金融審議会総会(第30回)・金融分科会(第18回)合同会合議事録

  • 1.日時:

    平成25年6月5日(水曜日)10時00分~11時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用特別第一会議室

○吉野会長

それでは、麻生大臣もご到着されましたので、ただいまから第30回金融審議会総会、第18回金融分科会合同会合を開催させていただきたいと思います。

本日は、皆様ご多用のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

本日の議事は、公開の形で行わせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、前回の会合以来、委員の交代がございましたので、太田克彦委員が退任され、新たに田邊栄一委員が任命されております。ご紹介させていただきたいと思います。

○田邊委員

三菱商事の田邊と申します。よろしくお願いいたします。

○吉野会長

どうぞよろしくお願いいたします。

また、全体の名簿につきましては、お手元にお配りしております資料4にございますので、適宜ご参照いただければと思います。

本日は、麻生大臣には最初からご出席いただき、それから寺田副大臣、島尻政務官は国会審議の関係で遅れて到着されることになっております。

それでは最初に、麻生大臣からご挨拶及び諮問をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○麻生大臣

おはようございます。金融審議会の総会の開催に当たりまして、私のほうから一言ご挨拶をさせていただきます。

まず最初に、審議会の議論に積極的にご参加をいただきましたおかげさまをもちまして、本年の2月に、この審議会で報告書を取りまとめていただいております。その提言を踏まえて法律案を策定をいたしまして、現在、参議院で審議をいただいている最中になります。報告書を取りまとめるに当たりまして、皆様方からいろいろご意見を拝聴させていただきましたことに関しまして、この場を借りまして改めて深く感謝を申し上げる次第です。

金融を取り巻く現下の環境というのを見ますと、金融システム全体としては健全と言える状況で、かなり安定しておると思っております。しかし、内外の経済の動向や、またそれらの動向が日本の金融システムに与える影響につきましては、引き続き高い関心を持ち続けておかなければならないところだとも思っています。

こうした中で、現在、安倍政権のもとで、長引いておりました円高、それに伴いますデフレ不況というものから脱却して、雇用、所得等々を拡大させて、日本の経済の再生を目指して、今頑張っておるところでありますが、このうち、1本目の矢、2本目の矢に続きまして、3本目の成長戦略につきましては、現在、産業競争力会議において取りまとめに向けた議論が進められております。

この会議におきましては、金融担当大臣であります私のほうからは、産業の新陳代謝の促進というものを図る観点から、新規産業また成長企業へのリスクマネーの供給のために仲介機能を強化すること、金融面からも産業に新たな血が入るように支援していく必要があること、そのために規制改革会議とも連携をしながら、クラウド・ファンディングや、地域における資本調達を促す仕組み、また、新規上場のためにいろいろかかります負担の軽減などなどの検討を進めていただくことを申し上げたところでもあります。

こうした課題というものを検討してまいります上で、金融審議会の皆様方からのご意見をいただき、これを参考にさせていただくことが重要と考えておりますので、本日、新たに諮問をさせていただくことにした次第であります。委員の皆様におかれましては、ぜひ活発な議論をお願い申し上げ、ぜひこの新しい状況に適した金融、そういったものをお考えいただければということをお願い申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。

引き続き、諮問をさせていただきたいと存じます。

金融審議会会長 吉野直行殿

金融庁設置法第7条第1項第1号により、下記のとおり諮問する。

経済の持続的な成長を実現していくためには、投資者保護に配意しつつ、金融仲介機能を活用し、新規・成長企業等に対するリスクマネーの供給の促進を図っていくことが不可欠である。

このような観点から、新規・成長企業へのリスクマネー供給のあり方、事務負担の軽減など新規上場の推進策、上場企業等の機動的な資金調達を可能にするための開示制度の見直し、その他、近年の金融資本市場の状況に鑑み、必要となる制度の整備について検討すること。

平成25年6月5日

金融担当大臣 麻生太郎

よろしくお願い申し上げます。

(諮問書手交)

○吉野会長

それでは、ただいま麻生大臣からご諮問いただきました、リスクマネーの供給、あるいは新規上場の推進、こういうものに関しまして、この金融審議会でしっかり議論させていただきたいと思います。

麻生大臣、どうもありがとうございました。

○麻生大臣

ありがとうございました。

○吉野会長

麻生大臣は所用のため、ここで退席されますが、今日は、朝、お忙しい中、ご参加ありがとうございました。

○麻生大臣

よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

(麻生大臣退室)

○吉野会長

それでは、引き続きまして、大臣からの諮問事項につきまして、事務局から補足説明をお願いしたいと思います。

それでは、市場課長からお願いいたします。

○古澤市場課長

市場課長の古澤でございます。お手元に資料1として、新規・成長産業等へのリスクマネー供給に関する議論の状況についての資料がついているかと思います。

1ページおめくりいただきまして、まず、これまでの議論の状況ということでございます。まず3月15日に産業競争力会議で、大臣より、規制改革会議とも連携しながら、クラウド・ファンディングや地域における資本調達などを促す仕組み、新規上場のための負担の軽減などについて検討を進めていきたいという表明がございまして、4月11日に、規制改革会議、創業等ワーキング・グループにおきまして議論が行われたところでございます。

この議論は現在進行中で、本日、規制改革会議、それから産業競争力会議それぞれ開催されまして、取りまとめに向けた議論が行われると承知しております。

さらに、参考にありますとおり、日証協において新規・成長企業へのリスクマネー供給に関する検討懇談会が開催されております。今週6月3日に第3回が開催され、そこにございますように6月末までをめどに市場関係者などによるニーズの把握、課題の洗い出しという作業が行われております。

