金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」(第2回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年2月16日(火)15時00分~17時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」(第2回)
令和3年2月16日
 
【黒沼座長】
 定刻になりましたので、ただいまより「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」第2回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参加いただき、誠にありがとうございます。

 本日の会合も新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とし、一般傍聴はなしとさせていただいています。また、メディアの関係者の方々は金融庁内の別室にて傍聴いただいております。

 議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させていただく予定ですので、よろしくお願いします。

 また、今回よりオブザーバーとして、札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所が御参加されますので、御案内いたします。資料1の名簿に追記させていただきましたので、そちらを御覧いただければと存じます。

 前回同様ではございますが、2点、注意事項がございます。まず、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくよう、お願いします。御発言される際にミュートを解除いただき、御発言が終わられましたら、再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。

 次に、御発言を希望される際は、オンライン会議システム上のシステムのチャット上にて、必ず全員宛てにお名前または会社名などの組織名を御入力ください。そちらを確認して、私が指名いたしますので、御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言ください。

 それでは、議事に移ろうと思います。本日は「最良執行方針等とSORとの関係等」をテーマに議論いたします。それでは、事務局より説明をお願いします。

【繁本市場業務監理官】
 企画市場局市場課の繁本でございます。それでは、お手元の資料に沿って説明させていただきます。

 資料をおめくりいただきまして、まず1ページを御覧ください。昨年12月18日に行われました第1回会合におきます委員の皆様方の主なコメントを1ページから3ページで整理させていただいております。

 まず1ページ、全体総論というところでございますけれども、一番上の丸でございます。論点の1つとして、この最良執行方針等の制度導入時に市場を選択する際の要素として、価格、コスト、スピード、執行可能性が4大要素となっておりましたところ、それについて変わりはないかというような論点がございました。これに関しまして、現在でもこの4つが4大要素というのは違和感はない。ただし、他の要素を排除するわけではないといった御指摘がございました。

 2つ目あるいは3つ目の丸でございますけれども、環境の変化、具体的にはPTSの取引が増えてきた、あるいはSORといったようなIT技術の進展を踏まえて、最良執行方針について見直す必要があるのかというところの論点に関しましてですけれども、2つ目の丸では、取引所で執行することが合理的というところから出発する現在の最良執行義務は見直す必要がある。あるいは3つ目の丸ですけれども、ITの進展、PTSにおいて、少なくとも取引所の取引時間内においては妥当な価格での売買が可能となってきているということを前提にすると、最良執行のあり方を見直すことについては異論はないと。また、PTSは東証の取引開始前の時間帯も取引しているが、その時間帯は価格を比較することは現実的ではないといった御意見をいただきました。

 また、次の丸でございますけれども、機関投資家と個人投資家については、これは最良執行方針について分けて議論するのが妥当であろうということで、これは多くの委員の皆様からいただいたところでございます。

 それから、その次の2つの丸は、アメリカ型の最良執行義務に関してでございますけれども、こちらにつきましては、両意見とも共通しまして、かなりの設備投資、インフラが必要となる、あるいはメンテナンスも必要となるということで、慎重な検討が必要ではないかといった意見でございました。

 その下、機関投資家に対する最良執行方針等に関する御議論でございます。一番上の丸です。先ほどコスト、価格、スピード、執行可能性、4大要素という考えがありましたけれども、これに関連しまして、機関投資家にとっては匿名性・秘匿性も重要であるといった御意見でございます。また、同様に、機関投資家は必ずしも価格のみを優先しているわけではないという2つ目の丸。3つ目の丸、そうしたことを踏まえてということかと思いますが、基本的には導入当初の精神、様々な要素を総合的に勘案するというものでございますが、こちらはいまだに生きており、これに大きく手を入れる必要はないといったような議論でございました。

 2ページにお進みください。個人投資家に対する最良執行方針等の議論でございます。一番上の丸でございますが、特に小口の注文に関しては、複数の取引施設を比較して、より良い価格で執行するというのはある意味自然という御意見。その一方で、同じ、上の最後のところですが、約定可能性、価格の透明性も重視されるべきといった御意見がございました。

 2つ目の丸も類似したものでございますが、どのような価格で執行できるのか、どのようなコストがかかるかという、この2点が一番重要な要因だと。そうした意味で、真ん中辺りですが、SORを積極的に活用した執行機会というものを最良執行という考え方の中に取り組んでいくことはメリットがあるとする一方で、最後のところですが、全てSOR経由でなければならないということではないといった御議論をいただきました。

 3つ目の丸でございますが、価格優先という形を一律的に適用するという発想については、若干懐疑的という御意見でございます。その3つ目の丸の最後のほうですけど、中堅証券が新たにシステムコストを過大にかけて、それが結果として投資家に転嫁されるというような形になるというのは、投資家保護とは必ずしも言い切れない、プリンシプルベースのアプローチが望ましいといった意見でございます。

 4つ目の丸でございますけれども、上のほう、取引所、PTSにつなぐために一定のコストがかかっているということで、一律SORを導入しようという議論はとても乱暴ではないかといった御意見でございます。

 最後の丸でございますが、投資家が少しでも有利な価格で取引できるにこしたことはないが、としつつ、真ん中辺りですが、中堅・中小証券においては、ブローカレッジ業務から資産形成ビジネスへのシフトが課題となっていることからも、価格追求の優先度は下げざるを得ないといったような御議論でございました。

 総じて、個人投資家に関しましては、より良い価格で執行するということは自然であると。価格をもう少し考慮していくことが必要だということでは皆様方一致している一方で、全ての証券会社に一律にこれを求めるというよりは、プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレインのような余地を残す必要があるのではないかというところで、多くの委員の意見が一致したところでございました。

 最後に3ページでございます。そのほかの論点でございます。一番上の論点、御意見でございますけど、いわゆるHFTの先回りについても議論が必要ではないかという御意見でございます。

 他方で、2つ目の丸ですけれども、個人投資家とHFTとのスピード格差に関連しまして、マーケットの流動性の多様性も大事だという御意見もございました。

 3つ目の丸ですけれども、最良執行方針どおりに執行されたのかという開示とモニタリングも大事ではないかという御意見でございます。

 4つ目の御意見は、SORに関しまして、非常に優れた仕組みではあるが、一種のブラックボックス化しているところを踏まえて、利益相反の観点から検討する必要もあるのではないかといった御意見でございます。

 そのほか、市場の透明性も考えなきゃいけないですとか、市場間での健全な競争環境は大事だといった御意見もあったところでございます。

 続きまして、こうした御議論を踏まえて、本日の説明資料を用意しております。まず最初に、最良執行方針等とSORとの関係について御説明をいたします。

 5ページを御覧ください。SORによる注文執行ルールの多様性について、資料にまとめております。一番上の丸、現在、PTSの取引参加者である証券会社35社の多くはSORのサービスを提供しております。そのうち、ネット証券の大半は個人投資家に対してのみSORのサービスを提供しておりますし、それ以外の証券会社の多くは機関投資家に対してのみSORのサービスを提供しております。

 また、そのSORでは通常、取引所に加えまして、PTS、ダークプールといったところを執行先等としておりますが、いずれの取引所、PTS、ダークプールを執行先等とするかは各社異なっております。下にございますけれども、例えば、PTS現在2社ございますが、2社それぞれの取引参加者となっている証券会社は28社、他方、1社のみという会社も7社ございます。また、ダークプールに関しましては、これを利用しているという証券会社が20社というようなことになっております。

 3つ目の丸ですけれども、SORによる注文執行のルール、これはまた次のページで御説明いたしますが、こちらにつきましては、顧客の希望に応じて、スタンダードなものからカスタマイズができる場合もございますし、あらかじめ決まった執行ルールを変えられないよという場合もあるようでございます。

 続けて6ページ御覧ください。もう少し具体的に注文執行ルールについてまとめております。まず、執行先等の違いということでございます。取引所に関しましても、東証において執行可能というのはいずれも共通しておりますが、重複上場銘柄について地方取引所の気配も参照しているというパターンと東証のみというパターンがあるようでございます。PTSに関しましては、先ほど申し上げたように2社の気配を見ているというものと、1社のみというものもございますし、また、ちょっと珍しい例としましては、SORにおいてはPTSの気配は見ていない、取引所とダークプールだけを比べているという会社もあるようでございます。ダークプールに関しましても、自社の運営するダークプールにおいて対当可能というケース、他社の運営するダークプールに注文を流すというケース、どちらも使えますよ、あるいはダークプールは使っていません、いろんなパターンがございます。

 ②、基本となる注文執行のルールの違いということで、こちら第1回の会合でも図を示して御説明しましたが、最良気配を提示している市場から注文順に回送していくというやり方と、複数の市場に注文を分割して同時に発注、投げるというやり方、最近は後者のほうが多いようでございますが、それぞれございます。

 3番目、同値の場合の処理の違いということで、複数の取引施設で同値の気配を示していた場合にどうするかということでございますが、最も流動性がある市場、すなわち東証のことが多いかと思いますが、そこで執行しますよというケース。それから、お客さんの支払う手数料が安い市場で執行する。これは、多くの証券会社はどこの取引施設で注文を執行しても手数料は一緒ということが多いようでございますが、一部の証券会社は執行する市場によって、お客さんが払う手数料も変わってくる、お客さんが証券会社に払う手数料にも執行市場の違いが反映されているという会社もございます。そうした会社において、お客さんが払う手数料が安い市場で執行しますというケースもあるようでございます。そのほか、事前に指定された市場、あるいは順番で注文回送するというパターンもございます。

 4番目ですが、SORにより発注した後、約定前に執行先の市場において気配が消えており、約定できなかった場合の処理の違いということで、注文は投げたんだけれども、その気配を時間優先等の中で最良気配を取れなかった場合にどうするかということでございますが、最も流動性のある市場、すなわち東証で執行します、あるいは事前に指定された市場で執行しますというパターンのほかに、改めましてSORで最良気配を探して、もう一度一番良い気配の、その時点で一番良い気配を提示している市場に投げ直す、SORをまた一からやり直すという場合もあるようでございます。

