金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第16回)議事録

日時:平成20年10月21日(火)16時02分~17時58分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室

○池尾座長

それでは、到着が遅れられている委員の方もおられるようですが、定刻を過ぎましたので、ただいまから、我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第16回会合を開催いたしたいと思います。皆様におかれましては、本日はご多用のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

いつもどおり、本日の議事は公開とさせていただいている旨を、会議に先立ちましてご報告申し上げておきます。

また、本日は谷本副大臣にお越しいただいておりますので、まず初めに谷本副大臣からご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○谷本副大臣

どうも皆さん、おつかれさまでございます。

内閣府で金融担当の副大臣を務めております谷本龍哉でございます。スタディグループの開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。

もう皆様ご存じのとおりでありますけれども、現在、国際的な金融市場においては、株式市場等の大きな変動に見られるように、緊張が一層高まっております。このことが、世界の実体経済に対しましても悪影響を与えている現状でございます。

我が国の金融システムは欧米と比べれば相対的にはまだ安定をしておりますが、マーケットの動揺が瞬時に世界を駆けめぐる金融の世界においては、常に高い緊張感を持って対応していく必要があると考えております。

さて、我が国金融・資本市場制度をめぐる状況を見ますと、近年、我が国企業のコーポレート・ガバナンスのあり方をめぐり、各方面でさまざまな議論が行われております。その際、市場参加者の方々からは、しばしば、我が国におけるコーポレート・ガバナンスについて、その強化を求める声が聞かれるところでございます。さらに、コーポレート・ガバナンス上の問題が、我が国市場に対する投資を阻害し、我が国企業の市場評価を低下させる要因となっているという指摘もされております。

このことは、金融・資本市場行政の観点からも看過できない問題であるというふうに考えております。我が国上場企業等のコーポレート・ガバナンスについて、何が問題とされているのか。そしてその中で、どのような原則・規範を、どのような形で確立していくことが大事なのか。我が国におけるこれまでの取り組みについて、評価すべき点は評価しつつも、将来に向けてどのような取り組みを進めていくべきか、こういった観点から、幅広いご議論を皆様方からいただきたいというふうに考えております。

当スタディグループにおいては、従来より、広範なテーマについて忌憚のないご議論をいただいてきたと伺っておりますが、今後とも引き続き積極的な皆様方からのご議論をいただけますよう、お願いを申し上げまして、私からのご挨拶にかえさせていただきます。ありがとうございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。それでは、カメラの方は退席していただいて。

それで、本日の会合は、昨年末の開催以降、久しぶりの開催ということになりますので、その間、メンバー等にも異動がありましたし、事務局の方にも異動がございましたので、まずはその点について、池田市場課長からご紹介いただきます。よろしくお願いします。

○池田市場課長

それでは、ご紹介をさせていただきたいと思いますが、本日事務局側が大変空席が目立っておりまして、誠に申し訳なく存じます。新聞報道等でもございますように、金融機能強化等の観点から法案提出等の議論もある状況でございまして、事情をご忖度いただければというふうに考える次第であります。

それでは、早速ご紹介をさせていただきたいと思います。

まず、異動がございましたスタディグループのメンバーの方々をご紹介させていただきたいと思います。

皆様の右側の方から岩原紳作メンバーでございます。

○岩原メンバー

岩原でございます。よろしくお願いいたします。

○池田市場課長

それから、川端雅一メンバーでございます。

○川端メンバー

川端でございます。よろしくお願いいたします。

○池田市場課長

それから、越村好晃メンバーでございます。

○越村メンバー

越村でございます。よろしくお願いします。

○池田市場課長

それから、中ほどになりますが、鹿毛雄二メンバーでございます。

○鹿毛メンバー

鹿毛でございます。よろしくお願いいたします。

○池田市場課長

それから反対側になりますが、皆川卓士メンバーでございます。

○皆川メンバー

皆川でございます。

○池田市場課長

なお、本日残念ながらご欠席となっておりますが、上村達男メンバー、神田秀樹メンバー、八丁地隆メンバーのお三方にも、新たにメンバーに就任をいただいております。

それから、オブザーバーといたしまして、本日、法務省民事局の江原健志参事官にもご出席いただいております。

○江原参事官

江原でございます。どうぞよろしく。

○池田市場課長

それから本日、ご欠席でありますけれども、経済産業省経済産業政策局の新原浩朗産業組織課長にも、オブザーバーとしてご参加いただくということになっております。

引き続きまして、事務局側の異動者をご紹介することになっていますが、座っているのは全員留任者だと思いますので、省略をさせていただきます。申し訳ございません。

○池尾座長

はい、どうもありがとうございました。金融機能の強化は大切な課題ですので。

それでは、本日の議事に早速入らせていただきたいと思いますが、昨年の開催以来久しぶりの開催で、まずは今期、スタディグループをどう進めるかという進め方に関しましてお諮りしたいと思いますが、その点について事務局からまずちょっと説明をしてください。

○池田市場課長

それでは、お手元に資料1、それから資料2ということで配付させていただいております2つの資料に沿いまして、ポイントをご説明させていただきたいと思います。

資料2の方で、今後の進め方についてお諮りする案を用意しておりますが、ちょっとバックグラウンドといたしまして、資料1の方をご覧いただきたいと思います。

上場会社のコーポレート・ガバナンスのあり方についてということでございますが、表紙をめくっていただきますと、昨年のスタディグループでの議論等も踏まえて、年末に金融庁として市場強化プランというものを取りまとめ、公表させていただきました。この進捗状況について昨年6月の時点で取りまとめ、金融庁として公表させていただいております。

昨年12月にご説明させていただきました市場強化プランのうち、図の右側にやや灰色に塗ってある部分がありますが、この部分につきましては、関係の法律を先の通常国会に提出をし、成立をいただいたところでございます。その他、政令、内閣府令、あるいは取引所規則というようなことで、この左側にありますような、いろいろな措置を行ってまいりました。

今後の課題としては、この右の方に書いてあるわけですが、この I の「信頼と活力のある市場の構築」という中の下の方になりますが、「上場企業等のコーポレート・ガバナンス強化」ということが、この市場強化プランの中では、1つの柱として掲げられていたところでございます。

めくっていただきまして、2ページに該当部分の抜粋を掲げさせていただいていますが、コーポレート・ガバナンスの強化ということで、1つは取引所におけるコーポレート・ガバナンスの強化への取り組みを推進するということとあわせて、そうした状況も見ながら、金融庁としても、上場企業等のガバナンスの強化についての検討を進めていくということが盛り込まれていたところでございます。

3ページでございますが、こうしたことの背景にある問題意識を整理したものでございます。1998年に金融システム改革を行い、その後も、各般の金融規制の見直しをしてまいりました。その中で、貯蓄から投資へといったことも1つのスローガンになってきたということでございますが、こうした動きをコーポレート・ガバナンスという視点でとらえますと、いわゆるバブルの前後の時期からメインバンクによるガバナンスが崩れたという中で、市場による規律付けというものの重要性が意識されてきたということだと思います。そうした中で、株主・投資者による監視の中で、緊張感ある良質な経営を実現し、そのことが法令等の遵守、あるいは企業収益の確保ということにつながり、これが株主・投資者へ適切に還元されることによって、我が国経済全体の成長あるいは国民の豊かさの実現を図っていくということが、一つの考えとして掲げられてきた動きだというふうに考えております。

こうした問題意識に立って、各般の改革が進められてきたわけですけれども、果たしてここに書いてあるようなことが、結果として期待どおりに実現してきているのかということが、一つの問題意識としてあるということでございます。

4ページ。コーポレート・ガバナンスをめぐりましては、これまで東京証券取引所あるいは金融庁の方でもいろいろな取り組みを行ってまいりました。東京証券取引所の最後のところに、※印で書いてございますが、東証の方では今後さらに、上場制度整備懇談会において、上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備等について検討される予定であるというふうに、承知をしているところでございます。

5ページでございますが、コーポレート・ガバナンスについては、冒頭副大臣からのご挨拶でも申し上げましたが、我が国のコーポレート・ガバナンスの水準が低水準なのではないかという指摘が、しばしばなされるところでございます。そうしたことの指摘をされる方が、どういった点をとらえてそういう指摘をされているかということを整理したものが5ページでございます。大きく3つのくくりになっていますが、1つにはガバナンス機構をめぐるさまざまな指摘がある。社外取締役の数が少ないんじゃないかとか、あるいは独立性が低いのではないかとか、あるいは委員会設置会社への移行数も少ないのではないか。そうしたもろもろ、ガバナンス機構をめぐる指摘があろうかと思います。

それと同時に、現実の資本政策等をめぐる指摘で、例えば支配権の移動を伴うような大規模な第三者割当増資や、株式併合を用いたキャッシュアウトというようなものが上場市場などにおいて行われる。あるいは、MSCB等の発行もしばしば議論があるところでございます。

あるいは、そうした資本調達をめぐっての開示に不適切な事例が見られるのではないかといった指摘があろうかと思います。あるいは、マーケット全体として、ROEが低いのではないかとか、あるいは持合いが復活しているのではないか、あるいは投資者に対しての経営方針に係る説得的な説明が不在なのではないか等の議論も聞かれるところであります。

あるいは、持株会社等を用いて企業集団が形成される中で、例えば株主によるガバナンスが、子会社などにうまく及んでいないのではないかというような指摘もされているところかと思います。

その他、コーポレート・ガバナンスをめぐっては、機関投資家の行動に関する議論、あるいは企業買収とか外資とか、そうしたものについての否定的な見方の存在をとらえて、コーポレート・ガバナンスの問題と指摘されている部分もあるのかなというふうに感じているところでございます。

6ページですが、以上のことを踏まえたときに、どのような論点が整理できるかというものを整理させていただいたものです。実際には、今後いろいろご議論いただく中で固まっていくものだというふうに思いますが、一応の整理を行えば、こうしたことが一つ考えられるかと思っております。

