金融制度スタディ・グループ(平成30事務年度第1回)議事録

  • 1.日時:

    平成30年9月25日(火)15時30分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(平成30事務年度第1回)
平成30年9月25日
  

【岩原座長】
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより、平成30事務年度の金融制度スタディ・グループ第1回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
当スタディ・グループは、昨年11月の金融審議会総会において、麻生大臣から諮問いただきました「情報技術の進展等の環境変化を踏まえた金融制度のあり方に関する検討」を行うために設置されたものでございます。
これまで同一の機能・同一のリスクには同一のルールを適用するとの考え方のもと、現在基本的に業態別となっている金融規制体系を、より機能別・横断的なものとすることについて検討を進めてきたところであり、本年6月には、これまでの審議内容を整理して公表することにより、幅広い関係者に問題意識を高めていただき、さらなる議論につなげていくことが有益であると考え、中間整理を取りまとめました。
本日再開いたします当スタディ・グループでは、6月の中間整理を踏まえ、また事業者の方々からもご意見を伺いつつ、検討を進めていきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、当スタディ・グループのメンバーの皆様と、本日、参考人としてご出席いただいている方々の紹介を事務局よりお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
信用制度参事官の岡田でございます。どうぞよろしくお願いします。
お手元に配付しております資料1のメンバー名簿のとおり、6月に中間整理を取りまとめいただきましたスタディ・グループのメンバーの皆様には、引き続きご参加いただいております。また、オブザーバー及び事務局につきましては異動がございましたが、時間の都合もございますので、この名簿及び配席図をもってご紹介にかえさせていただければと存じます。
また、本日は参考人として、マネーフォワード取締役執行役員・FinTech研究所長の瀧様、ヤフー決済金融統括本部事業戦略本部長の阿部様、LINE Pay事業企画チーム マネージャーの佐藤様、みずほ銀行データビジネス推進部長の梅田様、三井住友銀行データマネジメント部長の柳様、三菱UFJ信託銀行経営企画部副部長兼FinTech推進室長の伊藤様にもご出席いただいております。

【岩原座長】
それでは、続きまして、当スタディ・グループの議事の取り扱いについて、念のため再度確認をさせていただきたいと存じます。
当スタディ・グループは原則公開とし、議事録も公開させていただきます。したがいまして、公表を前提としたご意見、ご発言をお願いいたします。ただし、個別企業のビジネス等に言及して議論をされる際に、競争上の利益への配慮から非公開を希望される場合には、あらかじめ事務局を通じてご相談いただくこととしたいと存じます。
続きまして、議事に移らせていただきます。本日は、まず事務局から資料2についてご説明いただきます。次に、参考人の方々からご説明をいただき、その後で一括して討議を行います。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
6月に取りまとめいただきました中間整理を受けた当面の検討事項(案)について事務局からご説明させていただきます。
その際、改めてこのスタディ・グループの設置の原点に立ち返りますと、昨年11月、ここでの審議をお願いした諮問には、「情報技術の進展等の環境変化を踏まえた金融制度のあり方に関する検討」とございました。
そこにある情報という言葉について振り返って考えてみたいと思いますが、資料2の1ページをごらんください。金融業と情報とございますが、金融業は従前より決済や資金供与、資産運用、リスク移転等を通じて情報を収集・生産してきたとございます。もともとここで改めて申し上げるまでもなく、金融業の本来のあり方として、ここに幾つか例示をさせていただきましたけれども、こういった情報とのかかわり合いというのは従前からあったということだと思いますが、次の2ページにございますとおり、近年では情報技術というのが非常に進展しまして、デジタル化が進んでおります。そうした中で、金融業の高度化ということは不可避的に進展してきておりまして、ここで幾つか例示させていただいたのは、数あるいろいろな試みの中のほんの一例にすぎませんが、一言で言えば情報の蓄積・分析が量・質ともに飛躍的に増加・向上する中で、金融サービスの高度化というのが必然的に図られてきていると、そういうことではないかと思います。
そこまでであれば金融サービスが高度化していくということで、いわば話が閉じるわけでございますが、3ページ目をごらんいただければと存じます。そこにありますとおり、金融サービスを通じて獲得されました情報が、いわばそれ自体が価値を持つものとして、金融でない非金融サービス分野においても活用されると、そういった現象が生じつつあります。これは言ってみると、このページの真ん中の図にございますが、いわば情報というものを軸として、金融と非金融サービスが一体化した形で進められるようになりつつあると、このことが一番足元で注意が必要な現象ではないかと存じます。
以上のようなことを踏まえまして、当面の検討事項(案)というものを4ページ目でご紹介したいと思います。中間整理では大変広範なテーマについてご審議いただきましたが、今のようなことを問題意識として踏まえまして、まず情報の適切な利活用ということで、既存の金融機関も含めて多様なプレイヤーが適切に情報を利活用し、利用者目線に立って競争することを後押しすると、そういうことに向けた議論というのをお願いできればと思います。
その上で、(1)の問題意識というのを具体的な制度のところで捉えたのが(2)から(4)の3つだと思いますが、(2)に決済の横断法制とございますが、機能別・横断法制の検討におきましては、まずは情報の蓄積に有用なこともあって、近年新たなサービスが提供されている、決済分野を中心に議論を開始することとしてはどうかと存じます。その際、決済の現行制度は業態ごとに分かれている中で、利用者ニーズに対応した柔軟なビジネス選択に配慮しつつ、規模・相互関連性や取引の態様などによるリスクに応じたルールを確保していくため、決済分野の機能別・横断法制をどのように設計していくか、そういったことを当スタディ・グループでご議論いただければと存じます。
それから、(3)でプラットフォーマーへの対応とございます。プラットフォーマーというのは、決済その他のサービスで情報を蓄積しながら、多様なサービスを提供していると考えられますが、ここでは以下を含めて広く検討をお願いできればと思います。具体的には、ITを用いて情報を利活用し、個々の利用者ニーズに即した利便性の高いワンストップサービスを目指す業者などが、決済に加えて資金供与等の多様な商品・サービスを提供していく動きに対して、機能別・横断法制としてどのように考えるべきか、また、膨大な情報を蓄積しつつ多様なサービスを提供する場合をどう捉えるべきかについてご議論いただければと思っております。
それから、(4)の銀行及び銀行グループに対する規制の見直しでございます。以上のような情報の利活用をはじめ外部環境が大きく変化する中でございますが、決済・資金供与・預金受入れの一体的な提供を前提としてる現在の銀行規制につきまして、環境変化にそぐわなくなってきている部分があれば、その見直しに向けた議論をお願いしたいと思います。
私からは以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、マネーフォワードの瀧様、10分程度でご説明をお願いいたします。

【瀧参考人】
マネーフォワード、瀧でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。資料としまして、当社のビジョンとデータの利活用についてということでお話をさせていただきます。
まず、当社の成り立ちを本日お話しできればと思っておりまして、1ページをごらんください。ミッションは、社名のとおりお金を前向きなものにしたいというものなのですが、我々が6年半前に創業したときに、お金についてはよく金融リテラシーという言葉があるように、何か学習をしなければいけなかったり、横の人と相談がしづらいとか、何か悩みを抱えたときに聞ける場所がないことを何とかしたいなと思って生まれた会社でございます。プラットフォームという表現をしておりますけれども、やはりこれはフェイスブックであったり、クックパッドであったり、いろんな困ったことがあるときに必ず聞きにいく場所がネット上にはありますというときに、お金については非常にカスタマイズされたアドバイスが必要であったりとか、あるいは中立的なアドバイスはどこで受けられるのかとか、受け皿がないなというところもありまして、それに最も役に立つようなサービスを提供するというのが、当社がやっていることそのものをあらわしているのかなと思っております。
重要にしているのは3つの価値観の中で、とりわけフェアネスというのを非常に大事にしておりまして、どんな人たちから見ても、これはよく消費者であったり預金者の利益といったところが取り上げられがちですが、金融機関さんにとっても、きっとフェアな新しい金融の形があるんじゃないだろうかということを考えていまして、そのような思いでサービスを形成してきた次第でございます。
当社は6年半とはいえ、かなり多くのサービスをローンチしてきております。2ページをごらんいただければと思いますが、左側のオレンジ色の群が個人向けのサービスです。個人のお金の不安を最終的に解決することが目的のラインナップになっております。右側は、個人事業主様や中小企業様がよりよい意思決定をしたり、あるいは企業間信用であったり、銀行による融資とか、そういったいろんな制約もある中で、それをより会社を伸ばすために変化・活用できないだろうかという観点でやっているサービスでございます。
個人向けの方でも、図の上のほうのマネーフォワードのような家計簿サービスというのは、どちらかというとお金のデータの管理を目的としています。英語でいうとセルフダイレクテッド層向けという表現かなと思いますが、自分で何をすればいいのかがわかる人、が、今の主なマネーフォワードのユーザーともいえます。一方で、この図の下のほうへいくと、MONEY PLUSというのはお金に関する情報メディアでございまして、あとはその下にMoney Forward Mallという今年5月に開始したサービスもございますが、これらは自分でどうすればいいかわからない人たち向けに適切な情報を届けたいという、助言的な位置づけを帯びたサービスでございます。
一番下にあるしらたまはお釣りとかの自動貯金をするアプリでして、もう一つがmirai talkという、新宿に対面店舗をつくって、実際にトレーニングを付すことをやっています。マネーフォワードはどちらかというと自分で貯金や投資ができる人向けのサービスなんですが、下のほうはもう少し誰かの指示があったり約束があると、初めて貯金ができていくような人たちに向けたサービスとも言えまして、上側がそういう意味ではリバタリアン、下側はパターナリスティック、そういうラインナップになっていることで、実効的な問題解決に近づいているのが、当社が重視しているところでございます。
右側のビジネス向けのラインナップは、経営者さんが自分で考えることができる人たちではあるので、性質的にはデータの管理に寄った側面があるのかなと思います。真ん中に記載のあるManageboardというサービスは、当社に最近グループジョインいただいた会社のサービスなんですが、経営の判断に向けたデータを提供するサービスです。その上側にある一連のクラウドサービス群というのは、どちらかというとお金の見える化であったり、バックオフィスでやらなければいけない法定業務を効率化するためにあるんですが、そこからだんだんと実際に手を動かせたり、あるいは債権の交換に近い請求書の買い取りとか、そういったことを始めているというのが、まず当社の全体像でございます。
以下、ちょっと14ページほど当社のラインナップをずらっと見ておりますが、3ページが一番当社でいうとユーザーベースの大きいマネーフォワードでございます。こちらのサービスの中で、金融機関様の口座情報の内容について、ユーザーの同意のもとで収集をするという内容が、昨今の表現でいうと電子決済等代行業の対象になってくるというところで、これらの制度対応を進めているというサービスでございます。650万のご利用者様がいるサービスでして、やはりこれだけの人数がいる家計簿のサービスというのは、スマホアプリという手段がなければなかなか実現しなかったなとずっと思っております。
4ページは当社のウェブメディアでございます。なかなかお金の情報について、ここを見ればいいというものがなかったりしますので、ユーザーさんが、課題感が分かってきたときに次のステップは何でしょうか、と思ったときに誘導している先になります。
5ページにありますのが、何をすればいいのかはわかったと。例えば、証券口座の開設をすればいいらしいというときに、じゃあ自分に向いているところはどこなんだというのも、これも普通に検索をかけるよりも、何らかの丁寧なガイドがあったほうがいいのかなというところで、そういうモールのサービスというのを最近始めている次第でございます。我々の中では、こちらはいずれ電子的な本人確認方法をしっかりと実装することができると、よりスムーズに自分に即したサービスをユーザーさんが手に入れられる世界にいけるのかなと思っております。
6ページはもともとお釣り貯金から始まったアプリなんですけれども、知らずにお金がたまりますと。自助努力による貯金をある種放棄しているようなところがあるんですが、これをしていくと、どんな人でも貯金をすることが可能なんだという小さな成功体験が積めるわけです。それを重ねていくことで、本人としては自動操縦モードのような形で貯金ができると。いずれはこういったことを、例えば投資等の資産形成に振り分けていくといったようなビジョンで進めているものでございます。
7ページのmirai talkは、自主的な人向けよりも、やっぱり先生とかについて行動変容をもたらしたほうがいいんじゃないかというセグメントのサービスでございまして、こちらはコーチ費用がかかるんですけれども、お金を払ってでもしっかり貯蓄体質になりたい方々向けサービスを提供しております。裏側では同じマネーフォワードの仕組みを使っておりますので、利活用とも言えなくはないのかなと思うのですが、どちらかというと行動変容にちゃんとコミットしているというところが違うのかなと思っている次第でございます。
おめくりいただいて8ページのMFクラウドシリーズですが、日本のスモールビジネスの方々で、これはよく言われている話ではございますが、帳簿をつけている会社とちゃんとつけていない会社で損益にも大きな隔たりがあります。また、日本企業というのは概ね2カ月とか2カ月半ぐらいたつまで自社の会計帳簿をなかなか見ることができなかったりするというのも現状でございまして、我々は帳簿と経営者の距離を、このサービス部分を通じて縮めることで、生産性を上げた中小企業経営を可能にしていくというところをやっております。特に当社としては、税理士さんに愛されるツールになろうとしていろいろ頑張っているところがございまして、全国で3,000近くの会計事務所の方々が使っていただいております。
そういう意味では、8ページに見たMFクラウドシリーズがデジタルデータを帳簿とかに丁寧に加工するところが主眼にあるのに対して、日本のほとんどのデータはいまだ紙の領収書であったりするわけでございます。ここをデジタルに一気に変えるということを、9ページのSTREAMEDというサービスを通じて提供しています。こちらも大手の会計事務所さん等にご利用いただいているものでございまして、やはり紙のデータが世の中でほとんどである以上、分析の対象にならないという点をボトルネックとして解消するということを狙っております。
10ページのMF KESSAIは、端的に言うと請求書を買い取るというサービスをやっております。これをすることで、企業間信用の必要性を縮小することができます。また、下請け構造に起因してなかなかビジネスが拡大しづらいといったところをこちらで解消するというのが思いとしてはございます。
11ページは、今年から仮想通貨の交換業登録を目指す子会社として、マネーフォワードフィナンシャルという会社を立ち上げております。まずはいろいろな今の諸般の規制対応というのもございますが、こちらも仮想通貨というのがほんとうにユーザーさんにとって金融をわかりやすくする側面があるのであれば、それを実現していくための場所というので、立ち上げ中の会社でございます。
12ページは、もう一つ新しく立ち上げている会社がございまして、マネーフォワードファインというのがございます。こちらはどちらかというとマネーフォワード自社で貸付を行っていくことで、融資のモデルのデータをみずから収集していくところに主眼を置いております。当社自身は銀行さんと比べて強いバランスシートを持っているというような、会社ではないんですけれども、みずから貸していくという行為を通じて、教師データを生成していくというところにフォーカスしております。
以上に見てきた事業のためのデータ収集という面では、13ページにございますように、現在20社、銀行単位でいうと22社とのAPI契約を結んでいるところで、こちらを百数十に増やしていくというのが、今後の2年間の中での目途となっているところでございます。
14ページ、15ページにもう一つの当社の観点として、当社自身がフロントには立たずに、金融機関様の中のエンジンとして働くというモデルを見ております。たくさんございますけれども、1つあるのは、mirai talkもそうなんですけれども、人間でないと行動変容を起こせないところというのが大量にあるなというふうな観点を持っておりまして、みずからは情報のエンジンになりきることで、ビジネスとしては金融機関様がしっかりユーザーさんの行動変容を実現する、そのために使っていただくというイメージです。14ページは個人向けで、15ページの融資に近いところも、そういったことをやっているという点でございます。
最後にまとめですが、16ページにありますように、昨今データの利活用という表現で、よく当社にもお声がけをいただくことが多いんですけれども、我々いつも違和感として感じているのは、データがあるからマネーフォワードはいいことができるのではないかという期待値があるときに、そうではないのではないか、順番は逆かなと思っております。ユーザー体験が蓄積される過程でデータが蓄積されると。逆に言いますと、目的を持っていないデータを大量に持っていても、なかなかそれが事業に化けることはないのかなとも思っている次第でございます。また、マネーフォワードは、よく情報銀行なんですかという表現をされることが多いんですが、我々は結構この言葉にはちゃんとした丁寧な留保をつけたほうがいいかなと思っていまして、やはり銀行というのは、元本に利子を乗せて返す存在ですよねと。なので、例えば情報を販売するような形になっている場合に、それというのは情報が減価しているのではないかという、ちゃんとした懸念を持つべきなのかなとも思っていまして、そういう過程でマネーフォワードも、ソフトウェアの価値で利子をつけて情報をお預かりするということを大事にしている次第でございます。
あとは一番下にもございますけれども、ゼロイチで考えてよい時の、あるべき金融サービスは何か、という点です。ゼロイチで個人のお金の不安を解消するのにはどういうことができるのかといったときに、金融機関さんであれば、金融機関さんがその情報をこれから活用するという意味で、アドオンとして利活用の観点が入ってくるとは思うのですが、当社はある意味、金融機関にはならなかったわけでございまして、それはなぜかというと、情報のやりとりだけでも行動変容はもたらせるのではないかというような、そういう事例を見てきたからでございます。なので、狭義の意味での金融サービスである必要があるのかというのは、これは引き続き当社としてはいろいろな形で問うていきたいなと思っておりまして、そのような形で今後もサービス開発ができていければと思っております。
長くなりましたが、以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、ヤフーの阿部様、10分程度でご説明をお願いいたします。

