金融審議会総会(第25回)・金融分科会(第13回)合同会合議事録

  • 1.日時:

    平成23年3月7日(月曜日)17時00分~18時55分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○小野企画課長

ただいまから第25回金融審議会総会・第13回金融分科会合同会合を開催させて頂きます。

本日は、皆様ご多用のところ、ご参集頂きまして誠にありがとうございます。

また、金融審議会委員へのご就任をお引き受けくださいましたことにつきまして、改めて御礼申し上げます。私は金融庁総務企画局企画課長の小野と申します。

この後、新会長を選任して頂きますが、それまでの間、大変僣越ではございますが、私が議事の進行をさせて頂きたいと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。

本日は、合同会合の開催にあたりまして東副大臣にご出席頂いておりますので、ご挨拶を頂きたいと思います。

○東副大臣

ただいま紹介頂きました東祥三でございます。

現在、金融担当の副大臣をさせて頂いておりまして、本来ならば冒頭で自見大臣のほうからご挨拶をさせて頂くところでございますが、皆様ご案内のとおり、国会の日程で、現在、参議院において、予算委員会に出席しておりますので、大変僣越でございますが、私のほうから一言だけご挨拶をさせて頂きたいと思います。

まず初めに、新たに模様替え致しました審議会の委員を快く引き受けて頂きまして、まずもって心から御礼申し上げる次第でございます。

金融行政に係る諸課題の中では、国際的な金融規制改革の動向について申し上げたいというふうに思います。ご案内のとおり、先般の世界的な金融危機を踏まえ、その再発防止と強固な金融システムの構築に向けた議論が進展してまいりました。昨年11月のG20ソウル・サミットにおいては、銀行の自己資本・流動性の新たな枠組み、いわゆるバーゼルⅢについて了承されたところでございます。我が国としては、国際的な金融規制改革について中長期的に金融システムの向上に資するものとなる一方、各国の金融システムの実情の違いを十分に踏まえたバランスの取れたものであること、そしてまた実体経済への影響に十分配慮していくこと、が極めて重要であると考えております。こうした考え方に基づいて、システム上重要な金融機関、いわゆるSIFIsへの対応等、G20サミットで合意された幅広い課題に関する国際的な議論に引き続き積極的に参画してまいる所存でございます。

また近年、中堅・中小企業において、現地法人の設立等を通じて、積極的にアジア地域への販路拡大を求める等、海外進出意欲が高まっており、金融機関によるアジア地域等への進出支援体制の整備・強化を図る必要があります。

こうした状況を踏まえて、「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」においては、「金融機関による中堅・中小企業のアジア地域等への進出支援体制の整備・強化」を掲げております。具体的には、地域金融機関等が、JETROや国際協力銀行等の公的支援機関と連携をしながら、情報提供・相談面、及び資金供与面で中堅・中小企業の海外進出を支援する体制の整備・強化を図ることとしており、金融庁ではこれらの取組みの具体化に向けて、関係省庁等と連携し、検討を進めているところでございます。こうした諸課題等に対して、行政として、引き続き真摯な検討を重ね、不断の努力を続けていく所存でございます。

今後そのような検討を進めていく上で、必要に応じて委員の皆様に専門的な観点からご意見を頂きたいと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

○小野企画課長

ありがとうございました。

ただいま副大臣からもお話がございましたように、自見金融担当大臣及び和田政務官につきましては、国会関係の業務が終了次第、こちらの方に向かう予定となっておりまして、ご到着された後に、ご挨拶頂く予定としておりますので、その点につきまして、あらかじめご了承頂ければと存じます。

それでは、ここからカメラはご退出をお願い致します。

(プレスカメラ退室)

○小野企画課長

それでは、議事を進めさせて頂きたいと思いますが、本年1月25日の委員改選後初めての会合となりますので、委員の皆様をご紹介させて頂きたいと存じます。

なお、全体の名簿につきましてはお手元にお配りしております委員のメンバーリストがございますので、適宜ご参照して頂ければと存じます。

それでは、座席順にご紹介させて頂きたいと存じます。

委員の皆様の右側から、秋池玲子委員でございます。

○秋池委員

秋池でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

次に、大崎貞和委員でございます。

○大崎委員

大崎でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

太田克彦委員でございます。

○太田委員

太田でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

沖野眞已委員でございます。

○沖野委員

沖野でございます。どうかよろしくお願い致します。

○小野企画課長

小島茂委員でございます。

○小島委員

労働組合連合、小島です。よろしくお願いします。

○小野企画課長

川波洋一委員でございます。

○川波委員

川波と申します。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

神作裕之委員でございます。

○神作委員

神作でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

神田秀樹委員でございます。

○神田委員

神田と申します。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

黒沼悦郎委員でございます。

○黒沼委員

黒沼でございます。よろしくお願いします。

○小野企画課長

河野栄子委員でございます。

○河野委員

河野でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

齊藤誠委員でございます。

○齊藤委員

齊藤です。よろしくお願いします。

○小野企画課長

洲崎博史委員でございます。

○洲崎委員

洲崎でございます。どうぞよろしくお願いします。

○小野企画課長

田島優子委員でございます。

○田島委員

田島でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

永沢裕美子委員でございます。

○永沢委員

永沢でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

家森信善委員でございます。

○家森委員

家森です。どうぞよろしくお願い致します。

○小野企画課長

吉野直行委員でございます。

○吉野委員

吉野でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

また、事務局側のメンバーも紹介させて頂きたいと存じます。

皆様方から向かいまして左手におります、東副大臣の左側でございますが、三國谷金融庁長官でございます。

○三國谷長官

三國谷でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

畑中監督局長でございます。

○畑中監督局長

畑中でございます。どうぞよろしくお願い致します。

○小野企画課長

細溝検査局長でございます。

○細溝検査局長

細溝です。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

桑原総務企画局総括審議官でございます。

○桑原総務企画局総括審議官

桑原です。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

岳野証券取引等監視委員会事務局長でございます。

○岳野証券取引等監視委員会事務局長

岳野でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

鷲見総務企画局参事官でございます。

○鷲見総務企画局参事官

鷲見でございます。よろしくお願いします。

○小野企画課長

三井総務企画局総務課長でございます。

○三井総務企画局総務課長

三井です。よろしくお願いします。

○小野企画課長

財務省より、岡本信用機構課長でございます。

○岡本財務省信用機構課長

岡本でございます。よろしくお願いします。

○小野企画課長

また、金融審議会の幹事として雨宮日本銀行理事でございます。

○雨宮日本銀行理事

雨宮でございます。日本銀行からも議論に参画させて頂きます。

よろしくお願い申し上げます。

○小野企画課長

次に、皆様から向かって、私の右側になりますが、森本総務企画局長でございます。

○森本総務企画局長

森本でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

居戸総務企画局審議官でございます。

○居戸総務企画局審議官

居戸でございます。よろしくお願いします。

○小野企画課長

乙部総務企画局審議官でございます。

○乙部総務企画局審議官

乙部でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

池田総務企画局参事官でございます。

○池田総務企画局参事官

池田でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

中村総務企画局信用制度参事官でございます。

○中村総務企画局信用制度参事官

中村でございます。よろしくお願いします。

○小野企画課長

藤本総務企画局市場課長でございます。

○藤本総務企画局市場課長

藤本です。よろしくお願いします。

○小野企画課長

古澤総務企画局企業開示課長でございます。

○古澤総務企画局企業開示課長

古澤でございます。よろしくお願いします。

○小野企画課長

小原総務企画局保険企画室長でございます。

○小原総務企画局保険企画室長

小原でございます。よろしくお願いします。

○小野企画課長

油布総務企画局調査室長でございます。

○油布総務企画局調査室長

油布でございます。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、次に金融審議会会長及び金融分科会会長をお決め頂きたいと存じます。

金融審議会令の規定によりまして委員の互選により選任することとされておりますので、委員の皆様のご意見をお伺いしたいと存じます。

○太田委員

新日鉄の太田でございます。

会長でございますけれども、吉野先生をご推薦申し上げたいと思います。

ご経歴、ご業績から、ふさわしい方だと思いますのでご推薦申し上げます。

よろしくお願いします。

○小野企画課長

ありがとうございました。

ただいま吉野委員を推薦するというご発言がございましたが、ほかにいかがでございましょうか。

○神作委員

東京大学の神作でございます。

私も、太田委員と同様の理由から、吉野委員を会長とするというご提案をさせて頂きます。

○小野企画課長

ありがとうございます。

ほかにご発言はございますでしょうか。いかがでしょうか。

ほかにご意見がないようでしたら、金融審議会会長及び金融分科会長には吉野委員が互選されるということになろうかと思いますが、いかがでしょうか。

よろしゅうございましょうか。

(特段異議を唱える者なし)

ありがとうございます。

(拍手)

○小野企画課長

それでは、ご異論がございませんようですので、吉野委員のご承諾をもって、金融審議会会長・金融分科会長の就任をお願いしたいと存じますが、吉野委員、いかがでございましょうか。

○吉野委員

せっかくのご指名でございますので、皆様のご協力を得ながら、会を進めさせて頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

○小野企画課長

ありがとうございます。

それでは、吉野委員には会長及び分科会長をお願いしたいと存じますので、会長席にお移り頂くようお願い致します。

(吉野委員、会長席に着席)

○小野企画課長

それでは、新会長よりご挨拶を頂きまして、その後の議事進行をお願い致したいと存じます。吉野会長、お願い致します。

○吉野会長

ただいまご紹介頂きました慶應義塾大学の吉野でございます。

座ってご挨拶させて頂きたいと思います。

先ほど副大臣からもございましたけれども、日本の金融は非常に大きな転換点に来ていると思います。特に、いかにアジアを我々のマーケットの中に入れながら、日本の金融業、そして先ほどご説明のように中堅・中小企業が出ていけるかということも、非常に重要な問題だと思います。それから、さらには日本の地域にどういう形で新しいお金を流していくかと、こういうことも重要だと思いますし、様々な大きな問題を日本経済は抱えていると思います。

