第52回金融審議会総会・第40回金融分科会合同会合議事録

  • 1.日時:

    令和6年2月19日(月曜)10時30分~12時00分

    2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室 及び オンライン形式


    ○神田会長
     予定の時間になっておりますので始めさせて頂きます。ただいまから、第52回の金融審議会の総会と第40回の金融分科会との合同会合を開催させて頂きます。皆様方には、いつもお忙しいところを御参加頂きまして、誠にありがとうございます。
     本日の御出席状況でございますけれども、小林委員から御欠席の旨を承っております。また、星委員が遅れての御出席と伺っております。
     また、本日の会議ですが、一部委員の方は御都合で、オンラインでの御出席と伺っております。
     会議の模様ですけれども、これまでどおりウェブ上でライブ中継をさせて頂いております。
     議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて、後日公開をさせて頂く予定です。
     会議を始めます前に、留意事項を簡単に申し上げさせて頂きます。御発言を希望される場合ですけれども、対面で御出席頂いている方々には、挙手あるいは、ネームプレートを立てていただくようにして頂けるとありがたく存じます。オンラインで御出席の方々には、オンライン会議システムのチャット上で全員宛てにメッセージにてお名前を送信してください。それを確認させて頂いて、私のほうで御指名をさせて頂きます。そうしましたら御自身の名前を名乗って頂いた上で御発言頂ければ幸いです。
     さて、本日でございますけれども、神田政務官に御参加頂いております。開会に当たりまして、御挨拶を頂きたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
     

    ○神田政務官
     皆さん、おはようございます。金融担当の大臣政務官の神田潤一でございます。
     まず最初に、先月発生しました令和6年能登半島地震により亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。震災の発生後、金融庁では、被災地域の預金者や事業者等の金融取引に支障が生じないよう、また、震災の影響を受けた事業者の資金繰りに重大な支障が生じないよう対策を講じてまいりました。政府として、被災された方々が一日でも早く日常生活に戻ることができるよう、引き続き全力で取り組んでまいる所存でございます。
     それでは、改めまして、本日は、神田秀樹会長をはじめ委員の皆様におかれましては、お忙しいところを金融審議会に御参加頂きましてありがとうございます。開会に当たりまして、一言、御挨拶を申し上げます。
     岸田政権では、新しい資本主義を金融面から加速させるべく、昨年12月に、資産運用立国実現プランを公表いたしました。新しい資本主義の下、成長と分配の好循環の実現に向けて、同プランに掲げた様々な取組みを着実に進めていくことが重要です。
     こうした中、金融審議会では、資産運用立国実現プランに関連する金融制度面での対応の検討として、1つ目として、資産運用の高度化や多様化を図るため、資産運用業の参入促進や非上場有価証券の流通活性化に向けた取組み、また、2つ目として、企業と投資家の建設的な対話の促進を図るため、大量保有報告制度の対象のあり方について、3つ目として、資本市場の透明性や公正性の確保を図るため、公開買付制度の対象取引のあり方などにつきまして御議論を頂いてまいりました。本日、総会で御審議頂きました上、それぞれの御報告を頂くことになります。委員の皆様の御尽力に改めて感謝を申し上げるとともに、私どもとしましては、各報告をしっかりと受け止めまして、必要な対応を進めてまいりたいと思います。
     加えまして、本年1月から、抜本的に拡充した新しいNISAが開始いたしました。これを契機に資産形成に向けた機運が一層高まる中で、家計の安定的な資産形成の支援に関する施策の推進は極めて重要であり、本日の会議では、そのための基本的な方針案についても御意見を頂きたいと思っております。今後、本日、皆様から頂きました御意見も踏まえまして、政府としての基本的な方針を速やかに策定してまいりたいと考えております。
     最後に、新たな諮問についてお伝えいたします。気候変動や少子高齢化等の社会的課題の重要性が増す中で、持続可能な社会を実現するための金融、すなわちサステナブルファイナンスの推進も重要となっております。このような中、昨今の国際的な動向等を踏まえ、企業のサステナビリティ情報の開示や、その情報の信頼性確保に向けた保証のあり方等について検討を行うことが必要となっております。
     本件に関しましては、鈴木俊一金融担当大臣より諮問をいたしますので、委員の皆様には幅広い観点から御審議をお願いしたいと思います。
     それでは、諮問文を読み上げさせて頂きます。
     
     

    2024年2月19日


    金融審議会
    会長 神田秀樹 殿

    金融担当大臣 鈴木俊一

     
     金融庁設置法第7条第1項第1号により下記のとおり諮問する。
     

     
    ○ サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する検討
     
     サステナビリティ情報に係る昨今の国際的な動向や要請を踏まえ、我が国資本市場の一層の機能発揮に向け、投資家が中長期的な企業価値を評価し、建設的な対話を行うに当たって必要となる情報を、信頼性を確保しながら提供できるよう、同情報の開示やこれに関する保証のあり方について検討を行うこと。
     
     以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
     
    ○神田会長
     神田政務官、どうも大変ありがとうございました。
     それでは、議事を進めさせて頂きます。まず、本日の議事の流れについて簡単に御案内させて頂きます。今、大臣から頂きました諮問事項についての補足説明を、まずさせて頂きます。続けて、各ワーキング・グループの報告書ということになりますけれども、まず、「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」からの報告について御説明をさせて頂きます。続きまして、「市場制度ワーキング・グループ」から「資産運用に関するタスクフォース」を中心に審議した内容の御報告について説明をさせて頂きます。その後で、国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(案)についての説明がございます。これら全部を終えた上で、全体につきまして、委員の皆様方に討議をお願いするということにさせて頂きたいと思います。
     なお、今申し上げました基本的な方針案ですけれども、これは本年2月1日に施行されております金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律の規定において、策定の際に金融審議会の意見を聞くものとされているものでございます。
     それでは、まず最初に、今、大臣から頂きました諮問事項のサステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する検討につきまして、野崎企業開示課長から御説明を頂きます。野崎企業開示課長、よろしくお願いいたします。
     