1つは、今申し上げたことですが、コーポレート・ガバナンスの何が問題とされているのか。あるいは現実に、市場・企業行動においてどういうことが起きているのか。そうした中で、どういった原則・規範を確立していくべきか、という議論があろうかと思います。その上で、そうした原則・規範を確立しようとしたときに、それをどのように図っていくべきかという議論があろうかと思います。こうした中では、取引所の役割をどのように考えるか、あるいは当局としては開示のようなツールを持っているわけですが、そうしたものを通じてどう規律付けをしていくか、あるいは株主・投資者を通じた規律付けというようなことをどう考えていくかといったことが、論点としては考えられるかと思います。

その他、ガバナンス機構の問題、あるいは機関投資家の受託者責任のあり方の問題、あるいは法制のあり方なども、しばしば議論のあるところかと思います。

こうした状況を踏まえまして、資料2でございますが、当スタディグループの今後の進め方について、案を作成させていただきました。

今後の審議テーマとして、当面、上場企業等のコーポレート・ガバナンスをめぐる論点について、幅広い観点から検討を進めていただく。

日程等については、各方面における議論の状況等を踏まえつつ、柔軟に対応していくこととするが、遅くとも来年夏ごろまでには、一定の議論の取りまとめを行っていただきたいというふうに考えているところでございます。

私からは以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

要するに、市場強化プランの4つの柱のうちの第1の柱である、信頼と活力のある市場の構築ということの中に掲げられている、上場企業等のコーポレート・ガバナンスの強化というテーマについて今回は特に議論をしていきたいということで、幅広い観点から検討を進めるということで、現下の金融情勢等を踏まえたいろいろな議論も当然関連のある形では含めて、幅広く、一応主題は上場企業等のコーポレート・ガバナンスという主題を置いて、関連した形でぜひ議論をしたいということなんですが、いかがでしょうか。何かご質問かご意見がございましたら、お願いしたいと思いますが。その進め方に関してですけれども。

よろしいでしょうか。それでは、ちょっとくどいですが、幅広く議論をするということですので、さまざまな論点を関連する形でご自由に提起いただければ結構だと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、資料2にあるような形で今後進めるということについてご了承いただいたということで、早速とり進めたいと思います。

それでは早速ですけれども、ご承認されることが予定されていて準備されているということですが、議論に入るわけですが、初回でもありますので、我が国上場企業等のコーポレート・ガバナンスについて、何が問題とされているのかといった観点から、幅広くご議論いただきたいということで、その議論のキックオフとして、まずは東京証券取引所で今般、投資家アンケート調査を実施されたというふうに伺っておりますので、本日はまずこの投資家アンケート調査の結果等につきまして、メンバーであられる東京証券取引所の飛山さんからご説明をいただきたいというふうに思います。

よろしくお願いします。

○飛山メンバー

東京証券取引所の飛山でございます。よろしくお願いいたします。

今、池尾さんからありましたが、最近東証で、コーポレート・ガバナンスについて投資家からのアンケート調査を実施しております。今後、このスタディグループで、コーポレート・ガバナンスについて審議をしていくということになりますので、その参考になればということで、その概要について報告をさせていただきたいと思っております。

お手元の資料3の2ページをご覧いただきたいと思います。

これは、東証で従来から取り組んでいるコーポレート・ガバナンスの向上に向けての取り組みを書かせていただいております。従来から、東証ではコーポレート・ガバナンスの向上について積極的に取り組んでおりまして、例えば2004年3月には、上場会社コーポレート・ガバナンス原則を策定いたしました。それから、2006年6月には、上場会社に対しまして、コーポレート・ガバナンスに関する取り組み状況を記載した報告書の作成をお願いして、東証のホームページで開示しておりますほか、この報告書のデータを用いて、コーポレート・ガバナンスの現状の総合的な分析を行い、コーポレート・ガバナンス白書として公表しております。

より具体的な施策としましては、昨年11月に企業行動に関する一定の規範としまして、企業行動規範を上場規則の中に設けるとともに、実際に新規上場するときの上場審査の実質審査項目の1つとして、コーポレート・ガバナンスにどう取り組んでいるかとか、内部管理体制の有効性を確認するということを明確化いたしました。

さらに、今年はコーポレート・ガバナンスに関する環境整備を東証の重点課題として掲げておりまして、さまざまな試みを行っているということであります。その1つが、制度整備に向けた問題点等の洗い出しのため、今年の6月から7月にかけて行いました投資家向けの意見募集でありまして、本日はそれを紹介させていただくということであります。

3ページをご覧いただきたいと思います。

目的のところは今言いましたことが書かれておりまして、その次のところで、今回の意見募集に当たりまして、aからjとして列挙してありますとおり、第三者割当、株式併合、持合い、買収防衛策など、従来より投資家から改善の要望が寄せられておりました企業行動を中心に、東証側で質問を設定したほか自由意見を述べていただきました。

結果として、そこにありますとおり、海外の機関投資家を中心に合計41件の投資家の方から意見が寄せられました。お手元のこの資料の11ページ以降のところに、東証上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する投資家向け意見募集に対して寄せられた意見の概要ということで、本来の概要をここに付けておりますので、これは後ほどご覧いただきたいと思いますが、この中から同じような意見が10件以上寄せられたものを中心に、aからjの項目ごとに次ページ以降にまとめておりますので、そちらに沿って進めさせていただきたいと思います。

4ページをご覧いただきたいと思います。

まず1つ目の、大幅な希釈化を伴う新株式等の発行に関しては、投資家は大変否定的だということであります。ご案内のとおり、日本の会社法上、上場会社は有利発行に該当しない限り、取締役会が授権株式数の範囲内で新株の発行を決定できるため、株主の意思に反しまして、突如権利が希釈化される。議決権の比率が変更されるということでありますけれども、そういうことが行われるということがその背景にあるわけであります。

ちょっと5ページをご覧いただきたいと思います。2006年度と2007年度に行われました第三者割当による資金調達、これが227件ありますけれども、その希釈化の度合いを示したのがこの表でありまして、その5.3%が100%以上の希釈化、つまり、増資前の発行済株式数以上の株式を第三者割当増資により発行したということであります。

またちょっと4ページにお戻りいただきまして、これらの対応策としましては、ニューヨーク証券取引所がやっておりますように、一定規模以上のものは株主総会の決議によるべきとする意見ですとか、イギリスのように、基本的に既存株主に新株引受権が与えられるべきだという意見が、それぞれ10件以上寄せられました。

次に、不透明な割当先に対する第三者割当でありますけれども、発行者と第三者の関係の情報公開がほとんどない点を問題視する意見が寄せられております。具体例としますと、昨年ある上場会社が予定していた第三者割当で、オフショアの割当先の実態が明らかでないということが問題視された例があります。

次に6ページにいきまして、株式持合いについてどう見ているかということですが、資本の非効率的利用ということでそれを批判するもの。それから、少数株主の権利の侵害ですとか、取締役の説明責任の懈怠を懸念する意見などが寄せられておりまして、否定的な意見が大勢を占めております。

それから、その対応策としましては、持合い状況そのものの開示のほかに、さらに持合いの相手方との取引に関する事項の開示強化などの意見が寄せられております。

最近、ある上場会社が持合いの状況の開示を行って、投資家からは好意的に評価されているというようであります。

次に、多くの株主の株主権を奪うような株式併合ですが、少数株主を排除する点について否定的な意見が寄せられております。具体例としますと、ある上場会社が株式併合と第三者割当を組み合わせて行いまして、約8割の株主が株主としての地位を失ったという例があります。なぜこうした株式併合が必要なのかについて、取締役の説明責任の強化でありますとか、さらに少数株主保護のためのルール策定を要望する意見が寄せられております。

一方、株式併合そのものは、株主総会の特別決議による承認が必要ですので、特別決議をクリアした株式併合について、どのように少数株主を保護するかという点については、なかなか難しい問題があるように考えております。

7ページにいきまして、買収防衛策の導入についてでありますけれども、投資家はかなり否定的であるということであります。導入の目的は、経営陣の保身であってはならず、株主がよりよい価格を得るための交渉の機会を確保するためであるとすべきであるという意見ですとか、導入の目的とか導入が、株主価値の向上に資するといった点について、徹底的な説明が必要とする意見などが多数寄せられております。取締役の説明責任に言及する意見は、買収防衛策以外のところでも多数寄せられておりまして、投資家と上場会社のコミュニケーションが十分に図られていないということがうかがわれます。

買収防衛策の導入の決定の機関につきましては、株主の承認とするもの、独立取締役の存在を前提として取締役会とするものに意見が分かれております。それから、発動の是非、方法についての決定機関につきましても、同様に意見が分かれております。株主総会が意思決定することについては、持合い等で株主構成がゆがめられているということを問題視する意見がありましたし、取締役会が意思決定することにつきましては、独立取締役の必要性を主張する意見が寄せられております。

なお、この半年ほどの間に、買収防衛策を導入または継続を決定した東証上場企業の9割以上が、経営陣から独立した立場にある第三者委員会を設置しておりますが、そもそも委員の独立性への疑義が呈されているほか、取締役と異なり、株主に対して責任を負っていないということを問題視する意見がございました。

8ページ目は、取締役や監査役の機能・役割に関してでありますが、社外取締役について非常に期待感が強い要望がある一方で、社外監査役につきましては、取締役会での投票権がなく、社外取締役の代替にはなり得ないとする意見があったことが特徴的であります。

それから、9ページ目の機関投資家の議決権行使に関しては、株主総会の集中開催の緩和でございますとか、株主総会の参考書類等の早期発送の要望が寄せられております。これらにつきましては、東証では行動規範として定めておりまして、その改善を図ってきておりまして、10ページをちょっとご覧いただきたいと思います。

左側のグラフをご覧いただきますと、1995年には96.2%の東証上場会社が同じ日に株主総会を開催していたわけでありますけれども、今年は48.1%まで減少しているということで、同一日に対する株主総会の開催というのは緩和されてきているということでありますが、一方で、右側のグラフをちょっとご覧いただきたいと思うんですが、これは週単位で集計したものでありまして、同じ週に83.5%が株主総会を開催しているということで、投資家から見ますと、議案を実質的に判断する時間の確保がなかなか難しい状況にあるということがうかがわれます。

