金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第4回)議事録

  • 1.日時:

    令和3年12月17日(金曜)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第4回)
令和3年12月17日
  
【神作座長】

定刻より少し早いですけれども、皆様おそろいでございますので、ただいまより、資金決済ワーキング・グループの第4回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参加頂き、誠にありがとうございます。

本日の会合も、前回に引き続きオンライン開催とし、一般の傍聴はなしとした上で、メディア関係者の皆様には、金融庁内の別室において傍聴頂くこととしております。

次に、本日の会合も、オブザーバーにつきましては、本ワーキング・グループ設置時の各団体のほか、個人情報保護委員会事務局、日本銀行、預金保険機構、信託協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、日本STO協会、新経済連盟、日本IT団体連盟に加え、Fintech協会にも御参加頂いております。

それでは早速ですが、議事に移ります。本日は、まず事務局より、共同機関に対する業規制のあり方、ステーブルコインへの対応に係る報告案について説明を聴取した上で、取りまとめに向けて、メンバーの皆様に御討議頂きたいと存じます。次に、前払式支払手段に関する対応のあり方に関して、事務局より説明を聴取いたします。その後、事務局資料に対する御意見などについて、オブザーバーでいらっしゃる日本資金決済業協会の長楽専務理事、新経済連盟の片岡様、日本IT団体連盟の木村様、Fintech協会の落合様より御発表頂いた上で、メンバーの皆様に本論点の議論を深めて頂く、このような流れで進めさせて頂きます。

なお、討議に当たりましては、資料2-2の「本日討議頂きたい事項」を適宜御参照頂ければと思います。

それでは、事務局より説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料1に沿って報告案を見て頂きたいと思います。

まず、2ページから始まります。銀行等におけるAML/CFTの高度化・効率化に向けた対応ということで、まず1.として背景、それから2.銀行等におけるAML/CFT業務の共同化ということで、(1)AML/CFT業務の共同化の意義。

次のページに参ります。共同化の対象ということで記載させて頂いております。具体的には次のページもありますけれども、アとイ、取引フィルタリング業務、取引モニタリング業務ということでございます。

3、共同機関に対する業規制のあり方ということで、(1)基本的考え方、次のページに行って頂きまして、(2)といたしまして、業規制の具体的な内容、参入要件①です。

次のページに行って頂いてよろしいでしょうか。②兼業規制、それから③といたしまして、個人情報の取扱いに係る体制整備義務等ということでございます。

次のページに行って頂いてよろしいでしょうか。④として検査・監督でございます。

それで、次のページの冒頭よろしいでしょうか。この検査・監督の結果ですけれども、不適切な業務運営の結果、業務を委託した銀行等において、義務等の履行不十分となった場合ですけれども、当局としてはまず、共同機関に対する監督権等の行使により対応することが考えられるということですけれども、この点について、注でその趣旨を明確化させて頂いております。注の28ですけれども、①銀行等が共同機関を利用する場合におきましても、犯収法等に基づくAML/CFTの履行義務は引き続き各銀行等に対して課せられていること、②委託元の銀行等は、他の委託先と同様に、銀行法等に基づき、委託先である共同機関の業務の適正性を管理・監督すべきことに変わりはないということで趣旨を明確化させて頂いております。

続きまして、個人情報の適正な取扱いの関係の記載でございます。

その次に行って頂きまして、5.で今後の課題ということで、(1)AML/CFT業務の国民への周知・広報ということで、(2)で今後の課題ということでございます。最後のパラグラフのところでございますけれども、次のページに行って頂いてよろしいでしょうか。「AML/CFTの更なる実効向上策として、各銀行等の間の個人情報の共有を可能とする等の対応については、共同機関を含むAML/CFT業務に対する国民の十分な理解を得ていく中で、共同機関が当局による直接の検査・監督等の対象となることや今後の共同機関における業務実施状況、更には、マネー・ローンダリング等に関するリスク環境の変化等により銀行等に対してより高い水準でのAML/CFTが求められる可能性があること等を踏まえ、検討すべき課題である」という形にさせて頂いております。

続きまして、13ページ、第2章、金融サービスのデジタル化への対応ということで、電子的支払手段に関する規律の方、まず(1)といたしまして、背景を書かせて頂いております。

14ページに参りましては、我が国の現状ということでございます。

15ページの冒頭の辺りでございますけれども、「民間の発行するデジタルマネーに関して過不足ない制度整備を検討することは、利用者保護やAML/CFTの観点から必要な対応を行うことに加えて、民間事業者が、近年の関連する制度整備とあわせ、決済の効率化等に向けた様々の取組みを試行できる環境を整備する意義があると考えられる」。これに加えましてマクロの数字的なイメージといたしまして、国内における決済サービスの提供状況を見ると、全銀システムが約3,000兆円、資金移動業者の取扱額1.2兆円、前払式支払手段25.8兆円。また、国際的に検討が進むCBDCは、民間デジタルマネーとの共存が前提となっているということで、今回の制度整備によりまして、こうした決済サービスの利便性向上等に向けた取組みにつながることが期待されるという形でまとめさせて頂いております。

続きまして、(3)ステーブルコインの分類でございますけれども、これについては、これまで見て頂いていることから変更はございません。

16ページから17ページにかけまして、参考の暗号資産型のステーブルコインを巡る課題ということで、現行法をどういうふうに適用されるかという整理に加えまして、18ページの最後のところでございます。「なお、例えば暗号資産と価値が連動するステーブルコインも上記イに含まれ得ると考えられるところ、EUの規制案では、複数の暗号資産を組み合わせて価値安定を図るものも含む資産参照型トークンについて、発行者に対する開示義務等を課すこととしている。上記イに該当する暗号資産型のステーブルコインに対する発行者規制の要否等については、今後の利用実態や諸外国の制度整備の動向等も踏まえつつ、検討することが考えられる」ということで整理させて頂いております。

続きまして、(4)デジタルマネー類似型と既存のデジタルマネーの関係、(5)「発行者」と「仲介者」の分離に伴う課題、20ページに参りまして、「発行者」及び「仲介者」に求められる規律といたしまして、①「発行者」でございます。

21ページでございますけれども、中段あたりから、このアとイとウというスキームがあるわけですけれども、この具体的な破綻時の枠組みということで整理、もともと注にあったものを本文に記載させて頂いております。

22ページに参りまして、②「仲介者」の対象行為。

23ページに参りまして、仲介者の業規制の具体的な内容ということでございます。

24ページでございます。23ページの最後からなのですが、「利用者保護等の観点から支障を及ぼすおそれのある電子的支払手段は取り扱わないこととすべきと考えられる」と。この一環といたしまして、海外に所在する者が発行する電子的支払手段を仲介者が取り扱うことについてどう考えるかということですけれども、「発行者の破綻時等に利用者資産が適切に保護され、実務において利用者が円滑に償還を受けられることが重要となる。こうした観点から、現時点においては、基本的に、国内において発行者の拠点や資産保全等がなされることが求められると考えられる。それ以外の方策については、今後の諸外国における規制・監督体制の整備状況や実務上の観点等も踏まえ、引き続き、検討することが考えられる」という形にさせて頂いております。

業規制の具体的な内容が続きます。③、26ページに行きますと、「発行者」と「仲介者」の関係等に関する規律ということで、これも見て頂いているものと変わりありませんが、27ページの2つ目のパラグラフでございます。「なお、これらの規律は、第1章で検討した銀行等におけるAML/CFTの高度化・効率化に向けた対応と比較すると、基本的なものに留まる。電子的支払手段の仲介者等に対しても、銀行等と同様、今後、マネー・ローンダリング等に関するリスク環境の変化等により、より高い水準でのAML/CFTを求める可能性があると考えられる」ということを記載させて頂いております。

その下でございます。(7)グローバル・ステーブルコイン等に関する規律ということで、1つ目のパラグラフの一番最後の2行でございます。「また、プラットフォーマーを含む大規模な事業者による市場の寡占等の可能性を念頭においた議論も行う必要がある」ということで注の102でございますが、「欧州では大規模な決済事業者が市場を寡占することの弊害が議論されることもある。将来的に、サービス提供が寡占的になり得ることを念頭において、市場の効率性を確保する観点やインターオペラビリティ(相互運用性)確保の観点からの規律を検討すべきとの意見があった」ということを記載させて頂いております。

続きまして、28ページ、29ページに参りまして、関連する論点でございます。29ページ、CBDC、30ページ、②銀行が発行者となるモデルでございます。この銀行が発行者となるモデルにつきましては、預金保険の適用関係を含めまして、記述詳細化させて頂いております。

31ページ、③といたしまして、デジタルマネーの発行者に関連するその他の論点ということで、いわゆるナローバンクの議論ということでアとイ、銀行型、非銀行型ということで紹介させて頂いております。

その上で、非銀行型につきまして、32ページでございます。非銀行型については、現行の資金移動業と異なり自ら資産運用を行うのであれば、破綻時の利用者の償還請求権保護等の観点から、厳格な兼業規制や財務規制等のほか、利用者の運用資産に対する優先弁済権の付与を検討する必要がある。更に、発行者破綻時の迅速な払戻し機能(セーフティネット機能)の必要性等についても検討すべきと考えられるということを加筆させて頂いております。

以上でございます。

【神作座長】

説明ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明を踏まえて、メンバーの皆様に御討議を頂きたいと思います。また、メンバーの方々からの御質問、御意見が終わった後に、オブザーバーの方々に御発言の機会を提供させて頂きたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

後藤メンバー、お願いいたします。

【後藤委員】

説明をどうもありがとうございました。後半のステーブルコインの関係で、2点ほどコメントをさせて頂きたいと思います。

1点目なのですけれども、ちょっと今更ながらという感じもするのですが、用語法について少し分からなくなってしまったところがありまして、まずお伺いしたいと思います。

今回の報告案で提言されている規制ですけれども、13ページのタイトル、「電子的支払手段に関する規律のあり方」となっておりますので、この電子的支払手段というのが規制対象なのだろうと理解しているのですけれども、この電子的支払手段とは何なのかという定義が、実はあまりはっきりと書かれていないような気がします。似たような概念としてデジタルマネーというものが出てきますし、また、電子マネーという、これは法制度上の概念でなくて一般社会にいう電子マネーというものもあり、これらの中でステーブルコインというものがどのように位置付けられるのか、この辺の概念整理をちゃんとしておかないと混乱を招くのではないかなというふうに感じているところでございます。

この報告案を読んでいきますと、18ページになって、ようやくかぎ括弧つきで「以下「電子的支払手段」という」という定義めいた一文が出てくるのですけれども、そこでは、「社会で幅広く使用される電子的な送金・決済手段」、これが電子的支払手段ですと書かれています。こういう機能的なアプローチは、私自身は非常に好きなところなので、これはこれで結構かなとも思うところなのですけれども、ただ、こういう機能的なアプローチを取っていきますと、例えば現在前払式支払手段の形を取って使われている電子マネー、交通系のものとか何とかペイとかいろいろありますけれども、そういうものも大分幅広く使えるようになってまいりましたので、このような電子マネーも電子的支払手段に当たることになるように、ここだけ見るとそう思えるわけです。

ただ、その後しばらく行きまして、注の81に行きますと、前払式支払手段は、基本的には電子的支払手段には該当しないと書いてあって、あれ、と思うわけです。何で当たらないのか、注の54が参照されていますのでそこを見ると、ここでも当たらない理由ははっきりとは書かれていなくて、前払式支払手段については原則として償還できないということが書かれているに止まります。そうすると、償還できるものが電子的支払手段という整理なのかと。それはそれであり得る定義だと思うのですけれども、そうであれば、まず定義のところにしっかりと書いておくべきであろうと思われます。

もっとも、また注の81に戻ると、前払式支払手段は、基本的には電子的支払手段に該当しないのだけれども、実態として、その発行者や加盟店以外の不特定の者に対しても送金・決済手段として利用されるようになると、これはまた、償還できなかろうが、そこは関係なくなって、電子的支払手段に該当し得ると書いてあります。実態を見ると、確かに支払手段ですよねということで、これはこれでいいんですけれども、そうすると、結局、電子的支払手段というのは、この広く使われているという機能的な面を見るのか、償還できる、できないという法律構成の話を言っているのか、何かよく分からなくなってしまっているように思います。これが規制対象の一番根本的な概念だとすると、そこを曖昧にしたままこの報告を出してしまうというのは、私は非常にためらいを覚えるところであります。これがちょっと手直しすれば済むような話なのか、全体に影響するような話なのかというところは、慎重に御検討頂く必要があるのではないかなと思っております。私がひょっとしたら読み違いをしているかもしれませんので、この点、さっきのような読み方でいいのか、確認をさせて頂ければというのがまず1点目でございます。

