金融制度スタディ・グループ(平成30事務年度第4回)議事録

  • 1.日時:

    平成30年12月6日(木)9時30分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(平成30事務年度第4回)
平成30年12月6日
  

【岩原座長】
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融制度スタディ・グループ」平成30事務年度第4回目の会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
また、前回は、私の病気欠席のため、神田メンバーには代わって司会いただきまして、まことにありがとうございました。
本日は、当面の検討事項のうち、(1)情報の適切な利活用に関して、「情報と金融機関」についてご議論をいただければと存じます。
このテーマに関し、参考人として、これまでご説明いただいていない、「資産運用」と「リスク移転」分野の金融機関の方々にご出席いただいておりますので、その紹介を事務局よりお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
おはようございます。信用制度参事官の岡田でございます。
本日は、参考人として、野村證券株式会社執行役専務の新井様、

【新井参考人】
よろしくお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
第一生命保険株式会社取締役常務執行役員の畑中様、

【畑中参考人】
よろしくお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
損害保険ジャパン日本興亜株式会社取締役専務執行役員の小嶋様にご出席いただいております。

【小嶋参考人】
よろしくお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
どうぞよろしくお願いいたします。

【岩原座長】
続きまして、議事に移らせていただきます。
本日は、まず事務局から、事務局説明資料についてご説明いただきます。次に、参考人の方々からご説明いただき、その後で一括して討議を行います。参考人の皆様におかれましては、金融法制全般について様々なご要望があるものと承知しておりますが、時間と審議の効率の都合上、主に金融機関における情報の利活用についてご説明いただきますよう、お願いいたします。
それでは、事務局から説明をお願いします。

【岡田信用制度参事官】
それでは、まず、資料1に基づいてご説明いたします。
資料1の3ページをご覧いただければと思います。3ページは、金融業をめぐる情報関連規制と業務範囲規制の概観でございますが、一番上の四角囲いにありますとおり、金融分野につきましては、個人情報保護法令上、一般事業会社よりも厳格なルールが適用されています。さらに、銀行や保険会社などにつきましては、別途、業法上、業務範囲に関して厳格な制限がございます。情報の利活用を通じた利用者利便の向上やイノベーションの促進について考えていく際に、こうした規制環境について留意する必要があると思います。
その下の図は、白地のところが通常の一般事業会社でありまして、青い丸が、金融分野など、個人情報の保護に関して一般事業会社よりも厳格なルールが適用される分野で、その中でピンクのところが、さらに業務範囲に関して厳格な制限が存在する業態ということを図示しております。その具体的内容について、この後、簡単にご紹介します。
まず、5ページは、情報の取扱いに関するルールの概観でございます。上の四角囲いにありますとおり、金融機関に適用される情報の取扱いについてのルールは、個人情報保護法に基づくものと、業法等に基づくものに大別されます。そして、金融機関に対しては、情報の取扱いに関して、多くの一般事業会社よりも厳格なルールが適用されます。下の図でいきますと、上のほうが個人情報保護法に基づく体系、下のほうが業法等に基づく体系ということになります。
上の個人情報保護法の世界では、一般則としての個人情報保護法と、その上の個人情報保護法ガイドラインというのは一般事業会社も含めて全ての事業者に適用されるルールですが、金融分野については、薄青にあります金融分野における個人情報保護に関するガイドライン、それに関連して安全管理措置等についての実務指針というものが追加ルールとして適用されます。
次に、業法等の世界が下のほうにありますが、銀行法、保険業法をはじめとする金融関連法令や、その下位規範、ないしは監督指針において、情報の取扱いについてかなり詳細なルールがございます。また、若干毛色は違いますが、言ってみれば業界による自主ルール的なものとして、金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準などが使われているかと思います。
次に6ページでございますが、こちらは今申し上げたもののうち、個人情報保護法に基づく情報の取扱いに関するルールの概観です。具体的には、青の金融機関とオレンジの一般事業会社を比べて、金融機関のところについて、金融分野における個人情報保護に関するガイドラインによる、より厳格なルールがございます。
若干ご紹介しますと、上から、取扱禁止の個人情報ということで、取得、利用または第三者提供が、法令その他、何か事情があってどうしても要るという場合以外、原則禁止される情報として、金融分野については機微情報、具体的には個人情報保護法上の要配慮個人情報や本籍地等がございます。他方、一般事業会社については、特にそういうものはございません。
取得・利用時のルールにつきまして、まず利用目的を本人にお知らせする必要があるのですが、金融分野については原則書面、一般事業会社は特段限定はないということです。ただ、原則書面ということにつきましては、金融分野につきましても、電磁的な記録でもいいということになっておりますので、若干、相対化している側面はあろうかと思います。
それから、利用目的への本人同意の取得ということで、金融分野については、とりわけ与信につきましては、与信に際して個人情報を取得する場合には本人同意の取得が必要ということです。また、与信以外の業務に個人情報を利用することについて、与信の条件として本人同意を取得することは禁止ということであります。例えば、金融商品のダイレクトメールの発送に個人情報を利用することについて、与信の条件として本人同意を取得することは禁止されているところであります。
利用目的の範囲を超える場合には本人同意を取得するということですが、その場合、金融機関については原則書面とされております。
実質的に一番細かいルールがあるのは、次の保管・管理時の部分でございます。安全管理義務、それから従業員、委託先に対する監督義務について、金融分野のガイドラインでは、安全管理について管理責任者を置くといった組織面、あるいは情報システムのアクセス権限の管理といった技術面について、さまざまな詳細な定めがございます。委託先につきましても、例えば委託先における安全管理のあり方を委託先選定の基準に定めるなど、いろいろ細かなルールがあるのが、一般事業会社の通常の場合との違いでございます。
最後に、第三者提供について、金融分野については、本人同意の取得は原則書面とされております。また、金融分野では、本人同意がなければ原則として第三者提供ができない情報として、機微情報、返済能力情報、いわゆる信用情報でございますが、こういったものが定められております。一般事業会社につきましても、要配慮個人情報については同じような扱いでございますが、金融分野のほうがルールの対象範囲が広くなってございます。
以上が、個人情報保護法の体系であります。
次の7ページに、業法や自主ルール等の世界の定めを紹介してございます。一番上の法令の欄をご覧ください。これは銀行法の例でございますが、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じなければならないという法律上の規定がございます。それを受けて、施行規則レベルで少し具体化して、情報の漏えい、滅失、毀損の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなければならないという規定があって、さらにその下に、監督指針の世界の中で、ここに記載のあるような事項を中心として、かなり具体的な着眼点というか、ルールが定められております。
それとは別のものとして、一番下に、先ほども申し上げましたが、金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準というものがありまして、システムの保有するリスクに応じた、顧客データの漏えい防止等の安全対策の実施等が定められています。これは法令ではございませんが、多くの金融機関がそれに沿って対策をしているということで、一種、自主ルールとして機能しているものでございます。
以上が、金融分野と、それ以外の分野での情報の取扱いに関するルールの違いの概観でございます。
そのほか、冒頭申し上げましたように、業務範囲について制限がある金融機関がございまして、それについては9ページをご覧ください。金融業者もいろいろな業態がありますが、そのうちの一部、ここにある銀行、保険会社、証券会社が中心でございますが、これらにつきましては、規制上、業務範囲について厳格な制限が課されているものであります。
具体的には、銀行、保険会社、証券会社とも、それぞれの本業というか、固有業務がございまして、それに付随する業務がございます。その他の業務につきましては、原則、法令に列挙されているものに制限されるという意味で、一般事業会社や、資金移動業、貸金業といった、金融業の中でも業務範囲に関する制限が少ない金融業者と扱いが大きく異なっております。
なお、証券会社につきましては、一番右端にありますとおり、他業の承認という手続がありまして、金融庁が具体的に承認を行うことでいろいろな業務を営む余地があるということで、銀行や保険会社と若干違いますが、その場合であっても、金融庁の承認をとらずに、ここにあるようなこと以外を独自に始めることはできないという意味では、業務範囲制限がかかっている業態だと整理ができるかと思います。
これらの業態は、ほかの業態、すなわち一般事業会社、それから金融業のうち業務範囲に関する制限が少ない業態と比較して、情報の利活用を通じた利用者利便の向上やイノベーションの促進が進みにくいのではないかという指摘があるところでございます。
次に、10ページは、情報の利活用について若干のイメージをご紹介するページでございます。横軸が分析の対象とする情報の量の増加、縦軸が情報の分析に用いる技術の高度化でございます。記載している例の具体的な位置づけについては、異論と言いますか、いろいろなご意見はあろうかと思います。ただ、申し上げたいこととしては、一番左下のところに「担保不動産の評価や財務情報等に基づく与信審査(人間が審査)」とありまして、これは、ある意味、コンピュータだ何だという以前に、従前から銀行、あるいは銀行類似の組織であれば、当然に扱っていた情報だと思いますが、情報量と分析技術の高度化に伴って、どんどん右上のほうに行って、究極的には非金融関連のビッグデータの分析結果も活用した運用であるとか、いろいろな金融サービス、業務も技術的に可能になっているという文脈でございます。
続いて、若干の具体例をご紹介いたします。11ページをご覧ください。情報といってもいろいろな情報があると思いますが、従来の金融サービスとの直接的な関連性が一見すると弱く見えるような情報の利活用が、金融サービスの利便性を大きく左右する可能性があるということでございます。
下の図でいきますと、左側にいろいろな情報がございます。矢印にありますとおり、上に行けば行くほど従来の金融サービスとの直接的な関連性が強くて、下に行けば行くほどそこから離れていくということかと思います。一番上の企業の担保不動産の評価や財務情報というのは、典型的な金融関係の情報ということで疑いはないと思います。
これに対し、一番下の2つ、すなわち、地域におけるヒトのながれに関する情報や、ヒトのインターネット検索行動に関する情報といったものは、それ自体、銀行業、ないし何らかの金融業とどう関連するのかということが一見するとわかりにくい場合もあろうかと思いますが、これを使ってこういうことができるというのが右の例でございます。
例1でございますが、スマートフォン利用者の位置情報と属性情報から、ある地域の特定の場所を、特定の属性の利用者が多く訪問することを把握できるとします。例えば、中国人の旅行者の方が非常に多く集まるエリアであるとか、特定の時間帯に若い女性が多く通行するエリアであるとか、そういったことがわかるとします。そうした場合、中国人の方が多く歩くのであればそのエリアの小売店に対して中国語の看板を掲げて、中国人が使いやすい決済手法を導入するアドバイスを行うとか、あるいは、若い女性が多く通行する時間帯があるのであれば、その時間帯だけスクリーンで化粧品を広告するアドバイスを行うとか、いろいろ工夫の余地がございます。このような工夫は、今日、銀行にとっても非常に重要な要素の一つになってきているというのは、おそらくあまり異論のないところかと思います。
次に、例2は、人々がインターネットでどういうことを検索して、そこからどういうことがわかるのか、あるいは、どういう行動と関係するのかといった話でございます。例えば、観光旅行を予定している場合、訪問予定先の有名な観光地名をインターネットで検索すると思います。ある観光施設に対し、その名称を近隣の有名な観光地名を含むものに変更するようアドバイスを行い、当該観光施設が検索でヒットしやすくなって、当該観光施設への観光客の増加につながったのではないかと考えられる事例もございます。
こうした例を申し上げると非常に金融的だとわかるのですが、その前提として、一見すると従来の金融サービスとの直接的な関連性が弱く見えるような情報をも、金融機関は扱っていかないといけないということではないかと思います。
最後に、12ページで、どちらかというとリテールの例を取り上げたいと思います。一番上に、リテール向けに提供されているさまざまな金融サービス、あるいは金融の機能を並べておりまして、その下に、さまざまな情報を、従来の金融サービスとの直接的な関連性の強さに応じて上から並べております。預金口座を開いたり、証券や保険の相談に行ったりすると、年齢、勤務先、年収、保有資産などが聞かれ、そのことに違和感がある方はおそらくいないと思います。
だんだん下がっていって、途中までは金融関連の情報であることは違和感ないと思いますが、家族構成、ライフイベント、その他の一般的な予定(海外旅行、車の買いかえ等)、さらには価値観(保有するモノ、よく利用する商品・サービス、趣味、住環境や教育へのこだわり等)といったものは、一見すると従来の金融サービスとの関連性は弱く見えるものであります。しかし、ある意味そういったものを踏まえた上で、右側にございますとおり、利用者それぞれのライフイベントやその他の予定、価値観にあった金融商品・サービスを提案・提供するというようなことが、技術的には可能になりつつあります。今、フィンテック事業者などが工夫して新たに提供しているサービスの多くは、こうした情報をも利活用したものなのではないかと思われます。このような金融サービスの高度化について、銀行、保険会社、証券会社といった業務範囲規制のある業態が取り組もうとする場合、業務範囲規制が何らかの意味で阻害要因になっていないかといった問題意識でございます。
その上で、資料2で、本日討議いただきたい事項をまとめてございます。
1.ですが、近年の情報通信技術の飛躍的な発展等を背景に、金融と非金融の垣根を超えた情報の利活用が可能となり、下にターゲット広告やトランザクション・レンディングの例だけを挙げていますが、利便性の高い様々なサービスが出てきつつあるところでございます。その中で、(1)利用者利便の向上やイノベーションの促進の観点から、こうした動きは望ましいと考えられるが、どう考えるか、(2)他方、留意すべき点についてどう考えるかといったことをご議論いただければと思います。
あわせまして、2.でございますが、送金サービス提供者(資金移動業者)のような、金融業のうち業務範囲に関する規制上の制限が少ない業態においては、一般事業会社の新規参入などを通じて、今、申し上げた1.のような動きが拡大しつつありますが、他方で銀行や保険会社などの業務範囲規制のある業態においては、こうした動きが拡大しにくいのではないかという指摘がございます。
この点につきまして、業務範囲に関する規制上の制限が厳格な業態における、情報の利活用を通じた利用者利便の向上、イノベーションの促進についてどう考えるかということで、(1)こうした業態における現状についてどのように評価するか、(2)他の業態との間での公正な競争条件の確保についてどう考えるか、(3)仮に他の業態との間における公正な競争条件の確保を図っていくこととする場合に留意すべき点についてどう考えるかといったことをご議論いただければと思います。
最後に、3.でございますが、このほか、この分野について検討していく上で、何か留意すべき論点があればご指摘いただければと存じます。
私からは以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、野村證券の新井様、10分程度でご説明をお願いいたします。

