金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」(第3回)議事録

  • 1.日時:

    令和5年11月6日(月曜日)16時30分~18時30分

2.場所:

 中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用

 

金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」(第3回)

令和5年11月6日


【加藤座長】
 定刻になりましたので、ただいまより資産運用に関するタスクフォース第3回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
 
 本日は、初めに、事務局より、第1回及び第2回のタスクフォースでの議論のまとめについて御説明いただきます。次に、事務局より、資産運用業のガバナンスの向上等、アセットオーナーと金融機関の関わり等及びスチュワードシップ活動の実質化について御説明いただき、その後、討議に移りまして、委員の皆様から御意見をいただきたいと思います。
 
 なお、本日は、長谷川委員が御欠席ですが、意見書が提出されていますので、資料4-2としてお手元に配付しております。加えて、有田委員からも意見書が提出されていますので、資料4-1としてお手元に配付しております。御参照いただければと思います。
 
 それでは初めに、事務局より御説明をお願いします。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 それでは、第1回及び第2回のタスクフォースでの議論のまとめについて御説明させていただきます。お手元の資料2に沿って御説明させていただきます。
 
 3ページを御覧ください。投資運用業の参入要件の緩和、ミドル・バックオフィス業務の外部委託についてでございます。背景・課題といたしまして、投資運用業の新規参入が伸びていない要因の一つとして、コアとなる投資運用業務以外の業務、いわゆるミドル・バックオフィス業務について、登録要件を満たすための体制整備に係る負担が重いことが指摘されております。対応案でございますけれども、適切な品質が確保された業者へのミドル・バックオフィス業務の外部委託を可能とし、投資運用業の参入要件の一部緩和を検討することが適当である。一番下の四角でございますけれども、ミドル・バックオフィス業務の受託サービスを提供する事業者を一律に参入規制の対象とすることは過度な規制となり得るため、一律の参入規制とするのではなく、ミドル・バックオフィス業務の受託サービスについて、当局の登録を受けた業者に委託すれば投資運用業の参入要件を緩和するといった構成とすることが考えられる。
 
 続きまして、4ページ、運用指図権限の全部委託についてでございます。欧州ではファンドの運営におきまして、ファンド・マネジメント・カンパニー、管理会社がファンドの運営機能に集中できる環境が整っている。これに対し我が国では、欧州のファンド・マネジメント・カンパニーのようなファンド運営機能に特化した業務ができないとの指摘がございます。対応案について、2つ目の四角の最後の一文ですが、投資運用業としてファンド運営機能に特化した業務を行うことは許容されるものと考えられるため、運用指図権限の全部委託を禁止する規定の見直しを行うことが適当である。一方、こうした運用の外部委託を行う場合には、委託先の品質管理を適切に行うことが重要となるため、委託先の管理について必要な制度等の整備を行うことも必要と考えられる。
 
 続きまして、6ページ、新興運用業者促進プログラム、いわゆる日本版EMPについてでございます。背景・課題でございますが、新たに資産運用ビジネスを始めるに当たっては、新規参入業者としてのトラックレコードがないため、運用資金(シードマネー)を獲得することが難しいとの課題が指摘されています。対応案でございますが、金融機関やアセットオーナーが新興運用業者による運用成果を通じて、顧客・加入者の最善の利益を実現できる環境を整備するため、官民連携して新興運用業者に対する資金供給を円滑化するためのプログラムを策定することが適当である。新興運用業者の範囲や運用対象とするアセットクラスなどは、幅広く考えるべきである。金融機関やアセットオーナーにおいては、運用能力の高い投資運用業者を発掘し、また、将来的な顧客向け商品の委託先を発掘する等の観点から、新興運用業者を積極的に活用した運用を行うことや、幅広く新興運用業者も資金運用の委託先の選択肢に加えることが考えられる。そして、こうした取組の見える化を進めるため、政府等において、新興運用業者への資金供給に向けた様々な取組を公表することや、新興運用業者のリストを金融機関及びアセットオーナー向けに提供するといった取組を行うことも適当である。その他、金融庁において既に行っている取組として、特に海外の資産運用会社向けの取組である金融創業支援ネットワークや拠点開設サポートオフィスといった取組を拡充し、積極的に連携すべきである。
 
 続きまして、8ページ、マテリアリティポリシーの明確化でございます。背景・課題について、2つ目の四角でございますが、現状では各投資運用業者の社内規程によってマテリアリティポリシーが定められており、基準価額の訂正を行う水準はおおむね0.5%であるが、各社によってばらつきがあり、また、当該ポリシーの投資家への周知も図られていない状況にある。対応案でございますけれども、マテリアリティポリシーを各社において定める場合には、適正な水準とする必要があることや、当該ポリシーを投資家へ周知することが重要であることについて、当局の監督指針等で明記することが適当である。なお、基準価額の訂正の有無は投資家に影響を与えるものであるため、マテリアリティポリシーの策定に当たっては、各社において、経営陣の関与の下、水準等についての考え方を定め、これを投資家に示すことが望ましい。これにより、新規参入業者はマテリアリティポリシーとして定めるべき水準感を把握でき、参入障壁の引下げにも資するため、投資運用業の参入促進にもつながり得ると考えられる。
 
 続きまして、10ページでございます。VCファンドの公正価値評価については、例えば公正価値と取得原価の二重管理が必要となっているといった指摘や、監査法人の実務に浸透させる必要があるといった課題が指摘されているところでございます。対応案でございますけれども、二重管理の問題については、財務会計基準機構の企業会計基準諮問会議における議論の動向を注視していく。また、VCファンド間で同業他社が公正価値評価を導入した際の留意点を共有すること等も有用であると考えられる。さらに、今後日本公認会計士協会において実務指針を監査法人の実務に浸透させていく活動を進めることが期待される。
 
 続きまして、11ページ、ベンチャーキャピタル向けのプリンシプルについてでございます。背景・課題といたしまして、スタートアップ企業への資金供給を円滑化するためには、国内外の機関投資家の資金がVCを通じて国内のスタートアップ企業に供給される流れを拡大することが重要である。対応案でございますけれども、1つ目の四角の真ん中辺りでございますが、我が国スタートアップ企業を取り巻く状況やグローバルな実務等を踏まえたベンチャーキャピタル・プリンシプルを策定し、広く機関投資家から調達を行うVC全体のガバナンス等の水準の向上を図ることが適当である。2つ目の四角でございますが、また、海外機関投資家による国内VCへの投資が促進されるよう、国内VCと海外機関投資家とのマッチングの場が設けられるような取組が広がっていくことも期待される。
 
 続きまして、13ページ、投資信託への非上場株式の組入れについてでございます。背景・課題でございますが、我が国では法令上、投資信託に非上場株式を組み入れることは禁止されていないが、事実上できない状況にあるとの課題が指摘されているところでございます。対応案につきまして、投資信託に非上場株式の組入れが可能となるよう、投資信託協会において適切な枠組みが検討されているところであり、成長資金の供給及び投資対象の多様化が促進されていくことが期待される。なお、価格透明性が高い上場株式と非上場株式が同じ公募投信の中に混在することは、投資家にとって商品性やリスクが分かりにくくなる面があるため、既存の公募投信の枠組みとは別に商品類型を設計することも望ましいと考えられる。そうした投資信託が販売される際には、投資家保護の観点から、投資家の適合性が適切に判断される必要があるとともに、非上場株式への投資に関するリスクについて投資家に対し十分な説明がなされることが求められる。
 
 続きまして、14ページ、上場ベンチャーファンドについてでございます。背景・課題といたしまして、スタートアップ企業への新たな資金供給スキームを確立するとともに、個人投資家に非上場企業への投資機会を提供する等の観点から、ベンチャーファンド市場の利用活性化に取り組むことが重要である。対応案でございますけれども、東京証券取引所においては、上場企業とは異なる非上場企業の性質を踏まえ、情報開示の内容や開示頻度について検討が行われていくことが重要である。また、自己投資口の取得についてインサイダー取引規制の対象とした上で、自己投資口の取得を可能とすることが考えられる。
 
 続きまして、16ページ、少額募集・開示の簡素化についてでございます。背景・課題といたしまして、少額募集に係る有価証券届出書の利用状況は、直近10年間で5件程度と利用実績は限られている状況である。対応案でございますけれども、1つ目の四角でございます。スタートアップ企業の資金調達に係る情報開示の負担軽減・合理化の観点から、有価証券届出書に係る開示内容をより簡素化することが適当である。
 
 続きまして、17ページ、投資型クラウドファンディングの活性化(発行上限等)についてでございます。背景・課題の2つ目の四角でございますが、我が国においては、企業が投資型クラウドファンディングにより発行可能な有価証券の総額は年間1億円未満とされているところでございます。対応案につきまして、1つ目の四角でございますが、1億円以上の資金調達をする企業が必要な開示を行うことを前提に、発行総額上限を引き上げ、5億円未満とすることが適当である。2つ目の四角でございますが、個人投資家が多数いることを嫌う機関投資家もいることが指摘されております。基本的には、スタートアップ企業がそうした可能性も含めて資金調達手段を検討すべきであるが、クラウドファンディング業者においても、そうした可能性を事業者が適切に理解しているか確認するなどの対応を行うことが適当である。現行法でも、投資運用業と第二種金商業の登録をし、ファンドを介在させることによって株主の一元化を図ることは可能であり、上述の投資運用業の参入要件の緩和に関する枠組みも活用して、個人株主が多数いることに伴う課題に対応することも考えられる。また、発行総額上限については、一般投資家も含めた勧誘がなされる前提で投資家保護の観点から定めているものであり、特定投資家向け有価証券の私募を少額電子募集取扱業務として実施する場合には、一般投資家も含めた勧誘と合算して発行上限額を設定する必要はないものと考えられる。
 
 次の18ページ、投資型クラウドファンディングについて、投資家の投資上限、投資家の勧誘方法についてでございます。背景・課題につきまして、投資家に一律の限度額を設定することは、リスク許容度や投資余力に応じた投資といった観点から改善の余地があると考えられる。また、投資家において、より詳細に投資案件の内容を知りたい場合であっても、クラウドファンディング業者による口頭での説明ができず、投資家保護の観点から改善すべきであるとの指摘がございます。対応案につきまして、クラウドファンディング業者が顧客の年収や純資産を把握し、投資家の年収や純資産に応じて、クラウドファンディングの投資上限を定めることが適当である。その際、一定金額以内であれば、年収や純資産の確認をしなくても投資ができる仕組みとすることが考えられる。また、投資勧誘の方法について、投資家からの要請がある場合に限り、音声通話による商品説明を可能とすることが適当と考えられる。その場合には、クラウドファンディング業者において、例えば音声通話のやり取りを録音するなど、顧客対応の適切性について事後検証できる方策を講じることが適当である。
 
 続いて、20ページ、プロを対象とした非上場有価証券の仲介を行う金商業者の参入要件の緩和についてでございます。背景・課題につきまして、スタートアップ企業等の非上場企業の株式についてのセカンダリー取引の活性化は、スタートアップ企業等による資金調達の円滑化に資するものであり、セカンダリー市場の充実を図っていくことが課題である。また、海外の投資運用業者が設定・運用する外国籍投資信託や投資法人について、国内の投資家に販売する場合には、第一種金融商品取引業の登録のハードルが高く、販売を断念するケースがあることが指摘されております。国内の投資家の投資対象の多様化の観点から、こうした課題への対応も行っていくことが適当である。対応案でございますけれども、非上場有価証券のプライマリー取引やセカンダリー取引の仲介業務に特化し、原則として有価証券や金銭の預託を受けない場合には、第一種金融商品取引業の登録要件等を緩和することが適当である。ただし、一般投資家も参加する流動性の高い有価証券については、十分に投資家保護を図る必要があるため、プロ投資家(特定投資家)を対象とした非上場有価証券の仲介業務に限定すべきである。なお、一般投資家による売却も可能とすることが適当である。
 
 続きまして、21ページ、非上場有価証券のみを扱うPTS業務の参入要件の緩和についてでございます。背景・課題としまして、私設取引システム(PTS)業務の規制は、小規模な取引プラットフォームで電子的に非上場有価証券のセカンダリー取引を仲介しようとする事業者にとってはハードルが高いとの指摘がございます。対応案につきまして、非上場有価証券のみを扱うPTSであって、流動性や取引規模等が限定的なものについては、取引の管理等に関する必要な規制を適用する前提で、現状の認可制から第一種金融商品取引業の登録制の下で参入可能とし、資本金や純資産要件等の財産規制やシステムに関する要件等を緩和することが考えられる。
 
 続きまして、23ページ、株式報酬に係る開示規制の整備についてでございます。背景・課題の2つ目の四角でございますが、株式報酬のうち、RSU、PSU、株式交付信託といった事後交付型株式報酬については、現行実務上、情報開示のタイミングや開示書類に差異が見られ、開示規制の解釈をめぐる企業の実務が安定していないことから導入しづらいとの指摘があります。対応案でございますが、株式報酬規程等を定めて取締役等に通知を行う行為を有価証券の取得勧誘の端緒と捉え、当該行為が有価証券の募集または売出しに該当すると整理することが適当である。また、ストック・オプション及びRSと同様、有価証券届出書の提出に代えて臨時報告書の提出を認める特例を設けることが適当である。
 
