金融制度スタディ・グループ(第4回)議事録

  • 1.日時:

    平成30年2月9日(金)13時00分~15時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(第4回)
平成30年2月9日
  
【岩原座長】
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融制度スタディ・グループ」第4回会合を開催いたします。
皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。本日はいつもより長い2時間半の審議が予定されております。長丁場になって恐縮でございますが、よろしくお願い申し上げます。
本スタディ・グループにおいては、同一の機能・リスクには同一のルールを適用するとの考え方の下で、まずは、金融の各機能を「決済」、「資金供与」、「資産運用」、「リスク移転」に分類して検討を進めることとしております。前回は、これらのうち「決済」と「資金供与」を対象として検討を始めたところでございます。「資金供与」については、時間の関係でご発言いただけなかった方もいらっしゃいましたので、今回その続きの議論を行うことも予定しております。
本日の流れといたしましては、まず、事務局から金融の各機能のうち、「資産運用」および「リスク移転」に関する討議資料についてご説明をいただきたいと思います。その後、「資金供与」の論点について議論の時間を設けた上で、本日の討議資料についての議論を行いたいと考えております。
それでは、事務局から説明をお願いします。

【井上信用制度参事官】
信用制度参事官の井上でございます。お手元の金融審議会「金融制度スタディ・グループ」第4回と書かれた討議資料について、ご説明させていただきます。今回は、「資産運用」および「リスク移転」を検討の対象に加えまして、各「機能」が果たすことが期待されている役割や、その実現に向けて金融法制において達成すべき利益について検討していただきたいと思います。
まず、資料の1ポツの「資産運用」の(1)でございます。「資産運用」は、典型的には株式・社債や集団投資スキームの持分の購入等を通じまして、資金余剰主体(資金の出し手)が資金不足主体(資金の受け手)に対して、自らのリスク選好に従って資金を供給することにより、市場メカニズムを通じた効率的な資金配分と、資金の出し手の中長期的な資産形成などに寄与することが期待されるものと考えられるのではないかと思います。
前回までのご審議でご指摘いただきましたように、預金も資金の出し手から見れば運用手段の1つと位置づけることが可能でございます。その点を(注1)に記載させていただいておりますが、「資産運用」の射程にも含まれると考えております。一方、預金につきましては、元本保証性がありますし、法定通貨と同様に広く決済手段として使われ、また預金保険や日本銀行の最後の貸し手機能によって制度的に預金以外の資産に比べて高い安全性が確保されています。こうしたことを踏まえれば、預金については別途の考慮が必要となることが考えられるのではないかということで、この点については後ほど改めて触れさせていただきたいと思います。
また、(注2)のところでございます。本討議資料における「資産運用」に係るサービスの提供者には、例えば受託資産を運用する者や、最終受益者の資産について運用者に運用指図を行う者のほか、金融商品の販売・勧誘、売買の仲介、あるいは投資家に対する助言、金融商品の取引の場の提供など、先ほど申し上げました機能の達成に資する業務を行うプレイヤーを広く含めて考えていただければと思います。
1ページ目の1番下の丸でございます。資金の出し手(投資家等)が、自らのリスク選好に従った資産運用ができること、すなわち多様で良質の金融商品が適切に提供されること、並びに資金の受け手(企業等)にとって、資金調達の目的となる事業等の予測リスク・リターン等に照らして適切な資金調達の選択肢が提供されることなど、多様な資産運用・調達ニーズが充足されることは、同時に経済社会全体としても適切なリスクテイクを通じて経済成長等に寄与することにもなると考えられるがどうかという記載をさせていただいております。
その下の(2)でございます。こうしたことを踏まえまして、金融の「機能」としての「資産運用」分野における達成すべき利益として金融法制が想定すべきものに関して、以下のように考えることについてどうかということを論点として提示させていただいています。
まず、(ア)でございます。資金の出し手(投資家等)の立場から見て達成すべき利益として考えられるものにつきましては、①として、資金の出し手が自らの運用目的やリスク選好に合致した資産運用手段を見つけることを可能とすることを挙げております。これを達成するために、まず(a)といたしまして、資金の出し手に対して情報提供等が適切に行われること、すなわち、金融商品について、資金の出し手の投資判断に影響し得る情報が適切に開示されること。例えば、株式や社債を発行する企業等による開示等を念頭に置いております。また、サービス提供者が、サービスの内容に関する情報を適切に提供すること。これは、証券会社等による顧客への情報提供等を念頭に置いております。これらが考えられるかと思います。
なお、(注)でございます。サービス提供者と資金の出し手の間の情報格差や資金の出し手が負担するリスクの程度が大きい場合には、適合性原則が重要となるほか、個々の金融商品の性質等の観点から適合性原則の遵守が期待できない場合には、不招請勧誘の禁止が考えられるなど、取引の態様等に応じて適切な規制の態様は異なってくるのではないかと考えております。
次にその下の(b)といたしまして、資金の出し手の資産が保護されることを挙げております。下の(注)でございますが、資金の出し手や資産の性質、あるいは他者の資産との混合の可能性の程度等に応じまして、分別管理やセーフティネットなどの対象となる場合があるものと考えております。
次に、3ページ目にお移りいただきます。(c)といたしまして、サービス提供者がサービス提供において入手する資金の出し手の情報が保護されることを挙げております。
その次に、(イ)といたしまして、資金の受け手(企業等)の立場から見て達成すべき利益として考えられるものにつきましては、②といたしまして、資金の受け手が使途に見合った調達を行うことができる環境を整備することを挙げております。
最後に、(ウ)の効率的な資金配分の実現等、資金の出し手・受け手双方の立場から見て達成すべき利益として考えられるものにつきましては、③といたしまして、市場メカニズムによって形成された価格が資産評価の基準や金融商品の発行価格の目安として利用され、効率的な資金配分の実現につながるなど、公益の観点から重要な意義があるような場合には、公正で効率的な価格形成が行われるよう、市場の公正性・透明性を確保すること。並びに④といたしまして、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与を防止することなどを挙げております。
加えて、もう1つ論点を記載させていただいております。その下の丸でございます。現状、「預金受入れ」と「資金供与」をあわせて行う銀行に対しては、前回ご覧いただきましたとおり、その行う信用創造の流れが止まったり逆回転したりすると、経済活動や金融システム全体に悪影響が及ぶおそれ、システミックリスクがあることなどから、他の業態に比べて加重されたルールが課されております。
しかしながら、リーマンショックの際にも見られましたように、システミックリスクを有するのは伝統的な銀行業務における信用創造だけではなくて、シャドー・バンキングにおけるリスクへの対応も国際的に議論されております。こうしたことを踏まえれば、「資産運用」においてもシステミックな金融危機を回避し、効率的な資金配分を行うような市場機能を維持することは、前述の①から④の利益とは区別して位置づけることも考えられるのではないかということで、⑤といたしまして、システミックな金融危機を防ぐことについても記載させていただいております。
その下の(参考)のところはリーマンショックを受けた対応です。米国の大手都市銀行の破綻等の影響が、市場等を通じて金融システム全体に波及したこと等を踏まえまして、我が国でも、金融機関の秩序ある処理や、あるいは大規模かつ複雑な業務をグループ一体として行う証券会社グループについての連結ベースの規制・監督の枠組み、店頭デリバティブ取引の安定性・透明性の向上を図る枠組みなどの整備を行っていることをご紹介させていただいております。
次に、4ページ目の(3)、預金に関する考慮要素でございます。1ページ目でもご覧いただきましたが、「資産運用」の対象となる金融商品のうち、預金に関しては元本保証されているところに特徴があります。また、国民に広く利用される安全確実な価値の貯蔵・運用手段である側面や、法定通貨とほぼ同等に決済に利用できる決済手段という側面もございます。経済社会全体の信認と安定などの政策的配慮などからも、預金は預金保険や日本銀行の最後の貸し手機能などによって制度的に保護が強化されております。このような預金について、特別なものとして他の金融商品とは保護のあり方に差異を設けることが適切という考え方があるがどうかという論点を挙げさせていただいております。
なお、(注)でございます。預金と違い、投資性のある金融商品につきましては、投資家が自らリスク選好に従い、自らの判断で取引を行い、その結果を負担する自己責任の原則が妥当しまして、投資家の判断に必要な情報提供等によって自己責任原則の前提条件を整えております。
次に、(4)のITの進展等に伴う新たな「資産運用」サービスの取扱いでございます。ITの進展等に伴いまして、金銭にとどまらず仮想通貨などの新たな手段を用いた「資産運用」と同様の機能・リスクを有するサービスが広く出現してくることが想定されます。これらに関しまして、イノベーションの促進という観点に留意しつつ、利用者保護を確保する観点から、どのような考慮が必要かという論点を挙げさせていただいております。
(注)のところで3つほど例示をしております。仮想通貨を投資対象とした私募ファンド、仮想通貨を用いたデリバティブ取引、あるいはICOなどが出現してきております。
また、一番下の丸でございます。「資金供与」でもご覧いただきましたとおり、プラットフォームを提供するようなサービスがございます。これらは「資産運用」分野でも出現していると考えられます。この規制のあり方についてもどう考えるかという論点を挙げさせていただいております。
5ページの冒頭に(注)として、投資型クラウドファンディングのプラットフォームの運用業者につきましては、少額電子募集取扱業者として金融商品取引法で登録の対象となっております。必要な業務管理体制を整備すること等が義務づけられております。
最後に、5ページ目の1つ目の丸でございます。人工知能、AIにつきましては、例えばロボアドバイザーや運用のプログラムに活用し、投資の勧誘・助言・運用等の判断をAIが独自に行うサービスが広く出現してくることも想定されます。これに関連しまして、AIには自然人のような意思能力や過失を観念できない、あるいはディープラーニング等によって開発者の予見可能性を超えた能力・用途を具備する可能性がある。さらに、AIの判断・結論を導く仕組みを検証することが困難といった指摘があり得ます。これらはAIを活用したサービス提供に関するルールを検討する際に、どのように考慮されるべきかといった論点を提示させていただいております。
以上が、「資産運用」分野についてのご説明でございます。次に、2ポツの「リスク移転」の論点のご紹介に移らせていただきます。
まず、(1)でございます。「リスク移転」の射程についてでございます。リスク移転は、典型的には一定の事由の発生の可能性に応じたものとして対価を支払うこととし、相手方から当該一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付を受けることを約するものが考えられます。今回の討議資料ではこうしたものを念頭に置いて、ある意味狭義の意味で検討を進めていただければと考えております。
具体例でございます。まずは、「信用保証」というような貸付等の債務者から一定の保証料の支払いを受け取ることによって保証人となり、債務者が債務不履行となった場合に代わりに債務を履行するものが考えられます。これによりまして、債権者は債務不履行のリスクを信用会社等に移転することができ、債務者が貸付等を受けやすくなると考えられます。
なお、(注)のところでございます。現状、保険業法でも保険数理を活用した保証については、「保証証券業務」といたしまして保険業の一種とみなすものと位置づけられております。そのほか、物品を対象とした保証などもあります。
最後に、さらにその5ページ目の一番下の丸でございます。また、金融商品の価格や指標の値の変動などの偶然の事由を対象としたものとして「デリバティブ取引」がございます。価格変動などのリスクをヘッジする目的で用いられることもございます。
ページをおめくりいただきまして6ページでございます。このほか、同様のリスクに晒される主体が資金を拠出し合って基金を形成し、この基金からリスクが実現した主体に給付を行う「保険」がございます。保険契約者は保険料を支払うことを対価として、リスクが実現した際に必要となる保障(補償)を保険者から受けることを約することによりまして、経済・社会生活上の予測可能性を高めることを目的とするものと考えられます。
ここで1つ問いかけ、論点を提示させていただいております。これらのリスク移転のうち信用保証については現状、公的なものを除きまして特段の業規制は設けられておらず、デリバティブ取引を業として行う者についても金商法上の登録の対象とされているところにとどまります。(注)でございます。一定額以上の資本金を有する株式会社などのプロを相手方として行う一部の店頭デリバティブ取引等については、この金商法上の登録の対象からも除かれております。これに対しまして、「保険」を業として行う者につきましては、現在保険業法で免許の対象とされているというように違いが見られております。この点についてどう考えるかという論点を提示させていただいております。
そして次に、(2)でございます。こうしたことを踏まえまして、金融の「機能」としての「リスク移転」分野における達成すべき利益として金融法制が想定すべきものに関して、以下のように考えることについてどう考えるかという論点を出させていただいています。
(ア)の利用者の立場から見て達成すべき利益として考えられるものについてでございます。①として経済・生活上のさまざまなリスクに対する保障が確実に提供されることを記載いたしております。特に、保険などリスクを集積・分散する商品の場合に該当するものと考えられますが、この場合にはこれを達成するために、効率的なリスクの集積・分散により不確実性を軽減することや、適切なリスク管理により保障を提供するための原資が確保されること、またサービス提供者が健全な業務運営を行うことが挙げられるかと思います。(注)でございます。論点として、集団的なリスクの移転における集団構成員間の公平性や集団の健全性についても、守らなければならない利益として考えられるかという点を記載させていただいております。
次に、②といたしまして、利用者の資産が保護されること、すなわち利用者の資産が利用者に対する給付や利用者自身が承知した方法による運用以外の事由により毀損されないようにすることを記載させていただいております。次のページの上の(注)でございます。1つ論点として、資産運用の機能と併存する場合に利用者資産の保護をより加重することは考えられるかという点を記載させていただいております。
次に、③といたしまして、利用者に対してサービスの内容・リスク等に係る情報提供等が適切に行われること。④といたしまして、サービス提供者がサービス提供において入手する利用者の情報が保護されることを挙げております。
次に、(イ)の社会全体として達成すべき利益として考えられるものといたしまして、⑤のマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与を防止することを挙げさせていただいております。
加えて、この「リスク移転」の分野でももう1つ、システミックリスクに関係する論点を記載いたしております。先ほどご覧いただきましたとおり、現状「預金受入れ」と「資金供与」を併せ行う銀行につきましては、その行う信用創造の流れが止まったり逆回転したりすると、経済活動や金融システム全体に悪影響が及ぶおそれがあることから、他の業態に比べて加重されたルールが課されております。しかしながら、「リスク移転」の分野におきましてもリーマンショックの際に「モノライン保険」や、クレジット・デリバティブ取引を行っておりました保険会社の経営破綻がシステミックに連結することが懸念されましたように、他の金融機関等への債務の不履行等によりまして、システミックリスクの源泉となり得るかと思います。こうしたことを踏まえますれば、「リスク移転」においてもシステミックな金融危機を回避し、経済活動や金融システム全体への悪影響を防止することは、前述の①から⑤の利益とは区別して位置づけることも考えられるのではないかと、⑥としてシステミックな金融危機を防ぐことを挙げさせていただいております。
その下の丸でございます。以上のような達成すべき利益を考えるにあたって、他に留意すべき点はあるかという論点を出させていただいております。一例といたしまして、保険はサービス提供者から見れば主目的は利用者に対する保障の提供であり、その目的を利用者にとって有利に進めるために保険料を余資として運用しております。また、特に年金保険や貯蓄型の保険におきましては、利用者から見れば資産運用を目的として加入している側面がございます。このように「リスク移転」の機能と「資産運用」の機能が併存するものの取扱いについてどのように考えるかという論点を記載いたしております。

