第47回金融審議会総会・第35回金融分科会合同会合議事録

  • 1.日時:

    令和3年9月13日(月)13時02分~14時33分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室(オンライン会議) 
     
     ○神田会長  
     それでは、皆様方おそろいでございますので、始めさせて頂きます。ただ今から第47回目の金融審議会総会、そして第35回目の金融分科会との合同会合を開催させて頂きます。
     
     本日の総会におきましては、前回もそうでしたけれども、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議を併用した開催とさせて頂きます。一般傍聴はなしとさせて頂いております。メディア関係の皆様方には、金融庁内の別室にて傍聴して頂いております。議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて、後日、公開させて頂く予定です。以上のやり方ですので、よろしくお願いいたします。
     
     それで、オンラインですので、皆様方におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てにお名前を御入力ください。それを確認した上で、私から指名させて頂きますので、御自身のお名前を名乗った上で、御発言頂ければと思います。前回と同じやり方ですので、皆様方、どうかよろしくお願いいたします。
     
     さて、本日は、赤澤内閣府副大臣に御参加して頂いております。開会に当たりまして、赤澤副大臣から御挨拶を頂き、それに引き続いて、本審議会に対する新たな諮問を頂きたいと思います。副大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

    ○赤澤内閣府副大臣  
     ありがとうございます。金融担当の内閣府副大臣の赤澤亮正です。本日はリモートを活用してということですが、神田会長には現地に足を運んで頂いておりますし、委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、金融審議会総会に御参加頂きまして、誠にありがとうございます。
     
     新型コロナウイルス感染症の影響が長期化しておりますが、そうした中、深刻な影響を受けている企業や社会を金融機関が力強く支え抜くことが重要だと考えております。先月の8月31日に公表した金融行政方針でも示したとおり、金融庁では、引き続き、金融機関の取組状況を確認し、金融機関による事業者の資金繰り支援に万全を期すとともに、ポストコロナにおける力強い経済回復を後押しするため、金融機関による経済再生のための取組を促す施策を講じてまいります。
     
     特に、緊急事態宣言の再延長が決定される中、先週9月10日にも、事業者の実情に応じた資金繰り支援などの徹底について、関係省庁とともに金融機関などに要請いたしました。具体的には、事業者の業況を積極的に把握し、ニーズに応じたきめ細かな支援を徹底することや、追加融資について、決算状況、借入状況や条件変更の有無などのみで機械的、硬直的に判断せず、丁寧かつ親身に対応することなどについて、改めて、営業担当者をはじめ、職員などに徹底して頂くようお願いしております。
     
     具体的に、私が地元の事業者さんから聞いた例で言うと、例えばリスケを行った後に、追加融資、攻めの投資をしたいということをお願いしたら、リスケしている人は、債務を返すまでは追加融資はなしですよみたいな、かなり機械的にそういうことを言われて、それはおかしいのではないかというような声も私の元に届いたりもしています。当然、融資についてはいろいろな御判断があると思いますが、繰り返しになりますけど、決算状況や借入状況あるいはリスケも含む条件変更の有無など、それがあったら、機械的に、硬直的に、こうだといったような判断は決して好ましいものではない。やはり、事業性をしっかり判断して、ポストコロナに攻めようということで、攻めの投資をするための追加融資のお願いということについては、金融機関も真剣に、本業支援の一環としてしっかり見てあげるということで、親身な対応をお願いしておきたいと思います。なお、今申し上げた要請の内容については、先週9月9日に開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策本部において、私から説明し、政府全体においても共有したところです。引き続き、関係省庁と連携して、万全の対応を図ってまいります。
     
     こうした取組に加え、金融分野における環境変化を踏まえた取組も進めていかなければなりません。先月8月30日、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策のための多国間枠組み、いわゆるFATFでありますけど、第4次対日審査報告書が公表されました。報告書では、日本の対策について、成果が上がっていると評価されたということでありますが、同時に、金融機関などに対する監督、マネロン・テロ資金供与に係る捜査、訴追などに優先的に取り組むべきとされたところであります。これらの対策を不断に見直していくことは、世界に開かれた国際金融センターを実現していく上でも不可欠であると考えております。また、デジタル化の進展による決済手段の多様化や取引のグローバル化などが進行し、金融取引がより複雑化しています。金融機関などにおいては、このようなリスクの変化に応じた継続的な顧客管理体制の高度化が求められており、マネロン・テロ資金供与対策の経営課題としての重要性が一層増しております。
     
     こうした国際的な要請や環境変化を踏まえ、金融審議会において、安定的かつ効率的な資金決済に関する制度のあり方について検討を進めて頂き、私どもは、それを受けて、必要な見直しにつなげていきたいと考えてございます。金融審議会の委員の皆様には、ぜひ活発な御議論をお願い申し上げます。
     
     それでは、今から麻生太郎金融担当大臣の諮問を読み上げさせて頂きます。
     

    2021年9月13日 

    金融審議会
    会長 神田秀樹 殿

    金融担当大臣 麻生太郎

     
     金融庁設置法第7条第1項第1号により下記のとおり諮問する。
     

     
    ○ 資金決済制度のあり方に関する検討
     
     マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する国際的な要請やデジタル化の進展等を踏まえ、安定的かつ効率的な資金決済に関する制度のあり方について検討を行うこと。

     
     以上でございます。よろしくお願いいたします。

    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。赤澤副大臣におかれましては、他の公務のため、ここで退席されます。

    ○赤澤内閣府副大臣
     ありがとうございました。

    ○神田会長  
     ありがとうございます。失礼いたします。

    (赤澤内閣府副大臣退室)


    ○神田会長
     それでは、議事に移りたいと思います。

     今般、事務局に異動がございましたので、若原総務課長から御紹介をお願いいたします。

    ○若原総務課長  
     承知いたしました。

     まず、金融庁長官でございますけれども、このたび、中島が就任しております。リモートでの参加でございますので、画面を御覧頂ければと存じます。

    ○中島長官  
     この7月に金融庁長官を拝命しました中島です。

     神田会長をはじめ、委員の皆様には大変お世話になっております。引き続き、大所高所あるいは専門的な立場から、自由闊達な御議論を期待しております。何とぞよろしくお願いいたします。

    ○若原総務課長
     事務局メンバーにつきましては、その他、異動もございますけれども、お時間の都合もございますので、誠に恐縮ではございますけれども、配付させて頂きました配席図の記載をもって御紹介に代えさせて頂きたいと存じます。

     私からは以上でございます。

    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。

     それでは、本日の議事の流れについて、簡単に御案内させて頂きます。

     まず、先ほど大臣から頂きました諮問事項についての補足説明をして頂きます。それに続きまして、デジタル・分散型金融を巡る動向と今後の課題、会計監査を巡る動向、8月末に公表されました金融行政方針、これらについての説明をして頂きます。これらの説明が全部終わったところで、全体について、委員の皆様方に討議をお願いしたいと思います。

     それでは、まず、諮問事項の補足説明からお願いしたいと思います。事務局から端本信用制度参事官にお願いいたします。

    ○端本信用制度参事官
     資料1に沿って御説明いたします。
     
     まず、1ページ目でございますが、FATF対日相互審査についての財務大臣談話の3つ目の丸でございます。先ほど副大臣からも御説明がございました8月30日、FATFより、第4次対日審査報告書が公表されております。この中では、赤線が引いてあるところでございますが、マネロン・テロ資金供与対策の成果が上がっているという評価がなされております。同時に、日本の対策を一層向上させるため、金融機関等に対する監督等につきまして、優先的に取り組むべきとされています。
     
     次の丸でございます。この報告書の公表を契機といたしまして、今後3年間の行動計画を策定いたしました。
     
     2ページ目、この行動計画の関連部分を赤線で囲っております。まず、(3)金融機関等による継続的顧客管理の完全実施、取引モニタリングの強化を図るとともに、期限を設定して、継続的顧客管理などリスクベースでの取組強化を図るとなっております。
     
     それから、(4)取引モニタリングの共同システムの実用化ということで、取引スクリーニング、取引モニタリングの共同システムの実用化を図るとともに、政府広報も活用して国民の理解を促進するということで、期限は令和6年春ということになっております。
     
