金融制度スタディ・グループ(第5回)議事録

  • 1.日時:

    平成30年3月2日(金)13時00分~15時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(第5回)
平成30年3月2日
 
 
【岩原座長】
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融制度スタディ・グループ」第5回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本スタディ・グループにおいては、同一の機能・リスクには同一のルールを適用するとの考え方のもとで、金融の各「機能」について検討してまいりました。本日は同一の機能・リスクには同一のルールというときのルール、すなわち「規制」の態様について議論することとしたいと存じます。
本日の流れといたしましては、まず、事務局から「規制」の態様に関する討議資料についてご説明をいただいた上で討議を行いたいと考えております。
それでは、事務局から説明をお願いします。

【井上信用制度参事官】
信用制度参事官の井上でございます。お手元の討議資料「金融審議会 金融制度スタディ・グループ 第5回」と書いてございます紙に従いましてご説明をさせていただければと思います。
まず、検討の射程でございます。同一の機能・リスクに同一のルールを適用することを検討するに当たりまして、金融法制が達成すべき利益を念頭に置きつつ、今回はその実現に向けました「規制」の態様について検討していただきたいと存じます。
達成すべき利益の中には、金融に限らない経済活動全体に共通するものも考えられ、政府全体で規制のあり方を検討することが望ましい場合も考えられます。このため、ここではさしあたり法令による「規制」のうち金融に関する規制についてご検討いただきたいと思います。
注のところでございますが、例えば前回までに金融の各「機能」に共通の達成すべき利益としてご議論いただきましたマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策につきましては、犯罪による収益の移転防止に関する法律におきまして本人確認等の措置が講じられているところでございます。このため、ここでの検討のスコープからは一時的に除かせていただければと思います。
2ポツの、「規制」の態様と達成すべき利益との関係でございます。「規制」の態様と達成すべき利益の関係の検討に関しまして、討議資料の次に、横長のカラーの参考資料をお配りしているかと思います。ここで、これまでに扱ってまいりました金融の「機能」、すなわち「決済」「資金供与」「資産運用」「リスク移転」、並びに「預金受入れ」も加えてございますが、それと達成すべき利益が左のほうに並んでいるようなものでございます。
代表的なサービス提供者例を「機能」の下のところに書いてございますが、そのマトリックスの中に、現行の金融関係の「規制」がどのように対応しているかというものを図示させていただいております。
時間の関係で、この参考資料自体の説明は省かせていただきますが、討議資料と対応する形になっておりますので、適宜併せてご参照いただければと思います。
討議資料にお戻りいただきまして、2の(1)でございます。まず、利用者に対する情報提供等に対応する「規制」の態様といたしましては、商品・サービスの内容・複雑性や利用者の属性・リスク選好、情報の非対称性や交渉力の格差の程度等に応じまして、誠実義務/忠実義務、あるいは株式・社債等の発行者による情報開示、サービス提供者による情報提供義務、適合性原則、意向把握義務、不招請勧誘等の禁止などが設けられているところでございます。
まずこれらのうち誠実義務につきましては、金融商品取引法における金融商品取引業者などについて規定されているところでございます。忠実義務につきましては、投資助言業務、投資運用業、信託法・信託業法における信託業務などについて規定されているところでございます。忠実義務につきましては、顧客からの委託を受けて、当該顧客の利益のために業務を行うことが期待されており、相当の裁量的な判断を伴う場合に課されている、典型的には運用を受託するような場合と思われますが、そのような場合に課されているのではないかと考えることができるかということを記載させていただいております。
なお、注のところでございますが、信託法では忠実義務に違反した場合の損害額の推定規定が設けられております。
次の○でございますが、金融取引におきましては、将来のキャッシュフローが扱われたり、あるいは複雑な計算技術等が用いられたりする場合も多いところでございます。このため、一般の利用者がプロであるサービス提供者と金融取引を行う場合に、サービス提供者と利用者の間に情報の非対称性や交渉力の格差が生じやすく、利用者が不測の損害を被るおそれがございます。
こうしたことに鑑みまして、利用者の属性(知識・経験・財産の状況・取引の目的等)や取引の属性(商品・サービスの複雑性等)に応じまして、情報提供義務など非対称性の是正に関するルールが設けられているところでございます。また、後ほど(4)のところで詳述させていただきますが、株式・社債等の発行者に対しては情報開示が求められているところでございます。
他方、金融取引でございましても、取り扱う商品・サービスの内容が単純である場合や、あるいはプロ同士の取引である場合には、サービス提供者と利用者との間で知識・経験等に関する非対称性が生じにくいものと考えられます。このような場合には、非対称性の是正に関するルールの程度は軽くなるのではないかと考えております。
例えば預金のような、商品・サービスの内容が単純で、元本の毀損を通常予定していないようなものにつきましては、サービス提供者と利用者の間の商品・サービスの内容・リスク等の理解に関する非対称性は比較的小さいと考えられるかと思います。
これに対しまして、相場変動等の市場リスクや、投資リターンに影響する株式・社債等の発行者の事業リスク・信用リスク等につきましては、投資性のある金融商品に内在するリスクでございますが、将来のキャッシュフローとリスクに関する複雑性があるかと思います。また、保険等の「リスク移転」のサービスにつきましても、発生が不確実な事象を対象とすること、あるいは価格設定に当たり複雑な計算を伴うと考えられることによりまして、利用者がサービスの内容の妥当性を判断することが困難な面があるかと思います。このような場合には、商品・サービスの内容・リスク等に関する適切な情報提供の重要性が増すことが考えられるかと思います。
おめくりいただきまして3ページでございますが、また、投資性のある金融商品につきましては、サービス提供者と利用者の間の情報格差や利用者が負担するリスクの程度が大きい場合には、サービス提供者は利用者の属性に照らして不適当と認められる勧誘を行ってはならないという適合性原則が重要になるところでございます。
また保険に関しましては、利用者の抱えるリスクや、それを踏まえたニーズを的確に把握した上でサービスを提供すべきという観点から、利用者の意向把握というものが重要になるかと考えております。
このほか、個々の金融商品の性質等の観点から、適合性原則の遵守が期待できないような場合には、不招請勧誘の禁止が考えられるなど、取引の態様等に応じて規制が設けられているところでございます。
論点といたしましては、こうしたことを踏まえまして、利用者に対する情報提供等に関しまして、金融の各「機能」において「規制」の態様をどう考えるかということを提示させていただいているところでございます。
次に(2)利用者情報の保護でございます。ITの進展等に伴いまして、利用者に関する情報の蓄積・分析が容易となっている。AI、ビッグデータというものが考えられるかと思いますが、こうした変化というのは、利用者のニーズに沿った商品・サービスの提供に寄与する側面があるという一方で、利用者情報の保護が課題になってくるということもあるかと思います。
顧客との取引内容に関する情報や、顧客との取引に関して得た顧客に関わる情報などの顧客情報につきましては、金融機関が商慣習上、または契約上負っている守秘義務の対象であり、みだりに外部に漏らすことは許されないとされております。これを示している最高裁決定を下のところに脚注で示させていただいてございます。
利用者の氏名、生年月日等の個人情報につきましては、個人情報の保護に関する法律によりまして、目的外利用の禁止等の対応がなされているところでございます。また、同法におきましては、情報の利活用の観点から、本人の同意がなくても第三者に提供可能な「匿名加工情報」制度を近時の改正で導入したところでございます。
金融の各業法におきましては、サービス提供者に対して、利用者情報を安全に管理する体制の整備等の義務が課されているところでございます。また、金融情報システムセンター(FISC)が、金融機関向けにサイバーセキュリティに対する安全対策基準を策定・公表しておられまして、これらは監督上も指針とされているところでございます。
このほか、情報の利活用については、参考の1でご紹介させていただいておりますように、現在、政府内でも議論がされているところでございます。参考2ではEUの例について記載してございますが、データ保護規則、GDPRでございますが、これに規定されたデータポータビリティ権は、①個人は、自身が事業者に提供した個人情報を、一般的に用いられ、機械で読み取り可能なフォーマットで受け取る権利を有すること、②個人は、事業者において技術的に可能な場合には、自身が提供した情報を保有する事業者から他の事業者に情報を直接的に移転させる権利を有することを内容としているものと承知しております。
論点といたしましては、こうしたことを踏まえ、利用者利便やイノベーションの促進などの観点も考慮しつつ、利用者情報の保護に関する「規制」のあり方についてどう考えるかという点を記述させていただいております。
次に(3)に移らせていただきます。利益相反管理でございますが、ITの進展等に伴いまして、複数の金融・非金融のサービスを組み合わせて提供(リバンドリング)する動きが広がりつつあるということは第1回会合でもご紹介したとおりでございます。金融グループにおきましては、持株会社の傘下に銀行、証券、信託など多様な業態の子会社を有するものがあるほか、事業会社等の異業種グループがグループ内に金融機関を保有し、自らの事業とのシナジー効果を発揮するような場合もございます。また、新たなプレーヤーによる金融サービスの提供が拡大する一方で、金融機関においてもそうしたプレーヤーとの連携・協働、すなわちオープン・イノベーションを進めようという動きが見られるところでございます。
金融における利益相反としては、従来、例えば「資金供与」と「資産運用」を組み合わせたような場合に、銀行が貸付先企業から貸付金を引き上げる目的で、当該貸付先企業に社債を発行させて、当該社債を別の投資家に販売し、この社債の発行によって得た資金で自行の貸付金を償還させるような事態が生じ得るとされてきたところでございます。このような利益相反を防止するため、銀行本体が証券業務を行うことが禁止される、銀証分離規制があるところでございます。また、銀行・証券会社・保険会社におきましては、自社または金融業を行うグループ会社による取引に関しまして、利益相反管理体制の整備が求められているところでございます。
しかし、このリバンドリングの動きなどの中で、利益相反が生じ得る局面がさらに増えて、またその態様も複雑・多様になってくることが考えられるのではないかと思います。
このようなことを踏まえまして、金融サービスと非金融サービスの組合せにおいても、利益相反は生じ得ると考えられますが、上記で見ていただきましたような利益相反管理体制の整備義務は、このような場合には課されていないところでございます。利益相反管理につきましては、「機能」や業態を超えて共通の利益とも考えられますが、業態やグループの形態によって利益相反に関するルールが異なっていることについてどう考えるかという論点を記載させていただいております。
また、より一般的な問いかけになりますが、こうしたことを踏まえまして、利用者利便、イノベーションの促進、公正な競争条件の確保などの観点も考慮しつつ、利益相反管理の観点からの「規制」のあり方についてどう考えるかという点も記載させていただいております。
次に(4)でございます。市場の公正性・透明性ということでございますが、証券市場におきましては、流通市場における適正な価格形成を実現するとともに、形成された価格が資産評価の基準や有価証券の発行価格の目安としても利用されることで効率的な資金配分の実現にもつながることから、市場の公正性・透明性を確保するために幾つかの規制が設けられているところでございます。
以下4つほどにくくっておりますが、1つ目は、その株式・社債等の発行者による情報開示、並びに監査法人等による情報の信頼性確保でございます。
2つ目が、証券市場で取引を行う全ての者に対する公正取引ルール、すなわち、不公正取引の禁止、風説の流布・偽計等の禁止、相場操縦行為等の禁止、並びにインサイダー取引規制でございます。
3つ目が、金融商品取引所に対する公正な価格形成に関するルール。
4つ目が、顧客の注文についてサービス提供者自身が直接取引の相手方となって取引を成立させる行為に関するルール等があるかと思います。
6ページに移っていただきまして、投資家が自らの運用目的やリスク選好に沿って投資を行うに当たりまして、投資判断に影響し得る情報を有している必要がある一方で、一般的には個々の投資家による情報収集というのは困難であるとされていることから、株式・社債等の発行者による情報開示が求められているところでございます。その際、株式・社債等の発行者が作成する財務諸表には、その内容の信頼性を担保する観点から、監査法人等による監査が求められているところでございます。
また、証券市場においては、何人に対しても一般的に不公正取引が禁止されているところでございます。個別の不公正取引として、例えば相場操縦が行われているような市場における価格というのは公正な価格から乖離し、資金配分の歪みにつながるおそれがあるほか、他の投資家が不測の損害を被るおそれもあることなどから、相場操縦行為が禁止されているということでございます。
また、内部者情報を持つ者が、その他の者との間の情報の非対称性を悪用して利益を得、又は損失を回避することは、市場の公正性を害し、市場に対する信頼を損なうことにもなるかと思います。効率的な資金配分にも悪影響が及ぶおそれがあることなどから、インサイダー取引規制が設けられているところでございます。
また、金融商品取引所におきましては、広く一般の投資家が取引に参加するにふさわしい投資物件としての適格性を判断するうえで必要な基準を定め、上場審査を行うとともに、上場管理もされているところでございます。取引所金融商品市場における取引の公正を確保するために、売買審査等も行われているところでございますし、また取引所金融商品市場における気配情報・約定情報の公表も行われているところでございます。
このほか、証券市場におきましては、サービス提供者が顧客の注文について、サービス提供者自身が直接の取引の相手方となって取引を成立させるか、証券市場などで取引を成立させるかという取引態様を事前に明示すること、あるいは、参考のところに少し書かせていただきましたが、最良執行義務等が求められているところでございます。
7ページに移っていただきまして、以上のような対応につきましては、証券市場以外の分野では必ずしもその全てが求められていないが、その理由についてどう考えるかという論点をまず記載させていただいております。
次の論点は、エンフォースメントに関係するところでございますが、証券市場におきまして規制の実効性を確保するために、刑事罰や報告徴求・業務改善命令・業務停止命令・取消処分等の行政処分に加えまして、法令違反行為を行った場合の課徴金、差し止め命令、公表といった制度が近時の改正で導入されているところでございます。
諸外国では、このほか、一般的な業者に対する民事制裁金や不当利得の吐き出しといった制度が設けられている国もございますが、どのように考えるかという論点を記載させていただいているところでございます。
さらに、このような是正措置について、証券市場以外の分野での取り扱いについてどう考えるかという点もつけさせていただいております。
次に(5)の参入ルールに移っていただければと思います。参入規制の形式といたしましては、免許、登録、届出など幾つかのものがあるかと思います。一般的に我が国で免許と申しますと、法令による一定の行為の一般的な禁止を、公の機関が特定の場合に解除するという意味を持ちまして、免許を受けた者をある程度独占的な地位に置く性質を有するものと解されているところでございます。
登録については、一定の法律事実又は法律関係を行政庁等に備える特定の帳簿に記載するということと整理されておりまして、一般的には免許を付与する場合の方が登録の場合よりも当局の裁量が広く認められていると解されているところでございます。
届出については、形式上の要件が充足していれば届出としての効果を持つと解されているところでございます。
具体的な参入規制の内容としては、例えば財産的基礎、人的構成、業務管理体制、欠格事由などが法令で記されているところでございます。複数の「機能」にまたがってサービスを提供する者に対する参入規制の適用については、必要となる人的構成、業務管理体制の詳細などを、「機能」ごとに内容が異なる場合にはそれぞれの「機能」に課された規制を併せて適用することが基本となるかと思いますが、複数の「機能」に課せられた「規制」の両方に対応するようなことができる人材・システム等を確保した上で、仮に余剰能力が生じるような場合には、それに応じた軽減を行うことなどが考えられるかという点を記載させていただいております。また、健全性規制などではリスク量に応じた対応を行うことなどが考えられるが、どう考えるかという点も記載させていただいております。
注のところでございますが、「資金供与」と「預金受入れ」の組み合わせによる信用創造など、特定の「機能」を組み合わせることで、単に「機能」ごとのリスクを足し合わせるよりもリスクが大きくなるような場合、前回までに何回かご覧いただいたと思いますが、それを踏まえた対応が必要となるのではないかと考えられます。
信用創造に関しまして、現状、銀行が受け入れた預金に対して100%の現金準備は必要とされない中で、貸付金を貸付先企業等の預金口座に振り込みまして、当該企業等が行う支払いが預金振替の形をとることなどで、貸付金の多くも預金の形で保有され、銀行は当該預金を原資としてさらに貸し付けを行うことができる上、満期変換も行うことができるというところでございます。
第2回会合でも取り上げさせていただきましたように、資産を預けて電子的に決済に利用できるなど、預金類似と言える手段が登場してきておりますが、単に「機能」ごとのリスクを足し合わせるよりもリスクが大きくなるケースとしてどのようなものが考えられるかという論点もあるかと思います。
また、諸外国では、参入のためのライセンスにつきまして、業態をまたいで横断化や柔構造化を行う、あるいは目指すというような例もございます。具体的には、参考1と2で、それぞれ英国とシンガポールの例を取り上げてございます。これらについては第1回会合、第2回会合でもご紹介しておりますので、ここの説明は省きますが、イギリスの例のように、参入のためのライセンスにつきまして、複数の「機能」をまたいで一本化した上で、共通の基本ルールと個別の業務の内容・範囲・リスクに応じたルールの整備・調整が行われているような例がございます。こうした対応についてどう考えるかという点も、あわせてお伺いさせていただければと思います。
次に、2ポツの最後になりますが、(6)の利用者資産の保護等に移らせていただきます。これに対応する「規制」の態様といたしまして、業務に応じ幾つかの規制の類型を組み合わせて、現行では規定されていると考えております。
まず、財務・健全性規制として、最低資本金や自己資本(比率)規制、ソルベンシーマージン比率規制等がございます。9ページに移っていただきまして、業務範囲規制や主要株主規制、さらにセーフティネット、分別管理等が設けられているところでございます。これらの「規制」のうち、各業態のリスク等に応じて一部が適用されたり、あるいはその程度が調整されたりする場合もございます。
まず、最低資本金や健全性規制につきましては、経済変動をはじめとする環境変化を含めまして、サービス提供者が抱えるリスクがある中で、リスクが顕在化した場合などの損失の吸収を行い、サービス提供者の経営の健全性や利用者資産の保護に寄与するものと考えられます。また、システム上重要な銀行に関しては、国際合意により追加的な資本の積み立てが求められているところでございます。
業務範囲規制につきましては、サービス提供者の経営の健全性を確保する観点のほか、本業専念による効率性の発揮、他業リスクの回避、利益相反の防止などの観点から設けられているとされています。
業務範囲規制が設けられている場合の中でも、サービス提供者本体にのみ設けられている場合、例えば金融商品取引業者でございますが、そういう場合もあれば、持株会社や子会社・兄弟会社にも設けられているような場合、例えば銀行・保険会社等の場合でございますが、そういう場合もあり、その厳格性の程度にも差異があるところでございます。
主要株主規制につきましては、サービス提供者の業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から、サービス提供者の大口株主のうちサービス提供者に実質的に影響力を行使し得る株主について、一定の場合に設けられているところでございます。
このように、サービス提供者の経営の健全性を図る「規制」というのは複数ございますが、金融システムを取り巻く環境の変化を考慮しつつ、これらの有効性や副作用についてどう考えるかという論点をご提示申し上げております。
10ページの頭のところでございますが、セーフティネットにつきましては、サービス提供者が破綻した場合などの利用者資産の保護に寄与するほか、システミックな金融危機の防止という観点からも設けられている場合もございます。なお、セーフティネットが何を保護するものとして位置づけられていくべきか、またそれを踏まえて機能別・横断的な法体系との関連づけをどう考えていくべきかについては、後日さらなる検討を行っていただくことを予定しております。
サービス提供者が破綻した場合などの利用者資産の保護については、分別管理で対応されている場合もございます。その下の参考のところに、資金決済に関する法律の例を書かせていただいております。
サービス提供者が破綻した場合などの利用者資産の保護につきましては、セーフティネットと分別管理に共通する目的とも考えられますが、その使い分けについてどう考えるかという点を論点として記載させていただいています。
また、より一般的に、健全性規制、業務範囲規制、セーフティネット等により達成される利益は共通する部分もあると考えられますが、金融システムを取り巻く環境の変化やそれぞれの「規制」の有効性・副作用を踏まえまして、これらの「規制」の間の分担についてどう考えるかという点もご提示させていただいております。
長くなりましたが、2ポツは以上でございまして、3ポツはリスクについての考え方を簡単に取り上げさせていただいております。
横断的に「規制」を適用するような場合に、同じ「機能」に属する行為でありましても、リスクの性質やリスクの大小に応じて規制の内容や軽重を決定していくということが基本となると考えられます。
しかし、制度の具体的な設計を行うに当たって、リスクの性質やリスクの大小に影響を与える要素に関し、どういったことに留意していくことが必要となると考えられるかという論点をご提示申し上げているところでございます。
11ページに移っていただきまして、最後に4としてその他の論点で4つほど取り上げさせていただいております。
(1)が金融システムのネットワーク構造の変化についてでございます。第1回会合でもご覧いただきましたように、ITの進展等に伴いまして、金融システムのネットワークの姿が、利用者が金融機関を介してサービスにアクセスするような仕組み(金融機関ハブ型)から、利用者が直接取引所に参加するような仕組み(取引所型)や、個人同士が直接取引を行う仕組み(分散型)に移行していく可能性があるかと思います。こうした動きに対応するため、規制において留意すべき点としてどのようなものがあるかという論点を記載させていただいております。
上記の取引所型や分散型におきまして、個人でも直接に金融取引を行えるような状況の実現を見据えれば、取引の局面において、例えば市場メカニズムをより活用した規制の手法を取り入れていくということが重要になるとも考えられるがどうか、という論点も挙げさせていただいております。
参考といたしまして、非清算店頭デリバティブにかかるマージン規制というのを、一定程度分散型に対応した現行の規制と思われますので、それについてご紹介させていただいているところでございます。
(2)でございますが、国際的なサービス展開への対応についてということでございます。1つ目は、金融取引が国境を越えて行われることもあるところ、どのような場合に我が国の金融規制を適用し、またどのようにその実効性を確保するかということが問題になるかという点を書かせていただいています。さらに、国境を越えたサービス展開を阻害することを避けるとともに、国際的な規制の裁定(アービトラージ)を防ぐ観点から、規制の国際的な整合性を確保するよう努めることも重要となるかと思います。
これらに照らしまして、法制面の課題についてどう考えるかという点もご提示させていただいております。
(3)のシャドー・バンキングについてでございます。これも第1回会合でご覧いただきましたように、ファンド等の銀行以外の主体が、銀行類似の金融仲介(シャドー・バンキング)を行う動きというのは世界的に見られるところでございます。
このシャドー・バンキングは、伝統的な銀行部門を補完するような有益な役割を果たしているという指摘もある一方で、銀行に対して課されている健全性規制等の規制の適用が限定的であるほか、実態把握が必ずしも容易でないというような指摘がなされることもございます。諸外国におけるシャドー・バンキングの規制といたしましては、ファンドのカウンターパーティーである銀行等を通じた間接規制のほか、投資会社やファンドの運用者に対する直接規制などの例がございます。
参考でEUの例を挙げさせていただいておりますが、資本要件規則(CRR)におきまして、投資家会社に対して自己資本比率規制等が規定されているということと、UCITSとAIFMDにおきまして、ファンドの運用者に対して流動性リスク管理等に係る規定が整備されているものと承知しております。
我が国におきましては、金融商品取引法におきまして第一種金融商品取引業者に対して自己資本規制が課されているところでございます。また、ファンドの運用者については、投資運用業者に対して登録の制度が置かれ、財産的基礎の確保等のための規定が、また、特例業務届出者に対しては届出の制度が置かれておりまして、実態把握等のための規定が整備されているところでございます。こうした対応について留意すべき点はあるかという論点をご提示させていただいております。
最後に(4)でございますが、紛争解決手段の整備等についてでございます。事案の性質や、あるいは当事者の事情に応じた迅速・簡便・柔軟な紛争解決を図る観点から、コストにも留意しつつ、金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)を整備することが適切な場合もあると考えられるがどうかという点を論点としてご提示させていただいております。
このほか、無権限取引や不正な取引が行われた場合や、取引の実行に瑕疵があった場合の利用者資産の保護につきましては、損害賠償責任の特則規定(例えば損害賠償責任の法定、損害額の推定、立証責任の転換等)や損失分担に係る規定を金融規制として設けるという考え方があり得るが、どう考えるかという論点を記載させていただいております。
参考のところでございますように、金融商品の販売等に関する法律でも、このような損害賠償責任、あるいは損害額の推定規定が取り入れられているところでございます。また、参考の2では、EUの決済サービス指令、これも前回までにご紹介させていただいたところでございますが、この中でも無権限取引や不正な取引が行われた場合、あるいは取引の実行に瑕疵があった場合についての決済サービス提供者の責任や、利用者との間の損失分担などが定められているところでございます。
事務局資料の論点は以上でございます。規制の態様に関する論点は多種多様なものがあるかと存じますが、ここで取り上げさせていただいた点を中心にご議論いただけますと幸いでございます。よろしくお願いいたします。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
それでは討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構ですので、ご発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
岩下さん、どうぞ。

