金融審議会総会(第32回)・金融分科会(第20回)合同会合議事録

  • 1.日時:

    平成26年2月24日(月曜)9時30分~11時00分

  • 2.場所:

    場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○吉野会長

それでは、9時半になりましたので、ただいまから第32回金融審議会総会並びに第20回金融分科会合同会合を開催させていただきたいと思います。

本日も皆様、ご多用のところご参集いただきましてありがとうございます。開催に先立ちまして、議事は公開とさせていただいておりますので、よろしくお願いいたします。今日は、岡田副大臣にご出席いただいております。

まず最初に、開会に当たりまして、岡田副大臣からご挨拶をよろしくお願いいたします。

○岡田副大臣

副大臣の岡田広です。今日は金融審議会総会に、大変お忙しい中ご出席をいただきまして、本当にありがとうございます。

本日は、昨年諮問されました新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等について報告させていただき、そして、皆様からまたいろいろとご意見をいただきたいと考えています。

中小企業や新規事業を含め、高い技術力を有する企業が我が国にはたくさんあります。この新規・成長企業に対して、金融機関や投資家がしっかりと目利き力を働かせ、適切に資金供給することによって企業の持続的な成長を促すことは金融の重要な役割であります。こうした金融の役割が適切に発揮される環境を整えることが、金融行政における大変重要な課題であります。

金融庁のマークは、ご存知のように、真ん中Sのマークであります。水の流れに例えているということもあるんだろうと私は考えております。血液が体を循環するように、この水の流れに例えてお金が回るということが経済活性化のために重要なことであろうと私は考えております。

今一番人気の映画は「永遠の0」という映画です。2番目は「ゼロ・グラビティ」、宇宙の映画です。いずれもゼロがタイトルについております。ゼロからのスタートという言葉がありますけれども、ゼロは、日本ではゼロとか零と読みますが、アルファベットはEAUと書いて発音はO、P、Q、RのOであります。フランス語の読み方で、フランス語でOは水という意味です。

今年の大河ドラマは「軍師官兵衛」です。晩年は、水のように自然体で生きたいということで、黒田如水と名を改めました。まさに水のごとしだと私はそう思っております。

中国の老子の言葉に「上善水のごとし」という言葉があります。上善とは、私たちが生きる理想的な生き方を上善というそうです。理想的な生き方は、水に学びなさい、水に習いなさいという言葉の持つ意味だと私は理解しています。

水はさわやか、力強い、どんな汚いものでも洗い流してしまう大きな包容力を持っています。水は、手でつかむことができません。両手でくみ取るものです。だから、国民の心も酌み取るという言葉のほうが適当なんだろうと思います。1杯の水が3杯、5杯になれば、岩石をも押し流す勢いを持っているのが水です。水の持つエネルギー、爆発力ということだろうと思います。

麻生大臣一人では、畑中長官一人では物事はできません。皆さんのご協力によって、このお金の流れをつくっていく、とても大切だろうと私は思っています。

いずれにしても、元気な地域社会をつくるためには、この資金供給の流れをつくっていくことはとても大切なこと。元気の元にうかんむりをつけると完全という字に変わります。元気がないと完全はあり得ないという意味。「カン」という漢字、これも話していると長くなるから、この辺でやめたいと思いますけども、日本の単語の漢字の中で最も多い漢字の1つです。

時々は競輪、競馬、ヤマカンの勘、しかし、いつも当たるわけではありません。関東の関は関所の関、物事の新しいスタート。麻生大臣は金融庁の最高幹部、官と民と一体となって金融行政に汗を流す。汗もカン、時間もカンです。女性の感性を高める感とか、観光の観、管理職の管とかたくさんありますが、いずれにしても、日本の今、さまざまな国の政策課題がありますが、まず景気を回復させる。そのために私たち金融庁のほうで金融の支援をする。中小企業、小規模事業者をはじめとして、金融の支援をするということがとても大切なことなんだろうと私は思います。そういう環境をつくるということで、感動し、感激するというのが生きることなんだろうと思っているわけであります。

本日、皆さんから議論いただく課題に一つ一つ丁寧に取り組んでいくことが、物づくりをはじめとした実体経済を支える金融の発展・強化につながっていくのではないかと考えるわけであります。皆様方の貴重なご意見、ご指摘を賜りますことを重ねてお願いいたしまして、ご挨拶にかえたいと思います。ありがとうございました。

○吉野会長

岡田副大臣、どうもありがとうございました。血液に例えられて、我々もきちんとした資金の流れ、それから中小企業も含めた資金の流れができるように、今後とも皆様とご一緒に議論させていただきたいと思います。

それでは、カメラの方には順次退室をお願いしたいと思います。

(報道関係者退室)

○吉野会長

早速でございますけれども、本日の議事を進めさせていただきたいと思います。

まず最初は、新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの審議の結果及び報告書の説明を同ワーキング・グループの座長であられました神田委員からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○神田委員

ワーキング・グループの座長を務めてさせていただきました神田でございます。このワーキング・グループにおきましては、昨年6月から12月までの間、計11回にわたりまして新規・成長企業のリスクマネーの供給のあり方等について審議いたしました。

そこで、昨年12月25日に公表されました報告書がお手元の資料の1-1になります。その概要を一枚紙に書いたものがお手元の資料の1-2ということになります。そこで、お手元の概要、資料1-2に沿って簡単に報告書の内容をご報告させていただきます。

この報告書におきましては、企業のさまざまなステージに応じて必要な資金の供給を促すための提言が盛り込まれております。すなわち、技術やアイデアを事業化するというステージ、それから、飛躍・発展に向けたステージ、成熟・グローバル化等に伴って資金調達を行うステージ、それぞれのステージにおいて必要な資金を供給するということを促していくことを通じまして、我が国における起業や新規ビジネスの創出を促進し、経済の持続的な成長を実現することが目指されております。

概要の紙の一番左側に、まず事業化段階等におけるリスクマネーの供給促進策とありますけれども、ここをまずご紹介いたします。

1番がクラウドファンディングの利用促進、2が非上場株式の取引・換金のための枠組み、3が保険子会社ベンチャーキャピタルによるベンチャー企業への投資促進、これらについての提言がされています。また、ベンチャー企業支援をめぐる諸問題についての整理もされております。

そこで、1のクラウドファンディングの利用促進についてですけれども、リスクマネーの供給促進という観点から、投資型クラウドファンディングの仲介をする金融商品取引業者の参入要件を緩和すること。そして、クラウドファンディングが詐欺的な行為に悪用されることのないよう、投資者保護のための必要な措置を講じることが提言されています。

2の非上場株式の取引・換金のための枠組みについてですが、地域に根差した企業等の資金調達を支援するという観点から、非上場株式の一定の取引・換金ニーズに応える場として新たな取引制度を整備することが提言されております。この新たな非上場株式の取引制度ですけれども、これは、市場のような高度の流通性を持たせない仕組みを設けることにより、開示義務等、発行者に対する負担を極力軽減することが適当であるとされております。