もう1枚おめくりいただきまして、産業競争力会議の大臣発言であります。技術やアイデアを事業化する段階で、いわゆるリスクマネー供給が不十分なことも一因となって、事業を軌道に乗せられない、いわゆる「死の谷」と呼ばれる話がある。日本では米国に比べ研究・技術開発の資金調達について、上場前の段階のリスクマネーの供給活動が弱い。こうした問題に対処するため、新規・成長企業へのリスクマネーの供給のための仲介機能を強化し、金融面からも、産業に新たな血が入るよう支援していく必要があろう。

このため、金融庁としては、規制改革会議とも連携しながら、クラウド・ファンディング、地域における資本調達を促す仕組み、新規上場のための負担の軽減などの検討を進めていきたい。

もう1枚おめくりいただきまして、今の問題意識をポンチ絵の形で、追加的に説明するものです。ページで申しますと、3ページでございます。一番上にフェーズといたしまして事業化、それから上場前、それから上場後とございます。ご案内のとおり、取引所の市場につきましては、3,545社の上場企業があります。米国はニューヨーク・ストック・エクスチェンジで2,339、NASDAQで2,577で、両者を合わせますと、米国でも5,000社弱ですので、経済規模に比して単純な比較でございますけれども、上場会社数という面から比較いたしますと、日本における取引市場の規模というもの、必ずしも大きく劣っているわけではないと認識しております。

ところが、問題はそこに至るまでのプロセスではないかというのが、このポンチ絵のポイントでございます。例えば、そこにあります上場前の段階、日本におけるベンチャー・キャピタルの投融資額は約1,240億円、これに対し、米国は2.3兆円という規模と承知してございます。

それから、上場前のグリーンシートです。ポンチ絵をごらんいただきますと、38銘柄とありますが、注3をごらんいただきますと、米国におけるピンクシートの登録銘柄数は1万121銘柄となってございます。ちなみに、日本のグリーンシート銘柄38銘柄ということでございますけれども、2004年の段階では96銘柄あり、この足元の動向にも注意を払う必要があると考えてございます。

その次がエンジェルですが、注4をごらんいただきますと、エンジェル税制を利用した個人投資家の投資額は9.9億円です。それに対して米国におけるエンジェルの年間投資額は1.5兆円と言われております。こういう取引所市場に至るまでの段階をどういうふうに足腰を強くしていくかという問題意識を持っているということでございます。

もう1枚おめくりいただきまして、全体の課題の整理です。具体的検討課題のイメージの一番最初の1.のところが、前のポンチ絵で見ていただきました上場前段階についての論点の整理です。新興・成長企業へのリスクマネーの供給策ということで、クラウド・ファンディング、地域における資本調達の問題。

それから新規上場、その上場に至る際の問題ということで、事務負担の軽減、株主数基準の見直しなどを掲げております。

それから上場した後における資金調達の円滑化ということで、上場企業の資金調達に係る期間の短縮、届出前勧誘に係る整理。

その他の問題ということで、大量保有報告、虚偽記載の賠償責任というものを掲げております。

その次の個別の課題につきましては、今後ご議論いただく点でございますので、ポイントだけご紹介させていただければと存じます。5ページでございます。まず、クラウド・ファンディングですが、クラウド・ファンディングとは、新規・成長企業と投資家をインターネットサイト上で結びつけ、多数の投資家から少額ずつ資金を集める仕組みということでございます。日本では寄附ですとか、それから物販ですとかという形態での取り扱いが今までは中心ということで、株式形態での資本調達ではなくて、むしろ匿名組合の出資といった形での取り扱いが行われているものと承知しております。

参考にありますが、米国では新規・成長企業のリスクマネーの供給策の一環として、昨年のJOBS法で法制化されておりますけれども、この部分については未施行という状況です。

問題意識ですが、繰り返しになるのでポイントだけにいたしますが、いわゆる「死の谷」の問題というのがあり、リスクマネーの供給の促進という観点から、金融仲介機能の充実の取り組みとして、ここでございますが、株式形態を含めご議論いただいてはどうかという点が1つのポイントかと存じます。

次が、地域における資本調達を促す仕組みでございます。平成9年に日証協で創設したグリーンシート制度については、先ほどご紹介いたしましたとおり、必ずしも十分に利用されている状況ではなく、売買も低迷しております。

今後のあり方を考えていく際には、非上場企業にとって会社情報の定期的な開示、適時開示の対応が重い負担になっていることにも留意する必要があるということでございます。

3つ目のポツですが、地域に根差した企業というところに着目し、そこをとっかかりに長期保有を念頭とした資本調達、換金の場の提供ができないかという問題意識でございます。

2つ目の柱でございます事務負担の軽減につきましては、例えば新規上場のコスト低減の観点から、内部統制報告書の提出に係る負担の軽減。それから財務諸表の年数の限定といった点につきまして、ご検討いただけないかと考えてございます。

それから、その次、ページの8ページ目でございますけれども、新興市場、例えばマザーズの株主数基準につきまして、上場を促進する観点から見直しができないかといった論点でございます。

それから、3番目の柱でございます。ページで申しますと9ページからですが、上場後の資金調達ということで、有価証券の発行決議から、実際の有価証券の発行までの期間を短縮する余地がないかと。特に2つ目のポツでございますが、周知性の高い企業というものにつきまして、有価証券の種類、それから発行予定金額の記載を行うことなく、発行登録を行えるようにすることが考えられないかという論点でございます。

10ページ目は、届出前勧誘の論点でございます。これも長い議論がある論点ですが、問題意識にございますように、現在の勧誘の範囲というものにつきましては、実務や学会から、範囲が不明確ではないかといったご指摘をいただいているところでございまして、実務上も、例えば市場のニーズの調査を行うといったものについての障害となっているというような指摘もございます。