 5番、SORの開発主体の違いということで、こちら自社、他の証券会社、システムベンダー、あるいはシステムベンダーと自社が共同開発と、様々ございます。

 7ページは参考でございますけれども、ダークプールとPTSのマーケットシェアの推移、一部推計も入っておりますが、でございます。こちらを見ますと、青いほうがPTSで、赤いほうがダークプールになりますが、いっとき赤いほう、ダークプールが2016年、17年辺りはPTSを上回っておりましたが、足元はPTSの信用取引が解禁されたこともございまして、PTSのシェアが伸びてきているという状況かと思います。

 続きまして、8ページを御覧ください。8ページは最良執行方針等との関係ということで、SORのサービスを提供している証券会社には、これを最良執行方針等に記載しているものとしていないものがございます。また、投資家に対して最良執行方針等とは別に、SORに関する説明書、これは任意でということですが、交付している会社もおられます。

 まず、最良執行方針等、SORに関する記載がある証券会社ということで、数としてはこちらのほうが少数派になりますが、この場合でも大きく分けて2つに分かれます。最良執行方針等にSORに関する記載をしている証券会社のうち、SORを使用する旨、及び具体的な注文執行ルールについて記載している会社というのがまずございまして、具体的な注文執行ルールとしましては、①から④に掲げたような、6ページで説明したような内容についてそれぞれ記載している会社もございます。その下の矢尻でございますが、SORを使いますよということは書いているけれども、注文執行ルールの詳細は書いていないという証券会社もございます。また、3つ目の矢尻ですが、当該注文執行ルールを選択する理由について、1から4ごとに具体的に記載している証券会社は見当たりませんでした。

 他方、最良執行方針等にSORに関する記載がない証券会社、こちらのほうがむしろ多いわけですけれども、これらの会社におきましては、もともと最良執行方針等の中に、顧客から執行方法に関する指示があった場合には、当該執行方法により執行しますということが書かれております。これは第1回の資料の日証協さんのひな形でもそういったものがございましたが、そうしたところでございまして、顧客からの指示に基づくものとしてSORで注文執行するということのようでございます。

 9ページ、10ページは、最良執行方針等にSORのことを記載していただいている証券会社の具体的な例を示しています。9ページは、SORを使用する旨、及び具体的な注文執行ルールについて記載している例でございます。真ん中辺り、中略の下に(1)というところがございまして、ここで具体的な注文執行ルールが記載されております。10ページのほうは、SORを使用する旨は記載しているが、SORによる注文執行ルールについて詳細は記載していない例でございます。ただ、この会社の場合、詳細は別途の説明書を御確認くださいというようなことが書かれておりまして、そちらの説明書と最良執行方針等をセットで見れば、具体的な説明がなされている可能性がございます。

 続きまして、11ページでございます。これは最良執行説明書との関係ということで、最良執行説明書につきましては、証券会社が顧客からの注文を最良執行方針等に基づいて執行した後に、顧客から求められたときには最良執行説明書というものを交付するというルールがございまして、これに関してでございます。こちらの最良執行説明書に関しましては、2つ目の丸ですけれども、実務上は顧客から交付を求められることはほとんどないというふうなことで聞いております。

 それから、その中身、こっちは法定事項になりますけど、その中身につきましては、SORにより注文執行した場合における価格改善状況が含まれていない。具体的にはどのようなものを書かなきゃいけないかということで、かぎ括弧の中ですけれども、銘柄、数量、売り買いの別、受注日時、約定日時、及び執行した市場等ということになっております。

 他方で、実務上は、最良執行説明書とは別に、任意にSORによる注文執行結果を記載した書面を交付している証券会社も多いということでございます。ただし、こちらは法定の交付義務ではございませんで、あくまでも証券会社のサービスの一環という扱いになっております。

 続きまして、SORに付随する利益相反構造でございます。13ページを御覧ください。SORによる注文執行のルールいかんによって、証券会社の利益と顧客の利益との間に利益相反が生じることが考えられるということで、プリファレンシングというものを掲げてございます。取引施設に系列・友好関係にある取引施設と他の取引施設があった場合に、例えば、同値あるいは最良気配の取引施設があったとしても、系列・友好関係にある取引施設に注文を取り次いでしまうといったようなケースが考えられます。

 具体的な例としては、14ページを御覧ください。系列・友好関係にあるPTSで優先回送しているという例が考えられます。また、②ですけれども、自社あるいは系列会社が運営するダークプールへ優先回送するといったようなケースも考えられるということかと思います。

 矢尻でございますが、上記に関しましては、東証の立会市場における最良気配と比較して、価格改善効果がある。あるいは価格改善効果がない、例えば同値であったとしても、こちらの取引施設に出したほうが約定可能性が高いなど、投資家にとっても利益があるという主張も考えられるところでございます。一方、少なくとも個人投資家にとっては、価格改善効果を重視すべきではないかといった考え方もあろうかと思います。

 続きまして、最良執行方針等とダークプールとの関係でございます。16ページ、ダークプールに関する過去の主な改正等のまとめ、こちら第1回の資料の説明でも付いていたもののうち、ダークプールの関係を抜粋したものでございますが、2010年にダークプールがPTSに該当しないことを明確化した後、2018年には、その前年の金融審、市場ワーキング・グループの議論を踏まえ、ダークプールの認可制の要否を議論いたしましたが、認可制の導入は見送られたということでございます。さらにその2年後の2020年には、2019年からの市場ワーキング・グループの議論を踏まえまして、ダークプール取引の透明化等に係る措置を義務づける内閣府令等の改正が行われたところでございまして、直近、二度にわたって金融審議会で議論が行われている経緯がございます。

 17ページを御覧ください。こちら2019年、直近の金融審、市場ワーキング・グループにおける事務局説明資料を一部抜粋したものでございます。17ページはダークプールが投資家に利用される理由、あるいは問題点等を整理しております。利用される理由としましては、マーケットインパクトを最小化でき、もって大口注文の執行を促進できる、あるいは価格改善の可能性がある、あるいは取引コストが最小化できる可能性があるといったようなことが言われておりまして、主に機関投資家に使われだしたという経緯が書かれております。他方で、問題点としましては、IOSCOのレポートからの抜粋になりますけれども、価格発見機能が低下するおそれがある、あるいは、ダークプールが増えると流動性が分散する、あるいは情報が分断されるおそれがある、取引参加者間の公平性が阻害されるおそれ、あるいは取引の執行方針等に関する情報が十分提供されないおそれもあるということが言われているところでございます。

 それを受けて18ページでございますが、こちらはその一歩前、2017年から行われた金融審の議論について取りまとめておりますが、紹介しております。真ん中の辺りですけど、ダークプールをPTSと同様に認可制の対象とするということも考えられるといった議論を行いましたけれども、そうした要請は現状必ずしも強く聞かれないということで、将来的に新たな課題、環境変化が生じた場合には必要に応じてまた検討しましょうといったことにされたところでございます。

 19ページは、こうした結論の後の状況変化として、2点挙げておりますが、1つ目は、ダークプールのシェア自体はそうした2017年の議論の後、大きく伸びているわけではない。これは2019年時点での話ですけれども、大きく伸びているわけではない。他方で、ネット証券会社が個人投資家向けにダークプールの提供に参入するなど、個人投資家への間口が広がってきているといった指摘がなされております。それを踏まえて、懸念される点としまして、今後、個人投資家向けダークプールの拡大が見込まれる中で、何ら規制がないと、個人投資家に不利益が発生した場合の実態把握や対応が困難だと、ダークプールということで、非常に実態が見えにくいということもございまして、特に個人投資家は情報等の部分で機関投資家よりも弱い点があるので、何か不利益が発生した場合の実態把握、対応が困難ではないか、あるいは、そもそも個人投資家が十分な理解のないままダークプールを使っているおそれもあるのではないかということで、まずは実態把握を行う仕組みを手当てする必要があるではないかといった論点が示されたということでございます。

 これを受けて、20ページで委員から出された主な意見をまとめておりますけれども、ダークプール取引数量の把握に向けた手当てを進めるべき、あるいは、顧客の属性、ニーズに応じて適切な説明対応を行うべき、特に個人投資家に対し必要といったようなことで意見が出されたということでございます。

 こちらを受けまして、21ページは、この議論を踏まえて行われた制度改正についてまとめております。大きく分けて3つでして、1点目、ダークプールへの回送条件、運営情報の説明ということで、顧客に対してそういう説明をする義務が課されたということで、こちらは昨年の9月から施行されております。それから2点目、価格改善の実効性の確保に向けた情報の記録・保管ということで、ダークプールで対当した価格、時刻の記録・保管、あるいはダークプールに回送を行うと判断した際の取引所、PTS、ダークプールの価格、時刻の記録・保管といった義務が課されております。こちらは本年9月の施行に向けまして、現在、各証券会社が準備中というものでございます。併せて(3)、価格改善効果の顧客説明ということで、価格改善を主な目的としてダークプールで取引を行ったお客さんに対しては、個々の取引の価格改善効果の状況について説明をしてくださいということで、こちらも本年9月の施行を予定されているというものでございます。

 他方、2019年の金融審の議論の際に、提案はされたけれども、見送られた規制というのもございました。1点目がトレードアットルールでございます。海外、アメリカあるいはヨーロッパにおいては、小口注文について、最良気配の外側または同値での約定を禁止するトレードアットルールが導入されております。これにつきまして、日本でも導入してはどうかという議論も行われましたが、以下の理由からトレードアットルールの導入は見送られたということでして、①機関投資家がダークプールを利用する目的は、必ずしも価格改善効果に限られない、②トレードアットルールを導入すると、即時執行を阻害するといったような理由で、この際の議論ではトレードアットルールの導入は見送られております。

 また、個人から主体的なリクエストがなければダークプールを利用させないという規制も議論されましたが、取引の都度に、お客さんにダークプールを利用しますか、利用しませんかと確認をすること自体、お客さんにとっても煩雑であろうと、あるいは、投資家被害が顕在化していない現段階では、まずはお客さんへの適切な情報開示、説明を求めるにとどめるほうが適切であろうというようなことで、この2つの規制の導入は見送られて、現在は、先ほど21ページで説明した規制の適用に向けた準備が行われている最中ということでございます。