     続きまして、3ページ目でございます。この共同システムの実用化の検討実施につきましては、本年6月の経済財政運営と改革の基本方針におきましても、その強化に取り組むこととされております。この共同システムの実用化の検討は、現在、全銀協におきまして、実務的な観点からの検討が始まっております。このワーキング・グループにおきましては、それらの検討の中から出てまいります制度的な課題への対応のあり方について御議論頂くことが考えられます。また、先ほど申し上げましたとおり、この課題は2024年春に実用化することになっており、速やかな対応が求められておりますので、このワーキング・グループにおきましては、年内を目途といたしまして考え方を取りまとめて頂くことを想定しております。
     
     以上でございます。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、デジタル・分散型金融を巡る動向と今後の課題について、これも端本さんから、御説明をよろしくお願いいたします。

    ○端本信用制度参事官
     資料2に沿って御説明させて頂きます。

     まず、1ページ目でございます。デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の設置の趣旨でございます。

     まず、1つ目の丸といたしまして、社会経済全体のデジタル化が進む中で、金融のデジタル化も加速している。

     2つ目の丸でございますが、こうした中、民間のイノベーションを促進しつつ、利用者保護などを適切に確保する観点から、デジタル化への対応のあり方等を検討するということでございます。

     第1回目は7月26日に開催させて頂いております。
     
     デジタル・分散型金融の分野におきまして、これまでの事象を下に簡単にまとめさせて頂いております。
     
     まず真ん中の暗号資産のところでございますが、2008年、ブロックチェーン技術とビットコインが登場いたしました。

     その下でございますが、2016年の制度整備ということで、暗号資産交換業者に登録制が導入されております。

     その後、2018年、仮想通貨の流出事案が出たり、その右側でございますが、仮想通貨を利用した資金調達、問題のあるものも多く指摘されました。

     そうしたものを踏まえまして、2019年、2つ目のポツですが、暗号資産交換業者の利用者資産の管理の方法を厳格化するとともに、資金調達を行うような場合には、証券規制、金融商品取引法が適用されるということを明確にされました。

     その左側を見て頂きますと、いわゆる送金(デジタルマネー)の分野でございますが、2009年、それまで銀行が行っていた為替取引につきまして、資金移動業が創設されております。

     その下でございますが、2019年、いわゆるグローバル・ステーブル・コイン構想というのが出てまいりまして、その後、CBDC、中銀デジタル通貨の議論が活発になってまいりました。

     そうした状況を踏まえまして、それぞれ送金(デジタルマネー)、暗号資産、証券、3つの分野につきまして、関係者の狙いと指摘されている課題を整理させて頂いているのが下の箱でございます。

     まず、送金(デジタルマネー)の分野でございますけれども、低コスト・迅速な送金、あるいは途上国におきましては金融包摂、フィナンシャル・インクルージョンの観点から検討が行われてございます。

     これに対しまして、マネロン・テロ資金供与対策の観点からの課題、あるいは送金の安定・確実な履行が図られているのかどうかというような指摘があるところでございます。

     暗号資産につきましては、株式など伝統的な資産に代わる投資対象になり得るのではないかという意見がある一方で、引き続き高いボラティリティーを見せていまして、投資対象となり得るのかという意見もございますし、マネロン・テロ資金供与対策の観点から、引き続き問題があるというような御意見もございます。

     証券の分野につきましては、有価証券をトークン化するということで、低コスト・活発な取引を狙っていきたいという実証的な取組が関係者の間で進められております。

     これに対しましては、デジタル化に対応した取引インフラが十分あるのか、あるいは私法上の権利義務関係をより明確化すべきではないのか、このような課題が指摘されているということでございます。

     続きまして、2ページでございます。これは今申し上げた最近の取組をイメージとしてまとめさせて頂いたものでございます。まず、左側でございますが、デジタルマネーの世界ですと、一番左側でございますが、銀行など預金取扱機関が発行するものもございますし、資金移動業者、いわゆるペイ業者が発行する電子マネーがございます。それから真ん中でございますが、CBDCに関する検討も進められておりますし、いわゆるステーブル・コインと申しまして、暗号資産の取引プラットフォームで価値を安定させたもので取引するようなものも出てきているということでございます。

     トークンの世界ですと、先ほど申し上げたとおり、証券をトークン化しよう、あるいは従来からありますが、ビットコインなど裏付資産のない暗号資産取引が行われておりますし、コンテンツ・著作物等をトークン化しようというような動きもあるということでございます。

     それから、その下でございますが、デジタル・アセットの取引等のプラットフォームということで、特定の管理者がいない、あるいはいないと称する、いわゆる分散型金融(DeFi)というような形態でのサービスも海外では提供されているような状況にございます。

     続きまして、3ページでございます。関連する声明や議決定をまとめさせて頂いております。まず、G7、財務大臣・中央銀行総裁声明ですと、一番上のところでございます。デジタル・マネー及びデジタル・ペイメントのイノベーションは、大きな利益をもたらし得る一方で、様々な課題を引き起こす可能性があるということで、これらの課題について、しっかりと探求していく必要があるということが書かれております。

     それから次のところですけれども、いわゆるグローバル・ステーブルコインのプロジェクトにつきましては、関連する法律上、規制上及び監視上の要件が十分に対処されるまではサービスを開始するべきではないということが確認されております。

     その下は、国内、経済財政運営と改革の基本方針で盛り込まれている事項について整理しております。まず、CBDCの時間軸でございますが、政府・日銀は、2022年度中までに行う概念実証の結果を踏まえ、制度設計の大枠を整理するということになっております。

     それから、これは金融の規制監督だけの話ではございませんが、非代替性トークンやセキュリティトークンに関する事業環境の整備を行うということが盛り込まれているところでございます。

     こうしたことを背景といたしまして、研究会で幅広く、先ほど申し上げた論点について整理して頂くことを想定しております。

     以上でございます。

    ○神田会長 
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、会計監査を巡る動向について、御説明をお願いします。これは廣川企業開示課長、お願いいたします。

    ○廣川企業開示課長
     企業開示課長の廣川でございます。

     資料に入ります前に、会計監査を巡る動向に関しまして、先ほど赤澤副大臣から、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、資金繰り支援の対応について御説明がございましたけれども、企業の決算、監査への対応につきましても、引き続きコロナの影響を注視しまして、関係者間で適切な連携を図ってまいりたいと考えてございます。
     
     それでは、資料3の1ページ目を御覧ください。こちらは8月31日に公表されました2021事務年度の金融行政方針抜粋をお示ししております。
     
     日本経済の持続的な成長を実現するためには、中長期的な企業活動の向上を目指す企業自身の取組とともに、企業への最適な資本配分の前提となる財務情報の適正な開示を確保することが必要でございます。監査法人につきましては、こうした資本市場のゲートキーパーとして、外部監査の質の向上を一層進めていくことが求められております。企業に関しましては、本年6月にコーポレートガバナンス・コードの改訂が行われておりまして、こうした企業のガバナンス改革と歩調を合わせる形で、会計監査についても、信頼性の確保に向けた方策を検討する必要があると考えられます。
     
     このため、下線部にございますけれども、今秋以降、「会計監査の在り方に関する懇談会」を開催することとし、会計監査を巡る諸問題について総合的に検討することといたしました。

     2ページを御覧ください。懇談会で想定される議論につきまして、少し具体化したものでございます。近年の会計監査を取り巻く環境を見ますと、国内外における近年の監査基準の改訂等に見られますように、監査事務所の監査品質の向上が期待されている状況にあります。また、監査法人等ではなくて、企業に勤める公認会計士、いわゆる組織内会計士の増加に見られますように、公認会計士の活躍の場の多様化あるいは女性公認会計士の増加といったダイバーシティの進展が生じております。こうした環境変化を意識しながら、会計監査を巡る諸課題を総合的に検討してまいりたいと考えてございます。

     現時点では検討範囲を限定せず、幅広い観点から御議論頂きたいと考えてございますが、想定される議論のテーマといたしましては、例えば、多数のステークホルダーを有する上場会社の監査について、その担い手にどのような在り方が求められるか。

