第37回金融審議会総会・第25回金融分科会合同会合議事録

  • 1.日時:

    平成28年4月19日(火)10時00分~11時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

○岩原会長

それでは、ただいまから、第37回金融審議会総会・第25回金融分科会合同会合を開催させていただきます。

本日は、皆様お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。開催に先立ちまして、本日の議事は公開の形で行わせていただいておりますので、その点よろしくお願い申し上げます。

最初に、開会にあたりまして福岡内閣府副大臣よりご挨拶をいただき、それに引き続いて本審議会に対する新たな諮問をいただきたいと思っております。

副大臣、よろしくお願い申し上げます。

○福岡副大臣

おはようございます。麻生大臣が国会審議中につきまして、私からご挨拶をさせていただきたいと思います。

金融審議会の委員の皆様方におかれましては、日頃より審議会の審議にご尽力いただきましてありがとうございます。

前回の金融審議会でご報告いただきました金融グループを巡る制度のあり方及び決済業務等の高度化につきましては、関連の法案を今国会に提出させていただきました。成立に向けて引き続きのご支援を賜りたいと存じます。

また、本日の総会では、ディスクロージャーワーキング・グループの検討結果をご報告いただくことになっております。公正で透明な市場の実現及び投資の促進に向けた適切な企業の情報開示のあり方について、多面的にご検討いただいたものと感謝申し上げます。

さて、日本の証券市場・取引所では、1990年代末以降投資商品の多様化や取引システムの高度化などに向けた取り組みが進められてまいりました。このような中、例えば、近年アルゴリズムを用いた高速な取引が大幅に増加しており、こうした取引の高速化が市場の公正性、透明性、安定性などに及ぼす影響について検討していくことが重要と考えております。また、国民の安定的な資産形成に資するよう商品開発、販売、運用、資産管理、それぞれに携わる全ての金融機関等において、フィデューシャリー・デューティー、すなわち顧客本位の業務運営の観点からどのような取り組みが求められるかについて検討することも重要なことであると考えております。さらに、証券取引などの分野において、最近のFinTechの進展への対応をはじめ日本の競争力強化等の観点から、どのような対応が必要かという点についても検討すべきであると考えております。

こうした観点も含め、日本の市場・取引所を巡る諸問題について、幅広い観点から検討をすることが必要であると考えており、金融審議会の皆様方に新たなご検討をお願いしたいと考えております。

それでは、諮問を行わせていただきます。

金融審議会会長 岩原紳作殿

金融庁設置法第7条第1項第1号により、下記のとおり諮問する。

市場・取引所を巡る諸問題に関する検討。

情報技術の進展その他の市場・取引所を取り巻く環境の変化を踏まえ、経済の持続的な成長及び家計の安定的な資産形成を支えるべく、日本の市場・取引所を巡る諸問題について、幅広く検討を行うこと。

よろしくお願いいたします。

(諮問文手交)

○福岡副大臣

よろしくお願いいたします。

私はこの後また委員会審議等が入っておりますので、失礼させていただくことをお許しをいただければと思います。

○岩原会長

どうもありがとうございました。ただいまお話がございましたように、福岡副大臣は所用のため、ここで退席されます。

福岡副大臣、どうもありがとうございました。

○福岡副大臣

すみません。ありがとうございました。恐縮です。

(福岡副大臣退室)

○岩原会長

どうもありがとうございました。

それでは、カメラの方は退室をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○岩原会長

それでは、議事に移りたいと思います。

本日はまず、ディスクロージャーワーキング・グループの審議の結果及び報告書についてご審議をいただきたいと思います。ディスクロージャーワーキング・グループの神田座長がご欠席でいらっしゃいますので、事務局から説明をお願いいたします。

○田原企業開示課長

それでは、お手元の資料1-1及び1-2に従いまして、事務局からディスクロージャーワーキング・グループの報告内容につきましてご説明を差し上げます。ご説明につきましては、恐縮ですが資料1-2に従いましてご説明をさせていただきたいと考えております。

昨年10月の金融審議会の総会におきまして、麻生大臣より企業と投資家の建設的な対話を促進する観点も踏まえつつ、投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するための情報開示のあり方等について、幅広く検討を行うことにつきまして諮問がなされました。この諮問事項を検討するために、神田座長のもとディスクロージャーワーキング・グループが設置されまして、昨年11月から本年4月まで5回にわたりご議論いただき、先般報告書が取りまとめられました。

その具体的な内容につきまして、お手元の資料1-2に記載されております。大きな目的といたしましては、企業と株主・投資者との建設的な対話の促進、そして企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上につなげていくことでございます。このため、報告におきましては、制度開示に係る自由度を向上させる、それから対話に資する情報を充実させることによりまして、効果的・効率的で適時な開示を実現することが提言されております。

その具体的な内容につきましては、大きく2つに分かれておりまして、1つが開示の内容、もう1つが開示の日程・手続です。1つ目の開示の内容につきましては、この中で上側の四角になります。1つ目は制度開示の開示内容を整理・共通化・合理化することでございます。これは開示内容の自由度を高めまして、例えば下の囲みのマル2マル3のように、事業報告等につきまして、その内容が経団連ひな形などに即している必要はないことなどを明確化すること、あるいは有価証券報告書と事業報告との記載方法の共通化などをはかることによりまして、事業報告と有価証券報告書の開示内容の共通化、あるいは欧米に見られるような両者の一体的な書類としての開示などをより容易にすることです。それから、下の囲みのマル1にございますように、決算短信につきましては、速報としての性格を再確認いたしまして、監査・四半期レビューが不要であることを明確化する、あるいは記載を要請する事項をサマリー情報、業績概要、連結財務諸表等に限定いたしまして、簡素化を図ることによって自由度を高めることが1つ目でございます。

