金融制度スタディ・グループ(平成30事務年度第9回)議事録

  • 1.日時:

    平成31年4月5日(金)9時30分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(平成30事務年度第9回)
平成31年4月5日
  

【岩原座長】
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融制度スタディ・グループ」平成30事務年度第9回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、前回に引き続き、決済の横断法制に関し、事務局から資料1、2について、ご説明をいただいた上で討議を行います。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】 
おはようございます。
まず、資料2「本日討議いただきたい事項」をごらんいただければと存じます。
大きく2つのテーマがございます。まず1ポツは、前払式支払手段につきまして、送金サービス(資金移動業)との間の利用者資金の保全規制等の平準化というテーマを掲げてございます。冒頭にありますとおり、前払式支払手段につきまして、前回もご意見いただきましたが、資金移動業との間で利用者資金の保全規制等の平準化を図るべきというご指摘がございます。他方、この前払式支払手段というのは、非常に多種多様なものでありまして、例えば、小売店が発行する自店舗のみで用いることができる紙の商品券のようなものもございます。このようなものを含めた、すべての前払式支払手段について、一律・画一的に、送金サービスとルールを同じにする、あるいは寄せていく必要はないのではないかと考えられます。こうしたことのほか、現に前払式支払手段発行の事業をされている事業者の方々への影響も、当然配慮する必要があると思います。そうした中で、仮に今後、この問題について考えていく場合には、前払式支払手段の中でどの範囲についてどうしていくのかということについての議論が必要かと思いまして、その観点として2つございます。
ここで、資料1の3ページをごらんいただければと存じます。冒頭、前払式支払手段は多種多様と申しましたが、2つの観点からの区分について書いてございます。左側が財産的価値の記載・記録の方法に応じた区分、右側が使用範囲に応じた区分でございます。まず、左側をごらんいただきますと、大きく3つでございますが、まず、財産的価値、金額のようなものが紙に書いてあったり、磁気記録層、磁気ストライプである場合が多いと思うのですが、そういったところに記録されているようなものが一番上の「紙型」・「磁気型」。それから、真ん中の「IC型」というのは、カードとかスマホの場合が多いと思うのですが、そういう財産的な価値がICチップに入っているような場合。それから、一番下が「サーバ型」ということで、基本的に財産的な価値はネットワーク上のサーバに記録されていて、何らかの形で番号を入力するとか、あるいは加盟店の端末で読み取るということでサーバにアクセスするといったもの。このように大きく3類型ということだと思います。
次に、右側の使用範囲に応じた区分というのは、より単純な話でありまして、まず、自家型というのは、発行者自身ないし子会社等も含みますが、そこでのみ使用可能なもの。 それから、下が第三者型ということで、発行者に加え、発行者以外のサービス提供者、加盟店とここでは呼んでいますが、そこでも使用可能なもの。交通事業者が出しているものや、流通事業者が出しているものなど、今、日本で広く使われているのはご承知のとおりでございます。
以上のようなさまざまな区分がありまして、次の4ページをごらんいただきますと、その利用状況を書いてございます。まず、左側の財産的価値の記載・記録の方法の区分でいきますと、発行者数では紙型が過半ですが、発行額ではIC型が過半を占めております。それから、右側の使用範囲、すなわち自家型か第三者型かという区分でいきますと、発行者数では大体同じぐらいですが、発行額では第三者型が大部分を占めているという状況にあります。この話の関係で最後に、海外の立法例を簡単にご紹介しておきますと、5ページでございます。EUと、シンガポールの今年採択された新しい制度についてまとめさせていただいていますが、諸外国では、EU、シンガポールの例でいきますと、電子的・磁気的に保存された貨幣価値で、発行者以外の第三者に受け入れられるなどの要件を満たすものを「電子マネー」というように定義して、若干細かいところの規制の差異はあるのですが、その発行は「決済サービス」の一種ということで、資金の保全等について、送金サービスと同等の規制が課されているということでございます。
資料2の1ポツの2段落目に戻っていただきまして、以上のようなことを踏まえてご意見をいただきたいと思います。また、1ポツの3段落目ですが、それ以外の留意点についてもご指摘いただきたいと思いますが、例えば、「IC型」「サーバ型」の前払式支払手段について、チャージされている金額や、1回当たりの支払額について、法令上の制限はないのですが、現実には、例えばチャージ額について数万円程度に制限して提供されているものが多く、チャージ額が数万円ということは、1回当たりの支払額もそれより下になろうかと思いますので、そういう実態を踏まえつつ、こういったものをどう考えていくのかということでございます。以上が、前払式支払手段と送金サービスとの間の平準化の話でございます。
それから、2ポツは、もう一つ違う観点からの論点で、送金サービス(資金移動業)についての利用者トラブルへの対応の観点からの論点でございます。これまで何人かのメンバーの方から、時折ご指摘をいただいてきた話でございます。送金サービスがこれだけ広まっていて、今後、キャッシュレスの進展などで、日本社会でもますます利用されていくことを考えていく場合、利用者が安心して使うことができる、安定した決済の手段であることが必要というのは、おそらくご異論はないところだと思うのですが、3つほどの個別の論点についてどう考えていくかというようなことをお伺いできればと思っています。
1つ目が、前払式支払手段ないしクレジットカードでもございますが、加盟店についての規定が必要か否かという話です。ここで資料1の7ページをごらんください。左側が前払式支払手段の場合の加盟店に関する規定でございます。第三者型前払式支払手段発行者は、加盟店が販売・提供する物品・役務が公序良俗に反するものでないことを確保するための措置を講ずることとされています。図にありますとおり、左下に利用者がいて、上に第三者型前払式支払手段発行者がいて、右下に加盟店、お店があって、ピストルの絵がありますが、加盟店契約を締結する際に禁制品を扱っていないか審査する、事後的に禁制品を扱っているということがわかった場合は加盟店契約を解除するなどといった観点での規制でございます。右側も併せてご紹介してしまいますが、抗弁権の接続ということをどうするかという論点もございます。割賦販売法で信用購入あっせん業者について規定がございますが、利用者は、加盟店との間で生じている事由、例えば加盟店から商品の引き渡しがないとか、瑕疵がある商品だったといったことを理由として、信用購入あっせん業者からの支払い請求を拒むことができるというようなことでございます。信用購入あっせん業者にはそういう規定がございますが、これについて広く、例えば資金移動業についても対応しいくかどうかといったことについて、どう考えるかという論点でございます。
資料2にお戻りいただきまして、まず、(1)の加盟店の規定については、少し考えなければいけないと思いますのが、送金サービスの場合、商品・サービスの購入とは無関係の送金も含めて、広く送金一般に用いられているという事情があること、そして、もう一つは、インターネット上における個人間の物品取引が広く行われようになっている中で、個人と「加盟店」の区別がそもそも難しくなりつつあるということでございます。こうした状況の中で、送金サービスについて、加盟店についての調査のような規定を置くことを仕組んでいく場合には、こういったことについてどうするかという整理が必要になるということだと思います。
それから、(2)の抗弁権の接続についてですが、送金サービスについては今申し上げたような観点から、クレジットカードのような信用購入あっせん業者とは、事情が違うと思うのですが、そういった論点に加えまして、送金サービスの場合、決済手段として広く用いられるようになっていますので、一旦完了した決済が後から取り消されることになると、決済の安定性にマイナスの影響があるといった側面についても考慮する必要があろうかと思います。そういったことも含めて、この問題についてどう考えるかについて、ご意見を賜ればと思います。
3つ目は観点が違いまして、無権限取引が行われた場合の利用者の負担、あるいは利用者と事業者との間の負担の配分の問題であります。これは典型的にはパスワードを盗まれたり、ハッキングされたりして、正当な権限がない者の操作によって送金がされたといった事態が起きた場合に、事後的に補填をするのか、しないのかというような話であります。こちらにつきましては、資料1の8ページをごらんいただければと思います。この分野につきましては、銀行については、全銀協等の申合せ、その他、一部法律で裏づけがあるものもありますが、無権限取引が行われた場合の預金者に対する補償基準が定められております。また、諸外国では、送金サービス提供者についても無権限取引が行われた場合の利用者保護を定めている例が存在します。下の日本の例について簡単にご説明しますと、インターネット・バンキングでハッキングとか、パスワードの盗難、なりすまし等で不正な払い戻しが起きた場合、また、カードや通帳が盗まれて、それでATMで引き出しがされた場合、あるいは偽造されたカード等による場合といろいろありますが、預金者に過失がない場合は、いずれの場合も100%補償とされております。それから、預金者に過失がある場合は、インターネット・バンキングの場合は個別に対応、ATMによる不正な払い戻しの場合は、盗難、偽造でそれぞれ75%、100%の補償とされております。預金者に重過失がある場合は、インターネット・バンキングの場合は、過失と同様、個別対応ですが、ATMにおける不正な払戻しの場合は補償しないこととされています。
資料2に戻っていただきまして、こういったものについて資金移動業についてどうするかといったことでございますが、他方で、利用者資金の受入額や、1回当たりの送金額を、自主的に少額に制限している資金移動業者も多いところでございます。そういった場合、無権限取引が行われた場合の利用者の負担も一定程度限定されているとは思うのですけれども、この問題についてどう考えるかということについて、ご意見を賜れればと思います。
そのほか、こういう決済分野についての検討で留意すべき点があればご指摘いただければと存じます。
私からは以上です。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
次に、日本資金決済業協会から、前払式支払手段に関してご説明があるということでございますので、長楽様、よろしくお願いします。

【長楽オブザーバー】  
日本資金決済業協会の長楽と申します。発言の機会をいただき、まことにありがとうございます。
協会におきましては、金融制度スタディ・グループにおける決済の横断法制に関するこれまで議論の状況を踏まえると、前払式支払手段発行者に係る現行規制についても検討されることになるとの認識の下、前払式支払手段発行者の発行事業の実態や利用の実態等を把握するため、会員である前払式支払手段発行者191社に対しまして、1つは、前払式支払手段の発行額のほとんどを占めるIC型及びサーバ型の前払式支払手段のうち、繰り返し使用できるIC型及びサーバ型について、利用者の一IDの未使用残高の金額階層別ID個数の全個数に対する割合について、もう一つが、前払式支払手段に対する基準日未使用残高の半額以上の供託等義務が仮に100%に引き上げられた場合の発行事業に与える影響について、緊急アンケートを実施し、回答までの時間が短い中、70社から回答をいただきその結果を取りまとめました。今後も追加報告が見込まれることから、あくまでも協会事務局からの中間的な結果報告ということで、簡単にご報告させていただきます。お手元の前払式支払手段に関する緊急アンケートの中間結果報告(大要)をご覧ください。
アンケート項目の1点目でございますが、繰り返し使用できるIC型及びサーバ型の利用者の一IDの未使用残高の金額階層別のID個数の全個数に対する構成比でございますが、IC型5社、サーバ型17社から回答がありました。その結果でございますが、IC型は、3,000円以下は92.9%、1万円以下は98.6%、2万円以下で見ますと99.7%、サーバ型も3,000円以下は89.3%、1万円以下は96.8%、2万円以下で見ますと99.3%と、いずれも一IDの未使用残高はほとんどが少額のものとなっております。
アンケート項目の2点目でございますが、仮に供託等義務が基準日未使用残高の50%以上から100%に引き上げられた場合の前払式支払手段発行者の発行事業に与える影響について、5つの選択肢、1つ目が「事業継続上ほとんど影響はない。」、2つ目が「資金繰りや収益に影響するが、事業継続に支障が生ずるほどの影響はない。」、3つ目が「資金繰りや収益に大きく影響し、事業継続を見直さざるを得ない。」、4つ目が「事業として成り立たず、事業継続が困難となる。」、5つ目に「その他」をお示しし、回答をいただきました。
回答結果につきましては、前払式支払手段の発行業務を主たる業務とし、その収入割合が50%超である、いわゆる発行専門会社10社、それ以外の発行者60社に分けてご報告させていただきます。いわゆる発行専門会社10社中、「事業継続上ほとんど影響はない。」が2社、「資金繰りや収益に影響するが、事業継続に支障が生ずるほどの影響はない。」が3社、「資金繰りや収益に大きく影響し、事業継続を見直さざるを得ない。」が3社、「事業として成り立たず事業継続が困難となる。」が1社、「その他」が1社となっております。いわゆる発行専門会社以外の発行者60社中、「事業継続にほとんど影響はない。」が10社、「資金繰りや収益に影響するが、事業継続に支障が生ずるほどの影響はない。」が28社、「資金繰りや収益に大きく影響し、事業継続を見直さざるを得ない。」が10社、「事業として成り立たず事業継続が困難となる。」が1社、「その他」が12社となっております。70社全体で見ますと、「事業継続を見直さざるを得ない。」が13社、「事業継続が困難となる。」が2社となっております。 なお、紙型・磁気型でございますが、お手元の資料の3ページの当協会の「第20回発行事業実態調査統計(平成29年度)の金額区分別種類数の構成比」を見ますと、紙型は3,000円以下が72.5%、1万円以下が91.4%、2万円以下が94.6%、磁気型は3,000円以下が45.6%、1万円以下が76.1%、2万円以下が88.7%と、券面額は小額なものがほとんどとなっております。
最後になりますが、金融制度スタディ・グループにおける前払式支払手段に係る現行規制の検討に当たり、協会の事務局限りということで、一言申し述べさせていただきます。先ほどアンケート等に基づきご説明いたしましたとおり、前払式支払手段の利用実態を見ますと、前払式支払手段は、他の決済手段と比べてその利用が少額であり、リスクの程度も小さいと考えられます。また、供託等義務の強化は、発行者によっては資金繰りを悪化させ、資金調達コストの増加に伴う収益悪化などにより、発行者の事業継続の見直しや事業継続を困難にさせる事態を招きかねないことにもなり得ます。さらに全国の前払式支払手段発行者は1,900社余りございますが、商店街の組合など小規模な事業者も多く、これらの発行者の事業継続にも重大な支障を与えるおそれもございます。ひいては、少額決済の担い手である前払式支払手段発行者の新規参入が困難となり、これまで拡大してきた便利な少額決済サービスの発展も阻害されかねないことにもなり得ます。また、前払式支払手段が便利で身近な小口決済手段として国民生活に広く浸透しつつある中、仮にこうした事態が生じることになれば、政府が強力に推し進めているキャッシュレス社会の実現にも支障を与えかねないと考えます。
いずれにいたしましても、前払式支払手段の現行規制の検討に当たりましては、こうした点を十分に踏まえていただき、利用者保護と利用者利便の向上・イノベーションの促進の双方にも配意しつつ、慎重な検討をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。

