金融制度スタディ・グループ(平成30事務年度第8回)議事録

  • 1.日時:

    平成31年3月4日(木)9時30分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(平成30事務年度第8回)
平成31年3月4日
  

【岩原座長】
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融制度スタディ・グループ」平成30事務年度第8回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところ、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、前回に引き続き、決済の横断法制について取り上げます。
なお、このテーマに関して、オブザーバーとして、新たに日本クレジット協会にもご出席いただいております。また、本日は参考人の方々にもご出席いただいておりますので、その紹介を事務局からお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
本日は参考人として、LINE Pay株式会社プロダクト室室長の池田様、株式会社インフキュリオン・グループ代表取締役の丸山様にご出席いただいております。
なお、丸山様はFintech協会としてのオブザーバーの立場でのご出席を兼ねておられます。どうぞよろしくお願いいたします。

【岩原座長】
続きまして、議事に移らせていただきます。本日は、まず事務局からご説明をいただきます。次に、参考人の方々からご説明をいただき、その後に一括して討議を行います。
それでは、まず事務局から説明をお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
それでは、資料1と資料2を使ってご説明いたします。今回は、少額サービスとポストペイサービスがテーマとなってございます。
まず、資料1の3ページをご覧いただければと思いますが、少額サービスにつきましては、前回の資料にありましたように、資金移動業の実態として、数千円までの金額が件数的には決済の実績として非常に多いといったことで、仮にこうした少額のサービスのみを行うこととした場合に、1回100万円まで送金できる現行の資金移動業の規制から、さらに柔構造化して、一部の規制を緩和する余地があるのかどうか、適当かどうかという論点でございます。
この後、具体的なニーズ、ご要望等につきましては事業者の方からお話があると思いますが、私からは、まず現行の制度について簡単にご紹介いたします。
資料1の3ページに比較表がございますが、一番左にあるのが現行の資金移動業者の制度でございます。全体としては比較的軽い規制体系になっていると思いますが、こうした観点で通常よく話題に上りますのは、この中で、上から4番目、利用者資金の受入れ・保全の方法の供託等義務のところと、一番下のマネー・ローンダリング対応と書いてあるところ、いわゆる本人確認義務等のところかと思います。
なお、資金移動業者の右側に前払式支払手段発行者の制度についても掲げております。
真ん中の第三者型というのが、交通系ICカード等、いわゆるプリペイドカードとしてよく認知されているものかと思いますが、資金移動業との違いについて申し上げておきますと、まず使用額について何か金額的な上限その他が法令上はないということ。それから、保全の方法のところをご覧いただきますと、供託額が半額で、かつ年2回確認すればいいという点。それから、そのすぐ下の財務のところで最低純資産額が1億円以上というのを求めているということ。それから、一番下の欄で、原則として入金したものの現金化が許されていないと同時に、本人確認義務等は課されていないということでございます。
一番右の自家型というのは、第三者型と比べて、一番上のところで、届出制であったり、財務のところで1億円以上という最低純資産額規制がなかったりといった違いがございます。
次に、4ページをご覧ください。供託等の利用者資金の保全方法についての若干補足の説明を申し上げます。左はしばしば実務の方からご指摘いただいているような点を書いているものでありますが、現在の資金移動業の供託の考え方ですと、保全対象となる資金の算定時点と、実際の保全時点との間にタイムラグが存在するので、実際に負っている債務額に比べまして、保全額に過不足が生じる場合があるという問題であります。
それから、右側が現在の3つの保全方法ということで、法務局に供託する方法のほか、信託会社等と信託契約を結んで信託する方法、それから、銀行等と保全契約を結ぶ方法がございます。
後ほど、これも事業者の方からお話があると思いますが、実務上、それぞれ使い勝手について課題があると伺っておりまして、今後、法制化していくに当たりましては、その検討の中で、いずれにしても万一の破綻時に事業者の一般財産から確実に倒産隔離が図られることが前提ですが、その上で何か使い勝手がよいような仕組みがないかどうかについては模索してまいりたいと考えているところです。
それから、5ページは前払式支払手段の制度の沿革を示したものでございます。1932年に商品券取締法として始まって、1990年、2010年にそれぞれ施行された2回の大きな改正を経まして、現在の一番右のところ、紙型、磁気型・IC型、サーバ型といったこと、それから、自家型、第三者型といったことで分類されるような現在の制度に至っております。
この中で、とりわけ第三者型であってサーバ型といったことになりますと、この表の右下にある資金移動業とかなり近いサービスの提供が可能になってきているということだと思います。そうした中で、例えば、2分の1供託というのは、商品券取締法時代から受け継がれているということも資料で明らかだと思います。
それから、6ページですが、これは数年前にG7でテロ資金対策について議論になったときの取りまとめでございます。そういう国際会議の関係なので、いろいろなことが書いてありますが、ポイントについて赤線を2カ所引いております。まず、真ん中の赤線部分で、すべてのG7各国は仮想通貨やプリペイドカード等の新しい決済手段にFATF基準を適用するとあります。その上で、一番下の赤線部分に、日本の財務省がつけた注がございまして、日本では、既に現金引出可能なプリペイドカードについては、資金移動業として規制が導入されているという記述があります。若干補足しますが、資金移動業であれば、本人確認義務等が課されていることが含意されていると解されます。
他方で、日本において前払式支払手段発行者には、先ほどご紹介したとおり本人確認義務等がかかっていないわけでございますが、例えば、外国人旅行者が帰国するとか、国内で日本人が引っ越ししてその前払式支払手段を利用できなくなるといった、やむを得ない事情がある場面については、現在も現金での払戻しを認めているところであります。しかし、それを超えて、前払式支払手段について、極めて一般的に現金引き出しを可能とすれば、こうしたテロ資金対策、マネロン対策との関係で、前払式支払手段発行者に対しても本人確認義務等をかけざるを得ないといったことになることについては留意が必要だと思います。
以上を踏まえまして、資料2の1.に、少額サービスについての論点を掲げてございまして、1.の(1)ですが、送金額と入金額がともに比較的少額であることから、業者破綻時に利用者一人ひとりが被る影響は限定的であることを踏まえて、業者の規制対応コストを低減する観点から利用者資金の保全に関する規制を緩和することが考えられるとの指摘についてどう考えるかということ。
(2)は、業者破綻時に利用者一人ひとりが被る影響は限定的であっても、利用者数が膨大であれば、業者破綻が社会全体に与える影響は相応であると考えられることについてどう考えるかということ。
(3)は、資金移動業との関係での「少額サービス」についての議論は、プリペイドカード(前払式支払手段)発行者にもあてはまると考えられるが、どう考えるかということ。この3つを例示として論点提起させていただいております。
以上が少額サービスについてでございます。
引き続きまして、ポストペイサービスについて簡単にご説明します。
資料1に戻っていただいて、8ページをご覧いただければと思います。いわゆるポストペイサービスを提供していくに当たって、現状では3つ法的な枠組みがあろうかと思います。1つ目は、銀行がその銀行の業務としての為替取引と資金の貸付けを組み合わせる方法。2つ目は、これは実際にサービスとして出てくるのはこれからのようでございますが、資金移動業と資金業を組み合わせる方法。3つ目は、これが通常よく知られているポストペイサービスだと思いますが、クレジットカードを中心とした割賦販売法上の信用購入あっせん業で行う方法でございます。そういうことで、現在もポストペイサービスは、銀行であれ非銀行であれ、提供が可能ということであります。
他方で、出てきているサービスの中では、外形的には「資金供与」と捉えることもできるけれど、実態としては少し違う動機でやられているものがあるのではないか、いろいろなものがあるのではないかということで、9ページのところでございます。一例がこちらでありますが、何らかの理由で支払い時期をまとめたい、まとめた支払いを行いたいというニーズがあるということで、具体には後ほど、丸山さんからも説明があると思いますが、その際の利用者の動機が、お金が足らないので借りたい、不足している資金を融通してほしいという、いわゆる借金、ローンを受けたいという通常の「資金供与」サービスの利用者ニーズとは若干異なるものがあるのではないかということでございます。
仮に、資金不足とは異なるということで、かつ一定の少額以下のサービスというものを実際に切り出すことが可能だとしますと、貸金業法、あるいは割賦販売法にもありますけれど、借り過ぎ、多重債務者の発生といったリスクを制御するための規制との関係で、何らかの意味で緩和する余地が出てき得るのではないかということでございます。
他方で、こういうサービスを、経済的に余裕がない利用者の方が、通常の貸金等の「資金供与」サービスの代替として利用する可能性はないかという論点があります。また、悪質な業者が、こういった枠組みを悪用する余地がないかといったことも十分あわせて考えていく必要があろうかと思います。
以上、申し上げたようなことを、資料2の2.でも掲げております。2.の(1)は、「ポストペイサービス」は外形的には「資金供与」と捉えることもできるが、①業者がサービスを提供するインセンティブ、②利用者がサービスを利用するインセンティブは、一般的な「資金供与」に係るそれらとは異なると考えられるが、どう考えるかということ。
他方で、(2)ですが、仮に経済的に余裕がない利用者が「資金供与」の代替としてこうしたサービスを利用しようとすることも考えられるが、どう考えるかといったことでございます。
本日ご議論いただきたい点は以上なのですが、最後に資料3をご覧ください。
こちらはご報告になりますが、2月13日に総理も出席する未来投資会議という会議が開催されまして、そこで本スタディ・グループでもご議論いただいている「決済」分野の横断化・柔構造化と、プラットフォーマーへの対応についての検討のうち、一般利用者と金融機関をつなぐものに関して、言ってみれば横断的な金融サービスの仲介といったものですが、それらについて、麻生金融担当大臣からご紹介をした際の資料であります。
具体的には、2ページが「決済」についてでございまして、本スタディ・グループでもこれまでご議論いただいていますとおり、さまざまな課題がありますが、ここでは、一つには本日の議題のプリペイドとポストペイを組み合わせたシームレスな支払いの実現に向けた検討のような話、もう一つは、右下にありますが、これもこれまでにご議論いただいております、資金移動業の1回100万円の送金上限額規制との関連で、銀行と現行の資金移動業の間の新たな類型のようなものを検討していくという意見を全体の中で論点としてお示ししています。
3ページが横断的な金融サービス仲介法制についてでございます。プラットフォーマーのうち、一般利用者と金融機関の間に介在するものということで、12月に一度、ご議論をお願いしたものでありますが、これについても今後、続きの議論をお願いしていきたいと思っております。
4ページに、当日の麻生金融担当大臣からのご紹介と、会議の最後での総理からのご発言について抜粋しておりますので、後ほどご覧いただければと思います。
私からは以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、LINE Payの池田様、10分程度でご説明をお願いいたします。

