金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第8回)

日時:平成19年4月11日(水)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 特別会議室

○池尾座長

それでは、ほぼ定刻ですので、まだ若干出席予定でお越しになっていない委員の方もおられますが、ただいまより我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第8回会合を開催いたしたいと思います。

皆様には、ご多忙中のところご参集いただきましてまことにありがとうございます。

それで、初めに本日の議事についてご説明したいと思います。

本日の後半と次回で論点整理のようなことをやりたいと思っておるんですけれども、本日はちょっと前半にはもう一つヒアリングを入れさせていただきたいというふうに思っております。それで、今日だとうまく時間がとれるということでしたので、国際協力銀行資源金融部長の前田匡史様からイスラム金融についてのお話をいただき、スタディグループで勉強させていただくという感じですが、それで、その後、事務局の説明を少ししていただいて、これまでの議論の主要な論点について自由に討議をするという形で進めていきたいというふうに考えております。

それでは、事務局から資料の確認などをお願いしたいというふうに思います。

○三井市場課長

手元に資料が4つございます。1というものと2-1、2-2、それから3でございまして、1が前田様のプレゼンテーション資料、2-1と2-2が事務局説明資料、3が論点の2枚紙でございます。ご確認いただければと存じます。

○池尾座長

よろしいでしょうか。

それでは、前半のヒアリングに移りたいというふうに思います。前田様、どうぞよろしくお願いします。

○前田参考人

ただいまご紹介にあずかりました国際協力銀行資源金融部長の前田でございます。よろしくお願いいたします。着席させていただきます。

本日いただきましたテーマがイスラム金融の実像ということについてでございまして、お時間20分程度でということなので、お配りした資料を幾つかスキップさせながら簡単にご説明を申し上げたいと思います。

まず、イスラム金融ということは何かということなんですが、イスラム金融と申しますのは、いわゆるシャリーアと言われるイスラム法、シャリーアというのは人の道というような意味でございまして、いわゆる人としての行動規範というふうにお考えいただければよろしいかと思うんですが、このシャリーアに基づくといいますか、いわゆるシャリーアにコンプライアントしているファイナンスということで、シャリーアコンプライアントファイナンスと申しますが、そういうものがイスラム金融ということでございまして、最大のポイントというのは、いわゆる金銭消費貸借の契約に当然付随する金利というものが禁止されていると。これはリバーと申しますが、この金利をとることができないというのが最大のポイントでございまして、そのほかにもこのシャリーアの法源と申しますのは、イスラム教の聖典のコーランと、それから予言者ムハマドの時代のいわゆる慣行、人の道としての慣行、これをスンナと申しますが、この2つを二大法源とするものでございます。

今の金利がとれないということに加えまして幾つかポイントがございまして、まず契約の不確実性と言われている、これはガラールと申しますが、要するに不確実な契約をするということがまずできないということ、それからスペキュレーションですね、投機ということも戒められておりまして、これをマイシールと申します。そのほかに、資金の使途につきまして酒であるとか、あるいは養豚であるとか、そういう一定の忌むべきこと、これをハラムと申しますが、そういう忌むべきことを対象とするような行為、活動ができないということでございます。

イスラム金融を供与する金融機関と申しますのは、いわゆる通常の金融手段につきまして、あるいはストラクチャーにつきまして、このシャリーアに対してきちんと遵守されておるかということを確認するための作業というものが加わりまして、イスラム法学者ですね、ウルマと呼ばれますが、シャリーアスカラーとも言いますけれども、大体3名から4名、5名という、3名以上のイスラム法学者から構成されるシャリーア・ボードというものを設置するのが通例でございます。

後で申し上げますけれども、最近急拡大しておりますイスラム金融の一つのボトルネックと申しますのが、このイスラム法学者でかつ金融取引に通暁している人が非常に少ないということが上げられておりまして、いわゆる非常にレベルの高い、評価の高いイスラム法学者というのは世界中でも20名足らずというふうに言われておりますので、この点が一つ問題であるというふうに言われております。

さらに、イスラム金融と申しますのは非常にローカルな、市場ごとに発展してきたということがございますので、このシャリーアの解釈というものが、例えばバーレーンであるとか、ドバイであるとか、中東におけるシャリーアの解釈というのと、それから、マレーシアに代表されますアジアの市場におけるシャリーアの解釈というのが食い違うことが多々あるということでございまして、このシャリーアの解釈の統一性というものが今後の課題になってくると思われます。

まず、その次に最近におきますイスラム金融の急拡大の要因でございますけれども、原油価格の急騰というものが2001年以降見られますけれども、お手元のグラフは、これは国際金融市場におけるいわゆるオイルダラーの重要性ということについて言及したものでございますけれども、2004年以降、この薄いブルーの部分が中東でございますけれども、アメリカの経常赤字に対する地域別の経常黒字のシェアというのを見ますと、非常に日本、中国に迫る、あるいはそれを上回るだけのオイルダラーというのがアメリカに還流しているということが見てとれると思います。

これは、その次は、もう少し前から原油の価格といわゆる中東OPECの経常収支、それから石油輸出収入の推移を見たものでございますけれども、1980年の前半に原油価格の一時的な高騰を受けまして原油輸出収入が上がりまして、この経常収支は赤い折れ線グラフでございますけれども非常に大きくなっていると。その後、83年あたりからずっと原油価格が低迷いたしまして、中東OPECの経常収支の黒字というのは一時、20年近くですけれども、ほとんど国際金融の場にあらわれてこなかったと。これが再び拡大するのが2000年以降ということでございまして、この経常収支の黒字の拡大というのがオイルダラーとなっておるということがおわかりいただけると思います。

これは中東OPEC、イラクを除きますけれども、運用資産残高の推計をしたものでございます。サウジアラビア、クウェート、UAE、カタールといったところでございますけれども、これは時点といたしまして、多少古いんでございますけれども、2004年時点で約8,700億ドル、9,000億ドル弱であるというふうに思われます。

このような中東におけるオイルダラーの拡大というのとイスラム金融の拡大というのはかなり強い正の相関関係があると思われます。このオイルダラーとの関係で申しますと、イギリスというのが非常に顕著な政策的な取り組みをしておりまして、伝統的にはオイルダラーというのはイギリスのオフショア市場を経由いたしまして、アメリカの国債等への投資に向けられておったわけでございますけれども、リターン重視の投資資金の割合が相対的に高まっていくという中で、代替投資先というのは中東域内のプロジェクトにとどまっているのが現状でございまして、特に2003年以降、私ども国際協力銀行が融資の対象にしておりますようないわゆるインフラのプロジェクトにおきましても、域内のファイナンスというのが急拡大しておりまして、さらに、特徴的なものといたしまして、今までの中東オイルダラーというのは非常に流動性の高い、例えばアメリカの国債であるとか、いわゆるエージェンシーボントと言われるファニーメイとかフレディマックのようなところが発行する債券であるとか、そういう安全でかつ流動性の高いものに投資されておったわけでございますけれども、中東域内のほとんど流動性のない、例えば電力のプロジェクトであるとか、あるいは海水の淡水化のプロジェクトであるとか、そういったところに15年超という非常に期間の長い融資がイスラム金融という形で中東からのファイナンスという形であらわれておるのが特徴でございます。

ということで、今後の中東オイルマネーの集積の規模からいたしますと、中東以外にポートフォリオの対象を求めざるを得ないという状況になってきておるわけでございます。イギリスのゴードン・ブラウン財務大臣は、2006年6月にロンドンをイスラム金融のGatewayとするという構想を表明いたしまして、これに先立ちましてイギリスの金融当局は2004年に英国初のイスラム金融専門銀行、Islamic Bank of Britainというものの設立を認めました。さらに、昨年の3月にイスラム法に準拠する投資銀行、European Islamic Investment Bankというものに対する営業許可を付与しております。ただし、この英国のFSAは、イスラム金融を特別扱いするということはしておりませんで、彼らの言葉を借りますと、プロモートという言葉ではなくて、イスラム金融をエンカレッジするという言い方をしておりまして、通常の金融監督行政の中に取り込むということで差別しないというような態度を示しております。Financial Services and Market Act2000という一本の法律に基づきまして、イスラム金融を特に通常の銀行業と区別しないというポリシーをとっておりまして、イスラム金融という形での追加的な特別なライセンスというのを要求しないというふうに言っておるわけでございます。

それで、ここでイスラム金融の代表的な手法について幾つか申し述べたいと思いますが、一番代表的なものは、いわゆるマークアップファイナンスと呼んでおりますムラーバハという形態でございまして、これは通常の動産の割賦販売というふうにお考えいただければよいと思いますけれども、一定の手数料を加えまして、ムラーバハ契約というのを結びますけれども、これに基づきまして資金の提供者であるレンダー、イスラム金融機関ですけれども、これが実際のボロワーに相当する人に対しまして割賦販売を行うという形でございます。それから、このムラーバハというのは、今既に現存する動産等の割賦販売でございますけれども、これからつくるもの、いわゆる生産金融というものにつきましては、これの変形でございますイスティスナーと言われているものがございますが、基本的な構造はムラーバハの延長でございます。

それから、イジャラというのがございますけれども、これは通常のファイナンスリースとほとんど同じでございます。さらにムシャラカというのがございますけれども、イスラム金融の特徴の一つでございます資金の提供者と、その資金の提供を受けて事業を営む者が損益を公正に分配するというのが基本的な考え方でございます。貨幣というものが実物経済に投資されて初めて価値を生むのだという考え方が背景にあるわけでございまして、その実業の投資ということを実際実現するためには、資金の提供者と事業主体というものが損益を適正に分配するということが大事だというふうに考えられております。

このムシャラカというのは、あらかじめ定められ、リングフェンスされましたプロジェクトにムシャラカという形でレンダー、資金の出し手が投資対象事業の運営に対しファイナンスする形でございます。これは、ですから言ってみれば資金の出し手が無限責任を負う形というふうにお考えいただければよいと思います。