【阿部参考人】
ヤフーの阿部です。本日はよろしくお願いいたします。
最初に簡単に、ヤフーの会社紹介及び金融事業の紹介をしてから、具体的なデータ活用の事例について、今日はご紹介したいと思います。
ページをめくっていただきまして4ページ目に、業績のハイライトを記載させていただいております。ヤフーが年間での売り上げが9,000億円弱ぐらいと、大体5%程度の成長をしております。
5ページ目に各種KPIの状況があります。まず特徴的なのが、スマートフォン経由でのヤフーの利用というのが50%以上を超えたというのが1つ大きなイベントとしてあります。あとはeコマースの成長率が前年比で113%ということで、こういった成長をしているeコマースというものが、今のヤフーの大きな特徴になっております。
めくっていただきまして6ページ目に、売上の収益構成というのがあるのですが、ヤフーは以前は広告売り上げに大分依存していたのですが、今は売上としましては、コマース関連のほうが多くなっております。私のいる決済金融の売上というのも、このコマース事業の中に含まれております。ここで全体の4割ぐらいになっています。
7ページ目に投資実績ということで、今日はデータの活用ということで、弊社の中ではデータドリブン化という言葉を使っておりますが、ここでの投資というものが、年間で100億以上というような投資を使っているという状況です。何でこんなに投資をしているかといいますと、1つはデータの量がすごく増えておりまして、特徴的なのが8ページ目ですね。
デイリーでのユニークブラウザー数というものの年間の平均数というのがあるのですが、非常にやっぱり増えておりまして、スマートフォン経由で6,000万。当然ながら、スマートフォンのほうがPVというのが非常に細かくありますし、今までのPCとは違うような解析もしなければいけませんので、こういったデータドリブンに関しての投資というのは非常に重要視しております。
9ページ目は、月間のアクティブユーザー数になっておりまして、大体4,000万人ぐらいの方が月間必ず1回はヤフーを使っていただいているというような状況になっております。
10ページ目に、今年度からの新しいヤフーの統合事業戦略ということで記載させていただいております絵があるのですが、まず1つ、一気通貫でいろいろなサービスをやっていますというのが特徴的でして、これをデータでつなぐということを大きな事業戦略のコンセプトとして、掲げております。皆さんご存じかもしれませんが、ヤフーニュースですとか、そういった古くからあるメディアのサービスから始まって、検索、あとはeコマース、決済、今日ご紹介する金融、こういったものがありますので、こういったものをいかにデータを使ってつなぐかというところを、戦略的に取り組んでいきたいなと考えております。
11ページ目はご参考までに、今年度掲げた3つのナンバーワンということで、eコマース及びインターネットの広告売り上げ、あとはモバイルペイメントの取扱高ナンバーワンを今目指して取り組んでいるというような状況です。
駆け足になりますが、ヤフーが目指す決済金融事業というところも軽くご説明させていただきたいなと思います。13ページ目で、先ほどご説明しました統合戦略の中で、金融サービスというのは利用するというところに多くは属すると考えております。これはやはりコマースや決済といったところで起きるお金の流れ、商流をベースに、借りる、増やす、または備える、こういったサービスを提供していくということが重要なんだろうなと考えております。
14ページ目は決済金融事業のミッションでして、ネット屋が興す決済金融のデジタル化によって、ユーザーのよりよい豊かな生活を提供するということで、赤字にありますネット屋が興すというところが特徴なんですが、これが既存の金融機関様と何が違うのかというところが、15ページ目に考え方として記載させていただいております。
既存の金融事業は、主にリアルは、お客様が明確なニーズを持って証券会社、もしくは銀行様に訪れるというようなビジネススタイルだったのかと思うのですが、ヤフーがやるのは、こういったクレジットカードや証券や銀行といったセグメントを分けずに、1つの体験としてユーザーに届けると。これがスマートフォンのようなデバイスが登場したことによって、こういったものがより快適にできるようになったというところが大きいのではないかと思います。ただ、これはニーズを明確に認識しないユーザー様にも届けることになりますので、ユーザー体験というものにヤフーがこだわる。これはヤフーだけじゃなく、ネットの事業者様はみんなそうだと思うのですが、ニーズがまだ自明じゃない方に届けますので、それはわかりやすいものじゃなければいけませんし、心地よいものでなければいけません。そういったところでユーザー体験にこだわるというところをヤフーは重視しております。
具体的に金融領域においてどういったものを1つの体験として届けるかというところを、16ページ目に簡単に記載させていただいておりますが、支払う、決済関連ですね、クレジットカード、電子マネー、ポイントみたいなものから、投資信託、または銀行事業といったものをいかに1つのユーザー体験として、コンシューマーだけじゃなく、中小企業様を中心とした法人様に喜んでもらうのかというところに今取り組んでいるというのが金融事業です。
少しページをめくっていただきまして、18ページ目以降にヤフーのデータ活用の事例についてご紹介をさせていただきたいなと思います。
ヤフーのデータ活用というと代表的なのはターゲティングでして、これは昨今のAIブームよりも前に広告ですね、どういった言葉を検索しているかとか、どういったウェブサイトを見ているかで、その人の好みなどを推定して、それに合わせて広告を出すと。これは機械学習的なものを昔から取り組んでいるということは、ヤフーが長年やってきました。今日は、そういったものとはちょっと違う特性を持ったものをご紹介したいと思っております。
1つ目のご紹介が、ビッグデータ×AI×投信ということで19ページ目にキーワードを書かせていただいておりますが、めくっていただきまして20ページ目です。ヤフーは今、グループに運用助言をやるマグネマックスキャピタルマネジメントという会社と、資産運用のアストマックス投信顧問株式会社があります。この3社で、ヤフーのビッグデータからの完全AIの投資信託商品というものを2年前にリリースさせていただいております。
具体的に何がほかの投資信託と違うのかというのを、21ページ目に記載させていただいております。皆さんご存じのとおり、これまでの投資信託のファンドマネージャーというものは、その会社、もしくはそのファンドマネージャー自身が独自で仕入れしたマーケット情報、経済情報、こういったものをもとに運用を人間の頭脳によって判断していたというのが、従来のやり方です。昨今出てきたのはロボアドバイザーというもので、これは中心になっているのはETFのラッピングでして、これはリスクの受容度に応じて、または経済環境に応じて自動リバランスするというようなことが起こっているのが、ロボアドバイザーかなと思います。
ヤフーが2年前にリリースしましたYjamプラス!というものは少し違いまして、マーケット情報は当然ながら使うのですが、ここにヤフーのビッグデータを使っております。これをAIによる完全な自動解析で銘柄判定をしております。今、日本の株式のアクティブファンドというところでの位置づけでやっております。これは株価そのものを予測しているんじゃなくて、ヤフーにあるデータから世の中がどういった企業に注目しているのかと。それがポジティブな注目なのか、ネガティブな注目なのか、こういったものを解析することによって、今、この株というものは買ったほうがいいのかというようなものを判断するということをやっております。 
2016年のこの投資信託の商品を発売させていただいておりまして、22ページ目に1つパフォーマンスの評価として、TOPIXに対して、大体アルファが5%から10%ぐらいの領域で常に上回っているというパフォーマンスを出しております。2016年12月に運用を開始しておりまして、今、基準価格が1万2,000円を超えているというような状態になっております。
ちょっと時間のない中で、もう一つだけヤフーのデータ活用というところでご紹介させていただきたいと思います。
これは内部的なものになるのですが、不正検知です。ヤフーのコマースは、今、大体2兆円ぐらい年間の取扱高があるのですが、当然ながら不正の決済ですね、他人のクレジットカードを使ってしまうとか、こういった不正の利用というのは一定確率ありまして、これの検知というものは非常に重要視しております。
以前は、これを完全人手でやっておりました。ある程度不正利用っぽいルールベースでのデータの抽出をした上で、それをオペレーターの人が一件一件目視して精査するということをやっておりました。ただ、これだけでも実は金額ベースでいくと0.003%を切るような不正利用の率です。これはおそらくクレジットカード全体の中での不正利用の割合よりも低いのではないかなと思います。ただ、取扱高が上がってくると、人を増やさないとついていけないということになりまして、これをどうやって効率化するかというのが課題となっておりました。
こういったところで機械学習なりAIの活用というものを試みたのが、25ページ目です。何をやろうとしたかといいますと、不正決済そのものをAIで抽出するということを試みました。これはある程度うまくいくのですが、問題は不正利用の手段というのはどんどん進化していきます。そうすると、つくったモデルがすぐ使えなくなってしまいます。ではどうしたかといいますと、26ページ目なのですが、正常な決済というものは、機械学習とかAIでいう特徴量ですね、これが変わりづらいと。なので、正常な決済というものをできるだけ機械学習によってあぶり出し、そうじゃないものを審査するということで審査の効率を上げられるのでないかということを試みまして、これはよい結果が出ておりまして、大体審査する対象のものが70%ぐらい減るということが起きております。これによって人員を増強することなく、取扱高が増えても同じレベルでの不正検知ができるということが今、行われております。
27ページ目に不正検知のまとめということで記載させていただいているのですが、言いたいことは3つほどありまして、ご説明したとおり、データとかAIというものは万能ではなく、使い方は創意工夫が必要であるということです。また、日々変化するものにはどうしても弱いという特性がありますので、先ほどのような、できるだけ変わらないものを機械化していくということが重要なのではないかと思います。3つ目は、一番最初にご説明したYjamというものは、機械学習のエキスパートと金融のエキスパートがつくっているのですが、今ご紹介した不正利用の検知というものは、二、三年前ぐらいまで普通のウェブのエンジニアだった人間が、今、機械学習というものを自分たちのプロダクトに取り組んでやっている成果です。こういった二、三年前まで機械学習とか統計学とかやっていなかった人間も、これぐらいのレベルのことができるようになったというのは、ヤフーだからというわけではなく、おそらくネット企業、IT企業以外のところも、こういったことというのは目の前で起きているのではないかなというところで、1つ具体的な例としてご紹介させていただきました。
少し長くなってしまいましたが、ヤフーの紹介となっております。ありがとうございました。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、LINE Payの佐藤様、10分程度で説明をお願いいたします。