 続きまして、23ページですけれども、ダークプールに関する執行方法等ということで、特にSORでどのように執行されるかということでございます。ダークプールですから、気配の公表義務はございませんし、基本的には気配は外部に公表されておりません。また、証券会社の中の人間も原則として気配を見ることができないということになっております。他方で、SORを利用したダークプールに関する執行方法としては、2つに分かれておるようでございます。上の矢尻ですけれども、SORのシステム上では自社のダークプールと他の市場における気配を価格で比較することが可能なものがある。それは人の目では見えないんだけど、SORのシステムの中にはダークプールの気配があって、その他の市場の気配と比べることができるということのようでございます。この場合は、最も良い気配を提示した市場に注文が回送されることになります。他方で、よりダークにという部分を追求しているということで、SORのシステム上ですらダークプールの気配は一切出てこないというダークプールもございます。この場合はどのようにダークプールに執行するかというと、まず東証あるいはPTSにおける最良気配を把握した上で、それと同値、あるいはそれよりも有利な価格で一旦ダークプールに注文を投げると、もしそれに対当する注文があれば、対当させて、ToSTNeTなりで約定させるということになりますし、対当する反対側の注文がなければ、注文が戻ってきますので、その場合には最良気配を示している取引所なりPTSで注文を執行するという、そういう流れになるようでございます。

 最後に、以上を踏まえた検討課題ということで、25ページを御覧ください。まず、最良執行方針等とSORとの関係でございます。最良執行方針等においてSORによる注文執行のルールを記載することについてどう考えるかと。この場合、個人投資家も含め、分かりやすい記載にするためにはどのような点に留意する必要があるか。2つ目の矢尻でございます。SORにより注文執行した場合における投資家に対する執行結果に関する情報提供の在り方についてどう考えるか。法定の説明書類である最良執行説明書の記載事項の充実化についてどう考えるかというところでございます。

 2つ目、SORに付随する利益相反構造でございまして、SORによる注文執行のルールいかんにより利益相反が生じることを踏まえ、最良執行の観点から、SORによる注文執行のルールはどうあるべきか。前記の利益相反構造についてどのような対応策が考えられるか。

 3点目は、最良執行方針等とダークプールとの関係でございます。個人投資家が最良執行方針等について、より価格を重視したものに見直すと、第1回の議論でもそうした意見が多かったわけですけど、見直す場合に、ダークプールの位置づけについてどのように考えるべきかということで、先ほど申し上げたように、ダークプールにつきましては、2019年の金融審において、トレードアットルール及びダークプールを利用する場合における事前同意の取得の義務づけが見送られて、まずはダークプールの透明性等の確保が進められているといった、これまでの議論の経緯も踏まえて、御議論いただければということでございます。
以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明を踏まえて、御議論いただければと思います。チャットを通じて手を挙げていただければと思います。それでは、大和総研の横山様、お願いします。

【横山委員】
 黒沼先生、ありがとうございます。大和総研、横山でございます。非常に丁寧な御説明及び論点の整理ありがとうございました。いただいた検討課題につきまして、少しだけ思うところを述べさせていただければと思います。

 順番がちょっと逆になりますが、まず、利益相反構造の点につきましてちょっと考えているところがありまして、14ページかと思うのですが、こういう利益相反の議論をすると、得てしてといいますか、要は、利用者に別に利益が出ているからいいじゃないか的なことを言われることがあるのですが、そこはすごく私としては抵抗感のあるところでございまして、利用者に利益が出ていれば、利用者に損失が発生していなければいいんだという話ではなくて、選択肢があるときに、本来であれば利用者の方の利益に基づいて選択がなされている、最低限、利用者の利益よりも自らの利益を優先した選択は行われていませんという、そこはちゃんと押さえる必要があるのかなというふうに考えております。

 その上で、じゃあ、利用者の利益って何なんだろうかと考えたときに、ここは最良執行という問題については、確かに画一的に固まるもの、決まるものではないので、どういった利益というものを想定して、例えば価格改善であるとか、約定可能性があるとかというところから、こちらのほうが利用者の利益をより大きくしているんですよという判断で選択がなされているという、そういう整理が私はあるべきかなというふうに考えておりまして、その意味では、どういう利益を優先していて、どういうふうに対応していますということを御説明いただくということが大事なのかなというふうに思っている次第です。

 それを踏まえまして、Ⅴの「検討課題」のページの1に今度は遡るわけですけども、そうした最良執行における定義が必ずしも画一的ではないというところを踏まえると、確かにSORのロジックというか、アルゴリズムというかを逐一説明するのは確かにいろいろ難しく、また逆に弊害を生む可能性があるというのはよく分かるのですが、少なくともどういうポリシーで注文を探索していて、また、どういったプロセスを取っていますよというところは最低限示されないと、投資家として選択、これを採用するかどうかという判断は難しいのかなというふうに思います。

 少なくとも機関投資家につきましては、自ら検証されるというところもあると思いますので、執行結果のところも、やはり前回の会合でも何人かの委員の方から御指摘あったと思いますけれども、適切に自ら執行結果を評価できるだけの情報というものが必要だということではないかと思います。

 個人といいますか、リテールにつきましては、そう単純に自分で確認してくださいとはなかなか言い切れない。あるいは、ポリシーが出ているから、そこから自分で選びなさいとはなかなか言い切れない面が残るかなというふうに私も思っておりまして、1つの考え方ですけども、個人の最良執行について、「より価格を重視したものに見直す」というページの下の方に書かれているところを踏まえますと、これは例えば欧州の例も踏まえて、価格を重視するというのが一種の標準形というか、出発点と考えて、そこから、例えば自社はどういうふうなものを利用者の利益と考えるかということで、標準形に修正、補正している内容はこうですというような説明の仕方を求めるという方法、ある種、乱暴な言い方かもしれませんが、コンプライ・オア・エクスプレイン的な対応として考えられるかなというふうに思っている次第です。

 あと、執行結果のほうにつきましては、いただいた説明資料で、実は最良執行説明書の請求はほとんどないというのを見てしまうと、こちらでどこまで対応できるんだろうかというのは疑問として残るところはあると思うのですが、少なくとも生のデータで自分で確認してくださいというのはなかなかリテールのお客様に対しては難しいかな、どういう考え方でどういうところで執行されましたというところの説明がないと、なかなかちゃんと伝わりにくいのかなということが考えられます。あと、場合によれば、先般、誠実公正義務や適合性原則に関わる監督指針の改正ございましたけれども、業者のほうで適切な執行が行われているかについて検証するというのも1つの考え方としてあるかなと思います。

 ちょっと長くなって申し訳ありません。最後のダークプールですけれども、確かにおっしゃるとおり、ダークプールが含まれている場合に、本来最良執行であれば統合して考えなきゃいけないけれども、その性質上、事前の気配の透明性が不十分なので、なかなか難しいというのは非常によく分かる一方で、回送先として含まれ得るのであれば、何らかの言及はないと、利用者として、非常に判断は難しいのかなというふうに考えておる次第でございます。

 特に個人投資家の最良執行方針等ということになってきますと、ダークプールを使う目的といいますか、意図といいますか、そういったところも含めて、何らかの形で伝えることがあってもいいかなと。それが今まさにおっしゃった昨年改正されたダークプールに関する見直しのところともうまくリンクさせることができるのではないかなというふうに思った次第でございます。

 ちょっと長くなって申し訳ございません。以上でございます。ありがとうございました。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。それでは、上柳先生、辛島様、清明様の順で御発言いただこうと思っています。まず、上柳先生、お願いします。

【上柳委員】
 ありがとうございます。大分詳しいお話をいただきまして、ありがとうございました。

 私は今の段階では、これからまたHFTの問題とかあるのかも分かりませんけれども、この機会に最良執行について、骨太のといいますか、基本原則に立ち返って、きちんとした方向を示すべきだろうと思います。少なくとも個人投資家については、手数料も含めたというところがいいと思いますけれども、価格コスト重視のところにつなぐ義務があるんだということを明確にしたほうがいいと思います。もちろん、そこから明示的に外れる方、大口取引、そのほかをしたいということでオプトアウトはあるかも分かりませんけれども、そのように思います。システム構築等いろいろコストがかかるとかいうふうなこともあるとは思いますけれども、これからシステム取引どんどん、今でも増えてきているわけですけれども、そういう中で、日本も各国並みにといいますか、先進国に追いついていく必要があるというふうに思います。

 ただし、いろいろコストの問題あるいはシステム改善の問題、そのほかあると思いますので、それが実現するまでの経過措置としては、SORの利用、あるいは利用していないことについてきちんと開示をするということが少なくとも必要だろうというふうに思います。事務局資料でいうと、6ページのところにいろいろ分類をしていただいておりますけれども、そこに書かれているような項目については開示を義務づけるということが必要なのではないかというふうに思います。

 それと並行して、最良執行の一環として、私の言葉で言えば、しかもそれも経過措置ということになるわけですけれども、ダークプールについて、少なくとも個人投資家についてはいわゆるトレードアットルールを導入、これはまだ施行されていない法改正部分もあるわけですけれども、最良執行のほうの考え方を踏まえて、個人投資家についてはダークアットルールを導入すべきだというふうに思います。以上です。

【黒沼座長】
 ありがとうございます。それでは、野村證券の辛島様、お願いします。

【辛島委員】
 野村證券の辛島でございます。よろしくお願いいたします。課題として設定された3つ、順番に意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、最初の最良執行方針のSORとの関係というところですけども、御紹介いただいたケースだと、SORを使っている会社について2つのパターンを御紹介されていると思うのですが、SORはかなり複雑なシステムになりますし、説明しようとすると、本当に細かいところまで説明できなくもないので、文章量が大きくなり過ぎて、分かりにくくなってしまう、そういう、どっちがいいのみたいなところがあります。だから、例えば投資信託の交付目論見書と請求目論見書との関係みたいな感じかなとは思うのですけども、まずざっくり基本的なものを見せて、細部が知りたければ別冊を見てくださいというような形でも、形としては全く問題ないかなというふうには思っています。

 ただ、見えやすいところに一体何を書けばいいのかというところなのですけども、投資家にとって、コストとリスク、この認識に重要な情報というのはできるだけ本文に記載してあげることが必要だろうというふうに思います。基本的にはSORを使うか、使わないか。それから、使うケース、使わないケース、ケース分けは必ず発生すると思いますので、そこをきちっと書いてあげる。それから、SORを利用する場合に、例えば発注先によって手数料が違うというのであれば、手数料が違うということと、その水準の違い、その辺を書くなり、SORでの判定に手数料込みでやっているのか、それとも値段だけでやっているのかとか、その辺のところは基本的な機能だろうと思いますので、きちっと書いてあげたほうがいいだろうと思います。あと、PTSでは成り行き注文が使えませんので、基本的な話にはなりますけども、成り行き注文をPTSに流すときにどういう指し値で出すのかとか、意外とこの辺も重要になってきますので、その辺もきちっと書いてあげる必要があるなと。それから、複数のトレーディング・ベニューを使う場合、取引所とPTS、PTS2社とかでやる場合に、同時に出すのか、順番に出すのかというのは、意外とこれリスク認識に重要なポイントだと思いますので、この辺りは基本的に書いてあげるということかと思います。