 続きまして、25ページ、排出権を対象とする投資信託の組成についてでございます。背景・課題でございますが、我が国においても、2023年10月に東京証券取引所にカーボン・クレジット市場が開設されるなどの動きが見られているところでございます。対応案といたしまして、投資信託の投資対象として、十分な流動性や円滑で適正な価格形成が確保されるかなど、まずはカーボン・クレジット市場の状況を精査することが必要と考えられる。その上で将来的に投資信託の主たる投資対象に追加することの是非を検討することが適当である。
 
 続きまして、26ページ、外国籍投資信託の国内公募投信への組入れについてでございます。背景・課題につきまして、海外における、非上場ではあるが公募で販売されているオルタナティブ投資等を行う投資信託について、国内籍公募投信に組み入れられない場合があることが指摘されております。対応案でございますが、投資信託協会において、オルタナティブ投資等を行う非上場の外国籍投資信託の組入れに関する枠組みの見直しについて検討が開始されているところである。我が国の家計においても、リスクを理解した投資家層にとっては、分散投資などが可能となるため、こうした取組が促進されていくことが重要である。ただし、投資家がリスクを負うことになるため、そうした外国籍投資信託を組み入れようとする国内籍投資信託の組成者は、投資者保護に支障がないか適切にデューデリジェンスを行うことが必要であり、また、投資家に販売を行う際には、リスクを十分に説明するなど、十分な投資家保護のための措置が講じられるべきである。
 
 続きまして、27ページ、外貨建国内債(いわゆるオリガミ債)の発行の円滑化についてでございます。背景・課題につきまして、本邦発行体が発行する外貨建国内債は、外貨によるDVP決済が可能な環境にないことから、非DVPによる発行・取引が行われており、流動性は低く、取引する投資家層は限られております。対応案につきまして、DVP決済を可能とするための環境整備を行うべきである。具体的には、外国口座管理機関が運用する外貨のDVP決済プラットフォームを国内投資家がより広く利用できるようにするため、外国口座管理機関の下位に国内口座管理機関を設置できるようにすることが考えられる。その際、外国口座管理機関は口座管理機関の誤記録等をカバーする枠組みの対象外となるため、投資者保護の観点から、DVP決済による取引を可能とする投資家は、リスク判断能力の高い投資家に限定することが適当であり、また、国内口座管理機関等においては、投資家の属性等に応じ、投資家に対し誤記録等をカバーする枠組みの対象外であることについて適切に説明することが必要であると考えられる。
 
 最後に28ページ、累積投資契約のクレジットカード決済上限額の引上げについてでございます。背景・課題といたしまして、クレジットカード決済による有価証券の購入は、法令上の要件を満たすために、現行実務では、毎月の投資上限額は基本的に5万円に制限されております。対応案といたしまして、累積投資契約によるクレジットカード決済上限額については、来年からの新しいNISA制度によるつみたて投資枠をカバーできるよう規定を見直すことが適当である。
 
 以上でございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。それでは次に、事務局から、資産運用業のガバナンスの向上等について、御説明をお願いいたします。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 お手元の資料3に沿って御説明させていただきます。
 
 1ページの目次でございますけれども、大きく3つございます。一点目が資産運用業のガバナンスの向上等、二点目がアセットオーナーと金融機関の関わり等、3点目といたしましてスチュワードシップ活動の実質化についてでございます。
 
 まず、資産運用業のガバナンスの向上等についてでございます。3ページを御覧ください。こちらは昨年の市場制度ワーキング・グループの中間整理でございます。資産運用会社等におけるプロダクトガバナンスの確保について、一番下でございますけれども、顧客本位の業務運営に関する原則の見直しを検討すべきである旨が指摘されているところでございます。
 
 次の4ページでございますが、こちらは市場制度ワーキング・グループの顧客本位タスクフォースによる昨年の中間報告でございます。こちらにおきましても、上側のアンダーラインのところでございますけれども、資産運用会社においては、想定顧客を明確にし、顧客利益を最優先して個別商品ごとに品質管理を行うプロダクトガバナンス体制を確立することが重要であることが指摘されているところでございます。
 
 次の5ページでございますが、プロダクトガバナンスの確保等に向けた課題について指摘されている例を整理したものでございます。商品組成時においては、適切な想定顧客属性の設定などの検証が十分に行われないまま、商品提供されているのではないか。商品組成後においては、想定したとおりの運用が行われているかなどの観点から十分な検証が行われていないのではないか。また、販売会社から十分な情報提供を受けられず、想定顧客に見合った販売が行われているかなどの観点からの検証が行われていないのではないか。情報の提供につきましては、想定顧客属性や費用などに関する情報提供に改善の余地があるのではないか。また、個人向けの投資信託等において運用担当者の氏名開示が進んでいないため、安心して投資できないのではないか。また、氏名開示が進むことで、投資家に対する責任を持った運用を行う意識が醸成されるのではないか。ガバナンスの確保につきましては、2つ目の黒丸でございますが、プロダクトガバナンスが機能するためには、資産運用会社自体のガバナンスが向上する必要がある。オルタナティブ投資は、伝統的な証券運用よりも高度な管理が必要であるなど、投資対象・投資手法のリスク等に応じたスキームの選択や販売対象の検討などの適切なガバナンス体制が求められるのではないかといった指摘でございます。
 
 6ページでございますが、プロダクトガバナンスの確保等に向けた課題への対応についてでございます。2つ目の四角でございますが、資産運用会社における適切な商品組成と管理、透明性の確保等を後押しするため、顧客本位の業務運営に関する原則、FD原則に、資産運用会社のプロダクトガバナンスを中心とした記載を追加し、資産運用会社のガバナンス体制の確立を図っていくべきではないかということでございます。
 
 次の7ページは、御参考としてでございますが、プロダクトガバナンスに関連するEUの制度についてまとめた資料でございます。
 
 次の8ページも御参考として、運用体制の透明性について、海外比較等をした資料でございます。
 
 続きまして、10ページにつきましては、資産運用モニタリング室の中川参事官よりお願いいたします。
 
【中川監督局資産運用モニタリング室参事官】
 監督局の中川と申します。よろしくお願いいたします。
 
 これまで新興運用会社の育成等の議論がされてきたところでございますけれども、既存のプレーヤー、特に現状で相応の市場シェアを占めております大手金融機関グループに所属する資産運用会社の果たすべき役割も大きいものと考えております。そうした観点から、大手金融グループにおいて、顧客利益よりも販売促進を優先した金融商品の組成・管理が行われているのではないかという懸念を払拭いただくこと、また、顧客の最善の利益を考えた運営のための体制を構築いただくことが重要と考えてございます。
 
 また、右下のグラフでは、日系運用会社が運用する外国株アクティブファンドの自社運用、外部委託の割合を示しておりますけれども、自社運用が限定的となっている中で、これを強化していこうとされる場合、あるいはサステナブル投資とかオルタナティブ運用等の新たな領域におけるビジネス展開を実現していこうとされる場合には、運用人材育成確保に向けた取組が重要になっていくと思われます。
 
 そうしたことから、四角で囲んでいるところでございますけれども、大手金融グループに対して、グループとしての資産運用ビジネスの経営戦略上の位置づけ、運用力向上やガバナンス改善・体制強化のためのプランの策定・公表していただくことが重要なのではないかという点を提起させていただいております。
 
 次のページをお願いします。また、これまでこのタスクフォースでも御指摘がありました投信の基準価額の二重計算の問題についても簡単に触れさせていただきます。二重計算は、まだ情報技術が発展しなかった時代には、委託会社と受託会社の間での相互牽制機能の発揮を通じて受益者保護にも貢献してきたと認識してございますけれども、投信をめぐる環境が大きく変化する中で、現在では、投資家への追加的なコストあるいは新規参入障壁の要因となっているのではないかという指摘も存在するところでございます。一者計算の実現・浸透に向けましては、整理、対応すべき様々な論点が存在していると承知してございまして、資産運用会社においては業務フローとかシステム変更の対応、また、業界全体として、計理処理の標準化、データ連携フォーマットの統一などの対応が必要であり、このほか、マテリアリティポリシーの明確化の必要性も提起されていると認識してございます。そうしたことから、中央の四角でございますけれども、金融庁といたしましても、業界各社の動向あるいは協会における検討を踏まえつつ、特にマテリアリティポリシーの明確化につきましては、当局として何ができるかについてよく検討してまいりたいと考えております。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 続きまして、13ページ、投資信託における種類受益権についてでございます。問題の所在でございますけれども、投信法上、投資信託の受益権は、均等に分割しなければならないとされておりますが、欧米では、受益権について複数の種類が発行されるのが一般的でございます。我が国でも種類受益権を発行できないかとの指摘がございます。真ん中の図でございますけれども、左側について、現在我が国では、種類の異なる受益権を設定するためには、マザーファンドとは別のベビーファンドを設定する実務となっていると承知しております。論点でございますが、種類受益権の発行が認められれば、ファンドごとにかかる監査費用等を下げられるのではないかとの指摘がございます。一方で種類受益権については、種類受益者ごとの利害対立の調整や利益相反の防止など、投資家保護の仕組みについて検討することが必要となります。また、種類受益権が生じることを前提とした計理システム等の整備など、実務面の検討も必要となります。そのため、まずは投資信託協会等において海外の事例・状況の把握を含め、具体的なニーズや実務面、投資家保護の課題を整理するための検討を行うことが適当ではないかということでございます。
 
 続きまして、14ページは、こちらは御参考の資料でございますが、金融審議会におけるこれまでの検討ということで、平成24年に開催された金融審議会におきましても、種類受益権について議論され、論点が示されているところでございます。
 
 続いて、16ページ、投資信託約款の重大な変更についてでございます。課題として、投資信託約款の変更について、投資家保護や顧客本位の観点から望ましいと思われる場合であっても、重大な変更に該当すると変更手続に大きな負担が生じるため、約款の変更に踏み込みにくく、重大な変更の基準を明確にしてほしいとの指摘がございます。現行については、平成26年に金融庁において投資信託に関するQ&Aを公表し、重大な変更に当たらない場合について類型ごとに具体例を示しているところでございます。対応といたしまして、顧客の利益に資する変更など、投資家保護に支障のない約款変更について、投資者の負担につながる過重な手続を回避する観点から、当該Q&Aのさらなる明確化を図ることとしてはどうかということでございます。
 
 続きまして、18ページでございます。ここからはアセットオーナーと金融機関の関わり等についてでございます。この資料から3枚のスライドは、先日の資産運用立国分科会で厚生労働省が配付した資料となります。まず、このスライドは、DBについて、改革の方向性を示しているものでございます。取組項目として、運用力の向上について考えられる施策案の例として、受益者の最善の利益を達成するため、規模・特性に応じた運用受託機関の適切な選択や定期的な点検・見直し、より適切な運用に向けた専門性の向上のための取組があげられています。また、共同運用の選択肢の拡大については、企業年金連合会が実施する共同運用事業の発展及び総合型基金の利用促進による高度化が例として示されています。加入者のための運用の見える化の充実につきましては、加入者が他社と比較できるよう、資産運用状況に関する情報開示といった施策例が示されているところでございます。
 
 次の19ページは、DCについての改革の方向性についてでございます。取組項目として、適切な商品選択に向けた制度改善としまして、運営管理機関・DC実施企業・加入者本人の各段階における適切な運用の方法の選択を支援するための取組、特に元本確保型商品のみの運用のままとなっている場合などが示されています。加入者のための運用の見える化の充実につきましては、運用の方法のラインナップも含めた開示の促進といった施策の例が示されているところでございます。
 
 次の20ページは、私的年金のさらなる普及促進に向けた取組としまして、考えられる施策の例として、私的年金の広報といったものが示されているところでございます。
 
 次の21ページでございます。以上を踏まえましたアセットオーナーと金融機関の関わりについての論点でございます。公的年金や企業年金、学校法人や大学ファンドといった各アセットオーナーは、ゲートキーパーや資産運用会社などの金融機関を通じて様々な資産への投資を行っているところでございます。アセットオーナーの運用に関わる金融機関において、アセットオーナーの最善の利益が確保されるようどのような取組が期待されるか、また、運用力の向上、運用成果の還元に努めようとするアセットオーナーに対して、金融機関としてどのように貢献していくことが考えられるか、御意見をいただければと思います。
 
 次の22ページは、DCにおける金融機関の役割についてでございます。企業の多くは運用管理業務や投資教育を運営管理機関としての金融機関へ委託しているところでございます。加入者の最善の利益を確保する観点から、運用商品の選定・提示等を行うこれらの金融機関に対してどのような取組が期待されるか、当局によるモニタリングはどうあるべきか、御意見をいただければと思います。
 
 次の23ページは御参考として、DC資産と投信の割合に関するアンケート結果の例となります。
 
 続きまして、スチュワードシップ活動の実質化について、こちらは企業開示課長の野崎課長からお願いいたします。
 
【野崎企画市場局企業開示課長】
 企業開示課の野崎と申します。よろしくお願いします。私のほうから、最後のパーツでありますスチュワードシップ活動の実質化について御説明させていただければと思います。
 