この中で、資金の出し手というのが責任を一定の限度でしか負わないものをムダラバと言いましても、これは投資信託のようなものであるというふうにお考えいただければとよいと思います。

大体今申し上げましたようなものが金融のストラクチャーとしてはイスラム金融でよくあらわれているものでございます。その中でもムラーバハ、イジャラと、あるいはムラーバハの変形であるイスティスナーといったものが比較的ストラクチャー的にはシンプルなものでございますので、これらが非常に頻繁によく使われているということでございます。

実は、私ども国際協力銀行では、先ほど申しましたようにアジアにおきまして、具体的にはマレーシアでございますけれども、イスラム債券、これはスクークと申しますが、アラビア語で有価証券のことをサッカと申します、チェックですね、その複数形をスクークと言いますが、このスクークというものを発行しようと考えております。実は、今申しました金融形態というのが各市場で細々と続けられてきたわけでございますけれども、これが一挙に急拡大する要因となりましたのがスクークの発行ということでございまして、2001年にバーレーン政府が発行したものが最初と言われておりまして、非常に比較的歴史は浅いものでございます。

アジアにおきましては、マレーシアがこのイスラム金融の取り組みという観点からは非常に先駆的な取り組みをいたしておりまして、このスクークの発行市場としてのクワラルンブールを育成していくという非常に強いコミットメントというか、国家的な目標という形で掲げておりまして、2002年にイスラム金融の監督者の集まりでありますイスラミック・フィナンシャル・サービシス・ボード、IFSBというのがございますけれども、このIFSBの設立に最も強く貢献したのがマレーシア政府でございます。実際このIFSBの本部というのはバンクネガラマレーシア、マレーシア中央銀行の中にございます。

マレーシアの場合は、特に非居住者がマレーシアの市場におきましてスクークを発行するということを奨励いたしておりまして、実際、国際機関であります世界銀行、それからIFCも2004年、2005年にそれぞれマレーシアにおきましてこのイスラム債券スクークというものを発行いたしております。

これは債券でございますけれども、先ほどご説明いたしましたイスラム金融のストラクチャーというものをとっている必要がございまして、そのためにアセット、実物資産の取引がなければいけないものですからアセットトレーディングという形になりますけれども、対象とするアセット、これはアンダーラインアセットといいますが、このアセットの何がしかのイスラム金融の資本にのっとった取引というのが裏になければいけないということでございまして、単に債券を発行するということではございません。ただし、先ほど申しましたようにストラクチャーというのが幾つかございまして、これがどのストラクチャーをとるかということにつきましても市場によって利用のされ方というのに差がございます。

したがいまして、例えばマレーシアでしか見られない形態というのがございまして、これはIFC、世界銀行が発行したものがまさにこれでございまして、具体的に申しますと、アンダーラインアセットというものが、例えばイジャラというケースですと不動産の場合が多いんですけれども、例えば発行体の本店ビルとか、そういったものがアンダーラインアセットになって、それがリースされる形をとっているわけでございますけれども、そういたしますと、もともとの不動産の価格等の制約を受けるということで、本来であれば資金は別なところにあるはずなものですからなかなか使い勝手が悪いということで、マレーシアの場合は、対象となるアンダーラインアセットが有価証券でも構わないというものがございます。実際にIFC、世界銀行が発行したものはこの形態であったわけでございますけれども、これは中東の市場ではまだ認められておらないわけでございます。

私どもが今検討しておりますのは、中東の投資家でも買える形態のものをマレーシアで発行しようではないかということで、ただし、制約をできるだけ取り払いたいと思っておる関係で、このコモディティ・ムラバハ・スクークと、これはアジアでは初めてになると思いますけれども、このムラバハ契約、先ほど申しました割賦販売に相当いたしますけれども、対象となっているものを実物資産の裏づけのある、例えばロンドンにおきますロンドンメタルエクスチェンジの金属取引所におきます倉荷証券とか、そういう単なる証券ではなくて実物資産の裏づけのある証券というものを対象にしたいと考えておりまして、これは私どものシャリーア、アドバイザリーボードでも、中東において十分認められる形態であるというふうに確認をしておるわけでございます。

実は、私ども1月に先ほど申しましたイスラミック・フィナンシャル・サービシス・ボードと共催で、イスラム金融におきますセミナーというのを東京で開催いたしました。これは、イスラム金融の全体、これは今申しましたものに加えまして保険事業でありますタカフルというのがございますけれども、それを加えまして、いわゆるフルラインナップのイスラム金融におきます今の最先端の内容について専門家を呼びましてお話しする内容のセミナーを開催いたしまして、それに加えて今申しましたように私ども自身がマレーシアにおきましてスクークを発行するということを考えております。

その次の段階なんですけれども、先ほど来申しておりますけれども、中東オイルダラーというのが非常に投資先を求めておるということで、これらが欧米の市場だけではなくて、アジアの市場に適正に還流させることが非常に重要ではないかと考えておりまして、中東とアジアのイスラム共和国、具体的にはマレーシア、インドネシア、ブルネイといったアジアのイスラム共和国に加えまして、シンガポールであるとか、あるいは香港であるとか、そういう華僑系の経済圏も現在イスラム金融というものに対して非常に熱い視線を送っておりまして、シンガポールもクアラルンプールとは物理的に位置的に近いものですから、マレーシアに遅れをとらないようにイスラム金融を発展させるという強いコミットメントを持っております。

ということで、アジア全体で中東オイルダラーを、イスラム金融を通じる形でうまく還流させる必要があるのではないかというふうに考えておりまして、例えばアジアにおきますエネルギー効率化プロジェクトと、これをイスラム金融手法により、証券化するというようなことが考えられるのではないかというふうに思っております。

それで、これちょっと若干蛇足になるんですけれども、アジアにおきますいわゆるABS市場の大きさ等を見たものでございますけれども、なぜこのABSの話を持ち出すかと言いますと、先ほど申しましたように、イスラム金融というのは実物資産のトレーディングということですので、いわゆる証券化の中でもアセットバックというのがイスラム金融との親和性が高いという観点でございます。これは、日本、韓国、オーストラリアを除きますと、アジアの発行市場というのはまだ規模的には極めて小さいと。その中でも比較的法制度が整備されておりますインド、マレーシア、シンガポールといったものがございますけれども、まだまだ全体的な規模から見れば小さいと。最近このマレーシアでは、このイスラム金融手法を用いましたアセットバックセキュリティーというのが発行されております。これは、政府系のチャガマスというのがございますけれども、チャガマスがこのABSというものをイスラム金融手法で発行しておりまして、具体的には、このレジデンタルモーケージバックセキュリティーというものでございますけれども、第1号のものを発行しております。

ということで、まだまだ市場としては比較的歴史の浅いものでございますし、それからさまざまな制約要因がございます。今後の最大の制約要因というか、チャレンジは2点だろうと思っておりまして、1つは、やはりいわゆる監督システムの統一化というのがなされる必要があり、特に通常の金融形態とのハーモナイゼーションというのが今後の課題であるというふうに考えられます。先ほど申しましたイスラミック・フィナンシャル・サービシス・ボードでは、銀行、証券、保険、各分野におきまして、通常の例えばバーゼル2であるとか、西側の通常のレギュラトリーフレームワークとの調和化というものを図る努力をいたしております。それから、通常の金融等の調和化にとどまりませんで、イスラム金融の中でもまだまだ統一化がなされておりませんので、その結果、例えばスクークにつきましても、セカンダリーマーケットというのはほとんど発達しておりません。これはストラクチャーがばらばらでございますので、なかなかうまくマッチングができないという観点や、アンダーライイングアセットを分割して、転々流通させられないという制約がございまして、このスクークのセカンダリーマーケットをいかに発展させるかというのが現在のイスラム金融の課題であるというふうに考えております。

ちょっと駆け足になりましたけれども、いただいた時間が大分過ぎたようでございますので、私のプレゼンテーションはここで終わらせていただきたいと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの前田様からのプレゼンテーションに関しまして質疑応答に移りたいというふうに思います。今のプレゼンテーションに関しまして質問とかご意見がございましたら、いつものようにご自由にご発言いただければというふうに思いますが、いかがでしょうか。

どうぞ。

○山澤メンバー

どうもありがとうございます。最近新聞等でイスラム金融という言葉はよく目にするようになってきていますけれども、具体的な仕組み等は余りよくわからなったものですから、そういう意味では体系的に説明していただいて大変勉強になりました。

それで、1つ質問なんですけれども、これがどのぐらいの規模のものなのかと。オイルマネー全部がイスラム金融に回るわけではないと思いますし、もちろん伝統的な金融の枠組みで運用されて、かつ還流されてくるものもあると思うんですけれども、現状どのぐらいの規模の資金がイスラム金融の方に回っているのか。それがまた先行きどういうふうになっていくのかというあたりを教えていただければと思います。

○前田参考人

今のご質問ありがとうございます。規模的には、まだ全体の国際金融市場の中では恐らく1%ぐらいだろうと思いますが、先ほど申しましたスクークの発行金額というのが非常に大きくなっております。数億ドルからいわゆるビリオンダラーの単位のものも2005年以降は幾つか出ておりまして、恐らくオイルダラーの中でイスラム金融の形になっておるのが10%から15%ぐらいだろうと推計されておりますけれども、ただ、年々の増分というのは15%から20%ぐらいと言われておりますので、早晩1兆ドルレベルには達するというふうに考えられております。

