金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第9回)

日時:平成19年4月17日(火)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 特別会議室

○池尾座長

それでは、まだお見えでないメンバーの方も若干おられますが、それから第二部会長の岩原さんも来ていただくそうですが、ちょっと遅れられるそうなので、定刻になりましたので、本日の我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第9回会合を開催いたしたいと思います。

皆様、ご多忙中のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、初めに本日の議事について説明したいと思います。でも、議事次第を見ていただいたらわかりますが、事務局説明、自由討論ということしかありませんので、前回お知らせしましたように、本日はこれまでの議論の主な論点についてフリーディスカッションをしていただくというのがテーマになっております。

では最初に、事務局から資料の確認といいますか、1つしかないと思いますが、お願いしたいと思います。

○三井市場課長

ご案内のとおり、「主な論点」というのが今日の資料であります。

○池尾座長

それでは、自由討論に入る前に、この「主な論点」というペーパーにつきまして、事務局の方から一通りの説明をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○三井市場課長

それでは、お配りしております「主な論点」というものについて簡単にご説明します。

これまで出た議論を網羅的にというよりは、主な論点について、その中身を詳細にということに重点を置くよりはむしろ全体の構成なり全体の論点が主なものとしてある程度網羅されているかどうかという観点から整理してございます。それから、最初の I の目指すべき金融・資本市場の姿につきましては、前回非常にさらっとした総論を書かせていただきましたけれども、前回の議論を踏まえまして加筆させていただいています。

では、まず I の目指すべき姿について、書き加えたところもありますが、全体を読ませていただきます。書き加えたところは2つ目の○の後半、それから3つ目、4つ目、5つ目の○でございます。

  • 少子高齢化が進展する中、我が国経済が今後持続的に成長するためには、我が国の家計が保有する1,500兆円の金融資産を有効に活用するとともに、高い付加価値を生み出す金融サービス業が経済における中核的な役割を果たす必要がある。

  • しかしながら、我が国金融・資本市場の国際的なプレゼンスは低下傾向にあり、このままでは、これらに的確に応えられないのではないかとの懸念が指摘されている。また、経済に対するリスクマネーの供給が必ずしも円滑に行われていないのではないか、国際金融センターにふさわしい人材の厚みや市場慣行といった点で問題がある、との指摘もある。

  • こうした中、グローバルな市場間競争が一層激しさを増しており、我が国金融・資本市場の国際競争力を強化することが必要となるが、そのためには、これまでの金融・資本市場改革の取組みを更に進め、我が国金融・資本市場の裾野を拡大することにより、内外の市場参加者にとって魅力ある市場を構築していかねばならない。この課題は、金融・資本市場関係者にとどまらない国民的に優先度の高い課題である。

  • すなわち、我が国金融・資本市場の国際競争力の強化は、多様な金融商品・サービスの提供を通じ、投資家にとって、より有利な運用機会が得られることを意味する一方、資金調達者にとっては、事業の拡大等に必要な外部資金の調達により、更なる成長のチャンスにつながると考えられる。

  • 投資リターンの増大や企業収益の拡大は、仲介する金融サービス業が生み出す付加価値とともに、国民所得の増大につながり、国民全体の豊かさに還元されることが期待される。また、市場を通じた資源配分機能やガバナンス機能の適切な発揮は、経済活動の効率化や生産性の向上により、経済全体にプラスの影響を及ぼす。

  • このような成長の好循環の中に、海外からの運用資金や、国内に金融資産の蓄積が乏しい外国の企業を取り込むことにより、我が国経済の一層の成長のみならず、世界、とりわけアジアの成長にも貢献することが期待される。

  • また、内外の市場参加者にとって安心して利用できる市場であるためには、市場の活性化・効率化を図る一方で、透明性・公正性を確保するための対応も含め、総合的な取組みが必要である。

  • 具体的には、法制度面に限らず、人材、専門サービス、インフラ等多岐に亘る課題について、政府全体として取り組むと同時に、市場関係者においても一体的な取組みが求められる。

各論でございます。3ページ以下、 II .検討項目とあるところでございます。前回はその一番大きなくくりの項目だけを書いてございました。それに加筆してございます。

1.魅力ある市場の前提といって、総論でございます。(1)多様な商品・サービスの提供を通じた「厚み」のある市場の形成ということで、ここでは、市場の「厚み」、自由と規律の自由の部分でございますけれども、多様な金融商品が提供されて「厚み」のある市場が形成されるということでありまして、例示をしてございます。エクイティであると、エマージング国の企業の国内への上場であるとか取引対象化であるとか、デットでいいますと、クレジット関係の商品なり市場なりであります。

それから自由と規律の規律の方でございまして、(2)に市場参加者の高い自己規律ということを書いてございます。

具体面でありまして、大きな2と大きな3で、大きな2の方がインフラでございまして、3の方がマーケットプレイヤーの話ということで、環境と本人ということで書いてございます。

2のインフラの方でございますが、まず規制環境のマル1の規制プロセス、いわゆるベター・レギュレーションでありますが、前回幾つか項目だけ例示しました。最も議論がたくさん出されたものとして、プリンシプルベースのアプローチかルールベースのアプローチかということでございまして、基本的にプリンシプルベースを志向する意見が幾つか出された一方で、興味深い話として、プリンシプルベースをとっている国の方々から、ルールの明確化あるいは詳細化といったコメントがございました。ちなみに、先週末、今お配り中か、あるいは後ほどお配りできると思いますが、金融商品取引法に関する政令と内閣府令、監督指針のパブリックコメントを付させていただきました。ここではかなり詳細なルールを示しております。ポイントは、全体的には横断化をして、それから柔構造化、柔軟化をするということでございますけれども、この政府令の具体化に当たりまして、非常に多数の質問なり、あるいはルールの明確化についてのご質問なり要望がございました。極力その要望にお応えするような形でレギュレーションをお書きしたつもりでございます。ということで、ある意味、ルールの明確化といいますか、詳細化を求めるものと、それからプリンシプルベースのアプローチをどうバランスしていくかという問題が各論では非常にたくさんあろうかと思います。今回、金融商品取引法で内閣府令をつくるに当たりましては、特に規制の趣旨からして必要なところは特に規制を詳細にお示しする一方で、規制の趣旨から見て省けるところは省く、緩和するところは緩和するというメリハリをつけさせていただいたつもりでございます。そういった観点から、ここでは「相互補完的なもの」と試みに書かせていただきましたが、ご議論いただければと思います。

それから、ルールの更なる明確化。先ほどのプリンシプルベース、ルールベースのアプローチと実はシームレスにつながる可能性があると思いますが、項目としては別建てにさせていただいています。さらに改善すべき点があるのではないかということであります。

それから、事業者と規制当局の対話、あるいは、これは国内に限らず海外も含めてですけれども、規制当局の外への情報発信力が十分ではないのではないかということでございます。現在、金融関係法令の英訳については、金融商品取引法等について、予算をつけて割合きちんとした英訳をつくるという作業に取りかかっているところですが、それに限らず、それを含めて、さらに取り組むべきことがあるのではないかということであります。

それから、言わずもがなでございますけれども、規制当局のスキルアップが必要であるということでございます。

次の4ページであります。自主規制については、先ほどのプリンシプルベースのところとも関連いたします。自主的な取組みでありますので、法令がミニマムスタンダードだとしますと、さらに高い水準についてプリンシプルベース的なアプローチをより柔軟にするポテンシャルのある分野かと存じます。それから、今回金融商品取引法において横断化がなされました。こういう隙間のない横断的な利用者保護、あるいは柔軟な、よりレベルの高い自己規律といった面から、自主規制の範囲・役割・機能の拡充強化ということについて検討してはどうかということであります。

マル2のルールの適用、エンフォース部分でありまして、課徴金制度のご議論がございましたが、刑事罰よりも柔軟に運用することができる制度として、対象範囲をより拡大するとか、金額をより引き上げるといったことを含めて検討が必要ではないかという論点であります。

それから司法プロセス(私法)について、幾つかのご議論がありました。投資家が実際に被害を受けるかもしれない、あるいは受けたということについての救済、あるいは救済を受けることができる地位という観点から、より迅速で簡易な手続があってはどうかということなどがございました。あるいはそれを支える制度インフラとして幾つかご指摘があったと思います。

それからマル3の市場制度でありまして、海外企業の株式を国内で取引できるような機会を拡大するということで、JDRを例示してございます。

それから、プロに限定した取引の活発化でございます。何人かのプレゼンテーターあるいはご意見の中から、例えば機関投資家、プロフェッショナルな投資家をターゲットとした、あるいは限定した市場というものを考えて、そういったところに多様な商品を取引対象にして取引を活発化させるといったご提案もありました。それに対して、参加する投資家層とか商品の供給といった課題が言われていたかと記憶しております。

それからグリーンシート市場の改革。政務官から力強い提案がありました非上場銘柄とか上場廃止銘柄の取引の場としてのグリーンシートの改革のテーマであります。市場関係者による検討の場ができているとお伺いしております。

マル4、金融商品取引法制の施行とその活用でありまして、その詳細は今パブコメ中でございまして、またさらに説明の機会をいただければ説明したいと思いますが、国際化あるいは自由なイノベーティブな活動に活用の余地があろうかと思います。

次の5ページの冒頭は、金融・証券に係るファイアーウォール規制でございます。プレゼンテーションからも幾つか重要なご指摘がございました。それに対する異論もあったかと思います。そういう状況でありますので、ここでは比較的中立な書き方をさせていただいておりますが、さらに議論を深める必要があろうかと思います。

(2)その他の制度インフラとしまして、決済システムということがございます。資金あるいは証券あるいはその他の取引の決済というものがグローバル化あるいはIT化の流れに対応したものになっているかどうかということであります。

それから、個人の資産形成促進スキームの導入。この意味は、従来型の貯蓄優遇ということではなくて、むしろ貯蓄から投資への流れを後押しするようなスキームとして、預貯金ではなくて、リスクマネーをさらに個人に積み上げていただくといったインセンティブとして、諸外国のスキームを参考にしながら何か検討することはないのであろうかということであります。

