金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第2回)議事録

  • 1.日時:

    令和3年11月11日(木曜)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第2回)
令和3年11月11日
  
【神作座長】

それでは、定刻よりも少し早いのですけれども、皆様おそろいということですから、ただいまより、資金決済ワーキング・グループの第2回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参加いただき、誠にありがとうございます。

本日の会合も、前回に引き続きオンライン開催とし、一般の傍聴はなしとした上で、メディア関係者の皆様には、金融庁内の別室において傍聴いただくこととしております。

次に、本日の会合より、オブザーバーとして、個人情報保護委員会事務局、日本銀行、預金保険機構、信託協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、日本STO協会、新経済連盟、日本IT団体連盟にも御参加いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、早速でございますけれども、議事に移ります。

本日は、まず前半の70分は、前回の会合に引き続き、銀行等におけるマネーローンダリング・テロ資金供与対策の高度化や効率化に向けた対応、これをテーマとして、事務局より説明をいただき、メンバーの皆様に本論点の議論を深めていただきたいと存じます。

次に、後半の50分では、デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会における中間論点整理について、事務局より紹介いただきます。今後、本ワーキング・グループでは、この論点整理も踏まえ、送金・決済分野における諸課題について御検討いただければありがたいと存じます。

なお、討議に当たりましては、資料1-2および資料2-2の、本日討議いただきたい事項を適宜御参照いただければと存じます。

それでは、事務局より説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料1-1に沿って御説明させていただきます。

まず、2ページ目ですけれども、前回いただいた御指摘事項ということで御紹介させていただきたいと思います。まず、共同化の意義といたしまして、1つ目の丸ですが、AML/CFTは利用者保護においても重要な意義を有する。2つ目の丸でございます。金融機関がAML/CFTに投下できる資源には限界があるため、取引フィルタリング・取引モニタリングを対象とするシステムの共同化は、このような状況を改善できる可能性がある。3つ目の丸といたしまして、金融システムネットワークの全体でしっかりと取り組む必要がある。4つ目です。より多くのデータや客観的な知見に基づく分析が実施されるという方向性は適切。

続きまして、共同化の対象ですけれども、1つ目の丸で、高リスク領域の代表的なものである為替取引に関しまして、各銀行等による継続的な顧客管理を適切に行うことを前提として、フィルタリング・モニタリングについて国が支援することが適切だ。2つ目の丸です。預金取扱金融機関を対象機関として想定しておりますけれども、大口資金の送金が可能な第1種資金移動業者も含めていくべき。マネロン等は脆弱な部分が狙われるため、その他の送金や類似のサービス提供者も、同時でなくても同様の枠組みに含めていくことが必要。次の丸でございます。AML/CFTは、取引の種類を考慮することが必要。為替取引から実効性を担保していくことが現実的。業規制でございます。共同化には適切な業務運営を図るための法的な枠組みが必要である。

3ページでございます。共同システムの運営主体と利用する銀行等の間の責任の所在に関しまして、実情を踏まえ、監督対応を行うべき。次の丸ですけれども、個人の機微情報も含まれている顧客管理データの取扱いについて、高度なデジタル技術の活用と法的ルールの明確化の両面から対策を講じるべき。

個人情報の取扱いに関しましては、個人情報の適切な取扱いがシステムの共同化に当たり非常に重要。次です。情報環境が劇的に変化し、個人情報の適正利用やプライバシーへの配慮はより慎重になる必要がある。個人情報保護法の考え方を踏まえ、適切な仕組みの検討が必要。

それから、共同機関における実務に関しましては、業態により顧客の属性や種類、規模は異なる。次の丸ですけれども、各行独自の情報システムとの関係。それから、次の丸ですけども、関係団体に積極的に情報発信することも重要だと御指摘いただきました。

最後、国民の御理解をいただくという観点から、政府も広報等を通じて周知を進めるべき。それから、最後の丸ですけれども、AML/CFTにより、可能な限り利便性が損なわれないようにするという観点も必要だという御指摘をいただきました。

続きまして、共同機関に対する業規制の概要でございます。5ページでございますけれども、まず、考え方といたしまして、共同機関が多数の銀行等から委託を受け、その業務の規模が大きくなる場合は、委託元の銀行等による委託先の共同機関に対する管理・監督に係る責任の所在が不明確となるおそれがございます。また、共同機関の業務は、AML/CFT業務の中核的な部分を担うものであります。適切に行われなければ、日本の金融システムに影響を与えるということで、このような場合を念頭に置きまして、業規制を導入し、当局による直接の検査・管理等を及ぼすことで業務運営の質を確保することとしてはどうかということでございます。

その下を見ていただきますと、対象業務でございます。銀行等ということで、預金取扱等金融機関、それから資金移動業者からの委託を受けて、為替取引に関しまして、①フィルタリング関連の業務、②モニタリング関連の業務となってございます。参入要件といたしまして、一定の財産的基礎、あるいは業務を適切に遂行できる体制の確保等を求めていく。兼業規制でございますけれども、取引フィルタリング・モニタリングに関連するものを基本に考えてはどうかということでございます。

個人情報の適正な取扱いの関係では、銀行等と同様の個人情報保護の上乗せ規制としての体制整備義務等を、この共同機関に対して課していってはどうかということでございます。

続きまして、FATFにおきます課題等を御紹介させていただきたいと思います。7ページでございます。

2021年のFATFのレポートでは、データプーリング、それから共同分析等につきまして、以下の指摘があります。まず、タイムリーかつ負担の少ない方法で、マネー・ローンダリング等に係る要求を遵守することが可能となるという一方で、次のところですけれども、一定の場合には、基本的権利や個人の権利に対するリスクを伴うというような指摘がなされております。

次のページ、8ページでございますけれども、同レポートでは、当局者、民間セクターを含めた幅広い者に対するアンケート調査を行っております。その中で、その下の棒グラフを見ていただきますと、データプライバシー及び個人情報保護が主な課題というふうに指摘されている方が非常に多いということがうかがえます。AML/CFTと個人情報保護につきましては、各国の法制の下で、バランスの取れた形で考慮されなければならないという指摘がされているところでございます。

続きまして、我が国におけます個人情報の適正な取扱いの観点から御説明させていただきたいと思います。まず、10ページでございます。

共同機関におきましては、業務実施に当たりまして、政府機関等が公表する制裁対象者リスト、それから、銀行等が利用者から取得した顧客情報や取引情報といった個人情報を含む多くの情報を取り扱うこととなります。その具体的な情報の内容の例、イメージとしては、10ページの下にあります制裁対象者リスト、それから顧客情報/取引情報としてどのような情報が渡されるかということについては、ここの10ページの下のものを前提に御議論いただければということでございます。

それから、11ページは2つ目の論点といたしまして、個人情報保護法上の上乗せ規制として、今の銀行等に課せられている体制整備義務の規律でございます。ここにあります情報の安全管理措置等々、ここに記載させていただいているのと同じものを、共同機関に適用していくことが考えられるということでございます。

続きまして、12ページでございます。論点3つ目といたしまして、個人情報保護法の要請であります利用目的の特定等との関係をどう考えるかということでございますが、下の箱のところの(1)の一番上のところを見ていただきますと、利用目的の特定ということで、銀行等は、個人情報取扱事業者は、個人情報取扱いに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければならないとされております。現行の実務との関係につきましては、一番下の参考、現在公表されている銀行の個人情報の利用例ということですけれども、犯罪収益移転防止法に基づく御本人様の確認等のために使うということが明示されているということでございます。

それから、13ページでございます。2、銀行等が個人データを共同機関に提供する際の顧客による「本人同意の要否」ということでございますけれども、原則につきましては、その一番上のところにございます、銀行等は、原則としてあらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならないということでございますけれども、例外といたしまして、委託に伴って個人データが提供される場合には共同機関が第三者に該当しない、というのがございます。

1つ目のポツですが、銀行等が利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データの取り扱いを委託することに伴ってデータが提供される場合には、データの提供を受ける者(共同機関)は第三者には該当しないということでございます。ただしということですけど、この場合におきましては、提供先(共同機関)は、銀行等から委託された業務の範囲内でのみ、提供主体である銀行等と一体のものとして取り扱うことに合理性があるということで、委託された業務以外に、当該個人データを取り扱うことはできないとされております。

それから、その下でございますけれども、各銀行等から提供された個人データを区別せずに取り扱っている場合は、委託された業務以外に、当該個人データを取り扱っていることとなるとされております。

その他、個人情報の該当性につきましては、複数人の個人情報を機械学習の学習用データセットとして用いて生成した学習済みパラメーター、重み係数ですけれども、当該パラメーターと特定の個人との対応関係が排斥されている限りにおいては個人情報に該当しない。同意なく共有できる、提供できるという整理がされております。

以上を前提といたしまして、14ページでございます。共同機関における個人情報の適正な取扱い⑤といたしまして、想定される取り扱い事例でございます。

1つ目の丸のところにございますとおり、共同機関におきましては、業規制等に基づく適切な検査・監督等の下で、例えばということでございますけれども、まず1つ目のポツ。各銀行等から共同機関に提供される個人情報を分別管理し、他の銀行等と共有しない(事例1)。さらに共同化のメリット、分析の実効性向上を図る観点から、ノウハウを個人との対応関係を排斥された形で共有する(事例2)というようなことが想定されます。このようなことでありますと、個人情報の保護を適切に図りつつ、プライバシーにも配慮した形で、バランスを取りながらAML/CFTの実効性向上に努めることができるのではないかということで、その下の図は、まず事例1ということで、分別して管理して、結果についても共有しないということのイメージでございます。

右側はそれに加えまして、パラメーターを共有するということですけれども、各パラメーターそれぞれの銀行の中のデータ分析の中からできたものについて、個人情報との関係を排斥された形で、銀行間で共有することがあり得るということでございます。個人情報そのものを共有するものではないということでございます。

15ページは御参考までに、業務フローのイメージ。それから、16ページは制裁対象者リストのサンプルということですので、説明を割愛させていただきます。

続きまして、18ページから、前回の会議で海外の事例を紹介してほしいというお話がございました。3つ御紹介させていただきたいと思います。

まず、オランダでございますけれども、5つの大手銀行が参加し、個々の銀行では検知できない異常な取引パターンを検知するシステムを構築することで、分析の高度化を図る取組を進めております。これにつきましては、その下のポツの4つ目にございますけど、今は法人顧客に関する為替情報に焦点を置いてやっているということで、個人情報につきましては法的な手当てが必要だということで、これについては、まだ現時点におきましても内容調整中で、法案提出がされたということではまだないというふうに聞いております。

続きまして、アメリカでございます。19ページですけれども、アメリカでは9・11の後にPATRIOT ACTということで法律ができております。民間研究機関等との間におきまして、マネロン等に関連すると信じる合理的な根拠を有している場合には、民間金融機関の間で個人情報を共有することをしても、その責任を負わないという規定がございます。