○池尾座長

引き続きまして、平野メンバー。

○平野メンバー

今日は非常に興味深いお話をいただきましてありがとうございます。私ども銀行の立場で少し補足をさせていただきたいと思います。

ただいまご説明にもあったんですが、このイスラム金融はメカニズムがいわゆるコンベンショナルな金融とは非常に異なるということで、例えば私ども日本の金融機関がこれに対してどう取り組むかということを考える上ではやはり幾つかの課題がございます。その一つは、銀行が特に投資家といいましょうか、お金の貸し手として役割を果たす場合の問題でございますけれども、日本の銀行法上の業務範囲の問題がございます。すなわちスキーム上、イスラム金融というのは物の売買というのがベースで、先ほどご説明のございました割賦金融的なものであるとかリース的なものであるとか、あるいは出資といった形態があるわけですけれども、割賦、リースに関していうと、果たして銀行法における銀行の業務範囲に入ってくるのかという問題がある。それから、先ほどもご説明ございましたムシャラカというような出資形態をとったもの、これは無限責任に近いものでございまして、うまくいけば見返りが得られるけれども、うまくいかないと損失も負担すると、こういうものでございますので、これが株だというふうに考えますと、これは出資制限、5%ルールに抵触してくるということで、日本の現行の銀行法、あるいは監督上の指針等の中でははみ出す部分がかなりあるということでございます。ここをどう解決するかというのが一つの課題だと思います。

私ども三菱東京UFJ銀行でも、今この分野への研究を進め、一部実は取り組みを始めております。例えば、今年の春でございますけれども、マレーシアで日本の流通系のノンバンクの資金調達に関しまして、100億円を少し超える規模でございますけれども、地場のCIMBという、これは投資銀行、ここに私ども4.5%出資をしておりますけれども、ここと組みまして、CPと、それからミディアムタームノートに相当するファイナンスのアレンジをいたしましたが、これはあくまでもアレンジャーと、あとは保証人ということで役割を演じておりまして、私ども自身がファイナンスをつける、お金を貸すということは見合わせているという状況にございます。

それから、もう一つは、税制の問題というのが指摘されておりまして、先ほどからお話がございますように日本に対する投資、これはインバウンドということになると思いますし、それから日本からの投資、アウトバウンドということになりますが、この両者についてそもそも利息ではないと。場合によると配当でもないかもしれないというような、そういった収益というんでしょうか、リターンに対してどういう課税をするのかというところもまだ固まっていないということ、これが2つ目。

それから、3つ目、これは全然次元が異なるのでやや私の私見でありますけれども、もともこのイスラム金融が活発化した背景は、先ほどご指摘のイスラム諸国における金融資産の増加、それからもう一つ、イスラム諸国、特に中東におけるプロジェクト資金ニーズ、こっちはお金が余る方ですけれども、に加えてセプテンバーイレブン以降、イスラム諸国において対米投資偏重というのを警戒する雰囲気が出てきたということがあります。

したがって、世界の金融機関の動きを見ておりましても、アジアの金融機関がマレーシアを中心に非常に活発にこれに取り組んでいるのは間違いないところでありますし、それから、イギリスが国際金融市場としての機能を維持、拡大するという観点から取り組んでいるのも理解できるんですが、アメリカの金融機関はかなり慎重なのではないかというふうに見ておりまして、そういう意味での我が国としてのスタンスというのも少し考えていく必要があるんではないかというふうに思っております。

以上でございます。

○池尾座長

ほかにいかがでしょうか。藤巻さん。

○藤巻メンバー

プレゼンテーションありがとうございました。基本的な質問で、大変恐縮なんですけれども、これだけ中近東の黒字が大きくなると、イスラム金融以前に伝統的な投資が非常に重要になってくると思います。英国とオフショア市場を経由して米国債への投資に集中していると書いてございますけれども、米国株には余り投資されていないのでしょうか。あと、なぜニューヨーク市場経由ではなくてイギリス市場経由なのかという辺をちょっとお教えいただけますでしょうか。

○前田参考人

ヒアリングベースの話でございまして、これはイスラム金融というよりは、むしろオイルダラーということでございますけれども、オイルダラーとして、例えば中東の債務国におきます公的な投資機関というのが集中して扱って投資しているというのが今までの形態でございまして、これは重要な国家資産のレベニューについては安全で流動性の高いところに投資するということが今まで背景にあったわけでございますけれども、これが、例えば株式もご指摘のとおり相当程度あると思いますけれども、その株式の場合でもいわゆる信用度の高い格付の高いところの株式等に投資されているというふうにこれまでは考えられておりました。なぜイギリスなのかということについてなんですが、先ほど委員の方からもご指摘あったように、ナインイレブン以降、中東からの資金のフローに対して米国の当局が必要以上といいますか、非常にトレースする動きというのがございますので、そういう動きに対する自衛策というか、防衛策という観点から、これはイギリスだけではなくてカリブのタックスヘイブン経由のいろんな投資信託とか、あるいはプライベートエクイティファンドみたいなもの、さまざまなものがございますけれども、そういったところに中東の金が入ってきていると。これは、そういう意味では2000年以前には余りなかったことであるというふうに言われておりまして、したがいまして、ダイレクトにアメリカに投資するというよりは、どこか経由地を経由して出ていっているというのが増えているというふうに言われております。

○池尾座長

ほかにいかがでしょうか。淵田メンバー。

○淵田メンバー

税制の問題は、受け取る利息、あるいは配当への課税のあり方ということに加えて、恐らく支払う方で損金算入できるのかどうかという問題もあるように思いますが、例えばイギリスのようにイスラム系の銀行なり、投資銀行なりを誘致してくるとか、設立するとか、あるいはイスラム系の一般企業を呼び込んでくるといった場合、そういう税制上の問題はどのように解決しているんでしょうか。

○前田参考人

税制については必ずしも専門家ではございませんけれども、基本的にはご指摘のあったように、まず利息ではないものをどのように税制を取り扱うのかという、これは配当なのか利息なのかという点が一つでございます。それから、今の損金参入という、まさにポイントでございまして、さらに加えますと、ストラクチャーによっては非常に複雑なトランザクションになるために、課税対象となっている行為が1つではないということも、例えば買い戻すとか、そういう行為もあるもんですから、それらについての税制をどうするかというのも問題になっておりまして、イギリスでもまだこの点については完全に消化しきれていない問題であると。まさに検討中の問題であるというふうに承知しております。

○池尾座長

どうぞ。

○藤原メンバー

前田さんのお話をうかがっていて、日本政府がイスラム金融にどう取り組むべきかを早急に決めていかなければいけないということはよく理解できました。その際、窓口が2つある(経産省と金融庁)ということは大きな問題になるのでしょうか。前田さんのご意見を聞かせてください。

○前田参考人

窓口が2つだから問題だというふうに言うのはちょっと早計かと思いますけれども、少なくともイスラム金融という概念を全体としてとらえて、例えばイジャラというものとムラーバハ、それから投資行為であるムシャラカといったものを包摂する全体の概念であるイスラム金融というものをどうとらえるかということをどこかが、金融監督当局が持っておられないと、むしろ実際のイスラム金融サービスをこれから提供しようという側の実際の業界の方が一体どういう形になればいいのかというのがよくわからないと。恐らくさまざまな形で例えばファンドのような形で出てくるということは考えられるわけですけれども、そういったものに対するガイドラインというか、そういう一定の行為規範というのがつくられないと、恐らくどう行動していいのかわからないということだと思います。

一番の問題は、銀行法におけるアセットトレーディングといったものに対する取り組み方というのが法改正を要するのか、法改正なしに、例えばファンドのような形でやればいいのか、そういったことについての明確な指針というのが示されていないというのが多分業界としてどうしていいのかわからないので、先ほど平野委員からあったように、外国ではとりあえずアレンジ業務だけやると、そこで実績を積み重ねていくと、そういうような形にならざるを得ないんではないかというふうに考えています。

○池尾座長

我が国の金融サービス産業にとって将来的なビジネスチャンスになり得るもの、ポテンシャリティーがあり得ると。それをどういうふうに実際に活用していくかについて少し高いレベルで戦略的なスタンスを日本として固める必要があるんではないかというふうなことですね。

○前田参考人

先ほどの米国の機関についてお話があったと思いますけれども、スクークの引き受けの実績等を見ますと、これは投資銀行業務に当たるわけですけれども、米国ではシティグループというのが常に上位に入っております。ただし、これはニューヨークでやっているというよりはロンドン、あるいはドバイといったところに特別の部隊、イスラミックウィンドウというものを設けておるようでございまして、ただこれは、米国籍の金融機関全般に言えるんですけれども、いわゆるクロスオーダーのファイナンスから、むしろ今かなり国内の方にアメリカの金融機関自体の目が向いていますので、そういう意味でイスラム金融に対する警戒心があって、それであるからアメリカの銀行が消極的というのは若干言い過ぎかなという気がいたします。

○池尾座長

それでは、ほかに特にご質問がなければ、前田さんへの質疑応答は以上ということにさせていただきたいと思います。本日はどうもお忙しい中、貴重なお話をいただきましてどうもありがとうございました。

それでは、議事を先に進めていきたいと思うんですが、その前にメンバーの交代が一部あったのをお知らせするのを忘れていたので、それをちょっとお知らせさせていただきたいと思います。

○三井市場課長

前後して恐縮です。メンバーの交代がございましたので、この場で紹介させていただきます。

小足メンバーにかわりまして、今回より新たにメンバーになられました宇波信吾様でございます。

○宇波メンバー

宇波でございます。よろしくお願いいたします。

○池尾座長

それでは、議事を進めさせていただきたいと思いますが、論点に関する議論に先立って若干事務局から説明がございますので、それをお願いしたいというふうに思います。

○三井市場課長

手元に資料の2-1、2-2という2つの資料をお配りしております。一昨年、金融審議会で大変ご議論いただきまして、昨年の国会で成立いたしました金融商品取引法につきまして、何段階かに分けて施行されていくことになっております。既に施行された部分もございますが、今回は特にいわゆる投資サービス法と言われている横断化の部分につきまして、国際的な視点からどのようになっているのかという資料を用意いたしましたので説明させていただきます。