【新井参考人】
改めまして、野村證券、新井でございます。本日は、このようにご報告の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
私からは、資産運用をお客様に提供する証券会社が、お客様の情報を含むさまざまな情報を活用することによって、どのように資産運用に関するサービスを高度化しようとしているかについてご報告させていただきます。
本日は、時間の関係上、個人のお客様に関することにテーマを絞って説明させていただきます。
1ページ目をご覧ください。近年の外部環境の変化で我々に求められている付加価値も大きく変化しています。いろいろな技術の進歩もあり、できることも増えてきているなか、情報に関連して金融サービス業で必要とされていることは何か、そしてその方向性について、幾つかまとめております。
まず、お客様を深く知るということに関しては、しっかり情報を収集することで、提案のパーソナライズ化も可能になると思います。それから、情報をデジタル化、定型化して蓄積し、業務の自動化、効率化によってコストを下げていく。そして、大量データの整理、推論ができるようになってきていますので、提言機能を向上させ、運用能力の向上も図ることが可能になっています。本日、冒頭申し上げましたように個人ということで申し上げますと、商品・サービスの提供を一人一人に合った形、パーソナライズ化していくことが非常に重要だと考えています。
2ページ目をご覧ください。一人一人に合った商品・サービスの例ということで、いわゆるロボアドバイザーについてご紹介しております。簡単に申し上げますと、これは複数の質問に対するお客様の回答によってリスク許容度を判定して、ふさわしいポートフォリオを提供するサービスです。左側に米国の主要な会社の残高、右側に日本の主要な会社の残高を載せています。日本においてもここ数年、伸びてきていますが、日本とアメリカとを比較いただきますと、まだまだ差はあります。日本でも今後、伸びていくだろうと思います。
ただ、これがオンラインのロボアドバイザーだけで大丈夫なのかというところにおいては、議論が必要です。実は、左側の米国の例につきましても、オンラインといいながら、第1位から第4位は何らかの形で人間がサポートしているサービスによって残高を伸ばしています。私どもとしては、オンラインによるロボアドバイザーには何か足りない点があるのかもしれないと考えております。
3ページ目をご覧ください。今、申し上げた足りない点を埋めるには何が必要か。それは、現時点では人が行うコンサルティングではないかと考えています。質問に対する回答という情報だけではなくて、例えばお客様それぞれの金融リテラシーや、お客様自身も気がついていない潜在的な情報を把握することによってプラスアルファの提案ができると考えています。
右側にポートフォリオの提案と書いてありますが、本来、お客様のニーズはそれだけではありません。より多くの情報を収集することによって、お客様に提供できるサービスのレベルは上がっていくと考えています。
4ページには、私たちが考えている理想の姿を示しています。右側にありますように、まずお客様の情報をしっかり収集することによって、お客様の運用目的やリスク選好度合い、許容度を反映したご提案をします。お客様の納得感が向上するとともに、お客様ごとに期待しているパフォーマンスが提供できて、結果としてお客様の満足度が高まっていく。お客様満足度が高まりますと、お客様ももう少し情報を伝えてもいいのかなという気持ちになり、私どもからするとヒアリングが深化し、さらに深い情報収集、レベルの高い提案につながっていくという図です。
一点補足しますが、お客様の情報の収集の下にビッグデータの分析という項目があります。当初のお客様の情報収集だけでは、最適な提案ができるかどうかわかりませんので、私どもは、ビッグデータを分析することによってお客様のニーズを想定することで、お客様に合うような提案に努めています。
5ページ目をご覧ください。今、申し上げたようなプロセスをサービスの形にした例ということで、ラップ口座について記載しております。これは、今、申し上げたように、ヒアリングをもとにしてお客様にポートフォリオ提案をするのですが、定期的に運用報告を行ってアセットアロケーションを見直す他、最近では資産の使い道や、目的を設定する目的別の口座もご用意しています。右に、8Goalsと書いてありますが、ポートフォリオも資金の目的によって変わってくると思います。下に、「豊かな老後の備え口座」や、「趣味に使う口座」とありますが、それによってご提案するポートフォリオは変わってくるということで、お客様に個別のポートフォリオを提供できる口座の提供を始めています。
ただ、先ほど申し上げたように、個人のお客様のニーズは、いわゆるポートフォリオを提案してほしい、運用を提案してほしいということに限られないので、ヒアリングに基づいていろいろな情報を収集することによって、提供させていただくサービスが広がっていくと考えています。
6ページ目をご覧ください。個人の中でも法人オーナーの例をお示ししております。法人のオーナーということでは、ここに書いてあります事業承継、本業支援から始まって、相続対策に至るまでさまざまなニーズがありますので、これにお応えしていくようなことも工夫してやっている状況でございます。
ここまで、情報収集からサービスの高度化についてご説明申し上げましたが、先ほど申し上げたお客様自身が気づいていない情報の例について、次のページで説明させていただきます。
7ページ目をご覧ください。資産運用の提案をする際には、お客様の理解力や、判断力をしっかり把握することが重要です。ただし、理解力、判断力は年とともに低下していきます。こうした加齢に伴う認知機能の低下を把握するための研究や、取組みも進んでおりまして、私どもも数年前から慶應大学様と一緒に、いわゆる金融老齢学、金融ジェロントロジーという研究を進めており、それが発展して、来年春に日本金融ジェロントロジー協会なるものが設立される予定になっております。お客様の認知度の低下を、どういうようにご提案に生かしていくのか。そのためには、金融機関従事者の個々人のレベルを上げていく必要がありますので、こういう協会を通じて金融機関従事者のレベルを上げていくところにつなげていきたいと考えております。
8ページは、あまり細かく説明しませんが、資産運用自体が情報の利活用によって高度化していけることを示したページです。下に書いてあるようなデータ群が、分析可能な情報量の増加や、分析速度の上昇によって、運用におけるパフォーマンスを向上させることに、繋がってきています。ただし、様々なデータをどこまで使っていいのかということについては、これから検討いただくところかもしれませんが、さまざまな課題があるように認識しております。
最後でありますが、その他のテーマとして9ページに幾つか挙げております。まず、左の2つは、こういう情報があると、私どもが資産運用に関するサービスを高度化するのにありがたいという例です。改めて申し上げるまでもなく、一方でこのような情報の取り扱いには相当気をつけないといけないと思います。実現するには、まだハードルが幾つかあると思いますし、私個人の立場で考えますと、これを使われると気持ち悪いなという情報もあると思います。
例えば、取引前の顧客確認で、マネロンのところでは、個々の業者や、業界の協会レベルでも対応はしっかり行っていくのですが、マネロンに関する情報が外部から得られることになれば、マネロンを防ぐ意味でも非常に重要で、助かる話です。また、サービスの高度化というところで申し上げますと、例えば免許更新における認知機能の検査の結果がわかれば、先ほど申し上げた高齢化に伴う認知度の低下も外部から情報が得られるということで非常に有益です。ただし、繰り返し申し上げますが、こういった情報の取り扱いは非常に気をつけないといけないと思いますし、実現するにはハードルもあると認識しております。
9ページ目の右側では、情報の非対称性を埋める仕組みづくりが重要ということで記載しております。例えば、投資者の方が持っている情報と、発行者、企業が持っている情報には差があります。今までの伝統的な有価証券の引受ですと、この情報の非対称性を埋めるために証券会社がいわゆる引受業務を行っていました。結果的に、お客様にかわって私どもが発行体の情報を集めていたのが、ここが直接的にお金を集められるようになっていくと、この情報収集は誰が行うか、情報の非対称性を埋めるためにどういう仕組みを作っていくのかというところは非常に大事かと思います。引き続き、このスタディ・グループでもご議論いただけることかと思います。
私の説明は以上です。10ページ目にまとめをつけておりますので、よろしくお願いします。
ありがとうございました。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、第一生命の畑中様、5分程度でご説明をお願いいたします。

【畑中参考人】
第一生命、畑中でございます。本日は、このような機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。
「生命保険業界における情報の利活用」と題した説明資料をご覧ください。
表紙をめくっていただきまして、1ページ目が全体の俯瞰図でございます。イメージ図の左側からご覧いただきまして、上段の赤線でつながっている部分ですが、生命保険会社は従来から自社の保有する健康、医療、介護等のデータを活用してまいりました。今後、さらに公的なデータや情報信託などから得られるデータを、商品開発やサービスの向上につなげることが期待されます。それを右側の①、②を付した部分で表しております。また、下段の青線でつないでおりますように、行政データも含めました個人データの利活用により手続面での利便性向上が図られるという点を、右側の③を付した部分で表しております。さらに、これらデータの集積により、一層の活用の可能性を追求してまいりたいと考えており、この点を右端の④の部分で表しております。
以上の①から④の順に、次のページ以降でコメントさせていただきたいと思います。
2ページをご覧ください。まず商品開発についてでございます。こちらは、第一生命が今年3月より提供を開始しました健康診断割引特約という制度でございます。左上の赤の点線で囲った部分をご覧ください。こちらは、健康診断書をご提出いただくだけで通常の保険料よりも割引が得られ、健康状態が優良な方にはさらに割引が適用されるという制度でございます。この制度を通じまして、生活習慣の改善を促進し、重症化を予防、ひいては健康寿命の延伸や、社会保障給付費の抑制にも貢献したいと考えております。
この制度は、次の3ページにございますように、実はビッグデータの解析によりまして、健康診断受診者の支払の発生リスクが、未受診者との比較において、3大疾病、普通死亡ともに優位に低いことが判明したことから、開発につながったものでございます。
続きまして、サービスについてでございます。4ページをご覧ください。こちらは、第一生命が提供しております、健康増進サービスを提供するスマホアプリのご紹介でございます。アプリをご利用いただいている方からの、さらなるデータ蓄積と、その分析・活用も想定しております。
次に、5ページに移らせていただきます。こちら以降が手続面についてでございます。今後、パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)が整備されて、お客様ご自身から必要なデータを保険会社へ直接ご提供いただければ、例えば給付金受取のときの紙による診断書の取りつけ、ご提出が不要になり、お客様の利便性が向上する可能性を図でお示ししたものでございます。左右のイメージ図の対比でご覧いただけるとおり、診断書の作成、取得に関わる人と物の移動が不要になり、時間やコストの効率化につながると考えております。
同様に、6ページをご覧ください。年金受取の際に、現在は生存証明を基本的にはお客様にお取りいただいて、毎年、紙でご提出いただいているという実務がございます。こちらも、公的なデータが直接、保険会社に連携されることにより、お客様からの紙のご提出が不要となるものでございます。こちらは、従来より生命保険協会として要望しているものでございます。
続きまして、7ページをご覧ください。こちらは、今後の可能性についてでございます。保険会社における健康・医療・介護分野の幅広いデータの集積が進み、情報信託機能やプラットフォーム機能がもし発揮できれば、新たなサービスや利用者利便の向上につながる可能性もあると考えております。
最後に、8ページです。保険会社のグループにおきまして、情報の分析、活用を行う主体としまして、図上段の持株会社や、中段の保険会社、あるいは、その子会社が想定されると思います。目指すビジネス展開の方向性に応じまして、いずれの主体においても対応が可能となるよう、既に銀行法において手当てされております上段の持株会社へのグループ内共通業務の集約、あるいは下段の子会社としての高度化等会社の保有も含め、柔軟な対応が図られる制度整備が望ましいと考えております。
説明は以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、損害保険ジャパン日本興亜株式会社の小嶋様、5分程度でご説明をお願いいたします。