【岩原座長】 
どうもありがとうございました。
それでは、討議に移りたいと存じます。なお、審議時間が限られますので、ご発言は簡潔にお願いいたします。
それでは、どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いしたいと存じます。植田さん、どうぞ。

【植田メンバー】  
いつものことですが、非常に参考になる資料をご用意していただき、事務局の方、ありがとうございました。また、長楽さんからは、日本資金決済業協会さんから非常に参考になる緊急のアンケート結果を、ありがとうございました。
コメントと多少質問が入っていますが、1つ目は、大まかに言って前払式も、事務局さんからの資料でも、そういうことが強くにじみ出ているかと思いますが、第三者型と自家型ではかなり違うという認識を持たないといけないということです。紹介にありましたEUとかシンガポールでも、ほかの事業者からでも使えるというような第三者型の場合は電子マネーという扱いになっているという紹介がありました。ということは、機能別で考えたときに、日本でも第三者型と自家型は、ある程度分けて考えてみるべきだろうと思います。私見では、それが紙か磁気か、ICかサーバか、あまり関係がないような気がします。今後どのような仕組みが出てくるかもわかりませんので、むしろ、第三者型か自家型かという区分が大事ではないかと思います。
その次の「討議いただきたい事項」に従ってコメントを述べさせていただきますと、いろいろな意味で、先ほどの送金サービスとの平準化とか、トラブルへの対応というのも、少額かどうかというのはある程度大事になってくるというか、少額であれば、それほど気にすることはない部分がありますので、それをどのように緩めるかはともかくとして、ある程度、少額とそうじゃないものを区別することは有用ではないかと思います。
それから、2番目の利用者トラブルへの対応ですが、1つ目は、加盟店に関する規定でしょうか。これについては、ここにも書かれているとおり、個人と加盟店の区別はなかなか難しいので、加盟店に関する規定を入れることには、私はあまり賛成できないです。ただ、逆に言うと、さっき言った平準化を考えると、むしろ、前払式支払手段の第三者型のようなケースでしょうか。特に少額の場合は、もし送金サービスで加盟店に関する規定を入れないということであれば、むしろ、前払式の規制を緩和する方向を考えてもいいのではないか。平準化という観点からはそう思います。
2番目、法律的な話になってきまして、私は経済学者なものですから、なかなか難しい話ではありますけれども、抗弁権の接続ですけれども、もちろん、ここに書かれているとおり、一旦払ったものを後からなかったことにするというのは、決済が即時的であるならば非常に難しいのではないかと思います。たしか前回のときに、送金サービスの時間差のある、タイムラグのある決済をどうするかという話が出たかと思います。けれども、もし時間差が全くなくて、その場で払っておしまいであれば、そもそも後から取り消したいといっても、後ってどういうことかよくわからないです。けれども、クレジットカードとかであれば、月末決済とかで決済が来る前に取り消しが可能ではあると思うのですが、そこのところで、ここのところを考えないといけないのは、送金サービスのときにどの程度タイムラグがあるか。タイムラグの問題を考えつつ考えないといけないところ、何とも言えないですけども、そんなに簡単ではないと思います。タイムラグがなければ、取り消しはおかしいと思いますけれども、タイムラグが1週間とか、1カ月あれば、それは取り消す時間もあるだろう。ただし、そうだとしても取り消すべきかどうかは、話はまた別で、そこはクレジットカードとは違って、後から取り消しできるというようなことはおかしいのではないかと私としては思います。ただし、もしも購入したものが変なもので、ショッピングプロテクションというんですか、そういうような保険的なサービスを業者さんが手数料を取ったり、取らなかったりするかもしれませんけども、サービスをくっつけることはもちろんいいんですけど、それを法律で決めるべきかというのはおかしいんではないか。そう思うわけです。
3番目の無権限取引ですけども、勝手に預金が引き出された場合とか、それは、ある程度補償してあげないとかわいそうだということもよくわかりますし、全国銀行協会さんでも申し合わせをして、預金者に対して補償されているということですので。ただ、申し合わせしてやっているということは、どう考えても、ハードな法律で書いてあるわけじゃなくて、そういう団体で申し合わせでやっているわけですよね。その意味でいえば、申し合わせで、何らかの形で業者さんに対応していただくのが筋だろうかとは思います。ただし、事務局の方にもお聞きしたいのですが、大きな銀行さんであれば、それだけの資本力とか体力がありますけれども、例えば小さな信用金庫さんと信用組合さんの場合ですと、それぞれでやっているんでしょうか。それとも、信用金庫の中央団体、信金中金でしょうか、そういうような団体を通じてやっているのかということが気になるところです。というのは、これから新しいサービスをされるイノバティブな企業が出てくる中で、あまり資金力がないところは、こういう問題に全部対応していると、それで潰れてしまうようなことに逆になりかねませんので、むしろ、協会レベルとかでやるというのもあり得るのではないかと思うのですが、それが、そういう既存の業界さんではどのようなことになっているのかという質問がございます。
ありがとうございます。

【岩原座長】
それでは、事務局、お願いします。

【岡田信用制度参事官】 
ありがとうございます。
信用金庫、信用組合といった事業者の中には、銀行に比べると小規模なところが多いのは、ご指摘のとおりでございます。ただ、そういったところも、それぞれ信金の協会、信組の協会といった業界団体の申合せに従って、個別の金庫・組合で対応しているということでございます。リスクの管理の観点から、それぞれ個別の判断ですが、損害保険で備えるといったことをしているところもあるということでございます。

【岩原座長】
よろしいですか。
それでは、次に戸村さん、お願いします。

【戸村メンバー】  
ありがとうございます。手短に意見を申し述べたいと思います。
4点申し上げたいんですけれども、最初に、送金サービスに収束していくであろう前払式支払手段と、それ以外のもので規制を分けるのは妥当な考えだと思います。この点、植田さんがおっしゃったように、自家型と第三者型で区別すればよいのではないかというのは、私もそのとおりだと思います。
2点目として、保全規制の平準化と無権限取引双方に関連する点ですが、こちらも植田さんがおっしゃったように、少額決済手段と決済額に上限のない決済手段を明示的に分けて規制の内容を変えるのは妥当だと思います。ただ、1点、おそらく意見が違うところがあって、それは、保全規制の平準化に当たって、少額決済手段については、払い込まれた現金の保全を一切不要とする考えは行き過ぎだと思います。例えば低所得者が子供の塾代としてとっておいた2万円が消えて、子供が一定期間、塾に行けなくなった場合に、そんな金は大した金ではないから保全の必要はないと言えるかというようなことを考える必要があります。このように、人それぞれで違うお金の価値を経済学ではシャドウバリューと呼びますが、利用者保護の議論では、経済内におけるお金の平均的な価値ではなく、お金のシャドウバリューが高い人に対する保護が必要かどうかを考えざるを得ないと思います。また、少額決済手段について、保全規制を撤廃するという方向性よりは、銀行以外の証券、保険のような大規模金融機関にも保全契約の引き受けを認めるとか、もしくは日本銀行が民間銀行を通じて間接的に供託サービスを提供するなど、決済サービス事業者が利用できる保全供託の選択肢を増やして、保全供託サービスの低コスト化を図る施策のほうが望ましいと思います。以上が2点目です。
3点目ですけれども、加盟店と抗弁権の接続についてです。一般論として、前払式支払手段を2つに分けて、送金サービスに収束するであろうものと、クレジットカードのように商行為とひもづいた形のプリペイドカードであり続けるものの2つに分けるのがよいと思います。あとは、基本的に植田さんのおっしゃったとおりですけれども、私もプリペイドカードについては、決済のファイナリティを支払いとともに発生させたほうが利便性は高まると思います。
4点目は、その他の論点で、事務局から提示された論点ではないですけれども、今回議論されているような送金サービス向けの規制の整備と銀行の業務範囲規制の関連性について、意見を述べたいと思います。まず、送金サービスとマネーリザーブファンドのような価値保蔵手段をシームレスにつなぐことは可能だと思いますので、送金サービスでの資金滞留を限定すれば、銀行業との重複を避けられるという考え方は妥当ではないと思います。そうしますと、送金サービスを自由化する場合は、銀行と証券の分離のような規制もあわせて緩和せざるを得ないことは留意するべきだと思います。また、今の決済関連の議論の行く末を想像しますと、銀行業務のアンバンドリングの結果、業務範囲規制なしに利益の出る銀行業務だけを行う主要株主が登場するだけだと思うんですけれども、そうであれば、最初から銀行持株会社の業務範囲規制を主要株主並みにしたほうが日本経済の革新のスピードは早まるのではないかと思います。この点については、もちろん他業リスクが問題になります。ただ、銀行業が将来の決済サービスの顧客基盤をつくるために非金融ビジネスを始める場合、最初の事業規模は小さいので、大きなリスクにはならないと思います。一方で、種まきの段階にある非金融事業で、まだ金融サービスに接続していないものを現行法の銀行業高度化等会社で行うのは無理なのではないかと思います。そう考えますと、銀行の他業リスクについてもイノベーション促進の観点から、リスクに応じた規制にしていくべきだと思います。ちなみに銀行持株会社の行う非金融事業が大きくなった場合には、現在の銀行法上の主要株主と同じになるだけと言えます。
最後に、諸外国のキャッシュレス化を見ますと、銀行中心のスウェーデン、携帯電話会社中心のアフリカ諸国、インターネット事業者中心の中国など、それぞれの国の事情に応じたいろいろな形があります。日本特有の事情としては、根強い現金への信仰があると言われますが、それは諸外国に比べ現金が圧倒的に使いやすいからで、現金を使いやすくしているのは銀行の努力が大きいです。このような我が国特有の事情を踏まえますと、銀行送金を含め、ローコスト決済をこれまで実現してきた銀行が、業務範囲規制によりフリーハンドで非金融の電子サービスと決済サービスの融合に取り組めないがために、我が国のキャッシュレス化がおくれている可能性もあると感じています。
以上です。

