金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第1回) 議事録

  1. 日時:

    令和7年9月18日(木曜)13時00分~15時00分
  2. 場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用

【神作座長】

それでは、定刻になりましたので、ただいまより市場制度ワーキング・グループの第1回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。

私は、当ワーキング・グループの座長を務めさせていただきます学習院大学の神作と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

初めに、当ワーキング・グループについて御説明申し上げます。当ワーキング・グループは、資料1にございますとおり、本年6月25日に開催されました金融審議会総会・金融分科会合同会合におきまして、昨今の資本市場を巡る諸問題を踏まえ、我が国市場の公正性・透明性に対する投資家の信頼を確保し、利用者保護を図るとともに、市場機能が十全に発揮されるよう、不公正取引規制の強化等について検討を行うことという、大臣からの諮問を受けて設置されたものでございます。

皆様から御意見を頂戴しつつ、幅広い観点から議論を進めてまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。

次に、会議の運営と議事の公開、そして、議事録の取扱いについてお諮りをさせていただきたいと思います。会議は、本日のようにオンライン会議を併用した開催とさせていただき、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただきたいと存じます。また、会議資料は公表するとともに、議事録につきましても、皆様に御確認をいただいた後、発言者の氏名を掲載した形で、後日、金融庁のウェブサイトに掲載をさせていただきたいと考えております。

以上のような取扱いをすることにつきまして、御了承いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神作座長】

ありがとうございます。それでは、そのように取り扱わせていただきます。

続きまして、事務局よりメンバーの皆様の御紹介をお願いいたします。

【齊藤市場課長】

企画市場局市場課長の齊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

このたび、当ワーキング・グループの委員に御就任いただいた方々を御紹介いたします。資料2のメンバー名簿の順に御紹介いたします。

飯田秀総様でございます。

亀坂安紀子様でございます。

後藤元様でございます。

齊藤真紀様でございます。

坂勇一郎様でございます。

鈴木健嗣様でございます。

武田洋子様でございます。

野村亜紀子様でございます。

松岡直美様でございます。

萬澤陽子様は、本日はオンラインで御参加いただいております。

また、本日は御欠席でございますが、上田亮子様、佐伯仁志様、鈴木謙輔様にも委員をお引き受けいただいております。

オブザーバー及び事務局につきましては、時間の都合もございますので、メンバー名簿及びお手元の配席図をもって御紹介に代えさせていただきます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

メディア関係者の方々におかれましては、ここで御退席をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

それでは、議事に入らせていただきます。

初めに、証券取引等監視委員会より、今回の検討の背景にございます建議の内容について御説明いただきます。続きまして、事務局より、当該建議内容に関連する不公正取引規制や課徴金制度等について御説明をいただきます。その後、メンバーの皆様に御討議をいただくという流れで進めさせていただきます。

それでは、初めに、証券取引等監視委員会より御説明をお願いいたします。

【水谷証券取引等監視委員会事務局総務課長】

証券取引等監視委員会総務課長の水谷でございます。よろしくお願いします。

それでは、お手元の資料3に沿って御説明いたします。

まず、背景的なところです。本年6月20日、証券取引等監視委員会は金融庁長官等に対し、市場監視機能強化に向けた建議を行ったところです。監視委員会が行う建議は、検査・調査の結果把握した事項を総合分析した上で、法規制等に対する監視委員会の見解を明らかにし、これを行政が行う諸施策に反映させようとするものでございます。

今回、建議は3年ぶりの実施でございまして、市場監視における諸課題について、近年の検査・調査を通じて認識した課題を網羅的に対象としている点が特徴でございます。

それでは、1ページ目を御覧ください。まず、背景でございます。資産運用立国に向けた官民一体の取組が進展し、誰もが投資者となり得る中で、市場監視機能を一層強化し、従前の投資者も新たな投資者もともに安心して投資ができる公正・透明な市場を確立していくことが重要でございます。

金融取引の複雑化・高度化・国際化の進展などが見られる中、近年における監視委員会の検査・調査の結果等を踏まえると、以下の3つの事例の類型が認められておりまして、これらに適切に対応できる実効性のある措置等を整備していく必要があると考えております。

類型3つのうち、まず1つ目、事例1のところです。不正と考えられる行為について、現行制度では規制の対象とならず、法令違反行為について捕捉できない事例。事例2です。課徴金額が低く、あるいは直接の対象にならず、違反行為に対する抑止効果が不十分な事例。事例3です。効果的・効率的な検査・調査に困難が生じている事例でございます。

監視委員会のエンフォースメントの現場では、調査・検査を通じて市場の透明性・公正性確保及び投資家保護に向けて日々奮闘しておりますが、不正が法規制の対象にならないなど限界を感じている部分でございます。

それでは、3つの類型の主なものについて説明したいと思います。

まず、建議1と書かれている1つ目のところです。インサイダー取引規制に関する関係者の範囲についてでございます。発行者との契約締結者などの「公開買付者等関係者」と同等の内部者とみなされるべき者から情報を受領した者がインサイダー取引規制の対象外になる場合があるなど、規制の趣旨に鑑みると不正と考えられる行為でありながら、現行制度では規制の対象とならないものがございます。

具体的な事例としては、2ページ目を御覧ください。公開買付に係るインサイダー取引の事例でございます。左下の絵にありますように、公開買付者がX社、公開買付対象者がA社でございます。ここで、B社につきましては、A社と契約関係にありましたが、B社の社員が知人に公開買付け等事実を伝達し、当該事実の公表前に当該知人がA社に係る株券等の買付等を行った事案です。

現行の公開買付に係るインサイダー取引規制では、公開買付者の契約締結者は「公開買付者等関係者」に該当するものの、公開買付対象者の契約締結者は「公開買付者等関係者」に該当しないことから、その先の情報受領者、知人でございますが、こちらが「第二次情報受領者」となり、インサイダー取引規制の対象外となる可能性のあったケースでございます。

本事案では、たまたまB社と公開買付者X社が文書開示に係る契約を締結していたため、B社の社員は「公開買付者等関係者」、知人は「第一次情報受領者」となり、規制の対象となりましたが、仮に文書開示に係る契約がなければ、B社の社員が「第一次情報受領者」、知人が「第二次情報受領者」となり、当該知人は規制の対象外となっていたものでございます。

現実には、公開買付者の契約締結者と同様、公開買付対象者の契約締結者もインサイダー情報に接する機会があるにもかかわらず、公開買付者と契約しているか公開買付対象者と契約しているかの違いにより、情報伝達されたものを捕捉できないケースがあることになります。このため、「公開買付者等関係者」の範囲等について、各関係者と同様の内部者とみなされるべき者が含まれるよう拡大する必要があると考えております。

1ページ目に戻っていただければと思います。次に、2つ目の類型の建議2のところです。課徴金の適用範囲及び算定基準についてでございます。

他人名義の口座の提供を受けるなどして不公正取引を行う悪質な事例が多く発生しており、中には、提供先の不公正取引を認識した上で口座提供している課徴金対象にならない協力者も存在します。

3ページを御覧ください。こちらは令和2年度から令和6年度の5年間で見た資料でございますが、インサイダー取引規制の違反者の40%、個人による相場操縦規制の違反者の32%が他人名義口座を使用して不公正取引を行っていました。こうした行為は、違法取引の発覚を妨げる隠蔽目的で行われるなど悪質性が高いと考えられます。

また、不公正取引が行われることを認識した上で口座提供を行う協力者もいますが、共犯概念がある刑事罰とは異なり、当該当事者は課徴金の対象とならず、実効的な抑止効果がない状況にあります。

1ページにお戻りください。「また」以降ですが、継続的に株式の買い集めを行う投資者による大量保有報告書の不提出など、想定される利得額と比較して、現行の課徴金額の水準が抑止効果として不十分と見られるものがございます。

具体的には、資料をつけておりませんが、大量報告・変更報告書の不提出に係る課徴金の額は、株価の時価総額に10万分の1を乗じて得た額とされております。最近の事例を見ても、違反1件当たり数万円、1企業当たり十万円から数十万円にとどまっており、大量保有報告書の不提出の違反行為の抑止効果は限定的であると考えております。

さらに、続きのところですが、従来の方法では課徴金の算定が困難になり得る新しい形態である高速取引行為、HFTによる不公正取引事案が認められております。

4ページを御覧ください。令和6年3月の高速取引行為における不正取引に係る初の課徴金納付命令の勧告事例でございます。本件は他者の計算において行われた違反行為であり、課徴金額は運用報酬額に基づき算出できました。しかし、今後、高速取引業者の自己の計算に基づく高速取引行為を通じて相場操縦等が疑われる、極めて大量かつ薄利の売買がなされることも予想され、それらの疑わしい取引の全てについて個別に把握して法令違反を認定し、適切な課徴金額を算定することは極めて困難になることが想定されます。

また、高速取引行為は、複数銘柄をプログラムにより同時に取引することが多い一方、取引ごとの課徴金算定の過程で、銘柄ごとの課徴金額が1万円未満の場合には、現行法としては切捨てとなり、本来の経済的利得相当額よりも低い課徴金になり得る問題がございます。

建議2で挙げたそれぞれのケースにつきまして、実効的な抑止力を発揮するための課徴金水準の引上げ及び対象の拡大、新しい取引形態に対応した算定方法の見直しなどの適切な措置を講ずる必要があると考えております。

