金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」(第4回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年5月18日(火)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 オープンスペース

金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」(第4回)
令和3年5月18日
 
【黒沼座長】
 それでは、皆様おそろいですので、ただいまより「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」第4回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。

 本日の会合も、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とし、一般傍聴はなしとさせていただいております。また、メディアの関係者の方々は、金融庁内の別室にて傍聴いただいております。議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させていただく予定ですので、よろしくお願いします。

 また、メンバー表に更新がありましたので、詳細につきましては、お手元のメンバー表を御覧ください。

 今回、オンラインで参加される方におかれまして、2点、注意事項がございます。まず、御発言されない間はマイクをミュート設定にしていただくようお願いします。また、システム負荷を小さくするため、前回までと異なり、御発言されない間はビデオもオフにしていただくようお願いいたします。次に、御発言を希望される際は、オンライン会議システム上のチャット上にて、必ず全員宛てにお名前または会社名などの組織名を御入力ください。そちらを確認して、私が指名いたしますので、ビデオをオンにして、御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言ください。

 それでは、本日の議論に入りたいと思います。当タスクフォースにおいては、昨年12月より議論を重ねてまいりましたが、本日はこれまでの議論を取りまとめた報告書案について御議論いただきたいと思います。まず、事務局より、報告書案について説明いただき、その後、皆様から御意見等をいただきたいと思います。本日はこれまでの議論の取りまとめでありますので、会議は本来2時間の予定でありますが、特段の問題がなければ早めに終わることもあり得るものと考えております。

 それでは、事務局より説明をお願いします。

【繁本市場業務監理官】
 企画市場局市場課の繁本でございます。それでは、御手元の資料に沿って説明させていただきます。

 報告書案、資料のまず1ページを御覧ください。「はじめに」というところがございます。その下のほうのパラグラフでございますが、本タスクフォースの議論の意義づけについて書かせていただいております。最良執行方針等は、投資者保護の観点から検討を行ったということ。それから、この最良執行方針等は、その在り方如何によって市場間競争の促進にもつながり得る。ひいては、我が国資本市場の国際金融センターとしての一層の機能発揮にも資するといったようなことで、今回の議論を位置づけているところでございます。

 続きまして、3ページを御覧ください。3ページの2.制度の見直しのあり方のところで具体的な議論の方向性を書かせていただいております。まず、(1)より価格を重視した最良執行方針等ということでございます。そのうち①が、機関投資家と個人投資家の違いということでございます。機関投資家に関しましては、自らの投資戦略に基づき、金商業者等に対して執行方法に関する指示を行うことが通例となっています。また、価格につきましても、一時点での最良気配での約定というよりは、全体としての執行コストの低減を重視しているといった観点から、4ページの上のほうですが、機関投資家に対する最良執行方針等については、これを見直す必要性は、現状必ずしも高くないと整理しております。他方、個人投資家につきましては、小口注文が多く、基本的には価格が最も重要な要素ということでございまして、個人投資家に対する最良執行方針等については、より価格を重視する方向で見直すことが考えられると整理しております。

 4ページの②個人投資家におけるニーズの違い等でございます。個人投資家の中にも、中長期的な資産形態を目指す方、短期間での反復売買により利益を獲得することを目指す方など、そのニーズは様々であると。また、金商業者等のビジネスモデルもそうしたニーズを踏まえ、様々であるといった点。それから、仮に全ての金商業者等に対しまして、一律に価格重視ということでSORのサービスの提供等を義務づけた場合には、そこに経営資源を投入する必要が出てきますが、限られた経営資源をどのように配分するかというのは、顧客のニーズやビジネスモデルのあり方と密接に関係する事柄ですし、コストが顧客に転嫁された場合には、かえって投資家保護に悖る結果にもなりかねないというようなことで、金商業者等に対して一律に価格を重視した最良執行方針等に変更することを義務づけることは適当ではないと整理をしております。

 その上で、より価格を重視した最良執行方針等に変更することを促す仕組みといたしまして、最良執行方針等の法定記載事項に、顧客が個人である場合については、主として価格面以外の顧客の利益を考慮する場合には、その旨及びその理由を追加する、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレインを導入してはどうかと整理しているところでございます。

 5ページ、③関連する論点でございます。1つ目は、気配情報の統合配信制度、注文回送制度でございます。アメリカで行われている制度でございますが、こちらにつきましては、システムの構築・維持に多大なコストがかかる、あるいは、アメリカと比べて、取引施設の数が少ないといった日本の状況を踏まえれば、直ちに構築すべき必要性は高くないとしております。

 続きまして、ダークプールの位置づけでございます。個人投資家に対する最良執行方針等について、より価格を重視する方向に見直すに当たっては、ダークプールを利用した執行も含めて見直すことが望ましいということでございまして、他方、ダークプールについては、気配の公表義務がない、あるいは、これまで2019年等に金融審議会で議論が行われ、現在、新たな規制の導入に向けた準備が進んでいる段階にあるといった経緯も踏まえまして、具体的には、最良執行方針等の法定記載事項に、顧客が個人である場合については「ダークプールを使用する場合には、その旨及びその理由」を追加することが考えられると整理しているところでございます。

 6ページ、(ⅲ)顧客から執行方法に関する指示がある場合に関しましてですが、こちらにつきましては、引き続き執行方法に関して顧客による選択の余地を認めることが適当としております。他方で、顧客である個人投資家から十分な理解を得ないまま指示があったとして、最良執行方針等に記載された執行方法と異なる方法により執行するなどといった潜脱的な運用が行われることがないよう留意する必要があると整理しております。

