金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第1回)議事録

  • 1.日時:

    令和3年10月13日(水)15時00分~17時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第1回)

 

令和3年10月13日
  
【神作座長】

それでは、ただいまより、資金決済ワーキング・グループの第1回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参加頂き、誠にありがとうございます。

座長を務めさせて頂く東京大学の神作と申します。何とぞよろしくお願いいたします。

本日は初回の会合ですので、会議の運営と議事の公開、議事録の取扱いについてお諮りいたします。会議は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、今後も必要に応じて、本日のようにオンライン開催としたいと考えております。

議事の公開につきましては、オンライン開催ではなく、メンバーにお集まり頂く場合には、通常どおり、メディア関係者の皆様や一般の傍聴をありとし、本日のようにオンライン開催の場合には、一般の傍聴はなしとした上で、メディア関係者の皆様には金融庁内の別室において、傍聴頂くこととしたいと考えております。また、いずれの場合にも、議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させて頂きたいと考えております。以上について、皆様よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)
【神作座長】

どうもありがとうございます。

それでは、後ほど事務局からも説明がある予定ですけれども、本ワーキング・グループは資料1にありますとおり、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する国際的な要請やデジタル化の進展等を踏まえ、安定的かつ効率的な資金決済に関する制度の在り方について検討を行うことという大臣からの諮問を受けて設置されたものでございます。皆様から御意見を頂きつつ、幅広い観点から議論を進めてまいりたいと考えております。何とぞよろしくお願いいたします。

それでは、次に、事務局よりメンバーの皆様の御紹介をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

信用制度参事官の端本でございます。よろしくお願いいたします。

メンバーの皆様を御紹介します。資料2のメンバー等名簿順に、

井上聡様、

翁百合様、

加藤貴仁様、

河野康子様、

後藤元様、

坂勇一郎様、

末冨純子様、

巽智彦様、

西川嘉彦様、

松井智予様、

森下哲朗様です。

また、本日は御欠席ですが、石井夏生利様にもメンバーをお引き受け頂いております。

オブザーバーの皆様につきましては、メンバー等名簿をもって御紹介に代えさせて頂きます。

よろしくお願いいたします。

【神作座長】

どうもありがとうございます。

それでは、議事に移ります。本日は、議事事務局よりワーキング・グループの設置の趣旨や現行規制などについて説明を聴取し、次に、オブザーバーとして御出席頂いております、全国銀行協会の伊藤企画委員長より、全国銀行協会様のほうで取り組んでおられるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策業務の共同化に関する検討状況について、御発表頂きたいと存じます。その後、オブザーバーとして御参加頂いております、全国地方銀行協会会長行である静岡銀行のコンプライアンスリスク統括部、滝執行役員部長様、また、第二地方銀行の日當一般委員長様より、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策業務に関する現状の課題認識及びその共同化への期待について御説明頂いた上で、全体について、まとめてメンバーの皆様より、御意見や御質問を頂きたいと、このような流れで進めさせて頂きます。

なお、討議に当たりましては、資料4の本日討議頂きたい事項を適宜御参照頂きつつ、本日は初回の会合でございますので、諮問事項や本ワーキング・グループの検討課題をめぐって、幅広い観点から御意見を頂戴したいと存じます。

それでは、初めに事務局より説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料3に沿って御説明させて頂きます。

まず、目次ですが、検討の背景、それから銀行等におけるAML/CFTの現状等という二本立てで御説明させて頂きます。

次に、検討の背景ですけれども、FATF第4次対日相互審査の結果ということでございます。日本はマネロン・テロ資金供与対策の成果が上がっているとして、重点フォローアップ国とされております。その上で、主な金融関連の評価項目であります金融機関等の監督、それから金融機関等によるマネロン・テロ資金供与対策についてはモデレート、4つの評価の中の上から3つ目と評価されております。日本の対策を一層向上させるため、金融機関等の監督等に優先的に取り組むべきということとされております。

次のページに進んで頂いてよろしいでしょうか。FATFの対日相互審査の公表も受けまして、政府といたしまして、今後3年間の行動計画を策定いたしております。この資料は、そのうち金融関連の項目ということになりますけれども、赤で囲ってあります、(3)、(4)の部分がここでの御議論と関係しようかと思います。取引モニタリングの共同システムの実用化、取引スクリーニング、取引モニタリングの共同システムの実用化を図るということで、期限は2024年春ということとなっております。

次のページに進んで頂けますでしょうか。関連する閣議決定ですけれども、経済財政運営と改革の基本方針、上の部分ですけれども、青でカラーしてあるところでございます。共同システムの実用化の検討実施を含め、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の強化に取り組むということを決定しているところであります。

続きまして、6ページにいって頂けますでしょうか。デジタル・分散型金融への対応の在り方等に関する研究会ということで、社会経済全体のデジタル化が進む中で、金融のデジタル化も加速しております。こうした中で、民間のイノベーションを促進しつつ、あわせて利用者保護などを適切に確保する観点から送金手段等のデジタル化への対応の在り方等検討して頂いているところであります。この表の中で、まさに一番左側、送金デジタルマネーの検討に関連する法的な論点等ございましたら、このワーキング・グループで合わせて検討して頂くということも考えられるのではないかと考えております。

続きまして、銀行等におけるAML/CFTの現状等ということで、8ページは法令上の義務をまとめさせて頂いております。銀行等は為替取引等に関しまして、犯罪による収益の移転防止に関する法律、外国為替及び外国貿易法等に基づきまして、各種の義務が課されております。左側の上から見て頂きますと、まず、犯収法に基づく取引時確認、本人確認等を行わなければならない。それから確認記録の作成、保存、取引記録等の作成、保存を7年間ということでございます。それから過去の取引対応等に照らしまして、犯罪収益に関連する疑いがあるという場合には、疑わしい取引の届出を行わなければならないとなっております。

それから、外為法、国際テロリスト財産凍結法で、経済制裁対象者等との間での為替取引、または、その他の取引を行ってはならないという義務がかかっております。

以上のような法令の義務を適切に履行するために銀行法等の各業法に基づきまして、体制整備義務というのが課せられているということでございます。

その下の取引フィルタリング、取引モニタリングの定義でございますけれども、まず、取引フィルタリングでございますけれども、2行目あたりで経済制裁対象者等による取引を未然に防止するということで、リストの照合等を行って、こうした取引を行わない取引フィルタリングと定義しております。取引モニタリングにつきましては、過去の取引パターン等々を比較いたしまして、異常な取引等があれば疑わしい取引の届出を行うと。そのためのモニタリングということで用語を定義させて頂いております。

続きまして、9ページでございます。取引フィルタリング、取引モニタリング等に関するFATFの審査の結果の詳細でございます。上の囲みのところでございますけれども、まず、取引フィルタリングシステムにつきましては、ほとんどの金融機関で導入されているが、効果は限定的だとされております。制裁対象者リスト等が頻繁にアップデートされて、なかなかそれに追いついていくのに課題がある、そういった問題点もあろうかと思います。

その下ですけれども、取引モニタリングシステムにつきましては、まず、①のところです。適切なシステムを導入している金融機関は非常に限られているというのが1点目。それから②といたしまして、導入している金融機関でも誤検知等が多いのではないかという指摘。それから③でございます。業界団体の中にあるシステム共同化の動きは、こうした義務の履行状況を改善するために役立つツールとなり得るという指摘がされているということでございます。

その下の青字で書いているところの抜粋ですが、詳細にわたりますので、一番上のところだけ御紹介させて頂きますと、GSIB等の大規模銀行を含む一定数の金融機関等はマネロン・テロ資金供与リスクについて適切な理解をしていると。その他の金融機関については、理解がまだ限定的であるという総括的な評価がされているということでございます。

続きまして、最後、10ページでございます。為替取引におけるマネロン等のリスクということで、国家公安委員会公表資料から情報を紹介させて頂きたいと思います。左側から見て頂きますと、内国為替取引、それから外国為替等を悪用される者の約5割を占めているということでございます。背景事情等につきましては、以上でございます。

続きまして、資料4に沿いまして、本日、討議頂きたい事項について簡単に御紹介させて頂きたいと思います。

まず、1ポツといたしまして、銀行等におけるAML/CFTの効率的かつ効果的な実施に向けた対応ということでございますが、2つ目のパラグラフでございます。銀行等におけるAML/CFTにつきましては、各銀行等において、継続的な顧客管理を適切に行っていくこととあわせて、中核的な業務である取引フィルタリング、取引モニタリングに関して、システムを用いた高度化が喫緊の課題となっていると。こうした中で、(1)のところでございます。(1)の2つ目のパラグラフでございますけれども、2行目あたりから共同化によって、FATFが求めるAML/CFTの実効性向上や各銀行等における業務効率の向上に資することが期待できるものであって、共同化に関して、その質を確保する必要がある中核的な業務として、以下にあります、為替取引に関する、①取引フィルタリング関連の業務、それから②取引モニタリング関連の業務が考えられますけれども、この点について御意見があれば、ぜひ頂きたいということでございます。

それから、(2)といたしまして、これらの業務の適切性確保、質を確保していくという観点から(2)の3行目あたりからかと思います。「例えば」以降ですけれども、適切な業務実施体制や情報システムの管理・運用、業務実施に際して取り扱う個人情報の適切な取扱いなどについて、適切な業務遂行を確保するための法的枠組みを導入することが考えられますが、この点についてどう考えるか。それから、(3)、その他留意すべき点があれば御指摘頂きたいということでございます。

それから、もう一つ、大きな柱といたしまして、その他ということで、金融のデジタル化が進む中で、いわゆるデジタルマネーの分野において検討すべき点があるかと。先ほどご説明した研究会では、ステーブルコインなどについて検討頂いておりますけれども、この辺りについても課題を御指摘頂ければと考えております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、全国銀行協会、伊藤企画委員長より御説明をお願いいたします。

【伊藤オブザーバー】

三井住友銀行の伊藤でございます。

本日は、このような機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。私からは、「全国銀行協会におけるAML/CFT高度化に向けた取組み」について、掲題の資料に沿って御説明させて頂きます。

早速ですが、1ページを御覧ください。このページでは、全銀協におけます、AML/CFT態勢の高度化に向けたこれまでの取組をお示ししております。全銀協では、2018年、金融機関の共通の課題について研究を行い、全体の態勢高度化を目指すために「AML/CFT態勢高度化研究会」を設置しまして、翌2019年度にかけまして、金融機関間での業務共通化や共有化について検討を行ってまいりました。2020年度には、その検討結果も踏まえまして、NEDOから委託を受ける形で、AML/CFT業務の共同化に関する実証実験を実施しております。その結果を踏まえまして、2021年の7月、共同化施策の具体的検討の場としまして、「AML/CFT業務共同化に関するタスクフォース」を設置しました。このタスクフォースでは、共同化が必要とされる業務の範囲や、その運営組織の在り方等の検討を進めているところでございます。詳細は後ほど御説明いたします。