9ページにお戻りいただきまして、そのほか議決権行使関係では、株主総会における賛成、反対、棄権の投票数を開示してほしいという要望が多数寄せられております。イギリスでは、議決権行使結果の開示は上場会社に義務づけられているようで、最近では日本でもいくつかの上場会社が、事前行使の結果のみですけれども、公表したことで、投資家から好意的に受けとめられているということのようであります。

最後は、自由意見でありますけれども、これはさまざまな点にわたっておりまして、取締役報酬の開示ですとか、子会社上場、支配株主との取引、MBOなど、経営陣の濫用が懸念される事項についての意見が多かったというのが特徴であります。

以上、投資家の意見の紹介でありますけれども、上場制度の円滑な運用のためには、投資家のみならず上場会社、証券会社、その他の市場関係者にも十分理解をいただくことが重要だと考えておりまして、従いまして、これら投資家の意見は市場関係者の重要な一部として真摯に受けとめつつも、このスタディグループや上場制度整備懇談会などの関係各所のご意見もいただきながら、よりよい制度整備に努めてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

ただいまのご説明に関してもご質問があろうかと思いますが、本日は有識者の方からのヒアリングを予定しておりますので、それを先にやらせていただいて、ご意見を全部伺った後で、まとめて自由討議、質問の時間をとらせていただきたいと思いますので、ご質問等はちょっとお待ちくださいということです。

それで、本日は在日米国商工会議所のレイク会長にお越しいただいております。どうもレイク会長にはご多忙のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

それで、レイク会長からお話をまずいただいて、その後、企業年金連合会の鹿毛雄二さんにメンバーになっていただいていますが、鹿毛メンバーから引き続きお話を伺いたいと思っております。お二人から、それぞれ15分程度お話を伺って、それでまとめてその後自由討議をしたいと思いますので、よろしくお願いします

それでは、レイク会長、お願いします。

○レイク参考人

ありがとうございます。15分ということで15分から20分のスライドを用意いたしましたが、早口でお話をさせていただきます。このような機会をいただきましたことを、まず初めに御礼申し上げます。また、皆様のお手元にプリントした資料が配られておりますが、何枚かスライドとして用意したものがございます。それで映し出させていただきたいのですが、まず最初に皆様にお詫びをしなければいけない。

この会は、まさに日本を代表する実務家や先生方がいらっしゃる。そこでこのガバナンスの話をするということは、やはり釈迦に説法のようなお話となりますので、まず初めにお詫びをさせていただきます。その上で、在日米国商工会議所を代表して、今日、皆様にお話をさせていただきたいと思います。

ご存じない方もいらっしゃるかもしれません。在日米国商工会議所は1948年に設立されまして、今年還暦を迎えました。新たなスタートをし、向こう120年続けていきたいと考えております。在日米国商工会議所は、長期的な日本への投資、そして日本での企業活動の促進に力を入れてきた組織でありまして、1,400社、米国をベースにする企業が多いのですが、60余りの委員会等がございます。金融に関連する委員会が4つございまして、その4つの委員会の委員長、副委員長をまとめる金融サービスフォーラムという組織の座長も私、務めさせていただいております。その立場で、今日はお話をさせていただきたいと思います。

ただ、重要なポイントとして、今日、もしかしたら皆様と必ずしも同意見ではないご指摘をさせていただくかもしれませんが、その基本は相利共生、相互に利益、共に生きるという考え方のもと、持続可能な日本経済の成長への貢献に私どもも使命感を感じているからであり、建設的なお話をさせていただければと思っております。

早速ですけれども、4つ大きな課題についてお話をさせていただきたいと思います。

金融・資本市場の国際化とその意味での国家間の競争、そしてそれを受けて国際社会が指摘する日本のコーポレート・ガバナンスの課題、既に幾つか出ている課題でありますが。そしてもう1つ、日本の基本的な価値観と世界基準というのは私は融合できると思っておりますので、それについてコメントをさせていただいた上で、在日米国商工会議所の提言についてお話をさせていただきます。

早速でありますが、これも当たり前のことでありますけれども、直接投資というのは資本だけではなくて、技術・知識・マーケティングなどなど、経営能力や新しい考え方が導入されるため、まさに各国が対内直接投資の引き込みに力を入れており、国家間の競争が激しく繰り広げられているというのが現状であります。

その中で、日本の現状を見ますと、これはアップデートし2007年のデータも入れたものでありますが、対内直接投資のストックベースでの名目GDPの比率を見た場合に3%であると。最も多いのが英国で48.6%、中国や韓国、インドも10%、12%などなどであります。ですから、日本は極めて少ないということが言えるのだと思います。

そういうことも同時にある中で、ただ公開市場において、皆さんもうご存じのように、外国人投資家の株式保有比率が高まっています。今、27%から28%くらいであります。また、東証における株式売買の比率を見ると、外国人が60%を占めるということが大きな流れである。

ですから、外国人投資家の視点、そしてそれが市場に与える影響が大きいということは、皆さんもご存じの点だと思います。同時に、それ以外の分野で世界的にいろいろな意味で新しい役割として、プライベート・エクイティが資金調達の方法として大きな影響力を及ぼしていることも、皆様ご存じだと思います。

ミクロのコーポレート・ガバナンスのお話をする上で、対内直接投資の呼び込みと、それを呼びこんだ上で引き止め続けるということ、そしてさらなる展開を求めていくということが、究極の重要な政策課題であるということは、皆様ご存じの点だと思います。

その意味で考えたときに、世界と先進国の平均値をストックベースで名目GDPを見た場合に、27.9%が世界平均となる。先進国平均の27.2%までは必要はないのかもしれません。イギリスやフランスのようになる必要もないのかもしれません。ドイツのレベルですら必要もないのかもしれません。ただ、3%は圧倒的に少ない。逆に言えることは、これを3倍にして、例えば対内直接投資の比率が10%になったとしても、世界基準よりも低い。中国や韓国レベルにしたとしても、世界基準より低い。逆を言えば、90%は国内であると。それぐらいの状況になっても、抜本的なレベルで、日本のいろいろな基本的な価値観を変えてしまうような外資の役割にはならないということが、はっきり言えるのだと思います。つまり、それぐらい伸ばしても、いい効果はあるけれども、ネガティブな効果の方は少ないと言えるのではないかというのが、私どもの考えであります。

そういう大前提の中で、コーポレート・ガバナンスの課題がとても重要な課題になる。それを乗り越える、また解決していくということが、さらなる対内直接投資を増やしていく、一挙に増やすきっかけになるというふうに考えます。

では、どういうふうに見られているのか。これも、皆様よくご存じの点であります。あえて、この国々の旗を出し、ここにいらっしゃる方々、OECDにいらっしゃっていた方もいらっしゃいますので、必要はないことでありますけれども、たまにこういうお話をしますと、OECDはアメリカの陰謀で動いているのではないかとか、在日米国商工会議所だとそういうことを心配してしまうのかもしれません。ご存じのように、OECDは世界基準をつくる意味で大議論が行われる場であり、そこでコーポレート・ガバナンスの課題についても、2004年度に新たな基準というかその指針をつくるための大議論が行われました。そして、そこにはIMFや世界銀行も含めた世界的な機関が入っていた。

それらの重要な議論を受けて、OECDのコーポレート・ガバナンス原則が公表された。これももう当たり前のことでありますので、時間をかけてお話をすることはいたしませんが、投資家の信頼の向上は資本コストの低下につながり、そして金融市場を強くしていくなどなど、皆様がまさに議論をなさっていた、先ほどの点であります。その意味でコーポレート・ガバナンスの重要性は、もう世界的には当たり前のこととして認められているということだと思います。

さらにグローバルな資本市場の恩恵を得るために何が必要なのか。それは信頼に足る,また国境を越えた理解を得られるような制度、国際的な原則との整合性確保という、3つの大きな考え方でやはり見ていくということが重要なのではないかというふうに考えます。

それらの考え方をベースに、ご存じのように、OECDのコーポレート・ガバナンス原則には、有効なガバナンスの枠組みや、株主の権利等について、いろいろなことが整理されています。ここでまた時間をかけてご説明することはいたしませんが、ACCJとしての提案というのは、このOECDのコーポレート・ガバナンスの原則を前提に日本に適用したものであるので、重要な視点としてご紹介しました。

その意味で、適用した場合の課題をまず整理させていただきたいと思うんですが、先ほども出ていた点でございますけれども、株式保有比率に見合わない支配権の行使を認める非効率な株式の持合いというものがあると。ここであえて「KEIRETSU」という英語の言葉で系列を書きましたのは、20年前ぐらいには、某日米経済構造協議などでKEIRETSUという言葉が、何のことを言っているのかと私は思ったんですが、KEIRETSUという言葉が英語になりました。その時代は、高い率で株の持合いがKEIRETSUの象徴として取り上げられていた。ところが、ご存じのように、金融ビッグバン等を受けて持ち合い比率は大変低くなっていった、方向性がそこではっきりしています。こういう方向であるということが大変国際的にも評価されていたと思うのですが、最近違う形でやはり買収防衛策としての取引、株の持合いというのが増え始めているのではないかということが、やはり国内でももちろん取り上げられている点でありますけれども、国際的にもそれがやはり課題として見られている点であります。

もう1つ、OECDコーポレート・ガバナンス原則を適用した上で考えたときに、これもまた、皆様のお手元の資料として、ACCJの金融センター白書の一部を配らせていただきましたが、やはり1つの課題として、親会社が株式の過半数を所有する公開会社、子会社としての公開会社が多いと。米国の30社未満というのに対して日本の350社以上が多いかどうかというのはまたディベータブルなのかもしれませんが、実際にそういう事実とともに、子会社の株主の利益、または平等性ということも含めた親会社の位置づけ等、話題になっていますし、問題視されています。

そして、それがさらに注目されている1つの理由は、事例として、ある大手企業のエレクトロニクス関連子会社と海外からの投資ファンドの事例でありまして、ご存じのように、幾つかの重要な提案がされ、それが株主の利益に立ったときには60%近くのプレミアムが提示され、それが案としては十分な合理性、または利益があったと思われるにも関わらず否定された。そのプロセスや情報開示のあり方も含めて、国際社会の中では象徴的な事例として話題になっているということであります。