(3)のITの進展等に伴う新たな「リスク移転」サービスの取扱いでございます。まず、(ア)でございます。「リスク移転」におけるサービスの内容につきましては、サービス提供者と利用者との間に情報の非対称性が存在し得ると言われております。そして、発生が不確実な事象を対象とすること、価格設定にあたり複雑な数理計算を伴うと考えられることなどによりまして、利用者がサービス内容の妥当性を判断することが困難な面があることから、利用者の属性に応じた適切な説明や当局による内容審査などにより、利用者の保護を図ってきました。
一方で、これまで利用者側に情報の優位性があるとされてきましたリスクに関する情報につきましては、ITの進展等に伴いまして、利用者に関するデータ分析の高度化等によりましてリスク評価の精緻化が進む可能性がございます。これによりまして、サービス提供者から見て利用者についての情報の非対称性が低下し、良好な健康状態の利用者や安全運転を行う利用者等の保険料が下がることなどが考えられる一方で、健康状態の条件の悪い人は保険に加入しにくくなるといった問題が生じ得るかとも思います。このように同様のリスクにさらされている主体が細分化される結果、リスク移転の対価、すなわち保険料等の水準が上がるカテゴリーの方々を中心に充足できなくなる需要が生じる可能性がございます。こうした点についてどのように考えるかという論点を提示させていただいております。
最後に、(イ)でございます。ITの進展等に伴いまして、サービス提供者がインターネット等を活用して、友人同士など同じリスクに対する保険に興味のある集団に対してプラットフォームを提供し、その中で利用者同士で資金を拠出して事故が生じた場合に給付を行うサービス、例としてP2P保険と言われるものがございます。こうしたものが発展する可能性がございます。また、ブロックチェーン技術の進展に伴いまして、スマートコントラクトをブロックチェーン上で実装することが可能となりつつあります。このスマートコントラクトを用いて、保険プロセスの効率化を図ることができる可能性も指摘されます。こうしたITの進展等に伴う新たなサービスについて、どう考えるかという論点を最後に記載させていただいております。
事務局資料の論点としては、以上でございます。必要な論点を出し尽くせていないところもあると思います。また、これまで挙げてきましたさまざまな論点に関するご意見のほか、金融の「機能」としての「資産運用」および「リスク移転」の役割および達成すべき利益について、ほかに検討すべき点があればご指摘いただければ幸いでございます。
事務局からのご説明は以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
それでは、討議に移りたいと思います。まずは、前回の積み残しであります資金供与について、前回ご発言いただいていないメンバーの方でご発言を希望される方がいらっしゃいましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。
では、坂さん、それから、加毛さん。

【坂メンバー】
ありがとうございました。私から4点、意見を述べさせていただければと思います。
1点目は資金供与の保護法益、達成すべき利益についてです。第3回資料8頁の①のところですが、達成すべき利益としてはきちんと信用供与が行われることが第一であろうかと思います。これは「効率的な資金供与」と表現することも可能かと思います。この①の記載では「より具体的には」として、流動性変換、満期変換、信用変換がその後に記載されています。これらはどちらかというと利益をもたらす仕組みであって、達成すべき利益に書き込むのかどうかは要検討かと思います。
それから、効率的な資金供与の意義について、資金需要者に資金が提供されればよいということではなくて、適切に資金が提供されるという趣旨を含めるべきではないかと思います。適切な形での資金提供という観点からは、単に貸せる先には貸し、貸せない先には貸さないというだけではなくて、貸せない先を貸せる先に変えるための金融機関の活動や、あるいは貸せる先へより効果的な資金提供をどうやって行うかといった点についての活動が今後さらに重要になってくるのではないかと思います。
例えば、地域企業の経営課題の把握や助言といった取組みや、あるいは回収可能についての柔軟かつ実質的な検討などが考えられるのではないかと思います。こういった活動のために、金融機関が情報を適切に活用することも今後重要性を増すのではないかと思われます。
また、効率的な資金供与という点では、不適切な資金提供を抑制する趣旨も考慮すべきと思います。かつて、金利規制が整備される前の時代には、中小企業への高利貸付がかえって経営の見直しの機会を奪い、企業の財産や経営者の家族の財産をすり減らしたと、こういった例が多数見られたことも、十分に振り返られるべきではないかと思います。こういった観点からは、これはむしろ④の資金需要者の保護に位置づけられるべきかもしれませんが、高利の貸付の抑制も重要な課題であって、これも達成すべき利益として明記すべきではないかと思います。
それから、効率的な資金供与という点では、効率的な資金配分の実現という視点も重要と思います。先ほどご報告いただきました資産運用の項では、この点が明確に位置づけられています。資金供与の点においても、適切な融資審査や貸出審査による効率的な資金配分の実現が求められると思いますので、この点も検討いただければと思います。
2点目ですが、行為の類型化の点です。一定の行為に加重されたルールを課すべきとされている点について、これは2つに整理することが可能なのではないかと私は思います。1つは預金を受け入れて貸付を行う場合です。これは預金保護のために加重されたルールが必要になると思います。今1つは金融システムの安定を損なうおそれがある場合です。これらの2つは別の理由であって、分けて整理をしたほうがわかりやすいのではないかと思います。
それから、3点目です。金融規制の対象外とされている資金供与の論点についてです。この論点については、金融規制の対象外と位置づけられているものについても、適切に範囲を明確化した上で金融規制の対象とすることが是非必要ではないかと思います。これは基本的には達成されるべき利益の観点から検討すべきと思いますが、個人や中小企業の分野では、効率的な資金供与や資金需要者の保護が重要と思われ、これらは販売信用、一定の範囲のリース、ファクタリングにも必要かと思います。
例えば、過剰与信の防止の点では、貸金や販売信用の区別なくこれは必要です。個人にとっては無理なく支払いができる範囲は、個人の収入等によって決まってくると思われます。この範囲を超える与信はこれは貸金であろうが、クレジットであろうが控えられるべきであろうと思います。ところが、現状は縦割り規制の下で、業者が別々であれば個人が貸金業法の与信枠と割販法の与信枠を別々に使うことができるなど、問題があるのではないかと思われます。こういったその状況を解決するためにも、規制の横断化が求められるのではないかと思います。
なお、今の発言は利用者の立場から発言させていただきました。事業者の立場からもこういった形で規制を横断化することは、例えばその管理を統一的に行う、あるいは事業者は基本的にコンピューターシステムを組んで管理をされていると思いますが、そういったシステムを組む際にも、横断的な規制のほうが便利なのではないかと思われます。ファクタリングについても、これは現行法上も基本的には金利規制や貸金業法の規制対象になる部分があり、例えば譲渡人の買戻しが予定されているファクタリングについては、貸金業法違反により刑事摘発された例もあるようです。また、利息制限法の適用を肯定する大阪地裁の判決も出されているようです。それから、リースについてもファイナンスリース等において中小零細業者において過剰リースの問題が生じたような経過があります。
こういったその問題状況を踏まえると、ここで提起されている問題についてはできるだけ規制の対象とすることを検討すべきではないかと思います。もっともリースやファクタリングというのはかなり広い概念です。資金供与の実質を有するものをどのように範囲を画していくかというか、これは検討しなければならない重要な課題かと思います。
すいません。長くなって申しわけありません。もう1点です。第3回資料9頁の次の丸のところで聞かれております点です。この問題は資金供与の対象範囲をどう定義するかという問題かと思います。定義の仕方については幾つか考え方があり得るのではないかと思います。1つ目としては金銭の貸付をはじめとして、考えられる法形式を列挙する方法です。2つ目としては、例えば資金供与の経済的実態を有する取引など概念的な定義を行う方法です。それから、3つ目には考えられる法形式を列挙して、これらと同様の資金供与の経済的実態を有する取引など、法形式と実質的な概念定義を並列する包括的な定義を行うやり方と3つあるのではないかと。おそらく、現実的には3番目に申し上げた形の中で列挙する法形式をどうするかということと、それから実質的な定義をいかに洗練された表現にできるのかという問題なのではないかと思います。それから、どのようにその定義をしようともおそらく実質的な判断の部分は残らざるを得ないと思います。この点については、現在も取り組まれておりますが、ノーアクションレター等こういったものを有効活用していくことが重要になってくるのではないかと思います。
以上です。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
それでは、次に加毛さん、お願いします。

【加毛メンバー】
ありがとうございます。前回の資料の10ページの(7)のITの進展等に伴う新たな資金供与サービスの取扱いについて、2点申し上げたいと思います。1つが、上限金利規制についてどのように考えるべきかということ、もう1つが、P2Pレンディングの規制のあり方についてどのように考えるべきかということです。
最初に、上限金利規制についてです。まず、現在の利息制限法、出資法、貸金業法等による規制におきましては、消費貸借が個人・消費者向けであるか、それとも事業者向けであるかを問わずに上限金利規制が設けられています。また、利息規制の潜脱を防ぐために、みなし利息なども含めた広い利息概念が採用されています。そして、上限金利は年利で定められています。
しかし、10ページで指摘されているとおり、特に事業者向けの消費貸借では、短期の資金需要のために、年利に換算してしまうと上限金利を超えてしまうとしても、貸付を行うことに合理性がある場合が存在するように思います。そして、取引データなどを活用した融資審査の手法が発達し、資金需要者の返済能力を適切に審査できるようになるのであれば、上限金利規制を超える貸付を認めて良い場合もあるのではないかと考えられます。
このことは、さらに進んで、そもそもこの上限金利規制の目的は一体何なのかという点の検討につながるのではないかと思います。一定の属性を有する消費者を念頭におけば、パターナリスティックな観点から上限金利規制を設けることには合理性があると言えます。この点については、坂先生が、高利貸しの抑制を重要な機能の1つに含めるべきだとおっしゃったことに、私も賛成です。ただ、それが今申し上げたような例を含め、貸付一般に当てはまるのかについては検討の余地があるだろうと思うわけです。
実際、特定融資枠契約に関する法律により、特定融資枠契約については、手数料が利息制限法等の適用除外になることが認められています。このような法律が存在しない分野でも、金融取引における手数料等が利息に該当するのかについては、かねてから議論が存在するところです。そこで、この機会に上限金利規制の趣旨に立ち返って検討を行う必要があるのではないかと考えています。
他方、金融制度スタディ・グループの課題が、制度や規制の提案であるとしますと、上限金利規制は困難な問題を提起することになります。トランザクション・レンディングの合理性を個別に判断することは、実際上困難であるので、ある程度一律に規制・制度を設ける必要があります。そこで例えば、消費者向けの消費貸借のみを対象とすることも考えられますが、そのような規制は容易に潜脱されてしまうおそれがあります。
また、消費者保護に特化する形で規制を設けるとしても、事業者の中には消費者に近い属性の者も存在します。このことは、今しがた坂先生がご指摘された問題にも関わると思います。規制の対象をどのように画するのかという困難な問題が存在することに十分な留意が必要であると思われる次第です。
第2に、P2Pレンディングについてです。事務局資料に書かれていることと、現在の法制下での問題を区別して議論できるのではないかと思います。現在の日本法の下では、P2P業者と資金提供者の間は匿名組合契約を締結し、その上で、P2P業者が資金需要者に貸付を行っているという形態になっているものと思います。その結果、P2P業者と資金需要者の関係には貸金業法等による規制が、資金提供者とP2P業者との関係には金商法などの規制が、それぞれ適用されることになります。P2Pレンディングを議論するうえでは、これらの現行法下での規制に過不足がないのかを検討すべきように思われます。
とりわけ、P2P業者と資金需要者について、現在の貸金業規制には、先ほどの上限金利規制を含め、消費者保護的な色彩が強いものが含まれています。そのような規制を及ぼすことの当否がここでも問題とされてよいように思われます。他方、P2P業者と資金提供者との関係については、P2P業者の倒産リスク等から資金提供者の財産が十分に保護されているのかという問題があると思います。現在の日本法の下でのP2Pレンディングに対する規制は、資金供与と資産運用が組み合わさった形になっています。その観点から、現行法の状況を考えてみる必要があるのではないでしょうか。
以上に対して、事務局資料の10ページでは、資金提供者が直接に資金需要者に対して貸付を行う場合について、どのように考えるべきかという問題が取り上げられているものと思います。イギリスなど、このような法律構成を採用しているところもあるものと理解しています。他方、そのように考える場合には、現在の日本法の下で資金提供者が負っているのとは性格の異なるリスクを資金提供者が負うことになるものと思います。資金需要者の倒産リスクからの保護の問題等もありますし、資金提供者が借主に対して有する貸付債権を流通させる市場が未整備であるために資金回収のリスク等を負うことも問題になろうかと思います。これらの問題について検討する必要があるだろうと考えます。
長くなりまして申しわけありません。以上です。