 7ページからは、(2)市場構造の変化を踏まえた最良執行のあり方とその顧客説明についてでございます。最初に①SORによる注文執行ルールの透明化について記載しています。

 まず(ⅰ)最良執行方針等との関係でございます。様々なタイプのSORのサービスが提供されていることからすれば、SORによる注文執行ルールの内容は、投資家が金商業者等を選択するに当たり重要な判断要素になると考えられるということで、最良執行方針等の法定記載事項に「SORを使用する場合は、その旨及びSORによる注文執行ルール」を追加することが考えられるとしております。具体的には、SORにより、いずれの取引施設の価格を検索するのか、基本となる注文執行ルール、同値の場合の取扱い、さらにはそれぞれについての理由といったものが考えられるとまとめております。

 続きまして、8ページの(ⅱ)最良執行説明書との関係でございます。こちらにつきましては、事後のモニタリングの観点から、最良執行説明書の法定記載事項に、「SORを使用した場合には、価格改善状況」を追加することが考えられるとしております。具体的には、約定日時に加えまして、執行等がされた取引所・PTS・ダークプール、約定価格、SORの使用に際して比較した取引所・PTSにおける価格等が考えられるところでございます。

 続きまして、9ページの(ⅲ)SORに付随する利益相反構造でございます。SORに付随しましては、いわゆるプレファレンシングと言われるような利益相反構造が考えられます。ただし、こうした利益相反構造がある場合でも、顧客に別途の利益が生じる場合がある、あるいは、特定の注文執行ルールを一律に禁止、制限することは、SORの技術進歩を妨げることになりかねないなどの理由から、一律に禁止するのではなく、SORに付随した利益相反構造につきましては、最良執行方針等、あるいは最良執行説明書の記載を通じてSORを透明化することにより対応することが適当と考えられると整理しております。
 
 続きまして、②レイテンシー・アービトラージへの対応でございます。レイテンシー・アービトラージにつきましては、現時点では、実態把握の手法や標準的な対応策が確立されているとは言い難く、それぞれの金商業者等が、これに取り組んでいる状況にある。こうした中におきましては、各社のレイテンシー・アービトラージへの対応方針・対応策は、投資家が金商業者等を選択するに当たって重要な判断要素になると考えられるということで、特定の対応策を義務づけるということではなく、最良執行方針等の法定記載事項に、「レイテンシー・アービトラージへの対応方針・対応策の概要」を追加することとしてはどうかと整理しております。

 続きまして、11ページ、③注文回送リベート、いわゆるペイメント・フォー・オーダー・フローについてでございます。ペイメント・フォー・オーダー・フロー(PFOF)につきましては、現在、日本において例は確認されていません。他方で、既に海外、特にアメリカでは多くの事例がございますが、現在、PFOFに関する規制の見直しの議論が行われている途上にあります。こういったことを踏まえまして、諸外国における規制動向を踏まえて検討することが適当としております。したがって、現時点で結論を出すことは時期尚早であるが、海外の規制動向、あるいは実態把握の進捗等の状況の変化に応じて、必要に応じ、適切かつ機動的に対応することが期待されると整理しております。

 その上で、12ページの注でございますけれども、PFOFに関する制度のあり方について結論が出ていない状況下で、金商業者等においてPFOFを受領することには極めて慎重な意見が多かったという点、それから、PFOFに対する懸念を示す意見が多かったという点を注記させていただいているところでございます。

 報告書の概要、以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの事務局からの説明を踏まえて、御議論いただければと思います。今回、多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間といたしましては、5分を目安にしていただければと思います。

 それでは、御議論をお願いできればと思います。上柳先生、お願いします。

【上柳委員】
 ありがとうございます。報告書、それから、その提言の内容について異存ございません。注も含めてきちんとまとめられていると思います。

 その上で1点だけ申し上げたいんですけれども、最良執行が問題になる背景として、市場の並立化といいますか、市場間に価格の差異自体があることは自然かも分かりませんけれども、そこに何らか操作的なことが働くかもしれないという懸念があると思います。ぜひ最良執行のあり方だけではなくて、この市場構造について、監視のコストそのほかかかるところもあるかもしれませんし、それから、昔の取引所集中義務がどういうものであったのかということの振り返りも含めて、さらに議論が必要だと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。今後の議論の参考にさせていただきたいと思います。野村證券の辛島様、お願いします。

【辛島委員】
 野村證券の辛島でございます。上柳先生と同様に、報告書の記述に関しまして、全く異論のないところでございます。非常に専門的な分野であるにもかかわらず、大変バランスが取れた分かりやすい報告書案を作成していただきまして、座長の黒沼先生をはじめ委員の皆様、それから、金融庁の皆様には大変感謝しておるところでございます。

 現行の最良執行の制度がつくられて以降、取引所の統合であるとか、上場会社になったことであるとか、あるいはシステムの高速化だとかPTSの発展、あるいは注文執行に関わるテクノロジーの重要性の高まりなど、環境面の変化は非常に大きいものがございます。この市場環境と、それからテクノロジーのレベルの変化を背景及び前提にして、今回、最良執行の制度を見直す方向性をつけていただいたということは、大変意義があることだと感じております。我々証券会社の立場といたしましても、打ち出された方向性に向かって各社、自分でしっかりと行うべき対応を検討して、進めていくべきだろうというふうに感じております。