2つ目といたしましては、非財務情報の開示の充実です。企業と投資家の間で建設的な対話を行う上で、重要と考えられます経営方針、経営成績等の分析等につきまして、有価証券報告書の記載の内容を充実させること、また、こういった経営関係の情報につきまして任意開示をも活用いたしまして、開示を促進することによって企業と投資家の方々の対話を促進するような情報開示を促進していこうということです。以上が1つ目の開示の内容についての自由度の向上でございます。

2つ目といたしましては、下の囲みになりますが、開示の日程・手続でございます。より適切な株主総会日程の設定を容易とするための見直しを行うべきと提言されております。具体的には、開示の日程や手続に係る自由度を高めまして、下のマル1マル2にございますように、1つ目は株主総会日程の後ろ倒しを容易にすることで、総会日程の分散化あるいは情報開示されてから総会までの期間を取ることであり、大株主の状況の開示につきまして、その判定時点を議決権行使準備日とできることにいたしまして、株主総会日程の後ろ倒しを容易にすることです。2つ目は、右側のマル2ですが、事業報告等の電子化を推進することによりまして、印刷などにかかる時間を省くことで対話の時間を確保すると、こういったことが提言をされております。こういった措置を講じることによりまして、株主総会までに十分な期間をおいて情報が開示されるなど、対話に資する情報のより適時な開示を促進するということでございます。

このほか、報告におきましては、下の「その他」に記載させていただいておりますように、開示書類における単体財務諸表におきまして、IFRSに準拠した開示を認めることなどにつきましても検討すべきではないかということが提言されております。これにつきましては、会社法上の配当規制や税法上の取り扱いもございますので、まずもってニーズを確かめながらとされております。それから、その他の2つ目といたしまして、公平、公正な情報開示によりまして市場の信頼を確保することが、対話の上でも、また投資を促進する上でも重要であることから、諸外国で導入されておりますフェア・ディスクロージャー・ルールの導入に向けた検討をすべきとされております。また、開示情報が、中長期的な視点からの投資判断に活用されることを確保するために、投資家の方々のリテラシー向上などに向けた取り組みなどを行うことについても提言をいただいております。

以上が、報告書の内容でございます。報告書におきましては、金融庁をはじめとする関係者において提言の実現に向けた作業を速やかに進められること、また建設的な対話の促進に向けた取り組みは提言によって完了するものではなく、関係者における継続的な取り組みが不可欠であるとされております。このような報告を踏まえまして、私どもといたしましても必要な取り組みを行ってまいりたいと考えております。

以上、ディスクロージャーワーキング・グループ報告の概要につきまして、ご説明を差し上げました。

○岩原会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご説明いただきましたディスクロージャーワーキング・グループの審議の結果及び報告書につきまして、ご質問、ご意見等があればお願いいたしたいと思います。いかがですか。

はい、原田委員、どうぞ。

○原田委員

報告書の取りまとめ、ありがとうございました。今後につなげていただければと思うことがありまして、少しだけ意見を述べさせていただきます。

2つ目の囲みの中の「マル2事業報告等の電子化の推進」に関するところです。ここでは「推進」とありますが、これは今後いろいろなところで議論していただいて、電子化の制度的な手当てまで段階的にプロセスを経て決めていっていただくべきなのではないかと思います。現状できることと同様な手段で、府令で電子開示できる書類の範囲を少し拡大したところで、日本の電子化率はほとんどゼロに近いまま今後もいってしまうだろうと思われます。ディスクロージャーワーキング・グループは終わってしまいましたが、今後も規制改革会議やIT戦略本部など幾つも議論する場があるかと思います。今後、制度的な手当てができるところまで議論していっていただきたいと願います。

○岩原会長

どうもありがとうございました。

事務局から何かありますか。

○田原企業開示課長

特にございません。

○岩原会長

ほかにいかがですか。何かご質問、ご意見ございますか。よろしいですか。ほかに何かございませんか。

それでは、特にご質問、ご意見がないということでございましたら、本件に関する審議をこれまでとさせていただきます。ただいまのディスクロージャーワーキング・グループの報告を金融審議会の報告とさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。

(「異議なし」の声あり)

○岩原会長

どうもありがとうございます。

それでは、報告書を森長官に提出させていただきます。

(報告書手交)

○岩原会長

続きまして、次に副大臣から本日頂戴しました諮問事項について、事務局より補足説明をお願いしたいと思います。

○齋藤市場課長

市場課長をしております齋藤と申します。よろしくお願いいたします。

では、お手元の資料2、そしてお配りしている資料に沿ってご説明をさせていただきたいと思います。2枚おめくりいただきまして、2ページ目に総論と書かれたページがございます。先ほどの副大臣のご挨拶と重複する部分もありますが、基本的な考え方についてご説明をさせていただきます。