【岩下メンバー】
ありがとうございます。今回の討議資料を拝見いたしまして、最近のニュースとして、麻生大臣が、たしか仮想通貨交換業者の規制について聞かれたときに、中国と韓国が規制をするということですがいかがですかということに対して、何でもかんでも規制をすればいいということじゃないよね、というご発言をされたという報道がございました。
その文脈は多分、「規制」という言葉を「禁止」という形としてお使いになっていらっしゃるのだと思います。実際、中国は禁止をしたわけですし、韓国も当時禁止するだろうと言われておりましたが、それについて、何でもかんでも禁止すればよいということではないということは全くそのとおりだと思うわけであります。
たまたま、「規制」という言葉が、そういう意味で「禁止」という意味なのか、それともきちんとルールにのっとって、規則に沿わせるという意味なのかということについて、もともと日本語は両方の意味が多分あるのだと思いますので、そこの部分について、当スタディ・グループでは当然後者の意味で使っていることは理解しておりますが、そういう発言があったということをたまたま連想しました。
その議論が昨今のコインチェック騒動によって表に出てきているわけでございまして、果たしてどのように規制をするべきかという言葉が、適切なルールに則させるべきということなのか、それともそもそも禁止をするべきだという意味なのかというところについて、何となく曖昧としたまま議論が続いています。それはなんとなれば、きちんとしたルールのある世界、例えばまさにこの中にあるような預金受け入れ、資金運用、リスク移転といったような分野と比べて、そういうルールがまだ実は十分に設定されていないような世界については、規制をするという意味と禁止をするという意味とが曖昧になっている部分があるのかなと思うわけです。
こういう観点から考えてみますと、特に今回の討議資料の後半部分で、11ページでございますが、その他の論点というところで、いきなりその他で申しわけないのですが、(1)の中で、金融機関ハブ型から取引所型、分散型に変わっていくというお話がございます。このお話は確かに非常に大きな論点としてあるところだと思うのですが、実際に金融機関ハブ型から取引所型というのは、すなわち実際に各種の権利や利用者の保護すべき資産の位置というものが、本来金融機関が保有するのではなく、金融機関以外のものに安全に保有されている状態であるときに、その取引所型という言葉を意味するのだと思われます。
そのために、例えば利用者資産の保護等に関するルールというものは、取引所型であれば相対的に軽くてよいのではないかというような意味合いを持つような形を意識するわけでありますが、ただ、コインチェック事件によってより明らかになったのは、例えば従来取引所型だと思われていたものが、実際には金融機関ハブ型のような形態のものであったということです。
すなわち、仮想通貨の取り扱い事業者が、取引所を名乗っていたにもかかわらず、実際には保管する金融資産を全て自分のところのデータベースの中で管理をしていることが明らかになってしまい、当該機関が何がしかの問題があれば、預かっている資産に影響が出てしまうことがわかったということであって、それが最近の仮想通貨取扱業者に関する規制のあり方についての議論にいろいろな波紋を広げているように思います。
何を申し上げたいかというと、もちろん仮想通貨というのは今回の議論の中でも決済の資金移動業者の中のごく一部を占めるものであって、全体の中では極めて小さなインパクトでありますが、世の中で評判になっているという度合いについては比較的大きいものでございますので、それらのものについて、実際に取引の態様であるとか技術的な内容であるとか、そういう部分がきちんと把握されていることが、何よりもこういった規制を適切に行う上での重要な論点であって、実は我々は、こういうものだろうというふうに類推して考えている部分というのが、さまざまな金融商品についてあるわけですが、とりわけ新しい、フィンテックにおいて出てきているような金融商品の中においては、そもそも権利の持ち方であるとか、破綻時の利用者の保護であるとかについての事例の蓄積がほとんどないものでございますから、それらについての実態というものが、実はまだ十分に把握できていないものがあるような気がするわけであります。
そういったものについて適切な規制を行うというのは、多分本スタディ・グループの中でも1つの重要な論点だと思われますので、それを行う場合に、そういった実際にどのような金融資産の持ち方をして、誰がどのような権利を持っていてということについて、改めて厳密な分析をした上でルールを適用するということが非常に重要ではないかということを、最近の事件を通じて感じたということを申し上げておきたいと思います。
私からは以上であります。