 今後につきまして、具体的な法令改正作業が行われていくと思うのですが、これに際しまして、1点お願いがございます。現在の注文執行の分野におきましては、先ほど申し上げたとおり、お客様の執行成績の向上のために、いかに迅速にテクノロジーの進化を取り込んで、新たな執行方法や、あるいはアンチゲーミングの手法、それから、そのためのシステムを開発できるかが勝負を決める世界ということになっております。この技術開発競争を積極的に維持、推奨していくということが、今後の市場の発展、投資家の利益のために非常に重要になってくると思っております。一方で、法令改正の過程でよくある話として、やはり証券会社としては、セーフハーバー的なものを求めて細かい規定を求めるというような動きが出てくるということも考えられるのですけれども、今現在のテクノロジーや、今現在の執行手法を前提にして、あまり具体的に細かい点を規定してしまうと、かえって技術を固定化して、開発競争によるメリットを阻害してしまうという弊害が生じる可能性が高いと思っております。今回の報告書案の中では、非常にこの点に十分に配慮して記載していただいていると感じておりますが、今後の制度改正の過程におきましても、この点を十分御配慮いただいて進めていただけると大変助かると思っております。

 私からは以上でございます。ありがとうございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。では次に、フィデリティ投信の久保様、お願いします。

【久保委員】
 ありがとうございます。フィデリティ投信、久保でございます。

 既にお二方お話しされたとおり、本報告書案につきましては、途中の議論も非常にコンパクトに、かつ分かりやすくまとめていただき、また、その都度御説明をくださった金融庁各位におかれましては、詳しい分かりやすい御説明をいただいた上でタスクフォースに臨めましたことが、こういった報告書につながったものと思います。改めて感謝を申し上げます。

 その上で、本報告書案で出されております最良執行方針の内容に関します提言、こちらにつきまして、具体的な内容については今後ということですが、その内容が固まって、証券会社等が実施に移すということが次のステージになるかと思いますけれども、恐らくやはり各社、どういった形でやるのがいいのかというようなところも出てくると思いますし、それから、あまり申し上げたくないですけれども、若干形骸化してしまうような表記が、横並び的なということになるのも必ずしも本意ではないということを踏まえて、導入後、どのぐらいの期間が適当かというのはありますけれども、やはり各社が開示する、例えばSORを使う理由、あるいは使わない理由、それから利益相反に関する開示、こういったところを一定程度期間を踏まえた上でレビューをすると、モニタリングをすると。その上で、例えば、一定の考え方を再整理するような、そういったメッセージがまた出していただけるというようなことがありますと、より市場のほうも、あるいは業者のほうもインチューンを進められるのではないかと。これ結局、実効性があって初めてこの議論が意味が出てくると思いますので、この辺りも今後の1つのアクションとしてお考えいただければと思っております。

 それから、もう1点だけですけれども、タスクフォースの議論の中で、今回、最良執行方針ということではありますけれども、その最良執行ということを実現する1つの要素として、各市場の構造といいますか、構造というよりは約定の仕方だとかそういったこと。その中の1つとして、私が1点ちょっと申し上げたところとしては、例えば東証さんの値幅、値幅というかティックの幅ですね、こういったこともPTSさんとの競争だとか、それから、SORがより最適な執行を実現する1つの材料ということとして、ぜひ前向きに考えるべき事柄ではあるのではないかなと思っておりますので、ちょっと報告書案にはそこまでのことは記載されておりませんが、何らかの形で実現の方向に向かう道筋となることを強く期待するものであります。

 私のほうから以上でございます。ありがとうございました。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございました。それでは、早稲田大学の宇野先生、お願いします。

【宇野委員】
 早稲田大学の宇野でございます。本日は、タスクフォースの報告書を、非常に内容のある、まとまりのある内容で取りまとめいただきまして、誠にありがとうございました。

 これまでの最良執行方針を、価格を重視した制度に変えるということ。変えるに当たっては、一気に全てのことが義務づけられるわけではなくて、その方向への対応を促していくという内容になっている点において、基本的な方向性、それから、これを実現していくプロセスについて、大変配慮のある提言になっていると思います。そういう意味で、議論を正確に反映していただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 以上を踏まえてのことですが、2つ確認したいことがございます。1つはまず、ダークプールの位置づけについてですが、この報告書にありますように、証券会社によってSORを使うときに、ダークプールにおける執行も想定してよいという考え方について全く異論はないわけですが、ダークプールに注文を回す場合、ダークプール自体は気配を発信していないものが多いという認識に立つと、ダークプールにおいて約定が成立する場合には、その時点で他の市場にある最良気配と同じか、それよりもよい条件での約定になるということが前提条件としてあるということを確認させていただきたいと思います。執行先としてダークプールに出すことが可能であると、その旨説明せよということはあるわけですけれども、ダークプールで執行された場合も、他の市場に出したのと同等の最良気配における執行がなされるということを前提に、認められているということの確認をさせていただきたいというのが、まず第1点でございます。