90年代末以降、我が国の市場を欧米と並ぶ国際市場とするとの目的のもと、取引の場の多様化、投資商品の多様化、取引システムの高度化、取引所の統合等が進められてまいりました。90年代末の状況が、日本の証券市場といったものが欧米に比べてさまざまな面で大きく遅れているという問題意識から、当時金融システム改革、あるいは日本版金融ビッグバンといったような名前で呼ばれておりました、証券市場や金融市場に関するさまざまな改革が行われてまいりました。この90年代末以降のこの諸改革といったものが、現在の我が国の証券市場の基本的な枠組みを構成しているものだと考えております。その後、都度都度の発生した問題に対しては対応し、またさまざまな改正あるいは改革を行ってきましたが、その後、この証券市場、取引所周りの本格的な議論は行われていない状況にあります。

このような中で、日本や欧米の市場・取引所やそれを取り巻く環境にはさまざまな変化が見られてきております。それに対して、新たな対応が求められているのではないかと考えております。例えば、欧米のみならず日本においてアルゴリズムを用いた高速な取引が大幅に増加し、市場に与える影響についてさまざまな指摘がある。また、日本では足元の金融環境を踏まえ、国民の安定的な資産形成や資産運用の高度化を進めていくことがますます重要になってきているような変化がございます。また、ブロックチェーン技術など、最近のFinTechの進展等への対応は、証券取引などの分野においても国際的に重要な課題になってきております。このようなことを踏まえまして、我が国の市場・取引所をめぐる諸問題や今後のあり方について、欧米の動向や情報技術の革新などの環境変化を見据えつつ、幅広い観点から議論し施策を講じていくことが必要ではないかという問題意識から、先ほど副大臣からありました諮問事項に至っております。

諮問の内容は先ほどの諮問文にありますように、幅広い内容になっております。この中で幾つか事務局として論点と考えられるところがありますので、5つほどそれについてご説明をさせてさせていただこうと思います。

まず、1ページおめくりいただきまして、3ページ目です。各論マル1、取引の高速化と書かれているところでございます。背景ですが、東京証券取引所のアローヘッドが2010年1月に導入されたことで、注文処理時間が1ミリ秒と大幅に短縮をされました。昨年9月のこのアローヘッドリニューアルを経て、これが0.5ミリ秒とさらに短縮されまして、現在国際的にも遜色のないスピードを実現しているところでございます。また、その取引所のシステムのみならず、投資家の注文をするシステムに関してもIT技術の進展による高速化が進んでおります。その結果、高速な取引が増加をしていると思います。

2010年1月、東証がコロケーション・サービスを開始して以降、アルゴリズムを用いた高速の取引のシェアが大きく増加をしていると考えられます。右側にありますのが、東証の全取引に占めるコロケーション・エリアからの取引の割合でございます。注文件数ベースで足元だと75%ですから7割前後、それから約定件数ベースだと44%で4割前後となっております。そのコロケーション・エリアからの注文が全てアルゴリズムを用いた高速な取引かどうかといったところには、そうでないものも含まれている可能性もあります。他方で、コロケーション・エリア以外から高速な取引が来ている可能性もあります。そこはあくまでも推定、推量にはなりますが、相当程度アルゴリズムを用いた高速な取引のシェアが増加していることが推察、推量されます。このようなアルゴリズムを用いた高速な取引が増えている状況は、日本のみならず国際的にも同様な状況にあります。

これに対して、このような状況についてさまざまな見方が存在しております。もちろん、特に問題がない、あるいは流動性を供給しているので、むしろ取引コストは低下しているといった指摘があることは承知しております。一方で、このページの下にありますように、アルゴリズムを用いた高速な取引が市場に与える影響について、懸念といったような指摘が幾つかなされていることは日本のみならず国際的にも同様でございます。例えばオレンジ色の箱の左上でございます。市場の安定性に与える影響について、アルゴリズムを用いた高速な取引が相場の急変動あるいはボラティリティの上昇の要因の1つではないかといったような指摘です。それから、その下にありますように、市場の分断の程度は日本と欧米では違います。市場の分断を利用した不公正取引は限定的ではありますが、我が国でもアルゴリズム取引を用いたり、アルゴリズムに働きかけたりするような相場操縦事案が出てきております。それから真ん中の上の箱でございます。市場の効率性に与える影響について、そのアルゴリズムを用いた高速な取引の是非はともかくとして、過度なスピード競争のためにコストや労力をかけることは、市場の効率性を高める上で意味がないのではないかといった指摘です。これは例えば、高速な取引に対抗するために、長期保有型の機関投資家も対抗上ある程度高速な取引のための設備投資をせざるを得ないような状況、過度なスピード競争といえるような状況が果たして市場の効率性という観点からどれほどの意義があるのかといった指摘かと思います。それから、投資家間の公平性に与える影響で、高速性を生かして一般の投資家よりも過度に多くの利益を得る状況があるとすれば、投資家に不公平感を与えるのではないかといった指摘でございます。また、右上の箱でシステム面に与える影響です。このような高速な取引は多数の注文あるいはその注文を多数取り消すといったようなこともあります。また、アルゴリズムで注文をすることで、例えば誤発注である、あるいはプログラムがやや市場で暴走してしまうといったようなことが発生する、そういうことがシステム面でのトラブルを市場に起こして大きな問題を引き起こすおそれはないかといった指摘でございます。それから、右下の箱でございます。アルゴリズムを用いた高速の取引が相当程度のシェアを占める株式市場では、中長期的な企業の収益性に着眼した価格形成が阻害されるのではないかといった指摘があります。

