金融制度スタディ・グループ(平成30事務年度第10回)議事録

  • 1.日時:

    平成31年4月22日(月)9時30分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(平成30事務年度第10回)
平成31年4月22日
  

【岩原座長】
時間になりましたので、ただいまより「金融制度スタディ・グループ」平成30事務年度第10回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、一般利用者と金融機関との間に介在するプラットフォーマー、あるいは、オンライン取引を前提とした多種多様な金融商品・サービスの仲介に関し、事務局からご説明をいただいた上で討議を行います。
なお、このテーマに関して、オブザーバーとして新たに生命保険協会と日本損害保険協会にもご出席いただいております。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
おはようございます。まず、資料1で説明をさせていただきます。
1ページは、プラットフォーマーへの対応に係る検討の全体像として昨年12月の第5回会合の際にご説明したものと同じでございますが、ここにありますとおり、プラットフォーマーというのは、これと決まった定義というのはなかなかないということで、かつ、非常に多様な実態もありまして、現在いろいろな場で、いろいろな観点からの議論が行われているところと承知しております。
そうした中、本スタディ・グループにおきましては、下の図でいきますと赤丸のあるもの、すなわち一般利用者と金融機関との間に介在するような形のプラットフォーマーというものに着目して、昨年12月に一度議論をして、本日もまたご議論をお願いするということでございます。
2ページをごらんください。オンライン取引を前提とした多種多様な金融商品・サービスの仲介とございます。
情報通信技術の発展等により、オンラインで円滑に金融商品・サービスの提供を受けることが可能となっていると思います。そうした中で、利用者が、複数業種で、かつ、隔地、遠いところも含めた、多数の金融機関が提供するさまざまな商品・サービスの中から、その利用者自身にとって最も適したものの提供を受けられるようにすることは、非常に有意義で、社会的にも重要なのではないかと考えられます。
下の左側のイメージ図では、「資金供与」(「預金受入れ」)、「資産運用」、「リスク移転」といった「機能」のいろいろな金融商品・サービスを例示しておりますが、一番下にございますとおり、例えば長寿化などが進展して、世帯構成などの多様化が進展しているということを踏まえますと、利用者それぞれが、自分に最も適した金融商品・サービスの提供を受けられるようになることは、社会的にも重要ではないかと考えられるということです。
そうした中で、右側でございますが、多種多様な金融商品・サービスの仲介を今の法制度下で行う場合にどうなるかということでありますが、真ん中の青い囲みにございますように、左側の各「機能」の商品・サービスを全部取り扱おうとすると、銀行代理業者の許可、金融商品仲介業者の登録、保険募集人あるいは保険仲立人の登録を取ることが必要となってまいります。
3ページの内容は既に何度かご紹介しているものでございますが、仲介業者が「機能」をまたいで商品・サービスを取り扱おうとした場合、現行の制度のもとでは複数の登録等が必要となります。例えばフィンテック業界からは、縦割りでなく横断的に提供できるような仕組みができないかという要望があるところでございます。
他方で、「もっとも」というところでございますが、金融商品・サービスの仲介におきましては、それぞれの「機能」の特性に応じた対応や、仲介業者が担う役割に応じた対応が必要で、同一の機能・同一のリスクには同一のルールが適用されることが必要なのではないかと考えられます。
この同一の機能・同一のリスクには同一のルールということを具体的に申し上げますと、融資に関する媒介であれば銀行代理業者、投信等に関する媒介であれば金融商品仲介業者、保険商品に関する媒介であれば保険募集人あるいは保険仲立人と同様のルールが必要であるという点は、恐らくこのスタディ・グループの皆様からご異論はないと思いますが、具体論をいろいろ見てまいりますと、さらに検討を深める必要がある課題があろうかと思います。
4ページをごらんください。下の図は、注意書きにもありますが、架空の例でございまして、何か特定の企業のものを念頭に置いたものではないのですが、オンラインの取引の場合、商品やサービスの提供までの一連のプロセスというのが、対面の取引とは異なる形で、金融機関と仲介業者が役割分担をするということがあり得るのではないかということでございます。
その際、仲介業者が担う役割が、仮に「指図の伝達」だけであるとしても、それが決済指図の場合と、例えば投資商品の購入指図の場合とでは、少し違った事情があり、利用者保護の観点から必要な対応は異なるのではないかということでございます。
図の上側が送金の例でありまして、例えば、左側のスマホで「かんたん送金」を押すと、送金元口座を指定し、送り先と金額を指定するということだと思います。こうしたことを伝えて送金サービスを求めるということでありまして、非常にシンプルな場合であろうかと思います。
他方で、下が投資商品の提供でありまして、例えばこういう場合はどうなるのかという問題提起でございますが、まず左のスマホのボタンで「投資信託」というのを押して、投資信託でもいろいろありますが、どういうタイプのものですかという画面で、国内株式投信がいいですと選ぶ。それで、その投信を提供する証券会社のウェブサイトに飛んで、商品の詳細やリスクに関する説明や情報を得て、最後の購入依頼のところで仲介業者の画面に戻ってくるといったサービスの構成というのも、オンラインだと可能性としてはあると思うのですが、これについてどう考えるかということです。この例では、最後の購入依頼のところだけを見ますと、投信の購入依頼という指図の伝達なのかもしれませんが、アプリのメニュー画面から投信の種類を選択させて証券会社のウェブサイトにつながっていくという部分と併せてどう見ていくのかといったことがあろうかと思います。
このあたりは、いずれ具体的な制度論の議論の段階になれば、法的には媒介という概念をどう考えるかとか、例えばそういった議論になるのだと思いますが、本日の段階では、そういう具体的な法律上の道具概念の議論というよりは、上の決済の場合と下の投資商品、あるいは保険や融資というサービスもあり得るわけですが、そういう決済以外のサービスに関する指図の場合とで、利用者保護の観点から必要な対応が異なるのではないかといった点について、ご議論いただければありがたく存じます。そのほか、これをめぐってそれ以外に留意すべき点もあれば、ぜひご意見をいただければと存じます。
最後の5ページは、所属制というものについての論点でございます。
現在、銀行代理業者、金融商品仲介業者、保険募集人につきましては、所属制をとっておりまして、所属金融機関による指導を通じた仲介業者の適切な業務運営の確保や、利用者に対する損害賠償資力の確保などに資しているということがあろうかと思います。
イメージとしては左側の図をごらんいただければと思いますが、例えば仲介業者の説明が不十分であったその他の問題のある対応によって、利用者が損害を被り、損害賠償を求めるというケースの場合、利用者は仲介業者自体を訴えることもできるわけですが、所属制の場合は、所属金融機関、具体的には銀行、証券会社、保険会社などということですが、そちらに損害賠償請求を行うことも可能となっています。
所属金融機関の立場からすると、そのような賠償責任を負うということが前提となっておりまして、仲介業者が適切な勧誘・説明等を行うよう、指導を行うインセンティブが働く仕組みになっております。利用者との関係のみでなく、我々監督当局との関係でも、実務上、仲介業者の適切な業務運営の確保を所属金融機関を通じて行っているということがあって、その限りにおいて非常に効率的な仕組みであります。所属金融機関は、利用者、さらには当局との関係でも責任があるということで、仲介業者を指導することになります。
これに関し、他方で、仮に仲介業者が数多くの金融機関、例えば、多くの銀行、多くの証券会社、多くの保険会社の金融商品・サービスを取り扱おうとした場合、それぞれの所属金融機関から、それぞれのやり方で、細かいところで実務的に色々と違いのある指導を受けることになると、仲介業者側の負担が大きいといった指摘があるところでございます。
仮にこの所属制というのを緩和、例えば外すというような場合には、所属金融機関による指導や損害賠償という前提がなくなるということで、利用者保護の観点から、別途適当な措置を講じる必要があろうかと思われます。
そのあたりについては、資料2をごらんいただければと思いますが、この資料2の2つ目の丸のところが所属制の話です。今申し上げた別途適当な措置ということで例示しております。(1)は、仲介業者の業務における利用者保護上のリスクを低減するということで、例えば取り扱い可能な商品・サービスを、利用者保護上のリスクが相対的に低いものに限定する、例えばシンプルでわかりやすい商品で、情報提供などの観点で事後的にトラブルが起きにくいようなものに限定するなどということが考えられます。また、仲介に当たって利用者資金を受け入れることを制限するといったことも考えられます。
(2)は、問題が生じた場合の損害賠償資力の確保ということで、財務面の規制を、所属制がある形態の仲介業者よりは強化するなどといったことが考えられます。
資料1の5ページに戻ってきまして、右側は純粋にご参考ですが、医薬品、薬機法の例でございます。医薬品の中でもリスクが高いもの、低いものがあって、低いものについて、ネット販売が可能、登録販売者による販売が可能というように対応が分けられている例もあるということでございます。
もう一度資料2に戻っていただきまして、最後でございますが、今申し上げたこと以外で、あと1点だけございます。ここまでの説明では、基本的に金融機関、すなわち、銀行・証券会社・保険会社のほうが仲介業者より大きい、ないしは強くて、仲介業者というのは相対的にはそれより小さい、弱いというのを暗黙の前提にしておりましたが、金融機関と仲介業者の関係において、②にありますように、仲介業者のほうが影響力が強い場合もあると考えられますところ、こうした場合に、何かさらに留意すべき点があれば、ご指摘いただければと存じます。
事務局からは以上でございます。

【岩原座長】
どうもありがとうございました。
それでは討議に移りたいと存じます。なお、審議時間が限られますので、ご発言は簡潔にお願いしたいと存じます。
それでは、どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
植田さん、どうぞ。

【植田メンバー】
いつも丁寧にご説明ありがとうございます。少々引っかかるところがありまして、資料2「討議いただきたい事項」をもとに、私の考えを述べさせていただきます。
1つ目の丸のところの、特に最後の部分、自身に最も適した金融商品・サービスの提供を受けられるようにすることは社会的にも重要であるということで、全くそのとおりだと思うのですが、それを考えると、どちらかというと、ファイナンシャルプランナーのような人たちが、顧客に対していろいろな商品をワンストップで売ることができるようなサービス、というようなことをイメージするのです。ところが、そのファイナンシャルプランナー的な話が何も、ここ以外に出てこないので不思議に思った次第です。
そう思いますと、その次のところで、今、そういうことをやれるかどうかはともかくとして、やろうと思うと、いろいろな業者の資格を取らないといけないということです。なので、これはワンストップでサービスを提供できるいろいろな代理業者になれるというようなことができるのであれば、1回か2回かはわかりませんが、資格検定で済むような形にしないと、なかなかコストがかかるのではないかと思います。
それで、所属制にかかわるところですが、所属していないということは独立系ということだと思うのですが、逆に言うと、今のところで、いろいろなところを見てアネクドータルなエビデンスといいますか、聞きますと、日本人があまり投資信託や証券に投資していない、銀行預金のシェアが個人資産の比率の中で非常に高い1つの理由が、特定の会社さん系の店舗から買ったりすると、その会社が売りたいものが売っているのではないか、自分が欲しいものを売ってくれないんじゃないかというような、そういう不信感があるのではないかという話をよく聞くのです。が、そうしますと、ある程度独立系で、むしろ1つの会社に属していないという人たちがいるということも大事だと思うのです。そうやって考えていきますと、むしろ積極的に、どこかの会社に所属しないような業者を育てるべきではないかと思います。
そうした場合、財務面に関しては、もちろん何かしらのお金を預かるかどうかは判断すべきですし、預からずにただ単に、本当に純粋にファイナンシャルプランナー的に何らかの商品を推薦してやるだけであれば当然要らないと思うのですが、預かるのであれば、ある程度それは考えていくべきだと思います。
ただ、それ以上に、先ほどから言っていますが、この独立系で、顧客に対していろいろな商品の推薦などをするというサービスをしつつ、同時に商品を仲介して、いろいろなものを買えるよとなりますと、最初に言いましたが、ある程度しっかりとした資格を考えないといけないと思うので、むしろ専門性の担保というか、最後に薬局の話が出てきましたが、お客さん向けの薬剤師さんみたいなものが、必要になるのではないかと思います。
それから、全ての話がオンライン取引を前提としたと書いてあるのですが、今まで述べたことは、よく考えてみますとオンラインに限ることはなくて、対面でこういう業者さんがいても当然いいと思いますので、必ずしもオンラインだけこれを許しますよという話ではないのではないかと思います。
以上です。