【小嶋参考人】
ご紹介にあずかりました、損害保険ジャパン日本興亜株式会社の小嶋でございます。今日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、損害保険事業における情報利活用の状況と目指す方向性等につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。
1ページをおあけいただきまして、まずこちらは、今、業界ベースでどのような利活用をしているのかというポイントをまとめたところでございます。上段は、各保険会社が契約の手続、もしくは事故の際にどのようなデータをとっているかということでございます。業界ベースで申し上げますと、左下に損保協会、右下に料率算出機構と記載しておりますけれども、協会において各関係省庁とのデータをマッチングさせた、そんぽ防災Webということで防災関係の情報提供ですとか、あとは交通事故の多発地域を集約した上での地域へのビラ配布を含めた情報提供、料率算出機構におきましては、車の種類ですとか、住宅の構造、所在地を踏まえた参考純率の算出というようなところが、今、進んでいるということでございます。
2ページ目は、次に目指す方向性ということで、我々、どのような方向性を目指しているのかというところを、縦軸、横軸で記載しております。今は左上の状態で、どちらかというと過去の定量的・定点的なデータを主に使っているわけですけれども、既に始まっているものもございますが、横軸でタイムリー、リアルな、動的なデータが取得できる。あとは、縦軸のほうでサードパーティー、社内、業界内のデータ、外部のデータがもし取得できるようになると、お客様の意向に沿ってということになりますけれども、新たな付加価値、社会課題解決の取組みにつなげられるかなと考えています。これによって、損保業界が持続的、安定的な商品・サービスの提供と、多面的な情報の利活用をすることで、国のSociety5.0の実現に貢献したいというところでございます。
3ページは、今の絵を改めて整理したもので、これまでの汎用、過去情報から、日常情報、サードパーティー情報を組み合わせることによって、新たな価値ということで、お客様に関しては、事故のサポートだったり、早期支払いだったり、減災・防災という社会課題も解決したいということでございますが、もう少しイメージを持っていただければと思いますので、4ページをご説明いたしたいと思います。
4ページは、自動車運転のシーンでございますけれども、左側にサードパーティー、外部データ、右側に業界、保険会社が今、試行したり、持っていたりするデータということですけれども、位置、渋滞、気象みたいな情報、もしくは運転特性みたいな情報を伝えることで、行動の変革を促し、予防、減災につながるということを上半分で示しています。一方で下半分は、万一の事故のときの対応、サポートをしっかりできるというようなことを想定したイメージでございます。
次、5ページに、損保ジャパン日本興亜、当社の事例を幾つか書いてございますけれども、中身につきましては6ページ以降で簡単にご説明したいと思います。
6ページは、行動・環境変化を勘案したアラート情報ということで、左側では、いつもの運転においては、運転の特性とか、事故情報を含めて行動の変化を促すようなものを、右側では、万が一の場合に衝撃検知で事故時の対応をサポートするというサービス提供を紹介しています。
7ページは、最新技術を使いました例です。ドローンにつきましては、現在、いろいろな活用がありますけれども、最新の例で申し上げますと、左下に書いてございますような船舶だとか、港湾事故における安全かつ効率的な損害調査のための水中ドローンの活用をしています。あとは被災時にスピーカーを使った地域住民の皆様の誘導というようなことにも利活用できるかなと考えています。
8ページは、右側の絵を見ていただくとわかりやすいと思うんですが、国交省をはじめとしたデータと、我々が持っている保険金のデータに基づいて、皆様がお住まいの地域にはどのようなリスクがあるのかというような情報提供をするものでございます。
9ページは、まだ実証実験中のものでございますが、右下に書いてございます、気象データと、店舗の集客状況、キャンセル等のデータと、我々のリスクノウハウを用いることによって、店舗に生産性の改善とか、働き方改革、あとは今、フードロスの軽減というような課題もございますけれども、こういうことにも貢献できるのではないかと考えています。
10ページは、自動運転の世界に備えたいろいろなサポートを進めているもので、今、政府が進めております過疎地域での輸送サービスなどの際にも、我々としては、万が一のときの操舵介入ですとか、事故をサポートすることができるのではないかと思っております。
11ページに、検討事項を記載させていただいております。リスク評価の精緻化がもたらす可能性及び課題ということで、行動をコントロールするようなメリットみたいなものもございますけれども、例えば料率面の格差拡大というデメリットもございますので、この辺の課題をしっかり捉えながら進めていきたいということがあります。また、情報の利活用をどんどん進める上ではデータの正確性だとか、信頼性が必要になります。例えば、タイムリーなデータと言っても、今のデータなのか、ご本人のデータなのか、今、世の中で言われているフェイクみたいなものはないのかということを含めて、この辺の向上が一つの課題かと思います。あと、ご本人の意向を踏まえてということで進めておりますけれども、個人情報保護と利便性とのバランスの問題、あとは大量にデータを持っている業者等との競争環境の確保というところが大きな課題かと考えております。
12ページは、そうしたことがジュネーブ協会でも言われているという参考資料としてつけさせていただいております。
以上でございます。ありがとうございました。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
それでは、討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
では、加毛メンバー。

【加毛メンバー】
ありがとうございます。
事務局資料の資料2に即して幾つかコメントを申し上げたうえで、最後に1つ事務局に対してご質問を差し上げたいと思います。
1.(1)では、「利用者利便の向上やイノベーションの促進の観点からは望ましいと考えられるが、どう考えるか」という質問が投げかけられており、やや誘導的なところも感じられますが、利便性の高い革新的なサービスの登場が一般論として「望ましい」ということには異論がないように思われます。問題は、1.(2)の「他方、留意すべき点について、どう考えるか」という点であり、制度化を考える際にはさまざまな検討が必要になるだろうと思います。
1.では、具体例として、ターゲット広告とトランザクション・レンディングが挙げられています。このうち、ターゲット広告については、対象行為の法的性質が広告なのか勧誘なのか、さらには代理や媒介に該当しないのかなどといった問題が生じるように思います。そうだとすると、金融庁の所管を超えた検討が必要になると考えられます。このような問題意識は他の省庁でも共有されていると思いますので、省庁横断的な検討をお願いしたいところです。
これに対して、トランザクション・レンディングは、金融庁所管の問題とも位置付けられますが、このスタディ・グループでも既に議論されている通り、トランザクション・レンディングの実現には金利規制の緩和が必要となります。その場合、どのように対象行為を切り出し、また、事業者に対してどのような監督を行うのかといった点を抜きには、制度化を語るのは難しいと思います。このように、制度化を議論するうえでは様々な留意点があるものと考えます。
次に、2.(1)において「現状について、どう評価するか」という問いが投げかけられています。この点については、現状をどう評価するかとともに、現状の原因がどこにあるのかを明らかにすることが重要であるように思います。銀行などの既存の金融機関では「上記1.のような動きが拡大しにくいのではないか」と指摘されているわけですけれども、それは何故なのかについて考える必要があるということです。ここで指摘されているように、業務範囲規制が存在することによって革新的なサービスの登場が妨げられているのか、それとも別の要因による萎縮や抑制があるのかが問題となります。後者については、監督官庁である金融庁の指導のあり方の問題や、金融機関自体の姿勢・マインドの問題が考えられます。そのあたりの評価や分析が必要なのではないかと思われるところです。
このことに関連して、2つの点を申し上げたいと思います。まず、資料1の11ページの事例において、金融との直接的な関連性が低い情報の分析が金融サービスの提供に役立つことが指摘されています。しかし、このことの重要性は、IT技術の発展にかかわらず、既に従前から認識されていたのではないでしょうか。例えば、地方銀行などのリージョナル・バンキングを担う主体については、金融に関連性の低い情報の分析に基づいて取引企業に助言をすることが望ましいと言えるように思われます。仮にそうだとすれば、そのようなサービスの提供が十分になされていない現状が、果たして業務範囲規制に起因するのか、それとも地方銀行などの金融機関の姿勢に由来するものなのかについて考える必要があるように思います。
第2に、畑中参考人の資料の8ページでも言及されていますが、銀行については平成28年の銀行法改正で高度化等会社を子会社とすることが認められました。この高度化等会社の利用が進んでいるのか、あるいは進む見通しがあるのかということも問題となるように思います。仮に利用が進まないのだとすれば、その原因を考える必要があるのではないでしょうか。業務範囲規制を緩和することは、子会社ではなく、銀行本体で行う事業を拡大することを意味しますが、その必要が本当にあるのが問題となります。仮に高度化等会社の利用が進まない主たる原因が、前述した金融機関のマインドの問題であるとすれば、業務範囲規制の緩和の効果も限定的なものにとどまるように思われます。今回のご提案のような方向での業務範囲規制の緩和に反対ではありませんが、法改正が持つ意味について十分に考える必要があるだろうと思う次第です。
以上が事務局資料に対するコメントとなります。最後に1つ質問を差し上げます。2.の(2)(3)にかかわる質問です。「一般事業会社」との「公正な競争条件の確保」というときに、資料1の5ページから7ページで説明されている、金融機関に対する現在の個人情報保護に関するルールを緩和することの要否について検討することも、今回のご提案の内容に含まれるのでしょうか。それとも、その点には立ち入らず、あくまで業務範囲規制の緩和の要否に関する問いが立てられているのでしょうか。事務局提案のご趣旨を確認させていただければ幸いです。

【岩原座長】
それでは、岡田参事官、お願いします。

【岡田信用制度参事官】
ありがとうございます。
ご質問に回答させていただくほか、ご指摘いただいたことについて少々補足させていただければと思います。
まず、2.の(2)(3)につきましては、私どもとしては、業務範囲規制の問題ではないかと考えております。もちろん、金融機関の方、あるいはメンバーの方から、現状の金融機関に対する個人情報の取扱いに関するルールが何か厳し過ぎるとか、そちらが要因となって金融機関による情報の利活用が進んでいないということがありましたら、ぜひご指摘いただければと思いますが、本日の問題提起をさせていただく上での私どもの仮説は、業務範囲規制のほうであります。
その上で、制度の問題か、マインドの問題かというご指摘をいただきました。マインドの場合には、金融機関のマインドと、我々当局のマインドがそれぞれあるのだと思います。それについては、若干、個人的な意見になるかもしれませんが、金融業、とりわけ免許業種のような業態の場合、これまでしばしば経験しておりますのは、制度がマインドをつくるようなところがあろうかと思いまして、この問題もそういったところがあるのではないかと感じているところでございます。