次に、3の保険子会社ベンチャーキャピタルによるベンチャー企業への投資促進についてですけれども、保険子会社ベンチャーキャピタルによる投資を促進するため、保険子会社ベンチャーキャピタルがリードベンチャーや、それと同等の役割を果たしているような場合には、追加出資等の出資先企業に係る中小企業要件を撤廃することが適当であるとされております。

以上のほか、この報告書では、ベンチャー企業支援をめぐる諸問題といたしましてベンチャーキャピタルが果たすべき役割、ベンチャー企業支援の出口の多様化、それから、ベンチャー企業に対する人材面のサポートなどについて、現状認識と課題の整理がされています。

次に、この概要の紙の真ん中になりますけれども、新規上場の推進策といたしまして、1が新規上場に伴う負担の軽減、2が新興市場の新規上場時における最低株主数基準の引き下げ、について提言がされています。

まず1、新規上場に伴う負担の軽減についてですけれども、これは、投資者保護に支障を来さない範囲で新規上場に伴う企業の負担を軽減し、新規上場を促進するという観点から、そこに2つ書いてありますけれども、新規上場時に開示が必要な財務諸表を過去5年分から過去2年分に軽減するということでございます。そして、新規上場後、3年間に限ってですけれども、内部統制報告書に対する公認会計士監査を免除することが提言されております。

その下の2、新興市場の新規上場における最低株主数基準の引き下げについてですけれども、新興市場における新規上場を推進していくという観点から、各金融証券取引所の状況に応じて円滑な取引に支障が生じない範囲においてより低い水準、これは最低株主数基準ですけれども、これをより低い水準に引き下げる余地があるとの提言がされております。

次に、右のほうへ行きまして上場企業の資金調達の円滑化といたしまして、1、上場企業の資金調達に係る期間の短縮、2が届出前の勧誘に該当しない行為の明確化などについての提言がされております。

まず1の上場企業の資金調達に係る期間の短縮についてでありますけれども、企業の資金調達を円滑化する観点から、市場でよく知られた企業の増資につきまして対象有価証券の取得・買付けの判断を比較的容易に行えるような場合に限定してということになりますけれども、有価証券届出書の提出から効力発生までの待機期間というものが現在あるわけですけれども、それを撤廃することが提言されています。

2番目といたしまして届出前の勧誘に該当しない行為の明確化ですけれども、これは、法令上禁止される勧誘の範囲が必ずしも明確でないために、増資予定企業が情報発信を躊躇する場合があるなどの指摘をいただいております。こうした萎縮効果を取り除くために、勧誘に該当しない行為をガイドライン等で明確化することが提言されています。

最後に、資料1-2で言いますと右下のほうになりますが、その他の制度整備といたしまして、以上申し上げましたほかに、大量保有報告制度の見直しや流通市場における虚偽記載等に係る賠償責任についても提言されております。

具体的には、上場企業が自社株を取得・処分する場合には大量保有報告書の提出義務を免除すること。そして、虚偽の開示を行った上場企業が流通市場の投資家に対して負う金融商品取引法上の損害賠償責任の見直し。これは、挙証責任は上場企業に負わせつつも、現在の無過失責任という制度から過失責任という制度に変更するといったこと等が提言されております。

以上、簡単でございますけれども、新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの報告書の概要をご報告させていただきました。ありがとうございました。

○吉野会長

神田委員、どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご説明いただきました新規・成長企業のリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの審査結果、報告書の内容につきまして、どなたでも結構でございますけれども、コメントがあればお願いいたします。いかがでしょうか。では、川島委員、どうぞ。

○川島委員

ありがとうございます。ただいまご報告いただきました報告書の内容ですけれども、起業や新ビジネスの創出を通じて雇用を創出する、生み出す、そして経済を成長させるという観点からの趣旨、内容について異存はございません。

今後、このクラウドファンディングなど一般の個人にとって投資が身近になる、こういった手法を拡大するに当たっては、報告書にも述べられておりますが、投資家保護のための必要な措置、加えまして適切な広報などが着実に図られることが重要だと考えます。

1点お願いなのは、今後、消費者団体や国民生活センターなどと十分な対話を行い、そこでの意見を酌み取っていただきながら、消費者視点からの環境整備に取り組まれるようお願いしたいと思います。

以上です。

○吉野会長

どうもありがとうございます。いかがでしょうか。では、永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

ありがとうございます。私も同様の意見でございます。私は、リスクマネーワーキング・グループのほうに参加させていただいておりまして、この意見書で示された方向性には異論ないのですけれども、クラウドファンディングにつきましては期待先行、イメージ先行の部分も多いかと思います。これからつくられる枠組みというものは、具体的にどういうものなのかということを国民によくわかるようにお示しいただく機会をいただき、また、意見も丁寧に聞いていただくような機会を頂戴したいと思います。

以上でございます。

○吉野会長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、貴重なご意見をありがとうございました。これに関しましての審議はこれまでとさせていただきまして、ただいまの新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの報告を金融審議会の報告とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。

なお、同ワーキング・グループの報告書につきましては、私のほうから大臣のほうにお渡しさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

引き続きまして、最近の金融行政の動向としまして、もう一つ資料が皆様のお手元にあると存じますが、金融・資本市場活性化に向けての提言、それから、「責任ある機関投資家」の諸原則、日本版スチュワードシップ・コードの素案、3番目が金融指標の規制のあり方に関する検討会の議論の取りまとめ、これに関しまして事務局のほうから、ご説明をお願いいたします。

○藤本企画課長

企画課長の藤本でございます。お手元の資料の右肩に資料2と書いてある最近の金融情勢の動向についてという資料をごらんいただきたいと思います。

表紙をおめくりいただきますと目次がございます。事務局からは、ここにあります3つのことにつきましてご説明いたしたいと思います。

まず最初が金融・資本市場活性化に向けての提言というものでございます。2枚ほどめくっていただきまして、右下に1ページとございます。金融・資本市場活性化有識者会合と書いているものでございます。

これは、昨年10月1日の日本経済再生本部の成長戦略の当面の実行方針という本部決定を踏まえまして、金融・資本市場活性化有識者会合を開催したものでございます。

メンバーは、この資料の下半分に挙げさせていただいております。吉野会長にもご参加いただいているところでございます。金融制度に直接係る施策にとどまらず、ビジネス慣行ですとか金融以外の制度、さらには金融活動を支える文化、社会的土台といったものまで含めまして幅広く議論いただいているところでございます。

