の施行によりまして新たに入ってまいりますが、この3.の中で2つ目の○に書かせていただきましたが、私どもとしてはかなり大きな課題だと思っておりますのが実はこれでございます。金商法の第51条により新たに法令違反でなくても、公益または投資家保護のために必要な場合は行政処分を行うことになるという点でございまして、今までは証取法の中では法令違反というものにかなり絞った形での調査・検査をやってまいったわけでありますが、昨今の非常に取引が複雑化してくる、証券会社の経営というものが多様化してくるという中で、やはりいわば細々した法令違反を追っていただけでは、なかなかうまくいかないわけです。むしろ、その発生原因である内部管理体制そのものに、どこに問題があるのかというようなところの調査・検査をしていくというような形で、今後、対応していく必要があるというふうに考えております。

それから、3つ目が、今申し上げたような上場会社が増える中で、そういう開示報告書が増えてくるということでございます。

それで、今後の課題を4の「エンフォースメントの強化の在り方」というところに書かせていただきました。

まず、第1が、これまでに一定の市場監視機能・体制強化というものが進展してきたというふうに思っております。平成4年に監視委員会が発足をいたしまして、次の次のページ、4ページになりますが、監視委員会等の予算の定員というものの大体の規模が載っていますのでご覧いただきますと、年度がございまして一番左側に監視委員会がございますが、当初は84人から出発いたしました。現在が18年度で318人、来年度になりますと予算案のベースですが、341人と。財務局にも地方のスタッフがおりますので、合計を言いますと19年度末では615人という600人を超える体制という形で、拡大の傾向を続けております。

端折ますが、もう1枚めくって最後の紙をご覧いただきますと、先ほど申し上げたもう少し数別にいたしますと、証券取引所の上場会社数というのがございまして、これが10年前、金融ビッグバンの始まったころと比べますと全体で約1,000社増えています。3,000社から約4,000社になっております。これは新興市場の活況というものが原因、背景になっております。

それから証券会社数ですが、証券会社はかつては免許制だったわけですが、登録制になりました。現在、309社です。この数字だけですと若干増えたという感じかと思いますが、毎年毎年において新設する会社、それから閉鎖する会社、それが非常に多い数ございまして、ですから入れ替わりが非常に激しい、そういう状況になっております。それから、登録金融機関がむしろ減ったという数字なんですが、証券仲介業、これを加えていただきますと1,500から1,600、1,700と、こういう形で金融機関も着実に広がっておりますし、かつ扱うボリューム、これが飛躍的に増えております。それから投信会社、投資顧問会社、それから金融先物取引業。ご覧のとおりの形で、全体、増勢の方向を示しております。

それから、恐縮ですが、もとの2ページに戻っていただきますと、今申し上げたように体制はこういう形で平成4年から進んで参りましたけれども、金融監督庁発足以降は、監視委員会は金融監督庁のいわば外局というような形で、現在に至っているということでございます。それから、自主規制機関の機能・体制の強化、課徴金の導入というのを平成17年に入れて、実は私どものかなり中心的な行政の手段になっております。

(2)で、これからどういうふうな枠組みをやっていくべきかということで、私どもの内部でもいろいろ検討しているところがございまして、それを若干ご紹介させていただければと思いますが、まず、第1が課徴金制度の見直しということでございます。これは担当の部局からもご説明があったかと思いますが、法律の附則でおおむね2年後に見直しをするということで、大体今年がこの見直しの年に当たっている。折しも独禁法の見直しもやっているということもございますので、それも見ながら対応していくことになるのかなと思っております。

そのときに、私どもとしては是非ご検討いただければという思いの点が、3つぐらいございます。

まず、第1は、市場監視のための中心的ツール。これはアメリカでも、よくアメリカのSECが犯則調査とか刑事事案の調査をやるというような若干誤解があるんですけれども、アメリカの場合もSECの行政の中心はこの課徴金でございます。私どもとしても、これから課徴金というのは、ますます重要な仕事になってくるということで、適用範囲の拡大、それから、やはり現在は不当利得の剥奪というところに目線をおいた制度でありますけれども、これを制裁的な色彩にして、より抑止効果が効く、そういう制度にしていくべきではなかろうかと。

もう一つございまして、アメリカの場合には課徴金というものをSECが提案するときに、行為者との関係で和解という方法をよく用います。最終的にSECがどんどん時間と費用をかけてやれば、最終的な目的が達せられるんですけれども、費用対効果を考えますとある程度の和解で、妥協的なところで相手と手を握って問題をより効率化させる、効率的に事務を処理するというような観点ではないかなと思いますが、そういった機動的な対応といったものも可能になるような、そういうことが望まれるのではないかなというふうに考えております。

それから、第2が証券取引等監視委員会の機能とか体制のさらなる強化というところでございますが、先ほど申し上げたように職員の数を増加させておりますけれども、正直申し上げて、まだなかなか十分足りるというような段階ではございません。特に課徴金の新しい分野とか、それから犯則事件につきましても事件が非常に増加しておりますので、そういったところで、やはり引き続き強化をお願いしていかざるを得ないのかなというふうに考えております。

もう一つは、自主規制機関との関係もあるんですけれども、下に「自主規制機関の機能・体制の更なる強化」とも書いてありますが、やはり、日本の場合には、自主規制機関というのが本格的に体制を強化したということになってまだ数年程度しか経っていないだろうと思います。したがって、そこで証券会社の検査・考査といったようなものも、やってはいただいているんですけれども、アメリカのような運営というのは、なかなかまだ至っていないというのが現状ではないかなと言わざるを得ません。

アメリカの場合には、証券会社の個別の検査は基本的にはNYSEとNASD。今度は両者が合併をいたすように聞いておりますけれども、それらを両者がやりまして、SECはあるテーマを決めて、テーマごとにいわば証券会社に横串を刺すような形で検査をやっていく。そういうような体制で臨んでいるというふうになっておりますが、そういう意味で規制機関の体制の強化というのは、非常に重要な部分ではないかなというふうに思っております。