こういうものを踏まえまして、有価証券の募集売り出しを検討している企業、証券会社が、届出前に行うことができる行為というものについて具体的に明らかにすることができないかといった論点でございます。

それから最後が、大量保有報告制度の見直しと、その他の制度の見直しでございます。それぞれ重い課題ですが、まず大量保有報告制度につきましては、問題意識といたしましては、証券市場の公正性、透明性に留意しつつ、たとえばというところでございますけれども、自己株式を大量保有報告書の対象有価証券から除外する。提出者が個人である場合における記載事項を見直すといった負担軽減措置が考えられないかといった論点でございます。

それから12ページでございますけれども、虚偽記載に係る賠償責任ということでございます。問題意識ですが、上場会社は虚偽記載を防止するため、既にコストをかけて内部統制体制の構築などを整備をしており、このため、流通市場で有価証券を取得した者に対する賠償責任については、現在、無過失責任となっていることが適切か、改めて検討が必要ではないかという点でございます。

以上が、我々のほうで準備している論点及び問題意識でございます。最後13ページに、先ほど紹介させていただきました日証協でのご検討についての趣旨、検討事項をつけさせております。

簡単ではございますが、以上でございます。

○吉野会長

古澤市場課長、どうもありがとうございました。

引き続きまして、麻生大臣から言及のありました新規・成長企業等へのリスクマネーの供給に関しまして、規制改革担当でもおありになる寺田副大臣から、規制改革会議の議論の状況についてご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○寺田副大臣

ご紹介をいただきました、副大臣の寺田でございます。今日は、皆様、ほんとうに暑い中、またお忙しい中、金融審の議論ご参集を賜っております。常日ごろより金融行政に対しまして、多大なるご理解、ご支持を賜っておりまして、私のほうからも感謝を申し上げるものであります。

今、吉野先生からお話ありましたとおり、成長戦略の最重要のエンジンとして、規制改革会議、安倍内閣発足以来、濃密かつ活発な議論を進めております。私も内閣府で、この規制改革のほうも担当として仰せつかっておりまして、規制改革会議、実は今日、全く同じ時間帯で同時並行で官邸で開催をしておりまして、私もこのお話をさせていただき、官邸のほうに行かせていただきますが、4つのワーキング、この第1ワーキングが健康・医療ワーキング、第2ワーキングがエネルギー・環境ワーキング、第3ワーキングが雇用ワーキング、そして第4ワーキングが創業等ワーキングということで、とりわけ創業等ワーキングにおいては、本金融審のメンバーでもあられます大崎先生が、創業等ワーキングの座長として活発なご議論リードをしていただきました。

実は、きのうの深夜までかかって、例の薬のインターネット販売の話、決着をいたしました。これは健康・医療ワーキングであります。

また、エネルギー・環境ワーキングでも、石炭火力のアセスの短縮化や、高圧分電の規制緩和について議論いたしました。

また、雇用ワーキングでは、いわゆるジョブ型正社員、これらについて議論いたしました。

また、金融審とも一番関係が深い創業等ワーキングでは、ビッグデータビジネスの解禁、そして、このリスクマネー供給。これらが大変大きなテーマとなりました。おそらく今日のお昼ごろ、規制改革会議のほうで記者会見をし、そして諸点についても、現時点での取りまとめを発表させていただき、その内容の全てを閣議決定として政府の方針として進めていく、そのような段取りになろうかと思います。

リスクマネー供給につきましては、たった今、事務方からも説明がありましたが、大変重要なテーマといたしましてIPOの促進、またリスクマネーの供給の円滑化ということが挙げられますが、約1,550兆円の家計金融資産の大半が預貯金で眠っている。このリスクマネーの供給手段としてのさまざまなツール、また規制を緩和していこうということで規制改革会議、これは創業等ワーキングのほうと親会議のほうで活発にご審議を賜り、いい形でもって取りまとめを行うことができました。

今、説明がございました諸点について、全て規制改革会議でも前向きな検討をいたし、その実現に向けて取り組んでいく旨がワーキングのほうでも合意をされ、本日、今日同時並行で開催をしております親会議のほうで、そうした方針が了承をされる予定になっております。

とりわけ、今説明がありましたが、10ページのソリシテーションの点、これは非常に重要であります。この有報の届出とともに、勧誘の範囲の明確化によりましてブックビルドを早期に行うことによって、市場との双方向の対話が行えるようになりますと、具体的に届出前にここまでができるということが確立をすると、非常に円滑に新規公開も進む。ここらの点の整理、届出前のソリシテーションについての整理を、ぜひとも金融審でもお願いをしたいと思います。

あと、今、一番最後に説明がありました12ページ目の虚偽記載の点、これも金商法の中の規定にあるわけでありますが、ご承知のとおり、無過失責任であります。したがって、さまざまな要因によって、開示をした中身が事後的に全く過失がなくても、ファクトとずれてしまうと、その責任が無過失として発行体にかかってまいります。

例えば、ご承知のとおり、さまざまな財務諸表も、今さまざまなアプリ、あるいはソフトによって策定をいたしておりますが、これも一定の確率でエラーが生ずるわけであります。全く無過失に生じた、そうした財務諸表上のエラー、これは実は今回内閣府のほうで計算ミスが発覚をし、大変大きな問題となっておりますが、一定の確率で生ずるそのようなミスについて、どういうふうに対応したらいいのか。とりわけ発行段階と流通段階、いずれも今現在、無過失責任となっております。この点について、例えば新規公開を行うような、まだ非常に小粒な企業について、どこまで賠償責任を課すのが適切であるか、当審議会においても、ぜひともご審議を賜りたいと思います。