【佐藤参考人】
LINE Payの佐藤と申します。本日は、LINE Payにおける情報の利活用ということで、少し話をさせていただきたいと考えております。
まず初めに、簡単にLINE Payとはということで、少しサービスのご紹介をさせていただきまして、その後に具体的に今、LINE Payの中でどういう情報の利活用をしているのであるとか、今後の展望みたいなところを少し触れさせていただければと思っております。
めくっていただきまして2ページ目に、簡単にLINE Payの特徴をまとめさせていただいております。まずLINE Payですが、皆さんご利用いただいていますLINEの中に標準的に搭載されているサーバ型の電子マネーサービスになります。そういうこともありまして、追加のアプリのインストールなしですぐに使っていただけるというところは、1つ大きな特徴であると考えております。
そして、2つ目の特徴につきましては、冒頭も申し上げましたように、チャージをして使うプリペイド式の電子マネーになっておりますので、クレジットカードを持っていないような若い方であるとか、幅広い方に使っていただけるというところが2つ目の特徴になるかなと考えております。
そして3つ目です。個人間の送金であるとか割り勘の機能も備えており決済以外からもキャッシュレスを推進していくために、LINEグループ全社を挙げてやっているサービスでございます。
続きまして3ページ目になります。こちらはLINE Payのサービスの全体概要を示した図になってございます。先ほども申し上げましたように、チャージして使うというサービスになります。左側にチャージの方法がございまして、チャージした電子マネーを右側の利用方法で使うと、そういった図になっております。チャージについては幅広いチャージ方法を準備しておりますが、銀行チャージ含めまして、幅広いご利用がございます。ただ、ATMのチャージですとかコンビニでのチャージですとか、やはり日本においては現金主義が根強く、現金チャージの比率は依然として高いという状況があると言えると思っております。
決済につきましても、今、弊社含めて加盟店の拡大を急速にやっておりますQR、バーコードのところもそうですし、LINE Payカードというカードを通して残高を利用したり、非接触のサービスも今年の秋ぐらいを目途に準備をしているところでございます。このように使う方法もどんどん拡大し、本日のテーマである情報の利活用の場面で、使えるデータをどんどん増やしていきたいなというところも1つございます。
もう一つ使う方法でいきますと、請求書支払いというものがございまして、こちらは普段コンビニ等で持っていって払っていただく請求書をLINEのアプリ上でスキャンをしてその場で払うことができるサービスもございますので、店での利用だけではなくて、公共料金であるとかさまざまな生活シーンのデータの活用を視野に考えてございます。そして、もちろん送金であるとか出金もできます。
弊社のサービスで1つ特徴となっていますのが、前払い式と資金移動業のハイブリッドのサービスになっている点です。アカウントをつくっていただいたときは前払いの残高を持っていただくのですが、本人確認していただきますと資金移動業のアカウントになる、そういったサービス構成になってございます。
続きまして、4ページ目です。こちらはLINE Payにおけるセキュリティ対策ということで少し触れさせていただいております。ユーザー様からお預かりしたデータをきちんとセキュリティをもって管理することが必要となってきますので、当然ながらPCI-DSSであるとか、セキュリティの認定を取得しておりますし、あとFIDOと呼ばれるような新しい認証の国際標準といったことを検討しているような団体のボードメンバーとして、LINEとして入っていたりですとか、先ほどもあったような機械学習ですね、こういったことで不正の利用を未然に防止する、そういったこともやらせていただいております。もちろん24時間365日の体制もきちんと整えて、ユーザー様からお預かりしたデータをしっかり管理する、こういった体制をとっているということでございます。
5ページ目からが、LINE Payにおける情報の利活用の現状ということで、少し記載をさせていただいております。正直そこまでまだ情報の利活用という領域においては、まだまだこれからかなというところがあるのですが、本日お持ちした事例というのは、加盟店向けの集客のサービスとして情報の活用をしているものになります。
LINEの中には個人のアカウントのほかに企業様にアカウントを持っていただいて、そこからその企業アカウントのフォロワーに対してメッセージを送る、そういった機能がございます。それと決済を組み合わせて使っている事例になってございます。順番に説明させていただきますと、まず右上のところで、LINE Payの加盟店で決済をしていただいて、その決済が完了したタイミングで、その決済をした店の公式アカウントをフォローする形で、送客をまずさせていただきます。こうすることで、企業の方は来店して決済していただいた方に対して、LINEのマーケティングのチャネルを使って、その方にメッセージが配信できるようになります。そのメッセージを配信する際にも、なるべく配信していただきやすい環境が必要かなと考えておりまして、単純にデータを渡すだけではなくて、情報を活用していただきやすい環境を準備させていただいているところでございます。
その次、6ページです。こちらが具体的に加盟店の方や企業の方が、その企業の公式アカウントのフォロワーに対してメッセージを送信する画面イメージになってございます。こちらの例では、年齢であるとか性別、都道府県みたいなところが例示されていますが、LINEの中で収集したデータを統計的に分析して、こういった形でフォロワーに対してメッセージを絞り込んで送る、そういったことができるようになっております。ですので、店の方は、例えば20代前半の方に向けた新しい新商品を発売したときは、ここで20代前半みたいなのをチェックして、あとは性別も選択してメッセージを送る、そういったことが現状も可能になっております。
7ページ目のところが、LINE Payにおける今後の情報活用の展望ということで図を記載させていただいております。LINE Payが使える場所、先ほども申し上げたように、どんどん広がっている状況ではございますが、今後はやはりさまざまな金融サービスをLINEとしても展開してまいりますので、そういったところでもLINE Payの活用を進めていきたいと思っております。それによって、通常お金を使うような加盟店でのデータだけではなくて、金融サービスも含めたデータを集約していくと幅広いデータの蓄積が可能になってくると考えております。もちろんそういったことを通して、利用者の方に提供できる情報、精度が高まるというところもございますし、例えば加盟店様に対してのソリューションでも、先ほども触れたような、メッセージングの際に指定できる属性をさらに高度化するであるとか、精度を向上させる、そういったことも可能になってくると考えております。
LINE Payの中でも、今積極的に加盟店開拓しておりますが、やはり単純な決済サービスの提供先だけとして獲得するというわけではなくて、販促のツールであるとか、さまざまな周辺のサービスも含めて、加盟店様にメリットのあるサービスを提供することで、よりLINE Payを活性化させていただきたいと、そういった思いで今、サービスを展開させていただいている状況でございます。
一番最後の図ですが、弊社が考えるところの情報利活用として、どういった点に留意していかないといけないのかというところを少し触れさせていただいております。まず、環境の整備という点でいきますと、当然利用者の方からしっかりと同意をとって、しっかり情報管理をする、そういったところが求められてくると思いますし、それが活用できる情報量であるとか精度が、やはり十分でないといけないということも、環境整備としては重要だと考えております。
利用という観点からいきますと、利用者の方にとって情報を提供することで有益なサービスがちゃんと享受することができるのかというところは、すごく重要なテーマだと考えておりますし、先ほど説明させていただきましたとおり、幅広い企業様に使っていただくという観点からいきますと、提供されたデータが使いやすいのかどうなのか、ローデータで渡されたとしても、詳細なデータを使いこなせる企業様というのは少ないかなと思いますので、幅広い情報の活用を考えますと、その情報が使いやすい形で提供されることも、重要なのではないかなと考えております。
以上になります。ありがとうございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、みずほ銀行の梅田様、10分程度でご説明をお願いします。

【梅田参考人】
みずほ銀行データビジネス推進部の梅田でございます。よろしくお願いいたします。
本日、みずほ銀行からは、2ページに記載の4点に関してご説明をいたします。
1点目が、「情報信託機能に求められるもの」でございます。こちらは総務省から受託しましたIoTおもてなし環境の社会実装に向けた実証実験、これは在日外国人や一般旅行者の方々がモニターとなり、観光地等で自分たちの情報を使ってどのようなことができるのかというのもので、参加者の皆さんにヒアリングやアンケートを行い、どのようなフレームワークが必要か調査致しました。2点目が、「情報信託機能の普及に向けた取組み」について、情報信託機能普及協議会の話をさせていただきます。3点目が、「データ利活用ビジネスの事例紹介」でございます。J.Scoreの取組みと、キャッシュレス決済手段としてデジタルコインのご説明をいたします。最後に、「銀行グループが本施策に取り組む意義」という順番でご説明をさせていただきたいと思います。
3ページをご覧ください。情報信託機能に求められるものとして、平成28年度にIoTおもてなし環境の実証実験が行われました。資料の*にもあります様に、在日外国人、一般旅行者等約1,700名のモニターの方が参画しました。これは例えば、パスポート等の情報をICカードに入力いただき、そのICカードを用いて、例えば外国の方が、日本の観光地に行って案内が自国の言語で出るだとか、そのようなことを試したものでございます。
実際にモニターの方、もしくは参加された企業の方々に対して、規約等の準備や、アンケート・ヒアリング、包括的な各種調査等を実施し、社会実装に向けて何が必要か確認をしております。
4ページをご覧ください。社会実装上のポイントが3点ございます。1点目は、情報提供者に対する理解形成や普及促進に必要な取組みです。この中では特に、政府や第三者機関による仕組みの周知と認定・監督であり、やはり安心感が欲しいという声が挙げられております。2点目は、情報仲介機能のビジネスモデルのあり方で、情報の真実性の確保、情報利活用事業者に対する利便性向上等が挙げられております。3点目は、情報仲介機能の社会実装への課題で、情報を預けることにもなりますので、標準化やガイドラインの策定といったものが必要だという点が挙げられております。
続いて実証参加企業に対するヒアリングです。情報仲介機能に求めるサービスは、セキュリティ環境を提供してほしいという意見や、単に情報を媒介するのではなく、企業にかわってマーケティングの代行をしてほしい、調査結果を提供してほしいといった付加価値の提供を希望する意見がございました。また、データをすぐに情報利活用事業者が使えるかというと、なかなか難しいという技術的な問題もありますので、情報のスクリーニングやデータセットの作成支援も求めることとして挙がっております。
モニターアンケートの結果では、情報仲介機能を任せやすいと感じる業種として、公共部門に加えまして金融が挙がっております。情報を信託してもよいと思える条件として、自分の情報がどのような形で送出されるかということを明確にしている組織や、国などの認定・認証を受けている組織等が挙げられています。最後にインセンティブとしましては、各種クーポン等が、代表として挙がっております。
このような実態を踏まえると、やはり安心感や、認定、認証、ガイドライン等が必要だと言えます。もしくは金融がこのような形で期待されているということも踏まえ、金融機関としても汗をかけるところがあると考えております。情報信託機能普及協議会が8月6日に設立され、同協議会が日本IT団体連盟に加入しました。これに続きまして、情報銀行推進委員会が、日本IT団体連盟の中にできました。9月12日には日本IT団体連盟さんから、情報銀行推進委員会の設置など情報銀行認定事業の開始のプレスリリースがありました。
この中で、みずほ銀行としても、市場参加者の金融機関に対する期待に応えていくということに加え、健全な仕組みの確立に向けてもっと自分達自身もスタディをしていく必要があるという観点で、協議会に参加をさせていただいております。
6ページをご覧ください。実際のデータの活用事例をご説明させていただきます。1つ目が、J.Scoreです。これは新聞等で報道もありますのでご存じの方も多いと思いますが、ちょうど昨年の9月25日、サービスローンチをしました。その後、ヤフーさんとのデータ連携やモバイルアプリのリリース、Y!mobileさんとの連携等を踏まえまして、この10月中旬に新しくAIスコア・リワードという新しいサービスを開始するということになっております。
7ページをご覧ください。主なファンクションであるAIスコア・レンディングでは、18のチャット質問に答えていただき、わずか二、三分で、入力から合計1,000点満点のスコア提示をできるような形になっております。それに加えまして、約150項目の任意の質問に対して回答いただきますとスコアアップし、そのスコアに応じたレンディングを、資料に記載の金利、あるいは極度の範囲内で提供させていただくという仕組みでございます。
8ページをご覧ください。今年の7月にはハビットチェンジと言う、例えば運動や学習、あるいは睡眠時間等において良いアクションを起こしていただいた方に対し、一部スコアアップをするということを始めております。これは人間のどのような行動が、スコアにつながるのかを実証していくための仕組みでございます。この機能についても多くのお客様にご利用いただいております。
9ページをご覧ください。AIスコア・リワードでは、スコアに応じたランク、例えばGOLDと記載がございますが、このランクのお客様に対してはこのようなサービスを提供したいというような提携企業を募り、例えば、旅行会社で特典を受けられるといったリワードを提供するサービスを10月中旬から開始していきます。中国で言えば胡麻信用が行っているようなサービスにも近いのかもしれませんが、我々は個人情報の提供は行わずに、特典を受けるためのスコアランクの提供にとどめております。
11ページをご覧ください。デジタルコインの実証実験を今、福島、福岡で実施しております。このように様々なPOSデータに近いデータも集めて、新たなお客様へのサービス提供につなげることを展望しております。
12ページをご覧ください。このような取り組みや先ほどの実証実験に対するレビュー等を踏まえてまとめさせていただきます。データ流通ビジネスを取り巻く外部環境について、金融分野は官民データ活用推進基本計画で指定された重点8分野の1つで、積極的なデータ流通ビジネスの推進が必要であるとされております。一方でGDPR等、より厳格な個人情報取扱いのルール遵守体制を含めたビジネスモデルの構築・推進が求められております。このような環境下、担い手としての銀行の強みは、安全性の高い情報管理・システム運用、あるいは長年の経験や歴史で培った信頼、厚い顧客基盤と蓄積した決済データ等があり、情報信託機能・データ利活用に求められる機能との親和性が高いと思います。
先ほど申し上げたJ.scoreはソフトバンクさんとも協業させていただいていますが、決してバンク・オア・ノットということではなく、経済、社会の発展におきまして、銀行グループは情報信託機能・データ利活用ビジネスの主要プレイヤーとして、さまざまな企業の方と協業していくということができるのではないかと考えております。
説明は以上です。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、三井住友銀行の柳様、10分程度でご説明をお願いします。