1ページにお戻りください。最後に、建議3でございます。効果的・効率的な検査・調査の実施のための措置についてということで、2つ目の丸を御覧ください。近年、監視委員会の検査対象となる金商業者・上場企業等の多様化や当局間の国際協力の進展が見られているところですが、今後、検査において行っている任意の出頭要請に対する協力が得られないケースや、海外当局の相互主義に基づく調査協力に支障が生じる可能性がございます。

5ページを御覧ください。四角の中ですけれども、国内事業者等を対象とする検査及び外国当局に対する調査協力に関して、出頭命令の権限を追加する必要があると考えております。

その背景としては、国内における背景として、開示検査・証券検査においては、現在、金商法上、事件関係人等に対する出頭命令の権限がなく、任意の出頭要請に対して非協力的な対応が取られるケースが認められたこと。国際的な背景としましては、近年の証券取引のグローバル化に伴い、法令違反事案の複雑化が進んでおり、違反事案を立証するためには、これまで以上に国を跨いだ証拠収集が必要となっております。

金融庁は、証券当局間の執行協力や情報交換等について定めたIOSCOのMMoU、多国間情報交換枠組みに2008年に署名しております。これに加えて、2017年に、IOSCOでは、出頭強制の権限の追加等、既存のMMoUの枠組みを強化したEMMoUを採択しました。我が国については未署名でございますが、EMMoUの署名のための要件として、証券法令違反関係者に対する出頭の権限を有することなどが必要とされているところでございます。

1ページに戻っていただきまして、こうした状況を受けまして、国内事業者を対象とする検査及び外国当局に対する調査協力に関して、出頭命令の権限を追加するなどとともに、IOSCOの強化されたEMMoUへの早期署名に向けた取組を行うといった適切な措置を講ずる必要があると考えております。

次に、3つ目の丸のところですが、金融商品取引業の無登録業と偽計・相場操縦等の不公正取引との複合型と疑われる事案に適切に対応する必要があります。金融商品取引業の無登録業の疑いのある者が不公正取引を行う事案が顕在化していること等を踏まえ、犯則調査を通じて資金の流れや複雑な商品の内容を把握し、一連の事件として実態解明を進める必要が増してきております。

6ページを御覧ください。記載の事案ですけれども、こちらは知人・顧客等に対して投資一任契約に基づく資産運用を持ちかけて、証券口座と資金を提供させて相場操縦を行い、運用益から報酬を得たものでございまして、投資運用業の無登録営業の疑いがあったものでございます。

このように、偽計・相場操縦、インサイダーといった不公正取引を行うに当たり、自己資金で行うにとどまらず、無登録で資金を集めて不正行為を行うケースは、今後とも想定されると考えております。現行の監視委員会による犯則調査は、有価証券の売買等の公正を害するものとして、虚偽記載や不公正取引等に係る事件を対象とするとことが政令で定められているところですが、無登録で金融商品取引業を行った者については、犯則調査の対象に含まれていません。

このため、無登録業を行う者に対する犯則権限を創設し、一体的に効果的・効率的な調査を行うことを可能とすることが必要となっております。

監視委員会からの建議についての説明は以上でございます。監視委員会としましては、近年の検査・調査を踏まえた制度上の課題について、実効性のあるエンフォースメントが可能となるよう、適切な対応が取られることを期待しているところでございます。ありがとうございました。

【神作座長】

御説明どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、事務局より御説明をお願いいたします。

【太田市場機能強化室長】

企画市場局市場課市場機能強化室長の太田でございます。よろしくお願いいたします。

それでは、お手元の資料4に沿って御説明いたします。目次でございます。最初に総論の後、2、3、4と、ただいま監視委員会から御説明がありました建議1から3にそれぞれ対応、関連するものとなっております。

次のページから、総論についてでございます。

3ページ目でございます。金融商品取引法における不公正取引規制及び開示規制の概要を簡単に以下にまとめております。

次のページに、こういった規制の違反行為に対する課徴金・刑事罰の概要をまとめた表でございます。左側に違反行為、それぞれにつきまして、真ん中の課徴金について、一定の算定方法が法令で定められております。下の注についても、課徴金額が定められております。右側の刑事罰につきましては、法定刑の上限が定められている形になっております。

次のページを御覧ください。課徴金勧告・刑事告発の状況につきまして、5年間の件数を表にまとめております。一番上、相場操縦等の表でございますが、課徴金勧告・刑事告発の下に、そのうちの建議がございました他人名義口座の提供を受けるなどした事案の件数も併せて記載しております。その下のインサイダー取引等につきましても同様でございます。

こちらにつきましては、課徴金勧告・刑事告発欄の中にある括弧書きの中で、全体の件数のうち公開買付け等に係るインサイダー取引の件数が記載しております。一番下の表でございますが、大量保有・変更報告書の不提出・虚偽記載につきましては、令和6年度に5件の課徴金勧告が行われているという状況でございます。

次のページから、公開買付等関係者によるインサイダー取引規制についてでございます。

7ページ目、インサイダー取引規制の立法趣旨でございます。上が規制導入当時の審議会報告の引用となります。そこでは、「有価証券の発行会社の役員等は、投資家の投資判断に影響を及ぼすべき情報について、その発生に自ら関与し、又は容易に接近し得る特別な立場にある」、「そのような立場にある者は、公開されなければ当該情報を知り得ない一般の投資家と比べて著しく有利となり、極めて不公平である。このような取引が放置されれば、証券市場の公正性と健全性が損なわれ、証券市場に対する投資家の信頼を失うこととなる」とされております。

下は当時の文献の引用をしたもので、その真ん中辺りでございますが、「公開買付者等一定の関係のある者が、公開買付け等の実施または中止に関する事実を知って、その公表前に当該公開買付けに係る有価証券の取引を行うことも同様である」とされております。「このような取引が横行するとすれば、そのような市場は人々の信頼を失い、健全な投資家はそのような市場から退避することとなり、ひいては証券市場として果たすべき機能を果たし得なくなると言わざるをえない」と解説されております。

8ページ目に、公開買付者等関係者によるインサイダー取引規制の沿革を整理しております。昭和63年の証券取引法改正によって、インサイダー取引に着目した規制、会社関係者と公開買付者等関係者による取引規制が設けられております。併せて刑事罰も整備されております。

その後、刑事罰の水準の引上げですとか課徴金制度の導入等もございましたが、今回の「公開買付者等関係者」の範囲に関連する改正といたしましては、平成10年6月の証券取引法改正で、公開買付者等の親会社の関係者を規制対象に追加、また、従前、公開買付者等の契約締結者のみ規制対象でございましたところ、それに契約交渉者を規制対象に追加するといった改正。一番下の平成25年の改正では、さらにその範囲を拡大するということで、公開買付けの対象となる発行者とその役員等も追加されております。また、その改正では、情報伝達・取引推奨行為に対する規制なども導入されております。

9ページ目を御覧ください。公開買付者等関係者によるインサイダー取引規制及び情報伝達・取引推奨規制についてでございます。公開買付者等関係者によるインサイダー取引規制、下の図にございますとおり、左端の公開買付者等のところで、公開買付け等事実、公開買付けの実施・中止の決定、あるいは、議決権5%以上の買集め行為の実施・中止の決定といった公開買付け等事実が発生した際、所定の方法によりそれを知った公開買付者等関係者、図の真ん中に記載しております公開買付者等の役員等などが、あるいは公開買付者等関係者から公開買付け等事実の伝達を受けた、いわゆる第一次情報受領者という者が、公開買付け等事実の公表前に買付け・売付け等をしてはならないといった規制となっております。

上にございますが、公開買付者等関係者による情報伝達・取引推奨規制も平成25年に導入されており、公開買付者等関係者であって公開買付け等事実を所定の方法により知った者は、他人に対し、その事実の公表前に株券等の買付け等・売付け等をさせることにより、当該他人に利益を得させ、又は当該他人の損失の発生を回避させる目的をもって、当該公開買付け等事実の伝達・取引推奨をしてはならないといった規制でございます。

10ページを御覧ください。こちらは参考として、もう一つの会社関係者によるインサイダー取引規制及び情報伝達・取引推奨規制についてのものです。こちらは図にありますとおり、上場会社における重要事実、株式の募集ですとか業務提携等といったものが重要事実として規定されておりまして、それを知った会社関係者、上場会社の役員等、あるいは、それから伝達を受けた第一次情報受領者が規制対象として定められておりまして、それを先ほどの公開買付けと同様の立てつけで規制されております。

次のページを御覧ください。「公開買付者等関係者」の範囲でございます。公開買付者等の未公表の内部情報(公開買付け等事実)を知り得る特別の立場にある者が、「公開買付者等関係者」として、情報入手経路とともに規定されております。

具体的には、下の表にございますとおり、表の(1)から(4)までは、公開買付者等の役員等、会社帳簿閲覧請求権者、法令に基づく権限を有する者、契約締結者・交渉者といった公開買付者等の一定の関係者が定められております。

その下の(5)が、平成25年改正により追加されました公開買付けの対象となる発行者とその役員が規定されております。この発行者のほうに関しましては、表の上にありますような2から4のようなものは規定されておりません。また、平成25年の改正では、表の上に書いております投資証券(投資信託及び投資法人に関する法律に基づく投資法人の発行する証券)に係る公開買付者等の関係者も追加されております。

12ページを御覧ください。公開買付者等関係者によるインサイダー取引規制違反に対するエンフォースメントについては、下のとおりになっております。刑事罰及び課徴金がございますが、課徴金につきましては一定の算式で求めることになっており、実際に売った後に買い戻した実際の取引価格ですとか、買った後に売り抜けた実際の取引価格ではなく、下線部分のように、公開買付等事実の公表後2週間における最も低い価格ですとか最も高い価格といったものを用いて算出することになっております。