あと、終わりになりますが、皆様方のお手元に5月30日付で私の名前で、全ての関係金融機関、また全ての関係地方公共団体に対して発出をいたしましたレターが配付をされておろうかと思います。ちょっとだけお目通しをいただきますと、この5月30日に、実は新藤総務大臣と私で、両者の連名によって地方銀行協会、第2地銀協会、そして信金協会、そして全国信用組合中央協会、さらには農中の各代表者の方々に対しまして、強い経済を実現をする、とりわけ3本目の矢の成長戦略を実現をいたしますために、地域レベルでもって金融の活性化と、そして地域の再生、また地域経済の底上げを図るための地域元気創造プラン、これを策定をいたし、金融面でもってしっかりとこうした地域再生を支えていただきたいとお願いしました。これは間接金融のツールに加えまして、例えば事業再生ファンドでありますとか、あるいは各地域に設定された活性化ファンド、こうした直接金融の手段も含めてデュアルルートで、そうした3本目の矢の推進をお願いいたしたところであります。

とりわけ地域活性化ファンドにつきましては、本年の3月18日に発足をいたしました地域経済活性化支援機構、この予算も先々週、夜なべ国会、徹夜国会の末、1兆円の与信枠を政府保証つきで成立を見ることができました。ご承知のとおり、我々衆議院では多数を占めておりますが、残念ながら参議院ではまだ過半数に達しておりません。1回この予算案が参議院で否決をされ、両院協議会を開催し、何とか5月16日に日付が変わる前の5月15日の深夜に成立をすることができました。これから地域経済活性化支援機構とともに、地域経済活性化のために金融円滑化法期限到来後の適正な対応も求めてまいりたい、そのように考えております。

なお、この点につきましては、近々発表になりますところの骨太方針におきましても、「地域再生なくして日本の再生なし」との言い方でもって、とりわけ地域における経済再生の問題について、明確な記載をしていこうということで、今、経済財政諮問会議、そしてまた産業競争力会議、そして我々が今ずっと議論しております規制改革会議、この3つの会議の場でもって、この問題も取り扱いをさせていただいております。

金融審の先生方におかれましては、本問題につきましてのご理解並びにご指導、ご鞭撻のほど、お願いを申し上げる次第であります。

私からは以上でございます。

○吉野会長

寺田副大臣、詳細なご説明ありがとうございました。リスクマネーの供給、それから地域の活性化、ぜひ金融審議会を通じて議論させていただきたいと思います。

寺田副大臣は、所用のため、ここでご退席されますので、どうも今日はご出席ありがとうございました。

○寺田副大臣

ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

(寺田副大臣退室)

○吉野会長

それでは、カメラの方々も、ここで退室をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○吉野会長

それでは、ただいまから討議に入りたいと思います。

先ほど麻生大臣よりいただきました諮問事項に関しまして、皆様からご質問、ご意見がございましたら、ご発言お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

それでは、川島委員どうぞ。

○川島委員

どうもありがとうございます。このたび、新規・成長産業等へのリスクマネー供給、議論を行うということは非常に重要なことだと思っておりますので、このたびの諮問、そして今後の検討について賛同をいたす次第でございます。

特に成長分野への投資の促進、そしてそこで市場が生まれて雇用が拡大していくということが、このたびの成長戦略の中でも非常に重要ではないかと思っております。ぜひご検討いただく際には、この諮問書にもありますとおり、投資者保護に配意をしつつという点も重要だと思いますし、また、金融市場が健全に、かつ活性化をしていくということも重要だと思いますので、例えば幅広いバランスのとれた議論ができますように、個人の投資家あるいは消費者、そしてベンチャー企業を含む事業者の立場、また、あるいは法曹の実務のご専門の方だとか、そうしたメンバー構成なども工夫をしていただけたらと思います。

以上でございます。

○吉野会長

川島委員どうもありがとうございました。おそらくこのリスクマネーの供給は、個人投資家と、私なんか願っているのは年金基金とか、さまざまなところで長期の資金がたくさん入ってくるといいような気がいたします。

どうもご意見ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、家森委員どうぞ。

○家森委員

非常に重要なテーマであるとともに、大変難しいテーマであろうかと思っております。金融システムの安定性を図るという点で言うと、金融機関にリスクをなるべくとらさないというのが1つの方法でありましたけれども、同時に地域の実情を考えると、金融機関に適切にリスクをとっていただく必要も出てきているという現状認識のもとで出てきた諮問だろうと思っております。

これに対して、これから考えていく上で、いろいろな方々のご意見を聞いていく必要があると思います。もちろん発行会社の側でもですし、それから主取引金融機関、地域金融機関もそうでしょうし、それから証券会社もそうでありましょうし、今、吉野先生がおっしゃったように機関投資家も含めたいわゆる投資家、それからさらに、先ほどからの副大臣のご説明等にもありましたように、地公体とか、そういうようなものも含んだ幅広い議論が必要ではないかと思っております。

また同時に、新規のサービスということになると、新規参入をいかにサービスの供給者として促進していくかという意味で、既存の業界団体の外にいらっしゃるような方々のご意見等も聞ける機会があると議論が深まるのではないかと感じました。

以上です。

○吉野会長

ありがとうございます。デュアルな金融の提供と言いますか、銀行を通じた預金から貸し出しのチャンネルと、それからクラウド・ファンディングのような、銀行を通じない形での両方の資金の流れということが必要だと思います。

今、家森先生おっしゃいましたように、いろいろな関係者がおられますから、その関係者がうまくコーディネートしながらやっていただくのが重要だと思いますが、あと、もう1つは、目ききがやっぱり一番重要だと思いまして、この方々がうまくしないと、せっかくリスクマネーが提供されても、成長のほうに結びつかないと思いますので。