このような指摘が日本のみならず、国際的にもなされております。これに対して、各国当局等も様々な対応策を講じてきております。その中で次のページ、4ページ目でございます。ヨーロッパの第二次金融商品市場指令において新たなアルゴリズムの取引規制が導入される予定になっております。これは、アルゴリズム取引に従事する者に対する規制で、高頻度アルゴリズム取引技術を利用する投資家を登録制として、以下の規制を導入するものでございます。1つには体制整備・リスク管理義務です。先ほど申し上げたようなアルゴリズムを用いた注文が、例えば誤発注を起こす、あるいはシステムエラーを起こす、あるいは暴走というか明らかに常識的でない注文を繰り返すと、それが止まらないといった状況が市場に大きな影響を及ぼすようなことをできるだけ抑止するという観点から、強靭で十分な容量を有していることや適切な取引の閾値・上限を設定していること、あるいは誤発注を防止するものであることといった体制整備・リスク管理義務を課しているというようなことがございます。また、市場の混乱を惹起するような方法で機能するものではないことや、あるいは不公正な取引を行うようなものでないことといったようなことについても、体制整備・リスク管理義務を課しております。

加えて、実際に市場で何か問題が起きた場合に、当局として、どのようなことが背景にあったのか、どのような取引あるいは注文が背景にあったのかを把握する観点から、アルゴリズムの取引戦略からシステムが採用する取引パラメータやリミットの詳細などに関する情報を当局が求めた場合には、提供する義務を課すというような規制の導入が予定されております。2018年1月から実施予定になっております。

このような取引の高速化に関してさまざまな指摘がなされており、また投資家に対して一定の義務を課してそれを担保するために登録制を導入するといった欧米の動向を踏まえて、日本としてどのように対応していくべきかが、1つ論点になろうかと思っております。

1枚おめくりいただきまして、各論マル2、取引所外の取引が論点の2つ目でございます。先ほど申し上げた90年代末の金融システム改革におきまして、取引所集中義務が撤廃をされました。市場間競争を促進する観点から、PTS制度が創設されております。その結果、取引所取引を含めた取引制度の改善に、この取引所集中義務の撤廃やPTS制度の創設が一定の役割を果たしてきたと我々は考えております。他方で右側のグラフにありますように、PTSの取引シェアは5%程度と伸び悩んでおります。一方で、東証の現物の取引シェアは9割を超える状況になっております。

他方、同じようにその取引所集中義務が市場間競争を促進したアメリカにおきましては、50以上の取引施設が乱立する状況になっておりまして、取引所外の取引が35%超を占める状況になっております。右側の米国のグラフでございますが、緑の点線がダークプールも含めた取引所外の取引でございまして35%程度となっております。他方で取引所の取引シェアは、最大のNASDAQにおきましても15%程度、ニューヨーク証券取引所におきましては大体10%から15%の間で、日本とは大きく状況が異なっております。

このような状況を踏まえて、下のような検討課題があろうかと思っております。1つには市場間競争を促進すること、それから取引所の統合が進む中でその市場間競争、PTSの今後のあり方をどう考えるのかといったことが1つ論点になろうかと思います。それから、その下でございます。この市場間競争の促進を考えていく中で、例えばPTSと取引所のイコールフッティングということから、PTSでは信用取引が認められていないことについて見直しを求める意見がありますが、これについてどのように考えるのかがございます。それから右下の箱ですが、他方でそのPTSは現行の金融商品取引法上、取引所ではなくて証券会社の一業務として位置づけられていることから、特段自主規制機能を求めていない状況にあります。仮に信用取引を認める取引所のイコールフッティングを図ることだとすると、このPTSにおける自主規制のあり方についてどう考えるのかも1つ議論になるかと思います。また、米国ではダークプールも含めて、そのさまざまな取引施設がある状況にありますが、日本においてそのダークプールの位置づけについてどう考えるのかも1つの論点かと思います。それから、右上にありますように、他方でアメリカにおきましては50以上の取引施設が存在していて、市場の分断の問題も指摘されていることがあります。市場間競争を促進することが、米国のような状況といった問題を引き起こす可能性に留意しながら、その検討する必要があるかと考えております。以上が取引所外の取引でございます。

それから、1枚おめくりいただきまして、各論マル3、取引所の業務・自主規制機能についてでございます。まず、経緯と現状でございます。平成25年に東証と大証の経営統合により日本取引所グループが形成されました。先ほどのグラフにもありましたように、現状国内株式の取引の9割以上がJPXに集中しております。また、JPXは自らの市場に上場しております。他方、足元、JPXの中期経営計画では、海外ビジネスの拡大、新規ビジネスの進出など、業務の拡大・多様化がその経営課題として打ち出されているところでございます。この諸外国では、国境を越えた取引所の間の合従連衡といったようなことも、過去から足元でも進んでおります。このような海外ビジネスの拡大、新規ビジネスの進出を考えたときに国際化をどう考えるのかということが1つあろうかと思います。また、最近ではブロックチェーン技術などFinTechの進展がございます。ブロックチェーン技術に関しては、証券決済やその後の資金決済にも活用が期待されると言われております。このような情報技術の革新に対応した取り組みも取引所においては重要になってきております。一方で、取引所を取り巻く環境の変化等を踏まえて、取引所における自主規制機能の発揮について改めて検討を行うべきという指摘もございます。

