第43回金融審議会総会・第31回金融分科会合同会合議事録
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1.日時:
令和2年2月17日(月)13時30分~15時00分
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2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室
○神田会長
それでは、皆様方おそろいでございますので、始めさせて頂きます。
ただ今から、第43回金融審議会総会・第31回金融分科会合同会合を開催させて頂きます。本日は、皆様方には大変お忙しいところお集まり頂きまして、ありがとうございます。
本日の議事は公開の形で行わせて頂きますので、よろしくお願いいたします。
本日でございますけれども、宮下副大臣にお越し頂いております。最初に、開会に当たりまして、副大臣よりご挨拶を頂けるということでございます。
宮下副大臣、よろしくお願いいたします。
○宮下内閣府副大臣
本日は大変お忙しい中、金融審議会総会にご出席を頂き、誠にありがとうございます。
足もと、日本経済につきましては、内需を中心に緩やかな回復を続けております。一方で、通商問題を巡る動向や新型コロナウイルス感染症の発生など、引き続き様々な不確実性が存在してございます。海外発のリスクには留意していく必要があります。
政府としては、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を昨年閣議決定し、13兆円規模の財政支出を講じることといたしました。機動的かつ万全の対策により、民需主導の持続的な経済成長の実現につなげてまいります。また、新型コロナウイルス感染症に関しましても、先週、緊急対応策を取りまとめました。今後も、政府一丸となって、順次施策を講じてまいります。
さて、金融を取り巻く環境に目を移しますと、デジタライゼーションの加速、人口減少・高齢化の進展など、構造的な変化が生じております。中長期の経済活力の維持・向上のためには、我が国も新時代を拓くための制度の見直しを加速する必要があります。
こうした状況下、本日の総会におきましては、「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」と、「市場構造専門グループ」から検討結果をご報告頂くこととなっております。最近の情報通信技術の進展による決済サービスの多様化などの金融を取り巻く環境の変化を踏まえますと、今回の決済・仲介法制に関する報告は時宜を得たものと考えております。金融庁としては、本日の総会でのご審議をしっかりと受け止め、イノベーションを促進させるとともに、利用者利便の向上と利用者保護のバランスに留意した制度整備に向けて具体的な検討を行ってまいりたいと考えております。
また、「市場構造専門グループ」に検討頂きました東京証券取引所の市場構造の見直しにつきましては、我が国の市場そのものの在り方に直結する重要なご提言を頂いたものと考えております。市場構造の見直しを通じて、上場会社やベンチャー企業の持続的な成長と企業価値向上を促し、内外の投資家にとって魅力あふれる市場となることを強く期待しております。
これらのほか、本日の総会では「市場ワーキング・グループ」の審議状況や、昨年12月に公表いたしました「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」についても、事務局より説明させて頂きます。
委員の皆様方におかれましては、金融審議会でのご議論等を通じまして、適切な金融行政の実現、ひいては日本経済の更なる発展に向けて、ご知見を賜れますよう、よろしくお願い申し上げます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、カメラの方々は、ここで退室をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○神田会長
議事に入ります前に、昨年9月の総会以降、委員の異動がございましたのでご報告させて頂きます。川島千裕委員が金融審議会委員を退任されまして、新たに井村和夫委員が任命されました。よろしくお願いいたします。
それでは、議事に移らせて頂きます。本日はお手元の議事次第にありますとおり、3つ目と4つ目にありますけれども、まず、「諮問事項にかかる報告等」、そして金融庁から昨年12月に公表されました「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」についてご説明をして頂きます。その後まとめて委員の皆様方に討議をお願いしたいと思います。
それでは、まず昨年12月に公表されました、「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告につきまして、同ワーキング・グループの座長を務められました神作委員からご説明をお願いしたいと思います。神作先生、よろしくお願いいたします。
○神作委員
お手元の資料、「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告に沿ってご報告させて頂きます。
本ワーキング・グループは、金融審議会「金融制度スタディ・グループ」の「「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫」を踏まえ、決済法制や金融サービス仲介法制に関する具体的な議論を進めていくため、昨年9月の総会において、スタディ・グループを改組する形で設置されました。
本ワーキング・グループにおいては、≪基本的な考え方≫に示された方向性を踏まえつつ、7回にわたり審議を行いました。本報告は、本ワーキング・グループにおける審議の結果を取りまとめたものでございます。
まず、決済法制に関する審議について申し上げます。
キャッシュレス化が推進されている今日において、キャッシュレス時代の利用者ニーズに応え、利便性が高く安心・安全な決済サービスを実現することが求められていること等を踏まえ、イノベーションの促進等を通じた利用者利便の向上と利用者保護のバランスに留意しつつ、決済に関する規制枠組みの見直しの具体的な方向性について検討を行いました。
以下、その主な内容について、4点に分けてご報告いたします。
1点目は、資金移動業についてです。資金移動業については、資金移動業者に対する規制が、機能やリスクに応じた柔軟なものとなるよう、第1に「高額」送金を取り扱う事業者、第2に現行規制を前提に事業を行う事業者、第3に「少額」送金を取り扱う事業者の3類型に分けた上で、それぞれの類型に過不足のない規制を適用していくことが適当としております。
第1類型の「高額」送金を取り扱う事業者につきましては、リスク管理の重要性も相対的に高まることを踏まえ、認可制の対象とし、体制整備の状況等を追加的に確認することが考えられるとしております。また、「高額」送金を取り扱う事業者が破綻した場合の影響を極小化するため、具体的な送金指図を伴わない利用者資金は受入れを認めないものとするなどの滞留規制を課すことが考えられるとしております。
第2類型の現行規制を前提に事業を行う事業者については、事業者やその利用者の活動に支障が生じることのないよう、現行の規制枠組みを基本的に変えないことが適当としております。ただし、為替取引との関連性が認められないような利用者資金の滞留を防止するための方策として、受入額が送金上限額を超えている場合、資金移動業者に対し、第1に、利用者資金が為替取引に関するものであるかを確認し、第2に、仮に為替取引に用いられる蓋然性が低いと判断される場合には、払出しに向けた対応を行うための体制整備を求めることが考えられるとしています。
第3類型である「少額」送金を取り扱う事業者につきましては、利用者1人当たりの受入額の上限も「少額」とすることを前提に外部監査等を義務付けた上で、利用者資金について、現行の保全方法に代えて、自己の財産と分別した預金の形で管理することを認めることが考えられるとしています。
資金移動業に関する規制については、このほか、供託、保全契約、信託契約の併用を認めるなど、利用者資金の保全方法の合理化についても提言しております。
2点目は、前払式支払手段についてでございます。近年、発行者が提供する仕組みの中で、利用者が他者に前払式支払手段のチャージ残高を譲渡することで、個人間で支払手段の移転を行うことが可能な前払式支払手段が登場してきています。こうしたタイプについて、不適切な取引を防止するために、発行者に求められる対応を明確化することが考えられるとしております。
3点目は、無権限取引への対応についてです。なりすまし等による無権限取引が行われた場合の対応については、利用者保護の観点から望ましい補償ルールの整備が進みつつある現状を踏まえ、当面は事業者による自主的な対応を促していくことが適当としております。また、そのための制度上の対応として、利用者に対する情報提供事項に「無権限取引が行われた場合の対応方針」を追加することが考えられるとしています。
