金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」(第1回)議事録

  • 1.日時:

    令和5年10月3日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

 中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室 ※オンライン併用

 

金融審議会 資産運用に関するタスクフォース(第1回)

令和5年10月3日


【加藤座長】
 定刻になりましたので、ただいまより資産運用に関するタスクフォース第1回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。

 私は、タスクフォースの座長を務めさせていただきます、東京大学の加藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、当タスクフォースの設置について御説明したいと思います。当タスクフォースは、市場制度ワーキング・グループの神田座長と事務局が相談し、資産運用立国に関して、資産運用に関する制度面を中心に議論する場として設置することとなりました。そして、当タスクフォースの座長につきましては、神田座長の御指名で私が務めさせていただくこととなりました。

 本日は、第1回目の会合でございますので、委員の皆様を御紹介したいところではございますが、審議内容も多々ございますため、お手元の資料1に名簿がございますので、そちらで代えさせていただきたいと存じます。また、オブザーバー、事務局につきましても、同様に資料1及びお手元の座席表をもって御紹介に代えさせていただきます。

 なお、井藤企画市場局長におかれましては、公務の都合により、17時頃よりオンラインにて途中参加されることとなっております。

 メディア関係者の方々はここで御退席をお願いします。よろしくお願いします。

(報道関係者退室)

【加藤座長】
 それでは、議事に移らせていただきます。本日は、まず事務局より、資産運用に関する現状の概観を御説明いただいた後、みさき投資株式会社代表取締役社長の中神康議様から資産運用立国に関する提言について御説明いただき、続いて、投資信託協会様から御提言について御説明いただきます。その後、事務局より、運用対象の多様化について御説明いただいた後、委員の皆様から、資産運用に関する現状の概観や運用対象の多様化について、幅広く御意見をいただきたいと思います。

 それでは、まずは事務局より御説明をお願いします。

【齊藤企画市場局市場課長】
 金融庁の市場課長の齊藤と申します。よろしくお願いいたします。まず、資産運用に関する現状の概観について御説明させていただきます。お手元の資料2-1に沿って御説明させていただきます。

 資料をおめくりいただきまして、3ページ目でございます。こちらは骨太の方針2023と、下のほうが新しい資本主義の実行計画でございます。上側の骨太の方針でございますけれども、資産運用立国に関する記載がございます。2,000兆円の家計金融資産を開放し、持続的成長に貢献する資産運用立国を実現するということで、資産運用会社やアセットオーナーのガバナンス改善・体制強化、資産運用力の向上及び運用対象の多様化に向けた環境整備などを通じた資産運用業等の抜本的な改革に関する政策プランを年内に策定することとしております。また、下側の実行計画でございますけれども、一番最後のところでございますが、これらの取組を含む具体的な政策プランについては新しい資本主義実現会議の下で年内にまとめ、国内外への積極的な情報発信を含め必要な対応を進めるとされているところでございます。

 続きまして、4ページ目でございます。インベストメント・チェーンの図でございます。我が国の家計金融資産の半分以上を占める現預金、これを投資につなげるということで、持続的な企業価値向上の恩恵が資産所得の拡大という形で家計にも及ぶ、成長と資産所得の好循環を実現させていくことが重要ではないかということでございます。図のインベストメント・チェーンにあるとおり、家計からの投資の運用を担い、リターンを生み出す資産運用業やアセットオーナーの機能強化や高度化、こうしたものを通じて家計の資産形成を推進していくことが不可欠ではないかということでございます。

 次の5ページ目でございます。日本には2,000兆円を超える家計金融資産があるということでございますが、主要国の中では米国に次ぐ規模になっております。一方で、日本の家計金融資産は現預金が過半を占めておりまして、米英と比較して有価証券の占める割合が低い状況でございます。

 次のスライドでございます。これは資産運用ビジネスの概況ということで、日本の資産運用セクターが運用する資金は直近で約800兆円に上るところでございまして、増加傾向にございます。一方で、経済規模に占める資産運用残高の割合について右の表を見ますと、日本ではGDP比1.4倍ということで英仏よりも低く、日本においては資産運用ビジネスのさらなる拡大の余地があるのではないかということでございます。

 次のスライドでございます。日本における私的年金の運用資産残高についてです。DBは2022年3月末時点で加入者数は930万人、残高は68兆円超となっています。また、DCにつきましても、昨年3月末時点で加入者は782万人、残高は17.8兆円に達している状況でございます。iDeCoも同時点で239万人が加入し、残高は3.7兆円に増加している状況でございます。

 続きまして、資産運用業の現状ということで、9ページ目を御覧いただければと思います。金商法上の投資運用業の全体像についての参考資料でございます。投資運用業は、金商法上、投資一任業、投資法人資産運用業、投資信託委託業、自己運用業の4類型に分類されているところでございます。そのほかにも、一部登録要件等が緩和された類型として、いわゆるプロ向け投資運用業やプロ向けファンド、また、海外投資家等特例業務、こういった類型があるところでございます。

 10ページ目でございます。投資運用に関する制度改正の経緯ということで、これまでの制度改正の経緯についてまとめた資料でございます。投資顧問につきましては、1986年に投資顧問業法ができ、また、投資信託については、戦後、1951年に証券投資信託法が制定されて以来、御覧のような改正の経緯となっております。また、2007年に金商法が施行されるに伴いまして投資顧問業法は廃止されて、投資信託法は仕組み規制として存置されております。その後、プロ向け投資運用業等の新たな枠組み等が設けられる改正が行われてきたところでございます。

 次のページ、11ページ目でございます。こちらから次のスライドまで投資運用業に関する規制を整理しているものでございます。投資運用業は、原則として当局への登録を行うことにより可能となっておりますけれども、御覧のように緩和された類型も創設しているところでございます。

 13ページ目を御覧いただければと思います。国際金融センター関連の取組ということです。これまで金融庁においては、国際金融センターの実現を目指しまして、海外の資産運用会社等の参入を促進するための累次の取組を行ってきているところでございます。税制や金融規制、次のページでございますが、在留資格、創業・生活支援、情報発信等、こういった取組を進めてきているところでございます。

 15ページ目を御覧いただければと思います。資産運用会社数の推移についてです。我が国における資産運用会社数は、長期的には増加傾向にあるものの、新規参入は限定的でございます。一方で、右側のいわゆるプロ向けファンドについては、近年、相応のペースで増加している状況でございます。そのほか、適格投資家向け投資運用業は24社、海外投資家等特例業務届出者は1社ということで限定的な状況になっているところでございます。

 16ページ目、資産運用会社数の各国比較でございます。日本における資産運用会社数は長期的に見ると増加傾向ですけれども、他方で日本の運用会社数の伸びはアメリカやシンガポール、香港を下回っており、差は拡大している状況にございます。

 次の17ページ目でございます。金融庁・財務局では、新規に日本に参入する海外の資産運用会社等の登録に関する事前相談や登録手続、登録後の監督を英語で行うとともに、それらの業務をワンストップで行うということで、拠点開設サポートオフィスを2021年に開設しております。現在のところ、27件対応案件が出てきているところでございます。

 18ページ目を御覧いただければと思います。パッシブ運用とアクティブ運用ということで、これはグローバルな傾向でございますけれども、パッシブ運用の割合が高まっている状況でございます。他方でアクティブ運用については、調査活動によって中長期的に成長性の高い企業を発掘し、選別する重要な価格発見機能を担っていることが指摘されております。我が国では、右側の棒グラフでございますけれども、リテール向けでも、米国や欧州と比べて、ベンチマークに勝っているファンドの本数割合が高いということで、アクティブ運用の拡大余地が大きいことが指摘されているところでございます。

 19ページ目でございます。こちらは、本年4月に金融庁が公表した資産運用業高度化プログレスレポートの概要をまとめたものでございます。我が国の資産運用業においては、運用会社の事務と運用、販売会社の商品提供とアドバイスが一体的に運営されていることが多く、同一の機能間の競争による高度化と効率化が遅れ、新規参入が進まない要因にもなっていることなどが指摘されております。また、家計・個人向けの情報開示の不足や、一部のアセットオーナーの専門性・人員不足等も指摘されておりまして、資産運用に対する家計・個人や企業の理解が必ずしも十分に進んでないことも指摘されているところでございます。

 続きまして、アセットオーナーについて21ページ目を御覧いただければと思います。アセットオーナーの定義として2つほど紹介しております。まず、日本版スチュワードシップ・コードでございます。アンダーラインを引いているところでございますけれども、運用機関へ運用などを委託する資金の出し手、これらを含む資産保有者としての機関投資家、これをアセットオーナーという言い方をしております。また、国連の責任投資原則、PRIの署名機関については、次のような基準で区分が設けられているということです。アセットオーナーにつきましては、例えばレ点の2つ目でございますが、インベストメント・チェーンの最上位に位置する機関投資家で、受益者または政府に対する直接的な説明責任を負っている。また、その下でございますけれども、資産全体またはその大部分の投資についての裁量権、こうしたものを持っている。そういった者がアセットオーナーと区分されているところでございます。

 次のスライド、22ページ目でございます。アセットオーナーの範囲についてでございます。様々な主体が該当し得るということかと思いますけれども、本タスクフォースにおきましては、家計の金融資産を増加させて、成長と資産所得の好循環、これを実現させていくという観点から、議論すべきアセットオーナーを考える必要があるのではないということでございます。また、議論のスコープにつきましては、アセットオーナーの運用について受益者の最善の利益を確保する、そうした観点から、金融面の課題を中心とすることが適当ではないかということでございます。

 続きまして、運用対象の多様化について24ページ目でございます。これまでオルタナティブ投資につきましては機関投資家や富裕層のみがアクセスできていましたけれども、家計の資産形成を進める上では、分散投資の機会を拡大し、また、リスク許容度に応じて運用のプロ等を通じた積極的なリターンを追求する投資商品への投資の選択肢を広げる、そうした観点から家計の運用対象の多様化が進むことが重要ではないかということでございます。また、そうした新たな資金の流れを通じて、ベンチャー企業等への投資が促進されれば、企業への成長資金の供給や我が国経済の活性化にもつながるのではないかと考えているところでございます。

 次の25ページ目、オルタナティブ投資の拡大についてでございます。左側がグローバルな推移ですけれども、オルタナティブ投資は残高が拡大しております。右側のグラフは日本のスタートアップ投資額の推移でございますけれども、足元では9,459億円に上っている状況でございます。

 続きまして、スチュワードシップ活動の実質化についてでございます。27ページ目を御覧いただければと思います。コーポレートガバナンス改革の深化に向けたこれまでの取組ということでまとめたものでございます。これまでスチュワードシップ・コードの策定とコーポレートガバナンス・コードの策定により、これらが車の両輪として、中長期的な視点に立った企業と投資家との建設的な対話を促してきているところでございます。

 28ページ目はスチュワードシップ・コードの概要ということで、御参考にしていただければと思います。

 29ページ目でございますけれども、コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラムでございます。スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議におきまして、今年の4月にアクション・プログラムが取りまとめられております。

 考え方としましては、形式的な体制の整備ということではなく、実質的な対応をより一層促進させる、そういった観点からのものでございます。また、両コードの改訂時期については、必ずしも従前の見直しサイクルにとらわれることなく、改革の実質化という観点からその進捗状況を踏まえて適時に検討するということでございます。プログラムの具体的な取組内容につきましては、例えば右側のAでございますけれども、収益性と成長性を意識した経営ということで、例えば資本コストを意識した経営を促進すると、こういったものなどが盛り込まれているところでございます。

 最後に、御議論いただきたい事項として、32ページ目でございます。全般といたしまして、資産運用力の向上及び運用対象の多様化に向けた環境整備等を通じた資産運用業等の抜本的な改革を進める上で、どのような視点を持ち、どのような課題に取り組んでいくことが重要か。また、資産運用業につきましては、その運用力向上を図っていく上で、資産運用業の新規参入を促すためにどのような取組を行っていくべきか。また、新規参入促進以外に考えられる課題は何かという点でございます。

 また、アセットオーナーにつきましては、運用を受託する運用会社において高度な運用が行われ、受益者である家計の利益が最大化されるよう取組を進めていくためにどのような点が課題であるかということでございます。

 運用対象の多様化につきましては、広く個人に対してオルタナティブ資産への投資機会を提供するとともに、そうした資金がスタートアップ等への成長資金として流れていくことが重要ではないか。そうした観点から、運用対象の多様化を進めていく上で何が必要かという点でございます。

 そのほか、資産運用に関する施策を進めていく上で何が必要かという点についてでございます。

【加藤座長】
 ありがとうございました。

 それでは次に、中神康議様から御説明をお願いいたします。

【中神氏】
 皆さん、初めまして。みさき投資の中神と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。それでは、お手元の資料2-2に沿って説明させていただきたいと思います。私のほうからは、資産運用立国に向けてということで、エクイティプレイヤーを爆発的に増やし、大型化するという提言を差し上げたいと思います。よろしくお願いします。

 まずは、提言にいきなり行く前に、私の問題意識、背景となる問題意識ということで、今なぜエクイティプレイヤーの拡大と大型化が必要なのかということを若干お話しさせていただきます。私自身は実は2005年に投資助言会社を一度立ち上げており、その後、2013年にもう一度資産運用ベンチャーを立ち上げたということでございまして、実際にベンチャーが立ち上がり、あるいは大きく育っていくためにどのようなハードルがあるのかを実体験しております。その体験をきちんとお話をさせていただいた上で、実際のエクイティプレイヤーの拡大と大型化に向けてということで提言をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 最初に、若干のマクロな視点でございますけれど、資産運用立国を目指していくということでございますが、私は大変大きなハードルが一つあるのではないかと考えております。それは、資産運用をしていく上での拠って立つホームマーケット、特に株式市場でございますけれども、このホームマーケットで過半の上場企業の約10年間の資本生産性が実は株主資本コストを割れているという現実、これがある上で、本当に資産運用立国が出来るのであろうか、ということを考えなければいけないと考えております。先ほど事務局の資料にあったとおり、その中でもパッシブ比率が高まっていくということになりますと、対話機能がやはり低下していくということも考え合わせなければいけないのではないか、このハードルをいかに越えるかというのが、資産運用立国に向けて取り組まなければいけないことではないかと考えております。