2ページにお進みください。このページでは、2020年度の実証事業の概要をお示ししております。本事業は中段の調査目的に記載のとおり、AI等を活用しました高度なシステムの共同化を通じまして、銀行界として効率的かつ実効的なマネーロンダリング対策が実現可能か、また、その課題は何か、必要な規制は何かということを調査・整理することを目的として実施しました。実証事業に当たりましては、NECにAIシステムや共同データベースなどの実験用ミニシステムを構築頂きまして、全銀協とKPMGでミニシステムにおけます、AIモデルの有効性の検証ですとか共同化を前提としたオペレーションの設計案の提示などを行っております。

3ページに移ります。3ページ、4ページでは、AI活用のイメージについてお示ししております。3ページの図ですが、現行の取引モニタリングの業務フローをお示ししたものであります。このうち、赤枠で囲いました1次判定作業、ここにAIの活用を検討しております。現在、多くの銀行では、一番左、アラートが発生した取引につきまして、ヒトが全件おおむね同じ深度で1次判定を行っております。一方、FATFによります、第4次対日審査報告書でも指摘されておりますが、現在、各行で導入されておりますシステムでは、非常に高い割合で誤検知も見られますため、相当に非効率な確認作業が発生するのも事実です。このため、一次判定プロセスにAIを導入しまして、アラートの確からしさをスコアとして算出することを考えております。これによって、一次判定の作業負荷を軽減しまして、より精査が必要な取引の2次判定に時間を割けるようになり、業務効率化及び実効性向上につなげられる可能性もあるのではないかと考えております。ただ、この点につきましては、今後、タスクフォースの中でさらなる検証も必要だと思っておりまして、検証を進めてまいる所存です。

4ページを御覧ください。このページは、AIによる出力レポートのイメージをそのままお示ししているので、表示が細かくなって恐縮ですが、このポイントは3点です。1点目は、届け出るべき疑わしい取引であることの確からしさをスコア表示しているということです、真ん中あたりです。2点目は、スコアの根拠となった情報の関連性についても表示をお示ししているということ。3点目は、当該アラートにひもづく顧客や口座の取引情報を併せて表示することで、一覧性を向上していくということです。NEDOの実証実験では、今申し上げたようなAIの活用につきまして、実験用ミニシステムを用いて有効性を検証したということでございます。実験環境下におきましては、取引モニタリング及び取引フィルタリング双方において、業務の効率化及び分析の品質が確保できることを確認しておりますが、ここも今後、タスクフォースでさらなる検証を進めていかなければいけないとは考えております。

5ページ、お願いいたします。このページでは、共同運営機関を設置した場合の提供サービスイメージ及び今後の検討課題をまとめております。まず、核となりますサービスにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、各行が実施する取引モニタリングですとかフィルタリングのアラートやヒット情報に対して、まずはAIシステムを用いてスコアリングを実施して、各行に還元するということを一旦想定はしております。また、アラートやヒット情報の品質管理に苦慮している銀行等に対して、モニタリングシナリオやシステムの提供を行うことですとか、AI等が適切に機能していることを確認するための監査システム、こういったことの整備です。これもサービスメニューの1つとして、想定しております。

一方、中段、右側にお示しのとおり、今後の要検討事項も多く存在しております。具体的には、例えば共同化が必要な業務の具体化と、その優先順位づけ、それから個人情報の取扱い、共同機関の設立主体とコスト負担、また、具体的なシステム設計・運営や共同機関と委託行の責任分岐点の整理、こういったことも必要かと考えています。こうした点につきましても、タスクフォースで議論を進めてまいります。

6ページに進みます。このページでは、共同運営機関を設置する場合のロードマップ案をお示ししております。昨年度、一番左側のNEDO実証事業を完了しておりますので、現在は基礎検討フェーズに当たります。基礎検討フェーズでは、組織運営課題の整理ですとか共同化サービスメニューの確定、プロトタイプAIの要件定義・開発等を行ってまいります。基礎検討フェーズが完了次第、組織設立や業務機能の構築を目的とした準備フェーズ、それから、最終的にパイロット運用、本格運用を行う運用フェーズへと移行していく予定です。8月末に公表されました政府の行動計画におきまして、令和6年春を期限として「共同化を図る」とされておりますので、今後、関係当局や関係者の皆様との協議を通じまして、本ロードマップの言わば具体的なスケジュール感を設定していきたいと考えております。

7ページ、最後に、今年度の具体的な取組についての御説明です。今年7月に立ち上げましたタスクフォースの運営に当たりましては、NEDO実証事業からの継続性の観点からKPMG、NECにも参加頂いております。また、金融庁にもオブザーバーとして参加頂いております。今年度は6ページのロードマップでお示ししました、基礎検討フェーズの課題整理、具体的には、各行に共通する課題や共同化が望ましい領域の特定、およびその実現可能性等を分析し、検討を深めてまいります。

以上のように、全銀協はこれまで継続してAML/CFT体制の高度化に向けた取組を実施してまいりました。今後も、AML/CFT業務の共同化をはじめ、FATFの第4次対日審査報告書での指摘事項への対応をしっかりと進めてまいります。

私からの説明は以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、静岡銀行、滝執行役員部長より御説明をお願いいたします。

【滝オブザーバー】

ただいま御紹介にあずかりました、静岡銀行の滝でございます。本日はこのような機会を設けて頂きまして、誠にありがとうございます。

私ども静岡銀行は、本年6月より全国地方銀行協会の会長行を務めておりまして、本日、私からは地銀界におけるマネロン等対応の現状と課題について、意見を申し述べさせて頂きます。よろしくお願いをいたします。

それでは、資料の1ページ目、地銀界におけるマネロン等対応の現状のところを御覧ください。既に多くの地方銀行におきましては、金融庁のマネロンガイドラインを踏まえて、取引のフィルタリングやモニタリングに加え、顧客のリスク評価等を行うべく、専担部署の設置など相応の経営資源を投入するとともに、これらに対応するシステムの導入を含めた態勢の整備を図っております。一方、一部の地方銀行からは、その下に記載しておりますとおり、取引のモニタリングのシナリオや敷居値を適切に設定するためのノウハウの蓄積や人的リソースの確保が必ずしも十分にできていないといった課題が寄せられております。また、その下に記載をさせて頂いておりますとおり、各銀行におきましては、シナリオや敷居値の適切な設定や継続的な検証を行うためのインフラ整備やノウハウの積み上げを図るべく日々努めているところではございますが、誤検知も多く、結果として疑わしい取引が適切に検知できていない可能性も否めないとの見方もございます。

続きまして、次のページを御覧ください。こちらにはマネロンガイドラインにおける金融機関への要求事項を一部抜粋しておりますが、このうち、①取引モニタリングに関する適切な体制の構築、整備の項目におきましては、自らのリスク評価を反映したシナリオや敷居値などの抽出基準を設定するとともに、疑わしい取引の届出状況等を踏まえまして、当該抽出基準について改善を図ることとされております。また、その下、ITシステムの活用の項目におきましては、ただいま申し上げましたシナリオや敷居値がリスクに見合ったものとなっているかなど、ITシステムをその運用面も含めて適切に構築し、有効性の検証を行っていくことで、ブラッシュアップを図っていくことが重要であるとされております。

次のページをお願いいたします。こちらは、ただいま申し上げましたマネロンガイドラインの要求水準と、地銀各行が現在行っております取組状況とのギャップを実務上の課題として取りまとめたものでございます。まず、一番上、取引のフィルタリングにおきましては、ガイドラインで求められている遅滞なく照合するための態勢整備が課題となっております。具体的には、その下、経済制裁対象者等の指定に関する情報を即時に入手するため、各金融機関はそれぞれ個別に最新の対象者リストを調達し、都度、照合を行うなど、業務負担が相応に大きくなっているのが現状でございます。また、その下、送金の委託先の金融機関等からは送金受取人のフィルタリングに加えまして、取引の関係者や輸出入品目などの幅広なフィルタリングが求められておりまして、その対応に係るシステム導入コストの負担が大きいといったことも課題となっております。

次に、その下、取引モニタリングの項目でございますが、顧客属性や顧客リスク評価に応じたシナリオや敷居値の設定を適切に行うためのノウハウや人的リソースの確保が課題認識されております。さらに、その下、シナリオ調整のためのシステムの維持・改修につきましては、システムの有効性検証の実施に際しまして、外部専門家の知見等を活用しつつ取り組んでおりますものの、対応に時間を要しているのが現状でございます。

その他として、一番下に記載をさせて頂いておりますが、最近の取組課題といたしましては、継続的顧客管理における顧客情報の更新につきまして、顧客宛てアンケートの回答率が低く、なかなか更新が進まないといった点がございます。この課題の解決のためには、預金者である国民の理解と協力が不可欠でありますことから、政府広報の積極的な活用等につきまして、この場をお借りして改めてお願い申し上げる次第でございます。

次のページをお願いいたします。最後に、ただいま申し上げました実務上の課題を踏まえた共同化について、地銀界として期待をさせて頂く機能等につきまして、申し上げたいと思います。まず、上の取引のフィルタリングにつきましては、こちらに記載のとおり、最新の制裁対象者リストの共同利用化を希望させて頂きます。具体的には、ガイドラインに基づきまして、金融機関が遅滞なく照合できますよう、制裁対象者リストの即時反映ができるような仕組みが構築されることを期待いたします。また、その下、取引のモニタリングにつきましては、AIを活用した取引モニタリングの高度化が実現されることを希望いたします。具体的には、AIを活用した精度の高い不正取引等の検知や疑わしい取引の分析結果に基づくシナリオの改善、さらには、有効性の検証などが実現されることを期待するものでございます。

最後になりますが、私ども地銀協では、会員銀行におけるマネロン等管理態勢の高度化に向けた実務対応を検討するため、2017年10月よりワーキング・グループを設置し、これまで協議を重ねてまいりました。引き続き、同ワーキングにおいて、地銀界全体のマネロン等対応の底上げを図ってまいる所存でございますが、その中で、本件共同機関が力となり、各行のマネロン対応の高度化や生産性の向上が実現されることを期待するものでございます。

説明は以上でございます。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、第二地方銀行協会、日當一般委員長より御説明をお願いいたします。

【日當オブザーバー】

第二地方銀行協会の会長行を務めております、北洋銀行の日當でございます。よろしくお願いいたします。

本日はこのような機会を頂き、大変ありがとうございます。先ほど全銀協から御紹介のあった、金融界で進められているモニタリング、フィルタリングシステムの共同化について、私どもの考えを一言申し上げたいと思います。簡単なレジュメを用意しましたので、御覧ください。