4点目は、収納代行についてです。収納代行については、それぞれのサービスの機能や実態に着目した上で、為替取引に関する規制を適用する必要性の有無を判断していくことが適当としています。その上で、個人間の収納代行のうち、割り勘アプリのようなサービスについて、一般消費者である債権者・債務者の双方が、サービス提供者に対して信用リスクを抱えるおそれがあり、利用者保護を確保する必要性は高いと考えられることから、資金決済法等の為替取引に関する規制の適用対象となることを明確化することが必要と考えられるとしております。
続いて、金融サービス仲介法制に関する審議について、ご報告申し上げます。近年、情報通信技術の発展等により、多様な金融サービスをオンラインで円滑に提供することが可能となっており、例えば銀行口座などの利用状況を管理できるサービスを提供しながら、顧客の資産状況や資金ニーズを基に、住宅ローンなど利用可能な融資を紹介することや、ライフプランに応じて投資信託や保険商品の比較・推奨をするといったビジネスが現れることが想定されるところです。
こうした環境変化を踏まえ、本ワーキング・グループでは、利便性のより高い金融仲介サービスを実現していく観点から、多様な金融サービスをワンストップで提供する仲介業者に適した業種の創設について、制度の具体的な検討を行ってまいりました。
検討の柱は次の2点です。
第1は、シングル・ライセンス化であります。現行制度上、金融サービスの仲介を行うためには、業種ごとの許可・登録を受ける必要がありますが、新たな仲介業については、その登録を1つ受けることで、業種をまたいだ多様な金融サービスの仲介を可能とすべきと提言しています。
第2は、特定の金融機関への「所属」を求めないことです。現行制度上、仲介業者は特定の金融機関に「所属」し、業務運営について金融機関から指導を受けることが求められています。新たな仲介業については、「所属」を求めないことで複数の金融機関と連携しやすくしながら、取扱可能な商品・サービスの限定、利用者資金の受入れの制限、財務面の規制の適用等により利用者保護を図ることを提言しています。
以下、具体的な制度の中身について紹介してまいります。
まず、業務範囲について申し上げます。新たな仲介業者が、日常生活において生じる金融サービスへのニーズに応えられるよう、住宅ローンの紹介、投資信託や保険商品の比較・推奨などの仲介を幅広く認めることが適当と考えられます。また、十分なシステム管理体制を備えている事業者については、電子決済等代行業としての登録手続を省略できることとすることも考えられます。他方でデリバティブ取引など、仲介に当たって高度な説明が必要と考えられる金融サービスの取扱いを制限し、利用者の利便性と利用者保護とのバランスを図ることとしております。
次に、参入規制について申し上げます。新たな仲介業には所属制を採用しないことから、新たな仲介業者の賠償資力の確保に資するよう、事業規模に応じた額の保証金の供託等を求めることが適当であると考えられます。保証金の水準については、顧客保護の観点と、事業者の参入によるイノベーションの促進及び利用者利便の向上の観点とのバランスに留意すべきと考えられます。
次に、行為規制について申し上げます。総論としては、新たな仲介業者に共通して求める規制と、事業者が仲介を行う分野に応じて求める規制とを組み合わせてアクティビティーベースの規制体系とすることが望ましいと考えられます。本ワーキング・グループでは、各論としては、顧客情報の適正な取扱いや、仲介業者の中立性に関する措置、顧客に対する説明義務などについて、議論いたしました。このうち、仲介業者の中立性については、顧客に適した同種の金融サービスが複数ある場合、仲介業者には、顧客の最善の利益ではなく、仲介業者が金融機関から受け取る仲介手数料の多寡に基づいて商品を紹介するインセンティブが働きうることを踏まえ、保険仲立人の制度に倣い、金融機関から受け取る手数料等の開示を求めることが適当としております。
顧客に対する説明義務については、新たな仲介業者に対し、仲介を行う金融サービスに関する情報提供等を行うことを義務付けることが適当と考えられます。他方、金融機関と仲介業者が適切に役割分担を行い、いずれかにおいて説明が行われれば足りるという柔軟な制度とすることを提言しております。
現在、本報告も踏まえ、金融庁として、決済法制及び金融サービス仲介法制に関して、法制化に向けた作業を行って頂いているものと承知しております。
以上、簡単ではございますが、「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告の主な内容の報告とさせて頂きます。どうもありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。
続きまして、同じく昨年12月に公表されました、令和時代における企業と投資家のための新たな市場に向けてという副題になっておりますが、「市場構造専門グループ」報告書につきまして、私が座長を務めさせて頂きましたので、私からご説明をさせて頂きます。
資料2-1が映っているかと存じます。「市場構造専門グループ」は「市場ワーキング・グループ」に置かれたグループでありまして、東京証券取引所の市場区分等を検討してまいりました。東京証券取引所の市場区分は、2013年の東京証券取引所と大阪取引所との統合前の基本的な市場構造を維持しているという状況であり、統合から5年が経過する中で、色々と改善すべき課題が顕在化してまいりました。そこで、東京証券取引所の懇談会における論点整理を経て、金融審議会「市場ワーキング・グループ」の下に「市場構造専門グループ」を設置いたしまして、昨年の5月から、東京証券取引所の市場構造の見直しに向けて、上場会社やベンチャー企業の持続的な成長と企業価値の向上を促し、内外の投資家にとって魅力あふれる市場となるよう、市場構造の見直しに関する議論を開始いたしまして、6回にわたる審議を経て、昨年12月に報告書を取りまとめました。
報告書の本体は別冊として、お手元に配付しております。今、映っているところにも書いてあると思いますけれども、まず、現状の市場構造を巡っては、次のような3つの課題が指摘されていました。
第1に、東京証券取引所に5つある各市場区分のコンセプトが曖昧であって、多くの投資家にとって利便性が低い。
第2に、市場第一部へのステップアップ基準が低いことのほか、上場時の基準と比べて、市場第一部から第二部への移行や上場廃止に係る基準が低いことなどから、上場企業の持続的な企業価値向上に向けた動機づけに乏しいものとなっている。
第3に、多くの機関投資家がベンチマークとしておりますTOPIXですけれども、これは市場第一部の全ての銘柄で構成されております。そのため、投資対象としての機能性に欠けている一方で、JPX日経400やTOPIX500などの指数をベンチマークとする機関投資家は少ないことから、投資対象としての機能性と市場代表性を兼ね備えた指数が存在していないということであります。
そこで、ご議論頂きました結果、報告書では、現在の市場区分について、各市場のコンセプトを明確化し、いずれも仮称ではありますが、「プライム市場」、「スタンダード市場」、そして「グロース市場」の3つの市場区分に再編することを提言しております。
まず「プライム市場」についてですけれども、そのコンセプトを、「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額・流動性を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業及びその企業に投資をする機関投資家や一般投資家のための市場」と整理しております。「プライム市場」へ新たに上場する企業の時価総額基準は、市場で実際に取引されている株式が対象となるように定義を見直しまして、単純な時価総額ではなく、「流通時価総額」を基準とし、併せて、上場・退出基準を厳格化することとしております。具体的には、現在の市場第一部に直接上場する際の時価総額基準を踏まえた水準を念頭に、「流通時価総額」で100億円を目途とするという基準に一本化することとしております。
ただし、現在、市場第一部の上場基準におきましては、実質的に直近決算期が赤字である企業の上場は難しいとの指摘がある一方で、ネット系企業等のビジネスモデルによっては、従来の設備投資型産業よりも赤字が出やすくなる特性があるため、直近の決算が赤字の場合であっても、時価総額、売上や開示などの条件を加重することによって、「プライム市場」への上場を認めることができるよう基準を見直すこととしております。