    ○野崎企業開示課長 
     企業開示課長の野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。
     私のほうから、資料1を基に諮問に関する補足説明をさせて頂ければと思います。1ページをお開き頂ければと思います。下の図表のマル1にございますように、昨年の3月期から、有価証券報告書におきまして、サステナビリティに関する考え方及び取組みという記載欄を新設してございまして、サステナビリティ情報の開示が求められるということになってございます。他方で、その記載内容につきましては、ガバナンスやリスク管理、戦略、指標及び目標といった大枠が定められているのみで、現時点で個別具体的な開示基準というものは定められておりません。今後、この開示が具体的な基準に準拠して行われることで比較可能性を高め、投資家に有用な情報が提供されていくということが重要と考えてございます。
     具体的な基準の策定に関しましては、下の図表のマル2にございますように、昨年6月に最終化されましたISSB基準と呼ばれる国際基準を踏まえ、現在、SSBJが国内基準を開発中というところでございまして、来月にも公開素案が公表される予定となってございます。日本基準となるSSBJ基準の適用対象につきましては、下記の注にもございますように、欧米でも企業規模に応じた段階的な適用がされているということも踏まえつつ、グローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業、すなわちプライム上場企業ないしはその一部から始めるということが考えられる中、来月のSSBJの公開素案の公表に際しまして、下記のマル3でございますけれども、その基準の具体的な適用対象や適用時期を検討することで公開素案に関する適切な議論が行われるほか、企業等におきましても基準の適用に向けた準備が進むと考えているところでございます。
     最後の段落、図表のマル4でございますけれども、サステナビリティ情報の信頼性確保という観点から、保証制度の導入についても検討が必要かと考えてございます。
     以上を踏まえまして、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関しましてワーキング・グループを新規に設置して、御議論をお願いできればと考えております。
     私からは以上でございます。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、昨年の12月25日に公表されました「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」の報告について、私がワーキング・グループの座長を務めさせて頂きましたので、私から簡単に御説明をさせて頂きます。
     主なポイントを御報告させて頂きたいと思います。お手元の資料番号ですと資料2-1が報告の概要でして、2-2が報告の本体ということになります。2-1の概要に基づいて簡単に御報告をさせて頂きます。
     「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」では、近時の資本市場における環境変化を踏まえ、公開買付制度や大量保有報告制度、そして実質株主の透明性について、昨年の6月から6回にわたり審議を行いまして、12月に報告を取りまとめました。
     まず、1ページ目を御覧ください。公開買付制度についてですけれども、いわゆる市場内取引等を通じた非友好的買収事例の増加、M&Aの多様化といった環境変化を踏まえ、提言を取りまとめております。
     具体的には、次のような点があります。第1に、市場内取引についても公開買付規制の適用対象とすべきである、第2に、公開買付の実施が義務づけられる閾値を議決権の3分の1から議決権の30%に引き下げるべきである、第3に、部分買付けを実施する場合に、少数株主との利益相反構造に対する対応等について説明責任を果たさせるべきである、第4に、個別事案ごとに例外的な取扱いを許容する制度を設けるとともに、それを可能とするために当局の体制を強化すべきであるなどの提言がされております。
     続きまして、2ページ目に行って頂きまして、大量保有報告制度と実質株主の透明性についてということになります。これらにつきましては、いわゆるパッシブ投資の増加、企業と投資家の建設的な対話の重要性の高まり、協働エンゲージメントの広がりといった環境の変化を踏まえまして、提言を取りまとめております。
     大量保有報告制度については、次のような点になります。第1に、パッシブ投資家が企業と深度ある対話を実施できるよう、報告書の提出頻度を緩和する特例を受けられる要件を明確化すべきである、第2に、協働エンゲージメントを促進する観点から、複数の機関投資家が一定の合意を行わない限り、共同保有者として保有割合を合算する必要がないこととすべきである、第3に、現金決済型のエクイティ・デリバティブ取引についてですけれども、潜在的に経営に対する影響力を有するものや潜脱する効果を有するものを規制の対象とすべきであるなどの提言がされています。
     また、実質株主の透明性についてですけれども、実質株主を効率的に把握できるようにするため、第1に、機関投資家の行動原則として、株式の保有状況を発行会社から質問された場合には、これに回答すべきであるということを明示するということで、まずそれをやって、その後で法制度上義務づけることを検討すべきであるといった提言がされております。
     簡単でございますけれども、以上が「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」に関する御報告ということになります。どうもありがとうございました。
     続きまして、今度は昨年の12月12日に公表されました「市場制度ワーキング・グループ」と「資産運用に関するタスクフォース」の報告について、こちらも「市場制度ワーキング・グループ」の座長を私が務めさせて頂きましたので、私から説明をさせて頂きます。
     こちらは、概要が資料3-1でして、本体が資料3-2にということになります。資産運用立国に向けた政府全体の取組みと併せて、金融庁においても資産運用に関する制度的な枠組み等について専門的な検討を行うため、昨年10月に、「市場制度ワーキング・グループ」の下に「資産運用に関するタスクフォース」を設置いたしました。4回にわたって審議をして頂きまして、12月にその結果を、「市場制度ワーキング・グループ」及び「資産運用に関するタスクフォース」の合同会合において報告書として取りまとめました。
     資料3-1の概要のほうを御覧頂きますと、この報告書におきましては、第1に、資産運用会社の高度化、第2に、アセットオーナーに関する機能強化、第3に、成長資金の供給と運用対象の多様化の実現、そして第4に、家計の投資環境の改善等に向けた施策について提言を頂いております。
     以下、それぞれの内容について簡単に申し上げます。まず、資産運用業の高度化についてであります。この点につきましては、大手金融機関グループにおける傘下資産運用会社等の運用力向上、ガバナンス改善・体制強化等のためのプランの策定・公表、そしてプロダクトガバナンスに関する原則の策定が提言されています。加えて、ミドル・バックオフィス業務を受託する事業者の任意の登録制度の創設や投資運用業における運用権限の全部委託を禁止する規制の撤廃、そうした規制緩和を含め、新興運用業者の発掘・運用委託を後押しするための新興運用業者促進プログラム、いわゆる日本版EMP(Emerging Managers Program)の策定といった施策が盛り込まれています。
     次に、アセットオーナーに関する機能強化についてですけれども、この点につきましては、顧客等の最善の利益が確保されるよう、当局においてアセットオーナーの運用を支える金融機関を適切にモニタリングすべきとの提言がされています。
     次に、成長資金の供給と運用対象の多様化の実現についてですけれども、この点につきましては、機関投資家からベンチャーキャピタルへの資金の流れを拡大させるという観点から、ベンチャーキャピタルのガバナンス向上等に向けたベンチャーキャピタル・プリンシプルの策定、非上場株式の流通活性化のため、プロを対象とした非上場有価証券の仲介業務に関する第一種金融商品取引業の登録要件の緩和や私設取引システム(PTS)の参入要件の緩和といった施策が盛り込まれております。
     次に、家計の投資環境の改善についてですけれども、この点については、資産運用の改革がインベストメント・チェーンを通じて家計の資産形成に真に貢献していくためには、金融経済教育の果たす役割が極めて重要でありまして、金融経済教育推進機構を中心に官民一体となって金融経済教育の取組みを広く浸透させていくことが重要である等が提言されています。
     この報告書において具体的に対応策を提言、お示しいたしました事項につきましては、順次実施されていくこととされております。また、この報告書の内容は、政府が昨年12月に取りまとめました資産運用立国実現プランにも反映されております。
     以上、「市場制度ワーキング・グループ」と「資産運用に関するタスクフォース」の報告書の主な内容を御報告させて頂きました。どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(案)について、桑田金融経済教育推進機構設立準備室長から御説明をして頂きます。桑田金融経済教育推進機構設立準備室長、よろしくお願いいたします。
     
    ○桑田金融経済推進機構設立準備室長
     金融経済教育推進機構設立準備室長の桑田です。よろしくお願いします。
     安定的な資産形成の支援に関する基本方針案に関しまして、資料4-2の概要紙に沿って御説明いたします。
     まず、1(ローマ数字)において、基本的な方向を記載しております。国内外でファイナンシャル・ウエルビーイングの実現に関心が高まっているところですけれども、国民の安定的な資産形成は個々人の幸福だけではなく、成長と分配の好循環や公正で持続可能な社会の実現にも資するものと位置づけております。その上で、本基本方針案では、インベストメント・チェーンの各主体に着目した施策について記載しております。
     個別の施策に関しては、2(ローマ数字)に記載しておりまして、1ポツでは、制度の整備としてNISAやiDeCoについて触れております。NISAについては、令和9年度末時点で口座数3,400万口座、買付総額56兆円を目指すこととしております。
     2ポツでは、顧客本位の業務運営の確保など、販売会社や運営運用会社に関する施策、さらにはアセットオーナーについて、昨年末に取りまとめられた資産運用立国実現プランの方向性に沿う形で記載しております。
     3ポツは、教育・広報について記載しております。ここでは、総論として金融経済教育を受けたと認識している人の割合が低水準にとどまっているという現状に鑑み、将来的に誰一人取り残さず定期的に金融経済教育を受けられる機会を提供することの重要性について触れております。その上で、まずは令和10年度末をめどに、この割合を米国並みの20%となることを目指すということとしております。さらに、金融リテラシー・マップを踏まえた広範な教育を進めること、長期・積立・分散投資の意義の普及・啓発を行うこと、消費者教育や社会保障教育と連携していくことについても記載しております。また、新設される金融経済教育推進機構においては、多様なステークホルダーとの連携を通じて、地方を含めた学びの場づくりに取り組み、公的性格という強みを生かしながら、職域教育など活動を抜本的に拡充することとしております。
     次に、3(ローマ数字)は、国、地方公共団体、機構、民間団体等の相互連携・協力についてです。改正金サ法に規定されておりますとおり、資産形成の支援に関する国と地公体の努力義務のほか、事業主においても、事業に支障のない範囲内で、国や地公体あるいは機構が行う取組みに協力することを求めつつ、国としても企業に対し支援を行っていく旨を記載しております。
     最後に、4(ローマ数字)ですけれども、施策の実施状況や効果検証を行い、おおむね5年後をめどに、本基本方針案は見直しを検討することとしております。
     私から以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、御説明等は以上ということになりますので、本日、残りの時間、委員の皆様方に討議をお願いしたいと存じます。
     なお、本日御欠席の小林委員からは意見書を提出して頂いておりまして、皆様方の席上に配付させて頂いておりますので、適宜御参照頂ければと思います。
     それでは、大臣から頂きました諮問事項についての先ほどの補足の御説明、それから2つのワーキング・グループの報告、そして、基本方針案につきまして御質問、御意見等ございましたら、ぜひお願いしたく存じます。なお、繰り返しになりますけれども、この基本方針案につきましては、金融審議会の意見を聞くということになっておりますので、ぜひ御意見、御質問も含めてでございますが、御意見を頂ければありがたく存じます。
     それでは、どなたからでも結構ですので、会場にお越しの方は、このように札を立てて頂けますとありがたいと思います。それから、少しオンラインで音声の状況はよくないようですけれども、発言御希望の場合にはチャット欄に入れて頂ければと思います。
     今、星委員からオンラインで発言の御希望を頂きましたので、まず、星委員に御発言頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