このようなことから、検討課題として3つ挙げております。まずは、国際化や情報技術の進展を踏まえて、取引所の業務範囲のあり方についてどう考えるのか。先般の金融グループの議論でもございましたが、現状の取引所の業務範囲規制について、その国際化や情報技術の進展を踏まえて現状のままでよいのか。あるいは、多少業務範囲規制あるいは子会社規制、持ち株会社規制に関して見直す必要があるのかが1つ論点として考えられるところでございます。また、深く関連いたしますが、そのFinTechの進展について取引所は中長期的にどう取り組んでいくべきかも1つ論点かと思われます。他方で、取引所は株式会社として、営利企業として収益を追求していくことから、新規ビジネス、海外ビジネスの拡大が経営課題になるわけです。他方で、取引の場という公共的なサービスを提供する役割も持っているわけであります。その意味で自主規制機能を適切に発揮していくということも重要かと考えております。また、先ほどの取引の高速化を背景とした市場構造の変化といった環境変化も踏まえて、取引所の自主規制機能のあり方に関して見直すべき点はないかといったことも1つ論点かと思います。このようなことについて、足元の環境の変化、状況の変化を踏まえて、どのように考えていくべきかということも1つの論点かと考えております。

1ページおめくりいただきまして、各論マル4でございます。ETF等の投資商品の提供でございます。足元の金融環境、経済環境においては、そのポートフォリオ・リバランスあるいは家計の安定的な資産形成が重要な課題と考えております。その中でも、ETFはその上場商品であり透明性も高いことから、重要なものだと考えております。このようなETFについては、多様な投資商品の提供といった観点からETF市場の整備が図られてきて、その後銘柄数市場規模は右側にありますように、急速に拡大をしてきております。足元では、銘柄数では200銘柄に近づいておりますし、純資産残高も16兆円といった大きなものになってきております。他方で、現在上場されているETFの中には、流動性が乏しい銘柄も少なからず存在しております。また、ETFの中には対象指標、例えば日経平均に連動させるために行われる先物等の売買によって、結果的に相場変動を増幅させているといった指摘もあります。

このような総体で見れば大きく市場規模、銘柄数は進展してきておりますが、その人気が特定の商品に集中しているのが日本の市場の現状かと思われます。他方でアメリカでは、スマートベータ型のETFなど、収益性等に着目した商品も出てきております。日本でもJPX400に連動したETFなど商品の多様化が進んできておりますが、より一層多様化を図るべきといった指摘もあります。また、ETFの販売チャネルに関してその多様化を求める声があるほか、例えば同一の投信委託会社がほぼ同内容のETFと公募投信を提供している場合に、その販売方針が必ずしも明確ではないといった指摘もあります。

このようなことから、検討課題でございます。ETFの商品設計、販売チャネル、流動性供給などについて、多様な投資家が参加する厚みのある市場の形成に向けてどのような取り組みが求められるのかが、1つ論点として考えられるのではないかと思っております。

最後5点目、1枚おめくりいただきまして8ページ目です。各論マル5、顧客本位の業務運営、フィデューシャリー・デューティーと書かれているページでございます。左側の背景です。フィデューシャリー・デューティーという言葉は、さまざまな意味で使われる言葉でございます。最も狭い意味で使われる場合には、委託、受託の関係にある場合に受託者が委託者のために行動する受託者責任といった意味かと思われます。

ただ、このフィデューシャリー・デューティーに関しては、欧米において以下のような動きがございます。まず、アメリカのエリサ法は少し古い話ではありますが、ここでは右側の概念図にありますように、年金資産の管理運用に関してこのフィデューシャリー・デューティーが、単に表面的な委託者と受託者であるアセットオーナーと投資アドバイザー、投資マネージャーの間だけに存在するものではなくて、その委託者と最終受益者、年金受給者の間にも存在するものであり、また投資アドバイザー、投資マネージャーは直接の委託・受託あるいは契約関係にない最終受益者との間でもフィデューシャリー・デューティー責任を負うといったようなことから、さまざまな法律上の義務が課せられています。さらに、最近2016年に公表されたアメリカの労働省ルール案におきましては、退職口座を扱う証券外務員について有償で投資アドバイスを行う場合には、フィデューシャリーであるとされた上で、投資家のベスト・インタレストのために行動するフィデューシャリー・デューティーが課される方針が示されております。

また、イギリスのケイ・レビューという政府に対する提言におきましては、他人の投資に関する裁量権をもって投資の意思決定に助言を行うインベストメント・チェーン全関係者に、フィデューシャリー・スタンダードを適用すべきという指摘がなされております。このように、欧米ではフィデューシャリー・デューティーの概念について、単に委託者と受託者の関係だけではなくて幅広い、特にインベストメント・チェーンに含まれる全てのものが顧客目線で活動することが求められるといったような概念の広がりが見られております。右側にありますように、OECDの金融消費者保護に関するハイレベル原則あるいはその適用に関する報告書においても同様でございまして、インベストメント・チェーンに含まれる全ての者、金融関係者といった者が顧客のベスト・インタレストを図らなければならないことが示されており、このような考え方が国際的な潮流となってきております。

このような国際的な動向があるわけですが、先ほども申し上げたとおり、ポートフォリオ・リバランスの観点から、我が国においては家計における安定的な資産形成が重要になってきております。家計における貯蓄から投資への流れが進み、資産形成の過程において家計がよりリスク性資産を有することによって、企業がその資金を使って成長し、成長した企業の果実が家計に分配されるといった資金の良い流れ、好循環を生み出していくことが重要かと考えております。

