第41回金融審議会総会・第29回金融分科会合同会合議事録

  • 1.日時:

    平成31年3月4日(月)14時30分~16時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室


    ○長岡総務課長
     それでは、お時間も参りましたので、ただいまから、第41回金融審議会総会・第29回金融分科会合同会合を開催させていただきます。本日は、皆様ご多用のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
     
     この後、新会長の選任がございますけれども、それまでの間、私、企画市場局総務課長の長岡が議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
     
     本日は、田中内閣府副大臣及び長尾内閣府大臣政務官にご出席いただいております。それでは、最初に、開会に当たりまして田中副大臣よりご挨拶をいただきたいと思います。田中副大臣、よろしくお願いいたします。
     
    ○田中副大臣
     皆様、大変ご苦労様でございます。金融を担当いたします内閣府副大臣の田中良生でございます。本日は、お忙しい中、この金融審議会総会にご参集賜りましてありがとうございます。また、委員の就任に当たりましても、皆様にはご快諾をいただきました。重ねて御礼を申し上げたいと思います。
     
     さて、我が国経済でありますが、今、世界経済の様々な下方リスクには注意が必要ではありますが、安倍内閣のこれまでの様々な施策、取組みによりまして、企業収益ですとか雇用・所得環境が改善しております。確実に経済の好循環が生まれているという状況にあります。政府といたしましては、この好循環をさらに持続的な経済成長につなげていくために、生産性革命ですとか、人づくり革命、こうしたものを通じて生産性向上を推進することに力を傾注しているところであります。金融庁といたしましても、金融仲介機能の発揮ですとか、国民の安定的な資産形成、これを促す施策を推進するなど、経済の好循環を確かなものとするよう、金融面からしっかりと支えていきたいと考えております。
     
     金融を巡る環境変化を踏まえた機能別・横断的な法制の実現に向けては、金融制度スタディ・グループにおいて検討していただいているところですが、2月13日に開催されました未来投資会議においても、総理から、決済をはじめとする分野で早期に規制体系を再編成する法案の提出を検討したいという発言がございました。また、麻生金融担当大臣からも、決済分野の横断化・柔構造化や、横断的な金融サービス仲介法制の実現に向けた検討をしていきたいとの発言がございました。スピード感を持って対応していきたいと考えております。
     
     委員の皆様におかれましては、金融審議会でのご議論を通じて、適切な金融行政の実現、ひいては日本経済のさらなる発展に向けて、ぜひご知見を賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     ありがとうございました。続きまして、長尾政務官よりご挨拶をいただきたいと思います。長尾政務官、よろしくお願いいたします。
     
    ○長尾政務官
     内閣府大臣政務官を仰せつかっております長尾敬でございます。足もとの悪い中、金融審議会総会にご参集いただきましてありがとうございます。
     
     本日は、金融制度スタディ・グループと市場ワーキング・グループの検討課題について報告を受けまして、ご審議いただくこととなっております。いずれのグループにおきましても、議論が収束したテーマにつきまして、タイムリーに報告書をまとめていただきましたことを、まずは心より感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
     
     先ほど、田中副大臣からもお話がございましたが、金融の役割は、経済を支え、景気回復の温かい風を全国津々浦々に届けていくという観点からも、非常に重要でございます。企業の成長に向けた資金がすみずみまで行き渡るように、金融機関による金融仲介機能の十分な発揮や、資本市場の活性化を実現していく必要がございます。
     
     委員の皆様におかれましては、金融サービスの質の向上にむけた金融庁の取組みについて、引き続き、それぞれのお立場から忌憚のないご意見、またご指導を賜りますよう、お願いを申し上げ、挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     ありがとうございました。それでは、カメラの方々は、退室をお願いいたします。
     
                       (報道関係者退室)
     
    ○長岡総務課長
     それでは、議事を進めさせていただきます。まず、本年1月25日の委員の改選後、初めての会合となりますので、委員の皆様をご紹介させていただきたいと思います。なお、全体の名簿につきましては、お手もとに資料をお配りしてございますので、そちらを適宜ご参照していただければと存じます。では、座席順にご紹介させていただきます。
     
     委員の皆様方からご覧になって右側から、秋池玲子委員でございます。
     
    ○秋池委員
     秋池でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     岩下直行委員でございます。
     
    ○岩下委員
     岩下でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     翁百合委員でございます。
     
    ○翁委員
     翁でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     沖野眞已委員でございます。
     
    ○沖野委員
     沖野でございます。どうかよろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     川口恭弘委員でございます。
     
    ○川口委員
     川口でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     川島千裕委員でございます。
     
    ○川島委員
     川島です。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     神作裕之委員でございます。
     
    ○神作委員
     神作でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     神田秀樹委員でございます。
     
    ○神田委員
     神田でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     河野康子委員が少し遅れていらっしゃると思いますが、後ほどご参加いただけると思います。
     
     小林いずみ委員でございます。
     
    ○小林委員
     小林でございます。よろしくお願いします。
     
    ○長岡総務課長
     佐々木百合委員でございます。
     
    ○佐々木委員
     佐々木でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     志賀俊之委員でございます。
     
    ○志賀委員
     志賀でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     原田喜美枝委員でございます。
     
    ○原田委員
     原田でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     福田慎一委員でございます。
     
    ○福田委員
     福田でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     山本和彦委員でございます。
     
    ○山本(和)委員
     山本でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     山本眞弓委員でございます。
     
    ○山本(眞)委員
     山本眞弓でございます。よろしくお願いいたします。
     
    ○長岡総務課長
     なお、本日は、伊藤元重委員と家森信善委員はご欠席でございます。
     
     続きまして、金融審議会会長及び金融分科会会長をお決めいただきたいと存じます。金融審議会令第4条第1項及び第5条第3項の規定によりまして、委員の互選により選任することとされておりますので、委員の皆様のご意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。山本委員、お願いします。
     
    ○山本(和)委員
     私は、ご経験やご見識を踏まえまして、神田委員を会長及び分科会長にご推薦したいと思います。
     
    ○長岡総務課長
     ありがとうございます。ただいま、神田委員を推薦するというご発言がございましたけれども、ほかにいかがでしょうか。佐々木委員、お願いいたします。
     
    ○佐々木委員
     私も山本委員と同意見でして、神田委員が適任だと思います。
     
    ○長岡総務課長
     ありがとうございます。ほかにご意見はございますでしょうか。それでは、金融審議会会長及び金融分科会会長には、神田委員を互選いただくということでいかがでしょうか。
     
                       (「異議なし」の声あり)
     
    ○長岡総務課長
     ありがとうございます。それでは、ご異論がないようですので、神田委員のご承諾をもって、会長及び分科会長へのご就任をお願いしたいと思います。神田委員、いかがでしょうか。
     
    ○神田委員
     お引き受けさせていただきます。
     
    ○長岡総務課長
     ありがとうございます。それでは、神田委員には、恐縮でございますけれども、会長席にお移りいただくようにお願いいたします。
     
                       (神田委員、会長席へ移動)
     
    ○長岡総務課長
     それでは、これ以降の議事進行は会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
     
    ○神田会長
     それでは、着席したままで恐縮ですが、一言ご挨拶させていただきたいと思います。

     金融審議会というのは、金融庁設置法に基づいて置かれているものでして、金融庁設置法という法律の7条というのを見ましたら次のように書いてあります。金融審議会は、大臣及び長官の諮問に応じて、国内金融に関する制度等の改善に関する事項その他の国内金融等に関する重要事項を調査審議すること、それから、それらについて大臣及び長官に意見を述べること、その他の事務をつかさどるというふうにされています。
     
     10年前ぐらいを振り返りましても、まさか今日、金融審議会において議論することになるとは全く予想できなかったような課題について、今では審議をしていると、こういう時代になっておりまして、そういう意味で経済や社会の変化のスピードの速さを実感しています。
     
     日本の金融セクターの発展のために、ぜひ皆様方に建設的なご審議をしていただけるよう、司会進行役を務めさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
     