2点目、前も申し上げたところなのですけれども、海外の主体が発行する電子的支払手段について、24ページに記載を追加して頂きまして大変ありがとうございました。これで、少なくともこの報告案が想定する扱いというのが明らかになったかなとは思っております。

ここで書かれておりますのが、電子的支払手段については、発行者の破綻時に利用者資産が適切に保護され、償還を受けられることが重要となるということで、そこからは、基本的には国内においてその発行者の拠点とか資産保全がなされることが必要であるとされています。以前たしか日本の銀行免許または資金移動業の登録などが必要になってくるのではないかというような御指摘があったところかと考えております。

ただ、それ以外の方策もあり得るのではないかということで、引き続き検討するということも書いて頂きました。これも大変ありがたく思っているところなのですけれども、ただ、引き続き検討するということになった場合に、では現状はどうなんだというところが気になるところです。こういうサービスを提供しようとする事業者はもちろんですが、それだけではなくて、国際的なデジタル取引については海外発行のステーブルコインの利用が一般化してくるとしますと、日本の中でそれを使いたいというときにそれができるのかどうかというところは、一般の利用者、個人も法人も含めてですが、そういう方々にとっても重要なところではないかなと考えているところでございます。

もちろん、そういう海外の発行主体が日本に進出してくれて、日本で扱う以上は日本の登録とかをきちんと取ってくれれば良いのですが、残念ながら、グローバルにみたときに、日本のマーケットの規模というのは世界の中でどれだけの量を占めるのか。取るに足らないということになってしまうと、日本の登録をわざわざコストをかけて取りに行く必要もないよねということでスルーされてしまうというおそれは多分にあるように思います。ステーブルコインなどが経済発展にもつながる可能性があるのだとすると、こういう新しいことに対する規制をかけていくときに、このようなリスクは決して過少評価すべきではないというように感じているところでございます。

そこで、どういった規制のあり方があるのかということですけれども、翻って16ページのステーブルコインの分類のアとイというところで、イの暗号資産型というものは、先ほど御紹介がありましたように16ページから17ページで、結局、暗号資産なので、暗号資産交換業者が取り扱うことができる。ただ、その利用者の保護に支障を及ぼすようなものは扱ってはいけないということになっていますということになっています。これはこれで結構かと思うのですが、そうすると、国外の主体が発行するデジタルマネー類似型のステーブルコインというのは、この暗号資産型と比べて、危険性はそんなに悪くないのではないかなと。国外の主体が償還を約している、もしくはそれに準ずるスキームが取られているのであれば、それは外国にあるという点はあるにせよ、何の裏付けもない暗号資産型よりはむしろ安全であるという見方もあり得るような気がします。

そうすると、暗号資産型のステーブルコインであれば暗号資産交換業者が扱うことができるのに、アのデジタルマネー類似型で、ただ発行主体が国外で、日本の免許登録を受けていない場合には、仲介業者は扱えないということになるのだとすると、そこだけエアポケットのようにすぽっと抜け落ちてしまうということになることをちょっと危惧しております。そうだとすると、海外の発行主体に対する規制をどうするかは今後しっかりと検討していくべきであるとはしても、現状でも、少なくとも暗号資産型のステーブルコインと同等の扱いをすべきではないかというように感じております。

ここでネックになってくるのが、暗号資産交換業者は通貨建資産を対象とできないという整理ですけれども、では何で通貨建資産を取り扱うことができないのかというのは、よく考えてみるとよく分からないように思われます。これは暗号資産をもともと仮想通貨と呼んでいたときに、通貨建資産とは別物ですという整理をしていたことの名残ではないかと思うのですが、現状ではその頃とは違ってきて、たしかアメリカなどでも、こういうステーブルコインも暗号資産交換業の枠組みで扱っているということですので、日本では同じように、海外主体発行のステーブルコインは暗号資産交換業のほうで取り扱うことを認めるという整理をすることは不可能ではないように思います。もしくは、今回つくられる予定の電子的支払手段の仲介業に、国内の主体が発行していて、日本政府としてしっかりとした規制をかけているものと、それと比べて償還の確実性という点では少し劣るかもしれないけれども、外国の主体が発行しているものの両方を取り扱うことができるようにするということでも良いかと思います。こういった整理は分かりにくいのではないかというご指摘もあるのかもしれないのですけれども、やはり、この動きが早い世界において、日本の事業者や利用者が、世界の主流である国外発行のステーブルコインを使うことができないということは、あまり政策的に望ましい状態ではないように感じておりますので、その点、どうお考えなのかなということをお聞かせ頂ければというふうに思っております。

報告案でもいろいろとアメリカやEUの規制に関する議論を紹介されているのですけれども、私が理解しているところによりますと、まだいずれも規制案の段階にとどまるものであって、規制が固まっているわけではないという中で、日本がちょっと突出してしまわないかということも危惧されるところでありますので、その辺も併せて御検討頂ければとは思っております。

以上でございます。長くなって申し訳ございません。

【神作座長】

ありがとうございます。ステーブルコインについて2点、御指摘を頂いたと思います。

特に、1点目の用語法、電子的支払手段の定義については、デジタルマネーやステーブルコインとの関係など、整理する必要があるのではないかという御指摘を頂きましたけれども、端本参事官、事務局のほうからコメント頂けますでしょうか。

【端本信用制度参事官】

分かりました。分かり易いように整理できるか、工夫させて頂きたいと思います。まず、電子的支払手段は、報告案ですと20ページから22ページにかけてです。まず、権利義務関係が明確なものとしてア、イ、ウという3つ挙げさせて頂いております。

その上でということなのですが、22ページを見て頂きますと、「電子的支払手段は上記以外にも様々な仕組みで発行され得る」ということで様々なものがあるということでございます。それで、法的にどう考えるかという点については、これも該当箇所の関係をもう少し分かり易くしたほうがいいかもしれませんが、報告案の16ページの注の59を見て頂きますと、これはまさに後藤委員が言われた通貨建資産です。通貨建資産を決済等に使用する場合は、銀行業免許または資金移動業登録が現行求められるということですので、このまさに電子的支払手段、通貨建資産というものをベースに、法律上は規定していくことになろうかと思います。それで、そこについてのさらなる説明は、その下、注の60にも記載させて頂いているということでございます。

2点目の24ページの海外の現状をどう見るのかということですが、これは暗号資産交換業も同じだと思いますけれども、利用者保護上、問題や支障が生じるかどうかということだと思います。そういう意味で、このステーブルコイン、誰かが償還を約しているものについては、その約している者が規制監督の下にあるのか、あるいは何も規制がない状態なのかというのは一つポイントになろうかと思いますし、その約束が、発行者破綻時に果たされるかどうかということもポイントになろうかと思います。

この点については、FSBの2019年6月のリブラ構想を受けて、各国当局者間で相当議論して、FSBのほうで、2020年10月だったと思いますけれども、10の原則というのをまとめています。その中の9番目の原則でも、払戻しを約している場合は、その法的明確性、プロセスの明確性等を要求すべきだということにされておりますので、ここは各国共通の理解がなされているということではないかなというふうに思います。

それから、資料2-3を開けて頂いてよろしいでしょうか。その7ページになるのですけれども、今回の電子的支払手段というところで、仲介者の規制の枠組みが必要ではないかと申し上げているのは、この左側のデジタルマネー類似型の、この赤の点線になっているところでございます。右側の暗号資産については暗号資産交換業というのがあるわけですけれども、通貨建資産につきましてはこういう仲介者規制がない。そこについて議論して頂いているということですので、補足させて頂きたいと思います。

以上でございます。

【神作座長】

ありがとうございます。後藤メンバー、いかがでしょうか。何か追加の御発言はございますか。

【後藤委員】

どうもありがとうございます。

私ももう一回読み直してみたいと思いますが、様々な仕組みで発行され得るということはあるとしても、やはり定義はしておくべきではないかと思います。この後の注で書いているということなのですけれども、そこは概念整理をきちんと分かり易くしておかないといけないのではないかというのがまず1点でございます。

あと、FSBの原則などもあるということはもちろん承知はしているのですけれども、償還を約している場合にはそれが明確であってそのプロセスも明確である必要がある、そのことには全く異論はないのですが、それが明確であるということが、日本で扱う場合には日本の免許または登録を受けていなければいけないということと必ずしも同義ではないように感じているところでして、そのFSBの要請をもちろん満たす必要があるとは思うのですけれども、過不足のない規制であるべきではないかなと思います。

通貨建資産を日本で扱う場合には、為替取引として銀行か資金移動業になるという整理かと思いますけれども、日本円の場合には確かにそうかなと思うのですが、日本で外国主体発行の外国通貨建のものを扱う場合に、これを為替取引と呼んで同じ枠組みに入れるというのが果たして必然なのだろうかというところに疑問の余地もあるのかなと思ったというところでございます。

ほかの点も含めて、また頂いたお答えを踏まえて考えてみたいと思いますけれども、取りあえず先ほど申し上げたようなところでして、新しいものをつくろうとしているときに、これまでの経緯でできている為替取引ですとか、また通貨建資産や暗号資産の分類、ちょっとそこに引きずられ過ぎてしまっていないかなという懸念を持っているというところだけ、テークノートして頂ければと思います。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは、続きまして加藤メンバー、お願いいたします。

【加藤委員】

加藤です。よろしくお願いします。私も後藤委員と同じく、ステーブルコインについて2点コメントいたします。後藤委員のコメントと重なる部分もありますことを御容赦ください。

第1に、ステーブルコインが備えるべき規制の内容が流動的であるということを踏まえた制度整備が必要であると考えます。資料などで再三指摘されていますとおり、ステーブルコインを対象とする制度整備の動きが国際的に急速に進み、一定の方向性は明らかになりつつありますが、まだその終着点がどこになるのかということは確定していないように思われます。特にFATFとアメリカの規制の動向に注意する必要があると考えます。

報告案の26ページでも言及されていますけれども、FATFについては、パブリックブロックチェーンとAML/CFTの要請を技術で両立させることができるかということについての、技術者とFATFとの折衝のようなものがあると聞いておりますので、その評価が問題となると思います。

アメリカの規制については、アメリカで発行されたドルと連動するステーブルコインが暗号資産取引における基軸通貨のようになる可能性が有り得るため、我が国の業者がこれを取り扱うことができる余地を残しておくということが必要と考えます。

報告案でも13ページで言及されていますとおり、暗号資産取引はステーブルコインのユースケースの一つとして挙げられています。この分野では、ドルと連動するステーブルコインに対する需要が現に存在するわけです。暗号資産取引の将来性は未確定ではありますが、未確定であるからこそ、現時点で将来の規制上の選択肢を狭め過ぎることには慎重であるべきと考えます。

第2に、発行者と仲介者の関係についてもコメントいたします。報告案19ページの注の68で言及されていますとおり、発行者と仲介者の役割が分離するとしても、その分離の程度や内容は多様であるということを前提に制度整備を行う必要があると考えます。例えば、銀行がステーブルコインの発行者であると同時に、仲介者の役割を全部または一部担うという可能性が有り得るのであれば、これは銀行の業務範囲規制との調整が必要となるように思います。仮に、銀行が仲介者の役割を全く担うことができないとすると、銀行を発行者とする場合には、発行者と仲介者の役割の完全な分離が規制によって求められることになります。

しかし、このような形で分離を要求するということが、ステーブルコインを用いる決済システムが各種の要請を遵守することの妨げにならないか、懸念があります。また、発行者を対象とする規制については、そのステーブルコインの保有者の償還請求権が法的に明確な形で確保されている点が重要であり、この観点から海外発行のステーブルコインについても、発行者に日本のライセンスを要求しているものと理解しております。

現在の法制度を前提にしますと、このような整理はやむを得ないかもしれませんが、報告案でも言及されていますとおり、諸外国で、ステーブルコインの発行者を対象とする規制が整備された場合などには、例えば仲介者が、ステーブルコインの保有者に代わって、その各国の規制によって明確に確保されている償還請求権を仲介者が代わって行使するという仕組みなどが確保されているのであれば、利用者保護としては十分であるという評価も有り得るように思います。

私からのコメントは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして石井メンバー、お願いいたします。

【石井委員】

中央大学国際情報学部の石井です。私からは、個人情報保護法関係で簡単な質問を2点、お聞きしたいと思います。

まず1点目は、個人情報の取扱いに関する体制整備義務等について、個人情報保護法の上乗せ規制を設けるという整理がなされていますが、ここに書いてないような項目で、例えば苦情処理対応などその他の規律はどのような整理になるのか、ということについてお聞きしたいというのが1点目です。