そういう好循環を生み出していくためには、例えば家計に対して働きかける政策として、NISAや金融経済教育もありますし、また、その発行体である企業に働きかける政策として、コーポレート・ガバナンス・コードの策定やその運用の適正化もあります。加えて、家計と企業の間をつなぐインベストメント・チェーンにフィデューシャリー・デューティーあるいは顧客本位の業務運営といった視点をきちんと定着させていくことが、これから重要になってくるというか、現在においても極めて重要な課題だと考えております。

そのようなことから、昨年公表いたしました金融行政方針においても、検討課題に書いてありますように、投資信託・貯蓄性保険商品等の商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関等が、真に顧客のために行動しているかを検証するとともに、この分野における民間の自主的な取組みを支援するといったことで、フィデューシャリー・デューティーの徹底を図ることを掲げて、これまでそのモニタリング等を通じてその自主的な取組みを支援してきました。ただ、まだ全てのさまざまな分野、さまざまな現場においてこの顧客本位の業務運営、フィデューシャリー・デューティーのプリンシプルが必ずしも定着しきっていない状況を踏まえて、また先ほど申し上げた国際的な考え方の潮流を踏まえて、どういった取組みが必要かといったことも金融審議会でご議論いただければと思っております。

以上、事務局として現在考えている論点を5つほどご紹介をいたしました。冒頭申し上げたとおり、諮問の内容は幅広いものになっているので、論点はこれにとどまらないかと思います。いずれにしても、我が国の市場取引をめぐる諸問題や今後のあり方について、幅広い観点からご議論をいただければと思っております。

私からは以上でございます。

○岩原会長

どうもありがとうございました。

それでは、本日の諮問事項に関しまして、委員の皆様からご意見あるいはご質問をいただきたいと思います。いかがですか。

永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

ありがとうございます。質問が4つございます。

まず、3ページです。右肩に「コロケーション・エリアからの取引の割合」のグラフをお示しいただいております。この青の注文件数ベースのグラフと朱色の約定件数ベースとのギャップがどんどん開いていることの意味について、これは成り立たなかった件数という意味なのかを確認させていただきたいのと、これが広がっていることに何か意味があるのか、が第1点でございます。

第2点目は5ページです。本当に基礎的な質問で恐縮ですが、ご説明の中にあったようにも思いますが、「ダークプール」という言葉が私はよく分かりません。もう一度ダークプールの言葉の意味をご説明いただきたいのが、第2点目の質問でございます。

第3点目は7ページです。左のETF市場の現状の囲みの一番最後の丸のところで、「ETFの販売チャネルに関してはその多様化を求める声がある」と書いてありますが、この意味についてです。これは、現状、証券会社に限定されている販売チャネルを銀行や投信会社、たぶん投信会社もまだ駄目だと思いましたが、この辺りにまで広げてほしいという声があるという意味なのかを確認させていただきたいと思います。

それから最後に、これも言葉が分かったようで分からないような、とにかく新しい言葉がどんどん出てきておりますので、最初の時点で確認させていただきたいです。「インベストメント・チェーン」という言葉は、私は初めて見た言葉です。英語の意味は分かりますが、これは一体どういう概念なのかご説明いただけたらと思います。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

○岩原会長

それでは、事務局からお願いします。

○齋藤市場課長

まず1点目でございます。3ページ目のグラフの青の注文件数ベースと赤の約定件数ベースの差のところでございます。青のほうは、これは1つには永沢先生がおしゃられたように、注文をしたけれども約定をしなかったものも含まれておりますし、注文をした後で取り消したものも含まれております。赤のほうは実際に約定したものになります。なので、ここから先は今さまざまなヒアリング等々を通じて私が理解しているところですが、アルゴリズムを用いた取引を行う投資家の中には、その状況に応じて多数の注文を出した上で、状況が変化をした場合、例えば相場が変動した場合に、また違う取引機会を求めて過去に出した注文を取り消して違う注文を出すといったことを高頻度に繰り返すという取引戦略をとっている投資家も多いとされますので、約定に至らない注文、最終的に約定した、注文を出したままなのか、注文を取り消したのかわかりませんが、そういった注文が多くなる傾向にあることかと思っております。この違いが問題なのか問題でないのかは、今後またいろいろとご議論いただければと思いますが、その違いはそういう事実関係かと思います。

それから、2点目、5ページ目の下にあるダークプールでございます。一般的には、ダークプールはリットプールという言葉との対比で使われているかと思います。一番の違いは気配情報が公表されているかどうかが違いになります。取引所であれば気配情報が公表されて、大体このような価格で今約定できるのではないか、あるいは注文が出ているのではないかが分かった上で注文が出せるわけです。ダークプールはそういうものが開示されない、そういう取引の場となります。違いという意味ではそういう違いとご理解をいただければと思います。

それから、7ページ目の販売チャネルのところでございます。ご質問に関しては、意見としてはおっしゃられるとおりでございます。現在証券会社のみでETFの販売が行われております。その多様化といったときには、例えば銀行の窓口でと求める声があります。

それから、インベストメント・チェーンという言葉、8ページ目です。明確な定義があるわけではありませんが、イメージとすると8ページ目の下に書いてあるように、商品開発、販売、運用、資産管理など、顧客が実際に金融商品に投資をする上で、それに携わるさまざまな金融機関、金融関係者を総称するものとして、インベストメント・チェーンという言葉を使っているというようにご理解いただければと思います。