 次のページを見ていただきますと、日本企業の最頻値は左肩に寄った山になっております。この山を動かすために、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードといった形で働きかけることも重要ですし、既存の大手アセマネ会社の進化を促したりすることも重要です。しかしながら、かなり大きくこの山を動かしていかなければいけないと考えた場合、山のパーツパーツにある企業における課題は随分違うと思います。課題の深刻さ、シリアスさがかなり違うはずなので、異なる対話のスタイル、異なる対話のアプローチを持つプレイヤーが様々に出てこなければいけない。その様々なプレイヤーが彼らなりのスタイルでこの山に働きかけていくことで企業経営が進化していくということが必要だと考えております。

 すなわち、多様なエンゲージメント型プレイヤーが数多く生み出されて、それぞれのスタイルで経営に働きかけなければ、この拠って立つホームマーケットの正常化は起きない。そして、仮にこのマーケットがまだ株主資本コスト割れの会社が多いということになりますと、市場全体の持続的上昇は非常に考えづらいということであり、短期回転売買の運用が主流になりかねないというのが私の問題意識でございます。

 では、どうやったらそういったエンゲージメント型のエクイティプレイヤーが爆発的に生まれ、育っていくのか、ここで直視しなければいけないハードルは何かということを考えてまいりたいと思います。6ページ目を見ていただきますと、私が実際の体験として感じたことは、どうも資産運用事業というのは、運用スタートアップが生まれづらい事業特性があるんじゃないか、あるいは仮に生まれたとしてもなかなか大きく育ちづらい構造があるのではないかということでございます。商品特性として、やっぱり運用商品というのは無形物の商品です。実際にそれがどの程度のリターンを生んでいくのかというのは、なかなか有形的には事前には計れない。なので、信用財という側面がございまして、この運用プレイヤーが信用できるのかといったところにハードルがあると思います。

 そこに下のほうにあります顧客特性が組み合わさって、仮にアセットオーナーサイドの判断をするスキルセットが十分でない、あるいはリスク・リターンプロファイルとしてかなり保守的であるといった状況が積み重なりますと、実際には運用スタートアップが生まれづらく、あるいは生まれたとしても大きく育ちづらいということになってしまいがちで、自由競争に委ねていると、市場の失敗が起きやすいのではないかと考えております。資産運用ビジネスを立ち上げるということになりますと、ついついこの右側にあります制度の問題とか流通の問題がクローズアップされがちだと思いますが、私は本質的には、商品の特性、そして、顧客の特性がハードルになるのではないかと考えております。

 実際に私が経験したのが7ページでございまして、ある種、基本特性どおりの展開になったということでございます。右側の制度特性としては、我々が立ち上げたときには、約12名、フロントだけじゃなくてミドルとバックをそろえて12名ということになっていたわけですが、これはかなりの人件費の負担でございます。その中で、免許の登録あるいは申請をしていくということのリードタイムがかかるということでございます。

 これだけでも重いわけですけれども、実際には、我々は過去のファンドの8年半の経験があったんですけれども、やはり信用財としては信用は低かったと思います。その中で、国内の投資家は日本株離れが進み、そして、保守的なマネージャー選定の行動様式があるということになりますと、純投資家はなかなか開拓できなかったということでございまして、残念ながら3年経過時点では、ファンドの約7割が海外のお金であったということでございます。私どもが日本のアセットマネージャーとして日本の企業にエンゲージメント投資をして生まれたリターンもあるわけですが、その7割が海外に行くというような状況だったかと思います。

 この辺り、少し赤裸々にお話をしたいと思います。やはり数々の危機がございました。実際にローンチをするとき、ファンドのローンチをするのが非常に難しかった、時間がかかった、シードマネーがつかなかったというのがリアルな体験です。会社のBSの危機、個人のBSの危機というのは何を書いているかというと、会社をつくるために、自分の貯金を資本金として出すわけです。それが会社のBSになるわけです。当然、会社が立ち上がらない、シードマネーがつかないので、会社は赤字です。そうすると、資本金はどんどん減っていくわけです。この会社のBSの危機が片一方である。一方で、当然赤字で給料が出ませんので、残ったなけなしの貯金で食いつないでいくということになるわけですが、そうすると、個人のBSも危機にさらされるということです。ダブルで自分のお金がなくなっていくということになりますと、やはり正直な話、家庭の危機とか仲間割れ、本当にこのファンドがうまく立ち上がるんだろうかという不安、そして、個人の体力の危機といったものに直面しながら立ち上げてきたというのが私の実体験でございます。

 今、幸いにしてみさき投資は10年たちましたけれども、実感としては本当に奇跡に近い、非常に難しかった、苦難の道のりだったということを申し上げて間違いはないのではないかと思います。こういった奇跡を当てにしていては、エクイティプレイヤーは増えるはずもなく、資産運用立国も画餅となりかねないだろうと考えております。もちろん免許等の制度的な苦労もありましたけれども、やはりシードマネーがついてきちんと経済的に成り立つといったところまで持っていくのが大変でございましたというのが実体験でございます。

 今10年たってどうだったのかと考えますと、商品特性としては運用実績が出来ましたということですけれども、独立系への信用はまだ決して高いとは言えないと思います。その中で、顧客特性としては、日本株投資への縮小は継続しております。この中で、左側に書いております海外投資家からの引き合いは、特に最近、ガバナンス改革の進展によって注目が集まっていて、引き合いは大きくなっております。

 一方で、そういった海外投資家をどんどん獲得できるかというと、ちょっと待ちの姿勢にならざるを得ないというところがございます。それは何かというと、右側に書いてございます。海外投資家から受託をするハードルは意外と高い。いろいろなライセンスがあったり、商品の組成を各地域の特性に合わせて組成をしていかなければいけない。あるいは、お客さんにアクセスをし、きちんとフォローアップしていく。当然ながら、リーガルやコンプライアンス等の規制対応も必要でございますということになりますと、正直、独立系の小所帯ではなかなか海外のお金を大きく取っていくことは難しいと考えております。

 そうするとどうするのかということになりますと、保守的な国内投資家には頼れない、一方で海外顧客を大きく獲得していくのもなかなか困難だということでございます。今、海外からどんどん運用プレイヤーを招いて、日本で特区をつくってやろうじゃないかという話があるやに聞いておりますけれども、ある種ウィンブルドン化ということだと思います。ただ、そうやってウィンブルドン化するだけで本当に資産運用立国が成立したと言えるのか。国内ですばらしい運用者が育っていって、それがグローバルプレイヤーとして大きく育つということがないと、やはり本当の意味での資産運用立国とは言い難いのではないかというのが私の実体験でございます。

 こういった実体験を踏まえました、あくまでも現場からの提言ということになります。政策に関する知見もございませんし、現場からの提言ということにならざるを得ないわけですけれども、本日は3つ提言を持ってまいりました。

 提言の1つ目は、もう海外にもあります、エマージング・マネージャーズ・プログラム。新興運用者を育成していこうということで、海外では割とよくあるプログラムの導入、これは必ずやるべきではないかと思います。これは、EMPのほうはシードマネーがつくということなので、運用会社からすると収入サイドを助けるということになるわけですが、一方でコストサイドも非常に重い。先ほど12名と申し上げましたけれども、このコストサイドをうまく支援していくという意味で、ミドルバックのプラットフォームを設立してはどうかというのが2番目の提言でございます。さらに言いますと、仮に提言1、提言2がうまくいって数多くのプレイヤーが出来たとしても、それが本当にグローバルプレイヤーになるのかというと、そこに関してもう一度再ブーストするようなことが必要ではないかということで、3つの提言を差し上げたいと思います。

 12ページ目は、新興運用者育成プログラムということでございます。運用ベンチャーにとって最初のハードルは、何といってもシードマネーの獲得ですということを申し上げました。一方で、みさきの実体験でもそうですけれども、海外では実は運用ベンチャーこそ高いリターンが出るのだという実証分析もございまして、これを見つけて投資をしていこうじゃないかというアセットオーナーが存在いたします。この背景にも、やはり運用ベンチャーの高リターンに目をつけた公的年金や財団を中心に各国でも運用ベンチャーは発展を遂げつつあるのかなと考えております。

 巨大資金のアセットオーナーあるいは大手運用会社というのは世界にもあるわけですけれども、チケットサイズが大きい大手アセットオーナーというのは、やはり大手運用会社に限定した委託になりがちである。そうすると、運用が画一化してしまうんじゃないか、資金が偏在してしまうんじゃないかという懸念になっております。なので、こういった資産運用業への新規参入を促すことによって、社会でも多様な運用、多様な商品、そして、高いリターンを享受できる可能性があるのではないかというのが最初の提言でございます。

 それから、提言の2番目は、ミドルバック・プラットフォーム設立ということでございます。先ほど申し上げたとおり、運用スタートアップを始めたい者にとっては、ミドルバックのコスト負担があります。さらに申し上げると、人的ハードルもかなりあります。というのも、運用ベンチャーを始めたい人間というのは、普通はフロントサイド、運用をやりたい人間でございまして、実はミドルバックの経験もなければ、そういったところに人脈もあまりないということで、採用そのものに関しても非常に困ってしまうというのが現実かと思います。

 一方で、やはり大事なお金を預かるという業務の特質上、ミドルバックがしっかりした業務をやるというのはどうしても大切であるということも事実だと思います。ですので、このミドルバック業務を一種の社会インフラと考えて、どんどん参入をしていきたいフロントのベンチャーが誰もが使える公正中立なプラットフォームを用意してはどうか。そうすれば、運用ベンチャーは運用助言登録のみで運用をスタートできるわけですし、お金を預けたいアセットオーナーからしても、運用ベンチャーの頼りないミドルバックに頼るよりも、きちんとしたプラットフォーム、社会公正的なプラットフォームのほうがはるかに安心感があるということではないかと思いまして、ベンチャーサイドあるいはお客さんサイドから見てもよいのではないかと考えております。

 そして、この提言1、2に関しては、本日参考資料としてつけております。上田委員と私で実は2014年にこの辺りの構想を考えておりまして、もう約10年前になりますけれども、世界各国の制度や現実の動きを調査分析して書いてございますので、これもバックアップとして御参考いただければと思います。

 そして、私のほうから最後の提言、3番目ということですけれども、G化プログラムを構想するということでございます。問題提起といたしましては、EMPあるいはミドルバック・プラットフォームが出来たとしましょう。そして、多様なエクイティプレイヤー、中でも私はホームマーケットを正常化するという意味ではエンゲージメント型プレイヤーが多く生まれる必要があると思います。一方で、生まれたとして、あるいはウィンブルドン化政策によって国内に数多くの海外プレイヤーが来たとして、それが本当に運用立国化したことになるのでしょうかということが問題提起でございます。

 これは、すなわち、本質的なテーマとしては、スタートアップ政策と共通する課題だと思いますけれども、小粒なローカル(L)型のプレイヤー、L型の運用ベンチャーが数多く生まれたとしても、やはり世界一流の運用力を持ち、世界一流のお客さんにアクセスをし、抱える大型のグローバル(G)型のプレイヤーが新興なのか既存の大手なのかにかかわらず育っていかなければ、資産運用立国化したことにはならないのではないでしょうかという問題意識を持っております。

 このG化プログラムは、かなり独創的な政策を考えなければいけないというふうになると思いますけれども、これは国家間競争でも、敢えて申し上げてしまいますと、後発国ではないかと思いますが、そういった我が国では、他国に倣った1や2の政策だけでは不十分ではないかと思います。なので、少しチャレンジングではありますけれども、この提言3を考えていってはどうかと考えております。すなわち、国内プレイヤーがグローバルマネージャーに育つための資金と輸出企業化の支援をしてはどうかということでございます。もちろんかなり厳しく、本当にこのマネージャーはG化に耐え得るのだろうかといったものを選別した上で、EMPのセカンドプログラム的にお金をまたそこにブーストしていくということでございます。

 これはなぜかというと、私は5月、6月にアメリカ、ヨーロッパ、中東のアセットオーナーを回ってきたんですけれども、そのときに言われたのが、海外の大手一流アセットオーナーの中では、例えばワンチケットサイズが500億とか何百億という単位で投資していることです。下手をすると1,000億という単位ですと。それが投資できるファンドというのは、ある程度閾値を超えたファンドサイズが既にないと、自分たちがあまりにも大きな投資家になってしまうので、それは非常にやりづらいんだと。やはり閾値を超えてほしいというのが1番目の話でございました。

 あと、2番目は、国内投資家の構成比が重要なんだと。もちろん我々が投資するのはいいけれども、日本国内の投資家が大きく比率を持っていないファンドに、国内投資家が納得していない、投資に関して大きくコミットしてないファンドに、なぜ我々のような海外投資家が投資すべきだと言うんだ?という耳が痛い言葉を言われました。そういったことを考えると、EMPのセカンドプログラムが必要なのではないかと考えております。

 加えまして、先ほど申し上げましたとおり、独立系あるいは既存大手であっても、海外の一流アセットオーナーにアクセスをし、海外のリーガル、コンプライアンスの要件を整え、コミュニケーションをし、メンテナンスをしていく、サービスをしていくというのはなかなか簡単なことではございません。なので、ミドルバック・プラットフォーム機能の提供をして、日本発のアセットマネージャーが世界で大きく育つといったものを整備してはどうかと考えております。

 私の話は以上です。

【加藤座長】
 ありがとうございました。

 それでは次に、投資信託協会の杉江様から御説明をお願いいたします。

【杉江氏】
 投資信託協会の副会長をしております杉江でございます。本日はこのタスクフォースの初回の会合に当たりまして発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。それでは、資料2-3に沿って御説明をいたします。

 表紙をめくっていただきまして、目次になりますが、本日は、基本的な考え方、それから、どういう改革を進めていくか、4では具体的な施策について説明をしたいと考えております。

 もう1ページめくっていただきまして、3ページでございます。本論に入る前に、この資産運用業宣言について説明をいたします。この宣言は、2020年11月に投資信託協会と投資顧問業協会が共催で初めて資産運用業大会を開催するに当たりまして、両協会で協議をして取りまとめの上、公表させていただいたものでございます。この宣言は、資産運用会社の社会的な使命と使命を果たすための目指すべき姿を示すとともに、資産運用会社の役職員全員が自らの使命を認識し、一丸となって目指すべき姿に向かって業務を遂行していくという決意を広く社会一般に対して表明したものでございます。資産運用会社の経営及び業務運営の共通理念となることを目指しているところでございます。