最後に、シンガポールを申し上げたいと思います。シンガポールにおきましても、これも今、提案中ということでございますけれども、金融機関の間で情報共有プラットフォームをする法的なフレームワークの提案がなされているということで、これにつきましては、そこの青字でありますけれども、顧客が複数の高リスクの振る舞い等を示唆するレッドフラグがあった場合には、金融機関間での情報共有のリクエスト、プロバイド等々ができるということを提案しているということでございます。

資料1-1は以上でございます。

続きまして、資料1-2につきましては簡単に御紹介させていただきたいと思います。

まず、1ページ目は、前回御議論いただいたものをまとめたものでございます。

それから、2ページ目の3.(1)基本的考え方、先ほど御説明させていただきました考え方で業規制を行うということについてどう考えるかというのが論点1でございます。

それから、論点2は3ページの(2)、参入要件、兼業規制、体制整備等とございます。これらについて御意見をいただきたいということが論点2でございます。

それから、論点3といたしまして、ただいま御説明申し上げた個人情報の適正な取扱い、想定される前提で共同機関としてやっていくということにつきましてどう考えるか。ここにありますとおり、分別管理、それから特定の個人との対応関係が排斥された形でノウハウ、やり方を共有するということで、個人情報の保護を図りつつ、AML/CFTの実効性向上につながるのではないかという考え方についての御意見をいただければということでございます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの説明を踏まえて、メンバーの皆様に御討議いただきたいと思います。なお、全体の時間との関係がございますので、お一人当たり5分以内での御発言をお願いしたいと存じます。

それでは、どなたからでも結構でございますので、御発言をお願いいたします。

いかがでしょうか。巽メンバー、どうぞ。

【巽委員】

巽でございます。専門の関係から、初めに幾つか申し上げたいと思います。前回、共同機関に関する規制を置くというときに、バリエーションが幾つかあり得るだろうということを申し上げましたが、事務局で整理いただいた方向性が合理的だろうと思っております。法律によって共同機関自体に業規制を課すことの理由付けは説得的であるように思われたところです。

その規制の中身に関しては、これからまた詰めることになるのでしょうけれども、共同機関のガバナンスの確保という点では、さらに複数のやり方があり得えますので、そちらを検討いただきたいと思います。例えば共同機関の法人の形態を、株式会社ですとか、一般社団法人ですとかそういうものに限定して、そのガバナンスは会社であれば会社法、一般社団法人であれば一般法人法の仕組みに委ねるという方法もあり得ると思いますし、それをやった上で、必要であれば役員構成ですとか出資の在り方について特則を置いていくというようなやり方も可能だと思います。私がふだん見ている行政関係の法人ですと、結構法律で細かく決めてしまうことも多いのですけれども、今回はあくまで銀行等に主導権を持って決めてもらうべきもののように思いますので、法人の形態を一般的に指定して、プラスアルファちょっと特則を置くぐらいのことになるのかなと推察しておりますが、各行の利害関係が適切に共同機関のガバナンスに反映されるような仕組みにしていただけることが重要かと思っております。

もう1点は、個人情報の関係です。少し事務局からもお話があったように思いますが、情報の安全管理等の規定を、共同機関についても法律の中に別途定めるという方向性であると承知しました。これまでも銀行法と資金決済法に、銀行ですとか、前払式支払手段発行者ですとか、それぞれについて情報の安全管理措置の条文が置かれてきておりますので、これと同じようなものを共同機関の業規制の中に入れるということになろうかと思います。そうしますと、今回共同機関にかける規制も、金融分野の個人情報保護法制の一環として、すなわち、個人情報保護法と金融関係の個別法の個人情報保護規定を、金融庁と個人情報保護委員会の共管で、ガイドラインの下で安定的に運用していくというサイクルの中に位置付けられることになります。ガイドラインだけで対応していくのではなく、法律にちゃんと根拠を置くというのは、規制の通覧性や透明性を高めるために重要だと思われますので、そういった形で進められることがよろしいのではないかと思った次第でございます。私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、末冨メンバー、お願いいたします。

【末冨委員】

ありがとうございます。末冨と申します。どうぞよろしくお願いいたします。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

業規制を及ぼすというお考えにつきましては、御説明のとおり、機微な情報を扱われるということと、あるいは金融システム全体における影響を考慮する上で信頼性を高めるという観点から、業規制を及ぼす必要性が考えられると思いますので、そのような基本的な考え方というのは、望ましい方向性ではないかと思います。

その点に関して、個人情報等の扱いについてきめ細かな対応がなされている点は、賛同できるところかと考えております。また、本日の御説明にもありましたとおり、制裁対象者リストに載っているような公開情報と、個々の金融機関が取得された個人情報に関わるものというのを分けた上で、それぞれ別途の扱いをされるというようなところもきめ細かな対応になっているかと思います。先日の打合せの中で、制裁対象リストに載っているような、ほぼ公開と言っていいようなものというのは、ほとんどの金融機関が既にもう対応済みであるというようなお話があったかと思いますが、FATFの報告書からは、その部分についても、依然として手当てが必要な部分があるのではないかというような印象を受けております。

といいますのは、国連で決議がされる場合もございますけれども、各国がそれぞれ個人を特定したような制裁対象リストというのをつくっているわけですが、中には事実上の域外適用が認められるような法制になっているようなところもありますので、そうしますと、必ずしも例えば日本の金融機関であるからといって、日本の制裁リストだけを守っていればいいというわけではないことから、金融機関によっては、場合によっては全世界のものをカバーしていらっしゃるところもあるかと思いますし、特に域外適用がされているような国をカバーしていらっしゃるところもあるかと思いますけれども、そういうことからすると、公開情報の部分を整備して共有するという点も非常に重要な部分になるのではないかと思います。

そうしますと、論点の2つ目になるわけですけれども、機微な対応がされる非公開の部分と、そうではない公開情報で、すなわち透明性を持って積極的に公開していく部分の明確化というのが必要になってくるのではないかと思います。その点、そうすることによって公開情報については、広く簡単に共有ができるということにする必要があり、反対に非公開の個人情報については、丁寧な対応という区別が明確になっている必要があるかと思います。

そして、次に論点3に進むわけですけれども、共有できる部分については、基本的には各金融機関のものについては、それぞれ別個の保有ということで、共有についても慎重にという御説明でしたが、これがそのまま貫かれますと、多くの情報が入ってくる金融機関が有する情報というのは積み重なって蓄積されて、データベースになるわけですけれども、それほど情報が入ってこない金融機関のでは、それが積み重ならないということで、先日も懸念が示された、情報の量の格差がそのまま継続してしまうことになるかと思いますので、この第三者的な立場で業規制を受けながら情報をコントロールされる共同機関においては、例えば、多数の金融機関から共通の情報が上がってくるというような場合で、より広く共有すべき場合などについて、厳格な基準を定めた上で共有化を検討するということも考えられてもよろしいのではないかと思いました。

以上でございます。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、石井メンバー、お願いいたします。

【石井委員】

中央大学国際情報学部の石井です。よろしくお願いいたします。御説明いただきましてありがとうございました。私のほうからは、個人情報の観点から幾つかコメントさせていただければと思います。

まず1点目、利用目的のところですけれども、資料でいいますと12ページや14ページあたりに、現状、犯罪収益移転防止法に基づく御本人様の確認等というような御説明があるところについてです。共同機関を使って疑わしい取引の管理を行っていくのであれば、もう少しブレークダウンして、個人情報が、どういう使われ方をするのかが分かるような形で利用目的を整理していただくということが望ましいと思いました。

それから、2点目についてです。資料1-1の14ページあたりで、第三者に提供する整理と、委託の整理の両方お示しいただきましたが、どちらのスキームでいかれるのでしょうか。個人情報保護法の委託スキームを使った場合は、委託元が委託先を監督する義務を負いますので、そうすると個別の銀行が、という話がまた出てくるかもしれず、そのあたりの整理をしておく必要があると思った次第です。

3点目です。重要な情報を共同機関が管理することになりますので、データの取扱いについての監査を定期的に行うなど、そうしたものも上乗せとしては考えられるかと思いました。

4点目、このあたりはよく分からないところですが、個人が自分の情報について、どういう情報を取り扱っているかを開示請求したような場合は、現行法に基づいても業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすということで、開示請求等には対応しないということだと思います。共同機関が動いていくときに、開示請求、訂正請求、利用停止請求、このような請求には基本対応しないことになるのであれば、考え方をきちんと整理しておく必要はあると思いました。

さらに疑わしい取引だということで届出を行ったものの、実は疑わしくなかった場合、情報の正確性が必ずしも担保できなかったような場合には、取引当事者は監視対象になるのでしょうか。情報に誤りがあったときに、訂正するようなプロセスが必要なのかどうか、このあたりは御教示いただければと考えているところです。

その他、透明性の担保も御検討いただければと考えております。利用目的をできるだけ明確化していただくところと関係してきますが、共同機関を使って何をするのかということが、銀行の利用者、一般の利用者に対して伝わるようにすること、疑わしい取引をきちんと規制するために必要だという、取組状況の趣旨を伝えていくこと、こうした透明性の取組も、昨今の個人情報の議論に照らすと、あったほうが望ましいと思います。

最後に、ヨーロッパの事案を御紹介いただいておりますけれども、ヨーロッパはGDPRという厳しい規制がありますので、GDPRとの関係でどういう審査がなされているかというところも調べていただけますと、個人情報との関係の整理に役に立つかと思います。

以上です。

【神作座長】

ありがとうございました。ただいまの御発言の中に、2つ御質問が含まれていたと思われます。1つ目は、第三者提供のスキームについて、資料では、委託スキームというのが掲げられているけれども、それでいくのでしょうかという御質問があったと思います。それから、2つ目に、疑わしい取引として情報提供された場合に、それが誤りだったといいますか、正確ではなかったというような場合の監視、コントロールの在り方について、御質問があったと思われます。事務局から回答いただけますでしょうか。

【端本信用制度参事官】

ありがとうございます。御指摘いただいた点は御質問いただいたもの以外、例えば利用目的をもう少し明示できないかと、その辺も含めて整理させていただきたいと思います。御質問いただいた点については、今の資料では委託構成で想定しているということで資料をつくらせていただいています。その際の委託元の銀行との監督責任等々の関係につきましては、考え方を整理させていただきたいというふうに思います。

それから、疑わしい取引の届出ですけれども、これはあくまで疑わしい取引の届出ということですので、実際に犯罪収益を移転するものなのかどうかという点については、そうでないものも当然含まれていると思いますし、そういう前提でお考えいただければと思います。

それから最後、ヨーロッパの法制との関係ですけれども、オランダもまだGDPRとの関係を整理して、法案を提出するところまで至っておりません。ですので、どういう形で整理するということも含めて調整されているのではないかというふうに推察されます。

以上でございます。

【神作座長】

石井メンバー、よろしいでしょうか。

【石井委員】

はい、ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございます。

それでは、続きまして、西川メンバー、お願いいたします。

【西川委員】

西川でございます。よろしくお願いします。

本日、特に重要な議論が個人情報の取扱いということで、皆様、御発言されている内容について私も全く異論はありませんが、その前提となっている今回の基本的な考え方について、少し確認をさせてください。