【岩原座長】  
それでは、次に坂さん、お願いいたします。

【坂メンバー】  
ありがとうございました。
全体として前払式支払手段、資金移動とも低額のレンジで利用されている実情にあるようですけども、制度としては、前払式には上限規制はないですし、資金移動も100万円までの送金を想定した制度でありますので、また、将来的に利用レンジが高額に推移することも十分あり得ますので、まず、少額という点を過度にフォーカスすることなく意見を述べたいと思います。なお、少額サービスについては、リスクベースの観点から規制に段階を設けることの検討も必要ですけども、目指されるべきは少額レンジの適正なサービスであって、不用意に規制を緩くして少額サービス部分が玉石混交の荒れた状態になるような事態は防ぐ必要があると思います。今後、キャッシュレス普及を図っていくという観点からは、より適切な決済環境が求められる面もあろうかと思いますので、この点、十分な留意が必要と思います。
まず、1点目の前払式支払手段ですけども、この前払式支払手段の保全規制については、発行者の店舗においてこれが使用される場合と、加盟店において使用される場合とでは機能が異なっており、これに伴って資産保全のあり方も異なるということだろうと思います。例えばデパートがみずからの店舗で使える証票を発行する場合、デパートが将来、利用者に引き渡すのは商品であって、証票の裏づけとなる資産としては、供託金とともに将来販売する商品が考えられます。これに対して加盟店において利用される場合には、発行者が将来加盟店に支払うべきものは、あくまで金員でありまして、その実質は資金の預かりと支払いの代行とも言うべきものであります。ここでは、あくまでも資金が保全されなければならないと思います。このように経済構造が異なることに鑑みますと、自家型前払式支払手段について、現行法が、保全措置を発行残高の2分の1としていることについては合理的理由があるところです。これに対して第三者型については、将来加盟店に払うべき、あるいは支払う可能性がある額について、その全額が資金として保留される必要があるんだろうと思います。かかる観点から、第三者型について資金の保全措置について、資金移動業との平準化を図るべきであると思われます。特にIC型やサーバ型は、送金サービスにかなり近いので、資金移動業との標準化の必要性は高いと思います。これに対して磁気型や紙型は、第三者型がどの程度あるのかも含めて、実態を踏まえて検討すべきではないかと思います。利用者のチャージ額や支払い額が低い実情にある点に関しては、基本的には、先ほどお話ししましたとおり、実質的に受け入れた資金が預かり資金であることから、全額保全が筋であろうと思いますし、チャージ額等が低額でも、加盟店側への影響が件数によっては大きくなる得ることからも、少額サービスも基本的に100%の保全を求めるというのが本来のあり方かと思います。もっとも加盟店への支払いの可能性が極めて低い部分を合理的に算定して、その部分について2分の1相当額とすることは考えられるのではないかと思います。
次に、2点目の資金移動についてです。ご指摘のとおり、前払式支払手段やクレジットが加盟店からの商品・サービスの購入にひもづいていることに比べて、送金サービス、資金移動は、このような場合に限られず、仕送り等の純粋な送金サービスがあるなど射程範囲が広い。したがって、いかなる範囲で、いかなる規制を及ぼすかは課題で、この点を規制の横断化、それからアービトラージの防止、公正な競争環境の確保の観点から検討するということなのだと思います。
まず、加盟店に関する規定ですけども、前提として資金決済法と割賦販売法の加盟店制度は必ずしも同じものではなくて、制度の平準化に課題があることは指摘しておきたいと思います。資金決済法は、前払式支払手段について公序良俗に違反する、あるいは、それを害するおそれがあるものでないことを確認するために必要な措置を求めております。他方、割賦販売法では、クレジットの事業に分業が進んで、オンアス取引からオフアス取引に移行してきた実情に鑑みて、アクワイアラーの加盟店調査義務、イシュアーの苦情伝達義務、加盟店情報交換制度など、より精緻な制度が構築・運用されてきているところと思います。こういった体制を整備することによって問題を排除することが取り組まれております。クレジットと同様に前払いや即時払いにおいても、国際ブランドカードシステムの利用とオフアス取引が拡大してきている事情に鑑みますと、資金決済法の加盟店制度を現代的なあり方に合わせていく必要は高いものと思われます。この点を留保しつつ、資金移動において、どの範囲でどのような加盟店制度を整備するかという点ですけども、まず、送金サービスの提供者が加盟店契約を締結して、継続的に商品やサービスの販売に関する決済の機会を提供する。このような場合には前払式やクレジットと同様に、加盟店管理の措置を求めるべきであると思います。例えば国際ブランドのシステムを利用してプリペイドや、あるいはクレジットに並んで資金移動の支払いスキームを提供するような場合が典型になろうかと思います。また、資金移動の決済サービスだけを提供するような場合も、加盟店契約に基づいて継続的に決済システムを提供するものについては同様に扱うべきと思います。支払いスキームを前払式から資金移動スキームに変更する場合に、加盟店加入を行わなくてもいいというような事態が生じないように、これは、規制のアービトラージを防ぐ観点からも加盟店制度を整備する必要があるだろうと思います。もともと加盟店制度は、決済の信頼性を高めることを旨として導入されてきておりますけども、同様の機能を持つものについては、同様に信頼性を高める枠組みを用意すべきですし、低コストかつ実効的な加盟店制度のイノベーションを促す観点からも、この点は重要ではないかと思います。
次に、加盟店契約を締結せずに商品・サービス契約の決済に用いられる場合をどうするかということも問題かと思いますが、これは、取引実態を見る必要があると思います。もし手数料について、単純な送金と、それから商品・サービスの購入の場合とでやや状況が違うことがあり得るとすれば、つまり単純な送金は、比較的、送金人負担になる場合が多いんではないかと思われますし、他方で商品・サービス購入の場合には、受取人負担の場合が多いことも、あり得るのかもしれないと思います。こういった違いがあり得るとすると、手数料負担の違いによって取引を区分して、何らかの規律を整備するということも考えられるのではないかと思います。さらに、個人間の取引については、これは難しい面がありますけども、資金決済法上、排除を求める公序良俗を害しまたは害するおそれがある取引は、個人間の取引においても排除される必要があるだろうと思います。翻って、このような取引の排除が問題になり得る場面としては、インターネット上のプラットフォームを介した取引が考えられるのではないかと思います。そこでアプローチのあり方としては、資金移動業者がインターネット上のプラットフォームを介した取引に決済手段を提供する場合に、プラットフォームが問題取引を排除する仕組みを持ち、機能させているかの確認を求めることも考えられるのではないかと思います。なお、悪質業者が多数の低額な取引によって利益を獲得することを防ぐ観点から、低額取引を対象外とすべきではないように思います。
次に、抗弁権の接続についてですが、抗弁権の接続が具体的に何を求めるものかについて整理が必要なのではないかと思います。この抗弁権の接続については、抗弁権の接続という枠組みとは別に、国際ブランドのカードにおけるチャージバックの制度があるところだと思います。前にも発言させていただいたところでありますけども、これは、国際ブランドのカード規約に基づいて、前払い、即時払い、後払いに関係なく、商品・サービスが提供されないなど、一定の事由がある場合に、支払いの停止、または既払い金の返還を行わせるスキームであります。制度の横断化に親和性のある取り組みなのではないかと思います。もっとも現行の取り組みは、利用者の権利として認められた制度ではないなどの限界もあるところです。将来的には、抗弁権の接続の制度をチャージバックの制度を参考に、前払い、即時払いに拡充することが望まれると思いますけども、直ちにそれが難しい場合も、チャージバックのような取り組みがさまざまな決済手段に広く採用されるよう促進を図っていくべきと思います。それから、無権限取引についてですけども、これは、海外の規制でもあるところですし、送金サービス提供者についても制度を整備すべきと思います。少額の取引が多いという実情がありますけども、少額の取引については、むしろ、できるだけ明確な解決基準があったほうがよいという考え方もあり得るかと思いますので、こういった観点からの検討もお願いできればと思います。
最後に、その他の点ですけども、複数の決済スキームの組み合わせがされたものがいろいろと出てきていると思います。例えば前払式支払手段にクレジットからオートチャージされた場合における抗弁の接続ですとか、あるいは無権限取引の対応等、こうした点も社会的にはいろいろと問題場面が出てきているように思いますので、こういった点についての目配りも必要かと思います。
以上です。

【岩原座長】  
それでは、大野さん、お願いします。

【大野メンバー】 
ありがとうございます。
今回のテーマに関する論点につきましては、まず、大きな方向感として、少額取引に限定されることが確かな金融サービスのカテゴリーをうまく設けることができるのであれば、そうした少額取引については、リスクベースアプローチにのっとって相対的に緩やかな規制を適用する方向で臨んでいくのがよいと考えております。具体的な対応策としましては、どこで線引きを行って、どのように個々の金融サービスへ落とし込んでいくのが適当かについては、事務局にしっかりと見きわめていただいた上で、よいアイデアを出していただきたいと思っております。よろしく検討のほど、お願いします。その際には、ぜひ機能別横断的な制度の見直しを進めるという本スタディ・グループのこれまでの議論を通じて共有しているゴールを目指したいと思っております。以上が総論です。
次に、4点ほど意見を申し述べたいと思います。
1つ目は、目指すべき基本的なアプローチです。前回の会合でも何人かのメンバーの方が指摘しておられましたが、これから描く制度のフレームワークについては、イノベーションの進展を促すような柔軟性と弾力性を備えるものであることが非常に重要と考えます。今後もイノベーションやテクノロジーの進展のスピードは非常に速く、新しいサービスや革新的な技術が決済の領域でも次々と生まれてくると思っております。我々がこれから提示していく制度や規制の見直しは、そうした変化や変革に対してフレキシブルな対応が可能であって、しなやかさ、レジリエントさを兼ね備えたものとなるよう極力配意していくことが肝要である点を改めて強調させていただきたいと思います。少額取引や自家型のサービスについては、あまり厳しい規制を課さないという方向感でよいと思います。さらには、自家型サービス以外においてもリスクが少ないと判断できる小規模取引については、横断的な規制、相対的に緩めの受け皿を用意していただけるとよいのではないかと思います。1つ注意を要すると思われる点は、利用者基盤が非常に膨大なケースをどう扱うかではないかと思っています。利用客の規模が何百万人、何千万人に上るものや、中国では数億人に達するサービスもあらわれているようであります。こうした極めて広範な顧客層を有するケースで、もし、そこで問題が発生した際には、それが経営破綻であれ、オペレーショナルなリスクであったにしろ、社会を支える重要なインフラとも言える決済サービス基盤に対する信頼が揺らぎかねないとのおそれも出てきます。そうした業者やサービスに対しては、相応のリスク管理やセキュリティ対策、コンプライアンス、AMLなどの面でしっかりした基準やレベルを維持する規律を守ってもらう必要があると考えております。
2つ目は、利用者トラブルへの対応についてです。決済手段としてクレジットカードの抗弁権の接続などの利用者保護の安全弁が備わっているものから、少額取引に限定されて、そうした保護がないものまで、いろいろなサービスのバリエーションが併存するような状態、これは利用者側の視点から見れば、さまざまな選択肢があるということですので、むしろ好ましい側面もあると考えております。決済手段のメニューの中には、安くて簡便なサービスの提供を受けることの対価として利用者に対する保護のレベルがそれほど高くないものがあっても仕方がないという気がいたしております。消費者サイドの思惑としては、例えば少額にとどまる日常の商品の購入については、抗弁権がなくても手軽で便利な手段を利用する。他方で、高額な商品の購入や海外での支払いなどについては、取引でトラブルが発生した際の対応がしっかりとした、これは抗弁権や加盟店の管理、そういったものも含めてしっかりした対応ができているクレジットカードなどの手段を選ぶ。このような使い分けは合理的な行動であると考えます。社会全体としてイノベーションのもたらす果実を十分に享受させるためには、制度体系としてメリハリのついたメニューを備えるとの手法はあり得ると思っております。こうしたメリットを最大限受け取り、マイナス面を抑えるために満たさなければならない大前提としての条件は、利用者の側が、そうした決済手段の間のサービスレベルの違いをしっかり認識した上で、みずからのニーズに応じていろいろなサービスをうまく使いこなすための環境を整えることだと思います。そのためには、個々に提供されるサービスの内容について、しっかり利用者に理解してもらえるような透明性を確保することが必須の条件として挙げられます。
3点目は、今後の段取りに関するお願いです。決済の領域に関する個別の論点については、ここ数回の会合で相当議論を深めることができたと思っております。今後の運び方についてのお願いが1つあります。本日の議論を含めて、これまで当スタディ・グループで議論を進めてきた内容を整理して、新しい体系、新しい枠組みの全体像のようなものを、大ざっぱなもので構いませんので、ビフォー・アフターのような形で事務局の方で用意していただくことは可能でしょうか。そうした体系図をベースにして、我々のこれまでの議論の成果を確認して、抜けている視点がないかチェックできるような機会を持つことができると非常に有益ではないかと思います。よろしくご検討をお願いしたいと思います。
最後の4点目は、異業種、特にプラットフォーマーが決済領域に進出する動き、これへの対応です。プラットフォーマー的な大きな動きにどのように対応するか、これは、次回以降の検討テーマと関係してくるポイントかもしれませんが、若干先取り的に意見を申し述べさせていただきます。中国のアリペイ、GAFA、さらには他のIT関連企業、eコマース業者、通信関連業者、これらの中にも決済の領域に興味を示す先がございます。こうした動きにどのように対応できるかという論点です。これらのプレイヤーの主たる狙いは、顧客の囲い込みや、みずからが中心となる形での経済圏、エコシステムを構築することであったり、そこから得られる顧客情報を蓄積して、それをビジネスのシーズとすることに置かれるかもしれません。その際の主たる収益源は、決済的業務そのものから得られる収入というよりも、むしろ、プラットフォーム上で得られる広告収入であったり、顧客情報の提供によるフィー、手数料などに依存するビジネスモデルもあるかもしれません。そうした場合、決済自体から得られる収入や収益性には、それほどこだわらないような主体の決済領域のプレゼンスが大きくなる可能性もあり得るということであります。それ自体、何が問題かということは、もちろん議論の余地があるところですけれども、ここでも1つは、中長期的な視点で決済システムの安定性を確保するインセンティブを保持すること。2つ目、そのためにも健全な競争条件を促す上で、レベル・プレイング・フィールドをいかに確保するかという点は重要な検討テーマではないかと考えております。先ほどお願いした新しい体系図の最終版の中では、今申し述べたプラットフォーマー的な異業種が決済関連サービスに進出してくるようなケースについても、どのようにファンクショナルベースで捕捉できるのか、適切な規制を当てはめることができるのか、今後の課題は何なのか、こういった点をぜひ盛り込んでいただければよいのではないかと思っております。
以上です。
ありがとうございました。