【岩原座長】
それでは次に植田さん、お願いします。

【植田メンバー】
ありがとうございます。いつものように非常によくまとまっている資料で、ありがたく読ませていただきました。
ただ、私の感覚だと、これはやはり、現状を非常にうまく説明されているということですが、恐らくこのスタディ・グループの役割というのは、今後どうするかというところがあるかと思います。今後どうするかというのは、つまりこの現状をもとに、改善できるところと拡張すべきところを考えていくということだと思うのですが。まず今、岩下さんからお話がありましたように、1つは、前々からも言っていますが、決済の道具というか、ツールとしての、現金以外のものが出てきているわけです。仮想通貨とか、また今後どんなものが出てくるか全くわからないのですが、何か出てくると。
そういったときに、例えば現金のようなもの、仮想通貨のようなものを使った貸金業とか、それの預金をとって貸し出しするような銀行業のようなものとか、仮想通貨建ての株式や社債を取り扱う証券業のようなものも出てきてもおかしくないのですが、恐らく今の法体系では、そもそも仮想通貨のようなものをうまく金銭として認識されていないと思われます。ですので、そこが入ってきていないからこそ、まさに規制がかかっていないという岩下さんの話につながるのです。そう考えますと、まずは第一に、決済を使うツールとしての日銀券、法定通貨以外のものを、広い意味で入れ込んできて、その生態系の中で行われるような金融業というものも、ある意味法体系で盛り込んでいくべきではないかと思います。決して禁止するとかではなくて、日銀券を使っている、法定通貨を使っている事業者と同じように取り扱っていくということだと思います。
第2点目は、そのときに、P2Pとかそういう話になると、これも何度か言っているのですが、そうはいっても家計、個人とか、それが預金の主体、資金を出す主体であり、企業が資金を調達するほうの主体なものです。あくまでも現行法では業種、金融業というものに向けた法律体系になっているのですが、どうすればいいか法体系的にはわからないのですが、何とかその一個前に戻って、家計とか企業、究極的な受け手、出し手のところから、ある程度法律的なフレームワークを考えていかないと、本当にP2Pの貸し借りが大きく出てくるようになったときには対応できないのではないかと思います。
それから、そうはいっても、私は伝統的な銀行業というのはまだ特殊だと、ここで何度も申し上げているのですが、それは8ページ目とか9ページ目に書かれているかと思いますが、個々の顧客資産の保護だとか、個々の借りている人たちの保護ということをさらに超えた、社会的な意味での、マチュリティ変換、ここにも書いてある満期変換とか、社会的に信用創造を行うというような部分というのはありますので、それは別個に機能をしっかりと立てて、それを特殊的に行っている銀行というものは、ここに書いておかないといけないと思います。そのために、特殊なバーゼル規制とかそういうものがあるわけですから、それを法的フレームワークに入れていくべきだと思います。
付随する話では、先ほどおっしゃったように、一部のプリペイドカード会社もそうですし、恐らくコインチェックみたいなところもそうだと思うのですが、顧客の資産、本来そういうことは行っていないのですが、次の決済までに滞留している資金があるような人たちがいるわけです。そうすると、銀行業に類似するようなことをやるとも考えられるので、そこのところは悪い意味で規制といいますか、しっかりと禁止していくというような方向で、銀行業の特性は守っていくべきです。銀行業にその信用創造、満期変換をやらせるかわりに、そのかわり元本まで保証する預金保険、中央銀行の最後の貸し手機能までひっくるめた、非常に強固な保護を与えるとともに、そのかわりにしっかりとした規制を与えるというようなところは制度として持っているべきだと思います。それ以外のところはもう、比較的もっと自由にやっていいというような形にするべきではないかと。これは今までどおりと言えば今までどおりなのですが、そうすべきだと思います。
最後に、これはどちらかというと今後の課題なのかもしれませんが、いろいろなところで利用者保護で、情報があまりとれない利用者を保護しないといけないということが出てきています。2ページ目とか3ページ目あたりに書いてあるのですが、そのとおりだとは思うのですが、同時に、情報産業のまさに進展で、情報コストが非常に低くなったがために、一般の方、主婦のような方でも大量に情報を得て、また大量に、あたかも専門家のようにデイトレーディングで毎日コンピューターの前に座ってトレードができるような状況になっています。ですので、そのような状況を踏まえると、恐らく、情報というものと、認知する能力を分けていくべきだと思うんです。
情報開示は恐らく、これはプロに対してでも、どんな人にでも情報開示はしないといけない。ただし、恐らくそんな情報は要らないよという、本当のプロの人にだけは、特に開示する必要はないような情報もあるのかもしれませんが、基本的には全ての人に情報はあげないといけない。ただしその上で、誰が認知できるか、認知能力があるか、それを知的に処理する能力があるかどうかというところになってくると、そこはあまり、国や政府が言えるところはないのではないかなと。
これはもちろん、認知症患者とか、おじいちゃんおばあちゃんをだます人というのは当然よくないわけですから、それは厳しい規制が必要だとは思うのですが、それ以外の場合は、例えば、極端な話ですが大学で経済学部を出ないとこの証券の取引はできない、なんていうような認知レベルに応じた規制というのは当然あり得ないと思います。ですので、そこはもう仕方なしに、情報が開示されていれば、認知するかどうか、認知する努力をするかどうか、理解することをするかどうかというのは個人の責任、というふうにどこかに書いておかないといけないと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは大野さん、お願いします。

【大野メンバー】
岩原座長、ありがとうございます。今回の討議テーマは「規制」の態様ということで、私にとって少し難しい言葉であります。自分なりには規制のあり方、規制のあるべき姿、規制の目標とすべきフレームワークといったように理解させていただきました。
その上で、2ポツ以下の各論に入る前に、私から多少全体的なコメントを申し述べさせていただきたいと思います。それは規制のあり方を初めとした金融制度のフレームワークの整備を考えていく際の基本的なスタンスであります。
私が重要と考えているのは次の4つのポイントです。規制のあり方を考えていく上では、テクノロジー、イノベーションの発展によってもたらされる利便性のメリット、光の部分、それと副作用や問題点などのデメリット、影の部分、これをうまくコントロールすることが重要と思っています。言いかえれば、利便性の向上や効率化の追求と利用者保護とのバランスをいかにうまくとるかという点に照準を絞って工夫を凝らすこと、これが肝心だと考えます。
2つ目は、目指すべき目標のリストの上位に、私としては、イノベーションの健全な発展を促し加速することを置きたいと思っています。この目標を実現するための規制のあり方としては、バランスのとれた規制の見直しを行うことだと思います。その際には、この数年で大きく前進を遂げてきた金融当局が主導する規制緩和のイニシアティブの精神を引き続き発揮していただきたいという願いを持っております。
3つ目、規制そのものについては、できるだけ必要最低限の規制にとどめる。しかし、新しく発生するような問題に対しては有効な施策を準備すること、これを基本的な心構えとするのがよいと思っております。そして、急速な変化にも対応可能な柔軟性を持ったフレームワークの構築を目指すことにも心がけたいと思っております。
4つ目、これらの目標を実現させるための手段ないしツールとしては、法制度の整備がもちろん成功の鍵を握る大きな要素です。それを補完するものとして、あわせて行為規範、ガイドライン、プリンシプル、自主規制など、これらを最大限活用することが極めて重要であると考えます。
近年の金融の分野の拡大や新規参入者の増加といった新しい環境変化への対応として、従来以上に業界団体の整備を進めること。それから業界団体、自主規制組織などに対する指導をしっかり行うこと、これらの重要性が一段と増すものと思っております。
少々長くなってしまい恐縮ですが、次に、事務局から出された論点について6つほど意見を述べたいと思います。
1つ目は利用者情報の保護です。匿名性の確保を前提とした上で、利用者情報を積極的に活用することにより、利便性やサービスの付加価値の向上を目指すスタンスで臨むことがよいと感じております。
2点目は利益相反管理です。利益相反の管理は、裏返すと事業者の競争優位性を規制により消失させることを意味します。このため、この理念を尊重することはもちろん重要と考えます。
ただ、利用者の金融リテラシーが十分に確保されて、顧客に対する情報提供が十分に満たされることを前提とすれば、過度な利用者保護を意識した規制を慎むことにも配意すべきと思います。肝心なのは、ここでも両者のバランスをどのようにとるかであると思っております。この点、海外のよい取り組みや事例と比較して、我が国の規制に窮屈になり過ぎている点がないか、よい機会なのでチェックしてみるとよいのかなと思っております。
また、ここでもプリンシプルベースでのガバナンスに重心を置くことが有効と思います。
3点目、参入ルールについて申し上げます。参入のためのライセンスにつきましては、事務局ペーパーの8ページに示されている、英国などの海外の事例は非常に興味深いと感じました。業態をまたいで横断的に、しかも柔構造を目指す試みは、非常に魅力的であります。我が国においても、その適用の可能性について検討する価値があると思われます。
4点目は利用者資産の保護です。利用者資産の保護は極めて重要度の高い課題と認識しております。顧客資産の分別管理を徹底させること、加えて、前回会合で神田先生が指摘されました、我が国の法制度においても顧客資産の権利に優先権を求めることが考えられるのではないか、との施策が非常に有益、魅力的と感じております。
健全性規制、業務範囲規制、それからセーフティネットなどとの関係については、持ち株会社などに対するグループガバナンスを確保すること、セーフティネットをしっかり整えること、この2つの条件を満たした上で、業務範囲規制は極力柔軟な枠組みにすることが、目指すべき方向と考えております。
5番目は金融システムのネットワーク構造の変化について申し述べます。分散型にネットワーク構造がシフトする主たる要因は、テクノロジーの進展などによって情報の非対称性が解消することにあると理解しております。この種の変化の結果、これまで情報の非対称性に依拠して収益を獲得してきた金融機関などは、異なる収益機会を模索すること、すなわちビジネスモデルの抜本的な転換を迫られる可能性が大きくなります。
こうした金融機関のビジネスモデルの転換の努力を後押しし、金融サービス産業のダイナミックな進化、発展を促す観点から、業務範囲規制の枠組みを広げることが目指すべき大きな方向性と感じております。
11ページの2番目の〇に、事務局が示している市場メカニズムを活用した規制の手法の導入とあります。これも重要な課題と思います。行動規範、プリンシプル、ガイドライン、自主規制機関を整備すること、それとともにサービス提供者側ではしっかりとした経営情報やサービス内容などの情報の開示を進めること、これらを通じて市場規律を発揮させることが肝要と考えます。
最後、6点目は、国際的なサービス展開への対応です。これについては、もし国を横断してライセンスのポータビリティを確保するようなことができれば、国際競争力の向上や我が国金融サービス業の海外進出が促進できると思います。また、日本における事業開拓の加速といったものにも資すると思われます。海外当局などとの交渉といった金融外交的努力を要すると思われますが、これも検討に値する野心的な課題と感じております。
以上です。ありがとうございました。