【柳参考人】
三井住友銀行データマネジメント部の柳でございます。本日は、このような機会を頂戴し、まことにありがとうございます。アジェンダに沿い、SMBCグループにおけるデータ利活用と情報銀行への取り組みというテーマでお話しさせていただきます。
それでは、2ページをごらんください。ここにはSMBCグループにおけるデータ利活用の状況を、大きく3つに分類してあります。それの取り組み状況は記載のとおりですが、本日は分類3、情報銀行への取り組みについて詳しく説明させていただきます。
3ページ目をごらんください。情報銀行は、個人との契約に基づき、個人のためにパーソナルデータの管理や運用を行う事業です。その普及・成功の鍵は、個人がデータを預ける際の不安やコストを上回る便益・サービスを提供できるかにあると考えております。パーソナルデータにもいろいろありますが、ソーシャルメディア等で積極的に公開したいようなデータもあれば、できれば他人には公開したくないデータもあります。医療、介護、ヘルスケア分野のデータは、後者の秘匿性が高いデータですが、データ利活用の結果が個人の健康増進や健康寿命の延伸につながることが期待され、便益が直接的でわかりやすいため、特に注目されている分野と考えております。
4ページ目をごらんください。このページでは、情報銀行に対するSMBCの考え方をご説明いたします。まずパーソナルデータに係る社会課題ですが、フェイスブック問題以降、パーソナルデータを預けることへの不安が顕在化しております。加えて、ウェブ閲覧や検索の履歴に基づいた広告の配信など、自分に関するデータが使われているのは知っているけれども、企業が自分のデータを使って利益を得る一方で、それが自分にとってどのような利益になっているのか実感できないといった不満も潜在的にございます。ここで、情報銀行が個人の代理人としてパーソナルデータを安全に保管し、データの利活用とその利益を管理する役割を果たせれば、これらの解決は解決できると考えております。そして、情報銀行の担い手として安心して任せられるのは、長い時間をかけて社会的信頼を培ってきた金融機関ではないかと考えております。
5ページ目をごらんください。このような認識のもと、我々は情報銀行の実証実験に取り組んでおります。昨年末ごろから情報信託機能のあり方が検討されてきましたが、本年6月にその指針が示され、それを実証する事業が総務省から公募されました。我々はこれに情報信託機能を用いた個人起点での医療データ利活用実証事業として提案し、採択していただきました。
6ページ目をごらんください。この実証事業は、日本総研、阪大病院と共同で受託したものです。ポイントは、本実証は、医療データを個人に返し、個人の意思に基づき医療データを共有し、個人の意思に基づきデータを利活用して便益を得ることにあり、これは情報銀行の最も基本的な考え方です。下の図は、モデルとなる典型的なユースケースです。我々は、日常的に健康診断、かかりつけクリニック、大学病院などの中核病院、調剤薬局等複数の医療機関を渡り歩くことが当たり前になっており、各医療機関に自分の医療データがばらばらに保管されている状態になっています。具体的には健康診断結果、各種検査結果、アレルギー、予防接種、処方歴、病歴、治療歴などで、個人にとって非常に価値のあるデータです。これらのデータを情報銀行の口座に集め、ヒストリカルに蓄積していけば、自身の健康管理に役立つだけではなく、データをお医者さんに見てもらうことで、どこの病院へ行っても自分の体の状態を正しく理解してもらえるというメリットもあります。また、図にはございませんが、蓄積されたデータを個人の意思に基づき、個人のために利活用してくれる事業者に渡し、より付加価値の高いサービスを受けることも可能となります。
事業者の例としては、健康指導、栄養指導、給食サービス、フィットネスクラブ、保育施設、介護施設など、医療・ヘルスケア事業者が挙げられます。より具体的な実証シナリオについては、現在阪大病院と一緒に詰めているところですので、本日、この場でのご説明は控えさせていただきたいと思います。
次のページをごらんください。今回の実証事業で扱う医療データは、パーソナルデータの中でも最もセンシティブで預ける先を選び、かつ経済的価値が高いものです。医療データ分野での実証事業の成功は、情報銀行という事業をSMBCが担うことについて一定の信任を得られることになると考えております。情報銀行は価値のある取り組みだと考えていますが、普及しなければ意味がありません。最も取り扱いの難しい医療データの知見を出発点として、データ利活用のレベルを高めると同時に、もともと我々が得意としている金融データ等に預かるデータの種類を広げていきたいと考えております。そして並行して、真に個人のためになるサービスやアイデアを持ったデータ利活用業者の募集・支援・育成に努め、ともに情報銀行の普及に邁進してまいりたいと思います。
8ページ目をごらんください。最後にSMBCが目指す情報銀行の姿についてご説明させていただきます。まず、データは個人がその成果を享受し、個人の豊かな生活実現のために使うことと記載していますが、これは情報信託機能の認定指針に書かれている情報銀行の基本理念で、この一文に情報銀行の価値が凝縮されていると思います。
そして、それを実現するためには、情報銀行が個人の代理人としてパーソナルデータの管理・運用に努めるのは当然として、価値を生み出すエコシステム全体の経済的自立と発展を促す必要があると考えています。今回の実証事業を例にとりますと、阪大病院やクリニックが左側のデータ提供事業者として、個人からの請求に基づき、医療データを情報銀行に提供し、情報銀行は個人からの指示に基づいて医療データを、医療ヘルスケア系の事業者等の右側、データ利活用事業者に提供します。データ利活用事業者は、情報銀行から提供された医療データに基づいて、個人に特化した質の高いサービスを提供するという流れになります。そして、対価の流れとしては、個人は情報銀行に対して口座維持手数料と必要に応じてデータ提供事業者にデータ移転料が発生する場合はデータ移転料を情報銀行に支払い、情報銀行はデータ提供事業者にデータ移転料の支払い代行をします。そして、個人がデータ利活用事業者からサービス提供を受けた場合は、当然その個人は対価をデータ利活用事業者に支払っていきます。そして、最も重要なのは、情報銀行はデータ利活用価値によって、データ利活用事業者からデータ提供料を受け取ることも想定されます。ただ、その際はフィデューシャリー・デューティーに基づいて、データの運用益を個人に透明性をもって還元することが重要と考えております。
現代においては普通に生活するだけで、日々膨大な量のパーソナルデータが生み出され、我々はそれらを自覚の有無にかかわらず、いろんな事業者にばらまきながら生活しています。情報銀行はそれらのパーソナルデータをかき集め、個人に返し、個人の意思に基づいて運用し、新たな価値を生み出す仕組みを提供するという、非常に重要な取り組みだと考えております。我々銀行がこのような事業に参入することについて、さまざまな議論があろうかと思いますが、本日ご説明したような考え方を踏まえて、事業化の方針を検討してまいりたいと思っております。
以上で私からのご説明は終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、三菱UFJ信託銀行の伊藤様、10分程度でご説明をお願いします。

【伊藤参考人】
三菱UFJ信託銀行の伊藤と申します。本日は、弊社で幾つか準備しておりますデータプロダクト、データサービスのうちの1つでございます情報信託、パーソナルデータ信託のご紹介をさせていただきます。
まず1ページ目を御覧ください。まず、なぜこのようなことに私どもが取り組もうとしているか、その原点を含めて簡単にご紹介させていただきます。私どもは信託銀行ですので、現在でも信託財産を数百兆円お預かりしておりますが、この1ページ目の右側にありますとおり、これらの伝統的な資産、有価証券ですとか不動産、こういったものが徐々に左側にあるデジタル資産に移行してくるであろうという想定を置いています。この中でも、パーソナルデータというものは、価値を持つデジタル資産の1つとして捉えております。このデジタル資産につきましても、私どもがその価値の保存や移転という観点でお支えしていくことが、当然にして信託銀行のミッションであると捉えています。
加えて、これらの資産間を媒介、仲介するプレイヤーがこれから出てくると思いますので、こういうプレイヤーを後ろからお支えすることについても私どもの責務である、こういう前提でビジネスを捉えています。
次に2ページ目をごらんください。今準備している情報信託の形をお示ししています。結論から申しますと、この2ページ目にあります右側にVRM型と書いてありますが、私どもは、パーソナルデータは個人の持ち物であり、個人の統制下で流通、利活用されるべきであるという前提に立って、いかにしてパーソナルデータの持ち主である個人に寄り添うか、そのパーソナルデータの価値を最大にするために、どういうお手伝いができるかということを考えています。
具体的なスキームにつきましては、3ページ目をごらんください。非常に簡単ではございますが、スキーム図になります。まず左上に個人という表示がございますが、具体的にパーソナルデータをお持ちの個人の方から、パーソナルデータを私どものほうに信託していただきます。これを右側にあるデータ利用者の方々にお渡しして、その対価をお預かりする。これを個人にお返ししていくという形です。それから、左下にデータ保有者という箱がございますが、ここは実際にそのパーソナルデータを持っている会社さん、例えば携帯電話の会社さんですとか、あとはウェアラブルセンサーの会社さんですとか、そういうデータをためておられるところから個人の方の指示に基づいてデータをいただいて運用するという形になります。それから、1つつけ加えますと、私ども自身は、このパーソナルデータを使いません。全てお客様にかわってこれを運用するという立場をとってまいります。
具体的に4ページ目以降で、データフローを簡単にお示ししております。まず4ページをごらんください。まず4ページの左側にございますが、これは個人の方のスマートフォンに、あなたの今持っているパーソナルデータはこれだけありますというのが一覧表として表示されます。この中から、このデータとこのデータを信託しますというのを押していただくと、4ページ目の右側の画面のとおり、まず信託が設定されるということになります。
5ページ目、6ページ目を続けてごらんいただきたいのですが、この信託が設定されますと、今まではデータしかなかったものが、このような形であらゆる形でグラフ、あるいは地図、いろいろな形でご本人にお見せすることができます。単独のデータだけですとなかなかわからなかったものが、あらゆる組み合わせによって、まず自分ご自身が見えてくるということにつながります。
同様に7ページ目、8ページ目をごらんいただきますと、身体のデータですとか金融のデータ、こういうものも含めまして、あらゆる形でご案内するということが可能になります。
信託に頂戴した段階で、こういう形で可視化する、お見せすることができるのですが、次に9ページ目をごらんください。9ページ目は、実際にお客様のパーソナルデータを運用する指図をいただくところです。9ページ目の左側のところには、各個人のお客様に対してデータを利用したい企業からオファーが届きます。あなたのデータを使わせてくださいと。それに対して、対価は幾ら払いますというオファーがきます。これに一つ一つ個人の方々が、この企業に渡していいという指図を私どもにいただいて、その指図が完了するとデータ提供を開始するという画面に移ってまいります。当然ながら、これはいつでもやめられるようにしておきます。あくまでもデータの制御、運用というのはお客様個人に主導権があるという形になります。
最後に10ページ目でございますが、実際にその対価が返ってきたときには、この10ページ目の左側にあるように、お金がその分たまっていくのが見えるということになります。加えまして、今いろいろなデータを活用する企業様とご相談していますと、対価だけではなく様々なサービスも返していきたいというお話をいただいています。例えば、10ページ目の右側にありますけれども、無料体験ですとか無料サービス、こういったものもございますし、資産形成の学習ですとか、あるいは自己啓発の学習ですとか、あるいは健康になるためのご支援ですとか、そういうあらゆるサービスをここで対価と合わせて提供していきたいというお話を頂戴しています。こういったものもあわせて、パーソナルデータを持っている個人の便益が最大になるように、運用をご支援していくということを企図しております。
簡単ではございますが、ご説明は以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
それでは、討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。植田さん。