2点目は、上乗せ規制の趣旨です。今回は取引フィルタリングやモニタリングのために個人情報の取扱いを委託するという整理になると思いますが、個人情報保護法の一般法の方で認められているような情報の取扱い、利活用の規定について、で例えば匿名加工情報や、今度の改正で導入される仮名加工情報などの取扱いも、許容し得るような趣旨が含まれるのかどうかについてお聞きできればと思います。

以上です。

【神作座長】

ありがとうございます。2点御質問があったかと思いますけども、お願いできますか。

【端本信用制度参事官】

ありがとうございます。まず1点目ですけれども、報告案で7ページに書かせて頂いておりますけれども、具体的には、銀行等にどういう体制整備義務が課せられているかということも参考に、今後検討させて頂きたいと思います。詳細を完全に詰め切れているわけではないということでございます。

2点目の御質問も、そうした課題を、今後、具体的に検討していく際に考えさせて頂きたいと思います。

以上でございます。

【神作座長】

石井メンバー、よろしいでしょうか。

【石井委員】

私からは以上です。御検討頂いて、また御教示頂ければと思います。よろしくお願いします。

【神作座長】

ありがとうございます。それでは、翁メンバー、お願いいたします。

【翁委員】

翁でございます。前回欠席していましたときに、預金保険やナローバンクなどについてコメントさせて頂きましたが、それについて御検討頂きまして大変ありがとうございました。いずれも、このステーブルコインについては、今後の金融システムやCBDCとの関係、また、アメリカやEUなども議論が今も動いておりますので、やはり29ページにもございますが、引き続き幅広い視点から議論を深めていくということが大事だというふうに思っております。その観点から、少しだけコメントします。

まず、この報告案では、まず銀行については、今後日本では預金を用いた仕組みとして考えていくことになっていますが、ナローバンク的な安全な裏付資産のコインも今後の検討課題とされており、この辺もさらに検討していく必要があると思っております。

また、今回その預金を用いた仕組みでコインを考えていますけれども、実際のところその従来の預金とどういう異なる付加価値を生み得るのか、利用者のニーズはどの程度あって、どの程度の金融システムの効率化に資するのかといったような点についても、民間銀行のヒアリングなどもして、ぜひ検討を深められればというふうに感じております。

また、同様に、全額保護される新しい預金というものが流通していくといった場合に、注にはお書き頂いておりますが、従来の預金システムとどういう関係になっていくのか、また、CBDCとどういうふうに共存していく形になっていくのか、これは日本のデジタルマネー戦略といった点で、やはり広い観点からも検討する必要があると思っております。

また、規制のアービトラージについては、特に全額保護の観点については、心配する蓋然性は低いのではないかという説明が書いてあり、その点は理解しておりますが、今後、例えば、海外の事業者が、こういった完全に保護されている発行者や仲介者を買収するとか、そういうようなことも出てくるような可能性もありますし、こういったことをどう考えていくのかというようなことも検討していく必要があるかなと思っております。

資金移動業者についての検討も行われておりますけれども、現状は、これは既に前回の議論でもコメントがございましたけれども、機能としては、現状のデジタルマネーは送金機能だけでして、滞留規制の下では事実上今、資金移動業者が保有を前提とするようなコインの発行をできるビジネスモデルは描けないと思いますし、かつ、資金移動業者がナローバンク的なコインを発行しようとした場合には、今回御検討頂きましたように、事実上かなりハードルが高いというような形になっているということだと思っております。

この辺、やはり、さっきの後藤委員からお話ございましたけれども、為替取引というのが平成13年の最高裁判決のときに議論が出ているわけですけれども、その後、いろいろ決済について議論するときに常に論点になっておりますけれども、デジタル時代における為替取引って何だろうかというような、本来はそういった議論もしていく必要があるのではないかと、先ほどの後藤委員の意見とも関連しますけれども、ちょっとコメントまで申し上げます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして森下メンバー、お願いいたします。

【森下委員】

ありがとうございます。私も、今までいろんな委員のメンバーの方がお話しになられたところと共通する印象を抱いている部分もございますが、まず、今回の立法の対象については、先ほど端本参事官のほうから資料2-3の7ページを示しながら説明を頂いたことで、比較的クリアになったような気が私自身はしております。

要は、通貨建資産という形で、現行法の解釈上、暗号資産から除かれている部分について全く手当てがないのではないか、為替取引としての手当てはあるけれども、実際に支払手段のようなものが使われるというようなタイプについては、うまく適用できてないのではないかというようなことで、仲介者についての規定を設けるのと同時に、信託会社というようなものの規定を設けるというのが今回の規定の趣旨であって、そういった趣旨に照らすと、電子的支払手段に該当するようなものは、銀行の預金あるいは資金移動業者が預かっている滞留金に関して発行されるような電子的な支払手段、プラス信託のスキームを使って発行されるものをいうと。あるいはプラスして、それに同等の機能を有するような、流通性の高い前払式支払手段の一部が含まれるのかもしれませんけれども、そのような形で理解をいたしました。果たしてそういうような理解でいいのかどうかというのを確認させて頂ければと思います。

海外の点については、私も何度か発言させて頂いておりますが、他のメンバーの方と似たような印象を抱きます。他方で、今回のステーブルコインというものが、償還できるものとしてマーケットで流通するのだとすると、現実には償還のすべがないにもかかわらず、償還できるのだから安全であるといったようなことを装って、多くの人に一般的に流通するということになると、それはやはり好ましくないというような観点からの規制の必要性というのは分かるという気もいたします。

したがって、後藤委員や加藤委員、いろんな委員の方から御発言があったところも踏まえ、例えば海外で発行されるステーブルコインについて何らかの取扱いの道が示されるにしても、外国の発行者から現実に償還を受けるというのは、仮に仲介者が間に入ったとしても決して簡単なことではないので、そういったような部分について、よほどしっかりした開示なり説明というのがなされていくというようなことが確保されないと、よく分からない利用者の方がリスクを的確に判断できないまま利用してしまうということがあるかもしれないというような懸念を抱きます。

あと、私法上の問題についても幾つか書かれております。例えば振替の件ですとか対抗要件の件ですとか、あるいは連名預金に関する件ですとか、そういうようなことに関する記載があります。これらの点については何度か発言させて頂いていますが、これはこういった私法上の考え方について、例えば金融庁が権威を持って裏付けるとかそういうような形のものではなく、あり得るアプローチの一つとして例示がされたというふうに理解をしておりますけれども、これらの私法上の点というのはまだまだ検討すべき点があるので、こういった点は、実務の皆様なども研究者もちょっと頑張らなければいけないと思いますけれども、今後、発展はさせていかないと、現実に使おうと思うと、私法上の点がネックになって、なかなかうまく利用できないということが出てくると、あまりよくないなというふうに感じております。

最後ですけれども、預金保険との関係で、決済性預金とか一般預金というようなことがありますけれども、電子的支払手段について、発行者あるいは仲介者が例えばポイントのようなものをつけるとか、何らかのサービスをつけるなど、利息類似のようなものをつけるというサービスも考えられないわけではないと思います。そうしますと、決済性預金というような形での整理は難しくなるような気がしますので、電子的支払手段との関係でどういったようなものを決済性といい、一般性といい、あるいはそういったようなこととの関係で、そこに対するポイントあるいは利息的なものの付与をどう考えるのかということは、今回の報告でそこまで踏み込む必要はないかもしれませんけれども、今後の論点としてしっかりと考えていく必要があるのではないのかなと思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

1点、資料2-3の7ページの図によりながら、今回提言しようとしているこの報告の方向性というのは、先ほど森下メンバーが御発言された趣旨のとおりでよろしいでしょうか。森下メンバー、確認させて頂きました。

【森下委員】

ありがとうございました。

【神作座長】

それでは、続きまして井上メンバー、お願いします。

【井上委員】

ありがとうございます。前回までの議論を反映して報告案を書いて頂きまして、ありがとうございました。基本的には工夫して盛り込んで頂いていると思うのですけれども、念のために2点だけ、繰り返しも含めてコメント差し上げたいと思います。

もう既に何人かの委員がおっしゃいましたけれども、海外で発行された電子的支払手段を日本で取り扱うときに、取り扱う仲介者自身が仲介者規制を受けるのは当然だと思います。かつ、海外で発行されたものだとすると、取り扱うべき適切なものなのかどうかをきちんとデューデリジェンスをしてという意味で、報告案の24ページの一番上のところに書いてあるように、問題のある電子的支払手段は取り扱わないという形で、最初のスクリーニングをかけるというのも必要だと思うのですけれども、それに加えて、海外で発行した発行者自身に対して、国内に拠点を設けさせる、あるいは国内で資産保全をさせることが実現すればもちろんそれだけ安心感が増すわけですけれども、それを求めた場合に、現在、海外で発行されているものが、そういった規制を守ってでも日本で発行流通させようという動きになるのかという点には疑問もないわけではないので、そう考えると、この報告案の、「それ以外の方策」も、相応に重要になるように思います。

その観点で、先ほどの第1次のスクリーニングというのももちろん重要ですけれども、大丈夫と思って取り扱ってみたところ、その後、万々が一ということかもしれませんが、発行者が破綻したときにどうするのかというのは、先ほど加藤委員がおっしゃったように、仲介者がどこまでできるかという問題はありますけれども、現地での手続参加、あるいは現地の預金保険の利用等についてのサポートをする、あるいは権利者に代わってまとめて権限を行使することも考えられるのかなと思いました。

いずれにしても、現実的な方策でなければいけないわけですが、日本の市場が健全に育つという方向で、「それ以外の方策」と24ページに書いてあることについても、改めて御検討を進めて頂ければと思います。これが1点目です。

もう一つは、最後のほうで、ステーブルコインを今後どういうふうに発行、育てていくかというときに、非銀行型については、前回申し上げたことですけれど、現在の、滞留規制がかかっている資金移動業者規制でうまくフィットさせられるかについては限界があるように思いますので、その場合に別のバリエーションを認めるのか、あるいは信託会社型でいくのか、銀行以外の発行体を考えたときの方向性、あるいは、それをそもそもあまり認めるべきでないのかということについても、追加でといいますか、今後も検討が必要かなと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして巽メンバー、御発言ください。

【巽委員】

ありがとうございます。私からは、共同機関について少しだけコメントをさせて頂きます。

既に本日、事務局から説明があったところなのですけれども、一つは、8ページにあります、共同機関が不適切な業務運営の結果、そのAML/CFTの義務が履行されてない場合に、当局としてはまず、共同機関に対して監督権限を行使することが考えられるとありますけれども、注の28に適切にお書き頂いているとおり、その犯収法上の義務は第一義的には銀行等に課されているということですので、共同機関に対してきちんとやって頂くように、いろいろと働きかけるべきは第一義的には委託元の銀行等であるというところは、私からももう一度申し上げておきたいと思います。

この話は、最初の頃に私がいろいろ申し上げていた、共同機関のガバナンスという話に密接に関わっている話でして、今後共同機関を具体的に立ち上げるという際に、その委託をする可能性のある銀行等の具体的なニーズをきちんとすり合わせて頂いて、その上で共同機関の業務が走るというのが、以上のお話の前提になると思いますので、そういう趣旨が含まれているものとして、私は理解したということを申し上げておきます。

もう一つは、個人情報に関わる部分なのですが、こちら11ページに、一番上の箇条書ですけれども、個人情報の利用目的についてより分かり易くなるものになるように検討するとあります。こちらは実際には非常に重要だと思っておりまして、これも注の37で既に事務局から補足がありますとおり、個人情報保護法ガイドラインのQ&Aの改正の中で、プロファイリングに関する規制を日本法としては利用目的の特定のところにまず織り込んでいくのだということが明らかになりましたし、今回の共同機関の個人情報の取扱いがこの金融分野におけるプロファイリングの話に関わるものだと認識されることが大事だと思いますので、ここの記述が非常に重要だと思ったということも申し上げておきます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして西川メンバー、御発言ください。

【西川委員】

西川でございます。私は、全体的な報告の考え方について2点確認をさせて頂きたいと思っております。

まず、27ページ、報告案にお示しをされている「AML/CFTを求める可能性」というような表現がありますが、AML/CFTがどういうものであるかというのは今回、実はあまり議論がされずに、「ある一定の水準を満たせばよい」もしくは「AML/CFTは犯罪収益移転防止法が化体しているものだ」みたいな認識の御発言もまれに出てきたような記憶があります。当局のお考えとして、AML/CFTはかなり大きなリスク管理プログラムであって、これが対応するリスクは、バーゼルの、いわゆる内部モデルの手法を破壊するぐらいにグローバルに影響が大きいであるとか、FSBをはじめFATFの基準に従って対応するということを何回も声明を出しているというような形の規律であり、より高い水準のAML/CFTが今後求められる趣旨で今回の報告案に書いて頂いたと思います。これについて、議論しているステーブルコインもそうでしょうし、前払式支払手段のところもそうなのですけれど、この辺りの規律の向上というのはかなりまだ先がある話で、時間をかけて取り組んでいくということ以外は今の日本の金融システムにとって残された道はないと想像しますが、今後の取組方針のようなものについて、今お考えがあればお知らせ頂きたいと思います。