当局がなぜ共同機関に対する管理・監督を相当厳しくやっておかなければいけないのかというそもそも論の話になりますが、既に議論された通り、個人情報の取扱いがグローバルな観点でも最重要の要素であり、そこを当局の監督下でやるということは当然ではあるものの、その前提は、今回の共同化施策が犯罪対策というものを強化して金融システムを守るためだということです。犯罪対策として各金融機関は犯罪者とのいたちごっこに取り組んでいるものの、それが国際基準の間尺に合わないので国が御支援をするのであり、新しいリスク類型等に対して共同機関がしっかり対応しているのかを確認することも同じ目的だと、私は専門家として考えております。

もう一つは、システム面であるとかメソドロジー、いわゆる検知手法等に関しては、グローバルな金融機関の水準に対して日本国内は遅れていますが、これらは相当なスピードでずっと高度化、強化を続けています。これはテクノロジーがどんどん進んで進化しているから当たり前なのですが、このことが共同化の枠組みでしっかりキャッチアップされているか、究極的には犯罪対策に資する形で対応できているかということを確認する必要があります。せっかく導入した共同化の枠組みが機能せず、日本の金融システムの国際的な評価も上がらないということを回避するためには、やはり当局がしっかり管理することが必要であろうと、私は専門家として認識しています。

その中には、冒頭お伝えした個人情報の管理というものも重要項目として当然入っていますし、AML/CFTの世界ですと、例えばこれはセカンドラインの管理部署のみならず、サードラインの監査部署に対しても、専門家が定期的なレビューをする、または社内の専門家が毎年レビューをしていて、それを外部の専門家が一定期間ごとにレビューをして、更にそこで検査が入るというような、いわゆるかなり手厚い内容確認、有効性、正確性の確認をするということが一種の常識になっているので、第三者の確認、監査を入れたらどうかという委員のコメントがございましたけれど、監査を入れるということ、内部監査のみならず外部監査も入れて対応する形を取ったうえで、最後当局が検査に入って確認すると、こういうことも含めて、基本的な考え方に入っていると思って御質問を差し上げます。

もう一つは、委員のお話の中にもありましたが、どういう形の情報を個人情報でない形で共有していくのか、公開情報と非公開情報の話は御発言があったとおりですが、特にAML/CFTの実務の世界で言いますと、今回の資料でパラメーターというふうにお示しもされているのですけれども、いわゆる類型化された、こういうケース、こういう経路をたどって資金が移動した場合には犯罪に使われている可能性が高いと、こういうものが具体的なパラメーターとしてセットされて、それを見ていくということで、個人情報に触らない形で対応するということは大手の金融機関で既に行われているので、それを精緻化して行うのかとも思っておりますが、そのあたりの御認識も教えていただけないでしょうか。

西川からはこの2点です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。2つ御質問を、御意見も含めておっしゃっていただきました。基本的な考え方、当局がこの問題について監督、介入する根拠についての基本的な考え方についてお尋ねがありました。それから、個人情報の取扱いとパラメーターに関連して、特にパラメーターがどのような利用のされ方をされるのか、御質問があったと思います。この点もお願いできますでしょうか。

【端本信用制度参事官】

まず資料1-1の5ページですけれども、基本的な考え方として2つ挙げております。2つ目のポツのところで、共同機関の業務はAML/CFT業務の中核的な部分を担うもので、それが適切に行われなければ日本の金融システムに影響を与えるということですので、これは大きな考え方です。西川委員の御指摘と認識は同じだと思います。

それから、それに関連いたしまして、システム面、あるいはメソドロジーはどうなのかというお話ですけれども、その下の参入要件のところを見ていただきますと、適切なガバナンスの下で業務を的確に遂行できる体制の確保、これはシステム面が入りますし、業務実施の方法などと明示させていただいていますメソドロジーも含めてチェックさせていただくということでございます。

それから最後、類型化された方法を共有、これはまさにおっしゃるとおり、個人情報、特定の個人との関係を排斥する形で、いろいろなやり方、手法を共有していくということですので、西川委員の御認識と同一ということでございます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございます。よろしゅうございますか。

【西川委員】

分かりました。ありがとうございます。

【神作座長】

それでは、続いて、井上メンバー、お願いいたします。

【井上委員】

井上です。ありがとうございます。

私からは2点。1点目は簡単な質問になるかもしれませんけれども、資料1-2の2ページのところに、「共同機関に対する業規制の在り方」がございまして、規制の対象とすべき共同機関としてイメージされているのが、2ページの3の(1)の少し進んだところの「一方」で始まるところに、「共同機関が多数の銀行等から委託を受け、その業務の規模が大きくなる場合」と書かれてあって、まさにこれがイメージなのかとは思いますが、他方で、銀行が個別に同じようなことを業務委託する場合に、複数行にそういったサービスを提供している業者が受託する場合もあると思いますが、どこから規制がかかり、どこまでは規制の対象にならないのか。このタイプの業務委託は全て規制の対象だというのもトゥーマッチだと思いますし、そういう意識でおそらくここでは「多数の銀行等・・・」あるいは「規模が大きく・・・」と書かれていると思ったのですが、イメージとして、どれぐらいの切り取り方で業規制の対象をお考えになっておられるのかがありましたら、お聞かせいただければありがたいというのが1点目です。

2点目は、もう既に何名かのメンバーが言及された、5ページあたりの個人情報の扱いについてですけれども、これは資料1-1の13ページのあたり、あるいは14ページのあたりで御説明いただきましたように、現在の個人情報保護法の枠組み中で、特段の手当てなしにできる範囲、すなわち、規制の外で個別に委託する場合であっても、こういう形であればできるという範囲で整理されているのかなと思いました。

特に私が気になっているのは、この資料の14ページの事例2のところで、パラメーターを利用することにより、実効性を高めようというところです。これで十分であれば、もちろん現行法の枠組みで足りているということですので結構かと思いますし、そして、そのあたりからまずは始めてみるということでもいいのかもしれません。ただ、もちろんA銀行からB銀行に個人が特定できる情報が行くようなことがあってはならないことだと思うのですけれども、あくまでも共同機関の中で利用し、分析する範囲であれば、パラメーター以上のものを共有し、利用することが許されるようにすることも、次の段階としては考えるべきかと思っております。もちろん、この共同利用の仕方に即した条件を付す、弊害が起きないような条件を他方で課すことも必要かもしれませんが、そういう条件の下に、現行の枠組みからさらに一歩踏み出して利用範囲を広げることも考えられるのではないかと思います。

以上です。

【神作座長】

ありがとうございました。ただいま井上メンバーからは、委託構成をとった場合の、今回の業規制の範囲について、何かイメージのようなものがあればという御質問がありました。ご回答をお願いできますでしょうか。

【端本信用制度参事官】

井上委員御指摘の、資料1-2の基本的な考え方の多数、あるいは規模が大きくなるという点についてなんですけれども、預金取扱金融機関、規模が大きくなって金融システムに影響を与えるということですと、D-SIBs(Domestic Systemically Important Banks)という概念がございまして、現行ですと、預金量で見ますと30兆円から5、60兆円の金融機関がそういう形で現に指定されております。地銀の平均的な預金量を見ますと大体2兆円半ばぐらいかと思いますので、そういう意味で、10を超えるような銀行等から委託を受けて、その預金量でD-SIBs並みになるようなものは、1つ今後検討する際の目安、あるいは基準になるのではないかなというふうに思います。

【神作座長】

井上メンバー、よろしゅうございますか。

【井上委員】

どうもありがとうございました。

【神作座長】

それでは、続きまして、河野メンバー、お願いいたします。

【河野委員】

日本消費者協会の河野でございます。御説明ありがとうございました。

今回お示しいただきました共同機関の業規制に関する基本的な考え方には、概ね賛同いたします。マネロン対策について、私たち一般国民への周知や認知向上のためにも、共同機関を設置することと、その業規制を明確にして公表し、検査・監督を当局が行うという全体スキームに一定の安心感がございます。

また、懸念されております個人情報の取扱いに関しましては、個人情報保護法の上乗せ規制を置き、目的に沿った適切な管理を行うという前提は、当然の御提案だと思います。その上で、集積される顧客データの共有化や2次利用等への不安感に対しては、情報の分別管理と結果の個別対応、また、兼業規制について明確に示されており、共同機関の果たす役割に疑念が生じないような制度設計となっていると受け止めました。

ここで集積される膨大な顧客データは、ビジネス上大変価値があり、他の用途への転用等の誘惑を禁じ得ないというおそれもあると思いますけれども、最新のセキュリティー保護に関する技術の活用など、ここはしっかりと一線を引いて対処していただければ、というふうに存じます。

諸外国の例では、金融機関共通のアラートシステム等が導入されているところもあるようです。マネロン対策としての実効性は高いとは思いますけれども、まずは一般国民に対して先入観を持たれないように、クリアな業務範囲でスタートし、実績を上げてから、次の段階へと進むのが大事ではないでしょうか。国を挙げて日本の犯罪対策に関する信頼度を上げていくという意識を土台に置いて、制度設計をお願いできれば、というふうに思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、松井メンバー、お願いいたします。

【松井委員】

ありがとうございます。私の発言は、もう既に末冨委員、井上委員、西川委員の発言された内容と方向を同じくするものでございます。

各国の例につきまして、かなりラディカルに情報を共有している例が出ておりましたけれども、そこに共通して流れている考え方には、やはり各行では検出できない取引というものを捕まえる方法として、パラメーターでなく直接取りにいかなくてはいけない情報というのがあった場合にどうするのかという、恐らくその懸念があるのだと思います。

これらの例に上がったそれぞれのジュリスディクションにおける金融取引は非常に発達し、また多様なものを含んでいるわけで、このような国や地域の金融機関では潜脱・回避のリスクが高くなってくるため、あえて積極的な情報の共有という制度を選んだのであろうというふうに考えますので、必ずしも日本が、これと同じようなバランスを取れということを考えるわけではありません。我が国は現在、各行の持っている情報は各行が管理するという形を取り、その上で、個別の同意は不要であるというパッケージで制度をつくっているということで、この情報管理を尊重するバランスで制度を始めるということについてはよいかなと思うのですけれども、西川委員御発言のように、今のリスクがどのようなものか、それがどのように変化しているのか、ということについて国が責任を持って対応するということが、この制度の意味するところでありますので、情勢が変化したという場合に、もしかすると、そのような場合に応じた様々な情報共有のやり方というのを、引き続き検討し続けなければいけないのかもしれません。

したがって、定期的に評価等を行い、このような立て付けでいける部分と、それから、さらに制度を作ったり、あるいは改正するということが必要になってくる部分というのを、きちんと切り分け、見張っていくサイクルを回していくこと、必要になったときには、厳格にきちんと基準をつくって共有をしていくということも視野に入れておくべきではないかと感じました。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、加藤メンバー、お願いいたします。