まず、当業界が置かれた現状等、認識している課題について、3点申し上げます。

1点目は、マネロン対応の現状についてでございます。マネロンやテロ資金供与対策の目的は、犯罪の抑止や未然防止である以上、これは金融機関の規模に関わらず、必要な対応が求められるものと考えております。対応が手薄な金融機関は犯罪のターゲットとなりかねないと危惧しております。マネロンとの対応については、リスク管理一般で言われる、規模に応じた対応や身の丈に合った管理が成立せず、仮に小規模行であっても、その業務内容に応じたあらゆるリスク情報を踏まえることが求められます。特にマネロン・テロ資金に関しては、海外を含めて、参照すべきリスク情報が多岐にわたっており、こうした情報を効率的かつ効果的に活用して、適切に対応していくには、金融機関の個別の対応では一定の限界があるのではないかと考えております。

2点目は中小規模金融機関の対応可能性についてであります。今、申し上げましたように、マネロン対応等の対応を行っていくためには、人海戦術では限界もあり、システムによる対応が必要となります。そのようなシステム対応には相応の投資が必要であり、かつ人的対応に関わる負荷も重くなります。マネロン・テロ資金対策自体は、直接的に金融機関の収益を生むわけではないこともあり、特に規模の小さな金融機関経営にとっては大きな負担となっております。

3点目は、マネロン・テロ資金対策についての国民の理解についてであります。次のページを御覧ください。マネロン・テロ対策の基本は、顧客情報の取得とその更新による継続的な顧客管理にありますが、実際、現場においては、なかなか顧客の理解や協力が得られないのが実情であります。マネロン・テロ対策は、我が国全体としての取組であり、官民一体となって広く見て理解を求めていくことが不可欠と思われます。

最後に、当業界としての共同化への期待と要望を申し上げます。ただいま申し上げたように、マネロン・テロ資金対応については、個別金融機関だけの努力では限界があり、こうした課題の解決につながるシステムの共同化については大きな期待を持っております。当業界としましても、共同化プロジェクトが成功するように協力してまいります。

課題の3点目に挙げました、国民のマネロン対応の理解に関しましては、ぜひ政府省庁を挙げて、広く国民に対して周知頂くようお願い申し上げます。マネロン・テロ資金対策については、個別金融機関にとっての信用問題にとどまらず、我が国全体の信認に関わる問題につながるものと考えております。当ワーキング・グループにおける活発な御審議に期待するとともに、引き続き、政府当局からの一層の御支援をお願いしたいと思います。

以上、簡単ではございますが、システム共同化をめぐっての当業界の課題と期待等について申し上げました。当行からの発言は以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を踏まえて、メンバーの皆様に御討議頂きたいと存じます。なお、本日は初回の会合でございますので、諮問事項や本ワーキング・グループの検討課題をめぐって、幅広い観点から御意見を頂戴したいと存じます。また、これまでの御説明に対する御質問がございましたら、併せて御発言頂きたく存じます。どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

坂委員、お願いいたします。

【坂委員】

どうもありがとうございました。私のほうからは、資料4に基づきまして少し意見を述べさせて頂ければと思います。まず、1.についてですけども、示されている方向性については賛成をいたしますが、前提ないし、留意点について3点ほど述べさせて頂ければと思います。

第1に、資料3の10ページにもマネロン事犯で把握された取引事例の件数が示されておりますが、これは全体のごく一部であって、この背後には相当数の暗数があることには留意が必要だと思います。実態把握から法執行、それから抑止効果の発揮に至るまでの効率的な仕組みが必要と考えております。

第2に、マネロン対策が利用者保護の点でも重要な意義を有するという点を述べておきたいと思います。昨年のドコモ口座の事件などは、犯罪収益移転防止法、犯収法の当時の規制の緩いところが狙われた面があろうかと思います。また、犯収法上の取引時確認、本人確認記録が詐欺等の関与者の捕捉に役立つ反面、取引時確認の実効が図られていないところでは捕捉が難しく、被害回復が難しいばかりか、詐欺事犯等を助長するおそれがございます。このような観点にも配慮しつつ、取引フィルタリングや取引モニタリングの在り方を含めて、全体として実効的なシステムが望まれているところと思います。

第3に、この間、情報環境が劇的に変化しており、個人情報の適正利用やプライバシーへの配慮はより慎重なものが求められていると思います。情報の収集、分析・評価、情報の管理・共有、フィードバック、そしてシステムのガバナンス等において、個人情報保護法の匿名加工情報や仮名加工情報の考え方を参照しつつ、適切な仕組みづくりが求められているところと思います。

次に、2.についてですが、資金決済分野で検討すべき点としては、現在、規制対象になっていない決済方法に対して、規制の網をきちんとかけていくことが必要であって、特にセキュリティーやマネロン対策の観点から、その必要性が高まっていると考えております。ここでは足元の状況に鑑みて、個別の課題について3点述べたいと思います。

まず、1点目ですが、前払式支払手段の残高譲渡に関する問題です。国家公安委員会の犯罪収益移転危険度調査書では、マネロン等の危険度が高まる取引として、クレジットカード等により、多数のギフトカード等を頻繁に購入する顧客の取引が挙げられております。他方で、ギフト券の転売サイトが多数存在し、そこでの換金が極めて容易となっております。ギフト券は転売が禁止されているものもありますが、実態として出品者は多くを換金できる他方で、一部の利用者は、購入したギフト券の利用を停止される事態も生じております。現状に鑑みますと、マネロン対策上、残高譲渡が可能な一定額以上の前払式支払手段については、犯収法上の取引確認時等を求める必要があるのではないかと思います。もともと前払式支払手段は、加盟店への支払いへの利用が想定されているもので、残高譲渡による利用というのは、本来、これと異なるものと思います。残高譲渡は、それ自体、送金や支払いとしての機能を果たし得るというところにも鑑み、転売サイト等については、サービスを資金決済法等にきちんと位置づける必要があるものと考えます。

2点目に、いわゆるステーブルコインに関する問題です。ステーブルコインについては、マネーロンダリングに使用されるリスクが高く、現在広く使われているものについても償還可能性への疑義が指摘される状況にあります。現状において、普及が図られるべき条件は整っていないと考えられます。昨年6月のFATFの報告書においても、各国が取り得るリスク低減策として、P2P取引を制限するための措置、具体的には暗号資産業者が管理しないウォレットを利用できるプラットフォームの禁止、P2P取引への取引制限・金額制限、暗号資産取引における仲介業者利用の義務化等が挙げられているところです。これらとともに、ステーブル行為のコインについて、売買の場面も含め、犯収法上の規制を漏れなく実効的に行うことができる、一層の制度整備が必要と考えられます。

3点目に、暗号資産に関する問題です。現在、マッチングアプリ等で知り合った相手から勧められて、暗号資産取引に引き込まれ、投資資金が返金されないという事案がかなり多数発生しております。デジタル化の中で、効率的に詐欺取引が仕掛けられているという面があろうかと思います。トラベルルール等の体制整備が進められているということは承知しておりますが、現状においても、国内の暗号資産交換業者において、一般の個人から海外のサイトや暗号資産交換業者の管理しないウォレットへの送金を適切に制限するなどの対応が検討されるべきではないかと考えます。

以上です。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、松井委員、お願いいたします。

【松井委員】

発言の機会を頂きありがとうございます。私からは簡単に1点だけ、お伺いを、もしくは要望をさせて頂きたいと思います。

今回のシステムについて詳細は今後決定されると存じますが、中小金融機関を入れるという要請があるということから、銀行業界全体としてのデータベースづくりという形で検討が進んでいるかと存じます。一方で、フィナンシャルグループ単位で最適化をするというようなデータベースの作り方という視点も、恐らく一方では、あり得たのではないかと思います。過去にキャプティブローンなどの事例で認識されておりましたが、グループ単位でリスクを下げないと、実効的にリスクが下がらないというような取引というのも、もしかするとあるかもしれず、そうすると、任意にノンバンク等をデータベースに載せるのか、あるいは、場合によっては強制をするのかといったことも出てきますので、データベースの利用者の将来的な構想について、どう考えるのかということについての整理が必要ではないかと思います。

また、広い業界の企業を載せるとなりますと、データをたくさん集めた上で誤検知を減らすためのパラメーターとか敷居値を金融機関によって調整するというやり方をしていくということにはなるのかもしれないのですが、そうは言っても、都銀グループ、地銀グループとしてつくるのか、あるいは、例えば都銀とフィナンシャルグループに関連しているノンバンクや保険会社のデータとしてつくるのかでは、全く顧客の属性とか種類とか、規模といったものが違ってくるという可能性もありますので、顧客によって全く使わないようなデータが増え、冗長なものになり得るということもあり得ます。そういったことをにらみながら、最終的に非常に役に立つデータベースというものができるように考えていく必要があるのではないかと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、井上委員、お願いいたします。

【井上委員】

井上です。発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。既に御指摘があった点もございますけれども、何点か申し上げたいと思います。

現在、挙げられている取引フィルタリング及び取引モニタリングの関係で、できるだけ包括的な形で、共同システムの実用化を目指すことについては賛成いたします。その際、ここで銀行等と書かれているわけですけれども、まずは、為替取引を念頭に置いて、銀行などの預金取扱金融機関が想定されていると思うのですけれども、次いで、大口資金の送金ができる第1種資金移動業者も含めていくべきだろうと思いますし、それ以外にも、こういったマネロン、あるいはCFTの問題というのは脆弱なところが狙われるというところがございますので、それ以外の送金、あるいは送金的な機能を持つサービスの担い手、例えば、先ほど坂先生から御指摘ございましたけれども、一定の前払式支払手段の発行者、あるいはその譲渡の媒介者、それから、カード業者、あるいは暗号資産交換業者についても、同じような規制の下でこういったシステムに入って頂く、あるいは取り込んでいくことも必要だろうと考えます。同じタイミングですべての業者を対象にするということはないと思いますが、そういった方向で、対象範囲についても議論、検討して頂ければと思います。

次に、資料4の検討頂きたい事項の2つ目ですが、ここに挙げられている個人情報の適切な取扱いをきちんと確保しながらということが、システムの共同化については非常に重要だと思っております。バランスを取りながら進めていくのは難しいと思いますが、日本では個人情報保護法ということになると思いますが、さらに考慮しなければいけないのは、海外の個人情報を中心とした情報管理規制についても目を配る必要があると考えております。