     また、上場会社の監査、これまでは4つの大手監査法人が比較的高いシェアを占めてまいりました。最近では、中小監査法人のシェアが少しずつ上がってきている、このような状況がございます。こうした中小監査事務所など、監査の担い手の裾野の拡大に向けて、どのような支援が求められるか。

     あるいは、監査法人のガバナンスの在り方につきまして検討を深める点はないか。

     こういった点や、先ほど申し上げましたような公認会計士の活躍の場の多様化、女性公認会計士の増加といった環境変化の中で、公認会計士の力量発揮や能力向上の観点でどのような環境整備が考えられるかといった点が考えられるかと存じます。

     また、高品質な会計検査を実施するために、監査法人だけではなく、企業の取組も重要と考えておりますところ、企業の内部統制の在り方に関する議論も想定されるところでございます。

     続きまして、3ページでございますけれども、こちらは参考でございます。「会計監査の在り方に関する懇談会」は、2015年10月から2016年3月にかけて4回ほど開催されておりまして、会計監査の信頼性確保に向けて講ずるべき取組として、5つの柱から成る御提言をまとめて頂きました。

     資料の4ページでございますけれども、その後、監査法人のガバナンス・コードの策定や監査報告書の透明化、いわゆるKAMの導入など、御提言を踏まえた諸施策につながってきております。

     先ほど申し上げましたように、今回の「会計監査の在り方に関する懇談会」では、幅広く会計監査の課題を御議論頂くこととしております。今後、仮に制度的な対応を要する事項が出てまいりました場合には、改めて、その取扱いを検討したいと考えております。

     私の説明は以上でございます。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは、続きまして、金融行政方針について、太田原総合政策課長から御説明をお願いします。

    ○太田原総合政策課長
     総合政策課長の太田原です。よろしくお願いします。

     私からは、8月31日に公表されました本事務年度の金融行政方針の概要について、資料4に沿って説明いたします。

     ローマ数字Ⅰ~Ⅲにありますように、3本柱で構成しております。

     まず、「Ⅰ.コロナを乗り越え、力強い経済回復を後押しする」についてです。

     金融庁では、引き続き、金融機関の取組状況を確認し、金融機関による事業者の資金繰り支援に万全を期すこととしております。

     また、豪雨等の自然災害の発生時には、金融機関に対して、きめ細かな被災者支援を行うよう促すこととしております。

     資金繰り支援にとどまらない経営課題に直面する事業者に対しては、経営改善・事業再生・事業転換支援等の取組を進めていくことが必要であり、金融機関、信用保証協会、商工団体、地方公共団体等の地域の関係者と連携・協働し、財務局において、都道府県ごとに「事業者支援態勢構築プロジェクト」を推進することとしております。

     このほか、地域経済全体の活性化に向け、地域企業のための経営人材マッチング等を促進していくこととしております。

     さらに、モニタリング方針としては、例えば地域金融機関については、地域の実情を踏まえ、持続可能なビジネスモデルを構築するよう、対話を通じて、経営改革に向けた取組を支援することとしております。

     次に、「Ⅱ.活力ある経済社会を実現する金融システムを構築する」についてです。

     デジタル化の進展や地球環境等のグローバルな課題への関心の高まり等の国内外の経済社会・産業をめぐる変化を成長の好機と捉え、国内外の資金の好循環を実現するとともに、金融サービスの活発な創出を可能とする金融システムを構築することにより、活力ある経済・社会構造への転換を促していく必要があると考えています。

     このような認識の下、金融分野におけるデジタル・イノベーションを推進するため、先ほど端本信用制度参事官から説明がありました、デジタル化に対応した金融制度の検討等をすることとしております。

     また、国際金融センターとしての地位確立を目指し、「拠点開設サポートオフィス」を設置し、事前相談・登録審査・監督等の英語対応の強化を一層進めるほか、サステナブルファイナンスの推進として、企業開示の充実、グリーンボンド等の認証枠組みや情報プラットフォームの構築・整備を行うこととしております。

     さらに、資本市場の活性化と成長資金の円滑な供給の観点から、投資家保護にも留意しつつ、インベストメント・チェーン全体の機能向上に向けた取組を進めることとしております。

     この中で会計監査に関する部分につきましては、先ほど廣川企業開示課長からも紹介があったとおりでございます。

     このほか、利用者目線に立った金融サービスの普及のため、顧客本位の業務運営のための諸施策を講じることとしております。

     他方で、デジタル化やグローバル化が急速に進展する中で、強靱な金融システムを構築していくため、先ほどの諮問に関連するマネロン等の対策の強化やサイバーセキュリティの確保のほか、システムリスク管理態勢の強化等を促すこととしております。

     最後に、「Ⅲ.金融行政をさらに進化させる」についてです。

     「金融育成庁」として国内外の経済社会に貢献していくため、データ分析の高度化等を通じたモニタリング能力の向上、金融行政各分野の専門人材の育成、財務局とのさらなる連携・協働の推進等の取組を行うこととしております。

     金融庁としては、こうした重点課題に取り組み、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指していきたいと考えております。

     私からは以上です。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは、以上で御説明を伺ったということで、討議に入らせて頂きます。

     先ほど頂きました諮問事項についての補足説明、デジタル・分散型金融を巡る動向と今後の課題、会計監査を巡る動向、金融行政方針、これらにつきまして今御説明を頂きましたので、委員の皆様方から御質問や御意見等ございましたら、どなたからでもお出し頂ければありがたく存じます。チャット欄に、発言希望と書いて、全員宛てに送って頂ければありがたく思いますが、いかがでしょうか。

     岩下委員、どうぞお願いいたします。

    ○岩下委員
     ありがとうございます。私からは、本日、諮問を受けましたマネーロンダリング対応に関する件、それから、デジタル・分散型金融を巡る研究会についての件、そして今御説明にありました金融行政方針についての3つを重ね合わせたような形でコメントを申し上げたいと思います。

     まず最初に、金融行政方針の御説明の中で、日本全体のデジタル化を推進するために、デジタル・分散型金融を巡る研究会を開催して検討を行うという御説明があったかと思います。ただ、私が実際にこの研究会に参加させて頂きまして、そこで取り扱ったテーマ等を見る限りでは、現在、一部の取引関係者の間で行われているデジタル金融あるいは分散型金融と呼ばれるものについては、従来の伝統的な銀行や証券や保険といった金融取引とはかなり異質のものであり、かつ、関係者というか当事者が極めて限られている、かつ、日本というよりはむしろ海外が主導で行われており、そこに国境をまたぐような形で全世界的な広がりが見られるという意味で、従来とはかなり本質的に違う議論のような気がいたします。

     方々、日本の経済成長であるとか金融産業の一層の発展ということを考えた場合には、既存の金融機関がいかにデジタル化するか、デジタル的な金融に対応していくか、これはデジタル・分散型金融を巡る研究会で取り扱っているようなデジタル金融ではなくて、通常の、例えばインターネットバンキングであるとか、ネット証券取引といったものですが、それらのことについての取組は、実はまだ十分ではないと思われます。特に、例えば法人企業部門がインターネット銀行取引を行っていないがために、現に様々な非効率が存在してしまっており、これが2023年のインボイス導入に向けて、日本の企業全体の経理部門がより効率化していく上での大きな障害になっているという指摘は様々なところで行われており、先日の骨太の方針で、この問題について対応するべきという方針が示されたかと思います。

     その意味では、デジタル化の対応については、現在のデジタル・分散型金融を巡る議論というのは非常に最先端のことですので、これはこれでいろいろと考えておく必要があると思いますが、より地に足のついた形で、既存の金融機関が20年間にわたって提供しているインターネットバンキングがなぜこんなに利用されないのか、これから利用されるようにするにはどうすればよいかといったことについての検討が必要だという意味で、今の解決すべき課題と道具立てにミスマッチがあるのではないかということを指摘したいと思います。