【加藤委員】

加藤です。よろしくお願いいたします。

私が発言しようと思っておりましたことは、ほぼ巽委員の御発言と同じでして、基本的に巽委員の御発言に賛同しております。今回の共同機関は新しい試みでありますので、共同機関が何を目的とする機関であるか、銀行が提供する個人データがどのように利用されているのかということを、顧客に分かりやすく説明できるようにするということが非常に重要だと思います。

そのような観点から、やはり共同機関のガバナンスというものも非常に重要だと思います。その際には組織形態も非常に重要でありますけれども、結局、誰が運営するのか、誰が責任を負うのかといったことが明確になっている必要があると思います。そして、個人情報保護法との関係では、業務委託という関係を一応前提として御提案されておりますので、委託元である銀行と、共同機関の責任分担ということが非常に重要になってくると思います。この委託元と委託先の責任分担の話というものは、銀行法の業務委託にもある話ですので、個人情報保護法の話と銀行法の話、両方調整した上で合理的な責任分担の仕組みというものを、共同機関を対象とした業規制なども通じてつくっていく必要があるのだろうと思います。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、坂メンバー、お願いいたします。

【坂委員】

ありがとうございます。重複するところもございますけれども、意見を述べさせていただければと思います。

今回の御提案の内容は、基本的に各金融機関における取引フィルタリング及び取引モニタリングの効率化、合理化を図ろうとするものであって、現段階において適切な方向を目指すものと受け止めております。

論点1についてですけども、こうした取引フィルタリング・取引モニタリングは、マネー・ローンダリング対策の根幹を支える重要な業務であり、公共的な意義を有する面もあります。業務の重要性に鑑みますと、本来、係る業務を受託する機関は、原則としてすべからく業規制や当局の直接の検査・監督等が必要。もっとも順次整備を進めることを前提に、まずは一定の規模、内容のものを規制対象とするということも考えられるところです。

次に、論点2ですけども、共同機関におけるスクリーニングや情報処理が、適切な条件設定に基づいて、適切なアルゴリズム等によって行われる必要があることから、システムの適性確保やガバナンスが重要です。また、システム開発や管理運用等をシステムベンダーに委託する場合には、委託先の業務の適性を確保することも非常に重要な課題です。これらの点からも、共同化には相応の体制整備が必要というふうに考えられ、参入要件についてはしっかりしたものを求める必要があると思います。また、共同機関の業務は、適正、公正が求められることからも、他業の影響については排除する必要があります。

次に、論点3ですけれども、マネー・ローンダリング対策の実効確保のためには、できるだけ多くの情報を収集し、詳細に分析するということが望ましいと考えられます。他方、個人情報保護やプライバシーへの配慮、適正手続の確保の観点からは、分析、あるいは収集について、限定ないし、ある程度の統制が必要ということになります。この両者のバランスが課題ですが、現在提案されている中身が当面の対応として出発点になるというのは、他の委員からも御指摘があったところと思います。ただ、井上委員からも御指摘ありましたとおり、さらに高度な分析等が可能となるようなあり方を検討していく必要もあるかと考えておりまして、その場合には、やはり全体の透明性の確保ですとか、ガバナンスの確保ということが大事な点になってくるものと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、翁メンバー、お願いいたします。

【翁委員】

論点1、2に関わるところでございますが、もう既に多くの委員の方がおっしゃいましたけれども、やはりこの共同組織には、国際的な観点から見ても極めて重要なAML/CFTを進めていくという重要な政策目的がございますので、その上で共同化に意味があるということで、やはり規制、監督という形を取る必要があるかと思っています。特に個人情報の問題、それから業務の適切な運営ということは、金融システム全体にも関わることでございますので、規制、監督を行うことは必要になってくると思います。

一方で、今まで多くのメンバーがおっしゃいましたけれども、やはり民間の組織でございますので、しっかりとしたガバナンスを構築していくこと、そして、新しい技術を生かした効率的なシステムが構築され、業務が適切に行われることが担保されることがまず必要だと思っております。また、加藤委員からも御指摘がありましたけれども、銀行とこの共同組織との間での責任分担をきちんと明確にしておくということが、非常に私も重要だと思っております。

論点2に関わりますが、やはり今申し上げたようにガバナンス、参入要件としては、あと財産的基礎など重要でございますが、やはり何より個人情報の取扱いに係る体制整備のところがしっかりされるということが重要かなと思っております。また、機微なデータがございますので、兼業のところはしっかり見ていかなければいけないと思いますけれども、今後どういう参入があるかということは、今の段階ではちょっと予想ができませんので、個人情報の取扱いに問題が出そうな場合について、兼業についてしっかり厳密に見ていく、またはエンティティーをしっかり別にするとか様々な工夫を考えていくことが必要かと思っております。

論点の3については、この方向でよいのではないかと思っております。段階的に考えていく必要があると思うのですけれども、共同機関を設けるということは、やはりデータを共有して、それを分析できる。そして、リスク情報を共有できるというメリットにあると思いますので、個人情報の保護を適切に図ることをしながら、そのメリットが図れるようにして、機能を最大限発揮できるように、これから工夫していくということが必要かと思っております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

ほかに御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。追加の御発言、もしございましたらどうかチャットにて御希望を寄せていただければと思います。

【染川オブザーバー】

御発言させていただいてよろしいですか。

【神作座長】

オブザーバーの方にも御発言いただければと思います。どなたでしょうか。

【染川オブザーバー】

全国信用金庫協会です。

【神作座長】

どうぞよろしくお願いします。

【染川オブザーバー】

ありがとうございます。全国信用金庫協会の染川と申します。

今回の議論の中で、まだまだ理解が十分でないところもあって、この報告書の取りまとめに当たりまして、私どもが不透明と感じている点について、できますれば事務局と意見交換などさせていただきたくお願いを申し上げます。

【神作座長】

どうもありがとうございます。以上でよろしゅうございますか。

【染川オブザーバー】

以上です。お願いごとになり、申し訳ありません。

【神作座長】

ほかにオブザーバーの方も含めて、御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

基本的な方向性としては、御賛同いただいたと思います。ただ、いろいろ留意すべき点について様々な貴重な御指摘をいただき、ありがとうございました。

前半の議論はこのあたりで終了させていただき、後半のテーマに移りたいと存じます。まずは事務局より、説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料2-1に沿って御説明させていただきたいと思います。

金融サービスのデジタル化への対応ということで、まず2ページを見ていただきますと、これは前回御指摘の主なものでございます。デジタルマネー全般に関しましては、AML/CFTの観点から脆弱な部分が狙われる可能性があることを意識した上で、法整備を含めて検討していく必要がある。

それから、ステーブルコインにつきましては、マネロンに使用されるリスクが高く、現在使われているものは償還可能性への疑義が指摘される状況にあり、一層の制度整備が必要だ。

暗号資産につきましては、国内の暗号資産交換業者において、一般の個人から海外のサイトや暗号資産交換業者の管理しないウォレットへの送金を適切に制限する等の対応が検討されるべき。

それから、前払式支払手段につきましては、ギフト券の転売サイトが多数存在し、換金が極めて容易となっている。マネロン対策上、残高譲渡が可能な一定額以上の前払式支払手段については、犯収法上の取引確認等を求める必要があるのではないか。

それから、最後でございますが、マネロンを切り口の1つとして、資金移動業や前払式支払手段などの電子マネーに関する法制度が、現状過不足ないか、場合によっては検討してもいいのではないかというような御指摘をいただきました。

続きまして、御議論いただくステーブルコインとの関係で、デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の検討状況を御説明させていただきたいと思います。4ページでございます。

まず、この研究会、暗号資産、2008年にブロックチェーン技術とビットコインが登場したということで、その利用範囲が広がってきております。一番左側の送金(デジタルマネー)のところでございますけれども、2019年のいわゆるフェイスブックによるグローバル・ステーブルコイン構想以降、いわゆるステーブルコインについてのサービス提供が進んでいるということで、その下に関係者の狙い、低コストで迅速な送金、それから途上国の金融包摂。課題といたしましては、マネロン対策、それから、送金の安定・確実な履行等が指摘されているということでございます。

それから、5ページでございます。これまで4回にわたりまして、研究会で議論をしていただきました。3のところにありますけれども、今後の対応といたしまして、ステーブルコイン等に対する制度的対応については、本ワーキング・グループでさらなる検討を進めるとされているということでございます。

6ページでございます。制度的対応の論点ということでございます。まず、上の箱ですけれども、ステーブルコイン、非常に多岐なものがございます。その中で、まず2つに分けております。まず、上のデジタルマネー類似型といたしまして、法定通貨の価値と連動した価格で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの。これにつきましては、デジタルマネーとしての規律を考えてはどうか。それ以外のものです。例えば、マーケット需給調整等で価値の安定を試みるものにつきましては、暗号資産や金融商品として規律するということでございます。

デジタルマネー類似型のものについてという検討だということでございますが、左下を見ていただきますと、現在出ていますステーブルコイン、これから見ていただきますけれども、発行と移転、管理を行う者が別主体に分離されているという形態で行われているという特徴がございます。そうした中でどう対応するかということでございますけれども、まず、発行者のところにつきましては、(1)銀行業免許、あるいは資金移動業登録が必要なのではないか。そうした下で、利用者の発行者に対する償還請求権が明確に確保されることが重要なのではないかという議論でございます。

それから、仲介者のところですけれども、(2)ですが、利用者保護やAML/CFT、決済の安定性の観点から、現在の暗号資産交換業の規制を参考に、所要の規制を導入する必要があるのではないかということでございます。

以下、事実関係等を御説明させていただきたいと思います。まず、8ページでございます。ステーブルコインの現状ということで、左上、主な暗号資産の市場規模ということで、今総額200兆円を超えているということです。主な取引所における取引高に占めるその割合ということで、4分の3はステーブルコインになっているということで、ビットコインのような暗号資産の反対側の取引としてステーブルコインが幅広く使われているという状況が見て取れます。

9ページでございます。海外のステーブルコインの概要ということで、先ほど見ていただいたステーブルコインについての課題ですけれども、まず、この一番上にありますTetherというステーブルコインについてですけれども、まず、発行者は香港、現時点では香港に所在しているということで、一対一での償還は約しているわけですけれども、例えば払込み資金の管理状況などを見ますと、例えばCP、社債、それから貸付けで約6割を超える運用をしているということでございます。償還確実性があるのかどうかという議論もございますし、そもそもこのディスクロージャー自体、当局がチェックしたものではございませんので、適切な情報開示になっているのかどうかという議論もございます。

それから、その左側でございます。分散型台帳、パーミッションレス型ということで、本人確認をしない者の間のP2P取引を許容する形で提供されておりますので、これについては、FATF等でもマネロン等のリスクがあるということが指摘されているということでございます。