【岩原座長】  
それでは、次に舩津さん、お願いします。

【舩津メンバー】  
ありがとうございます。
私は、資料2の1の前払式手段について、少し述べさせていただきたいと思います。この討議事項に対する正面からの意見とはなっていないかもしれませんが、少しお話しさせていただければと思います。討議事項1の第1段落に関しては、確かにそのとおりだと思います。事実上、送金と同様の効果をもたらすものであれば、送金の規律に服するというのは、総論としては正しいことになろうかと思いますし、逆に前払式支払手段全てに画一的に送金規制を課すというのは行き過ぎだということも、これまた総論としてはそのとおりだと思います。ただ、ここで問題となるのは、送金サービスに類似する前払式支払手段に限り、という形での限定を、果たしてどのようにして行うのかという点が一番難しい問題ではないかと感じております。
もう一点、送金に使える前払式手段を送金の規制にそろえるというのが、どうも、この討議資料のスタンスのようですが、その点に関しては、そもそもなぜ今まで前払式支払手段と送金との間での保全措置のレベルが異なっていたのかということを改めて考えておく必要があるように思われます。この点に関しては、単なる歴史的な経緯だという偶然の要素が強いことにはなるかと思いますけども、先ほどどなたからかありましたが、あえて説明するとすれば、現金を確保しておく必要性の強弱という点にあるのではないかと考えております。この点に関しまして討議資料では明記されておりませんけれども、分析の視点として追加しておいたほうがいいというか、意識しておいたほうがいいと思いますのは、ここで議論の対象となっているさまざまな仕組みなり、サービスが何を目的としたものかという点ではないかと考えております。といいますのも、抽象的に考えれば、前払式支払手段は、どれも送金手段になり得るわけです。物理的に物を送るなり何なりして、送金はできるというのが基本的な構造かと思います。しかしながら、商品券には商品券の、プリペイドカードにはプリペイドカードの、議論の対象となるかどうかはともかくとして、ポイントプログラムにはそれなりの、それぞれの達成したい目標があったはずだと思います。例えばですけれども、商品券の多くは、おそらくは顧客の固定化というのがスタートではなかったかと思います。他方で、今となっては贈答品の形で、ある種の送金として使われているというような部分があるわけです。他方で、プリペイドカードの中には、例えば顧客の固定化をおそらくする必要がなかったであろうテレホンカードのように、まさにキャッシュレスによる業務の効率化というものが実は目的であったというような前払式もあるのではないかと思います。このような主目的の違いというのが規制の対応におそらく影響してきた部分もあるのではないかと考えておりますし、今後の規制を考える上では参考になるように思います。プリペイドカード法における現金への払戻禁止規制というものも、顧客の固定化を主目的に設定する限りは、現金への払戻しという汎用性を回復させる措置を認めたのであれば、顧客はどんどんほかに流れてしまうという点で自己矛盾であるということからすると、そういった現金払戻しを認める必要性はないと考えれば、うなずける規制であると思います。逆に業者や利用者の決済手続の簡素化が主目的であるというような場合、顧客の固定化がそれほど強くないということであれば、顧客のニーズに応じて現金化することも、それは認められてよいような気もしております。
他方、今、前払式支払手段の規制の見直しの必要性が認識されているのは、おそらく、そういった顧客の固定化、すなわち支払い手段の汎用性が失われるというようなことが、利用者には意識されないままで前払式支払手段が流通・利用されていることが1つの原因になっているような気がしております。それは、先ほど来出ております第三者発行型というものを認めたことによる部分がかなり大きいわけですけれども、第三者発行型であっても、狭いネットワークである限りは、それほど問題にならなかったものが、アライアンスグループが広がっていくことによって相当の汎用性を獲得したためであると考えられます。そのように考えますと、先ほど来、自家型か第三者型をメルクマールに規制を分ければいいではないかというご議論もありました。それと同じ話なのかもしれませんけども、規制を区分するメルクマールの1つとしては、支払手段がどの程度汎用性を獲得しているかという点ではないかと思います。したがいまして、第三者型であっても汎用性がないものについては、必ずしも送金と同じような形にしなくてもいいような気もするということも含意するわけでございます。とりとめのない話にはなりましたが、以上、要するに規律を考える上では、それぞれの支払い手段の仕組みが目標としていた機能と現実の利用において果たしている機能の両方をにらみながら、規制のあるべき姿をゼロベースで考えるべきではないかと思っているところでございます。
今回の討議資料の中にはあらわれておりませんでしたけども、そうなってきますと、ゼロベースで考えるとしますと、現金での払戻し規制をどう考えるかという点も論点として取り上げるべきではないかと感じております。その際、単に規制を緩和する、すなわち現金による払戻しを業者の選択で認めるというような選択肢のほかに、EUのように顧客の要求があれば、現金払戻し義務が生じるという形での規律というものも選択肢としてあり得るように思われます。とりわけ払戻し義務の法定というのは、支払手段の汎用性に対する利用者の信頼を保護する上では究極の形であるとも思うわけですので、どのレベルに設定するかはともかくとして、相当程度の汎用性を獲得した支払手段については、そのような払戻し義務といったものを認めていく方向も検討されてよいように思われます。
以上、申し上げたことは、目的や実態を踏まえて検討した上で、なお最終的な規律のあり方として、金額によってリスクを評価して、ある程度の少額の割り切りというものをすることを排除するものではないことも付言させていただければと思います。
以上です。

【岩原座長】  
それでは、永沢さん、お願いします。

【永沢メンバー】  
ありがとうございます。
私は、前回、欠席をしましたので、皆様ほどに理解が進んでおりませんが、資料2について発言させていただきます。
前払式支払手段、1の項目ですけれども、利用者保護という観点から、例えば全額供託で統一することが望ましく、保全規制については平準化を図っていくという方向で進めていくべきということを以前から申し上げており、その考えに今も変わりはございません。しかしながら、先ほど舩津メンバーがおっしゃった点についてなるほどと思うところがありました。送金サービスと競合する分野とそうではない分野もあると思いますので、その辺は整理して、議論をしていく必要があると思いました。利用者保護に向けて見直しを進めていくべきですが、先ほど日本資金決済業協会から現状についてご説明をいただきました。確かに事業者の中には規制強化で営業が難しくなるところが出てくることもありうることは考慮しなくてはいけないと思います。事務局が提案されているように、紙型・磁気型、IC型、サーバ型という区分や自家型、第三者型という区分で規制のあり方を議論していくことに賛成です。ところで、自家型と第三者型ですが、自家型であれば、利用者は相手となる発行者を見てこの事業者が安全かどうかを判断して利用することが比較的可能と思います。一方、第三者型となると、それが難しいという状況にあります。その意味で、自家型と第三者型は、規制のあり方について差をつけてもよいのではないかとも考えます。
その前の①に戻りますが、特にサーバ型については、インターネット取引の中ではクレジットカードに代替する決済手段として使われる場面も増えてきているという認識でおります。IC型もそうなのかもしれません。この辺も、従前からある紙型・磁気型とは違う扱いで考えていく必要があるのではないかと思います。
それから、1の後半のところですが、金額に応じて制限する、リスクを考えて規制を考えるというご提案もありました。資金決済業協会からご提示いただきました資料を見ますと、5万円とか10万円という金額で制限をするのが妥当ではないか思いましたが、一方、先ほどの戸村メンバーのご意見についても、十分に配慮すべきと思いました。この種の決済媒体は、社会的弱者と呼ばれる保護を必要とする人ほどリスクを理解しないまま利用するケースが多いというのも事実であり、保護をすべき人に対する保護が欠けるという状況があってはいけないと思いました。悩ましいところですけども、戸村メンバーのご意見は十分に考慮すべきだと思いました。
2番目の送金サービスの利用者トラブルへの対応のところですけれども、資金移動業者が誰から誰に送金するのかというところで、さまざまなケースがあると思いますが、資金移動業が提供するサービスの中でも経済社会に広く普及していくのは、おそらくCtoC型であろうと思っております。CtoC型以外の形態については、例えば坂メンバーのご指摘のとおりと思いますが、私はCtoC型に限定してお話をさせていただきたいと思います。CtoC型の取引の場合を考えますと、利用者調査義務が資金移動業者などの業者にあるというのは何ともぴんときませんし、調査対象となるのも利用者側にとってあまり居心地のいいものでもございません。調査義務的なものがあるというのはCtoCでは考えづらいのではと思います。ただし、犯罪や公序良俗に反する経済活動に利用されるようなことはあってはならず排除していく必要がありますので、例えばお金の送金の目的などをヒアリングし、チェックをする程度のことは必要なのであろうと思います。そもそも資金移動業者は登録業者ですから、送金者の本人確認などは当然されていると思いますが、プラスアルファ、送金目的程度のヒアリングは必要なのかもしれないと思います。
また、2番目の抗弁権の接続もなかなか考えづらいと思いますし、大野メンバーのご指摘と重なりますが、手段は一つではなく多様に世の中にあるわけで、利用者も選択可能なわけですから、抗弁権の接続がないサービスを利用するということは、それなりにリスクがあることを理解して利用されるのではあれば、保護にかけるところがあったとしてもそれはそれなりにと私は思いもいたします。ただし、繰り返しになりますけれども、リスクについて一般的な周知徹底を行うとともに、利用者に対してリスクがあることの個別の事前通知がなされることが必要だろうと思います。
3については、このサービスが普及していくことがキャッシュレスという流れを推進する上で必要ということでしたら、3につきましては、利用者保護というのはきちっと考えていかなくてはいけないと思っており、銀行で導入されている補償の規定なども、法律よりも前にまずは自主ルールで導入いただくことなども検討いただくことが必要なのではないでしょうか。それから、この機会に、議題からは外れますが、一言お伝えしたいことがございます。8ページ目のところのインターネット・バンキングにおける個別対応のところですが、現在、全国銀行協会では申し合わせで自主的にやっていただいていますが、できましたら法で手当いただいたほうが望ましいのではと思っております。といいますのも、私は消費者団体の役員をしておりますが、インターネット・バンキングを導入しようとしても、法令で手当てされていないサービスは使うべきではないというような意見もありまして、苦労をいたしました。全国銀行協会の申し合わせで自主的にやっていただき、それは立派な姿勢でありますし、確かに補償割合を法令で定型的に策定することは困難という事情もよく理解できるのですが、インターネット・バンキングを導入する側からすると法で手当されている方が安心感があり、導入のハードルが下がります。これは、送金サービスや資金移動業でも同様と思います。
以上でございます。