     もう1点は、最初の諮問、それから、その後のデジタル金融あるいは金融行政方針の中で説明があったこととの関係で、FATFの対日審査において進展が見られたという御説明を頂きましたが、マスコミ報道を見ますと、日本は不合格であったという報道が多いかと思います。実際、日本の金融機関が、大手金融機関を除けば、マネーロンダリング対応についての理解とか体制とかが十分であるかというと、それは若干心もとない面があるのは事実だと思いますが、皆さん、真面目にやっていらっしゃいます。そもそも、そういう問題に関連する事務が少ないのと、昔から、金融取引において相手を確認するということはあまりしてこなかったので、継続的な取引において、あなたは本当にこの名前の人ですかということをきちんと確認して取引をする仕組みというのは残念ながらできていないという意味では、それは日本の銀行制度の大きな問題であると思います。この点については、例えば、マイナンバー制度や、あるいはマイナンバーに紐づけて銀行口座番号を記録するといった形でデジタル庁を中心に全体の変革が進んでいる中で、銀行側がそのまま手をこまねいていていいのかという問題はもちろんあります。一方で、マネーロンダリング防止の観点からは、既存の銀行の預金の中の為替取引で本人確認が十分でないという部分はあまり大きな問題を招来するものではなくて、むしろ、実際の大きな穴は、暗号資産の取引にあります。特に、本人確認をしているオフチェーンの取引ではなくて、本人確認がされないで野放図にされているオンチェーンの取引が取り締まれないという部分に問題があるのではないかと思います。国内外で様々なマネロン事件が多発した場合に、オンチェーンでのビットコイン等の取引というものが行われたということは毎回のように耳にする話でありまして、残念ながら、この点については有効な対策は取られていません。この点については、既存の暗号資産交換業者を規制するだけでは対応することができない領域なので、これについての対応というものを考えることが今後の、本当にマネーロンダリングあるいはテロリスト資金供与を防止するためには必要なのではないかと考えます。

     私からは以上です。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは、チャットを頂いております順番で、続きまして、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

    ○佐々木委員
     ありがとうございます。御説明頂きましてありがとうございました。私からは、ちょっと中長期的な点になりますが、総会ということですので、金融機関への広い意味での制裁・罰則の今後の在り方について、1つ意見を申し上げたいと思います。

     私、市場制度ワーキング・グループに参加しておりまして、そちらでも幾つかこういう議論をしてきたんですけれども、本日の御報告にも関連していますので、ここで申し上げさせて頂きたいと思います。

     具体的な内容としましては、日本では、部分的に課徴金とか、そういったものも取り入れられているものの、多くの場合、業務改善命令などの行政処分が中心となっていると思います。ただ、今後、主要国と同様な民事制裁金などの罰金などを取り入れる変化というのが検討されていくのではないかと思っています。もともとは、ファイアウォールの議論で、利益相反とか優越的地位に関して、規制緩和とともに罰則も考えていったほうがいいのではないかということで、ワーキング・グループではこのような意見を申し上げたんですけれども、例えば今日の御報告に関連しましても、FATFの勧告の中に、法人に対して効果的で適切な抑止力のある制裁措置というのが求められていると思います。これはもちろん行政処分または民事とか、刑事とか、そういったものの中から選んでということだとは思うんですけれども、少なくとも、そういったことを検討することが求められていると思います。

     また、金融行政方針に関連しまして、やはり金融育成庁として、金融機関へのガバナンスを効かせるときに、規制監督だけではなくて、このような事後的な罰則などをアップデートしたり、グローバル化するということも必要になってくるのではないかと思います。そういった事後的なものを整備するということが事前的なガバナンスに効いてくるということにつながってくると思いますので、非常に関係があるのではないかと思います。

     個別のことについてお伺いしたいわけではないんですけれども、例えば、最近も銀行でシステムトラブルが起こるような事態が発生していて、そういったときに、その銀行に対して、金融庁がガバナンスを効かせるのにどこまで役割を果たすべきかという議論があると思うんです。そういったことを考えるときに、規制監督とかモニタリングということに加えて、事後的な処分というのもどうしていくのかということを検討していくことが重要ではないかと思います。行政処分ということだけで十分効かないと思っているわけでもないですが、やはり流れとして、部分的に課徴金制度が導入されたり、あるいはグローバル化ということで規制が緩和されたりする中で、罰則といった事後的な処分といった部分についての検討が必要だと思います。本日のお話にも関係していると思いますので、今後、そういったことも考慮に入れて進めて頂ければという私の意見です。

     以上です。ありがとうございます。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、井村委員、どうぞお願いいたします。

    ○井村委員
     連合の井村です。

     私からは、会計監査に関する件と金融行政方針について、2点申し上げさせて頂ければと思います。

     まず、会計監査を巡る動向についてでありますけれども、これまで連合からも、コーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議に参加させて頂いて、内部統制やリスクマネジメントの問題について、ガバナンス上の重要な問題として捉えて意見をしてきました。今般のコード改訂において、内部監査部門の活用や重要性をはじめ、内部監査強化の方向で改訂がされたことを連合としても非常に評価しておるわけでありますが、今後の実効性をどう確保していくかということが重要であると考えています。

     その上で、中長期的な企業価値の向上に向け、監査の信頼性確保は不可欠であり、いわゆる三様監査と呼ばれる内部監査、監査役等による監査、監査法人等による会計監査、それぞれが有効に機能する必要があると考えております。懇談会においては、2020年に改正された公益通報者保護法によって体制整備が義務づけられた内部通報制度の活用等も踏まえて、どう実効性を確保していくかが肝要であり、具体的な行動計画を期待するところであります。

     続いて、金融行政方針についてでありますけれども、コロナ禍がいまだ現在進行形で、経済活動に大きな影響を与えている中、資金繰りで苦しむ企業も、まだまだ多いところであります。まさに今、資金繰りに困窮している事業者を救済するとともに、資金繰りの悪化により失業が急増するなど、社会不安の増幅を回避し、国民生活を守り、安心を与える観点からも、公的金融も含めた金融機関による支援の継続は不可欠であると考えております。

     加えて、K字回復と言われる中において、特に回復が遅れている産業・業種に対する手厚い支援に重点を置くべきではないかと思っております。また、支援においては、貸付け条件の変更も含めた中長期的な支援が必要である点も申し添えておきたいと思います。雇用の維持においては、在籍出向も含めた雇用調整助成金の活用も拡大しているものの、国民生活を守るセーフティーネットの主体として、金融機関の果たすべき役割は引き続き大きいと考えております。

     私からは以上であります。ありがとうございました。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは、チャットの順番で、次に、福田委員、どうぞお願いいたします。

    ○福田委員
     ありがとうございます。私からは、3点コメントをさせて頂きたいと思います。 

     1つはデジタル化に関する論点で、御提案のとおりの問題意識を単純に私も共有しています。特にCBDCに関しては、昨年と今年では多くの人たちの問題意識がかなり違っています。中国が具体的に実証実験を始めて、どういうスキームでやるかということを含めて、今後どうやっていくかということもかなり明確な段階になっています。こういうふうにやっていけるんだということがいろいろと分かる時代になってきていますので、やはり、これまで以上のスピード感を持って問題に取り組んでいくことが重要なんだとは思います。

     ただ、そういう問題を考えるときに、これは岩下先生の論点とも少しは関係していますけれども、全体の調和性というのは大事です。一方の部分だけが非常にデジタル化して、他が全然デジタル化していないとか、そういうアンバランスな発展というのは世の中にとって望ましくないわけです。まさに2ページ目とか、1ページ目もそうですけれども、書いてあるように、全体の調和として、どうデジタル化していくかということが大事だと思います。かつ、そのときに、各デジタル化をそれぞれで独立にやるのではなくて、例えば日本銀行は日本銀行でCBDCをやるし、預金保険機構は預金保険機構でマイナンバーの管理をやるし、民間事業者は民間事業者で別のデジタル化をやるというのではなくて、やっぱり、ある種のネットワークの外部性というのがありますので、それぞれの取組が調和をもって行われていくことが大事です。その全体を俯瞰的に見られるのが金融庁だと思いますので、ぜひ、そういう形の取組を進めて頂きたいと思います。