     それでは、議事を進めさせていただきます。まず、議事運営についてですが、今後とも金融審議会議事規則及び金融分科会議事規則にのっとりまして、執り行わせていただきたいと思います。なお、会議は原則として公開とさせていただきますので、ご承知おきいただければと思います。
     
     また、私が、万が一、会議に出席できないような場合の会長代理及び分科会長代理についてでございますけれども、もしよろしければ私にご一任いただくこととし、その都度、ご指名をさせていただくということにさせていただきたいと思いますけれども、そのようにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
     
                       (「異議なし」の声あり)
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございます。それでは、そうさせていただきます。

     それから、各部会の部会長というものがございまして、会長が指名することとなっております。各部会といいますのは、自動車損害賠償責任保険制度部会と公認会計士制度部会ということになりますけれども、これらの部会長につきましては、もし特にご異論がなければ私が務めさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
     
                       (「異議なし」の声あり)
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございます。
     
     それでは、次の議事に移らせていただきます。本日は、お手もとの議事次第にありますとおり、3つのテーマについて事務局説明を予定しております。
     
     まず最初に、金融制度スタディ・グループの報告書及び審議状況について、岡田信用制度参事官からご説明をお願いします。よろしくお願いします。
     
    ○岡田信用制度参事官
     信用制度参事官の岡田でございます。資料1-1を用いまして、金融制度スタディ・グループについての審議状況についてご説明させていただきます。
     
     3ページになります。最近の開催状況につきまして、上から2番目の開催状況・審議テーマという欄の特に右側をご覧いただければと思いますが、昨年9月以降、「情報の適切な利活用」、「決済の横断法制」、「情報と金融機関」、「プラットフォーマーへの対応」、そういったテーマについて審議をお願いしております。この後それぞれについて簡単にご紹介したいと思います。
     
     まず、「情報と金融機関」についてでございます。5ページにございますとおり、金融分野の事業者に対しては、個人情報保護法令上、一般の事業会社よりも厳格なルールが適用されております。その上で、さらに銀行や保険会社などにつきましては、別途業法上、業務範囲について厳格な制限が存在するところです。今後、様々な形での情報の利活用を通じた利用者利便の向上、イノベーションの促進といったことについて考えていく際、今申し上げたような規制環境、規制構造になっているということに留意が必要かと思います。
     
     具体的に申し上げますと、まず情報の取扱いについてのルールの概観が6ページにございます。左側の青いところが金融機関で、右側がそれ以外の一般事業会社ということでございますが、ざっと見ていただきまして視覚的にもわかる形になっているかと思いますが、一言で言うと、金融分野については、金融分野における個人情報保護に関するガイドラインや実務指針など、様々な形で一般の事業会社に比べてより厳格なルールが適用されていると、そういう姿にあります。
     
     7ページは業務範囲に関する制限についての整理でございまして、金融業のうち、その全てではないのですが、ここに挙げております銀行、保険会社、証券会社といったものにつきましては、規制上、業務範囲について厳格な制限が課されております。下の図における固有業務というのは、それぞれ銀行、保険会社、証券会社の本業でございます。それから、その下に付随業務というのがあって、それは固有業務に付随する業務ということで認められておるものでございまして、それ以外の業務となると、一番下の欄にありますように、非常に限定的になっております。これはもともと健全性の確保など、ゆえあって置かれている規制でありますが、これらの金融機関については、ほかのこういう制限がない業態、具体的には一般事業会社や、金融業のうちでもこういう銀行、保険、証券といったものでない業態と比較しますと、何かやるにしても、業務範囲内なのかどうかということを常に意識しなければいけないということで、情報の利活用を行おうとする場合にも、そういったものが制約要因になるのではないかという指摘があるところでございます。
     
     他方におきまして、金融機関による情報の利活用の範囲というのもどんどん変化をしております。8ページの図は、横軸が分析の対象とする情報の量の増加、縦軸が情報の分析に用いる技術の高度化でございます。左下の担保不動産の評価や財務情報等に基づく与信審査、こういったものなどは、殊さら情報の利活用とかいうことを言わずとも昔からやっていたわけでございますが、右上に行けば行くほど、単に技術的に高度化するというだけでなく、もともとの銀行業とか保険業とか金商業といったものとの関連でも、ぱっと見ると関連性というのがわかりにくいようなものもだんだん出てきているということかと思います。
     
     そうしたことも踏まえて、スタディ・グループでご議論いただいて、1月に「金融機関による情報の利活用に係る制度整備についての報告」というのを取りまとめていただいております。9ページですが、今申し上げたような情報通信技術の発展などを背景に、情報の利活用が社会で進展している中で、一般事業者、フィンテック事業者、伝統的な金融機関のいずれの主体であっても、情報の利活用に取り組んでいくのは自然な流れではないかということを前提とした上で、スタディ・グループで審議した中で出てきた留意点として、(1)情報に関連するルールのあり方と(2)伝統的な金融機関の業務範囲規制のあり方という2つに整理してございます。
     
     まず、(1)の情報に関連するルールのあり方ですが、情報の適切な取扱いの確保は引き続き重要とした上で、スタディ・グループでも様々な意見がございました。例えば、最近の新たな形での情報の利活用というのを踏まえた上で、個人情報保護の観点からルールの再検討が要るのではないかという意見。それから、多少角度が違うのですが、情報の保護だけではなくて利活用との両立を一層図っていくことが重要ではないかというようなご意見などがございました。他方で、こうした問題は必ずしも金融分野に限定されるものではなくて、分野横断的な検討の必要があるということで、個人情報保護委員会など、関係機関とも連携しつつ適切な対応が進められていくことを期待というような形でまとまってございます。
     
     それから、(2)の伝統的な金融機関、銀行、証券、保険などが典型ということでございますが、それらの業務範囲規制のあり方につきましては、右の欄の青字のところでございますが、先ほど来申し上げていますとおり、業務範囲に関して厳格な制限が存在するこうした金融機関についても、社会全体の変化に適切に対応していく環境を整備するため、業務範囲規制について見直しの検討を行うことが適当ではないかと整理いただきました。具体的には、矢印の下でございますが、銀行、保険会社、証券会社等の本体について、さしあたり、保有する情報を第三者に提供する業務であって、本業に何らかの形で関連するものを営むことを認めることが適当ということ。それから、少し観点は違いますが、情報の利活用に関する業務を幅広く営むことが可能な子会社の保有ができるような枠組みが現在ない保険会社につきまして、保険業の高度化や利用者利便の向上を図る観点からも、銀行法にある銀行業高度化等会社に相当する会社を子会社として保有することを認めることが適当ということ。大きくこの2点についてご提言いただいたところでございます。それを踏まえて、現在、金融庁、政府として法改正について検討をしているところでございます。
     
     以上が「情報と金融機関」に関するご説明でございます。
     
     次に、「決済の横断法制」でございますが、11ページにございますとおり、「決済」分野では最近いろいろな新しいサービス形態が出てきていますが、重要なことは、それぞれのリスクに応じた規制というのが過不足なく適用されるような法制というのを検討していくことであろうかと思います。それを通じてイノベーションやフィンテック事業者の新規参入といったものが促進されていくということが望まれるのだと思います。そうした中で、スタディ・グループでお願いしております決済についての審議は、大きく2つの観点がありまして、1つは、左側にあります「規制の横断化」ということで、銀行の為替取引、資金移動業者の為替取引、前払式支払手段発行者のサービス、経済産業省の所管ですけれども割賦販売法に基づくクレジットカードのサービス、それから、現在明示的な規制はない収納代行サービス、ポイントなど、様々なものが広い意味での「決済」ということで出現しておりますが、既存の法体系に必ずしもとらわれずに、機能・リスクが同じものについては同じルールがかかっていくというようなことを議論していっているところです。もう1つは右側の「規制の柔構造化」でございますが、同じ種類の決済だということであっても、規模や実際の具体の態様によって、リスクに違いがあるということで、それぞれのリスクに応じた規制というものを検討していく必要があるということで、事柄によってはより重い規制が必要ということかもわかりませんし、物によってはより軽い規制、場合によっては規制が要らない領域というのも出てくるというようなことで、そのあたりの仕分けの議論というのをお願いしているところであります。
     