昨年11月11日より数回議論を行いまして、12月13日に提言を取りまとめいただきました。この冊子の下にA3の紙で参考1-1というのがありますが、その下に参考1-2という冊子がございます。これが、金融・資本市場活性化に向けての提言です。22ページほどのもので、かつ活字が大きいものにしております。

最初の5ページぐらいまでが総論でして、機会があったらぜひお読みいただきたいと思います。今日はこのA3の紙、参考1-1を中心にご説明したいと思います。

このA3の紙の左上にデフレ下での縮小均衡メカニズムというのが書いてあります。金融・資本市場活性化に向けての提言の概要、参考1-1です。デフレ下での縮小均衡メカニズムというのが書いてあります。デフレというところから始まりまして、そういうもとでは元本保証資産が有利。そうなりますと、成長マネーの供給が不足する。そうすると、またデフレに陥る。こういう悪い均衡がぐるぐる回っているということではないかというふうに提言では述べられています。

右のほうに行きまして、2%の物価安定の目標を踏まえましてデフレ脱却ということになりますと、資産の目減りを回避するためのリターンが必要ということになります。下のほうに行きまして、そうしますと成長分野への投資が必要。それがなされると、またデフレ脱却がより進むという、物価安定下での拡大均衡メカニズムというふうに概念上はなっているのではないかということでございます。

ただ、赤い線でございますが、放っておくだけでは、こういうことが概念上こうなっているということでございます。、これをいかに太いものにして、強いものにして、勢いがあるものにしていくかという政策課題があり、制度整備が必要だという提言がなされています。

図の中に幾つかの視点というものが書かれておりまして、マル1マル2マル3マル4とあります。マル1が豊富な家計資金や公的年金等が成長マネーに向かう循環を確立するといったものでございます。マル2がアジアの潜在力を発揮させ、地域としてアジアの市場機能の向上、アジアと我が国との一体的な成長というのが重要。マル3で企業の競争力の強化、起業の促進というのがございます。一番下に台形で書いています土台でございますが、人材育成・ビジネス環境の整備等というのが土台として必要だとされております。

ただ、このぐるぐる回っているものは、安定的な経済社会構造のもとで量だけ増やせばいいというものではございません。右のほうに行きますと、我が国を取り巻く構造といったものが非常に動的でダイナミックであると書いてあります。高齢化ですとか、アジアの経済発展ですとか、産業構造の変革ですとか、こういうダイナミックな構造のもとで、この赤いぐるぐるを太く、強く、勢いのあるものにしていかなければならない。

この提言では、それがすぐできるというふうには考えられておりません。目標の年を2020年と設けております。東京オリンピック・パラリンピック招致ということもございます。そういう中で2020年の姿というものをまず描いております。これが右下でございまして、今申し上げたマル1マル2マル3マル4につきまして、それぞれどういった姿にすべきか、また、なるだろうかというのが書かれております。

まず最初は、豊富な家計資金と公的年金等が成長マネーに向かう循環を確立するということです。これは、個々人が資産形成を行う社会であり、しかも、個々人がライフサイクルに応じて資産形成をする。それから、リスク資産をも適切に組み込んだ資産形成を行うということでございます。

それから、東京市場にスキルの高い機関投資家とか運用業者といったものが集まって、高度な運用を競い合う。それから、東京市場がアジアナンバーワン市場としての地位を確立といったような姿を描いております。

更に、アジアとともに成長する我が国の市場ということでございますが、これは、アジア各国で日本企業が円滑に資金を調達できるような環境を整備する。また、アジア地域とクロスボーダーでいろいろな取引、決済が行われる。東京市場が金融センターとして資金供給の役割を果たす、仲介機能を果たすといった姿が書かれております。

それから、今度は企業自体ということでございます。新産業・新規企業が活発に勃興し成長する活力ある企業社会の実現ということでございます。高い開業率とか、真にグローバルな企業、高い成長力を有する部門の経営資源の集中、金融機関の融資でも事業の成長性の重視について書かれております。

また、土台となります質・量ともに十分な国際的人材の育成・確保といったことも提言されております。

ただし、これらは2020年の姿でありまして、一挙にここに行けるというわけではございません。この資料の左下のほうを見ていただきますと、直ちに着手すべき施策というのが、それぞれの項目について述べられております。今ご報告もありましたマル3クラウドファンディングの本格整備など、直ちに着手すべきものとして提言されています。

これを次のステップにつなげまして、更に2020年の姿にもっていくといったことが提言されています。

こちらの提言本体の上に参考1-2と書いているものの最後のページをご覧ください。22ページ、「結び」と書いてございます。

ここに「2020年の姿」は、現状からの大きな跳躍であると書いてあります。これは、もう相当跳ばなきゃいけないということは、この提言でも述べられております。また、我が国経済社会の土台の変革にもつながるチャレンジングなものであるというようなことも述べられているところでございます。

この有識者会合は、この提言の着実な実行にとどまらず、進展状況をフォローアップして、さらなる施策を検討するといった不断の取り組みが求められているところでございまして、本年に入りましても引き続き会合を開催して、具体施策の検討を継続しているところでございます。

以上でございます。

○吉野会長

それでは、次に油布企業開示課長のほうから「責任ある機関投資家」の諸原則について、日本版スチュワードシップ・コードの素案につきましてご説明をお願いしたいと思います。

○油布企業開示課長

企業開示課長の油布でございます。お手元の資料2の4ページと5ページの間に、スチュワードシップ・コードの表紙をつけさせていただいております。それから、縦長の資料参考2のほうに日本版スチュワードシップ・コードの素案そのものもお配りさせていただいております。

横長の資料のほうでご説明させていただきますが、この資料、パブリックコメントに付しまして、ちょうど明後日、再度スチュワードシップ・コードの有識者検討会にお集まりいただきまして、その一部を反映しまして確定させる予定でございます。

ただ、お寄せいただきましたコメントを見ますと、大きな方向性とか考え方、あるいは大きな項目についての修正はないであろうということで、そういう前提のもとでご説明させていただきます。

スチュワードシップ・コードでございますが、非常に新しい概念でございますので、このコードそのもののタイトルもいろいろとご議論いただいた上で、現在、パブリックコメントにかけさせていただいております。すなわち「責任ある機関投資家」の諸原則、日本版スチュワードシップ・コードとありまして、さらに「投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために」という副タイトルがついております。

横長の資料の5ページをごらんいただきたいと思います。まず経緯及び背景でございますが、産業競争力会議におきまして、もともと英国にございますスチュワードシップ・コードの日本版の導入について議論がありました。

スチュワードシップ・コードとは、ということで、こちらに2行ほど書かせていただいておりますが、機関投資家が投資先企業に対してどういう関与をすべきかについて規定した行動原則のことを指すということであります。2010年にイギリスで策定されております。

