金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」(第2回)議事録

  • 1.日時:

    令和5年10月18日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所:

 中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室 ※オンライン併用

 

金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」(第2回)

令和5年10月18日


【加藤座長】
 定刻になりましたので、ただいまより資産運用に関するタスクフォース第2回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
 
 議事に入ります前に、今回、参考人として、株式会社産業革新投資機構の取締役CIOの久村俊幸様、ラクスル株式会社代表取締役社長CEOの永見世央様にオンラインで御参加いただいておりますので、御案内いたします。なお、御都合の関係から、永見様におかれましては、14時頃まで、久村様におかれましては、14時20分頃までの御参加となります。
 
 それでは、議事に移らせていただきます。
 
 本日は、まず、事務局より、資産運用会社の新規参入の促進、成長資金の供給などについて御説明いただいた後、久村様から、産業革新投資機構におけるベンチャーキャピタルに関する取組について御説明いただきます。その後、討議に移りまして、委員の皆様から事務局の説明内容や産業革新投資機構における取組について、幅広く御意見をいただきたいと思います。なお、討議の際には、御都合の関係から、初めに、永見様から御意見を賜りたいと思います。
 
 また、本日は、山下委員が御欠席ですが、意見書が提出されていますので、資料3として、お手元に配付しております。御参照いただければと思います。
 
 それでは、まずは事務局より御説明をお願いします。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 お手元の資料の資料2-1を御覧いただけますでしょうか。
 
 1ページ目の目次でございますけれども、大きく2つのパートについて御説明させていただきたいと思っております。1つが資産運用会社の新規参入の促進等、もう一つが成長資金の供給等でございます。また、最後にその他の論点もございます。
 
 3ページ目を御覧いただけますでしょうか。まず、新規参入促進の趣旨等でございます。新規参入の促進につきましては、多様な運用商品が開発、提供され得るといったことや、資産運用会社間の競争促進により運用業界全体の運用力の向上につながり得るといったことが期待されるのではないかということでございます。
 
 これまでも参入要件の緩和等に取り組んできたところでございます。具体的には、プロ向けとして、プロ向けファンドやプロ向け投資運用業等の創設といった対象投資家を限定する形で緩和を行ってきたところでございます。これにつきまして、一般投資家にも裨益する形で、運用力強化に向けた環境を整備することが重要ではないかということでございます。
 
 少し飛びまして、7ページ目を御覧いただければと思います。新規参入の促進に当たっての大きな課題として、まず、1点目が上側のほうでございますが、新規に運用業を立ち上げる際に登録要件を満たす体制整備等の負担が大きいといった御指摘。また、下側でございますが、トラックレコードがない新興運用会社にとって、運用資金、シードマネーの獲得が難しいといった課題が指摘されているところでございます。これらへの対応が必要ではないかということでございます。
 
 9ページ目を御覧いただけますでしょうか。事務局で行ったヒアリングに基づき整理した、資産運用会社の体制整備等に関する課題についての指摘でございます。運用へ専念したいニーズ、体制整備等の負担を指摘する声、また、ミドル・バックオフィス業務の外部委託についての指摘などがございます。
 
 10ページ目でございます。体制整備等の負担についての課題への対応でございます。適切な品質が確保された業者へのミドル・バックオフィス業務の外部委託を可能とし、投資運用業の参入要件を緩和することが考えられるのではないかということでございます。具体的な対応といたしましては、黒丸のところでございますが、品質が確保された外部委託先へミドル・バックオフィス業務、コンプライアンスや計理業務でございますが、これを委託し、原則として、自らが金銭等の預託を受けない場合には、投資運用業の参入要件、資本金や体制整備等の緩和をしてはどうか。また、品質確保の観点から、その委託先につきましては、参入規制や行為規制、当局による監督の対象としてはどうかということでございます。
 
 その下の注書きでございますが、業務を外部委託した場合であっても、委託先の管理等を行うことは必要ですが、専任の担当者等を確保することが不要になる点で、負担が軽減されていくのではないかと考えております。
 
 次の11ページ目は、欧州のUCITSの例でございます。UCITSにおきましては、管理会社であるファンドマネジメントカンパニーが中心となって、運用機能については運用会社へ、また、アドミニストレーション機能については、アドミニストレーターへといった形で外部委託が進んでいるものと理解しております。
 
 また、次の12ページ目はアメリカの例で、こちらも外部委託が進んでいる状況にあると理解しております。
 
 続きまして、15ページ目は、投資信託などの運用の指図に係る権限の全部委託についてでございます。先ほど申し上げましたように、欧州のUCITSでは、運営会社がファンドマネジメントカンパニーとして運営機能に特化し、投資運用や計理等の事務機能は全て外部に委託することが一般的であると理解しております。
 
 我が国におきましては、平成10年の法改正によりまして、運用指図権限の外部委託が可能である旨は明確化されたものの、その全てを外部委託することはできないということにされております。そのため、ファンド運営機能に特化できないとの指摘があるものと承知しております。現行規制の趣旨でございますけれども、運用指図を全く行わない業者は運用業者として適当ではないといった考え方によるものと承知しております。
 
 論点で記載しておりますが、運用指図権限の全部を委託したとしても、運用業者は投資家に対する義務、例えば忠実義務や善管注意義務、あるいは、任務懈怠による損害賠償責任など、こうした各種の責任を引き続き負っていると考えられます。また、委託先の運用状況については、必要なモニタリングを行うこととなると考えられるため、ファンド運営機能に特化するということは許容されるのではないかということでございます。我が国におきましても、ファンド運営機能に特化して、運用のために器を提供する業者が増加していけば、新規の特色あるアセットマネージャーの増加につながるのではないかと考えられ、運用指図権限の全部委託を禁止する規定を見直してはどうかということでございます。
 
 なお、注書きでございますけれども、運用権限の全部委託を禁止している規定は投信法だけではなく、投資一任なども含め、投資運用業者全般について金商法に規定があるため、これらも見直してはどうかということでございます。
 
 続きまして、17ページ目でございます。新規の運用業者の立ち上げに当たっての大きな課題として、新規の運用会社としてのトラックレコードがないために、運用資金、シードマネーを確保するハードルが高いことが指摘されていることへの対応についてでございます。下の四角囲みでございますが、東京都や諸外国におけるEMPの例も参考にしながら、機関投資家から新規の資産運用会社へのシードマネーの供給を円滑にして、運用業界全体の運用力の向上を図るためのプログラムをつくるべきではないかといった検討の方向性を示させていただいております。
 
 18ページ目は参考でございますけれども、実証研究の中には、新興運用業者は運用初期ほど投資パフォーマンスが高いといった結果も指摘されているところでございます。
 
 少し飛びまして、23ページ目でございます。投資信託のマテリアリティポリシーの明確化についてでございます。投資信託のマテリアリティポリシーとは、投資信託の基準価額の計算過誤に関しまして、過誤が一定の水準を超える重大なマテリアルな場合には、基準価額の訂正を行うこととするものでございます。これによりまして、軽微な計算過誤であっても、遡及的に基準価額の訂正等を行うことによるコストが投資家全体に生じることを回避し、また、過誤を訂正する適正な水準を確保するといったことにつながるものと考えられております。
 
 これまで、投資信託協会における検討会の報告書が示されており、そうした考え方も踏まえながら、各社の社内規程においてマテリアリティポリシーが定められているところでございます。現状では、おおむね0.5%の水準でございますが、各社によってばらつきがあり、また、このポリシーについて、投資家への周知が行われていない状況にあると承知しております。
 
 このため、各社においてマテリアリティポリシーを定める場合には、適正な水準とする必要があること、また、当該ポリシーを投資家へ周知することが重要であることについて、監督指針等で明記することが適当ではないかということでございます。
 
 続きまして、25ページでございます。投資信託の主たる投資対象資産に排出権を追加することについてでございます。現行規制でございますが、投信法上、投資信託は、主として特定資産に対する投資として運用するとされており、この特定資産につきましては、投資を容易にすることが必要であるものとして政令で定めることとなっております。
 
 排出権に関する動きにつきましては、欧米では、排出権を投資対象とする投資信託の組成が進んでいる状況でございまして、我が国におきましても、東証におきまして、カーボン・クレジット市場が先日、開設されたところでございます。
 
 論点でございますけれども、投資信託を通じて排出権に投資を行うということは、地球温暖化対策の促進にもつながる面があり、政策的意義があるのではないかと考えられる一方、我が国におきましては、東証などでカーボン・クレジット市場が開設されたところであり、価格形成や取引量等の状況を精査した上で、将来的に是非を検討することが適当ではないかと指摘させていただいております。
 
 続きまして、27ページ目でございます。こちらは投資対象の多様化の観点でございますけれども、オルタナティブ投資を行う外国籍投資信託の国内籍投資信託への組入れについてでございます。国内籍の公募投資信託に外国籍の投資信託を組み入れようとする場合には、投信協の自主規制で規制が設けられているところでございます。外国籍投資信託が取引所に上場されている場合を除きまして、借入れ制限などに関する規制が適用されており、借入れ制限としては、純資産総額の10%を超える借入れができないこととなっています。また、外国籍の不動産投資信託を組み入れる場合には、外国において上場されていて常時売却可能であることといった規制も適用されているところでございます。
 
 課題としまして、海外において、非上場ではあるものの、公募で販売されているオルタナティブ投資等を行う投資信託について、国内籍の投資信託に組み入れられない場合があるといった御指摘がございます。現在、投信協において、オルタナティブ投資等を行う非上場の外国籍投資信託の組入れが可能となるように、枠組みの検討が開始されているところと承知しております。投資対象の多様化の観点から、投資家保護に留意しつつ、こうした取組が促進されることも重要ではないかと指摘させていただいております。
 
 続きまして、大きな2本目の柱としまして、成長資金の供給等でございます。29ページ目でございます。スタートアップへの資金供給の状況について、国内スタートアップの資金調達額は、左側の棒グラフでございますが、年々増加している状況にあります。また、右側の円グラフでございますが、スタートアップに投資を行う主体のうち、ベンチャーキャピタルによる投資額は全体の3割程度を占めており、スタートアップへの資金供給において、重要な役割を果たしているものと承知しております。
 
 次の30ページ目でございます。VCファンドの規模等について、日米の比較をしたものでございます。米国と比較しますと、日本のVCファンドは、ファンド組成金額、ファンドの平均サイズとも低水準にとどまっている状況になっているところでございます。
 
 続きまして、31ページ目でございます。VCファンドに対する投資の状況でございます。VCファンドへの資金供給者を日米で比較しますと、左側が日本でございますが、日本では事業法人や預金取扱金融機関が約半数を占めている一方で、米国におきましては、年金基金や財団、寄附基金、保険会社などで6割程度を占めている状況になっており、違いが認められるところでございます。
 
 続きまして、32ページからの公正価値評価につきましては、企業開示課長の野崎課長からお願いいたします。
 
【野崎企画市場局企業開示課長】
 続きまして、私から非上場株式等の公正価値評価について御説明させていただきます。
 
 32ページ目の資料では、この論点に関する経緯とかこれまでの進捗について記載してございます。公正価値評価を推進するための環境整備を進めるという方針の下で、現時点までに、一番下でございますけれども、日本公認会計士協会において、監査上の留意点の整備が行われるとともに、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)において、VCファンドの出資持分に係る会計上の取扱いの見直しについて、提案が行われているところでございます。
 
 おめくりいただきまして、33ページでございます。JVCA等が行った調査によりますと、2021年から22年にかけて、国内VCファンドについて本数、金額ともに、公正価値の導入が拡大しているという状況でございます。我々がヒアリングを行ったところでございますけれども、公正価値評価には、海外投資家からの資金を得るなどしてファンドの規模を拡大するとか、有価証券の評価の透明性を向上させるといったメリットを指摘する声があった一方で、主にファンドサイズや一部GPにおける内部管理体制の不十分さを起因とした費用対効果の観点から、公正価値導入が困難なファンドも存在するといったお話を伺ったところでございます。
 
 34ページ目に、課題を幾つか並べてございますけども、まず、①としましては、先ほど申し上げた会計上の取扱いの見直しに関連する事項でございますけども、仮に公正価値評価を導入しても、日本の会計基準との関係で二重管理が要求されてしまっているというような課題があるところでございます。
 
 ②としまして、公正価値評価に対応するためのコスト負担のためには、その導入には、やはり一定以上のファンド規模が必要というような御指摘もあるところでございます。
 
 ③ですけれども、先ほど監査上の留意点について申し上げましたが、これを監査法人の実務にしっかりと浸透させていく必要があるというような御指摘もございます。
 
 ④としまして、これは将来的な話ですけれども、将来的に公正価値評価の導入が増えて、監査需要が高まった場合における監査の担い手の確保というような問題もあるかと認識しております。今後とも、冒頭で御説明した環境整備に係る施策を着実に進めていければと考えておりますけれども、これらの課題の対応も含めて、ほかに留意すべき点があれば、御指摘いただければと思います。
 