ほかにいかがでしょうか。

原田委員、どうぞ。

○原田委員

成長産業などへの資金供給という点については、非常に重要なテーマであるかと思いますが、今までにもあった制度と言いますか、ベンチャーキャピタルの投資、エンジェル、そしてグリーンシート、この3点は今までもあったものです。クラウド・ファンディングについては比較的新しい試みであるかとは思いますが、今後の活用について考えるに当たっては、今まであった、とくにグリーンシートなどについては、低迷を続けてきた原因についてもレビューをして、今後の活性化にどう活用していくかということを考える必要があるかと思います。

低迷というのはいろいろな理由があるかと思うのですが、例えば、投資家側からしてみれば、非常に扱いにくい、売買しにくいとか、換金しにくいとか、そういった問題があったかと思いますし、企業側からしてみれば、もともとはグリーンシートというのは上位の市場へのステップアップのための場所という位置づけがあったかと思うのですが、実際は上位の市場へ行ける企業数というのは非常に限られていて、むしろグリーンシートからの指名を取り消されるような企業のほうが多くありました。グリーンシートで取引されるメリットがどのくらいあったのかといった反省を踏まえて考えてから、次へステップアップしていくべきであるかと思います。

以上になります。

○吉野会長

ありがとうございます。

古澤市場課長、何かございますでしょうか。

○古澤市場課長

例えばグリーンシートにつきましては、資料の6ページに整理しております。原田先生のお話にございましたように、なぜ低迷しているかの分析がまずスタートで、このような制度のデザインをする際の難しさは、実態と規制とのバランスの取り方になります。フルスペックの規則を入れると厳しいものになりがちなので、例えば資料の6ページの一番最後のポイントでございますけれども、1つの切り口が、地域に根差した企業などについて、その地域の株主や当該企業をよく知る株主による長期保有を念頭とした資本調達、換金の場を提供するという視点。ここは次に矢印にございますけれども、地域に根差した企業などについては、株主が当該企業などになじみがあることなどに鑑み、信頼できる仲介業者の関与を前提に、例えば開示などの面で上場企業などに比べて、より簡易な手続での資本調達を可能とするということもございます。

また、開示だけではなくて、インサイダー規則をはじめとする不公正取引関係の取扱いも論点になっていくことかと思います。

他方、当然そこは投資家保護とのバランスがございますので、何が許されるのか、何が許されないか、実情に合ったところでのバランスを先生方にご議論いただくのかなと考えております。

○吉野会長

今、原田委員からご指摘のように、アメリカの場合のベンチャー企業というのは大体それが最終的に上場されて、キャピタルマーケットに行くわけですけれども、日本の場合の地域の中小企業というのは、ずっと中小企業でいて、いいものをつくっていって、必ずしもアップルとかYahoo!みたいに株式市場に上場しないわけですから、そうするとやっぱり、ずっと中小企業でいながら、いいものをつくっていくようなところに対しても、さまざまな資金が提供できるということも考えなくてはいけないような気がいたしまして、それから今までの使い勝手の悪さ、それからアジアとか日本に特有の形というのがあると思いますから、そういうものも含めて、また深めていただければと思います。

ほかにいかがでしょうか。河野委員よろしいですか。

○河野委員

今の原田委員のご意見に賛成というか、同じ意見を持っていたのですけれども、もちろん今までの中でもエンジェルとかグリーンシート、各国との違い、先進国との違いというのは、多分今後、再度我々も確認させていただけると思うのですけれども、リスクに対してリスクから保護するという考え方よりは、我々が少し認識を変える、ジャッジにおける自立というふうな、教育問題もいろいろ今までも論じられてきていますけれども、やはりリスクに対する認識が変わらないと、たくさん新しいルールを設けても、かえって遠回りになってしまったり、現実に効果が上がらないということもありますので、保護するというよりは、国民の自立というような、そのためのバックグラウンドとして金融知識を高めることの必要性を盛り込んだり、そこを変えるということが色合いとして出てきたほうがわかりやすいのではないかという気もいたしました。

さっきのご意見につけ加えて、いろいろ目指しても、やっぱりこれからはもっと自立、自己判断の中でやるんだよということのメッセージは消費者の側にもですけれども、伝わるような何かというのが必要ではないかと思いました。

以上です。

○吉野会長

ありがとうございます。おっしゃいますように、何でもうまくいかなければ国の責任だとか、ファンドの責任だというのではなくて、河野委員のおっしゃいましたように、個人がある程度金融知識をしっかり持たなくてはいけないと思いまして、後でご報告がこちらからありますが、金融経済教育でそういうものをしっかり確立していこうと。まさに国民の方々の知識を深めようというところも、これから進めたいと思っております。ありがとうございます。

福田委員、どうぞ。

○福田委員

重要な問題ですので、ぜひ推進していただきたいと思いますが、日本とかアメリカとの違いは、新しい企業がどんどん生まれる率というのは非常に少ないだけではなくて、退出も非常に少ないというのが日本の産業の特徴で、そういう意味ではダイナミックスが非常に欠けているというのが日本のこれまでの産業の問題点だったと思うので、リスクマネーですから、当然成功すればものすごく大きなゲインがあるけれども、失敗すれば大きなロスが発生するわけで、やっぱりロスが発生したところは退出させて、また新しいところをどんどん入れるという仕組み。

ですから、参入を容易にするというだけではなくて、退出サイドも同時に考えるということが大事だとは思うので、参入を容易にするという規制改革のみではなくて、退出の問題も工夫する形での仕組みというのを、ぜひご検討いただければとは思います。