【岩原座長】
では、岡田さん。

【岡田信用制度参事官】
ありがとうございます。1点だけ、冒頭のご指摘にございました資格ということについてでございます。
事務局説明においては、業者としての許可や登録というものについて、何回も行わなければいけないというのは手間であるという声をご紹介したところでございますが、他方で、業者としての登録のような話以外に、個々の販売員の資格としてもさまざまな試験、例えば投資信託を扱う上での試験とか、保険商品を扱う上での試験のようなものがありまして、そちらについても、議論としてはそれを横断化するというのはあり得ないことではないかと思うのですが、他方で、それぞれ、保険なら保険、証券なら証券についての知識を試すというような試験制度だと思いますので、最後にご指摘いただいた、専門性というのをきちっと個々の職員について確保するという観点から、現状、保険は保険、証券は証券に特化した試験になっているのだと思います。業者としての登録等の話と、個々の職員の専門知識を確保するための試験というのは、少し分けて議論させていただければと存じます。

【岩原座長】
それでは次に舩津さん、お願いします。

【舩津メンバー】
ありがとうございます。私も、まず1点目につきましては植田メンバーと全く同じような感想を持っておりまして、オンライン取引を前提としてという形で書かれているわけですが、これは対面でも当然考えられる話ではないかと思っております。
まず、ライセンスの一元化のような話があるかと思いますが、オンライン取引の発達で、そのニーズは高まったかもしれませんが、実はそのようなニーズというのはオンラインに限られないのではないかと思います。それから、オンラインではないオフラインといいますか、そういう取引であっても、一元的な窓口を設置する際に複数のライセンスを取るのが煩雑だという議論になりそうだと思います。同様に所属制につきましても、既に複数のライセンスを取っている場合に、それぞれの管理が重複するという話であって、オンラインとは本質的にはリンクしていないと思います。
また、とりわけ資料1のスライド5では、薬機法のネット販売規制が参考として掲げられておりました。これを金融商品に当てはめるとすれば、所属元の管理・指導や信用補完なしでも仲介していい、またオンライン取引してもいいという金融商品の種別を設けるということが考えられるのではないかというご指摘かと思いますが、恐らく、所属先の指導や信用補完の必要性というものとネット販売の可否というのは切り離せる話ではないかと思います。金融商品のリスクとして一くくりにされていますが、所属元からの指導の有無という切り分け、それから所属元による信用補完という切り分け、それからオンラインかオフラインかという切り分けがそれぞれあって、相互に関係はすると思うのですが、一応別の問題として整理して議論したほうがいいのではないかと思います。
この議論の射程がどこまで及ぶのかという話で、オンラインに限らないということだと私は思っているのですが、一応、資料上はオンラインを中心にということですので、以下オンラインの話をさせていただきますと、資料2「討議いただきたい事項」の1つ目の丸の、ライセンスの一元化のような話に関しては、手続は煩雑・重複がないに越したことはないという意味では、それが適切に統合できる限りは反対する理由はないということにはなりそうかと思います。同様に所属制についても、所属元の重複で過重な規律がされているということであれば、代替的な保護方策が考えられるのであれば、それを緩和あるいは外していくことは当然考えられると思います。
もっとも、いきなり各論に入って恐縮ですが、資料2の2つ目の丸の下の(1)の下のところ、「仲介にあたって利用者資金を受け入れることを制限」と書かれているわけですが、これが果たしてオンライン取引を前提としたワンストップ仲介業者の目指すサービスに合致するのかというのが、いま一つ私にはイメージがつかないところがあります。
確かに、オフライン取引を念頭に置いた場合は、倒産時の補償が顧客保護の重要なテーマで、所属制を外して所属金融機関というディープポケットがなくなるということであれば、直感的には顧客資産を預からないほうにしたほうがいいのだというのは、確かにそうだろうと思うわけですが、ワンストップでオンラインで金融商品を提供するような仲介業者というのは、恐らく最近のフィンテックサービスがそうであるように、既に顧客専用アカウントを運営していて、そこに顧客資産を滞留させているモデルというのがまず考えられるのではないかと思います。現行制度では銀行代理業なのか、恐らく多くの会社さんは資金移動業という形でされていると思うわけですが、顧客が金融商品を購入したいと思った場合の、純粋な経済的な動きとしては、その仲介業者の顧客アカウントから銀行や証券会社等の金融商品の販売元に資金を移動させるというのが、単純な形ではないかと思います。そう考えますと、仲介といっても、そのような経済的な動き自体は単なる資金移動として捉えることができるような気がしております。
仮にそのようにいえるとすれば、資金移動業のライセンスを取っている業者に関しては、契約の適合性とかそういったもの、そういった意味での顧客保護の問題はひとまずおくとすれば、倒産時の受け入れ資金の保護という点に絞った対策としては、資金移動業の破綻対策を充実させれば済む話ではないかと考えられるのではないかと思います。
細かな法律解釈というよりも、まずは制度論でということですので、あくまで私の申し上げたことは頭の体操の1つなのかもしれません。もしかしたらそうではないのかもしれませんが、そういう形で、仲介業者が事実上送金業者の機能を果たしている局面、すなわち金融商品の購入についての顧客意思は既に固まっていて、あとはそれを履行するだけというような局面のトラブルである限りは、資料2の2つ目の丸の(2)、「財務面の規制を強化」と書かれているわけですが、問題が生じた場合の損害賠償資力の確保というのは、送金業者の債務不履行一般の問題として、資1金移動業における債務不履行リスクに備える財務規制のあり方などとして議論ができるような気がしております。
もっとも、先ほど「ひとまずおくとすれば」と申し上げた、契約の適合性の問題ですとか、顧客意向に従った契約の成立を確保するという点は、恐らく、少なくとも今までの純粋な資金移動業にはない発想であると思います。
討議資料の上の丸の(2)のところで書かれているように、同じ指図でもいろいろあって、必要な対応は異なるのだと書かれているのは、私が先ほど申し上げた頭の体操からしても、送金に還元できるものと、プラスアルファの要素が極めて強いものという形で理解すればうなずけるのではないかと考えますし、そういう契約の成立面に関する損害賠償の資力が、仲介業者が独立して確保できる体制を整備するという点は、重要になるのではないかと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは次に加毛さん、お願いします。

【加毛メンバー】
ありがとうございます。4点申し述べたいと思います。直前の植田先生、舩津先生のご発言に関係する点もございます。
まず総論として、資料2の一番下のところに書かれている①のような社会状況を前提とすれば、金融機関の競争を促進するという局面から、独立型の仲介業者を増やしていく、育成していくということが重要であると考えます。銀行をはじめとする金融機関が現在置かれている状況に鑑みれば、さらなる競争にさらされることの厳しさは理解できるところですが、利用者・国民の目から見れば、競争の促進にはメリットがあると思います。
他方で、②にあるように、今後、仲介業者の影響力が強くなる可能性があるのは確かですが、この点は、どのくらいの数の仲介業者が市場に残るかという点にも関連しており、競争政策の問題として検討すべきように思います。
第2に、規制のあり方について考える際には、規制の内容が大切なのはもちろんなのですが、それとあわせて、手続面での負担にも注意を向けるべきように思います。そのような観点からは、例えば参入の際の手続の一元化のように、事業者の手続面の負担の軽減を前向きに検討する必要があるものと考えます。
3点目は、規制の内容に差異があることを積極的に評価すべきことです。資料1の3ページに現行法の内容が整理されていますが、先ほど舩津先生からご指摘がありましたように、例えば決済と資産運用では、問題となるリスクが違うので、リスクベースアプローチからしても、規制の内容には差異があってしかるべきだと考えます。
この点に関連して、植田先生から預かり金の有無という観点に着目されたご発言がありました。顧客の資金を預かっているか否かは顧客保護の必要性を考えるうえで大切な着眼点だといえます。ただ、それ以外にも重要な規制が多数存在します。例えば、保険に関する情報提供義務・意向把握等義務や、金融商品販売に関する適合性原則が挙げられます。このような金融の機能の特性に応じた規制の在り方は、積極的に評価すべきであると思います。
なお、預かり金について、舩津先生から、利用者保護の観点に基づき、資金移動業の規制の内容を充実させていく方向性が指摘されました。利用者保護の観点からは、そのような考え方もあろうかと思いますが、マクロ経済への影響等も含め、検討すべき問題は他にもあるような気がいたします。この点は、そもそも預かり金に対する規制をどのように考えるべきなのかという、より広い問題につながっているものと思います。
4点目は、所属制についてです。1点目として申し上げた競争の促進という観点から、独立した仲介業者の登場を支援するために、所属制を緩和するという方向性はあるだろうと思います。
他方、本日の資料では、所属制の趣旨について、利用者に対する損害賠償資力の確保という観点が重視されているような印象を受けますが、資料1の5ページの四角囲いにもあるとおり、仲介業者の適切な業務運営の確保というモニタリングの視点もまた重要であると考えます。現在の制度は、金融庁が所属金融機関と仲介業者に対するモニタリングを分担しているものといえます。そこで、仮に所属制を緩和するとすれば、今後、どのようにして仲介業者に対する監督を行うのかが、重要な問題となります。
その際には、市場による規制や業界団体による自主規制も重要な意義を有するといえますが、さらに、金融庁自身がさまざまな規制手法・監督手法を開発していくことも、あわせて検討する必要があると考えます。