 こちらは、25ページ目にございますように、成長と分配の好循環の実現に向けて、企業の持続的な成長を後押しするコーポレートガバナンス改革の推進は、資産運用立国に関する政策プランを進めていく上で基盤とも言える部分と考えておりますので、この場をお借りして、特に企業と投資家との対話、エンゲージメントの実質化に向けた取組について簡単に御説明させていただければと思います。
 
 次の26ページから29ページにかけて、これまでの取組を御紹介しております。まず、26ページにありますように、これまで政府としましては、スチュワードシップ・コード、それから、コーポレートガバナンス・コードの策定及び改訂を通じまして、投資家と企業の中長期的な視点に立った建設的な対話を促進し、コーポレートガバナンス改革を進めてきたというところでございます。
 
 次のページは、スチュワードシップ・コードの概要でございます。
 
 28ページ目、本年4月に金融庁ではアクション・プログラムを策定しまして、今後は形式的な体制整備ではなくて、対話の促進とか企業と投資家の自律的な意識改革といった実質面での取組が重要であるとの考え方に基づきまして、今後の取組の方向性をお示ししたところでございます。
 
 その一つとしまして、29ページ、スチュワードシップ活動の実質化に関しまして、機関投資家、アセットオーナーにおいて、実効的なスチュワードシップ活動を担うためのリソースが不足しているという問題とか、エンゲージメントが形式的になっている場合があるといった課題の解決に向けて、取組の重要性が共有されたところでございます。
 
 次の31ページ目に行っていただきまして、その具体的な取組としまして、まず東証による資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応という要請がございます。今年の3月末にプライム及びスタンダード市場の上場企業に対しまして、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、現状分析、計画の策定・開示、取組の実行を行うよう、東証より要請がなされており、こうした要請に基づく企業の開示を踏まえ、投資家と企業が積極的に対話をし、この取組をブラッシュアップしていくということが期待されているところでございます。
 
 次の32ページ目でございます。7月時点の開示状況でございますけれども、左のグラフにございますように、プライム市場上場企業のうち31%が具体的な取組の開示や検討中である旨の開示を行っているというところでございます。
 
 33ページ、今後の取組でございます。こうした取組は、一過性のものであるべきではなくて、また、PBRが1倍を割れているか否かということにかかわらず進められていくことが重要と考えております。こうしたことから、本年10月、東証の要請の再周知が行われるとともに、来年1月以降、定期的にこの要請に基づき開示している企業の一覧が公表されることとなるということが発表されているところでございます。金融庁といたしましても、収益性と成長性を意識した経営に向けた企業の取組を一層促す観点から、東証と連携し、企業の取組をフォローアップしていきたいと考えております。
 
 続きまして、35ページ目でございます。エンゲージメントに関する近時の取組として、まず、GPIFが採用しているエンゲージメント強化型パッシブファンドについて御紹介させていただきます。GPIFは、スチュワードシップ活動を通じた市場全体の底上げとスチュワードシップ活動のアプローチの方法の多様化・強化を目的として、スチュワードシップを重視したパッシブ運用モデルを採用し、その対価としてスチュワードシップ活動を加味した手数料を支払っているというところでございます。採用された各社におきましては、インデックスへのインパクトが大きい企業の絞り込みによる効率的なβの上昇や、トップマネジメントによる積極的な関与など、各社の状況に応じたエンゲージメントが行われているところでございます。エンゲージメントの実質化に向けては、このようにスチュワードシップ・コードの趣旨を踏まえた、自ら置かれた状況に応じた対応を促進していくということが重要と考えております。
 
 36ページでございます。近時、国内外においては、複数の投資家が協働して企業に対して対話を行っていくという、いわゆる協働エンゲージメントの取組が進められているところでございます。国内におきましても、機関投資家協働対話フォーラムや生命保険協会のスチュワードシップ活動ワーキング・グループにおいてこうした取組が進められているというところでございます。リソースの制約という課題がある中で実効的なスチュワードシップ活動を行うためには、こうした協働エンゲージメントを活用していくということも有効かと考えております。
 
 次に、37ページでございます。アセットオーナーにおいても協働する取組が見られているところでございます。企業年金連合会においては、スチュワードシップ活動の実質化に向けて、運用受託機関のスチュワードシップ活動を協働でモニタリングする旨の表明をされているところでございます。また、個社においても、スチュワードシップ活動のリソースを補う取組として、エンゲージメントの代行とか支援を受託して実施するという取組も見られているところでございます。このように、機関投資家、アセットオーナーそれぞれにおいて実効的エンゲージメントを行う機運が醸成されていくということが重要であり、当庁としましてもこうした取組を促していきたいと考えております。
 
 続きまして、39ページ、こうした取組を促すための制度上の対応について、金融審議会に設置された公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループにおける検討の方向性について御紹介させていただければと思います。このページの下の諮問事項にございますように、企業と投資家との間の建設的な対話を促進する観点から、本年3月、大量保有報告制度等の在り方について検討を行うことが諮問されたところでございます。
 
 次のページ、40ページでございます。大量保有報告制度の概要を記載しておりますけれども、この中で、2つ目の共同保有者とか、3つ目の重要提案行為等の範囲が不明確ということからエンゲージメントの支障となっているとの指摘があるところでございます。
 
 次のページの41ページでございます。特例報告制度の適用を受ける前提としまして、投資先企業に重要提案行為を行わないことが要件とされておりますけれども、この重要提案行為につきましては、実効性があるエンゲージメントを促進するため、さらなる明確化が必要ではないかという御指摘をいただいているところでございます。それを受けまして、現在、その範囲の限定とか明確化について御議論をいただいているところでございます。
 
 次のページ、共同保有者でございます。42ページ目、大量保有報告制度上、合算の対象となる共同保有者につきましても、協働エンゲージメントを促進するため、さらなる明確化が必要という御指摘があり、規制の潜脱にも留意しつつ、その範囲の限定・明確化について御議論いただいているというところでございます。
 
 最後のページ、実質株主の透明性についての検討状況でございます。こちらは、現行制度上は、議決権指図権限や投資権限を有するいわゆる実質株主については、大量保有報告制度の適用対象となる場合を除いて、企業やその株主がこれを把握する制度が存在しないという状況でございます。企業と投資家の対話を促進する観点から、実質株主を把握することができるように制度を実現していくということが重要かと考えておりまして、こちらについても御議論いただいているというところでございます。
 
 以上がスチュワードシップ活動の実質化についての現状の御説明となります。以上でございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。それでは、これまでの当タスクフォースにおける議論のまとめや、本日の事務局からの御説明に関する御質問、御意見をいただければと思います。全体の会議時間の制約もありますので、御発言のお時間といたしましては5分を目安にしていただければと思います。また、御発言の順番に関しましては、前後する可能性がございますので、あらかじめ御了承いただきますようお願いいたします。
 
 それでは、御発言をお願いいたします。それではまず、有田委員より御発言いただきまして、その次に、有吉委員、お願いいたします。
 
【有田委員】
 ありがとうございます。まず、これまでの議論のまとめですけれども、資産運用に関連した課題認識について整理された内容であり、また、このタスクフォースでの各委員からの発言もおおむね盛り込まれていると認識しております。なお、私が第1回会合で運用対象の多様化のところで申し上げました提出物につきましては、後ほど少しだけお時間をいただいて御説明させていただきたいと思います。
 
 続いて、今回のテーマについて意見を述べたいと思います。まず、運用会社におけるプロダクトガバナンスについてでございますけれども、長期にわたり多くの問題が指摘されているにもかかわらず、いまだにこれが確保されていないという御指摘を受けることにつきましては、運用業に携わる者として極めて遺憾に思っております。今回、FD原則に資産運用会社の本件に関する記載を追加することには賛同いたします。
 
 一方、大手金融機関グループにおける運用業の位置づけにつきましては著しく向上しておりまして、各グループとも真剣に運用ビジネスの強化に取り組んでいることは極めて喜ばしいことだと思っております。しかしながら、運用商品の製造と販売が同じ金融グループに存在することの利益相反は、ルールをいかに厳しくしても、個人投資家から見れば払拭できない懸念でありまして、人事交流、資本関係等さらなる抜本的な解決策を模索する必要も将来出てくるのではないかと考えております。今回、経営戦略上の位置づけや体制強化のためのプランを公表することについても賛成いたします。
 
 また、二重計算の問題ですけれども、本来は運用者ではない者が責任を持って基準価額を公表すべきでありまして、そのために必要であれば、法律の改正も含めた整合的な体制を整備すべきと考えております。マテリアリティポリシーを標準化することは、業界の効率化に資するものだとも考えております。
 
 続いて、アセットオーナーと金融機関の関わり方等についてです。申し上げるまでもなく、国民の将来の資金を安定的に確保することは、資産運用立国として最大の目的であり、私個人の志もその1点にあると言っても過言ではございません。なかんずく、年金の拡充は国民に安心感を与え、現世代の消費を刺激することにもなり、経済成長を促す効果もあると思っております。
 
 国内の退職給付積立金の50%以上を運用する公的年金は、世界的にも高度化された運用機関であり、長期の運用成績は私は特出すべきと考えております。また、DBもおおむね同様です。運用成績はすべからくそうなのですけれども、リスクに応じた成果を論じるべきでありまして、各運用主体が抱える負債に応じてどのようなリスクを取り、それに応じてどのような成果であったかを評価すべきだと思っております。必ずしも7%の投資成果が5%の投資成果よりもいつも好ましいというわけではございません。そうした前提で各運用主体について運用担当者を、例えば短期的な人事ローテーションではなく、なるべく長期に育成・確保する必要があると思います。また、現在はやや限られております共同運用の選択肢を増やしていくことは極めて重要だと思います。
 
 こうした議論は金融サービスのプロバイダーの高度化に関わるものですけれども、DCにおきましては、消費者の金融リテラシーの向上がより強く求められます。国民の皆さんが仕組みを理解し、個人の人生設計を考えた上で、まずは取るべき運用リスクを考え、その上で商品を選定していくようになるまでにはかなり遠い道のりと感じております。こうした考え方の浸透の推進をしながら、DBとの兼用を計らい、業界として様々な取組をしていくことが急務であると思っております。
 
 続いて、スチュワードシップ活動の実質化についてです。第1回会合で私は、金融の仕組みにおいて、直接金融を通じて機関投資家が果たす役割が増大していると申し上げました。企業、そして経済全体の長期的かつ持続的成長の実現に当たって、スチュワードシップ活動の実効性向上は極めて重要なテーマだと思います。
 
 ただし、魔法のような特効薬があるわけではございません。各機関投資家が明確な投資哲学を持ち、それぞれの特徴や個性を生かしながら地道に創意工夫を重ねて、投資先とエンゲージメントを重ねていくことが重要だと考えております。そのために何よりも重要なのは人材でございます。同活動に求められる高度なスキル・能力だけでなく、スチュワードシップ活動の実践に強いインセンティブと情熱を持った人材、こういった人材の育成が急務だと考えております。
 
 続きまして、少しお時間をいただきまして、第1回会合で申し上げました、既に存在するものの、制度的・実務的な制約があって十分生かされていない、活用されていない商品について、いかに投資をより容易にしていくかについて御説明させていただきたいと思います。
 
 まずは、お配りいたしましたスライドの3枚目でございますが、投資商品の税制関連の論点として4つございます。①は、つみたて投資枠における利用可能なインデックス商品の範囲の拡充の問題でございます。長期の資産形成上、年齢に応じて債券の役割が増してくるにもかかわらず、単一指数に連動する通常のインデックスファンドの対象として債券インデックスが含まれないのは極めて使い勝手が悪いと思います。現在制度上指定されている指数の範囲を拡充し、株式以外の資産も含めて取り込むことで、既にある優良な商品を用いて投資家のよりよい資産形成を支援することができると考えております。
 
 ②は、同じくつみたて投資枠において、現在はETFの取得価額について制度上の制約があるということでございます。事実上、市場価額のあるETFを単元未満株と同様に処理するシステムを必要とする要件となっており、この制約がなければ投資家の選択肢は大きく広がるのではないでしょうか。
 
 ③、④は、書面記載のとおりでございますので説明はここでは割愛させていただきますけれども、同じく現行制度の制約を工夫することで、制度にかなう商品をより多く投資家に届けることが可能だと考えております。
 
 続いて、スライド4枚目ですけれども、会計面の論点です。会計上、ETFの特性に応じた制度を別途備えることで、現在売買されているETFの流動性を改善するための論点でございます。
 
 スライド5枚目ですけれども、これは複数の投資家の資金をプールする投資信託において、投資家間の公平性をどう高めるかという論点でございます。ここで言うDilutionとは、投資信託の設定・解約に伴う取引コストが、その設定・解約を行った投資家ではなく既存の投資家によって負担されているという問題でございます。投資信託において特に大口の設定・解約や短期間の繰り返し設定・解約を伴う資金取引コストが、投資信託にとどまっている投資家の資金によって負担されているということをどのように改善していくか、これは個人の長期分散投資を大事にしていくという点からも非常に重要なことなのではないでしょうか。
 
 続いて、スライド6枚目ですが、外国籍の投資信託は、NISA制度も含めて既に国民の皆様の投資の選択肢の一つでございます。しかしながら、外国籍の投資信託は、国内で勧誘等を行うために一度国内に届出を行いますとその届出を廃止できないのが現行制度でございます。このため、より良質な商品への新陳代謝が阻害されることにならないよう、制度見直しの余地がないかというのが私どもの提起でございます。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 有田委員、ありがとうございました。引き続いて、有吉委員、野尻委員、白須委員の順に御発言をいただきます。有吉委員、お願いいたします。
 