【池田参考人】
LINE Payの池田でございます。よろしくお願いいたします。
少額資金移動サービスについてという資料をごらんください。こちらでまず、当社のサービスの現状から簡単にご紹介をしていこうと思います。
まず、その前にLINE Payについてですけれども、LINE Payというのは、皆様もお使いいただいている方、多いかと思うんですが、LINEというコミュニケーションアプリ、その中に含まれております決済・送金サービスでございます。
こちらの提供しておりますサービスは、基本的にプリペイドのサービスではあるんですけれども、アカウントが2種類ございます。1つは前払式支払手段のLINE Cashというもの、それから、もう一つが、取引時確認を済ませました、資金移動が可能なLINE Moneyという2つのアカウントでございます。こちらのLINE Moneyにつきましては、資金移動のアカウントでございますので、決済の利用と送金が可能となっております。ここでは、LINE Moneyという資金移動のアカウントでのユーザーの使い方や利用金額などの詳細につきまして、簡単にまとめてございます。
まず、決済利用につきましては、月間1万円未満の利用が、件数ベースでは95%、金額ベースで言いますと70%を占めております。他方、5万円以上の利用が、件数ベースは1%ではございますけれども、金額ベースでは20%となっております。
一方、送金としての利用につきましては、1万円未満の利用が件数ベース90%、金額ベースで50%、対しまして5万円以上の利用が件数ベースで3%、金額ベースで30%となっております。この送金のほか、取引時確認をしておりますので、出金することができます。ATMや自分の口座への振り込みになりますけれども、そちらでの出金というものが送金の件数の1割程度ということで、それなりに利用されているという現状でございます。
今、LINE Payの加盟店には、コンビニ、それからドラッグストアというような日常使いのお店が非常に多いこと、それから、飲み会の割り勘などで使われることが多いこと、そういうことがございまして、少額の利用が比較的多いと考えております。
一方で、月間5万円を超えるロイヤリティの高いユーザーも、先ほどお示ししましたとおり、それなりに存在しております。また、家電量販店で、年末とか、入り用のときには利用の金額も同様に上がる傾向も出ておりますので、高額利用というのは今後、加盟店の広がりを受けまして、増えていくのではないかなと考えております。
次のページでございますけれども、少額資金移動サービスということで、今、話題になっておりました、少額のみを取り扱うニーズについて、我々なりに整理をしております。現状、少額に限定した資金移動サービスを求めるニーズは徐々に顕在化していると考えております。その背景としては、テクノロジーをいろいろ活用したサービスとして、少額の取引が増えているということが一つ背景としてはあるのかなと見ています。
資金移動サービスの利用状況は、前回の金融審議会のスタディ・グループの資料に加えまして、先ほどの弊社の利用状況を鑑みまして、実際に少額のものが多いと考えられます。規制の対応次第では、少額に限定した資金移動サービスであればやってみたいという事業者は増えていくのではないかと考えております。
これは他業態の話になりますけれども、保険や投信、これまで少額というニーズはあまり顕在化していなかったわけですけれども、実際、潜在的なニーズが顕現化しまして、ここで言いますミニ保険であったり、それから、お釣り投資であったり、というような新しいサービス市場がつくられてきているともあります。そういうことを考えますと、こういう少額の資金移動というシーズを芽吹かせるサービスが登場する可能性は大いにあるのではないかと考えております。
次のページでは、少額資金移動サービスを取り扱う上での課題ということで、先ほども事務局からお話がありましたけれども、その一つは、本人確認と考えております。本人確認の必要性につきましては、先ほども申し上げました、再現金化したいニーズ、こういったものがございます。一方で、世界的にアンチ・マネーローンダリング等の国際的な要請があると思います。こういうことから本人確認の義務は必要だと考えております。
その本人確認を弊社としてはどのように実施しているのかというのが次のところでございます。
1つは、銀行依拠による本人確認でございます。銀行が本人確認をしておりますので、その情報を利用させていただく形です。こちらは非常に簡便ではございますけれども、課題も多いと認識しておりまして、その次のページでご紹介をしております。
参考と書いてございますこのページ、LINE Payの今の本人確認の案内の仕方になっております。
まず、STEP1として、本人確認をするために必要な情報をお手元にご用意いただくことになります。その必要な情報というのが、右側に各銀行の一例ということでお示ししております。各銀行によりまして、本人確認をするために入力する情報、これは多様でございまして、それぞれ1つにまとめることができない状況でございます。こういったものをご用意いただきまして、LINE Payの画面から銀行の登録画面に進んでいただきます。
ここでSTEP2ということで、登録したい銀行を選択していただきます。そうしますと、各銀行のサイトに遷移をするわけでございますけれども、このSTEP2からSTEP3のところで、銀行を登録するのであったら、ちょっと面倒くさいのでやめてしまおうということで離脱されてしまう方が、40%おられます。現状ここでは60%の方が、この先の手続に進まれていることになります。ここで先ほどご用意いただいた情報に基づきまして、銀行のサイトで必要な情報を入力していただきます。ここは銀行によりまして、かなり離脱率に差があるんですけれども、さらにここで平均しますと20%の方が離脱しまして、最終的には40%の方が銀行登録を完了するという状況でございます。
前のページにお戻りいただきまして、課題ということで幾つか書かせていただきました。
まず、銀行の登録に対して抵抗を感じるユーザーが一定数存在するということ。それから、各銀行によりまして、インターネットバンキングの契約が必要であるとか、それから、トークンを持っていないといけないとか、前提としまして、確認に必要な情報が異なる点が一つの課題と考えています。また、確認に必要な情報の入手が困難というのがございます。例えば、通帳の最終残高を入力してくださいという銀行がございます。最近ですと、通帳を普段持っていないユーザーの方も増えておりますので、現在の最終残高が幾らかという情報が手元にないというケースもございます。
それから、先ほどの参考の次のページに進んでいただきまして、今後、弊社として取り組んでいこうという新たな本人確認の方法について記載しております。
銀行依拠以外の取り得る方法として、E-KYC(送達確認不要な新たな本人確認)というものを取り入れてまいります。2018年の11月、犯収法施行規則の改正によりまして認められた手法でございます。今、実施に向けて準備をしているところでございますけれども、そのサービスの使いやすさと効率性、それから非対面で、かつ送達確認をしませんので、正確性をどのレベルで両立させられるかというところは、これから運用しながら調整をしていくものと考えてございます。先ほどの銀行依拠ではすくい切れないユーザーのニーズと本人確認の対応ということで、E-KYCを活用しまして課題解決を目指してまいります。とは言いますけれども、他国のように番号を入力するだけで手続が終わるような、より簡便かつ活用しやすいKYCの方向を引き続き模索していきたいと思っておりますし、そういうところで制度的な検討もいただけるとありがたいなと考えております。
それから、次のページにお進みいただきまして、もう一つの課題ということで、資産保全が掲げられておりましたけれども、こちらについてご説明いたします。
まず、資産保全の必要性でございます。利用者保護の観点から、資産保全、利用者資金を分別管理することは必要であると我々も考えております。一方で、分別管理に伴う手間、それから負担がございますので、ここが課題かと思います。
資産保全の方法につきましては、現在、事務局からもお話がありましたように、供託、信託、それから、銀行による保証というものがございますけれども、我々としては、手元の資金の流動性を確保できる保証の利便性が高いと考えております。
ただ、一方で課題がございまして、保証は利用者資金が急増したときなどに臨機応変に銀行の保証枠を引き上げていただくことが難しいことがございます。そういう場合には、急遽、資金を集めまして供託を行うケースもあります。そういう手続きの部分で一定程度の負担がございますので、こういったところが何とかなればなと考えております。
一方で、少額のサービスを取り扱うような新興のフィンテック企業が出てきた場合、ここについての課題は多分、景色が変わってくると思っております。保証につきましては、当然、その銀行側の保証料も高くなってくると思われます。また一方で、保証を避けて供託しようということになりますと、塩漬け資金の増加というものは、そもそもキャッシュフローが厳しい中では、かなりキャッシュフローの悪化を招くのではないかと考えております。事務局からも話がありましたけれども、規制緩和の方向性として、少額ということに限定するのであれば、この義務を免除、軽減するということもあるのではないかと考えております。
以上、LINE Payからのご説明でございます。ありがとうございました。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、インフキュリオン・グループの丸山様、10分程度でご説明をお願いします。

【丸山参考人】
丸山でございます。先ほどもご案内いただきましたが、本プレゼンテーションに関しましては、フィンテック協会ではなくて、弊社のサービスを一例に後払いについて、ご説明させていただきたいと思います。お手元の資料に関しまして、決済サービスの動向と新たな支払い方法についてという資料でご説明いたします。
まず、1ページ目、私どもの会社、インフキュリオンのご紹介ですが、主に決済に関するインフラである、決済端末ですとか、決済ゲートウェイという事業と、電子決済等代行業による、APIを使ったアプリケーションと、本日ご説明します後払いのサービスの機能などを運営している会社でございます。
2ページ目は割愛させていただきまして、3ページ目でございますけれども、決済という業界について、日常の消費をイメージしていただくと、お店と利用者という関係がございます。今、我々のアプローチとしては、お店側には加盟店視点での決済インフラの効率化、利用者には電代業等を通じて、ユーザー体験の向上を提供しています。今回、ご説明させていただく支払い方については、お店と利用者をつなぐ銀行ですとか決済事業者に機能を提供していく立場でビジネスをさせていただいております。
今回の後払いというところに向けての課題でありますけれども、現状の認識を4ページ目、5ページ目でお話をさせていただきます。
4ページ目に関しましては、もう以前からご議論されていらっしゃるところと思いますが、今さまざまな支払い手段、支払い方法が出てきております。特にバーコードを使った決済に関しましては、銀行様による口座直結の支払いから、LINE Payさんも含め、新しい事業者様によるプリペイド、ポストペイも含めたいろいろなサービス、支払い方法が出てきている状況かと思っております。
さらに現状の変化としまして、5ページ目でございます。最近の支払いに関しては、お店で、店頭で支払いをするだけではなく、事前に予約をして事前に認証する。もしくは事前に支払いをして後からサービスを受けて、さらに帰宅後に支払いのタイミングを変更する。こういったような時間軸の流れを意識したサービスも多く出てきております。特に最近はスマホを使って事前予約をする、事前決済をするサービスなど、非常に注目を浴びておりまして、どのタイミングで認証決済して引き落としていくのかが、非常にいろんな可能性が出てきている状況かなと思っております。
そんな中で、6ページ目でございますけれども、弊社のサービスだけでなく、多くのウォレット、○○ペイというサービス事業者の方が近い概念かと思いますけれども、認証と決済というもののタイミングを自由に組みかえられるようなものが出てきているという理解をしております。
図ではバーコードを中心に書いておりますが、バーコードだけでなく生体認証やカードも含め、一度認証したIDを特定すると、そのIDを持った方が銀行口座から払うのか、後払いで払うのか、はたまた誰かからもらったクーポンで払うのか、こういったものが自由に組み合わされる、こういうような時代になってきていると思っております。このような技術の変化、サービスの変化によって今までになかった後払いサービスということで、一例として弊社のサービスをご紹介させていただきます。
それは、7ページ目でございまして、SLiDEという商品名でありますけれども、考え方としては、デビットカード、クレジットカードの中間といいましょうか、両方の要素を持ったようなサービスでございます。
デビットカード、最近普及が期待されている部分かと思いますが、やはり、いきなり口座の残高から落ちると、ほかの引き落としとかぶってしまうのではないか、クレジットカードのように、1回明細を確認したいというようなお声も非常に強くあると理解しています。
クレジットに関しましては、よく言われるとおり、浪費が不安だ、支払い日がわかりにくいので現金派だと、こういうような方も多くいらっしゃると思います。
そこで今回は、締め日をつくらないで、明細にはすぐ反映するものの、引き落としだけタンキングをして、後から引き落とすという技術を使いまして、すぐに引き落としたり、後から引き落としたりを自由に変更できる、このような機能を構築しております。
具体的なサービスのイメージは、次の8ページ目でございます。
一度明細を確認するという意味では、今週使った分は来週引き落とすという、例えば週払いを基本に設定しておきまして、口座の残高に余裕があるのであれば、すぐにというふうにスイッチを押せばその場でデビットになって引き落としがされる。ある程度口座に資金を余裕を持たしておきたいという場合は、翌週にしたり月末にしたりということで、残高を見ながらいつ払うのかということをコントロールできるようなサービスとしております。
このサービスに関しましては、9ページ目でございますけれども、当社のサービスという形よりも、まずは銀行様に提供しております。ファーストユーザーとしては、りそなグループ様に機能をご提供しておりまして、現在はりそな様がサービス主体になりますので、一時的な与信も含めてりそな様が行いまして、我々は機能を提供しているというところでサービスを開始しております。
このような後払いに関して、利用者がどのようなニーズがあるかの参考情報が10ページ目でございます。
こちらは、経済産業省のキャッシュレス・ビジョンも含め、博報堂さんのリサーチ結果が出ておりますけれども、キャッシュレス社会に関して、女性のほうが不安が多い。特に若い方のほうが不安が多いというような結果が出てきております。その理由は、浪費しそう、お金の感覚が麻痺しそうということで上がってきております。要するに、お金をしっかり管理できる方法というのは、特に若い方にニーズがあるのではなかろうかという形になっているかと思います。
これを1つの参考情報にしまして、弊社のほうでも、独自で2月に1,000人ほどインターネットリサーチを行いました。弊社のSLiDEという後払いサービスに関してですけども、利用意向を確認したものが左側になります。利用してみたいというところを青のグラフにしておりまして、ごらんいただきますと、やはり、仮説どおりといいましょうか、当初の狙いどおり、若年になるほど利用意向が強い。特に10代、20代では半分以上が利用したいというようなご意向をいただいているというものです。
また、こういったサービスの特にどこが使いやすいかという点が右側でございます。上位から表示しておりますが、やはり、口座の残高を見ながら、口座の残高に余裕があればすぐ払うと、こういったような支払いタイミングが管理できるですとか、明細を一旦確認できる、こういったようなニーズを捉えておりまして、非常にご評価をいただいているというところでございます。
こういった、消費者の方が柔軟な払い方や、少し後おかに払うですt、一旦明細を確認したいというようなニーズが若年の方に広がっておりますが、12ページ目、若い方を中心に、生活のスタイルの変化が今後はますます進んでいくのではなかろうかと思っております。あくまで概念の図、簡単な図ではございますけれどもご説明させていただきますと、これまでは、収入は月に1回とあとは賞与という形で、まとまった資金がまとまったタイミングで入ってくるケースが多かったと思います。これに対して支出も、休日にまとめてお買い物、ボーナスをもらうのでそれに向けてお買い物と、そういう意味では、資金の立てかえはまとまった金額というニーズが強かったのかなと思っています。
最近の動向としましては、収入に関しまして、給与を週払いでもらうようなケースがあったり、副業ですとかシェアリングによる収入。例えば、フリマアプリ等で物を売って得る収入なども、収入の小口化・多様化といったようなものかと思います。
これに対しまして、支出のほうも小口化・多頻度化が進んでいるかと思っておりまして、例えば、サブスクリプション型と言われるように、購入せずに月額利用したり、シェアリングのように購入せずに使った分だけ、あとはリアルタイムですぐに欲しい、こういったような環境変化があると思います。ですので、期間的にも金額的にも、今求められているのは、比較的小口のキャッシュフロー調整というようなニーズがありまして、週払いですとか、月末払いとこういったような小口支払いのニーズがあるのかなと思っております。
また、利用者だけでなく、先ほど金融庁の岡田参事官からもご説明がありましたけれども、いろんな形態の事業者から見ても、効率的に事務を行える、そんなメリットもあるのかと思っております。それが13ページ目の図でございまして、左上に書いてある口座直結型の支払いというものです。これは、決済するたび、買い物のたびに銀行口座に電文が飛んでいくという処理が行われるものであります。
これに対しまして右側、後払い型と書いてあります。いろいろな形態がありまして、まさに銀行がサービスを行う場合と、後払い事業者の場合と前払いに後払いを組み合わせたようなものもありますけども、買い物というのを多頻度で行うときに、銀行口座にはアクセスの頻度を減らせるという意味合いもあるかと思います。そういう意味では、必ずしも資金繰りというよりも、事業者側の効率化も含めてまとめて引き落とすようなニーズもあるのかなというところでございます。
そういう観点から、最後に、ご要望という形ではございますけども、14ページ目に記載をさせていただいております。
低リスク・小規模と、小口の資金のキャッシュフロー調整という意味合いのニーズが非常に強まっていると思います。これまで、後払いイコール借金といいますか、立てかえ払いでしたが、今はほんとうに明細を一度確認したいですとか、小口のキャッシュフローにあわせて支払いをまとめる、こういうニーズがしてきているのかなと思っております。
現状も、マンスリークリアの場合は特に規制がかかっているということではないと思いますけれども、これを前提としつつ、さらに小規模・低リスクな資金供与、こういったものに関しては柔軟な法規制がありますと、よりサービスの多様化、参入の多様化が図られるのではなかろうかと考えてございます。
駆け足でございますけれども、私からのご説明は以上となります。ありがとうございました。
 