昔、よく日本の金融というのは血液であると言われまして、うまく資金を流していくというのは日本の金融の役割だったというふうに思います。しかし、欧米などのアングロサクソンの国では金融業自身が一つの大きな筋肉となっておりまして、やはり今後も日本は、製造業、サービス業を強くすること、それから農業を強くすること、そういうところに資金がしっかり流れると同時に、金融業自身でもやっぱり収益が上げられる、そしてさらには国際的に強い金融機関というのを作っていかなくてはいけないのではないかと思っております。そういう意味では、ぜひ、この金融審議会を通じまして皆様から活発なご議論を頂き、ぜひ日本の金融業が世界に強くなって、そしてそこからアジアの中でも活躍できるようにさせて頂ければと思っておりますので、ぜひご協力をよろしくお願いしたいと思います。

ありがとうございます。

議事に入らせて頂きたいと思いますが、まず最初に会長代理、分科会長代理を選任する必要がございます。金融審議会令によりますと、会長代理、分科会長代理は、会長、分科会長が指名することとなっております。私と致しましては、これまでの金融審議会のご経験から、ぜひ神田先生に、会長代理、分科会長代理をお願いしたいと思いますが、神田先生、よろしいでしょうか。

○神田委員

はい。

○吉野会長

どうもありがとうございます。

それでは、神田先生に会長代理及び分科会長代理をお願いさせて頂きたいと思います。

続きまして、議事運営についてでございますけれども、金融審議会議事規則及び金融分科会議事規則に則りまして、今後ともこの会議を開催させて頂きたいと思っております。

また、会議は原則として公開とさせて頂きたいと思いますので、委員の皆様、ご承知おきをお願いしたいと思います。

それでは、次に事務局のほうから、金融審議会の再開の経緯、それから新体制につきまして、ご説明をお願いしたいと思います。

よろしくお願い致します。

○小野企画課長

資料はございませんが、口頭でご説明させて頂きます。

金融審議会につきましては、一昨年の政権交代によりまして、新しい政権のもとにおきまして、政治主導のもとにおける審議会の在り方について再考し、整理する必要があったため、しばらく開催が見合わされていたところでございます。しかしながら、委員の皆様の任期が本年1月に満了を迎えるということにも鑑みまして、審議会の在り方について検討が行われまして、金融審議会メンバーの縮減及び大幅な見直しを図るとともに、運営方式の見直しを行いまして、今般、金融審議会を再開することとなった次第でございます。

まず、金融審議会の委員数につきましては、従来27名の方がいらっしゃいましたが、これを16名と大幅な縮減を図りまして、金融庁の政策課題に関して、専門的な観点から調査審議等を行って頂く機関としての位置づけをより明確にしたところでございます。

また、金融審議会の運営方式につきましても、従来のように政務三役から受けた諮問を第一部会、第二部会等で検討するという方式を改めまして、このような部会及び既存のワーキング・グループは、これを全て一旦廃止致したいと存じます。そして、今後につきましては、その時々の具体的な政策課題につきまして、政務三役から金融審議会に諮問して頂きまして、諮問を受けた課題について、それぞれの政策課題ごとに、審議会のもとに、審議会メンバー及び金融分野の実務者、有識者にも加わって頂きましてワーキング・グループを設置し、それぞれのワーキング・グループにおいて、実務的、専門的な観点からご検討頂く方式とさせて頂きたいと考えております。

なお、当該政策課題についての検討が終了した段階で、そのワーキング・グループは解散するというサンセット方式で運営を行うことと致したいと考えているところでございます。

私からの説明は以上でございます。

○吉野会長

ありがとうございます。

ただいまのご説明のように、今後は、その時々の具体的な政策課題につきましてワーキング・グループを設けまして、機動的に調査審議を進めていくということでございますので、そうした見直しに伴いまして、金融分科会の下にこれまでありました第一部会、第二部会、それから特別部会、さらには既存のワーキング・グループ等については、今般、一旦全て廃止をさせて頂きたいというふうに思いますけれども、よろしいでしょうか。

ただし、専門性が高い特殊分野でございます自動車損害賠償責任保険制度部会、それから公認会計士制度部会、これは金融審議会で調査審議を行う事項として金融庁設置法上も明記されておりますので、この2つの部会については引き続き設置をさせて頂きたいというふうに思います。よろしいでしょうか。

(特段異議を唱える者なし)

また、各部会の部会長は、私、会長が指名することとなっておりますので、私のほうから、自動車損害賠償責任保険制度部会のほうは、この分野にお詳しい洲崎委員にお願いしたいと存じます。また、公認会計士制度部会は私が務めさせて頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(特段異議を唱える者なし)

ありがとうございます。

それでは、ご同意頂きましたので、引き続きまして、事務局のほうから最近の金融・資本市場制度の整備あるいは改善への取組み状況等につきまして、ご説明をお願いしたいと思います。

よろしくお願い致します。

○小野企画課長

それでは、お手元に資料1-1、それから資料1-2、資料2があるものと存じます。資料1-1はA3の大きな紙でございます。資料1-2はA4の紙で「最近の金融・資本市場制度の整備、改善への取組み状況等」について、資料2は、A3の紙でございますが、「金融機関等のグループ経営に係る制度整備の取組み」についてというタイトルでございます。この3つをまずご説明させて頂きたいと思いますが、資料1-1と資料1-2をお手元に並べておいて頂きまして、私のほうから、資料1-1と適宜資料1-2を参照しながらご説明させて頂ければと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

「最近の金融・資本市場制度の整備、改善への取組み状況等の概要」ということでございますが、皆様ご承知のとおり、私ども金融庁の任務というものは、金融庁設置法の第3条におきまして3つの役割、金融の機能の安定、金融サービスの利用者の保護、金融の円滑化というものが定められております。ただ、ご承知のとおり、いわゆるバブルの崩壊後、不良債権問題等がございまして、特にいわゆるペイオフ全面解禁、平成17年のペイオフ全面解禁までは、どちらかというと制度整備の取組みの力点は、セーフティーネットの整備・改善に置かれておりました。それが、ペイオフが一段落致しまして、次第に本来の使命ではございます利用者保護や利用者利便の向上への一層の取組みへ、軸足を移してまいりましたし、さらに市場や取引インフラの一層の整備というほうにも軸足を移し、これまで取組んできましたところでございます。また、平成19年に、市場による価格調整機能というものを働かせることによりまして、資金を円滑かつ効率的に進めていく必要があるという認識に立ちまして、平成19年12月に、この資料1-1の左上にございますような「金融・資本市場競争力強化プラン」というものを作成いたしました。なぜこのようなプランを作ったかということは、ここに書いてございますように、競争力強化の必要性がある、すなわち少子高齢化が進展する中で、我が国経済が持続的に成長していくためには、家計部門の金融資産への適切な投資機会の提供や、内外の企業等への適切な成長資金を供給する必要があると、また非常に国際的な市場間取引が激化する中で、我が国市場の競争力をいかに強化していくかということが課題になっている、さらに、金融サービス業というものが高い付加価値を生み出す産業として日本経済へ貢献するということが期待されると、このような問題意識に立ちまして「金融・資本市場競争力強化プラン」というものを作ったわけでございます。その内容につきましては、資料1-2の1ページをお開き頂きたいと思うのでございますが、ここに「金融・資本市場競争力強化プラン」の中身が書いてございます。

下の方のボックスでございますが、この「金融・資本市場競争力強化プラン」は4つの柱から成ってございます。

第1の柱が「金融・資本市場の信頼と活力」ということで、公正性・透明性を確保しつつ、多様性・利便性を高める市場インフラを整備していくということを目指しまして、例えば上場投資信託等のETFの多様化やプロ向け市場の枠組みの整備等を進めるということを打ち出したわけでございます。

2つ目の柱として、「金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境」を整備していくということで、多様で質の高いサービスの提供を可能とする、時代のニーズにマッチした競争環境を整備していこうということで、例えば「銀行・証券・保険会社間のファイアーウォール規制の見直し」や「銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大等」を行おうということでございます。この点につきましては、また後ほど詳しくご説明させて頂きたいと思います。

それから3番目の柱が、「より良い規制環境(ベター・レギュレーション)」を目指していこうということで、監督当局の行政手法の改善によりまして、規制の実効性・効率性・透明性を向上させていこうということでございます。

4番目の柱が「市場をめぐる周辺環境」ということで、専門性の高い人材の確保、都市インフラの充実を図っていくということでございました。

このような4つの柱で施策を打ち出しまして、「金融・資本市場競争力強化プラン」に掲げられた施策の着実な推進を図っていったわけでございます。

ところが、またこの資料1-1の図に戻って頂きたいのでございますが、その翌年でございますが、いわゆるリーマンショックというものが起きまして、このような改革の努力にいわば冷や水を浴びせるような欧米発の金融危機が起きたわけでございます。このリーマン・ショックにより、市場は大変混乱致しまして、市場の価格発見機能というものが喪失致しまして、当局としては、この市場安定化を図ることが喫緊の課題ということで、「市場安定化等の為の緊急的な措置」というものに舵を取らざるを得なくなったということでございます。どういう中身かと申しますと、資料1-2の2ページでございますが、当時、非常に市場が混乱する中で、市場安定化のための緊急避難的な措置をとらざるを得なかった。例えば2ページにございますような空売り規制を強化する。取引所による空売り情報の開示拡充や空売り規制の強化等を行うですとか、この4つ目の丸にございますような銀行等保有株式取得機構というものの買取りを再開させまして、銀行等が保有しております株式を買取る。さらには、買取り対象を株式のみならず、優先株やJ-REIT等にまで、この買取りの対象の範囲を拡大するというような緊急措置をとりました。

さらに、1つ飛びまして、改正金融機能強化法、これは、金融機関に国の資本参加を通じて金融機関の金融仲介機能を強化することにより、厳しい状況にある地域経済で中小企業を支援することを目的としたものでございますが、この金融機能強化法を改正致しまして、緊急避難的な措置をとってきたわけでございます。

また、資料1-1の図に戻って頂きまして、このような緊急避難的な策をとりまして、1年経ちまして、この金融危機というものを踏まえて、これを1度総括しようと、この金融危機というものを踏まえて、今後の我が国の金融の在り方について検討していこうということで、金融審議会の基本問題懇談会においてご検討頂きまして、そこで報告が纏められました。

そこで纏められた報告は大きな2つの内容から成ってございます。

1つ目が、この右側にございます市場発の金融危機、また今後このような市場発の金融危機が来ないとも限りませんので、この「市場発の金融危機への対応の為の方策」というものをちゃんときちっと考えていこうということでございます。