 以上です。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 続きまして、35ページでございます。引き続き、ベンチャーキャピタルへの資金供給の点でございます。
 
 35ページ目は昨年の市場制度ワーキング・グループの中間整理での指摘でございます。機関投資家、アセットオーナー等による資金供給の拡大について、課題を御指摘いただいているところと承知しております。
 
 続きまして、36ページ目でございます。ベンチャーキャピタルを取り巻く課題について、事務局によるヒアリング等に基づき、様々なご指摘を整理したものでございます。機関投資家、アセットオーナーの資金がVCを通じてスタートアップに円滑に供給されていくためには、国内のVCの運営につきまして、全般的に様々な課題があるものと承知しております。もちろん個々のVCにおきまして状況が異なっており、例えばトップティアに位置づけられるようなVCでは、先進的な対応が行われていると指摘されている一方、VC業界全体を見渡せば、取り組むべき課題は様々あるといった指摘があるところでございます。
 
 例えば情報提供につきまして、海外ではLPに提供される情報が日本では提供されないといったものやVCの情報の透明性に問題があるとの指摘。あるいは、ガバナンスにつきまして、VCのGPとして利益相反管理を行うことが重要であるといった指摘。また、公正価値につきましては、海外投資家から投資を受けるには公正価値評価の導入が必要、こういった指摘がなされているところでございます。
 
 続きまして、37ページ目でございます。こうした課題への対応といたしまして、長期運用に資するアセットクラスとしてのVCの魅力を高め、VC業界の発展を後押しすることが重要ではないかということ。そのために、VC向けのプリンシプルを示し、広く機関投資家から調達を行うVC全体のガバナンス等の水準を向上させていくことが考えられるのではないかということでございます。
 
 その際には、我が国のベンチャー企業を取り巻く状況やグローバルな実務等を踏まえながら、右下のところでございますが、例えば、情報提供やガバナンス、投資先支援、こういった課題への対応を後押しするプリンシプルとしていくことが考えられるのではないかと考えております。
 
 また、上側の四角の2つ目に戻りますけれども、一方で、広く機関投資家等からのLP出資を予定していないVC、例えばCVCなどがあることも踏まえながら、プリンシプルの範囲や内容等を考えていく必要があるのではないかということでございます。
 
 続きまして、また少し飛びますけれども、42ページを御覧いただければと思います。こちらは、非上場株式のセカンダリー取引について、昨年の市場制度ワーキング・グループ第2次中間整理で、提言されているものでございます。機関投資家等による非上場株式の取引活性化についての御指摘でございます。
 
 続きまして、43ページ目でございます。非上場株式のセカンダリー取引についての課題でございます。非上場株式につきましては、発行会社自身やセカンダリーファンド等による買取りが行われている状況ではありますが、広く潜在的な投資家にアプローチすることが難しく、株主の換金ニーズや投資家の投資ニーズに十分に応えられていないのではないかということが指摘されております。非上場株式の流通市場の発展に向けまして、新規事業者等の参入促進が課題ではないかということでございます。
 
 次の44ページ目でございますけれども、米国等のセカンダリー取引の状況で、グローバルでは非上場株式のセカンダリー取引が増加傾向ということでございます。また、米国におきましては、右下の表でございますけれども、インターネット上でプロ投資家を対象に、非上場株式のセカンダリー取引の場を提供するプラットフォームが存在しているところでございます。
 
 続きまして、46ページ目でございます。こちらはプライマリーの話になりますけれども、海外の運用業者が設定、運用する投資信託等を国内拠点の法人を通じて、日本国内の投資家に販売しようとしますと、第一種金融商品取引業の登録が必要でございます。第一種金融商品取引業には高い財産要件等が課されるということで、販売することを断念するケースもあることが指摘されているところでございます。国内の投資家による投資対象の多様化の観点から、こうした課題への対応も必要ではないかということでございます。
 
 47ページ目でございます。以上のようなプライマリー・セカンダリーの課題への対応でございます。非上場有価証券取引の仲介業務への新規参入を促して、セカンダリー市場の活性化や、多様な投信等が国内で販売されるようにする観点から、以下の規制緩和を行うことが考えられるのではないかということでございます。
 
 まず、①として、プロを対象とした非上場有価証券の仲介を行う金商業者の登録の特例でございます。非上場有価証券のプライマリー・セカンダリー取引の仲介業務に特化して、原則として有価証券や金銭の預託を受けない場合には、第一種金融商品取引業に求められる資本金規制や自己資本規制比率などの登録要件等を緩和することが考えられるのではないかということでございます。
 
 ただし、一般投資家も参加する流動性の高い有価証券につきましては、やはり十分に投資家保護を図る必要があるということで、対象をプロに限定し、また、非上場有価証券の仲介業務に限定するべきではないかということでございます。
 
 米印のところにありますように、売手サイドについて、例えば非上場有価証券の発行会社の創業者等は、売却を可能とする必要があるものと考えております。
 
 また、②として、非上場有価証券のみを扱うPTS業務の参入要件の緩和についてでございます。現行法では、上場有価証券等を頻繁に売買することを想定して、資本金、純資産要件として3億円以上が必要であるほか、システム要件として、システムの二重化、第三者評価書の添付が必須であるなど、厳しい参入要件が定められているところでございます。非上場有価証券のみを扱うPTSであって、流動性や取引規模などが限定的なものにつきましては、参入要件を緩和してはどうかということでございます。
 
 また、こうしたPTSは、取引所類似の取引が行われる場ではないことを踏まえまして、取引の管理等に関する必要な規制を適用する前提で、認可制を緩和いたしまして、第一種金融商品取引業の登録制の下で、電子的なマッチングを行うことをできることとしてはどうかということでございます。
 
 48ページ目は、現行の第一種金融商品取引業の登録要件を緩和している例としまして、株式投資型クラウドファンディングを行う業者との比較表でございます。
 
 続きまして、少し飛びますが、53ページ目でございます。株式報酬につきまして、また企業開示課長から、よろしくお願いいたします。
 
【野崎企画市場局企業開示課長】
 では、株式報酬に係る開示規制の整備について、御説明します。
 
 まず、53ページでございますけれども、事後交付型の株式報酬であるRSU(譲渡制限付株式ユニット)について、金商法上の取扱いを明確化するということが実行計画において提言されているところでございます。
 
 54ページに、株式報酬の概要を整理したものがございます。先ほどの実行計画で記載がありましたのは、左のRSUでございますけども、これに類するものとして、PSUとか株式交付信託などがございます。これらは、いずれも株式報酬規程等に基づいて、取締役や従業員に対して、譲渡が想定されないユニットやポイントを付与しておいて、一定期間の後に、付与されたユニット等に応じて有価証券である株式を交付するというようなスキームになっております。
 
 表の右側の方に記載のあるストック・オプションと、RS(譲渡制限付株式)につきましては、それ自体が有価証券である新株予約権や株式に譲渡制限を付した上で取締役等に交付しておき、一定期間経過後に、その譲渡制限を解除するというスキームになっております。
 
それぞれのスキームの詳細や付与されるものの法的性質というものは異なりますが、いずれも会社がその取締役等に対して譲渡ができない形で報酬を前払いするというような経済的性質は類似していると考えております。
 
 56ページ目にいっていただきまして、開示規制の適用の方向性について検討しております。株式報酬は、取締役等に対して取得勧誘を行って株式等を交付するということになりますので、通常は有価証券の募集又は売出しに該当するということになります。1億円以上の株式報酬を交付する場合には、有価証券届出書又は発行登録書を提出する必要がございます。
 
 他方、ストック・オプションとRSにつきましては、株式報酬に関するものであり、交付する相手方が自社の情報を把握している、あるいは容易に把握できる取締役等であることから、有価証券届出書の提出に代えて、臨時報告書の提出を認めるという特例が設けられております。
 
 次に、下の図の現行実務の欄を見ていただきますと、RSUなどの事後交付型の株式報酬については、届出される書類の有無やタイミングなど、情報開示の方法に差異が見られるということでございます。他方、先ほど御説明させていただいたように、仕組みとしては共通する部分もあるのかなと考えております。
 
 このため、事後交付型株式報酬に係る開示規制の適用を明確化する観点から、株式報酬の開始時点である「株式報酬規定等を定めて取締役等に通知を行う行為」というところを有価証券の取得勧誘の端緒と捉えまして、当該行為が有価証券の募集又は売出しに該当すると整理できないかと考えております。
 
 加えて、事後交付型株式報酬につきましては、先ほど御説明させていただいたように、報酬の前払いとしての経済的性質が、既に特例制度のあるストック・オプションやRSと類似しているということもございますので、これらと同様に、有価証券届出書の提出に代えて、臨時報告書の提出を認めるという特例を設けることができないかと考えております。
 
 以上のような見直しの方向性について、御議論いただければと思います。以上です。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 続きまして、最後の論点として、58ページ目でございます。外貨建国内債、いわゆるオリガミ債の発行の円滑化のための制度整備でございます。2つ目の四角でございますけれども、本邦発行体が発行する外貨建ての国内債は、外貨によるDVP決済が可能な環境にないため、現在、非DVP決済による発行・取引がなされており、流動性は低く、取引する投資家層が限られている状況にございます。なお、外国口座管理機関、具体的にはユーロクリアでございますけれども、ユーロクリアが運用するプラットフォームを利用すれば、外貨のDVP決済による発行・取引ができるということではございますけれども、ユーロクリアに口座開設できるのは大手金融機関に限られるため、広く国内投資家が参加することは難しい状況にあります。こうした中、国内でも外貨建国内債の取引についてDVP決済を可能とする制度整備を行うことによりまして、社債市場の活性化や資産運用の多様化につながるではないかといった指摘があるところでございます。
 
 59ページ目でございます。左上の現状・課題でございますけれども、振替法上、口座管理機関の誤記録等をカバーする枠組みといたしまして、加入者保護信託と連帯保証義務というものが設けられております。例えば加入者保護信託とは、一番下の注でございますが、口座管理機関が誤記録等による損害を加入者に補償することなく破綻した場合には、加入者へ、1人1,000万円まで補償を行う枠組みでございます。こういった投資者保護の措置が講じられているところでございます。
 
 一方で、外国口座管理機関におきましては、外国の法制に基づく債権債務の整理が行われるため、こうした保護の枠組みの対象外となっております。そして、その下に国内口座管理機関である証券会社や銀行をぶら下げることはできないこととなっております。
 
 外貨建てであるオリガミ債のDVP決済を行おうとすると、外国口座管理機関であるユーロクリアのプラットフォームを使う必要があり、国内投資家が本邦の証券会社や銀行に口座を持つことで振替ができるようにするためには、右上のほうでございますが、外国口座管理機関の下に国内口座管理機関の設置を可能とする必要があるのではないかと考えております。その場合には、外国口座管理機関は、誤記録等をカバーする枠組みの対象外ということですので、その下にぶら下がる国内口座管理機関も対象外としなければならないものと考えられます。
 
 その場合、国内投資家は保護の対象外となるものですから、リスク判断能力の高いプロ投資家に加入者を限定するとともに、国内口座管理機関等にそうした保護の対象外となることについて、適切に説明をすることを求めることが考えられるのではないかといった点でございます。
 
 以上で、事務局からの説明を終わります。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。
 
 それでは、次に、久村様から御説明をお願いいたします。
 
【久村参考人】
 御紹介いただきました、JICの久村でございます。それでは、産業革新投資機構の取組について、御案内させていただければと思います。
 
 JICについて、御存知ない方もいらっしゃるかと思いますが、産業競争力強化法に基づいて作られた組織でございまして、オープンイノベーションを通じた産業競争力の強化と民間投資の拡大という政策目的の実現に寄与すべく発足した投資会社ということになります。
 
 ページ飛んでいただきまして、6ページになります。こちらに、私どもの投資体制としてストラクチャーが出ております。私ども、傘下にVGIとかJICCという運用会社を持っておりますけども、本日の主題としては、資料の左に「民間ファンドへのLP投資」と記載していますが、いわゆるファンドにリミテッドパートナーとして投資をするところについて、御案内できればと思います。
 
 JICは、2019年に現経営陣が着任いたしまして、2020年の9月から投資を開始させていただいています。民間ファンドに投資をするに当たりましては、6ページの「民間ファンドへのLP投資」の箱の中に1、2、3とございますが、一般の機関投資家ですと、3の投資評価がメインになるかと思うのですが、私どもは、政策的な意義がなければいけない、また、民間の投資資金の不足分野に資金を入れていくと、こういう形になっておりますので、それらが前提になっている点は、機関投資家の方の投資と若干違うところでございます。
 