それから、これは先ほどの御説明の中に出てまいりましたけれども、こういったことは金融サービスの利用者に対して一定の負担、負荷がかかることになると思います。預金サービスは空気あるいは水のようなもので、誰でもどこでもいつでも利用でき、極めて簡便に使えるという一般の認識が、ある程度あるのではないかと思いますけれども、それはだんだん常識ではなくなってきていると思います。一定の負担、あるいは手間をかけないと安全で便利なサービスが利用できなくなってきている。これはもう国際的にやむを得ない面が一定程度あるということだとすると、金融機関側ばかりが努力を重ねてもなかなか利用者の理解が得られないということもあろうかと思いますので、そこは政府の側からも広報などを通じて、みんなでこういった負担を分担していかなければいけないということを周知して頂くということもぜひ進めて頂きたいと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、末冨メンバー、お願いいたします。

【末冨委員】

発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。末冨でございます。重複する部分も若干あるかと思いますけれども、できるだけ違う観点からのコメントをさせて頂ければと思います。

まず、1点目の共同のシステムを使うということにつきましては、いいアイデアであると考えますし、賛同させて頂きたいと思います。といいますのは、ここで銀行の皆様から、あるいは金融庁の皆様からもプレゼンテーションございましたように、例えば、きちんとしたリストを作るですとか、あるいはモニタリングの基となる材料をそろえるというのは非常に時間もコストもかかるところであることは、私ども専門家のほうも常日頃、経験しているところで、そこは全く同意するところでございまして、それを各金融機関がそれぞれ実行されるのは非常に負担が大きいことだと思いますので、有益な情報を共有して、コンプライアンスを実行するというのは非常に効率的であるかと思います。また、FATFの報告書なども見ておりますと、まずはボトムアップといいますか、基本的なところを徹底するというところが重要なのかと思いますので、例えば、米国でSDNリストに載っているような人を見過ごしてしまうと、何もやっていないではないかということになりかねませんので、最低限のラインをみんなで共有し、これだけ守っていれば、ある程度のことはできているということが共有できるというのは、ユーザーも金融機関も、あるいは利用する消費者も、また、当局側も安心できる材料になるのではないかと思います。

また、先ほど御指摘がありましたように、為替取引という対象については、今後拡大していく可能性はあるかと思いますけれども、まずは、最初のアイデアとして為替取引というところでかっちり固めようというお考えも、最初のステップとしていい考えなのではないかと考えております。

また、FATFの報告書では、NPOなども抜け道になりやすいというところがあるかと指摘されていたかと思いますけれども、そういう意味では、主体についても拡大していく可能性というのはあるかと思います。FATFの指摘を基に考えますと、不十分なところが狙い撃ちされるという可能性が高くなるかと思いますので、基本的なところを、全てのメンバーが備えるというのは非常に意味があるところかと思います。

次に、2点目の情報の取扱いについて、情報保護のために法令の整備をするという考え方にも賛同させて頂きたいと思います。といいますのは、例えば、取引を拒絶すべき人として対象となるところのものとして、例えば国連決議に基づいて指定されている人ですとか、あるいは日本でいうところの「外国人ユーザーリスト」に指定されている人というような公開情報に基づく場合は、それとの取引に注意を喚起するフラグを立てるということについて、それほどの問題はないかもしれませんけれども、例えば、疑わしい取引で、本当にこの人との取引を拒絶すべきかどうかという点について、いろいろな情報を検討するにあたり、特に例えば薬物事犯や、あるいは違法取引というような非常に機微なもの、あるいはプライバシーに関わるような情報の扱いにおいては、情報が守秘義務等で保護されていないと有益な情報が出てこないということになりますし、また、それが漏れた場合に提供した人がリスクを負うということになるかと思いますので、その点は守秘義務も含めた手当てが必要なのではないかと思います。

その他、何か留意すべき点はということについてですけれども、先ほど銀行の方からのプレゼンテーションの中でも御指摘がありましたように、責任の所在をどうするかというところは特に、例えばリストから漏れてしまったりとか、あるいは誤情報が入ってしまった場合の責任の所在をどうするのかということについては議論の余地があろうかと思います。

基本的には、各主体である金融機関の責任になると考える可能性が高いかと思いますけれども、しかしながら、共有システムに基づいてベストを尽くした、共有システムの情報に基づいて取引を行ったところ、たまたまそのシステムで誤情報があったために取引すべきではない相手と取引をしてしまったという場合ですと、できる限りの情報に基づいて、できる限りの努力をしたということであって、それに対して、法執行するかどうかということについては可能性が下がってくる、すなわち完璧を期すことができなかったとしても、最善を尽くしたことが認められることによって、悪質性が低減されるという解釈というのは成り立ち得るところではないかと思います。

それと、あと、どういう形で実効化するかということについて、法執行、インフォースメントの問題があろうかと思います。すなわち、疑わしい取引というのは、かなり多数が報告されているわけですけれども、実際に検挙されている数というのは、報告されているデータとしても非常に少ないということから、日本で法執行のリスクが少なく、これに対して、例えば米国では、制裁法違反で重い罰則を受ける、例えば口座を凍結されたりとか、あるいは多額の罰金を科せられたりということがあって、どうしても米国の執行のほうの恐怖が大きいためにそれに備えるということになると、米国当局の執行を受ける可能性は大規模な金融機関が高いということになって、どうしても大規模な金融機関が米国の制裁に備えて対応せざるをえない状況というのがあるかと思います。そうすると、それほど大規模ではない金融機関の場合には、そこまでリスクベースとして対応する必要があるだろうかということになっているという現状はあろうかとは思います。よって、その部分について、エンフォースメント(法執行)をどうするかというところについては議論の余地があろうかと思います。ただ、何でもかんでも法執行すれば、罰則を科せばいいということではないと思いますので、慎重な対応が必要になるところかと思います。

加えて、コンプライアンスについてどのように行っていくかということについては、3つの要素で、人、教育、監査についての実行が必要になってくるかと思います。すなわち、人としては担当者、責任者を決めることによって、その実行についての意識が高まると思いますし、教育のほうはトレーニングを定期的に行うことによって、各金融機関のメンバーの方の意識が高まると思います。これは、仮に形だけのものであったとしても意味があると思います。また、定期的な内部の監査を行うということについても、これは、仮にこれも形式的なものであったとしても、徐々にコンプライアンスの意識というのは高まっていくところではないかと思います。

最後に、デジタル化が進む中での課題としましては、最近、新しいビジネスモデルとして、プラットフォーマーを中心としたビジネスというのが隆盛を見ているかと思いますが、これについては、登録をするような段階でのデューデリジェンスという形での、そこが抜け道にならないような形での手当というのがこれから必要になるかと思います。そこでアナロジーとして参考になるかどうか分かりませんが、例えば、輸出規制についても、物の輸出規制というのは水際でできるわけですけれども、ソフトウェアの送信でも行われうる技術移転の規制というのは水際だけでは十分取り締まることにはなりません。しかしながら、それでも技術移転規制についても、今、徐々に精緻なものになりかけております。それと同じような形で、デジタルマネーという資金決済についても、デジタルであっても、そこに報告を要求するですとか、デューデリジェンスを要求することによって、可及的限度でのコンプライアンスというのは実行が可能になっていくのではないかと思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、加藤メンバー、お願いいたします。

【加藤委員】

加藤です。よろしくお願いいたします。私からは3点コメントいたします。

第1に、各金融機関がAML/CFTに投下できる資源には限界が存在するため、AML/CFTに関する体制整備に問題を抱えてしまう金融機関が生じるという状況が存在しているのであれば、取引フィルタリングと取引モニタリングを対象とするシステムの共同化は、このような状況を改善できる可能性があると考えます。

関連して、アラームの誤検知の問題についてコメントします。FATFの報告書によれば、アラートの誤検知として、問題がない取引を検知してしまうことが問題視されています。しかし、アラートについては、問題がある取引の検知を逃してしまう点も問題となり得ます。共同システムを使う場合には、問題がある取引の検知を逃してしまうという問題が共同システムを使う金融機関全てに広がってしまう可能性がありますので、このような問題を意識しながら、システムの共同化の作業を進めていく必要があるかと思います。

2点目は、AML/CFTのガイドラインなどがよって立つリスクベースアプローチとの関係です。取引フィルタリングと取引モニタリングは、リスクを低減する措置の重要であるけれども、1つにすぎません。資料4にもありますとおり、各銀行などにおいて、継続的な顧客管理を適切に行っていくことと併せてとありますとおり、セットで行わないと、リスクベースアプローチの観点から適切な体制が整備されたとは評価できない可能性があります。共同システムを用いることによって、取引フィルタリングと取引モニタリングについて各金融機関が自分で一から作るよりも非常に優れたシステムを利用することができる状況になったとしても、各行が抱えているリスクに応じてこういったシステムが使われないと、実効的なAML/CFT対策にはならないのではないかという気がいたします。リスクベースアプローチは責任分岐点を考える際にも重要な視点であると思います。

最後に、資料4のその他の項目についてもコメントいたします。デジタルマネーについても、先ほど事務局からの御報告でもありましたとおり、AML/CFTの確保が重要な課題であると認識しております。特に坂委員が御指摘になった額が大きく、かつ譲渡が容易な前払式支払手段については、規制の要否を検討する意義があると考えます。また、井上委員及び末冨委員の御指摘のとおり、AML/CFTの関連からは弱い部分が狙われる可能性があることを意識した上で、様々な制度整備を検討していく必要がある点に賛同いたします。

私からのコメントは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、河野メンバー、お願いいたします。

【河野委員】

発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。日本消費者協会の河野でございます。御説明ありがとうございました。

マネー・ローンダリング、テロ資金対策として、現在、全銀協様においてAML/CFT業務の共同化が進行していて、それを基にして制度全体の構築を進めるという方向性に異議はございません。その上で、一般消費者の立場から3点、意見を申し上げたいと思います。

1点目は、FATFからの指摘事項に忠実に対応するとなると、個人の機微情報も含まれている顧客管理データの取扱いが大変気になるところでございまして、悪用を防ぐことは当然ですけれども、漏えい事故等が起きないように、高度なデジタル技術の活用と法的ルールの明確化の両面から対策を講じて頂きたいと思います。また、こうした対策について、大勢を占める善良な顧客が不安を抱かないように周知広報にも力を入れて、国民の協力体制というのも構築して頂きたいと思います。

2点目です。全国銀行協会様主導での共同化は、実行可能性という視点からは適切だと思いますが、他方、組織運営の透明性の担保や多様な参画を促すという観点で別組織にすることも、例えば、指定法人ですとか、そういった形で別組織にすることも一案ではないかと考えるところでもございます。この制度構築において求められているのは、AI技術などデジタル分野での専門性を持つ人材であり、また、システムの構築や維持管理に伴う経費等の確保など、財政的な独立性や持続可能性、それから、加えてスピード感ですよね。じっくりつくっていくといっていても、外からは対策を求められているわけで、スピード感も重要だと思いますので、そういったことを考えて、どういうところが主体を担うのかということに関しても、皆さんの知恵を集められればと考えたところです。