 それから、2番目の利益相反と関連するのですけれども、取引所は独立していますので別だとすると、自社のグループ会社なり関係の深い先というのを同値の場合に優先するというような設定をしている場合、あるいは、そもそもグループ会社のPTSにしか発注しないというような方針を取っている場合、そこは、その理由についてきちっと説明してあげる。自社の中で利益を囲い込みたいからですという説明はやっぱりできないと思いますので、そういう意味では、きちっと、なぜそうしたのか、流動性が高いので、ほかを使う必要がないんですとか、その辺をきちっと説明してあげるというのは、1つ、利益相反を牽制するという意味でも非常に大事なのかなというふうに思います。

 それと、もう一つは、今まで議論に出ていませんけれども、米国なんかで問題になっているのは、ペイメント・フォー・オーダーフローの問題だと思います。投信の販売会社手数料と似たような構造でもありますけれども、どこのベニューにつなぐのかというところで、裏側で、ベニューから証券会社へのキックバックがあるというような構図があれば、「それが理由なんですね、本音の理由なんですね」ということになるので、逆に言うと、キックバックがあれば、それを投資家に向かって明確に明らかにしてあげてくださいと。その辺は、最良執行方針として掲げる際に、幾らもらっていますというのをきちっと出してくれというふうにするのが、1つ、利益相反を防止するための手段なのかなというふうに思います。

 あと、執行結果の説明ですけど、これは前回、梅野さんからもかなり厳しい御指摘がありましたけれども、なかなか、出した注文に対して取引所で板が変わってしまったというようなことを、じゃ、結果の報告として個人投資家に向けて出したところで、分かっていただけるかというのは非常に難しい問題だとは思いますので、これはある程度シンプルに書いた上で、追加的にはお客様から問い合わせてくださいという形にせざるを得ないのかなというふうに思います。最低限、主市場のその時点での最良気配というのは見せてあげるべきかなというふうには思います。機関投資家に対しては、先ほど横山さんからお話があったとおり、御自身で分析できますし、証券会社との力関係も強いですから、その辺は当事者同士に任せてあげるということでいいと思います。

 2番目の利益相反の話、今もう触れてしまいましたけれども、ここに関しては、具体的なSORの動作に踏み込んだ規制をかけるというのは技術進歩の制約になりますので、これは今の段階ではやらないほうがいいと思います。ですので、先ほど申し上げたように、最良執行方針において説明する際に、利益相反となり得る状況があれば、それを開示するということで牽制していくということかと思います。

 最後にダークプールの話ですけども、ダークプールに関しては事務局からの御説明のとおり、既に規制がまさに今、実施されようとしているところ、特に投資家への説明義務のところはこの9月に施行されようとしているところで、実際、私の会社では個人投資家にダークプールを使っていただく予定はないのですけれども、中身を見てみると、ダークプールを使っていただくに際して個人投資家に向かって説明すること、それから、結果としての価格の水準に対して説明する事項というのは、かなり重たいことを要求されていまして、しかも1件1件について、取引所と同値であっても価格改善がなされていないという、その理由を説明するとか、かなり重たい義務が課せられています。ですので、あえて、ここで最良執行方針の中でダークプールの話を議論する必要は今の段階ではなくて、使うというのは当然書く必要があるとは思うのですけども、まず一旦は、今決まっているルールが施行された上で、それが過剰なのか、あるいは足りないのかというのを評価した上で、もう一度議論すればいいのではないかというふうに思っています。

 すいません、長くなりましたけど、以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございます。貴重な御意見、御説明ありがとうございました。それでは、マネックス証券の清明様、お願いします。

【清明委員】
 マネックス証券の清明です。丁寧に御説明いただきましてありがとうございます。私ども個人投資家向けのネット証券でございますので、個人投資家の観点で発言させていただければと思います。

 そうは言いましても、横山さんですとか辛島さんと同じような意見になってしまうんですけれども、1つ目の最良執行方針等とSORの関係のところについて、細かいルールを書き過ぎるというのは分かりづらくなるという点もございますし、書き過ぎたら書き過ぎたでそれを狙う投資家に裏を突かれるといいますか、先回りされる可能性もあったりとかしまして、どうしてもそこは考え方ですとかプロセスですとか、そういった大きな方針は開示すべきだとは思いつつも、ルールを細かいところまで書き過ぎるというのは弊害もあるのかなというふうに思っております。

 一方で、それゆえに、結果をしっかりと情報開示するということは重要だと認識をしておりまして、どの取引所で約定が付いたのか、他市場でいくらだったのかというものをしっかりと開示させていただいて、お客様に御確認いただけるという形を取るというのは重要かなというふうに思っております。

 それから、2点目の利益相反のところでございますが、こちらは前回も述べさせていただいたように記憶しておりますが、PTS市場も、「市場」となりますと透明性が非常に重要ですので、利益相反行為となり得る可能性があるものにつきましては、やはりしっかりと説明をする。証券会社側もどういうふうに注文を取り扱うのか、SOR・発注した市場でどういうふうに注文を処理するのか、プロセスも含めてしっかりと御説明をするということはマストかなというふうに考えております。

 それから、最後にダークプールの観点ですけれども、こちら、先ほどもお話ございましたが、今、足元新たなルールになるという中で、実は弊社につきましてもちょっと取扱いを変更するということを考えておりまして、具体的に言いますと、今は現物のところだけで入っておるんですけれども、今後新しい形になると、終了しようかなというふうに思っています。その後もダークプールを使われるということであれば、そういった事実の説明、どういう形でダークプールなのかというのは説明はしておいたほうがいいかなというふうに思っておりますが、ただ、先ほどもありましたとおり、新しいルールに変わる中でございますので、なかなか、一緒にセットで考えていくのはもしかすると難しいかもしれないなという思いではおります。

 簡単ですが、以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございます。引き続いて、宇野先生、内田様、永堀様の順に御発言いただこうと思います。では、宇野先生、お願いします。

【宇野委員】
 早稲田大学の宇野でございます。発言の機会ありがとうございます。検討課題に沿って私の考えを述べさせていただきたいと思います。

 今回検討している事項というのは、我が国の株式市場において、マーケットメカニズムとして、市場にある最良気配での執行を原則として実行していくというところに1つの意義があると感じております。これから申し上げることは、基本的にはいわゆる一般的な個人投資家が出す注文に対しての原理原則として、各証券会社は複数の市場の気配のなかで最良のもので執行する、この原則に基づいて最良執行方針としていることを明示していただく必要があると思っております。

 複数市場として幾つまでの市場をカバーしているのか、PTS2社全てをカバーしているのか、そのうちの1社しかカバーしていないのかというようなところは、各社の事情がございますでしょうから、この辺は明確に述べることによって、誤解がないようにしていく必要があると思います。

 どのようなルールでSORが適用されるのかということについては、先ほど御発言もありましたように、本日の資料の6ページにあるような内容について、簡潔に記載しておくということは最低限必要なのではないかと思います。①から④に関しては、各証券会社のSORがどういう発注先をカバーしているか、そして、複数の市場に同値があった場合に、どういう順番が適用されるのかというようなことについては、投資家として関心を持つのでしょうし、説明が必要だと思います。④の部分は少しややこしくなるかとは思うんですけれども、結局④という事象は起こると思いますので、そのときにどういうふうに対処するのかということについても、どこまで詳細に記述する必要があるかどうかというのはありますが、基本となる考え方が記述されていることが望ましいように思っております。

 結果に関しても、したがって、出した注文がその時点の最良気配のある市場で執行できたのかどうか。出したが、執行できずに、もう一度やり直すといいますか、④のようなケースになったのかどうかといったことについての質問に対しては、回答していただく必要があると思います。この辺で一番気になるのは、執行可能な状況、最良気配での執行が可能な状況という判定について、個人投資家の顧客が出そうとしている注文の全ての全量が執行できるのかどうか。例えば、複数の市場に分ければ、足して合計して執行できる株数はその投資家が出そうとしている株数をカバーできる状況にあるのかどうかといったところで、誤解を生まないように実施をしていく必要があると感じております。

 利益相反についてですが、今回の趣旨というのは、市場にある最良気配で執行ができる、同値の注文をもつ先に系列であるとか提携先の証券会社があった場合に、証券会社としてはそちらを優先して流すということ自体は、とりわけ個人投資家の利益を損なうものではないというふうに感じます。ペイメント・フォー・オーダーフローのような契約が重要な要因として、オーダーのラウティング先について影響を与えるような状況が出てくる可能性がありますので、こういった関係については開示していただくことが必要であると思います。

 それから、ダークプールとの関係に関して言いますと、先ほどの御説明の中で、ダークプールの中でいわゆる気配に当たる情報を生成していて、システムでアクセスできるようになっている市場があるという御説明ございました。もし同値で執行できる値段がダークプール上に存在していて、それが注文を最初に受けている証券会社が実行しているダークプールである場合に、そこへ注文を流すということについて、とりわけそれを妨げる要因は私はないような気がいたします。もう一方で、そういった板情報に当たるものが開示されていなくて、試しに出してみて、その最良気配、ないしはそれよりもいい価格で執行できるかどうかを試してみるというやり方でダークプールに注文を投げることについては、そこで失われる時間の問題を考えますと、非常に慎重に対応するべきではないかなというふうに思います。

 私の考えとしては以上でございます。ありがとうございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。では、次に内田様、お願いします。

【内田委員】
 発言機会をありがとうございます。ニッセイアセットの内田と申します。よろしくお願いします。今回の検討課題に沿って、順に意見を述べさせていただければと思っております。

