金融制度スタディ・グループ(第6回)議事録
-
1.日時:
平成30年3月27日(金)9時30分~12時00分
-
2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室
平成30年3月27日
【井上信用制度参事官】
おはようございます。信用制度参事官の井上でございます。
本日は、岩原座長より、急遽所用のため、ご欠席とのご連絡をいただいております。また、神田座長代理からも、所用のため、少し遅れて到着する見込みとご連絡をいただいております。つきましては、大変恐縮ではございますけれども、メンバーの皆様にご了解いただければという前提で、座長代理がご到着されるまでの間、事務局が議事進行を務めさせていただければと存じますが、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【井上信用制度参事官】
恐縮でございます。ありがとうございます。
それでは、ただいまより「金融制度スタディ・グループ」第6回会合を開催いたします。皆様、ご多忙のところ、ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、まず、事務局から、お手元の討議資料等についてご説明させていただいた上で、ご討議をお願いできればと考えております。
それでは、恐縮ですが、お手元の討議資料をご覧いただければと存じます。
まず、1の検討の射程についてでございます。これまでの回におきましては、「決済」「資金供与」「資産運用」「リスク移転」といったサービスの性質に着目いたしまして「機能」を分類し、検討を進めていただいておりました。
一方で、第2回会合でも多少ご議論いただいたところではございますけれども、「販売」や「助言・マッチング」など、金融商品・サービスが顧客に利用されるまでのプロセスにおける各段階の行為に着目して分類を行うという考え方もあり得るところでございます。
現に、従来、銀行、証券会社、保険会社等が主な担い手でありました金融の各「機能」の提供プロセスを分解して、金融機関以外の主体が個別のプロセスに特化して提供(アンバンドリング)する場合がございます。
特に金融機関と利用者との間に介在して、金融取引の代理・媒介などを行う事業は、今後、新たな事業者の参入が見込まれるところではございますけれども、このような事業に係る現行法上の規制は基本的には業態ごとに設けられておりまして、業態をまたいだビジネス選択の障害となりかねないというご指摘があり得るところでございます。
また、利用者に直接商品・サービスを提供するのとは異なる立場から、証券市場の投資家にとって参考となる情報を提供する者(いわゆるゲートキーパー)など、金融機関とは異なる形で金融の「機能」の実現に寄与する者が存在しているところです。
さらに、ITの進展等に伴いまして、金融サービスのアンバンドリングやリバンドリングの動きが広がる中で、金融機関や金融商品取引所とは別に、インターネット等を活用して資金の出し手と受け手等のマッチングのためのプラットフォームを提供する者、「プラットフォーム提供者」とここでは呼ばせていただきますけれども、こうした方々が出現してきているところでございます。これは、金融機関と利用者との間ではなく、プラットフォームを利用することで金融の「機能」の一端を担う多数の者とその相手方等の間に介在いたしまして金融取引の媒介等を行う者と捉えることができ、今後もさまざまな形態に発展していく可能性があるかと考えております。
ここで脚注2をつけてございますけれども、それに関連いたしまして、お手元にお配りしました参考資料2をご覧いただければと思います。これも以前の会合でお配りしているものではございますけれども、金融のネットワークの構造が、利用者が金融機関を介してサービスにアクセスする仕組み、左上の「金融機関ハブ型」から、利用者とのインタフェースをつかさどる事業者が外部で組成された商品・サービスを組み合わせて提供する仕組み、いわゆる「インタフェース企業中心型」という左下の絵、さらに、利用者が直接取引所に参加する仕組み、この右上の「取引所型」、あるいは、個人同士が直接取引を行う仕組み、右下の「分散型」などに徐々に移行していく可能性があると考えられると思います。
このプラットフォーム提供者というのは、ビジネスモデルに応じて、この「インタフェース企業中心型」、「取引所型」、「分散型」のいずれの形態をもとり得るのではないかというふうに考えているところでございます。
恐縮ですが、本文の2ページにお戻りいただきまして、このように、金融に係る商品・サービスというのは多種多様でございまして、以上の者が行うような行為については、「機能」ごとに、各「機能」の特徴に応じた対応を行うことが少なからず必要になると考えられるところではございますけれども、共通の性質が認められる部分については、「機能」横断的な視点を取り込んで検討することも有益であると考えられます。今回は、以上のような観点から、このような者に対する規制のあり方について、ご検討いただければと存じます。
それでは、2.の金融の「機能」の実現において関与する金融機関以外の者に移らせていただきます。なお、プラットフォーム提供者については3.にて取り上げさせていただければと存じます。
まず、(1)の現行制度の概観でございます。
金融の「機能」の実現に金融機関以外の者が関与する場合の典型例といたしましては、銀行代理業者や保険募集人など、所属する金融機関のために金融取引を代理・媒介する者が挙げられるかと思います。これらは金融機関との雇用または委託契約に基づき、所属金融機関に従属した立場により、金融の「機能」の実現に関与する者と捉えることができると考えられます。
以下、これらの業者を単に「従属型」と表現させていただきますけれども、このような「従属型」につきましては、基本的に所属金融機関の管理・指導に従って業務を行うという考え方がございまして、現行法では、所属金融機関による管理責任を定めているところでございます。
このような「従属型」におきましては、原則として特定の所属金融機関に専属する「一社専属制」が採られるものがございます。例えば生命保険募集人のような者でございますけれども、その一方で、保険等にございます乗合代理店のように、複数の所属金融機関に属するような場合がございます。後者の場合には、所属金融機関による管理・指導を前提としつつも、複数の金融機関が提供する商品の比較推奨を行うなど、一定の独自性を有するものと捉えることができると考えられます。
他方、保険仲立人や電子決済等代行業者などのように、金融機関から一定の独立した立場において利用者のために金融の「機能」の実現に関与する者も存在しております。以下、これらの者を単に「独立型」と表現させていただきますが、このような「独立型」の事業者は、利用者のために業務を行うことが期待され、利用者に対して責任を負うこととされているところでございます。
金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介等を行う者に対する規制のあり方を考える際には、このように一つの金融機関に専属する者、複数の金融機関に所属する者、「独立型」の事業者といった立場の違いに留意してルールを整理する必要があるという考え方がございますところをどう考えるかという論点をご提示させていただいております。
また、このほか、金融機関と利用者との間には直接介在しておりませんものの、例えば、投資家の投資判断等に参考となる情報を提供する格付会社などのいわゆるゲートキーパーも、証券市場の公正性・透明性の確保に寄与していると考えられます。
その下の(参考)におきまして、「従属型」と「独立型」の事業者に関する現行制度の概要を簡単に記載させていただいております。
「従属型」の業者といたしまして、銀行法における銀行代理業者と保険業法における保険募集人、金融商品取引法における金融商品仲介業者を例として挙げさせていただいております。
「独立型」の事業者として、保険業法における保険仲立人や銀行法における電子決済等代行業者、金融商品取引法における投資助言業者をそれぞれ例として挙げさせていただいております。
詳細につきましては、横表でお配りしております参考資料1をご覧いただければ、そちらに、従来ご議論いただいております「決済」「資金供与」「資産運用」「リスク移転」のそれぞれの「機能」に対応する形で、今挙げました6つの事業者を例示いたしまして、現行法の規制をマトリックスで並べさせていただいております。討議資料とあわせて、適宜ご覧いただければと思います。
なお、第5回の「規制」の態様で扱った事項については、重複を避ける観点から、網羅的に記載するということは遠慮させていただいております。また、電子決済等代行業者については、政府令の案について、一部、パブリックコメント中の事項があることについてもご留意いただければと存じます。
それでは、また本文にお戻りいただきまして、4ページ目の(2)の規制についての考え方からご説明させていただきます。
金融に係る商品・サービスは多種多様でございまして、金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介等を行う者に対する規制についても、「機能」ごとに各「機能」の特徴に応じた対応を行うことが少なからず必要になると考えられます。
一方で、このような規制の姿は、例えば金融の「機能」の提供プロセスの一部に特化して提供(アンバンドリング)しようとする者が、業態をまたいだビジネスモデルを構築しようとする場合において障害となるおそれがあるとの指摘もあり得るところでございます。
金融の各「機能」の特徴に応じた対応を基本としつつも、行為の態様等を踏まえて、業態や「機能」横断的な視点をできるだけ取り込むことが、利用者のニーズに対応した商品・サービスを提供するという観点から適切とも考えられますが、どうかという論点をご提示させていただいているところでございます。
次に、金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介等を行う者につきましては、金融機関が提供する機能の一部を代わりに提供しているとも考えられますため、利用者に対する情報提供など、第5回会合までで検討していただいています「規制」の態様についての考え方が基本的に当てはまると考えられるが、どうかという点もお伺いさせていただいております。
一方で、金融機関とは異なる主体としての金融の「機能」の実現に関与するということから、その下の黒丸で取り上げますように、そうした観点からの規制が必要となる部分があり得るかというようにさせていただいているところでございます。
黒丸の1つ目のところでございますけれども、例えば「従属型」の事業者は、一定の金融機関に所属しておりますことから、その所属金融機関に「従属型」の事業者の管理責任を求め、当該金融機関による管理・指導を通じて規制することが考えられるかという論点がございます。この場合、当然、「従属型」の事業者も利用者に対して一定の責任を負うということは前提かと思います。ただし、「従属型」であっても、複数の所属金融機関があるなどによりまして、特定の所属金融機関を通じた管理等による規制の枠組みでは対応しきれないものというものについては、修正した考察が必要となるものがあるのではないかということについてもあわせてご検討いただければと思います。
なお、注書きのところは、後者の修正した考察の例といたしまして、保険の乗合代理店が複数の所属保険会社の商品について比較・推奨販売を行う場合についてご紹介しております。
その下の黒丸でございますけれども、「従属型」に対しまして、「独立型」の事業者は、特定の所属金融機関による管理等は原則として想定されないことから、基本的にその者自身が利用者に対して責任を負うこととする必要があるかといった論点がございます。
また、少し異なる観点ではございますけれども、いわゆるゲートキーパーについては、証券市場の公正性・透明性を確保する観点から、独立した立場において公正に業務を行うことが求められると考えられ、利益相反管理の観点などから規制が必要となる場合があるかという論点についてもご提示申し上げております。
以下、(ア)と(イ)といたしまして、金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介等を行う者や、いわゆるゲートキーパーに対する規制を考える場合にポイントとなる点を順次検討させていただければと思います。
まず、(ア)の誠実義務、忠実義務、利用者との利益相反の管理等でございます。
現行制度におきましては、金融商品仲介業者や保険仲立人など、金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介等を行う者の中には、誠実義務(顧客に対して誠実かつ公正に業務を遂行すること)が求められているものがございます。また、投資助言業者のように、忠実義務(顧客のために忠実に業務を遂行すること)が求められているものもございます。加えて、原則として、金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介等を行う者を含む金融事業者は、金融商品・サービスの提供を求める顧客の信認に応えるため、顧客本位の業務運営を行うことが求められているところでございます。
6ページにお移りいただきまして、一方で、「従属型」の事業者につきましては、専ら所属金融機関の管理・指導に従って業務を行い、所属金融機関と利用者との間で利益相反が生じ得る関係に立ちやすいというご指摘があるところでございます。
この点、「従属型」であっても、複数の所属金融機関があり、一定の裁量をもって商品・サービスを選択して利用者に提供するような場合には、自らの判断により複数の商品・サービスについて比較・推奨するなど、利用者のニーズに合った商品・サービスを提供する可能性が高まり得ると考えられます。ただし、このような場合でも、その所属金融機関と利用者との間での利益相反から完全に離れておらず、利用者のニーズを踏まえず特定の所属金融機関の商品・サービスを販売するなど、不適切な事例が生ずる場合もあることが指摘されるところでございます。
その下の(注)でございますけれども、例えば保険の乗合代理店につきましては、保険募集の適正性を担保するために、複数の商品について比較・推奨販売を行う場合には、比較する商品の全容を明示し、推奨の理由を説明するなどが求められているところでございます。
他方、「独立型」の事業者につきましては、金融機関から独立して金融の「機能」の実現に関与する者でありますので、本来的に利用者の利益のために業務を行うことが期待できるとも考えられます。もっとも、このような場合でも、例えば、金融機関から手数料を受領するなどの場合には、金融機関と利用者との間で利益相反が生じ得る関係に立つというご指摘があり得るところでございます。