その右側を見ていただきますと、発行者と仲介者が分かれるとはどういうことか、ということでございますけれども、USDCのスキームを見ていただきますと、真ん中あたりにサークルインターネットという発行者がございます。その下に仲介者がいまして、ステーブルコインの取引自体は仲介者のところで行う。顧客がステーブルコインを購入する際に支払った金銭につきましては、発行者を通じて、上にあります銀行が管理するという形で、多数の者が協調してサービスを提供するような仕組みになっているということでございます。

続きまして、10ページ以降です。これまで金融規制監督当局者はどういう議論をしてきたかということでございます。

11ページ、グローバル・ステーブルコインに係る議論ということで、先ほど申し上げました2019年6月、フェイスブックによるリブラ構想が公表された後ということで、左側のところを見ていただきますと、2020年、IOSCOのほうから「グローバル・ステーブルコインの試み」ということでレポートが出ております。それから、6月にはFATFのほうからレポートが出ております。それから、金融安定等を議論いたしますFSBのほうからもレポートが出てきているということで、FSB、FATFのレポートは、これから御紹介させていただきたいと思います。

12ページ、次のページでございますけれども、FSBの議論でございます。グローバル・ステーブルコインにつきまして、10個の原則があるということで指摘されております。同じビジネス、同じリスクには同じルールを適用するという原則に基づいて、監督等を適用していくと、検討を適用していくということが指摘されているということでございます。後ほど見ていただきます、研究会で議論いただきました対応案という、今、基本的にここで指摘されています10の原則に沿って議論されたものということでございます。

それから、13ページでございます。FATFのほうですけれども、ステーブルコインのAML/CFT対応ということで、ステーブルコインはグローバルに普及する可能性が高いことから、マネー・ローンダリング等に使用されるリスクが高いということで、左側の箱のステーブルコインのML/FTリスクの2つ目のポツを見ていただきますと、1行目の最後あたりからですけれども、ステーブルコインは、高価格変動、低利便性、セキュリティーの欠如、価値交換手段としての未受容等、従来の暗号資産が有していた課題に対処し、広く普及する可能性があるということでございます。

その下のAML/CFT上の残余リスクという下の箱ですけれども、仲介業者を通さないP2P取引にどう対応するかというのが、1つの論点として議論されているということでございます。

続きまして、15ページ以降は、研究会で議論いただいた対応案の基になる現行制度等の説明でございます。まず、現行制度におけるステーブルコインの取扱いということで、2つ目の丸ですけれども、様々なものがあるわけですけれども、発行額、法定通貨と連動した価格で発行され、発行額と同額での償還を約するものの発行・償還は為替取引に該当しますので、銀行業免許・資金移動業登録を受けなければならないと。上記以外のものにつきましては、内容に応じて個別有価証券、または暗号資産に該当し得るという現行制度でございます。

続きまして、16ページ、このステーブルコインの発行者と我が国の中でなり得る銀行、資金移動業者の概要でございます。左側、銀行、右側、資金移動業者ということですが、上から2つ目、送金上限額を見ていただきますと、資金移動業者につきましては、送金上限額がございます。それから、その4つ下ですが、預かった資産の保全、銀行につきましては、預金保険制度の対象、資金移動業者につきましては、供託等で保全するという仕組みになっております。それから、一番下ですけれども、いずれもAML/CFTの規制ということで、犯罪収益移転防止法上の特定事業者に該当しているということでございます。

それから、17ページでございます。利用者の発行者に対する償還請求権が明確かどうか、ということでございますけれども、今の米国で流通しております、暗号資産の枠組みを使ったスキーム、取引につきましては、これはもともとある話ですけれども、私法上の権利義務関係が不明確であるという指摘がございます。

それを受けまして、18ページでございますけれども、右側はまさにこれが今の暗号資産型で取引される場合ということなのですけれども、発行者に対する顧客の直接の請求権というのはなかなか確保されるかどうか定かではございません。ですから、そうしたものに対応するものといたしまして、左側、預金スキームということで、顧客口という連名預金、総額を発行者である銀行が管理しつつ、その持分を業規制の下、仲介者が帳簿管理をするという前提で移転させるという仕組みが考えられるというのが1つでございます。

それから、信託受益権、信託財産は、銀行に対する要求払預金で運用するということを前提といたしまして、その信託受益権を移転するという形で、これまでの信託法制、信託実務の積み重ねがそのまま活用できますので、権利義務関係は明確なのではないかということで、2つスキームを提示させていただいて、議論していただいているということでございます。

続きまして、19ページでございます。仲介者につきましては、今の暗号資産交換業者と同様の規制をということかと思います。まず、一番上の対象行為でございますけれども、関連する行為を過不足なく捉える必要がございます。ここにありますとおり、売買、交換、その媒介、取次ぎ、代理、それから他人のために管理を行う、この1、2、4のものにつきましては、ステーブルコインの仲介者についても対象になるのではないかということだと思います。

それから、下から3つ目、問題がある暗号資産による利用者保護上のリスクへの対応ということで、ステーブルコインも様々なスキーム、様々なやり方というのが考えられるところでございます。利用者保護等で支障を及ぼすおそれがあると認められる暗号資産の取扱いを禁止しております。これと同様のものが要るのではないかという議論かと思います。

それから、AML/CFTの観点ですけれども、犯収法に基づく取引時確認義務等を、ステーブルコインの仲介者は負っていただく必要があるのではないかという議論をしていただいております。

それから、20ページでございます。発行者と仲介者が分かれることに伴いまして、どう全体として規律していくか。システム全体としてのガバナンスが必要だということが書いてあります。

2で、送金分野のステーブルコインということでありますと、ここの①、②、③にございますとおり、権利移転に係る明確なルールがある。それから、AML/CFTの観点の要請に応えられる。それから、③不適切な取引の巻き戻し等々必要ではないかというようなことでございます。

その下の丸ですけれども、FATF等の議論を踏まえつつ、システム仕様等含めて、P2P取引にどう対応するかということも含めまして、検討する必要があるのではないかということかと思います。

それから、12ページでございます。ステーブルコインの規模が大きくなりまして、グローバル・ステーブルコインというようなことになった場合、その発行、償還が大規模に行われますと、金融市場への影響等がございます。そうしたものにも配慮しつつ、検討する必要があるのではないかということで、現行の我が国のデジタルマネーの発行者に対する規制モデル、一番左側の銀行モデルの下ですと、その真ん中です。流動性カバレッジ比率規制等、銀行の財務規制等で対応していく。それから、資金移動業者モデルですと、供託された資金は原則として国庫で管理されますので、そこの移動がマーケットに直接影響を与えるということは必ずしもないのではないかということでございます。

以上が、ステーブルコインにつきましての資料の御紹介でございます。

ここから最後、関連する論点といたしまして、まず、AML/CFTからの規律ということで紹介させていただきたいと思います。

まず、前払式支払手段の区分ですけれども、自家型、それから第三者型というのがございます。本日は、この第三者型について御議論いただくわけですけれども、その中身につきましても、右側になりますけど、財産的価値の記載・記録の方法に応じた区分ということで、紙型、磁気型。それから、その下でございますけれども、IC型、サーバ型というふうに大きく2つに分かれます。それで上の紙型、磁気型につきましては、その黒線の上のところに参考であります、古物営業法の物品に当たるものについては同法が適用され、買取額が1万円以上となる場合には、古物商において本人確認が必要になるということでございます。

次のページ、24ページを見ていただきますと、先ほどから何度か出てきてまいりますけれども、真ん中でございます。前払式支払手段発行者、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認義務等が現行は課せられていないということでございます。

25ページでございます。そうしたことを前提といたしまして、まず、第三者型の前払式支払手段のうち、IC型、サーバ型の中には、価値の移転・譲渡が可能なものがございます。このうち高額のチャージや移転・譲渡が可能なものを、高額電子移転可能型というふうに、ここで資料上整理させていただいておりますけれども、この類型につきましては、マネロンのリスクが特に高いのではないかと考えられます。高額電子移転可能型の発行者に対して、アカウントの開設等に際しての犯罪収益移転防止法に基づく本人確認等の規律を適用することが考えられるのではないかということで、下の図を見ていただきますと、まず、現在幅広く使われております交通系のICカード、これはまず、少額、残高上限2万円までの利用ですし、価値の電子的な移転・譲渡等ありませんので、これはまず左側ということで、今回の議論の対象ではございません。今回の議論の対象は、この右側の価値の電子的な移転・譲渡が可能なものでございます。この内訳としては、番号通知型、プラットフォームで使う電子ギフト券のようなものもございますし、残高自体を譲渡する、両方ございます。それにつきまして、10万円超の残高のチャージが可能なものについてどうかということかと思います。

例えば注2のところを見ていただきますと、2年前の調査ですけれども、4社の調査になりますけど、残高譲渡額の分布を見ますと、10万円以上のものというのは限られているのかなということでございます。

それから、もう一つの論点として、注3、注4のところにありますけれども、残高譲渡型につきましては、2年前の金融審議会におきまして、一定の議論を行いました。中央のところでございます。その議論を踏まえまして、内閣府令等の改正におきまして、不正、不自然な取引を検知する体制整備等が義務づけられておりますけれども、番号通知型については、同様の体制整備義務は現時点ではない、ということも論点かと思います。

それから、御参考までにということですけれども、26ページ、前払式支払手段に関する不正利用事案ということで、1ですけれども、オンラインバンキング等からID・パスワード等を窃取して、前払式支払手段のアカウントにチャージするという形。それから、番号自体をだまし取って移転することで現金化するような事例が報告をされております。

それから、27ページでございます。これは国家公安委員会の犯罪収益移転危険度調査書ということでございますが、下から3つ目の丸でございます。実際にマネー・ローンダリングの過程において、電子マネーが利用された事例が存在し、その件数は増加傾向にある、ということが示されております。全文につきましては、参考資料のほうに掲載させていただいております。

それから、28ページは、これまでの不正利用防止をめぐる対応ということでございます。

それから、最後に本人確認、オンラインでどうするのかというお話があろうかと思います。御参考までにということで、オンラインで完結可能な本人確認の方法といたしまして、ここにございますとおり、本人確認書類を用いた方法、それから、電子証明書を用いた方法が定められているということでございます。

以上が前払式支払手段についてということで、最後に、関連する論点の(2)といたしまして、発行者の提供する機能に関してでございます。

先ほど申し上げましたとおり、銀行等が銀行法等に基づき提供するデジタルマネーサービスにつきましては、利用者等から受け入れた資金、チャージされた資金を預金として、その性格に応じて決済用預金、または一般預金等として、預金保険の保護対象とする扱いとなっております。

そこの下を見ていただいて、上から4つ目あたりです。決済用預金の要件、3要件ございます。これを満たすものにつきましては、銀行破綻時等について全額保護されると。一般預金等につきましては、預金者1人当たり名寄せされた上で、1,000万円までの定額保護ということでございます。このあたりの仕組みにつきましては、2002年の金融審議会の答申がございます。現時点でも基本的にこの整理で整備された預金保険制度で運用されているということを御紹介させていただきたいと思います。