2つ目の話は、今回のワーキング・グループ設立自体のことでございますけれど、当初麻生大臣から出ている、マネー・ローンダリング及びテロ資金対策に関する国際的な要請ということを筆頭に、最終的には安定的かつ効率的な資金決済に関する制度、これがお題であったと思います。

この中で、今回の会合でもそうですし、前回の会合でも発言いたしましたが、AML/CFTのリスクというものに関して、FATFという日本も設立メンバー国であるグローバルな規制をつくっている団体が日本に対する審査を行ったときに、どういう方法論でリスクの審査を行ったのか、また、どういうことに問題があると言ったのかという点について、今回のワーキング・グループで、一つは方向感を出すということで共同化の話も進んでいると思います。

一方、この方法論、メソトロジーであるとか、基本的な考え方は既に確立されていて、固有リスクであるとかコントロール強度であるとか残余リスクであるとか、これらについて世界中の金融機関、もしくは資金移動業者が同じ考え方で対応していますが、この辺りは、今回はあまり表に出ておりません。このようなグローバルに適用されているAML/CFTの規律、もしくは方法論というのは、今後どのように、今回のステーブルコインであったり、前払式支払手段のところの管理について入れていかれるのかという点について、お考えをお示し頂けないでしょうか。

西川から、以上2点、御質問でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございます。

2点御質問がございましたが、いかがでしょうか。

【端本信用制度参事官】

ありがとうございます。

27ページに記載させて頂いていますとおり、ステーブルコインについての対応は、この報告案で記載頂いているのは基本的なものにとどまっているという認識でございます。どういう形でさらに高度化していくか、御指摘のとおり時間をかけて、しっかりと検討していかないといけないと思います。具体的にどういうアプローチを取るかという点についても今後検討させて頂きたいと思います。

【神作座長】

西川メンバー、よろしいでしょうか。

【西川委員】

あともう一つの点は、今回のワーキング・グループの立ち上げに関してなんですが、国際的な要請というもののスタンダードについてはどの辺までかというところで、もしお考えがあれば。なければまた御議論させて頂きたいなと思っておりますが、いかがでしょうか。

【端本信用制度参事官】

このワーキング・グループ、制度的な対応のあり方を検討するということですので、実務の全てをカバーする前提で検討して頂いておりません。そういう前提で、制度的な対応をどうすべきかということを議論して頂いたということでございます。

【西川委員】

承知しました。ありがとうございます。

【神作座長】

それでは尾崎室長、御発言ください。

【尾崎マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長】

金融庁総合政策局のマネロンを担当しております尾崎でございます。西川委員、ありがとうございます。

今、この分科会における位置付けというのは、端本参事官のほうから説明があったとおりです。他方、プラスアルファ、一般的にグローバルな考え方、マネー・ローンダリングの考え方、今後グローバルな考え方を受けてどうするのかということの御質問を受けましたので、その点につきまして、私どもの考え方を述べさせて頂きたいと思います。

この報告案の2ページに書いてありますとおり、まず、法令に基づく規制の根拠法としましては、日本の場合、犯罪収益移転防止法がございます。それに加えまして、この注の1にございますとおり、金融庁のマネー・ローンダリングのガイドラインがございます。これはFATFのスタンダードに沿ったリスクベースアプローチという考え方を取っておりますので、金融庁所管の特定事業につきましては、最低遵守基準である法令遵守プラスアルファ、ガイドラインを踏まえリスクベースで対応していただくということでございます。

リスクベースで対応するに当たっては、まず、固有リスク、これは商品サービス、顧客属性、取引形態、国地域といったような要素の固有リスクの特定・評価を行い、この固有リスクに対するリスクの低減措置、すなわち、統制項目、もしくは、コントロールという言い方もしますが、どのようにリスクに応じた措置を講じていくかということを決めてゆくということでございます。すなわち、高いリスクであればより高いコントロールが要るということで、その差分としての残存リスクを極小化していくということでございます。これが、今、グローバルで言われているリスクベースアプローチのマネー・ローンダリング等対策の基本的考えです。金融庁のガイドラインもこの考え方に沿っております。

そして、グローバルな基準やスタンダードにつきましては、当然、技術であるとか、経済環境であるとか、そういったものに応じて変化するわけでありますが、その背景には、固有リスクに応じて、また統制も変えていくということがございますので、我々としましても、FATFやバーゼルでの議論をしっかりとフォローしながら、ガイドラインの改訂等で、必要に応じて、対応していく所存であります。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして末冨メンバー、御発言ください。

【末冨委員】

ありがとうございます。私のほうから1点だけ、ステーブルコインの規制について確認させて頂ければと思います。

ステーブルコインについては、中央銀行が発行者となるモデルとか、あるいは銀行が発行者となるモデル、あるいは非銀行型ということで、既存の銀行法等々の規制も踏まえた上で、償還を保証したりすることによって適正な運営を図られるというふうに理解しております。このようになると、この要件を満たすステーブルコイン及びその業者と、そうではないものというのが将来的に併存することになってくるかと思いますが、利用者の側の観点から1点質問させて頂きます。このように適正に規制に服するステーブルコインというものについて、利用者にとってそれが明確に分かるような差別化というのが図られることになるのかどうかということについて、ご教示頂ければと思います。すなわち、それが資格なのか認証なのか、あるいは名称で区別されるのかと、いろいろ方法があるかと思うのですけれども、利用者としてそれが区別できるような形を想定していらっしゃるのかということについて確認させて頂ければと思います。

ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございます。御質問頂きました。よろしくお願いします。

【端本信用制度参事官】

ありがとうございます。そういう意味で申し上げますと、仲介者の制度的な枠組みが入りますと、まず、利用者保護上問題がある、いわゆるステーブルコインというものが流通することは、少なくとも制度上はなくなるのではないかと思います。その上で、発行者が銀行なのか、あるいは資金移動業者のような形で資産保全するのか、あるいは海外発行なのか、その違いは出てくるわけですけれども、そこについてはどういう対応が可能か考えていきたいと思います。ありがとうございます。

【神作座長】

よろしいでしょうか。

【末冨委員】

ありがとうございます。そうしますと、利用者保護で不十分なものは、そもそもステーブルコインとしては存在し得なくなるということを想定していらっしゃるという理解でよろしいでしょうか。

【端本信用制度参事官】

制度上は業者が取り扱うということはなくなるということを想定しております。

【末冨委員】

分かりました。ありがとうございます。

【神作座長】

それでは、松井メンバー、お願いします。

【松井委員】

報告案の発表ありがとうございました。私も今、末冨メンバーが御質問していらしたことと類似しておりますけれども、発行体において銀行と非銀行が含まれているということで、この非銀行の破綻について発言させていただきたいと思います。これらの非銀行においては、セキュリティーの問題で、発行されたコインの流出等が契機となって起こる破綻、もしくは事業体自身のロバストネスが問題となって起こる破綻など様々なものが考えられると思いますが、非銀行については破綻法制が、銀行ほどシステマチックな議論が進んでいないため、先ほど加藤メンバーが発言されたように、仲介者がある程度利用者保護の役割を果たすような、そういったスキームというものが今後できていく可能性がある状況において、このような負担が、きちんとコストに反映され、また破綻のリスクに影響しないよう設計されるのかどうかということについては不透明だなというふうに感じております。

今回の報告案の注の87では、セキュリティー等に不安があるものについてはそもそも取扱いできないようですし、また、注の99、26ページあたりでは、破綻に関して情報提供をはじめ様々な対策ということを考えましょうと書かれています。ただ、発行者と仲介者の両者がどのように決済手段から生ずる破綻等に関するリスクを分担していくのかということについては、それぞれの業者が、まだいろんな業態というものを発展させ得るという余地を残した中での報告になる以上、その分担に様々なバリエーションが出てくることが不可避であり、これらについてある程度事業の内容が分かってきたところで、引き続き議論をする余地というのがあるのだろうというふうに感じております。この点、議論が進んだ後になるかとは思いますけれども、引き続き手当等について注視をして頂けますようにお願いいたします。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

メンバーの方からの御発言はこれで終了したと思います。オブザーバーの皆様に御発言の機会を提供させて頂きたいと思いますけれども、まず、預金保険機構の林部長、よろしくお願いします。

【林オブザーバー】

ありがとうございます。預金保険機構預金保険部長の林でございます。デジタルマネーの預金保険との関係等については、これからも議論を深めていくことが適切と考えております。

以上でございます。

【神作座長】

ありがとうございます。

それでは、続きまして日本IT団体連盟の木村様、お願いいたします。

【木村オブザーバー】

日本IT団体連盟の木村でございます。資料1の9ページから10ページの個人情報保護法上の整理について意見を述べさせて頂ければと思います。

今回は時間がない中で、個人情報保護法には触らないという前提で議論が進められていたのかなと理解しておるのですが、典型的な取引情報を基に異常性を検知するというだけではなくて、周辺情報、例えばほかのサービスの利用貸与ですとか、過去の異常な取引歴ですとか、疑わしい取引を行なったことがある顧客かどうかといった属性とか、こういったものを含めて説明変数にしていくということまですれば、さらに高度な機能を共同機関が提供できるようになるのではないかと思っております。そこまでしようとすると、複数の金融機関での情報を利用するということになり、個人情報を各金融機関で共有するという立て付けにならざるを得ないと思っております。

何を申し上げたいかと言いますと、今後、AML/CFTの高度化という世界的な要請に共同機関が応えていこうとすると、共同機関と金融機関、金融機関相互の間で個人情報を共有するという前提で議論をしていく必要が出てくるだろうと思いますし、そうすると、個人情報保護法上の整理ということも、しっかりと考えていく必要が出てくるということです。そういう趣旨の御発言をされたメンバーの方もいらっしゃったかと思います。そういった発言があったということをぜひこの報告の中に記載頂ければ、今後の議論につながるのではないかと思っておりますので、記載を検討頂きたいと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして新経済連盟の片岡様、お願いいたします。

【片岡オブザーバー】

新経済連盟の片岡です。一言だけ、まず共同機関の話ですが、今、IT連から話があったとおり、そのスタートとして共同機関というのはすごくいい取組みだと思いますが、今後いかに合理的に使えるデータを使って、よりリスクベースでリスクの高いところに注力するかというのが必要になってくると思いますので、今後その議論に期待をしたいと思っています。

ステーブルコインについては、詳細はこれから議論という、これから検討される部分も多いと思いますので、ぜひ事業者とのコミュニケーションも図っていきながら、ガラパゴスになってしまわないようにして頂ければと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

オブザーバーの皆様から、ほかに御発言の希望はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

共同機関に対するその業規制のあり方、ステーブルコインへの対応に関する報告案については、皆様方より大方の御賛同を頂いたと思いますけれども、特に24ページの海外に所在する者が発行する場合の記述点については多くのメンバーから御指摘を頂いたと存じます。

また、最初に後藤メンバーから御発言頂きましたけれども、定義について若干まだ整理の余地があると思いますけれども、電子的支払手段等について、性質上、厳密に定義するというのはなかなか難しいところかと思います。しかし、書き方について工夫して整理するということはあると思います。

これらの点については、事務局において、本日の議論を踏まえて御検討頂き、次回、そこの点は再度、御議論頂くとともに、この報告案の記載の最終的な調整に向けて、本日お時間の関係で言い尽くせないようなところがございましたら、メール等でぜひお気づきの点、御注意頂く点を事務局までお知らせ頂ければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、続きまして後半のテーマに移ります。まずは事務局より説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料2-1に沿って御説明させて頂きたいと思います。

まず、1ページ目ですけれども、これは前回から見て頂いております、価値の電子的な移転・譲渡ができないものとできるものというものを分けた上で、電子的な移転・譲渡が可能なもの、高額電子移転可能型の前払式支払手段についての規律を御議論頂いております。

その内訳といたしましては、ここにありますとおり残高を譲渡するもの、番号通知型のものの電子ギフト券、いわゆる国際ブランドのプリペイドカード、こうしたものを念頭に置いて頂いているということでございます。

2ページ目でございます。国家公安委員会が2015年以降公表しております犯罪収益移転危険度調査書の内容の一覧ということでございます。上から見て頂きますと、マネー・ローンダリング事犯等の分析、危険度の高い取引といたしまして、例えば国・地域、顧客の属性として反社会的勢力、国際テロリスト等々ということが記載されております。

