金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」(第1回) 議事録

  • 1.日時:

    令和2年12月18日(金)15時00分~17時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」(第1回)
令和2年12月18日
 
【黒沼座長】
 では、定刻になりましたので、ただいまより「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」第1回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ誠にありがとうございます。

 私は、当タスクフォースの座長を務めさせていただきます、早稲田大学の黒沼でございます。どうぞよろしくお願いします。

 本日の会合につきまして、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とし、一般傍聴はなしとさせていただいております。また、メディアの関係者の方々は、金融庁内の別室で傍聴いただいております。

 初めに、当タスクフォースについて御説明したいと思います。本年9月11日に開催されました金融審議会総会・金融分科会合同会合において、大臣からいただきました諮問を受けて、市場制度ワーキング・グループが設置されました。そして、本年12月1日に開催されました市場制度ワーキング・グループ第4回会合において、最良執行方針等に関する規制の点検・検討といった検討課題については、専門性・個別性が特に高いため、市場制度ワーキング・グループの下に当タスクフォースを設置して議論することについて、当タスクフォースの委員の選任も含めて、市場制度ワーキング・グループの座長である神田委員に一任されました。これを受けて、当タスクフォースが設置されたわけでございます。

 本日は、第1回会合でございますので、初めに当タスクフォースに御参加いただく委員の皆様を御紹介したいと思いますが、お手元に資料1として名簿がございますので、そちらを御覧いただければと存じます。また、オブザーバーにつきましても、同様に資料1に記載しております。事務局につきましても、お手元の座席表をもって御紹介に代えさせていただきます。

 次に、会議の運営について、市場制度ワーキング・グループと同様とさせていただくことを御了承、御承認いただきたいと思います。

 会議は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、今後も必要に応じて、本日のようにオンライン開催としたいと考えております。

 議事の公開については、オンライン開催ではなく、メンバーにお集まりいただく場合には、通常どおりメディア関係者の皆様や一般の傍聴をありとし、本日のようにオンライン開催の場合には、一般の傍聴はなしとした上で、メディア関係者の皆様には、金融庁内の別室において傍聴いただくこととしたいと考えております。

 いずれの場合も、議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させていただきたいと考えております。

 また、私が会議に出席できない場合の当タスクフォースの座長代理につきましては、上柳委員にお願いできればと考えております。皆様、よろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

 特に御異議ないようですので、それでは、そのように進めさせていただきます。上柳委員、どうかよろしくお願いいたします。

【上柳委員】  
 どうぞよろしくお願いします。

【黒沼座長】  
 議事に移る前に、2点注意事項がございます。まず、御発言されない間は、必ずミュート設定にしていただくようお願いします。御発言される際にミュートを解除していただき、御発言が終わられましたら、再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。

 次に、御発言を希望される際は、オンライン会議システム上のチャット上にて、必ず全員宛てにお名前または会社名などの組織名を御入力ください。そちらを確認して私が指名いたしますので、御自身のお名前を名乗っていただいた上、御発言ください。

 それでは、議事に移ろうと思います。

 本日は、金融商品取引業者等の最良執行方針等をテーマに議論いたします。

 それでは、事務局より説明をお願いします。

【繁本市場業務監理官】  
 企画市場局市場課の繁本でございます。それでは、お手元の資料に沿って御説明させていただきます。

 資料の表紙をおめくりいただきまして、目次でございます。本日の御説明を、大きく分けて3つのパートに分けております。1つ目が、取引所・PTSに関する制度等、2つ目が、最良執行方針等、3つ目が検討課題でございます。

 それでは、資料をおめくりいただきまして、右下のほうにページ番号を振ってありますので、御確認いただきながら御覧いただければと思います。

 まず、1ページを御覧ください。過去の主な改正等のまとめということで、年表風に整理をさせていただいております。こちらに掲載しておりますのは、取引所、それからPTS、さらにはダークプールを含めた取引施設等に関するこれまでの制度の改正を年表風にまとめております。このタスクフォースで御議論いただく最良執行方針等に関する規制につきましては、赤く囲んであるように、2005年に導入されたものでございます。主な内容を、2ページ以降の資料に沿って御説明させていただきます。

 まず、2ページを御覧ください。1998年でございますが、この年、取引所集中義務が撤廃され、それに合わせて私設取引システム(PTS)の認可制が導入されたところでございます。取引所集中義務、(1)でございますが、市場間競争を促進し、投資家の取引ニーズの多様化に対応するといった目的で解禁されたところでございます。2行目、3行目あたりでございますが、顧客にとって最良の執行となる市場に注文を自動回送するシステムが存在しないことから、顧客が取引所外と明示しない限り取引所において執行するといった取引所取引の原則も、この際に併せて課されたところでございます。

 また、PTSにつきましては、取引所ではなく証券業と整理された上で、認可制で導入されたところでございます。

 3ページを御覧ください。2000年にPTS開設等に係る指針が策定されております。この中では、(1)にございますように、PTS業務における売買価格決定方式の拡充が行われるとともに、これに伴いまして、一定の価格形成機能をPTSが有するようになったということで、公正な取引の確保や投資者保護の観点から幾つかのルールが導入されております。(2)の①、②でございますが、1つは、気配情報等の外部公表、もう一つは、取引高シェアに応じて、例えば売買管理等の体制を強化していただくといった数量基準の導入でございます。

 その下、2005年でございますが、2005年には先ほど申し上げた取引所取引の原則が、取引所とPTSの競争条件のイコールフッティング確保の観点から撤廃されました。また、これに合わせて、どこで取引を執行するのかといったことについて、完全なブローカー任せではなく、やはり投資家保護のために一定の規範が必要ということで、最良執行方針等に関する規制が導入されております。このほか、最良執行の確保に必要な気配情報等のリアルタイム公表、さらには2000年に続きまして、PTS業務における売買価格決定方式の拡充が行われております。

 この累次にわたる売買価格決定方式の拡充につきましては、4ページで整理しております。上の2つが98年当時からあったもので、市場価格、これは取引所の価格で売買する方式。それから、顧客間交渉方式。お客さん同士のネゴシエーションの結果、成立した条件で、PTS上で約定をつけるといったものでございます。その下の2つが2000年に導入されたもので、顧客注文対当方式は、言わば成行注文や板寄せのないオークション方式のようなもの。それから、その下の売買気配提示方式は、マーケットメイク方式ですが、恒常的な気配提示義務ですとか、それに基づく約定義務が課されていないという意味で、当時の店頭市場、JASDAQで行われていたマーケットメイク方式よりも価格形成機能は低いと整理されたものでございます。これら4つの方式につきましては、一定の取引高シェアを超えた場合には、売買管理やシステム容量のチェック等といった義務が課され、さらに第2段階に達すると取引所になってくださいということで、右側の資料に書いてあるとおりの基準が課されております。

 一番下の競売買方式が2005年に導入された方法でして、こちらは取引所のオークション方式と同様の方式になります。これに伴いまして、取引量で取引所とPTSの区別をということで、全体の1%、あるいは個別銘柄について10%といったシェアを超えた場合には取引所になってくださいといった規制が導入されたところでございます。

 続きまして、5ページを御覧ください。2010年にダークプールがPTSに該当しないことを明確化といった改正が行われています。

 6ページの図を御覧ください。PTSとダークプールは、投資家からの注文を証券会社がシステム的につけあわせをするといった意味では共通しておりますが、PTSが気配も開示した上で、市場的な役割を果たしているのに対しまして、ダークプールは、むしろマーケットインパクト等を意識した機関投資家があまり気配を開示されないまま取引を約定したいといったニーズに応えるといった一面もあることから、気配の開示義務は課されておりません。他方で、一定の約定後の情報は明示するといった観点から、証券会社のシステム内で約定までつけるのではなく、約定については取引所の立会外市場で行うといったことを要件に、PTSの認可は不要と整理されたところでございます。

 7ページでございますが、2018年の改正について紹介します。(1)でございますが、高速取引行為の登録制の導入、いわゆるHFTでございますが、こちらにつきましては、HFTの取引等についての実態把握を図る観点から、登録制を導入するとともに、例えば取引戦略を届け出る、取引記録を作成・保存義務を課す、あるいは当局の監督権限を整備するといった改正が行われたところでございまして、現在、HFTは55者が登録している状況にございます。また、この改正に基づいて、現在、日本取引所グループ等と連携し、金融庁においてHFTの取引についてモニタリングを行っている状況でございます。

 続きまして、8ページを御覧ください。8ページは2019年ですが、この際は、PTSの信用取引が解禁されております。利益相反防止措置を講ずる、あるいは取引所の自主規制機能と同等の措置を講ずるといったことを前提に、PTSの信用取引が解禁されたところでございます。

 9ページを御覧ください。本年2020年ですが、先ほど御紹介したダークプールにつきまして、個人投資家向けのダークプールが拡大しているという状況を踏まえて、ダークプールの実態把握を行うため、ダークプール取引の透明化等に向けた措置を行っております。具体的には、顧客に対して、証券会社がダークプールへの回送条件等を明確にするといったこと、あるいは価格改善の実効性の確保に向けて、取引情報の記録・保管を行い、当局でもそれを検証できるようにすることといった対応を行っております。

 以上が、これまでの主な改正の経緯でございます。

 続きまして、10ページ、11ページで、これまでの審議会等における市場間競争についての考え方を御紹介しております。

 10ページの上のほうは、1997年の証券取引審議会、取引所集中義務を撤廃した際の議論でございます。一番上の丸、アンダーラインの部分を御覧ください。取引を証券取引所等に集中させることが、効率・公正の両面で最も効率的と考えられてきたと。しかしながら、一番下のアンダーラインですが、様々な資金調達者、投資家が、それぞれの多様なニーズに従って市場を選択する、あるいは市場が相互に競争し合うことにより、全体として市場システムの効率化・機能強化が図られると、こういったことを狙いに、取引所集中原則が撤廃され、PTSが導入されたところでございます。