3点目です。我が国の金融機関全体のレベルアップが求められているとすると、信用金庫、信用組合や資金移動に関わる各種事業者に対してどう対応するのか、別枠でいいのかという問題や、先ほどから皆さん言及されていますけれども、従来型の金融取引に加えて、一般社会に静かに浸透してきているステーブルコインですとか暗号資産での資金移動に対する対策は、では、どこで考えるのかという点が大変気になるところであります。金融分野、つまり資金の移動が起こるところ全体で取り組むという視点がとても大事で、それが私たち国民の安心感にもつながるのではないかと感じました。

私からは以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、翁メンバー、お願いいたします。

【翁委員】

発言の機会を頂きありがとうございます。私も今までの委員がおっしゃいましたとおり、取引フィルタリング、モニタリングともAML/CFTにとって非常に重要でございまして、共同化というのが非常に重要だと思っております。生産性という観点からも、効率的にやるということが、まず求められておりますし、それから効果を上げるという意味でもデータベースを共有していくということが非常に重要だと思っておりますので、共同化は意味があると思っております。

また、モニタリングとしましては、取引をネットワークとして見て、それをしっかりトレースしていくということができないと効果を上げにくいのではないかと思います。個別行として防止できるものもあるかもしれませんが、金融システムのネットワーク全体としてしっかりと取り組むという意味で、共同化というのは必要であると思っております。

(2)で挙げられておりますけれども、こういった共同化をするに当たっては、何かエンティティをつくるのだろうと思うのですけれども、適切な業務運営を図るための当然法的な枠組みが必要であると思っております。特に、この仕事に関しては、個人の理解、国民の理解が必要になってきますので、個人情報の適切な扱いをしていくということも極めて重要になっていくと思っております。

私がコメントしたいと思っておりますのは、FATFで合格点をもらっているような、海外でどのような取組が行われているのか、先進的な仕組みなどが行われているのであれば、そういったシステムはどういうことを注意して入れているのかという海外の事例などについても、ぜひ御紹介頂きたいと思っております。これだけAIが発展してきておりますので、多くの口座データを集めて、機械学習などアルゴリズムを活用して、口座とか疑わしい取引を特定して、そして不正送金などをリアルタイムでトレースしながらウォーニングを出していくと、そういったことが理想像としては望ましいのだろうと思うのですが、こういった精度の高いシステムを導入していくということが、最終的に全銀協のほうで標榜されているんでしょうか。この辺り、今の共同化の行き先は、そういったシステムで、そして、リアルタイムで警告できるような、そういったことを構築していけば、十分FATFの要請には応えられるようなものになっていくと、そういう方向で今後やって頂くことがすごく大事だと思っておりますが、その辺りお伺いしたいと思っております。

特に決済システムとの関係というのはどのようになっているのでしょうか。例えば口座情報とか、こういったことを特定していくことが必要になってきますが、全銀システムとの関係とか、こういったことはどのように今、お考えになっているのか、もし現状で御検討されていることでありましたら、教えて頂きたいと思っております。

また、FATFのほうからも指摘されていますし、多くの委員が御指摘になっておりますが、非常に金融機関のリスクの理解が深まるということが大事だということであるかと思います。リスクの理解が深まれば、それへの対応というのも進みますので、今までも多くの委員が弱いところでこういったところが突かれるということがございますので、金融機関全体としてのレベルを上げていくということが極めて重要であります。その意味でも共同化というのは、その方向にも資するかなと思っております。

最後になりますが、デジタルマネーの分野というのは、今後AMLにとっても非常に重要な課題であると思っております。仮想通貨についても、既にいろいろな事件なども起こっておりまして、この分野をしっかり見ていくということも大事でありますし、同時にステーブルコインについては、今、グローバルにいろいろな動きが出てきております。国際的な動きと連携しながら、こういったところのテロ対策、AML対策、これをしっかりやっていくということが極めて重要で、法制整備も含めて検討していくということが大事だと思っております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

ただいま翁委員から2つの御質問をいただいたと思います。共同化について、第1に、諸外国の事例はどのようでしょうか。あるいは、それについて今後のWGでご紹介頂くということは考えられますかという点と、第2に、決済システムとの関係、例えば全銀システムとの関係について御質問を頂いたと思いますけれども、これは事務局からお答え頂くことでよろしいか、あるいは全銀協の伊藤様にお答え頂ければいいのか。

【端本信用制度参事官】

まず、海外の事例につきましては、整理させて頂いて、御紹介させて頂くよう努めていきたいと思います。

【翁委員】

ありがとうございます。

【尾崎マネーロンダリング・テロ資金供与対策企画室長】

総合政策局で、マネロン・テロ資金供与対策室長をしております、尾崎です。貴重な御意見ありがとうございます。

まさに海外の事例で、今、端本参事官からありましたように、既に調査をしております。実際にオランダで全く同様な取組がされておりまして、法人の取引に関する共同での取引モニタリングシステムの実用化の検証が進められていると。我々より部分的には一歩進んでいる部分もあります。オランダはAIは使っていませんので、AIに関しては、我々のほうが先んじているということで、情報交換はしております。

そういった事例を、次回、御紹介させて頂きたいということと、あと、先ほどからほかの先生からも出ております、継続的顧客管理に関して、どのようにお客様の御理解を得て、どのようにお客様から情報を入手しているかという点につきましても、全銀協のほうで、今、海外の事例、特にマスリテールでどのように情報更新をしているのかというところ、法律であるとか国民の理解であるとか、そういったところも今、調べさせて頂いております。これはまさにコインの裏表でございまして、そこもぜひ紹介させて頂きたいと思っております。

それから2点目、全銀システムとの結合ということに関しては、これは銀行から取引データを、入手します。ルートは2つあります。1つは取引モニタリングに関しましては、御指摘のとおり、全銀システムと海外送金のスイフト、両方のデータを共同システムのほうに、銀行からそれぞれの銀行の独立したサーバーに流し込んで、そこで共同システムのアルゴリズムで判定をするということを基本設計として考えております。

他方、取引フィルタリングに関しましては、制裁対象者につきましては、今、基本設計としては、国境をまたぐ外為送金のスイフトベース電文上の情報と制裁対象者、特に国連安保理制裁決議であるとか、外為法であるとか、アメリカの財務省のOFACのSDNリストであるとか、そういった基本的な制裁対象者の情報を遅滞なく、最新のもので、曖昧検索機能を使って照合いたします。また、先ほど加藤委員からもあったように、タイプツーエラー、本当に見逃していけないものを見逃さないことも考慮しつつ、高度な検証機能を発揮していくということを考えております。基本的には、これらはそれぞれの決済システムから銀行を通じて独自のサーバーで共同体のほうに流し込むという形で、かつ、個人情報保護の観点からも考慮した基本設計ということで今、検討しているというところであります。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。翁メンバー、追加の御発言等ございますでしょうか。

【翁委員】

ありがとうございます。1つだけ追加的に、リアルタイム性とかそういうのはサーバーから流し込むという言い方だったのですけれども、かなりスピーディーに検知しなければいけないと思いますが、そこは大丈夫なのでしょうか。

【尾崎マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長】

大変貴重な、重要な御質問でございまして、そこも検討事項として検討しておりまして、セキュアな環境で、リアルタイムで情報のやり取りができるということを基本設計で考えております。

【翁委員】

ありがとうございます。結構です。

【尾崎マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長】

ありがとうございます。

【神作座長】

よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、続きまして、西川メンバー、お願いいたします。

【西川委員】

西川でございます。本日、発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。もう既に委員の皆様から適切な、また、重要なコメントがなされているので、私からは、あくまでもAML/CFTであったり、決済業務の専門家として、今まで経験したことを前提にコメントさせて頂きたいと思います。

まず、FATFの対日4次審査の結果を端緒として、この議論が発生しているということでございますが、実はFATFの話というのは、2008年の3次審査の頃から、日本にとっては非常に大きな課題が発生をしていて、4次審査が2019年に行われ、その結果が2021年、今回出てきたことになります。その中で、原理原則は大きく変わっていないものの、金融機関等に求められる対応、AML/CFTの義務、もしくはこれをやらないと犯罪を助長してしまうということは非常に多岐にわたっています。こういう中で、今回の政府として提案を頂いている資料4のマネーロンダリングのリスクが高いと言われている、高リスク領域と私どもの業界では言いますけど、その代表的なものが為替取引であり、それの対抗策として、今回お示しのとおり、顧客管理が実施されていることを前提として、取引フィルタリングと取引モニタリングについての支援を国が行うということは非常に適切な対応と考えます。諸外国の例をもちましても、必ずしも同様の枠組みではありませんが、アメリカ等の先進国、もしくはアジアの発展を続けている国々でも、かなり政府の後ろ押しがあって、AML/CFTという非常に難しい課題についての対応を進めている中で、本邦の政府が支援をする、もしくは、全体の枠組みを決めて、このような対応がなされるというのは極めて望ましいと実務家の立場では思っておりますし、先ほど尾崎室長からお話がありましたけれど、オランダの例もそうですし、データの取扱いに関して国のバックアップ、もしくは共有化に基づいて高度化をしていくことで、犯罪対策の高度化、制裁対応、さらに拡散金融対策の高度化を進めるというのは非常に大きな流れとして、FATFからも公表されているところでありますので、グローバルな流れ、もしくは日本の現状、置かれた歴史的な状況から見ると、適切な対応であると、私も実務家としては考えております。

もう一つ、為替という取引を先ずは対象として、という記載が資料4にございますが、今回の事務局資料で疑わしい取引は966件出ていて、その中で約5割が内国為替、外国為替です。だから為替取引がいいのではないかということでございます。現実的には、委員の方からお話がありましたとおり、今回お示しがあったAML/CFTの範囲は、あくまで悪用された主な取引例であって、これよりはるかに広い範囲でAML/CFTを認識すべきであり、マネー・ローンダリング、もしくはテロ資金が動いているということはもう間違いない事実ですが、一方で、その中で為替取引の位置づけというのが非常に大きなものであるということを実務家は経験し、もしくは直感的に多くの方が考えていて、その意味で、私の経験値に基づいた意味でも、まず、為替取引からやるというのは、かなり具体的な話と考えます。マネロンの世界でよく気をつけないといけないのは、取引のタイプ、これは融資であったり、電子マネーであったり、仮想通貨だったり、たくさんの種類がございますが、それぞれの取引タイプに合った形のリスク低減策を取らなければいけないことです。クレジットカードの取引で犯罪利用を回避するために、外国為替と同じようなことをしても全然役に立ちません。こういう意味で、それぞれの取引タイプに合わせたモニタリング、フィルタリング、もしくは顧客管理というものが厳然としてある中で、また、それぞれが各国、もしくは、大手金融機関等が、今回の対日審査結果でもGSIBという言葉が出ていますけれど、世界中で様々な方法が、各国の国情に合わせた形で取られています。