     規制の柔構造化のテーマの例として資金移動業の金額を中心とする議論をこの後ご紹介します。12ページでございますが、資金移動業が扱える送金サービスは、1回100万円までということになっております。他方で、決済というのは、この下の図にありますとおり、少額から高額まで、また、リテールのものも企業間のものもあり、それぞれのリスク・プロファイルは違ってくるところであります。スタディ・グループでも、そうした違いを勘案しつつご議論をお願いしているところでございます。
     
     13ページでございます。現在、日本で送金というのを正面から認められているのは、銀行と資金決済法の資金移動業者でございまして、それについて現状の制度を比較してみました。右側には、ご参考までにイギリスのpayment institutionの制度も載せております。真ん中の我が国の資金移動業者の場合は、1回当たりの送金額が100万円以下というところが非常に特徴的で、したがってここを緩和してほしいという要望が寄せられているところですが、イギリスのpayment institutionの例を見ますと、まず参入形式が認可制になっていまして、リスクベースで業者の態様に応じた検査監督、モニタリングを行っているというようなことがあるほか、利用者資金の滞留について、運用・技術上必要とされる以上の期間保持しないとか、財務の面でも一定の規制があるなどの違いがあるところでありますので、こういったものも参考にしつつ、この取扱額のところの議論についても去年秋からご議論いただいているところでございます。
     
     14ページ以降は各論なのでしばらく飛ばしますが、資金移動業者の実態についてもスタディ・グループの場でご紹介して議論をしております。17ページでございますが、先ほどの送金1回100万円のところの議論に関連しまして、現行の資金移動業者の実態について非常に特徴的だったのは、1件当たり5,000円未満の少額の送金というのが件数の過半を占めていることが確認されたことでございます。したがいまして、むしろそういった部分がキャッシュレスにおいても大事になっていくというようなことを踏まえまして、先ほど100万円より上の送金というのを検討しているというのを申し上げましたけども、もう一つ、スタディ・グループでは、より少額に限った送金の場合に、現状よりも場合によっては軽い規制というのがあり得るのかどうかといったことも含めてご議論いただいているところでございます。
     
     なお、資金移動業以外の前払式支払手段やポイント・サービスなどについてもご議論いただいているところです。
     
     もう一つスタディ・グループでお願いしているテーマで、「プラットフォーマーへの対応」というものがあります。20ページですが、「プラットフォーマー」というのは確立した定義がなくて、政府の中でも現状様々な場で様々な議論が行われているところです。この金融制度スタディ・グループでは、金融分野のプラットフォーマーを2つに類型化しております。1つは一般利用者と金融機関の間に介在する形でのプラットフォーマー、もう1つは、一般利用者と一般利用者の間に介在するプラットフォーマーでございます。これまでのところ、スタディ・グループでは、とりわけ左の一般利用者と金融機関との間に立って多種多様な金融商品・サービスをワンストップで提供するような主体というものを考えた場合に、どのような規制というのが必要になっていくだろうかといったことについて議論をお願いしているところであります。
     
     最後に補足ですが、先ほどの副大臣のご挨拶でもございましたが、2月の未来投資会議でもこのスタディ・グループの関連の話が麻生金融担当大臣からご紹介がありまして、1つは、23ページにある決済分野の話、それからもう一つは、先ほどプラットフォーマーということでご紹介しましたが、24ページの横断的な金融サービス仲介法制の話です。その2つについて麻生大臣からご紹介し、ご説明したということになっております。
     
     駆け足になりましたが、私からは以上でございます。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、続きまして、市場ワーキング・グループの報告書と審議状況について、小森市場課長からご説明をお願いします。
     
    ○小森市場課長
     よろしくお願いいたします。それでは、資料2-1に沿いましてご説明をさせていただきます。
     
     市場ワーキング・グループは、平成28年4月の本審議会総会において諮問された事項について議論をしていただいておりますけれども、一旦中断をした後、昨年9月から再開をしているところでございます。昨年9月以降は、ご覧いただいておりますとおり、「高齢社会における金融サービスのあり方について」を中心にご議論いただいております。また、それに加えまして、第17回、第18回におきまして、「直接金融市場に関する現行規制の点検」といった点についてもご議論いただき、この点について、昨年の12月に取りまとめをしていただいているところでございまして、まずその点からご説明を申し上げたいと思います。資料の2ページ目でございますけれども、主に3点について取りまとめをいただいております。
     
     まず1点目が、契約締結前交付書面等の見直しでございますけれども、金融商品取引業者等が契約の締結前に、契約の概要やリスク等を記載した書面をあらかじめ交付する必要がございまして、実務上は、上場有価証券等に関する書面を冊子にまとめて顧客に対して年1回交付するといった運用が存在しているところでございますけれども、顧客にとって必ずしも分かりやすい情報提供がなされていない、というご指摘もいただいたところでございます。これにつきましては、この書面につきまして、顧客に対して重要情報を提供するという趣旨を損なわずに、顧客利便、環境への配慮等の観点から交付の合理化・効率化を図る、複雑な商品等については顧客本位の説明等が確保されるようにする。また、あわせまして、記載事項や方法等を工夫して、より認識・理解しやすいものにするなど、顧客への情報提供のあり方について、さらに検討をしていくことが望まれる、というふうに取りまとめをいただいております。
      
     2点目でございますけれども、犯則調査における証拠収集・分析手続でございます。犯則調査において電磁的な記録、例えばパソコン接続のサーバに保管されているデータの証拠収集・分析の必要性が高くなっているところでございますけれども、他の法令での規定等を参考にしながら、金商法におきましても差し押さえ等の必要な規定を整備する、といった点でございます。
     
     それから3点目が、非清算店頭デリバティブ取引の証拠金規制でございます。我が国の金融機関等が行います非清算店頭デリバティブ取引につきまして、取引の一方当事者が倒産した場合、証拠金の清算が行われるところでございます。我が国で一般になっている慣行と国際慣行に違いがあるところでございます。クロスボーダー取引におきましては、質権構成による当初証拠金の授受を行うわけでございますけれども、現行法上、その即時利用というのが必ずしも確保されていないといった指摘をいただいているところでございまして、関係法令におきまして、この国際慣行に即した規定を整備して、担保のついた証拠金についても一括して清算するために必要な規定を整備する、といったことについて取りまとめをいただいたところでございます。
     
     市場ワーキング・グループにつきまして、今議論を集中的に行っていただいております「高齢社会における金融サービスあり方」について少し付言をさせていただきたいと思います。
     
     資料の3ページでございますけれども、高齢社会における金融の目指すべき姿として、非常に多様な状況にございます高齢者をはじめとする国民が、それぞれの状況に応じた適切な金融取引の選択を行うことができるような状態を実現する、といったことが高齢社会において金融の目指すべき姿なのではないか、という議論をしているところでございます。また、このことを通じまして、預貯金偏重から長期・分散・積立投資といった資産形成への流れの推進、長寿化の進展に応じた資産寿命の延伸、公助から自助の流れに沿う金融環境の実現・提供、個々の家計の資産配分の効率化を通じた経済全体の資金循環の質の改善などを目指していくこととなるか、といった形でテーマが設定されているところでございます。
     
     そして、このような姿に向けまして、金融庁、金融業界をはじめとする多様な主体による今後の様々な取組み、金融業界が取り組むべき方向性、あるいは高齢社会において顧客が心得ておくような事項についての原則の策定など含むということでございますけれども、これについて市場ワーキング・グループにおいて議論をしていただいてはどうか、ということでキックオフがなされまして、現在議論をいただいているところでございます。
     
     昨年の12月に、「『高齢社会における金融サービスのあり方』等の議論に関連してこれまでいただいた意見等の整理」ということで、本日の資料の4ページにございますような整理を行っております。総論として、検討にあたり留意すべき事項、議論の位置づけ、また、各論として、顧客自身の「見える」化、金融機関のビジネスモデル、資産運用・取崩し、資産形成制度、高齢顧客保護、高齢者の側に立ったアドバイザーなどについて、メンバーの方たちから熱心なご意見をいただいているところでございまして、これらについて引き続き議論をしていただこうと思っております。
     