それから、税制につきましても、たくさんご指摘がございまして、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるための税制上の役割、さらに、国際競争力という観点からは、税体系全体についての議論が必要ではないかというご指摘だったと思います。

それから、人材教育でございます。人材は、官民あるいは民間でも各方面の総合的な取組みが必要であるというご指摘があったと思います。特に英語対応については、議論が分かれましたけれども、重要な論点ということで一部さらに掲げてございます。

(3)は物理的環境であります。プレゼンテーションあるいは委員の方から、国際金融センターとしての機能の向上のための都市インフラあるいは環境といったご指摘がございました。それから、その関連ですけれども、交通インフラ、その他にあります人材確保のための生活環境ということで、例えばロンドンなどでは、外国の優秀な専門人材が集まって生活できるという環境があって、そういうものは日本でも一部の地域ではあるとして、そういうことを念頭に置いて、何らかの対応が必要な場面があるのではないかという議論だと思います。

それから、今度は大きなくくりの3番目で、プレイヤー側の話でございます。市場開設者につきましては、海外企業の日本の取引所への上場のプロモーションであるとか、取引所における取扱商品の多様化、それから取引所の自主規制機能の強化。この3つ目の点については、上場制度整備懇談会において活発な議論が行われたと聞いております。企業の行動規範とか、ペナルティの多様化、あるいはペナルティのエンフォースに当たっての適正手続など、広範な議論があったと聞いております。

(2)の資金調達者、これは企業サイドの能力の向上ということであります。

それから、(3)個人投資家については、金融リテラシーの向上のためには、これも官民挙げての施策ということになります。

非常に議論が多かったのは(4)機関投資家でありまして、市場型間接金融を支える柱となるという位置づけでありまして、その機関投資家の質なり量なりの向上というものが非常に大事であるという論点でございます。年金とか投資信託とか、ファンドも含めた幅広い機関投資家が資金を出して、それから預かって運用する方々が多様な運用手法を駆使できるようにすること、仮に制度的に、あるいは市場慣行的に、あるいはその組織の慣行として運用対象が制約されているような場合には、その拡大などの取組みが必要であるのではないか。それから、機関投資家については、リスクテイク・運用技術力の向上を図ることと、それとの関連で受益者に対する受託者責任というものがより一層十分に果たされることが求められているのではないかという論点であります。

次のページでありまして、金融仲介者の高度金融人材、それとの関連で、実際の現場の高度金融人材に加えて、それを活用するマネジメントの側の人材の問題、それから周辺サービスにおける法律、会計の専門人材という点についても、項目を分けて掲げております。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、これより自由討議に移りたいと思いますが、一言だけ申し上げたいと思います。これまでの議論の取りまとめとして、これはおかしいというところがあれば、もちろんご指摘いただきたいと思うのですが、それ以上に、今後どういうところをさらに詰めて議論していくべきか、あるいはどういう方向性で議論していくべきかという今後の議論のための取りまとめという趣旨が強いので、これはスタディグループですから、何か意識的に合意形成をしてどうのというよりは、もっと議論していきたいと思っておりますので、今後どういった点をどういう方向で議論していけばいいかというところを中心にご議論いただければありがたいなと個人的には思っておりますので、よろしくお願いします。

それでは、どなたからでも結構ですので、挙手をいただくか、ネームプレートを立てていただければ発言の機会をと思いますが、いかがでしょうか。江原メンバー、お願いします。

○江原メンバー

それでは1番バッターということで意見を述べさせていただきます。このスタディグループのミッションなのかどうかはちょっと定かではないのですが、私はもう少し踏み込んだ形でのビジョンというものを書いてもいいのかなと思います。例えば、ここで言っている国際金融サービス業というものは、日本の国策という観点から見て主要産業に育てるべきだという打ち出しというのですか、それはもっと必要なのではないかなという気がします。ではその理由はということでは、ここにはいろいろ書いてあるのですが、日本が置かれている相対的競争力というものにも触れるべきではないかなと思います。このスタディグループでは過去においてかなり建設的な意見がたくさん出てきたかと思いますが、一方で日本が持っている優位性というものは当然のことながらたくさんあるわけで、特にアジアという観点で見ると、この優位性というものに基づいてさらなる強化といった打ち出しというものが必要ではないでしょうか。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

ほか、いかがでしょうか。では柴田メンバー。

○柴田メンバー

今、江原さんがおっしゃったとおりだと思います。5年後、10年後、この国の金融市場がどういう姿になったらいいか、それが目に浮かぶようなビジョンというものが必要です。細かいものや大きいものなどのいろいろな骨組みはそれを助けるものであるということですので、まずビジョンというものである程度未来を語りたいということです。それから、東京市場ということを考えるときに、東京市場だけを考えても仕方がありません。ここでも市場間競争という言葉は使われておりますけれども、日本の金融市場というものを主だった競争相手と想定される諸外国に対してベンチマーク比較をすることも必要であろうかと思います。実際にシンガポールの人々と話をしますと、彼ら自身、幾つかの主要な金融センターとの間に、非常に多岐にわたる項目においてベンチマーク比較をして、戦略的な意思決定をして、自分たちはこのようにしたいということをやっています。そういったことを公に言う人たちも余りいないでしょうが、どこの当局と話をしても必ずベンチマーク比較をやっているということで、このビジョンの議論と、それを可能にするための相対的な競争力、先ほど江原さんがおっしゃったところ、これを担保するためのベンチマーク比較というものは避けて通れないものだと思います。

○池尾座長

ありがとうございました。

どうぞ、檀野メンバー。

○檀野メンバー

この資料の5ページにございますけれども、インフラのところでの話の(3)の物理的環境、マル1の都市インフラとマル2の交通インフラ、これに対して肉づけのコメントがないということは、これまで余り議論されてこなかったのかなと思っておりまして、不動産業に身を置く身として、国際金融センターとしての機能の向上のための都市インフラの整備について少し考えを述べさせていただきたいと思っております。

もちろん、金融資本市場の国際化のためには、金融制度の整備というものが非常に大事だということは、今までの議論を通じて私も大変参考になりましたが、金融資本市場のプレイヤーが活動しやすい拠点を整備するといった視点から、ここに挙げられております論点は非常に重要なことだと思っております。昨年末の時点で、東京23区のハイスペックビルと定義されているいわゆるAクラスビルの空室率が約1.4%にまで低下しており、CBDについてはもう1%を切っているという状況です。通常、オフィスの空室率は5%が適正だと言われておりますが、現在の空室率はそれをはるかに下回っているということで、オフィスの需給は非常に逼迫しているという状況がございます。そのため、現在、都心にオフィスを構えようとしても、まとまった面積のオフィスを確保するということは非常に困難な状況にございます。また、昨年来、景気の回復に伴って企業が採用を非常に増やしております。メディア等でも取り上げられておりますけれども、特に金融機関が採用を増やしております。私どもの経験から、採用が増えるとオフィス需要が急速に増えるため、さらに需給がタイトになってくるのではなかろうかなと思っております。また、CBDには老朽化したビルが非常に多くて、金融機関等が求めている電気容量、それからIT環境、セキュリティー機能を備えたオフィスビルが絶対的に不足しております。また、我が国では諸外国と比較して地震リスクが非常に高いことから、事業継続計画――BCPの策定に当たって、エリア防災という観点からの関心も外資系金融機関を中心に非常に高いものがあります。ただ、こういった都市インフラの整備というのは一朝一夕にできるものではなく、長期間の取組みの中で生まれてくるものですので、このインフラ面での整備について早く手を打っていかないと、金融資本市場の国際化もなかなか進まないのではないかなと思っております。

ちょっと視点を変えてみますと、ロンドンのシティとかニューヨークのウォールストリートなどの金融街では、金融資本市場を支えるプレイヤーが非常に集積して住んで働いております。日本の金融機関でも、私どももいろいろアンケート調査をするわけでございますけれども、オフィスの選択に当たっては、クライアントへのアクセスのよさ、リクルーティング活動に有利だということ、ビジネスインフラが整っていること、それからセキュリティー面、テナントサービス面の充実というものが重視されておりまして、交通利便性やビルのスペックに加えて、企業集積とかビジネスインフラの充実など、エリアのポテンシャルに着目してオフィス立地を決定されているということが顕著になっております。また、ビジネスインフラとして、ローファームや会計事務所などのプロフェッショナルファームの集積も求められてきております。最近では、こういったプロフェッショナルファームも巨大化して、大きなスペースが必要になってきております。そういったスペースを確保することも金融資本市場の国際化のためには必要なことだと思っております。企業が集積されることによってクライアントとの物理的な距離が短縮されて、最も貴重な資源である時間が節約されるということが言えます。それから、関係者を一堂に集めることも容易となって、ITではできないフェイス・トゥ・フェイスの情報収集や知的交流も気軽に行えます。

以上、お話をさせていただきましたように、金融資本市場の国際化を推進するためには、この市場のプレイヤーが24時間安全快適に働いて住むことができるような街づくり、それから建物の更新が必要であると考えております。このためには、先ほども出ておりましたけれども、我が国金融資本市場の国際競争力の強化にあたっては、その将来像というものを我々が共有した上で、官公民が一体となったスピード感を持った取組みが必要だと思っております。都市インフラの整備については、以上のような観点から、今後、議論をしていくことが有用だと私は考えております。

○池尾座長

大変どうもありがとうございました。

それでは、ほかにご意見はいかがでしょうか。どうぞ。

○柴田メンバー

各論の一部で4ページの一番上のところに「自主規制の役割・機能の拡充・強化」という項目があります。それで、今、三井市場課長からお話がありましたとおり、法律というのがミニマムスタンダードであるとすると、その上位概念として原則――プリンシプルがあり得る、さらにその上位概念として一般的な倫理といったものがあり得るというヒエラルキーであろうかと思います。このヒエラルキーを生かして自主規制機関がいろいろな行動を行うわけです。現在の日本の体系でいきますと、ほとんどの業務が登録制になっていて、これ自体はいいことだと思いますが、登録制というのは非常にオープンなシステムであるがゆえに、どなたでも入ってこられるということに近い建付けになっています。しかし我が国では、欧米におけるような個々人のファイル、望ましからざる人物の排除のための仕組みといったものがまだ未発達です。望ましからざる人物の排除というときに、個人も対象になりますけれども、法人もまた対象になるべきであろうかと思います。業界の関係者の一人として、望ましからざる者の排除の仕組みが充分ではない、ここには非常に危険を感じています。