 この宣言では、一番上にございますが、資産運用会社の社会的使命を、皆様の安定的な資産形成に向けて最善を尽くすとともに、そのための投資活動を通じて社会課題の解決を図り、皆様の豊かな暮らしと持続可能な社会の実現に貢献することですというふうに規定をしております。さらに、資産運用会社としての目指すべき姿といたしまして、専門性と創造性の追求、顧客利益の最優先、責任ある投資活動、信認の獲得の4つを明示しております。両協会の会員各社は、全役職員に対する本宣言の趣旨の浸透及び定着を図るため、それぞれ創意工夫をしてしっかり取組を進めているところでございます。

 それでは次に、5ページを開いていただきまして、具体的に今回の資産運用立国の実現に向けました資産運用業の抜本的な改革につきまして、投資信託協会としてどういうことを考えているかということを説明したいと考えてございます。この考え方につきましては、本会の会長の諮問機関でございますアドバイザリー委員会や本会の理事会において検討したものでございます。

 まず、1番目の丸のところでございますが、資産運用立国の実現に向けまして、国民の資産形成のための投資信託等の改革及び運用力の向上のための資産運用業の改革、投資信託等の改革と資産運用業の改革、この2つの改革を進めていこうということを考えております。1つ目の投資信託等の改革につきましては、この改革を通じまして、国民が安心して資産形成に取り組める環境を整備し、資産形成のさらなる促進に貢献する。加えて、家計の金融資産所得を増やすだけでなく、企業の成長を支えるリスクマネーの円滑な供給にも努めていくということにしております。

 それから、2つ目の資産運用業等の改革につきましては、3つ目の丸のところでございますが、資産運用会社が国民からさらに信頼される存在となることを目指し、インベストメント・チェーンにおける資産運用会社の役割や責任を全うしていくということにしてございます。4つ目の丸でございますけれども、このような改革は、現行の法令諸規則等や資産運用業等の慣例にとらわれずに、資産運用会社の主体的な創意工夫を引き出して、投資家や受益者の利益を第一に考えて行うという考え方になっております。それから、5つ目の丸でございますけれども、資産運用会社として経営の透明性を確保するためのチェック機能や開示などの充実を通じ、顧客の最善利益を考えた運営のために求められる体制の向上を図るとしております。

 それから、最後でございますけれども、資産運用会社が、国民をはじめとするステークホルダーとの社会的信頼を高めていくためには、改革に係る取組の透明性を高めることが重要であり、より分かりやすく効果的な取組状況の発信に努めるというようなこととしております。投資信託協会といたしましては、このような基本的な考え方にのっとりまして、資産運用立国の実現に向けて全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 次に、具体的な改革の内容でございますけれども、7ページをお開きいただけますでしょうか。先ほど申し上げました2つの改革のうち、投資信託等の改革について4つの論点を示しております。

 まず、最初の1の論点はプロダクトガバナンスの推進でございます。資産運用会社は、プロダクトガバナンスの推進によりまして、顧客利益最優先のガバナンス強化を進め、国民が安心して資産形成に取り組める環境を整備するということが大事だと思っております。また、運用パフォーマンスのモニタリングなどにより商品品質の維持・向上を図り、改善に向けた対応が困難と考えられる商品は償還等を行うなど、常に顧客本位の観点で商品の組成・提供を行うということがプロダクトガバナンスの推進の考え方でございます。

 2つ目の投資資産の多様化につきましては、国民の資産形成に適した商品を組成し、多様化するニーズに応える商品をラインアップするとともに、家計からの長期のリスクマネーを成長分野や課題解決に取り組む企業、あるいはスタートアップ企業等も含まれますが、こういう企業等に供給することで社会や経済の好循環を構築するということを考えてございます。

 それから、3つ目は、DC・iDeCoの改革でございます。これについては、DCとiDeCoの抜本的な改革を推進して、資本市場に国民の老後のための資金が投資信託により安定的に供給される仕組みを構築強化するということを掲げてございます。投資信託協会におきましては、国民の資産形成を促進するためには、NISAの抜本的な改革に加えまして、ここで申し上げておりますDC・iDeCoの改革が不可欠だと考えているところでございます。

 4つ目は金融経済教育の充実ということです。安定的な資産形成の重要性を浸透していくための金融リテラシー向上に向け、低年齢からお金や金融商品を理解する力を育てる金融経済教育の充実に貢献するということで、新たに設けられます金融経済教育推進機構につきまして、証券業協会あるいは全銀協と併せて投資信託協会からも関連する事業を移管させていただき、人的・予算面でも積極的に協力をさせていただきたいと考えているところでございます。

 それでは、次に8ページをお開きいただけますでしょうか。もう一つの改革でございます資産運用業の改革について、4つの論点を示してございます。まず、第1の論点は、資産運用会社の多様化の推進でございます。国内外からの新規参入による資産運用業の多様化を進め、資産運用会社間の公正かつ自由な競争の促進により、運用力の向上や商品・サービスの充実などを図り、投資家が様々な商品の中から資産形成のニーズに合った商品を選択することができる環境を整えることが必要だと考えてございます。

 2番目は、運用人材の育成と国内外からの人材獲得でございます。3行目になりますけれども、資産運用会社等における計画的なプロフェッショナルの強化・育成とともに、国内外からの優秀な人材を獲得し、長期的な雇用を維持できるようにすることが必要だと考えてございます。

 3つ目は、資産運用の高度化と効率的な業務運営の実現でございます。下の部分になりますけれども、デジタル技術などの活用に加えまして、各資産運用会社で重複して行っている業務の集約・一元化などで、より効率的な資産運用体制の構築を進めることが必要だと考えてございます。

 最後でございますが、スチュワードシップ活動の実質化ということです。最後の行でございますけれども、責任ある機関投資家として適切にスチュワードシップ責任を果たすため、スチュワードシップ活動の実質化に取り組むということが必要だと考えてございます。運用会社といたしましては、スチュワードシップ活動や責任ある投資活動によりまして、投資先の企業と積極的な対応を行うということが運用会社の重要な仕事だと認識をしているところでございます。以上、改革について説明いたしました。

 10ページでは、投資信託等の改革について3項目、それから、資産運用業の改革について3項目の具体的な施策について示しているところでございます。これについて簡単に説明をしていきたいと思っております。

 11ページをお開きください。まず、プロダクトガバナンスの推進につきましては、ここに書いてございますように、重大な投資信託約款の変更に関する基準の適正化、明確化をすることによりまして、不芳ファンドの繰上償還や、新たに投資家保護を向上させる観点から措置される制度の導入などを容認しまして、より顧客本位の商品提供を可能とすることを検討してはいかがと考えているところでございます。

 次の12ページ、投資資産の多様化ということです。欧米の類似のファンドの例を参考にいたしまして、例えば排出権などの新たな資産クラスや欧米において投資対象とされております資産の中から、日本においても投資家に投資機会を提供することが望ましいと考えられるような資産につきまして、投資家に対して新しい投資機会を提供することを可能とする観点から、投資信託等の主たる投資対象資産の追加等を検討することはいかがかと考えてございます。

 この投資資産の多様化につきましては、投資信託協会の中でも既に検討が始まっております。14ページをお開きください。未上場株の投資信託への組入れにつきましては既に検討が始まっておりまして、現在、自主規制ルールの改正につきまして意見募集を開始しているところでございます。投資信託協会といたしましては、こういうような取組につきまして、さらに自主規制改正手続を進めていきたいと考えているところでございます。

 15ページをお開きいただけますでしょうか。投資資産の多様化として、投資信託等において種類受益権等の発行を可能とするというようなこと、あるいは私募投資信託について金銭信託原則の例外とする範囲を拡大するというようなことによりまして、投資対象資産や想定される顧客層に応じたファンド・スキームの多様化を促進することが検討できるのではないかなと考えているところでございます。

 次に、16ページでございますけれども、こちらのほうは資産運用業等の改革のための具体的な施策でございます。まず16ページでは、基準価額の一者計算につきまして、これを希望する運用会社や新規参入者が円滑に一者計算を導入することを促進するために、受益者保護の水準を維持し、業務執行の非効率、コスト増要因を排除する観点から、マテリアリティ・ルールなどの業務の標準化を措置するということを掲げております。

 この基準価額の一者計算につきましては、これまで投資信託協会で累次の検討会を設けまして様々な議論をしてまいりました。18ページをお開きいただけますでしょうか。今回、この一者計算につきましては、基準価額算出に係る実務者検討会を設置いたしまして、実務的な検討を始めたところでございます。この検討会につきましては、一者計算に関係する様々な主体、この参加者のところにございますが、運用会社、信託銀行、証券会社、システムベンダー、公認会計士、金融庁、関係団体等様々な関係者を集めまして議論をしてまいりたいと考えているところでございます。

 19ページでございます。資産運用の高度化の関係で、投資信託協会は、運用会社が自らのビジネスモデルに応じた社内態勢を構築して、経営資源を効率的・効果的に配分することが可能となるように、資産運用業者につきまして、運用業務以外の業務の外部委託を適切に行うということが可能となるような改正を考えてございます。運用と事務の分離を図り、資産運用を高度化するという観点から、こういうものが必要ではないかと考えているところでございます。

 21ページ、最後になります。公販ネットワークというものがございまして、これの一部非接続による業務上の非効率を解消するということが求められております。こういうような観点から、投資信託の設定・解約等のデータの集中機関を創設するということが考えられないかということを提案しているところでございます。以上、駆け足でございましたが、具体的な施策について御説明をいたしました。

 22ページは、その他の要望事項についてまとめているところでございます。

 私からの説明は以上でございますけれども、国民の投資による資産形成を促していくためには、資産運用に係る様々な主体が協力・連携をいたしまして、インベストメント・チェーン全体としてよりよいサービスの提供に向けて改革を進めていくことが必要であると考えてございます。投資信託協会といたしましては、資産運用立国の実現に向けて協会を挙げて取り組んでまいりたいと考えてございます。様々な課題がございますが、資産運用立国の実現に向けて皆様の御指導、御協力をいただきたいと考えてございますので、よろしくお願いしたいと思っております。ありがとうございました。

【加藤座長】
 ありがとうございました。

 それでは、次の議題に移ります。事務局から、運用対象の多様化について御説明をお願いいたします。

【齊藤企画市場局市場課長】
 それでは、お手元の資料3に沿って御説明させていただきます。

 資料3の3ページ目を開いていただければと思います。こちらは、6月に閣議決定されました新しい資本主義の実行計画の抜粋でございます。この後に説明する論点に関連する記載として、特にアンダーライン部分について今回議論する対象として取り上げているところでございます。

 続きまして、6ページ目からでございますけれども、非上場株式の募集、私募制度等の在り方ということで、こちらは企業開示課の野崎課長より御説明をお願いいたします。その後、また再び私のほうから御説明をさせていただければと思います。

【野崎企画市場局企業開示課長】
 企業開示課課長の野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。私のほうからは、6ページ以降の開示部分について御説明させていただければと思います。

 先ほど若干御紹介のありましたスタートアップ育成5か年計画におきまして、少額募集の在り方とか少人数私募制度の在り方について検討するというような記載がございました。6ページでございますけれども、日米欧における少額募集の要件とか私募の要件の一覧をまとめております。こちらの表の上段が、募集金額が一定水準以下の少額のものについて開示を簡素化する枠組みということで、少額募集の枠組みを示しております。下段が投資家層に応じて開示を簡素化する枠組みを示しております。

 左上の少額募集の要件でございますけれども、日本においては、50名以上の一般投資家に有価証券の勧誘をする場合には、調達金額が1億円以上の場合には有価証券届出書の提出が必要とされておりますが、調達金額が5億円未満の場合には少額募集に該当しまして、連結情報を不要とする簡素な情報開示の枠組みが存在するところです。さらに、調達金額が1億円未満の場合には、有価証券届出書の提出自体が不要となりまして、証券情報のみを記載した有価証券通知書を当局に提出するということになってございます。

 6ページの左下でございますけれども、私募の話でございます。日本におきましては、縁故者を念頭に置いた49名以下への勧誘である少人数私募とか、機関投資家等のプロ投資家への勧誘である適格機関投資家私募、これよりもプロ概念を拡大した特定投資家に対する勧誘である特定投資家私募という制度がございます。

 少人数私募につきましては、発行者から投資判断に必要な情報を直接入手する立場にあると考えられるために、開示義務、すなわち、有価証券届出書の提出が免除されております。なお、49名という取得勧誘の対象者の人数制限のカウント方法につきましては、従前は有価証券の発行日から遡って6か月間分を通算してカウントするというところになってございましたけれども、より機動的な資金調達を可能とする観点から、通算期間を3か月に短縮するという改正が昨年1月に行われているところでございます。

 左下の日本における特定投資家私募につきましては、2022年7月に日本証券業協会において制度整備がなされたところでございます。これによりまして、証券会社を通じて、非上場企業の株式を特定投資家向けに勧誘することが可能となっております。以上、少額募集や私募の要件について御説明させていただきましたが、実際のニーズや投資家保護の観点も踏まえて、現時点においてさらに見直しを検討する部分があれば、御意見を賜れればと思います。

 続きまして、7ページ目の少額募集における開示内容の簡素化でございます。先ほど御説明した調達金額1億円以上5億円未満の少額募集につきましては、有価証券届出書の提出が必要ではあるんですけれども、様式が別に定められておりまして、連結情報の記載が不要となっております。ただし、この少額募集に係る有価証券届出書の利用状況は直近10年間で5件というところで、利用が限られているという状況になってございます。開示内容が一定程度簡素化されているところですけれども、近時、上場会社を念頭に非財務情報の開示の充実が図られてきたこともございまして、現状、スタートアップ企業にとっては開示負担が大きい項目もあろうかと考えております。スタートアップ企業の資金調達に係る情報開示の負担軽減の観点から、少額募集の届出に係る開示内容をより簡素化するということが考えられます。

 具体的には、右上の囲みにございますサステナビリティ情報の記載欄について、開示を任意化するということが考えられないかということを検討しております。あと、右下の囲みにございます、最近5事業年度の財務諸表の記載を求めているところでございますけれども、これを不要にしまして、第4の経理の状況にございます、直近2年間の財務諸表のみとするというような形で簡素化するということが考えられるのではないかと考えてございます。また、左側の囲みにございます第三部の企業情報につきましても、例えばコーポレートガバナンスの状況等につきましては記載内容を簡素化して、全体として会社法上の事業報告における記載事項に相当する内容と同程度とするということが考えられるのではないかと思っております。