資料2-1と2-2の両方をおめくりいただきたいと思います。並べていただければと思います。

まず、先に2-2の1ページ目、四角がいっぱいある図、審議会の委員、この今回の任期の前から委員である方は何度かご覧になられた資料かもしれません。この証券取引法等の一部を改正する法律というのと、それからその整備法という四角がたくさんございます。その復習になって恐縮ですが、昨年の成立した法律は大きく分けて4つのパーツからできていました。ここで言われていた話でございますけれども、次のページをちょっとお開きいただきたいと思います。

2ページと3ページ、何度かご覧いただいている委員の方には大変恐縮ですが、この投資サービス法の議論をしていたときには2つの視点がございました。現在、縦割りの法律が並んでいまして、規制のすき間があるという3ページのような問題点が利用者保護上問題があると、こういうことがまず先に言われておりましたが、もう一つの問題としまして、この金融のイノベーションを現在の法体系が阻害しているのではないかと。あるいは、国際化の観点から日本の法体系が異質になっているのではないかという問題点でございます。

3ページでご覧いただきますと、商品の縦割り型になっていまして、コンベンショナルな商品を提供する場合には居心地がいいのかもしれませんが、新たなイノベーティブな金融商品や金融サービスを開発されますと、法律をまたいだり、あるいは場合によってはうまくつくれなかったり、場合によってはすき間に落ちていることによってかえって法的な安定性を害されていて、むしろサービスの提供、商品の販売はしにくいといった問題があるのではないかということで、ここをできるだけ横断化して経済実質に応じて機能的かつシンプルな規制体系の方が金融のイノベーションに資するのではないかということが議論されていたわけであります。

それに加えまして、前の2ページにお戻りいただきたいわけですけれども、従来は、プロ投資家に対しても一般投資家に対しましても、適格機関投資家に対する開示規制の一部の免除を除き、原則として、フルセットの規制が適用されると、こういうふうな法体系をとっておりましたので、国際的なプレイヤーが集まって、先端的なホールセールビジネスをやっていくという場合に、それでもリテールの規制が一体的にかかるという法体系だったものを、今回の法改正で柔構造化いたしました。例えばプロ投資家向けのビジネスの場合には大幅に規制を簡素化するであるとか、一般投資家向けビジネスについてはそれなりのきちんとした規制をする形にしました。その際、例えばイギリス、EUなどでとられているようなアプローチも参考にしたわけです。こういうことから、最初の1ページに戻っていただきたいわけでございますが、四角の一番下、たくさん四角がある一番外側の下でございますけれども、金融商品取引法における3つの視点という注書きみたいものがございます。この金融審議会、前のタームで議論されまして、常に3つの視点ということが議論されていました。利用者の視点に加えて、市場の視点と国際的な視点と、こういう3つの点でございます。ということで、この法律では各種の柔軟化措置が盛り込まれているわけでございます。

それでは、資料2-1の3枚紙の方に戻っていただきまして、逆に参考資料の2-2で言いますと4ページでございます。できれば両方、左右前後、上下に並べてご覧いただければと思いますが、まず資料2-1の方でございますが、金融商品取引法における「国際化」の視点ということでありまして、マル1で対象商品の横断化という項目がございます。主要国の市場法制も参考にファンド持分を包括的に対象化しましたということと、それから、デリバティブ取引についても幅広い取引を対象化しましたということでございます。

資料が大部になるために一部省略してございますけれども、この参考資料2-2の対象商品の横断化という四角で囲った図が全体像でございまして、集団投資スキーム、詳細な説明は省きますけれども、極めて包括的な定義をしております。それから、右側にありますデリバティブにつきましても、多々最近出てきたデリバティブも含めて幅広く取引に入れております。また、政令でも新たな、例えば経済指標等のデリバティブ等をベースにしたデリバティブもカバーできるような仕組みにしてございます。

政府令などで明確化する余地を盛り込んであり、現在政府令の作業をしております。具体的な適用対象商品の取引などを明確化する方向で検討しておりますが、まず対象商品を非常に横断化しまして、単一の法律でできるだけカバーすると、こういう哲学のもとで、今までのコンベンショナルな商品をまたぐ、あるいはそこに当てはまらない商品というものがカバーされるような、しかも単一のシンプルなプラットホームで規制対象になるような、そういうふうな工夫をしておるということが第1点でございます。

それから、第2点、マル2の業規制の横断化と一本化でございまして、参考資料、資料2-2で言いますと5ページでございます。縦割りの法体系、4つの法律を廃止しまして、その他幾つかの法律の業規制の部分もすべてこの金融商品取引業という規定の中に盛り込んでいます。先ほどにありましたような商品先物であるとか銀行法、保険業法が適用されている一部のものにつきましては、それぞれの法律で依然として規制されているという体系が残っておりますが、投資性のある金融商品に対しては金融商品取引業と同様の行為規制を準用するなどの工夫をしております。そして、それぞれ登録だったり認可だったり、参入規制の異なるものについて極力登録制に一本化してございます。

具体的には、投資顧問の一任運用業者、それから投資信託の委託業者、投資法人運用業者につきましては、認可制から登録制になってございます。具体的な資本金要件等のメカニカルな要件については、基本的には従来の構造を維持しております。一部投資顧問のようにバーを下げているというものもございますが、登録制に一本化しております。

ということで、従来の法制の下では、特に新たなサービスを行う場合には、複数の法律に抵触いたしますと、複数の規制を受けて許認可も複数になり、規制の抵触をどう処理するかという悩ましい問題があったことなどを、今回の法律では単一の登録のもとで、できるだけシンプル、整合的な規制にしたと、こういうことでございます。

それから、この矢印がございますが、政府令事項で検討しておりますところですけれども、対象業務など幾つかの点について詳細は政府令に委任されている部分がございまして、これまで必ずしも扱いが明確でなかった部分などにつきまして、国際的に活動する証券業者・運用グループを念頭に置いた規制緩和措置、これは従来から規制緩和要望、特に国際化の観点からあった部分でございますけれども、そういったものについて現在検討中でございます。

それから、そのマル3の行為規制を従来の業態別から機能別に整理するということでございまして、これも同じ参考資料5ページでございます。最初に申し上げた横断化は左半分ですが、右半分が柔軟化になりまして、まず最初の柔軟化は、4つの業務の種類によって参入要件に段差をつけてございます。第一種金融商品取引業から始まりまして投資運用業、第二種業、投資助言・代理業ということで、参入要件に段差をつけております。

それから、さらにこの行為規制につきまして、右にありますように、共通、販売・勧誘、運用・助言と有価証券の保護預りという行う機能に応じて規制を整理いたしました。従来は業者なり業態別の行為規制体系であったものを行う業務の機能に分けて整理をいたしたわけでございます。

ということでありまして、例えば少し古典的な事例で言いますと、ラップ口座のように複数の業態にまたぐ業務を一つの証券会社が行う場合の規制について、複数の法律の中で複雑な調整措置を講じながら法的に整理してきたものについて、シンプルな機能別の規制体系にしたということが一つございます。

それから、国際的な話でございますけれども、二重矢印があります。上場商品について行為規制の合理化ということはさきほど申し上げた点でございますが、外国投資信託などについての投資について、外国の投資信託、投資法人については、現在の検討信託投資法人法において、条文でいうと58条と220条ですが、各種の届出等の措置がございます。これについて、ボーダーレスな投資、あるいはファンドビジネスの中で、一定の要望が今までもあったわけでございまして、この法律も実は政府令で一定の場合について、そういった許認可、届出的なものを除外なり軽減することができる措置を今回の法改正で盛り込んでおります。具体的なものについて、例えばプロフェッショナルな投資家に対して行うビジネスなどを念頭に置きまして、何らか国際化の観点から規制を緩める措置が検討できないかを検討しているところでございます。

今の資料の次の2ページをめくっていただきたいと思います。

それから、規制体系の柔構造化、参考資料は同じ5ページのさらに右側でございまして、行為規制というふうになっています。プロ投資家向け、法律上は特定投資家という概念を新たに導入いたしてございます。プロ投資家向けの販売・勧誘については、行為規制を大幅に緩和しております。法律のレベルでもかなり詳細に書いてございますけれども、大きくシンプルに整理しますとこの表のとおりでありまして、一番右の欄、プロ投資家向けに不適用となっているものには、書類、ドキュメントワークがかなりあるようなものや、販売の前線で手間がかなりかかるようなものが入っております。趣旨としては、この括弧の中にありますように、業者なりプロと一般投資家の間に存在する情報格差なり知識経験差を是正するような趣旨の規制について大幅に免除しているということでございます。

それから、もう一つは、参考資料で言いますとやや下の真ん中辺にあります特例業務届出者というものでございますが、プロ投資家向けのファンドという概念を創設いたしまして、これについてはビジネスを行う際に届出だけで登録等の参入規制をしないと、こういうことであります。それとの関連で、行為規制についてもほとんどの行為規制を免除するということで、マーケットの関係で虚偽の説明の禁止と、それから損失補てんの禁止というのをマーケットのインテグリティーの観点から残してございますが、それ以外の規制をすべて免除すると、こういう大胆な、規制の少ないものをつくってございます。法律上、機関投資家、その他政令で定める人数の投資家にのみ販売する組合型のファンドでございますが、政令におきまして機関投資家プラス49人ということを定める予定でございます。

また、細かな話になりますけれども、ファンド・オブ・ファンズの形で投資されているプロフェッショナルなファンドが多々あるというふうに聞いております。これについて、細かなところを検討しながら一定のものはこのプロ向けファンドの届出制が、要するに登録制が免除される簡易なスキームが適用できるように詳細な検討をしておるところでございます。