【岩原座長】
それではその次に岩下さん、お願いします。

【岩下メンバー】
どうもありがとうございます。今回のこのテーマは、これまでの本研究会における議論が従来から比較的連続性のある変化であったのに対し、かなり不連続というか、従来とかなり大きな考え方の違いが生まれてくる話ではないかと、私は考えております。
今日の資料から若干外れますが、実際に私自身が日々、金融商品をどのように選んでいるかということを考えてみますと、実は最初に価格ドットコムを見るんです。そうすると、通常の生命保険も自動車保険も、クレジットカードも、個人ローンもFXも全部取り扱っていまして、全部のランキングが出ていて、全部のクチコミが出ています。ですので、自分の必要な商品は大体この中で選んで、誰とも対面の取引をせずに購入することが可能なのです。住宅ローンにしても、あるいはどこのネットバンクの預金金利が一番高いかにしても、そういったサイトを見て選んでいる人が相当多いのではないかと思います。
もちろん、その人のリテラシーによると思いますが、情報通信技術の発達によって新たにできるようになることを、このスタディ・グループの大きなテーマにするのであれば、当然そのような、ある程度ネットリテラシーの高い人たちが増えてくることを前提にするべきだと思います。そういう人たちの場合、個別の代理店のサイトに行くことは実はあまりありません。当然、たくさんの候補の中から選んだほうがいいと考えるからです。
同じように複数の金融商品を紹介してくれる実店舗もあります。店舗型の場合は、既に保険や銀行の代理人といったようなものを取っているケースが多いようです。そういうところが中立的かつ第三者的に、FPが相談を聞いてくれて商品を推奨してくれるのかというと、中立的な立場を装いつつ、相対的な比較をするような顔をしつつ、実は特定の金融機関の商品を推奨するところも結構あるようです。もちろん、特定の商品を推奨することが悪いわけではありません。金融機関の窓口に行けば、そこが販売する金融商品を勧めるのは当たり前ですから。どの保険会社、証券会社、銀行に行けばいいかということを、人々はまず迷うわけですが、そのときに、そこの入り口を広くあけて、一番有利なものを提供してくれるのは、現時点ではランキングサイトなのではないかと思うわけです。
ランキングサイトは単なるリンクをしているのであって、代理業ではないという整理が、現時点では可能だと思います。ただ、実際に人々の意思決定に非常に大きくかかわっているのはそういう部分であって、エントリーポイントとしての機能が非常に大きいこと等を考えると、この種の議論の行き着く先としては、そういうサイトをどうするんだということがあるのではないかと思います。
もちろん、ランキングサイト自身にもランキングがありまして、外から評価をされています。このランキングサイトは実は偏っているよ、だからこっちに行くべきだよ、みたいなことはさんざん言われているので、そうすると、ランキングサイトをランキングするサイトは果たして規制するべきか、みたいな議論になってしまいます。ですから、この種のことを通常の規制の中に取り込んでもしようがない部分だと思うのですが、一方で、人々の意思決定に非常に密接に関連してくる部分について、例えばあたかも中立的なFPを装って、特定の商品、必ずしも消費者にとって有利にならないような商品を推奨してくる行為をどう規制するかというのは、なかなか難しい問題であろうと思います。
もちろん、それは今の業法等が予定しているものではないのだと思います。どの金融機関を訪ねるかというのはその人の自由意思なはずですから。しかし、情報通信技術の発達によって相乗り型のサービスが可能になり、人々の選択に影響を与えられるようになったことは、非常に大きな変化だと思います。しかも今、それをとり行っている会社は、既に今の制度を熟知しており、必要な部分については代理業を取っているという実態があります。
そうだとすると、こういう文脈の中で考えるべきことは、そういう実態に即した形で、現在の代理業、あるいはその先は広告という整理になっているのかもしれませんが、その外縁を広げていくことなのかもしれません。従来の金融業の規制の対象外にあったものを規制して免許業種にしろと言うつもりはありませんが、例えば中立性の欠如であるとか、不適切な勧誘といったことについて、従来、業法の中でルール化されてきたことが、もっと外縁にポイントが移っているのだという実態の認識が必要な感じがいたします。その上で、そういう部分についてどのような有効な対策を打っていくかということを考える必要があると思います。
以上でございます。

【岩原座長】
私も発言してもよろしいですか。ただいまの岩下さんのご発言にインスパイアされまして。
保険業法に関しまして、金融庁の保険会社向けの総合的な監督指針では、募集関連行為という概念を設けているわけです。募集関連行為を行う者は、保険募集人あるいは保険仲立人に当たらなくて、業法上の規制は受けないとされています。
具体的に募集関連行為に当たる例として挙げられておりますのは、例えば比較サイトなどです。保険商品の推奨・説明を行わず、契約見込み客の情報を保険会社または保険募集人に提供するだけの行為や、比較サイトなどの商品情報の提供を主たる目的としたサービスのうち、保険会社または募集人からの情報を転載するにとどまるもの。これは募集関連行為であって、保険募集行為ではない、保険募集人には当たらないので、業法上の規制がかからないというたてつけをとっているのですが、まさに今、岩下さんがご指摘になったように、そういう比較サイトなどの募集関連行為というのを、果たして全くルールの外に置いておいて、これからいいのだろうかというのは、ここでの大きい問題です。従来、保険募集人や保険仲立人等の規制を受けない、かつて紹介代理店などと言われていたものがそれに含まれますが、そういうものから、さらにこういう比較サイトみたいなものについて、どういうふうに考えていったらいいのかというのは、多分、ここで議論する必要がある、新しく出てきた問題です。プラットフォーマーに関するルールの適用があることを前提にした議論を、今日は大体しましたが、まずそもそもどこの範囲までがこういうルールの適用対象になるのか、それが非常にはっきりしなくなっていると思います。
先ほどの監督指針の中では、特定の保険会社の商品のみを見込み客に対して積極的に紹介して、保険会社または保険募集人などから報酬を得る行為になると、募集関連行為ではなくて募集人としての規制を受けるとされています。しかし「積極的に紹介する」って一体どういうことなのか。
それから、比較サイトについては、保険会社または保険募集人などから報酬を得て、具体的な保険商品の推奨・説明を行う行為と書いてありますが、多分、比較サイトだけで報酬を得ても、まだ規制の対象にはならないでしょうけれど、そこから具体的な保険商品の推奨・説明をしたことになるのかどうか。そこをどう考えて、これから先そういうところについてどういうルールづくりをしていくのかというのが、多分一番難しい問題だろうと思います。
余計なことを言いました。それでは、その次に大野さん、お願いします。

【大野メンバー】
ありがとうございます。まず総論から、大きな方向性についてコメントいたします。
今回の事務局ペーパーで提示された目標、これは資料1の2ページの括弧書き、囲みの中にございますが、その2つ目です。利用者が複数業種かつ多数の金融機関が提供する多種多様な商品・サービスの中から、自身に最も適切なものの提供を受けられるようにすること。
これは非常に重要な課題であると認識しております。この目標実現に対して、当スタディ・グループでの検討が貢献できることを強く望んでおります。
事務局ペーパーでは同時に、高齢化社会への対応の重要性が的確に示されております。保険との関連で申し上げれば、健康増進や介護、認知症を初めとした医療サービスに対するニーズが、今後もさらに高まることは間違いないと思っております。健康で充実したシニアライフを送るためには、先ほど植田さんからもお話のありましたファイナンシャルプランニングであるとか、ライフプランニングといったことに対するニーズも、同時に増大していくと思っております。
このほか、地方創生なども重要な社会的課題の1つとしてつけ加えられるのではないかと思っております。
このような社会的な課題の解決に向けて、金融機関やフィンテック企業がメインプレーヤーとなり、異業種との連携を深めながら、よりよいサービスを提供しやすくなるような環境を整えることは、当スタディ・グループに期待される重要なミッションであると認識しております。
今回、事務局から提示されました仲介業者の機能に着目したワンストップモデルの追求、これは我が国の社会全体として求められる大きな目標を達成するための第一歩を踏み出す上で、非常に魅力的な案であります。ぜひ、このプランの実現に向けて、前に進むのがよいと考えております。
仲介業者が多数の金融機関と利用者の間を取り持つ形で、できるだけワンストップ的に一まとめにしてサービスの提供やアドバイスを行い、利用者のさまざまなニーズに柔軟に応えることができるようにする。そのために必要な制度の見直しを図ることが望まれます。これがもし実現されれば、利用者が享受する利便性は格段と向上することが期待できると思います。
以上の方向感を持って、制度の見直しを図っていただけるということであれば、本日の、資料2「討議いただきたい事項」で挙げられている個別の論点につきましては、私は基本的に金融庁の方々の知見と工夫にお任せしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
若干、個別の論点について意見を述べさせていただくと、1つは、3ページにある仲介業者の扱いについてであります。現状はかなり複雑であるため、柔軟なワンストップ的なサービスを展開する上で、いかにも使い勝手が悪そうであります。ここはできるだけすっきり、シンプルに模様がえを行うことが望ましいと思います。その際には、リスクベースアプローチに基づくこと、プリンシプルベースの持つ長所をできるだけ活用するとのスタンスで臨んでいただけるとよいと思っております。
次に所属制に関しましては、1つは、仲介業者の果たす役割や立ち位置、先ほども出ておりましたが、主な収入をどこから得ているかなど、これが利用者によくわかるように、透明性、トランスペアレンシーを高めることが大切だと考えております。
2つ目は、仲介業者は利用者に寄り添ってワンストップ的なサービスやアドバイスを行うとの機能を担うわけですから、もちろん、高いフィデューシャルデューティの責務を負うことが求められるのではないかと考えられます。
3つ目は、事務局から提示されております利用者保護のリスク低減のための工夫を凝らすこと。これらの条件をクリアした上で、所属制全体としては緩和の余地を探ることが適当と考えております。
以上が個別論点で、次に、今後のテーマに関して若干意見を述べさせていただきたいと思います。
1つ目は、今後のスコープの拡張性です。これは、これから先、次の課題に位置づけられるものかもしれませんが、利用者のニーズを踏まえながら、スコープを金融の周辺からさらに外側にもつながりを持たせて、ワンストップ的なサービスの提供を展望できればなおよいと考えます。金融業と非金融業をまたいだ拡張という視点です。
例えば、保険、健康増進、介護などのトータルなヘルスケアについては、かなり前向きの動きが既に見られております。これを一歩進めて、医療分野との連携・接続といったものが図られると、国民的レベルで見て、受けられる恩恵は非常に高まるものと思われます。この課題は、ハードルは少なからず高いと思われますが、チャレンジする価値は十分にありそうに感じております。
次に、ワンストップサービスの担い手は誰なのかということについてです。これは、先ほどの岩下さんのお話と少し関連しますが、今回のモデルでは、その主な担い手は仲介業者であります。これはこれとして先に進めるのがよいという意見を今申し上げましたが、そのほかにも幾つかのパターンが考えられると思います。次の2つの点について注目するとよいかと思います。1ページ目の円グラフを使って説明してみたいと思います。
1つ目は、3つ円があるのですが、上の円と左下の円の重なっている部分、すなわち金融機関とフィンテック企業の2つの円グラフが重なる部分であります。私は、今後を展望した場合、金融機関の中から金融分野を足場としてプラットフォーマーとして振る舞う企業が出てきてもおかしくない、さらにはそのような金融機関が出てきてほしいと思っております。
例としては、地方再生という社会的課題の解決策として、地方の金融機関が地場の産業と協力してエコシステムを構築するような取り組みが挙げられます。その際に、金融サービスとその他のサービスをともにバンドルするような形で、利用者に対してワンストップ的な金融・非金融にまたがった切れ目のない魅力的なサービスを提供するというビジネスモデルが発展すれば、きっと地方経済を力強く再生する上で威力を発揮すると期待できるのではないでしょうか。
こうした挑戦や試みの背中を後押しする上で意味があるような業務範囲規制面での緩和の余地があるかどうか、このテーマについても検討を進めるとよいのではないかと思っております。
2つ目は、メガプラットフォーマーを含む異業種が金融業務へ進出を図るようなケースです。これは、先ほどの1ページにある3つの円グラフでは示されていない4つ目の円になると思います。
どこに位置するかといいますと、場所としては恐らく左上に描くとよいと思います。金融業から見た異業種、GAFA、IT系企業、流通系、通信産業系など、これらの業種がみずからの顧客基盤を対象にして、プラットフォーム上で広範な商品のラインナップの中に金融機関サービスも盛り込む形で、ワンストップ的にサービスを提供するようなビジネスモデルです。
本年度のスタディ・グループ内の検討では、この領域までスコープを届かせることは少し難しそうでありますが、近い将来に、この部分の面積が拡大していく可能性も十分あるのではないかと感じております。このため、今後の検討テーマを考える上では、この点を視野に置いておくことが有益であると思っております。
その際にぜひとも押さえておきたいポイントとしては、金融業、非金融業、フィンテックベンチャー企業などとの間の競争条件を確保することであります。それを通じて、利用者の利便性の向上を促すとともに、このマーケットの健全な発展を図ることが重要だと考えております。
以上です。ありがとうございました。