     5ページ目に、この議論の位置づけについて整理させていただいたものをつけております。急速な高齢社会が進展していく中、政府全体として、未来投資戦略や骨太の方針等、大きな議論がなされているところでございますけれども、金融審議会の市場ワーキング・グループにおきましても、金融庁、金融業界、国民、それから他省庁が関連するようなイシューも含めまして、金融を切り口として幅広い議論を行っていただいております。関係の省庁の方にもオブザーバーとして議論に参加していただき、議論を持ち帰っていただいているといった状況でございます。本年はG20議長国であることもございます。高齢社会における金融包摂等についても議論がなされる見込みでございます。
     
     市場ワーキング・グループにつきましては、以上でございます。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、続きまして、仮想通貨交換業等を巡る諸問題について、仮想通貨交換業等に関する研究会において制度的な対応の検討が行われまして、昨年12月に報告書が取りまとめられました。この機会に、これについても事務局から説明を伺いたいと思います。これも小森市場課長からお願いいたします。
     
    ○小森市場課長
     引き続きましてご説明を申し上げます。資料3-1に沿ってご紹介をさせていただきます。
     
     まず、仮想通貨に関してでございますが、2017年4月から仮想通貨と法定通貨の交換業者に登録制が導入され、マネーロンダリング、テロ資金供与規制の対象とされるとともに、利用者保護のための一定の制度的枠組みが整備されたところでございます。一方で、その後、顧客の仮想通貨の流出事案が発生したほか、当局の検査を通じまして業者の管理態勢の不備が把握されました。また、仮想通貨の価格が乱高下し、仮想通貨が投機の対象となっている、との指摘もなされているほか、仮想通貨を用いた証拠金取引や資金調達といった新たな取引も登場してまいりました。
     
     仮想通貨交換業等に関する研究会は、こうした状況を受けまして、昨年の3月に、仮想通貨交換業等に関する制度的な対応を検討する場として設置をされたものでございます。研究会では、神田会長に座長をお務めいただいたほか、本審議会の委員でもいらっしゃいます岩下委員、翁委員、神作委員、福田委員にも研究会のメンバーとして議論にご参加をいただいたところでございます。
     
     検討に当たりましては、利用者に適正な自己責任を求めることを念頭に置きながら、仮想通貨を用いた様々な取引の機能に着目し、同様の経済的機能・リスクを有する場合には同様の規制を適用するという考え方を基本としつつ、制度的な対応のあり方につきまして11回にわたる議論を重ね、昨年12月に本報告書を取りまとめていただいたところでございます。
     
     報告書の主な項目でございます。資料の中ほどにある3点に分類され、その他の項目につきまして、資料の下の枠の中で記載がされております。
     
     まず1つ目でございますが、仮想通貨交換業者を巡る課題への対応でございます。仮想通貨の流出リスクなどへの対応として、オンラインで秘密鍵を管理する顧客の仮想通貨相当額以上の純資産額及び顧客に対する弁済原資となる同種・同量以上の仮想通貨の保持を義務づけること。顧客の仮想通貨返還請求権を優先弁済の対象とすることなどの提言をいただいております。また、業務の適正な遂行の確保の観点から、取引価格情報の公表を義務づけること、投機的取引を助長する広告・勧誘を禁止することなどのほか、例えば移転記録が公開されないなど、業務の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすような問題がある仮想通貨の取扱いを交換業者に禁止することなども提言いただいております。
     
     真ん中の2つ目でございますが、仮想通貨証拠金取引等への対応です。機能・リスクを踏まえますと、外国為替証拠金取引、FX取引と同様の規制の対象とした上で、適切な証拠金倍率を設定すること、仮想通貨のリスクに関する説明義務など、仮想通貨の特性を踏まえた追加的な対応を講じることなどの提言をいただいております。また、仮想通貨の信用取引につきましても、証拠金取引と同様の機能・リスクを有することを踏まえまして、同様の規制を適用すべき、との提言をいただいております。
     
     3つ目は右側でございますが、ICOへの対応でございます。ICO(Initial Coin Offering)につきましては、詐欺的な事案が多いなど、様々な問題への指摘が多いところでございます。その一方で、新たな資金調達手段としての将来の可能性も含めた一定の評価もあるところでございます。こうしたことを踏まえまして、機能やリスクに応じて規制内容を明確化した上で、利用者保護、適正な取引の確保を図っていくことを基本的な方向性とすべき、と提言いただいております。具体的には、仮想通貨による出資など、収益分配を約して仮想通貨の調達を行う投資性を有するICOについて、金融規制の対象となることを明確化することを提言いただいております。また、資金調達に当たりまして、企業等が発行するICOトークンの流通性の高さ、投資家のリスク等を踏まえまして、株式などと同様に、発行者に公衆縦覧型の発行・継続開示を義務づけること。ICOトークンの仲介業者を、証券会社と同様に一種業規制の対象とし、発行者の事業、財務状況の審査を義務づけることなどの提言をいただいております。また、投資性を有しないその他のICOにつきましても、ICOトークン自体が仮想通貨に該当し得ることから、ICOトークンを取り扱う仮想通貨交換業者に対しまして、発行者による事業の実現可能性等に関する顧客への情報提供を義務づけることを提言いただいております。
     
     最後にその他の項目でございます。仮想通貨の現物取引に関し、不当な価格操作などの不公正行為を行為主体を限定せずに禁止するとともに、仮想通貨交換業者に取引審査を義務づけ、未公表情報に基づく利益目的での取引を禁ずること、仮想通貨の管理のみを行うカストディ業務につきまして、仮想通貨交換業規制のうち仮想通貨の管理に関する規制を適用すること、新たな業規制の導入に際して経過措置を設ける場合には、経過期間中の業容拡大を禁止することなどの提言をいただいております。
     
     さらに、仮想通貨の呼称につきまして、G20をはじめとしまして、国際的には、かつての「バーチャルカレンシー」ではなく「クリプトアセット」との表現が用いられつつあること、仮想通貨という名称が法定通貨との関係で誤解を招きやすいという指摘があることを踏まえまして、法令上の呼称を「暗号資産」に変更する方向性を示していただいております。
     
     報告書の「おわりに」のパートについて述べていただいている点について、最後にご紹介させていただきます。技術の進展などを通じて仮想通貨を取り巻く環境が変化を続けている中、今後、関係者におきまして、本報告書に示された考え方を踏まえて、実現可能なものから速やかに適切な対応が図られること、また、そうした対応がなされることで仮想通貨に関する取引に適用されるルールが明確化され、歪みのない形で、今後のイノベーションの可能性が追求されることについて期待したい、というふうにおまとめをいただいているところでございます。
     
     以上、簡単でございますが、仮想通貨交換業等に関する研究会報告書の概要をご紹介させていただきました。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、討議に入りたいと思います。今の金融制度スタディ・グループ及び市場ワーキング・グループに関するご説明と、それから、仮想通貨交換業等に関する研究会の報告書につきまして、皆様方からご質問、ご意見等、どなたからでもお出しいただければ幸いです。いかがでしょうか。川島委員、佐々木委員の順で、川島委員、どうぞ。
     
    ○川島委員
     どうもありがとうございます。諮問事項に対する2つの報告書について、それぞれ意見を申し上げます。
     
     まず、金融制度スタディ・グループの報告については、利用者保護と公正な競争環境の確保という視点からの意見です。資料1-2にある金融機関の業務範囲規制に関してですが、銀行本体が営むことを新たに認める業務に関する記述について、「保有する情報を第三者に提供する業務であって」の後に続く、「銀行業に何らかの形で関連するもの」という表現は、相当幅のあるもののように思われます。確かに、利用者の役に立つサービスの開発を促すというプラスの面は理解いたしますが、解釈の幅が広がり過ぎることで思わぬ問題が生じないかという懸念もございます。今後の法制化に当たっては、個人情報の保護、セキュリティの確保、優越的地位の濫用を防止することなどを勘案しつつ、新たに認める範囲のあり方について検討の深掘りをお願いいたします。
     