内容でございますが、資料1-2の3ページをお開き頂きたいと思いますが、市場発の金融危機への対応の為の方策として、この基本問題懇談会の提言として、次の方策が大事だということでございます。

1つ目が、危機の要因となり得るような不均衡の蓄積というのを予防するための方策が必要であると、具体的には、店頭デリバティブ取引や証券化商品、ヘッジファンド等、規制が及ばない分野への適切な規制を行う必要があるということでございます。これにつきましては、次の行の矢印に書いてございますように、金融商品取引法を平成22年に改正致しまして、店頭デリバティブ取引等に関する清算機関の利用の義務付け等の規制を整備したところでございます。

2番目が、銀行部門に対する健全性規制・監督の見直しに係る国際的な議論に積極的に貢献すべきであるということでございます。これにつきましては、ご承知のとおり、先ほど東副大臣からお話がございましたように、国際的に活動する銀行の自己資本・流動性の新たな枠組みに係るバーゼル委員会による合意等が既になされたところでございます。

3番目が、銀行部門における株式保有リスク軽減への取組みをすべきであるということでございます。これにつきましては、先ほど述べさせて頂きましたように、銀行等保有株式取得機構による株式買い取りが、既に再開されているところでございます。

次が、いわゆるシステム上重要な金融機関、SIFIsに対する規制・監督を行っていくべきである。これにつきましては、現在、G20等で議論が行われているところでございまして、今後、G20等における議論を踏まえつつ、さらなる検討を行っていきたいと考えております。

次の提言の柱が、4ページをお開き頂きたいと思いますが、危機の伝播を抑制するための方策ということでございます。

1つは、市場インフラの再構築、CDS等の清算に係る制度整備や国債レポ等の清算機関の態勢等を強化すべきであると。これにつきましては、先ほど申し述べましたように、店頭デリバティブ取引に関する清算機関の利用の義務付けは金商法で改正を行いましたし、また市場関係者によりまして、国債取引等の証券決済・清算態勢の強化への取組みに対する支援等も行ってきているところでございます。

また、SIFIs、いわゆるシステム上重要な金融機関が経営困難に陥った際に連鎖を引き起こさないための対応をすべきである。これにつきましては、今後、G20等における議論の推移を踏まえながら、さらなる検討を行ってまいりたいと考えております。

3番目の柱が、マクロ健全性の観点からの規制・監督の充実でございます。これは、中央銀行等の連携強化等が必要であるということで、既に金融庁と、日本銀行との間で密接な連携を図っているところでございます。

最後の提言が、実体経済への波及に対応するための方策でございます。中小企業を含めた企業金融の円滑化等を図るべきであるということでございまして、これにつきましては、先ほど申し述べました、国が資本参加をする改正金融機能強化法、それから中小企業者や住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るための中小企業金融円滑化法というものを策定し、対応しているところでございます。

もう一つ、この基本問題懇談会で提言がございます。それは何かと申しますと、次の5ページでございますけれども、こういう市場発の金融危機への対応を行うとともに、日本の金融業にはまだ課題があると、我が国金融システム及び金融業には課題があるということが提言されてございます。資料1-2の5ページでございますが、金融システムの課題として、少子高齢化の進展の中で経済の持続的な成長に寄与し、国民の資産形成に貢献すべきであると。我が国金融・資本市場の国際的な競争力の強化も図る必要がある。ショックに対する銀行部門と市場部門との相互補完機能の確保も必要である。

また、金融業自身の課題と致しまして、企業の価値創造を支援する金融、いわゆるバリューアップ型を指向していくべきである。そして、金融業として、少子高齢化の進展の中で国民の資産形成に貢献していくべきであると。これによって、金融業自らも発展し、社会的な責任というものを遂行していくべきであるということでございます。

ここで、また資料1-1のこの大きな紙に戻って頂きたいのですが、結局、今申しましたように「金融・資本市場強化プラン」というものを作成しまして、日本の金融業の強化を目指したわけでございますが、リーマン・ショック以降、緊急避難的な措置というものに軸足を移しました。しかし、まさに基本問題懇談会での指摘もございましたように、そのような市場発の金融危機への対応をきちっとできるための制度整備を重要ではあるが、我が国金融システム及び金融業には課題が残っているということで、今申しましたような課題というものが指摘されているところでございます。

そして、次にこのような金融システム、金融業の課題というものを認識しつつ、私どもとしては政策を進めていくということでございまして、昨年の6月に、「新成長戦略 ~「元気な日本」復活のシナリオ~」というものが閣議決定されましたが、この「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」というところで7つの戦略分野が掲げられ、金融戦略もその7つの戦略のうちの1つとして位置づけられております。

具体的には、この資料1-2の7ページをご参照頂きたいのでございますが、資料1-2の7ページに新成長戦略の中身がございます。

7つの成長分野というものが、環境・エネルギーから始まりまして、雇用・人材戦略、そして7番目に金融戦略というものが重点分野として位置づけられているところでございます。

この金融戦略では、「企業・産業を支える金融」、「成長を支えつつ、自らも成長する金融」などの観点から金融分野における成長戦略を策定するということになりまして、具体的なアクションプランというものを平成22年に作成するという旨がこの新成長戦略でコミットされたところでございます。

そして、私ども金融庁としましては、この2つの柱、「企業・産業を支える金融」と「成長を支えつつ、自らも成長する金融」を目指すのだというその柱立てに沿いまして、アクションプランというものを策定したところでございます。

それが、平成22年12月に発表致しました「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」でございまして、次のページをおめくり頂きますと、昨年12月に発表いたしました「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」の中身がございます。

先ほど申しましたように、金融の役割として、適切な投資機会・多様な資金調達の手段を提供して、実体経済を支えるという役割、もう一つの役割は、1,400兆円を超える家計部門の金融資産や成長著しいアジア経済への隣接等の好条件の活用を図り、金融自身が成長産業として経済をリードするという、この役割を認識しまして、アクションプランは3本の柱から成っています。

この下のボックスにございますように、1つ目が企業等の規模・成長段階に応じた適切な資金供給を行っていくこと。

2つ目がアジアと日本とをつなぐ金融ということで、日本市場がアジアのメイン・マーケットになるということを実現していくための方策。更に、併せて、我が国金融機関のアジア域内での活動拡大というものを支援していくというものでございます。

3つ目の柱が、国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備を図っていく。

これがアクションプランの3本の柱でございまして、この3本の柱に沿ったそれぞれの具体的な政策が掲げられております。

その政策の中身が、9ページをお開き頂きますと、先ほど申しました3つの柱立てに沿ったアクションプランの施策が掲げられているところでございます。9ページでございますが、簡単にご紹介致しますと、まず第1の柱でございます。企業等の規模・成長段階に応じた適切な資金供給と致しましては、その中でまた3つにブレークダウンしてございますが、1つ目が中小企業等に対するきめ細かで円滑な資金供給ということでございます。その施策としてここに幾つか掲げてございますが、例えば、一番上の監督指針の改正を図り、金融機関の動機付け、環境の整備を図ることによりまして、地域密着型金融をより一層促進していこうということですとか、次の3つ目でございますけれども、いわゆる特定融資枠契約、コミットメントライン法の適用対象、現在は大企業が中心でございますが、それを中堅企業まで拡大していこうというような中身が盛り込まれているところでございます。また、2つ目のこの大きな柱の小柱と致しまして、新興企業等に対する適切な成長資金の供給ということで、新興市場等の信頼性回復・活性化を図っていく。現在、市場関係者で、この新興市場の信頼性回復・活性化の具体的な取組みの実施期限を明確にした工程表を作成すべく、作業を進めているところでございます。また、3番目の小柱と致しまして、機動的な資金供給等ということでございまして、この下から3番目にございますようなライツ・オファリングが円滑に行われるための開示制度の整備を図っていこうということでございます。

次に、右側のボックスに移らせて頂きまして、アジアと日本とをつなぐ金融ということで、これは2つの小柱がございますが、1つは、日本がアジアのメイン・マーケットになるための施策ということで、1つは、証券・金融・商品の総合的な取引所の創設を促す制度・施策について検討を行っていこうというものでございます。

また、次にございます、外国企業等による英文開示の範囲の拡大等の制度整備を行いまして、活力のある、成長著しいアジア等の外国企業が日本でも上場できるような環境整備を図っていこうということでございます。

また、2つ目の小柱でございます、我が国金融機関のアジア域内での活動拡大でございますが、先ほど副大臣からもお話がございましたように、この真ん中の2つ目の項目にありますように、金融機関による中堅・中小企業のアジア地域等への進出支援体制の整備・強化を図っていこうということでございまして、JETRO、JBICともタイアップ致しまして、このような支援体制の整備を進めているところでございます。

3番目の大きな柱が、国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備ということでございまして、1番目にございますような資産流動化スキームに係る規制の弾力化を図りまして、不動産や都市再開発等のための資金調達の手続等を簡素化して、そこにお金が流れるようにしていこうということでございます。

このような柱から成る様々な施策が盛り込まれておりますけれども、これにつきまして、私どもとしましては、実施可能なものから取りかかっていこうということになっております。その実施状況が10ページ目以下に掲げられているところでございます。

さらに、14ページ目をお開き頂きまして、今ご説明しましたアクションプランの中で所要の法律改正が必要なものが結構ございます。これにつきまして、今般、所要の法律改正が必要なもの、全部で15本の法律があるのでございますが、これを一括化した法案を資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律案として、国会に提出させて頂く方向で、現在、作業を進めているところでございます。本法律案の趣旨は、まさに今申しましたように、このアクションプランを実施していくための方策ということで、我が国資本市場及び金融業の基盤強化が課題と認識致しまして、3つの柱立て、1つは、一番左側のボックスにございます、「多様で円滑な資金供給の実現」、2つ目は「国民資産を有効活用できる資産運用機会の提供」、3番目は「市場の信頼性の確保」でございます。一番左側の、「多様で円滑な資金供給の実現」は、先ほど申しましたライツ・オファリングの開示制度の見直し、それから同じくコミットメントラインの借主の範囲の拡大、それから銀行・保険会社等金融機関本体によるファイナンス・リースの活用の解禁でございます。