【有吉委員】
 有吉でございます。私からは、資料2、それから、資料3の各項目について個別にコメントをさせていただきたいと思います。
 
 資料2のほうでございますが、内容について基本的には賛成をいたします。その上で幾つかの項目について個別にコメントさせていただきたいと思います。
 
 まず、日本版EMPについてでございます。日本版EMPの、官民連携をして新興運用業者に対する資金供給を円滑化するという思想については全面的に賛成するものであります。ただ、民間の金融機関やアセットオーナーは、受益者に対してフィデューシャリー・デューティーを負っているという立場にある者でございますので、この日本版EMPの思想によって新興運用業者に対する資金供給が義務づけられるといった規律にしてはならないと強く思うところであります。
 
 次に、マテリアリティポリシーの明確化についてでございますが、事務局説明資料にございますとおり、ポリシーを定めた場合に周知をすることが重要であるという点は全くそのとおりであると思うわけでございますが、同時に権利関係を定める約款の中にマテリアリティポリシーを規定することが許容されるのだということが明確になると、実務として動きやすい面があると考えます。監督指針等の改訂によってそのようなメッセージを盛り込むということも御検討いただきたいと思います。
 
 それから、非上場株に運用対象を絞った投資信託についてでございます。これも事務局説明資料にございますとおり、上場株を対象とする投資信託よりもリスクが高いという面があることは否定ができないわけでございますけれども、一方で非上場株式を直接保有することに比べると、分散が利く点等でリスクが緩和されるというものでもございますので、その点も強調するような形でメッセージを発してほしいと思います。
 
 次いで、株式投資型クラウドファンディングに関する見直しの関連でございますが、スタートアップ企業が資金調達手段の適切性を理解しているか業者に確認を求めるという制度はあり得るのだろうなとは考えます。ただ一方で、資金調達に必死なスタートアップ企業に将来の状況まで予測して判断を求めるというのは、現実的には難しいように感じます。そういった意味で、本来クラウドファンディングがなじまないようなスタートアップ企業に対して業者がクラウドファンディングの利用を促すことにならないように、この点は監督面においてしっかり規制運用に努めていただきたいと思います。
 
 それから、累積投資契約のクレジットカード決済についてでございます。第1回のタスクフォースにおいて発言しましたとおり、規制趣旨との関係で、クレジットカード決済の金額に上限を設けることの必要性には疑問を感じるところがございます。ただ、その後この制度について改めて考えている中で、決済に要する費用を誰が負担すべきなのかという点や、それから、いわゆるポイントを獲得する目的で有価証券取引におかしなインセンティブが働かないようにすべきである点等、考慮しなければならない変数の多い課題であるとも思い至りました。将来的にはそういったクレジットカード固有の論点にも踏み込んだ制度設計を期待したいと思うところでございますけれども、当座の対応としてはバランスのよい上限額を模索するということで進めていただくべきなのかなと考えております。
 次に、資料3についてでございます。まず、プロダクトガバナンスについて、この点、私に誤認があれば御指摘いただきたいと思いますが、今回は基本的には投資信託を念頭に置いて顧客本位の業務運営に関する原則を見直す方針であると理解いたしました。その点については賛成するところでございますが、プロダクトガバナンスという考え方については、投資信託だけではなくて、それ以外の形のファンドとか、証券化商品とか仕組債とかこういった他の類型の仕組み性商品にも通じるものであると思います。一方で、商品類型ごとに実務の状況に違いがあるというものでございますので、投資信託に関する規律をそのまま他の商品類型に適用するのは必ずしも適切ではないといった面もあると思います。これらの点も踏まえまして、今後、プロダクトガバナンスという観点について、さらなる制度の見直しも検討していただきたいと思います。
 
 それから、投資信託の種類受益権についてでございます。こちらは事務局説明資料にもございますとおり、仕組み自体もそうですし、権利内容や、それから、利益相反関係といったものが通常の投資信託に比べて非常に複雑になるという面があると思います。投資信託協会のほうで議論を進めるに当たりましては、こういった観点、特にこれが投資家保護や、適合性をどう判定するのかといった観点についてよくよく検討して、制度を導入するかどうか、導入するとしてどのような規律にするか、検討していただきたいと思います。
 
 それから、アセットオーナーに対する規律、さらにはアセットオーナーに関わる金融機関に対する規律についてでございます。今国会で審議対象になっております金融サービス提供法の改正によって、企業年金の運営者等にも誠実公正義務が課せられることになると理解しております。こういった規律を考えるに当たっては、この新しい法令上の義務との関係についても十分整理した上で制度設計していただくことが重要ではないかと考えます。また、一律の義務、一律の規律とするのではなく、アセットオーナーの規模や属性といった個別事情に応じて取り扱う必要があるものだと思いますので、緩過ぎず厳格になり過ぎずというところで、バランスがよい制度となることを期待したいと思っております。
 
 最後に、スチュワードシップ活動との関係でございます。機関投資家が受益者に対する義務を果たすということとの関係では、協働エンゲージメントや、その他、投資家あるいはアセットオーナーが協働的に活動するということが重要な要素になると思います。その観点で、大量保有報告制度の見直しに当たりましては、アセットオーナーや機関投資家が協働活動をするということについて、アセットオーナー側、機関投資家側のリアルなニーズや何が懸念なのかということをしっかりくみ取って制度設計を進めていただきたいと思います。
 
 私からは以上でございます。
 
【加藤座長】
 有吉委員、ありがとうございました。それでは、野尻委員、よろしくお願いいたします。
 
【野尻委員】
 お時間ありがとうございます。私のほうからは5点お話をさせていただこうと思っています。最初の3つが資料2のほうで、残りの2つが資料3になります。
 
 まず、資料2、これまでの議論をまとめていただいているなという感じがするんですけれども、一般投資家の目線で見ると、一般投資家に直接影響するものと、業界内またはプロの投資家を対象にした議論もしくは規制緩和がごちゃごちゃに入っているなという感じをすごく強く感じるんです。これをそのまままとめた報告書として出そうとすると、何だかどこまでが自分に関わりそうな話なのか、ここから先は自分に直接じゃないなとか、この辺の線引きがなかなか難しいのではないかと思います。
 
 特に情報の非対称性が言われる中で、競争力の強化とかそれによる多様な商品の登場というのは、顧客の最善の利益につなげるというこのコンテクストには必ずしも直結しないと思っているんです。そのためには、やっぱりそれをサポートする目利きみたいな方々がそれぞれいないと難しいだろうと。例えばファンドアナリストみたいなものとか、デューデリを専門にやってくれる会社とかアドバイザーとか、この辺がこの議論の中では少し手薄になっているのではないかなという感じを受けました。
 
 個別のポイントでは、3ページ、4ページは投資運用業の参入要件の緩和のところが記載されているんですけれども、3ページを読んでから4ページを読むと、あ、そうか、そういうことだったのかと思えるような感じ。4ページのほうには、ファンドの運用における欧州のあるべき姿みたいなものが示されているんですけれども、これが日本におけるあるべき姿かどうかは議論のあるところかもしれませんが、これを見ておけば、運用の業界もしくは投資信託を個人投資家に届けてくれるというプロセスは、ファンド・マネジメント・カンパニーもしくはそのファンクション、アセットマネジメント・カンパニーとファンクション、それから、ディストリビューターとそのファンクション、アドミニストレーターとそのファンクション、この4つがあるよと書かれています。3ページの議論は、アドミニストレーターをどう使っていけるようにするか、それによってコストダウンができるのかという議論であるとか、4ページのところが、アセットマネジメント・カンパニーとファンド・マネジメント・カンパニーのそれぞれの在り方をどう整理しているのかという議論になるように思えています。なので、もう少し目線を下げてというと失礼な言い方かもしれませんが、分かるようにしていただけるとうれしいと思います。これが2点目です。
 
 3点目は、投資信託への非上場株式の組入れです。これも先ほど御指摘があったと思うんですけれども、やっぱり普通のものとは違う商品類型を別な累計として設計することは必要だと思っています。
 
 それから、資料3のほうは2点になります。5ページ目の想定顧客属性。これは非常に重要な情報だと私は認識をしてこれまでも議論に参加をさせていただいたのですが、依然としてその情報の提供が不十分ではないかという指摘をされている。有田委員もおっしゃっていたように、これはやっぱりもう少し何か手を打つ必要があると思います。私は、本当に業界でこれを自主的につくるのが難しいのであれば、もう少し当局が踏み込んで具体的な表現みたいなものを見せてもいいのではないかというぐらいに思っています。
 
 先ほどの4つに分けた議論でいけば、ファンドマネジメントをする会社にとって、想定顧客属性というのは、顧客の最善の利益追求というときの大きなポイントになるはずだと思うんです。アセットマネジメントは必ずしもそうじゃないかもしれませんけれども、ファンドマネジメントの機能としては非常に大事になると思います。その意味でここをぜひキーにしていただきたいし、また、6ページで、プロダクトガバナンスの記載に追記というような表現なんですが、できれば原則を増やすというよりは、やはり第2の原則のところ、先ほどから申し上げている顧客の最善の利益の追求というところの注記ででもいいので、もう少し明確にするという手があるのではないかと思います。
 
 最後のポイントは、二重計算、それから、投資信託の種類受益権、これはぜひ早急に検討に向けて動いていただきたいなと思います。また、有吉委員がおっしゃっていた、アセットオーナーの規模に応じた議論みたいなのも、一律にするのはやっぱりよくないなという感じを強く受けました。
 
 以上であります。
 
【加藤座長】
 野尻委員、ありがとうございました。続いて、白須委員、玉木委員、片山委員の順に御発言をいただきます。白須委員、よろしくお願いします。
 
【白須委員】
 白須です。私も、時間の制約があるので、大きく4つ申し述べたいと思います。
 
 まず1つ目が、資料2、今までの議論のところの6ページでございますが、新興運用業者促進プログラムの対象とするアセットに対して、このほかにデジタルアセット、暗号資産を加えていただきたいと思います。新興業者は海外のみでなく、国内の新会社の設立、皆様御承知だと思いますけれども、若手の元信託銀行マンが非常にそういう分野で頑張っておりますので、そういった方を支援できるようにしたらいいと思っています。
 
 2番目ですが、これは資料3の今回の議論でございますけれども、まず6ページの運用会社のプロダクトガバナンスについてございます。日本の投資信託は、やたらと数が多くて、一方、デュレーションが短過ぎるということが問題になっております。本当に顧客本位のプロダクトになっているのか疑問があるところです。そこで、海外のように、ベースになるようにどっしりした主要プロダクト、このようなものがあったらいいかと。日本は今こういうものが少ないかなと思っています。
 
 どのようなお客さんにどのようなタイプのプロダクトを提供するというのを考えれば、数千に上る選択肢に分かれていくことはないのだと思うんです。やはり顧客本位に立って、幾つかの顧客パターン、ティピカルなものに対しては、ベースとなるプロダクトをつくって、それに対していろいろなオプションをつけて商品性をリッチにする、しかし、シンプルという、そのような戦略が必要ではないかと思います。
 
 3つ目が、22ページのDCの運用管理でございます。DCは、見方を変えれば、従来の財形貯蓄(年金)のキャピタル版とも言えるんだと思います。そのように考えると、当タスクフォースで議論している運用立国のためにはキーになる商品であるはず。しかし、従来のデッド型の財形に比べて制度面で大きなデメリットがあります。それは、私も何回か転職しているうちに気がついたんですけれども、転職に当たって従来のDCを引き継げないことです。財形貯蓄はできました。DCができない理由は何なのかと。もし口座管理の問題であれば、昨今の新聞でもにぎわしているように、証券とかバンクの口座を共通にして、類似商品があればそれに引き継げるようにすればいいと思う。国としては一方で、人的資本を高める議論、つまり、終身雇用にとらわれない働き方改革を進めている。そういった中で、DC口座を引き継げない、要するに、終身雇用を逆に進めているような感じなのですけれども、それは大きな矛盾です。早急に現実に即した対応をしていただきたいと思っています。
 
 4つ目が、資料3の36ページで企業と投資家のエンゲージメントでございます。36ページは、GPIFの例でございますので、パッシブ型のマネジメントなんですが、そもそもコーポレートガバナンスにはボイスとイグジット制度があって、エンゲージメントはボイスの一つです。ですから、当然、株式保有、アクティブな活動による企業への口出しであるはずです。
 
 一般的には、パッシブ投資家というのは、個別銘柄に丁寧に目配せしているわけではなく、一律の基準をかけてしまっています。例えばROE何%とかですね。このことが少々問題があると思っております。パッシブ投資家はアクティブ投資家とは異なるわけですから、ですから、一律ってかけるのですが、一律であること、それから、ROEという指標が本当に正しいのかどうか、これは市場をゆがめかねないのではないかと思っています。あくまでも企業によっては、ROE何とか%というのが非常に楽なところもあるし、または企業の構造的とか例えばイベント、IPOとかそういうようなときに達成できないような大きな構造的な問題があるにもかかわらず、パッシブ投資家がエンゲージメントと称して特定の指標を一律に掲げるということは、私は市場をゆがめかねない危険があると思います。
 