以上を踏まえますと、次の3つの観点からのルール整備が論点になるかと考えておりまして、それについてご意見を伺えればと思います。
1つ目でございますが、金融機関と利用者との間の利益相反管理。
2つ目でございまして、自らの立場に関する説明義務でございます。すなわち、金融機関とは異なる主体として、金融の「機能」の実現に関与することから、金融機関との関係、例えば一つの金融機関に専属しているか、複数の金融機関に所属しているか、独立しているかといった自らの立場について、利用者に誤認が生ずることがないよう説明する義務があると考えられるかという論点でございます。
3番目といたしまして、利用者からの手数料の受領ということでございます。すなわち、金融商品・サービスの選択・提供、あるいは、推奨等のサービス提供の過程における中立性や公正性を担保するため、利用者から手数料を受領すること等についてどのように考えるかという論点でございます。
3番目に関しまして、7ページ目の冒頭の(注1)・(注2)で、イギリスと欧州におきまして、金融商品に関するアドバイザーにつきまして、商品提供者等の顧客以外の第三者からの手数料(コミッション)の受領が原則禁止されている例をご紹介させていただいております。(注1)はイギリスの独立アドバイザーについて、(注2)は欧州のMiFID Ⅱにおける規定についてご紹介させていただいております。
このほか、いわゆるゲートキーパーにつきましては、証券市場の公正性・透明性を確保する観点から、独立した立場において中立公正に業務を行うことが期待されております。一方、例えば収益構造等によっては、そのようなインセンティブを期待しにくいような場合があり得るため、利益相反の管理や、利用者以外の者から対価を受けるなどの利害関係に関する事項の表示などが求められている場合がございますが、このような対応についてどう考えるかという論点も掲げさせていただいております。
(注1)で、まず、格付会社の規制について簡単に触れさせていただいております。(注2)につきましては、金商法において、証券アナリスト等を念頭に、何人も、株式・社債等の発行者等から対価を受ける等して投資についての判断を提供すべき意見を一般に表示する場合には、当該対価を受ける等の表示を併せてしなければいけないという規制が入っていることについてもご紹介させていただいております。
次に、7ページ目の下のところの(イ)の利用者資産の保護でございます。
金融機関以外の者が金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介等を行うに際して、利用者資産を預からない場合には、預託された金銭の消失といったリスクを伴うものではないため、事業者に過度な財産的基礎を求めないという考え方もあり得ますが、他方、一定の体制整備を行うには相当の財産的基礎が必要という考え方もございます。このような点について、どう考えるかという論点を提示させていただいております。
一方で、当該事業者が利用者資産を預かるような場合には、預かる資産の多寡や他社の資産との混合の可能性の程度等に応じて、供託、信託、分別管理等の必要性を検討すべきという指摘があり得るが、どう考えるかという論点も上げさせていただいております。注書きといたしまして、銀行代理業者における分別管理義務の規定についてご紹介させていただいております。
金融機関などに比して高い財産的基礎を求めない場合、その業務に際して利用者に損害を与え得る場合には、損害賠償の実効性を確保するための措置が必要となる場合があり得ると考えられるが、どうか。また、賠償資力を確保するため、賠償責任保険を活用することなども考えられるが、どうかといった点についてもご意見を伺えればと思います。
また、金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介等を行う者と、金融機関との間での損害賠償責任の分担についてどう考えるかというふうにさせていただいております。一定の場合には、十分な財産的基盤が確保されている所属先または提携先の金融機関等に一次的に損害賠償責任を負担させ、事業者に対して求償させることも考えられるが、どうかという論点もご提示させていただいております。
(注1)に、いわゆる「従属型」の業者の場合、所属金融機関が損害賠償責任を負う旨の定めがある旨、(注2)に、電子決済等代行業者について、接続する銀行と契約を締結して、あらかじめ損害賠償責任の分担等に関して定めて公表するという規定についてご紹介させていただいております。
最後に、若干重複いたしますが、利用者資産の預かりの有無や預かり資産の多寡によって損害賠償のリスクの程度が異なると考えられるか。例えば、利用者資産を預からず、金融取引の媒介のみを行う場合には、利用者資産を預かる場合に比して財務規制などについて軽微なものとすることが考えられるかという論点をご提示させていただいております。
次に、9ページにお移りいただきまして、3.として、金融取引におけるプラットフォーム提供者についてご説明させていただきます。
まず、(1)のプラットフォーム提供者に係る新たな形態のサービスということでございます。
ITの進展等に伴いまして、金融機関や金融商品取引所とは別に、インターネット等を活用して、資金の出し手と受け手等のマッチングのためのプラットフォームを提供するようなサービスが出現しているところでございます。
資金の出し手がプラットフォームを利用して資金の受け手を見つけ、必ずしも金銭や資金に限られない手段によって資金あるいは資産の融通を行うことや、プラットフォームを利用したP2P保険等が発展する可能性も考えるなど、今後、さらに金融システムのネットワークの姿や取引の手段・対象等が多様化することも考えられるかと思います。
(注1)で、このようなプラットフォーム提供者について、単なるマッチングを行うにとどまらず、利用者から資産を預かるような場合も出てきているということをご紹介させていただいております。また、(注2)でございますけれども、プラットフォームの提供者において用いられることが多いインターネットにつきましては、取引を行うための物理的・心理的障壁が従来のサービスと比べて低くなりやすいとも考えられまして、利用者にとって利便性が高い一方、詐欺的な行為が行われやすい面があることにも留意が必要ではないかという点についても記載させていただいております。
なお、金融機関について、支払いや資金の融通等の仲介を行うという意味でプラットフォームと捉えたり、金融商品取引所について有価証券の売買等の注文をマッチングするという意味でプラットフォームとして捉えたりする考え方もあり得るかと思います。こうした観点から見ますと、プラットフォームを提供するサービスは、従来のプレーヤーが提供してきたようなサービスをアンバンドリングしたり、あるいは、複数のサービスをリバンドリングしたりするような動きと捉えることもできるところでございます。
続きまして、(2)で、現行制度の例を2つほどご紹介したいと思います。
まずは、投資型のクラウドファンディングのプラットフォームの運営についてですけれども、これは金融商品取引業をアンバンドリングしたものと捉えることもでき、金融商品取引法では、このようなプラットフォームの運営業者を想定して、少額電子募集取扱業者の規制を設けております。詳細については説明を割愛させていただきますけれども、10ページ目の(注)をご覧いただければと思います。
10ページ目の中ほどでございますけれども、このような投資型のクラウドファンディングに関し、米国では、いわゆるJOBS法ですとか、SEC規則におきまして、ブローカー・ディーラーに比べて規制が緩和されるプラットフォームの運営業者には、投資助言・推奨、プラットフォームに掲載された証券に係る勧誘、投資家の資金・証券を預かることなどが禁止されているところでございます。また、証券の発行者に対し、一定の開示が求められているところでございます。
続きまして、P2Pレンディングについてご紹介したいと思います。我が国では、P2Pレンディングのうち、個々の資金の出し手が特定の資金の受け手に貸付の実行判断を行って貸付を行えば、個々の資金の出し手に貸金業登録が必要となるところでございます。
他方、サービス提供者がインターネット等を通じて資金の出し手から少額・短期の資金を集めた上で、貸付の実行判断を行って資金需要者(個人・中小規模の事業者)に貸付を行う場合、サービス提供者は、資金の出し手に資産運用の手段を提供するサービスと、資金の受け手に資金調達の手段を提供するサービスをリバンドリングして提供していると捉えることもできるかと思います。この場合、サービス提供者に対し、資金の出し手に「資産運用」における投資家としての保護を与える観点から金融商品取引法の規律が、資金の受け手に「資金供与」における資金需要者としての保護を与える観点から貸金業法の規律が適用されております。この場合は、個々の資金の出し手による貸金業登録などは求められていないところでございます。
(注)のところで、米国の例もご紹介させていただいておりますけれども、米国では、我々の承知している限り、P2Pレンディングのプラットフォーム提供者は連邦証券法の規制のもとで、資金の受け手の信用力などを審査して金利を設定して、それに対応する社債を発行するとともに、資金の受け手に対しては、銀行と連携して、貸付を銀行法の規則に従って行っているものと承知しております。
続きまして、(3)の規制についての考え方でございます。
プラットフォーム提供者自身が利用者との取引の直接の契約相手となるような形態のプラットフォームもございますけれども、本来的なプラットフォームとしては、契約相手を見つけようとする者の間に介在して、契約が成立するような媒介等を行うものと考えることができるかと思います。
このような金融取引における本来的なプラットフォーム提供者の要件として、以下のようなものが考えられるがどうか、ということでご意見を伺えればと思います。
1つ目は、「独立型」の事業者であること。2つ目は、契約相手を見つけようとする者の間に介在して契約を成立させるための仕組みを提供するなどの媒介等を行うサービスを提供すること。3つ目といたしまして、インターネット等のITを活用したサービスを提供すること。4つ目といたしまして、利用者が想定する特定の相手方・金融商品等とマッチングすること。5つ目といたしまして、プラットフォームの提供者のサービスを利用して多数の者(業規制を受ける者を除く)が金融の「機能」の一端を担うことなどでございます。
この最後の括弧書きにつきましては、(注)のところで、業規制を受ける契約の一方当事者の商品・サービスを他方の契約当事者である利用者に提供するような場合には、金融機関と利用者との間に介在する者として、先ほどご説明いたしました2.のほうの対象になるというふうな整理ができるかというふうに考えております。
本来的なプラットフォームの場合、金融規制の実効性を確保する観点からは、プラットフォームを利用して金融の「機能」の一端を担う多数の契約の当事者に対して個別に業登録を求めるよりも、プラットフォーム提供者に対して、その提供する「機能」に応じた規制を適用していくほうがより実効的であると考えられるが、どうか。
また、プラットフォーム提供者を規制する効果として、プラットフォームを利用して金融の「機能」の一端を担う多数の契約当事者には個別に業登録を求めないことについて、どう考えるかという論点をご提示させていただいております。
(注1)でございますけれども、プラットフォーム提供者への規制では、プラットフォーム提供者にとって負担になるという指摘もあろうかと思いますけれども、例えば、プラットフォーム提供者が利用者から手数料を得る仕組みなどによって、規制の実効性を確保するためにプラットフォーム提供者が負う負担を実質的にプラットフォームの利用者に分担していただくということも考えられるかということを書かせていただいています。
また、(注2)でございますけれども、プラットフォーム提供者に対する規制を適切な内容・水準にすることによりまして、プラットフォームを利用する契約当事者が、個別に業登録を求められる場合と比べて、負担する規制コストを抑制しつつ、プラットフォーム全体の資金の流れを適正なものにすることもできるかと考えられるが、どうかという点も挙げさせていただいております。
上記のような場合に、金融の「機能」の提供に係る適切性の確保はプラットフォーム提供者によるところが大きいと考えられますが、プラットフォーム提供者に求めるべき基本的事項をどう考えるかということで、幾つか論点を提示させていただいております。
例えばでございますけれども、プラットフォームの利用者に対する誠実義務、インターネット等を活用した、取り扱う金融商品等の内容・リスク等や、プラットフォーム提供者自身のサービスの内容・リスク等に係る適切な情報提供、プラットフォームを利用して金融商品等を提供する者が当該金融商品等の内容・リスク等に係る情報提供を適切に行うことを確保すること、プラットフォームの利用資格に関する要件の設定・審査、プラットフォームで取り扱う金融商品等に関する要件の設定・審査、プラットフォームを利用した取引の確実な履行を確保することなど、利用者間の取引の適切性を確保するための措置を講ずること、プラットフォームを適正に運営するために必要な参入要件等についてどう考えるかということでございます。
このほかに、12ページ目の一番下の丸でございますけれども、プラットフォーム提供者が利用者資産を預かることについて、先ほど触れさせていただきましたアメリカの投資型クラウドファンディングでは禁止されているところでございますが、どう考えるか。これを禁止しない場合、利用者資産の分別管理、あるいは、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策等についてどう考えるかという論点を挙げております。
また、プラットフォーム提供者が取り扱う金融商品等に関する勧誘等を行うことについて、米国の投資型クラウドファンディングでは同様に禁止されているところではございますが、どう考えるか。禁止しない場合、勧誘等に関する適合性原則等の金融規制を適用することになるかという論点も挙げさせていただいております。
以上のほか、プラットフォーム提供者に求めるべき基本的事項があれば、ご指摘いただければと思います。
なお、規制の実効性を確保する観点からは、プラットフォームの提供者による措置に加えまして、自主規制機関による自主規制、当局による規制・監督というように、複層的な仕組みをすることも考えられるが、どうかという論点についてもあわせてご意見を伺えればと思います。
以上のような金融の「機能」の実現に関与する者に関する論点は多種多様なものがあると存じますが、挙げさせていただいた論点を中心にご議論いただけますと幸いでございます。
事務局の説明は以上でございます。