それから、監視委員会におきましては、私どもはここで増員とか専門的人材の採用というように書いておりますが、民間の人も相当数加わっていただいております。銀行とか証券会社を途中で退職をされて我々に入られる方、それから、任期つきで私どもの方に来られる弁護士さんであるとか、あるいは公認会計士さんというような方もいらっしゃいます。それから、他省庁から、例えば法務省から出向される方もございます。そういった方々を含めますと、私どもは先ほど320人ぐらいと申し上げましたけれども、18年度末で大体90人ぐらいがそういう今までの霞ヶ関外の方から、あるいはまた金融庁・財務省関係者でないというところから来ている方でございまして、そういった関係者も今後、ますます専門性に応じて採用していく必要があるというふうに思っております。

それから、最後に市場参加者による市場ルール等の再認識というのを書かせていただきました。これは市場参加者によるルールの認識・遵守とか、個々の市場参加者による誠実心の発揮による自己規律と書いておりますけれども、これはいわば当たり前の話でありまして、私どもは、最近のインサイダー事案あるいは虚偽記載の問題についてもそうなんですが、そういうものをやっている中で感じますのは、やはり私どもとしては、基本は違法行為があればそれを監視をし、また調査し摘発していく。これが我々の与えられた当面の課題ではあるのですけれども、市場における啓蒙活動といいますか教育といいますか、注意喚起をしていく、そういったものもやはり欠かせないというふうに考えております。

実は、私どもの方からも東証さんにお願いをしたりいたしまして、全上場企業にインサイダーに関わる社内の教育であるとか、あるいは社内のルールとか、そういったものの整備状況は今どうなっているかということを、一度アンケート調査をしてもらいまして、それに応じてまた次の対応を考えていくという形で、そういった最も基本の自己規律というところも、より一層我々としては徹底をして、また、意識を持っていかないと、なかなか今後の仕事の量を考えますと対応するのは非常に難しいということで、そんなこともいろいろやっておるということでございます。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、質疑及び自由討論に入りたいと思いますが、本日は最初にクオ会長からIBAが作成されました詳細なレポートの骨子に関しましてご報告いただきました。その内容に関して、さらにご質問とかご意見をいただく。それに関連して大森参事官の方からありましたコングロマリット規制に関する、日本の場合、銀・証の区分については非常にセンシティブでいろんな議論をしてきたんですけれども、バンキングとコマースのことに関しては、何かちょっと鈍感だったというか、だから、知らないうちに事業会社が銀行を持っていたりしているという状況があるような気もしますが、そのあたりとか。それから最後に内藤事務局長から、率直に現在の証券取引等監視委員会が抱えている課題と実情のようなことをご説明いただきましたので、それについてのご意見、ご質問等をご自由にいただきたいと思います。一応、プレゼンテーションをいただいた順序で、最初にIBAのクオ会長からのご説明に関連して、あるいはIBAのレポートそのものについて、ご意見とかご質問がありましたら、よろしくお願いいたします。

○田村政務官

内藤さんの話とクオさんの話にも関連するんですけれども、公務員制度改革の話なんですけれども、我々当事者はなかなか言いにくいことで、皆さんは第三者ですから是非ちょっとひとつお願いといいますか、今行われています公務員制度改革の行方を是非注視して、皆さんからもいろんなご意見をいろんなところで言っていただきたい。また、ご指導いただきたいと思うのは、クオさんのレポートでも内藤さんのプレゼンテーションでも、やはり監督とか検査とか監視、企画立案もそうなんですけれども、これをもっと効率的に行うためには市場との回転ドアといいますか、人材がもっと流動化していって、もっと出入りを自由にすることが重要だと思うんですけれども、残念ながら、今の公務員制度改革の流れというのは、いかがなものかという方向に行きそうなんですね。

人材バンクがどうなるかわかりませんけれども、基本的にはそこを通さないと再就職できないとか、今度は関連の営利企業への再就職というのを、求職行為だけじゃなくて、今度は営利企業の方から働きかけも非常に厳しく見られる可能性があるわけです。そうすると、企業の方からも声をかけにくいし、こっちからも普通の交渉もしにくいと。それで、罰則も非常に厳しくなる可能性があるんですね。それで、人材バンクの中でも金融庁から行った人は、元金融庁の人は金融庁の人の就職に関して一切関わらないとか、今度は再就職等監視委員会というのができるんですね。そこが今度はもうきっちり見ていくわけですよ。

もし、こんなことが実際起こったら回転ドアどころか、ますます民間と業界の壁ができるような気がしますんで、これは質問ではないんですけれども、今度の公務員制度改革のあり方、グローバル化の流れに合わせて、本当に追い風なのか向かい風なのかを皆さんに見ていただいて、我々が言うと手前味噌になりますので、是非いろんなところでご意見とかご指導とかご発言をいただければなと思います。是非注視をよろしくお願いします。

以上です。

○池尾座長

それでは、平野メンバー。札が立っています。

○平野メンバー

それでは、先ほどクオメンバーからご指摘のあった諸点のうちで、コングロマリット規制に関する部分、これにつきましては、その後、大森参事官からもお話がございましたので、ちょっとこのあたりにつきまして、先ほど大森参事官からもご紹介のございました、ちょうど私どももメンバーになっております都銀懇話会のペーパーがまとまっておりまして、かなり共通する話題もございますので、少し補足と言いましょうか、コメントをさせていただきたいと思います。