【岩原座長】  
それでは、後藤さん、お願いします。

【後藤メンバー】  
どうもありがとうございます。
このあたりのお話については、まず、前払式支払手段であるとか、資金移動業などという法律上のたてつけと、現実の使われ方とが必ずしも一対一に対応するわけではないというところがありますので、今、永沢メンバーの話にもありましたけど、どういうものを想定するかというところ、1つになかなか決めがたいわけですけれども、どういうイメージでお話しするかということを最初に申し上げた上で、意見を述べさせていただきたいと思います。
今現在、現金と銀行送金とクレジットカードと電子マネーが主要な支払手段としてあるわけですけれども、これから発展していく可能性のある新しい支払手段をどういうものとして位置づけるかと考えていったときに、銀行送金とクレジットカードについては、かなりしっかりとした仕組みが信頼のできる業者によって構築されているわけでして、それをもう一個つくる必要はあまりないような感じがしております。他方で、既に交通系の電子マネーなどが広く普及していますが、これは、現金で行われていた決済を、現金を使わずにICカード等に記録された電子情報でできると非常に便利になってくるということだと思います。そこで、今回の議論の対象のイメージですが、現在交通系の電子マネー等で行われている決済を、ICカード以外の様々な形でできるようにする、また個人対事業者間に限らず個人間でもできるようにすると、さらに便利になるというイメージなのかと思います。そうすると、少し語弊があるかもしれませんが、現金の電子化、現金に近いものをどうやってつくっていくのかというのが一番の課題になっているように思います。もちろん規制の組み方次第ではいろんな使い方ができてしまうんですけれども、現金の代替物ではなくて、より銀行的な使われ方をするかもしれないので、銀行に寄せて規制を重くしていこうというと、最初の目的とはずれてしまう可能性があるところに注意する必要があるのかという基本的なスタンスからの発言になります。
話しやすさを考えて、2の送金サービスの利用者トラブルへの対応の方からお話をさせていただきます。例えばクレジットカードは、クレジットカード業者が加盟店をしっかりコントロールして、抗弁権の接続を認めるという仕組みがつくられていて、そういうものがここでも必要ではないかというお話が、たしか坂メンバーからあったように思うのですけれども、他方で現金についてはどこでも使えるわけですし、また、銀行送金についても、口座さえ開くことができれば、支払いの当事者間のトラブルは当事者間で処理するというのが銀行取引の基本になっているかと認識しております。学習院の小塚先生と東北大学の森田先生が書かれた「支払決済法」という本がありまして、非常にいい本だと私は個人的に思っているんですが、そこで強調されているのは、決済手段を運営する事業者を個々の取引に伴うトラブル、例えば売ったものに傷があったとか、片方が倒産したとか、そういうことから決済手段の運営システムを切り離すことによって、決済システムの運営コストを引き下げることができ、このコストの低下は、その決済手段を利用する利用者全員が享受できるのであって、個別のトラブルは当事者間で解決することとした方が決済システムとしては効率的であるということです。現金や銀行振込は、まさにこれが妥当しているわけでして、クレジットカードはむしろ例外になっているわけですけど、なぜ例外が認められているかというとクレジットカードには与信機能がついているからであって、その場で現金が不要であるために、つい多額のものを買ってしまいがちである、またトラブルが起きがちであるということによるものだと考えられます。そうしますと、少なくとも与信機能のない資金移動業については、抗弁権の接続を認める必要はおよそないのではないかと考えております。また、抗弁権の接続を入れないのであれば、運営者側が、個々の加盟店というか、個人間の利用もあるので「店」ではないというお話があって、そのとおりかと思うんですけれども、利用している人をチェックすることは、マネーロンダリング防止のための本人確認という観点を離れれば、それも存在しないのかと認識しております。
ただ、(3)は新しい資金移動業にも存在する話でして、例えばカードであったり、スマートフォンであったりを落としてしまうという紛失のリスクや、紛失したことによって他の人に使われてしまう無権限取引のリスクをどのように配分していくかということが問題となります。このときに難しいのは、まず自分のカードや携帯を落としてしまうという問題や、またはパスワードを誕生日とか電話番号と同じにしてしまうというパスワード管理上の問題は、利用している人がコントロールしやすい要素であるのに対して、そもそものシステムをどのように構築するか、例えば指紋認証を入れるなどして本人以外が使えないようなシステムをどうつくるのかというのは、業者側が、運営する側がコントロールできる話であり、これをどのように配分していくか、またそのためにルールをどう設計すれば良いかということです。安全性を高めれば高めるほど仕組みは重くなって、不便になっていくというところがあるわけでして、例えば現金については日銀が発行しているわけですけど、日銀は何も責任をとってくれるわけじゃなくて、落としたら、それでおしまい。そのことは、みんなわかった上で、例えば財布の中に入れるのは幾らまで、財布はしっかりとしまうということをみんなで管理しているわけです。また、交通系の電子マネーについては、今現在、法規制はないかと思いますけれども、大体の事業者さんがたしか上限を2万円ということにされていて、無記名のものについては、拾われて使われてしまったら、それで終わり。なので2万円までにしておく。記名のものであっても連絡すれば止めてもらえますが、止めるまでの使用は利用者負担になるということで、これはカードの利便性、使うたびに暗証番号を入れなくてもすぐ払えるということを重視して、リスクをそちらに負わせていることになるものかと思います。他方で、8ページに書いてある銀行のカードは、銀行預金に直結していますので、上限を設けることはできない。そうすると、全財産持っていかれてしまう可能性があるということで、電子マネーのようなリスク配分はできないということになり、特に預金者に過失がない場合には100%補償し、人間の記憶力には限界がありますので、どうしてもカードの暗証番号は身近な番号にしてしまいがちであるということなども踏まえて、軽過失であっても75%は補償する。ただ、あまりにもひどい場合には補償しないというような配分をして、そうすることによって、銀行側にもしっかりしたシステムをつくるインセンティブを与えつつ、利用者側のインセンティブも確保することを実現しようとしたものと思っております。新しい資金移動業にしても同じようなことが問題になるはずです。これは、アカウントにどれだけ入れるのかということにもつながってくるかもしれませんけれども、まず媒体と、現在想定されているのはスマートフォンなのではないかと思っておりますが、スマートフォンを落としてしまって、暗証番号が外れればすぐ使えてしまうということがあり得るという意味ではカードに近い形になってくるかもしれません。ただ、そのときにロックの外し方をどうするかというところで、指紋認証などを用いれば、かなりの程度防げるとすれば、そのようなシステムにするインセンティブがある方が望ましく、事業者と利用者の間のリスク配分を考えていく必要があるわけです。そこでどうするかということですけれども、図の左側でインターネット・バンキングについて、左下分は、先ほど永沢メンバーからご指摘があったところですが、個別対応となっておりまして、これは、リスク管理方法が多様であり過ぎて、カードの偽造と盗難というふうにすっきりとした分け方をすることがもはやできない。特にネットバンキングについては、暗証番号だけのものもあれば、ワンタイムパスワードのトークンをもらうという形もありますし、乱数表でやるものもありますので、いろんなものがある中でどれがいいかわからないので、業者に任せるということをやったと認識しております。ただ、このようなやり方が可能であるのは、銀行は免許事業者であり、厳しく規制されているので、銀行の自主ルールに任せても、そんなに大きな問題は起きないだろうということが考えられたわけです。もちろん資金移動業者さんにもちゃんとしたところはいっぱいあるかと思いますけれども、ただ、どういうものが入ってくるかまだわからないところがありますので、業界の個別対応に任せるというのは、私も少し不安を感じているところでございます。そうだとすると、運用が少し難しくなるかもしれませんが、預金者に過失がない場合と軽過失がある場合と重過失がある場合の3段階に分けて、補償割合については、数字は決めでしかありませんので、100%と75%と0%にするのか、100%と50%と0%にするのがいいのか、正解はありませんが、そういう形でリスク配分をして、両方のインセンティブをちゃんと促進していくことがいいのではないかと考えております。
続いて、前半に移らせていただきます。預かった資金の保全を幾らさせるかということは、どういうタイプのリスクかというと、前払式支払手段の発行者の倒産リスクへの対処という問題になります。既に何人かのメンバーからご指摘がありましたけれども、自家型については、まず自家型であること自体によって、預ける額には自然と限度がかかるでしょうし、また預ける側もリスクの高さを認識した上でやるだろうということで、自家型については、少なくとも今から規制を重くする必要はないものと考えております。他方で、第三者型ですが、舩津メンバーがおっしゃられましたように、特に汎用性があるかどうかが重要なのではないかということは私も全く同感ですけれども、ただ、汎用性という概念をどうやって規制に落とすかというとなかなか難しいところがあると感じております。利用可能店舗数が何店あるかというのでもなかなか難しいわけですので、規制をかけるとすると、第三者型というところでさらにどう絞れるかという話になってくると思っております。そのときに倒産リスクの話だとしますと、重要になってくるのは、そこに幾ら預けることを安全だとしてあげるかという話ですので、例えばチャージ額と1回当たりの支払い額という2つの基準が定められていますけれども、1回当たりの支払い額は、本質的にはここでは関係ない話ですので、チャージ額がいくらまでであれば2分の1の保全でもいいけれども、それを超えた場合には全額の保全を要求するというような形にするということは一つ考えられるのかもしれません。そうすると、難しいのは、サーバ型であれば、おそらくアカウントは1人1つであり、携帯の場合にも、携帯を複数持っておられる方も世の中にはいらっしゃいますけれども、普通の人は1台しか持たないわけですので、そこへのチャージ額を基準とすればいいわけですが、紙とか磁気型というのは1人で何枚でも持てるので、そこを同じようにしていいのかというところです。もっとも、紙型・磁気型というのは、舩津メンバーからご指摘がありましたように、今現在では贈答用として使われている部分が多分にあるんじゃないかと思いますが、そうすると世の中での使われ方が違うわけですし、また、資料にもありましたように、金額的にも非常に小さい。そうしますと紙型・磁気型については、グランドファザーリングといいますか、今現在の規制を基本的にそのままにするという趣旨で、同じように1枚あたりの金額を基準とすることで良いように思います。なお、IC型の無記名カードも1人で複数枚持つことが可能である一方、利用の仕方は紙型・磁気型とは違うでしょうから、1枚あたりのチャージ金額を制限するのでは少し不十分かもしれませんが、そこは一種の割り切りとして、そこも半額の供託もしくは保険で良いことになるチャージ金額の上限をつけるということで良いと感じております。この点について、戸村メンバーから、そうはいっても、2万円をそこでとっておいた人の期待というものは、そこには2万円以上の価値があり得るのだから、保護すべきではないかというご指摘があったかと思うのですが、先ほど冒頭に申し上げた話から言いますと、2万円をとっておくときに、新しい資金移動手段でとっておく必然性がどこにあるのだろうかということを考えますと、本当に必要なのであれば銀行預金に置いておけば一番安全なわけです。そうすると、わざわざ新しい手段で貯金しておくというレアなケースのために規制を重くする必要はなく、むしろ低所得者のことを考えるのであれば、そういう人にもより使いやすい資金移動手段を提供するほうが全体の利便性は向上するのではないかと考えております。
最後、舩津メンバーから指摘のあったゼロベースからというお話ですけれども、払い戻しを認めるかどうかという点については、出資法の規制によるものと理解しております。たしかEUでは現金化も認めているという話がありまして、これを認めると、さらに大きな金額を入れやすくなってしまうという側面もありますので、認めるのがいいのかどうか、なかなか難しいところもあるのですが、ただ他方で、出資法が広過ぎるのではないかとも認識しております。出資法は、基本的には投資詐欺を防ぐためのような法律だとしますと、もう少し精緻な基準をそちらでつくることができれば、こっちもより設計がしやすくなるのではないかと思いますが、ただ、今から出資法を改正しましょうというと、これは多分、大変な作業になるのかと思いますので、一遍にできるのかどうかわかりませんけれども、ただ、将来的な検討の対象に上げていただければいいのかと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。