神田座長代理がご到着されましたので、この後は、座長代理に進行をお願いしたいと存じます。神田座長代理、よろしくお願いいたします。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。進行の代理を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
それでは、今いただきましたご説明を踏まえて、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければと思います。どの点についてでも、どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。それでは、岩下さん、どうぞ。
【岩下メンバー】
今回の整理は大変きちんとまとまっていて、かつ、最近拡大しつつある金融業の外縁の部分について、その外縁を担う者がどのような義務を果たすべきか、特にその金融商品の消費者、投資者、投資家のためにどういった規制を課すべきかということについて、大変きれいに整理してあると感じております。ご提案については概ね賛成できるものだと思っております。
私がちょっと発言させていただきたいのは、この議論の外縁がどこまで広がるのかという話です。と申しますのは、まさにこの議論の出発点は、例えば保険であれば、保険の保険会社があり、保険業法等に定められた形での、それを募集する者についての規制等があるということが前提となっているのだと思いますが、最近のインターネットを利用したさまざまな取引においては、こうした当初の規制が想定していないような新しい取引形態というのが出てきているというように思うからです。
これはいわゆるフィンテックと言われるような類いのものではございませんが、端的に言いますと、ランキングサイトというのがございます。随分前から、例えば住宅ローンの金利はここが安いです、あるいは、インターネットバンキングの金利はここが高いですといったような形のランキングサイトというのはたくさんございました。彼らは一体どうやって収益を得ているのでしょうか。
彼らは決して銀行代理業でもなければ、保険等の代理人でもないわけですけれども、しかし、広告収入を得て業務として行っている者が大半です。そういったランキングサイトの中には、特定の業者が有利であるという情報を、もしかしたら不誠実に流しているところがあるかもしれません。
別の形態として、アフィリエイトサイトと称する者がございます。これらは、直接金融取引の仲介をするわけではないのですが、例えばサイトの中の広告をクリックしてある金融取引の契約を結んだことに伴って、報酬を得ているといったような形態のサイトがたくさん出てきております。こういったインターネットを通じた広告というのは実はもう既にテレビを通じた広告を上回っているという統計もございます。
こうなると、インターネットを通じた広告を通じてさまざまな金融商品等の情報を提供する、これはある意味で、ゲートキーパーのほうで整理されている者の行為に当たるのかもしれませんし、あるいは、事実上、そこからリンクして金利の安い住宅ローンなり、金利の高いインターネット預金なりというものに誘導するという意味では、媒介の機能を果たしているのかもしれませんが、そうしたものが具体的に規制に服しているということは聞いたことがございませんし、そういうものを直接律するルールというのは多分ないのだと思います。
ところが、例えば、私はいつも仮想通貨の事例をお話ししてしまうのですが、仮想通貨の取引においては、このアフィリエイトサイトが極めてたくさん存在しておりまして、仮想通貨投資を推奨するブログや相場解説記事に添えられたアフィリエイト広告を踏んで、その仮想通貨取引所で取引を始めると、大体1先当たり、そのアフィリエイト広告を踏ませたサイトの運営者に3万円が支払われると聞いています。要するに、仮想通貨取引所としては、1口座を3万円で買っているというような仕組みになっているようです。
例えば、つい最近問題になったBinanceという仮想通貨取引業者に関して言うと、その仮想通貨業者を経由して取引をする手数料の一定割合が永遠に、最初に取引を開始したときにクリックを踏ませたアフィリエイト業者に対して謝礼として支払われるので、未来永劫収入が入ってくるという仕組みであるとのことです。
こういった形でのインターネットを通じた金融取引の募集であるとか、仲介であるとかというものの外縁というものがどんどん広がっていっている中において、今の目に見えている範囲の規制で対応可能なのか、あるいは、業界の自主規制に委ねるべきなのかといったような部分について、今後議論が必要になると思います。今日のご説明はそこまでの射程がないように思ったのですが、実際の広告等のお金の動き方を見ていると、どうも新しい外延の部分が非常に大きいようでございますので、この点についてコメントをさせていただきました。
以上でございます。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、名札を立てていただいた順に、植田さん、大野さん、森下さん、舩津さん、後藤さんの順で行きたいと思います。植田先生、どうぞ。
【植田メンバー】
私も、事務局の整理は非常に良く今回まとまっていると思います。ありがとうございます。参考になりました。P2Pレンディングについて、特に述べさせていただきたいと思います。
こちらの参考資料2に書いてあるような中では、右下の「分散型」というところが本来のP2Pレンディングに当たる話だと思うのですけれども、10ページから11ページあたりにかけてご説明がありますとおり、どうも今の規制の状況では、もしも貸し手のほうが誰かに対して貸すときに、自分で判断を行うのであれば、貸金業登録が必要。そうではなくて、仲介役の人がある程度お金を集めて、ほかの人、顧客に持っていくのであれば、それはむしろどちらかというと証券業とか銀行業に準じたような感じで考えられるというような整理で今ついているかと思います。が、そうだとすると、実際には「金融機関ハブ型」にかなり近くなってしまいますので、必ずしも「分散型」ではなくなってしまいます。
やはり本来の「分散型」を考えてみますと、特に日本にいるとよくわからないのですけれども、やはりこういうような仕組みは、発展途上国にとっては非常に大事な仕組みです。多くの方々が銀行などにアクセスできない中で、低利で安くアクセスできるような技術が発達したことで、人から人へお金がだんだんと回るようになってきたという経緯がありまして、開発経済学の世界では非常にいいものだと捉えられているものです。
日本ではもちろん多くの家計、企業が銀行にアクセスがありますから、それほどメリットを感じないのですけれども、それでも、やはり本来のメリットを考えますと、一般のサラリーマンとか主婦の方が、要するに、ある意味で気軽にというか、少額で気軽にほかの人に、お金に困っている人に貸し出せるというようなものをつくらないといけない、そういうことを許してあげるような仕組みじゃないといけないのだと思います。
そのときに、一人一人がやはり貸金業に登録しないといけないというのはあまりにもハードルが高いと思いますので、そこはやはりそういう縛りをなくして、もうちょっと自由に個人から個人にお金が流れる仕組みを考えてあげるべきだと思います。
ただし、それを考えてみますと、いろいろとパンドラの箱をあけるような感じになってしまうところもよくわかります。そもそも、本来、このワーキンググループで話していた機能別に整理して、同機能であれば、できるだけ同じような規制とか、イコールフッティングになるようなことを考えるということを言って議論してまいりました。けれども、その貸し出しということを考えますと、例えば銀行が中小企業とか、そういうところに貸し出すときは、ここに書いてありませんけれども、公的な信用保証協会の保証が利用できるのですけれども、例えば個人がこういうような仕組みでやった場合には、それが、利用できないわけです。
だからといって、こういう仕組みに公的な信用保証をつけろとは決して言っているわけではなくて、むしろ、あまり議論になってきていないのですけれども、公的な信用保証の度合いというのは、日本は世界的に見てみましても、突出して手厚く幅広くやっているのですね。それがほんとうにこのままでいいのかと。むしろ、そちらのほうを見た上で、イコールフッティングをしていくべきではないかと思います。
それから、逆に言うと、今度は高金利の貸し出しのほうですね。もしも個人に貸金業登録を求めないとするのであれば、貸金業法による貸し出し金利規制というのはなくなる、適用されなくなると思います。ですので、それは何度もこちらで言っていますとおり、じゃあ、それを、そうはいっても、個人がやる場合にも貸金業法の上限規制のようなものを設けるようにするのかどうかというのがやはり問題になってくる。
先ほども言いましたけれども、発展途上国の例を言いましたけれども、世界ではほんとうにお金に困っている人がいる国がたくさんあるんですね。ここで、インターネットを通じたお金のやりとりというのは、やはりある意味でボーダーを超えていけるところも非常に大事なところです。ブラジルとかインドネシアとか、いろんな国、タイとかも
、もっと言えばアフリカの国々とかにも、ある意味でもうちょっとお金が日本から回れば、日本の貯蓄をさらにより高いリターンで回すことにもなりますし、現地の人にとってもより今まで以上に安くお金が借りられるようになりますので、ぜひそういうことをやってもらいたいのですが。
そうしますと、そういう現地の発展途上国などというのは金利が20%、30%で通常の銀行が貸し出しても決して不思議ではないので、グローバルな金利水準というのを考えていきますと、やはり、これは別に「分散型」に限ったことじゃないかもしれませんけれども、今までの日本だけを見た規制からもうちょっと離れないといけないのではないかと、そう思います。
以上です。ありがとうございます。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、お隣の大野さん、どうぞ。
【大野メンバー】
ありがとうございます。まず、初めに、私からは、プラットフォーム提供者の類型について、大きな枠組みに関してコメントを述べさせていただきたいと思います。
事務局のペーパーはそれなりによく整理されており、今回も大変参考になりました。ありがとうございました。今回のペーパーの中の分類法を3つの分類法というふうに私は理解させていただきました。前半での「従属型」と「中立型」、それから、後段の3以降の金融取引におけるプラットフォーム提供者、このスコープが色々なところにばらまかれているのですが、おそらく十分言い尽くされていない領域があるのではないかという気がいたしました。
それは何かというと、大きく言えば、最近、海外などで増えつつある、金融を本業としていないIT系の企業の金融業務への参入、いま一つは、金融機関と非金融機関が連携して新しい価値を提供するケースであります。
試しに、金融業務に関連するプラットフォームの種類を4つに分けてみると有益かと思われましたので、ご参考まで、ご紹介したいと思います。
1つ目は、アンバンドル型です。これは金融関連のテクノロジーを活用することによって、従来の金融業務の一部をアンバンドルするケースです。これまでの主な担い手はフィンテックベンチャー企業が多いと見ております。クラウドファンディング、P2Pレンディング、ICO、こういったものが例として挙げられると思います。これらは今回のペーパーの中で後段の9ページ以降でカバーされているものです。
2つ目が、金融ブローカー型。これは本業での顧客基盤を活用して、適切な金融商品を推奨したり、アドバイスするものと位置づけられます。事務局のペーパーの中では、従来型の仲介・媒介でかなりの部分をカバーされておられます。この中では、ブローカー型の中の「独立型」として、保険仲立人、電子決済等代行業者が取り上げられています。これらに加えて、フィンテック企業系の投資アドバイザー、あるいは、eコマース系のオークション型の金融販売、これは先ほど岩下さんがおっしゃったところと近いものですが、そういったものも存在するのはご承知のとおりであります。
3番目は、IT系プラットフォーマーが本業に近い領域、あるいは、派生するサービスとして金融業務に踏み出しているケースであります。これまで固有名詞は避けてきましたが、わかりやすいので、アリババとかウーバー、それから、eコマース、いわゆるジャイアントプラットフォーマーと呼ばれるところが提供する貸し出しビジネスなどの例があります。物販と親和性を持った貸し出しなどの金融サービスを提供するものとか、自動車の配車アプリと連動した形で、保険サービスやリースといったビジネスを拡張する動きというものが見られております。
4番目は、金融機関と他業種が連携して新しいビジネスを展開するケースです。これは金融機関が他業種と協力して、金融サービスを一部に含んだ新しい価値を顧客に提供するようなプラットフォームの構築を目指すものと位置づけられます。具体的な組み合わせの例としては、例えば保険会社、これと健康増進関係、介護、医療を組み合わせたもの。それから、保険や融資などの金融サービスと他の産業、例えば海外では農機具、耐久消費財、住宅関連サービスなどを組み合わせたものなど、多様な広がりを持つビジネスが増えつつあることが観察されております。
以上の4つの分け方で見ますと、事務局のペーパーでは、今申し上げた3つ目と4つ目について、まだあまり掘り下げて論じられていないのかなと感じました。4分類目の3つ目の金融を本業としないプラットフォーマー、そして、4つ目の金融機関と非金融業との連携のビジネス、この2つを機能別横断的フーレームワークの中にどのように捕捉して取り込むことができるのか、そして、こうした新しいビジネスの健全な発展を図るための規制を含めた環境をどのように整備するのかという視点、これらも重要な論点の一つとして提示させていただきたいと思っております。
もちろん、今申し上げたような非金融機関が担い手となっている金融機関のプラットフォームビジネスに対して、どのように規律を求めていくのか、どうやって尊重すべき諸原則を遵守することを促していくのかというのは大変難しい課題だと想像されます。
しかしながら、野心的な目標として、今後の当スタディ・グループの検討の射程に含めることができるとよいと私は思うのですが、いかがでしょうか。
以上が大き目なコメントです。次に個別の論点について5つほどコメントを述べさせていただきたいと思います。
まず、検討の射程について、1ページの2番目の丸には、金融機関と利用者との間に介在して金融取引の代理・媒介を行う事業についての事務局ペーパーの認識が示されています。その中の、「新たな事業者の参入が見込まれること、業態をまたいだビジネス選択の障害となりかねない」という2つの問題意識を強く共有させていただきます。さらにつけ加えるとすれば、金融と非金融業をまたいだサービスの拡大という視点もつけ加えることができればよいと考えます。