この公表後2週間における価格というのは、導入当初は公表日翌日の終値とされていたところ、平成20年の改正でこうした形に引き上げられたものでございます。

そのときの解説、下の文献にございますとおり、「インサイダー取引により違反者が実際に得た利得に対し、従来の算定方法による課徴金の額が少ない事例がみられた」ということです。「違反者は可能な限り多くの利得を得ることを目指して違反行為を行っていると考えられ、違反行為の抑止の観点からは、違反行為の実施時において違反者が一般的に期待し得る利得に相当する額を課徴金の額として賦課することが適当と考えられる」と。

そして、これまでの事例を見ますと、「重要事実公表後に伴う市場価格の上昇(下落)は、2週間程度でいったんは収束するもの」と考えられまして、当時、公表後2週間における価格を使ったと改正の趣旨が説明されております。

次のページを御覧ください。近年の公開買付けの動向についてです。下のグラフにありますとおり、近年の公開買付けの件数は増加傾向にあります。令和6年度におきましては計155件、そのうち他社株公開買付けは121件でございます。また、投資法人に対する公開買付けの事例も見られるようになっております。

14ページは、公開買付けに係る関係者についてです。公開買付者は、公開買付けの事実の公表前に、賛否確認等のため発行会社に接触する場合が多いと考えられます。また、公開買付けの事実を告げられた発行者は、証券会社・投資銀行といったFAや法律事務所等と契約を締結して対応を検討することが一般的ということです。

下の相関図にありますとおり、公開買付けの買付者側だけではなく、対象者となる発行者側においても関係者がいろいろ多く存在するといったところになっております。

次のページが、公開買付けに係る関係者への公開買付けの事実の広がりを関与者、情報内容、時間軸の観点から、TOB公表前までの情報の広がりといったものを表したものでございます。オレンジ色が濃くなればなるほど、情報を入手する可能性が高いということを示しています。赤枠で囲んでいる部分、公開買付けの対象者側、発行者側のFAですとか弁護士(法律事務所)といったところについても、情報が広がる可能性が高いということが見て分かると思います。

16ページです。諸外国におけるインサイダー取引規制の対象者の範囲でございます。米国、EUについては、記載のとおり対象者の範囲が定められていることになっております。

続きまして、課徴金制度についてでございます。

18ページを御覧ください。金融商品取引法における課徴金制度の概要についてです。金融商品取引法における課徴金制度は、金融・資本市場における違反行為を的確に抑止し、規制の実効性を確保する観点から、金銭的な負担を課す行政上の措置として、平成16年の改正で導入されております。

金商法の違反行為には刑事罰も規定されておりますが、謙抑性・補充性の原則により抑制的に運用されるということから、課徴金制度の導入により、刑事罰を科すに至らない程度の違反行為についても、金銭的な負担を課すことで規制の実効性を確保するといった趣旨でございます。課徴金の水準につきましては、規制の実効性を担保する必要最小限の水準として、違反行為により得た経済的利得相当額とされております。

調査から課徴金納付命令の流れは、図のとおりとなっております。監視委員会の勧告を受けまして、審判手続開始決定が行われ、審判官が審判手続を経て課徴金納付命令決定案を作成し、金融庁長官がそれに基づいて納付命令の決定を行うといった流れになっております。

19ページ目に、金融商品取引法における課徴金制度の沿革を整理しております。平成16年の証券取引法改正で課徴金制度を新設しております。その後、課徴金制度の対象の追加等もありましたが、平成20年における改正の2つ目の点、過去の違反実績に基づきまして課徴金の算定方法を変更する、経済的利得相当額の基準の枠内における課徴金の水準の実質的な引上げといった改正が行われ、また、その下にありますとおり、加算規定の導入、減算規定の導入なども行われております。

20ページ目を御覧ください。金融商品取引法における経済的利得相当額の考え方についてです。一番上は、導入時の金融審議会での報告でございます。「少なくとも違反行為による利得の吐き出しは必要であるが、違反行為が市場への信頼を傷つけるという社会的損失をもたらしていることをも考慮し、抑止のために十分な水準となるように検討すべきである」とされまして、平成16年の改正におきましては、真ん中にありますとおり、「課徴金制度は利得の吐き出しを目的とするものではなく、違反行為の抑止を図るものであること、予測可能性を考慮して、その金額については、対象行為ごとに一般的・抽象的に想定し得る経済的利得相当額を基準とした具体的な算出方法が規定されている。違反者が実際に利得を得たか否か、利得を得た場合の利得額の多寡にかかわらず、この算出法によって算出された金額が課徴金として課されることとなる」と解説されております。

一番下は、平成20年の改正時のワーキング・グループ報告の抜粋でございます。課徴金について、「違反行為が「やり得」とならないよう、利得相当額が課徴金の水準とされた。この点について、規制の実効性を一層確保する観点からは、利得に必ずしもとらわれる必要はないのではないか、といった指摘があった。一方で、課徴金が反社会性・反道徳性を問うものではない以上、利得から完全に離れるべきでないとの指摘」もなされているところです。

21ページを御覧ください。課徴金制度と二重処罰の禁止・比例原則との関係性でございます。従前、課徴金制度につきましては、憲法第39条、二重処罰の禁止との関係が議論されてきたところです。参考となる判例をそこに挙げさせていただいております。これは追徴税との関係の話でございますが、「追徴税のかような性質にかんがみれば、憲法三九条の規定は、刑罰たる罰金と追徴税とを併科することを禁止する趣旨を含むものではないと解するのが相当である」とされております。

この下にあります国会での内閣法制局の答弁でございますが、現行の課徴金制度というのは、「違反行為によって得られる経済的利得相当額を基準とする金銭的負担を課すことによりまして、違反行為がいわばやり得になるということを防ぐとともに、違反行為の防止という行政目的を達成するというもの」、「その趣旨、目的、手段などを前提といたしますと、憲法39条後段が規定する二重処罰の禁止との関係も問題にならない」との答弁がなされております。

次のページに、近年の学説についていくつか文献から引用させていただいております。こちらでも、二重処罰の問題ではなくて、全体として過剰な規制となっていないかどうか、比例原則との関係から問題がないかどうかといった傾向になっていると考えております。

23ページを御覧ください。金融商品取引法における課徴金の額の調整についてです。一番上の端数処理につきまして、課徴金の額が1万円未満の場合は、課徴金の納付を命ずることができないとされております。また、1万円未満の端数は切捨て処理がなされることとなっております。

その下、違反行為の繰返しによる加算、過去5年以内に命令を受けた場合は、課徴金の額を1.5倍にするということですとか、調査開始前の違反行為の申告による減算制度、一定の違反行為につきまして、調査開始前に申告した場合には、課徴金の額を0.5倍とするといった制度も導入されております。

これにつきましては、下の文献にありますとおり、「違反行為を繰り返した者は、1回目に課した課徴金の水準では当該違反者の抑止には不十分であると推認できること、それが違反行為であることを認識しつつ違反行為を行っているものと推認できること等を考慮すると、より強い抑止が必要と考えられる。」これが加算制度の趣旨でございます。

その下の「継続的・反復的に行われる可能性が高い違反行為については、早期に発見がなされることの公益性が強く、早期発見のインセンティブを与えることが必要と考える。」こちらが減算制度の趣旨となっております。

その下、必要的没収・追徴が行われた場合の課徴金額の調整もございます。それにつきましても、違反行為の抑止を目的とする課徴金制度の趣旨からは、没収が行われた場合にさらに課徴金を課す必要はないと考えたものでございます。

24ページを御覧ください。法令違反を行った者の氏名等の公表制度でございます。法令違反行為、金商法又は同法に基づく命令に違反する行為を行った者の氏名その他法令違反行為による被害の発生もしくは拡大を防止し、または取引の公正を確保するために必要な事項を一般に公表することが可能とされております。

これにつきましては、不公正取引に関する課徴金事案において、繰り返し違反行為を行う可能性が高いと考えられる者については、違反行為者に課徴金を課すことに加え、取引相手先となり得る証券会社や投資家等に対して注意喚起し、将来的な違反行為の未然予防等を図っていくことが重要であるとの趣旨から設けられたものでございます。

次は他法令における課徴金制度との比較でございます。金商法以外の他の法令、独占禁止法から導入順に5つ、他法令の課徴金制度を記載しております。

上から2つ目、算定基礎の行でございますが、いずれも算定基礎は経済的利得相当額といったものになっております。独占禁止法のみ、表の下に注がございますが、一部不当な取引制限については、経済的利得相当額(8%)に25%上乗せした10%を基本算定率として設定するというものがある点がございますが、それ以外は経済的利得相当額とされております。

また、一番下の減算制度でございますが、独占禁止法におきましては、調査開始前の事前の申告のみではなく、事後、調査開始後の違反行為の申告についての減算制度も設けられているところです。また、その減算率につきましても、申請順位や協力度合いに応じて減算率が変動する仕組みとされております。

26ページを御覧ください。諸外国における課徴金制度でございます。米国につきましては、不公正取引規制等に係る民事制裁金の上限は、違反行為の重大性により以下のような3段階で設定されております。ただし、民事手続の場合は、不当利得の額が上記金額を超える場合は、不当利得の額まで請求可能。また、インサイダー取引規制違反の民事制裁金の上限は、不当利得の3倍とされております。また、民事制裁金に加えて、違法な利益の吐き出しも同時に請求可能とされているところです。