【岩原座長】
どうもありがとうございました。
それでは、討議に移りたいと存じます。なお、審議時間が限られておりますので、ご発言は簡潔にお願いしたいと存じます。それでは、どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。翁さん、お願いします。

【翁メンバー】
ご説明ありがとうございました。数千円か、数万円の少額送金サービスのみを取り扱う場合に特化した規制を新設する場合ということでの問いかけですが、これも、やはり、今までどおり、機能とリスクの両面から検討することが有益だと思います。おそらく、こうした新しい少額サービスにつきましては、システミックリスク惹起の懸念は小さいと考えられますし、また、利用者保護を損なうリスクもほかの資金移動業者と比べれば小さくなるので、方向としては、規制は緩和する方向ではないかと思います。
また、資金移動業者のほか、プリペイド発行者にも共通する部分が多いというご指摘はそのとおりで、また、2分の1供託というのも、非常に古い法律で導入されたものであるということをご説明いただきまして、現代で合理的な根拠があるかどうかということもあわせて検討を進めていく必要があると思います。
供託の実態を伺いますと、供託の義務づけの規制というのは、事業者の方からもご説明がありましたけども、やはり、塩漬けになる資金を増やしたり、また、当該企業のリスク管理インセンティブの向上にとっても、それほど大きなメリットを持たないし、マクロ的に見ても、おそらくこれは必ずしも効率的な手法ではないように思われます。
1つ金融庁にお伺いしたいんですが、事務局資料の4ページの、供託・信託契約、保全契約、今どんな感じで事業者がそれを選んでいるのかということを後ほど教えていただければと思います。
もちろん非常に規模が大きくなって、国民の大半が使うといった(2)のようなご質問なんですが、これは、おそらく業者も大規模になると思いますし、破綻による影響は相応にあると思うんですが、連鎖的にリスクが広がるシステミックリスクを招くというのは若干異なるのかなと思います。本来、送金事業者全般は、ほんとうはスマートなやり方というのは保証なのではないかと私は感じておりますし、仮に当該義務を免除することも考えられるのではないかということなんですが、利用者の保護というのは依然として大事なので、そうだとしても、未決済残高を縮小する形でのリスク管理みたいなことが非常に重要で、そこがどのぐらいできるのかということが1つ重要な点ではないかと思っております。
また、小口送金の事業者について規制緩和するとしましても、利用者保護の視点では、1日何十件も送るといったような規制の潜脱行為などが起こらないようにすることも重要かなと思っております。
一方で、マネロンにつきましては、事業者の方もおっしゃっていたように、少額でも重要だと思いますし、e-KYCの活用をより発展させていっていただきたいし、銀行と連携した本人確認というのも、運用上の対応をどのように効率化できるかということをお考えいただくことが重要かと思います。
それから、ポストペイのシームレスなサービスを望む利用者が存在しているということはご説明で非常によくわかりましたので、こういったニーズに応えるための対応を考えることには賛成したいと思います。ただし、非常にこれはどういう動機でやっているかというのは、外見的には見えにくいので、その利用限度額を少額に限定するというようなこととか、利用者にそれなりに十分な支払能力があるというようなことが確認できるというようなことも重要でありますので、どういう条件であればこういったサービスを認めるかということもよく検討していく必要があるのではないかと思います。
以上でございます。

【岩原座長】
事務局、何かありますか。

【岡田信用制度参事官】
保全方法3種類についての実態ということでご質問がありました。もし、事業者サイドから見て、補足があれば後ほどお願いしたいと思いますが、供託、信託、保全につきまして、これらのうち保全契約ですと、手元に一定の現金等を準備しなければいけない必要が少ないという意味で、事業者さんの間では比較的魅力を感じるところと聞いています。他方でネックとなっているのが、保全契約を結ぶ銀行等からすると事業者についての一定のリスクを負担することになりますので、比較的成長して規模が大きくなった事業者さんであれば、リーズナブルな手数料で受けられますけれども、スタートアップなどですと、どうしてもそこはやむを得ないとところだと思うのですが、手数料が高くて、そういう場合は、結果的には法務局供託を手段として選んでいるというような実態があるように聞いております。

【岩原座長】
植田さん、お願いします。

【植田メンバー】
ありがとうございます。いつも非常に勉強になる資料を事務方及び事業者の方々ありがとうございました。
私からコメントと多少質問ですけれども、やはり、小口化するところで、いろいろな新規の事業者の方に出てきていただいて、イノベーションをどんどん促進していただくという方向は間違っていないと思いますので、そういう方向でやっていただいていいと思うんですけれども、そのときに、どのように、今までの規制を緩和していくかというところの議論だと思います。1つ、マネロンに関しては、やはり、緩和できないところだと思いますので、それをどうするかという問題です。1つ質問があるのは、先ほど池田さんかと思いましたけれども、e-KYCの使い勝手がまだちょっと悪いというようなことをおっしゃっていましたけれども、もし何か、こうなったらいい、どういうふうに使い勝手が悪くて、どうなったらいいかというのがもしあれば、後ほど教えていただければと思います。
それから、保全の方法なんですけれども、これは、やはり、資金移動業のもとでの小口になってきますと、LINE Payさんもそうでしょうけれども、いろんな事業者の方から、いわゆるプリペイド型とか、交通系のICカード、いろいろなものが、ほとんど利用者から見ると似たようなものでして区別がつかないので、区別がつかない中で選ぶとなると、それは、やはりコストが安いところを選ばざるを得ないんですが、そうなりますと、規制のコストというのが問題になってきます。なので、やはり、いろんなもとになっている、寄って立っている法体系、法律が違うにしても、最終的に規制のコストがほぼ似たようなものになってこないといけないと思うんです。だとすると、おそらく小口の資金移動のところで問題になってくるのは、交通系ICカードとか、前払式の、3ページに書いてあります比較表のところで、ほかのところが2分の1の供託でいいところが、全額だというところになっているのは多分1つの問題になるのかなと思うんです。が、同時に、当然、現金化できるできないというものがありますので、そこをどう考えるかなんですけど、私の目から見ますと、そうすると2分の1まで下げられるかどうかはともかくとして、100%という基準をちょっと下げていくというやり方も1つあるのかなと。50から80%ぐらい、今後、さらに議論を重ねる必要は多少あるかと思いますけども、ちょっと下げていくという形で小口に関しては保全の義務をちょっと緩くしてもいいのではないかと思います。
あとは、ここは、もう一つ質問なんですけれども、これも事務局の方から説明がありました3つの保全の方法のうち、金銭信託でしょうか、信託会社が使う保全の方法をとられていないような、あまり説明がなかったんです。けれども、今、聞いていますと、法務局の供託は問題があると、それから、銀行の保証もちょっと問題があるというようなことをおっしゃいましたけど、3つ目の信託というものがあるわけですね。おそらく、あまり使われていないというのは何か理由があるかと思うんです。けれども、これも、ある意味では信託というのは金融商品なわけですから、例えば、どのような金銭信託商品、どのような信託商品があれば使い勝手がよくなる、例えば保全する際にですね、保全の目的、どういうものがあれば使い勝手がよくなるんだろうかというものが、もしご意見ありましたら、丸山様、池田様からコメントをいただければと思います。
そして、ポストペイのほうなんですけれども、ポストペイのほうは私、完全には中身をよく知っているというわけではないんですけれども、例えば、証券市場、昔の商取引もそうでしょうけれども、昔は、5、10日決済とか、30日決済とかやっていましたので、今でも、例えば、ほんとうにリアルタイムかと言われたら、現金以外のものというのは、おそらく1秒ぐらいのずれは必ずあって、下手すると1分、もしくは1日の終わりとかいうことで、多少タイムラグはあるのが当たり前だと思うんです。ですから、ほんとうに純粋に、全くタイムラグなしでというと、これはもう現金しかないわけですので、タイムラグをどう考えるかということだと思うんです。例えば、1週間ごとの決済ぐらいまではタイムラグのうちだと。昔、いつまでさかのぼるかはわからない、昭和時代か江戸時代かわかりませんけれども、少なくとも昭和ぐらいのところであれば、5、10日決済ぐらいのところにさかのぼれば、1週間ぐらいあっても決済のうちというふうに考えてもいいような気がしますので、タイムラグで見ながら、一体どこまでを決済と呼んで、どこからを貸出と呼ぶかということになるのではないかと思います。もしも、例えば、5、10日決済のような間隔に従って、1週間であれば決済だというふうにするのであれば、そういうような方向で整理もできるのではないかなと思うんです。ただし、その場合は、もちろん貸出に当たらないわけですから、金利をとったりそういうことはしないというような了解での、あくまでも決済だという位置づけでするというようなことではないのかなと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは、ご質問について、池田さん、お願いします。

【池田参考人】
まず、e-KYCの使い勝手のところのご質問がございましたけれども、e-KYCにつきましては、まだ弊社も商用化といいますか、実用化を始めている段階ではございません。ですので、現状、本人確認資料を画像で提供していただいた後、後続の作業で、目視で確認するというところがございます。そこの体制の整備に加えまして、人件費が発生します。そういったものが全てシステム化できる規制にはなっておりませんので、そういったところでまだまだ改善の余地、それから、精度をどれだけ目視によって保つことができるのかというようなところの検証が必要だというのが使い勝手をまだ見きわめられない1つの理由です。
もう一つは、今度はユーザー側でございますけれども、ユーザーが画像の指示によってちょっと向きを変えたりするというようなことに対して、抵抗感なくやっていただけるようになるのか、ユーザビリティーをどう確保していくのかというところが、使い勝手の2つの課題と考えております。
それから、あと信託に関するご質問がございましたけれども、信託につきましても、やはり、手元に資金が残らない、それから、自由に使えないというところは、供託と非常に近いと考えております。それに対しまして、保証契約は手元に資金が残りますので、やはり、資金を二重に確保しなくていいというところの圧倒的な利便性がございますので、現状は、信託というのは特に選択肢として上がらなかったというのは、そういう背景でございます。

【岩原座長】
丸山さんからもお願いします。

【丸山参考人】
ありがとうございます。信託の件は、Fintech協会としての立場で発言させていただきます。
我々のほうでお聞きしている限りでは、信託を使っている会社さんはごくごくわずかはいらっしゃるように伺っておりますが、やはり、多くないと聞いております。理由は、今、まさに池田様がおっしゃりましたけれども、キャッシュ自体が手元に残らないという点、供託に近いという意味合いにおいては信託報酬もかかってくると。また、信託銀行様側でのいろいろ事務のお手間もあるようにというふうにも理解しておりますので、そういう意味では少し使いにくいものになっているのではなかろうかとは理解しております。
あと、ポストペイ決済のタイムラグという点ですと、我々の理解ですと、例えば、法人のBtoB取引でも月末支払いとか、あと、クレジットの1回払いも、通常の商取引の中で1カ月ぐらいであれば、それは決済といいましょうか、通常の取引の範疇と思っておりますので、今の一般的な例でいくと大体1カ月ぐらいは、もともとそういう理解に入っていて、それをさらにさらに短くしているというサービスも出てきているということかと理解しております。