まず、大きな枠組みといたしましては、今回の本スタディグループのテーマそのものでもありますけれども、いかに市場あるいは金融制度、それから、そこで活動するプレイヤー、この活動の内容を充実し、競争力をつけていくかということがテーマであります。それをするためにはやはり顧客のニーズ、この場合は前回も申し上げましたけれども、調達サイドと、それからあと運用サイド、2つあるわけですけれども、それぞれのニーズにいかに応えていくか。これを利便性の観点と、それからまた一方で顧客保護というこの2つの観点を担保しながら進化させていくと。これが求められているというふうに思われます。

そうなりますと、やはり今の世界の潮流というのは、総合的な金融サービスの提供ということであって、銀行の貸出業務だけではなく、やはり資本市場における調達業務、これをパッケージあるいは全体の提案ということで、法人のお客様に提案を申し上げる。個人のお客様についても単純に銀行預金であるとか外国預金だけではなくて、既に可能になっておりますけれども、投信であるとか保険商品をあわせてお勧めし、その中で一番お客様のニーズにマッチしたものをとっていただくと。これが基本なんだろうなというふうに思います。

そういう中で、どちらかというとこれまでの金融ビッグバン、過去10年の規制緩和の中で運用系の商品の販売、あるいは製造と販売というふうに分けますと、製造というよりは販売面においては自由化が進み、今、私が申し上げたような具体的な活動が可能になってきている。これを通じて、例えば銀行の窓販を通じて売られる投資信託が、投資信託全体の販売量の過半を占めるようになってきていると、こういう大きな展開が起こっているわけです。一方で調達系の商品であるとか、あるいは製造と販売というふうに分けると製造の方、ここのところの自由化と申しましょうか、規制緩和が若干遅れているのではないかと、こういう認識を基本的に持っております。

そういう意味で、幾つかポイントがございますけれども、この場では2つだけ申し上げたいと思います。1つは業務範囲、金融コングロマリット、金融コングロマリット的なサービスを提供していく上での金融機関の業務範囲の問題。それから、もう一つが先ほども話題になりましたけれども、ファイアーウォールの問題と。この2つでございます。

それで、まず業務範囲に関してでございますけれども、やはり、今、日本に関しては銀行持株会社の傘下で認められる子会社の業務範囲というのは、基本的に銀行と同じになっているということがございまして、これは銀行法上に限定列挙されているということでございます。これはもちろん理由がありまして、異なる事業の営業によってリスクが銀行に波及することを回避するためと。銀行というのは預金者の資産の安全性を確保する必要があるということで、こういった措置が講じられていることはわかるんですけれども、先ほどから申し上げているようなお客様のニーズに対する柔軟・機動的な対応であるとか、いわゆるワンストップ・ショッピング化ということによって、シナジーを追及していく方向には障害が起こっているということでございます。

一方、例えば証券持株会社に関していうと、証券業務だけでなくて投資会社業務であるとか、あるいはその不動産業務が認められている。この結果として例えば、今、金融業界における再編統合が進んでいるわけですけれども、銀行持株会社形態をとっている金融グループ、私どもMUFGはその一つでございますけれども、これが証券持株会社形態の金融グループと再編しようといったような場合には、子会社の範囲に入り切らないものが出てくるということで、これを放出しないと統合が進まないといった形での制約があるという点が1つございます。

こういった業務上の範囲の問題というのを考えていく上で、やはり1つ参考になるのは先ほどからも話題に出ておりますけれども、アメリカのグラム・リーチ・ブライリー法の考え方だと思っておりまして、事前に新しい業務へ参入あるいは原則としては認められていない業務に参入、あるいはそれを買収していくというような場合には、あらかじめ、それを認める要件、これを定めて、それを満たした対象に関して言えば、事前承認等を条件としてこれを認めていくと。いわゆるグラム・リーチ・ブライリー法におけるFHCの認定の基準というのは、自己資本とか経営状態であるとかがありますけれども、こういったアプローチが1つ可能なのではないかと考えます。

とりわけ、その子会社の範囲を無制限に拡大するというのは難しい面もございますので、比較的金融に近い分野、例えば不動産仲介であるとか投資会社は保有できるようにする。今、話題になっておりますけれども、プリンシパル・インベストメントなどは、銀行傘下の証券会社ではできないといった制約があるわけでございますけれども、あるいはやろうと思っても制約があるということがあるわけでございますけれども、このあたりに手当てをしていくと。こういったことは総合的な金融サービスを可能ならしめる上で、有効な施策なのではないかというふうに思います。

2番目に、ファイアーウォールでありますけれども、これにつきましては先ほど大森参事官から既に詳細なご説明がございましたので、あまり繰り返しはいたしませんけれども、やはり顧客情報の共有の部分、これも元々どうしてこういうことを決めているかというと、詐害的な行為を防止したり、あるいはインサイダートレーディングを防止したり、それから顧客のプライバシーの保護を図ると、こういう趣旨でございますので、それに対応するためには、必ずしも顧客情報の共有を認めないということではなくて、チャイニーズウォールの設定を行ったり、インサイダー取引規制あるいは金融機関の守秘義務、こういったアプローチで、問題あるいは弊害を回避することができるのではないかというふうに考えております。

かつ、これをまた無制限に認めてしまいますと、私も記憶しておりますけれども、90年代にアメリカで問題になったアメリカのメガバンク、マネー・センター・バンクが個人の情報を他業に売るというようなことが現に行われていたわけでございまして、これに対する反省から、アメリカではさまざまな個人情報の規制が入ったと私は記憶しておりますけれども、そういうことがないようにするという意味でいえば、例えば同一金融グループ内に関しては幅広く認める、例えばオプトアウト等のアプローチでここは認めるとか、そういった考え方があるのではないかなというふうに思っております。

先ほどお話のございました役員兼職のところも同じでございまして、これは1番目に申し上げた複合的な金融のサービス提供ということに関していうと、銀・証あるいは信託、あるいはそれ以外の金融業態との協働を進めて、お客様に幅広いサービスを提供するという上では、役職業兼務もさらに認めていただく。