その下でございますが、危険性の認められる商品・サービスということで、犯罪収益移転防止法上の特定事業者を列記させて頂いております。例えば、(6)ですと、資金移動業者は2009年に追加されております。暗号資産交換業者は2016年、クレジットカード事業者につきましては2007年に追加されているということでございます。

こうした中で、前払式支払手段、電子マネーということで、特定事業者ではございませんが、2015年以降利用実績等を注視していく必要があるということで、毎年リスク分析がされているということでございます。

3ページでございます。電子移転可能型前払式支払手段のマネロンリスクということで、クレジットカードとの比較をさせて頂いております。左側のクレジットカードのリスク、国家公安委員会の調査書の中での記載を抜粋させて頂いております。「自己の保有するクレジットカード番号等の情報を第三者に教えることにより、当該第三者に商品等を購入させることが可能」、「当該第三者が当該商品等を売却して現金を得ることにより、事実上の資金移動を国内外を問わず行うことが可能」ということで、本人確認義務あるいは疑わしい取引の届出義務等は課せられているということでございます。

右側を見て頂きますと、いわゆる国際ブランドの前払式支払手段、これは国際ブランドのクレジットカードの決済基盤を活用いたしますので、同様の機能を提供しております。近年、数千万円規模の高額なチャージを可能とするサービスも登場しているということでございます。

4ページでございます。電子移転可能型前払式支払手段のマネロンリスクの2つ目といたしまして、1つ目の丸でございます。電子移転可能型前払式支払手段の発行と資金移動業を併せ行う電子マネー発行業者におきまして、まずその図の下で見て頂きますと、まず前払いのところは本人確認なくアカウント開設・チャージができます。それから利用して、途中で資金移動業サービスに移行する過程で本人確認をするわけですけれども、この過程で反社会的勢力による利用ということが確認されてサービスの利用停止をした事例もあるということでございます。

続きまして、5ページでございます。資金移動業者における「反社会的勢力との取引を未然に防止するための事前審査」の例といたしまして、アカウント開設時に本人確認を自社の反社会的勢力に係るデータベースとの照合、あるいは必要に応じて警察等に問い合わせるということで確認して頂いております。

その下の事務ガイドラインですけれども、これは資金移動業者についての事務ガイドラインですが、前払式支払手段発行者についても同様の記載がございます。加盟店については同様のチェックをして頂いていると承知しております。

続きまして、6ページでございます。疑わしい取引の届出の事例ということで調査書より抜粋させて頂いております。主なパターン3つございます。まず、①といたしまして架空名義・借名での疑い、②といたしまして暴力団等に係る取引の疑い、③取引の態様が不自然なものということで報告されているということでございます。各業態、ほぼ共通しているということが、下で見て頂けるとお分かり頂けると思います。

7ページでございます。疑わしい取引の届出受理件数、近年、増加傾向にございます。これにつきまして、国家公安委員会のほうでは、その下の囲みのところでございます、社会全体のコンプライアンス意識の向上に伴い、監視態勢が強化されている、あるいは金融機関等を対象とする研修会等の効果が出ているというような形で分析されております。

8ページは、疑わしい取引の届出受理件数、業態別に見て頂きますと、預金取扱金融機関、続きましてクレジットカード事業者、貸金業者、送金会社あるいは資金移動業者というような順番で届出をして頂いているということでございます。

9ページでございます。特定事業者の業界団体による取組みといたしまして、ガイドブック・社内規程モデルを作成して頂いたり、研修会を実施して頂くなど、マネー・ローンダリング対策を業界として向上させる取組みが継続的に行われているという状況でございます。

以上を踏まえまして、10ページでございます。前払式支払手段の発行者に係る制度的対応案ということで、マネロン上のリスクが特に高い、高額のチャージや移転が可能な発行者に対して、資金決済法において業務実施計画の届出を求めるとともに、犯収法に基づく本人確認等の規律の適用を検討するということでございます。

同一の機能・リスクに対しては同一のルールという考え方に基づきまして、機能が類似する資金移動業者・クレジットカード事業者に対する現行制度や利用実態等を踏まえ、高額の考え方は、1回当たりの譲渡額が例えば10万円超、1か月当たり譲渡額等の累計が例えば30万円超ということで考えてはどうかということでございます。

より詳細に見て頂きますと、下の注の1でございます。現金を持ち込んで銀行送金する場合、10万円超の送金に対しては取引時確認、本人確認して頂いています。これを参考に、1回当たり10万円超としてはどうかということでございます。1か月当たりの累計につきましては、この左側、国際ブランドのクレジットカードということで参考で書かせて頂いております。学生等を除きまして、クレジットカードを契約いたしますと30万円超の利用、通常可能になりますので、そうしたものも参考にさせて頂いてはどうかということでございます。ちなみに、クレジットカード事業者、資金移動業者、いずれも金額の多寡にかかわらず、全て本人確認等、あるいは疑わしい取引の届出をして頂いているということでございます。

11ページは、それをもう少し詳細に記載させて頂いたものですので説明は割愛させて頂きますが、13ページでございます。対応といたしまして、まず、2つ目のポツですけれども、高額電子移転可能型、そうでないもの、両方を発行する場合が考えられます。同一のアプリ等でシームレスに移行できるような仕組み、これは可能とできる必要があると考えております。発行者側のシステム対応に加えまして、既存ユーザーへの周知が必要であることを踏まえて、適切な猶予期間を設ける必要があると考えております。オンライン、マイナンバー含めましてオンラインで完結する本人確認方法があるということ等も考慮要素かということかと思います。

14ページでございます。一般のユーザーの方にどれぐらい影響がある話かということで、一つの参考のデータでございます。2年前に、金融庁のほうで4社のチャージ残高の譲渡額ということで、御協力頂いて調査したことがございます。95%を超える方が、件数が2万円未満ということで、例えば10万円以上ということの譲渡で見て頂きますと、全体の0.1%という状況でございます。

以上でございます。それに基づきまして、討議頂きたい事項、論点1から論点4まで用意させて頂いております。よろしくお願いいたします。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、日本資金決済業協会の長楽専務理事より御説明をお願いいたします。

【長楽オブザーバー】

日本資金決済業協会の長楽でございます。

資料3の1ページから7ページ、協会事務局金融審議会発言骨子に基づきまして、かいつまんで協会事務局の意見を申し上げます。

最初に、資金決済ワーキング・グループにおける進め方及びこれに対する当協会の対応等について御報告させて頂きます。

2019年の金融審議会で、前払式支払手段はマネロンリスクが相対的に限定されているとして、引き続き取引時確認義務等については課さないとされ、その後、特段の事情の変更があったとは認められず、8月のFATF対日相互審査結果でも言及がない中、11月の第2回資金決済ワーキング・グループで、高額電子移転可能型前払式支払手段について、犯収法に基づく本人確認等の規律の適用について討議事項として提示されました。

そこで、協会事務局におきましては、会員が発行する前払式支払手段のサービス継続や経営に与える影響等を把握すべく、金融庁から示された番号通知型、残高譲渡型のイメージを示しまして、ワーキング・グループのスケジュール上の都合から、11月中旬に4日間という短期間で緊急アンケートを実施しました。その後、金融庁から、国際ブランドプリペイドが番号通知型に準ずるとのコメントがあり、12月に新たにアンケートを実施したところでございます。その結果については後ほど報告いたします。

次に、前払式支払手段に対する本人確認等の規律の適用に関する実効性等の観点からの意見を申し上げます。

国家公安委員会が公表しました犯罪収益移転危険度調査書において、電子マネーがマネロンに悪用された事例として、詐欺により不正に取得した電子マネーを買取業者等に転売し現金化した事例などが記載されております。このようなケースにおきまして、本人確認等の規律を適用したとしましても、本人確認の対象となり得る者は、買取業者等から番号等を購入しサービスを利用する一般消費者であり、必ずしもマネロン行為者を特定することにはつながらないのではないかと考えます。この場合、マネロン防止の観点からすると、出口である買取業者等に対して法規制を行うことこそ有効ではないかと考えます。

3点目でございます。犯収法の本人確認等の規律の適用の必要性等の観点から意見を申し上げます。前払式支払手段はあくまで発行者や加盟店から物品の購入やサービスの提供を受けるための前払いであり、ほとんどの前払式支払手段は利用範囲がごく限定されており、一部の広範囲に利用できるものであっても、加盟店での利用に範囲が限られるのであって、制度上原則払戻しが禁止されているため現金化できない以上、どこでも利用できるものではなく、現金や送金サービスとは本質的に異なるものと考えております。

前払式支払手段発行者におきましては、架空請求等詐欺被害については、詐欺への注意喚起とともに詐欺被害を速やかに受け付ける態勢の整備や、詐取等された前払式支払手段を特定し、利用停止等の措置を講じ、アカウントの残高がある場合には返金に応じるなどの対応を行っております。また、不正アクセス等を防止するためにセキュリティ管理態勢の高度化とともに、敷居値やシナリオを設けてモニタリングを行い、不正利用等の疑いがある場合にはアカウントの利用停止等の様々な不正防止のための取組みを行っております。さらに、各発行者においては、リスクに応じ一定のチャージ上限額や利用上限額を設けるなど、様々な工夫を行っているところであり、こうした各発行者の自主的な取組みを評価頂きたいと思います。

4点目です。緊急アンケート調査結果の詳細は発言骨子に記載されておりますので、ここでは簡単に御報告し、本人確認等の規制がサービス継続や経営に与える影響等について意見を申し上げます。

まず、アンケート調査結果ですが、電子移転可能型を発行する会員は32社、種類は70種類となっております。提出があった会員のチャージ上限額の状況ですが、30万円超は残高譲渡型が5種類、番号通知型は2種類、国際ブランドプリペイドは11種類となっております。チャージ残高の分布状況でございますが、残高譲渡型、番号通知型、国際ブランドプリペイドのいずれにおいても、30万円超がございます。金融庁が提示された高額電子移転可能型前払式支払手段の定義に商品設計上、相応の前払式支払手段が該当し、利用実態としても該当する前払式支払手段が一定程度ある状況でございます。

このため、商品設計としてチャージ上限額を設けていない場合やアカウントにおいて譲渡できるものと譲渡できないものにシステム上区別されてない場合などには、新たなシステム開発やシステム改修等のための多額な投資負担や事務負担が発生し、ビジネスの継続に支障が生じるおそれがあります。また、前払式支払手段の利用者は、本人確認なしに簡単な手続で利用できるという点を重視するため、本人確認の手続を進める中でその利用を諦める例が多く発生するおそれがあります。

論点1から4について、会員の意見等を踏まえ、協会事務局の意見を申し上げます。

論点1でございます。クレジットカードは、与信枠の範囲内でいつでも利用できるものであり、また、後払いのため利用時に金銭的負担がないこと等から、信用力のある利用者の場合、多額の与信枠の下、不正利用に使用される金額が大きくなり得る可能性があるのに対し、前払式支払手段は事前に金銭の前払いが必要であり、未使用残高がなければ利用できないという大きな制約があり、また、小口決済手段として利用されているのが実態であることに鑑みますと、犯罪者にターゲットとされるリスクはクレジットカードと比べ小さく、仮に不正に利用されたとしても少額の利用にとどまるものと考えられ、そのリスクの程度については相応の差があるものと考えます。

論点2でございます。企業が反社会的勢力との関係を遮断するための取組みを推進することは、社会の秩序や安全を確保する上で極めて重要であることは当然のことであります。前払式支払手段の利用者に対し反社会的勢力に該当するかどうかの確認を求めることとなれば、本人確認を行うことが前提となり、一律に本人確認を行い、反社チェックを求めることとした場合、発行者において本人確認・反社チェックのための事務負担及びシステム対応への多額の投資負担を要し、社会全体としてもコスト負担の増大を招くほか、大多数の善良な利用者に対しても重い負担を強いることになり、また小口決済手段として利便性を損なうことになることから利用者の減少を招き、キャッシュレス社会の実現にも支障を与えかねないものにもなり得ると考えます。

論点3でございます。発行者において、これまで申し上げたとおりセキュリティの高度化、モニタリングの強化など、不正利用防止策の強化に取り組んでいるところでございます。仮に本人確認等の規律を適用することとした場合、先ほど論点2で申し上げましたことと同様の問題が生じ得ると考えます。

論点4でございます。監督官庁におかれて、まずは、前払式支払手段がマネロンに悪用された事例を具体的に把握・分析し、どのような方法がマネロンを防止するのに有効かどうか具体的に検討頂くとともに、提示されたような高額電子移転可能型前払式支払手段を発行する事業者を特定し、不正利用・マネロン防止に関する業務実施計画を求め、各社の取組状況をモニタリング等により把握頂き、マネロンリスクがどの程度あるのかどうかその実態を十分に把握・分析・評価した上で、本人確認等の規律の必要性について検討をお願いしたいと思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、新経済連盟の片岡様より御説明をお願いいたします。