○吉野会長

中小企業の方とお話ししたときに、退出も非常に重要で、そのときにほんとうに非常に苦しくなるときまで待ってあげて退出すると、もう再生の力がないわけですから、そうだとしますと、ある程度余力のあるところで、この産業は少し衰退産業であれば、早く退出していただいて、新しいところに移っていくという、そういうことも必要だと思いますので、参入と退出の自由化というのは重要だと思います。ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

細かい点になりますけれども、先ほど規制改革会議における議論の状況についてご紹介がありました。その中で少し気になったことがあります。虚偽記載等に係る賠償責任を見直すという点に関して、何か有価証券報告書に記載があって、それが事後的な状況の変化によって誤りになるような場合に無過失責任が生じるというのは問題だというご発言がありましたけれども、虚偽記載かどうかは提出時に決まる話なので、提出時に真実であった記載が事後的な状況の変化によって虚偽記載となることはありません。

また、一定の確率でミスは発生するものだから、誤記でも無過失責任が生じてしまうというのは問題だというご紹介もありました。一定の確率でミスが生じることは確かですけれども、民事責任が生じる虚偽記載は、投資者の判断に重要な影響を及ぼすような重要な事項についての虚偽の記載ですから、そういったものが一定の確率で発生するミスによって起こることは、まず考えられないのです。

金融審議会では正確かつ緻密な議論を行っていくべきだと考えます。

○吉野会長

ありがとうございました。

古澤市場課長、何かございますか。よろしいですか。

○栗田企業開示課長

企業開示課長の栗田でございます。今のお話に関連して申し上げますと、例えば確率論の話でございますが、今、会計はシステムでやっている企業が多くて、外注したシステムに、例えば企業ではなかなかわからないようなバグがあって、それで売り上げの集計が大きく誤る結果になってしまっていたというようなことがあっても、今だと、重要な虚偽記載だと認定されれば損害賠償責任になるという建付けになっております。これは言い方の問題だと思うのですけれども、例えばシステムエラーというのはある程度確率的に発生すると言えなくはないわけでございまして、要は、最後に出てきた結果に重要な虚偽表示があれば今はだめだということになります。

ただ、企業としては全くどうしようもないような局面もあるかもしれません。そういうときまで責任を負わすのが適当かどうか、ここはご意見分かれるところがあると思うので、ぜひ審議会でご議論をいただいて、どういう要件で、どういう場合に免責を認めるのか、認めないのかというようなことをご議論賜ればと考えております。

○吉野会長

それでは、多くのご意見をいただきましたので、このリスクマネーの供給の促進に係る検討に関しまして、諮問事項、ワーキング・グループを設置させていただきたいと思います。具体的なメンバーにつきましては、企業や市場の関係者等、この分野に詳しい方々に入っていただきたいと考えておりますが、座長につきましては、金融審議会でご経験の非常に長い神田先生にお願いしたいと思っております。今日は神田先生はご欠席でございますが、ご本人からは事前にご了解をいただいておりますので、メンバー、それからその他につきましては私にご一任させていただき、座長を神田先生にお願いさせていただきたいと思います。皆さん、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○吉野会長

それでは、どうもありがとうございます。

引き続きまして、この機会に、最近の金融行政の動向としまして事務局から、金融審議会ワーキング・グループの報告書を踏まえて開催されている官民ラウンドテーブルにつきましての議論、それから金融庁金融研究センターで設置されました金融経済教育研究会は4月に報告書を取りまとめましたので、それについて事務局からお願いいたします。

最初は官民ラウンドテーブルで、長谷川企画課長よろしくお願いいたします。

○長谷川企画課長

企画課長の長谷川でございます。資料2-1、横長の数ページの資料をごらんいただければと思います。表紙をめくっていただきまして、1ページでございますが、官民ラウンドテーブルの概要ですけれども、昨年の5月に公表されました金融審議会の「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」の報告書における提言を踏まえまして、我が国金融業の向上・活性化に向けて、官民が持続的な対話を行う場として昨年9月に設置されました。

参加メンバーですけれども、下にありますように、全銀協以下、預金取扱金融機関、生損保、証券、政府系金融機関、日本銀行、金融庁といった、オール金融界がメンバーになっております。

官民ラウンドテーブルの仕組みですけれども、真ん中にありますが、官民ラウンドテーブルの本会合、これは役員クラス、金融庁側で言えば局長クラスが構成員になっておりまして、その場において、今後官民が検討すべき課題を決定いたします。その後、課題ごとに実務家レベルの作業部会を設けます。構成メンバーは、まさに実務家レベルでありまして、金融庁側は課長補佐等の若手が入りまして、文字どおりかんかんがくがく議論をいたしまして、約半年ほど議論の上、その成果を官民ラウンドテーブルの次の本会合に報告して、その後、公表するといった仕組みをとっております。これまで本会合は2回行われているところであります。

より具体的な中身ですけれども、2ページをごらんいただければと思いますが、昨年の9月に第1回官民ラウンドテーブルの本会合を開きまして、以下の3つのテーマを設定し、作業部会を設置いたしました。1つ目は、高齢者社会と金融サービス作業部会でありまして、これは私の企画課が事務局になったのですが、少子高齢化が進展する中で、高齢者あるいは現役世代それぞれにとって望まれる金融商品やサービスといったものはどういうものがあるのかといったことについて議論いたしました。

また、国際展開作業部会におきましては、これは国際室が事務局になりましたけれども、我が国企業、金融機関の国際展開を促進するため、その障害となるような海外の金融規制に対して、官民で協力してどのように見直しの働きかけを行っていくかなどについて議論をいたしました。

それから中小企業金融の向上作業部会におきましては、これは監督局で事務局になりましたけれども、金融機関によるリスクマネー供給力の強化などを通じた創業・新規事業支援の促進などについて議論を行いました。