【岩原座長】
それでは坂さん、お願いします。

【坂メンバー】
ありがとうございました。私からは、資料2の論点整理に従う形で、主としてオンライン取引の影響において、問題状況あるいは課題状況として考えるところを発言させていただければと思います。
まず1つ目の丸の(1)の参入制度の横断化のところですが、ここは、ご指摘がありますとおり、多種多様な商品サービスをワンストップで提供するサービスが求められていることに鑑みますと、参入規制については規制の実効性を確保しつつ、制度を合理化・効率化する観点から、横断的な参入制度を設けることが必要と考えられます。
もっとも、基軸となる横断的な参入要件を設定しつつ、提供する商品やサービスの範囲に応じて、若干の差異を調整的に設けることも検討すべきと思います。
次に(2)の、投資商品や保険商品の購入指図についてですが、こちらにつきましては、いろいろな場面を考えなければならないとは思うのですが、差し当たり、この資料1の4ページの対比表を見ながら考えたいと思います。
ここでは、送金指示と投資商品等の購入指示が対比されておりますが、この2つというのは、少なくとも2つの観点から、かなり性格が異なるのではないかと思います。
指摘されていたところでもありますが、1つは、投資商品や保険商品の販売・購入場面は、独自の制度的な課題が存するという点です。すなわち、送金はそれ自体単純な行為ですが、これに対して投資商品や保険商品の販売・購入場面には、事業者と利用者の間の格差のもとで、いかに適切な契約を実現するかという課題があります。これは、利用者保護の課題であるとともに、社会的に適切な資金融通やリスク分担を図るという金融機能発揮の課題でもあると思います。
2つ目は、仲介業者の利用者に及ぼし得る影響の違いという点です。送金については、送金指示を行う仲介業者が、利用者の選択や判断に及ぼし得る影響は限定的と考えられますが、投資商品等の購入指示の場合には、仲介業者は購入指示の前の商品選択に至る過程において、利用者の選択判断に相応の影響を及ぼし得るところかと思います。
特に、投資商品や保険商品の販売・購入の場面では、オンライン取引、特にスマートフォン利用による取引の普及、そこにおける仲介業者の機能や役割に鑑みて、いかに適切な契約を実現する環境を整えるかということが目の前の課題なのではないかと思います。
そこで、投資商品あるいは保険商品等の指示伝達を行う業者の機能を、いま少し具体的に見てみますと、4ページの下の図にありますとおり、段階を経て契約に至るということになろうかと思いますが、少なくとも利用者にとっては、仲介業者の商品指示から購入依頼までの流れは、多くの場合一連の流れというふうに映る場合が多いのではないかと思われます。恐らく、業務の形態によっていろいろ違いはあろうかと思いますが、利用者は、特にスマホ等の利用の場合、この一連の流れの中で商品を選択し、認識するということかと思います。
この一連の流れでは、証券会社のウェブサイトに遷移する前の、仲介業者のページの影響が比較的大きいように思われます。利用者は、仲介業者のページに表示された商品の中から、大なり小なり仲介業者のレコメンドやサポートを受けて商品を選んで、証券会社のウェブサイトに遷移すると思われます。遷移の前に、購入意思決定がある程度固まっているということがあり得ますし、また遷移した後に商品を選択し直すことについて、手間と感じることもあり得ると思います。
また、仲介業者が大規模プラットフォーム等の場合には、証券会社よりも、むしろ仲介業者を信頼して意思決定をするということも往々にして起こり得るだろうと思います。
他方で、仲介業者は、高度なデジタルマーケティングの手法によってそのページを構成し、利用者の選択判断に影響を及ぼし得ると思います。すなわち、利用者情報の収集・蓄積を前提に、ビッグデータ解析やプロファイリング技術、あるいは行動経済学の応用等によってページ画面を構成し、表示商品を選択・掲載して、サービス提供を行うことが考えられます。
仲介業者は、あるいは証券会社等よりも顧客やその市場状況をよく知る可能性もあり得るところですし、今後、仲介業者が重要性を増すことも考えられるところだと思います。
このように、仲介業者の業務は、今後の展開も考えますと、基本的に単なる購入指示の伝達ではあり得ない場合が多いように思います。指示の伝達の場合においても、仲介業者の業務が利用者の意思決定に重要な影響を及ぼし得るということを前提とした、仲介業者の業務の適正化こそが重要な課題なのではないかと思います。
問題となりそうな場面を幾つか考えてみますと、例えば仲介業者の誤った情報提供によって、利用者が商品を選択してしまい、証券会社のウェブサイトで十分に誤情報の打ち消しがされずに契約に導かれてしまう場合や、あるいは、仲介業者の不適切な誘導によって、複数の証券会社にまたがる形で過剰な取引が行われるような場合。あるいは、仲介業者が利用者のためのリコメンドの体をとりながら、実はみずからの報酬の一番多い商品へ利用者を誘導する場合などが考えられるところかと思います。
最後の例は、保険の乗り合い代理店等の規制においても類似の問題が提起されたところで、保険業法では商品の推奨販売の規律が置かれているところと思います。こういった規律について、適切な形で横断化を図ることも検討すべきところかと思います。こうした課題への対応は金融法制で行うべきものと考えられます。
次に2つ目の丸について、所属制についても、オンライン取引における多種多様な金融サービスの仲介という業態を考えた場合に、所属制の横断化といいますか、あるいは横断的制度への見直しをどう考えるかというのが課題ではないかと思います。
所属制は、もともと金融機関が仲介業者にみずからの商品を扱わせるに際して、当該金融機関に仲介業者の指導・監督を行わせ、業務の適正を図るという制度と思います。
かつては、仲介業者は1社ないし少数の金融機関に所属することが想定されていましたが、この間、銀行の窓口販売の拡大や、保険の乗り合い代理店等の展開によって、多数の金融機関に所属する仲介業者がふえてきている実情にあるのだと思います。
今後さらに、オンライン取引において、デジタル環境下で多数の金融機関に所属する仲介業者が拡大する事態に、いかに対応するかというのがここの課題かと思います。
かつてのように、所属金融機関が1社ないし少数であれば、所属金融機関の指導監督も効きやすいと思われますが、所属金融機関が多数となりますと、個々の所属金融機関の指導監督が利きにくくなる面があると思います。
また、仲介業者の業務が1社ないし少数の金融機関に関するものの場合には、仲介業者の業務は金融機関の業務の一部ないしはこれに準ずるものであるものが多いと思われますが、多数の金融機関の商品にまたがる業務となりますと、仲介業者独自の業務の比重がふえるものと思われます。さらに、保険の乗り合い代理店でも既に起こっていることだと思いますが、仲介業者が大規模化し、相応の力を持つという事態も、今後進行していくだろうと思います。
こういった事態、こういった変化に鑑みますと、仲介業者を相互に独立性のある主体であることを前提とした指導監督体制を整えるということが必要であって、所属金融機関による指導監督よりも、監督官庁や業界団体レベルの指導監督の必要性、重要性が増すものと考えられます。
また、業務の特性を踏まえて、指導監督の実効を確保しやすい制度枠組み、業務枠組みを検討する必要がありますし、かかる観点からは、ある意味、ルールの標準化といいますか、そういったものが一層求められるのではないかと思います。
こうした観点から、この2つ目の丸のところに書かれております(1)(2)はいずれも重要な方向性を示すものと考えられると思います。
なお、現行の所属制を見直す場合も、金融機関と仲介業者の関係をいかに規律するかというのは、独立の課題だろうと思います。この点、資料1の4ページ下の図のように、金融機関と仲介業者の行為が一連のものとして利用者への働きかけが行われることや、あるいは金融機関と仲介業者との間で情報やノウハウの共有・交換が行われ得るということに鑑みますと、こういった業務の適正化を考えるに当たっては、金融機関の行為と仲介業者の行為を分断せずに、両者が一連のものであることを踏まえて、その適正確保が図られる必要があると思います。
かかる観点からは、金融機関と仲介業者が相互に、相手方のウェブサイト上に提供する情報やサービスをチェックし合う仕組みなどを確保していくべきではないかと思われます。
また、所属金融機関の損害賠償の意義についても再検討が必要と思われます。この点、所属制の問題と損害賠償の位置づけの問題は、相対的に独立の問題ではないかと思います。もともと所属金融機関の損害賠償責任は、仲介業者の支払い能力を補完するという意義もありますが、金融機関が仲介業者の利用により販売チャンネルを拡大するという利益を受ける反面、仲介業者の行為によって利用者に損害をもたらす危険があるということに鑑みて設けられているところと思います。
オンライン取引で多種多様な投資商品を扱うということを考えた場合に、さきにも述べたような諸点から、ある意味の報償関係というのはより強まる面があるとも考えられます。
両者が協働して利用者に対する一連のサービスを提供しているということに鑑みますと、相互に協働して適切なサービス提供を行う責務を負っているということも、視点としては持つべきではないかと思われます。こうした観点から、規律や損害賠償の責任のあり方を検討すべきではないかと思います。
以上です。