 以上のような見直しの方向性についても御意見をいただければと考えています。私からは以上でございます。

【齊藤企画市場局市場課長】
 続きまして、投資型クラウドファンディングの活性化について10ページ目を御覧いただければと思います。クラウドファンディングにつきましては、非上場会社がインターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金調達する仕組みということでございます。株式投資型クラウドファンディングの制度は、非上場株式の発行を通じた資金調達の制度として2015年に導入しております。通常、株式等の投資勧誘を発行者に代わって行う場合には金融商品取引業者として登録が必要でありますけれども、少額要件を満たす株式投資型クラウドファンディングによる投資勧誘のみを行う業者については、登録要件を一部緩和しているところでございます。

 真ん中の図で申しますと、右側の資金調達を行う企業については、発行価額の総額は1億円未満とすることが求められており、また、左側の投資家については1名当たり投資額が年間50万円までとなっております。これらについて次ページ以降で論点として提示させていただいております。

 次のページでございます。左側の我が国でございますけれども、現行制度では、企業の発行総額の上限として1億円未満となっております。これは1億円以上になりますと有価証券届出書の提出が義務づけられるということで、開示規制がかからない範囲内においてクラウドファンディングの枠組みを設けているところでございます。一方で米国や欧州を御覧いただきますと、米国ですと500万ドル、欧州ですと500万ユーロということで、一定の高い金額の資金調達を可能としているところでございます。

 次の12ページ目でございますけれども、スタートアップの資金調達規模別の調達者数割合の推移についてです。スタートアップにおける資金調達規模につきましては年々増加しておりまして、1億円を超える資金調達を行う企業の割合は約10年間でほぼ倍増している状況でございます。足元では1億から5億のゾーンが最も多いという状況になっています。

 13ページ目でございます。以上を踏まえまして、クラウドファンディングによる資金調達の手段の多様化を図るために、発行総額の上限を1億から5億円未満に引き上げることが考えられるのではないかということでございます。1億円以上については法定開示の対象ということで、先ほど御説明させていただきました少額募集による簡素化の対象として行うということでどうかと考えております。

 次の14ページ目でございます。現在、クラウドファンディング業者がクラウドファンディングによりまして1年間に同一企業の募集と私募双方の取扱いを行った場合には、両者を合算して発行総額の上限を計算することになっております。この発行総額上限につきましては、一般投資家も含めた勧誘がなされる前提で投資家保護の観点から定めているものでございます。プロ向けの私募につきましては、別枠で考えてもよいのではないかといった論点でございます。一方、別枠でありましても、非上場株式というリスクが高いものであることを踏まえますと、プロ向けであっても少額電子募集取扱業務として扱える範囲に一定の上限を設定する必要があるのではないかという点でございます。

 次の15ページ目でございます。こちらは投資家の投資上限についてでございます。我が国では、投資家の投資上限額は、投資先ごとに年間一律に50万円としているところでございます。一方で諸外国では、ご覧の図のとおり、年収や純資産に応じて投資家ごとに年間の投資上限が設定されているところでございます。投資家のリスク許容度や投資余力に応じて限度額を設定するということは、投資家の保護と利便向上の双方に資すると考えられるのではないかということで、我が国におきましても、クラウドファンディング業者が顧客の年収や純資産を把握して、投資家の年収や純資産に応じて投資上限を定めることが考えられるのではないかということでございます。一方で、投資家の年収や純資産を把握するには一定の事務負担がかかりますので、一定金額以内であれば、こうした確認をしなくても投資できる仕組みとすることが考えられるのではないかということでございます。

 次に16ページ目のクラウドファンディングの勧誘方法についてでございます。現在、クラウドファンディング業者の勧誘方法につきましては、ウェブサイトや電子メール等の電磁的方法に限定されております。しかしながら、投資家からの求めがある場合に口頭で丁寧な説明を行うことは、投資家のより適切な投資判断につながるのではないかということでございます。一方で、訪問や対面での説明をすることについては、投資家に対してある種の強圧性が生じる可能性があるということで慎重に考える必要があるのではないかということで、投資家からの要請がある場合に限って、音声通話による商品説明を可能とすることが考えられるのではないかということでございます。

 続きまして、18ページ目でございます。投資信託や投資法人を通じたスタートアップへの資金供給についてです。これまで機関投資家や一部の富裕層に限られていました非上場株式への投資については、リスクを理解し許容できる一般投資家に対しても投資機会が提供されるということは、投資家の資産形成に資するものであると同時に、スタートアップへの円滑な資金提供にもつながると考えます。一般投資家は、プロの運用者を通じた投資、つまり、投資信託等や上場投資法人を通じた投資が考えられますけれども、こうしたプロの運用者により投資家の投資目的やリスク許容度を勘案した商品が適切に設計・運用されて必要な情報が開示される、そうしたことを前提に、投資信託等の適切な枠組みの整備や取引所における上場ルールの整備が行われていくことが重要ではないかということでございます。

 次の19ページ目は、投資信託への非上場株式組入れについてでございます。先ほど投資信託協会から御説明があったように、現在、投資信託に非上場株式の組入れが可能となるよう、投資信託協会において枠組みが検討されており、先月9月に自主性規則の改正案を公表されております。非上場株式は流動性が低いということで、原則として投資信託への組入比率を15%以下に制限するということとされておりまして、そうした枠組みでの投信の組成が進むことが期待されるところでございます。また、解約制限など流動性確保のための措置が適切に講じられているという前提の下で、流動性の低い資産に運用対象を絞るといった商品設計を明確にした投資信託についても促進されていくことも重要ではないかということでございます。

 次に、20ページ目の上場ベンチャーファンドについてでございます。東京証券取引所に上場ベンチャーファンド市場が設けられております。こちらは2001年に当時の大阪証券取引所において開設されたものでございます。過去に2銘柄の投資法人が上場されたものの、いずれも再投資先選定が困難ということとなりまして、市場期待が低迷したことなどにより運用期間満了で償還されており、現在、上場銘柄は存在しない状況でございます。個人投資家の投資対象の多様化の観点からは、ベンチャーファンド市場の利用活性化も重要であると考えられます。今後も東京証券取引所において必要な見直しなどが検討されていく必要があると考えております。

 次の21ページ目は上場ベンチャーファンドの情報開示についてでございます。法定開示につきましては、有価証券報告書等の提出が求められているところでございますけれども、それに加えて、東京証券取引所の上場規程等におきましても開示内容が規定されているところでございます。上場企業とは異なる非上場企業の状況に適した情報開示となるよう、東京証券取引所において情報開示の内容や開示頻度について検討される予定と承知しているところでございます。

 次の22ページ目は上場ベンチャーファンドの自己投資口の取得についてでございます。上場投資法人につきましても、不動産投資法人、いわゆるREITにつきましては、2013年の投信法改正により、インサイダー規制の対象とすることと併せて、自己投資口の取得が解禁されているところでございます。上場ベンチャーファンドにおきましても、株式売却などによる余剰資金について再投資先が直ちに見つからない場合などの使途として自己投資口取得も考えられるのではないかということで、インサイダー規制を導入することと併せて、自己投資口取得の解禁対象とすることが考えられるのではないかということでございます。

 最後に、その他の論点について24ページ目を御覧いただければと思います。累積投資契約のクレジットカード決済上限額の引上げについてでございます。クレジットカード決済による投資を金商業者などが受託する行為については、現行規制上、原則禁止されているところでございますが、一定の要件、つまり、翌月一括払いであること、信用供与が10万円を超えないこと、累積投資であること、こうした要件を満たす場合には投資可能とされているところでございます。ただし、決済期日の関係で10万円を上回ることのないよう、業界慣行では上限額が5万円とされているところでございます。

 現行規制の経緯といたしましては、クレジットカード決済により顧客の資力を上回る有価証券の購入を可能ならしめ、過当取引による投資家保護上の問題が生じるおそれがある一方、支払いの選択肢を増やすことにより投資家の利便性向上にも資する面もあることを考慮し、一定の要件の下で認められているところでございます。

 新しいNISAが来年からスタートすることになっており、積立投資枠につきましては月にならしますと10万円、成長投資枠も月にならしますと20万円ということで、合わせますと30万円になるということでございます。現行の規制の趣旨を踏まえて、投資家の資産形成を促進するための利便性を高めるという観点から、このクレジットカード決済上限額を引き上げてはどうかということでございます。その場合には積立投資枠の毎月10万円までということも考えられますし、あるいは成長投資枠も含めて毎月30万円までとすることも考えられるかという点でございます。

 以上でございます。

【加藤座長】
 ありがとうございました。

 それでは、これまでの説明を踏まえて、資料2-1に記載した御議論いただきたい事項、中神社長や投資信託協会様のプレゼンテーションに関する御質問、御意見をいただければと思います。また、資料3の運用対象の多様化に関する御質問、御意見などについても、御自由に御発言いただきたいと思います。

 なお、全体の会議時間の制約もありますので、御発言のお時間といたしましては4分を目安にしていただければと思います。

 それでは、御議論をお願いできればと思いますが、発言を希望される方はお知らせください。それでは、永沢委員、よろしくお願いします。

【永沢委員】
 ありがとうございます。私は1990年代から2000年にかけて内外の投資信託の仕事に関わっておりまして、その過程でパッシブ運用専業の投資顧問の設立や、当時の投資信託改革、投信窓販の立ち上げなどにも関わった経験がございます。四半世紀近く前の経験になりますが、そうした経験を通じて、投資信託が日本において個人の資産形成の中核商品になるという確信とともに、日本の投資信託制度が、欧米をまねてつくってきたものの本質的なところを何か忘れてきたのではないかという問題意識をずっと抱いており、さきほど中神社長が2004年に会社をつくられたと言われましたけれども、私も有志とともに2004年に良質な金融商品を育てる会という市民グループを立ち上げ、以来、個人投資家の立場から意見を申し上げております。

 自己紹介が長くなりましたけれども、そのような経験を踏まえ、本日は、時間に限りがありますので、資料2-1の御議論いただきたい事項についてのみ意見を申し述べさせていただきます。

 まず、全般のところですが、日本の資産運用業の運用力強化には、若い運用者を起用し経験を積ませる仕組みづくり、これは必須だと思っております。運用の才能とお金を集めるマーケティングの才能とは、私は異なる才能であると思っておりまして、運用力が高くても、やはりシードマネーがなければ、その力を磨く機会もございません。みさき投信の中神社長の御提案に強く賛同するところでございます。

 それから、運用対象の多様化に対応できる環境整備としては、オルタナティブ投資に特化したスペシャリスト的な運用会社の育成も必要だと考えます。大資本金融機関の子会社である大企業型運用会社では、私はそうした人材の育成・定着はなかなか難しいように思っております。極論を申しますと、大資本金融機関の子会社である大企業型運用会社は、パッシブ運用に特化されて、アクティブ運用は外部の業者に委託し、ミドルからバックオフィスの部分は、今日もいろいろ御提案が出ておりましたけれども、外部に委託する分業的構造を日本においても進めていくことが必要であり、また、顧客である受益者に代わって、そういった運用者が運用方針どおりの運用ができているかという監督をするというようなことに特化されてはいいのではないかと私としては思っておるところです。かなりの極論を申しまして、関係者の方々には失礼いたしました。

 また、オルタナティブ投資については、伝統的な証券運用よりも高度な善管注意義務が私は求められると思っておりますし、迅速かつ専門的な意思決定が必要であると思います。現在、日本では、戦後長らく契約型投資信託という法形式を中心に展開してきておりますけれども、投資対象、投資手法のリスク等に応じて器をもっと選択するという知恵が必要であり、現行の契約型投資信託が、オルタナティブ投資のような投資に果たして適しているのかどうか、法形式の整備の検討も、もっと重ねていくことが必要なのではないかと思っております。日本でも投資法人という法形式の利用が可能となっていますけれども、その利用なども検討し、検討を重ねていくことが必要ではないでしょうか。

 次に、資産運用業のところにつきましてですが、私はリテール分野の公募投資信託に限って3点意見を申し上げたいと思います。まず、新規参入を促すことが本当に必要かという点について問い直してみることも必要ではないかと思っております。現状、投信会社は、将来的に持続可能な程度に収益をあげているのでしょうか。この点を確認してから、会社数を増やすべきかどうかを検討すべきと私は感じております。

 2点目として、矛盾するかもしれませんが、運用会社の新陳代謝が大変重要になります。NISAの普及が期待されており、投資信託への資金流入はしばらくは続くと思いますが、長期的に日本は少子高齢化の流れにあり、個人金融資産の増加はどこかでピークを打つ時が来るでしょう。一方、投資対象の多様化も対応していかなくてはいけません。新規参入の必要もありますが、一方、健全な市場の維持のためには適正な運用会社数という考え方もあることに鑑みますと、顧客に迷惑をかけない方法で、市場から退出すべき運用会社の撤退を促すということも必要ではないかと考えております。

 なお、撤退の際に顧客に迷惑をかけないようにするために、ファンドの吸収合併が容易に行われるような整備が必要です。この点、ファンドの併合が可能なように、投信法の改正を行っていただいておりますけれども、一向にファンドの併合の動きが出てきません。ここにも、契約型という法形式に限界があるのではないかと思っております。例えば、責任の所在が不明確な点や意思決定が迅速に行えないなどの事情が一因としてあるのではないでしょうか。改めて、日本の投資信託は、現行の契約型のまま、この先進んでいっていいのかどうか、再検討が必要なのではないでしょうか。

 そして、少々次元の低い話になりますけれども、この機会にファンドの繰上償還について一言申し上げておきたいと思います。運用力の向上のために、運用の効率化が必要であることは、私共個人投資家も十分理解しております。しかしながら、ファンドの繰上償還が奨励されているように見える点につきましては、投資家としては納得できないところがございます。そもそも運用会社には、投資信託を組成して世に出した責任があります。運用成績が芳しくない責任も運用会社にあるはずです。そのような不良な品を市場に出してしまった責任を自ら反省せず、当初の約束を破って繰上償還をすることを、安易に容認し奨励する市場文化はどうなんでしょうかと思います。

 かねてより繰り返し御提言申し上げておることですけれども、繰上償還をされるときには、同種類のファンドを一定期間新設することはできないといったペナルティーを科していかなければ、安易なファンドの新設を防止することにつながらないと考えます。