 続きましてその下、2003年の金融審議会の報告でございます。このときの議論で、取引所取引の原則が撤廃され、本日御議論いただく最良執行方針等が導入されたものでございます。

 一番上の丸ですが、東証への取引の集中傾向が続いているのは、市場参加者が流動性、利便性を求めたがゆえの自然な帰結、また、上場企業も重複上場を見直す傾向にあり、一極集中が加速するといった現状認識が示された上で、その下の丸でございますが、市場間競争を促進するためには、有効な対抗勢力が存在した方が、東証自身も経営効率に向けた不断のインセンティブが働き、ガバナンス上有効と考えられるといった見解が示されたところでございます。

 続きまして、11ページを御覧ください。こちらは2017年の金融審議会の報告書でございます。PTSへの信用取引等を解禁した際の議論でございます。真ん中よりちょっと下、アンダーラインのところにございますが、ここでは過去の市場間競争につきまして、ToSNeTの整備が進められてきた、あるいは、PTSがティック・サイズを先行して縮小し、取引所が追随することにより、市場参加者の利便性向上が図られてきたとの指摘があるといった認識を示した上で、その下でございますが、こうした点を踏まえると、我が国においても、市場間競争により期待されるイノベーションの喚起や利用者のニーズに合った取引手法の提供促進といった効果が一定程度認められ、市場間競争の意義は今日においても失われていないといった認識が示されたところでございます。

 12ページは、市場間競争につきましてグローバルな議論ということで、IOSCOの報告書の内容を抜粋しております。2001年、2011年のレポートから抜いているもので若干古いんですが、大きな考え方は現在も変わっていないのではないかと考えております。

 メリットとしましては、独占的慣行の打破と効率性の向上、取引手数料の引下げ効果、イノベーションの喚起、より利用者のニーズに合った様々な取引手法の提供促進といったことが挙げられています。

 デメリットに関しましては、市場の分断により最良価格の探索に係るコストが増大するおそれ、新たな取引方法やビジネスモデルの導入が市場全体の利益にならない可能性、流動性の拡散がボラティリティを増大させる結果を招くおそれといったものが指摘されております。

 13ページは、日本の取引施設等の変遷ということでございます。証券取引所につきましても、JASDAQを含めて以前は9あったのが、現在では現物の株を取り扱う取引所は東京、名古屋、福岡、札幌の4つになっております。株式のPTSにつきましても、これまで8社参入しておりますが、現在も営業を続けているのはジャパンネクスト、チャイエックス・ジャパンの両社、いずれもPTS専業の証券会社ということになりますが、そういった形になっております。

 14ページを御覧ください。日本における現物取引のマーケットシェアの状況でございます。上のほう、青い線が東証でございまして、立会内とToSNeTを含めたところで若干数字が変わっておりますが、いずれにせよ東証のシェアは70%から90%程度で推移しております。他方、PTSは赤い線になりますが、2011年以降、5%程度で推移した後、直近では7、8%程度に上昇しております。信用取引の解禁も1つのきっかけになったといった言われ方もされていると承知しております。

 15ページでございますが、米国におけるマーケットのシェアの概況でございます。米国では、取引所全体のシェアが6割から7割程度、OTC(店頭取引)と取引所外取引システム(ATS)、PTSに類似したATSを合わせたシェアが3割から4割程度で推移しております。なお、下の注1にございますが、取引所の個別のシェアの最大はNASDAQですが、15%程度でございます。取引所の数も16、ATSの数は51といったことで、大変多くの取引施設が競争している状況でございます。

 16ページは、ヨーロッパにおけるマーケットシェアの概況でございます。イギリス、フランス、ドイツのグラフを載せておりますが、3国共通して、取引所全体のシェアは6、7割程度で推移、残りの幾つかをPTSに類似したMTFと呼ばれる取引施設が占めております。ただし、この数字は店頭(OTC)が除かれておりまして、欧州ではOTCが一定のシェアを占めているというふうに言われているところでございます。

 17ページを御覧ください。17ページはちょっとまた違う話でございますが、御参考として、日証協さんの個人投資家の証券投資に関する意識調査の結果の抜粋をつけております。この中、真ん中あたり、投資方針等の株式のところでございますが、概ね長期保有といった方が51%、配当重視といった方が19%、キャピタルゲイン重視で短期間に売却するといった方が13%程度となっております。またその下、平均保有期間ですが、10年以上が25%、5年以上が43%である一方で、1か月未満といった方が3.8%程度いらっしゃるという状況でございます。

 続きまして、大きな2ポツの最良執行方針等の御説明をさせていただきます。

 19ページを御覧ください。まずは最良執行方針等に関する規制の導入の経緯でございます。当時、こうした導入に関して議論が行われた取引所のあり方に関するワーキング・グループ、さらにはその親部会に当たります第一部会のそれぞれの報告書の抜粋を掲載しております。大きな方向性につきましては、19ページのワーキング・グループの報告の1つ目の丸を御覧ください。JASDAQの取引所化やPTS等の制度整備が進むことにより、同一の銘柄が複数の市場において活発に取引され、投資家が取引を行う市場等の選択肢が広がることから、投資家保護のため、最良執行を確保することが必要であるとされたところでございます。

 その下は、先ほど申し上げた取引所取引の原則が取引所に有利に働き、PTS等の発達を妨げ、市場間競争を抑制しているとの指摘が記載されたところでございます。

 こうした考え方に基づきまして、19ページの下の箱のところですけれども、市場間競争を促進するために取引所取引の原則が見直された際に、投資家保護のために最良執行方針等に関する規制が導入されたと言えるかと思います。

 続きまして、最良執行方針の中身に関する考え方については、20ページを御覧ください。ワーキング・グループの報告の上の丸でございますが、我が国における市場インフラの現状を踏まえれば、最良執行方針については、価格、コスト、スピード、執行可能性といった条件を勘案しつつ、顧客にとって最良の条件で執行する義務としてはどうかといったことが言われております。

 またその下、第一部会の報告書におきましても、大多数の投資家にとって取引所で執行することが利益に合致している実情を踏まえ、価格のみならず、様々な要素を総合的に勘案して執行する義務とされたところでございます。

 またその下は、制度を施行する際のパブリックコメントで金融庁が回答した内容でございますが、我が国の証券市場の状況に鑑みれば、執行可能性を重視し流動性の最も高い市場で執行することも「最良の取引の条件」で執行する方法の1つに該当し得るといった見解が示されたところでございます。

 続きまして、21ページを御覧ください。ここからは最良執行方針等に関する規制の枠組みについての御紹介でございます。1つ目の丸ですが、金商業者は、顧客の注文について、最良執行方針等を定めなければならないとされております。

 2つ目の丸ですが、金商業者は、最良執行方針等を公表しなければならない。また3つ目の丸ですが、金商業者は、最良執行方針等に従い、注文を執行しなければならないと。

 また、22ページの一番上の丸ですが、金商業者等は、顧客の注文を受けようとするときは、最良執行方針等を記載した書面を交付しなければならない。

 22ページの3つ目の丸ですが、金商業者は顧客の注文を執行した後、当該顧客から求められたときは、最良執行説明書を当該顧客に交付しなければならない。こういった規制の枠組みによって、現在の最良執行方針等の規制は行われているところでございます。

 23ページを御覧ください。こちらは日証協さんが、各証券会社に提供している最良執行方針の参考モデルになります。この中では、2ポツの(1)でございますが、上場株券等に係る注文はすべて取引所市場に取り次ぐこととし、PTSを含む取引所外売買の取扱いは行いませんといったモデルが示されております。また、その理由につきまして、流動性、約定可能性、取引のスピード等の面で優れているといったことが掲げられております。また、4ポツでは、顧客から執行方法に関する指示があった場合には、その指示のあった方法で執行するといったことも書かれているところでございます。

 続きまして、24ページを御覧ください。24ページは、価格を優先した最良執行方針を使う上では必要と考えられる、Smart Order Routing(SOR)について御紹介しております。SORとはということで、複数の市場から最良の条件を提示している市場を検索し、注文を執行するシステムでございます。

 このSORの注文執行のルールにつきましては、それぞれ導入している証券会社によってシステム、あるいはその執行ルールも異なっておりますが、大きく分けると大体この2つのパターンに分けられるのではないかと考えております。左側でございますけれども、最良気配を提示している市場から順にIOC注文をするものということで、気配の良い市場に注文を出して、残りを次の市場に回送するといった、順次注文を回送していくやり方でございます。②でございますが、複数の市場に対して分割して同時にIOC注文をするものということで、一番気配の良い市場で全ての数量を売れればいいんですけれども、必ずしもそうではないので、そこは最も良い気配のある市場に、その気配に応じた数量、次の良い気配を出している市場に、その気配の数量といった形で、注文を分割して同時に発注するものになります。

 次のポツですが、いずれの場合であっても、最良の条件を提示している市場を検索する際は、東証の気配を基準として、それよりも良い気配を提示している市場はないかといった検索をするようなシステムになっているようでございます。

 25ページを御覧ください。SORのサービスの提供状況でございますが、現在、PTSの取引参加者である証券会社の多くは、SORのサービスをお客さんに提供しております。ただし、ネット証券の多くは個人投資家に対してSORのサービスを提供しているのに対しまして、そのほかの証券会社の多くは、機関投資家に対してのみSORのサービスを提供、個人投資家には提供しないといった現状にあるようでございます。