【岩原座長】
よろしいでしょうか。それでは、坂さん、お願いします。

【坂メンバー】
ありがとうございました。それぞれの論点について若干発言させていただければと思います。
まず、少額サービスについては、全体の規制のバランスのあり方をあわせて検討すべきではないかと思っております。事務局の資料1の中で、3ページに全体像が示されていますけども、特に3点気になっている点がございます。
1つは、資金移動業者の利用者資金の受入れで、受入れ上限額と期間については上限を決めておく必要があるのではないかと思います。
2つ目が、前払式支払い手段についてです。これについては、5ページにありますような歴史をたどっておりますが、汎用性が高まっていることに鑑みますれば、第三者型前払式支払手段の保全措置については、資金移動業者と同様に、むしろ、全額保全とするべきではないかと思います。それから、マネロン対策についても、第三者型については犯収法上の確認義務の対象とすることを、検討すべきではないかと思います。
一応、その点を留保した上ですが、少額サービスについては、緩和された規制枠組みを設けるという考え方は、一般論としては理解できなくはないですが、その必要性については慎重な検討が必要かと思いますし、具体的にどういう枠組みを考えていくのかということについても慎重な検討が必要だと思います。
資料2の1.(1)のところについて、資金移動業に関し、供託による資金拘束を避けたいというお話が先ほど来出ておりますけども、お話に出ておりますとおり、これを避けるということであれば、保全契約という選択肢があり得ると思います。基本的に、利用者からの受入れ資金は、預かり資産でありますので、これを事業者の事業のために使うことは、本来の趣旨に反する面があるのではないかと思います。
保全措置に関する規制緩和は、参入を容易にする面がある反面、事業者が本来利用者のために確保されるべき資金を事業上のリスクにさらす面があるのではないかと思います。いわば、事業者の将来の可能性とリスクを利用者に負わせるということであって、経済的合理性や事業者と利用者とのリスク負担のバランスという点では疑問があります。特にシード段階、事業体が成長の早い段階であればあるほどリスクが高い点も勘案する必要があろうかと思います。
それから、緩和を考える場合には、いかなる金額を少額とするかも問題と思います。この点、同じ金額でも、低所得層と高所得層では影響が異なることにも留意が必要かと思います。緩和の影響は、低所得層ほど大きなものとなると思います。例えば、生活保護世帯等では、数千円でも相当に大きな金額となるのではないかと思います。
それから、規制を緩和すれば参入が容易になるという面はありますけども、他方で、体制が十分でない事業者により利用者が不利益をこうむるというおそれが増すという面もあろうかと思います。利用者に対してサービスを提供する以上、相応の体制整備が必要で、それを促すには相応のハードルが必要ではないかと考えます。
次に、ポストペイについては、一定期間の送金サービス利用代金をまとめて利用者の銀行口座から引き落とす行うサービスというふうに紹介されていますけれども、この一定期間をどのぐらいの期間というふうに考えるのかというところが1つ問題かと思います。
ポストペイのサービスの具体的中身を見てみますと、基本的に行われるサービスは、商品等購入代金の支払い、送金と、一定期間後の銀行口座の引き落とし、それから、送金から引き落としまでの与信ということになろうかと思います。基本的に、送金、引き落としが確実に行われる必要があるということになろうかと思いますし、また、過剰な与信が行われないようにする必要もあろうかと思います。適切な情報提供や個人情報保護も必要となってくると思います。
基本的には、ポストペイ、後払いについては、お話ありましたとおり、従来は割賦販売法の信用購入あっせんに該当するというふうに整理がされてきたところと思います。今日の事務局資料のご紹介の中には、資金移動業と貸金業の組み合わせというスキームが紹介されておりますけども、ポストペイが個別の商品等の購入と関連性が強いことに鑑みますと、この構成はやや違和感を感じるところであります。特に比較的長い期間の後払いである場合に、抗弁の接続を主張し得なくなるということになりますと、これは相当の違和感があるところであります。
基本的に、こうした点を考える必要はあろうかと思いますけれども、比較的短期のものについては、資料2の2.(1)に関係するところですけれども、これについては、割賦販売法の改正当時の議論が多少参考になるところがあるのではないかと思います。平成28年の割賦販売法改正の際には、いわゆるマンスリークリア取引について議論がされて、この中では、悪質業者によりマンスリークリアの悪用事例が増勢にあるということも指摘をされたところであります。
このときに、マンスリークリア取引の特徴ということが言われておりまして、先ほど来少しあるように、決済の期日が少しずれるという性格が強いということですとか、あるいは分割払い、リボ払いのように、商品等の購入への誘引性は必ずしも高くないのではないかといった特性が指摘されているところと思います。この指摘は、ある程度ポストペイにも当てはまる面があるというふうに考えられなくはないんですけども、他方で、フィンテックによるサービス提供の特性に鑑みますと、購入への誘引性という点については今一歩慎重な検討が必要なのではないかと思っています。フィンテックでは、商品やサービスへの誘導がシームレスになり得ると、いわば、抵抗なく購入に導かれるという傾向が強いのではないかと思います。現実の店舗を訪れて購入するのとスマホの操作だけで購入できるのでは状況がかなり違います。ターゲティング広告やステルスマーケティングなどもあります。そうすると、ポストペイサービスは、むしろ、購入への誘引が相応にあり得るということを前提に検討する必要があるのではないかと思います。人間の心理において、将来の負担は軽く見積もられがちであるという点は、行動経済学等からも指摘されておるところで、将来の負担を軽く見積もって、ポストペイの引き落としに不足が生じた個人が、不足分を他からの借り入れに頼らざるを得なくなくなるということにも留意が必要かと思います。
ポストペイについて、ニーズがある利用者層が、もし、手元の資金がなくて、給料が入ったときにまとめて払いたいというようなところにあり得るとすれば、そういった方々との関係では、経済的に余裕がない利用者がシームレスな誘導に導かれて、過剰な利用に陥ってしまう危険というものを考えなければならないのではないかと思います。過剰与信や過剰購入等の対策については、できるだけその入り口をつくらないという観点からの検討も必要だと思います。
それから、もう1点、先ほども少しありましたが、悪質業者の参入を防ぐということも、この分野では重要な課題となってきているところだと思います。割賦販売法の改正の際にも議論があったところでありますけども、結局、規制の緩いものができますと、悪質業者にも使い勝手がよくなって悪い業者が入ってくるということが起こり得ますし、実際起こっていることではないかと思います。
現在、割賦販売法、クレジットの分野では、加盟店調査義務ですとか、あるいは加盟店情報管理制度等によって、こういったことができるだけ起こらないように、その対策を講じているところと思います。その努力がされているところで、そういった努力に対して、穴をつくらないような配慮も重要なのではないかと思います。こういった観点を含めて、どういったところでこうした課題に対応できるかということをあわせて検討する必要があるのではないかと考えております。
以上です。

【岩原座長】
それでは、戸村さん、お願いします。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。特に参考人の方々には大変勉強になるご説明をいただき、ありがとうございました。
最初のコメントは雑感で、今日の参考人の方々への直接のコメントというわけではないんですけれども、今日来られている2社の方々のようにモラールの高い企業というのは当然あって、そういうモラールの高い事業者には規制が不必要だと、個々の事業者が感じておられるというのはよくわかる話でございまして、私も個人として規制対象になるときはそう感じるときもあります。
ただ、坂先生がおっしゃったように、規制で悪徳事業者を排除するからマーケットが成り立つという側面もあるので、規制を考えるときにはモラールの高い企業の目線のみならず、悪徳事業者の目線はここにはおられないわけですけれども、そういう目線も想像する必要があると感じております。
各論の意見と、最後、質問を2点させていただきたいんですが、各論の個人的な意見を表明したいんですけれども、少額サービスについては、これは私の個人的な意見ですけれども、利用者が一々事業者の健全性をチェックする費用が便益に見合わない可能性があるので、少額サービスであるからこそ、利用者の代理として金融庁によるスクリーニングとモニタリングがないと、少額サービスの利用が進まないということもあり得ると思っております。特に新規参入を促進するという観点からは、まだ名の知れていない新規参入事業者を金融庁がスクリーニングして一定の安全性を保証するということがないと、なかなか利用者の利用が進まないのではないかと思います。そういう際に、金融庁のリソースも限られておりますので、多数の事業者について細かいモニタリングを行うリソースがないという場合は、本日ご指摘のあった非効率性というのはあるけれども、やむを得ず、外形的な財務規制や供託のような流動性規制で補わざるを得ないということになるのかなと思います。
次の点として、銀行依拠による本人確認についてですが、利用者からすると、こういうものができるだけコストが安く利用できるとよいというのはそのとおりだと思うんですけれども、本人確認をしてしまった銀行にとっては、事業上のアセットだと思うので、その価値は認める必要があると思います。なので、理想的には、資金移動業者と銀行の間の交渉で、そのアセットの使用料が妥当な水準で決まるのがいいと思いますので、仮に銀行側が寡占的でアッパーハンドを持っているというような状況がもしあるのであれば、本人確認サービスを行う事業者の競争が増えると望ましいと思います。そういう意味では、すぐに規制緩和というか、規制を取り払うというふうにはならないのではないかと思います。
最後の個人的意見の4点目としては、ポストペイについては、今後のあり得べき方向性としては、与信を増やすというよりは、リアルタイムペイの処理をバックグラウンドで効率的に行うような技術革新を促して、利用者体験としては、ポストペイ、リアルタイムペイをあまり意識せずにシームレスに決済が行われるというようなことになるとよいのではないかと思います。こう申し上げる理由は、これまで銀行間決済のほうでは過去数十年イノベーションが進んできたわけですけれども、方向性としては、リアルタイムのグロス決済をできるだけ増やして、金融システム全体として無駄な信用リスクを排除しようという動きが続いてきましたので、リテール決済も同様の流れになるのではないかと思います。そうすると、規制があることでかえって効率的なリアルタイムペイの技術革新を促すということがあってもよいのではないかと思います。
以下は、2点質問なんですけれども、それぞれ、LINE Payの池田様とインフキュリオン・グループの丸山様に1点ずつ質問させていただきたいと思うんですけれども、まず、池田様への質問としては、小規模事業者にとって供託義務の負担が大きいということは大いにあり得ると思うんですけれども、そういう場合、包括的に銀行などと保全契約を結んでしまえばよいというのが回答になると思うんですけれども、なぜ保全契約のほうを使わずに供託義務そのものをなくしてしまったほうがよいと考えるのか、もしご意見があれば伺いたいと思います。その理由としては、例えば、銀行等が寡占的な地位を利用して、信用リスク以上の過大な保証料を要求するであるとか、保全契約の提供そのものを断るであるとか、そういった寡占の問題があり得ると思います。
仮に、お答えを聞く前の私の個人的な意見ですけれども、寡占の問題がある場合は、保全契約の提供先となり得る金融機関の範囲を広げるとか、競争促進の方向で法規制を変えるべきであって、利用者保護をなくすというのはあまり妥当な方向性ではないと思うんですけれども、事実確認として、銀行サイドに寡占的な振る舞いというものを感じられておられるか、答えにくいと思うんですけれども、お答えできる範囲で伺いたいというのが池田様への質問です。
丸山様への質問は、ポストペイについてですけれども、簡単な質問で、小規模のポストペイだとクレジットカード事業者としてサービスを提供するのが難しいという問題なのか、規模を問わず新しいサービスに割賦販売法が対応できていないという問題なのか、その点について確認させていただければ幸いです。
以上です。

【岩原座長】
それでは、まず、池田さん、お願いします。

【池田参考人】
それでは、先ほどの保全契約に関するご質問の部分をご回答いたします。
我々は、小規模事業者ではありませんので、そういう意味では、直接、銀行がどういう態度をとられているのかというのは、正直存じ上げない部分ではございます。ただ、一方で、銀行が小規模なフィンテックカンパニーに出資をしているケースがあるので、当然、そういう企業に対しては、銀行は保全の契約については前向きに応じるのではないかと思っております。
一方で、そういうような銀行の出資等も得られていない、ほんとうに独立したようなフィンテック企業が、やはり、銀行から見ると、おそらく最初のころというのはリスクの塊ということもあろうと思いますので、適切なサポートが得られずに、アイデア、それからイノベーティブな取組みというのが世に出ないというリスクもはらんでいるのかなと思っております。
先ほど先生のほうからお話がありました保証ができる、保全契約ができる銀行が増えることによって競争が活発になれば、そういう部分に対しては1つ解が出るのではないかというお話もありましたけれども、そういう可能性は多分にあるのかもしれないと個人的には思っております。今、全ての銀行が保全契約をできるわけではないと思っておりますので、いろいろな銀行が参入することで競争が活発になる、そういうことで、今までサポートが得られなかったフィンテックカンパニーのようなところが発達していく、そういうことは十分あり得るのではないかと思います。

【岩原座長】
それでは、丸山さん、お願いします。

【丸山参考人】
ポストペイのところですけれども、まさに大きく2つの考え方がありますが、まず、割賦販売法に関しても、実は割賦販売小委員会でご意見を申し上げさせていただきましたが、支払可能額の調査といったところに金額の考え方を導入したり、支払可能額の調査方法に関しても新たな技術を使って柔軟に対応する方法などがあるというよいのではないかなと考えてございます。
ここは、私も何か意見があるわけではないですが、先ほどのとおり、割賦販売法ではない方法によるポストペイのようなものも考えられるというところでございますが、我々としては、割賦販売法もそうですし、そうではない方法も含めて、同じような与信判断方法ですとか、リスクベースなアプローチがあると、何法かはさておき、やる事業者としては、統一的に事務が行えるというメリットはあるのではなかろうかと思っております。