また、「国民資産を有効活用できる資産運用機会の提供」につきましては、プロ等に限定した投資運用業の規制緩和を図ること、また先ほど申しました資産流動化スキームの規制の弾力化、それから同じく先ほど申しました英文開示の範囲拡大を図っていきまして、外国企業の我が国の上場を促進していこうということでございます。

最後の柱、「市場の信頼性の確保」につきましては、最近社会問題にもなっております無登録業者による未公開株等の取引に関する対応を致しまして、無登録業者による未公開株等の売り付けを原則として無効にすることによりまして、未公開株等の投資者被害を抑止することを考えてございます。また、企業の財務書類等の質の向上を図るため、公認会計士制度の見直しを図ろうと考えてございます。さらに、投資助言・代理業の登録拒否事由の拡大を図りまして、投資者被害の抑止を図っていきたいと考えております。

最後に、もう一度資料1-1に戻って頂きますと、このように私どもとしましては、この平成19年以降様々な施策を、一時、リーマンショックで緊急施策対策もやりましたが、様々な施策をやってきているところでございますが、いずれに致しましても我が国金融業の在り方につきましては、先を見据えて不断の検討を重ねていくことが必要というふうに考えているところでございます。一方で、この金融業の業務運営の在り方につきましても、先ほど少し申し上げましたように、金融業には限りませんけれども、最近ではグループ経営やコングロマリット経営というものが非常に進展しているところでございます。その流れについて、最後に簡単にご説明させて頂きたいと思いますが、A3の資料2をご覧頂きたいのでございますけれども、金融機関のグループ経営に係る制度整備の取組み状況について見てみますと、まず左側でございますけれども、金融機関のグループとしての業務範囲の見直し等につきましては、平成9年度に金融持株会社を解禁して以来、その傘下にある保険会社、銀行・証券間の子会社方式による参入の解禁ですとか、銀行の証券子会社の業務範囲の完全撤廃、それから銀行・保険会社による証券仲介業務の解禁等々、どちらかというと当初は金融業の業態間の垣根を低くしていくという策を推し進めてまいりましたが、最近になりますと、この平成20年にございますように、銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大ということで、例えばリスク管理に優れた銀行等の兄弟会社に対する商品現物取引等の解禁ですとか、銀行・保険会社等本体の排出量取引の解禁や、銀行・保険会社等の子会社等に関するイスラム金融の解禁等々、金融業の外縁部分、周辺部分の業務の取扱いをどうするかというところまで、徐々に、見直しの対象範囲が広がってきているところでございます。ただ、一方で、業務範囲を見直しする一方で、当然、業務の健全、適切な運営は確保しなくてはいけませんので、そのための取組みも併せて実施しているところでございます。それが右側でございますけれども、平成10年度の銀行における連結自己資本比率規制の導入をはじめとしまして、連結ベースのディスクロージャー制度の整備、さらに上場会社等の子会社に関する重要事実をインサイダー規制の対象に追加するですとか、平成17年度に行いました上場会社の親会社が非開示会社である場合の当該親会社に対する情報開示の義務付けですとか、平成20年度に実施しました利益相反管理体制の構築ですとか、さらには平成22年度、昨年は証券会社・保険会社に対しましても連結規制を導入してきております。このように、いわゆるプルーデンス規制につきましては、相当、連結というものの視点が前面に出るような状況になってきているというのが、最近のこの動きではないかと考えるところでございます。

以上、長くなりましたが、私のほうから最近の金融・資本市場制度の整備、改善の取組み状況につきましての概要をご説明させて頂きました。

○吉野会長

それでは、和田政務官がお越しでございますので、ご挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願い致します。

○和田政務官

失礼致します。金融担当大臣政務官の和田隆志と申します。よろしくお願い致します。

○吉野会長

カメラが入室するまで、ちょっとお待ち頂きたい。

○和田政務官

そうですか。では、しばらくお待ちください。

(プレスカメラ入室)

○吉野会長

和田政務官、よろしくお願い致します。

○和田政務官

改めまして、金融担当大臣政務官の和田隆志と申します。

各委員の皆様方、本当にお忙しい中、久しぶりの金融審でございますが、お集まり頂きまして本当にありがとうございます。

私自身、実は昭和63年に公務員になった時に、この中にも何名かお世話になった先生方がいらっしゃいますが、本当にこの委員会がしっかりと動いていく様をもう一回見たいなと思って、今日を心待ちにしておりました。どうぞよろしくお願い致します。

先ほど副大臣のほうからもご挨拶があったのではないかと思いますが、私のほうからは、今般、金融審をして頂く際に、私どもの思いとして取組んでいる課題の中で、中小企業金融や地域金融をはじめとして、金融仲介の促進に関する取組みについて申し述べたいと思います。

その取組みの一つとして、引き続き中小企業者や住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために、先般、中小企業金融円滑化法を1年ほど延長させて頂きたいという改正法案を国会のほうへ提出申し上げております。金融庁としては、同法案を機に、金融機関が貸付条件の変更等を行う間に、借り手に対する経営相談・指導等のコンサルティング機能を十分発揮することによりまして、中小企業者の経営改善が着実に図られて、返済能力の改善につながる、という流れを定着させる必要があると考えています。また、顧客企業の新しいビジネスに対する必要な資金の供給を前向きに行っていくことは、地域金融において重要な点であると考えています。

例えば中堅・中小企業のアジア地域等への海外進出ニーズの高まりも見られている中で、こうしたニーズに対しまして、地域密着型金融に係る取組みによって、これまで構築してきた顧客企業との関係を通じて、地域金融機関等が中堅・中小企業等の期待やニーズを的確に把握して、適切に資金供給を行っていくことが大変大切であり、求められていることだと考えています。

金融庁として、引き続き金融仲介機能の適切な発揮、促進に向けた不断の取組みを行ってまいりたいと考えておりまして、今後は、そのような取組みに向けた検討を進めていく上で、必要に応じ、金融審議会の委員の皆様方に専門的なご見地からご意見を頂きたいと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

以上でご挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。

○吉野会長

和田政務官、どうもありがとうございました。

副大臣が、これから再度ご入室されまして諮問を読んで頂けますので、ちょっとお待ち頂きたいというふうに思います。

副大臣がお見えになりましたので、副大臣のほうから金融審議会に対する諮問を頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

○東副大臣

金融庁においては、実体経済を支えるとともに、金融自身が成長産業として経済をリードすることが金融の役割であるとの認識のもと、「金融・資本市場競争力強化プラン」をはじめ、これまで各種施策の実施に努めてきたところであります。

このような取組みをさらに推進していくため、昨年12月には、「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」を公表しており、その早期実施を着実に進めることと致しております。他方、そのような取組みと並行して、先に述べたような観点から、我が国金融業の在り方について不断に検討を重ねていくことが重要であると考えております。

こうしたことを踏まえ、我が国金融機関の国際競争力の強化、地域経済における金融機能の向上、更には両者があいまった我が国経済・金融業の一層の発展を図るための課題等、我が国金融業の中長期的な在り方についての金融審議会における調査審議を求めます。

また、近年、金融機関を含め、企業の合併・再編が進み、子会社や関連会社から構成されるグループ経営が一般化してきております。こうした実態を踏まえ、金融機関を含めた企業が円滑なグループ経営を行っていく上で金融に係る制度の見直しが必要となります。このうち、まず取組むべき課題として以下の2点について、金融審議会における調査審議を求めます。

第1に保険会社による外国保険会社の買収等に係る子会社の業務範囲規制の見直しを含む保険会社のグループ経営の向上に資するような規制の在り方等について、検討を求めます。

第2に、上場会社等の単体ベースの決算値を基準としている現状のインサイダー取引規制のうち、合併等の重要事実に係る軽微基準及び決算情報変更に係る重要事実について、上場会社等が純粋持株会社である場合には連結ベースの決算値を基準とするような特例を設けること等について、検討を求めます。

以上、3点の課題の検討にあたり、この分野につき高い見識を有しておられます金融審議会の委員の皆様方のお力をお借りし、金融・経済の現場で活躍されている市場関係者や金融実務家、金融の利用者である事業者等からの意見も聴取して頂きながら、幅広い観点から深度ある専門的な調査審議をお願いします。

(プレスカメラ退室)

○吉野会長

東副大臣、どうもありがとうございました。

ただいま副大臣のほうから3つの諮問を頂きましたが、これまでの事務局のご説明と、それから副大臣からの3つの諮問につきまして、どなたからでも結構ですが、ご自由にご討議を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

神田先生、何かあれば、いかがでしょうか。

では、小島委員、どうぞ。

○小島委員

今の副大臣から諮問された3点ですけれども、この金融審議会、今日からスタートということもありますけれども、1点目は中長期的な在り方の検討ということで、少しこれは中長期的な議論になろうかと思いますけれども、下の2つについては、これはいつ頃を目処に取り纏めということをお考えなのでしょうか。

○吉野会長

2番目と3番目の問題は、割合早期のことだと思いますけれども、専門家のグループのワーキング・グループなどを設置致しまして、その中で検討して頂くということですので、別にいつまでという日にちを決めるわけではありませんけれども、1番目と比べれば、より早期に議論して頂きたいというふうに思っております。

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

はい、それでは永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

市民グループ「良質な金融商品を育てる会」の永沢と申します。

今日は、金融庁の取組みについて丁寧に説明頂きましてありがとうございます。私どもが問題提起させて頂いてきたことも進めて頂いているということは理解致しました。

今日は副大臣から頂きました宿題について、質問というよりもお願いと感想めいたことを合わせて3点ばかり申し上げたいと思っております。

まず、金融業というものは産業としても大変重要なものでございますけれども、何よりも実体経済を支えてこその金融業であり、また国民の資産形成に貢献できてこその金融業という認識を前面に出し、そこを出発点として頂いている点は大きな意義があると思っております。ただ、資料を拝見して思ったことを率直に述べさせて頂くと、資料1-2の9ページのアクションプランの主な施策のⅢの「国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備」というところが、ほかの2つと比べますと、少し寂しいという印象は否めないと思っております。記載されている課題を拝見しますと、何かここを貫く問題意識がほかに比べて希薄なのではないかと感じております。資料1-1の頭のところで、平成19年の強化プランで「家計部門の金融資産への適切な投資機会の提供」という文言がありましたけれども、果たして、日本の金融業に課されたこのミッションは果たされてきたのか、この点が疑問に思われます。全国各地で仕組み商品をはじめとする複雑な金融商品をめぐる紛争が多発しております。金融機関と国民との間に何が起きているのかについて、しっかりした事実認識を踏まえた上で、これからの政策についての基礎を築くことが必要なのではないかと私は感じております。そんな思いもありまして、第1の項目に関するワーキング・グループのメンバーが、実際に国民と金融機関の間で何が起きたのかを正しく認識できるよう、そうした情報がワーキング・グループに提供されるような配慮をお願いしたいと思っております。そのためには、既にご予定のことと思いますけれども、金融トラブル連絡調整協議会との連携とか、既に立ち上がっております金融ADRだとか、弁護士会などからも協力を頂きながら関連情報をワーキング・グループに集めて頂くようお願いしたいと思っております。