     それから2点目は、公認会計士の点に関して少しコメントさせてたいと思いますけれども、公認会計士が直面している1つの大きな問題というのは、トレンド的には受験者の数が激減してしまっているということです。足元では少し回復しているようですけれども、過去に比べると受験者の数が激減してしまっていて、多様な人材を採ることが少し難しくなってきているという問題もあります。かつ、これは少し細かい話にはなりますけれども、受験者の数が減ったこともあって、予備校が特定の科目だけで受けるように指導するようになって、昔のように、例えば民法とか経済学を選択して受験する人たちは、今、ほとんどいなくなっている。みんな別の特定の科目だけを選択して、公認会計士を受けるようになっているわけです。新しい時代には、むしろ公認会計士というのは、様々な人材が必要になってきているとは思います。ルーティーンワークはAIなんかで置き換えられるような時代になっていくわけですので、もう少し様々な人材が、育成もそうですけども、入口の段階でも採れるような仕組みづくりを考えて頂くことが大事なのかもしれないと思います。

     それから、最後の金融行政方針も非常に重要な論点が記されています。最初のポストコロナ時代に向けた力強い経済回復の問題というのは非常に大事で、足元では、まだなかなか難しい問題もあって、資金繰りに困っている企業が存在していることも確かです。けれども、昨年度に比して、全体を見ると、企業が保有する預貯金の量は過去最大の伸びを示していまして、そういう意味では、かなりいろいろな資金を持っている企業というのは全体としては増えているということです。一部に非常に困っている企業があるのは事実ですけど、そうした中で、企業の余剰資金もうまく活用しながら、どうやったら力強い経済回復ができるのかを考える必要があります。残念ながら、先進主要国の中でも日本の経済成長の見通しが非常に低い部類に見なされているという現状もありますので、金融面からそれをどうやってサポートしていくかということは重要な課題であると思います。

     私からは以上でございます。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、小林委員、どうぞお願いいたします。

    ○小林委員
     小林です。

     私からは、金融行政方針について2点と、それから、委員会への諮問のマネロンに関して、実務的な視点からのコメントをさせて頂きたいと思います。

     まず、金融行政方針です。デジタルイノベーションは非常に重要な問題ではありますが、先ほど岩下委員がおっしゃられましたところの従来型の金融機関のサービスの1つとして、これは以前の審議会でも出ていた問題だと思いますけれども、高齢者に対する金融サービスをどうするかという問題が一向に進んでいないと感じております。デジタル化が推進されることはもちろん重要ですけれども、一方で、日本独自の金融難民という人たちが実は潜在的にたくさんいるということを考えますと、デジタルイノベーションの対極として、高齢社会におけるデジタルを十分使い切れない人たちにどうサービスを提供していくのかということについて、金融庁としての指針のようなものが必要なのではないかと思います。これが1点目です。

     それから同じく、サステナブルファイナンスですけれども、ここで「グリーン国際金融センター」とありますが、日本がサステナブルファイナンスに関して非常に遅れている部分は、専門人材の不足だと考えております。日本のアカデミアにおいて、サステナブルの問題に関して専門性のある人材の育成が、欧米諸外国と比べますと、かなり遅れてスタートしているということもあり、この辺りにつきましては、金融庁のみならず、国として、人材の育成に力を入れていきませんと、なかなか、他の市場と競争していくのが難しいのではないかと思います。その点、少し広義で考えていく必要があると思います。

     それから、今回のマネロンに関する諮問です。確かに、大手の銀行、金融機関においてはマネロン対策が進んできている一方で、実は海外にいる邦人が、なかなか日本の金融システムを使えなくなってしまったという現実の声を聞いております。単純にマネロンを防ぐという、ガードに焦点を当ててサービスの絞り込みをするのではなくて、必要なところに必要なサービスが提供できるようなマネロン対策を考えていくべきではないかと思いますので、その辺も視点の中に入れて頂く必要があると思います。もし共通プラットフォームというものをつくるのであれば、その中で、過度なマネロン対策によって、実際にサービスが限定されないような仕組みも考えていく必要があるのではないかと思います。

     以上です。ありがとうございました。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、河野委員、どうぞお願いいたします。

    ○河野委員
     ありがとうございます。日本消費者協会の河野です。

     本日の議題に関して、3点申し上げます。

     1点目は、資金決済制度のあり方についてです。9.11から20年、悲惨なテロを防ぐには、その資金源を絶つことが重要であり、マネーロンダリング対策に関しては、日本も決して無縁ではないとの自覚を持って、社会全体で対処すべきだと考えています。

     私たち一般消費者からすると、国際テロのような惨事は他人ごとと考えがちですけれども、実は昨年のゆうちょ銀行や地方銀行から、ドコモ口座などの電子決済サービスを通じて預貯金が不正に引き出された事件と根っこは同じ問題であり、疑わしい送金を避けるには、徹底した本人確認が必要です。取組強化に対して誤解等が生じないように、私たち一般消費者への理解と協力に力を注いで頂きたいと考えています。

     2点目ですけれども、デジタル・分散型金融への対応のあり方に関してで、これは金融庁所掌の範囲から外れているかもしれませんけれども、暗号資産については、資料に整理されているベネフィットとリスク一覧に挙げられていることに加えて、この仕組みを維持するには、保有や取引の際の安全を確保するために膨大な電力が必要とされていて、金融のデジタル化イコール効率化、また、低コスト化と簡単にくくられてしまいそうですけれども、できれば、再生可能エネルギーの活用促進へ導くような視点も検討の範疇に入れて頂けるといいのではないかと考えました。

     3点目、金融行政方針についてです。今回の提案内容は、コロナのパンデミック、グリーンファイナンス、デジタライゼーション等、情勢の変化を総合的に勘案した時宜を得たものになっていて、評価できると受け止めています。

     他方、活力ある金融システム構築においては、個人資産1,900兆円と言われていますけれども、これを原資の1つとして成長分野に供給することで、新たな金融商品や革新的なサービスの提供、脱炭素社会の実現に向けたESGへの橋渡しなど、貯蓄から投資への流れを加速させる施策をいろいろと挙げてくださっていますけれども、消費者、投資家を保護するという視点が、やや希薄だと感じました。コロナ禍によって、個人資産においても、格差と将来への不安は広がっています。消費者、投資家が安心して市場に参画できるように、顧客本位の業務運営をより分かりやすく開示するとともに、コンプライアンス人材の育成、それから、DX等について行けない消費者を市場から排除しないための金融リテラシー教育の向上、消費者団体や消費者センター等との連携強化など、改めて、市場の振興と私たち消費者、それから多くの投資家の保護を両輪に置いた、バランスのいい施策を望みたいと思います。

     私は以上でございます。ありがとうございました。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、渡辺委員、どうぞお願いいたします。

    ○渡辺委員
     私は主に見せて頂いている金融行政方針の3のところ、特に、データ分析の高度化、推進のところについて、2点ほど発言させて頂きたいと思います。

     データ分析については、今、様々な形で分析能力を組織的に高めることが重要で、まさに御庁の中でそういった取組はされているところだと考えているんですけれども、それと同じか、それ以上に重要なのが、データの質だと思います。どんな優秀なデータ分析チームを持っていても、データの質を上げないと分析の質は向上しないので、世間ではオルタナデータの行政での活用の話がいろいろ言われたりしますけれども、まず一番大事なのは、足元の徴求データの質を高めることだと思います。例えば、金融機関であれば、個別の貸付について返済をリアルタイムに日次でデータを取れるようにするとか、とにかく、できる限り細かい粒度のデータをできる限りリアルタイムに近い速さで取る体制をつくることで、モニタリングの改善にも資することになります。また、そのような粒度の高いデータがあると、データ分析でできることのレベルが全く変わってくると考えています。徴求データの質を高めることについては、どんな粒度で、どういうデータを取ってくるかを、きちんと方針をつくって進めていくのが重要なのではないかと思います。

     当然、言うのは簡単ですが、金融機関ごとにシステムの違い等があり、すぐにはできないということは非常に理解できるわけですけれども、であればこそ、きちんと中期的なロードマップみたいのをつくって、数年後にはきちんと質の高い徴求データを取れる体制をつくって頂くようにすると、データ分析を進める際に、とにかく徴求データの質というのが非常に重要になってくると思いますので、より意味のある分析が行われるようになるのではないのかなと思います。