この3つの議論の結果を、今年の5月の第2回官民ラウンドテーブル本会合に報告いたしまして、その後、公表いたしました。また同時に、新たに以下の2つのテーマを設定し、作業部会を設置する予定であります。1つは、資金決済サービスの向上作業部会でありまして、これは企画課が事務局になろうと思っておりますが、2つのテーマがありまして、1つ目のテーマは国際資金決済サービス、グローバルCMSと言われているものですけれども、我が国企業の国際展開を資金決済の面から支援するために求められる金融機関によるサービスの向上や、公的関与のあり方などについて議論をしたいと思っています。

2つ目のテーマが、国内資金決済サービスでありまして、近年電子決済が進展しておりますし、全銀システムや日銀ネットも改定されたり、改定を予定しております。そういった国内資金決済インフラの発展を踏まえた企業向け決済、送金サービスの向上について議論をしていきたいと思っております。

もう1つの作業部会は、地域における新産業等の育成と金融の役割作業部会でありまして、これは監督局が事務局になりますが、この作業部会は、左側の前回の中小企業金融の向上作業部会での議論をさらに継承しまして、具体的な事例の収集などを通じて金融面における課題を抽出したり、整理をしたりするようなことを予定をしております。

いずれも、これから半年ほど議論をいたしまして、年末に向けて取りまとめを行って、次回第3回の官民ラウンドテーブルの本会合で報告の上、その後、公表したいと考えております。

3ページは、第2回会合において公表された各作業部会の報告の概要でございます。本文は、この資料の後に2-2、2-3、2-4と分厚い資料がございますが、時間の関係もございますので、簡単にそれぞれのポイントだけご紹介したいと思います。

高齢化社会と金融サービスの作業部会につきましては、例えば、高齢者などが気軽に相談できる金融コンシェルジュといったようなものを、病院などに設置できないかといった議論がありまして、それを踏まえて、早速日本ファイナンシャルプランナーズ協会、FP協会が名乗り出ていただきまして、杉並区の河北総合病院と提携をして、まずパイロットプロジェクトを実施しております。その実施状況を踏まえて、今後も広げていきたいと考えているところであります。

それから、民間介護保険の充実に向けた官民の連携の強化、あるいは持ち家の資金化というのがありますが、退職世代の方にとっては、比較的持ち家はあるのですけれども、キャッシュフローがなかなか厳しいという問題がありますので、持ち家を、できれば資金化するといいのではないかといった観点から、リバースモーゲージですとか、住みかえ支援について、具体的にどういう問題があって、どういうふうに解決すればうまく進んでいくかなどについて議論を行っていきました。

それから、次の国際展開の作業部会におきましては、日本企業の海外展開円滑化のため、相手国に対して技術支援を行うとともに、他方で金融規制緩和の要望を一体的に行うといったこと。それから、今後は国・分野ごとに行動戦略を策定して、官民で連携して対応をしていく。そしてその進捗を定期的にフォローしていく。こういったことが提言されております。

3つ目の、中小企業金融の向上作業部会におきましては、金融機関の目利き能力の向上のための取り組みですとか、地域レベルにおける関係者間の情報・ノウハウの共有、リスクシェアリング、金融機関によるハンズオン支援能力の向上等々について、具体的な取り組みが提言をされております。

それぞれこの報告で提言されております具体的な取り組みの進捗状況においては、次回以降のラウンドテーブルにおいてメンバー間で共有し、フォローしていくということになっております。

私からは以上でございます。

○吉野会長

ありがとうございました。

それでは、引き続きまして、中島政策課長から金融経済教育研究会の報告書について、簡単にご説明をお願いいたします。

○中島政策課長

それでは、お手元の資料3-1と3-2に沿いまして、金融経済教育研究会の報告書についてご説明いたします。この研究会は金融研究センター長であり、この金融審の会長でもあります吉野先生のもとで、有識者の方々、業界の関係者、関係省庁の方々をメンバーとして、昨年秋以降、時には、島尻政務官にも議論に参加いただきながら、熱心に議論を進めまして、お手元の報告書を取りまとめております。

その概要につきまして、資料3-1を使いましてご説明いたします。まず、金融経済教育の意義・目的について、大きく3つに分けて考えております。現代社会では金融とのかかわりを持つことは避けられず、そうした中で、社会人として経済的に自立し、よりよい暮らしを送っていくためには、生活設計の習慣化、金融商品を適切に利用選択する知識・判断力が重要ということで、生活スキルという意味での金融リテラシーが重要というのが1つ目の意義。

続きまして、先ほども委員からご発言がありましたが、利用者保護の実現には政府による規制だけでは限界があり、過度な規制は金融機関のイノベーションを阻害するおそれもある。このため、金融リテラシーを高めて、利用者の金融商品を選別する目が確かになれば、より良い金融商品の普及も期待できるのではないかという意味で、健全で質の高い金融商品の供給を促す金融リテラシーという2つ目の意義。

さらに、約1,500兆円の家計金融資産の過半は、現在、現預金となっております。デフレ下のもとでは、こうしたことも考えられるのかもしれませんが、分散・長期投資のメリットについての理解が十分でないということが、その原因になっていた可能性もあるのではないかということで、家計の中長期の分散投資が促進されれば、成長分野への持続的な資金供給に資する効果もあるのではないかという意味で、我が国の家計金融資産の有効活用につながる金融リテラシー、こういう3つの意義・目的に整理しております。

その上で、公正で持続可能な社会の実現を目指すとしております。

続きまして、金融経済教育の今後の進め方についてですが、既に学校段階、社会人、高齢者段階において、様々な金融経済教育が行われております。その上で、今後の方向性として、1つ目に、身につけるべき金融リテラシーということで、まず行動面を重視することを大きな柱としております。最近のG20、OECD等の、国際的な議論の動向も踏まえた上で、知識としての金融リテラシーだけではなく、それを実際の行動に移していくことが重要ということを掲げております。