    ○星委員
     よろしくお願いします。聞こえていますでしょうか。

    ○神田会長
     よく聞こえております。
     
    ○星委員
     そうですか。こちらは何回か、そちらの声が聞こえないことがあるので。
     
    ○神田会長
     申し訳ありません。
     
    ○星委員
     最後の国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(案)についてですけれども、ここについて、方向性に関して異論がないのですが、もう少し拡充すべき点があるのではないかと思いますので、ここでは時間の関係から2点だけ指摘したいと思います。
     1つは、金融教育ということですけれども、金融リテラシー向上に向けた金融教育の対象と、どういうことを教育するかという中身について、もう少し検討したほうがいいところがあります。現在の案では、2(ローマ数字)の3にて主に中学・高校レベルでの消費者向けの基礎的な金融教育というのが強調されていると思います。それはもちろん重要ですが、一方で、もう少し高度な、大学以上で学ぶような金融知識を、これは消費者というよりも事業者側がフロントラインで消費者に接する人まで含めて徹底して習得しておくということが、もしかしたら消費者教育以上に重要ではないかと思っています。方針の中で、よく資産形成を健康維持とのアナロジーで説明しているところがあって、これは非常に適切なアナロジーだと思っていまして、金融も健康科学同様に、消費者が知識を高めるだけでは不十分で、特に高度な部分というのは信頼できる専門家の知見に頼らざるを得ないというか頼るべきだというところがあると思いますので、そういう専門家、特に消費者に直接接する専門家というのが十分な知識を持って消費者の立場に立って行動していくというのが重要になると思います。そのための専門家のための金融教育というのも重要で、それをここで強調しておくべきことかと思います。さらに言えば、金融業というのは、残念ながら医療に比べて消費者の高い信頼を得ている業界とは言えないと思いますので、そうした信頼を得られるような教育、ここ20年ぐらいはビジネスの倫理教育というのが重要だということも言われていますけれども、そういったものも含めて検討すべきではないかと思っております。
     第2点は、最後の4(ローマ数字)のところで、実施状況の評価と基本方針案の見直しをするということを言っているのは、非常に重要だと思います。ただ、現在の案では、対策の効果の検証というのが、実施状況の評価の中に入っていて独立の項目になっていないというのは少し気になります。対策と効果の検証・評価というものを独立の項目にして3本立てにして、実施状況の評価と、見直しと、それからその間に効果の検証というものを入れて、今から検証の準備をしておくのが重要だと思います。厳密な検証には、どのようなデータをどのように分析しなければならないのか、あらかじめ計画を立てて、データを整理して検証する体制というのを整える必要がありますし、そのための予算というのもしっかり確保する必要があると思います。ここで言っている安定的な資産形成というのは、政府のほか政策、例えば健康維持とか、防衛力の増大とか、そういったものに比べると、政策の効果が測りやすいところだと思いますので、ぜひ厳密な効果検証を行って、取組みをより効果的なものに進化させていくような仕組みというのをつくって頂きたいと思います。
     以上です。

    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、会場で札を立てて頂いた方々に、順番といたしまして、山本眞弓委員、佐々木委員、岩下委員、そして川口委員、松井委員、加藤委員まで御発言頂いて、その後にチャットで頂きました冨田委員、北尾委員、河野委員の順でお願いしたいと思います。では、山本眞弓委員、どうぞお願いいたします。

    山本(眞)委員
     山本です。
     私も、基本的な方針案について意見を述べたいと思います。タイトルで国民の安定的な資産形成と挙げている以上、多様な資産形成のあり方というのを示してほしいと思っております。基本方針案、今日いただいた資料の8ページで、貯蓄と投資の組合せと書いてはあるのですが、この案の中では投資が強調され過ぎているのではないかと感じられます。むしろ貯蓄と投資のバランスを取るべきだというところを強調すべきで、そこを明確にしてほしいと私は考えています。仕事柄、投資で傷ついた事例に接することが大変多いです。ここにも書いてありますが、元本は保証されないとか、元本割れの危険がありますとか、必ず示されて、皆さん投資をしているわけですが、それを申し込む時に聞いたり読んだりしたとしても、あまり実感を持っていないというか、すごく実感が乏しくて、むしろそんなことは自分には起きないのではないかと、これは、人間の性かもしれませんけれども、そういう方向に流されやすいように思います。アナウンスされるのも、うまくいったケースがどうしても多くなるというか、そういうケースに偏ることも影響しているのだと思います。
     もちろん、それはその意味で、今、星委員が御指摘されたように教育が必須で、それについては、この案で記載されている施策をぜひ実効性を持って進めてほしいのですけれども、それでもなおやはり貯蓄というものが資産形成の基盤をなすもので、仮に投資で元本割れが起きても、この基盤があれば余裕を持って生きていけるということがあると思いますので、税制上の優遇措置がある財形貯蓄について少し言及はされていますが、これも含めて貯蓄という選択肢があるということ、皆さん分かっているから書いてないということはあるかもしれないのですけれども、明確にして、投資とバランスを取ってやっていってくださいみたいなことをはっきり示して頂ければと思います。投資の拡充を目指すこと自体を否定するつもりはもちろんないし、それは必要なことだと思いますけれども、それが国民にとって実効性があるようになるためにも、この方針案が間違ったアナウンスを国民に示すことにならないように留意していただきたいと少し気になっております。
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     では、続きまして、佐々木委員、どうぞお願いいたします。
     