それからもう一つ、クロスマーケティングのところですけれども、これもタイイングとよくセットで議論されることがあるわけで、タイイングについては私どもも反省を込めながら申し上げるわけでございますけれども、優越的地位の濫用、とりわけ中小企業で借入れに依存せざるを得ないような借り手のお客様に対するクロスセールス、クロスセリングに関しては非常に注意をしなければいけない。自戒しているところではございますけれども、ただ、やはり大企業のお客様で単純な借入れだけでは満足できないようなお客様に対するさまざまなクロスセリング、クロスマーケティングの実施ということは、基本的に顧客利便性の向上につながるというふうに考えておりまして、このあたりの規制の緩和、今、いわゆる市場誘導型業務というのは認められておりますけれども、このあたりのより弾力化、規制の明確化、こういった面での一層の配慮がなされるのが望ましいのではないかというふうに考えております。

少し長くなりましたけれども、以上でございます。

○池尾座長

大変どうもありがとうございました。

○露木メンバー

クオさんのご提言の中にありましたけれども、このビジョンということと、それから年限、到達年度というか、15年でこういうことやりますという中身のことはちょっと別としまして、こういった形を持つべきだと思います。というのは、日本の構造問題、特に少子高齢化の問題でいえば、今後、50年間で3,800万人の人口が減少するという実態が見えています。この3,800万人という数字だけではなくて、いわゆる15歳から65歳までの生産年齢人口が3,800万人減ると。要は、これから日本の50年間というのは働き手のみが減っていく姿というのが既に想定されている、そういった社会になっていくと思います。

こういったところで、2030年以降というのは実質GDP成長率もマイナスに陥ってくる可能性があると。こういった国力の相対的なグローバルに見た低下というものが見えていく中で、どういう産業を生産性の高い産業に、どの程度成長を促していくかということを、はっきり時間軸と、それからゴールというものを明示する方法が、国民にやはり一番理解しやすいのではないかと。特に世界的に見れば、毎年1.5兆ドル程度のGDPの成長があるんですけれども、これはスペイン一国が毎年登場しているような姿で、特にインドや中国という急進している国もある。この中で食糧輸入60%、エネルギー輸入80%という実態の日本の国力がさらに弱まっていく中で、生産性が極めて高い分野というのをどうやって育成していくかというのは、真剣に議論してくるときに来ていると思います。

もちろん、国として1,500兆円の個人金融資産というものがあって、なかなかリスクマネーに浸透していないという問題があって、ただ闇雲に市場開放すると、慣れないものですから、海外の、いわゆる国民が心配しているのは外資の人に食い散らかされちゃうと。そこの1,500兆、先ほど内藤局長からも50歳以上の方が80%という問題はあるにせよ、どうやってリスクマネーを中小企業とか日本の産業を支えているところに浸透させる仕組みをつくるかということと。それとやはりその弊害で一番気になるところは、日本の基幹産業として支えているような企業というものが、買収等の目的でいろいろ問題になるんじゃないかと。

こういったものが日本の安全保障の議論の中で、どの程度プロテクションという仕組みをつくるか。これと併せてやっていくことが必要なんじゃないかなと。今回のクオさんの提言の中のビジョンと時間軸というものは、我々日本の今後の先行きにとって非常に必要な話だろうと思っています。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

○堀内分科会長

クオさんのプレゼンテーション、どうもありがとうございました。大変興味深く伺いました。

1つ、私は金融セクターの規制・監督体制についてのご提案についてご質問したいんですけれども、8ページのレジュメのところで、統合され独立した権限のある規制・監督機関が重要であると。これは全くそのとおりだというふうに思いますけれども、提言の中では民間の運営資金負担による組織というふうに謳っていらっしゃいますよね。これはどういう意味でしょうか。

直感的にイメージするのは、さまざまな自主規制団体が民間でつくられていますので、そういうものをベースにした監督体制をつくるというご提案なのか。そうすると、それに対するこれまたすぐ思いつく批判は、そういう民間の利益団体をベースにするような規制・監督体制というのは、国民利益全体の観点から見た場合には、やはり歪みがあるんじゃないかというわけですから、当然、そういうものからインディペンデントである必要があるだろうということですと。そうすると、国民負担が軽減された上で、しかも民間の運営資金負担という形の規制体制というのは、どういうふうにイメージされておられるか、ちょっとその辺を伺いたかったんですが。

○池尾座長

お答えいただけますか。

○クオメンバー

イメージとしましては、もしかしたらイギリスのUKFSAが一つのいい例なのかもしれませんけれども、インダストリーファンディングであると。何しろ専門性、金融商品の開発速度がすごく速まっている今、そういう専門性とか業界との対話あるいは人材不足という意味でも、インダストリーファンディングにすることによって、そういう問題が解決できるというふうに思っております。

○池尾座長

ありがとうございました。

税金を取ってそれを使うかわりに、直接検査を受ける金融機関から料金を徴収するとか、そういうある種の会費を強制的に徴収するというふうな、そういうスタイルを想定されているんじゃないかと思いますね。検査してあげるからお金を払ってくださいという感じだと思うんですけれども。

どうぞ、柴田メンバー。

○柴田メンバー

クオさんのおっしゃった構想というのは、既にイギリスにおいてFSAでそういった形になっています。労働党政権発足後にFSAがつくられたときは、バンク・オブ・イングランドの監督部門と民間の自主規制機関のSFAとが合併するという形で発足しましたが、このプレゼンテーションを拝見しまして、そういったイメージなのかなというふうに思いました。

そこのイメージを延ばして考えますと、今の監督局、監視委員会の機能と人員に加えて、証券業協会、投資信託協会、投資顧問協会などをまとめてメガで統合された機関をつくろうというプロポーザルに見えますが、クオさん、そういったことでよろしいんでしょうか。