【岩原座長】
よろしいですか。
それでは、次に、後藤さんお願いします。

【後藤メンバー】
どうもありがとうございます。少額サービスとポストペイについて幾つかの意見と質問をさせていただきたいと思います。
まず、少額サービスのほうですけれども、この問題につきまして、前払式支払手段につきましては、現時点で、自家型は第三者型よりも財務規制が緩和されているわけですけれども、その趣旨は何かということを考えますと、これは、例えばクリーニング店のクーポン券のように、特定のお店でしか使えないものは、購入される額には自然と消費者側が買う額に限度があり、そうするとリスクも少ないし、また、そのお店が閉店してしまったら使えなくなるということは消費者も当然理解できるはずだからだと思います。
そうしますと、資金移動の中の少額サービスというのは、特定の店舗でしか使えないというわけではないわけですけれども、額の上限があるのでリスクは限定されているので、チャージした額の全額の返金が完全に保証されているわけではないということが消費者に理解されていれば、理解さえできていればというところがおそらく評価が分かれるところなのかもしれませんけれども、そういうことが言えるのであれば、自家型の前払式支払手段と同様に考えて、規制を緩和すると言うことは十分考えられるのではないかと思っております。もちろん、問題が起きてしまった場合のインパクトは、特に低所得者層について大きいのではないかという坂メンバーからのご指摘もありまして、その点については全く同意するところでありますけれども、ただ、こういう新しいサービスが生まれることによって、便益を大きく受ける主体もおそらく低所得者層であると思っております。銀行の手数料はなかなか高かったりするわけですけれども、1件300円などの振込の手数料がもし低廉化されるのであれば、これは低所得者層にとって非常に大きな利益になるだろうというメリット面も考えるべきはないかと思っております。
その上で、仮に規制を緩和するとして、どうしていくのがいいだろうかということなんですけれども、この点については、金融庁さんに1点ご質問がございます。今現在、資金移動業については供託義務が全額で、前払式支払手段については半額であると言われているのですけれども、条文上は、何の全額で何の半額であるかという基準が違って規定されています。前払式支払手段の方は、基準日の未使用残高ということになっておりまして、基準日は3月末と9月末で決められているわけですが、この未使用残高というのは、商品券の販売額であったり、電子マネーにチャージされた額など、明らかであると思うのですが、資金移動業の方は、前の週で要履行保証額が一番高かった日の全額ということになっています。要履行保証額というのは何かというと、資金決済法の43条2項によると、各営業日における未達債務の額とそれに関する費用であって、未達債務の額というのは、資金移動業者がその行う為替取引に関し負担する債務の額で内閣府令で定めるところに算出した額ということになっているわけですが、この意味が私自身も正確に理解していないところもあるんですけれども、例えば、LINE Payさんのアカウントに5万円をとりあえずチャージして、そのうちの1万円だけ送金することにしましたという場合には、要履行保証額は、チャージされている5万円全部になるのか、そうであれば、これは前払式支払い手段と同じわけですけれども、そうではなくて1万円だけなのか、どちらでしょうか。文言からは、実際に資金移動が依頼されている1万円だけというのに近いようにも読めるように思うのですが、そうすると、前払式支払手段の場合とは大分性格が違う規制だということになるので、単純に全額半額というところだけで比べていい問題ではないということになると思うんですが、私の思い過ごしかもしれません。この点については、ひょっとしたらわかっていないのは私だけなのかもしれないですけれども、全員でイメージを共有できておいたほうがいいのではないかと思っております。
前払式支払手段の場合にチャージされている分の半額とされている根拠は、全額が直ちに使われるわけではないと考えられるからであると思います。保証として半額で本当に十分なのかは分かりませんが、銀行でも全額がすぐに引き出されるわけではないということが規制の根拠となっているわけですから、それは一定の合理性がある規制なのかと思っております。他方で、資金が動いている部分については、決済である以上、その全額を保全しなければいけないというのは、預金保険法にも見られる考え方であり、このような性格の違いも考えて規制をかけていったほうがいいのかなと思っております。
たしか翁メンバーからだと思いますが、資金の移動を効率的に迅速にやれば、未決済残高を縮小させることができ、それを促すべきではないかというご発言がありまして、それには全く賛同するところであります。ただ、業者の自由に任せておけばそうなるかというとそうではなくて、当局の監督が一定程度必要になるのではないかと思います。規制が緩和された類型であっても、おそらく登録制は維持するのかと思いますが、金融庁がそこに対してしっかりとモニタリングをされるのだろうと信じております。
LINE Payさんに対してお伺いしたいのですが、先ほどのお話で、決済と資金移動については1万円未満が非常に多くて、残りは5万円ぐらいであるということであったわけですけれども、これは動かされるお金の額をご紹介いただいたのだと思います。他方で、例えば、飲み会で幹事役をやった場合にはみんなからお金を受け取ることになり、3,000円を20人から集めるとすると6万円が入ってくるわけですけれども、自分でチャージできる額の上限や、そのアカウントに滞留させられる額の上限というのは設定されているのでしょうか。
また、坂メンバーから、引き出しの期間というお話もありました。確かに、資金がずっとたまり続けていくとすると、その分リスクが高まっていくということもあるかと思います。この点に対処するために、資金を一定期間以内に引き出すことを促したりしているのでしょうか。また、引き出すときに出金の手数料がかかったりすると、できるだけプールさせておこうという逆のインセンティブが利用者には生じるかと思うのですが、そのあたりはどういった扱いになっているのかということを可能な範囲でご紹介いただければありがたく存じます。
資料2の1.(3)の少額サービスについて規制を緩和した場合には、プリペイドカードのほうにも当てはまるのではないかということですが、これはおそらく、第三者型のプリペイドカードで少額な場合ということかと思いますが、確かに、規制のアービトラージを防ぐためには差をなくしていったほうがいいかとは思うのですけれども、先ほど申し上げた、動いているお金の話なのか、たまっているお金の話なのかというところでは、やはり、質が違う側面もありますので、その点に留意した上でそろえていくのが良いかと思います。
ポストペイサービスのほうですけれども、こちらはあまり申し上げることはないのですが、インフキュリオン・グループの丸山様のご発表の最後に規制緩和のご要望があったのですが、どなたかからもご発言がありましたように、今現在、割賦販売法では、マンスリークリア方式の場合にはクレジットカードの番号を管理しなければいけないというのが入っているぐらいで、抗弁の接続などは要求されていないわけです。これを使えば、今でもできるのではないかというふうにも思ったのですけれども、逆に、今の割賦販売法のマンスリークリア方式ではできないことをやろうとされているのだとすると、それはどの部分なのかということが、ご紹介いただいた事業内容では、わからなかった部分がございます。坂先生からのご指摘もありましたけれども、現在の割賦販売法は、今月払って翌月の一括払いということで、与信期間が最大2カ月未満であれば、消費者が自分で管理できるでしょうということを考えているのだと思います。この範囲以上のことをやりたいというお話であったのか、それとも、翌月払いなのだけれども、割賦販売法は商品の購入と結びついてカードを渡してということになっているわけですが、そういう形ではないものをやりたいということなのか。後者であれば、リスクの範囲としては割賦販売法のマンスリークリア方式と同じであるにも関わらず、現在は貸金業法とかに引っかかってしまうので、そこをそろえてほしいという話ということになるのだと思います。このどちらなのか、両方なのかもしれないんですけど、その点をクリアにしていただけると議論の役に立つのではないかなと思っております。どうぞよろしくお願いします。

【岩原座長】
それでは、岡田さん。

【岡田信用制度参事官】
資金移動業の場合の供託が必要な額ですが、先ほどの先生の例で言うと5万円、いわゆる「チャージ」ないし「預かっている」金額全額ということになります。資金移動業者がそういったものを預かっているのは、結局、為替取引というか、送金の準備として受け入れているということですので、その全体について、未達債務の額に算入される、その辺はそういう理解でおります。

【岩原座長】
それでは次に、丸山さん、お願いします。

【丸山参考人】
ありがとうございます。緩和の要望というところに関しましては、まさに今、我々が行っているサービスの範囲というところにおいては、現状の法制度でできているということでございます。まだ確定しているわけじゃないんですが、今後このようなサービスができたらよいんじゃないかという考え方、それから他社さんでやられているようなサービスを考えたときに、一部緩和などがあるとよいんじゃないかなと思っている部分を申し上げます。
まず1点が、先ほど少し触れさせていただきましたが、割賦販売法になるケースもございます。なるケースというのは、2カ月、3回以上にわたってしまうようなニーズもありますが、その際に例えば金額、リスク、与信方法等を少し柔軟化できるとよいのではないのかなと思っているところがございます。
また、弊社のサービスはあくまでも商品の立て替えの時期をずらすというところですが、我々の概念ではデビットもプリペイドもクレジットもある意味、行き来できる環境ということになりますと、プリペイドに後からチャージをするというサービスも今後、考えられるんじゃないかなと思っております。この場合、何法に当たるのかというとなかなか難しいところはあると思いますが、仮に貸金業の与信枠から一部を使ってチャージをするみたいな概念のときに、そこまで大きな金額ではなく小さくチャージみたいなことであれば、必ずしも貸金業法の規定の中でも一部緩和のところがないのか。
要望だけを申し上げますと、割賦販売法も貸金業法も両方、サービスとしては今後触れる部分がありますが、事務手続ですとか与信方法等々は共通といいましょうか、同じ概念で進められると、より事業者としても消費者としても進めやすいのではないのかなと思っているところでございます。

【岩原座長】
それでは次に、LINE Payの池田さん、お願いします。

【池田参考人】
それでは、先ほどの上限額、それから滞留期間等についてのご質問の部分をご回答申し上げます。
まず、資金移動のアカウントにつきましては、上限額は100万円となっております。これを超えての受入れはできないという状況です。
それから、ユーザーの方は、1週間から2週間分くらいの決済等に必要な金額をチャージされて使うのが一般的でございます。先ほどお話が出たように、割り勘をして高額の資金が入ってきたようなケース、これはやはりLINE Payの残高の中に置いておきますと、結局、これはLINE Payでしか使えません。ですので、ユーザーの方というのは、それをSuicaに入れたい、それから銀行の引き落としに回したいとか、多分いろいろな活用をされたいと思っていると思われますので、これは我々から積極的に働きかけるわけではないんですけれども、銀行の振込み、それからATMからの出金、こういったものを通じて出されているケースが多いと考えております。
先ほど、送金の1割ぐらいが出金の件数だと申し上げましたけれども、こういうことがあらわれていると思いますし、それから、実際出金をされる金額というのは、資金移動、LINE Payのユーザー同士の送金の額に比べますと数倍の単価でございますので、やはりそういったまとまった資金が入ってきたので出す、それをほかに使いたいということがあらわれているんだと考えております。

【岩原座長】
よろしいですか。

【後藤メンバー】
出金をするときに、例えば自分の銀行口座に振り込むというときには、銀行送金の手数料はかかるが、LINEさんとしては、それ以外にはとってないという理解でよろしいのでしょうか。

【岩原座長】
池田さん。

【池田参考人】
そこの部分は、各銀行によって送金の手数料は違ったりしますけれども、一律実費相当の金額ということで弊社が手数料をいただいております。そこの部分で特に我々としては稼ごうということは考えてないと。

【岩原座長】
いいですか。それでは、岩下さん、お願いします。

【岩下メンバー】
どうもありがとうございます。今ちょうどLINE Payさんのほうから入金の上限額が100万円というご説明がありましたが、たしか1回当たりの入金額というのはもっと低いんでしたよね。

【池田参考人】
はい。銀行ごとによりまして、銀行の連携で言いますと、10万円ぐらいが上限になっています。

【岩下メンバー】
10万円のケースと4万9千幾らのケースというのがあるのは一応調べて知っています。

【池田参考人】
ありがとうございます。

【岩下メンバー】
そういうものがあって、ただ、トータルとしては、実はやはり総額として100万円程度の金額を受け入れることは資金決済法上の、ある意味上限に当たるものとして持ってらっしゃるわけですね。かつ、それを、例えばATMから引き出す場合には、これはATM側でもちろん引き出し上限が、例えばセブン銀行さんで50万円だとかいうのがあるのは別とすれば、例えば100万円引き出すことは可能なんですか。

【池田参考人】
現状はセブン銀行さんでの出金につきましては、1回1万円という上限が決まっておりますので、回数を重ねればそれは可能でございます。

【岩下メンバー】
手数料はその分かかるということですね。

【池田参考人】
そうですね。

【岩下メンバー】
なるほど。わかりました。なぜこういうことを聞くかと申しますと、基本的に今回のお話にあるような少額決済、あるいはポストペイの決済といったような新しいものについては、これは積極的に広めていって、利用者の利便性を高めるということがまず大事であろうという認識は持っております。
その一方で、往々にして、これがかつての銀行のこういう業務に当たる、あるいは割賦販売法上のこういうルールに当たるということを過去の例を引き合いに出して、だから、この制限でよいのであるということになりがちなところなんですけれども、私自身は新しい技術にはやはり新しいリスクがあるんだろうと思うんですね。
例えば、これは相当性質が違うものなのでそのまま適用することは全く意味がないんですけれども、バンクマスカット事件というのが数年前にありました。この事件においては、とある中東系の銀行が大量の銀行内のシステムの不正操作を行われた上で、その資金を世界各国のATMで一斉に引き出すということで、日本からも相当な金額の不正出金があったことが知られております。その後、出し子等は逮捕されておりますが。
こういった事件というのは、少なくとも当時のATMの国際ネットワークをつくったときには、こんな事件が起こるなどということは多分考えてなかったはずなんですね。実際に被害に遭われたのは日本の場合はセブン銀行さんでしたが、セブン銀行さんは国際的なルールに基づいて出金を取り扱っただけですので、それに対する損害というものが生じたわけではなかったわけですけれども、ただ、トータルとして見ると、相当な規模の国際的な不正犯罪のある一部分を結果として担わされてしまったという事件があったのです。
例えば少額決済でも件数が増えればという話があります。金額がどういう形で使われるのかということについてチェックは、多分、従来の使い方がこうであったから、お客様がこう使うのであろうと思ってなされます。例えば極端な話をしてしまえば、メルカリというフリマアプリがありまして、私も時々使っておりますけれども、ここにやたらと1万円札が出品されたんですね。それが禁止されると、今度はチャージ済みのSuicaが出品されるという感じで、これはある意味で、そういうものによってさまざまな新しい取引が可能になった結果、それを使って何とかルールの裏をかこうという人たちがかなり大量にやってくるという感じがいたします。
利用者が通常の業務を使っている限りにおいては想定できるリスクというのはこの程度であり、そのために必要な供託はこうであり、リスク管理の手法はこうでありということは判断できると思います。しかし、ルールの裏をかこうとする人のためのより高いセキュリティーとかリアルタイムでの資金の利用状況のフォローアップであるとか、そういうことが多分必要になるのではないかと思うんです。
そういう意味では、実はそういうところには週次ベースの供託金をどこに入れているということはあんまり有効ではない可能性がありますし、また大規模なアタックが行われれば、それは個々の利用者というよりは業者さんに大きなダメージが行って、それが結果としてサービスの提供が不能になるということで利用者の不便になるというリスクがありますので、そういうことをきちんと牽制するというか、そういうことがないように常にアンテナを高くするような、そういう方向性の規制が必要だと思います。
全体的な規制を弱めることはいいことだと思いますし、今のルールのこの何万円規制のここにこう当たるどうという議論はいいんですけど、新しいものに対しては、基本的に伝統的な規制というのは対応してないはずなので、新しい規制についてどのようなセキュリティー対策を考えて、どのように検討されておられるのかということをぜひ、特にネーションワイドに広がる、あるいはインターナショナルに広がるかもしれないLINE Payさんなり、インフキュリオン・グループさんなり、その辺のお考えをお聞きできればと思っています。
もう一つ思うのは、LINEというのは、たしか日本国内だと8,000万人ぐらいですけど、一応グローバルだと4億人とか5億人とかおっしゃっていましたっけ。

【池田参考人】
今、約1億6,000万です。

【岩下メンバー】
約1億6,000万ですか。そうすると、その意味では、フェイスブックほどではないにしても、LINEというアプリ自体は一緒ですから、国際的に広がっているLINEユーザーの間での送金というのは理屈の上では可能なわけですよね。これは海外のLINEのユーザーでも、例えば日本で銀行口座を開設すれば海外でLINE Payで送金することは、これは少なくとも現実的には可能になっているという理解でよろしいですか。

【池田参考人】
日本でKYCを済ませたユーザーが海外に行って送金をするということですね。それは可能です。

【岩下メンバー】 多分この手の話は国際的な形でどの程度広がり得るのかという話についても、国境をまたいだものとか、あるいは異なる法管轄地域に対しての送金というのは別の意味での国際送金になると思うので、それは当然いろいろなチェックを設けていらっしゃるんだとは思うんですけれども、そこについてどのようなお考えなのかということもぜひお聞きできればと思うんですが、いかがでございましょうか。