【岩原座長】
それでは後藤さん、どうぞ。

【後藤メンバー】
どうもありがとうございます。私も資料2について、幾つか意見を申し述べさせていただきます。
最初に上の(1)で、機能をまたいで複数の商品・サービスを扱う場合に、登録の負担等をどう考えるかというところですが、ライセンスを例えば共通化するということができるのであれば、それは非常にいいことでしょうし、またさらに規制の内容も、できるだけ不整合をなくしていけるのであれば、それは望ましいことかとは考えております。
ただ、扱うものによって、ライセンスが1つであったとしても、ライセンスを取った上で、例えばこのビジネスをする場合は上乗せでこういう規制がかかってくるということはあるのだろうと思っているのですが、そうしますと、追加で新しいことをやった場合に、追加でかかってくる規制を満たしていることを確認するという手続がどこかで入ってこなければいけなくなるような気がいたしまして、そうすると、どれだけ負担が減るのかというのはよくわからないところがあります。金融庁と関東財務局に行く回数が少なければ少ないほうがいいということは、事業者の側にはひょっとしたらあるのかもしれませんし、それはもっともなことだとは思っておりますが、負担があるので減らしましょうというときに、どこにその負担感の源泉があって、それがどれだけ合理化できるのかというところは、今後詰めていく必要があるようにも思っております。
また、複数のビジネスをやるときに、例えば体制整備などについては、規制の中身自体をそろえていければいいでしょうし、また金融庁への報告については、レポーティングは1回で済めばそれに越したことはないでしょう。ただこれは、業者側というよりは、金融庁側の受け取り方の問題もあるような気がいたします。
(2)の点ですが、今も坂先生からご指摘がございましたが、私も、送金の伝達の場合に比べて、投資商品や保険商品を買うという場合には、買うことが決まった後でそれを伝えるだけということではなくて、買うという意思決定に働きかけるということが恐らく想定されているのではないかと思います。それがランキングの提示なのか、またはその人のお金の動かし方や行動からするとこういうものがお勧めですよということがポップアップしてくるのか、その形態は様々でしょうが、いずれの場合も、意思決定に働きかけているところに着目する必要があるのではないかと思っております。
ただ他方で、先ほど岩下先生からもご紹介があり、また岩原先生からもご指摘のありました比較サイトなどは、結局同じことをしているわけですが、例えば保険に何となく興味を持っている人が比較サイトにアクセスして、一定のキーワードなり基準を打ち込むと、それに沿ったランキングが出てきたりして、そこから選ぶということが行われていますが、これは今現在、保険の募集の範囲外ということになっているわけでございます。
6年ぐらい前ですか、たしか平成25年の保険募集制度に関する金融審でこの問題を取り扱った際に、なかなか悩ましいと思ったのですが、その際、私が申し上げましたのは、確かに比較サイトには意思決定に働きかけるという側面はあるのだけれど、これを今現在、保険募集行為だということにして、保険募集規制を全部にかけるのがいいかというと、比較サイトは非常に便利なものであって、消費者に受け入れられているということを考えると、一部にひょっとしたら問題はあるかもしれないけれど、保険募集規制をかけることによってこの便利な仕組みが社会からなくなってしまうとすると、それは望ましくないということです。この意見がどれだけ意味を持ったかはわかりませんが、結果としては、保険募集の範囲を拡張することはせずに、ただ、募集関連行為という形にして、保険会社側に一定の体制整備を期待するとともに、今後も動向を注視するということになったものだと理解しております。
今回の問題も、それが各自のスマートフォンでアプリの中でできるかということはあるのでしょうが、本質的には比較サイトと一緒の問題だと思いますので、またこの問題が出てきたかという感じではあるのですが、その際に忘れるべきではないのは、今しがた申し上げました、消費者の利便性の維持・向上というところでして、確かに意思決定に働きかけるのだけれど、だからといって全て規制をするというのは思いとどまったほうがいいと思っております。
そうすると、どういう場合に規制が必要で、どの場合に必要でないかということを考えることになりますが、例えば比較サイトは、私も海外出張などに行くときに、海外旅行保険をよく見たりするわけですが、あれは商品構成がかなり共通化されていまして、費目もそんなにわかりにくいものはない。そうすると、比較サイトで十分判断ができる。しかし、これが、長期の生命保険になってくると、比較サイトのシンプルな情報だけで選択をすることには不安は覚えます。また投資信託につきましても、ごく基本的なシンプルな長期保有を前提としたものもあれば、なかなか複雑なものもあったりするわけです。
そうしますと、購入するときのリスクが低いというか、シンプルで判断しやすいものについては、少なくとも規制をかける必要はないように思いますし、他方で複雑過ぎる、例えば変額保険であったり、また金融庁さんご自身が、投資信託についてあまりよろしくないものはやめようという運動をされていると認識しておりますが、そういうものについては、規制をするという形があり得るのかもしれないとは思っております。問題は、そのような枠をどの主体が設定するのかという点で、国がやるのがいいのか、民間に任せるのがいいのか、業界団体の任意の自主規制に期待するのかということはいろいろあると思いますが、いずれにせよ、そのような区別をせずに一律に規制をかけるというのは躊躇されるところでございます。
それが上半分でして、今度は所属制ですが、所属制は、今、坂先生からご指摘がありましたが、基本的には所属金融機関などが仲介者をコントロールするというところに期待が置かれているわけでして、そのときに、賠償責任もあるわけですが、賠償責任を負わせている意味は、結局責任を負担させることによってちゃんとコントロールしなければならないというインセンティブを与えるところにあると思っております。
言い換えますと、これは単に利益を得ているから責任があるのではなくて、コントロールできるかどうかに意味があるのであって、コントロールできないのであればその者に責任を負わせても意味はないわけですし、逆にそこがコントロールできるのであれば責任を負わせるという形になっていくということです。そうしますと、本当に独立した、自分で自分の体制は整備するし責任を持つんだという仲介事業者であれば、その所属金融機関の責任というものを考える必要はないように思っております。
そのことが問題として顕在化してくるのは、この一番下の②ではないかと思っております。今現在も、保険ショップさんですとか、また銀行の窓口で保険を売るという場合には、乗合代理店の形をとっていて、所属保険会社が建前上はあるということにはなっているわけですが、現実問題として、特定の保険会社が大手の保険ショップや銀行にコントロールを及ぼしていくことはなかなか難しいような状況にあると理解しています。それにもかかわらず、保険会社が保険ショップや銀行の問題のある募集行為について賠償責任を追及される場合、その後で保険会社が銀行や保険ショップにちゃんと求償できていればいいわけですが、仮にこの求償が事実上、営業政策などを考慮してなされていないとすると、仲介者に対しては所属会社によるコントロールも責任負担による規律付けも及んでいないということになり、仲介者のインセンティブを悪化させているという問題があるように思います。ですので、この場合には、むしろ保険仲立人のような形をとって、仲介者に責任を負わせるということが考えられてしかるべきなのかと思っております。
そうすると、そのときの賠償資力を確保するということで、仲介者による保証金の供託などを考えることになり、保証金の供託の話が出てきますと、今度は参入障壁になってしまうという悩ましい問題が出てくるわけですが、少なくとも規模が大きくなった場合にはそのような懸念は小さいでしょうし、また複雑で被害を与えかねない商品を扱うという場合には、やはり適切なインセンティブの確保が重視されるべきでしょうから、新しくつくるものについては、一定の規模以上の業者、もしくは一定の複雑な商品を扱う業者については、複数の金融機関に所属するという形を選ばせる余地をむしろ認めるべきではないようにも感じております。そこのすみ分けをはっきりしておかないと、保険仲立人はあまり使われていないという現状が繰り返されるおそれがあるような気がしていまして、この②の問題というのも、そういう意味では強く意識する必要があるのではないかと考えております。
今度は①ですが、こちらについては今の問題は生じないわけですが、だからといって、独立した形でやっていきたいというのであれば、それは十分認めるべきだとも思っております。ただ、そのときに問題になるのが、そこの体制整備と賠償資力の確保をどうするかという問題かと思っております。
このときも、結局、問題が起きる可能性が小さいのであれば、賠償資力の確保はそれほど必要ではなく、ただ、変額保険などを売ったりするのであれば、それは問題が起きやすいので、賠償資力が重要になってくるだろうと。そうするとここでも、扱っている商品、または行う行為の中身の危険性の度合いと連続的な関係があるわけです。これは行為の性質がリスク移転なのか資産運用なのかというだけでは切れなくて、リスク移転や資産運用の中にもいろいろな危険性のレベルがあるわけですので、より細かく切り分けていくことが必要になると思います。これは現実にはなかなか難しいかもしれないとも思われますが、金融商品取引法をつくった時のように規制を柔構造化するということを考えていけるのであれば、こういうところこそがまさにその場面かとも思っているところでございます。
以上でございます。

【岩原座長】
それでは神作さん、お願いします。

【神作メンバー】
ありがとうございます。3点、発言させていただきます。
第1点は、資料2の上の白丸の(2)について申し上げさせていただきたいと思います。多種多様な商品・サービスをワンストップで利用者に提供するという場合に、横断的な参入制度を設けるというのは、そのようなサービス自体、顧客にとっては非常に便利でありまして、ぜひそのようなサービスを提供する業者が参入しやすくなる方向で議論を進めていただきたいと思います。
できれば、参入のところだけではなくて、もちろん、さまざまな金融商品・サービスの特殊性によって違いが出てくるというのはそのとおりだと思いますので、完全に全部を一体化することはできないと思いますが、統一的なルールをつくることが可能なルールについては、参入のところだけではなくて、くくり出して監督規制の中身についても共通したルールをつくれるところは、くくり出して検討していくということができればさらによろしいのではないかと思います。
また、この点に関連して、オンライン取引を前提としているけれど、オフラインというのもあり得るのではないかというご議論がございました。理論的には全くそのとおりであると思いますが、しかし、オンライン取引において、まさにこういった多種多様な金融商品・サービスの仲介サービスを提供することが現実的であり、かつ、監督という観点からも、オンラインの場合にはオフラインとは違っている面があると思いますので、たとえばもし監督の実効性等でオンラインの場合とオフラインの場合とで差を設けて考えることが可能であるということであれば、オンライン取引を念頭に議論をするということは、私は現実的な対応としては、十分にあり得るのではないかと思いました。
第2に、決済サービスについて、金融商品の販売と違うかどうかについて申し上げます。この点については、すでに多くのメンバーの方々が指摘されたように、決済の機能と資産運用・リスク移転というのは、かなり大きく異なっていて、他方、資産運用とリスク移転というのは非常に近接しているという部分があるかと思います。
一言で申しますと、決済というのは資金移動ないしは債権債務関係の清算ということでありますが、何らかの点で、原因関係と申しますか、原因債務というものが存在するわけですから、そうすると、それを決済するというのはたんに情報を伝達するというのが中心となるわけでございます。場合によっては、決済サービスに伴って現金の授受があるということはありますが、いずれにせよ受動的なサービスということが言えると思います。これに対し、資産運用・リスク移転については、特に勧誘がある、あるいは誘引しているということが認められる場合には、説明義務を初めとしてさまざまな追加的義務と申しますか、単なる情報の伝達、場合によっては金銭等の移動を超えた機能を、仲介者は担うことになると考えられます。
したがって、これまでもご議論がありましたが、誘引、勧誘というのがどこまでかという線引きは非常に難しいところがあるかと思いますが、少なくとも、資料1の4ページ下段の図で示されているような、投資商品の提供は、顧客を誘引、勧誘している面があると考えることが妥当であると思いますので、少なくともこのようなサービスの提供については、単なる顧客・利用者から発せられた決済に係る情報の伝達とは分けて考えていく必要があるように思われます。
第3に、所属制との関係でございますが、所属制をとるかとらないかというのは、まさにさまざまなビジネスモデルがあり得るところで、必ず所属制をとらなければいけないというわけではないと思います。
他方で、所属制が、これまで仲介業者に対する非常に重要なコントロール機能を果たしてきたということは確かだと思いますので、所属しない場合の仲介業者のあり方については、何らかの監督法上の手当てを考えるというのは当然であります。私は、2つ目の丸の(1)(2)で書いてあることというのはもちろん重要で、一つの選択肢ではあるかと思いますが、最も重要なのはフィデューシャリー、所属制を採用していないという場合には、少なくとも顧客にとっては自分の利益のために行動してくれるということを期待するのは当然でありますので、フィデューシャリーとしての適切な行動をどのように確保するかという観点から論じていくことがもっとも大事であると思います。
もちろん、リスクを低減したり、財務規制を強化したりするという選択肢もあり得るとは思いますが、どのようにしてフィデューシャリーとしての行動規範を確保するかという観点から、論点を追加することは考えられると思います。
それから、戻って恐縮ですが、最後に、ワンストップでさまざまな金融商品・サービスを仲介するという場合には、むしろ単品で販売していた場合と違って、顧客の資産全体についての管理という観点、例えば分散投資ですとか適合性という観点を、より打ち出しやすくなるという面があるのではないかと思います。単に顧客にとって便宜であるというだけではなくて、顧客にとって利益になるような、そのようなオンラインでの工夫がなされることが望まれます。
以上でございます。