【岩原座長】
それでは、岩下メンバー。

【岩下メンバー】
どうもありがとうございます。
今日のテーマ、特に金融業界における情報の利活用につきましては、ここ数年来、熱心に研究をしてまいったテーマでございますので、幾つか考えることを述べさせていただきたいと思います。
事務局に整理いただいた件、あるいは参考人の方からいただいたご説明は大変参考になるものでございましたが、そもそも現在の情報、日本国内企業における情報処理の、いわば基本法となっている個人情報保護法ですね。これから各業態の人たちが、どのようにそれを担当するかということのガイドライン、さらに各業法、その業法の中での業務範囲規制と、そういう順番で物事が、今、説明いただいたと思いますが、その順番で考えていきたいわけですが、もともと個人情報保護法というのは、考えてみれば住基ネットの導入のために、やや突貫工事的につくられた法律であったと、私は記憶しております。
基本的には、OECDの1980年のガイドラインをベースとしたもので、GDPR等の国際的な個人情報保護の仕組みからすると、ややオールドファッションドなルールであると考えています。2015年の改正によって国際的な標準にかなり近づいたわけですが、2000年ごろから2015年ぐらいにかけて、日本国内のさまざまな情報の、個人情報保護基本法はかなりオールドファッションドであったということ。あるいは、その前から、日本の金融業界を含めた業界が、情報の利活用について必ずしも積極的ではなかったということは、その後の我が国の、例えば成長戦略等に大きな影を落としていると、私は考えています。
具体的に申し上げますと、例えばさまざまな情報の利活用をするに当たりまして、よく問題になるのは第三者提供でございます。本日の3人の参考人の方々のご意見、お話はよくわかって、ご苦労されているんだなと非常に感じたわけです。と申しますのは、例えば持株会社方式によって子会社に何らかの業務を任せた場合、その子会社は別の法人格となりますので、一般的に子会社と親会社、持株会社、あるいは、その兄弟会社が個人情報を共有するということは第三者への提供になります。日本の場合は、もちろん個人情報保護法上、個別の承諾が必要であるとされています。
実は、これ、アメリカではどうなっているかということを考えますと、1999年にグラス・スティーガル法が廃止されたときの大きな金融法の改正がございましたが、あのとき、たしか5つぐらいの主要な項目の中の1つがプライバシーでございました。そのプライバシーの中で、アメリカの業界は、オプトアウトでの個人情報の第三者提供の権利というか、プラクティスを、業務上の規則を獲得したというように、ロビーイングの結果、そうなったと、当時、報じられていたかと思います。
考えてみれば、米国の銀行業界は1990年代から、このように個人情報をどのように活用してビジネスに生かしていくかということについて、かなり戦略的にロビーイング等を行っており、その結果として法規制に結びつけているということを考えると、日本の金融業界は、考えてみれば個人情報保護法ができるまでは、決して情報はいただいた目的以外には使いませんというようなルールとし、かつ、実際にはんこをきちんととって立派な個人情報の利用許諾書をもらった上で、それを金庫の奥にしまっておくだけの使い方になっていたというのは、多分、今から考えれば、当時、その情報技術が大きく発展したということを考えれば、日本の金融業界の成長を大きく制約したものであると言わざるを得ないと、私は考えています。
その意味では、まさに現在のアベノミクスの第3の矢的な意味で言えば、金融業界が情報を大いに有効に活用して、さまざまな新しい金融サービスをつくっていくことこそが求められていることだと思うわけですが、当然、さまざまな制約があります。その中には、もちろん今日、議論になるような業法、あるいはガイドラインの中での制約もあるでしょうし、そもそも根本となっている個人情報保護法はそこまで自由な設計を許すような仕組みではないので、もともと無理だよという部分と両方あるように思います。
実は、この2015年の改正のときに、当時、内閣官房のほうで改正を担当されていた方々が、いろいろと各方面にヒアリングをされました。実は、私もそのヒアリングの対象で、金融業界は一体何をしたいのか、どういうようにしてくれれば第3の矢的により活用できるというだろうかということを聞いたところ、実際に、これはすみません、伝聞情報でございますので、どこまで正確がわかりませんが、こう変えてほしいと具体的なニーズというものがほとんど聞かれてこなかったと。あるいは個人情報保護法というのは基本法でございますので、一番根幹の部分をいろいろといじることはそう簡単にはできませんが、そうはいっても、そこを自由に使わせようという方向で何とか変えようとしているにもかかわらず、金融機関が預かっている情報は顧客から預かっている大事な情報であるから、これを安易に他の目的に使うなどしては、金融機関の信用にかかわるといったような議論のほうが優勢であったやに聞いております。
これは、多分、担当している企業の中でも、金融機関の中でも考え方がいろいろございますでしょう。実際にお客様と対面をして、さまざまな情報をいただく側としてみれば、もういただくだけで十分、その業務が完成するのであれば、それをさらに第三者に提供します、あるいはグループ内の企業と共有しますということに、書面をもって許諾してもらうということは、1段ハードルが高いわけですし、それは自分自身のためにもならないわけです。そういうことではなくて、とにかく法令上、必要な情報だけもらっておこうということになるのはありがちな話であります。したがって、金融機関全体として情報を上手に活用していく、最近ですと情報ガバナンスという言葉がございますが、この発想がどのぐらいあるかということに本件は大きくかかわっているのではないかと思われます。
そういう観点で見ていきますと、もともと個人情報保護法をつくったときには、当初の日本の個人情報保護法の法令にはいろいろと問題があったと言われていますが、その根底として、とりわけ医療と金融分野については特別法をつくって、その特別法によって将来、対応するので、そこの部分については特別な考慮はしないのであるとなっていたと、当時、法案を起案した方々が、たしか内閣官房が担当されたと思いますけれども、後の講演等でお話をされていましたが、実際にはガイドラインで終わってしまった。
では、そのガイドラインの中で具体的に何をやるのかというと、あえて厳しい言葉を言えば、結局、個人情報保護法というのは、茶道とか、華道の畳のあけ方とか、お茶の回し方を決めているような法律でありまして、実際に個人の情報をどう具体的に守るかということについてのきちんとしたルールにはなっていないわけです。端的に言うと、個人情報保護法違反ということで摘発されて、実際に罰金刑なり、禁固刑なりを受けた事例というのは、個人情報保護法が成立してから1件もないわけですから、実際には全く機能していない法律なわけです。ところが、個人情報保護法上の書面を原則とするとか、この場合にこういうような形でサインをしてもらうという、茶道の回し方を3回ではなくて10回みたいな形のルールにしているのがガイドラインでありまして、そこの部分は実は全く意味がないことをやっていると、私は考えています。
そういう意味でいくと、個人情報をほんとうに活用する気があるのであれば、もうちょっと抜本的な発想が必要です。とりわけ、第三者提供をきちんとオプトアウトで認めるということは、今、個人情報保護法上の基本的なルールからは無理でしょうけれども、少なくとも、もともとグループ会社等でとる場合、相当部分、利活用を想定した形でのとり方をするということを原則にしていくような形にしていかないと、これはほとんど勝てないと思います。
多分、問題としているのは、業界内での競争というよりは、どちらかというとビックテック、GAFAに代表するような、既に大量に個人情報を集めている企業との間での競争だと思いますので、今のような形で一個一個、手で集めている竹やり作戦では、とてもではありませんけれども、機械的に人々の購入のデータや、日々のクリックをどこでするといった情報を詳細に集めて全てを認知している、例えばグーグルであるとか、アマゾンとかと競争して勝てるわけがないわけであります。そういう意味での金融分野における個人情報の利用の方向というのは、これからますます重要になってくるだけに、そこに対する考え方はできるだけより本質的なものになる必要があると思います。
そういう意味で考えていくと、もし仮に金融業務の仕組みの中で立っている問題が非常に高いとするならば、そこは結局、金融業務という枠をできるだけ取り払ったほうが実はよいのではないかと考えています。今のご説明の中でも、それは果たして金融業務なのかというような話を含めて、いろいろなものが出てきたわけですけれども、これは金融業務だから10回回し、これは金融業務ではないから3回でいいというルールを決めるのではなくて、全て同じようなことができるような形になっていたほうが望ましいし、その上で自由に活用するための仕組みをつくっていくべきである。
そのためには、例えば簡単に現在のルールなり、考え方が変えられないのであれば、いっそのこと業務範囲のほうをより自由化してしまって、現在の金融業としてやっている部分以外のところと、言ってみれば一体として行う。つまり、本人が取得した情報であれば、本人がある程度自由に使うことができるということは、今の個人情報保護法の基本的なルールですから、例えばGAFAが、グーグルが銀行をやれば、グーグルが集めた情報はグーグルが自由に使えるわけです。多分、グーグルは銀行はやらないと思いますけれども、グーグルと同じように情報を収集する業務を銀行が本体で行う、あるいは生命保険会社が本体で行う。本体で行った上で、それは銀行業務、証券業務、保険業務ではないけれども、行っていいのであるというようにすれば、かなりの部分、日本の今の制度に基づく問題は解決できるのではないかと思われます。これは、ややウルトラC的な解決ですが、一つの帰結は、業務範囲を大幅に自由化するということが選択肢になるのではないかと考えます。
私の意見は以上でございます。

【岩原座長】
次に、植田メンバー、お願いします。

【植田メンバー】
ありがとうございます。
またいつものとおり、非常に参考になるプレゼンテーションを、事務局、それから参考人の方々、どうもありがとうございました。
私からも、岩下メンバーの話に関連する話かと思いますが、データ、情報のことについて、考えを少し述べさせていただきたいと思います。
三方のプレゼンテーションをお聞きいたしまして、情報産業の発展によっていろいろな情報が出てきたという話と、行政側にもいろいろ情報がたまっているので、それをできるだけフリーに、自由に使いたいという話が、また使い始めていますという事例が、どの方も頭のほうに乗っかっていた感じでしたが、最後のほうになってきますと、それぞれ自社でいろいろなことを考え、いろいろな情報を得てきていて、その情報をほかの人たちに売って、お金をもうけるというビジネスにしたいというような話が幾つか出てきていたかのように思います。
フリーで使いたいという話と、ビジネスとしてお金をもうけたいという話は、どうもうまくいかない話です。フリーで情報を使いたいのであれば、売るときもただになってしまいまして、ビジネスでお金をもうけたいとなれば、利用するときはお金を払わないといけないという話になります。そこのところを考えてみますと、ここで情報と言っていますが、少なくとも2つカテゴリーがあると思うのです。つまり、基本的な情報、おそらく社会的にフリーにすべきであって、少なくともみんな、金融業界の方とか、医療業界の方、保険会社の方も含めて、本来、みんなといっても業界の方だけかもしれませんけれども、少なくともフリーで使えるべき基本的な情報というのは、多分、あろうかと思います。
もう1つは、そうではなくて、さらに各社の創意工夫で新しい情報をとってきて、新しいビジネスで、うちはうちにしかない情報をとってきて、それでビジネスをやるのだという部分の、何といいますか、ビジネスとなる情報というか、新しい情報というのがあると思います。個人にとってみますと、おそらくフリーの基本的な情報は、ある意味で個人のほうもフリーで使われるのはいたし方ないかな、と納得がいく部分はあるかと思うのです。
例えば、保険会社であれば病歴だとか、貸金業界とか、銀行業界であれば、幾らお金を借りて、ちゃんと返してきたかというような情報は、お金を借りるときとか、保険会社と契約するときにそういう情報が渡るのはいたし方ないし、ある意味で業界で共有されているのも仕方ないのかなというところでの納得はしていただけるかと思うのです。ただし、それ以上の、例えば第一生命さんからありましたけれども、アプリを使ってより健康状態を、運動データなどを使ってどんどん分析して、それを第一生命に、毎日の運動している情報を提供するということを契約で書いて、それがみんなにただで使われるというのは、やはり個人情報だと言ってくるかと思うのです。だから、利用者のほうから見ても、基本的な情報と、それ以上の情報と、区別をやはりつけるのではないかと思うのです。
そうすると、もちろんグレーゾーンもあるので、何をグレーゾーンにするかという問題がありますが、基本的な情報に関しては、特に銀行ですと、おそらく20年ぐらい前から言われていたと思いますけれども、欧米では、信用情報をクレジットレジストリーとして銀行で共有しているから、銀行の競争もあるし、比較的簡単に参入しやすいと言われていた。日本は、なかなかそれを、今ではあるということですけれども、共有されていなかったということで、その部分はまだまだやれるところがあるのではないか。
貸金業界と銀行業界の話に行きますと、まだ信用情報が共有されていないという話らしいですが、そのような金融業の基本的な情報というのは、行政上のものもあるかと思いますが、もうちょっとフリーにすべきところがあると思うのです。それは、まさに集中して管理する。それを公的にやるか、民間でやるかというのはもうちょっと意見があるかと思いますが、ある意味では米国のように民間の3つか、4つぐらいの信用情報会社をちゃんと競わせてしっかりとやるという、民間ベースでもできる部分があるかと思うのです。
多少は公的なところが入る必要があるというのは、例えば今後、変な話ですけれども、中国の大手インターネット企業が来て、グレーゾーンの業態でやって信用を集めたときに、日本の業界団体には出したくないなんて言われると困るところがありますので、そういうところはしっかりと、フリーの情報というのは義務化するべきところがあると思うのです。もちろん、貸金業などでは義務化しているところはありますけれども、そういうところも考えて、何をフリーで基礎的なものにするかというのは一つ考える必要があります。
もちろん、グレーゾーンと言ったのは、例えば将来的にアマゾンとか、楽天の商取引のトランザクション・データが信用情報として非常に有効だとわかったときに、それをフリーにしろと言えるかどうかという話は、まだまだ後の話かと思いますけれども、将来的に何を基本的な情報とするかについての定義が変わり得るということも考えた上で、やっていくことがあるかと思います。やっていくべき必要があるかと思います。
ビジネスとしての情報を考えますと、これも当面の間は、少なくとも創意工夫によって自分のビジネスの基本となる、ほかと差異をつける場所ですから、そこは当然、フリーに出すことはおそらくないでしょうし、その意味では顧客のほうも安心して出せる部分があるかと思います。ただ、ビジネスとしてやっていくのであれば、それはほかの会社に売るとか、ほかの会社から利用料をとるという形にもなりますので、前にも言いましたけれども、個人の方も納得できるように、情報提供者である個人の方にちゃんと還元するようなインセンティブのスキームを考えてあげないと、そもそも情報も集まってくるべきものではないし、まさにプライバシーの問題があるかと思います。
業態の話は、岩下メンバーにある意味、賛成、同じでございまして、銀行だからこういうこと、保険会社だからこういうことしかできないというような状況にしておきますと、グーグルとか、アリペイとか、ほかの業態が乗り出してきたら、一気に芝刈りのように周りの、既存の金融業界の市場をどんどん取られてしまうということがございます。それは、イコールフッティングではございませんので、できる限りイコールフッティングで、本体及び子会社を通じていろいろな情報産業への進出ができるようにしておくような形でいかなければいけないのではないかと思います。
以上です。