また、もう1つ、先ほども出ていた点でありますけれども、社外取締役の選任状況。東証の上場会社のうちの60%近くが社外取締役を選任していないということなど。

また、低水準の株主資本利益率、ROE、Return on Equityという意味で、私どもも白書の中で出させていただきました。

また、国際的な原則との整合性に反する買収防衛策の事例として、こういう事例があります。なぜこの犬なのかについては、コメントいたしません。これはジャーマンシェパードではないのは確かです。

また、もう一つ、これも一つの国際的な評価の中で、一つの流れとして、ダボス会議で福田総理が大変力強い、対内直接投資を推進するというメッセージを発信なさいました。私も生でそれを聞き、力強いスピーチだと思ったのですが、1週間たたないうちに、この外資規制、空港外資規制の案が発表された。金融庁の皆様が国際的な視点を提示、明確にご説明なさり、その案は最終的には取り入れられなかったというふうに理解しておりますけれども、総論では賛成だけれども、各論になるとそういう事例が出てくると。これもまた安全保障上の外資規制というのは重要な課題で、それはそれだけでも議論できることでありますが、メッセージとしてどういうふうに伝わったかということを、その意味でネガティブであったというふうに思います。

同時に、皆様もご存じのように、それらの流れを受けて、ACCJとは直接関係ないんですが、アジア・コーポレート・ガバナンス協会という組織が、機関投資家のグループでありますけれども、日本のコーポレート・ガバナンスについて白書を5月に発表いたしました。その中で、幾つか大変厳しい指摘がされていると思います。読んでみまして、ACCJより厳しいことを書く組織があるんだなというふうに思いました。

それは、私ども、やはり違う形で日本に根ざしビジネスをしているので、そこまでは書けない、書かないということも書かれていたような気がいたしますが、重要な問題提起というか、率直な意見として国際的にそういう視点があるということとして、特に注目されるべき機関投資家、世界的にそういう意味では重要な役割を果たしている投資家の視点であるということだと思います。これらの課題についてコメントがされていることもご存じだと思います。時間の関係でゆっくりとお話しすることはいたしません。

同時に、ご存じのように、対外直接投資については、One-way streetであるというような記事がウォールストリートジャーナルに出たり、ここにちょっとこういうのが話題になるのもまたいかがなものかとACCJの会員で皆で話をしていたんですが、What Kosaku Shima, Japan’s most popular salaryman, says about Japanese businessというようなのが話題になりました。もちろん、島耕作が日本を代表するサラリーマンでも経営者でもないというのはわかっていることでありますが、今の流れの中で架空の人物が話題になってしまったということが重要だと思います。そういう意味で、私は今、一つの流れとして、平成の攘夷派というのがやはりいるのではないかと。反改革派の逆襲というようなものがACCJの会員の中でも話題になっているような気がいたします。桜田門外の変の絵を使わせていただきました。

時間がなくなって、そんな漫画なんか見せるのではないと、田中先生のお叱りを受けるかもしれませんが、早くお話をしたいと思います。

「日本型経営のかたち・強み」、ジェームズ・アベグレン、またはマイケル・ポーター、竹内先生の本などで、日本の経営の強みというのはいろいろな意味で分析されています。外資系の企業であっても、その強みというのはもちろん評価し、逆にそれを取り入れて経営を強めているということがあるんだと思うんですが、私どもはその意味で、それを崩さず、信頼に足る、そして国境を越えても理解され、国際的に受け入れられた原則と整合性のとれたコーポレート・ガバナンスを確立することが、対内直接投資をさらに増加させる。同時に、日本国内のステークホルダー、もちろんその利益に反するものではない形でそれが実現できると確信しております。

その前提に立って、在日米国商工会議所としての提言をまとめました。詳しくはまた、このお配りいたしました資料、または金融センター白書については、インターネットでホームページにアクセスしていただければ、全文がプリントできますので、ぜひご覧いただければと思いますが。

まず最初に法制の分野では、公開会社については特にもちろん上場会社として厳しい、いろいろな意味でまたスタンダードを求めていくということで、国内の日本取締役協会も出されたアイデアにある、公開会社法というのを議論していく。これは1つの法律ですべてがそこに網羅されているということが、わかりやすいメッセージを海外に発信するのではないかという考え方で提案がされています。

もう1つ、独立社外取締役の効果的な活用方法として、3分の1を独立社外取締役にするというルールを明確につくると。これは見ていただければおわかりいただけると思いますが、3分の1にしたとしても社内の取締役の方が圧倒的に多い。ところが、独立社外取締役が明確に3名ぐらいいれば、海外の投資家は、全然違う形で議論がやはり行われ、チェックが入るだろうと期待する。ですから、例えばニューヨーク上場企業のように、過半数が独立社外取締役にならなければいけないということではない、1つのバランス感覚を持った提案なのではないかと思っています。また、独立社外取締役の定義の明確化も重要であると思います。

企業買収については、企業価値研究会の6月30日の今年の報告書を完全に支持するという意見を、私どもも出し、その内容について提案をいたしました。

時間がないので、終わらせますが、ディスクロージャーとIRについては、さまざまな投資家とどういうふうにコミュニケーションをとっていくべきか、ディスクロージャーのルールということだけではない接点を持ち、説明責任を果たしていきながら、透明性を向上することによって、一挙に方向性また環境が変わってくるのではないかと思いますし、その意味での株主総会への参加または議決権の行使の問題についても、先ほど議論されていた点について、共通の認識を持っているのがACCJの考え方だと思います。

最後に、皆さんもご存じのように、最新の金融・資本市場のランキングで、Corporation of London調査で日本のランキングは、2007年9月に10位であったのが、その前、9位が10位になって、10位よりもさらに悪くなるのではないかと心配をされた中で、2008年3月、9位になりました。それが、2008年9月には7位になりました。これは、本当に金融庁の皆様、そして政府関係者、そしてここにいらっしゃる皆様が、金融・資本市場の強化に取り組んだ成果であるというふうに思います。金融危機の問題だけではなくて。

ですから、逆に言えることは、今こそ金融をリードしてきた、ある意味で欧米、ニューヨークやロンドンが1位、2位ということでずっと来たわけでありますが、そちらの振り子は、明確にまた大きな課題として証券化商品の規制の不備、また規制のあり方について大議論が行われることで、違う形で戻るのかもしれませんが、日本は逆にその振り子を進めることで、一挙にさらに7位から5位、4位へと進めることが可能です。そして金融・資本市場の強化ということを進めていくことによって、アジアの金融センターになることができるんだと思います。その意味で、コーポレート・ガバナンスの課題というのは大変重要な課題であるというふうに考えております。

ご清聴ありがとうございました。

○池尾座長

どうも、レイク会長、ありがとうございました。

それでは引き続き、鹿毛雄二メンバー、お願いいたします。

○鹿毛メンバー

ご紹介いただきました鹿毛でございます。ただいま、企業年金連合会で資産運用を担当しておりまして、資産運用の現場、議決権行使等も含めたコーポレート・ガバナンスの現場という立場と、それから現在海外の国際コーポレート・ガバナンス・ネットワークの理事をしておりますので、海外のガバナンス関係者あるいは機関投資家等と意見交換する機会も持っておりますので、そういった中から主として現場の感じを少し話したいと思います。

なお、今日お話しするのは、私見で、企業年金連合会とは直接関係がないということを最初にお断りしておきたいと思います。

今お話がありましたように、金融危機という流れの中で、これは極端な利益追求マインドではないか、アメリカの金融・資本主義の行き詰まりではないか。やっぱり日本のやり方の方がよかったんだというような意見が、一部ちらほらと出かかっております。これからコーポレート・ガバナンスの議論を進めていく上で、こうした議論とも意見をすり合わせていかなければいけないなという感じはあります。しかし、私の感じでは、欧米におきましても、長期的な企業価値の向上ということが、企業経営の目的になっておりますので、今回見られたような、一部マネジメント、一部株主も含まれたかもしれませんが、極端な短期収益志向、過剰なまでのリスクテイクということは、言いかえますと、これはやはりガバナンス機能が極めてウィークであったということの結果ではないか。こういう金融恐慌的な状況を見ても、やはりコーポレート・ガバナンスが、いかに大切であるかということの一つの背景ではないかというふうに、とらえるべきではないかと思います。

今、東証の方とそれからACCJの方から、ある意味では投資家あるいは全体としての包括的なご意見というのが出されましたので、私の方からはむしろ投資家という立場から特に申し上げたいことを、何点かに絞ってお話ししたいと思います。

第一に「外人投資家」の意味です。先ほどのACCJのご意見、包括的、大変大事なお話が十分含まれておりますし、特に中立的なお立場でのご意見ということなので、これについては私はもう特段何も申し上げることではないんですが、海外の一般的な意見、世の中で外人投資家がこう言っているというような意見の中には若干疑問もあります。たとえば国際社会の意見という時、一体国際社会って誰なんだと。こういうところがあるわけですね。

要は、私も海外のガバナンス専門家、運用機関等と議論をして特に感じることは、日本におけるコーポレート・ガバナンスの議論というのは極めてピュアだなという点です。会社は誰のものか、会社の経営はどうあるべきか、天下国家のためにどうか。アカデミックな観点からもどうかと。基本的にこういう議論が非常に多いと思うんですね。これに対しまして、今日のお話はちょっと別にしても、海外で一般的に出てくる話は、どちらかといいますとビジネスに直結した、利害関係に直結した議論が多いということを、一応押さえておく必要があるんじゃないか。言いかえますと、アメリカでのコーポレート・ガバナンス議論の中心的な課題の一つは、マネジメントの巨額報酬に対する株主からの巻き返し、その企業成果の取り合いということがあります。

それから、現在、海外におきましては、いわゆるコーポレート・ガバナンス関連産業が拡大しておりまして、例えば議決権行使のコンサルタントであるとか、買収防衛をめぐって企業ボードに対する法律顧問、コンサルタントといった、さまざまなサービス産業が発達している。これはそうしたニーズが増えているという実態を表しているわけですが、同時に事業の立場での発言という面も一部にはないとは言えない。