 本日は、1の「政策課題の解決への貢献」、2の「民間投資資金の不足分野」のところについては主題ではございませんが、お時間があれば、この資料の後ろの方、28ページから30ページまで「重点投資テーマ」ということで挙げておりますのでご覧ください。これらの投資テーマに沿うファンドについて、投資評価を行っていくということをやらせていただいています。
 
 7ページになります。左の方に、「民間のVC、PEファンドへの投資」と記載しております。この約3年の間に、ファンド数で28件、約1,500億をコミットしておりますが、VCに限りますと、国内で19件、680億円、海外は7件、442億円を投資しております。海外といっても、日本に対する裨益を考えられる、期待できる投資先ということで、限定的にやっておりまして、そこについては、左下にコメントさせていただいております。
 
 9ページになります。JICの国内VCに対する投資、ここに関しての私共の役割について、御案内できればと思います。また、この3年間の経験を通じて、見えてきた課題感がございますので、その課題についても、実務者として共有させていただくということが本日の私のご説明の趣旨と思っておりますので、御案内できればと思います。
 
 JICの役割でございますけども、「スタートアップ育成5か年計画」に向けて、大きく2つあると思っています。
 
 1つは、魅力的なスタートアップの創出に向けて「つなぐ役割」、資金供給という観点でございますが、これが1つ目の役割。2つ目が、本日の主題になるかもしれませんが、VCについて、機関投資家の資金受託に向けて「VC運用体制の改善を促す役割」、この2つを意識して取り組んでおります。
 
 先ほどの事務局からのお話にもありましたけども、この②のVCについては、過去10年で見ると、LP投資家は、オープンイノベーションを目的とした事業会社や事業目的の金融機関がメインでした。これはこれで、エコシステムが発展してきたということで良いのですけれども、ここから先の発展を考えると、機関投資家を入れていかなければ、ファンドの規模が大きくならないのですが、VCに対して求めるものが、事業会社や金融機関と機関投資家とでは異なると考えております。
 
 そういった中で、国内外の機関投資家の資金を受託している国内VCというのは足元では非常に限定的でございまして、3年前ですと、多分片手いらっしゃらないぐらい。今、恐らく2桁にようやく乗ってきたぐらいの数の運用者の方が、国内外の機関投資家の資金を受託していると、そのような状況だと思っております。
 
 3ポツ目は先ほどの事務局のプレゼンにもありましたけども、独立系のVC専業の運用会社、投資によりインセンティブを得られるチームが、ファンドの運用に専念すると、こういったことを機関投資家は求められるのですけども、これができている方は実はそんなにはいらっしゃらないというのが実態かと思います。
 
 そういう中で、JICはコアなLPとして、最大のLPになるケースが多いのですが、出資前にVCさんに運用体制を改善いただくことを交渉し、改善が見られたら投資をしていくということをやっています。通常の民間の機関投資家さんは、体制が整っていなければ見送るだけということでございますけれども、私どもは政策的な意義という観点から、体制変更を促していく、促した上で進めていくということをやっております。
 
 11ページになります。「つなぐ役割」のところですが、今回主題ではございませんので、細かくは御案内いたしませんが、ヨーロッパを見てみると、10年前は日本と同じように、スタートアップの資金調達額が1兆円ぐらいだったものが、足元、21年、22年は10兆円を超えてきたというような形でございます。
 
 13ページになります。そういった中で、お金が先なのか、それとも魅力的なスタートアップが先なのかと、そういう命題があるのですけども、私どもの結論としては、これは2010年以降、ヨーロッパにおけるユニコーンの件数、件数が出てきた年を、主立ったところで見てみますと、まず、先にユニコーンが出てきたと。魅力的なスタートアップ、ユニコーンが出てくると、海外の資金も含めて、まずは直接投資の資金がどんどん増えていく。その後、ファンドのリターンがよくなってきて、ファンドにも民間の資金が入ってくると。そんな形なのかなというのが私どもの結論でございます。
 
14ページになります。そういう意味ですと、資金供給と言いながら、じゃぶじゃぶとお金を入れるというよりは、役割としては、つないでいくということで、リスクマネーの谷、狭間、ここをつないでいくということを意識してやっております。
 
 これは民間のファンドのみでは最後、イグジットに行くまでの資金がうまくスムーズに流れていないということもありますので、そういったところを、分野を見極めてLP出資をしていくということをやっております。
 
 また、個別ファンド、これは規模が小さいということを言われていますけども、私どもから見てみますと、規模が小さくて何が問題かというと、フォローオン投資ができない点が問題となります。フォローオン投資ができないと、その後のラウンドに入ってくる投資家からすると、前の投資家が追加投資をしないということは、あまりいい案件ではないという話になってしまいますので、ここを解決していかなければいけないということで、私どもが期待しているファンドについては、サイズを大きくする、適正なサイズに大きくするというようなことをやっております。また、海外のマーケットへつなぐ役割ということもあると思っています。
 
 16ページになります。主題になる「VC運用体制の改善を促す役割」というところでございますが、主題の前にですけども、この3年ぐらいやってまいりまして、JICのコミットメント、国内VCの募集額に占める私どものコミット額というのは大体、今平均で15%ぐらいになっていると思っています。
 
17ページになります。ヨーロッパを例に取ると、ヨーロッパの公的投資資金というのが、VCファンドへのコミットメントの比率として大体、平均すると20%弱ぐらいという形になっておりますので、今、官民ファンドはJICだけではございませんけども、官民ファンドとして15%から20%、時によっては30%ぐらいやっていくというのは、特に大き過ぎることはない、ネガティブなインパクトはないのではないかということで考えています。
 
18ページになります。 資金フローで見てみますと、先ほど来、出ているように、スタートアップについては、国内の事業会社、金融機関が直接投資、並びに国内のVCに対する主要な資金ソースになってきているというのが現状だと思います。
 
 一方で、国内VCを見てみると、国内の機関投資家、年金をはじめとした機関投資家の資金というのはあまり入ってきていない。ましてや海外の機関投資家の資金も入っていないというのが現状と思っています。資料の真ん中に②と書いていますが、機関投資家さんは、再現性が高く、良好なリターンを提供できるVCに投資をするというのが投資目的になっていますので、こうしたVCを増やしていかなければいけないのですけれども、ここは残念ながら、すぐにはできない。時間を要するというのが実態かと思っています。ここを、時間をかけながら育成していくということが必要だと考えてございます。
 
 19ページになります。国内外の機関投資家の資金受託に向けて、ということで、これも先ほど来の事務局のペーパーに書いていらっしゃるのと、ほぼ同じことが書いてございますが、付け加えていきますと、①のリターンのところ、こちらだけコメントさせていただきます。機関投資家さんから見ますと、投資先というのは国内のVCだけではなくて、グローバルのVC、並びに、国内でのバイアウト、こういったものが投資対象になる中で、国内のVCは、そういったところと比較されるわけなのですが、グローバルのVCのトップ25%にいらっしゃるファンドのリターンというのは大体ネットで3倍です。過去のファンドで国内のVCさんでネット3倍のリターンを出していらっしゃるのは、多分片手ぐらいの数しかいらっしゃいません。理由は幾つかあるのですが、1つは、まだ歴史が浅いので、今いるマネージャーさんもほとんどが2015年以降に募集開始された、運営開始されたようなところですので、まだファンドの号数が4本目まで至っていないという方も多いですので、ここはある程度時間がたてば、3倍を超えるリターンを出すマネージャーというのは増えてくるのかなとは思いますが、そこまで時間はかかるということかと思っています。
 
 JICの選定先とJICの役割のところですけども、JICは、リターンについては、現状、まだ3倍まで行っていなくても、将来期待できる運用者を選定するという、そういう形でやっています。
 
 また、②ですけども、運用体制、利益相反の管理、組合契約書、これについては、私どもはコアなLPとして、最大の投資家として、交渉をやりますので、私どもが入る前に改善していただくということを条件に投資を進めていきますので、私どもが入ったということは、こういったものは、機関投資家から見ても違和感のないレベルに仕上がっていると御理解いただけるのではないかと思います。
 
 報告書等管理体制については、投資後に改善していきますので、運用者に対して継続的にミドル・バックオフィスの業務も含めて、評価、助言をしていくということをやらせていただいています。
 
 運用者の成長支援のところでございますが、20ページにいろいろ書いてあるのですが、少し飛んでいただいて、33ページにより具体的に書かせていただいています。ファンド運用者の成長支援の観点で、投資前に整備しますということと同じなのですけども、右側に受容しがたいリスクの例とございますが、真ん中の投資体制、契約条件等とございますが、ここの受容し難いリスクのところについては、私どもは受け付けません。これを改善いただけるということであれば、投資を検討するということにしています。これも先ほど来、出ていましたけども、CVCさんですとか、必ずしもこれに沿うべきものではないと思っています。そういったところには事業としてやっていただければということでJICからお金は行かないんですけども、将来、機関投資家の資金を受託できるようになっていただくためにはということで、ここに書いてあるような体制の整備、契約条件の変更、こういったことをやっていただいた上で、コミットメントを行うということをやってございます。
 
 現状、国内ではLPとして、ここをやらないと投資を検討しない、という方はほとんどいらっしゃらないと思います。恐らくGPIFさんだけが公正価値評価をしないと駄目ということをおっしゃっていると思いますけども、体制面では、私どもが一番、厳しく申し上げていると、そんな状況かと思っております。
 
 21ページ、私どものディールフローということで、ファンド投資機会のレビューというのを出しているんですけども、メッセージとしては、左の方、当社の検討件数があって、例えば2020年度に受け付けたものは、83件のファンドがございますけども、投資決定したものが、その年度中にコミットしたものが4件、翌年度が4件、2022年度、要は2年間かかったものが3件ございますけども、これは先ほど申し上げた、いろいろな体制の整備、例えば、運用会社の株主の変更等をお願いするケースもありますので、それなりに時間がかかって、整えていただいた上でコミットメントをさせていただいている、そういった結果として、これだけ時間がかかっていると、そんな状況でございます。
 
 私どもからは以上でございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。
 
 久村様におかれましては、御都合もあるかと存じますので、この後は、お時間の許す限りで御参加いただければと思います。本日は御説明いただきまして、誠にありがとうございました。
 
 それでは、事務局説明や久村様のプレゼンテーションに関する御質問、御意見をいただければと思います。なお、全体の会議時間の制約もありますので、御発言のお時間といたしましては、5分を目安にしていただければと思います。
 
 また、冒頭でもお伝えしましたとおり、まずは、永見様より御意見を頂戴したいと思います。その後は、御発言を希望される方は、お知らせください。なお、御発言の順番に関しては、前後する可能性がございますので、あらかじめ御了承いただきますようお願いいたします。
 
 それでは、永見様、御発言をお願いします。
 
【永見参考人】
 ラクスル株式会社のCEOの永見と申します。本日はお呼び立ていただき、また、このような発言の機会をいただき、大変ありがとうございます。
 
 私自身、東京証券取引所様のフォローアップ会議の委員も務めており、弊社の仕組みを変えれば世界はもっとよくなるというビジョンに基づき、仕組みを変えていくという観点でパブリックサービスへの貢献も非常に意識強く持った会社でございまして、このような機会をいただき大変ありがたく思っております。
 
 私に関連する部分で言うと、今回のアジェンダの中においては、成長資金の供給というところになりますので、その部分に特化してコメントさせていただきます。
 
 政府のスタートアップの育成の5か年計画に基づいて、イノベーションを今後さらに創出、拡大していくという観点において、過去10年、資金の供給量という意味においてはかなり増えてきていて、欧米と比べてまだ足りないというのは当然あると思うのですが、変化自体としては非常に目まぐるしく、大きな進展、進捗を見せたなと思っています。
 
 今後さらにスタートアップのエコシステムを進化させていくためには、まさに今回のアジェンダとも関連するのですが、投資家層の拡大、あとは、特に未上場株式の流動性の向上、これらが非常に重要だと思っています。具体で申し上げますと、まず、投資家層の拡大というところにおいては、ベンチャーキャピタルの議論が本日中心でしたが、ベンチャーキャピタルでいうと、今後LPとして機関投資家、また海外投資家が入ってくる、エンダウメントも含めて入ってくるというのが非常に重要になってくると思っていまして、そのときに、より英語でいうところのインスティアライズというか、ベンチャーキャピタル自体も、より体制として整備されていくというのは非常に重要なことだと思っています。私自身ラクスルに入社する以前は、カーライルというグローバルのプライベートエクイティファームに7年ほど在籍しており、やはり国内のベンチャーキャピタルと海外のプライベートエクイティファームを比較して、一つ大きな違いがあるとしたら、バックオフィスの充実とかファンドレイジングチームの充実みたいなところが結構大きな違いがありまして、投資側のほうも当然大事ではありますが、そういったバックオフィスの充実とか、ファンドレイジングチームの充実みたいな話が、今後、ベンチャーキャピタル側にもより一層求められると思っていますし、これらの点におけるナレッジの共有ができると、よりベンチャーキャピタルのファンドサイズも大きくなってくるし、入ってくる投資家層、LP層もより多様になってくるのではないかと思っております。
 