【岩原座長】
それでは加毛さん、お願いします。

【加毛メンバー】
ありがとうございます。恐縮ですが6点ございます。
まず、第1点として、前回のスタディ・グループにおいてメンバーの意見が対立した論点に、上限金利規制の問題がございました。今回の討議資料では、この点に関する言及がなく、それは上限金利規制が資金供与あるいは貸金業に特有の問題であるからかもしれません。
ただ、考えてみますと、上限金利規制は、ある取引を禁止するという非常に強いタイプの規制の在り方だと思います。前回の会合では、そのような上限金利規制を、例えば、一定の属性を有する消費者の保護として正当化することができるのではないかという趣旨のことを申し上げました。しかし消費者を保護するという場合に、情報提供によって情報格差を是正し、取引自体は禁止しないという方法もあることが、本日の討議資料では紹介されています。これに対して、情報提供による情報格差の是正という方法ではなく、一定の取引を全面的に禁止するというタイプの規制があるとすると、それを今回の討議資料においてどのように位置づけるのか、あるいはこのスタディ・グループの検討の中でどのように位置づけるのかということが、議論の対象となるように思います。上限金利規制は、貸金業にのみ関係するわけですが、しかし、仮に貸金業に関する上限金利規制に正当性があるとすると、他にも消費者保護の観点から取引を禁止した方が良い取引も存在するかもしれません。
2点目は、2(2)利用者情報の利活用と(3)利益相反管理の両者にかかわる問題です。利用者情報の保護につきましては、適切に利用者から同意を取得するなど利用者の保護という観点からの問題があるわけですが、利用者保護が適切に行われていたことを前提として、さらに情報を利活用する局面において、競争法上の問題等が存在するのではないかと思います。
例えば、決済等に関する多量の情報を有する企業が存在し、当該企業がグループ内の会社に情報を優先的に提供してグループ全体で利益を上げるという場合を想定します。この場合において仮に同種のサービスをグループ外の別の企業がより安価に提供することができるとすれば、顧客が不利益を被ることもあるように思います。情報の利活用については、以上のような競争法上の問題についても考えておく必要があるように思います。
3点目は、利用者財産の保護についてです。先ほど大野メンバーから、利用者財産の分別管理と利用者に対する優先権の付与を制度化することへの言及があり、私も賛成するところです。そのことを前提として、諸外国の法制などをみていくと、利用者財産の保護にも様々な形態がございます。例えば、サービス提供者が顧客のために取得・保有する財産のほか、サービス提供者が固有財産として保有する同種の財産についても、顧客に優先権を与えるという法制も存在しています。利用者財産の保護をどのように制度化するのかについては、いくつかの選択肢があるだろうということを指摘しておきたいと思います。
4点目は討議資料12ページの無権限取引についてです。無権限取引の問題も、広くいえば利用者資産の保護であると思いますが、討議資料の前半部分で言われている利用者資産の保護というのは、主としてサービス提供者の倒産リスク等からの利用者財産の保護であり、無権限取引等からの利用者財産の保護と区別して議論されているものと理解しました。
その上で、まず無権限取引については、何よりも、無権限取引がされないようにするという意味でのセキュリティの基準の確保が第一課題になると思います。
そのことを踏まえた上で、無権限取引が起きてしまった場合に、私法上の責任に関する特則を法定することは十分に考えられる選択肢だろうと思います。
ただ、そのような規定を設ける際には、無権限取引の私法上の位置づけについて考える必要があると思います。無権限取引が生じた場合の当事者間の法律関係を明らかにしたうえで、サービス提供者の責任について規定を設けるのが望ましいだろうということを申し述べておきたいと思います。
5点目と6点目は、レベルの異なる話題となります。まず、5点目として、本日お配りいただいた参考資料の図表につきまして、ここで挙げられているのは金融庁が所管する業態であると思います。他方、割賦販売業者のように金融の機能を有する業態はほかにもあるので、中間整理においては、所管を越えた提言をすることができれば良いように思いました。
最後の6点目ですが、やはり大野メンバーからご指摘があったところですけれども、本日の討議資料は法令による規制について取り上げられておりますが、当然のことながら、規制にはさまざまな選択肢があるところであり、ガイドラインや自主規制団体による自主規制などの選択肢も含めて検討しなければならないのだろうと思います。
例えば4点目として申し上げた無権限取引については、法律によって規定されているものもあり、あるいは全国銀行協会の申し合わせのようなソフトローで対処しているところもあります。それらを平準化していくことは重要な課題であると思いますけれども、その際に、どのような規制の手法をとるのがいいのかということを検討する必要があるだろうと考えます。
以上、長くなりまして申し訳ございません。ありがとうございました。

【岩原座長】
それでは次に坂さん、お願いします。

【坂メンバー】
私のほうからは、大きな項目についての意見を3点と、短い意見を3点申し上げたいと思います。
大きな項目の1点目ですけれども、1ページの「利用者に対する情報提供等」の点です。これらは、利用者保護としての意義を有するものでありますけれども、より広く、適切な資金の流れをつくる基盤であるという意義も確認しておきたいと思います。企業の持続的成長と安定的な資産形成のためには、資金がより効率的な先、より社会的に意味のある先に流される必要があります。勧誘規制における情報提供義務ですとか、適合性原則、運用規制における忠実義務等は、利用者保護としての意義も有しますけれども、効率的な先、社会的意義のある先への資金の適切な流れを実現するための重要な基盤であると思います。こうした役割が適切に発揮されるよう、制度を考える必要があると思います。このことは、市場機能を発揮させるということでもあると思います。
これを前提として、課題と考えるところを3点申し上げたいんですが、1つは、現状の勧誘の状況についてです。現状、投資勧誘の現場では、投資者は単なる投資商品の情報提供ではなくて、どういった商品がよいのかという投資判断に関する助言を求める傾向が強まっている面があるのではないかと思います。こうした傾向に鑑みて、勧誘のあり方についてはブラッシュアップすることが必要かと思われますし、この観点から顧客本位の業務運営で指摘されている点は重要と思います。
それから、2つ目ですけれども、これは前回指摘したところでもありますが、現物を購入させて、これを預託させる形をとる預託型の投資商法により、数百億円単位ですとか数千億円単位の被害が繰り返されており、昨日もこの種の案件について規模の大きな破産決定が行われております。この種の投資商法について、参入規制を課すとともに、継続的な運用規制を課すことは重要な課題となってきていると思います。
それから、3つ目ですが、金利規制についてです。金利規制は、別にお配りいただいている参考資料の中では、適合性の原則の左に伸びているオレンジのところに位置するものかと思いますけれども、特に中小事業者への適切な資金の流れの確保という観点でも、重要な意義を有するということを指摘しておきたいと思います。
金利規制の必要性については、借り主における問題の先送り傾向ですとか、将来の問題を過小評価する傾向があることが指摘されていますけれども、特に中小業者において経営者個人の経営判断に依拠するような業務運営が行われている場合には、こうした傾向は消費者と共通しておりますし、従業員や取引先を抱えることから、むしろこうした傾向が強まるとも思われます。中小企業が高金利での借り入れを求める場合、本来中小企業に必要とされているのは、持続不能な一時的な高利の資金ではなくて、事業の見直しやそのためのさまざまな助力である場合が多いように思われます。単なる高利での資金提供ではなく、こうした事業の見直しへの助力を伴う高くない金利での融資が、当該企業の持続的成長に資すると思われます。
もとより高利による借り入れは、それ自体当該企業の競争条件を悪化させるものでもあります。かつて高金利による商工ローンが社会問題化した経過を十分踏まえる必要がありますし、企業の持続的成長の確保ないし成長戦略の観点からも、金利規制は重要な役割を担うものと思います。
次に、大きな項目の2点目ですけれども、参入規制に関してです。参入規制に関しては、新規参入を適切に確保するという観点も重要でありますけれども、悪質な業者や不良な事業者の参入を防ぐ、あるいは参入業者の業務の適正を確保するという観点が本来重要であろうと思います。参入要件が緩く、詐欺的な資金集めやいいかげんな資金集めがしやすければ、悪い業者は必ず入ってきます。相応に適切な高さの参入要件を設ける必要があると思います。
また、業務の適正を確保するための適切な要件というのは、ある程度機能によって異なってくると思われます。こういった機能別に応じた適切な要件を定める必要がありますし、参入に当たって、その際に業務改善を求めるということも重要な機能かと思います。
それから、金融機関の業務の適正は参入要件、行為規制、行政監督等により図られておりますけれども、これらは相関関係にあると思われます。参入要件をもし低目にする場合には、行為規制は比較的高目のものを設定する必要があると思います。こういった点についても留意が必要かと思います。
8ページで、参入資格について、業態をまたいで横断化、柔構造化するという例が紹介されています。完全に1つのライセンスで全ての機能を行えるとすることは難しいと思いますけれども、1つのライセンスのもとで許可を追加的に取得し得るというようなあり方は、一つのあり得る姿という印象を持っております。
それから、大きい項目の3点目ですけれども、11ページのネットワーク構造についてです。このような形態の資金の流れが、適切な資金の流れにどのように資するかということは、慎重に検討する必要があると思います。ともすると、資金の受け手が事業計画の練り上げよりも資金獲得の宣伝に注力し、それを見抜けない投資者が資金を投じてしまい、その結果中途半端な事業計画による資金、資源の浪費が行われるという事態が生じることも懸念されます。また、悪質な業者が詐欺的な資金集めのためにプラットフォームを悪用し、被害を及ぼすということも心配されます。分散型の取引では、事業計画等の審査の適正確保と、悪質な業者の排除が課題になるものと思われます。
この点、対応としては、資金の出し手を事業計画や事業者の適正を判断できる投資者に限定するというやり方が一つあり得ると思います。P2Pレンディングにおいて、資金の出し手に貸金業の登録を求めるというあり方は、このような機能を担い得る面があるように思われます。
これとは別に、プラットフォーム業者に事業計画や事業者の審査を行ってもらうということも考えられます。このスキームは、現行法では金商法における投資型クラウドファンディングと似た枠組みになると思われます。現状、投資型クラウドファンディングでは、事業計画の審査については各業者ですとか業界団体において、その充実に向けた努力が行われているところと思います。
制度検討に当たっては、プラットフォーム業者、資金の出し手がいかなる情報流通、情報共有のもとで審査なり投資判断を行っていくかが問題となりますけれども、審査や投資判断能力を深める方向にイノベーションを促進できる制度枠組みが望ましいように思います。
長くなって申しわけありません。短目の意見をあと3点申し上げたいと思います。
1つ目は、7ページの2つ目の丸のところです。不当利益の吐き出しの制度について触れられております。この点、米国では行政機関が裁判所に違法行為の差し止めや資産凍結の申し立てを行って、裁判所の発令により財産管理人が事業者の資産を保全し、被害者に分配するなどの制度があります。実際、我が国の投資家の資金が米国に流れた事案において活用されている例もあります。違法業者に対応するに当たって、迅速な資産凍結、資産保全が求められることに鑑みれば、米国のような制度は必要であり、その導入を検討すべきと思います。
それから、次に、11ページの国際的なサービス展開のところですけれども、投資以外の分野では、投資金の送金先が海外となっているものですとか、海外の投資商品を取得させるもの、海外の無登録業者による被害事例が少なくない状況にあります。こうした点に鑑みますと、海外における法執行の充実を図るということは重要な課題と思います。
最後になりますが、12ページの紛争解決手段の整備のところです。紛争解決手段の整備は、今後の制度設計を考えていくに当たって重要と思います。特に金融ADRについては、現在整備されているところと整備されていないところがありますけれども、整備されているところについては一層の充実を図る必要がありますし、整備されていないところについては確実に整備をしていくことが必要と思います。
それから、行政資源が有限であることや、新しいサービスへの機動的対応が必要であることに鑑みますと、契約者、当事者による私的なエンフォースメント機能の充実、強化を検討すべきと思います。例えば勧誘規制における私的なエンフォースメント機能を発揮させる観点からは、適合性の原則や説明義務の履行について、金融機関側に立証責任を負わせることなども検討すべきかと思います。こういった規制のあり方は、適切な勧誘に向けての事業者側のイノベーションを促進する面もあり得るように思います。
以上です。