     また、保有する情報の第三者提供に当たっては、本人の同意が十分な理解と納得のもとになされるべきであり、その際には個人情報保護法の趣旨が徹底されることが重要であります。この点について、金融機関や消費者団体などの意見も聞きながら、内閣府令やガイドラインなどにおける対応を図っていただくようお願いいたします。
     
     次に、市場ワーキング・グループの報告についてです。資料2-2の1つ目の「契約締結前交付書面等の見直し」については、電子化を基本に合理化・効率化を図る方向性だと理解いたします。その際には、高齢の方をはじめ利用者におけるインターネット環境が依然として多様であることを踏まえ、求めに応じて適時適切に書面を受け取ることができるよう、必要な配慮を講じるようお願いいたします。
     
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、佐々木委員、どうぞ。
     
    ○佐々木委員
     ご説明をありがとうございました。
      
     まず、金融制度スタディ・グループの報告について、資料1-1の9ページになりますが、もちろんご検討いただいているかとは思うのですが、この最後のところで、業務範囲規制のあり方については「引き続き検討」とされておりますが、業務範囲規制がある中でこの上にあるような規制緩和を行うことで矛盾が生じないように、要するに、同じ子会社同士の銀行と証券会社の間にはファイアーウォールがあるのに、銀行と一般事業会社での情報のやりとりのほうが楽になってしまうというような矛盾が生じないようにしていただきたいと思います。
     
     もう1点が、その後の「決済の横断法制」の部分についてですが、銀行のような預金取扱機関の決済部分だけを取り出すというのはなかなか難しいと思います。実際、預金の取扱いに伴って規制が厳しくなっているところもございますので、なかなかそこだけを切り出して送金サービス提供者との比較をするというのは難しいことかなと思いますので、資料の中にも銀行との比較が幾つかございますけれども、そこはかなり考慮しないといけないと思います。
     
     また、逆に、送金サービス提供者の側からみますと、例えば16ページにいろいろな業者が出ておりますけれども、資料からもうかがえるように、その中にはアカウントにかなり資金を置けるようになっている業者もございます。そうしますと、もちろん預金のように運用したりということはないわけですけれども、意図的に資金を預かり、その額が高額になるということも将来的には考えられます。また、現状では非常に限られた金額ではございますけれども、最近ではポイント還元などという形で決済にプラスの部分を設けるといったこともございますので、将来のことも考えて、そのような決済、送金サービス提供者が担いうる仕事の範囲の定義というのを見極めて、今後、考慮していただきたいと思いました。
     
     また、これは感想なのですけれども、仮想通貨に関して暗号資産というふうに呼び方を変えられることについては、私は大賛成でして、金融論を教えている立場からすると、暗号資産というのは将来的に通貨になる可能性はあるものの、現状、交換手段機能としては非常に限られたものですので、それを通貨と呼ぶことに強い抵抗感がありました。部分的に交換手段機能を持つ暗号資産と呼ぶほうが、むしろ適当であると感じましたので、非常にいいことだと思いました。
     
     ありがとうございました。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、志賀委員、川口委員の順で、志賀委員、どうぞ。
     
    ○志賀委員
     ご説明をありがとうございます。

     1点だけなのですけれども、市場ワーキング・グループの資料2-1の5ページに、「『高齢社会における金融サービスのあり方』検討の全体像」ということでいろいろな視点から書かれているのですが、今、実態として、私も介護の必要な年寄りを抱えている立場で考えますと、資産運用あるいは資産形成というよりも、どちらかというと資産管理、つまり、持っている資産をどう管理するかが大きな問題だと思います。結果的には銀行に預けているわけですが、なかなか銀行にも行けない、現金支払いということで家の中にたくさんの現金を持って、結果的に最近のアポ電犯罪にも近づいている。高齢者が資産管理を考える場合、個人信託や家族信託、あるいはきちんとした信託銀行に預けるといったやり方はあろうかと思うのですが、いずれにしても高齢者にとっては非常に使いづらいですし、これに携わる弁護士や司法書士にとっても同様だと思います。かといって、正規に後見人をたてるというようなことやっている年寄りもいない。こうした事情もあって、ほとんど現金をそのままにしながら詐欺被害に遭われる方がいるというのが実態だろうと思うのです。
     
     金融庁でこれだけの全体像を描かれる場合、今、高齢化社会で実際に起こっている最大の問題は、手もとに現金を持っておられる年寄りの方々が、フィンテックも使えない、キャッシュレスも使わない、現金で持つしかない、それが狙われているということです。このため、もっと簡単に気軽に資産管理ができるやり方、例えば、今、送金とか決済でたくさんのスタートアップの会社が入ってきているわけですけれども、信託の分野にも新たな事業会社が入ってきて、要するに、大きな銀行がやっているような信託業務ではなくて、もっと個人に密着した信託、つまり年寄りのお金を安全に預かるような機能をもっと安いコストでやる、そういうことも考えられないのかなということをこの全体像を見ながら思いついたものですから、発言をさせていただきました。
     
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、川口委員、どうぞ。
     
    ○川口委員
     ありがとうございます。

     資料1-1の9ページの「情報の利活用」のところですが、「保有する情報を第三者に提供する」といった場合の「保有する情報」というのは、金融業を営む上で入手した情報なのか、あるいは、本業以外でも集められるような情報をも意味するのか、をお聞きしたいというのがまず第1点です。つまり、情報銀行と呼ばれているような、いろいろな顧客の情報を集めてそれを活用するといったものも含むのか、含まないのかというのを教えていただきたいということです。情報の利活用というときに、まずは、情報収集という入口の場面で、銀行の業務の範囲がどこまで広がるのでしょうか。
     
     第2点は、これは川島委員がおっしゃったところと同じなのですけれども、集めた情報を使うといった場合の線引きというのはどのようなものが考えられるのか、ということです。例えば、金融業に関する情報の関係会社間の授受というのは、これまでいろいろ議論がなされ、規制緩和がなされてきました。先に述べたように、今回の議論は業務範囲の拡大との関係で議論されてきたと理解をしているのですけれども、情報の提供という点で、すなわち、出口の場面で、具体的にはどういうような規制緩和につながり得るのだろうかというところをお尋ねしたいと思います。
     
     なお、資料1-1を拝見すると、今回は、銀行業高度化等会社として子会社が認められている業務の全てを本体に認めるものではないのだということですが、ではどこまでが本体として認められるのか、線引きをどこにするのか、今一つ、よく分かりません。これは今後の課題なのかもしれないのですけれども、現時点で到達点があればお教えいただきたいと思います。
     
    ○神田会長
     ありがとうございました。岡田さん。
     
    ○岡田信用制度参事官
     まず、第1点でございますが、「保有する情報」というのは、必ずしも狭い意味での本業との関連で保有しているものというふうに限る必要はないと思います。ただ、その場合も、いずれにしてもその後の第三者への提供に当たっては、業法上の整理以前に個人情報保護法やそれに基づく金融分野におけるガイドラインの規定をきちっと守るということでして、もともとの情報の提供者の同意をきちっと得ているということを前提として第三者への提供というのを認めるということだと思います。
     
     それから2点目で、高度化子会社と本体の業務範囲の違いでございますが、高度化子会社というのは、大変に広範な業務が可能な立てつけになっておりまして、それを当局の認可で1個1個確認しながら認めていくというものになっております。今回は情報の利活用ということで、本体については、利用者の同意を得た上で情報を第三者に提供する業務だということですので、高度化子会社よりは相当狭い射程のものだという考え方で立法化に向けた準備をしております。
     
    ○川口委員
     ということは、銀行本体での業務範囲は、大きく見直さないという話になるということでしょうか。
     
    ○岡田信用制度参事官
     すみません、ご質問は、今回の報告の射程に限らない本体の業務範囲の見直しはどうしていくのかということでございましょうか。それはそれで今後の課題として、今回は情報の利活用という文脈で本体の業務範囲を見直す提言をいただいて、現在立法化に向けた準備をしているところでございます。
     
