金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第17回)議事要旨

1. 日時:

平成20年12月4日(木)14時00分~16時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3. 議題

  • 上場会社等のコーポレート・ガバナンスのあり方について

  • 事務局説明

  • 東京証券取引所説明

  • 討議

4. 議事内容

  • 上記について事務局及び東京証券取引所からの説明の後、討議が行われた。

  • 主なやりとりは以下のとおり。

    • 新株発行について取締役会決議のみで行われるとの説明があったが、日本の取締役会は決して株主の代表となっていない。他方、米国の場合、取締役会は株主の代表となっている。なぜなら、米国の経営者は、大量のストックオプションを保有しており、最大の個人株主であるため、自分の損になるような、すなわち株主の損になるような判断はしないからである。取締役会での判断を間違えると、自分の財産を失うことになる。従って、新株発行について、日米共に取締役会決議といっても、内情は異なる。日本の取締役会は経営者の代表となっているので、経営者と株主の利害関係については日米で差がある。

    • 取締役会が株主の代表となっていない中で、会社のあり方の根本を変えるようなことが、株主が知らないところで、取締役会決議のみで行われるというのは、正常とは思えない。また、支配権を持ってしまうような割当先について、なぜ情報開示されないのか、という疑問がある。

    • 新株発行については、株主総会を開いて株主の声を聞くという方向に変えるべきではないか。

    • 株主の声を聞くといっても、何でも聞かれては困るので、取締役会をもっと信頼できるものに変える必要があると思う。

    • ドイツ、フランス等ではなぜ原則株主割当なのかというと、株主・投資家が個人であることに対する市民社会の強い合意があるからである。これに対し、日本では、個人株主が少ない。まずは、個人と個人のために運用する機関投資家を増やすために、公募原則を確立すべきではないか。

    • 公正取引の観点からは、大規模な第三者割当増資や、割当先が不透明な場合等は、当該ファイナンスに伴う様々な株価の動きによって、株価操縦、インサイダー取引、粉飾等につながるおそれがあるという問題がある。この数年、ファイナンス発表後に破綻したり、資金が本業とは関係のないところに流出したり、それが反社会的勢力とつながっていることもあるなど、あやしいファイナンスがかなり増えてきており、発行自体は違法でなくても、流通市場も含めて全体として問題である。

    • 第三者割当増資は、企業再建や技術革新を行う場合等における機動的な資金調達手段として必要な場合がある。

    • 第三者割当増資が必要な場合があるため、取引所において数値基準などで一律に規制することは好ましくないとの指摘があるが、そうは言っても、ある程度は数値基準を入れる必要があるのではないか。

    • 第三者割当増資に関しては、国際的な資本市場の原則である少数株主の保護について、何らかの法律上、若しくは取引所規則による規制が必要であると思う。

    • 取引所による自主規制は法令による規制よりも大事であり、取引所規則でやるべきことがたくさんあるのではないか。英国でも取引所規則で規制を行っている。

    • MSCBについてはイリーガルな商品だと思う。MSCBの発行によって既存株主の株式の希薄化を招くだけでなく、株価が下がることも企業は認識しているはず。また、MSCBを発行するような企業は、発行コストが高くても支払うため、発行を手伝う証券会社にもインセンティブを与えるのではないか。

    • MSCBはそもそも社債と言えるのか。どんな条件が付与されていても「社債」という名前を最後に付ければ全て社債であるとすることが問題。

    • 端株制度を利用したキャッシュアウトについては、合法だとしても邪道だと思う。議決権の80%以上でも90%以上でもいいが、明確なガイドラインがあった方がいい。一方で、少数株主が不必要な権利を主張しないよう、90%以上というのは一つの妥当な基準なのではないか。はっきりルール化してもらえれば、端株制度を利用しなくてすむだろう。

    • ほとんどの問題が会社法が機能していないという根本的な問題。平成17年に会社法を制定したとき、従来の株主保護のための事前規制を180度転換し、マーケットメカニズムと経営者を信頼するという米国モデルに則って、企業が自分の裁量で何でもできるという構成に変えた。

    • ただ、米国の場合は、連邦証券取引法と州会社法の二元的システムになっており、州会社法レベルでの規制はゆるいが、連邦証券取引法で枠をはめている。しかしながら、日本の場合は、昭和25年に商法を改正して米国型の制度を導入した際、州会社法をモデルにする一方、証券取引法については連邦証券取引法をモデルにしたものの、日本の証券取引所が米国の証券取引所のような自主規制ができたかというとそうではない。例えば、NYSE上場規則では、当局による監督権限を背景に、発行済株式総数の20%以上の新株発行等の場合は株主総会承認としているが、日本ではこのような上場規則は導入せず、会社法の方だけを導入した。

    • 従来は、会社法でガチガチに規制していたから問題が表面化しなかったが、今では、会社法の規制がゆるくなった結果、経営者も法律上可能なら何でもやるという風になってしまった。

    • 会社は基本的には株主のもので、株主の意思に従うべきであり、株主総会の特別決議の要件がゆるいなど、株主の意思を問う方法に問題があるため、会社法の規律を見直す必要があるのではないか。

    • 会社法の規律が機能していない中では、日本の資本市場は世界から信頼されなくなってしまうだろう。

(以 上)

問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る