【植田メンバー】
まずは事務局の方から、コンパクトにまとまった説明資料ありがとうございました。それから、各社の方々、非常に有意義な参考になるプレゼンテーションありがとうございました。
私のほうから、こちらの事務局の説明資料にございます、最後の検討事項というところを中心に、少々考えを述べさせていただきたいと思います。
まず、よく見えていないのですが、やはり1つの大きな課題は、金融に関する規制をどうするかということが当然大きな課題でありますので、ここにあらわれてきてはないのですけれども、それを軸にやっぱり考える必要性が1つあるのかなと思います。それで何度もこの場でも言ってまいりましたけれども、大きく経済学的に考えるとどうかということを考えてみますと、ありとあらゆるいわゆる一般の企業の事業者にこんなにきつい規制をかけているわけではないんですね。当然金融業だからかけている側面がありまして。それはなぜかというと、それは慣用的にやっているわけでも何でもないと思うのです。やはり一旦原理原則に立ち返って、経済学的にはこれこれこういう理由があるから、金融の規制は意味があるんだというふうなことがずっと議論されてきて、実証的にも理論的にもいろいろわかってきていることがございますので、それにやっぱり立ち返るべきところが1つあるのだろうと。
というのは、世界的に、金融業も変わってきていますし、また当然いろんなグローバルな会社が出てきて、グローバルに相互に金融業が発展してきていますから、日本だけの議論というわけにもいかないわけですから、原理原則に戻っていこうと。原理原則でいうと、非常にちょっとアカデミックな議論で申しわけないのですけれども、預金とか貸出しというようなところまで引っくるめた意味での、一般的な我々が市場と呼んでいる、民間が活動する市場、民間の方々が携わっている市場というのは、経済学的には、基本的にはうまくいくというふうに考えられているんですね。こちらのプレゼンテーションで明らかなように、いろいろなことが起きて考えられている中、政府とか国家が押さえつけるというのはちょっと無理がありますし、世の中のためによくないですね。ですから、できるだけ自由にやってもらおうというところがあるのです。
うまくいかないときというのはわかっていまして、そのときに規制が必要だというのが経済学的な論理です。うまくいかないときというのは、市場が基本的には不完備なとき。不完備なときというのは、何か事が起きたときに、それに対する保険とかデリバティブのようなセーフティネットが、市場では提供されないときというのを不完備なときといいます。そのときと、もう一つはかつて言われていたのが、情報が不完全なときですね。顧客とかいろいろな意味で市場に参加している人たちが、互いに情報がよくわからないときにうまくいかないときがあるのではないかと言われています。
ただ、情報が不完全なときというのは、理論的にはだんだん最近あまり問題がないのではないかということがわかってきている最中でございまして、私もそれほど問題にすることはないと思います。それに、今まさに実はこのプレゼンテーションで見せていただいたように、情報がどんどんどんどんと完全化している最中でございますから、逆に情報という側面から見ると、今まで以上に規制は要らなくなっているのだろうな、また今後もそうなっていくと思います。
ただ、不完備なところというのは、銀行業で一番問題にするところで、銀行取りつけ騒ぎなのですね。銀行取りつけというのはどういう意味で不完備かといいますと、ほかの人がもしもある銀行に取りつけに行ったときに、自分も行かないと、自分の預金がなくなってしまうかもしれないということです。これはどういう状況かというと、ほかの人の行動に合わせて自分の取り分が変わるという、そういう変な条件つきな債券、条件つきな証券になるわけですね。それに対するセーフティネットを民間で提供するのはなかなか難しいんですね。それで経済学的には、公的なお金で預金保険とか、中央銀行によるいざという場合の貸し付けというのが必要になるという、そういうような論理構成になっています。
ところが、公的にセーフティネットを提供してしまうと、公的なセーフティネットに寄り掛かって、銀行さんのほうで真面目にリスク管理しないのではないかという問題が出てくるので、そこで規制が必要という、そういう論理です。いわゆる伝統的な銀行業、すなわち取りつけ騒ぎが起きるような銀行、それはどういう銀行業かといいますと、短い資金を預金者から要求払い預金で取って、長いところに貸し出すという、そういうことをやっている銀行になります。これが長短のマチュリティミスマッチのある場合のマチュリティ変換業務だとか、信用創造と言われるような業務になりますけれども、これをやっている限りにおいては、やはりまだそういう伝統的な銀行さんにおいては、やはりまだ今までのようなセーフティネット、預金保険とか、中央銀行は必要ですし、それがあるがために資本規制のようなものもやはり必要だというふうになると思います。
それから、いわゆる世界金融危機、2007、8年以降でわかったことは、セーフティネットというのは、実は銀行さんだけではなくて大きな保険会社さんとか大きな証券会社さんでも、政治的な理由もあり、どうしても政府がセーフティネットの役割をいざという場合に果たしてしまうということがわかってきました。ですので、そのいわゆる大きくてつぶせないもの、トゥ・ビック・トゥ・フェイルという問題がある金融業に関しても、多少のそれに基づいた、似たような規制も考えていかないといけない。それはやはり残らざるを得ないかと思います。
ただし、ここだけがやはり規制が必要だというふうに経済学的にはおそらく明確にわかっているところです。それ以外に特殊な規制、もちろん詐欺をしちゃいけないとか、顧客をだましちゃいけないとか、いろんな意味でそれは一般の事業者の人もそうですが、そういう意味の規制はさすがに必要です。けれども、金融業に特殊な規制として、特に押さえつけないといけない、押さえつけるという言い方は変ですけれども、特に慎重にプルーデンシャルな規制というものを設けないといけない、という理由は、先ほどの理由だけだと思いますので、それを中心に考えていきたいと思います。
そうすると、決済とかプラットフォーマーの話との関連も明確に私的には見えてきまして、そのような伝統的な銀行業、規制が必要な銀行業、セーフティネットが必要な銀行業とはこれだという線引きを、つまり信用創造しているというようなところをしっかりと線引きさえすれば、そういう業務を持っているところは規制をするとなります。もしくはそこを子会社と、グループで言えば、そこの銀行子会社及び銀行子会社の下についているような孫会社も含めた伝統的な銀行部門というのは、そういう意味でのセーフティネットと規制が必要なのです。しかし、それ以外の部分はやはりもっと規制が緩くていい。もっと自由にいろいろなことをやっていただいていいんだと思います。
またグループのこと、ちょっと話がいろいろと飛んで済みませんが、グループのことを考えますと、実は今、ご存じのとおり非銀行業の方は銀行業務をグループ子会社として持てますけれども、一旦そういうふうに考えることができれば、今の銀行業をやられている方々が、その上に持株会社を通じて、兄弟の会社として非銀行業を持っても、全くシンメトリックに規制のほうは考えていっていいのではないかと思います。
最後にですが、経済学では、情報が完全で共有されたほうがいいのですが、もちろん一般の人々はそれをただで利用されるのは嫌がっています。ですから、それに対して対価をできるだけ出してあげるというようなことに、今後当然いくべきだと思います。今、こういう取り組みがあることを、済みませんが、私は勉強不足で知らなかったのですが、各社からのプレゼンテーションを聞いて非常に安心いたしました。こういう取り組みがないとすると、これはやはりそれなりに規制も必要ですし、何か仕組みが必要かなと思ってはいたのです。けれども、こういう取り組み、つまり今、各社さんで考えられているような個人個人にデータ利用料を払うということができれば、そこはそれで市場がうまく機能しますので、特に新たな規制もそれほど必要ないのではないかと思います。以上です。

【岩原座長】
それでは、次に福田さん、お願いします。

【福田メンバー】
この制度スタディ・グループの大きな目的は、横断的な規制が必要なのかどうかということが大きな枠組みであります。そこで、最初のプラットフォーマーの方々、いろいろご説明いただいて、かなり横断的なビジネスをやられていると思いますけれども、現行の制度で、特に不都合はないのかどうかということを教えていただきたい。不都合がないのであれば、わざわざ現行の制度の根本的な発想を変えて、横断的な議論をする必要はこのスタディ・グループでもそもそもなくなる。実際に本来、違う法律が適用されるいろいろな分野のことをプラットフォーマーの方々はやられていて、でもそれは別に現行の制度で、特に不都合なくやられているようなご説明だったような感じにも聞こえたんですけれども、ほんとうにそうなのでしょうか。あるいは実際には違う業態をまたいだいろんなことをやられている中で、それなりに制約は感じてるのかどうか。何かあれば教えていただきたいというのが、まず最初のプラットフォーマーの方々に対するご質問です。
もう一つ、銀行グループの方々にご質問があるんですけれども、情報の銀行という形で非常にご丁寧にご説明いただいたんですけれども、この情報銀行を、銀行の傘下、あるいは銀行一体で運営したいと考えられているのか、あるいはフィナンシャルグループの中の1つのエンティティという形で考えたいのでしょうか。銀行によっても違うのかもしれませんけれども、銀行のエンティティの傘下、あるいは銀行の本体と一体であれば、現行法制では業務がかなり限られてしまうということもあるとは思うんです。フィナンシャルグループの中に独立の主体として存在するのであれば、かなり横断的なことというのが制度変更の中ではできてくる可能性もあるとは思うんですけれども、どういうエンティティとしてこういう情報銀行というのを、フィナンシャルグループあるいは銀行の中で位置づけたいのかということ、もしお考えがあれば教えていただきたいということです。

【岩原座長】
それでは、まずプラットフォーマーの方々の中から、どなたか答えていただけますか。瀧さん、お願いします。

【瀧参考人】
ご質問ありがとうございます。多分2つ観点がございまして、1つは、日本ではまだこれからの議論ではあるのですが、データポータビリティの話がございます。基本的に規制をすることで、よりイノベーションが加速するかという観点でいうと、わりと今でも対応で精一杯なところもあるのですが、今後を考えたときに、欧州で起きているPSD2の法制がどれぐらい消費者にとってもわかりやすいサービスの誕生を促しているのかというのは、非常に引き続き重視すべきかと思っております。日本ですと、個人情報保護のあり方とか、生まれてまだ十数年の法律でございますので、一般の中での理解というのもまだまだこれからというところではあるんですが、ひいては個人のデータは個人のものであるということを認識していけるような整備ができていきますと、金融制度というのは、基本的に最終的に情報制度と似ていくのかなと思っておりまして、ユーザーさんの役に立つための提言をするためにも、そういった個人にデータを帰着させるという方向の整備は非常に重要だというのが1つでございます。
もう一つは、先ほどは多分三菱UFJ信託様の資料の中に、VRMという言葉がございましたけれども、今後のサービスというのは、エンドユーザーに寄り添って、いかにその人の選好に耐えるようなものを提供できるのかというのが重要であるときに、その導入だけでも円滑化するのが重要であるというのが、我々が常々思っていることでございます。例えば投資導入をするような人たちで、ものすごくプリミティブなMRFやインデックスファンドといった、初歩的な商品に対するアプローチだけを可能にするような業態というのを、今後つくっていけないだろうかと思っておりまして、行為規制の中におけるリスクベース型の業態がどんどん出てくることが可能になると、貯蓄から投資という長年の課題が進みやすくなるのかなと思っております。そういう意味では、導入的チャネルをインターネットの時代に即した形でちゃんと考えていくかというのが2つ目の観点として重要と思っております。以上でございます。

【岩原座長】
ほかのプラットフォーマーの方、何かございますか。阿部さん、佐藤さん。では、阿部さん。

【阿部参考人】
そうですね、我々よく海外のこういう金融サービスをやっているネットの事業者、例えば中国で言えばアント・フィナンシャルさんは代表的な例だと思いますし、そういったところと比べたときに、何か法的な違いによる競争力の差というものがあるのかないのかというのは非常に気になるので、中国側の企業の人間とディスカッションとかしているのですけれども、結論、何か圧倒的な差を感じたことはあまりないのです。なので、それは同じレベルでやっていて、何が違うかというと、やはり法規制じゃないところでのインフラです。
例えば、どうしても決済とか金融については本人確認ですよね。これは中国ですとソーシャルナンバーみたいなものが、ネットで認証というのが昔から根づいていて、それで本人確認が済むのに対して、皆さん日本の現状はご存じだと思われます。そういったものの差が大きいなと思うのと、あとは国による差があるかどうかわからないのですが、事業者側の立場からいくと、いろんな免許や登録などをするときのリードタイムがどうしても不明確だったり、ほんとうに何をそろえればいいのかというものがたまに不明確で、時間というものもやっぱり我々のようなネットの事業者というのは非常に重要な競争力なものですから、そこでちょっとこちら側がコントロールを失うということは起きます。
あとは個人的な見解になってしまうかもしれないのですが、やはり事業の大きさによって、柔軟なものというのはあってもよいのではないかなというのはありまして、例えば日本でも、保険で少額短期の法制度というのはつくられたかと思っていまして、あれはすごくいいと思うのですが、もう少しライトにしてもいいのではないかなと。個人向けの保険商品とかを、商品一個一個がまだ少額短期でも認可制でして、それだけでも半年ぐらい時間がかかってしまうと。中国とかでは、自動車の保険とか、命にかかわるものは事前の認可が必要なんですけれども、そうじゃない、例えばECで物を買うときに一緒についてくる返品の保険だとか、ホテルのキャンセルの保険とか、そういったものはそんな事前の認可はないようです。商品のサイズ感、事業のサイズ感で、もうちょっと柔軟性がありますと、一般のコンシューマーの方に届けられる、もうちょっとマイクロな、ネットに親和性のあるようなサービスというのは、よりスピード感を持ってやれるのではないかなと思います。以上です。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。それでは、佐藤さん。

【佐藤参考人】
少しだけコメントさせていただきたいと思います。
LINE Payでは、基本的に資金決済法に基づいてサービスを提供しているのですが、情報を直接的に活用するという領域において、法規制で進まないということを感じたことは直接的にはあまりないのですが、先ほどもあったように情報を蓄積していくという観点の中で、前払式支払手段であると使える幅が資金決済法の中で制限されているようなところもあります。例えばLINE Payの残高で募金していいのかであるとか、そういった利用用途のところで、少し決済の事業者としては少し不便を感じるところもありますので、情報の精度を高めるという観点で、少しそういった面でも話ができたらいいかなと感じるところはございます。以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
銀行の方々、何かありますか。次回に意見をいただくことになっていると伺っていますが、今特に今日ご発言されたいことがあれば。どうぞ、柳さん。