    ○川口委員
     いえ、今回の報告の射程内の話です。情報の利活用という点で銀行本体の業務範囲が何か変わってくるのかが見えないという話です。
     
    ○岡田信用制度参事官
     限定的ではありますが、広げます。
     
    ○神田会長
     よろしゅうございますでしょうか。それでは、岩下委員、河野委員、山本委員の順で、岩下委員、どうぞ。
     
    ○岩下委員
     どうもありがとうございます。
     
     本日ご報告いただきました3つのテーマのうち、金融制度スタディ・グループ及び仮想通貨交換業者等に関する研究会のメンバーを務めさせていただいた関係で、その趣旨について若干のコメントを申し述べたいと思います。
     
     まず最初に、今ほども議論になりました金融制度スタディ・グループの中で出た金融機関の情報の利活用のあり方についての議論についてですが、これはこの報告書の解釈、あるいは趣旨ということではなくて、このスタディ・グループの中で私の個人の考えを申し述べたことについて申し上げさせていただきます。これまで日本の銀行というのは、ある意味で個人情報保護の専門家と思われていたように思うのですけれども、もっと言うと個人情報を使わない専門家と考えられてきたように思うのですね。つまり、個人情報に立派な判子を押して顧客同意をとり、立派な金庫にしまってそのまま何もしないということが日本の銀行がこれまでやってきたことであろうと思います。それは、もちろん顧客の信用を得て、かつその顧客の情報をみだりに、特に同意なしに第三者に漏らすということがあっては、これは個人情報保護法上まずいわけですので、そういうことは一切しないというのが当然なわけですが、一方で今や情報は21世紀の新しい石油であるというような言われ方をします。情報の活用の仕方がその国の産業の、あるいはその業種の命運を決するとも言われている状況において、果たして従来のような、何重にも封をして金庫にしまっておくという方法でよいのだろうかという大きな問題意識が、おそらくこのスタディ・グループ報告に込められているのだろうと考えています。
     
     私自身は、もちろん個人情報保護法や、あるいは銀行に対する信頼を裏切るようなことになってはまずいと思いますので、一定の歯どめというか、各銀行自身の自制及び何かしらの法的あるいは制度的な歯どめは当然必要なわけですが、その上で、できる限り積極的かつ能動的に金融機関が利用者の情報を活用しながら新しいビジネスを起こしていくということが、これからの将来において重要ですし、例えば、アベノミクスの第3の矢的な意味で今フィンテックという言葉が語られているということの意味は、まさにそういうことにあるのではないかと考えているわけであります。
     
     ただ、ともすると、今の銀行の業務をその業務範囲の中だけでやろうとすると、せいぜい銀行は、今本体で業務として推進しているのは、例えば個人ローン向けの商売のようなものばかりでございますので、やたらと個人ローンを借りませんかという電子メールがやってくるという、それが情報の活用の仕方かということになりますと少し悲しくなってしまいますので、もっと銀行が情報を活用できる自由度を何とか広げられないかということが、この報告書が直接意図しているかどうかは別として、これから金融制度を考える立場として一緒に考えていくべき問題ではないかと考えております。
     
     もう一つの仮想通貨というか、今度は暗号資産になるわけですが、この仮想通貨が暗号資産になり、通貨という単語が抜けるということについては、私もまだ慣れないのですけれども、努めて暗号資産という言葉を使おうとしております。ただ、もともとのことを考えていただきますと、2013年のキプロス危機のときにビットコインがまさに通貨のように使われたことがある意味でパンドラの箱を開けたような、その後のビットコインの大きなうねりをつくったのだと私は記憶しております。
     
     その意味では、ビットコインは、単に、何だかよくわからないけれども値上がりするもので、資産なのだということではなくて、どうもここには何か通貨として使われているという1つのイリュージョンがあって、結果として値上がりしたという、そういう実態がどうもあるような気がするのですね。
     
     それは多分、ビットコインの価格が比較的安定していた時期には特に、マネーロンダリングなどのイリーガルなことも含めて、国際的な取引ができていたということだと思うのですけれども、確かにビットコインを使えば、国境をまたいでも、違う法律の制度・立てつけであっても、資金決済のようなものができたというのが、それゆえにイリーガルに使われてしまったのだとも思うのですが、それが世の中の流れにつながったような気がいたします。
     
     ビットコインが一旦国境の壁を乗り越えたかに見えましたが、結局その後、ビットコインは乱高下してしまって、結局通貨ではなくなったのでもう使えないわけです。もうビットコインを仮想通貨と呼ぶには当たらないと思いますが、では、それに当たるようなものが今後出てこないかというと、決してそんなことはないと思うのですね。そのときに、国境をまたいだ形での新しい仕組みのようなものが出てくるのではないか、出てきたときにどうするべきなのかということも、これもまたこの仮想通貨を巡る一騒動が我々に与えてくれた、非常にいい、物を考えるチャンスだったと思いますし、今回、金融庁がおとりになられた様々な努力によってこういうことがいろいろわかってきて、この報告書ができたということは、非常に望ましいことだったと思います。
     
     以上、コメントです。ありがとうございました。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。では、河野委員、どうぞ。
     
    ○河野委員
     ご報告をありがとうございました。それから、冒頭、遅参いたしまして大変申し訳ございません。お詫び申し上げます。
     
     私自身は消費者団体におりまして、消費者の立場でこの審議会に参画させていただいているわけでございます。これまでの各委員のご発言を伺っておりますと、私たちの暮らしに身近な食べ物と同様に非常に重要な金融サービスというものが、時代とともに大きく変わってきている、今本当に変革期を迎えているのだなということを心から感じるところでございます。
     
     先ほど、3点のご検討事項についてご報告をいただきました。このことに関しまして、消費者の立場で幾つか感想をお伝えしたいと思います。
     
     1点目は、どんなに鈍感な消費者でも、「ああ、本当に変わっているな」と気づくほど金融を取り巻く環境が急速な変化を遂げていると思っております。デジタルテクノロジーの進展はもちろんですし、低金利等によるビジネスモデルの変化、これは雇用状況ですとか、様々な銀行サービス等のアクセシビリティの変化ですとか、そういうところからも感じられますし、それから新しい分野からのプレイヤーの参入もあります。昨年来「ペイ」という言葉がいろいろな言葉の頭について、何とかペイみたいな形で、私たちの普段の暮らしに近づいてきておりまして、そういった様々な利便性を前面に押し出している決済サービスというのは、一体暮らしとどのようにつながっていって、これから先、私たちにどんな恩恵をもたらし、またどんなリスクがその背後に隠れているのだろうと、そのあたりが今現在見えないところでございます。
     
     例えば、この間の報道、それから金融庁のホームページにもアパート等のサブリースに関する注意喚起等の情報提供もございます。組織内のコンプライアンスと経営の問題ですとか、サブリースにかかわる融資の問題ですとか、先ほど来ご報告いただき、今後は対策が講じられるであろう仮想通貨転じて暗号資産に関しても、消費者自身のリテラシーといいましょうか、国民全体でのまだらな理解のもとに、様々なサービスが出現し、様々な制度が整えられているという状況にあります。それに対して国民は、的確にそれを指摘できないまでも、一定の不安というものを感じているところであります。ただ、この変化というのは避けられないものであるということも片や自覚しておりますので、消費者にとっての金融サービスに対する信頼感ですとか安心感の確保、ともすると後追いになりがちな金融機関の法規制に関する課題等に関しまして、ぜひここにいらっしゃる関係者の皆様のお知恵をあわせて、積極的なアプローチをお願いしたいと強く思っております。
     