これは、企業の持続的成長、あるいは中長期的な成長というのは、もちろん企業自身の努力が第一義的に重要であるわけでございますが、ただ株主、特に最終的な意味でお金を預かって投資先企業に投資している機関投資家のような株主については、そうした持続的成長、中長期的成長を目指す動きに積極的に関与あるいは対話をしていくべきではないか。その結果、中長期の投資リターンも拡大が見込まれる、そういう考え方に基づくものでございます。

スチュワードシップのスチュワードは執事とか管理者という意味かと思います。そういう意味で、お金を預かっている機関投資家がスチュワードでございまして、最終的なお金の出し手である一般の顧客・受益者がマスター、ご主人に当たる、ということでございます。

2つ目の丸のところでございますが、この産業競争力会議の議論を踏まえまして、昨年の4月に総理から、この原則のあり方について検討することという指示が金融担当大臣に下りました。さらに、これを敷衍する形でいわゆるアベノミクスの3本目の矢に当たる6月の再興戦略において、日本版スチュワードシップ・コードについて検討を進め、年内に取りまとめということが閣議決定されております。

日本再興戦略の中では、点線で2つ引用しておりますとおり、同じ趣旨のことを違う表現で2回、記載がございます。

6ページをごらんいただきますと、金融庁において、この日本版スチュワードシップ・コードの検討のために有識者検討会を開催して議論することとさせていただきました。8月6日に初回の会合を開催いたしましたけれども、その座長は、本日もお見えになっています神作委員にお願いしているところでございます。

8月6日以降、議論を重ねていただきまして、年末の、12月26日に公開素案を公表し、パブリックコメントを実施させていただきました。もともと海外からの問い合わせ等が非常に多かったものでございますので、和文に加えまして、英訳して海外向けに英文でもコメントを受け付けました。

お寄せいただいたご意見の詳細は明後日にならないと申し上げられないと思いますけれども、国内外から概ね40~50の個人、団体の方からご意見をお寄せいただきました。寄せられたご意見の概要は、コードの策定を歓迎するとした上で、一部こういうふうに直したほうがよくなるのではないかといったコメントや、あるいはコードについての解釈の正誤を尋ねてくるようなコメントが多かったように思います。

ご意見の数は40~50と申し上げましたけれども、このうち海外からのコメントは約4割に上っております。それらはいずれもコードの策定を歓迎するとした上で、いろいろとご意見やアドバイスをいただくものでございました。

私どもとしましては、こうした反応を見まして、本コードの策定が今後長い目で見たときに、短期だけではない、中長期の海外の機関投資家の資金などが日本の資本市場にもっと流れ込んでくるような、そういう効果につながればよいなというふうに考えた次第でございます。

続きまして、日本版スチュワードシップ・コードの枠組みについてでございますが、これは、いわゆる法令などと違いまして、非常に真新しいアプローチをとっております。もともと英国のコードがとっておりますアプローチをそのまま採用したということでございますが、1つ目のバーのところにありますように、機関投資家が、このコードを受け入れるかどうかは任意でございます。ただし、金融庁のほうで、コードを受け入れた機関投資家の名前をリスト化して公表するということを考えております。こうした仕組みを通じてコードの受入れを促していきたいと考えております。

それから、2つ目のバーのところでございますが、これは、いわゆるプリンシプル・ベース・アプローチと言われるものでございます。ルール・ベース・アプローチのように、こういうことをしなさい、こういうことをしてはだめだということを詳細に規定するやり方ではなくて、基本的な原則を提示するというやり方をとっております。

3つ目のバーのところにございますが、これは、法令のように義務を課すものではございません。ましてや一律に義務を課すといったものでもございません。そのかわり機関投資家に対して、7つの原則と指針から成り立っているこのコードを実施するか、あるいは実施しない場合にはその理由を説明してください、そういうコンプライ・オア・エクスプレインと呼ばれるアプローチを採用しております。

それから、このコードの中に、3年ごとに見直しを行う旨が明記されております。これは、定期的な見直しやいろいろなご議論によって、コード自体がさらに定着していくようにという狙いも込められております。

1枚おめくりいただきまして、7ページでございます。もちろんコードの詳細の内容については、参考2のコード案そのものをごらんいただきたいと思いますので、概要だけをご説明させていただきます。

 

日本版コードは7つの原則から構成されております。上の点線の欄の中に記載されておりますが、1点目、機関投資家は、スチュワードシップを果たすための基本方針を策定して公表する。

2点目ですが、機関投資家は、利益相反を適切に管理する。この利益相反については、基本方針も公表していただくということが記載されています。

3点目ですが、投資先企業の状況を的確に把握してくださいということを記載しております。

4点目ですが、機関投資家は、投資先企業との建設的な対話を通じて、いろいろと認識を共有し、問題があれば、その改善を図るように努めるべきであるということを記載しております。

5点目は議決権行使について、行使の方針、それから、行使結果を公表すべきであるということを記載しております。行使結果の公表につきましては、議案の主な種類ごとに整理、集計して公表するというやり方をデフォルト方式のひとつに定めております。

6点目ですが、個別のクライアント、顧客、受益者に対して報告を行うべきということを記載しております。

7点目は日本独自の原則になりますが、機関投資家は、投資先企業に対する深い理解に基づいて適切な対話や判断を行ってくださいということを記載しております。

下のほうに日本版コードの特色について記載しております。日本版コードは、英国版の直輸入ということではなく、日本の実情に応じてバランスのとれたコードになるよう幾つかの修正が加えられております。

1点目は、中長期的視点から企業価値や資本効率を高め、企業の持続的成長を促すことが重要だという点を繰り返し強調しております。

2点目は、機関投資家と企業との間の建設的な対話を重視しているということでございます。

3点目は、企業側にとっても有益な対話となるように、機関投資家にはいろいろと勉強や体制整備をしていただき、あるいはスキルも蓄積していただいた上で、投資先企業やその事業環境等に対する深い理解を要請しているということでございます。

最後に、英国のコードには、例えば企業側と意見が合わない場合には、企業への働きかけをどんどんエスカレートさせていくんだというようなこと、あるいは、他の投資家と共同して要求を突きつけるといったことを促すような原則も記載されております。この点、私どものほうでは海外の実態調査なども実施しました。その結果、確かに英国コードにはこういう記載があり、そのこと自体は決して否定されるものではないと思いますけども、こと、機関投資家に限れば、必ずしも欧米でもそういったやり方が広く行われているわけではないというような状況も踏まえまして、また、我が国の資本市場の状況等も踏まえた上で、日本版コードの素案では、この原則は基本的には採用しないこととしております。

○吉野会長

油布課長、ありがとうございました。

それでは、最後のテーマは金融指標の規制のあり方に関する検討会における議論の取りまとめですが、井上企画課調査室長にお願いいたします。

○井上調査室長

調査室長の井上でございます。それでは、金融指標の規制のあり方に関する検討会について、検討会の概要とその取りまとめられた内容につきまして、事務局のほうからお手元にございます概要紙、資料2の8ページになりますけれども、それに沿う形でご紹介させていただきたいと思います。