その下の不公正取引規制に係る行政上の金銭的制裁について、EU各国は、その上限の下限値を少なくとも以下の額、不当利得の3倍などとする必要がある旨が規定されております。各国はこの上限を引き上げることも可能とされておりまして、英国も同様とのことでございます。

次は金融商品取引法における高速取引行為についてでございます。近年、アルゴリズムを用いて高速、高頻度かつ自動的に行う金融商品取引、いわゆるHFTでございますが、これは金融商品取引法上、高速取引行為として規制の対象とされております。

真ん中に高速取引行為の取引の傾向を記載してございます。マイクロ秒単位で競い合い、高速・高頻度に注文を繰り返して薄利の取引を大量に行う傾向にある。また、超短期的なリスクと向き合うため、ポジションの偏りを日中で解消し、翌日まで持ち越さないといった傾向が見られます。左のグラフにありますとおり、1銘柄1日当たりの利益額は、1万円未満が大半、約80%を占めているとの集計結果もございます。

調査権限等について御説明いたします。

29ページ目でございます。金融商品取引法における調査権限でございます。左側の行政調査をまた大きく4つに区分しておりますが、一番左端の開示検査・証券検査につきましては、現在、出頭命令の権限が規定されておりません。その右側、課徴金に関する調査、さらにその横、審問等に関する調査、緊急差止め命令の申立てなどに使われるものですが、こちらにつきましては、出頭命令が規定されております。さらに右側の外国金融商品取引規制当局に対する調査協力でございますが、こちらについても、現在、出頭命令の権限が規定されていないところでございます。

この外国調査協力に関連して、次のページのEMMoUの概要について御説明いたします。

まず、MMoUの概要についてです。金融庁は、IOSCOが策定した各国証券監督当局間の協議・協力及び情報交換に関する多国間覚書(MMoU)に署名しております。これまでも、このMMoUに基づく協力が実施されてきております。

そして、下のほうにありますEMMoUの概要でございます。IOSCOによるMMoUの策定以降、金融市場のグローバル化と相互関連性の進展等を踏まえ、MMoU署名当局同士の情報共有・協力を強化する必要性というのが明らかになった、そういった背景を踏まえまして、IOSCOでは、出頭強制の権限を追加するなど、既存のMMoUを強化したEMMoUを策定いたしまして、平成29年より署名申請の受付が開始されております。

このEMMoUの署名のための要件の一つとして、申請当局が出頭強制の権限を有している必要があるとされているところでございます。金融庁は、前のページで御説明したとおり、出頭強請の権限を有しておりませんので、現在、EMMoUの署名のための要件を満たしていない状況でございます。

31ページは犯則調査の対象となる犯則事件についてです。犯則事件は、金商法の罪のうち、有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等の公正を害するものとして政令で定めるものに係る事件と定義されております。

この犯則事件の対象となる罪は、政令において、下の表のとおり列挙されております。例えば、有価証券届出書の虚偽記載ですとか不公正取引規制違反などが規定されておりますが、現在、金融商品取引業の無登録業に係る罪は列挙されておりません。

32ページは金融商品取引業の無登録業に対するエンフォースメント等についてです。無登録業に対しましては、平成23年の改正におきまして、刑事罰を引き上げる、民事効規定を導入する、無登録業者が金融商品取引業を行う旨の表示をするといった行為を禁止するといった強化が行われております。

さらに、一番下は、緊急差止命令を活用してこうした無登録業者へ対応していくということも積極的に行われているところでございます。

最後のページが、御議論いただきたい事項でございます。それぞれ建議の1から3に対応するものでございまして、インサイダー取引規制における「公開買付者等関係者」の範囲の拡大について、公開買付者等の未公表の内部情報を知り得る特別の立場にある者を規定するという現行制度の考え方を踏まえ、どう考えるかというのが1点目でございます。

2点目、課徴金の適用範囲及び算定基準の見直しについて、対象行為ごとに一般的・抽象的に想定し得る経済的利得相当額を基準としつつ、一定の加算・減算を行うという現行制度の在り方を踏まえ、どう考えるかということでございます。

3点目は、効果的・効率的な検査・調査の実施のための課徴金の減算制度の拡大、出頭命令の権限の追加、無登録業を行う者に対する犯則調査権限の創設等についてどう考えるかと書かせていただいております。

最後に、その他、証券市場における不公正な取引の抑止力を高めていく観点から留意すべきことはあるか。以上4点を挙げさせていただいております。

資料の説明は以上です。

【神作座長】

御説明どうもありがとうございました。

それでは、これまでにいただきました御説明を踏まえて、委員の皆様に御討議をいただきたいと存じます。なお、本日は初回の会合でございますので、御説明いただいた内容以外も含め、幅広い観点から御意見を頂戴したいと存じます。また、御質問がございましたら、併せて御発言をいただきますようお願いいたします。

御発言を希望される方は、机上の名札を縦にしていただき、それを確認させていただいた後、私から御指名させていただきます。なお、御発言の順番に関しては前後する場合がございますので、あらかじめ御了承いただきますようお願いいたします。時間も限られておりますので、お一人当たり5分程度を目安に御発言をいただければと存じます。

それでは、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。それでは、坂委員、どうぞ。

【坂委員】

ありがとうございました。この間、新NISAの導入ですとか金融経済教育の取組等を背景に、新たに市場に参加する個人が増加しており、特に若年層の参加が増えています。こうした状況から、市場への信頼を確保し、高めることの重要性は高まっています。かかる観点から各論点について意見を述べたいと思います。

まず、「公開買付者等関係者」の範囲についてです。この間、公開買付けの動きが広がるとともに、公開買付けをめぐる関係者が拡大していることから、規制対象を実態に即して拡大するということが必要であり、資料4の14ページから15ページに登場する関係者及びその周辺関係者については、基本的にインサイダー取引規制の対象とする必要があると考えます。

また、過去10年間ほどの間に情報環境が劇的に変わって情報伝達・拡散が容易となっていること、米国やEUでは第二次以降の情報受領者についても規制対象としていることに鑑みますと、関係者からの情報であることを知らされつつ情報を得た第二次以降の情報受領者についても規制対象とすることを検討すべきと考えます。

次に、課徴金の適用範囲及び算定基準についてですが、現状に鑑みますと、課徴金制度を違法行為の抑止という目的により適した形に見直す必要性は高まっていると考えます。

まず、課徴金の適用範囲について、現下の実態に鑑みて、不公正取引により不正な利得を得ている者、あるいはそれに協力する者を的確に把握できているかは再検証されるべきです。今後とも、情報環境の変化によって不正な利得を得る者が広がる可能性があると考えられます。

次に、算定基準については、インサイダー取引が経済的利得を目的に行われること、また効率的に実態を把握し課徴金を課す観点から、行為類型ごとに一般的・抽象的に想定し得る経済的利得相当額を検討する枠組みは一応合理的と考えます。

ただし、その水準については再検討すべきです。インサイダー取引を行おうとする者が、仮にその行為が発覚しても、利得した額、ないし、それに多少の金額を加えた額の経済的負担を課されるだけでは、違法行為を抑止するハードルとしては低いと考えます。

実際のところ、インサイダー取引の課徴金勧告事案、刑事告発事案が増勢にあり、また、全体としても不公正取引は発生し続けていると見えます。また、現代では、国際的に規制や体制が甘い国や企業が狙われるリスクも勘案すべきと考えます。米国やEUにおいては、不当利得の3倍までの制裁金が課されているということも参照しつつ、課徴金の基準額の引上げを検討すべきです。

また、高速取引については、技術の進展の中で発生している新たな相場操縦類型なので、それに見合った形で課徴金の算定方法をアップデートすべきと考えます。

次に、効果的・効率的な検査・調査についてです。まず、調査開始前に違反報告を行いながらその後調査に協力しない違反者に50%の課徴金減額がされることは適切とは考え難いので、その後の調査協力へのインセンティブを確保できる制度とすべきと思います。

次に、この間、金融犯罪の国際化が顕著となってきており、国際的な連携の強化は極めて重要です。かかる観点からも、独禁法、公認会計士法、スマホソフトウエア競争促進法にならって、出頭命令の規定を整備すべきと考えます。

さらに、無登録で違法な行為を行う主体は、この間、資金を得て、より高度化していると見られます。監視委員会からの報告事案も、無登録で投資運用業を行う者が中心的な役割を果たしていると見られますが、無登録業者は様々な形で不公正取引に関与し得るものであり、その実態解明は今日重要な課題です。

また、こうした主体が摘発されにくいところを狙って違法行為を行う、あるいは、そうしたところを利用すべく新たな手口を開発するということも行われます。これらも念頭に、無登録業者への犯則調査権限は、実効的な調査が可能となるよう留意が必要です。

最後に、抑止力を高める観点から、3点簡単に申し上げたいと思います。

第1に、規制や体制の脆弱性に関する情報や手口に関する情報の共有・拡散がされやすい状況にあることに鑑みますと、不公正取引を早期に検知し、動きを止める視点も重要です。相場操縦では、効率的な検知と取引の迅速な停止措置、あるいは、アラートの発信等を規制とともに技術的な観点からも検討すべきではないかと思います。

第2に、できるだけ効率的に実態を把握し課徴金を課すことも重要で、この点において、制度的なところも含め、また、デジタル技術の活用も含めて、効率的な実態把握と分析の手法の開発をぜひお願いしたいと思います。

第3に、捜査機関等の関係機関や海外機関との連携や情報共有がより重要となってきております。この点についても、ぜひ多面的な取組をお願いしたいと考えます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、飯田委員、お願いいたします。