以上を踏まえまして、資料の2-2ということですけれども、まず、論点1といたしまして、先ほど概要だけ御紹介させていただきましたステーブルコインへの対応案ということにつきまして、本ワーキング・グループで制度的対応を検討するに当たって必要な論点、検討すべき論点があれば御指摘いただきたいというのが論点1でございます。

例示といたしまして、仲介業を創設した場合における既存の業規制、資金移動業等との関係。それから、仲介業を創設した場合の利用者資産の保全の在り方や不正利用等への対応。それから、信託受益権を用いたスキームにおけます金商法の適用関係等を例示させていただいておりますけれども、その他留意すべき点等があれば御指摘いただければというのが論点1でございます。

それから、論点2でございます。論点2につきましては、前払式支払手段の本人確認の話でございますけれども、マネー・ローンダリング等は対策の脆弱な部分が狙われる面があり、AML/CFTの対策は分野横断的に講じる必要があろうかと思います。また、AML/CFTの対策は犯罪の未然防止等を通じて利用者保護にも資するということで、銀行・資金移動業者のまさに共同機関の議論で為替取引についての対策、それから、暗号資産の分野では、ステーブルコインについてAML/CFTの対策強化を検討する中で、従来、犯収法に基づく本人確認義務は課さないことと整理されていた前払式支払手段につきましても、リスク・ベース・アプローチの下で、ハイリスクなものについては対応を検討する必要があるのではないかということでございます。

まず、(1)につきましては、特にリスクが高いと考えられる高額電子移転可能型につきまして、①発行者に対するモニタリングを強化する。それから、②といたしまして、本人確認をして頂くことを求めていくと。その際には、発行者側でのシステム対応に加えまして、既存ユーザーへの周知が必要であることを踏まえて、適切な猶予期間を設けることなども検討する必要があるかと思います。

それから、(2)といたしまして、電子移転可能型のうち、番号通知型につきましても、残高譲渡型と同様の体制整備を求めるという趣旨で、①です。転売を禁止する約款等の策定、転売等が行われた場合の利用凍結等を行える体制整備を求める。それから、当局といたしましても、転売サイトの利用等を控えるよう周知徹底を図るということが考えられますけれども、これについて御意見いただきたいというのが論点でございます。

それから、最後、論点3でございます。先ほど、預金保険の話を紹介させていただきました。ここにつきましては、研究会での議論は現行の発行者を前提とした議論でございましたけれども、幅広い観点から、将来的な課題含めまして、議論すべき点があれば御指摘いただければと思います。

以上でございます。

【神作座長】

説明ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明を踏まえて、メンバーの皆様に御討議いただきたいと存じます。今回は、こちらの論点については初めての御議論ということになりますので、お気づきの点がございましたら、幅広い観点からコメントをお願いできればと存じます。

また、メンバーの方々からの御質問、御意見が終わった後、オブザーバーの方々に御発言の機会を提供させていただきたいと存じます。

なお、残りの時間も限られておりますので、お一人あたり3分程度で御発言をお願いいたします。時間内に言い尽くせない点などがございましたら、後日メールなどで事務局にお寄せいただければ幸いです。

それでは、どなたからでも結構でございますので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。それでは、翁メンバー、お願いいたします。

【翁委員】

主に論点3について意見を申し上げたいと思います。ステーブルコインは銀行が発行者となる場合、預金との違いというのは整理しておいたほうがいいと思っています。ステーブルコインは預金とは異なりトークンベースのマネーであり、データを活用できて、預金よりビジネスでの付加価値がつけられそうな気もいたします。一方、ステーブルコインは一般受容性は乏しいですが、ひとたび活用されるようになれば、その銀行の負債として広く流通していく可能性もあります。銀行が発行すれば、預金並みに安全と利用者からは認識される可能性があり、預金保険の対象とすることは考えられますが、今述べた預金と多少違うこととか、それから、預金保険の持つモラルハザード性などの問題を考えれば、普通預金並みに1,000万円まで保護するのか、決済用預金のように完全保護するのかは十分検討したほうがいいと思っております。

ステーブルコインの利便性、安全性が評価されれば、もしかしたら預金からのシフトというようなリスクが場合によっては起こるかもしれないということも、留意する必要はないかと思っております。また、ステーブルコインを全額保護して、信用リスクゼロとしますと、CBDC類似のステータスになります。日本はCBDCとステーブルコインを同列で並行して流通させるのか、それとも民間のステーブルコインの技術革新や相互運用性確保を優先するのかという、日本のデジタルマネーシステム設計に関わる問題として十分検討する必要もあると思っております。

また、預金との関係だけでなく資金移動業者のステーブルコインも預金保険の対象とするのであれば、従来の資金移動業者が発行してきたデジタルマネーとステーブルコインの違いの整理も必要ではないかと思います。預金保険の対象になる場合は、資金移動業者にも独自の破綻処理の環境整備が必要となると思いますし、また、規制の強化につながったり、技術革新の芽を摘まないか、今までのデジタルマネーとステーブルコインの規制の違いによるアービトラージがないかといった点も確認する必要があると思います。

ステーブルコインは、競争政策の観点から見ると、ある経済圏でネットワーク効果やロックイン効果を持ちやすいので、寡占的な傾向をもたらす可能性もあると思います。その場合、発行体がどこであれ、発行体がToo big to failというふうになるリスクもあるかと思います。複数のステーブルコインが競争的に存在し、相互運用性が確保されるということも必要であると思います。そうした環境をつくるにはどのような守り方が良いのかという視点も重要ではないかと思いますし、また、各国様々動いておりますので、そういった規制なども見ながら議論を進めていく必要があると思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、坂メンバー、お願いいたします。

【坂委員】

ありがとうございます。私のほうからは、論点1と2について発言させていただきます。

まず、論点1ですけれども、ステーブルコインにつきましては、今も少し御指摘がありましたが、預金と同じようなものとして広く使われる可能性があるということから、一般の利用者が安心して使えるように制度を整える必要があると思います。論点1で指摘されている論点に関しましては、利用者資産の保全については、仲介者の流用のおそれへの対処も含め検討の必要があると思いますし、不正利用等については、利用者への適切な補償が検討されるべきと思います。

指摘されているもの以外には、利用者の個人情報、顧客情報の取扱いにも留意すべきです。この点につきましては、金融サービス仲介業には、個々の仲介業務の情報、兼業業務の情報の相互利用については、本人同意を必要とするとされているところです。

次に、論点2ですけれども、前払式支払手段につきましては、現状、犯収法の規制対象になっていないということと、他方で、電子移転可能型という換金容易なサービスが登場してきていることから、特殊詐欺ですとか、あるいはマネー・ローンダリングにおいて利用しやすいものとなっており、現に電子マネーが関係するマネー・ローンダリングが増加傾向にあると指摘されているところです。

特に高額のものがリスクが高いことに鑑みますと、(1)に記載されておりますとおり、高額のものは、犯収法上の規制対象として、当局のモニタリングの対象とする必要があります。他方で、高額でないものや、残高譲渡型につきましては、当面、現行法上の措置に委ねるということが考えられます。これに対し、番号通知型につきましては、現行法上特段の措置がなく、またデジタル化により、小口に分けての換金が容易になっていること、それから、転売サイトでの価格が数千円から数万円であることに鑑みて、(2)の対応が必要と考えられます。

もともと前払式支払手段は、発行者または加盟店への支払いのために用いられることが想定されております。発行手段の残高譲渡は、あくまでも付随的な範囲で許容されるものであって、残高譲渡が頻繁に行われるサービスは、基本的には実質的に為替取引が行われるものとして、為替取引規制の対象とすべきであると考えます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、河野メンバー、お願いいたします。

【河野委員】

ありがとうございます。私からは、今回提案された全体像に対する、消費者目線での受け止めをお伝えしたいと思います。

FinTechの進展は本当に目覚ましいものでして、決済手段の多様性や利便性を高めることを目的に設計された暗号資産は、一般社会においても徐々に市民権を獲得しつつありますし、暗号資産絡みの消費者トラブルもかなり増えています。暗号資産のボラティリティーへの対策として、ステーブルコインが国際関係資産や海外送金などにとても便利かつ低コストであるとして浸透しつつある今のこの時点で、先ほど御説明いただきました研究会での御議論を踏まえ、ステーブルコインに対する様々な今後に対する対策というのを明確に示していただきたいと思いますし、本ワーキングの主題である不正送金を防止する規制の在り方についても、一定の見解を早期に示すべきであるというふうに考えます。

また、規制のかかっていない前払式支払手段など、各種決済手段に対しても、御提案のように本人確認等を導入するなど、見えにくいリスクへの対応方針を今の時点で明確にすることで、分野横断的な抑止力としての効果を期待したいというふうに思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、西川メンバー、お願いできますでしょうか。

【西川委員】

既に各委員からお話がありましたので、重複することをできるだけ避けて、簡単に3点、確認をさせていただければと思います。

1点目のステーブルコインに関する規律の在り方のところで御説明いただいた中で、AML/CFT関係でいうと、犯収法に準拠することを検討が進んでいるというふうな御説明がありましたが、犯収法以外にも、外為法や国際テロリスト財産凍結法関係のような、いわゆる金融機関に課されているAML/CFTの法令は原則遵守すべき対象であり、しっかり取り組んでいくというふうな形で議論がされていると思いますが、念のため確認をさせてください。

論点2のところですが、既に坂委員を含め皆さんおっしゃっている話で、本来の商品設計として考えられている前払式支払手段のスキームの中で、主な商品設計と異なる形で為替類似の取引が行われているということは、私どもAML/CFTの実務家の中でも非常に問題意識は持っております。それはぜひリスクに応じた形で法体系が整理されるということと、実務対応が整備されると。これは過剰なことをやるのではなくて、あくまでリスクに応じたということがキーポイントになると思っています。もう一つは、前払式支払手段の利用者は個人で、発行者が法人の場合が多いと思いますが、個人の利便性を確保するという観点と、発行者が対応を強化するということで利用者に感謝されるというような、いわゆる、利便性とAMLリスクとの関係がしっかり整理されていて、AML/CFT対応がしっかりされている発行者を使うと安心だとか、自分は犯罪に巻き込まれないということがPRできるような制度設計ができるというのが望ましいというふうに考えております。

3点目ですが、論点3に関して発言させて頂くと、これも実務家の議論として、銀行が発行するデジタル通貨に関しては、やはりCBDCの導入が行われるのか否かが日本国内では非常に大きな論点になっておりまして、その際の銀行が発行するデジタル通貨とCBDCの関係がどうなるのかということが注目されています。これはもう皆様御協議されているとおりですけれども、通常の従来の法定通貨に比べて、CBDCにしてもデジタル通貨にしても、相当に取扱いが便利であることが重要な論点で、多岐にわたる他方面の取扱い、もしくはサービス提供の機会があるということは、犯罪行為に使いやすいということでもあるので、その対応を誰がどの程度のコストとどの様な責任を持って行うのかという枠組みがないと、便利であるがゆえに、犯罪者に利用されるということが非常に起こりやすい環境にあると考えます。CBDCについても非常に大きなAML/CFTの管理負担がかかるところを誰が負担するのか、ということも含めて制度設計が行われるべきだと考えております。