 そう考えると、アクティブ投資家とパッシブ投資家もいる協働エンゲージメント、多くのいろいろな種類の投資家がいる協働エンゲージメントというのは一定の賛同はできるかと思います。しかし、あくまでもエンゲージメントというのは、個別の企業の実情を丁寧に把握した上で行うべきであり、特定の指標、今のROE何とか%というのは問題があるかと思います。個別の事業をよく考慮したエンゲージメント、そもそも本当にこれが今できているのかどうかという疑問は個人的にはございます。私としては、そういった疑問をまず払拭できるようなエンゲージメントをしていただいた上で、各企業に対して個別の事情に合った目標設定、それに伴うエンゲージメントをしていただきたいと思っております。
 
【加藤座長】
 白須委員、ありがとうございました。それでは、玉木委員、よろしくお願いします。
 
【玉木委員】
 それでは、私からは、まず資料2の6ページにありますEmerging Managers Programについて申し上げます。ページ真ん中辺りですけれども、対応案の1行目から2行目に、「顧客・加入者の最善の利益を実現できる環境を整備するため、官民連携して新興運用業者に対する資金供給を円滑化するためのプログラムを策定することが適当」とございます。このセンテンスにつきましては読み方に少し注意を要すると思われます。このセンテンスには、「顧客加入者の最善の利益を実現できる環境を整備するため」と「資金供給を円滑化するため」と「ため」が2回用いられています。後ろのほうの「ため」だけを見ると、あたかもEMPが新興運用業者を育成することを目的とするかのように読めてしまいますが、実は前のほうの「ため」が言わば上位にございます。EMPの目的はあくまで顧客・加入者の最善の利益を実現できる環境整備をすることだというのが文意、このセンテンスを意味するところではないかと思います。この点につき、ここのタスクフォースの議論の対外的な御説明等におかれては、誤解が生じないような御説明をぜひお願いしたいところでございます。
 
 続きまして、資料3のアセットオーナーと金融機関との関わり等、17ページ辺りからございますが、この点についてでございます。まず、企業年金に関しましては、DBにせよDCにせよ、以下の3点を常に意識していることが必要かと思います。
 
 まず、第1に、DB、DCそれぞれの根拠法の第1条において、法の目的が公的年金給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することとされていることでございます。第2は、税制優遇を前提に労使が合意して企業年金というものがつくられることでございます。第3に、したがって、労使にはそれぞれ労働者、事業に対する相応の責任があるということでございます。
 
 これを踏まえて、資料の18ページ、19ページにありますような加入者のための運用の見える化の充実について、一言コメントをいたします。このような充実に取り組むことは、一言で言って適切と思います。では、開示された情報が先ほど申し上げた企業年金というものの目的の達成にそのままつながるかといえば、事はそう簡単ではないと思います。労使は知恵を絞る必要があります。
 
 一般的な企業による開示の場合、企業が財務諸表などを通じて経営内容等を開示し、それを見た投資家が例えば当該企業の企業価値向上に期待を持てないと思えば、当該企業に投資しない、あるいは、その株式を売却するというように、投資家が開示情報を基に行動する余地が十分にございます。しかし、企業年金の場合、従業員が開示情報に接して、運用の在り方がおかしい、自分の受給権が危ないと思っても、他の企業に転職しない限り投資家のような行動を取ることはできません。
 
 したがって、事業主は、年金などに対して他の何らかの主体が何らかの働きかけを行うのでない限り、開示をしたとしても、先ほど申し上げた目的、公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することの達成によりよく資する企業年金には、必ずしもならないわけでございます。
 
 では、誰が今申し上げた何らかの主体たり得るかということでございます。個々の従業員は情報弱者ですから、開示情報をそしゃくして行動を起こすと想定することはなかなかできません。労働組合は1つの候補と思います。ぜひ頑張っていただきたいです。しかし、労働組合だからといって情報強者とは限りません。恐らくは何らかの公的な支援が必要になるのではないでしょうか。今は、労使に対してこうした公的な支援、知的な支援を行う枠組みは、私の知る限りでございません。
 
 しかし、現在審議中の法案が成立すれば、金融経済教育推進機構が設立されることとなります。この機構の運営委員会の委員は法案によれば、金融経済教育活動または年金制度に関して専門的知識を持つ者から選ばれることとなってございます。この機構は、金融アドバイザーの中立性の認定を行うことも展望されているなど、個人に対する金融教育、投資教育だけを使命とする組織ではなさそうです。言うまでもないことですが、まだ立法府の御判断が下されていない法案に関して先走った議論をすることは厳に慎まねばなりませんが、ただ、機構の役割というのはなかなか重要なテーマだなという感想は持っているところでございます。
 
 続きまして、資料3の19ページに、DCのところでございますけれども、右側の考えられる施策案の例のところに、「適切な運営の方法の選択を支援するための取組」という表現がございます。また、22ページにおきましては、一番上のところでございますけれども、3行目、当局によるモニタリングはどうあるべきかという問題提起がございます。
 
 どちらも大変重要な問題提起かと思いますけれども、この点につきましては、たくさんの主体が関わって、先ほど申し上げたDC、DC法の目的を達成するわけでございますけれども、その目的達成に向け、金融庁なり厚生労働省なりがそれぞれの間口において最も効果的に行動していただきたいです。この点に関して、関わっている主体が金融機関である場合、金融庁所管の組織である場合には、金融庁にはぜひ踏み込んだ対応、断固ということではありませんけれども、適切に踏み込んだ対応をお願いしたいところでございます。
 
 最後に、スチュワードシップ活動の実質化について一言申し上げます。資料3の35ページにGPIFのエンゲージメント強化型パッシブの御紹介があります。注目に値する建設的な試みと思います。1つ申し上げたいことは、エンゲージメント強化に不可欠の専門性の高い人材を確保するためのものなど、諸々のコストが適切に支払われることが必要ということでございます。
 
 言うまでもなくGPIFの資金は国民のものであり、被保険者の利益のために使われねばなりません。しかし、だからといって私企業である運営機関にエンゲージメントのコスト負担を押しつけることは、長期的に見て被保険者の利益にはならないでしょう。アセットオーナーがエンゲージメントに要するコストをカバーするだけの運用報酬を支払うことは、運営機関において専門性の高い人材が安定的に確保されるに足る一種のエコシステムの起点として必要だと思います。
 
 先ほどの御説明では、GPIFにおきまして通常のパッシブ運用とは異なる報酬体系が取られている、あるいは、エンゲージメント活動を加味した手数料になっているというふうな御説明がございました。これは長期的に見て被保険者の利益に資する適切な御判断ではないかと思うところでございます。GPIFをはじめ公的なアセットオーナーにおかれては、そういう負担を国民が許容してくれるよう丁寧な説明に努めていただきたいです。また、企業年金など私的なアセットオーナーにおかれては、関係者の間で運用機関のエンゲージメントに何を期待するのかに関して、そのコストを含めた議論を深めていただきたいと思うところでございます。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 玉木委員、ありがとうございました。
 
 続きまして、片山委員、上田委員、大槻委員の順に御発言をいただきます。片山委員、よろしくお願いいたします。
 
【片山委員】
 連合の片山でございます。ウェブから失礼いたします。本日は3点に絞って意見を述べさせていただきます。
 
 1点目は、投資家保護の重要性についてです。資料2の、これまでの議論のまとめに、投資家の保護について幾つか記載いただいておりますが、今後の報告書の取りまとめに当たっても、様々な改革を行っていく前提として、投資家保護がおろそかになってはいけない旨の記載をいただきますようお願いしたいと思います。
 
 2点目は、資料3の企業年金の運用についてでございます。これまでも申し上げてきましたが、企業年金の原資が賃金後払いとしての性格を持つ退職給付であることを踏まえれば、労使自治、労使合意の尊重を前提に、長期にわたり確実な給付が保障される制度を確立すべきであると考えます。このため、スタートアップ企業への投資の促進などの政策的な目的でリスクの高い投資先への運用に誘導するような議論は適当ではないと考えます。
 
 現在、企業年金の改革の方向性は社会保障審議会においても議論が進められておりますので、そちらの議論も十分に尊重して進める必要があると考えます。
 
 3点目は、スチュワードシップ活動についてです。資産運用会社の新規参入に当たっては、短期的な利益追求主義に陥ることを助長することがないよう、資産運用会社にスチュワードシップ責任を果たすことを促し、企業との建設的な対話を通じて、サステナビリティを強く意識した経営を助長していく必要があると考えますので、この点よろしくお願いしたいと思います。
 
 私からは以上です。ありがとうございます。
 
【加藤座長】
 片山委員、ありがとうございました。
 
 それでは、上田委員、お願いします。
 
【上田委員】
 ありがとうございます。では、まず、資料2についてですが、これまでのまとめのところ、この会議でほかの委員の皆様からお伺いした内容など網羅的に入っているかと思います。特段こちらについて私は修正をお願いした点はございません。賛同いたしております。
 
 続きまして、資料3で御説明いただいた内容について4点コメントさせてください。
 
 まず、第1点、プロダクトガバナンスについてでございます。プログレスレポート等を踏まえて、金融機関、特にアセットマネジメント会社、運用機関においては、真摯にこの対応に取り組んでいるところと拝察しております。商品設計についても、各アセットマネジメント会社においていろいろな規程を設けたり、社内の体制を整えたりして、体制を整えておられるのかなと思います。しかしながら、実際の商品企画から販売に至るプロセスにおいては、やはり販社の影響というものがあるのではないかと懸念をしているところです。
 
 そこで、もしよろしければお聞きしたいのですけれども、金融庁において、プロダクトガバナンスや、次に言いますが、運用会社のガバナンス等について、金融機関に対してモニタリングされておられると思います。この場合、当事者である運用機関だけで本当に足りるのだろうかと。本来であれば、販社も含めて見ていくことで、プレッシャーを与える側の影響力はあるわけですから、全体で見ていくことで、よりよい目的が達成できるのではないかなと思います。もし機会がありましたら、この辺りについても御教示いただけると幸いです。
 
 第2点目が、運用会社のガバナンスでございます。これは資産運用立国の基盤となるものでありまして、本当に大事なポイントだと思います。そして、割と長い間この議論をしていたものかと思いますが。資料10ページにおまとめいただいておりますけれども、これを見ますと、我が国の金融機関の多くが大手金融機関グループに所属している。さらに、プログレスレポート、あるいは以前のこの会議に出てきた資料等を見ますと、運用会社のトップというのは親会社派遣が多い。すなわち、グループ人事が反映されているのかというような事実もあったかと思います。
 
 資産運用業というのは大変専門性が高い職業でありまして、国内外で投資家コミュニティーというものもできています。したがって、グループ親会社の証券会社とか銀行の経験だけでは、ファンドマネジャーとかあるいは商品設計、さらに言うと営業も、投資顧問業における年金向けの営業と投資信託の営業は全く違う性質のものですけれども、全く違うものである。こういった人を含めた資産運用会社の人材をしっかり管理できるのだろうか。今後、人的資本と企業には言いますけれども、アセットマネジメント会社においても必要なのではないかと思います。もっと言いますと、アセットマネジメント会社の資金等の使い方、リソースをどう配分するかというものについても、やはり運用をしっかりしている人たちがマネジメントに入る必要があるのかと思います。
 
 一方で、金融機関グループ全体の観点から見ると、資産運用業というのは大変重要な機能を持っている部門だとも思います。したがって、グループ経営というグループ全体での価値という点も重視しつつ、一方で、運用会社自体の独立性、専門性というものも尊重していくという、このバランスが必要なのかと思っております。
 
 ということで、今回の資料にもあったかと思いますけれども、例えば、経営レベルで独立の第三者の視点が入ることであるとか、あるいは、運用のトップ、CIOには、株式運用が得意な会社であれば、そういう株式投資の経験が長い人が入るとか、そういったガバナンスの体制整備が必要かと思います。スチュワードシップ・コードになるのかもしれませんが、アセットマネジメント向けの、運用機関向けのガバナンス・コードとか原則、こういったものもある程度見えてきてもいいのかなと思っているところです。
 
 特に最近では、若い人材も初めから運用会社に就職するという人も増えていますので、彼らがシニアクラスになったときに、どうも自分の上には親会社から来た人しかいないとなってしまいますと、離職の可能性が高まり、リテインの必要も高まりますので、そういった点も入れていただきたいと思っています。
 
 あわせて、グローバルセクターも見ていただきたい。グローバルセクター、これも以前お話ししたことの繰り返しになりますけれども、企業はグローバルに経営しています。昨今関心が高いサステナビリティなどは海外で先に議論が進んでいる。これを国内に入れるためには、アセットマネジメントの携わる人間自体もグローバルな経験が必要です。ということを踏まえて、そこにリソースが配分できるような経営体制を構築できるようにしていただきたいと思います。
 
 スチュワードシップ活動についてです。スチュワードシップ活動の実質化について、エンゲージメントのところです。GPIFのエンゲージメントについて御紹介がございました。先ほどほかの委員からもありましたけれども、これはエンゲージメントを後押しする仕組みとして大変すばらしい仕組みと思います。そして、別途コストを負担しているというところも後押しになっているかと思います。
 