【飯田委員】

東京大学の飯田と申します。よろしくお願いします。「ご議論いただきたい事項」に沿ってコメントさせていただきます。

1点目ですけれども、資料には「特別の立場にある者を規定する」というフレーズが出てまいりますが、典型的には、いわゆる信認義務を負う取締役などがそのイメージの典型例ですけれども、少なくとも日本法においては、それに限定する必要はないのではないかと思います。

問題の本質ということについて考えれば、インサイダー情報を持っている者とそれを持っていない一般投資家との間の情報格差の問題なわけでありますから、そういう観点からしますと、第二次情報受領者以降の情報受領者も含めて、本来的には規制の対象になっていいのではないかという気すらするわけであります。そういう場合でも、もちろん、市場に対する投資家の信頼を害するおそれがあるということで、つながってくるからであります。

そういう観点、立場からいたしますと、建議1として本日お示しいただいた方向に賛成ということになります。ただ、根本的な規制の趣旨にも関わるような話が含まれていると思いますので、そこはもう少し考える必要あるかと思っております。

つまり、金商法の166条は内部情報、167条は外部情報、公開買付け等の情報ということで、情報の発生源がそもそも異なるわけであります。そのため、167条における公開買付けの対象会社というのは、これはもともと外部の情報を受領するという関係に構造的になるわけであります。これに対して公開買付者のほうは、自ら公開買付を行うという、情報を作り出す人たちの関係者が規制の対象になっているわけです。そのため、対象者と買付者との間で情報受領者等の規制の範囲に差があること、それ自体は本来的には条文の構造上正当であるということになるはずであります。

本日の御説明で、やや両者の間で平仄がそろっていないのではないかという御指摘もあったかと思いますが、そのこと自体は全くおっしゃるとおりであるものの、立法の方向性を考える上では、そのバランス論だけではやや不十分なのではないかと思いますので、本来的にはインサイダー取引規制の趣旨の在り方というやや中長期的な課題が背後にある問題であるという位置づけを常に意識しながら議論すべきではないかというのが1点目についてのコメントです。

2点目ですけれども、二重処罰と課徴金との合憲性ということに関しては、もう既に、利得吐き出しに限る必要はないということで、憲法的にといいますか、行政法的にといいますか、ほぼ決着がついた論点ではないかと思っております。そのため、適切な違法行為抑止といいますか、金商法違反の抑止に必要な範囲で適用範囲及び算定基準を広げて、また引き上げるという方向性が必要だと思います。

ただ、抑止として十分かについては、もちろん行政の措置だけではなくて、刑事責任ですとか民事責任、さらには自主規制等、様々エンフォースメント手段があるわけですから、それらとの連携、関係性といったことも視野に入れながら課徴金の在り方を再検討するということが重要だと思います。

それから、基準の引上げということに関して、インサイダー取引等の不公正取引についてです。ヨーロッパ等で3倍ですとかそういった基準が出ておりますが、これは発覚確率との関係で期待値を考える必要があり、インサイダー取引で得た利得相当額を払わせるだけでは「やり得」になってしまうので、発覚確率の逆数を掛け算するということで抑止するというのは、1つ合理的な考え方だと思います。

ただ、刑事処分もあるわけで、課徴金の一本足打法ではないので、そういったことも視野に考える必要があるかと思います。

それから、そもそも利得吐き出し、経済的利得相当額を基準とするという発想が基本的に取られて条文がつくられているという理解ですけれども、必ずしも金商法全体的にそうとも言えないのではないかという認識を持っております。

例えば、公開買付け規制違反の場合の25%というところなどは、公開買付けによらずに支配権、支配株式を取得するときに、実はプレミアムは払っているわけですので、利得を得ているとか吐き出すとか、そういった発想とそもそも結びつきがかなり弱いものも課徴金の中に含まれているというわけであります。

また、大量保有報告制度違反については10万分の1ということですけれども、変更報告の基準の1%と、その場合に市場の価格が0.1%動くのではないかというやや擬制的な、フィクション的な数字に現状なっていると思います。これは例えば、文字どおり、企業買収する前段階で株を買い集めている場合などは、課徴金を払ってでも大量保有違反してたくさん株を買い集めたほうが有利ということになりかねない状況になっておりますので、この辺りは大幅に見直す必要があるのではないかと思います。

これは公開買付け等の改正等のときにも議論になりましたけれども、課徴金以外にも、議決権の差止めですとか株式の売却命令等、課徴金にこだわらない新たな方法も含めて、柔軟に制度設計を考えていけば良いのではないかと思っております。

その関係で、建議2との関係について、基本的に賛成でございまして、高速取引行為について新たな考え方で制度をつくっていくべきだろうと思います。その場合、非常に小さい改正で終わらせるのであれば176条1項の計算の特則をつくるというだけになりますけれども、根本的に課徴金の基準の計算の仕方として、経済的利得相当額というのは一応の参考にはなるにせよ、そこからやや卒業した発想というのも重要ではないかと思います。例えば違反者に対しては、類型的に一定の金額と実際の利得額の大きいほうを課徴金の額にするなど、そういった新しい発想も考えながら、視野に入れながら、その辺りも考えていけば良いのではないかと思います。

3点目については、基本的に資料の方向性で拡充していくことに異存ございません。

4点目についてです。例えば緊急差止め命令等が最近はかなり活用され始めていると認識しておりますが、これのますますの活用というのももちろん重要ではないかと思います。そういった観点も含めて考えると、規制当局における人的・物的な資源の充実も重要だと思いますので、予算措置等も視野に入れながら、ますます市場の公正性の確保に向けた取組を期待したいと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、鈴木委員、どうぞ御発言ください。

【鈴木(健)委員】

どうもありがとうございます。適用範囲の拡大や課徴金の増額、権限の追加について、いずれも市場の公平性、信頼性の観点から、大きな方向性として賛同いたしております。その上で、私のほうから3点ほど申し上げたいと思います。

1点目は、インサイダー取引対象者の範囲についてです。公開買付者に関係する未公表の内部情報を知り得る特別の立場にある者の定義を拡充することにつきましては、抑止力の観点から賛同いたします。しかしながら、近年は取引方法の複雑化や情報伝達経路の多様化が進んでおり、今後も新たな関係者や新たな経路というのが生じることが容易に予想されます。その結果、現行法上の公開買付者等関係者や、第一次情報受領者に形式的に該当しない者が未公表情報にアクセスし、これを利用する事態も十分に想定されます。その場合、規制の網を潜脱し、制度の実効性が損なわれる懸念がございます。立証の困難性や取引の萎縮という懸念もございますが、立場の如何を問わず、未公表かつ重要な内部情報を取得した者を広く規制対象とする方向性を御検討いただくことが、いわゆる連鎖的伝達による不公正取引を防止し、制度の実効性を確保する上で望ましいものではないかと考えております。

2点目は、抑止力としての課徴金の在り方についてです。現行制度では、課徴金は得られた経済的利得に近い金額を基準として算定されております。しかしながら、抑止力としてそれで十分かどうかということには疑問が残ります。インサイダー取引を行う者は、実際に得られる利得のみならず、摘発される確率と摘発時に課されるペナルティーを踏まえた、いわゆる期待される利得を基準に意思決定しているものと考えられます。実際、米国の研究においても、摘発確率やペナルティーの重さによってインサイダーの取引量が変化するということが報告されております。仮に摘発確率が十分に高いのであれば、利得の没収だけでも十分な効果が見込めますが、現状では取引が根絶されておらず、市場参加者が摘発確率を十分に高いとは認識していないという可能性がございます。したがって、単に利得の没収にとどまらず、それを大きく上回る課徴金を課すことが必要なのではないかと考えます。

また、課徴金が経済的利得を大きく上回る水準であれば、検査・調査への協力に応じた減算制度についても、より柔軟かつ効果的に設計できるものではないかと考えられます。減算制度の課題は、協力すれば軽く済むというモラルハザードですが、もともと課徴金が利得を大きく上回る水準であれば、減算後もやり得にはならず、この問題を一定程度緩和できる可能性がございます。この意味において、経済的利得相当額を上回る課徴金の加算と減算制度の拡大は、併せて検討すべき課題ではないかと存じます。

3点目は、監視委員会の不正取引検知能力に対する市場参加者の認識についてです。規制や課徴金を強化しても違法取引を十分に検知できなければ実効性を欠き、言わば絵に描いた餅にとどまってしまいます。先ほど申し上げましたが、摘発確率が高い、十分な監視体制が整っている、そのように市場参加者が認識することは、抑止力の確保に直結いたします。

米国のSECでは、AIや機械学習を積極的に活用し、インサイダー取引や相場操縦の検知能力を大幅に高めていることが広く知られております。我が国におきましても、様々な取組が進められていると承知しておりますが、例えば、取引所や証券会社からの情報のみならず、SNSやインターネット上の情報も随時監視対象としていることや、AIによる監視体制の強化により、検知能力が飛躍的に向上していることなどを積極的に発信していくことで、潜在的な違反行為に対する牽制効果が高められるのではないかと考えられます。仮に現状において検知能力が不十分な点があるとすれば、抑止力を高めるためには、情報収集体制の一層の強化や、AIを含む検知技術強化のための予算、人員の充実が急務であると存じます。