 また、投資家層の拡大という点に戻りますと、今日の日経新聞に出ていた個人投資家の参入ですとか、あと事業会社も出資のみならず、本来はもっとスタートアップを買収していくような流れがあると、アメリカと同じようなエコシステムになってより良いと思っていまして、その観点においては、事業会社が、特に日本の事業会社において、スタートアップを買収しにくい一つの要素が、のれん及びのれんの償却・減損というのが非常に躊躇するテーマになっています。当然会計基準の問題があるというのは百も承知ですが、事業会社がよりスタートアップ、リスク性の高い会社を買収するということに対する環境の整備、こういったものができると、より一層エコシステムが回っていき、結果的に成長資金もより一層、供給されていくような形かなと思っています。
 
 続けて、私が申し上げた未上場株式を中心とした流動性の向上について、こちらもカバーいただいている認識で、東証フォローアップ会議においても申し上げているのですが、数年前から未上場株式のセカンダリーマーケットの必要性というのは、いろいろなところで言われてきているのかなと思っております。
 
 海外ですと、資料にもあった、カルタとかは非常に利用されている認識をしていまして、東証様が始めるのか、それ以外の民間の会社様が参入するのかとかという話はあると思いますが、規制の緩和とともに実際のプレーヤーが近々そういったサービスを開始することが、エコシステム上、非常に重要だなと思っています。金融庁様からの支援や指導というのが緩和とともにあると、より一層よくなるのではないかと思っています。
 
 最後、株式報酬についても一言だけ触れさせていただきます。株式報酬自体は、報酬の制度の充実はかなり進んだなと思っておりまして、開示についての課題感とか今後の改善点はあると思うのですが、一方で、重要だなと私が思っているのは、日本自体が資産運用立国になっていくという観点でいうと、資産運用の対象の一番大きな一つとしては、いわゆる上場株であることから、上場企業の経営者自体がより一層株式報酬を比重として多く受け取るべきだと思っています。投資家や株主とアライメントを果たしていくという観点においても、株式報酬の導入社数自体は増えていますが、とはいっても4,000社の国内の上場企業数に比べると、まだまだ比率としては十分ではないと思っていまして、この辺の株式報酬に対する上場企業の経営者に対する導入働きかけが大事で、現金と株式報酬のバランスはアメリカですとより一層株式のほうに寄っている認識をしていまして、環境整備、もしくは株式報酬導入を促していくような行政からの働きかけというのがあると、一層の好循環につながるのではないかと思っております。
 
 すみません、長くなってしまいましたが、私の発言は以上になります。
 
【加藤座長】
 永見様ありがとうございました。御都合もあるかと存じますので、お時間になりましたら、適宜御退室いただけたらと思います。本日は大変御多忙のところ、御参加いただきまして、ありがとうございました。
 
 それでは、委員より御意見を頂戴したいと思います。有吉委員、お願いいたします。
 
【有吉委員】
 西村あさひの有吉でございます。私からは、事務局説明資料の関係で幾つかコメントをさせていただきたいと思います。
 
 まず、全体像につきまして、基本的には事務局説明資料で示された問題意識に共感するところでございますし、御提案の内容について、基本的に全ての項目に賛成したいと思っております。
 
 その上で、幾つか各論についてコメントを差し上げたいと思いますが、まず、投資運用業者のミドル・バックオフィス業務の委託先に参入規制を適用することを前提に、投資運用業者自体の参入要件は緩和するという制度設計には賛成いたします。
 
 ただ、ミドル・バックオフィス業務の委託先に対する規制や監督が厳格過ぎるということになってしまいますと、こちらの業態に誰も参入しないということにもなりかねないわけでございまして、そうすると、目的が達成できなくなることを危惧するところでございます。したがいまして、委託先のほうの業態の、実際に参入が想定されるような、具体的なビジネスモデルであるとか、既存業態のようなものを意識しつつ、詳細な制度設計を検討していただきたいというのが1点目のコメントでございます。
 
 2点目に投資信託のマテリアリティポリシーの明確化に関する取組の点についても、方向性として賛成するところでございます。特に、事務局説明資料23ページの1点目に御記載のマテリアリティポリシーのそもそもの意義をどうやって達成するかということについて、当局のメッセージがうまく業界に伝わるように、監督指針の見直しなのか、どういった方策になるか分かりませんが、施策を進めていただきたいと思います。
 
 それから、3点目としまして、非上場株式の公正価値評価の関係でございますが、こちら、もう既に現在進行形で進められている施策はぜひとも引き続き進めていただきたいと思っております。この点について、投資家保護の観点から適正な処理が求められることは否定できないわけでございますけれども、ただ、対象がスタートアップ企業であるという性質上、正確な価値評価を行うことには、どうしても限界があるということも否定できないと思います。
 
 過去に市場制度ワーキング・グループ等で同じようなことを申し上げたこともございますが、こういったスタートアップ企業の特性なども踏まえまして、公正価値評価に関するルールが硬直化、あるいは厳格化することによって、定量的な価値評価にはなじまないビジネスが評価されなくなってしまうということにならないようにしていただきたいと思いますし、また、評価に要するコストとか、それから評価することに伴う責任が重過ぎて、公正価値評価による監査になかなか誰も取り組まないという結果にならないように、柔軟な制度整備と、それから制度が整備された後の実務での運用を強く期待したいと思っております。
 
 また、今日の事務局説明資料の中で御提案がありました、ベンチャーキャピタル向けのプリンシプルを策定するという方向性についても賛成するところでございます。ただ、こちらも一つ前の公正価値評価と少し似たところがございますが、ルールが厳格になり過ぎる、あるいは、ルールが一律、画一的なものになり過ぎるということによって、かえってベンチャーキャピタルの担い手がいなくなってしまうといったことにならないように、ぜひバランスのよいルールをつくっていただきたいと思います。
 
 それから、最後に、プロ投資家を対象とした非上場有価証券の仲介の特例や、非上場有価証券のみを取り扱うPTS業務の特例といった事務局説明資料47ページに書かれている提案についても、全面的に賛成するところでございます。特に、後者のPTS業務の特例についてでございますが、この特例の具体的な立案に当たりましては、通常の第一種金融商品取引業から、追加でどういったことが求められるのか、体制整備等について、どの部分を厳格化する必要があって、どの程度の厳格化が必要になるのかということが、もちろん過度に厳格にならないようにすることも大切なわけでございますけど、同時に、何を備えればPTS業務を行うことが認められるのかということの予見可能性が高くなるように、できる限り、明確なルールとなるよう制度設計をお願いしたいと思います。
 
 私からは以上でございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。
 
 それでは、白須委員、永沢委員の順に御発言をいただきます。白須委員、よろしくお願いします。
 
【白須委員】
 白須です。今日はオンラインで失礼いたします。
 
 私は、2点、御指摘します。1つはスタートアップ融資と、前回から話題になっているアセットオーナーの関係についてでございます。
 
 今日の資料にもございましたように、米国でいえば、スタートアップ融資のプライベートエクイティが入っていますけども、プライベートエクイティの市場規模というのは、御案内のとおり、既に一般の株式市場とほぼ同じで、ベンチャーキャピタルファンドの出資者が、公的年金であるということは今日の資料のとおりです。つまり、米国はスタートアップ資金の出し手、スタートアップのいわゆるスターターに当たるのが年金、アセットオーナーであるという状況です。
 
 日本を振り返るとどうかというと、スタートアップ融資のスターターは、日本の場合はデッド型金融のためか、銀行でバンクであり、アセットオーナーではありません。ただ、GPIFは、御承知のとおり、昨年からオルタナティブの一部で、プライベートエクイティの1つとして、ベンチャーキャピタルによるスタートアップ融資というのは始めたばかりでの状況です。GPIF以外のアセットオーナー、公的年金はどうかというと、私がネットで調べたところですと、幾つかの大きな公的年金で、既にオルタナティブの投資自体は始まっているようです。ただし、不動産、インフラ中心で、まだスタートアップまではやっていないところが多いようです。ただし、まだ年数が浅くて、非常にチャレンジングな可能性だというような言い方をしているところもあります。
 
 ですから、年金、まず、アセットオーナーに関しては、チャレンジングなことをやっと始めたという段階なのであり、まず、長期のリターンにつながるということを、経年変化を経ることによって、アセットオーナーである公的年金が経験をして、その後、スタートアップ融資に広げていっていただくというのがいいかと思います。ですから、アセットオーナーである公的年金が、いきなりスタートアップ投資のスターターになるのは現実的ではないと思うんです。
 
 確かにアセットオーナーが先か、スタートアップ投資が先かというのは、卵が先か鶏が先かという議論は確かにありますが、ベンチャーキャピタル融資の長期リターンが得られるという環境整備が必要だと思います。最終的には年金の最終受益者である国民の一人一人の了解が必要であり、そのような実務的な障害を取り除いていって、多くの人のコンセンサスを得ていくというのが日本の場合は必要なのではないかと思います。
 
 ですから、今回のいろいろ細かな提案が出ておりますけど、そういったことには、私は賛成します。
 
 2点目ですけども、フェアバリューベースの監査の担い手の問題でございます。企業のアドバイザー的立場にある会計士、公認会計士がフェアバリューベースのアドバイス、監査を十分にできる体制にあるかどうかというのは、この件に限らないが、一つ問題があるのではないかと思っています。
 
 もちろん、十分現場では要請されているということは、お話には聞いております。しかし、例えば、公認会計士試験、たまたま私、ここ何年か出題委員をしていますが、旧来の会計的科目が非常に多くて、マーケットベースの、例えばファイナンス科目というのはあまり重きが置かれていないと感じます。ですから、会計士になるという初期のモチベーションの段階でも旧来的発想の強い、そういう人を育成している、そういう人を採用しているということになっていっているように感じています。
 
 ですから、これからは、まさにスタートアップの問題には限らないんですけども、監査とかアドバイス的立場にある人、会計士の育成、養成というところも考えていく必要はあるかと思っております。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 白須委員、ありがとうございます。
 
 次に、永沢委員、片山委員の順に御発言をいただきます。永沢委員、お願いいたします。
 
【永沢委員】
 永沢でございます。私は個人投資家という立場で参加しておりますので、投資信託会社に関するところにつきまして、4点、意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 
 まず、資産運用会社の新規参入の促進というところにつきましてですが、基本的には賛成でございます。ただ、投資信託会社につきましては、前回も申し上げましたが、百数社が本当に少ないのかどうかというところについては、まず、検証が必要であろうと思っております。投資信託は、これまでにも増して国民の長期資産形成の中核商品として位置づけられてきており、国民にとって購入後20年、30年、40年お付き合いする商品でございます。会社の経営が苦しくて存続ができないので、このファンドは終わらせていただきますというのでは大変困ります。やはり長く存続し得る会社なのかという観点から、規制緩和の検討をお願いしたいと思っております。
 
 また、競争を働かせれば、国民に提供されるパフォーマンスが改善されるというのは少し安直なのではないかと思っております。したがいまして、登録要件の緩和とともに、果たして、どのような観点で、国民が安心して、長期にお金を託すことができるというところを最優先に考えて、環境整備を進めていただきたいということを、まず、最初に申し上げたいと思います。
 
 2番目に、ミドル・バックオフィス業務の外部委託についてですが、新たな業種を指定して、登録制を導入することに賛成いたします。ミドル・バックオフィスの業務の外部委託を促進するためにも、ミドル・バックオフィス業務を新業種として定義されることに賛成いたします。
 
 資産運用においては、ミドル・バックオフィスがあってこその資産運用であって、一般業界におけるような事務部門ではないと認識しております。本当に重要な部門でございますので、繰り返しますが、新業種として定義いただき、参入規制、行為規制を定めて、当局の指導監督がしっかり及ぶようにしていただきたいと思っております。
 
 それから、外部委託の規制緩和を検討するに当たりまして、欧米の例が示されておりますが、欧州のUCITSに基づいて運営されるファンドは、私の認識では、管理会社が非常に重要な役割を担っています。昔、証券会社に勤めておりました頃に、ルクセンブルク籍の投資信託を何本か設定した経験から申しますと、管理会社はいわゆるペーパー的なもので、取締役会が非常に重要な役割を果たしていたと認識しております。
 