また、上場企業の持続的な成長と、企業価値の向上を促すメカニズムを強化するため、「プライム市場」に上場する企業については、我が国を代表する投資対象として、優良な企業が集まる市場にふさわしいガバナンスの水準を求めていく必要があります。そこで、今後、コーポレートガバナンス・コードなどの改訂等を重ねるごとに、他の市場と比較して、一段高い水準のガバナンスを求めていくことなどによって、ガバナンスを向上させることとしております。
なお、既存の市場第一部の上場企業は、上場基準の遵守や取引所によるモニタリングなどを通じて、国・地域における主要企業としてのブランドイメージが確立され、雇用や取引に当たっての信頼性・安心感を与える源泉となるなど、当該企業のステークホルダーに対して、有形・無形の価値を提供しているということが、専門グループで行ったヒアリングにおいて強く示されました。このため、経過措置といたしまして、「プライム市場」の新たな上場基準を満たしていないとしても、企業による選択により、より高いガバナンスについてのコミットメントを行う限りにおいて、当分の間、「プライム市場」への上場及び上場維持を認めることが適当としております。
次の「スタンダード市場」につきましては、そのコンセプトを、「公開された市場における投資対象として一定の時価総額・流動性を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業及びその企業に投資をする投資家のための市場」と整理しております。
上場基準等ですけれども、「プライム市場」と同様に「流通時価総額」を基準としつつ、現在の市場第二部への上場基準を目途とすることにしました。また、ガバナンスについてですけれども、現在、市場第二部の上場企業にはコーポレートガバナンス・コードの全ての原則が適用されますが、JASDAQスタンダードの上場企業にはコーポレートガバナンス・コードの基本原則のみが適用となっております。今後は「スタンダード市場」全体として、コーポレートガバナンス・コードの全ての原則を適用することが考えられます。
そして、「グロース市場」につきましては、そのコンセプトを、「高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業及びその企業に投資する機関投資家や一般投資家のための市場」と整理しております。
上場基準等ですけれども、引き続き、ベンチャー企業にとって世界で最も投資資金にアクセスしやすい市場でありますので、時価総額など現状の上場基準を原則として維持することが適当であるとしております。
最後に、インデックス、すなわちTOPIXの見直しについて簡単に申し上げます。TOPIXは機関投資家にとって使い勝手が良く、選定される企業にとっても納得感のあるインデックスを目指す必要があると考えられます。そして、TOPIXは既に年金運用や投資信託に数多く用いられているという実態を踏まえ、連続性の確保を考慮しつつ、より流動性を重視する方向で企業を選定することが適当と考えられます。これらのことから、新たなTOPIXの対象企業は、「プライム市場」に上場する際の基準となる「流通時価総額」を目途として、市場区分の範囲とは切り離して選定する方向で検討することが考えられます。
なお、インデックスの見直しにつきましては、マーケットに過度な影響を与えないよう、連続性の確保に十分留意するとともに、十分な移行期間を設けて、事前周知を行うなどの配慮をすることが考えられます。
以上が、「市場ワーキング・グループ」、「市場構造専門グループ」における検討結果の概要となります。今後、東京証券取引所をはじめとする関係者の適切な対応がなされ、ここに提言いたしました各対応策が実現されることで、内外の投資家にとって魅力あふれる市場となり、市場の公正性と活力が確保され、企業と経済が持続的に成長し、もって我が国の国民経済の発展に寄与することを期待しております。
以上が私からの報告でございます。
それでは、続きまして「市場ワーキング・グループ」の審議状況につきまして、事務局からご報告をお願いします。
○太田原市場課長
市場課長の太田原でございます。よろしくお願いいたします。
「市場ワーキング・グループ」につきましては、2016年12月に「顧客本位の業務運営の原則」等に関する報告書を公表し、これを受けて、同原則を2017年3月に策定しました。その後約3年が経過していますが、必ずしも営業現場等への浸透は十分ではなく、同原則の定着は道半ばと認識しているところです。そのため、昨年9月25日の金融審議会総会において説明させて頂きましたとおり、「顧客本位の業務運営」についてこれまでの進捗を検証しつつ、制度対応の適否も含めて新たに検討を行うべく、昨年10月に「市場ワーキング・グループ」の審議を再開し、これまでに再開後3回の審議をしております。
資料の2ページ目です。昨年10月23日の第25回会合では、「顧客本位の業務運営」のこれまでの取組を総括し、取組方針、KPI公表等による見える化の促進、金融機関との対話による取組の促進等を行い、金融庁、金融機関の取組に係る顧客評価の実態把握を行ってきたところ、それぞれの取組において課題が見られ、国民や金融機関への浸透、定着は道半ばとしております。
また、事務局から、3ページにありますとおり、「市場ワーキング・グループ」においてご議論頂きたいポイントについて、議論のたたき台として提示いたしました。
「顧客本位の業務運営」の更なる定着に向けて、行政として今後どのような対応が考えられるか。例えば原則の見直し等があります。金融機関における「顧客本位の業務運営」の浸透、定着状況や顧客の認知度の現状についてどう評価するか。そのほか、「顧客本位の業務運営」を促進する環境を整備するため、行政や金融機関はどのように対応していくべきか。例えば高齢顧客対応等があります。そして全国銀行協会、日本証券業協会、生命保険協会からそれぞれの取組を紹介して頂いた後、国民生活センターから、同センターに寄せられている相談の概要や、消費生活相談から見る課題等について説明して頂きました。
その後、各委員にご議論頂きました。そのご意見の中で幾つか紹介いたします。
個々の商品の販売の在り方に深くとらわれるよりも、販売金融機関全体の在り方として議論を進めていく必要がある。金融商品におけるお客様が、現役世代と現役後の世代が大きく分かれていて、ニーズも対象商品も全く違っていることを理解した上で議論する必要がある。共通KPIの改善も必要であり、また、分かりやすい解説も必要である等のご意見がありました。
次に4ページ目にありますとおり、昨年12月10日の第26回会合では、「顧客本位の業務運営」に関する日本と欧米の対応を紹介しました。まず日本の対応としては、遵守すべき最低基準を定めた法規制に加え、金融事業者のベストプラクティスの実現を目指した原則があり、これはプリンシプルベース・アプローチを採用したものとなっています。そして、関連する法令等としては、金融商品取引法等で誠実・公正義務や適合性原則などの包括的な行為規制のほか、開示義務などの個別具体的な行為規制が存在し、監督指針等において具体化されていることを紹介しました。
一方で、米国では、5ページ目にあるとおり、Regulation Best Interest、最善の利益規則が昨年6月に最終規則として承認され、本年6月までに完全実施するとされています。
その内容としては、6ページにありますとおり、何が最善の利益であるかを定義していないものの、最善の利益を追求する義務は、開示義務、注意義務、利益相反回避義務、法令遵守義務の4つの義務を全て履行した場合に遵守されると規定しています。
誠実公正義務や適合性原則の観点から問題のある事例の要因と考えられる事項について、8ページにありますとおり、日本では法令や監督指針に関連規定があるほか、「顧客本位の業務運営の原則」にも関連する記述がありますが、海外では、法令で詳細かつ具体的な関連規定が設けられている場合があります。
その上で、10ページ目にあるとおり、論点を提示しております。不適切な事例の要因と考えられる各事項に対して、当局としてどのように対応することが適当と考えられるか。例えばミニマム・スタンダードの明確化、もしくは原則の改訂、又はその組合せ等があります。顧客の最大の利益の考慮を、各業法で規律する商品の枠を超えて横断的に考えることも必要ではないか。日本において金融機関のベストプラクティスの実現、それを支えるためのメカニズムの醸成に資する方策としてどのようなものが考えられるか。例えば、米国の顧客に説明する概要書面のようなものが考えられます。
その後、各委員にご議論頂きました。そのご意見の中で幾つか紹介いたします。
金融機関のベストプラクティスの実現は引き続き追求すべきである。一方で、不適切事例に対してはミニマム・スタンダードも明確化する必要がある。証券、預金、保険の販売等、様々なものを横断的に考えていくことは重要である。米国の顧客に説明する概要書面は、顧客と金融機関との間のコミュニケーションツールとして非常に有効である。日本でも強制ではなく、まずは金融業界全体で自主的かつ具体的に取り組んで欲しい等のご意見がありました。
そして、11ページ以降が先週、2月13日の第27回会合の関連です。