 それから2番目は、今後の制度の変更に伴う見直すべき事項ということで、取引所とPTSの間の様々な競争条件についても検討を要するということが、最後の注のところにございます。大変適切な注で、まさにそのとおりで、今回の変更はこれで完結したわけではなくて、むしろこれに伴って様々なところで矛盾が生じないように、制度を調整していくことが必要になるという点で同感でございます。最も気になるのが、取引所とPTS間で、現状は呼び値に格差があるという点で、最良気配を決定する上で、値刻みが違うということは非常に重要な要因になっていくと思います。そういう意味では理想論を言えば、市場間にある呼び値格差をなくすというアメリカと同じような方向を指向すべきだと思いますが、現在、私が研究プロジェクトでやっております呼び値変更と市場間競争へのインパクトの研究結果に基づきますと、東証とPTSの呼び値格差がなくなると、PTSの取引高に激烈な影響が発生するということが確認されております。そういう点を考えますと、この点の変更も、慎重に様々な副次的な影響を考慮しながら実行していくことが必要になるだろうと思います。この最良執行をめぐる制度の向上は、これが第一歩であり、今後さらにシステム、メカニズムとして確実なものにしていくための検討材料はまだ残されているという点を、改めてこの場で申し上げさせていただきたいと思います。

 誠にありがとうございました。失礼いたします。

【黒沼座長】
 御発言ありがとうございました。

 それでは、今の御発言中、ダークプールについての確認事項について、事務局から御説明をお願いします。

【繁本市場業務監理官】
 金融庁、繁本でございます。御説明させていただきます。

 宇野先生御指摘のダークプールと、例えば取引所、PTS、それぞれを対象として、SORを使って執行していくということを想定した場合、当然価格優先ということにはなってまいりますので、ダークプールが取引所やPTSよりも悪い気配しかないにもかかわらず、ダークプールに注文を回送するということは、当然価格優先という観点から許容されないということになろうかと思います。この報告書の6ページに記載されているトレードアットルールにつきましては、同値ではなく、取引所の立会市場の価格よりも有利な価格でなければ、約定自体を成立させないことを義務づけるというものでございますので、そこまで厳格にダークプールが有利な場合に限定するということではございませんが、少なくとも同値以上でなければならないというのが、最良執行方針等が価格優先である場合においては、当然に求められるものとなります。

 なお、コンプライ・オア・エクスプレインということですので、ダークプールのほうが価格は有利じゃないけれども、当社はとにかくダークプールに注文を回送するんですというような最良執行方針等をつくることは論理上は否定はされませんが、そこは顧客にとってどういう利益があるのか、価格面以外の顧客の利益を優先して、価格が不利でもダークプールに流す理由というのが非常に想定しづらく、現実的にはそのようなことにはならないだろうというふうに我々も期待しているところでございます。

 したがいまして、結論から申し上げて、ダークプールに注文が回送されるのは、少なくとも他の取引施設と同値、あるいはそれよりも良い場合に限られるんだろうというふうに想定しているところでございます。

 以上でございます。

【宇野委員】
 ありがとうございます。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、大和総研の横山様、お願いします。

【横山委員】
 黒沼先生、ありがとうございます。横山でございます。もう多くの委員の皆様がおっしゃっていることの繰り返しになってしまうかもしれませんが、非常にテクニカルで難しい内容、さらにはこれから起こり得るフォワードルッキングな難しい問題も含めて、非常にコンパクトかつ分かりやすくまとめていただきまして、どうもありがとうございました。報告書の内容につきましては、私も賛成でございます。

 その上で、久保委員のお話と若干かぶるかもしれませんが、ちょっと1点だけ、今後、運用に当たってお願いしたいなと思う点だけ申し述べさせていただければと思います。今回、価格を重視しましょうと、促しましょうという点につきまして、コンプライ・オア・エクスプレイン、言うなればプリンシプルベースの取組をするということは、顧客ニーズ、あるいは辛島委員がおっしゃったような技術革新、そういったところを踏まえても、私は適切な考え方ではないかというふうに考えております。ただ、こういったコンプライ・オア・エクスプレイン、あるいはプリンシプルベースという取組につきましては、やはり実効性をどう確保していくかということは非常に重要ではないかというふうに考えております。当然、コンプライしています、というだけではなくて、ちゃんと中身を伴ったコンプライになってもらわないと困りますし、エクスプレインにつきましても、今、お話がありましたような、ちゃんと中身の伴う、合理性の伴うエクスプレインになってもらわないといけません。こうしたことが適切に市場関係者に伝えられて、顧客がサービスを適切に選択できていくという体制が整うということが必要だと思います。同様のコンプライ・オア・エクスプレイン、あるいはプリンシプルベースの取組をしております両コードですとか顧客本位の業務運営に関する原則などにつきましても、適宜フォローアップ、モニタリングをなされているかと理解しておりますので、最良執行の問題につきましても、そういったフォローアップということを、ぜひお願いしたいと思っております。

 すみません、発言の機会いただきましてありがとうございます。以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。続きまして、清水先生、御発言をお願いします。

【清水委員】
 ありがとうございます。福井県立大学の清水です。

 私も皆様がおっしゃっているとおり、報告書の内容には異論はありません。賛成いたします。それから、このたび狭い領域とはいえ、とてもテクニカルな話題について多岐にわたる報告書をおまとめいただきましてありがとうございます。