【岩原座長】  
事務局からお願いします。

【岡田信用制度参事官】  
1点だけ、私が先ほど説明で省略したので、補足をさせていただければと思います。
資料1の5ページに国際比較がございまして、今、後藤先生からご指摘があって、先ほど舩津先生からもご指摘があった論点についてでございます。
比較表の一番下を見ていただきますと、現金化の可否と本人確認義務について書いていますが、EUについては、電子マネーというもので現金化が可とあります。他方、シンガポール、日本は現金化が原則できないということでございますが、一定の場合は日本は認めていますし、シンガポールもそうなるのではないかと思います。これにつきましては、確かに出資法との関係も、我が国の文脈であるんだと思うのですけれど、今日的にもう一つ意識しておく必要が実際上高いのは、その真下に書いている本人確認義務のところでありまして、現金化ができるかどうかということによって、マネロン上のリスクというのが相当程度違ってきます。EUは現金化が可能、ないし求められれば対応が必要というご紹介がありましたけども、同時に、本人確認義務が課されているというような関係にあるといった点は留意が必要かと思います。
補足させていただきました。

【岩原座長】  
ありがとうございました。
それでは、次に神作さん、お願いします。

【神作メンバー】 
ありがとうございます。資料2に沿ってコメントをさせていただきたいと思います。
まず、第1の決済サービス間の利用者資金の保全規制等の平準化の論点でございますけども、既に多くのメンバーの方からご指摘がございましたように、自家型の場合には別に考える必要があると考えます。と申しますのは、前払式支払手段発行者が自家型である場合は、当事者間の信用関係が、他の取引の経済実態とは大きく違うと思いますし、現行法上も資金移動業者や第三者型の場合は登録制が採用されているのに対し自家型は届出制を採用しており、このように監督法制自体、すでに大きく違っておりまして、自家型については別途規制を行い、それ以外の類型よりも緩やかな規制を正当化できるのではないかと思います。これに対して資金移動業者と第三者型の場合は、私は、できる限り平準化する方向で検討していく必要があると思います。そのときの保全に関する規制ですけれども、後藤さんも指摘されたと思いますけれども、たとえばチャージ額に着目して、少額については保全の規制について緩和することは、イノベーション促進等の観点からも正当化できると思いますし、他方で、現在、資金移動業者と第三者型の場合で財務規定等に差がありますけれども、一定の規模で決済サービスを営んでいる場合については、少額の場合に保全が、例えば2分の1でいいというようなことにしたとしても、一定の規模以上で事業が営まれているのであれば、財務規制とその他の規制が必要になってくるのではないかと思います。また、平準化という観点からすると、現金化の価値というのも、今の資金移動業と第三者型前払式支払手段の場合とで差が生じておりますけれども、少なくとも決済サービスを利用する側からすると、現金化が広く認められることのほうがありがたいのではないかと思いますので、討議事項から外れる面もあるかもしれませんけれども、保全の規律のあり方と並んで現金化の可否、それから財務規制、その他についても総合的に考える必要があると思います。
次に、第2点の利用者トラブルへの対応でございますけれども、まず(1)の加盟店に関する規制は、私も既に何名かのメンバーの方が指摘されたのと同様に、加盟店に例えば調査義務を課すというような形、あるいは加盟店に対して何らかのコントロールをしなければならないといった義務を課すことは一定のビジネスモデルを強制することになるのではないかと懸念しています。加盟店のあり方というのは非常に多様であり得るものですから、加盟店調査義務といった義務については、本来、法規制にはあまりなじまないという感想を持っています。
次に抗弁権の接続に関する規定でございますけれども、これも後藤メンバーが指摘されましたように、基本的には現行法上もまさに抗弁の対抗という形で、与信を受け元利金の支払いを請求されたときに、その支払いを拒むときの理由として商品やサービスなど原因関係である契約関係に基づく抗弁を主張する、対抗するという話ですので、基本的にはプリペイドですとか、リアルタイムの決済の場合には直接には問題とならないと思います。しかし、実態としては、先ほどのオートチャージからプリペイドカードに充填するようなケースをはじめとして、与信と決済を組み合わせるケースがございますので、そのような場合には抗弁権の接続がたしかに問題になりますし、既払金の返還等々、論点としてはもちろんあり得ると思います。しかし、この点については、形式的、事前的に規制するのは難しいと私は思っておりまして、この問題は、本来は事後的に個別的ケースに応じて、裁判所による司法的解決を図るのが望ましい解決の姿ではないかと思います。そのような意味では、抗弁権の接続についての一般的な規定というのは設ける必要はないのではないか。他方で、今申し上げましたように、民事的な規律については、より活発かつ緻密に議論していく必要があると思っています。
最後に、無権限取引が行われた場合の論点でございます。これも多くのメンバーが指摘されましたように、私も方向としては、もしコンセンサスが得られるのであれば、何らかの形で立法を考えることが望ましいと思います。その際の論点としては、たとえば立証責任の問題等があるほか、損失分担のルール、それから仲介者が介在する場合において業者間における損失分担のルール、特に顧客との関係でどちらが第一義的な責任を負うか等々、いろいろな論点があり得て、このあたりについてもし統一的なルールができるのであれば、大変望ましいことであると思います。もっとも、これまでの議論の経緯等からしてもコンセンサスに達するにはかなり難しい面はあるとは思いますが、少なくても、それを目指して議論をさらに続けていくことが考えられます。
以上、簡単ではございますけども、コメントさせていただきました。ありがとうございました。

【岩原座長】  
それでは、福田さん、お願いします。

【福田メンバー】 
ありがとうございます。
今日の問題をどのように考えるかといったときに、金融規制庁的な立場で考えるのか、金融育成庁的な立場で考えるのかという発想は大事なんじゃないか。金融規制庁的な立場で考えれば利用者保護等を拡大ということになると思いますけれども、必ずしも、こういう問題は、それだけでいいということでもないのかもしれないと思います。例えば3ページに事務局がまとめていただいた図で、少なくとも利用者保護という観点で見ると、右側に関しては自家型のほうがリスクは少なくて、下側のほうがリスクは大きいことになるでしょうし、左側は必ずしも明らかではないかもしれませんけれども、上から下にリスクが大きくなっていくという感じがあります。ただ、少なくとも利便性というか、イノベーションという観点からすると、下のほうが魅力的で、上に行くほど魅力は少ないという観点は逆にあると私は思いました。そのときに、どのように物事を考えるかという発想は大事なんじゃないかと思いました。もちろん、多くの方がおっしゃるように、金額が少額であるならばという前提はおそらくつくんだろうとは思いますけれども、この図で言う下側のほうだから規制を重くしなきゃいけないというよりは、下側のほうが我々の利便性を大きく広げるチャンスがあるんだという発想は大事だと思います。実際、我が国は、戸村さんが言われたように現金が主ですけれども、それによって社会的には大きなコストが発生しているという観点は大事で、それは最終的には我々が負担しているコストだろうと思います。そういう意味では、この図の下側のサービスが広がっていけば、そういったコストは減っていって、国民経済的にも大きなメリットはあるという視点は大事だろうと思います。
それから、いろんな規制の問題を考える上でも、商品の多様性は非常に大事で、抗弁権とか、そういう法律的なことは、私はコメントしにくいところではありますけれども、クレジットカードでも補償のあり方は、実態的には1種類ではありません。ステータスによっていろんなものが補償されているクレジットカードから、最低限のものに限定されたクレジットカードまで、いろんな選択肢があって、それを加入するときに大体、マル・バツがついていて、非常に明確な説明がある。これは永沢メンバーもおっしゃった説明責任に関連するかもしれません。利用者にどういうことまでが補償されていて、どういうことが補償されていないのかという明確になっていることはもちろん大前提だとは思いますけれども、商品の多様性が生まれて、いろんなサービスが提供されることは良いことだと思います。もちろん、利用者保護が厚い商品があることは大事ですけれども、その分、手数料は大きくなって、コストも発生しているという発想は大事です。コストと安全性のトレードオフを考えて、利用者がどれを選ぶかを選択できるような仕組みづくりは大事だろうと思います。
それから、無権限取引をどうするかというのは難しい問題があって、少額取引でもクレジットカード情報が盗まれて、どんどんチャージされてしまったというような問題が発生する可能性はあります。このようなときにどう考えるかという難しい問題はありますし、日常生活に支障が出るようなトラブルが発生しないような規制は大事だろうと思います。そういう意味では、少額といった場合でも、少額のチャージが無制限にどんどん知らない間にされていたというようなことがあると困りますので、そういう問題は配慮する必要はあると思います。
それから、この種の問題を考える上で大事なのは、これからの世界の将来像というのは、我々は全く見えていないということだろうと思います。先ほど3ページの図の下側が多分、有望だろうとは言ったんですけれども、将来の決済のあり方が、これからどのようになっていくのかは、我々がわかっていない面が非常に多い中での規制を考えなければならないということだと思います。とりあえず、いろんな形で、現状考える最善の仕組みづくりというのはやる必要がありますけれども、将来的に予想外の事態は起こってくるわけなので、それに備えて不断に、将来的に問題が発生した場合には見直していく姿勢は大事だろうと思います。
以上です。