高齢者など認知判断能力の低下した顧客への対応を議題として、高齢化の現状や関連する諸制度を紹介した後、13ページにあるとおり、論点を提示いたしました。金融機関の対応として、改善すべき点がないかについての検討、分かりやすい発信、地域連携ネットワークとの質的・量的に十分な連携についてどう考えるか。認知判断能力の低下に備えた事前の検討、金融機関のアフターフォロー相談窓口、職員の理解向上、金融商品等の開発・導入、預貯金の引き出し等に関する代理等の問題についてどう考えるか。業界団体における指針の策定、金融機関の好事例の集約・還元についてどう考えるか等です。また、判断能力の低下した方々への対応に携わっている有識者からもご意見を聴取しました。
その後、各委員にご議論頂きました。そのご意見の中で幾つか紹介いたします。
契約終了時まで適合性を担保することが重要である。財産面の事前の意思表示である金融商品取引版ドナーカードは有用である。顧客本位については、競争と協調の分野がある。高齢顧客対応等は協調を促すべきもので、収益が見込みにくく、金融庁がリーダーシップをとって指針等をつくるべき等のご意見がありました。
このような議論を踏まえつつ、今後、春以降の取りまとめに向けて、引き続き議論を継続していく予定です。
私からは以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、これも昨年12月に公表されていますけれども、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」につきまして、監督局石田参事官と総合政策局石村リスク分析総括課長からご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○石村リスク分析総括課長
リスク分析総括課長の石村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
金融庁の検査・監督の在り方につきましては、近年、検査マニュアルの廃止を含む抜本的な整理・見直しを進めております。私からは、先般の検査マニュアルの廃止に至るまでの全体の経緯をご説明申し上げます。
金融庁は、金融を巡る環境や課題が大きく変化したことを受け、平成28年、2016年でございますけれども、「金融モニタリング有識者会議」を設置し、検査・監督の在り方について見直し・整理を行うべく、外部の有識者にご議論頂きました。
その報告書の中では、金融危機後に一旦確立した検査・監督の在り方を見直し、進化させる過程にあること、これまでにも個々の見直しは金融行政方針等で逐次示されているが、見直しの全体像は十分に整理されていないこと、などが指摘されております。特に検査マニュアルにつきましては、最低基準さえ充足していれば良いといった企業文化を生むなど、自己変革を避ける口実として用いられ、創意工夫の障害になるといった副作用が指摘されました。
金融庁は、こうした指摘を受け、平成30年6月、これまでの一つひとつの取組の全体の基本にある考え方や、今後更に取り組むべき課題に対する方針を、「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」として取りまとめ、公表いたしました。この基本方針の中で、金融行政の目標を明確化するとともに、ルールとチェックリスト中心の検査・監督から、プリンシプルや考え方と進め方中心の検査・監督へと転換することなどを示しました。
その後、こうした新しい検査・監督の分野別の方針について、コンプライアンスや健全性などの考え方と進め方を順次公表いたしました。そして昨年12月、これからご説明申し上げる、融資に関する検査・監督の考え方と進め方を公表したことで、新しい検査・監督の大枠を示すことができましたので、検査マニュアルを廃止することとした次第でございます。
以上が全体の経緯となります。
○石田参事官
監督局の石田でございます。続きまして、検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の方針について、ご説明いたします。
資料の3ページ目、今、石村課長からお話ししたところと若干重複するところがございますが、見直しの背景でございますけれども、ご案内のように金融庁発足当初、我が国におきましては、バブル崩壊後の不良債権問題への対応が最優先課題になってございました。特に不動産融資が非常に大きな問題になっていたわけでございますけれども、その解決のため、金融庁は、金融検査マニュアルに基づきまして、実質債務超過か、あるいは担保・保証による保全の状況がどうかというところに特に重点を置いた検査をかなり徹底して行ってきたことはご案内のとおりでございます。
しかしながら、現在はそれから随分時間も経ってございますけれども、人口減少や高齢化の中で、取引先が特に地方で減少して、地域が疲弊しているというようなことも発生してございますし、さらに低金利環境が継続していることなど、金融機関が対応しなければいけない課題が大きく変化しております。そういった中で、金融機関の中には、既に例えば地域企業の育成に自ら工夫、あるいは注力することで、独自の取組を行おうとしているところも広がってきていると思います。
こういった取組を進める金融機関の中からは、これまでに金融検査マニュアル、あるいはそれに基づく国のこれまでの検査での議論に対しまして、金融機関のビジネスモデルと切り離して、ある種特定の内部管理態勢の在り方を前提にして、金融検査マニュアルというものが設計されているために、金融機関による創意工夫、あるいは特徴ある取組が制約されているというご意見も頂いてきたところでございます。
こうしたご意見を踏まえまして、金融庁では、融資に関する新しい検査・監督の在り方を検討するために、業界団体や有識者等をメンバーとする「融資に関する検査・監督実務についての研究会」を設置し、今後の改善の道筋についてご議論頂きました。この研究会の議論の結果を取りまとめまして、今般、新しい方針として、公表した次第でございます。
資料の4ページ目をご覧頂きたいと思います。この新しい方針では、金融機関の融資業務が、そもそも経営理念、あるいは経営戦略といったものは、それぞれの金融機関によって多様性があるはずのものだと思いますけれども、そういったものと一貫性のある形で融資方針、あるいは内部管理態勢、そもそもその金融機関が一体どういうことを目指していこうとしているのかということとかみ合った形での融資方針、リスク管理、償却・引当までの実務が一貫性を持って進められているのかといったことをよく見ていくことができる検査・監督を再設計することを目指してきております。
融資業務全体に関する新しい検査・監督の在り方として、金融機関の経営理念、あるいは戦略といった多様性、個性・特性を私どもでもよく理解した上で、これに即した実効的な改善の道筋を議論していくという姿を提示してございます。その中で引当についても、今後は金融機関の融資方針等を踏まえた、それぞれの融資ポートフォリオ全体の中での信用リスクはどういうもなのかを理解した上での引当への反映、あるいは自己資本の配賦について議論していくことになると思います。
このような検査・監督を実践することで、早期に顧客の業況の変化を引当に反映させることによって、迅速な支援が可能になる、あるいは将来を見据えた幅広い情報に基づいて、より的確な金融仲介、リスク管理、引当を行うことが可能になるということが期待されてございます。
5ページをご覧頂ければと思います。今後の引当の見積りにつきまして、従来の検査マニュアルの枠組みとの関係を含めて、イメージで記載してございます。まず1点目、大前提といたしまして、検査マニュアルの廃止は、現状の実務を否定するものではございません。むしろ現状の実務を出発点として、より合理的、的確な引当、創意工夫に取り組んでいくことを目指しているものでございます。
そして、次の点でございますけれども、マニュアルに記載がなくても、マニュアルの場合ですとどうしても、特に過去実績というところに一律性というか、恣意性を排するというのが重視されていたものですから、過去実績に重点があったわけですけれども、それに加えて現在、足もと、あるいは将来の個社の情報、あるいは全体の情報を取り入れることによって、より的確な引当の見積りを検討していってもらいたいということになると思います。
なお、5ページの一番下の注に書いてございますけれども、健全性や適切性の観点から問題がある、恣意的な信用状態の仮装など、こういう点で非常に問題があると認められる場合に対する対応は変わらないものでございまして、何か検査・監督を甘くするというような趣旨ではございません。より的確な引当を目指していくという趣旨でございます。