    佐々木委員 
     ありがとうございます。
     私も、この基本方針案について、既に「市場制度ワーキング・グループ」のほうで発言もさせて頂いているのですが、改めまして意見、感想を3点申し上げたいと思います。
     まず、機構についてですが、やはり設立のもともとの趣旨というのは資産所得倍増プランにあるように、投資の未経験者が一歩進んで投資をしてみようというときに安心してアクセスできる、参考にできるところをつくろうという意図が含まれていると思います。そういう意味で、実際、すぐに踏み込んでくれればいいのですけれども、そうではない方も多いと思いますので、やはりそういう人たちの初めの一歩をしっかり捉えていただけるような、うまく導いて公平な形でいろいろな事業を提供できるといった入り口のところをしっかりデザインして頂きたいと思っています。これが1点目です。
     もう一つが、個人から見たポートフォリオということなのですが、例えばアドバイザーのところを見ますと、ライフプランや資産状況、収入、いろいろな税制優遇制度などをいろいろ考慮してアドバイスをするということではあるのですが、やはり個人の側から見ますと、先ほどの山本委員のお話にも関係ありますが、様々な選択肢の中からどのような組合せをつくっていくかということが重要だと思いますので、個々の事項はもちろんなのですが、総合的な学びというか、どんな税制優遇があって、例えばなのですけれども、若い方が、ローンを返済するべきなのに、無理に投資をしたり、積立てをしたりということが起こらないように、その辺の理解をしっかりできるような形にして頂ければと思います。
     3つ目が、この案の中で言うと調査及び研究という項目が12ページのところにありますが、そこに関係するかと思うのですが、これらの一連の貯蓄から投資へという政策は、日本の資金循環の流れに非常に大きく影響を与えるもので、そういった視点での話題になっていることもあると思います。ですので、やはり国民一人一人の資産形成という側からだけではなくて、国全体として、この政策がマクロ経済の資金の流れにどのように影響を与えて、できればどのように改善し、プラスの効果を日本経済にもたらすのかという辺りを、期待どおりに効果を挙げられているのかどうかという検証も必要ではないかと感じております。
     以上です。ありがとうございます。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、次に、岩下委員、川口委員、松井委員の順でお願いしたいと思います。岩下委員、どうぞお願いします。
     
    岩下委員
     ありがとうございます。
     まず、これまで議論になっている安定的な資産形成の支援に関する基本方針案についての意見を申し上げます。その上で、本日諮問をいただきましたサステナビリティ情報の開示についての意見を申し上げたいと思います。
     まず、資産形成の件ですが、これまで議論にございましたとおり、この基本方針案には、これまでの日本の金融の構造が、貯蓄と投資を対比させれば貯蓄に偏重であるとの記載があります。例えば、日本銀行が出している日米欧の資金循環勘定を用いた比較統計などでクリアに分かりますけれども、日本の個人の金融資産が2,000兆円ある中で、54%が現金預金であり、この比率は米国の12%と比べて極めて高いという問題が常々指摘されているわけであります。
     この問題は、星委員が先ほどおっしゃった、金融機関が広く医療に比べて信頼されていないからかというと、むしろ信頼されているからこそ、これだけたくさんの預金が集まっているのだと私は思います。ただ、なぜこうなってしまったのかという歴史的経緯を考えると、今から70年ぐらい前でしょうか、もっと前でしょうか、貯蓄推進運動というのが全国の自治体及び官庁あるいは日本銀行等によって推進されていた時期がございました。これは、当時の日本経済にとって貯蓄が必要だったからこそ、国を挙げて貯蓄を振興しようということでこの活動を行い、結果として日本人が極めて貯蓄好きになったということを反映してのことだと思います。当時、貯蓄から投資へという言葉はかけられませんでした。それがかけられるようになったのは、1970年代ぐらいでしょうか。その意味でいくと、それ以来50年ぐらいは多分、貯蓄から投資へという掛け声をかけ続けているのですが、最初に行った貯蓄推進運動の極めて強いインパクトがそのまま残ってしまって、日本人が預金を偏重しているという傾向が残ってしまった。これは一見すると、必ずしも国民の資産形成等の観点からいうと、投資に振り向けて例えばロスをしてしまう、あるいは消費に振り向けて使い尽くしてしまうよりも、個人の生涯の構成という意味からはよいことだと思うのですけれども、一方で経済全体として見ると、例えばリスクマネーの供給であるとか、様々な成長分野への投資であるとかというものについて、もともとの原資が預金であるならば、その預金を通じてリスクの高い投資を行えないということを考えれば、おのずと金融の仲介機能の特性に影響を与えてしまうという意味で、日本の成長にとって望ましくないという傾向があります。だからこそ貯蓄から投資へ、より個人にリスクを取って資産形成にチャレンジしてもらう、その代わり個人により大きなリターンを得てもらって、結果として個人の資産形成に資するというストーリーで、この議論を進めているものだと思います。
     その意味でいくと、どうも問題の端緒は、やはり教育にあったというのは事実だと私は思いますので、その意味でいくと、これまで議論に出ているような、単に高校生に、例えば消費者金融からお金を借りることはやめましょうとか、リボルビング払いをすることはやめましょうという教育をするだけではなくて、より広く投資というものについて、拒否反応を示しているような方々に対しても、合理的な判断をして頂くように促すことは大事だと思います。
     一方で、そういう掛け声がかかるがゆえに、怪しい金融商品であるとか特殊な投資対象にいろいろな勧誘がなされるわけですが、そういう部分への配慮も必要だと思います。そういうものとの混在があるからこそ、多くの人々が投資に消極的なってしまっているという問題を見逃すべきではないだろうと思うので、この点からも、きちんとした投資環境のクリーン化が十分に進められることが大事だろうと思います。
     では、もう1点、サステナビリティ情報の開示の諮問について、こちらはもちろんSSBJの公開素案の公表を受けて規制が必要であるというのは、それは当然のことなので、これは粛々と進めていくのが必要であることは当然理解します。私自身はむしろ、この種の議論、いわゆるサステナビリティ報告書や、企業の中のESG対応に関係するときに感じている違和感を少しだけ申し上げたいと思います。このESG絡みの話がなかなか難しいのは、もちろん理念としてはよく分かる部分でありまして、環境であるとか社会であるとかという非常に大きな問題に対して、企業が経済活動を行うことによる外部不経済を何らかの形で内部化して、より最適な解に近いものを目指そうという理念は分かるのです。企業の個別の投資活動についてそういうことをやるのは分かるのですけれども、例えばCOの排出によって最終的に地球環境がどうなるかということについて、実はまだ科学的な解明が完全に進んでいるとはとても思えないところです。あるいは、それ以外の個別のイシューであったとしても、例えばEVか、それともハイブリッドかとか、あるいは石炭火力を残すべきか否かとか、様々なイシューが極めて政治的な問題として、かつ、国レベルでも判断のつかない問題として残っています。これを必ずしもそれらの専門家ではない個別企業の経営陣に、その検討を委ねるというのもやや無理があるように思います。
     例えばCDPの基準などを見ると、地球環境問題についての専門家が取締役会にいるか、みたいな質問が入っていたりします。こういったことが行き過ぎると、例えば様々な社会問題に対する専門家、あるいは環境問題の専門家を様々な形で企業の内部の中に取り込んでほしいというような意見が出てくるわけです。けれども、全ての分野の専門家に、特定の産業に従事している企業経営者が必ずしもなれないし、なる必要もないだろうと私は思います。そういう方向にくれぐれも行かないように、これはあくまでも、全世界的に推進されている脱炭素的な運動に対応していくためのものであって、これを過度に推し進めてしまう結果、適切な企業の経営判断等に、無駄なと言うと怒られてしまいますが、過剰なコストをかけてしまうことにならないように注意する必要があるという懸念だけ申し上げて、私の意見とさせていただきます。
     ありがとうございました。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、川口委員、松井委員、加藤委員の順でお願いします。川口委員、どうぞ。
     