 一方、日本の投資信託を見てみますと、ファンドマネジャーという存在が非常に前面に押し出されてきたと思います。もちろんアクティブ運用においては優れたファンドマネジャーは鍵となる存在だと思いますけども、投資信託という仕組みは、専門家による分業を基礎としているスキームであり、全体をどう構成するのかということや、運用開始後にいろいろなイベントが生じますので、そのイベントに対してどう対応するのか等、専門家としての判断や意思決定こそが最重要なのではないかと考えます。
 
 その意味で、取締役会、先ほどのUCITSにおける管理会社の取締役会という存在は非常に意味のあるものであり、日本においても、このような議論を進めていく上では、このところにもう少しクローズアップして議論していく必要があるのではないかと感じております。
 
 それから、関連して、投資信託の運用の指図に係る権限の全面委任に関してですが、現行の規制の部分につきまして、現行規制の趣旨について御紹介がありましたけれども、これを拝見して、改めて、日本の投資信託だけなのかもしれませんが、投資運用は、売ったり買ったりして汗を流す、何か職人的イメージが浸透してしまっているのではないかと思います。真に求められているのは、約款に示されたとおりに全体の運用が行われて、品質管理を行われることであり、その責任を持つことであると思います。この辺りの基本的な考え方を再構築し直すことも必要なのではないかと感じております。
 
 世の中で、事業会社の間ではガバナンス改革が言われています。投資信託は、委任の関係の最たるものだと思います。この辺りの議論を、投資信託協会の会議室の中だけではなく、国民、投資家に見える形で、議論のプロセスを見せていただくことも必要ではないかと感じておりますので、その点も、要望させていただきたいと思います。
 
 長くなって恐縮ですが、マテリアリティポリシーの明確化についても、基本方針に賛成ですが、投資信託の基準価額は、多数の投資家が出入りする際の基準になる価格です。投資家間の公平な取扱いを担保するために開発された、投資信託の命とも言える制度です。特に、オープンエンド型の投資信託ではまさにここが生命線でございまして、この点について、会社間の社内規定にばらつきがあることについてよろしくないというのはそのとおりだと思います。
 
 一方、業界統一ルールを決めてしまいますと、ルールで定まっているからということで、自分で考えず、受け身になってしまう虞がありますので、各社で決めることを促すという方針に賛成すると同時に、どう決めたかを投資家に明示していただくことが必要です。また、社内規定として定めたポリシーを実際に適用する場面がありましたときには、各社の取締役会で決議事項と定めていただき、責任の所在を明確にしていただくことも監督指針のほうに明記いただいてはどうかと思います。既にそうされていたとしたら、出過ぎた発言かもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。
 
 最後になります。基準価額の重要性については、先ほども少し述べさせていただきましたが、前回時間が足りず、申し上げることができなかったことを述べさせていただきます。前回、投信協会様から、現行のオープンエンド型の投資信託に非上場株式の組入れに関する規制緩和の話があり、パブリックコメントを募集されているというお話がございました。パブリックコメントを募集されたということは、もう既に既定路線として進んでおられると拝察いたしますが、前回、有田委員が御指摘されましたように、オープンエンド型の投資信託の信頼性の基礎は、その透明性であり、基準価額は多数の投資家の出入りの際の公平性を担保する上で大事な役割を果たすものでございますから、時価の分からないものを組み入れるという規制緩和については、十分慎重なお考えが必要だと私は考えます。その点で、前回の有田委員の意見に賛同します。
 
 そして、その意見の延長として、本日、オルタナティブ投資について、要望といいますか提案が出ておりました。確かに、実務家の間では、外国籍の投資信託において、上場して値段をつけているからといってそれが適正かどうかというのは疑問という指摘がありますし、その程度の上場ですから、上場コストが無駄だという意見ももっともだと思いますけれども、透明性の観点から、この点は本当に慎重に議論していただきたいと思っております。時価を得ることができない投資対象を組み入れることは、オープンエンド型の投資信託において、資産が増えている段階では問題になりませんが、何かイベントが起きて大量解約が生じたときに、結局は、情報弱者である一般の投資家が、最後に残されてババくじを引くということになるということが懸念されます。一般の投資家を対象とする投資信託については、なかなか賛成いたしかねるところでございますが、規制緩和が避けられないとなるならば、この辺りの投資家の明示的な開示が大変重要になります。
 
 本当に最後になりますけれども、投資信託は、今や国民の退職後に向けた重要な資産形成の中核商品となっているわけでして、投資家保護という抽象的な言葉で片づけるのではなく、具体的に国民に見える形で、その投資家保護の対応策について、協会をはじめ関係者の方々には、国民に見える形での議論をお願いいたします。
 
 以上となります。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 永沢委員、ありがとうございました。
 
 続いて片山委員、幸田委員、野尻委員の順に御発言をいただきます。片山委員、よろしくお願いします。
 
【片山委員】
 片山でございます。本日はウェブで失礼させていただきます。本日、3点に絞って意見を述べさせていただきます。
 
 1点目は、資産運用会社の新規参入についてです。新規参入を促進することによって、運用商品や運用手法の多様化が図られ、運用業界全体の運用力向上につながるなど、メリットも一定程度あると思いますが、同時にデメリットもあるのではないかと思っています。規制緩和を進めるあまりに、投資家、顧客メリットを軽視するような質の低い企業が参入しやすくなってはならないと考えます。
 
 2点目は、企業年金の運用についてです。資料の31ページを御覧いただくと、日本とアメリカのベンチャーキャピタルファンドへの資金供給主体を比較した図がありますが、アメリカでは年金基金による投資が盛んであるように見えます。しかし、これはアメリカの年金基金の予定利率の水準が高いことが要因の1つであり、予定利率が高いということは、それだけ大きなリスクを取って高いリターンを目指していることになります。日本の企業年金基金等の予定利率が低いなどの報道もありますが、そのことをもって資産運用力が低いとされることには違和感があります。そもそも企業年金の原資が賃金の後払いとしての性格を持つ退職給付であることを踏まえれば、労使自治、労使合意の尊重を前提に、長期にわたり確実に給付が保障されるための運用がなされるべきです。過度なリスクテイクやそれによるリターンの獲得を目指すなど、企業年金の運用に関して、特定の方向性に誘導することがないよう留意する必要があると考えます。
 
 3点目は、株式報酬についてです。株式報酬制度は、取締役などの役員だけではなく、従業員にも広がりを見せていますが、労働基準法第24条において、賃金の支払い方法については、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならないと定められています。本日の議論は株式報酬の開示規制に関するものですので問題はないと思いますが、今後の議論が、労働の対価である賃金の安全性、確実性に影響を及ぼすことがないように御留意いただきたいと思います。
 
 以上です。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 片山委員、ありがとうございました。
 
 それでは、幸田委員、よろしくお願いします。
 
【幸田委員】
 幸田です。まず、私の専門分野の1つが、ベンチャーエコシステム、ベンチャーキャピタルエリアなので、成長分野の資金供給について、最初に見解を述べさせていただきます。併せて、先ほどプレゼンがございました産業革新投資機構JICについて、私自身社外取締役を務めておりまして、JICのLP投資を行う投資プロセスにも参加しております。その観点からも触れたいと思います。
 
 このスタートアップの資金調達については、かねてから量の課題と質の課題の両面があると認識しております。量については、先ほど御説明いただいたように、足元1兆円規模に達してきておりますので、2010年の1,000億円規模との比較からは10倍ということで格段に広がっていることは、まさに様々な政策面の後押しであるとか、関係者の取組の成果であると認識していますけれども、まだまだ不十分であることは間違いないところだと思います。さらに量を増やすためには、やはりその質が問われているという状況に変化してきているのではないかと認識しております。機関投資家の資金があまりに不足しているということについては、既に御説明のとおりですけれども、足元、公正価値評価が進んできているVCが相応に出始めているとか、あるいは独立系のVCが増えてきているというようなことが進みつつありますので、今後期待できるところではありますけれども、一方で1つのVCの調達規模が小さ過ぎると、例えば500億円以上の規模のVCを増やしていくことができないと、国内機関投資家、海外機関投資家の資金を本格的に導入することは、なかなか難しいのではないかと考えている次第であります。
 
 そういう観点も含めて、ちょっと簡単にですが、4つの点を指摘したいと思います。
 
 1つ目は、今申し上げた公正価値評価であるとかガバナンスとかコンフリクト等についての対応については、国内機関投資家からの資金導入に向けて少しずつ進んでいくとしても、海外の機関投資家が日本のVCに資金を入れていくということをある程度視野に入れていくというのが、今のステージではないかと考えています。そういう意味では、グローバル基準に公正価値評価あるいはコンフリクト対応等を本格的にしていくということが極めて重要ではないかというふうに思います。
 
 そういうことも含めて、2つ目ですが、国内のVCが、それなりに特徴がある、あるいはパフォーマンスも出始めているという中において、海外の機関投資家向けに発信する場を本格的に設けていくというようなタイミングではないかと思います。政府が後押しをして特徴あるVCを紹介する、あるいはカンファレンス的なことを設けていくというようなことを行ってはどうかということがございます。
 
 3点目ですけれども、いわゆるVCの出口が、基本的にはIPOということに限られているというのが現状であるかと思います。これについては、東証との連携や議論が重要であると思いますけれども、今の状況はIPOが出口になっているというようなことの中で、上場市場が必ずしも成長、あるいは企業価値を上げていくということに十分使われていないということで、市場がゆがんでいるのではないかというふうに考えている次第であります。もちろん、東証が基準を厳しくするということも必要だという面は、私はあると思いますけれども、一方でバランスを取って取り組んでいかなければいけないというようなことからすると、本日御説明いただいたような未上場セカンダリー市場であるとか、あるいは未上場株式セカンダリーファンドを広げるとか、こういったところをうまく設計して、体系的に整えていくというのが極めて重要ではないかと思います。その観点では、未上場取引における投資家保護、投資家の範囲をどうしていくのかというようなことが極めて重要だと思いますので、この辺りの設計も含めて、今のVCの出口がIPOに偏っているということの是正に向けた取組が重要ではないかと認識しております。
 
 4点目ですけれども、VCにおいて新しく立ち上げていきたい方々というのはかなり増えているというのが私の認識であります。以前は、JAFCO出身の方を中心に新しい独立系が随分、それなりに出てきており、それが今かなりVCの広がりの中で増えてきているということでありますけれども、そうしたファーストファンドをサポートする機能というのは、先ほど御説明があったJICであるとか、あるいは中小機構等がコア資金を出してサポートはしていますけれども、なかなか十分ではないというようなことがあります。
 
 そういう意味では、御説明はございませんでしたけれども、資料の中にあったEMP的な取組の中で、そうしたVCも対象エリアに組み入れるというようなことができないかということを検討してみるというのも1つのアイデアでないかと思います。
 
 時間の関係もありますので、もう1点、資産運用会社の新規参入について一言申し上げたいと思います。日本の金融あるいは企業の置かれている状況からすると、今回新規参入を増やすということに大きくかじを切るタイミングであるということは間違いないと認識しております。日本においては、既存のアセマネ会社から独立できる人をサポートすること、海外からは、実績のある、特徴のあるアセマネ会社の参入を増やしていくということで、競争環境をかなり広げて後押ししていくということが、事実上今まで参入に当たってのハンデが大きかった方々に、レベルプレイングフィールドで勝負をしてもらう前提ということで、こういうことが重要ではないかと考えております。
 
 その観点で2つ申し上げます。1つは、登録要件の緩和と外部委託については賛成であります。ただし、外部委託については、先ほども永沢委員からもございましたけれども、責任を持って外部委託をきちんと監視する、モニターしてチェックをするという体制を監督当局が定期的にモニタリングをして、あるいはチェックリスト等を含めて体制を整備するということについて責任を持ってやっていただくことが非常に重要ではないかと、こういうふうに考えております。
 
 もう一つは、国家戦略として本件を議論するのであれば、やはりゲートキーパーを育てること、こういう観点が重要ではないかと思います。新規参入を紹介する、あるいは連携するというようなことを考えていくというようなことについては、資料にございましたけれども、フランス版EMPというようなものを日本でも取り組むことができないかということは、検討してみる価値はあるかなと認識しております。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 幸田委員、ありがとうございました。
 
 続いて、野尻委員、玉木委員、大槻委員の順に御発言をいただきます。野尻委員、よろしくお願いします。
 
【野尻委員】
 ありがとうございます。フィンウェル研究所、野尻でございます。私は、どちらかというと資産運用業の新規参入等のことについてコメントをさせていただこうと思っております。
 