○永沢委員

ありがとうございました。

○岩原会長

よろしいですか。

○永沢委員

はい。

○岩原会長

ほかに。では、まず、大崎さん。

○大崎委員

ありがとうございます。私はまず、こういう検討を本格的に行うことになったことは大変時宜を得たもので大変結構なことだと思います。たぶん2000年でしたか、法改正で取引所の株式会社化が可能になって以降、取引所市場規制についての大きな制度変更はなかったかと思います。今世紀に入って初めてという言い方もできるわけでして大変に画期的なことだと思っております。

私は、実はこの取引所や市場規制について非常にマニアックに研究、調査をしておりますので、各論で言いたいことはいっぱいあります。今日は総論的に今後の検討の方向性といいますか、姿勢として3つ意見を申し上げたいと思います。

第1は、この市場・取引所を巡る大きな変化は、これは基本的に情報技術の急速な進歩によってもたらされたものと理解しております。情報技術はさらに日々進歩しておりますので、その進歩を妨げたり、あるいはその進歩の成果を市場で活かしていくことを妨げたりするような制度にならないように、むしろそういうものを全面的に享受できるような仕組みをつくっていく観点から検討すべきではないかと思っております。とりわけこういう新しいことが起きていますと、何かよく分からないので危ないものではないかという見方をする向きも出てきます。そういう思い込みを避け、客観的事実に基づいた検討をするべきではないかと思います。これが第1点です。

それから、2番目に先ほど事務局からいただいたご説明の中にも、例えばアメリカでは市場の分断がすごく進んでいるが、日本はそうではないという違いについてのご紹介がございました。私はこういう欧米との違いを十分踏まえて検討することは非常に重要だと思っております。例えば、欧米で登録制度といっても、日本における登録制度と同じかというようなことです。この点について、昨年の法改正でプロ向けファンドについての規制見直しをする過程で、随分議論になったところであります。日本でいう登録制度は非常に厳しいのではないかという見方をする方も大勢おられたりします。その辺も踏まえた、そういう実質的にどうかということも踏まえた欧米との違いを十分認識しながら検討する必要があると思っております。

それから第3点です。これは先ほど申し上げた第2点目とある意味で重なります。欧米の場合は、欧州はもうEU一体で制度設計しておりますし、米国はその国自体が1つですから1つで、一体でやっております。日本の場合、アジア地域を考えた場合、域内の他の金融センターとの競争関係を十分意識しないといけない立場にあることは、これは忘れてはいけないと思っております。シンガポール、香港はアジア地域における国際金融センターとして、ある意味では日本よりも優位に立っているというようにも見えるわけです。それに対して、さらに遅れを取るような結果を招く制度設計をしてはいけないという、この点は十分意識しながら検討する必要があると思っております。

少し長くなりましたが、以上3点申し上げました。

○岩原会長

佐々木委員、どうぞ。

○佐々木委員

ありがとうございます。佐々木です。

7ページのETFについて一言申し上げます。7ページの右側にグラフがございますが、おそらくこれは全体の残高だと思います。そうすると、たぶん私の理解が間違ってなければ、日銀のETFの購入額が含まれているのかと思います。そうすると、最近だと年3兆円近く購入されているということですからそれを引きますと、このオレンジの線よりは日銀以外の機関の人たちが買っている分はもう少し少ないというのが1つ感想としてありました。

ETFは、上場した形になって取引が非常にしやすく、これは個人投資家でも投資がしやすいような形になっていると思いますが、ただ、個人投資家にはあまり周知されていないのが現状ではないかと思います。実際取引額も低いですし、すごくローカルな例ですが、大学生に聞いてもFXや個別株の取引は何かイメージを持っていますが、投資信託やETFの話をすると、全く知識がないです。私としては、例えば個別株式に比べればリスク分散がされているような少額からできる取引ですので、もっと個人投資家に広まってもいいのではないかという感想を持っています。

すみません。意見として申し上げさせていただきました。

○岩原会長

川島委員、どうぞ。

○川島委員

ありがとうございます。

まず、事務局から提起されました課題認識や検討項目について賛同するものでありまして、必要とされる施策についての幅広い検討をお願いしたいと思います。特に取引の高速化についてですが、その必要性や意義は理解できるものの、事務局からも指摘があったとおり、市場の安定性、公正性、公平性、また中長期的な企業活動に基づく価格形成に与える影響などへの適切な対処が求められると考えております。

私たち労働組合の国際的な議論の場においても、超高速取引が世界経済や国民生活に悪影響を及ぼす投機マネーの暴走に一役買っているのではないのかとの指摘がありました。それを押さえるための仕組みについて検討なども行っております。その他の課題も含めまして、これから専門的、技術的な議論が行われると思います。検討にあたりましては、国民の安定的な資産形成を進めていく観点と、我が国経済を支える企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上といった観点をしっかりと押さえて議論をしていただくようにお願いをいたします。

以上です。

○岩原会長

家森委員、その後に原田委員、お願いします。

○家森委員

ありがとうございます。今回の諮問事項は非常に重要なテーマだと思います。今日事務局からまとめていただいたものについて、このようなことも議論してみたらどうかということで発言させていただきたいと思います。