まず、金融指標の規制のあり方に関する検討会が開催された背景について簡単にご説明させていただきます。

LIBOR、ロンドンのインターバンク間の取引金利でございますけれども、それらの金融指標に係る不正操作事案の発生を受けまして、金融指標に関して国際的に規制導入に向けた議論と動きがございました。

証券監督者国際機構(IOSCO)では、昨年7月に金融指標の算出者が遵守すべき事項等として、算出者のガバナンス、算出者の説明責任、指標の品質、指標の算定手法の品質などを柱とする金融指標に関する原則を公表しております。

また、イギリスでは、昨年の4月にLIBORなどの金融指標に監督を導入する金融サービス法が施行されております。欧州では、昨年9月にEURIBORをはじめとする金融指標に関する規則案が公表されています。

このような国際的な議論や規制導入の動きを踏まえまして、金融庁におきましても慶應義塾大学経済学部の池尾和人教授に座長をお引き受けいただき、実務家を中心とする12名の方をメンバーとする金融指標の規制のあり方に関する検討会を昨年11月28日より3回にわたって開催しました。

本検討会では、我が国における金融指標の規制の枠組みについて、金融指標の算出、呈示、使用を行っている実務家、投資者の方々に技術的、実務的な観点からご検討をいただいたものでございます。

昨年12月25日には、本検討会における議論を踏まえまして、金融指標の規制のあり方に関する検討会における議論の取りまとめとして公表いただいております。この報告書の全文は、参考3としてお手元に配付させていただいております。

本取りまとめでは、我が国金融取引の基礎として幅広く使用されております金融指標に関して公的規制を導入することが必要であるというご提言をいただきましたため、本日、本取りまとめの内容を金融審議会にもご報告させていただくことといたしました。

それでは、取りまとめにおける提言の概要についてご説明させていただきます。

まずは公的な規制の基本的な考え方としまして、1.金融商品取引法に基づき規制、2.IOSCO原則に沿った規制、3.当面の規制対象はTIBORとすること、4.中心的な規制対象者は算出者とすることについての提言がなされております。

1つ目の金融商品取引法に基づく規制につきましては、本検討の主たる契機がデリバティブ取引に係る不正事案であったことや、金融指標の正確性、信頼性を確保することは金融商品等の公正な価格形成などの金融商品取引法の目的と整合的でありますことから、金融指標に関する規制は金融商品取引法において措置されることが適当である旨のご提言をいただいております。

2つ目のIOSCO原則に沿った規制につきましては、我が国における公的な規制を導入する場合には、その具体的な内容は国際的な整合性を図る観点から、IOSCOの金融指標に関する原則に沿ったものとなることが適当である旨のご提言をいただいております。

3つ目の当面の規制対象はTIBORとすることにつきましては、デリバティブ取引で広範に利用されていることや不正操作を行うインセンティブが相対的に高いこと、同様の銀行間金利でありますLIBORやEURIBORについて国際的な規制が導入されつつあること等を踏まえまして、当面はTIBORを公的な規制の対象として据えることが適当であるという旨のご提言をいただいております。

4つ目の中心的な規制対象は算出者とすることにつきましては、金融指標の算出者は自己の名において金融指標の算出、公表等を行っており、金融指標の正確性や信頼性の確保に主体的な役割を果たすことが期待されること、IOSCO原則におきましても算出者に対する規制を中心に構成されていることなどを踏まえまして、規制の対象主体は算出者とすることが適切である旨のご提言をいただいております。

次に、金融指標の算出者に対する規制の提言内容として、1.規制の枠組み、2.具体的な規制内容、3.検査・監督の枠組み、4.継続性の確保についてご説明させていただきます。

まず1つ目の規制の枠組みにつきましては、規制の対象となる金融指標を特定金融指標と定め、その算出という公的な性格を有する業務を算出者が担っていることに鑑みて、一定の者を指定いたしまして、この算出者を規制対象とするということをご提言いただいています。

2つ目の具体的な規制内容につきましては、特定金融指標の算出者のガバナンスの強化や説明責任の履行、特定金融指標及びその算定手法の品質の確保を図る観点から、特定金融指標の算出者に対しまして業務規程を作成させ、これに基づいて業務を行うことを義務づけることを提言いただいています。

3つ目の検査・監督の枠組みにつきましては、特定金融指標の算出者に対する規制の実効性を確保するため、報告徴取・立入検査等の検査・監督の枠組みを整備することが適当であるというご提言をいただいています。

4つ目の継続性の確保につきましては、特定金融指標は金融市場のインフラとして重要な役割を果たしていることを踏まえると、コンティンジェンシー・プランの策定を業務規程の必要的記載事項の1つとすることなど、指標が継続的に算出されていく仕組みを設けることが適当であるというご提言をいただいています。

最後に、金融指標の算出の基礎となるデータを提供する呈示者に対する規制の提言内容として、1.行動規範の締結、2.不正呈示に関する罰則についてご説明させていただきます。

1つ目の行動規範の締結につきましては、呈示者に対して直接的な規制をかけるのでなく、特定金融指標の算出者に対して呈示者との間で行動規範を契約として締結することを求めることにより、算出者を通じて間接的に呈示者を規律付けることが適当であるというご提言をいただいております。

2つ目のデータの不正呈示に関する罰則につきましては、既に金融商品取引法で規制が課されている金融商品取引業者等につきましては、これらのものが特定金融指標のデータ呈示に関して不正行為を行うことを禁止行為とし、これを罰則で担保することが適当であるというご提言をいただいております。

現在、金融庁といたしましては、このような検討会のご提言を踏まえました必要な制度整備を、本年の通常国会に提出予定の金融商品取引法の改正法案に盛り込む方向で法案の策定作業を進めております。

なお、具体的な法案策定に当たっては、立法上の技術的な観点等から検討会の報告書の内容と若干異なった内容となる場合があることにつきまして、あらかじめご理解をいただければ幸いでございます。

以上、簡単ではございますけれども、金融指標の規制のあり方に関する検討会における議論の取りまとめの概要をご報告させていただきました。

○吉野会長

井上調査室長、ありがとうございました。

それでは、ただいま3つご報告、ご説明がありましたが、何かコメント、あるいはご意見をございましたら、どなたでも結構でございますので、お願いいたします。まず川島委員、それから大崎委員。

○川島委員

どうもありがとうございます。私から2点ほどコメントさせていただきます。

1点目は金融市場活性化に向けてのご提言であります。その必要性については受けとめているところであります。提言の中でGPIFなどの公的・準公的資金について運用対象の拡大などの記述がありますが、公的年金の積立金の性格に鑑みますと、私は、これらが金融・資本市場の活性化、日本経済の発展という枠組みの中で議論されることに相当の違和感を持っております。