第2点目は、素人の発言で恐縮ですが、保険についての諮問についてでございます。保険業の国際競争力の強化のためには規制緩和が必要ということは理解できますけれども、やはり保険会社がこうしたビジネスリスクをとることによって、私達消費者が利用する、老後の生活や自分が死んでしまった後の家族の生活を維持するための保険商品の品質に何等かの影響が出るのではないかという不安を抱かざるをえません。今後のワーキング・グループでの検討においては、一般国民が抱くであろうこうした不安をどこまで払拭できるのかということが大事なポイントになるかと思いますので、その点をよろしくお願いしたいと思います。

最後に、直接的にインサイダーに関する話ではありませんが、適時情報開示の要請との衝突が、いろんな場面で起きてきているということを個人の投資家でありながらも感じております。情報開示というのは個人投資家には投資商品の品質の一番重要な項目でございまして、私どもも最重要視しておりますが、一方で、その情報開示の要請が、企業にとって、時に厳し過ぎるのか分かりませんけれども、桎梏となっている場合があるようで、最近、優良企業と言われるところが、ゴーイング・プライベートというのでしょうか、市場から退出されるケースも出ており、そういった報道に接するたびに、一般投資家がアクセスできる良質な投資機会が減っていくのではないかということも危惧し始めているところでございます。本件には直接関係ないことではありますが、情報開示等の要請と、私ども国民に中長期的に良質な投資機会が提供されることとの兼ね合いが大事なように感じておりまして、ワーキング・グループではそうした視点からもご検討頂けたらありがたいと一投資家としては思っております。以上でございます。

○吉野会長

永沢委員、どうもありがとうございました。

新しい金融技術みたいなものが出てくるということは一つ重要ですけれども、それをしっかり理解して、自分達が、それを買っていい商品なのかどうなのかということが分かるということが必要でして、絶対そういうものがいけないと言っていますと、日本の金融業の発展がないと思いますので、おっしゃいますように、やはり商品に関する開示とか、そういうものをしっかりしていくということだと思います。

また、保険業に関しましても、いろんな保険業があっていいのだと思います。国内だけでやっていく保険業、それから海外に出ていって、さらに収益を上げたいという保険業もあると思いますから、そういう意味では色々な機会が作れるようにするということも重要であります。最後のところも、情報開示とやはり資産の運用ということでなかったかと、どうもありがとうございました。

ぜひ、設置させて頂きます色々なワーキング・グループの中には、そういう今日のご視点も入れさせて頂ければというふうに思います。

ほかにございますでしょうか。

では、齊藤委員、どうぞ。

○齊藤委員

一橋の齊藤です。諮問を受けるほうが、その内容に文句を言うのは、本当は無礼なのかもしれませんが、ご無礼をお許しください。

諮問事項を見て、やはりすごく唐突感を感じました。非常に大きな課題1つとテクニカルな2つの課題。しかし、1つ目の課題については、先ほど副大臣のほうからも、バーゼル規制をはじめ自己資本規制の議論がありました。今、金融機関は、そうしたことにどう対応していくのか必死で考えていかなくてはいけない環境があります。和田政務官からは、金融円滑化法案の延長に関して議論があって、これは、色々と議論が様々あると思います。そういうことに関して非常に重要な論点があります。

会長のほうからは、アジアを主軸にということで、金融展開をしていかなくてはいけないということでしたけれども、昨今、去年の暮れ位から北アフリカや中東を動かしている政治情勢、経済情勢というのは、アジアに関しても非常に共通する部分がありますから、そういうことを考えていくと、本当にアジア主軸ということを、今までの延長線上でメッセージとして出していいのかどうかということも考えなくてはいけないと思います。そうした、まさに副大臣や政務官や会長からご提案のあったような問題意識が諮問事項のどこにも含まれていないというのは、やはりどういうことなのかなと率直に疑問を持ちました。

以上です。

○吉野会長

諮問事項の中に、これは、多分、具体的には入っていませんけれども、今、齊藤先生がおっしゃいましたことは、大体一番上の我が国の金融業の中長期的な在り方の中にも、一部含まれている問題だと思います。ですから、この中の、今日お話しの3つの自己資本規制とか、あるいはカントリーリスクの問題、それから中小企業金融の問題というのは、この中で議論させて頂きたいというふうに思っております。

ありがとうございます。

では、河野委員、どうぞ。

○河野委員

今のお話も少し関連するのですけれども、この一番最初の中長期的な在り方についてというのは時間がかかってもいいというお話ではあるのですけれども、これは、相当、データと数字を追いかけて頂きたいなと。我々が追いかけるのかもしれませんけれども、その必要性をぜひお願いしたい。

例えば、先ほどご説明頂いた中で、実体経済への波及に対応するための方策で、要するに改正金融機能強化法、平成20年ですからもう2年は経過いたしました。中小企業金融円滑化法も丸1年で、その実態というか実効はどれぐらい上がっているのかとか、どれぐらいのことを目標にしていて、どこまで来ているのかというのが、やはり分かるような形で、今後は議論を進めていけたらと、データを使っていけたらというふうに思いますのが1点ですね。

そういう意味では、今現在も銀行の貸出残高というのは減っているのではないかというふうに理解しているんですけれども、ただ貸し出せといっても問題があると思うのですが、どこを目指すかというのと、その銀行が貸し出すにしても、多分今まで貸し出すため、要するに消費者金融が担保無しで貸し出すときの目利きという意味で言えば、中小企業を目利きするというふうなことが、どれだけ金融業に期待する経営戦略みたいなところに盛り込まれてあるかというのがやはり大事ではないかと思います。

それと、最初に副大臣がおっしゃったことにも関係するのですけれども、もちろん日本と各国の金融システムと実際に参加している国民性というのが違うのは良く分かっているのですけれども、ただ、その国民性をそのまま言い続け、自己責任とか自律した個人という部分の教育というか、そこのレベルも変えていかないと、世界に勝てる金融機関とか金融業ということにはならないだろうというふうに思っていまして、民間の企業の中で、成長戦略の最後に書いてあって、どちらかというと、やや今までその議論が表には出てこなかったところだと思うのですけれども、そういう意味では、そこにも、例えば外国人の活用とか、要するに多様な人材の能力活用が必要で、今までの金融業に馴染んできた人達というところでは、なかなか世界に勝つというのは難しいので、これは、相当、海外あるいはアジアの現状を、すごいスピードで変化している現状をぜひ追いかけていかなくてはいけないのではないかなと。要するに数字で見えるようにすること、データを追いかけること、各国の実態を、敵を知って、己を知らないと、世界に通用したり、あるいは勝てるような金融業は非常に遠いことになるだろうというふうに思っていますことと、金融業については、筋肉、血流、血液として捉える見方もありますが、要するに勝てるということです。日本の金融業のシステムコストというのは、やはり異様に高い。それは、ほかのアメリカなどからも、からかわれるぐらい高いというのを、例えばそういうことをどういうふうに中長期的にというのか、直近的にスピードを上げてやれるのかというふうなことを、ぜひ、話題あるいは話がうまく回っていけばいいなというふうに思っております。

以上です。

○吉野会長

ありがとうございました。

データ分析は、私も計量分析をやっていますから一番重要でして、データを利用しながら政策目標がどういうものであったかと、どこまで来ているか見るというのはぜひ必要だと思いますし、それから、貸し出しに関しましては需要の面と供給の面と両方ありますので、どういう要因で今が少ないのかというようなことも、やはりデータからうまく出ればと思います。

それから、最後の個人あるいは利用者がしっかりしないと、金融業が強くならない、全くそのとおりだと思います。株式市場で、あまりうまくいっていないのは個人と事業法人で、外国人がすごく日本の株式市場でうまくやっているという、そういうデータもありますので、やはり利用者の側の金融経済教育も含めて重要ではないか。

どうもご意見ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。

個々のこの諮問事項についての詳しい議論は今後進められていくということだと思いますので、そこでの議論のスタンスについて、ちょっと幾つか気になった点というか、私が思うことを少し申し述べさせて頂きたいと存じます。

1つは、最初の我が国金融業の中長期的な在り方についての検討でございますが、この我が国金融業とか、我が国金融機関という、この言葉をちょっと聞きますと、何となく昔の表現で言うと国内金融機関と申しますか、外資系というものと対置される形をイメージしてしまうようにも思うのでありますが、私は、今の世界的な金融センター間の競争というのは、その場所の土着資本であるかないかということはあまり関係なくて、結局その場で実際に活動している金融機関がどれだけ強いかということで相当程度決まってしまっているのかなというふうに思うわけです。例えば身近な例で一番分かりやすいのは、例えば香港とかシンガポールのような金融センターをイメージして頂ければいいのではないかと思います。もちろん、日本が国際的な金融センターとしてどのような形のものを作っていこうとするのかというのは、別に他の国と違ってもいいわけではありますが、私は、やはり国際的な競争力というものを考えていく上では、この日本に拠点を置いて活動している人達の競争力というのを重要視するという観点を強く持つべきだと思っておりまして、その意味では、ともすればこういう議論、何となく外資系は、いわばむしろさっきの河野さんの表現をちょっと借りれば、その敵のほうであって、こっちがいわゆる強化しなくてはいけないものとは違うというふうに考えてしまいがちになるのではないかと思っておりますが、私は、この外資・内資を問わず、この日本という場を舞台として活動しようという人達、みんなの競争力を強化していくというスタンスで検討していくことが重要なのではないかなと思う次第でございます。