【片岡オブザーバー】

片岡です。では資料1枚めくって頂きまして、1ページ目に意見をまとめております。

まず、冒頭に書いてあるところですが、正直言って今回提案された敷居値に納得がいっていないというところがありまして、この敷居値で本人確認義務を課すということには反対いたします。まずは、資金決済法による体制整備やモニタリング強化はやるべきだと思いますので、それを行った上で、どういう切り口でどういう敷居値を設けるのがいいのかという点をきちんと慎重に考えるべきだと思っております。

中ほどに書いてありますけれども、今回は、前回と前々回には出てこなかったクレジットカードとの比較というのが出てきました。クレジットカードというのは先ほども説明ありましたけれども、お金を後で払うということで信用の枠をつくって、その枠の範囲内であればそのお金を払う前に使えるという特徴がありますので、やはり前払式支払手段とは違うものだと思っています。

資金移動アカウントに移行をしようとした反社がいたという紹介事例がありましたけれども、逆に言えば、買取り業者に売るという事案が出てくるという話もそうですが、やはりどこかで現金化したい、出金したいというニーズが反社の側にはあって、従って逆にこういう事例が出てきたということで、払戻し不可というのはやはりリスクヘッジとしては大きな機能だと思っております。

今回、敷居値10万円、30万円というのが出てきていますけれども、1回当たり10万円というところは、何となく1回当たりを少額にすることでモニタリングもしやすくなりますし、何となく理解するところではありますが、30万円というのは恐らく根拠がしっかりしたものがあるわけではなくて、学生へのクレジットカード枠というのは、それは単純に与信ですので違う話だと思っています。

マネロンリスクを考えるときに、まずその現金化が可能かどうかという話と、個人から個人に移転可能かという話と、利用がどのくらいできるのか、これも一定期間でどのくらい利用ができるのか、1回当たりでどのくらい利用できるのか、それからどこで使えるかという、いろいろなファクトがあって、それでリスクヘッジする切り口があると思っています。

そういう観点からすると、今、いろいろなビジネスモデルがあって、例えば100万円チャージできたとしても1回当たりの利用額を少額に抑えていたり、その会員の利用状況によって限度額を変えていたりとか、いろんな工夫をそれぞれがしていますので、それを全て一律に、今提案されているような敷居値で切ってしまうというのはやはりイノベーションを阻害するおそれがあると思っております。

もう一つあるのが、現金というのが色がつきませんので一番マネロンリスクが高いものと思っていますが、チャージできる手段はいろいろありまして、これも現金で店頭でチャージするのか、それともクレジットカードや銀行口座からチャージするのか、いろんなチャージ手段がありますので、そのチャージ手段によっても異なるはずのリスクをどう考えるかというのも、きちんと実態を確認しながら検討する必要があると思っています。

あとは、先ほど申し上げましたが、着目する点はいろいろあると思います。マネロンリスクといったときに、結局、移転に着目しているのか、利用に着目しているのかというのがはっきりしない部分がありまして、といいますのも、電子マネーは移転したとしても、結局、利用するしかその利益を享受する方法がありませんので、移転はできるけれども利用が制限されているというようなものもリスク低減として評価されるべきだと思っているのですけれども、現在の提案にはそれが考慮されていない類型があります。ですので、ここも何度も申し上げてありますが、どういうことを防ぐためにこういう取組みをするのかというところを、もう少しはっきりとした上で慎重に検討して頂きたいということです。

あとは、番号通知型というのがあるわけですけれども、これは定義がかなり難しいと思っていまして、例えば、アカウント間の譲渡、残高譲渡型と見えるものであっても、実際はもともとアカウントに紐付いている残高を別のアカウントに紐付ける手前でURLを発行するというようなやり方もありますので、番号通知型の定義をどうするのかというのは慎重な検討が必要で、そのアカウントに紐付けるときのIDとかパスワードが番号に該当するのかしないのかというところもはっきりすべきだと思っています。

いずれの類型についても、想定と異なるものが含まれることのないように慎重に検討すべきだと思っていまして、まずはそれを資金決済法で定義した上で、実態をしっかり確認するべきだと思っております。その上で、どういったマネロンリスクに対して、どういう切り口で、どういう敷居値で対応するのかというところを慎重に決めて頂きたいと思っています。

ちなみに、事務局から示して頂きました残高譲渡型の残高の分布のグラフがありましたけれども、恐らくこれ1回当たりの譲渡額の分布かなというふうには思っていますので、例えば、ではそれが一定期間になるとどうなるのかとか、あるいは、今回その残高譲渡型の分布を示して頂きましたが、ギフトコードでチャージできるものも世の中に結構たくさんありますので、そこの辺も踏まえて番号譲渡型もきちんと調査をして、考えて頂きたいなと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、日本IT団体連盟の木村様より御説明をお願いいたします。

【木村オブザーバー】

弁護士の木村と申します。日本IT団体連盟といたしまして、資料5に基づき私どもの意見を説明いたします。

先に、2ページの「論点4について」を御覧ください。不正利用対策やマネー・ローンダリング対策の必要性というものは重々理解はいたしますが、今事務局から提案されているような形で、高額電子移転可能型とされる前払式支払手段に犯収法上の本人確認義務を課すということには懸念を持っております。

なぜかと申しますと、本人確認手続というものはユーザーと事業者双方に負担があるわけですが、特に、ユーザーが新しいサービスを利用し始める際の障壁として機能するからでございます。事務局資料、資料2-1の13ページの最後のポツに「オンラインで完結する本人確認方法があること等も踏まえつつ」という御記載があり、こちらは、「オンラインで完結するいわゆるeKYCがあるので、それほどユーザーにとって負担ではないのではないか」という趣旨だと思うのですけれども、現実的には、eKYCで手続を行おうとして頂いたユーザーがその手続を完了できる率がそれほど高くはないという実態がございます。裏を返すと、我々はドロップ率というのですけど、ドロップ率が高いということです。

一例ですが、政府では強力に、マイナンバーカードの取得と、マイナンバーカードのチップに保存されている電子証明書を用いた本人確認を推進して頂いていると考えていまして、大手のコード決済事業者でも最近導入しています。この大手事業者における開始から20日間での推計によると、手続を完遂できた率、つまりマイナンバーカードのチップを用いた本人確認手続をしようとしてくれて、その手続が終わった率が20日間ぐらいの推計なのでまだまだかもしれませんけど、3割か、3割を切るぐらいにとどまっているというような見方です。

理由は、スマホでチップを読み取るアンテナが機種によって違うので、それでユーザーが戸惑っているということ、マイナンバーカード、電子証明書のパスワードを忘れている人が多いということがあると考えられています。こういったことから、なかなかeKYCの完遂率は上がっていないというところがございます。ドロップ率が高いということを踏まえますと、サービスの入口でそれを課すと、新しいサービスがユーザーに膾炙しにくくなっていくということになります。そうしますと、前払式支払手段の簡便な決済手段としての機能が損なわれる。キャッシュレスの推進も損なうということですし、もっと言えば、新しい、ベンチャービジネスが育っていく余地が減るという意味で、イノベーションや、新しいビジネスを阻害することにつながりはしないかという点も懸念しています。

ですので、まずは、番号通知型に関するモニタリングですとか不正利用防止の体制強化、これをした上で、その効果を見ながら、犯収法の規制をどう課していくかというステップが必要だと考えています。前回、巽先生がおっしゃった意見に賛成するものでございます。

また、それでも規制を課すというふうになった場合には、いわゆるリスクベースアプローチの観点から、価値移転の場面で本人確認をすればよく、アカウント開設時に本人確認をする必要があるだろうかというところは疑問に思います。

また、その今回の案では敷居値を設定していて、例えば、1回当たり10万円の譲渡が可能かどうかといった敷居値の設定がされています。現状でも、いわゆる事務ガイドラインに基づきまして、多くの残高譲渡可能な前払式支払手段の発行者においては、1日当たり例えば10万円といったような上限規制を自主的に課しているわけですので、同じような敷居値を犯収法上の規制として課す必要があるのか、いま一つ理解が及ばないところでございます。

論点1、国際ブランドのプリペイドカードに関するリスクに関する認識は、こちらは記載のとおりでございます。

論点2です。前払式の利用者の中に、いわゆる反社が含まれているということは事実であろうと思いますが、それがどの程度の割合であるのか、ここが、立法事実につながっていくところだと思っております。その点をある程度明らかにして議論をしないと、どうしても空中戦になってしまうのではないかと考えております。

論点3ですが、本人確認と取引目的の確認の実施をしたからモニタリングの実効性が大きく上がるというわけでもないのではないかと考えています。確かに架空名義であるとか借名取引であるということは、本人確認をしていないと判断し難い。それはそのとおりですが、それ自体が重要かというよりも、論点3のイにあったような、頻繁な送金と、そういったちょっと不可思議な行動のモニタリングをしっかりしていくということが重要だと思いますし、これは現行の事務ガイドラインの下でも実施されているのではないかと理解しています。

また、資金決済業協会の資料にもございましたが、犯収法上の手続ではない本人確認、例えば、携帯電話不正利用防止法上の本人確認結果の活用など、こういったことも組み合わせて考えていくこともできるのではないか。

最後になりますが、事務局からお答えを頂きたいこととして1つ質問がございます。残高譲渡型につきましては、既にその発行者において自主的な上限規制をしているという事業者が多いという中で、それに重ねるような形で、法令上の本人確認義務を課す必要があるのか、それはなぜなのかというところを、お示し頂ければと思います。

【神作座長】

どうもありがとうございました。御質問もあったかと思いますが、後でまとめて質疑応答をさせて頂ければと思います。

それでは、続きましてFintech協会の落合様より御説明をお願いいたします。

【落合オブザーバー】

ありがとうございます。Fintech協会の常務理事をしております落合と申します。今回から参加の機会を頂きまして感謝申し上げます。

それでは、次のスライドをお願いいたします。まず、意見の総論です。今回の前払式支払手段に関する御議論を頂いているところですが、前払式支払手段については、やはり払戻しを原則禁止するという制約の中で、日本の中で特に発展をしているサービスであり、Fintechサービスの中でも主要なサービスの一つになっていると思います。そういった払戻しの禁止をしている状況なども踏まえ、発展を阻害しないような整理を行って頂くということが重要であろうと考えております。

ただ一方で、FATFの第4次対日相互審査の結果も踏まえますと、一定のAML/CFTの対策を強化していくという議論自体の重要性というのは、当協会としても認識をしております。この議論が重要であることは改めて確認していますが、各団体からも前回、今回のワーキングでも指摘があったように、前払式支払手段について、どの範囲で規制をするべきなのか、そもそも規制の対象をどう考えるべきなのかについて、まだ根拠が明確でない部分もあると思います。必ずしも拙速に決めるということではなく、しっかり御検討頂きたいと思っております。

では次のスライドお願いいたします。当協会としては、特に今後の議論に当たって、やはり実際に、取引時確認の義務がかかってくることになった場合に、サービスの発展を阻害しない、もしくは事業者において合理的に対応できるようにするという観点で、定義について、御配慮頂きたいと思うところを整理させて頂きました。

まず、家族ですとか法人等の構成員が前払式支払手段を利用できるというような場合について、一定の場合には残高譲渡型に該当しないというような整理をして頂くのは重要ではないかと思っております。特に、1つのアカウントを家族の中で使われていたりですとか、こういったような場合に、必ずしも譲渡をしているという形に捉えられないということです。また、親アカウントと子のアカウントが存在する場合で、その金額が同額である場合、一つ前のIDを共用しているというのとは若干違うような形にはなりますけれど、そういった場合ですとか、親アカウントにおいて子アカウントの残高を管理しているような場合については該当しないという整理を頂けないかと考えております。

続いて、2点目として書かせて頂いている点が、前払式支払手段の残高について、ほかの前払式支払手段との交換をなされるということが考えられますが、この点だけをもって残高譲渡型に該当しないということを御確認頂きたいと思っております。

第3点として、前払式支払手段の事業者が実際に規制に対応していくという場合に、重要になるのはどういう形で防止措置を行えば、定義に該当する、しないかが明確に分かる形になるかということが重要だと考えます。利用規約において、そのIDやパスワードであったり残高の譲渡が禁止されておりまして、かつ、譲渡できるような仕組みも提供していないような場合は、仮にIDですとかパスワードを利用者側が一方的に譲渡した場合には、結果的にほかのユーザーが残高を使えることもあるかもしれませんが、それだけをもって直ちに残高譲渡型に該当すると整理されないことです。事業者の対策上はこの点を明確にして頂くことが重要であろうと思っております。