6ページをご覧頂ければと思いますけれども、最後に今後の進め方でございますが、新しい方針では、より的確な引当の見積りの参考になるように既に取組を進めている金融機関の事例も記載してございます。もちろん償却・引当の実務現場では、既存の事例の範囲を超えて、様々な悩み、あるいは課題が生じることが予想されますけれども、こういった場合に相談を受け付けるための窓口を私どもで設置しまして、寄せられた事例について公認会計士協会、あるいは日本銀行様とも議論いたしまして、そういった事例を積み重ねて、関係者間の目線をすり合わせていくことで、良い事例を積み重ねて、広げていくということを進めていきたいと思っております。
私からの説明は以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、討議に入らせて頂きたいと思います。今、4つご説明があったと思います。まず「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告について、それから「市場構造専門グループ」報告書について、そして3つ目が「市場ワーキング・グループ」の審議状況、最後に4つ目として、今、ご説明頂きました「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」ということになります。
これらにつきまして、ご質問、ご意見等をどなたからでも結構ですので、お出し頂ければありがたく存じます。いかがでしょうか。
井村委員、どうぞ。
○井村委員
連合の井村と申します。労働組合の立場から4点意見を述べさせて頂きます。
まず、「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告についてであります。決済法制の整備に当たっては利用者利便の向上、利用者保護、公平な競争条件を前提とした議論が必要であり、マネーロンダリング対策やテロ資金供与防止対策に係る規制や監督について、決済事業者に対してもほかの事業者と同様に求められると考えます。また、ITを悪用した犯罪による被害から利用者を保護するための事業者や関係機関における管理・監督態勢の構築も重要であると考えます。
続きまして、「市場構造専門グループ」報告書についてであります。「流通時価総額」を上場基準として設け、株式市場の流動性を高めることは、それ自体が上場企業のコーポレートガバナンスの向上につながることも期待され、企業価値の向上と株式市場の活性化のために進めるべきだと考えます。
3点目であります。「市場ワーキング・グループ」の審議状況についてであります。「顧客本位の業務運営」を促進し、顧客が金融サービスを適切に選択できる環境の整備に向けては、国民がライフステージに応じた金融経済教育を受けることができるよう、金融機関やNPOなどとも連携し、学校における教育の充実を図ることも必要だと考えます。
4点目、最後であります。「検査マニュアル廃止後の検査・監督の考え方と進め方」についてであります。検査マニュアル廃止によって金融機関の創意工夫を促すことは言うまでもなく重要でありますが、併せて地域の金融機関が地域密着型金融としての役割を発揮し、将来を見据えた事業再生や成長分野の育成、産業集積など、雇用の創出に資する融資行動につながるよう推進していくことを期待いたします。
以上4点、意見とさせて頂きます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、お隣の岩下委員、どうぞ。
○岩下委員
どうもありがとうございます。最初に宮下副大臣からもデジタライゼーション、高齢化という様々な課題に対して、審議会、あるいはその関連する部会で様々な検討を行っていくべきであることについて改めてのご指摘を頂いたわけですが、実はデジタライゼーションあるいはデジタル化の進展という話と、高齢化という話は非常に相性が悪い話のような気がします。
例えば今日頂いた「市場ワーキング・グループ」資料の11ページのグラフ、これは先ほどのご説明の時にはあまり言及がなかったわけですが、金融資産の年齢階級別割合の推移の見込みで、既に2014年時点で金融資産の実に65.7%、2035年の見込みでは70.6%を満60歳以上の高齢者の方々がお持ちであるという実態がございます。こうなると、金融機関といえどもビジネスでございますから、お客様の満足度を上げることが第一なわけで、高齢者の方でもITに精通している方もいらっしゃいますけれども、一般的にはデジタライゼーションに積極的に対応されている方の比率が低い年齢層ですので、そういう方々が扱う金融資産が多い一方でデジタライゼーションを進めるということで、金融機関は色々な意味での矛盾というか、苦労を抱えているのだろうと思います。
そういう意味では、今回はもちろん「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」で審議された新しいデジタル化時代に向けての可能性を追求するための新しい制度が非常に大事である一方で、こういったものをいかに実際に金融資産をお持ちの高齢者の方々にもお使い頂くかということが、実は非常に重要な論点になっていくのではないかと思います。今、井村委員からもお話があったとおり、例えば昨年の9月以降、インターネットバンキングを利用した不正な送金が急増しているという統計も警察庁から出ておりまして、その意味ではセキュリティーが、とりわけ利用者がフィッシング詐欺等にひっかかってしまうということを含めて、完全に守るのは実はなかなか難しいと。そうすると、怖いからデジタライゼーションを使わないということになりがちでございます。
なかなか魔法の杖はないわけでございますけれども、こういった問題をどうやってうまく整合させるのか。しかし一方で、例えば海外の例を見てみますと、高齢者だからといって別にデジタライゼーションを使っていないかというと、中国やヨーロッパはみんな使っていらっしゃいますので、そういう意味では日本の高齢者だけが使えないということはないはずです。ですから、どうやって皆さんにデジタライゼーションのメリットを受けて頂いて、また、金融機関もそれを使って上手にビジネスをしながら、同時に利用者も十分メリットを受けるようになるという世界に上手に移行していくかというプランニングが、これから非常に大事になるのかと思います。その意味では、今回の結論を順次実施していくほか、さらに新たな課題というか、施策を講じていく必要があるのではないかと感じている次第です。
私からは以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。佐々木委員、どうぞ。
○佐々木委員
ありがとうございます。私から何点かあるのですけれども、1つは「プライム市場」に関してですが、経過措置や、既存の一部上場企業に関してはガバナンスについてのコミットメントを求めればそのままで良いなど、色々な説明が書いてあって、入れ替えがどれくらいの時期を目途にされているのかというイメージがいま一つ湧かなかったので、もし何かそういうものがはっきりされているのであれば、教えて頂きたいと思います。
もう1点、TOPIXに関して、流動性を重視するというのはもちろん賛成ですし、重要なことだと思うのですが、日経平均とのすみ分けなどは先々どのように考えておられるのかをお伺いしたいと思いました。例えば日経平均ほどではなく、もうちょっと大きいグループを考えているのかどうかといった点についてお伺いしたいと思いました。
あともう1点、これは感想になるかもしれませんけれども、金融検査マニュアル廃止後のことに関して、今後、例えばより積極的に事業性を評価していくというようなことが金融機関にも求められると思うのですが、一方であまり性急にそういうことを進めると、例えば事業性評価などをしていく人材が育っていないという問題が生じ、信用リスクの上昇にもつながる可能性があるので、そういったことをバランスをとりながら考えていかなければいけないのかと思いました。
以上です。
○神田会長
ありがとうございました。最初の2つについては、もし事務局からご発言があればお願いします。
○太田原市場課長
では、私から市場構造に関連する2点について申し上げさせて頂きます。
まず実施時期については、別紙の冊子で本文の11ページに適用時期が書いており、「2022年上半期を目途として市場区分やTOPIXの変更を開始することが想定される」と整理されております。また、TOPIXについては、その前の10ページ、下から7行目に、「数年程度をかけて慎重に移行を進めていくことが考えられる」とあります。したがって、2022年上半期を起算点として、更にそこから何年かかけてという姿を想定しております。
また、2番目の日経平均とのすみ分けというご質問でしたけれども、基本的に今は日経平均もTOPIXも両方存在していて、報道では日経平均などがよく使われておりますが、機関投資家には、あるいは投資信託の構成銘柄としてはTOPIXの方が使われていると承知しております。したがって、日経平均のことは今回の報告書では特に触れていなくて、TOPIXの機能性の改善について触れております。カバレッジですけれども、そもそもの課題とも関係しますが、現在はTOPIXと市場第一部が完全に一致しているということで、日経平均よりもTOPIXは広い関係になっております。TOPIXの構成銘柄を見直すということで、今後は「流通時価総額」で基準に満たないところを徐々に外していくことになっていきますが、基本的には連続性にも考慮とありますので、ある程度幅広い銘柄で構成されていくものと考えております。