【柳参考人】
SMBCの柳でございます。本体で参入するのか、子会社で参入するのかということについて言うと、まさに今議論している最中でございまして、本体で参入しようとする場合には、業務範囲規制のどこで読むのかというのが論点になるかと思っております。高度化等子会社の形で参入する場合には、より制約は少なくなると思うんですが、実際にお客様がデータを預けるときに、銀行だから安心するのかという議論がほかにもあったと思うんですけれども、子会社で参入するよりは銀行本体が参入したほうが、お客様に対する安心感という面では意味があるのかなとは考えております。ただ、どこまでやるのかが、まさに今、実証事業を進めているところですので、その内容によって、ちょっと変わってくるかなと考えています。

【岩原座長】
どうぞ。

【梅田参考人】
みずほ銀行の梅田でございます。先ほど植田先生のお話でもありました様に、まだこの領域に関してマーケットがきちっとできてはいない中において、情報を取り扱うのが銀行本体なのか、子会社なのかを決めるのは難しいと思っています。やはりお客様に安心に感じてもらうためには、どこでディフィニションを切っていくのかについて、これからかなり議論をしていく必要があると思っています。
先ほど私どものみずほ情報総研で調査した結果にもある通り、お客様が安心に思い、そしてメリットを感じていくためには、どのエンティティでどのように行えばいいのか、そういったマーケットがきちっとできてこその話だと思っておりますので、その辺のところを実証実験、あるいはこうしたケーススタディを通じて考えていければと思います。以上です。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。伊藤さん。

【伊藤参考人】
三菱UFJ信託、伊藤でございます。先生のご質問にストレートにお答えしますと、先ほどご説明したものは、私ども銀行本体でやる前提で、今当局と、持株会社であるMUFGと相談しております。以上です。

【岩原座長】
どうもありがとうございます。
それでは、永沢さん、お願いします。

【永沢メンバー】
ありがとうございます。去年の金融制度のスタディ・グループでお話を伺ったときと比べると、大きく世の中が変化、進展しているということに驚いております。本日は、私は一般の消費者の立場から、お話を聞きながら幾つか感じたことをお話しさせていただきたいと思います。
ここ数年前までの金融審では、私の感じていることですが、合理的な判断をできる人をどう育てていくのかというところに重点を置いて、いろいろな制度改革を行ってきたと思っていますが、現実のところ、合理的な判断ができる人ばかりではないという状況が現実にあり、誰一人として取り残さない社会をつくっていくためには、ある程度のパターナリスティックなことも必要なのかもしれないと、賢い投資家を育てるために金融経済教育が必要と訴えてきた私でも、そう思うようになっているところです。そういった意味で、先ほどマネーフォワードさんからお聞きしたお話は、明確な目的を持つ人ばかりではないという現状を踏まえた上で、そうした人の、認識できていないニーズを喚起して行動を変容させるという考え方というのは、私としては非常に共感するところでありました。
私はこういった動きを促進していくために規制というものの必要性を感じており、そのような規制を整備していくべきと考えます。といいますのも、利用者の安心・安全というものがなければ、新しい技術の利用は進まないとも思っておりまして、そういった観点からの規制づくりというものが必要なのではないかと感じております。
それから、2点目といたしましては、やはり決済の横断法制の必要性です。この件につきましては、以前から継続して審議を行っているところでございますけれども、私自身、この週末に上海と上海の奥の無錫を回ってまいりましたが、それこそお寺のお布施をウィチャットペイで払ったりしている光景などを見てまいりました。こうした体験から、私たち消費者に今後見えてくる光景というのは、今の光景とは様変わりするのだろうと思いました。今まで私たちは金融サービスを利用するときには、銀行なり証券会社、金融機関の看板を見て、店舗を見て入り、ATMを見て入店ということをしているわけですが、特に決済の分野に関しては、見えてくる光景がスマホのアプリの画面になってくるわけで、大きく違ってくる中で、私たち消費者は、誰がどのような役割を果たしているのかが見えなくなってくることも起きるわけですので、そういったことも踏まえながら、従来の規制とは違う規制ももしかしたら必要であり、横断的なものというのは、そういったことも踏まえながら考えていかなくてはいけないのではないかと、数日前の経験を踏まえて感じているところです。
3点目として、事務局のほうで用意されました資料の中に、プラットフォーマーという言葉が出てきておりましたが、最近、いろいろなところでプラットフォーマーという言葉を見かけますが、金融分野のプラットフォーマーについて議論をしていく上で、どういうものを意味するのかの定義づけが必要と感じております。先ほどこれもマネーフォワードさんから聞きにいけるところという表現をしていただきましたが、私たちが議論するプラットフォーマーというのはどういうものなのかを共有できるよう、先ほどのように具体的な例示を挙げていただきながら準備していくことが必要なのではないかと思っております。そうしなければプラットフォーマーの議論は、拡散してしまうのではないかと気になっているところでして、事務局にはその点をお願いしたいと思います。
4点目として、情報銀行という言葉は最近聞くようになりましたけれども、私にとっても急にあらわれた概念です。情報銀行ということですが、銀行業務とは全く違う分野に金融機関が出て行くのでしょうか。金融業界は生き残りのためにいろいろな他分野への展開を目指されているわけですが、今日お答えいただく必要はございませんけれども、こういった展開をすることの可能性とあわせてリスクというものについて、どのようなものがあるとお考えかかというところもお聞きする機会があればと思いました。本日のみずほ様の説明の中で標準化やガイドラインについて審議・議論が行われているというお話がありましたが、これからの審議の中で、金融庁以外ですでに御準備されている話なのかもしれませんが、そういった情報提供もこのスタディグループでしていただけたらと思いました。
最後に念を押させていただきますが、やはり利用者の安心・安全というところが必要でございまして、一言で利用者目線と片づけてしまうのではなく、利用者目線とは一体何なのかというところも,ぜひとも踏み込んで具体的な議論もしていただきたいと思っております。以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。では、戸村さん、お願いします。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。6点ほど質問がありまして、1つずつお答えしていただく形でもよろしいでしょうか。手短に。

【岩原座長】
手短にお願いします。

【戸村メンバー】
最初は、マネーフォワード社の瀧さんに質問させていただきたいんですけれども、銀行のオープンAPIの努力義務が改正銀行法で導入されましたけれども、銀行側にオープンAPIの法的義務がないほうが、ある種交渉力が上がって銀行がAPIの接続事業者との情報共有を求めることができるような側面もあるのではないかと思うんですけれども、銀行側のオープンAPIの努力義務を今後も法律で定める必要があると考えるかどうか、お尋ねしたいと思います。
あるいは、事業者間の任意の交渉だけでもAPI接続を通じた連携というものは可能なのか、これが最初の質問です。よろしくお願いします。

【瀧参考人】
ご質問ありがとうございます。おそらく法律上は、厳密には義務ではない。努力義務という表現でよく形容されるものかと思っておりまして、これは欧州と比較しますと、もともとGDPRが存在していたり、その直接の関係はなかなか難しいですけれども、PSD2が存在している中で発生した議論であることと、日本の場合はもう少しFinTechの発展という目途で進んできたという議論を、分けて考えるべきかなと思っております。実際には昨年の未来投資戦略で80行という数字がございまして、それを大きく上回る形で開放が進んでいくところであるんですけれども、わりと丁寧に議論していくべきは、その先に何があるのかという点かと思っていまして。
というのも、もちろん我々みたいな事業者からすると、義務化された、オープンな形がありがたいというのはそれはそれでありますが、日本人の場合ですと、3から5口座ぐらい銀行預金を持っていますから、それぞれ通帳を記帳しにいくとか、それぞれのインターネットバンキングにログインして確認するよりは、1カ所でデータをちゃんと見て、それですぐに判断ができるという、当社の一番初歩的な付加価値はそこにあるわけでございます。そして全ての金融機関をユニバーサルにマネーフォワードとして接続することが、最終的に家計を守れるということのみならず、人々の確定申告をちゃんと促すとか、節約だけではなくてちゃんとお金を増やせるような家計を育てるといった形で、公益性に合うようなサービスへとつながっていきます。そういうユニバーサリティを提供できることが極めて重要だと思っておりまして、そういう意味ではウェブスクレイピングをしている時代から、当社は全ての金融機関に対応しておりますということを非常に重要視していっていった次第でございます。
ですので、2つ観点がございまして、完全な義務化というよりは、おそらく対応することによって、よりよいソフトがいっぱい生まれるという世界観を、FinTech業の人たちがつくっていくのが1つは重要だと思いますのと、もう一つが、やはりデータを参照するだけですぐに付加価値が生まれるわけではないというのがあります。私の資料の最終ページにもございましたけれども、データを使ってソフトウェアを提供して、そこで初めてユーザー体験が生まれて、その中の一部が付加価値であるという捉え方をしたときに、データに直接、課金をしてしまうようなことがあると、議論が最初から詰まれてしまうというのがございます。ですので、どのような形で開放が行われるのかというのも、引き続きあわせて丁寧に議論するべきところかなと思っている次第でございます。以上でございます。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。

【岩原座長】
では戸村さん、2つ目。

【戸村メンバー】
はい、すみません。手短にしたいと思いますが。
今度はヤフー社の阿部さんに質問なんですが、簡単に。現在も御社は主要株主として銀行を傘下にお持ちだと思うんですけれども、オープンAPIが始まって、今でも主要株主として銀行を傘下に持つことの利点が、御社の事業展開をするに当たってあるのか、もしくはもう今後は、多様な銀行と提携していけばいいような形なのか、もしご見解があれば伺いたいというのが第2の質問です。

【阿部参考人】
まずオープンAPIみたいなものが進んだからといって、我々が銀行を傘下に持つ意味というものが損なわれるということはないと考えております。それはやはり銀行というライセンスを持っていなけれればできないことというのを、やはりヤフーのこういったコマースを利用するユーザーさん、もしくは事業者さん、中小企業の出店者さん、そういった方たちに銀行のサービスを提供したい、それは我々自身の手で、先ほどご説明したとおりヤフーなりのユーザー体験で提供したいというものがありますので、それがやはり自分たちで持たないとできないということである限りは、それは意義があることかなと考えております。

【岩原座長】
ありがとうございました。では、戸村さん、3つ目は。

【戸村メンバー】
済みません。次はヤフー社の阿部さんとLINE Pay社の佐藤さんに質問なんですけれども、不正検知の件、ご説明いただいて大変勉強になったのですが、送金サービスを展開していくと、やはり振り込め詐欺対応が重要になってくると思うんですけれども、現状は銀行とかコンビニとか、対人での対応が結構効いているのかなと思うんですが、そのような振り込め詐欺のような不正送金への対応はどのように考えておられるのか、2社のご意見をご参考までに伺いたいというのが質問です。

【岩原座長】
では、佐藤さん。

【佐藤参考人】
少しだけ回答させていただきます。まず不正犯に狙われにくいサービスにするということが非常に重要かなと思っておりまして、私どもとしましては、提携銀行様といろいろ協議させていただきまして、例えばデイリーでチャージできる上限を設定したりだとか、不正に狙ったとしても悪い人にメリットがないようなサービス設計みたいなのはもちろんありますし、人というよりは自動で止めるみたいなところも含めて、弊社では対策を講じております。

【岩原座長】
いいですか。では、4つ目。

【戸村メンバー】
済みません、手短にいきたいと思います。今度は銀行グループの方への質問に移るんですけれども、4点目はみずほ銀行とSMBC、三井住友銀行の2行の方への質問になるんですが、情報銀行は預けられた情報にアクセスできる企業をどのように選ぶのかというご説明がちょっと見つからなかったので、企業ごとに利用者が認証する形なのか、伺いたいと思うんですが。可能でしたらお答えいただければ幸いです。

【岩原座長】
では、柳さん。

【柳参考人】
情報銀行の中に預けてもらったデータは、あくまでその個人が開示したいというところに対してアクセス権を付与して開示するような形になります。以上です。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。最後になります。最後の2点は、銀行グループの3行の方への質問になりますが、2点まとめて質問させていただきたいと思います。
1つは、永沢メンバーのおっしゃられたこととも重なるんですけれども、情報銀行が広く普及した場合、まだマーケットができていないわけですが、広く普及した場合、情報銀行に加入しないと企業サービスが受けられないような問題が生じて、そうしますと、悪い履歴を持つ家計がさらに困窮するような事態も考えられると思うんですが、そのような問題への対応策が何か議論されていることがあれば伺いたいというのが5つ目の質問で、もう一つは電代業との差別化についての質問なんですが、電代業があれば情報銀行がなくても、金融に関する利用者情報が集約化され、利用者がどの企業に、どのような情報を開示するか選べると思うのですが、電代業による情報の集約化に比べて、情報銀行のサービスがどのように差別化されるのか伺いたいというのが2点目の質問です。以上です。

【岩原座長】
それでは、梅田さん。

【梅田参考人】
1点目のご質問について、マーケットができていないという中でもあり、あくまで情報を提供する方と利用する方々にとって利便があるかないか、あるいは安心感があるかないか等について私どもも参加させていただいている情報信託機能普及協議会等でも議論を重ね、何らかの基準のようなものを設け、マーケットにしっかり享受していただけることを念頭に考えてまいります。