 まず最初の最良執行方針とSORの関係のところですけれども、事務局の方の資料にも書いていただきましたとおり、前回の議論でもありましたが、証券会社の最良執行方針の明示、ホームページ等での開示については、実態も鑑みて、まずは機関投資家向けとそれ以外のお客様向けに分けて記載することが望ましいと思います。この点は資料に記載いただいたとおりだと思います。これは、例えば我々機関投資家の側から見れば、IOIですとかクロス取引システム等が利用できること等を考えれば、非機関投資家の方との間で、実際に完全にイコールフッティングというか、同等の条件をそろえるというのは難しいと思いますので、違いを認めるというところからスタートとしてはというのが大事ではないかなと考えております。

 今回議論となっている個人、非機関投資家向けのお客様への記載を考える際には、ここで議論するに当たって、まず適用範囲としてどこまでを想定するのかを念頭に議論しないといけないと思っています。これは、営業店等の注文端末をSOR接続することが、どれぐらいコストがかかるものなのかということが、機関投資家の側ではピンと来ないですけれども、こういったシステム開発はその証券会社もしくはベンダーが担当するのか、いずれにしても最終的には証券会社の方がコストを負うことになると思いますけれども、果たしてそれがどの程度合理的な投資になるのかという点も考慮する必要があると思っています。と申しますのは、SORによる注文回送というのは、専ら電子接続、ネット接続のような電子取引向きの手法であり、なおかつ、私どものようなものを含めて、1回の注文をパーシャルするというか、分割して複数回執行するのに向いたサービス、SORというのは比較的そういうところに適性のあるサービスだと認識しています。そこでは、先ほど申し上げた営業店のようなマニュアルで対面処理の注文のようなものまで同等に扱うというのは、もしコスト負担がなければ、それは肯定されるのだと思いますけれども、もともと電話で注文をいただき、それを復唱して、実際に発注するという、相当のリードタイムが必要な取引、いわゆるタイミング・コストや何かも含めて発生していることを考えると、一律SORに回送します、全営業店舗回送します、といった対応を強いることはあまり合理的ではないと考えているのがまず1点目でございます。

 次に、個人向けの最良執行方針の記載についてですけれども、これについては専ら2点、意見を言わせていただければと思います。

 1つは、先ほど事務局の方の資料にもありましたけれども、多くの証券会社が「特に執行に指示がない場合は、いわゆる主たる取引所に取り次ぎます」という記載をしてあるということを御紹介いただきましたけれども、これは正直なところ、現状の認知度、これはPTSの方には大変失礼なんですけれども、からすれば、ある程度はやむないところかと考えております。

 それよりも問題なのは、多くの証券会社様が最良執行方針の中で、そういう方針を選ぶことは、「一般に取引所につなぐことが、流動性、約定可能性、スピード等からいって最も合理的だと判断するからです」と記している点だと思います。この記述は、明示的にPTSのような方の存在を否定するような書きぶりなので、こういったところを直すところから入るのが最初の議論ではないかなと思います。先ほど清明さんのほうからもお話ありましたように、あまり細かく書き過ぎると、逆に読んでもらえないし、分かりにくいというのもそのとおりなので、個人的には、最良執行方針の記述の中には、「取引所よりも有利な条件が見込める場合はSOR回送することがあります」というぐらいの表現があって、御興味のある方は詳しくはドリルダウンするような形で、こういうところを御覧くださいという開示をするという、開示の仕方を段階を分けて、あまねく皆さんに詳細を御説明申し上げますみたいな形はなかなかなじまないと感じております。

 あと、執行結果ですけども、基本的には、証券会社の方が報告される取引報告書に執行場所まで、執行ベニューまで記載するというのが第一義かなと思っております。その上で、価格証跡や何かを希望されるような方がいらっしゃれば、これは、さっきのリテール、ネットなのか、店頭なのかというのもありましたけど、基本的にはネット開示するぐらいの対応が現実的ではないかなと感じております。

 次に、SORに付随する利益相反の問題なのですが、こちらについては、PTSのように価格だとか板状況が開示されている、いわゆるリットベニューについては、仮に自社の、もしくは系列のPTSへの回送が優先されても、他のベニューと同等以上の取引内容で取引されている間においては、特に大きな問題は発生しないと感じております。それは、投資家にとって明確な機会損失等が発生していないからです。一方で、先ほど辛島さんがおっしゃられたように、少なくともマナーとして、ペイメント・オーダーフローのようなものを利用している旨を開示するというのは、これはどちらかというと、フェアな姿勢という整理で、まず望まれるものだと思います。一方で、接続先を制限するような対応だとかは、そういうことをやっていますと、特にネット利用者、ヘビーユーザーの方なんかが該当すると思いますけれども、結局それが競争条件の1つになりますし、「あそこの証券会社はいつもこことだけしか取引しないよ」、「ここでしか約定がつかないよ」という話になれば、逆に信用がなくなるというか、意外と世間のユーザーの目は、ヘビーユーザーなんかは特に厳しくて、今ではネットで直ぐに広まり、ごまかせない世の中になっていると思っています。

 あと一方で、なかなか難しいのは、この後のダーク取引とも関係するのですが、利益相反を立証することの難しさ、挙証することが桁違いに難しいという点を考慮しなくてはならず、この点は最初からやり過ぎてもなかなかうまくいかないと考えております。

 最後に、最良執行方針とダークプールとの関係なのですけれども、個人のダークプール利用については、正直なところ、極めて慎重に行われるべきだと思っています。先ほど申しましたように、個人投資家、非機関投資家を一括りにするのではなく、いわゆるデートレーダーや何かも含め、ネット取引をするような方とか、それから電話注文だとか店頭に来られるような個人投資家との間で、まず線引きが要るのではないかなと。同じような属性の顧客でも同じような取引形態ではないので、そこを考慮する必要があると思います。先ほど申し上げましたように、電子取引だとか反復執行するようなお客様の場合は、SORと合わせてダークプールの利用のメリットは決して小さくないと思うのですが、営業店に来て、リードタイムを取って、いろんな復唱確認をして、こういった取引を望まれている方にとって、ダークプールのメリットというのはそれほど大きくないのではないかなと感じます。ダークプールはその名のとおり、不透明な流動性なのですけれども、そこではSORなんかよりももっと難しく、取引内容の妥当性、事前に最良執行方針を開示しなさいということ自体にはアグリーなのですが、事前の説明どおりの執行であったか等について、第三者検証も含めて検証しにくいという明確な欠点があると思っています。この点については、以前のワーキングの中でも整理されたと聞いておりますけれども、検査等で運用データを検証して、不適切な部分を改善するという、どちらかというと業者規制的なもののほうが現実的には馴染むと思っています。この点については他社ダークに接続する証券会社も、説明責任も含めて責任を負うべきだと思っています。あと、先ほど事務局の方からお話いただきました通り、ダークについては今年9月から新しい規制が入るということで、今、各社とも取り組んでおられるということですので、実際にはその効果とか影響を見て、その次にもう1回ステップを踏むほうがよいのではないかと考えているところでございます。

 以上でございます。ありがとうございました。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。それでは、モルガン・スタンレーMUFG証券の永堀様、お願いします。

【永堀委員】
 永堀でございます。このたび、貴重な発言の機会をいただきましてありがとうございます。私のほうからも検討課題に沿って一つ一つ、私の思うところ、弊社としての考え方を申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、最良執行方針とSORの関係です。これは辛島さんからもまた内田さんからもお話をいただいたとおりでございまして、今の最良執行方針のホームページ上で記載されているもの、そのもの自身だけでは少し足りない部分があると考えております。ただし、詳細な情報を全てその中に詰め込むというのは、読む側にとって非常に苦労がありますし、それだけではなく、リバースエンジニアのリスクがございます。弊社では、当社ホームページ上で最良執行方針を記載するだけでなく、オーダー・ハンドリング・アンド・ラウティング・プラクティスというドキュメントをホームページに添付しております。ここでは、お客様から頂いたご注文の執行について、その概要を説明する資料として、お客様が閲覧できるようにしております。このような形で、包括的な説明と、もう少し詳細な概要を別の形で載せることが重要と考えております。また、個人投資家向けの証券会社様にとっては、ここの部分が個人の方でも分かりやすい文体で書かれるというのがすごく重要なのかなと思っております。

 また、2つ目の最良執行説明書というところですが、この検討課題の中では、当該記載事項をもう少し充実させるべきかどうかというお話ですが、私どもといたしましては、実は投資家様、あるいはお客様によって、最良執行として考え、必要となる情報というのがかなり多岐にわたっているという現状がございます。例えば弊社であれば、一つ一つのスライスの約定がその主市場最良価格に対してどの程度よかったのかということより、むしろ全体像として、お客様の親注文がどのような形で最終的にインパクトをかけて執行したのかというようなものを求められる場合があります。私どもとしては、トランザクション・コスト・アナリシスと申し上げているのですが、最良執行説明書みたいなものをお送りさせていただいた上で、説明をするというサービスもやらせていただいております。こうしたサービスを提供する事業者として、本件に対する感想としては、一義的に全ての投資家の方に、この項目を入れれば十分である。というもので片づけるのは少し乱暴かなと考えております。

 次に、利益相反の部分です。こちらは皆様がおっしゃられるとおりでございまして、より深く考慮しなければいけないところと考えております。ただ、各証券会社様、市場関係者様によって、その戦略は多様であり、この部分を一義的に必ずこうしなければいけないというルールは決めるべきはないと考えております。むしろ、利益相反が存在するのであれば、何らかの形で必ず利用者が閲覧できるところに記載すべきだというのが私の考え方でございます。