これとの関連で、規制について検討する際には、業態や機能横断的な視点をできるだけ取り込むことを通じて、利用者のニーズや利便性の向上に資する付加価値の向上を促すこと、ここに重点を置きたいと思っております。
2つ目は、規制のあり方のうち、ページ6にあります「独立型」の事業者に対する規制についてであります。この中で私は、利益相反の管理が最も重要な論点と考えます。「独立型」の業者の中立性、公正性、透明性を確保するためには、フィデューシャリー・デューティの原則を徹底すること、特に留意すべき点としては、みずからの立場に関する説明義務を課すこと、利益相反の誘引を除去する観点から、英国の例にありますような顧客以外の第三者からのコミッションを受け取るのを制限する扱いとすることが望ましいと考えます。
3番目は、7ページの利用者資産の保護についてです。顧客から資産を預かるようなサービスを提供する業者に対しては、顧客資産の分別管理の徹底を課すことが大原則として求められるのではないかと思います。ただし、事務局ペーパーの8ページの記述にあるように、リスクの多寡などによって、ある程度フレキシビリティを持たせるという余地があってもよい気がいたしております。
4番目です。プラットフォーム提供者に対する規制のあり方については、ページ4の2番目の考え方、ここに賛意を表させていただきます。何と書いてあるかというと、「業態や『機能』横断的な視点をできるだけ取り込むことが利用者のニーズに対応した商品・サービスを提供するという観点から適切とも考えられるが、どうか」とありますが、この問いかけに対する答えはイエスだと思います。
それから、もう一つ、ページ12にも非常によいことが書いてあると思います。ここにありますプラットフォーム提供者に求めるべき基本的事項、7つ、いずれも大変重要な論点というふうに賛意を表したいと思います。
その上で、プラットフォーム提供者に対する規制のあり方を考える上で重視したいポイントを2点、申し添えたいと思います。
1つ目は、業態をまたいだビジネス選択の可能性を拡大し、利用者がイノベーションの果実を最大限享受できる環境を整備することに心がけたいということです。2つ目は、金融機関とIT企業や広義のプラットフォーマーとの間での適切な競争環境の維持を図ることが肝要だということです。そのためには、前回も議論にありました業務範囲規制の緩和であるとか、兼業禁止規制の見直しとあわせて検討することが有益と思っております。
最後のページのソフト・ロー・アプローチ、自主規制、当局による規制・監督などの複層的な仕組みに関する問いかけに対して一言述べます。ここについては、業態横断的な取り組みに対してガイドラインやソフト・ロー・アプローチを適用する際には、監督当局の複層的な取り組みが重要だと思います。サンドボックスの活用をはじめとして、省庁横断的な取り組みがオーソリティーズ(当局)側にも求められると思います
私としては、この分野で金融庁が強いイニシアチブを発揮されることを大いに期待しております。以上です。ありがとうございました。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、森下さん、どうぞ。
【森下メンバー】
ありがとうございます。前半の「従属型」と「独立型」という点について4点と、あと、プラットフォーム関係で1点、申し上げたいと思います。
「従属型」と「独立型」というものを分けて考える必要があるのではないか、大きく分けて2つのタイプがあるのではないかというのはまさにそのとおりなのかなと思います。
これに関して、まず、1点目ですが、どうやって分けるのかというのはなかなか難しいところではないかと思います。顧客に対して負う義務の内容なのか、あるいは、商品提供者というのでしょうか、本人の立場にある方との関係か、幾つかのメルクマールは考えられると思いますけれども、おそらく後者だとは思うのですけれども、実際にルールをつくっていく場合には、ここをどう分けるか、どういった基準で考えていったらいいのかという点が非常に重要になると思います。ただ、いろんなバリエーションがあり得るのかなと考えております。
2点目は、監督のアプローチということでございます。この点に関しましては、ペーパーの4ページから5ページにかけてだと思いますけれども、「従属型」については所属先を介した監督なりコントロールというようなものが期待できる。それに対して、「独立型」の場合には、その特定の所属機関による管理等は原則として想定されず、その者自身を監督するということが書かれております。
これも基本的にはそのとおりなのかなとは思いますが、例えば、「独立型」の例として挙げられております電子決済代行業との関係で考えますと、電子決済代行業に関する今の枠組みは金融機関側からのモニタリングを全く期待していないかというと、必ずしもそうではないというように理解をしております。
そうしますと、バリエーションがいろいろありますので、やむを得ないことかと思いますが、この部分について基本的にはそうかと思いますけれども、果たすべき役割に応じていろいろのバリエーションを考えていく必要があるのではないかというふうに思います。また、「従属型」の場合に、所属先に管理を期待するということになると、ある程度、当局による管理、監督というのは軽減してよいのではないかという気もいたします。
3点目に、規制の内容に関してです。利益相反が重要であるというようなお話がございました。それはそのとおりかなと思いますけれども、「従属型」と「独立型」の場合では、利益相反に関するルールにも違いが出てくるのではないのかなと思います。
「従属型」と「独立型」をどういうふうな形で記述するかにもよると思いますけれども、顧客に対する義務の内容ですとか、利益相反管理のあり方という点で、必ず守らなければいけないような部分についてのルールのあり方には差をつけていくことが考えられるのではないかというふうに思います。例えば、弊害が大きいようであれば、「従属型」の場合には一定の行為を禁止するとか、「独立型」の場合には必ずこういったことはやってくださいということを義務づけるということもあり得るのかなと思います。
最後に、このような間に入る事業者は、「独立型」であれ、「従属型」であれ、ユーザーとの間に立つということで、さまざまな顧客情報を取得するのではないかと思います。顧客情報の管理という観点、あるいは、顧客情報をどのように扱うべきかというような観点は、特に金融法制にとって非常に重要な点であると思いますので、この点について、どのようなルールづくりをしていくかをしっかりと議論していく必要があるのではないかと思います。
ただ、情報の利用を規制して、使っちゃいけないとか、そういうことではなく、やはりフィンテックの一つのポイントというのは、情報を有効に活用して価値を生み出していくというところにありますので、しっかりと守る、しかし、活用するという、相反する要請かもしれませんが、顧客情報に関する良いあり方を見つけていくことが期待されているのではないかと思います。
それに加えて、おそらく、システムの安全管理ですとか、KYCといったようなものは顧客との間に立つ者としては、当然、標準装備ということで求められてくるのではないかと思います。
最後に、プラットフォームに関してです。このプラットフォームとして何をイメージするかということはなかなか難しく、おそらく我々の中でも頭に描いているものにさまざまなバリエーションがあるのではないかというような気もいたしますけれども、1点だけ申し上げますと、従来型のP2Pレンディング、日本で行われているようなものについては、お書きになられているようなことというのはそのとおりかなと思いますが、だんだん技術が発展していって、ほんとうにP2Pができるというようなことになっていった際に、その規制の窓口となるような、規制の名宛人となるような仲介役を想定できるのだろうかというような点がやや気になるところであります。
仲介役を規制するかわりに、個々のプレーヤーは規制しないというのは確かにそのとおりかなと思うのですが、そのためには、その仲介役にかなりの義務を負ってもらわなければいけないというようなことになりますし、逆に言えば、かなりの義務を負えるプレーヤーでないと、その仲介業をしてはいけないというようなことになると思うのですが、それが今後のいろいろなビジネスの発展を考えていくときに、適切なのかどうかというような点があるように思います。
テクノロジーが発展していけば、一々業登録をしなくても、個々のプレーヤーに対して何らかのルールを当てはめるとか、何らかの規制をかけるとか、そういうようなことも効果的にできるようになるのかもしれませんけれども、ちょっとその点については私自身は答えを持ち合わせておりませんが、少しそこは視野を広げて考えておく必要があるのではないかというような感想を持っております。
ありがとうございました。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、舩津さん、どうぞ。
【舩津メンバー】
ありがとうございます。2.について1点、3.について1点、申し上げたいと思います。
先ほど、森下メンバーから、「独立型」と「従属型」等の二分法をどう切り分けるかということでご指摘があったかと思いますが、私自身は、私的経済の枠内で金融を回していく以上は、それぞれがどのようなインセンティブ構造になっているかということで切り分けるべきではないかと考えます。
したがって、要するに、金融機関からお金を受け取っているか、受け取っていないかということで、「従属」か「独立」かということを決めるというのがよいのではないかと考えております。そうしますと、7ページに書かれているようなイギリスですとか、MiFID Ⅱとか、そういったあたりの立法というものも参考になるということになるかと思います。
ただ、現実問題として、現時点の課題として、金融機関から独立した仲介者がどれだけいるのかというところがやはり問題になるかと思います。したがって、ひょっとしたら放っておいたら独立の仲介者というものは全然育たないということになって、従属ばかりになるということになると、やはり従属の業者についても、これまでもそうだったと思いますけれども、一定程度、顧客の保護に係るような措置というものをやっていかなければいけないとは思います。
逆に、例えばそれこそフィンテックといいますか、テクノロジーの発展によって、業者から独立した形で収益を上げられるような仲介者という者が育つかもしれないということかもしれない。そういったテクノロジーに期待して独立した仲介者が育つということを前提とした規律を設けるのか、さらにいえば、独立した仲介者をテクノロジーとは無関係に育成していくというような方法での法制を組むのも、また1つ、論点としてはあるのかなという気がしております。MiFID Ⅱですとか、あるいは、ドイツなどでも、独立であるということに一つの一種の品質保証機能というものを見出して、独立と名乗るということ自体に価値を見出し、独立仲介者となったほうがビジネスがやりやすいというような規制というものも一つ、考慮に値するのではないかというのが1点目でございます。
2点目のプラットフォーマーの話でございますが、10ページのところにJOBS法が引かれてありまして、プラットフォーム運営業者には、投資助言・推奨、プラットフォームに掲載された証券に係る勧誘等が禁止されているということで、13ページで、そういうような規律についてどう考えるかということが論点として掲げられています。
私の認識としては、JOBS法のこの規律は、確かにプラットフォーマーであるということもあるのかもしれませんけれども、クラウドファンディングであるという要素も働いているのではないかという気がしております。
すなわち、クラウドファンディングというのは大勢の者から支持された者だけが事業をして、ある程度、そこでセレクションをかけるんだというような制度としてJOBS法もたしか設計されていたような気がしております。そうしますと、助言とか勧誘というものがあると、むしろ、多くの者が事業を自然体で評価できなくなるという意味で、どちらかというと、情報生産の機能を発揮させるために禁止があるようにも思いましたので、このあたりはもう少し検討してみたらいいのかなと思いました。
以上です。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、後藤さん、どうぞ。
【後藤メンバー】
どうもありがとうございます。自分の発言のポイントが何点あるのか、ちゃんと整理をしておりませんが、ご容赦いただければと思います。
まず、何人かの方がご発言をされている「従属型」、「独立型」というところなのですけれども、この2類型が大きくあることはそのとおりかと思うのですが、数年前に、保険の募集のあり方に関する金融審のワーキンググループに参加させていただいたんですけれども、そのときに問題になりましたのは、乗合型代理店という、保険募集人、つまり「従属型」の形をとりつつ、複数の保険会社に所属している結果として、中立的に見えるという中間的な存在が出てきてしまうということでした。伝統的な乗合型代理店、例えば自動車のディーラーとかであればそんなに問題はないのですが、いわゆる来店型保険ショップのように、中立性を何となくうたっているものは、消費者の誤解を生じさせる可能性があるということが問題となっていました。これらの事業者は、保険仲立人のように、保険会社からは独立した中立の存在であるとはっきり言うのではなく、中立であるという感じを醸し出していることがあるわけです。また、最初に岩下メンバーからもご紹介のあった保険の比較サイトなども一見、中立的に比較しているように見えるので、そういうところをどうするかといったところが、そのとき、問題になっていたように記憶をしております。
これらについては、6ページの2つ目の丸の真ん中あたりでまさに紹介をされているところなんですけれども、そこでは、複数の業者の商品・サービスを比較・推奨する場合には「所属金融機関と利用者との間で利益相反から完全には離れて」いないことが問題となると書かれています。しかし、保険募集のワーキンググループで問題となっていたのは、乗合型代理店が特定の金融機関の利益を図るということよりは、複数の保険会社の商品を扱っている結果、お客さんに対してはベストなものをお勧めしていますという素振りを見せつつ、結局は手数料を一番たくさんもらえる保険会社の商品を売っているという意味で、利用者と当該事業者自体の利益相反であったように思われるわけであります。
そうしますと、問題であることは変わらないんですけれども、6ページの表現ぶりは過去の議論と少しずれているように思います。その時の検討、例えば保険手数料の開示が必要なのかとか、あと、この注に書かれている比較・推奨販売を行う場合にはちゃんと全部理由を説明しなさいというのはまさに利用者と当該事業者自体との利益相反にポイントがあったわけですので、利益相反が大事なことはもちろんなんですけれども、利益相反の中にもいろんなものがあるということがまず1つあるように思います。