 その下の矢尻ですが、いずれにしましても、全体として見れば、最良執行方針に関する規制が導入された頃と比べますと、価格を重視した注文執行が可能と。このSORを活用することによって可能になっていると考えられます。他方で、SORによる注文執行のルールを個別に見ていきますと、必ずしも価格だけではなくて、執行可能性などのそのほかの要素も考慮していると思われるものもございますので、そのあたりは今後さらに分析、議論をしていければと思っております。

 最後に、最良執行方針等との関係でございますが、SORのサービスを提供している証券会社のうち、SORに関して最良執行方針等に記載のある証券会社もございますが、全く書いていない証券会社もございます。こうした証券会社におきましては、SORでの注文執行は顧客からの執行方法に関する指示に基づくものと。先ほど日証協さんのひな形でもそうした記載がございましたが、そうしたものとして注文執行はされていると承知しております。

 続きまして、26ページですが、外国の例を載せております。まずアメリカですが、アメリカでは、コモンロー上の忠実義務を根拠に、ブローカーに最良執行義務があると解されてきたと承知しております。また、1975年にNational Market Systemといったものが構築されまして、当時からアメリカは複数の市場、多数の市場があった状況ですが、それぞれの市場における気配情報等を統合配信する制度が整備されました。また78年には、Intermarket Trading Systemが構築されまして、National Market Systemによる統合気配、これをSIP feedと言うようですが、こちらに基づきまして、最良気配のある市場に、ほかの市場は注文を回送する義務を負っているといったことのようでございます。アメリカでは、これらの制度に基づいて注文執行する場合、原則としてブローカーの最良執行義務違反は問われないと承知しております。

 他方、下の矢印でございますが、HFTなどの高度な技術を有する一部の投資家は、各市場から直接気配情報の提供を受けまして、その情報それぞれを自ら統合することにより、公的な統合気配、SIP feedに依拠するよりも早く情報を入手し、それに基づいて注文することが可能となっていることのようでして、この結果、SIP feedに依拠した投資家による注文を執行しようとすると、もはやSIP feedに表示されていた最良気配では執行できないといった事態も生じているようでございます。

 続きまして、27ページを御覧ください。こちらではEUとオーストラリアの事例を紹介しております。両国・地域とも非常に似通った規制になっておりまして、ブローカーに対して最良執行義務は課されておりますが、アメリカにおけるNational Market SystemやIntermarket Trading Systemのような制度は採用されていません。また、最良執行義務につきましては、機関投資家については、価格のみならず様々な要素を総合的に勘案して執行する義務とされている一方で、個人投資家につきましては、価格と手数料などのコストを考慮して執行すべきものとされております。

 28ページは、今申し上げた規制の概要をまとめたものでございます。

 最後に、検討課題でございます。30ページを御覧ください。検討課題、大きく3つに分けて記載させていただいております。

 まず1つ目、注文執行のあり方でございます。投資家の利益を踏まえて注文を執行するに当たり、証券会社が考慮すべき要素にはどのようなものがあるのか、価格、コスト、スピード、執行可能性などが言われておりますが、ほかにこれらも含めてどのようなものがあるのかといった論点。2つ目は、投資家から執行方法に関する指示がある場合について、証券会社は当該指示に基づいて執行すれば足りると考えられるのかといった論点。

 続きまして、大きな2つ目、機関投資家に対する最良執行方針等でございまして、かぎ括弧のところは、最良執行義務の内容としては、大多数の投資家にとって取引所で執行することが利益に合致している実情を踏まえ、価格のみならず、コスト、スピード、執行可能性など様々な要素を総合的に勘案して執行する義務と。これは当時の金融審議会の報告で書かれた、導入当時の考え方でございますが、SORの普及やPTSのシェアの上昇などといった環境変化を踏まえて見直す点があるのかといった論点でございます。

 3ポツの個人投資家に対する最良執行方針等につきましても、上の矢尻は同様の論点でございます。その上で、個人投資家の最良執行方針等につきましては、以下の点についてどのように考えるかということで、幾つかの論点を追記させていただいています。1つ目、SORのメリット、価格改善などが考えられますが、それからデメリット、これはコスト等が考えられますが、それについてどう考えるか。2つ目は、個人投資家に対してSORのサービスを提供していない証券会社、PTSの取引参加者ではない証券会社、当然SORは使っていないと思われますが、こうした証券会社における最良執行についてどのように考えるか。3つ目、個人投資家と高速取引行為者との間のスピード格差が市場に与える影響についてどのように考えるか。あるいは、時間差から生じる価格差を利用した投資戦略についてどのように考えるかといった検討課題があるかと考えております。

 事務局からの説明は以上でございます。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明を踏まえて御議論いただければと思います。

 宇野先生、お願いします。

【宇野委員】  
 ありがとうございます。早稲田大学の宇野です。

 まず、現在の制度というのは、価格だけではなくて、執行においてはコストやスピード、そして確実性、これらを総合的に考慮することが大事であるということから、現在の最良執行方針というものが定められていると思いますが、執行の方法の選択、質的な選択の部分と、それから、実際に注文を出す時点において、アベイラブルな最良の価格が取得できるかどうかという、2つに分けて考えるべきではないかなと思っております。

 前者の部分に関して言いますと、これは主として大規模な資産運用をしている機関投資家において非常に重視されなければならない要因で、それほど大きな注文は出さない個人投資家においては、やはりどのような価格で執行できるのか、あるいはどのようなコストがかかるのかという、この2点が一番重要な要因になってくるのかなと思います。

 そういう意味では、今回機関投資家に対する最良執行方針と個人投資家というのを違った視点で別に扱おうというふうに考えるという考え方については、違和感はないといいますか、より現実的で妥当な最良執行方針というものを定められるのではないかなと感じております。

 先ほどの例でいきますと、ヨーロッパないしは欧州で定められているような考え方というのが、私の考えるところにも近いかなと思います。現在の制度が導入されてから、マーケットの多様化も進展しておりますし、発注技術に関する進展もございます。そういう点を踏まえますと、大多数の投資家にとって取引所で執行することが合理的であるというところから出発する現在の最良執行義務というのは、少し見直す必要があるのかなと考えております。

 情報の収集、つまり複数の市場で執行が可能な場合に、どの市場に最良価格があるかということを収集する能力は、個人投資家の場合には非常に限られていると思いますので、そういう意味で、このSmart Order Routingのような技術的な進歩がある、これが普及してきているということを踏まえて、こうしたものを積極的に活用した執行機会というものを、最良執行という考え方の中に取り込んでいくことはメリットがあるのではないかなと思います。ただ、SORを使用した執行には特有のデメリットみたいなものもございますので、投資家によっては取引所での執行を優先して好むという投資家も当然いるかと思いますので、これは投資家の選択の余地を残すという意味では、全てSOR経由ではなければいけないということではないというふうに、私は考えております。

 以上でございます。聞こえますでしょうか。

【黒沼座長】  
 はい、よく聞こえました。どうもありがとうございます。それでは、フィデリティ投信の久保様、お願いします。

【久保委員】  
 ありがとうございます。フィデリティ投信の久保でございます。本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。

 私のほうからは、最良執行方針に関して、価格優先の義務という点に主に焦点を当てて、少しテクニカルな部分は今後の論点として、意見の概略を申し上げたいと思います。

 まず、機関投資家の立場、機関投資家に対する最良執行義務ということに関しましては、今、宇野先生からもありましたけれども、こういう議論において、機関投資家と個人を分けるという考え方は適切だと思っております。現在においても、私ども機関投資家としましては、必ずしも価格のみを優先して証券会社さんを選んでいるわけではなく、様々な視点、それから、投資元となっておりますファンド、あるいはお客様の視点から、適切な優先すべき事項を選んで証券会社さんを選んでおりますので、こういった対応というのは、個別の機関投資家ごとに決められる、そういったあり方が適切ではないかと思っております。

 続きまして、個人投資家についてでございますが、先にちょっと結論めいた話になりますが、価格優先という形を、とりわけ一律的に適用するというような発想については、若干懐疑的でございます。現在まででもSORを既に利用している、例えばネット系の証券さんなんていうのはかなり増えてきているということは事実でございます。ただ一方で、そうでない証券会社さんも、あるいは大手さんも含めて、とりわけ店頭で取引を行っているような証券会社さんの場合は、むしろそういったケースは少ない。一律に課すということは、こういった場合の証券会社それぞれにおける特性といいますか、ビジネスモデルといいますか、例えば顧客、あるいは得意とするマーケット、あるいはその手法など、場合によっては減殺してしまうというような側面もあるのではないか。

 例えば、個人投資家さんという属性でも、デイトレーダーに代表されるような、とにかくスピードと価格が最も重要であるという特性を持った個人投資家さんがある一方で、恐らくより一般的には、中長期的な資産形成というものが、証券業協会さんの調査でも出されておりましたけれども、こちらのほうの個人投資家さんの特性というのが、より多いというふうなことが言えるかと思う中で、投資家さんが約定価格の数十銭単位の違いということよりも、それ以外にアドバイスなどのような証券会社さんからのサービスというものが、そういった顧客にとっては非常に重要であるといったケースがかなり多いのではないかというふうには思います。

 一方で、マーケットの側面から見ても、これは私が言うより皆さんのほうがそういう御認識は強いかと思いますけれども、投資家の多様性という意味では、例えば我々機関投資家、あるいは金融機関等の投資家に対して、個人投資家というのは非常にまた違った市場参加者の特性を持っている。例えば、今年の3月のコロナの混乱のときでも、動き方はそれぞれのマーケット参加者によって大きく違ったものだと思います。そういったことからも、市場の多様性を維持するというか、健全な市場の多様性を維持していくという意味においても、価格のみに焦点を当てるということによって、その特性が若干損なわれることがあるとすると、これはあまり好ましいことではないのではないか。既に議論として出ていますけれども、例えば中堅証券さんで、代々資産家の資産運用のお手伝いをされているというようなケースで、そこに新たなシステムコストを過大にかけて、それが結果として投資家さんに転嫁されるというような形になるというのは、これはやはり投資家保護とは必ずしも言い切れないというところがあろうかと思います。