それから、よく言われております、アクティビストファンドは自由な資本市場における通常の商行為である面は否定できないと思うんですが、例えばガバナンスがウィークな会社の、従って割安になっている会社の株を買って、そこをねじを巻いてガバナンスがよくなれば、投資リターンが高くなるということからいくと、投資リターンの獲得とガバナンスに関する発言は関連しているわけです。もちろんそういったご意見の中には、日本経済、日本全体としても当然耳を傾けなければならない部分もありますが、発言の背景にあるそういう利害関係もある程度区別意識する必要があると思います。

第二に、やはり投資家とは誰か、何か、海外投資家とは誰かという中に、2つの種類があるということを申し上げたいと思います。1つは、言うまでもなくファンドマネジャーですね。実際に株を売買している方々。それから、もう1つは、ガバナンスの担当者なんですね。それで、大機関投資家の場合は、大体これがはっきり分かれております。大きくない機関投資家は、ほとんどの部分が外部の運用機関に委託されておりますから、運用機関においてはやはり株式、銘柄選択をして売買しているアナリスト、ファンドマネジャーと、議決権行使をしているガバナンス担当者というのはやっぱり分かれているケースが多いわけですね。この2つの方の問題意識とか行動原理というのは、同じ部分もありますけど、結構違うところもあるわけです。

これがなぜ余り表に出てこないかといいますと、実際に売買をしているファンドマネジャーは基本的に物は言わないわけですね。一方、ガバナンスの担当は、多くの場合少数株主ですから、何とか意見を集約するという形では非常に声が大きくなるということで、投資家の意見としては、主としてそのガバナンス関係の意見が強く出てくるわけです。決して悪いことということで申し上げているのではないんですが。

ただ、どうやって日本市場の魅力を高めるか、どうやって投資資金を招くかということになると、実際に投資をするのは、議決権行使をしている人ではなくて、むしろファンドマネジャーなんですね。このファンドマネジャーは、とにかくリターンを上げなければいけない。リターンを高めるということがファンドマネジャーにとっては最も大事な話であって、この部分がコーポレート・ガバナンスを考えていく上でもかなり大事な点だと思います。

従来、コーポレート・ガバナンスの議論というのは一種の車の両輪で、リターンを高めていくことと、リターンを高めるためのストラクチャー、早い話がボードの機能とか社外取締役とかという、こういうストラクチャーと車の両輪だと思うんですけれども、どちらかと言えばややストラクチャー、制度の問題にかなりウェイトがかたよっていて、売買をしているところの意見というものが、必ずしも十分に理解されていないといいましょうか、あるいはそちらの意見が伝わっていないというようなことを感じております。今後、スタディグループで、日本にとって本当にあるべき姿のガバナンスの方向性をつくっていくためには、ファンドマネジャーの意見をよく聞いていく必要があるんじゃないかというのが一つの提案でもあります。

第三は、これをもう一つ別の見方から見ますと、コーポレート・ガバナンスというときの目的が、最終的にはやはり企業の業績を高める、長期的に高め、リターンも高めていく方向に影響力を与えていくことだと思います。プレッシャーのかけ方は、当然法規制、東証のルールといった規制と、市場の持っているプレッシャーとがあります。この市場のプレッシャーという部分が、やはりコーポレート・ガバナンスの機能を通じ、リターンも高めていくことに、重要な役割を果たすと思います。しかし、この部分が必ずしも十分議論の対象になっていないんじゃないかという気がします。

つまり、市場機能、特に市場の退出機能がよく働くことで、逆に企業に対してもある種のプレッシャーが働いて、それが最終的にはガバナンスの目的も達成できるという意味で、先ほどのファンドマネジャーの行動が、買っていくという面、あるいは売っていくという面、この両方で企業に対する強いメッセージを送って、これが市場の持っているメカニズム、市場の強制力をより機能させることで、この目標達成にも寄与するのではないかと思われます。その意味でもファンドマネジャーの意見というのをもう少し考える必要があるということであります。

次に各論で、今日の資料の中で3枚目、「わが国の課題」というところをちょっとご覧いただきたいと思います。包括的というよりは、もうポイントを絞って投資家の立場で何点か、これだけはちょっとご検討いただければありがたいというところを申し上げます。基本的には上場企業を対象としておりますから、上場の問題に絞られてまいります。

第一に、上場に伴う義務の問題です。日本で上場といった場合に、どうしても、新規公開のところで既存株主が、キャピタルゲインを得ることが上場の目的になっているケースが実際問題としては極めて多いのではないか。その先はステータスだと。現実に、もちろん上場していることによって、もちろん資金調達ができるとか、特に最近の状況で、M&Aのためにいろいろな形で使えるというのがあるんですが、実際問題として、こういう形で積極的に上場を活用している企業は、上場は三千何百社のうち、それほど多いわけではない。結構限られているのではないか。

そうすると、それ以外の会社というのは、上場していることの現実のメリットを必ずしも得ていない。逆に言いますと、従って上場に伴う責任、つまり不特定多数の内外投資家に株を売ったから発生した責任というものが必ずしも明確に理解されていない面もあるのではないか。投資家の立場からはそれなりのリターンを期待するわけですけれども、そういう問題。あるいは、少なくとも必要な情報を開示していくというような、実質的な責任があるということの認識が、必ずしも上場企業全体に理解されていないんじゃないかという気がします。

第二に、それから、これも当たり前のことですけれども、基本的に証券市場には、国境がない。外人株主比率も平均28%というお話がありましたけれども、大手の優良企業であればすぐ4割5割となっておりますから、どう考えても日本にしか通用しないという基準では通用しないのではないか。もちろんそれぞれの国にそれぞれ少しずつ違いがあることも考慮しつつ、OECDのルールなどを、いわば共通ガイドラインとして考えてくる必要があるのではないかと思います。

投資家から見て気になる点ということからいけば、特に日本特有の、社外取締役の項目とか、第三者割当増資の問題、新株予約権、買収防衛とか、こういうものについてある程度、国際基準とほぼ同様なものでないと、内外投資家からはむしろ敬遠される結果になってしまうんじゃないか。それが今の状態でもあるんじゃないかと。当たり前のことを申し上げて恐縮なんですが。

第三に、情報開示の問題です。言うまでもなく先ほどの規則という意味からも、市場機能が十分働くという意味からいっても、情報開示が決定的に重要だと思います。現在例えば、恐縮ですけれども、東証さんも大変ご努力されて、適時開示ルールとかいろいろなことが出てきて、企業の方にお伺いすると、その情報開示、適時開示のことがいつも頭の片隅にあるというふうにおっしゃっているんですが、投資家の立場から見た場合には、何かそれが形式的な基準のところに偏っていて、実質的なところではまだいまいちといいましょうか、もう少し何とかしていただけないだろうかという感じがいたします。

具体的には、例えば総会議案というのを拝見しても、どういうことなのか、どうも本当のところの意味がよくわからない、もうちょっと具体的に言いますと、例えば取締役選任議案というところに書いてあるのは、その取締役候補者の方の、会社に入ってからの経歴しか書いていない。一体この方がなぜこの会社の取締役として適任かというようなことについては何も書いていない。それからよく、合併のときにはほとんどの場合、対等合併ということになるわけですけれども、当然のことながら企業価値に差があれば、そこでどっちかの株主は必ず損して、どっちかが得するということが直ちに起こってしまうとか。それから、場合によって買収価格、あるいは合併価格の発表がある場合にも、大体において発表時点とは時差があるわけですね。

海外の場合、買収合併があるという発表のときに、必ず価格が一緒に出てくることによって、投資家は判断ができるわけですから。もちろん、投資家から見ると、このように形式ではなくて実質的な情報開示という点で、大変期待したいところだということであります。

第四に、ルールのエンフォースメントの問題です。金融庁さんには、釈迦に説法の議論でしょうが、1つだけ申し上げれば、証券実務はどう考えても実務のほうが常に日進月歩、先にいきますから、法律ルールは、ある意味ではもう構造的に後追いという面があるんだろうと思います。しかし、その新商品が、しばらくやってから黒と言われるのが一番困る。アンプレディクタブルというのは一番困るというのが、最近の内外投資家といいましょうか、関係者の非常に大きな声です。これについて、私はもちろん専門家じゃありませんけれども、ある金融監督行政の専門家の方がおっしゃっておられたことで、SECの場合に、何十年とかかって、いわゆるノーアクションレターであるとかルーリングとか、いろいろなことについての解釈についての実例集という、データベースが出来上がっているので、これをもう少しよく調べて、その日本語のデータベースでもできれば、事前に解釈についてある程度見当がつくんじゃないか。日本はある意味で始めたばかりかもしれないので、この事前の解釈についての情報というのは、言うべくして極めて難しいことではあるかと思いますけれども、例えば今申し上げたような点を参考までに申し上げたいと思います。

第五に、市場機能のうちの業績不振の企業あるいは経営者についての退出という部分がないと、投資家としてはどうしていいかわからないといいましょうか、不測の損害を被るということがあり得ます。こういったメカニズムの働き方ということも期待したいということであります。

この関係では、1つだけ申し上げたいのは、これは機関投資家側にも一つ検討しなければいけない点があると思うんですが、パッシブ運用の問題です。パッシブ運用の中でも例えば、東証一部1,800社を全部買うというパッシブ運用も少なくないわけですね。そうしますと、これはどんなにガバナンス上問題があっても、とにかくそこを全く考えずに買っていくということです。結果的には業績不振企業だったり、いろいろな不適格企業をサポートする結果になっていくというわけです。ここは今後の課題としては、むしろそのパッシブ運用について考える必要があるんじゃないか。ちなみに、私どもの企業年金連合会の場合は、東証一部上場企業を全部買う、TOPIXをベンチマークにしないで、特定の一部だけを対象としてそれを全部買うというように、ベンチマークを変えてやっております。これも一つの考え方かという感じはいたします。

第六に、次のページの4ページですが、日本の場合、日本の政府あるいは経営者の方からも、どちらかといいますと株主だけではなくて、会社は社会の公器であり、地域社会、社員も大事、お客さんも大事、株主も大事、皆さんのために長期安定的適正利潤を上げるという社会を意識したメッセージが出ているのではないか。早い話が、株主のため利益のためにだけ経営してと言いにくい事があると思います。