このような問題が起きるのは、仲介業者が保険会社や金融機関から手数料をもらっているからじゃないかというお話で、先ほどの舩津メンバーからの問題提起にもつながってくるのかなと思うんですけれども、私自身は、この手数料をもらっているかどうかを基準にするというのはなかなか難しいんではないかなと思っております。なぜかといいますと、中立性をうたうのであれば、金融機関から手数料を受け取ってはならないということにしますと、お客さんから手数料を取るということになるわけですが、それが今の日本の消費者に受けるかという問題があります。消費者は、問題が起きない限りは、自分が手数料を払わないのが一番得なわけですから、消費者には多分すぐ浸透するわけではないだろうということが想定されるわけです。
そうすると、独立であるとうたうのであれば顧客から手数料を取りなさいという制度にした場合であっても、表現方法を非常に厳しく規制しない限り、独立であるとは正面からはうたわない形で、そういう印象を与えることにより、金融機関から手数料をもらい続けるという仲介業者が生じ、規制のはざまに落ちるということが懸念されるわけです。ですので、イギリスやこのMiFID Ⅱのようなあり方というのは、規制として美しさはあるのですけれども、その日本の現状に果たして適しているだろうかというと、私は非常に不安に思っているところでございます。
そうしますと、むしろ、金融機関から手数料を受け取るということはビジネスモデルとして認めた上で、その結果生じる顧客と仲介事業者との間、またはその所属金融機関との間の利益相反を、行為規制をかけることによって、コントロールしていくというのが現実的なやり方であって、保険募集のあり方などもそういう形をとったというふうに考えております。
また、保険募集のワーキンググループでは、比較サイトの話は結局手をつけられなかったわけですが、そのときに問題となった点が2つあると思っております。まずは、比較サイトが金融系の雑誌によく乗っている保険商品の広告などと何が違うのかというと、消費者からした場合、インターネットでクリック一つで行けると、つながりやすいので、やはり保護をかけていく必要があるのではないかというです。
もう一つは、例えば保険料という1点だけで比較をされると、その他にいろいろな違い、例えばカバーの範囲が違うということがあるかもしれないのに、その1点に絞った比較をされることによって、消費者をミスリードしてしまうのではないかという問題です。そのミスリードされた結果が比較サイトが受け取る手数料とリンクしているとすると、さらに問題であることになります。
しかし、同時に、比較サイトは、いろんな情報を自分で集めずに済むという意味では、消費者の利便性を高めていることも疑いないと思われるわけです。そうすると、比較サイトも全て募集人だとして募集規制をかけることによってコストがかさんでそのようなサービスが消えてしまうことは、消費者にとって果たして本当に望ましいことではないようにも思われ、今の保険募集人の規制をフルでかけることにはちゅうちょもあるところです。他方で、中間的な類型を作るかというと、分類が複雑になるということで、前回のワーキンググループは見送ったという経緯だったように記憶していますが、比較サイトのようなサービスがどんどん広がってきていることは岩下メンバーご指摘のとおりですので、これらについて、必要な情報をしっかり提供させ、また消費者をミスリードしないようにさせることに重点を置いた軽目の枠組みができるといいのかなと思っております。
次に、利用者資産の保護なのですけれども、7ページから8ページにかけてのところで、利用者資産を預かる場合には、それを保全することが一番大事なわけですが、預からない場合にはどこまでやるかということでして、預からない場合に、事業者に過度な財産的基礎を求めないという考え方があり得ると書いてあるのですが、全く財産的基礎がなくてもいいのかというと、そうではなくて、預からない場合であっても、例えば変な情報を流すことによって損害を与えるという場合には賠償資力ということが問題になってくるわけです。そういう意味では、一定の財産的基礎は求める必要があるんですが、この場合には、ここの丸で書かれている体制整備を行うための財産的基礎が必要という考え方とは観点が異なり、例えばその責任保険でいいとか、そういう話、この下の2つ下の丸で書かれているような話になってくるかと思います。
他方で、体制整備を行うために財産的基礎が必要ということを強調し過ぎますと、やはり新しい事業者にとってはここが一番大変なところでして、例えば最低資本金何億円とかということでやると、もうそれだけで参入がとまってしまうということに気をつける必要があると思います。体制整備を行うことはもちろん重要なんですけれども、そうであれば、体制整備の中身を見ていくことが大事なのであって、それが例えば何億円必要ですよねという話では、今回の話とはちょっと違った方向に行ってしまうんではないかなというところが懸念されるというのが2点目でございます。
また、この資力のところで、先ほどの代理店とかの話にもつながるのですけれども、8ページの下から2つ目の丸で、所属金融機関に一次的な損害賠償責任を負担させるという制度が今でも保険業法283条などにあるわけですけれども、これはこれであっていいと思うのですが、これは所属金融機関が代理店をコントロールできるということを前提に、そのインセンティブを与えるための仕組みになります。そうしますと、例えば銀行窓販で変額保険を売る場合には、銀行が乗合代理店になったりするような形なわけですけれども、銀行窓販は非常に重要な販売ルートになっておりますので、銀行の交渉力は保険会社に対して非常に強いということが考えられるわけです。そのため、銀行が違法な勧誘をしたとして、所属保険会社が責任を一次的に負った後で、銀行に現実に求償できるかというと、見送らざるを得ないということもひょっとしたらあるかもしれません。そうすると、所属保険会社に責任を負わせる前提の部分が成り立っておらず、一番しっかりしなきゃいけない販売者が責任を負わずに済んでしまって、インセンティブとして一番悪い状態になってしまっている可能性があるということも懸念されます。
そうすると、複数の所属金融機関が乗り合っていて、擬似的に独立のように見える仲介業者に対しては、どういう責任制度が最適なのかというところも考える必要があり、切り分けの基準は難しいかもしれないんですけれども、現実に即して考えていくと、別の枠組みにするということも考えてしかるべきなのかなという気がしております。
最後に1点、プラットフォームのところです。貸金業法について、P2Pレンディングの個人に貸金業登録を求めるというのはちょっと非現実的だというところはそのとおりかと思うのですけれども、借り手の保護が貸金業法の目的であるわけでして、P2Pレンディングの場合でも、借り手の保護は依然として必要だと思われます。そうしますと、P2Pレンディングの貸し手に回る人たちに個別の登録を求めないということはいいとしましても、貸金業法の中身で、例えば植田メンバーからご指摘のありました金利規定であるとか、あと、総量規制も現在入っているかと思いますけれども、これは貸し手が誰であるかにかかわらず、借り手を保護するために必要というお話ですので、貸金業法をまとめて適用を除外するかと、そういう話ではなくて、貸金業法の中身とその制度趣旨に従って1件ずつ考えていくべきであると思います。そのときに、どの主体に業者としての行為規制をかけるのが望ましいのかというのは、また別の観点から決まってくる話かと思いますので、今ある業法の個々の規制の内容ごとに応じて考えていくといったスタンスが必要なのかなというふうに思っております。
全体としての考え方はこれでいいのかと思うんですが、最終的にはそういった丁寧な検討が求められていくことになるのではないかというところでございます。
以上でございます。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、6人の方にお札を立てていただいていると思います。坂さん、永沢さん、福田さん、加毛さん、松井さん、翁さんの順でお願いしたいと思います。
坂先生、お願いします。
【坂メンバー】
ありがとうございます。私のほうからは、プラットフォームの提供者に関する問題について、5点ほど意見を述べさせていただければと思います。
1点目は、前回の問題提起ではあるんですけれども、市場メカニズムを活用した規制手法という点について、若干意見を述べたいと思います。
一般的に言われていることではあると思いますけれども、金融商品は一般の商品と異なって目に見えるものではなく、また、そのよしあしは将来にならないと、すなわち、一定期間経過後のリターンの状況がはっきりしないと、わからない面があります。
また、市場機能が発揮されるためには、相応の数の市場参加者、しかも、金融商品を評価できる市場参加者が必要になると思います。この点、プラットフォームは、多数が閲覧できる半面、ピア・ツー・ピア、P2Pの金融商品は個別性が高いようにも思われます。
なお、詐欺的な行為を行う者は、短期に不正の利益を得て市場からいなくなるので、市場の機能によりこれを防ぐことは困難と思われます。市場メカニズムの機能には相応の条件が必要であり、限界も存することには留意が必要と思います。
2点目ですけれども、制度検討の視点についてです。第3回目、第4回目の会議で、金融制度により達成されるべき利益について議論が行われました。ここで議論された利益について、「分散型」の仕組みにおいて、どのようにしてこれが確保されるのかが検討される必要があろうと思います。
現行の金融法制は相応に堅牢な制度をつくっておりますが、「分散型」の仕組みにおいて、業者、利用者、行政等がいかなる役割分担をすれば、適切な資金の流れや適切なリスクの移転が可能か、これが検討されるべきと思います。
こうした課題に鑑みますと、現行の少額電子募集取扱業者に準じて、参入規制、行為規制、行政監督について制度整備を行うというのが一つのあり方なのではないかというふうに思います。
3点目ですけれども、12ページのプラットフォーム提供者に求めるべき基本的事項についてです。いずれも重要な項目と思いますが、問題はその具体的内容であろうと思います。この点に関しては、各論的に4点ほど述べたいと思います。
各論の1つ目ですけれども、まず、金融商品等の要件の設定についてです。これは提供される商品・サービスの特性に鑑み、そもそも、どのような枠組みの商品・サービスの仲介を認めるのかが課題となると思います。この点、少額電子募集取扱業者においては、非上場株式について極めてリスクが高いことなどに鑑みて、投資額を50万以下に限定するなどしております。
P2Pで直接の貸し金・融資を認める場合、回収可能性の判断は必ずしも容易でないことや、延滞等の場合の回収の手間、費用の負担等に鑑みると、いかなる範囲で、あるいは、いかなる形でこれを認めるかが問題になると思います。保険についても、将来にわたって保険金の支払いが確保されるのかなどの問題に鑑みて、どのような範囲、形のものを認めるかどうかというのは検討されるべきと思います。
次に、各論の2点目ですけれども、商品・サービスの審査についてです。個別の貸し金・融資や個別の保険が適切なものかは誰かが審査をしなければならない。この点、貸し主が回収可能性を適切に審査できるか、あるいは、保険契約者が引き受け者の引き受け能力を適切に審査できるか、あるいは、市場が審査できるかというと、難しいのではないかと思います。
そもそも、貸し主や保険契約者は直接、借り主や保険引き受け者の情報を得ることができる立場にありません。ここでは、いかなる情報を借り主、保険引き受け者から得るかも含め、審査はプラットフォーム提供者によらざるを得ないと思われます。利用のハードルを下げるという観点からも、この審査はプラットフォーム提供者によることが合理的と思います。
また、現状の株式型クラウドファンディングやファンド型クラウドファンディングでは、プラットフォーム業者が事業計画等の審査を通じて、資金需要者に対する助言を行ったり、また、継続的な情報提供を行うなどの努力が行われています。
こうした取り組みは、資金需要者の成長、成功にプラットフォーム提供者が寄与し、リターンの源泉を生み出そうとする活動と評価できると思います。プラットフォーム提供者にさまざまな情報が蓄積され得ることも鑑みますれば、こうした取り組みは極めて重要だと思います。貸し金・融資や保険契約においても、借り主、保険引き受け者への情報提供等は重要な意義を持ち得る面があるかもしれません。
こうした点に鑑み、金融商品等の審査に関する基準は極めて重要と思います。自主規制等の役割分担は必要かと思いますけれども、基本的枠組みは法律において的確に定めることが必要だと思います。
なお、審査に関するルールのあり方は、公正な競争条件の確保という点でも重要な意義を持ち得ることは指摘しておきたいと思います。
各論の3点目ですが、もう一つ重要な点は、利用資格に関する要件の設定・審査だと思います。リスクが高いものや判断が難しいものは、相当程度、利用者を限定することも検討されるべきと思います。この問題は、規制による限定と事業者の審査による限定と2つの方法があり得ると思います。後者は、取引における適合性審査の問題であり、プラットフォーム提供者は、適切な情報を得て適切な判断を行うことが期待されると思います。
また、利用資格に関する要件の設定・審査は、悪意の利用を防ぐ。例えば悪質な金貸しによる利用ですとか、あるいは、不正に保険金を得ようとする者による利用、あるいは、返済や保険金の支払いを行う意思のない者による不正な資金集めのための利用等、こういったものを防ぐためにも重要と思われます。問題の一断面は、これらの点について、プラットフォーム提供者が直接はリスクを負担しないという点であり、ここにも規制対応の必要性が認められると思います。
4点目ですが、12ページに記載されている項目のほか、幾つか検討すべき項目があるように思われます。プラットフォーム提供者に情報の集中、蓄積が行われることに鑑みれば、情報の利用・保護に関する規律ですとか、あるいは、利益相反の管理についても留意が必要と思われます。
また、仲介した案件のその後の状況に関する継続的な情報提供や、プラットフォーム提供者の実績に関する情報提供、要するに、プラットフォームが仲介した貸し金・融資における回収率や、あるいは、保険給付における実績などの情報提供も重要と思われます。
それから、大きい項目の4点目ですけれども、13ページの1つ目の丸についてです。米国のストック型のクラウドファンディングにならって、勧誘については禁止すべきと思います。