以上です。
○神田会長
ありがとうございました。3点目はご意見ということでよろしゅうございますか。
○佐々木委員
はい。
○神田会長
ありがとうございました。
それでは、河野委員、小林委員の順で、その後原田委員、福田委員、志賀委員の順でお願いしたいと思います。河野委員、どうぞ。
○河野委員
ご報告ありがとうございました。消費者の立場から意見、それからお願いを申し上げたいと思います。
キャッシュレス時代の利用者ニーズに応えて、利便性が高く、安心・安全な決済サービスを実現し、既存の制度を緩和して柔軟なサービス提供を促進するとともに、相応の利用者保護を行ってくださるという、最初の「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告に関して、その方向性には賛同したいと思います。それから、スピーディーな取組も求められておりますので、タイムギャップがなくというのは理解しております。ただ、キャッシュレス決済においては、最近、淘汰が始まったとはいえ、消費者の多くは利便性等に惹かれて、そのリスク等をあまり認知できていません。多様な決済手段を利用することで、消費者側からは、自覚なく多くの個人情報を提供していまして、そうしたビッグデータの効率的な活用という視点から、金融サービス仲介法制の改正というか、緩和にもつながっているのではないかと推察しています。
報告に沿って迅速に法制化が進められることと思いますが、消費者はこうした金融を巡る環境変化に対して行われる施策を簡単には理解できません。今回の報告書においても、耳慣れない金融ワードがたくさん出てきます。消費者保護策を検討してくださっているのは、報告書を熟読するとよく書いてあるのですけれども、例えば無権限取引への対応においても個社の対応に任せるというようなことになっておりまして、不安は依然として残るところでございます。改めて、制度の変更等について、教育というのは時間がかかるものですから、適切な情報提供の徹底をお願いしたいと思います。これが1点目です。
2点目は、「顧客本位の業務運営」の取組に関して、原則公表から2年が経過するも、国民や金融機関への浸透・定着は道半ばと総括されています。昨年末にかんぽ生命の保険商品の不適切な保険募集について行政処分が行われたわけですけれども、この事例においては、郵便局、ゆうちょという特にお年寄りにとって安心できる機関という、その信頼感を逆手にとって消費者被害が引き起こされたことは大きな問題だと思っておりますし、コンプライアンス、顧客保護の意識を変えた組織風土、ガバナンスの機能不全が指摘されています。国民、消費者としては、大きな怒りと失望を感じています。
「市場ワーキング・グループ」の検討項目に、高齢者など認知判断能力が低下した顧客への対応とありますけれども、かんぽ生命の事件はまさにこの点で顧客の信頼を裏切っておりまして、今後に向けて、性善説に基づいて、金融機関の自主的な取組に基づく公正な競争をうたっての「顧客本位の業務運営」の取組が果たして機能していくのか。このままでは国民は安心して資産形成と金融サービスの利用に取り組めなくなるのではないかと思っております。どういう方向かは有識者の皆さんのご検討にお任せするにしても、ガバナンスの強化や、コンプライアンスの徹底など、健全な業務態勢の構築をぜひ本気で進めて頂きたいと強くお願いします。
3点目は、検査マニュアルの廃止に伴って、今後、金融機関の経営理念・戦略に応じて、将来を見据えた引当を行っていくというお話です。今、世の中でSDGsが社会的なコンセンサスというか、ゴールとして提唱されていますし、金融機関におきましては、ESG投資が今後主流になっていくと伺っております。社会の持続可能性に対して、金融機関が果たす役割はものすごく大きいと思います。気候変動に対しても、はっきりとリーダーシップをとれると思っておりますので、ぜひこの点に関しましては、消費者、国民としても、大きな期待を申し上げたいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、お隣の小林委員、どうぞ。
○小林委員
報告ありがとうございました。3点申し上げたいと思います。
1点目は決済法制についてです。利用者の利便性を考えて、コストも安く、そして利便性の高い制度を導入するということですが、当然のことながら、コストを安く、そして利便性を上げるということになりますと、デジタル化の世界においても、リスクは利用者がとらなければいけなくなると思います。利用者保護は当然ですけれど、利用者保護を強調し過ぎることによって、利用者の自己責任が曖昧にならないよう、使うに当たってはしっかり自分の責任は何なのかが分かるような発信をして頂きたいということ。加えて、既にほかの委員の方もおっしゃっていますけれども、こういった制度、サービスを使えるように教育を徹底していくことについて、教育界とも一緒になって教育プログラムをつくって頂きたいという点がまず1点目。
それから2点目、市場区分についてですけれども、「プライム市場」については、当初は希望すれば、今の一部上場の企業は「プライム市場」に残れるということですが、これについてはどの時点で、何をもって退出させるのかという基準をしっかりつくって頂きませんと、何となく今のままが続いてしまうのではないかと思います。また、「グロース市場」に永遠にいるというのは「グロース市場」の目的には適いませんので、「グロース市場」についても退出の基準をしっかりとつくって頂きたいと思います。
3点目は、金融検査マニュアルの廃止ですけれども、これは私は非常に良いことだと思います。金融機関に行きますと、金融庁のマニュアルにこう書いてあるのでということで、自分でしっかりとケース・バイ・ケースにものを考えずに、一方的にサービスを押し付けられるというのが、実際に様々な現場で起こっているわけです。同時に検査マニュアルのない検査において、しっかりと金融機関と検査官が議論して、本質を見て判断できるような質の高い検査官の育成についても、ぜひご尽力頂きたいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、原田委員、どうぞ。
○原田委員
ありがとうございます。「市場構造専門グループ」報告書について3点ほどと、「市場ワーキング・グループ」の審議状況について1点意見を述べさせて頂きます。
まず、「市場構造専門グループ」報告書です。市場の構造を巡る課題を出して頂いて、再編後の市場のコンセプトも明確にして頂いたと思うのですが、報告書の中でも述べられていますように、インデックスについては今後検討するということが書かれておりまして、今後の検討、今後の課題とされている項目も幾つかある状況です。
情報が劣位にある投資家、個人投資家などへの配慮ということを今後考えて頂きたいというのがあります。インデックスと市場区分を切り離すという議論があって、今後この辺は詰められていくところだと思うのですけれども、ベンチマークとしてのインデックスへの影響を小さくするということだけでなく、パッシブ運用の商品を持っている個人投資家も多いので、情報が行き届いていない人へも周知できるようにというのを考えて頂ければというのが、まず1点目になります。
2点目として、関連するのですけれども、今回、インデックスとして挙げられているのはTOPIXで、TOPIXは時価総額加重平均の株価指数ですので、今後これを見直すことになるかと思うのですが、TOPIXはあまり値動きしませんので、研究事例はあまりありません。一方で、日経平均株価に関しましては、銘柄入れ替えが定期的にあったことから、指数の連続性に関する研究など、様々な実証分析などがあります。指数としての性格は時価総額加重平均と平均株価で大きく違うのですけれども、インデックス見直しに関するインパクトを考えて、新しいインデックスを考えるときには、ぜひとも日経平均株価指数の研究事例なども参考にして頂いて、丁寧に議論をして頂きたいというのが2点目になります。
現状、日本のマーケットは海外投資家を遠ざける要因が幾つもあると思っています。株価が下がったときに、中央銀行がETFを通して買い支えるということをしていると、ファンダメンタルズから乖離して買いにくいという意見は内外にあります。この春に施行される外為法の改正で、安全保障などの観点から海外投資家の日本への投資に規制が加わるなど、マイナス要因が幾つかあると思います。
3点目としましては、海外投資家にとって魅力ある市場にして、いかに呼び込むかということを忘れないで頂きたい、ということです。今回、英語の報告書も資料に入れて頂いていますが、英語での情報発信を積極的にすることなどを今後も考えていって頂ければというのが3点目になります。