○クオメンバー

具体的には、どこの組織がどうなるべきかということはちょっと置いておいて、イメージとしては、そういう今の幾つかある自主規制機関も、ある意味では重複しているというふうに思いますし、イメージとしては柴田メンバーがおっしゃったとおり、UKFSAのモデルに近いものであるということでございます。

○池尾座長

そうしたら、根本委員、次に藤巻委員、順にお願いします。

○根本メンバー

クオ会長のプレゼンテーション、非常にありがとうございました。

ちょっと、今、堀内先生も質問された規制・監督のあり方についてご質問させていただきたいんですが、6ページ目なんですけれども、この4原則をさらに継続的に構築を図るとありまして、ここの意義に関してはもう否定する余地もないのかと思うんですが、もう少し具体的に、例えばどういうところが海外の銀行・証券さんにとってもう少し改善してもらいたい点なのか。例えば効率性、検査・報告の重複の排除とありまして、例えば、今、FSAさんと日銀でやっている検査・考査は、もう少しインテグレートした方がいいとか、何かどういうことをここで言っていらっしゃるのか。あと透明性のところで、プレディクタブルな規制あるいは行政処分というものは、どういうときに透明があると感じられて、どういうときに感じなかったのか、ちょっと教えていただければと思うんですけれども。

○クオメンバー

あまり細かい具体例を言う場ではないんだと思うんで、本文の方で幾つかお時間あるときにご覧になっていただければ、詳細の内容が幾つか例もございます。

コンシスタンシー、エフェクティブネス、エフィシエンシー、トランスパレンシー、この4原則はとても重要だというふうに考えております。つい最近のシティ・オブ・ロンドンのアンケートの結果ですけれども、ついこの間までは金融センターとして大事なファクターナンバーワンが、ある意味では人材というふうになっていたわけですけれども、今年、レギュレートリー・エンバイロンメントというふうにアンケートの結果が、多少、金融センターにとって何が重要なのかという意見が、いろいろ動いていると認識しております。

○池尾座長

どうぞ、藤巻委員。

○藤巻メンバー

クオさんのご提案非常にすばらしいと思いますが、あえてちょっとだけ付け加えさせていただきたいとおもいます。16ページ目に税制上の支援策というのがありまして、2番目にクロスボーダー経済活動を増大させるための租税条約の見直しという項目があります。これに関して、細かい話で申しわけないんですが、私はやはり日本人の富を増やすためにも、日本人はもっと海外の株式に投資をするべきだと思うんですね。日本人の富を増やすし、それよって円安・ドル高は進む。そうなれば日本経済にも好影響です。そのようなことを考えても日本人の海外株式投資をふやすことが重要だと思います。日本人は海外の債券投資に偏りすぎている。もっとリスクを取らなければいけない。米国人のように。

日本人が海外株式を買うようになると、日本の金融機関にもビジネスチャンスだと思います。確かに東証に外国企業が上場するようにさせるというのが1つの方法ですが、もし、それをしないのであれば、当面の間は日本人が日本の例えば証券会社を通じて、ニューヨークの株を買うような仕組みや努力を日本の企業等は考えるべきだと思います。そのとき1つネックになるのは税金の問題でしょうか、日本の株の場合は源泉分離ですと確か10%で済むわけですけれども、日本の証券会社を通じて例えばニューヨークの株を買うと、向こうの税金を10%ぐらい払って、こちらも10%払うということで二重課税になります。外国税の通算はたしかできないと思うんですね。

ですから、もうちょっと海外の株を買えるような税制度を考えるべきかなと思います。もう一つ、やはり小さいことで申しわけないんですが、人材の確保の問題です。株式オプションというのは人材確保の面で非常に有効なる手段、確かに今アメリカでは多少問題が出てきていますけれども、だと思うんです。この前、最高裁の方で確かにオプションというのを給与収入だという判決がもう出てしまっています。ただ、私はオプションというのは欧米であれば値段があるわけですから、もらったときのオプションの値段を給与所得として、それ以降エクササイズするまでの利益は、キャピタルゲインではないか思うんですね。

日本の場合には個別株のオプションマーケットがないんで、なかなかもらったときのオプション価格というのを算定するというのは難しいのかもしれないんですけれども、それを例えば税務上、何か便宜法でやってあげるのがよろしいかなと思います。オプションをもらった後、自社株が上がるか下がるかによってどの程度もうかるかまたは損するのかは、やっぱりもらった個人のキャピタルゲインまたはキャピタルロスだと思うからです。株でも貰った時の評価が給与所得で、個人の判断でいつ売ったかによって給与所得が変動するのはおかしいと思うからです。税務上、そういう暫定的なというか便宜的なオプション価格の取り扱いを提案するとか、そういうことをやって、従業員にオプションを与えるということをやれば、いろいろいい人材は集まってくるのかなと思います。その辺もできれば提言に入れていただけるとありがたいかなと思います。

○柴田メンバー

このプレゼンテーションの中で、金融セクターを推進しようという組織が必要でないかというご提言がありますが、観点としておもしろいのではないかと思います。

今、日本の市場監督当局というものは、プロデューサーズ・ロビーの色は薄れて、今はコンシューマーズ・ロビーの色彩が強くなっているけれども、もう一つ足りないのがやはりマーケット・ロビーなのではないかという感じがいたします。英国のFSA等々と議論していきますと、監督者である一方で、どこまでいってもロンドンを資本市場の中心にしておきたいという目的も見えてきます。今後、いろいろな仕組みを考える上で、どういった形が適当であるかどうかはまだわかりませんけれども、日本の政府のどこかにやはりマーケット・ロビーというものがあってもいいのではないかと思います。