まず、1つ目の取引の高速化です。株価の動向を見ていると、毎月のようにSQデーの前は要注意だという議論が出てきています。あのようなものはしようがないのかもしれませんが、市場の投資家にとって非常に大きなリスク要因と見なされていて、何か改善できる点はないのかも1つ考えていただいたらと思いました。

2つ目は取引所外の取引の点であります。諮問事項には、経済の持続的成長という観点が書いてあって、また、前提として情報技術の発達についても書いてあります。1年ほど前に株式型のクラウドファンディングが解禁をされて、また株主コミュニティとして地方の中小企業の株式市場といったものもこれからやっていきましょうということになっているのですが、なかなか実際の案件がありません。地方創生の観点からいうと、こちらのほうは今回のテーマではないのかもしれなくて申し訳ないのですが、エクイティをどのように地域に入れていくかという観点で、もし議論に幅が広がるようでしたら、こちらの議論についてもご検討いただければというのが2つ目です。

それから、各論マル4のETF等の投資商品の提供についてです。タイトルにはETF等と書いてありますが、あとの説明のところは全部ETFについてだけ書かれています。これはJリートやETNなども議論の対象ということなのか、それは何らかの理由で分けたほうがいいとお考えなのかというのが、マル4についての質問です。

最後は、マル5のフィデューシャリー・デューティーに関しての議論です。ここについても、諮問事項では家計の安定的な資産形成という観点が今回の議論の対象になっています。家計向けの投資助言をいかに充実させていくかという観点、先ほどの最初の分科会報告にも、最後に金融投資リテラシーについて議論がありました。そういう観点についても引き続きご検討いただいて、こちらの議論の枠組みからも何か改善できる点があればぜひ検討していただきたいと思います。

以上です。

○岩原会長

それでは、ご質問について齋藤さん。

○齋藤市場課長

ETF等の「等」のところですが、あくまでも例示的に書いてあるということと、それから特に家計の安定的な資産形成に資するという意味において、ETFが重要な投資商品である認識からこう書かせていただいています。あくまでも諮問内容においてETFと限定化されているものではありませんので、いただいた意見に関して、その意見を踏まえてどのような検討ができるか考えてみたいと思います。

○岩原会長

それでは、原田委員。

○原田委員

ありがとうございます。市場・取引所を巡る諸問題、これは各論に挙がっておりますもの全て非常に重要なものだと思います。その中でも1点、5番目に挙がっていますフィデューシャリー・デューティーについて、議論していただきたい点を少し述べさせていただきます。

先ほど齋藤課長から、さまざまな意味でこの言葉は使われていますという説明があり、狭義では受託者責任であるということでした。ここで議論することは受託者に限定されないであろうということです。米国、英国の背景などを見ましても、外務員にもFDルールということが書かれてあります。8ページの下にある日本の検討課題について見ましても、商品開発から販売、運用、資産管理それぞれに関わる人たちとなっています。受託者責任という日本語は、たぶん今はそのように訳されていますが、もう少し現実をあらわす言葉があってもいいのではないかと考えます。カタカナだと余計に分かりにくい面があると思います。例えば、製造物責任のような言葉、でしょうか。金融商品の製造物責任のようなものが、たぶんここでいうところの顧客本位の業務運営に関する別の言葉になるのかと勝手に考えております。この分野は既に民間が先行しているかと思いますので、民間の自主的な取り組みを妨げないようなルールなどを今後ご検討いただければと思います。

以上になります。

○岩原会長

はい、よろしいですか。ほかに何か、よろしいですか。

それでは、いろいろ貴重なご意見を賜りまして誠にありがとうございました。本日諮問されました市場・取引所を巡る諸問題に関する検討については、具体的な検討を進めていくため、市場ワーキング・グループを設置したいと存じます。本日、委員の皆様から頂戴しましたご意見を踏まえて議論を進めていただくようにしたいと思います。

なお、市場ワーキング・グループの座長については、神田委員にお願いしたいと思います。本日、神田委員は所用によりご欠席されておりますが、本件につきましてはご本人から事前にご了解をいただいております。その他のワーキング・グループのメンバーにつきましては、私にご一任いただきたいと思いますが、よろしいですか。

(「異議なし」の声あり)

○岩原会長

どうもありがとうございます。

最後に、金融グループ及び決済高度化の2つのワーキング・グループにつきまして、お諮りしたいと思います。この2つのワーキング・グループでは、既に報告書を取りまとめ、関連法案も国会に提出されております。いずれの報告におきましても、FinTechを巡る動向など今後の状況等を踏まえながらさらに検討を進めていくべき課題が挙げられているところであります。これらについて、継続的に検討を行っていくことが必要であると考えられます。

つきましては、両ワーキング・グループは、場合によっては両者を統合した上で、存続させることとしたいと思います。扱いの詳細につきましては、私にご一任いただきたいと存じますがよろしいですか。

(「異議なし」の声あり)

○岩原会長

どうもありがとうございます。

それでは、予定の議事を全て終了しましたので、以上をもちまして本日の金融審議会総会・金融分科会合同会合を終了したいと思います。

なお、本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行わせていただきますので、ご承知おきいただきたいと存じます。また、今後の日程などに関しましては、事務局よりご連絡させていただきますのでよろしくお願いいたします。

皆様、本日はお忙しい中ご出席いただき、熱心にご議論いただきまして誠にありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企画課

(内線3645、3520)

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