    川口委員
     ありがとうございます。
     私からは諮問事項についてと基本方針案についてコメントさせて頂きます。
     まず、諮問事項については、冒頭、神田政務官からお言葉がありましたように、サステナビリティ情報の開示というのは世界的な潮流であることは間違いありません。そこでは、もう導入段階から、現在では情報の信頼性をどのように確保するかが課題になっています。この点、虚偽の情報あるいは見せかけの情報を開示した者の責任ですとか、あるいは外部専門家による保証のあり方が議論されます。前者については、例えばセーフハーバーを認めるべきかということを含めた民事責任、後者については、一体誰がそれを担当するのか、そして保証のレベルが問題になるかと思います。保証のレベルにつきましては、与えられた情報の下、虚偽があるとは認められないというだけの保証、すなわち、「限定的な保証」または「消極的な保証」で足りるのか、あるいは全ての点で適正な表示であるという保証、すなわち、「積極的な保証」まで求められるのかが注目されます。海外では、こちらの制度設計といいますか検討が進んでいるようですが、日本は、これからというところです。このことは逆に、海外の動向を参考にできるとも言えます。もちろん日本の固有事情はあると思いますが、いずれにせよ、国際的にも見劣りのしないシステムの検討をお願いします。
     次に、基本方針案についてです。国民の安定的な資産形成、特に金融商品での資産形成を目指すためには、金融商品を売る側と買う側の双方に関する取組みが不可欠です。「安定的」という言葉がキーワードとして使われていますが、そこでは、長期的視野に立った政策が求められることを意味します。
     まず、売る側、すなわち、業者に対する規制ですが、これは、やはり、顧客本位の業務運営の実現というのが中心になるかと思います。基本方針案においても、顧客本位の業務運営の確保がうたわれています。この点、近年の金融サービス提供法において誠実公正義務があらためて規定されました。これにより、従来、金融商品取引法において金融商品取引業者などに限定されていたものが、金融サービスを提供する業者全般に適用されるということになりました。このような法改正で、金融サービスを提供する業者が顧客本位の業務に関してどのように変わっていくのか注目したいと思っております。また、先に述べたように、誠実公正義務は、金融商品取引法において規定されていました。しかし、監督官庁である金融庁は、この規定をほとんど使ってきませんでした。抽象的な規定ではありますが、新しい法制度の下、この規定がどのように運用されていくのかにも注目しています。
     そして、買い手である投資者のほうですが、先ほど来、金融教育が重要なキーワードであることは、皆さんがおっしゃっているとおりで、私も同感です。短期的には、お金を持っている人、つまり社会人などを対象とした教育というものが効果的でしょう。さらに、長い目で見れば、学校での教育も意味があると思います。今までも、自主規制団体である日本証券業協会などが金融教育を実施してきたようですが、新設される機構が主体的に行うようになり、より効果的な教育がなされることを期待しています。
     ただ、なんでも教育にコストがかかります。金融教育の普及目標を達成するには、そのリソースに限界があるようにも思います。富裕層だけがこれを享受するのではなくて、全国的に等しく金融教育がなされる必要があります。昨今のコロナ禍で、大学教育も大きく変わりました。例えば、インターネットを活用したいろいろなツールが開発され、非常に便利になってきました。こうしたツールなどを利用した幅広い教育というものも一つの方法かと思います。
     以上でございます。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、松井委員、どうぞ。
     
    松井委員 
     それでは、私も、諮問事項及び資料3と4について意見を述べたいと思います。
     諮問事項につきましては、配られました資料1の4ページにおいて、プライム市場であるかどうかということは関係があるのか、ないのかといったような議論がございました。ESG関係の要素に会社が与えるインパクト、ダブルマテリアリティということを考えると、こういった議論が起こりやすいですけれども、投資家への説明の重要性であるとか、開示を行う財務面の体力ということを考えると、現実としては、雇用の規模あるいは取引の規模といったものを勘案した上で、まずはプライムであるとか、上場して説明義務を大きく負うというところから始めていくという考え方もあるのではないかと思います。
     他方で、限定した以上、欧米並みのものを入れるということになるのかということについては、必ずしもそうではないのではないかと思っておりまして、細目的な自主的な基準の設定というのが産業別に他国で先行していることもあり、ISSBなどを通じて、これらを参照しなさいというような形になっていくということも、もしかするとあるかもしれないわけでございますが、日本で採用すべき基準というものの内容については、日本で実行可能な枠組みというものを整えていくことが重要であろうと思っております。
     このように、日本基準のあり方というものを堅持するのであるならば、保証についても同様に、その立てつけ、あるいはその趣旨を正しく理解して、保証業務を行う主体というものを確保するということが今後重要になっていくであろうと思っております。
     資料3と4につきましては、これは複数の政策を正しくかみ合わせるということが非常に重要だろうと思っております。家計の面からいいますと、金融商品を買っていくであろう将来世代というのは、比較的小規模零細であるということが多いでしょうし、そういった人たちの求めるプロダクトは何かということを考え、教育し、提供していくとなると、プロダクトガバナンスの重要性はアップするかと思います。
     他方で業務の側の規制の仕方としては、バックオフィスにおける業務プロセスを改革したり新興業者を育成するという、この2つはいずれも合理的ですけれども、投資家の側から見ると、どういうふうに手数料が配られているのかが見えにくくなるですとか、バックオフィスの側では、顧客の管理に際して、誰がどういう資産を保有しているとなぜ問題なのかという、顧客の保有資産にかかる問題の中身まで掘り下げてみるということが起きない場合というのもあるかと思います。したがって、それぞれの政策をきちんと回していくためにも、プロダクトガバナンス、それから実際に会社がこれを、バックオフィスも含めてきちんと管理できるのかという体制を整えていくという執行部分が非常に重要かと思いますので、これらをきちんと回して、国民が正しく安定的に資産を形成できる社会になっていくといいなと思っております。
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、次に、加藤委員、どうぞお願いいたします。
     
    加藤委員 
     私も安定的な資産形成の支援に関する基本方針案について、2点コメントいたします。
     第1点目ですが、資産運用業の改革という点につきまして、「市場制度ワーキング・グループ」の報告書と、それに至る審議の中では、資産運用業のプロフェッショナル人材の育成という点が非常に重要ではないかという意見がありました。資産運用業とはどういったビジネスであるかについて、例えば学部とか大学院で専門に勉強している人は分かるかもしれませんけれども、若い方にとっては分かりにくいという部分があるのではないかという意見がありました。資産運用業の改革の中で、やはり優秀な人材が資産運用業というビジネスに興味を持って頂き、そこに継続的に新しい人が参入していくことは重要かと思います。ですから、資産運用業のプロフェッショナルの育成の仕方ということについても、やはり何らかの施策を講じる必要があるかもしれないと思います。
     関連して、今回の基本方針案では、主に直近の施策が取り上げられている印象を持っています。ただ、安定的な資産形成の支援等については、10年以上かけて様々な施策を積み上げてきたという部分もあると思います。例えば電子決済等代行業や金融サービス仲介業など、少し前に新しく導入された新しいビジネスの仕組みが現在どの程度使われているかについても、これらも資産形成に関わりますので、併せて検証していくことが考えられてよいのではないかと思います。
     2点目は、資産形成を行う側からの視点についてです。金融教育は大変重要であるのは言わずもがなですが、やはり望ましい資産形成の方法は、年代や各個人が置かれている環境によって相当異なる部分があると思います。金融教育などに関するプログラムを考える際には、そういった個人の置かれている状況に応じて、やはり望ましい資産形成の方法が変わり得る場合があるということも意識した施策が必要であると思います。
     さらに、事務局の御説明で、定期的に金融教育を受ける機会が必要だという説明がありましたが、これは非常に重要であると思います。入り口の段階、つまり資産形成の必要性を意識していただくために金融教育が必要であることは当然ですけれども、その後、実際に自分で資産形成のために様々なことを試してみると思います。その際、何か分からないことがあった場合には、気軽に情報収集できる、それも信頼できるような形で情報収集できるような仕組みがあると、これは資産形成を考える人々にとっては非常に役に立つと思います。こういった点も、この基本方針案の金融教育に関するところに組み込まれているかと思いますが、実際の施策を講じる際には、ぜひ検討して頂きたいと思います。
     私からは以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     ここで、順番からいうとオンラインで御発言の御希望いただいた委員の皆様に御発言頂きたいのですけれども、もし聞こえていれば、冨田委員、北尾委員、河野委員の順で御発言頂ければありがたく思いますけれども、冨田委員、聞こえておりますでしょうか。 
     