【岩原座長】
それでは、田中さん、お願いします。

【田中メンバー】
少し雑駁な議論になってしまうと思います。前回は資金供与ですね。今回のものも読ませていただいて、何のための金融制度をつくろうとしているのかという、法律で言えば目的規定がもう1つ明確でないという気がしています。
その中で1つ、資金供与に関しましては、ここにある文章を読みますと、資金供与の主体が預金取扱金融機関に少し限定し過ぎているのではなかろうかという印象があります。これは前回の最後に、たしか植田先生だと思いますが、キャピタルマーケッツ、証券市場が資金供与の役割を果たすことは当然あるわけで、それにたしか触れられたと認識しています。
現実問題として、このキャピタルマーケッツに関しては、例えば1つ引用させていただきますと、一橋大学の寺西名誉教授が「もともと銀行業の機能は多数の企業ファイナンスと短期の商業金融であって、大企業の設備投資は自己資本と証券市場によるというのが教科書の教えるところである」と書かれております。
去年の終わりごろに、ワシントンでトランプ政権の方々とお会いをしましたときも、リーマンクライシスの後、ヨーロッパ、アメリカ、日本の中で、アメリカの経済が最も早く回復した理由は、それは明らかにキャピタルマーケッツが他国に比べて大きいからだとおっしゃっていました。たしか日本で開催されたSESCの会議でも、そういう話を聞いた覚えがあります。そういう意味では、キャピタルマーケッツを無視した資本供与の議論では、議論の範囲が狭くなり過ぎるのではなかろうかという気がします。
現実問題として、特に設備投資等の長期の金融、資金供与については、かつては金融債を発行した長期信用銀行、貸付信託をベースにした信託銀行などそういうところがやっていました。当時はそもそも普通銀行の仕事ではあまりなかった訳です。ところが、日本の金融クライシスの中で、長期金融機関という制度がなくなり、貸付信託という商品がなくなり、金融債がなくなり、結局長期の資金供与機能が、ある意味では宙ぶらりんになっているところがあるのではなかろうかという気がします。一方で、普通銀行がそういうところに入っていくとは言っても、ほんとうにそういうことができているのだろうかという疑問もあります。
また、普通銀行において長期の貸出が増えて、それが満期変換という単純な理論で短期の調達とのギャップがどんどん拡大するということであれば、今度はもう1つ引用させていただきたい。イングランド銀行の元総裁のマーヴィン・キングは最近いろいろな本を書いておられまして、その中に「錬金術の終わり」という本があります。そこでは、「現在の金融システムは、銀行がひとたび資金を確保できなくなると取りつけ騒ぎが起きて、金融システムが崩壊寸前に追い込まれる錬金術である」という言い方をしています。つまり、長短ギャップがさらに広がっていくことのリスクがここでは指摘されているわけです。
そういうことを考えますと、資金供与を単純に「金融機関が預金を取ってお金を貸すこと」だけに限定して議論するのはいかがなものだろうかという気がします。そこには資金使途、それから期間など、そうしたものを考えて整理をしていく必要があるのではかろうかという気が1つしております。
それから、今回も前回も出ていますが、預金についての議論があります。預金に関する考察をするときに、今回のペーパーにも書いてありますが、「元本保証」と書いてあります。私が若いころお金を貸しているときによく言われましたのが、「元本保証の預金が原資なのだから、貸したお金は必ず全部回収しろ。それは預金者に対する義務である」と、そういう基本的な考え方で金融機関はお金を貸したわけです。
ところが、その後、あまり整理をされていないのですが、不良債権問題が発生してそうした考え方に陰りが出てきた。また、最近は特に貸出が増えない一方、預金は集まってきますから、証券投資などのリスク資産が増えてきている面があります。すると、この預金の元本保証は一体何で担保されているのかもう一度考える必要があります。
そういう意味では、昔は貸出が必ず返ってくるという前提の下に元本保証をするのがベースだったわけです。そのように実態的にプレイヤーの中身、資産の中身、やり方が変わってきている中で、元本保証というのは一体何で担保するのかという論点があります。もちろん、そこの1つの答えは、リスクの計量化に基づく自己資本による手当であったり、最終的には預金保険制度などになっていくと思いますが、この元本保証の意味合いをもう少し掘り下げる必要があるのではなかろうかという気がいたしています。これから、預金に関する議論は続くと思いますが、1つの問題意識として提示させていただきたいと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは、次に舩津さん、お願いします。

【舩津メンバー】
ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。
1点目は、9ページの(6)番の金融規制の対象外と位置づけられている資金供与のところです。先ほど坂メンバーから少しお話があったかと思います。これらのものについて与信である、だから金融規制に対象として議論すべきであるというお話であったかと思います。
たしかにそういうことかとは思うわけですが、一方で、とりわけ上の2つに関しましては、端的に言えば物品とのひもづけがされた、目的が限定された資金というか与信がメルクマールになっていると考えられます。そうだとした場合に、過剰与信の話は実はより広く一般的な取引の問題として、要らないものを買わせる行為自体が問題になっているのではないかと考えます。そうすると、それを金融規制という狭い範囲でやるべきなのか、それとも、もう少し一般私法の規制として対応するということ、そういう手段もあると考えられるわけです。もちろん、金融規制ですべきだという議論ももちろんあるかとは思います。ただ、そういう考え方も1つあるかと思います。
逆に、そういった、色がついている信用であるからこそ外していいという議論を仮にしたとした場合、逆に今度色がついていたはずの与信について色がなくなるような潜脱行為は必ず防止しなければいけないだろうと考えております。これが1点目でございます。
2点目は、10ページの(7)番の新たな資金供与サービスの取扱いのところのピア・ツー・ピア・レンディングの話です。これにつきましては資金供与に限らない、資産運用やリスク移転についても言える話だと思いますが、ピア・ツー・ピアでやる場合に、なかなかプレイヤー個人に規制をかけるのが難しいので、プラットフォーム提供者に対して規制をかけようというスタンスは、たしかに効率性という点からはそうかと思う反面、他方、このプラットフォームを利用するプレイヤー自体が、一体どういうものまで想定するのかによって、プラットフォームの規制も変わってくるという気がしております。
例えば、個人のレンディングの可能性もありますが、もしかしたら大きな資本を持っている者が業者に近いような形で参加することまで認めるとするのか。その辺りを考えますと、どういう人をプレイヤーとして想定し、それについてどのような規制をかけるのかを考えておかないと、過剰あるいは過小の規制になるという気がしております。
以上です。

【岩原座長】
それでは、松井さん、お願いします。

【松井メンバー】
ありがとうございます。先週途中で退出してしまいましたので、もし既に議論済みであればご放念いただければと思います。
8ページの資金供与分野における金融法制の保護法益に関するところでコメントでございます。実は、今日この後に資金運用やリスク移転の話が出てくるので、このことを見据えながらという話になります。ここに挙げておられる保護法益を基に、制度なり、規制なりのあり方を考えていくときに、果たしてどういう切り口であればこれは使えるメルクマールになるだろうかと少し考えてみました。
ここを見ておりますと、②や③は預金の受入れという形で限定が加えられているところからもわかるように、実は資金供与という切り口、あるいはその保護法益の切り口ではなくて、預金を受け入れているかどうかという切り口でないと、ここは議論ができないというのが明らかです。結局それは何を意味しているかというと、どういう形で資金を集め、その集めてきた資金がどのように運用され、そしてどこにリスクが集まるのかが多分ポイントになっているだろうということです。
何を言いたいかと申しますと、預金であれば元本保証で集めてきて運用するわけですから、銀行あるいは預金受入金融機関というエンティティにリスクが集中します。そうすると、そこが多分規制なり制度をつくるときのポイントになり、現に今の制度もそうなっています。この後、保険の話が出てきますが、保険も多分同じのような話になってくるのかと思いながら聞いておりました。
それからもう1点、過剰貸付の防止の点ですが、先ほど加毛先生もおっしゃっていたとおり、ここは消費者保護的な発想があるという話がありました。もう少し抽象化して考えていくと、例えば、同じ資金調達をするときに、貸付という形で受ける場合には過剰貸付の話が出てきます。しかし社債を発行するときに、過剰社債発行という話はあまりないわけです。なぜそのようなことが起こらないかというと、社債を発行するときには、発行に関わるゲートキーパーがいるからです。そしてマーケットのメカニズムが働いて、そもそも不必要な発行については引き受け手が出てこないので、そこでスクリーニングがかかるわけです。そうすると、過剰貸付は裏返していうと、ゲートキーパーが機能しない局面であり、マーケットメカニズムが働かない場面となる。そうすると、ここで出されている問題意識なり、保護法益なりの話は、結局そのようなマーケットメカニズムが働くかどうか、ゲートキーパーが機能し得る局面にあるかどうか、多分このようなことがメルクマールになるだろうと思うのです。またこれは、今日出てくる資産運用やリスク移転にも同じような話になっていくのではないかと思った次第です。
以上の通り、資金供与、資産運用、リスク移転という切り口は、多分そのような切り口とは別の横串を刺す切り口が多分必要になってくるだろうというのが、今日の議論と前回の議論と合わせて見たときの感想です。少し議論の先取りのようなことになっておりまして申しわけありません。
以上でございます。