その上で自主規制機関ということを考えますと、自主規制機関の本質というのは、自分たちで自分たちを律する、すなわち仲間を律すること以外は何ら力を持たない人たちであるということであります。そうすると、仲間を律するための仕組みというものは、一つは調査であるとか、検査であるとか、そういった能力もありますが、それに加えて何らかの形の処分というものを行う権限が必要になってきますけれども、その最終形というのは除名です。現在の日本の自主規制機関の前提というのは、登録した人は全部入ってくださいということですが、実は自主規制機関に役割を与えるとすると、排除をするという役割も必要になってくるかもしれない。そこが建付けのかなり難しいところでして、法律のようにあまねく日本全国に当てはまるようなルールがあるとすると、実は自主規制機関がみずからのコントロールを及ぼせる範囲というのはそれよりも集合としては小さくなってしまうというところ、そこに矛盾があり、ここは今後の課題ではないかと思います。

○池尾座長

競争政策との兼ね合いという論点も当然入ってきますから、カルテル行為的なところと非常に重なりかねない懸念が生じますから。

ほかにいかがでしょうか。では順番に、山澤メンバー、まず最初に。

○山澤メンバー

冒頭座長の方から今後の議論のためにさらに議論を進めていった方がよいポイントということでご示唆がございまして、総論のところで言うと2ページ目の最後の○のところですが、先週の議論でもどなたかメンバーの方がおっしゃっていたかと思うのですけれども、もちろんそれぞれさまざまな議論はあると思いますけれども、大きい流れとしては、皆さんそれほど大きなイメージのずれはないと思うんですけれども、これは基本的に大事なのは、コミットメントというか、推進体制をどうするのかというところだと思っています。まさしくここでお書きになられているように、政府全体として取り組むと同時に、市場関係者においてもということだと思うんです。まさしく国家的課題としての政府の取組みも重要だし、あとこの資料で言いますと最後の6ページ以下に書いてあるような各市場参加者(プレイヤー)としての取組みも重要だということだと思うんですけれども、それをインテグレートする場というか、取りまとめて一体的に取組みを進めるような場として、こういうスタディグループみたいなものが適当なのか、それともまた何か違う仕組みが重要なのかと、それをどういう形で推進していくのかということを議論できればなと思っております。

○池尾座長

ありがとうございました。

では、増井メンバー、お願いします。

○増井メンバー

今自主規制の話が出たものですから、一言だけお話し申し上げたいと思います。今のご意見のとおりだと私は思うんですけれども、自主規制の関係、しかもここに書いてあることは私は全く賛成でございまして異論はないのですけれども、現状を考えますと、いろいろなメンバーの方が入ってくる一方で、入りたいという方については基本的には拒めないという仕組みになっているものですから、自主規制機関のあり方として第一に、これは金取法のときにもご議論があったかもしれませんが、加入義務についてどう考えるかということがあると思います。加入義務を課すということになれば、この自主規制のあり方というのはまた相当違った世界になると思います。その議論をきちんとやる必要があるということと、それから仮にそうでない場合は任意加入になるわけですが、会員の方々にある程度ルールを守っていただく仕組みというか、手段といいますか、もうちょっと強化する、例えば、先ほどご議論がありましたけれども、加入の拒否とか条件をつけるとか、そういう手段を与えていただけるとか、そういったことである程度自主規制のルールの実効性が確保できるのではないかと思っています。ただ、加入を拒否した場合に、拒否された業者がどうなるのかという問題もあるわけですから、そういったことも一体的に考える必要があると思いますし、ぜひともその問題について、基本的な仕組みといったことについてもまたご議論いただければと思います。

○池尾座長

ありがとうございました。

では、平野メンバー、お願いします。

○平野メンバー

今後議論を深めるべき論点というご指摘でございましたので、ちょっとそういった観点から考えを述べたいと思います。今回、例えば3ページのところで、検討項目の最初の項目に「魅力ある市場の前提」ということで、その(1)に、多様な商品・サービスの提供を通じた「厚み」のある市場の形成というのを掲げていただきました。市場を論じる上では、さまざまなインフラもさることながら、市場の中身、市場像、先ほど柴田メンバーからもビジョンという言葉がございましたけれども、それを提示するのが非常に大事なことだろうと考えます。そういう意味で、これは以前根本さんからも議論があり、今週の「金融財政事情」にも執筆しておられますけれども、エクイティからデットに至る幅広い商品が多様な姿で取引される、そういう市場を形成することが非常に大事だろうと思います。ただ、以前この場でも議論されたことがあるわけですけれども、例えば海外の投資家から見ますと、今、日本の市場で魅力のある商品は何かというと、一つは株であるし、それからもう一つはプライベートエクイティファンドというのが今ありますし、もう一つはリートということで、今は株と現物投資に非常に偏っているという問題がございます。これは結局、ここにも書いていただいておりますけれども、クレジット関連商品が未成熟であるという点に一つの問題があるということでございます。

これにつきましては、以前私はこの場でも発言させていただいたことがございますけれども、この数年、間接金融偏重から複線型の金融、市場型間接金融をどう育てるかということが話題になってきたわけでありますけれども、それがなかなか実現できていないという状況がございます。過去の金融危機の時代においては、今申し上げた間接金融偏重型の市場構造というのが銀行へのリスクの集中という形になって金融市場の混乱を招いたということで、この場でもいろいろとご指摘をいただいている、そもそも金融機関自体が自分自身の足でしっかり立っていくというのが金融市場の基本になる。そこのところをまず押さえないと国際化もないという話があったわけですけれども、そういう姿が今もってあまり変わっていないということでございます。その結果として、国内での融資の競争というのが相変わらず続いておりまして、結果として低マージン化が進む。そうすると、これも以前この場でご指摘がありましたけれども、それを証券化しようと思っても、適正なストラクチャーを組むことはできない。端的に申し上げると、格付別のリスクプレミアムというのをとった統計が一般的にはこのクレジットリスクプレミアムに使われますけれども、例えばトリプルBぐらいをとると、日米の格差は大体1%ぐらいあるわけです。それともう一つ、実際には我々の貸出の対象というのはダブルB以下のお客様が大半でありますけれども、ここでは2%近い差があるという、この辺の構造をどのように変えていくのかということを考えていかないと、これは前回に田中さんからもご指摘があったと思いますけれども、なかなか日本の金融市場の構造というのは大きく変わることはないだろうと思います。

ではどうするかということなんですけれども、一つは金融機関自身の努力が非常に大事だと考えております。まず運用面から申し上げれば、私ども自身もそうですけれども、貸出の分野における多様化、中小企業とか個人のお客様への貸出を増やすということがございますけれども、それ以外にもいわゆる分散投資を活発化させようということで、今、弊社だけに関して申し上げても、数兆円規模の代替投資手段も含むようなポートフォリオの構築を行っております。日本においては農中さんがこの先駆者であられますけれども、日本のほかの金融機関もそういった意味で分散投資を通じて貸出に代わるような運用手段を見つけようとしている。ここの努力をさらに続ける必要があるだろうと思っております。

ただ、一つこのときに注意しておかなければいけないと私は思いますのは、それを通じて恐らく投資手段がさまざまに構成されてくることになるだろうと思いますが、そうすると、仮にクレジットリスクプレミアムの適正化が起こると、恐らく今クレジットリスクプレミアムが低いことを享受している資金調達者、この最大の調達者は申し上げるまでもなく政府なのですけれども、それに加えて企業、先ほど申し上げたダブルB格以下というセグメントは中堅中小でありますから、それに対する影響が出てくるということは、これは一種の副作用として理解しておく必要はあるということは申し上げておきたいと思います。ただ、それを伴いながらも、クレジットリスクに見合ったリターンとリスクのさまざまな組み合わせ、幅広いスペクトルのリスクプロファイルを持った商品が取引されるような市場が形成されることが望ましいと思います。

それと、今はどちらかというと国内の話をしたのですけれども、もう一つは、国際分散投資だと思います。今回も1ページのところで、前回、これもたしか根本さんのご指摘でしたけれども、アジアの視点ということで、一番下にアジアと入れていただいているのですが、ここにつながる視点というのが国際分散投資の視点ということで出てくるのだろうと思います。それは私ども自身の問題でもあるし、それからもう一つは、1,500兆という個人金融資産をどうするかという、これもこのスタディグループの大きなテーマにもつながるテーマでありますけれども、これをどうアジアに供給していくか、この辺の視点が重要であろうと思います。

長くなって申しわけないんですけれども、以上の目的を達成していくためには、幾つかプレイヤーという面でも考えておかなければいけないことがあるだろうと思っております。一つは、今回は5ページのところでお書きいただいております一番上の銀・証のファイアーウォールの問題ということなんですけれども、これについては私はたしか第6回のときに少し長い話をいたしました。ここではファイアーウォールという書き方をしていただいておりますが、これは金融コングロマリットというとらえ方をした方が多分正しい。利用者の利便性あるいは市場の発展ということを考えると、先ほどから申し上げているようなデットからエクイティに至る幅広い商品を取り扱えるような業者をつくっていく必要があるだろうと考えておりますので、この点についてはファイアーウォールだけではなくて、例えば業務範囲の問題であるとか、それから経営管理の問題、法人、カンパニーをつくった場合のさまざまなそういった規制をどうするかといった問題にも踏み込んだ検討が必要なのではないかと思います。