それから、適格機関投資家という概念がございます。開示が免除されまして、ここの特例業務届出者というプロ向けファンドの要件にも関連するものでございますが、この範囲を今回拡大するということを検討しておりまして、事業会社の投資額基準ということで、有価証券報告会社であって、有価証券投資残高100億円の届出者というのが現在適格機関投資家になっています。これについて大幅な範囲の拡大といったものを考えています。

それから、事業会社以外の法人、あるいは個人についても十分なプロフェッショナルと言える方々について適格な投資家となるような制度を現在検討中でございます。詳細につきましては、近い将来にパブリックコメントに出させていただく政府令の中でその検討した案についてお示ししたいと思っております。

それから、マル5の取引所の自主規制業務でございます。この取引所につきましては、現在株式会社化というのが平成12年の証券取引法の改正で認められまして、幾つかの取引所が株式会社化されております。そういったものについて、自主規制機能という公益性のある業務と、それから株式会社という営利を追求するということの利益相反という観点から、取引所における取引の公正であるとか透明性の確保、それに対する投資家の信頼を確保するということから、例えばニューヨーク証券取引所などでも自主規制機能を別会社化して独立させるという試みが行われております。そういった国際的な状況も踏まえて、日本のその取引所の自主規制の機能を担う組織についても、別法人化してグループ内の別会社に担わせる、あるいは同じ法人の中でも独立した自主規制委員会が担うということができるようにする法改正を行っております。

そして、政府令の中では、こういった制度の趣旨が実現するようにその対象となる業務の範囲について、例えば幾つかの中身について詳細なルールを定めて、これは自主規制業務に該当するといった政府令案を検討しているところでございます。

例えば、一定の自主規制の執行に関する規則とか制定、改廃といったものについては、当然自主規制の権能に入る、あるいはそれの適切な遂行のためのさまざまな細かい制度について検討中でございます。

それから、最後のマル6番でございます。参考資料につきましては、少しめくっていただきまして10ページ以降でございます。ここで申し上げますのは特に11ページでございますが、時間の関係で一言で説明しますと、数年前アメリカでサーベインズ=オクスリー法で導入されました内部統制報告制度がございます。日本では、その後の諸外国での議論、あるいはアメリカでの議論を踏まえまして、昨年この法律の中に財務報告に係る内部統制についての制度を導入いたしました。

具体的には、内部統制について、財務報告に関する部分ですけれども、経営者による評価と、それから公認会計士による監査というのを法律上義務づけるということで、内部統制報告書という、いわば財務諸表にプラスされた書類を提出、公衆縦覧をすると、こういう制度でございます。

その次の行にありますように、米国等において行われています負担が過大ではないかといった議論や、実施状況について検証いたしまして、例えばトップダウン型のリスクアプローチで評価対象の絞り込みを行うような具体的な考え方、基準を示すといったこと、それから、マル2にありますように直接報告義務、ダイレクト・レポーティングという制度を採用しないといったことや、あるいは内部統制の監査と財務諸表監査を一体的に実施するといった各種の措置を盛り込んでございます。詳細については、11ページと12ページ、参考資料に掲げておきました。

以上のように、金融商品取引法については、すでに投資家保護の観点からの詳細な報道をいただいておるところでございますけれども、この国際化の視点、あるいは規制緩和の視点、あるいは金融イノベーションの視点で各種の措置が盛り込まれております。かなり詳細、技術的なところに及ぶことでございまして、現在そういった詳しいところを政府令の作成、それから監督指針の作成という形で作業中でございます。詳細につきましては、近々にでも公表される可能性のありますパブリックコメント案をご覧いただければと存じます。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。この夏以降、金融商品取引法が本格的に施行されていくと、制度整備がかなり大きく前進したという形になっていくということが期待されるわけですけれども、ここではそういう成果を踏まえつつさらに踏み込んでどういうふうな論点があるかということを検討するという場としてやってきたというふうに思います。ということで、今の事務局からの資料説明に直接関係する形でご質問とかご意見がございましたらお受けしたいと思うんですが、今のご説明に関していかがでしょうか。

政府令の内容がわからないと何とも言いがたいということなんでしょうか。近々原案が出るそうですので、いかがでしょうか。資料に直接関係する形のご質問とかご意見とかございませんでしょうか。

それでは、先に進ませていただきたいと思います。

それで、あと残りの時間を使いまして、これまでの議論で出てきた主な論点についてまとめる方向で自由討議をしていただきたいということです。それで、そうした自由討議のためにというか、その前に事務局より主要な論点の整理の項目のようなものですが、ペーパーを資料3という形で用意していただいているので、それをちょっと説明していただきます。

○三井市場課長

それでは、縦紙の資料3、2枚紙をご覧いただければと存じます。

1ページ目には、目指すべき金融・資本市場の姿という文章があります。あえてこの1ページ目、姿のところは文章で、2ページ目に検討項目というのを書いたというのには、その1ページ目の姿、国際化の点ではどういう姿を求めるのであるかということを、さまざまなご議論がございましたので、少なくともいろんな検討項目を議論していくに当たりまして、1つのたたき台としてあり得る姿というのを書いてみたわけでございまして、これがすべてのコンセンサスと事務局は受け取ったわけではございません。試みの記述でございます。

逐次的に読み上げるのも省きますけれども、1つ目の○では、家計が保有する1,500兆円の金融資産の有効活用、それからもう一つは、金融サービス業の生み出す高い付加価値というのが経済における中核的な役割を果たす必要があるのではないかということであります。

それから、2番目は、日本のプレゼンスの低下という懸念、将来への不安でございまして、3番目の○で、国際競争力の強化が必要であるのではないかということで、そのために、そもそも日本の金融・資本市場の貯蓄から投資への流れを一層加速していくことによって、日本の市場自体の魅力をまず高める必要があるのではないか。

それから、その次でございますけれども、その前提というか、表裏一体なのかもしれませんが、内外の資本市場への参加者というのをふやす、あるいは層を厚くするというためには、市場のインテグリティー、活性化・効率化と、それから透明性・公正性というものが求められるわけでございまして、そういうマーケットのインテグリティー、あるいは活性化・効率化、透明性・公正性を高めるための総合的な取り組みを行っていく必要があるのであるということで、具体的なことでございまして、法制度面のみならず人材、専門サービス、インフラ等多岐にわたる課題について、政府全体、官民挙げてというふうにご意見たくさん出されていますけれども、取り組むということで書いてございます。

問題の検討項目でございまして、非常に多岐にわたる議論をいただいておるものでございますので、この項目で果たして尽きているのかどうか、あるいは整理、項目立てがどうかというご議論がまずあろうかと思います。ということでありまして、項目を立てた立て方について簡単に説明したいと思います。

大きく分けて3つのパーツでございまして、魅力ある市場の前提ということでございますが、2つございまして、自由と規律という2つのキーワードをベースにしますと、1つ目が自由といいますか、まさに自由で多様で厚みのある活力ある市場ということかと思います。例えば、これまで議論が出ているものでは外国市場であるとか新興市場といった、あるいは新興企業といったものへの金融であるとか、あるいは投資家にとっての多様な商品の提供という観点から、さらに厚みのある多様性を増していく必要があるのではないかとか、あるいはデットの面でいいますと、クレジットをめぐる一連のマーケットというのが、諸外国に比べて日本はやや未発達であるのではないかといった観点があろうかと思います。

それから、自由と規律の規律の方でございまして、そちらの方はまさにマーケットインテグリティー、あるいはマーケットとしての魅力の両輪の片方ということになろうかと思います。具体的な検討課題について大きく2つに分けてございまして、いわゆる環境・制度、インフラ的なものと、それからプレイヤーのことに大きく分けてみました。そして、いわゆる環境なりインフラなり制度的なものを幾つかにまた分類いたしまして、まず規制環境、レギュラトリーエンバイロメントと言われているもの、それから、それ以外の制度インフラ、要するに目に見えないインフラ、それからさらに物理的に目に見えるインフラというふうに分けてみました。それぞれ規制環境についても幾つかのプロセスがあろうかと思いまして、規制そのものをつくって適用していくという、その規制プロセスということ、それから、ルールの適用、それからさらにいわゆるルールについても公的な、官の行うルールから、自主規制機関の持っている規制、それから、さらに規制とは言えないけれども市場制度という取引の慣行も含めた市場制度という概念があろうかと思います。

それぞれについて若干コメントいたしますと、規制プロセスにつきましてたくさん出た議論としては、プリンシプルベースのアプローチなのか、ルールベースのアプローチなのかといった点があったかと思います。外国の方々にプレゼンテーションいただいたときにはルールベースを採用するアメリカ型の方々の議論と、それからむしろプリンシプルベースのもとで活動しておられるヨーロッパ型の方々でクロスされた議論があったり、興味深い議論があったかと思います。

それから、もう一つは、ルールのさらなる明確化という議論が多々あったかと思います。ノーアクションレターということについての言及もございましたし、それ以前の問題として、規制当局とプレイヤーの間の相互のコミュニケーションというものについて言及されている点が多かったかと思います。

それから、さらに言葉の問題もあるんですけれども、英語でのコミュニケーション、あるいは当局からの情報発信、あるいは情報を受け取るといった双方向の対話といった点についてのご指摘、さらには当然のことながら規制当局としても人的知識のスキルアップが必要であるということがあるかと思います。

それから、規制プロセスの中に自主規制も法的な位置づけのある規制を担う民の側の団体として重要な位置づけを占めているというご指摘がございました。その具体的なご議論もいただいていたかと思います。

それから、次のルールの適用ということでございまして、まず行政上のサンクションについては、課徴金、あるいはシビルマネーペナルティという諸外国では普通に使われていて、日本ではまだ必ずしも十分でないと言われている分野のルールの適用やエンフォースメントの部分、それからさらに民事・私法のプロセス、あるいはこういう金融証券取引に高度な専門的な民事の処理する仕組み、それは裁判所的なものから私的紛争解決手段やオンブズマンに至るまでご指摘もあったかと存じます。