 今回の報告書というより、今後のイメージのようなものをコメントとして申し上げたいと思います。最良執行は、皆様もおっしゃっているとおり市場構造とワンセットで検討していく必要があるものだと思っています。アメリカ型の価格による最良執行を非常に厳しくしていくことは、よい価格を取りにいくということですので、顧客、投資家のために、最もいいことのように見えると思いますし、私もそうだと思いますが、一方で、価格による最良執行のルールをどんどん厳しくしていくということは、市場間競争も非常にタイトなものになっていくことを意味しています。例えば、同値であればどちらの市場に注文を出してもいいとするのか、少しでも条件の良いところに出さないといけないというふうにトレードアットルールのようなものを入れるのかなど、ぎゅうぎゅうと市場間競争が厳しくなっていくというイメージです。アメリカのような市場間競争がタイトな市場を見ますと、先ほど来御発言がありましたように、ティックサイズを揃える必要があるかということもそうですし、ペイメント・フォー・オーダー・フローのような手数料のキックバックのようなものが出てきたり、また、取引所でもなく、PTSでもない相対のディーラーが最良執行を保証して注文を買い取るというようなことも拡大する可能性もあります。そういうことが進むと、まず、取引コストの中身が複雑化してきます。イメージとしては、一般の商取引で、いろんな条件をつけて、複雑な値引きやキックバックを行う結果、本当の価格競争がどこにあるかが見えにくくなるというようなイメージです。また、市場間競争のルールも複雑化してくると考えます。以前の会合で、アメリカではヘルシーコンペティションということが頻繁に言われるということを、どなたかが御発言になっていたかと思うんですが、逆に言うと、アメリカではアンヘルシーなコンペティション、つまり競争の行き過ぎも起きていることを前提に、競争は健全でなければいけないという発言がされていると理解しています。ですから、競争が不健全にならないような最良執行ルールや市場間競争のコントロールが必要で、これが広い意味での証券市場の運営コスト、つまり規制コストも含めたコストになるんじゃないかと思っています。特に一般投資家から見て、非常に運営コストの高い証券市場を維持することがいいことかは難しいところだと思います。広義の運営コストをあまり高く引き上げないことが重要で、目先の市場間競争をタイトにしていくことが必ずしもいいわけでもなく、バランスを取る必要があるんじゃないかなということを感想として申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

【黒沼座長】
 御発言ありがとうございました。続きまして、マネックス証券の清明様、御発言をお願いします。

【清明委員】
 マネックス証券の清明でございます。本日はありがとうございます。私も皆様と同様に、本報告書につきましては異存ございません。短い期間で技術的な内容も含めてまとめていただきまして、誠にありがとうございました。

 その上でなんですけれども、改めて、7ページの(2)にあります、市場構造の変化を踏まえた最良執行のあり方と顧客説明のところ、この部分は非常に重要だなというふうに感じております。以前、タイム・イン・フォース注文を導入していた証券会社様があって、その注文の回送において、一定期間PTS上で有効となる設定を設けていた件というのが記憶に新しいと存じます。その有効期間中にHFT業者がレイテンシー・アービトラージを行っているのではないかですとか、PTSの約定率の向上を図ったのではないかですとかいろんな臆測が生まれてしまって、結果的に個人投資家の皆様がSORですとか、あるいはPTSというものに対する不信感を抱きかねないという事態があったかなと記憶しております。こういった例を踏まえましても、やはりしっかりと説明をし、無用な疑いを持たれないようにするとともに、健全で透明な資本市場の環境づくりに、私たち自身、業界として努めていかなければいけないかなというふうに思っております。

 また、先ほど来から出ておりますが、市場間競争、こちらも大変重要なポイントだと思っております。今後、最良執行というものが適切に機能し、そして個人投資家が安心して資本市場に入ってきてくれるような市場をつくるためにも、やはり実効性ある制度というものにしていかなければいけないと考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございます。それでは、ブラックロックの梅野様、よろしくお願いします。

【梅野委員】
 ブラックロック、梅野でございます。まず、本件、取りまとめられた事務局の皆様に感謝申し上げているところでございます。内容につきまして、私も全く異論等ございません。

 やや私見のような形になってしまいますが、今回の議論に参加させていただきまして、感想といいますか印象でございます。今回、価格による最良執行をもっと広めていきましょうということで議論させていただいた中で、個人投資家、あるいは機関投資家という立場を超えて、資本市場に対するアクセスの部分に関して、幅広く不公平感が存在しているんだなということを改めて感じた次第でございます。実際に不公平かどうかということではなくて、そういった印象があるということは極めて重要だというふうに思っておりまして、そういった不公平感の払拭に向けて、金商業者としての責任は極めて大きいということを自覚したところでもございます。

 先ほど印象というようなことを申しましたけれども、やはり今回、例えばSORを使うのであれば、その理由を開示しましょうということがございましたけれども、理由に加えまして、例えばそういった選択をした結果、執行価格がどう改善したかというのを、最良執行説明書のみならず、さらに幅広く自主的に開示をするというような姿勢も重要なのではないかなというふうに思っております。今回取りまとめられた報告書の中での、こういうことを開示しましょうというのは、あくまで全社共通の最低限のラインであって、これをさらに超えて自主的に開示を広げていくということが、今後、価格による最良執行の高度化ということに役立つのではないのかなというふうに考えております。

 清水委員も申されておりましたけれども、価格競争が複雑化するということは、現状も複雑化しておりますし、今後もそのようになっていくということが予想されておりますので、取りまとめの最後にございますように、今後も適切かつ機動的に対応していくということが重要であるというふうに考えております。以上です。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございます。続きまして、藍澤證券の藍澤様、御発言をお願いします。