そして、短い意見です。「市場ワーキング・グループ」の審議状況に対する論点をまとめて頂いているページが、資料3の13ページにあるのですけれども、今後高齢化はさらに進展していくと。個々の金融機関に対応を求めている箇所が論点の中にありますけれども、この論点の中にもほかの機関との連携も期待されると書いて頂いていますので、ほかの公的機関との連携、ほかの公的機関の機能の拡充といったことも今後議論して頂いて、高齢化に対する対応を当局も含めて、民間だけに任せず、公的機関も積極的に支えていって頂きたいというのが意見になります。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、福田先生、どうぞ。
○福田委員
私からは「市場構造専門グループ」報告書、それから検査・監督に関してそれぞれ1点ずつコメントさせて頂きたいと思います。
こちらは原田さんのコメントと似ているのですけれども、本日、英語の資料があるのはこの報告書だけですが、それだけ、国内向けだけではなくて、海外向けにも極めて重要な報告書ということだとは思います。ただ、英文を読ませて頂くと、基本的には日本語の直訳になっているだけです。多分、例えば国内向けには2022年上半期を目途として、さらにゆっくりやりますよというようなメッセージはそれなりに大事かもしれませんけれども、海外向けには、魅力に欠けるメッセージです。それが極めて問題があるとまでは言いませんけれども、スピード感をもってやっているというメッセージを出すことは極めて大事だろうとは思います。
これは「市場ワーキング・グループ」でも申し上げたことですけれども、特にアジアの金融市場はおそらくここ数年が勝負のところがあります。香港市場の地位が低下することが予想されている中で、いかに世界の人たちを東京市場に呼び込むかということで非常に重要な時期にあります。このため、単純に国内向けのメッセージを翻訳するというのではなくて、対外向けには、日本がかなり積極的にやっていくという姿勢を示すことに取り組んで頂きたいというのが1点目のコメントです。
それから、2点目は検査・監督の考え方と進め方で、それを大幅に見直したい、見直すという姿勢は私も非常に評価したいと思います。時代は大きく変わってきていますので、そういう意味で、従来のやり方に固執しない点は非常に評価したいと思います。また、かつては日本の検査・監督はどちらかといえば、オンサイト・モニタリングにウェイトがあったと思いますけれども、グローバルな大きな流れとしてはオフサイト・モニタリングの重要性というのが、かなり進んできていると思います。このディスカッション・ペーパーの中にもそれは議論されていますけれども、金融庁が使えるリソースが限られている中でいかに効率的な検査・監督をするかという点を考えた場合、非常に労力のかかるオンサイトよりは、客観的なオフサイト・モニタリングを重視した検査・監督を進めていくスタイルというのは、1つのありうる姿だろうとは思います。
ただ、現場の勘というのもそれなりに大事だと私は思っています。日本は金融危機からもう20年経ってしまって、その当時のことを知っている人が少しずつ減ってきているということはあると思うのです。当時のことを知っている人の経験を内部でもぜひうまく引き継いでいって、今後の検査・監督に生かせるような遺産を残していくということも同時にやって頂くよう要望させて頂きたいと思います。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、志賀委員、どうぞ。
○志賀委員
どうもありがとうございます。最近、アジャイル・ガバナンスとよく言われて、デジタル化等のイノベーションの進展に応じて規制を柔軟に考えるという、日本の官公庁の中で金融庁が一番進んでいるということをどなたかがおっしゃっていて、よいしょするわけではないですけれども、そうかなというので、今後ともぜひ積極的にアジャイル・ガバナンスに取り組んで頂きたいというのが、応援演説の1番目です。
2つ目は「グロース市場」のところですけれども、詳細な文書の中で、グロース投資については、引き続き世界一アクセスしやすい、最も投資家がアクセスしやすい市場であるために、現状を維持するという表現が出ているのですが、現状のマザーズ等のマーケットの在り方が理想的かどうかということを再度考える必要があるかと思って、上場ゴールとしてIPОをされる方も多いですが、残念ながらIPОをした後での資金調達が苦しくて、小粒のままで終わるという、中小企業というか、市場価値10億円ぐらいの零細企業を1個つくって終わりみたいな。日本全体を考えたときに、上場しやすいマーケットは当然必要だろうと思うのですが、一方で、もうちょっとマクロで考えると、グロース投資のところでもう1回ベンチャーキャピタルを中心にエクイティの投資があって、そこでもう一度我慢をして、そこで成長に入ってIPOみたいな。ところが、グロース投資のベンチャーキャピタルはなかなか出し手がいないものだから、その手前でやむを得ずIPOと。IPOをしてしまうと、どうしても足もとの決算に追われて、大胆な投資ができずに小さいままという。
ですから、今回のグロース投資を従来の延長線でやりますということは、現状やむを得ないと思うのですけれども、金融庁の立場としてそれをリスクマネーのエクイティと、上場機会のバランスの中で、日本が一番ベストなフォーメーションになっているのか。あるいは政府が目指しているユニコーンを創出していくという中で、今のマーケットの状態が本当にユニコーンを創出するマーケットの状況になっているのかみたいなところもご検討頂ければ良いかと。INCJという投資ファンドにいて、日常的にそれを感じていますので一言申し上げました。
○神田会長 どうもありがとうございました。
それでは、秋池委員、家森委員、川口委員、翁委員、山本委員の順でお願いできればと思います。秋池委員、どうぞ。
○秋池委員
2点ございます。新たな市場につきまして既にほかの委員もおっしゃっているところではあるのですけれども、報告書を拝読しますと、22年の上半期を目途に開始するということですが、この後の移行期につきまして、これから詳細な設計をやっていかれるところだと思いますけれども、工夫のしようによっては市場の見方が曖昧になってしまうなど、事業者の資金調達に影響が出ることも当然起こりえますが、そこを上手に切り抜けるようなやり方をご検討頂ければと思います。
それから、もう1つは「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」ですが、資料を拝読しますと、独自の取組についてもう少し見方を広くして、それぞれの金融機関が成長なり、事業の維持なりをやっていけるようにということだと思うのですけれども、融資だけに拘らず、独自の取組の中には、融資に加えてその他の業務が関わってくる部分もあろうかと思います。監督をする側、検査をする側はより難しくなっていくことが予想されますが、そこにまた画一性が生まれないような工夫をして頂ければと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、家森委員、どうぞ。
○家森委員
ありがとうございます。2点だけにさせて頂きます。
1つは、新しい金融仲介業が今後つくられて色々なことができるようになるということですが、私が最近調査したものでも、例えば銀行での保険窓販について、今でもまだお客様方が混乱されることがあるという結果が出てきますので、今後色々な業ができて、銀行的なサービスを提供してもらおうと思っていたのに、いつの間にか保険的なサービスの提供を受けたという混乱が出ないようにして頂きたい。また、「高度な説明を要しない」というのも、どこのレベルが高度かというのは人によってかなり違ってくるという現実があります。そういうところも含めて、色々な委員からご意見が出ていましたように、金融経済教育の充実などのことも、業者の行為規制も含めて今後慎重に対応して頂けると混乱が少なくて良いかと思います。
それから、第2点は「顧客本位の業務運営」のところでありまして、原則私も賛成しているところです。ただ、先ほど委員からかんぽの問題が出たように、ああいう問題が出ると、一般の国民の方々が、そこが悪いと思って良いところに移るというのは我々が期待していることですが、そうではなく、金融界全体が悪いとなってしまって、怖いから金融には立ち入らないでおきましょうということがしばしば起こります。悪い人は悪い、でも、ほかの金融機関はきちんとしているということがしっかり伝わるようなメッセージの出し方を当局としてもして頂ければと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
では、川口委員、どうぞ。
○川口委員