その上で、2つ目に、最低限習得すべき金融リテラシーの共有ということで、教えるそれぞれの主体ごとに金融経済教育の内容というのがまちまちでありましたので、資料3-1の2ページ目にあるように、最低限身につけるべき金融リテラシーを、やや大胆ではありますが、4分野15項目に整理しました。1の家計管理に始まり、2の生活設計、さらに3番目として、「金融取引の基本としての素養」、「金融分野共通の知識」、さらに各金融商品ごとに、「保険商品」、「ローン・クレジット」、「資産形成商品」に整理し、「資産形成商品」には項目12にあるように、人によってリスク許容度は異なるが、仮により高いリターンを得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことの理解であるとか、項目13にあるように、資産形成における運用資産の分散、投資時期の分散の効果の理解であるとか、項目14にあるように、資産形成における長期運用の効果の理解といったことも含めております。

さらに4番目の柱として、外部の知見の適切な活用ということで、金融商品を利用するに当たり、外部の知見をその都度適切に活用するということが必要だということも含めて、15項目に整理しました。

また、1枚目にお戻りいただきまして、左側の1.身につけるべき金融リテラシーの(3)のところですけれども、この15項目について、さらに今後、年齢別・分野別の教育内容について体系的に取りまとめた、より詳細なスタンダードを確立していくとしております。

さらに、2.ですけれども、金融経済教育の対象者について、学校における取り組みとともに、今後は社会人・高齢者にも焦点を当てていく必要があるとしております。

さらに3.各分野の取り組みの内容ですが、学校段階における取り組みの推進、社会人・高齢者段階における取り組みの推進ということで、具体的には、例えば確定拠出年金加入者への投資教育の充実や、2ですが、消費者教育推進法に基づき、今後政府で策定する基本方針に金融経済教育を位置づけ、自治体における取り組みを推進していく、業界団体・各金融機関の積極的な取り組みへの期待、予防的・中立的なアドバイスの提供の充実などを挙げております。

さらに、金融経済教育を担う人材の育成、金融商品にかかる情報提供の充実を内容としております。

この報告書については、これだけで終わりというわけにはいきませんので、この報告書の中で右側の4.のところに、今後どうやってこれを推進していくのかという具体的な手段についても取りまとめております。具体的には、金融庁が引き続き積極的な役割を果たすとした上で、日銀を事務局としております金融広報中央委員会のネットワークを活用して、「金融経済教育推進会議」を立ち上げる。その場では、無駄や隙間を生じさせないよう、適切な役割分担で全体の取り組みを関係者でフォローし、進行管理を行うとしております。

当面の取り組むべき課題についても書いておりまして、先ほど申し上げました15項目の具体化や、年齢別にどのような順序で教えるべきか整理・体系化を行なうこととしております。

最後に、こういった金融経済教育について、効果測定を定期的に実施するという趣旨で、昨年初めて実施された金融広報中央委員会の金融力調査を活用していくことを内容としております。

私からは以上です。

○吉野会長

中島政策課長、ありがとうございました。

それでは、島尻政務官が先ほど出席なさっておられますので、金融経済教育研究会につきましても、活発にご参加いただきましたので、一言お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○島尻政務官

島尻でございます。委員の皆様方には、お忙しいところをいつもご協力をいただきまして、ありがとうございます。

それでは、今、ご報告のありました金融経済教育研究会報告書について、私からも一言述べさせていただきます。私は、昨年8月に成立をしました消費者教育推進法の提案者でありまして、我が国でも持続可能な社会を構築するために、自ら考え、行動する消費者市民を育成する消費者教育の充実、そして強化が重要な課題であると考えております。

とりわけ、その中でも金融経済教育は、消費者教育の重要な要素でありまして、消費者庁とも今後連携して推進していく必要があると考えております。

また、現在、我が国の家計金融資産の過半は現預金となっておりますけれども、この家計が国内外の資産、株式や債券への中長期的あるいは分散投資を進めていくことは、家計の安定的な資産形成に資するだけではなく、成長資金の供給等を通じ、デフレ脱却にも資すると考えております。そのためにも、利用者側において分散投資の重要性を理解することなど、資産運用を行う上での基礎知識、いわゆる金融リテラシーを身につけることが必要だと考えております。

今般取りまとめられました金融経済教育研究会報告書で指摘された課題の実現に向けて、金融広報中央委員会や関係省庁などと連携をし、金融経済教育の取り組みを、今後とも粘り強く推進していきたいと考えております。

よろしくお願いいたします。

○吉野会長

島尻政務官、どうもありがとうございました。

それでは、ただいま2つの関連する議題がございましたが、1つは金融経済教育、もう1つは官民ラウンドテーブルに関しまして、何か皆様のほうからご質問、ご意見がございましたらお願いしたいと思います。

よろしいでしょうか。私から、官民ラウンドテーブルでは、ぜひ率直にいろいろ議論していただきまして、日本の金融業が世界でも強くなり、そして金融資産もうまく運用できるというふうにしていただきたいと思いますので、ぜひ官と民が協力していただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、予定の議事を大体終了いたしましたので、これをもちまして本日の金融審議会総会、金融分科会合同会合を終了させていただきたいと思います。

なお、本日の議事の模様につきましては、事務局のほうから後ほど記者レクを行わせていただきますので、ご承知おきいただきたいと思います。今後の日程などにつきましては、事務局よりご連絡をさせていただきたいと思います。

今日は、島尻政務官にもご参加いただきまして、どうもありがとうございました。これで終了させていただきたいと思います。

ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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