    冨田委員 
     はい。ありがとうございます。それでは、発言をさせて頂きます。
     私は、働く者の立場から、大きく2点、意見を申し上げたいと存じます。1点目は、サステナビリティ情報の開示についてでございます。今回ワーキング・グループを設置し、開示基準を検討するとのことですが、ハードルが高いのは承知をしておりますけれども、引き続き開示項目に人権の尊重を加えることにつきまして御検討頂きたいと存じます。国連の指導原則でも人権の保護尊重は国家の義務、企業の責任とされておりますし、ESG投資の中では、ビジネスと人権が重要な取組みと位置づけられております。開示基準とまではいかないまでも、どうすれば開示基準をつくれるのか、課題を洗い出すなどの前向きな御議論を頂けるとありがたいと存じます。
     2点目は、安全的な資産形成の支援に関する基本方針案についてです。こちらは、ぜひ方針の中に記載を頂きたいという観点で2点、最後に教育について1点申し上げます。安定的な資産形成実現の必要性につきまして、全く異論はございませんが、諸外国と比して長らく賃金が上がってこなかった我が国においては、貯蓄にさえ十分に回せない層が多く存在をいたします。そのことを踏まえれば、投資は当然に余剰資金によって行われるべきであるということを方針の中に明示を頂きたいと存じます。その上で、若年層や非正規雇用で働く方の資産形成の入り口は貯蓄でありますので、特に勤労者財産形成促進法に基づいて国が行う財形貯蓄制度は、勤労者が長期で安定した資産を形成する上で大変重要な制度です。基本方針案では、政府として後押ししているにとどまっておりますが、資産形成を始める際の重要な選択肢であると、より位置づけを明確に記載頂くとともに、多くの勤労者が本制度を活用できますよう、制度の見直しや企業の環境整備にも言及を頂けるとありがたいと存じます。
     勤労者が資産形成に前向きに取り組むには、幼少期から高齢期に至るまで切れ目のない金融教育が必要です。方針案には、金融教育を受けたと認識している人の割合を米国並みの20%を目指すとありますが、真に重要なのは数字目標ではなく、ライフステージごとに反復して教育を受ける機会の提供です。幼児も含めた教育での機会拡充を図るとともに、職域においては、中小企業や非正規雇用で働く方にも確実に機会を提供するなど、誰一人取り残さない丁寧な対応をお願いしたいと存じます。
     私からは以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     では、続きまして、北尾委員、お願いいたします。
     
    ○北尾委員
     聞こえていますでしょうか。
     
    ○神田会長
     はい。聞こえております。
     
    北尾委員 
     オンラインの方の話はよく聞こえたのですが、会場の音声が聞こえていないので、流れが分かってなくて、ずれたことになってしまったら申し訳ないのですけれども、私のほうからは、マクロ経済の研究者としての観点から、特にインベストメント・チェーンを通じた成長と分配について3点、簡潔にコメントさせて頂きます。
     インベストメント・チェーンの途中で、やはりフローが詰まることなくて、最終的なゴールであるところのミクロレベルの国民の所得向上、それからマクロの経済の成長につながるのかというのは、中長期的な検証が必要であると思います。例えばNISAの拡大によって市場への投資が促進されて、株価が上がり、企業価値、資産価値が上がるというところはすばらしいですけれども、そこで止まらずに、最終的な目標であるところの持続可能な成長につながることが必要です。なので、企業・家計が豊かになることによって、それは資金が成長プロジェクトへの投資促進とかスタートアップ資金の供給・成長につながっているかということを1つ1つ検証していくことが必要であると思います。特に制度変更が起きたときには、そういったインベストメント・チェーンの流れを検証する好機であると思います。もともと資金の豊かなセクターに資金が集まって、資本コストが下がることで、より、例えば期待収益率の低い投資に資金が向けられるようなことがないように、長期的な成長率に対してプラスの影響があるということを見ていく必要があるかと思います。
     2点目に、成長と分配の観点から家計レベルに目を向けると、大きな目的の1つは安定的な資産形成というところが掲げられているわけですけれども、ここで特に後押しが必要な人の役に立っているかということを、制度を導入する際に検討していくことが必要かと思います。特にNISAやiDeCoであれば、いずれにしても投資を行うような人が非課税率のメリットだけを受けることになっていないかといったことを検証する必要があって、こういうのはNISAの利用者数とか総投資額の変化、マクロデータだけでも見ていても分からないことなので、家計のどういった層、特に年齢、所得、資産によって異なる家計というのがどのように行動変化させて、彼らの貯蓄率、それからその内訳というのがどのように変わってきたのかを把握してくることが大切であると思います。
     あらゆるライフステージの人が、先ほど冨田委員のお話にもありましたけれども、消費を減らして貯蓄を増やして投資比率を高めればいいというわけでもなく、リテラシーが向上することはプラスではあるのですが、それが必ずしも投資が増えることにつながることが正しいというわけではないというところも分けて議論する必要があるかと思います。こういったミクロの行動というのは、やはりサーベイに基づく政府統計の調査とか、あるいは即時性が必要であれば、民間の金融機関といった他の機関との連携によってデータ分析に力を入れていくべきことかと思います。
     最後、ちょっと離れた観点になってしまうのですけれども、税の優遇制度によることの財政的なコストもあるわけです。NISA等の非課税制度によって、とりわけ移行過程においては、やはり失われた税収もあるわけですけれども、それをどういった形で補っていくのか、再配分を悪化させるような形で負担の付替えになっていないかということを理解する必要があるわけですが、そういったことを理解するためにも、述べたようなミクロデータの検証から明らかになっていくというところもあるかと思います。
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、オンラインでの河野委員、お願いいたします。
     
    河野委員 
     河野でございます。御説明、大変ありがとうございました。
     私も会場の議論が聞こえておりませんので、重複するところもあるかもしれませんけれども、意見を述べたいと思います。
     家計金融資産の半分を占める預貯金を投資に回すことで経済に活力を与えるという資産運用の抜本的改革のために様々な具体策が提案されており、本日諮問されましたサステナビリティ情報の開示と保証についても、投資家にとって信頼性のある情報が適切に提供されることで、大きな流れを補完する取組と理解しております。
     基本方針案については、大きな違和感はございませんけれども、消費者として3点申し上げたいと思います。1点目は、ハイリスクの金融製品から消費者を守るために、金融消費者保護の法制度全体の見直しと、紛争が起こったときに迅速に解決に導くADR等の整備、そして金融経済教育の充実などが一体的に行われるべきで、さらに海外の現状との落差是正という視点にも踏み込んで頂ければと思います。中でも、新たに設けられる金融経済教育推進機構の役割は重要で、安定的な資産形成の重要性の理解と浸透のための金融リテラシー向上に向けて、低年齢のうちからお金や金融商品を理解する力を育てることで、自分らしく生活する力を養うということに力点を置いて頂き、貯蓄を投資に回すという偏った教育にならないように、関係者の方には肝に銘じて頂きたいと思います。
     2点目は、施策の実効性を高めるためには、体系的・整合的に取り組んで頂きたいということで、金融分野におけるステークホルダーである資産運用業、アセットオーナー、販売、証券会社、金融機関、上場企業、そして私たち家計や個人というところまでも視野に入れて、総合的な機能と質の向上に着目して進めることがとても重要だと考えています。
     最後に、消費者としては、これからは物価、賃金、金利が上がる時代になるのかもしれないということを頭に入れて、年齢や状況に応じて違いますけれども、どう働いて収入を得ていくのか、知識や技術を磨くことで、どう賃金を上げていくのかとか、資産を長期的に運用するのか、または守っていくのかなどについて、投資の機会が広がることで、これまでの20年とは違うということを考えるいい機会であると捉えたいと思っています。また、資産運用改革に一般市民が参画するということは、どういう投資先を選ぶのか、その選択が、例えばカーボンニュートラルやSDGsなど地球規模課題や地域創生など社会課題等への改善への貢献につながるという大局的な視点での評価も行って頂ければ、国民生活全体へのインパクトとして、その効果の検証につながっていけばいいと思っております。
     私からは以上です。ありがとうございました。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、会場に戻りまして、渡辺委員、翁委員、そして吉戒委員、佐古委員の順でお願いしたいと思います。渡辺委員、どうぞお願いします。
     