それから、もう一点、インサイダー取引規制、これは私も少し勉強した分野でございますので、検討について一言申し上げたいのでございますが、ここに書かれたことは、先ほど齊藤先生からもありましたが、非常にテクニカルな感じがするというので、実際、テクニカルなのだと思います。ただ、非常にこれ、実は、実務上大きな影響を持ってしまっている問題でございますし、投資家保護の観点からも現状のままでいいのかという疑問が生まれることですので、こういう検討をすることは非常に重要だと思うのですが、他方で、このインサイダー取引規制ですとか、あるいは株式公開買付規制ですとか大量保有報告規制ですとか、この金商法の様々な制度について、もう少し今の枠組みというか、建て付けそのものをもう少し深いところから、根本から見直したほうがいいのではないかと思われるようなところもあるように思うのですね。ですから、こういう短期的に、とにかく問題をいわば解決しなくてはいけないという観点で検討するということは非常に重要だと思うのですが、幾つもやっていたら間に合わないということも当然あるのですけれども、1つ終わった段階でというようなことかもしれませんが、こういうインサイダー取引規制あるいは株式公開買付規制といったような金商法の根幹をなすような規制で、しかし色々な形で綻びといいますか、難しい問題が色々出てきてしまっているものを、一つ抜本的に見直すというのも、これは半年とかいう短い期間でできるものでは到底ないと思うんですけれども、例えば、あまり暢気なことを言っていては怒られますが、2年、3年というようなペースで検討するということも今後ご検討頂いてはどうかなと、こういうふうに思う次第でございます。

以上です。

○吉野会長

ありがとうございました。

では、副大臣、どうぞ。

○東副大臣

永沢委員、また齊藤委員、河野委員、また大崎委員から、本当にとてもいいご意見を頂きました。何でこういうものを諮問しているかという点を述べると、僕は専門家ではありませんから素朴な表現になりますが、ものすごい勢いで世界中が動き出してしまっていると、特に金融分野においては文字どおり本当に国境を越えた形で動き出していると思います。それに対し、きちんとした形でもって対応できる体力を持っている金融機関も国内にある。他方において、先ほどご指摘がありましたとおり、金融というものが、その実体経済を支えていく、そういう形で今日まで来た。では、それだけで本当にいいのかと、まだ練れていないと思うのですけれども、その金融産業が一つの成長産業として育成していくためにどうしたらいいのか。これを簡単な言葉で、誰が聞いても分かり得る、そういうところまでまだ行っていないのだろうと思うのです。

吉野会長から、先ほど金融業そのものが筋肉体質を持って、金融業が成長することによって実体経済にいい影響を与えていくとのお話がありました。世界をこういう角度から見たときに、多くの方々は、その日本が目指すべきものというのは、イギリスのシティのような、そのイギリスの実体経済から離れた形のものを求めているのではないと、こういうふうに言われます。それはそうなのだと思いますが、例えばシティの状況を見ていれば、そのイギリスという国、それ自体が背景にあるのではなくて、EU全体を巻き込み、あるいはまた世界全体を巻き込んだ形でのそういうものを作り出しているのではないのか。あるいはまた、シンガポールというものを見たときに、シンガポールは実体経済というよりも文字どおり世界の金融センターたらんとしており、さらにはまた香港等を見ても、香港だけがあるのではなくて、後ろに、バックにある中華人民共和国という巨大な経済のダイナミズムが展開されている、そういうものが背景にある。そうしたときに日本というのは、今後どういうふうに進んでいったらいいのかというのが素朴な私達の視点でありまして、そこには世界で通用するような金融機関だけが育っていけばよくて、他方において国内における地域密着型の金融機関があって、というように二分化がなされるような、そういうものではないのだろうと。ある意味で私達は、国内だけを対応しているということが許されない時代に突入してきているのではないのかと。

日本の国が、その三番手、四番手、五番手でも構わないと、そういう角度の視点で議論をした場合、また別の視点が、僕は出てくるのだろうと思いますが、少なくとも、この日本の英知を結集していき、なおかつ理想的な角度から言うならば、日本的な部分というのは絶対あるのだろうと、世界のどこを見ていたとしても日本ならではというものは、僕はたくさんあるのだと思うのです。しかし、この部分に関しては、まだきちんとしたその方向性なり、そういうものは出てきていない。どうしても他国の例を模範として、そこまで追いついていくにはどうしたらいいのかと、こういう話になってしまっている。

ただ、実際問題として、間違いなく、日本の全体の金融状況を見たときに僕は遅れているのだろうと思うんです。本来ならば、日本をセンターとしてというふうに理想的に言うことができたとしても、日本にはなかなかお金が集まってこない。だから、逆に実体経済で大きな比重を占めつつあるアジアを中心とした、そこにちゃんと視野を置いて、そこでもちゃんと活躍できるような日本の金融業というのはあるのではないのかと。それを取り込んでいけるように足りない部分を補いつつ、しかしそこで完全に取り残されてしまっている地域の金融機関があるとするならば、ここの共有制といいますか、それをそのまま分断していいのか、それともそこに何らかの協調性を持てるような何かが出るのか。

僕は非常に難しい諮問をさせて頂いているということも、全く皆さん方が言われるとおりだろうというふうに思っているんです。そして、それを2、3年だとか、そういう長期ではなくて、皆さん方の英知を使って頂いて、少なくとも1年ぐらいにそういうものをちゃんと出して頂きたいと。そうでなければ、それは、まさにものすごい勢いで回っているこの状況に僕は対応できなくなってくるだろうと。こういう問題意識で大臣とも、また政務官とも考え、それが今一番重要なことなのだろうということで諮問として、皆さん方のお力をぜひ貸して頂きたいということです。2番目、3番目に関しては、おっしゃられるとおり、これは極めて技術的なものであり、僕の少ない脳漿ではなかなか解決できない問題でありますから、極めて技術的、専門的なことになり、それもまたぜひお力を貸して頂きたい、そういうことでございます。

齊藤委員の質問といいますか、ご疑問というのはもっともだというふうに思うのですが、そういうことが入っているということだけ、ぜひ理解しておいて頂きたいというふうに思います。

○吉野会長

東副大臣、どうもありがとうございました。

昔、アメリカは、ずっと自動車が優れていたんですが、そのときに日本の自動車業界は日本のどこが自動車産業で負けていて、どこが強みだろうかということを非常に皆が議論したというのですね。そこからアメリカに勝てる車を作っていったという話がありまして、まさにおっしゃいましたように、日本の金融業のどこが優れていて、どこが負けているのか、やはりそういうことも含めて議論しながら、その中から、ではどういうふうに改善すれば欧米に負けない金融機関になれるかというところまでいければ、1年でできるかどうか分かりませんけれども、副大臣は1年間ということをおっしゃっていますから、少し中長期的に議論させて頂けると思います。

ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。

では、川波委員、それから太田委員の順番で。

○川波委員

ただいま金融庁のほうからのご説明と諮問を伺いまして、大変大きい問題だなと思いましたけれども、感想も含めて3点ほど申し上げます。ただいまの諮問の内容に致しましても、先ほどからご説明頂きました平成19年の強化プラン、ここのところに既に、例えば市場の活力を取り戻すであるとか、金融サービス業の競争力ということが言われています。そういう意味では政策としてはかなり一貫性があって、この段階に至って前に出るというか、打って出るという施策を出そうとしているのだろうと、私としては前向きに受け止めたいと思っております。それが1点。

それから、アジアとの関わり方なのですけれども、これは2つあるだろうと思います。

1つは、日本から企業なり、あるいは金融機関が出て行くという、出て行く先としてのアジアとの関わり方をどう戦略的に立てていくかということが極めて重要で、そういう意味では、必ずしも経済面だけでなくて、環境であるとか、あるいは政治的なファクターとか、様々なリスクがあるので、そういうことも含めて研究していく必要がある。

もう一つは、今度はアジアから日本に来るといいますか、あるいはアジアだけでなく世界中から日本に来るという市場としての競争力というか、あるいはセンターとしての競争力、これが極めて重要で、これは大崎委員もおっしゃったと思います。ですから、そういう2つの面でアジアとの関わり方を見ていく必要があるだろうと感じました。

それから、もう一つ、3点目ですけれども、先ほどの成長戦略の中に金融戦略が入っていますが、もう一つ経済戦略というのがあります。例えばアジアと関わるときに、私ども、たまたま今、研究プロジェクトを始めていまして、要するに金融機関がアジアと関わるときに中堅・中小企業がアジアに出て行く、彼らが何を考えているかということが極めて大事だと思います。何を求め、何をリスクと感じ、何をやりたいと考えているのかという、その企業の側に立った彼らのニーズと金融業の展開ということを考えていかなくてはいけないので、私としては、ぜひ、そういう単に金融戦略だけではなくて、経済戦略といいますか、企業が何を考えていらっしゃるのかということを併せて金融戦略を見ていくという、ここのところで色々検討させて頂ければありがたいと考えます。以上3点、感想めいたことですけれども、恐縮です。

○吉野会長

どうもありがとうございました。

それぞれがごもっともなご意見で、特に借り手の側が、どういうニーズがあるかということ、サプライサイドだけではなくて、やはりしっかり見ていくことがぜひ必要と。

どうもありがとうございました。

太田委員、それから家森委員。

○太田委員

太田でございます。ありがとうございます。

この1点目の諮問事項の我が国金融機関の国際競争力の強化という論点は、長い間、議論されてきたことだと思うのですね。しかしながら、それが十分にできていないという状況だと思います。できていない理由は色々とあろうと思いますし、この間、日本の都市銀行が、十数行あったものが、メガ3行プラスアルファに集約されつつある、というような状況になったとか、あるいは日本の金融機関も海外の金融機関も買収されるとか、色々な努力をされていると思うのですけれども、それでもなおこういう論点が出てきているということを重く受け止めて、この議論に参加したいというふうに思います。状況としては、ここに書かれているように、日本経済そのものがやはりアジアの成長を取り込むということが必要な状況になってきておりますから、そういう意味では金融の国際競争力というのも待ったなしの状況になっているのだろうと思うのですね。そうした観点から言いますと、従来は実体経済を支える金融業というのは、円滑で安定的な資金調達なり供給責任を負うということがメイン・イシューだったと思うのですが、それは、日本経済そのものが成長しているときには、それがメイン・イシューだったと思いますけれども、国内の成長が少子高齢化の中で必ずしも安定的に望めない中では、外の成長を取り込むということになったときには、実体経済を支える金融業というものが、その安定的な資金調達に加え、やはり海外に進出する色々な企業のそれをサポートすると、そういう役割もまた実体経済を支える金融業の役割として大きく浮上してきたと。したがってこのテーマは重要だというふうに思っております。そうしてみると、我々企業サイドも、色々な企業を買収したり、海外の立地をしたりと、こういうことでありますので、大きくは2点の期待があって、1つは、従来に無い規模の資金調達の円滑なる資金調達、こういうことが必要だと思います。