【岩原座長】
2点目についてはどうですか。よろしいですか。

【梅田参考人】
先ほど申し上げた点がどこまで高度化できるかといったところに尽きるのではないかと考えております。以上です。

【岩原座長】
それでは、次に森下さん。

【森下メンバー】
済みません、ありがとうございます。今日、情報に関していろいろなお話をお聞かせいただきましたけれども、少なくとも私が理解した限り、5つぐらい異なる使い方がお話にあったのではないかと思います。それでそれぞれによって、やはり考え方というのは違うのかなと思いました。
まず1点目が、個人などが自分で自分のデータを使えるようなサービスを提供するというタイプ。例えば、マネーフォワードさんなんかはそういうふうなサービスとお伺いしたのですが、そういうもの。あと、2番目は、自分の会社のサービスや商品のレベルアップに使う。例えば、不正検知に活用するとか、投資に使うと。おそらくこういったところというのは、今までもどうぞやってくださいということだったのではないかなと思います。
ただ、3つ目なんですが、自己商品のセールスに使う、お客さんに対するアプローチに使っていくという話。あるいは、4番目ですが、他社商品のセールスに使うというような話。こうなってきますと、おそらく従来の金融法の中では、顧客情報についてはもちろん守秘義務に関する規律はありますけれども、それに加えて特に利益相反などの観点から、情報の利用ということについての一定の制限というものが設けられていると思うんですね。ですから、今後情報を活用していくということを考えていく際に、従来我々が金融の領域で考えてきた不適切な利用というようなものを若干変更する必要があるのか、あるいはきつくする必要があるのか、そういったようなところが1つ重要な論点になるように思われます。
それとは別に5つ目として、情報を管理し、指図に従って運用すると。これは信託ということなのかもしれませんが、そういうようなものというのは、従来はあまり金融サービスとして考えてこられなかったようなものではないかなと思います。情報が財産的な価値を持つようになってきて、それを扱うことが金融なのかというところは、大いに議論される必要があるのかなと思いますが、ただ、金融でなかったとしても、業として非常に大事なものをお預かりするという場合には、ほかの業態で規制されているというようなこともあるのかもしれませんし、あとは先ほど安心感というお話もありました。そういったような形で、5つ目の類型、管理し、指図に従って運用するという類型につきましては、今後、それを金融とするかどうかはともかく、何らかの規制の対象とする必要があるのかどうか、そこまでのリスクがあるのかどうかというようなところ。すぐに定見を持っているわけではございませんけれども、そういったようなところをしっかりと詰めていく必要があるのではないかというのは、今日のお話を伺っての意見、感想でございます。

【岩原座長】
それでは、後藤さん。

【後藤メンバー】
どうもありがとうございます。今日は非常にいろいろなお話を伺わせていただきまして、大変勉強になりました。
何人かのメンバーがおっしゃっておられたかと思いますが、この話は金融の話なのかというと、今まで金融として考えられてきたものというよりは、どちらかというと個人情報の管理や保護をどう扱っていくかという問題であったように思います。もちろん、だからといって金融機関がやっていけないわけでもなく、またその逆側ですけれども、伝統的な銀行以外のものも当然やることができてしかるべきものなんだろうなと考えております。
幾つか感想があるのですけれども、まず、情報銀行ですとか情報信託という言葉は、何となくイメージは捉えているのですけれども、ただ、現行法上の銀行ですとか信託の概念とは大きく異なるものであり、またこの言葉を使う事業者や人によって、その言葉に与えている意味内容が大分違ってきているように感じますので、この言葉、特に情報銀行でしょうか、ひとり歩きするのは、規制の話をする上で危険。危険というのは言い過ぎかもしれませんが、気をつけるに越したことはないのではないかなという気が1つしております。
また、今日マネーフォワードさんやLINE Payさんと銀行3行の方から伺ったお話の中で大変興味深かったのは、皆さん、個人情報は価値を持つので、その利用に伴う利益は個人に還元するべきである、個人こそが情報の所有者なのであるということを強調されていたのですけれども、ただその中で考えておられることが少しずつ違うような気がしたところです。
最近の個人情報の扱われ方に関する不安というものは確かにあって、それは結局、自分の知らないところで個人情報が流通させられ、またそれに対してどのような具体的なメリットを受けているのかよくわからない点にあるということですが、銀行の皆さんは、この点について、銀行が預かった情報を特定の業者に渡す場合には個別に情報を預けた利用者の同意が必要であるとして、さらにその同意に対して一定の対価、金銭的な対価が個人に支払われるというスキームを想定されておられるようです。三菱UFJさんの資料には1件500円と書いてあって、そんなにもらえるのかなという気もしますが、これはあくまでわかりやすい数字を挙げられただけなのかなとも思います。ともあれ、そういうことが想定されている事業者さんがおられると。
これはこれで個人情報のコントロールや対価の提供という意味では望ましいようにも思えなくもないのですが、他方で言い方は悪いのですけれども、個人情報を自分で切り売りしているような側面がないわけではない。また、自分からアクションを起こして情報を提供するのであればいいんでしょうけれども、自分から求めていないのに頻繁に同意を確認するメールが来たらたまったものじゃないなと思うところがないわけでもございません。
他方で、例えばフェイスブックなどのSNSでは、便利なサービスを無料で提供してもらっているかわりに、裏で自分の情報がいろんなところで使われているわけですが、それに対して気味悪さを覚えるのは私も非常に理解できるところではあるのですけれども、それはそれで利便性が高まっているという側面もないではない。そのバランスのとり方が難しいところだと思います。
重要なのは、預かられた情報が変な形で漏洩されないように、また悪用されないように管理されているというところであって、この点さえしっかりと確保されているのであれば、個人情報を活用したサービスの提供のあり方を限定する必要はなく、この点は事業者の創意工夫に任せるべきであって、銀行の方から伺ったようなサービスも、フェイスブックのようなサービスも、いずれも世の中に存在していいのではないかと思います。
そうすると、金融の観点から、使い勝手のよい個人情報保護法制であるべきだということは言えるのかもしれませんけれども、個人情報の扱いという問題は金融規制というフォーラムで議論するのがほんとうに適切なのかという問題があると思います。
最後に1つだけ質問なのですけれども、マネーフォワードさんのご発表、非常に興味深かったのですけれども、情報銀行という言葉には注意が必要だと最初におっしゃっておられましたが、その関係で、やはり情報の利用による利益はちゃんと利息をつけて消費者に還元すべきであるということもおっしゃっておられたかとも思います。ここでいう利益・利息というのはどういうことかということですが、マネーフォワードさんでは、個人の家計の管理をやりやすくするということがおそらく想定されている利益であって、利用者に何らかの金銭的な対価がいくということを想定されているわけではないように理解したところです。もし間違っていたらご訂正いただければと思います。
そうすると、このサービスは、利用者に対しておそらく無料で提供されているのだと思いますけれども、そうしますと利用者にとっては非常に便利なわけですが、私が心配することではないのですけれども、マネーフォワードさんの収入はどういうところから入ってくるのだろうかというところが気になるところでございます。情報が非常に蓄積されていて、それはいいのですけれども、それをどういった形で活用されて、それがどこにどうやって流れていくのかと。そこが明らかにされていないというところが、先ほど銀行3行の方の報告との違いだったようにも思いますので、事業上差し支えない範囲で構いませんので、そこのあたりがどうなっているのか教えていただければ大変ありがたく存じます。よろしくお願いします。

【瀧参考人】
かしこまりました。そういう意味では、当社の個人向けサービスの収益構成はIR資料で出ているものでございますので。大体半分がプレミアム利用料になります。なので、マネーフォワードは650万ユーザーいるんですけれども、その中で15万人ぐらいの方々が、月額500円の利用料を払って利用していまして、そこで機能差を設けているというものになります。いただいたご質問、実は5年ぐらい前に有料プランを出すまでは、当社にはけっこう苦情があったんですね。おたくは情報を売っているんじゃないかとよく疑われたところがあって、それは有料プランを出すと逆に苦情が減るという、非常におもしろい現象が当時あったわけです。
残りの半分のうちの4分の1の部分が広告収入と言えるものでございまして、残りの4分の1が当社がいろいろなアプリやソフトウェアで金融機関様に提供しているところのサービス提供料というところになっております。我々としてもプレミアム利用料というのは非常にわかりやすいサービスでございまして、ユーザーさんがソフトウェアの価値に対して対価を明確に支払うものになっています。ただ、世界をいろいろ見渡しても、しっかりとサービスそのものに課金できている家計簿というのは実はほとんどなくて、過去にも日本だと、マイクロソフトさんがマイクロソフトマネーを提供されていましたが、あれも事実上、日本でしか大きく売れなかったというふうにも聞いておりまして、それ以外のソフトとして世の中では、実はそういう形ではなくて、例えばクレジットカードの紹介であるとか、そういったところでアメリカのFinTechプレーヤーは稼いでいるところがございます。どちらかというと我々でいうと4分の1のところの広告収入に近いところが、世界的には類業のメーンストリームになっているのかなと思っております。以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。それでは、加毛さん。

【加毛メンバー】
まず、事務局資料の「当面の検討事項(案)」の(2)及び(3)について、幾つか意見を申し上げたいと思います。
「(2)決済の横断法制」につきまして、第1に、資金決済法の規制の内容を、この際に再検討する必要はあるだろうと思います。既に様々なところで指摘されている問題としては、資金移動業の送金額の上限規制がありますし、それに関連して、顧客資産の保全に関する規律も問題となります。後者の問題については、資金移動業と前払い式決済手段の関係を視野に入れて考える必要があると思います。
第2に、資金決済法による規制の対象から外れているところについても、検討の必要がないかが問題となります。例えば、資金決済法の制定時以来、議論の対象とされているものとして、収納代行の問題があります。収納代行は、私法上の法律構成としては、弁済の代理受領とされ、資金移動業とは異なるものと理解されていると思います。ただ、前述の資金移動業の送金額の上限規制との関係で、上限額を超えるサービスを提供しようとする場合に、それを資金移動業ではなくて収入代行であるとするような実態があるとすれば、現在の規制の在り方が適切であるかが問題となるように思われます。
また、以上にも増して、個人的な関心があるのが、いわゆる「ポイント」の問題です。資金決済法の制定時には、「おまけ」という性格もあることから、規制の対象外とされたのですが、現在では、汎用性の高いポイントが普及しており、それも単なる決済を超えて資産運用等にも利用できるようになっています。そのような財産的価値の高いポイントについて、現状のままでよいのだろうかということが、非常に気になります。
例えば、ポイントを発行している企業が一方的に利用者にとって不利益となる形で利用条件を変更することが果たして許されるのだろうかという問題があります。また、システムに対する不正アクセス等を原因として無権限でポイントが利用されてしまった場合に、どのように対処するのかも問題となります。そのほかにも、システム障害等、様々な問題を想定できるところです。規制の手法については自主規制を含めた多様な可能性があると思いますが、決済の横断法制を考える場合には、ポイントも重要な問題になると考えます。
第3に、これまで資金決済法に関連する意見を申し上げましたが、決済の横断「法制」を検討するためには資金決済法などの金融庁所管の法律だけではなく、他の省庁が所管する法律をも検討対象に含める必要があるだろうと思います。他の省庁で仕事をする際には、金融庁が所管する法律についても検討する必要がある旨を申し上げておりまして、同様に金融庁のスタディ・グループにおきましても、省庁横断的な検討をすることができればと考えています。
次に、「(3)プラットフォーマーへの対応」につきましても、若干の意見を申し上げたいと思います。まず、先ほど永沢委員から重要なご指摘があった点ですけれども、現在、「プラットフォーマー」という言葉は非常に多義的に用いられており、何を検討の対象とするのかを明確にする必要があるように思います。この点に関して、「規制」という観点からは、B(事業者)とC(消費者)をつなぐタイプのプラットフォーマーと、C(消費者)とC(消費者)の間に立って取引等の場を提供するタイプのプラットフォーマーを区別することが、有益であるように思われます。BとCをつなぐタイプのプラットフォーマーとしては、例えば、電子決済等代行業者があります。他方、CとCをつなぐタイプのプラットフォーマーについては、このスタディ・グループの検討対象に入りそうなものとしては、例えば、ソーシャル・レンディングのプラットフォームを提供する事業者が考えられます。
BとCをつなぐプラットフォーマーに対する規制を考えるうえでは、まず、一方当事者であるBに業法等による規制が存在する点が重要です。また、Bは、継続的に事業を行うことが前提とされますので、レピュテーション・リスクなどとの関係で、規制を遵守するインセンティブを有します。さらには、業法による規制を超える内容のサービスを提供することも、容易に想定できるところです。これに対して、CtoCの取引に介在するプラットフォーマーに対する規制を考えるうえでは、両当事者ともに業法の適用対象でないことに加えて、事業者のような規制遵守に対するインセンティブが小さくなり、機会主義的な行動をとるおそれが増大するという問題を指摘できるように思います。それゆえ、プラットフォーマーに期待される役割も変わってくるところであり、そのことが規制の在り方を考えるうえで有益な視点を提供するものと考えられます。
いずれにいたしましても、どのようなタイプのプラットフォーマーを念頭に置いて議論をするのかを明らかにする必要があるだろうと思います。
続いて、金融機関による情報信託機能に関するプレゼンテーションにつきまして、質問をさせていただきたく存じます。メガバンク3行からご出席の参考人のどなたからでも、お答えをいただければ幸いです。実は、昨年末から今年の前半に、他の省庁で開催された情報信託機能に関する検討会に参加していたのですが、その際に、事業者から指摘されていた問題点として、情報信託機能に関して、どのようなビジネスが展開されていくのか見通しが立ちにくい、ということがございました。従前、想定されていたビジネス・モデルの1つは、ある事業者が事業の過程で取得した情報を活用して、それを新たなビジネスの創造に役立てる、というものでした。銀行についていえば、銀行の本業について集積した情報を、新しいビジネスに利活用する、というモデルになります。他方で、本日ご紹介いただいた事例は、銀行の本業との関係で取得した情報を利用するというより、情報の利用方法やサービスの内容を予め定めたうえで、新たに顧客から情報を取得する、という形態でのビジネスであるように思われました。本日の瀧参考人のお話の中で、目的を定めないデータ集積はビジネスにつながりにくいというご指摘がございました。そうだとすると、前者のタイプよりも後者のタイプのほうが、金融機関のビジネスとして将来有望性があるようにも思われるところです。そのようなお考えをお持ちであるのか、それとも、本日は最近の取り組みとして実証実験等の内容をご紹介されたに過ぎないのか、について、ご意見を頂戴いたしたく存じます。
また、もう一つ、情報信託機能に関して指摘されている問題として、情報の真正性をいかにして担保するのかということがございます。この点について、何らかのお考えや、取り組みの実例などがございましたら、お教えいただければ幸いです。