【岩原座長】
大野メンバー、お願いします。

【大野メンバー】
ありがとうございました。
まず初めに、参考人の方々のプレゼンテーションに対して厚くお礼申し上げます。証券業界、生命保険会社、損害保険会社におけるいろいろな取組み、課題認識について理解を深めさせていただきました。
それから、今回の事務局作成資料2の「本日討議いただきたい事項」のアジェンダについては、先ほど加毛メンバーが誘導的ではないかとおっしゃった部分ですが、私は、情報の利活用を起点とした、利用者にとっての利便性の向上とイノベーションの促進を推し進めようという、金融庁の方々の気持ちがこもったものと受けとめ、とても心強く感じたところであります。是非スピード感を持って、できるところから一歩一歩、具体的な施策やアクションを進めていただきたいと大いに期待しております。
1つ目は、大きな方向性についてです。私は競争的な環境を整えることが特に重要と思っております。伝統的な金融機関と、金融業務に進出してくる異業種、この双方ができるだけ同様の条件のもとで創意工夫を凝らして、より付加価値の高いサービスを提供するような制度へのチューンナップが望まれると思います。
大きなピクチャーとしては、「本日討議いただきたい事項」の1.で示されているようなサービス、そこには、テクノロジーの発展を生かした金融と非金融の垣根を超えて、情報の利活用によって、これまでなかった利便性の高い革新的なサービスとあります。こういったものがどんどん生まれ出るように、さまざまなチャレンジを後押しするような制度の見直しを目指していければよいと思います。
金融機関と非金融機関が力を合わせて、協力して新たな価値を創造する「協創」というケースや、金融機関と異業種が新たなサービスの提供をめぐって競い合うようなケースなど、いろいろな組み合わせがあると思います。そういう選択肢を多く持った枠組みを構築することをゴールに掲げたいと思っております。創意工夫を凝らした斬新で革新的なサービスを次々と生み出すためには、私は、多様性を備えた制度を整えることが極めて重要であると考えております。そのためには、情報の利活用をはじめとした競争条件について、可能な限りイコールフッティングを図ることが、重要な必要条件と位置づけられるのではないかと考えます。
2つ目は、少し短期的な視点でのターゲットとして、金融業の本業に近い領域、親近性の高い領域への対応についてです。海外の事例を見ますと、例えばオーストラリアの銀行では、住宅販売に送客することによって得た紹介手数料を原資にして、住宅ローンの金利を引き下げるサービスを提供しております。似たような仕組みを自動車ローンで行っているケースが、ブラジルなどでも見られます。また、南アフリカの生命保険会社では、健康増進のパートナー企業に送客して得られる紹介フィーを利用して、保険契約者にポイントなどを還元するサービスを行っております。似たようなサービスは、最近、我が国でもスタートしております。さらに、スペインの銀行では、銀行の店舗内で、パートナー企業と連携して家電の販売を行っているケースも出てきております。
最後のケースは別にして、住宅販売と住宅ローン、自動車販売と住宅ローン、健康増進と保険との組み合わせの例などは、金融機関の本業と極めて近い領域、親近性の高いビジネスであるとくくってよいと思われます。これら銀行業務や保険業務などの金融、それと隣接するような業務等をバンドルするような形で、パッケージとしてサービスを提供するケースにつきましては、できるだけ付随業務の受け皿を弾力的に運用することによって、我が国おいても、同種のビジネスのスコープのさらなる拡大を促すことができるのではないかと思われます。
重要な点は、こうした新しいビジネスは、利用者の利便性の向上や効用の増大に間違いなくつながるということであります。この種の金融機関の業務と、親近性の高い領域におけるサービスを促進させることができれば、とてもよいのではないでしょうか。
それから、先ほど金融機関と金融当局との関係について、加毛メンバーのほうから制度か、マインドかというご指摘がありました。私は、新しいチャレンジが非常に重要であるという価値観を当局と金融機関が共有して、気合いをそろえることが鍵ではないかと思っております。これまでにない新しい取組みについて、金融機関などから相談が金融庁に寄せられることも多いかと思います。そうした際には、当局側がサンドボックス的に親身に相談に乗ってアドバイスを行うことを通じて、イノベーションの動きを力強く引き出していただくよう期待したいと思っています。金融機関側にも、新しい取組みについては、躊躇することなく当局に相談できるような環境、意識を合わせるような努力が重要ではないでしょうか。
3つ目は、もう少し広い論点について述べます。本日のヒアリングを含めまして、これまで各業界の方々からいろいろとお話を伺いました。そうした中で、「社会的課題の解決」という視点が重要なポイントになるのではないかという認識を持ちました。言うなれば、金融機関や金融業務と社会的課題の関係には、親和性の高い領域があるのではないかということであります。
本日の畑中参考人のプレゼンテーションの7ページで、「情報信託」のところはお話になったのですが、その1つ下に、私はこれがとても大切だと思っているのですが、健康・医療・介護に関する連続的、総合的なコンサルティングとありました。私はこれにアドバイザリー的なサービスの提供や、認知症の対応のようなものも含めていいと思っております。これらの領域に対しては非常に大きな社会的なニーズがあるのではないかと感じています。この点について今日は5分のお時間なので、お話が聞けなかったのはちょっと残念でしたが、もし後で時間があったら教えていただけたらと思います。
それから、損保ジャパンの小嶋参考人のお話の中では、2ページから5ページにかけて随所に示されている、防災・減災をはじめとした取組みは社会的なリスクの低減に資する非常に重要なイニシアチブではないかと拝聴させていただきました。
さらには、以前の第2回会合で、今日もオブザーバーとしていらっしゃいます望月様のプレゼンテーションの中でも、少子高齢化や地方創生などの社会的課題の解決に向けて積極的に取り組みたいというお考えを伺ったことが鮮明に記憶に残っております。社会的な課題の解決において、金融機関がその一翼を担うことは大変重要なことであると考えております。この領域に対して、金融機関がサービスを拡張すること、同時に異業種サイドから見れば、金融機関との連携強化を緊密に図ることができればよいのではないかと思っております。こうした動きを後押しするとの観点からは、現行の規制や法制度、組織の立て付けの中で障害、ハードルになっていることはないかチェックした上で、もちろんマインド面も含めて、制約をできるだけ軽減するための努力を是非進めたらよいのではないかと思います。もし、現行の「付随業務」で取り込組めるものがあるのであれば、弾力的な運用によってスピーディーに動くことができれば、非常に素晴らしいことだと思っております。
最後に、その他の論点として、「従属業務」に関する収入依存度規制について一言触れたいと思います。既に申し述べたとおり、金融機関の固有業務(本業)と付随業務、それから従属業務の中身については、時代の変化やテクノロジーの進展に応じて、できるだけフレキシブルに拡充できるような仕組みにできるとよいと思っております。情報の利活用によって可能となる新しい革新的なサービスのうち、金融機関サイドから見て親近性、親和性の高い業務を、できるだけ金融機関の本業に近い業務として位置づけられることができれば、非常に拡張性が高まり、望ましいと思います。
ただ、固有業務や付随業務に分類分けすることが悩ましいような新しいビジネス、こういうものも随分あると思いますが、これらをプロアクティブに取り込むという観点から、現行の従属業務の収入依存度規制を多少なりとも緩和することができれば、金融グループに対して、新しい萌芽的なビジネスに挑戦するインセンティブを高める効果を期待できると思われますので、この論点も検討に値するのではないかと考えております。
以上です。ありがとうございました。

【岩原座長】
それでは、神作メンバー。

【神作メンバー】
ありがとうございます。何点かコメントさせていただきたいと思います。
まず、資料2の「本日討議いただきたい事項」の1.と2.に共通する問題といたしまして、イノベーションを促進し、利用者利便を向上するために、例えば1.では情報利用の拡大、2.では業務範囲規制の見直しが提言されています。顧客にとっては、簡便、安価、多様で、かつ顧客の利益になるようなサービスが提供されるということは大変望ましいことであり、さらに社会的な課題にも一定の解決を与えるということになると、このこと自体、否定する人はほとんどいないのではないかと思います。しかし、問題は、本スタディ・グループの中間整理で述べられておりましたように、これまで存在している規制の目的が確保されることが必要かつ重要であると思います。
そこで、1.と2.に分けてコメントさせていただきますけれども、まず情報の利用につきましては、私の理解では、個人情報保護法の改正によって、個人情報の利活用が正面から個人情報保護法の目的に掲げられたものと思います。そのような観点から申しますと、個人情報保護法の趣旨に鑑みて、金融業界で重ねているプラスアルファの規制について見直しをするというのは、むしろ当然と申しますか、なすべきことであると思います。
ただ、その際に一方的に規制を緩和するだけなのかというと、おそらくそうではないのではないかと感じております。例えば、情報の活用も、ビッグデータやAI等を利用する場合には、メンバーのどなたかのご指摘ございましたけれども、もととなっている情報の正確性が重要であるということになります。あるいは、どのような範囲でデータを集めるか、また、そのデータの解析についても、非常におかしな、合理性のない解析の手法をとっているというようなことが起こると、これはかえって顧客の利益に反するということになりかねません。解析の合理性等については、経営判断と申しますか、裁量に委ねられる部分が多いとは思いますけれども、やはり最低限度の、これもどなたかガバナンスと言われたかと思いますけれども、そのような観点が重要だと思います。
また、AIとか、ロボアドバイザーによる業務の提供がなされたときに、既存のルールとの関係も問題になり得ると思います。適合性の原則ですとか、説明義務などの既存のルールが一体どのように適用されることになるか。特に、適合性の原則につきましては、これまでの基本的な考え方というのは、顧客が自己申告した情報に基づくということだったかと思いますけれども、本日のお話では、第三者と申しますか、外部からさまざまな顧客に関する情報も取得可能になるということになると、これまでの適合性の考え方についての前提が大きく変わってくるようにも思います。
このように、既存の金融に関するルールについても適用がどうなるのかというような問題があるかと思いますけれども、そのような観点から情報の利活用を、先ほど申しました個人情報保護法や、金融規制の目的に反しない、それらの目的が確保されるような形で見直していくということが重要であると思います。
次に、2.の業務範囲の規制の見直しでございますけれども、これも先ほどの一般論、すなわちこのスタディ・グループの中間整理の考え方に基づいて考えていくことが適切であると思います。業務範囲規制の見直しは、リスクの制限ですとか、利益相反の問題、特に銀行等の場合には優越的地位の濫用、それから監督の実効性の確保、こういったさまざまな諸点が業務範囲規制の目的と申しますか、根拠と考えられてきたと思います。
リスクの制限については、他方で多様な業務を営むことによって、むしろリスクを分散する。リスク管理が適切になされれば、リスクの分散という観点から業務範囲規制は見直す余地もあると思いますし、利益相反の問題、監督の実効性、優越的地位の濫用などの業務範囲規制の根拠にさかのぼって、きちんと金融規制の目的が確保されるという範囲において、業務範囲に関する規制を緩和していくというアプローチをとるのが適切ではないかと思います。
以上でございます。どうもありがとうございました。