 最後に、全く別の視点になりますけれども、最近の金融庁さんの行政アプローチ手法と申しますか、プリンシプルベースのアプローチというのは、御承知のとおりかと思うんですが、個人的にはプリンシプルベースの行政というのは、我が国においては非常によい結果を残そうと、あるいは残してきている部分が出てきていると考えています。この代表が、スチュワードシップ・コードであろうかと。こちらはその導入といいますか、企画といいますか、こういった考え方が始まった当初から私も非常に注目しておりましたけれども、金融庁さんの非常に行き届いたフォローアップ、あるいは各いろいろな参加者、関係者への聞き取りだとか、そういったものを細かく考慮したコードへの反映だとか、そういったフォローアップを受けて、基本的には金融機関それぞれがスチュワードシップを果たしてきていると。一方で、アセットオーナーの年金さんをはじめとして、こういった参加者の枠組みの向上というものも自立的に順回転といいますか、ポジティブに回転させていく、そういう枠組みに育ってきている。それからもう一つ、顧客本位の業務運営方針につきましても、正直これはまだまだこれからというところはあろうかと思いますが、出だしとしましては、金融機関、私どもを含めまして、自らの強みとか、あるいは改善すべき点というのを、個々に見直す良い材料として理解が進みつつあると。今まではこんなことをやらなきゃいけないのかというのが、それが大分自らを見直して改善する材料として使われ出してきているのではないかなと思います。こういった事例を踏まえると、最良執行方針のあり方についても、やはりいろいろなサービス提供者、それからいろんな個人投資家さんの背景等を考えると、一律というよりもプリンシプル的なアプローチ。例えば、今と何も変えないというわけではなくて、開示という方法を通じて、投資家さんの理解を進めて、結果として各投資家さんのニーズに合った、あるいは証券会社さんのリソース、あるいは強みを生かした、そういった施策につなげていくというやり方が望ましいのではないかと考えています。

 私の意見としましては以上でございます。ありがとうございました。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。それでは、大和総研の横山様、お願いします。

【横山委員】  
 黒沼先生、ありがとうございます。大和総研、横山でございます。すみません、初回ということで、最良執行に関しての基本的な考えと、あと検討課題として挙がっておられます最良執行についての考慮要素について、ちょっと意見を述べさせていただければと思います。

 最良執行義務ないし最良執行方針の策定ということについて、そもそも何を目的にしているのかというところも、やっぱりちょっと立ち止まって考える必要があるかなと考えております。私なりに考えたところ、1つは市場全体を見たという前提の上で、いわゆる市場間競争、事務局の資料の12ページでしょうか、あるいはIOSCOが指摘されているような、メリットを享受しつつも、デメリットの部分を乗り越えて、金商法の目的にもありますような、公正な価格形成というのを明確に行っていくと。そういった観点というものと、もう一つは小さなところにスポットを当てますけれども、業者と顧客との関係というところにスポットを当てて、例えばアメリカでこの問題ではスタートが忠実義務から始まったというのは非常に示唆的だと私は思っているんですけれども、例えば、我が国の金商法では公正・誠実義務であるとか、利益相反管理であるとか、そういった観点からの側面があるのかなと思っております。

 前者につきましては、もしこれを貫徹しようということになりますと、言わば市場施設が多数分立しているという状況の中であったとしても、例えば、アメリカのNMSにありますような気配統合であるとか、あるいは最良条件を探索して注文が適切に回送されるであるとか、そういったところを含めて、分立はしているけれども、全体として見るとあたかも1つの市場として機能していると、そういったところを目指すということになるかと思います。ただ、これはいかんせん非常に大規模のインフラが必要になってまいりますし、これは構築してそれで終わりというわけにはいかず、当然メンテナンスをしてアップデートしていかないと、事務局の説明資料にもありましたけれども、綻びが生じてそこを突かれるようなことも起こり得るということからすると、目標として高く掲げることはできたとしても、なかなか一朝一夕に実現するのは難しい面があるのかなと考えております。

 他方、後者の、業者と顧客との関係において最良執行というものを通じて投資家保護を図っていきましょうという部分につきましては、典型的には一種の利益相反の問題、複数の執行方法がある中で顧客にとって最善となる方法が選択されているのかというところになってくるかなと思います。この点について、現行の最良執行方針を策定しそれを開示ないし提供しなさいという、利益相反管理の上では1つの有効な手段であるということは評価できると私は考えておりますが、ただ、こういった開示ないし情報提供による利益相反のコントロールというのは、受け手のほうが提供された情報を適切に咀嚼して、その業者を評価し、さらに選択していくというところができて初めて機能するということになるかと思います。その意味で言うと、やはりヨーロッパでリテールとホールセールを分けて考えましょうというのも重要な点だと思いますし、昨今の技術革新を踏まえた上で、もちろんSORは多様な条件を迅速かつ円滑に探索する上では非常に優れた仕組みであると私は思っておりますけれども、他方で高度なアルゴリズムであったりとか、技術的に非常に高いものであったりとか、あるいは一種のブラックボックス化であったりというようなところを踏まえて言うと、開示というもので十分に解決できる部分があるのかというところは、やっぱり検討する必要はあるのかなと考えている次第でございます。

 それを踏まえまして、いわゆる最良執行に当たっての考慮要素ということでございますが、もちろん先ほど御指摘もあったかと思いますが、非常に多様な投資家さんがいらっしゃる中で、なかなかこれが全てですと一律に切るのは非常に難しいというのは、私も全く同感でございます。恐らくここに挙がっている価格、コスト、スピード、執行可能性のほかにも、例えば価格改善の可能性であるとか、あるいは匿名性、顕名性といった問題であるとか、様々な要素を指摘すること自体は可能だと思います。ただ、いわゆる多種多様な投資家を前提に最大公約数を取るという観点からすれば、現在でも価格、コスト、スピード、執行可能性というのが、ある種4大要素としてありますよと言われたとすれば、私自身はそれほど違和感は感じておりません。ですので、この4つが、ほかを排除するわけじゃありませんけれども、この4つを軸にしてということであれば、今でも生きているのかなと思っております。

 あとは先ほどの御指摘もありましたけれども、一般論として言うと、大口の注文、さらに複雑な条件のついた注文になればなるほど、スピードや執行可能性というもののウエートが恐らく重たくなっていくでしょうし、逆に言うと、小口でプレーンというかシンプルなというか、条件があまり複雑でない注文になればなるほど、恐らくスピード、執行可能性というものの重要性は下がっていって、相対的に価格やコストのウエートが上がっていくというような傾向はあるのではないかと考えております。この点については、恐らく機関投資家と個人投資家の間に大きな差異がというか、本質的な差異があるとは思ってはおりませんが、ただ先ほどお話ししたような、いわゆる利益相反の問題であるとか、あるいはそういった点を踏まえて考えると、機関投資家さんについては、言わば情報を十分提供されれば、それを咀嚼して、自分たちの考えているウエートづけに合った執行者さんを選ぶというところは可能でしょうけれども、リテールといいますか、いわゆる日本の金商法上の一般投資家さんに当たる人については、なかなかそこの部分の判断がつきかねるという場合があり得るとすれば、そこの部分についてもう少し進んで、ただの開示にとどまらない何らかのルールを一歩進めて考えるということも、検討の余地としてはあるのかなと考えております。

 すみません、以上でございます。どうもありがとうございました。

【黒沼座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、マネックス証券の清明様、御発言をお願いします。

【清明委員】  
 マネックス証券の清明でございます。本日はありがとうございます。

 私どもは、個人投資家向けのオンライン証券でございまして、現在、私どもはSORを導入しております。ただ、SORを導入するシステム対応につきましても一定のコストがかかりますし、それから、取引所、PTSにつなぐところについてもただではないというところもございまして、一定のコストをかけてSORを導入したという形になっております。

 この背景は、やはり私どもネット証券ですので、SORを導入してお客様に、個人投資家様に価格改善メリットを取っていただければというもので、もしかするとネットから先に導入するということを考えているのかなというふうには思っております。

 実際、価格が改善しているかというのは、見てみますと、若干価格改善につながっているんですけれども、やはりまだまだ東証さんでというところが多いという形になっております。これは価格改善に至っているのは、もしかするとやはり刻みの話があって、PTSは刻みが小さいところが取引の中心であることもありますので、今、東証のほうでも議論されているような刻みの問題が、少し幅がまた狭くなってくるとどうなるのかなという思いもありながら、現時点では若干改善されているという事実がございます。

 ただ、若干ですので、正直かけたコストに対して、私どもとしてメリットがあるか、あるいはお客様がメリットを享受されているかというとまだまだ小さいところでございまして、やはりここはニワトリ卵の話になるんですけれども、流動性がまだまだない中で、やはり競争環境がある中においてSORというのは機能すると思うんですけれども、現時点では、先ほどの冒頭の1つ目のお話でありました、現状のPTSについては、まだまだ流動性も小さいというところもあって、なかなかつながっていないと。なので、やはり最良執行を考える際には、最良執行だけではなくて、こういったマーケット全体を見ていかないといけないんじゃないかなとは思ってはおります。