それともう一つは、これも同じ5ページにありますけれども、(2)の個人の資産形成促進スキームということなんですが、私はここが一番大事なところの一つだろうと思っております。結局、先ほど申し上げた1,500兆をアジアの市場を含む国際分散投資へと言っても、個人のお客様がご自分で投資ができるわけではないのですから、そこは機関投資家を通じて、あるいは401kといったプログラムを通じて、自分の意思で、しかしプロに運用していただくという方向でお金を流していく。これが重要であろうと思います。それからもう一つは今申し上げた機関投資家の問題で、これは6ページの一番下のところでかなり整理していただいておりますので、この議論はもう一段と深めていただく必要があるだろうと考えております。

少し長くなりましたけれども、以上といたします。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

では、若松メンバー。

○若松メンバー

私も先ほどから出ている5年後、10年後のいわゆる目に浮かぶビジョン、より具体的な将来像を示すということに賛成です。ここに書かれている理念とか考え方というのは、結構かなり受け入れやすいものだと思います。では具体的にそれを進めていくに当たっては、例えばここではさらっと税制についても書かれていますけれども、これ一つをとっても、今後具体的に進めるとなると、その利害調整は大変だと思います。はっきり言って、そう簡単に財務省などが納得するかと言えば、その辺の調整もかなり摩擦あるいは政治的にも相当なあつれきがあるのではないかと思います。そういう論議でも、具体的な目指す一つの目標像とか、そういう像が設定されていれば、それについて、ではその政策判断を今後どうしていったらいいのかとか、そういう国民的な論議も、展開しやすいと思います。一つのビジョン、像があれば、ではそこに向かっていくためにはどうしたらいいのか、そこにはどのような問題があり、修正していったらいいのかと、非常に建設的に論議が進めやすいと思うんです。そういう意味においても、目に浮かぶビジョンと口では一言で言っても、その具体像を示すとなるとなかなか大変かもしれませんが、一つのそういう像があった方が、論議を進め、制度をさらに改革して進めていく上においては、私は非常に重要なのかなと思います。

○池尾座長

では、藤原メンバー。

○藤原メンバー

ちょっと風邪を引いていますので聞きづらいかもしれませんがご了承ください。先ほどから柴田メンバーが話している5年後、10年後の姿について、付け加えたい点がいくつかあります。まず、第一に、将来どういう姿になりたいかは私たちが日本の金融市場の目標を今後どう設定するかによって違ってくると思います。例えばアジアNO1の金融市場という目標を掲げた場合と日本の投資家と発行体のためのローカル市場でいいと決めた場合とでは、その目標実施のための施策は違ってきます。前者の目標の場合、国際競争に勝ち、アジア1になるのですから、欧州のようにユニバーサルバンキング導入をコスト削減と生産性の向上のために実施することを真剣に検討していかざるを得なくなると思います。第2点は、現在、日本は低金利政策を実施しているので、円がヘッジファンドやプライベートエクイティーに調達通貨として使われてます。しかし今のところその実態は見えてません。私は、私たちが想像している以上のことが起こっているのではないかと思います。政府が市場の国際化を目指す目標を掲げることは大事なのですが、その場合市場を故意にリードする動きに対しても注意する必要があると思います。米国や英国では5年ぐらい前からこういう株主の動きが話題になってますが、日本においてもここ数年問題が大きくなってきてます。私が何を言いたいのかといいますと、それはシェアホールダー・アクティビストの動きについてです。こういう投資家の動きは市場がグローバル化されると必ず出てきます。金融庁のSGはこういう新しい動きに注目し、日本の市場や企業に対して影響を調べ、もし悪い影響であるなら、乗り越えるためには何をしたらいいのかに関して先手先手で施策を打ち出していく必要があると思います。

日本は市場での法律違反に対し課徴金が安すぎると思います。もっと上げてもいいのではないでしょうか。例えば、カナダのある上場企業の場合、10社以上のヘッジファンドに空売りを継続的にされ、業績が下がってないにもかかわらず、株価が半値になり、訴えられてます。その場合の損害賠償金は約5000億円です。日本の場合、金融犯罪に対する罰金が軽すぎると思います。それはライブドアや村上ファンドのケースをみても明らかです。罰金が小さいので、それぐらいだったら、どさくさにまぎれて儲けてしまったほうがこっちのもの・・と思う人を増やしているのかもしれません。金融市場で違反をしたひとが作った財産、つまり「法律に違反して儲けたお金」に対する処置は、もっと厳しくしてもいいのではないでしょうか。もちろん自由を維持する市場は大事なのですが、規律に違反した参加者にはもっと厳しい処遇があってもいいと思います。

次に、金融機関が法令どおり仕事をしているかを監視するコストを誰が負担すべきかについて触れて行きたいと思います。市場の国際化に伴うインフラ・コストの増大は他の先進国のリーダーを悩ませています。コストを誰が負担するかについての具体案ナシに、5年後10年後の国際化を考えるのは難しいです。日本の場合、金融機関の監督費用は現在国民が税金という形で負担してます、英国FSAは違います。例えばシティの銀行検査に検査官が入ると、その入られた銀行が費用を負担します。国民の税金は使われてないのです。今後、日本でも誰がコストを負担するかについてもっと積極的に議論をしてもいいのではないでしょうか。例えが証券業協会の自主規制が増えていくようであるなら、増加するコストを負担するため証券業協会は会員の年間費を上げざるを得なくなるかもしれません。こういうことに対する話し合いも5年後、10年後に今より国際化している市場にするために大事だと思います。

○池尾座長

ありがとうございました。

では、藤巻メンバーが先にお願いします。

○藤巻メンバー

最初に、細かいと言うと失礼かもしれませんが、細かい方から申し上げます。私が米銀に勤めていたころ、毎年米国中央銀行の定期的な監査があったですけれども、私が勤めていた最後の数年間に一番指摘されていたことは、地震等の防災対策が弱いことだということでした。そこで茨城の方に、地震が起こったときの疎開地みたいなものをつくって、ディーリングルームを含め、すべてのバックアップ体制をそこにつくったんです。何を申し上げたいかというと、外国人の目から見ると、そういう非常事態に対する対策がきちんとできているかどうかが重要だということです。例えばそのような非常事態用の施設に敷地をまとめて提供するとか、1社では対応できないことも地域全体で対応ができているかどうかというのが外国人にとって非常に気になるところだと思います。それが1点目です。

2点目は、今週の「週刊ダイヤモンド」の野口先生と池尾先生の対談の中に書かれてあることです。非常にためになりましたし、おもしろかったのですが、その中で野口先生だったか、池尾先生だったか、日本人はアメリカの国債等リスクフリーのお金に投資する。それを欧米の金融機関がリスクマネーにかえて、そこで彼らは非常に儲けているという話をされていました。私は外銀に勤めていた経験からしてそのとおりだと思いました。要は市場参加者のうち外資系の金融機関は非常に大きなリスクをとっている。特に私が勤めた外銀は、一流の企業を相手に一流のビジネスをということを標語にしていて顧客ビジネスから収益を上げているという印象が非常に強いのですが、それは株価を安定させる理由が大きかったのです。非常に多くの利益の部分が自己リスク、自分たちでリスクをとることによって儲けていたというのが実態です。前回か前々回かに申し上げましたけれども、モルガン・スタンレーが不動産投資をするのも、新生銀行を買った外資ファンドもみんな、各々がリスクをとって儲けているというのが現実ではないかと思います。要は、ビジネスにしろ、マーケットにしろ、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンの原則が的確に反映されるわけであって、リスクをとらない限りハイリターンもないということだと思います。制度をつくるときの議論というのは往々にしてリスクをいかに減らすかということになってしまうのですけれども、要はリスクをとる参加者もしくはリスクをとるカルチャーがなければ、マーケットは大きくならないだろうと私は考えております。

もちろんやみくもにリスクをとるのはギャンブルと変わらなくなってしまうわけですから、リスクコントロールシステムをいかに構築するかは、非常に重要です。リスクマネーをどうやってつくるか、そのリスクをどうやってコントロールしていくかということを考えないと外形だけをつくっても、魂は入ってこないのではないかなと思います。そういう意味で、税制を含めて、だれがリスクマネーを供給するか、市場参加者もいかにリスクをとるか、そしていかにそれをコントロールしていくかということを考えなければ他のマーケットに伍していけないのではないかと考えています。

○池尾座長

では、柴田メンバー。

○柴田メンバー

まず、リスクマネーの話が出ましたので、補足という意味で。どうしても日本の場合ですと、個人の金融資産の活用というところに話がいきますが、これは正しい。ただし、それに加えて年金の運用の自由化及び外貨準備の活用という概念も必要であろうかと思います。すなわち、この国には金融資本市場を発展させるために、ほかの国が持っていない資源がある。その一つ一つがすさまじい金額なわけです。例えば、個人ですと1,500兆を超えるし、年金もいろいろな数え方はあって混乱するにしても200兆はあるであろう。外貨準備は100兆であるということでありまして、これは諸外国のすべてが活用しているものであって、我々だけがどうも活用に熱心ではないように見えるというものであると思いますので、ここのところは一つ強調させていただきたい。ちなみに、年金、特に公的年金の部分ですが、先ほどの三井市場課長のプレゼンテーションでは非常に注意深い言葉遣いをされたわけですが、現実には、例えばGPIFという組織においては、形の上ではもう理事長がどんな運用対象商品を選んでもいいようにはなっているんです。ただ残念なことに、これを安全弁として担保するガバナンスの構造にもう一つ改善の余地があるということであって、すなわちどの資産に幾ら回して、ある時期で幾らもうけて幾ら損をしてとか、そういったところにつきましてはかなり高度な専門性と高度な技術が必要であるということで、これを担保するためのガバナンスのボディーが必要であろうということです。それがないと、国会とGPIFとの間に安全弁がないという状況に結びつくということかと思います。やはり安全弁が必要であって、これはどこまでいっても年金の受益者である方々のためのことだけを考えるフィデューシャリー・レスポンシビリティーを持ったボードが必要なのかなと思います。