【岩原座長】
審議時間が限られていますので、皆さん簡潔にお願いしたいと思います。
それでは、坂メンバー、お願いします。

【坂メンバー】
ありがとうございます。
まず、各社の皆さんからのご報告について、ありがとうございました。各社において、個人に関する情報の利活用について、工夫した取組みが行われていると感じました。
集められる個人に関する情報については、個人が自覚的に提供する情報、または自覚が薄く提供する情報、それから個人の提供とは別に事業者が取得する情報、この中には公開情報と他の事業者から取得する情報があると思われます。こういったさまざまな情報が、事業者において整理された形で蓄積されていくということになるだろうと思います。
個人としては、このような集積や整理は必ずしもみずから行うわけではないので、事業者が取得し、蓄積する情報にアクセスできると大変ありがたいと思います。こうした蓄積情報にアクセスできれば、利用者がみずから気がつくこともあり得ると思いますし、みずから利用を工夫するということもあり得ると思います。事業者に新しいサービスを求める声も生まれるかもしれないと思います。個人が事業者の蓄積情報の内容を知ることができれば、情報収集、蓄積の透明化を図ることができ、利用者の安心材料になると思いますし、事業者に対する信頼基盤ともなり得ると思います。
事業者のほうでは、個人情報を集めて、場合によっては匿名加工してビッグデータとして解析をする。その上で、全体状況を把握するということが可能になるんだと思います。個人としては、できればその概要を知ることができればと思いますし、全体の中で自分がどこにいるのか、例えば、自分の健康状態が同年代全体のどの位置にあるのかですとか、全年代のどの程度の位置にあるのかということを知ることができればと思います。こういった情報へのアクセスということを、ぜひ検討いただければと思います。これは感想です。
次に、「本日討議いただきたい事項」の3つの論点についてですが、まず1.について。技術の進展によって利用者のニーズに応える新しい形のサービスが生まれるということは、基本的に歓迎すべきですけれども、出ておりますとおり、新しい変化の中で新たに生み出される課題については適切に対応していくことが必要と思います。
挙げられている2つの項目について、例えばターゲット広告については、情報集積によるプロファイリングの精緻化とともに、単なる広告というよりも個別の働きかけという性格が強まってきていて、勧誘に近い性格を帯びつつある面があるのではないかと思います。勧誘規制との関係では、従来の広告規制の枠組みでは足りず、勧誘規制に準じた規律の検討の必要があろうかと思います。
トランザクション・レンディングにおいては、資金需要・供与のあり方が変化すると思われます。従来は企業が資金の必要性を判断して、これを金融機関に求める。金融機関は、いわば受け身でこれに応じるという形であったのかと思います。これに対して、企業の商取引情報を金融機関が分析し、資金提供を提案するということになりますと、資金需要の発見や融資の申し込みの判断に、金融機関側が積極的に関与することになると思います。
これは、一歩間違うと過剰融資を招くことになりかねないという問題があると思いますけれども、適切な資金需要と供与が行われるには、企業と金融機関の間で、適切なコミュニケーションのもとで、適切な情報共有と、それぞれの判断が行われる必要があると思いますし、企業は金融機関が集めた情報の正確性を確認できるとともに、もし不正確な場合には訂正を求める機会が確保される必要もあるように思います。こういったことを含め、他方では、情報収集により、新たな金融排除が起こらないような観点からの留意も必要かと思います。
2.についてですけれども、現行の情報規律に関しては、金融分野のガイドラインと実務指針が規律の具体化と、一部、上乗せを行っているということかと思います。こうした規律というのは、金融機関が社会的に信頼されているがゆえに求められるものであるとともに、社会的信頼の基盤の一つとなっていると思います。また、銀行や保険会社等が扱う情報が、個人の生活に比較的重要な情報であることにもよると思われます。
こういう観点から見ますと、現行の枠組みは、現行の個人情報保護法を前提とする限り、基本的には合理的と思われますけれども、この間の変化や現状に鑑みて、2点、検討すべき点があるように思っております。
1つは、機微情報の規律に関して、ガイドラインの第5条第1項第7号というものがありますが、同号では、金融分野の事業の適切な業務運営を確保する必要性が認められる範囲内で、本人の同意に基づいて機微情報の取得、利用等を認めています。この中で、金融分野の事業というのは技術の進展等を背景に変化してきているものでありますし、また、適切な業務運営のために必要とされる情報の範囲も変化してきているだろうと思います。こうした変化も踏まえて、解釈・運用は、適切に見直していく必要があるのではないかと思います。
いま一つは、書面による同意取得というところで、これは利用者がその内容を理解して同意するという実効を確保するためのものと思われますけれども、実効が十分確保されているかというのは検証の必要のあるところで、実効確保のためには、同意を求める内容と同意の前提となる理解について、直感的にわかりやすくする工夫等も必要かと思います。また、技術的な工夫により、いろいろな確認方法があるのであれば、そういうことも検討が必要ではないかと思います。
次に、業務範囲規制との関係ですけれども、おそらく金融機関が他の業態と同じことをやろうとすれば、競争条件に不利なところが部分的に出てくるということはあり得るだろうとは思います。しかしながら、例えば銀行や保険会社等の金融機関に期待されるのは、一般事業者や資金移動業者等と同じサービスを提供するということではなくて、金融機関としての専門性を生かしたサービス提供ではないかと思います。
その観点から、本日のご報告はさまざまな工夫がされていると思いますし、その中には他の業態には必ずしもまねできない面も多々あったのではないかと思います。広く他業を認めることは、本来、期待される本業での取組みから、ともすると、もしかすると遠ざけてしまうおそれもあるということには留意が必要かと思います。
例えば、銀行であれば、相応の情報を収集、蓄積して、個別企業との情報共有やコミュニケーションの中から、企業収益や企業価値の向上を図って、収益や増加価値の一部を利益として得るということが期待されているんだろうと思います。あるいは、情報の利活用によって、企業や地域の連携を促すなどにより地域全体の活性化を図る、その中から資金需要を生み出していくということも期待されると思います。また、金融機関として、行政情報の利活用や行政機関との連携も重要と思われます。
公正な競争条件の確保は重要な課題ですけれども、こういった業態の個性も含めて検討する必要があるだろうと思います。金融機関の業務範囲は、時々の状況に応じて適切に見直す必要があると思いますけれども、基本的に情報の利活用の観点から、金融機関の活躍が期待されるのは本業のところでということがまず第一にあると思っておりまして、本業とは異なる物やサービスの提供の部分が大きくなっていくというのは、やや期待されている姿とは異なるのではないかという印象を持っております。
それから、3.のところについて若干申し上げたい点がございます。欧州の一般データ保護規則が、今年5月に施行されております。また、世界的にプライバシーに関する関心が高まってきているということには留意が必要かと思います。一般データ保護規則では、重要な意思決定について、AI等による自動プロファイリングに服しない権利を持つとされています。明示的同意によってこれが行われる場合も、事業者は利用者の権利保護のための措置をとるべきとされていますし、利用者に対して人を介させる権利、見解を表明する権利、異議を唱える権利を確保しなければならないとされていると思います。これは、情報環境の変化に応じた規律が整備されているものと思われます。
我が国の個人情報保護法上、プロファイリングによる情報取得の位置づけは必ずしも明確ではありませんけれども、要配慮個人情報の条項適用があり得るという見解も存するところと思います。また、プロファイリングについては、憲法上、プライバシー権の問題があり得る、あるいは個人の尊重、ないし個人の尊厳と抵触するという指摘もあるところと思います。さらに、ビッグデータの監視と透明化の必要が説かれていますし、それを支える新たな専門知識や制度も必要と言われています。
こうした動向との関係においても、利用者の同意の実質化ですとか、蓄積情報の共有、管理への参加の確保というのは重要だと思われます。こういった点は、ともすると利用に後ろ向きになるような作用を及ぼすおそれもなくはないですけれども、こういった問題点について、きちんと正面から向き合って解決を図っていくことが必要かと思います。基本的な一つの視点は、利用者の参加ということかと思っておりまして、利用者に参加の選択肢が示されて、参加を選択し得るということが一つの視点かと思います。情報の利活用への利用者の参加という観点から実践が進んで、課題が克服されることを期待したいと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは、戸村メンバー、お願いします。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。
できるだけ手短に、銀行業におけるデータの利活用についてのコメントと、生命保険業についての質問を1つだけさせていただきたいと思います。
まず、最初にコメントですが、銀行業によるデータの利活用については、現状どおり資金移動業と貸金業という業態が可能であり続けるとすれば、銀行のみに業務範囲規制を課してデータの利活用を制限しても、資金移動業と貸金業を組み合わせれば、銀行類似のサービスを提供できてしまうので、制度設計としては抜け穴がある状態になると思います。また、データ収集の結果として得られる優越的地位の濫用の懸念については、金融業のみの問題ではなく、非金融業を含めて一般的な懸念になっているように思いますので、金融業特有の行為規制を課すことの意味は薄れていると思います。この点は、ほかのメンバーの方が既にご指摘の点と同じです。
また、今回の論点は、資金移動業と銀行の関係一般に当てはまる大きな論点の一部だと考えております。今回のスタディ・グループの最初の会合で、岩下メンバーが触れられていたことですが、元ミネアポリス連銀総裁のジェラルド・コリガンによる「Are Banks Special?」という古典的なエッセイがありまして、銀行業においては為替業務が根源的な業務であることが強調されております。私も同感なのですが、この点を踏まえますと、現行のように資金移動業の送金上限を置くか、資金移動業と銀行規制の足並みをそろえるかのどちらかをしないと、資金移動業という業態をとることで、銀行に課された規制を迂回できる場合が多々生じるであろうと思います。
ですので、資金移動業という業態が存在する以上は、セカンドベストの規制のあり方としては、銀行側の業務範囲規制を抜本的に緩和せざるを得ず、例えば現在の銀行に課されている行為規制を、他業種とも共通化できるリスク量に応じた財務規制に置きかえるというようなことは、他の論点でも生じるだろうと思います。この点は証券業、保険業とは異なり、銀行業特有の状況だと思います。
最後に、保険業におけるデータの利活用について質問させていただきたいと思いますが、生保・損保に共通して、今まで定量化できなかったリスクを計測することで、顧客の間で新しいリスク共有ができるような保険商品が開発されると、社会全体のイノベーションになるとは思います。ただ、健康・医療データを使った顧客の差別化の場合は、特定の個人については保険料率が高くなり過ぎてしまって、今まで加入できていた生命保険に加入できなくなるようなケースも考え得ると思います。そのような場合は、社会全体のイノベーションとは必ずしも言えなくなると思います。
このような問題意識について、第一生命保険株式会社の畑中参考人に質問させていただきたいと思うのですけれども、顧客の差別化において、民間サービスから排除されるハイリスクの個人が増えることになった場合、社会保障など政府財政の負担と考えればよいのか、もしくは、どこかで業界内の自主的な倫理規定のような歯どめの線が引かれることになるのか、あるいは、そういう心配はないのか、何かお見通しやご見解があれは伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【岩原座長】
それでは、畑中参考人、お願いします。

【畑中参考人】
ありがとうございます。
ご指摘のとおり、やはりデータが充実することで、リスクのプールといいますか、要するに保険集団をどのように構成していくかということは、これから大きな課題になっていくであろうと認識しております。それは、お客様のほうに情報がたくさんある場合もあれば、保険会社のほうにたくさん情報がある場合もあり、両方とも考えられると思います。ただ、情報が充実することで、一概にリスクの塊が増えて被保険者になれない方が増えるということではなく、既に弊社においても過去のビッグデータを分析することで、今まで被保険者としてお引き受けできなかった方を、新たに引き受けられるようになったということが実際に起こっております。具体的には、例えば糖尿病の罹患者の病歴や周辺状況等のデータを分析することで、今までは社内基準でお断りせざるを得なかった方をたくさん救えるという状況も起きておりますので、今後、双方で検討していくことがとても重要かと考えております。
ありがとうございます。

【岩原座長】
それでは、永沢メンバー、お願いします。

【永沢メンバー】
ありがとうございます。
ご説明ありがとうございました。事務局の資料、資料2の「本日討議いただきたい事項」に従って、まず意見を述べさせていただきたいと思います。
1.の(1)ですが、些細な点ですが、ターゲット広告が利便性の高い革新的サービスと言えるのかどうか、私は疑問に思います。このような記載には違和感があったところです。自己決定権を脅かされるように感じている方も少なくないと思っておりまして、坂メンバーがご指摘されたように、勧誘の規制について、こういったものがどんどん進む中では、もう一度見直しが必要なのではないかということを、(2)として指摘させていただきたいと思います。
それから、2番目、2.の(1)ですけれども、現状についてどう評価するかです。確かに、フィンテック事業者というものが台頭してきており、これまで手の届かなかったところに先んじてサービス提供を提案し、自分ではできないことを簡単にやってくれる、便利、安い、早いというところは大変利便性を感じているところです。直近でも、QRコード決済が日本でも急速に拡大しているというニュースが伝えられております。このように新たな、既存の金融業以外の事業者が新しいビジネスを展開していく中で、金融業以外の新しい事業者が顧客の情報を集積させていくというケースが増えてきているわけで、金融機関以外の分野の動きに比べて、正直なところ、伝統的な金融業の動きが、ややスピード感がないところに、余計なお世話かもしれませんが、大丈夫なのかという懸念を感じているところです。
(2)以降ですけれども、どのように考えるかとか、公正な競争条件の確保というところですが、伝統的な金融業者の対応がおくれているからといって、では、どうかしてやろうという発想は間違っていると思います。むしろ、これまで器ごとに規制を考えてきましたが、その壁をとり払って、何を事業としているかということに着目し、その事業に伴うリスクで考えていく、ルールづくりをしていくことが必要なのではないかと思っているところです。神作メンバーがご指摘されたように、前回のスタディ・グループの中間整理で、どんな利益を保護するために我々はどう規制を考えていくのかという視点をもう一度振り返って、その時の議論からつなげていくことが必要なのではないかと思いました。
また、一番初めに加毛メンバーがご指摘されたところですけれども、業務規制は厳しいという声が実際に業界から出ているのかというところが、やはりひっかかったところです。金融行政モニター委員などをさせていただいておりますけれども、特にそういった意見も上がってきていないように思っておりますし、金融庁に具体的に見直しの要請が上がっているのでしょうか。岩下メンバーからも、前回の個人情報保護法の改正のときにヒアリングがあったときに具体的な要望が出てきていなかったというお話がございました。何を具体的に要望するのかというところを出していただいて、その上で検討ということが望ましいのではないでしょうか。漠然と検討ということはなかなか難しいように思いました。何れにしても、先ほども申し上げましたように、金融、非金融という枠組みではなくて、全体でどう考えていくのかということが必要かと思います。
岩下メンバー、それから坂メンバーもおっしゃったように、EU指令では、既に個人の情報について、プライバシーの問題について、やはり踏み込んで保護をするという方向に動いてきておりますので、その点の配慮をお願いしたいと思います。これは金融庁のマターではなく、省庁を超えた議論となりますが、規制をするというよりも、我々情報を利活用される国民が安心できるルールをつくっていただきたいと思っております。
続いて、本日、プレゼンテーションしていただきましたが、気づいたところといいますか、なるほどと思ったところを申し上げさせていただきたいと思います。
新しい便利なサービスがいろいろ出ておりますが、野村證券の新井参考人が「何となく気持ちが悪い」という発言をされましたが、私は、この感覚は非常に重要だと思っておりまして、気持ち悪いという感覚がなくなってはいけないと思いました。
また、9ページの資料で情報の非対称性の絵を見せていただきましたが、従来、事業者に情報があって、我々消費者側に情報はないという図式で情報格差を認識しておりましたが、今回、改めて見方を変えますと、個人の情報については逆の情報格差的なものもあるわけです。こうした双方の情報格差を新しいイノベーションで埋めていくことができるとなると、神作メンバーがご指摘されましたけれども、KYCのルールも新しい局面に入ってきているのではないかと思います。
本日、事業者団体の代表の3社からご説明がありましたけれども、本日の3社に限らず、事業者の皆様は新しい付加価値ということをおっしゃっていますけれども、付加価値といえるかどうかは受け手によります。場合によっては、自分の弱さ、もろさに関する情報が、あるいは平均より劣っているという情報が事業者に渡る、そして集積されるということで、これは我々としては非常に不安なものです。取り返すことがなかなか難しいことを考えると、何か倫理の分野になるのかもしれませんけれども、これもルールづくりが必要なのではないかと思いました。
最後に、情報に価値があるということならば、これは植田メンバーのご発言とも重なりますが、ビジネスに自分たちの情報が利活用されることについて、利活用して事業者が収益源とするならば、原材料である自分たちの情報が幾らなのかということは、示していただけたほうが逆に安心感があるのかなと思ったりもします。もちろん、フリーで使われてもいいのですけれども、その場合はフリーで使われることに社会的な意義があるということの納得感のある説明が必要なのだろうと思います。
以上でございます。