言うまでもなく、この年金積立金は、厚生年金保険法などに基づきまして、専ら被保険者の利益のために長期的な観点から安全かつ確実な運用をすべきであるというものでありますし、仮にリスク性資産の割合を高め、年金積立金が棄損した場合には、結局のところ、被保険者、受給者が被害を受けることになります。

年金制度に対する国民の信頼回復、あるいは保険料拠出者の意思が確実に反映されるガバナンス体制を構築することが最優先の課題だというように考えておりまして、今後、拠出者である労使の意思がしっかりと反映される形で、慎重な議論が行われることをお願いしたいと思います。

2つ目は、日本版スチュワードシップ・コードについてであります。このたび「責任ある機関投資家」の原則として、こうしたものが取りまとめられることを評価しております。私は、ここで言う「責任ある機関投資家」を広く解釈いたしますと、環境、社会、企業統治、いわゆるESGを考慮した社会的責任投資への積極的な取り組みが求められると思いますし、こうした行動は、企業の中長期的な価値の向上にも資する、さらには持続可能な経済社会の発展にもつながると思っております。

そこで、この日本版スチュワードシップ・コードが、今申し上げました社会的責任投資にどのようなかかわりを持っていくのか、教えていただきたいと思います。これは質問であります。

その上で、この取り組みが国連責任投資原則や21世紀金融行動原則など、ESG投資を促進させる取り組みとセットで展開されることをお願いいたします。

以上です。

○吉野会長

課長のほうからスチュワードシップ・コードについてお願いいたします。

○油布企業開示課長

スチュワードシップ・コードにつきまして、大変支持、応援してくださるようなご意見をいただきました。事務局としても御礼申し上げます。

ESG投資の件につきましては、基本的には英国のスチュワードシップ・コードとほぼ同様なスタンスに立って記載されているものと私は理解しております。

具体的には、参考2、コードの素案そのものの8ページをごらんいただきますと、原則3として、機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たせるように当該企業の状況を的確に把握すべきということを記載しております。その指針の3-3に投資先企業のどういった事項を把握すべきなのかということで、例示として投資先企業のガバナンス、企業戦略、業績、リスクなど、代表的なものを挙げております。なお、このリスクの中には、社会・環境問題に関連するリスクが含まれる旨も記載しております。この点は、英国のコードの書き方とほぼ同じような形になっている部分でございます。

有識者検討会でスチュワードシップ・コードをご議論いただくときに、私どものほうで、英国のスチュワードシップ・コードのほかにも、例えば今お話がございました国連責任投資原則、PRIなども勉強させていただきまして、それらを踏まえてご議論もいただいたということでございます。

基本的には、スチュワードシップ・コードは法令ではございませんので、これを一つ一つ解釈してどのように責任を果たしていくかというのは機関投資家の判断に委ねられるというのが大きな枠組みでございますが、おっしゃったようなESGの問題などにつきましても、原則3に例示で書いておりますように、現代の機関投資家が様々な事項を考慮するときには、必ず念頭に置かれるポイントの1つであろうというふうに考えております。

また、3月には東京で機関投資家の国際会議の開催が複数予定されております。規模の大きなものとしては、国連責任投資原則を促進するPRI関係の大きなカンファレンスが東京でありまして、海外から大手の機関投資家が随分お見えになるということが想定されております。東京証券取引所が後援しているカンファレンスでございますが、そこで私も講演者として呼ばれまして、日本版スチュワードシップ・コードについてご説明をするというようなことも予定しております。

○川島委員

ありがとうございました。

○吉野会長

油布課長、どうもありがとうございました。大崎委員。

○大崎委員

2点ほど感想めいた意見を申し上げまして、それから、1点ちょっと質問させていただきたいんですが、最初は金融・資本市場活性化に向けての提言に関する意見なんですけれども、再三強調されておられましたように、ここで描かれた姿というのは長期的に実現していくものということで、2020年までかなり時間をかけてやっていくんだと、それはもっともな話なんでありますけれども、個々の項目を拝見しますと、中には、もちろん、今年になって出てきたようなものもありますけども、随分昔から検討、検討といってやってきたものも見受けられまして、例えば私個人的にかかわったこともあるものでちょっと気になったのは総合取引所構想なんていうのがございますけど、これ、私がかかわったのでいきますと、経済財政諮問会議のワーキング・グループで2007年でしたか、最初に構想を出させていただいて、かれこれ6年たって、残念ながらまだ完全な意味での形にはなっていないわけでございます。これなんかも、例えば既存の取引所の再編と結びつけられてばかり議論される、いろいろ言われる傾向があるのでございますけれども、例えば金融商品取引所が単独に商品市場を開設するというような方向も含めて、金融庁として2020年と言わず、かなりの前倒しで実を結ぶように働きかけといいますか、頑張っていただけないかなというのが、まず意見の第1でございます。

それから、意見の2番目が金融指標の規制のあり方に関する検討会の議論についてでございますが、経緯からして、いわゆる呈示者が出してきたものを算出者が整理するような指標というのが議論の焦点になったという、これは非常によく理解できるところなんですけれども、実際の市場への影響ということで言いますと、例えば株価指数なんか見ましても、本当に機械的に、例えばある市場に上場している銘柄全部を足し合わせるというのもあれば、採用銘柄の入れかえに関して一定の基準はあるものの、算出者の裁量の余地が相当程度あるような、そして、市場に対して非常に大きな影響を及ぼしているような指数もあるわけですね。

こういったものを直ちに規制対象にしろとかいうことを言うつもりはないんですが、こういう規制が設けられる趣旨にも鑑み、ぜひ金融庁と算出者との間での対話といいますか、いろんなやりとりを深めていただけると市場の安定に資するんじゃないかなと思う次第です。これは2番目の意見です。

あと、1点質問でございますが、スチュワードシップ・コードについて、これは非常にいいことだと私は思っているんです。また、これを規制色を強めて一律に適用するとまたよくない。これは、やっぱりケース・バイ・ケースといいますか、各機関投資家の判断、それから対話の相手となる企業の判断が柔軟に実現してくるというのが大事だと思うんですが、他方で、ホームページに採用する機関投資家の名前を公表するというご説明があって、それはそれで第一歩だと思うんですけれども、ホームページに載せるだけだとちょっと寂しいなという感じもありまして、もう少し広げていくための、先ほどセミナーなんかでも宣伝していくというお話もございましたけれども、そういうのにさらに加えて、これにのっとった行動をしていくと何かいいことがあるという、インセンティブづけを具体的にできないかなということをちょっと思っております。