現実には、もちろん業績を高め、利益を上げ、株価を上げようという企業もたくさんあると思うんですけれども、実態のメッセージが必ずしも明確に出ていなくて、その結果、むしろ日本の状況が過小評価されているという面もあるんじゃないか。少なくとも等身大のメッセージというものも、私は必要なんじゃないかと思います。

同時に、さっきのファンドマネジャーのところで申しましたけれども、結局すぐれたコーポレート・ガバナンスというのも、最終的には長期的に企業業績を上げ、企業価値を上げるという手段であって、目的ではないということから考えますと、“Comply or Explain”といいましょうか、杓子定規にこうでなければならないという議論よりは、むしろ原則を定め、それに合わない場合は説明を必要とする、“Comply or Explain”というやり方が、実質的な効果もあるのではないかという感じがいたします。

時間もなくなりましたので、これで一応終わらせていただきます。

○池尾座長

はい、どうもありがとうございました。

それではちょっと、時間が限られてきていますが、自由討議に移らせていただきたいと思いますので、これまでのお三方からのご説明等を踏まえまして、それらに対するご質問があれば出していただければ結構ですし、関連したご意見等をいただきたいと思いますので、どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。

ちょっとテーマが大きくて、漠としていて、とっかかりが難しいということはあるかなというふうに思うんですが、どうしたものでしょう。

○柴田メンバー

鹿毛さんのおっしゃった点で、“Comply or Explain”というポイントがありましたが、これはまさに原則ベースの規制の精神を一言で言い表したものです。規則ベースの規制とは違うアプローチをイギリスがとっていることがその考え方の底流にあるかと思います。

おっしゃる通り、ガバナンスについて、日本でも機関投資家からいろいろな発言が出ていることも事実です。ただ、ガバナンスという言葉を誰かが使うときに、この言葉自体は誰もが賛成できる綺麗な言葉ではあるけれども、発言者が本当に意図するところは別のところに隠されているということもあります。これは、先ほどの鹿毛さんのお話の中にも、ニュアンスとしてありました。

ガバナンス系の投資家であることを標榜する方々は、2つの種類に大別することができます。すなわち、グッド・ガバナンス系及びバッド・ガバナンス系の二大分類です。前者はガバナンス面で問題のない綺麗な会社のリストをつくって、その中からアウトパフォームしそうな会社だけを投資対象に抽出して選ぶ。これがグッド・ガバナンス系の投資家です。バッド・ガバナンス系とは、先ほど鹿毛さんがおっしゃったとおり、まずガバナンスの悪い会社を探して、あえてその株式を購入して、その上でガバナンスの向上を経営陣に要求することによって、キャピタル・ゲインを得ようとする投資家です。

後者には、いわゆるアクティビストといわれるお行儀の悪い投資家もいます。日本のガバナンスにかかる議論は、このアクティビストの方々によるウエスタン・メディアに対する情報発信力が飛び抜けて強いがゆえに、少しゆがめられた形で海外で報道されることが多いと思われますが、これは残念なことです。

また、機関投資家による株主投票権の行使については、まさにおっしゃったとおりの形で、いろいろあだ花も出てきています。

ある議決権行使助言会社の場合には、株主総会の時期が近づくと、大量に大学生のアルバイトを雇って、その方々に議決権行使書に載せられている議案を形式基準に従って全部チェックさせ、賛成すべし、反対すべしという印をつけさせ、その上で責任ある方が議決権行使の助言の内容について最終判断をするということをやっているようです。これが、ガバナンスを改善させるための株主権限の行使、その崇高な目的を支えるためのインフラとしての理想型と合致する風景なのかについては、疑問の余地があるところです。形式基準重視ですから、形式主義に流れるリスクが高まります。企業経営者の中には、株式会社の最高意思決定機関である株主総会での意思決定プロセスの中に、大学生アルバイトが存在すること自体に違和感を持つ向きも多いかもしれません。もちろん、最終判断は責任者が行っている訳ですが。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

じゃ、藤原メンバー。

○藤原メンバー

東証さんのプレゼンの8ページと9ページについて、私のコメントを1つと、あとは鹿毛さんに質問を1つしたいと思います。

日本の経営者は、わが社には監査役が3人いるので、社外取締役は要らないという意見をよく述べたりしますが、私はこういう意見はおかしいと思います。この投資家向け意見募集から寄せられた意見のとおり、監査役の役割と取締役の役割は違いますので、日本のコーポレート・ガバナンスをよくするためには、上場企業は社外監査役がいても、別途社外取締役を置くというのは大事だと思います。

次に社外取締役を何人置くのがいいのかという問題になりますと、多くの機関投資家は3人と言います。そこで彼らに、なぜ3人必要なんですかと質問すると皆さんの答えは一貫していません。結構有名な機関投資家のトップの方に聞いでも「1人だと恥ずかしくって意見を言えないでしょうから、3人ぐらいいると発言力も増していいと思う。」といったたぐいの答えしか返ってきません。だから、なぜ3人なのかについてはコーポレート・ガバナンスのルールをつくる人たちがもっときちんとした理由を考えてもいいのではないかと思います。

それから、9ページの、株主総会での議決権行使の結果についてですが、やはり日本も議決権行使については発表していいのではないかと思います。

次に質問の方ですが、私は以前非常にコーポレート・ガバナンスに凝っていた時期があり、それゆえ日本企業のコーポレート・ガバナンスをよくするためにかなり発言もしました。

その時、1つ、自分なりに質問に答えられない部分がありました。そこを企業年金の鹿毛さんに聞いてみたいのですが、投資家というのはいくら長期的な観点から企業に投資していると言っても、いつかはその株を売ってリターンを得なければいけなくなります。企業の経営者からみると、株主がその企業の株を売ってしまえば赤の他人になるわけです。こういう事情を踏まえて、どこまで日本の経営陣が、そういう投資家のコーポレート・ガバナンスをよくしてくれという声を聞くべきとお思いでしょうか。この質問を鹿毛さんにしてみたいなと思いましたのでよろしくお願いします。

○池尾座長

今の2番目の質問といいますか、投資家はいくら長期投資家といっても、いつかは売るんじゃないですかという話で。

○藤原メンバー

 日本企業のガバナンスの遅れについて、英字新聞、例えばFTとかは、びっくりするぐらい鋭く指摘してきます。

日本の企業のコーポレート・ガバナンスは10年前に比べると、非常に進歩したと思います。

こういう日本の上場企業の経営陣には、毎年投資家から質問状がたくさん送られて来ます。投資家の声にこたえるのは時間がかなりとられます。彼らは長期投資とは言っているものの、中には1年で売る投資家もいます。あまり長く持たない投資家が多い中で、そういう投資家の話を、企業経営陣はどこまで真剣に聞くべきなのかというのが私の質問です。

○鹿毛メンバー

なかなか難しい問題です。企業から見て投資家をどういうふうに判断して、どう考えるべきかというご質問だと思うんですけれども。投資家といってもいろいろな種類があるというところから始まるのだと思います。基本的には機関投資家は、長期投資が一応前提ですが、例えばアクティブ運用の投資家だって売ることがあると思います。

この場合、じゃアクティブの投資家が売るときってどういう状況かというと、例えば2割上がったから目的を達したから売ると、それもあるかもしれません。だけど、特に海外を含め日本でも大手の、先ほどのたくさん持っている一流と言われるようなファンドマネジャーというのは、やはり企業が成長を続けている限りはそう簡単には売らないんですね。当然、相当大きな額を持ちますから、多少一部減らすとか増やすとかあっても、この会社というふうに見込めば、それを長く持つと。半永久的に持つと。逆に言うと、企業が何らかの形で見切られるようなときになれば売ることもあると。

だから、売るとしたら、それは企業側にも責任があるかもしれないということです。一番企業から見て頼りになるのは、やはりそういう長期に持ってくれるような、言いかえますと、大運用機関の一流のファンドマネジャーのようなところでしょう。多数の年金、機関投資家の分を預かっていますから、場合によっては5%とか8%とかというふうになってくるわけですね。さっき申し上げたファンドマネジャーという次元ですけれども。

こういう人は、その産業とかその企業のことを10年、20年と徹底的に調べながら買っているわけですから、企業から見れば最大のファンですよね。ですから、逆に言うと、今最近になってようやくそういうファンドマネジャーのところに社長さんが相談に来ているという声がありました。数年前までは、会いたいと言っても会ってくれなかったというのが、だんだん会ってくれるようになってきたと。恐らく企業にとって最も耳を傾けるべき人、頼りになる与党はそういう人なんだろうと思います。

一方では、もちろん世の中には短期の投資家もいれば、あるいはパッシブの投資家もいれば、いろいろな投資家がいて、しかもそのいろいろな投資家が、仮にある投資家が売ったとしても次の投資家が買っていくわけですから、その意味では、やはりそうでない、先ほど言った与党でない投資家の声というのも、それが当然株式の何十%かを持っているとすれば、やっぱりその声も、短期だからとか気まぐれだからといって無視はやっぱりできない。それがまさしく上場することのコストなんじゃないかなというふうに私は思いますけれども。

○池尾座長

レイクさん、ご意見、それならちょっと。

○レイク参考人

私も今の意見と全く同意見でありまして、そして経営者として仕事は本業がありますので、在日米国商工会議所は一切給与を払ってくれませんので。経営者として絶えず考えるのは、いろいろな投資家がいらっしゃって、そして長期的に企業価値の向上をしている中長期的な戦略が明確、そして実際に約束したことを実行している。そういう中で、いろいろな方々が評価をなさる。売る方もいるかもしれませんが、そういう方とも向き合うというのが、公開市場で資金調達をするという意味だと思いますので、どこかで売るからといって、それがどこかで最終的には売るのだということで、投資家の意見に耳を傾けなくてよいということにはならない。それが本当に嫌なのであれば、非上場で企業活動をすればいいのだと思います。

公開市場に上場する以上、その上で説明責任を果たし、約束したことを実行し、そのリターンを提供するということがやはり求められるのだと思います。重要な点は、それをするからといって、私これ一番強調したい点なんですが、社員を大事にしないでいい、短期的なことだけ考えればいいということでは全くない。米国のエクセレント企業でも、そういう中長期的な戦略で実行している企業がやはりあるということをご理解いただきたいと思います。