 資料の3ページ目に、新規参入促進の趣旨ということで、非常に明確にお書きいただいていて、ここが大事なポイントなのではないかと思っています。3ページ目の冒頭に書かれている①多様な運用商品が開発・提供され得る、②家計・アセットオーナーによる運用商品の選別を通じた資産運用会社間の競争促進により、運用業界全体の運用力の向上につながり得る、これは大変大事なポイントだと思っています。ただ一方で、このページの一番下に、一般投資家にも裨益する形でという表現もあります。今回の資産運用業の新規参入等々、こういった改革なり緩和が、個人の投資家にどれぐらいのメリットがあるのかという趣旨をもって、報告書なり資料をつくっていくということをしていかないと、どうしても改革をするべきという答えだけがクローズアップをされて表に出ていくということになって、何となく一般的には空中戦をやっているように感じられます。ちょっと言葉が正しくないんですけど、訳の分からないところの議論になっているというふうにならないようにしていくことが、私たちにとっては大事なことではないかと考えています。
 
 例えば、27ページで海外のオルタナだとか、海外で公募で販売されているものについては、国内の公募投資に組入れられない場合があるので、これを何とかしたほうがいいんじゃないかという指摘はすごくよく分かるし、いいことだなという思いがあります。ただ、これは、要はあったらいいんだという話なのか、これによって個人投資家にどんなメリットがあるんだということが、ある程度、我々の言葉として出していかないと、受け取っていただく人たちにとっては、何のためにやっているんだろう、業者にとってメリットがあるだけというふうになる。こういうことは、ちょっと避けていきたいと思っています。
 
 繰り返しになりますけど、新規参入の促進ですとか、ミドル・バックオフィスの要件緩和ですとか、それから運用の外部委託、それからマテリアリティポリシーの明確化、それぞれ大変貴重な改革、改善、緩和だと思っています。もちろん、これをどうやってモニタリングしていくのかとか、計画どおり、もしくは我々が考えているとおりに動いているかということを、モニタリングなりレビューをしていく、これも大事だと思うんですけれど、その際にも、これが個人投資家にとってどんなメリットがあるのか、国民にとってどんなメリットがあるのかというのを明記していくというのが必要ではないかと思います。
 
 今回、こういう議論をさせていただく中で常に感じているのは、今回の資産運用業の立国という言葉が、産業化という言葉に近いのではないかというふうに指摘をされることがあります。要は、もう少し金融ビジネスが大きくなることなんだということだとすると、産業化のために個人金融資産が使われるというのは、ちょっと本末転倒な気がしています。個人金融資産は、よく金融庁の方々のプレゼンテーションにも使われているように、欧米に比べて成長が劣後してきました。これからこれをキャッチアップしていくために何が必要か。要は、個人金融資産を増やすために、この業界を産業化する、高度化するという、こういうロジックでないといけないと思います。ここが、報告書なり、こういう形のレポートが表に出たときに、ちゃんと記載されている、明記されているということが賛同者を増やすことになると思います。賛同者というのは変な言い方かもしれませんが、ポジティブに見ていただくことが増えるのではないかというふうに考えています。
 
 ぜひ、中身は議論をする。これは大事なことだと思うんですけど、どうそれを発信するかというところにも、もう少し意を尽くしていただければいいなと思っています。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 野尻委員、ありがとうございました。
 
 それでは、玉木委員、よろしくお願いします。
 
【玉木委員】
 大妻女子大学短期大学部の玉木でございます。私からは、2点、エマージングマネージャープログラムに関連するところと、資料一番最後のオリガミ債について申し上げたいと思います。
 
 まず、エマージングマネージャーをアドミニストレーションコストの削減などの経路から支援するというのは大変生産的であり、私は大いに賛成でございます。この資料の中にも、幾つかそういったものへの言及がございますけども、賛成いたします。また、アセットオーナーが、自らの運用の高度化の一環として、よりよいマネージャーを発掘しようと努めること、これは至極当然のことでございます。アセットオーナーというのは、ほとんどの場合、他人のお金を運用しております。資金を委ねてくれた人を、金(かね)のあるじと書いて「金主」と読むとすれば、金主に奉仕するものとして当然のことでございます。
 
 他方、金主、これは公的年金であれば被保険者になるわけですけども、その利益を極大化することが当然、公的年金の運用機関等においては使命でございます。そういった公的な機関投資家がエマージングマネージャーの育成を目的にすると、育成を目的にエマージングマネージャープログラムに資金を投じるということになると、これについては慎重であるべきと考えます。ちょっとこだわりたいのは、「発掘」という言葉と「育成」という言葉の別でございます。
 
 あるメディアで記事を見ました。ノルウェーのソブリン・ウエルス・ファンドを運用しているNBIMが、日本でよい運用機関を一生懸命探しているということについて肯定的に報じているものでございました。この記事につきまして、NBIMと対比するような形でついた見出しが、「クジラの怠慢、育成弱く」でございました。また、この記事の中で、クジラ、すなわちGPIFでございますけども、理事長が、育成する目的の投資はできないというふうに御発言なさっています。これについて、理事長は釈明しているというふうに書いてございました。この辺、私は、発掘と育成という言葉の違いをよく踏まえて我々は理解しなくちゃいけないんだなと思ったところでございます。GPIFなど有力な投資家・アセットオーナーが、新興のエマージングなマネージャーであろうと、エスタブリッシュされたマネージャーであろうと関係なく、よいマネージャーはよいマネージャーだ、よりよいマネージャーを何としても探すんだ、という姿勢の下で発掘に向けて努力するといったことは当然のことであり、また、相当程度行われているところではないかと思います。
 
 こういった事実がより広く知られていけば、他のアセットマネージャー、投資家におきまして、自分の受託者責任のバーは結構高いんだなというふうな認識が広がっていくということになるのではないかと思います。これは、私はポジティブに捉えてよろしいかと思います。
 
 我が国の資産運用業の仕事のレベル、クオリティーを上げていくためには、アセットオーナーがよいマネージャーを発掘するための努力をもっともっと払うことが必要ではないかと思います。その結果として、育成がなされる、運用業が発展するのであれば、それはそれで大変望ましいことでございます。しかし、GPIFにつきましては、例えば専ら被保険者のため運用しろというふうに法律に書いてございますので、そういった組織に対して、「育成」を「目的」にした投資をせよというふうに主張することになると、これはいろいろと慎重な配慮が必要になるんじゃないかと思うところでございます。ちょっと先走ったことを言えば、もしそうした育成を目的に独立行政法人たるGPIFが運用するとなりますと、運用の結果、育成されたのかどうかを厚生労働大臣が評価するということになります。そういったことが我が国の行政の在り方として適切であるのかどうか、この辺はよく考えていくべきところだと思います。
 
 もう1点は、オリガミ債でございます。これは、お書きになっているような、資料にあるような素地が国内の外貨建ての債券への投資家層の広がりをもたらすということになるのであれば、ぜひ前向きに進めていただきたいと思います。誤記録の際の投資家保護、そういったものとの兼ね合いを見ながらにはなると思いますけれども、多くのプラスがあると思われますので、積極的な検討に値すると考えます。
 
 多くのプラスのうち、私が2つ挙げるとすると、以下のとおりでございます。
 
 1つは、国内の投資家の運用対象の分散、多様化に資するということでございます。今、我が国の投資家におきまして、外貨資産を持つというメニューがちょっと限られているかなというところもございますので、国内の企業などなじみのある発行体のものが出てくるということになれば、これは投資家にとって基本的にプラスだろうと思われます。
 
 もう一つは、発行体企業の外貨ファンディングの安定ということでございます。もし国内の企業が、外貨建ての長期の資金を国内で安定的に調達できるということになれば、これは、国内の企業の財務運営のメニューを豊かにするものとなると思います。また、もしこういったものを国内の投資家が持つということになれば、国内の投資家が、外貨のロングポジションを長期的に持つわけです。そういったことの反対側では、企業にとって外貨建ての負債の安定的な確保の道ができるわけでございます。外貨建ての資金調達の市場というのは、時折とんでもない変動を示すわけでございますけれども、その変動の中に、メカニズムの違うものが入っていけば、安定の方向に資するのではないかというふうに考えるところでございます。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 玉木委員、ありがとうございました。
 
 続いて、大槻委員、有田委員、長谷川委員の順に御発言をいただきます。大槻委員、よろしくお願いします。
 
【大槻委員】
 ありがとうございます。
 
 非常に久しぶりの見直しだと理解していますので、政策的意義の高いものを、ぜひお願いしたいと思いますし、あと、アウトカムベースで、どこにどういう形での修正をすることがベストであるのかを考えていただきたいと思います。今日伺っていても、賛成意見が多い中でも、幾つかの反対意見も出てきたと思いますので、そういったところをしっかりと比較することによって、アウトカムがベストな形の政策をというふうに思っております。
 
 それと、もう一つ、今回の資料もそうですが、非常に分野が多岐にわたっていますので、全体での報告という形で出てきた暁には、一番主体となる企業や個人にとってメッセージ性が失われないように、そこはしっかりと軸足を持ったメッセージをお伝えいただきたいと思います。
 
 と申し上げた上で、全体として、方向性として全て賛成しております。
 
 幾つか個別の点で、もう皆さんいろいろおっしゃっていただいたのですが、ミドル・バックオフィスについての外部委託なんですけれども、過度な管理を委託者のほうに課すのは、先ほど申し上げたアウトカムという意味で無にしてしまいかねないという点も含め、これから明確化することが重要かと思っています。どういうところまではどちらが責任をより大きく負うのかということです。
 
 それからもう一つが、非上場株式のセカンダリー取引のところでございます。47ページ目かと思います。こちらにつきましては、数年前から、取引の活発化ということを言われてきた一方で、様々やっても育成されないので、改めて、今回御提示いただいたような形で、果たしてアウトカムが確保できるのか、本当に取引が活発化されるのかどうかということを検討できるような形でお願いできればと思います。
 
 それと同時に、個人のプロ投資家についてでございますが、やはりそこまで広がってきていないという認識をしています。これについても、改めて何らかの形で参加が一層容易になるような形で考えていただければと思っています。
 
 それから、株式報酬についてです。こちらについては、今回御提示いただいている開示について賛成でございますし、これはやはり産業界からの要望も強い事案だと理解しております。産業界のほうからは、自己株式の処分について、この株式報酬に係る自己株式の処分についての要望等も出ているかと思います。そういったことも併せて、一層の使い勝手について御検討いただきたいと思っています。
 
 そして、最後にオリガミ債です。もう既に玉木さんがおっしゃったとおりだと思っていますが、それらに加えて、もう既に外貨建てのSDGs債等が国内の発行体から相当出てきていると理解しておりますので、この修正については、スピード感を持ってやっていただければなと思います。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 大槻委員、ありがとうございました。
 
 それでは、次に、有田委員、お願いいたします。
 
【有田委員】
 ありがとうございます。私からは、主に新規参入の促進について意見を申し上げまして、最後の15秒で、成長資金の供給等について申し上げたいと思います。
 
 まず、資産運用会社の新規参入でございますけれども、皆さんおっしゃっていましたように、これは競争を促進いたしまして、国民が投資できる内外の資産クラスの拡大及び運用手法の多様化につながると思います。
 
 一方で、現状に安住し運用をめぐるグローバルな環境変化に適用する努力を怠る運用会社については淘汰を要することも、言うまでもないことだと思っております。運用以外の業務の集約化、コスト低減を図ることで、業界全体にこのような健全な新陳代謝を起こさせるということは、運用立国の実現に向かう施策として非常に重要なことだと思います。そうした施策を実施する上で重要と考えられる点を、現場に即して4点挙げたいと思います。
 
 第1に、どのような外部委託が行われようとも、運用会社が自ら投資家の皆様に対するフィデューシャリーを果たすべく、リスクガバナンス体制を確立することが非常に大切だと思っております。その上で、委託先に対する監督がしっかり行われることが重要です。すなわち、運用会社の運用部門が常にお客様の御要望に沿った形で運用を行うようなメカニズムを運用会社内部で保持し、そのために必要なリスク管理指標であるとかポートフォリオコンプライアンス、顧客レポート、あるいは決済、こういったものを外部委託先に委ねることで、コスト負担を低減することは可能だと思っております。具体的には、登録要件の緩和、事務の外部委託を行った後であっても、運用会社自身のガバナンスという観点で、リスク管理、法令遵守機能といった運用と表裏一体をなす重要な機能について、委託先をしっかりと監督する人材を運用会社が備える体制整備が非常に重要であると思います。
 
 第2に、大槻委員が先ほどおっしゃっておりましたが、責任の所在の明確化です。運用及びガバナンス以外の業務の外部委託を可能にする際には、運用会社と外部委託先との間での役割分担が、当局によって極力明確にされることが必要だと思います。この点が不明確ですと、例えば外部委託先が行った事務の内容を検証するために、結局資産運用会社も詳細なチェックを再度やらなければいけないと。そのためにシステム投資を行うといった二重の手間になり、そのことによって業界全体のコストがかえって増大してしまうということを懸念いたしております。
 