 3つ目として、日本の投資信託市場の問題として、販売金融機関の優位が続いていることがあげられます。この点は、金融庁も指摘されていることです。この問題の克服がなければ、資産運用力の強化はなかなか進まないと思います。NISAの恒久化・拡充が決まり、投資信託は今以上に広く国民の資産形成の中核商品となっていくことが期待されますが、現状の投資信託は、投信会社と代行契約を締結している販売金融機関でしか購入・換金できず、販売金融機関を変更しようとしても、投資信託の他社への移管、持ち出しが必ずしも保障されていません。

 ある投資信託を購入しようという時に、Aという銀行では買えるが、Bという銀行では買えないという状況は、おかしくないですか。少なくとも、NISA採用の投資信託商品については、どの金融機関でも買えるようにしていただきたい。そのために、投資信託の決済や顧客名簿管理を行うプラットフォームを、できましたら国主導で構築いただいて、運用会社も販売金融機関もそこにつながるというような大きな設計図を描くことはできないのでしょうか。難しい話かもしれませんけれども、NISAを普及させていくためには、そうしたプラットフォーム的なものが必要であろうと思います。

 続いて、運用対象の多様化に関してでございます。事務局資料に「広く個人に対してオルタナティブ資産の投資機会を提供する」とありますが、オルタナティブ資産は、伝統的な資産と比べるとデータが少ないため、価格変動の動きが読めない点や換金性に課題があり、私は、全ての個人が直接的にこうした投資機会に触れることを可能にするという規制緩和には慎重であるべきだと考えます。やはり、ここは間接市場型金融商品であるファンドというものの育成が必要になると考えます。

 その際、先ほども申しましたけれども、関係者の善管注意義務の程度も異なってくることから、こうした投資に適した投資信託の器について、十分にご検討いただきたいと思っております。また、個人が直接に投資する場合は、私は投資家側に資格要件を定めることもあっていいのではないかと思っております。

 最後になります。その他のところでございますが、多面的な視点での投資を促すという観点から、資産運用業における投資判断に関わる人材の多様化、具体的には女性や外国人の登用を進めていく必要があるのではないでしょうか。なお、ここで投資判断に関わるという意味は、マーケティングやバックとかミドルオフィスの部門ではなくて、アナリストやファンドマネジャー、加えて議決権行使といった部門に関わる分野での情勢や外国人の登用を意味しております。こういった分野、投資判断の本丸において人材の多様化を進めていくことも、必要ではないかという意見を述べさせていただきたいと思います。

 また、マイノリティーが起業する場合のアファーマティブアクションとして、年金などがマネジャーを一定割合採用することを義務づけるような政策があってもいいと思います。これはみさき投資様の御提案と同じであろうと思います。

 昔話になりますが、1980年代の後半に、アナリストとしてアメリカの投資顧問会社を訪問したことがあるのですけれども、まだ名前も覚えております。リリア・クレメンテという、フィリピーナの女性がトップを務めているクレメント投資顧問という会社を訪問したのですが、その時の驚きは今でも忘れられません。女性でもこんなふうにトップをやれるんだと知り、勇気づけられたと申しましたら、彼女が、アメリカでは女性や外国人というマイノリティを優遇しており、州年金等では採用することが義務付けられている、そういったアファーマティブアクションがあるという説明を受けました。日本でもこういうアファーマティブアクションを、資産運用の分野で考えていってもいいのではないかと思っております。

 長くなりましたが、私からは以上でございます。ありがとうございました。

【加藤座長】
 永沢委員、ありがとうございました。

 続きまして、有田委員、よろしくお願いいたします。

【有田委員】
 ブラックロックの有田と申します。私からは、資産運用に関する概観について、20年来の考え方を御紹介させていただきまして、続いて、運用対象の多様化についてコメントしたいと思います。

 いきなり大上段で誠に恐縮ですが、戦後、我が国の高度成長を支えたのは、雁行形態論に基づく、いわゆる傾斜生産方式でありました。それを金融面で支えたのが、預金と貸出を業とする銀行を中心とした間接金融の仕組みだったと思います。その世界では貯蓄が美しいとされ、政府と産業界、金融界は一体となって、なけなしの国民の資金を、軽工業から重厚長大な産業に配分してまいりました。この開発経済のモデルでは、いわゆるライアビリティーマネジメントこそ重要でありまして、企業はどのように負債を確保できるか、それさえできれば国内に事業を起こすことができたわけです。

 80年代後半以降、経済が成熟しまして、生産要素の比較優位が発展途上国にシフトする中で、国内での資金需要が細ったわけです。行き場を失った預金はバブルを生じさせ、その後、バランスシートの修復に伴うデフレの世界に突入していったというふうに考えております。この間、積み上がる経常収支の黒字により、資本市場の需給は資金の供給過多ということになりまして、その過剰流動性をどのように海外資産で運用するかが、国富の継承に関わる問題となりました。ここでアセットマネジメント、なかんずく国内の余剰資金をいかに海外で、海外資産で運用するかが国民経済にとって重要になったわけです。

 さて、私は足元、さらに大きな転換期が訪れていると考えています。世界の情勢は大きく変化しています。地政学リスクが強く意識され、多少効率が悪くても、垂直分業的なサプライチェーンの再構築が行われています。また、脱炭素化に向けたトランジションファイナンスで、国内設備投資の増大が見込まれています。また、日本の地道な技術開発力が、世界から再注目されているというふうに感じております。

 先ほど申し上げましたように、数年前までは日本の資金を海外資産で運用し、その配当や金利で国内を豊かにするということが重要であると考えておりましたが、現在ではこうした様々な世界情勢の変化の中で、国内の増大する資金需要を、従来型の間接金融に加えて、資産運用会社を通じた直接金融でファンディングする必要がある。その過程では、グローバルな投資家から、日本国内への投資を惹起することも必要だと考えるようになりました。

 そのためには、幾つか課題があると思います。まずは金融のプロバイダーとして、資産運用業界をどのように高度化していくのか。また、資金の受け手としての産業界のさらなる活性化、そして、その2つを結びつける資本市場の整備、これらが喫緊の課題であると認識しております。

 続いて、運用対象の多様化ですが、まず、今回の検討範囲について、私の意見を1つだけ申し上げたいと思います。資料2-1の32ページでは、オルタナティブ資産への投資ということにフォーカスされているように見えます。この点は大変重要な論点ですけれども、運用対象の多様化といった場合に、個人投資家にとって新しい投資対象だけではなくて、既に存在するもの、制度的、実務的な制約があって十分活用されていない商品について、いかに投資をより容易にしていくかという方策についても検討していくのが重要だと考えております。その点について、次回以降の会合で私どもからペーパーでお示しさせていただきたいと考えておりますが、こうした進め方ができるものか、後ほど事務局にお伺いしたいというふうに考えております。

 1つ実例を申し上げますと、例えばETFはコスト等の利便性からも、つみたてNISAの対象に非常に適した商品であるというふうに考えますが、つみたてNISAの取得対価が1,000円以下と定められていることで、この枠組みではほとんど利用されないことになると考えられます。この取得単位の規定も税制に関わることであると理解してはおりますけれども、せっかく資産運用立国の実現のために検討を行うのですから、こうした点についても聖域を設けず検討することが望ましいと考えます。

 そう申し上げた上で、資料3に事務局から示された論点、諸点について、あまりほかには違和感がございません。今回の御説明の背景にある考え方は、投資家保護の原則はあるものの、投資家はより投資しやすく、発行体はより発行しやすくという精神であると理解しております。過剰な規制になっているものを排除するということについては、賛成の立場でございます。

 1点だけ、公募投信に15%を限度に非上場株式を組み入れることを促進するという点ですけれども、極めて価格透明性の高い上場株式の中にこういったものが混在することによって、投資家が混乱することになるのではないかと懸念しております。非上場株式に資金流入を促進するという目的は理解しておりますが、資料3の19ページにありますように、既存の公募投信の枠組みとは別に、より適切な商品類型を新たに設計することが望ましいと考えております。

 以上です。

【加藤座長】
 有田委員、ありがとうございました。

 御発言の御希望をいただいた順番で御発言をお願いいたしますけれども、若干順番が前後するかもしれませんので、そちらは御容赦くださいませ。

 次に、有吉委員、大槻委員の順番で御発言をお願いいたします。では、有吉委員、お願いいたします。

【有吉委員】
 西村あさひの有吉でございます。

 まず、資産運用に関する制度整備につきましては、これまでの市場制度ワーキング・グループや顧客本位タスクフォースで既に提言されている施策を着実に進めていただくということがとても重要だと思いますので、これはぜひよろしくお願いしたいと思います。

 その上で私からは、資料2-1の資産運用の関連で1点、それから、資料3の運用対象の多様化との関連で、記載されているそれぞれの項目についてコメントを申し上げたいと思います。

 まず、資料2-1の関連でございますが、中神様や投信協様からの御提言にも関連する事項かと思いますけど、国内外の業者の新規参入を促すという観点に加えまして、投資運用業者の運用力を向上させるといった観点からも、投資運用業者がコンプライアンス業務などをグループ会社であったり、あるいは専門の業者、または御提案にあるようなプラットフォームなどに外部委託することを柔軟にできるようにする制度が望ましいのではないかと考えます。もちろんその投資運用業者の管理体制の水準が低下するということは問題でございますので、そのような外部委託がなされた場合の監督のあり方というものも重要な論点になるとは思いますが、他方で、この部分が厳格になり過ぎてしまうと本末転倒ということもあると思いますので、うまく柔軟かつバランスのよい制度設計を御検討いただきたいというのが、資料2-1の関連でのコメントでございます。

 それから、運用対象の多様化についてでございますが、まず少額募集の関連でございます。資本市場や金融環境の変化を踏まえまして、5億円程度を基準に少額募集の発行開示を簡素化するという方針自体には賛成でございます。ただ、よく私のほうで分かりませんのは、資料3の7ページで御提案になっているような開示内容の緩和ということだけで、実際に使い勝手がよくなるのかどうかということが、実務感覚的につかみきれておりません。現行の開示規制では、何が手間となって障害となってしまっているのかというリアルなニーズをぜひ把握していただいて、ただ他方で、投資者保護とのバランスも十分に取りつつ、見直しの内容を検討していただきたいと思います。

 それから、次に、クラウドファンディングの関連でございます。応援とか共感の要素を含めつつ、いわゆるローカルスタートアップであるとか、ソーシャルスタートアップであるとか、こういったスタートアップに対する資金供給を行う手法としての投資型クラウドファンディングの活性化を図ることには賛成いたします。したがいまして、投資型クラウドファンディングにおける勧誘方法の見直しなどの御提案については賛成するところでございます。

 ただ、しかしながら、株式投資型クラウドファンディングによる投資額の引上げという点については、そもそもこの金額を引き上げるということが、スタートアップの育成という目的に資することなのかどうかという点を慎重に御検討いただきたいと考えております。すなわち、もちろん投資家保護という観点もあるわけでございますが、それ以上に重要だと思いますのは、スタートアップが規模の小さい段階で、クラウドファンディングによって資金調達を行い、多数の個人投資家が株主になってしまうと、こういった状況は、スタートアップ自身の成長の阻害要因になり得ると考えるわけでございます。業務運営の円滑化を阻害するということもあると思いますし、その後に規模が大きくなって、大きな資金調達をしたいとなったときに、大口の機関投資家からの資金調達を株主構成の観点から困難にするといった可能性があることを非常に懸念するところでございます。

 目先の資金調達の便宜という視点だけにとらわれずに、ここはぜひスタートアップへの大口の資金供給主体となり得る機関投資家やベンチャーキャピタルの方々の意見を聞きながら、はたして株式投資型クラウドファンディングについて規制緩和を進めることが適切かどうかということを御検討いただきたいと思っております。

 それから、投資信託、投資法人、あるいはファンドを通じた一般投資家からのスタートアップへの資金供給を促進するといった施策については、ぜひ積極的に進めていただきたいと思っております。ただ、金融規制の見直しという手当てだけでは、なかなか限界がある論点ではないかという気がいたします。事務局説明資料の中にも出てきますベンチャーキャピタルトラストのようなスキームを検討していくということであれば、この場で議論できることなのか分かりませんが、税制優遇など、投資家にとってのメリットを重視して、制度の構築を御検討いただきたいと思っております。

 最後に、累積投資契約のクレジットカード決済上限額の引上げの点でございますが、まず、この引上げの方向については賛成でございます。ただ、そもそも論としまして、クレジットカード決済による有価証券取引について、事務局説明資料にございますような過当取引につながる懸念があるという論点があることは十分承知しておりますものの、そもそもクレジットカードには割賦販売法の規制も適用されるわけでございますし、利便性や、それから投資を拡大させるといった観点から、累積投資契約に限らず、また上限額を設定することなく、有価証券取引に対してクレジットカード決済を一律に認めるという発想があってもよいのではないのかと感じます。この令和の時代において、規制によってクレジットカードで買うことができない商品があるということ自体が非常に奇異に感じるわけでございます。

 私からは以上でございます。

【加藤座長】
 有吉委員、ありがとうございました。

 引き続き、大槻委員、玉木委員の順で御発言いただきます。それでは、大槻委員、よろしくお願いします。

【大槻委員】
 御発言の機会をいただきましてありがとうございます。全体感というところから、資料2-1の議論の事項に沿って少しお話をさせていただければと思います。

 まず全体感ということで、どんな課題、視点を持つかというところでございます。まず大前提として、やはり資産運用立国、これは本当に大きく、かつ一歩前進した重要な論点だと思っています。日本は資源は少ない国と言われながら、お示しいただいた1,100兆円の個人の預金というのも、それが成長に結びついていく大きな資源であるという認識を持って考えると、いかに活用するという視点に立って資産運用立国を考えるということについては大いに共感するところでございます。

 その意味では金融リテラシーの点ということを視点の中にも入れていただきたいと思っているんですが、金融リテラシーというとどうしてもどうやって運用していくかということになりがちですが、申し上げたような企業、ひいては日本の経済全体の成長に資するお金の使い方をみんなが考えていくんだという視点が重要であるということを改めて広く認識を広げていただきたいと思います。と同時に、今も幾つかお話がありましたけれども、多様な資金があるということです。資産形成層のお金と、いわゆる富裕層のお金等々では、リスクのアピタイトも違いますので、どういった性質のお金を、どういったところにどうやって使っていく、運用していただいていくのか。デモグラフィーだけではなくて、地域のお金なのか、それとも中央のマネーなのか、そういったところによっても違ってくるかもしれませんし、そういった多様なマネーの多様な運用というところにも、広く関心を向けながら議論をしていければと思っております。