【岩原座長】
では、池田さん、お願いします。

【池田参考人】
最後の国際送金の部分ではございますけれども、まず、ここの考え方としましては、海外にいるユーザーが日本のインターネットバンキングを使って送金をしたりするのと同じでございますので、それは国外にいるユーザーがスマホを操作したからといって、日本国内での送金が国際送金に当たるわけではないとは考えております。
それから、送金のつながりで国際的な広がりということが話題に出ましたので申し上げますと、今、各国のユーザー間、ユーザーが日本に来たり、それから海外に行ったりということで、現地で決済はまだできない状況ではありますけれども、まず、決済からインバウンドの需要、アウトバウンドの需要というのがございますので、決済についてはクロスボーダーでできるようにしていきたいと考えております。
送金のほうは、それほど各国間のユーザー同士で送金をするニーズというのがまだ大きくなっておりませんので、現状、具体的に何か考えているわけではありませんけれども、そこの部分は将来的な課題であるとは考えております。
それから、新しい取組みについての新しいリスクというお話がありましたけれども、我々も決済サービスを提供しているプレーヤーでございますので、その部分については非常に気を遣っております。アカウントの不審な動きであったり、それからアカウントを乗っ取ったりしようとするような動きについてはモニタリングをしておりまして、都度何かあればその閾値を見直す等によりまして、未然に防げるような体制を構築しております。
それは今後も当然ながら新しい不正のやり方、乗っ取りの仕方というものが出てこようと思いますので、そこの部分は多分、絶え間ない努力を続けなければいけない部分だと考えております。
ちょっと抽象的な回答ではございますけれども、以上でございます。

【岩原座長】
よろしいですか。それでは、次に大野さん、お願いします。

【大野メンバー】
ありがとうございます。大変興味深いプレゼンテーションをありがとうございました。たくさんのメンバーの方が既におっしゃったので、ポイントを絞って申し上げたいと思います。
まず少額サービスのところは、私も今の岩下さんとかなり似たポイントなんですけれども、新しい動き、イノベーションの動きにかかわる新しいリスクへの対応ということが重要と考えます。全体としましては、少額サービスについて、リスクベースアプローチで緩和の余地があるのではないかというところについては、事務局のご提言と問題提起に全く賛成します。
そのうえで、どういったところに注意すればいいかということの1つに新しいリスクが上げられます。それはもちろんKYC、アンチマネーロンダリングということがありますが、もう一つは、新しいテクノロジーや新しい技術を活用したようなネットワークが持つリスクについて、どのように堅牢性というか安全性を確保するかということです。個々のミクロの話というよりも全体のシステムについての安全性ということについて気をつけなければいけないのではないかと思います。
その場合、どういう方法論で対応するかということについては、1つは、当局の監督、届出のときのいろいろな審査があります。あと、全体としての新しいサービスの抜け道、あるいは犯罪に対する抵抗力をどういうふうに見るかということもあります。むしろ概念的にいえば、サイバーアタックみたいなものに対してどれだけちゃんとした防御ができるかというところの視点というのがやはり重要ではないかと思います。
もう一つは保全、供託金のところですけれども、この表を見ても、今の3つの業態に対する全額、それから半額が区々になっている、ここのところをもう少しすっきりと合理的、効率的に整理する検討をしていただくのがいいのではないかと思います。そのときには、翁メンバーもおっしゃっていましたけれども、未決済の残高のようなものをどれだけ圧縮するかという業者の方々のご努力というのももちろん重要だと思います。
それから、供託とともにということで言いますと、LINE Payさんとか、インフキュリオン・グループさんよりもっと新しく入ってくる方々に対する保証と言うか、バックアップですね、それを組む先が既存の銀行であってもちろんいいわけですし、今までそういうサービスを提供していないようなもっと広義の金融機関の方々も含めてもしそこにニーズがあるのであれば、保証サービスを拡充するような面での競争が促進されるような工夫というものも魅力的な方法ではないかと感じたところです。
それから、後者のポストペイサービスについては、こちらの方も参考人のお話を伺って、いわゆるおまとめサービス、これを進めるのは非常に利用者にとっては利便性の向上につながるのではないかと感じました。要は、利用者サイドのニーズがどこにあるのかといったところを、もう既にチェックされていると思いますけれども、それに的を絞ってできるだけ短い期間に、期間というのは決済までの期間という意味ですけれども、短い期間に限定してサービスの拡充を探るというのが目指し得る方向性ではないかなと思います。
その際の留意点としては、先ほどのお話を伺っていると、1カ月をあまり超えてのニーズというのは少ないのかなと私は感じましたが、そうであれば、もちろん許容範囲になると思います。その上でもし与信的な部分が加わってくるにつれて貸倒れリスクに対するしっかりとした対応であるとか、坂メンバーをはじめ、何人の方もおっしゃいましたけれども、多重債務問題の引き金にならないような配慮であるとか、それから、もちろん悪質な業者の参入に対する防波堤をしっかりさせる、こういったことを考えながら進めていくのがいいのではないかと感じました。
以上です。ありがとうございます。

【岩原座長】
それでは次に、舩津さん、お願いします。

【舩津メンバー】
ありがとうございます。まず少額サービスについてですが、少額サービスそれ自体を単独で見る限りにおきましては、先生方からお話がありましたように、金額が小さければリスクも小さいということでいいのかなとは思っております。
ただ、保全措置等との関係で行きますと、ポストペイといいますか、仮に資金決済業者に対して与信も認める方向で行くといった場合については少し考えないといけないのかなというのが私の感想でございます。事実上の与信を同時に行うものについては、受け入れたプリペイドの資金をポストペイに先に払ってしまうということがあり得るとすると、システミックというほどではないのかもしれませんけれども、利用者の決済関係が業者が破綻した場合には混乱するのではないかというのを若干懸念しておるところでございます。
それから2点目、ポストペイサービスについてでございます。先ほど、クレカでできるのであればなぜ今規制を緩和しなければならないかという議論がありましたけれども、たとえクレカでできる範囲であったとしても、制度の競争を促すという視点からクレカの既存のインフラではない自前の決済インフラを構築するということについて、何らかのインセンティブというものがつけられるのであれば、それはひいては利用者利便に資するのではないかと。競争が進めば、手数料の低下等、利用者利便に資する可能性もあるとすれば、たとえ同じようなスキームでできたとしても制度を緩和することには意味があるのではないかというのが、私の利用者としての感想です。
ただ、1点、気になっておりますのは、先ほど植田メンバーが、決済だから利息はとらないでしょうねという形でおっしゃっておられたと思うんですけれども、資金供与かどうかということと利息をとるかどうかということはリンクするのかしないのかというのは1つ論点だと思うわけです。白地でポストペイサービスを認めるかどうかということを考えた場合に、2通りスキームがあり得て、1つは、先ほど言ったような資金供与ではないという形で何らかの制限をかけて、これは資金供与とは違うんですよという形でやる方法と、もう一つは、もっと簡単に資金決済プラス貸金業と整理したうえで、貸金業部分に少額免除のようなものを設けるという2通りがおそらくあると思うんですね。
今回議論されているのは前者のことだとは思うのですが、ただ、ここで1点、丸山様にお聞きしたいのは、先ほどの利息の話になりますけれども、ポストペイの場合に、やはりある程度利息といったものでの稼ごうとしているというようなスキームでお考えの部分もあるのか、いや、利息がつかないということであってもサービスとして十分ニーズはあるし、ぜひそこは緩和していきたいと考えるのか、このあたりをちょっとお聞きしたいなと考えております。その点でおそらく規制の考え方が違ってくるのかなとは思います。
先に私の意見だけ全部申し上げますと、おそらくこの議論は資金供与ではないという方向で決済のポストペイサービスを組むことになるのだろうと思うのですけれども、そうした場合に、おそらくは資金供与とは違うのだ、決済なのだと言い得るためには3点ほどポイントがあるのかなと思います。
先ほど来メンバーの方々がおっしゃっておられますけれども、決済との結びつきが強固であるということ、与信期間が短期間であるということ、それから、信用創造というほどではないのかもしれませんけれども、決済で預かったものから与信をするというのはよくないという、そのあたりの3点が資金供与とは別の規律とするという場合にメルクマールになり得るのかなと考えております。そのあたりについてはPSD、あるいはPSD2の決済業者について与信を含む決済手段を与えてもいいという場合のメルクマールとして使われているということかと思います。
ただ、PSD、PSD2の場合ですと、与信期間が12カ月、たしか許されておりまして、短期といってもかなり幅はあるんだろうなとは思います。ただ、それは各国の経済状況とか、あるいは規制の体系等で違ってくるんだろうとは思います。
あと、利息をとるにしろとらないにしろ、先ほど坂メンバーから問題点のご指摘がありましたけれども、過剰与信とか、そういう問題も出てくるだろうということを考えますと、シームレスに一般的な資金供与に行くような形はやはり避けるべきではないかと思います。幾らここで利息がとられないからといっても、過剰な債務を負った場合には、そこからすぐに資金供与のほうに手を出すというか、受信のほうに行ってしまうということがありますと、それはやはり問題だと思います。
そのあたりについては支払能力の調査をどこでするのかというところが1つ問題にはなってくるのかなとは思っております。
以上です。

【岩原座長】
それでは、丸山さん。

【丸山参考人】
利息をとるのかとらないかという部分中心の話がまず出ておりましたと思います。今、後払いサービス、弊社も含め、ほかにもマンスリーでやっているようなところは、基本的には利息という考え方ではないのかなと思っております。ご指摘いただいたように、基本的にはクレジットカードと近い仕組み、それは同じ契約であるかはさておき、別で直接契約するかにしておき、加盟店と利用者双方に便益を提供していて、その支払いのタイミングを柔軟にすることが重要であるというときに、基本的には商取引とセットであって、加盟店さんから一部、安いか高いかは事業者によりますけれども、加盟店手数料をとるようなモデルかと思いますので、基本的にはクレジットカードと同じような概念の中で行われているというのが基本的な考え方だと思います。
ただ、今後の可能性という意味では、利用者によっては、先ほどのシームレスな部分はあまり優位性がないというお話もありましたけれども、利用者によってはやっぱり金利等を払うので、全ての買い物というよりも例えばこの買い物だけはちょっと支払いを遅らせたいとかという要望は出てくると思います。その場合は、サービスとしては金利等をいただくようなサービスに変更する、こういうようなニーズは当然出てくるんだろうなと思っておりますが、戻りまして、今のサービスとしては、利息というよりは商取引に結びついて、加盟店、事業者さんから収益を上げるようなモデルが中心かと思っております。

【岩原座長】
よろしいですか。それでは次に、加毛さん。

【加毛メンバー】
ありがとうございます。少額サービスにつきまして3点、ポストペイサービスにつきまして2点のコメントがあります。
少額サービスに関するコメントの1つ目は、検討の方向性についてです。これまでのスタディ・グループの会合でも申し上げてきましたけれども、少額サービスについて資金決済法の規制を緩和することは十分あり得るだろうと思います。
現在の資金決済法の規制の根拠の1つは、多数の小口債権者の存在に求められるものと考えられます。事業者に対するモニタリングについて、能力の面でも意欲の面でも、期待することが難しい多数の債権者が存在し、それらの債権者に代わって事業者をモニタリングするところに公的規制が必要とされる理由の1つがあるものと思われます。
このことを前提として、以上のような小口債権者の要保護性が低いといえるのが、いかなる場合であるのかを議論する必要があることになります。そのような観点からは、坂メンバーや後藤メンバーが指摘されたところですが、1回当たりの送金額の上限ではなく、入金額の上限を基準として、小口債権者の要保護性が低い少額サービスを切り出すことになるのだろうと思います。本日の資料2で申しますと、「1.少額サービス」の冒頭部分の①と②のうち、重要なのは②であることになります。先ほどご紹介があったようなチャージ金額を100万円とするものは、おそらく少額サービスに当たらないだろうと考えられます。
少額サービスに関する2点目のコメントは、前払式支払手段との規制の平準化についてです。まず、資料2の1.(3)に指摘されているところですが、資金移動業の少額サービスに関する規制緩和の議論は、前払式支払手段にも妥当するだろうと思います。他方、規制の平準化を考える際にあわせて検討する必要があると思われるのが、払戻しの可否です。現行の法制のもとでは、出資法により、預り金が刑事罰をもって一律に禁止されており、それを個別の法律で例外的に許容するという仕組みになっています。しかし、預り金が規制される根拠についても、この際に検討し直す必要があるのではないでしょうか。
本日の資料1では、現金化の可否がマネー・ローンダリング規制との関係で言及されています。もっとも、払戻しという形での現金化の可否によって、マネー・ローンダリング規制の内容を違えることが合理的なのかはよくわかりません。先ほど、岩下先生からご紹介がありましたけれども、前払式支払手段について、チャージされた媒体などの売却による換金が容易であるとすれば、事実上、払戻しが認められるのと同じことになるように思われます。そのような観点からしても、預り金の規制を、マネー・ローンダリング対策に限らず、広い視野から検討する必要があるのではないかと思います。
3点目は、利用者資金の保全に関する規制についてです。本日の資料には、2つの性格の異なる問題が含まれているように思います。まず、1点目のコメントで申し上げた少額サービスとの関係で、保全要件を緩和・廃止すべきか、という問題があります。これに対して、少額サービスに限らず、現在の保全に関する規制のあり方に関する問題も存在するところです。
後者の問題に関係して、植田先生がご指摘されたところですが、資料1の4ページで紹介されている、信託契約が現在利用されていない理由について、検討の余地があろうかと思います。先ほど、参考人からは、事業者の手元に資金がないために利用しづらいというご説明がございました。しかし、資金が手元にないというのは、比喩的な表現に過ぎません。信託銀行の信託口に金銭が預けられている場合に、いかなる条件のもとでその金銭を利用できるのかということを、検討する必要があるだろうと思います。
信託契約の使い勝手が悪いのだとして、その原因が銀行システムにあるのだとすれば、その当否が問題となります。他方、資金決済法による規制に問題があるのかもしれません。未達債務の認識の時期との関係で、信託銀行の信託口に預けた金銭を機動的に利用することができない可能性もあります。そのあたりを含めて、信託契約という資産保全の方法についても、検討の余地があるように思われます。
続いて、ポストペイサービスに関する1つ目のコメントですが、坂メンバーが詳細にご説明されたところですけれども、クレジットカードについては、原因関係の瑕疵への対処が重要な問題として議論されて参りました。事前的な観点からは、なるべく原因関係の瑕疵が生じないように加盟店調査義務を課し、また瑕疵のある取引がなされてしまった場合には事後的に抗弁の接続によって対処するということが行われてきたわけです。
これに対して、今回話題になっているポストペイサービスについては、おそらく以上のような原因関係の瑕疵の問題とは切り離した形でのサービスの導入が検討されているのだろうと思います。そうだとすれば、原因関係の瑕疵に関する割賦販売法の規制の根拠に立ち返った検討が必要になるものと考えられます。マンスリークリアとの関係では、与信の期間の長短のみに着目して規制の内容を違えることが妥当であるのか、疑問に思うところもございます。その点も含めた規制の根拠の検討が必要になるように思われます。
また、以上の点にも関連しますが、2点目のコメントとして、新しいタイプのポストペイサービスを制度として導入する場合には、消費者・サービス利用者に対する情報提供が重要になるだろうと考えます。後払いという形式のサービスの中に多様なものが含まれ、商品に問題があった場合に支払いを止めることができるタイプのものと、止めることができないタイプのものが存在することになりますと、消費者・サービス利用者にとって、その違いを理解するのが難しい場合も生じるように思います。そうだとすれば、消費者・サービス利用者の保護の観点からは、問題となるサービスの内容を適切に説明することが重要になると考えられます。原因関係の瑕疵に関する規制のあり方とは異なる次元での考慮も重要であろうということを指摘しておきたいと思います。ありがとうございました。