西川からの質問等は以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。第1点目の御発言は御質問であったと思います。犯収法以外の法律について、コメントいただけますでしょうか。

【端本信用制度参事官】

1点目につきましては、西川委員御指摘のとおり、外為法についても適用について検討しております。それから、国際テロリスト財産凍結法等、これは何人規制ですので、当然適用されるという前提で考えております。

【神作座長】

ありがとうございます。西川メンバー、よろしいでしょうか。

【西川委員】

理解いたしました。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、末冨メンバー、お願いできますか。

【末冨委員】

ありがとうございます。末冨でございます。

今、折しも質疑応答があったAML/CFTについて、どのような管理がなされるべきかということで、犯収法のみならず外為法等様々な局面で検討がされているということでございましたけれども、ステーブルコインが今御説明あったように、仮想通貨よりも変動がそれほど激しくないことから、より通貨に近い形で利用されるであろうと考えられているということから、やはり仮想通貨と同じように、マネロンとかテロ対策としては規制の必要性が出てくるのかと思います。

今年の10月に米国のOFACが、仮想通貨(バーチャル・カレンシー)に対するガイドラインというのを発表してございます。そこで発表されたところによりますと、バーチャル・カレンシー(仮想通貨)についてもリスクベースでのベスト・プラクティスを要求するコンプライアンスプログラムが必要であるとなっておりまして、大まかには5項目を挙げています。①経営(マネジメント)のコミットメントが必要であるということ、②リスクアセスメント(リスク分析)が必要であるということ、③内部統制が必要であるということ、④監査が必要であるということと、⑥トレーニングが必要であるということを踏まえた上で、普通にマネロンとかで言われているような、リストのスクリーニングやキーワードのスクリーニングや、あるいはIDをロックすることや、取引モニタリングを行うというようなことに加えて、各金融機関ごとの環境に応じたモニタリングというのが必要だということになっています。これを概観しますと、いわゆる通常の金融機関に課せられているようなAMLに引き寄せる形で、仮想通貨についても同じような規制を及ぼすという基本的な姿勢を見て取ることができます。マネー・ローンダリングに利用されるようなものであったとするならば、それが通貨(カレンシー)ではなかったとしても、規制が適用されるという流れからしますと、仮想通貨であれ、あるいはステーブルコインであれ、それがテロ等に利用される可能性があるのだとすると、それへの規制が必要になってくるというのが自然な流れかと思います。

そうしますと、数年前には仮想通貨ということ自体が珍しかったものが、技術的にも様々な手法が用いられて、いろいろな種類が出てきているわけですが、カテゴリーを変えることによって規制が潜脱されるのは、マネロンの対策からすると避けられることが望ましいと考えられます。そうすると、行く行くはAMLのような規定というのは、通貨とほぼ同じような形で及ばざるを得ないのかと思います。そこで問題となってくるのが、皆様御指摘のように、利便性との関係で、規制を強めれば強めるほど利便性というのは下がってしまうので、せっかくそのスキームを開発し、利用しようとして、また普通の金融取引であれば加われない人までが利用できるような、利便性をどうするかということについて、1つのアイデアとして、漠としたものですが、透明性を上げることによって不正な取引が行われないようにすることによって、ある程度の利便性を維持しつつ、犯罪の防止につながるということが考えられないかと思うところでございます。

すなわち透明性を上げると、例えば取引記録が全部残ることによって、プライバシーが若干阻害されるわけですけど、しかしながら、犯罪に巻き込まれることも同じように低くなり、取引に入る人にはそれなりの覚悟を持って、しかしながら、利便性はあまり下げずに現実に取引は維持できるというようなシステムというのは考えられるところかと思います。

最近のプラットフォーマーや、デジタルのビジネスを見る限りでは、業者の側も消費者の側も、何も犯罪に巻き込まれたいわけではなく、むしろ犯罪者はできるだけ排斥したところで取引を行いたいというのは共通の認識で、例えばプラットフォームによっては、ちゃんとした取引業者が入ってきて、ちゃんとした消費者が入ってきて、相互に安心して取引できるような、プラットフォーマーそのものも、きちんとコンプライアンスを守っているということを売りにして、同じように法令を遵守できる人たちを引き寄せるようにすることを指向しているようなところもあることからすると、透明性を上げることによって、望ましい取引を向上させ維持させるということも、考えられるところではないかと考えているところでございます。

以上でございます。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、井上メンバー、お願いいたします。

【井上委員】

井上です。ありがとうございます。

資料の2-2に沿ってコメントを申し上げたいと思うのですけれども、1つ目は論点1のところにありますが、ステーブルコインに関する規律です。この点、先ほど翁メンバーから御発言がございましたけれど、銀行の発行するステーブルコインを、果たしてどういうふうに制度に位置付けるかといいますか、設計していくのかについては、銀行の負債であるわけですけど、預金に寄せて設計するという方向と、それから電子マネーといいますか、銀行が発行する電子マネーとして位置付けるのかというので規制の在り方は変わってくると思います。どういった広がり方が想定されるかによるかもしれませんけれども、その2つの選択というか、分かれ道が結構大きいのかなと思っております。

それから2点目、これはここでの議論のスコープに入るかどうかがよく分からないのですけれども、利用者の発行者に対する償還請求権の確保の文脈で、資料2-1でいえば、18ページでしたかね、図を使って御説明いただいたところがございましたけれども、連名預金の形を取るとか、信託受益権の形を取るとかという形で直接の権利を発生させて、それで顧客Aから顧客Bに権利が移転するということだと思いますが、権利の移転が権利の譲渡という構成になると、今度はAがBに対する移転をしたときに、毎回、確定日付のある通知、あるいは確定日付のある承諾を得ることはあまり現実的ではないと思いますので、そういったことはなされないとすると、Bに移転したと思っていたところ、その後、Aが破産してしまいますと、Bは権利を失ってしまうことになりますので、譲渡構成を取らない形で構成する必要があると思います。

資料に信託受益権の販売という記述がありましたが、これがもし売買を意味するとすると、そういった問題が出てくるかもしれないので、問題を回避できるような法律構成を取る必要があるか、あるいは譲渡という構成を取るのであれば、制度的に何らか対応する必要があるということかと思います。

次に、論点2についてですけれども、ここに至る御説明については、基本的には賛同いたします。弁護士として資金決済関係の仕事をしているときに、前払式支払手段が、伝統的なプリペイドカードが始まった頃のイメージと随分変わってきていて、この形を取ることで、本人確認の義務がなくなる、あるいは格段に軽くなるという状況にやや違和感を感じることがやはりありまして、そういう観点からすると、全てではないにしても一定の範囲のものについては、同じような規制をかける必要があるというのは、私も全く同感です。

そこで、事実上の譲渡の可能性ですけれども、約款上禁じられていても、というところがありますので、事実上譲渡可能なものであるとか、高額なものという仕切り方もあると思いますし、もう一つ要素を上げるとすると、汎用性というのでしょうか、例えば1店舗、あるいは数店舗でしか使えないものであれば、幾らか高額のものであっても、さほどのリスクはないわけですが、様々なものが買える非常に汎用性の高い前払式支払手段や、前払式支払手段で買えるものの中に、買ったもの自体の換金が非常に容易であるといったものがありますと、より弊害が大きくなると思いますので、そういったファクターも含めて、規制の必要性、あるいは対象についてはお考えいただくといいのかなと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、加藤メンバー、お願いいたします。

【加藤委員】

ありがとうございます。私からは、3点コメントをいたします。最初の2点は、ただいまの井上先生の御発言と相当重なってしまいますが、私の意見を述べさせていただきます。

1点目は、私法上の取扱いを前提として金融規制を考えることの重要性についてです。ステーブルコインに関する新しい金融規制を考える際に、目的の1つとして、ステーブルコインの保有者が発行者に対して直接の償還請求権を有しているということを明確にするということが挙げられております。これについては、私も賛成です。しかし、直接の償還請求権というものを、言わば金融規制の中で明確にすることによって、それがステーブルコインを利用者間で取引する際の私法上の関係にどのような影響が生じるかということも、併せて考えていく必要があるということです。

2点目は、前払式支払手段の取扱いについてです。現在の資金決済法が定義する前払式支払手段と情報通信技術を組み合わせることによって、実質的に為替取引を実行するための手段として機能させることが非常に容易になっているという、こういう実態が存在するのであろうと思います。

論点2で挙げられていることは、こういった実態に対して法制度が対応していく必要性を示しているものであって、私も賛成いたします。さらに、これは今回のワーキング・グループでは無理だとは思うのですけれども、資金決済法における規制対象の区分の在り方の見直しも検討されるべきであると考えております。資金決済法の中には暗号資産、資金移動業、前払式支払手段を対象とする各規制が既に存在し、さらにステーブルコインを対象とする規制が導入されるのであれば、資金決済法という枠組みの中で規制されるサービスはさらに多様になります。当然、それぞれのサービスが抱えているリスクが異なるからこそ、こういった様々な類型に分けて異なった規制をかけているわけでありまして、これは非常に合理的ですけども、資金決済法の規制対象の区分の在り方自体が、今、このままでいいのかということも問われているということです。

3点目ですが、今回御提案いただいた資料では、発行者は例えば銀行であれば、1つの銀行が1つのステーブルコインを発行する、ということが想定されていると思います。将来のことになりますが、複数のステーブルコインが乱立するような状況が発生してしまった場合に、これが日本の金融システムにとってよいのか気になっております。

また、例えば複数の銀行が共同してステーブルコインの発行者になるというような仕組みがあったほうが、実際にこの制度が利用されやすくなるかもしれません。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは、後藤メンバー、お願いいたします。

【後藤委員】

今日は、大学の会議の関係で大幅に遅刻をいたしまして申し訳ございませんでした。そのため、これまでの議論をちゃんと伺えておらず、ひょっとしたら既に指摘があったところかもしれませんけれども、ステーブルコインと、あと前払式支払手段について、1点ずつコメントさせていただきたいと思います。

まず、ステーブルコインですけれども、資料で提案されているような規制が必要ではないかという点については、まだ詳細を十分に理解はできておりませんけれども、基本的な方向性としては、賛同したいと思っているところでございます。

ただ1点だけ気になっておりますのが、発行者と仲介者に規制をかける、特に発行者に規制をかけていくとしますと、日本の事業者が発行するものはいいのでしょうけれども、海外の事業者が発行するものについては、日本法に則っていない以上、扱えないということになるのでしょうか。ただ、特にグローバル・ステーブルコインと言われるものもあるように、こういった話は日本国内で完結するものばかりとは決して限らないように思いますので、日本法の規制とうまく接続ができるのか、また、グローバル・ステーブルコインを利用した取引を日本の事業者や消費者が事実上するということになった場合に、それがどういう立てつけになるのかということも、考える必要があるように思います。今お答えいただきたいということではなくて、今後この規制を進めるに当たって、そういった国際的な適用関係ということについても御留意をいただければと思っております。