【岩原座長】
戸村さん、お願いします。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。前回後藤先生からご発言があったかと思いますが、私も信用創造について思うところを3点申し述べさせていただきたいと思います。
第3回討議資料8ページの3.(4)の①に列挙されている保護法益について、最初にコメント申し上げます。MMFや日本の流通系銀行に見られるように、預金を原資とした流動性変換、満期変換、信用変換機能のいずれかを提供している金融機関が、そのまま必ずしも信用創造を行っているわけではないので、ここの項目でもう1つ信用創造機能の維持を別立てで保護法益と立ててもよいかと思いました。それが第1点です。
第2点目は、次のページの3.(5)に関連するところです。前回、後藤先生が信用創造の定義がぼんやりしていてなかなか難しいというお話をされていて、私もこの討議資料のみならず、経済学全体においても同じような感想を持っています。今日は信用創造の定義について個人的な意見を述べさせていただいた上で、規制へのインプリケーションについての意見を申し述べたいと思います。
信用創造には、3つのプロセスがあると思っております。まず、金融機関が借り手と債務を相互に交換すると。その上で、借り手が取得した金融機関向けの債権を他者に移転することでものを買う、それが第2のプロセスです。最後に物を売ったほうが受け取った金融機関向け債権を保有することで、最初の借り手に対する最終的な貸し手になることで信用創造が完結すると考えております。少し今ややこしかったのですが、ざっくり言いますと、信用創造の要件としてはまず債務の交換があって、その後債権の移転があると、このように考えております。このように信用創造行為を分解することで、ある程度信用創造を法律的に定義することができるのではないかと考えております。
その上で、現在銀行の預金では不特定多数からの金銭の受入を要件にしております。そのような不特定多数が保有するような債務を発行することを信用創造の追加的な要件とするかは論点となると思います。それが私の信用創造の理解です。
そう理論的に考えた上で、今回の討議資料を読んで思いますのは、信用創造においては金融機関が保有する借り手への債権の対象は必ずしも金銭ではなくてもよいことになると思います。現状では討議資料にあるとおり、預金と資金供与の組合せで信用創造がなされているのが主だと思いますが、理論的には将来違った形の信用創造が現れる可能性はあると思っております。その意味では、資金供与と預金の受入の組合せのみに加重的規制を課すべきかは、さらなる検討が必要だと思っております。例えば異なる考え方として、加重的規制の対象となる機能を資金供与のみに限定せずに、現在の銀行預金のような不特定多数への移転が可能な債務の発行主体を全て加重的な規制の対象とした上で、ナローバンクのような安全な短期流通証券のみを保有するような事業者は規制の対象から外すなど、異なる考え方もあると思います。ここで私が1つの考え方を提示しているわけではないですが、さらなる検討が必要だと思います。
長くなったので手短に、最後に関連して10ページ目の討議資料3.(7)の最初の丸ポツにある資金供与の対象物が金銭でなく、何らかの電子台帳上の残高になることがあり得るのではないか。そういうことは大いにあると思います。この点については、資金供与の定義を金銭消費貸借のみならず、決済機能の提供の対価として何らかの債務を借り手が負うことをすべからく資金供与と呼ぶとするような、広い定義が必要になるのではないかと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは、森下さん、お願いします。

【森下メンバー】
2点だけ申し上げたいと思います。
1点目は、先ほど来、資本市場と貸金の市場との関係も視野に入れる必要があるのではないかというお話があったと思います。経済の実態としては、まさにおっしゃるとおりだと思います。従来、金融規制との関係では資本市場では主に投資家の保護、貸金、他方、資金供与になりますと今度は借り手の保護を主な目的としていろいろな仕組みができてきたと言えるのではないかと思います。
そういったようなところから、さらに一歩踏み出して、例えば資本市場についての借り手保護、貸金市場についての貸し手保護、P2Pなどになればひょっとするとそういったような発想も必要になるのかもしれません。そういったような視点を取り入れるかどうかはよく考える必要があるのではないかと考えております。
また、2つの市場の関係もよくわからないというのは、まさにそのとおりです。例えば、シンジケート・ローンは貸金をした時点ではおそらく融資ということだと思います。それが、マーケットで流通して投資のポートフォリオとして持たれるようになってきますと、ほんとうに貸金規制だけで押し切っていいのかという観点もひょっとすると出てくるかもしれません。そういった基本的な従来の金融規制が持ってきたような基本的な視点を果たして維持できるのか、あるいは動かす必要があるのかはかなり根本的な課題のような気がいたします。
2点目です。先ほど上限金利規制との関係で、みなし利息にさまざまな手数料も含まれることから、いろいろなビジネスとの関係で上限金利規制との関係が問題になることが少なくないのではないかというお話があったと思います。何年か前の金融法の学会でもこの点が議論されたように記憶をしております。その際の議論の雰囲気からしますと、要はきちんとした事業者が、きちんとした目的で手数料を貸金に付随して取る場合はいいのではないかという議論と、しかしながら、何らかの類型を設けてしまうと悪用されるのではないかという議論があったように記憶をしております。
そうしますと、例えば今、特定融資枠法は借り手の側に着目をして一定の規制を外す形にはなっておりますが、考え方としては免許を有して一定の規制下にあるような事業者が行うタイプのものについては、もう少し自由にできるようにする考え方もあり得ると思います。規制が緩くなる部分、業務の遂行にあたってしっかりとした自己規律を持って行うことが重要であって、規制の対象にならないから野放図にやる、やり過ぎることがあってはいけないことは全く言うまでもないことであります。場合によっては、そのような事業者の側に着目して規制に差をつける考え方もあるのではないかという気がいたしております。
以上です。

【岩原座長】
それでは、次に神作さん、お願いします。

【神作メンバー】
ありがとうございます。資金供与という項目を立て、資金の提供が前提になされておりますけれども、経済的・実質的に考えますと信用リスクを取っているという観点から、もう少し横断的、機能的に広く捉える必要があるのではないかと思います。9ページの(6)が、その点に直接的には関連します。
信用供与という観点から捉える場合には、必ずしも資金の提供に限る必要はなく、特に横断的、機能的な観点からアプローチする場合には、信用リスクをとっている場合を広くカバーして議論することが必要だと思います。まずは、資金供与より広い概念である信用供与という枠組みで議論し、資料9ページに指摘されております販売信用等については、私法の分野で規律をするため監督法上の規制は必要がない等々、さまざまな理由によって除かれることはあり得ると思います。しかし、議論の出発点としては、資金の供与に限る必要はないのではないかと思います。
他方、これも既にご意見が出されておりますが、信用創造機能あるいは金融仲介機能のような単なる信用供与機能とはまた別の機能も「資金供与」の中に入ってきていると思います。これらは分解して考えることができると思います。
いずれにしても、資金供与については出発点としては信用供与という観点から広くカバーした上で、信用創造機能や金融仲介機能をあわせもつ場合を場合によってはさらに機能的に分化して議論することが考えられると思いました。

【岩原座長】
どうもありがとうございます。森下さん、よろしいですか。
それでは、ほかにご発言がございませんようでしたら、次は時間の関係もございますので、一括して資産運用およびリスク移転についての討議を行いたいと思います。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
福田さん、どうぞお願いします。

【福田メンバー】
前回の話と今回の話は非常に密接には関連しているので、必ずしも今回の話に必ずしも限定されたわけではないのと同時に、私も田中メンバーと同じようにもう少しラフな話をさせていただきたいとは思います。
まず、多くの議論の中になる考え方で「銀行は特殊か」という伝統的な考え方の話が、根底には多く流れているようには私は思っています。少なくとも、かつてはそのとおりだったということはそのとおりです。その理由としては、多くの整理がなされているような機能があったことは間違いないことだとは思います。
ただ、銀行の特殊性はかなりなくなりつつある時代に入ってきている中で、どう考えればいいかとう論点が生まれている。そういう意味では、昔銀行がやっていたような話をアクティビティベースと考えて、整理して、それに類する議論を整理しようという発想なのだとは思います。なかなかその整理でうまくいくのかどうかがしっくり来るような、来ないような感じはややあります。要するに、必ずしもそのようにきれいに分けられるような形でアクティビティが動いているわけでもない感じはすることだと思います。
それから、多くの議論は規制に関する議論、どう規制するかという議論だったと思います。危機対応の規制に対する考え方、少なくとも経済学では大きく分けて2つ、あるいは3つに分けられていると思います。まずは、事前的にどう予防するかという予防的な問題と、実際に起こったらどう対応するかという問題があります。それから事前的な要望に関しても、大きく分けて2種類あって、ミクロプルーデンスという考え方とマクロプルーデンスという考え方の両方があります。おそらくこの3者がバランスよく機能していることが大事です。特定のミクロプルーデンスだけをともかく強調することは、全体としてはバランスはよくないのではないか。もちろん、全てミクロプルーデンスで解決できればいいわけですが、非常に金融機関の業態も多様化している中で、特定の金融機関だけを規制すれば当然シャドーバンキングのようなものが膨れ上がってきて、逆にリスクを膨らませることにもなるわけです。そういう意味では、マクロ全体のバランスを考えた規制とはどういうものなのか。個別の業態だけの規制をすべきかという議論だけではなくて、危機を防ぐには経済全体のバランスを考えた規制はどういう規制なのかという議論は必要なのではないかと思っています。
それから、最後にリスクに関して1点だけコメントさせていただきたい。リスクと言ってもいろいろなリスクがあるのは、金融の教科書にも書いてあることです。1つはもちろん、ここでさまざまな議論をされている信用リスクというのは1つです。それから、もう1つの市場リスクはマーケットのリスクがあって金利が上がったり、下がったりなどのリスクもあります。
ただ、近年重要になっているリスクはそれ以外のリスクも極めて重要になっています。それが管理リスクというか、マネージメントに関するリスクであります。実際リーマンショックの後、訴訟などを金融機関が受けて、経営を左右するような大きな損害賠償を払わされるようなリスクが直面している金融機関も実際あるわけです。かつ現在の新しいITの環境の下では、ハッキングされたりするリスクは当然大きく増えてきています。システム障害というリスクもきわめて大きくなっているので、リスクの概念というのは伝統的な金融で議論をしていたのはもちろん信用リスクや市場リスクを非常に重視していました。それ以外のリスクのウエートは現状ではきわめて大きくなっているという意味で、リスクを考える上での視点、リスク移転を考える視点ではそういうことも取り入れる発想は大事なのではないかということであります。

【岩原座長】
それでは、次に永沢さん、お願いします。

【永沢メンバー】
ありがとうございます。私はいただきました資料を素人の目で読ませていただいて、よくわからなかったことや感想めいたことを、資料に従って発言させていただきたいと思います。
まず、前回、保護法益という言葉が出てきました。保護法益という言葉はわかりにくいということで、達成すべき利益と履き替えていただいています。一方、文章全体の中に「保護」という言葉が多く使われています。この「保護」という言葉が、今ひとつ腹に落ちないところがございます。それぞれどのような言葉に言い換えられるのかを、少しもう一度次の機会にでも工夫いただきたいと思っております。
例えば、2ページの一番下のところに、「資金の出し手の資産が保護されること」という表現があります。ここで「保護」という言葉で言わんとしていることと、ほかで使われている「保護」は意味が違うようにも思えます。「保護」という言葉で何をどのように守ろうとしているのか、もう少し考える必要があるのではないかと感じました。
2点目ですが、先ほど田中メンバーからもご指摘があったようにも思いますが、金融制度を見直す上で、何をしようとしているのかという目的とも、何かを「保護」するということは関わってくると思います。保護するということは、誰かを規制したり、誰かに特別に何かを負担してもらって、他の誰かの何かの利益を守ることを意味するものと思います。そこの関係が今ひとつ素人の私には見えてこないということを、抽象的な発言ですが、全体的に通じることとして、お伝えしたいと思います。
3点目ですが、4ページになります。預金に関する考慮要素のところで、預金について特別な議論をすべきかどうかという点について意見を求められているわけですが、特別なものとして扱うということは、田中メンバーが先ほどお話された話になるかと思います。誰かに特別に負担を強いることによって得られる利益や効果、効用が、今の時代、どうなのかということも検討することが必要ではないでしょうか。ただ単に特別なものと言ってしまうのではなく、突っ込んだ議論や検証が必要なのではないかと思います。また、この点、海外ではどうなっているのでしょうか。その点も気になったところです。
4点目として、4ページの下のところになります。プラットフォームという言葉が世の中で言われるようになりました。前回もプラットフォームのお話が出てきました。ITの進展に伴って新しいサービスが、いろいろな分野で次々と登場してきていますが、利用者が安心して利用できるようにしなければ、こうしたサービスも普及もしないわけです。当局が、プラットフォームを運営する事業者がどのような活動をしているのかということぐらいは少なくとも把握できるようにしていただいておくことが、利用者が安心してそういったサービスを利用できる基礎となるのではないでしょうか。お金は見えない流れです。デジタル化が進み、ますますその形がなく見えなくなっていく中で、その流れを提供する事業者については、国がその活動状況を把握できるようにする、そういった体制が必要なのではないでしょうか。
その一方で、金融庁が監督しなければならない業の数がどんどん増えるという状況にあり、どうやって監督していくのかという課題もあるのではないでしょうか。規制のない自由な分野に業規制を導入することの難しさは、ここ数カ月の間に起きている仮想通貨の状況を見ても明らかです。。今までのような規制のあり方とは違う方法が、新しい業への規制や監督の仕方には必要なのだろうとも思います。また、消費者の側も、ある程度の消費者被害が発生することは覚悟した上で、新しいサービスの利用に参加することが必要であり、、消費者被害の発生状況に応じて規制を機動的かつ柔軟に見直しをして行くことができるようにしておくことが賢明ではないかと思います。
長くなって申し訳ありませんが、5ページでございます。AIを自分はよく理解しておりませんが、こういった新しい見えない技術がどんどん導入されていますが、ほんとうに設計ミスはないのでしょうか。金融商品は、形のある商品や実感できるサービスと違って、設計者のミスが問われたことがなかったように思います。AIを導入して使うことで利益を得た事業者にはそれなりの責任があるのではなかろうかと素朴に思ったりするわけです。この辺の責任分担はどうなるのかでしょうか。
続いて、7ページのリスクのところですが、一番上の(注)のところの意味について確認をさせていただきたいと思っております。「資産運用の機能と併存する場合」というところは、これは後にも出きますが、保険の中に運用が組み込まれているものが販売されているといったことを意味しているという意味でしょうか。
もしそういう意味であるなら、情報開示と言いますか、中で何をされているのかが外から見えるということ、透明性との関係で、当局の関与や規制の程度を考えていくことができるのではないかと思います。情報開示の程度が低ければ、その分、規制や監督を加重するということが考えられるのではないでしょうか。
最後になります。8ページですが、フィンテックが保険の分野を大きく変えるのではないかと思っております。フィンテックの進展によって不確実性が軽減されていくことになると、保険商品のあり方も変わってこざるを得ないだろうと感じております。リスクの高い人は保険に入れないというような状況が事務局資料にも書いてありますが、そういったことが起こりうるわけです。このような状況をどう考えるべきかということも、最終的には議論することが必要なのではないかと思います。
以上でございます。