【岩原座長】  
それでは、次に松井さん、お願いします。

【松井メンバー】  
ありがとうございます。
既に皆様がおっしゃったことと重なる部分が多いかと思いますけども、資料2に従って少しコメントさせていただければと思います。
まず1つ目の前払式支払手段についてですが、これは、従前から規制のある分野をどう最適化していくかという視点の話かと理解しております。紙型か磁気型か、IC型かサーバ型か、自家型か第三者型かというのは既に皆さんがお話しされているので、少し違う視点も含めてお話ししたいと思います。前払式支払手段で1つポイントになるのは、まさに「前払い」であって、そのシステムに入る際に、関係者がみずからがその仕組みを選ぶという契機があることかと思います。このことが何を意味しているかというと、場合によっては、自分がそのシステムに参加することを選んだのだから、きちんと開示がされて説明がされている限り、自己責任でもよいのではないか、ということです。もし潰れそうな業者であれば、前払いをしなければいいわけですし、システムに信頼ができなければ前払いをしなければいい。極端なことを言えば、こういう考え方もありうるのではないか、ということです。むろん、前払いをする、あるいはチャージをするという時点と、実際に商品やサービスと価値の交換が起こる時点というのは、どうしても時間的な差が生じるので、その間に関連する事業者の信用不安等が起こって、当初の想定とは違うということはありえます。だから、そこをパターナリスティックに保護するということなのではないか、と思います。ただし、その場合に何を保護しているかというと、実際に価値を投下した利用者、あるいはそれに関連した利用者を保護しているという側面があると同時に、そのような利用者を保護することによって、前払式の支払手段に関する仕組みそのものが保護されている。つまり、いざとなったときに自分が守ってもらえないとなれば、誰もお金を投じないということになり、システムそのものが成り立たなくなってしまうので、一定の保護を図ることによって仕組みそのものが保護され、利用者の利便性も上がる、こういう構造があるのかと理解しました。もし、このような仕組みの保護ということが制度の視野に入っているのだとすると、利用者を100%保護する、つまり100%保全により保護するということが必然的な方法ではないという気がしています。要はシステムなり、仕組みなり、制度なりの信頼性が保護されるような形で規制ができればいいわけです。そうだとすれば、例えば100%保全ではなく、今のような半分の保全でもいいのかもしれませんし、あるいは、むしろ不良な業者が入ってこないように――今もありますけども――業者の財務規制を課すとか、行為規制を課すということでもよいのかもしれません。先ほど神作メンバーもおっしゃっていましたように、要は保全が100%かどうかということだけが規制を考える際の視点になるべきではないのだろうという気がしています。
以上は現時点での私の感触ですけども、この議論のもう一段先には、もう一つ、ポリシーマターが隠れているのだと思います。特に、第三者型に関する議論との関係で、これをより電子マネー的に、つまり決済手段として一般的に使わせていこうということになれば、これは、先ほど言った制度ないし仕組みとしての保護の必要性がもっと高まることになります。そうなりますと、外国でもありますように、100%保全させて、可能な限り通貨に近づけていくというようなことはあり得ると思います。ただ今の我が国で、そこまでの結論を出すための前提があるかどうかというと、私個人はまだ自信がないところです。
それから、2点目の送金サービスの利用者トラブルへの対応についてですが、そもそも今でも利用者が保護されていないわけではなく、私法ルールで対応がなされ、相応のリスクの配分がされているわけです。今回の(1)~(3)は、この私法のルールを修正しましょうという話ですので、私は1つ目の論点よりも重たい話をしているのだろうと思っています。ここは、既に後藤メンバーや神作メンバーからお話があって、法律学者はみんな似たようなことを考えるのだと思ったのですけれども、私も(1)~(3)について慎重に考えたいと思っています。
(1)と(2)については似た面があって、加盟店というところを連結点にして規制が一部でかかっているわけです。ただ今回は、送金サービスという非常に抽象度の高い話で出てきていますので、もしここに(1)や(2)と同じような話を入れるとなると、送金サービス事業者に、送金サービスの利用主体に関する調査とか、取引内容に関する調査とか、事実上、さまざま調査義務を課すことになります。これは、先ほど後藤メンバーもおっしゃっていましたけれども、決済、あるいは送金の仕組みを原因関係になる取引から独立させることで得られるメリットを減殺していくことになるのだと思います。そのようなコストをとるのは、なかなか難しいのではないかと思っておりまして、私法上のルールで個別の事案において原因関係と送金・決済の仕組み(資金関係)を連結することはあり得るので、規制によって一律にここを連結してしまうのは、私は非常に躊躇するところです。
(3)の無権限取引については、無権限者が入ってきたときにどのようにリスク負担をするかという話ですので、帰責事由のある人間が基本的にはリスクを負うということに本来はなるはずです。もちろん、これに対して何らかの規制をかけて修正すれば、仕組みとしての信頼度は上がるのだと思います。ですから、これは、先ほどの話とも結びついてくるのですが、送金サービスについて、例えば国民にとって本当に不可欠で、高度の保護が必要であるというのであれば、この点について何らかの対応を公的にしていくというのはあると思います。ただ、これもコストの負担の問題が生じますので、そことの兼ね合いになりますけども、そういうポリシーを設定できるかどうか。これは、先ほどの(1)や(2)よりは現実味がありそうな気がしますけれども、まだ考えることはあると思っております。資料には銀行の例が出ていますけど、銀行の場合、偽造カードや盗難カードの問題が顕著に社会問題化したときに、この規制が出てきている。送金の場合、これと同じである必要はないのですけれども、高度の保護を必要とする何らかの事情があるのか、というようなことは考えておいたほうがいいかと思います。そのような 事情が肯定できれば、ポリシーマターとして、送金サービスの高度の安全性を確保していくという議論ができるのかと思いました。
以上でございます。

【岩原座長】  
それでは、森下さん、お願いします。

【森下メンバー】  
ありがとうございます。
まず、1に関しまして、前払式支払手段と資金移動は同じような形で把握したほうがいい場合があるのではないかという点に関してですけれども、これについては、利用者資金の保全ということを超えて、前払式支払手段のうち第三者型のものの一部と資金移動というのは、機能的にもリスクの上でも大変似ているのではないかというようなことが言えるのではないかと思います。これは、もう既に何人かのメンバーの方から指摘のあった点だと思います。特に例えば前払式支払手段のうち第三者型であって、幅広く利用できるもの。本人以外、どんどんほかの人に転々流通していって、ほかの人が誰でも使えるようなものということになりますと、機能的には、資金移動の目的で使えるような前払式支払手段といえるのではないかと思います。それに先ほどお話がありましたように、現金化までつければ、ほぼ送金の目的で利用できることになると思いますので、そうなりますと、ただ単に利用者資金の保全ということでは足りず、先ほど事務局からもお話がありましたけれども、例えばマネーロンダリング規制はどうするのか、あるいは無権限利用の場合にはどうするのかというような、資金移動に関する規制全般に対して問題となっているようなことが問題となってくると思います。どこで資金移動と同じような機能を果たす前払式支払手段とそうでないものを分けるかという点が難しいということはあり得るかと思いますけれども、1つは、利用範囲が限定されていないかですとか、取得者自身が転々流通させることができるか、それを誰であっても利用できるかどうか。さらに現金化ということになれば、段階が全然違うと思いますけど、そういったような点をメルクマールに考えていったらいいのではないかというような気がいたします。その上で、今回、具体的にご提案いただいている少額の取引について、ある程度、特別に考える可能性があるのではないかというのは、私もそういった方向性でいいのではないかと思います。そのときに1回当たりの支払い額、あるいはチャージ額ということもありますけれども、諸外国の例などを見てみますと、当該事業者が年間、大体どれぐらい発行しているのかというようなことを基準に規制の対象内とするか、対象外とするかというようなことを決めているような例があると思います。トータルとしてどれぐらいのリスクを抱えられる主体なのかというようなことは大事な視点だと思いますので、複数のメルクマールを組み合わせて、メリハリのきいたというんですか、バラエティーがあるんであれば、そのバラエティーに応じた規制を考えることができるのではないかと思います。
次に、2番目です。加盟店に関する規定ですとか、抗弁権の接続に関しましては、従来、送金ですとか、資金移動の世界においては、原因関係と切り離すような考え方、それによって振込みの取引ですとか、資金移動の取引を安定させることが基本的な考え方であったのであって、それが原因関係によって資金移動の取引自体が大きく影響を受けるというのはなかなか難しいのではないかと思います。逆にもし原因関係をもって資金移動の取引にいろいろチャレンジができることになりますと、資金移動の取引自身が不安定なものになってしまうようなことがあるのではないかと思います。今回の事務局の資料の中でPSD2の中には、そういったような規定はないというようなことがあったと思います。PSD2に関する資料を見ると、原因関係のいかんにかかわらず有効な支払い指図として考えていくのである、というような注記があるものもあるかと思いますけれども、そういったような考え方も、今申し上げたような、基本的には原因関係と切り離すというようなことが適切なのではないかということを物語っているのではないかと思います。ただ、クレジットカードの場合は、加盟店と継続的な関係がある。だから、いろんなこともできるというようなこともあるかと思います。先ほど坂先生から、例えば特定のサービス、あるいは特定の物品との関係で用いられる、かなり特殊な支払い手段であれば、何らかの形で特別に考えることができるのではないかというようなお話があったように記憶しておりますけれども、そのような特殊な支払い手段であればともかく、そうでない限りは加盟店の管理義務ですとか、抗弁権の接続という考え方を導入するのは難しいのではないかと思います。私法上、うまくこの点について対応できればいいと思うのですが、現在、例えば振り込まれた資金を振り込まれた後、その帰属を争うことについてもなかなかやりにくいのが裁判例ですので、そういったようなところが変わっていくことによって、事後的に当事者間で、その資金の帰属をめぐって決着をつけるとか、今でも支払い指図はしても、送金する前であれば取り消すことはできると思いますので、そういったような形でもうちょっと実質的な救済が図れる場面を考えていったらいいのではないかと思います。
無権限取引との関係、あるいは利用者保護ということですけれども、確認していないですけれども、今のところ、資金移動業者さんなどの約款とか、自主的な取り決めの中で、例えば無権限の取引があったときには、こういったことを救済します、こういった方針で臨みます、このような手続で対応しますということを明示的に示されているところがどれぐらいあるのかというようなところが1つ疑問に思っておりまして、そのようなものが自主的に開示されている、しっかりとした利用者に対する対応方針が確立しているというのであれば、また別なのかと思いますけれども、そうでないような状況を考えますと、例えば欧州のルールなどを参考に、無権限の取引があった場合にはどういった手続がとられるべきなのか、この点に関しましては、先ほど神作先生からいろいろ詳細な着眼点についてのお話がありましたけれども、そのようなものを定めることがあってもいいのかと思います。あとは、欧州ではなく、例えば米国などの電子資金移動の法制ですと、一定の技術水準の本人確認の手段を確保する義務というようなものについて規定している例もあると思います。偽造されやすい、悪用されやすいようなサービス、あるいは本人確認手段、そういった技術を採用している事業者に何の責任もないのかというと、多少疑問ではないのかと思います。そう考えますと、単に無権限取引が行われた場合にどこまで補償する、何%補償するという話ではなくて、もう少しきめの細かな規定の仕方というものを諸外国の立法例なども参考に検討すべきであると思います。
最後に、3のところで決済分野に係る検討を進めていく上でというところで、1点だけ気になっておりますのは、これまでもこのスタディ・グループで議論になったと思いますが、滞留資金という話があったと思います。今の資金移動業の法制では資金が滞留するということを前提とした法的な枠組みにはなっていないと思うのですけれども、したがって、そこについては何の規律もないということだと思います。しかしながら、それがかなりの量に達しているのだとすれば、その点が果たしてそのままでいいのか、あるいは何らかの特別なあり方を考えたほうがいいのかというのは検討されるべきであると感じております。
以上です。

【岩原座長】  
それでは、翁さん、お願いします。

【翁メンバー】  
ありがとうございます。もう皆様がおっしゃったことと重複する点もございますが、意見を述べさせていただきます。
同一の機能・同一のリスクには同一の規制をという考え方にのっとることを考えますと、プリペイド型のサービスの中でも送金業に近い形になっているものについては、平準化の方向で考えていくというのは、そのとおりであると思います。ただ、ご指摘のように、この中には多種多様なサービスがございますので、第三者型といった送金サービスに近いものに関してこれを考えていくことが必要かと思っております。同一のリスクという観点では、多くの皆様がご指摘になったとおり、金額に応じて、受入額や支払い額に応じて規制を考えていくことが重要と思いますので、そこでリスクに応じた規制ということで考えていく必要があるのではないかと思っております。第三者型につきましては、確かに汎用性もあって送金サービスに近いものが出てきておりますが、一方で、資金移動業者と異なって最低純資産額という財務規制も入っております。これとの関係も考えていく必要があると思います。また、第三者型でも少額であれば、半額を全額に引き上げるという必要は乏しいということではないかと思っております。また、送金サービスの利用者トラブルの対応についてでございますけれども、加盟店に関する規定につきましては、プリペイド型というのは、もともと商品・サービスの購入のための支払い手段であったわけでございますけれども、送金サービスにつきましては商品・サービスの購入にひもづけられたものではないですし、また、インターネット上でのPtoP取引が増えている現状、個人と加盟店の区別もなかなか難しくなってきているというのも、そのとおりだと思いますので、加盟店に関する規定は必要ではないと思います。
また、抗弁権に関する規定につきましても、これは、クレジットカードとは異なっておりますし、金融庁がご指摘になっているようにファイナリティの点につきましてもマイナスの影響があることは考えられますので、この接続についても必要ないのではないかと思っております。
無権限取引につきましては、ハッキングやパスワードの問題など、これからますますこの問題は出てくる問題だと思いますが、ここも少額の受入額、送金額であれば、ここについてはかなり限定されると思います。ただ、今、森下先生がおっしゃったように、業界として利用者の安心につながるような形で、例えば受入額、送金額、それらが大きいようなケースについて、無権限取引が行われた場合にどのような対応をとるのかということが自主的な形でルールとして出てくると、利用者の安心につながるのではないかと思っております。この点に関しまして、これも私、森下先生と全く同じことを申し上げようと思っていたんですが、今まで金融庁からご指摘いただいたんですけれども、資金移動業者の場合、100万円を超えるアカウントは4,000以上あって、中には10億円を超える滞留アカウントがあるというようなことのご指摘がございました。こうした多額の滞留は、送金業を創設したときに予想していなかったものと思われます。こういったことについてどのように考えていくかについては、検討していく必要があるのではないかと思っております。
以上でございます。