 ただ、残念ながら、このエンゲージメントというのはすごくコストがかかるわけです。企業のセレクションもそうですけれども、人材を確保する、データを集める、分析、対話。銘柄数が多いパッシブに至ってはなおさらです。それに対して十分払われているかというと、多分、規模の経済で今はカバーできているというところで、決して十分フィーが払われているとは言えないと思いますので、ここもしっかりフィーに組み込んでいく。アセットマネジメント業界が将来に向かって投資ができるように、我々は最終受益者でありますけれども、我々も含めて投資家全体で負担する必要があると思っています。
 
 協働エンゲージメントです。これは次の対話の形として必ず必要になってくるものだと思いますが、特に企業側から見ても、いろいろな投資家の意見がある中で、平均的な投資家の意見、特にこういうメインストリームの投資家の意見は大変貴重になります。先ほど御説明がありましたように、資本コストを意識するとかいった場合に、どの辺りを目指せばいいのかというのはこの協働エンゲージメントから学ぶことが大変多くあると思いますので、これもぜひ、重要提案行為とか共同保有のあたりの金商法の対応についても実務が進むように御対応いただければと思います。
 
 最後、リテラシーのところについてまとめさせてください。今回、スタートアップへの投資とか、あるいはプライベート等々、いろいろな商品が出てくるということが今後予想されます。ただ、そのためには、販社など金融商品を提供する業者側ではなくて、買う側の投資者自身のリテラシーというのが必ず必要だと思っています。今までは、業者へ規制をかけてきましたけれども、国民一人一人、我々一人一人も知識を持つ必要があると思っています。
 
 金融教育は、職域のところの議論が進んでいる、取組が進んでいるという話は聞きますが、一方で、家庭内において、子供の頃からお金というものの話をタブーにしてはいけないのかと思っています。そういった学校教育の場での支援についても、ぜひ今後、今既にされているとは思うんですが、そこをもう一歩進んで、次の世代にそういうリテラシーが――親世代、貯蓄が得意な親世代であったりします――は、子供の世代には違う在り方というものが伝えられるような枠組みを検討していただければと思います。
 
 長くなりました。以上でございます。
 
【加藤座長】
 上田委員、ありがとうございました。上田委員の御発言の中で、プロダクトガバナンスに関するモニタリングについて御質問があったかと思います。この点につきまして、中川参事官、よろしくお願いいたします。
 
【中川監督局資産運用モニタリング室参事官】
 御意見ありがとうございました。いただいた御指摘はごもっともと思っておりまして、私の所属しています監督局の資産運用モニタリング室で資産運用会社を基本的にモニタリングしておりますけれども、対話を行うときには、親会社のFGですとかホールディングスの方に来ていただくことも多々ございますし、それから、これは私の課ではなく別の局ではございますけれども、リスク分析総括課などでは販売会社も横串でモニタリングできる体制を整えておりまして、日々行っていると思いますので、そうした取組をぜひ続けていきたいと思います。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 中川参事官、ありがとうございました。
 
 続きまして、大槻委員、永沢委員、幸田委員の順に御発言をいただきます。大槻委員、お願いいたします。
 
【大槻委員】
 ありがとうございます。まず、全体についてということで、先ほど野尻さんからもありましたけれども、この包括的な見直しというのは、タイミング的に非常にいい時期だと思っておりますが、一方で、1月から新NISAが始まるということに伴って、市場からも、それから個人投資家からの期待も大きいところです。早くもお金が動き出すタイミングになってしまうので、集めたお金の行った先がまだこれから向上の途上であるということですと不足感がありますので、できるだけスピード感を持ってぜひお願いしたいところだと思います。
 
 あと一点、確かにすごく多岐にわたるので、最初の日にいただいたような、インベストメントチェーンとか金融システム全体について今回こういう形で変えたんだという要点を、多分、内部ではおまとめになっているのかと思いますが、そういったものを市場や個人に対してもお示しいただけると、これだけ自分たちのお金を託すシステムがこれからつくられていくんだということで説得感が増すんじゃないかと思います。そういった見やすさ、分かりやすさということを、せっかくの大改革だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 
 その上で、幾つか細かい点なんですが、まず、資料2のEMPについてです。先ほど玉木委員から、あくまで投資家の最善の利益ということだということで、私も同感なんですが、一方で、ここで言っている「最善の利益」の対象先というのは、今世代だけでなくて将来世代の資産形成ということもあるのかと思っております。ですので、ここでEMPの運用力の向上・育成を図ることによって、将来にわたってその運用力が一層強化されていくということを促進するものとして、EMPの推進ということが重要になってくるんだと思います。そういう意味では、今いただいているような文言で、そういった将来世代の資産形成ということを意識していただくということがあっていいんじゃないかと思っています。
 
 それから、2点目です。同じく資料2で、非上場企業、ベンチャー投資のマネー、これも資産運用立国と経済成長を直接的にリンクさせる鍵だと思っていますし、御指摘いただいた点はどれも賛成しますし、重要だと思います。ただ、非上場に絞った投資について、これは規模等の面でのハードルもあろうかと思いますので、少し現場というか市場へのヒアリングということもしていただいた上でというのがいいのかと思っております。
 
 それから、非上場、ベンチャー投資全体ですが、トーンとしてやはりまだ、投資家保護ということでやむを得ない点はあるとしても、消極的な感じがしないでもないと思います。長年やろうとしながら、この非上場株式等についてはお金が行き渡らないというところでもありましたので、できる限りお金が回りやすいような制度設計にしていただきたいと思っております。
 
 続きまして、資料3でございます。プロダクトガバナンスについて、FD原則に資産運用会社等のプロダクトガバナンスの記載を加えるという点については賛成をいたします。一方で、8ページ目で、運用体制の透明性向上については基本的には賛成するのですが、例えば、現在の開示のような形で、役職名と経験等を中心とした形の開示になってしまうと、これを見て選ぶ側に、これは過度に経験年数ということに偏った形での、ウエートをかけた形での選択を迫るということになってしまうと、若手の育成ということとやや逆行するのではということを感じております。そういった偏り、ゆがみがないような運営をしていただければと思います。
 
 それから、PBR1倍のところでございます。企業を動かした点は本当に大いに評価すべきだと思います。ただ、先ほどほかの委員の皆さんからもありましたけれども、PBR1倍というのはあくまでも、資本コストを意識した経営ということの1つのやり方、一例ということだと理解しておりますので、ここでも、先ほどの御説明でも御指摘いただいたとおり、資本コストをしっかり分析して、これに対して対応策をやっていくということでありますから、たとえPBR1倍を超えているところであっても、しっかりと意識してやっていくべきであるということ、それから、業界特性ですとか企業特性に応じた付加価値の醸成ということも重要な観点だと思いますので、一律ではないということも認識しながら、企業価値を高めていくことを推進していただければと思います。
 
 最後に短く、クレカ決済でございます。もちろん、柔軟性の向上という意味で必要性は理解をしていますので、本件について賛成はいたします。ただ、やはりあくまで「貯蓄から資産形成へ」というのが目的だと理解しています。もちろんマンスリークリアだけだということなのではありますが、バランスを取った進め方でいただければと思います。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 大槻委員、ありがとうございました。
 
 それでは、永沢委員、お願いいたします。
 
【永沢委員】
 ありがとうございます。私からは資料2、資料3について発言させていただきたいと思います。
 
 まず、資料2につきまして、これまでの回で私ども委員が発言したことが反映されており、お示しいただいた内容に、おおむね賛同いたします。野尻委員のご指摘のように、この部分は誰に対するメッセージであるということを明確にされたほうがいいのではないかと私も感じたところです。
 
 そして、各論部分について、まず、本日は投資型クラウドファンディングの箇所について一言述べさせていただきたいと思います。私は、投資型クラウドファンディングに対する規制が金融審議会にて審議されたときの委員でした。その当時、未公開株詐欺の被害が全国的に多発していた時期であり、また、クラウドファンディングがまだ海のものとも山とも分からないものであったこともあり、個人が参加することについては、当時の審議会の委員全体として非常に慎重であったと記憶しております。しかし、あれから時間もたち、経験値も上がってきておりますので、基本的には、事務局が示された方向への規制緩和に賛成いたします。
 
 ファンドを介在させるという提案については、零細な投資家ばかりでは経営の監視にはなりません。リードインベスターが参加できるようにすることは、スタートアップの企業にとってもいいことであり、賛成いたします。
 
 投資上限額については、当時、一律50万円と決めましたが、一般個人が失っても困らない金額として50万円と定めたと記憶しております。時代も変わっておりますので、見直してもよいと思います。
 
 また、適合性の原則といいますか、Know Your Customerルールについても、年収や資産額といった形式的な基準よりも、未公開株の流動性の低さだとか情報開示が十分にないことについての理解があるか等、要するに金融リテラシーですね、主観的な要素をもっと考えていくべきと思います。
 
 ここで1点、事務局に確認させていただきたいのですが、資料では投資型クラウドファンディングと記載されていますが、有吉委員は株式型クラウドファンディングとおっしゃっていました。このタスクフォースで議論しているのは、私の認識も有吉委員と同じですが、株式型のクラウドファンディングであることを確認させていただきたいと思います。
 
 投資型には株式型とファンド型がありますが、今回のタスクフォースではスタートアップ企業の育成ということを議論していると認識しております。ファンド型を否定するわけではございませんが、ファンド型についての規制緩和は、別の場で議論すべきではないでしょうか。この点、金融庁はどうお考えなのか、確認させていただきたいと思います。
 
 続きまして、資料3ですが、2018年からフィデューシャリー・デューティーという言葉で始まった顧客本位の業務運営の議論のまさに本丸の部分が、プロダクトガバナンスであると考えており、ようやくこの本丸の議論に入ってきたのかなと私としては感慨深く思います。
 
 金融庁からプログレスレポートが公表されるようになって、資産運用会社の皆さんはこのレポートを真摯に読みこみ、誠実に対応されていると思います。むしろ、真摯に受け止め過ぎておられないかということが気になっております。自分たちのことが指摘されているのではないかと疑心暗鬼になっておられ、少々萎縮ぎみになっておられないでしょうか。金融庁と運用会社の間の対話がもっと行われるよう、自由なカルチャーが醸成されていくことが必要ではないかと感じております。
 
 そのほか、気になったことを申し述べさせていただきます。
 
 まず、運用担当者の氏名の公表の話が出ております。アメリカのミューチュアルファンドの目論見書では運用担当者に関する情報の開示が義務づけられており、名前と経験年数が開示されていますし、そのような情報開示が日本でも行われることが望ましいと思いますが、問題は、名前の開示が強制されたからといって、投資家への責任感が醸成されるものでしょうか。もちろん、情報開示もプロダクトガバナンスの一環ではありますが、名前を開示したからといって、それがプロダクトガバナンスに直には結びつくものではないと感じているところです。
 
 ほかの委員からもご指摘がありましたように、欧米の投資信託では、ファンドマネジャーはファンドの中核となる存在です。日本の場合、運用担当者は、そういう存在でしょうか。単なる平社員なんではないでしょうか。むしろ、開示すべきは、CIOだろうと思います。ここで開示を求めるべきは、当該投資信託の運用戦略を語れる、責任のある人なのではないでしょうか。運用担当者とはどういう人をいうのか、その議論をしていただいてから、氏名公表に踏み切るのが望ましいと思います。
 
 むしろ私は、前回からも申し上げておりますけれども、プロダクトガバナンスの観点から申しますと、投資信託会社の取締役会についてもっと情報開示をしていただく必要があると感じているところです。日本の投資信託会社の多くは、グループ会社が100%その株式を保有しています。独立系でも、オーナーが100%株式を所有しておられます。どういう人で取締役会が構成されているかは、重要な情報であろうと思います。
 
 プロダクトガバナンスをモニタリングする役割を、投資信託の運用会社の取締役に担っていただくことも提案させていただきたいと思います。会社の株主の利益とその会社が運用する投資信託の受益者の利益が相反することもありうることから、取締役には、株主の利益よりも、投資信託の受益者の利益を最優先に考えることを法的に義務付けるというようなことも必要なように思います。
 
 続いて、種類受益権のところですが、有吉委員からもご指摘のように、利益相反とか、異なる種類の受益者をどう守るかというところが非常に重要な論点であろうと思います。その点を議論もせずに、監査費用が下がるからという理由でこの問題を議論をすることには、大きな抵抗感があります。反対するわけではございませんが、慎重な議論をしていただきくことを希望します。
 
 最後になりますが、16ページの投資信託約款の重大な変更に関する基準の明確化のところですが、基本的に賛成ですが、こだわるようで申し訳ありませんが、繰上償還という言葉には敏感に反応してしまいます。繰上償還が本当に投資家保護に支障のない約款変更という範疇に入るのでしょうか。疑問に思います。
 
 受益者集会の開催など、手続的に大変なことを求めているわけではございません。別の形で受益者がコミットできる方法はないものでしょうか。
 
 デジタル化が進んでおりますので、受益者の考えを聞くというようなことも可能になっているのではないでしょうか。イノベーションを活用して、受益者が重要な変更にコミットできる、関与の機会を保障していただく。保障という言葉が適切かどうか分かりませんが、何らかの手だてを考えていくことが、投資信託を面白くするために必要な施策とも思います。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 永沢委員、ありがとうございました。1点事務局に質問がありましたが、この点については、齊藤課長、お願いいたします。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 投資型クラウドファンディングの活性化について、株式投資型クラウドファンディングに限るのか、ファンド型も入っているのかということについて御質問いただいたと思います。
 