     2点目がデータの公開に関してです。特にここに書かれているわけではないんですけれども、データ分析をする際に、データを中で分析するだけではなくて積極的に公開する、または、全部そのまま公開しないにしても、一部を研究者には公開するという形で、外部の力を使うことで、データ分析の力というのは大幅に上がるかと思います。内閣官房のEBPM課題検討ワーキング・グループでまさにそういう議論をしています。例えば、今、日本のデータで公開されているものだと、地銀の合併について、競争政策の観点から分析しようとしても、ほとんど経済学で論文として成立の水準のデータは日本では存在しないというのが私の認識です。

     一方で、私自身はアメリカの地銀の合併についてのFDICで公開されているデータで論文を書いているんですけれども、そこにいくと、非常に細かい、カウンティレベルでの銀行別の支店とか、エリアごとの銀行別の預金シェアが全部見えるマイクロデータが過去のものも含め全部公開されていて、誰でも使えるようになっています。そうなっていることによって、外の人たちが分析することができて、それがそのまま政策形成にプラスになるということがあるわけですね。

     1つ目の点は、徴求データの質を上げて頂くよう考えて頂きたいということですけれども、2点目は、そういった形で徴求データをよりよいものが取れるようなったら、それを積極的に公開するような方向性をきちんと考えて頂くことが重要という点です。

     以上、2点になります。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、河村委員、どうぞお願いいたします。

    ○河村委員
     日立の河村です。

     私は今、CFOをやっていまして、日常的に監査法人といろいろな議論をやっていますので、会計監査の在り方について、3点コメントを申し上げます。

     1つは、先ほど東大の福田先生からも言及頂きましたけれども、監査と、それからデジタルイノベーションの問題が非常に大きなテーマで1つあります。人工知能をどんどん回して、例えば異常値の発見であるとか、あるいは全体の傾向値を近似していくとか、今、いろいろなことが人工知能でできるようになりましたので、従来、人間がやっていた監査等を今のテクノロジーのレベルでも人工知能で代替できるような感じになってきましたので、これをもっと推し進める。そして、推し進めるためには、AIに対する投資についてバックアップしていくような仕組みが要りますので、この技術をどこまで活用して監査をやっていくかということは、ぜひ、制度的なサポートも含めて検討していくべきだと思います。

     第2点は、AIを中心とする技術で監査の仕事の過半ができるようになると、今の会計士の皆さんは何をするのかという問題があります。今、私どもの監査をやって頂いている監査法人、個別がどうこうということは全くありません。一般論として申し上げますけど、難しい公認会計士の試験を通ってきた割には、会社の経営全体に対するいろいろなインサイトであるとか、あるいは、当然ですが、経験がどうしても欠けてしまうわけです。今、御案内のとおり、企業は日本で成長が限られる中で、外国への投資のシフトをしておりますので、外国には国内と異なるリスクがたくさんあり、大中小で言えば、大は地政学リスクから小は個別事業の紛争までと質量ともにものすごいバライエティがあります。

     このような環境の中で事業を行い日々厳しい経営判断をしている訳で、では会計士の皆さんにどういうことをやって頂くということですが、従来の会計周りの監査には、基本的には技術が代替しているものですから、やはり、もっと広範な企業経営について、中に入って見て頂く。その結果がPLとかBSにつながってくるので、当然、会計監査にも影響するんですけれども、例えば、日本でなかなか市場の成長機会が取れない中で外国へ行くわけですけど、そうすると、地政学の問題とか環境リスクから始まって、例えば労働市場の問題とか、金融市場の問題とか、流動性とか、さらに細かく言えば、プロジェクトマネジメントをどうするかとか、経営計画をどうするとか、そういうすさまじいリスクの塊の中で事業経営をやっているわけですね。だから例えば、そういうところに人材の交流か何かという名目で1年か2年入ってもらって、企業のリスクの塊の現場で会社をどうやって回しているかということを会計士の皆さんに肌で知ってもらって、また戻って、それを集大成であるPLとかBSの中身がどうなっているかということの監査をやって頂く、そういうローテーションを組まないと、会計士の皆さんが技術を超えて新しい価値をつくっていくには、やっぱりそういうことが要ると思うんですね。加えて、これはこの会議で何回も指摘されていますけど、英語の問題があって、今、私が非常に危惧しているのは、例えばロンドンのPwCの本店で国際会計基準の議論あるいはデロイトのマンハッタンの本社でUSGAAPの議論をやるときに、立ち振る舞いがよくて、きちんと英語で日本の事情を説明できる方が何人いるかというと、ほとんどいらっしゃらないんですね。だから行く行くは、いろいろな事業の経験を通して、外国でいろいろもまれて、英語もできてという人をつくっていかないと、世界的に伍して、国際会計基準とかGAAPの議論をやるときに誰も日本人が入れないというような状況になるのを非常に危惧しております。
     
     それから3点目は、監査報酬の問題があって、これは以前から指摘されていることだと思いますけれども、監査をしてもらう側が報酬を払うというのは、普通の労働市場というか、賃金市場において、ないストラクチャーになっていまして、やはり、ここは何か仕組みが要ると思うんですね。例えば、企業側から資金をプールして報酬を払うことを考えないと、監査をしてもらうお客が監査報酬を払っているというのは、お互いにジェントルマンですから余分なことは言いませんけど、非常に難しい関係をつくっていますので、ここについては、やっぱりメスを入れて、どういう監査報酬を払うかということは1回検討頂いたほうがいいと思います。

     以上3件です。ありがとうございました。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。一部、やや聞き取りにくいところがあったかと思いますので、大変恐縮ですけれども、議事録でまた御確認頂ければと思います。

     それでは、続きまして山本眞弓委員、どうぞお願いいたします。

    ○山本(眞)委員
     山本です。時々、ハウリングをしているようなので、大丈夫でしょうか。

    ○神田会長
     はい。金融庁の部屋は大丈夫ですが、御参加の皆様方で、スピーカーの性質によっては、スピーカーを変えて頂くとか、音量を落として頂く必要があるかと思います。取りあえず、お願いしてよろしゅうございますでしょうか。

    ○山本(眞)委員
     はい、分かりました。

     まず1点目、マネロンの件です。すごく細かい話で恐縮ですが、多分、マネロンの関係で、銀行から個別口座について、各預金者に調査の手紙が送られてきていて、私は仕事上、裁判所から選任されて、相続財産とか不在者とか、財産の管理をすることがあるので、そういう口座を複数所有しておりまして、ほとんどの口座についての問合せが来ております。銀行に確認したところ、これについても、私の個人の情報を提出しろと、こういう御指示なんですね。ただ、それって本当に意味があるのかなと、すごく疑問に思います。これはあくまでも個別の事例ですけれども、このようなことも含め、先ほど顧客管理の継続的実施ということも出ていましたけれども、きちんときめ細かな情報収集をするシステムを構築することが必要なのではないかと思っておりますので、今後検討されるときに、そこら辺を配慮頂ければと思います。

     それから、先ほど小林委員が触れてくださいましたけれども、マネロンの関係で、恐らく本人確認が非常に重要視されて、そうすると高齢者は、必ず銀行に来い、窓口に来いということになるんですね。ところが、なかなかそういかないことがあって、手続が進まないということが非常に多いです。デジタルイノベーションはいいんですけれども、やはり、デジタルに対応できない人たちへの配慮というのも、もちろんマネロンは大切とはいえ、御配慮頂ければと思います。

     それから、2点目、会計監査の件ですけれども、3ページ目に、企業の不正を見抜く力の向上ということをポイントで書いてくださいました。結局、ここに行き着くのかなと思っております。この場面では、性悪説に立たないと、多分、進まないと思います。いかに多くの不正場面を想定できるか、それについては、事例検討も含めて、レベルアップするように努力して頂きたいと思います。