また、ACCJの私のプレゼンテーションの中での対内直接投資について、もう一度7ページの表を見ていただきたいのですけれども、海外のマスコミがちゃんと日本の企業の経営者、また日本政府を含めたその努力を全然わかっていない、そして伝えていないということでありますが、ある意味では私も海外の方々と話をしていて、こんなことも知らないのかということがよくありますので、在日米国商工会議所で海外からいろいろな方々が意見交換に来ると、実はあなた、10年前のことを言っているんですよというようなこともあります。ですから、金融センター白書では、そういう意味の会社法の制定等についても言及をいたしました。そしてマスコミの報道の中には、先ほどご紹介したような事例がインパクトを与えているのも事実かもしれませんが、どう考えても、この3%の水準で日本の努力を説明することはできないということであります。

もっと重要なことは、この表ですね、1990年、ちょっと白黒なのでわかりにくいかもしれませんが、棒が2つございます。1990年と2007年を比較しています。1990年に日本は0.3%、インドは0.5%、インドはそれが2007年に6.7%に上がりました。韓国は2%だったのが、12%に上がっています。これだけ対内直接投資が増えていると。それが、韓国のいろいろな事件についての英語の報道というのは、ネガティブなものもたくさんございました。でも、これだけ増えているということは、やはり海外の報道だけで投資先の評価をしているのではないということ、と同時に対内直接投資をこれだけ拡大するために、いろいろなことを徹底的にやっている国々に向け、世界のお金が動いているという現実の中で、日本でどうするのかということが、やっぱり議論されなければいけないのだというふうに私は思います。

○池尾座長

はい、藤巻さん。

○藤巻メンバー

最初からちょっと参加できなかったので、もう既に議論されている点なのかもしれないんですが、鹿毛さんの方から、今回の金融システム不安は、欧米金融機関のリスク管理のガバナンスの欠如にあったのではないかというご発言があったのですが、本当にそう思っていらっしゃるのかという質問、並びに私自身の意見表明をさせていただければ、私の外資の経験からすると、リスク管理に対するガバナンスというのはかなり高度だと思うんですね。例えば、レバレッジがかかっているとかいう人もいますけれども、レバレッジがかかっていることを前提の上でリスク管理をしている、その企業が倒産しないというか、その体力に合ったリスクをとっているかというガバナンスは、極めて高度なものだと思うんですね。

今回、なぜああいうことが起こったかというと、とんでもない価格が出ちゃったということ。すなわち、リスク管理をするときも、大体99%かの確率でやっていて、例えば戦争が起こったときというような異常事態に対してのリスク管理は確かにできていないと思うんですね、ちょっと。今回の場合、要するに戦争が起こったような状況、すなわち、全く流動性のないサブプライム商品に対してとんちんかんな値段が出てきちゃったと。そこに私は問題があるのかなとずっと思っているんですね。

要は、自分の会社がどの程度の商品を持っているかなんて当然わかっているわけですし、どの程度のレバレッジがかかっているかもわかっているわけで、普通の動きだったらどのくらい損するかもわかっている。だけれど、わからなかったのは、とんでもない数字が出たときに、とんでもないことになってしまったということだろうと私は思っています。

実は、ポケットロイターを見ていたときに、モルガン・スタンレーか何かのCFOが、このプライスはsilly and irrationalと言っていたのですが、これ、ザ・プライスが何とかというのは説明がなかったので何ですが、株価のことか、もしくはサブプライムローン商品の価格のことを言っていたんじゃないかと私は想像したんですけれども、そのように、想定しなかったものの値段がirrationalでsillyなものが出ちゃったときに、コントロールできなくなっちゃったという、そういうリスクコントロールの問題だったと思うんですね。

これ、なぜsilly and irrationalなプライスが出ちゃったかと言うと、まさに先ほど流動性のないところでの時価評価の問題だと思うんです、私自身は。要するに、情報を開示しろというときには、確かに時価評価の方が極めて私は優秀だと思うんですが、今回、その時価評価の大きい問題が出てしまった、で、ガバナンスが効かなくなってしまったということだろうと思うんですね。

要は、昔の日本のバブル崩壊のときの問題というのは、簿価会計の問題、要するにそのうみがちっとも出てこなかったということだと思うんですが、今回の金融システム不安の問題というのは、流動性のないところの時価会計の大弊害が起こったというふうに私は理解していて、その大弊害が起こったというのは、やっぱり例えばサブプライムローン商品に関してみると、その倒産確率からリーズナブルなプライスが出るべきところを、リーズナブルなプライスじゃなくて、例えばバナナのたたき売りをやっちゃって、例えばAIGがつぶれたらそのときにも危機があったわけですね、バナナのたたき売りと、明日生き延びるためには合理的な価格じゃなくてバナナのたたき売りをしなくちゃいけない。それが、そのバナナのたたき売り価格を全員が共有しなくちゃいけなくなった。非常に大きい、irrationalでsillyな価格で、評価をしなくなっちゃったということで、変な負の連鎖が始まったのじゃないかなと。私はそのサブプライムの専門家ではないのでよくわからないんですけれども、そういうふうに私は分析しているんですけれども。

だとすると、コーポレート・ガバナンスというか、少なくともリスクについてのガバナンスにおいては、会計の問題、すなわち簿価会計がいいのか時価会計がいいのか、それから、私は時価会計がいいと思うんですけれども、時価会計のときでも異常事態が起こったときにどういう対処をするかということは、非常に今後とも大きい問題になるんじゃないかなと思っています。これは意見であり、また、鹿毛さんの反論をお聞きしたいと思っています。

○池尾座長

ちょっと、レイクさんが手を挙げられているので。

○レイク参考人

私は、ちょっと今お話しになったコメントに、どうしても違う意味でコメントをしたいと思いました。それは金融行政上の問題が米国にあったのははっきりしていると思うんですね。ですから、それは今後議論されていくと思います。サプライムの問題、証券化に対するシステムリスクを起こさないようなコントロールをどういうふうにするのかという意味での政府の役割と、その上でのガバナンスというのは、やっぱり米国でも議論されるんだと思いますので、それはされていたという、ガバナンスが問題なかったということだけで、という形では私は終わらないと思います。

また、同時にこれを強調したいのですが、今日はACCJの立場をちょっと離れて個人的な意見として。米国の企業の中で、護送船団型ではなく、ガバナンスが機能し、そういう商品に手を出さなかった会社がたくさんあるということも見ていただきたいと思います。自分の会社の宣伝をするつもりはないんですけれども。

ですから、同じ金融機関、保険会社でも、サプライムやCDS、スワップ商品というのをやらない、それはなぜか。それは、私の事例をお話しすれば、独立社外取締役だけで構成される投資委員会の方針として、投機的なものへ投資をしない。長期的な保険業務の本業で成長していくという私たちの経営方針と、それを説明している投資家に対する責任を果たすためにつくっているシステム、内部統制とリスク管理が機能していたから。それを高いリターンのものになぜもっと投資をしないのという投資家もいらっしゃる中で、説明責任を果たした事例があるということだと思いますので、そういうガバナンスが働いているケースもあり、そうじゃないケースもあり、それがどこまで経営責任がそこにあるのかというのは、今後、大議論が米国でも行われると思います。それと同時に金融行政上の新リスクである、新しい違う意味での分野に対してのシステム整備についても、こんなことになるということはやはり許されてはいけないことですので、それは議論されるというのが今後のアメリカなのかなと思いますので。

別にアメリカ政府を代表しているわけでも何でもないので、ただ、考え方としては、私は現状をしっかり理解し、進めると同時に、だからこそ日本は米国とは違う状況であるというのを整理しないと、金融・資本市場の強化をやっぱりやめたほうがいいんだなんていうことに、日本国内でなることを私は一番懸念します。

藤巻さんとは大議論をいつもするので。

○池尾座長

どうもありがとうございました。幅広く議論していただくので、こういう議論をしていただくのは大変結構なんですが、時間的にちょっと限られていますので、本題の方になるべく戻してご意見を伺いたいと思います。

じゃ、柴田さん。

○柴田メンバー

今、レイクさんのおっしゃったことに非常に共感を覚えるわけですが、1つの上場企業のガバナンスが良いからといって、業績が良いことが保障されるわけでもないし、リスクが完璧に消えてなくなるわけでもないということは言えると思います。

先ほどの藤原さんの株主についての質問ですけれども、現実として、上場企業は株主を選ぶことはできません。私どもの会社の株主を見ましても、外国人の株主の比率が高まったり、低まったり、バリュー型の投資家が増えてみたり減ってみたり、グロース型の投資家が増えてみたり減ってみたりということが長い時間軸の間には起きています。そのプロセスの中では、株主とのコミュニケーションというのはとても大事であって、また過去株主であった方々とのコミュニケーションの継続もまた非常に大事です。いったん株式を売却した投資家でも、市場や業績などの状況が変わればまた戻っていらっしゃる可能性があるということかと思います。

会社が行うインベスター・リレーションズ活動や、ディスクロージャー活動というのは、株主の方々が投資判断を行うための判断材料を提供するというもので、そこに重要性があります。さらに、その上で、投資判断材料の1つとして、やはりガバナンスという問題もかなり重要な投資判断材料の一つではあろうということかと思います。

過去、機関投資家としての業務に携わった時期がありましたが、その時の体験から申し上げますと、できればこのガバナンスの善し悪しというものは、ニュートラル要因であってほしいと思います。仮にガバナンスが良かろうが悪かろうが業績の良し悪しにそれほど相関関係がないとすると、最低限の規範であるところの、公私混同がない事、経営者の社外に対する説明責任が厳しい社外取締役に対する説明責任で立派に代替されているというようなプロセスの保障などで、安心をしたいということです。そして機関投資家は業績の見通しの分析に全力を集中したい。

私どもの会社でも、社外の取締役の方々がおられます。社内の人間が内輪で話をしているときには、専門用語が飛び交い、またある種のことは当たり前であるかのごとく思っているわけですけれども、社外の方が来られますと、やはり説明しなければいけないことがかなり増えてまいります。そういったことをきちんと説明するというプロセスを通じて初めて、我々の事業活動を、世間という言葉で代表されるような常識の世界に一歩でも近づけることができるのかなと思います。ですから、ガバナンスの中の論議として、社外取締役の効用というものはかなり重要な点であるという感じを持っております。