先ほどもご指摘がありましたが、別の観点から、少し意見を述べさせていただきますと、もともと、金融商品の電話訪問勧誘は、投資被害、利用者被害の温床ということがずっと言われてきていると思います。さらに、最近はSNS等を通じた勧誘による投資被害事件も少なくない状況にあります。P2Pによるサービスは相応のリスクがあるものと思われ、他方、プラットフォーム提供者における情報の蓄積ですとか、あるいは、ターゲッティング広告やステルスマーケティング等の弊害も懸念されるところです。もとより、プラットフォーム提供者のビジネスモデルと勧誘というのは少し相入れないところがあり、基本的に異なるものではないかとも思われます。
それから、最後に、5点目ですけれども、13ページの最後の点、規制のあり方についてです。この点については、過去に投資型クラウドファンディング業者において、集めた資金をみずから関連会社に流して行政処分を受けたなどの例があることに鑑みますと、自主規制との役割分担はあり得るとしても、行政による適切な規制監督というのは不可欠と言うべきと思います。この点は重要だと思います。
「分散型」の取引にはさまざまな課題があると思いますけれども、こうした課題の解決に向けたイノベーションが促進されるような規制枠組みが求められると思います。
以上です。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、永沢さん、どうぞ。
【永沢メンバー】
ありがとうございます。私からは、7つ、意見と質問をさせていただきます。
まず、岩下メンバーから、事業者の外縁について冒頭にご指摘がありました。私はこのご指摘は大変重要な論点と思いました。私も事務局でご用意いただいた表に記載されていない事業者、例えば比較サイトを運営している事業者について、ここには個人も結構いらっしゃると思いますけれども、そういった人たちについても、何らかの規律、規制の導入の検討というのは必要なのではないかと思っております。
続きまして、以下は、事務局資料に沿って個別論点について質問や意見を申し上げさせていただきたいと思います。
まず、「独立型」と「従属型」の2つに分けるということについてですが、この2類型に分類することに異論はないのですけれども、事務局でおまとめいただいた比較表に関して、1つ質問がございます。
報酬の受領に関する規制を横に並べて、横に見ますと、投資助言者は利用者から報酬を受領するのに対し、保険仲立人は利用者からの手数料の受領が禁止となっています。「独立型」に分類される保険仲立人は、どこから報酬を得るのでしょうか。金融機関から何らかの報酬を受領しているというと思いますが、どういう根拠で金融機関から報酬を受け取るのか疑問に思いました。保険業界に詳しくないものですから、教えていただきたいと思います。
また、海外でも、保険仲立人については、日本と同様の規制になっているのでしょうか。素人考えですけれども、お金を払う人が雇い主というふうに思います。独立系中立というのであれば、手数料は利用者から受け取るべきなのではないかと素朴に感じました。本日でなくて結構ですので、この点、ご説明いただけたらと思っています。
それから、続いて、6ページ目の論点に関する意見です。国民の資産形成を進めていく上では、仲介者の果たす役割というのは大変大きいと思っております。利用者のサイドに立つ独立アドバイザーを育てることがこれからの資産形成を進めていく上では大変必要と思いますが、「独立型」の定義は利用者にわかりやすいもの、腑に落ちるものでなければいけないのではないかとも感じております。この点から、私は、手数料を利用者以外の第三者から受領することを原則禁止するという英国や欧州のルールの導入は検討に値するのではないかと思っております。
この点に関しまして、後藤メンバーから先ほど、「独立型」の場合は利用者には自分が事業者に支払う手数料が見えるのに、「従属型」の場合はそれが見えないというのであれば、我が国の現状の消費者には「独立型」はなかなか受け入れられないもので、結局のところ、「独立型」を育てることができないことになってしまうのではないかというご指摘がありました。私もそのような問題点があると思います。
ただ、私はこの点、「従属型」についても、所属金融機関から幾らの手数料を受領しているのか、特に所属が複数ある場合には、どこから幾らの手数料なり報酬を受領しているのかを情報開示していただくことことが必要と思っており、そうした情報提供を利用者に行うことにより、「独立型」の普及を我が国でも後押しできるようになるのではないかと考えます。
また、手数料という名目だけでいいのかという疑問もあります。金銭以外の対価の提供を受けている場合は、そういう対価の開示も必要となるのではないかとも思ったりもしております。
続いて、プラットフォーム事業者のところに移らせていただきたいと思います。11ページ以降の規制についての考え方について、1つ質問がございます。
まず、2番目の丸のところでございますけれども、「独立型」であるという要件が示されていますが、「独立型」である必要性について、理由をお聞きしたいと思います。「従属型」でもいいのではないかということを私は言いたいわけではなくて、「独立型」の意味が一体何なのかということを再確認するために、この質問をさせていただきたいと思った次第です。
それから、続きまして、次の12ページのプラットフォーム提供者に求めるべき基本事項については、私は異存ございません。利用者資産を預かることは禁止すべきです。また、この分野においては資金調達者の情報開示を相当に緩めざるを得ないかもしれないという事情を考えますと、この種のものへの投資は本当に自己責任であることを、出資される方には一層徹底するという意味で、勧誘の定義がなかなか難しいところですけど、人間による勧誘、例えば電話や訪問販売による勧誘などは禁止すべきではないかと考えます。個人的には、セミナーなどもやり方によってはも自己責任が曖昧になりやすく、いかがなものかとういうふうには私は感じております。
最後に、投資型クラウドファンディングとP2Pに関連した記述がございましたので、この機会この点についても意見を申し述べさせていただきます。投資型クラウドファンディングのプラットフォーム運営業者には、デューデリジェンスをはじめ、情報提供を適切に行うことを確保するように求めてはおりますけれども、資金調達者に関する情報開示についての規制が不十分なまま、この制度をスタートさせてしまったのではないかという問題意識を私は持っております。
資金を調達する、言い換えれば人様からお金を集めようとされる方は、きちんと情報開示をすることが原則と思っておりまし、この点もあわせて、プラットフォーム事業者だけではなく、資金調達者の情報開示についても再度検討が必要ではないかと感じているところです。
最後になりますが、P2Pレンディングについては、日本では貸金業法の規制があるために、海外で行われているようなP2Pは行われておらず、匿名組合を介在させ、インターネット上でソーシャルレンディングと称して投資資金を集める行為が行われています。お金を集めるところは金商法、融資をするところは貸金業法で手当てされていると言われておりますけれども、借り手保護を口実にどこにどのように融資されているのかが投資家に十分に開示されていないという課題があるとも聞いております。。持論になりますが、投資判断に必要な情報の開示が不十分なところに自己責任を求めるのは難しく、健全な発展は難しいのではと思っており、対応の改善が求められるところであり、改善できない理由が貸金業法にあるというならば、借り手保護と投資者保護の両立をはかれる方法をこの機会に模索すべきと考えます。
金融制度の議論から外れた話をしてしまいましたが、いずれにしても、海外で行われているP2Pというものが日本でもスタートすることが早晩ありうることも考え、金融制度全体の見直しの議論を進めていくことが必要ではないかとも思います。
以上でございます。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。ご質問があったと思います。
【井上信用制度参事官】
永沢メンバーからご質問いただきました。
まず、1点目、参考資料1の保険仲立人のところの右側のところに、利用者からの手数料の受領禁止(監督指針)と書いてございますけれども、ご推察のとおり、実際には保険会社から手数料をもらうという形になっています。他方、保険会社からのその手数料の多寡をもって、お客さんに勧める商品を変えるというようなことはあわせて禁止しているというようなことでございます。
2つ目のご質問ですけれども、11ページのそのプラットフォーム提供者の要件として、「独立型」の事業者であることというのを書かせていただいておりますけれども、これは「従属型」でございますと、基本的にはその所属金融機関からのコントロールがきくというようなことを前提に、「独立型」というふうにここでは要件を設定させていただいているということでございます。
【神田座長代理】
どうぞ。
【永沢メンバー】
本日、時間がないので、後日で結構ですので、海外では、その保険仲立人の扱いというのはどうなのかというところを、別の機会で結構ですので、ほかの方はご存じかもしれませんので、私にご教示いただけたらと思っております。
以上です。
【井上信用制度参事官】
かしこまりました。イギリスにおいては、インシュランス・ブローカーというのは基本的には顧客から手数料をもらっておられるというふうに承知しております。
【永沢メンバー】
ありがとうございます。
【神田座長代理】
よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。
お隣の福田先生、どうぞ。
【福田メンバー】
ありがとうございます。今回の横断的な機能の視点もまじえた金融制度のあり方に関する事務局の討議資料、非常に重要な論点、たくさん提供していただいていると思います。また、最近のテクノロジーの進歩みたいなものもある程度考慮しながらの資料になっているということは重要、非常に御苦労されているということは非常に評価したいと思います。
ただ、このテクノロジーはこれからもさらにどんどん進歩していくという視点はやはり重要だとと思います。現状ではテクノロジーをある程度我々は把握している。けれども、検討しているのが、これからも我々が想像もしないようなテクノロジーが生まれてくる分野だという視点でやっぱり考えざるを得ないということなんだろうと思います。
そうすると、本来はきれいな規制、スマートな規制をつくりたいんだけれども、それをつくっても、テクノロジーが進歩すればやがては時代遅れとなり、新しいルールが必要になってくるというイタチごっこになってしまう。あるいは、規制を作っても作っても新しいビジネスは規制しきれないというモグラたたきになってしまう。このような状況は、あまり好ましいルールづくりではないと思います。
また、イノベーションもゆがんでしまう可能性もあります。本来望ましいイノベーションというのは我々の生活を豊かにするようなイノベーションだとは思うんです。けれども、何か変に規制をつくると、その規制を逃れるためのイノベーションが逆に力を注がれてしまうというようなこともやっぱり起こり得るわけで、そこら辺はやっぱり常に気をつけなければいけない。
金融業というのは伝統的にはあまりイノベーションのない産業だったので、これまではきちっとしたルールをつくって、それできちっと規制しましょうという考え方が金融業では主流でした。それはそれでこれまではよかったわけですけれども、やはり新しいイノベーションというのがどんどん起こっていく時代に、どうすればいいかというと、やっぱりがちがちのルールではやっぱり規制できないという時代にはやっぱり来ているという視点はやっぱり大事です。もちろん金融は特殊でいろんな意味で規制しなければいけないことは多い。けれども、テクノロジーがどんどん進歩する時代には、厳格なルールで規制するのではなく、なぜ規制しなければいけないかというやはりプリンシプルに常に立ち返って、現行の規制に関してはある程度弾力的に運用していくという視点というのはやっぱり大事じゃないだろうかというふうに思います。
金融庁にとっては、厳しい規制を敷いて保守的に規制したほうが楽かもしれない。けれども、やはり金融行政方針でそうじゃないかじとりを切っているわけですので、やはり金融庁もリスクを負うことにはなるかもしれないですけれども、ある程度の弾力的な運用というものも見据えた形でのルールづくりというのを考えざるを得ないんじゃないかというふうには考えております。
その際にもちろん重要になるのは、例えば8ページにあるように、預かり資産の有無とか預かり資産の多寡という視点というのは大事で、やはり金額が多くなってくれば、そうはいっても、あるいは、預かり資産が非常に巨額な資産を取り扱っているような金融機関、あるいは、業者に関しては、やはりかなり保守的に見積もるという視点というのは大事です。その一方、そうじゃない、預かり資産がない、あるいは、あっても非常に少額だと思われるものに関しては、当事者はかなり自己責任をとる形でやってもらうという視点も、ある程度、私は大事なんじゃないだろうかなというふうには考えています。
また、新しい技術がどんどん発達してきますので、なかなか何が起こっているかもわかりにくいということは当然出てくるわけです。そういう意味では、その一番、最後の13ページにあるような複層的な仕組みという視点は非常に大事です。もちろんプラットフォームの提供者を規制するということは大事だとは思いますけれども、それだけでは規制しきれないことというのは当然あるわけで、いろんな立場から監視するとは必要です。規制すると監視するはこれは違うとは思うんですけれども、何が起こっているかということをいろんな観点から見るという視点というのはやっぱり大事です。一定方向からしか金融規制を考えないと、やっぱり従来とは違うことが起こっていたときに、なかなか見通せないということはあるとは思いますので、そういった多角的な視点というのはやっぱり大事なんじゃないだろうかというふうに思います。
私からは以上でございます。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、加毛さん、どうぞ。
【加毛メンバー】
ありがとうございます。3点ございます。
1点目は、森下先生がご指摘になった、情報の利活用の問題についてです。本日の討議資料では、4ページにおいて「利用者に対する情報提供などこれまで検討してきた「規制」の態様についての考え方が基本的に当てはまる」とされており、それゆえに、顧客情報について特別の項目が設けられていないものと理解しております。
ただ、とりわけ「独立型」の仲介業者やプラットフォーム提供者を想定した場合に、それらの事業者にとって一番重要なのは、多数の顧客から集めた情報を活用して、例えば他の事業者に利用させることによって、利益を得るということではないかと思います。
そうであるとすれば、これまでの検討において示された考え方が妥当するところも多いと思いますけれども、「独立型」の仲介業者やプラットフォーム提供者に対する制度の在り方を考えるうえでは、情報の利活用が重要な問題になるだろうと考えます。