 また、実はお客様の中にも、個人投資家の中にも、やはり東証、そこまで細かく価格を気にせずに東証がいいんだという方も当然おられまして、これはもしかすると取引所あるいは私設取引所としての透明性とか信頼性とか、そういったことも同時に上げていかないと、やはり東証一極集中というのはこのままなんだろうなと思っておりますので、ポイントは、流動性ですとか、あるいは透明性というところを同時に併せて考えていかなければいけないんじゃないかなと思っています。

 最後に、リテール、個人投資家と機関投資家で考えてみましたところ、先程来から出ておりますとおり、投資行動が違いますし、何よりもロットが違ってきていると思います。したがって、個人の方がどこまで価格というものにセンシティブかというところも、もしかするとそこまでセンシティブではない一般の投資家様も多いのではないかなとも思っておりまして、そういったことから、一律SORを導入しましょうという議論を今ここですると、とても乱暴なことになってしまうかもしれないなと思っております。

 以上でございます。

【黒沼座長】  
 ありがとうございます。それでは、モルガン・スタンレー証券の永堀様、お願いします。

【永堀委員】  
 モルガン・スタンレー証券、永堀でございます。このたびは、貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。

 私どもモルガン・スタンレー証券は、業務の性質上、海外のお客様、また機関投資家のお客様と日々やり取りさせていただいているような背景から、ここではぜひ海外から見た日本という形でお話をさせていただければと思っております。

 今回、このような最良執行方針を見直す、あるいはもう一度焦点を当てるというお話でございまして、ここは非常に大きなステップだと思っております。やはりフェア・イコール・アクセスですとか、あるいはレベル・プレイング・フィールド、また、ヘルシーコンペディションというような言葉がよく海外では飛び交っておりまして、あらゆる投資家の方々が御自身の裁量の中で、あるいは選択の中で、どのような形の執行もできて、かつ市場間での健全な競争環境があるというところが、先進国市場の中では重要な条件になってくるのかなと思っている次第でございます。そういったような観点から、やはりベストエクゼキューションをまず一番初めに考え直してみる、あるいはもう一度焦点を当ててみるというのは大きなステップではあるものの、ここだけで全てが完結するものだとは思っておりません。やはりこれを実際に実行に移していくための施策まで、幅広にここの中でいろいろと議論できればなと思っております。

 冒頭申し上げたとおり、モルガン・スタンレー証券は、機関投資家様をお客様としておりますので、ここでは機関投資家様の御注文ということで少しお話をさせていただきますと、検討課題のところにございました、まず証券会社が考慮すべき要素というところについては、皆様方がおっしゃられたとおり、機関投資家は注文のサイズがそれなりに大きいということもございますので、単純に価格コストのみならず、スピードとか執行、あるいはフットプリントという言い方をするんですが、いわゆる秘匿性を重視しながら、執行を継続するというところが重要になってくるのかなと思っております。

 また、次の検討課題のところで、お客様から指示があった場合、単純に指示に従うことで、証券会社としての最良執行義務を果たしたことになるのかという、非常に重要な御質問についてなんですが、ここについて私どもが考えておりますのは、やはりマーケットのゲートキーパーという性質であったり、あるいは市場にとってのプロフェッショナリズムがある、エキスパートであるというようなことを考えると、むしろお客様の指示に単純に従うのではなくて、お客様の執行を最良な方向へ提案させていただくというのも、証券会社としての最良執行義務として1つ重要なポイントなのではないかなと考えている次第でございます。

 また、今回、個人投資家の最良執行方針がどうあるべきかというお話も出ておりますが、ここは私ども申し上げたとおり、機関投資家を中心にやらせていただいているというような背景から、あえてここで今日、この場ではコメントを控えさせていただこうと思っております。

 最後に、この検討課題の一番下のポイントにある、いわゆるスピード格差というところですが、実際のところ、やはりマーケットの流動性の多様化というのは非常に重要なポイントであって、そういったようなマーケットの見方が違う投資家がいるからこそ、売りと買いが発生する、需給が発生するというようなことを考えると、健全なマーケットのエコシステムという意味では、あらゆる投資家が自分自身の考え方の中で選択し得るものというのを常にチョイスできるような環境があるというのは、市場として重要なことではないかなと考えております。

 以上でございます。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。その次に、ブラックロックの梅野様、よろしくお願いします。

【梅野委員】  
 ブラックロックの梅野でございます。よろしくお願いいたします。

 ブラックロックという機関投資家として、また、証券会社様が提供されていらっしゃるSORのユーザーとして、本件に関しまして思うところを2点ほど、発言させていただければと思います。

 まず、一番重要なこと、最良執行方針とは、私個人の考えとしては、まさに価格改善をどのように定義し、どのように測定するかということに尽きるのではないかと考えております。その意味で、先ほど一部のメンバーの方より、価格改善効果があるというようなお話がございましたけれども、私から言わせていただきますと、確かに約定価格と約定した時点の取引所の気配を比較すれば、価格改善効果はあったというふうに言えるかもしれませんが、本当に重要なのは、例えばある注文を証券会社が受領してPTS等に指し値で発注したときに、何らかの気配情報が発信され、例えばHFTがその情報に基づいて取引所等で先回りして取引をしてしまった、その結果投資家の注文は約定されず、より不利な価格での約定を強いられた。こういったケースがあった場合に、約定した結果だけを見て価格改善効果があるというのは、これはフェアではないと言えると思います。そういったことも全て踏まえた上で、本当に投資家にとって価格改善効果とは何ぞやということを突き詰めて考え、当社の価格改善効果はこうであるということを定義し、それをきちんと測定する、そしてその結果を開示するというようなことを明示的にやることが、本来最良執行方針ということにとっては重要なんじゃないかというのが問題提起の1点目でございます。

 その意味から申しますと、他の委員もおっしゃっていらっしゃるように、当然投資家ごとにニーズは違いますし、何より注文サイズが違うという観点からしますと、個人と機関投資家で分けて考えるというのは、極めて妥当であろうと考えるところでございます。

 続きまして、2点目でございますが、現行の規制というところで、例えば資料21ページ目にもございますように、金融商品取引業者等は最良執行方針等を公表しなければならない、また、その方針に従って注文を執行しなければならないというような規定となっておりますが、果たしてこれは本当にそのように執行されているのかどうか、開示されたとおりに執行されているかどうか確認のしようがないという点になります。我々機関投資家にとっては事後的にデータを付き合わせれば、ある程度分かることもございますけれども、100%それがきちんと担保されているかどうかは判断が難しい。具体的に言いますと、先ほど申しましたような、発注したけれども未約定だった、こういった場合の未約定注文が市場の価格形成に与える影響は、証券会社が提供する情報にはきちんと反映されていない。こういったところをきちんとモニタリングし、検証するというようなことは、やはり外部の投資家からは極めてやりにくい。こういったところをきちんとモニタリングし、チェックする必要があるのではないか。事によっては、開示したとおりにやっていないということであれば、例えばそういう業者を公表するといったようなことも含めて、開示とモニタリングが、より適切に行われていく必要があるのではないかと、このように考えております。

 以上でございます。

【黒沼座長】  
 貴重な問題提起等ありがとうございました。それでは、次に、清水先生、御発言をお願いします。

【清水委員】  
 私は、市場構造という観点から、最良執行について意見を述べさせていただきたいと思います。先ほどの御説明にもありましたように、御承知のとおり、アメリカでは個人でも機関投資家でもがちがちの価格による最良執行義務が証券会社側に入っていて、常に最良執行価格を取りにいかなければいけないということになっています。これは世界的に見ると、割と特殊な形ではないかと思っていまして、それをやるためには、先ほども御説明があったように、各市場の気配情報を統合配信するようなシステムを取引所側がお金を出資してそろえて統合の気配フィードを出し、証券会社側はそれを見てどの市場の気配が最良価格かがすぐに分かるという、そういうシステムを備えています。これは構築も大変ですし、先ほど別の委員もおっしゃったように、十分なメンテナンスを続けておかないと、ベンダーさんのほうが早い速度で気配を配信できたり、あるいは取引所が取引参加者に自市場の気配だけを早く届けるダイレクト・フィードを出してしまってそちらのほうが早かったりというような統合配信システムが業者のシステムに追い抜かれてしまうという問題が出る可能性があります。このため、アメリカのような価格重視の最良執行義務を入れるためには、かなりの設備投資が必要だということが気になります。今回は個人投資家のことを議論されているということですけれども、機関投資家も含めて、価格を重視した最良執行義務をかなり厳しく入れるということには、私はちょっと慎重な立場です。

 それから、さらに加えて、価格を強く重視した最良執行義務を入れると、市場の構造にも一定の影響が出るのではないかと考えています。これは、例えばアメリカで問題になっているのですが、証券会社さんによっては自分で各市場の最良価格を探索するのはなかなかコストがかかって面倒であるケースがありますが、そういう場合に別の証券会社がそういった注文を引き受けてしまって、自分のほうに注文を回送してくれれば自分のほうで最良価格を見つけて執行しますよというサービスが、ビジネスとして成立してしまう可能性があります。アメリカでは、リテール・ホールセラーなどと呼ばれているようですけれども、主にネット証券さんから、注文を固定的に自社に回してもらい、最良執行をする市場を探す責任を請け負っています。ネット証券さんは、リテール・ホールセラーに注文を流しておけば、あとはお任せできるというビジネスです。確かに最良執行は常に実行されるので、個人投資家の注文執行に何の問題もないように見えますが、やはり特定のネット証券から特定のリテール・ホールセラーに常に注文が回送され、リテール・ホールセラーがそのときそのときの最良執行で自分で呑んでいく、自己勘定で執行するというような執行は、健全かと言われると判断が難しく、意外とこの問題は複雑なんじゃないかと思います。こういった形で最良執行は確保されるものの、市場外の執行を増やしていくことが、市場構造として健全かどうかということには検討の余地があると思います。