私からは以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、野村委員、御発言ください。

【野村委員】

ありがとうございます。野村資本市場研究所の野村でございます。

全体観のような話で恐縮ですが、いわゆるエンフォースメントのアプローチという点では、日本の場合は、あらかじめ具体的な規制内容を定めて、規制する側、規制される側の両方にとって一定の予見可能性を持たせた上で、それを適用していくというアプローチだと理解しております。例えばアメリカの場合は、包括的に詐欺的行為を禁止するとして規制対応しており、日本の場合はとは少しアプローチが異なるという理解です。そういった意味では今回も、基本的には従前のアプローチを踏襲されていくものと理解しております。

既に御発言がありましたとおり、私もこの建議で挙げられた不公正取引につきましては、これらは何らかの対応が必要だろう、御指摘のとおりで、ロジカルである、説得力があると思います。他方、恐らく次回以降の議題となるかと思いますが、現時点ではhowの部分、どうやって抑止力を高めていくのか云々といったところが具体的にまだ見えておりませんので、どの程度の規制が適当かなどという意味でのコメントは全体的にまだ少し難しいかと思います。

一方で、資料4の34ページの「ご議論いただきたい事項」の1番目、TOBのインサイダー取引規制の対象範囲の拡大につきましては、恐らく買われる側の契約先云々も含めていくという方向性かと、これは推察十分できるところでございます。繰り返しになりますが、これ自体ロジカルな話だと思います。ここから先、具体的な範囲の決め方や運用といったことも含めて、関係者にとって明確であることがとても重要であろうかと考えております。

続いて、「ご議論いただきたい事項」の2点目についてです。これも例えば、他人名義の口座にある不公正取引をどう抑止するのかという点ですとか、HFTの不公正取引にどのように対応していくのかということについては、具体的な方法としてどういったものが俎上に載ってくるのかを知りたいと思います。

また、違反内容に基づいて、場合によっては細かいグラデーションが必要なケースもあろうかと思います。例えば、大量保有報告のところで、先ほど御説明いただいたとおり、確かに意図的な不提出などについては、課徴金の抑止力のために一定の引上げ等が必要だということはそのとおりだと思います。一方で、大量保有報告というのは様々な主体が提出するものと理解しておりまして、そうするとケアレスミスや軽微な訂正といったものも恐らくあると考えられます。その意味では、グラデーションという考え方も必要なのかと思います。課徴金の引上げその他につきまして、要は市場参加者にとってクリアであること、明確であること、そして予見可能であることは重要かと思います。

以上です。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、亀坂委員、お願いいたします。

【亀坂委員】

御説明ありがとうございました。資料4の34ページ目のご議論いただきたい事項に従ってコメントをさせていただきます。

まず、1つ目のインサイダー取引規制で、内部情報を知り得る特別の立場にある者を規定することに関してです。資料4の16ページ、特にEUの(2)を拝見すると、「上記以外の者であって内部情報を保有し、かつ、当該情報が内部情報であることを知るべき者」とあり、非常に広く定めています。日本ではそういった包括的な規制は難しいのかもしれませんが、いずれにしても今は大分まだ狭いので、インサイダー取引規制の範囲をもう少し広げる必要があるという、これだけは確実なのではないかと思いました。

2点目は課徴金に関することです。私は今はやりの、分野で言うと行動経済学や行動ファイナンスという分野が専門で、投資家行動の分析を大学院生時代からしてきました。行動経済学や行動ファイナンスでよく言われていることで、何かに違反したとしても罰則、ここでいうと課徴金などが軽いと、資料4では20ページ目、21ページ目で「やり得」という表現がされておりますが、罰金を払えば何をしてもいいのだというか、その程度の罰金で済むのであれば、罰金を払ってでも稼ごうというふうに思う人が多いかという印象です。要するに、資料4で26ページ目に諸外国の例を示していただいておりますが、この諸外国の例と比較しても、日本はやはり課徴金が低過ぎるのではないかという印象を持ちました。

行動経済学や行動ファイナンスの観点からも、あまり罰金が安いと、それを防止するどころか逆にやる人、違反する人が増えてしまうという論文も多くありますので、課徴金も引き上げられたほうがよいのではないかと思います。

3つ目は出頭命令で、こちらが特に気になるところです。資料4の30ページの一番下のところ、EMMoU署名のための要件として、申請当局が出頭強制の権限を有している必要があり、金融庁は当該権限を有していないため、署名のための要件を満たしていないとあります。これは国際的にかなりゆゆしき状況、致命的な問題ではないかと私は考えております。私は大学院生時代、1980年代のデータから日本のデータを分析しておりますが、その頃は世界の3大マーケットといえば日本の東京とニューヨークとロンドンとなっており、その頃から世界を代表するマーケットである東京がどんどん地盤沈下しています。地盤沈下をいかに食い止めようかということを、金融審議会だけではなくて、例えば財務省の関税・外国為替等審議会などでも議論させていただいてきましたが、今、EMMoUの署名ができないというのは、これは本当に何とかしなければいけないのではないかと感じております。

次は無登録業についてです。こちらも大変気になっております。先ほど坂委員からも、国際的に規制が緩いところが狙われやすいこと、犯罪が複雑・高度化していることなどを指摘されていました。私の身近なところでも、フェイスブックの偽アカウントとかをつくられて投資詐欺をするなど、自分がやったことではないにもかかわらず、ネット上でひどく批判を受けて、本当に鬱病になってしまった知り合いなどがいます。34ページの4つ目の点にも関係して、そういった無登録業に関する不正等に対して抑止力を高めるような政策をもう少し考えていただけるとよろしいかと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、後藤委員、どうぞ御発言ください。

【後藤委員】

御説明どうもありがとうございました。まず、全体として監視委員会から建議をいただいた点はいずれも重要な問題かと思いますので、基本的にその方向で進めていただくのがよいのではないかと思っております。幾つかの点に絞ってコメントをさせていただきます。

まず、課徴金のところですけれども、既に多くの委員から御指摘がありましたように、経済的利得相当額というものに必ずしもこだわる必要はないのではないかと思います。課徴金制度が違法行為を抑止するための制度であれば、その摘発の確率というものを勘案して、利得よりも大きな額を取ることにしないと抑止が果たせないわけですから、経済的利得相当額に限られているということに、私はこの制度が導入された最初の頃から疑問を大きく持っていました。導入当時の憲法上の議論などもあってそういう形を取ったのだろうと思いますが、そこが憲法や刑法の議論でクリアされた今、そこにこだわる必要はないのではないかと思っております。

御紹介いただいた過去の議論の中で出てきた言葉としては、例えば比例原則ですとか、また、反社会性・反道徳性という言葉があります。課徴金は反社会性・反道徳性への非難をしているわけではないという整理になっておりまして、それはそのとおりだとしても、その場合には経済的利得相当額でなければいけないという理由はどこにもないように思われますので、あくまで抑止のために必要なのであれば引き上げていくべきと考えられます。また、比例原則というのは、私の理解では、行政法上の手段として、ある目的を達成するために、重過ぎる手段を使ってはいけないと、より軽い手段で目的が達成できるのであれば軽いほうを選ぶべきだということかと思っております。今、抑止という目的が達成されていないわけですから、比例原則からしても、もっと引き上げるべきということになるのではないかと思っております。

とはいえ、利得というのは出発点に置く金額としては便利でしょうから、それを参照点とすることは問題ないかと思います。例えば、アメリカのように、利得の3倍ということにすることが考えられますが、アメリカはたしか上限という形になっていたかと思います。先ほど大量保有報告書の違反についてどなたかから御指摘があったところですが、ケアレスミスで違反してしまった場合や、また、しばらく前にうっかりインサイダーという言葉もあったかと思いますがそのような場合など、全ての違反について一律に3倍を取っていくのか、それとも事案の内容を考えて、加算・減算とは少し別の枠組みかと思いますが、当局が裁量的に課徴金額を判断するのかどうか。裁量性というのは恐らく、この制度の位置づけにとってなかなか大きな問題かもしれませんので、そこをどうするかということを考える必要はあるかと思いますが、その点もやはり抑止のために必要なのであれば、乗り越えていくべきハードルではないかと思っております。

また、理屈の上ではそうだとしても、独禁法やその他の課徴金制度を見ると、日本法全体の中で利得相当額が基準になっているのだということはあるのかもしれません。ただし、同じフォーラムで同時に改正の議論を進められない以上、どこかが先陣を切らなければいけないことかと思いますので、お互い様子見をし合っていて一向に進まないということだけは避けていただく必要があろうかと思っております。

次に、監視委員会の権限の話についてですが、出頭権限の追加は、これが国際協力の上で重要なのであればぜひ進めていただくべきかと思います。なぜ入ってないのだろうと思って29ページの表を見させていただくと、既に入っているところもあるわけですので、制度の立てつけ上、入れてはいけないということは全くないかと思いますので、これはすぐにでも対応すべきものと思っております。

最後に、無登録業者に対して犯則調査権限を広げるべきではないかという点について、これもぜひそうしていただければと思いますが、ほかにも犯則調査権限の対象となっていないものがあるのかどうか。問題が起きてから、監視委員会は権限に入ってないから動けないので金融審の開催を待たなければいけないというのでは、十分に市場の公正性を確保することができないかもしれません。監視委員会の限られたリソースをどのように使っていくべきかという問題はあるかと思いますが、犯則調査権限を予防的に広げておいて、機動的に対応するようにしておくということもよいのではないかと思っております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、松岡委員、御発言ください。

【松岡委員】

松岡と申します。御発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。少し皆様と観点が異なるかもしれませんが、私からは、主に発行体企業の観点からの発言をさせていただきたいと存じます。