【岩原座長】
それでは、次に舩津さん。

【舩津メンバー】
ありがとうございます。資産運用について3点、それから、リスク移転について2点申し上げたいと思います。
資産運用に関しては、出し手にとってと受け手にとっての利益は1ページ目に書かれていると思います。この出し手と受け手が、こういう形で並立させるのがいいのかどうかについて私はためらいがあるというのが1点目でございます。と言いますのも、資金の出し手にとって資産運用といっていいかどうかわかりませんが、少なくとも儲かりそうな話、利殖と言ったらいいでしょうか、そういうものまでを資産運用に含めて規律するならば、そのような資産運用に受け手の資金的なニーズがあるかどうかはおそらく問わないはずです。4ページに仮想通貨やトークンなどの話が書かれておりまして、それが一番典型的だと思うわけですが、価格上昇を見越して思惑で買うようなことは、最近よく聞く話だと思います。そういうものも含めて資産運用の一つとして規制の対象とするということであれば、受け手にとって資金調達の目的があるものだけが資産運用だという狭いとられ方をされないような工夫が必要なのではないかが1点目でございます。
2点目はこれとの兼ね合いの話ですが、私のイメージだとむしろ、資金運用の受け手は仲介あるいは運用をする業者、討議資料では「サービス提供者」とされている人を念頭に置くべきではないかと思っております。2ページでその提供者に関して適合性原則などの話が書かれているわけですが、この辺りはむしろ資産運用の規律として極めて重要な話だと思いますので、その辺りをもう少し明確にしたほうがいいのではないかというのが2点目でございます。
それから、3点目は全くの感想になります。AIについてです。先ほど自動的な運用に関連してAIについてどういう責任を考えたらいいのかという話がありました。この点については自動運転と他の分野における今後の議論の進展も注視しないといけないわけですが、乱暴なことを言えば、運営主体やプラットフォーマー、あるいはAIをつくった人といった主体が明らかである限りは、最後にはその中の誰かにつけを回せば済むと考えられます。
ただ、より先の先を見ていったときに難しいのは、運営主体やプラットフォーマー自体が明確でない場合です。The DAOというような事件がそれに当たるのかどうかわかりませんが、そういうスキームが含まれたときに、それが肥大化したときにどういう規制を及ぼすのか、それこそシステミックリスクが起きたりしないのかという点はなかなか難しいのかと。ここまでいくとさすがに、それはもはや一国で対処できる問題ではないのかもしれませんが、遠い将来を見ればそういうことも考えた方がいいのではないかということが3点目でございます。
リスク移転についてです。1点目は、まずは保険をイメージしながらリスク移転の話をいたします。まず、保険の原理として収支相当の原則があるかと思います。これは端的には同種のリスクにさらされた複数の主体、多くの主体から保険料を徴収して、この資金プールの範囲内でリスクが現実化した主体に対して支払いを行う、そういう原理かと思います。実は、保険会社というのは、そういった同種のリスクにさらされた各個人を集団として取りまとめる形で、極端なことを言えばピア・ツー・ピア取引のプラットフォーマーという形で見ることができるのではないかと感じました。極端なことを言いますと、保険料は信託のようなスキームで別のところにプールしておいて、保険会社というプラットフォーマーがすることは、保険料を算定して人を集めることであると考えることができる気がしております。
ただ、ここで注意すべきなのは、このプールされた資産は、商品性を高めるため、あるいはインフレ等に対応するために運用することになるわけですが、この場合の資産運用は特に生命保険の場合などによく言われている長期にわたる資産管理運用という特徴のほかに、保険契約者保護という観点から、おそらく原則として元本割れが許されない性質の資産運用であると考えます。そういう意味では、預金の受入れに類似するような規律の必要性が組み合わせることによって生じてくる気はしております。
そういう形で、プラットフォーマーと資金プールの管理者をパッケージしたものが現在の保険会社だと考えますと、逆にP2P保険はこれをアンバンドルしたものだと考えることができる。そうだとするとP2Pの保険についての規制としては、例えば現在保険会社が行っているような保険数理を利用して収支相当性を確保したような料率算定の能力を有することを確保するといった、割り算をして規制を導くことが可能であるという気がしております。
逆に、今度は保険ではなくて、収支相当の支配しないようなリスク移転については、リスク負担能力のない者がリスク負担能力余裕のある者からリスク負担能力を借りる取引だという説明の仕方もあるようです。保険のように、同種のリスクにさらされたといった、当事者の同質性は要求されないことになるかと思います。
そうなってきますと、リスクの引き受け手の側から見れば、無関係な者による賭けの要素が強くなってきますし、もっと言えばリスクの引き受け手から見れば、少し広く捉えられた「資産運用」の一環という評価がせいぜいである気がしております。
それはともかく、特定のイベントが発生したときに確実に支払いが行われることの必要性は、リスクを移転したい側から見れば収支相当が支配するかどうかとは本来無関係であると思います。現行の規制はそれにもかかわらず両者に差を設けているわけですが、その差異をどのように考えればいいのかがまさにこの討議資料の問いかけかと思います。それについての考え方を申し上げることはなかなか難しいところです。
それと関係するのかしないのかわかりませんが、1つ考えられる差異としては、イベント発生時に支払われる資金が、イベント発生前に確保されているかという点が、保険と地震デリバティブのような代替的リスク移転手段との違いとしてあるような気がしております。ただ、逆に利用者保護を考えますと、デリバティブの方が不確実というか事前に確保していないのだから、むしろ事後的な履行を確保する措置をなおさら一層講じなくてはいけないとも考えられます。そうされていないことをどう説明するのかが問題になるわけですが、現行法は、むしろそういった利用者保護の観点ではなくて、保険よりもコスト優位性のあるリスク移転商品として法制上設計されているという評価ができるような気がしております。何が言いたいかと言いますと、同一の機能については同一の規制を設けること自体に異議を唱えるつもりはないのですが、ただ、逆に規制のかけ方によって商品性あるいは機能といったものが変わってくるのではないかという気がしております。これは元本保証があるものを指して預金と言うのか、預金だから元本を保証をしなければいけないと言うのかの違いもそうかもしれませんが、同一機能に同一規制という考え方とは逆の発想もあるという気がしております。
以上は、現代の高度化されたリスク管理の世界から見ればはなはだプリミティブな理解に基づくものですが、そういう印象を持ったというのが、すいません、長くなりましたが、1点目でございます。
2点目は、保険集団内の公平性を守るべき利益とするかという6ページの(注)のところでございます。それとの関係で、情報技術の発展によって保険に入れなくなる人をどうするかということが8ページでも議論されております。保険技術の発展によるリスクの分類の細分化で保険に入れなくなる人が出てきうるわけですが、集団構成員内の公平性を守らなければならない利益だと考えるのであれば、情報技術の発展によって新たに判明したリスクプロファイルが違えば違う取扱いをするのが公平だ、だから、そうしなければいけないとなりそうです。
しかし、それを突き詰めて低リスクの人と高リスクの人とを同じ保険に混ぜることはだめだという要請としてまで考えるのは、問題であるように思います。世の中の全ての人間がそれぞれ個性を有して1人として同じ人間がいない以上は、おそらく同種のリスクにさらされた集団は現実には観念できないはずです。そう考えますと、少なくとも収支相当の支配するような形で同種のリスクの集団を観念して保険をつくることは成り立たなくなることになるかと思います。
このように考えますと、私保険が成立するためには各加入希望者のリスクプロファイルをある程度大雑把に、という言い方はよくないかもしれませんが、見る必要があるかと思います。集団を大雑把にくくることを許容しなければ、およそ私保険が成立しなくなって誰も得をしないのではないかという気がしております。大雑把で問題はないのかということになりますが、集団を大雑把にくくったものを見てなお購入したいと思う人が、低リスクの人の中にもいて、その人からの所得移転があれば成り立つ制度ではないかという気がしております。そして、どの程度の所得移転までなら低リスクの人が入ってよいと思うかは、各業者の経営判断に委ねていい問題であるように思われます。したがって、公平性を過度に強調するのは極めて問題ではないかと思います。

【岩原座長】
それでは、坂さん、お願いします。

【坂メンバー】
主に資産運用の論点について、3点ほど発言させていただければと思います。
まず1点目です。資産運用分野において達成すべき利益についてです。記載されている利益の中身については、直接金融、株式投資や社債投資等、こういったものについては基本的に記載のまとめでよいかと思いますが、市場型間接金融を考えますと、少し補充の必要があるのではないかと思います。
具体的には、資産運用において継続的に適切な運用が確保されることや、そもそも資産運用手段が適切に組成されることが必要なのではないかと思います。市場型間接金融、投資信託やファンドでは、資金の出し手と資金の受け手の間に資産運用を行う会社、金商法上は投資運用業者となろうかと思います。これが介在し、資産運用がかかる会社の判断により行われることになります。しかしながら、投資のリスクは資産運用を行う会社ではなく、資金の出し手が負担することになりますと、資産運用をする会社にきちんと適切に動いていただくことは重要な利益ではないかと思います。いい加減な事業計画のファンドなど、組成が不適切だと資金の出し手の利益は損なわれますし、また継続的な運用が適切に行われないときにも、例えば年金基金において善管注意義務等に従った運用が行われないとなりますと、問題が生じることになろうかと思います。こういった組成および運用の適正の確保が重要な観点かと思います。
それとの関係で、少し現行法との関係で気になりますのは、現行の金商法では投資性のファンドについては運用の規制が入っておりますが、事業型のファンドについては必ずしも継続的な運用規制対象になっていないとなりますと、そこがそのままでいいのかは要検討ではないかと思います。
2点目ですが、資産運用の射程についてです。この資産運用の射程については、典型的には資金を直接金融商品に投じることが念頭に置かれているかと思います。投資目的の取引の中には、投資者の資金によって投資者に商品や権利を購入させて、当該商品や権利により事業を行って収益の配当等を行うものもあります。こうした形の取引についても、広く対象とすることを検討してはどうかと思います。
こうした取引は、形式的には物や権利の売買契約と当該物や権利の利用契約等の形を取るわけです。出資者は基本的に投資として資金を拠出しており、また自ら事業を行うわけでもなく、配当等のリターンのみを得る立場にあります。こういった取引についても、例えば投資リスクについて出資者に適切な情報が提供されること、あるいは事業者が適切に事業を行うこと等が求められるのではないかと思います。
現行法では、競走用の馬を購入させる場合のみが金商法の規制対象になっているようです。そのほか貴金属等は比較的規制が緩い特性商品預託法の規制対象になっております。そのほか多くの商品は特段の規制がない状況にあり、こういったものについては特定商取引が対応しているのが現状かと思います。現状の規制枠組みは不十分と言わざるを得ないと思いますし、基本的には横断的な法制が本来的にはこの分野にも求められているのではないかと思います。これが2点目です。
すいません、長くなって申しわけありません。3点目です。新たな資産運用サービスについてどう考えるかという点です。この新たな資産運用サービスについては、こうしたサービスの特性に鑑みる必要があるのではないかと思います。少しこの特性と思われるものを考えてみますと、差し当たり5点ほどあるのではないかと思います。
1点目は、サービスを支える技術や仕組みが発展途上であると、さまざまな点において未成熟な面があり得ること。また、サービスの発展や継続自体にリスクがあり得ること。それから、2番目に立ち上げて間もない企業によって行われる場合が比較的多いのではないかと思います。そういった場合には事業基盤が必ずしも強くなくて、企業の属性という点でもリスクが高いことになるのではないかと。3点目に法的な規制枠組みが必ずしも確保されていない場合が多いのではないかと。既存の規制が適用されない、あるいはいかなる法が適用されるのか必ずしも明らかでない、あるいは規制が実効的に機能していないことが懸念されると。4点目です。基本的に規制の機能しない環境にあることから、投資者の目に触れる面のサービスは向上しやすいですが、投資者の目に触れない面のサービスは後回しになりやすいところがあるのではないか。5点目です。一種のブームになりますと、リテラシーの高くない投資者の投資が行われやすいと。こういった特性があるのではないかと。
こういった特性に鑑みて規制のあり方をどう考えるかです。この点、イノベーションのためには、規制の余白があったほうがよいという議論があります。たしかに、投資者とサービスの提供者が対等な関係にあって、自由な契約に委ねても相互の牽制や対等な交渉・監視が十分に働き得る場合にはこの議論が妥当し得ると思います。
しかしながら、一般投資者と事業者の間には情報、経験、組織力、交渉力等の点で、基本的には格差があることになります。一般にそのような相互牽制等は期待できない。特にリテラシーの低い層にしわ寄せがされやすいところにも鑑みますと、新しい分野についても適切な規制枠組みはある程度必要になるのではないかと思われます。
規制枠組みを具体的にどう考えるかです。技術や仕組みの成熟度がかなり低いもの、規制枠組みが極めて脆弱なものは、基本的に少なくとも一般の投資者の投資は認めるべきではないという方向で考えるのではないかと思います。それから、一般の投資者への投資を許容するような場合であっても、先ほど幾つか挙げましたようなリスクといいますか、特性があるわけです。こういったものを可能な限りリストアップして、情報提供、注意喚起を行う、これが不可欠なのではないかと思います。
それから、もう1点です。先ほど述べた点にも関係します。投資者の目に触れにくい点のサービスが後回しになりやすい面があることから、こうした点については特に配慮すべきではないかと。例えば顧客資産の保護や分別管理等については、こういった論点になるのではないかと思います。
最後に、この規制目的の実現方法についてです。規制目的に実現方法としては法規制や行政監督、それから自主規制、利用者による監視、市場による監視、いろいろなものがあると思います。新しいサービスへの規制方法としては、基本的には新しい技術や仕組みをよく知る事業者や事業者団体の自主規制を活用すること、これは相応に合理性があるのではないかと思います。
ただ、例えば事業者が規制のコスト節約傾向を持っており、そのために十分な規制が導入できそうにない、あるいは諸事情により自主規制の整備に時間がかかりそうである場合には、これは早期にきちんと公的なところが法規制を決断すべきなのではないかと思われます。
また、骨格となる規制枠については、これは公的にきちんと定める必要があろうかと思いますが、技術的な開発、イノベーションとの兼ね合いでどういったところまで公的なところで決めて、どこを自主規制に委ねるかはいろいろ工夫の余地があるところだと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは、神田さん、お願いします。