【岩原座長】
それでは次に、森下さん、お願いします。

【森下メンバー】
ありがとうございます。まず、本人確認につきましては、既に今、加毛先生からもお話がありましたけれども、現状、現金で出金できなければ本人確認の必要はないというお話があったかと思います。
ただ、今後、キャッシュレス化が進展していき、現金でなくてもさまざまな形でサービスを受けられる、現金化せずとも匿名性をもって利益を移転できるという環境が拡大していく中で、それでほんとに大丈夫なんだろうかということは、ある時点で検討する必要があるかと思います。
あとは、本人確認手段に関してですが、銀行によってばらばらであるという点に困っているというお話があったかと思います。スウェーデンなんかの例を見ますと、銀行が開発した統一的な本人確認のシステムとして、Bank IDというものがありまして、それが官公庁などでも利用できる、幅広く利用できるということがキャッシュレス化、あるいはオンラインの取引を進める上での非常に大きなインフラとして機能しているというのは広く知られているところかと思います。そういった環境を誰が提供できるのだろうかということは事業者の方などは真剣に考えていただく必要があるのではないかと思います。
次に、少額取引に関連してなのですけれども、今のお話をお伺いしていますと、その前提になるかもしれませんが、各事業者の方々は取引1件ごとの数字だけではなくて、誰が幾ら何回取引をしたのか、言ってみればトータルとしての残高管理ですとかリスク管理、1カ月当たりに何回取引をしたということをしっかりと管理できるツールをお持ちなのかなと思っております。
と申しますのは、1回だけの取引の額だけが規制の視点というのは少し乱暴で、やはりトータルとしての残高ですとか、あるいは何回ぐらいやっているのかということによってもリスクの量は変わってくると思いますので、そのようなトータルとしてのリスク管理、残高管理、取引量管理ということができるという環境が必要なのかなと思います。
その上で、取引額を引き下げるかどうかということですが、1回当たりの金額は1万円が妥当なのか、数千円が妥当なのか、いろんな考え方があると思いますが、それに加えて、例えばトータルとしてリスクに対する適切な規制という意味では、顧客の数ですとか、あるいは利用できる範囲ですとか、そういうことも総合的に考える必要があるのではないかと思います。1件当たり数千円だったとしても、顧客の量が何万人ということであれば、その事業者が破綻した際のリスクというのはかなり大きくなってくるのではないかと思っております。
供託金との関係で塩漬けとなる資金というのが非常に負担であるというお話がありました。その前提としては、お客さんから預かった資金をいろいろ有効に運用したいというお考えがあるのだと思いますけれども、そうしますと、おそらく預金とほぼ一緒、預け入れられたお金を事業者が特段の制約なくみずからの事業に使えるということになると、顧客が抱えているポジションというのは預金と一緒であると、純粋な債権しか持たないと。しかも分別管理もしないということになれば、私法上の何の法的な保護も与えられないということになってしまって、一債権者になってしまうのではないかと思います。
前払式支払手段の際にそれでいいということになると、ほんとに全く預金と一緒ということで、先ほど、リスクの塊というお話もあったと思うのですけれども、そういった状況において、何の規制もなく、顧客がリスクを抱えるといった状態が広く発生することを認めるのがいいのかどうかというのは、相当慎重な検討が必要なのではないかと思います。
他方で、資金移動の場合、これはすぐに送るのであれば、今言ったようなリスクは限定されると思うのですが、資金が滞留する期間が長くなるということであれば、やはり前払式支払手段の場合と同じようなリスクが出てくるのではないかと思います。
そういうようなことで、塩漬けになることがコストであるという観点は大事かと思いますが、他方で、誰にそのリスクを負担させるのがいいのか、どこまでだったら許容できるのかという点は、慎重に考える必要があるのではないかと思います。
ポストペイに関してですが、今のところはクレジットカードのマンスリークリアというかたちで、一定の範囲でポストペイ的なものが、特段の大きな規制がないような状態で許容されているということがあると思います。
また、諸外国ではいったん契約したものをポストペイから即時払いや分割払いに変更し、またそれをもとに戻すとか、そういったフレキシブルなサービスも提供されていますので、そういったことができるようにというのは考えられると思うのですが、既にお話もありましたように、やはり利用者保護ですとか、あるいは事業者の事業の健全性の確保も必要だと思います。
1日でも2日でも3日でも、決済をするタイミングと実際にお金をもらうタイミングの間にタイムラグがあれば、それはやっぱり与信だと思うんですね。これは与信ではないと言うのはあまり適切ではなくて、信用を与えていて、そこにはリスクが発生しているわけですから、それはやっぱり事業者にとっての与信であることは間違いないと思うんですね。
しかしながら、その与信の量なり性格から考えて、リスクが低いので与信に関する規制をしないという考え方はあり得ると思いますけれども、そこは与信ではない、決済なのである、だから別なのであるという議論は、リスクの本質ですとか、それに対応する規制の適否を考える上で、ちょっと本質から目をそらしてしまうような危険があるので、それは慎重に検討する必要があるのではないかと思います。
そう考えた場合に、例えばある一定の残高までだったら認めるとか、滞留の期間に応じてある程度だったら認めるというのは、与信として考えたとしても、事業者にとっても、あるいは利用者にとってもリスクは大きくないという考え方はあると思いますけど、そのような多様な観点から検討が必要だと思います。ありがとうございます。

【岩原座長】
それでは、次に神作さん、お願いします。

【神作メンバー】
ありがとうございます。少額サービスとポストペイサービスについて、それぞれコメントをさせていただきます。
少額サービスにつきましては、まさに中間整理の考え方に従って検討することが適切であると思います。規制の目的として、決済の機能をきちんと確保するということが重要であって、資金の決済のために例えばある口座に入金したというような場合に、これは決済目的であって保管自体を目的としてカストディアンとして預かったというわけではありませんから、必ず分別管理しなければならないとか、全額供託が必須であるということは必ずしも必要ではないかと思いますけれども、供託等義務、財務規制、自主規制、その他いろいろなルールや仕組みを組み合わせて、しかし決済の機能を確保することが重要だと思います。とくに、決済は、国民経済生活・企業活動の基本ですので、その機能を確実に履行する必要があると思います。
そのような観点からすると、現行法制の下で、資金移動業者等に規制の差があることは、全く説明できないわけではないと思いますので、それぞれの規制法の採用する手法などを参考に、それらを適切に組み合わせて、その中で供託等義務についても見直すということは、方向としては考えられると思います。しかし、先ほど申しましたように、決済の機能を確保するという観点から、様々な規制の組み合わせはあり得るにせよ、整合的・統一的に考えていく必要があると思います。
それから、2点目でございますけれども、ポストペイサービスについて意見を申し上げます。さきほど、森下メンバーがご指摘された点と非常に似たようなことを申し上げることになるかと思いますけれども、資金供与、もうちょっと広い意味での信用供与という機能から考えるという点からすると、資金供与と捉えないという見方は、これまでの金融制度スタディ・グループで議論してきた方向と違うのではないかと思います。
むしろ、資金供与、信用供与に当たるけれども、一定のものについては規制をかける必要はないということになると、おそらくどのような法形式をとっていようが同じ扱いになるのではないかと思います。
その点にも関連して、1点ご質問と申しますか、ご確認でございますけれども、資料1の8ページのポストペイサービスの(1)でございますけれども、3つの法的枠組みが存在するということでございます。
それで、ご質問と申しますか、ご確認させていただきたいことは、例えば資金の貸付けだとか、銀行業の免許を受けて資金の貸付けをするという場合、特に②の貸金業法上の貸金業の登録を受けてポストペイサービスを行う場合であっても、私の理解では、③の信用購入あっせんというのは非常に開かれた定義がなされておりまして、どのような法形式や法的枠組みを使うかによって、必ずしもきれいに区分けされる問題ではないのではないかと理解しております。すなわち、資金の貸付けという法律構成をとっていても、割賦購入あっせんに該当することはあり得ると思います。
そのこととの関連で、ポストペイサービスのようなものが出てきますと、やはり規制の横断化、標準化、平準化というのが極めて重要になると思われます。現在、どのような法形式・法的枠組みを用いるかによって規制が大きく違うところについて、これは将来的な課題になるかもしれませんけれども、いずれ整理する必要があり、そして、そのときにおそらく重要な点というのは、消費者についての信用というのは切り離して考える。さらに、その場合には、監督法上の規制ではなく、むしろ民事ルールというのが中心となっていくという方向に進むのではないかと考えています。
しかし、いずれにしてもポストペイサービスというのは、利用者にとっては非常に便利なサービスで、このようなサービスを利用できるようになれば喜ぶ人々がたくさんいるのではないかと思いますので、ポストペイサービスをさらに促進するという方向で議論をしていただくと私もありがたいと思いますけれども、今申し上げたような点に留意しつつ適切な規制を行う必要があるという感想を持ちました。

【岩原座長】
どうもありがとうございます。次に、福田さん、お願いします。

【福田メンバー】
ありがとうございます。皆さんが既に非常に貴重なご意見を表明されていますし、私も基本的には賛同しております。
常にイノベーションとリスクのバランスをどうとるかは非常に悩ましい問題で、どっちが大事だということはおそらくないと思います。特に金融の分野では、普通の分野よりもリスクの問題が極めて大きなウエートを占めているという意味では、リスクのウエートは大きいし、あるいは新しいサービスがどんどん登場する中では、これまでに考えられていないようなリスクが存在するということも確かにありますので、リスクに対する留意は必要だということは、その通りだとは思います。
他方で、イノベーションも大事だし、かつ、リスクは常に存在するわけですけど、イノベーションのチャンスは常に存在しているわけではないという視点はやっぱり大事なんだろうと思います。すなわち、今イノベーションを逃したとしたらどうなるのかという問題意識は大事な問題で、やはり今、世界的にこういうイノベーションで、しのぎを削って競争をしているときに、リスクが大事だからという形で二の足を踏むという選択肢をとるのがいいのかどうかという視点は、第一の視点としてはやはり大事なんだろうとは思います。
そういう意味では、事態は非常に流動的で、どういう規制がいいのか、あるいは新たな規制の導入をどうするのかという問題は非常に大事な問題ですが、イノベーションと向き合いながら少しずつ考えていくというふうにせざるを得ない面はあるのだろうとは思います。
それからもう一つ、こういうイノベーションの担い手はどういう人たちなのかといったときに、経済学では有名な発想があって、イノベーターのジレンマという言葉があります。これは、既存の業者はイノベーションを起こしにくいということです。既存の業者は、能力があったりお金もたくさんあるんだけれども、イノベーションを起こしにくい。これがイノベーターのジレンマと言われているものです。
なぜならば、新しいイノベーションが生まれると、既存の業者は既存のビジネスの利益が失われることがあるので、どうしても消極的にならざるを得ないからです。むしろ全くしがらみのない新しい業者の人々が、これまでにない新しいイノベーションを生んでしまう、生まざるを得ないことがあるのだということだとは思います。
そういう意味では、いろんな規制体系とかは既存の業者にフィットする形でいろいろとつくられているんですけれども、その発想だけで考えるのは、やっぱりイノベーションにはいろんな障害になり得るんじゃないかと思います。
今までの金融サービスの発想の大きな枠組みを超えた新しいサービスを新しい業者にはぜひ生み出してほしいという点はあるので、そういう意味では、横断化、柔構造化という、ここの論題でも議論されていた発想というのは、やはり大事だと思います。
ただ、何でもオーケーかといえば、そうでもない。そうしたなかで、事務局の案にありますように、とりあえずは少額サービスに関してそういうことを認めてはどうかという発想に関して、私は全面的に賛成したいと思います。
そのときの少額とは何ぞやというのは、皆さんもご注意されていたように、単に現金の少額さだけではなくて、いろんな意味、トータルな意味での金額の問題とか、あるいは業者が多数の件数を扱っている場合はどうするかといった留意点はあります。
少額という定義に関しては、やや留意が必要ではありますけれども、やはりいろんなイノベーションのチャンスが限られており、今やらなければいけないイノベーションの機会が切迫している中では、少なくとも少額サービスに関してはある程度フレキシビリティーを認め、問題があれば適宜、将来的には新たな規制をつくっていく等の措置というのが大事なんだろうとは思いますということです。
ポストペイに関しては、やや難しい問題もありますけれども、新しいイノベーションで資金供与が主だというのは、やはり私自身もかなり違和感はありますけれども、既存の新しいサービスとのセットでこういうことが行われているというものであれば、一定のものは認める方向性はあり得るのではないかと思います。
そういう意味では、既存の金融サービスの発想を超えた新しいサービスを促進していくことはやはり大事な問題で、そういう意味での見直しということは、一定程度、もちろんそれも金額の大小あるいは後払いの程度にもよるとは思いますけれども、そういう発想はある程度必要なのではないかとは思っております。
以上でございます。