     2022年4月には、民法改正により成年年齢の引き下げが行われます。多くの若年層が一気に社会の荒波に立ち向かうことになります。契約や決済等で何か問題が起きないかと私自身消費者団体におりまして心配しているところでございます。ぜひここにいらっしゃる関係者の皆様、それから、私たち消費者団体も当然でございますけれども、丁寧な情報提供、すなわち、今何が変わっていて、何が大事で、どこに気をつけなければいけないか、そうしたリテラシーの向上に対する丁寧な対策をお願いしたいと思っております。簡単、便利の裏側に潜むリスクに対する警鐘をぜひ若い頃から体にたたき込んでおく、そのことが我が国の金融サービスを健全に発展させる重要な鍵になると感じております。
     
     安全で安心な取引のもとで資産をつくり、資産を守るということが、金融庁をはじめとしてここにいらっしゃる関係者の皆様の総意だと思っておりますけれども、消費者にとってみますと表層的な部分にしか目が行きません。そのあたりに関しまして、ぜひ便利にストレスなく安全な金融サービスを享受できるように、新規事業者も含めて上手に舵を取っていただければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、山本委員、小林委員、福田委員、原田委員の順で、山本委員、どうぞ。
     
    ○山本(和)委員
     2点申し上げたいと思います。

     第1点は、金融制度スタディ・グループの関係ですけれども、資料1-1の最後の項目、「プラットフォーマーへの対応」という部分についてです。この中で、特にP2Pと言われる取引の部分に関連するかと思いますけれども、このような事業者が活躍するというのは、消費者の利便性を高めるという意味で大きな意味があると思うのですが、他方では、利便性とともに苦情・紛争というものを生む可能性があり、とりわけこの金融分野においてはそういう可能性が高いようにも思われます。
     
     そういう苦情・紛争、一般利用者間に生じる苦情・紛争について、プラットフォーム事業者がどこまで責任を持つのかというのは、ほかの分野でも既にかなり議論がされているところであろうかと思いますけれども、特にこの金融分野にこういう事業者が入ってくるに当たっては、その点は十分に考えておく必要があるのだろうと思っています。ともすれば苦情・紛争というのは、やや後ろ向きの議論のようにも思えるわけですが、そこはきちんと解決されるというのが、こういう取引に対する信頼性を高めて市場を拡大していくという上では非常に重要な事柄ですし、苦情・紛争の解決を通じて消費者からの信頼・信用を得るというのは重要な事柄だと思いますので、今後の検討におかれましては、ぜひそういった点も配慮いただければと思います。
     
     第2点は、仮想通貨交換業等に関する研究会の報告書についてです。やや細かい点ですが、私の専門にも関わるところなのでご質問したいのですが、資料3-1の左側の「仮想通貨交換業者を巡る課題への対応」の一番上の四角の2番目の黒丸で、「顧客の仮想通貨返還請求権を優先弁済の対象とする仕組みを整備」ということになっております。この整備のあり方なのですが、報告書の本体を見ると幾つかの可能性が研究会でも議論をされたようにも見えるわけですが、現段階においては、この具体的な制度整備、仕組みの整備のあり方について、一定の方向性というものがあるのかどうかということをお伺いできればと思います。
     
    ○神田会長
     ありがとうございました。では、小森課長、お願いします。
     
    ○小森市場課長
     お答え申し上げます。この顧客の暗号資産返還請求権を優先弁済の対象とする仕組みについて、現在法案を準備しているところでございまして、各府省と調整しているところではございますけれども、具体的には以下の方向で進めております。仮想通貨交換業者が顧客から預かった暗号資産、及び弁済原資として持っている同種・同量以上の暗号資産から、業者が破綻した際に一般の債権者に先立って顧客が弁済を受けることが出来る権利を持つ、といったような形で今議論を進めているところでございます。
     
    ○山本(和)委員
     なかなか興味深い仕組みだというふうには思うのですけれども、あまり前例がないような仕組みであり、倒産手続等に対してもかなり影響があるような仕組みのような気もいたしますので、そういう手続的な観点にも配慮していただきながら、ほかの制度との整合性ということにも配慮していきながら、検討を進めていただければと思います。
     
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。
     
    ○山本(和)委員
     はい。
     
    ○神田会長
     アメリカなどで言うファイナンシャル・アセットというのをより狭い範囲でというような発想だとは思いますので、いろいろな意味で諸外国に例はあると言っていいと思います。日本では多少特色のあるものですが。
     
    ○山本(和)委員
     制度的には、合理的な仕組みである可能性は十分あると思うのですけれども、手続の仕組み方は、なお考えていくところはあるのかなというふうには思っています。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、小林委員、どうぞ。
     
    ○小林委員
     本日初めて参加させていただきまして、これまでのご議論等の報告をありがとうございました。
     
     個別にいろいろあるとは思うのですけれども、ただいま金融界の置かれている状況、あるいは金融サービスが置かれている状況というのは、これまで伝統的な金融機関が担っていた業務、サービスではないものあるいは新しいテクノロジーを使ったものがどんどん提供されるような時代になってきています。この場でも仮想通貨ですとかいろいろなツールが出てきていますけれども、まだまだこれからもどんどん出てくると思うのですね。
     
     我々が考えなければいけないことは、おそらく、既存の枠組みの中で何を変えたらいいかということ、これは重要なのですけれども、一方で、将来を見据えてこれから求められるサービス、また、それぞれのサービスにおいてどういったツール、どういった業者が最も適切なサービスを提供できるのかを考え、そこに安全性と利便性を確保するためにどういう仕組みをつくったらいいのかということだと思います。個別の制度の修正という下からではなくて全体像を俯瞰し上からの視点で既存のシステムを再構築する作業が必要なのではないかなと思います。そうでないと、細かいところを議論し過ぎて、ルールや制度が増え過ぎて、結局何だかよくわからないものができ上がってしまうのではないかという危惧を抱いております。ですので、ぜひそういった視点で物事を見ていくということを考えていただきたいと思います。
     
     それから、今の点にも少し関係あるのですけれども、今回、高齢者保護ということを議論されていますが、同時に、先ほど志賀委員がおっしゃられましたけれども、高齢者には全く使えない金融サービスというのが今現実には起こっているわけですね。このあたりは現行の規制の緩和ということも含めて考えていかないと問題の解決はできないのではないかと考えます。また、これとあわせて、これから高齢者が増え続ける中で、自分でリスクを判断できるような金融教育というものをもっと徹底してやっていかなければ、何から何まで国が守ってあげることはできない時代なので、その辺のところもあわせて対応していくべきと思います。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、福田委員、どうぞ。
     
    ○福田委員
     ありがとうございます。
     
     皆様がご指摘のように、金融の新しい流れは非常に大きく変わってきて、かつては考えられなかったようなことが起こっているということだと思います。それに伴って2つの大きなことが起こっていて、1つは、利便性を向上させるようなイノベーションの可能性というのが非常に大きく膨らんでいるということです。他方で、それに伴って、これまでになかったようなリスクも大きく拡大しているということだと思います。ある意味では、一方を推進すれば一方を犠牲にしなければいけないという相矛盾するようなことが同時に起こっている中で、どういう形で金融制度を見直していけばいいかということで議論されたのが、金融制度スタディ・グループの報告書であり、あるいは仮想通貨交換業者等に関する研究会の報告書であったと思います。いずれも全ての問題を解決したものではないとは思いますけれども、様々な議論が出た中で、現在できる制度変更というのは何かということが議論された報告書になっているのではないかと私は理解しております。
     
     ただ、こういう制度変更というのは、ある意味で不断に見直していかなければいけないものなのだろうと思います。例えば、仮想通貨に関する資料3-2の3ページで、セキュリティ対策の観点から、秘密鍵をコールドウォレットで保管しなければいけないという話が出ております。ただ、報告書がでた後、1つの事件が起こったことはご存じの方も多いと思いますけれども、コールドウォレットで保管していた仮想通貨がその秘密鍵を唯一知っていた人が死んでしまって引き出せなくなってしまったというようなこともありました。だからこの報告書の主張が間違っているとかそういうことではないのですけれども、想定外のことというのがこれからも不断に起こってくるという中で、1回こういう議論で一つの方向性が示されたからといって、それでもう固まってしまうというよりは、頭をフレキシブルに持つことが重要だと思います。新たな事態が起これば新たに物事に対応していくというような形で、弾力的にこの種の検討を今後も引き続き進めていただきたいということでございます。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。では、お隣の原田委員。
     