【神田メンバー】
どうもありがとうございます。資産運用について幾つかと、リスク移転について1点、感想を申し述べさせていただきたいと思います。
資産運用についての1点目です。資産運用の法制度は、ご承知のように「証券取引法」という法律を「金融商品取引法」という法律に題名変更したときに、その適用対象を広げた歴史があります。そこでの考え方は、証券取引法時代はあるものが資本市場における投資の対象になるという投資対象性の基準と当時呼んでいました。それに加えて、そのものが証券市場において、流通性を有するという流通性の基準というこの2つを満たしたものを適用対象としていました。ですが、金融商品取引法制にするときに、2番目の流通性の基準はもちろんあってもいいわけですが必ずしも必要としない。投資対象性の基準を満たしているものは幅広く含めましょうとなったわけです。
したがいまして、機能で分類すると2類型ある。投資対象性の基準を満たしているものに加えて、流通性の基準を満たしているものと流通性が乏しいもの。これが機能的な分類と言っていいかと思います。ただ、先ほどからもご指摘がありますように、金融商品取引法制の下でも、まだ対象とされていないものがたくさんある、というとどうかと思いますが、金商法の世界の外にあるものがあります。
前にも申し上げましたことですが、あるものというのは複数の機能を果たすので、それが決済の手段になることもあれば、取引の対象になることもあります。今日の資産運用の観点からは、あるものが取引の対象になり、つまり、今日の言葉で言えば資産運用の対象となり、あるいは投資の対象、投機の対象となる、そういうものは全て資産運用の対象として機能的な整理がされるべきであります。
その上で資料にもありますように、例えば重複規制については調整する、伝統的な預金については、重複するのであれば資産運用の規制は不要となります。これは諸外国もそういう姿を採っています。
次に2点目です。2点目はバケットショップというか、こういうものについての横断的な整理をしていただきたいと思います。顧客の注文に対して業者が自分で取引の相手方となって取引を成立させる行為、こういう行為についての規制とルールは現状でもそろっていません。ご承知のように、証券取引や商品先物取引では伝統的に禁止です。しかし他方、為替、FXなどでは昔から自由で、現状でもそうなっています。さらに、新しい投資対象、投機対象になるようなものも含めて考える際に、こういう業者の行為について全体として横断的な整理をしていただきたいと思います。
3点目です。分別管理規制関係です。あまりうまく言えないのですが、顧客の資産に関する権利に何らかの優先権を認めることを、考え方の上で整理して検討していただきたいと思います。分別管理といっても分別管理をしていたものがなくなってしまったら、結局顧客の権利は一般債権になってしまうのが日本の現状です。しかし、これは主要諸外国と大きく異なっています。主要諸外国では顧客の資産に関する権利に一定、詳細は今日は省略しますが、優先権が認められています。日本ではそうなっていません。
4点目。これも分別管理関連かとは思います。破綻処理というのでしょうか、現行の下では、金融機関の破綻処理については、金融整理管財人という制度があります。しかし、証券、今日の言葉で言えば資産運用分野についてはこれがありません。そこで、証券整理管財人とでも呼ぶべき制度が必要になるのではないかということを、ご検討いただきたいと思います。
スタディ・グループとの関係で言うと、どういう機能であれそれについて法の目的を達成すべき利益は何かです。業者が破綻した場合に、例えば破産管財人は破産財団の管理をしますが、顧客が仮に取戻権を持っている資産がそこにあったとしても、それを顧客に返す作業をする人がいません。この問題を解決する必要があり、やや個別的な提案になってしまうかもしれませんけれども、金融整理管財人の証券版が必要になるような気がします。もう少し機能のレベルでの整理で結構かと思いますが、整理していただければありがたく思います。
5番目、長くなって恐縮ですが、AIについて一言だけ。5ページに「AIには自然人のような意思能力や過失を観念できない」という記述があります。これは抽象的にはそうだと思いますが、法制度や法規制は社会における決め事です。観念すればいいので、立法論としてはAIに法人格を例えば観念すればいいということになるわけです。もう少し抽象的に言えば、法人でも意思能力や過失は観念できないわけです。しかし、法人には能力があり、法人に過失ということがあると社会の決め事としてそうしているわけです。ですから、AIについても能力や過失は決め事として観念すればいいわけで、それは具体的に言えば法人の場合の能力や過失は、自然人の誰の過失や能力で見るのですかという問題への結びつけになっていくのと似ていると思います。伝統的な法人とここでのAIとは当然違いますので、その違いを見据えた上でルールのあり方を考えていただきたいと思います。
最後に、リスク移転について1点だけです。あまりうまく言えないのですが。ここに書かれている話は世の中の大きな変化で、特に伝統的な家計保険を支えてきた大数の法則を使った保険という仕組みが、ITとAIによって今後大きく変わることかと思います。したがって、それを見据えた上で法制度を整備していく必要がある。そのためにどういう点がポイントかが問われていると思います。
具体的には、保険と呼ばれているものとそうでないものとの線引きが違ってくるのではないかと思われる点と、もう1点は利用者保護の姿が違ってくると思われることです。後者は、先ほどからもご指摘がありますが、被保険者の間でリスクシェアするのが伝統的な保険です。リスクシェアしないと、「Aさん、あなたにはこのリスクです。この保険料です」「Bさん、あなたのリスクはこうです。この保険料です」とこうなるわけです。そういうときに保険に入れなくなる人がいるというご指摘が先ほどもありました。格差というかいい表現が思い浮かびませんが、そういう世界における伝統的な言葉で言えば保険法制ですが、利用者の保護や実現されるべき利益を整理する必要があると思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは、次に森下さん、お願いします。

【森下メンバー】
ありがとうございます。これまで4つの分野をいろいろ検討してきました。今後、取りまとめに入ってくるとは思いますが、お話を伺っておりますと、いずれの分野にも共通するような視点が浮かび上がってきているのではないかと思います。そうした観点から発言をさせていただきたいと思います。こういうようなものはどの分野であったとしてもきっと大事だろうと思いますのが、8点ございます。
まず、1点目はリスクの内容やサービスの内容をしっかりとお客様に理解できるように説明すること。
2点目は、一定の主体については専門家と個人などの情報格差などにも鑑みて、過度なリスクを取らせないということ。これは例えば金利規制なのかもしれませんし、適合性の原則の形で現れてくる場合もあろうかと思います。一言だけ、預金について特別かという話がありました。今社会において預金というのは、基本的にはリスクを考えなくていいと。潰れないような銀行が預かってくれているし、預金保険もあると。そういうような安心した存在として特別な地位を占めているのかとも思いますので、特別に考える側面はあっていいと思います。
3点目は、取引の過程で出た顧客情報を不当に扱わないこと、こういったお話も何度か出てきていると思います。この点に関しては、フィンテックなどの中で、非常に重要なことは情報をいかに生かしていくかということです。具体的にルールのあり方は、この機会にいろいろと考えるべき問題かと思います。
4点目、簡潔ですが、マネーロンやKYCのようなものです。これはもうどの分野についても関係するものなのかと思います。
5点目です。約束を守る、あるいは期待されている機能を果たすことです。具体的な内容はそれぞれの業務分野において違うとは思いますが、例えば、顧客との関係で実行しなければいけないサービスを実施できないような体制は許さない、しっかりと期待された機能を果たせないようなことをやっては困るということです。ガバナンスも含めてです。そういったようなことはあるのではないかと思います。
6点目です。今日、プラットフォーマーの話もあったと思います。1つの機能あるいはサービスが、複数の主体によって提供されることが今後ますます大きくなってくる現象なのではないかと思いまして、それはどの分野についても共通することではないかと思います。アンバンドリング、リバンドリングと言ってもいいのかもしれません。そういった中で、関連する複数の主体の中でどのように責任分担をするか。あるいは、顧客との関係で誰が窓口に立って処理をしていくかという問題はいずれの分野においても重要なことで、それぞれのプレイヤーにどういった責任を負わせるかということは、どの分野においても大事なことではないかと思います。
7点目です。顧客から特定の目的で預かったものはきちんと返す、あるいはきちんとその目的のために使うこと、これは決済でも運用でも何でもそうだと思いますが、そういったこともあろうかと思います。そういった観点で、先ほど神田先生から「顧客資産に優先性を設けることも考えてもいいのではないか」というお話がありました。神田先生のお話にもありましたように、たしかに諸外国ではそういった法制もありますので、それは十分検討に値することではないかと思います。
8点目、最後です。紛争の予防や解決、ADRが使える、あるいは破綻処理、そういった、うまくいかなくなったときに迅速かつ適切に物事が解決できるような仕組みは、運用だろうが、決済だろうが、貸金だろうが、全てについて共通することと思います。
そのように全ての分野に横断的なルールもあってもいいのかという気がいたしております。また、何を対象とするか、機能やリスクが同質かどうかをどうやって検討するのかという際にも、今申し上げたような視点は有益なのではないかと考えています。
以上です。