【藍澤委員】
 ありがとうございます。藍澤證券の藍澤です。よろしくお願いいたします。

 まず、今回の報告書案の取りまとめ、ありがとうございます。内容については、私も皆様と同様、異存ございません。今回、対面のリテール証券ということもあり、私自身は今回の様々な検討課題の中で、ほぼ個人投資家に対する最良執行方針の部分しか意見も言っていなく、その点、貢献度合いが低くなってしまい申し訳なく思うわけですが、ただ、今、対面の証券会社がブローカレッジから資産形成にシフトしようという中で、お客様のために執行時の価格をより重視するということは当然ですが、どうしてもそこにこだわり過ぎると、特に我々のような中小の証券会社の場合は、システムコストを筆頭に、結果としてお客様にとってデメリットを生じてしまう恐れがあるということは懸念としてございましたが、それが今回、コンプライ・オア・エクスプレインの形でまとめていただけたことは非常に大きな意味があり、今、業界を挙げてやろうとしている取り組みを阻害する要素になり得ない。具体的にそれが記載されている箇所は、4ページ目の②の部分ですが、会議の場で皆さん述べられていましたし、私自身も主張させていただいた内容も全て盛り込んでいただき、特に投資家の多様なニーズと、それに対する証券各社のビジネスモデルの違いまで踏み込んで原案をつくっていただけたことは、立案した事務局には大変感謝しておる次第です。

 それを踏まえて、細かい話ですが、今後の議論のために気になる点があるとすれば、同じく4ページ目、②の下から2行目の部分ですが、主として価格面以外の顧客の利益を考慮する場合という箇所で、本当に釈迦に説法ですが、資産形成を考える上で、価格面における顧客の利益には2種類あるかと思っており、1つは資産形成を行う入口とその出口において、1約定当たりの価格差から生じる利益、もう1つは出口に至るまでの保有期間中の資産価格の上昇で生じる利益、つまり運用益ですが、資産形成においてより大事なのは後者の方で、一方で今回は最良執行にかかる議論ですから、ここで言う価格面の利益とは当然前者のことを指してくるかと思います。それを追求していくと、PTSやSORの利用につながっていくかと思いますが、我々中小の場合は、これまでの刹那的な回転売買を中心とするブローカレッジサービスを脱却して中長期の資産形成サービスにシフトしている中で、やはり後者の価格面の利益に重きを置いて今後も取り組んでいくわけですが、今回、コンプライ・オア・エクスプレインの対象としているのは前者の価格利益で、これを追求しないことだけがクローズアップされ、後者の取り組みや努力がお客様に理解されないのであれば、そこは残念ですし、業界全体の今の流れに水を差す結果にならないか少し懸念はしております。

 ただ、ここに関しても事務局の方から、その次のページの注釈の部分も含めて、この文言の意図するところを御説明いただき、今まさにエクスプレインの書きぶりで対処すべきものだというように理解しておりますので、その部分で今後も引き続き関係者の皆様には、より顧客本位で、さらに各社の意図がお客様に伝わるような書きぶりを模索していただければいいなと思っておる次第です。

 結論を申し上げますと、繰り返しになりますが、今回の内容については異存ございません。ありがとうございました。以上です。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。貴重な御意見として受け止めさせていただきます。ニッセイアセットマネジメントの内田様、御発言をお願いします。

【内田委員】
 発言機会をありがとうございます。ニッセイアセットの内田と申します。

 まず、これまでの参加者の方がおっしゃられたように、今回の報告書につきましては、短期間で非常にコンパクトに要点をまとめていただきありがとうございました。非常にすばらしい報告書に仕上がったものと認識しております。

 今、ちょうど藍澤證券様からもお話がありました様に、ポイントは、この手の指針は作って終わりではなくて、いかに実際の各証券会社さんへ通知して、考え方を共有するかという点がすごく大きな課題だと思っております。そういう点では、もしかしたらこの後は証券業協会さんに御尽力いただくところになるのかも分からないのですが、やはり今回の報告書は、中身が非常にぎゅっと詰まっていて、行間というか、凄く含意のある表現が非常にたくさん含まれています。そういう点で、ここを誤解なく、正しく上手に津々浦々の方々に御理解いただくというような取組が非常に重要になってくるものと思います。今回は事務局の方々に非常に御尽力をいただいたおかげで、議論の最中も、事務局の方々に御用意いただいた資料等に助けられた部分は少なくなかったと認識しております。こういった背景や課題意識等を上手に伝えていかないと、せっかく議論をしてもなかなか遍くその精神が伝わらない、その様なことが発生しないように、是非ともこれは最後までしっかり面倒見るようなつもりで、この後、進めていただければと考えているところでございます。

 以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。それでは、時間が参りましたので、委員からの質疑応答、意見交換を終わらせていただきたいと思います。

 オブザーバーの方から御意見があれば、3分程度を目安に発言をお願いします。それでは、チャイエックスの色川様、お願いします。

【色川オブザーバー】
 チャイエックス、色川でございます。このたびは、このように重要な議論に同席させていただきまして、誠にありがとうございます。また報告書、大変すばらしいものでして、その場に居合わせることを許していただきましたことを改めて感謝申し上げます。二、三、この機会を借りて、オブザーバーではございますが、発言させていただければと思います。