最後に、国際ブランドのプリカが全般的にその番号通知型に準じるものということで、資料の中で記載されている部分があると考えます。ただし、この部分について、前提となる不正事案ですとかその評価が必ずしも明確ではない部分があると思っております。法人のキャッシュレス推進という意味では、法人用のプリカの利便性の維持ということも重要ということになってまいります。既にほかの団体からも指摘されたところとも重なる部分があると思いますが、国際ブランドプリカの全般を形式的に規制の対象に規定するという形にはせずに、適切な限定を行って頂くことが必要と考えております。

では次のスライドお願いいたします。今後の対応ですとか、整理の方向性について、最後にお話できればと思っております。

こういった、先ほど具体的な定義との関係で、何点か御留意頂きたいなというふうに考える点をお話しさせて頂きましたが、やはり、具体的な実務を行っている事業者にとって懸念や誤解、萎縮効果が出てしまうともったいないことになり、発展が阻害されるということになります。最終的な法令や政省令等の策定に当たって、さらに具体的な条文の書き方であったりで魂が宿る部分もあると思いますので、ぜひまた改めて意見を述べる機会を頂ければと考えております。

また、全体に係る部分ですけど、番号通知型、残高譲渡型について、一定の数値を敷居値として設定されていることがあろうかと思います。ただ、個々の利用実態に応じて考慮頂きたいと思います。先ほど、現金でのチャージか、それとも銀行口座からのチャージかという新経済連盟からの御指摘などもあったと思いますけども、様々、リスクというのは利用実態に応じて変わる部分があると思います。一律に敷居値を設定するということではなく、具体的な問題事例に対処するような形で設定して頂きたいと思いますし、また、現時点で例示されている金額が確定の金額ではないのだろうとは思いますが、これを引き上げて定義をして頂くということも含めて御検討頂ければと思っております。

私のほうから以上でございます。御清聴ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を踏まえて、メンバーの皆様に御討議頂きたいと存じます。どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

坂メンバー、お願いいたします。

【坂委員】

どうもありがとうございました。事務局の整理と、それからオブザーバーの皆様の御発言もありがとうございました。

私のほうからは、前提的なところと、論点に従った形で少し発言をさせて頂ければと思います。

まず、前提として、制度枠組みについて1点確認をと思っておりますのが、資料2-2の中では注7の部分です。ここに2009年1月の金融審議会答申を引用する形で、現行法の枠組みが記載されています。すなわち、前払式支払手段も譲渡、換金・返金が自由に行われ、為替取引として機能する場合には資金移動サービスと整理するとされております。

現状、前払式支払手段は、基本的には、加盟店への支払いという本来の利用がされていて、送金手段として用いられているというわけではないと思いますけれども、前払式支払手段が本来のあり方と違って、送金の手段として用いられることを防ぐためにも、現行法の考え方を再確認することは必要と思います。もとより利用者資金が2分の1しか保全されない前払式支払手段について、その譲渡自体が送金や支払いに用いられている事態が許されますと、利用者保護上の問題ということもありますし、また、規制の回避を誘発することになって、公正な競争環境の確保という観点からも、極めて問題は大きいと思います。万が一、そういった送金手段として用いられているような事案がある場合には、適切に為替取引規制を及ぼす監督対応をお願いしたいと考えます。

次に、論点1についてですけれども、マネー・ローンダリングは、犯罪収益等を資金として保管し、送金や商品購入等を繰り返すことで追跡を困難にし、最終的に合法的な資金として社会に流入させるという過程というふうに把握されています。要は、こうした目的のために、いかに使い勝手がよいものになっているかどうかが、マネロンのリスクを考える上では必要です。

この点、論点1に記載されているクレジットカードの特徴は、いずれも前払式支払手段にも当てはまるものであり、このことは、否定のしようがないところと思います。さらに、クレジットカードでは、本人確認手続を要するクレジットカードを用意することが必要ですが、前払式支払手段には本人確認を要する用意も必要ないという点に鑑みますと、むしろ前払式支払手段の方がマネー・ローンダリングをより行いやすいという面もあると考えられます。

次に、論点2についてですけれども、消費者被害の現場では、サクラサイト事案のほか、最近では、投資詐欺事案においても前払式支払手段により払い込ませるものが見られます。こうした事案では、被害者が払い込んだ電子マネーを、例えば別のIDに移したり、あるいは別の電子マネーを購入したりするなどとして、追跡がより困難となっているものが見られます。また、第三者による不正利用事案においても同様に追跡が困難になっているものが見られます。前払式支払手段の匿名性や移転の容易性が悪用されやすい面を有することは否めないと考えられます。

次に、論点3についてですけれども、モニタリングにおいて本人確認がされないということになりますと、例えば反社会勢力がこれを利用しても、それが反社会勢力であることを確認することができないということになりますので、ここには大きな限界があると思います。また、多数の者から頻繁に送金を受ける口座、あるいは多数の者に送金を行う口座を把握するということはできるかもしれませんが、誰がそれを行っているのかを把握することができないということになりますと、止めることはできても、行為者の捕捉は相当程度難しいということになるものと考えられます。

次に、論点4についてですけれども、高額電子移転可能型の対象となる金額の水準について、事業者側の皆様のお話を聞きつつも、やはり詐欺事案、あるいは詐欺的な事案等の実態を踏まえる必要があると思います。これらは、マネロンとの関係ではマネロンの前提犯罪ということになろうかと思います。この点、例えば、少し前になりますが、平成27年8月の内閣府消費者委員会の調査報告ではプリカ詐欺の被害事例が紹介されております。ここでは、数千円ないし2万円から3万円のギフト券や電子マネーを大量に購入させられた事例が紹介されています。それから、サクラサイト等の被害事例では、1回当たり2万円から5万円程度の利用が繰り返し促され、被害が多額になるという実態が存在します。1回当たり10万円という水準は、高額電子移転可能型の対象を画する金額の水準としては高いと考えられます。もっとも、1か月の譲渡累計額やチャージ累計額の要件によって、ある程度はカバーされるものとは考えられます。ただ、ここでも30万円という水準というのは、高いというふうに言わざるを得ません。

他方、前払式支払手段の現状の利用実態を拝見させて頂きますと、いろいろオブザーバーの皆様から頂いた資料や公表されている資料からは、ご提案の要件に該当する高額取引というのはかなり限定されるとみられます。現状、利用者の利用実態はかなり少額のものが大宗を占めていて、例えば事務局資料に表れているところでも、資料2-1では、譲渡残高は10万円以上のものは0.1%となっていますし、資料3の中では、チャージ高が10万円を超えるものは1%ないしそれ以下の水準となっております。

こうしたところから、今回の御提案というのは利用者への影響を極小化した水準になっていると評価できると思います。今回ご提案の水準というのは高いという評価は否めないところでありますけども、まずはこの水準で制度を開始し、その後の実態把握の中で基準の調整を図るということも考えられるところと思います。

それから、オブザーバーの皆様のほうから、一律の敷居値を設けることについて消極意見が出されておりましたが、利用者の分かり易さという観点からしますと、やはりここは一律のものをきちんと定めるということが大事な観点と考えます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、河野メンバー、御発言ください。お願いします。

【河野委員】

ありがとうございます。日本消費者協会の河野でございます。前払式支払手段の個々の論点についてというよりも、今回のワーキングの検討はどういう意義を持っているのかという視点で発言いたします。

検討の目的はマネロン・テロ資金等の犯罪防止対策です。加えて、これは国内の問題にとどまらず、グローバル課題であり、マネロンやテロ資金など、犯罪行為を防止するために、日本という国家がどういう対策を示すのかが世界から注目され評価されます。その上で、国内外の資金移動において、従前からの金融サービスに加えて、デジタル技術を活用した様々な手段が実在し、ワークしている現状において、一部分だけの対策を講じた結果、どこかに抜け穴がある、対策が行き届いていない部分を残すことはどうなのかという見方をすべきではないでしょうか。

例えば、消費者トラブルでいえば、自由なビジネスの発展を阻害するからということで、一定数の被害が顕在化しなければ規制措置が取られない状況にあります。誰の目にも明らかな実害が生じてから、事後に再発防止策が検討されるというのが実情でございます。

一方、今回の検討は、犯罪防止対策です。初めから悪意のある個人や団体が不正な資金移動を行うことへの対策です。実例が少ないとか、可能性は低いのではないかという理由で取り組まないことは、不作為と受け取られかねないのではないかと感じております。事務局からの御提案は、全てを対象としているものではなく、一般の利用とは次元の違う高額利用に対して一定のルールを設けるというものであり、規制の中身は、さらに整理する必要はあると思いますけれども、私は時を空けずに手を打つべきだというふうに感じております。

重要議案1番目の報告案の重要な視点として、AML/CFT業務の国民への周知広報がございます。継続的顧客管理としての定期的な本人情報の確認や個人情報の取扱い等について、国民の理解を得ることが不可欠であるというふうにされているところ、資金移動手段の全体感に基づいた施策であってほしい、あるべきだというふうに強く思いますし、今回の施策は、実効性の確保はもちろんですけれども、ここにしっかりと記述することによって、社会への抑止力になるということを付け加えさせて頂きたいと思います。

私からは以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、末冨メンバー、お願いいたします。

【末冨委員】

ありがとうございます。今のマネー・ローンダリングの件に関しまして、論点というのを挙げて頂いておりますけれども、この論点に関しての問いかけについては、全て肯定の方向での答えにしか今の段階ではならないのかなというふうに考えておりまして、すなわち、同じリスクに対して同じ対応というのが必要になるかと思いますし、本人確認せずに反社会的勢力に対する防止というのは限界があるのではないかということについても、そのように考えますし、また、本人確認、口座開設時の確認なくして、防止するのは難しいのではないかということについても、まさにそうかと思いますし、また、高額電子移転可能型に対しても、具体的な敷居値とかが、そこがどこまで妥当かという論点は残るにしても、対応が必要であることについては肯定せざるを得ないというところが現状かと考えております。

これに対して、今いろんな業界の方から御意見を賜りまして、それぞれの御意見がまさにもっともであり、また、それぞれ合理的な理由に基づいているところであって、それぞれが説得的な御意見かというふうに思いますが、ではどうして、必要性と現実の業務への合理的な適用の間に違いが生じるかといいますと、恐らくはマネー・ローンダリングということの定義といいますか、カバーする範囲が拡大していること、すなわち、経済制裁の対象となる人にも拡大していますし、また、行為が拡大していること等によって、対象が拡大していることが、その原因になっているのではないかと思います。

すなわち、従来、我々がマネー・ローンダリングとして認識していたものだけでなく、その範囲が広がっていることによって、実際、国際的にも必要性が広がっているにもかかわらず、従前の認識で対応していることになると、ずれが生じてしまうということが現状ではないかなというふうに考えているところでございます。

マネー・ローンダリングの定義につきましては、国際連合の国際組織犯罪防止条約の6条1というのが定義をしてございますし、ここで読み上げることはいたしませんけれども、単にその換金だけに限ったことではなくて、犯罪であることを認識しながら、財産の性質、出所、所在、処分とか移動等を偽装するようなことによって、だんだん犯罪に近かったものということが分からなくなるようにすることであるかと思いますし、また、米国の法令で言いますと、米国連邦検査官協議会というのが定義を定めてございますし、日本で言いますと、警察庁の刑事局組織犯罪対策部の組織犯罪対策企画課犯罪収益移転防止対策室というところは、そこで資金洗浄とはという定義を公開していらっしゃいます。

具体的に、ではどういう手法がマネー・ローンダリングに当たるかということにつきましては、3つに大きく分けることができるかと思いまして、一つは預け入れ、プレースメント(Placement)と言われているものでありまして、これは単に大口のものを小口に預け分けるというような物理的に預けることだけでも、そのマネー・ローンダリングの手法になってございますし、2つ目としましては、分別、レアリング(Layering)というものがございまして、これは犯罪から遠いところに分離していくということも含まれます。3つ目が統合、インテグレーションということでございまして、これは問題のないお金と犯罪と関連しているお金ということを一緒にすることによって分からなくするということでございまして、先ほど申し上げた米国の連邦検査官協議会というところはこの3つの手法について規定しております。このように広い手法ということになると、先ほどお話があったように、換金が想定されていない場合、これはリスクヘッジになっているというお話もあって、それはもっともです、ではマネー・ローンダリングの手法には入ってこないかというと、そこを否定するのは、この法令あるいは国連の条約からするとなかなか難しいところかと思います。

マネー・ローンダリングの範囲の広がりについては、定義のみならず、従前マネー・ローンダリングといいますと薬物犯罪に関連するもの、それから次は組織的犯罪に関連するものというふうに拡大してきて、最近はテロ対策等にも拡大してきてございます。そのような広い範囲でカバーされるマネー・ローンダリングへの対応ということになりますと、業務の利便性を何ら阻害することなく遵守することは可能かという最初の問題、論点の1、2、3、4に戻っていきますと、なかなか難しいというギャップがあります。