 そして、資産運用についてでございます。みさき投資さんからもございましたけれども、海外からの運用者が集まるということは、市場の活性化の原因ではなくて、むしろ結果なのではないかという印象を持っています。様々な運用先があり、市場として魅力的であるから海外から運用会社が来るのであるということだろうと思いますので、まずはどうやって現在の日本の市場、市場関係者、資産運用会社を育成、成長させていくのかという観点が重要だと思っています。

 その中で、先ほども少し資料にございましたけれども、日本の資産運用会社さんが海外に委託する比率が非常に高いという議論がありますが、その逆は残念ながら今のところは少なく、そこはハードルが高いという議論がございます。しかし、やはりそれは様々ハードルがあるということであれば、何がハードルになっているのか、そこを掘り下げていくということも重要だと思います。海外への委託というのは、例えば海外の株に投資をするのであれば、そのエクスパティーズを持った方に委託するというのは、資産の運用という意味では有効な手段であると思います。それはそれとして生かし、やはりむしろ日本の運用会社が海外からお金を受託できてないというところがより重要なところなのではないかと思っています。EMP、これはそういった意味でも重要な観点だと思います。トラックレコードをつくるという意味では、いろいろな形で枠を設けて、一定程度運用させてあげるということが重要であると思いますが、特に最初の時点では、公的な資金等をEMPとして運用させていくような試みも必要なのではないかと思います。同時に、既存の大手運用会社さんの一層の成長というところについても検証をしていく必要があるのではないかと思っています。

 最後に、資金運用の多様化についてでございます。時間の関係で少しだけに絞りますけども、資料3については、先ほども有吉先生からも御指摘ありましたけれども、上限については議論があるかとは思いますけれども、やはりスタートアップの成長を大幅に促していく、それには時間が勝負ですから、そういう意味では、大幅な拡充ということが個人的には必要だと思っていますので、この提案については賛成です。特に地方の活性化という視点を、より一層設けていただきたいと思っています。資金の地産地消ということがたまに言われますけれども、やはり地方で金融機関等に預けられているお金、これをより一層活用していくような、そういったスタートアップ支援ということがあってもいいのではないかと思います。クラウドファンディングというのがその1つだと思っています。

 一方で、資料3の24ページ目のクレジットカードのところでございます。確かにクレジットカードで買えないものはないという視点は、よく分かります。ですので、これを反対ということでは決してないんですけれども、ただ資産運用というのは、やはり余剰資金が原則だということを考えると、一定の頻度であるとかそういったことについては、検討、考慮すべき点ということになるかもしれないとは思っています。

 以上です。

【加藤座長】
 大槻委員、ありがとうございました。

 続きまして、玉木委員、野尻委員の順に御発言いただきます。それでは、玉木委員よろしくお願いします。

【玉木委員】
 私からは、資料2-1の32ページの御議論をいただきたい事項のうち、全般というところについて一言申し上げた上で、資産運用業やアセットオーナーの項目をまとめて、これにつきまして、企業年金の観点からコメントを申し上げたいと思います。

 まず全般についてでございますけれども、本日のお話を伺いまして改めて強く思うことは、資産運用の市場というのは、顕著な情報の非対称性があるところであり、また、市場の失敗がたくさんあるということでございます。こういう市場につきましては、公的な関与の十分な理由があると言うべきであります。金融庁におかれては、失敗している市場に踏み込むことにちゅうちょしないでいただきたいと思います。

 続きまして、資産運用業及びアセットオーナーの項目を、まとめて企業年金の観点から申し上げます。企業年金の運用する資金は、企業が払う掛金、すなわち株主のお金でございます。経営者は株主に対する受託者責任の一環として、その資金が企業価値の向上に最大限資するよう努力する、そういう責任を負うと思います。このことを踏まえつつ、企業年金というアセットオーナーに関し、その運用を高度化していく経路について、考えているところを申し上げます。

 まず、確定給付年金(DB)の場合ですけれども、経営者は株主が提供する掛金の運用を、リスクとリターンのバランスを最適なものにしつつ行う責任を負います。しかし、残念ながら、運用を行う基金のトップに、専門性に欠けるのではないかと思われる人がなる事例が多い、そういうふうな報道もあるところでございます。他方、確定拠出(DC)の場合ですけれども、多くの企業で、信託銀行などの運営管理機関に運営管理業務を委託してございます。ここで重要なことは、従業員が運用できる運用対象が、運営管理機関が設定した運用メニューの範囲に限られる、すなわち従業員の老後の生活の安定が、運用メニューに多少なりとも左右されることでございます。運用メニューの設定につきましては、これは100%従業員の利益のために行われねばなりません。運営管理機関が属する企業グループ等の利益のために、従業員の利益が多少なりとも犠牲にされるなど、夢にもあってはならないことでございます。

 厚生労働省は、確定拠出年金法を所管する立場から、運営管理機関の責任が重いこと、事業主の責任も、運営管理機関に業務を委託したからといって軽くなるものではないということなど、重要なポイントを公式に明らかにしてございます。しかし、個別の確定拠出年金の運営の具体的なところまで、厚労省の強い権限が及ぶということではありません。他方、金融庁は、運営管理機関としての銀行や信託銀行の業務を直接的に監督する位置にあると思います。金融庁におかれては、必要に応じて踏み込むことを除外せず、適切な対応をお願いしたいところでございます。

 また、確定拠出年金における経営者の責任に関しましては、運営管理業務が適切に遂行されることを通じて、労使関係の改善、従業員の士気向上などがもたらされ、ひいては企業価値の向上につながるものでなければならないことを強調したいと思います。これは経営者にとってかなりしんどい仕事でございます。しかしながら、DB(確定給付)のほうは、財務的にリスクを負うから大変だけれども、DCだったら楽だなどというような勘違いをしていては困るわけでございます。最近、人的資本経営を標榜する企業は少なくありませんが、退職給付に関して、人的資本経営の観点から語られる人が取締役会にいてほしいものと思います。

 このように見てくると、企業年金のアセットオーナーとしての高度化の成否が、企業経営者が、株主や従業員に対する責任を真剣に果たすか否かに大きく依存することが分かると思います。したがって、企業年金という角度から、経営者に対するガバナンスを改善していくことが必要であり、こうしたガバナンスを担うべき機関投資家や、議決権行使の助言機関などにおいて、今申し上げたことについて、建設的な対話のテーマの中に含めるなど、適切な対応をしていただきたいところでございます。

 企業年金以外のアセットオーナーにつきましては、運用年金のかなりの部分は公的な機関でございます。当該機関の主務官庁である財務省、総務省、厚生労働省、経済産業省その他の所管の組織に、適切な御対応を期待しております。

 私のコメントとしては、以上といたします。

【加藤座長】
 玉木委員、ありがとうございました。

 引き続き、野尻委員、片山委員の順に御発言をお願いいたします。野尻委員、よろしくお願いします。

【野尻委員】
 ありがとうございます。フィンウェル研究所の野尻と申します。
 
私の論点、議論いただきたい事項のうちの一番上のところに、「どのような視点を持つ」というところが非常に大事ではないかと思った次第であります。すなわち、資産運用業の高度化の議論というのは、どちらかというとBtoBの議論にならないようにすべきだと思っているということです。投資家と、もしくは個人投資家とウィン・ウィンの関係が維持・向上できるということが前提でないと、この議論をしても、国民は賛同してくれないと考えています。

 その意味で、個人投資家にとって何が重要で、これに資産運用業はどう貢献できるかという視点が不可欠ではないか。単純に言えば、国民としてという、何か大括りではあるんですが、長期投資と分散投資に資するというところがきちんと担保できていることが、私は大事ではないかというふうに思っています。

 長期投資については、3つ大きなポイントを考えています。1つは、ここの中にはほとんどカバーされておりませんが、日本のいろんな制度の中には、ある時点をもって、現金化をほぼ強制するような制度が残っています。例えば、確定拠出年金で退職のときに一時金で引き出そうとすると、現金で引き出さざるを得ません。これは国民経済的には有価証券を増やしていきましょうといっているにもかかわらず、制度上はここで切ってしまうというようなことがあります。ほかにも、認知判断能力が低下すれば、運用資産は現金化するべきだとか、相続のときには、やっぱり有価証券よりも現金のほうがいいんだというようなマインドセットがあったりとかという、こういったものを併せて取り除いていくようなアイデアが必要です。私は日頃、運用をしながら少しずつ取り崩すという、退職以降の時期のお金に対するアプローチが日本では欠け過ぎていることを指摘していますけれども、こういったことを進めていくことが、長期の運用をもたらす。これは資産運用業にとっては大きなメリットにつながると考えています。

 2点目は、長期で運用しようとすると、やっぱり低コストなものを大きな期待を持って見ているわけであります。この場合の低コスト、やっぱり信託報酬とか、その他の総経費に含まれるようなコストをいかに下げるかという議論に、常になってきているわけです。下げるかというよりは、FDの7原則でも議論をした手数料の明確化、どのサービスに何がひもづいているお金なのかというのが明確になることが、投信間の比較ができるようにする力に私はなると思っていますし、同様に、高い信託報酬の投資信託を売りがちになる手数料バイアスをいかに排除するかといったような制度設計も、明らかに長期の個人投資家の目線にはプラスになると思います。これを実現するために、運用業界のコストダウンを進めるんだというロジックでないと、なかなか納得感はないのではないかと思っています。事務と運用の分離とか、運用ビジネスと投信の組成ビジネスを分離する、これは非常に大事ですし、1者計算するとか、それからシステムベンダーにもっと競争を促すとか、こういったのは本当に大事だと思っているんですけど、それは何のためにということが大前提として必要だと思っています。それこそが、個人投資家の長期投資をサポートするという点であります。

 もう一つ、分散投資を推進するという目線でいけば、先ほどのオルタナとかスタートアップへの投資機会、これは非常に大事な1つの資産になると理解をしています。ただ、広く個人に対してという言葉が、運用対象の多様化のところについていまして、これが正しいのかどうかは十分に議論する必要があると思っています。ちょっと正しい比較かどうか分かりませんが、今度の新NISAでは、デリバティブを使っていると駄目だというルールが一方であって、デリバティブとスタートアップやオルタナのリスクのバランスがどれぐらい違うのというのも比較しないで、こっちでは広く個人にといってしまうことの、私はちょっと不誠実さを感じてしまうなと思います。ここはやっぱりある程度の何か基準というのをつくっておくのが必要ではないかなと思います。

 それから、分散投資においても、外部知見の導入が必要ではないかと思っています。これは持論でありますけど、投資信託を定量、定性で分析するようなファンドアナリストがいないと、どんなに新しい投資信託が生まれたり、新しい運用会社が出てきても、それを拾い出してくれる、掘り出してくれる機能やファンクションがないということになります。それから金融機関や企業、DCなんかですが、投資信託を採用する際の外部のデューデリジェンスをやってくれる機関が存在することで、よりクリアに、投資家のための分散の、しかも外部知見を使うということになるのではないかと思います。

 それから、前回の顧客本位タスクフォースでも議論になりましたが、中立的なアドバイザーも、個人の投資家の投資に対する重要なピックアップ機能を持っていると思っています。

 分散投資の3つ目は、先ほどからちょっと議論になりましたが、投資信託のやっぱり合併等をいかに推進するかも大事な知見になるのではないかと思います。長期投資と分散投資それぞれ3つずつポイントを挙げさせていただきましたが、大事なのはやっぱりどのような視点を持って議論を進めていくかという点ではないかというふうに考えています。

 以上です。

【加藤座長】
 野尻委員、ありがとうございました。

 引き続き、片山委員、幸田委員の順番で御発言いただきます。片山委員、よろしくお願いします。

【片山委員】
 連合の片山と申します。私のほうは、働く者、生活者の立場から、幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。

 資料2-1の中に、我が国の家計資産の半分以上を占める現預金を投資につなげることで、持続的な企業価値の向上の恩恵が資産所得の拡大という形で家計に及ぶ好循環を実現するとありますが、まず家計資産については、将来ですとか、老後に備えた大事な蓄えであるということを踏まえた議論が必要であるということで、そのためにも投資家保護というのを念頭に置いた議論が必要だということを強調したいと思います。

 資料の中に、一定金額以内であれば、投資家の年収や純資産を確認しなくても、投資型クラウドファンディングに投資できる仕組みの提案がありますが、無理な投資とならないように、投資先ごとの投資上限でなく、投資家の年収や純資産に応じた投資上限の設定が必要だと思います。また、累積投資契約のクレジットカード決済上限額の引上げについても、投資家がクレジットカードの支払いに窮することがないような、慎重な検討が必要だと思います。

 次に、運用会社の運用の在り方について意見を述べたいと思います。企業年金については、とりわけワーカーズキャピタルであるという観点から、投資先の企業が短期的な利益追求主義に陥ることを助長することがないよう留意した運用が必要だというふうに考えます。そのため、コーポレートガバナンス改革の深化に向けた取組というのを、今後、強力に進めていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 私からは以上です。ありがとうございました。

【加藤座長】
 片山委員、ありがとうございました。

 それでは、次に、幸田委員、長谷川委員の順番で御発言いただきます。幸田委員、よろしくお願いいたします。

【幸田委員】
 幸田です。どうぞ皆さんよろしくお願いいたします。私からは、マクロ的な観点で、資産運用業の抜本的改革についての視点をどう持つかということで、2点ばかり、まず大枠についてお話ししたいと思います。

 視点の第1ですけれども、特に日系のアセマネ会社という点で、今後の資産運用業を高度化していくということを考えた場合に、グローバルな運用力が足らない、あるいは人材としてのプロフェッショナルリズムというのがどうなのか、あるいは最近議論が出ております金融グループとの独立性であるとか、あるいは中立性的な論点というようなことを考えた場合に、一方で今回、政策的に取り組んでいる海外勢を日本国内に持ってくるとか、あるいは本日も話題に出ました、国内での新規資産運用ベンチャーを育てていく観点で総合的に取り組んでいくことを考えたときに、資産運用業の市場を活性化させるという意味においては、こうした総合的な政策を取るということは極めて重要ではないかというふうに考えております。