昨今、世界に開かれた市場という観点で、主に発行体企業に対して、様々な改革や規制の強化というのがなされてきたと思います。その基盤となるのは、やはり市場の信頼性、公平性、そしてそれを担保するための仕組み及びエンフォースメントが十分に機能しているということが重要かつ基盤であると考えます。その中で、公開買付けについて、御指摘がございましたように、事例、また参加者、そして関係者も増加、拡大していると思いますが、その中で特にクロスボーダーの活動の違反行為については、十分なエンフォースメントがなされることをぜひ望みたいと思っております。日本市場がほかの市場と比べて、一部の利得者にとって魅力的な狩り場となることは、何としても避けなければいけないと考えます。

とりわけ、先ほど来話題にもなっております大量報告書の不提出について、課徴金の効力の問題を含めて、実効性が十分に担保される制度設計を望んでおります。

いずれにいたしましても、発行体企業の立場からいたしますと、先ほどもございましたが、ルールがクリアカットであること、そして、それと同時に迅速かつ有効なエンフォースメントがなされること、この2つが非常に重要かと存じますので、ぜひとも今後ともそういったことを目指して、皆様で議論を進められればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、武田委員、御発言ください。

【武田委員】

武田でございます。本日は、証券取引等監視委員会の皆様及び事務局の皆様から丁寧な御説明をいただき、ありがとうございます。

全体の方向性としては、賛同いたします。冒頭に御記載いただいておりますとおり、幅広い投資家が市場に参入する中、誰もが安心し、また、市場に対する公平で透明な市場であり、信頼感を持った上で参加できる環境にしていくことは非常に重要と思います。

全体の方向性としては賛成ですが、確認させていただきたい事項が1点と、意見を簡潔に4点述べさせていただきます。

まず、本日、証券取引等監視委員会の皆様にプレゼンいただいたこともありますので御質問させていただきますが、建議の1から3はいずれも必要で、特に悪質な取引を念頭に、規制や課徴金、効果的な調査を行う方向性と認識しました。お伺いしたい点は、建議の2のグラフで書いてありますとおり、他人名義の口座がそれなりの割合あることは、明らかに悪質と思います。自己名義の口座を活用した不正取引の中で、峻別難しいのだと思いますが、悪質、悪意を持って行ったものはどの程度でしょうか。先ほどからお話が出ていますとおり、ケアレスミスや、そもそもの認識不足が理由など、何か把握していらっしゃることがあれば、後ほど教えていただきたいと思います。

意見といたしまして、1点目はインサイダー取引規制に関する公開買付者等関係者の範囲の拡大を実態に即して見直すことは極めて重要と思います。ただ難しいのは、この範囲の定め方や、見える化、周知化、いずれも今後の議論と思いますが、その点について次回以降、伺いたいと思います。

2点目は、課徴金の憲法の二重処罰との関係については、法律の専門家の御意見は改めて確認させていただきたいと思いますが、そもそもこの課徴金の行政目的に照らせば、抑止のために十分な水準であることは大前提と思いますので、それが満たされていないということであれば、早急に見直す必要があると思います。その際には、十分な抑止が働く水準について、何らかエビデンスを持って定められるかが課題となります。今回設定し直しても結果的に十分な抑止にならないことを避ける意味でも、その点をしっかり検討する必要があると思います。

3点目、金融商品取引の複雑化、高速化、国際化への対応はスピード、迅速な対応が必要と思います。出頭の強制の権限がなければいけないことについては、29か国も既に入っていることもありますので、迅速な対応が必要と思います。そのほか金融庁と、監督される側の体制面はどうか。かなり技術的に進化している中、監督の手法自体も、技術を使って見直すべき余地はないのかどうか、その点も確認が必要と思います。

4点目は、先ほど御質問したことにも関係しますが、幅広く多様な方々が投資家として市場に参加する中で、悪意を持っている方については、先ほどの建議の1から3でしっかり対応するとして、難しいのはそれがインサイダー取引に当たるという認識なく、SNS等で拡散された情報に接しやすくなった結果としてやってしまうという行為に、本日の様々な対策では対応できないことです。ミスももちろんあるでしょうし、きちんとした理解がない中で行うこともあるのかもしれませんが、どのようにして投資家を守るのかという観点は必要ではないかと思います。予見性や透明性もそうですが、十分に周知されることについても、併せて考えていく必要があると感じました。

長くなりまして申し訳ございません。以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

1点御質問があったかと思います。証券取引等監視委員会に対しまして、自己名義口座での不公正取引の内容と申しますか内実について、お答えいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【水谷証券取引等監視委員会事務局総務課長】

御質問ありがとうございます。自己名義口座につきましても、うっかりというのはなく、基本的には悪意を持ってやっているということでございます。ただ、他人名義のほうが隠蔽目的であるとか、より悪質なことが多いという意味でございます。

【武田委員】

御回答いただきありがとうございました。承知いたしました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、齊藤委員、どうぞ御発言ください。

【齊藤委員】

齊藤でございます。御発言の機会をいただきましてありがとうございます。いただいたテーマの順に、簡単に意見を申し述べさせていただきます。

まず、インサイダー取引規制の適用範囲の拡張についてですが、特に近時の実務の発展によりまして、対象会社において組織的にTOBに対応することが一般化してきており、そのような場合に起用されるFAやリーガルアドバイザーは、発行会社の役員等と同等の情報に接する可能性があり、発行会社の末端の従業員などに比べればはるかに詳しい情報を手にできる立場にあろうと思いますので、これらの者について、現在の規制の考え方を大きく変えなくても入ることに理屈が立ち、また入れていく必要があるのではないかと思います。

次に、課徴金の適用につきまして、二重処罰に該当しないということではございますが、二重処罰に該当しなければ幾らでも課してもいいということではなくて、比例原則に従ってということになると思います。その際には課徴金だけを見るのではなく、対象者に科される制裁全体を横断的に見ていくべきであろうかと思います。抑止機能という観点で、課徴金にのみ目を向け、しかも一罰百戒的に引き上げていくと、個々のケースでは比例原則に反する過剰な結果を招くおそれもございます。行為類型ごとに引き上げるべきなのか、それから適切な範囲に収まっているのかどうかというのを、他のエンフォースメント手段の有無や、その運用状況などにも目を配り、バランスにも配慮しながら考えていくべきではないかと思います。

課徴金の額についても、利得額をまずは基準にし、それにプラスアルファの抑止効を加味するのか、そのような発想をそもそも排除するかということも、対象となる行為が利得に直結するような不正かそうでない不正かによって異なってくるのではないかと思います。

インサイダー取引につきましては、なかなか適時に摘発する、あるいは事前に防止することが難しい領域ではあり、利得を得る行為であることから、課徴金の引上げが有効かもしれないと思います。これに対して、例えば、発行会社の開示義務違反につきましては、このような不正は個人の単純な動機に基づくというよりも組織的に行われることが多いですし、既に複数のエンフォースメントが機能し得るような状況にございますので、引き上げが必要なのか、引き上げによりさらに開示義務違反が大きく予防されうるのか慎重に検討するべきであろうと思います。企業に課される課徴金は、その後、代表訴訟等を通じて役員等に転嫁されるおそれが非常に高く、この問題が解決されない限りは、引上げが、その面においても歪んだ過剰規制を招くおそれもございますことから、そのようなことも考えて検討していくべきではないかと思います。

他方で、大量保有報告書規制につきましては、飯田委員からもお話がございましたが、議決権停止や売却命令などの制度の活用をぜひとも検討していただきたいと思っております。特に議決権停止につきましては、会社法改正の議論状況をみながらということになろうと思いますが、いずれにしてもどこかで法制化を検討してよいのではないかと思います。

次に、高速取引につきましては、技術には不案内なので、抽象的、一般的なことしか申し上げられないのですけれども、コンピューター技術の発展に規制が追いついていかなければいけないのは当然といたしまして、規制側の技術の導入が進めば、とても小さな取引にもしっかり目を配って、情報収集、集計、そして課徴金を執行していくということができるようになるかと思いますので、今のような大きな額を切捨てる規律の必要性も乏しくなっていくのではないかと思います。また、1万円未満を切り捨てる基準があれば、1万円未満の取引を目指して不正を行う動機づけを提供することは容易に予想されうるところでもございますので、執行のコストが低くなっていくのであれば、そういった例外を廃止していくということも考えられるのではないかと思います。

次に、検査権限の拡張でございます。私はドイツの事情を調査する機会がこれまでにありましたが、同様の分野におきまして、ドイツの監督当局であるBaFinには、資本市場規制違反につき、広く調査権限が与えられており、書類の徴求の権限が認められている場面では、併せて、誰でも召喚し、尋問する権限があるということが法律で明記されております。ドイツの資本市場規制は、証券取引法、企業買収法と幾つかに分かれているのですが、各所に同様の規律が置かれており、人の召喚だけ特に区別するということはされてはいません。ただし、人の召喚や尋問については、しかるべき手続保障などにも配慮するべきではないかと思っております。

次に、無登録業者への規律につきましては、無登録であるがゆえに目が行き届きにくいので、様々なエンフォースメントを考えていくべきではないかと思います。民事的なエンフォースメントは、当局の目が行き届かない領域において被害者に声を上げさせることを通じて、被害を可視化するという機能があります。未公開株取引による詐欺が問題となった時期に、取引自体を無効にする規律がおかれましたが、公序良俗によらず、取引の効力を直接否定する条文を置くのは珍しいことであるように思います。取引の効力を否定することは、取引の相手方が損を被ったときに初めて機能するので、取引に介在する関係者がもうけている状況においては、これによりあぶり出される問題行為はほんの一部に留まり、また財産を取り戻すことができなければ、被害者への救済としても機能しないということになろうと思います。したがって、監督当局による調査・指導を充実させ、民事的な事後的な救済と公的機関による予防の両輪で規制目的を達成していくべき領域ではないかと思っております。