顧客情報の問題は2つに大別できます。第1は、顧客情報の保護に関連する問題であり、これは、情報の帰属主体というべき顧客と、その情報を取得・管理する事業者との間の関係です。この問題は比較的議論がしやすいところでして、消費者保護的な観点から情報の取得・管理にいかなる要件を課すのか、あるいは、個人情報保護法を遵守しつつ、いかなるプラクティスを確立するのが望ましいのか、などの問題について、一定の方向性を共有して議論をすることができます。
これに対して、顧客情報をどのように利用するのか、とりわけ、情報を取得した事業者が他の事業者に対し、どのような契約に基づいて、顧客情報を提供し、いかなる条件のもとで情報の利用を認めるのか、については、議論が難しいところです。事業者間における情報の利活用の問題は、当事者に委ねれば良いとも考えられますが、顧客情報の提供に関する不適切な差別などの問題もあります。この問題については、研究者として、今後議論を蓄積していかなければいけないところだと認識しておりますが、ぜひ行政サイドにおいても、積極的に検討していただきたいと考えております。
2点目は、討議資料の12ページで挙げられているプラットフォーム提供者に求めるべき基本的事項についてです。討議資料に挙げられている事項について異論はないのですが、今後、制度を作っていくうえでは、これらの事項をどのように具体化していくのかが問題になるだろうと思います。
例えば、最初に挙げられている「プラットフォームの利用者に対する誠実義務」に関連して、プラットフォーム提供者が提供するサービスの内容次第では、利用者間の公平に配慮すべき場合があると考えられます。また、4点目の「プラットフォームの用者資格に関する要件の設定・審査」についても、例えば、利用者のレーティングなどを適切に行うことが求められる場合もあると思いますし、あるいは、利用規約に違反した利用者にどのように対処すべきかなどの問題もあろうかと思います。制度構築の観点からは、基本的事項の具体化が重要になると理解しています。
そして、この点に関連して、3点目なのですが、基本的事項の具体化に際しては、問題となるサービスを念頭に置かなければ、議論を進めることができません。しかし、先ほどから多数のメンバーが指摘されているとおり、今後新たなビジネスとして、どのようなサービスが登場するのかを予測するのは、大変難しいところです。そのような状況下で、実効的な規制の在り方を考えるうえでは、討議資料の13ページにある通り、自主規制機関による自主規制というものの比重が大きくならざるを得ないように思われます。
ただ、自主規制機関による自主規制というのは、言葉だけでは簡単に実現できそうに響くわけですけれども、新しいビジネスの分野では、大変個性的な事業者も多いと仄聞致しますので、当然のように、ある事業分野について自主規制機関として一つの団体が立ち上がり、監督官庁がその団体を窓口として監督をすれば良いという状況は生じ難いように思われます。この点は、事業者サイドの問題であり、その協力を求めなければならないところではありますけれども、新たなビジネスの成長を妨げないように、自主規制の手法を活用しようとするのであれば、避けては通れない問題であると考えております。
ありがとうございました。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、松井さん。
【松井メンバー】
ありがとうございます。今回も、金融庁さんから、非常にわかりやすく、かつ刺激的な整理をいただきまして、感謝申し上げます。私からは3点、お話をさせていただければと思います。
まず、1点目ですけれども、規制のエンフォースメントをどうしていくかという点でありまして、全体に通ずる話かと思います。今回は、この代理や媒介を行う仲介者がターゲットになっているわけですが、ここに入ってくる事業者に想定される取引というのは、今回の資料でもアンバンドリング、リバンドリングといった話が盛んに出てくることからもわかりますとおり、創意工夫がどんどんなされるものであり、領域としても非常に進化の早い領域かと思っております。
先ほど、福田メンバーからもありましたけれども、常にイノベーションが起こる分野でありますので、このことを前提として、規制をどうつくっていくのが果たして今後にとって好ましいのかという視点が要るのだろうと思っています。
例えば具体的に対処すべき論点が確定された際に、それに対してどういうメニューで規制をつくっていくのか。1つは、私法のルールに委ねてしまう、あるいは、それに近いルールで処理をするということがあろうかと思います。今回も銀行の代理店や保険募集人についての損害賠償のお話が出ていますが、これなどは私法のルールに寄せて規制が設けられているという理解だと思います。
いま1つは、私法のルールでは足りない場合であるとして、行政上の強制手段を伴ったルールを用いて、エンフォースメントを行っていく、ということがあるかと思います。この行政上のルール、強制手段を持ってくる場合においても、例えば参入規制であるとか行為規制であるといった比較的厳格なルールを設けるのか、あるいは、取引の公正ルールのようなもう少し穏当な形でいくのかといった視点もあるかと思います。以上のように、具体的な論点に対して、エンフォースメントをどのように設けていくのかというのが、この領域で非常に重要な視点ではないかという気がしております。
2点目も、それと関連するのですが、皆様から既に何度もご議論のありました「従属型」と「独立型」の話です。これまでの話を聞いていまして、私の結論も皆さんと一緒で、この2つの分類があっていいと思ってはいます。ただ、ちょっとあまのじゃくな気持ちから、ひょっとしたらこのような分類は要らないのではないか、ということを少し考えてみました。と申しますのは、要は、利用者を保護するための仕組みさえできればいいわけですから、この「独立型」、「従属型」とあえて分けて考える必要があるのかということです。
そもそも、どんな仲介者が出てこようと、どんな金融商品が出てこようと、利用者が全て仲介者のことをよく知り、あるいは取引をする金融商品の内容を十分に理解し、評価できるのであれば、「従属型」や「独立型」というような分類は要らないのです。もちろん、実際にはそうではないので、どのような人が仲介者として出てきているのか。その仲介者が用意している金融商品がどういうものなのか、ということを補ってあげなければいけない。ただ、このように考えても、利用者に情報提供すればいいという話にとどまるので、まだ「従属型」、「独立型」の話にはならないのです。
そうだとしますと、どこで「従属型」、「独立型」の話が出てくるかというと、情報を補うに当たって、そもそも利用者の利益を損なう蓋然性がどれぐらい高いかという話が問題となったときであるわけです。要は「独立型」であれば、その蓋然性は相対的に低いし、「従属型」であれば、逆にその蓋然性が相対的に高くなる。つまり、ここで言っている「従属型」、「独立型」というのは、ある種の情報の補い方について、利用者の利益を損なう蓋然性の違いからくる量的、質的な違いを意味しているのだろう、ということです。自分では以上のように理解して、そこで一応、納得をしてこの2つの分類は意味があるのかなと思っておりますが、非常にプリミティブな話でもありますし、皆さんには自明の話かもしれません。ここでは、一応自分の思考の整理のため、以上のように考えた次第でございます。
それから最後に、3点目です。これは、プラットフォーム事業者の規制の話であります。ちょっと意地悪なことを考えてみたのですが、私がもし非常に悪い業者で、このプラットフォーム規制の話が出てきたときに、どういうことを考えるかというと、プラットフォーム事業者に対する規制があることによって、貸金業者に対する規制が外れるというのであれば、悪い業者である私としては、ぜひこれを使いたい。なので、プラットフォームの中に入っていきたい、と思うわけです。
そこで資料の12ページを見ますと、プラットフォーム提供者に求めるべき論点が幾つか上がっています。この中で、4つ目にあるプラットフォームの利用資格に関する要件の設定・審査というのが実は先ほどの「悪い業者」との関係では非常に重要で、プラットフォーム事業者に不良な事業者であるとか、悪意を持った貸し手を排除させる、というのが必要になるのではないかと思います。
ここがきちんと機能することによって、プラットフォーム利用者に対する貸金業法の規制が外れるということも担保し得るのでしょうし、逆にそこがうまくいかないと、貸金業法の規制とプラットフォーム事業者の規制をバーターで考えるということも、なかなかしにくいのかなと直感的には思いました。
なお、この先の話として、仮にプラットフォーム事業者に対する適切な規制がなされることによって、この貸金業法による規制が外れるとした場合に、その後、万が一、不良業者が入ってきてしまったら、これを排除する方法はどうするのか、ということがございます。つまり、不良業者がいったん入ってきてしまうと、プラットフォーム事業者がその不良業者なり悪意のある業者に対して何らかのコントロールをかけられるかというと、なかなか難しいところもあるのではないかと思います。では、どうすればいいのかという解を私が持っているわけではないのですが、このプラットフォーム事業者が問題に直面したときに、どういうエンフォースメント手段を持ち得るかというところはやはり非常に大きな問題になるのかなと、思った次第です。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
では、翁さん、どうぞ。
【翁メンバー】
ありがとうございます。私も、今回の大きな考え方で、金融機関と利用者の間に介在するものは、「従属型」か、また、複数の金融機関に所属する者か、「独立型」かという立場の違いに留意して、利用者保護のルールを整備していくということについては基本的な考え方はそうではないかと思いますし、また、ご指摘になっているように、機能ごとに考えると同時に、業態横断的に、これはレギュレートリーアービットレージの問題もあると思うんですが、ここについての視点を持つということが重要であるという、この大きな考え方については賛成です。
幾つかコメントを申し上げたいんですが、1つは、例えば電子決済等代行業者のところの議論でもありましたけれども、同じ決済という機能の中でも、いろいろな行為があって、AISPみたいに情報を集めるだけの機能を果たす業者もあれば、または、決済の指図を行うようなPISPみたいな業者もあるということだと思うので、そして、それはまさに現在のルールがそうであるように、財務条件も異なるわけでありますので、やはり少し、機能の中でもどのような行為をするかということで少しルールを、行為規制とかとの組み合わせでルールを整備していくという考え方が必要じゃないかと思います。
いろいろなことをやりたい業者が入ってくるはずですので、その意味では、機能の中でも、どういう行為をするかというような、そういった、シンガポールもそのような考え方に近いわけですけれども、そういった柔構造的な考え方を入れて設計していくという発想も大事なんじゃないかなというふうに思います。アクティビティの内容やリスクによって、考えていくということが1つ目です。
それから、2つ目は、福田先生がおっしゃったこととほとんど同じなんですけれども、やはりフィンテック企業はやはり革新的なビジネスモデルを持ち込む場合があるというようなこととか、それから、ここでも格付会社のことがありますけれども、これは非常に寡占的なプレーヤーの市場であるというようなことでありまして、そういう意味では、やはり全体として、イノベーションや競争促進的であるという視点というのは必要なのかなというふうに思っております。
これも以前の議論でございましたけれども、財産的基礎というのはいろいろな業者で必要だと思っているんですけれども、例えば小さなフィンテック企業が参入したいと考えたときに、それが非常に大きなハードルになるということもございます。
ですので、こういった今新しいテクノロジーの発展というところでは、新規参入や競争の促進という視点もあわせて考えて、ほかの体制整備の要件とあわせて、いろいろな要件というのを適切なレベルにしていくということが重要かなと思っています。市場の構造、テクノロジーの進展を促すということもこういった分野の議論には非常に重要かと思っております。
プラットフォームにつきましては、12ページに書いてあるこのポイントというのは、私も重要な論点が記載されていると思うわけでございます。特にこの今のP2Pレンディングというようなプラットフォーマーを考えた場合は、そのとおりかなというふうに思います。
一方で、例えば、日本にはまだないんですけれども、イギリスやドイツなどでは、銀行自体がプラットフォームになるという、ソラリスバンクなんかがまさにそうで、バンキング・アズ・ア・サービスということでフィンテック企業とつながっていくことによって、銀行、新しい銀行像をつくっていくというような動きも出てきているわけです。オープンAPIを今、日本が進めているということは、こういったプラットフォームについても、銀行業がオープンAPIでそういうプラットフォーマー的な機能になっていくということに対しても目を配っておくということが必要かなというふうに思っています。
ですので、ここで本来的なと書いてありますけれども、今あるP2Pが本来的という意味なのかもしれませんけれども、プラットフォームはいろいろあると書いてありますように、独立の事業者と定義するというような、厳密な考え方をとるのは、これからの動きを考えると、あまり適切ではないのではないかなというふうに思っております。
例えば、これは大野メンバーもおっしゃったんですけれども、ほかのプラットフォーマーが金融に入ってくる一方で、銀行がいろんなP2Pレンディングと組んでいろいろな業務をやっていくときに、業務範囲規制の話というのは必ず出てくる議論だというふうに思いますし、そういったことも視野に入れて、これから検討していく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。
以上です。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、戸村さん、どうぞ。
【戸村メンバー】
ありがとうございます。私は5点申し上げたいと思います。既に出たご意見と重なる部分もありますが、意見表明という意味で、繰り返しになる点についても申し述べさせていただきたいと思います。
第1点は、討議資料6、7ページにある金融取引の代理・媒介等を行う者に対するルール整備の論点のうち、手数料の受領について、意見を申し述べたいと思います。
私の意見は、既に出ているご意見と異なる部分もあるんですが、事業者に細かい情報開示を義務づけても、利用者に提供されるそれぞれの現場のお店で提供されるそれぞれの情報の背後にあるインセンティブまで開示することは技術的に不可能だと思います。そうすると、複数「従属型」、及び、「独立型」の事業者の場合、提供される情報のうち、どれが広告で、どれが助言なのか、利用者には判別できないという問題が生じると思います。