私が思いついたのは、川島委員にはお叱りを受けるかもしれませんが、例えばGPIFで、運用の委託先を選定する際に、これにのっとってやっている機関投資家について、いわば選考上、加点をして優先的に採用するというような、例えばそんなことも思っておりまして、何か金融庁として、これを採用することを促すようなインセンティブづけについて、採用しない者をいじめるというのはやめていただいたほうがいいと思うんですが、採用したくなるようなインセンティブづけについて何かお考えがあれば、教えていただきたいと思います。

○吉野会長

油布課長、よろしくお願いいたします。

○油布企業開示課長

私も委員のおっしゃるとおりだと思っておりまして、これは、あまり監督や検査の枠組みに取り込まないで、例えば方針などを策定して、それを公表していただくわけですが、そこで必ずしも「ミニマムリクワイアメントを果たせばいいんだ」という発想に陥らないように、むしろ、いろんな工夫をして方針などをつくっていただいて、それを一般に公表することによって差別化が図られていくことを狙っております。そういう意味でミニマムではなくて、もうちょっと上を目指すような一種の競争によって、差別化が進むことを期待したほうがよろしいのではないかというふうに考えております。

その中で、コードの受入れを促す1つのインセンティブとしまして、さきにおっしゃいましたGPIFとの関連では、私、手元に正確な文書がちょっとございませんが、11月20日に伊藤隆敏先生を座長とする内閣官房の有識者会議が取りまとめた報告書の中に、金融庁で検討中のスチュワードシップ・コードを踏まえて対応することが要請されております。

実際、この提言を踏まえてどうするかというのは、まさにGPIFでこれからお考えになるところだと思いますけれども、GPIF自体がスチュワードシップ・コードにのっとって何かをやるということになりますと、その場合には巨大なアセットオーナーとして、ファンドの運用を委ねるアセットマネジャーを選ぶときに、そのアセットマネジャーがどういうふうにスチュワードシップ責任を果たしているだろうか、どういう公表を行っているだろうかということは、自然に検討される1つの要素になるのではないかなと私は考えております。

また、企業年金連合会の方にも、この有識者検討会の委員に入っていただいております。そういう意味で、アセットオーナーがアセットマネジャーにスチュワードシップ責任をどう果たしていくかを尋ねて判断していくという一種のビジネスのチェーンを利用してこの促進が進むような、そういうやり方が一つ望ましいんだろうなというふうに私は考えています。

○吉野会長

大崎委員の2番目の金融指標のほうは、これまで金融庁は、どちらかというと取り扱う業者というか、そういうところをいろいろ見てこられたと思うんですけど、これからだんだん情報の時代になってきますと、こういう金融指標というのも非常に大きな役割を果たしてくると思いますんで、金融庁もこういうデータをつくっている算出者の方々との何らかの意味の懇談会といいますか、そういうものも常に見ていっていただきたいと思います。

それから、金融・資本市場活性化に関して、大崎委員から2007年からいろんなことが出ているじゃないかと。私もこの委員ですけども、これまでどうしてなかなか進まないのかというようなところもきちんと外から見ていって、それで、どういうところがブレークスルーとして必要かというのを考えていただきたいと思います。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。それでは沖野委員、どうぞ。

○沖野委員

質問させていただきたいんですけれども、日本版スチュワードシップ・コードの点についてです。ご説明を伺いますと、顧客ですとか、受益者に当たる人から委託を受けた、いわば受託者責任の一環として何をすべきかという観点が一方にあると思われますけれども、他方で参考2の副題になっているところからしますと、企業の持続的成長を促すためにということで、むしろ、企業の展開や活動の中で機関投資家というものがどのような役割を果たすべきか。そういう中で、各企業、あるいは経済全体を活性化していこうみたいな話と両面があるようにご説明をいただいたと思います。

そのような理解でよろしいのかということで、それに関連してなんですけれども、受託者責任の1つのあり方だというふうに考えますと、今ご指摘の中でも出てきたミニマムとして、プリンシプル・ベースかルール・ベースかということで、プリンシプル・ベースでいろいろ考えていくんだけれども、基本的には、これがミニマムであるという考え方であるのか。そうだとすると、積極的に推進すべきだということになるんですけれども、1つのカタログであって、いろいろなタイプがありますということだと、1つのモデルを呈示して、そのモデルの呈示よって、それを採用しやすい。ゼロからではなくて、モデルがあることによって、そういうタイプの受託者責任の果たし方というのが促進されるんだという理解であるのか、どちらと理解したらよいのかというのが1つです。

もう一つは、持続的成長を促すという中で積極的な役割を期待するということになりますと、一方で責任の問題ということが気にかかりまして、とりわけ日本版の場合には、そこまでは書かないけれども、そういうこともあり得るんだということが認識されている中で、意見が一致しないときに、強く働きかけをしていくとか、要求していくときに、それがうまく回って成長へとつながっていけばいいですけれども、逆にうまくいかなかったときに非常に積極的に企業活動にかかわるということになりますと、その責任ということが、レンダー・ライアビリティみたいな話を想定したところがあるんですけれども、そのことは必ずしも顧客や受益者にとっては望ましくない可能性も出てくるわけで、一種、相反した要請もあるように思われます。

このスチュワードシップ・コードというものが一体どこを狙いとしているのか。また、この限りでは、責任は生じないようなタイプのかかわり方であるようなものも含めて提案するということなのかということを少し疑問に思ったものですから、理解を進めるために教えていただければと思います。

○吉野会長

油布課長、お願いします。

○油布企業開示課長

大変本質的で、かつなかなかお答えが難しいものも含まれておりますけれども、順次お答えいたしますと、まず、持続的成長と中長期的なといいますか、受託者責任の件でございます。

まず、これは法令ではないということもございまして、受託者責任という用語を使う場合に、法令上の狭義の委託・受託関係ではなくて、最終受益者も視野に入れた、もう少し幅の広い用語であるということを、最初にお答えさせていただきます。

その上で、企業の持続的成長と受託者責任の関係でございますが、これは、参考2の1ページ目をおめくりいただきまして、右側の一番上にスチュワードシップ責任とはということでボックスを設けて説明しております。この点、非常に大事なポイントで、かつ幅広く知られている考え方ではないということであえてボックスを設けておりますが、ここで書いておりますことを私なりに要約して申し上げますと、基本的には、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図ることが機関投資家の最終的な責任だということになろうと思います。ただ、そのためには2行目、3行目にございますように、目的を持った対話、エンゲージメントなどを通じて企業価値の持続的な向上を促し、それにより中長期的な投資リターンの拡大につながるという一連の流れがセットになった考え方ではないかというふうに理解しております。

それで、ミニマムリクワイアメントというお話が2つ目にあったと思いますけれども、基本的には、受託者のミニマムリクワイアメントについて、例えば信託関係の法令等の中で、最低限やらなければいけないことは規定されているという理解のもとで、それに付加して、その後ご質問にございましたように、具体的にどういう働きかけをすれば中長期的な投資リターンにつながるのか、あるいは企業の持続的な成長につながるのかということを一律に規定するのではなくて、機関投資家自身が自らのスチュワードシップの責務に照らして判断してくださいというのが、一言で申し上げると、このコードの意味かと思っております。