最後に、一般的に不公正な取引を防止していくためにどのようなことが考えられるかでが、既に申し上げたことと重複する部分もあるのですが、例えばドイツにおきましても、当局の包括的で強力な権限が法律で明記される一方で、民事的な制裁も活用されています。特に当局の監視が及びにくい、あるいは事後に判明することが多い行為、特にそれによって誰か経済的に不利益を被る者がいるような場合においては、民事の制裁、例えば損害賠償、あるいは議決権停止などが活用されるという形です。これはエンフォースメントという観点から有効な側面があるだけではなく、当局に過度な負担を課さない1つの工夫でもございまして、そのような観点からも、問題となる行為ごとに有効なエンフォースメントの組合せを検討していくことが望ましいのではないかと思います。

ただ、ドイツの例を出しましたけれども、諸外国を参照するに際して気をつけなければいけないのは、複数の国を見て、あっちではこれがあり、こっちではこれがありというので、目につく規制をつまみ食い的に組み合わせて導入してしまうことは望ましくないということです。民事的制裁に期待している国もあれば、公的な監督がうまく機能すると考えられている国もあれば、市場の自主規律に依拠している国もございますので、諸外国の例を見るときにはそういった点にも配慮して、我が国の事情も顧みて、我が国に最も望ましい組合せを考える必要があろうと思います。

また、人的・物的資源の確保という御指摘が既にございましたが、たびたびドイツの例を出して恐縮ですけれども、BaFinも、日本の金融庁、証券取引等監視委員会と同じような課題に直面しています。金融の分野は優秀な人材の獲得競争が最も激しい分野の一つですから、そのような優秀な人材の獲得のために待遇を改善しなければいけないということが、金融関連法制の立法の理由書にも明記された上で待遇の改善が図られてきたくらいです。我が国も置かれている状況は全く同じかと思いますので、優秀な人材の獲得、あるいは引き止めのために、待遇の改善に向けた予算獲得ということも考えていくべきではないかと思いますし、また、外国の監視当局との間の人材交流なども活発にして、諸外国とのノウハウや問題意識の共有を図っていくことも、長期的には有効な方策ではないかと考えております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

ここで、オンラインで御参加の萬澤委員から御発言の希望をいただいております。萬澤委員、どうぞ御発言ください。

【萬澤委員】

ありがとうございます。筑波大学の萬澤と申します。私のほうからは、3点申し上げたいと思います。

まず、公開買付者等関係者の範囲の拡大です。御説明いただいたとおり、これまで我が国のインサイダー取引規制は、会社関係者と公開買付者等関係者と、これらから情報を伝達された第一次情報受領者を規制対象にして、第二次情報受領者は対象外としてきました。それでも金融商品取引法166条1項4号、5号、167条1項4号、6号を使って、または166条3項前段、後段、167条も3項前段、後段等を使うことで、一定程度広く適切な形で規制を及ぼすことができてきたように思います。

例えば、平成16年の大日本土木工業事件だったと思いますが、インサイダー取引をしたとされる者に重要事実が伝わるまで3人が介在していた事案でしたけれども、166条1項4号、5号、166条3項前段、後段を適用することで、当該取引者を第二次情報事業者とは解釈せずにインサイダー取引責任を課していたと思います。そういった事案もあったと思います。

ただ、今回、現行法では規制を及ぼせない事例、すなわち、我が国のインサイダー取引の規制対象とされてきた未公表の内部情報を知り得る特別の立場にある者であると合理的に解釈されるにもかかわらず、現行法の規制、先ほど述べたような条文等を使っても規制を及ぼすことができない可能性のある事例が生じたのであれば、それらに対しても規制を及ぼせるように、範囲を拡大することに賛成いたします。具体的には資料4の15ページにお示しいただいた図のように、公開買付けの対象者側でも、それとつながりのあるFAや弁護士、印刷会社といったところに類型的に公開買付け等事実が知られることになるのであれば、公開買付者同様、公開買付けの対象者と特別な関係があって、未公開の公開買付け等事実を知り得る特別な立場にある者として、類型的に規制対象にすることはぜひ検討するべきだと思います。これが1点目です。

続きまして、第二次情報受領者への規制を及ぼすという点ですけれども、私は第二次情報受領者が規制対象から外されていることには、一定の合理性もあると思っております。ですので、それを規制対象にするかどうかについて検討することに反対するものではありませんが、慎重な検討が必要になると思います。実際、先ほど御説明いただいた通り、アメリカでは第二次情報受領者は確かに規制対象となりますが、それは第二次情報受領者が内部情報を使って取引することが市場に対して不公正であるからという抽象的な理由ではなく、16ページで御説明くださったとおり、信任義務理論または不正流用理論の要件を満たしたからという理由であることには注意が必要だと思います。これが2点目です。

3点目で、課徴金の適用範囲と算定基準の見直しのところです。課徴金について、当初の趣旨とは異なったように実際運用されてしまっているならば(これは先ほど御説明のあった高速取引の課徴金の算定や減算制度のことを念頭に置いておりますけれども)、趣旨にのっとって運用できるように改められるべきだと思います。

これに対して、不公正取引規制の違反全般についての課徴金額を、抑止力が不十分であるとしてその引上げをしようとすることには、個別的に慎重に十分に検討する必要があるように思います。

資料4の26ページで、諸外国における課徴金の制度という御説明をいただき、米国の不公正取引規制違反の民事制裁金の額も御紹介いただいておりますところ、確かに米国では多額な金額、利得相当額の3倍まで課せられるようになっておりますが、ただ、民事制裁金は、SECが裁判所に請求のための訴訟を提起して裁判所によって認められるもので、SEC自身がかせるものではないという点で、課徴金制度とは単純に比較はできないように思っております。

私からは以上となります。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

本日、御参加いただいております全ての委員の方から御発言をいただきました。大変ありがとうございました。まだ少々時間がございますので、もしほかの委員の方の御発言をお聞きになって、追加の発言等がございましたら、どうか御遠慮なく御発言いただければと思います。いかがでしょうか。

それでは、飯田委員、どうぞ。

【飯田委員】

1点だけ。大量保有等の軽微なものについても虚偽記載の対象になるのかというような御発言もあったかと思いますが、大量保有に限りませんが、有価証券届出書やその他全般にそうですが、「重要な事項について虚偽の記載がある場合」ということになりますから、重要性のない情報について何か誤記があったというような程度であれば、およそ課徴金の対象にそもそもならないものなのではないかと思いましたというコメントです。

以上です。

【神作座長】

ありがとうございます。ほかに御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、よろしければ、オブザーバーの方から、御希望がございましたら御発言をいただきたいと思います。オンラインで御参加されているオブザーバーの方におかれましては、オンライン会議システムのチャット場にて全員宛てに御発言を希望する旨を御入力いただければと存じます。いかがでしょうか。

それでは、日本取引所グループの市本さん、どうぞ。

【日本取引所グループ】

日本取引所自主規制法人の市本と申します。御指名いただきありがとうございます。

日本取引所自主規制法人といいますのは、御承知の方も多いかと思いますけれども、東京証券取引所ですとか、大阪取引所における売買の公正性確保のための売買審査ですとか、あるいは上場会社の適格性の審査、新規上場の審査など、こういった自主規制業務を行うために金商法に定める自主規制法人として、日本取引所グループの傘下に設立されているものでございます。

今回、事務局が御提起されました、我が国市場の公正性、透明性のさらなる確保に向けた不公正取引規制の強化について検討を行われるということにつきましては、自主規制機関の立場からも、誠に時宜にかなった御提案であると考えてございます。

具体的な議論は次回以降と認識をしておりますが、監視委員会の資料にございました建議の1つ目の、インサイダー取引規制における公開買付者等関係者の範囲等の拡大ですとか、あるいは建議2の課徴金の適用範囲、算定基準の見直しの議論というのは、私どもの売買審査の業務とも非常に密接に関係しております。市場ですとか売買審査の現場、実務に近い立場から、オブザーバーとして御協力できればと思っております。

また、不公正取引の抑止力の強化という話がございましたが、不公正取引への罰則強化に加えまして、未然防止のための取組も重要であると認識しております。私ども自主規制法人では、上場会社ですとか証券会社におけるコンプライアンス活動の支援を目的としたチームを設けまして、これをCOMLECと称しておりますが、出張による講義やオンラインプログラムの提供などを通じて、法令遵守の重要性について啓発をする活動を続けております。私どもとしては、市場への信頼性、公正性、透明性の確保、向上を図り、資産運用立国の流れを着実なものとするため、引き続き、金融庁や監視委員会などと連携して、我が国市場の健全な発展に向けて貢献してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

ほかにオブザーバーの方で、御発言を希望される方いらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、ほかに御発言がないようでしたらば、本日の第1回目の市場制度ワーキング・グループはこれにて終了したいと存じます。活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。

建議の方向性についてはおおむね御賛同いただいたと存じますけれども、具体的な制度設計に当たっての注意事項や考慮すべき点などについて、本日は幅広い観点から御意見を賜わりました。本日いただきました御説明及び御意見を踏まえて、これからさらに議論を深めてまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。

また、次回のワーキング・グループの日程につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内をさせていただきます。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。御多用のところ、誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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