○池尾座長

どうも。では、飛山さん。

○飛山メンバー

クオさんから取引所のあり方について意見をいただいておりますので、その部分だけちょっと言わせていただきたいと思います。

まず、基本的な考え方でございますけれども、東京市場の比較優位を最大限利用して、アジアの企業にとって主要な取引所としての地位を確立すべきと。これはもう私どもの考え方とまさに一致しておりまして、私どもでもアジアの資金循環の中核的市場を占めたいという経営戦略を立てているというところでございます。その方策、提言がいろいろ書いてありますが、これもこのとおりかなと感じております。特に流通市場の安定性というのは非常に大事だと思っていまして、能力の拡張とかBCPとかバックアップサイトとか、そういうことについて市場の安定的な運営に努めたいと考えております。

それから、外国企業の上場のところについても、ここにはちょっと書いておりませんけれども、英文の資料の方には、やっぱり東証に上場されることがアジアにとって優良な企業であるという証にしろというようなことが書いてありますのが、東証に上場されるということは、ディスクロージャーとかガバナンスがちゃんとしているんだよということの証明になるような形で、アジアの企業を勧誘していきたいというのが東証の基本的な考え方でもあります。それから、これは前回、柴田委員からも指摘いただいたんですけれども、やっぱりプロ市場ということで、ちょっと違うコンセプトで上場するというようなことも、考えてもいいのかなという感じを持っているということでございます。

それから、もう一つ、資料の中に国内取引所の統合というふうに書いてありますけれども、これはいろいろ考え方があって、統合という考え方もあるでしょうし、いろいろ競争して切磋琢磨して、日本の資本市場を繁栄させるという考え方もあるだろうと思っておりまして、どちらかといえば、私どもは後者の方のいろいろ競争しながら、日本の証券市場の競争力をつけていくという方がいいんではないかという考え方に立っているということでございます。

○増井メンバー

幾つか私ども自主規制機関のお話も出ていたりなんかいたしまして、いろいろ意見を言わなければならないところがあるのかもしれませんが、気がついたところだけ、1つ2つだけ申し上げます。

クオさんのプレゼン、私も非常に参考になるのではないかというふうに思っておるんですが、こういう立場なものですから、銀・証の分離の問題は一言申し上げなければいけないのかなと思っています。クオさんも当協会の有力メンバーでございますので、昔のように銀・証の話が出たら、頭ごなしに反対というようなことではないとは思うんですけれども、ただ、一方でその後、当局の方からもいろいろお話がございましたけれども、やっぱり銀・証分離の問題のというのは幾つかの観点があると思います。大きなところはやはり利益相反の部分だと思うんですが、利益相反の部分というのは、どうも我が国の状況を見ますと、ルールなりあるいは事例なりの蓄積というのは、必ずしも十分ではないんではないかと、私はそういった感想を持っております。

かつ、そのエンフォースメントの問題もやっぱりあるんだろうと思います。内藤事務局長からもお話がございましたけれども、エンフォースメントの体制というのは必ずしも手段とか、あるいはその組織体制がまだ十分でないという状況でございますので、そういった状況をよく考えながら、慎重に議論していくということが大事ではないかなというふうに考えております。

それから、そのときに当然私どもの自主規制機関の監査の体制などもご指摘がございましたけれども、これも私どもは自覚をしておりますので、そういった体制の充実にも、これから努めていかなければならないというふうに思っております。

あと、先ほど田村政務官からお話がございました公務員制度改革の関係なんですが、私は先般、ヨーロッパとアメリカにちょっとだけ行ってまいりまして、非常に印象に残ったのが実はフランスでこの話を聞いたときに、フランスもご承知のように官僚組織でして、あちらも相当ほかのイギリス、要するにロンドンに比べて出遅れているなという気持ちがあって、相当な危機感を持っていたということもあると思うんですが、やはりフランスの中から今の官僚制度というのは、要するに官僚は特に金融の世界は規制当局がプロフェッショナルにならなければいけないんだと。今のフランスの官僚制度というのは、どうもそれぞれが民間と交流が少なくて、トップの方は民間とそういう交流もやることがあるんですが、特に上から下まで見ると、下の方はほとんどそういう世界がないと。その状況がいかんというか、それを変えていかないと、規制当局がプロフェッショナルにならないというようなことを相当熱弁を振るっておりまして、私もそのとおりだなというふうに思っております。

先ほど日本の市場の国際競争力を高めるというようなお話がいろいろ縷々ありますけれども、やっぱり規制当局がそういう面でプロフェッショナルだというのは非常に大事だと思いますし、そういう意味での人材交流というのがないということ自体が、もう競争力からいっても致命的なことにもなりかねないと思います。この公務員制度改革の担当大臣は前副大臣でいらっしゃったと思います。金融には大変造詣の深い方だと思いますので、是非、そういった面を強調していただければというふうに思います。

○池尾座長

では、江原委員。

○江原メンバー

クオ会長のプレゼンテーションの17ページの人材の確保なんですが、本当に簡単に触れていらっしゃいますけれども、3番目のポイントに関して、少し意見を述べさせていただきたいと思います。

外資系の金融機関において、実を言うとなかなか日本に人材をロンドンだとかニューヨークから送り込むというのは、結構「至難の技」だというふうなのが現状としてあります。というのは、やはりなかなか日本という仕事場というのが魅力的に映らないというのが現象として起きているんですね。これは単純に英語圏でないということのみならず、税金が高いだとか、または不透明性だとか、いろいろな仕事及びプライベートの両方のレベルでの障害というのがかなりあるんだというものを、やっぱり国として認識しなければいけないと思います。