    ○原田委員
     仮想通貨に関しまして、お教えいただきたいことと、感想めいたことがございます。
     
     まず、資料3-1の真ん中の「仮想通貨証拠金取引等への対応」のところになります。仮想通貨もレバレッジ取引ができる時代になっているようでして、ここでは、FX取引と同様に規制の対象にするということが書いてありまして、倍率の上限を設定するとレバレッジの比率は下がるということであろうと思うのですけれども、そうした場合、例えば、仮想通貨の日本でのレバレッジが下がる、取引のレバレッジが下がると、主に投資家は若い世代の人たちであろうと思うのですけれども、例えば、海外の取引所で取引をするようになったりした場合には、海外の取引所で取引している人が被る損失などは、把握できないということになってしまいますでしょうか。多分、海外の取引所での取引は簡単にできることであろうかと思いますので、その辺がどうなるのかなというのが気になりました。
     
     感想めいたこととしましては、仮想通貨の呼称について、私は豪州の事例しか知らないのですけれども、今、学生は、仮想通貨ではなくクリプトアセットとして金融の授業で習っております。クリプトアセットに日本語名称を変更することは、混乱を避けるためにもいいと思います。同様に、資料3-1でICOという表現もありまして、仮想通貨取引所での取引ということで、何となく証券業のIPOに近いイメージを抱きがちなのですけれども、多分それはかなり違った認識になるかと思いますので、今後もう少し継続して議論していただけるのであれば、これも似たような名前でないほうがいいのかなという感想を持ちました。
     
     先ほど、ICOのところで、一種業登録に言及なさったように思うのですけれども、それについてはどういう形であるのかというところを少しお教えください。
     
     あともう1点、決済につきまして、決済のところで少額の送金が多いということで、先ほどのお話では、少額の送金については、現状よりも緩い規制を考えるということも可能性としてはあるというふうにおっしゃいましたが、少額であるがゆえに埋もれているトラブルなどが結構あるのではないかと思っておりまして、それに対する対応などは、今のこの資金移動業者では十分にできていないのではないかと思っております。このため、少額の送金の金額を大きくするというよりも、まずは少額の送金でのトラブルをより少なくして、その後、もっとさらに金額を上げるなどのステップを踏むのがいいのではないかと思っております。
     
     以上になります。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。それでは、小森さん。
     
    ○小森市場課長
     2つご質問をいただいたと思います。まず第1点が、暗号資産を用いた証拠金取引についてでございます。暗号資産の証拠金取引自身は既に活発に行われておりまして、現物も含めた全体の取引の中で、国内ですと8割がこの証拠金での取引であると公表されているところでございます。ご質問の中にもございましたように、FX取引と同様に金商業の対象にするといったことをしようと思っております。報告書に書かれているとおりにしようと思っておりますし、その上で、適切な証拠金倍率というのを原資産である暗号資産のボラティリティなども見ながら設定していく、といったことが考えられるところでございます。
     
     ちなみに、FX取引は、個人の取引の場合、上限倍率が25倍とされているところでございまして、まだ規制の対象となっていない暗号資産の証拠金取引についても、一部の業者では25倍での取引を行っていると言われているところでございますけれども、暗号資産の原資産のボラティリティが非常に高い中、リスク管理の観点からは、それを踏まえて25倍よりも低い倍率にしていかなければならないところだと思っております。現在の自主規制団体のルールでは、今後4倍にしていくといったようなことが規定されているところでございます。ちなみに、ヨーロッパで言われている規制は2倍ということでございます。
     
     直接のご質問の対象は、外国の取引業者に逃げる場合に何が起きるのか、といったことだと思うのですけれども、日本国内の顧客に対して、例えば日本語のホームページ等を使って取引を誘引しようとするような場合につきましては、日本国内においても登録をして業を営んでいただく必要があるということで、それができない場合については、無登録営業ということで警告等の対象になっていくといったことでございます。
     
     それから、2点目で、ICOについての一種業登録についてご質問があったと思います。ICOというのがかなりいろいろな性格のものがあるというふうに言われているところでございます。このトークンと呼ばれるものをお客様に渡す際に、そのトークンには、例えばアイドルの握手券がついていたりだとか、あるいは、デジタルのプラットフォームの利用サービスを今後受けられる、といったものがある一方で、投資性ICOという、収益分配を約する形でそのトークンに権利を乗せるといったようなことも世界では行われているところでございます。このうち、この投資性ICOの場合、収益分配を約する行為なので、仮にトークンでなかったとしても、それは金商法上の有価証券としての性質を帯びていると考えられますので、こちらについては、有価証券の一部として位置づけて、現行の流通性の高い有価証券についてかかっている一種業登録を仲介業者に求めてはどうか、といった考え方を報告書に書いていただいておりまして、現在その方向で準備をしているところでございます。
     
    ○神田会長
     よろしゅうございますしょうか。決済の部分はご意見だったかと思いますけれども、岡田さん、よろしいですか。
     
    ○岡田信用制度参事官
     少額のところの取扱いは、スタディ・グループでの議論も始まったばかりでございますので、いただいたご意見も含めて今後検討していきたいと思います。
     
    ○神田会長
     ありがとうございます。よろしゅうございますでしょうか。
     
    ○原田委員
     ありがとうございます。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。
     
     本日も大変多くの貴重なご意見、多彩なご意見をいただきまして、ありがとうございました。そこで、先ほどご説明いただきました金融制度スタディ・グループと市場ワーキング・グループの報告の部分、お手もとの資料で言いますと資料1-2と資料2-2になりますが、これらにつきましては、これを金融審議会の報告というふうにさせていただきたいと思いますけれども、そうさせていただいてもよろしいでしょうか。
     
                    (「異議なし」の声あり)
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。
     
     三井局長、どうぞ。
      
    ○三井企画市場局長
     ご多用中、ご参集いただきまして、また熱心なご審議をいただきまして、大変ありがとうございました。特に本日ご報告いただきました2つの報告、ご提言、それから、それらを踏まえたところの皆様方の幅広い見地からの、かつ専門的な見地からのご意見を賜りまして、大変ありがとうございます。
     
     これらの議論を踏まえまして、私どもといたしましては、所要の制度整備をすべく、今国会に資金決済法あるいは金融商品取引法、それ以外の関連法律の改正案を取りまとめて提出できるように、早急に作業を進めてまいる所存でございます。これからも引き続きご審議を賜りますよう、また、私どもにアドバイスを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
     
    ○神田会長
     ありがとうございました。最後にもう1点、大変恐縮ですけれども、今後のワーキング・グループ等の運営についてお諮りさせていただきたいと思います。
     
     本日ご審議いただいた金融制度スタディ・グループと市場ワーキング・グループもそうなのですけれども、ワーキング・グループ等の検討課題の性質や範囲によっては、その検討期間が非常に長期にわたることがあり得ますし、実際にそういうことが生じています。
     
     他方で、金融を巡る環境は急速に変化しておりますので、こういった長期的な検討を行うに際しては、例えばですけれども、状況に応じてワーキング・グループ等の改組を行うなど、その運営を機動的に変えていくことが審議の充実を図る上でのポイントになろうかと考えられます。
     
     そういった状況でございますので、今後は、ワーキング・グループ等が同一の検討課題を継続的に審議するような場合には、その運営について、必要に応じて、改組とか、名称あるいはメンバー等の見直しを行うことを含めまして、恐縮ですけれども、私にご一任をいただければ大変ありがたく思いますけれども、そのようにさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。
     
                   (「異議なし」の声あり)
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございます。それでは、予定の議事を全て終了いたしましたので、以上をもちまして、本日の金融審議会総会・金融分科会合同会合を終了したいと思います。
      
     なお、本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行います。また、今後の日程などに関しましては、事務局から後日ご連絡をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
     
     本日は、皆様方には、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。以上で散会いたします。

     

以上

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企画市場局総務課

(内線3645、3520)

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