また、費用面でのくびきでございますが、公開された資料を見ますと、14億円ぐらいかかっているような感じだと思いますけれども、これを仮に今後150兆を運用する組織の予算であると考えますと、この0.001%に満たない金額だと思うんです。例えば、これを1ベーシスポイント:―0.01%にすると、これは150億であって、今は恐らくそれぐらいのお金を使わないとプロとしての組織を担保することもできないであろうし、それからそれに必要な技術的なインフラもできないのではないかと思っています。心配しているのは、今、独立行政法人であるということを理由に、この14億円を3%減らすとか何%減らすという議論になっていますが、これはまさに本末転倒ではないのか。費用の全体が0.001%というのは、国民のための年金の重要性と比較すれば、これはもう誤差の範囲と言ってよい金額です。この誤差を幾ら縮めても、いいことはないのではないかと思います。

それから、一般的に今もう一つこの場の議論で気になっておりますのは、どうしても金融の話ばかりになりますので、国家戦略というものの視点をビジョンの中に強調すべきであろうかと思います。些細なことでいきますと、外国の金融のプロ、法律のプロ、会計のプロがワークパーミットを非常にとりやすいといったことも必要でしょうし、また滞在についてストレスが少ないようないろいろな手当ても必要でしょうし、その中にはひょっとしたら外国人子弟の学校も入るかもしれない云々とありますので、ホスト国としての体制というものを少し自由な発想で考える必要もあるのではないかと思います。

それから、先ほど平野委員からクレジット商品について非常に示唆にあふれるご指摘があったわけですが、本質的に、なぜ日本においてクレジット商品の発展がいまいちかということにつきましては、一つは買い手であるリスクテイカーの機関投資家の育成がまだであるということですが、もう一つは供給の方もまだであるという現象がございまして、なぜ供給がないかということは、ものすごく端的に申し上げまして、ローンのマーク・トゥ・マーケットができていないからであるということの一言に尽きると思います。これは、マーク・トゥ・マーケットができていれば、そのローン資産を売却しようが、どこから買ってこようが、中立になるということだと思いますので、これは今後の少し重たいテーマになると思いますが、議論してもいいのではないかと思います。

全体的には、貯蓄から投資への流れをとめてはいけないし、逆流させてはいけないということもあると思います。日本という国はどうしても間接金融が強い国であって、この間の金融危機の克服によって銀行が強くなったというところで、これは明らかにいいことなんですけれどもミックス・ブレッシングであって、今後、昔と同じように銀行へのリスク集中が起きても困るし、それから昔と同じように公器としての決済機関の経営健全性について心配が出る事態になっても困るということで、業際の議論は余りする気はないんですけれども、そもそもなぜ銀証分離がアメリカでできたかというところの一つの理由はそこにあったので、いろいろな議論を進める上においては、そこの安全性の担保というのはかなり大事であろうかと思います。

あともう一つは、日本において外資系の金融機関が、いろいろな業際をめぐるレギュレーションによって苦労が多いということは事実だと思います。特にこの苦労というのは、大きい会社はまた別だと思うんですけれども、小さい会社がいろいろな商品を扱うときに、仕事を行うときのいろいろな管理やリスクに余計なコストがかかってしまうということはあると思いますので、ここに関するいろいろなご意見というのは正当なものであろうかと思います。ただ、これを市場全体の議論にするときに、「金融による産業支配」というものがあってはいけないし、また「支配力を行使」するような形での弊害が起きてはいけないのだろうと思います。これは皆さんご異論はないと思うのですが、仮にそういった安全面の議論をするときに、例えば検査マニュアルも変わるのだろうと思います。帳簿を見れば「支配力の行使の有無」がわかるということはないわけでして、いつ誰がどことあった、どういう電話をしたといった少しソフト的な嫌らしい面も見ないと検査が不可能になるということだと思います。先般大森さんの方からお話があったと思いますけれども、「明示的な被害がない」のでということがあったと思うんですが、明示的な被害は絶対に表面には出てきません。「どこそこの誰からこういう圧力を受けたから私はこう決めました、恐れ多くも」ということを言ってくる人は、まず第一に力のある人にけんかを売っていることになるし、第二に株主に対して自分がベストのフィデューシャリー・レスポンシビリティーを果たしたとは対面上言えないということになると思います。社会にとっての安全弁というのは重要なポイントではないかと思います。

○池尾座長

ありがとうございました。

では、木南メンバー。

○木南メンバー

きょうの資料の4ページにはルールの適用という項目が挙がっておりまして、先ほど三井市場課長の話の中ではエンフォースメントという言葉であらわされていましたけれども、エンフォースメントをやると争いが出る。争いが出るときには最後には裁判所に行くという形にならざるを得ないことが多いのはよくないんですけれども、そういうことはどうしてもある。その場合には、当事者は多分課徴金の場合だと金融庁が一方にいるだろうと思うんですけれども、それ以外に市場参加者同士の争いというのもある。裁判というのは国が独占して提供しているサービスなんですが、それを使いやすく、わかりやすくするという努力がどうしても必要になってくるのではないかと思います。裁判所の提供するサービスがわかりにくければ、日本で産業振興策をやろうとしても外国から来る気が最後はしないかもしれないし、そういう観点からは、司法制度改革というのはもう終わったかのように語られていますけれども、改革はいつも続いているわけですから、司法制度改革に準じて、こういうルールの適用から生じた紛争について適切に判断できるような裁判サービスを充実するということが、どうしても取り組む課題になるのではないかと思います。

もう一つは、その下に書いてある司法プロセスで投資家保護の観点というのと、それからもう一つは受託者責任という話が出てきておりますけれども、この場合の受託者責任を追及したいような受益者というのは、多数分散して、1人1人では文句を言いに行くインセンティブが低い。こういう人はどこに文句を言いに行けばいいのか。一つは、金融庁に行って苦情を言うというのがあって、金融庁が代わりに事後的に制裁をかけるという仕組みというのはいいのですけれども、金融庁に言いに行ったところで、損害が生じたとか、損失が生じたという場合には、金融庁がどこまでお世話されるかというとこれはわからないので、最後は裁判所に行かざるを得ないこともある。ところが、さっき言いましたように、1人や2人集まっても弁護士費用が出ないといったことがある。こういうことに対しても、多数の投資家に被害が及んだ場合に、多数の投資家の利害をまとめるサービスが提供されればいいのですけれども、そういうときにはまたプリンシパル・エージェント問題というのがあって、代理した人がその利害を追及するということがあって、集団訴訟制度というのはいい面と悪い面の両方があるんですけれども、そういうことも考慮しながら実効的に被害者が救済される制度というのを考えておかないと、間接型市場金融が増えていって、受託責任ということを言っていても、それを結局は事前に政府機関が監督しなければならないという事態になると思うので、そのあたりも今後十分に考えていく必要があるのではないかと考えます。

○池尾座長

どうぞ。

○岩原第二部会長

先ほどの平野メンバーのコメントに対する柴田メンバーのご意見について、ちょっと私の方からも感じたことを申し上げさせていただきたいと思います。

非常に大きい問題についていろいろご意見があり、それぞれ非常に有益なご意見だと思うんですけれども、ある意味では細かい問題でありますが、現実に日本で活動している海外の金融機関等から一番よく出てくる苦情というのは、さっき柴田メンバーも触れられましたように、日本における管理コストの問題だと思うんです。日本の場合、銀行・証券等の分離があり、かつ、それもあるんですけれども、それぞれの分けて入ってきているところが、銀行は銀行ごとの単体で、そして証券会社は証券会社ごとの単体でそれぞれガバナンス、それからコンプライアンスのシステムを独自に持っていなければいけない。そういう規制が加えられているんです。その問題が明確に出たのがステート・ストリートの事件だったと思いますけれども、一方で海外の金融機関は、ユニバーサルバンキングのところは当然、アメリカでも銀行と証券を分離していても実際には内部のガバナンスはむしろ縦割りというか、リスク管理部門であれば、同じグループの中の銀行・証券その他をいわば統一してコントロールしている。ところが、日本の場合は、違う法人ごとにそれぞれのコントロールの仕組みを要求していて、それがまさに検査等を通じてチェックされる。そのために日本に進出している海外の金融グループには管理コストが高いという問題がある。それは裏返せば日本の金融グループについても同じ問題があり得るということで、それが非常に問題になっている。ステート・ストリートの場合は確かに管理そのものがかなりずさんだったところもあって処分されたと思うんですけれども、ただ、そこで提起された問題は、そのような単体ごとの管理コストというか管理の仕組みを海外から来ている金融グループに求めていくことがどこまで合理的かということがあると思います。リスクをコントロールする必要があるのは当然です。しかし、それはむしろグループとしてのリスクがきちんとコントロールされていればそれでいいはずであって、単体ごとのリスクコントロールの仕組みをそれぞれワンセットでつくることを要求する必要が本当にあるのかという問題はあると思います。日本の金融コングロマリット監督指針等もその点は考慮していない。平成10年の銀行法改正で金融機関に対するリスク管理の基本的な方針を変更して、グループとしてのリスク管理がきちんとできているかどうかという観点から、大口信用供与規制あるいはその他の財務の健全性規制は中身的にはグループ単位でやるようにということになったんです。ところが、ガバナンス、それから内部のリスクのコントロールシステムについては単体ごとのも要求している。そのために海外から進出している金融グループには非常にコストが高くなっているという問題があるし、日本の金融グループについてもそういったコストを負担してまた海外にも出ていかなければならないということで、プレイヤーとしての日本の金融グループの効率性を考えた場合に、分離の問題もありますけれども、そもそもガバナンスのシステムとして、本当に単体ごとにやっていく必要があるのか、またそれに対する監督もそういうものとしてやっていくのがいいのかという問題があると思っていまして、そういう点は見直す必要がある。そういう具体的に日本に進出してきている海外の金融グループなどが直面している問題、本当にそういう具体的な問題からこういった国際化の問題も考えていくべきではないかと考えております。そしてまた、そういう点で見ると、現在の法規制は、そういう進出してきている海外の金融機関等、あるいは逆に日本から進出していく日本の金融機関が働きやすいように、あるいは海外からの金融からの日本の居住民に対するアクセスについてきちんと国内の居住民を保護するような法規制になっているのかというと、相当問題があると私は思っていまして、外国銀行支店に関する銀行法47条以下の規定などもかなりどうかなと思うところがあるように思っていますし、預金保険法、外国証券会社に対する規制その他、まさにそういうところから見直していく必要があるのかなと思っています。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、江原メンバー、どうぞ。