 その際、先ほど中神さんからも話が出ましたけれども、ウィンブルドン化ということをどう考えていくのかということについて、少し意識を持っておく必要があると思います。やはり日本として、日系のアセマネ会社をここまである程度育ててきたというような部分がある中で、国家にとってこうした資産運用業の全体像を産業としてどう考えるのかということについては、欠くべからざる視点として持っておく必要があるのではないかというふうに思います。

 この点を総合的に考えられるようにするために、やはり視点の2として私が非常に感じているのは、資産運用業の改革のみという側面からだけ考えることでは、やはり難しい面があると思います。これはやはり体系的、整合的に取り組んでいくということでいうと、資産運用業、アセットオーナー、それから販売証券会社、金融機関、上場企業、あるいは家計、個人ということまでを総合的に整合的に進めていくということが極めて重要だと思われます。

 そういう意味においては、金融庁さんから資産運用業高度化プログレスレポートのような、そういう多面的な視点を出すことによって、いろんなところで取り組んでいるものを整合的につなげていくということがすごく重要ではないかという感じがします。ここは制度改正ということではないわけでありますけれども、総合的に、体系的にどう取り組むのかという視点を欠かさずに、資産運用業の抜本的改革ということを考えていくべきではないかという観点を申し上げたいと思います。

 そういう意味では、民間がやるべきことが非常に多いという部分がありますけれども、一方で中神さんが言われたように、政策として資産運用業というものにどう取り組むかという視点を、従来よりは行政サイドが踏み込んで行っていくということをしてもいいのではないかということで、制度面でのバックアップに加えて、政策面でどう取り組むかということについてはスコープに入れて、政策として取り組んでいくという観点を盛り込んでいくということが大事ではないかと感じております。

 最後に、ちょっと各論で少しだけ申し上げておきたいと思います。有吉委員からありました、スタートアップの目的で1億円から5億円というようなところについては、これは私自身はどちらかというと、そうした調達したい企業がどういう目的でクラウドファンディングをやるのかというようなことからすると、株主が多くなっても構わないというようなことも含めて、ある程度合理的な判断の下で行っていくというのが、多分基本だろうというような感じはします。目的がそうした調達を、1億円から5億円に増加させることについて、スタートアップという政策目的を広げていくというようなことがあるといったときに、何らかの区分けをして、この辺りは金額を5億円を上限に持っていってもいいのではないかという感じがいたします。

 それから、オルタナティブの投資であるとか、あるいは非上場株の部分については、これはやはり日本の資産運用の状態であるとか、あるいは資金の循環というような観点から考えたときに、やはり今まで資金循環の偏りが、かなりあるというようなことがベースにあるというふうに認識されていますので、そういう意味では、一定程度プロをかませることによって、ここの運用の範囲を広げていくということについては、このタスクフォースでぜひ議論をして取りまとめて、新しい取組ができるようにしていけるといいと、こういうふうに感じている次第であります。

 以上です。

【加藤座長】
 幸田委員、ありがとうございました。

 引き続きまして、長谷川委員、白須委員、上田委員、滝澤委員の順番に御発言いただきます。それでは、長谷川委員、よろしくお願いします。

【長谷川委員】
 ありがとうございます。まず、今回のこのタスクフォースの資産運用能力の向上、それから、運用対象の多様化に向けた環境整備を進めるという方向性には賛同しております。ただ、日本における資産運用業やアセットオーナーの資産運用業務の改革を求めるのであれば、まずは多様な当事者から、現在の運用業務の実態ですとか現状について、丁寧に話を聴取するというところから始めるべきではないかと考えます。また、運用会社において運用の高度化をする、例えばアクティブ運用の比重を高めるですとか、運用対象を多様化させるなどのためには、最終受益者である家計が投資に対する一定のリスクを許容できるということが前提になると思いますので、年金の場合であれば、年金加入者、受給者が正確な知識を持ってリスクについて正しく理解できるということが前提になりますので、金融リテラシー向上に向けた金融経済教育の拡充というのが必要だと考えます。

 それから、運用対象の多様化につきましてですが、経団連は2022年3月に公表いたしましたスタートアップ躍進ビジョンにおいて、スタートアップ投資については、特に公的な性格を持ち、世界最大の機関投資家、ユニバーサルオーナーでもあるGPIFによる投資拡大を求めております。海外でもスタートアップへの投資が盛んなのは、アメリカでもカルパース、カルスターズなどの公的な年金基金であります。わが国でもGPIF、共済組合などの公的な性格を持った年金基金を中心に、スタートアップ投資などの運用資産の多様化を進めてはどうかと考えます。

 また、資料の第3の関係でございますが、同じくスタートアップ躍進ビジョンにおきましては、スタートアップに対する資金調達の手段の充実を求めております。投資型クラウドファンディングの活性化は、その提言でも要望している事項でございますので、今回検討対象にしていただいたことは歓迎しております。また、上場ベンチャーファンドを通じたスタートアップ投資の促進も歓迎いたします。経団連は、今年度の税制改正要望において、上場等の一定の要件を満たすベンチャーファンドの投資についても、優遇措置の対象に追加するなど所要の措置を講じるべきとしておりまして、税制を含めた一体的な改革によって、使い勝手のよい仕組みにしていただきたいと考えます。

 また、非上場株式について、少額募集における開示内容の簡素化はありがたいですが、それに加えまして、非上場株式の流通市場の活性化のために、セカンダリー市場の整備も着実に進めていただきたいと考えます。

 そして最後でございますが、これは今回の御議論いただきたい事項には入っていないんですけれども、先ほど投資信託協会からも御指摘があったとおり、資産運用の高度化に当たりましては、スチュワードシップ活動の実質化というのが何よりも重要だと考えております。スチュワードシップ・コードに基づいて、機関投資家が企業の中長期的な価値向上や、持続的な成長に向けたエンゲージメントを行うということが重要であります。また、この関連で、インベストメントチェーンの重要な一角を占めます議決権行使助言会社については、データの正確性や対話の質、それから、そもそも対話を行ってもらえず評価に偏りがあるということへの懸念が大きいということから、スチュワードシップ・コードに基づく体制整備を進めるとともに、必要があれば何らかの規制なども御検討いただければと思います。

 以上です。

【加藤座長】
 長谷川委員、ありがとうございました。

 それでは、白須委員、よろしくお願いします。

【白須委員】
 青学大の白須と申します。

 私は、研究者ですので、大きいところから俯瞰したいと思います。東京マーケットの強みは、高い信用力と豊富な資金量、安定的なデッドのシステム・バンキングシステムです。それから、外貨調達力の強さ、そして何といっても社会的な安定さ、が魅力だと思います。ただし、これらの魅力・強みというは、挑戦的であるというよりはコンサバ的な要因です。東京マーケット、かつては、ニューヨーク、ロンドンに次ぐ市場であって、第3位ということでしたが、今ではアジアの一市場に過ぎない、そういった状況にあります。

 それはどうしてかと考えると、1つはプレーヤーの新陳代謝が行われているのか、この辺が疑問にあると思います。今回の事務局の資料にあるように、新規に投資家を呼び込みたい、新規に呼び込みたい投資家というのはどのような投資家なのかということを、まず考える必要があります。よりアグレッシブ、既存の枠組みから独立しているような外資のイメージだと思いますが、彼らがわざわざ東京マーケットに入ってくる魅力というのは何かを考えてみます。

 2つ考えられます。グローバルの視点とドメスティックな視点。グローバルの視点としては、アジアであればシンガポールがある中で、新たなグローバル取引が東京マーケットに入ってくればできるようなこと、オリジナル性、ほかの市場との差別化、こういったものがないと、わざわざ東京に入ってくる理由というのがないのではないかなと思います。例えば、資産クラスは、トラディショナルなものが多い中で、今回の御提案にもあるように、オルタナティブとかPEとかREITがあるでしょう。その中でも新たなエクイティーの市場、東京ならではのオリジナリティー、魅力、こういったものをつくっていかないと、今回の勧誘で一旦は入ってくるかもしれませんが、シンガポールの方が使い勝手よい、香港の方がいいということで、東京に根づいてくれない可能性がある。

 そこで、例えばIPOであれば、失敗を許すIPOというか、あえて失敗して2回目の人のIPOの優遇、こういったようなクラスをつくってみてもいいかと思います。また、未上場投信。それから、プライベートエクイティーですが、これはアメリカでは非常に盛んで、通常の株式マーケット程の規模があります。日本では、例えば、デッドでやっていたものをキャピタルの形にしていくこと、具体的には事業継承のようなものもあると思います。これでしたら、東京マーケットだけではなくて、全国の少なくとも地方裁判所があるような地域であれば見込めますので、こういった魅力のあるエクイティー型の資産クラスを豊かにしていくことが必要ではないかと思います。豊かな魅力づくり、様々なリスク資産のラインナップを増やすことによって、様々なリスクを持っている様々な投資家、オリジナリティーのある資産クラスの多様化が重要になってくると思います。

 市場のプレーヤーのみの対応では難しいです。シンガポールを見ても分かるように、政府が相当主導してますので、政府の大胆な規制緩和等の主導が必要になってくるでしょう。場合によっては、例えば銀証規制の見直しもあるかもしれません。

 入ってきた投資家の究極のお客さんは誰か。大きく分けて、大口の取引であればアセットオーナーと言われている人、公的年金や企業年金、保険会社。それから、小口であれば個人投資家です。NISAとかiDeCo、こういったところを推進していくのが一義的には大事だと思うんですけれども、個人投資家は、私の研究では、単にリテラシー、複利の計算ができればいいよということではなくて、システム、金融制度、例えば投資信託のシステムはどうなっているのか等を知ること、経験を積むことによって学習していくことが必要です。私たちは応用的リテラシーと呼んでいましたが、算数ができるだけではなく、経験を積んだ上での応用的リテラシーが大事です。それから、投資を迷っている個人投資家の対応も大事です。判断に迷ってフリーズしている個人投資家の背中を押す機会づくりも必要と思うのです。具体的には、例えば100円投信です。ためていたポイントで100円投信が試しにできてしまい、何か面白いからやってみようと背中を押している。若い方のNISAの加入というのはそのようなものがあるようです。ちょっとした背中を押すシステムづくりというのを拡大していく必要があると思っています。

 大口のアセットオーナーについてですが、アセットオーナーは、フィナンシャルヒエラルキーのトップにあって、キャピタルの最終提供者です。しかし、日本の場合、1つのアセットオーナー、具体的にはGPIFですが、それ以外は、力のあるアセットオーナーがパワーを発揮しているのかどうかというと、若干疑問ではないかと思います。大型の年金基金は、アセットマネジャーに対して、本当にアセットオーナーとして明確なコミットメントを示しているのか?小規模な企業年金は、これはあまたの企業年金ですが、そもそもアセットオーナーとして、アセットマネジャーと対等な会話をなし得ているのか?なし得ていないのではないかという疑問があります。インデックスに負けているような運用結果報告を出してきても、企業年金側はそれを許してしまって、一任契約を継続してしまうではないか。リテラシーのみではなくて運用に対しての執行能力、こういったものもあまたの企業年金には求められているのではないかと思います。

 つまり、アセットオーナーに関しては、GPIFが確かに突出しています。GPIFはアセットオーナーとしてESGを確かに成功してきたという実績もあります。ただし、それ以外のアセットオーナーがどうなのか、どのような問題を抱えているのか、もしかしたらアセットオーナーが云々という議論をする以前の問題があるかもしれない、と考えている所存です。

 以上です。

【加藤座長】
 白須委員、ありがとうございました。

 それでは、上田委員、よろしくお願いします。

【上田委員】
 上田です。御指名ありがとうございました。私は意見書を出させていただきましたので、これに沿ってお話をできればと思っております。

 主に御議論いただきたい事項の全般と資産運用業にフォーカスをしております。私が資産運用タスクフォースについて思っている論点は2つございまして、1つは大きな目的として、インベストメントチェーンを通じた価値創造というのが目的にあるのではないか。それは国民全体で共有できるものではないかという視点でございます。

 2つ目が、では、そのための運用力強化といったところについての2つの視点、1つは、新しい力をどう活用するか。もう1つは、今ある力をどう強化していくか、この2つがあるかなと思っております。

 まず、第1点目のインベストメントチェーンを通じた価値創造、これは金融庁がずっと長らく取り組まれてきたかと思います。資料2-1の4ページ、あるいは27ページのスチュワードシップ・コードもありますが、こういったインベストメントチェーンを通じて、各プレーヤーを活性化して、直接的には企業の価値を上げ、それに投資をしている投資家の価値を上げていく。結果として、投資者、最終受益者、これは年金、保険、投信等を通じると、国民一人一人の利益につながるといったところが大きな目的であろうかと思います。

 他方、資産運用というもの、特にコーポレートガバナンス改革を経て、その中にはコーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードと2つコードがありましたけれども、運用会社の対話力というものは相当高まっていると感じます。企業側も対話を受け入れる土壌ができていて、この関係も相当よくなっていて、よい関係で対話をしているという場面も増えているのではないかと思います。

 その結果、企業の価値が上がると、上場会社の価値というのはそこだけにとどまらず、取引先、あるいは従業員の価値ということにもなります。インベストメントチェーンの効果として、個人の所得であったり、あるいは、取引先の中小企業においても所得が上がる、あるいは売上が上がるということにつながります。そのため、この議論は大変裾野が広い議論で、重要だなと思っているところでございます。

 そのためにはより運用力を強化していく必要があるという切り口の議論についてです。1つ目の新しい力の活用、これはまさに中神さんが御報告されたところで、10年前にちょうどこういった勉強会をやっていて、今なおこれがフレッシュな議論であるということは、対話とかが進んでいる一方で、この問題が残ってしまったのかなという感じも思っております。特に中神さんのように自分でスタートアップを立ち上げられたということも、すごくすばらしいと思います。今後出てくるのは、今、日本ではファンドマネジャーはほとんどサラリーマンであられますので、退職した後に独立されるという方も多いと思うんです。そうなると、そういう方が退職して、ただやめてしまう、自己資金ではなくて、そういう方がまた新しい運用会社を立ち上げるとなると、スキルとか経験が引き継がれることにもなるので、そういった意味でも新興の運用会社の設立をサポートするというのは大変重要かと思います。