【岩原座長】
それでは戸村さん、お願いします。

【戸村メンバー】
ありがとうございます。私の意見を申し述べたいと思います。
金融機関に所属せず、複数の種類の金融商品を取り扱う仲介業者を、金融庁が直接監督できるということであれば、そのような仲介業者のカテゴリーを新しく導入してもよいと思います。その場合、金融庁が監査をするための人的・物的リソースが有限であることを踏まえると、問題を未然に防ぐための監査を補完する形で、事後的な利用者の救済のための財務要件が必要になると思います。この点については加毛先生が、きちんと監督できるかどうかが大事だとおっしゃっていたように思うのですが、私もそうだと思って聞いておりました。
注意点としては、オンラインの仲介で株式や債券、預金など、異なる金融商品を並べて販売する場合、対面販売でその場で質問するよりは質問の手間がかかるため、買い手側の錯誤が発生しやすくなる懸念はあると思います。また、スマートフォンの誤操作の問題も出てくると思います。
加えて、オンライン、対面販売を問わず、販売元の金融機関が金融商品を直接販売する場合も、仲介業者を通じて販売する場合も、どちらでも、売り手にとって利益率の高い商品を売ろうとするという問題が生じるのは変わらないと思いますが、仲介業者が間に入る場合のほうが、売り手側の責任の所在が分散して曖昧になり、利益相反行為をやりやすくなる側面はあると思います。
このようなことが実際に起き得て、買い手の錯誤が起こりやすい状況があるとしますと、そのような問題の緩和策としては、今回の「討議いただきたい事項」にありますように、仲介業者はトピックスなどの代表的な株式インデックスや国債ファンドのような基礎的な金融商品のみを扱えるとすれば、買い手の錯誤を起こしにくくする効果はあると思います。
この点については、オンラインと対面販売で買い手の錯誤の発生しやすさに差異は生じると思いますので、オンラインと対面販売で仲介業者が取り扱える金融商品の範囲を変えてもよいとは思いますが、詐欺的な、ある種攻撃的な商品の売り込みというのは、実は対面のほうが行いやすいと思いますので、その点には留意が必要だと思います。
以上申し上げた全ての点は、決済指図では起こりにくく、金融商品の販売に特有だと思います。これは多くの委員の先生方がおっしゃった点と同じです。
また、こちらも既にどなたかがおっしゃった点と重なると思いますが、インターネットがある以上、仲介業者が資金を受け入れなくても代金の支払いと販売を同時に行うことは可能だと思いますので、無駄な信用リスクが発生することは避けるべきだと思います。
最後に、岩下先生を皮切りとして今回議論に出た、仲介業者への規制の点についてですが、私の意見としては、各種情報サイトまで射程が広がるのは極力避けるべきだと思います。この点については、情報収集のやり方については利用者の自由として、購入申し込みを入力するウェブサイトの提供者のような、最終的な販売者のレベルで、販売対象となる金融商品について適正な情報提供が行われることを担保するような規制のあり方が望ましいと思います。
以上です。

【岩原座長】
それではその次に福田さん、お願いします。

【福田メンバー】
ありがとうございます。このワーキンググループでもずっと議論してきたように、同一機能には同一ルールをという観点というのは、私も大事なものだと思っています。
ただ、そこでもう1つ大事なのは、厳しい方向にどんどん統一すべきかということであります。既存の金融規制というものに関しては、銀行法なり、その他非常に厳しい規制があるわけですが、そういう方向にどんどん統一すべきだというふうには、私は考えていないというものです。
そういう意味では、このワーキンググループでも議論してきましたように、リスクベースといいますか、リスクの多寡で規制の大小を変えることは大事です。これは資料1の5ページ目の右側にありますように、人体への作用という健康被害という例で挙げられていますが、自分たちの生活にどれだけ大きな被害を及ぼすかというリスク、そういったものに応じて、規制の多寡は変えていくという発想が、私は大事だと考えております。
そういう意味では、フィナンシャルプランナーみたいなお話も出ていましたが、そういうものに相談するというのは、自分の持っている資産全体を相談するというような話ですので、これはそれなりに慎重にならなければいけないということでしょう。一方、少しお小遣いを運用するとかいうような問題であれば、そこまで深刻に考えなくてもいいんじゃないかという観点は、大事なのではないかとは思っています。
最後に、比較サイトの話が皆さんから多く意見が出ていましたので、経済学の比較サイトに対する解釈はやや複雑であります。例えば、先ほど特定の業者の名前が出ていましたが、そこでいろいろな値段が表示されているのですが、必ずしも最安値のものをみんなが買っているわけではないということが知られています。
それはなぜなのかというのは、いろいろな事情があるのですが、1つは単純に価格以外の附随的なものがいろいろあって、単純に価格が安いから有利というわけではないということと同時に、取引はスポット取引ではない、1回限りの取引ではないということです。
例えば、先ほど旅行の例も出ていましたが、ホテルとかでも、1回だけ泊まるのだったら比較サイトで最安値のところに泊まるのがもちろんいいのですが、同じホテルにずっと泊まっていると、ホテルの会員制というのがあって、どんどんステータスが上がっていって、別のいろいろなポイントもついていくといういろいろなサービスもある。要するに継続的な取引になると、1回限りの値段ではいろいろと議論ができない、いろいろな問題も登場するということで、比較サイトの問題は、研究がいろいろ進んではいるのですが、やや複雑な問題というのはあるということだとは思います。
最後に、、資料2「討議いただきたい事項」にあるプラットフォーマーに関してです。私は当面は積極的に育成してほしいと考えています。そういう意味ではオンラインか対面かという議論も出ていましたが、イノベーションの可能性があるのは明らかにオンラインであって、対面の人たちをイノベーションという観点から優遇する理由があるとは、私はあまり考えておりません。
もちろん、将来的には、そういうオンラインの人たちが非常に大きな力を持ってきて、大きな問題を引き起こすという可能性はあるわけです。けれども、それを今から心配して規制を厳しくするという発想はないのかなと思います。もちろんそういう問題が出てきたならば、別途問題を考えるという発想は大事だとは思いますけれども、現在は、日本の現状を考えたときには、頑張っている業者もたくさんいらっしゃいますけれども、それでも世界の大きなFinTechの流れからは、むしろ日本は取り残されているんだという発想のもとに、こういう規制緩和というのをぜひ考えていただきたいということを最後につけ加えさせていただきたいと思います。

【岩原座長】
それでは、永沢さん、お願いします。

【永沢メンバー】
ありがとうございます。先にお話された先生方の意見には全て同意です。私からは資料2の「討議いただきたい事項」のペーパーに従って、感想的なお話をさせていただきたいと思います。
まず、オンライン取引については、対面よりも自己責任が徹底できるという前提で話をしがちですが、意思決定の過程で、本当にそう言い切っていいのかどうかを再検討しておくことが必要と思います。
といいますのも、市場ワーキンググループで行動経済学の専門家の先生方からさまざまなお話を聞かせていただいており、特に高齢者の認知能力の低下についてお話を伺っています。高齢者がオンライン取引にどんどん参加してくることを考えますと、加齢と認知能力や判断能力の低下についても意識しておくことが必要ではないかと思います。
次に、資料中にワンストップという言葉が出てきておりました。ワンストップが実現すれば、それは便利であるとは思いますが、一度使い始めたワンストップの場は、そうそう簡単に変更できないとも思います。高齢になればなるほど、一旦使い始めたワンストップが仮に不利益なものであっても、変更するようなことはしないだろうとも思いました。
資料の(1)のところになりですが、後藤先生もおっしゃったように、事業者がなんども金融庁に足を運ぶというようなことは減らしていくことが必要かもしれませんが、利用者保護の観点から果たしていただかなくてはいけない責務というものが必ずあるわけですので、その軽減というのは難しいと思います。
それから、(2)は資料1の4ページに対応すると思いますが、ほかの先生方からもご指摘がありましたように、決済と違い金融商品の場合は、同じ分類のカテゴリーの商品であっても同一のリスクとは言えない場合もあります。また、人間は今見えているものの中から選ぶ傾向がありますので、オンライン取引の場合には、商品の見せ方、並べ方、表示の仕方が人間の選択にどのような影響を与えるのかという視点も大事なように思いますし、公正・適正に情報提供がされていると言えるのかどうかというところも気になるところです。また、複雑な商品の場合は説明責任を果たせないだろうとも思いますし、適合性の原則をどのようにして全ういただけるのか等も気になるところです。
所属制については、これを緩和する場合は、事務局から提示されたような措置は当然必要と思います。
総論賛成なのですが、気になりましたのは、リスクが総体的に低いというところです。資料1の5ページに医薬品の販売の例を示していただきましたが、医薬品の販売の場合はそれなりに科学的な根拠に基づいてリスクが測定されているわけです。金融商品の場合は、変動率をリスクと考えるのが一般的ですが、それだけでは不十分で、商品の複雑さなどもリスクと捉えることも必要と思います。
事業者の方々は、商品を自分の店頭に並べて商売をされる以上は、並べた商品の品質の保証責任的なものを会社全体で負っていただいているものと私たちは期待しているわけですが、所属制が緩和された場合には、こうした責任の所在をどのように考えていったらいいのかが難しいところではありますけども、引き続き、金融機関・会社にも責任を負っていただくことを求めたく、厳しめに考えていただきたいと思いました。
最後のところですけれども、既存の金融機関、特に銀行が勝者という構図で規制を考える傾向がありますが、この分野では必ずしも伝統的な金融機関が勝者になるとは限らないとも思いました。
福田先生がおっしゃるように、私もやみくもに規制を強化することには賛成ではありませんが、一方で、ある程度の規制は必要とも思っております。特に表示に関するところは、公平公正に適切な情報が提示されているのかどうかの監視を行政がきちんとしてくださり、是正が必要なときには是正命令を事業者に対して出していただけるようにしておくことも必要と思います。
最後になりますが、産業政策的にはこの分野への新規参入は歓迎すべきことだとは思いますが、ワンストップのところでも申し上げましたけれども、新商品やサービスが次々に登場する中で、我々利用者は一旦選択したサービスから別のよりよいサービスへとそう簡単に移っていけるものではないと思います。よいものが新たに投入されることと、我々利用者がより良い新しいものに乗り換えて使えるかどうかは、これは必ずしもイコールではないとも思います。
以上でございます。