【岩原座長】
松井さん、お願いします。

【松井メンバー】
ありがとうございます。これまでのメンバーの皆さんと同じような話になる部分があろうかと思いますが、お時間をいただければと思います。
まず少額サービスにつきまして、私も基本的な方向性は緩和の方向でいいとは思っております。考え方として、従来の規制というのは、やはり保全の規制であれ、あるいは財務規制であれ、利用者の方が可能な限り保護されるような方向性をベースとして持っているのだろうと感じています。そのかわり規制が重たくなるので、例えば十分に業者が入ってこないとか、送金のサービスが多少高価になるとか、そういう形で間接的に利用者が多分規制によるコストの負担をしてきたわけです。
もし、少額サービスについてこの点を緩和するということは、その部分については業者の負担が軽くなりますから、参入も容易になるでしょうし、送金サービスも安価になるのでしょう。そのかわり、従来のように十分には保全規制なり財務規制なりがかかっていないので、場合によってはそのことによって生じるリスクを利用者が負担しなければいけないということで、リスク負担の構造が直接的になってくるのだと思います。
ですので、マクロで見れば利用者の負担は変わらないのだと思いますけれども、負担の構造が変わりますので、もし、このような規制を緩和していくのであれば、利用者がそのようなリスクがあることを認識して、十分負担できるような前提が必要なのではないかと思います。それは、業者に説明をさせるのか、別の周知の方法をとるのか、また、それは業法でやるのか、私法のルールに委ねるのかといったことはありますけれども、そのリスクを十分にとれるような前提を置くことで、この少額サービスについての緩和という話はできるかと思いました。
それからポストペイサービスにつきましては、何人かのメンバーの方がおっしゃっていたとおり、このスタディ・グループの機能別・横断法制の考え方からすると、これは機能として間違いなく資金供与、信用供与の話になってくるのだろうという感じがしました。
ただ、今回のご提案、あるいはご説明でおもしろいと思いましたのは、「信用供与」とか「資金供与」という機能の切り分け方ですと、実はまだ抽象度が高くて、今後、規制を具体的に考えていくときに、十分に機能し得ない概念になっているのではないかという点です。
例えば、物やサービスを分割で売りますというような信用の供与の場合、単純に業者が資金を貸しますという信用供与の場合、あるいは今回出てきた、口座にある程度資金があって、でも短期間かつ少額のものを事後に払えるようにしますという場合では、同じ信用供与や資金供与といっても、全然リスクの状況が違うのだと思います。ですので、機能別の横断法制を志向するといっても、資金供与の局面に関して言うと、もう一段、下位概念というか、下位機能というか、そのようなものを考えていかなければならないのだろうという感じがしました。
下位概念として何がいいのかというのは、先ほど舩津メンバーもおっしゃっていましたけど、額であったり、期間であったり、実際の資金供与の中身であったり、そのようなものをもう少し精緻化して検討していく必要があるのではないか、と思った次第でございます。
以上でございます。

【岩原座長】
それでは、田中さん、お願いします。

【田中メンバー】
池田さん、丸山さん、どうも今日はありがとうございます。大変役に立ちました。
この問題を考えるときに、そもそもビジネス的には、利用者、顧客のセグメントは一体何だろうという発想が必要だろうと思っています。今回の対象領域は、個人、少額ですよね。富裕層とか中小企業のオーナーとかはあまり考えていないと思うんです。個人、少額でしょうね。
特に、これは丸山さんの資料だと思うんですが、10ページに、若い女性たちはあまりキャッシュレスを求めないと書いているんですが、まことに健全な金銭感覚だと思うんです。若い女性たちは大体、国税庁の調べによると、独身の方で年収270万ぐらい、それぐらいのレベルだったと記憶しています。
それから20歳から40歳ぐらいまでの間、一般的には、結婚した方々というのは、通常は純資産がマイナスなんですよね。住宅ローンがあったりとか車を買っていたりとか、通常は借り入れが多い年代層です。つまり、そうしますと若い年代層は債務の依存度が高いということが一般的に言えるんだろうと思います。
そういう意味では、こういうセグメントを扱うんだという認識が必要だと思います。しかも、最近は貧困層が増えているという話もありますから、その辺はやはり、このセグメントをどのようにプロファイルするかが大事だろうと思います。
それから2つ目は競争の視点ですけど、もう既に中国のアリペイは我が国の国内でものすごく利用できるようになってきていますね。インバウンドは今後も非常に増えるでしょうが、今日はこの中には出てきていません。今日の対象は国内事業者だけですが、日本国内において、既に、こうしたフィンテック絡みの決済はもう起きている。ただし、今の所対象はそういう中国の方、旅行者であるということですね。
一方で、日本人が中国に行くと、現金を持っていってもお金が払えないという状況すらできているわけで、そういう競争環境というものは、1つ頭に置いておく必要があるんじゃなかろうかと思います。
そういう意味では、今日お見えになりました池田さん、丸山さんたち日本のフィンテック業者は、グローバルに展開することをぜひ考えていただきたいと思いますし、ぜひグローバルに成長していっていただきたいと思いますね。そして、それを規制の面でもサポートしていくことが必要だろうと思います。
丸山さんの資料の4ページ目に、銀行による参入と非金融機関による参入が書いてあるんですが、これは中身をよくよく見ると、明らかに右側のほうが強そうですね。それは、やっぱりコスト競争力が高いということと、それから先ほど福田メンバーがおっしゃったこともあるんだろうと思います。ただ、一方で非常に群雄割拠していまして、こうした状況が今後どうなっていくんだろうと思いますね。再編されるのか、それともやり方を統一していくのか、いろんなやり方をつくっていかれるのか、そういうことが起きるんだろうと思いますけれども、今後、我が国における競争環境については、お互いに潰し合いをしているよりも、むしろグローバルに戦ってほしいという気がいたします。
3つ目は利便性の点なんですけども、少額、それからポストペイが、今回の「本日討議いただきたい事項」に入っているんですが、これは一種、日本におけるマイクロファイナンス領域のデジタリゼーションを活用した利便性向上みたいなところがありますね。
そうすると、先ほど来、何人かの先生方からお話がありましたけれども、1つ、少額少額と言っているんですけど、一体幾らをイメージしているのという点が大切だと思います。100万円は多いだろうという話がさっき出ましたけれども、一体、限度額は10万円ですか5万円ですかという、ここはさっきの利用者セグメントとの兼ね合いにおいて、金額についてある程度のイメージが必要なんだろうという気がします。
それから後払いも、この期間というのは1週間の話をしているのか1カ月の話をしているのかということがあり、先ほどの利用者のセグメントの観点からこうした2つの要素で、どのような対象領域をつくっていくのかは非常に大きなポイントだろうと思います。
そうしますと、例えば5万円までということにすると、そういう事業者を1種登録事業者みたいにして、そして、もっと小さな金額であれば供託等を免除する、例えば1万円までだったら、これは2種として供託等を免除するというような、行政上もしくは立法上のそういう手続ができるんじゃないかという気がいたします。
そこで、この後払いに関して、1つ議論されていない大きなポイントがあると思っているのは、これは丸山さんにお伺いしたいと思うんですが、デフォルトになったときは一体どうなるんですかね。
いただいた資料の8ページに書いてあるんですけども、実際に顧客がデフォルトになった場合には、一体どういう形でそれを処理されるんでしょうかというところなんですよね。要するに、残高は残っているんだけれども、支払いをとめるという大前提の議論になっているんですが、途中でお金が要るとなることは皆さんもご経験が、僕もしょっちゅう経験していますけれども、そういうときに、デフォルトになったらこれは一体どうなるかというところが、1つ大きなポイントだろうと思います。
法律的に、民事的に処理すればいいというだけの話かもしれませんが、実際にこれが増えたりすると、やり方によっては社会問題になりますので、このデフォルト時の処理方法というのは、後でいいのでちょっとご説明をいただければと思います。
それから、先ほど森下メンバーからスウェーデンの例のお話が出ましたけれども、KYC、BSA、それから顧客のIDは、実は世界的にはほかにもいろんな動きがあります。日本は全然おくれているという気がします。
前にもこの会合で申し上げたと思うんですが、KYCとかBSAに関してはユーティリティーカンパニーをそれこそ金融庁の傘下で、業界団体でおつくりになって、そこの認証を得れば、その認証を持ってどこでも口座開設できるぐらいのことにしていかないと、日本の金融業、これはフィンテック業界も含めて非常にコストの高い業界になってしまいますので、そうしたことをもっとスピード感を持って進めていく必要があるんじゃなかろうかと思います。
こういう点では、業界団体には是非奮起してほしいと思いますね。場合によってはフィンテック協会でこうしたカンパニーをつくられてもいいんじゃないかという気がしますけれども、そうした方向感がやっぱり大事だろうと思います。
最後に、未来投資会議の資料の3ページに横断的な金融サービス仲介法制と書いているんですが、これを本格的に考えるに当たりましては、広い意味での金融機能というのを全て入れて考える必要があると思います。
したがいまして、金融庁主導のもとに、例えばクレジットカードであるとか割賦業者、住宅ローン、その他ノンバンクも入れた形でもって我が国の金融全体を含めて、こういう形で仲介法制をつくっていくということで、ぜひご検討いただきたいと思います。
以上です。恐縮ですけど、丸山さん、さっきのデフォルトについて、もしあればコメントいただけますでしょうか。

【岩原座長】
丸山さん。

【丸山参考人】
おっしゃるとおり、基本的にデフォルトがない前提ではありますが、お金がなくなってしまってデフォルトするというケースはございます。銀行に残高があることを前提にお支払いを認めるものの、後から取りに行ったらなくなっているというケースは、理論上、発生します。ですので、現在においては提供している銀行さんとセットで、銀行様のほうの通常の債権の回収業務、債権管理業務と一緒にやっています。
あと、我々とは別で、自社でリスクをとっている事業者さんも、同じように立てかえ資金、これは金融債権という扱いではないかとは思いますが、立てかえ債権の回収業務等をデフォルトが発生した場合は通常どおり行っているというのが一般的かと思っております。

【岩原座長】
よろしいですか。それでは、神田さん、お願いします。

【神田メンバー】
ありがとうございます。手短に感想を申し上げたいと思います。
感想としては、難しいことを考え過ぎじゃないかというのが私の感想です。新しい技術やイノベーションとセキュリティーというのは当然表裏の問題です。したがってセキュリティーの問題もあるし、クロスボーダーの問題もあるし、悪用する人が出てくるでしょうし、供託を幾らからなどといっても、なかなか答えはないと思うのですね。
ですから、今日の資料2の言葉で言えば、入金額の上限が少額、数千円から数万円だということであったら、規制は要らないと思います。例えば、私が飲み屋の割り勘で1万円入金していて、それが何かの事故が起きて失う確率が1%あったとすれば、100円ですよね。それは利便性の代金だというふうに考えないと何もやれなくなるのではないでしょうか。
ポストペイのほうも、ポストの程度、それから金額が一定の範囲内、幾らかということはあるかと思いますが、機能としては資金供与機能があるのですけれども、資金供与規制は不要、あるいは大幅に軽減するということで、また、抗弁の接続がなくても、これも金額が少額であれば、これまた先ほどの利便性の代金だと考えていいように思います。
ですから、以上の2つの点を横断化することが可能なのかどうか、ちょっと現行の制度から離れて、そういう発想で考えていただいてはどうかと思います。
以上とは別に、もう1点だけ。現在の制度を見渡しますと、例えば資料1の3ページにある、供託が半分だとか全額だとか、これはちょっと一遍、今日の目でよく検討して、整理してみる価値があるように思います。
以上です。

【岩原座長】
どうもありがとうございます。大変長時間にわたって熱心なご討議をいただきまして、まことにありがとうございます。
非常に多様な論点を指摘していただきまして、一般的な規制緩和の必要性については、最初に翁さんや植田さんからご指摘がございました。今、神田さんからも、少額の場合等については非常に柔軟に考えてよいのではないかというご指摘があった一方で、他方、配慮すべき問題があり得るということを坂さんや、あるいは岩下さんのような視点からのご指摘もあったところであります。そのほか、問題を考える上でのいろいろな視点について、多くの方からご指摘をいただきました。
特にポストペイについては、機能としてはやはり信用供与ではないかというご指摘があった一方で、ただいまの神田さんのようなご指摘もあったところであります。
何で信用供与に当たるか否かということが非常に問題になるかということを考えると、おそらく、信用供与とされると貸金業法の適用という問題が出てきうるわけですが、日本の貸金業法の適用があまりにもカテゴリカルで、例外を認めず、柔軟化された規制になっていないために、貸金業法の適用を受けないよう、信用供与と認めたくないということがあるかと思います。同様の問題は銀行法についても言えるかもしれません。割賦販売法との関係もそうですけれども、各種の金融規制法が縦割りで、それぞれ非常にカテゴリカルで柔軟性を欠いているところがあるのが大きい問題の背景にあるように思われます。金融規制を横断的なものへと見直し、柔軟なものへと見直す必要があるのではないか。それは田中さんがさっきご指摘されたところだと思いますが、そういうことを考えていければよいのではないかと感じた次第であります。
それでは、ほんとに長時間ありがとうございました。本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえ、引き続き審議を進めさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
最後に、事務局から連絡事項等がございましたらお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
毎回のことで恐縮ですが、次回につきましては、皆さんのご都合を踏まえた上で、後日、連絡させていただきます。

【岩原座長】
それでは、以上をもちまして本日のスタディ・グループを終了させていただきます。ありがとうございました。
 

                                                    ―― 了 ――

 
 

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