○江原メンバー

先ほど来、ビジョンをもうちょっと打ち出すべきだというご意見がかなり増えつつあるかと思うんですが、そのもう一つの重要なポイントは、確かにここでいろいろ議論された資本市場のあり方というのは5年、10年というタイムホライズンがあるんですけれども、もう少しきちんとした時間軸というものを持ったビジョンが必要ではないかなと私は思います。何年後にはこういう政策を打ち出すのだといった目標というんですか、これがしっかりしていないと、いつまでも議論ばかりしていて何も実現できないままに終わってしまうという、今まで日本が何度も繰り返してきたミスを繰り返してしまうのではないかなと思います。間違いなく他市場との競争というのは日夜進んでいるわけなので、時間軸というのですか、仮に2年後に政策を打ち出すというのであれば、その2年後の途中経過においてもきちんとしたマイルストーンを置きまして、進捗状況というものがちゃんとチェックできるようなものを打ち出すべきであると思います。それが第1点。

第2点は、このユニバーサルバンキング等々の話なんですが、私は少し違った観点を持っています。元証券業界にいた人間としてはこのユニバーサルバンキングには若干抵抗感が確かにあるのですが、とはいえども、アメリカにおいてもグラス・スティーガル法というのはもう死語に近いものになってきていると思いますし、大きな流れという意味では、日本もそちらの方向に行くべきではないかなと私は思います。

一方で、今回この金融商品取引法にも打ち出されていますが、許可制ないしは免許制という概念から届出制及び登録制というものは、私はすごく大きな良い影響が今後出てくるのではないかなと思っています。それは何かと申しますと、俗に言うブティックファームという存在が日本では余りなかったということが言えると思うんです。一方でウォールストリート近辺を見てみますと、確かに大きなインベストメントバンクとかコマーシャルバンクとかいろいろありますが、日本と大きく違うのはこのブティックファームの存在なんです。その代表的なグループがヘッジファンドでありプライベートエクイティファンドだと思います。統計はありませんので、どういう勢力図なのかというのはわかりませんが、仮にざっくり言うのであれば、大手金融機関というのが7割ぐらいの役割を占めているのであれば、アメリカにおいてはその3割ぐらいはブティックファームといったものが活躍していると。ではこれは我が国においてはどうなんだろうということになると、これは99%対1%ないしは1%以下の存在感かもしれません。でも、この届出制といったものがブティックファームというものの存在をかなり可能にすると思います。

では、そんなに小さな金融機関で一体何ができるんだといったことをよく言われるんですが、過去において護送船団方式といったものに頼ってきた国としては、確かに大手金融機関の存在というのはそれなりに意味があったのだろうと思います。一方でそれの弊害として、先ほどからも何名かの方が指摘なされていましたけれども、リスクマネーの提供者及びその参加者の多様化というものが非常に限定的であったということだと思うんです。ではその大手金融機関のみが圧倒的に強い立場、優位性を持っているのかということを考えると、逆に小さい方がそれなりにスペシャライズされた強みというものを持っている、ないしはコンフリクトがない。仕組み上、非常に簡単にできているとか、または発注するお客さんとそれを受ける金融ブティック会社間の取り決めというのが非常にわかりやすいとかといういろいろなメリットというのがあるんだと思います。ということで、ブティック系の金融会社の今後の活躍というものは、このサービスの厚みとか、リスクマネーの多様化とか、参加者の多様化という観点においては、私は不可欠だと思いますし、そういう意味では金融商品取引法というのはそれを促してくれるいい第一ステップではないかなと思っております。

○池尾座長

では、翁メンバー、どうぞ。

○翁メンバー

今まで議論があったユニバーサルバンキングに関連する話なんですが、今、日本だけでないですけれども、企業もグローバルに資金調達をして資金運用をする。それをどのように考えていくかということについては、もうエクイティに関してもデットに関してもシームレスになってきていて、それは専門的な、今、江原委員がおっしゃったような観点からのアドバイスを必要とする企業もあれば、総合的な金融ソリューションを求めるところもあると思います。実際にもう今本当にアメリカなどでは、グラム・リーチ・ブライリー法で金融持株会社ができて、そういう状況はかなり変わってきておりますし、我が国においても、いわば本当に例えばリスク管理が優れているとか、統合的なリスク管理が可能であるとか、内部統治の仕組みがきちんとしているとか、そういったある一定のインセンティブを持たせるような形で、そういった企業に対してはより自由度を広めていくといったアプローチでこういった問題に対応していってはどうかなと思っています。それで、この考え方、インセンティブに対してコンパティビリティーを持たせる規制の体系というのは、こういった問題だけでなくて、例えば検査の頻度とか、それはどんな業種にも関連する話だと思いますし、例えばセーフティーネットの負担の話、預金保険料とか、そういった考え方にも応用できる考え方だと思うんですが、そういったよりきちんとした内部統制・リスク管理ができるといった企業に関してより自由度を認めるような形での規制のあり方というのも、これはグラム・リーチ・ブライリー法もそういうフィロソフィーで金融持株会社を認めていると思っているのですが、そういう考え方も一つの検討の方向ではないかなと思っています。

○池尾座長

では、順番に、矢野メンバーからお願いします。

○矢野メンバー

検討項目については、非常に幅広くまとめられておりますし、特に異論はないのですけれども、1~2ページのあたりとか、それから全体的に見て印象としまして、非常に俗っぽい言い方をしますと、これは金融機関が商売しやすいようにいろいろ書いていらっしゃるのかなという感じがするんです。これは、金融機関の方がほとんどですから、それとテーマからしてそういうことになるというのはわかるわけですけれども、もう少し国民的な視点といいますか、そういったものをつけ加えていただけるとありがたいなと思うんです。例えば、今、少子高齢化が進む中で将来に対する不安というのをものすごく皆さん持っているわけです。選挙の争点などでも社会保障とか年金問題がいつもトップに来るわけです。そういう将来不安に対して、それは経済的な不安というのが一番大きいわけですから、そういった問題にどうこれからこたえていくのかといった視点が必要ではないかというのが一つです。

それからもう一つは、金融・資本市場の問題は非常に多岐にわたるわけですが、金融庁で担当されている分野というのは全体から見ると一部ということになるわけでして、提言ではどうやって実行させていくのかというのが非常に大きな難問でして、単にこういうことを書いて出すだけでは、結局作文に終わってしまって、実行が伴わないということになりかねないわけですから、そこをどうするかということを大いに議論する必要があるのではないか。あるいは、そういうことはもう無理なので、こういったペーパーをまとめて、それぞれの役所にお願いするとか、そういうことでやるということであれば、それも最終的にはしようがないのかなと思いますけれども、提言を実行に移すためにはどうするのかということは非常に大きな課題だなという気がいたします。

○池尾座長

ちょっと政務官からご発言があるそうなので。

○田村政務官

すみません、ちょっと出てしまうもので。

まず、ユニバーサルバンクのファイアーウォールの話なんですけれども、もちろんリスク遮断、利益相反、優越的地位の乱用、この3つを防ぐ形でやることは確かに大事だと思います。ただ、管理コストのことは、僕はちょっと外資系が強調し過ぎではないかなと思うんです。というのは、外資系というか、ヨーロッパでも多分リスクプロファイルに応じてそのエンティティごとに管理しているはずなんです。もちろんさっきの3つの視点から考えていくことは確かですけれども、管理の仕方に関しては正確な議論が要るという感じがします。

もう一つ、柴田さんと平野さんから提案があった、クレジット市場、マーク・トゥ・マークのマーケットがなぜできないかという話なのですけれども、これは議論を続けていればできるのでしょうか。どうやったらできるのかという話なのですけれども、何か政府がやることはありますか。例えば、ROAによってしっかり検査・監督でやっていきますか。それとも厳格な時価評価をして、厳し目にやりますか。そうしたら始まるのでしょうか。やっぱり民間の努力が足りないのじゃないかなという気がするのですけれども、議論するのもいいんですけれども、どこから始めるのがいいですかね。

質問と意見でした。どうも。

○池尾座長

それでは、淵田メンバー。

○淵田メンバー

クレジットの話は、金融機関自身が収益力を重視した経営をするというのがまず基本だと思いますが、それがだめなら3つあって、1つは、まずはオーバーディポジットを正すために、ここに書かれているような個人の投資優遇税制を導入する。2番目は、銀行・金融機関の株主がもっと金融機関に儲けろとプレッシャーをかける。3番目は、やはり規制監督で、もっとリスクに見合った金利を取りなさいとプレッシャーをかける。この3つだと思います。それから5ページの銀・証の話ですが、ここは確かに、銀行・証券に係る規制のところを問題にしたいのか、それともファイアーウォール規制の方を問題にしたいのかがちょっと不明確で、銀・証というと、ユニバーサルバンクを目指すのか、それとも業態別子会社方式でいいかという論点になると思いますし、ファイアーウォール規制となると、ファイアーウォールというのは別に銀・証だけの話ではありませんから、金融グループに対する規制監督のあり方の問題というテーマになると思います。どっちのテーマになるか。

ユニバーサルバンクを目指すのかどうかということについての私の考えは、そもそも世界がユニバーサルバンクに向かっているというのは単純な間違いでありまして、GLB法はご承知のように業態別子会社方式を選択し、かつもっと言えば銀・証の分離をより明確化した枠組です。つまり、証券業は銀行でやるのではなくて証券会社でやりなさいと、ただしそれはグループ会社でもいいですよという枠組みであって、これは銀・証分離の明確化なんです。ユニバーサルバンクでは全然なくて、この辺はメディアなども全然理解していない書き方をしているので、これはそういう誤解に基づいた議論をしていくのはちょっと問題だと思います。

またこれは国際化の議論ですから、ユニバーサルバンク制の国の方が国際的な金融市場になっているのかというと、アメリカはGLB法のもとでも業態別子会社方式ですから、別にユニバーサルバンクだと国際化するということではないということだと思います。