 それからさらに、これも先ほど御議論がありましたけれども、刻み値の問題にも影響が出ると考えます。取引の刻みが小さくなることは、一般的には投資家にとっては利益になるので良いことですが、アメリカで一時問題になりましたように、ほんの僅かの刻みの差で最良執行価格を提示することで注文を集めるというようなことが行われていました。ビジネスとしては重要だと思いますが、一方で市場間競争という面で健全かというと、極めて小さな刻みの差だけで流動性を集めることが健全な市場間競争かというと、なかなか難しい問題があるかと思います。アメリカでは一定より小さい刻みの差で注文を集めるような市場間競争を禁じるルールをつくるという手当をしているかと思います。

 最良執行は、特に個人の場合は、価格とコストが特に最重要ですから、そちらに比重を置くということは意味があるかと思いますけれども、余りにもがちがちにしてしまうと、市場構造にも影響が出るという点を慎重に考えないと、思わぬところに副作用が生まれる可能性があるかと考えました。

 以上です。

【黒沼座長】  
 ありがとうございます。貴重な御意見ありがとうございました。それでは、野村證券の辛島様、お願いします。

【辛島委員】  
 野村證券の辛島でございます。本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。

 事務局のほうからも御説明があったように、皆様の意見とも重複するのですけれども、我が国の最良執行に関する制度が導入された当時、これは2005年ぐらいだったと思うんですけれども、あの当時と比べて何が大きく変わったのかというと、やっぱりITの進展だと思います。当時は、例えば東証さんが一番早い市場ではありましたけれども、それでも板の突き合わせで2秒に一度とかいう非常に遅い速度でもありましたし、価格情報自体が秒単位で遅れるという状況にありましたので、当時、SORとか、あるいはその他のアルゴリズムも含めて、使うことが全く現実的ではなかったと。ですので、アルゴリズムといっても単純なVWAPターゲットであるとか、そういうものしかなかったという状態だと思います。

 ただ、概念として最良執行の当時整理したものですね、これについては今でも変わっていないとは思っています。ですので、今は取引所もとても早くなりましたし、マーケットデータのフィードもミリセカンドの世界あるいはマイクロセカンドの世界で飛んでくるようになっていますので、アルゴリズムが有効に機能するようになっていますし、またそれを背景にして、PTSでの売買も、少なくとも取引所の取引時間内におきましては、妥当な価格での売買は可能になってきているとは考えます。ですので、変化した現在の環境を前提にして、最良執行義務のあり方を今見直しましょうということについては全く異論はないところであります。

 では、最良執行として、当時整理した、価格のみならず、コスト、スピード、執行可能性など様々な要素を総合的に勘案して執行する義務であるというところが何か変化していますかと言われると、それはないと。やはりそれは同じであるということだと思います。あくまでも環境が変わった中で、手法として使える選択肢が増えてきているというのが、変化した点だろうと考えています。

 最良執行の様々な要素という言葉が入っていますけれども、ここの中で一番大事なのは、やはり決済が安全に行われることであろうと思います。また、個人投資家に関してということかもしれませんが、価格の透明性、市場としての信頼度、ここも非常に重要な要素かなと思っています。

 一方で、機関投資家にとってみますと、梅野委員からの発言にもありましたけれども、やはり市場の値段を動かしてしまわないかという意味では、秘匿性というのが非常に大きな要素なんだろうと思います。ですので、この観点で考えますと、当日中に売買を完了させなきゃいけないとか約款の縛りとかの制約のある機関投資家で大口であるという投資家の事情と、大半が小口注文であってワンショットで完了するという個人投資家というのは、やはり事情が異なるというふうに思っています。ですので、今回整理として、機関投資家と個人投資家と切り分けた問題提起をされていたのは、とても歓迎できることかなと思います。

 あと、機関投資家につきましては、各社とも、梅野委員や内田委員のように、取引の専門家による執行手法の分析、開発というのを日々行っておられ、永堀委員からの御指摘にもありましたけれども、証券会社はこれに対していかにアイデアを提供し、投資家のアイデアを実現していくかということを日々やっていくというのが付加価値ということになっていますので、そういう意味では、機関投資家に関しては証券会社がある最良執行方針を定めて、それに従ってくださいというのは、全く現実味がないなというのが今の実感であります。なので、機関投資家に関しては、今の最良執行義務のかかり方というのは、もっと緩めてもいいとは思っています。

 一方で、一般投資家に関しましては、特に小口の注文に関しては、複数のトレーディングベニューを比較して、より高い値段で執行するということはある意味自然でありまして、それができる環境になっているということであれば、前提として証券会社がシステム投資が負担可能な限りであるということはあるとは思うんですが、対応していくべきであるという意見については、これに異論は出しにくいなと思っています。

 ただ、この場合も、取引可能なあらゆるベニューを比較しなければいけないというのは、現実的ではないと思います。事務局の資料の中でも、ダークプールを並べて書いてある絵があったと思うのですけれども、ダークプールは価格情報がありませんので、並列で並べることもできませんし、あるいは価格情報だけをキーにして注文を出していたところが、決済がDVPもないとか、清算機関が入っていないとか、リスキーな市場であれば、こういうことは逆に意味がないということになりますので、そこは基本になる決済の安全性とか価格の透明性というのはきちっと見た上でベニューを選ぶというのは大事なのかなと思っています。

 あと、小口の個人投資家の注文だからといって、全てのケースにおいて価格の比較というのが有効であるというわけではない、ということにも注意が必要だと思っています。というのは、例えば、主市場である東証の取引が始まる前の時間帯ですね、ここはチャイエックスもジャパンネクストも今取引していると思うんですが、このときに出ている価格を比較して、ここで取引しますということに現実になるかと言われると、なかなかないなということがあります。ですので、時間帯の問題というのは、1つ考慮すべき点としてあるかなと思います。

 それともう一つは、お客さんの注文の出し方なのですけれども、最良気配の外側、外れたところで、自分で指し値をして待つという場合は、まさに今の最良気配の比較というのは意味がないということになってしまいますので、個人投資家の中長期のお客様は、こういう注文の出し方が多いと思ってはいるんですが、このようなケースについてもあまり価格をキーにするというよりは、違う要素、約定可能性であるとか、価格の透明性であるとか、そちらのほうがやっぱり重視されるべきであるという観点はあるということで、意識しつつ議論を進めることが大事だと思っております。

 私のほうからは以上でございます。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。それでは、この後は内田様、藍澤様、上柳先生の順で御発言いただこうと思っております。それでは、内田様、よろしくお願いします。

【内田委員】  
 ありがとうございます。ニッセイアセットの内田と申します。よろしくお願いします。

 先ほどブラックロックの方からお話がありましたように、私どもは機関投資家でございます。今回の中でいきますと、機関投資家に対する最良執行というところに関しましては、ペーパーの30ページに記載いただいているようなところで見ると、基本的には導入当初の精神というのは未だに生きておって、これに大きく手を入れる必要があるのかというと、そうではないのではないかと漠然と思っております。というのは、私どもとブラックロックさんでも違うように、各社各様の事情の下に、それぞれの会社が創意工夫をして競争するというのが前提だと思っておりますし、それから、やはりもう一つ、我々機関投資家の中でも特に第三者資産の運用に携わる者は、金商業者さん向けの受託者責任、最良執行義務の下に、我々自身の受託者責任として、先ほど梅野さんがおっしゃいましたけれども、やはり不断に最良の執行を追求するという姿勢が求められているところがあるかと思いますので、そういった形で補完すると、そもそもの規定のところをあまり細かく規定し過ぎると、その工夫の余地がなくなるという懸念が大きいのではないかなと思っています。

 30ページの上のところに、注文執行のあり方云々というところがございましたけれども、私ども、例えば機関投資家のバイサイド・トレーダーからいたしますと、実は機関投資家としての立場以外に、社内ではポートフォリオ・マネージャーという運用者の意図を酌んで、それをいかに正確に注文するかという立場にあります。それを例えば口頭でなのか、DSAのアルゴリズムのような形に落とし込むのかというようなところ。そうすると、パラメーターをどう組み合わせると自分たちの注文を正しく表現できるのか、あるいは、我々だけではなくて、これは証券会社さん、アルゴリズムを提供いただいている方にも関係するところだと思いますけど、そういった点がすごく試行錯誤するところでございます。

 それから、やはり我々、先程来皆さんおっしゃっている、技術革新が激しい中で、お互いの参加者が競争しておりますので、乱暴なことを言うと、やはり昨日良かったものが今日も良いとは限らない。やはりここは機会の公平性は担保されるべきですけれども、結果はなかなか保証されるものではない世界だと思っています。そういう中では、我々も含めて常に試行錯誤の中で、良かれと思って、プロセスをきっちり管理する中で、説明責任を持って説明できるような取組をすることが大事なのかなと。機関投資家としては、そういう立場が必要なのかなと考えているというのが状況でございます。

 あと、個人のほうでございますけれども、先程来おっしゃっていただいた御意見にもありましたけれども、やはり店頭で注文されるようなお客様と、ネットの方と、明らかにここには大きく異質な2種類のニーズが存在するのであろうと思います。その中では、どちらにフォーカスするというわけではないのですけれども、やはりその違いを認めて許容していくというような形の議論の持っていき方が良いのかなと感じております。

 どう考えても、物理的な距離の違いや何かも含めて、どうしても限界的な差異というのは生じ得てしまう。これを全て東証さんのサーバーのところでコロケーションするようなインフラを整えなさいというのも、あまり現実的ではないと思います。

 そういう点では、後そのコストを誰が最終的に負担することになるのかといった課題なんかもすごく大事なことなのだろうと思いますので、恐らく個人のところは、意外と答えが広い形に、なかなか1点に集約しきれない可能性があるのかなと、話を承りました。