 このタスクフォースは最良執行に関するものでありましたが、それと密接に関わる市場構造という問題がございます。例えば、今回の報告書案で、米国型のNBBOを導入するとか、全取引所とPTSの利用を義務化するといったことはまだ困難であるとされていますが、一方、市場構造の観点、もしくは高速取引行為者の利益への問題意識の観点からは、ほぼ無リスクの市場間アービトラージ機会を放置するというようなことにもなり得るものであります。我が国の市場構造と投資家保護にとって何がベストか、今後さらなる議論が継続されることをお願いしたいです。

 次に、ペイメント・フォー・オーダー・フローですが、この報告書で、注文回送リベート、いわゆるペイメント・フォー・オーダー・フローが、米国における用語と同様、ブローカーが、顧客の注文をマーケットメーカーに回送し、ブローカーがマーケットメーカーから受領するリベートとして定義され、その問題点も示されました。一方、PTSは複数の参加者が競い合い、価格を提示し、気配値が時々刻々透明に表示される取引施設であります。実際、いわゆるメイカー・テイカーですとかテイカー・メイカーといった手数料体系により、取引施設からメイカーへ、あるいはテイカーへの手数料支払いという構造は、米国などではペイメント・フォー・オーダー・フローとは全く別のくくりで議論がされています。取引とか、あるいは開示の公正性と、活発な市場間競争の両立を目指しつつ、しっかりと当局と相談をしながら創意工夫ができることがないか、今後も考えていければと思っている次第でございます。

 最後になりますが、PTSは英語名でProprietaryとなっておりまして、特定の証券会社による内部プールを想起させる名称であります。実際、制度スタート当初は、ネット証券による夜間取引を中心に、そうした内容のものが多かったと思います。その後、弊社のように取引所代替市場としての運営のPTSも現れたわけでありますが、今回のタスクフォースにより、PTSを執行先として重要な取引施設として認知していただくことになりましたのは、我が国の市場構造において大きな一歩になったと考えております。

 この会は、取引施設の利用に関するタスクフォースでありまして、その利用対象は取引所やPTSということであります。一方、これは最良執行規制を議論するタスクフォースであり、その規制対象は証券会社であります。そのタスクフォースにメンバーとして招聘できるか、オブザーバーにとどめるかの線引きを何にするかは難しいとは思うのですが、今後、最良執行や市場構造における議論、様々な場におきまして貢献できる存在になっていけるよう、弊社としましても、より一層精進してまいる所存であります。本当にありがとうございました。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございました。それでは、日本取引所グループの南出様、御発言をお願いします。

【南出オブザーバー】
 日本取引所グループの南出でございます。このような充実した議論に参加する機会をいただきまして、ありがとうございます。また、報告書も非常に分かりやすい内容となっておりまして、こちらの取りまとめ、事務局の皆様に感謝の意を示したいと思っております。

 この報告書の内容でございますが、アプローチとしまして、プリンシプルベースというのがふさわしいと思っております。最良執行方針に書くべき内容を、方向性を示して、金融商品取引業者が顧客本位の観点から取組を進めていくというアプローチに全面的に賛成するものでございます。この報告書が取りまとまり、その後、法令が改正された後、金融商品取引業者の目線、皆様における最良執行方針の充実化、そしてそれを情報提供していくということになると思います。

 ただ、私が思いますに、最良執行方針に書くというのはもちろん第一でございますが、例えば報告書の6ページ、顧客から執行方法に関する指示がある場合というところで、「個人投資家から十分な理解を得ないまま指示があったものとして、最良執行方針等に記載された執行方法と異なる方法により執行する等、潜脱的な運用が行われることがないように留意する必要があると考える」というところでございますが、こちらの方針の記載を充実化するだけではなくて、例えば発注画面においても、お客にとっては理解が難解のものについて、例えばデフォルトでそうしたものが選ばれることがないよう、そうした細かい面でも顧客本位の業務運営を進めていく必要があるのではないか、投資家の利益が図られるのではないかと考えております。

 今回の内容がプリンシプルベースでございますので、今後、テクノロジーが発展していき欧米で行われていることが日本に持ち込まれるようになった場合も、ある程度は最良執行方針の記載を充実化するというアプローチで対処できると思いますが、それでも対処できないようなものが生じた場合には、行為規制ですとか情報開示の義務づけ、こういったことを不断見直していく必要があると考えております。

 以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございました。それでは、次に、ジャパンネクスト証券の山田様、御発言をお願いします。

【山田オブザーバー】
 ジャパンネクスト、山田です。このたびはオブザーバーとして参加させていただき、大変ありがとうございました。また、報告書の取りまとめに関しましては、事務局の皆様、大変御苦労さまでした。

 今回のタスクフォースは、最良執行義務自体をどのように再定義して、利用者の利便性を高めるとともに、適切な保護措置について議論するということが意義であると考えておりまして、この報告書に関しましては、まさにその意義に則った形で出来上がっているのではないかと考えております。

 その中で若干細かい、私の私見に近いところを言わせていただきますと、まず価格及びコストを重視するという、ある意味当然の結論となっているのですが、その最良執行方針を実際に実現するに当たり、それを遵守させる措置である、法令における義務化というのが一番明確だと思うのですが、そういうものとか、それを客観的にバリデートできる最良気配というものの設立に関して、今回は先送りされたということ、及び、世界的には常識化しているダークプールとかSOR、あとこれは米国だけなのでしょうけれどもPFOFですとか、報告書に書いてありますアービトラージというのが、何となく構造的な悪であるかのように取り扱われていることには、若干違和感を感じざるを得ないと考えております。我々取引施設を含めた業界として、こういうようなイノベーション的なものとも、しっかり向き合った上で、投資家の利便性を最大に追求していくというのがやはり必要だと思います。それに関して、ブローカーの皆様と協力して、対応していきたいと考えております。