それから、3番目の市場制度でございますけれども、これは、例えば海外企業の国内での取引の活発化、その取引所なり市場の点で幾つかのご議論があったと思います。また、その関連でプロフェッショナルの投資家に限定した取引をさらに活発させるようなご議論があったかと存じます。

それから、政務官からのプレゼンテーションにありましたように、グリーンシート市場、あるいは上場廃止企業や地方の非上場銘柄についての取引の活発化のためのフレームワークの改革といった重要な議論があったと思います。

それから、その他といたしまして、銀行・証券間の規制、例えばファイヤーウォールであるとか情報の共有といった点について、何人かの方々からご意見がございました。

それから、(2)のその他の制度インフラでございますけれども、個人あるいは法人もそうかもしれませんが、年金であるとか、あるいは個人の老後に向けた蓄えといったものについて、投資家のすそ野を広げる観点から、さまざまな税制を含む、あるいは制度的な枠組みなり、それをプロモーションするようなそういう取り組みが必要なのではないかといったご議論があったかと思います。

あと、あるいは決済であるとかITであるといったものもこういった制度に含まれるのかと思います。

それから、(3)物理的環境でありますと、例えば都市インフラ、イギリスのシティーで金融機能がいかに集積して高度なサービスを提供されているのかどうかという点、あるいは一部空港等の交通インフラも項目に含まれるかと思います。

その他ということがありますけれども、例えば生活面、外国人のトップレベルの金融の専門家が日本で活動できるとか、あるいはそういった生活できるといったインフラがどうかといったご議論も一部あったかと思います。

それから、大きい3つ目のというか、中身でいうと2つ目ということになりますけれどもカテゴリーとして、今度は外側ではなくてその当事者ということで、市場参加者(プレイヤー)の課題としていかなるものがあるか、これもさまざまな点があると思います。

例えば、市場開設者については、たくさん議論がございました海外企業の上場のプロモーションであるとか、取引所なり市場の取扱商品の多様化であるとか、それから自主規制機能についてや、上場会社の品質あるいはガバナンスについての取り組みであるとかご議論があったかと思います。

それから、資金調達者、既にグローバルに資金調達されていらっしゃる方から地方の間接金融にしかアクセスできない企業までさまざまなレベルがあろうかと思います。こういった方々が企業財務、法務、会計といったものを活用しながらマーケットアクセスを増やす必要性、あるいはその活用といった議論があったかと思います。

それから、個人投資家、まさに金融経済教育、あるいは金融リテラシーといった観点からのご議論、それから、機関投資家については多々議論がありまして、プロ向けのマーケットの点でも関連して出てきました例えば年金を初めとする機関投資家というか、お金の出し手が、適切なリスク管理をしながらリスクをとって運用、長期的に高いリターンを目指して運用していくといったことについて幾つかご議論があったと思います。

その関連で言うと、年金に限らないわけで、例えば外国では大学の基金が大きなリターンを上げているといった例も紹介されていました。

それから、金融仲介者につきましては、金融仲介者の中でも特に専門人材、専門知識、あるいはそういったものを活かすマネジメント、例えば投資運用を行う人材についてのインセンティブなり、その報酬体系なり人事体系なりといったご意見があったと思います。

それから、周辺サービスですと、まさに金融証券分野専門の法律、あるいは会計の専門家といったものを英米並みに層の厚いハイレベルものをさらに強化していく必要があるといったご議論があったかと思います。項目の立て方なり、その内容、欠けている面あるかと思いますので、そのとりあえずたたき台ということでお示しいたしました。ご意見を賜れればと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、早速自由討議を行いたいと思いますが、まずは何を目的にしてやろうとしているのか、目指すべき姿は何なのかという点についてある程度明確でないと始まらないというところがありますので、それが用意していただいた資料の1ページ目にあります。だから、その点についてまず少し議論していただいて、続きまして、コンテンツは書いてなくて項目だけなわけで、コンテンツはこれまでいろんな方にメンバー含めてプレゼンテーションいただきましてそれなりにあるわけです、コンテンツは既に。そのコンテンツをどういうふうに配置して取りまとめればいいかということなので、中身そのものに関する意見というよりは、取りまとめの仕方、項目立て、ないしくくり方がこれでいいか、あるいは項目として落ちているものがないかというふうなことを中心に今日は議論していただければ、繰り返しになりますが、コンテンツに関しては既にプレゼンテーションしていただいた内容をそれに入れる形で次回とかにお出しできるというふうに思いますので、まずは1ページ目の目的あるいは今後の目指すべき姿というところについてこうした認識で十分なのか、足らないところはないのかという点についてご意見をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

では、根本メンバー。

○根本メンバー

ここに挙げている内容については賛成したいと思いますが、もう少し詳しくあってもいいのかなと思ったのは、個人にとってどういうメリットがあるのかというところなんですけれども、というのは、このスタディグループの最初の方に金融業以外の人にどういうメリットがあるのかとか、金融業とそれ以外の格差が広がるだけではないかというような、若干慎重なご意見があったと思うんですが、個人にとって商品の多様性が増すとか、リスクを抑制してリターンを得られるとか、1,500兆円の金融資産の活用というところに盛り込まれているとは思うんですけれども、個人納税者、そういった人にどういうことがあるのかをもう少し入れていただいた方がよろしいのかと思いました。

あと、同様に事業会社というんでしょうか、中小企業も含む、後ろの方にそういった調達者というのもあったんですけれども、そちらの方にももう少しわかる形でのメリットというのがあってもいいのかと思いました。

また、ここはちょっと余りコンセンサスがないのかもしれませんが、海外の企業等、例えばアジア地域とか、非常に成長力のあるそういった企業が、日本の豊富な金融資産をどう活用できるのかみたいな、多分プレゼンテーションの中にもアジアの中核市場となることを目指すとか、ロンドンとまでいかないけれども、アジアでトップになるとかというご報告もあったかと思うんですけれども、そのアジアにおける地位というか、貢献というような視点もあってもいいのかなというふうに思いました。

以上です。

○池尾座長

非常に重要なご指摘をいただいたと思います。我が国金融・資本市場の国際競争力を強化するということが国民的、あるいは国家的というか、国民的課題、ナショナルプライオリティーだということをいかに納得的に訴えかけるかという問題はあると思うんですね。だから、そこは金融サービス産業に直接かかわっている方にとっては自明であっても、一般の日本社会の構成員の方々にも東京市場を強化することが日本としての課題であるということをちゃんとわかってもらう必要があるので、その辺はどう訴えかけるのが一番効果的かというようなことは考える必要があると思いますし、それから、アジアとの関係というのをもう少し具体的に述べた方がいいのではないかというのもそのとおりだというふうに思います。

ほかにいかがでしょうか。

どうぞ。

○江原メンバー

今の根本さんのご意見は本当にいい意見だと思います。やはりベネフィットは一体何なんだろうというものを全面に出すこと、これは賛同します。

それを言った後で、ちょっと本当に具体的な手法になってしまうんですが、この5番目のポイントの政府全体として取り組むということですけれども、これに関してもまだ具体的な議論というのは、少なくとも私が参加させていただいた範囲では必ずしも明確化されていなかったと思います。ここら辺は総論的にはだれも反対する方はいないんだと思うんですが、ただここはかなりロードマップをはっきりさせた形の案というものを打ち出す必要性はあるんではないでしょうか。

○池尾座長

そうですね。全体としての推進体制をどう構築するのかというのは、当然議論として必要なポイントだと思うんですね。この問題といいますか、日本の金融・資本市場のグローバル競争力の強化という話はここだけで議論しているわけではなくて、経済財政諮問会議でも取り上げられる予定になっていますし、それから、先ほどのアジアとの関係で言えば、アジアゲートウェイ戦略会議でもそういう問題を取り上げているということで、いずれというか、経済財政諮問会議等でそういう工程表的なこととか、推進体制については主として取り上げられることになるとは思いますが、ここでもクオメンバーからは、金融セクター推進機構、プロモーション機構的なものをつくればいいんではないかという提案がございましたけれども、そういうのを含めてどういうふうなことを考えられるかというのは今後議論していく必要があるということだと思うんですね。今の段階でまとめる主要な論点のところにそれをちょっと具体的に書くことは、議論がこれまだ詰まっていないので難しいかと思いますが、そういう点は今後の議論のためには明らかにしておく必要があると思います。

ほかにいかがでしょうか。

藤巻メンバー。

○藤巻メンバー

先ほどの根本さんのご発言は非常に重要だと私も思います。なぜ金融が重要かということを国民に知らしめる意味では、今後日本は何で食べていくべきか、という提案が必要なのかと思います。例えばアメリカは今や自動車産業で食べているわけではなくて、ITもしくはサービス産業で食べている。イギリスは完璧にとは言いませんけれども、金融産業で国を保っている。それから、フランス、イタリアとかヨーロッパ諸国は、伝統的工芸産業、ブランド製品や農業ですね、そういうもので食べている、日本は、メーカーの方もいらっしゃいますけれども、製造業で今後とも食べていけるのかということを考えると、どんどん技術は移転しているし、安い労賃の中国と闘えるかという問題もあります。、やはり次の新しい産業を育成しないと食べていけないんではないかと思うのです。金融は一つの大きいキャンディデートであるという議論かなと思うんですが。一つの提言にすぎませんが。

○池尾座長

それはご指摘のとおりだと思います。だから、産業構造の高度化を図っていく必要と、今日も内閣府の何か生産性に関することが記事になっていましたが、全般的に日本の生産性を引き上げていく必要があるというようなことに、この金融・資本市場の強化というのが寄与するんだという、そういう点は視点として正しいものだと思います。