ここで何度か議論されている、いかにこの日本の資本市場を活性化するかというのは、私は必ずしも日本人だけで活性化するというふうな枠組みにとらわれないで、外国人も巻き添えにしながら高度化していくんだという、こういうふうな考え方が必要なんではないかなと。日本にも立派な大学がたくさんありますけれども、やっぱり経済理論、特にマクロ及びビジネスレベルまたは金融工学というところになると、欧米の大学に一日の長があるという現象は明らかだと思いますし、先日、たまたまシンガポールにいく機会があったんですが、シンガポールではインシアードが分校をそこで開いたとか、またはシカゴ大学のビジネススクールがそこで分校を開いているとか、そういうふうなものをもっと日本も誘致するような仕組みというか枠組みというんですかね、そういうふうなものがもしかしたらば、必要なのではないのかなと。ちょっと金融庁一つだけの枠組みでとらえる話ではないというのは、重々承知しておりますけれども、やはりそのぐらいの政府全体を挙げた気概が必要なのかなと思いました。

○藤巻メンバー

今の点なんですけれども、私自身はやっぱりウィンブルドン現象で外資がどんどん東京マーケットに入ってきてこそ、東京市場は活性化するのだと思います。でも、やはりその中で働くのは日本人であるべきだと思っています。外国人がたくさん入ってくるんだと、日本にはメリットが少ないからです。やはり日本人に、職場を提供するという意味が重要です。資本の流入はいいんですけれども、仕事の流入はあまりよくありません。日本人が働ける市場にしなくてはいけないんだと私は思うんです。ですから外国人を入れるという案には、基本的に賛成しないですね。

私が米銀の支店長をやっていた頃って、日本人の支店長は外銀の中で私1人だったんですが、今はローカル化していますよね。日本人がどんどん支店長になっているわけで、そういうのがいい姿であって、私の頃みたいに日本人支店長は外銀の中で1人しかいない世界に戻っちゃいかんと思うんです。日本人が働ける場をつくるために、私は国際化をすべきだというふうに思っています。

○池尾座長

別にそこは意見が対立しているとは思わないんで、1人がやってこられて、それで国内雇用が10人分増えれば問題ないわけですから、そういう意味だと思います。

私もちょっと1つだけ質問。クオさんに答えていただくというか、ほかのメンバーの方全員に対する質問ということでいいんですが、これまでの議論を振り返って、論点整理も含めてちょっといろいろと考えていたんですが、その中でおっしゃったレギュレートリー・エンバイロンメントというんですか、そういうものについての不満が多くの方は持たれていると。

規制の執行過程について、もっと予測可能性が高まる必要があるとか、納得性がちょっと余り得られていない面があるんじゃないかという、そういうふうなことはこれまでのお話から感じられたんで、それは一つの大きなイシューというか論点になるなと思うんですが、では、どうすれば改善できるのかという対応策というか、答えの方はなかなか見えてこないところがあります。今日、配付していただいたIBAのレコメンデーションだと、セクション3がその話になるんですが、4つの原則みたいなことは根本さんもおっしゃっていましたけれども、全く異議のないことなわけですけれども、それがいかにすれば、もっとよりよく実現できるのかということで、いきなり規制・監督組織のあり方に飛んでいるんですけれども、規制・監督組織をイギリスのFSAみたいにすれば、本当に4原則が実現されることになるんだろうか。

ちょっと間をつなぐロジックないしもっと規制の執行プロセスのあり方とか、何かそういうところの問題というのがやっぱりあって、いきなり組織論にいくというのは少しジャンプがあるんじゃないかなという思いがあるんですが、そのあたりは最初に申しましたクオメンバーから答えていただいてもいいですが、別に特定の質問というよりは、他のメンバーの方でひとつその辺についてお考えがあればお願いしたい。

○柴田メンバー

規制そのものにどの程度問題があるかというと、日本はそれほど大きい問題はおそらくないと思います。ただ、処分の数が増えているということは、一体何なんであろうかということを考えてみると、実際、今我々の目の前で判例集ができているという感じがします。つまり処分の数が増えているのは、まだ、判例が出そろっていないがゆえの現象なのかなという感じです。また、規制の透明性が少ないという実感もおそらくないと思います。ただ、今まで「なあなあ」で許されてきたところが「なあなあ」では許されなくなったことは明確にあります。つまり「ルールが変わったんじゃないか」という認識があるとしたら、確かにルールは変わっているんでしょうが、そういう今までのような「お目こぼし」がなくなってきたという現象に見えます。

それよりも、やはりこの国において海外の会社が自由に起債してこなかったこと、この国において海外の会社が自由に株式を発行してこなかったこと、そのあげく例えば象徴的には、東証が悪いわけじゃないんですけれども、東証における外国企業の存在というのもかなり寂しいものがあった。ということで、資本市場そのものの活性化に資するようないろいろな前向きの施策、例えばディスクロージャーのあり方とか言語のあり方とかを以前例示をさせていただきましたが、そちらの方が恐らく必要なのではないでしょうか。

○池尾座長

ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、お願いします。

○関メンバー

これはむしろクオさんや内藤さんに聞きたいことなんですが、今の池尾先生の議論の前提になるような議論だと思うんですけれども、私は公的規制とやっぱり東証だとか証券業協会だとか、そういう自主規制機関がやる規制というのはかなり役割分担というか、それぞれの位置づけがあるのではないかと。組織論ということでやれば、これを一緒にしたらどうかというような議論だったんじゃないかと思うんですけれども、私はそこの公的規制というものの考え方と、それから自主規制機関の考え方というか、その辺の役割分担というか、その原理原則をプリンシプル・ベースと言ったって、これはどっちもそうなのかなと思ったりしますし、その辺の考え方をどういうふうに理解しておけばいいのかと。私自身はそれほど知識があるわけじゃありませんから、ちょっとお二人に聞きたいなと。これが1つ。

それから、私は柴田委員とは少し違った感覚を持っているんですが、やはり日本のこの市場というのは非常に内藤さんがおっしゃられたように、いろんな不祥事のようなものがたくさん起こっていて、公的規制にしてもあるいは自主規制にしても、なかなか対応できない面が随分多く出ているんではないかと。私もこれは素人ですからよくわかりませんが、アメリカなんかはやはり相場操縦だとかfraudだとか計略だとか技巧だとかいうようなことについていろんな判例がたくさんあって、かなりやっぱり積極的に取り締まることができるという実態があると。