 あと、レイテンシー・アービトラージという概念が報告書に今回出てきていますが、そもそも割安な価格で買って割高な価格で売るという、この手法自体は非常に古典的なものであり、ナショナルマーケットシステムが存在しない我が国においては、こういう手法をやる人がいることにより、各取引施設においてどんな方式で取引を行われていても、価格がばらばらにならずにまとまっているという現状があると思います。そこで、どういうようなアービトラージに問題があって、個人投資家の利益を損ねているのかというのをある程度明確にした上で、それに対する対応方針を立てていくという必要があるのではないかと考えます。

 また、皆様もお力添えいただいたところで、最後のほうにPTSと取引所間競争の一層の促進が明記されたことというのは、非常に我々PTSにとってはありがたい話であると思います。しかし、これに関しましては、PTSと取引所の立会市場に限定せずに、ほぼPTSと同様な機能を持つ代替市場である、例えばダークプールですとか、ToSTNeTを利用した取引に関しても議論をやるべきではないかと考えております。そもそも取引施設ごとに規制上の建てつけが異なりますし、実際に価格決定方法も違うと思います。その中で呼び値の刻みについて議論が結構出ていましたけれども、ToSTNeTは皆さん御存じのとおり万分の1ケタまで取引可能ですし、ダークプールは小数点以下2桁で取引をやっているところもあります。ですので、それらを全て含めた上で、適正な規制はどうであるべきかということを、また別の場で議論させていただくことは、我々にとっても非常に有意義なものであるというふうに考えております。

 また、最後に、前回も少し申し上げたのですが、今回、どうしてもファクトに基づく議論というのが、時間がなかったせいもあってできなかったので、今後、あるべき規制の内容について、もう少しファクトに基づく実証研究を踏まえながら、定期的に議論とか、必要に応じて見直し等々も行うようにしていただけたらと考えます。

 以上でございます。

【黒沼座長】
 御意見ありがとうございました。続きまして、日本証券業協会の松本様、よろしくお願いします。

【松本オブザーバー】
 日本証券業協会の松本でございます。今回、オブザーバーとして参加させていただきましてありがとうございます。

 内田委員から御発言いただきましたとおり、また、報告書の最後の脚注のほうに、日証協において検討をというように書いていただいておりますので、今後、きちんと検討してまいりたいと思います。

 その際、本日、委員の方から御発言ありました、証券会社が自分でしっかりと検討して対応していくことが必要ということですとか、また、形骸化ですとか、横並びにならないようにというようなこと、またプリンシプルベースで、コンプライ・オア・エクスプレインがきちっと実行できるように、健全な透明な資本市場の発展に資するというようなことを、本日いただいた発言も踏まえて、検討を行っていきたいと思ってございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 私からは以上でございます。

【黒沼座長】
 ありがとうございます。国際銀行協会の平山様、御発言をお願いします。

【平山オブザーバー】
 ありがとうございます。国際銀行協会、平山と申します。これまでこのタスクフォースのワーキング会議に参加させていただきまして、どうもありがとうございました。2点ほど述べさせていただきます。

 まず1点目です。国際銀行協会内で本タスクフォースにおける議論を適宜メンバーと共有してまいりまして、その趣旨につきましては概ね了承されていると思っております。もちろんこの報告書案は共有しておりません。また今後、微力ながら貢献していきたいと思っております。

 2点目です。今後、金融庁におかれまして、具体的な法令改正を検討されることになるかと思いますが、その際は、ぜひプリンシプルベースで御検討いただければと思っております。なぜなら技術の発展、目まぐるしく変わる社会の状況、新たなタイプの市場参加者等、現在そして将来起こり得るであろう森羅万象全てを捉えて、ルールベースで規則をつくり上げていくというのは非常に大変なことだと思うからです。

 私からは以上です。ありがとうございました。

【黒沼座長】
 どうもありがとうございました。オブザーバーの方で、ほかに御発言を希望される方はいらっしゃいませんでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、この辺りで取りまとめをさせていただければと思います。報告書案につきましては、皆様から御賛同いただけたものというふうに思っております。また、本日皆様から、特に、今後この報告書の内容を制度化した場合にいかに実効性を確保するか、一定期間経ったら検証をするべきであるとか、さらにこの報告書には直接記載はありませんけれども、市場構造の問題も含めて今後検討の対象とすべきであるといった、大変貴重な御意見を多数いただいたというふうに考えております。

 報告書につきましては、今後、さらに表現の平仄などを精査しまして、必要があればごく微小な修正をいたしたいと思いますが、その点は私に御一任いただき、取りまとめをしたいと考えております。その後、金融審議会市場制度ワーキング・グループへ報告し、報告書を公表するという段取りを想定しておりますが、段取りについても私に御一任いただきたく存じますが、その点よろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

【黒沼座長】
 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。

 当タスクフォースは昨年12月以来、計4回にわたって議論を重ねてまいりました。メンバーの皆様方には大変お忙しい中、積極的に御参加いただき、また、精力的な御議論をいただきましたことを厚く御礼申し上げたいと思います。

 それでは、本日の会合をこれで終了いたしたいと思います。皆様、どうもありがとうございました。

―― 了 ――  
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企画市場局市場課(内線:3943)

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