 最後に、最良執行方針とダークプールの関係です。こちらについては、何人かの委員の方もおっしゃられたとおりで、2019年の金融審議会を受けて、一つ一つ、ダークプールにおけるいわゆる透明性の確保が進められている環境でございます。それゆえ、この時点で新たな規制を導入するのは少し早いと考えております。その一方で、今回この資料の中の7ページ目のところにございました、いわゆるPTSのマーケットシェアとダークプールのマーケットシェアですが、こちら御覧いただくと、PTSが大きく伸長しているのに対して、ダークプールのマーケットシェアが去年の2月、3月ぐらいから落ちているという状況でございます。ここというのは時を同じくしてコロナ禍において、個人投資家の方の東証におけるマーケットシェアが上がったタイミングでございます。ここから読み取れるのは、むしろ個人の投資家の方々のダークプール利用率というのは、市場全体で言うと、少ないほうで、個人の方がダークプールのベネフィットを完全に享受できていない可能性があるというのは事実としてあるのかなと思っております。私としては、全ての投資家の方々が、あらゆる形での執行方法というのを選択でき得る環境の構築が必要と考えております。当然、個人の方におかれましては、KYCを通して、内田さんがおっしゃられたとおり、この投資家の方が本当にダークを使っていいのかどうかというのは、しっかりとした審査が絶対必要だと思っています。ただ、その一方で、それが使える投資家であるというふうに判断されるような投資家さんであれば、その方はどの証券会社さんであったとしても、あらゆる形で執行ができるような構造構築が必要と考えております。それが全ての証券会社さんがダークプールのアクセスを必ず持たなければいけないというような議論にすると、非常に厳しいハードルがございますので、それを既にアクセスできる証券会社、あるいはPTSのSORシステムのようなものをうまく利用できるような何らかの形というのをつくることで、結果として、知識、リテラシーを有する全ての投資家さんが必要に応じて、いろんな形で執行の形態を選択することができるようにするというのが重要なのかなと思った次第でございました。

 以上でございます。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございます。それでは、引き続きまして、清水先生、久保様、梅野様、藍澤様の順に御発言いただこうと思います。それでは、清水先生、お願いします。

【清水委員】
 発言の機会をありがとうございます。皆様の御意見と重複するところは省略しながら、お話し申し上げます。

 まず、SORの注文回送の方針については、詳細過ぎると理解も難しく、また、リバースエンジニアリングのおそれもあるということは大変もっともなことだと思います。事務局資料で6ページに載せておられるような項目について、簡易版の分かりやすい開示と、それから、必要に応じた詳細な開示の2段階開示が私も適当ではないかと思います。

 それから、特定市場へのプリファレンシングがある場合についてですが、やはり利益相反のおそれがありますので、利益相反の可能性のある項目については開示が必要かと思います。アメリカを参照しますと、ペイメント・フォー・オーダーフローへの対応として、証券会社ごとに、自社が回送している先の市場なり、執行する証券会社なりについて、シェアでトップテンを取り上げ、そことの資本関係の有無ですとか、資本関係がある場合、さらに詳しい内容ですとか、それから、手数料のキックバックに当たるペイメント・フォー・オーダーフローの有無ですとか、項目を定めて開示しています。かつ、アメリカの場合は詳細ですので、成行注文か、指値注文かとかいうような、注文形態の別ごとにもシェアを示しているようです。日本はそこまで細かいことは必要ないと思いますが、こうしたことを参考にしながら、利益相反の有無の可能性については開示が必要かと思います。ただ、開示がかなりの負担になると考えられます。アメリカでも開示ルールの施行期限を何度か延長していたようで、恐らく開示のためのシステムコスト負担が大変だという声が参加者の皆さんから出たのかと推測されます。開示負担への配慮も必要かと思います。

 それから、ダークプールについても、皆さんおっしゃっておられますように、今、別の手当てが進んでいる最中ですので、ひとまず様子を見るということでよいかと思います。一方で、ダークプールについて、気配ではないけれどもシステム的に感知できる気配のようなものが生成されていて、SORで回送ができるということですが、これの中身にもよるかと思いますが、ダークプールも1つの市場だと考えた場合に、このダークプールの中で同じ市場の参加者なのにアクセス条件などに差があるとすると、ダークといえどもちょっと問題じゃないかと、むしろそちらのほうがちょっと気になりました。ダークで生成されている気配類似のものの態様にもよるかと思いますが、1つの市場で参加者のアクセス条件が異なるということは、取引所はもちろん、PTSも、程度によっては問題かと思います。

 それから、最良執行について、多くの市場の気配を参照してその中からよい気配を選ぶことはもちろんベストではありますが、これは証券会社にとって、接続先(取引参加先)市場を選ぶ自由とちょっとトレードオフのようなところがあるかと思います。例えば、地方証券取引所だけのアクセスをしている証券会社がいたとして、その証券会社に最良執行のために別の市場へのアクセスもしろと求めることは、例えばアメリカでも行われておりません。シカゴ証券取引所だけの会員(取引参加者)になっている証券会社の場合、シカゴにしか注文を出しませんが、ニューヨークでいい気配が出ていれば、シカゴの指定マーケット・メーカー(旧スペシャリスト)が注文をニューヨークに回送するあるいはそれと同等の手立てを講じるというふうに、市場側にも注文回送責任を負わせる形で証券会社の最良執行を担保していると理解しています。日本はPTSの数も必ずしも多くないので、ある程度可能なように見えますが、仮にアメリカのように取引のベニューが増えてきたときに、どこまで求めるかというのは難しいと思っています。

 それから、最良執行について、個人投資家の場合に、結果として執行価格が得であった、損であったということに目が行きがちですけれども、最良執行をどこまで求めるかということと、複数市場全体の統合性とが大きく関わると理解しています。究極的に求めることは難しいですが、あっちでばらばら、こっちでばらばら執行がされる市場の分裂という状態を避けるためにも最良執行というのは必要で、個々の投資家にとっての損得だけではなく、日本の複数ある取引の場全体が統合的に運営されるために、最良執行が必要だと考えています。

 ちょっと長くなりまして申し訳ありません。以上です。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございました。それでは、久保様、お願いします。

【久保委員】
 ありがとうございます。フィデリティ、久保でございます。私のほうも検討課題の1、2、3に沿って、簡単でございますが、考えを述べさせていただきます。

 まず最初の執行方針のところですけども、ルールの記載に関してですけども、ルールの記載ということの前に、私も、何名かの委員の方が触れられた本資料の6ページの整理、これは非常に全体を俯瞰した形に整理されていると見ておりまして、一般的な個人の方でも、こんな方法だとか、ベニューだとか、あるいはロジックの違いとか回送方法の違い、そういったものがあるんだということを、もちろん開示のレベルというのは実務的に検討する必要があると思いますが、この6ページに書かれているような記載の開示というのは、一般的な個人の方でも、全てをすぐに分からないにしても、あっ、これちょっとどういうことか聞いてみたいなという取っかかりをつかむ上でも非常に分かりやすい。しかも、これの1つのテンプレートのような形で置かれるとするならば、各社の比較がこれも比較的容易にしやすいのではないか。私、今回、個人の投資家さんということでの意見をお伝えさせていただくことにさせていただきますけども、個人の方にとってみても、リテラシーを上げる1つの材料にもなる。最近では、投資家さん、何となく、それこそスマホでぽちっという形で始める方というのは思いのほか増えてきているんだと思います。こういった方々にしてみても、そうやって進めているうちにいろんな疑問にぶつかってくる。そういったものも1つの取っかかりを示す、本当にこれ別におべっかを使うわけじゃないんですけども、とてもいい整理のされ方がされていると思います。あとは開示のレベル、具体的な項目、内容をどこまで、先ほどのリバースエンジニアリングというのは、確かにこれはあったらいけないなというところもございますので、そこのさらなる検証はあるとしても、いい方法かなと思います。

 それから、執行結果の説明でございますけども、執行結果については、これもお恥ずかしながら素人考えというふうな言い方をあえてさせていただきますけども、会社さんによっては、その執行結果について、個別のお客様に対して開示をされているということは既に行われているとお聞きしております。ただ、個別に開示されている内容にもよりますけども、そのことだけですと、いまひとつ、それがどの程度の出来なのか、妥当な結果と考えていいのかどうかというのは、比較対象がないものになりますので、非常に分かりにくい。こうやってもらったけど、これってよかったのか、悪かったのか、よう分からんということにどうしてもなっていくような気がいたします。それで、ただ、本当に実現可能かというのはありますけども、SORを利用することの効果、利益、目的、いろんな言い方はできると思いますけども、それぞれ導入するに当たって、何を目的にされ、どういった効果を期待して証券会社さんとしては導入しているのかということは当然あると思うんですね。それによって、開示の内容で多少軸が変わってくるかもしれませんけども、個々のお客様ではなくて、例えば証券会社さんごとの半期だとかクオーターだとか、そういったもので、取り扱ったお客様の全体の取引の結果、SORを使った場合ということでいいのかもしれません。その結果を何らかの形で、別にAというお客さん、Bというお客さん、Cというお客さんではなくて、当会社が取り扱った結果がこういう結果となりましたというようなものがもし実現できるのであれば、これも先ほどの6ページの開示と同様の視点ですけども、例えば会社さんごとに特徴が出たりだとか、別にいい悪いというのは必ずしもないと思うんですね。投資家にとって、こういう結果を出せるところでやりたいというような1つの比較材料として考えられるのかもしれないという、かなり夢物語的な部分かもしれませんが、そういった開示というのがあってもいいのかなと思います。

 2番目のSORに関する利益相反ですけども、私は個人的には、私の職責との関係もあるんですけども、利益相反という言葉を聞くと、これ何に関する問題かということはあまり関係がなくて、基本的には、利益相反を内在する取引、あるいは業形態、先ほど資本関係が清水先生のほうからもありましたけども、これ、今度は典型的な昔から当然のように開示されている情報ですね。投資信託の場合でも、上位取引ブローカーさんとの取引に関して、それがグループあるいは資本関係があった場合には当然開示がされます。ですので、利益相反の可能性があるんであれば、これは議論する意味すらない。潜在する利益相反構造というのは、有無を言わさず開示というのが、これは当然必要だというふうに考えます。開示の仕方というのは、もちろんいろんな視点があると思います。投資家さんに理解されやすいという必要があると思います。先ほどのペイメント・フォー・オーダーフローなんていうのも、その典型的な1つだと考えていいかと思います。

 最後になりましたが、ダークプールについてですが、これも私もあまり個人投資家さんはダークプールを使われるということについては、トータルのコストで確かに低減する可能性というのはあるのかもしれませんけども、やはりあまり理解されずに使われていて、しかも結果開示も十分でないということを鑑みますと、かなり慎重な考えが必要なのではないかと。もともと発展の経緯というのは、我々のような機関投資家、言ってみればプロですね、証券会社さんとの関係においても対等といいますか、情報開示も一定程度求められるというようなところで機能してきたところかと思います。我々機関投資家のニーズも、非常に有効に受け止めてくれるベニューといいますか、のところだったんですが、個人投資家さんから見ると、こんなところでやっていたのというところは多分、非常に重いのではないか。一方で、これを説明するというと、またこれ非常に難しいところもありますし、ちょっと結論はなかなか思いつくところがないんですけれども、この検討課題で言われている、より価格を重視したものに見直す場合、ダークプールの位置づけについてどのように考えるべきかという、より価格を重視したものに見直す場合という論点も、それ以前の問題かなというところは正直ございます。