【岩原座長】
それでは、翁さん、お願いします。

【翁メンバー】
五、六点です。
1つは資金供与と資産運用のところについて、今までいろいろ議論があったわけです。これはともに今までいろいろな先生がご指摘になったのですが、経営資源の配分、資金仲介などそういった大くくりの中の2つの分類だと理解しております。ここは大くくりに考えると、資金供与のところが間接金融で、資産運用が直接金融と市場型間接金融とそういう整理になっているように見えます。ただ、そこがあまり明確にはなっていないし、少しそういう観点から見るともう少し書いたほうがいいところがあるのではないかと思います。
ただ、今申し上げた理解はざっとした区別です。先ほど神田先生もおっしゃいましたが、例えば市場の流通性、流動性の観点から見れば、貸出債権もマーケットに乗るようになってきています。そういったことで明確に分けられるわけではないので、そこは留意してこの資金供与と資産運用のところをもう少し考えたほうがいいと思っております。資産運用のところで、岩原先生が最初におっしゃったプライシングの話がここにも入ってきています。いかにもアクティビティベースで議論しているようで、ここでふっと入ってきているわけです。今日も田中委員がおっしゃいましたが、マーケットで機能を発揮する部分と資金仲介業者のアクティビティーの区別が明確になっていないので、少しわかりにくいのではないかと感じております。特に、アクティビティの部分から資産運用のところを見ますと、これは坂委員がおっしゃったこととも関連しますが、例えば受託者責任のような投資信託やアセットマネジメントやサービス提供業者のところの資産運用する人に対して負うべき義務をどのように書くのかが、特に書き込まれていないので、そこが気になったのが1つ目でございます。
それから、2つ目のポイントです。3ページで「市場メカニズムによって形成された価格が」と真ん中にございます。ここはまさにマーケットで資源配分が行われるところに着目した論点だと思っております。それで、今回から「達成すべき利益」となって整理をされているので、達成すべき利益であれば、公正で効率的な価格形成が行われる、市場の公正性、透明性を確保するのは常に必要だと思っています。おそらくこの「公益の観点から重要な意義があるような場合には」と書いてあるのは、おそらく「市場に介入する場合があるのであれば」の名残ではないかと思いますが、ここが気になりました。おそらく金融規制を考えるといったときに、金融システムの安定性と利用者保護と市場の公正性のところが3つの大きな目的だと思います。それが損なわれるようなときにこういう介入が必要だという意味であれば、わかります。ただ、市場は常に公正で透明である必要があると理解しております。
それから、その次のページで預金のことが書いてあるところがあります。預金が特別というところはこの間もコメントしたことなので繰り返しませんが、預金を小口預金と大口預金と全く同じように考えていいのかという論点はあるのではないかと思っております。基本的に預金は大事ですが、大口預金者についてはセーフティネットは原則的には及んでないので、そこは留意したほうがいいのではないかと思います。
それから、プラットフォームのことです。これから、アマゾンのようなところが入ってきたときにこれをどのように考えていくのか。アマゾンが銀行をつくったらどのように考えていくのかというようなそういったところでの論点が非常に重要になってくると思います。同時に、ここでも書いていただいていますが、金融業がプラットフォーム化していくということはいろいろ考えられます。オープンAPIになっていくのはまさにそういうことではないかと思っています。
実際にプラットフォームになるための銀行が海外では生まれてきています。もちろん、そういったときにはセキュリティやそういうことは重要にはなるわけです。外から入ってくるプラットフォーマーと、それから中の銀行など金融機関がオープンAPIでプラットフォーム化していく動き、これ自体はオープンAPIを促進しているので、様々な動きが今後出てくると思います。多分いろいろなフィンテック業者等と結びついていくと、業だけには限らない金融商品の運用もやれば、資金運用自体もフィンテックを通じてやるなどいろいろな組合せが出てきます。そういったことを念頭にいろいろな議論をしていく必要があるかと思います。
それから、最後に2つです。リスク移転のところに関しまして、ここもインスティテューショナルな議論と、デリバティブのようにとてもマーケットで取引されるものと両方が書かれているように思っています。例えば、システミックリスクのところについては、わりとインスティテューションの視点で書かれています。これだけデリバティブやクレジット・デフォルト・スワップなど取引されるようになってくると、マクロプルーデンスの観点からマーケットを見ていくのは、これは規制ではないと思います。取り組むべき視点としては重要なのではないかと思っております。
最後になりますが、インシュアテックなどフィンテックとも通じますが、ここに書いてあるようなデータ分析による新しい取組みや効率化が望ましい動きだと思っております。一方で、例えば今出てきている詐欺的なICOなど、そういうところはルールを整備しなければならない分野だと思っております。この分野は非常にスピードが速いので、イノベーションは発揮させつつも、利用者保護をどのようにやっていくか。スピードが速いので、どのようにそういったイノベーションを阻害させないようにしながら、必要なときには利用者保護の手を打っていくような、レギュラトリー・サンドボックスもできますが、そういったいろいろな合わせ技で、うまくそれを両立するような仕組みや体制を整えていただくことが大事かと思っております。

【岩原座長】
それでは、大野さん。

【大野メンバー】
ありがとうございます。まず、資産運用の達成すべき利益については、事務局から1から6まで書いていただいた論点に全く違和感はありません。
そういう中において、私として特に力点を置くべきと思っているポイントを述べます。1番目は、投資家から預かる資産をしっかり保護する観点からの分別管理を徹底させることです。これに関しては、先ほどの神田先生からのここを強化するというお話を大変魅力的に感じました。それから、2つ目は、効率的な資金の配分機能を確保・拡充する観点から市場の公正性・透明性を確保すること、もちろん適切な価格を担保する仕組みも含めて極めて重要だと思います。
3つ目は、投資家が自らの運用目的やリスク選好に合った資産運用手段を選択することを可能とする情報に適切にアクセスすること、これが大切だと思います。4番目は、資産サービスの提供者側の業務内容、財務状況、リスク管理、コンプライアンスをはじめとしたガバナンスの状況についてつまびらかにさせることが有益だと考えます。この辺については、既存の業者の対応は相当程度進んでいると思います。先ほど来の議論に出てきている新しいいろいろな提供者にとって極めて重要な課題ではないかと思っております。
次に、ITの進展に伴う新たな資産運用サービスの取扱いについて、留意点を3つ述べたいと思います。
1つ目はIT、イノベーションの進展に伴ってますます適切な顧客情報の扱いをどうするかについて配慮が必要となると考えます。資産サービスの提供企業やグループの企業の中で、顧客情報を活用したより付加価値の高いサービスを創出すること、これはもちろんサービスを受け取る側にとって非常に大きなメリットであります。このメリットを享受することと、その一方でファイアウォールなどによるインサイダー・トレーディングの防止といったようなデメリットの抑制、この2つのバランスをいかにうまくとっていくかが重要だと思っています。
2点目はデジタル社会化が進展することによって、情報の非対称性が低下します。市場の効率化が進むに連れて、資産運用についてもビジネスモデルの転換が今後促されていくのではないかと予想しています。1つの方向性としては低流動性資産、現物資産、さらには小口資産といった資産へのリスクマネー供給に対する需要が高まる可能性が強いのではないかと思っています。その場合には、株式・債券や取引所といった既存のインフラの整備された世界に対する規制や制度整備だけではなく、ブロックチェーンを使った小口資産の証券化やそれに伴う決算、それから決済基盤の整備、そういった部分への規制面も含めた対応について留意する重要性が増していくのではないかと考えております。
3つ目はICOやプラットフォーマーについてです。この2つは同じレベルで議論はできないと思いますが、これらの新しい技術のもたらす果実、すなわち利用者にとっての利便性の向上をできるだけ享受することと、同じようなサービスをこれまで提供してきた金融機関などに求めてきた規範などをうまく適用していくことによって、サービスや業務の透明性を高めること、この2つの目標に同時に配慮をすることが大切であると考えます。これは翁さんのご発言の最後のポイントと同様の趣旨であります。
最後にリスク移転について、「ITの進展に伴うリスク移転サービスの取り扱い」の切り口から見て4点ほど所見を述べさせていただきたいと思います。
1つ目は、リスク移転の代表的な機能である保険についてです。イノベーションの進展に伴って今後、業態を超える動き、それは生命保険と損害保険、さらには健康増進、介護、医療などがつながる動きといったものが拡がりを見せると思います。こうした業種を超えた動き、協働、協業あるいは兼業がやりやすいようなフレームワークをつくれるとよいと思っております。健康増進の支援などの社会全体としてリスクを軽減させる取組みについては、リスク移転の機能を担うサービス提供者が幅広く扱えることになると社会全体の厚生を高める上で望ましいのではないかという気がしております。これを商品組成の面から捉えれば、生命保険における健康増進、それから損害保険におけるモノの稼動保証やメンテナンス、これらを組み合わせた商品を充実させていくことが望まれます。従来の保険では規定できない商品、金銭保証の要素に加えて付保対象のリスク軽減を含めたものなどの商品の組成を加速するような工夫ができるとよいのではないかと思っております。
2つ目は、損害保険を中心にシェアリング経済が進展していくと、資産価値に関心を持つ物の所有者と利用価値に関心がある利用者の両者の間の分断が進むような気がしております。また、デジタル化社会の進展によって従来型の保険事故の発生確率が低下したり、事故発生時の経済的損失の低下も進んでくると思います。その一方で、新しいリスクファクターの増大といった保険のビジネスをめぐる大きな環境変化が進んでいく可能性があるのではないかと思っております。これらの変化に対応するための新しい保険の開発や経済損失と分担ルールの見直しについても、柔軟性を持った制度フレームワークを整備することが重要ではないかと考えております。
3つ目は、データ活用による新たな保険関連商品を組成するビジネスが拡大していく方向が考えられます。その際には、統計的な有意性を立証するには相応の時間と手間がかかることと思います。試行的な取組みであるチャレンジを後押しするような制度面での対応ができると、イノベーション促進の面では望ましいと思っております。
最後に、8ページの事務局からの問いかけです。リスク評価の精緻化と細分化の行く末は何かということを見通すことは非常に難しい問題であります。個人的には、リスクの細分化や精緻化が進むことで、これまでの相互補助的な保険の機能が抜本的に変革していく可能性があるのではないかと思っております。これまでの伝統的な保険機能の柱とも言える相互補助的な機能は、少なくとも縮小していく可能性が高いのではないかと。そして、保険サービスのイージーオーダー化であったり、さらに進めばカスタムメイド化が進展していく可能性が少なくないと見ております。
この流れの中では、先ほど来何人かの先生からご指摘がありましたが、利用者側が金融機関などサービス提供者に期待する役割も、従来のリスクに対する保障から、自らの将来を守るための急場の備えをする行為、すなわちより資産運用的な色彩の強いサービスを求めるニーズが高まっていくのではないかと、間違っているかもしれませんが、現時点ではそのように考えております。
以上です。ありがとうございました。

【岩原座長】
それでは、植田さん、お願いします。

【植田メンバー】
ありがとうございます。私は少し違う見方というか、今まで言っててきたものと私はあまり変わっていないのですが、ほかの方々と多少違うかもしれません。
まず、何人かの方がこの目的がどうもはっきりしないと言われていました。ある意味でこの目的は、特に資産運用の1ページ目に書いてあります。これは金融制度システム全体の目的だと思いますが、「資金余剰主体が資金不足主体に対し、自らのリスク選好に従って資金を供給することにより、市場メカニズムを通じた効率的な資源配分と資金の出し手の中長期的な資産形成などに寄与する」と。効率的な資金配分が目的であり、もちろんこの中の達成すべき利益にも2ページ以降入っていますので、そこは全く問題ないです。
ただ、どうしたわけかこの後の規制やここで話していることになってくると、どうしても保護や安定性に非常に意見、議論が集中しがちです。最初に書かれている資金の効率的な配分は一番の大事なところ、もちろんそれはひいてはマクロの経済活動にも響くわけです。そこの視点が途中で欠けてきているような気がします。そちらの視点から見ると、効率的な資金配分をするには、これは別に金融業に限ったわけではないですが、いろいろな業界もそうですが、できるだけ規制をなくすことがまずあります。それを理解した上で、その中で必要最小限な規制は何かを考えていかないといけないと思います。
その意味では、例えば先ほど何人かの方がおっしゃいましたが、私は金利の上限規制なども個人的にはその意味からすると全く反対です。例えば、ある意味、儲けの上に上限をかけられてしまうのであれば、いろいろな意味でのキャピタルゲインの儲けはどうするのかなどいろいろ話が出てきます。損失も損が出るのであればできるだけ自己責任で損を持ってもらわないといけないと思います。
ただ、これまた大事になってくると思いますのは、なおかつ今情報産業、そこから新しい金融の仕組みがどんどん出てきています。今まで以上にできるだけオープンにして、できるだけいろいろな新しい商品、新しい業者に出てきてもらわないと困るわけです。その場合にたくさん規制をかけていたら、そういう動きが削られてしまうと思います。ですから、今まで以上にある意味で緩くしないといけない部分があるかと思っております。
ただし、その段階で言いたいのは、あくまでも特にアーリーアドプターという人たち、新しい商品に飛びつくような人たちには、「自己責任でやってください」としっかりどこかで言っておかないといけないと思います。自己責任でそういう人たちがやっていくからこそ、いいものが残るわけです。悪い業者や悪い商品はどんどん消えていくわけです。当然消えていってもらわないと困りますので、そこまで保護はすべきでないと思います。
例えば、これが具体的な例になるかはわかりませんが、私は浜松出身です。戦後の混乱期に100社ぐらいオートバイのメーカーが浜松にありました。そのうち結局10年、20年たって残ったのは3社です。ホンダとヤマハとスズキが残りました。そのときにあらかじめ保護をかけて、ぎゅうぎゅうに絞って、オートバイ産業に来る人たちを拒んでいたらどうしようもないわけです。最初のころは利用者保護も何もないわけです。個人が自分の責任で選んで、いい業者、いい商品を選ぶ仕組みをつくっておかないと、金融システム全体が発展しない部分があるかと思います。ただその上で全ての規制をなくすべきと言っているわけではもちろんなくて、当然必要最小限の、顧客の預かり資産の流用や盗難に対するところは、しっかりと保護をかけないといけないわけです。
ややこしいのですが、保険に関して言えば、どこまでの顧客の差別をしていいか。例えば、アメリカなどで問題になっているのは、人種による保険、および銀行の貸出金利の差別など、当然そういうものは禁止されていくべきものだと思います。そういうところは多分残さないといけないと思います。
その上で、今まで何度も言うように、銀行は総合的な金融産業として今まであったわけです。決済もやり、資金供与も資産運用もある意味でやる形であったわけです。その銀行業という総合的なものは、私も何度か言っていますが、またここにも書いていただいていますが、要求払預金を短期で受けつつ、中長期で回すという産業は、マクロ的にそういう需要者と供給者のミスマッチがある以上、残らざるを得ないということです。それは先ほどの田中メンバーから話がありましたとおり、マーヴィン・キングさんの本でありましたとおり、そういう長短のミスマッチをどうしても抱えるのはもろいです。もろい産業、もろいものができてしまうのが銀行というものです。またそのもろさが1つ倒れると、ほかに波及していくもろさもあります。だからこそ銀行は今まで、ある意味特殊に見られていて、特殊的な、バーゼル規制などに見られるような規制に敷かれていて、それは今後も残っていくものです。そのもろさの波及がシステミックリスクだと。少なくとも狭義で見たら、金融システムのリスクはこのような銀行システムのリスクだと、つまり銀行業がばらばらと倒れていくところがシステムリスクだと解釈できるわけです。それが経済学的にも言われていることだと思います。
ただし、広義のシステミックリスクは、幾つか話が出ていましたが、広義のシステミックリスクは、マクロ経済活動まで大きく影響を与えてきたりするような場合や、もしくは先ほど言った銀行業のシステム、銀行システムに対してその外部から悪影響を大きく及ぼすような場合が、多分含まれます。シャドーバンキングや不動産のバブル、その崩壊などがそうなってくるわけです。どこまでこの金融制度の話で手を広げるかですが、そこの広義の部分もある程度頭に入れた上で、たしかにやっていくべきだと思います。ただ基本的な中核になるもろさは、先ほど言った銀行業のところにあるという理解でいいと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは、松井さん。