そういう意味で、スチュワードシップ責任というのは、もちろん「ライアビリティー」ではないということで、責務という言葉を使っている表現も何カ所か出てまいりますけれども、そういう考え方でございます。

最後に、例えば働きかけをエスカレートさせていくことが自分の顧客・受益者の利益にかなうのか、それとも、そうしないことがかなうのかというのは、その局面、局面において非常に難しい判断であると思います。ですから、そこは、「その場合にはこういうふうにせよ」ということを記載するのではなくて、機関投資家自身に「この判断が一番いいのかというのをしっかり考えてください。そのためには、ふだんからどのようにスチュワードシップ責任を果たしていくのか、議決権行使はどう行使するのかというようなことを方針で定めておいて、その一部は公に公表するということで、市場の評価を得るようにしておいてください。」と、そういった考え方を示したコードであると理解しております。ちょっと正確なお答えになっていないところもあったかもしれません。

○沖野委員

ありがとうございます。

○吉野会長

よろしいですか。

○沖野委員

よく理解できました。ありがとうございます。私、ミニマムリクワイアメントと申し上げたのは、むしろ、私のほうが適切な用語法ではございませんでした。あまねくこれがとられるべきということなのか、特定のカテゴリーなのかというつもりでございましたが、その点も今のご説明で明確になったと思います。ありがとうございました。

○吉野会長

ほかにいかがでしょうか。では、原田委員、どうぞ。

○原田委員

ありがとうございます。金融・資本市場活性化に向けての提言に関することで、1点だけコメントを述べさせていただきます。

成長マネー、リスクマネー、このA3の1枚の資料、参考1-1で、すばらしい図を描いていただいていて、さまざな施策で省庁をまたいで、いろいろなことが実行されているのは好ましいことだと思います。金融庁では、去年、ワーキング・グループでリスクマネー供給のあり方について議論いたしましたし、私が1つかかわっているものとしては、財務省の財政投融資のほうでもいろいろ官民ファンドに産業投資のほうからお金が流れているということで、これもリスクマネー、成長マネーへの資金供給の一端として実施されておるところです。

ただ、政府から官民ファンドにいろいろお金が流れていくことに関しては、いろいろ疑問の声が複数の委員から上がっておりまして、リスクマネーという名をかりて何でも流していいのかとか、官民ファンドが肥大化しているとか、あと、昨年議論のありましたリスクマネー供給のあり方に関するワーキング・グループに関係したところですと、人材面の問題というのが挙げられていまして、ファンドの育成そのもののあり方についても長い間議論されていますし、人材が足りないということについても課題として、先ほど神田委員にご説明いただいた資料1-2のほうでも課題の中に挙げられておりましたので、人材の育成ということも含めて、まだまだ残っている課題などを今後横断的に議論していただきたいなというふうに思っております。

参考1-1では2020年というふうに目標がありますけれども、これ、先ほど大崎委員がおっしゃったことですけれども、2020年を待たずに、その前に、経過も含めて事後的に検証しつつ、課題として挙げられているものがどの程度解消されているのかということも含めて議論していただきたいなというふうに思います。

ぜひ金融庁主導で、それぞれの官民ファンドごとですとか、省庁ごとには、かかわったところはまとまりが何らかの結果は出てくると思うんですが、それも全部含めた形での成長マネーとしての経過報告のようなものを金融庁のほうでお示しいただければなと思いました。

以上になります。

○吉野会長

よろしいですか。ご意見ありがとうございました。まさに現場での目ききが一番重要だと思いまして、ですから、おっしゃるように人材育成も含めて、それから、大崎委員と同じ点ですけども、これまでどういうところがネックで、何度も言われてきたのに進んでいないところがあるかというのも考えながらやらせていただきたい。どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。では、家森委員、どうぞ。

○家森委員

金融・資本市場活性化に向けたの提言の中の19ページあたりに、「金融機関の融資における事業の成長可能性の重視」という項目の中で、「直ちに以下の課題に着手するよう提言する」というようなことで、金融機関の監督に関しての金融モニタリング基本方針等を着実に進めていくというようなご説明がありますけども、それに関連して現状を少しお尋ねしたいというふうに思うんです。

昨年来から新しい金融モニタリング基本方針で、地域金融機関に関して5年、10年の中長期的な経営方針、経営戦略に沿って経営されるように、当局のほうからもヒアリングをされているというふうに聞いているんですけれども、こういう地域金融機関の経営動向、こういうような取り組みに対して地域金融機関、どのようなスタンスで進まれているというふうに金融庁が見られているか、少し教えていただけたらありがたいと思います。

○吉野会長

細溝局長でよろしいでしょうか。お願いいたします。

○細溝監督局長

金融機関、多分、通例は3年ぐらいの中期経営計画をつくって、それをローリングしていくというのが今まで多かったわけでございますが、今後、人口が減少するとか、開業率・廃業率がひっくり返って事業所が少なくなっていく、ないしは取引先が海外展開していくといったような大きな流れがございます。

そうした大きな流れを踏まえて、自分の金融機関としての立ち位置をどう考え、今後どういうふうに取り組むのか。それについて今打つべき手は何かというのを考え、ちゃんと打っているかといったところについての議論をやりたいということでございまして、これはモニタリング基本方針もそうですし、監督方針もそうでございまして、オンサイト、オフサイト両方でそういったことの議論をやろうということでやっているところでございます。

金融機関も、自分の営業地域の将来像というものを従来よりも長い目で考えて、真剣にこの地域の活性化なり、地域の産業の振興なり、場合によって顧客の海外展開なり、いろんなライフステージがあるわけですから、そうしたことについてどういうふうに取り組むか。その中には、こういった新たな業を起こすといったことも当然入ってくるわけですし、転廃業も入ってくるかもしれません。そういったことにどう取り組むかということについて、私どももいろいろ議論したいということでやっております。

各金融機関、おそらく意識が変わってきたような気がいたします。そろそろそういった中長期のことも念頭に置きながら、いろんな取り組みをやるといったことを考え出している状況だろうというふうに思っております。

○吉野会長

ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、少し時間は早いようですけども、皆様から貴重なご意見をいただきましてどうもありがとうございました。それぞれ担当の方々、金融庁のこれからの検討の糧としていただきたいというふうに思います。

それでは、これをもちまして本日の金融審議会総会・金融分科会合同会合を終了させていただきたいと思います。今後の日程などにつきましては、また事務局からご連絡させていただきたいと思います。

今日は、お忙しい中をご出席いただきまして、どうもありがとうございました。これで終了させていただきたいと思います。

以上

(参考)開催実績
 

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る