【岩原座長】
次に、森下メンバー、お願いします。

【森下メンバー】
ありがとうございます。
まず、情報の点に関してですけれども、金融に関するガイドラインなどができた際には、どちらかというと情報を守るという観点が主だったと思います。今日、いろいろ出たお話も踏まえて、利活用という観点から、もう少し考え方の精緻化を図っていいのではないかと考えております。
今のガイドラインの中でも、例えば情報に応じて取り扱いを変えているという部分はあるかと思いますけれども、金融取引を通じて得られる個人に関連する情報としては、個人が提供した情報、あとは個人との取引の過程でいろいろ形成されていく情報、あるいは個人との取引にいろいろ事業者が分析を加えた情報など、さまざまなレベルの情報があると思います。また、それを利用するといっても、いろいろな利用の対応の仕方があって、自社の新たなサービスの開発に使う、あるいは、若干加工して第三者、あるいはグループ会社で活用するとか、いろいろなやり方があるのであって、そういったようなレベルの問題が、今のところ、ちょっと大ざっぱでとどまっている。諸外国の検討の例などを見ますと、そういったところをもう少し精緻に分析して、それぞれのデータについて、事業者が有する権利、顧客が有する権利をしっかりと考えていこうというような議論が進んでいるように理解をしております。そういった諸外国の例も参考にしながら、情報に関するルールのあり方をもう少し精緻に考えていく必要があるのではないかと考えております。
あと、業務範囲についてですけれども、具体的にどのような業務が今の規制ではできないのか、いま一つはっきりしなかった部分はございますけれども、業務範囲規制については4つの観点があるというような話があったと思います。情報を活用して、いろいろなアドバイスをしていくというサービスとの関係で考えるならば、利益相反というのは非常に重要なものになるとは思うのですが、それは利益相反という問題があるから情報を共有してはならないとか、活用してはならないというよりも、サービスを提供するに当たっては、利益相反規制、お客様の利益を最大限に考えてもらわなければいけない。要は、フィデューシャリー的な義務がかぶさってくるというような形で規制をすべきものであって、利益相反があるから、それが問題になり得るから、ここで情報を活用してはならないというような性格のものではないかと思います。
優越的地位についても、企業との関係ではないわけではないのかもしれませんが、例えばリテールなどの関係などにおいては、そのリスクはあまりないのかなと。むしろ、仮に抱き合わせをするとか、不当に融資を押し込むというようなことがあれば、独禁法その他で厳しく取り締まっていけばいいのではないかと思います。
本業との関係では、アドバイスをするというのは大分、金融機関の本業に近づいてきている部分もあるような気もいたしますし、これをしたから本業がおろそかにされるようなリスクがあるものではないように思います。
他業リスクということですけれども、これは情報を扱うことによって、あるいは情報を活用して、いろいろなサービスを提供することによって、どれだけのリスクが発生するのか。ここら辺は、情報をうまく扱えなかったことによって、どういった責任が発生するのかというところが、必ずしもはっきりしていないというところにも関係するとは思います。ただ、金融機関は、そういった情報を管理するということに関しては、他業に比して比較的しっかりとしてきた業態と考えられております。ヨーロッパなどで聞いても、GDPRに対して金融機関はそうそう慌てていない。むしろ、自分たちはしっかりと情報を管理してきたというような見解に接することも少なくなかったように感じております。そういたしますと、他業リスクもさほどではないのかなと。
そうしますと、具体的に何をしたいのかというところが必ずしも明確ではなかったという点を措いたとしても、その情報を活用して、さまざまなアドバイスを提供していくというようなビジネスを行えるようにすることについて、金融機関の業務範囲規制を考える上で、大きな障害はあまりないのではないかというような印象を抱いております。
以上です。

【岩原座長】
次に、後藤メンバー、お願いします。

【後藤メンバー】
どうもありがとうございます。情報の話と、業務範囲規制について1点ずつお話をしたいと思います。
まず、情報の取り扱いの方ですけれども、何人かのメンバーからご指摘がありましたように、今現在、メールなどでやりとりした情報がいつの間にかカレンダーに反映されているとか、非常に便利ではあるんだけれども、気持ち悪さがある。ただ、気持ちが悪いけれども、便利だし、そこまで困る情報でもないからということで、みんな使っているのだと、私は感じております。そして、気持ち悪さは拭えないというところはあるわけですけれども、個人情報保護法にのっとって、最初にそのサービスを利用するときに、こういう目的で使いますということで同意ボタンをみんな押しているはずですので、おそらく違法な状態では全くないわけです。
この状況で何を問題と見るかということですが、普通の情報については、漠然とした気持ちの悪さはもちろんあるわけですけれども、実害があるわけではないのかもしれません。だからこそ、気持ち悪さを飲み込んでサービスを利用するわけですが、ただ情報の中には、この情報だけは他人に知られたくなかったというものもあるかと思います。このような情報が事業者に行ってしまうことを個別に止められないのかというところが問題なのかなという気がしております。今は、オール・オア・ナッシングで、最初に同意してしまったら、そのサービスの利用に関する情報は全部事業者に渡って、それがどこかへ提供されてしまう。どの範囲で共有するかというのは、最初の同意書に書かれているのでしょうけれども、私自身、最初に出てくる同意書をちゃんと読んだことは一度もなく、法律家が読まないのだから、きっと一般人はもっと読まないだろうという気がするわけです。
そうしますと、最初の同意でやったからいいと、ある意味そういう落としどころを個人情報保護法は見出したわけですが、本当にそれでいいのかということは考えていく必要があるような気がします。預かった情報をちゃんと管理するというのは、それはそれでもちろん重要なのでしょうけれども、オプトアウトという言い方がいいのかわかりませんが、そういう処理はできないのか。特に、銀行とか、金融業とか、医療関係のセンシティブな情報、さらに一定の思想信条や嗜好などを推察できる情報もそれに入ってくるかもしれませんが、そういうものについては見られないで済むということができると安心感は増すのではないか。私、情報に関しては全く素人ですが、そういうことを感じております。
これは、金融の話というよりは、もう個人情報保護法全体の話ですので、この場が適切なフォーラムかどうかわかりませんが、やはりこの話を発展させていくとすると、どうしてもそこと向き合わなければいけないときが来るのではないかという気がしております。それが、1点目でございます。
次に業務範囲について、私も何人かのメンバーの方と基本的に同意見で、広く認めていったほうがいいのではないかという気がしています。銀行につきましては平成28年の銀行法改正で、いわゆる銀行業の高度化に関する子会社は金融庁の認可をとれば保有していいということになったわけです。そのときは銀行法の銀行グループの話が主な議題でしたので、保険会社はちゃんとカバーできていなかったというお話が、今日、第一生命の方からありましたけれども、銀行が持っていい子会社を保険会社が持ってはいけないという理由はあまりないような気がします。今回、せっかくいろいろな業態を横断的に見て、リスクが一緒だったらそろえましょうということですので、この点はそろえていったほうがいいのではないかという気がしております。
そろえるとした場合、多分、保険業の高度化会社という言い方になるんでしょうけれども、保険会社がそれを持てるという話に加えて、保険持株会社であれば、保険業法の第271条の22で、一定の範囲に入っていれば、あらかじめ金融庁の承認をとらなくても持てるというところのリストに保険業の高度化会社も入るということで、保険業法の仕組みで、そろえていったほうがいいのではないかという気がしております。
さらに、銀行業、または保険業の高度化に関するものということですが、今現在の銀行法の第16条の2の第1項第12号の3は、「情報通信技術その他の技術を活用した当該銀行の営む銀行業の高度化若しくは当該銀行の利用者の利便の向上に資する業務又はこれに資すると見込まれる業務を営む会社」という規定になっていますが、そのポイントは、銀行業がより高度になったり、また、銀行の利用者の利便性がより向上したりするのであれば子会社を持ってもいいということにある、言い換えると、銀行業に役立つのだったら持ってもいいでしょうというところにポイントがあるのだと思っております。ただし、この役立ち方に「情報通信技術その他の技術を活用した」という限定が付いています。情報通信技術を活用するというのがいわゆるフィンテックなのでしょうけれども、狭義のフィンテックに限らず、その他の技術も含んでいるというわけですが、何か技術を使わないといけないのか。例えば、仮にeコマースみたいなことをやったほうが、銀行業が高度化すると言える場合、eコマースは現在も既に広く行われているものであり、何か新しい技術を使っているというわけではないのだとすると、これが「情報通信技術その他の技術を活用」したと言えるのかはよくわからないことになりますが、本当に銀行業が高度化するのであればそのような子会社の保有を認めることには問題があるのでしょうか。ここの前置きの限定はそんなに本質的なのだろうかというのは、よくわからないところでして、仮にこの限定を取り払って、端的に銀行業の高度化、もしくは銀行の利用者の利便の向上に資する業務ということにしたとしても、高度化に役立つかどうかを当局がちゃんと判断しますという仕組みがとれるのであれば、そんなに問題がなくできるのではないかという気がしております。
このような考え方と子会社保有を一般的に認可制にするということとの違いは、単純にもうかる事業だったら子会社でやっていいというわけではなく、あくまで本業は銀行業、または保険業であって、それが高度になる、もしくは便利になるという制約はかけているという点です。ですので、ちょっともうかりそうだから、この事業をやってみようと思ったけれども、失敗して大損して、全体がきしむということは避けられる。もちろん、高度化すると思ったらしなくて、投資分を損するということはあるんでしょうけれども、普通の銀行業の範囲内でも、例えばシステム開発などに投資したけれども、うまくいかなくてトラブルが起きるということは起きることもあるわけですので、そことそんな大きな違いはないのではないかと感じております。
というわけで、業務範囲については保険会社についても銀行とそろえるということと、場合によっては第12号の3の前置きの部分を削ることも考えてもよいのではないかということが、私の意見でございます。ありがとうございました。
 
【岩原座長】
次に、舩津メンバー。

【舩津メンバー】
ありがとうございます。3点、感想めいたことを申し上げたいと思います。
1点目、加毛メンバーからご指摘ありました「本日討議いただきたい事項」1.の(1)のところで、利用者利便の向上やイノベーションの促進の観点からは望ましいのは、それは望ましいけれどもということだと思うのですが、逆に言うと、今回、制度の改正を議論する上で、この修飾語が強く読めるのかどうかということが一つ問題なのかなという気がしております。それはどういうことかといいますと、坂メンバー、あるいは戸村メンバーからありましたけれども、情報等を活用することによる金融排除は、明らかに利用者利便向上にはつながらないということになるのではないかという気がしております。少なくとも、自分は金融に入れないという人が出てくるわけです。
そういうことまで含めた上で、そういうデメリットもあるということを踏まえて、なお制度を変えていくことにするかどうかが問題になってくるのかなという気がしております。その場合に、戸村メンバーからもご意見ありましたけれども、第三者、あるいは国がセーフティーネット等を設けて、そういった排除された人を救うという手段も考えられるかもしれない。そのセーフティーネットを、実は規制事業である金融機関が今までは担っていたのかもしれないということになりますと、金融機関は私的企業ですので、そういったセーフティーネットを金融機関自身が担う必要があるかという点は、必ずしも自明ではないという気はしております。他方で、それが果たして業務範囲規制の問題なのかということも、また一つあるのかなという気がしておりまして、業務範囲規制があろうと、なかろうと、そういう排除は起こるという気もしなくもないということを考えると、あまり議論をする意味がないのかもしれない、ちょっとよくわからないというところが、まず金融排除に関する私の感想でございます。
2点目は、2.の(2)のところですけれども、公正な競争条件を確保するという比較の対象でどなたかからご意見あったかと思いますけれども、一般事業会社として何を想定するのかということで、一部のメンバーからは、GAFAを含めて、そういうところと競争していくためにというようなご意見もあったかと思います。あるいは、そうではなくて、業態の特性に合わせたというようなご意見もあったかと思います。
少なくとも、GAFAを想定してそういうような公正な競争条件を確保するということは、逆に言いますと、GAFAのような巨大プラットフォームを呼び込むということにもなるわけでして、果たしてそれが我が国の金融制度にとってプラスであるかということは、慎重に考える必要があるのではないかと思っております。
3点目ですが、これはもうほんとうに全くの感想ですが、岩下メンバーから、もしかしたら個人情報の利活用というのは、子会社が第三者提供に当たるからではないかというようなご指摘があったやに記憶しております。その点につきましては、なぜ子会社が第三者なのだろうかということは、少し突き詰めて考えてみてもいいのかなという気がしております。
とりわけ、後藤メンバーからもありましたけれども、平成28年改正でしたか、銀行グループの親会社の経営管理義務が制定されたということを考えますと、実はそれは親と子の間のかなりの密接性といいますか、指揮命令であるとか、責任といったものを結びつけるような改正ではないかという気もしております。そうしますと、果たして子会社を第三者として取り扱って、何か厳格な、純粋な第三者と規律を合わせなければならないのかということは、もう一段踏み込んで検討してみてもいいのかなという気がしております。
私からは以上です。