    渡辺委員 
     私から2点です。
     1点目は、安定的な資産形成に関する支援に関してですけれども、そもそも国民がどんな資産形成をしているかについて、我々はあまりよく分かってないのではないかと思っています。どういう意味かといいますと、基本的に持っているデータがほとんどクロスセクションなデータ、基本的なデータとしてあるのが、例えば家計調査とか、それから金融リテラシーに関しても金融リテラシー調査もクロスセクションのデータになります。なので、ある時点だけを断面的に捉えることが我々持っている統計ができることになります。
     一方で、資産形成というのはダイナミックな、今日こうだった人が明日どうするという話になるわけです。なので、先ほど北尾委員もおっしゃっていましたけれども、こういう話をミクロにきちんと検証していくなり、そもそも政策を考えるに当たって、題材としては、先ほど資金循環統計の話がありましたが、本当にマクロなアグリゲートされたものでは大きなことは分かってはいるわけですが、では、低所得の人とそうじゃない人の間でどういうように行動が違って、それによって、新NISAによって、そのインパクトはどういうように違うのかということは分かりません。先ほどから、例えば懸念点としてほかの委員からも指摘があったような点等に関しても、本当に見ようと思ったら、変化を捉えられる必要がありますが、そのための統計がないと認識しています。
     ですので、すぐに新しい統計を作るというのはできないとは思うのですけれども、パネルの形で、ある人について、複数の時点で、どのように金融行動が変わっていっているのかというのを捉えられるようなデータを持てるように統計を、家計調査はほかのところが主管ですのでどうするがよいか分かりませんが、この大きな政策的な取組みがなされていくわけですから、それがどのように国民に影響を与えているのかをきちんとミクロレベルで検証できるような仕組みを整えていく、そのための基礎となる統計というのをつくっていくということは重要なのではないかと思っています。これが1つ目の点です。
     もう一つは、金融教育に関してですけれども、金融教育に関しては、私もタスクフォースでいろいろ御意見を申し上げたりもしたのですが、割と印象論で語られることが多くて、それ自体はいろいろな人のいろいろな感想があって、それが反映されるということは非常に重要なことだと思います。ただ、一方で、膨大な研究の蓄積がありますので、金融教育に関して、こういう場面ではこういうやり方をすると効果的とか、こういう時にはこういうやり方がいい、所得層が違う人にはどう、といった膨大な蓄積がありますので、それらを参考にしながら進めて頂くとよいと思います。もちろん日本国内のものもあれば海外のものもありますけれども、そういうものを見ながら、取り入れられるところは取り入れるとともに、そこで使われている手法、どういう形で金融教育の効果というのが測られて、どういうデザインで測られているのか。それをうまく取り入れることで、柔軟に政策改善できるような形で、データを取りながらEBPMの観点から政策を改善しながら、最初のやり方にとらわれることなく、より効果的なやり方をどんどん探しながら、政策を改善していくという形で進めていけるような仕組みで始めていかれるといいのではないかと思いました。
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     では、次に、翁委員、どうぞお願いいたします。
     
    翁委員 
     ありがとうございます。
     「市場制度ワーキング・グループ」及び国民の安定的資産形成の支援に関して2点申し上げたいと思います。
     1つは、スチュワードシップ活動の実質化についてでございます。やはり、これは資産運用立国を目指す上で大変重要な課題になっていると思っております。東証から資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて昨年3月末に要請を出して、その後、上場企業の行動が随分大きく変化してきていると思っております。要請は上場企業に対してでございますが、その際にも投資家のエンゲージメント活動の重要性が指摘されています。今回の「資産運用に関するタスクフォース」でも、この重要性が指摘されていまして、様々な施策が提言されているわけでございます。したがって投資家がインベストメント・チェーンにおいて役割をしっかり果たすことが重要ですが、今後そのエンゲージメント活動の質というのが非常に問われるのではないかと思っております。例えば、投資家のエンゲージメントが、財務、サステナビリティ、そして事業のビジネスモデルをつなげて有機的にエンゲージメントが行われるということで、初めて中長期的な企業価値の向上に結びつくことが期待されると思っております。こういうエンゲージメント活動が行われることによって、企業の成長が家計にも及ぶ成長と分配の好循環も実現していくと考えております。
     また、今回、実質株主の透明性確保に向けて機関投資家の行動規範に関する提言も行われておりますが、これも大変重要な指摘であると思っております。これは最終的に法律についても検討していくということでございますが、まずは、スチュワードシップコードにつきまして、例えばエンゲージメント活動の質の向上や今回の透明性の向上などを改めて検討して、必要に応じて改定を考えていくこともしていってはいかがかと思っております。
     2点目は、金融教育についてでございますが、これも、今、渡辺委員もおっしゃいましたけれども、ここでは金融教育で、アウトプットとして10年度末にアメリカ並みの20%というのが、目標で掲げられておりますが、大事なのは、だんだん資産形成が行われていくというアウトカムだと思っております。その意味では、リテラシーが上がるような教育を実施することのみならず、多くの人の行動変容が促されていくということが大事なのだろうと思っております。海外では、金融リテラシーと、加えて金融ケーパビリティという言葉も使われておりますけれども、行動経済学的な知見も高めて、どうやれば、どういう所得層に効果的なのかというようなこともしっかり検討しながら進めていっていただくことが大事ですし、それをEBPMでしっかり検証していって中長期的な検証を行っていくことが大事だと思っております。
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、吉戒委員、どうぞお願いいたします。
     
    吉戒委員 
     私からは「市場制度ワーキング・グループ」の「資産運用に関するタスクフォース」の報告について私見ですけれども、申し述べたいと思います。
     個人的に非常に強い関心を持っていますのは、地域の中堅企業の成長ということだと、ずっとそう確信しているわけですけれども、今回の資産運用会社の高度化の中で大手金融グループの高度化によるガバナンス向上、これは当然と一方で地域金融機関というのは地域の優良な非公開企業に対してデットだけではなくてエクイティを成長資金として提供していく。これはスタートアップだけではないのです。むしろ伝統的なといいますか、クラシックな企業のほうが、こういうニーズは非常に強いと思います。企業価値を向上させて、その結果、地域金融機関が投資リターンを得る。これは地域金融機関しかできない、非常に重要な仕事ではないかと考えています。今、現実どうかというと、地域金融機関で、いわゆる資産運用業を本業に近いレベルで考えているところは恐らくほとんどないと思うのですけれども、これはやはり次世代の本業というぐらいの位置づけを持ってもらうということが非常に大事ではないかと思います。例えばバランスシートとか規制資本の一部を一定の比率を投資事業に振り向けるというようなこと、大きなコミットメントがないとなかなか全体が動かないだろうと思います。
     それから、今回の報告、提言の中に投資運用業の参入緩和と、要件の緩和というのがありまして、例えばミドル・バックオフィスのアウトソーシング、非常に大きいと思います。今、プロ向けファンドといいますか、いわゆる適格機関投資家の特例業務というところで、PEとかファンド運営をやっているところが非常に多いと思うのですけれども、これが、できるだけ一般投資運用業に移行していく流れになると非常にいいのではないかと思うのです。翻って地域金融機関の場合はどうかというと、これは投資専門子会社というのが、認められていて、恐らくかなりの地方銀行はこういったものを設立しているのですが、ほとんど例外なく、母体行だけが、出資しているシングルLPなのです。全然と言ったら少し語弊があるのですが、これではないのではないかと思うのです。やはり純粋な、純投資のアセットオーナーを招聘するというぐらいのレベルにレベルアップしていかないといけないのではないかと思います。
     こういったことを地域金融機関に促すといっても、先ほど人材の問題だとか御指摘もありましたけれども、端的に言えば必要なら運用会社を買ってくる。M&Aを促すのではなくて自らやるというぐらいのことをやらないと、地域における成長と分配の好循環を達成していけないのではないかと思います。これは全ての地域金融機関が対象になるかというと、それは甚だ難しいのかもしれませんけれども、やはりこういったものがうまく機能できるところもあるのではないかと思います。
     以上です。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、佐古委員、どうぞお願いします。
     