新しい金融仲介業についてのビジネスモデルとして、インターネットやアプリを利用したサービスが想定されているようです。このようなインフラを利用してより良いサービスを提供するというのは、当然のことながら利用者にとっても好ましいと言えるかと思います。他方で利便性の向上は、利用者の保護という側面を無視して議論できないわけです。冒頭に副大臣がおっしゃいましたように、バランスが重要かと思います。
今回の報告書はこの点に十分配慮して、その方向性は妥当だと思います。特に手数料、報酬の開示については、利用者が適切な金融商品を提供されているのかを判断するために、役立つものだと思います。もっとも、同じ種類の金融商品を勧めている場合、手数料の決め方はそれほど変わらないでしょうけれども、多種の金融商品を勧めるような場合、手数料の決め方なども異なるように思います。今回の改正は、ある意味で、銀行と証券と保険の垣根を引き下げるという側面もあると思います。同じ経済的な効果のある商品でも、これまで業界によっては手数料の決め方が異なるものもあるでしょう。この点、新しい仲介業者が比較可能な形で、すなわち結局どのようなコスト負担になるのか、メリット、デメリットを含めて利用者に分かりやすく提示できる仕組みが構築されることを強く期待します。法令なのか自主規制なのか、ルール上どうやっていくのかということは今後の課題かもしれませんけれども、このようなことは「顧客本位の業務運営」の1つだと言えるかと思います。
また、今回も説明義務は外さないということのようですが、インターネットを通じた説明義務というのは、現行の制度でもそうですけれども、本当に十分に機能しているのかという疑問もあります。画面上でクリックをしていくだけなのです。利用者の自己責任ですと言ってしまえばそれまでですけれども、今回はネットを使うということで、顧客層がどんどん増えていく、今まで投資をしたことがないような人たちにも広がっていくということを考えると、問題は少なくないように思います。
この点、今回のご提案では取引の額を限定し、仕組みが複雑なものは認めないという措置が考えられているようです。金融機関の監督責任が外れるという点から必要な措置とも言えるわけですけれども、説明義務の徹底が難しいという観点からもその弊害を和らげることに有益な方策ではないかと考えます。他方で、あまり商品のラインナップが少なくなってしまうと、これは利用者のニーズに合わないという可能性もあるわけですが、この辺は痛し痒しですけれども、仕組みが複雑な商品を希望するのであれば、既存の仲介業者を利用すれば良いので、これはこれで良いのではないかと考えます。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
では、翁委員、どうぞ。
○翁委員
3点申し上げたいと思います。1つ目は決済及び金融仲介のところで新しい法律の準備が進んでいるわけでございますが、最初に副大臣からもございましたように、まさにこのデータ利活用ということが、特に今回の新しい法制整備のバックグラウンドにあると思います。新規事業者については、様々な決済サービスの情報などを利活用していますし、それから既存の銀行などはオープンAPIなどを使って、高付加価値のサービスを提供しようとしているということだと思います。
そういう意味で、今後ますますこのデータを利活用して、個人に合ったどういった高付加価値のサービスを提供していくかというのが、この分野の非常に大きな課題になってくると思っております。各国ではオープンAPIなどのオープンなデータの公開について色々ルール整備をしながら、データを利活用できるような環境の整備などが行われているところでございますが、日本においても、個人データなどの利活用のルールの議論を更に進化させていくというようなことに加えて、既存の金融機関についても、こういったデータ利活用という環境変化の中で、どうやったら社会的課題に応えるためのビジネスモデルを構築できるかという観点から、その業務範囲の在り方もきちんと議論していくことが必要なのではないかと思っております。
それから、2点目は13ページの「顧客本位の業務運営」のところで出てきております認知症のことですけれども、団塊の世代の皆さんが後期高齢者になるのが2025年でございますので、こういった環境整備は非常に急がれていると思っております。(1)の2つ目の丸のところに書いてある課題はいずれも非常に重要な課題でありますし、事前の検討を促すという意味でも、非常にスピーディーに検討して頂くことが大事ではないかと思っております。それが2点目でございます。
3点目は検査マニュアルですけれども、私も、今回検査マニュアルを廃止して、画一的な考え方から脱却し、また、過去のデータで判断するということから、各銀行等のビジネスモデルに応じて、自主的に色々な考え方でフォワード・ルッキングに取引先をサポートしたり、また、引当などのリスク管理をしていくという方向には大いに賛成しております。その意味では、金融監督の方もそれをサポートする方向でお願いしたいと思っております。
少し懸念しておりますのは、今後、厳しくなってくる金融機関もあるということかと思っております。そういった経営が悪化したところに関しては、しっかりとバランスシートの状況が把握できるというようなことも両立していって頂くことが大事かと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、山本眞弓委員、お願いします。どうぞ。
○山本(眞)委員
超高齢社会への対応について、先ほどから皆さん13ページを引用して頂いていますけれども、認知判断能力が低下した顧客への対応は、かなり検討もして頂いて、対策も進んでいる感じがあるのですけれども、1行目の「認知判断能力や」の後ろに「身体機能の低下の問題に直面」という点があります。これについての検討はあまりされていないと思っているので、そこをお願いしたいと思って発言する次第です。
認知判断能力が低下していないけれども身体機能が低下しているという方は、つまり窓口に行けない方々なのです。窓口に行けないか、もしくは行くとなったらすごく労力や費用がかかる。だけど頭はしっかりしているので、成年後見制度の対象にはならないということで、私、現実に仕事をしている中でもそれで非常に困っていることが色々あります。何しろ原則窓口に来てくれと言われるわけです。無理だと言って、色々交渉すると、例えば銀行だとすると、「銀行に届け出ている番号にお電話して本人確認させてください」とおっしゃるのですが、「すみません、本人は施設に入っていてそこにおりません」となると、もうにっちもさっちもいかないのです。
そういうことだと、本当に困る。私は弁護士の立場で、「頭はしっかりしているのだから委任状をもらってくるから」と言うと、「委任状では対応できません」と言われる。もう本当にどうしようもないことが結構あります。もっと言わせて頂ければ、体も動かず財産管理ができないのでということで、わざわざ公正証書をつくって私と財産管理契約を結ぶ。財産管理契約を結んだので、私が代理で手続をしたいと言っても、それを受け付けてくれない。極端な話、本当にクレジットカードの解約1つできないというのが現状です。
だから、そういうこともありますので、「顧客本位の業務運営」という一場面として、皆さん、施設まで来てくだされば良いですが、とてもそんなことはやっていられないでしょうから、そういう行けない人についての何か方策を、ぜひ併せて検討して頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
○神田会長
どうもありがとうございました。色々貴重なご意見を多数頂きましてありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。大体よろしゅうございますか。
どうもありがとうございました。
それでは、先ほど説明させて頂きました2つの報告書、「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告と「市場構造専門グループ」報告書につきましては、これを金融審議会としてご了承頂けると大変ありがたいと思うのですけれども、ご了承頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございます。
以上で本日予定の議事は全て終了いたしました。
本日の金融審議会総会・金融分科会合同会合を以上をもちまして終了とさせて頂きます。なお、本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行わせて頂きます。また、今後の日程などにつきしましては、事務局から後日ご連絡をさせて頂きますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
それでは、皆様、本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。散会いたします。
以上
お問い合わせ先
金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課
(内線3645、3520)