それを埋めるとすると、マネー・ローンダリングそのものの定義を小さく、こんなものはマネー・ローンダリングでないというふうに狭めるのか、あるいは、法令による規制の幅を広げるのか、どちらかを変えなければ、ギャップはずっと残ったままになるということになるのかと思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして森下メンバー、お願いします。

【森下委員】

ありがとうございます。このマネロンとかCFTの問題は、これさえやっておけば完璧にリスクがなくなるということではなく、やっぱりできることを少しずつ積み重ねていくというようなことが大事なのかなというふうに思っています。そういった観点から、私自身は御提案頂いた点については違和感を抱くものではありません。

やはりこの問題はリスクと利便性と効果のバランスが大事だと思うのですけれども、このリスクという点に関しましては、先ほど末冨委員からもお話がありましたが、例えば現金化されなければいいのかというような、その点を捉えてリスクが非常に低いというふうに考えることができるのかというと、必ずしもそうではないのかなと思います。容易に現金化できるようなマーケットがあれば、それは必ずしもそうではないのかなというような気がいたします。

ですから、あまりその点に着目して、だからこそ規制のハードルを下げるというような議論というのは、キャッシュレス社会が進めば進むほど、尚更そういうことは言いにくくなるのではないかというふうに思います。

顧客の利便性ということだと思うのですけれども、今回御提案頂いているような比較的高額の、例えば10万円超のものの移動というふうなことに限定した場合、その10万円超が匿名でできなければならないというニーズ、そういった利用者の利便をすごく保護する必要があるのかと。マネー・ローンダリングですとかテロ資金対策のために、そこに御不便をおかけするということとのバランスを考えた際に、数値などでも、ごくごく限られた割合と御説明があったと思いますけれども、そういった限られた範囲の方々に、そういった御不便をおかけすることが本当に容認できないものなのかどうかというのは、やや私は、そこは御不便を甘受して頂くというような考え方があるのではないのかなというふうに思います。

今回御提案頂いているような制度が導入されたからといって、全ての前払式支払手段の利用者について本人確認を求めるというわけではないということだと思いますので、影響の及ぶ範囲も合理的なのかなというふうに思います。

あと、ここの本人確認をするということによる効果はさほど大きくないのではないかというような御意見もあったかに思いますけれども、先ほど申し上げましたように、これが決定打となって劇的に犯罪の割合を減らすということではなかったとしても、一定の効果があるというものであれば導入するということが考えられてもいいのではないのかなというふうに思っております。

例えば、10万円超で本人確認を入れるということですけれども、本人確認というのは非常に手間がかかるものなので、その手続の中でドロップしていく方が多いというようなお話があったと思いますが、例えばその犯罪者がそういったようなものを使おうと思ったときに、一般の人にまずチャージをさせるというようなことをやろうとしたときに、店頭にいる方が一般の方だったとしても、その一般の方がすごく時間がかかる、あるいは時々その手続をして忘れてしまうというような環境が生み出せれば、こういったようなものをこの犯罪に使いにくくなると、要は犯罪というのは多分手間がかからないような手段を選ぶと思いますので、そういうような効果はあるのではないのかなというふうに思っています。

あとは、残高移転型ということのときに、移転のときを捉えたらいいのではないかというようなお話もあったと思うのですけれども、先ほどのお話の中で、例えばIDとパスワードを移転するような場合はこの残高の譲渡型に当たるのかどうかという話があったと思いますけれども、場合によってはアカウント上の残高を動かさなくても、IDとパスワードを動かせば移転時ということを的確に捉えられないかもしれないところを、最初に本人確認をしておけば多少そういうようなものが防げるかもしれないということもあるかもしれず、そうすると、今回の御提案がリスクの低減に全く役に立たないということもなさそうですし、その負担という点でもすごく大きな負担ということでもないのかなと思います。先ほど落合先生のほうからいろいろ明確にする必要がある、範囲を明確にしていく必要があるというお話があった点は全くそのとおりだと思いますけれども、大きな方向性としては私自身は賛成できるものです。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、加藤メンバー、お願いいたします。

【加藤委員】

ありがとうございます。私から2点質問、1点コメントさせて頂きます。

まず、質問の第1点目なのですが、資料2-2の注の10及びその本文で、発行者による前払式支払手段の買取りについて言及がされておりますが、これは前払式支払手段に関する内閣府令42条の改正を検討するという御趣旨なのかという点が1点目です。

2点目は、高額電子移転可能型の位置付けについて、これは直近の改正で導入された資金移動業の種別、この種別に相当するようなものを前払式支払手段の新しい、言わば自家型と第三者型に加えるイメージでよいのかということです。

最後にコメントですけれども、前払式支払手段がマネー・ローンダリングやその他違法な取引の決済の手段として使われる可能性への対処について、事業者の皆様がそのような可能性を最小化するために努力されていることは理解しております。その一方、前払式支払手段は、匿名性を確保したままで価値を移転する、すなわち決済に使えるという点で、やはり違法取引ないしマネー・ローンダリングに使われる手段となり得ることは否めないと考えます。そこで問題となるのは、現在の資金決済法に基づいて対応可能な話と、犯収法に基づかなければ対応不可能な領域があり、後者の内容をもう少し明確に示すことが、事業者の方にも納得感が得られるような制度設計を行うために重要であると考えます。

私からは以上です。

【神作座長】

ありがとうございました。2点御質問がございました。よろしくお願いいたします。

【端本信用制度参事官】
 まず、1点目につきましては、内閣府令の改正は想定しておりません。現行制度の説明をさせて頂いております趣旨ですので、その旨、明確化させて頂きます。

2点目、高額電子移転可能型は、そういう意味では、新たな種別ができるということを想定しております。

以上でございます。

【神作座長】

加藤メンバー、よろしいでしょうか。

【加藤委員】

承知しました。

【神作座長】

それでは、後藤メンバー、御発言ください。

【後藤委員】

お時間ない中、恐縮です。幾つかあるのですけれども、まず、論点という形にはなっていないのですが、3ページから4ページの転売サイトの問題について、前回申し上げたところも取り込んで頂いたのかなと思いまして、感謝しております。

ただ、幾つか気になるところがあるのですけれども、中ほどで、転売サイトへの転売等に伴うトラブルも報告されているというような記述がございます。もちろんそういうものもあるのかもしれないのですけれども、私の思っておりましたイメージは、どちらかといいますと、一般の方が転売サイトで買ったら使えなくなってしまったという購入者のほうの問題なのかなという気がしまして、これはどちらもあるのかもしれませんけれども、表現は御留意頂いたほうがいいのかなというふうに思いました。

また、下のほうで、そういったことを防ぐために、転売サイトで売らないようにするためには発行者による買取りが有益ではないかという指摘もあるということで、これもそのとおりかと思うのですけれども、ただ、発行者が買い取るようにするためには結局その償還という形になってしまいますので、それが一定限度を超えると、前払式支払手段としてはできなくなってしまう。そうすると資金移動業になるかということになるわけですが、それはやはりハードルが高いと感じる業者さんもいらっしゃるのではないかと思います。

そうすると、課題は、前払式支払手段のままで、転売をどうやって防いでいくかということでして、この前申し上げましたのは、発行者が買い取るという形だけではなくて、発行者が管理できる状態、転売される場合の売主、買主を把握できる状態で、発行者の管理の下で転売が行われるようにすれば、チケット販売のように問題が減るのかなと思ったところです。これは金融庁というよりは業者さんの取組みの問題かもしれませんけれども、そういった観点もご考慮頂ければいいのかなと思った次第でございます。

また、議論になっております高額移転可能型のほうなのですけれども、金額についての御指摘が事業者の皆様からありました。その中で、10万円という敷居値は、銀行の窓口で10万円現金で振り込む場合には本人確認が要ることと合わせているということで良いとしても、30万円という敷居値の根拠は何なのかという御指摘がありました。私も、最初お話を伺ったときに、どういったつながりでこのクレジットカードの若者向けの30万円が来るのかよく分からないなと感じたところでございます。

これは、一定程度の取引の少額と言える基準として、とりあえず30万円という線の引き方で、論理的ではないではないかという御指摘は全くそのとおりだとしても、ほかになかなか決め手はないよねということなのかなと思いました。

与信の可能性とは違う話のはずだという御指摘も、それはそのとおりなのですけれども、恐らくここで問題となっているのは、1回当たり10万円を超えると確認が要るとなると、これを逃れようとする人は、99,999円で繰り返すという形を取って、潜脱をしようとしていく。その潜脱をしたものが積み重なっていってしまって大きくなってしまっては困るのでという、合計額についてのバーを引くことが必要だということだと思います。では、このバーをどれくらいの高さで引くのかというと、30万円というと大体3回分、3回以上に分けてやるということなのですけれども、別に潜脱をしようとしているわけではなくて、たまたま積み重なって30万円を超える人がいるかどうかというところの問題なのかなと。そういう人が多いのであれば、それは制約になってしまうのかもしれませんけれども、それが少ないのであればいいのかなという気もするところです。

ただ、そこが分からないということでしたら、例えば潜脱的な移転を繰り返している人を識別できるような形になっているのであれば、そちらに委ねるということもあるのかもしれません。技術的にどういうことが可能なのか分かりませんが、そういった取組みができるのであれば、それを考慮していくということもあり得るのかなとは思った次第でございます。

一般の利用者が不便を感じてはならない、こういうキャッシュレス決済を進めていくというのが政策として進められている中で、それに逆行することがないようにという事業者さんの御指摘はもっともかと思いますし、マネロンがあるから我慢しろというのは、一般の利用者向けにはいささか乱暴な議論かなとも思いますので、そこが誤解されることのないように、丁寧な議論を積み重ねていく必要があるのかなとも思いました。

取りあえず以上でございます。

【神作座長】

ありがとうございました。

続きまして、井上メンバー、お願いします。

【井上委員】

すみません。では時間もありませんので、ごく簡単に申し上げます。

資料2-2の論点に沿って申し上げますが、論点1については、前回も発言しましたけれども、前払式支払手段の移転を受けて、それで換金しやすいものを買って換金すれば国内外どこへでも実質的に送金できてしまうという問題だと理解しておりますけれども、これがクレジットカードにおいて起こっているのだとすると、前払式支払手段においても、利用できる金額が同程度であれば、やはり同じように起こり得る問題ではないかなと思います。あるいは、むしろ既に起こっているけれど、論点にありますように本人確認が行われないために見つかっていないという可能性もないわけではないと考えます。既に今、問題があるのかどうかということ自体は、あるというのもないというのも、今の時点では検証がなかなか難しいのかもしれないのですけれど、不正利用が行われるリスクが同じようにあるのではないかという点には共感いたします。

論点3については、前払式支払手段の利便性を維持しながら、リスクベースで本人確認をしていくというのがあるべき方向だろうと思いますので、その点で、金額や譲渡性や汎用性、いろいろな条件で、リスクが高いものに絞って規制を及ぼすのがよいのではないかと考えております。先ほど新経済連盟の片岡様から御説明頂いて、いろいろなファクターがあるということを御説明頂いてなるほどと思い、その意味では、現在の切取り方、御提案されている切取り方が絶対なものではないとは理解したのですけれども、他方で、複雑になり過ぎないように規制範囲を決める必要もあると思いますので、あらゆるファクターを全てということではなくて、現金にチャージするのか、銀行送金やクレジットカードのように既に確認がされている方法でチャージするのかということもあるのかもしれませんが、有用な切取り方があれば、そういったことも一部加味するということが考えられるのかもしれないと思いました。

最後の論点4になりますが、一定の限度でリスクの高いものについて対応するということについては賛成いたします。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

私の進行の不手際で、予定の時刻をかなりオーバーしておりますけれども、オブザーバーの方も含めて、どうしても今の時点で御発言の希望はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

まだ議論が尽くし切れてないところがございます。事務局には、本日の御議論の内容を踏まえて、この前払式支払手段に係る対応のあり方について、たたき台をお願いできればと思います。

なお、本日、特に後半の議論で時間が不足しておりまして、言い尽くせない点があったのではないかと思います。どうか、御発言に代わりメール等で事務局に、御意見等、御注意等をお寄せ頂ければと思います。

次回は、本日の後半のテーマに特に重点を置いて、報告の取りまとめに向けて議論をして頂きたいと考えております。

最後に、事務局から連絡事項などございましたらお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

次回のワーキング・グループの日時ですけれども、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、御連絡させて頂きます。よろしくお願いいたします。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、時間を超過して大変失礼いたしました。これをもちまして、本日のワーキング・グループを終了いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線3572、3556)

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