そうすると、経済学的にはいわゆる逆選択が起こって、利用者に課金して助言サービスを行いたい独立型事業者が育たないおそれがあると思います。この点、既に委員のどなたかが申し上げた、おっしゃられた論点と同じでございます。
この問題への対処としては、「独立型」事業者は、金融機関からの手数料の受領をできないという規制をかけてしまうことで、「従属型」は広告、「独立型」は助言と利用者にはっきりわかる形で分けてしまうことが解決になります。当然、このような規制をかけると、非効率性というものが生じるんですけれども、利用者と事業者の間の情報の非対称性がある以上、セカンドベストの解では、何らかの効率性を犠牲にせざるを得ないと思います。
また、後藤先生からあった日本の消費者は直接課金を望まない文化があるというのは重要なご視点だと思うんですけれども、今後変わっていく可能性もあり、金融機関から手数料を受け取れない「独立型」の登録を「従属型」の登録とは別に、金融庁として設けることで、個別の事業者が効率的な事業形態を選んで、今後、日本経済がより効率的になるのではないかと思います。それが1点です。
第2点目は、討議資料7、8ページ、金融取引の代理・媒介等を行う者が利用者資産を預かる場合について意見を申し述べたいと思います。
翁さんもおっしゃられたように、オープンAPIの原則を踏まえると、金融取引の代理・媒介等を行う者は、原則、利用者資産を預からないような形にするのが可能なのではないかと思います。ただし、物理的な現金もまだ存在しておりますので、現在の銀行代理店が物理的な現金の預け入れを代理するような場合は、利用者資産の分別管理の徹底が必要だと思います。
ただ、これは私の個人的な考えなので、もし議論の末、金融取引の代理・媒介を行う者が利用者資産を預かることを通例とせざるを得ないと、そういったような場合は、まず、分別管理の徹底、その次に、賠償責任保険への加入を求めることで、利用者へのリスクを低減することが必要だと思います。このような場合は、分別管理の効率性を高めるために、優先弁済制度を法律で提供することも検討に値すると思います。その上で、財務規制が最後に補助的なものとして課されるべきだと思います。
この場合には、預かった利用者資産を分別管理をせずとも、賠償責任保険への加入や銀行保証の取得でかえられるという考え方もあるとは思いますが、私の意見としては、このような保険や保証での代替を許すと、預かった利用者資産を運転資金等に自由に回せることになり、実質的に金融仲介業務を行う抜け道ができることになるので、利用者資産の分別管理を原則とするべきだと思います。それが意見の2点目です。
3点目の意見は、討議資料の12ページ、プラットフォームを利用して金融の「機能」の一端を担う多数の契約当事者には個別の業登録を求めないことについてどう考えるかという論点について意見を申し述べたいと思います。
私の意見としては、資金の受け手と出し手の間で直接契約が結ばれる場合は、契約の内容に応じた業登録、もしくは、機能登録を個別の利用者に求めるべきだと思います。この点は坂先生と同意見です。
同じ内容の契約について、契約に至った経緯の違いによって規制が変わると、規制逃れの手段になりやすいと思います。例えば、インターネット上のマッチングサービスを利用した白タクは適法だが、そうではない場合の白タクは違法とすることは、タクシー免許制度の目的と相入れないと思いますけれども、同じような状況が生まれると思います。
よって、規制の内容は、契約の経緯にかかわらず、最終的な契約の内容のみによって決めたほうが、透明性の高い規制になると思います。実際、これまでの機能別規制の議論も、契約の内容のみに依拠していたと思いますので、その点も申し述べさせていただきます。
そうしますと、現実、じゃあ、どのようにプラットフォームサービスをするかというと、現在のクラウドファンディングにあるように、資金の受け手と出し手の間に法人が挟まって、その法人が業登録、もしくは、機能登録をする形しかなくなってしまうかもしれませんけれども、近年、ホールセールの店頭取引を考えますと、セントラル・カウンターパーティの導入が進められてきており、クラウドファンディング業者をセントラル・カウンターパーティと捉えれば、取引の経済的な性質としては分散型でありながら、契約上は取引当事者の間に法人が挟まるという形があることもおかしなことではないと思います。それが3点目です。済みません、長くなって。
あと、4点目は、討議資料12、13ページ、プラットフォーム提供者が利用者資産を預かることについて、どう思うかということですけれども、先ほど申し上げたように、オープンAPIがもう原則として確立したような状況ですので、そのような状況では、プラットフォーム事業者が利用者資産を預からない形で事業を展開することを促したほうが規制のあり方としては効率的ではないかと思います。
また、仮にプラットフォーム事業者が利用者資産を預かるようなことが避けられないといった場合でも、プラットフォーム提供者であるか、ないかを問わず、利用者資産を預かる場合には、その形式に応じた機能登録を必要とするべきだと思います。そもそも、サービス内容に応じて、事業者が多様な機能の組み合わせを行い、そのような機能の登録を許すことで、過不足ない規制をするというのが機能別規制の狙いであると思うので、プラットフォーム提供者にも機能登録を求めることが機能別規制の本来の趣旨に沿うと思われます。
最後、討議資料にはないですが、ここの議論に出た規制とイノベーションについて、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。
私は、悪貨が良貨を駆逐するというような逆選択を心配する立場です。きちんとした登録制度をつくることで、利用者と事業者の間の非対称情報が減り、よいサービスが採算をとれるようになり、産業が発展していくという効果があると思います。その観点からすると、ある種、硬直的に見える規制とイノベーションが実は代替的な関係ではなくて、補完的な関係に立つことも多くあると思いますので、その点は留意するべきかと思います。
ありがとうございます。以上です。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
それでは、神作先生、どうぞ。
【神作メンバー】
ありがとうございます。私は、本日の事務局の資料、討議資料の3ページ、5ページ、7ページ等で触れられておりますゲートキーパーの問題を中心にコメントさせていただきたいと思います。
3ページを拝見いたしますと、上から3つ目の白丸でございますけれども、投資家の投資判断等に参考になる情報を提供する格付会社などのいわゆるゲートキーパー等に対して、一定の規制を考えるということが記載されています。格付会社の格付サービスなど、第三者の投資判断や金融取引、あるいは、投資した金融商品に基づく権利の行使の仕方等に影響を与えるサービスについては、情報の媒介という点に共通点が見いだせます。情報の媒介という観点からすると、討議資料が取り扱っている金融取引の代理媒介と「媒介」という点で同じような性質をもちます。すなわち、金融商品や投資判断等に係る情報の「媒介」というサービスを提供している観点からすると、ゲートキーパーの業務は金融取引の代理媒介をする者と同様の性質を持つものであり、そのような媒介を行う者についての規制、コントロールのあり方という観点からすれば、両者を全体的・統一的に考えることができると思われます。
したがいまして、格付会社のほか、今申し上げましたような金融取引や金融商品・金融サービス等に関する情報を提供し、投資判断や金融取引・金融サービス取引に係る意思決定に影響を与え、さらには、投資した金融商品に基づく権利の行使のあり方等に影響を与える業務を行う中で、金融取引や金融商品・金融サービス等に係る情報の仲介・媒介を行っている者についても、金融制度スタディ・グループの議論の射程に広く含めることは重要であり、賛成でございます。
具体的には、討議資料の3ページでは格付会社のみが上がっておりますけれども、おそらく、伝統的に最も議論されてきたゲートキーパーは監査人、公認会計士だと思われますし、それ以外にもアナリストや議決権行使助言会社、また、本日の議論の中では、金融商品や金融サービスに係る比較サイトのようなタイプのものも含まれ得ると思います。もっとも、一応、こういった金融取引や金融商品・金融サービスに係る情報を媒介する者の範囲を広く射程に捉えた上で、その中から真に規制が必要なもの、コントロールが必要なものが何かを線引きをしていくことが重要であると思います。
ゲートキーパーのうち、どこまでを規制ないしコントロールの対象に含めるかというときに、幾つか視点があろうかと思いますけれども、先ほど少し申し上げましたように、規制をする、特にコントロールの必然性が高いのは、今申し上げたゲートキーパーの中にはもちろん投資家、利用者との間に契約関係が成立している場合もありますけれども、契約関係が成立していない場合が少なくないという点が、規制もしくはコントロールをすべき大きな根拠になり得ると思います。
逆に申しますと、なかなか契約法による規律というのが十分に働かないという分野であり、こういった監督法、もしくは自主規制を含めた広い意味でのソフトローによるコントロールというのが期待されるところだと思われます。
どのように範囲を画するかという際に考慮すべきことは、先ほど申し上げましたように、投資家の投資判断ですとか、投資家が有している金融商品に基づく権利行使に非常に重大な影響を与えているかどうかという視点であると思われます。そのようなゲートキーパーの提供するサービスというのは、専門性を必要とすることになると思われます。また、こういった情報を提供する者の間に競争が働いているかというような問題もあろうかと思います。
このほかにも多様な要素を考慮し、さらに、例えば格付会社ですとか監査の場合というのは金商法とか会社法が強行法的に規制している情報開示制度の存在を裏づけにしていると考えられるわけでございまして、情報の媒介という観点から規制を考える場合にも、情報の信頼性を確保するために、一定の規制をすることが有効であるのか、その必要性はどの程度まるのかという観点から検討することが考えられると思います。
今の点に関連して、具体的に規制ないしコントロールする場合の内容についてでございますけれども、規制の目的は、ゲートキーパーにより媒介される情報の信頼性を確保することであると思います。
参考資料1では、電子決済等代行業者の欄がございまして、これもある意味では、決済にかかわる情報の提供をしているわけですけれども、おそらくゲートキーパーと電子決済等代行業者との情報提供、あるいは、情報媒介の大きな違いは、ゲートキーパーが提供する情報というのは裁量性、評価の余地があるという点にあるのではないかと思います。だからこそ、業務を提供する際には、ゲートキーパーの独立性・公正性が重要となり、特に利益相反等によって提供される情報がゆがめられていないかといった観点が問題になるものと思います。
媒介する情報も、先ほど申し上げたように、決済に関する情報の場合というのと、それから、ゲートキーパーが扱っているような情報とで、その取り扱っている情報によって規制の内容が異なってくることは当然であり、規制の内容について考える際にどのような性質の情報を扱い、情報の伝達はどのような性質をもっているのかという点も規制の内容を考慮する際のポイントになると思います。
事務局のこのペーパーの中で、少し指摘はございますけれども、今のような観点から、情報の媒介者についての規制のあり方を議論する際に重要なのは、独立性、公正性の確保と並んで、専門性を確保し発展させていていくことであると思います。資格要件ですとか、それから、専門的なサービスを提供するための組織のあり方などです。もっとも、この点については法規制による限界があるところでもございますので、自主規制等々も組み合わせて規律をしていくことが重要であると考えられます。
ゲートキーパの、独自性・公正性の確保については、とりわけ利益相反という観点が重要ですので、場合によっては、情報媒介者のタイプごとに、典型的に見られる具体的な利益相反については具体的な規制をするとともに、一般的な利益相反については利益相反を管理する体制の整備、それから、場合によっては、その他のサービスの提供等についても規制を行うということも考えられると思います。
ゲートキーパーに関連して、金融にかかわる情報の媒介という観点から整理してみることも有用ではないかと思い、発言させていただきました。どうもありがとうございました。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。
14名の方々全員からご発言、ご意見をいただきました。オブザーバーの方々、ご発言ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
それで、私、本来はいつものように言いたいことを言わせていただこうと思っていたのですけれども、ちょっとこちら側に座りますと時間をとるのが申しわけないので、1点だけ感想を申し述べたいと思います。
プラットフォーマーに関係して、イノベーションとか競争促進というのは非常に重要なことで、また、大事なことだと思うのですけれども、その結果として、大きな問題として、今、アメリカなどで問題視されている問題が生じ得るかなと思いまして、それは市場独占、競争者の排除行為ということです。そういった問題はこの金融セクターでも特にプラットフォーマーの将来ということにはなると思うのですけれども、そうした関係で重要な課題になり得るかなというふうに感じております。
まだ時間がございますので、ほかの皆様方のご発言等を伺った上での追加のご発言等があれば、ぜひお出しいただきたいと思います。なかなか難問が多くて、毎回難問の連続かとは思いますけれども、いかがでしょうか。
よろしゅうございますでしょうか。それでは、予定の時間より多少早いかとは思いますけれども、このあたりとさせていただきたいと思います。
本日も、大変活発で建設的なご意見をたくさんいただきまして、ありがとうございました。本日いただきましたご意見等を踏まえて、さらに審議を深めさせていただきたいと思います。
最後に、事務局から、連絡事項等ございましたら、お願いいたします。
【井上信用制度参事官】
ありがとうございます。次回のスタディ・グループの日時につきましても、皆様のご都合を踏まえた上で、事務局より改めてご案内させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【神田座長代理】
どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして散会いたします。ありがとうございました。
―― 了 ――