 主として念頭に置いておりますのは株式投資型クラウドファンディングでございますけれども、ファンド型のクラウドファンディングにつきましても、スタートアップ企業等への資金調達の手段として利用されているところではございますので、そうしたファンド型のクラウドファンディングも含めて検討していくものと考えているところでございます。
 
【永沢委員】
 よろしいですか。すみません。ファンド型につきましては、別の問題を抱えていると思います。日本で主流になっているのはファンド型ですが、トラブルも発生していますし、行政処分も行われています。その辺の事実も踏まえて、別のところで議論してはどうでしょうか。規制緩和に反対というわけではないんですが、ファンド型について、問題が起きていないか確認が必要ではあろうと思います。よろしくお願いいたします。
 
【加藤座長】
 永沢委員、ありがとうございました。
 
 続いて、幸田委員、山下委員、滝澤委員の順に御発言いただきます。幸田委員、よろしくお願いします。
 
【幸田委員】
 ありがとうございます。今回、事務局から資料3ということで資産運用業全体像について、議論の俎上にのる形でお示しいただいたので、本タスクフォースとしての資産運用に関する幅広い議論ができる素地がある程度見えてきたと理解をいたしました。
 
 今回、資産運営に関するタスクフォースの目的との関係性で言うと、何が今回議論を進めていく上で重要なのかということについてどういうふうに考えるかという視点から、まず一言お話をしたいというふうに思います。
 
 今回、投資運用業あるいは資産運用業のあり方ということを考えるに当たって、競争環境を整えていくということが極めて重要だという視点から、内外の新規参入をどうやって広げていくかということに資する規制緩和であるとか施策面のサポートが大事ではないかと認識しております。
 
 その点において、資料2でお示ししていただいているような論点については、私は大いに賛成でありますし、その点に積極的に取り組むべきと考えております。けれども、これで十分なのかどうかということについては、やや懐疑的なところがございます。
 
 これは、内外の資産運用業者が新規に入ってくるということに当たっては、資産運用業の参入障壁が相応に高いのではないかと認識をしておりまして、今回の施策で十分性があるのかどうかということについてはやや懐疑的であります。この点については、今後のフォローアップなのか、もう少し網羅的に論点をピックアップするのか、御検討いただく必要があるのではないかと思います。
 
 それから、もう一点は、資料3と関わるところになりますけれども、既存の資産運用会社が、いわゆるガバナンスの論点において資産運用の高度化を図っていけるような体制にあるのかどうかということについての論点提示があると認識をしております。この点については、金融系を含めた既存の資産運用会社において、かなり前向きに高度化に向けていろいろ取組をすることによって向上しつつあるというのは間違いないところであるかと思いますけれども、先ほど来の議論のような独立性等を含めたところについては、まだ課題があるのではないかという認識をしております。
 
 そういう意味では、私はどちらかというと、資産運用業のところについても、中立系であるとか独立系を増やしていくという観点からの政策的な取組がもう一段できないかということを踏み込んで考えるタイミングではないかと認識をしております。
 
 そういう意味では、既存資産運用会社のガバナンス関係については、1つだけ申し上げます。資産運用会社と販売証券との金融グループ内との関係性ということについては、既にいろいろな論点が提示されておりますけれども、ある意味、マーケットの状況であるとか置かれている収益状況等によって、なかなか、こうしたガバナンス面での取組が進む場面とそうでない場面というのが出てくるのはどうしてもやむを得ないところがある一方で、それをうまくコントロールして高度化していくためには、何らかのコンフリクトを排除できる、あるいは、顧客重視ということができるような枠組みをもう一段設けるということは検討の俎上にのせてもいいのではないかと思います。
 
 それから、もう1点、資料2のほうの成長資金のところの論点について、何がこの資産運用業としての取り組みでとして考える上で大事かという観点から一言申し上げたいと思います。
 
 この点については、既にスタートアップ投資等も含めて相応に流れができて広がってきている中で、残された課題は何かというようなことで言うと、グローバルスタンダード的なVCについての金融面での取組の重要性と、私は、もう一点は、資金供給がスタートアップ企業が成長していく中でシームレスにつながっていないという問題が、金融面においては大きな課題ではないかという認識をしています。
 
 これはいわゆるエグジット問題としてのIPOの課題、あるいは未上場セカンダリー市場が非常に狭い部分しかない、投資そのものが十分ではないというようなこと等を含めて、この未上場の段階のところを含めた資金供給の幅の狭さ、シームレスでないということについて、ここを手がけないと、スタートアップ5か年計画等を含めたいろいろな取組が、ここの点においてボトルネックが生じかねないということが懸念されると認識をしております。
 
 そういう意味では、本タスクフォースのスコープに入るかどうかという点はあるかと思いますけれども、この未上場株取引の部分についてどう広げていくかということについて、もう一段の検討をするべきではないかという感じがいたしております。
 
 最後に、まとめとして2点申し上げたいと思います。1つは、今申し上げたこととも関係しておりますけれども、本資産運用の話については、資産運用のみというよりは、もう少し幅広い総合的、体系的な整合性が求められる政策というような観点で取り組む必要があるということは間違いないところかと思います。
 
 そういう意味では、金融庁のスコープのところとそれ以外のところを含めて整合的にどう取り組めるかということについて、全体のフォローアップの仕組みであるとか、アップデートをどういう形で行って、そこに追加の対応を取っていくのかということを組み合わせて取り組めていけるようにするといいのではないかと思う次第であります。
 
 もう一点は、委員の方々からも出ておりますけれども、金融教育の重要性ということについて、来年の新NISAもそうですけれども、今回の資産運用の話を考えたときに、金融教育というものの重要性ということについて私なりの視点で一言申し上げます。当然、投資信託等を含めてプロに任せるというような視点がより重要になってくるという面はありますけれども、一方で、個々人、自分自身でそういうリスク体験をどうしていくのかというようなことに取り組んで、実感というか感覚を持てる、ある意味、持つ部分を有していかないと広がらないというような部分を含めて、プロに任せる部分と個々人の金融教育、リスク教育というようなことをどう考えていくかということが非常に大事ではないかという認識をしております。
 
 最後に、各論で一言だけ。資料2のほうの非上場株の投資信託への組入れについてですけれども、ここについては別枠組みというようなことが中心的な対応ということになっていますが、あまり非上場株を別扱いし過ぎるということが、商品設計とかあるいは投資に当たっての仕組みに制約的になり過ぎるというようなことが留意されるという点があるかと思います。私はどちらかというと、その辺りをあまり制約的に設計をしない、あるいは、枠組みをつくらないというほうが望ましいのではないかと感じています。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 幸田委員、ありがとうございました。
 
 それでは、山下委員、お願いいたします。
 
【山下委員】
 ありがとうございます。
 
 私から、まず、資料2については、これまでのタスクフォースにおける議論を反映したものと認識しておりまして、この方向で進めていくことに賛成いたします。その際に、既にほかの委員から指摘がありましたが、私も投資機会の多様化と投資家保護は両立させる必要があると考えております。資料2においても、投資家保護への配慮は随所で示されていると思ってはおりますけれども、今後の議論でも御配慮いただけますと幸いです。
 
 次に、資料3について4点コメントさせていただきます。第1に、資料3の19ページの企業型確定拠出年金(DC)についてです。資料で記載されておりますように、適切な商品選択に向けた制度の改善は重要であると考えております。とりわけ、加入者本人が適切に商品選択できるような支援の仕組みとして、商品の選定・提示や情報提供の充実が重要であると考えます。
 
 加入者がDCにおける運用選択を実際に経験するということは、先ほども出てまいりましたが、加入者への投資教育と併せて、個人投資家の金融リテラシーの向上にとって重要な機会ともなるように思います。ここで得た知識・経験は、加入者がDCとは別に投資を始めるきっかけにもなるとも思いますので、運営管理機関となる金融機関の積極的な取組みを期待いたします。また、商品の選定・提示につきましては、いわゆるナッジが効果的に機能する場面ですので、ぜひともいろいろな工夫をしていただきたいと思います。
 
 他方で、ナッジなどで弱い形であるとはいえ加入者の選択を一定の方向に誘導するのであれば、その誘導先が加入者本位となっていること、すなわち、金融機関の自己都合を優先するものではないことの確保が重要となります。この点につきましては、当局による監督が重要になるのではないかと考えております。
 
 第2に、資料3の13ページの投資信託における種類受益権についてです。これも既にほかの委員から指摘されたことと重なって恐縮ではございますが、会社法における種類株式相互の利害調整や信託法における異なる内容の受益権があるときの受託者の公平義務といった場面で展開されている議論を見ますと、投資信託における種類受益権に係る利害調整も、恐らくは複雑になると想像いたします。しかし、検討自体は、投資信託協会等においてぜひ進めていただきたいと考えております。
 
 第3に、資料3の35ページから37ページまでにかけてのエンゲージメントに関する部分です。パッシブファンドのエンゲージメントについては、そのインセンティブとコスト負担の問題がありますけれども、GPIFの取組はインセンティブの改善を、協働エンゲージメントはコスト削減を行うものと認識しております。そのため、エンゲージメントの促進、実質化に向けて効果があるように思われるところですけれども、ご紹介いただいた実際の取組例の状況は大変興味深く、現に一定の効果が出ているようにも見受けられます。そのため、政策的にこの活用を推進するということに賛成いたします。
 
 第4に、資料3の39ページ以下の公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループにおける検討内容についてです。これは市場の透明性・公正性の観点からいずれも大変重要なテーマであると考えており、私も議論状況を注目してまいりました。大量保有報告制度はエンゲージメントを阻害しないものとする必要がある一方で、仕手筋のような濫用的な株主に悪用されないようにする必要もあり、その調整が悩ましいと考えております。
 
 この点も含めて、公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループで検討進めていただいているようであり、大変ありがたく思っております。また、検討の方向性について、私もおおむね賛成でございます。
 
 私からは以上となります。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 山下委員、ありがとうございました。
 
 それでは、滝澤委員、よろしくお願いいたします。
 
【滝澤委員】
 御指名ありがとうございます。全体として、大事な論点が幅広く盛り込まれていて、しっかりした検討が進んでいるという印象を受けました。その上で、資料3について3つほど短くコメントがございます。
 
 第1に、資産運用業のガバナンスの向上について、ユーザー目線からの何らかのデータに基づいた検討があるとよいと思いました。例えば、資料の5ページ目で、プロダクトガバナンスの確保に向けてでは勘案すべき重要なポイントが列記されていますけれども、リテール投資家の立場から見たときに、これらのポイントのどこにどの程度の問題があると認識されているのか、運用会社間でこれらの点についてどの程度の差があるのかなどの具体的な数字に基づいた議論が実効性のある取組を検討する上では必要になるように思いました。
 
 第2に、資料の8ページにあります運用体制の透明化が極めて重要だと考えております。運用会社は、人とシステムが高度に結びついた結果生み出されるサービスを提供している業であり、これがどのようなインプットアウトプットの構造になっているかが外部から観察できなければ、仮にある時点において好調なファンドを提供している運用会社がいたとしても、これが単なるラッキーなのか、それとも、しっかりした体制整備の下で生み出された必然的な結果なのかが判別できないように思います。そのため、透明性の確保は極めて重要で、改めて強調されるべきポイントとも思います。
 
 最後に、第3に、3のスチュワードシップ活動の実質化のエンゲージメントについてですけれども、35ページに、例えば、2018年に開始されたものにつきまして、投資先の企業価値向上に貢献する、企業の競争力強化による収益性・成長性向上を目指すなどの表現がございますが、何らかの実証分析の結果があれば、参照されるべきというふうに思いました。
 
 私からは以上です。
 
【加藤座長】
 滝澤委員、ありがとうございました。以上で本日御出席いただきました委員の皆様全てに御発言いただきました。ありがとうございます。
 
 それでは、オブザーバーの方から何かございましたら、御発言をお願いいたします。それでは、投資信託協会様、よろしくお願いいたします。
 
【投資信託協会(杉江オブザーバー)】
 御発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。投資信託協会の杉江でございます。現在、投資信託協会におけます検討状況を簡単に御報告させていただきたいと思っております。
 
 まず、一者計算につきましては、先週、基準価額算出に係る実務者検討会の第1回会合を開催しまして、その実現に向け議論を開始しているところでございます。また、投資信託への非上場株式の組入れにつきましては、現在、自主規制規則の改正に関するパブリック・コメントを終了いたしまして、改正に向けて手続を進めているところでございます。このように投資信託協会におきましては、本タスクフォースにおける議論を真摯に受け止めて、資産運用立国の実現に向けて業界一丸となって全力で取り組んでいるところでございます。
 
 本日の議論につきまして、3点コメントしたいと思っております。1点目は、プロダクトガバナンスについてでございます。本日、委員の皆様方よりプロダクトガバナンスの強化につきまして様々な議論をいただきました。投資信託協会といたしましても大変重要な課題と認識しておりまして、運用会社におきましては、プロダクトガバナンス委員会を設ける等、様々な努力が現在行われていると理解をしているところでございます。
 