ほかにいかがでしょうか。

ここには5つ○があって、私の理解としては、最後の2つの○は、金融・資本市場の国際競争力強化というのを前提としたときに、金融センターの国際競争力を規定する要因というのはどういうものがあるか、その中でもいろいろあるでしょうけれども、最も重要と考えられる競争力を規定する要因は大きくいって2つあって、1つはレギュラトリーエンバイロメントが、快適というと怒られると思いますけれども、予測可能性が高くて透明性が高いとか、そういういい、グッドな規制環境が提供されているかどうかという点と、それから2番目がやはり人材ですね、人材プラスいろんな意味のスキルに富んだ人材がアベイラブルで、さまざまな関連サービスとかインフラが整っているかどうかというのが金融センターの国際競争力を規定する大きな要因の2つだということで、それの面を強化していくことが国際競争力の強化につながるというふうな感じだと思います。

どうぞ。

○藤巻メンバー

確かに間違いなくそうなんですけれども、もう一つリスクテイカー、もしくはスペキュレーターの存在が必要だと思うんですね。シカゴの先物市場でもそうですし、シンガポールの先物市場でもそうですが、いろんな商品をつくって、トライしては全部つぶれていってしまうのは、リスクテイカーや、スペキュレーターが存在しない場合なのです。実需家だけではだめだということです。日本においても金融スワップができた当初も金利スワップマーケットがなくなってしまうのではないかと思ったことがあるんですけれども、それはやはりスペキュレーターが全く存在していなかったからだと思います。これは個別のマーケットの話なんですけれども、マーケット全体を考える場合も、どこかでスペキュレーターや、リスクテイカーが存在しないとそのマーケットは大きくならないと思うんですね、。ですから、どうやってそのリスクテイカーをつくるか、もしくはスペキュレーター的な人材というか、制度というか、参加者をふやすか、税制の問題かもしれない。何らかの形でスペキュレイト、リスクテイクをしないと市場というのは大きくならないというのが私の経験からの、実感であります。

ですから、そこの方針が出ないと、制度だけつくっても終わっちゃうのかなというのが感想です。ですから、日本人は特にスペキュレーターとかリスクテイカーというものにものすごく嫌なイメージを持ってしまっているんですけれども、そうではないことを認識しないと、市場は大きくならないと私は考えております。

○藤原メンバー

日本の金融・資本市場の国際化には関連サービスとかインフラが整っていることは大事なのですが、その中でも英語が話せるかどうかということがかなり大事だと思います。例えば、アジアにおいてなぜ日本がシンガポール・香港の方に仕事を取られているかについて調べてみますと、税金の安さ以外に英語で仕事ができるローカル社員数が日本に比べはるかに多いのが分かります。シンガポールでは金融に携わっている人たちだけでなく、タクシーの運転手さんやデパートの店員を含むほとんどの人たちが英語を普通に話します。今後、日本が本当に金融の国際化を目指すのであるならば、日本人全員が英語を話せるようになることが必要になると思います。こうすることは、日本人であることを否定することでもなければ、日本人としての誇りをなくすることではないのです。私は英語が大嫌いでしたが、サバイバルのために英語を覚えました。結構苦労しました。でも、英語が話せることになり、労働市場の幅が広がりました。つまり、日本以外でも仕事を探せるようになったのです。英語が話せることによる、メリットは大きいです。例えば、英語で仕事ができれば金融市場でカバーできる範囲が大きく広がります。中国の投資顧問会社や発行体である中国企業との取引件数や額も増えていきます。こういう見方をしてはどうでしょうか?5~6年前、PCができない部長さんなどは多くいたのですが、PCができないと昇進もできなくなるという具合に企業を取り巻く環境が代わり、いまでは誰でもPCができます。英語も今は話せる人が多くなくても、英語ができないとサバイバルできなくなるという具合に環境が変化すると、話せる人の数が増えていくと思います。英語教育の問題になると、金融庁マターではなくなり、文部省の管轄になるので、他省庁マターになりそれがハードルというかブレーキになっているような気がしますが、いかがでしょうか。

○池尾座長

いかがでしょうかと聞かれても困るところなんですけれども、極めて根本的な問題提起だというふうには受けとめさせていただきますが、日本はつまり大きいんですね。世界全体から見ると、マジョリティーではなくてマイノリティーなんだけれども、マイノリティーにしては規模が大きいだから、本当に小さなマイノリティーだったらそれは同化せざるを得ないので、それこそおっしゃっていたように生きていくためには言葉も全部覚えなければ生きていけないということになるんですが、日本はそこそこ大きいので、生きていけるようなところがある。日本語だけでも十分生きていけるし、国内市場だけでもある程度の規模があるみたいなところで、なかなかそこまで追い込まれにくいというところはあって、おっしゃるような決断がなかなかできないという面は残念ながらあるかというふうに思いますが、そこは考えさせていただきたいと思います。

はい、どうぞ。

○藤巻メンバー

まさに池尾先生のおっしゃるとおりだと思います。英語は確かにハンディキャップなんですけれども、今から英語をみんなができるようになるといったら、それは無理な話でして。確かにそのハンディキャップはありますけれども、個人金融資産が1,500兆円あるというプラスもあるわけですから、日本のマーケットというのは十分国際化し得るのだと思っています。英語ができないのは、これはしょうがないということで、ギブンでいいのではないかと思いますけれども。

○矢野メンバー

これ読ませていただいて、何かちょっとぴんと来ないんですね。何かきれいごとというような感じが、一言でいいますとそういう感じがします。なぜ1,500兆円の金融資産がありながら貯蓄から投資が進まないのか、これについての分析とか反省とか、ここがまず出発点としてあるのではないか。規制の問題とか人材の問題というのは非常に大きな問題ですけれども、もっとこの問題というのは根が深いんではないか。

私は、一番最初になぜ日本では一般庶民レベルで市場とか投資家というのがこんなに評判が悪いのか、国民の信頼が持たれていないのかということを申し上げて、ここのところがやはり鍵になるのではないかということを申し上げたんですけれども、そういった点について触れられていないのではないでしょうか。ここに書いてある2つ目の項目もこのとおりで、これがおかしいとか、いけないとか、そういうことではもちろんないんですけれども、こういうことをやったからといって貯蓄から投資が進むかといったらどうもそう思えないんですね。だから、コーポレート・ガバナンスの問題だとか、そういった点を含めてもう少し深く突っ込んで議論する必要があるんではないか。

それから、項目としましては、ご説明の中では税制とか年金とか教育の問題とかご指摘もございましたので、含まれておるということですが、金融・資本市場の国際化の問題というのは、金融庁マターだけにとどまっていたのではどうしようもないと思うんです。だから、もっと幅広く税や年金の問題についても大胆に提言していかないといけないと思います。原案は金融庁マターにやや偏り過ぎているのかなと、そういう気もするわけでして、もう少し広い視野でこの問題を考える必要があるんではないかと。そういうことを感じたような次第です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

最初の根本委員のご発言を受けて、要するに国民的課題であるということを本当に納得してもらわなきゃいけないと。そういうのを考えていくと、日本の社会の文脈とかあり方を大きく変えない限り無理なんだという話に至るところがありまして、そういうところをちゃんと包み込んで議論として頭出ししておく必要があるんではないかということかと思うんですけれども、なかなか勇気の要ることでありまして。

それでは、時間の制限もありますので、項目の方も含めまして、引き続き1ページ目についてのご意見も結構ですけれども、項目立てとして今も少しありましたが、こういう項目だけでは狭いんではないかとか、足らないのではないかと、もっと項目として取り上げるべき項目がこれまでのプレゼンテーションの内容からいってもあるんではないかというふうな点についてご意見がありましたらお願いしたいと思いますが。

では、藤原メンバー。

○藤原メンバー

国際化という問題で今問われている問題点というのは、実は非常に日本の根幹を揺るがすような問題点ではないかと思うんです。1つは、税制策をどうするのか、金融と税というのは非常に深いつながりがありまして、それがここに出てないわけですね。所得税が安いからシンガポールとか香港に人が集まり、金融関係者が集まり、ということがどうしてもあるので、税というのをここに入れるというのは難しいでしょうか。その難しい、避けたいというところを避けられない状況に今入りつつあると思うんです。5年後とかになったときに、やっぱりあのとき入れておけばよかったという感じの国際化の流れに私はなっているような気がします。だから、税のところを入れていただきたいと思います。

○池尾座長

2.の制度を含むインフラの(2)のその他の制度インフラという項目の中で、金融に直接かかわる税制の話は一応触れたいなとは思っているんですが、今藤原さんがおっしゃったのは、もっと広い税制体系全体の話ということになるのかというふうに思いますので、それについてはどの程度、これはスタディグループですからあえて無理にコンセンサスを形成する必要はないのですけれども、税の重要性についてはご指摘がこれまでもあったと思うんですが、どういう税制にすべきかということについては余りまだ議論はできていないという感じだと思うんです。だから、その面も含めて議論をしていく必要性があるという指摘は当然したいというふうに思いますが、今の段階ではそういう形かなというふうに思います。

いかがでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

私が言うのもあれなんですが、人材育成という話を事務局から説明していただいたときに、3.の各市場参加者が取り組むべき課題の中で、それぞれについて人材の育成の話が触れられていたんですけれども、そういう各プレイヤーが取り組むというレベルでの課題というのもたくさんあると思うんですけれども、それだけで例えば人材育成という問題が尽きるのかというと、全体としての教育システムのあり方だとか、これは日本社会の根幹にかかわるのかもしれませんけれども、日本の企業組織の人事システムのあり方だとかというのを見直さないと、金融専門人材というのはなかなか育ってこないんではないのかというので、少なくとも教育行政的な課題、ちょっと私も大学の関係者だから天につばしているような気もしないことはないんですが、そういう課題はあると思うので、ちょっと各プレイヤーが取り組むべき課題の中に分散解消してしまうんではなくて、人材育成ということでちょっと1項目独立で立ててほしいなという感じはいたしますが。