 以上でございます。ありがとうございました。

【黒沼座長】  
 ありがとうございます。では、藍澤様、お願いします。

【藍澤委員】  
 ありがとうございます。藍澤証券の藍澤です。今回は、メンバーに加えていただいてありがとうございます。

 我々は、中堅の対面を中心とする証券会社でして、インターネット取引も行っておりますが、中心はあくまで対面です。ですので、私のお話はどうしても機関投資家さんじゃなくて個人投資家さんを念頭に置いたものになる点、御承知おきいただければ幸いです。ちなみに当社のお客様は、資産規模で言えば中間から準富裕層の方々が中心で、年齢で言えば60代以上の方が過半数を占めるというような状況です。

 それで、先程来話に挙がっている価格追求の議論について、主に述べさせていただければと思いますけれども、やはりPTSですとかSORの導入は、投資家が少しでも有利な価格でお取引できるに越したことは当然ないですし、また東証一極集中の是正という点でも意味はあると思っております。ただ、正直申し上げて、全てはコスト次第なのかなと。先ほど久保さんや清明さんもお話しされていましたけれども、特にシステムコストとかがどうしてもかかってきます。今も基幹システムの維持、利用料でも相当なコストが毎月かかっていまして、それが利益を圧迫しているというのは、多分中堅、中小の証券会社の延長だと思いまして、そこが何かしらの改善については目が向けられるというのもあるかと思います。

 我々のような対面型のリテール証券にとっては、それ以上に重要といいますか喫緊の課題なのが、これまでのような売買手数料を収益の柱とするブローカレッジ業務から資産形成ビジネスへのシフト。そこで中心になるのは、フォローとアドバイスという形になるんですけれども、そういったものを収益の柱とする、中長期で安定的に資産を増やしていく、お客さんの資産を増やしていくビジネスへの転換というのが課題なのかなと考えていまして、その点に関して言うと、価格追求は、どちらかというとですけれども、ブローカレッジ業務に主たるメリットがあるかなと考えていまして、どうしても優先度を下げざるを得ないというのが実情です。

 昨今では、IFAさんの数も増えて、今後彼らが資産形成の中心になるというような議論もされています。そう考えると、これからの証券会社の役割自体が、一般の投資家、特に我々のようなリテールの一般の投資家相手というものから、IFAを顧客とするような会社に変わっていく可能性も当然あるわけですけれども、仮にIFAの方々が資産形成の中心になるとしても、彼らが顧客の中長期の資産形成を進める上で、やはり僅かな価格メリットを追求するということが、先程来お話が出ているような個人投資家の投資金額から考えても、あまりプライオリティが高くならないのではないかというふうに考えております。

 そうなると、ここに最良執行の4つの要素がありますけれども、それを勝手に優先順位を申し上げると、まずは執行可能性といいますか、約定可能性、流動性ということだと思います。それから、市場の透明性。言ってみれば、お客様が安心してお取引できる市場というようなことが一番に来るのかなと考えております。次に、コスト。先ほどのお話のとおりですけれども、やはり今時点では、お客様が受ける価格面でのメリットと、当社が支払うコストを天秤にかけた場合、今時点ではコスト負担のほうが明らかに大きくなってしまうのではないかなと考えています。その次に、価格が来るのかなと思います。法人と違って、やはり個人投資家さんは少額投資中心ですので、僅かな価格差に大きなメリットがあることは現状感じられないというのが正直な感想です。それと、一般の投資家さんでよくやりがちなのが、高値づかみ等ありますけれども、中長期投資を前提に、定額投資をしていく上では、ドル・コスト平均法で買っていくので、そういった高値づかみのリスクというのは大部分吸収できるのではないのかなと。その上で、当然それ以上を求めるのであれば、SORということになるのかなと思います。最後にスピード。リーマンですとかバブルのときみたいな大暴落時には当然スピードも重要ではありますけれども、どうしても個人投資家を前提として考えた場合は、優先度合いが、この4つの中では一番下に来るのかなと考えております。

 ということで、先ほどもちょっとお話のあったような、価格優先義務をどう考えるかという点で言わせていただけるのであれば、今申し上げたような考えで、それはできれば我々としては、今後の方向感を考えても避けたいというのが正直なところです。

 以上です。ありがとうございました。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。それでは、上柳先生、お願いします。

【上柳委員】  
 ありがとうございます。まだ全体を分かっていないので、できればもう今日、時間はこんな感じですので、次回以降お答えがどなたかからいただければありがたいです。特にコストの面であるとか、あるいは技術の面をよく知る必要がある、実情が変化していることはよく分かるんですけれども、もっと検討しなきゃいけないと思いました。

 1つ目の質問は、今、コストとしてどういう中身があるのか、かつ具体的にどれぐらいのものなのか、それがエンドユーザーにどのように転嫁されているのかということを、いろいろ差し支えはあるとは思うんですけれども、何らかの形で知りたいなと思います。というのは、まさに直前に藍澤様からお話がありましたけれども、私は個人の投資家の相談なんかを受けることも多いんですけれども、価格が優先なんじゃないかと思うんですね。ただ、いわゆる市場から見ての価格優先というよりも、価格プラスコストといいますか、いわゆる手数料的なことを指しておりますけれども、それが総合的に安いかどうかということが市場選択のポイントなのではないかなと思っていて。もちろん約定できないのでは意味がないですから、そういう意味で執行可能性であるとか、あるいは透明性であるとか、無視するものではないんですけれども。ですので、コストということで、何が実際かかっているのか、どんなふうにかかっているのかというのが大きな質問です。

 それから、2つ目は若干小さいのかも分かりませんが、個人の場合には機関投資家の場合と違って、執行可能性についての障害というのはそれほどないのかなというふうに思ったのですが、藍澤さんからは、そこはそうでもないんだよというお話がありましたので、執行可能性の意味合いにもよるのかもしれませんけれども、もう少し知りたいと思いました。

 それから、3つ目なんですけれども、地場証券でSORを使いにくいとかいうお話があって、それもそうだろうなと想像するんですが、いわゆる共同利用であるとか、それから、ほかの方のものを使うときに、当然コストがかかってくると思うんですけれども、そのあたりというのはどうかなと。他方で、おっしゃいましたように、個人の投資家にとっては、SORを使うまでもなくて、自分がこういう値段で買いたいということがはっきりしている場合もあると思いますので、必ずしも全部が使うべきだというわけではありませんが、もし分かれば聞きたいと思います。

 最後の質問ですけれども、これまで、最良執行については、基本的には開示をしていただいて、後で説明できるようにという話で来たのではないかと思います。ただ、私は単に開示しているだけではなくて、やっぱりもっと安いところ、あるいはコストの安いところで買える、あるいは高いところで売れるのであれば、そちらを選んであげるというのが顧客本位原則の立場じゃないかと思いますので、そういう意味で、これまでも執行上、あるいは説明文書の実際の監督なり、あるいは苦情なんかが金融庁のほうに上がっているという情報が分かれば、これもまた教えていただきたいと思います。

 4点です。以上です。失礼しました。

【黒沼座長】  
 今の御質問は、次回以降、事務局のほうで、可能であれば調べてお答えいただくということでよろしいですね。

【古澤企画市場局長】  
 結構です。

【黒沼座長】  
 ありがとうございます。今日御出席の委員の皆様には一通り御発言いただきました。オブザーバーの方にも御発言いただこうと思いますので、これで委員からの質疑応答、意見交換は終わらせていただきまして、オブザーバーの方から御意見があれば、2分程度を目安に発言をお願いします。既にこちらに上がっていますので、その順番でお伺いしますけれども、ジャパンネクスト証券の山田様、お願いします。

【山田オブザーバー】  
 このたびは、発言の機会をいただきましてどうもありがとうございます。

 今回の検討課題のまず1番の注文執行のあり方及び2番、3番の最良執行方針等に関しましては、厳密に言いますと、証券会社様と投資家様の問題であるので、取引施設を運用している私があまり四の五の言うような問題ではないかとは思います。しかし、私も証券界に身を置く人間として1つだけ言わせていただきますと、最良執行方針の考え方といたしましては、先ほど御発言いただきました辛島委員、内田委員と同じく、その精神というのは現在も変わらないと思います。

 しかしながら、現在の最良執行方針に関しては、一部ネット証券なんかはかなり詳しく書いていらっしゃいますけれども、多くの場合は多様性がなく形式的なものが多いために、結果的に取引所に発注してしまうケースが多いと感じております。これは2012年の公取委が東証と大証の合併のときの審査結果におきましても、最良執行方針がこのような形式であるので、主たる市場からフローが移動することは容易でないという見解が、ちょっと古いですが、記載されているのと同様でございます。ですので、これは私個人の考え方ですが、いろいろ本日の議論の中で出ましたように、各証券会社様が自らの顧客層に合わせたものをつくって、常に検証するということが大切であると考えております。すなわち、今回、最良執行義務を見直すというよりも、各社が最良執行を深化させることが、現在、必要なフェーズであると考えております。

 最良執行義務が深化することは、市場メカニズムの観点から2つの効果があると思います。1つは、やはりPTSと既存の取引所の競争を促進する点、もう1つは、複数の取引施設がある結果としての市場の分裂が起きるというのがありましたけれども、これは最良執行を義務づけることによって“括り”ができる点であります。すなわち、市場メカニズムの観点からは、特に価格中心の最良執行義務を入れるというのは、市場間競争を促進しながら市場の分裂を防ぐといったような効果もあるということを御理解いただきたいと考えております。