     それから、皆さんもおっしゃっていますけど、金融行政方針の金融機関からの支援、特に中小企業においては金融機関の果たす役割は非常に大きいので、ここについて、本当に具体的に実効性のある支援に向けて取組ができるように注力頂ければと思います。

     以上です。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、原田委員、どうぞお願いいたします。

    ○原田委員
     ありがとうございます。原田です。

     デジタル化に関しまして、事務局に1点お伺いしたいと思うことがあります。金融庁の内部で、金融デジタルリテラシーとでも言うんでしょうか、金融リテラシーでもなく、フィンテックという技術側面だけでもなく、内部で金融のデジタルに関する研修会のようなものがあるかと思いまして、この点について少々お伺いしたいと思いました。過去に金融庁の内部の研修会で講師をしていたことがありまして、私がやっていたのは10年弱ですけれども、テーマ別研修という括りで、「市場動向分析」というタイトルの、一連の内部研修で、証券化について講義をさせて頂いておりました。参加者の方々は、内部の人を中心に、証券取引等監視委員会の若手の方などもおられ、全体で何十人かという形だったんですけれども、過去にこういうことをやっておりました。最近、金融庁主催の金融経済学勉強会という研究グループにも参加しておりまして、そこでのテーマは、DX、ビッグデータ解析、非伝統的データ、分散型金融といった、主にデジタルに関連したテーマが最近多く、参考になると思って参加しております。こういったことから、過去、私が担当させて頂いていた内部研修などの場でデジタル化について学ぶ機会が広く提供されているのかなということを少々疑問に感じまして、お伺いさせて頂こうと思いました。

     デジタルは、皆さんも御存じのように動きの激しい分野でして、技術進歩も大きいので、技術的な側面の把握というのも難しいところではありますが、金融であるという側面からは法的な知識も必要です。そして、実務的な対応も別途難しいものがあるかと思います。タコつぼ化しそうな面もありますけれども、広く浅く学ぶ機会を継続して、より多くの職員に提供するというのは大事だろうなと考えています。

     研修の場があるかということをお伺いさせて頂いて、なければ検討して頂きたいんですけれども、あるということでしたら、少し御説明頂ければと思います。IT系の大学院に留学、進学する内部の人数とか、スキル試験にどういうものを推奨しているかとか、内部の人たちのスキルアップに関係するところも1つ大事な側面であろうかと思います。

     先ほど渡辺委員が、データの質を上げてほしいということと、公開して誰でも分析できるようにして頂きたいという御発言をなさっておられて、研究者としては、本当に同意するところです。内部にも高度な分析をなさる人材の方々は一定割合いらっしゃるかと思うんですけれども、幅広く金融に関するデジタル面での知識というところをいかに共有なさっていらっしゃるかということについて、現状どうなっているか、お教えください。

     以上でございます。

    ○神田会長
     ありがとうございました。金融庁に御質問がありましたけど、今この場で、ということでよろしかったでしょうか。

    ○原田委員
     いつでも構いません。

    ○井藤政策立案総括審議官
     人材研修の話について、私の方でも全てを把握しているわけではないですけれども、まず、おっしゃっている話は、データ分析能力といった話がまずあり、その他に、そもそもITリテラシーのような話があり、さらには業界の先端動向をどのようにつかんでいくか、非常に多元的あるいは多方面の取組が必要ではないかと考えております。まず、データ分析については今すごく力を入れていまして、庁内でデータ分析プロジェクトというのを立ち上げていまして、いろいろなデータ分析を、まずは業務に即して進めてみようと。その結果、トライアルみたいな点も多いですけれども、有益な分析ができるかどうかということもさることながら、まずはその裾野を広げてみようということでやっております。また、このプロジェクトについては、今の直接の業務から離れて参加することも可能なような仕掛けもしています。あと、先端技術のフォローアップについては、例えば、ブロックチェーンとか暗号技術については、別途、いわゆる先端の先生方と研究会等を持っていまして、庁内で希望があれば参加できるような場を設けており、また、各種プログラミングですとか、様々な基礎的なデータの分析、アプリケーションの操作の研修といったものは当庁の中にもございますし、また、政府として進めている研修もあって、それに参加することも可能となっています。

     そういったことで、多様な場を設けて育成する取組をしているわけですけれども、今、あまりにもデジタルというものが我々の業務の中に浸透してきております。あるいは我々の行政の対象である金融機関でも、急速にそういったものが採用されて、あるいは実装されてきて、様々な取組を行っている中で、取組の強化というのはさらにやっていかなくてはいけないと考えていますが、そういった面では、多元的な取組をさらに進めていく必要があると思っています。なかなか、この場で全ての取組を、通常の業務にもすごく密接した状況にもなってきていますので、網羅することもなかなか難しいんですが、もし、我々の取組について、さらにアドバイス頂けるということであれば、別途またお伺いいたしまして、アドバイス頂けるような機会を設けられればと思います。

     取りあえず、以上です。

    ○神田会長
     ありがとうございます。

     原田さん、よろしゅうございますでしょうか。

    ○原田委員
     はい、御説明ありがとうございました。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは、次に進ませて頂きます。

     チャットの順番で、次は、吉戒委員、どうぞお願いいたします。

    ○吉戒委員
     吉戒です。どうもありがとうございます。

     私からは、金融行政方針の中の特にコロナ後の事業再生をどうやって支援していくか。特にその場合、ほとんど中小企業というイメージがあろうかと思うんですけど、今日の資料にも書いてありますけれども、私的整理ガイドラインを改訂する、恐らく中小企業向けのイメージなのかなと思っています。私的整理ガイドラインというのは、これは言うまでもないんですけど、債権放棄をするための一定のルールをつくっていこうということだと思うんですね。債務超過を解消するとか、そういう意味では負債が減るわけなので、バランスシートは大きく改善するんですけれども、当たり前のことですが、企業というのはバランスシートが幾ら改善しても、当然、それだけでは再生しないわけですね。PL、損益計算書をどうやって立ち上げるのか、回復させるかというのが一番肝ですけれども、残念ながら、これは銀行ではできないと言ってしまえば身も蓋もないんですけど、ここはなかなか、一番難しいところなんですね。これは私的整理ガイドラインを改訂しても、あまり変わらない。つまり、債務カット、バランスシートの調整をやるためのガイドラインだけでは、その後の再生というのは、なかなか難しいのではないかなと思います。

     中小企業向けということになってくると、恐らく、条件が緩くなるといいますか、ガイドラインが、例えば3年以内に債務超過を回収しなければ駄目だとか、経営責任の問題だとかありますよね。例えば経営者の退任を求めないとか、どちらかというと緩い方向に行くのかなと思います。ただ、そうなると、先ほどのPLではないんですが、ますます再生、再建というのは難しくなるのではないかなという気がいたします。

     私自身の経験も加えてお話ししますと、再生がうまくいった事案というのは、ほとんどの場合、出口でM&A、結局、企業の再編ですね。つまり、スポンサーを見つけてくるとか、アライアンス先と提携をするとか、そういったことを必ず最後の出口でやらないと、債務カットしますので債務超過は解消されたりはするんですけれども、なかなかその後、再建、再生の道筋には乗らないというのが、過去の少ない経験ではあるんですけど、そんな気がいたします。

     再生を確かなものにするには、やっぱり、債務をカットした後、恐らく今のコロナ融資といいますか、ゼロゼロ融資で、資金繰り的にはかなり余裕がある状態だと思うんですけれども、この債務もいずれ過剰債務という問題が起こってきて、多分、ここ1年後、2年後になるかもしれませんけれども、いずれ必ずそういうときが来ると思うんですが、このときに、債務カットした後に、どうやって再建の道、つまり、事業再編とか、本当に個別の企業としてではなく事業として生き残れる道筋をつくっていくか。債権者の金融機関、銀行というのは、やっぱり、そこまで踏み込んだ支援をやっていくべきではないかと思っています。

     ただ、最後に身も蓋もないんですけれども、残念ながら、今、特に地方の金融機関に、これだけのことをやるだけのノウハウと再生人材、金融支援をやれるだけの体力、収益力、これはかなり不足しているのではないかという気がいたします。ガイドラインを改訂して、債権放棄もやりやすくなるんでしょうが、残念ながら、ルールが少し緩くなっても、それを行使して債務カットをしていくだけの体力がどうも銀行側に足りないのではないか、そもそも経営の規模が小さ過ぎるのではないかという気がしています。