    佐古委員 
     私のほうからは、安定的な資産形成の支援に関する基本方針案について1つコメントさせて頂ければと思います。昨今は、国民はこういう情報をネットで入手することが多いと思っております。御存じのようにネットの情報は、信頼できる専門家が言っているのかどうなのかが分からないという状態で、射幸心もあって、不幸な事件がたくさん出ていると思っております。必ずしも技術が全てを解決できるわけではないと重々承知しながら、1つ紹介させて頂きたいのが、デジタル資格証というのがあって、その人が認定された資格を持っている人かどうかということが判定できるような仕組みの検討が始まっております。そのような仕組みも使って頂いて、ぜひ国民が、この人の発言は信頼していいのかどうなのか、あるいはその人が過去に変なことを言ってないかどうかが分かるような仕組みも検討して頂ければと思っております。
     私からは以上になります。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     ほとんどの委員の皆様方から御発言を頂きましたけれども、あと会場では山本和彦委員、オンラインでは河村委員から、まだ御発言の希望を特に頂いていないのですが、もし何かあればということで。山本委員、いかがですか。
     
    山本(和)委員 
     それでは、1点だけ。やはり安定的な資産形成の支援という観点からすると、先ほど、どなたからか御指摘がありましたが、最初にやはり預金、預貯金の重要性ということ、その後、投資ということが言われたけれども、そこにやはりなかなか国民が十分に動かされなかったということ。1つは、やはり投資の危険性といいますか、そういうことが非常に過度に言われてきたところがあったのかと思っています。それは、1つの問題としては、今でもやはり非常に不健全な事業者というのがいて、それが非常に大きく報道されて、そのことが行動全体に影響している面というのはあるのかと思っています。どなたかから市場をクリーンにするということが言われていましたけれども、そういったところに少しずつ、消費者庁をはじめとして取り組んでいるところはあると思いますが、まだまだ十分でないようなところがあるのかと思います。今回のところでも詐欺的な投資勧誘等による被害防止ということが指摘されていますけれども、実効性を持つように、必ずしも金融庁だけの話ではないと思いますが、国全体で取り組むということは重要かと思っています。
     
    ○神田会長
     どうもありがとうございました。
     オンライン参加の河村委員、御発言がもしありましたらお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
     
    河村委員 
     神田先生、ありがとうございます。今日はオンラインで申し訳ありません。
     制度的な問題は、もう皆さんがほとんど議論されていますので、少し感想めいたことを申し上げますと、やはり投資の問題というのは個別具体的な話になってきますので、例えばですけれども、具体的にもう少しどういう点を啓蒙するかというところの議論があったほうがいいと思うのです。例えば、金融機関はどういう証券会社を使ったらいいのか、ネット証券を使うのかどうかという問題から始まって運用の原則ですよね。長期投資、分散投資、低コストで投資をするとか、長期投資はじっと待つとか、集中よりも分散がいいとか、ファンドをどのように考えるのかとか、そういう、まず、基本的に投資をどのように考えるのかということをきちんと確認しないと。ただ、何か株式市場へお金を入れればいいという感じにややもするとなりがちなものですから、投資の基本原則みたいなものをきちんとPRできるようにするといいというのが1点あります。
     もう一つはもっと大きな問題で、今日も御指摘ありましたけれども、極端な話、資産家を除けば、皆さん労働者なわけです。だから、我々が提供する労働と、労働の対価で得た資金の生活費で余った分、残った分を投資するということの意味合いですよね。資本家的なアクティビティと労働者としてのアクティビティをどのように折り合いをつけるのだという結構重要な問題についても、少し何か議論ができるといいという感じがいたしました。
     以上であります。
     
    神田会長 
     どうもありがとうございました。
     これで御参加の委員の皆様方全員から御発言を頂くことができました。どうもありがとうございました。
     私も一言だけ、基本方針案の金融経済教育について申し上げたいのですけれども、これは加藤委員がおっしゃったことと同じなのですが、前からワーキング・グループの議論に参加していて、定期健康診断ということの重要性を非常に感じていまして、体の健康については、私たち、大体、定期的な健康診断というのを受けることが確立しているし、また、法律によって一部義務づけられているわけですけれども、やはりお金の健康についても定期的な健康診断ということを実施するというのが、何かすごく重要な気がいたしまして、御検討頂ければありがたく思います。
     時間が大体終わりに近づいているのですけれども、もし皆様方の御意見を聞いて、さらにもう一言言いたいという方がいらっしゃったら承りたいとは思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
     それでは、多くの貴重な御意見を、いつものことではございますけれども頂きまして、誠にありがとうございました。なお、オンライン参加の皆様方には、前半のほう、音声が届かなくて大変失礼いたしました。
     それでは、次にといいますか、最後にということになるのですけれども、幾つかございまして、まず、本日、大臣から頂戴いたしました諮問につきまして、ワーキング・グループを設置して具体的な検討を進めていきたいと思います。ワーキング・グループの座長につきましては、専門委員の神作裕之先生にお願いしたいと存じます。本日、神作先生は、この場にはいらっしゃらないのですけれども、本件につきまして、御本人から事前に御了解を頂いております。その他のワーキング・グループのメンバーやワーキング・グループの名称等につきましては、大変恐縮でございますけれども、私に御一任を頂ければ大変ありがたく存じます。
     以上のような形で進めさせて頂きたいと考えておりますけれども、ここで御承認頂けますでしょうか。


                       (「異議なし」の声あり)

     ○神田会長
     どうもありがとうございます。
     次に、先ほど御説明、御報告をさせて頂きました2つの報告書でございますけれども、「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」の報告、それから「市場制度ワーキング・グループ」と「資産運用に関するタスクフォース」の報告、これにつきましては、これをここで金融審議会として御了承頂きたいと存じます。御了承頂けますでしょうか。
     

    (「異議なし」の声あり)

     
    ○神田会長
     どうもありがとうございます。
     そして、今日もたくさん御意見を頂きました国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(案)についてですけれども、これにつきましては、本日、委員の皆様方から頂きました御意見等を踏まえながら、金融庁において政府としての基本的な方針の最終化に向けて準備が進められるということになっております。
     それでは、以上で予定の議事は全て終了をしたと思います。
     最後に、政務官からございますでしょうか。

    神田政務官 
     委員の皆様、お忙しい中、本日はありがとうございました。そして、大変貴重な御意見をたくさん頂きました。皆様の御意見をこれから真摯に検討して反映させてまいりたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
     
    神田会長
     どうもありがとうございました。
     それでは、以上で金融審議会総会、金融分科会の合同会合を終了させて頂きたいと思います。
     本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行います。今後の日程などにつきましては、事務局から後日、御連絡をさせて頂きますので、よろしくお願いいたします。
     皆様方、本日は大変お忙しい中を御参加頂きまして、誠にありがとうございました。
     以上をもちまして、終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。
     

    ―― 了 ――

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企画市場局総務課

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