 3番目は私もあまり意見がまとまらず、大変雑駁な物言いになってしまいましたが、私からは以上でございます。ありがとうございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。それでは、梅野様、お願いします。

【梅野委員】
 ブラックロックの梅野でございます。25ページ、検討課題1、2、3に沿って私の意見を述べさせていただきます。

 まず1番、SORとの関係というところでございますけれども、先ほど久保委員もおっしゃっていましたけれども、6ページに書いてある内容というのは極めて有効といいますか、事前に開示する情報としては極めて類型の整理が上手にされているなというふうに思っております。我々機関投資家でSORを使う場合には、都度といいますか、証券会社に例えば①番から⑤番までどうなっていますかというようなことをヒアリングして、それを各社ごとにまとめているというようなことをやっておって、こういったものが全く開示されていない、公に見えるところに出ているわけでありません。本来こういった情報は、個人投資家に限らず、PTSを使う、あるいはダークプールを使う、SORを使うという場合に投資家が知っておくことが望ましい内容であるというふうに思います。前回申し上げさせていただきましたが、SORにおいてもやはり事前の開示と事後のモニタリングは極めて重要だということを考えますと、事前の開示の内容としては、私個人としては、この6ページの類型の内容というのは最低限証券会社が開示すべき内容ではないのかなというふうに考えるところであります。

 また、事後モニタリングのところに関しまして、現状では最良執行説明書があるということでございますが、こちらリクエストベースということになっておりますので、そうではなくて、例えば何らかのフォーマットを決めて定期的に当局に報告する。その報告の内容としては、例えば、取引所の気配の中でできた約定はどれぐらいだったか、あるいはその外側でできた約定がどれぐらいだったか、そういったものも含めた報告をするか、もしくは、ある証券会社が使っているということを聞いたんですが、外部の情報ベンダー、例えばクイックといったところが、約定結果と市場の気配情報を付け合わせて、果たしてそのプライスが妥当だったかどうかというのをチェックする、そういったサービスも外部情報ベンダーが提供している。こういった、コストは払いますが、外部のチェックを導入することによってモニタリングを補完しているということがあるというふうに聞いております。そういったチェックを導入して、モニタリングを高めていくということは極めて重要だろうというふうに思っております。

 こういった話をしますと、先ほど清水先生もおっしゃっていましたが、証券会社にとってはコストのところが問題になってくるかと思います。そういったコストを負担しつつ、かつ、足元の売買委託手数料がゼロになっていくような世界では、そんなSORなんてやってらんないよという証券会社さんがもちろん出てくるのは当然だと思いますし、その辺りは証券会社の判断として、取引所でしか執行しないというのはもちろんあってしかりだというふうに思います。また、SORの1ユーザーとして投資家サイドから見てみれば、先ほど手数料がゼロになっていく世界の話をしましたが、委託手数料を割り増しで払ってもこの証券会社のSORを使いたいというようなものが今後出てくることは期待できるんじゃないかというふうに思っております。それぐらい、本当に投資家にとってメリットが実感できるようなSORがあれば、もちろん投資家は喜んで委託手数料を払うというようなことだと思います。そういったSORが今後も出てくるというようなことを個人的には期待したいというふうに思っておるところでございます。

 課題の2つ目でございますけれども、SORに付随する利益相反構造というところでございますけれども、こちらも事前の開示と事後のモニタリングということで、先ほど久保委員からも、可能性があれば事前の改善が必要だということをおっしゃっていましたが、まさにそのとおりだと思っております。今回は、例えば14ページ目でいわゆるプレファレンシングで、証券会社と、その友好関係にあるPTS及び友好関係にあるダークプールが指摘されておりますが、ここで利害関係者の範囲をきちんと定めておくというのが極めて重要だというふうに思っております。今、利害関係者といいますと、SORに関しましては、PTS運営会社、取引所、それから顧客というところが利害関係者としては出てくると思いますが、その中で利益相反が生じる可能性としては、例えばPTS運用会社とその株主ですね。一部PTSは株主の中にHFT業者が入っている。じゃ、そのHFT業者の注文とほかの顧客の注文をどうやって公平に扱っていくのか。こういったものは当然開示すべきでありますし、また、顧客間においても、手数料をたくさん払っている顧客と手数料を払わない顧客に関して、どのように公平性を保っているのか。一部PTSに関しては、テーカーメーカールールを導入しているということもございますので、テーカーとメーカーの間でどうやって公平性を担保しているのか。手数料が違うという中でどうやって公平性を担保するかということをきちんと開示すべきであろうというふうに考えております。

 3点目、ダークプールとの関係というところでございますけれども、ここは、検討課題の1、SORの文脈にひもづけて考えるといいのではないかというふうに思っております。恐らく個人投資家がダークプールを使う状況というのは、証券会社がSORを通じてということになると思いますが、SORの中で、先ほど申しました開示とモニタリングの中できちんとダークプールに規律が付けられるということが期待できるんじゃないのかなというふうに思っております。

 私からは以上です。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。それでは、ちょっとお待たせしてしまいましたけれども、藍澤様、よろしくお願いします。

【藍澤委員】
 ありがとうございます。藍澤證券の藍澤です。よろしくお願いします。

 前回も申し上げたとおりですが、我々のような対面のリテール証券会社の立場からすると、PTSも含めたSORの導入は、中長期で資産形成したいという個人投資家のお客様にとっても、あれば、それにこしたことはない。ただ、現時点では優先度が低いのではないかという立場からの発言になってしまうのですが、もし我々がSORを導入した場合、どういったことが望ましいのかという観点で、あえてこの最良執行方針とSORについて意見を申し上げさせていただくと、そもそも最良執行方針ということもあって、先ほども御発言ありましたけれども、SOR取引の詳細の全てをそこに記載する必要はないのではないかと。言い切ってしまうのはちょっと危険かもしれませんけれども、少なくとも現時点ではそれを義務化する必要はないのではないかと思っております。これは投資家サイドから見てもそうではないかと考えていまして、例えば、当社の現行の最良執行方針では、先ほどお話のあった証券業協会から提供されたひな形に基づいて作成していますが、発注市場については、クイック端末で最初に表示された市場が最良執行市場になるとしていて、これは対面の各社さんもそうしているのかなと思っていますけれども、では、具体的にクイックがどういったアルゴリズムで市場を表示しているかに関しては、当該市場は同社所定の計算方法によって、一定期間において最も売買が多いとして選定されたものですというような表記にとどめており、流動性を優先しているという趣旨の記載はありますけれども、その具体的な計算方法までは記載していない。これに関して、当社の場合ですけれども、これまでお客様からお問合せをいただいたケースは今のところゼロというような状況です。それと、ちなみに、お客様から執行市場で指定されたケース、要は東証以外の市場ということですけれども、これも今まで当社では実績がないという状況です。もちろん、今そうだからこれからもよいというのでは決してなくて、SORに関しても、少なくともSORを利用している旨ですとか、最良執行市場、その結果、当社はSORが選択した市場だというような記載は当然必要だとは思いますけれども、その先どこまで記載するかに関しては、これは各社のお客様の目的ですとか関心度合いも異なってくるかと思いますので、そこをにらんで、先ほどもお話ありましたけれども、お客様の混乱を避けるためにも、各社判断に任せるという形でもよいのではと、今はそのように考えております。当然、なぜその記載にしたかのエクスプレインも必要になるとは思いますけれども。その上で、事後的にですけれども、取引に疑義があった場合も含めて、最良執行書で説明するというのがよいのではないかと考えております。

 ただ、うちができるのはあくまでSORが投資家にとって明らかにデメリットを生じない場合においてだと思っておりまして、それが次の利益相反の話につながってくるのかと思うのですが、確かに系列とか友好関係にあるPTSへの優先回送に関しては、考えなければいけないポイントなのかなというふうに思っております。ただ、これも、今後、市場の選択といいますか、そういった行為が個人投資家の間にも普及していくというふうに考えた場合、当然、投資家側のニーズも多様化してくるといいますか、例えばですけれども、全部約定優先で東証に行きたいのか、たとえ一部のみでも有利な価格を求めてPTSに行きたいのか、この辺りはお客様の事情も関連していきますので、先ほど内田さんもおっしゃっていましたけれども、何が利益相反か否かという判断は難しいのかなと。ただ、少なくとも我々金商業者側としては、系列・友好関係にあるPTSが存在しているということ、それからSORがそれを選択する可能性があるということについては、明記する必要はあるかと思っておりますし、先ほど申し上げたような、その結果としてお客様の希望する優先順位どおりの執行ではなくなる可能性がある点について、あらかじめ告知するということは必要だと思っております。ただ、これに関しては、最良執行方針に含めるというよりかは、むしろ利益相反管理方針の中、これも証券業協会がひな形を提供していて、当社もホームページで告知していますけれども、載せるのであれば、こちらではないかなというふうに考えました。

 そういうことで、SORとか利益相反の可能性とか、ダークプールもそうですけれども、最良執行方針における記載は、必要最低限のものを除いて、各社判断に任せるのもいいのではないかと。それに伴うデメリットですとかリスク等については、最良執行方針以外のところに記載するのがよいのではないかと思っております。

 以上です。ありがとうございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。お手が挙がった方からは一通り御意見を伺いましたけれども、神田先生、何か一言ありませんか。せっかく御出席いただいているので。

【神田委員】
 ありがとうございます。神田です。それでは、一般的な感想を少しだけ述べさせていただきます。形式の面と実質の面で。

 形というか、制度の立てつけについて、今のままでいいとお考えなのかどうかというのも検討課題だと思います。既に御指摘ありますように、今、私、手元で金融商品取引法の条文を見たのですけれども、40条の2という条文は、最良の取引の条件で執行するための方針及び方法、これを最良執行方針等と定義して、業者はそれを定めなさい、そして公表しなさいと。それで3項で、それに従って注文を執行しなければいけないと、こう書いてあるのです。何か分かりやすいような、分かりにくいような。普通であれば、最良の取引の条件で執行しなければならないとだけ書けばいいわけで、それのための体制整備とか方針をつくるというのはもちろん結構なことなのですけれども、この制度の立てつけはこのままでいいのかどうかというのは1つ課題だとは思います。