 EMPについては、ある意味これは政策的に、例えば公的基金といったところはできるだけ取り組んでいただきたいなと思います。また、ミドルバックのところ、これはぜひ機会がありましたら、中神さん、あるいは別の方、事務局からでもいいので教えていただきたいと思います。ミドルバックの信頼性を確保しつつ、一方で実効的に、先ほどコストとおっしゃいましたけれども、どのようにバランスしているのか。そのために、今現に新興のファンドがどういうふうな取組をされておられるのか。例えば、助言だけ日本において海外で運用しているというものもあるかと思います。なぜそうなっているのか、できないのかというところも、もし実態があれば、またお教えいただけると幸いです。

 続いて、今ある力、現在の力を強化するという点についてです。これは今既に運用機関として活躍されている機関について、より力を強めましょうということです。御報告にもありましたけれども、今、パッシブファンドが増えているというようなお話がございました。もちろんパッシブファンドってすごくメリットがありまして、サステナビリティとか、こういったものに対して長い時間をかけて、長い目線で対話ができるということで、これ市場全体の価値が長期的に変わらざるを得ないこの世の中で、そこに向かう原動力になっているのかと思います。

 ただ、対話、スチュワードシップ活動、議決権行使でもそうですが、実は1つ課題がありまして、運用力の強化という点から課題があるのが、既に保有している資産について行われるということです。重要なのは、運用力を上げるためには、対話力もそうなんですが、投資判断につながるような訓練を受ける必要があるかと思っています。そうすると投資判断を行うための企業分析とか評価、対話のスキル、これは将来的にはパッシブファンドになった場合の対話力にもつながりますので、やはりアクティブの運用力をつけていくということが必要かなと思っています。幸い日本はアクティブファンドのパフォーマンスが、諸外国と比べてもよいという御報告がありましたので、そういう意味では力みたいのがあるのかなと思っています。

 アクティブファンドの課題は、私が考えているものは、2つございまして、1つはグローバル目線です。経営者の方は皆さん、グローバルな視点で戦略を立てておられます。であるならば、アクティブファンドマネジャーもグローバルセクターの分析等が必要です。ところが、海外拠点への派遣や外株の運用の機会が少なくなっていると聞いています。外株の運用も海外の運用機関に委託するところが多くなっていますので、こういった外株運用を含めた海外のグローバルな経験が1つ目の課題です。

 もう一つが、中小型株式の運用です。今、東証さん含めてその辺りに取り組まれているかと思いますが、日本の市場全体を活性化するには、既にすばらしい取組みをされている大企業だけではなく、中小型の底上げが必要です。特にパッシブ中心では、なかなか機関投資家と対話がないというような中小型の会社については、もしかしたら機関投資家と対話をすることで価値がもっと伸びるかもしれない。中小型株式への投資を通じて、こういったところを底上げできるのではないかと思います。それが先ほどの話になりますけれども、日本経済全体に波及するのではないか。

 最後に、そういった体制をするためには、やはり運用機関そのものの経営力といいますか、ガバナンスが必要であろうと思います。特に運用の専門家集団としての経営判断が必要だと思います。そういう意味で、今、日本の多くの運用機関が金融機関に所属しているということを考えると、人の配置をどうするか、報酬をどうするかといった点、また、運用機関における人材育成や人的資本をどうするか。こういった点も含めた運用機関のガバナンスなどについての取組みも進んでいますので、そこを後押しできるような施策になればよろしいかなと思っております。

 長くなりました。以上でございます。

【加藤座長】
 上田委員、ありがとうございました。

 それでは、滝澤委員、よろしくお願いします。

【滝澤委員】
 御説明ありがとうございます。学習院大学の滝沢美帆と申します。マクロ経済学を専門としております。本日は時間に限りがあるかと思いますので、資産運用業に関する全般について、短くコメントを申し上げたいというふうに思います。

 日本の資産運用業界につきましては、欧米と大きな違いがあります。それはトラックレコードに基づかない資金の流入が極めて大きいということが指摘されております。資産運用業は高いスキルに基づいて営まれるものだと理解しており、企業ごとに巧みさに相当の差があると考えるのが自然だと思います。としますと、トラックレコードを勘案しない資金の流入があること自体が、ある意味不自然と言えるかと思います。一部の独立系の運用会社については、トラックレコードに基づいた資金のインフロー、アウトフローが見られるという報告もあるほか、足元では状況が変わっているのかもしれませんけれども、そもそもこうしたある種のアノマリーを議論の出発点にするべきという考え方もできるのではないかと思います。

 その上で、やや遠回りに聞こえるかもしれませんが、資産運用業がスキルに依存したものであり、トラックレコードを踏まえた選択が重要であるということをリテール投資家に周知するという試みが大事だと思います。あわせて分かりやすい形で、トラックレコードを開示させるという当たり前の施策も、同時に展開すべきとも思います。

 最後に、それから個人的には、強力な販売チャネルを持っている金融機関の系列に属する資産運用会社と、独立系の運用会社の足元における状況の違いというのを踏まえた議論も必要だと考えます。

 私からは以上です。

【加藤座長】
 滝澤委員、ありがとうございました。

 それでは、山下委員、よろしくお願いします。

【山下委員】
 時間も超過しております中、発言をお許しくださりありがとうございます。京都大学の山下徹哉と申します。

 まず、総論といたしまして、投資運用業の新規参入の促進と、商品内容の合理化・多様化を進めるに際し、法制度上、ボトルネックとなっているものについて改善を図る必要があるということについて強く共感いたします。その関係で、本日のみさき投資の中神様の御提言は、いずれも重要であると思います。その一方で、アセットオーナーの機能強化も重要であると考えております。玉木委員、白須委員の御指摘とも関連しますが、アセットオーナーが運用体制を整備し、しかるべき運用能力を備えることは、受益者の資産を預かるアセットオーナーの義務であると言えます。また、需要と供給との関係とでもいいますか、投資運用業の競争を促進し、魅力的な商品が提供されるようになるためには、それを購入する顧客の側も一定の判断能力を備え、適切な選択を行っていくというということが前提になると思われます。そこで、アセットオーナーの機能強化も急務であると考えております。アセットオーナーの規模や特性に応じた考慮も必要であるかもしれませんが、アセットオーナーの機能強化と投資運用業の機能強化とは車の両輪であるという観点からの検討が必要であろうと思っております。

 各論といたしまして、投資運用対象の多様化について、時間の関係から3点のみ意見を申し上げます。第1に、投資信託協会からのプレゼンにありました、投資資産の多様化のため、種類受益権等の発行を認めるということについてです。これは投資家にとって各自の投資方針に沿った商品を選択できるようになるという点で、魅力的な提案であるように思いました。ただ、複数種類の受益権等を設定いたしますと、異なる種類の受益権を有する投資家間で利害衝突が生ずるかもしれません。そうなのだとすれば、そのような事態が生じた場合の対処方法をあらかじめ考えておく必要があるように思いました。

 第2に、少額募集における開示内容の簡素化についてです。事務局から御説明がありましたとおり、有価証券届出書及び有価証券報告書の記載内容の中には、大規模な上場会社を念頭に記載を求めるようになった事項があろうかと思います。そのため、有吉委員からの発言にもありましたように、少額募集の想定ユーザーの具体的ニーズに応じて、また投資家保護の観点を考慮した上でということになろうかとは思いますが、必要な簡素化を図ることは望ましいと考えております。

 第3に、投資型クラウドファンディングにおける投資家の投資上限についてです。投資家のリスク許容度や投資余力は投資家ごとに様々ですので、投資家各自の投資方針に沿って最善の投資をするという観点から見れば、一律に年間投資上限を課すのは合理的ではないように思います。もちろん要件の具体化や年収、純資産の把握が適正に行われるようにするためにどうすべきかは議論する必要があると思います。あわせて勧誘方法につき、個別の口頭説明を認めるのであれば、それ自体は説明の充実という点で望ましいと思う反面で、不当な勧誘がなされないように、場合によっては一定の検証が可能となるような措置を講ずるなど、十分に検討する必要があると考えております。ですが、こうした検討を踏まえた上で、投資上限の再検討自体は進めていくことが望ましいと考えております。

 私からは以上です。

【加藤座長】
 山下委員、ありがとうございました。

 これで本日御参加いただいた委員の皆様全員の御意見を伺うことができました。ありがとうございます。

 先ほど有田委員より、次回以降ペーパーを提出してよいかとの御質問がありましたので、この点については事務局から回答いたします。よろしくお願いいたします。

【齊藤企画市場局市場課長】
 運用対象の多様化に関し、既存の活用されていない商品についてのご指摘をいただきました。ペーパーをお示しいただくことにつきましては全く問題ございませんので、また事務局のほうにお出していただければと思います。よろしくお願いします。

【加藤座長】
 それでは、時間が大変押しておりますので、オブザーバーの方から、特に本日、発言の御希望がありましたら、簡略、簡潔に御発言をお願いしたいと考えておりますが、いかがでございましょうか。

 それでは、日本証券業協会の森本本部長、よろしくお願いいたします。

【日本証券業協会(森本オブザーバー)】
 御指名いただきましてありがとうございます。日本証券業協会の森本と申します。時間が押している中、恐縮でございますが、簡単に3点申し上げさせていただきます。

 まず、資料2-1の資産運用の観点でございますが、日本での資産運用ビジネスがより魅力的なものとなり、結果として資産運用業のさらなる高度化が進むことを期待しており、証券業界としても引き続き、このような取組みにしっかりと貢献していく所存でございます。

 また、先ほど投資信託協会から御説明があったとおり、NISAだけでなく国民の老後資金の形成のための確定拠出年金制度、こちらの抜本的改革も重要であると考えております。制度面の見直しに加えて、年金運用に適した運用商品の選択のあり方などについても検討を進めていただきたいと考えます。

 それから、2点目はスタートアップの関連でございます。どれも重要な課題であると認識しておりますので、実務面におけるフィージビリティも十分に考慮しつつ、検討いただければと思います。その中で、少額募集における開示内容の簡素化につきましては、検討の方向性に賛同いたします。議論に当たりましては、スタートアップ企業の情報開示の負担も考慮して検討を進めていただければと思います。

 それから、投資型クラウドファンディングの活性化につきましても、お示しいただいた方向性に賛同いたしますが、特定投資家向け銘柄制度、いわゆるJ-Shipsや株主コミュニティ制度、こうした株主クラウドファンディング制度以外の非上場株式に係る制度につきましても、活性化に向けた課題があると認識しておりますので、本件と併せて検討いただければと思います。

 それから、スタートアップの資金調達手段としましては、社債を通じた資金調達も重要と考えております。運用対象の多様化を進めていくという観点も含めまして、相対的に信用リスクの高い企業の起債のためには、投資家側の運用力向上も必要と考えておりますので、併せて御検討いただければと思います。

 最後に、資料3の最終ページにございました、積立投資のクレジットカード決済上限額につきまして、資料3行目では業界慣行とされておりましたが、こちらは法令解釈を踏まえた法令遵守対応の問題であると認識しておりますので、念のため申し上げさせていただきます。その上で、同様の提案は、本協会が昨年7月に行いました資産所得倍増プランへの提言においても取り上げておりまして、方向性としては一致しているかと思います。私どもといたしましては、投資者にとってより利便性の高いものとなりますよう、信用の供与額のベースから積立金額ベースでの上限金額に見直すべきと考えております。

 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【加藤座長】
 ありがとうございました。

 それでは、次に、国際銀行協会様から御発言の希望をいただいておりますので、よろしくお願いいたします。

【国際銀行協会(平山オブザーバー)】
 ありがとうございます。国際銀行協会の平山と申します。発言の機会をいただきましてありがとうございます。

 資料2-1の御議論いただきたい事項の「その他」につきまして、1点だけコメントいたします。現在、継続審査中の金商法等改正法案が施行されますと、受益者を含む顧客の最善の利益を図る義務化がアセットオーナーに課されるという理解でございます。その方向性について異論はございません。しかし、義務を履行するレベル感について、若干の懸念を有しております。すなわち、その義務に応じるべくアセットオーナーが一斉に、かつ各社様が独自の御判断で、運用機関に対して情報提供を求める可能性があるという点でございます。アセットオーナーの御要望にお応えすることは重要である旨、十分理解をしております。

 一方で、そのような御要望が多数発生いたしますと、資産運用業務に専念したいファンドマネジャーの足かせとなってしまうかもしれません。つきましては、関係機関によって、アセットオーナーと運用機関が建設的な議論をできる環境が醸成され、また、運用機関がアセットオーナー宛て提出資料や報告書における記載上のポイントや指針が明示されることも検討いただければありがたいです。

 以上でございます。ありがとうございました。

【加藤座長】
 ありがとうございます。

 次に、信託協会様からも御発言の希望をいただいておりますので、よろしくお願いいたします。

【信託協会(林オブザーバー)】
 御発言の機会をいただきましてありがとうございます。信託協会年金部会部会長を担当しております林と申します。

 当協会からは、アセットオーナーの範囲の1つとしてお示しいただきました、企業年金(DB)の資産の管理運用に携わっている観点から、DBの運用についてコメントをさせていただければと思います。

 DB制度におきましては、企業が従業員に対して退職後の所得を保障する目的で実施しております年金制度でございます。給付の内容は、企業規模の大小のほか、人事給与制度によって様々ではございますが、こちらは労使合意に基づいて設置されている制度でございます。確定給付企業年金法の下で、労使合意に基づき、あらかじめ加入者、受給者様に約束した給付を確実に実行するために、長期かつ計画的に掛金を積み立てて運用していくことを基本的な考えとしている制度でございます。長期にわたる金利低迷やボラティリティーの高い運用環境下において、運用リスクを極力コントロールしまして、運用で補えない部分があれば掛金を積み増すなどして、安定的な運用と健全な年金財政の実現を目指しているところ、今は多くのDBで、年金財政は健全な状況に至っているというふうに私どもは考えております。

 そうした背景を踏まえまして、本タスクフォースにおかれましては、企業年金、DBにおいてアセットオーナーの範囲に含める際には、丁寧な議論をいただきたいというふうに考えております。

 信託協会からの発言は以上です。ありがとうございました。

【加藤座長】
 ありがとうございました。以上で、御発言の希望をいただきましたオブザーバーの方からは、御意見いただくことができました。ありがとうございます。

 本日いただきました御意見などを踏まえまして、事務局において、今後検討すべき課題について整理し、次回以降のタスクフォースでの御議論につなげていきたいと思います。

 また、次回日程につきましては、委員の先生方の御日程などを踏まえて、後日事務局より連絡させていただきたいと思います。

 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。長時間にわたりありがとうございました。

―― 了 ――

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