     私からは以上です。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、佐古委員、どうぞお願いいたします。

    ○佐古委員
     発言の機会をありがとうございます。

     私から簡単に3つだけ、1点目、デジタル・分散型金融については、皆様からここで頂戴した意見を踏まえながら、研究会の中で議論していきたいと思っています。

     2点目ですが、先ほど山本委員の御発言で思い出したことを少し共有させて頂ければと思います。間接的な情報で大変恐縮ですけれども、外国人ぽい名前の人だけが個別に銀行からコンタクトがあって、いろいろ資料を出せと言われたのが、おそらくマネロン対策だろうが、すごく差別的な扱いであったというのを見聞きしました。この夏のオリ・パラでも、その際の運営のときにも、海外から来た人たちが差別的と感じるような言葉遣いとか、種々あったということを見聞きしておりますので、国際金融センターを目指すという意味でも、日本に行ったら差別的な扱いをされてしまうというようなレピュテーションが広がらないためにも、そういうことが起こっているということを留意して頂ければと思っております。

     3点目、会計監査の在り方についてです。経営者と監査者が癒着して、株主や従業員に不利なことが起こるという事案を是非防いで頂きたいと思いまして、透明性のある形を検討して頂きたいと思います。

     先ほどの河村委員の御意見と近いところですけれども、IT技術を活用して、会計監査コストを抑えつつ、全体で不正を抑止するというところを考えて頂ければと思います。その際に、やはりデジタルというのはいい面ばかりでもないと思っておりまして、例えば、一般論ですが、あらゆる情報が取れるというため、要らないかもしれないけど、あったらいいかもという情報を要求し過ぎてしまうことも起こりがちで、集めるほうのコストが増えてしまいますので、監査する側と監査される側のバランスを取った適切な情報収集があるといいかと思っております。

     さらに、昨今はAI技術というものが増えてきておりますけれども、これも一言にAI技術と言っても、実は中で使われているアルゴリズムだったりとか、入力するデータの質によってさまざまなものがあり、その中には差別など、意図しない悪い結果が出てくるということも知られております。なので、細かく見ていくというのは大変だと思いますけれども、そういうところも注意深く、どういう技術を使っているのかというのが、透明性はどうだろうとか、気を付けて運用されるのがいいかなと思っております。

     私からは以上です。ありがとうございました。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは続きまして、松井委員、どうぞお願いいたします。

    ○松井委員
     発言の機会をありがとうございます。既に幾つか御発言頂いておりますので、1点だけ、資料1、マネロンについて発言したいと思います。

     今般の諮問に対しては、恐らく、成長戦略、フォローアップにある疑わしい取引の検知や制裁対象者の照合などの業務の効率化を視野に入れて検討していくものと考えられますけれども、諮問の内容は広く安定的な金融制度というものの提供の仕方ということですので、少し長期的に考えますと、やはり、銀行が相手方をどう把握するかということにとどまらず、その取引先がマネーロンダリングに関与してしまうというリスクの側もある程度クリアしておかないと、対策が根本的なものにならないと考えます。

     今般、対象とする銀行における対策というものにとどまらず考えますと、他国でその辺にどのように対処しているか、あるいは自国で典型的なマネロンに事業者がどのように巻き込まれているかの事例の抽出といった作業を通じて、他の分野や省庁との連携を探りながら、この点に対処するということは有用ではないかと思いますので、その点を留意して頂ければと思います。

     以上です。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     それでは次に、翁委員、どうぞお願いいたします。

    ○翁委員
     翁ですが、3点、手短に申し上げたいと思います。

     1つはデジタル・分散型金融の件でございますけれども、やはり昨年ぐらいから、分散型金融は物すごく大きくなり、また、ステーブル・コインや各国のCBDCに向けた様々な検討なども進んでおりますので、この研究会で、しっかりグローバルな動きなどもフォローしつつ、関係者の共通理解を深めて、我が国としてのデジタル・分散型金融やCBDCなどについてのいろいろな考え方の交換ができることを期待しております。

     それから、2点目につきましては公認会計士の件でございますけれども、コーポレートガバナンス・コードなどでも明らかになってきておりますように、無形資産の開示が非常に重要になってきておりまして、サステナビリティとか、人的資産とか、知的財産とか、こういったことについて、高品質な会計監査がまた一層求められると思っておりますので、そういった点も、ぜひ御検討頂ければいいかなと感じました。

     それから最後、金融行政方針で、先ほど吉戒委員がおっしゃったことと関連するんですが、私も今後、過剰債務の問題が大きな課題になってくると思いますが、地方銀行とかがポストコロナのビジネスモデルを考えてサポートしていく上では、人材の面で、まだまだ非常に課題が多いのではないかと思っております。やはり人材をどう育成するかとか、またはネットワークでどうサポートしていくかとか、そういった総合的な検討が必要なのではないかと思います。

     以上でございます。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     以上で、チャットで発言希望と頂いた委員の皆様方からは御発言頂きました。多くの貴重な御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。

     そろそろ予定の時間が近づきつつありますけれども、他にいかがでしょうか。

     岩下さん、どうぞお願いします。

    ○岩下委員
     どうもすみません。先ほど河野委員から御発言があったことについて、1点だけコメントを申し上げたいと思います。暗号資産のマイニングに伴う電力消費が環境問題を引き起こすという、極めて消費者協会の方らしい視点で、とても大事なことだと思います。この点を金融審議会の総会で話すことができるとは思いませんでしたが、今、ビットコインのマイニングのために使われている電力は、PwCのエコノミストの推計によれば、現時点で大体160テラワットアワー、日本全体で1年間で消費する電力が900テラワットアワーですから、日本の6分の1以上の電力をビットコインのマイニングのためだけに消費しています。この水準は今すごい勢いで上がっていますので、このまま放っておくと、先進国1か国分に匹敵するのも時間の問題かと思います。このような状態を放置しておくことは、COの削減という観点から非常に大きな問題ですが、先ほどおっしゃった再生可能エネルギーを使うように言うというのは、これは残念ながら、誰がマイニングしているのか全然分からないので、そういうことを強制することができません。このため、今のままだと、地球環境問題への対策は講じられないということになると思います。この点は暗号資産の大変深刻な問題と考えておりまして、その点については、ある意味で、これからグローバルな取組が必要になると思います。

     私からは以上です。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。

     他にいかがでしょうか。

     それでは、よろしゅうございますでしょうか。

     本日も大変多くの貴重な御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。

     そこで、最後にお諮りさせて頂きたいのですけれども、本日、大臣から諮問を頂戴いたしておりまして、その具体的な検討を進めていく必要がございます。それで、ワーキング・グループを設置したいと思います。ワーキング・グループの座長でございますけれども、神作委員にお願いできれば、ありがたく存じます。そして、ワーキング・グループの名称ですとかメンバーの決定につきましては、大変恐縮ですけれども、私に御一任頂くことができれば、ありがたく存じます。

     以上のような形で、頂いた諮問についての具体的な検討を進めさせて頂きたいと考えておりますけれども、御承認頂けますでしょうか。

    (「異議なし」の声あり)


    ○神田会長
     オンラインでなかなか分かりにくいのですけれども、ジェスチャーも含めて、大変ありがとうございます。チャットも頂きました。

     それでは、そういうことで進めさせて頂きます。

     それでは、以上をもちまして予定の議事を全て終了いたしましたので、本日の金融審議会総会・金融分科会の合同会合を終了とさせて頂きます。

     なお、本日の議事の模様につきましては、後ほど事務局から記者レクを行いますので、御承知おき頂ければと存じます。

     また、今後の日程などにつきましては、後日、事務局から御連絡させて頂きますので、よろしくお願いいたします。

     皆様方には、本日も大変お忙しい中、長時間御参加頂きまして、誠にありがとうございました。

     以上にて終了とさせて頂きます。

     

     

     

    以上

     

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企画市場局総務課

(内線3645、3520)

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