では金融グループという形で業態別子会社方式での相互参入というアメリカと同じような今の枠組みでやる場合に、アメリカに比べて日本の金融グループに対する規制監督のあり方というのは何か問題があるのかどうかということを議論すべきとすれば、それは論点として成り立つと思います。ファイアーウォールを比較する表がありましたけれども、確かに日本の方が厳しいところもあるということでしょうし、また江原先生からのご指摘もありましたように、ガバナンスといった観点の規制監督というのはグループという観点でやっていった方がより適切であろうといったことは、大いに議論すべき内容ではないかと思います。

ただ、一方でアメリカと比べて日本の方がむしろ緩いという部分もありますので、その辺はアメリカが日本よりも規制緩和だからそちらに合わせるとか、そういうレベルの話ではなくて、その辺は正確に比較して、どういう枠組みがいいのかというのを議論すべきだと思います。ただ、これは国際化の議論なのかどうかというのは私にはよくわからなくて、金融機関にとって規制が緩い方が便利というのはわかるのですけれども、先ほど矢野さんからもご指摘のように、ユーザーの立場からはどうなのかというのも常に忘れないようにしておかなくてはいけないわけであります。例えば企業財務協会というのが2~3年前にアンケートをとった場合に、金融コングロマリットは別に結構ではないかという意見が多かったのですけれども、グループ企業内における情報の共有はやめてほしいという意見の方がはるかに多かったわけです。企業財務協会というのは大企業がメンバーでありまして、中小企業まで含めて考えると、もうちょっと抵抗感が強いのかなという印象を私は持っています。

いずれにしても、そういうユーザーの立場も踏まえると、本当に国際化のためにその議論をどこまで深めることが有意義なのかという疑問が生じます。優先課題に順番をつけると、この論点整理全体の中にあるベターレギュレーション、それから自主規制の強化、それから税制のあり方、あるいは年金、機関投資家、その辺のところが恐らく優先順位としては非常に高いと思います。いろいろな論点を盛り込もうとすれば総花的になってしまいますし、限られた時間の中で意義のある結論を出すためにも、少しプライオリティーづけをした議論をしていくことが大事ではないかと思っております。

○池尾座長

では、藤原メンバー。

○藤原メンバー

今までの委員の方たちの発言に少し付け加えたいと思います。日本の金融は今までアメリカ方だけを向いてきましたが、私はこれが必ずしも良かったことだとは思いません。日本はよく「日本の個人はリスクをとらない。リスクフリー商品だけ買っている」と米系のバンカーに批判されたりします。これはアメリカを向いているから批判されるのであり、フランスの個人を比較すると話は全く違ってきます。というのは、私は以前フランスの金融機関で働いていて、フランスの個人投資家が日本の投資家のようにリスクを取らない人たちなのだということを知りました。だから、日本のようにフランスでは元本保証型金融商品がすごく売れます。

2点目ですが、ブティックファームについて付け加えたいと思います。アメリカでは3割がブティックファームで、日本ではほとんどないという話ですが、ブティックファームを増やすには大手金融機関のブティックサポート業務が同時進行で開発させていく必要があると思います。私はフランスのケースしか説明できませんが、投資銀行や投資顧問会社で仕事を10年ぐらいして独立し、ブティクファームを作る人たちが多いですが、彼らには競争に生き残るための弱点が2つあります。1つはセトルメントやITに対する投資が非常に困難なこと。2つめは信用がないので、投資先を開発することが難しいことです。それゆえ、フランスの大手銀行はブティックファームのサポート業務を提供しています。彼らが何を提供するかというと、それはセトルメントやリスク管理をブティックに変わってしてあげることと小さなブティックファームに対して年金などから変わりにお金を取ってきてあげることです。私が仕事をしていた銀行には100ぐらいのヘッジファンドがこういうサポート業務を頼んでいて、お互いにウィンウィンの関係を作り上げていってました。こういう大手銀行のサポートもあるからブティックも数が増えてきたわけです。今、日本の金融市場を国際化し、ブティックファームを例え増やそうとしても、私は日本の大手銀行がこういうサポート業務を立ち上げのブティックファームに提供するかどうかは疑問です。

3点目ですが、英国は金融の自由化により、ウィンブルドン現象が起こっても経済繁栄のためにはしかたがないと受け入れたと言われてますが、私は事実とはちょっと違っているような気がします。この点について少し触れてみたいと思います。私は金融の自由化が実施されていた86年に英国のシティで仕事をしてました。私は、英国人はウィンブルドン現象がおこるとは当時思っていなかったと思います。だから、クラインオート・ベンソンやウォーバーグといった老舗英国マーチャントバンクが買われて行き、日本の財務省の偉い人が国際会議でこの減少を「これはウィンブルドンと同じではないか」(私は彼がウィンブルトン現象の名付け親だと思ってます)、と聞いたとき座が白け、みんな静かになったのだと思います。英国人は英国の繁栄を喜んでましたし、外資が増えることは歓迎してました。しかし、こういう状況をウィンブルドン現象と呼ぶことに関しては皆さん当時は嫌がってたものです。英国人が自らウィンブルドン現象と使うようになったのは90年を過ぎてからだと思います。私見ですが、私は日本の金融の国際化により日本がウィンブルドン化するのはできれば避けたいと思ってます。

○池尾座長

それでは、平野メンバー、お願いします。

○平野メンバー

先ほどからご指摘のありますユニバーサルバンキングなのかどうかという点についてでございますけれども、実は私も先ほど発言した際には「ユニバーサルバンク」という言葉は使っておりませんで、「コングロマリット」という言葉を使っております。これは、ヨーロッパ型のユニバーサルバンクがいいのか、それともアメリカ型がいいのか、ここはもう余り議論をしても尽きないところだと考えておりまして、要は、今回このスタディグループでテーマとなっているような日本の金融市場をいかに活性化し、参加者にとって利便性の高い市場にするか。それが国際的な競争力を持つかという観点からすれば、現状の形というのは金融機関自身にとってそんなに不具合の大きなものではないと考えております。バンクそれから証券会社あるいはノンバンクというのがそれぞれの業務特性を持ち、当然リスク管理あるいは経営管理あるいは戦略においても異なった形をとる以上は、リーガル・エンティティが分かれていて具合が悪いということではないんだろうと考えております。

ただ、一方で金融サービスのワンストップショッピング化、これはお客様の視点ということが重要だと思いますけれども、その観点からすると、そういった異なる商品、異なる機能をいかに組み合わせて、あるいはスペシャライズドされたようなご提案あるいは総合的なご提案をしていくかということになると、異なるエンティティ間でいかに協働しながらお客様に対してビジネスを提供できるか、ここが問題になってくる。それに必要な規制、あるいは法制の枠組みの修正というのでしょうか、改善が必要だろうと申し上げているということでございます。

それから次の点ですが、もう一つ、バンクの持つ日本における強みということを申し上げますと、これは個人のお客様に対するアクセシビリティーというのでしょうか、お客様から見た場合は、手軽に相談ができる、手軽に足が運べるという意味での強みというのがあるだろうと思っております。私どもですと4,000万というお客様の口座を持っているわけでございますが、実際その口座を持っておられるお客様に対して、過去の金融ビッグバン以来の本格的な規制緩和を活用する形で、投信あるいは年金保険の窓口販売、それから証券仲介業務ということをやってきているわけですけれども、投信の分野では銀行の窓口を通じて販売される投信が5割を超えたという事実がありますし、それから仲介の世界では、これは弊社ですけれども、1兆円を超えたということで、お客様からご覧になった場合の利便性というのは高い。1,500兆という個人資産の活用ということをテーマにするのであれば、そのあたりは重視する必要があるのだろうと思います。

それと、これは今、藤原メンバーからもお話があったのですが、私も個人のお客様は必ずしもリスクフリーの商品だけを選好されるということではないと思っておりまして、いろいろ組み合わせを考えておられます。例えば、窓口販売でいいますと、投信は株なんです。ところが、年金保険については元本保証に対するご要請が極めて高いということで、これは主力になっているのは外資系の保険会社の意見でございますけれども、彼らも驚くような特性を確かに持っているわけでございます。したがって、長くなってくるとやっぱり元本保証と将来の保証が重要になり、先ほども少子高齢化に対する社会的な課題にどう応えるかというのがテーマだというご指摘があって、私もそうだと思いますけれども、そういう意味では個人のお客様というのはよく考えておられる。それからもうちょっと言いますと、仲介業務は生の商品を売っているわけですけれども、そこで言うと国債が今やはり多いんです。ということで、証券会社のネットワークとは異なるニーズ、異なる属性のお客様をいかに活用していくかというのは非常に重要だろうという中での規制とか法制、そういった議論をしていただくのが一番大事なのではないかなと思っております。

先ほど政務官からもご指摘のあったさまざまな弊害に対する防止措置、情報の遮断の問題とか、優越的地位の濫用の問題とか、利益相反、この辺はきちんとやっていく必要があるのは当然でございますけれども、全体としては、そういった枠組みの中で議論を進めるのが適当ではないかと考えております。

以上です。

○池尾座長

どうも。

田中メンバー。

○田中メンバー

国際社会に対して日本が金融の分野でどのように貢献していくのか、あるいは日本にいろいろな取引を引っ張り寄せるかというときに、今欠けているものが何かあるだろうなというのはあります。他方、日本の非金融業の人たちに対して、日本において金融業がなぜ重要なのかというのを伝えるにも、まだちょっと一つ欠けたものがあるなと思っています。それは実は同じことではないか、同じことを取り上げることによってつなげられるのではないかと常々思っておりますので、ちょっとその点について述べてみたいと思います。