 第3は、外部委託先の会社の質の確保でございます。業務の委託先には、高い業務執行能力と適切な体制が要求されているという点でございます。資料13ページに記載のあるパフォーマンス測定やリスク管理を実施するにおいては、例えば個別証券の属性の登録、管理、ベンチマークの整備をはじめとするオペレーティングプロセスが非常に重要で、高度な運用のためには、あらゆる資産クラスにおいて分析が行え、また、運用のフロントまでSTP化されているものであるべきというふうに考えております。
 
 第4は、これらの会社の健全な競争でございます。業務の委託先の高い能力と適切な体制を確保するために、参入規制であるとか行為規制を設け、当局の監督の対象とするという方向性は理解できるものだと思います。しかし、この参入規制がこの分野における既得権益の維持のために使われてはならないと思っております。資産運用会社において、新しい血の導入によって健全な競争を促進するのであれば、委託先についても広く新規参入に門戸を開いて、健全な競争を促進して資産運用業全体のレベルの底上げを図るべきというふうに考えております。
 
 以上、申し上げた諸点に関してさらに申し上げますと、資料11ページに示していただきましたような、欧州での仕組みは検討に値するものと考えております。つまり、各プレーヤーの責任分担が明確である中、運用会社とは別に独立した管理会社が存在し、管理会社が事務委託先を監督する仕組みとなっているということでございます。例えば、基準価額に当たるNAV計算においては、アドミニストレーターが行う立場が明確とここではなっております。また、資料23ページのマテリアリティポリシーについてでございますが、第1回会議の投資信託協会様の御提示資料にありましたように、標準化を図ることがなされれば、運用コストの最適化を通じ業界全体の参入障壁の引下げにも資する論点であるというふうに考えております。
 
 最後に、成長資金の供給等の論点でございますけれども、1点だけ申し上げますと、46ページ、47ページで御提示されております海外グループ会社の投資信託の国内販売に係る課題の認識とこの緩和の方向については、賛成でございます。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 有田委員、ありがとうございました。
 
 続いて、長谷川委員、上田委員の順に御発言をいただきます。長谷川委員、お願いいたします。
 
【長谷川委員】
 ありがとうございます。私からは、資産運用会社の新規参入の促進と、それから成長資金の供給等について、大きく述べさせていただきます。
 
 もう既に御指摘があったことと重複する点もございますが、まず、資産運用会社の新規参入を促し、運用対象、手法の多様化に向けた環境整備を進めるという方向性には賛同しております。しかし、資産運用業やアセットオーナーの資産運用業務の改革を求めるということでございますと、前回も述べましたけれども、まずは多様な当事者から、現在の市場や運用業務の実態、現状について丁寧に話を聴取するというところから始めるべきではないかと考えております。このタスクフォースの場で御説明いただくとともにということでもよろしいですし、事務局が各当事者から聞き取った意見を資料にまとめて、このタスクフォースに提供いただくということでも構わないと思いますが、改めてお願いしたいと思います。
 
 その上で、ミドル・バックオフィス業務の外部委託など、投資運用業の参入要件を緩和することについては、コンプライアンス業務の外部委託などにより不祥事案が発生し、市場の混乱を招くような事態は避けるべきであると考えます。この点については、金融庁の役割に期待をしております。
 
 それから、経団連といたしましても、スタートアップ振興に向けた取組を進めておりまして、成長資金の供給は重要なテーマであると考えております。ただ、成長資金の供給は金融審議会の市場制度ワーキング・グループで検討が進められてきたと存じております。この市場制度ワーキング・グループと、こちらの資産運用に関するタスクフォースでは構成メンバーも異なっておりますことから、今後どのように議論の連続性を取っていくのか、もしくは、こちらのタスクフォースでは、市場制度ワーキング・グループが昨年の12月に公表した第2次中間整理のうち、どの項目の検討を深めたいと考えているのかといったことについて、整理をいただければと思います。
 
 また、株式報酬に関わる開示規制の整備に関しまして、事後交付型株式報酬、RSUの開示規制の緩和は、経団連がかねて規制改革要望で求めてきた内容でございますので、検討の俎上に載せていただくということはありがたいと存じます。ただ、例えば臨時報告書の開示を行うタイミングなど、多くの論点があるというふうに理解しておりますので、株式報酬を導入している企業の意見を聴取した上で、実務的な負担の軽減につながるような制度設計となるように検討を進めていただきたいと思います。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 長谷川委員、ありがとうございました。
 
 それでは、上田委員、よろしくお願いいたします。
 
【上田委員】
 上田でございます。本日、オンラインにて失礼いたします。よろしくお願いいたします。私は、資産運用会社の新規参入、特に前半の部分についてコメントをさせてください。
 
 お話を聞いていますと、基本的には資産運用業という1つの産業を発展させていこうということであろうかと思います。今まではどちらかというと金融の中における資産運用という1つの機能というものに特化したいろいろな規制であったり、枠組みができていたかと思います。仮に、資産運用業という1つの産業の発展ということを目指すとすれば、やはり関連する中の機能とか役割分担というものを明確にして、それぞれの規制であったりモニタリングを確保しつつ、競争ができるような環境にしていくというような目的で取り組む必要があると思います。特に、ミドルオフィス、バックオフィスの外部委託に関連してですけれども、ミドルオフィス、バックオフィスの部分というのは、資産運用業の中において大きなリソースをかけている部門であるかと思います。とりわけ、昨今サステナビリティに関連する投資、あるいは規制がグローバルに強化される中で、ここはもうコンプライアンスの費用と見るかどう見るかということも含めて、大変コストが増えているというところかと思います。
 
 一方で、前回、中神さんのお話もありましたけれども、これが資産運用業に新規参入への障壁になっているという実態がある。あるいは実際の既存の資産運用業者において、このミドル・バックのところのコスト、リソースがかかるということであるとすれば、本来資産運用そのものを向上させるために、人材育成含めてリソースをかけたいところ、それが制約条件になっている可能性もあるのかななどと感じました。
 
 よって、こういったミドルオフィス、バックオフィスの部分については、質を確保する、もちろん投資家に対する保護にもなりますが、その質を確保するという枠組みを構築しつつ、一方で外部委託も可能とするような規制緩和を行う。そうすることで選択肢を増やすということは望ましいことであろうと考えています。
 
 今回の事務局から欧州のUCITSの御説明があったかと思います。ほかの委員の方々からも御指摘がありましたけれども、こういった仕組みを導入することで、資産運用と資産管理という機能を分別して、それぞれ専門機関に任せるということがあれば、全体としての効率性は高まるのかなと思います。他方で、そのモニタリングというところをしっかりしておく必要があるかと思っております。例えばUCITSにおいては、マネジメントカンパニーのボードが機能し、ガバナンスやモニタリングをしっかり機能させるといったことで、それぞれの役割、運用や管理というところをしっかり見ていくといったことができるのかと思っています。このようにUCITSのような仕組みを参考として、新しい仕組みの導入というのは大変望ましいと思っていますので、併せてモニタリングやガバナンスの視点というものもしっかり入れた形で進めていただきたいと思っております。
 
 次に、EMPについて、将来の資産運用業への投資というのも、ほかの産業への投資と同様に、長期的な資金の投資先としてはあり得るのかなというふうに考えるようになっております。特に、公的年金というのは、資金の性質上、超長期と言うことができる資金である。一方で、その運用の在り方や運用パフォーマンスというところが強過ぎるぐらいモニタリングされ、規律されておられるかと思います。ただ、将来の投資先確保という観点からすると、こういう長期的な資金規模の大きなところが、一定の規律の枠内で、例えばトラックレコードが十分にない新規の運用会社への投資等、こういった枠組みをつくっていくということは、将来の投資者にとってもメリットなのかなと思いました。各基金あるいは政府においてもリードされているかもしれませんが、その可能性を探っていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
 
 以上です。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 上田委員、ありがとうございました。
 
 それでは、次に、オブザーバーの方から何かございましたら御発言をお願いいたします。まず、日本ベンチャーキャピタル協会の郷治様、お願いいたします。
 
【日本ベンチャーキャピタル協会(郷治オブザーバー)】
 ありがとうございます。事務局資料34ページの非上場株式等の公正価値評価のところと、37ページのVC向けのプリンシプル及びアセットオーナープリンシプルについて意見がございます。
 
 私は、こちらに載っております投資事業有限責任組合法というベンチャーキャピタルファンドの仕組みを定めた法律の起草を25年前に担当しておりました。その後退官してベンチャーキャピタルを経営して参り、今年から日本ベンチャーキャピタル協会の会長に就任させていただいております。まず、この公正価値評価に関する会計ついては、ここに書いていただいたとおり、公正価値評価を採用している場合に金商会計上の取得原価と二重管理をしなければならない問題がなくなるように金商会計においても措置いただけるとありがたいと思います。
 
 続いて、VC向けのプリンシプルについてですが、金融庁様のほうで策定されると思うのですけども、御留意いただきたい点を申し上げたいと思います。まず、VCによる情報提供のところはいいと思うのですけれども、VC向けのガバナンスとVCによる投資先支援について規定する内容はよく注意する必要があると思います。例えばVC向けのガバナンスについては、おそらく、VCが複数ファンドを運営したり他の事業を運営したりする兼業についてよろしくないといったことを掲げようとされているのかと思うのですが、ベンチャーキャピタルの事業活動は、投資先のオペレーションの支援や経営陣の構築のための人材のチームビルディングといった事業なども含み、いわゆる金融的な事業にはとどまりません。VC向けのプリンプルを示すことで、VCが様々な活動を行うことでアセットオーナーのために投資先の企業価値を高めようとする活動の阻害になり、結果的にアセットオーナーのリターン追求の支障にならないようよくご注意をいただければと思います。また、投資先支援に関するプリンシプルについても、ここによれば日本独自の投資条件は基本的によろしくないかのようなニュアンスが書かれておりますが、アセットオーナーの観点から注意を要する記載であると思っております。日本のスタートアップの取締役会は、アメリカのVCが投資しているスタートアップと違い、創業者が非常に支配的な形でつくられることが多いです。それに対して米国のVCが投資しているスタートアップですと、取締役会の構成員の中で創業者などの業務執行メンバーは基本的にCEO1人だけです。そのほかはVCや独立取締役などの社外取締役で構成されていて、取締役会で非常にガバナンスが効く形となっているのが一般的です。日本の場合は、創業者及びその配下にある方々が取締役会の多数を構成し、資本構成もそういった方々が中心になっていることが多い状況で、アセットオーナーの資産を投資するVCのような投資家は、取締役会でも株主構成でも少数派であることが通常です。スタートアップへのガバナンスが効きにくい状況の中でリターンを確保するために、これまでの日本の独自の投資条件のプラクティスができてきているということです。もし、このたびのVC向けプリンシプルで一概に日本独自の投資条件を問題視するようなことをお考えだとしますと、結果的にアセットオーナーの投資資金が毀損されたり、リターンを回収できなくなったりするリスクが非常に高まります。したがって、プリンシプルで投資条件に言及するに際しては、取締役会構成や株主構成などのガバナンス状況が米国等に比べて遜色ないかどうかによって適切な投資条件を設定し得るよう、アセットオーナーのためにバランスが取れた形で対応できるようにしていただきたいと思います。
 
 最後に、アセットオーナープリンシプルについて、これは新しい視点のインプットになるのですけども、一アセットオーナーの投資資金の利益追求という観点だけではなく、ほかのアセットオーナーの利益にも配慮した内容とするよう規定していただけるとよろしいかと思います。例えばベンチャーキャピタルがGPをしているファンドに様々なLPが投資することが広がっていくことが政策的に望ましいと思うのですけれども、アセットオーナーが自社1社だけの利益や権利を追求するようなことはよくないといった旨も入れていただきたいなと思います。具体的に言いますと、例えば、ほかのLPがいるのに特定のLP1社だけでファンドの非常に重要な意思決定をできてしまうようにすることは控えるよう書いていただくとよろしいのではないかと思います。例えばGPの解任のような非常に重要な決定を、他のLPの了解なく一LPだけでできるようにすることが一部のアセットオーナーで行われているというふうに聞いておりますが、そのようなことがもし続くようですと、ほかのLPがVCファンドに投資しにくくなりかねません。金融庁におかれましては、ぜひ、VCに投資しようとするアセットオーナー全体がエコシステムとして発展していくように、一アセットオーナーが自分の権利主張や権利強化だけを考えて、他のアセットオーナーの権利を損なわないようにという観点の考慮もいただけるとありがたいと思います。
 
 また、当協会からは村田という者も出席させていただいております。村田さん、よろしくお願いします。
 
【日本ベンチャーキャピタル協会(村田オブザーバー)】
 JVCA理事の村田でございます。私からは、セカンダリー市場についてコメントさせていただきます。
 
 スタートアップ育成5か年計画におきまして、あるいは本日の議論の一部でもスタートアップへのニューマネー、いわゆるプライマリーの資金供給増加に向けた施策の活発に議論されているところですが、市場の原理から自社プライマリーを拡大させるためにはセカンダリーの拡大が必須だと考えます。我々ベンチャーキャピタル自身のセカンダリーニーズも重要な論点だと思いますが、発行体の役職員の方が保有されている株式やストック・オプションの流動化も、ユニコーン企業の創出の観点で大変重要だと考えております。
 