 最後に、取引情報を集中化しなければ、最良執行はなかなかできないのではないかとの意見があると思います。これは、アメリカで言うところのNBBOの算出でございますが、今現在のテクノロジーを考えますと、この計測機関というか計算機関においては、ダイレクトフィードで価格情報を取得することが可能です。すなわち、HFTが計算するのと同じスピードでそのような機関がNBBOを算出することは可能だと考えております。ただし、その情報を見た後の発注に関しては、一般的な取引と同じくレイテンシーの差があるということは事実でございます。しかしながら、投資家様へのディスクローズという観点から、ベストな価格を提示できる手段が、ないよりはあったほうがいいと考えております。

 私の方は以上でございます。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。それでは、日本取引所グループの南出様、お願いします。

【南出オブザーバー】  
 日本取引所グループの南出でございます。このたびタスクフォースへの参加と、今日の御発言の機会をいただき、ありがとうございます。市場構造の話と最良執行方針の話、それぞれについて簡単にコメントさせていただければと思います。

 まず、既に御指摘いただいておりますが、最良執行の話は、市場構造全体に結びついてくるというものでございます。この最良執行の規制は、アメリカが一日の長であるというところでございますが、EUが特徴的なんですけれども、必ずしもアメリカと同じような規制対応でないというところで、決してアメリカが完成形ではないですし、いろいろな問題を現在進行形ではらんでいるというふうに考えております。どういう問題があるかといいますと、これも既に言及ございましたが、ペイメント・フォー・オーダーフローや、資料にあるとおり、レイテンシーアーブの話というところでございまして、このたび規制を見直していくに当たって、こういったアメリカのほうにもし近づくのであれば、そういったところを正していくような制度も同時に考えないと、投資家保護にはもとることになるかもしれませんし、市場全体の透明性、公正性や効率性というところを阻害する可能性があるのではないかと考えております。また、ペイメント・フォー・オーダーフローにつきましては、ロビンフットにつきまして、今週ちょうどSECと和解はしたというところですが、コストの話については、彼らは開示義務ですとあったところ、説明も開示も十分に行っていなかった。また、執行方法についてレビューするべきところもしていなかったということで、こうしたところを起き得るのを防ぐ必要があるのではないかと考えております。

 最良執行方針につきましては、資料も検討の課題の立て方もそうでございますし、皆様から御指摘いただいているとおり、機関投資家と個人投資家、これは分けて考えるアプローチは賛成でございます。また、個人投資家につきましても、デイトレーダーの方からそうでない方まですごいグラデーションがあると思いまして、なかなか個人投資家以上に細分化された類型を規制上設定することは難しいと思います。一方で証券会社様、各社のお客様の投資スタイル、デイトレーディングなのか長期投資なのかというところに合わせていろいろサービスは組み立てていらっしゃると思いますので、規制でここを画一的にするということではなくて、むしろ多様性を育てる、尊重するというアプローチであるべきではないかなと考えております。

 これも既に御指摘いただいておりますが、その際に、お客様が十分選択をということで、横山委員からございましたが、お客様が証券会社を選択するのに必要な情報提供がなされるべきだと考えておりますし、今はそういったことが情報提供されている例はないと思うんですけれども、ペイメント・フォー・オーダーフローについて、もしやるのであれば、これは利益相反の可能性も出てまいりますので、アメリカの規制を参考に、開示義務を課すといったことは、開示の内容の充実ですとか項目の充実といったところを考えていく必要があるかもしれないなと考えております。

 私からは以上でございます。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。では、チャイエックスの色川様、お願いします。

【色川オブザーバー】  
 チャイエックス、色川でございます。オブザーバーであるにもかかわらず、発言の機会を頂戴しましてありがとうございます。

 まず、現状や経緯の把握から、私なりの意見を僣越ながら申し上げられればと思うんですが、これまでの経緯、市場間競争ですとか最良執行の現状、19ページの下段のほうにありますように、2003年末の金融審の問題意識としては、取引所とPTSの競争条件のイコールフッティングを確保する、そこが出発点で、様々な最良執行の現状に至るものがつくられたわけですが、しかし、23ページにありますように、その結果として、日証協において作成された参考モデルというのは、PTSの取次ぎは行いませんになっているわけでありまして、実は出発点と結果が全く違う状況がある。そして、それが現状まで続いているということは、ぜひ御理解いただければと思います。

 そして、我が国の最良執行の現状ですね。一覧表等でお示しいただきましたように、法律のほうでは最良執行を定め開示せよ、聞かれたら説明せよだけなわけなんですが、もちろん様々な議論の中で様々なことが言われ、価格のみならず、様々な要素を総合考慮とする最良執行であるという現状にはなっています。しかしこれも残念ながら制度や議論と実務との間に相当な乖離がある状態でございまして、結局、総合考慮という名の下に行われていることは、総合考慮した結果、一律に過去の出来高が一番大きかった取引所のみで執行するというのが現状の、特に個人のための、現状の最良執行でございます。機関投資家に関しては、様々、プロ対プロで証券会社さんと個別にやっているんですけれども。ですので、特に個人に関しては価格とすべきか、ということが割と議論の中にも大きい部分があるかと思うんですけれども、この変更することというのは、総合考慮の現状から価格にフォーカスを当てる変更をすべきかということではなくて、過去の出来高のみの現状から、価格を中心とした総合考慮とすべきか、というのが実態的な議論点であるのではないかなと考えている次第でございます。

 そして、SORを採用しているかしていないか、SORの場合には順繰りに見るのか一遍に見るのかという対比がございましたけれども、東証のみなのかあるいは一部のPTSのみなのか、現状株式のPTS、2社しかないわけなんですが、2社しかないのであれば両方見るべきかとかそういったことも検討すべきかと。そもそもそういった何を見るかという議論の中で、いろいろな市場を見て執行すると、レイテンシーであるとかそういうチャンスもHFTに出てしまうというのはもちろんあるはあるけれども、適切にSOR運営を行うとそのリスクは限定的と考えています。現状を見ますと、個人投資家のフローというのは、ものすごく大雑把に申しますと、既に9割近くが、あるいは9割以上が、いわゆる大手ネット証券5社さんが押さえていて、残りが他のネット証券や総合証券やいわゆる中堅証券会社さん。SORあるかないかとかいう議論というのは、この残りの10%のほとんどが東証のみの執行の状態でSOR無しだからどうするか、というものになります。しかし大手ネット証券は、PTSとかダークプールとか採用しておるんですけれども、かなり採用の状況はまちまちでございます。ですから、こういった9対1の議論ではなく、SORがどういうふうな参照をしているかとか、手法とか、そういったことも考慮の中にいろいろ考えていただけると大変実のあるものになるんじゃないかと。

 僣越ながら、個人のための最良執行の要点を私なりに考えた場合、大きく分けて3つ。そのうち1つは、2つに分岐して合計4つであると思っていまして、まずすぐに約定したいという注文のニーズですね、これは証券会社、そして執行市場として、当然投資家のニーズはとにかく満たさなければいけないわけです。ですから、まず成行注文では、重要なことはすぐに執行することです、止めておかずに。そして、すぐにということを満たしながら、できれば一番いい値段。

 そしてもう一つ、すぐにじゃなくて、投資家の考える、今よりも高い値段で売る、今より安い値段で買うということに関しましては、指し値で置いておくに当たって、相場が自分の価格に近づいてきたときに、なるべく早くそれが取られる可能性、執行できる可能性があると、各証券会社なりに考えることを行う。

 そして最後にもう一つ重要だと思いますのは、金融審議会等で、保険販売や投信販売において非常に問題視され、現在の顧客本位の業務運営に至る面ですけれども、やはり自社グループ最優先のような形で行う、いわゆる利益相反の元になり得るもの、これは現にいろいろ議論されなければいけないんじゃないかな、そんなふうに考える次第でございます。ありがとうございました。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。では、日本証券業協会の松本さんからお願いします。

【松本オブザーバー】  
 日本証券業協会の松本でございます。私から、2点申し上げたいと思います。

 1点目ですが、まさに今、画面で映っております日証協の最良執行の参考モデルについてでございますが、必要に応じてこちらを変更していくということはさせていただきたいと思います。なお、ここの中で、PTSへの取次ぎを含む取引所外売買の取扱いは行いませんと書かせていただいているのは、こちらの参考モデルはあくまでもPTSでの取次ぎを行わない会社向けのモデルですということを断った上で、こういう形にさせていただいておりまして、注書きの中では、PTSの取次ぎを行う場合は変更してくださいということを書かせていただいていることを、申し上げたいと思います。

 2点目でございますが、多くの方から発言がございましたが、個人投資家につきましても一律的な規制というのはなじまないというところは大きく賛同するところでございます。今日の資料の中でも、日証協の調査結果を引いていただきましたが、個人投資家でもデイトレーダーと呼ばれるような方ですとか、また株式の優待を目当てで買われるような方もいらっしゃいますし、顧客の層もかなり幅広いです。また、証券会社におきましても、ネットの会社、大手の会社、または取引所の参加者でないような会社も株式の取引を行っておりますので、なかなか一律的に規制を及ぼすということ、あるいは一律的な、画一的な決め事をするということは難しいのかなと思ってございます。

 私からは以上でございます。

【黒沼座長】  
 ありがとうございました。発言希望が出ている方の御発言は一通り終わったと思いますけれども、よろしいでしょうか。

 今日、多数の意見をいただきました。さすがタスクフォースというか、専門家の皆様が集まっていますので、個々に発言していただいただけですけれども意思疎通もでき、問題点も明確になってきたのではないかと思います。本日いただきました御意見等を踏まえ、引き続き検討を行ってまいります。

 次回のタスクフォースの日程及びテーマ等に関しましては、後日事務局より御案内させていただきます。

 それでは、以上をもちまして、本日の会合を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――  
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