まずは、内国為替、外国為替というところで実効性を担保する形で対応を進めた上で、リスクに応じて範囲を広げていくと、委員の御説明もありましたけど、資金移動業者のリスクというのは、それ相応に高いものでございますので、リスクに応じて範囲を広げていくというのが具体的かつ実効性があると考えます。リスク低減策の対応自体が非常に複雑で、高度な技術、もしくは知見が必要な分野でございますので、全部やりますといって時間をかけるような問題ではないであろうと思います。一方で、FATF審査は、今回の4次の次には5次というものも用意されていると聞いていますし、フォローアップ期間中もいろいろな対応策を金融機関等は講じていかないといけない中で、手戻りになることのないように、アジャイルなアプローチかもしれませんが、先ず為替から始めて、リスクに応じて広げていくということが私どもの実務家から見ると非常に現実的には思えております。この辺りについては御検討されている全銀協の委員や今回プレゼンテーションして頂いた方からも、どういった形で進めていく御計画なのかというのはぜひ教えて頂きたいと思っております。

最後に、今回の資料4の暗号資産を含めたデジタルマネー、CBDC等を含めての話ですが、これに対する議論は世界中でかなり盛んに行われております。当然のことながら、今回、事務局からお示しを頂いたとおり、安心安全な決済、もしくは安心安全な金融というものを実現するために、一番重要な要素としてAML/CFTが位置づけられていて、今回の事務局の資料にもそのような表現がなされているわけですけれど、これはこれで、非常に高度な知見が必要である一方で、システム的な対応は必ずしも為替とは一致していないと考えます。さらにリスク、もしくは法の建付けも為替のような取引とは同じとは言えず、こういう形で差分がある中ですが、当然のことながら、最終的には金融システムの安全であるとか発達という観点で、それは消費者の皆様への利便性というものにつなげるという意味で今回の対応も包括的なものである必要があるものの、非常に緊急度が高く手戻りが許されない中では、段階的なアプローチでないとこのようなシステム構築はなかなか難しいのではないかと考えます。この辺りも含めて御議論をさせて頂ければと思っております。

西川からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

ただいま西川メンバーから全銀協の伊藤さんに対して御質問があったと思いますが、もし御回答頂けましたら、何かコメント頂ければと思います。いかがでしょうか。

【伊藤オブザーバー】

伊藤です。御質問ありがとうございました。御指摘のとおり、為替取引から今後どう広げていくかという想定ですけれども、まず、一番影響の大きい為替取引について、モニタリング、フィルタリングの実用の共同化のフィージビリティーをしっかり固めていこうと考えています。その立ち上がり状況等を踏まえながら、追加で拡大できる可能性があるのかどうかというのは、慎重に検討をしていきたい、と、考えているという次第でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございます。

【西川委員】

私が申し上げたイメージとほとんど変わりませんので、大変安心をいたしました。ありがとうございます。

【伊藤オブザーバー】

ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、後藤メンバー、お願いします。

【後藤委員】

東京大学の後藤でございます。いろいろ御説明をどうもありがとうございました。私から質問を2つと、あとコメントを1つほどさせて頂ければと思います。

まず、AML/CFTの対策として、システムの共同化を進めていくというのは非常に結構なことではないかと思いまして、ぜひ進めていって頂ければと思っているのですけれども、このワーキング・グループの議論の出口は何なんだろうかということが少し気になっております。例えば、こういう共同化を進めていくに当たって、今現在、何らかの制度的な制約があるということなのか。共同化されたシステムに入っていないと業務ができないということになるのだとすると、独禁法的な問題もあるのかもしれないと思っているんですが、なかなかイメージがわきにくいものでして、その他の点も含めて、制約はあるのでしょうか。また、制約があるわけではないのだけれども、先ほどから何人もの方から御指摘がありましたように、一番弱いところが犯罪者集団には突かれてしまうということがあるのだとすると、全ての預金取扱金融機関が参加していなければ結局、意味がないということになるので、こういう共同化のシステムを全銀協さんがつくられた場合に、そのシステムへの参加を金融機関に義務づけるといったことをお考えなのでしょうか。この辺りのイメージがわきにくいもので、そこをまず一つ、お伺いできればと思っております。

2つ目なのですけれども、FATFの報告書で誤検知の多さが問題とされているということですが、加藤メンバーや尾崎室長から先ほど御指摘があったように、そこをあまり重視することについては、私も違和感を持ったところです。この問題として、タイプツーエラーがたくさん発生してはいけないということかと思いますので、広めに網をかけた上で、そこから絞っていくということなのだとすると、誤検知という言い方がそもそも適切なんだろうかというところに表現としての疑問を持ったというところと、広めに網をかけた上で、それを精査していく必要があるが、そこには非常にコストがかかるので、そこをAIで効率化していこうということなのかなと理解してご説明を伺ったところでございます。

その上で、質問なのですが、全銀協さんの資料の3ページのフローチャートでは、アラートが生成された後で、アラートで検知されたものについての1次的な判定をAIで行い、そこで絞り込んだものを第2次でもっとしっかりと見ていくということになっていました。それでは最初のアラートの生成は何でやっているのだろうかというところが純粋に気になりまして、これも何らかのシステムでフラグを立てて出してくるのかと思うのですが、そうすると、アラートを最初に出すところとAIによる1次判定とは、何が違うのでしょうか。少し流れのイメージが分かりにくかったので、ひょっとしたら御説明があったのかもしれないのですけれども、御教示頂ければと思います。

最後、コメントなのですけれども、AML/CFTは非常に大事な問題かと思いますし、また、それを進めていくに当たって、利用者の個人情報の取扱いというのも非常に重要になってくるので、そこは不安がないようにしなければいけないという御指摘が何人もの方からございました。いずれもそのとおりかと思うのですけれども、もう一つ、忘れてはいけないのではないかと思う観点として、こういう金融サービスの利便性ということも意識していかなければいけないように思っております。特にキャッシュレスがコロナ禍の下でどんどん進んでいっているわけなのですけれども、消費者にとっては、安心安全ということも大事なのですが、同時に日々の生活をできるだけストレスフリーで行えるということも重要なものだと思います。また、一般の市民生活の中では、銀行の窓口での本人確認とかが煩雑だと思う人も一定数いるのではないかと思われます。AML/CFTが大事なことはもちろん全く否定しないのですけれども、それによってできるだけ消費者の利便性が害されることのないように、そういった問題意識も検討の中で持っていって頂ければいいのではないかと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【神作座長】

後藤メンバーありがとうございました。

2つ御質問頂いたと思います。1つ目は、これは事務局にお尋ねしてよろしいのでしょうか。議論の対象といいますか、範囲でございますけれども、情報の共同システム化について、法的な制約があれば、そういったものについても検討する、あるいは、全金融機関の参加を強制するという方向性なのか、ワーキング・グループの議論の出口とおっしゃいましたけれども、何について、どのような観点から議論すればいいのかという問題提起を頂いたと思います。これは事務局に回答をお願いしてよろしいですか。

【端本信用制度参事官】

まず、1点目の点ですけれども、資料1にありますとおり、諮問の内容、制度の在り方について検討するということになっております。その上でということなのですが、銀行が業務の一部を、共同機関のようなものを含めて委託することについて制約はございません。そういう意味で、何か制約があって共同機関ができないということではないのですが、他方で、これだけ多数の金融機関が委託をする可能性がある共同機関について、業務の質を確保するということは極めて重要です。ですので、そうした場合に、共同機関自体の業務の質を確保するような制度的整備を行うことが適切かどうかと、そういう観点から御議論頂きたいということでございます。

それから、利用を義務づけるかどうかということですけれども、FATFの審査報告書にもありましたけれども、一部の金融機関につきましては、相応の対応が進んでいるという評価があったかと思います。また、犯収法、外為法等の義務は、各金融機関に対する義務ということでございます。各金融機関が、それぞれのリソースできちんと対応するということは、今後も当然あり得ると思いますし、そうした観点から全ての金融機関が共同機関を必ず利用しなければいけないということではないのかと思います。また、そういう前提で全銀協においても検討されているのではないかと思います。

【神作座長】

後藤メンバー、よろしいでしょうか、第1点目について。

【後藤委員】

どうもありがとうございました。

【神作座長】

それでは、第2点目は、これは全銀協の伊藤さんへの御質問だったかと思います。AIの利用において、どのような情報をAIに投入しているのかということだったかと思いますけれども、お願いできますでしょうか。

【伊藤オブザーバー】

質問ありがとうございます。まず、アラート生成と記載しておりますのは、まず各行単位で、個々のシナリオを基にフラグ立てして、これはアラートだよねというのを検知すると。その各行レベルで出てきたアラートを、共同システムにおいて、1次判定としてAIを使ってより絞り込むという流れです。そういう意味では、作業する主体が変わっている図でございます。よろしいでしょうか。

【後藤委員】

どうもありがとうございました。最初のアラートは共同システムではなく各金融機関がやるというのは、これは共同システムの負荷が大きくなってしまうからということなのでしょうか。最初のところが各行任せになってしまうと、問題となるケースが共同システムに行かなくなる可能性があり、共同システムの意味がないような気もしたのですけれども。

【伊藤オブザーバー】

そうですね。そういう意味では、基本的に、まずは各行レベルにおいて、リスクベースの判断というのが、まず求められると思います。そこが最初のアラート生成と書いてある段階で、各行レベルでのリスクベースの判断があって、そこから初めてプロセスとして共同化という貌をコア機能として考えているということでございます。

【後藤委員】

どうもありがとうございます。どういうものとして設計されているのかは理解いたしました。各行レベルの判別が緩いと言われている金融機関がもしあるとすると、そのときにはどうするのだろうという疑問が残るように思いますが、取りあえず、今日のところは了解いたしました。ありがとうございました。

【神作座長】

よろしいでしょうか。それでは、続きまして、巽メンバー、お願いします。

【巽委員】

東京大学の巽と申します。行政法を専門にしておりまして、必ずしも金融法自体は専門ではないのですけれども、今回のお話に近いものとして、最近、地方公共団体がガバメントクラウドという一種の共同のシステムを使うために、行政法の中でいろいろな動きがあるところですので、それと比較しながら伺っていたところでございます。