規模的には1,000億円を超えるような瞬発力のある資金調達が必要になってきている。それを支える金融業であり、それを支える資本市場の制度なり仕組みなりの問題点が何かと、こういうことだと思います。

2つ目は、金融業が、やはりそういう企業をサポートするというのでしょうか、一緒になって、一番分かって頂いている金融業が一緒になって、その相手の企業を探索するなり、相手の企業を評価するなり、場合によっては交渉の代理になって頂くなり、そういうことだと思うのですね。私は、日本の金融業である必要は必ずしもないと思います。大崎委員のとおりですね。

だけれども、一番分かっている金融機関にその役割を果たしてもらいたい。必然的に国内の金融機関になるのではないかと思うのですね。ただ、今、起きていることは、フルラインのサポートを日本の金融機関は一生懸命して頂いていますけれども、肝心なところは、そこに専門特化した経験豊かなところに、そこだけ競争で負けているというような状況が起きていると思うのですね。だから、そこもフルラインでサポートする以上、一番分かっている人ですから、そういうところ、2番目の課題もきちんとできるような金融機関になって頂くということが我々の期待だと思っています。

そういうことを期待しながらこの議論に参加したいと思います。進め方としては、そういうことなので、ここにいらっしゃる委員の方、それぞれ立派な方ばかりですが、当然お考えだと思いますけれども、金融機関をそのワーキング・グループに呼ぶとか、企業側もちゃんと参加させて頂くとか、そういうことはよくご配慮頂いて進めて頂ければありがたいなというふうに思います。

以上です。

○吉野会長

ご指摘のように、それぞれのときに関連の方々にぜひ来て頂いて、それでご意見を頂くというのは非常に重要だと思います。

ありがとうございました。

では、家森委員、どうぞ。

○家森委員

名古屋大学の家森です。

最初の諮問が中長期的な在り方ということですけれども、これは、だからといって中長期にゆっくり考えるということではないということを今、副大臣からご説明があって、のんびりやっている時代ではないと思っていましたので安心致しました。できる課題から速やかに提案をさせて頂くような形にできるといいなというふうに思いました。

私は、専門として、地域金融機関のことを研究しております。地域金融機関は、現在、例えば貸出難から大量に国債を抱えているので、金利が少し上がるだけでも、多額の損失が顕在化するというような潜在的には非常に危うい状態に実はあります。こうした中で、地域金融機関の最大の問題というのはやはり収益性が低いということなのですけれども、金融機関が儲けようとしても、お客さんである中小企業が儲からないので、金融機関だけが儲けることはできないというのが根本的にあります。そうすると根源的問題は、地域の企業の収益力をいかに上げていくかということに尽きるのだろうと思われます。その点で言うとリレーションシップ・バンキングというのも、いいお客さんを見つけるというような生易しい状況では既になくなっております。いいお客さんはいなくなってきているわけで、いいお客さんをつくっていかないといけないということになると、伝統的な金融業からはかなり踏み込んだ、商業銀行業務からいうとかなり逸脱した形になって、多分、金融行政のスタンスで言えば、それは従来の銀行のやることではないということだったのだろうかと思いますけれども、そういうようなところまで考えていかないといけない状況になっているのだろうと思います。

そういうところについては、これから議論させて頂ければありがたいと私は思っています。

ついでながら、例えば、この半年ぐらいで、金融システム政策上、非常に重要なことで何があったかというと、初めてのペイオフが行われたということです。かつてですと、ペイオフで預金を定額のみ保護するということは、金融システムに非常に大きな混乱が及ぶというように心配されていましたが、今回、金融庁が、適切に対応されて、そういう混乱は起こらないで済んだわけです。預金保険制度というのは危機のときにはさわれなかったわけですけれども、制度が落ち着いてきているということですと、例えば可変保険料率を導入するであるとか、現在、一時的に保険料率が高くなっているわけですけれども、そういうものの見直しなどという、安定に入った局面でできることも、この中長期的な課題の中で議論させて頂ければと思います。

それから、最後、これから金融業を成長産業にしていくのだという観点で言うと、近年、金融業ですごく成長した例を考えると、1つはFXです。FXについては、いろいろな問題もあって、例えば倍率を規制したということですけれども、その結果として、その問題がどういうふうに解決しているのか、まだもっと倍率を下げないといけないような状況なのか、また、例えばですけれども、逆に、そのことで十分なので、むしろ倍率を戻してもいいのだという議論もあるかもしれません。そういうところについてはデータを見せて頂いて、弊害が依然多い、あるいは弊害が解消した、意外にむしろ別のマイナス面が大きくなってしまったというようなことが分かると、我々としては議論がし易くなるなというふうに考えております。

以上です。

○吉野会長

ありがとうございます。

地域金融に関しましても、それから色々なデータを使って、その政策の効果はどうだったかというのもぜひやってみたいと思いますので、よろしくお願い致します。

ほかにございますでしょうか。

では、秋池委員。

○秋池委員

はい、お願いします。

1つ目の諮問事項につきまして3点ほど申し上げたいと思います。

こちらに恐らくはつながっていくお話なのだと思うのですけれども、バリューアップ型を指向する金融業という言葉があるのですけれども、ここにバラ色の夢を抱きすぎると難しいかもしれません。海外に既に出ているような企業は、新興市場を近くに控えまして、まだまだ成長の画というのを描いていますし、かなりの企業が、今そのことに向かって経営資源を重点的に配分しているということはありますけれども、一方で、この資料の中にも出てきます地方の問題ですとか、それから中堅・中小企業の問題ということになりますと、人口が減っていく地域で、海外に出て行くような芽が必ずしもないような産業であれば、成長するということは、ほかの企業からシェアを奪い取ってくるか、あるいは縮小均衡の画を描いて、収益性を上げるかという、どちらかの方向性しかありません。

ですので、この議論はもちろん重要な議論でありますけれども、恐らく、地域に残るような産業について議論する場合は、産業構造をどう転換していくかという議論にも触れないわけにはいかないのではないかというふうに考えております。

もう一つ、今まで出ていなかった企業が積極的に海外進出に挑戦して、実際成功している中堅企業などもありますので、大変元気の出るいい例だと思うのですけれども、もう一方で、そういう企業、事業者と議論をしていると、海外に出ていった時のリスクというものを金融機関がはかりかねるということがございまして、融資や出資のプロセスが進まないというようなこともあるやに聞いております。ただ、リスクを測れないのも致し方なくて、金融機関のお立場になってみれば当然だと思います。ですので、沢山事例を作っていって、成功事例や、失敗の事例ももしかしたら必要なのかもしれませんが、リスクの測り方というものを金融機関がより早く理解して、企業が速やかな資金調達を行えるようにしていくということも重要ですので、そのような議論もぜひしていきたいというふうに考えます。

最後に、先ほど副大臣から、金融機関の競争力で日本ならではとは何なのだ、というお話がありました。実は私も、製造業の競争力という議論はよくあるのですけれども、日本の金融機関の国際競争力という議論は意外にないと感じていたところでした。ぜひ金融機関の方に来て頂いて、その競争力について私たちが理解をした上で、中長期の在り方について組み立てていきたいというふうに考えております。

○吉野会長

ありがとうございました。

地域の産業構造を考えなくてはいけないというのは全くそのとおりだと思います。例えば農業まで含めた産業構造まで考えなくてはいけないかもしれませんので、ぜひこれからも議論をよろしくお願い致します。

ほかにございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

そろそろ時間になりましたので、最後に自見大臣のほうから少しご挨拶をお願いしたいと思いますので、よろしくお願い致します。

カメラが入るそうですので、ちょっとお待ち頂きたいと思いますので、ちょっとお座り頂いて。

(プレスカメラ入室)

○吉野会長

自見大臣、よろしいでしょうか。

○自見大臣

いいですか。

○吉野会長

はい、お願いしたいと思います。

○自見大臣

金融担当大臣の参議院議員の、自見庄三郎でございます。

本日は、今さっきまで参議院の予算委員会がございまして、6時過ぎまでございましたので到着が大変遅れたことを申しわけないと思うと同時に、せっかくの機会でございますから金融審議会の皆様方に一言ご挨拶をさせて頂きます。

初めに、皆様方におかれましては、金融審議会委員へのご就任を快く引き受けて頂いたことを心から大臣と致しまして、お礼を申し上げる次第でございます。

また、金融行政が直面する課題は、中小企業金融、地域金融をはじめとする、今さっきから色々話が出ておりました金融仲介機能の促進、あるいは国際的な金融動向や、それを踏まえた国際的議論にも配慮した安定的な金融システムの構築、利用者保護を図りつつ我が国経済の成長に資するための金融の役割の一層の発揮など、多岐に亘るとともに、内容が相互に連関するなど複雑化する傾向にあるところであります。

このように課題が山積する状況のもとで、今般、金融庁の政策判断に資する専門的な検討を行うため、金融審議会を新体制で再開する運びとなりました。

皆様方には、まず、ご検討頂きたい項目が、先ほど東副大臣からあった、この諮問項目どおり、1つ目が、我が国金融業の中長期的な在り方についての検討、2つ目が保険会社のグループ経営に関する規制の在り方等についての検討、3つ目がインサイダー取引規制における純粋持株会社の取扱い等についての検討、の3点でございます。ぜひ、この調査審議にあたり、私からは、金融審議会の委員の皆様及び関係者の皆様に以下の3点をお願いしたいと思っております。