【岩原座長】
銀行の方々、いかがですか。では、伊藤さん。

【伊藤参考人】
三菱UFJ信託、伊藤でございます。先生のご質問に対して答えになるかどうかわかりませんが、情報信託という言葉の意味も含めて、私どもの解釈をお話しますと、実はお客様の指図に基づいて、お客様の資産を運用するという形は、信託の枠組みでいうと特定運用の信託として、私ども90年前からやっております。その意味からすると、先ほどご説明したパーソナルデータ信託、情報信託も、特に新しいことをやるという意味では考えておりません。
と申しますのは、資産の形がいわゆる伝統的資産なのか、あるいはパーソナルデータなのかというところが違うだけで、お客様の指図に基づいて運用するという点は一緒ですので、特に枠組みとして何か違和感を持って捉えているということはないということでございます。
もう一つのデータの真正性の担保というところは非常に重要なご指摘でして、実際のパーソナルデータをいただく場合には、そのデータを持っている方とAPIの接続をしたり、システム的に加工できないような形でいただくことを大前提としますけれども、当然それが正しいかどうか見ていく方法はきちんと整えなければいけないと思っております。以上です。

【岩原座長】
ほかの銀行の方、よろしいですか。では、柳さん。

【柳参考人】
例えば、我々が今進めようとしている実証実験の中では、医療データは病院の電子カルテシステムと直接つないで、病院からもらうという形で真正性を担保していると考えております。

【岩原座長】
よろしいですか。それでは、舩津さん。

【舩津メンバー】
ありがとうございます。情報銀行に関して、2点感想を申し上げたいと思います。
1点目は、既に森下メンバー、後藤メンバーからご指摘がありましたけれども、情報銀行と一口に言いましても、情報の集め方ですとか、集める情報の内容ですとか、活用の仕方というものが、3行お伺いしていてもさまざまだということかと思います。そういうことですので、やはりどういうモデルを念頭に置いて規制をかけるのかかけないのか含めて、内容を検討する際にはモデルの具体化というものが重要になってくるのではないかということが、まず1点目でございます。
それから、2点目です。情報銀行に関して、なぜ銀行がやるのか、やるほうがいいのかという点に関しては、少し慎重な検討が必要であるかのように思います。別にそれは銀行がやるべきではないという趣旨ではございませんで、どういうことかといいますと、3行のどなたかのプレゼンの中で、銀行が情報を預かるのにふさわしい主体であるということの1つの証左として、人々の信頼があるんだということをおっしゃっておられたかと思います。おそらく3行ともそういうご認識であろうと思いますし、世の中もそう考えているのだと思います。
ただ、その信頼というのはあくまで既存の規制に基づいて打ち立てられた信頼であるという点に関しては、注意をしておく必要があるかと思います。例えばですけれども、その信頼の源が業務範囲規制にあるのだとすれば、信頼に基づいて銀行が情報を預かってよいとした場合には、その業務範囲規制は崩すべきでないという方向に働き得るものではないかと考えられます。そういう意味で、果たして信頼というものがあり、その信頼の中身がどういう規制、あるいはカルチャーを源として発生しているのか、そのあたりの信頼の源については十分注意して議論していく必要があるのではないかと思いました。以上です。
 
【岩原座長】
それでは、大野さん、お願いします。

【大野メンバー】
座長、ありがとうございます。まず事務局から提示された4つの柱について違和感はございません。一番初めの情報の適切な利活用というのは極めて難しい課題かなと思って今日来ましたが、やはりそうだなという印象を持ちました。ただ、この課題はおそらくクリアすべき核心の問題でありますから、これを挙げていただいた事務局の勇気と意気込みに敬意を表したいと思います。
その上で、本日のヒアリング、金融機関の方々、それからIT、FinTech企業の方々からの情報利活用のプレゼンテーションは大変参考になりました。参考人の皆様に厚くお礼を申し上げたいと思います。
ポイントとしては、結局、突き詰めるところ、利用者にとっての利便性の向上、付加価値がイノベーションを取り込む形でどれだけ果実として得られるかということだと思います。そういう意味からすると、今日はわりと金融機関の方々と、それからこちらのお三方との間ですごく対照的に見えたという気がしております。先ほどの今の制度に対して何か不都合があるかという質問に対して、プラットフォーマーの皆様は、それほど痛痒はないという答えでした。一方、銀行の方々は、わりと真剣な面持ちで、今のところまだということで、次回以降に態度を留保されたのが印象的でした。
私としては、昨事務年度のときも申し上げましたけれども、いろいろな情報の利活用を伴うイノベーションを通じて、新しい金融のビジネスモデルや、金融以外も含めたビジネスモデルの転換が進むと思っています。金融機関と、それから非金融機関の皆様との間の垣根がずっと低くなっていく中で、金融と異業種との間での競合というものと、金融機関がプラットフォーマーとかITの方々と戦うということばかりでなく、むしろいろいろな金融機関と、IT、プラットフォーマーの方々、あるいは前回あったキーワードでいくと、親近性の高い業務の業種の方々と、チームになって様々なことにチャレンジしていく協創の動きが、複層的に、並行して進むという世界になると思っています。
私の予想が仮に当たるのであれば、制度的なインプリケーションとして重要なのは、各プレイヤーの方々が、金融機関、非金融機関にかかわらず、しのぎを削ってよりよいサービスを提供し易い環境の整備を、どうしたらできるかということです。これはやはりイコールフッティングも含めて、制度的な課題として取り組むのが重要ではないのかとずっと思っておりましたけれども、今日のお話を伺いまして、改めてそうだなという気持ちを強く感じたところであります。
我が国の金融制度やフレームワークがイノベーションの進展の流れをうまく取り込んで、その波に乗れるようなモデルチェンジを図るということを、この本事務年度の会合でもいろいろ議論させていただければいいかなと思いました。
情報の適切な利活用については、今日特に金融機関の3名の方からお話を伺って、半分くらいすっきりした感じです。私は、利用者の同意が必要であること、それから提供する情報の内容を利用者が選択できることも重要であると思っておりましたところ、これらの点を伊藤さんのお話の中でもきっちり管理されていらっしゃるということを聞いて非常に安心しました。
あとはやはり利用者が情報の提供に伴って、どのようなメリットがあるのか実感するということ、これがすごく重要だと思いました。半分と言ったのは、三井住友銀行の柳さんがおっしゃった、医療データの活用の例はすごく実感ができてほんとうにそうだなと思いました。それと同時に、おそらくほかの領域でも、いろんな例があるのではないかと感じたところであります。そういった具体的な価値ある情報提供が期待できるようなニーズを、もっとはっきりできると、この問題に対する糸口ができるのではないかと思いました。
また、情報収集サイドで情報収集された後、どういうふうに加工して付加価値を提供するかというところについては、今日はあまり多くお話がなかったのかなと感じました。おそらくデータのマスキングとビッグデータ分析をどのように活用して、どういう新しいこと、新しいニーズができるかというところを捉えた上で、金融機関と非金融機関を問わずに遵守すべきデータの管理のルールであるとかセキュリティ対策に関する原則をどのように整備するかということ、データガバナンスのルールをどうするかなどについてはやはり当局や審議会のほうで検討すべき課題だと思います。
最後プラットフォーマーについての永沢さん、それから加毛さんのご意見に全く同感です。定義が相当幅広いわけですから、いろいろな検討のポイントを考える際には、この定義、対象をあらかじめ整理した上で議論に臨むことが極めて重要だと思います。そこについて、先ほどCtoC、それからBtoCという捉え方を加毛さんがされていらっしゃいました。ちょっと言い方を変えればPtoP的なものとメガのプラットフォーマー的なものとの捉え方もできます。以前にも申し上げましたが、後者のメガプラットフォーマーの方々が金融業務への進出を視野に入れてくる、そういった場合に、制度全体としての安定性をどのように考えるかということが重要だということを、付言させていただきたいと思います。ありがとうございました。

【岩原座長】
それでは、翁さん。

【翁メンバー】
ご説明どうもありがとうございました。情報の活用につきましては、society5.0ということで、データの利活用、それから分析を進めて、インクルーシブな社会をつくっていくという、そういう概念だと思いますので、そういった方向でさまざまなプレイヤーがこういった分野に参入してくるということ自体は望ましいことだと思っております。
一方、今日いろいろな論点がありましたけれども、事務局のほうで整理された情報の適切な利活用に関しましては、これはほんとうに横断的な話で、もう皆様おっしゃっていたとおりで、個人情報の保護、セキュリティ、それからデータポータビリティの問題、それからさまざまな今日もご紹介ありましたけれども本人同意の重要性とか、そういった全ての産業横断的に非常に重要なことだと思いますし、おそらくこれは情報信託機能についてどういう人がやるのかという要件ということにもかかわってくると思うので、少し視野を広く、この点については議論していくことが必要なのかなと感じました。
それから、事務局の整理に従えば、(2)、(3)については今日皆様がご指摘になったような点と全く一緒で、プラットフォーマーの定義、それから決済の横断法制についても、まずこの分野から議論していくということについては賛成でございます。
銀行業が、銀行グループがどういう新しいことをしていくのかということについては、ほんとうにさまざまな論点があると思うので、その論点を一つ一つ議論していくことが必要かなと思いました。例えば、今日もご発言ありましたけれども、銀行のやっている、どの部分が特別なのかという議論。それから、今まで業務範囲規制の議論をするときは、親近性の話とか、エクセスキャパシティの議論とかいろいろあったんですけれども、そういうことはどう考えるのか。それから、やっぱり一番重要なのは、新しい業務のリスクの大きさということであって、どういうふうなリスクがあるのかということではないかなと思います。
今日お話しいただいた情報を扱うという新しい業務というのは、非常に新しいので、ビジネスとしてどういうふうに持続的に収益を生み出していくのかなということに関心があります。だから、それは難しいかもしれないからどうのこうのということではなく、そういったことも議論していくということが大事だと思いますし、それから、結局誰に自分の個人情報を預けるかということは、やっぱりユーザーが選ぶことになりますので、ユーザーから選ばれるビジネスプレイヤーがこういったものを担っていくようになるのだろうなと思います。
いずれにせよいろいろな論点がありますので、これから幅広く議論に参加できればと思っております。

【岩原座長】
どうもありがとうございます。翁さんに最後にまとめていただいたような感じです。
ほんとうに本日も非常に熱心にご議論いただきありがとうございました。大きく分けて、規制についてのご議論と、それから、情報の利活用をめぐるご議論、この2つに皆様のご議論がわたったかと思います。規制については、そもそもどういう場合に規制が必要なのかから考え直すべきだというご指摘をいただいたところでありまして、それをより具体的に考えますと、福田さんがご指摘になったように、現行法ではどこがまずいところが出てきているのか。それを実証的に考えていく必要があるということになるかと思います。
また、情報の利活用につきましては、これが単に金融にかかわる問題ではなく、日本政府全体として、情報についてどのようなルールを定めて、それが適切に使われ、最も利活用されるようになるにはどうしたらいいかということを考えていかなければならず、金融庁の枠を超えて考えていく必要があるというご指摘をいただいたところかと思います。
細かい具体論としては、プラットフォーマーという言葉の定義もいろいろであって、それに応じて考えていく必要があるというご指摘があったと思います。そしてまた、情報銀行、情報信託という言葉についても、これは非常に慎重に扱う必要があるというご指摘をいただいたと思います。先ほど伊藤さんからご指摘のありましたように、特定信託としては、情報信託というのも多分従来の伝統的な考え方の延長で考えやすいかと思いますけれども、一方で、情報銀行といっても、銀行が直接本体で行おうとすると、銀行法上、固有業務、付随業務、どこでどうやって行うのかということを考えていかなければならないことになっていくわけで、そこら辺の問題も、今後検討する必要があるというご指摘をいただいたかと思います。
今日はメンバーの皆様に大変有益なご議論をいただき、また実務の皆様からも大変有益な参考意見をいただきまして、まことにありがとうございました。本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえまして、引き続き審議を進めていきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
最後に、事務局のほうから連絡事項等がございましたらお願いします。

【岡田信用制度参事官】
次回のスタディ・グループの日時につきましては、既にご相談しておるところでございますが、近々事務局から正式にご案内させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【岩原座長】
それでは、以上をもちまして、本日のスタディ・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 
 

                                                    ―― 了 ――

 
 

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