【岩原座長】
次に、翁メンバー、お願いします。

【翁メンバー】
ご説明ありがとうございました。資料2に従いまして意見を申し上げます。
私も、利用者利便の向上やイノベーションの促進の観点から、まさに今日、議論してきたような、金融業がより情報を利活用できるような方向で検討していくことが望ましいと思っております。また、何人かの委員からご指摘ありましたけれども、やはり日本の超高齢化社会、人手不足という非常に大きな社会的課題を解決するためにデータを活用して、そういった問題に対応していくという今の流れは、金融業としても非常に重要でありますし、そういった社会的課題の解決のために貢献するということが求められていると思っております。今日、保険会社のほうからご紹介があった認知症の問題とか、健康寿命延伸の問題とか、こういったことについては金融業が貢献できる分野ではないかと思っております。
また、環境が大きく変わりまして、やはりオープンイノベーション、オープンAPIという大きな流れで、さまざまな主体と金融がつながっていく社会になってきておりますので、こういったことも考えて、環境変化を踏まえた上で検討していくべきだと思っております。
留意すべき点として、もう多くの方がご指摘になったのですけれども、やはり今までのガイドラインなどで重要になってきている部分、特に先ほど森下メンバーからもご指摘あったのですけれども、おそらく詳細なルールというのは、情報保護のためのルールとしてかなり詳細なものであったと思いますけれども、今後は保護と利活用の両立のために、また、その技術革新を勘案した、ややプリンシプルベースのものにこういった考え方を変えていく必要があるのではないかと考えております。
また、情報のセキュリティーの問題は、引き続き利用者の安心を確保するために非常に重要であると思いますのと、ガバナンスの体制がどうとられているかということにも関心を持って臨むべきではないかと思っております。今日、野村證券の方から、今のビッグデータは全部、ビッグデータ×AIであるというお話がございました。やはり多くのこれからのビッグデータの分析はAIで行われていくことになると思いますので、AIガバナンスとか、ブラックボックス化をどう可視化していくのかとか、こういったことについても意を払っていくべきだと思います。
また、本日、何人かの委員からご指摘ありましたように、個別かどうかは別としまして、第三者提供をするときの個人の関与、個人のコントロールというところについても、特に医療などの機微情報を扱うようになってきた場合に必要な重要な論点でございます。ここにつきましては、今、情報信託とか、情報銀行の議論が政府の中でも進んでおりますので、省庁横断的な議論を踏まえて検討していく必要があると思っております。
業務範囲規制につきましては、やはり情報の利活用、利用者利便の向上やイノベーションの促進ということを考えますと、金融機関についても業務範囲規制は緩和していく方向で考えていくべきだと思っております。
大きなフィロソフィーみたいなものを、これから考えていく必要があるのかなと。まさに今の規制緩和というのは、IT技術が飛躍的に発展している環境変化に伴う規制緩和であるかと思いますけれども、先ほど親近性ということから考えていくのかという議論もありましたし、米国などではエクセスキャパシティーをどういうように活用していくのかというような議論も、業務範囲規制の緩和のときに議論されておりました。こういったフィロソフィーについても、1回きちんと議論をして、どういうような規制緩和を考えていくのかということを議論する必要があるのではないかと思っております。
以上でございます。

【岩原座長】
それでは、松井メンバー。

【松井メンバー】
ありがとうございます。私も、資料2に従ってお話をしたいと思います。
冒頭、加毛メンバーから、この資料2は誘導的であるというご発言がございましたが、私も、これは読んでいくとストーリーがあるおもしろい資料であると感じましたので、そのストーリーに乗って少しコメントをしたいと思っています。
まず、1.ですけれども、私も、情報通信技術がこれだけ発展して、金融、非金融の境が解けているときに、金融分野だけそのような状況とは無関係に制度をつくりますということはあり得ないと思っていますので、基本的に1.の(1)については望ましいですし、そうせざるを得ないだろうと思っています。ただ、金融の場合は、どうしても商品設計なり、サービス設計なりのために、かなりセンシティブな個人情報をとらないとできないので、この個人情報をどう扱うかということが論点になってまいります。これに対しては、本日の議論で、岩下メンバーや森下メンバーから、この点に関する考え方を柔軟化したり、精緻化したりすれば対応できるのではないかという話もありましたので、この点はそれでよいだろうと思います。
そうしますと、個人情報の対応ができる金融業者がマーケットに入ってくるという話になるのですけれども、そのときにほかの一般事業会社は入ってこられるけれども、特殊な規制がかかっている銀行や保険会社などはどうしても他業禁止との関係で入ってこられないという領域がございます。これが競争上、バランスを欠くのではないかという議論になるということで、2.の選択肢が出てくるのだろうと読みました。
そうだとすると、一定の金融機関だけ制限をかける必要はないので、同じ土俵にのせましょうという話になる。多分、これが(2)なのですけれども、ただ公正な競争条件の確保というのは二義的であるのも事実です。一つは、既存の金融機関に他の一般事業会社や金融関連業者とは違う規制がかかっていて、競争条件が違うのではないかという話。いま一つは、仮にその規制を取り払って、銀行や保険会社がマーケットに同じ条件で出てきたときに、今度はそちらのほうが圧倒的に資金力や情報量を持っていますから、市場支配力を持つ可能性がある。そのときに、果たしてどういう競争条件を考えていくべきかという話があるのではないか、と理解しました。
今までは他業禁止で事前規制がかかっていましたから、後者の問題は顕在化しなかったのですけれども、そこが取り払われた場合には一般的な競争法の問題が出てくる、ということになのだと思います。この類の話は、これまでもいろいろな分野であるものでして、例えばかつて会社法は多くの事前規制をかけていました。これを自由化した結果、会社法上はできるようになった行為がたくさんありますが、その代わりに生じた問題について、今度は金商法で対応をしていかなければいけなくなった。こういう話と同じ話だと思います。
おそらく今後考えなければいけないのは、仮に銀行や保険会社について、業務範囲規制をある程度緩めて――高度化会社の枠組みを使うという一つアイデアが出ていましたけれども――同じ競争条件で競争させたときに、場合によっては圧倒的な資金力とこれらが固有に持っている特殊な情報をもって、市場を支配していくという場合、それは全く独禁法の問題に任せていいのか、ということなのだろうと思います。
ただ、これは、あまり一般的には議論できないのではないかとも思っております。例えば、今でも人材派遣会社などは一般事業会社が行ったり、金融機関が持っていたりしますけれども、こういった業種については、事業の性格上、金融機関が市場を支配してしまうということは、多分、ないのだろうと思います。他方、金融機関が実際に情報を持って出ていく領域で、場合によってはそれが市場支配をしてしまうのであれば、チェックをかけるのかどうか。いちばん極端な考え方は、全部、独禁法に任せます、公正取引委員会の法執行に任せますということなのでしょうが、事前にチェックできるものがあれば、金融規制としてチェックをかけますということもありうるでしょうから、その点の規制の枠組みというのは、今後、考えるべき論点ではないか、とちょっと思った次第です。
私からは以上でございます。

【岩原座長】
大変お待たせしました。福田メンバー、トリをお願いします。

【福田メンバー】
いえいえ、そんな大げさなものではございません。皆さん、もう既に多くの意見を述べられたので、手短にはしたいと思います。
規制が必要かどうかという意味では、もともと規制をつくった精神、プリンシプルは重要だし、これは今でも生きているということだと思います。森下メンバーが言われたように、例えば情報を守るという観点が不要だという考えられる方はないと思います。ただ、現行の規制の中でも、多分、原則書面であるとか、そういうものは、そういう観点からでも不要なのだろうとは思うのです。他方、情報を守るという精神はこの分野で要らなくなったわけではないということだろうとは思います。
その一方で、それとやや反するような、情報を利用するということも大事になってきて、それとのバランスをどう考えるかという問題ですし、その情報を利用するという問題をきちんとやれば、イノベーションにもつながっていく可能性はこれまで以上に増えている。このため、情報を守るという観点と、情報を利用するという観点のバランスが、これまで以上に難しくなってきているということなんだろうと思います。
そうした観点から考えたときに、日本固有の高齢化社会の要因もありますけれども、日本の金融機関のイノベーションというのは、やはり相対的には、主要国の中でもやや遅れをとってきたという点は否めないという危機感は、やはり共有すべきなのかなと思っています。日本だけが規制しても、ほかの国は規制しない場合技術の格差はどんどん進んでいくということもあります。そういう意味では、それに遅れをとらないようなイノベーションの機会をつくってあげるという発想は大事だろうと思います。
他方で、いろいろ提案された、非常に興味深い提案が皆さんからたくさんなされたと思いますけれども、一つ重要な点は、イノベーションは、現在途中経過のものだということが、非常に多くの側面であることです。幾つかのものはまだ実証実験段階だとか、極端な言い方をすれば、やってみなければわからないものが非常にたくさんあるという段階で、まだ成熟していないという問題なのだろうと思います。そういう意味では、今、どちらをどれだけ重視するということを決めて、ここの情報はいいけれども、ここの情報はだめだとかいうことはなかなか決められる段階ではないものだろうと思いますし、やってみなければ、いろいろなことが、どういう弊害があるかわからないものが大半なのではないかと思います。
そういう意味では、ガイドラインに基づいて、ある程度の裁量を持って、とりあえずやらせてみたけれども、問題がありそうならばまた見直すとか、そういうフレキシビリティーを持って対応せざるを得ない段階なのではないかとも思います。イノベーションを促進するという発想を核に置きつつも、弾力的な運用がやはり重要になってくるのではないかということです。
2点目は、2番目の業務範囲規制ということだと思います。何人かからご指摘あったように、完全な公平というのはなかなか難しいだろうと思います。やはり金融機関のスペシャルな状況というのは、昔よりは弱まってはいるけれども、金融業はそれなりにまだ特殊性が残っているということですし、他業と完全に平等な競争条件で競争することはなかなか考えにくいのではないかと思います。
他方で、かなり大きな不公正が、競争条件でも生まれています。そういう意味では、程度問題ではないかというのが私の見方で、やはりこういう規制があることで、かなり競争が不公平なものになっているということに関しては、やはり適宜、見直していくことが大事です。その際、ただ単に不公正ということだけではなくて、重要な観点としては、最初の観点にもつながりますけれども、イノベーションにつながっていくかどうかというような観点なども今の世の中の情勢を考えた場合には重要です。これらの点を勘案しながら、業務範囲規制はこれまでより見直していくことが大事ですし、私も必要だと考えているということです。
以上でございます。

【岩原座長】
それでは、事務局からご発言があればお願いします。

【岡田信用制度参事官】
いろいろなご意見を頂戴しまして、ありがとうございます。
資料2を提案させていただいた事務局の立場から、僣越ですが、幾つか申し上げたいと思います。
1つは、本日の議論を伺っていて、全会一致ではないにしても、多くのメンバーの方から、銀行、保険会社、証券会社といった業務範囲に関して厳格な制限が存在するものについては、利用者利便の向上やイノベーションの促進の観点から、情報の利活用に関して、その他の主体との関係で何らかの形でイコールフッティングが必要ではないかということは、ご賛同いただけたかと思っています。その上で、既存の業務範囲規制というのは、理由があって導入されたものであるというご指摘もございまして、全くそのとおりだと思っております。仮に、業務範囲規制を何らかの形で見直すことを検討する場合には、現行の業務範囲規制の枠組み、また、その背景にある趣旨、考え方といったものを、当然、踏まえた上で検討していきたいと考えております。
また、関連しますが、この件について、金融業界から具体的な要望があまり聞こえてこないというようなご指摘もございました。平成30事務年度 第2回会合で、みずほ銀行の望月様のプレゼンテーションにおいて、さまざまな社会的課題の解決に取り組んでいく上で、業務範囲規制がともすると障害になっているというような形ではご意見をいただいたのですが、確かに具体的な形で銀行、保険会社、証券会社からの要望を受けて、この場でご提案申し上げている論点ではないというところはございます。ただ、本スタディ・グループは、必ずしも具体的な要望を受けていない場合にあっても、将来を見据え、全体として、銀行、保険会社、証券会社、フィンテック事業者、金融業を併せ行う一般事業会社といったさまざまな金融サービスの担い手が存在する中で、どういった金融制度がいいのかということをご検討いただく場であるとも考えておりまして、そういうこともあってご提案させていただいております。また、どうしても金融業、とりわけ規制が厳格な業態の場合、制度のあり方によって取組みが影響されるということはあるのではないかとも考えております。
最後に、今後検討を行っていく上でのシークエンスについてもいろいろとご示唆があったと思います。個人情報保護法に基づく金融分野のガイドラインは、もともと個人情報保護法が導入されたときに金融分野について設けたものでございまして、改正も行っているものの、確かに今日的な観点でいろいろと検討していかなければいけない面もあると思いますが、そういったことと、例えば業務範囲規制の見直しといったこととのシークエンスというか、どこから手をつけていくかといったことも考えて、次回以降の議論の準備をさせていただきたいと思います。

【岩原座長】
よろしいでしょうか。本日は、大変盛りだくさんの内容に、多様なご意見をいただきまして、まことにありがとうございました。情報の利活用についても、金融法制を超えた、かなり積極的なご指摘がございました。また、業務範囲規制については、岩下メンバー、植田メンバーからは、根本的にそもそも廃止すべきだというご意見もある一方で、神作メンバーなどからは、やはり規制にはそれなりの根拠があって、そこにさかのぼって考える必要があるというご指摘もあったかと思います。それは、最後に福田メンバーがご指摘になったように、もともと理由があってつくられたものであるので、現状が変わる中で、それをどう見直していくかということをここで検討していただけたらと思います。そのほか、永沢メンバーや坂メンバーからは、むしろ個人情報の保護というか、コントロールという観点、視点からのご指摘もあったところであります。そういったところも含めて、今後、検討を深めていきたいと思います。
本日は、長時間どうもありがとうございました。

                                                    ―― 了 ――

 
 

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