後半の電子的な移転が可能な前払式支払手段、特に第三者型の支払手段の話ですけれども、先ほど井上委員からの御発言にもございましたように、これがやはり昔とは大分違ったものになってきているということは私も全く同感でありまして、そういう観点から、特に対象を限定した上で、本人確認等の規律を導入していくということが必要ではないかと思っているところでございます。

また、現在は本人確認を要求せずに、その代わりに転売ができないことになっているのだということがあったかと思いますけれども、もし本人確認等の規律がしっかりとできていくことになった場合には、転売の禁止というアプローチは本当にこのままでいいのだろうかという疑問も持っております。いくつか既に下級審の裁判で出ているかと思いますけれども、転売サイトなどで電子ギフト券等を購入した人が、使おうと思ったら、これは転売されたものですので無効にします、という措置を取られてしまって不満を持つという事案が出てきているようです。これらの人は、転売不可という約款をちゃんと読んでいなかったという落ち度はあるにせよ、特に犯罪行為等を行っているわけではない消費者であり、金券ショップで買うようなイメージでディスカウントで買ったに過ぎない、ということもできると思います。確かに約款に書いてある以上、契約的には無効とされても止むを得ないのかもしれないですが、本当にそういう措置でいいのだろうかと。

そもそも電子ギフト券というものについては、人にあげることを想定してギフト券という名称がついているわけですので、ギフトにするということと、転売をするということをどのように区別しているのかというのは、なかなか一般の方には理解しがたいところもあるのではないかというふうにも思います。そうしますと、本人確認等の規律が進んでいった場合に、事業者さんがこの転売禁止の約款、周知をするというのはそれ自体必要なのかもしれないのですけれども、周知しても、し切れないところもあるように思いますので、このあたりの規制の在り方、規制というより約款上の扱いですけれども、そのあたりも含めて、もう少し広い観点から見直しをしていくということも必要になってくるのではないかなと感じているところでございます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、巽メンバー、お願いいたします。

【巽委員】

ありがとうございます。先ほど、加藤先生がおっしゃったことに触発されて1点のみということなのですけれども、行政法の観点から見ましても、この分野は銀行法、資金決済法、あと金融商品取引法が複雑に絡み合っており、特に今回、資金決済法がさらに肥大化するということになると、非常に見通しが効きづらくなるのではないかというのが気になっています。変化が早い分野でサステーナブルな行政規制の体系を維持しようということになりますと、枝葉を増やしていく以上に、根っこの部分の理論的な基礎をきちんと検討していただくのが肝要だなと思っております。今回、暗号資産や金融商品の規制においては既に分かれていた発行者と仲介者というものが、デジタルマネー類似型の部分でも分かれる、その実態に即した規制を組むということでありますと、アジェンダの中にありましたが、発行者に対する規制、仲介者に対する規制の法理論的な基礎を、この際に横断的に詰めていけると、公法学者としてもありがたいということがあります。デジタル・分散型金融への対応のあり方に関する研究会から一部アジェンダを引き継いだという形で、今回のアジェンダが設定されていると思うのですけれども、その大本の研究会との関係においても、今申し上げたような理論的な基礎が何らかの形で整理されるとよいのではないかと思っております。

CBDCについても、こういう理論的な基礎の部分の様子を見ながら進めざるを得ないところがあるように見ておりますので、大変重要なテーマだと思った次第です。

以上でございます。以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

後半の論点について、メンバーの方から、ほかに御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければオブザーバーの方から御発言の希望をいただいておりますので、まず、預金保険機構の林様、どうか御発言ください。

【林オブザーバー】

預金保険機構預金保険部長の林と申します。2点申し上げさせていただきます。

1点目といたしまして、事務局の御説明資料ですと2-1の18ページに関連いたしますけれども、左側の図でありますが、金融機関、銀行破綻時の円滑な処理を可能とするために、御説明があったような仲介業というものを創設する場合には、仲介業者に対して、当機構、預金保険機構による報告徴求や検査などを可能とする制度整備をお願いしたいと考えております。

次に、2点目についてでございますが、預金保険による決済用預金の恒久的な全額保護は、2002年の預金保険法改正で、当時、ペイオフ解禁を実施するために必要な措置として導入されました。その際には、当座預金を通じた振込みや口座引落しなどを中心として、通常の決済機能の確保の必要性について議論が行われました。当時、デジタルマネーが決済用預金に当たるかや、その是非などについて議論が行われたことはございませんでした。銀行が発行するデジタルマネーを預金として整理する、あるいは事務局資料18ページの真ん中の図のように、デジタルマネーの発行者は、この図ですと、デジタルマネーが信託受益権である場合には、その信託の受託者ということになりますが、その資産保全に預金を用いることとするのであれば、そうした預金も、決済用預金として預金保険で全額保護することにより、デジタルマネーに関する信用リスクをゼロにするのを可能とすることは適切なのか、改めて検討して、コンセンサスを得る必要があると考えられます。既に御指摘などが出ているところではございますが、まさに幅広い観点からの御議論をお願いしたいと考えております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、新経済連盟の片岡様、よろしくお願いいたします。御発言ください。

【片岡オブザーバー】

新経済連盟の片岡です。御発言の機会をいただき、ありがとうございます。私からは、前払式支払手段の規制の検討について発言させていただきます。

まず、今、世の中で起こっている犯罪対策という観点からすると、今御提案いただいている、アカウントにチャージされたときの本人確認ということでは、対策としてずれていると考えておりまして、実態をしっかり把握した上で、リスクに応じて、そこにちゃんと対応する対策を考えるべきだと思っております。例えば、残高譲渡型というのは番号譲渡型のようなもの、商品券のようなものから一歩前進したというか、改善されたタイプのものです。それぞれチャージするときも譲渡するときも、発行者側のシステム上でそのことが分かるので、よりモニタリングがしやすく、現状そこでは換金化のようなものはあまり行われていないのが事実です。番号譲渡型に関しては、モニタリングなどをしていますけれども、犯罪というのはやはり換金できないと犯罪として意味をなさないので、お金に換えるところが一番問題になるのです。

そうすると、今の前払式支払手段の換金できないという部分にかなり大きなマネロン防止効果があると思っていますが、そこを崩してしまっているのが転売業者、転売サイトの存在だと思っています。転売業者に対する対策を考えずに、本人確認義務だけを考えてしまうと、かなり多くの一般人が巻き込まれてしまうということになりますので、利便性にも配慮した上で、きちんとリスクに対応したものを、対策としてやっていくようにお願いしたいと思っております。

新経済連盟としても、実務・実態などを御説明する機会をいただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

後半の論点について、ほかにオブザーバーの方から御発言のご希望ございますでしょうか。どうぞ。

【長楽オブザーバー】

日本資金決済業協会の長楽と申します。本日は、発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。

先ほど、金融庁のワーキング事務局から譲渡できる前払式支払手段についてのマネロンリスクへの対応についての御説明がございました。前払式支払手段の発行者に対する新たな規律に関する事項でございますので、協会事務局として、意見・要望を申し述べさせていただきます。

前払式支払手段の特性でございますが、あくまでも発行者等が提供する物品の購入やサービスの範囲内で、その支払いに充当されるものであり、また1回当たりの利用金額も少額なものとなっており、未使用残高が残っても、原則払戻しができないという点で、極めて換金性が低いという特性がございます。こうしたこともあって、事務局資料にもございますが、2019年7月に公表された金融審議会金融制度スタディ・グループ「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫におきまして、「資金移動業者が提供する送金サービスと異なり、前払式支払手段は払戻しが認められておらず、マネー・ローンダリングやテロ資金供与に係るリスクが相対的に限定されている。このため、取引時確認義務等については、これを引き続き課さないこととすることが考えられる。」とされたところです。

また、今年5月に施行された改正資金決済法や改正事務ガイドラインにおいて、譲渡可能な前払式支払手段について不適切な利用を防止するための措置を講じることや、口座連携サービス等においてセキュリティーの確保や不正利用防止策の体制整備が求められています。これを受けて、発行者においては、セキュリティーの高度化を図るとともに、一定の敷居値やシナリオを設けて、不正利用を防止するために常時モニタリングを行っており、不正利用の疑いがある場合にはアカウントを凍結すること等により、不正利用の防止に努めております。

このような発行者の取組を踏まえ、スタディ・グループの報告書以降、前払式支払手段をめぐる状況の変遷、リスクの有無、程度を改めて把握する必要があるものと考えております。

そこで、協会では、本日の資金決済ワーキング・グループにおきまして、譲渡できる前払式支払手段に関するマネロンリスクへの対応が議題とされたことを踏まえ、当協会の会員であるサーバ型前払式支払手段発行者等全社に対し、譲渡できる前払式支払手段の発行の有無、利用実態、規制が導入された場合のサービスや利用者への影響等についてアンケートを行うことといたします。アンケート結果や会員の意見等を踏まえ、次回ワーキング・グループにおきまして、協会事務局の意見、要望を申し述べさせていただきますので、ぜひともその機会を設けていただきますようお願い申し上げます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの方から御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

少し時間がございます。石井メンバーから、資料1に戻って御発言の希望が出されておりますので、手短に述べていただければと思います。よろしくお願いします。

【石井委員】

お時間いただきましてありがとうございます。

資料1についての追加のコメントです。事故発生時の事後的な対策をどうするかということも、安全管理措置の中に含まれてくると考えましたので、そうした検討が必要かと思った次第です。共同機関の扱う個人情報が、何かしらの事故によって漏えいなどした場合には、プライバシーを侵害するという面はもちろんありますが、国や社会全体の安全に関わる利益を損なう危険もあるだろうと考えます。

個人情報保護法制においては、情報漏えいなどの事故が発生したときに、個人情報保護委員会の報告と、個人への通知が、一定の要件を満たすことで義務づけられることになっていきますが、共同機関の場合にどうするかを考えておく必要があるというのがコメントです。

また、個人情報保護委員会が、個人情報の取扱いについては、監督する領域になるのかということが、監督機関との関係での整理が問題となると思います。本人への通知となると、これは犯罪者に通知するというような話になるかもしれないので、何かしらの代替策を講じることができるのか、そうした事務的な対策についても考えておくことが望ましいと思いました。

共同機関の情報は、個人情報ではあるのですが、保護すべき利益が果たしてプライバシーや個人情報保護だけなのかということも、この分野の議論だと考えておく必要があるだろうと思いました。

さらに、安全管理措置の関係では、データの保存期間について、最低限の期間しか保存しないのか、あるいは公益性を維持するために一定の期間は保存する必要があるのかという点についても整理しておく必要があると思います。

以上です。すみません、お時間来てしまいました。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

予定の時間となりました。まだまだ御意見があることと存じますけれども、本日はここまでとさせていただき、次回以降にまた御発言をお願いしたいと存じます。本日いただきました御説明や御意見を踏まえて、今後さらに議論を深めてまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

最後に、事務局から連絡事項などございましたらお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。

【神作座長】

それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線3572、3556)

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