【岩原座長】  
それでは、田中さん、お願いします。

【田中メンバー】  
ありがとうございます。
ずっとお話を伺っていまして、9回目の会合ですから、だんだん細目に入ってくるわけですけども、大野さんのご意見が非常に整理されているという印象を持ちました。そもそもこの会合、何でやっているのかというところですが、決済分野におけるイノベーションを促進しましょう、それから、我が国の金融機能の利便性を高めましょうということでした。そうしたことでそもそも始めたわけで、さらに国際的な競争力を高めるという視点も必要かと思っています。我が国の決済業者がグローバルに展開しているというようなことが、日本発のそうしたことが起きないかということを非常に希望するわけで、そういうところにつながればいいなと思っています。その観点からしますと、先ほど福田先生がおっしゃった育成庁なのか、規制庁なのかという観点も非常に大事な観点だと思います。これまで長年の間、金融制度改革を見てきたり、関与したりしてきたんですけども、大体、金融機能に関する議論をやっていきますと、最後に、本来は別の法制でやるべき法律上の目的みたいなものとか、ほかの制度で対応すべきことであるとか、よくあるのは非常に社会政策的な要請を入れようというのが最後に常に出てくるんです。その結果、業者側では、コンプライアンスコストがものすごく高くなり、一方、利用者側の観点からしても手続がものすごく複雑になる。それを押しつけることになりがちです。最近の幾つかの法制の中でも、そういうのがあったような気がしますけれども、そういうふうにならないようにしたいと思います。これは、一言で言えばコストの観点、新しい制度をつくるに当たってのコストの観点は非常に大事だと思っています。そういうふうに思いながら、ずっとお話を伺っていますと、法律の専門家の皆さんの中では、ほぼ同一のご意見が整理されているのかという気がいたします。私がお伺いしていた中で最もきれいに整理されたのは、神作先生のご発言の中で、自家型であるとかは穏やかな規制にしたほうがいだろう。それから、資金移動業者、第三者型の小口については、イノベーションを進めるという観点から緩和する。これも非常によくわかるお話です。それから、先ほど翁さんがおっしゃっていましたけども、少額については保全を半額から全額にする必要はなかろうと。私もそう思います。
それから、2つ目の大きな項目にありますようなところですけど、加盟店に関して、それから抗弁権の接続に関しては、もともとクレジットカードの世界のお話だろうと思いますし、加盟店に対して調査義務を課すというようなことは法規制上なじまないと思いますし、抗弁権の接続につきましても、本来、事後的に、個別的に裁判所でやるのが筋だろうというのも、そのとおりだろうと思います。
それから、無権限取引につきましても、確かに全銀協でこうしたルールをつくっているというのはあるんですけれども、本来であれば立法ができればそれがいいというのも、そのとおりだと思いますし、追加的にほかの業界、もしくは個別の会社が、そうした対応をするというのもあってもいいんだろうと思います。
もう一つ、これから個別の法制度をつくるに当たって、1つの観点としてぜひ持っていただきたいのは、例えばチャージバックの話なんかが出ましたけれども、こういうのは一律規制というよりも競争に任せるという方法もあると思います。要するにマーケットにおける競争で、チャージバックをするという業者が出てくれば、そちらのほうが利便性が高いわけですから、当然、競争を通じて、そちらに行くだろうという考え方です。そうした競争を促進するという観点が必要だろうと思っています。
それから、不良業者その他の話が出ましたけれども、これも一律の規制というよりは、監督行政の中で考えていくということがあり得るだろうと思います。その手法は幾つもあるだろうと思いますけども、最近ですと、暗号資産の取引業者に関してもいろいろなご議論をされて、ご経験を積まれたと思うんですが、そうした監督行政の中で考えるという手法があってもいいだろうと思っています。
最後に、今後の話ということで、前回も申しましたけれども、機能別の金融制度を考えるという中では、バンク、ノンバンク、その他、全ての金融にかかわる主体を含んだ形で見直しを考えていくことが必要だろうということをもう一度申し上げておきます。
以上です。

【岩原座長】  
小木曽さん、それではお願いします。

【小木曽オブザーバー】  
新経済連盟の小木曽です。よろしくお願いします。
3点、前払式の100%保全の話と現金化の話、それからプラットフォーム対策の話をコメントさせてください。
100%保全のところですが、我々としては、先ほど長楽さんがおっしゃっていたのと我々の団体も全く同じ立場ですが、前払式と資金移動は違うものですので、画一的に標準化を図る必要はないと考えております。100%保全のところが話題になりましたけれども、発行額が大きい事業者ほど、保全割合を増やすと、多分、ビジネスへの影響はかなり大きくなりまして、例えばですけど、今、皆さんが便利に使っていらっしゃる電子マネーなどの有効期限が短縮されてしまうなど、いろんな影響が出てくると思うので、ここは非常に精緻に分析していただいて、慎重な議論をしていただきたいと思っております。下手をすると、政府方針であるキャッシュレス推進ということと真逆になる可能性があると思っております。
それから、自家型だと発行者を見ているから消費者の判断に任せていいという趣旨のご発言もあったと思いますが、第三者型でも、消費者は第三者型を提供しているプラットフォームがどこであるか、誰が発行しているかわかって使っているので、そこを区別して議論する必要はないのではという気がしました。
それから、前払式支払手段の現金化のところですが、気を付けなければいけないのは、岡田信用制度参事官が説明されましたように、そもそも法制度として本人確認義務とセットで区別されるという形になっているので、前払式支払手段を現金化可能にするという議論をする場合、マネロンの本人確認なんかどうするのというところを整理しないまま議論してしまうと、逆に規制強化になってしまい、そんなところを目指していましたっけということになるんじゃないかという違和感がありました。
それから最後、プラットフォームのところですが、これはまさに大野さんがおっしゃっておられて、議論のテーマにするべきじゃないかと思っております。新経済連盟でも先週、決済分野に限った話ではないですが、越境経済、すなわち国境を越えてサービスが提供される時代において、どのように事業分野のイコールフッティングを図るのかというのが最大の問題だと思っておりますので、特に決済分野のところは、大きな資本力を前提に、決済で儲けなくてもいいという形で海外プレイヤーがやってくる可能性が高いと思いますので、非常に根が深いというか、根幹の部分に関わってくるところだと思いますので、議論していただければありがたいと。その議論に我々としても貢献したいと思います。
以上です。

【岩原座長】  
ほかに何かございますか。植田さん。

【植田メンバー】  
2度目で申しわけありません。
田中メンバーのご意見に対して私から一言だけ言いたいのですけど、田中メンバー、社会的な政策を考えるとコストが高くなってしまうというご懸念を発言されまして、そのとおりだとは思いつつも、しかし、いろんな経済学的な金融制度の発展の歴史を見てみますと、むしろコストを下げることは貧しい人が金融サービスを使えるという側面がございまして、社会的政策を入れる必要はありませんけれども、コストを下げること自体は社会的にもいいことだという認識を我々は持つべきだと思います。
以上です。

【岩原座長】  
田中さん。

【田中メンバー】  
全く異論はありません。
特に今回の資金決済業者の方々というのは、もともと従来の金融業者よりもコスト構造が非常に低いところにメリットがあるという点がありまして、そのこと自身が否定されるものではないと思います。私が申しました社会政策というのは、時折、全然別の観点から金融制度に対していろんな要請が入ってくることがあり、それが結果的に利便性であるとか、逆にコストを高めるとか、そういうことが過去何度もあったことを指摘しているわけでございます。
以上です。

【岩原座長】  
よろしいでしょうか。
それでは、大変熱心なご議論をいただきまして、まことにありがとうございました。今日のご議論の中で、考え方が分かれたところもありますし、多くの方の間で一致したところがあったと思います。
まず、全般的な問題として問題提起がありましたのは、福田さんや翁さん、それから田中さん、植田さん等からのご指摘にあったと思いますが、イノベーションを高めてよりよい金融サービスを提供するような観点からの考え方も必要ではないか。そういう意味では、規制を加えることについて、本当の必要性を慎重に考えるべきだというご指摘がありました。一方で、例えば少額の利用者であっても、それが多数の人にわたるようなときについて、保護の必要性は一切ないと考えるべきではないといったようなご指摘もあったところかと思います。全般的に申しますと、最初の前払式支払手段については、多くのご意見は第三者型と自家型では違う。少なくとも自家型については緩やかな規制であってもいいのではないかというご指摘であったかと思います。ただ一方で、第三者型についても、第三者型だからといって規制を厳しくするのはいかがかというご意見もございました。それから、前払式支払手段について非常に問題になったのは、送金サービスに近い形で前払式支払手段が使われるようなことが出てきた場合についてどのような手当てをするかということでした。そういう場合については、送金サービスと平準化したルールが必要ではないかというご意見があったと思います。そういう使い方がされるようになってきますと、当然、そういう問題が出てくるようになるかと思います。一方で、送金サービスについても資金が滞留するという形で、ある意味で前払式支払手段と同じような形の問題が出てきて、さらに言えば、出資法における預け金というか、銀行法における預金に近いような形の利用のされ方もするところが出てくる可能性もあります。そういう問題が生じたとき、実際上の機能に応じてどういう手当てが必要かということを考えていく必要があろうかと思います。先ほども申しましたように、少額についてはより緩やかなルールでよいのではないかというご意見が多数だったかと思いますが、一方で、だからといって一切保全の必要がないとはいえない。シャドウバリューの問題が生じ得るというご指摘もあったところであります。
それから、加盟店への抗弁の接続については、支払手段、送金サービスと加盟店とが密接な関係がある場合は別かもしれないけれども、そうでない場合についていえば、一般的に加盟店監督義務や抗弁の接続を認めることは、むしろ送金サービスのコストを高めることになって、必ずしも適当ではなくて、むしろ事後的に裁判などで、そういうことを考慮してもらうほうが望ましいのではないかというご意見が比較的多かったかと思います。多分、問題なのは、それで利用者の保護が十分に図れるかとか、日本の裁判がそれだけ柔軟にやってくれるかということかもしれません。
それから、最後の無権限取引の問題については、現状のように、一般的に単に銀行の扱っているATMカード等についてだけ法制があるというのではなくて、送金サービスが行われている以上は、無権限取引についての法的なルールがあってしかるべきではないかというご意見が多かったように思います。ただ、そのルールの設定について、多分、サービスの種類によっていろいろ考慮すべき要素は異なることが考えられますから、非常にきめの細かいルールの設定が必要になってくるのではないかというご指摘もあったところだと思います。後藤さんのご指摘は、そういう点に触れていたかと思います。実際、ルールに落としていくことを考えますと、先ほどの2分の1の保全か、全額の保全かといっても、保全のやり方によって話が違ってくるわけでありまして、EUは、電子マネーについて全額保全ですが、日本における保全のやり方と違いますし、ペイメントサービス業者についての保全の仕方も日本とは違うわけであります。そういう保全の仕方等を含めて、実際、ルール化するときにはいろいろ考慮すべき要素があって、それらを含めて考えていくことが、これから先必要になってくるのかと思います。
何か特に皆様から追加してご指摘いただくようなことはございますか。よろしいでしょうか。
本日は、皆様に大変熱心なご議論をいただき、議論にかなり進展があったという感じを持っております。本日いただきましたご意見やご説明を踏まえまして、引き続き審議を進めてまいりたいと考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
次回のスタディ・グループの日時につきましては、また皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思います。

【岩原座長】
それでは、以上をもちまして、本日のスタディ・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

                                                    ―― 了 ――

 
 

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