ほかはいかがでしょうか。どうぞ。

○宇波メンバー

今日初めてでございますので僣越だと思うのですが、今までのいろいろと議論も聞かせていただいて思います点が2つほどありまして、これは当然のことながら議論の前提になっているのだと思うのですけれども、今後我々が提案していくべきものの時間軸というのですか、先ほど、政府として取り組むところのロードマップというのがあったと思うのですが、まさに我々が示すところにもある程度の時間軸というものがあって、手前のところで見せられるものはより具体的に、人材とか、先ほどの英語教育、まさに語学の教育みたいなところというのはかなり長期で取り組んでいかないと、今日明日に英語をしゃべれと言われても私もちょっと無理でございまして、そういったところもあると思いますので、そこは分けてお示しいただければよろしいのではないかと。そうすると、どうしても先のところというのは若干抽象的な項目の提示というのも場合によってはあり得るのかと思います。

もう一つはプレイヤーのところでございますけれども、これはずっと話を聞いていて思っておりましたが、やはり我々の出発点が1,500兆円の資産をどうするかという、まさに我々の資産の投資機会を外に持っていくのか、あるいは日本という市場にどういうプレイヤーを引き込んでいくのかという、2つの側面があるので、これはすべてのプレイヤーに、日本に対する、あるいは日本からという、○×つけると全部が全部はならないかと思うのですけれども、そういう視点を持って検討をもう少しブレイクダウンしていくという方がよろしいのではないかと思いました。

○池尾座長

ありがとうございました。

先ほど申し上げた人材育成の話に関しても、国内で人材を育成するということと、国内に現状で不足しているんだったら海外から優秀な人に来てもらったらいいではないか、それで、来てもらいやすい環境をいろんな形で用意するというふうなこととか、プレイヤーとして国内プレイヤーだけを念頭に置かない形で考えるということですね。

それと、当面の課題と、中長期課題とかの切り分けがある程度明確な方がいいのではないかと。

田中さん。

○田中メンバー

日本における期待インフレ率が世界の先進国の中においても際立って低い。ゼロの近傍のはずなんですけれども、にもかかわらず円はユーロに対してもドルに対しても下がり続けているという事実があります。そして、政策金利については、短期金利については完全につぶしたまま数年を経過してきていると。円に対する需要が非常に低い中で、円、カレンシーとしての円がずっと低下し続けていると。

こういう短期金利がつぶされ、円の価値が下がっている中で、円を組み込んで日本の金融市場において商品をつくるとか、あるいはそれを買ってもらうとか、そこでトランザクションが増えるというのは無理な話なわけですね。なぜこういうことになっているのかというと、幾つか今人材育成のお話ありましたけれども、そもそも我が国の経済がどういう形で成り立っているのか、景気変動がどういう形で起きているのかということについても、言うならば子供の話ではなくて大人のレベルで非常に認識が乏しいと。今回の2003年ごろから明確になりました景気上昇は、財政支出を削り、政府保証の傘をすぼめ、マネーサプライの伸び率は2%以下、しかも銀行の不良債権比率は高いままで起きたわけです。結果として銀行の与信の質は向上しましたし、マネーサプライは増えてはいませんけれども、設備投資に意欲を持っている企業は十分な資金を手にしている。財政はこの間一貫して景気との関係はなかったという事実があります。にもかかわらず、例えば政策金利をどうすべきかというときに、物価上昇率と1対1で対応させた議論をメディアも含めて、多分大学の経済学の講義でもそういう議論が多いのではないかと疑っているんですけれども、大学と縁がないので、そうではないかと思っているんですが、これは明らかな誤りです。結果としてこんな金利水準で、短期金融市場が成立していないところで、金融商品を工夫しろとか、デリバティブを工夫しろといったって無理ですよ、それは。

結果として何が起きたかといったら、これだけ東アジアにおける外貨準備が増えるような、そういう状況であるにもかかわらず円が全くクウォートされない。フォーリンリザーブにおける円は既にポンド以下、4位になっている。こういう状況のもとでは、邦銀がいかに活躍しようとしても、円をクウォートしてくれませんから、まず力の発揮しようがない。ドイツの幾つかの銀行は、少なくとも3年前までは本当にどうするのか七転八倒していましたけれども、昨今は、ユーロの価値が大幅に上がる中で、ユーロがクウォートされる中で、彼らは勝機を明らかに見出しています。その中で、選択と集中をそれぞれに行い始めて、結果としてグローバルにも役割を果たすところも出てきているということなんです。

我が国における経済政策決定過程の背景にある、一体我々がどういう経済のもとにあるのか、そのことについての分析、結果として金利体系をつぶしているということにもなるんですが、これがある限り円はクウォートされません。円がクウォートされていない中で、ファイナンシャル・インスティテューションに商売やれとか、国際業務を増やせと言ったって、そんなことは「蟷螂の斧」でして、それは無理というものだというふうに私は思います。

そういう意味からいくと、人材育成の前に経済学者の育成をやる必要があると。あるいは、普通の言葉で言うとメディアの、あんまりこれ言うとあれなんだけれども、やっぱり議論の取り上げ方自体が、国論、国の経済政策の取り上げ方自体がおかしいと。ずっとねじ曲がったまま。例えば、どうやって説明するのかと、期待インフレ率が低くて、十分インフレを、伝統的な考え方をすれば、コントロールしているところで、通貨価値がどんどん下がると。どうやって、だれがどこで説明しようとしているのかという問題が私はあると思っています。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

反論しようかと思ったんですけれども、政務官から。

○田村政務官

全く別な観点なんですけれども、一番最初のたしかプレゼンテーションで、どういう国際金融市場を目指すかというところで、内内とか外外というモデルありましたね。このまとめ方はすばらしいんですけれども、これもう少し僕はアンビシャスにできるのではないかと思うんです。

というのは、これ1,500兆円をどうやって働かせるかというところが大命題になっているんですけれども、1,500兆に限ることなくて、これは内内、ニューヨークみたいなモデルかもしれませんけれども、もちろん大きな経済ですからそれでも十分意義があるし、やるべきだと思うんですけれども、もう少しアンビシャスに内内と外外のハイブリッドぐらい目指したらいいのではないかと思うんです。外からもしっかりお金を持ってくる。今は世界には9,000兆円以上のお金があると言われていますので、これぐらいのことをやったら外からも来ると思うんですね。タイムフレームがどうなるかという議論はありますけれども、やはり命題に世界のお金もしっかり引きつけていく。

例えば外内、外から持ってきて内で使うということもあるし、外外でスルーしていってその加工で付加価値を得るという手もあるんですけれども、その外のお金も引っ張ってくるということもしっかり大命題として書いてほしいなというのが私の希望です。

○池尾座長

それはそのとおりだと思いますが、田中委員おっしゃったのは、マクロ経済政策上、金融政策に非常に負荷をかけるような運営のあり方と、金融・資本市場改革というある種の構造改革というのが、スタンスとして齟齬が基本的にはあるんではないかと。だから、金融・資本市場改革ということで政務官おっしゃったようにもっとアンビシャスにいくんであれば、マクロ経済政策運営のあり方もそれともっと整合性のあるものにしないと、何か右手で火を起こしながら左手で水をかけているようなことをしているのではないかと。そういうことではないかというのは、個人的には私も賛成で、別に私は経済学者の代表ではありませんが、そういうことを認識していないわけではないんですが、なかなかマクロ政策運営上は金融政策にいろいろと注文をつける力が依然として強いということは事実としてはあるということだと思うんですね。

だから、先ほどの矢野委員のご指摘も含めまして、もっと本音ベースのことをせっかくだから書かないと、余りきれいごとだけでおさめるのは論点の取りまとめといってもいささか不十分ではないかというご指摘だというふうに受けとめます。

○藤巻メンバー

確かに円の国際化を議論したときは、私は日本経済が弱い限り円なんか国際化しっこないと思っていました。ただ、そうは言っても日本経済が回復したときは円が国際化する可能性もあるのだから、そのときのためにルールづくりをしておくのがいいだろうという考えだったんです。今回の場合も日本経済は確かにまだ弱いんです。しかし、そうであっても東京市場を通じて日本の個人資産1,500兆円でアメリカ国債なり、アメリカ株を買わせるというビジネスもできるわけです。

日本経済が回復したときは、それこそ日本にお金が入ってくるビジネスも発生するわけで両方向の市場が成り立つわけです。今経済が弱いから、もしくは金利が低いからといって国際化できないわけはないと思うんです。景気がよくなったときのために今こそやっておくべきだと思いますし、そういう面で見ると、政務官がおっしゃったようにどっち方向もあるわけですね。海外に投資するマネーを東京市場を通じて出せばいいわけですし、海外から東京市場に持ってくるという両方サイドのビジネスの可能性があるわけです。

○池尾座長

そろそろ時間が迫っていますので、この論点整理の取りまとめは次回以降、引き続き今日のご意見を含めてもう少し、ややコンテンツも含めたものを事務局に作成していただいて議論を続けたいと思いますが、どうしても今ということで何かご発言が残っているようでしたらお受けしますが、よろしいでしょうか。

それでは、今申しましたように、次回に引き続き今日の議論を踏まえて論点の取りまとめについて議論したいというふうに思います。

それでは、どうも皆様、活発なご議論をいただきましてどうもありがとうございました。

では、次回の日程等について事務局より説明していいただきます。

○三井市場課長

第9回、次回の会合は、来週17日火曜日、朝の10時から12時で予定しております。よろしくお願いします。

○池尾座長

それでは、以上をもちまして本日の会議は終了とさせていただきますので、皆さん、どうもありがとうございました。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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