日本の金融市場についてですが、規模とか、流動性とか、あるいは我がFSAのレギュレーションとか、非常に高い評価があるのは当然でありますし、それから、いろいろ私が聞いている限りでいうと、日本の司法システムは、裁判所で出る判決も含めて、非常にリーズナブルだと、この東アジアにおいても取ってかわるものはないという意見の方が圧倒的に強いと私は思います。その中で、それでも少し問題があるのかなという議論は金融の本質にかかわる話でして、日本において金融資産をつくり上げてくるものの背景にある、何をどこで改善するのかということで、売り買いをしていれば常にさやが抜けるというわけでもないわけで、実体経済、非金融部門における効率化、付加価値を高めるというところに、金融がどのような形でお手伝いできるかの結果として、リスクが相対的に抑制され、利回りも相対的に高いという金融商品につながる分野がある。そこへのつながりが弱いのではないかという意見は強いと思います。

また、日本で非金融業から見ると、製造業は大変付加価値が高い。そうでなければ国際競争に生き残れないという経緯があったわけですが、国内のサービス業については残念ながら国際的に見ても生産性はそれほど高くないといういろいろなデータがあります。物流、倉庫、流通、旅行業、興行――エンターテインメント、それから教育サービスとか医療サービス、こういう分野においては国際的に見て決して生産性は高くないんです。この問題を解析すると、もし金融業あるいは投資という分野にガバナンスと評価、会計的な報告、人的資源、コンプライアンスにかかわるもの、こういうものが金融サービスの投入を通じて入ってくれば、働いている人たちにもう少し明瞭な目標が立つといいますか、働くことが何につながるのか、要するに結果として高い付加価値につなげるということなんですが、これが可能になるのです。この分野だけとは言いませんけれども、国際的に見て明らかにどうも劣位しているという分野に知恵の部分が欠けていることは、あるいはガバナンスにかかる何か切り分けが悪いことは間違いないわけですから、この分野を取り上げて、この分野で結果として金融資産を持つという、あるいはそこに投資家の目線で物事を整除していくということが重要です。もしそういう広い意味での金融資産が我が国に――これは非常に多角化されたものになりますから、いろいろな投資家にとってそれぞれに魅力的なものが映ると思うんですが、そういうものをつくり上げていくんだと。要するに、そのこと自体が日本の少子高齢化における高付加価値、高い生産性、結果として年金世代の年金拠出を通じて高い期待収益率が得られる。その全体のイメージがつながらないと、何かしょせん国際金融業というのは2キロ四方だと昔議論していた覚えがありますけれども、もうちょっと広がったかもしれませんが、そんなに10キロ四方になるようなアクティビティーではないはずでして、そこだけ議論していたのでは、それは国民的視点からいって、10キロ四方以内の話をしている人たちだなと思われる可能性が非常に強いわけです。金融業は、非金融事業分野に何をもたらすことができるのかというので腕を競うという、今言っていることは別に当たり前の話だと思いますけれども、それが何か視点として要る。そのこと自体が国際社会に対して、日本はついに、従来だったら規制、あるいは保護、あるいは談合かもしれませんが、そういう形で起きていなかったところに新しいものをつぎ込んでくる。商品の組成は国内で行われるけれども、それを購買する投資家は世界に開かれたものだというのが要るのではないかと私は思います。でないと、金融機関が頑張れば頑張るほど、リスクの高いものあるいは利回りが低いものというところに集中して入って、結果としてファイナンシャル・インスティチューションの財政基盤が棄損することもあり得るということでこの話が終わってはならないのではないかと思っています。

○クオメンバー

今後国際化の議論が進む中で、2つだけ注意するべきポイントがあることをちょっとコメントさせていただきます。

1つは、国際化の定義です。日本の銀行と証券会社、金融機関の国際的競争力の向上というのはとても重要であり、国益になるとは思います。ただし、場合によっては、項目によっては相反するものになって、市場の国際化と日本の金融機関の国際競争力の向上は、いろいろな議論を進めていく中で、市場を国際化することによって結果的に日本の金融機関の国際的競争力が向上するということが重要であり、この辺を注意していくべきであると思うのが1つ。

2つ目は、自主規制機関の機能の強化という話が幾つか出ましたけれども、自主規制機関の一つのデメリット、これも対応するべきだと思います。すなわち1社1票といった、日本のみならず海外でもそうなんですけれども、例えばいろいろな金融機関があって、ネット証券、地場証券、銀行系証券、メガ証券といろいろあるわけですけれども、いろいろ利害関係があるという中で、1社1票という国連的な形ではなく、シェアが大きいところにはもっと発言力があるというIMF的な形にしないと、いい改革は望めないと考えます。

最後に、自主規制機関に関しては幾つかあるので、その統合というのも一つの大きなテーマになるのかなと考えます。

○池尾座長

どうぞ。

○藤巻メンバー

先ほど田中メンバーからのお話にもありましたし、それとあと矢野メンバーの方からも国民的な視点からもうちょっと書かないと国民にサポートされないのではないかというご発言がありました。矢野メンバーのほうから、今多くの国民の不安材料は社会保障とか年金が大丈夫かということだというご指摘がありましたけれども、確かにそうだと思います。年金問題を解消するためには、一つには子供を増やす、もしくは運用の利益を上げるという二者しかないわけです。その点から、金融マーケットが発展し年金の運用益改善にも役立つということを主な論点に書き加えると、多少なりとも国民に少しアピールするかなと思いました。

それともう一つ、先ほど来、平野メンバーと柴田メンバーの方から、クレジットリスク等について発言があって、政務官からもご発言がありました。そのなかに時価会計の市場ができていないという論点があったと思うのですけれども、これはクレジットリスクのマーケットだけではなくて、非常に重要なポイントだと思うんです。私はリスクをとることが重要である、そうしないと企業としても、市場としても、それから個人としても生き延びられないと思っているということを何度か発言しておりますけれども、そのときにリスクをとるためにはリスクコントロールシステムが重要であるという話もしてきました。リスクコントロールシステムの一つの大きい点は会計なんだと私は思っています。要するに、時価会計ができていない以上、だれもリスクなどをコントロールできないわけなのです。時価会計というのは、市場が大きくなるための非常に大きい重要なポイントなのかなといつも感じております。

私は2000年に米銀をやめましたが、その時点では、私の感覚としては、会計に関しては米銀は邦銀よりも7~8年進んでいるのではないかと思っていました。米銀が1970年の後半の金融システム不安を乗り越えて非常に強くなった理由の2つのうちの1つは、会計システムだと私は実感しております。実際のところ、昔は米銀も簿価会計が盛んだったんです。それで、SECの方から時価会計にしろという指摘を随分受けて、それに対する反論を、正直言って外銀の反論の原稿は私が下手くそな英語で書いていて、というのは私が一番典型的な簿価会計論者だったわけなんですけれども、最終的には全部SECに押し込まれて、結局典型的な時価会計に変わりました。そのマーク・トゥ・マーケット私は最初これに大反対していたわけですけれども、後にはこれが外資の強みだと感じるようになりました。時価会計があるがゆえにリスクコントロールシステムができて、それがゆえにリスクをとれるようになったからだと思うのです。そういう意味で言うと、マーケットの厚みを増すという意味で、リスクマネーというのは非常に重要であるし、それをコントロールするための会計システムというのは非常に重要なのです。そういう面で言うと、会計基準の問題というのも一つの大きい論点になるのかなと考えます。

最後に、これは蛇足ですけれども、日本では、今は個人はリスクをとらない。これは何回か前にお話したと思いますけれども、個人が未来永劫リスクをとらないとは私は考えていません。資産デフレであり、デフレが続いたおかげで現状リスクをとっていないのであって、日本人が今後リスクをとる可能性はあるとおもうのです。なにせバブルのときとり過ぎるぐらい取っていたのですから。どちらかというとサラリーマン・ディーラーのほうがいつまでもリスクを取らないんではないかと思います。そういうリスクをとる素地はあるがゆえに、今、きちんとリスクをとる仕組み、そしてそれ以上に、それをモニターする仕組み、コントロールする仕組みをきちんとつくっておくことが、日本の市場が国際化するために必要かなと思います。

○池尾座長

もう時間が来てしまいましたので、本日の議論はこれぐらいにさせていただきたいのですが、ちょっと一言だけ申し上げます。

矢野委員からご指摘があって、田中委員から示された視点に関しましては、もちろん不十分だとは思いますが、1ページの3つ目の○の最後のところで、「金融・資本市場関係者にとどまらない国民的に優先度の高い課題である」ということで、その説明を次の3つの○で書いているつもりで、その下のところで、市場を通じたガバナンス機能の適切な発揮によって国民経済はよくなるんだというふうに一応書かせていただいているということです。それから、実現体制の問題ですが、ここで毎回やっています議論の内容については事務局を通じて山本大臣には報告されているはずで、それと、日本政府部内でこの問題について検討している場はここだけではなくて、ご案内のように経済財政諮問会議の下のワーキングでも議論をしておりまして、それは直接諮問会議で取り上げられることになると思いますので、そこで日本政府としてどういう取組みをするかということの意思決定がなされていくという形になるかと思っております。

それで、前回も申し上げましたように、この会議はスタディグループという形をとって、特に期限を設けて最終的な答申をまとめるという趣旨ではないんです。それで、今回のこの「主な論点」についても、今日いろいろ議論をいただきましたが、その議論を踏まえてこれを修文してどうのこうのということではなくて、このペーパーは、今後どういう点についてもっと深掘りして議論していかなければいけないかという論点を抽出するために私と事務局でまとめたものですので、これから、今日いただいたご意見を踏まえて追加的な議論を5月、6月としていきたいと思います。それで、今日の議論を含めて、5月、6月の議論も踏まえた上で、さらにバージョンアップした論点の取りまとめというのを夏休み前ぐらいには行いたいということです。だから、このペーパーはこれっきりという感じの扱いにとりあえずはなります。それで、今後引き続きもう少し議論をして、さらにバージョンアップさせたものを改めてまとめたいということです。

それでは、最後に次回の日程について事務局より説明していただけますでしょうか。

○三井市場課長

現在、連休明け以降、また今までと同じようなペースで、当分5月、6月上・中旬ぐらいまで議論を続けていくということで、事務的に日程をお伺いしています。今日の時点でまた日程は確定的に調整できておりませんので、固まり次第、できるだけ早くご連絡させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○池尾座長

それでは、どうもありがとうございました。

これで会合は終了にいたします。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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