私から何点か御指摘させて頂きたいところとしては、既に複数の委員から御指摘あったと思うのですけれども、システムを共同化するとしても、そのシステムを使って何かをやるというのは各行であるわけでして、各行の顧客の属性ですとか取引の態様というのは様々で、リスクの在り方も様々であるということになりますと、結局、共同のシステムをどう作るかということに加えて、作った後のアップデートについても各行からのボトムアップの仕組みをきちんと入れていかないと、せっかく一度いいものができても、その後の流れに対応できないということになってしまうかもしれません。地方公共団体でも似たようなところがあります。結局、共同運営機関と呼ばれたもののガバナンスの仕組みを考える際に、各行の固有の事情をきちんと適時にフィードバックしていけるような法的な仕組みを用意するということが、必要になるのかなと思った次第でございます。

関連で、各行がそれぞれ共同システムを使うという話に分解していくよりは、例えばファイナンシャルグループ単位で、ある程度まとまることができないかといった御指摘もありましたけれども、そういう各行のニーズの細かな調整の部分も含めて、全銀協さん、地銀協会さん、第二地銀協会さんが御対応なさっていることを適切に情報提供頂くということが、今後、必要なのではないかと思った次第でございます。

あわせて、地方公共団体のほうでまさに問題になっているのは、共同のシステムを使う前提として、各地方公共団体が持っている自前の情報処理システムが標準化されないといけないという話でございます。要するに、地方公共団体の場合は、各自治体がそれぞれの経緯で、いろいろなベンダーにいろいろな形で業務システムを発注して、それぞれが固有の情報システムを使い続けてきていたわけなのですけれども、共通のシステムに接続する際に、たとえば各自治体のデータのフォーマットがそろっていないと、共同システム自体が機能しないということがあります。流れとしては、共同システムの構築はまだまだ先の話で、今年は各自治体の情報システムを標準化するための法律が成立した段階です。こちらは必ずしも今日、お答え頂きたいということではないのですけれども、銀行の中にもそういう問題はひょっとしたらあるのかなということが気になっておりまして、共同システムを作る前提として、先ほど決算システムとの連結の話がありましたが、そういう各行が作っている情報システムを、もし標準化のために改修しなければいけないとなると、それは共同システムを作る段で、綿密にすり合わせる必要があるのだろうなと推察しております。こちらは全銀協さんのほうで取組がされているのだと思うのですが、いずれで結構ですので状況を教えて頂けますと、こちらの議論の内容に資するのではと思った次第です。

もう一つは、1つ前の後藤メンバーの御質問に対するお答えでありましたとおり、法制度としてどういうものを仕組むのかというところを今後、詰めていかなければいけないとすると、行政法としてはかなりバリエーションがあり得る話かなと思っています。法律は変えずに行政が各行の取組を支援するという一番緩やかな形から、各行に法的な義務を課して、各行と共同運営機関との間の契約ですとか取決め、覚書のようなもので共同システムの適正性を担保してもらうというやり方もあれば、一番直截なのは、共同運営機関自体を法律で規律してしまうというやり方まで、いろいろなバリエーションがあり得るだろうと思います。目指す仕組みの実質を先に詰めないといけないわけですが、それを法的に実現するにはいろいろなパターンがありそうだということだけ思ったということでございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。直ちに本日、お答え頂くことはないということでしたけれども、ただ今の巽メンバーからの御発言に対して、事務局及び全銀協のほうからコメントございますでしょうか。どうかよろしくお願いいたします。

【尾崎マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長】

マネロン対策企画室長の尾崎です。巽先生、ありがとうございます。実はデータのやり取りにおけるデータのクオリティーとかプロトコール、手順、これが実は肝の1つでありまして、御指摘のとおりです。ここがうまくいかないと、データ分析ができないということです。また、システム的に負担をかけずに、すなわち、ハードを変えずにソフトでこういう情報を入れると、こういう質のいいアウトプットが出るのだということを、この共同体に参加することによって参加者に教育できるというか、それによって使用データの標準化を通じて、データ分析のレベルを上げるということを一応基本設計の方向性として考えております。当然、マッピングとかいろいろやらなくてはいけないのですけれども、手順やデータ・フォーマットの標準化といった点、そこが非常に重要な指摘でございまして、ありがとうございました。

そこだけ私のほうからはその点、コメントさせて頂きたいと思います。ありがとうございます。

【神作座長】

全銀協の伊藤さんから、今日の時点で何か御発言ございますか。もしあれば、どうぞ。

【伊藤オブザーバー】

今、尾崎室長がおっしゃったことと同意見でございます。私どもの資料の5ページの、今後の要検討事項の中でもお示ししておりますが、こういった参加行のシステムと共同機関のシステムの連携は非常に大きな1つの論点だと思っていますので、今後しっかり検討していきたいと考えております。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。巽メンバー、よろしいでしょうか。

【巽委員】

ありがとうございます。

【神作座長】

ありがとうございました。それでは、森下メンバー、お願いいたします。

【森下委員】

ありがとうございます。もう既に多くの先生方がお話しになられたところとあまり異なるところはないのですけれども、私もこのような形で、共同でこの問題に取り組んでいくということは、本当に進められるべきだと思いますし、AI、その他を活用して適切に対処できるようにしようというのは、本当にぜひ進めていきたいのかと思っております。

後藤メンバーから顧客利便性ということとのバランスも大事ではないかというお話もあったと思いますけれども、個別の行員の方が店頭で検知するということにはいろいろ限界もあるでしょうし、システムをうまく使うことによって、本当に危険な取引がうまくピックアップできることになり、それが、金融機関のコストや負担も下げるし、あとは利用者の利便性も下げるといった形で寄与するようなシステムを、どうせ作るのだったら作れるといいなと思っています。異常値を発見するということとの関係では、なるべく多くのデータが集まること、客観的で正確なデータが集まるということが大事だと思いますので、個別行で個々の経験値に即して検討しているだけではなくて、より多くのデータや知見に基づく分析がなされていくという方向性は非常にいいのではないかと思います。

その上で、この制度がうまくいくかどうかは、中央にいるシステムがどこまで有効に機能するかということに関わってくると思います。NEDOで実証実験をされて、ある一定の効果はあったということだと思うのですけれども、日本の金融機関の中核となって、マネー・ローンダリング関係の情報の分析をするという責務を課される組織ということになると思いますので、そのクオリティーをどう担保していくか、人の面ですとか、コストの面ですとか、あるいは継続的な向上を常にしていけるような体制ですとか、あるいは海外との知見の共有ですとか、そういうことも含めて、しっかりとした体制というものを作るということが非常に大事なのかと思います。

先ほど事務局から体制の制度的な整備ということを、ぜひワーキングで考えてほしいというお話があったと思うのですけれども、共同化ということだけではなくて、共同化を引き受ける組織に何が求められるのかということについても、高い目線で果たすべき役割を果たして頂けるような体制ですとか、業務運営ですとか、そういうものの在り方を考えていければいいのかと思っております。

あと、もう1点、思いますのは、この組織が比較的シンプルに情報処理をして、異常値があったら、そのアラートを機械的に各金融機関にフィードバックするということが期待される組織として作るのか、そうではなくて金融部門・決済部門におけるマネー・ローンダリング、あるいはテロ資金対策における、もう少し大きな役割を果たす象徴的な機関として、中心的な機関として位置づけるのかということはあると思います。各行個別の事情があるというのは本当にそのとおりだと思うのですけれども、いろいろ重要な部分の情報処理を中央の機関に任せた後に、個別の金融機関と中央の機関との役割分担について、どういう役割分担をするとそれが理想的なものになるのかというのは、こういった制度を設計するときにすごく大事だと思います。こっちの責任、あっちの責任ということの隙間にぽとんと落ちるとか、一方からデータが来たのでそのままにしましたとか、あるいは個別の事情を配慮しようとし過ぎて、全体のメカニズムがうまくいかなくなったとか、どっちもないように、いい役割分担ということができるようにして頂いたらいいのかと思っています。

あとは、こういった集中的に情報が集まる機関としては、ただ単に、情報処理ですとか、異常値を検出してそれを通知するというだけではなくて、こういうことがありましたですとか、全体として共有すべき情報を積極的に発信していくということも大事なのかと思います。海外と日本では、こういったマネー・ローンダリングとかテロ資金とか、そういうことに対する感度というか危機の意識が大分違うと言われたりもしますので、情報が集まる機関として、関係の団体に情報発信していくということがあってもいいのかという気もします。そういったことも含めて、本当にこの機関に何を担って頂くのがベストなのかということをしっかりと考えていく必要があるのではないのかと思っております。

その他に関しては、デジタルマネーということについて、括弧で書かれていますけれども、私は電子マネーというものの利用がかなり普及してきた中で、電子マネーに関する法制度が現状、本当に過不足ないものとなっているのだろうかというあたりというのは、1度点検してみてもいいのではないのかと思います。マネー・ローンダリングというのは、そのうちの切り口の1つだとは思いますけれども、それに限らず、電子マネーの社会的なプレゼンスが非常に高まってきており、電子マネーの中にもいろいろなものが出てきているという中で、今の資金移動業と前払式支払手段という枠組みが、本当にベストにそれを把握できているかという問題は、場合によっては検討してもいいのではないかと感じております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。本日、御参加頂いたメンバーの皆様からご発言を頂いたと思います。まだ少々時間がございますので、さらに御発言される方、ぜひチャットでお知らせ頂ければと存じますけれども、いかがでしょうか。オブザーバーの方もどうぞ御発言ください。国際銀行協会の鳥海さん、お願いいたします。

【鳥海オブザーバー】

国際銀行協会の鳥海でございます。ありがとうございます。私のほうからは、全銀協様に要望と御質問を2点ほど、述べさせて頂ければと思います。

御丁寧な御説明ありがとうございました。要望と申しますのは、先ほど先生方の発言の中で、信用金庫さんをはじめとします、幅広い業態でのニーズですとか展開について、御発言がございました。私どもも外国銀行の在日拠点が加盟しておりますが、大変高い関心を持っております。また、一定のニーズもあるのではないかと存じますので、今後とも前広な情報共有をぜひお願いしたいと存じます。共同システムということですので、いろいろな意味での外部性がございます。参加していない、利用していない業態は弱いのではないかというような御発言もございましたので、その辺り、非常に私どもも関心を持っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

それから、質問になりますけれども、2つほどございまして、1つはフィルタリングに関するものなのですが、フィルタリングの対象として、反社会的勢力が含まれているのか否か、反社会的勢力のフィルタリングが共同化の対象になるのであれば、金融機関としては利用価値が高い、利用希望が多いのではないかと考えるものですから、その辺りいかがなのでしょうか。