【岩原座長】
その次に、舩津さん、お願いします。

【舩津メンバー】
ありがとうございます。私は、5点ほど申し上げたいと思います。
まず、総論として、参考資料としてつけていただいたものを見ながら感じたところなんですが、金融の機能がアンバンドリング化するということで、規制もアンバンドルしよう、ライセンスもひょっとしたらアンバンドルというか、個別にやっていこうということになるのかもしれないですが、アンバンドルしたときに、ちょっと言い方が難しいんですが、デフォルトルールというものをどう設定するのかというのは気になっております。
先ほど岩下メンバーから、今般の事例で取引所という看板をつけているんだけれども相手方になっていたというお話がありましたが、これなんかはまさに典型的だと思うんですけれども、ある特定の看板をつけたときにどういうデフォルトルールになっているのかで、利用者の保護といいますか、利用者の意識は大きく変わってくるような気がしております。それこそ例えば銀行ですと、銀行という名前がついているからこそ、そこに行けば元本保証のある形での金融商品が買えるんだというのが少なくとも今までのところだったかと思うわけですけれども、今後それをどうしていくのか、アンバンドルしてしまうと、そういうあたりがかなり難しくなってくるのではないかなという気がしております。
銀行は元本保証があるというのがデフォルトだとして、例えば銀行で元本保証がないものを売ると、元本保証がありませんと言わないといけないということになっているかと思います。元本保証がないものについては、情報の非対称性が少ないということが討議資料に認識として書かれているわけですけれども、これは今までがそうだったという話でして、むしろこれからアンバンドルしていった場合には、これは元本保証がありますとか、あるいは、元本保証はほんとうにあるのかというと、実は銀行自身の信用リスクというか倒産リスクにさらされていて、そのうちのセーフティネット分だけがもらえるんだという説明をしなければいけなくなるんじゃないかということをつらつらと考えておりました。これがまず1点目でございます。
それから、2点目は、業法の一般規定についてです。業態ごとに規制をマトリクスで並べてみますと、何らかの規制が条文上あったりなかったりということがわかってくるわけでして、それを、同一の機能であれば必要なものについては追加していこう、というのは、確かにそうかなと思うわけですけれども、ただ、一般規定に関しましては、これをほんとうにそろえていいのかというか、そもそも業法の中に一般規定を置いておくことがほんとうにいいのかということは、もう一度考えてみたほうがいいのかなという気がしております。
例えば誠実義務だとか忠実義務といったものに関してですけれども、実はいろいろなところに入っているんだけれども、内容が少しわかりにくいというか、読む人によっていろいろな解釈が出てきているということがあるのかなと思います。そういう一般規定については、行政処分の根拠になるのかならないのか自体が争いうるかとは思うわけですけれども、先ほど大野メンバーからもありましたが、法規制以外の方法でも何らかの規律ができるんだということを考えますと、行政処分の根拠ではなくて、単なる行為規範だということであれば、むしろそういったものは、例えば忠実義務だったら顧客本位の業務運営という形のプリンシプルでやっていけるのではないかと。逆に、行政処分の根拠ということで使うつもりがあるのであれば、むしろ機能ごとにどういうものが誠実義務に違反する、忠実義務に違反するんだということはきっちりと明記しておく必要があるのではないかというのが2点目でございます。
3点目は、利用者情報の保護に関する規制のあり方のところでございます。先ほど来討議資料を含めて私が聞いていますイメージですと、情報をどう利用するのかということを中心に議論されているわけですけれども、これは完全に私の消費者としての意見ですが、利用させたくないという人も一定数はいるんじゃないかという気がしております。確かに匿名性を確保した上で利用するのはイノベーションに資するということは事実かとは思いますけれども、ただ、私の消費者としての気持ち悪さをいいますと、業者の社内で処理がされて初めて匿名性が担保されるということですので、そもそも業者の内部で処理を失敗すれば匿名性があるとは言えないということになってしまうわけです。そう考えますと、全て利用するんだと、利用させないということはないんだという形での規律は、利用者の保護としてはあまり望ましくないことなのではないかなという気がしております。
もっとも、そういう気持ち悪いと思う人については、情報を利用すると宣言している業者を選択しなければいいんだということなのかもしれませんけれども、イノベーションという観点からは情報を利用したほうがいいということになってくると、利便性が高い業者ほどどんどん情報を利用していくということになり、どうしても情報の保護のほうに重点を置いた業者というのは競争上不利になってくる。そうすると、市場ではなくて法的な規律として、とりわけ金融のセンシティブな情報だと、何らかの「利用されない権利」を確保する制度というものが必要なのではないかという気がしました。これはかなり後ろ向きなご意見で、異論はあろうかと思います。
それから、4点目は、業務範囲規制です。これにつきましては、大野メンバーから既にありましたけれども、私も業務範囲規制というのはなるべく見直す方向で考えたほうがいいのではないかという気がしております。このところの金融周りの改正では、海外、欧米でできることがなぜ我が国ではできないのかという観点から、規制緩和という議論がされてきたような気がしております。これも私の消費者としての感覚ですけれども、トータルでの金融サービスというものがワンストップでできるということ自体が、利用者利便なのではないかという気がしております。
そう考えると、業務範囲規制を見直していったほうが、利用者にとってはいいのではないかという気がしております。もっとも、現在では法人格は分離しているんだけれども、グループトータルでは総合的な提供ができているからいいではないかということもあるかもしれないですけれども、そうであれば、逆になぜ法人格を分離しなければいけないのかということを改めて検証する必要があるかなという気がしております。この点に関しましては、顧客資産の保護とか利益相反管理というあたりが重要になってくるのかもしれませんけれども、同一法人格であってもきちんと管理すればリスクの遮断とかは可能であると考えられますので、そのあたりは見直していけばいいのかなという気がしております。
最後、5点目は、簡単な感想ですけれども、セーフティネットと分別管理の使い分けという話ですが、何となく見ておりますと、お客さんのものを預かっているという形態に着目すれば、結局のところ預かっているものを返すというのが一番顧客の保護が厚いのではないかと思います。そうすると、分別管理というものが原則になるのではないかなという気がしております。ただ、銀行の場合ですと、信用創造するので、分別管理していたのでは信用創造できないということになるので、それはできないということになるかと思います。先ほど植田メンバーから、資金が滞留するような業者が銀行類似の行為をすることを禁止していかなければいけないのではないかというご意見がありましたけれども、これは分別管理をしてしまえば使えなくなるのではないかなという感想を持ちました。
以上です。

【岩原座長】
それでは、次に永沢さん、お願いします。

【永沢メンバー】
ありがとうございます。私からは、全体で4つ意見を申し上げます。まず、利用者に対する情報提供等のあり方の2ページ目の預金に関する記述のところですが、小さなことに引っかかって恐縮なんですが、非対称性が比較的小さいという表現に違和感があります。預金については、サービスの内容やリスクなどがわからなくても、情報の非対称性が大きい人が仮にいたとしても、そういう人でも問題なくスムーズに取引に参加して利用できることが期待されており、そうした期待に応えるという意味の保護が大事であり必要とされていると考えます。
この点は先ほど植田メンバーからご指摘のあった認知力のお話にもつながるわけですけれども、全ての方が高い認知力を持っているわけではなく、人によって認知力には差があるわけです。情報をきちんと収集・分析できなくても、支障なく生活できる程度の金融インフラを享受できるということが、国民・利用者の権利のように思いますし、そこは金融制度が一番大事にして守らなくてはいけないのではないかと思います。
その一方で、次の3ページの、投資性のある商品とか資産運用に関しましては、自己責任を十分に問える程度の情報開示というのが必要という点はその通りと思います。ただし、投資生のある商品の利用者が自己責任を十分に問える程度というのが、人によってかなり違ってくるということを申し上げたいと思います。この辺りはこれまでも制度整備が進められてきたところではありますけれども、高齢化社会も進んできておりますし、投資者像というのも考え直さなくてはいけないのではないかと思います。先ほど加毛先生からお話があったような方向で整理していくことに賛成いたします。情報開示を進めることで解決していける問題と、情報開示しても解決できない問題とを整理したうえで、それともう一つ、先ほど申し上げました投資者像という視点をかけ合わせて、情報提供のあり方というのは考え直していく必要があると思います。
続いて、利用者情報の保護に関するところは、先ほど舩津メンバーがお話しされたことに私は全く同感でございまして、イノベーションが進められる中で情報が利活用されて、生活が豊かになっていくことはもちろん望ましいことですし、その方向性は私も応援したいところなんですけれども、出発点として、個人のデータは個人のものというところが押さえられなくてはいけないと感じております。例えば利用者が事業者に削除を求めることができる権利といったものも一方で必要なんだろうと思っております。個人のデータは自分のもので、自分が管理できるという安心がない限りは、たとえ技術的イノベーションが進んでも、利用者がみんな利用するようになるかどうか疑問に思っているところでございます。
それから、3番目といたしましては、取引所のお話があった11ページでございます。ネットワーク構造のところでございますが、一般人の理解では、取引所というのは歴史の中で形成されてきた取引形態だと理解しており、いろいろな問題点を克服して取引所に集中するという形ができてきた理解しております。そのように考えますと、本日お示しいただいた姿というのは、取引所以外の取引形態、ある意味で原始的な取引形態にイノベーションによって回帰していく方向なのかなと私なりに解釈しているんですけれども、そのときに、なぜ取引所に集中させなくてはいけなかったのか、その事情だとかを踏まえて、果たしてその時に問題となった問題が克服されているのかどうか、それがイノベーションによる技術で克服できるものなのか、規制によって克服すべきものなのかというところは確認していく必要があるのではないかと思います。公正な取引が行われているのかを確認できるような体制なのかどうか、その点が取引所取引以外の分散型とか金融機関ハブ型ではどうなんだろうかというところを今一度確認していく必要があるのではないかと思いました。
最後に、坂先生のご意見と重なりますけれども、金融ADRがまだ整備されていない分野があるということを申し上げたいと思います。加えて、本日の論点からは外れてしまいますが、金融に関する紛争の裁判外での解決は、国民センターなど金融ADR機関以外でも行われており、金融庁の所管ではないかもしれませんが、そこでの金融機関に服していただきたいルールについてもこちらでご検討いただけたらと思っております。坂先生からもお話がありましたように、消費者側に立証責任があるという状況は消費者側には酷なことで、そのために紛争の解決が難しいことも多いのが実情です。その点、金融ADRは金融機関側に片面的な義務がいろいろ課されていますから、紛争解決がかなりうまくいっているように思いますが、消費者の中には金融ADR機関以外のADRを利用したいという方もいらっしゃいますので、金融分野における消費者紛争の広い意味での解決のために、この機会に検討をお願いできたらと思います。

【岩原座長】
それでは、次に福田さん、お願いします。

【福田メンバー】
ありがとうございます。事務局の資料は非常にまとまっていますし、参考資料は非常によく理解できる資料になっていると思います。このように縦割りに金融行政を見ると、今の仕組みはよくできていて、これまでは少なくとも基本的にはうまく機能してきたということなんだろうと思います。
もちろん縦割りで見ても、新しい機能というかサービスが生まれてきて、新しく追加しなければいけない問題はないわけではありません。例えば送金なんかでも、これまでは10円単位の送金などはあまり想定していなかったと思いますが、それができるようになっている。ただ、新しいイノベーションということを考えたときには、8ページにもありますように、横断的な問題というのが一番ビジネスチャンスとしては大きいし、そういう横断的、包括的な問題をどう考えるかということが常に大きな問題になってくると思います。
そのときに、イノベーションとリスクをどう考えるかというのは、常に難しい問題だと思いますし、どっちを重視するかで全然方向性というのは変わってくるんだろうと思います。この会議では、一体どっちを重視して議論しているのかというのは、私は必ずしも理解はしていません。例えば日本の金融業をどう発展させるべきかという観点であれば、もうちょっといろいろな挑戦的な可能性を模索すればいいでしょう。一方、そういうことが発展したらどういう問題があるかということを重視すれば、もう少し保守的に議論しなければいけないということになるんだろうと思います。
そういう意味では、従来は金融庁は基本的には経済や金融のブレーキ役の側面が非常に強くて、現行法なんかも基本的にはブレーキを中心として考えているルールだったと思います。けれども、新しい金融庁の考え方というのは、もちろん従来型のブレーキも非常に重要だけれども、経済のアクセル的な側面も重視するというスタンスがとられている。そうした中で、ブレーキとアクセルのどっちを重視して問題を考えるかということは、5ページにもありますけれども、非常に難しい問題であるし、なかなか結論のない問題なんだろうとは思います。
ただし、イノベーションが起こってきたときに、どういうリスクが顕在化するかというのは、事前にはわからないことがあまりにも多いということなんだろうと思います。例えばこれは新しい金融技術とは関係ないですけれども、前々回ですか、議論がありましたが、リーマンショック前には銀行セクター以外で大きなシステミックリスクが発生しました。しかし、発生するまでは、そんなに大きなシステミックリスクをもたらすとあまり学会でも理解はされていなかったと思いますし、規制当局もそこまで強くは思っていなかったんだとは思うんです。けれども、実際には非常に大きなシステミックリスクがあったということが結果的にはわかった。どういうリスクが顕在化するかが事前にはわからないときに、あらゆる可能性を考えてルールをつくっておくのか、起こったときには徹底的に対応して、その後はそれに対応する仕組みをつくっていくのかというのは、なかなか難しい問題なんだろうと思います。
それから、いろいろな業態が横断的になってくるときに、もちろん皆さんも議論されたように利用者が一番わからなくなってくるという問題があると思います。そのとおりなんだろうと思います。利用者にいかに理解してもらうかと同時に、自己責任をどこまでとらせるかということは重要な問題なんだろうと思うんです。けれども、ただ、ほんとうに新しい技術がどんどん起こってくると、規制当局自体もこの業者はどこまでをやっているのかというのが非常にわかりにくいと思いますし、そもそもやっている業者自体も、自分たちがどういう機能を担っているのかということすらわかってない形でサービスを提供し始めるということもあるんだろうと思います。
そういう意味では、ルールをつくるということだけじゃなくて、常に規制当局といろいろな利用者、業者が対話をしていかないと、一回ルールをつくっちゃったらそれでおしまいということではなかなか対応できない時代に来ていると思います。決してリスクを無視していいということではないと思いますけれども、他方では、イノベーションというのも常に大事なんだという視点に立って、こういう問題をどう考えればいいかということはこれからも議論を深めていかなければいけないということなのではないかと思います。
私からは以上でございます。