1点目は、金融を巡る諸課題の調査審議にあたっては、常に経済・金融の実態について、現場の声を十分に聴いて頂きたいということでございます。私もこれまで、全国の中小企業団体や金融機関の方々からお話を伺い、政策判断の参考とさせて頂いてきたところでございます。審議会の委員の皆様方におかれましても、調査審議に際しましては、金融実務家や、市場関係者、また金融の利用者である事業者等のご意見など、地方を含めた現場の意見についても、積極的に耳を傾けて頂くように、お願いしたいと思っております。

第2に、従来の金融ビジネスを巡る制度・慣行に必ずしも囚われず、新しい視点や考え方をも取り入れた議論をお願いしたいと思っております。経済・金融を取り巻く状況は、金融の技術革新やグローバル化の進展など、刻々と変化をしております。こうした変化に柔軟かつ機動的に対応していくためには、常に新たな観点からも検討を加えていくことが必要と考えています。

第3に、金融には、実体経済を支えるとともに、金融自身が成長産業として、今さっき色々な方々から意見を、大変貴重なご意見をお伺いしましたが、成長産業として経済をリードするという2つの役割が期待されることを踏まえ、国内外の様々な利用者のニーズにこれまで以上に応えるための制度整備の在り方をご検討頂きたいと思っております。これまでやっていらっしゃってきたノウハウや1,400兆円の個人資産等をはじめとする我が国金融業が誇れる強みを活かしながら、利用者のために何ができるのか、何をすべきかといった点についてさらに検討を深めて頂きたいと思います。

以上申し上げました点を踏まえまして、審議会の委員を引き受けて頂きました審議会の委員の先生方に、あるいは関係者の方々に、皆様方に、今後も忌憚のない、本当に忌憚のないご論議を頂けますようお願い申しまして、私の挨拶とさせて頂きます。

どうもありがとうございました。

というのが、事務方が一生懸命書いたご挨拶でございますが、私も38から国会議員をさせて頂きまして、9回ほど選挙を致しまして、8勝1敗でございます。今は参議院議員をしておりますが、13年前、郵政大臣をさせて頂いた後、また昨年の6月11日から金融担当大臣あるいは郵政改革大臣をせいということでございまして、東副大臣、和田政務官ともども、今は政治主導という、そういう時代を生きております。私は、皆様方のように、決して金融の専門的知識はございません。私は医者でございまして、40年間、医者をして、26年間、国会議員をやらせて頂いておりますけれどもね。

こんなことをさせて頂いておりまして、やはり政治というのは何かというと、私は鳥の目と虫の目の2つが必要だと思っております。鳥の目というのは、ご存知のように、3年前のリーマン・ショック、あるいは2、3百年続いた、イギリスから始まった産業革命、そしてフランスから始まった自由・平等・博愛、これがアメリカに行きまして世界の近代化だという、ヨーロッパから始まる、滔々たる歴史の流れがあったわけでございますが、その流れの中で、私は、日本の大学の先生、アメリカの大学の先生を致した経験もありますが、リーマン・ショックとは、21世紀に起きた2、3百年に一遍の変化だというふうに認識を致しております。

皆様方ご専門でございますけれども、この世界の経済のグローバル化あるいは石油のグローバル化、それから特にソ連が崩壊し、冷戦構造が崩壊した後は、アメリカが軍事的にも、政治的にも、経済的にも、金融的にも極めて強固な国家であったわけでございます。しかし、ご存じのように金融工学、あるいは証券の細分化、あるいはリスクの分散等々、今は株式も3分の1ぐらいは、コンピューターで売ったり買ったり自動的に、反応的にやるようでございますが、そんな人間が制御できないようなといいますか、この金融商品を作り、まさにリーマン・ブラザーズというような150年続いたウォール街の老舗が、自分の会社の作った製品のリスクも自分の会社の中でコントロールし得ないどころか、アメリカという国家そのものが、まさに自分で作り出したコントロールできないリスクを抱えたのであります。私は、人間がここ50年間に作った3大、手に負えないものは、1つは核兵器だと思っています。核兵器というのは、すさまじい原子力エネルギーを持っていますけれども、運用を間違えれば、地球を、何回も人間を殺してしまうコントロール不能なところもございます。それから、もう1つは地球温暖化だと。私は、自民党に22年いましたけれども、環境基本問題調査会長という役割を5年間程やっておりました。まさに石炭と石油を燃やすことで、150年前から人間というのは、こういうすばらしい時代を作ったけれども、発生した炭酸ガスによる地球温暖化で、地球が、南極も北極もどうにかなってしまうというようなことですね。

そして、もう1つは、今言いましたように、コンピューターと金融工学の発達で、自分達がどうしようもない、コントロールできないアンコントローラブルなリスクを抱え込んで世界の経済はこんなになったと。私は、九州の福岡県でございまして、トヨタ自動車も日産自動車も大きな工場がございますけれど、3年前、トヨタ自動車は、生産があの一瞬で4割落ちたわけでございます。本日、アジアという話が出ましたけれども、まさに、このアジアが、中国が、力を持ってきたと。この中国が13億人、インドが11億人、ASEANが6億人ぐらいの、30億の人間がまさに非常に活気を持って生きてきた、という意味で、先ほど言いました、2、3百年に一遍の変革期を迎えたということでございます。

しかし、皆さん方、我々は140年前から近代化を始めた、ただ一つのアジアの国なのです。

今、少子化だとか、色々なマイナスの要因はございますけれども、我々は2回の世界的な奇跡を起こした国家と国民であるというふうに思っています。

1つには、アジアで戦前に近代化をなし得た国は日本たった1つだけでございます。H・G・ウェルズさんという有名なイギリスの歴史学者はこう書いていますよ。人類が2回だけすさまじいエネルギーを経験したと。1つは、マホメットがアラビア半島に生まれて、あれほど大きなイスラム帝国を本当に一代にして作ったこと。もう1つは、アジアの極東の小さな国、日本が、先ほど言いましたが、イギリスに生まれ、フランスに行って、そして大きくなった西洋文明に遭遇して、その国を、形を変えつつ、たちまちのうちに近代工業国家あるいは近代国家を作り得たことであり、それは、人類の2大エネルギーとして奇跡だということをH・G・ウェルズが書いたのを、もう50年ぐらい前に私は読みまして、今でも鮮烈に覚えております。さらに、国破れて山河あり、66年前、この国はまさに310万人の人が死にましたし、国土の65%が灰になったのですけれども、その中から、また、むっくり起き上がってきて、人類が今まで誰も経験しなかった高度経済成長をやってきた、それらのことを2つやり遂げた国民、国家でございまして、今でもG8の中で、アジアの国は日本だけでございます。

そして我々は、やはり日本人的な心根を持ちながらも、それこそきちっと、ある意味で、和魂洋才と申しますか、西洋的な世界の仕組みも制度も入れた、そういった誇るべきすばらしいところを持っていますが、どうも私も政治家をしておりまして、今頃何か元気がないと思っております。もう何もかも少子化だとかのせいにするのではなくて、まさに東西が、巨大に融合して、どっとアメリカ、ヨーロッパからアジアに向かいつつある今は、まさに私は日本の世紀だと思います。まさにそういう時だからこそ、私は、そういったことをきちっと評価して、日本がやっていける時代だというふうに確信をするわけでございます。私は、昨年8月、アメリカに行ってバーナンキさんやボルカーさん、ブレイナードさんにも会ってきました。また中国に行って温家宝さんと会ってきて、周小川中国人民銀行総裁にも会ってきました。今年の1月には、フランスのノワイエフランス中央銀行総裁とラガルド財務大臣・経産大臣にお会いしました。彼女は、先月ですか、G20を司会した大臣でございますけれども、そのような人達がみんな世界の政策を決定しているわけですが、ラガルドさんに会ったときに、イの一番に言われましたよ。「自見さん、ありがとうございます」と。何かというと、ギリシャ・ショックやアイルランド・ショックへの対応のために、ヨーロッパが出したユーロ債を日本が買うということを発表してくれたと。今まで戦後66年間、皆様方、営々と働いてきて頂いたから、ユーロ債を買えたわけでございます。地球の裏のヨーロッパの金融危機における日本の対応について、そんなことも感じ取ったわけでございます。

少し長い話になりましたけれども、本当に今、日本が難しいときでして、金融業というのは、勉強させていただけば頂くほど、何か非常に複雑多岐だけれども、所詮人間のツールです。我々の幸せのために、豊かになるために使う道具がお金でございますが、主人公は人間でございます。政権交代を機に新たに作り直させて頂いた金融審議会についても、そのことをしっかり踏まえて、ひとつしっかり皆様方がお持ちの知識、経験、英知を与えて頂きたいと、こういうふうに思っております。

我々、3人、政治家でございますけれども、政治家は、物事に追従する人間、状況に追従する人間と思っていません。状況を新たに作り出す、これが政治家の最大の使命でございまして、今、確かに厳しい状況にございますけれども、ピンチは最大のチャンスでもございますから、そのことを活かして、そういった知恵を、英知を、知識を皆様方が我々に与えて頂きたいということを、心から心からお願い致します。これは全部私の言葉でございまして、恐縮でございますけれども、皆様、本当にいろんなご専門家に、新しく金融審議会の委員になって頂いたことを本当に心からお礼を申し上げまして、改めて自見庄三郎の、本当に感謝と、そして本当に必死のお願いの言葉にかえさせて頂きます。ありがとうございました。

(プレスカメラ退室)

○吉野会長

自見大臣、どうもありがとうございました。

我々も元気が出るご発言で、ありがとうございました。

それでは、大臣、副大臣、それから政務官から頂きました3つの諮問事項につきましては、各々の課題の検討にあたりましてワーキング・グループを設置させて頂きたいと思います。

それから、また今日、色々ご意見がございましたけれども、その設置に関しましては、メンバー、どういう方々に入って頂くかなど、今後、皆様とご相談させて頂きたいと思いますが、このワーキング・グループなどの設置に関しましては私にご一任いただけますと幸いでございます。よろしいでしょうか。

どうもありがとうございます。

それでは、ただいまをもちまして、本日の総会、金融分科会合同会合を終了させて頂きたいと思います。

本日の模様は、私のほうから後で記者会見を行わせて頂きたいと思います。また、今後の日程に関しましては事務局のほうからご連絡をさせて頂きたいと思います。

今日は、大臣、副大臣、大臣政務官、皆さん、お忙しい中ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645)

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