これが1点と、もう一つの御質問はモニタリングに関するものでありまして、先ほど加藤先生、それから松井先生もおっしゃっていたと思うのですが、個別の銀行には固有のリスクというのがございまして、例えば、私どもの業態ですと、よく知られておることなんですが、海外送金について、お国柄によってパターンが異なると。ある国のお客様は1度にまとまったかなりの金額を送金なさるのに対して、別のある国のお客様ですと、少額の送金を頻繁に送ると、こういったことがございます。ですので、共同システムの中で、自行の取引データにぶつけるシナリオパターンが限られた数の共通シナリオだけですと、無用なフォールスポジティブが生じてしまうおそれもございます。

そういう意味では、個別行に応じたパラメーターを調整するといった共同システムに対する細やかなインプットとか、学習を施した上で当該行の取引データにぶつけるような機能も検討に値するのではないかと思っておったところなのですけれども、先ほど後藤先生の御質問に対する全銀協様のお答えをお聞きしたところ、どうも固有のリスクは、まず個別行で洗い出した上で、個別行では把握し切れないような比較横断的なリスクを洗い出すために共同システムのほうにデータを流して御利用くださいと、こういった設計のような印象を持ってしまったのですが、その辺り、正しく理解したいものですから、一度確認させて頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【神作座長】

ありがとうございます。どうぞ。

【端本信用制度参事官】

全銀協からお答え頂く前に、まず取引フィルタリングのところですけれども、事務局のほうから出させて頂いている資料なのですが、外為法、国際テロリスト財産凍結法を例示させて頂いていますけれども、こうした法令に基づくフィルタリングについて、制度的な対応を考えてはどうかということで御提案申し上げています。共同化によって効率化が図られるものとして、そうしたものを提案させて頂いているということでございます。

【神作座長】

ありがとうございます。どうぞ。

【尾崎マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長】

尾崎のほうからモニタリングのほうについてお答えいたします。当然シナリオは、それぞれ金融機関のビジネスモデルによって違うということもありますので、将来的には、金融機関ごとにシナリオ変えるということも、これはオプションとしてあり得る検討課題と考えております。

また、AIを使った機械学習ということで、その辺も活用できる可能性もありますので、そこは鳥海さんの御指摘のとおり、各金融機関ごとに違うパターンといったものも認識した上で疑わしい、もしくは異常な、普段と違うパターンの取引をシステム的に検知するということを考えていくという方向性だと思います。

それから、会長行の伊藤さんからのお答えの前に、ひとこと。これは全銀協さんで、今、ご検討頂いているのは、まさにどのようなオプションをメニュー・オプションとするのかということも、検討課題でございます。事実、既に取引モニタリングシステムは多くの銀行で入っております。もしくは、共同化を一部進めているところもあります。そことの兼ね合いもありますので、既に自分のところでお持ちのモニタリングシステムの結果をここで追加検証するというメニューがメインでありますが、将来的には、取引データをそのまま共同体に渡して、共同化のほうで取引モニタリング・システムでの検知をするというメニューも当然オプションとしてあり得るということです。これらの選択肢を検討する中で、できるだけ選択肢を狭めずに、利便性と効率性の観点から、できるだけ広くメニュー・オプションを考えていくということで、今、協会のほうで検討して頂いているということと理解しております。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは、全銀協の伊藤様、御回答頂くことできますでしょうか。

【伊藤オブザーバー】

三井住友の伊藤です。尾崎室長ありがとうございました。尾崎室長のおっしゃるとおりでして、私どもとしては、そういう意味では、鳥海さんの御指摘頂いたようなシナリオも含めたオプションを様々に今後、検討していくということで、これも5ページのサービスイメージのところにも書いておりますけれども、複数のオプションを状況に応じて検討していくということを今後、進めていきたいと思っています。

1点目に御要望頂いた幅広い情報共有というところにつきましては、私どもももちろん前広に、いろいろなところで連携をさせて頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。

【神作座長】

ありがとうございます。鳥海さん、いかがでしょう。よろしいでしょうか。

【鳥海オブザーバー】

ありがとうございました。

【神作座長】

それでは、西川メンバーから追加の御発言があるということです。西川メンバー、お願いいたします。

【西川委員】

すいません。2点確認をさせてください。

1点は、AML/CFTという業務、もしくは今、議論をさせて頂いている枠組みの中のガバナンスの話なのですが、私、本日の御説明を伺って、想像をたくましくして聞いていたのですが、今回のセンターができた後に疑わしい取引を検知、もしくは、先ほどの制裁者対応の検知というものの責任の所在、管理の所在というものはどうなるのかということを、次回の議論のために今回はっきりさせておくことが有用ではないかと。海外の例でありますとか、実務者の感覚ですと、センターの高度な機能を使った場合であっても、疑わしい取引の検知、届出、もしくは制裁者への対応のガバナンスを利かせて、それに対応する義務というのは、あくまでも事業者側にあるという印象を持っているのですが、現状のデザインはどういう形で議論されているのかということも、お答えを頂きたいと思います。

ちなみに、金融機関等の事業者側にあった場合、本日も委員からお話が出ているとおり、ちゃんとしたデータ、使えるデータ、評価に値するデータを出せるかどうかというガバナンスに関しても、今回の資料4にあります通り、継続的顧客管理をしっかりした上で今回の枠組みに参加するというところも各事業者の責任だと思います。一方で、非常に高度な機能を利用して、一対一でマッチさせるような機能なのか、インテリジェンスを持っているような海外で実例がある機能なのかというのは、今後議論されるのでしょうけれど、そこに対する最大限の努力はセンターがしていることが前提で、それの結果責任というものは事業者側で持つことになるのかと思いました。ただし、今回、委員からもお話があったとおり、最大限努力している場合には、法的な対応としては当然のことながら、エラーは認めざるを得ないということもあるのかと思います。こういう議論を今後していく中で、疑わしい取引の検知、届出の最終的な責任が誰にあるのかということをはっきりしておくということが、センターのあるべき姿を検討する上で非常に重要かと思って、1つ目の質問とさせて頂きました。

2つ目の質問は、先ほど尾崎室長からもご説明あった、何を対象にするのかというところで、モニタリングに関しては本日議論ができていると思うのですが、フィルタリングの場合に、全量データのフィルタリングなのか、何らかの選別があった後のフィルタリングなのか、この辺りについては、現状あまり絞らずに検討しているのかどうかということを、念のためですけど、ご回答お願いできないでしょうか。

西川からは以上です。

【神作座長】

ありがとうございました。事務局に回答をお願いしてよろしいでしょうか。

【端本信用制度参事官】

まず、前段の御質問に対してお答えしたいと思います。

資料4-1ページ、①、②に記載させて頂いていますとおり、共同機関と照合して、その結果を銀行等に通知する業務です。それから疑わしい取引も通知する業務です。その通知を受けまして、疑わしい取引の届出をするかどうか、あるいは通知を受けまして、取引をするかどうか、その判断は金融機関に残っております。金融機関の義務が変わるものではないということで御理解頂ければと思います。

【西川委員】

承知いたしました。ありがとうございます。

【神作座長】

尾崎室長お願いします。

【尾崎マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長】

2つ目のほうのフィルタリング、スクリーニング業務の対象範囲について、尾崎のほうから、今の考え方、これは当然、今後の検討次第ということであるのですが、ご回答させて頂きます。

現状では、スイフトのメッセージ上の情報、すなわち外国送金のスイフトメッセージタイプというスイフトプラットフォームでやり取りする情報を対象とすると検討しております。しかし、将来的には、例えば、貿易書類等のデジタル化が進んだ場合には、当然そこも検証の対象にしていくということは、今後の検討課題としてあり得るということです。当然、西川メンバーからも御指摘があったとおり、それを最終的に判断するための材料は、ここで共同化と捉えたとしても、その判断に至るまでのインプットと最終判断をするためのデータというのは、お客様の属性であるとかお客様の履歴であるとか、そういった継続的顧客管理に基づいて、各金融機関が持っているものですので、それらのデータと照らし合わせながら、各銀行が最終判断するということになると、そこも当然重要になってきます。そこは共同化から、参加銀行を指導する範囲ということで、今のところは、共同体での分析は考えておりませんけれども、そういったことも、例えば、将来的には共同化の中で課題が出てきた場合には、共同体で分析し、参加行に還元していくということも1つあり得るのではないかと思います。ご質問への直接的なお答えとしては、現在フィルタリングの対象はスイフトのメッセージタイプというところから検討を始めていると、いうことになります。

尾崎からは以上です。

【西川委員】

そうしますと、スイフトのメッセージを全量、センターに送るというのが基本デザインであると、こういう理解でございましょうか。

【尾崎マネーロンダリング・テロ資金供与対策企画室長】

さようでございます。

【西川委員】

よく分かりました。ありがとうございます。

【神作座長】

よろしいでしょうか。

【西川委員】

ありがとうございます。

【神作座長】

それでは、続きまして、日本資金決済業協会、長楽様、ご発言ください。

【長楽オブザーバー】

日本資金決済業協会の長楽でございます。本日は発言の機会を頂き、誠にありがとうございます。また、金融庁ワーキング・グループ事務局、全銀協、地銀協、第二地銀協の皆様方から丁寧な御説明を頂き、誠にありがとうございました。

資金移動業者におきましても、「取引フィルタリング及び取引モニタリングに関する適切な体制の構築・整備」が求められており、個々の資金移動業者においてその体制整備に取り組んでいるところでございます。しかしながら、資金移動業者がこれらの事項に関し、適切に対応するためには、制裁対象者等を含むデータベースの整備・更新、確認記録・取引記録等の作成・保存・管理、取引状況等の分析のために抽出基準を設定し、異常取引等を検知するためのシステムの整備、ノウハウの蓄積及び人的リソースの確保等が必要と考えられ、個々の資金移動業者単独での体制整備の高度化には多大なコスト負担を要し、特に規模が小さい事業者にとっては、経営上の負担が大きいものと考えられます。

金融庁から説明がありましたように、資金移動サービスは、マネロン等に悪用されるリスクは他業態に比べても相対的に高いとされているところであり、共同システムの実用化に当たりましては、その実効性を確保するためにも、資金移動業者が参加できるような枠組みでの検討をぜひともお願い申し上げます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございます。ほかに御発言、御希望ございますでしょうか。

ちょうど時間になってまいりましたけれども、本日は、たくさんの貴重な御意見を頂戴いたしました。本日の御説明及び御意見を踏まえ、今後、さらに議論を深めてまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。

最後に、事務局から連絡事項等がございましたらお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で後日、御案内させて頂きます。よろしくお願いいたします。

【神作座長】

それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了いたします。本日は誠にありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線3572、3543)

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