【松井メンバー】
ありがとうございます。簡単に2点だけです。
1点目は、リスク移転のところでございます。先ほどの繰り返しになるので、ごく簡単に申し上げます。先ほど申しましたように、リスクの移転の話は、機能に応じて制度を考えるという際に、1つのポイントになるのではないかということで非常に重視されている概念です。つまりリスクの中身、それからリスクの移転の仕方によって、制度を考える際の様相がだいぶん違ってきます。繰り返しになりますが、マーケットベースでリスクが考えられる場合と、それからエンティティにリスクが寄っていく場合とでは違うでしょうし、その他リスクの中身によっても違ってくるでしょう。それを念頭に置きながら議論したほうがいいだろうと思っております。
つまり、リスク移転の議論をする際には、もう1段、下位概念が要るのではないかという感じがいたします。問題となっているリスクがどのようなリスクで、そのリスクがどう移転されるのかというところです。マーケットでリスクが移転する場合には、もちろんマーケットベースの制度になるでしょう。エンティティに寄っていく場合には組織をどう構築するかという制度になるでしょう。その辺りをもう少し整理していく必要があると、今日の議論を伺っていて思った次第です。これが1点目です。
2点目は、資産運用のうち、預金の話に関してです。預金については4ページですが、意地悪な読み方をすると、1つ目の丸で、預金に関しては「元本保証」があり、「安全確実な価値の貯蔵・運用手段」という側面があり、「決済」に利用ができ、「経済社会全体の信認と安定の政策的配慮」があり、「預金保険や日本銀行の最後の貸し手の機能によって制度的に保護が強化されている」ものが預金です。
このような性格を持った預金であれば、特別なものであって、保護のあり方に差異を設けることが適切だというのは、もう当然です。
ただ、ここはもう少し分析的に考えたほうがいいのかと思っております。つまり、このような特徴の中で、特に預金を特別たらしめているものはどれだろうかということを議論しなければいけないだろうと思います。前回のペーパーを見ますと、例えば要求払い預金のところがくくり出されています。この点は特別なのではないか。なぜなら、決済に使われるからです。そもそもなぜ決済が大事なのかといえば、そこがきちんと保護されないとシステミックリスクにつながるからです。これは例えばの議論ですが、そういったもう少し分析的議論が必要だろうという気がします。
今、決済の側面からお話を1つしましたが、その他にもう1つあるとすれば、国民に広く利用される安全確実な価値の貯蔵・運用手段というところがあります。預金には元々、国としては零細な資金を確実に集めたい、国民の側からすれば、自らの資金をきちんと価値保存する手段を提供してほしい、ということがあります。かりにここが重要だということであれば、この点は特別なのだろうということになりそうです。
以上のように一定の政策的な判断を基に、預金が特別である部分はどこなのかはもう少し議論をした上で、この預金の特別性を議論すべきではないかと思いました。今のままだと「特別な制度があるから特別です」と言っているような感じです。先ほど舩津先生がおっしゃったように「特別な保護を与えているものが預金だ」となってしまうので、ここはコメントした次第です。
以上です。

【岩原座長】
それでは、戸村さん。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。2点だけ手短に申し述べさせていただきたいと思います。
まずは、今松井先生が論点を提起された預金についてです。私も似た感想を持っております。預金の定義が少し固定的な印象があります。
ここからは少し個人的な意見になります。資料にも詳細に書かれてありますように、預金は複数の機能を持っております。私が注目するのは2つであります。1つは元本保証のある短期の価値保蔵手段を提供している。それが預金の1つの機能で、もう1つは為替機能を持つ決済手段であることです。この2つの機能のいずれかを持つ金融商品は、どちらか一方の機能を持っていただけであったとしても保護の対象となり得るので、検討が必要だと思います。
なぜ、こう申し上げるかというと、米国の最近の金融危機におけるシャドーバンキングがどうしても頭から離れないもので、シャドーバンキングにおいては、元本保証のあるMMF等を通じて元本保証のある短期の価値保蔵手段の提供は行われたけれども、為替もしくは決済機能の提携は行われなかったと理解しております。そういう意味では片方の機能を持つだけでもシステミックリスクを生じるので、そういうものに対して特別な扱いをするべきかは検討するべきかと思います。こういう論点においては、システミックリスクをどこで守るのか、アメリカの例で言うと、MMFだけ守るのか、もう少しシステム全体を守ってしまう、証券化商品も守ってしまうのか、などいろいろな論点があろうかと思います。そういう大きな論点も含めて預金が持つ2つの機能、いずれかについてもそれぞれ別個に保護の対象とするべきかは議論すべきかと思います。そういう意味では松井先生がおっしゃったように、もう少し分析的に預金を分解してもよいのではないかという感想を持ちました。それが1点目の感想です。
2点目は、複数のメンバーの方が既におっしゃられたことなので恐縮ですが、8ページの2.(3)のITの進展に伴うリスク移転サービスへの影響について、個人的な意見を申し述べさせていただきたいと思います。植田先生がおっしゃったように、新規参入をどう促進するかが、このスタディ・グループの大きなミッションであると思います。ただ、フィンテックにおいては既存のサービスが壊れていく側面もありまして、そこのバランスをどうとっていくのかが難しい課題だと思います。その点では、ここに書いてある保険への影響が1つ大きな潜在的な問題であると思います。例えば、データ分析が進んで将来がんになる確率のような、今まで被保険者が知り得なかったような特性がわかってしまうようになると、今までリスク分担できていたものが保険によってリスク分担することができなくなる、そういうような思いがけない悪影響が生じる。それが1点あります。
もう1つは、この資料にも書かれておりますように、既往症のような被保険者が既にわかっている自分の特性についても、これまでは他の被保険者が同じ保険料を払うことでリスク分担をして、言い換えると民間サービスを通じて所得移転がされてきたような実情もあるかと思います。そういうものはここに書かれてあるように、データ分析が進むと壊れていく危険があると思います。それに対してどう考えるかについては、これは舩津先生がおっしゃった論点の手前の論点で恐縮ですが、何らかの配慮は必要だろうという感想を持っております。
そういう意味では、今後は社会的に望ましいリスク分担を実現する上で、例えば利用者の差別を年齢など一定のカテゴリーに限定するような基本的な保険の種別を定義するべきかどうかは、検討すべきだろうと思います。そういうユニバーサルアクセス的な規制をかけると、どうしても規制のあり方が決まっていない新しいサービスが登場して、レギュラトリー・アービトラージ、規制の迂回が起こるのが通例ですので、そういうユニバーサルアクセスを保証するような保険のカテゴリーをつくる場合は、公的な保険で再保険するような形の補助も必要になるかもしれないと思います。少なくとも利用者差別をどれだけ許すのかが論点になるだろうと思います。
以上です。

【岩原座長】
ほかに何かございますか。はい、坂さん。

【坂メンバー】
すいません。3回目ですが、今のリスクの細分化と保険の問題について発言させていただければと思います。
このリスクの細分化で議論されている点については、リスク評価の精緻化の問題とリスク区分・料率区分の細分化の問題と2つの要素があり得るのではないかと思います。私は問題の中心はリスク区分・料率区分の細分化の問題で、これは現在もある問題ではないかと思います。もっともリスク評価の精緻化によって問題がより深刻化するおそれがあると思いますし、細分化により保険から排除される人が出てくるとすれば、これは対応が必要なのだろうと思います。
リスクの程度に応じた保険料を負担する保険の原理からは、細分化は個々の主体のリスクに応じた保険料が設定できる点で、その要請に資することになるのかもしれません。他方で、リスクの分散を効率的に図る保険の仕組みからは、保険集団をできるだけ大きくする必要があるという要請があろうかと思います。そのバランスをどう図るかが課題です。これは保険数理の公平性と社会的公平性のバランスの問題という議論がされたりするような場面でもあろうかと思います。
自由競争の下では、細分化によりリスクの低い主体の保険料を低くして、これをアピールする競争が行われがちで、現在もその傾向があるのではないか少し心配されるところです。他方でリスクの高い主体が排除されることになるのであれば、これは保険が社会的に期待されるリスク分散機能を果たし切れていないことになります。こういった傾向が強くなっていくとすれば、規制対応が必要になるのではないかと思います
民間の対応としては、そのような排除が起こらないような商品開発が期待されるところだろうと思いますし、この点は少額短期保険において特殊なリスクへの対応が行われていることや、同様の努力が保険会社において行われることは注目されるところかと思います。
さはさりながら、それで足りるかという問題があります。規制のあり方は全体として考える必要があるだろうと思います。
また、民間の保険で対応できないリスクないしリスク区分がどうしても出てくることになれば、これは最終的には公的な保険は役割分担となります。そういったところも念頭に置いて検討する必要があるのではないかと思います。
それとすいません。もう1点だけ、預金です。預金については、私は決済手段であることが基本的には一番大事なというか、守られるべきところなのではないかと思います。これは金融システムのシステムリスクの問題もありますが、経済活動の中で決済手段としてきちんと守られることが前提として経済全体が回っているので、そういった点から特性があるのではないかという印象を持っております。
以上です。

【岩原座長】
ほかにありますか。

【植田メンバー】
すいません、保険に関して一言よろしいですか。

【岩原座長】
それでは、植田さん。

【植田メンバー】
一、二分で失礼します。
経済学的にはできる限り細分化してそのリスクに応じた保険を提供することが、おそらく均衡になることが大体わかっております。そういう方向に行かざるを得ないです。そのときに、懸念をしていらっしゃいましたように、一番の高リスクの人たちにはたしかにそれが払えるだけの能力がないなど、そういう部分が出てくる可能性があります。
ただし、保険にもよりまして、例えばタレントさんなどは自分の足や手に保険をかけています。あれを全員買うべきかと言えばそうではなくて、そういう誰でも買うべきでないような保険もあるわけです。ゴルフ保険やスキーヤー保険などもあります。そういうものに関しては、特に心配する必要はないと思います。
では、どういう保険は皆が持つべきかという議論をまずしないといけない。それが例えばアメリカで議論されている医療保険はどうか。もしくは日本では、自動車の損害賠償保険、損保になります。その辺はたしかに全員に必要だと私は思うので。でも、そうなりますとここの問題というよりは別の役所の問題になってくるような気がだんだんとしてきます。どの保険はほんとうに全員持たないといけないかという議論は、また別個議論すべきような話だと思います。

【岩原座長】
永沢さん、手短にお願いします。

【永沢メンバー】
1分で。最初に言い忘れましたので、一言申し上げさせていただきたいと思います。
資産運用の分野における達成すべき利益の一番初めは、翁先生も坂先生も言われましたが、お金を出し手の信頼に応えるような運用ができることと、昨今フィデューシャリー・デューティなどは議論されました。そういったことが言葉としては必要だと思います。是非一言入れていただきたいことを最後申し上げさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【岩原座長】
よろしいでしょうか。何とかぎりぎり30分延長の時間内に収めることができそうです。今日は大変活発なご議論をいただきましてありがとうございます。本日の皆様の御発言をまとめることは私の能力を超えますので、まとめるのは遠慮させていただきます。
ほかにご発言がございませんようでしたら、これで討議を終わらせていただきます。本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえ、さらに審議を深めていきたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いします。

【井上信用制度参事官】
次回のスタディ・グループの日時につきましても、皆様のご都合を踏まえた上で、早急に後日事務局よりご案内させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【岩原座長】
それでは、どうも長時間ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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