日本の場合は見ていても皆さんご存じのとおり、どうしても財務報告の虚偽記載というようなことで引っかけないとできないとか、あるいはインサイダー取引というようなことでしかできないとか、そういうやや制約されたような規制の仕方になっていて、もっと思い切った、それこそダイナミックな規制ができるというようなことにならないのかなと。それをどうしたらいいのかということで、公的規制だとか自主規制のあり方をもう一回再検討するという、そういうプロセスが要るんではないのかと、そういう実感を私は持っているということであります。

○池尾座長

今、関委員がおっしゃったことにちょっと付け加えさせていただきますと、公的規制と自主規制と、それから内藤さんのご説明の最後にありましたけれども、参加者自らのコンプライアンスといいますか、そういう3層ぐらいあると思うんですね。レイヤーが3つあるんですけれども、レイヤー3つの相互のあり方みたいなことをどう設計するか、あるいは、その前にどう考えるかという論点があると思うんですね。それと、これはまさにエンフォースメントにかかわることになると思いますが、しっかりした武器が与えられていないんじゃないかと。だから、例えばクロスアクションもできないし、司法取引もできないということがやっぱり実効性というところで問題を生じているんじゃないかということで、特に最後の方は何か内藤さんの方からご意見があればお願いしたいんです。

○内藤証券取引等監視委員会事務局長

関さん、池尾先生のお話もそんなに違和感がないんですけれども、やはり日本の場合、よく議論されるのがイギリスのFSAのようなシステムに、日本ももう考え直していくべきではなかろうかと、こういう議論も確かにあるんですけれども、では、果たして日本の今の状況の中で、そういうものが根づいた形でやっていけるだろうかと。公認会計士の監査法人もよく議論になるのが、相手の会社からお金を報酬をもらっているわけですね。それでいくと、だからあのようになるんだと、だからもっと考えるべきではないかという議論がもう一方であるわけですね。

ですから、なかなか向こうから検査料をもらって、それで行って公正な検査ができるか、あるいは世の中はそういうふうに公正な検査であるというふうに認めるかどうかというような問題もありますので、私はむしろ現実的なのは先ほどちょっと申し上げましたけれども、これはまた自主規制機関の方でもいろいろご意見があろうかと思いますけれども、やはり公的機関と自主規制機関との連携を強化していく。自主規制機関が今よりはさらに強化・拡充をしていただいて、そこの中でこの連携を図っていけるような方法というのが、最も現実的な方法ではなかろうかなと。自主規制機関も成立して数十年たっているわけですから、長い歴史のある中での、今後、さらにそれを定着させていくという方が現実的な方法ではなかろうかなというふうに思いますけれども。

それから、インサイダーとか虚偽記載というふうなことで、アメリカではもう一方での判例というのが相当あるんじゃないかと。おっしゃるとおりだと思います。先ほど、私が申し上げたように課徴金も和解という制度も、やはり一種の司法取引でありまして、日本でいきなりそれを持ち込むというのは非常に無理があるだろうと思います。独禁法でもそれではなくて別の仕組みで、できるだけ情報提供をしていくようなインセンティブを持たせるような、そういう制度をつくっているわけです。

2年前に、先ほど申し上げたように課徴金という制度を入れましたけれども、最近、課徴金という制度を動かして調査をしておるんですけれども、私は課徴金という制度はかなり具体・実際に動く、そういう制度であるというふうに思っております。これもやはり犯則事件ということになりますと、今まで犯則事件かあるいは行政処分かというものしかなかったんです。行政処分以上のものというのは犯則事件しかなかったんですが、犯則ということとになりますと、やはり最終的には起訴をして、公判で維持できるということの証拠を集めなければいけない。これが相当大変な作業になっていまして、なかなか1件やるのに2年とか、場合によっては3年とか、こういうような非常に長期間を要するようなものでございます。

それと比べると、課徴金の場合は審判手続というのはもちろんありますけれども、それには耐えなければいかんのですけれども、基本的には刑事事件ほどに故意性を立証しなくても十分対応できると、こういうような妙味がございますので、それに応じたような司法の中でやっていけばいいということで、ある程度円滑裏に物事が進むと。SECも実は犯則事件をやっておりませんで、課徴金を中心にやっているという中で、インサイダーであるとか相場操縦であるとか虚偽記載というものを立件してきているんではなかろうかなと。

むしろ、我々は刑事事件というか犯則事件というのは、監視委員会発足当初に与えられたものですから、これは一つの大きな仕事としてやっておるんですが、アメリカではほとんどは司法省の仕事になっていますね。だから、そういう面で非常にある意味で多面的な仕事をむしろやっているというのが現状なんですけれども、いずれにしましても、課徴金というものは非常に市場行政というものにおいてはかなり有効な手段で、いろいろ変えるべきところはありますけれども、そう考えております。

○池尾座長

何かありますか。

それでは、そろそろ時間が終わりに迫っているんですが、最後に本日、何かご意見が特にございましたらお受けしますが。よろしいでしょうか。

それでは、本日も活発に議論いただきまして、大変ありがとうございました。

最後に、次回の日程等につきまして、事務局よりちょっとご説明いただきます。

○三井市場課長

次回、すぐでございます。来週火曜日27日、10時から12時の予定でございます。当スタディグループの小足メンバーのプレゼンテーション、それから事務局からと当局からの説明なりお話も予定しております。

それから、4月以降の日程調整につきましては、現在、私どもの事務方から幾つか候補日を皆様方にお配りして調整中でございます。また、日程が固まり次第、ご連絡させていただきますのでよろしくお願いいたします。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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