【岩原座長】
それでは、翁さん、お願いします。

【翁メンバー】
ありがとうございます。高齢化社会になりまして、本日、金融庁からご提示いただいたように、自身に最も適した金融商品・サービスが選べるようにするということは、利用者の選択肢を増やすという意味でも非常に重要な課題だと思っております。その意味で、今日ご提示いただいたようなプラットフォーマー型の資金仲介業者という、新しい事業者については、ルールを整備した上でこういった業者がいろいろなサービスができるようにしていくということが大事だと思っております。
その際は、仲介業者について、一つのライセンスをまず与えて、その後、いろいろな保険をやる、または証券を扱う。こういったアクティビティというか、そのベースでこういう規制をその都度付加していく、適用していくというような考え方が適切かと思います。
その意味で、最初の仲介事業者として、ミニマムで共通する、本当に必要なものは何かということをまず考えておく必要があるのではないかと思います。もちろんここは顧客本位のサービスができるガバナンスの体制やコンプライアンス体制、またはオンラインの場合がほとんどでございますので、セキュリティの体制。こういったことを中心に、まず共通するものについては何なのか。本当に共通する財務基準は何なのか。こういったところが一つ重要な論点になってくるかと思います。
その次にどういうアクティビティをするか、ここでお示しいただいたように、まさに決済、資産運用、リスク移転といったところに、基本的には分けられて、これごとにどういう法規制を付加していくのかということを考えていくということではないかと思います。
その意味では、こういったプラットフォーマー型というのは、多くの金融機関との関係を持つということを考えますと、こういったタイプの代理をするところについては、所属制というのはなかなかなじみにくいということではないかと思います。ただ、今までご議論ありましたように、所属制というのをもしこういった業者に適用しないならば、その適切な業務運営と利用者保護をどういうふうに担保するかという工夫が必要だと思います。
資金移動業につきましては、ご議論ございましたけれども、預かり金が非常に多いというようなことは、今まで議論してきたように制限するべきと思います。また、資金運用とかリスク移転に関しましては、ここでご提示いただいているのは財務面の規制かリスクというようなことや、リスクが総体的に低いものにするのかというような案が書いてありますが、財務面の規制というのも利用者保護の観点からは必要だと思いますが、非常に小さい事業者がイノベーションを興して入ってこようとするときにはネックになりかねないので、そこをきちんと検証する必要があると思いますし、また、リスクの高い商品という考え方ももちろんあって、非常にハイブリッドの難しいものについて、こういうもので売るのかというような論点もあると思うのですが、ここも非常に切り分けは難しいので、そこも十分なご検討をしていただきたいと思っております。
こういった事業者は、おそらく今までご議論があったように、どういうものがその人に合うのかというような、その適合性の原則にあって、最もその人、いろいろなその方の情報を分析して、最もこの人にはこういうものがいいんじゃないかというようなものを、AIなどを使って出すというようなところに付加価値のつけどころもあるのかというような感じがいたしますが、一方で、いろいろな先生方がご議論されていたような比較についてのルールをどういうふうにするのか。ただ、ここは付加価値のつけどころではあるかと思いますので、そこについてもそういったものを阻害しないようなルールを検討していくということが必要かと思っております。
医薬品の販売などについてもそうでございますが、既にネット証券とか保険とか、ネットで、もう事業者は情報提供し、顧客に販売して、意向把握をした上で販売しているということかと思いますが、難しくなってくるのは、金融機関と仲介事業者でこのオンラインのところでどういうふうな責任分担をしていくのかということかと思います。
4ページに書いてありますように、投資商品の場合は一旦遷移して、商品の詳細やリスクに対して、利用者への説明をするというところは、例えば「証券会社ウェブサイト」と書いてありますけれども、最終的に情報提供内容を理解した旨の確認というのが大事だと思っております。
この理解したものの確認というのはおそらく代理業者がするのかと思いますが、そのあたりの責任の所在というのがオンラインであると、遷移してしまうと、どういうふうにそこがきちんと担保できているのかということを、きちんと後から検証できるようにしておくということが大事ではないかというふうに思っております。
私は、対面とオンラインを比べると、いろんな比較ができると思うんですけれども、オンラインはオンラインでいいところがあって、例えばリスクについての説明について、何度も何度もホームページに戻って、それを確認することができるということがあると思いますし、また、こういったオンラインサイトの設計にもよりますけれども、メールとか双方向でやりとりするということを可能にすることもできるというところ、少し時間をかけて確認するというようなことができるような仕組みも仕組めるかと思います。
あともう一つは、もちろん今、紙ベースできちんと判こを押して、説明を受けましたということをやっていますけれども、オンラインであれば、必ず履歴も残るというメリットもあるかと思いますので、対面販売のメリット、デメリット、オンラインのメリット、デメリットというのがありますので、このオンラインの場合は、このオンラインのメリットを生かすような形で、フィデューシャリー・デューティーをきちんと尽くし、顧客本位のルールというのを設計していくことが大事ではないかと思います。
以上でございます。

【岩原座長】
それでは、森下さん、お願いします。

【森下メンバー】
ありがとうございます。金融サービスの仲介者を育てていく必要があるのではないかということについては、そのとおりかと思います。ただ、この点については、大野メンバーからお話があったと思いますが、必ずしも新しい業者に限られるべきものではなく、既存の金融機関などがそういった役割を果たすということも十分考えられるのではないかと考えております。
仲介業者といったときに少し注意する必要があると思いますのは、その仲介業者が実際に何をするのかということをよく考える必要があるのではないかという点です。先ほど来お話に出ています、さまざまな商品を比較する、比較情報を提供するということは、期待される大きな役割の一つだと思いますが、金融取引は、その後、顧客のプロファイリング、それに応じた推奨、アドバイス、具体的な商品の説明、契約の締結、あとは不都合があったときの事後処理、紛争処理といったようなプロセスがあると思います。それぞれにそういったような機能があると思います。こういったような機能は、金融商品によって異ならず、どのような商品を考えたとしてもあることだと思うのですが、そういったような全てを代理店でない仲介業者に委ねていいのかどうかというのは一つの視点としてあり得るように思います。
所属制というものの背景にあるのは、少なくとも不都合があったときの責任というものは、ほかの人に丸投げしてはだめですよというような意思のあらわれというふうにも考えることができるのではないかと思います。様々な商品を比較して情報提供するというような点について、岩原座長からもご指摘がありましたけれども、この点が非常に重要になってきているというのはそのとおりなのではないかと思います。こういった点を視野に入れて、金融のさまざまな機能というのをもう一度整理して、分解して考える必要があるのではないかと思います。
今の規制というのは、そういったそれぞれの機能に応じて、求められるものが結びついているような気がいたしまして、例えば説明義務ですとか適合性原則というのは、説明プロセス機能の部分に付着した義務として求められるものだと思います。顧客本位の業務運営とかフィデューシャリーということになりますと、アドバイスのときはもちろんですが、様々な商品を比較して紹介するときにもそれを期待するのかどうかというのは、従来さほど議論されてなかったかもしれませんけれども、微妙なところなのかと思います。
いろんなプロセスで、オンラインでサービスを提供するということになりますと、セキュリティですとか顧客情報管理というようなものもありますけれども、こういったようなものになりますと、一部分を担当したとしても、お客さんの情報を抱えるということになった途端に、リスクのファクターというのが出てくると思います。具体的に担当する機能によって、どうしても必要な規制、あまり必要でない規制というのが分かれると思いますので、少し細かく仲介業者が実際に担当する機能に分けて考えることによって、そういう仲介業者に対して、実際にどういった規制を残す必要があるのかということがより具体的に検討できるのではないのかと思っています。
そういったそれぞれの機能に応じて、今、存在している規制というのは、過去にあまり望ましくないことが起こったからこそ、入れられてきたと思うんですね。これをオンラインにするからということで、直ちに外せるのかというと、そこまでの合理的な理由が存在するのかというのはやや疑問であります。イノベーションを促進しようというような議論もあると思いますが、イノベーションを促進した結果、トライしたらよくないことが起こったと。それはオウンリスクで顧客に負担してくださいというようなことは、おそらくイノベーションを推進しようという方々もお考えになられていないとは思うんですね。
ただ、イノベーションを推進するというときに、事業者の方はどこまでだったら自分たちで責任をとれるのかと。例えば仲介業者としてここは自分たちの責任領域としてしっかりと責任をとるというようなことについても、何ていうんですかね。具体的な意思表明というか、そういうようなものがないと、イノベーション推進です、だから規制緩和しますという形には少し議論を進めにくいのかという気がいたしております。
ただ、他方で、リスクに応じた、めり張りを効かせた規制が重要ではないかというようなご意見も多々あったかと思いますが、それはそうなのかと思います。例えば取り扱う商品のリスクが非常に小さいと。提供する機能のリスクが非常に小さいというのであれば、規制を軽減したらいいと思いますが、それはおそらく仲介業者が果たす場合に限らず、一般の金融事業者がサービスを提供する場合についてもイコールなので、オンライン事業者、あるいは仲介業者が果たす一定の機能に対して規制を軽減する必要があるというのであれば、一般の事業者が提供する同様の機能に対しても同様に規制を軽減するということが考えられてしかるべきではないかというふうに思います。
所属制というところですけれども、所属制に何を期待するかということに関して、しっかりとした業務運営ですとか、責任分担ですとか、いろいろなことがあるというのはそのとおりかと思います。ただ、所属制といっても、いろんなレベルがあって、例えば電子決済代行業者における制度と、保険などにおける、実際の損害賠償義務まで当然負ってくださいという場合の所属制と少しレベル感が違うような気がしますので、これの所属制についても、1かゼロということで考える必要はないのではないかとは思います。
ただ、これは電子決済代行業者の議論のときにもそういうふうな感じがしたんですが、契約先が膨大になってくるということになりますと、それぞれの金融機関と一々契約を締結して、その金融機関との間でいろんなことを合意するというコンプライアンス・コストが非常に高くなるというのはそのとおりなのかと思います。例えば誰かがまとめてチェックしてくれて、他者はそれに依存できるとか、そういうようなシステムがあればいいと思います。そういうようなものがないのであれば、広範に代理、仲介業をやろうとするのであれば、そういった仲介業をもっと独立した主体として規制監督の対象として規制していくということは十分考えられるのではないのかと思います。
そのときには別に所属制ではなくて、もう自分で責任をとっていただくと。果たすべき機能に必要な規制には服していただきますし、何かあったときにはしっかりと責任を負っていただくというような形の業を、本当に必要であればつくるというようなことはあり得ると思いますけれども、繰り返しになりますが、そのときには新しい業者だから、本来果たすべき機能に付随する責任を果たさなくてもいいというような議論はなかなかしにくいのではないかというような気がいたしております。
以上です。