○池尾座長

はい、根本さん。

○根本メンバー

金融機関の経営を見ている立場からなんですが、数年前は、ちょうどりそな銀行が国有化になって、委員会設置会社になったというような大きな変化があったこともあって、非常にガバナンスの仕組みについていろいろ、海外事例はとか、ご質問を受けることが多かったんですけれど、最近そういう改革欲が後退しているのかなという気がします。監査役がともかく社外の方が過半になったので、とりあえずはいいんじゃないかというような感じを受けるというところです。

それから、報告の中にあった投資家の議決権の行使のしやすさとか、資料を早く送るとか、こういったことは、それほど大きな制度の改正を必要としないのに、どうしてなされないのか。もしその理由があれば教えていただきたいという気がします。投資家にとってはバリューを感じられるところではないかと思います。

あと、報告の中にもあったんですけれども、やはり実質的な状況というのが投資家としては興味があるところで、社外取締役の方の人数とか要件というのも重要なんですけれども、どのぐらいその議論が本当に深められているのか、株主の利益をそこでディスカスされているのかとか、経営トップに対して違う観点で、取締役が時には反対をされているのかとか、その辺が一番重要なのかなと思っています。

そういう観点を、開示に反映するというのは難しいのかもしれないんですが、コーポレート・ガバナンスの開示というのは、私もいろいろなディスクロージャー誌で見ているんですけれど、かなり形式的なことが書いてあって、経営の方がどういうポリシーを持っていらっしゃるのかとか、どういう観点でこういう社外取締役の方に入ってもらっているのかとか、その哲学的なものが余り伝わってこないというのが考えているところです。

以上です。

○池尾座長

はい。

○藤巻メンバー

先ほどから社外取締役の話は随分出ていると思うんですけれども、基本的に私の米銀での経験からすると、日本ってすごくユニークだと思うんですね。というのは、アメリカの、ちょっとレイクさん、間違えていたらご指摘いただきたいのですが、少なくとも私が勤めていた米銀は、取締役はほとんど全員社外取締役でしたよね。というのは、結局、取締役というのは株主の代表であって、我々従業員の目標というか、従業員は執行役員にはなりたかったけれども、取締役は別の組織だと思っていまして、取締役に入っていた従業員は会長ともう1人ぐらいしかいなかったと思う。あとは皆、社外取締役で。

だから、日本というのは取締役と執行役員が全く分離していないんですけれども、アメリカの場合は全く違うものであるという認識があったんですね。だから、その辺はちょっと多くの方に認識を共有した方がいいんじゃないのかなと。どちらがいいかは別としてですね、と思いました。感想です。

○池尾座長

ほか、いかがでしょうか。

だから、最終的にはパフォーマンスがよければ誰も何も言わないんですけれども、日本企業に関して、やはり現状全体として、パフォーマンスが決して芳しいとは言えなくて、現状だと、年金基金もやっていけないようなパフォーマンスしか日本企業は出してくれていないということであれば、やはりガバナンスのあり方というのが問われても仕方ないというのが現状かなというふうに思っているんですけれども。どうでしょうか。

じゃ、淵田さん、お願いします。

○淵田メンバー

今の点も含めて、二、三、ご質問させていただければと思います。

まず、東証の資料の3ページ、意見募集の結果のところで、合計41件の回答のうち30件が海外機関投資家となっています。国内機関投資家は6件だけです。先ほど、投資家、株主といってもいろいろいらっしゃるということでしたが、この意見募集に答えられた方はどういう方なのかということが当然気になります。また、国内機関投資家がどうしてこんなに少なかったのでしょうか。可能な範囲でお教えいただければと思います。

それから、2番目にレイクさんの資料の中で、現状の課題として株式持合いというのが大きなウェイトを占めております。私も、持合い比率自体は随分低下したものの、昔の持合いというのは、銀行とかあるいは取引先という関係先同士で持ち合うというパターンが多かったのに対し、最近の持合いは、場合によっては本来はライバル会社同士の間でも株を持ち合うようなことも出てきていまして、質的にちょっと変化があるのかなというふうに思っております。

ただ資料では、課題のところで株式持合いが取り上げられてはおりますが、提言のところでは、明確に株式持合いをどうすべきということは表れていません。これは先ほどの東証の資料にありましたように、例えば持合いに関するディスクロージャーというところで対応すべきというふうなお考えなのか、あるいは場合によって法制とか何か別な手段で考えるべきというご意見でいらっしゃるのかという点をお伺いしたいと思います。

もう1点、やはり提言の中で、今、話題にもなりました独立取締役3名という非常に明確なご提言になっているのですが、この点を含めたガバナンスのストラクチャーについては、形式的なことをどうこうすべきという問題ではないのではないかという意見もあります。本日も出ているわけで、さんざん言われてきている指摘だと思います。例えば日本の大手の自動車会社というのは、パフォーマンスでははるかにアメリカの自動車会社よりもよいわけでありますし、しかし、ガバナンスのストラクチャーという点では、米国の自動車会社の方が、教科書的にはいいのかもしれませんし、あるいはエンロンやワールドコムの方が、日本の自動車会社の一部よりもはるかに教科書的にはよいガバナンスストラクチャーだったのかもしれません。

そういうことを考えますと、大きな提言が幾つか柱としてあるわけですけれども、相対的に考えると、このストラクチャーの部分はほかに比べて優先順位といいますか、重要度というのは他と同列に考えて良いのかというふうに、ちょっと素朴に考える次第ですので、ご意見いただければと思います。

○池尾座長

それでは、時間が迫っていますから手短に、まず飛山さんからお願いします。

○飛山メンバー

投資家の名前はちょっと公表しておりませんけれども、これは意見を忌憚なくいただきたいということで、公表しないということで答えていただいております。

基本的には、中長期の投資スタンスを持った機関投資家が中心だということで、外国と日本でこんなに差が出たのは、ガバナンスに対する温度差といいますか、やっぱり日本が外国に比べてちょっと変だねというような感じを外国の方が非常に多く持っておられたということが出ていて、外国の方から非常に多くお答えいただいたということでございます。

○池尾座長

では、レイクさん、お願いします。

○レイク参考人

まず最初の点につきましては、まさにそのとおりでありまして、具体的に持ち株の、それに対して何か規制等でそういうのを解消するべきだという提案ではなく、幾つかのガバナンス強化による説明責任と、かつチェックというものが取締会の位置づけとともにディスクロージャーで実現されていくことによって、懸念が解消され、または説明責任が果たされていくという考え方であります。

ですから、36ページ等に、例えば親子上場の点もそうなんですが、その持合いもそうでありますけれども、どうして持ち合っているのか、例えば競合同士でなぜ持ち合っているのか、子会社上場の場合にも、上場させているけれども、全く株主を平等に扱うつもりはないので、そのつもりでちゃんと買ってくださいということをはっきり言えばいいという、そういう考え方であります。つまり、持株会社、親会社の戦略の一環として存在する会社なんですよということを、しっかり向き合って説明をすればいいのだということであります。

それと同じように、ある意味でこれが一番とても大切な課題だと思いますが、先ほどのストラクチャーと実際にパフォーマンスということでありますが、エンロンの事例が一番やはりそれを象徴しているんだと思うんですが、スタンフォード大学のビジネススクールの元学長が監査委員会の委員長をしていたと。金融工学の大専門家であったと。でも、CEOがその人をだまし、取締役会をだまして経営をしようとすれば、いくらでもそれはできるということだというふうに思います。

逆に、同じように独立社外取締役が全くいない、日本を代表するエクセレント企業がそこにあると。でもその企業がなぜこの激動の時代に変革し続けて、世界のエクセレント企業であり続けるのかというのは、ストラクチャーの問題よりも違う企業風土等があって、そして実現していることなのかもしれませんが、同じようにそれができない企業まで、そういう企業があるから変えてはいけない、変える必要もないということで、ストラクチャーを守るというのも問題であると。

ですから、OECDの考え方をご紹介しましたのは、アメリカでもそうでありますが、最終的には経営者の理念、倫理観、そしてどうやって取締役会と向き合うのか、投資家と向き合うかによって、ストラクチャーはいくらでも生きる、または死ぬということだと思いますが、国際的に見た場合に、やはり独立社外取締役、部下でもない、昔の後輩でもない、関連企業でもない人たちが、ある規模、ある数いて、そして自分の社会での信用というものもあり、そういうものを失いたくないから、チェックをするという役割を果たしてくれている取締役会がそこにあるという方が、ないよりもやはり海外の投資家は安心するのだと思います。成果が出せている企業は独立社外取締役が存在しなくても説明責任が果たされているのかもしれません、パフォーマンスという意味で。でも、そうでない場合には、特にそれが重要になるということだと思いますので、今後の課題としては、本来であれば米国型の独立社外取締役の数を過半数とする方がわかりやすいのかもしれませんが、なぜ3分の1とACCJが提案したかと言えば、それぐらいあれば、一つの機能としてのチェック機能、また牽制機能というのが働くだろうという考え方、それが海外にも理解されるレベルであるという考え方で、3分の1という提案をいたしました。

○池尾座長

はい、どうもありがとうございました。それでは、そろそろ時間なんですが、特にご発言したいという方がおられましたら、あれですが。よろしいでしょうか。

それでは、1回目ということもありまして、全般的な形でコーポレート・ガバナンスに関する課題について取り上げる形になりまして、やや議論しづらかった面もあるかとは思いますが、次回以降はもう少し論点を絞った形で議論をするようにしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、今申し上げたような点も含めて、事務局から連絡をお願いいたします。

○池田市場課長

次回のスタディグループにつきましては、今、池尾先生からありました点を踏まえまして、進め方については今日の議論も踏まえて考えさせていただきたいと思いますけれども、きょう、飛山メンバーの方から若干ありました部分もありますが、市場でどういうことが具体的に起きているのかということも含めて、若干論点を絞りつつ議論をしていきたいというふうに考えております。

日程等につきましては、追って事務局の方からご連絡をさせていただきます。

○池尾座長

はい、どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議は終了とさせていただきます。皆さん、ご熱心にどうもありがとうございました。

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