 第1回の会合におきまして、資産運用立国の実現に向けた投資信託協会としての基本的な考え方を御説明いたしましたが、私どもは国民の資産形成のための投資信託の改革の一つとして、プロダクトガバナンスの推進を掲げております。今回、顧客本位の業務運営に関する原則を見直し、プロダクトガバナンスを強化する方向性が打ち出されておりますが、具体的な見直しにつきましては、資産運用会社の創意工夫を生かし、各社のビジネスモデルに即した実効性・柔軟性のあるプリンシプルベースの規制となるよう、十分に意見交換をさせていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 2点目は、投資信託における種類受益権についてでございます。投資者保護等の問題につきまして御指摘をいただきました。今後、投資信託協会におきましては、今日、委員の方々から出された意見を踏まえまして、実務面、投資者保護の課題を整理するための検討を進めさせていただきたいと考えているところでございます。
 
 3点目は、DC、iDeCoの改革についてでございます。投資信託協会としては、NISA、それからDC、iDeCoは、国民の資産形成のために必要な車の両輪だと考えております。信託協会の基本的な考え方におきましても、このDC、iDeCoの改革を提唱しておりますが、iDeCoの改革は資産所得倍増プランの中でも第2の柱とされておりまして、DC、iDeCoの抜本的な改革を推進し、資本市場に国民の老後のための資産が投資信託により安定的に供給される仕組みを構築していくことが資産運用立国のために重要だと考えているところでございます。
 
 私からの発言は以上です。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 ありがとうございます。
 
 続きまして、経済産業省、亀山様、よろしくお願いします。
 
【経済産業省(亀山オブザーバー)】
 ありがとうございます。経済産業省産業資金課の亀山と申します。
 
 経産省では、経済成長、それから社会課題の解決をリードするスタートアップの創出・育成、これを最重要課題と捉えておりまして、そのファイナンス環境について産業界の声を踏まえた検討を行う場として、投資家やスタートアップも入れたファイナンス研究会を開催して議論をしているところです。
 
 今回、様々な論点について金融庁さんの方で前向きに御検討いただいておりまして、大変感謝をしておりますけれども、そこでの研究会での意見も踏まえて、少し資料2についてコメントをさせていただきます。
 
 まず、少人数私募の制度についてですが、研究会の委員からは、実務的な視点、それから海外の状況なども踏まえながら、勧誘人数ではなくて購入者ベースで算定する方法を考えることが必要ではないかという指摘がございます。これは現場のニーズも強いものと認識をしておりますので、是非とも前向きに御検討いただきたく存じます。
 
 それから、特定投資家私募について、第一種金融商品取引業の登録要件の緩和について、これは是非とも前に進めていただければと思っております。研究会においては、1つは、金融アドバイザーとか上場企業の役員経験者など、特定の知識・経験の条件を広げることが必要ではないかというような声、それから、特定投資家になるメリットを分かりやすく伝えていくことが重要ではないかというような御意見もございました。そのような特定投資家を増やすことについての御検討も是非お願いさせていただきたいと思っております。
 
 それから、有価証券の届出が免除される基準、又は少額募集のあり方の議論がございますけれども、小規模の公募の基準1億円についても、これは海外の状況、もっと高い基準での要件設定になっていますので、そういった状況も踏まえながら引上げも考えるべきではないかという御意見もありましたので、この点も是非検討がなされることを期待しております。
 
 それから、セカンダリー市場については、取引活性化のために新規事業者の参入促進が重要であるというのは同じ認識でございます。研究会においても、PTS該当性の整理を行った上で、PTSの認可がなくてもマーケットプレースの開設などができるようにしていくべきであるという意見がございました。今後のPTS見直しの具体的な制度設計の中において、是非考慮いただければと思っております。
 
 それから、最後に、その他の論点として、小規模公募、少人数私募などで証券会社の顧客網を活用した調達ができるように、証券会社による未上場株式の取得勧誘を解禁すべきであるという意見も複数ございましたので、こちらについても付言をさせていただきます。
 
 以上でございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。
 
 続きまして、日本証券業協会様、よろしくお願いいたします。
 
【日本証券業協会(森本オブザーバー)】
 日本証券業協会の森本でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。まず、本タスクフォースで取り上げていただきました項目の中には、我々証券業界からの意見を反映していただいたものもございまして、改めて御礼を申し上げます。
 
 このうち1点だけ、資料2の18ページ、投資型クラウドファンディングの投資家の勧誘方法につきまして、大変細かい点で恐縮ではございますけれども、コメントをさせていただきます。このページの対応案の最後の2行では、「音声通話での商品説明時に提供できる情報については、ウェブサイトや電子メールに掲載される内容に限定することが考えられる」とされております。
 
 この点、実際の場面を想像いたしますと、お客様はウェブサイトや電子メールに書かれていることが分からないからお問合せをされて、音声通話による商品説明の要請をしてくるものと思われます。つきましては、そのような投資家もリスクを十分把握した上で適切に投資判断を行うことができるよう、音声通話による説明はウェブサイト等の内容に厳格に限定されるものではなく、分かりやすくかみ砕いた説明や補足の説明もできることとしていただければと思います。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。
 
 続きまして、国際銀行協会、中村様、よろしくお願いいたします。
 
【国際銀行協会(中村オブザーバー)】
 国際銀行協会の中村でございます。発言の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。本日の資料について3点述べさせていただきます。
 
 まず、1点目は、マテリアリティポリシーについてです。本日の資料11ページ目にマテリアリティポリシーの明確化の記載がございます。また、11月2日には基準価格を訂正する際の基準を統一する旨の新聞報道もございました。弊協会は訂正基準の統一に賛成でございます。訂正基準が統一されることは、二重計算解消後に信託銀行が一者計算する際、信託銀行における事務面、システム面での負担が減ることになり、最終的には投資家のメリットになると考えています。
 
 2点目は、業務の外部委託についてです。本日の資料の3ページに、ミドル・バックオフィス業務の外部委託の記述がございます。新規参入を促す点で賛成でございます。一方で、監督指針では、委託元としての管理・監督責任の定めがあることから、結果としてコスト削減につながらない可能性もあるかと思います。外部委託を前提とした場合、運用業者が運用業務に専念できる体制も御検討いただくことを希望いたします。
 
 3点目は、「運用機関の多様化等」についてございます。本日の資料の26ページに外国籍投資信託の国内公募投資信託への組入れの記述がございます。運用対象の多様化は賛成です。一方、組み入れた場合の実務への配慮も必要です。公募投信として目論見書、販売用説明資料などの内容を一般投資家に十分分かりやすいものにするためには、運用会社や販売会社の作業が増える、すなわち、コストが増加することが考えられます。そのような川下の議論についても御配慮いただくことを希望いたします。以上が本日の資料についての意見となります。
 
 なお、誠に申し訳ないのですが、前回の会合について申し上げることができなかったベンチャーキャピタルの関連事項について述べさせていただきます。第2回会合の資料30ページ、31ページにおいて日米の比較がなされていますが、日米のベンチャーキャピタルの差異は2点あると思っております。それは中身と規模でございます。
 
 中身としては、米国のベンチャーキャピタルはレイターステージの投資が過半を占めている一方で、日本ではアーリーステージまたはミドルステージへ投資するベンチャーキャピタルが過半を占め、レイターステージ投資へのベンチャーキャピタルは2割から3割ぐらいであるという点です。そのため米国では、レイターステージによりスタートアップ企業の規模が成長し、IPOも日本よりも大型になっております。その結果、エクイティ・アナリストのカバレッジがついて、米国のIPOでは投資家の約7割が機関投資家という理解です。
 
 次に、規模の差異について述べさせていただきます。日本はスタートアップが十分成長する前にIPOとなることが多いため、米国と比べIPOの規模が大きくありません。私どもの感覚では、日本のIPOのサイズは米国の10分の1という認識です。その結果、日本でIPOに参加する機関投資家は、全体の平均として約3割ぐらいではないかと思います。そして、IPOに十分な成長ストーリーを描けず、結果的に機関投資家からのフォローオン投資も得られないため、せっかく上場した企業が成長できなくなっているケースが多いと思います。
 
 以上より申し上げたいことは、レイターステージに参加するベンチャーキャピタルを増やし、現状よりも規模の大きいIPOを増加する施策を検討するべきだということです。それによって成長に必要なフォローオン投資を受けることが容易になり、成長とリターンとしての果実を両方取れることができるのではないかと思います。ぜひ御検討ください。
 
 以上となります。ありがとうございました。
 
【加藤座長】
 ありがとうございます。
 
 引き続きまして、全国銀行協会様、よろしくお願いいたします。
 
【全国銀行協会(菅沢オブザーバー)】
 全国銀行協会の菅沢です。発言の機会をいただき、ありがとうございます。私からは1点、クレジットカードの決済上限額の件です。
 
 既に有吉委員や大槻委員からも、投資家保護および利便性向上の両面からバランスの取れた制度を模索してほしいという御意見があったと思います。その中で、先ほどもありましたけれども、本件は利便性向上による「貯蓄から資産形成」を進めるという観点で引上げを検討するということであり、資料にも、新NISA制度がスタートし、つみたて投資枠については月10万円に引き上げられるとございますが、今回の新NISA制度の重要なポイントは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能ということです。したがって、上限額は少なくとも30万ということも1つの選択肢と思っております。
 
 投資家保護の観点では、ここにも書いてありますが、①翌月一括払いであること、②累積投資契約であること、③クレジットカード会社による信用供与に係る規制が存在すること、といったかたちで投資家の取引に対する弊害防止措置がすでに存在しているという観点も踏まえて、バランスの取れた設計をお願いできればと思います。
 
 以上です。
 
【加藤座長】
 ありがとうございます。
 
 それでは、最後になりましたが、日本プライベート・エクイティ協会様、よろしくお願いいたします。
 
【日本プライベート・エクイティ協会(廣本オブザーバー)】
 ありがとうございます。日本プライベート・エクイティ協会、副会長の廣本でございます。
 
 私、現在はプライベート・エクイティのファンドの社長をやっているんですが、以前はJ-REITを上場させて、それの社長、合計で言うと十六、七年そういう職業をやってまいりました。特にJ-REITの頃は、2つのREITを上場させていましたので、年に4回決算して4回配当する。そのたびに、世界中のアセットオーナーさんにIRということで面談をする。年間延べで二、三百社を回っていました。内外ですけれども。
 
 延べで言うと2,000社を超える方々とお会いしてきたという経験的なものに基づいてお話しさせていただきますと、今回の資料3で出てきましたアセットオーナーをどう見ていくか、どう改革していくかという論点が大変大事だと思っておりまして、最終的に年金の受給権者というのはアセットオーナーさんの後ろにいるわけで、アセットオーナーさん――我々はアセットオーナー様とか言うんですけれども、アセットオーナーのリテラシーをどうやって高めていくかということは極めて重要で、経験知で申し上げさせていただくと、アセットオーナーの資産規模掛ける運用年数が、ほぼそれに比例した形でリテラシーが上がっていくというふうに私自身は受け止めておりまして、これは具体的に言うと、資産規模で言うと、ニューヨークやロンドン、東京の大きなアセットマネジメント会社、年金、あるわけなんですけれども、例えば、エジンバラであるとかボストンで長年やっているアセットオーナーのリテラシーの高さということにいつも感心して舌を巻いてきた、そういう経験知でもあるわけなんです。
 
 したがって、資料5、4ページにあるとおりで、まだまだ日本のDBというのは、巨大なクジラが1頭、それからシャチが10頭ぐらい、あとはサバとかイワシが何千匹というそういう状態なので、サバ、イワシのところで共同投資の枠組みをしっかりつくっていって、リテラシーを上げていただく、それが大事なのかなというのが第1点。
 
 それから、第2点は、資産運用業全体を盛り上げていくために、EMPであるとか今回御議論いただいていることにも大変大賛成なんですが、そもそも論としては、そこにちゃんとみんなでシェアする収益源となるジュースがちゃんと出てなきゃいけないんですが、日本の場合は、世界最大のクジラ様は大変倹約的に運用されてこられた。大変厳しいフィー体系を業界に強いてきたという歴史があって、これは1ベーシス違えば大きな国民的損失になるので、全く正しい選択だったとは思うんですが、一方で、そこに参入する業者の利益を生んできたかというと、必ずしもそうではなかったかもしれないということもあるわけでございます。
 
 例えば、その点でいえば、スウェーデンのように、ガバナンスは1つでいいんですけれども、ファンドの運営としては4つぐらいに分割した上で、例えばフィーをぎりぎり削っていく運用のやり方と、ある程度潤沢に国際基準で払っていったときに、ネットでどっちが勝つんだというようなことは実はあってもいいのかもしれない。かつて、2010年頃にあった分割論ではなくて、運用のやり方を多様化していく考え方もあるんじゃないかということを申し上げます。
 
 私からは以上2点でございます。
 
【加藤座長】
 ありがとうございました。
 
 本日いただきました御意見などを踏まえまして、次回以降、取りまとめに向けた御議論をお願いすることを考えております。
 
 また、次回日程については、委員の皆様の御日程などを踏まえて、後日、事務局より連絡させていただきたいと思います。
 
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
 

―― 了 ――

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