【岩原座長】
皆様からのご発言いただきましたが、全体の議論を聞いて、さらに何かご発言されたいということ、ございますか。特にご希望されています? ご希望はないようですね。
それでは、オブザーバーでご出席いただいている方からのご発言のご希望があるようですので、まず小木曽さん、お願いします。

【小木曽オブザーバー】
新経済連盟の小木曽です。3点、お話しさせてください。
1点目が、比較サイトに対する規制でございますが、経済団体として明確に反対です。理由は、委員の方もおっしゃっておりましたが、最終的にリンク先のところにこういう規制をかけるというのが筋であって、比較サイトはむしろ消費者に対してもいろんな情報が与えられるということで、情報の自由流通市場が確保されているということなので、過度な規制は逆効果になると思っております。ここは極めて慎重に議論していただきたいと思います。
それから、2点目です。仲介業が顧客の資金を預かる場合について、舩津委員から、資金移動業のアプローチというお話がありましたが、我々も、基本的には現行の資金移動業で整理できるのではないかと思います。
それから最後、3点目。5ページで、医薬品のネット販売の薬機法の話が参考事例として紹介されていますが、これはネットか対面かというような話になってしまっています。この件は私は10年以上、厚労省とやり取りしていて、ライフワークになっていますので、本スタディ・グループではそういう議論にはならないと思っていますが、念のため申し上げておきます。現状、対面と非対面について、それぞれがコミュニケーションツールであるという趣旨のご発言が翁委員からもあって、私もそのとおりだと思います。今回の国会で、デジタルファースト法案というのが出て、対面原則撤廃という基本原則の方向が条文で書かれておりますので、ネットだということに過度に注目して、何かおかしな議論にならないよう、極めて慎重に議論してほしいと思います。医薬品のような話にはならないと思っていますが、5ページで、医薬品のネット販売が事例として挙げられており、いま一つ、どういう意味でこれが参考になるのかがわからないところがあるんですが、慎重に考えてほしいです。
あとは、私は医薬品ネット販売の件は10年以上携わっているので、この5ページで書いてある、右側の議論について、もし経緯等、ご説明聞いていただければ何でも答えられますので、議論の参考にしていただければと思います。よろしくお願いします。

【岩原座長】
それでは、丸山さん、お願いします。

【丸山オブザーバー】
FinTech協会の丸山でございます。我々FinTech業界からの要望につきましても、ご検討いただきありがとうございます。
メンバーの皆様からご意見いただいております通り、金融サービスをより利用者のために広げ、投資や消費、融資、こういったものを活性化し、国民の公正の増大といいましょうか、金融市場の活性化に向けたご議論と思っております。その観点で、気になった点としては、いろんな問題の議論を再度する必要がおありだという先生方のご議論ありましたが、よかれと思って始めたものが、再度、規制が強化になって、結果として、投資や融資が進まないということが起こらないような詳細の議論をぜひ進めていただきたいというのがお願いの1点でございます。
あと、少し具体的な点でございまして、先ほど来より、オンライン、オフラインという点がございます。我々、基本的にはオンラインのビジネスをしている立場でありますので、その観点からという形にはなってしまいますが、先ほど翁先生からありましたとおり、オンラインのよさ、それを生かした制度というのをご議論いただければと思います。
例えば、資料1の4ページ目でフローがありますけれども、先ほど来、責任の所在や確認だというところにおいて、オンラインであれば、何を確認したのかという履歴を残すなど、結構柔軟な設計も可能だと思います。例えば4ページ目、FSAアプリで、「完了しました」になっております。これはまさにこのとおりで、依頼が完了でして、依頼は完了したけれども、契約の完了は例えば金融機関側画面から表示しないと進まないとか、こういうような設計も可能になります。
オンライン上においては、どこまでが責任で、どこまで確認したのかというのが比較的設計しやすい、確認しやすいと思いますので、このゼロイチといいましょうか。確認はどっちでしたんだということではなく、確認が相互でできる、もしくは片方で完了する。こういういろんな設計ができることを前提にご議論いただけますと非常にありがたいと思います。
あと、最後、対象の範囲の部分で、資金を預かる場合、預からない場合というお話があったと思います。例えば預金の部分においても、資金を預からない預金口座開設指示や振替だけの依頼などもあるでしょうし、先ほどの資金移動業で整理できるんじゃないかというところもあったと思いますので、こういったところは実務のサービス例をもとに、具体的な議論を進めていただけるとありがたいと思っております。
以上です。

【岩原座長】
ほかに何か特にございますか。
大変熱心にご議論いただきまして、まことにありがとうございました。オンライン取引を前提とした多種多様な金融商品・サービスの仲介ということが今日の議論の対象だったわけでありまして、そこから、事務局側の資料2の最初の丸の(1)、(2)の議論の前に、岩下さんからご指摘があり、私も発言させていただきましたけれども、オンライン取引による仲介サービスというのは、それの実態を考えて言いますと、伝統的な保険募集とか、金融商品仲介業とか、銀行代理業者と言われているものにすぐ明確に乗っかるものだけでない、新しいタイプのサービスが提供されているので、それを踏まえて、どういうようなルールの設定なりを考えていったらいいのかという問題がまずあるというご指摘があったかと思います。
それに対しては、こういうオンラインのサービスについては、なるべくイノベーションを大事にすべきであって、規制を早急にかけるべきではないというご意見もあったわけでありますが、一方で、そこから実質的に利用者保護の問題が生じ得るようなときについては、何らかのルールが考えられるべきではというご意見もあったところであります。
実際、先ほど後藤さんからご指摘ありましたように、金融審議会の保険の部会においては、募集行為、また、募集関連行為という概念の中で、実際にそういうオンラインの比較サイトのサービスについてどのように考えたらいいのかということが検討されてきているわけですから、そういうことを踏まえて、新しいサービスについて、単に伝統的な枠組みの中だけで考えるのではなくて、どういった全体の、まさにイノベーションを促進しながら、一方で、この利用者の保護がきちんと図られるようなルールづくりはどうしたらいいかということを考える必要があるのではないかと私個人的には感じました。そして、最初の丸の(1)、(2)で、なるべく仲介業者に過重な参入の手続の負担をかけないように、手続が整理できるものは整理したらよいのではないかというご意見があり、また、その辺に関しては、そのサービスの中でも決済サービス関連と金融商品販売に関連したようなサービスでは分けて考えるべきではないかというご意見が多かったように思います。
ただ、これも具体論が入ってきますと、色々と問題がありうるように思われます。確かに参入規制、資料1の3ページのところに、この参入の要件を見てみますと、登録の要件、これは電子決済等代行業者ですと、銀行法の52条の61の5に要件が規定され、銀行代理業者は、52条の38の1項、それから、金融商品仲介業者は、金融商品取引法の66条の4と。保険募集人が保険業法の279条。保険仲立人が289条ということになりまして、その中で比較的似たような要件が法律上は規定されています。例えば財産的基礎とか、体制の整備とか、人的構成とかですね。そういうところで整理をして、手続をなるべくワンストップ化していくということは考えられないわけではないと思います。しかし一方で、具体論で考えると、同じ財産的基礎あるいは人的構成といっても、それぞれ提供しているサービスごとで求められているものは違う可能性がある。というか、はっきり言えば、法律上のものは同じでも、そこから規則、あるいは、さらには各自主規制団体がつくっている自己規律のためのルールを含めて考えると、決して同じではないわけでありまして、これを簡単にワンストップ化するということができるのかという問題があると思います。そこはよほど今後整理して、本当に共通化できるところと、そうはいかない、それぞれのサービスの性格に応じて、さらに必要になる部分とを分けて、それらの手続をなるべく合理化するにはどうしたらいいかということを考える必要があると思います。
さらに、先ほどご指摘ありましたように、単に入り口だけの問題ではなくて、一旦そういう登録あるいは許可を受けた後で、今度は監督を受けていくわけでありまして、その監督の体制についても、大きく言えば確かに情報提供義務とかいうところでは、同じように見えても、この各条文をごらんいただければわかりますように、それぞれかなり違った監督体制が法令上、要求されています。さらに言えば、さっき申しましたように、規則や監督指針、それから、各自主規制団体がお決めになっている自主規制ルール等を含めると、一旦入り口から入った後の監督体制がそれぞれ違っているわけでありまして、それを単に入り口で、一つのパスポートで入れるようにしたからといって、その後の監督体制を全部同じようにできるかというと、そう簡単な話ではないと思います。
むしろ一つの入り口にしてしまいますと、全部の要件を満たすような規制を満たせるような体制でないといけないと言われて、かえって、規制が厳しくなることさえ考えられるわけであります。そこら辺のところを実際にどういうふうにしたら、なるべく業者の人を負担を軽くしながら、それでいて、必要なチェックはちゃんと図れるようにするかという具体論、むしろこの先の話が非常に大変だと思いますので、そこら辺のところを事務局にはきちんと検討していただきたいと思います。
それから、所属制については、柔軟に考えていく必要があるというご意見が多かったように思いますが、一方で、こういった制度ができた経緯を考えて、その趣旨が失われないようにすべきだというご意見もあったかと思います。
そもそも考えてみますと、この所属制という制度が最初に設けられたのは、保険業法の保険募集人だったと思います。金融商品仲介業者や銀行代理業者等における所属制は、保険募集の制度を参考に後からつくられたものです。保険募集の場合の所属制というのは、特に生保に関して言えば、保険業法282条で、1社専属制をとって、所属している生保会社の非常に強い監督のもとに生保募集人が募集行為を行っていくことを前提にしてつくられた制度です。そういう実際上の実務の運用実態を踏まえてできてきているわけなので、それが後から拡張された金融商品仲介業者や銀行代理業者について、所属制がどういうふうに実際に機能しているかということを検証した上で、それをさらにこういう新しいタイプの横断的な仲介サービスをするものに適用していくことが本当にいいのか。それを適用するとしたら、どのような必要な調整がなされるべきか、ということを実態に即して考えていく必要があります。今日はほとんど抽象論で終わったわけですけれども、そういう検証が必要なのではないかと思います。
今日は最後に、私個人の意見を色々言わせていただいて恐縮でしたが、何か皆さんからの御発言よろしいでしょうか。
どうもありがとうございます。それでは、幸い、久しぶりに少し皆さんに残ったお時間を返すことができまして、本日の討議を終わらせていただきたいと思います。
さて、昨年9月に再開した本スタディ・グループにおきましては、これまで10回にわたり、大変精力的にご議論をいただいてまいりました。このあたりで、決済と仲介業についてこれまでの議論を整理し、基本的な考え方の取りまとめに向けたご議論をお願いできればと考えております。次回以降、そのようなご議論をお願いできればと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
最後に、事務局から連絡事項等がございましたらお願いいたします。

【岡田信用制度参事官】
次回のスタディ・グループの日時につきましては、後日、また事務局からご案内させていただきたいと思います。

【岩原座長】
それでは、以上をもちまして、本日のスタディ・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 

                                                    ―― 了 ――

 
 

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