【岩原座長】
それでは、次に神作さん、お願いします。

【神作メンバー】
ありがとうございます。現行の規制をまず前提にして考えてみますと、一番問題なのは、まさにこのスタディ・グループの問題意識でごありますけれども、同一の機能、同一のリスクを提供しているのにルールが違う、あるいはそもそも一方にはルールの適用がない、ルールが存在しないような状況が生じており、それを是正することであると思います。
そのような観点から議論をする際に、これまでもメンバーの多くの先生からご指摘がございましたように、イノベーションの健全な発展を目的とするとともに、個別的な意味ではなくて、まさに利用者がそういった業態、業界等を信用できるという一般的な意味における「利用者保護」が重要な視点になってくると思います。規制の観点から申し上げますと、オープンエンドな、開かれた、一般的な概念が必要になると思います。例えば決済について申し上げますと、銀行法の改正で電子決済等代行業という新しい規制が入りましたけれども、これもあくまでも銀行預金が支払手段の場合であって、かつ、銀行に開設された銀行口座だけを対象にしていると思います。そのような意味では、今後の発展等をにらんだ場合には、もうちょっと広い意味での例えば支払口座とか支払手段とか、横断的・機能的にカバーすることを可能にする一般的な概念が必要なのではないかという気がいたします。
他方、投資性のある金商法の世界では、一部の仮想通貨のように投機・投資の対象となっていると考えられるものが、必ずしも現行の有価証券の概念等の中には含まれないという場合が生じています。ここでも、何らかの形で投資適格があるものを拾い上げるような一般的な概念が必要になるのではないかと考えております。その際、先ほども申し上げましたように、イノベーションの健全な発展と一般的・抽象的な意味での利用者保護という観点から、横断的・機能的な規制を可能とする一般的な概念についてはおそらく広く網をかけながら、適用除外等により柔軟な規制枠組みをつくっていくことが考えられると思います。
次に、規制の内容についてでございますけれども、事務局の非常によく整理していただいたペーパーを拝読し大変勉強させていただきましたが、1点追加し得るのではないかと思いましたのは、利用者資産の保護等という保護法益があって、このためには例えば現行のルールも改善すべきだというご提言がございます。この点は、確かに全くおっしゃるとおりだと思うのですが、業者の倒産まで至らなくても、特に決済、あるいは資産運用、リスク移転等のサービスがきちんと約束どおりに果たされないということについて、もちろん個別的な保護は民事法で実現されることになると思うのですけれども、もう少しマクロに見た場合に、先ほど私は一般的な意味での利用者保護と申し上げましたが、抽象的な言葉で言うと、業務の健全性の確保という観点を入れる必要があるのではないか。特に決済の分野のように、ほぼ全ての国民が利用するようなサービスについては、業者の破綻に至らないケースであっても、きちんとやっていただく必要がある。そのために、業法的、監督法的な規制が必要になると思います。
先ほど一般概念を入れる必要があるのではないかということを申し上げたことと、ある意味で表と裏の関係になると思いますけれども、そうすると、例えば業務範囲規制のような規制は必然的に見直さざるを得なくなり、また、そうなると、利益相反規制等も必然的に見直さなければならなくなると思います。そのときには、先ほど申し上げたような視点をバランスよく取り込んだ規制、さらには、これもほかのメンバーの方からご指摘がありましたが、顧客本位の業務運営の方針というソフトローのようなものも存在しますので、法規制以外のさまざまな規制、規律、社会規範等の適切な組合わせに十分配慮しながら、規制のあり方について検討していく必要があると思いました。
以上でございます。

【岩原座長】
次に、戸村さん、お願いします。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。討議資料に示されている各論について、5点自分の考えを申し述べさせていただきたいと思います。
第1点は、7ページの2の(5)の参入ルールについてどう考えるかという点について意見を述べたいと思います。先ほど福田先生がおっしゃったように、イノベーションというのはすごく大事だと思うんですけれども、その観点から、参入障壁ができるだけ低いほうがいいというのはどのメンバーの方も合意するところだろうと思います。その目的を考えると、自己資本比率のようなリスク量に応じた規制を活用していくことが望ましいように思います。もう一つ、代替的な規制のツールとして、人的構成や業務管理体制などの外的な要件を求めるということもあると思うんですけれども、こちらのほうは、外的な要件を仮に厳しく求めたとしても、運用時に実際に従業員が手抜きをするようなモラルハザードというものは排除し切れないということに留意すべきだろうと思います。
こう考えますと、小規模事業者にとって負担の大きい固定費になりがちな体制整備の外的要件は柔軟なものにするかわりに、事業規模に応じて事後的な損害賠償義務に耐え得るような健全性規制を課すという考え方もあり得るかと思います。こう申し上げますと、規制を緩くしたほうがいいんじゃないかと聞こえるかもしれませんが、そういうことではなくて、先ほど坂先生がおっしゃられたような規制の目的は所与として、体制整備か健全性規制かチョイスがあり得るのではないかという視点であります。それが第1点です。
第2点目のポイントは、同じ項目の、機能ごとのリスクの足し合わせによってリスクが大きくなるケースがあるかという問いでありますけれども、この問いについては、原則システミックリスクを生じさせる機能の組み合わせは何かということを考えればよいと思います。その中の一つは、討議資料にありますように、短く借りて長く貸すような満期変換を行う機能の組み合わせがあると思います。
もう一点、討議資料に必ずしもないもので、満期変換以外のもので考えられるのは、為替機能と短期の資金供与機能を組み合わせて、現在銀行が行っているつなぎ融資のようなサービスもなくなってしまうと、例えば98年に我が国が経験した大きな不況をもたらすような大きなシステミックリスクを生じさせると思いますので、満期変換以外でも加重的な規制に服するべき機能の組み合わせはあるだろうと思います。それが第2点目です。
第3点目については、11ページの4の「(1)金融システムのネットワーク構造の変化について」ですけれども、ここに述べられているのは、例えば現在の機関投資家及び金融機関の間の店頭取引のような形態が個人間に出てくるのではないかという問いだと思うんですが、もちろんそういうことはあり得ると思います。そのような場合に、市場による規律づけが重要であるという原則は私も賛成するところであります。
その際に、実際にどのような運用がされるだろうかと想像すると、プラットフォーム事業者がいて、プラットフォーム上で個人間の金融取引が行われるんだろうと想像いたします。そうしますと、個人間の店頭取引のようなものがあらわれた場合、プラットフォーム事業者への例えば利益相反防止義務であるとか健全性規制を整備していくというのが重要であろう。そういう基盤があると、ここでも述べられているような市場ベースの規律づけということも可能になっていくのではないかと思います。それが第3点目です。
第4点目は、同じページのシャドー・バンキングについてですけれども、これは私が申上げるまでもないことだと思いますが、シャドー・バンキングの問題点は、セーフティネットがない形で満期変換が行われ、短期債務のロールオーバーが難しくなった際に、システミックリスクが顕在化したことだと思います。そう考えますと、シャドー・バンキングへの対応としては、証券業者全体への規制で対応するよりは、満期変換を行っているサービスを識別して、そういうサービス、例えば特別目的会社があった場合には、そのような法人に対して漏らさずに加重的な規制を課していくことが必要だと思います。それが第4点目です。
最後は、13ページ目のその他の論点があるかという問いなんですけれども、私が追加の論点として申し上げたいのは、電子決済の普及に関連するものであります。従来の現金の支払いによる物の購入であれば、物権の対象物の交換だったので、売買を簡単に定義できたと思います。ですけれども、最近増えておりますように、電子商取引業者の発行するポイントのような電子台帳上のポイントによって商取引の決済が行われるようなことになった場合、決済手段が物権の対象物でなくなるために、電子台帳上の記録が売買の決済なのか、もしくは贈与の記録なのか境目が曖昧になるという問題が今後生じ得ると思います。資金決済の定義が曖昧になると、その結果、金融規制の境界も曖昧になってくると思いますので、これは法学への課題というか、質問のような形になりますけれども、電子的な資金決済と単なる贈与の電子的な記帳をどう区別するかは、はっきりさせたほうが望ましいと思います。
以上です。

【岩原座長】
次に、翁さん、お願いします。

【翁メンバー】
ありがとうございます。今日のタイトルは「規制」の態様ということでございますけれども、「規制」の態様というのは、規制のその分野での可否と同時に、どういう規制の手法を選ぶかも非常に重要な論点であると思います。
この点については、大野メンバーほか、いろいろな方がご発言されたんですが、特に最近の金融環境の変化でこういったことを意識する必要が出てきているのではないかと思っております。例えば、イノベーションのスピードの速さは自主規制とかソフトロー的なものの必要性を惹起していると思いますし、業務の複雑化、多様化は、ルールだけでなく、ルールよりはプリンシプルで考えていく必要性が出てきていると思います。また、さまざまなビジネスモデルが出てきているということやその発展性を考えますと、ルールというよりはインセンティブ・コンパティブルな市場規律を使うという考え方も入れていく必要があると思います。また、これだけ金融というものの外縁が広がってきますと、金融庁の監督の資源を考えますと、むしろその新しい業者のガバナンスや内部管理をいかに活用していくかという視点も非常に重要になってくるのではないかと思います。ですので、「規制」の態様という言葉を使うのであれば、こういった視点も十分留意して考えていく必要があると思います。もちろん、これをあまり頻発しますと、裁量的になるとか、いろいろな批判はあるとは思うんですけれども、金融環境の変化を考えますと、規制の可否に加えて、こういった工夫が必要だというのが、まず全般的なコメントでございます。
それから、幾つか気がつきました点につきまして、コメントいたします。2ページで、先ほど何人かの委員の方がご指摘になりましたけれども、預金のところについては「単純で元本の毀損を通常予定していない」という記載がございまして、「これに対し、~社債等の発行者については」と書いてございますが、預金は、セーフティネットの範囲の預金は保護されますけれども、大口預金については、もちろん基本的には銀行もうあまりつぶれないだろうと認識はされているのかもしれませんけれども、やはり銀行の信用リスクがないわけではないので、これについては、しっかりとディスクロージャーする必要がありますし、預金があまりにも特別であるという位置づけをし過ぎると、後で申し述べるようなコストの大きさにもつながっていくと思いますので、その辺は少し注意して書いたほうがいいのではないかという印象を持っております。
4ページの利益相反のところにつきましては、先ほど神作先生からもご指摘がありましたけれども、これから業務範囲規制の大きな変化があることに従って、利益相反はいろいろ管理が重要になってくると思うんですけれども、ここはやはりプリンシプルの考え方を入れて考えていくことが必要ではないかと思っております。
参入規制のところにつきましては、私も、基本的には新しいイノベーションを発展させるためには参入は促進していくことが望ましいとは思っております。しかし、免許、登録、届出というところで、特に最近の仮想通貨交換業者なんかを見ていますと、やはり形式よりも、業務管理など実質的にちゃんと業務管理ができているかを金融庁の体制としてもチェックできるような、実質的な登録における体制整備も非常に重要になってきているのではないかと思っております。ですので、もちろん参入は基本的には障壁が低いほうがいいんですけれども、どんどん新しい技術革新が進むにつれて、免許、登録、届出でどうかという形式的なことだけでなく、そういった実質的な態勢についてチェックできる当局の体制が重要かなと思っております。
それから、8ページで書いております柔構造、英国やシンガポールのような考え方は、私も一つの考え方としてこれから検討していくべきではないかなと考えております。
最後に、利用者資産の保護のところにつきましては、私自身も業務範囲規制は全体として緩和していく方向だと思っておりますし、もう既に業務範囲規制は銀行のところでも緩和はしましたけれども、限定列挙というのはあまりにもスピードについていけない部分がありますので、やはりスピーディーな対応をできるような形での対応が今後はますます必要になっていくのかなと思っております。
10ページでセーフティネットや分別管理、健全性規制や業務範囲規制との関係について書いてございますけれども、基本的には、これからは多様なビジネスモデルがいろいろなエコシステムが出てくることが考えられますので、業務範囲規制は緩和の方向かと思っております。
一方で、例えば銀行業についてのセーフティネットと分別管理の考え方をどう考えるかということですが、理論的には担保の裏づけのある要求払い預金みたいなものが提供できればセーフティネットが必要がなくなり、効率的にできるかもしれません。ですが、実際上はそれは難しいわけでございますので、やはりこういったセーフティネットと自己資本の組み合わせが必要になってきていると思っております。ただ、セーフティネットは、やはりモラルハザードの副作用もございますし、ただではないので、その業態の維持コストも大きくするという問題がございます。また、セーフティネットを大きくし過ぎると、健全性規制、自己資本比率規制のほうにも影響してくるということでございまして、健全性規制とセーフティネットのバランスは非常に重要な論点だと思います。健全性規制は自己資本が厚ければ厚いほどいいように見えますけれども、一方で株主のリスクテークを大きくしてしまうという副作用がございますので、そこのバランスを考えていく必要があると考えております。
10ページの最後にリスクについての考え方ということがございますが、ここにつきましても、リスクというのは、特に横断的に考えていくところについては検討すべき点が多いんじゃないかと思っております。最初に述べました自主規制などをやって、どのぐらいそこが担保できているのかどうかもチェックする必要があると思いますし、リスクが大きいか、小さいかについても十分な説明が必要になってくるかなと思ってきています。今、フィンテックなどの新しい分野においては、利用者の保護、利用者の利益を著しく損なうようなリスクがある場合には、規制を検討する要素になると思います。
一方で、アマゾンとかが入ってこない限り、システミックリスクのようなリスクについてはまだあまり大きくない、国際的にも、現状フィンテックの動きについては、サードパーティリスクなどに注意する必要がある、といった指摘もございますけれども、まだあまり差し迫った大きな問題にはなっていないという認識になっているかと思います。
利用者の保護について、それを著しく損なうような場合には、新しく規制を入れるのであれば、そこは挙証責任を、金融庁はしっかりと議論していく必要が出てくるのかなと。同時に、市場の公正性に対する著しい問題点を生ずる場合もあり得るかと思うんですけれども、いずれにせよ、この分野はさまざまな新しい業者が新しいイノベーションを発揮しようとしている分野でもありますので、ここについては十分な検討をして制度の具体的な設計を考えていく必要があるんではないかと思っております。