 それから、中身の実質の部分については皆様方からたびたび御指摘ございまして、顧客本位ということであり、ポイントは多分2つで、1つは、証券会社さんの行動基準ですね。個人顧客の場合でいえば、何を原則として、例えば価格を重視した行動基準というのを原則とした上で、オプトアウトを認めていくという行動基準であり、もう一つは、情報開示、情報提供の充実ということで、事前と事後があると思うのですけれども、情報の量ということもありますけど、分かりやすさというのがやはり個人のお客様の場合はポイントになるのではないか。その点に注意して、あるいは顧客間の公平さというものについて、情報提供の面でどういう工夫が要るかということです。今あるルールをいずれの面でも一歩先へ進めることが適切かどうかという話のように理解しました。

 以上です。どうもありがとうございました。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。委員からの質疑応答、意見交換はこれで終わらせていただきます。

 オブザーバーの方から御意見があれば、お一方2分程度を目安に御発言をお願いしたいと思います。同じようにチャットで御希望を出していただければと思います。では、まず、日本取引所グループの南出様、お願いします。

【南出オブザーバー】
 日本取引所グループの南出でございます。御発言の機会をいただきありがとうございます。個人投資家を念頭に置いた最良執行方針等について、1点、意見を述べさせていただきます。

 利益相反の開示の必要性につきましては、既に多くの委員から御指摘いただいているところでございまして、私ども、これに同意するところでございます。すなわち、利害関係があったり、もしくは何らかの利益を証券会社が注文を回送することによって得る場合、これを開示すべきだというふうに我々も考えております。利益といった場合に、代表例としてはリベートだと思います。リベートにつきまして、最近の報道でいろいろ知られるところになっていると思いますが、アメリカにおきましては、このリベートを得ることによって手数料が無料になっている。お客様として、確かに手数料無料というベネフィットを得ていると思うんですが、その裏には、特にこれは証券会社がいわゆるリテールホールセラーに注文回送して、リテールホールセラーの中で執行する場合に出てくる問題と思うんですけれども、当然、価格の改善の可能性と証券会社が得るリベートの多寡というのは、これはどうしてもトレードオフの関係になってくる。これ自体は当然のことでございますが、こういう仕組みがあるんだよということをお客様がしっかり知る機会がある、もしくはちゃんと知った上で、その証券会社を利用しなければ、投資家保護としては不十分ではないかなというふうに考えております。アメリカにつきまして、情報開示の規制があるということは既に御紹介いただいているところでございますし、ヨーロッパ、EUもMiFIDにおきまして注文回送に伴う利益というところの関係につきましては規制がございます。日本でまだリベートというところを得ているところはないのかなとは思うんですけれども、少なくともヨーロッパに比べて、日本におきましては個人投資家の参加の割合が高いというところで、アメリカもEUも既にこういった規制がある中で、日本においても、まだ問題はもしかしてないのかもしれませんけれども、やはりこれから起き得ることに対して対応していくことが必要ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございます。それでは、ジャパンネクスト証券の山田様、お願いします。

【山田オブザーバー】
 ジャパンネクスト証券の山田でございます。発言の機会をいただきまして誠にありがとうございます。

 私どもはオブザーバーといたしまして、本タスクフォースにおける最良執行方針等にかかる規制の点検、検討に関して、トレーディング・ベニューを運営する立場から、皆様に対して、市場構造のマイクロストラクチャー等について補足させていただくのがメインのタスクじゃないかというふうに考えております。

 1点申し上げたいのは、先ほどから出ております日本証券業協会の参考モデルというのが2005年に作られたということで、現状の認識からはちょっと離れているということは、各委員の方も御発言いただきましたので、共通の認識であると思います。けれども、例えば、当該モデルの中で示されている約定可能性とか流動性に関しましては、よく見られている方は見られていると思うのですけども、銘柄によっては、当社だけでも取引所よりも売買代金が多い銘柄もございますし、2割程度のシェアがある銘柄は幾つもあるという状況でございます。ですので、一口にPTSといいましても、チャイエックスさんと当社と合算いたしますと、ある程度のシェアは取っていて、流動性もあると考えており、PTSが必ずしも劣っているわけではないです。あと、スピードに関しましては、これはプロフェッショナルの方々は皆さん御存じだと思うのですが、PTSのほうが取引所のシステムに対しては数倍早いというのが現状でございます。取引コストに関しましても、PTS各社各様に工夫しておりますので、証券会社の皆さんがうまくPTSでの取引を組み合わせることによって、コストを抑える結果が出る場合も多いかというふうに考えております。

 先ほどのスピードの点を述べましたが、機関投資家さんなんかがよくおっしゃられることですが、PTSのほうが約定のスピードが早いので、大口の注文でしたら、PTSにおいて先に取引をしてしまったら、その後、それを受けて取引所の値段が動いてしまうので、かえってやりにくいケースもあると聞いております。逆に、小口のお客様だったら、先にPTS取っちゃったほうが、当然いい値段を取れるということになります。各取引施設の性質に合わす形で、各証券会社でSORを研究されていると思うので、このようにPTSでの取引と取引所での取引を組み合わせて、お客様のベストエグゼキューションに資するようにやっていただきたいなというふうに考えております。

 あと、価格決定方式に関してですが、以前は東京証券取引所におきましては、本当の競争売買みたいな形でやっていらっしゃったのですが、現在、ザラバ中の価格形成機能に関しましては、取引所、PTS両方とも価格優先、時間優先で注文を対当させている形でマッチングしております。したがって、幾つかコメントが出ましたけど、PTSが取引所に比して価格の透明性等が劣っているという認識は、アップデートしていただきたいかなというふうに考えております。

 我々取引施設は、できるだけ、注文いただいた証券会社の執行サービスに対して、最良の執行をしていただける場をつくるサービスを競い合っているという状況なので、いろんな技術があれば使っていただき、また、PTSが優れたサービスを提供している場合は、我々にもどんどん注文を出していただくということも必要なのかなというふうに考えております。

 あと、最後にベストビッドオファーという議論は今回のテーマではないのですが、先ほどから出てきました顧客に対する取引検証の意味から、最良執行気配というのをつくることは考えてもいいのかなと考えます。このような統合気配情報があったほうが、個人投資家も自分のエクスキューションに関して即座に検証できるということもできるのではないかというふうに考えております。

 最後に、近い将来になってしまうのかもしれませんが、清水先生がおっしゃられていたような、アメリカで言うところのトレードプロテクションルール等も、当社にとっては必ずしもプラスではないものですが、ベストエグゼキューションを実践するためには、導入することを検討してもいいのではないかと考えております。

 私からは以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。それでは、チャイエックス・ジャパンの色川様、お願いします。

【色川オブザーバー】
 チャイエックス・ジャパン、色川でございます。発言の機会をいただきありがとうございます。

 まず、課題1、最良執行方針等とSORの関係に関してですけれども、多くの皆様がおっしゃられましたように、概略と詳細というような分け方が個人投資家さんの分かりやすさにとっていいのではないかなと思います。ただ、開示の中では、特に幅広い証券会社からの接続を受け入れ、かつ価格データ配信等を適切に行っているようなPTSで、SORの対象先になっていないようなPTSがある場合には、その旨、及び、それらに最良価格がある場合には接続できない旨、SORの詳細もさることながら、そうした根本の大枠のそもそもの話ということが開示されることは必要なんじゃないかなというふうに考えております。

 そして、SORに付随する利益相反構造でございますけれども、自社とか自社グループのPTSもしくはダークプールでの執行を行う場合、広く開放されたPTS、現在は2社なわけなんですけれども、それらのSORによる参照と最良価格執行を義務づけることが必要なんじゃないかなと考えております。それは最良執行規制全体がプリンシプルベースになろうが、全体の義務づけになろうが、と考えます。なぜかというと、顧客提供していないPTSに優位気配値があって、そして、それを無視して自己のデスクや親密なマーケットメーカーが顧客の即時約定ニーズ注文に向かった場合、それらは容易に無リスクで、顧客向けにはつながっていないPTSにおいて利益確定が可能となるわけであります。この利益は本来顧客に提供されるべき価格改善でありまして、そうしたことが本当に行われているかどうかは別にして、利益相反の議論においてよく言われるように、この温床となり得る構造自体が問題かと思いますので、重要な点かと思います。

 なお、ちょっと付け加えたいのですが、SORの議論が活発ですが、SORは成り行き注文を中心とした即時約定ニーズの注文に関するものです。ここで最良執行のために、指し値注文、個人の7割が実はそうなんですが、ちょっと意見を述べたいと思うんですが、東証に最も多くの流動性が集まっているため、指し値注文は東証において待機するのが一般的です。そこに積み上がった大量の指し値注文の板は、相場がその価格に近づいてきたときには、即時約定注文たちによって時間優先で順番に取得されていきます。つまり、出来高の大きい東証だからといって、自分が置いた指し値がすぐに取得されるとは限りません。一方、板が薄いPTSに待機すれば、流動性が、シェアが低い代わりに競争相手も少ない。そのPTSに集まる即時約定ニーズ注文の傾向によっては、東証に置くよりも、即座に執行されることも期待でき得ます。つまり、顧客の差し値注文をどこにどう待機するかには、証券会社の最良執行努力の余地があるわけです。そして、その経営努力を阻むような法令諸規則は見当たりません。しかしながら、実態上、投資家自身が能動的にPTS発注しない限り、東証に待機することしか許されていないという現状があります。こうした状況では証券会社の最良執行努力を削ぐと言わざるを得ませんし、また、最近、社会的要請にもなっておりますが、いざというときPTSが東証の代替となり得るような有機的な市場になるということは、まず不可能な現状があります。こういったことなんかも議論を深めていく材料になれば、というふうに思っています。ありがとうございました。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、本日いただきました意見等を踏まえて、引き続き検討を行ってまいります。本日3つの検討課題について、それぞれ活発な御意見を頂戴いたしました。これを整理して、報告につなげていければというふうに考えております。

 次回のタスクフォースの日程及びテーマ等に関しましては、後日、事務局より御案内させていただきます。

 それでは、以上をもちまして本日の会合を終了させていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――  
お問い合わせ先

金融庁 03-3506-6000(代表)

企画市場局市場課(内線:3943)

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