 流通量を拡大させるためにはブローカレッジを前提とするよりも、アメリカのATSのように、発行体が直接利用可能な仕組みにしていくことが非常に重要で、資料の47ページに記載されているような、新たなレギュレーションつくることに大きな需要があると考えています。
 
 これまでのように、証券会社だけでなくセカンダリーファンドの事業者であったり、発行体の株式事務や資本政策の管理するソフトウエア事業者など、多様な担い手が大きな負担を伴わずにセカンダリー市場に参加できるルールの整備が非常に重要で、資料の47ページに記載されているように、非上場株式をセカンダリーに限定して、取扱い金商業者や、PTS運営のレギュレーションを緩和していただくことにベンチャーキャピタルとしても大きな需要がありまして、強く賛同したいと考えております。
 
 私からのコメントは以上です。
 
【加藤座長】
 日本ベンチャーキャピタル協会様、ありがとうございました。ただいまの御発言について、1点、事務局より補足させていただきます。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 JVCA様からの御発言のありました、情報提供でありますとかガバナンスでありますとか投資先支援といったところについてなんですけれども、アセットオーナープリンシプルとおっしゃいましたけれども、ベンチャーキャピタルプリンシプルということでよろしゅうございますか。
 
【日本ベンチャーキャピタル協会(郷治オブザーバー)】
 むしろ御質問したかったんですけども、このプリンシプルを策定するというふうになっていますが、この策定主体は金融庁様のことを意識されているのかなと思ったんですけど、違いましたっけ。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 37ページの資料につきまして、左下のほうで、機関投資家、アセットオーナー向けについてはアセットオーナープリンシプルをということを記載しております。
 
【日本ベンチャーキャピタル協会(郷治オブザーバー)】
 失礼しました。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 このアセットオーナーからのお金の受け手としまして、ベンチャーキャピタル向けに、ベンチャーキャピタルプリンシプルを示してはどうかとしております。
 
【日本ベンチャーキャピタル協会(郷治オブザーバー)】
 なるほど。じゃ、勘違いしていました。このプリンシプルのことでございます。失礼しました。1つだと勘違いしておりました。これは、策定主体は金融庁様ということですか。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 ベンチャーキャピタルプリンシプルを策定するということで、このタスクフォースで提言いただきました暁には、事務局として作成についての進め方を検討していきたいと考えております。
 
【日本ベンチャーキャピタル協会(郷治オブザーバー)】
 であれば、また議論の機会があるかと思いますので、そのときにも検討させていただけるというふうに、よろしくお願いできればと思います。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 よろしくお願いします。
 
【日本ベンチャーキャピタル協会(郷治オブザーバー)】
 このLP様の件については、アセットオーナープリンシプルで、例えば1社だけのことを考えたものではなくて、ちゃんとほかのLPさんも入りやすいような内容にしていただきたいということです。これはまたベンチャーキャピタルとは別でした。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 はい、承知いたしました。
 
【加藤座長】
 それでは、続きまして、日本証券業協会様、よろしくお願いいたします。
 
【日本証券業協会(飯山オブザーバー)】
 ありがとうございます。日本証券業協会、オブザーバーの飯山でございます。発言の機会をいただきまして、御礼申し上げます。数点、申し上げたいと思います。
 
 1点目は、投信法における特定資産の投資対象の拡大についてです。事務局から御提案があった投資信託に関する投資対象への排出権の追加や、オルタナティブ投資等を行う非上場の外国籍投資信託の国内籍投資信託への組入れについては、いずれも投資対象の多様化の点で有効であると考えます。こういった施策については、一般投資家の販売を念頭にした投資家保護の観点も踏まえながら、前向きに取組を進めていただきたいと考えてございます。
 
 2点目は、非上場有価証券の取引の活性化の観点です。規制緩和により、金商業者の新規参入を促すことで、非上場有価証券取引を活性化させるという検討の方向性に賛同いたします。非上場有価証券の仲介を行う金商業者の登録の特例につきましては、対象顧客をプロ投資家である特定投資家に限ることも考えられますが、現時点では特定投資家の数は多くないことを踏まえ、特定投資家に移行可能な顧客に対して移行を促す際の情報提供の緩和についても併せて御検討いただければ幸いです。例えば、価格等の情報の提供は、現状できないことになっていると思います。その他、非上場有価証券のセカンダリー取引の円滑化が図られるように、規制緩和、明確化をお願いしたいと思います。また、PTS業務の要件緩和につきましては、特に自社顧客のみや特定投資家のみを対象とする電子的なセカンダリー取引に関して、上場株式のPTS業務と同等の規制は過剰であると考えられますので、PTS業者が行う業務の性質に応じた要件の緩和を御検討いただきたいと思います。
 
 3点目は、外貨建国内債発行の円滑化のための制度整備についてです。本件について、その方向性に賛同いたします。今後、市場関係者とのコミュニケーションを取りながら御検討いただきたいと考えております。
 
 最後に、資料17ページのEMPについて一言申し上げたいと思います。EMPは、将来の競争を喚起するという意味で非常に大事な仕組みと考えますが、シードマネーの出し手がなかなかいないことが大きな課題と認識してございます。証券会社は基本的にセルサイドにおりますので、証券会社としては、いろんな候補のマネージャーをアセットオーナーに紹介していくことが、1つ貢献の仕方としてあると思っており、先ほどもゲートキーパーという単語がありましたが、そういった方法が1つあると思っております。資料中に東京都のEMPについて言及がございましたが、こういった仕組みを何らかてこに、発展的にうまく活用しやすくする、アセットオーナーがシードマネーを出しやすくする工夫もあると思っております。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございます。
 
 それでは、続きまして、国際銀行協会様、よろしくお願いいたします。国際銀行協会様、どうぞ御発言をお願いいたします。国際銀行協会様、大変申し訳ありませんが、そちらの音声がこちらに届いておりませんので、後ほど改めて御発言をいただくということで御容赦くださいませ。
 
 続きまして、投資信託協会様、よろしくお願いいたします。
 
【投資信託協会(杉江オブサーバー)】
 投資信託協会の杉江でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。
 
 投資信託協会といたしましては、今回の事務局資料におきまして、投資信託に関連する項目について示された方向性につきまして、いずれの項目につきましても本会の考え方と軌を一にするものでございまして、ぜひこの方向で制度整備を検討していただきたいと考えております。また、今回、将来的に検討するとされました項目や、お取上げいただけなかった項目につきましても、引き続き御検討いただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 
 私ども投信協会といたしましても、今回の議論などを踏まえまして、資産運用業の抜本的改革に全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えておりますので、引き続き御指導、御協力いただければ幸いです。
 
 私からの発言は以上です。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。
 
 それでは、全国銀行協会様、よろしくお願いいたします。
 
【全国銀行協会(河本オブサーバー)】
 全国銀行協会の河本です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私から2点、実務の観点から申し上げたいと思います。
 
 1つは、25ページ以降に御記載いただいている投資対象資産の拡大についてです。家計の資産形成推進の上で、個人に対してリスク許容度に応じた投資の選択肢を広げるという観点で、公募投信の組入れ資産を拡大する方向性の意義は理解するところです。
 
 一方で、それに伴いまして、当然リスクの種類や幅も拡大することになりますので、お客様側の金融リテラシーも必要となってまいりますし、我々販売会社としても、商品選定に係るガバナンスや、商品説明、フォローアップ等、お客様の最善の利益の実現を意識した販売機能の発揮に努めていく必要があると理解しております。その上で、当然販売員への研修あるいは説明ツールといったことも含めて、商品種類の拡大に伴う販売実務への影響も見込まれると思いますので、制度の具体化に向けては、販売会社としての実務の観点からの意見もしっかりと踏まえていただきたいとお願い申し上げます。
 
 もう1点が、58ページ、59ページに御記載いただいている、外貨建国内債発行の円滑化についてです。こちらにつきましては、口座管理機関である銀行の立場として意見を申し上げたいと思います。総論として方向性に大きな異論はございませんが、一方で、外国口座管理機関の下位に国内口座管理機関を設置する場合には、階層が重層化することになりますので、実務上の課題として源泉徴収あるいは元利払い金の支払い等の実務に課題が生じると思いますので、我々のような関係する金融機関の意見もよく踏まえていただいた上で、具体的な検討を進めていただければと思います。
 
 以上でございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございます。
 
 引き続きまして、経済産業省、亀山様、よろしくお願いいたします。
 
【経済産業省(長宗オブサーバー)】
 よろしくお願いします。亀山が、すいません、ちょっと出てしまったので、私、長宗から発言させていただきます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 
 スタートアップ創出、育成の観点から4点ほどクイックリーに申し上げたいと思います。
 
 1点目についてですけど、公正価値評価についてでございます。経産省としましても、公正価値評価の導入、重要だと認識しております。この観点から、LPS規則において、時価の定義として公正価値を位置づけた上で、公正価値評価を原則とするという見直しを行うべく、今年の8月から9月にかけてパブコメを実施してきたところです。その結果を踏まえながら、現在所要の見直しを行っておりまして、近日、新しい会計規則の公表を予定しております。また、上場企業が保有するVCの出資持分に関しましても、公正価値評価を含む会計処理の在り方について議論が行われているものと承知しておりまして、関係者の意見も踏まえながら検討が進むことを期待しております。また、公正価値評価に係る管理コストや監査の担い手の確保、こういった問題についても議論が進むことも重要だと考えております。
 
 2点目でございます。VCのガバナンスの在り方についてです。VC業界でも様々なファンドがあります。例えば機関投資家からの出資を考えていないような、そういうVCについてなどもありまして、そういった、様々なVCの性質に応じて議論が進められていることが大事だというふうに考えております。いずれにしましても、機関投資家からのリスクマネー供給拡大に向けて、本論点は非常に重要だと考えております。
 
 3つ目です。セカンダリー取引についてです。事務局から御説明ありましたとおり、第一種金融商品取引業の登録要件であったりとか、PTSの業務の参入要件の緩和を進めていただくことは非常に大事だと考えております。売手と買手を電子的にマッチングする事業者も含めて、仲介事業者が低コストで参入できるように、非上場株式のセカンダリー取引の環境が活性化することを期待しているところでございます。
 
 最後になります。先ほどのセカンダリーの議論とも大きく関わってきますが、特定投資家の数が限定的であるというところの課題についてですけど、例えば特定投資家の定義の拡大であったりとか、証券会社からの特定投資家のなり手の勧誘の緩和といったところに向けての取組は非常に重要だと考えております。また、少人数私募制度についても、米国の事例なども参考にしながら、勧誘人数ではなくて取得人数での投資家の数を算定できるようにすることも非常に大事かなというふうに考えております。
 
 経産省からは以上でございます。ありがとうございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。
 
 それでは、国際銀行協会様、よろしくお願いいたします。
 
少しトラブルがあるようですので、国際銀行協会様は、大変申し訳ございませんが、また別の機会に御発言いただくことにいたしまして、最後に生命保険協会様、よろしくお願いいたします。
 
【生命保険協会(三上オブザーバー)】
 生命保険協会の三上と申します。御発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 
 私どもから、資産運用会社の新規参入の促進というテーマにつきまして、1点コメントさせていただきます。
 
 生命保険業界は、お客様からお預かりした保険料で資産運用を行っておりまして、こちらは将来の保険金の原資ということになりますが、そういう観点から長期的かつ安定的な収益獲得が求められている業界でございます。
 
こうした社会的使命を果たすという観点から、外部委託の活用にあたってはトラックレコードを非常に重要視しておりまして、また、新規で参入される運用会社への委託につきましても、中長期的にコミットいただけるということが非常に重要な要素かと思っております。
 
 EMPに関しまして、ゲートキーパーの選定やガバナンスモニタリングといった運営体制の構築は、まだこれから議論が進んでいくところかと思ってございます。本日資料でお示しいただいているような公的資金を含むスキームなどの枠組みがしっかりと明示され、安定した制度の設計、さらには裾野の拡大が進んでいくということでありましたら、生命保険業界、生命保険会社としても、私どもの投資家特性を踏まえつつ、どのように関与できるかを検討できるかと思ってございます。
 
 私からは以上です。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。本日いただきました御意見などを踏まえ、次回以降のタスクフォースでの御議論につなげていきたいと思います。
 
 また、次回日程については、委員の皆様の御日程などを踏まえて、後日、事務局より連絡させていただきたいと思います。
 
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
 

―― 了 ――

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