【岩原座長】
次に、田中さん、お願いします。

【田中メンバー】
それでは、少しコメントをさせていただきます。
2月27日の日経新聞で、監督局長がコメントをされています。「金融の中心にいるのは伝統的に銀行だが、別の業態に移っても仕方がない。新規参入者が銀行のかわりにうまく機能を果たし、顧客の支持を集めたら、とってかわり得る。金融審議会で業態別だった根拠法を機能別に再編する議論をしているのもその流れだ」というコメントをされておられますね。これは非常に当を得たコメントだと思って私は読んでおりましたけれども、この観点から今日のテーマを考えてみますと、先ほど来、何人かの先生方がおっしゃいましたように、やっぱりイノベーションというものが起きているからこそ、こういう議論をしているんだろうと思うんですね。ところが、最近の金融事業者の動きを見ていると、最近、QRコードを一本化するなんて報道がありましたけれども、中国あたりから比べると数年遅れもいいところですね。アリペイはもうずっと昔からこれをやっている。それから、現金の利用量は日本はものすごく多くて、そのコストがものすごくかかっているという報道もありますね。じゃ、それをどうするのかという動きも出てこない。
仮想通貨については、日本では一つの問題が起きていますけれども、世界ではまだどんどんイノベーションが起きていますし、実際には、ICOの投資者は、日本でICOが起きないために海外の投資をすごく始めたという動きも出ています。トークンについても数百のレベルで世界中で今でも上場されているという動きがあるわけで、ある意味では、世界では金融の世界のイノベーションはまだどんどん進んでいる中で、日本はものすごく遅れているという印象はやはりあります。実際、金融庁は銀行法を2年続けて変えられたと思うんですけど、その変えた銀行法を銀行界はどの程度、使ったんですかね。法律を変えるというのは皆さん大変ご苦労されたと思うんですけど、そこの目的が全然起きてないということがあります。
これは銀行界に限らず、産業界もそういう面があって、いわゆる第4次産業革命というものが世の中では、世界中では起きているんだ、その中でソサエティ5.0をつくるんだという政府の方針、その一端に金融も入っていると思うんですが、残念ながら、物事がなかなか進んでいかない、スピード感で世界から明らかに遅れているという状況が1つあると思います。これをどのようにして今回の制度改正の中で対応していくのかという論点は、僕はやっぱり頭の中に置いておく必要があるかと思います。
そこで、先ほどの監督局長のコメントにありますように、伝統的に銀行が金融の中心にいましたというんですが、去年の10月だったと思うんですけれども、日銀の金融システムレポートの1ページの中に出てくる分析だと、過去5年の間に預金取扱金融機関の総資産は240兆円ぐらい増えている。三井住友グループ、みずほグループが総資産200兆円ですから、総資産としてはメガバンク1つ分以上増えているわけですね。そのうちの8割が日銀当預とか現金に行っている。そのうちの6割が預金として集まってきている。つまり、このシステムそのものが、基本的に、金融庁が今回、おつくりになった金融行政方針にある国民の資産形成に役立ってない、リスクマネーの供給にも役立ってないという状況がここにあるわけですね。つまり、現在の銀行のシステムが期待されている役割を果たし切れてないんじゃないか。
それから、最近のさまざまな報道を見ますと、収益が悪くなっているということもこれあり、私が非常に懸念していますのは、銀行というものに対する世の中の信頼、安心感が揺らぎ始めているんじゃないかという気が非常にして、心配しております。したがって、今回、金融制度を考えるというときには、こうした問題もやっぱり頭に置いて制度設計を考えていく必要があるんではないかと思います。
そのうちの一つの論点としては、現在、地域金融機関もメガもそうなんですが、金融持株会社を中心としたグループ化が非常に進んできているわけですね。ところが、銀行の持株会社というのは、主要株主の一形態という形で銀行法で規定された経緯がありまして、その結果、残念なことに、子会社である銀行による、親会社である上場会社の持株会社支配ということがずっと長い間、続いてきたわけですね。今でも地域金融機関の中にはそういうところが非常に多いと思いますけれども、その結果、ガバナンスが非常にゆがんだものになったという歴史的経緯がありまして、これを変えるのにものすごくエネルギーを使った経緯があります。
したがいまして、こうした法制のあり方も見直す必要があって、本来は、欧米のように金融持株会社法を、アメリカだったらBHCのようなものを考えて、そこを中核にして、そこがしっかりした体制を組めば、業務範囲の問題や新しい業務への新規参入の問題についてはできるだけ緩和しよう、それによって、金融グループとして、いわゆる銀行というものだけではなくて全体としての業態転換みたいなものが図れないか、それによって、現在の収益環境に非常に困っている銀行が、グループとして全体としての事業の転換を図っていくことができないだろうかという問題意識を持ちます。
地域金融機関の経営陣の方々と最近、随分お話をする機会があったんですが、預金をとってお金を貸すなんていうことでは、とてもじゃないけど、もうビジネスの将来をつくることはできない、むしろ投資会社、エクイティを使わせてほしいという声が結構あります。しかしながら、元本保証の預金を原資にしてエクイティを買うというのは非常に無理なことだと思いますので、そうすると、やっぱり持株会社方式に基づくリスク遮断をしっかりした上で、そうしたところに展開していくという全体としての業態転換ということで考える必要があるんじゃなかろうかという気がします。
もう一つは、持株会社のあり方なんですけれども、日本は単体主義があまりにも厳しくなっているものですから、それぞれの子会社がエンティティとして一つの体制をつくらなきゃいけないという形になっていて、これは本来、会社法は真正面からその問題に取り組むべきだと思うんですが、残念ながら、産業界の反対が随分あるようで、私は、必要であれば、銀行法もしくは金融法の特例法をつくってもいいんじゃないかという気がいたしております。そういう中で、きちんとしたガバナンスをつくった上で業態転換ができる、新規参入ができるという形にしていったらどうかという気がいたします。
最後に一言だけ申し上げたいのは、顧客保護の問題なんですけれども、これも諸外国、特に中国なんかでは、言ってみれば、名前を言うのは差し控えますが、ある会社では、ネットの商品の売買の利益を兄弟会社であるフィンテックの会社が共有している。それでもって、個人の信用をはかり、それを今度は信用情報として使うということも既にされているわけですね。日本の場合は、個人情報保護に関する意識が非常に高いものですから、なかなかそれが進まないという部分があるんだと思いますが、これは個人の面では日本の社会でも議論を進める必要があると思うんですけれども、法人は違うんじゃないかという気がしています。したがいまして、例えば、持株会社方式における金融グループがあるとすれば、そこにおける、少なくとも持ち株会社の完全子会社間での法人取引先の情報の共有みたいなことはある程度、認めていく方向に行ってもいいんじゃなかろうかという気がいたしております。
相変わらず雑駁でございますが、以上、コメントをさせていただきました。

【岩原座長】
次に、神田さん、お願いします。

【神田メンバー】
ありがとうございます。田中さんの後で発言しにくいのですけれども、一般的な感想と、若干気がついた点を申し上げます。
今回の討議資料のトーンには、私は違和感はありませんで、幾つかのところにどう考えるかという問いがあるのですけれども、答えは「機能に着目して横断的な規制を整備すべきである」ということになると思います。
その際、機能の分類ということと、前に申し上げたことがあるのですが、リスクの分類ということとは同一ではありません。このことは今日は3ポツに書いてあるのですけれども、1ページ目の冒頭がややミスリーディングで、「同一の機能・リスクに同一のルール」と書いてあるのですけど、この読み方は、同一の機能には同一のルール、同一のリスクには同一のルールという意味だと読んだほうがいいと思います。3ポツに出ています。
以上が一般論なのですけれども、若干細かい点も含めて、既にご指摘もあったのですが、何点か感想を申し上げます。
第1点目は、機能に応じた規制とエンティティベースの規制はどういう関係になるのか。極端に言えば、機能に応じた規制が100%整備されたら、エンティティベースの規制は不要なのかということです。これは、具体的に、参考資料でいえば、自己資本比率規制というのは伝統的にはその主体、エンティティの財務の健全性を確保するという趣旨と機能を持っていたと思うのですけれども、今回の議論との関係でいえば、既にご指摘がありましたように、分別管理をしていない、あるいは要求しない場合の代替措置になるわけでして、ちょっと抽象的な発言にとどめたいと思いますけれども、機能に応じた規制が充実していくときに、エンティティベースの規制は緩和していっていいのか、あるいは、どのような形で共存ないし最適組み合わせがあるのかを、できればもう少し整理していただければありがたいと思います。
2点目は、今日は「規制」の態様ということなのですけれども、その観点から私がおもしろいと思いますのは、11ページに挙がっている店頭デリバティブの規制です。これは、ひょっとすると機能というよりはシステミックな問題があって、それにも対応するためにグローバルなレベルでこういうルールができているという流れがあるのですけれども、「規制」の態様という意味でいうと、これは非常に興味深いやり方だと思います。
といいますのは、店頭デリバティブ取引は、まず分別管理規制は利きません。なぜなら、想定元本を受け渡ししないからです。次に、自己資本比率規制も利きません。なぜかといえば、想定元本ベースには掛けられないからです。したがって、どうなっていったかというと、中央清算機関を通してください、さもなければマージンを積んでくださいということになっているわけです。ですから、「規制」の態様という意味ではやや特色のある態様なのですけれども、興味深い態様として注意していいと思います。
3点目は、今、田中さんがおっしゃったことも関係するのですけれども、業務範囲規制の将来です。業務範囲規制というのは事前禁止規制です。そういう意味では、古いという言い方がいいのかどうかよくわからないのですけれども、フィンテックなどが言われたときに私も最初に感じたことは、アマゾンのようなところが本を売っていて支払もやりますと言っているときに、支払をやっている金融機関が本は売れませんというのはどう見てもアンバランスなので、それは本を売りますというのもありにするしかないでしょうと思ったんです。それは今もそう思っているんですけれども。、このスタディグループの議論との関係でいえば、業務範囲は思い切って緩和していくべきだと思います。ただし、重要な条件があると思います。その条件は、リスク管理がしっかりしていること、利益相反管理体制がしっかりしていること、そして、ガバナンスがしっかりしていること。これらの条件を満たすところについては、業務範囲規制を緩和するという考え方がいいのではないかと思います。
4番目に、これは次回の話になるかもしれませんが、機能の分類ということで一言、申し上げます。
前に申し上げたかもしれませんけれども、例えば、決済という機能があるときに、決済そのものをする人、つまり支払サービス行為をする人がその業者になることは疑いがないのですけれども、実際問題としては、そこにつなぐ、あるいは次回以降、プラットフォーマーというか、伝統的な言葉でいいますと、媒介、代理、その他、よくわからないようなといいますか、間に入る人をどう位置づけるかという整理が必要だと思います。抽象的に言えば、そういう間に入るような人は主従で位置づける、すなわち支払仲介の実行行為をする人は主、間に入る人は従と位置づけるのか、間に入る人自体を独立した業として成立するのか、大きく2択あると思うのですけれども、いずれにしても、業の分類が課題になると思います。
同じように、金融取引の主体ということでいうと、業者側の分類だけではなくて利用者側の分類も重要で、既に指摘はあったところですけれども、個人の利用者については、私としてはぜひ高齢者という分類を少し意識して物事を整理していただきたいと思います。
あと2点、非常に抽象的なことを申し上げます。5点目になるのですけれども、「規制」の態様という場合に、私法と業法との役割分担がやはりあると思います。これはエンフォースメントや紛争解決制度も含めての課題であり、20年ぐらい前になってしまうと思いますけれども、「流れ懇談会」でかなりこの両者の関係を整理していますので、当時の議論等も多少参考になるかもしれません。私法と業法の役割分担は整理するに値すると思います。
6点目、最後になりますが、これも大きな話になってしまいますけれども、今の田中さんのお話などを伺っていて、ここで私どもがどんなに金融セクターの法制度をよくする議論をして、仮に、その結果、金融セクターがよくなったとしても、結局、金融セクターから資金供給される先は産業セクターなので、産業セクターの将来なくして金融セクターは語れないと思います。したがいまして、抽象的になりますけれども、産業セクターの将来を意識して金融の分野の議論をするということが大事だと思います。
以上です。

【岩原座長】
ほかにございますでしょうか。一応、皆様からコメントはいただきましたが、再度、発言したいという方。植田さん。

【植田メンバー】
途中で、何人かのメンバーの方から上限金利規制の形で考え方にちょっと相違があるという話をお伺いして、多分、私がそのうちの一人だろうと思いますが、私から一言、つけ加えさせていただきます。やはり今、貸金業だけ金利規制があるのは、おそらくそこが、実際的には最後に金策に困った人が来るところだからだと思うんですよね。ただ、本来、経済学的にというか、普通に考えてもそうだと思うんですが、債務者の方が最後に保護されるべき、依って立つものは、おそらく倒産法制だと思うんです。しかしその議論があまり入っていないのが現状です。
倒産といいますと、夜逃げ、勝手に債務者の方がどこかに逃げてしまう形や、もしくは債権者が資産の全ての差し押さえなんてことになるわけですが、それは非常に社会的なコストが高い。したがって、経済学的にも、現実の世界でもそうですけれども、そういうことはできるだけやらずに、むしろ債務を削減した上で、企業であれば事業を継続してもらう、もしくは、家計であれば、家と家財道具と生活資金をある程度持った上で普通に生活をしてもらうという、再生型の倒産法制が出てきたわけです。日本でも2000年代の初めから民事再生法と会社更生法の形で出てきましたし、ドイツなんかもそのころに倒産法制を改正しています。そういう形で、しっかりと債務者を倒産法制で包括的に保護するという考え方を持っていれば、必ずしも貸金業、もしくは今後、出てくるであろういろんな業態による暴利というもの、それがあるかどうかわかりませんけど、そういうものに一応、対応はできるのではないか。
ただ、翻って、それでは、日本で今の状況がいいかというと、実は、こちらに少し書いてあったことに気がついたんです。12ページに、紛争解決手段の整備等についてということで、例えば金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)を整備することがどうかと書いてあるんですが、ここは確かにある程度必要がございます。というのは、1つは、現在のそのような破産制度を使っても、迅速に行われないと、それでもまだ社会的コストが高いんですね。できるだけ迅速に行うということがやはり重要でして、実は、これは私は、前の職場、国際通貨基金(IMF)で、2008年以降の金融危機に対しての対処法の一つの柱として、チームとしていろんな国に言ってきたわけです。過重債務問題はできるだけ迅速に片づけましょう、その意味では、もしまだ会社更生法、民事再生法のようなものがない国には、そういうのをつくりましょう、さらに進んで、簡易的な裁判外の紛争解決制度もしましょうという形で言ってきまして、例えばアメリカなんかもそうですし、イギリスなんかもそうですけど、各国で行われてきております。
振り返ってみれば、まさにそれがアメリカのバブルとその崩壊が、日本と同じ大きさ以上だったんですけど、非常に早く経済がリカバリーした一因ではないかと思っております。逆に言うと、日本はまだそういうところでは遅れている。この場合は借りている人の保護になるんですが、その裏は債権者、貸している側の保護ということになるんです。実際に、債権者保護の強度、強い具合を調べた資料が世界銀行で発表されているんですけれども、それを見ますと、日本はまだまだ強いほうでして、債権者のほうがまだ強い、つまり借りている人のほうがまだ比較的弱いほうなんですね。そこをもうちょっと包括的に、借りている人を破産法制で保護していくというふうにしておけば、何も貸金業で何かをやろう、新しいものができたときに何か規制をしようと、それぞれ個別的にやっていく必要性はあまりないんではないかと考えております。

【岩原座長】
ほかに何か再度のご発言はございますでしょうか。坂さん。

【坂メンバー】
今のご発言を受けてなんですけれども、確かに、倒産法制については、この間、ずっと整備をされてきたところではあろうかと思います。そうはいっても、先生からもご指摘があったように、そこに至ってしまうと、その処理にはそれなりのコスト、大変な対応があるわけで、そこに至らない方向にできるだけ持っていけるのであれば、それはやはりそういった枠組みのほうがよろしいんではないかと思っております。
私は、金融機関は本来はそういった方向に尽力をするといいますか、昔、地域金融機関等がやっていたことが――今も努力されていると思いますけれども、本来的な大事な使命、役割であると思います。そういったことで地域の経済が活性化していって、地域金融機関もきちんとリターン、収益を得られるということが、現状はなかなか難しくなってきているという議論はありますけれども、やっぱり大事な機能として我々は確認するべきではないかと考えております。

【岩原座長】
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

【鳥海オブザーバー】
オブザーバーですが、よろしいでしょうか。

【岩原座長】
鳥海さん。

【鳥海オブザーバー】
ありがとうございます。私どもからは、いずれも要望と申しますよりも今後の皆様のご議論のご参考にしていただければという趣旨で、2つほどコメントさせていただきたいと思います。
まず1つは、4ページにございます利益相反管理についてでございます。ここで描かれておりますのは、経営戦略としてサービスをリバンドリングすることと、そこから生じるネガティブな影響、具体的には顧客の利益を損なうおそれがある利益相反の管理という問題かと思いますけれども、それでもなお、リバンドリングを徹底しなければならない分野、目的というのがございまして、すなわちこれがマネー・ローンダリング対策とかテロ資金対策といった分野でございます。
金融サービスのアンバンドリングが進みますと、それを逆手にとって、悪意を持って濫用、アビュースする顧客も現れてきますので、それに対する備えをしなければなりません。手法が巧妙化しますと、異なる金融事業者、異なる商品を股にかけてマネー・ローンダリングを企てるというケースも出てまいります。このため、金融事業者としましては、顧客や取引の情報をきちんとリバンドリングして、社内横断的に、グループ横断的に把握、管理、スクリーニングする必要に迫られますし、実際、海外の当局も、そのような期待を持って金融事業者を監督し始めております。これができませんと見落としが生じてしまいまして、その結果は、言い逃れは許されずに、莫大な課徴金が科される結果になります。
この情報共有の問題については、FATFも昨年の11月にガイダンスを公表していまして、きちんと情報共有ができない国からは撤退することも一案だということまで書いております。これはさすがに我が国のような先進国を念頭に置いた記載ではないとは思いますけれども、いずれにしましても、来年、予定されておりますFATFによる我が国への第4次審査に向けても論点の一つになるのではないかと考えております。
昨年末には、我が国でも金融庁がマネー・ローンダリング対策等のガイドラインを公表なさいまして、パブリックコメントを募集していただきました。私どもが懸念しましたのは、我が国における金商法との関連についてです。金商法上、顧客の利益を損なうことを予防するために、銀行と証券会社の営業職員は、それぞれの顧客の非公開情報をお互いに共有してはいけないこととなっております。このため、いわゆる3線管理、Three Lines of Defenseの最前線として、営業職員は、本来、顧客に対する完全な情報を得てマネロン対策を行うべきなんですけれども、残念ながら、不完全な情報に基づいて対策を行わなければならないといった実態にございます。
これについてパブコメでお尋ねしましたところ、先月の金融庁のご回答としましては、マネロン対策等のために必要な情報共有は法令遵守のために必要であり、金商法の規制の適用除外に該当するという旨の表明をしてくださいました。このご回答のとおりであれば、AMLという目的においては顧客情報や取引情報のリバンドリングを確実にすることができますので、金融システムを濫用、アビュースから守ることができるため、FATFのスタンダードとも平仄がとれるものと存じております。
さらに、もう一歩進めて、ITイノベーションを一層活用することによって、業界横断的に情報を1カ所にプーリングしてスクリーニングを一本化する方が格段に効率が良いとも考えられますが、それについては、犯収法等が特定事業者ごとでの取引時確認を義務づけておりますので、現状では難しいのが実情です。
いずれにしましても、今、申しました点は、本日のワーキンググループの範疇からははみ出す他の所管庁に関する論点かと思いますけれども、今後、ご検討の考慮に入れていただければと存じます。
もう一点が、11ページの国際的なサービス展開への対応についてでございます。私どもは外資系の業界団体でございまして、私どもの事例がここでの議論に当てはまるかどうかわからないのですけれども、我が国の銀行法第4条では、銀行業を行うことについて免許を取得するとされておりまして、ここでいう銀行業というのは、いわゆる固有業務3業務でございます。そうしますと、法文上の反対解釈としては、銀行業以外の業務、すなわち付随業務を行うことについては免許を要しないということになってしまいまして、具体的には、日本に拠点を設けていない外国銀行であっても、日本の顧客向けに付随業務だけを提供するのであれば銀行免許を要しないという解釈も成り立ち得るかと思っております。
この間、2008年に導入されました外国銀行代理業務という制度がございまして、これ自体は他の先進国にはあまり見られないものと理解しておりますが、この制度の趣旨は、今、申しましたとおり、銀行法上、外国銀行の在日支店は免許を取得したれっきとした銀行として認識されるのですけれども、海外所在の本支店は日本の銀行法上の銀行と認識されておりませんため、海外本支店がその商品サービスを日本の顧客向けに直接、販売、勧誘することが許されておりません。このため、在日拠点が本支店になりかわって、その代理、媒介を行うことが必要となりまして、それについては外銀代理の認可を取得することが必要であるという趣旨でございます。ただし、その認可の対象は、銀行業にとどまらず、広く銀行業務とされておりますため、付随業務まで含まれております。したがって、付随業務だけの代理、媒介を行うのであっても外銀代理の認可が必要ということになります。
冒頭に申しましたケースと併せて考えますと、日本に拠点を設けてない外銀は付随業務を行うに際して一切認可が必要でない一方で、日本に拠点を設けた外銀在日支店については外銀代理の認可が必要となるというねじれ現象が生じてしまうように思います。一昨年の銀行法の改正の際に、外国銀行グループという画期的な概念を導入していただきまして、許認可の負担は大幅に低減された点は感謝を申し上げておりますが、引き続きこのような課題も残っておりますので、ぜひ考慮に入れていただければと思います。
また、それに先立つ2015年の金融審議会「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」では、この制度も取り上げていただきました。その際に、翁委員はじめ、ご発言いただきましたが、神作先生からは、これまでのところ行政処分を要する事例が見られないのであれば、規制の中心を事後的な規制に移していくのも一考に値する旨のご発言がございました。今、申しました外銀代理制度に限った話ではございませんけれども、他の分野でも事後的規制にシフトできる分野があるのか、ないのかといった点も今後のワーキンググループのご議論の中で考慮に入れていただければと考えております。
以上でございます。

【岩原座長】
ほかにまだございますか。もうそろそろ時間ですが、よろしいでしょうか。
非常に活発なご議論をいただきまして、まことにありがとうございました。非常に多様なご意見をいただきましたので、とてもまとめるようなことはできませんが、少なくとも、同一の機能に対しては同一のルール、同一のリスクに対しても同一のルールという基本的な考え方については、あまりご異論がなかったように思います。それから、イノベーションが非常に大事であるということも、多くのメンバーの方からご発言があったところかと思います。その延長で、業務範囲規制はなるべく緩和したほうが望ましいというご意見もございました。
ただ、それを考えていきますと、これは神田メンバー、田中メンバーのご指摘にかかわってきますが、従来の業法的な規制はエンティティを前提にしていますので、業務範囲規制を緩和するときにも、あくまで個々のエンティティ単位の問題とグループとしての問題があり、リバンドリングが進む中で、それをどのように修正し、手当てを行っていくかということが非常に大きい問題となります。田中メンバーがおっしゃいましたように、持株会社とそのもとの単体の金融機関との間の関係をどのようにするかを、考えなければいけない。また、神田委員のご指摘のように、アクティビティベースの規制、機能に応じた規制に徹底していくと、従来のエンティティをベースにした規制の体系から変えていく必要があるのではないかという、かなり根本的な問題も本日は提起されたように思います。そういったことを含め、今後、さらに審議を深めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
最後に、事務局から連絡事項等がございましたらお願いします。

【井上信用制度参事官】
次回のスタディ・グループの日時につきましても、皆様のご都合を踏まえました上で、後日事務局よりご案内させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【岩原座長】
それでは、以上をもちまして、本日のスタディ・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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